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そして、次第に意識は浮上していく。ぼやけた意識は、ある一点を境にはっきりする。 (ステージ『コロシアム』か……) 円形のフィールドで、障害物は天井から生えた鉄柱程度。最もポピュラーでスタンダードなステージだ。 (樹羽) シリアの声が、自分の内から響いてくる。その声に対し、私は口を使わずに返す。 (シリア、調子は?) (絶好調。油断はしないけどね) 私は自分の――神姫の体を軽く動かした。 手を握り、また開く。足を上げて、下ろす。蹴る、殴る。問題なしだ。 (武装セットお願い) (了解っと) 自分の体が光ったかと思うと、すぐに光は散った。だが、変化はある。 ヘッドガード、ショルダーガード、ブレストガード、リアテイルパーツ、リアウイングパーツ、レッグパーツ。 俗に純正装備と言われるものだ。ついでにアームガード兼ナックルにもなる『ゼピュロス』も展開してある。 (空に羽ばたく鳥のように、だっけ?) (セイレーンって元々そういう感じらしいよ?) セイレーンと聞くと、海でハープを弾いているイメージなのだが、それはイーアネイラのほうだ。実際、中世以前のセイレーンは半人半鳥であったと伝えられている。 まぁ、なんにせよ与えられた武装は最大限活用させていただく。 (絵美ちゃん……相手の武装は?) (相手も純正装備だね。槍になるダブルナイフ、それから光学系ランチャー。ウェポンプールに剣が二本とバズーカが一つずつ) 相手は大海を泳ぐマーメイドをイメージされた神姫だ。らしいと言えばらしい。いや、どこら辺がマーメイドらしいかは、分からないから、結局よくわからないのか。 ちなみにこちらの純正装備は、カタールにスピードランチャー、あとナックルといったところだ。ウェポンプールは空っぽ。あくまで純正装備だけだ。 (互いにロングレンジは不向き。ランチャーの種類的に言えば相手の方が僅かに有利) 通常のランチャー――光学系ならなおのこと射程が長い。 しかし、エネルギー反応をこちらがキャッチしてからガードが間に合うぐらいの速度だ。 逆にスピードランチャーは、射程が短い代わりに弾速が早い。 例えて言うなら、通常のランチャーは70m先まで届いてスピードランチャーは60mしか届かない。 (ミドルからクロスの槍も、相手の使い方次第だけど、クロスはダブルナイフと剣だし、ゼピュロスとエウロスをうまく使えばなんとかなるんじゃない?) カタールのエウロスは、ゼピュロスを展開したままでも掴むことができるのを、この間知った。前回のエリーゼ戦では、ゼピュロスで殴るためにあえて一つしか展開しなかったが、本来エウロスは二本あるのだ。 (槍も、クロスで使われるかも知れない。油断大敵) (だね。そろそろ始まるよ) 開始を宣言するブザーがなる。 『Ready……Go!』 アナウンスが入り、いよいよ戦闘が始まった。 (ロックオン出来る?) (ちょっと難しいな……もう少し近付いて) 実は障害物がないのと、このステージが直径80m程度しかないので、相手の姿はギリギリ視認出来る。 (っ、エネルギー反応、来るよ!) ロック範囲は相手の方が広いのか、こちらがロックしない内に砲撃がきた。 (この程度なら……!) 走りながら、軽くサイドステップして軸をずらす。次の瞬間、さっきまで自分がいた場所に光が伸びた。 (狙いが甘い……ノーロック? それともわざと反らした?) 多分前者だろう。客観的にみて、あの少女が戦い慣れしているとは思えない。 (ロック完了!) 牽制のランチャーを二、三度避けた辺りで、シリアが報告した。 現在の武装のロック範囲は41,2s(人で言うところの41,2mに当たる)だから、ロック完了=約40mと考えていい。 それでも相手の姿は辛うじて人型だとわかる程度。 (飛ぶ……は駄目だな、狙い撃ちにされる) 背中についているリアウィングは、広げることで飛行することが出来る。飛んだ方が早いのだが、今飛んでもランチャーの良い的だ。 だから…… (だから、ミドルでレールアクションを使って一気に近付く) Rail Action. 一時的に神姫の性能限界を越えて動けるプログラム。 発動後、相手からの射撃の威力を軽減するバリアを展開し、さらにジャミングをかけた後、高速移動する。 ただし、レールアクションの名の如く、一定のルートしか動けず、ベテランのプレイヤーには最悪ルートを読まれ、反撃ないし回避される。 さらに使用制限があることが難点としてあげられる。 距離、24,8s。 (よし、ここで……) レールアクションを使おうとした、その時だった。 (あれは……?) 最初は見間違いだと思った。しかし、ここまで近付いたのだから、相手の様子もはっきりする。 ――そこには、一匹の人魚がいた。 あった筈の足は魚の鰭のようになっている。それは中空を漂った後、おもむろに地面に潜った。 (な、何あれっ!?) シリアは随分と驚いているようだが、私はそれほどでもなかった。それよりも重要なことを、思い出すので必死だった。 (確か、あれは……固有RA) 柏木さんから神姫について朝から晩までみっちり覚えた甲斐があった。 レールアクションの中には、そのタイプ専用の固有RAが存在する。イーアネイラの固有RAは、『ウェパル・アサルト』 まさにステージという海を游ぐ人魚の如きレールアクション。発動後、ステージの下に潜り込み、そこから強襲する。 確かに効果的ではあるが、反則くさい。地面から来るなんて非常識な気がする。 「ハックシュンッ!」 「にゃ? 風邪ですかにゃ先生?」 「いや、なんか今寒気が……」 どこかのゲームセンターにて、ドリルで砂漠に潜るミス非常識がいたりもするが、それはまた別の話。 (ジャミングでロックも出来ない……樹羽) シリアが不安そうに意向をうかがってくる。私は…… (……ゼピュロスしまって。ボレアス、展開。同時にチャージ開始) (ランチャーで向かえうつの? そんなこと) (早くして) 早くしないと、相手が仕掛けてきてしまう。 シリアは渋々ゼピュロスを消し、既に見慣れたランチャーを出した。小さな起動音、チャージ開始。 (落ち着けば、かわせる) この固有RAは相手のガードを崩す能力がある。下手をすれば、HP切れではなく、クリティカルダウンをもらいかねない。 通常、神姫に設定されているHP(ヒットポイント)は、ゼロになると試合が終了する。動けると言い張っても、ジャッジシステムはそのマスターに負けを宣言する仕組み。 しかし、たとえHPが残っていようとも神姫から強制的に弾かれるほどの衝撃を食らった場合、クリティカルダウン扱いで一撃で倒されてしまう。 つまり、いくらデータ的に威力の弱い武装でも――少し嫌な例えだが、相手の首を撥ねたり、腹部を貫いたりした場合、ダメージ計算すら行わず、ワンキルになる。 しかし大概はその前に神姫がバリアを張り、クリティカルダウンはそんなに起こらない。だが相手がレールアクションを使用した場合、ジャミングによって相手の位置が掴めないため、クリティカルダウンになりやすいのだ。 (来るなら、来い) 計器では測れない、その場の雰囲気を五感で感じとる。 相手は必ず下から来る。しかし、飛び出すタイミングがわからないため、不用意に飛ぶわけにもいかない。 集中する。自分の中にある一点に心を静める。 足元から、水が撥ねる音がした。 (今だ!) ボレアスを斜め前に放り投げ、自分も飛込むように前へと転がる。 次の瞬間、さっきまで自分がいた場所からアイラが飛び出した。 「え、嘘っ!?」 相手はさぞ驚愕しているだろう。しかし、確認するのは、前方に投げたボレアスをキャッチした後だ。 落ちてくるのを待っているなんてことはせず、翼を広げながら自分から取りに行く。 今、掴んだ。 「「いっけぇぇぇっ!!」」 二人の声がユニゾンし、オーバーヒート寸前だったボレアスから出た光の帯は、固有RAの後の硬直で動けない相手を飲み込んだ。派手な爆煙が辺りに広がる。 (やった、の?) (まだ、ジャッジが出てない) 倒せたのなら、ジャッジシステムが勝者の名前を掲げるだろう。 それがないのなら、結論は一つ。 (まだ、終わってない) (大丈夫? 絵美?) (うん、なんとか……) ギリギリのところでアイラがバリアを張ってくれなければ一撃でやられていたかもしれない。それでもまったくダメージがなかったわけではない。まだ腕が痺れている。 (強いね、樹羽さん) (えぇ、神姫バトルの初心者なんて思えないわ) さっきのウェパル・アサルトをかわされるとは思わなかった。多分、事前にお兄ちゃんが教えておいたんだと思うけど。 (絵美、クロスでの戦いになるわ。気を付けて) (うん。ありがとう、アイラ) 持っている槍、『トリアイナ・ハスタ』に力を込める。今のうちにスキュラの準備もしておかなくちゃ。 (やっぱり倒しきれてないか……) 爆煙がはれ、そこにいたのは、傷付きながらも槍を構え直すアイラの姿だった。 (クロスでいくよ。ゼピュロスとエウロスを出して) (わかった。気を付けてね) ボレアスが消え、代わりに両手にカタールと鉄甲が現れる。それを構えながら、私は相棒に尋ねた。 (ねぇ、確か相手の装備は剣とダブルナイフと槍なんだよね?) (クロスの武器って意味なら、そうだよ) (そう……) 剣は、取り回しが利く。多様される恐れがあるが、来たら来たでどうにでもなりそうな気がする。 ダブルナイフは取り回し次第ではかなり手強い。まだ慣れてないからゼピュロスで捌くのはキツイかもしれない。 槍も危ないかもしれない。聞いた話では、槍だけで大会を勝ち抜いた強者もいるという話を聞く。それは数年前の話らしいので、絵美ちゃんではないはずだが。 (バーニアの制御をこっちに回して、合わせる練習はこのバトルが終わったら) (樹羽) すこし凛としたシリアの声。改まって、といった感じか。 (確かに、樹羽がバーニア制御した方が、的確なタイミングでバーニアを使えるかもしれない。でも、それじゃ駄目なんだよ) 言われて、気付く。自分はどうやら、勝ちにこだわり過ぎていたらしい。 (二人で勝とう、樹羽) (……そう、だよね。私一人で戦ってるわけじゃ、ないんだよね) 何年も一人だった。信用できなかった。頼れなかった。 でも、今は自分の中に、信頼できる相棒がいる。 (勝とう、二人で!) 相手に向かって構え直す。相手はまだ攻めて来ない。ずっと続くかと思われたにらみあいは、相手が破った。 突如相手の姿が消える。レールアクションだ。 (落ち着け、さっきもできたじゃないか) 空気の流れを、全身の感覚を総動員して感じとる。 (*1) 右に回転し、飛んできた足をゼピュロスで受け止める。さらにそこからくる槍のなぎ払いは、左手を前に出しながらシリアがバリアを張ってガード。 「何でっ!?」 「そこぉっ!!」 ガード時に引いた右手を相手につき出す。しかし、それは相手の左手に現れた一本のナイフによって阻まれた。付け根の部分から三つに分かれており、そこで挟み押さえられてしまう。 「はぁっ!」 相手の槍が顔面に迫る。この槍も先端が三つに分かれている。その間にエウロスを入れ、押さえ込む。 互いに両手が封じられてしまった。地面を踏みしめているため、足技も使えない。 (エウロス……収納!) (……っ) 両手から刃が消え、同時に右手を引く。 支えがなくなり、相手の体制が崩れる。 「でぇやぁっ!!」 がら空きになった腹に、右手のゼピュロスを下から叩き込む。相手の腕が動くが、間に合うわけがない。綺麗にボディに拳とゼピュロスが入る。同時に足のバーニアが起動し、掬い上げるように相手を浮かせる。 そこからさらに腕を引き、バーニアをふかして相手の上をとる。そして、右手に現れた刃を相手に向けた。 「貫けぇぇっ!!」 重力にバーニアの加速。相手がとっさに張ったバリアと、こちらの刃が激しくぶつかり合いながら、二人とも地面に落下していく。 そして、地上との距離がゼロになった時、勝敗は決まった。 「…………」 相手の脇腹を貫き、地面に刺さった刃を抜く。 「私たちの、勝ちだ」 試合終了のブザーが、鳴った。 第四話の2へ 第五話の1へ トップへ戻る
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ウサギのナミダ 番外編 オリジナルの矜持 ~前編~ ◆ 蓼科涼子にとって、それは千載一遇のチャンスだった。 いつも四人組で行動している彼女は、今日はたまたま一人だった。 そして、いつも仲間たちと一緒にいるあの人も、今日は胸ポケットに自分の神姫を連れているだけ。 あの人は、いつものように、ゲームセンターの壁に背を預け、大型ディスプレイに映し出されるバトルロンドの様子を、見るともなしに見ている。 しかし、その視線は鋭い。 ときどき、独り言のようになにか呟いているのは、自分の神姫に何か意見を求めているのだろうか。 ストイックな人だ。 だが、涼子はそれが好ましいと思う。 とにかく、これは滅多にないチャンスだった。 二度とは訪れないかも知れない。 涼子はごくり、と唾を飲み込む。 緊張に背筋が伸びる。 胸に握り拳を当てて、深呼吸を一つ。 「よし」 心を決めて、一歩踏み出した。 はやる気持ちを抑えながら、涼子はゆっくりと、その人に近づいてゆく。 周りから横やりが入れられないよう、注意を払いながら……。 やがて、その人の前にたどり着く。 「……あのっ! すみませんっ!」 まずい。 声がうわずっている。 それに伴い、涼子の緊張が加速する。 目的のその人は、ゆっくりと涼子に視線を向けた。 まっすぐに、涼子を見る。 「ああ、君は……」 もちろん、涼子と彼は顔見知りだ。 だが、こんな風に差し向かいで、まっすぐに視線をもらうなんて今までになかった。 緊張が高まって、頭がクラクラする。 しかし、涼子は、勇気を振り絞る。 そう、こんなチャンスは二度と来ないのだから……! 「あのっ! 遠野さんっ! わたしを……弟子にしてくださいっ!!」 沈黙。 二人の間を、ゲームセンターの喧噪が流れていく。 「…………は?」 あ、こんな顔もするんだ。 その人……遠野貴樹は世にも間抜けな表情をしていた。 ◆ ことの起こりは、四人組の一人・園田有紀が、自分の神姫であるヴァローナ・タイプのカイに、新たな武装を与えたことだった。 「へぇ……純正ストラーフ装備ね」 「中古だったんだけどさあ、状態も良くて、格安だったんだよ。ちょっと予算オーバーだったけど、思い切って買っちまったい」 八重樫美緒の感心した声に、有紀は得意満面だ。 それも仕方があるまい。もともと有紀はストラーフ装備でパワーファイトすることを望んでいた。 資金の都合でライトアーマーの神姫を購入したが、ストラーフ装備と相性のいいヴァローナを選んだのも、将来を考えてのことだ。 ヴァローナ・タイプはストラーフ・タイプの姉妹機であり、武装の相性もいい。 いずれストラーフのフル装備を手に入れる、というのは有紀の口癖だった。 その思いは、『エトランゼ』久住菜々子と知り合ってから、ますます強くなっているようだった。実際、有紀はエトランゼのバトルに心酔している。 まさに、念願かなった、といったところだった。 有紀の神姫・カイも、はじめてのストラーフ装備に満面の笑みを浮かべながら、細かく動作を試していた。 心中穏やかでないのは涼子である。 涼子たちは、四人の中で対戦して遊ぶことがほとんどだった。 その四人のランキングは決まっている。 一番は八重樫美緒。彼女は頭脳的なバトルを得意としている。オールラウンダーであるウェルクストラ・タイプは、まさに彼女の神姫としてうってつけだった。 四人の中ではダントツの強さを誇る。 二番目は、蓼科涼子と園田有紀で争われている。 有紀の神姫・カイは、猪突猛進のパワーファイター。 涼子の神姫、パーティオ・タイプの涼姫は機動力を生かしたヒットアンドアウェイを得意としている。 二人の実力はほぼ拮抗していたが、最近、涼子はあまり勝てなくなってきていた。 特にスランプというわけではない。 だが、以前のように勝ちに行けなくなっている。 状況打破のため、新装備の導入も考えてはいるが、いかんせん、女子高生の限られたお小遣いの中では、なかなか手が出せるものではない。 そんな状況での、カイの新装備導入である。 涼子は焦った。 