約 1,954,115 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/597.html
先頭ページへ 設定解説 ここではMightyMagic本編において、現在までに全容が判明している設定を公開しております。 バーチャルバトル概要筺体 おおまかな試合の流れ 武装神姫・オフィシャルバトルリーグ概要ランキングポイント バトルの形式 非公式バトル・裏リーグ バーチャルバトル概要 ※本設定はバーチャルバトルを行っている多くの作品に汎用できるよう書かれております。ご参考になれば幸いです。 今日における「武装神姫」の全世界的な市民権獲得は、ファイトマネー形式によるアクセス料金の10%~最大数十倍の還元制度もさることながら、本項で説明するバーチャルバトルの普及が重大なファクターであると言っても過言ではない。 オフィシャルの介入のなかった草創期において、武装神姫が草バトル規模から脱却し切れなかった原因の一つに、神姫のロスト事故がある。当時リアルバトルしかバトルの方法が存在せず、また往々にしておざなりなものでしかなかったレギュレーションから生まれた数多くの威力過剰な自作武装パーツは、精密機械の塊である神姫にとってはほとんど凶器であり、しばしばコアやCSCが損傷してしまうことがあった。それは最悪の場合神姫の再起不能に繋がり、決して安くはない所有物を破壊されてしまうデメリットと共に、日常生活における最愛のパートナーを無残に失ってしまう衝撃が大きかった。数多くの神姫オーナーに武装神姫への二の足を踏ませてしまうには、それは十分すぎる不安材料だと言える。 オフィシャルの介入が果たした役割は、アーンヴァル、ストラーフに始まる公式武装神姫の開発、発売だけではない。ご存知神姫BMAの発足から、公式のリアルバトルリーグ(バーチャルバトルのまだ無い当時はただ単に公式リーグと呼ばれた)を設け、またしっかりしたレギュレーションを設定することによって威力過剰な自作パーツを排除し、バトルによる神姫のロストを1%以下にまで押さえることに成功したことも、見過ごしてはならない功績なのである。 しかし、それでも深刻なロスト事故が完全になくなったわけではない。神姫の開発元であり神姫BMAの総元締めであるEDEN-PLASTICSは、公式リーグの整備と並行して、近年その技術が実を結び始めたバーチャルリアリティのノウハウを流用、将来人間が利用するための実地テストも兼ねた「仮想空間における武装神姫バトル」のシステム開発も推進してゆく。 そして、アーンヴァル、ストラーフの発売から、公式武装神姫第二弾のハウリン、マオチャオ、ヴァッフェバニーの発売をまたぎ、およそ半年を経てついに、ロスト事故の起こり得ない「バーチャル武装神姫バトルシステム」、V.B.B.S.の実用化に成功する。 一般的なシステムの概要は以下のものである。 筺体 二台のオーナーブース(ある程度大型の筐体になると個室となり、オーナーズルームと呼ばれる)と、その中心に設置された三次元立体ディスプレイ(低コストの通常ディスプレイの場合もある)、その一セットにつき一台以上のインフォメーションブースが最もよく見られるタイプのV.B.B.S.筺体である。設置店舗の規模によってディスプレイの形が四角形から円形へと変わることがあり、またその大きさも違ってくる。複数によるタッグバトルやバトルロイヤルが可能な店舗では、オーナーブースが四台や六台も設置されている。 インフォメーションブースではオフィシャルバトルライセンスの登録、ICカードの発行、各種設定の登録、ランキング情報の閲覧などが行える。 オーナーブースに最低限ある設備は、三面ディスプレイ、操作コンソール、神姫アクセスポッド、武装メインボード(デッキ)、武装サイドボード、そしてICカードリーダーである。 三面ディスプレイは椅子に腰掛けたオーナーの前方に、その名の通り三つの二次元ディスプレイが三面鏡のように設置されている。デフォルトの設定として、中心の画面には自分の神姫周辺の映像を映し出し、左右には神姫の武装と神姫自身のコンディション、レーダー、フィールドマップなど、バトルに必要な情報を表示するようになっている。オーナーはこれらに目を配りつつ神姫に指示を出してゆく。ディスプレイの表示内容は通常手元のコンソールによって自由に変更可能だが、店舗によっては表示内容が著しく限られておりオーナーは見ているだけというものや、逆に神姫自身が把握できる以上の情報を網羅し積極的に指示させることを目的としたものもある。 ディスプレイ脇に設置された二十センチの細長い卵のようなものが、神姫アクセスポッドである。バトルをする神姫はポッド内部に寝かせられ、陽電子頭脳への直接低周波励起によってバーチャルリアリティを体験する。 アクセスポッドの土台にある引き出しのような武装メインボードはトレーディングカードゲームにならってデッキと呼ばれ、バーチャル空間に出たときに神姫がプリセットで身に着けている武装を入れて置く所である。その下の引き出しは戦闘中に変更する武装や補給する弾薬を入れる武装サイドボードである。 メインボードやサイドボードに入れる武装の装備設定は試合前に行うことができるが、時間がかかるため事前に自宅やインフォメーションブースで設定をICカードに登録しておくのが望ましい。ICカードには武装構成情報のほかに、ディスプレイの設定など、各種情報を記録しておくことができる。 おおまかな試合の流れ ここでは今から武装神姫を始めるものとして説明する。まず最低限準備するものは自分の神姫とその武装、そしてアクセス料金であることは言うまでもない。 オフィシャルバトルライセンスを持っていない場合、インフォメーションブースでライセンス登録をする。オーナーの名前、神姫の名前やタイプなど、必要な情報を入力していって、ライセンスICカードが発行されると登録完了である。この時点で登録された神姫は自動的にサードリーグへ配属される。なおライセンスはオーナーではなく神姫自身に付与され、ランキングも神姫ごとに異なる。そのためICカードは神姫一体ごとに一枚必要となる。登録後すぐにバトルへ向かうことができるが、その前にこのまま武装の構成を続けて設定、登録しておいた方がよい。 武装の設定を終えたらオーナーブースへ向かう。ICカードをリーダーに差し込み、料金を投入。オフィシャル介入初期はバトル人口が少なかったこともありお世辞にも安いとはいえないアクセス料金であったが、全世界的に広まった現在は小学生でも一週間に一~二度遊べるほどリーズナブルになっている。 神姫をアクセスポッドに寝かせ、メインボードにプリセット装備を入れ、予備の装備や弾薬があればサイドボードに入れる。事前に武装構成設定やディスプレイの表示設定を記録しておいたのなら、これだけで準備は完了である。近年では「データウェポン」と呼ばれるバーチャルバトル専用の武装データが記録されたカードが発売され、実物と比べて安価であるためバーチャルバトル人口の更なる増加に貢献している。 五分間の待機状態に入り、その間にコンソールで操作するか対戦相手が現れなかった場合、オンラインから相手を探す。デフォルト設定ではオンラインに接続した瞬間相手は自動で決められるが、待機時間が余っていてなおかつ自分の次に待っている人がいないのならば、設定を変えてオンラインのバーチャル空間で五分いっぱい相手を待ちつつ練習が可能である。いずれにせよ五分後には必ず対戦が組まれることになる。 バトルフィールドはだいたいにおいてコンピュータ側が自動で決定する。ただ完全なランダムではなく、水中用の神姫同士なのに地上フィールドが出てくるなどということはありえない。なるべく公平になるよう選ばれるが、かといって絶対というわけでもなく、地上型の神姫同士の対戦で広大な山岳地帯、つまり本来なら空中戦同士が戦うべきフィールドが選ばれる場合もある。つまり戦闘そのものに支障が起きなければ、どのようなフィールドも選ばれる可能性はあるというわけである。 戦闘はバーチャルリアリティのコンピュータとは独立したジャッジAIシステムが、筺体一台につき「主審」一台と「副審」二台で判定する。リアルバトルのように「コアのある頭部やCSCのある胸部を攻撃してはならない」などという禁止事項は無く、データ改ざんなどに始まるいわゆる「チート」や、双方隠れたままや動かないままで攻撃も何もせず延々と状況が進展しない「ネガティブペナルティ」などを除けばほとんどルール無用の戦いが繰り広げられる。相手を撃破するか、降伏させる(する)ことで勝敗が決定し、勝者には対戦相手とのランク差に応じたランキングポイントが与えられる。ある程度ランクが上がれば勝者には料金の還元が発生し、最初は微々たるものだがセカンドリーグも中頃になってくると還元額がアクセス料金を上回るようになり、上位になればそれだけで神姫関係のメンテナンスや装備購入が可能になってくる。花形のファーストランカーの中には、武装神姫で生活しているオーナーもいるほどである。 武装神姫・オフィシャルバトルリーグ概要 ※本設定は多くの作品に汎用できるよう書かれております。ご参考になれば幸いです。 バーチャルバトルの実現、それに伴う競技人口の爆発的な増加にあたって、神姫BMAは従来一リーグ制でリアルバトルしか試合形態のなかったオフィシャルバトルリーグを全面改定することとなった。ここに現在の、サード、セカンド、ファーストに分かれた三リーグ制が生まれる。ここでは現在の制度をもとにオフィシャルバトルリーグを説明する。 ランキングポイント オフィシャルバトルライセンスを発行された神姫は自動的にサードリーグへと配属され、その中でバトルをしてランキングポイントを溜めていくことになる。 ライセンス発行時点でその神姫にはあらかじめいくらかのランキングポイントが付与されており、このポイントはバトルの勝敗によって増減する。ポイントの加算はただ増えるだけではなく、対戦者どうしのポイント差――つまりポイントとはその神姫が持っている実力の代替値であり、その差である――からコンピュータが判断し、敗者から一定割合が差し引かれ勝者に移動することによって増える。つまり戦った相手が自分よりも強ければ強いほど(所持ポイントの差が大きいほど)、勝利時に大量のポイントを取得することができるのである。 つまりどんなに参加者が増えリーグ昇格のための目安ポイントやリーグ全体のポイントがインフレを起こそうとも、リーグ昇格に必要な努力の平均量はほとんど変わらない。 そういった制度上、積極的にバトルしていれば例えどんなに弱い神姫であろうとも自然と実力がつき着実にランキングを増やせるし、それほどバトルに参加しないのであればランキングは下位のままである。もちろん上位になってゆけばゆくほどランキングの維持や昇格は難しくなってくる。特にファーストリーグは別格で、天下のトップ100以内であろうとも日々メンツが変動し、少しでも努力を怠ればたちまちランクが落ち最悪セカンド降格になることも珍しくない。 バトルの形式 バトル形式は三リーグともにリアル、バーチャルの二種類が選択可能である。しかし、現在サード、セカンドではバーチャルバトルが大半を占め、ファーストリーグでは逆にリアルバトルが通例となっている。これはもちろんリーグごとの意識の違いによるものであり、サードでは大半の参加者が「大事な神姫を傷つけたくない」という考えであるからバーチャルバトル一色となっているだけである。ランキングが上がってゆくにつれてリアルバトルの割合は増してゆくが、セカンドまではたとえ上位でもバーチャルバトルで戦うことがほとんどである。 逆にファーストリーグではお互いに実力者であるという敬意とプライドから、ほぼリアルバトルで戦われる。レギュレーションにより威力過剰なパーツはなくなったとはいえ、制限に肉薄する性能の装備群が織り成す極限の死闘は、バーチャルバトルでは味わうことのできない迫力とスリルを生み出す。これは人間の格闘技に通じるものがあると言える。もちろん愛護団体等による非難も少なくないが、全世界にファンがいる今、レギュレーションを改正することはあっても試合自体を規制することはもはや不可能である。ただ、ファーストランカーである神姫たちの名誉のために言うならば、彼女達は人間の欲望に振り回されているのでは決してなく、自らの意志でリングに上がり、ファーストランカーとしての自分に誇りを持って戦っていることは間違いない。 非公式バトル・裏リーグ 厳密にはオフィシャルとは関係ないが、バトルを語る上では外せない事項であるためにここで説明する。 神姫業界、こと武装神姫において現在大きな問題となっているものの一つに、非公式バトルや裏リーグがある。 ただ非公式バトルに関しては、それだけでは問題とはならない。オフィシャルバトルライセンスを持たない神姫たちはたくさんいるし、そう言った神姫同士の草バトル、いわゆるフリーバトルは様々なところで行われているからである。問題となるのは、そこに金銭や威力過剰パーツが入ってきたときである。 様々な催しで非公式バトルが組まれるとき、観戦料金を取ったり選手にファイトマネーが支払われたりするだけであれば問題は無い。ただ、「どちらが勝つのか」などで観客が金を賭け始めたならば、届出をしていない場合無許可賭博となり犯罪となる。 威力過剰なパーツが使われたならば、神姫に対する危険もさることながら周囲の人間に被害が出たときに場合によっては失明したり最悪生命に危険が及ぶことがある。一定の威力を超えるパーツは現在法律によって取締りの対象となっており、やはり犯罪なのである。 こうしたことを陰で平然と行っているのが、裏リーグである。裏リーグにおいては無届賭博や違法パーツの使用はもちろんのこと、たとえフリーバトルでも固く禁止されている「コアのある頭部(首から上)、ならびにCSCのある胸部への攻撃」がさも当然のように行われている。これによってロストした神姫の数は日本国内で確認されているだけでも数千体で、実質一万体以上にのぼると見られており、看過することのできない社会問題である。 先頭ページへ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1369.html
