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戦うことを忘れた武装神姫 その10 ・・・その9の続き・・・ 「両者、神姫をフィールドにセットして下さい。」 ジャッジマシンの音声に従い、久遠はフィールドに歩み寄る。 M町の筐体は、立体フィールドが実際に構築される最新型のCMU-381型。広がるは・・・人間サイズのキッチン。にやり口元に笑みを浮かべる久遠。 「こりゃ初戦は・・・エルガで決まりだな。」 神姫達も異論なし。 「じゃぁ、頼むぞ。」 「にゃーん! まーかせてー!!」 エルガと、各種装備・得物のつまった箱をフィールドの指定箇所にセット。対するサイトウは、2体分の装備を組み合わせた白子をセット。 「両者、準備はよろしいですか? では、フィールドを閉じます。」 フィールドバリアがおろされる。 久遠たちは、モニター席に移動。ここからは指示を出すことも可能で、待機神姫用のクレイドルもある。。。 「それでは、本日の第1試合・猫爪『エルガ』VSアーンヴァル『アスタ』、試合開始いたします。」 静まり返るギャラリー。フィールドでは、にらみ合うエルガとアスタ。 「Ready-・・・ GO!!!」 試合開始。 キッチンフィールドは最近追加されたもののようで、サイトウの白子・アスタもやや不慣れな様子。 接近が困難と判断したのだろうか、アスタはセットポイントから斜め上後方へ移動した。さすが過剰なほどの重装とだけあり、上昇速度も相当速い。間合いを取りつつ、フィールドの全体を確認する- 、遠距離を得意とする白子のセオリー通りの戦い方・・・ ・・・なのだが。 「にゃっはー!!!」 アスタの上昇速度を上回る勢いで、床から飛びかかるエルガ。 「な、なにっ!」 「そーれっ!!」 あっという間に追いつくとヤンチャオを振りかざす。慌てるアスタ、サイドバーニアを全開にしなんとか避ける。 「ありょ? ・・・おーーー!!!」 一方の避けられたエルガは、戸棚に向かって一直線・・・かと思いきや。 「あらよーっとなのですよー!」 ヤンチャオを器用シンクの突起に引っかけ、クルリと向きを変える。 勢いそのままに、姿勢がまだ整え切れていないアスタへ向けて突撃。 どうやらアスタは、装備が大きすぎるためすばやい動きが出来ないらしい。 『アスタ!上から来るぞ! 撃て、撃つんだ!』 叫ぶサイトウ、しかし、銃をかまえる前にエルガが追いつき-。 「おくさーん! 今日の晩ご飯は何ですかー!!!」 エルガが取り出したるは、なんとしゃもじ。 両手で持つしゃもじを一気に振り下ろす。 斜め後方からの強烈な一撃。 「ぐはっ!!」 アスタはシンクのカドにたたきつけられ、ブースター1基破損。補助翼にも大きな損傷を受けることになる。 「『とつげきしゃもじ』が決まったな・・・。」 モニターで観戦する久遠が、ぼそっと呟いた。この技、エルガと久遠が調理中に、つまみ食いをして逃走を図るリゼを仕留めるためにエルガが編み出した技。。。 「い、いたそー・・・」 と、リゼ。・・・しょっちゅうこの技を食らってる為であろうか、その痛みを想像し、顔を思わずしかめる。。。 幸いにも、アスタは下に落ちることなくシンクの上へと転がった。バーニアと損傷した補助翼をすぐに捨て、LC3がベースと思われる長銃を構えた。 「set・・・ファイア!」 床に降り立ち、テーブルに登ろうとこそこそ走り回るエルガに狙いを定め、LC3とは思えぬ速射で打ちまくる。 しかし。 「ほーいほいのほいさっさー。」 軽快かつ挑発的なステップで、エルガは弾を避ける。 「くっ・・・何故そこまで速く動けるっ!!」 「にゃっにゃんにゃー。 それは企業秘密なのでーす。」 「なぜ、何故だっ!!」 実際、エルガの足は、久遠の神姫の中で最も速い。だが、、弾が当たらない理由は別にあった。 「あいつ・・・戦闘の基本わかってんじゃねぇか。。。」 サイトウはエルガの動きにうめいていた。 エルガは、アスタが撃ち始めた瞬間から、死角となる位置を選んで走っているのはもちろん、どんな床面であっても一切飛び上がらずにいたのだ。 飛び上がった瞬間は、飛行装置を装備しない神姫にとってはもっとも無防備な瞬間のひとつでもある。それをエルガは、本能的に知っていたのだ。 その様子に、久遠はここでようやくCTaの言っていたこと -戦うことを忘れていても、戦いを忘れてはいない- を、理解した。 「なるほどね。。。 うん、うん。。。 となると・・・。」 こいつらなら、勝てる。 『エルガ、竹串だっ!! 右にあるぞっ!』 久遠は通信用マイクを掴んでエルガに声をかけた。 「にゃにゃ? ・・・あっ! わかったのですー、にゃーさん!」 降り注ぐ弾を避けつつ落ちていた竹串を拾い上げると、アスタめがけて投げつけた。 「甘い、甘い!!」 さっさっと、鮮やかに竹串を避けるアスタ。だが反撃されているということは、攻撃方法を読まれている裏返しでもある・・・そう感じたアスタは、弾種を速射から高エネルギー弾に変更し、改めて狙いを定めた。 「これなら・・・仕留められる!」 エルガが身を隠すイス全体が消滅するレベルにセットし、引き金を- 『あっ!!! アスタ! 撃つな!!!』 叫ぶサイトウ。しかし、遅かった。 引き金が引かれた瞬間。 LC3改、爆発。 爆風でとばされ、食卓の上にどさりと落ちるアスタ。装備はボロボロ。 LC3改の銃口に竹串が深々と刺さっていたのである。長銃であるが故の死角となっている真っ正面から、見事な投擲で竹串を突っ込んだエルガ。。。 「串カツと焼き鳥の作り方教えて置いて良かったよ。」 「ま、マスター、これは違うと思うんですが・・・。」 モニターを見ながらほっと胸をなで下ろす久遠に、イオが突っ込みを入れる。 「ちっ・・・。 アスタ、9Xを使え! 早くしろ!上がって来るぞ!!」 一方のサイトウは、舌打ちをしつつアスタに指示を出し続ける。だが相当のダメージを受けたようで、なかなか立ち上がらない。そうこうしているうちに、エルガもテーブルに上がってきた。 「こ、こんな情けない試合になるとは・・・っ!」 立ち上がるアスタ、手には自動小銃・・・ 「ほいさっ!」 を取り出したと同時に、エルガは再び竹串を投げ、すっぽりと銃口に。 「な、ななな?!」 自動小銃を捨て、ハンドガンを取り出す・・・と今度は爪楊枝。出す銃出す銃に、エルガ次々に竹串、爪楊枝を差し込み、使用不能としてしまった。 「にぇっへっへ・・・ もうおしまいですかぁ?」 取り出す銃が無くなった頃、アスタはテーブルの隅に追いつめられていた。背中の羽根はすでに使用に耐えられない。最後に残された、黒子の武器でもある剣を取り出した。 「そんなもんは怖くないのですよ。 でざいんないふって知ってるかにゃ? あれはもっと怖いんだよー。」 どうやら以前、シンメイに脅迫されたときのことを言っているようである。 久遠も脅迫された、あのエンゼルパイ事件のこと。。。 エルガにとってもトラウマとなっている様子。。。 「ほんとーに怖いモノって何かを、にゃー教えてあげましょうかぁ?」 妙な目つきで、にじり寄るエルガの手には・・・SUS製のおたま。 「そぉれっ!!!」 かぁん!!! 剣よりもリーチが長いため、余裕の攻撃。剣をいざ投げんと構えた格好のまま、白目をむいて・・・ アスタは倒れた。 「アスタ、戦闘不能。 勝者、猫爪・エルガ!!!」 ジャッジメカが勝負の終わりを告げた。 エルガの勝利に、ギャラリーは大きな歓声を上げた。 ・・・>続くっ!!>・・・ <その9 へ戻る< >その11 へ進む> <<トップ へ戻る<<
