約 18,366 件
https://w.atwiki.jp/byakumu2/pages/2212.html
404
https://w.atwiki.jp/oukasenbu/pages/59.html
外来者掲示板 test -- もみ (2010-07-20 15 29 02) ども。すのうです^^みなさんお元気にして、あすか?^^ -- 宋琉春羽 (2010-09-30 14 57 00) 相変わらずごばってしまった・・・。元気にしてますか?です^^; -- 宋琉春羽 (2010-09-30 14 57 45) お久しぶりです。もしよろしければ、メンバ掲示板のパス教えます。 -- もみ (2010-10-01 01 03 26) スノウさん、久しぶり~ww なんか嬉しい^^ -- 周 (2010-10-02 00 51 42) FFやろうとみんなで目論んでます!! -- 周 (2010-10-02 00 52 28) やっほー♪ みなさんFFしてるのですねーお元気そうで^^ -- 孫人 (2010-11-03 02 43 52) ご無沙汰です^^ FFかぁ、なかなか手が出ないなぁ。 -- 陸 (2010-11-03 02 52 26) 大航海時代やってたけど、いまはIXAやってます^^ -- 陸 (2010-11-03 02 53 04) 孫さん、陸さん お久しぶり~ -- 周 (2010-11-08 01 10 27) FF忙しくて出来てないです しかもイマイチw -- 周 (2010-11-08 01 11 02) 自分もIXAやってます^^5鯖上杉(-。-)y-゜゜゜ -- もみ (2010-11-09 15 35 39) ご無沙汰ですー^^私は三ON引退後からAIONやってます^^vなかなか楽しいですよー^^ -- すのう (2010-11-24 09 50 36) でも、こうして桜花の掲示板を利用してお会いできるのって嬉しいですね^^v -- すのう (2010-11-24 09 51 34) ちなみに、私のPCでFFの推奨環境のテストしてみたら・・・ちと無理っぽいですね^^; -- すのう (2010-11-24 09 52 56) あ、スノウさんだ^^ AIONやってるんだ~ FFはいまアプデ待ちです… -- 周 (2010-11-25 22 31 08) 皆さん、最近は何してるんですかねぇ なんかやるゲームないかねぇ? -- 周 (2011-09-21 23 17 33) 皆様、ご無沙汰です。なんかメンバー掲示板に入れない・・・ -- 周 (2014-06-22 04 40 11) 数年ぶりにここに来てみた みんな元気かなぁ -- 周 (2018-06-09 14 24 37) このゲームやってたの、8年以上前か・・・ -- 周 (2018-06-09 14 25 43) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/mirumiruyzf0775/pages/147.html
〇 ● 毎年恒例の桜花見へ行ってきました。 目的地は加太国民休暇村下の駐車場です。 天候は曇り時々雨のようだったのですが、日曜よりマシのようだったので 今日 友夫婦と一緒に行ってきました。 11:30 自宅を出発し、友夫婦と待ち合わせ場所であるコンビニへ そのコンビニ周辺にも桜が咲いており、満開でした。 しばし雑談の後、加太へ向かったのです。 さすが花見客が多いのか、いつもより渋滞してました。 加太国民休暇村下駐車場にて 15:00過ぎに、雨がポツポツと降りかけてきたので、 帰宅することにしたのです。 帰宅中 雨が激しくなったり弱くなったりでした。 帰宅 19;00 走行距離 110km 友夫婦さんおつかれさまでした。雨でゆっくりできませんでしたが、 桜が見えたのが不幸中の幸いですね、 来週にしちゃうと散ってるだろうしね。 また 楽しみましょう~(*^-^)/ by、管理人 【今までの訪問者】 - 【今 日の訪問者】 - 【昨 日の訪問者】 - 〔コメント閉鎖〕 新年度以外のコメント欄を閉鎖することにしています。御了承ください。 上へ 日記メニュー 〇 ●
https://w.atwiki.jp/srwdd/pages/631.html
パーツ名 天真爛漫な耳長族の魔法使い キャラ名 グリグリ 作品名 魔動王グランゾート CV 林原めぐみ 専用演出対象 グランゾート 実装日 2021年3月24日 パラメータ レベル HP 攻撃力 防御力 照準値 運動性 1 1026 624 534 103 110 100 2565 3120 2670 258 276 110 2655 3180 2730 264 282 メインスロット性能 防御力ダウンⅢ 特性レベル 効果 0 1 2 3 4 5 40%の確率で、戦闘時のみ敵ユニットの防御力を[Lv]%減少させる 10 11 12 13 14 15 サブスロット性能 タイプ強化Ⅳ・攻撃(バランス)(遥大地) 特性レベル 効果 0 1 2 3 4 5 SSR+ 攻撃力が[Lv]%増加する。 7 7.4 7.8 8.2 8.6 9 11 バランスタイプのみ、さらに攻撃力が[Lv]%増加する。 3.5 3.6 3.7 3.8 3.9 4 4.5 遥大地装備時、運動性が[Lv]増加する 30 36 42 48 54 60 60 精神コマンド 種類 効果 使用回数 SSR 奇襲 1アクションの間、攻撃力・照準値が15%増加し、移動力が3増加する 2 SSR+ 奇襲+ 1アクションの間、攻撃力・照準値が25%増加し、移動力が3増加する 2 アビリティチップ変換時のユニークアビリティ 攻撃力アップ 性能考察 グランゾート実装に合わせて追加されたバランスタイプ向けの攻撃力特化支援。 大地装備時は更に運動性が伸びる。 精神は迎撃戦で非常に便利な『奇襲』。 広いマップの移動やMAP兵器の位置取りの際にはあるとかなり動きやすい。 迎撃戦以外でも攻撃力と照準値を伸ばす精神としても便利だが、複合効果の精神なので単純な攻撃力と照準値強化用の精神としては倍率は少し低め。 攻撃力中心に伸ばしつつ便利な「奇襲」が使える事もあり、バランスタイプが「奇襲」を使いたい時にはかなり便利な支援。 一方で大地専用支援としてはパイロット一致部分以外で運動性が伸びないため、これがグランゾートの運動性不足の一因にもなっている。 昇格考察 共通仕様としてパイロット一致効果は昇格しても変わらない。 昇格後の精神は攻撃力・照準値の伸びが15%から25%へと2倍近く伸びる。 タイプⅣなので昇格による数値上昇は小さめだが、攻撃力増強+「奇襲」という組み合わせは使いやすいので余裕があれば昇格も考えたい。 コメント欄 名前 すべてのコメントを見る
https://w.atwiki.jp/propoichathre/pages/1481.html
─────────────────────────────────────────────────────────── 桜花之恋塚 この幻想郷には、定期的に迷い人が流れてくる。 あの隙間妖怪の定例行事。半分はお仕事で、半分は趣味のような物だろう。 まあ、そんな事はどうでも良いのだ。あの胡散臭い奴の思惑など知ったこっちゃ無い。 重要なのは――その迷い人に限り、妖怪が捕って喰おうが何をしようがお咎め無し、という事。 そう。独り占めして弄り回して、果てに潰しても、誰にも咎められない、体の良い玩具が手に入るという事だ。 妖怪ならば当然の思考。 ただ、どんな因果か。 私はその玩具を、いたく気に入ってしまうことになる。 何処ぞの本の中で『人間友好度:最悪』という素晴らしいお墨付きを頂いた、この大妖怪。 泣く子は笑うが妖怪はショック死、悪名高いフラワーマスター。 この風見幽香が、である。 長生きはしてみる物だ――これは、私を知るもの古株達の一言。 私もそう思った。 全く、妖怪の人生というのも、何が起こるか判らないものだ―― これは、そんな恋話。 Q1、初めて出会った時の事は? 出会いは唐突。 そいつにして見れば、もっと唐突だったろうけど。 何時もの様に、向日葵に囲まれて午睡を愉しんでいたら、急に辺りが騒々しく。 蜂の巣を突付いたような妖精たちの動きを見れば、向日葵畑の中で暴れている奴がいるじゃないの。 向日葵よりも背の高い巨猿。随分お腹を空かせているのか、動きも大雑把で力任せ。 その先には案の定、獲物である人間の男が一人。足を縺れさせながらの大遁走。 『外』の奴って、皆あんなに鈍臭いのかしら。 