約 173,340 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2831.html
ぶそしき! これから!? 第0話 『トモダチ』 0-2 「着いたー」 自転車で行くこと15分ほど、今回の目的地の神姫センターに到着する。 入るとまず目につくのは大型のモニターだ。 新しいゲームのCMや、バトルで神姫が戦っている様子が映し出される。 改めて周りを見渡すと、大勢の人に各種のゲームに幾つもの神姫のバトル用の大型筐体、そして武装神姫の素体やパーツなども売られている広い販売コーナーが目に入る。 「おー……」 ふと筐体の映像に目を見やると、闘技場らしき場所で凶悪な手脚そして重装甲の青髪の神姫と鎧を身にまとい大剣を持った神姫が切り結び、激突する様が見られる。 別の筐体では、荒野の空に舞う神姫の姿が見える。 大きなウイングユニットを背負い、手に持った長大なレーザーライフルで他の神姫達を撃ち落としていく白い神姫の姿が映る。 どことなく似たような雰囲気の装備を身に纏い、緑の剣と赤の剣で切り結ぶ白と黒の神姫の姿も見える。 そんな幾つものバトルの様子が少年の目に映る。 「――あ、いけない」 思わずバトルに目を奪われるが、本来の目的を思い出して販売コーナーに向かう。 「う~ん……」 少年は棚を見渡しながら移動する。 神姫のパーツが単品で売られているコーナーを抜け、神姫用の服やアクセサリーなどがある場所に出てしまう。 色々と目移りしてしまうが、目的地はパーツの所ではない。 そうしていると、上から声がかけられる。 「お客様、なにかお探しでしょうか?」 「え?」 視線を上に向けると、そこにはフライトユニットを装備して、風に吹かれる風船かなにかのように穏やかに飛んで来る金髪の白い神姫がいた。 少年の近く、目線の位置まで来るとそこで静止し、高度を維持する。 「天使型MMSアーンヴァルのアリシアと言います。この神姫センターの店員神姫の1人です。 お客様、なにかお探し物がありましたら、ご案内させていただきます」 ぺこりと一礼し、にっこりとした営業スマイルで自己紹介と少年に提案する神姫のアリシア。 その提案に思わず頷いてしまう。 「あ、その、武装神姫があるところを探してる……んです」 「分かりました。こちらにどうぞ」 アリシアが場所を案内してくれる。 まずは武装と素体が一緒になったフルセットの棚に向かう。 「……」 アリシアの先導にしたがって行く。 少年はなんとなく気まずさを感じて、話しかけてみる。 「え、え~と、あのさ……」 「はい?」 「武装神姫ってバトルでレーザーや弾を撃ったり、剣で切ったりしているけど、もしかして子どもが買うのは危険だったりする?」 先ほどのバトルを見て、思いついた話題を振る。 そんな話題を振られたアリシアは、ニコニコとした営業スマイルのままだ。 「いえ、そんなことはありませんよ。もしよろしければ、少し長くなりますが説明させていただきましょうか?」 「あ、うん。頼むよ」 アリシアが少年に向き直る。 そして、小さな先生が生徒に授業をするかのように説明を始める。 「武装神姫はロボット技術の結晶とも言える商品です。 心と感情を持ったフィギアロボットであり、人間のパートナーです。ソフト面でもハード面でも安全なように考慮されています。 もちろんマスターとなった方に尽くしますし、倫理プログラムで人間に危害を加えることはありません 武装も銃弾などはあくまでゲーム上のエフェクトですし、剣も切れるのはヴァーチャルバトルの中だけで、実際には切れるような刃は付けられていません。 ここまでよろしいでしょうか?」 「う、うん」 「神姫バトルは、バーチャルとリアルがあります。 リアルも神姫センターなどで行われるものはルールにのっとって行われる健全なゲームであり、言わばマスターと神姫達のスポーツのようなものです。事故がないよう、日々努力と改善が行われた結果、今の神姫バトルがあります」 「うん。武装神姫が危険なものじゃないことは分かったよ」 アリシアの説明を聞いて、少年は武装神姫のことについて少し理解できたように思う。 そんな少年を見て、アリシアはもう少しだけ説明を続ける。 「ありがとうございます、お客様。もう少しだけ続けますね。 神姫のマスターの中には、さらに刺激を求めて通常のルールに縛られないストリートバトルを行う方々がいます。これは勿論危険ですので、もし誘われるようなことがあっても参加しないでくださいね。なにかあったら悲しむのは、マスターやその神姫ですから」 「……」 思わず黙り込んでしまう。 最後の一言に、少年はなんとなくアリシアの真摯な想いのようなものを感じる。 「長々と申し訳ありません。……あ、案内を再開しますね」 「う、うん。ありがとう」 ニコニコとした営業スマイルのアリシアを追う。 「ここです、お客様」 アリシアの案内で目的の場所に着く。 「……う~ん」 棚に置かれた商品に目をやり、その値札を見て少年は思わず腕を組んで唸る――高い。 高いだろうとは思っていたが、想像していたものよりさらに1つ桁が多い。 「お客様、なにかお困りですか?」 「あ、うん……武装神姫って高いんだね……」 声をかけてきたアリシアに思わず、素直に困っていることがこぼれ出ててしまう。 そんな言葉を聞いてアリシアも少し困ったように笑う。 「あ、あはは……、そうですね。 武装神姫はフルプライスですと、良いパソコンと同程度のお値段になります。 お客様位の年齢ですと、ご両親やおじいちゃん、おばあちゃん、年上のお兄さんお姉さんなどに買ってもらうことがほとんどです。中には、お年玉とお小遣いなどを貯めて買うツワモノな方もいますけど」 「そ、そうなんだ……」 アリシアの説明を聞いて、武装神姫を買うのは、やっぱり難しいのかなーと思ってしまう。 「武装抜きの素体だけなら、もう少しお求めやすいお値段になるのですが……」 「う~ん、ちょっと安くなったぐらいじゃ……」 アリシアは少年の様子を一見する。 やはり、手持ちでは購入は難しかろうと見切る。 「失礼ですがお客様の年齢ですと、武装神姫の購入には保護者同伴か、同意書が必要となります。 購入の際にはご家族とのご相談が必要かと思います」 「え、そうなの?」 聞き返すお客様に、アリシアはさらに話を続ける。 「ご家族様に相談する前に、どんな神姫が良いか決めておくとお話しやすいかと思います。 なにかご希望の神姫はございますでしょうか?」 「そうだなぁ……」 営業スマイルを崩さず、悩むお客様をアリシアは見つめる。 「……分かんないなぁ。え~と、アリシア、さん。何かオススメはありますか?」 少し考え、具体的なイメージがわかず、少年はよく知っているだろう相手に尋ねる。 「アリシアでいいですよ、お客様。 でも、そうですね。神姫をおすすめするならば――」 一拍置く。しかし、それは逡巡によるものではなかった。 「――天使型MMSアーンヴァルがいいと思います!」 ドンと擬音がつきそうな位に言い切るアリシアさん。 営業スマイルのままだが、なにか妙な迫力を感じさせる。 「性格は真面目でマスターの言うことをよく聞く、従順で良い子たちです。愛情を注いであげれば素直に応えてくれます。 武装は高機動空戦型で、飛べるのはバトルでも日常生活でも大きなアドバンテージです。日常生活でも使えるフライトユニットはお高いですけど。 武器は近接戦のライトセイバー、近距離のハンドガン、中距離はマシンガン、遠距離は強力なレールガンにレーザーライフルとオールラウンダーでどの距離にでも対応できます。武装神姫の初期に販売されたものですが、アップグレードを繰り返されていますので最新のものに見劣りすることはありません。 初めて神姫を持つ方にとてもオススメです!」 笑顔のまま一気に説明し切るアリシアさん。 その勢いに押される少年。 「……あ、あれ! あの神姫についても教えてよ!」 直感的に話を変えた方が良いと思った少年は、公園で見た神姫と同型と思われるパッケージの説明を求める。 「あ、はい。あれは猫型MMSマオチャオです。 性格は一言で言えばネコです。 自由気ままでハイテンション、一緒にいると騒がしいけど元気になれる。そんな神姫です」 アリシアはまずは性格面での説明を行う。 今度は少年の様子を見ながら説明を行う。 「武装はクローにナックル、そしてドリルの近接戦特化の仕様です。 相手に近づいて殴り倒すという、単純明快なコンセプトがバトル初心者の方にもわかり易いです。 サブウェポンのプチマスィーンズを使ってのトリッキーな戦い方もできますけど」 今度は武装面での説明を行う。 「武装とその性質に癖はありますが、その性格で子どもの遊び相手に人気の神姫です。 中にはペット代わりとして、購入されるお客様もいます」 最後に総評して締めくくる。 今回は相手の反応を見ながらの説明のためか、神姫について初心者の少年でも理解しやすかった。 「へえ、あの時見た神姫ってマオチャオって言うんだ。……確かにテンション高かったなぁ」 少年はふと、見上げて公園で会った神姫のことを思い出す。 今アリシアに説明されたのとイメージが一致する。 「……ん?」 ちょうど上の棚が目に入る。そこにはアーンヴァルのものとは違う、鳥のような翼を持った神姫の姿があった。 「ねえ、アリシア。あの神姫なんて言うの?」 「はい、あれはセイレーン型MMSのエウクランテです。 武装が格好よくて、しかも合体変形機能付きで男の子に人気です。 性格も真面目な良い子ですよ」 少年の興味を持った神姫の簡単な説明をするアリシア。 この後、少年は他の神姫もアリシアに説明してもらい、最後には神姫購入のための保護者同意書の用紙ももらった。 ――少年が神姫のマスターになるまであと23時間 前へ / 次へ トップページ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/396.html