このままでは、美緒と有紀に追いつけなくなってしまう。 自分の涼姫も、なんとか新しい装備や新しい戦い方を模索して、強くならなければ。 ちなみに、ポモック・タイプのモナカのマスターである江崎梨々香は、勝敗にこだわらない。装備もデフォルトだし、勝っても負けても楽しそうにしている。なので、涼子は、目下のライバルは有紀だと思っていた。 □ 「ですから、装備や戦い方のアドバイスをいただきたいんです。お願いします!」 「……なるほど。詳しいいきさつはわかった。だけど、なあ……」 ポニーテールがトレードマークの少女は頭を下げた後、必死の視線で俺を見つめてくる。 困った。 彼女の気持ちは、わからないでもない。 蓼科さんはバトル指向の持ち主だから、バトルをやるからには勝ちたいと思うのも、自然な話だ。 だが、だからこそ、俺に持ちかける相談じゃないと思うんだが。 「……俺とティアは大して強くないし、勝敗にもこだわってない。君の相談からはかけ離れてると思うんだけど」 「ご謙遜を。クイーンに敗北を認めさせた神姫のどこが強くないって言うんですか?」 俺は苦虫を噛み潰した。 そういう風評は、俺にとっては何の価値も持たない。 「だったら、久住さんにお願いした方がいいんじゃないか? 『エトランゼ』の異名をとる彼女は、俺よりずっと経験が豊富だし」 「あ、菜々子さんはダメです」 「なぜ?」 「有紀が、菜々子さんに弟子入りする! と息巻いてまして……」 なるほど。 確かに、エトランゼに憧れていて、しかもストラーフ装備を手に入れたなら、久住さんに教えを乞うのはもっともなことだ。 しかも久住さん自身、ストラーフ装備には特別な思い入れがあるから、園田さんの願いを無碍に断ることはあるまい。 「それに、わたしはティアの戦い方に憧れています。高速機動で相手を翻弄し、軽量装備で渡り合うスタイルは、わたしが目指すスタイルなんです。だから、遠野さんに是非教えを乞いたいと」 ううむ。 残念ながら、蓼科さんの言っていることは筋が通っている。 似たようなスタイルの武装神姫プレイヤーから教えを乞いたいと思う気持ちは分かる。 だが、オリジナル装備を使う、俺のような神姫プレイヤーは、他人にアドバイスするのが難しい。 公式装備なら、同じ装備を使う神姫に有効なアドバイスもできるだろう。公式装備は量産品であり、基本的な性能も大きくは変わらない。 オリジナル装備というのは、他人が使わない唯一無二のものだ。 だから、俺がティアの装備について語ることは、ティアにしか通用しない。他の神姫の参考にはならないのだ。 公式装備こそは正統派であり、オリジナル装備はむしろ邪道なのだ。 だからこそ、レギュレーションを満たさないオリジナル装備は、公式大会には参加できない。 蓼科さんは教えて欲しいと言うが、俺には有効なアドバイスが出来るとは、まったく考えられないでいる。 しかも、下手なアドバイスをすると、彼女を邪道に引き込んでしまいかねないのではないか。 俺が腕を組んで思い悩んでいると、蓼科さんは上目遣いで俺を見て、言った。 「だめ……ですか?」 くそっ。 どうして女の子という生き物は、男の防御を無効にするずるい攻撃ばかり持ち合わせているんだ。 蓼科さんたち四人の少女は、いずれも、大城が知り合いになれたことを大喜びするくらいに、美少女ぞろいだ。 そんな可憐な女の子に見つめられて、お願いされて断る手段を、残念ながら俺は持ち合わせていなかった。 俺は降参の溜息をつきながら、言った。 「……わかった。アドバイスくらいなら、してもいい」 「ほんとですか!?」 「でも、俺に言えることなんて、観念的なものになると思うし、あまり参考にならないかも知れないけど」 「いいです、それでも。よろしくお願いします!」 頭を下げ、にっこりと笑う蓼科さん。 ……正直、可愛い。 どうにも困った俺は、彼女から視線をはずし、うつむき加減で言った。 「それじゃあ、とりあえず一戦しよう」 「え?」 「君の神姫の現状が知りたい。バトルするのが手っ取り早いからね」 「わかりました。やりましょう……真剣勝負でお願いできますか?」 「もちろん、そのつもりだ」 ◆ バトルのレギュレーションを簡単に打ち合わせて、空いている筐体に向かい合って座る。 バトルの設定は、ライトアーマー戦。フル装備のバトルとの違いは、武装が限られること。サイドボードの容量も、フル装備のバトルよりずっと狭い。 ティアはいつもフル装備のバトル設定だが、今回は涼姫に付き合ってくれるようだ。 フィールドは、おなじみの廃墟ステージ。 そのステージもライトアーマー設定ということで、ずっと狭かった。 「嬉しそうですね、涼子」 鼻歌など出てきそうなくらいにニコニコしている自分のマスターにそう声をかける。 「もちろんよ。だってあの『ハイスピードバニー』が全力で相手してくれるのよ? 今の実力でどれほど通用するのか……勝てないにしても、一矢報いてみせるわ」 最近、勝率が落ちてきているのを棚に上げて、そううそぶく。 フル装備が許可されている無差別級で戦う神姫とは言っても、武装は所詮ライトアーマー並なのだ。 ライトアーマー級の俊敏さを生かせば、少しは勝負になるだろう、と涼子は踏んでいた。 準備を終えて、向かいに座る遠野を見る。 ヘッドセットに何事か囁いている。 この試合の作戦だろう。 自分を相手にどんな作戦を立ててくるのだろうか。 涼子は、緊張を感じると共に、少し楽しみでもあった。 双方とも準備が終わる。 同時に、スタートボタンを押した。 バトルロンド、スタートだ。 ◆ 涼姫は、廃墟になったビルの屋根から屋根へと飛び移り、駆けている。 パーティオ・タイプは身の軽さが信条。 この程度は朝飯前だ。 涼姫はビルの屋上から、ストリートを伺う。 ティアの装備はローラーブレードのようなレッグパーツだから、まずはストリートに姿を現す、と思う。 こっちが身を隠しながら戦うのは分かっているだろうから、誘いに来るはずだ。 はたして、ティアは現れた。 広いメインストリートを大きく使って、ジグザグに疾走している。 「見つけました」 『よーし、近付いてきたら、突撃よ! まずはM573でティアの足を止めて!』 「了解」 涼姫は、基本的にノーマルのパーティオの装備である。 ただ、左腕の装備のみ、ポモックの射撃武器「PML-01 ポモスバーグM573」に換装してある。 M573を撃って足を止め、涼姫得意の接近戦に持ち込む。 これが涼子の考えた戦術だった。 装甲の薄いライトアーマー相手なら、十分に実用的な戦術。 ライトアーマー並の装備であるティアにも、当然通用するはずだ。 ティアは、涼姫のいる廃墟のビルに接近してきた。 ビルの前で方向を変えようとする瞬間、そこを狙って、涼姫は飛び出した。 「はああああぁぁっ!!」 ビルの屋上から落下しながら、ティアを狙い撃つ。 しかし、銃弾は地面の砂埃に消える。 断続してティアを撃つが、そのことごとくを華麗なステップでかわされた。 涼姫が着地する。 ティアはターンの最中で明後日の方角を向いている。 だが油断はしない。 目視せずとも狙い撃てるのがティアだ。 こちらを向いていたサブマシンガンの銃口が火を噴いた。 予想通り。地を蹴って回避する。 こちらも再びティアを撃つ。かわされる。ティアは止まらない。 「……はい!」 小さな返事が聞こえた。 マスターの指示に応えたのだろうか。 ティアは涼姫を見据えると、今度は鋭く方向を変えて走り出した。 速い! 涼姫は左腕の銃口でティアの姿を追う。 □ 予想通り、涼姫はティアの姿を追って、銃身を振り始めた。 涼姫の装備を見てすぐに、彼女の装備の弱点が分かった。 おそらく、クレバーなバトルを得意とする八重樫さんは気が付いているだろうし、園田さんも無意識のうちにバトルの流れの中でその弱点を突いているのだろう。 勝率が上がらないのも仕方のないところか。 このバトルは蓼科さんと涼姫の実力を見ることが目的だから、その弱点を遠慮なしにあぶり出すことにした。 ティアに出した指示は一つ。 涼姫の左後方に回り込むこと。 これだけで、涼姫は思うように戦えなくなるはずだ。 ◆ 「くっ……」 涼姫は焦っていた。 どうにもティアを捕らえることが出来ない。 ティアが涼姫の左側に回り込み始めたときから、M573の射線を彼女に合わせられないでいる。 涼姫が銃口をティアに向けたときには、すでに彼女はまたさらに左側に回り込んでいるのだ。 一度間合いを切るべく動いたが、ティアの高速機動ですぐに左後方を取られる。 かくて涼姫は、反時計回りに身体を回転させながら、ティアを追う形になった。 当たらなくてもいい。 かすめる程度にティアを撃てれば、あのやっかいな足を少しでも止めることができるはずだった。 しかし実際は、かすりもしない。 相手の足を止めるどころか、相手に振り回されて、自分の方が足を止めている。 「え……?」 涼姫はそこでようやく気が付いた。 機動力が持ち味の自分が、動けなくなっていることに。 はっ、となって、改めてティアを狙う。 しかし、既に遅かった。 身体を回転させて、ティアを視界に入れたとき、彼女は既に至近に潜り込んでいた。 「うわっ!」 間近に見えるティアの顔。 身体の回転にようやく追いついてきた左腕を向ける。 しかし、ティアは涼姫の銃口を跳ね上げた。 間髪入れず、がら空きになった涼姫の身体にサイドキックを打ち込む。 「きゃあああああ!!」 地面の上を二転、三転、ストリートの片側まで飛ばされて、ようやく止まった。 涼姫は、蹴りを喰らったおなかを押さえて、立ち上がる。 不思議とダメージは少ない。 手加減されたのだろうか。おそらくそうだろう。 とどめを刺すならば、蹴りの代わりに、左手に握ったコンバットナイフを突き立てればよかったのだから。 涼姫は再び、左腕を持ち上げる。 どんなことをしても、ティアの足を止めなくてはならない。 『姫! 大丈夫!?』 「涼子……なんとか、戦えます」 『よかった……それじゃあ、ビルの壁を背にして、M573を構えなさい。死角を減らして、ティアの動きを絞るのよ』 「わかりました」 涼姫は涼子の指示に従い、すぐさま背中をビルの壁に着けた。 そして右腕のPTR-01のブレードを展開して脇に構え、左腕のM573を正面に伸ばす。 その銃口が示す先。 ティアが立っていた。 □ 涼姫の行動は、ある意味では正解だ。 壁を背にされれば、どんな神姫でも行動は格段に制限される。 しかし、その戦法が許されるのは、真っ正面の攻撃に絶対の自信を持つ神姫だけだ。 涼姫のように軽量武器しか持たない神姫では、自らの行動をも制限し、逆に不利になる。 しかも相手はティアである。 地上型とはいえ、機動性では後れをとらない自信がある。 蓼科さんに、考えの浅さを思い知らせるとしよう。 俺はティアに指示を出すべく、ヘッドセットをつまんだ。 ◆ ティアは背を伸ばし、涼姫の正面に立っている。 美しい立ち姿。 激しい躍動への予感をはらむ、たたずまい。 リラックスした状態でありながら、一分の隙も見いだせない。 涼姫は急に自分が小さく感じられた。 涼子は「ティアの行動を制限する」と言ったが、本当に制限できているのか? ティアは地上型だし、真っ正面に立っているならば、左右どちらかに動くとしか考えられない。 しかし、ティアに射撃が当たるとも思えないのだった。 構えた左腕があまりにも心細い。 ティアが構えた。 動く。 ティアの身体はスライドするように、先ほどとは逆で、涼姫の右側に回り込んできた。 涼姫はあわてて、M573を放つ。 当たらない。 銃口でティアを追う。 しかし、すぐに追えなくなった。 身体が邪魔で、左腕を右に振ることが出来ない。 ティアを追うためには、背中を壁から離さなくてはならない。 涼姫は身体を離し、ティアを正面から捕らえようとした。 ティアは涼姫を回り込み、壁際までやってくる。 そうなれば、ティアも速度を落とし、壁際で対峙できるはずだ。 しかし、ティアは速度を落とさない。 壁に激突する! そう思った瞬間、黒兎の身体がかき消えた。 「!?」 壁に激突したのではない。 レッグパーツのホイール音はいまだこだましている。 ならば……。 涼姫は思い出す。 そう、ティアは壁の上などものともせずに走れる神姫だ。 だとすれば、いま、ティアは、壁を走っている! 涼姫の予測は当たっていたが、遅すぎた。 ティアは涼姫の頭上を越え、その背後に着地した。 その気配を感じ、振り向こうとしたが、できなかった。 ティアは涼姫の左腕を取ると、それを頭上に上げるようにして押さえ込み、そして身体を密着させて、ビルの壁に涼姫を押しつけた。 凶悪に輝くコンバットナイフの刃が涼姫の眼前につきつけられる。 目を見開いたまま、身動きのとれない涼姫。 彼女が見つめる白銀の刃の先。 ティアが、なんだか困ったような顔をしていた。 □ 一戦終えた後、俺はゲーセンの壁際で缶コーヒーを飲んでいる。 一口飲んで、ちらりと隣の蓼科さんを見る。 がっくりとうなだれ、ひどく落ち込んでいた。 ……やりすぎただろうか。 でも、真剣勝負だと言ったのは彼女なのだから、仕方がないと思う。 「まさか、あんなにあっさり……」 「まあ……今回は真剣勝負だと言うんで、遠慮なく弱点を攻めたし」 「ううう……」 蓼科さんはますます落ち込んでしまった。 どうも彼女は、涼姫の弱点に気が付いていなかったらしい。 涼姫が左腕に装備したM573は、長所でもあるが弱点でもある。 片腕に射撃武器を装備し、それを撃って相手を牽制し、もう片腕の近接武器で接近戦に持ち込む。 この戦術自体はオーソドックスだ。 しかし、蓼科さんはその戦術にばかり固執している。 だから攻撃は単調になるし、涼姫の足を止めるようなミスを犯す。 「まあ、オーソドックスな戦術だから読みやすいっていうのはあるけれど」 「……いつ弱点に気付いたんですか?」 「スタート直後、涼姫の装備を見たとき……かな」 「そんな早くですか……!?」 蓼科さんは、またがっくりとうなだれる。 そこまで落ち込まれると、俺にも罪悪感が溢れてくるんだが。 俺がどうやって声をかけようか、困っていると、 「……オリジナル装備って……どうやって思いつくんでしょうか……」 そんなことを呟いた。 いやだから、お勧めしないと言っているんだが。 「それは人それぞれだろうね」 「遠野さんは、どうやってティアの装備を思いついたんですか?」 「ああ……俺、スキーやるから」 スキーは、俺の唯一と言っていい、スポーツの趣味だ。 雪上を滑走するあの興奮と開放感は何物にも代え難い。 「だから、フリースタイルみたいな動きの出来る神姫がほしいと思ったんだ」 「なるほど……」 「俺はあんまりオリジナル装備を使う神姫プレイヤーに会ったことはないけど……みんなそうじゃないかな。 自分の趣味や興味のあるもの、あるいはインスピレーションで自分が突き詰めたいと思ったスタイルを実現するために、オリジナルの装備を用意するんだ」 公式装備に、それを実現するものがあればいい。それが最良だ。 だが、なければ作るしかない。 オリジナル装備を使う者は、公式装備のメリットを捨てても、自分のスタイルを貫こうとする者たちだ。 ゆえに、求道者であり、邪道を行くものなのだ。 「……もし、わたしがオリジナル装備を思いついたら……作るの手伝ってくれますか?」 「……オリジナル装備は邪道だし、茨の道だ。 それでもなお、君がオリジナルでいきたいというなら……その時には協力しよう」 蓼科さんはようやく顔を上げると、にこりと笑った。 ◆ 高い空に、鐘が鳴り響く。 「あー、終わった終わった!」 うーん、と伸びをしながら立ち上がったのは、園田有紀。 彼女がそうして立つと、もともとの長身がさらに高く見える。 終業のチャイムを合図に、クラスメイトもそれぞれに立ち上がり、解散していく。 高校生の放課後はなかなかに忙しい。 有紀は、帰り支度をしている仲間の一人に声をかけた。 「美緒~。ゲーセン行くだろ?」 「ええ、そのつもり」 「じゃあさ、今日は特訓に付き合ってくれよ、みんなでさ」 「特訓? なに?」 「もっちろん、カイの新装備さ! こないだ、菜々子さんに手ほどきしてもらってさ、いろいろ教わったんだよね~」 はすっぱな有紀の言葉に、美緒は苦笑する。 有紀のエトランゼに対する心酔は、美緒たちの憧れとは少しベクトルが違う。 そのバトルスタイルに惚れ込んでいるのだ。 