神姫ちゃんは何歳ですか?第二十七話 スーパー神姫TIME 書いた人 優柔不断な人(仮) 「っと…そろそろ時間だな」 俺はTVのリモコンを取り、スイッチを押した 「あれ?センパイ、この時間何か見てましたっけ?」 「今までは見てなかったが、今期の番組改編で新番組が始まるじゃないか」 「あ、今日でしたっけ?『スーパー神姫TIME』」 そう、とうとう神姫もゴールデンタイムに番組が放送されるまでになったのだ 『スーパー神姫TIME』は54分の番組で、キャッキャウフフからハードなバトルまで様々な神姫ライフ情報を提供するというコンセプトで作られるという 番組内にはマスターと神姫を迎えてインタビューを行う『神姫マスターズ』というコーナーがあり、その第一回のゲストとして、観奈ちゃんが呼ばれたのだった 『すぅ~ぷぁ~~~すぃんきとぅぁ~~~~いんむ!』 「あっ、お兄ちゃん、始まったよ」 …なにこの30年前のタイトルコールは… TVには男性と女性の姿が映し出された 「皆さんこんばんわ。今日から始まりました『スーパー神姫TIME』。司会は私、富華 三根雄です」 「皆さんこんばんわ~。アシスタントの浅木マキで~す。よろしくおねがいしま~す」 「それでは早速、最初の…」 と司会の富華が言いかけたところに 「ちょっとまったー!二人共、大事な事を何忘れてない?」 と、なにやら小さな女の子の声が割り込んだ 「おおっと、これは失礼。もう一人のアシスタントを忘れてました」 「全く!この超絶ぷりちーな私を忘れるなんて有り得ないんじゃなくて?」 「ほらほら志緒理ちゃん、怒ってないで皆さんに自己紹介して」 カメラがずいっと下へと向けられる テーブルの上には一体の神姫と、さらに小さなヌイグルミのような物体がいた 「あっ…えっと、この番組のアシスタント神姫、シュメッターリングの志緒理です、宜しくお願いします」 ぺこり 「志緒理、今更カワイ子ぶってもおそいんじゃねーの?」 志緒理の隣のヌイグルミ?が喋る 「んもうー!なによー!私は可愛いから許されるのよ!それより、アンタも自己紹介しなくていいの?」 「っと、そうだな。オイラはしおりのお目付役のガンノスケってんだ、ヨロシクな!」 手を振り、挨拶をするガンノスケ 「んもう~、誰がお目付役よ。私が居ないと何も出来ないのはガンノスケの方でしょ!」 「オイラは志緒理が暴走しないように…」 「まぁまぁ二人とも、そのくらいにして。番組が進まないじゃない」 「志緒理ちゃん達には後のコーナーで存分に喋って貰うとして、まずは最初のコーナー、『バトルアリーナ』からどうぞ!」 「このコーナーは武装神姫バトルの中でも、特に名勝負と呼ばれている物を解説を交えてお送りしていきます」 「ふえー、スゴかったねぇ」 感嘆の声を上げる志緒理 「アーンヴァルとストラーフは初期のモデルですが、それだけに数々の名勝負を繰り広げてきました。この第一回大会の二人も、決勝戦に恥じない試合を見せてくれました」 遠い目をしながら説明する富華に、浅木も頷きながら 「最後のデモニッシュクローが出たときにはゲルダの勝ちかと思いましたが、ギリギリで静名がレーザーライフルで防ぎましたね。ライフルがベッコリとへこんじゃいましたけど」 志緒理もそれを聞きながら 「その後、その反動を利用してその場で一回転して壊れたライフルで殴るなんて、よく出来たよねー」 とウンウンと頷きながら言った 「あの後のインダビューでは本人も『咄嗟のことで、何をしたか分からなかった』と言ってましたよ」 「こーいうのは日頃の訓練が大事なんだよ。志緒理もサボってないで、普段からトレーニングしとけよ」 「うーっ、わかったわよぅ」 ガンノスケの言葉に頬を膨らませながらも応える志緒理 「それでは、CMの後は『神姫マスターズ』、第一回ゲストはファーストランカーの國崎観奈ちゃんとミチルちゃんでーす」 CM後、セットが対談用へと変わっていた テーブルが一つ、テーブルから向かって左側には長椅子があり、富華と浅井が座っている。右側にはゲスト用の椅子があり、観奈が座っていた テーブルの上には神姫用の椅子が置いてあり、志緒理とミチルがそれぞれ座っている アシスタントの浅木の声でコーナーは始まった 「それでは、『神姫マスターズ』のコ-ナー、ゲストは國崎観奈ちゃんとその神姫、ミチルちゃんでーす」 「うむ、よろしくなのじゃ」 「よろしくなのだ」 ペコリ、とお辞儀をする観奈とミチル 「早速なのですが、お二人は神姫バトル歴が長いと聞きましたが」 「うむ、そうじゃな。テスト期間から始めていたから…かれこれ5年になるかな?」 「5年って…7歳の頃からやっていたのですか?」 「まぁそういうことじゃな」 「どうでしょう、最初の頃と今とでは、バトルも様変わりしましたが?」 「最初の頃はヴァーチャルシステムも無かったし、社外武装も使用禁止じゃったから、皆限られた範囲での試行錯誤の繰り返しじゃった。それも2弾が出たときのバランス変更でパァにされたりと、なかなか面白かったぞ」 「ああ、通称『犬猫パッチ』ですか」 「そうじゃ。その後の社外武装解禁、ヴァーチャル戦の導入等、神姫バトルも様変わりしていったのじゃ」 観奈の話を聞きながら、富華がぽんと手を叩き 「そうそう、その頃のミチルちゃんの映像が残っていたのですよ」 と言い出した 「なに?まことか?」 「…なにかイヤな予感がするのだ…」 富華の言葉に喜ぶ観奈と、不安そうなミチル 「それでは、映像どうぞ!」 富華の言葉を受け、セットにあるモニターにスイッチが入る そこに写ったミチルと思しき影に、浅木が疑問の声を上げる 「あー、ミチルちゃん…ですか?なんか今と違いますね?」 「この頃はまだ、今のような白い翼は付けていないからじゃな」 観奈の言葉通り、画面の中のミチルには象徴ともいえる6枚の白い翼は無かった ヴァッフェバニーの装備にアンクルブレードを持ち、棘輪を腰に下げていた 「この頃は、ヴァッフェバニーの装備を主体にしておったからな」 「でも、リアブースターに6枚のスラスターを付けてるのね」 「なかなか目敏いな、志緒理殿。最低限の防具に機動ブースターが付いたヴァッフェバニーの装備はミチルに最適じゃったのじゃ。しかし、それでもヤツには追いつけなかったので、スラスターを追加して挑んだのじゃ」 「ヤツって…この人?」 志緒理が指した先には、一体のハウリン型が映っていた 「この人、足の狗駆しかつけてませんよ?」 「当時を知らない志緒理殿が訝しがるのも無理はないな。彼女の名は『ストレイト』クウガ。当時誰も追いつけなかった、最速の神姫じゃ。いや、今でも追いつける者はおらんじゃろうな」 「ふえー、そんなスゴイ人なのですか?会ってみたいなぁ」 「残念じゃが、それは無理じゃ。彼女はもう…」 観奈の言葉にスタジオ内が、暗い雰囲気になる 「いくら安全に配慮されているとはいえ、事故と言うものは起きるのだ。でもあたしたち武装神姫は、そのくらいの覚悟を持ってバトルに参加してるのだ」 「そういうことじゃ、しかと見ておくのじゃ。クウガ殿の勇姿を」 「う、うん」 観奈とミチルの言葉に頷き、画面をしっかりと見据える志緒理 「あっ、ジャガーだ!…この頃はまだ普通のぷちますぃーんボディを使ってるのね」 試合開始 開始と同時にジャガーが牽制の射撃を行った 『…遅い』 画面の中のクウガが呟くと同時にその姿が消える ガキィッ! 否、瞬時にミチルの傍へと移動したのだ 「うそっ?なんて速さなの?」 「大抵の相手はこれで終わるのだ。この時あたしが防げたのも、運が良かったといってもよいくらいなのだ」 『ほう…剣でギリギリ防いだか…』 『くうっ…とりゃっ!』 アンクルブレードを盾に、クウガを押し返し距離を取るミチル。そしてすぐさま棘輪を投郭する ダンッ!ギュン! しかしそれをアッサリと避けるクウガ そしてすぐさまミチルへと2撃目のキックを放つ バシュッ 間一髪スラスターを吹かし、これを避けるミチル 『なかなかやるな…しかし』 ギュン! 有り得ない程鋭角に、ミチルへと向かい跳ぶクウガ 『まだまだ速さが足りない!』 ミチルへと三度キックを放つ しかし ザシュッ! 『やっと、捉えたのだ』 これまでのクウガの行動を分析し、攻撃パターンを掴んでいたミチルは、次に攻撃が来るであろうポイントにブレードを振っていたのだった クウガの足が切断され、ブースターを吹かしながらクルクルと飛んでいく 『ぐっ!』 苦痛に顔を歪めながらも、なんとかその場に留まるクウガ ゲシッ! そんなクウガに容赦ない追撃をかけるミチル 蹴り飛ばされ、地に伏せるクウガ ミチルはクウガを踏みつけ、アンクルブレードを構える 『これで、あたしの勝ち…』 スコーーン! ミチルの言葉は、飛んできた何かによって中断させられた 「…ねぇ、今の何?」 モニターを真剣に見ていた志緒理が怪訝そうな声を上げる 「…狗駆…というか、クウガの脚?」 同じく、呆気にとられていた浅木が答えた ブースターを吹かしながら飛んでいた脚が、何の因果か戻ってきて、ミチルの後頭部へと直撃したのだった 『きゅぅ…』 完全にフリーズして、倒れるミチル 『ミチルのノックアウトを確認。勝者、クウガ!』 クウガの勝利が告げられる中、ミチルはその先にいたクウガへと倒れ込んだ ガツン! 『!!』 クウガの上に覆い被さるように倒れたミチル ミチルの顔が、クウガの顔にぶち当たる というか… 「うわっ!ミチルちゃんとクウガさんが、ちゅーしてる!」 浅木の言葉に、スタジオ大爆笑 「あ、あれはノーカウントなのだ!意識してないし、というか意識無いし!」 顔を真っ赤にしながらパタパタと手を振り全力で否定するミチル 「あはは…ファースト上位のミチルちゃんも、こんな事があったんですね」 「うーっ、この油断が無ければ…」 「そうじゃな、あの後もずっとクウガ殿には勝てなかったのじゃからな」 「えっ?もう攻撃は見切ったんじゃ?」 観奈の言葉に疑問の声を上げる志緒理 「次の対戦で同じ事をやったのじゃが、ミチルが剣を構えるよりも先に蹴り飛ばされてKOされたのじゃ」 「うっそ…」 「自分が成長してるのと同じように、対戦相手もまた成長してるのだ」 「観奈ちゃんもミチルちゃんもそうやって成長してきたんですよね」 「そう言われると、照れるのじゃ」 「ところで観奈ちゃん、今現在、気になる神姫というを教えて欲しいのですが」 「そうじゃな…ファーストの神姫はほぼ気に掛けておるが、ここは注目のセカンド神姫を挙げておくのじゃ」 「観奈ちゃんが気になるセカンドの神姫ですか」 「まずはセロ殿じゃな。地元では『クイントス』と呼ばれており、ファンも多いそうじゃ」 「鳳凰杯の決勝トーナメントの第一回戦で戦った神姫ですね」 モニターが切り替わり、ミチルとセロとのバトルが映し出される 「剣の腕前はもとより、優れた洞察力もある素晴らしい神姫じゃ。スグにでもファーストでも通じるだろうに、何故セカンド中位にいるのじゃろうか」 モニターではムラサメが破壊されたシーンが映し出されていた 「次に挙げるのは…『雷光の舞い手(ライトニング・シルフィー)』ねここ。高機動と重装備を両立させている、数少ない神姫じゃ」 画面が切り替わり、アーンヴァルの武装を中心に組み上げた武装『シューティングスター』を振り回し、フィールド中を駆け回るねここの姿が映し出される 「ほぼ公式装備で組みながら、要所にはオリジナルパーツを組み込まれておる。マスターのセンスも光る神姫じゃ。」 必殺の『ねここフィンガー』を決め、相手のストラーフ型を沈黙させるねここ 「ちなみに、地元での人気は絶大で、最近ファーストに来た『マジカル☆ハウリン』ココと人気を二分しており、ファンクラブまであるそうじゃ」 モニターにはフリフリの衣装を着たココが口上を述べている所が映し出された 「あと、セカンドでは無いが、鳳凰杯の時に不慮の事故で記憶を失ってしまったミカエルも注目じゃな」 「オーナーの鶴畑大紀さんもファーストの称号を返上してしまいましたね」 画面には圧倒的火力でフィールドこと相手を焼き払うミカエルの姿が映し出される 「サードからの再スタートということで勝手が違うじゃろうが、あの二人ならまた勝ち上がってくるじゃろう」 「その三人が、観奈ちゃん一押しの神姫ですか…っと、そろそろ時間になってしまいましたね」 ADの合図を見た富華が申し訳なさそうに言った 「それでは観奈ちゃん、最後に視聴者の皆さんに、何かメッセージをお願いします」 「武装神姫で大切なのは、神姫を信じる心じゃ。信頼無くしての戦いはありえんのじゃ。たとえ負けても、ちゃんと得る物はあるのじゃ」 「有り難う御座いました。本日のゲスト、國崎観奈ちゃんとミチルちゃんでしたー!」 パチパチと拍手に見送られ、退席する二人 「神姫を信じる心、か…」 俺は次のコーナーの新作情報で映し出されている新型機の『アーク』と『イーダ』を見ながらボーっと考えていた 「…センパイ。以前のことを考えているのですか?」 「皐月にはお見通しか…」 皐月の指摘通り、昔の事を考えていた 神姫を道具としてしか見ず、ユキに過酷な試験ばかりをさせていた日々を 「でも、今は信じてるんでしょ?」 「ああ…」 「なら、それでいいじゃないですか」 「…そうだな」 俺はエンディングを歌う志緒理ちゃんを眺めながら、今のみんなの幸せを壊すまいと誓うのだった 『きょうのまおちゃお~』 『マオチャオは今日も日向ぼっこ。大好きなマスターの帰りを待ちながら、窓際でうつらうつら』 「うにゃぁ…ごしじんさま、だいすき…むにゃむにゃ…」 『あらあら、どんな夢を見ているのでしょうね』 ピクッ 『おや?マオチャオの耳が動きましたよ?』 ガチャガチャ…カチャッ 「ただいまー」 「おかえりなさい、ごしじんさま!」 『満面の笑顔でマスターを出迎えるマオチャオ。よかったね』 -END- あとがき なんとか生きてます、優柔不断な人(仮)です 今回はss掲示板の方で上がっていた「百質」をみてたら思いついたので、それで一本書いてみました 未だに妄想の人さんに言ったコラボssも書けてないのにスイマセン ちょっち補足 観奈とミチルがクイントスの事を本名のセロと呼んでおります これは鳳凰カップではクイントスは通り名で、あくまでもセロとして参加し、アナウンスもそうであったと考えられるので、観奈達が紹介する時にもそっちを使ったと考えるからです ミカエルに関しては、大紀が改心し、技術の蓄積も有ることからこれから強敵になるであろうと予測した為です ちなみに最後の『きょうのマオチャオ』は独立した五分番組です。提供は勿論、BLADEダイナミクス(もしくはKemotech)です さらに、今回の番組出演者の設定 富華 三根雄(ふか みねお) フリーのアナウンサー。45歳 神姫バトルの中継では実況も務める。その実績を買われ今回のメイン司会者に抜擢された 浅木 マキ(あさき まき) TV局のアナウンサー。24歳 若手女子アナウンサー。自身も神姫を所有しているが、上前はサード中位。どちらかというと、神姫と遊んでいる方が好き 志緒理(しおり シュメッターリング型) デモを兼ねてスポンサーから番組へと贈られた神姫 歌って戦う神姫を目指してる 彼女が歌う番組エンディングテーマも番組開始と同時に発売 「みんな買ってね(はぁと」 ちなみに所有者は番組のプロデュサーという事になっているが、ADの一人を気に入っていて、マスターそっちのけでつきまとってるらしい ガンノスケ 志緒理付属のヌイグルミ型支援マシーン『ラビボン』 主にツッコミ担当 志緒理とガンノスケは『スーパーしおりん』へと合体出来る …らしい