wiki版キャラクター相関図最新投稿対応状況 2007年4月5日時点で、以下の話までは確認しています。 主に相関図の進度確認用のメモ。 もどる Mighty Magic インターバル6 神姫たちの舞う空 コンタクトイエロー CROSS LO[A=R]D 14話 神姫狩人 第五話 武装神姫のリン 3章第20話 凪さん家シリーズ 凪さん家の十兵衛さん第十二話 真・凪さん家の弁慶ちゃん 第一話 凪さん家の弁慶ちゃん/0 TR-2 凪さん家の弁慶ちゃん 3話 ねここの飼い方 そのじゅうよん 劇場版~十一章・終焉~ ねここの飼い方・光と影 ~十章~ 岡島士郎と愉快な神姫達 第十三話 外伝第一話 『不良品』 師匠と弟子 明日の為に、其の11! 閑話休題:其の8、後日譚 マリナニタSOS!(仮) 第6話「初陣」 SOS番外編その2 せつなの武装神姫 僕とティキ そのじゅうろく Y.E.N.N 第5幕 魔女っ子神姫☆ドキドキハウリン ドキドキ☆エピローグ 外伝☆エピローグ コードネーム『G』 コラム1 HOBBYLIFE,HOBBYSHOP 第8話 SUB STANCE その6 いつか光り輝く 4.0 幸せな神姫を戦場に立たせる会 アルファ 春夏秋冬 三日目午前 休日 一日目 橘明人とかしまし神姫たちの日常日記 日記その十四 おまけ 出会いは雨の日 鳳凰カップ 2日目 アールとエルと 12話 TwinSword's クラウ・ソナス(第2話) BattleAnima Show No Mercy - なさけ むよう - 後編 おまかせ♪ホーリーベル 妖精コンビあらわる 外伝 その名はシュートレイ エピローグ 戦う神姫は好きですか 九話 戦うことを忘れた武装神姫 第4部第28話 番外-10 エルガのにっき 0403 シンメイのにっき 0310 徒然続く、そんな話。 第七節。 番外編 そのに 俺とティアナの場合 プロローグ 第2日目 ツガル戦術論-副題 シルヴィア奮闘記 鏡の試練 7 妄想神姫 本編 第二十三章 外伝 その十六 2036の風 第七間幕 短章2「野生の力」 幻の物語 幻・其の三 弾丸神姫 4 きしぶし! 第4話 流れ星シィル-銀河流星伝説- 2話 神姫ちゃんは何歳ですか? 第二十一話 過去編 1日だけの恋人 番外編 デモンストレーション 神姫ガーダーシリーズ エピソード1 二アー・トゥ・ユー Phase01-7 ユメノカガヤキ 剣は紅い花の誇り 第拾陸幕 幕間三 鳳凰杯編V sister G princess 9話 番外―sweet sweet chocolate ― EXECUTION Phase-4 鳳凰カップ編04 Phase-X01-Second Volumes Column02 武装神姫~ストライカーズ・ソウル~ 第1話 Gene Less Gene8おまけ Les lunes 第1話後半 Second Place -Howling- 第四話2 単発作品用トップページ 音声ファイル2036 三十路の独身男性、自営業の場合 第五弾発表 ある天使型の場合 弾丸神姫 騎士子のヴァレンタイン大作戦 目覚めればそこは 花は咲き乱れて※注意!18禁です 花種きてから数日後・・・ R18指定
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1311.html
鋼の心 ~Eisen Herz~ 神姫の構造と戦闘について ※この雑文は武装神姫に対するALCの勝手な解釈です。 一応本編ではこの解釈で考えてますよ、的なものです。 以上を考慮した上でお読み下さい。 オレ設定に興味は無いと言う方はどうかスルーして下さい。 鋼の心 ~Eisen Herz~へ戻る 神姫の構造 武装神姫の構造は中枢部、末端部、装備の3つに分類できる。 中枢部 神姫の最低必要条件。 頭部、首部、胸部(胸アーマーの部分、及び腹部は含まない)のみの構成。 これにCSCを搭載すれば神姫と識別される。 (この状態では電源は無いため、有線接続が必要だと思う) 交換が効かず、破損=神姫の死であるため堅牢なシェルで守られていると思う。 バトルに使用する武器は、このシェルを傷付けられないのが前提。 非常用のバッテリーもここに内臓されていると思う。 頭部は思考、嗜好などを決定する部分のひとつ。 CSCから影響を受け、その方向性を決定するが、頭部自体の傾向も強くあると思う。 (アーンヴァルは真面目な子が多いとか…) 胸部はCSCの基部であると同時に、神姫の身体機能の最大値を決定する部分だと思われる。 トルクがここで決まると言う感じだろうか? (マオチャオは素早いとか、サイフォスは腕力があるとか…) もちろんCSCの影響を受け、性能は変化すると思う。 余談だが、神姫は全て裸素体だと考えている。 フィギュアの塗装はパイロットスーツみたいなもの? (ジルダリアならブラとパンツだけだ!!) 当然“デフォルトでは”胸の先端や股間部分は何も無いと思うが…。 交換用の18禁パーツが出回らない訳は無い!!(力説) 末端部 いわゆる手足、それに加えて中枢部に含まれない腹部も末端部のひとつ。 ここは神姫の体であると同時に交換可能な装備でもあるため、換装やカスタマイズも可能。 (作中ではレライナが脚部を改造していると言う設定になっている) 腹部には神姫のメインバッテリーである燃料電池が内蔵されている。 燃料電池の種類はさまざまだが、基本的には水素を補給し、酸素と反応させることで電力を得る仕組み。 しかし、この機能を使用したとしても、やはりクレイドルによる睡眠と充電は必須。 (補給用の水素は商品なので有料。バトロンの急速充電池がこれだといいな、とか・・・) もちろん、この機能を使用せずにクレイドルの充電のみでも活動可能。 また、別売りのバイオ型燃料電池と換装すれば、神姫は食事から糖分を摂取し電力に還元することが可能になる。 (食事できる神姫の科学的説明・・・になる?) そして、燃料電池だということは活動すると“水”が生成されてしまう訳なのだが…。 あ…、えっち機能のある(性器のある)お腹も売ってると思う。 装備 言わずと知れた武器防具。 取り外しは容易であり、簡単に換装が可能。 手で握るものの他、ぷちマスィーンズなどもこれに分類される。 武装の威力はおそらく最大でもガスガン程度。 これ以上になると人間に対する殺傷能力を持ってしまい玩具としては危険。 近接武器ならカッターナイフとか? どちらにせよ使い方しだいで人間に攻撃も可能。 (神姫の銃弾が目に入れば失明の危険はあるし、頚動脈を狙えば刃物で殺せる) これは現実のエアガンや包丁等でも同じ事なので許容できるはず。 当然、防具はその威力で破壊できる物に限られる。 (その場合、アーマー系は消耗品なので値段も安いはず) また、前述のとおり中枢部は堅牢なシェルで守られる為、バトルによる神姫の『死亡』は無いはず。 もちろん、中枢部を守るシェルのような強度の高いものは、防具としての使用は禁止だと思う。 つまり、これに当てはまる武器防具が公式レギュレーション(この作品内の公式です)に相当するはず。 自作武器や改造武器はこの審査を受けなければ公式戦での使用は認められない。 もちろん、違法改造の武器はこれに相当しない。 戦闘について 神姫が強くなると言うのは、力が上がるとか素早さが高くなるとかでは無いと思う。 きっと百戦錬磨のアーンヴァル(たぶん非力)が、生まれたてのサイフォス(腕力は凄そう)と腕相撲すれば必ずサイフォスが勝つと思う。 これが、剣を使った勝負となると話は別。 (剣道八段の小柄な老人と、剣道初段の大男の戦いを想定すれば分かりやすいだろうか?) つまり、神姫の強さは能力値ではなく技術(スキル)的な強さと、経験を反映した最適化による効率の向上だと言う事になる。 また、神姫は案外“頭が悪い”と思う。 計算の速さとかはコンピュータなので当然早いのだろうが、応用力に欠けるのではないだろうか? 狙撃が得意な神姫と言うのは、遠くの目標に弾を当てられるだけであり、狙撃の最適なポジションの選定とかはマスターの指示待ちになる筈。 でないとマスターが戦闘を指示する意味が無くなるし…。 もちろん、経験を積んだ神姫はかなりの精度でその手の判断が出来るようになるのだろうが、マスターの指示が完全に不要な神姫はいないと思う。 実力差がある場合ならともかく、互いの実力が伯仲している場合、マスターの指示の有無(あるいは良し悪し)は確実に勝敗に影響する。 こんなところですね。 くれぐれもALCの勝手な解釈だとお忘れなく。 そのうちコラムとか、対談形式で纏めて読み物にしておきたいけど・・・。 鋼の心 ~Eisen Herz~へ戻る