ただまあ、色々とけしからん事よね、主に向日葵圧し折りまくるとか。 という訳で、そのけしからん猿にはとっととお引取り願ったわ。息を。 文字通りの千切っては投げ、ね。え?用法違う?まあ良いじゃあないの。 で、折角一難去ったってのに、腰を抜かして呆然としているオトコが一匹。 それ見て指差して笑ってやったのに、もービクビクしちゃって、益々笑いが止まらなかったわ。 百点満点のリアクションをしてくれたお礼に、なるだけ綺麗に穏やかに『弄り倒して』あげようとか思って―― そう考えてた時よ。 「ごめん、怖がったりして――有難う」 ――ってさ?信じられる? そりゃ確かに『これから虐めちゃいますよ』って態度は旨く隠したつもりだけど、 にしたって自分を襲った化け物以上の怪力女に『怖がってごめん』だの『有難う』だの、普通出てくる? 『外』の人間の感性って、ほんと信じられないわよね。 ただ、まあ。 それで興が削がれてしまった私は、そいつに埋め合わせをしてもらう事にしたのです。 単刀直入に言えば、『下僕』ね。 春夏秋冬の花を見て回るようになってからは、夢幻館は空けることが多くなったし、 その為に季節ごとの名所に用意した隠れ家の維持って、結構大変なのよ。 たまーに弾幕ごっこで吹っ飛ぶ服の替えとかも、人里の呉服屋で買ってるし。意外? という諸々の雑用を押し付け、ついでにどっかの姫よろしく無理難題も押し付けて、 そこで右往左往する必死な彼の哀れな姿を見て、暇潰しにでもしよう――そんな気まぐれ。 そんな気紛れの一番の決め手は、『有難う』より、『ごめん』の時の表情ね。 だって、本当に済まなさそうな、悲しそうな顔をするんですもの。 Q2、進展はどのように? 結構ゆっくりとした展開なのよ? 初めのうちなんて、今だから自覚できる程度だし。 まず、色んなことの積み重ねよ。 手伝いに関しては、まあ滞りなく。 一人暮らしが長かったのか、掃除と炊事はなかなか手際良かったけど、……問題は洗濯ね。 女物の扱いには気をつけろってーの! あと持ったまま固まるな!オロオロすんな!赤面すんなこっち見んな!白で悪いか! ……こほん、失礼。いやホント思い出しただけでも腹立つわ。首絞めたいくらい。 いや、実際1秒くらいキュッと絞めたけど。 ああ、そういえばもう一月もしないうちに、料理に凝り始めたのよね。イタリアン。 良いわよねイタメシ。素材の良さを全面に立てた強引な発想なのに、また美味しいのよ。 それにしても、トマトソースのパスタをちょっと褒めた程度で、妙にその気になった物よね。 まあご飯が美味しいのは良いことなんで、放っておいたけど。 そうそう、イタメシ向けのトマト探しも、その頃からなのよね。 今はもう夏の隠れ家の名物よ?ビニールハウスまで建てちゃってまあ。 あ、そーだ、やたら風呂周りも凝り始めたのよね。 最初は五右衛門風呂同然だったのに、石鹸はもちろん、洗髪量、入浴剤、垢擦りの海綿……、 今も時々増えてたり、新しいのに変わってたりするのよ?嬉しい反面、気色悪いわよね。 ちなみに今のお風呂は広々ユニットバス。 無縁塚にそのまんま転がってたりするのは驚いたわ。 あいつ、結構凝り性なのよね。 そういえば、私が人間の子供と戯れているのを見るとき、やったらニヨニヨしてて気持ち悪かったわー。 子供は可愛い物よ?純粋無垢な頃から、花を愛でる尊い心を養っておかなきゃねー。 って言ったら『何その新手の洗脳』って目で見られた。腹立ったので傘でビシバシしてやったわ。 紫の気持ちがちょっと解ったわ。結構癖になるわね。 Q2-2、決定的だったのは? その後。秋から冬になる頃ね。 あいつに冬の隠れ家の準備をさせて、私は人里に買い物。 流石に秋も終わりだと、山に入るのは小競り合いの元だし。あと秋の神様が暗くてウザい。 食料を買える立場なお姉さんは自重して、残り僅かな山の幸を採る権利を譲ったわけです。 これでも結構考えているのよ? さて、服も買い終わり、蓄えの心許ない食糧も買い貯めて、花屋に入った時のこと。 あそこの花屋は必ず鉢と種で売るから、見てても楽しいのよ。 突然、目の前に突き出された向日葵。 季節外れもいいところ、当然造花だったわ――手作りのね。 その花を携えているのは、あいつ。 冬支度が割と早く終わったから、後を追いかけて来たんだと。 「これから、少し目に寂しい季節だから」 ……それを満面の笑みで言われるんだもの。 「ホントは造花ってあんま好きじゃない」って言おうと思ったけど……やめた。 ただ終始不機嫌面で、あいつの用意した隠れ家へドカドカと歩いていって、締め出してやったわ。 あの時の戸惑いようは、今見れば傑作だったでしょうねぇ。 ただ、本当に不意打ちだったのは、その隠れ家よね。 例えば、寒いから暖房に毎度苦心してたんだけど、見れば和室に囲炉裏が出来てるんだもの。 不恰好な物だけど、機能的に問題なし。 他にも、火鉢が当たり前のように置いてあるし、掛け毛布を置いた安楽椅子まで。 それ以外にも細々とした物が一杯。どんな贅沢かって思って蓄えを確認したけど、 金目の物は勿論、置いてあった家財も手が付けられてなかったわ。 ただ、ね。 あいつの身の回りの物が根こそぎ無くなってたのよ。 特に外の物が。 ――帰る気、全く無いのよね。要するに。 呆然としてたら、外に雪が降り始めてね。 まさかと思って、玄関を開けたら―― 「こんなもんで如何でしょう、お嬢さん」 案の定、よ。寒空の下、子犬のように震えているのに、よくもまあこんな臭い台詞が吐けるものよ。 気障よね。ホント。 そんな気障な男に、キスひとつで済ませた私も私かもしれないけど、ね。 その翌日、風邪を引いて寝込むのも予測済み。 うーうー唸っている馬鹿面を堪能させてもらったわ。 あいつが隣にいると、冬でも暖かい――そう、しみじみと思う日々だったわ。 今でも思い出す、あの冬の日々――私の初恋の日々。 ええ白状しますよ。恋ですとも。惚れましたとも。 そんな――幻想郷の妖恋譚。 あのとき、あいつの前では一言も言わなかったけれど。 それどころか、多分自分でも気づいてなかったのだろうけれど。 あのとき わたしは とっても しあわせでした――。 ――そう、幸せだったのよ、あの日までは。 Q3、その『あの日』というのは? 忘れもしない。 その翌年の、夏の終わり。 それまで雨も降らず、田畑も人も妖怪も水不足に嘆いていた頃、唐突の恵みの雨。 最初はみんな有難がってたのだけど――三日も続いた辺りから、違う方向で慌しくなったわね。 それまで降らなかったものだから、川も地盤も大荒れ。 人里の人間たちは治水に追われ大騒ぎよ。 そんな中、隠れ家に缶詰で憂鬱にしていると、『長引くと備蓄が心許ない』って、 毎度の如く気を利かせたあいつが外に出てった。甲斐甲斐しい事よね。 ……数刻ほどまどろんでいると、グラスの水を揺らす程度の地鳴りを感じた。 妙に胸騒ぎを覚えて、合羽を被って人里に降りたわ。 ――人里は、『山側から川の下流にかけて土砂が崩れた』って大騒ぎになってて。 しかも、生き付けの店の誰もが、あいつの姿を見てなくて。 そして、現場では、沢山の人間の叫びが聞こえていて――。 ……あんまり、覚えてないのよ。その後から暫く。 多分、周りで見聞きしてた連中のほうがまだ詳しいわ。 土砂に片っ端から妖花の種打ち込んで発芽させて、人間引き摺り出させて、養分にされる前に枯らす。 そんな滅茶苦茶な方法で、手当たり次第に人間探しをしてたそうね。 ……本当に、覚えて無いの。 その後、覚えがあるのは、ね。 うん、結論から言えば、『骨折り損』だった訳よ。 とうとうその方法で、山にいた全員を助け出して、妖力も結構目減りして、息も上がっていた。 それだけやっても――見つからなかったの。 大丈夫。その後、滞りなく見つけたわ。 ……川を、流されている最中だった。 濁流の中、『外』から来た人間特有の、カラフルな上着が浮き沈みしてたわ。 川に飛び込んで、沈んだ木に引っ掛かっているのを、力尽くで引き上げて。 人工呼吸も見よう見まねでして、泥と水をがっぽり飲んでいたから、吸い出してやって、 心臓マッサージ、だったけ?あれもこなしたわ。 真っ青だった唇に色が乗ったときは、本当に安心したわ。 同時に、それだけ人間に入れ込んでいた自分に、改めて驚いたりして見て。 久々にくたくたに疲れ果てて―― そんな時に、気付いたの。 彼ね、引き上げたとき、腕を骨折していたのよ。 まあ、川に落ちたときに岩にぶつけたんでしょうけど―― ――な訳無いでしょう? だって、私が引き上げるときに引っ張った腕の方で、 しかも折れてる部分に、ばっちり私の手形が付いてるんだもの。 ――介抱する時は、身体を揺する時も、蘇生させる時も、気を使っていたけれど、ね?おかしいでしょ? 引っ張った時、完全に加減なんて忘れていたのよ。ただ必死で、引っ張っていたわ。 ……あいつの為じゃないわ。 本当に、本当に、ただ、私の為に。 でも、私の為でも――あいつを助けたかったのに。 永遠亭の薬師達のおかげで、あいつは危なげ無く峠を越えたわ。 ……腕は、『一朝一夕には元通りには動かない程度』までは、治せた。 本当なら切断か義手を覚悟するくらい、綺麗に潰れてたのに。 ありがとう、って、あの時くらいよね。誰かに大真面目に頭下げたの。 そして今日。 今、あいつは――『あの人』は、この隣の部屋で眠ってます。 薬師の話では、もう目を覚ます頃だそうです。 漸く、肩の荷が降りた、って所でしょうか。 逢いたいです。あの人の無事を確認したいです。 あの人の身体が冷たくなく、ちゃんと暖かいのを確認したいです。 あの人の声を、聞きたいです。 ごめん、嘘。 触りたくないし、聞きたくない。 触ったら、抱き締めてしまいたくなる。 自分の想いのままに、あの人を抱き締めたら――あの人は、潰れて千切れてバラバラになってしまう。 でも、そのぐらい抱き締めたい。 あの人に「そのくらい貴方が大事です」って教えてあげたい。 だから……やめておく。 彼から、腕の事を責められるかもしれない――なんてのは思ってないわ。 あの人、多分、責めないわよ。 責めたとしても、フォローも万全でしょうし。 ――だから、嫌なの。 甘えたくないの。縋りたくないの。 あの人に――もう、私の重み一つ、掛けたくないの。 壊れてしまうかもしれない、重荷になってしまうかもしれない。 そう考えるだけでも嫌なの。 手加減して触ることは、勿論出来る。 でもね?私我侭なの。 あの人に、私の思いの丈を、ありのまま伝えたいの。 だから、折衷なんて出来ないから。 そんな事すれば、益々我慢できなくなるから。 だから――しないわ。 もう二度と――あの人には、触れない。 怖いから。我慢できなくなるから――あの人には、もう逢いません。 でも、あの人が起きたら、もう終わりよ。 あの人は多分、私を追いかけて来る。 そんな事になったら、私はあの人に対して、何をしてしまうか、解からない。 ……嘘ね。 多分、「こうしたい」とか考えるだけでも、我慢できないから、無意識に避けてるんでしょうね。 ――ぶっちゃけ、もう駄目なのよ、私。 だから――行くことにしました。 あの人が、絶対についてこれない場所に。 「……どうしたの?」 永遠亭。そのとある一室。 青年が担ぎ込まれたその翌日より、ここにはもう一人の患者が入院することになった。 防音処理がされたその部屋は、主に心を患った者のケアの為に用意された個室で、 窓一つ無く、大概の事はこの部屋だけで賄える様になっている。 一つは外部への配慮。一つは患者自身への配慮のため。 患者の容態は、極めて重い。 睡眠も出来ない状態で、胡蝶夢丸の服用も当初は考慮されていたが、患者の精神的外傷を鑑みると、 それさえも危険である、と、専用の導入剤と鎮静剤を投与。 外部からカウンセリングの為の人員まで派遣し、その治療に勤めた。 だが、それもついに限界に達し、一つの『期限』に到達してしまった。 患者は、風見幽香。 病名は――『恋煩い』。 妖恋譚は必ず悲劇となる――その一礼をなぞる様な、経緯であった。 そして、患者の希望により、今、あることが行われていた。 「幽香さん、本当に――」 「ええ、ちゃんと遺しておいてね? 人間と妖怪、その両方に、必ず遺して置かなくてはならない事だから」 永遠亭の薬師以外に、この部屋への来客が4人。 幻想郷最速の新聞屋にして、天狗の山報道官・射命丸文。 彼女はベッドで半身を起こす幽香の隣で、河童謹製のレコーダーを手に、質問を繰り返していた。 「一つ、良いだろうか」 「あら何よハクタク、関連項目なら答えますけど?」 「無論だ」 礼儀正しく、挙手しての意見を発したのは、歴史喰い・上白沢慧音。 里の守護者である筈の彼女もまた、この大妖怪に招かれていた。 「何の為に、このような事を?」 「利ならあるわ」 答える幽香の口は雄弁で、笑顔さえ見せる。 その生き生きした姿は、とても心を病んだもののそれとはとても思えない。 「今後、このような事があった時の、参考にする為よ。 二度と繰り返さなくても良いように。或いは、今回よりも冴えた答えに、辿り着く為に」 ただ――それこそ、病んでいるのかもしれないが。 「……幽香さん」 それまで沈黙し、ただ会話内容を綴っていただけの人物が、声を上げる。 九代目阿礼乙女・稗田阿求。 表情は暗く、目は微かに潤んでさえいる。 「あら何?もう泣きそうな顔しちゃって」 「だって……そんなの、貴女らしいとはとても思えませんよ」 紹介記述を書いた身にもなってください、という声も掠れて、しかし言葉は続く。 「貴女が、自分以外、それこそ、後に続く『顔も知らない誰か』の為に、書を残すなんて」 「そーねえ」 幽香は、照れ隠しのように頭を掻き、苦笑いさえしながら、 「しかもそれが、遺言だってんだから――笑うしかないわね」 そんな重い一言を、本当に何でもないように、笑い飛ばした。 「……認めません」 「認めなさいな、閻魔さま。 喜ばしい事じゃない? これで私は、あんたの言う通りに、間違いなく地獄逝きよ?」 残る一人――四季映姫・ヤマザナドゥにさえも、この物言い。 それこそ、この幻想郷に無双の妖怪の真骨頂であるが、 「貴女は――!」 私の説教を、何だと思っている―― そう言おうとした口を、 「駄目、大きな声を出さないで」 背後に現れた、幽香の分身が覆う。 「あの人が、起きちゃうわ」 「完全防音のこの部屋でも、あんたの説教だと通るかもしれないの」 「だから駄目」 「お願い」「でないと」 「たとえ閻魔でも、息を御引き取り願うことになるわ」 閻魔に対して、それが果たして可能なのか。 だが、今この場の誰もが、それこそ閻魔自身でさえ、その事を疑いもしなかった。 それだけ、今の幽香の笑みは美しかった――冷たく、凄絶に。 「……」 止む無く、映姫は手振りで是と答える。 その姿に、悪いわね、と彼女は力なく謝罪し、分身も掻き消える。 そこに、先程の鬼気迫るものは、微塵も無い。 「まあ、解かるわよ。あんたは立場的にも、性分的にも、許せないでしょうね。 ――私が、自らを害するなんて」 「っ」 馬鹿みたいよね、と自嘲を隠しきれない笑みに、映姫はついに顔を背ける。 「……八意永琳」 「……彼女は、鈴蘭畑で、そのまま眠ることになります。 メディスンには承諾させました。貴女なら良い、とも」 淡々とカルテに何かをメモしていた永琳が、これまた淡々とした口調で述べる。 「何ぶん、相手が相手なので、半端な毒では死にません。 メディスンの力と私の力で造った毒で、時間をかけて、しかし安らかに、確実に完了する予定です」 「頼もしいわ」 自分の死に方を、本当に安心したように笑顔で頷く本人。 死刑台前の聖人でも、これだけの穏やかさはあるまい。 「ちゃんと記録、残しておきなさいよ? 良い医者なんだから――もう、私以外に安楽死なんて手がけたら駄目」 「……そうね」 白衣の薬師は何も言わず、ただカルテを淡々と綴るのみ。 「時間よ。術式の補正も済んだわ」 カルテが閉じられ、その手が幽香へと差し出される。 文に支えられながらベッドから立ち上がった彼女の、顔を覗き込む。 「MARCHE AU SUPPLISE って言うには、淡白ね」 返されるのはやはり、その二つ名に相応しい、花の如き笑顔だった。 「ええ、躊躇させないように、転送も用意できているわ」 「――お姫様と揉めなかった?」 「当分は口を聞いてくれそうに無いわ」 「迷惑量は、私の診療経過で勘弁かしらね」 「……何万年かぶりの黒星ね。二度と、忘れないわ」 会話の間にも、準備は整っていく。 花嫁のドレスと見紛う様な、白い死に装束を着付け、 美しい化粧が施されていく。 とても、黄泉への旅路の姿には、見えない。 「どうかしら、稗田さん?」 「……綺麗だなんて、言いたくはありません」 目の前で、くるりと一回転して笑ってみせる幽香に、とうとう阿求の瞳から涙が溢れ出す。 「人間が、妖怪の為に泣きなさんな」 それじゃあ、と、幽香の視線は慧音へ。 「……考えるだけでも、不味そうなのが想像出来るのだが、な」 「お願いね」 ――あの人が、私の事を忘れるように。 その為に、歴史を喰うことの出来る彼女を呼んだ。 「それ以外に…彼の心を守れぬというのならば」 『彼』が、愛する者の後を追う事など、決して無いように。 程なく、永琳の手により転送のための陣が、扉のように描かれる。 