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メインキャラ 藤堂 亮輔(トウドウ リョウスケ) リンのマスターであり、武装神姫関連の下請け会社(意外と業績は良い)に勤務している。 最近やっと生活に余裕が出てきた。 最初は神姫に興味が無かったが友人をはじめ、周りの人間がほとんど神姫を所有していたので、「流行に遅れるわけにはいかない」と再販日に人ごみに突撃して「リン」を購入。 小さい頃からロボットが好きでプラモデルやキットを弄ったりしてたので意外と手先は器用。 友人には特殊なスキルを持った人間が多く、その人脈を使って試作パーツのモニターをさせてもらったり、職人芸のパーツを卸売り価格で譲ってもらったりと意外と神姫に関して都合の良い環境にいるらしい。 バトルに際してはリンやティアが常に100%の能力を発揮できるように、大会前日はパーツのメンテナンスに一晩かけるほど。 そういった面ではかなり几帳面らしい。 リン(悪魔型 ストラーフ) 亮輔の買った初めての神姫であり、良きパートナー。 亮輔に尋常で無い想いを寄せているがそれを隠して普段は生活している。 普段は礼儀正しい中、たまに亮輔に甘えたりと公私の分別はわきまえている様子。 なおマスターである亮輔を侮辱するヤツは絶対に許さない。 多重登録防止のため「リン」で登録できなかたっため、バトルサービスでの登録名は「燐」。 バトルスタイルはレッグパーツの脚力を生かした変幻自在の動きとエアリエル技。 基本的に接近戦仕様の武器しか扱わない。というか射撃武器は基本パイソン357マグナム2丁のみ。 エアリエル技には「烈空」、「隼」とった漢字の名称が与えられている。 戦闘において敵をだましたりといった行為が全く無く、正々堂々とした戦いぶり故か、いつのまにか「黒衣の戦乙女」といった二つ名をもって(もらって)いる。 ちなみにカワイイ物好きであり、ポ○モンやぬいぐるみ等を好む。 ティア (天使型 アーンヴァル) リンより半年遅れて亮輔の家族になった神姫。 彼女は以前ルクレツィアという名でサードリーグ中のトップランカーの神姫として名をはせた。 がマスターの違法行為により改造され、プログラムで思考さえも変化させられていた模様。 リンに倒された後は元のおしとやか?(典型的なお嬢様的思考、言動)な性格に戻る。 彼女の元マスターが捕まる際に彼の意志で亮輔に託される。 なおプリセットの都合上亮輔を「ご主人様」と呼ぶ。 多少のレズっ気があるらしく、リンを「お姉さま」と呼び慕うほどである。 また戦闘において好んで扱う武器が鞭やら鎖やらと、外見とのギャップが激しい。 篠崎 茉莉 (シノサキ マツリ) 亮輔の幼なじみであり、幼少時の関係から勝手に親同士が決めた亮輔の許婚である。 年は五つも離れているのだが、小さい頃は近くの家には同年代の子がいなくていつも亮輔が遊び相手だった。 その結果いつのまにか亮輔よりロボットなどに詳しくなっていて、神姫を買う最後の一押しをしたのは彼女。 小さいころは亮輔をお兄ちゃんと呼んで慕っていた。 小学時代に1度重い病気になり(亮輔は妹のようにかわいがっていたからほぼ毎日見舞いに通った、これが婚約の原因だと思われる)その結果一年遅れで進学した。 なので今は19歳で大学一年生。 サブキャラ 倉本 本名不明。亮輔の友人であり同僚。 根っからのオタクであり、神姫からアニメ、果ては企業のまだ発表していない情報までなんでも知っている。 正にオタクといった見た目に対して性格はさっぱり系で、初対面でそのギャップに驚く人が多い。 ちなみに人の好みに合ったものをほぼ確実に選ぶことの出来る「買い物の天才」である。 レオナのマスター イベントで急遽開催された新人戦の選手。 亮輔を勝手にライバル視しているが戦績は芳しく無い模様…… レオナ リンの初陣の相手、犬型のハウリンタイプの神姫。 おとり作戦で燐を追い詰めるが、亮輔を侮辱したことで怒った燐に倒される。 マスターの戦略に忠実すぎるためか、予想外の事態にめっぽう弱い。 ルクレツィアのマスター サードリーグにおいてのトップランカーであり、常に勝ちを求めた。 ランク的にはセカンドに挑戦できるレベルだが、相手を叩き潰すのが好きなようでサードリーグに常駐し、ルクレツィアにさまざまな改造を施していた。 そしてついに違法パーツにまで手を出して、亮輔との対戦後逮捕される。 ルクレツィア ティアの以前の名称。強化アームユニットと違法内部フレームによって己の3倍はある刀身の斬艦刀を振り回すダイナミックな戦いをしていた。 バックパックには対艦刀が多数マウントされており、内部の隠し腕でそれを展開した姿は某グ○ーバス将軍の様だった。
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戦うことを忘れた武装神姫 その17 ・・・その16の続き・・・ ・・・リゼは、始めから劣勢だった。 気持ちの整理が付かぬまま、サイトウに威嚇されるかの如く急かされて、 ひとまずの武装とその他の袋を持たせただけで試合開始となってしまったの だ。徐々に防戦一方となるリゼを、久遠は腕を組んだまま、黙ってモニター 席で見ていた。 リゼの戦い方に、久遠は勘づいていた。 リゼが、本気で戦えない理由に。 -リーダー、なぜそんな姿で戦うのですか? ・・・相手は、リゼのかつての仲間、リーダーであったストラーフ・・・。 しかし、そこにはリゼの知るリーダーの姿は無かった。アームどころか搭載 できる限界をはるかに超えているであろう様々な武装から、雨あられの如く 繰り出される、力任せとも取れる技と砲撃。地に足を着ければ、建物に仕掛 けられた爆薬で、降り注ぐ瓦礫。 ここまで攻撃されても、直接相手の「本体」へダメージを与えるような攻撃 を、一切しないリゼ。装備品を狙い投擲、砲撃と、手を変え品を変え、でき る限りの反撃はしているようにも見えたが。。。 相手の反撃に、かけらも 役に立たず。 逃げ回る形になったリゼが呟いた。 -私のことを忘れてしまったんですか? 美しさのかけらもない、がむしゃらな攻撃。ついに、リゼの左リアアームに 炸裂弾が命中し、ちぎれ飛んだ。 衝撃で飛ばされ、壁にたたきつけられる。 敵のストラーフは、背後の建物に大量のミサイルを撃ち込み・・・ 「うわああぁあぁっ!!」 リゼは、瓦礫の中へと埋没してしまった。文字通りの、瞬殺とも言える早技。 勝利を確信したのか、妙な盛り上がりを見せるサイトウ側。対して、静まり 返る久遠側。 埋もれてしまったリゼは、目に涙を浮かべ・・・動けなくなっていた。 -暗い・・・ あの頃の記憶が・・・ あの頃の、哀しい記憶が・・・ -だからこそ、リーダーとは戦いたくなかった・・・ -こんな姿のリーダーを見ることになるなんて・・・ 「もう・・・だめだよ・・・」 瓦礫の中から、久遠に呟くような声で、通信を送るリゼ。 