https://w.atwiki.jp/duelrowa/pages/372.html
No. タイトル 登場人物 場所 時間 作者 051 あなたの死を望みます 衛宮士郎、犬吠埼風 C-3 深夜 ◆7PJBZrstcc 052 ■滅の刃(前編)■滅の刃(中編)■滅の刃(後編) 吉田優子、桜ノ宮苺香、風祭小鳩、保登心愛、櫻井戒、閃刀姫-レイ、門矢士、継国縁壱、キャスター・リンボ、吉田良子、最上啓示 E-5E-5(上空)E-5 市街地 早朝 ◆ytUSxp038U 053 Battle Royal Mode-Joining 超戦士カオスソルジャーBattle Royal Mode-Joining 王魂調和Battle Royal Mode-Joining ぶつかり合う魂 ジャック・アトラス、深淵の冥王、うさぎ、ジャンヌ、野比のび太、九十九遊馬、尾形百之助、野原しんのすけ(大人)、ルナ C-2 黎明 ◆EPyDv9DKJs 054 聖戦 奈津恵、コッコロ E-4 市街地 冴島邸 黎明 ◆ytUSxp038U 055 Introduction:未完成の君達へIntroduction:SWORD SUMMITIntroduction:ふぞろいのPlayers!Introduction:Runners high 空条承太郎、天津垓、環いろは、黒死牟、不動遊星、燕結芽、キャル D-6(島・聖都大学付属病院) 早朝 ◆ytUSxp038U 056 鬼械戦線 滅、鬼舞辻無惨 E-4とF-4の境界G-3 川辺付近 黎明 ◆ytUSxp038U 057 青き眼の激臨 天々座理世、橘朔也、花家大我、百雲龍之介、海馬瀬人@遊☆戯☆王 F-2(バッティングセンター内) 早朝 ◆EPyDv9DKJs 058 これはバトル淫夢でもBB劇場でもない 虐待おじさん、肉体派おじゃる丸 D-4 黎明 ◆7PJBZrstcc 059 異種闘争? PoH、夜神月 G-2 深夜 ◆EPyDv9DKJs 060 Stronger ─負け犬たちの後夜祭─Stronger ─ノイズU破壊の旋律─Stronger ─Ride the Wind─Stronger ─背中合わせのハレルヤ─ 門矢士、閃刀姫-レイ、風祭小鳩、保登心愛、千代田桃、七海やちよ、滅、フグ田タラオ、パラダイスキング、奈津恵、コッコロ E-4E-4 冴島邸付近E-4(冴島邸から離れた位置) 早朝 ◆ytUSxp038U 061 Chase the world ニノン・ジュベール、マサツグ様、土部學、モニカ、深海マコト D-1 早朝 ◆QUsdteUiKY 062 二人だけは二人信じてる キリト、空 D-8 海上 深夜 ◆2fTKbH9/12 063 マゾクの心得 キリト、空 C-7 黎明 ◆2fTKbH9/12 064 Round ZERO~Ruffin Coffin Evil PoH E-5 早朝 ◆2fTKbH9/12 065 発見!希望への第一歩! 桐生戦兎、エボルト E-1 早朝 ◆ytUSxp038U 066 淀んでゆくだけ キャスター・リンボ(式神)、里見灯花 F-5 早朝 ◆ytUSxp038U 067 Mが求めるモノ/花のように意思を繋ぐMが求めるモノ/嵐のように心を裂くリスタート・オブ・G/笑顔も後悔も全てチカラにしてリスタート・オブ・G/あの星に辿り着けたはずの ニノン・ジュベール、マサツグ様、土部學、モニカ、深海マコト、桐生戦兎、エボルト、カイザーインサイト、保登心愛(きらファン)、琴岡みかげ D-1 オーエド町D-1とD-2の境界 早朝 ◆QUsdteUiKY 068 マジックテンペスター ジャック・アトラス、深淵の冥王、九十九遊馬、野原しんのすけ(大人)、ルナ、明石 C-2D-2~D-3のどこか 早朝 ◆EPyDv9DKJs 069 託されし意志 宮川尊徳、ユキ C-8 黎明 ◆QUsdteUiKY 070 Break&Peace地獄絵巻・序 直見真嗣、クウカ、コッコロ、奈津恵、フグ田タラオ、肉体派おじゃる丸、キャスター・リンボ、吉田良子、最上啓示、吉田優子 D-4 上空D-4 上空(真嗣達とは別方向)D-4 早朝 ◆ytUSxp038U 071 物々交換録アルト 飛電或人 H-6 早朝 ◆ytUSxp038U 072 Judge End ─アドバンス・カーニバル─Judge End ─BLADE CHORD─Judge End ─救世主-SAVIOR-─Judge End ─Just the Beginning─Judge End ─見えない明日は来なくていい─Judge End ─すべての罪が眩しく消えた─ 白鳥司、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、武藤遊戯、閃刀姫-ロゼ、涼邑零、香風智乃、衛宮士郎、犬吠埼風、ジャンヌ、ルナ、エボルト C-3 明治時代の病院D-3とC-2の境界D-3 エーデルフェルト邸D-3 早朝 ◆ytUSxp038U 073 懺恨のJudgment 天々座理世、橘朔也、花家大我、百雲龍之介、海馬瀬人@遊☆戯☆王、鬼舞辻無惨 F-3 川辺付近、E-2(バッティングセンター内) 早朝 ◆4Bl62HIpdE
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2223.html
ウサギのナミダ 番外編 少女と神姫と初恋と その1 ◆ 「なあ、八重樫。昼休みに時間もらえる? ちょっと相談に乗ってもらいたいんだけど」 八重樫美緒だって、年頃の女の子である。 男子と話すときは少しドキドキするし、こんな台詞ならなおさらのこと。 それが、憧れている男の子からなら、思考が真っ白になって当然だ。 「え、あ……うん……いい、けど……」 「そっか、よかった。じゃあ、弁当持って屋上集合で」 「え、お弁当……?」 「ちょっと込み入った話になりそうでさ……八重樫にしか相談できないんだけど……だめかな」 「え、あ……うん……いい、けど……」 「よかった! それじゃあとで」 「うん……それじゃ……」 さわやかな笑顔を残し、去りゆく彼の背中を、呆然と見送るしか美緒にはできなかった。 彼はすぐに男子の輪に取り込まれてしまう。 「安藤! お前、八重樫になに話してんの」 「大したことじゃねーよ」 ははは、と笑って答える彼。 そう、大したことじゃないんだ。 男子たちはもう別の話題で盛り上がっている。 美緒は苦笑する。 ただちょっと、声をかけられただけ。期待するなんてどうかしてる。 美緒が鞄から教科書を取り出そうと視線を下げたそのとき。 「美緒っ!! アンディと何話してたんだ!? あたしにっ、親友のあたしに話してみろっ!」 うきうきとした口調と共に、後ろから首に腕を巻わされ、絞められる。 「ちょ……有紀……くるし……」 「ああ? おっと、わりぃわりぃ」 手荒なスキンシップをしてきたのは、親友の園田有紀。 仲良し四人組の一人である。 有紀の長い腕をはがしながら、視線を上げると、目の前に残りの二人も立っていた。 「よかったわね。きっかけが掴めそうじゃない」 「そうだよ、美緒ちゃん! ファイト、押し倒せ!」 蓼科涼子の落ち着いた物言いは、師匠譲りだろうか。 江崎梨々香は、顔に似合わず過激なことを言う。 それにしても、彼はこっそり美緒に話したのに、なんでみんな注目しているのか。 少しぐらい目をそらしているふりをするのが、友達がいと言うものではないだろうか。 「そんなんじゃないわ。ほんとに、大したことじゃないもの……」 そう言って、顔を上げた美緒は、涼子と梨々香の背後を見て、凍りつく。 