その先の事など、微塵も感じさせず、それこそ花嫁のように、慎ましく、陣をくぐって行く。 「じゃ、行ってくるわ」 「……風見、幽香」 一言。 押し殺した声が、彼女を制止する。 「それこそ――地獄で、待っています」 「ええ――ありがとう、閻魔さま」 俯き、顔を杓で覆う映姫の頬に、冷たい雫が、一筋流れた。 「……まったく、永琳のばぁか」 「仕方ありませんよ、姫」 「こらイナバ、あんた諦め早すぎるのよ! いいの?えーりんに黒星付いちゃうわよ? ああ見えて永琳ってば結構気に負う性質だからねー。後引くかもよー?」 「そ、それは……で、でも、一体どうすれば」 「あらやだ、あなたもやっぱり気付かないのね。 まったく、師弟揃って頭固いのね」 「えーと、すみません姫、話見えません」 「敢えて捻って言うとね――作れるわよ?恋煩いの特効薬」 「……彼は、今ここで寝てるんですが」 「起きてるわよ?」 「へ!?」 「しー声が大きいッ。……さて、貴方?」 ……。 「そこでずーっと、ハクタクに記憶あぼーんされる直前まで、さめざめと泣いているつもり?」 ……。 「ええ、嫌だけど仕方ないものね?愛する人が望んだことですもの、身を引くのもまた愛の選択。 ――でも、納得はいかないのよね」 ……。 「まったく、女も馬鹿なら男も馬鹿ね。 そんな馬鹿につける薬は、一つしかないわね」 「って、ちょ、姫、何ですかその薬壷!」 「んー?えーりんの部屋からガメて来たの。ちなみに超劇薬」 「なんですかそれ……?」 「だぁーから、馬鹿につける薬よ――で、そこなお兄さん」 「私からの、無理難題よ。 この悲劇を、見事なハッピーエンドに変えて見せたら、後は私が何とでもしてあげるわ。 どうやって、とは聞かなくていいわ。貴方は脚本を上げて、舞台を演じ切れば良いの。 スポンサーは得意なのよ?私。 ――どうする?乗ってみる?」 「幽香……本当に、いいのね?」 「ありがと、お人形さん。 こんな花畑で眠れるなら、よく眠れそうよ」 鈴蘭の揺れる、無名の丘。 そこに、今まさに眠るような佇まいで、静かに寝そべる、白装束が一人。 その枕元に、死神のように立つ、月の叡智。 「では、始めるわ」 「そうして頂戴な。もう、言うことも無いわ」 でも、と。 直後に、自らの口で、否と零す。 「そうね。あの人の好きな御伽噺の一つに、こんな台詞があったわ」 「……」 無言で、ただ、幽香の口元を見つめるように、そのときを待つ。 「『もしこの戦いが終わっても、生きていいって言われたら、小さな鏡を一つ買って、微笑む練習をしてみよう。 何度も何度も練習しよう。もう一度会うために。 もし――』 「『誰も傷つけずに生きていいといわれたら、 風にそよぐ髪を束ね、大きな一歩を踏みしめて、胸を張って会いに行こう』」 目の前で続けられた行に、僅かに驚く。 その表情に、永琳はただ悪戯っぽく微笑み。 そのまま、歌うような二人の声が、重なる。 ――生きていたい。 ありがとうを言うために。 ――生きていたい。 たくさんの気持ちを贈るために。 ――生きていたい。 「――この台詞を言った娘は、最後はハッピーエンドで終わるのよね」 「あんた、見たの?」 「私も女で、女には秘密がつきものよ?」 永琳の手が、ハンカチを取り、幽香の目元を優しく拭う。 「生きて、いたかったのよね」 「当たり前よ」 「でも、もう傷付けたくないのよね」 「ええ――でも、無理」 生きると言うことは、必ず誰かが近くに居ると言うことだから、と。 そう言って、静かに、幽香は目を閉じ、ただ頷いてみせる。 もう、とうに覚悟は決めた、と。 永琳の手に、スペルカードが握られる。 【天文密葬法】。 この術により彼女を結界で覆い、その中に致死量の毒を送り、『密葬』する。 「さようなら――大好きなあなた」 頬を、一滴が流れ―― ――アーイ…… 「……?」 幻聴だろうか。或いは夢だろうか。 聞き覚えのある掛け声がする。 ――ちょ、っとあんた!いくら何でもこの高度は! ――わぁ!?揺らさないでッて落ちる落ちる! ――キャーン……… 「……な、に?」 「……さて」 幻聴に違いない。夢でもいい。 多分、最後の最後で夢物語の台詞なんか出したからだろう。 しかし、それはそれで気になる。 「――フラァァァァァァァァァァイッッッッッ!!!!!」 先の掛け合いからすると、使用タイミングが致命的に間違っているのだ。 具体的には、二話分程先取りしているような。 「……姫のばぁか」 挙句、薬師のこの溜息。 それが、余りに気になって。 眼を開けてしまった――。 「幽香ァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」 眼前。未だ日の出たばかり、朝方の空。 幾つかの小さな点と、それに守られるような、大きな点が見える。 妖怪としての図抜けた視力を持つ、彼女の眼に映ったのは―― 「置いていくなァァァァァァァァァァァァァァッ!!?」 「嘘……」 逢いたいけど、逢えない。 そう思って、思い出の中からさえ、追い出そうとしていた。 「この馬鹿ァァァァァァァァァァァッ!!!」 「来るなこの馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!?」 文字通り、苛むほどに、狂おしいほどに愛しい――『あの人』の姿。 「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」 「いやああーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!?」 逃げる。 逢いたいという想いより、怖い、傷付けたくないという想いに押されて、自分の頭上の影から、 足を縺れさせて、しかし明確に。 だが、それにも構わず、彼は――『着弾』した。 「アーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!?」 「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああ!?」 『着地』でなく、『着弾』と言ったのは、ほぼ文字通り。 相応しい粉塵と轟音を上げて、彼が地面に到達したからである。 「……ナンセンスだわ」 「な、何言っているのよっ!!?頭抱えてる場合じゃないのよ!?」 完全に平静を欠き動揺する幽香とは対照的に、渋面を浮かべて、あいたたたと眉間に手を当てる永琳。 「早くあいつを助けて!!どーやったかは知らないけど、あんな高度じゃ――」 「……鈴蘭がクッションになってるし、天狗の風だの姫の力だので減速はしてる。 即死は免れているはずよ」 「ッよくもまあ冷静に――」 「あいにくと逆よ。頭痛いわ。もー限界もー知らない――夫婦漫才はとっとと片付けて頂戴」 「――え?」 そう言って、スペルカードを放り出し、幽香に背を向けて寝転がってしまった。 「お……」 「ひッ!!?」 そして、そんな事は他所に。 粉塵が晴れた先から、やがて、 「ぐ…………あぁ……ッ」 幽香にとって、いまや最愛の人の――見るも無惨な姿が現れる。 「あ――」 「ご――」 衝撃を受け止めた為か、両足は膝から下が決して向かないはずの方向を向いており、 内臓を潰したか、口から泡のような血を吐き。 そして、あの悲劇の幕開けとなった腕の傷も、完全に開き――千切れかけてすらいる。 「ほ――ゆ、ゆ、う、か」 しかし、眼光だけは強く。 その表情もまた、欠けた歯と血の零れる口で、豪快に笑って見せた。 そして、前に力強く突き出された、辛うじて無事な手には。 「な、何よ、それ……」 「は、はあ、は……っぐ、げぼ」 『馬鹿につける薬』と殴り書きのラベルが付いた、警戒色の瓶。 「……どういう、意味よ……」 止めて、だの、嫌、だのと、覆った口元から悲痛な声を漏らし、 いやいやと首を振る幽香の前で、裂けた彼の唇が動く。 もはや音を紡ぐ事の出来ない、その口はしかし、 「……え?」 一人には、しない、と。 それだけを形作って。 「まさか――馬鹿につける薬って――!!」 『馬鹿は死ななきゃ治らない』。 そんな言葉が、彼女の脳裏をよぎった。 幽香の声にならない制止を、形だけの笑顔で笑い飛ばし。 『あいしてる』。の音を、唇が綴った。 「――!!」 瓶の封を口で破って、その中身を飲み下し―― 「馬鹿ぁぁぁぁぁーーーッ!!!?」 飛び出した幽香に支えられながら、前のめりに崩れ落ちた。 「……うそ、その人、死んだの!?」 あまりの成り行きに呆然としていたメディスンが、二人に駆け寄る。 幽香は無言。 ただその両手は、強すぎず、しかし決して彼を放さないようにと、必死に、青年の身体を支えていた。 