「やっぱり・・・ 戦うことを忘れたい・・・ こんなに、痛くて悲しい だけの事なんて・・・」 しばらくの沈黙のあとに、久遠は静かに言った。 「なぁ。 なんでお前はあの日、記憶を残してもらったんだ?」 -今、それを後悔している- 「まさか、今のように昔を思い出して、悲しむためだったのか?」 -それは、違う- 「何か、大事なモノがあったんじゃないのか?」 -大事なモノ。。。 あの日の暖かい言葉- 「それに、今のお前は『名無し』じゃないだろう?」 -今のあたしは、リゼ- 「あの日の、俺たちとの約束を忘れたのか?」 -!! 忘れるもんか!- 「忘れたなら、ここで終わりにしてしまう。 忘れていなければ・・・」 -そうだ。 あたしは、まだ、いける・・・!!!- 「『リーダー』に、表舞台に立てるようになった姿を見せつけてやれ。」 -・・・! あたしは・・・ あたしは・・・!! しおれていたリゼの目に、光が戻る。 「負けない・・・絶対に負けない・・・!」 瓦礫の下敷きになったリアアームの右腕に、全電力が注がれる。瓦礫が持ち 上がり、状況確認をしに登ってきていた「リーダー」の足下が揺れる。 「あたしは、リゼなんだ! 『名無し』のストラーフなんかに、絶対に負け ないっ!!」 瓦礫が吹き飛び、リゼが現れた。飛び退いていったん待避する敵ストラーフ。 「あたしは、世界一カッコイイ神姫になるんだっ!!」 大きく叫ぶと、リゼは今までにない素早い動きでセットポイントへ戻った。 その姿に、ギャラリーが沸いた。 間近で観戦していたかえでとティナは、 涙すら浮かべている。 瓦礫の山に立つリゼは、今までとはうって変わった 強い意志を持った -あの日、CTaに「記憶を消さないで」と頼んだときと、 同じ強さの- 紅い瞳に変わっていた。 その姿に、サイトウも少しは驚いたようだったが、自らのストラーフの強さ に自信があるのだろうか、 『・・・ふん、こうでないと。 よーし。お前もいったん下がれ。あいつが 装備を整えて出直すまで、ちょっと待ってやれ。』 と、余裕の表情で、サイトウはストラーフに命じた。 「了解しました、Mr.サイトウ。」 相手ストラーフも、一旦セットポイントへ。 「よくできました。 しっかり覚えていたね。」 セットポイントへ戻ったリゼに、久遠が声をかけた。 「へっ、忘れるもんか。 ・・・ありがとうよ、ヌシさん。」 ちょっと嬉しそうな目つきをしたリゼの耳に、 「そうでなくちゃ。あたしが治した神姫じゃないぞ。」 と、別の声が入ってきた。 「CTaのねーちゃん!?」 そう、久遠のモニター席に突如やってきたのは・・・白衣姿のCTaであった。 「いつの間に来たんだ?」 「ついさっき着いたばっかりだよ。」 久遠に訊かれたCTaは、答えながら一体の騎士子-先に逃げ出した、ディサ- を取り出した。 「あっ! 何で姉様がもっているんですか?」 その姿に、イオが驚き尋ねる。 「詳しいことはあとだ。 ・・・リゼ、よく聞け。」 通信用のマイクを久遠からひったくり、CTaはリゼに伝えた。 「いいか。 今の『リーダー』には、プロテクトをかけて無理矢理サイトウ をオーナーと認識するようにしてあるらしい。 その所為で、本来の性能の 半分も出せていない- 、その分を武装とトラップで補っているだけなんだと。 ・・・何が言いたいか、解るな?」 「ふっ、よ〜く解ったよ、CTaのねーちゃん。」 「その呼び方は止めろ。 それから、だ。今まで一度も伝えていなかったけ ど、お前の身体、換えられる所は、全部特殊アラミド樹脂に置き換えてある から。関節も合金入れて強化済みだよ。」 「へっ?」 リゼも、そして久遠も、目が丸くなった。 「確かに・・・言われてみればエルガなんかに比べても、若干とはいえど、 重かった気がするなぁ。」 久遠がエルガを手にとって呟く。 「考えてみ。あれだけの攻撃喰らって、今のお前の身体・・・」 CTaに言われて、今一度自分の身体にチェックをかけるリゼ。 -損傷箇所、 本体には・・・ 「無傷だ・・・。」 驚きを通り越して、リゼは感動すら覚えた。 「あんたを最高にカッコイイ神姫にするって言った以上は、それ相応のこと はしてあげないとねー。」 そう言うと、CTaは一息ついて、一言二言久遠に耳打ち。にやり笑みを浮か べた久遠は、マイクを受け取ると、改めてリゼに声をかけた。 「さぁて・・・ リゼ、ここからが本番だろ?」 その声に、リゼは・・・黙って頷いた。 目に貯めた涙に感づかれないよううつむき加減のまま、自らの背中に着けた リアアームを外した。 さらには、身体の各部に取り付けていた装甲パーツ も捨てた。 ギャラリーがざわめく。 自らの装備を捨てるなんて・・・ 本当に勝負を 諦めてしまったんだろうか・・・ ぐっと涙を拭いたリゼは、傍らに無傷で残っていた自らの装備袋の中から、 妙な物体を取りだした。見た目は、何かのエンジン模型。しかし、妙な配線 がゴテゴテとくっついている。 それをリアアームを外したハンガーへ取り 付け、配線類を自らのボディへ接続。 接続が終わり、再び顔を上げたリゼ。そこには、小悪魔のような笑みを口元 にたたえた、いつもの姿の・・・ 久遠の「リゼ」が立っていた! ・・・>続くっ!!>・・・ <その16 へ戻る< >その18 へ進む> <<トップ へ戻る<<
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戦うことを忘れた武装神姫 その13 ・・・その12の続き・・・ 「おつかれー! いやー、お見事!」 シールドが解除され、久遠がイオに手をさしのべる。イオは酒瓶を片手に持った まま恥ずかしがりながら駆け寄ろうとするが、瓦礫に足を取られ見事転倒。さら には、手にした酒瓶の栓が開いてしまい、頭から酒をかぶってしまう。 「ふえぇ・・・やってしまいました〜。」 半泣きで酒臭いイオの姿に、わき上がる笑い。と、かえでが、ギャラリーをかき 分けて近づいてきた。その姿に先に気づいたイオが、 「はじめまして、かえでちゃん。 お話はリゼから聞いています。ちょっと変な 形にはなっちゃったけど、敵はとったつもりです。」 酒臭いまま久遠につまみ上げられ、かえでにご挨拶。かえでは目を輝かせていた。 「すごかったです、イオ・・・さん! あんな技、見たことも聞いたことも無い ですよ!! もう、あんなにかっこよくやってくれるなんて・・・ 本当に ありがとうございます!!!」 久遠と顔を見合わせて苦笑いのイオ。 「え、ええ・・・まぁ・・・。 夢中でしたから・・・。」 「それはそうと、どこかこいつを洗える場所ないかなぁ。」 「えー! 私、洗われるんですかぁ?」 「洗わんでどうしろと。このままだとベトベトになっちゃうぞ。」 「あの・・・拭けば大丈夫ですから・・・」 「だーめ。 あ、そこに給湯室があるんですか? ちょっとお借りしますー。」 気づいた店員の案内で、給湯室へイオを連れていく久遠。 「あ、だめです! 洗っちゃうと翼が傷む・・・いえ、その・・・きゃー!!! 濡れるのはイヤーーー! だめーーーーー!!! だぇ・・・ ブクブク・・・」 給湯室から響いたイオの叫びが、徐々に小さくなる。