「いいわ。付き合うわよ。みんなも行くでしょ?」 いつもの仲間である、他の二人に視線を向ける。 江崎梨々香は、はいはい、と手を挙げて、 「わたしも行くよ~!」 とにこやかに笑った。 彼女の神姫・モナカはポモック・タイプなのだが、性格や雰囲気が、マスターによく似ている。 「……ごめん、わたしちょっと用事があって図書館に行かなくちゃいけないから……今日はみんなで行って」 もう一人の仲間、蓼科涼子は、トレードマークのポニーテールを揺らしながら立ち上がった。 美緒は驚きを隠せない。 涼子は四人の中でもバトル好きだ。 有紀をライバル視しているにしても、気心知れた仲間だから、有紀の申し出を断るようなことがあるはずはなかった。 「涼子……?」 「……気にしないで、ほんと。ちょっと調べものがあって、ね。だから、今日はごめん」 涼子は荷物を肩に掛けると、そそくさと教室を後にした。 残された三人は、顔を見合わせた。 はたして、涼子は学校の図書館で本を開いていた。 机の一角を占領し、十冊ほどの本がうずたかく積まれている。 一冊ずつぱらぱらとめくっては、机にいる彼女の神姫と何事か話をする。 気を遣って、できるだけひそひそと話しているが、つい声が高くなったときなどには、図書委員に厳しく注意されていた。 「なにやってんだ、ありゃ……」 有紀が呆れ気味に呟く。 バトル派の涼子が、試験前でもないのに、ゲーセン行きを断ってまで、図書館で調べもの。 気にならない方がおかしい。 そう思って、涼子の様子を物陰から盗み見る美緒たちだった。 だが、何をしているのか、さっぱりわからない。 「生物図鑑に乗り物図鑑、百科事典に航空写真集……?」 涼姫と一緒にそれらの本を見ているということは、神姫がらみなのだろうけれど。 ときどき、わしわしと頭を掻きながら、それらの本を一心不乱にめくる。 その様子に声をかけることもためらわれて、三人はそっとその場を後にした。 ◆ 「そう簡単に見つかるもんじゃないわね……」 帰り道。 図書館で閉館まで格闘していたが、今日も成果はない。 日はとっぷりとくれて、あたりは既に夜だ。 図書館に通って四日。 オリジナル装備のヒントを掴もうと必死だったが、芳しい成果はない。 武装神姫の多くにモチーフがある。 アーンヴァルは天使だし、ストラーフは悪魔。犬、猫、兎、海豚、カブトムシ、クワガタムシ、戦車に飛行機……様々なものの意匠を装備に取り込んでいる。 そうした公式装備に使われていない何かを探そうとすれば、おのずと範囲は狭まるし、自分の好みともなかなか合わない。 昆虫図鑑とかも目を通したが、涼子には十分グロテスクな写真群に、正直引いた。 「そう簡単に見つからないって、遠野さんも言ってましたよ。気長に行きましょう」 涼姫は前向きだが、涼子は焦っている。 こうして、自分のスタイルを探している時間は、全くの無駄ではないのか。 この間にも、有紀のカイも、美緒のパティも強くなっているはずなのだ。 図書館通いなんて続けるより、装備を妥協しても試合をする方が強くなれるのではないか。 だが、同時に、その妥協を決して許さない自分がいる。 今のスタイルは付け焼き刃の仮のものだという意識が強い。 だから、いつかはこうして自分のスタイルを模索しなくてはならない。 それが今だというだけなのだ。 焦りを募らせながらも、無意味とも思える調べものを続けなくてはならない。 涼子は深くため息をついた。 「ただいま……」 「おかえりー」 家の扉を開け、気のない挨拶をすると、これまた気のない返事が返ってきた。 靴を脱ぎ、ポニーテールを揺らしながら、リビングへと向かう。 「雄太……また映画?」 気のない返事をしたのは、涼子の弟だ。 彼は最近、映画にはまっていて、古今東西の映画を、ムービーチャンネルの配信サービスで見まくっている。 もっとも、原作付きやアクション映画ばかりなのだが。 今も、古い映画を、家のメインのテレビを占領して鑑賞中だった。 「うん~。面白いんだよ。姉ちゃんも見れば」 「いやよ。あんたが見てるの、古いのばっかりなんだもん」 涼子はキッチンの椅子の上に鞄を置くと、グラスに牛乳をあけて、飲み干した。 弟は夢中で映画に見入っている。 何がそんなに面白いのやら。 涼子は横目でテレビの画面を見た。 弟が好きそうな、アクション映画だ。 アメリカの高層ビル街が映っている。 興味なさげに、視線を逸らそうとした、次の瞬間。 一人の奇妙な男が、高層ビルの間をふっ飛んで行った。 赤と青の、趣味の悪いボディスーツを身に纏い、ビルの谷間をすいすいと駆けていく。 涼子は画面に釘付けになった。 羽を付けて飛んでいるのではない、その独特の動き。 まさにビルの谷間を「すり抜ける」というのがふさわしい。 彼は、摩天楼を縦横無尽に駆け回る。 「こ、これだーーーーーっ!!」 画面にかぶりつきになった涼子と涼姫は、同時に声を上げた。 突然叫び出した姉に、弟はどん引きしている様子だが、そんなことはかまっていられない。 弟の肩をつかんでぐらぐら揺さぶりながら、勢い込んで尋ねる。 「ちょっと! この映画なに!? 何の映画!?」 「ア、アメコミの有名なヒーローだよ……三十年くらい前に実写化されたやつ。その二作目」 「二作目って……何作あるのよ?」 「四作か、五作かな……」 「全部見られる!?」 「今週、アメコミヒーロー映画特集が配信中だから、たぶん……」 「はじめから! 一作目から全部見るわよ!!」 「ええ~? 俺、もう見たんだけど」 「弟のくせに文句言わない!」 雄太は、横暴だ、と思った。 いつもはクールな姉であるが、一度スイッチが入ると手が付けられないのは、幼い頃から身に染みている。 結局は雄太があきらめ、そのシリーズを頭から全部一気に鑑賞する羽目になった。 涼子は晩ご飯もそっちのけで、映画に夢中になった。 気が付いたときには、家の中は真っ暗で、家族はみんな寝静まっていた。 涼子はまだ制服も着替えていなかった。 □ 土曜日。 いつものようにティアを連れて、公園に散歩に出かけ、それからゲーセンに向かうその途中で、蓼科さんから電話があった。 『ちょっとこれから、相談に乗ってほしいんですが!?』 勢い込んでしゃべる彼女に、俺はちょっと気後れする。 だが、約束は約束である。 ゲーセンではゆっくり話すことも出来ないということで、いきつけのミスタードーナッツで待ち合わせることにした。 俺が店の入り口をくぐると、奥に座っていた蓼科さんが立ち上がり、一礼するのが見えた。 アメリカンコーヒーだけで席に着いているのを見て、俺は余分にドーナッツをトレイに乗せ、会計して、蓼科さんの向かいに座った。 「甘いものは大丈夫だよね?」 「あ、はい、すみません……」 好きなものをどうぞ、というと、一番安いオールドファッションにおそるおそる手を伸ばす。 甘いものとコーヒーは、不思議と心を落ち着かせる。 興奮気味に見えた蓼科さんも、心が整理できてきたようだ。 「目が赤いけど、大丈夫?」 「……二日ほど寝てなくて」 頭を掻きながら苦笑する蓼科さんに、俺は呆れた。 あの電話のテンションを二日も維持してたのか。 お互い一つずつ、ドーナッツを食べたところで、蓼科さんが本題を切り出した。 バッグからレポート用紙の束を取り出し、俺に差し出す。 「……これは?」 「やっと思いついた、オリジナル装備です。アドバイスしてもらいたくて」 装備の概要がレポート用紙数枚にまとめられている。 まだアイデアのラフの段階だが、イラストで図解されており、なかなかわかりやすい。 俺は一度ざっくりと目を通した後、じっくりと読んだ。 時間にして五分くらいだろうか。 蓼科さんは緊張した面もちで俺を見ている。 「……よくまとまってると思う。実現性が高いとすれば、B案の方かな」 「ほ、ほんとですか!?」 「ああ。こっちなら、パーティオの装備に手を加えればいいし、使える部品も想像が付く。安く上がると思うよ」 蓼科さんは笑顔を弾けさせた。 ……いやだから、その無防備な笑顔は反則だろう。 俺は彼女を直視できず、うつむいたまま言った。 「で、どうする? 装備を作るなら、パーツを買いに行かないといけないけど」 「……じゃあ、明日、買いに行きたいので……付き合ってもらえませんか?」 「いいとも」 俺は即答した。 このときにはもう、俺も面白くなってきていた。 新たなオリジナルの武装神姫。 同じオリジナル装備の使い手として、心躍らないはずがない。 だが。 「ただし、条件がある」 「え……なんですか」 「今日は帰って早く寝ること。買い物途中に倒れられたら、たまらない」 俺の言葉に、蓼科さんはなぜか顔を赤くしてうつむいた。 ◆ 「あれ……遠野くんはまだ?」 日曜日の午後、菜々子はバトルロンドコーナーで辺りを見回す。 この時間なら先に来ているはずの遠野が見あたらない。 「あ……そういえば昨日、秋葉原に買い物に行くから、今日は来られないかも知れないって」 美緒の言葉に、菜々子はがっかりした。 大学のレポート提出が間近で、昨日は必死でその作業に明け暮れた。 そしてなんとか今日、ゲーセンに来る時間を空けてきたのだ。 それなのに、想い人がいないのでは、昨日の苦労が全く無駄になってしまう。 がっくりと肩を落とし、うつむく菜々子。 そこに梨々香の言葉が飛び込んできた。 「あれ? そういえば、涼子ちゃんも秋葉原にお出かけって言ってたよね?」 「……梨々香っ」 たしなめるような美緒の呼びかけに、梨々香はまったく頓着しなかった。 「もしかしてー、涼子ちゃんと遠野さん、二人でお出かけだったりして~」 あは、なんて笑っている梨々香に、美緒は頭を抱えた。 我が親友ながら、空気読め、と言いたい。 そして、正面から伝わってくる、ただならぬ気配に、美緒は身体を硬直させる。 「ふーん……そう……」 聞こえてきた絶対零度の呟き。 見れば、菜々子の背後に、ただならぬ暗黒のオーラが立ち上っている、ように見える。 美緒はもう涙目になりながら、ことの成り行きを見守るしかない。 そこへ。 さらに空気の読めない親友が声をかけてきた。 「あ、いたいた! 菜々子さ~ん!」 有紀は片手をぶんぶん振りながら、小走りに駆けよってくる。 ゆらり、と振り向いた菜々子の動きは、亡霊じみていた。 そんなことも気にとめず、有紀は話し始める。 「菜々子さん! 今日もご指導、お願いしていいっすか?」 「……指導? ふふふ……いいわよ……」 「はい! お願いします! ビシビシ鍛えてください!」 「わかったわ……ビシビシ、ね……」 心酔している『エトランゼ』から、ストラーフ装備の使い方を直接指導してもらえるのだ。 その言葉に舞い上がり、多少当人の様子がおかしくても、有紀の目には入っていない。 ああ、神様。 美緒は親友の行く末に、不安を禁じ得ない。 やがて。 「ぎょあー」 断末魔的な悲鳴が断続的に聞こえてきた。 その日の菜々子はスパルタだった。 後編へ> Topに戻る>
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陸戦バトルロワイアル 日時 5月1日(金)20:30~ 受付開始。 21:30~スタート 場所 ロンドン教会内で受付&開始 担当 curryさん 優勝商品 50M+テセウスの篭手(剣術+1 防御19) 決闘で、映画「バトルロワイヤル」を再現できないかどうかと・・ 今現在のルールとしましては ● 最後の1人になるまで戦ってもらう。 ● 艦隊あり。(艦隊海事LV合計200まで) ● 装備品は武器と装飾品のみ。 ● 決闘申し込みから逃げたら死亡。 ● 陸戦アイテム使用可 (煙玉は不可) ● 時間経過で移動範囲を狭めます。 バトルロワイヤル本編と同じく禁止区域を設けまして、そこに入った人間は敗者とします。 時間としては、15分間隔で1つのエリアを潰していきます。 潰すエリアとしては5分前にはシャウト、メール、ネトラジで連絡していきます。 禁止区域になった場所には行けない様に、スタッフが通路に座り込みを実施します。 また出航所に逃げるのは無しです。これも敗者扱いになりますので、出航所ワープ等もルール違反としますのでご了承下さい。 ~参加登録と終了時のお願い~ 1、 参加者はまず私とフレ登録を行って下さい。 2、 参加者を3グループ(初心者、中級者、熟練者)にこちらで振り分けましてグループ毎に出発のメールを致します。 3、 メールを受け取った参加者は教会を出発して下さい。 4、 外に出ましたら基本ルール内で活動して下さい。 5、 死亡した場合は私にメールを入れて下さい。 以上が大会までの流れと終了時にやって頂きたいものです。 フレ登録は禁止区域の連絡にメールも使うという事、艦隊人数の管理、場所の管理といった様々な管理に使用しますので、これは必ずさせて下さい; 大会終了後即刻解除して頂いて構いませんのでよろしくお願いします。 また「出席番号」に間してですが、これも本編と似た動きが取れるという事と、あらかじめ艦隊で来た人達がいきなり艦隊を組んで戦闘を始めるというものよりも少し緊張感が出るんではないか・・といった狙いです。 死亡時のメールとしましても、こちらが後何人残っているか・・といった管理に繋がりますのでご協力お願いいたします。 ● ニコニコにてCM開始 http //www.nicovideo.jp/watch/nm6806422 です。 今の所、こんな感じに考えています。 何より参加人数が欲しいので(5人とかだと泣けるので;) 宣伝頑張ります!(`д´ )ゞ <陸戦バトルロワイアル連絡帳> 陸戦バトルロワイアルに関する連絡事項はこちらを利用してください -- リトマネン@広報担当 (2009-04-06 11 11 16) ありがとうございます~、計画をしっかり発動出来る様に頑張ります~ -- 米 (2009-04-08 23 07 18) スタッフ専用ページにも書きましたが18日のリスマで宣伝してみてはどうでしょう?宣伝効果がどれくらいあるかわかりませんが、デモンストレーションすれば参加者もわかりやすく増えるのでは??? -- リトマネン@広報担当 (2009-04-09 15 14 45) 名前 コメント