ボロボロになった青年もまた、無言のまま。 息を継ぐ気配もなく、ただ静かに、しかし笑みのまま、幽香の手に抱かれていた。 「……結局」 おもむろに、幽香の手が、柔らかく彼の頬を撫でる。 震える手は、彼の唇の血を拭い、彼女はそれを、涙溢れる瞳で、呆と見つめる。 「あなたを傷付けるのは、同じだったのね」 そして、泣き笑いの顔を作って、その唇に口付ける。 触れるだけの、穏やかなキス。 「……待っていて、私も、そっちに――」 そして、彼が手に握っていた、薬瓶を手に取り―― 「やめときなさい――本当に、死にたいならね」 目の前から、声が聞こえる。 溢れる涙を拭って、水を差した張本人を探せば、 「……月の、お姫様じゃない」 「こんにちは、花妖怪さん」 何故か、服のところどころがボロボロである。丁度、幽香の手で動かぬ彼と同じ様に。 「どういう、事……」 「『馬鹿は死ななきゃ治らない』ってのは、穢き地上の民の思考、って事y」 最後まで言い切らないうちに、その頭部が紅く散華する。 「……取り消せ。彼を馬鹿にしていいのは、私だけよ」 「――がー!人の話は最後まで聞きなさい!!」 瞬く間に、輝夜の頭が『巻き戻り』、元の黒髪美人の像を結ぶ。 溜息を付き、あのね、と、子供に言い聞かせるような態度で、 「でも、こいつはどちらかっていうと『死んでも治らない』類よね――あーもー怖い顔しないで、重要なところなんだから」 もう一度、吹き飛ばしてやろうか。 泣き腫らしたままの、夜叉の形相で輝夜を睨み―― ――【リザレクション】―― 「!?」 唐突に、幽香に抱かれた青年の身体が、淡い光を放ち始めた。 だからね、と、袖で口元を覆った、『悪役の笑み』で、月の姫は続ける。 「天然記念物級の馬鹿だから、永久保存する――それが私たちの『嗜好』よ?」 「さて姫」 「はいはーい?」 「ぶっちゃけ予測済みだったわ。というのはさておき。 私の部屋から、蓬莱の薬を勝手に持ち出したことに対する申し開きはある?」 「姫……最低です」 「知ったことか。ざまあカンカン」 「そ ー か よ し 殺 す !」 「ししょー!!抑えて!気持ちは解かるけど抑えて!」 「ええい離しなさいウドンゲ!」 「え、えーと、スーさん、こういう時は何ていうのかしら……あ、ブン屋さんはどう思う?」 「『僕は死にましぇーん』とでも言っておけば良いんじゃない?あーもー記事の練り直しね」 「あのー四季様?」 「何です?小町?」 「なんだか、物凄く嬉しそうですね」 「ええ、とても良い事がありまして」 「慧音さん?」 「阿求?どうした?」 「こんなハッピーエンドって、本当に良いんでしょうか?」 「何を言っている――当人の間では、まだこれからなのだぞ」 「あー、……それも、そーですねぇ」 「良いじゃないか、甘々で」 「甘々、良いですねぇ」 「さて、皆さん」 ――はい!!!!?(×9) 「お騒がせして申し訳ありませんでした」 は、はあ、畏まってどうも。 「――と、言いたいところだが」 へ? 「単刀直入に言いましょう」「あなた達には即座に消えてもらう」 はい? 「どんな手段をもってしても良い」「直ちに此処を去りなさい」 「さもなくば」「もし、これ以上他人のプライベートに干渉すると言うのなら」 あ―― 「その時は何のことは無い」「ただ、死ぬだけだ」 「「さあ」」 あ―――! 「「 死 ぬ が よ い 」」 WARNNING!! ここから先には、溢れんばかりの糖分と、表情筋がぶっ壊れん限りのニヨニヨ感を含む、 色々と当てられないような、殺人的成分が待ち受けています。 それでも、進みますか? ニア YES! YES! YES! NO.NO.NO... 「……あ、れ」 「目が覚めた?馬鹿!」 彼が目を覚ましたのは、もう一年の付き合いになる風景。 季節になれば見られる、周囲が見渡せない程の向日葵。 太陽の畑。 二人の妖恋譚、その始まりの場所。 「……もう、枯れている頃だと思ったのに」 「私が咲かせたのよ、馬鹿」 未だ夢の中に居るような表情で、周囲を窺う。 周囲に咲いている向日葵は、成るほど、確かに土台となる『枯れた植物などが肥えた土』を介さずに、 綺麗なままの地面から直接生えている。 そして、目の前には。 「……泣いて、たんだ」 「そうよ、あなたのせいよ、この馬鹿」 涙一杯の微笑を浮かべる、妖怪の少女が居た。 服は、いつの間に着替えたのか、何時ものチェック柄主体。 相も変わらず、姿は人間のそれと何ら代わりは無い。 「――く」 その姿に妙に安心した、と。 緩み顔で、くつくつと笑い始める青年。 途端、何か言い返してやろうかと、幽香の泣き顔が膨れ面に変わり―― 「……泣きたいのは、こっちだよ、馬ぁ鹿」 次の間には、青年は幽香を抱き締めていた。 幽香は一瞬驚き、しかしもはや拒まず、恐れず、ただぎこちなく彷徨う手付きで、彼の背を抱く。 「何言ってるのよ、泣いてるじゃない、馬鹿ね」 青年もまた、泣いていた。 言われ、撫でる頬に、水気を感じた。 「……生きてる」 「もう死ねないとも言うわ」 その頬を、幽香の手が優しく拭う。 「気をつけてね」 その緋唇が、涙の後すら霞む程穏やかな、はにかんだ微笑みを描く。 「これからは、私の方が居なくなる率が高いんだから」 「君さえ辛くないなら、如何様にでもなるだろうさ」 ばか、という優しい呟きと、こつん、と優しく額を叩く指。 そのむず痒さに、青年の頬も緩む。 しかし、直ぐにまた彼女の表情が曇り、俯く。 「それは……ちょっと、寂しいかも」 「……そっか」 じゃあ、と、今度は青年の手が、幽香の頬をなぞる。 頬を撫でられ、ウェーブ掛かった独特の碧髪を弄ばれて、幸せそうに目を細めた。 「やっぱり、ずっと一緒がいいかね」 「ええ、一緒に居ましょう。生きて行きましょう」 そして、どちらからとも無く、 「もはや、世の何が咎めようとも」 「たとえ、傷つけ合うのだとしても」 その手に、解けぬ力がある限りは、幽明の境さえも超えて――と。 確かな絆を、しかと辿る様に。 「愛しています」「いとおしいアナタを」 「「いつでも、どこでも――いつまでも」」 誓いは、交わされた。 Q4、それから? 「それで、僕と彼女は夫婦となりました」 恋煩いから始まり、恋の結実という大団円で幕を閉じた大騒動から、また季節は巡り。 もうじき桜の季節となっていた頃。 四季を統べる大妖怪の春の根城を、件の『夫』が手入れをしていた。 「なんだか、主夫が完全に板についてますねぇ」 人の悪い笑みを隠しもせず、ペンを走らせるのは、いつもの新聞記者。 辺りには、まだ春には早いの言うのに、蕾を色付かせ始めた大小の花達が、天然の花園を築いていた。 それほどまでに、主を待ち焦がれているのか。 それとも、この何処か冴えない夫の顔を立ててやろうという、要らぬ気遣いか。 新聞記者の一言に、農具を片手に携えたまま、寧ろ胸を張る程に、誇らしく笑んで返す。 「それはつまり、僕が今も彼女を支えているという証明でもありますね」 冴えない旦那の、ささやかな『威厳』というものを、文は慮った。 「変わったことは?」 「実は、あまり何も。 彼女は気紛れに起きて、気紛れに出掛けて、気ままに余所を見て回って。 でも、予め言わない限りは、必ず帰ってきます」 「関白ですね」 「何言ってるんだか。そこが良いんじゃないですか――ああ、帰ってきた」 青年は立ち上がり、妻の姿を見受けたであろう空に向かって、笑顔で手を振る。 文もその方角を見やり、手を振る――が、不意にその手が固まる。 「あれ?」 「どうか?」 「幽香さん、ですよね?」 何を見たのか、烏天狗は目を擦って検め、それでも合点が行かぬと、とうとうカメラの望遠機能を持ち出した。 「失礼、言い忘れてました――彼女、髪がt「おでこヘアピンにテール――!?」 大絶叫し、顎が外れんばかりに落ちる。 その記者の失礼千万な物言いに、彼は顔を顰め、 「……可愛いじゃないですか」 素で返答した。 「いやいやいや!!確かに可愛いかもしれませんが――敢えて控えめに言うなら!! 誰てめえって言って良いですkげふっ」 「悪かったわねぇ。普段芸の無い髪型でッ」 言い切る前に、新妻のスマイル0円の高角度キックが、新聞屋の頬を張り倒した。 その髪型は、少し全体を伸ばした上で、襟足の辺りを結って纏めたもの。 瞳を隠すような長さと癖になった前髪を、赤のヘアピンが綺麗に分けていた。 透き通るようなきめ細かい肌の額が現れ、健やかさをと艶やかさを両立させている。 件の台詞の通り――髪を、束ねてみたのだという。 『誰かを傷つけても構うものか。傷ついただけで失せるものなど殆どない』 とは、まっこと彼女らしい弁だろう。 