イオ、戦場から洗浄へ。。。 ・ ・ ・ ・ ・ と、こちらサイトウ側では、ちょっとした異変が。 「おい・・・早く戻ってこい!」 がっくりとうなだれたままのディサ、サイトウがいくら呼びかけてもフィールド の縁から、それ以上サイトウに近づこうとしなかった。 「いい加減にしろ。 ・・・仕方ない、あいつを回収してこい。」 「イエス、マスター。」 軽装の兎子がディサの回収に向かう。 「ディサ、命令です。今すぐ戻りなさい。」 「・・・。」 兎子が差し出したてを払いのけるディサ。 「ならば、強制執行します。」 「触らないで!」 その声に、兎子、サイトウだけでなく、近場にいたギャラリーも静まり返った。 「もう・・・私はあなたの神姫であることが我慢できません!」 立ち上がったディサは、唖然とするサイトウに向かい、きっぱいと言い放った。 「あの日、彼の『黒』が、あなたをクサレ扱いした理由がよくわかりました。」 「お前、何が言いたいんだ? 俺に向かって何を言っているのか、わかって いるのか?!」 「・・・やはり、私は貴方の神姫ではありません。 さようならっ!」 止めようとする兎子に肘鉄を喰らわせ、その隙に、あっという間にその場から 逃走。 自慢の足の速さで、あっというまにいなくなった。 「待て! どこへ行く!!」 追いかけるサイトウ、しかし多すぎる程のギャラリーに阻まれてディサを見失 ってしまう。 あまりに一瞬の出来事に、何が起こったかギャラリーも把握が 出来なかったらしい。。。 「くそっ・・・。」 舌打ちをしながらサイトウが戻ってきた。 「マスター、どういたしますか? 追跡しますか?」 兎子が尋ねる。 「一体ぐらいいなくなっても気にしねぇよ。 代わりはいくらでも居るんだ。 それより、次はお前に行ってもらうからな、準備しておけよ。」 「了解しました。」 兎子は、黙々と準備にかかる。 ・・・が、応援団の呼びかけにも返答が出来 ない程、明らかに動揺を隠せないでいるサイトウに、一抹の不安を覚えていた。 ・ ・ ・ ・ ・ 「相変わらず水が嫌いなんだから。」 モニター席で待つリゼが呟いた。横ではエルガがエルゴブランドの神姫ドリンク、 ロボビタンRをすすっている。 「にゃーはおフロ、好きだよ?」 「エルガ、貴方のことではないんですよ。・・・どうやらいつものイオに戻った ようですね。」 クレイドル上では、シンメイが出番に備えて装備を整える。 「そ、そんな軽装でいいんですか?」 その姿を見たティナが驚きの声をあげた。 「いいんです。私は、武具を使うことを好まないので。これで十分なんですよ。」 シンメイが装着したのは、黄色くペイントされた狗駆と心守のみ。どちらも手が 加えられており、薄く削られて、のっぺりとした見た目になっている。 「メカニックは手先が命ですからね。 道具・工具類を器用に扱えない万武は、 滅多に使わないんです。」 最後にセットするヘッドユニットも、通常のものとはちょっと形が違っていた。 色といい形といい、それはまさしく・・・狐。 しっぽも狐型に改造されている。 シンメイが装備と同期を取る。 と、胸の所にぽわーっと浮かび上がる緑の十字、 狗駆には「安全第一」の文字。 最後に、工具箱を背中に装備。 「おぅ、お待たせ。 ・・・シンメイ、やっぱこの装備なんだ。」 洗濯されて半ば放心状態のイオを手に久遠が戻ってきた。久遠は、ぐったりして いるイオをリゼとエルガに任せ、シンメイを手に乗せた。 「私にとっての、最強の装備をしたつもりです。」 「だな。 うん、あいかわらず似合っているよ。 良い良い。」 「久遠さん、これ、なんて装備なんですか?」 興味津々のティナ。かえでは持参したカメラで手に乗るシンメイを激写している。 「名前は・・・どうする?」 「そうですね・・・『工臨壱式』なんてどうでしょう。」 「ふむ、・・・自分の型式名に引っかけたのか?」 「・・・。」 ぽっと頬を赤らめて無言になるシンメイ。だが、しっぽは嬉しいのか、パタパタ と反応。。。 久遠がモニター席からフィールドへ向かおうとする・・・と、色が黄色ベースと 目立つこともあり、またもやワラワラと人垣が出来る。 「写真撮影は全試合終了後におねがいしまーす!!」 ついに、店員が全員動員され、誘導や整理を始めた。久遠が見回すとありえない ほどの人数になっている。 「な、なんだこりゃ・・・」 「どうやら、『妙な連中が勝っている』と、ネット上なんかで祭りになっている みたいです。私たちもこんな事はじめてでして。。。 不手際申し訳ない。」 久遠を誘導する店長が教えてくれた。 (・・・そういや、この試合は公式で中継もされているんだっけ。。。) 今更ながら、恥ずかしさがこみ上げてきた久遠であった。 ・・・>続くっ!>・・・ <その12 へ戻る< >その14 へ進む> <<トップ へ戻る<<
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戦うことを忘れた武装神姫 - type_S -03 皆様、こんばんは。 神姫との生活、いかがお過ごしでしょうか。 キャッキャウフフも、ドキドキハラハラも。そして、夜の生活も。 それぞれに、それぞれの生活があることでしょう。 しかし。 世の中には、本当は怖い神姫との生活というものもあるのです。 今宵は、その一部をご紹介しましょう・・・。 ・ ・ ・ ・ ・ ~めざまし神姫・Phase-2:ハウリンの場合~ 朝。 目覚まし時計の電子音が部屋に響く。 「・・・。」 布団から手がぬっと出てきて、器用に目覚まし時計の電池を外した。 電子音が止まると、再び手はずるずると布団の中へ。 「相変わらず器用ですね・・・って感心している場合ではありませんね。」 ベッドサイドに立っていたハウリンは、静かにまくらでよだれを垂らす男の顔の横へ立った。 「マスター、起床の時間です。」 ぺちぺちと小さな手で男の頬を叩くも、反応無し。ハウリンはもそもそと耳元へよじ登り、囁くように、しかし先よりも大きな声をかける。 「朝ですよ! もう、起きてくださいっ!」 だが、男はすやすやと穏やかな寝息を立てたまま。 「・・・。」 その寝顔に、一瞬見入ってしまったハウリン。ポッと頬を染めるも、すぐさま首を振って次の作戦を考える。 「あ。 以前、マスターと見たDVD! あれの真似をしてみましょう。。。」 ハウリンは耳元に膝をつくと。 「・・・はむっ」 男の耳たぶを甘噛み。 男が、一瞬ぴくりと反応した。 「・・・ふぉれふぁ・・・ひいへはふへ・・・(これは・・・効いてますね・・・)」 はむっ、 はむっ、 はむっ・・・ 数分間は続いただろうか。 ハウリンが自ら噛みやすいように出す唾液で耳たぶがヌレヌレになり、はむはむと噛む音がぴしゃぺちゃと卑猥な響きに変わった、その時だった。 「ぅわあぁあぁあぁぁあぁあぁぁぁっ!!!!!!!!!」 大絶叫と共に、男が飛び起きた。 投げ出されたハウリンは空中で見事に姿勢を変え、男の腿へしゅたっと着地。 「おはようございます、マスター!」 「はぁ、はぁ、はぁ・・・お、ハウリンか・・・。おはよう。今日は君がめざまし当番だったよね。」 