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第五幕。上幕。 ・・・。 新京都国際会館大ホール。薄暗い照明、設置された数台の大型筐体。 交差する小さな影を見つめる瞳。 筐体のカップホルダー。そこに描かれたMBAというオフィシャルロゴの上。 無造作に置かれたレモンイエローのケータイには大小様々なストラップが賑やかに吊るされている。 そのプレイヤーシートに座る少女。染色された髪の前髪の一部にホワイトメッシュ。細い赤縁の洒落た眼鏡。インカムを付けている耳には右には2つ、左に1つ賑やかにピアスが踊る。 その筐体の中・・・アラートウィンドウと光が踊る戦場を見つめる横顔は、軽薄そうにも見えるが、その視線は真剣そのもの。その瞳には少しの不安と自信が宿るが、絆創膏が貼られた両手を祈るように組んで、彼女はそこをじっと見続けていた。 彼女の名は山県 光。アキと読む。 やがて。 砲台型神姫フォートブラッグが携えた、大きく形状を改造されたライフルの銃弾が悪魔型ストラーフの胸部急所に直撃した。 ドクロのマークのデッドマークが赤く表示され、悔しそうな顔を浮かべながらストラーフが膝をつく。勝利を収めたフォートブラッグはバイザーを上げ、特別感慨も無さそうに・・・それが当然と言うかのように敵であった者に一瞥をくれると。自身のバトルフィールドへの侵入ゲートへ足を向けた。 『バトルロンドエンド。勝者、フォートブラッグ『ルクス』。OFMBA・・・勝敗数・・・』 電子音声と、その戦いのギャラリーであった『ライバル達』の拍手が流れる中。 そのフォートブラッグ『ルクス』は、白と黒だけで彩られた世界を見回した。 いつも通りの視界。ノイズが少し混じっているままで。 「お疲れ様。ナイスやったで、ルクス!」 関西弁が強く混じった声。嬉しそうに、アキが自分のパートナーを迎える。 「・・・ありがとうございます」 そのマスターの祝福に顔さえ上げず、腕を組み。淡々と答えるルクス。 今の戦いに満足してはいないのか、目を軽く閉じ瞑想しているかのように口はそのまま噤まれた。その喜びを表現しようともしない姿に、困ったような笑みを浮かべながら、アキが慌てて付け加える。 「あ・・・うん。どっか、壊れたとか。調子の悪いトコとか無い?」 「マスター。異常ありません」 さらっと答え、ルクスは心配そうな彼女の声を無視する。 まだ何かを言おうとしたアキだが、先のストラーフのマスターが来て、挨拶と祝福への礼を言う事に追われ、それ以上の声をかける事は出来なかった。 自分は武装神姫である。 マスターと自分の誇りの為に戦い、勝利を収める為の存在。 特にフォートブラッグは本格的なショットバトルの為に設計された『砲台型』。主とは完全にバトルパートナーとして在るべきだと、彼女は『正しく認識』していた。 主が戦略を練り、自身が戦術で勝利を収める。それこそが正しい姿である。幸いにもアキは戦略という点では問題は無い。ならば自分にはそれに答える義務がある。 そこに間違いなど・・・。 それから一時間後。これで勝てばベスト4という試合が始まった。敵はアーンヴァルタイプ限定型のカスタムモデル・・・それも随分と神戸で名の知れた実力者。 しかし此処で負けているわけにはいかない。 その戦闘の途中。 彼女は一瞬、丘陵の段差に足を取られた。 ほんのワンミスでしかない。 しかし、この戦場には、『ここまで勝ち上がってきた者』しかフィールド内にはいないのだ。それを見逃すはずもないアーンヴァルのアルヴォが火を噴き、彼女のバイザーを跳ね上げた。幸い、直撃ではなかったが・・・。 「・・・っ!」 ヂヂッという音と共に、目の前に妙な火花が舞った。いや、目の中で舞った。 視界が急速な勢いで萎み、これまでの三分の一程度まで縮小する。ダメージアラートが表示されているはずだが、それを完全に見る事が出来ない。 (ダメージ数の把握が・・・!) 見えなくなりつつある事よりも、彼女は戦闘に支障をきたす事を悔やんだ。残った視界にも大きなノイズが走っている。最早、視界のほとんどが奪われつつる状況。それでもルクスは敵をスコープに入れようとする。 (負けるわけには!) が、目が見えない重砲撃タイプなど単なる的に過ぎない。 数秒後に放たれたレーザーライフルを回避する事が出来ず、ルクスは直撃をくらった。全身から力が抜けていく。高いブザー音と共に、彼女のボディに敗北を意味するドクロが舞った。 あちこちにガツ、ゴツとぶつかりながらも、何とかルクスはゲートに辿り着いて筐体から出る。火花はまだ目の中で散っていた。 「ルクス!?」 慌てたような声が聞こえる。そこにいるのだろう。 彼女はいつも通り、視線を主に向けずに首を振った。 「申し訳ございません、マスター。私のミスで敗北しました。弁明の言葉もありません」 「そんなんはえぇねん! それより・・・大丈夫なんか!?」 何が、いいのか・・・。 オフィシャル・プロを目指しているような方が。 「異常といえば、視力が奪われました」 恥だ。主の構想を裏切り、自身のミスで負けただけではなく。挙句故障とは。何という役立たずな・・・。 そこまで思った時には。アキはルクスを引っ掴み、メディックルームに走っていた。 「・・・ありがとう、ございました」 搬送された神姫センターから、暗い表情でアキがルクスを胸に抱いて出てくる。 「・・・」 結果は・・・『ノー』だった。 そもそもが、彼女の人工眼球が、武装神姫の物ではなかったという衝撃の事実付きで。 パーツの混入・・・数百分の一か、数千か、数万か。何が起きたかは解らないが、しかし確かに起こりえた。彼女の眼は旧型神姫タイプ『ミネルヴァ』の不良品であったのだ。 武装神姫のカメラアイ部は、従来の神姫よりもガードグラスが遥かに丈夫に出来ており、それ故に人工眼球とCSCセンサーとの結合も強固になっている。ルクスが・・・生まれながらに持っていた障害をアキに伝えていれば、その時点での良品への変更は可能であっただろうと。 彼女は当初から視界が色を認識していなかった。 だが、ルクスは別段それを主であるアキに言おうともしなかったし、不便とも感じなかったのだ。全てはバトルに、戦闘に・・・必要ないからと。 その『悪い眼』でずっと暮らし、戦ってきたルクスのCSCが既に『その規格の眼球』を自身の目とする認識を、終了してしまっていた。 新品の武装神姫の眼の規格では、彼女のCSCがデータを認識しない。 とはいえ『悪い眼』と同じ程度の格である『旧式の眼』はほとんどがハンドメイドの代物だ。色も違えば、一つ一つが微妙にセッティングが違い、合う物が見つかる可能性は限りなく低いと・・・そう、伝えられた。 「・・・なんで、言わんかったん?」 合う物が見つかれば、連絡をくれると気の毒そうにドクターは言ってくれたが。期待は出来ない。 アキの言葉に、抱かれたルクスは俯いたまま何も言わなかった。 「なんで・・・色が見えないって、言わなかったん? ルクス」 もう一度。それでもどこまでも優しく、アキは言う。それが妙に苛立たしく感じられ、ルクスは僅かながら乱暴に答えた。 「必要ないと判断しました。バトルに影響はなく。むしろ、色の彩度に目を取られないだけ便利であろうと」 酷くなっていくノイズは。既に視界のほとんどを奪っている。 「そっか・・・ごめんな・・・気付かへんで」 ポツポツと聞こえる声。何故謝るのか。全ての非は私にある。 「マスターは悪くありません。状態管理・報告の義務さえ怠った、私の責任です」 「ウチは、マスターやのに・・・」 聞こえていないのか、アキは尚も呟くように言うだけだ。 ルクスは溜息をつき、淡々と言った。 「・・・マスター」 「?」 「私のCSC破棄を提案致します」 ぴたっと、足が止まった。 「え・・・?」 アキの顔さえ見ずに、ルクスは続ける。 「マスターはオフィシャル・プロを目指し、それに近い場所にいらっしゃいます。状態管理を損ない、無様にも・・・恐らくは視力を失うような神姫では貴女への期待と、高いステータスに答える働きは出来ません」 それが当然だ。 「CSCを一度破棄し、新しい眼球に取替え、そして再度起動を行ってください。名はルクスでも構わないでしょう。同一ボディとヘッドパーツならば特例としてランキング継承が認められた例があります」 私は彼女の神姫・・・所有物であり、期待に答える義務があった。 それが出来ない愚かな存在が、これ以上、類稀なる才能を持つ方の側にいる訳にはいかない。 「何・・・言って」 アキの震える声。ルクスは首を振って溜息混じりにはっきりと言った。 (・・・何を感傷的になっておられますか) 「私と貴女はパートナー。片方が『裏切り』に近い行為を行った時、貴女には切り捨てる権利があり、私にはソレを受け入れる義務がある。今日とて勝てば、日本選手権への切符を手に入れることが出来たベスト4入りを逃したのは、私の責任です」 「『裏切り』・・・?」 「何よりも、マスターはフォートブラッグの戦い方・セッティングに慣れておられるでしょうし・・・」 そこまで言って、決定的に重要な事を言う。 「CSCと眼球のみでしたら、『コスト』も、抑えられますから」 「『裏切り』・・・? 『コスト』!?」 少し、語気が強められた。 「?」 「この・・・っ! ド阿呆おっ!!」 水がパタパタッとバイザーに降ってきた。きょとんとして、ルクスは見えなくなりつつある目を上に向けた。 白黒の、小さな視界に。泣いているアキがいた。 (・・・ぁ) そういえば・・・。 「ウチはルクスじゃないと意味がない! ルクスの代わりなんておらん!」 「代わりは・・・」 私は、武装神姫。大量に生産されているタイプ。代わりなんて。 「ルクスが、好きやから! 一緒に来たのに! 裏切りなんてありえへん!! ルクスはルクスやのに、何でそんな事言うん!?」 大粒の涙が眼鏡を濡らし、首を振った時に零れ落ちる。 (・・・好き?) 泣きながら叫ぶアキを呆然と見つめながら、言葉を反芻する。 そういえば・・・マスターの顔を正面から見たのは、はじめてだったっけ・・・。 紫電が舞った。耳に届くブチッという音と共に。 視界から光が、完全に失われた。 ・・・一週間後。 昨夜、『データ規格に一致するかもしれない』眼があると電話があり、そこに連絡を入れるや平日にも関わらず、アキはルクスを連れて早朝からリニアエクスプレスに飛び乗った。 新京都駅からの通勤の人たちに混じって揺られる事一時間と少し。中央ステーションからバスに乗り換えて。 そして。彼女達はそこに降り立った。 「きょう、こく・・・?」 この一週間。泣き腫らした目でアキは、その珍しい名前をした研究所の看板を読む。ルクスは無言で俯き、そのポシェットの中で座っている。 千葉峡国神姫研究所。それなりに大型の研究所らしい。 意を決して。彼女は呼び鈴を鳴らした。 この一週間。 ルクスは一人暮らしをしているアキの部屋、机の上。言葉さえ発せず、クレイドルの上にずっと座っていた。座らされていたし、そこから動こうともしなかった。 毎朝、声をかけながらアキは優しくルクスの身体を払う。 「ごめんな・・・ごめんな?」 そう謝りながら・・・学校には行っているか解らない。 時折、机に突っ伏しているのか、くぐもった涙交じりの声が近くから聞こえるだけで。 ただ。 ルクスは、何か一つのキーワードを探し続けていた。 この、胸を蹂躙する気持ちを、はっきりとさせるワードが。あるはずなのに。 「・・・。結論から言えば。移植は可能です。それで光が戻るかは確信はありませんが・・・確率的には半々と言った所でしょうか」 様々な機械でデータを取り、その後所長室に通されたアキとルクス。 その前に座った、堅苦しそうな雰囲気を漂わせる小幡 紗枝と名乗った初老の女性は、手元のデータファイルに目を通しながら事務的な口調で言った。 「半、々・・・」 アキはぽつっと呟いて。 「あの、それで・・・」 「無論。一人でも多くの神姫と、そのマスターをお救いするのが私達の使命でもあります。お譲り致しましょう。・・・治療費は、別途頂くかもしれませんが」 「ホンマですか?」 嬉しそうに言うアキに、しかし小幡は冷静・・・冷徹とも見える表情のまま一つ頷くと、机上に直立するルクスに視線を向けた。 「さて、ルクスさん。貴女に聞いておきたい事があります」 ルクスは顔を声のする方向へ向ける。 「視力を失う前兆は当初からあったとの事ですが・・・何故、貴女は。色彩を認識していない旨をマスターに伝えなかったのですか?」 ふっと顔を下を向けたまま、答える事が出来ない。彼女は質問を理解はしていたが、それどころではなかったのだ。 ずっと探している。その単語を。今も心中を漁って。 「ウチの・・・。ウチのせいです!」 何も言わない彼女に慌てたように、アキが叫んだ。 ゆっくりと、声がした方に顔を向ける。 (マスター?) 「・・・ウチが・・・ルクスに無理をさせすぎて」 一週間聞き続けた、涙声に変わっていく声。 「構ってあげれなくて・・・そんで・・・彼女の事を何も考えてあげれなくて。色が見えてないって事さえも、気付いてあげられへんかったのは・・・」 絞り出すような声。 (何の為に・・・) 「全部・・・」 どうして? 「なるほど。・・・今の話が本当として。さて、貴女には、彼女を恨む権利があります」 別の方向から、小幡の冷静極まりない声が聞こえた。 「・・・。・・・!」 ルクスは『恨む』という単語に驚いて顔を振り向ける。 「ルクスさん? 神姫の不調さえ気付かず、戦いを強い、視力を奪い去った彼女を。それでも赦すのですね?」 それは。 赦す・・・? 「当然ですよね。貴女は、彼女の神姫なのだから」 「そ、それは! ちゃいます! ウチは!」 驚いたような、アキの声。 「お黙りなさい、山県さん」 それを封じる、厳しく、冷たい声。 「・・・これは、貴女の問題でもありますが、同時に彼女の問題でもあるのですよ?」 情に流されぬ研究者の声。 「どうですか? ・・・ルクスさん」 「・・・」 アキの、漏れるような声だけ、聞こえている沈黙の中。 (・・・あ) ルクスは、ようやく『一つの単語』に辿り着いた。 「・・・『光を失う』事」 質問の回答になっていない言葉を、彼女は紡いだ。 「これは、私への罰。・・・マスターの顔さえ直視せず。その声から耳を塞ぎ・・・『それ』から逃げ続けた」 直立したまま、淡々と。感情がほとんど込もっていない声で続ける。 「私は・・・『それ』を受け止めようとしなかった」 ふっと、自分の声調が変わった。 「大好きなネイルアートをやめてしまわれた。・・・髪が、傷つくからと」 それは誰の為に。 「パーツを持った事も無いドライバーで分解し、綺麗に洗ってくれたのも。ハンドカスタムしようとして。絆創膏だらけになってしまった指先も」 一体誰の為だったか。 「初勝利のときに誰よりも喜んでくれたのも。時間が無いのにアルバイトをして、兵装をフルチェックに出してくれたのも」 全ては。誰の為だった? 「・・・。そんな事を、何も考えずに受け止め。それが当然だと甘えながら」 それら全ては。誰に向けられていた? 「マスターの声に耳を傾けず、その瞳を真っ直ぐ見る事さえ出来ない・・・こんな」 声が揺れていた。とめどない感情の奔流が口から流れ出す。 ルクスは膝から崩れ落ち、その場にへたり込んだ。 何も見えぬ闇の世界。冷たい机の堅さだけが、足から伝わってくる。 「本当に救いようの無い、愚かな神姫の為に」 マスターは。私に。 どれほどの『それ』を注いでくれていたのか。そんな事さえ考えもしない神姫の為に。 「私は・・・」 光を照り返さない瞳を天に向ける。それも空しき抗いに過ぎず、涙が目から零れ落ちた。 「私は、きっと。愛されていた」 『愛』。 そんな簡単な単語を導くために。一体、どれほどの時間が必要だったのか。 雫が落ちる音が聞こえる。それは、誰の涙なのか。ようやく彼女は、全てを認識した。 「この光を失う事は。その愛を踏み躙り、目を伏せ続けた。愚かな私への罰」 「・・・。受け入れると?」 冷たくこちらを刺す様な小幡の声。ルクスは小さく頷き。唇をわななかせた。 当然の罰。受けるべき刑・・・。 「・・・それでも」 メモリーを埋め尽くす、最後に見た映像。 彼女は・・・マスターは。 「それでも・・・私はっ!」 何も掴めぬ指で見えぬ目を閉じ顔を覆う。消えない。その映像は消えはしない。 はじめて・・・そう、はじめて真っ直ぐに見詰め合った、陽の如き愛を注いでくれたマスターは。 泣いていたのだ。 こんな、愚か者の為に。 「マスターの姿を・・・失いたくないっ!!」 泣いていたのだ! こんな、『愛』を『涙』にしか換える事が出来ない、ガラクタの為に! このまま光を失えば。自分は、ずっとずっと知らないまま。 泣いていない、哀しみに囚われていないマスターの顔を。 愛を与え続けてくれた、いつも自分へ向けてくれていたはずの、唯一無二のマスターの顔を! 「う・・・う、ひぐっ・・・。マスタ・・・マスタぁ!」 心が無茶苦茶に掻き乱されていく。氾濫する感情。 メモリーを埋め尽くすのはアキの泣き顔。姿を見る事さえ適わぬ主を、彼女は叫ぶように呼ぶ。 あの泣き顔が・・・与えてくれた愛に出した答え。あの涙が、愛の代価として私がマスターに与えた物だ! 身を引き裂くほどの後悔と懺悔。ルクスは両手を地に付いた。 「ごめん、なさい。ごめんなさい・・・っ!」 吐き出された『想い』。赦されるとは思っていない。赦されるはずなんてない。 自身がやってきた事。自身が口にした言葉。 その須らくが、愛への『裏切り』に他ならなかった。 何本の棘をマスターの心に叩き込んだ? 果たして、どれだけの愛を捨ててきたのか? どれほどの愛を踏み躙ったのか! 考えただけで心が押し潰されそうな罪。 身動きさえ取れないルクスを、誰かがそっと抱き上げた。 「・・・。マスター・・・?」 知っているコロンの香りに、彼女は、ぽつりと呼んだ。 「・・・」 しゃくり上げる声。何も言わず。アキはルクスをぎゅっと胸に抱いた。 暖かい。知っている匂いと温もり。 ・・・初めて起動した時に、抱き上げてくれた時と同じ。 あの頃から・・・この、こんな神姫に・・・この人は、『愛』を注いでくれていたのに。 彼女は咽び泣いた。ごめんなさいと、ただ繰り返しながら。 「小幡、さん」 泣き続ける彼女を抱きながら、自身も涙でボロボロの顔を、アキは小幡に向けた。 「・・・。解りました」 小幡は静かに頷き、微笑を浮かべた。 「彼女に・・・良い『名』を、お付けになりましたね。