注意喚起する暇もなく、女子の一群が二人の背後から押し寄せ、はじきとばし、美緒をあっと言う間に取り囲んだ。 「ちょっと、ヤエガシ! 今のどういうこと!?」 「安藤君とどういう関係!?」 「今アンディと話したこと、洗いざらい吐きなさい、ミオ!」 「え、ええええぇぇっ!?」 美緒は自分の席から立ち上がることさえできないまま、女子たちの詰問を受けた。 だが、あの短い会話の内容を何と答えられるというのだろうか。 よく見ると、自分を囲む女生徒には、自分のクラスメイトでない女子も含まれているような気がする。 美緒はとまどいながら、お茶を濁し続けるしかなかった。 教壇でクラス担任の教師が、わざとらしく大きな咳払いをするまで。 美緒に声をかけてきた彼……安藤智哉は、同学年女子の間で一番人気のある男子だった。 ◆ クラスメイトたちにおける、八重樫美緒の評価は「変わり者の文学少女」である。 整った顔立ちに、セミロングの黒髪、銀縁の眼鏡はいかにも文学少女といった風情で、理知的に見える。 実際、彼女は読書家だ。時間があれば本を開いているし、図書館の常連であることはよく知られている。 おとなしく、女の子らしい優しさと気遣いの持ち主で、男女問わず、クラスメイトは彼女に好感を抱いている。 成績も常に学年上位。まさに絵に描いたような優等生だ。 また、あまり表立ってはいないが、美緒に憧れている男子も少なくない。 その理由の一つが、彼女の魅力的な胸にあることは、年頃の男子にしてみれば仕方のないところであろう。 ブレザーの上着を着てもなお存在を主張する大きな胸は、楚々とした性格と外見とはあまりにミスマッチで、美緒の意志に関係なく、男子たちを密かに魅了しているのだった。 そんな美緒を「変わり者」呼ばわりさせているのは、彼女の交友関係に原因がある。 いつも美緒と一緒にいる三人。彼女たちは揃いも揃って変わり者だった。 園田有紀は、長身でプロポーションもよく、顔もボーイッシュな美人だ。乱暴な男言葉を使うが、それがよく似合っていて、嫌みを感じさせない。下級生女子には絶大な人気を誇っている。 しかし、彼女は言葉だけでなく、性格も乱暴だった。短気で、男子とでも平気で取っ組み合いをする。しかも強いので、負けるのはたいがい男子の方だ。 また、学業は下の下。数学以外の勉強が壊滅的だ。 スポーツは万能で、特に球技は特待生とも向こうを張るほどの実力を持つ。球技大会のバスケットボールで、バスケ部の部員三人のマークを蹴散らしてダンクを決めたのは、もはや伝説だ。 しかし、なぜか再三のクラブ勧誘を頑なに断っている。 有紀は劣等生のレッテルを貼られ、教師たちからも問題児扱いされていた。 蓼科涼子は、有紀ほど悪目立ちするタイプではない。 むしろ真面目な性格で、責任感もあり、努力を欠かさない。そのため、教師たちからは人気がある。 長い黒髪を後ろで結わえたポニーテールは、彼女のストイックな性格によく似合っている。 だが、ストイックな性格こそが、蓼科涼子の問題点だった。 生真面目すぎるのだ。 特に同年代の男子は不真面目に見えるのか、いつもやぶにらみである。 女子でも「カタ過ぎる」と言って、涼子を敬遠する者が少なくない。 涼子に近しい友人以外で、彼女の笑顔を見た者はほとんどいないという有様である。 もちろんその美少女ぶりに、付き合ってくれと告白した男子は数多い。 しかしそのたびに一言、 「あなたと付き合うことは、金輪際あり得ません」 とばっさり切り捨てられる。 あまりにとりつく島のない物言いに、逆ギレした男子が、直後に涼子に襲いかかったことがある。 だが、逆に投げ飛ばされて地面にたたきつけられた。 実は涼子は合気道の有段者である。小さな頃から定期的に合気道の道場に通っているのだった。 以来、涼子は陰で「武士子」と呼ばれているのだが、それを聞くと本人は激昂するという。 生徒の人気という点では、江崎梨々香が四人の中で一番かもしれない。 梨々香は男女ともに人気がある。 性格は明るく、社交的だし、可愛い印象の美少女だ。 彼女はファッションにとても詳しい。コーディネートは友人たちからいつも相談を受けるし、自分で服や小物も作ってしまうほど。 本人の普段着はピンクハウスや甘ロリ系ばかりなのだが、それがまた異様に似合う。 料理も上手で、家庭科実習の残りなど、男子よりも女子が狙っている。 その明るさ、家庭的な趣味もあいまって、男子の人気もすこぶる高い。 だが、彼女にも問題点はある。梨々香はとにかく勉強ができない。家庭科以外の科目は、間違いなく最下位クラスである。 それだけなら勉強すればいいのだが、本人に勉学に励む気がまるでない。しかも、成績が悪いことを全く気にしていない。だから、成績が上がるはずがないのだった。 教師たちから見れば、梨々香は非常にたちの悪い劣等生だった。 このように、性格も趣味もまるで違う変人が、なぜか仲良しグループを形成している。 そのリーダーが、普通の優等生である美緒なのだ。 三人とも、美緒の言葉は、なぜか素直に聞き入れる。 有紀の乱闘に仲裁に入れば、「仕方ねぇなぁ」と言って、あっさり拳を引っ込める。 「武士子」呼ばれて激昂する涼子を、一瞬にしてなだめられるのは美緒だけだ。 追試になっても勉強しようとしない梨々香に、「いい加減にしないと怒るわよ?」の一言で、一心不乱に机に向かわせる。 なぜ変わり者の三人が、ここまで美緒を立てるのか。 三人はそれぞれ抜きんでた特技があるのに、クラブ活動を頑なに拒むのはなぜか。 そして、全く方向性の違う四人の共通点とは何なのか。 その理由こそが武装神姫だった。 彼女たちはいずれも神姫のオーナーであり、ゲームセンターに入り浸るバトルロンド・プレイヤーだ。 クラスメイトたちは思う。 なぜ武装神姫なのか、と。 それこそが、美緒を変わり者に仕立て上げている最大の理由なのだった。 ◆ 午前中の授業は、まったく上の空だった。 安藤智哉は、美緒にとって憧れの男子生徒だ。 彼の印象を一言で言えば、さわやか系、だろうか。 とにかく、表情にも言葉にも屈託がない。 怒った顔も、悩んだ顔も、裏を感じさせない。 いつも仲間たちの輪の中で、笑っているような人だ。 その笑顔が可愛くて、魅力的だと、多くの女子が思っている。 成績は中の中といったところだが、スポーツが得意だ。 特に得意なのはサッカーで、いつも昼休みにクラスメイトとボールを蹴っている姿を見かける。 球技大会でもフォワードで大活躍し、クラスの優勝に貢献した。 その姿を見てファンになった他クラスの女子や、下級生も多いらしい。 だが、安藤もまたなぜか、特定の部活動はしていない。 ある意味、女子の理想の彼氏像を体現しているような安藤智哉は、モテて当然だった。 しかし、いままで、安藤が特定の女子と付き合ったことは確認されていない。 同じ中学出身者はもちろん、同じ学年の女子で、安藤と付き合いたいと思う者は数知れない。 多くの女子が、安藤の彼女の座を、虎視眈々と狙っている。 美緒は、彼女の座を狙うだなんて、大それたことは考えていない。 時々妄想の中で、かの『エトランゼ』菜々子とティアのマスター・遠野がゲーセンで談笑している姿に、自分と安藤を重ね合わせてみたりするのが関の山だ。 そもそも、美緒と安藤の共通点なんて、同じクラスであること以外、何もないのだ。 話をしたことくらいはあるが、それは単なる連絡事項とか挨拶とか、その程度のことだった。 安藤が自分をどう思っているかなんて、考えたこともない。考えるまでもない。 それが、今朝のように名指しで、しかも個人的に相談だなんて、全く想定外だった。 美緒は視線を窓際の前の方に走らせる。 そこには頬杖をついて黒板を見る安藤の後ろ姿。 その背中を見つめるだけで、胸のドキドキが止まらなくなる。 いったい何の相談なんだろう。 美緒には想像もつかない。 期待半分、不安半分な気持ちを持て余したまま、午前中は過ぎていく。 ◆ 一方、安藤智哉を本命と狙う女子連には、激震が走っていた。 高校入学からこれまでの数ヶ月間、安藤が特定の女子を誘って昼食だなんて、前例がない。 いや、同じ中学出身者に言わせれば、中学時代だって一度もなかった。 それが今朝、覆された。 しかも、相手は、物静かであまり目立たない文学少女の八重樫美緒である。 まったくノーマークの人物だった。 確かに美緒は、男子の人気はそこそこある。 だが、安藤が美緒に特別な関心を寄せたことは、今までなかった。 美緒は安藤を憎からず思っているようだが、表立った行動に出たことなどない。 しかも、美緒は変人グループのリーダーである。 彼女たちにしてみれば、ライバル候補としてまずあり得ない、と思っていた人物だ。 彼女たちは、急浮上した新たな恋のライバルに、何を話したのか尋問したが、本人の答えは要領を得ない。 いったい、安藤は美緒に何の相談をするのか。 恋のライバルたちは、いったん休戦に合意。