と言うなり、男はため息ひとつ。 「どうされました?」 「いや、その・・・この前一緒に見たAVのシーンが夢になってな・・・耳をはむはむとしゃぶられる強烈な夢d・・・」 その時、股間のテント状の部分をじっと見つめるハウリンの視線に気づいた男。 ・・・顔を赤らめて、もじもじするハウリンと目が合う。 ・・・気まずい雰囲気。。。 「あの、どうも申し訳ありません・・・あのDVDのように耳をはむはむすれば、すんなり起きると思ったのですが・・・」 「ちょ・・・それ違う! なんだその豪快な取り違いはっ!!!」 「すみません!!!」 「・・・でもな。 そんな夢を見てしまうくらいに君のはむはむは上手だっt・・・はっ! 今・・・」 ふと気づくと電池を抜いたままの時計が傍らに。 ということは・・・大慌てで、腿に乗るハウリンを再び投げ出し。机上の腕時間を確認。 いつもの出勤時刻・・・15分前。 「やっべーーーー!!! 遅刻、遅刻するっ!!!」 ベッド上でちょっとポーズしてみるハウリンには目もくれず、バタバタと男は仕度を整え始めた。 悶々としたまま、ろくに仕事も手に付かない一日を過ごすハメになった男だったが、寝起きの悪い自分のために必死に考えてくれたハウリンを当然怒ることもできず。 夜もまた、悶々と過ごす独り身であった。。。 神姫との生活。 それは、快楽と地獄が紙一重なのかも知れない。 >>次の話を読んでみる>> <<トップ へ戻る<<
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戦うことを忘れた武装神姫 - type_S -01 註:このSSは、半ば実験企画でもあります。 すなわち、BGM付けて読んでくれ企画。 でもって、本話の指定BGMは下記の曲であります。 「IN THE CATHEDRAL」 (DIABLOS X、http //www.muzie.co.jp/cgi-bin/artist.cgi?id=a043064 より) 上記の曲をDL等していただき、所々のタイムと併せるように聴きながら、此処を読んでいただければ幸いです。 気が向いたら.swfに起すかも。。。 フィールド:大聖堂。。。 まだ日が昇らず薄暗い中に、ステンドグラスを通したわずかな明かりが差し込む。 ほぼ真ん中の位置。重装で待ち構えるサイフォス。 左上ではツガルがHEMLを構えて待ち構える。 -00 13" ギギィ・・・ 大聖堂の扉が開いた。 逆光の中に浮かび上がるは、アーンヴァルとストラーフ。 ごく標準的な装備であるが、そこかしこに刻まれた傷に、サイフォスも、ツガルも、一目で対戦相手が相当のレベルであろうことを悟った。 -00 27" ジャッジマシンの音声とともに、トップランカー同士のバトルが始まった。 間合いを取るべく、フィールド内を移動する4人。 隙を狙い続け・・・ストラーフが口火を切った。 -00 40" 飛び出したストラーフがチーグルを振りかざすも、サイフォスはやすやすと回避。 そこへツガルが上方より容赦ない弾幕を食らわせるが、アーンヴァルの援護により射線が外れストラーフは間一髪で逃げ出ことに成功。 しかし、顔を上げたそこに待ち構えるは、サイフォスの振りかざしたコルヌ。 ストラーフは弾き飛ばされた。 体勢を立て直して着地は出来たものの、迫り来るサイフォスの攻撃を防ぐのが精一杯。 弾き飛ばされたストラーフに気が行ったその一瞬をつかれ、アーンヴァルはツガルの放ったHEMLの一撃をまともに受けてしまった。 動きを止めたところへ、次々に撃ち込まれる弾。 そこへ、下方から刃が飛んできた。 ストラーフが投げたのだ。 ツガルがひるんだ瞬間、一気に接近し背中の翼による一撃を喰らわせるアーンヴァル。 その間、左手に持つPDW9からはサイフォスめがけて弾丸が発射され続けた。 降り注ぐ弾をかわすことに注力するしかないサイフォスに、ストラーフが襲いかかった。 力と力、技と技。 互いの持てる能力のすべてがぶつかり合い、火花を散らす。 大聖堂に、金属のぶつかり合う音と弾の射出される音が響く。 -01 18" と、そのとき。 大聖堂に、光が差し込んだ。外から鐘の音が響く。 日の出だ。。。 -01 26" 白く柔らかな光の中、ツガルの砲撃を受け流しながら、ふと想いをめぐらせるアーンヴァル。 私たちは、如何なる相手でも負けられない。 あの子の涙は、もう見たくない・・・!! ついにサイフォスを追い詰めコルヌを弾き飛ばしたストラーフもまた、同じ想いをめぐらせた。 そのために、私たちは勝たなければいけない。 勝ち続けなければいけない・・・!! -01 52" 予備バッテリーの電力を全開放させるアーンヴァル。光に浮かび上がる姿は、さながら十字架を背負った・・・堕天使。 目に宿る光は天使ではなく、獲物を狙う猛禽類の眼差・・・。 -02 03" 深い闇のように不気味に輝く瞳、悪戯っぽくも大胆不敵な笑みを口元に浮かべたストラーフ。 「双腕の悪魔」と呼ばれ恐れられている、かのストラーフはチーグルに全電力を注ぎ込んだ。 -02 11" あの子の、笑顔を失いたくないから。 たとえ、どんな相手であっても。 間合いを取るべく下がったツガルに狙いを定め。 デファンスを構えて突進してくるサイフォスに向かい。 -02 18" アーンヴァルは、十字架を背負う堕天使からの裁きの如く。 ストラーフは、闇を振りかざす使者からの雷の如く。 LC3の一撃がツガルに命中し、チーグルはディファンスをやすやすと打ち砕いた。 -02 24" 側方からまともに喰らってしまい壁に叩きつけられるツガル。 祭壇まで飛ばされ、一瞬気を失うサイフォス。 -02 31" にじり寄るストラーフ。 目を覚ましたツガルはとっさに身を引いて飛び上がる・・・が。 ストラーフが取り出したるはなんと吠莱壱式。 すぐさま一発が撃ち込まれ、飛び上がることも出来ず再度壁に叩きつけられた。 センサーに異常が生じたのか、ストラーフの位置が正確に掴めない。。。 ・・・かつての戦友であったハウリンよ。 見ていてくれ、私たちの戦いを- 。 お前たちの想いは、今、確かに生きている。 たとえお前が此処に居なくても- 。 -02 43" 殺気を感じ、後ろに跳び下がるサイフォスの目前を、研爪が掠めた。 アーンヴァルでは到底考えられない接近戦、しかも・・・速い!!! 何とか身体をよじり交わしたところに、防壁が叩き込まれた。 次々に繰り出される技に、サイフォスは成す統べなく、体勢を立て直すことすら出来ない。。。 ・・・技を競い合い、日々鍛錬したあの頃を思い出せ。 マオチャオ、私に力を- 。 あなたたちの想い、私たちが護りぬきます。 あの子が、悲しみの涙を流さぬように- 。 -02 55" ハウリンとマオチャオを一撃で喪ったあの日から、 あの子が失くした笑顔を取り戻すために。 私たちは・・・堕天使となり、闇の使者となった。 小さな私たちが、「武装神姫」として出来る、唯一のこと。 それは- 。 -03 09" 残された力を振り絞り立ち上がったツガルに、アーンヴァルのLC3が炸裂。 跳ね上げられたところへストラーフのチーグルが叩き込まれた。 地に叩きつけられたツガルは全装備が破壊され、戦闘不能のマーキングがジャッジより打ち込まれた。 このわずかな隙をついて立ち上がったサイフォスは、銀のフォークを手に取りふたりに最後の突撃を仕掛けるも、再びストラーフのチーグルに弾き飛ばされ、振り返った先にはLC3を構えるアーンヴァル・・・ -03 21" アーンヴァルとストラーフは呟くように、 貴女たちに罪はありません。 しかし、これが現実・・・ 貴女たちの未来に幸多からんことを。 そういうと、 LC3の引き金が引かれ- 。 -03 31" 大聖堂いっぱいに広がる閃光。 -03 33" ジャッジマシンの声が響いた。 「勝者、アーンヴァル・ストラーフ ペア!!」 >type_s -01 楽屋 を覗いてみる> <<トップ へ戻る<<