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2630.html
――あのゲームセンターの近く、ファミレスがあるのだけど、そこで話せない?―― 二時間後。 淳平と別れた後、夜に変わった時刻にメールをもらい、一旦家に帰る。 シオンには「休んだ人が出ちゃったから、バイトに行くよ」と嘘をついた。 正直に前のオーナーと会ってくるなんて言えるわけもなく。 「代わりだからすぐ終わるよ。だからちょっと待っててね」と言った。 寂しそうにしていたと思ったら、すぐに嬉しそうに返事をしてくれた。……かわいい。 待っていてくれる人、ではなく神姫だけど、そんなのが家にいてくれるのは嬉しいと思えた。 私服に着替えて、返信をしてすぐに向かうことを伝える。 あのゲームセンターから、少し通りを歩いたところ。信号があって大きな十字路になっている角にファミリーレストランがある。 ゲームセンター近くに来てみたけど、ここで合ってるのかな。 心配になったので、とりあえずそこで合っているかどうかのメールをしてみる。 合ってなかったら恥ずかしいし、聞く恥なら耐えられる。 ――そのお店。そこの禁煙席、奥の方にいるから―― すぐに返信を返してくれる律義さに感心を覚えつつ、ファミリーレストランに向かう。 会う事はできたけど僕はどうすればいいのか、まだ答えは出てきてない。 シオンが元の場所に戻れるのを望んでいるのか。……それは嫌なんだけど、元々は宮本さんの物だし、武装神姫は世間から見れば、結構高いもの。 高校生の僕とかはアルバイト代とかを必死に貯めれば買えないものではないけど、武装とかもお金がかかるしな。淳平とかは親戚の伝手で、中学の頃から内緒でアルバイトしてミスズを買った、て言ってたっけ。 僕はただ、シオンの顔を曇らしたくないだけで。転がり込んできた神姫だけど、シオンが望むのなら元の居場所に戻ったって……。 考え込んでいたら、足はもう目的地のファミリーレストラン前に着いていた。 思い耽ってた事を横に置き、扉を潜る。 「いらっしゃいませ、何名さまですか?」 とお決まりのフレーズを店員さんが出しやってきた。待ち合わせで来ている人が居ると説明すると「ごゆっくりどうぞ」と会釈される。 いつも、家で食べてるからファミリーレストランに入るのも久しぶりだな。一人暮らしだったらこういうところを利用するのも悪くないけど、お金がかかるしなあ。ちゃんと、生計は考えないといけないし。 禁煙席の奥の方。宮本さんはいた。 もうテーブルには積み上がった二皿とアイスティーが載せられていて、今はグラタンを食べている。 女性なのに、よくこんなに入るな。 「さっきぶりね。こんばんわ」 「こんばんわ」 僕は挨拶をすると、向かいの席に座る。 宮本さんの方を見れば横に何かの紙袋を置いていて、先ほどと同じ服装でいる。ラフな服装を好む人みたいだな。 「長倉君だっけ。キミも何か頼んでいいよ、奢ってあげるから。ただし常識の範囲内でね」 「そんなことはしませんよ。今日一緒にいた僕の友達ならやりかねないですけど」 「彼ね、確かにそんなことをしそう。でも、あの天使型の神姫に止められるでしょう?」 「そうですね。学校でもそんな感じですし」 「ふふ、初めて会ったけど、何となく想像つくわ」 なんでか知らないけど、淳平の事をだしにして会話をしている。いい人そうであるし、神姫のバトルに固執する人にも見えない。あのイスカっていう神姫だって……あれ? 「宮本さんの神姫はいないんですか?」 「ああ、言ったでしょ。スリープモードになっているって。家に置いてきたわ。それに、この話しを聞かせたくないのよ」 一呼吸置いて、グラタンを運んでいた手を止める。 「それじゃ、話してくれないかしら。長倉君がどうしてあの子を拾ったのかを」 居住まいを正して、僕はあの日に拾ったことから、いままでのことを話した。 ―――― 「……。そう。あの子にはシオンって名前をつけてくれたのね」 「はい」 話し終えたら、宮本さんは名前に関心がいっている様子で、いつの間にか食べ終えたグラタンの皿の底をスプーンでつついている。 「どうして、神姫の登録を消したんですか?」 「こういう時って、こうするしかないのよ。探し回ってはいたんだけど、どうしても見つからなくて、家にも戻ってこなくて。……長倉君は知ってる? 神姫を悪用して、犯罪を犯す人もいてね。それが自分のじゃなくて、他のオーナーのとかだったらどうなるか、とか」 「! ……そうか」 拾う人が善人とは限らない。携帯電話とかと同じだ。携帯会社に連絡して紛失したら一時的に解約することと同じ。 神姫が知らない人に自分の名前、オーナーの名前を言わなくても、機械を通じている人なら神姫の記録を直接見ることが出来る人もいる。当然神姫をプログラムで操る人もいる。 それが他人の神姫だったら犯罪のリスクが低くなるということか。疑われるのは持ち主だもんな。そこら辺りが勉強不足だった。 「キミって見かけの割に、結構頭の回転早いのね。詳しく説明しなくてもわかってるみたい。まあ、つまりそういう事。心が痛むけどね」 「だけど、それは考えれば少ない事例です。神姫が盗まれたりした時とか、神姫を捨てる人だって多分そういうのはわかってます。でも、勝手に家出する神姫なんて極力ないし、なにがあったんですか」 「あら、あの子から聞いてないの?」 「そ、それは、聞きましたよ。バトルが出来ない、戦う事が出来ない。武装神姫としては欠陥だって悲しそうに言ってました。でも、武装神姫だからって、色々他にもあるはずです。生活のパートナーだったり、友達とかでも」 「……甘いわね」 「っ――」 目を見て射すくめられた。先の言葉を言おうとしたのに、止められた感がある。細くなっている水色の目つき。感情は冷え切っているようにも見えた。 「確かに、そういう人も周りにはいる。でもね、わたしの武装神姫はバトル本命なのよ。バトルができないからって、いきなり『生活のパートナーにする』とか私は切り替えられない。……それにね、ええっと、今はシオンだっけ? シオンがバトルできないことに対して、一番怒っているのは『イスカ』なのよ。私が何も言えない程にね」 「あのストラーフですか」 「そうよ。あの子が妹が欲しいなんて言うから買っちゃたのよ。買うときは、バトルに熱くなれるよう熱血なアーティル型がいいからってイスカが決めたんだけどね。コアをセットしてみたら、あら不思議。バトルができない心優しいアーティル型ができたってわけ。組み合わせが悪かったのかもね」 宮本さんは饒舌に喋り続けている。今まで行き場のない怒りや不満に感じていたことを全部吐き出すように。一旦止めて、テーブルにあったアイスティーを一口飲むとまた喋り出した。 「バトルを始める前までは、そりゃすごく可愛がっていたのよ。イスカは無口だけど、バトル以外で楽しそうにしてるのを初めて見たわ。……私にとったらドン引きよ。顔をデレデレしちゃってるんだから。だけど私はシオンがものすごく丁寧な物腰なのにちょっと不安だったのよ。こんな子が激しいバトルをできるのかって」 真っ赤な目で無表情な顔を綻ばせているあの悪魔型神姫があまり想像できないな。バトルしてる感じでは普段からあまり喋らなそうに感じたけど。 「そしたら、案の定バトルをやらせてみても、何も出来ずに終わる。どんなバトルでも同じ。イスカとやらせてもへっぴり腰な姿。イスカはそれはもう絶望してたわ。期待してたのに、裏切られた気分だったみたいね。元の無表情に戻ってたわ。私もそんなこと初めてだから、何を言えばいいかわからなかったのよ。 神姫センターで修理にも出してみたけど、ノーエラーで異常はないってね。何もでないっておかしいけど本当なのよ。それで私は何も出来ず、イスカは会話もせず。……それで、あの子は出て行っちゃったってわけ」 「でも、だったら、どうしてここのゲームセンターでバトルなんかして、探すような真似をしてたんですか? 宮本さんの地元はここじゃないみたいですし」 最近見かけるようになったって話しを聞いたときに、不思議だった。シオンを拾った日から何日も経ってるし、なんで今ごろとも思った。 「私ね、神姫バトルは好きなんだけど、これでも医学生なのよ」 うん? なんか話が飛んだな。 「私はクォーターでね、祖父がフランス人。その祖父が国で病院を経営しているの。最近になってそこで研修生として働かないかって話が祖父から来ててね」 「じゃあ、日本を離れるんですか?」 「今すぐって訳じゃないけどね。もちろん、神姫も連れて行くわ。あっちにも武装神姫は流行っているみたいだし。日本を出るとなると、気になってきてね。あの子はどこに行っちゃったのかって。まさか二駅先にまで彷徨っていたなんて。根性があるわ」 ふうっと一息ついて、アイスティーを飲み干す宮本さん。言いたい愚痴を全部吐き出した感じがする。 「後はゲーセンで色々聞き込みしてたら、バトルする流れになっちゃって。キミたちが出てきたということ。バトルしてたのは無駄じゃなかったわ」 「見つけて、その後はどうしようと?」 「うーん、いい人に拾ってもらってたらそのまま。危ないことや酷いことをさせられてたら、意地でも捕まえて悲しいけどリセットさせるわ。でも、キミみたいな子に拾われてたのは不幸中の幸いね。……そこはお礼を言うわ。ありがとうね」 「いえ、大したことはしてません。とてもいい子だし、僕の神姫としては勿体ないくらいです」 一緒にいる僕もシオンには色々助けられているし。 「そうね。いい子すぎるわ」 宮本さんは自傷気味にそう言うと、グラタンの皿を持ち、テーブルの皿は三皿積み上がった 「……CSCをリセットしようと思わなかったんですか? バトルがうまくできないとわかって」 言いたくはなかったけど、これは聞いておかないといけないことだ。 「CSCをリセットすることはね、神姫を殺すことと同義なのよ。医者を目指す私としては人形といえどそんなことをする気は起きないわ。だから余計にバトル恐怖症をなんとかしようと躍起にはなったんだけど……このざま、カウンセリングなんて知識もまだない。ましてや相手は武装神姫。神姫に逃げられるダメマスターよ」 宮本さんはため息をもらす。 どうにかして、バトルできるようにしてたみたいだけど失敗に終わり続け、シオンは宮本さんの元を離れてしまったわけか。バトルができないからオーナーに捨てられる、傍にいる価値はないと思ってるのかな。神姫も悩むし苦しむんだ。 「宮本さんの神姫は……イスカは、シオンの事を怒っているんですよね」 「ええ、今でもその話したら、不機嫌になるわね。『……あいつの話はしないで』なんて言って、もっと仏頂面になるわ。最悪、いなくなって、なにも思ってないのかもしれないわね」 イスカをどうにかできないと、シオンのわだかまりはどうにもできそうにないな。イスカにシオンを認めさせるには、やっぱりバトルをして勝つことだろうか。 いがみ合った敵でも戦った後に友情が芽生えるとか王道だし。……思考が短絡的だな、僕。 戦う前提だと、バトル恐怖症の壁があるのを忘れたのか。 「私からも一つ聞いていいかしら?」 「あ、ええ。なんでしょうか」 「見た感じ長倉君は武装神姫は初めて持つのよね。拾った神姫でなんでそこまで一生懸命になれるのかしら?」 なんで、てそれは……なんでだろうか。家庭に人がいない状況を僕は寂しいと感じた。それでも毎日シオンが出迎えてくれるのが嬉しい。つまりそれはもうシオンが僕の家族になっているからだと僕は思ってるから。 「シオンは僕の家族です。家族の為に行動するのに理由はいりません」 キッパリと僕は宮本さんに言いきった。 「ク……クク……。ハハハハ!」 だけどなぜか宮本さんにすごい笑われた。腹を抱え口を開けて大笑いだった。 「な! どうして、笑うんですか!?」 「いえね……クク……。キミが真剣にそんなこと言うから。ふふ」 ものすごく心外だ。真面目に答えたのに、笑われるとどう反応していいのかわからないぞ。 「ふぅー。久しぶりにこんなに笑ったわ。でも、いいと思うわよ。家族」 「……そうなんですかね」 笑われた人に言われてもな。僕はなんだか呆れてしまう。 「そうよ。私は真正面から人形を家族なんて言えないもの。それは長倉君が持つ優しさよ。……シオンを頼むわ、それで、これ」 「これって?」 宮本さんは横に置いてあった紙袋を渡してきた。ずいぶんと大きな紙袋だ。中を確認してみると、武装神姫とロゴが入ったケースだ。隅の方にはクレイドルもあった。 「あの子の装備一式よ。バトルのために揃えたけど、無駄になってね。イスカにも似合わないし、あげるわ」 「そんな、こんなの貰えません。バトルだって……」 「でも、必要になるわよ。武装神姫を持っていればおのずとね」 意味深な事をそう告げる。なにか見透かされているようなそんな感じ。 「……一応、預かっておきます」 「そうしておきなさい」 そう言うと、宮本さんはコップの、解けた氷の水と少し残ったアイスティーとが混ざった飲み物を口に入れる。それがカランと音をたてる。 その後、僕は結局何も頼まずお礼をして、家に帰った。 手には紙袋を持って。 前へ 次へ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2755.html