非常事態宣言を発令した。 今回の事案に対し、周辺情報の調査が開始され、様々な情報が飛び交う。 授業中の情報伝達方法は、いにしえより、ノートの切れ端と相場が決まっている。 数え切れないほどのノートの切れ端が、教壇に立つ教師には気づかれぬよう、極秘裏に受け渡される。話題の本人たちのみを迂回し、教室内を音もなく行き交った。 短い休み時間中は、教室の端、階段の踊り場、女子トイレなど、そこかしこで緊急ミーティングが開かれ、情報の検討と精査が行われた。 そして、情報の真偽は、携帯端末からのメール配信によって、すぐに情報共有される。 事態は高度情報戦の様相を呈してきた。 しかし、昼休みを目前にしても、最重要事項……安藤の相談内容については、まったく判明しなかった。 ◆ 「おーい、八重樫! こっち!」 昼休み。 美緒が屋上に上がると、ベンチの一つに陣取った安藤智哉が手を振った。 彼の指示通り、五分ほど教室で待ってから、屋上にやってきた。 その間に、安藤は学食でパンを調達し、上がってきたらしい。ビニールの手提げ袋を手にしている。 美緒は、安藤から一人分ほどの間をあけて、ベンチに腰掛けた。 「はい。八重樫はこれが好きだったよな」 俺のおごり、と言って安藤が差し出したのは、ミルクイチゴのパックだ。 美緒は驚きながらパックを受け取る。 「ど、どうして知ってるの……?」 「え? だっていつも、そればっかり飲んでるじゃん」 安藤はコーヒー牛乳のパックにストローを刺した。 美緒は混乱する。 確かに、美緒はいつもミルクイチゴを決め打ちで買っているが……でも、そんなことを、まさか彼が気にとめていたなんて、夢にも思わないではないか。 (……これって、どういう夢なの……!?) 彼からのささやかなプレゼント。 二人きりのお昼ご飯。 今の状況に、ひどく現実感がない。 でも、一口飲んだミルクイチゴは、いつも通りの甘い味がした。 ◆ 「かたい……かたいよ美緒ちゃん! もっとこう、やわらかく、かわいく、媚びて笑えば、もう男なんかイチコロなのにっ!」 小声でエキサイトしている梨々香を押さえ込みながら、涼子は二人の様子に目を細める。 「美緒の飲み物まで用意してるとは……いつもながら、さすがの気遣いね」 「あれ、涼子はアンディとそんなに仲良かったっけ」 「同小、同中だからね」 涼子と安藤は、特に仲がいいわけではない。 小学校から同じ学校だし、同じクラスにもなったこともあるから、お互い顔は見知っている。 また、二人とも噂に上りやすい性質なので、情報がよく耳に入ってくるだけだ。 安藤の気遣いの良さ、マメさは昔からの筋金入りである。 「まあ、安藤はあのくらいして当たり前よ。昔からそうなんだから」 「……そう思ってない連中も多いみたいだけどな」 涼子の言葉を聞きつつ、有紀は背後を振り返る。 そこにはクラスの女子が大勢隠れつつ、二人の様子を覗いる姿がある。 クラスメイトの半分以上がいるんじゃないだろうか。 階段ホールのある建物の裏側は、通学ラッシュのバスの中もかくや、という状況である。 そんな女子たちは皆、今の二人の様子を見て、絶望的なショックに顔を真っ青にしていたり、ハンカチの端を噛んで細い奇声を上げたりしている。 二人を監視しているメンバーは、階段ホールにいるだけではない。 美緒と安藤が座るベンチから少し離れたところで、他クラスの女子グループが談笑するふりをしながら、監視活動を行っている。 そうした女子グループがぐるりと二人のベンチを取り囲む形に、いつのまにかなっていた。 だが、さすがに安藤自身が美緒を呼び出しただけに、妨害するわけにも、すぐ近くに行くわけにもいかず、ある程度の距離を保った包囲網を形成することとなった。 ゆえに、二人の会話はあまりよく聞こえない。 「……座るベンチが分かっていれば、盗聴器を仕掛けたものを……」 近くにいた女子の一人が呟く。 盗聴器をいつも持ち歩いてんのか、と突っ込みたくなる有紀である。 有紀は呆れながら、いまなお微笑ましい、ベンチにいる二人に目をやった。 ◆ 美緒は持ってきた弁当の包みを開け、小さな弁当箱のふたをそっと開く。 卵焼きにウインナー、きんぴらごぼう、チェリートマトに蒸しキャベツ。 半分はごはんが占めており、真ん中に梅干しが乗っている。 何の変哲もない、弁当の定番メニューだ。 「……それ、八重樫が作ったの?」 コロッケパンをかじりながら、安藤が尋ねてきた。 「う、うん……そう、だけど……」 美緒は一人っ子で、両親は共働きだ。 働いている母が早起きして弁当を作るのは大変だ。 だから、家族三人分の弁当を作るのは美緒の役目だった。 「すっげー。朝早く起きて、こんなおいしそうな弁当作ってくるなんてさ」 「そ、そんな……大したこと、ないよ……ぜんぜん……」 本当に感心している様子の安藤に、美緒は恥ずかしくなってしまう。 弁当の定番メニューなんて、短い時間で作れてしまうもので、ちっとも凝った料理じゃない。 美緒にしてみれば、見せるのもためらわれるほどの手抜き料理だ。 それを褒められるなんて。 美緒はうつむきながら、横目で安藤を見つめた。 総菜パンを食べる彼。 お弁当は持ってきていないのだろうか。 お昼ご飯が購買のパンだけでは、少し味気ない感じがする。 安藤は、毎日購買のパンを買っていたように思う。 それでは食事が偏ってしまうし、毎日代わり映えしない。 そんな風に思ったら、つい口から言葉が転がり出た。 「……よかったら、少し食べる?」 ……わたし、何言っちゃってるの!? 言った次の瞬間には後悔していた。 ちょっと彼がお昼に誘ってくれたからって、調子に乗りすぎだ。これでは下心があるみたいではないか。 ほら、彼だって呆れてこっちを見ている。 だが、美緒の予想と違って、安藤からかけられた言葉は、 「……いいの?」 むしろちょっと驚いた感じの口調だった。 美緒は安藤の顔をまともに見られないまま、そっと、弁当箱を差し出す。 小さく頷いた。 安藤は嬉しそうな顔をして、卵焼きを一切れ摘むと、口に入れる。 もぐもぐと口を動かす気配。 「……うまー……」 ため息のように呟いた後、安藤は美緒に満面の笑みを見せた。 「すごいおいしいよ! こんなにうまい卵焼き、久しぶりに食べた」 「そ、そう……よかった……」 もう、助けて。 嬉しいはずなのに、楽しいはずなのに。 せっかく自分に向けられた笑顔を、美緒はまともに見ることができない。 めいっぱい緊張した美緒の心は、逃げ出したくなっていた。 ◆ 共同戦線を張った女子連は、大ダメージを被っていた。 手作りの弁当を二人で摘むなど、まさに清き学生の恋人同士の姿である。 その一撃たるやメガトン級で、共同戦線を一瞬にして崩壊させる破壊力だった。 ここで二人の共同作業を阻止すべく、過激派の実行部隊が動き出しそうになったが、状況がそれを許さない。 当の安藤が満面の笑みを持って、美緒の弁当を食べているのだ。 ここで邪魔をしたら、かえって自分たちの心証が悪くなりかねない。 また、今日の本題は弁当ではない。 安藤が美緒を呼び出した理由がまだ明らかになっていないのだ。 女子連は苦渋の選択を強いられる。 階段ホールの陰に隠れたクラスメイトたちは、毒ガスを食らったかのように、苦悶の表情を浮かべつつ、声を出さないように喉を押さえている。 まるで地獄絵図の様相だった。 「……ばかじゃね?」 呆れた有紀の端的な感想である。 美緒の様子を見れば、完全にテンパっているのは明白だ。 「あー、あれは、購買のパンばっかり食べてたら栄養価が低くて心配だ、とか思って、反射的に弁当差し出したのねー、たぶん」 なま暖かい眼差しで二人を見ながら、涼子は棒読みで言った。 さすがに親友だけあって、性格を読み切っている。 親友のテンパった姿を見ながらも、空気を読まずにエキサイトしている人物もいる。 「そおよ、美緒ちゃん、ナイス! 手作りのお弁当はポイント高いよ! このまま、毎日作って来てあげるって展開に……」 「それ以上はやめとけ、梨々香。後ろの女子連中に殺されるぞ」 頬を膨らませて不満を露わにする梨々香だったが、さすがに殺気だったいくつもの視線に睨まれては、口を噤まざるを得なかった。 美緒の親友三人は、再びなま暖かい眼差しで、二人を観察する。 ◆ 「……それで、相談って……?」 昼食を食べ終わり、二人の手にジュースのパックだけが残ってすぐ、美緒は切り出した。 安藤は気を遣ってくれたのか、ずっと気さくに話しかけてくれたが、美緒はまともに会話することができなかった。 さぞかし話し下手な女だと思われたことだろう。 美緒は自己嫌悪に陥りながらも、それでも安藤の相談には真摯に対応しようと心に決め、勇気を振り絞って切り出したのだった。 「ああ……これなんだけどさ」 ストローから口を離した安藤は、傍らにあった一冊の本を手に取り、美緒に渡す。 