山県さん」 「・・・! はい」 ルクスを抱き締めたアキを、小幡は奥の部屋に誘った。 再起動音が自分の耳の奥で鳴っている。とすれば。これは、夢、だろうか。 ゆっくりと眼を開ける一瞬前。ルクスは不思議な光景を見た。 どこまでも続く、晴れた風吹く草原。そこに立つ彼女の前に、一人の美しい神姫が髪を風に揺らせ立っている。 翠の髪。そして、銀色の瞳。パールと草色のスーツカラー。 その神姫はルクスに優しく微笑みかけていた。 『・・・母様?』 ふと自然と出た、その言葉。 風が吹き、草原が消えていった。 高い電子音が一度鳴る。 その瞳の色は銀色に変わっていた。焦点が合い、部屋を視界に映し出す。 「ルクスっ!?」 覗きこむ、心配そうな顔。 ルクスは小さく頷いた。 ぱっと、アキが笑顔に変わる。 (あぁ・・・) 赤い縁の洒落た眼鏡。 染めた髪にメッシュが入って何と鮮やかな。 銀のピアスで賑やかな耳元。 どことなく日本人とは違う印象を与える、顔立ち。 「マスター」 私は、こんなに近くにあった愛を。長く、見ようともしなかったのか。 「見えるな? 見えるんやな!?」 「はい・・・」 これほどまでに。美しい愛の姿を。 「・・・はい、マスター。異常ありません」 そう言い終わったときには。強く、胸に抱きしめられていた。 空はどこまでも蒼く、遠く千切れたような白い雲。 グレーのアスファルト。走る色とりどりの電気自動車。街路樹は緑の葉を萌やし、金の木漏れ日を落としている。 歩く、黒い影。肩に小さな影。 目に映る、初めての世界の色。 「ゼリスさんかぁ・・・凄いヒトもいるねんなぁ」 「はい」 あの後ディスクを見て、この『瞳』が誰の物かを知った。 きっと。夢の中で思わず口走った言葉は・・・決して間違いではなかった。 「・・・重いね」 「はい」 「頑張らな、アカンね」 「はい。マスター」 こちらに向けられた視線を真っ直ぐに見返し、ルクスは頷いて見せた。アキも嬉しげに頷き返す。 ただそれだけ。こんなに簡単な事が。今まで出来なかったのか・・・。 胸の奥でCSCが揺れて、心が熱くなる。 「・・・ん? メール?」 開いたケータイに目をやったアキの表情が一変する。 「しもたっ・・・今日絶対受講の講義が七限にあるんやったっけ。間に合うかな!?」 「・・・。時間的に一時間後までにラピッド=エクスプレスに乗れば間に合います。急ぎましょう」 脳内で時間割を的確に展開、計算してルクスはアドバイスを送る。 「・・・マスター」 「ん?」 「私の名に・・・何か、意味があるのですか?」 恐縮するようにルクスは聞く。 小幡が言っていた言葉が気になっていた。『良い名』とは。如何なる意味なのか。 「あ・・・『ルクス』ってのはな」 ストラップだらけのケータイをポケットに捻じ込むと、アキは嬉しげに笑って見せた。 「ウチと、同じ」 「?」 「『光』っていう意味やねん」 風が、吹き抜けた。 「よし、バス停まで走るで!」 「・・・。はい、マスター」 しっかりと服に掴まる。放さないように。そして離れないように。 銀の瞳をビルの間に見える天に向け、涙を浮かべている事に、気付かれないように祈りながら。 ・・・。 この愛は私には大きすぎる。 この光は私には眩しすぎる。 それでも。 こんな愚かな、ド阿呆と・・・怒られるような神姫でも。 貴女の『愛』を、『笑顔』に換えられる様に。 ・・・愛していこう、ずっと。 光溢れる天よりの旋風。鳥、舞い降りるその一迅。 海には波を誘い。空には雲を呼び。その髪を遊んで吹き抜ける。 第五幕。下幕。 第五間幕
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折り返し──あるいは二日目その二 “鳳凰カップ”は二日目の中天を過ぎ、流石に客足は決勝ブロックの ギャラリーへと流れつつあった。私・槇野晶は必死で客を捌き続け、 神姫たる“妹”のアルマも、数時間に及ぶゲリラライブをこなした。 あれ程の大群衆を引きつけてくれたのは、彼女の功績に他ならんな。 故に、遅めの昼食を摂る事とした。アルマも空腹だろうしな、有無。 「アルマ、よく頑張った。あれ程歌い続けて、ヘトヘトだろう?」 「あ、はい……ちょっとだけバッテリー残量が心許ないですけど」 「ならば昼食をたっぷりと食べて、午後のライブまで休むと良い」 「えっと……すみませんマイスター、本当はお手伝いの時なのに」 構わぬ、と言って私は彼女の躯を軽くチェックし、着衣の乱れを正す。 しっとり風のラブソングから熱血の極みと言えるファンファーレまで、 アルマは実に、アルバム1枚超に及ぶ長丁場を一人で切り抜けたのだ。 その間急造のステージから降りる事も叶わず、彼女は一人歌い続けた。 激しい動きをせずとも、その服が乱れてしまうのは仕方ない事なのだ。 「ところでマイスター、梓ちゃんとロッテちゃんはどうしたんです?」 「有無。先程渡瀬美琴がやってきおってな……勝ちを拾ったそうだぞ」 「本当ですか!?ファーストやセカンドが、ひしめいているのに……」 「……これで公式に反映されるポイントも、相当数になる……だがな」 冴えない私の表情から、何かを感じ取るアルマ。そう、語られぬ所では クララとアルマも、ちゃんと公式バトルでの勝利と敗北を重ねている。 だが、ロッテとのランク格差は……今回の一件で大きく開く事だろう! 流石に何もせずしてセカンドへ昇格、等という事態はないだろうがな。 だがそれでも、この様に突出する事が果たして“三人”の幸せなのか? 「多分、この次も勝ったら……あの娘らは、即刻棄権するだろうな」 「……そうじゃないか、と思います。戦うなら最後まで、ですけど」 「だが望まぬ戦いをも率先して受ける様な、戦闘狂ではあるまい?」 「はい……ただあくまでロッテちゃんは、限界を見切るつもりです」 「有無。それを知りたくて、頂点を目指しに行ったのだろうからな」 言葉では明言されない物の、今ならばロッテと梓……ついでにアルマが、 奇策を弄してまでトーナメントの参加を押し通した理由が、良く分かる。 “己の戦いに誇りを”。これはロッテが戦いの際に、時々告げる誓いだ。 だが言葉だけの“誇り”等、いかがわしいネオンサインより陳腐である。 実行しなければ、出来ない事ならば。野心も勇気も願望も、力を持たぬ。 「ならばこそ己が何処まで出来るのか、更に何処へ伸びて行けるのか」 「それらの見極めの為に、今回の“聖杯”は打って付けだったんです」 「……アルマや。別にお前達が後ろめたさを覚える事は、何もないぞ」 「マイスター……はい、有り難うございます。そして、ごめんなさい」 「その意志を大事にしたい故に、私も“魔剣”等を求めたりしたのだ」 何も頂点に立つ事だけが大事なのではない。その過程に何を見出すか、 それが出来てこそ“求道者”や“戦士”としての成長が、あるのだな。 だからこそ、“姉”であり後援者たる私は……過程も結果も尊重する。 『結果が全てだ』等とは今世紀初頭から言われているが、愚かな事だ。 過程がなければ結果はまず成せず、結果が見えなければ過程も為らぬ。 「まあ何を言おうとも、私は彼女らを褒め称え労うつもりでいるぞ」 「あ……は、はいっ!本当に有り難うございます、マイスター!!」 「有無。所で何故、前日に『神姫素体で赴く』と言い出したのだ?」 ここで話を変える。このゲリラライブは、文字通り“ゲリラ戦法”だ。 大会本部への申請は、殆ど事後承諾となっていた。私自身、アルマめが 前日に準備を始めるまで、本気でライブを行うとは思わなかったのだ。 その時は強い意志に根負けして挙行を認めたのだが、やはり気になる。 だがその疑問に対する答えは、やはり驚く程シンプル且つ強固だった。 「あたしだって神姫です。神姫でしか出来ない事で、挑戦したかった」 「……故にこそ敢えてHVIFでなく、その躯で挑んだというのか?」 「はい。“肉の躯”よりも、“殻の躯”で伝えたかった想いですから」 HVIFは、人と神姫の垣根を取り払う。だが同時に、神姫達にとっては 不便な要素も存在していた。“心”に纏わる事柄についても、同じ様だ。 だからこそ“歌い手としての”アルマの感性は今回、神姫素体を選んだ。 神姫の“心”が人と同様だからこそ、僅かな差を敏感に感じるのだろう。 そう言う意味では、『同様であっても模造ではない』とも言えるのだが。 「そうか。想いを皆に伝えたいが故に、より良き策を取ったのだな?」 「はい……巧く言葉では表現出来ないんですけど、こうなんとなくっ」 「それで構わぬ。人の心も神姫の心も、理論では説明しきれぬしな!」 私はそう言って、アルマを肩に乗せてブースを離れた。二人とは今日、 一緒に昼食を摂る事は叶わぬが、最早全ての懸案は払拭されたも同然。 後はロッテ達が悔いの無い様に戦えば、それで十分だ。上機嫌である。 喫茶店“LEN”専用ブースたる大型トレーラーに、向かう事とした。 それは混雑する往来を小柄な躯ですり抜けていく、そんな最中だった。 「む……あの娘は、先日店へとやってきた……いや、人違いか……?」 「ん?……えっと、どうしたんですかマイスター。振り返っちゃって」 「いやな、この間店にやってきた女性に似ている者が居たのだが……」 L字定規を投げつけて、分かっていない不埒な輩を追い出したあの日だ。 うっかり往来にて投げたまま忘れていたL字定規を届けてくれた、ミラ。 “本物のガンスミス”の業物を持ち歩いていた、武装神姫達のオーナー。 「……彼女も彼女で忙しいのかもしれぬな。構わぬ、行くぞアルマ?」 見間違える筈はないのだが、彼女の姿を認めたのは会期中初めてである。 だが、あれ程“訳あり”の雰囲気を醸し出しておいて……偶然ではない。 ならば今の私が彼女を深追いする事は、お互いにとって“損”であろう。 不思議そうに首を傾げるアルマを宥めつつ、私は“LEN”に向かった。 「いらっしゃい……あら、晶ちゃんと大食いのアルマちゃんね」 「だッ、だから大食いって言わないで下さい!京都さん~!?」 「ふむ……そうか、千空めも決勝トーナメント出場組だったな」 「なんだ、彼奴がいないと寂しいか?そんな時はコーヒーだ!」 ──────寂しいのかどうかは、私だって分からないよ。 メインメニューへ戻る
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熱き心魂──あるいは二日目その一 さて、“鳳凰カップ”という祭りもいよいよ折り返しを過ぎ二日目。 今日も昨日同様……いや、それ以上に私・槇野晶と“妹”のアルマは 出典ブースの準備に余念がない。何せクララ……もとい梓とロッテの “大番狂わせ”は、良かれ悪しかれ多少の注目を集めてしまう物だ。 MMSショップ“ALChemist”のホームページにも、問い合わせが幾つか 寄せられていた。恐らくブースへの来客数も微増するだろう、有無。 「というわけでだアルマや、今日は朝からかっ飛ばして良いぞ?」 「え、ええっ!いいんですか!?……レパートリー無くなりそう」 「一向に構わん。全力全開、魂の限りを込めて唱い上げるのだ!」 「……はいっ、精一杯……唱える限り、あたし……唱いますね?」 本当は誰かに手伝ってもらいたかったが、梓とロッテは決勝ブロックの 説明を受けねばならぬ故、武装一式を持って入場時に別れたっきりだ。 こういう時に手を貸してくれる係累はいないし、“オーナー”とて原則 店の経営自体には不干渉だ。今後も決して、表に出る事は無いだろう。 アルマは客引き……を兼ね“己”を表現する為、ブース内のステージで 唱うのが仕事だ。なので、今日も私一人で此処を切り盛りする訳だな。 『只今よりゲート開門いたします!皆様、二日目も頑張ってね~っ!』 「……にしても昨日もそうだが、妙にノリノリだなこのウグイス嬢め」 「なんというか、マイスターみたいな印象受けますよね……あ、いえ」 「ちょっと待てアルマ、私はあんな可愛げ満載の雰囲気ではないッ!」 「そんな事はないんじゃないかな、小さなレディ達?十分、可憐だよ」 思わず噴きそうになりつつも、慌ててアルマから手を離し正面を見る。 そこにいたのは既に幾人か並んでいる客達だった。その先頭にいたのは 以前クララの初戦を務めた“アラクネー”のオーナー、前田氏だった。 ……この様な歯の浮く台詞が言えるのは、彼だけだ。間違えはしない。 無論、アラクネー嬢も一緒だ。とは言っても、彼女はスーツ姿だがな? 「げふげふ……貴様ら、アラクネーにウチの服など入り用なのか?」 「服その物は某の趣味ではないが、ネクタイだけなら良さそうでな」 「えっと……そう言えば、そうですね。ネクタイなら、合うかも?」 「アルマ君、だっけ……君は、ライブの準備をしなくていいのかい」 「あっ!?す、すみません今すぐにしますからっ!あうう……ッ!」 前田氏に急かされて、アルマが楽屋の用途を為すコンテナに飛び込んだ。 その合間に私は、アラクネー嬢のスーツに合うネクタイを見繕ってやる。 そして彼らを捌ききり、次の者を応対する頃……それは唐突に始まった。 ハンディ・シーケンサーによるパーカッションの音色に続き、弾ける弦。 それは地中海の潮風を思わせる軽快なリズム、それでいて勇壮な音色だ。 『♪ビルの林-おか-に小さな躯晒して、水面に映した想い出-かげ- 汐の様に遠ざかる日々……それでもあたし、振り返らず進むの 暮らした昔大事にしたい!でもねもっと、今を輝かせたいッ! 星無き遙かな黒天-よぞら-に、茜-あさひ-の色を宿したいの! 現在-今-が果てに過ぎてもあたしの想い、決して消させないよ そうよ──────忘れないの、この傷-むね-の痛みはッ!!』 題名は“朱金-あかね-の夜明け”。ラブソングなのか戦いの挽歌なのか 良く分からぬのだが、作詞作曲等全ての作業をアルマが行ったらしい。 アルマに言わせると『あの人の声には、届かなくてもいいんですよ』。 つまりは自らの言葉で、声で……そして想いで、曲を作りたいらしい。 こういった行為は、まさに神姫の“創造性”の極北とも言えるだろう。 テンポの速い曲故か、あっという間に……4分足らずで独唱は終わる。 「う……うおおぉぉー!?唱ってる、神姫が唱ってるぞぉーッ!?」 「戯けッ!怪物でも見る様な声を出して、それ程驚く事か貴様ッ!」 「いやだって……この娘“アルマ”だっけ、ストラーフでしょ?!」 「有無。だが戦いだけが神姫の姿ではないのだぞ、この服の様にな」 喚く男性客……恐らくは高校生か?……を一喝しつつ、私は思い出す。 現在の様にMMSが神姫として……更には“武装神姫”として、規格の 統一が為される前の試作期に何タイプか存在した、“神姫”達の名を。 故あって、私は神姫の黎明期……試作段階の逸話を色々と知っている。 その頃は音感能力特化型等、実に様々な能力を持つ神姫が試作された。 中でもとあるタイプに属する一人の神姫は、“訃報”が報じられた程に 一過性ながらも人々の話題となった、言語処理系特化型の神姫である。 そうか、もう大分経つか……“武装神姫”以外を知らぬ者も多い筈だ。 『えっと……皆さんッ、今日も“鳳凰カップ”に来てくださって……』 『Woooooooooooooooooooooooooooo!!!!』 『……あ、ありがとうございますっ!このお祭りに花を添えたくて!』 そんな感慨も、アルマの声に惹かれて訪れた客達への応対と、それ以上に アルマの前に群がってきた“観衆”の熱い叫びに、早々と掻き消される。 ……にしても、何十人いるのだ?今日は“鳳凰カップ”の決勝戦である。 そちら目当ての方が必ず多い筈で、しかもこのブースは“祭典”で用いる 簡易型テーブル3~4台分の幅しかない。それなのに、この盛況振りだ。 『恥ずかしかったけど……今日は一日唱い続ける事にしましたッ!!』 「凄い人手ですね、決して大きくないブースなのに買い物客も聴衆も」 「む?貴様ら……戸田静香とココか。暇潰しに来た……いや、違うか」 「まさか。私も個人ブランドをやっているんです、気は抜けませんよ」 客の列に紛れてやってきた戸田静香と、会話をする。そう言えば彼女も “TODA-Design”という銘で、エルゴ等に神姫用衣装を提供していた。 不敵に笑う彼女らしい動機とも思えた……のだが、真実は違う様だな。 そして私達を後目に、アルマの挨拶で“観衆”は一気に燃え上がった! ……この場合“萌え上がった”でも間違っていない気がするな、有無。 「静香が“ライバル”の偵察をしたい、って建前で……もごもご!?」 「あくまでこれは偵察なの。そうでしょココ?ごめんなさい、晶さん」 「まあどちらでも私達は構わぬ。存分に見て、聴いてゆくが良いぞ!」 『拙いあたしの唄ですけど、少し疲れたら聴いていって下さいねッ!』 『アルマちゃーんッ!!いーじゃん、いーじゃんすげーじゃんッ!?』 『次は“妹”を題材にした……“天空-あおいそら-の鳥”ですッ!!』 『Woooooooooooooooooooooooooooo!!!!』 ──────不死鳥の様な心は、皆も生き返らせるんだよね。 メインメニューへ戻る