与太話11 : 祝! アニメ第一話放送開始! 注意! TVアニメ武装神姫、第一話のネタバレを盛大に含みます。 もう一度言いますが、 TVアニメ武装神姫、第一話のネタバレを盛大に含みます。 「うわあ……ビル一刀両断しちゃったよ、あのストラーフ」 「イルミ姉さんも、もしかしてあんなことできるんですか?」 メルとエルの期待の眼差しを、イルミはうっとうしそうに流した。 「同じストラーフなのだから不可能ではないだろうが――少なくとも私には無理だ」 「そんな事よりさ、あの武装を自在に出したり引っ込めたりするヤツとか、どんな場所でも仮想フィールド展開できる機械とか、あれすごくない? アタシもファーストとセカンドいつでも呼び出せるようにしたいぜ」 「確かに、私もあのシステムはとても有効だと思います。もう妹君に重い荷物をお持ち頂く必要がなくなりますから。 ……しかし、何より重要な問題があるでしょう」 どうせレラカムイなんで出ないし見る価値なし、と直前まで言っていたコタマも、なんだかんだで付き合ったマシロも最後の次回予告まで目を離すことはなかった。 深夜アニメだったために昼間のうちに寝溜めをしておいた彼女達の議論はテレビの電源を切った後も続いた。 その主な議題内容は、武装神姫の戦闘力のインフレについてだった。 戦乙女型アルトレーネ、エル。 戦乙女型アルトアイネス、メル。 悪魔型ストラーフ、イルミ。 狐型レラカムイ、コタマ。 人馬型クーフラン、マシロ。 弧域の部屋のテレビの前に並んだ五人の武装神姫達。 その中で同じタイプが登場したエルは、若干放心気味のメルを気遣うように問いかけた。 「アイネス、メチャクチャ強かったですね。私の『ブレードジェット』ほどじゃないですけど、かなりの速さで飛行してましたよ」 「うん……っていうかあのレベルだとボクのパンドラスカートの小細工とかほとんど意味ないよね……。ねえ、この中でさ、アニメで戦ってた神姫達に勝つ自信のある人、いる?」 答えはわかりきっていたメルだったが、手を挙げたのが予想通りコタマとマシロだけだったことに悲しさを覚えた。 例えばオープニングでストラーフがビルを一刀で切り崩したシーン、あれだけでメルはかなりの衝撃を受けた。 以前コタマVSエルメル姉妹を行った時、メルは高層ビル内部に多数の爆弾を設置して回り、自分自身を囮としてコタマごと巻き込んだことがあった。 捨て身の甲斐あって結果は引き分けに持ち込むことができたが、アニメのストラーフの圧倒的な強さを目の当たりにした今となっては無力感を覚えてしまった。 姉のエルにしてもそうだった。 アルトレーネが天然おとぼけ娘であったことは構わない。 元々アルトレーネとはそういうものである。 しかし引越し荷物の片付けの際、明らかに5kgくらいのダンベルを軽々と持ち上げていた。 (中が空っぽで水を入れて使用するダンベルという可能性もあるが) 基本スペックからして想定との差がありすぎるのだ。 あとハムスター可愛い。 「そう悲観することもないでしょう。我々は今まで閉鎖的なフィールドで戦ってきました。しかしアニメのような奥行きが半無限にあり空中戦が圧倒的に優位なフィールドが今後広まっていけば、神姫達も自ずとレベルアップしていくものです。それにカメラワークでバトルスピードが速く演出されていましたが、準優勝者だというエウクランテの装備はほとんどデフォルトだったではないですか。つまり努力次第ではどんな神姫でもアニメのキャラ程度には戦えるようになる、ということです」 しかしアニメのバトルスピードでは、例えマスターが指示を出せるとしても、それは「どのタイミングで必殺技を使え」といった簡易なもので精一杯になってしまうはずだ 加えて、今までの武装神姫バトルコンテンツが『バトロン』と『バトマス』だけだった、というのも問題に一役買っている。 『バトロン』はターン制のようなもので臨場感に欠けるし、『バトマス』は低予算ゲーム相応の動きしかできない。 いずれもアニメとのギャップは凄まじい。 「これからどうしましょう……。やっぱり現状の武装神姫はアニメが基準になるわけですから、私達もそれに合わせて戦闘力をインフレさせたほうがいいんでしょうか」 心配そうにエルはちらりとマシロのほうを向いた。 この中で現時点で戦闘力の頂点に立つマシロですら、竹櫛鉄子の主人公補正無しでは苦戦を強いられることになるだろう。 この地域では頂点に君臨する『デウス・エクス・マキナ』と呼ばれる、マシロを含めた五人の神姫がいる。 (『デウス・エクス・マキナ』については15cm程度の死闘でそのうち語られます) コタマですら入れない五強と勝負になるテレビの神姫との差を埋めるのにはどうしたらよいか。 頭を抱えて悩むエルとメル。 そこに、一筋の光をイルミが差し示した。 「15cm程度の死闘のキャラ性能と機械の技術力を底上げしたらいいだけじゃないか。別に今のままでも問題ないとは思うが、どうしてもというならば週刊少年ジャンプのバトル漫画のインフレのように、いつの間にか大幅な戦闘力の底上げがなされても適当な設定を加えるなどして『そんなものだ』で済まされるだろう」 「「ああ、なるほど」」と納得したエルとメル。 コタマとマシロは「それでいいのか」と思うだけに留めておいた。 戦闘力を危惧したのはエル達だけではなかった。 かくして翌日、全国の神姫とオーナー達からコナミへ、ハイテクシステムの発売予定についての問い合わせが殺到したそうな。 やはりバトルシーンはISと似たような感じになりましたな。 しかし個人的に、一話で切ってしまうようなクオリティでないとは思いました。 尻すぼみにならないことを祈ります。 次回はケモテック神姫が出るとのことで、頭身のデフォルメが気になるところです。 15cm程度の死闘トップへ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1414.html
天薙の視点 バトルは無事に終了した。 時間軸にして、パルカが初戦に勝ち、ルーナが負けた。 後に残ったクリナーレとアンジェラスはほぼ同時刻に勝敗が決まってバトル終了。 クリナーレが負けてアンジェアラスが勝ったので結果は二勝二敗。 ±0の引き分けだった。 なんとも嬉しくも悔しくも無い中途半端な闘いになってしまった…兎に角複雑な気分だ。 俺は煙草に火をつけ、筐体についてる四つのドアが自動で開く。 「お疲れさん。気分はどうだ?」 俺は気軽に声をかける。 俺の神姫達はヘトヘトに疲れたような感じで来た。 でもアンジェラスだけは疲れてないご様子。 「アニキー。すまないけど、ボク達疲れているから休んでいい?」 「あ、おう。別にいいぜ」 「ボクもうヘロヘロだよ~」 「あたしもー」 「私も同じく」 そう言いながら俺の体によじ登って来た。 クリナーレは俺の頭によじ登って来たらそのままグッタリと寝転んでしまい、ルーナは右肩でパルカは左肩でグッタリしている。 なんで一回だけのバトルでここまで疲れるのだろうか、今までのバトルでは連続的に出来たのに…このバトルでは例外なのか? もしかしてバーチャルで闘ったからなのだろうか? いや、それはないなぁ。 実際にバーチャルバトルは配備されているし、バーチャルバトルでも連続的に闘える。 じゃあ何が原因? これは家に帰ったら検討しよう。 「もう、この子達はご主人様に迷惑をかけちゃって」 「ん?アンジェラス、お前はなんともないのか??」 「エッ?別に私はなんともありませんよ」 「…そうか。それなら別にいいんだけど」 アンジェラスだけ元気がある。 こいつはちょっとおかしくないか? 普通ならあの筐体内で闘っていたアンジェラスだってクリナーレ達と同じ症状が出るはずだ。 なのに、こいつだけ平然としてやがる。 …前々から思うのだが、アンジェラスだけが他の神姫と比べて違うような気がする。 あぁーもう訳解らん。 「おい天薙」 俺が悩んでいる時に後ろから声を掛けられた。 振り返るとそこに居たのは七瀬都だった。 「っんだよ」 「引き分けだったな。天薙とは前から闘ってみたかったと思ってたけど。ここまで白熱としたバトルをしたのは久しぶりだったよ」 笑みしながら俺に言ってきた都。 悪いが今は構ってる暇がないんだ。 「あっそう。そいつはよかったなぁ」 素っ気無く返事する。 すると都は怪訝な顔してきて。 「どうした?もしかして悔しいのか」 「アァッ!?…そんなじゃねーよ」 「…何か悩みごとか?」 「まぁ…そんなとこだ。…なぁ都」 「なんだ?」 「お前の神姫達は疲れてる様子はあるか?」 「いきなりなんだ?でもまあ、なんだか筐体から出てきてから気だるそうな感じだったな。今もこうしてダルそうにしているだろ」 都の胸ポケットを見ると両ポケットに片方づつ入ってるノワールとハウがグッタリしていた。 予感は的中していたみたいだ。 この分だと都の妹やその男友達の神姫も同じ症状になってるに違いない。 畜生。 なんだか後味が悪いぜ。 「ワリィな都。気分をブチ壊しちまって」 「別に構わない。お前が難しい顔をしてる時はいつも『何かある』時だからな」 「鋭い奴だな。確かにこの筐体には何かある。試作機というのもあるともうが、たった一回のバトルでここまで神姫を疲れさせるのは相当な何かが負荷しているに違いない」 「そうなのか。・・・・・その件、何か出来るか?」 「いや、都を巻き込む訳にはいかない。こいつは俺のバイトをやってる会社が原因だからな」 「そう言うなよ。こっちも暇なのさ」 都はやる気満々みたいだ。 困った事になった。 正直、都が手伝ってくれのは嬉しい…が。 今から俺がやろうとしているのはVIS会社へのハックだ。 もし万が一に会社にバレて都の人生を狂わせるような事になったら俺の責任にでもある。 俺だけならまだいい。 けど親しい奴等を絶対に巻き込みたくない。 これだけは守らなければ。 「悪いけど都はこの件から手を引いてくれ」 「まだ言うか。大丈夫だって、ハウとノワールだって神姫侵食に犯された神姫には負けないさ」 「はぁ~。あのさ、言いたくないけどこの際言わせてもらうぜ」 俺は都に近づき。 「ブッチャけた話、俺と都は住む世界が違う。頼むから手を引いてくれ」 「しかしだな」 「万が一に俺とお前が捕まる事になったら、芋づる形式でお前の妹やその友達も巻き込まれちまうんだぞ!」 「………分かった。お前がそこまで言うなら構わんさ」 やっと解ってくれたみたいだ。 都には悪いが…これもお前のためでもあるんだ。 それだけは解って欲しい。 「でも何かあったら言いたまえよ。相談ぐらいなら出来ると思うがね」 「…相変わらずお人好しだな」 「天薙もそうだろう?」 「ケッ!言ってくれるぜ」 俺は煙草を灰皿に入れる。 「俺はすぐに帰らしてもらうぜ。やる事がまだあるからな」 「そうか。もし次に店に来る時は沢山本を買ってくれよ」 「俺の欲しい物があったらな。あばよ」 都と別れた後、姉貴に方に行った。 「おい姉貴。この症状はいつ頃に治る?」 「え、症状?」 「恍けるな。たった一回のバトルでこんなに神姫がバテルのを見たのは初めてだぞ。あの筐体のプログラムの所為じゃないのか」 「う~ん、そうかもしれないわね。まだ試作段階だからなんとも言えないけど。でも、その症状はすぐに回復するんじゃないかしら。長くても数分よ。神姫だってそんな柔に出来ていないんだから」 「たく、次から気をつけてくれよ。俺の神姫は兎も角、あいつ等の神姫まで巻き込むのは気にくわないからな。それとちゃんとあいつ等に金を払っとけよ。態々来てもらったあげく変な症状まで発生させたんだからな」 「大丈夫よ~。そのうちほっとけば治るし」 だぁ~、まったく…開発者が言う言葉じゃないよな。 しっかりしてくれよ、姉貴の奴。 さてっと、今日の用事はこれで終わった事だし、家に帰って色々とやらないとな。 「そんじゃあ姉貴、俺は先に帰らせてもらうぜ。どうせ姉貴は会社の奴等と帰るんだろ」 「そうね。まだまだヤらないといけない事が沢山あるし」 「そうかい。まぁ頑張れよ」 俺は武装神姫センターを出た。 外へ出ると熱気が身体中を包み込んだような暑さが襲ってくる。 …うげ~、朝来た時よりも暑いぞ。 早く車の中に入らないと身体の水分が抜けてミイラになりそうだ。 …ミイラというか干物っと言った方が正しいかな。 って、そんな冗談言ってる暇なんかない。 車、車っと~。 ガチャ 「ウヲッ!?」 ドアを開けた瞬間、更なる熱気が俺と神姫達を襲う。 外の暑さで暖められた車の中はサウナー状態だった。 この暑さなら人間を殺せるぐらいレベルだと思う。 嫌だな~、この中に入るぐらいなら外の方がまだマシだ。 でも、そんな事は言ってられない。 俺は暑さに我慢しながら車の中に入った。 入ったと同時にエンジンを掛けエアコンの冷房と風量を最強にした。 ブオオオオォォォォーーーー!!!! 「ドワッ!?アッチィーーーー!?!?」 冷房つけたのに何故か暖房並み以上の風が顔に当たった。 でもこれはしかたない事。 元々車が暑くなってるので、すぐには冷たくならないのだ。 「アニキ~。ボク、暑さで死んじゃうよ~」 「私も~、お兄ちゃん~助けて~」 「俺も暑いんだから我慢しろ。そのうち冷たくなるから」 車につけてるMP3プレイヤーの電源をONにしBGMを流す。 『To Heart/Piece of Heart』の『新緑の草原』だ、この曲は結構好きな部類にはいる。 それから少しの間は車の中でグデ~としていた。 そして数分が経った頃、車の中がそれなりに冷えていたので俺は運転しようとした。 