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戦うことを忘れた武装神姫 - type_S -06 皆様、こんばんは。 神姫との生活、いかがお過ごしでしょうか。 キャッキャウフフも、ドキドキハラハラも。そして、夜の生活も。 それぞれに、それぞれの生活があることでしょう。 しかし。 世の中には、本当は怖い神姫との生活というものもあるのです。 今宵は、その一部をご紹介しましょう・・・。 ・ ・ ・ ・ ・ ~めざまし神姫・Phase-4:ストラーフの場合~ 朝。 目覚まし時計の電子音が部屋に響く。 「・・・。」 布団から手がぬっと出てきて、器用に目覚まし時計の電池を外した。 電子音が止まると、再び手はずるずると布団の中へ。 「うふ、うふふ・・・。」 電池の外された目覚ましの隣で、寝息をたてる男の顔をニタニタしながら見つめるストラーフ。 もぞもぞと近寄って、男の頬をつついたり、鼻先をつまんだり。 しかし、男に起きる気配は・・・無し。 「ヌシさんの寝顔・・・かーわいい~。 えへ、えへへ・・・」 起きそうもないことを確認したストラーフは、ごそごそと男の布団に潜り込む。 ぽこっと頭だけを出し、 「添い寝ー!」 と、しばらくゴロゴロと悶えたかと思うと、男の頭によじ登りどこからか取りだした「登頂記念」と書かれた旗を立ててみたり。 眠り続ける男と(一方的ではあるが)戯れて、時折頬を赤らめたりしつつ・・・ やがて、本当に添い寝してしまった。 男と並び、心の底から安心しきったような穏やかな顔付きで、すぅすぅと小さな寝息を立てるストラーフ。。。 ・・・数時間後。 「はっ!!!!!」 男が飛び起きた。 傍らの目覚ましは・・・針が動いていない。 壁に掛けられた時計を見るや、男は絶叫。 「やっべーーー!!! 遅刻どころの騒ぎじゃなーい!!!!」 時刻は午前11時。 「ちょ・・・ストラーフ! お前が今日の目覚まし当番だろ?!」 「むにぃ・・・おはよう、ヌシさん。 ・・・起こしたよ? ほっぺたつついて。」 「ガーッデーム!!! 何しても良いから起こせと言ったろうが!!!」 「えー。 でもでも・・・」 「あー、もうっ! それどころじゃないz・・・」 慌ててベッドから降りようとして勇み足となりそのまま転倒、前転しつつ部屋のドアにぶちあたる男に、上方に掛けられていた時計が落下、見事に頭に命中。 しかしさっと立ち上がり、寝間着から着替えようとするも、ズボンの片側に両足を突っ込んでしまい再び転倒。。。 その惨劇をケラケラと笑いながら見ていたストラーフ、 「・・・あのさぁヌシさん。 今日は旗日だよ。」 と、頭を押さえつつ悶える男に卓上カレンダーを差し出した。 男はひったくるようにカレンダーを手に取り、携帯電話の日付と照合。。。 ぎぎぃ・・・と、怒りと悲しみの入り交じった目でストラーフを睨み付けた。 「お前・・・なんで先に教えなかったんだ?」 「だって。 知っていると思ったし。 それに・・・ヌシさんと添い寝もしたかったし・・・」 サイドテーブルの上でもじもじするストラーフに、つり上がった目尻がすぐさま下がる男。 「・・・なんだよ。 それなら夜のうちに言えばいいのに。 全く。。。」 男はストラーフを手に乗せて、指でそっと頭を撫でてやった。 ストラーフは目を細め、小さく頷いた。 ・・・と、ストラーフはふと思いだしたかのように、悪戯っ子の笑みを浮かべて男に言った。 「それにしてもヌシさんの慌てっぷり、すごく面白かったよ。 うまく填めた甲斐があったってもんよ。 また今度も上手く罠に填めるから、もっともっと慌ててみてねっ!」 もしかして・・・ウチはストラーフに、神姫に弄ばれているのか・・・?! 突然、虚しさに襲われる男。 ウチ、神姫を飼っているのではなくて、神姫のおもちゃにされているのでは。。。 考えているうちに、男は怒る気すらも失ってしまった。 神姫との生活。 それは、主従関係が逆転することもある、恐ろしい日々。。。 <<トップ へ戻る<<
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戦うことを忘れた武装神姫 その21 珍しく悩んだ数日だった。 そして、あたし自身にとっても、大きな数日となった。 ・・・事の起こりは、朝の来客だった。 「はぁ・・・時間はありますが・・・?」 久遠以外では、久しぶりのアポ無しの訪問客。 なにやら神姫絡みのハナシ だという。 大方、修理依頼かデータ解析とか、そんなモノだろう・・・と 考えていたのだが。 応接室で待っていたのは・・・ 「お忙しい中時間を割いていただき、誠にありがとうございます。」 明らかに日本人ではない、しかし顔を知っている人間・・・ 「フェレンツェ・カークランド博士?!」 「おお、どうも。私の名前をご存じでしたか。 貴女がCTa博士ですね?」 と、差し出す名刺。紛れもなく、本物のフェレンツェ・カークランド。。。 「は、博士のような御方が、なぜここへ?」 「いえいえ、そうかしこまらなくても結構です。 礼を言うのはこちらの方 なんですから。。。」 と、彼は訪問の理由を話し始めた。 ・・・知っての通り、博士は機械と人間、すなわち神姫と人間のコミュニケ ーションに於ける研究の第一人者である。 そして、彼はあたしの研究成果、 すなわち食事機能・消化変換機能や、センサー類の研究成果を相当応用して 幾多の成果を上げることとなった、というのだ。 博士の持参した論文集に は、しっかりと引用としてあたしの論文も。。。恥ずかしいやら嬉しいやら。 博士は、心ばかりではあるが、謝礼ということで、金額の記載のない小切手 を取りだした。 「お心遣いありがとうございます、博士。ですが、あたしはあくまで自分の 趣味範囲の研究として行っているだけですので。これを受け取ることは出来 ません。 どうかその旨、ご理解いただければ。」 「そうですか・・・。」 その時、あたしは少々寂しそうな目つきをしつつ小切手をしまう博士の眼の 奥に、別の光があるのを感じた。 「・・・ところで博士、あたしの所に来た目的は・・・それだけでは無い、 と思うのですか?」 あきらかに、博士は動揺した。 「いかがですか?」 たたみかけるように問いかけると、 「やはり同じ科学者、隠し事は出来ませんね。」 博士はやられたという顔をしながら静かに話し始めた。 そう、ここへ来た 本当の理由を-。 「すごいじゃないですか。 