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エルロンド城下町クエスト 報酬はメインクエスト系は5000exp、フリークエスト系は2400exp 対象レベル以上だと段階的に減少する 1レベル超過毎に2割減 +1 2400 +2 1920 +3 1440 4 960 5+480 +6 0 メインクエスト クエスト名 依頼者 対象LV エリア 依頼内容 報酬 エレメンタル暴走 アリマ (23,31) 05~07 アテーリア草原辺境 バラススビープ L04×3サイレントスビープ L05×3 120R女神の祈り×1 混沌の夢 アリマ (23,31) 07~09 アテーリア草原辺境 バラススビープ L09×2サイレントスビープ L08×2 200R女神の祈り×1 夢の傷跡 アリマ (23,31) 10~12 エルトス大城壁 アイシックオーグルボーン L09×4アイシックオーグルボーン L10×4 200R女神の歌声×1 悪夢の支配者 アリマ (23,31) 15~17 エルトス大城壁 アイシックオーグルガード L14×8 350R女神の祈り×1 東方の落陽 バーバラ (32,20) 05~07 アテーリア草原辺境 ジョウカン (39,43)と会話後報告 - 暁の脅威 バーバラ (32,20) 08~11 アテーリア草原辺境 ジョウカン (39,43)と会話 - エルロンド七不思議1 スウェイジ (36,24) 06~08 エルロンド城下町 マリーン (33,32)と会話 ロンドヨクナオール薬×1 エルロンド七不思議2 スウェイジ (36,24) 09~11 アテーリア草原東 バイナ (34,33)と会話 120Rラクニナール薬×1 エルロンド七不思議3 スウェイジ (36,24) 13~15 エルトス大城壁 ナスターシャ (19,18)と会話 180R中級傷薬×1 エルロンド七不思議4 スウェイジ (36,24) 17~19 アテーリア東兵舎跡 チョボ (42,12)と会話 220R初級魔法薬×1 エルロンド七不思議5 スウェイジ (36,24) 22~24 ゼスの祭壇 ルーク (30,41)と会話 380R上級傷薬×1 エルロンド七不思議6 スウェイジ (36,24) 24~26 愚者の焦土南 ドゥーブ (36,36)と会話 450R悪魔の傷薬×1 エルロンド七不思議7 スウェイジ (36,24) 28~30 コルキア大空洞 イフェル (27,24)と会話 L23 上級職防具(胴衣) ダンジョンスタンプラリー1 ゲン (16,24) 10~12 アテーリア地下水路 ズーキ (,)と会話 初級傷薬×1 ダンジョンスタンプラリー2 ゲン (16,24) 13~15 清めの間 ナトレア (38,29)と会話 女神の歌声×1 ダンジョンスタンプラリー3 ゲン (16,24) 15~17 エルロンド地下水路 エリオット (10,38)と会話 大吟醸「朧月夜」×1 ダンジョンスタンプラリー4 ゲン (16,24) 26~28 ヴェルク遺跡 グランツ (26,34)と会話 中級魔法薬×1 ダンジョンスタンプラリー5 ゲン (16,24) 29~30 コルキア大空洞 ガン (43,36)と会話 悪魔の魔法薬×1 シークレットマーベル マーベル (32,24) 10~12 ゼスの森東エルロンド地下水路エルトス大城壁 緑の網膜×3サンダーアイ L11赤の網膜×3ファイアーアイ L11青の網膜×3フロストアイ L11 200R女神の歌声×1 マーベル・マーベル マーベル (32,24) 12~14 ゼスの森東 リュリナス (55,43)と会話後報告 200R女神の歌声×1 騒乱の団 マーベル (32,24) 15~17 コルキア平原 作戦指令書×1ライオットオーグル L15 400R精霊の歌声×1 謎の言葉 マーベル (32,24) 19~21 コルキア平原 ザクセン (,)と会話後報告 500R上級傷薬×1 トップシークレットマーベル マーベル (32,24) 27~29 薄闇の異界 ザイナル (35,14)と会話後報告 ロンド精霊の御手×1 新たなるロストドラゴン アリヤ (24,30) 11~30 アテーリア草原東 イルシー (43,47)と会話後報告 竜塔解放 レアモンスターを狩れ!1 アピンドン (33,30) 12~14 アテーリア草原西 ヴァルッドシオス L07×1 210R初級傷薬×1 レアモンスターを狩れ!2 アピンドン (33,30) 14~16 エルトス大城壁 ヴォンカルツァー L10×1 300R初級魔法薬×1 レアモンスターを狩れ!3 アピンドン (33,30) 16~18 エルロンド地下水路 スラプヨン(LL) L13×1 L16 上級職防具(頭) 伝説は動き出す ジグルド (35,19) 20~22 愚者の焦土南 地竜の紋章×1ガルグ系 500R女神の御手×1 ライバルからの挑戦1 ダイナ (42,32) 23~25 ゼスの森西 グリンプルン L18×1ブラウプルン L18×1クリムプルン L18×1 ロンド中級魔法薬×1 ライバルからの挑戦2 ダイナ (42,32) 25~27 ヴェルク遺跡 黒の網膜×10オプティアンガード L21/23ガードアイ L20/23 ロンド特級傷薬×1 ライバルからの挑戦3 ダイナ (42,32) 27~30 コルキア大空洞 トロル L30×1 L20 上級職防具(足) 奪還!エルロンド王 ドエル (19,20) 29~30 ゼスの祭壇 ダークガーディアン L30×1 1600R 生命の水晶 ドエル (19,20) 29~30 コルキア大空洞 生命の水晶×1クリスタルシューデル L28 800R精霊の御手×1 闇への序章 ドエル (19,20) 29~30 残月の古城エントランス エンジェラ? L30×1 L27 上級職武器(右) 光の試練 ドエル (19,20) 29~30 コルキア大空洞 ブルデグレル L30×1 1600R精霊の御手×1 大地の祝福 ドエル (19,20) 29~30 コルキア大空洞 幸運の四つ葉×4タイニーラット L25スネアラット L29 - 地竜の轟き ドエル (19,20) 29~30 地響きの神殿 地竜グリズロック L30×1 1600R女神の御手×1 水の祝福 ドエル (19,20) 29~30 イヴワール鍾乳洞 ブルーパール×4ケイヴジャーク L28 - 水竜の奔流 ドエル (19,20) 29~30 イヴワール鍾乳洞 水竜アクアレウス L30×1 1600R女神の御手×1 火の祝福 ドエル (19,20) 29~30 ボルゴナ火山島 レッドトーチ×4ヴァイツアーアウト L22/23 - 火竜の烈火 ドエル (19,20) 29~30 炎魔殿 火竜ボルガオラ L30×1 1600R女神の御手×1 風の祝福 ドエル (19,20) 29~30 エアロス山 ティンクルブリーズ×4ミストラル L25 - 風竜の暴風 ドエル (19,20) 29~30 空中宮殿 風竜ウェンディオス L30×1 1600R女神の御手×1 闇に立ち向かう者 ドエル (19,20) 29~30 ダークネスホール 闇竜ガルガンティス L30×1 2000R暁暗の杖×1 フリークエスト クエスト名 依頼者 対象LV エリア 依頼内容 報酬 新職業を使ってみよう ジョン (48,36) 01~03 旅立ちの草原 プヨンL01×5 50R 新職業に慣れよう ジョン (48,36) 01~03 旅立ちの草原 グリンスラプヨンL03×8 80R クラス別クエスト クエスト名 依頼者 対象LV エリア 依頼内容 報酬 ガーディアン試練 ガルトス (52,18) 07~ アテーリア地下水路 グリムガーディアン L07×4 ガーディアン転職の資格 アサシン試練 アシッド (52,27) 07~ アテーリア東兵舎跡 グリムアサシン L07×4 アサシン転職の資格 ウォーロック試練 キャリウス (51,36) 07~ ゼスの森東 グリムウォーロック L07×4 ウォーロック転職の資格 ビショップ試練 エピカ (52,45) 07~ 清めの間 グリムビショップ L07×4 ビショップ転職の資格 マジックナイト試練 メルティス (52,17) 07~ 清めの間 グリムマジックナイト L07×4 マジックナイト転職の資格 モンク試練 烈波 (52,44) 07~ 清めの間 グリムモンク L07×4 モンク転職の資格 ガーディアン腕試し エンリケ (42,15) 03~05 アテーリア草原辺境 バラススビープの針×10バラススビープ L04/05/06/09 衛兵の槍 アサシン腕試し ラタン (50,24) 03~05 アテーリア草原辺境 バラススビープの針×10バラススビープ L04/05/06/09 狩人の爪(右) ウォーロック腕試し マイア (50,37) 03~05 アテーリア草原辺境 バラススビープの針×10バラススビープ L04/05/06/09 まじないのワンド ビショップ腕試し カルロ (50,46) 03~05 アテーリア草原辺境 バラススビープの羽×10バラススビープ L04/05/06/09 曹長教本 マジックナイト腕試し リンド (50,15) 03~05 アテーリア草原辺境 バラススビープの羽×10バラススビープ L04/05/06/09 スチールエストック モンク腕試し カイロス (50,42) 03~05 アテーリア草原辺境 バラススビープの羽×10バラススビープ L04/05/06/09 曹長のグローブ(右)
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大会 1戦目 2戦目 3戦目 パートナー タッグマッチG1 柴田勝 三毛屋ベンガル 赤橋瞳子 柏葉剣 プルミエ コモモ ハヤテ ルーデル ピコピコハンマーFB アルファ・ピストルカットラスヘッドセンサーユニコーンFL016LガントレットLGコレオプテールロントラシューズパーツ トンファースティレット銀のフォーク鉄耳装KT36C1キャットテイル 銀のナイフシュラム・RGランチャー手甲・拳狼+腕甲・万武 (内蔵武器)胸甲・心守手甲・拳狼+腕甲・万武KT36D1ドッグテイル BKピストルシルバーストーンZel Gメット+ゴーグルZel CプロテクターZel リストプロテクターZel HSフットユニットZel F.A MユニットZel ドラムマガジン 柿崎静馬 山中美幸 足利崇文 ナギ ライラ 紅葉 トンファースティレットブーメランプリンセスクラウン脚甲・狗駆KT36D1ドッグテイル 十手アルヴォPDW9ジークフリートヘッドセンサーユニコーンガントレット白LGパピオンロントラシューズパーツFL012ガードシールド カットラスP・A・R ショットガン裂拳甲+衛袖 (内蔵武器)翼の髪飾りレザーアーマー裂拳甲+衛袖レザーブーツ黒レザーアーマーショルダー タッグマッチG2 シルバー・クレイ 軍曹 春夏冬 ダリル・ブレナン マリー 三等兵 あきな ドロシー 銀のナイフOS-36 AカービンExトゥインクルバトンヘッドセンサーユニコーンFL016チェストガードFL016LガントレットLGコレオプテールロントラシューズパーツRU・コーリペタラスLSHアームレット フルストゥ・グフロートゥZel ガトリングキャノンシルバーストーンZel グルーヴドメットZel CプロテクターZel リストプロテクターZel サイプロテクターZel HSフットユニットZel F.A MユニットZel アームプロテクター エアロヴァジュラアイゼンイーゲル黒吠莱壱式ヘッドセンサーユニコーンレイディアントアーマー黒FL016LガントレットLGパピオンロントラシューズパーツRU・シンペタラスディコ・シールドLSHアームレット ダブルレイブレードシルバーストーンココレット頭甲・咆皇+GC手甲・拳狼+腕甲・万武脚甲・狗駆KT36D1ドッグテイル 犬童太 猪苗代孝実 双蜂 ハナ ふゆなぎ ベル A・ホーク飛苦無"蓮華草"手甲・拳狼+腕甲・万武 (内蔵武器)頭甲・咆皇胸甲・心守手甲・拳狼+腕甲・万武脚甲・狗駆KT36D1ドッグテイル M49ショットガン黒Zel ガトリングキャノンシルバーストーンZel Gメット+ゴーグルZel CプロテクターZel リストプロテクターZel サイプロテクターZel HSフットユニット日輪光背Zel ドラムマガジン くろがねのドリルジャマダハル鉄耳装+GC争上衣裂拳甲+衛袖天舞靴KT36C1キャットテイル タッグマッチG3 鍋島樹里 チョコレッタ・G ケンプ 立花茂 みおん アンネ 黒姫 銀千代 セブンエッジ九鉤刀M8ダブルライトセイバー鉄耳装争上衣裂拳甲+衛袖天舞靴+GC M8ダブルライトセイバーMSR22スナイパーM49ショットガン黒サーリットカウルOSA111 CカナードMU"バンチョーmk3"OSA111 Aスポイラー ビーハイヴ+msカッツバルゲル手榴弾Zel Gメット+ゴーグルZel Cプロテクターガントレット白+BKZel サイプロテクターZel HSフットユニットターボファンウイングZel ドラムマガジン リコーダー吠莱壱式手榴弾頭甲・咆皇胸甲・心守手甲・拳狼+腕甲・万武脚甲・狗駆KT36D1ドッグテイル黒ぶちメガネ 南部蒼太 豪徳寺みか 給料シーフ フレンダー まりぃ シルファ 偃月刀アイゼンイーゲル黒吠莱壱式忍装束"紫苑"淑女の手袋黒忍脚絆"紫鳳"忍大袖"紫木蓮"忍襟布"陽炎" ミストルテインMSR22スナイパーZel L・R/Sライフル鉄耳装争上衣裂拳甲+衛袖+GC天舞靴フローラルシールドピンク (ランク2) フォールディングナイフM49ショットガン黒ジャマダハルサーリットカウルOSA111 CカナードMU"バンチョーmk3"レザーブーツ赤2mmSRC SPEAR タッグマッチG4 真田有希那 偉吹玲人 嶋渓フミカ 得川義文 キリカゼ まお エイル 葛葉 セブンエッジMSR22スナイパーミストルテインOSY010 AガードMU"ジェリーmk2"OSY010アームガード 旋牙吠莱壱式鉄耳装争上衣裂拳甲+衛袖天舞靴+GCKT36C1キャットテイル M8ダブルライトセイバーMSR22スナイパー棘輪ヘッドセンサーユニコーンFL016チェストガードFL016Lガントレット+GCLGパピオンロントラシューズパーツRU・シンペタラスディコ・シールドLSHアームレット ジャマダハルスーパーシルバーストーンMSR22スナイパー面隠し"闇狐"忍装束"紫苑"忍篭手"紫式部"忍脚絆"紫鳳"忍大袖"紫木蓮"忍襟布"陽炎" 練馬大将軍 痴豚 ドグラ・モゲラ ミュー ミランダ 菊花 ミストルテインジャマダハルMSR22スナイパーエンジェルリングFL016チェストガードFL016Lガントレット+GCLGコレオプテールロントラシューズパーツRU・コーリペタラスディコ・シールドLSHアームレット ミストルテインカッツバルゲルMSR22スナイパーOSY010 CIクーラーOSY010 Aガード2mmSRCEXPLODイヤリング(バブル)銀ぶちメガネ 九鉤刀M49ショットガン黒M8ダブルライトセイバー忍装束"紫苑"忍篭手"紫式部"忍脚絆"紫鳳"しましまテイル忍襟布"陽炎"忍大袖"紫木蓮" タッグマッチG5 山中日向 赤城春菜 兜茂 武本哲 葵 麗音 ユリコ チェリー