「まったく――そも幽香は何も無くとも可愛いのに」 「あーら駄目よ、昼間から惚気るのは無し」 二人の間では、もはや当たり前となった、何気ない会話。 これがブン屋を足蹴にしているという構図で無ければ、もっと暖かい光景だったのだが。 「ど、退いてくれませんか」 「ああ、ごめんなさい」 全く悪びれる様子も無く、ただ淡々と足を退ける幽香に、文はこの大妖怪への認識を新たにする。 ――基本、やっぱり悪者だコイツ――!! 「で、幽香、首尾は?」 「滞りなく。人里も守矢の神社も、快く承諾してくれたわ」 「は?」 天狗の情報網にも初耳な、その計画。 文の追求を待たずとも、幽香は、歌うように続けた。 「人里の外れ、丁度、太陽の畑との境になるところ。 あそこに、桜を一本、咲かせたの」 そこは、太陽の畑を遠くから一望できる、小さな丘。 人と妖怪の境界線に、互いを見守るよう、聳え立ったその桜。 不死人の血を受け、妖怪の力で大樹となったその花の色は、何処かの悪魔のお墨付きを頂くほどの深紅。 折り良くあった岩を削って石碑とし、幻想郷の新たな名所になった。 「人と妖怪、その距離を見直すの場所になるように。 それでも、手を取る者達の背中を押す標として――なんてね」 「まあ、盛大なノロケ話が長々と刻んであるだけなんだが」 その名は――『桜花之恋塚』。 そこには、さながら薔薇の様に、燃え立つ情熱の赤に彩られた桜が、春の初めに咲き誇るという。 刻まれた妖恋譚は何故か悲恋話で、それ故人里では『下には人と妖怪の夫婦が埋まっている』 『深紅なのは、今でも幽明の果てで、薔薇の赤のような二人の愛が続いているから』という、まことしやかな 言い伝えが生まれたとか。 おまけ。 「あら?」 「どうした、早苗よぅ」 「恋塚の桜が、真っ白なんですけど」 「夫婦が喧嘩でもしてるんじゃないか?仲睦まじくとも、一日くらいはあるさ」 「何よこの花!!明らかにオマケして貰っているし! しかも薔薇とか桔梗とか――花屋の娘ね!?そうなのね!?」 「壮絶な誤解に決まっているでしょうが――――ッ!!!?」 喧嘩してました。 おまけ2。 「ねー見てみて――」 「何よサニー」 「じゃーん!四季の花冠ぃ!」 「わあ!凄い凄い!」 「慌てないで慌てないで、材料はあるからルナのも作れるわ」 「でも、こんな季節外れの花、いったい何処に……」 「領域侵犯、並び不法採集を確認――侵犯行動として、厳正に処断する」 「あ、花妖怪の隣にいる人間だ!やっほー」 「あれ?スター、何処言ったの?」 「逃走行動を感知――侵犯から、簒奪行動へと対処をシフト――確認」 「え、な、何それ、鋸に篭手みたいなのが付いた奴!? それ、庭仕事の道具なの!?凄いわね?――さよならー!!」 「へ?――あ」 「対象を確認――駆逐する」 陽符【留年皇―銃剣「恵貢思阿」―】 「「「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」」」 ――ピチューン―― 「……無断で、花壇に触るな……!」 フラワーマスターの夫は、単にニュアンス的な違いで『フラワーマイスター』と称される。 彼の姿を見たければ、恋塚の大花壇に行くと良い。 ――無断で摘んだ場合、命の保障はできない。 最近の訓練で、『慈意得怒』(慈しみの意より憤怒を得る)という力を得た彼は、花を脅かす万物を根絶する。 二つ名は、『留年皇』。 現世での、彼の者の過去の経歴に由来するのだという。 【幻想郷縁紀 第⑨版 英雄伝より抜粋】 「ダブりって言うな―――!!!?(←神隠しに遭う直前、所属学部の留年が決定した)」 おまけ3。 「さてさて、境界を司る隙間妖怪としては、妖恋譚なんてものは興味よりも義務感が先立っちゃったりする訳でー」 「あーあ、紫ってばホント出歯亀だね」 「そういう伊吹殿もワルよのお」 「のっほっほ」 「「では、ご拝見~」」 「今日も一日、有難う御座いました」 「や、そんな畏まって言わんでも」 (ゆ、紫さん!?これは何かの天変地異の前触れ!?嘘よ!?嘘だといってよ!?ねえ!?) (現実から目を背けるのは駄目よ……信じがたいけれど。あの幽香が、旦那の前で三つ指立ててるなんて……!!!) 「あのね、そうじゃあ無いのよ――この上で、お願いがあるから」 「……お願い?」 (恥らい無く、ただ頬を染めてはにかむだけのグッドフェイス!! こ、これは最早ツンデレとかそういうレベルを通り越してますぜ八雲さん!!) (そーでございやがりますね伊吹さんッ!!ああもう、あの子が、あの幽香があんな表情を!) 「……抱き締めて。ぎゅー、って」 「こうかな」 「うん。そう――ぎゅっと」 「もっと?」 「もっと」 「いっぱい?」 「いっぱい」 (こ、これは) (この展開は……ッ) 「……ごめん、まだ時々、怖いのよ」 「そうか」 「でも、今日は、いい事を思いついたわ」 「へ?」 (――ちょ、おま――アウッ!!?アウッ!!?) (ね、ねねねネッカチーフで自分の両手ててててししししsbばばばば) 「……えーと、その」 「……これで大丈夫。だから――」 「全部ひっくるめて――あなたを、くださいな?」 (ちょーーーーーーーーー!!?手ッ!!手―――――ウボァー) (有り得ない!たとえば、なんていうかこー――あ、ちょ、閻魔様、これには隙間より深い事情gアッ――――――――――――!!) <裁かれました> 最後に最後のおまけ。 「師匠、何やってるんですか?」 「例の二人。ちょっと奥様のほうが、イマイチ元気が無いって」 「で、今は検査中?」 「正直、お手上げなのよ。もう片端から検査に掛けて反応待ちなんだ ・ け … ど … … 」 「……師匠?」 「……ウドンゲ、今ここで自分の頭かち割って脳髄引き摺り出して、地面に叩きつけながら大笑いして良い?」 「師匠なら出来そうですが止めてください。てゐが夜トイレに行けなくなります」 「そう残念ね。ウドンゲが行けなくなる事を期待したのに」 「無視して本題入りますよ? 何が出たんですか?もしや」 「不治の重病のほうがまだマシよ」 「ではいったい何を――あれ?何これ、市販の検査器じゃないですk」 「おーーーーーーーめーーーでーーーーとーーーーーーーーーーーーーございまーーーーーーーーーーーすッ!!!?」 「御免ウドンゲ、私の書き上げた医学書、纏めて焼いておいて――ってあら駄目ね、気絶してるわ」 「「……」」(扉に耳の夫妻) 「……おめでとう。いや、有難う、なのか、これ」 「……えと、ご、御免なさいね? ――いっぱい、貰い過ぎちゃった」 Q5、――Happy? ニア YES! YES!! YES!!! 10スレ目 249 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「っ」 硬い繊維質に、何かが食い込む音が響いた。 やや置いて、息を鋭く吸い、堪える様な呻き。 「ちょっ、大丈夫?」 「あ、幽香、おはよう」 台所に響いたその音に、食卓から慌しく駆け込む影。 真新しいチェック柄のパジャマに身を包んだ、碧髪の少女。 知る人ぞ知る、四季のフラワーマスター。 そして彼女の目線の先には、 「……包丁、滑らせちゃって」 床に突き立つ万能包丁と、赤の滴る右手首を押さえる、一人の青年。 どこか幼ささえ感じる顔立ちを歪ませ、息を詰めている。 「大丈夫?」 見せて、と白布を片手に、駆け寄る彼女を、しかし彼は苦笑いで迎える。 「もう、止まってる」 抑えていた左掌を退け、手拭で血を拭えば、既に右手首の傷には、瘡蓋が被り始めていた。 とはいえ、傷そのものは大きく、そして深かったようで、盛り上がった傷跡が、赤く腫れていた。 「ここ最近、ぼーっとしすぎよ?」 まったく、と幽香は安心と不満の嘆息を漏らす。 お役御免となった布で、床を濡らす血を拭っていく。 「大晦日だからって、気が抜けた?」 「あー、どうだろ」 自分でも困惑しているのか、青年は治りつつある自分の傷口を、訝しげに見つめている。 「……拙いよな、いくらこんな身体でも」 軽く自分の頬を張り、気を引き締める青年。 そんな青年の瞳に、何を見たのか、 「あなた」 幽香が、その頬に手を伸ばす。 「ふぇ?」 頬を抓んでいた。 相当緩い力なのか、彼の表情に苦しさは見られず、だが、その行動の奇怪さに、瞳が困惑に揺れた。 幽香はしばし、彼の頬の感触を確かめつつ、彼のそんな瞳を覗き込んでいた。 男性としては背が低く、幽香と自然に目線が合う彼。 妖怪である彼女の隣に、何時までも居る為に、唯の人であることを辞めた彼。 風見幽香の、愛しい伴侶。 「何か、悩んでるわね?」 「んぁ?」 