美緒はイチゴミルクを一口飲んで、本を受け取った。 少し分厚い、飾り気のない本。 どこかで見たことのあるデザイン。 タイトルを見る。 美緒はイチゴミルクを吹き出しそうになった。 ◆ 階段ホールの陰では、今度は親友三人が悶絶していた。 声を上げずに爆笑しているのだ。 涼子は声を上げようとする梨々香の口を押さえながら、背中を丸めて身体をぷるぷると震わせている。 有紀にいたっては、声を立てずに爆笑し、地面をのたうち回るという器用なことをしていた。 クラスメイトは三人を奇異な目で見ている。 安藤が美緒に渡した本を見て、爆笑し始めたのだ。 しかし、女子連には、三人が笑いのツボを突かれたポイントがわからない。 見れば美緒も、なにやらむせている。 「ねえちょっと、あの本はなんなの? 何がおかしいって言うのよ」 クラスメイトの一人が、身悶えしながら無言で笑う有紀に言った。 有紀は両手で目に浮かんだ涙を拭い、ひーひー言いながら答えた。 「まあ、そりゃアンディも美緒に相談するわな……あれはマニュアルだよ」 「マニュアル?」 「そう。武装神姫の取扱説明書だ」 その場にいたクラスメイト全員が、毒気を抜かれたような顔をした。 ◆ 美緒はかろうじて、イチゴミルクを吹くという醜態をさらさずにすんだ。 そんなに驚いたのには、二重の意味がある。 一つは、安藤が武装神姫について相談を持ちかけてきたことだった。 まさか彼が武装神姫に興味があろうなどとは、夢にも思っていなかった。 もう一つは、手渡されたマニュアルの武装神姫の機種である。 「アルトレーネ……」 「お。八重樫、知ってるんだ?」 知っているも何も。 アルトレーネは、今、神姫オーナーの間でもっとも話題の新型機だ。 ここのところ、武装神姫の新製品のリリースに、各メーカーともかなり慎重である。 各メーカーとも特色ある人気機種が定番となりつつあって、保守的になっているのだ。 新しい武装神姫を開発するより、人気機種のリペイントバージョンや、装備を変更、追加したリパッケージ品の市場投入を優先したのである。 しかし、目の肥えたユーザーたちは納得がいかない。 フルセット品の購入離れがはじまり、ヘビーユーザーは既存の神姫のカスタマイズに走るようになった。服を着せたりして神姫のいる日常を楽しむ「非武装派」も増えている。 そのため、神姫自体の売れ行きは横ばいなのに、カスタムパーツや神姫サイズ服の市場は急激に広がっていた。 そんな状況下、彗星のごとく現れた新製品、それが戦乙女型MMS『アルトレーネ』である。 人気機種の要素も取り入れながら、独自性を備えた豪華な装備、清廉な印象を与えるデザインに、美しさとかわいらしさを兼ね備えた神姫本体。 武装派には、装備の豪華な仕様と組み替えの可能性に期待が集まった。 非武装派も、神姫自体の良さに前評判が集まった。 かくして、アルトレーネは、新規参入メーカーの新作であるにも関わらず、予約が殺到し、生産が追いついていない状態だ。 その盛り上がりを受け、既存メーカーも新製品を発表し、神姫市場はいまや活況を呈している。 そのアルトレーネは、先週末に発売になったばかりだ。 いま、ゲーセンの武装神姫コーナーはアルトレーネの話題で持ちきりと言っていい。 美緒が知っているのも至極当然のことだった。 「今話題の神姫だもの。もちろん知ってるわ。……でも、よく買えたね。ほとんど予約完売らしいけど」 「もらったんだよ」 「え?」 「誕生日プレゼントなんだ。オレのおじさん、アルトレーネ作った会社にいてさ、製品サンプルをプレゼントにくれたんだ」 「なるほど……」 武装神姫の初心者である安藤が、そう簡単に人気機種を手に入れられるとは思えない。 納得がいった。 「それでさ。日曜にマニュアル読んでみたけどよくわからなくて……なんか小さくてデリケートな部品もあるし」 「ああ、CSCね」 「だから、起動の仕方を詳しい奴に聞いてみようと思って……それで八重樫に声かけたってわけ」 「そう……」 期待していたわけではない。 でも、少しも期待してなかったと言えば嘘になる。 安藤の中の美緒は「武装神姫に詳しい奴」に過ぎないのだ。 すこしがっかりしたが、美緒は気持ちを切り替えた。 そう、期待していた自分が悪いのだ。 せっかく安藤君がわたしを頼ってきてくれたんだ。 だから、少なくとも彼には、自分の誠意を尽くそう。 「わかった……わたしでよければ、力になるわ」 「そっか。やった!」 にっこりと笑った彼の顔を、美緒はまともに見られなかった。 無防備にそういう顔するのは、ずるい。 どんな女の子だって、わたしだって、勘違いしたくなってしまう。 美緒はうつむきながら、手元にあるマニュアルの表紙の文字を繰り返し読み続けた。 だが、そんな美緒の気持ちなど伺い知ることもなく、安藤は話し続ける。 「八重樫、今日なんか用事ある?」 「え……? えっと」 放課後の用事は、きっと今日もいつもの四人でゲーセンだ。 それは日課のようなものなので、特別な用事ではない。 安藤の相談に乗ってから、遅れてゲーセンに行っても、他の三人は気にしないでいてくれるだろう。 「ううん、特にないよ」 「それじゃ、放課後、荷物置いて着替えたら、M駅の改札集合で」 「え?」 図書館あたりで詳しくレクチャーということではないのか? 「え、って……だって、神姫の起動のやり方教えてくれるんだろ?」 「うん……そう、だけど」 「だから、ウチに来て、オレがやるとこ見ててよ。そしたら間違いないし。八重樫の神姫もみたいし」 「……そ、それは……その」 「お礼に、親にケーキ買ってこさせるからさ。何がいい?」 「……チーズケーキ」 なにオーダーしちゃってるの、わたし!? 美緒がそう思ったときにはもう、安藤は笑いながら頷いてしまっていた。 「わかった。飲み物はミルクイチゴは用意できないから、コーヒーか紅茶で勘弁してくれ」 「え、あ、あの……」 「っと、もう昼休み終わるな……それじゃ、放課後。よろしくな!」 安藤は立ち上がり、階段ホールへと歩き出す。 美緒は呆然とその背中を見送るしかできなかった。 まだ手元に、アルトレーネのマニュアルが残っている。 返さなくちゃ。 あ、でも、放課後でいいのか……。 放課後。 それを意識した瞬間、美緒の心は沸騰した。 顔が真っ赤になっていることを自覚する。 顔どころか体中から火が吹き出しそうだ。 あまりに急転直下、超絶怒濤の展開に美緒の思考は吹っ飛んでいた。 (これって、どういう夢なのーーーーーーーっつ!!?) 続く> Topに戻る>
https://w.atwiki.jp/myonmyon/pages/14.html
Risk s Endless Batlle Wiki ここに 設置されてあるEndless Batlleの公式Wikiです。 基本事項・ルール 基本的にOn狩りは 禁止ではありません。 公の場での、合成レシピ公開はご遠慮ください。 個人的に口頭で伝えるのだったり、個人対象に私信を送るのであれば制限はかしません。 クレクレ、教えてなどノーマナー行為はご遠慮願います。 当EBS仕様 最大能力値 HP ⇒ 9999 EN ⇒ 9999 At,Gu.Sp.Hit ⇒ 非公開 回復速度 HP ⇒ 0.5%/s EN ⇒ 0.05/s 治療スクリプトがあるため、回復速度は極力落としています。 管理者 みょん m-myon☆hotmail.co.jp スパム防止のため☆を@に。 特殊システム 宝具システム ⇒ 予備の宝具という欄に武器を入れると、特殊効果が発動。 宝具に関しては色がピンクです。 禁止武器 現在のところありません。
https://w.atwiki.jp/busou_bm2/