ジークフリート+ms三七式一号二粍機関砲+SKトゥインクルバトン+msサーリットカウル+GCOSA111 CカナードMU"バンチョーmk3"+GCレザーブーツ白+BKOSA111 RSフレーム+GCフローラルシールド黒+BKヂェリカン Oil+GCギフトリボン赤+BKイヤリング(スノー)+BK エアロヴァジュラ+msLC5レーザーライフルM49ショットガン銀+SKフレイアヘルメヴァイスブレストヴァイスカフス+GCヴァイスガーターニーベルング+GCヴァイスチョーカー+GCヴァイスシュルター+GC ダブルブレード鋼+msカッツバルゲル+SKOS-35 AライフルEx+SKサーリットカウル+GCOSA111 Cカナードレイディアントリスト黒+BKMU"バンチョーmk3"+GCOSA111 RSフレーム+GCヂェリカン Coolant+GC ダブルブレード鋼+ms三七式一号二粍機関砲+SKOS-36 AカービンマルチセンサーゴーグルZel Cプロテクター+GCZel リストプロテクター+GCZel サイプロテクター+GCZel HSフットユニット+GCZel F.A MユニットZel アームプロテクター+GC 笠嶋京香 音黒野美子 麻呂 あざみ クロミ 雛鶴 アングルブレードM49ショットガン黒+SK忍者刀"風花"FL017アリエーニFL017スペクトルガード+GC"カローヴァ"レッグパーツヴイードラシューズパーツ+GCFL017リア+グリーヴァイヤリング(ハート) アイアングローブOS-35 AライフルEx+SKダブルブレード鋼+msコンみみ+GC忍装束"紫苑"+GC忍篭手"紫式部"+GC忍草摺"紫蘭"+GC忍脚絆"紫鳳"+GC忍襟布"陽炎"+GC忍大袖"紫木蓮"+GC ビームジッテエレキベース+FNアルヴォPDW9+SKプリンセスクラウン+BKOSY010 CIクーラー+GCOSY010 Aガード+GCMU"ジェリーmk2"OSY010アームガード+GCイヤリング(スター) タッグマッチ狙撃スター1 柏葉剣 赤橋瞳子 犬童太 足利崇文 ルーデル ハヤテ ハナ 紅葉 BKピストルシルバーストーンZel Gメット+ゴーグルZel CプロテクターZel リストプロテクターZel HSフットユニットZel F.A MユニットZel ドラムマガジン 飛苦無"蓮華草"シュラム・RGランチャープチマスィーンズ[DOG]頭甲・咆皇胸甲・心守手甲・拳狼+腕甲・万武脚甲・狗駆KT36D1ドッグテイル アルヴォPDW9飛苦無"蓮華草"シュラム・RGランチャー頭甲・咆皇胸甲・心守手甲・拳狼+腕甲・万武脚甲・狗駆KT36D1ドッグテイル P・A・R ショットガンシルバーストーンプチマスィーンズ[CAT]レザーアーマーレザーパンツレザーブーツ黒レザーアーマーショルダー 山中美幸 シルバー・クレイ 軍曹 ライラ マリー 三等兵 P・A・R ショットガン三七式一号二粍機関砲飛苦無"蓮華草"ヘッドセンサーユニコーンガントレット白LGパピオンロントラシューズパーツRU・シンペタラスFL012ガードシールドLSHアームレット シルバーストーンOS-36 AカービンExココレットヘッドセンサーユニコーンFL016チェストガードFL016LガントレットLGコレオプテールロントラシューズパーツRU・コーリペタラスLSHアームレット 手榴弾Zel ガトリングキャノンBKピストルZel グルーヴドメットZel CプロテクターZel リストプロテクターZel サイプロテクターZel F.A MユニットZel アームプロテクター タッグマッチ狙撃スター2 ダリル・ブレナン 春夏冬 立花茂 南部蒼太 ドロシー あきな 銀千代 フレンダー Zel ガトリングキャノンシルバーストーンココレット頭甲・咆皇+GC手甲・拳狼+腕甲・万武脚甲・狗駆KT36D1ドッグテイル M49ショットガン黒アイゼンイーゲル黒吠莱壱式ヘッドセンサーユニコーンレイディアントアーマー黒FL016LガントレットLGパピオンロントラシューズパーツRU・シンペタラスディコ・シールドLSHアームレット Zel ガトリングキャノン吠莱壱式手榴弾頭甲・咆皇胸甲・心守手甲・拳狼+腕甲・万武脚甲・狗駆KT36D1ドッグテイルPRS・FATEシールド黒ぶちメガネ Zel L・R/Sライフルアイゼンイーゲル黒吠莱壱式忍装束"紫苑"淑女の手袋黒忍脚絆"紫鳳"忍大袖"紫木蓮"忍襟布"陽炎" 猪苗代孝実 チョコレッタ・G 豪徳寺みか ふゆなぎ アンネ まりぃ M49ショットガン黒Zel ガトリングキャノンシルバーストーンZel Gメット+ゴーグルZel CプロテクターZel リストプロテクターZel サイプロテクターZel HSフットユニット日輪光背Zel ドラムマガジン ビーハイヴ+msMSR22スナイパーM49ショットガン黒サーリットカウルOSA111 CカナードMU"バンチョーmk3"OSA111 Aスポイラー アイゼンイーゲル黒MSR22スナイパーZel L・R/Sライフル鉄耳装争上衣裂拳甲+衛袖+GC天舞靴フローラルシールドピンク (ランク2) タッグマッチ狙撃スター3 ケンプ 真田有希那 痴豚 練馬大将軍 黒姫 キリカゼ ミランダ ミュー ビーハイヴ+msシュラム・RGランチャー手榴弾Zel Gメット+ゴーグルZel Cプロテクターガントレット白+BKZel サイプロテクターZel HSフットユニットターボファンウイングZel ドラムマガジン ジャマダハルMSR22スナイパーカッツバルゲルOSY010 AガードMU"ジェリーmk2"OSY010アームガード スーパーシルバーストーンカッツバルゲルMSR22スナイパーOSY010 CIクーラーOSY010 Aガード2mmSRCEXPLODイヤリング(バブル)銀ぶちメガネ ジャマダハルM49ショットガン黒+CRMSR22スナイパーエンジェルリングFL016チェストガードFL016Lガントレット+GCLGコレオプテールロントラシューズパーツRU・コーリペタラスディコ・シールドLSHアームレット 給料シーフ 得川義文 嶋渓フミカ シルファ 葛葉 エイル スーパーシルバーストーンM49ショットガン黒ジャマダハルサーリットカウルOSA111 CカナードMU"バンチョーmk3"レザーブーツ赤2mmSRC SPEAR ジャマダハルスーパーシルバーストーンMSR22スナイパー面隠し"闇狐"忍装束"紫苑"忍篭手"紫式部"忍草摺"紫蘭"忍脚絆"紫鳳"忍大袖"紫木蓮"忍襟布"陽炎" カッツバルゲルLC3レーザーライフル棘輪ヘッドセンサーユニコーンFL016Lガントレット+GCLGパピオンロントラシューズパーツRU・シンペタラスディコ・シールドLSHアームレット タッグマッチ狙撃スター4 練馬大将軍 ドグラ・モゲラ 赤城春菜 山中日向 ミュー 菊花 麗音 葵 アイゼンイーゲル黒ジャマダハルMSR22スナイパーエンジェルリングFL016チェストガードFL016Lガントレット+GCLGコレオプテールロントラシューズパーツRU・コーリペタラスディコ・シールドLSHアームレット カッツバルゲルM49ショットガン黒アイゼンイーゲル黒コンみみ忍装束"紫苑"忍篭手"紫式部"忍草摺"紫蘭"忍脚絆"紫鳳"忍襟布"陽炎"忍大袖"紫木蓮" MSR22スナイパー棘輪カッツバルゲルフレイアヘルメヴァイスカフス白き翼ヴァイスチョーカーヴァイスシュルター MSR22スナイパーアイゼンイーゲル黒カッツバルゲルサーリットカウルOSA111 Cカナードレザーブーツ白OSA111 RSフレームフローラルシールド黒 (ランク2)ヂェリカン Oilギフトリボン赤イヤリング(スノー) 痴豚 笠嶋京香 武本哲 ミランダ あざみ チェリー 棘輪ビーハイヴ+msMSR22スナイパーOSY010 CIクーラー2mmSRCEXPLODイヤリング(バブル)銀ぶちメガネ ジャマダハルOS-35 AライフルEx棘輪FL017スペクトルガードヴイードラシューズパーツイヤリング(ハート) ジャマダハルMSR22スナイパーM49ショットガン黒+CRマルチセンサーゴーグルZel CプロテクターZel リストプロテクターZel サイプロテクター+GCZel HSフットユニットZel F.A MユニットZel アームプロテクター タッグマッチ狙撃スター5 音黒野美子 麻呂 ういろー 山県みちる クロミ 雛鶴 ナナ 薫 ビーハイヴ+CGM49ショットガン黒+CR手榴弾+msコンみみ忍装束"紫苑"忍篭手"紫式部"忍草摺"紫蘭"忍脚絆"紫鳳"+GCコンしっぽ忍襟布"陽炎"忍大袖"紫木蓮" カッツバルゲル+SK手榴弾+CROS-36 AカービンOSY010 CIクーラーOSY010 AガードMU"ジェリーmk2"OSY010アームガードイヤリング(スター) RG8レールガンアルヴォLP4ハンドガンヘルゲートブラスターまるみみ争上衣+GC天舞靴+GCレザーアーマーショルダー モデルPHCヴズルイフフルストゥ・クレインアルヴォLP4ハンドガンフレイアヘルメヴァイスブレストヴァイスカフスヴァイスグリーブニーベルングフローラルシールドピンク (ランク2)ヴァイスチョーカーヴァイスシュルターギフトリボン白 兜茂 埴場怜太 陰陽熊 ユリコ クラリス ファム シュトルムウントドラングP・A・R ショットガン+SK手榴弾+msサーリットカウルOSA111 Cカナードレイディアントリスト黒MU"バンチョーmk3"+GC鋼の翼ヂェリカン Coolant RG8レールガンP・A・R ショットガン+SKアイゼンイーゲル黒+CGエルダヘルメ/Cシュバルツブレストシュバルツカフスソックス黒ローファー黒ノインテータークロイツクロスシュバルツシュルター ビーハイヴ+CGRG8レールガン-9サブマシンガンシュバルツブレストシュバルツカフスシュバルツグリーブノインテーターシュバルツシュルタークロイツクロス タッグマッチピットブル1 柴田勝 三毛屋ベンガル 足利崇文 山中美幸 プルミエ コモモ 紅葉 ライラ ピコピコハンマー銀のスプーンカットラスヘッドセンサーユニコーンFL016LガントレットLGコレオプテールロントラシューズパーツRU・コーリペタラス 防壁エアロヴァジュラフォールディングナイフ鉄耳装争上衣裂拳甲+衛袖天舞靴KT36C1キャットテイル フォールディングナイフエアロヴァジュラ偃月刀翼の髪飾り争上衣レザーパンツKT36C1キャットテイル フォールディングナイフ偃月刀銀のスプーンヘッドセンサーユニコーン+GCFL016チェストガードFL016LガントレットLGパピオンロントラシューズパーツRU・シンペタラスFL012ガードシールドLSHアームレット 柿崎静馬 赤橋瞳子 シルバー・クレイ ナギ ハヤテ マリー フルストゥ・グフロートゥ"シェルブレイク"PBダブルレイブレード頭甲・咆皇胸甲・心守手甲・拳狼+腕甲・万武脚甲・狗駆KT36D1ドッグテイル エアロヴァジュラフォールディングナイフ"シェルブレイク"PB頭甲・咆皇+GC胸甲・心守手甲・拳狼+腕甲・万武脚甲・狗駆KT36D1ドッグテイル フォールディングナイフ偃月刀防壁ヘッドセンサーユニコーンFL016チェストガードFL016LガントレットLGコレオプテールロントラシューズパーツRU・コーリペタラスディコ・シールドLSHアームレット タッグマッチピットブル2 犬童太 ダリル・ブレナン 鍋島樹里 春夏冬 ハナ ドロシー みおん あきな A・ホークくろがねのドリルリコーダー頭甲・咆皇胸甲・心守手甲・拳狼+腕甲・万武脚甲・狗駆KT36D1ドッグテイル ダブルレイブレード"シェルブレイク"PBフルストゥ・グフロートゥ頭甲・咆皇+GC手甲・拳狼+腕甲・万武脚甲・狗駆KT36D1ドッグテイル セブンエッジ九鉤刀M8ダブルライトセイバー鉄耳装争上衣裂拳甲+衛袖天舞靴+GC エアロヴァジュラフォールディングナイフ偃月刀ヘッドセンサーユニコーンレイディアントアーマー黒FL016LガントレットLGパピオンロントラシューズパーツRU・シンペタラスディコ・シールドLSHアームレット 軍曹 双蜂 南部蒼太 三等兵 ベル フレンダー フルストゥ・グフロートゥ"シェルブレイク"PBダブルレイブレードZel グルーヴドメットZel CプロテクターZel リストプロテクターZel サイプロテクターZel HSフットユニットZel F.A MユニットZel アームプロテクター くろがねのドリル"シェルブレイク"PB鉄耳装+GC争上衣裂拳甲+衛袖天舞靴KT36C1キャットテイル 偃月刀ミストルテインダブルレイブレード忍装束"紫苑"淑女の手袋黒忍草摺"紫蘭"忍脚絆"紫鳳"忍大袖"紫木蓮"忍襟布"陽炎" タッグマッチピットブル3 立花茂 給料シーフ 偉吹玲人 真田有希那 銀千代 シルファ まお キリカゼ リコーダー十手バルムンク頭甲・咆皇胸甲・心守手甲・拳狼+腕甲・万武脚甲・狗駆KT36D1ドッグテイルPRS・FATEシールド黒ぶちメガネ フォールディングナイフミストルテインサーリットカウルOSA111 CカナードMU"バンチョーmk3"レザーブーツ赤2mmSRC SPEAR 旋牙くろがねのドリル鉄耳装争上衣裂拳甲+衛袖天舞靴+GCKT36C1キャットテイル M4ライトセイバーセブンエッジミストルテインOSY010 AガードMU"ジェリーmk2"OSY010アームガード 豪徳寺みか 練馬大将軍 得川義文 まりぃ ミュー 葛葉 ミストルテインセブンエッジフルストゥ・グフロートゥ鉄耳装争上衣裂拳甲+衛袖+GC天舞靴フローラルシールドピンク (ランク2) M4ライトセイバーミストルテイン忍者鎌"散梅"エンジェルリングFL016チェストガードFL016Lガントレット+GCLGコレオプテールロントラシューズパーツRU・コーリペタラスディコ・シールドLSHアームレット M4ライトセイバーセブンエッジM8ダブルライトセイバー面隠し"闇狐"忍装束"紫苑"忍篭手"紫式部"忍脚絆"紫鳳"グラスパピヨン忍大袖"紫木蓮"忍襟布"陽炎" タッグマッチピットブル4 痴豚 ドグラ・モゲラ 赤城春菜 山中日向 ミランダ 菊花 麗音 葵 ミストルテイン防壁フォールディングナイフOSY010 CIクーラー2mmSRCEXPLODイヤリング(バブル)銀ぶちメガネ 防壁九鉤刀M8ダブルライトセイバーコンみみ忍装束"紫苑"忍篭手"紫式部"忍草摺"紫蘭"忍脚絆"紫鳳"忍襟布"陽炎"忍大袖"紫木蓮" 九鉤刀M4ライトセイバーセブンエッジフレイアヘルメヴァイスカフス白き翼ヴァイスチョーカーヴァイスシュルター 九鉤刀M8ダブルライトセイバーM4ライトセイバーサーリットカウルOSA111 Cカナードレザーブーツ白OSA111 RSフレームフローラルシールド黒 (ランク2)ヂェリカン Oilギフトリボン赤イヤリング(スノー) 嶋渓フミカ 笠嶋京香 武本哲 エイル あざみ チェリー ミストルテインM8ダブルライトセイバーセブンエッジヘッドセンサーユニコーンFL016Lガントレット+GCLGパピオンロントラシューズパーツRU・シンペタラスディコ・シールドLSHアームレット M8ダブルライトセイバー九鉤刀M4ライトセイバーFL017スペクトルガードヴイードラシューズパーツイヤリング(ハート) ダブルブレード鋼忍者鎌"散梅"九鉤刀マルチセンサーゴーグルZel サイプロテクターZel HSフットユニットZel F.A Mユニット+GCZel アームプロテクター タッグマッチピットブル5 音黒野美子 麻呂 ういろー 山県みちる クロミ 雛鶴 ナナ 薫 防壁M8ダブルライトセイバーコンみみ忍装束"紫苑"忍篭手"紫式部"忍脚絆"紫鳳"コンしっぽ忍襟布"陽炎"忍大袖"紫木蓮" フォールディングナイフM4ライトセイバーディスインテグレーターOSY010 CIクーラー淑女の手袋白OSY010 AガードOSY010アームガードイヤリング(スター) 旋牙九鉤刀M4ライトセイバーまるみみ+BK争上衣裂拳甲+衛袖天舞靴+GCKT36C1キャットテイルレザーアーマーショルダー 忍者鎌"散梅"九鉤刀ラムダオヴァイスカフスヴァイスグリーブニーベルングフローラルシールドピンク (ランク2)ヴァイスシュルターヴァイスシュルターギフトリボン白 兜茂 埴場怜太 九頭龍 ユリコ クラリス ルル M8ダブルライトセイバー九鉤刀M4ライトセイバーOSA111 CカナードMU"バンチョーmk3"鋼の翼ヂェリカン Coolant 忍者鎌"散梅"ダブルブレード鋼M4ライトセイバーシュバルツカフスシュバルツガーターローファー黒ノインテータークロイツクロスシュバルツシュルター ダブルブレード鋼ブリューナクサーリットカウル+GCOSA111 CカナードMU"バンチョーmk3"OSA111 RSフレームヂェリカン Nitro