そんなことは無い、と表情に出す彼を、しかし幽香は首を振って、優しく嗜める。 「人間辞めて一年坊、自己観察眼なんてそうそう着きますか。 そーいうのは、自覚の無いところで積もっているのよ」 「んー」 そういうものか、と首を傾げる彼に、 「そういうものよ。その道の先達が言うんだから」 と、澄ました笑顔で返し、手を離す。 「……嫌な説得力だな、それ」 件の事を思い出したのか、表情に困った苦笑いに強張る彼。 でしょう?と幽香は相槌を打つ。 「今日は家事は良いわよ? 私はいつも通りだし」 「んー、御節とか雑煮とかは?」 「その手じゃ無理でしょ。私が用意するわよ」 それとも、と、床の包丁を引き抜いて、その刃を撫でる。 「年末年始も、お好みは私?」 「んなっ」 悪戯心に満ちた笑みと台詞に、彼の頬は紅潮する。 その様にくつくつと笑いながら、包丁を棚に収めた。 「相変わらず可愛いわねぇ」 「う、うっさいなあ」 彼は心底拗ねたように、顔を背けた。 「お昼は外で済ませるけど、お茶時には帰ってくるわ」 「……はいはい」 その後、玄関先で彼女を見送るときも、彼の表情は晴れていなかった。 「凹んだ?」 「結構ね」 わざとらしい即答に、幽香は微笑んで、 「じゃあ埋め合わせ」 彼の襟首に指を掛け、 「ぅわ」 その顔をこちらに向かせて、 「ん」 「んんぅ!?」 その唇を、見事に掻っ攫った。 「ん……?」 「――んー」 その間、たっぷり十秒ほど唇を重ね、満足げに唇を離す。 「ゆ、ゆ」 「まだ足りない?」 「……いんや、そんなことは」 よろしい、と笑って、彼女は外へと歩み出る。 「いってきます、あなた」 「――あーもー、いってらっしゃい、僕の奥さん」 降参だよ、と苦笑いに見送られ、玄関の戸が閉じる。 その閉まった戸を、しかし幽香は何故か物憂げな瞳で見つめる。 足はゆっくりと外へと進み、それでも、その瞳は玄関の戸へと。 ――もっと、求めてもいいのに。 そんな声が、日傘を開く音に消えた。 「はー……そりゃあんたが悪い」 「ええそうね、悪い」 「酷い女だぜ」 「幽香さんってば、鬼畜……!」 「これは酷い。地獄行きですね」 「ああ、寧ろ地獄に落とすべきだ」 神社に立ち寄った幽香に対し、茶の席で零した愚痴に返された反応は、辛辣極まっていた。 思わず、炬燵の天板に額をぶつける。 「な、何が……?」 すっかりと人妖のたまり場が定着した博麗神社も、その在り方に些細な変化があった。 その顕著な例が、ここに集まる顔ぶれであり。 「あんたさあ、乙女心と同様に、男心ってもんがあるのぐらい察しろよ? 霊夢、茶」 「ずぼらねぇ、自分の持って来なさいよ? ――でもほんとよね。幽香、さすがにそれはあんまりよ」 博麗神社には、男手が増えた。 同じ釜ならぬ、同じ碗で茶を飲む程度の仲である。 「生殺しってのはこの事だろうな……。 まあ確かにあいつ、奥手だとは思うがな?」 「そうですねー。うちでやったら、台所の時点で召し上がられちゃってます」 「お前は歯に衣着せろ」 縁側では、新聞記者が夫婦漫才。 「俺が言う事ではないと思うが、流石にこれは目に余る」 「逆を言えば、この人が苦言を述べるほどなら論外、という事です」 境内の焚き火を突く閻魔の隣には、寡黙な副官が付き従う。 もっとも、マフラーを共有する上下関係というのも、そうそう無いが。 幻想郷の弾幕少女たちもまた、新たな縁を結びつつあった。 「……そんなに?」 「「「「「「そんなに」」」」」」 六人前の追い討ちに、幽香の額が再度、天板を直撃する。 とても良い音だった。 その姿勢のまま、幽香は溜息を零す。 「でも、ねえ」 その様子に、他の面々が注目する。 「……恥ずかしいじゃないの。自分から求めるのは」 ぼそぼそと口篭りながらの呟きに。 「「「「「嘘だァーーーーーーーーーっ!?」」」」」 「えーーーーーーーーーーー!?」 擬音で表現するなら、ガビーン、だろうか。 そんな反応が、周囲から返ってきた。 「あの小鬼から聞いたぞ!?『お前ら自重』ってぐらい仲睦まじいって!?」 「紫からも聞いたわ!昼間には言えない事を仕掛けているのは、大概幽香だって!?」 「あいつらーーーー!?」 人里にて、酒蔵前で、鬼と蔵主がくしゃみをした。 外界にて、『罪袋』と掛かれた面を被った黒スーツの男が、己の伴侶を思った。 「そうですよ!たとえ私のカメラから逃れても、椛の眼までは誤魔化せmぶふぅ!?」 「椛さんにも旦那居るのに何させてんだこの阿呆おーーーーー!?」 「私の拳も受け取れ!?頼むから記憶を失えーーーーーーーーー!?」 上司からありえない職権乱用を受けた白狼天狗が、相方に慰められていた。 もちろん犬的に健全な意味で。 「あれで照れているつもりなら、私たちは何だというのです!?」 「ちょっと待て閻魔、それ私情」 むがー! と泣いているのか怒っているのか恥ずかしがっているのか分からない顔で、閻魔が捲くし立てる。 「落ち着け、映姫」 「むぐ」 と、閻魔の口に、二つに割った焼き芋が捻じ込まれる。 この副官だけは、ただ肯定し、冷静に思惟を続けていた。 「人によりけりだ。『そういうもの』は、な」 「……ほむ」 自分より背の低い上司の頭に手を置き、嗜め、慰めるように髪を撫でる。 さしもの閻魔も、こういう彼には頭が上がらないのか、赤い顔で黙り込み、焼き芋を頬張り始めた。 「その上で、だ。風見幽香」 「ん?」 自分の言葉を確かめるように、二、三、眼を瞬き、幽香へと問う。 「お前は――自分の魅力に、自信が無いか」 もはや、確信に近い問いだった。 硬直し、表情の消えた幽香の反応が、その正鵠を表していた。 「やはりな」 面と向かって、女性に聞くべき質問では無かったが。 ただ、この反応を見て、もはやそれを咎める者は居ない。 「……あの人は」 彼女は力なく項垂れ、誰とも無い呟きを漏らす。 副官は、それを真っ向から聞き留める。 「私を好きだと言ってくれたの」 「ふむ」 「でもね」 鼻を啜る音が聞こえ、幽香は顔を両手で覆い、力なく告げた。 「あの人が……私の何が好きなのかを、私は知らないの」 場を、重い空気が支配する。 ただ、その中でなお、この副官は寡黙。 つまりは、自然体だった。 「悪い事を聞いた」 ごく静かな、彼の謝罪。 その表情を先程から神妙に見上げ、無言で見守る映姫。 彼の事を良く知る彼女にも、彼の真意を量りかねている様であった。 「いいえ……有難う」 少し、気が楽になったと、涙を拭いながら、幽香が答える。 「まだ早い」 「……え?」 「その涙に対する報いとして、俺から助言がある」 唐突だった。 彼は自らの鞄を検め、厳重な封をされたファイルを取り出す。 「これが、何だか解るか?」 「それは!?貴方何をもご!?」 その行動を咎めようとした映姫を、再び焼き芋一つで沈黙させると、そのファイルを掲げる。 「ここにあるのは、あの留年男の、人間であった頃の記録だ」 「っ!?」 幽香の眼が見開かれ、再び表情が強張った。 「お、おい、何であんたそんなもん」 「蓬莱人をはじめ、寿命という理から開放された『元』人間の監視は、我々の管轄だ。 そして、あいつの担当は、俺だ」 周囲の問いに彼は答え、縁側まで寄ると、そのファイルを差し出す。 「これを」 「は、はい」 流石に幽香までは遠く、先ずは文の隣の青年へと渡す。 「み……見たいッ……」 「正直なのは良い事だ。気に入った。後で覚えておけ」 「や、やだなあ、思うだけなら自由じゃないですか」 天狗の好奇心の方が自制に勝るか、文が悶々としていると、 「見ても構わんが、その内容は『見るべきものにしか見えない』ようになっている」 「あゃーん」 という回答が帰ってきた。 がっくりと落胆した文を尻目に、そのファイルは霊夢へと渡される。 「たとえば、結界の管理者である私には、この中身が見えるのね?」 「そうだ。その権利もある」 ふーん、と、その封をまじまじと見つめる。 「ど、どうする」 隣人の慌てぶりに、さも詰まらなそうに息を吐く。 「これがあなたのでも、見やしないわ」 だから要らない、と。 遂に幽香へと、そのファイルが、渡る。 「これが」 あの人の、人生。 その変遷が、全てそこにある。 幽香は息を呑み、そのファイルを封の外から見つめていた。 ずっと、見つめていた。 「あの人の、全て?」 外界での人生、その全てを記したファイル。 流石に分厚く、そして重い。 「……これ、いいの?」 震える指が、その封に掛かる。 爪で擦るようにすると、封印の札は容易く剥がれた。 「好きにするといい。予備はいくらでもある」 その言葉に、その瞳が妖しい輝きを帯びた。 そして―― 「その中身は、俺はとうに見たからな」 その表情が凍り、震えていた手が止まった。 