そんな大御所から直々に指名されるなんて。」 昼休み。 事の次第を、自販機前でたまたま出会ったMk-Zに話した。 博士の話したこと、それは・・・博士の研究 -すなわち、HVIFの開発- に、 あたしも参加しないか、という事だった。 所属は東杜田技研のまま、身分 の保障も含め、何一つ不満のない待遇。 施設も、資金も、桁違いの規模。 文字通り、やりたいことがやり放題。。。 Mk-Zはしきりにハナシに乗る ようすすめるが、どうも今ひとつ気が乗らない。博士は良いお返事を待って いると言い残して帰っていったが。。。 午後。仕事が始まっても、思うように作業がはかどらない。 今の自分の仕事に、不満はない。むしろ、感謝しているくらいの毎日。 だが、このまま踏みとどまって、前へ進めなくなってしまうのではないかと いう漠然とした不満もつきまとう。殻を破り、より大きな可能性のある世界 へと踏み出すべきなのだろうか。 沙羅とヴェルナにも話したが、まだ成熟 がすすんでいない2人にはピンと来ないようで、当然っちゃ当然だが、答え は・・・出なかった。 そうこうしているうちに、数日が経過。 毎日・・・というより、日に二回はフェレンツェ・カークランド博士側から 何らかの連絡があった。あたしの所で面倒を見たことがあるオーナーへも、 研究協力の依頼・・・つーかボディ供与をした、とかいう話も舞い込んだ。 ま、そいつらは顔をちらっと見ただけで、実質はMk-Zが面倒を見たんだけ ど・・・。 なんとも身近なところにも来ているんだねぇ。。。 そんなこんなで、気が迷い、仕事は進まず停滞に次ぐ停滞。・・・気づけば、 デスクの両サイドには、書類だの資料だのが、今にも崩れそうなほどに積み 上がっていた。 「マスター、いい加減して下さい! これ以上のスケジュールの遅れは技研 の他の部署へも影響が出てしまいます!!」 あたしがぼーっとしている間、ヴェルナは懸命に仕事のスケジュール管理、 調整をこなしてくれていたようだ。片や沙羅は、散らかる一方のデスクの上 を、ちっちゃい身体を目一杯使って整頓してくれて・・・いたのだが。 「も、もうダメっす、マスター! う、うわあぁあぁぁぁあっ!!!」 ついにデスク上の積載物大崩壊。沙羅、ヴェルナともに埋没してしまった。 「あっ!! ご、ごめん!!!」 慌てて2人を掘り出す。と、ヴェルナがびっとあたしを指さして言った。 「・・・こういうときこそ・・・あの方に相談すべきではないですか?」 「そうっすよ! でないと、マスターが死んじゃいますよぉ!」 確かにろくすっぽ寝ていないし、飯もまともに食っていない気がする。。。 「うむ・・・ そうするか・・・。」 あたしからハナシを切り出すのは性格上ちょっと癪だったが、仕方がない。 デスクの上で埋まった携帯電話を引っ張り出し、ダイヤルを廻す。 こんな時に一番頼りになる・・・あいつ・・・。 「・・・あぁ、久遠か? 悪い、今夜・・・いつもの所へ来てくれないか? あと・・・エルガとシンメイもいっしょに連れてきてくれ。」 その夜、T市のいつもの居酒屋。 あたしの声が相当深刻そうだった- との ことで、わざわざ仕事を途中で切り上げ、久遠は時間を作ってくれた。早速 久遠に先日のフェレンツェ・カークランド博士とのやりとりを、詳細に説明 した。同席するエルガ、シンメイも、静かに聞いている。あたしが知る限り では、こいつらほど精神面で成熟した神姫はそうそういないと思う。まぁ、 2人とも行動に関しては、久遠同様、幼いところがあるけどね。。。 一通り話し終えたところで、久遠が口を開いた。それは、あたしではなく、 エルガとシンメイに対してだった。 「・・・だってさ。 お前らならどうする? 俺たちと同じ、大きな身体が 欲しいか?」 「にゃーは欲しい! そしたらマスターと、もっとラヴーになれる?」 エルガの発言に、流石の久遠も苦笑いしている。 「なるほどね。 確かに、エルガがおっきくなったら、ラヴーになっちゃう なぁ。 お前可愛いし。」 「うにゃはぁ。。。」 顔を赤くして崩れるエルガ。その会話に嫉妬してしまうあたし。。。 「んで、シンメイはどう思う?」 久遠が尋ねると、シンメイはしばし考え・・・ 「ラヴ・・・というより、越えちゃいけない一線を越えませんか?」 相変わらずの冷静な判断。 「なるほどね・・・。 確かに、そう言う問題も出てくるねぇ。 難しい話 だなぁ。。。 奥も深いし。。。」 久遠の答えに、あたしも、エルガとシンメイも黙ってしまった。 ・・・そこなんだよね、あたしが引っかかっているのは。今はまだアングラ 的な研究だけど、それが表に出て商業化された時、果たして「今の人間」の 理性・・・いや、生き物としての倫理がどう問われるか、HVIFを与えられた 神姫がどういう立場になるか・・・と。 もっとも、フェレンツェ・カークランド博士は、そこの所をどうすべきかを 現在いっちゃん重点的にしているというので、あたしは安心しているのだが。 ビールをきゅっと飲んだ久遠が、沈黙をやぶり改めて問いかけた。 「なぁ・・・お前らは、本当におっきくなっちゃっていいのか?」 ・・・>その22へ続くっ!!>・・・ <その20 へ戻る< >その22へ進む> <<トップ へ戻る<<
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戦うことを忘れた武装神姫 その14 ・・・その13の続き・・・ ジャッジマシンが、フィールドの準備が出来たことを知らせる。 「両者、神姫をフィールドにセットして下さい。」 久遠は、狐スタイルのシンメイを静かに置いた。 プラントフィールド、神姫 サイズの工場が次の舞台。相手は、軽装にバックパックのみの兎子。一見すると 普通の「中装備兎子」なのだが。。。 「むむ、あの兎子の装備・・・」 「ええ、本気ですね。 全く無駄がありません。」 ぼそっと呟くように答えるシンメイ。 「おそらく、このフィールド自体にも相当慣れているのでしょう。」 しばしフィールドを眺め、なにやら考えるシンメイ。 「そうだ。マスター、私の背中のハコを、緑の大きいモノに換えていただいても いいですか? ついでに、ぷちの弐号も載せて下さい。」 と、久遠を見るシンメイの顔は、普段は滅多に見せることのない、ちょっと悪戯 っ娘のにんまり笑顔。 「おっ・・・何かひらめいたな。」 言われたとおりに、緑の箱とぷち弐号を載せる久遠。 「任せて下さい。 おそらく、7分30秒以内には勝てるでしょう。」 「目標を定めるのはいいけれど、無理はしない事。いいね。」 「了解しました。 ・・・ではマスター、許可を願います。モードB・レベル5に 移行してもよろしいですか?」 「本件は重要事象である。 よって、モードB・レベルF+ を、特別に許可する。」 「・・・ありがとうございます。 では、行ってまいります。」 キィン・・・ 甲高い動作音が久遠の耳に入った。閉じられるフィールドから手を 振るシンメイの右目の色が・・・ 濃紺に変わっていた。 「それでは、本日の第3試合・吼凛『シンメイ』VSヴァッフェバニー『コリン』、 試合開始いたします。」 先までとは一転、異様なまでの盛り上がりを見せる店内。コリンに、シンメイに、 声援が飛ぶ。 