「そろそろ出すかぁ。お前等、車を発進させるからしっかりつかまってろよ」 「はぁーい…了解です、ご主人様」 「早く帰ろうよ~ダーリン」 「はいはい。つか、アンジェラスもこの暑さにはバテるか」 幾分か車の中が冷えたとはいえ身体の中がポカポカしている。 簡単に言うと身体の中に熱がこもってしまった。 外と先程の車の中はそれ程暑い証拠という訳かな。 って、そんな証拠いらないけどね。 車を走らせ出口に向かう道を走る。 そこへ丁度神姫センターの出入り口から都達が出てきた。 お、暑さでダルそうにしてるよ。 丁度、神姫センターの目の前を通るし話掛けてみるか。 「よぉー。今帰りかい?」 「あっ。天薙は車で来ていたのか」 運転席ドアに寄りかかって来た都。 「悪いけど、シガーライターを貸してくれないか?百円ライターのガスが切れてね」 「煙草が吸えないっと。解った、今貸してやるよ。ほら」 「ありがとう」 都は咥えた煙草にシガーライターで火をつける。 煙草に火がついた事を確認した都は俺にシガーライターを返した。 俺もついでにシガーライターで煙草に火をつけた。 「むむむー…」 「ワリィなアンジェラス。今だけは勘弁してくれや」 「今だけですよ」 頬っぺたを膨らましてプンプンと怒るアンジェラス。 アンジェラスも俺が仲良く友達と煙草吸いながら喋ってる時は邪魔しないようだ。 まぁそいう事が解ってくれるからこそお前の事が好きなんだよ、俺は。 「どうせなら乗って行くか?都の店なら解るし」 「いや、いいよ。自分の足で帰る。天薙だって色々と大変だろう?」 「ウワッ。フラれっちまったよ」 「フラれっ…って、お前は私の事が好きなのか?」 「好きだぜ。良き友達としてな」 「そんな所だと思ったよ」 「おっ!もしかして、結構俺へのフラグがたっていたのか?」 「そんなわけないさ。男には興味が無くてね。私もお前と同じ気持だよ」 「『良き友達』としてかぁ。まぁ、都とは今のこの関係が壱番いいと思うしな」 「同感だ」 お互い煙草を吸い、ニヤニヤと笑いながら話に花を咲かせる。 そんな中、蚊帳の外状態の都の妹の春奈とその男友達の良平の方になんとなく目がいった。 こんな暑いなか律儀に俺と都の会話が終わるまで待っていてくれやがる。 よし、ご褒美に今の俺にとって不要なチケットをやるか。 確か財布の中にあったよな…お、あったあった。 「お~い、八谷良平ー!」 「は、はい!?」 「ちょっとこっち来いや」 大きな声で呼ぶと少しビクビクしながら俺の車に近づく。 もしかしてヘタレか? 「な、なんでしょうか?」 「そーオドオドするなって。俺が怖いかい?」 「・・・・ちょっと…怖いです」 あれま。 俺が怖いかぁ。 今は別にガン飛ばしたり威圧感を出してる訳でもないしなぁ。 まぁいいや。 「右手を出せ」 「え?」 「ツベコベ言わず右手を出せばいいんだよ」 「は、はい!」 …あのさ。 そこまで怖がれると流石の俺も悲しくなるよ。 別に俺は何処にでも居る普通の大学生なのに…。 そんなヤクザに絡まれたように怯えなくていいのにさぁ。 俺は良平の右手に不要のチケットを二枚乗せた。 「えっ…これって最近出来たプールのテーマパークの二泊三日無料招待チケット?」 「やるよ。今の俺にはただの紙切れに過ぎないからな」 「いいんですか!?」 「そんなに驚くなよ。どうやら君はヘタレみたいだし、見かねた俺が少し助け舟を出したまでに過ぎねー。うまく誘うだぞ」 「誘うって…」 「都の妹、春奈に決まってるだろうが」 「エエエエェェェェーーーーモゴモゴッ!?!?」 良平の口に俺の左手で覆い被せるように声を遮る。 まさか、叫ぶとは思わなかった。 ベタベタな展開ぽいぞ、これじゃあ。 「バッカ!声が大きい!!」 「ごっ!?ごめんなさい!」 「まったく…お前は何処までヘタレなんだよ。そんなじゃ春奈に好きになってもらえないぞ」 「な、なんで僕が春奈の事を。別になんとも」 「隠すな隠すな、チェリーボーイ。見てるだけで解るんだよ、俺にはな」 「本当になんでも無いですよ!」 「はいはい。兎に角そのチケットを使うか使わないかは、テメェで決めろ。そのぐらい意思が無かった時はお前は本当にヘタレだ」 「ウウゥゥ…」 「悩め。悩みに悩んで決めろや。それが男という者でもあるんだからな」 「…よく考えてみます」 「それでいい。行ってよし、あばよ」 八谷良平を解放してやると都がニヤニヤしながら来た。 「ふふ・・・、何かしたのか?」 「何かしたねー。どうしても知りたかったらヘタレな良平君に聞きな」 「何かねそれは?」 「気にするなという事だよ。今年の夏は中々楽しかったぜ。また会おう、七瀬都」 「あぁ。またな、青年」 「…最後の最後に『青年』かい」 俺は都に一瞥してアクセルを踏み神姫センターを後にした。
https://w.atwiki.jp/cwcwiki/pages/684.html
武装神姫 BATTLE MASTERS Mk.2 武装神姫 BATTLE MASTERS Mk.2ID+ゲーム名1回の戦闘でLOVE 1UP 1体目から30体目の神姫LOVE xx 1体目神姫Love 所持金MAX コストオーバー ○ボタン レールアクション全部 神姫全部購入可能 全武装1個所持 HP減らない 攻撃当たらない L+R+セレクトで即勝利 移動距離2倍 神姫巨大化 公式バトルのレギュレーションチェックスキップ 装備変更時に武装ランクとコストオーバーのチェックをスキップ Ver1.01用コード神姫ポイント 1回の戦闘でLOVE 1UP 1体目の神姫 LOVE 30 30体目までの神姫 LOVE 30 1.01用の装備のコストとランクチェック無視 即勝利 全武装 初回対戦会話フラグON レールアクション全部 LP減らない SP減らない ブーストゲージMAX ライドレシオゲージMAX ロックオン外れない ID+ゲーム名 _S NPJH-50453 _G BUSOU SHINKI BATTLE MASTERS Mk2 ※アップデータを適用した場合はアドレスがズレる場合あり。 1回の戦闘でLOVE 1UP _C0 EXP _L 0x203CA430 0x000927C0 1体目から30体目の神姫LOVE xx _C0 1-30 LOVE _L 0x8038E057 0x001E02C4 _L 0x000000xx 0x00000000 ※xxは1からFF[255]まで、1E[30] 1体目神姫Love _C0 1 LOVE _L 0x00038E057 0x000000xx ※2体目以降は+2C4h 所持金MAX _C0 MONEY MAX _L 0x2038DE70 0x3B9AC9FF コストオーバー ○ボタン _C0 cost over ○push _L 0xD0000001 0x10002000 _L 0x604DF8E4 0x00000000 _L 0x00010001 0x000000E0 レールアクション全部 _C0 Rail Action All _L 0x803A7C90 0x006D0001 _L 0x00000001 0x00000000 神姫全部購入可能 _C0 ORIGINAL BODY ALL _L 0x803A418F 0x00420006 _L 0x00000001 0x00000000 全武装1個所持 _C0 All WEAPON _L 0xE0078084 0x001C8692 _L 0x201C8690 0x0E200400 _L 0x201C8694 0x80850000 _L 0x20001000 0x24050001 _L 0x20001004 0xA0850000 _L 0x20001008 0x80840000 _L 0x2000100C 0x03E00008 _L 0x20001010 0x3084007F ※所持数ズレた時は全神姫購入後、下記の2行をONにすればOK _L 0x803A4180 0x00890001 _L 0x10000181 0x00000000 ※DLCOPENはセーブ後も効果残るんでなんか不都合出たら各自対処 HP減らない _C0 HP NOT DEC _L 0xD0278D62 0x000014C7 _L 0x20278D60 0x14C00003 攻撃当たらない _C0 INVINCIBLE _L 0xE0020002 0x00277EF8 _L 0x20277EF8 0x8E2401A8 _L 0x20277EFC 0x10800014 L+R+セレクトで即勝利 _C0 INSTANT WIN L+R+SELECT _L 0xE00201A8 0x0022837C _L 0xD0000000 0x10000301 _L 0x2022837C 0x00003021 移動距離2倍 _C0 MOVING DISTANCE x2 _L 0xD0273214 0x00003F80 _L 0x20273214 0x3C084000 神姫巨大化 _C0 DEKA SHINKI _L 0xE0070008 0x0025E698 _L 0x2025E698 0x0A2005C0 _L 0x20001700 0xAE670008 _L 0x20001704 0x3C043FD0 _L 0x20001708 0xAE040060 _L 0x2000170C 0xAE040064 _L 0x20001710 0x0A2979A8 _L 0x20001714 0xAE040068 公式バトルのレギュレーションチェックスキップ _C0 NO REGULATION _L 0x2005D744 0x10000016 装備変更時に武装ランクとコストオーバーのチェックをスキップ _C0 EQUIP LIMIT OFF _L 0xE0025080 0x001CA6F2 _L 0x201CA6F0 0x1000007C _L 0x201CA8FC 0x1000007D 中華の長いマスターコードの分割について。当環境のPRO-Bで、18行目の「_L 0x00002020 0x00000000」までで1コードにした場合になるが、HP,SP,Boost Gauge、Raid Ratio,時間停止,敵一撃死までの効果を2周目クリアまで、正常動作を確認した。ただし、もうすでにスレのほうにマスターコードを使わなくても同等の効果の出せるコードがあり、そちらも同PRO-B環境で効果を確認しているので、中華のコードが嫌いな方はそちらを使ったほうがいいかも…。 -- (名無しさん) 2011-09-29 13 22 20 Ver1.01用コード 神姫ポイント _C0 money 9999999 (1.01) _L 0x2038FED0 0x0098967F 1回の戦闘でLOVE 1UP _C0 1battle 1LOVE up (1.01) _L 0x203CC490 0x000927C0 1体目の神姫 LOVE 30 _C0 1 LOVE 30 (1.01) _L 0x0003900B7 0x0000001E 2体目以降は+2C4h 30体目までの神姫 LOVE 30 _C0 1-30 LOVE 30 (1.01) _L 0x803900B7 0x001E02C4 _L 0x0000001E 0x00000000 1.01用の装備のコストとランクチェック無視 _C0 Cost and Rank Not Check (1.01) _L 0xE0025080 0x001CB9F2 _L 0x201CB9F0 0x1000007C _L 0x201CBBFC 0x1000007D 即勝利 _C0 INSTANT WIN(START) (1.01) _L 0xE00201A8 0x0022973C _L 0xD0000000 0x10000008 _L 0x2022973C 0x00003021 全武装 _C0 All Weapon (1.01) _L 0xE0078084 0x001C9992 _L 0x201C9990 0x0E200400 _L 0x201C9994 0x80850000 _L 0x20001000 0x24050001 _L 0x20001004 0xA0850000 _L 0x20001008 0x80840000 _L 0x2000100C 0x03E00008 _L 0x20001010 0x3084007F 初回対戦会話フラグON _C0 firstcontact ON (1.01) _L 0x202B6C28 0x30840000 レールアクション全部 _C0 Rail Action All (1.01) _L 0x803A9CF0 0x006D0001 _L 0x00000001 0x00000000 LP減らない _C0 Player LP (1.01) _L 0xE0033010 0x00228D1C _L 0x20228D28 0xC64C291C _L 0x20228D2C 0xE64C2918 _L 0x20228D40 0x44047000 SP減らない _C0 Player SP (1.01) _L 0xE0013010 0x00228D1C _L 0x20228D94 0xC64C2938 ブーストゲージMAX _C0 BST MAX (1.01) _L 0xE0013010 0x00228D1C _L 0x20228DC8 0xC64C2954 ライドレシオゲージMAX _C0 RAID RATIO MAX (1.01) _L 0xE0033010 0x00228D1C _L 0x20228DF0 0xC64C2994 _L 0x20228DF4 0xE64C2990 _L 0x20228E10 0x44066000 ロックオン外れない _C0 NO LOCK-ON RELEASE (1.01) _L 0xE0024500 0x0026F776 _L 0x2026F774 0x10000003 _L 0x20270158 0x00000000 武装神姫バトルマスターズMk.2 チート(現行スレ) http //kohada.2ch.net/test/read.cgi/gameurawaza/1323353116/