wiki概要 PSPソフト「武装神姫 BATTLE MASTERS Mk.2」の情報をまとめるwikiです。 編集できる方は編集の手伝いをお願いします。 初めてプレイされる方へ重要なお知らせ アップデート 当ゲームには通常プレイで発生する深刻なバグ・設定ミス・誤植が多く見つかっています。 修正パッチが配布されているので必ずアップデートして下さい。 XMB→ゲーム→武装神姫 BATTLE MASTERS Mk.2に合わせて△ボタン→アップデートで実行できます。 アップデートにはオンライン接続が必要です。 PSPには有線LAN接続機能が無い為、無線LAN接続環境を用意するか、PlayStation®Spot設営店舗でオンラインに接続しましょう。 アップデート後のバグ アップデートによって新たに発生する深刻なバグ(アルトアイネス無限ロードバグ)が見つかっています。 バグ・設定ミス・誤植の「アップデートによって新たに発生するバグ」に目を通しておいて下さい。 アップデートでも修正されていないバグ・設定ミス・誤植も見つかっています。 「アップデートでも修正されていないバグ」にも目を通しておくことを推奨します。 関連サイト 公式サイト 武装神姫 公式サイト 武装神姫 公式Twitter 武装神姫 BATTLE RONDO 公式サイト 武装神姫 BATTLE MASTERS 公式サイト 武装神姫 BATTLE MASTERS Mk.2 公式サイト 武装神姫 BATTLE CONDUCTOR 公式サイト 武装神姫 アニメ 公式サイト wiki 機械仕掛けの姫のwiki 武装神姫 wiki 武装神姫 BATTLE RONDO wiki 武装神姫 BATTLE MASTERS wiki 武装神姫 BATTLE MASTERS Mk.2 wiki 武装神姫 BATTLE COMMUNICATION wiki 武装神姫 BATTLE CONDUCTOR wiki 5ちゃんねる 2022-05-01 現行スレッド 武装神姫 PART 742 武装神姫 BATTLE RONDO PART 389 武装神姫 BATTLE MASTERS 総合 PART 189 ログ 武装神姫 BATTLE COMMUNICATION PART 8 ログ 武装神姫 BATTLE CONDUCTOR PART 20 武装神姫 BATTLE CONDUCTOR カード交換 PART 1 お役立ち 武装神姫 BATTLE MASTERS Mk.2 武装シミュレータ 閉鎖 製品情報 タイトル 武装神姫 BATTLE MASTERS Mk.2 ジャンル 3Dバトルアクション 発売日 2011年9月22日 メーカー希望小売価格 UMD版:5,800円(税込)ダウンロード版:4,800円(税込) 対応機種 PSP® (PlayStation®Portable) 仕様 データインストール対応 プレイ人数 1〜4人 CERO年齢区分 B 12才以上対象 オンライン オンライン対応 発売元 株式会社コナミデジタルエンタテインメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/820.html
折り返し──あるいは二日目その二 “鳳凰カップ”は二日目の中天を過ぎ、流石に客足は決勝ブロックの ギャラリーへと流れつつあった。私・槇野晶は必死で客を捌き続け、 神姫たる“妹”のアルマも、数時間に及ぶゲリラライブをこなした。 あれ程の大群衆を引きつけてくれたのは、彼女の功績に他ならんな。 故に、遅めの昼食を摂る事とした。アルマも空腹だろうしな、有無。 「アルマ、よく頑張った。あれ程歌い続けて、ヘトヘトだろう?」 「あ、はい……ちょっとだけバッテリー残量が心許ないですけど」 「ならば昼食をたっぷりと食べて、午後のライブまで休むと良い」 「えっと……すみませんマイスター、本当はお手伝いの時なのに」 構わぬ、と言って私は彼女の躯を軽くチェックし、着衣の乱れを正す。 しっとり風のラブソングから熱血の極みと言えるファンファーレまで、 アルマは実に、アルバム1枚超に及ぶ長丁場を一人で切り抜けたのだ。 その間急造のステージから降りる事も叶わず、彼女は一人歌い続けた。 激しい動きをせずとも、その服が乱れてしまうのは仕方ない事なのだ。 「ところでマイスター、梓ちゃんとロッテちゃんはどうしたんです?」 「有無。先程渡瀬美琴がやってきおってな……勝ちを拾ったそうだぞ」 「本当ですか!?ファーストやセカンドが、ひしめいているのに……」 「……これで公式に反映されるポイントも、相当数になる……だがな」 冴えない私の表情から、何かを感じ取るアルマ。そう、語られぬ所では クララとアルマも、ちゃんと公式バトルでの勝利と敗北を重ねている。 だが、ロッテとのランク格差は……今回の一件で大きく開く事だろう! 流石に何もせずしてセカンドへ昇格、等という事態はないだろうがな。 だがそれでも、この様に突出する事が果たして“三人”の幸せなのか? 「多分、この次も勝ったら……あの娘らは、即刻棄権するだろうな」 「……そうじゃないか、と思います。戦うなら最後まで、ですけど」 「だが望まぬ戦いをも率先して受ける様な、戦闘狂ではあるまい?」 「はい……ただあくまでロッテちゃんは、限界を見切るつもりです」 「有無。それを知りたくて、頂点を目指しに行ったのだろうからな」 言葉では明言されない物の、今ならばロッテと梓……ついでにアルマが、 奇策を弄してまでトーナメントの参加を押し通した理由が、良く分かる。 “己の戦いに誇りを”。これはロッテが戦いの際に、時々告げる誓いだ。 だが言葉だけの“誇り”等、いかがわしいネオンサインより陳腐である。 実行しなければ、出来ない事ならば。野心も勇気も願望も、力を持たぬ。 「ならばこそ己が何処まで出来るのか、更に何処へ伸びて行けるのか」 「それらの見極めの為に、今回の“聖杯”は打って付けだったんです」 「……アルマや。別にお前達が後ろめたさを覚える事は、何もないぞ」 「マイスター……はい、有り難うございます。そして、ごめんなさい」 「その意志を大事にしたい故に、私も“魔剣”等を求めたりしたのだ」 何も頂点に立つ事だけが大事なのではない。その過程に何を見出すか、 それが出来てこそ“求道者”や“戦士”としての成長が、あるのだな。 だからこそ、“姉”であり後援者たる私は……過程も結果も尊重する。 『結果が全てだ』等とは今世紀初頭から言われているが、愚かな事だ。 過程がなければ結果はまず成せず、結果が見えなければ過程も為らぬ。 「まあ何を言おうとも、私は彼女らを褒め称え労うつもりでいるぞ」 「あ……は、はいっ!本当に有り難うございます、マイスター!!」 「有無。所で何故、前日に『神姫素体で赴く』と言い出したのだ?」 ここで話を変える。このゲリラライブは、文字通り“ゲリラ戦法”だ。 大会本部への申請は、殆ど事後承諾となっていた。私自身、アルマめが 前日に準備を始めるまで、本気でライブを行うとは思わなかったのだ。 その時は強い意志に根負けして挙行を認めたのだが、やはり気になる。 だがその疑問に対する答えは、やはり驚く程シンプル且つ強固だった。 「あたしだって神姫です。神姫でしか出来ない事で、挑戦したかった」 「……故にこそ敢えてHVIFでなく、その躯で挑んだというのか?」 「はい。“肉の躯”よりも、“殻の躯”で伝えたかった想いですから」 HVIFは、人と神姫の垣根を取り払う。だが同時に、神姫達にとっては 不便な要素も存在していた。“心”に纏わる事柄についても、同じ様だ。 だからこそ“歌い手としての”アルマの感性は今回、神姫素体を選んだ。 神姫の“心”が人と同様だからこそ、僅かな差を敏感に感じるのだろう。 そう言う意味では、『同様であっても模造ではない』とも言えるのだが。 「そうか。想いを皆に伝えたいが故に、より良き策を取ったのだな?」 「はい……巧く言葉では表現出来ないんですけど、こうなんとなくっ」 「それで構わぬ。人の心も神姫の心も、理論では説明しきれぬしな!」 私はそう言って、アルマを肩に乗せてブースを離れた。二人とは今日、 一緒に昼食を摂る事は叶わぬが、最早全ての懸案は払拭されたも同然。 後はロッテ達が悔いの無い様に戦えば、それで十分だ。上機嫌である。 喫茶店“LEN”専用ブースたる大型トレーラーに、向かう事とした。 それは混雑する往来を小柄な躯ですり抜けていく、そんな最中だった。 「む……あの娘は、先日店へとやってきた……いや、人違いか……?」 「ん?……えっと、どうしたんですかマイスター。振り返っちゃって」 「いやな、この間店にやってきた女性に似ている者が居たのだが……」 L字定規を投げつけて、分かっていない不埒な輩を追い出したあの日だ。 うっかり往来にて投げたまま忘れていたL字定規を届けてくれた、ミラ。 “本物のガンスミス”の業物を持ち歩いていた、武装神姫達のオーナー。 「……彼女も彼女で忙しいのかもしれぬな。構わぬ、行くぞアルマ?」 見間違える筈はないのだが、彼女の姿を認めたのは会期中初めてである。 だが、あれ程“訳あり”の雰囲気を醸し出しておいて……偶然ではない。 ならば今の私が彼女を深追いする事は、お互いにとって“損”であろう。 不思議そうに首を傾げるアルマを宥めつつ、私は“LEN”に向かった。 「いらっしゃい……あら、晶ちゃんと大食いのアルマちゃんね」 「だッ、だから大食いって言わないで下さい!京都さん~!?」 「ふむ……そうか、千空めも決勝トーナメント出場組だったな」 「なんだ、彼奴がいないと寂しいか?そんな時はコーヒーだ!」 ──────寂しいのかどうかは、私だって分からないよ。 メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/765.html