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叡智を刃に、想いを力に(前編) “かまきりん”と称されていたフォートブラッグは、本人の意思によって 外道・猪刈久夫の手を離れ、今は私のスーツケースで眠りに付いている。 前回の事もあった為か、それを咎める者は誰もいなかった。まあ恐らくは 彼奴めの事だ。懲りもせずに再び神姫を虐げるのだろうが……今はいい。 偽善だろうが見栄だろうが、私達に出来る事をしただけだ。悔いはない。 「さて……騒がしかったが、これでクララのバトルも出来るか?」 「そうですの。今日はアルマお姉ちゃんだけじゃないですのッ!」 「頑張ってくださいね、クララちゃん?あたし達、応援しますッ」 クララにも専用の“Heiliges Kleid”と変身道具の“W.I.N.G.S.”を 装備させてやる。その腰はやはり、他の“姉達”と比べ些か寂しい。 彼女に欠けている物……普段から全形態で使う為の、彼女の武器だ。 銘だけは既に“ヘル”と決めているものの、試行錯誤が続いていた。 白兵でも射撃でもない非消耗品の武器。これは意外と難しいのだぞ? 「……うん。ボクも“戦乙女”の名に恥じない戦いをしてくるもん」 「その意気だ。お前には“魔術”がある、さあ蹴散らしてこいッ!」 『槇野晶さん、バトル開始時刻です。オーナー席に付いてください』 館内アナウンスが響く。私はエントリーゲートにクララをセットし、 見届け人のロッテと戦い終えて着替えたアルマを肩に、座席に着く。 今回の対戦相手は……見た事がない、切れ長の目を持つ男性だった。 「“アラクネー”。相手は初陣の様だが、手加減するな?」 「嗚呼、分かっているよ……今日も某の仕事をするだけだ」 男の神姫は、市場へ滅多に出回らず“ヴァーチャル神姫アイドル”とさえ 言われる幻の武装神姫、フブキタイプだった。見るのは初めてでないが、 彼女が“忍者刀・風花”も“大手裏剣・白詰草”も持たんのは初めてだ。 その姿も、どちらかと言えば“忍”というよりは現代の“スパイ”だな。 もっと装備の確認をしたかったが、ウェアラブルPCでの分析よりも早く “アラクネー”と呼ばれる神姫は、エントリーゲートに入ってしまった。 『クララvsアラクネー、本日のサードリーグ第36戦闘、開始します!』 そして、幻影の戦場が姿を見せた。舞台は……高層ビルとその周辺か。 ビルの外に出て戦う事も、ビルの狭い部屋を利用して戦う事も出来る。 今回のクララには都合の良い舞台と言えた……む、会話が聞こえるな。 「某は躊躇せず、そなたを木っ端微塵に“解体”する。覚悟は良いか?」 「……戦いに望む時から、ボク達は何時でも戻れない覚悟をしているよ」 「大した度胸だ、あるいは怖い者知らずか……どちらでも構わないかな」 「戦いってそういう物だもん……さあ、“態度”でお互い見せようよ?」 愉快そうに一息笑うアラクネー。移動型のカメラが二人の対峙を映す。 そこは、少し広めの会議室。その両端で、お互い睨み合っている様だ。 先に動いたのはスーツ姿の“アラクネー”であった。その指には……! 「某の名は“女郎蜘蛛”アラクネー!名の力、とくと知れ!」 「!?……高速で、部屋の壁面を蹴って移動している!!」 「まずは此方から往くぞ……丸腰のハウリンッ!!」 「ッ!?……糸?」 トリッキーな動きで飛びかかるアラクネーを、間一髪で避けるクララ。 だが彼女の髪が数本、はらりと床に落ちる。その軌道には……鋼の糸。 それが“蜘蛛の糸”の如く壁から、クララを切断しようと伸びたのだ。 厳密にはワイヤーのリールは、アラクネーの手中に幾つもあったがな。 「どうした、止まっていると死ぬぞ!?……ふっ!!」 「させない……ッ!?パイプ椅子が、こんな簡単に……!」 「チタン粉をコーティングした“斬鋼糸”だ、その程度」 「“斬鋼糸”……それが貴女の武器であり、名の由来」 素早く背後を取るアラクネーに向けて、私服であるコート姿のクララは パイプ椅子を盾代わりに利用した。御陰で首が飛ぶのは免れたものの、 スチール製のパイプ椅子は火花を散らして細切れに!……恐ろしいな。 「丸腰で戦場に叩き込むとは、そなたの主も鬼畜だな」 「……この姿ならまだ、でもボクには“力”がある」 「何?……ッ!こ、これは……先程のアレか!?」 言い放ち瞑目するクララ。その胸が、耳が、背中が……鮮やかに輝き、 幾重ものラインが、アルマの時と同じ様に“聖なるドレス”を形取る! どうやら先程のアルマを見ていたらしく、アラクネーも行動を起こす! 『“W.I.N.G.S.”……Execution!』 「……ふん、ただ丸腰という訳でもなかったか」 “姉”のドレスとほぼ同形状の、鋼鉄の衣をまとったクララ。 カラーパターンとその“腕”以外は、同じ性能・同じ素材だ。 そしてクララの腕には、16本の“柄”が下部に生えていた。 「貴女がトリッキーな手を使うなら、遠慮はしないよ」 「そうか、だが見てみろ。そなたは“蜘蛛の巣”の直中だ」 対するアラクネーは、数秒の“変身”の隙を突き“罠”を……って そうか、これかッ!!と、感心している場合でもないな。クララは 精緻な技術を以て編まれた“蜘蛛の巣”に、周囲を囲まれていた。 だがクララは冷静に部屋中を見渡し、アラクネーと対峙したのだ。 「動けばその鎧ごと斬り裂く。動かずとも、急所を穿つがな」 「……固定箇所、64。固定方法、チタン製のアンカーボルト」 「ッ!?……出来るだけ読まれぬ様に編んだのだが、やるな」 だがどうする?とワイヤーを向けるアラクネー。後で知った事だが、 このアラクネー……所詮サードリーグとは言え上位に属するらしい。 それ程の手練れ相手、普通の神姫ならば今頃はバラバラだったろう。 だがそんな強敵を前にしても、クララは冷静沈着に“柄”を抜いた! 「苦無?いや、ダガーか……だがそんな物で何になるか」 「……“蜘蛛の糸”を断ち切る、菩薩の手になるんだよ?」 ──────解けない数式だって、この娘は解いてみせるよ。 次に進む/メインメニューへ戻る
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「ところでマスターさん、つかぬ事をお伺いいたしますが」 夕食が済み、私たちは並んで(と言っても私は卓袱台の上で、ですが)TVを見ていたときの事。 番組がCMになったのを機に、少し前から思っていたことを、思い切って聞いてみることにしました。 「なんでしょうか犬子さん?」 マスターさんは、手にしていた湯飲みを卓袱台の上に置くと、正座の姿勢のままでこちらに膝を向けなおしました。 私もそれに習って、マスターさんに向き直ります。同じように正座、というのは残念ながら武装神姫の関節構造上ムリなので、中途半端にそれを真似た、膝立ちのような姿勢でですが。 「マスターさんは、どうして私をお買い求めになったのでしょうか?」 「ああ、そのことですか。……実はですね、私はとある理由から、私に代わってPC管理をしてくれるパートナーが必要だったのです。つまり……」 マスターさんの表情が心なしか強張ります。 まるで、なにか決意を固めるかのように。 自らの罪を認め、それを今から告白するかのように。 「実は機械オンチだった私に代わって……!」 「………………………………実は存じておりました」 「気付いていたのですか?」 「気付いていたのです」 というか、どうして気付かれてないと思っていたのかと問い詰めたい衝動を抑制するのに大変でした。 PCは必要なため揃えたものの、その設置は知人にお願いしたとのこと。その後はなんとかサイト閲覧とメールのやり取りは覚えたものの、不要な重いアプリケーションを常駐しっぱなしにしてたのはともかく、ウィルス対策ソフトをはじめとする各種重要なソフトも初期インストール時のままでアップデートせず、不用意にセーブしたデータはその後どこにあるか探し出せず、そうしてデスクトップにはフォルダとファイルが散乱しまくり、そうした「荒れ放題」と言うほかなかったPCを整理したのは誰だと思っているのでしょうか。 そのほか、ビデオや炊飯ジャーのタイマー予約が出来ないのは言うに及ばず、ケータイは通話とメール専用機、TVのリモコンは電源とチャンネルと音量の部分だけが使い古され、電気ポットはヤカンで沸かしたお湯を保温しておくためのものetcetc。 ある意味で、武装神姫とはもっとも縁遠いお方なのです。 しかしそれだけに、私としてもお仕えし甲斐があると申しましょうか、分類上は「玩具」とはいえ、もともとそういった生活サポートも視野に入れて開発された最先端電子機器の塊でなおかつ高度なプログラミング技術の結晶たる武装神姫にとって、そのあたりはまさにホームグランドでして。 機械オンチなマスターさんが武装神姫を購入を決意したのは、まさに英断であり最良の選択であったと自負しております。 が、私がお聞きしたかったのはそれとはもうちょっと違ったことでありまして……。 「あの、それでですね……数ある武装神姫たちの中から、なぜ私をお選びになったのかな、と」 「なるほど、そちらでしたか」 自らの「罪の告白」がスルーされたことに安心したのか、マスターさんは表情を和らげると、卓袱台の上の湯飲みを手にとって、一口。 卓袱台の上に戻されたそれに、私は急須を抱えてお代わりを注ぎます。 「ありがとうございます」 深々。 「どういたしまして」 深々。 「それで、なぜ私が犬子さんを選んだかといいますと……別に、深い意味はなかったのです」 マスターさんが言うには、初めて武装神姫の存在を知ったのはぶらりと立ち寄ったお店の店先で、その時は「なんだかかわいいお人形さんが並んでいますね」くらいにしか思ってなかったそうです。 その後、ネット放浪の最中に偶然武装神姫のことを書いてあるサイトにたどり着き、自分の見たアレが「そういうモノ」だったことを初めて知ったのだとか。 そうして武装神姫に興味のわいたマスターさんは、そのままサイトを伝ったりカタログや本を読んだり、武装神姫を知っている方にお話を聞いたり、お財布の中身と貯金通帳と月末の支払いとを見比べたり、お給料とボーナスの振込みの日を指折り数えたりして、ようやく武装神姫の購入を決意したそうです。 その実、最初に武装神姫を見かけてから数ヶ月、武装神姫のことをもうちょっと詳しく知ってからも実に1ヶ月はたっているとか。 「ですがもともとそういった意図での購入でしたので、『これが欲しい! これでないとダメ!』というのはなかったのです。それでとにかく、お店に行って決めようとしたら、店先に残ってたのは、70%オフで売っていたお侍さんと、それから騎士様に犬さんと猫さん、イルカさんとサンタさん、それに新発売ののぼりのついてた寅さんに牛さんでした」 その時のことを懐かしむように、マスターさんは語ります。 「このうち、やたら安かったお侍さんは、そのあまりの安さが素人目に不安になって回避しました」 「……なるほど」 私はそれだけを口にして、心の中で紅緒型さんの不遇に合掌しました。紅緒型さんがよく安売りされるのは性能が要因ではなく、その、なんと申しましょうか、純粋に需要と供給のバランスからくるもので……。 つまりマスターさんのように、個々の武装神姫にこだわりなくあくまで武装神姫の電子秘書的なサポート性能を期待しての購入を検討される方には、まさにうってつけの値段設定だったという事は……まぁ言わぬが花なのです。 「同じように、他より安くて箱が一回り小さかったイルカさんとサンタさんも回避しました」 「それは正解でしたね、マスターさん。ヴァッフェドルフィン型さん及びツガル型さんはあくまでEXウエポンセットであって、神姫の素体が含まれていないのです。 一応それでもコアユニットはありますので起動及び電子秘書としての役割は果たせますが、それを買っていたら、今頃マスターさんは胸像とお話していたのです」 「そうなのですか」 「そうなのです」 その当たりは箱の裏にしっかりと明記されていますが、それを見落とすのも機械オンチのうちなのでしょう。 「それで、新製品と寅さんと牛さんは、見るからに部品が多くて複雑そうだったので、断念いたしました」 「賢明な判断だとおもいます、マスターさん」 彼女らの売りである工夫次第で様々な形態を実現可能な複雑な合体機構は、マスターさんの手にかかれば前衛芸術作品へと昇華されることが容易に想像できます。 実際のところは、その当たりは神姫が自分で管理できるであろうということも言わぬが花なのです。 「そうして残った候補の中から、私は……」 そこでマスターさん、一度言葉を切り、少し照れくさそうに頬をかいて。 「一番可愛かったのを、買ってきたのです」 ……あー、なんと申しましょうか、非常に武装神姫冥利に尽きるといいますか、ありていに言って幸せです。 腰部に接続されたドッグテイルが、ぶんぶん振り回されるのを制御不能なのです。 それでもってなおかつ、非常に照れくさいです。 「しかし……マスターさん、購入まで随分と長くお時間かけられたのですね」 その照れを隠すように、私はぎこちなく話題を変えます。 「そうですね。もとより安いものではないですし、そもそも僕がそういったものを手にするとは、ついぞ想像すらしていませんでしたし、何を基準に選んだらいいやらすらわかりませんでしたからね。 いやはや、我ながら優柔不断のきわみでした、お恥ずかしい」 「いえ、そんなことはありませんよ、マスターさん。それは、マスターさんが真剣に考えてくれたという証なのです。誇りこそすれ、卑下することなど何一つとしてないのです」 「や、そう言って頂けると恐縮です」 深々。 「いえいえ」 深々。 「それに、ですね」 「はい?」 顔を上げた私は、笑顔で続けます。初期プログラムに設定された笑顔ではなく、マスターさんとの生活で勝ち得た、私オリジナルの満面の笑顔で。 「マスターさんの悩んだ期間が、 もうほんのちょっとだけ短くても、 もうほんのちょっとだけ長くても、 『私』はマスターさんに出会えませんでした」 マスターさんは、神妙に私に言葉の続きを待っています。 「もし別の機会に購入していたら、ここにいたのは別のタイプの武装神姫だったのかもしれません。 いえ、もしハウリンタイプだったとしても、 『私』より前の棚に並んだハウリンだったかもしれません、 『私』より後ろの棚に並んだハウリンだったのかもしれません。 マスターさんがそれだけの時間を悩んでいて頂いたからこそ、『私』は今こうしてここにいることができるのです。 マスターさんが悩んだ時間は、きっと『私』がマスターさんに出会うために必要な時間だったのです。 もちろんそれは『私』にとっての都合で、マスターさんにとっては『私』でなくてもよかったのでしょうけど……マスターさんと出会えた『私』は、それだけの時間をかけてくれたマスターさんと、マスターさんと出会えた幸運に感謝しているのです」 「……犬子さんは、ロマンティストなんですねぇ」 微妙に的を外したマスターさんのご返答は、しかし照れ隠しなのが丸判りなのです。ですから私は、さらに流れに乗って攻め立てます。 「ロマンティストなんです。というか、ことオーナーとの絆に関する限り、武装神姫はみなロマンティストなのですよ」 「そういうものですか」 「そういうものです」 マスターさんは、優しく微笑み、湯飲みをこちらに差し出します。 「お代わりをいただけますか?」 「はい、少々お待ちを……はい、どうぞ」 「ありがとうございます」 深々。 「どういたしまして」 深々。 「あ、CM明けました」 「おっと、危うく見逃すところでした。ありがとうございます」 深々。 「どういたしまして」 深々。 こんな風にして、私とマスターさんの夜は、他愛無く過ぎていくのです。 <そのご> <そのなな> <目次>