「Ready-・・・ GO!!!」 ジャッジマシンの声に、両者同時にスタート。 構造物が多いフィールド内を、 互いに隙を狙うように走り回る。時折、兎子のコリンが撃つカロッテP-12の弾音 と、2人の駆け回る足音だけが、静かな工場内に響き渡る。スパイ映画のような 緊迫した様子がモニターに展開され、徐々に静まるギャラリー。 と、シンメイが足下に散らばるチェーンを踏んでしまった。一段高い通路に立つ 立つコリンは、その音により、すぐさまシンメイを発見。 しまった、という表情のシンメイの頬にレーザーサイトの赤い点が光る・・・ 間一髪、シンメイは何とか弾を避けるも、顔にかすり傷を負う。 転がるように コンテナの陰へと逃げ込むシンメイ。 -しばしの静寂-。 「ふっ。。。」 口元ににやりと不気味な笑みを浮かべたコリンは、バックパックからグレネード ランチャーを取り出し、コンテナへ向けて・・・ ガス弾を何発も発射。 猛烈な煙が、フィールドを覆う。 排気しきれずに、シールドの隙間からガスが 外へ漏れだし、近場にいるギャラリーもむせ返るほどのガス。 『いいぞ! そこで一気に決めるんだっ!』 スコープを下ろしガスマスクを装着したコリンは、P-90を模したと思しきオリ ジナルのハンドガンを手に、通路から飛び降りコンテナ裏へと廻った・・・が。 「い、いない?!」 そこに、シンメイの姿はなかった。 「けほ・・・な・・・なんですかっ! 私はゴキブリですかっ?!」 振り返ると、そこには目薬ぽちぽち差しているシンメイが。 「な・・・なぜあれだけのガスを浴びても動けるんだっ!!」 驚くコリン。モニター席のサイトウもまた、驚きを隠せずにいた。 「あぁ、良かった・・・ どうなることかと思いました。」 イオがシンメイの無事に、ほっと胸をなで下ろす。 「ガス絡みは、あいつは相当抵抗力あると思うよ。」 シンメイを信頼しきっている久遠は、コーヒー片手にのんびり観戦。 「何しろウチに来た頃、しょっちゅう殺虫剤で自爆していたからね。」 「シンメイはね、バ○サンで炊きあげられたこともあるんだよー。」 久遠に、エルガも付け加えた。 「へー、そうなんだ・・・。 あのシンメイがねぇ・・・。 くすっ!」 妙ににやにやするリゼ。いつも小言を言われているからだろうか・・・ と。 『皆さん・・・ 通信入ったままですよ・・・ けほっ・・・ あ、あとで、 覚えておいて下さいね・・・ 特にマスター。』 怒りの四つ角が見えそうな押し殺した声に、久遠のモニター席はちょっとだけ 空気が凍り付いた。。。 『・・・ん? おい、何をぼーっとしている! 相手は止まっているぞ!!』 サイトウの声が、コリンに届く。 「い、イエス、マスター!」 サイトウの叱責にP-90を構えるコリン・・・と、何かによって銃がはじかれた。 「・・・遅いですよ。」 見れば、スパナ(神姫サイズ)を数本手にしたシンメイが不気味な笑みを浮かべ ている。 コリンはP-90を諦め、A4W改を取り出しすぐさまぶっ放す。 だがシンメイは、まるで先を読むかの動きで鮮やかに弾をかわす。 「いいですよ、弐号。 ・・・同期もばっちりですね。」 ぷちの弐号、シンメイが狐型ヘッドユニットを作った際、センサー類のさらなる 感度向上を図るため、CTaに頼んでセンサーユニットとしての機能に特化させた ぷち。。。 フィールドに慣れているであろう相手との差を補うために、弐号を 選択したシンメイの読みが、見事に的中したのである。 再びフィールドは、刑事ドラマのクライマックスばりの様相を呈していた。 コリンはA4Wを手に、所狭しと逃げ回るシンメイを追いかける。 シンメイも、 今度はぷち弐号の力を借りていることもあろうか、背負った緑の工具箱から取り 出したスパナやレンチで反撃をする。しかし、コリンも相当の手練れ、ひとつと して当たるものは無く、工具はどこかへと消え、金属の当たる音が響くだけ。。。 「あと・・・3箇所・・・。 残りは4分15秒・・・いけるっ!」 ぼそっと呟くシンメイ、取り出したるは、射出可能な特殊インパクトレンチ。 再び高い位置の通路へと登ったコリンを狙い、コマを3個発射。 「はっ、どこを狙っているのか?」 余裕の表情で飛んできたコマを避けたコリン。 「狙っていたのは貴方ではありません。 ・・・2、1、0! さぁ、お祭りの時間ですっ!!」 シンメイが叫んだ。すると。 「うっ、何だっ?! 何が起きたんだっ!」 コリンの足下の通路が傾いた。 慌てて飛び降りると・・・今度は両サイドから 鉄骨が襲いかかる。 突然の事態に、状況が読めないコリンは、マスターである サイトウに助けを求めた。 『マスター!! 指示をお願いします!!』 コリンの呼びかけに、サイトウは返事をしなかった。いや、できなかった。神姫 が、自ら判断し、フィールドを崩壊させて攻撃を仕掛けるなどとは、夢にも思わ なかったからだ。 鉄骨を避け、反射的に後ろへ下がると、クレーンのワイヤーが緩みフックが落下。 崩れた鉄骨の隙間をスライディングの形で抜け出し、ドミノ倒しになる厚板材を 蹴り飛ばす。 『マスター! はやく!! 指示を!!!』 しかも、計算し尽くされた、見事なまでのトラップ・・・。 神姫に、所詮機械 人形である神姫に、こんなことができる訳がない。。。 サイトウは、半ば パニックになっていた。 返事の無いマスターに見切りをつけ、コリンは全体がトラップと化した建物から の自力脱出を試みる。休む間もなく襲いかかるトラップの数々、床を波のように 流れ来るパイプを飛び越え、降り注ぐ煤をかいくぐり・・・ 最後に、台座が緩んで転がり出した大型変圧器に、フィールドの隅へ追いつめら れてしまった。 「おー、さすが工具とトラップの天才だなー。」 美しいまでの崩壊の連鎖を、モニターでじっくり鑑賞する久遠たち。ギャラリー にもどよめきが起こる。 ・・・シンメイは、コリンを狙っていたわけではなく、トラップを構築するため に、各所に工具を当てていたのである。もちろん投げた工具は、駆け回りながら くまなく回収済み。 追いつめられたコリンが振り返ると、ざっくりとフォークが足下に突き刺さる。 シンメイの得意技、「最後のリンゴは、私が頂きます」が決まった。 「くっ・・・!」 硬直するコリン。直後、背後に気配を感じ、続いて首筋に冷たい感触が。 「・・・。」 「・・・。」 変圧器のノイズに紛れ、勘づかれることなくコリンの背後へと回ったシンメイが、 首筋にナイフを突き立てる。そのナイフは、コリンが装備していたものだった。 「私は、神姫を治すことのできる技術をもった機体です。・・・賢明な貴方なら、 この言葉が何を意味するか、おわかりになりますね?」 シンメイが静かに言った。 その言葉に、コリンは手にした銃を捨てた。 「・・・神姫の息の根の止め方も知っている、と言うことね。」 コリンは両手をあげて、ギブアップをジャッジマシンに示す。 「コリン、ギブアップ! 勝者、吼凛・シンメイ!!!」 相手を一切傷つけることない、美しい勝利。 予想外の展開に、店内は、ネット上は、大いに盛り上がった。。。 ・・・>続くっ!>・・・ <その13 へ戻る< >その15 へ進む> <<トップ へ戻る<<