熱き心魂──あるいは二日目その一 さて、“鳳凰カップ”という祭りもいよいよ折り返しを過ぎ二日目。 今日も昨日同様……いや、それ以上に私・槇野晶と“妹”のアルマは 出典ブースの準備に余念がない。何せクララ……もとい梓とロッテの “大番狂わせ”は、良かれ悪しかれ多少の注目を集めてしまう物だ。 MMSショップ“ALChemist”のホームページにも、問い合わせが幾つか 寄せられていた。恐らくブースへの来客数も微増するだろう、有無。 「というわけでだアルマや、今日は朝からかっ飛ばして良いぞ?」 「え、ええっ!いいんですか!?……レパートリー無くなりそう」 「一向に構わん。全力全開、魂の限りを込めて唱い上げるのだ!」 「……はいっ、精一杯……唱える限り、あたし……唱いますね?」 本当は誰かに手伝ってもらいたかったが、梓とロッテは決勝ブロックの 説明を受けねばならぬ故、武装一式を持って入場時に別れたっきりだ。 こういう時に手を貸してくれる係累はいないし、“オーナー”とて原則 店の経営自体には不干渉だ。今後も決して、表に出る事は無いだろう。 アルマは客引き……を兼ね“己”を表現する為、ブース内のステージで 唱うのが仕事だ。なので、今日も私一人で此処を切り盛りする訳だな。 『只今よりゲート開門いたします!皆様、二日目も頑張ってね~っ!』 「……にしても昨日もそうだが、妙にノリノリだなこのウグイス嬢め」 「なんというか、マイスターみたいな印象受けますよね……あ、いえ」 「ちょっと待てアルマ、私はあんな可愛げ満載の雰囲気ではないッ!」 「そんな事はないんじゃないかな、小さなレディ達?十分、可憐だよ」 思わず噴きそうになりつつも、慌ててアルマから手を離し正面を見る。 そこにいたのは既に幾人か並んでいる客達だった。その先頭にいたのは 以前クララの初戦を務めた“アラクネー”のオーナー、前田氏だった。 ……この様な歯の浮く台詞が言えるのは、彼だけだ。間違えはしない。 無論、アラクネー嬢も一緒だ。とは言っても、彼女はスーツ姿だがな? 「げふげふ……貴様ら、アラクネーにウチの服など入り用なのか?」 「服その物は某の趣味ではないが、ネクタイだけなら良さそうでな」 「えっと……そう言えば、そうですね。ネクタイなら、合うかも?」 「アルマ君、だっけ……君は、ライブの準備をしなくていいのかい」 「あっ!?す、すみません今すぐにしますからっ!あうう……ッ!」 前田氏に急かされて、アルマが楽屋の用途を為すコンテナに飛び込んだ。 その合間に私は、アラクネー嬢のスーツに合うネクタイを見繕ってやる。 そして彼らを捌ききり、次の者を応対する頃……それは唐突に始まった。 ハンディ・シーケンサーによるパーカッションの音色に続き、弾ける弦。 それは地中海の潮風を思わせる軽快なリズム、それでいて勇壮な音色だ。 『♪ビルの林-おか-に小さな躯晒して、水面に映した想い出-かげ- 汐の様に遠ざかる日々……それでもあたし、振り返らず進むの 暮らした昔大事にしたい!でもねもっと、今を輝かせたいッ! 星無き遙かな黒天-よぞら-に、茜-あさひ-の色を宿したいの! 現在-今-が果てに過ぎてもあたしの想い、決して消させないよ そうよ──────忘れないの、この傷-むね-の痛みはッ!!』 題名は“朱金-あかね-の夜明け”。ラブソングなのか戦いの挽歌なのか 良く分からぬのだが、作詞作曲等全ての作業をアルマが行ったらしい。 アルマに言わせると『あの人の声には、届かなくてもいいんですよ』。 つまりは自らの言葉で、声で……そして想いで、曲を作りたいらしい。 こういった行為は、まさに神姫の“創造性”の極北とも言えるだろう。 テンポの速い曲故か、あっという間に……4分足らずで独唱は終わる。 「う……うおおぉぉー!?唱ってる、神姫が唱ってるぞぉーッ!?」 「戯けッ!怪物でも見る様な声を出して、それ程驚く事か貴様ッ!」 「いやだって……この娘“アルマ”だっけ、ストラーフでしょ?!」 「有無。だが戦いだけが神姫の姿ではないのだぞ、この服の様にな」 喚く男性客……恐らくは高校生か?……を一喝しつつ、私は思い出す。 現在の様にMMSが神姫として……更には“武装神姫”として、規格の 統一が為される前の試作期に何タイプか存在した、“神姫”達の名を。 故あって、私は神姫の黎明期……試作段階の逸話を色々と知っている。 その頃は音感能力特化型等、実に様々な能力を持つ神姫が試作された。 中でもとあるタイプに属する一人の神姫は、“訃報”が報じられた程に 一過性ながらも人々の話題となった、言語処理系特化型の神姫である。 そうか、もう大分経つか……“武装神姫”以外を知らぬ者も多い筈だ。 『えっと……皆さんッ、今日も“鳳凰カップ”に来てくださって……』 『Woooooooooooooooooooooooooooo!!!!』 『……あ、ありがとうございますっ!このお祭りに花を添えたくて!』 そんな感慨も、アルマの声に惹かれて訪れた客達への応対と、それ以上に アルマの前に群がってきた“観衆”の熱い叫びに、早々と掻き消される。 ……にしても、何十人いるのだ?今日は“鳳凰カップ”の決勝戦である。 そちら目当ての方が必ず多い筈で、しかもこのブースは“祭典”で用いる 簡易型テーブル3~4台分の幅しかない。それなのに、この盛況振りだ。 『恥ずかしかったけど……今日は一日唱い続ける事にしましたッ!!』 「凄い人手ですね、決して大きくないブースなのに買い物客も聴衆も」 「む?貴様ら……戸田静香とココか。暇潰しに来た……いや、違うか」 「まさか。私も個人ブランドをやっているんです、気は抜けませんよ」 客の列に紛れてやってきた戸田静香と、会話をする。そう言えば彼女も “TODA-Design”という銘で、エルゴ等に神姫用衣装を提供していた。 不敵に笑う彼女らしい動機とも思えた……のだが、真実は違う様だな。 そして私達を後目に、アルマの挨拶で“観衆”は一気に燃え上がった! ……この場合“萌え上がった”でも間違っていない気がするな、有無。 「静香が“ライバル”の偵察をしたい、って建前で……もごもご!?」 「あくまでこれは偵察なの。そうでしょココ?ごめんなさい、晶さん」 「まあどちらでも私達は構わぬ。存分に見て、聴いてゆくが良いぞ!」 『拙いあたしの唄ですけど、少し疲れたら聴いていって下さいねッ!』 『アルマちゃーんッ!!いーじゃん、いーじゃんすげーじゃんッ!?』 『次は“妹”を題材にした……“天空-あおいそら-の鳥”ですッ!!』 『Woooooooooooooooooooooooooooo!!!!』 ──────不死鳥の様な心は、皆も生き返らせるんだよね。 メインメニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1121.html
このページは『双子神姫』に出てくる違法改造武器の紹介です。(主に龍悪が作った武器です) 話の進行につれてこのページで武器の細かい紹介をしていきます。 この武器をコラボで使うのは大歓迎ですが、自分の武装神姫達が壊れないよう気をつけてください。 基本的に補足でも言うように神姫達の対神姫侵食度100までですが、オーナーと神姫達の親密度によって変化します。 そこら辺は自由に決めてけっこうです。 補足:『神姫侵食度』についての説明。 神姫侵食度は神姫のプログラムを侵食する数値です。(オリジナルです) 簡単に言ってしまいますと、神姫を壊すプログラムです。 違法改造武器関係は普通の武器より神姫に対して大幅な負担を掛けます。 更に武器のプログラムが神姫とのプログラムに同調しないといけないために、武器のプログラムが神姫のプログラムに侵入します。 そうする事によって神姫のプログラムに余計なプログラムがインストールされる事によって壊れていきます。 ですが、違法改造武器の武装解除すればプログラムがアインストールされ、侵食度が戻ります。 基本的に普通に販売している武装神姫達は侵食度100まで保ってますが、それ以上の数値を超しますと暴走し二度とその神姫は修復不可能になります。 二丁拳銃、二刀流の装備の場合は同じ武器なら神姫侵食度はプラスされませんが、武器の種類が違うと別々のプログラムがインストールされるのでプラスします。 アンジェラス、クリナーレ、ルーナ、パルカは生産元が違うのでノーマル武装神姫達と侵食度が違います。 ○ANGELUS(アンジェラス) 対神姫侵食度:???? ○CRINALE(クリナーレ) 対神姫侵食度:200 ○LUNA(ルーナ) 対神姫侵食度:180 ○PARCA(パルカ) 対神姫侵食度:300 ○違法改造武器 メインウェポン サブウェポン リアパーツ アーマー アクセサリー オリジナル武器(龍悪完全自作武器) オリジナル武器技紹介