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2849.html
設定ダブっていたらすいません。 形骸化するかもしれないけど一応。 使えそうな設定があれば使って構いません。 バトル形式 アンリミテッド 筐体で神姫同士を直接戦わせる形式。 大きな大会やFバトルなどの主流だが、ゲーセンでも可能。 バトルロンド 電脳空間で神姫を戦わせる形式。 メジャーな形式で、その気になれば全国どころか全世界の神姫との対戦が可能。 ライドスタイル 神姫ライドシステムを用いて、一体化して戦う形式。 Fバトルではアンリミテッド形式と併用される時もある。 ストリート 野外などで行われる形式。 アンリミテッド形式と性質が近いが、保証外の可能性が高い。 ファイトネーム 神姫マスター達が本名とは別に、神姫バトルで用いる呼び名。 二つ名 神姫に付けられる、一種の称号。 バトルスタイルや特徴から命名される場合が多い。 ただし、嘲笑うかのように皮肉ったものを付けられる場合もある。 他作品での一例として、赤羽雷神の 下から二番目(セカンドラスト) 、タカヤ・ノリコの 全滅娘 など。 神姫の機構等 構造系 骨格フレーム(人間で言う骨。頭蓋骨相当のものもある)、アクチュエータ(関節)、CNT製の人工筋肉(筋肉。股関節や顔面等に採用)、バッテリー、コアユニット(脳。バトロンでの頭部)、CSC(中枢部。脳機能もある) 、外装(外皮や頭髪等)などで構成。細かい部分は公式とか参照。 人工筋肉についてはMGRを参考にした。 外装は作者の言い回しの都合。 機体強度について バトマスでのアーティルイベントの動画を見て参考に。 多少の衝撃や負荷では破損しないくらい頑丈。 コアユニット及びCSC周り(主に内装部)は特に強靭で、神姫の武器で損傷させるのは困難。 ただし”困難”なだけで、損傷しないわけではない。 稼動時間について 稼動状態により変動するが、フル充電の状態から約二日、省電力モードなら数日。 大容量バッテリーや高効率の駆動系等を使えば多少延びる。 充電は1日1回を目安に。 充電はフル充電と急速充電がある。 人工筋肉について MGRの設定を参考にした駆動システム。 柔軟な稼働と高い靭性を兼ね備える。 一部の関節がBLADE氏のアレ風な感じのラインになるということで。 オリ武装 自作もしくは特注された装備など。 他の作品にも出る「オリジナルのパーツ構成」によるものも含む。 ライドレシオ ライドスタイルにおける概念で、所謂「同調率」「シンクロ率」のこと。 最大同調時はライドレシオMAXともいい、戦闘力が上昇する。 バトルモード バトロンからの流用+α。 神姫の最大戦闘形態。略称はBM。 追加設定として、「アンリミテッドルール等のリアルバトルでも発動可能」「ライド状態でも発動可能」「発動はある程度任意で可能」 その他的なもの ライドオンギア MoonAngelから採用。 ライドシステム用のガントレット型アイテム。略称はROG。 ストリート等で用いられる。 バイザー 幾つかの作品でおなじみ(?)アムドライバーの戦闘ビークル。 巡航形態バイザーモードと戦闘形態ブリガンティモードの形態をもつ。 そのまま運用したり、オリ武装に組み込まれたりする。 死に設定になる可能性ががg ちなみに作者はバイザーシリーズを持ってない。当時欲しかったが。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2158.html
ウサギのナミダ ACT 1-28 ■ マスターは家に帰るまで、ずっと無言だった。 胸ポケットの中で、やっと落ち着いたわたしは、マスターの顔を見上げる。 マスターはいつも真剣な表情の人なのだけれど、なにかいつも以上に脇目も振らない様子だった。 すでに夕闇が迫っている。 足早に帰宅を急ぐ。 マスターが何をそんなに急いでいるのか、このときのわたしにはまだ分かってはいなかった。 家に着いて、マスターがまずしたことは、わたしをクレイドルに座らせることだった。 わたしは素直にクレイドルに座った。 わたしは少し沈んだ思いで、マスターの指示を待つ。 今日のわたしを、マスターはどんな風に思っただろうか。 雪華さんとの試合の後、なし崩しに騒ぎになってしまって、マスターとお話する時間もなかった。 あの時、わたしは感情の高ぶるままに言葉を口にした。 そんなことは初めての経験で、今のわたしは自分の行動にとても驚いている。 マスターはとても驚いていた。でも、わたしは言葉を止めることができなかった。 分かってもらいたい、それを伝えなければいけないと思うほどに、強い想いだった。 それは後悔していないけれど。 マスターがどう思ったのか、それだけは気がかりだった。 マスターは、カップに飲み物を入れて、机の前へとやってきた。 いつものようにPCの電源を入れると、椅子に腰掛ける。 クレイドルに座るわたしと向かい合う格好になる。 カップを机におく。 そして、軽く吐息をついた。 「さて……どこから話そうか、考えていたんだが……」 マスターはいつものように、真っ直ぐわたしを見た。 だけど、無表情じゃない。 どことなく優しげな、落ち着いた表情で、でも瞳にはなにか決意のようなものを秘めているように見えた。 「ティア……お前に分かるかな……どうしても欲しいものが、どうしても手に入らないときの苦しみってやつが」 え? マスターは何を話しているんだろう。 わたしは目をぱちくりとさせて、マスターを見る。 マスターはあまり表情を変えないまま、優しい口調で、ゆっくりと話し始めた。 「俺はもうずっと……お前と会うずっと前から、武装神姫のオーナーになりたかった。 バトルロンドを始めたくてな。 神姫に興味を持ったのは、お前も会ったことのある、海藤とアクアを見てからだ。 ……そうだな。今回の件の報告も兼ねて、今度会いに行くか。 海藤とは高校の頃から仲が良くて、違う大学に進学しても、よく会ってた。 もっぱら俺があいつの家に行ってたんだけど。 そのたびに、海藤とアクアの仲の良さを見せつけられてな……俺だけじゃなくて、他の友人たちも神姫に興味を持ったというわけさ」 マスターは独り言を言うように話を進めていく。 これは……この話は、マスターの本当の想い……。 「それからずっと……探していたよ、俺の神姫を。 友達が次々と神姫のオーナーになっていく中で、俺は神姫を迎えられずにいた。 あちこちのショップにも行った。 神姫センターにも行って、バトルロンドの観戦もしたし、そこで興味が出た神姫のパッケージも手に取った。 新発売の神姫の情報はくまなくチェックした。 メーカー展示会に気になった神姫を見に行ったりもした。 ネットオークションで安く出回ってるパッケージ品もチェックしたし、ネットショップの掘り出し物も何度もチェックした。 ……海藤の家でアクアを見てから、お金を握りしめてホビーショップに行ったことだって、一度や二度じゃない。 それでも……それでも俺は、神姫を買うことに踏み切れなかった」 マスターの寂しそうな表情。 その時の気持ちを、思い出しているのだろうか。 「なぜ、ですか?」 わたしは尋ねた。 もちろんその時に、マスターが神姫をお迎えしていたら、わたしは今こうして、マスターと話をしていることもないのだけれど。 「どうしても……納得が行かなかった。 どの武装神姫のパッケージを手にしても……これが俺の神姫だって、思えなかった。 だから、どんなに神姫マスターになった友達が羨ましくても……俺は神姫を迎えられなかったんだ。 どうしても、自分が心から納得の行く神姫がほしかったんだ」 マスターはわたしを見つめながら、かすかに苦笑した。 「その頃の俺の気持ち……分かるかな……。 武装神姫のオーナーになりたくてなりたくて……狂おしいほどに神姫が欲しくてさ。 そのくせ、どこを探しても、自分の神姫が見あたらないんだ。 すでに発売されているものなら、探しようもある。プレミアついていたって、お金を出しさえすれば手に入る。 でも……この世にいるかどうかもわからない『自分が納得の行く神姫』を探すなんて……雲を掴むような話だ。 探して探して……必死で探しても見つからなくて……あの何とも言えない、焦りというか渇きというか……そんな、胸をかきむしりたくなるような焦燥感が、いつも心にあってさ……。 神姫の情報を集めたり、見たりするのは楽しいのに、それが欲求を逆撫でして苦しくなるような……そんな感覚に苛まれる。 友達はみんな神姫マスターになって、楽しそうに、幸せそうにしていてさ。 それで俺はまた焦りと羨ましさにかられて……その繰り返しさ」 マスターは自嘲するように笑う。 ……知らなかった。 マスターが武装神姫にそんなに強い想いを抱いてたなんて。 わたしは呟くように話すマスターの顔から、目が離せなくなっている。 「……あの夜……お前と出会ったあの夜、俺は飲み会の帰りだった。 気心知れた仲間たちとの飲み会だったんだけど……俺はちょっと機嫌が悪くなった。 神姫マスターになった連中は、口をそろえて言いやがる。 『そんなにこだわって選んでないで、とりあえずお迎えしてみればいいじゃないか』ってな。 連れてきた神姫と笑いながら……そう言うんだ。 腹立たしかったよ。 とりあえず、ってなんだよ。大切なパートナーを選ぶのに、こだわるのが当たり前だろう。 でも結局、俺は神姫マスターでない時点で、仲間たちの言葉に反論もできなかった。ただ、苦笑するしかなかったんだ」 そう言うマスターの表情は、少し悔しそうだった。 その時の感情を思い出しているのだろうか。 そして、マスターは言った。 「その後で……お前に出会ったんだ……」 ものすごく、安心したような、優しい顔をして。 見たことない、そんなマスターの顔。 わたしはかえって緊張してしまう。 「ゴミ捨て場で、あいつが……井山が何か悪態ついて捨てたのを、たまたま見かけたんだ。 ゴミのポリ袋の上でうめいていたのがお前だった。 見た瞬間に『ああ、これが俺の神姫だ』って思った。 当たり前みたいに……いや、衝撃的だったかな。どうだろう。 ただ、これが運命なんだって思ったんだ。 ……いや、違う。格好つけすぎだな。 たぶん、お前に、一目惚れしてしまったんだ」 照れくさそうに笑うマスター。 今日のマスターはいつもと違う。 まるで菜々子さんと話すときのように、くるくると表情が変わる。 「それでお前を連れて帰ってきた。 クレイドル買ってきて、充電して、メンテナンス用のソフトをPCにセットアップして……舞い上がっていたと思う。 俺の神姫がやっと手元に来た、ってな。 お前の記憶を見て……俺も一瞬ひるんだ。それでも、お前を自分の神姫にしたい気持ちは変わらなかった。 これが運命でなくて何だ、って思ったよ。 ……そしたらさ、目覚めたお前が言うんだよ。 『わたしをお店に戻してください』 って」 ……あ。 思い出した。 あの時わたしは、自分のマスターになりたいというこの人に、そう願ったのだ。 あの時、マスターはわたしにものすごく怒ったけれど。 わたしはなんで怒られるのか、よくわからなかったけれど。 いまなら分かる気がする。 「そりゃないだろ。 俺はやっと、やっとの思いで自分の神姫を見つけだしたって言うのに、地獄のような場所に返してください、じゃあさ……。 そりゃあ怒りもするさ、俺でも。 どうしても諦められなかった俺は、お前を言葉で丸め込んだ。 お前が武装神姫になりたいかどうかなんておかまいなしで……俺が望む戦闘スタイルを押しつけた。 さんざん練習させて、つらい思いもさせた。 お前が俺のところから逃げられないのが分かっていて、そんなことさせていた」 マスターの言葉に、何か違和感を感じる。 わたしは……武装神姫になりたくなかった? マスターが望む戦闘スタイルが嫌いだった? 練習は、つらかった? マスターのところから逃げ出したかった? ちがう。 ちがいます。 わたしの想いとマスターの考えはすれ違っている。 マスターは無理矢理わたしを武装神姫にしたというけれど。 わたしがそう望むのなら、それは、無理矢理ではないんじゃないですか? 「……それでも、俺は嬉しかったんだ。 自分だけの神姫と、俺たちだけの戦闘スタイルで、バトルロンドを戦えるのが。 夢が叶った、と思った。 久住さんや仲間たちにも出会えた。ゲームセンターで過ごす時間は……バトルロンドをプレイしている時は、本当に楽しかった。 そんな時間をくれるお前に、ずっと、感謝していたんだ。 でもな……心の底ではずっと思っていた。 本当は、俺の楽しみのために、ティアを無理矢理戦わせているだけなんじゃないか、って。 お前の自由を奪って、自分だけ楽しんでいるエゴイストなんじゃないかって」 「そ、そんなこと……ありません!」 わたしはついに口を出してしまった。 マスターの話を遮ってしまった。 臆病な心が、顔を覗かせようとするけれど。 でも、わたしは勇気を出して、言う。 声が震えててもかまわない。 言わなくちゃ。 だって、マスターは間違っているから。 「わたしも……わたしも幸せでした。 薄暗いお店しか知らないわたしに、世界を教えてくれたのはマスターです。 わたしが知らなかった気持ちを……楽しい気持ちも、嬉しい気持ちも、風の心地よさとか、友達の優しさとか、技を自分のものにできたときの喜びも……全部全部、マスターがくれたんです」 こんなに幸せでいいのかって、今でも思ってる。 マスターは少し驚いたような顔をしていた。 「……そうなのか?」 「そうですよ」 「それなら……お前がそう思ってくれるなら、俺も救われるよ。 俺はこの間思ったんだ。 ……もし、バトルロンドができなくなったとしても、お前が走ることができれば、それでお前が喜んでいるのなら、それでいいって。 何より大事なのは、お前がそばにいてくれることだってな」 ほっとした表情で、そんなことを言った。 やっとわかった、マスターの本当の気持ち。 でも、わたしは以前から疑問に思うことがある。 「あの……」 「なんだ?」 「ほんとうに……ほんとうに、わたしなんかでいいんですか」 「わたしなんか、って言うな」 いつもの言葉。 でも、厳しいところは、表情にも口調にもなくて。 優しく微笑んでいる。 わたしに向かって。 「お前じゃなきゃ、だめなんだ」 ……ああ。 さっき言っていたマスターの気持ちが、いま、少しだけわかった気がする。 欲しくて欲しくて、それでもどうしても手に入れられないもの。 わたしにとって、それは、マスターの笑顔だった。 いま、このマスターの笑顔こそ。 わたしがずっと、欲しくて欲しくてやまなかったもの……。 「でも……わ、わたしは……マスターに、とんでもない迷惑をかけてしまって……」 「迷惑なんて、いくらでもかければいい。それでもいいんだ」 「じゃ、じゃあ……手の甲をわたしに差し出すのは……?」 「お前、掴もうとすると怖がるだろ」 「……わたしの前で、表情を変えないのも……?」 「なんだ、気がついていたのか? 俺が表情を変えなければ、お前が不用意に怖がらなくてすむだろ」 やっぱり。 無表情のことは、この間、やっと気がついたのですけど。 マスターは照れくさそうな顔をして、頭を掻いた。 「まあ……俺は元々、仏頂面だからな……」 「で、でも……マスターとわたしは、毎日顔を合わせてました。 それなのに……ずっと無表情でいるなんて……」 「そんなの、お前が俺の神姫でいてくれるなら、大したことじゃない。 いつかお前が俺のことを心から信じてくれたら……そうしたら、掴むことも許してくれると思ったし、笑いあうこともできるって……信じていた」 そんな……。 「わたしは……ずっとマスターに笑って欲しいと思っていました」 「そうなのか?」 「そうですよ」 マスターは苦笑する。 「そうか……俺たちはお互いに、お互いの笑顔を見たいと思いながら、ずっとずっと遠回りしてきたんだな……」 「……そうですね」 「なぁ、ティア……」 マスターは不意に真剣な表情でわたしを見た。 真っ直ぐな視線。 この人は真っ直ぐにわたしを見てくれる。初めて出会ったときから、ずっと。 「俺の神姫で……いてくれるか? 俺はバトルロンドを続けたいけど、お前が嫌だというならそれでもいい。 こんなわがままで情けない男でも、マスターと認めてくれるか?」 ……どうしてそんなに自信なさげなんですか? もう答えなんて、決まりきっていることじゃないですか。 それをはっきりと伝える方法を、わたしは思いついた。 「マスター。手のひらを出してください」 「……? こうか?」 マスターは怪我をしていない方の左手を、手のひらを上にして、わたしの前に出した。 わたしはクレイドルから立ち上がり、マスターの手に歩み寄る。 そして、その手の上に腰掛ける。 ちょっと緊張したけれど、何も怖いことなんてなかった。 この人を信じているから。 マスターの親指に顔を寄せて、キスをした。 「これは……わたしの誓いです」 顔を上げて、マスターを見る。驚いてる。 わたしはうつむいてしまう。 マスターの顔、まともに見られない。いまさら、とても恥ずかしくなって。 「わたしはあなたの神姫です。 わたしのマスターは、世界でただ一人、あなただけだと……誓います」 マスターの手はあたかかくて、心地いい感じがした。 もう一度、マスターを見る。 わたしの顔はこれ以上ないほど赤かったかも知れないけれど。 マスターも、とても照れくさそうな顔をしていた。 やがて、見つめ合うわたしたちは、どちらからともなく笑い始めた。 マスターと初めて心から笑いあえた。 ああ。 わたしが一番欲しかったものが、今ここにある。 長い長い一日の果てに。 わたしは、本当の意味で、遠野貴樹の武装神姫になった。 次へ> トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/gamemusicbest100/pages/3181.html
ぶそうしんき バトルマスターズ 機種:PSP 作曲者:ベイシスケイプ(並木学、上倉紀行、工藤吉三)、佐藤直之、岩崎健一郎 開発元:ピラミッド 発売元:コナミデジタルエンタテインメント 発売年:2010年 概要 コナミから発売されているアクションフィギュアシリーズ『武装神姫』が原作の3Dアクションゲーム。 ロードが長い、DLCが高いなどの欠点は多いが、キャラは個性的でかわいく、ゲームの出来も悪くは無い。 2011年にアップグレード版の『武装神姫 BATTLE MASTERS Mk.2』が発売された。 BGMはベイシスケイプが担当。「かわいらしい女の子キャラのゲーム」というより「近未来のロボットバトル」のイメージの強いものが多い。 収録曲 曲名 作・編曲者 補足 順位 RIDE ON Prologue Map Shinki Center Arms Edit Ready Battle "Coliseum" Battle "Sky" Battle "Black blizzard" Win Jingle Battle "Ruins" Battle "Waterfall" Battle "Examination room" Victory Jingle "Title Match" After Battles My Room Game Center F BATTLE Battle"F BATTLE Title Match" Victory Jingle "F BATTLE" Victory Jingle "F1 BATTLE" Junk Shop Varuhara Battle "The Hardes" 工藤吉三 第7回686位第8回286位第9回437位第10回238位第11回398位PSP29位 Lose Jingle 喜 怒 哀 楽 Maochao Clutter Chitose's Theme Hazuki's Theme Gaia's Theme Epilogue キズナ 岩崎健一郎 エンディングテーマ歌:藤原加奈絵 サウンドトラック 武装神姫BATTLE MASTERS オリジナルサウンドトラック 現在CDは品薄だが、iTunes Storeで曲を購入可能。
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2669.html
8東京都Fバトル会場付近の神姫センターは普段とは段違いなまでの度数の熱気に満たされていた。真夏の甲子園を連想させる感情の嵐は通常の規格よりも巨大な筺体を中心として渦巻き観客達の様々な声が神姫バトル参加者に襲い掛かる。或る神姫の可愛らしさを褒め称える様な歓声、或る神姫の危機を救わんと叫ぶ悲鳴、或る神姫の卑劣を詰る様な怒号。一つの場所に人の密集度が高いと言うのはそれだけで重圧となり或る神姫プレイヤーは身体が竦み或る神姫プレイーは吐き気にも襲われていた。 魔物でも住んでいそうな文字通り阿鼻叫喚の異世界の中で黒野白太/イシュタルは普段通り、到って普段通り悪役を演じていた。参加者十五名の神姫バトルロワイアル、森林の多い山岳地帯の夜となれば森林に身を潜めて奇襲を狙うのは定石だろう。だが卑怯卑劣が売りの黒野白太/イシュタルは何故か今回のバトルに限って身を隠す事は無く悠々と散歩でもするようなノリで森林地帯を歩いていた。そんな事をすれば参加者の誰かに奇襲されるのは当然の事で、然しながら奇襲は失敗しそれから予定調和と言わんばかりに普通の戦闘になる。 武器を壊す『刃毀れ』の黒野白太/イシュタルへの奇襲に失敗したモブキャラは武器の破壊を怖れ出来る限り距離を取って攻撃する。そんなテンプレ的な対応策にテンプレ的な対応策の対応策として黒野白太/イシュタルは弾幕を?い潜り得意な近距離格闘(レンジ)で襲い掛かる。ストラーフMk2型とは思えない素早さで接近されたことに焦ったモブキャラは急いで小剣を取り出し振り下ろされた大剣を防御するが勢いだけは殺し切れず仮想空間の地面に叩きつけられ急いで起き上がろうとするも背中を踏まれ押し付けられる。 黒野白太/イシュタルは大剣を下向きにして持ちそのままの振り下ろしてモブキャラのリアパーツのみを破壊すると脇腹を蹴り飛ばした。敗北を覚悟した筈なのに壊されたリアパーツだけ、意味が分からないと言う視線に黒野白太/イシュタルはヘラヘラと笑って返す。 「何? どうしたの?」 神姫越しに見えそうな黒野白太の表情と神姫の声帯を借りて聞こえた黒野白太の声に言い様の無い不安を感じた。尻尾を巻いて逃げようと決めた時には既に遅くストラーフMk2型標準装備のリアパーツの副腕に掴まれて引き寄せられる。何とかもがいて副腕の呪縛を解くと同時に黒野白太/イシュタルは両手に持つ二本のナイフをモブキャラの神姫の素体に滑らせるように走らせる。 ほんの刹那に神姫の素体を一切傷付ける事無く胴体を守る装甲の留め具や接続部を破壊し崩れ落ちたパーツをこれ見よがしに踏み砕く。その神業的なナイフ捌きへの驚きよりも黒野白太/イシュタルの目的を知った事への恐怖がモブキャラの中で勝っていた。目の前の武装神姫は遊んでいる、何時でも倒せると言うのに敢えてそれをせず極限の精密動作性で装甲を壊す事を楽しんでいる。 「ほら、どうしたの? まだ武器はあるでしょ?」 副腕の拳がモブキャラのヘッドパーツに命中し大きくよろめいた所で黒野白太/イシュタルが目前にまで迫る。 小剣で斬りつけようとするが両掌を掴まれて動かせずそれならばと蹴りを放つが足が届く前に大きく跳躍したので悪足掻きの蹴りは空を切る。黒野白太/イシュタルは宙で身体の向きを反転させると副腕の掌でモブキャラの頭部を包むとリンゴでも潰すかのような勢いで握り潰す。 グシャァと何かが破裂した音と共にヘッドパーツの部品が副腕の掌からボロボロと零れ出るがモブキャラの敗北判定は出ない。副腕はヘッドパーツを握り潰して破壊しただけでありモブキャラには僅かなダメージも与えていない。それでも精神面は言い様が無くダメージを受け続けておりなまじその手に武器があった事が降参と言う最善の選択肢を引き留めていた。 「う、うァアアアアアアアッッッ!」 ホラー映画の犠牲者宜しく咆哮と銃声を奏でるモブキャラに黒野白太/イシュタルは回り込む。所詮ストラーフMk2型であり速度自体は大してないものの時には樹木に身を隠し時にはバク宙をしたりと獣の様な身軽さで翻弄する。段々と距離が縮められ弾丸を撃ち尽くしたモブキャラが急いで装填をし直すがその瞬間を見計らって飛び掛かる。飛び掛かられ押し倒すと副腕でモブキャラの抵抗を抑えつけながらもスカートに手を掛けたかと思えば力付くで引き剥がした。 バトルステージの外、筺体を円形に囲む観客席から男性と卑しい歓声と女性の痛々しい悲鳴の合唱が聞こえて来る。 さて次はアームパーツだと立ち上がって意気揚々とナイフを手に取った黒野白太/イシュタルに人の目がある副審のマシンが警告を届けてきた。曰く装甲の破壊は確かにルール違反ではないが観客にも対戦相手にも気分を害させるので中止するようにと。 何となくモブキャラを見ればモブキャラは仰向けに倒れたままの状態で左手の甲で目を隠しており頬には涙が流れている。どうやら余りにショッキングな出来事にマスターと神姫共に戦意を喪失して泣き出してしまったらしい。もう少し壊したかったのが黒野白太の本音だが当初の目的は果たせたので良しとしイシュタルにモブキャラの首を素体の腕で刺し貫かせた。二度目のグシャァと何かが破裂した音の跡には何も残らず黒野白太/イシュタルは再び悠々と歩き始めた。 『もうこんなのは二度と御免だ。』 『いや、御免ね。でも、こうするしか無かったしさ。』 『二度と「こうするしか無かった。」等とふざけた事を口にするな。』 『分かったよ。でも、僕は悪くない。』 黒野白太の命令とは言え強姦魔のような事をしてしまったストラーフ型Mk2神姫イシュタルは目に見えて激怒している。原因も理由も分かっているが黒野白太としてはイシュタルには元の冷静さを取り戻して欲しかった。恐らく次に戦う事になる相手は今のモブキャラとは異なり一切の雑念を抜いて本気で戦っても尚その剣が届くかどうかすらも危い相手なのだから。内心その時をまだかまだかと子供のように待ち侘びる黒野白太はイシュタルを宥めつつも聴覚を研ぎ澄ませる。周辺は不気味なまでの静寂を醸し出しておりバトルロワイアルだと言うのに別の参加者達が争い合うよう戦闘音も聞こえない。黒野白太の目論見は成功している、後はそれが何時来るかだが――――――来た、観客席の誰か(恐らく男性)が彼女の名前を呼んだ。 彼女の名前を呼ぶ者は一人から二人に、二人から四人に、ミジンコの単体生殖の様に分裂し増殖し神姫センターを彼女の名前で埋め尽くす。彼女とは一体誰か、決まっている、悪の怪人が現れた時に人々が名前を呼ぶのは正義の味方であると決まっている。 「竹姫!」「女帝!」「TAKEHIME!」「葉月御姉様ぁ!」「竹姫葉月!」 渾名『女帝』―――竹姫葉月、神姫バトルの本場である日本の頂点、世界で一番強い神姫プレイヤー。 今日この日神姫センターが普段よりも異常な盛り上がりを見せている原因の八割近くが竹姫葉月の参戦によるものである。黒野白太の目的は竹姫葉月とタイマンで戦う事でありその為に自転車を三時間漕いでまで今回の神姫バトルロワイヤルに参加したのだ。悪名高い『刃毀れ』黒野白太が残虐非道な神姫バトルをすればそれを目にした観客が望むのは『一番強い』竹姫葉月による正義の鉄槌だろうから。 全ては黒野白太の思い通りに物事が進んでいる、事実、他の参加者は黒野白太/イシュタルに何もせず隠れながらも監視している。彼等にしても有力者同士が潰し合ってくれればが助かるのだろうけど、黒野白太にとって他の参加者なんてものはどうでもよかった。 レーダーを頼りに黒野白太/イシュタルは道を誘導するかのような位置に隠れている参加者達に従って森林を歩く。少し経つと森林の牢獄の挟間にある開けた場所、バトルステージ中央の浅瀬の川がある地帯に出た。空には満点の星、雪よりも白い満月、それ等は全て水面に鏡写され、突き出した岩石に腰を降ろすアーンヴァル型神姫の存在感を際立たせている。 「今晩は。月が綺麗ですね、竹姫葉月さん。」 「仮想空間なんですから当たり前でしょう。」 「………久し振りだな、アルテミス。」 「久し振りと言う事は貴方はイシュタルなんでしょうか?以前会った時は初代ストラーフ型神姫でしたよね?」 「色々あって前のボディが使い物にならなくなっちゃってね。神姫一転って事で移し替えたんだよ。」 「そうですか。それでも腕は落ちていないようですね。」 「まぁ元々こっち(ストラーフMk2型)に合う戦い方をしてたから。ほら、卑怯者の『刃毀れ』。」 「知っていますよ。前々から思っていたのですが、貴方は何故あんな戦い方をしているのですか? 貴方は普通に戦っても強いでしょう。」 「僕よりも強い人に強いなんて褒められても皮肉にしか聞こえないね。」 「質問に答えて下さい。『刃毀れ』。」 「他ならぬ葉月さんに渾名で呼ばれたくないんだけど。名前で呼んでくれれば答えます。」 「面倒な人ですね。答えなさい、黒野白太さん。」 「うんうん、それでいい。で、僕が『刃毀れ』として戦う理由だけど建前と本心の二つあるんだ。建前の方の理由は僕なりの手加減(と書いて騎士道と読む)だよ。」 「手加減(と書いて手加減と読む)?」 「よく考えてみてよ。武器を壊したり装甲を壊したりして僕に何かメリットはある? 無いよね。相手の武器を奪うとか装甲を奪うとかならともかくさ。僕だったら武器とか装甲を壊すくらいなら相手の急所を直接狙う。イシュタルにはそれが出来る。それをしないのはそれじゃ面白くないから武器を壊したりしてるんだ。僕には神姫バトルが強い知り合いとかいないからさ。遠征するお金も無いし。そういう縛りプレイでもしていないと神姫バトルも作業ゲーで詰まらないものになっちゃうわけ。あ、でも勘違いしないでよね。手加減して負けたからって言い訳するつもりはないよ。僕は八年間神姫バトルしていて一度でも負けていい試合なんてした事が無いのが自慢なんだから。格上相手には全身で挑んで全力で勝ちにいく。格下相手には全力で手を抜いて全身で勝ちにいく。それが僕だ。まぁ、僕としては前者の方が遣り甲斐があると思ってるけどね。」 「それが建前だと?」 「うん。本心で言えば世界一強い神姫プレイヤーの竹姫葉月に勝ちたいから。それ以外に理由なんて無いよ。」 黒野白太/イシュタルは竹姫葉月/アルテミスへと歩み寄る、川の水がぱしゃぱしゃと音を立てながら飛沫を上げて弧を描く。 「勝利よりも大事なものがあると知った風な口を叩く奴も居る。たかが神姫バトルと嘲笑う奴も居る。じゃあそいつらは今勝てなくて一体いつ勝つんだ?敗北したままで満足なのか。この人には絶対に勝てないって納得して諦観めるのか。違うだろ、親友も両親も師匠も好敵手も天敵も全ては勝つ為にあるんだろ。勝利こそがオーナーの神姫を結ぶ友情の成果だと信じている。勝利こそが積み重ねてきた努力の証明だと信じている。勝利こそが神姫バトルの全てであると思っている。だから僕は竹姫葉月に勝ちたい。イシュタルに勝ったアルテミスに勝ちたい。世界一強い神姫プレイヤーに勝ちたい。勝って僕は今よりも一歩前に進みたい!」 強く飛沫上げた黒野白太/イシュタルは両手にナイフを握り締め身を低くし身構えてキツく竹姫葉月/アルテミスを睨み完全な臨戦体勢に入っている。先程までの熱が入った詭弁とは異なりその手に握るナイフのような冷たく鋭い眼差しに竹姫葉月/アルテミスは岩石から腰を上げて月光色の大剣を手に取った。 「何と言うか、今まで好い加減な人だと思っていましたけど、実は熱い人なんですね。」 「僕は神姫バトルに勝ちたいだけの武装紳士さ。」 「そう言えば今回は神姫バトルロワイヤルですがいいんですか? 例え貴方が勝ったとしても消耗し切った状態で優勝出来ると思いませんが。」 「別にいいよ、優勝くらい呉れてやる。と言うか、そもそも僕は初めから葉月さん以外に眼中に無いし。」 「そこまで熱烈に迫られて無碍にするのは礼に欠けますね。いいでしょう、全力で御相手します。アルテミス!」 「はい、マスター!」 「今度こそ勝ちにいくぞ、イシュタル!」 「勿論だ。負けっぱなしと言うのは性に合わない!」 先に走り出した黒野白太/イシュタルは加速しつつ両手にナイフを構え付け加え副腕の両方に大剣を握らせて竹姫葉月/イシュタルに迫る。 「二刀流…いや、四刀流!?」 「独眼竜の六刀流ってぶっちゃけあれメリケンサックみたいな何かだよね!だから僕は負けてない!」 神姫自体の両手にはナイフが二丁、副腕にはリアパーツとセットになっている大剣とまた別の大剣の二振り、計四本の剣。 流石に四本もの腕から成る剣技は捌き切れないと判断した竹姫葉月/アルテミスはアーンヴァル型神姫の領域である空中へと飛び逃げる。 黒野白太/イシュタルは屈んだ両膝の動きに合わせて二本の大剣を川に叩きつけ加速させながらも上方向に跳躍し無理にでも近距離戦に持ち込もうとする。 大剣の剣先が届くまで距離が縮まった瞬間に竹姫葉月/アルテミスは空中でターンし最短最適の速さで逆方向への方向転換と加速を済ませて蹴りを叩き込んだ。追い付こうと無理に加速していた為に防ぐ暇も無く跳躍の勢いを殺されて落下する黒野白太/イシュタルへ追撃にと持っていた大剣を投げ付ける。難無く片方の大剣で弾き飛ばすが驚異的な加速でその瞬間に追い付いた竹姫葉月/アルテミスは最高速度を維持したまま自分の大剣を掴みそのまま振り下ろした。もう片方の大剣で防がれるもの重力と加速が乗っている一撃なら押し切られる、がそれを黒野白太/イシュタルの手のグレネードランチャーの銃口が覗いていた。 「BANG☆」 茶目っ気たっぷりに洒落になって無い砲撃を叩き込み二人の武装神姫の僅かな間で神姫大の規模の爆発が起きる。予め爆発による被害や衝撃を計算していた黒野白太/イシュタルは難無く川辺に竹姫葉月/アルテミスは少し吹き飛ばされてから空中で制止した。レッグやウェストに僅かな焦げ目が付いているもののダメージ自体が少なそうだ、バトル漫画でよくある衝撃の瞬間に退くとかの理屈で衝撃を激減させたのだろう。完全に決まったと思ったカウンターにアドリブで対処出来る竹姫葉月/アルテミスに羨望しつつも黒野白太は内心でくつくつと屈託有りで笑って見せる。天才、主人公補正、王道、才能、努力、邪道、悪役、思い浮かんだ全ての言葉(マイナス)は黒野白太が信条とする勝利の二文字の前に消え失せた。 「準備運動はここまでにしておこうか。」 「そうですね。」 「マスター、さっき全力で戦うって言ったばかりじゃないですか。」 「アルテミス、これは様式美と言う奴だ。つっこむだけ野暮だぞ。」 「はぁ、イシュタルはもう慣れっ子なのですか?」 「葉月と違いうちのマスターは『悪役』としてキャラ立てしているからな…。」 今度に先手を取った竹姫葉月/アルテミスは牽制射撃をするもチャージショットでの威力と速度が売りのレールガンでは足止めする事すら叶わない。と言うよりも黒野白太/イシュタルは常に必要最低限の動きしかしないのでストラーフ型とは思えない速度で接近してくる。敗北を予兆する黒猫の想像(イメージ)を振り払い竹姫葉月は『女帝』として世界最強の神姫プレイヤーとしての誇りを懸けて全力で迎え撃った。 黒野白太/イシュタルは武器を壊すから『刃毀れ』と呼ばれている通り竹姫葉月/アルテミスの渾名『女帝』にも当然ながら由来はある。竹姫葉月/アルテミスが何故『女帝』と呼ばれるようになったかその理由は至って簡単でシンプルに彼女達が強いからである。これと言って際立った武器も戦法も無く王道(セオリー)で勝ち続け世界最強にまで辿り着いた器用貧乏の最終形態こそが『女帝』である。 世界最強にして世界最高の『女帝』に対し黒野白太が採った戦法は「特に何もしない事」即ち竹姫葉月と同じく王道に基づいて戦うというもの。普段は状況や環境を自分の有利なように変える黒野白太が竹姫葉月と同じ戦法を選ぶに際し感傷的な感情が一切無いとは言い切れない。 例え相手と同じ土俵であっても黒野白太は負けるつもりは一切無いしそして勝つ秘策もあった。その秘策を公開する前に出来るのであれば勝利したかったが竹姫葉月/アルテミスはそう簡単に倒せる相手ではない。 アーンヴァル型の王道に従い制空権と空中での制動力を盾にし黒野白太/イシュタルによる手数のアドバンテージを覆す。加速と重力を上乗せさせたハンマーの一撃は四本の腕による防御の上からでもダメージを与えるだけでなく高度も激減させる。急加速と急停止を自在に出来る制動力をフルに活かし大剣による一撃離脱戦法を繰り返し少しでも隙を見せればレールガンの雷が落ちる。 一発目と二発目のフルチャージレールガンは大剣で弾き飛ばしたが三発目により副腕の一本が破壊された。自分から近付く事の出来ないジレンマと一方的に攻撃される苛立ちが招いた誤作動であるがこの一撃が逆に黒野白太を冷静にさせた。壊された副腕の大剣をリアパーツの鞘に納めて回収し四発目となるフルチャージレールガンを残った副腕の大剣で弾き飛ばす。そのまま黒野白太/イシュタルは微動だにせず待ち構えている、ストラーフ型の王道である不動戦法。 あのように待ち構えられてはレールガンは弾丸の無駄になるだけと判断した竹姫葉月/アルテミスは一撃離脱を狙い大剣で斬りかかる。それを受け止めたのは黒野白太/イシュタルの素体が手に持つ大剣、副腕はグレネードランチャーの銃口を川と垂直になるように向けて引き金を引いた。爆発を踏み台に飛び上がりつつも急加速、素早く大剣を盾にした竹姫葉月/アルテミスを踏み台にしてさらに上昇し制空権を完全に奪い取る。今まで散々苦しめられた重力を裏切らせ黒野白太/イシュタルは身体の向きを調節しつつ殆ど相手を見ずに大剣を投擲した。 アーンヴァル型でなら投擲された大剣を回避するのは容易いが本命は大剣の陰に隠れるように投擲された二本のナイフをくっ付けて出来た手裏剣。手裏剣は意思でも持つかのように回避動作を採った竹姫葉月/アルテミスを追跡し大剣が川に叩きつけられると同時にその刃が竹姫葉月/アルテミスの喉を突き破った。 完璧に仕留めた感覚が黒野白太/イシュタルがあった、観客達も世界最強の神姫マスターの痛々しい姿に静かな悲鳴を上げる。 だがジャッジが判決(コール)を下す事は無かった、竹姫葉月/アルテミスは喉に刺さった手裏剣を引っこ抜いてその辺りに投げ捨てた。歓声がドッと沸く、正義の味方は負けないんだと観客の誰もが共感する、唯一現状を把握する黒野白太/イシュタルを除いて。 『在り得ない。今の手裏剣はで確実に喉の急所を貫くよう気流を計算して投げたと言うのに。』 『もしかして川の水か?』 『何か気付いたのか?』 『手裏剣が当たる直前に川の水を蹴り上げて手裏剣に掛けたとすれば…完全な計算は完全故に狂う。』 『馬鹿な、あの二人は手裏剣に気付いていなかったはずだ。』 『僕達の勝利じゃない以上はそう仮定するべきだよ。』 努めて冷静にイシュタルを宥める黒野白太であったが今の手裏剣で仕留められなかったのは非常に不味かった。グレネードランチャーを副腕に撃たせての急速な加速により制空権を奪いそれから一気に仕留める気でいたのだがそれに失敗した。一度見せた手が二度と通用するとは思えない、相手はそれだけの技量を持っていると考えるべきだ。その予感は的中し制空権を取り戻した竹姫葉月/アルテミスはハンマーを振り翳して徹底して黒野白太/イシュタルの奇襲を補助する副腕の破壊を狙い始めた。 先の失敗で手軽なナイフを失った事のもまた痛く大剣の二刀流では一撃を防ぐ事は出来ても反撃するまでの時間が取れない。それから数度の襲撃を経て等々大剣を握る副腕は軋み上げ動きが鈍ったその隙に肘の部分を粉砕された。神姫自身にダメージは殆ど受けてないものの副腕を破壊され手裏剣は何処かに捨てられ残された武器は大剣とグレネードランチャーのみ。奇しくも黒野白太/イシュタルの今の状況は彼等自身が手加減と称した『刃毀れ』の戦法で武器を破壊された対戦相手の状況によく似ていた。 『イシュタル、やるぞ。構えろ。』 『やっとか。待ち侘びたぞ。』 尚も一切の敗北を認めず激しいまでの勝利への渇望に燃える双眸を見た竹姫葉月/アルテミスは油断無く大剣を身構えた。その直感は間違いでは無く黒野白太/イシュタルはまだとっておくきを、奥の手を残している。黒野白太/イシュタルの瞳の底、竹姫葉月/アルテミスが勝利への渇望を見たそこに、無数の真っ黒な蟲のようなものが蠢き始めた。 「「バイツァ・ダスト。」」 …。 …。 …。 その後、黒野白太/イシュタルは敗北した。 だが竹姫葉月/アルテミスもまた『バイツァ・ダスト』を破る際に重傷を負い勝敗が決した瞬間に別の参加者に襲撃され脱落した。悪役の黒野白太/イシュタルが敗北した時には歓声が湧いたが、正義の味方の竹姫葉月/アルテミスが敗北した時には何も起こらなかった。 それも当り前で、そもそも今回のバトルルールはバトルロワイアルである、激戦で消耗した相手を狙ったところで何か咎があるはずが無い。いや、よくよく考えれば今日の竹姫葉月/アルテミスもまた初めからバトルロワイアルをやるつもりでバトルロワイアル用の武装をしてやって来たのだろう。それに対し初めからタイマン用の装備で挑んだにも関わらず負けた黒野白太/イシュタルはこの上なく惨めな敗北をしたのかもしれない。 かもしれない、じゃなくて、したのだろう、筺体から離れた黒野白太を待っていたのは観客のニヤニヤした視線。あれだけ残酷な事をやって、あれだけ格好付けた事を言って、それでも負ければ、待っているのは周囲からの冷やかな嘲笑である。イシュタルは目を伏せて何も答えない、例えマスターが勝手にやった事であっても神姫にその責任が無いとは言えないからだ。そして黒野白太はと言えば、泣いているのか笑っているのか判別の付かない、ヘラヘラとした笑顔を浮かべる。 「また負けたね。」 「…。」 「また負けちゃったね。」 「五月蠅い、黙れ。」 イシュタルに怒られて流石の黒野白太も口を噤む。 負け慣れているからヘラヘラと笑っていられる黒野白太であったが矢張り神姫にとって敗北とは決して慣れるものではないらしい。竹姫葉月との勝負には負け、イシュタルの機嫌は損ね、後に残っているのは自転車で三時間掛る帰り道である。まぁ僕は主人公じゃないんだし仕方は無いか、と無理矢理にでも自分を納得させる黒野白太であった。