「……見た?」 「仕事に必要な内容だ。大概は頭に入っている」 確認を求める声に、彼もまた、極めて淡々と答える。 「……そう、見たのね」 ファイルを両手に持ったまま、席を立つ。 「そっか」 「幽香?」 霊夢が何事かと、その表情を伺う。 その口は、笑っていた。 縁側の者達に退く様に示すと、靴を履いて、庭に出る。 そして、一つ溜息を吐くと、満面の笑みを浮かべ。 「ざけんなぁーーーーーーーーーーーーーーーあッ!!!!!?」 一転、夜叉の形相。 手にしていたファイルに有りっ丈の力を込め、引き裂いた。 真っ二つに。それも背表紙に対して垂直に。 「赤の他人がッ!!?旦那の事を知ってて!!?」 さらに、その切れ端をまた纏め、 「その上にィ、私はその事を知らなくてぇッ!!?」 引き裂き、 「そ・れ・っ・て・つ・ま・り――」 丸めて、また引き裂き、 「私が――あの人の事を殆ど知らないって事でしょうがあーーーーッ!!?」 傍の焚き火に、叩き付けた。 周囲、副官以外が呆然とする中で、幽香はがむしゃらに焚き木に火種を足し、火力を上げていく。 その度、天まで届かんばかりに叫びながら。 「ふー、ふー、ふぅうううううぅッ……」 一通り、ファイルの残滓らしきものが灰と化した炎の前で、荒げた息を整える。 焚き火の度を越しつつある火勢に汗が流れ、纏わりつく髪をかき上げて払う。 「死神さん?」 地面を鳴らして振り返り、幽香の微笑が、一行へと向けられる。 「なんだ?」 彼は、やはり寡黙で、静かであった。 「――有難う」 そして、スカートの煤を払い、縁側の日傘を手に取り、 「お騒がせしました」 と、優雅に空へと舞った。 「……文」 「はい」 「帰ろうか」 「え、ええ」 すっかり空気に飲まれきっていた二人が、早々に立ち去る。 「映姫」 「は、はい!?」 「すまない、庁に用が出来た。書類の確認を頼みたい」 「へ?あ、ちょっ、だから人前で抱えるなと――!!」 静かな死神は、喧しい閻魔を抱きかかえて、足早に去っていった。 「ねえ」 「どうした?霊夢」 「幽香って、男の人から見て、どう?」 「いい女なんじゃないか? 少なくとも、これからは」 「そう」 「お前も」 「……ありがと」 「……ん、寝てしまってた、か」 幽香の隠れ家。 彼女の葛藤はさて置き、彼もまた、思うところがあり。 気が付けば、自分で整えていた寝床の上で、眠っていた。 「……陽が、沈むな」 台所の番は、自身の領分だと、起き上がろうとする。 「ん?」 そこで、気付いた。 換気していた窓は閉められ、何故か干してあった羽根布団が掛けられており。 さらに、部屋も既に暖気されている。 もしやと、鼻を立てると、案の定、鼻腔を擽る、夕餉の香り。 誘われるように、寝室から顔を出す。 「――あ、起きたのね」 「やっぱりか」 そこには、エプロン姿で振り返る、幽香の姿があった。 いつもは青年が着けているエプロンが、意外にも似合っていた。 「いけなかった?」 「いや、丁度良いよ。献立の予定はしてなかった」 いつものように、笑う彼。 それは幽香にとって見慣れた、それでいて、惚れ込んだ表情のひとつ。 しかし、それを見る幽香の笑みは、控えめだった。 「?」 「疲れは、ないみたいね」 「いや、そりゃそうだ」 ただ、その視線は、これまでに無い穏やかさに満ちていた。 「どうだった?」 「文句なし」 食事が終わり、片付けもまた、幽香が買って出た。 自分のやることが無くなり、手持ち無沙汰にしている彼。 幽香はそんな彼を時々振り返っては、幸せそうな笑みを浮かべ、手を進めていた。 ふと漏れる、こんな愚痴。 「プライド傷つくよなぁ」 「ん?」 「こんな簡単に、幽香は僕の上を行ってしまう」 「――そうね」 その返し方が、いつもやや辛口な彼女のそれとは違った。 訝しがる青年を余所に、片づけを終えた幽香が向かいに座る。 「でもね?」 目を瞑り、微笑んだまま、確かめるように、幽香が口を開く。 「それで、あなたの価値が変わるわけじゃないわ」 「いや、そうだけど」 「だから」 身を乗り出し、戸惑った彼の頬へ、手を伸ばす。 朝方のものとは違い、あくまで優しく、真摯に。 「『あなた』を教えて?」 「――」 青年の瞳が慄き、身が強張る。 「……なんでまた、改まって」 「知りたいの」 彼が目を逸らしても、それを咎めることはせず、但し、止める事もせず、 ただ、言葉を続ける。 「私は、私に会うまでの貴方を、殆ど知らない」 「……必要、なかったしね」 「ええ。私の『あなた』は、ここにあるもので全て」 それで構わない。それで充分。 今まで、その筈だった。 だが。 「でも、気付いたの」 「何を?何に?」 「今此処でこうしている貴方は、その『今まで』を全て投げうった、って事」 「!」 淡々と、しかし重い言葉に、彼が振り返る。 「そして、それは私との出会いが無ければ、有り得なかった選択」 「待ってくれ、そんな」 捨てたつもりなど、無い。 その意思を、あくまで優しく、しかし堅く拒んだ。 「でも、その身体では、もう引き返すことは出来ない」 「う」 どちらとも無く、視線は青年の右手へと。 もう、その傷の経過さえ、見当たらなかった。 幽香の手が、その彼の右手を取る。 そのまま、両手で抱くように包み込み、 「いいの。私もその事を責めないし、嘆かない」 「幽香?」 「でも――知りたい」 教えて?、と首を傾げ、微笑んで、請う。 「あなたが、あちらでどんなことを知ったのか。 どんな事を学んだのか。どんな事を覚えたのか。 何を好み、嫌ったのか。どんな人に出会ったのか。 あなたにとって、向こうの人生はどうだったのか。 あなたは、どんな未来を、夢を思いながら。 どんな人の想いを受けて、生きてきたのか。 そして、それらを今、どう思っているのか もし今、それらを取り戻せるとしたら。 もし今、戻れるというのなら、何を思うのか」 彼の掌を耳に当て、その鼓動が心地よいとばかりに目を細める。 「前にも、言ったけど」 そう、前置いて、 「全部ひっくるめて――あなたを、頂戴?」 お日様のように、微笑んだ。 「……やっぱり、泣いた」 「ごめんね」 「いいよ、話さないのが、おかしかったんだ」 先ずは、此処に流れてくる直前の事から。 そんな、青年にとってあまり比重の重い事ではない、些細な事。 そんな事も、幽香は真摯に聞き入り、そして泣いていた。 「……ご学友、どうしてるのかしらね?」 「さあ。まあ平穏には違いないさ」 それより、と。 彼の手が、幽香の涙を拭う。 「有り難う、受け止めてくれて」 「ふふ、こちらこそ」 その手を再び取り、そこでふと気付く。 「ねえ、あなた」 「ん?辛気臭いのは、年が明けてからにしようって」 「そうじゃないわ。単純な事」 その笑みが、悪戯っぽいものに変わる。 「あなた、私の何を見て、『好きだ』って思うようになったの?」 「え」 ぴしり、と音が出そうな勢いで、彼の身が震え、固まる。 その上、頬が紅潮し、眼が泳ぎ始める。 わかりやすい。あまりにも、わかりやすい。 「一目惚れ、ってのは、責めやしないわ、一体――」 「・・・ひさま」 目線を逸らしたまま、赤ら顔で、搾り出す様な、声が漏れる。 「幽香って、お日様みたい、天気みたいだな、って思ったんだ」 「――」 「いつも花と草木と、お日様の匂いがする。 で、笑顔が日向みたいで、でも夏日みたいに辛いこともあって、 嵐のように怒ったり、雨のように泣いたり、泣き方も、通り雨だったり、梅雨の様だったり。 冬のように寂しげで、吹雪のように、苛烈で――」 とにかく、と首を振りながら、涙目で向き合う。 「でも、どんな時も」 緊張に上擦り、しかし徐々に明瞭になっていく、彼の告白。 「お日様みたいに、暖かさが、熱が、温もりがある娘なんだ、って……」 そこで、告白が途切れた。 何故なら。 「決めた」 彼の愛する、『おひさま』を背負う女の子が、 「あなたが失くしたもの、置いていったもの」 彼の一番大好きな、向日葵のような微笑みで。 「そして、あなたが得るかも知れなかったもの」 愛しく、羨み、焦がれるように。 「その代価と思えるようなものを――」 ただ、彼だけを見つめて。 「全部、私が持ってきてあげる」 いつの間に移動したのか、彼の傍らから。 「もう、大好き」 強く、優しく、抱き締めて来たから。 「幽香」 「ん」 彼女の腕力は強く、多少動いた程度では、振り解けない。 そんな力で、しかし優しく包まれこそせよ、締め付けて来る事は無かった。 その温もりを、存分に抱き返した所で――、 「ん?」 「鐘?」 除夜の鐘の、一つ目が鳴った。 「そんな時間だったのね」 「そうだね、良いお年を、幽香」 「こちらこそ、良いお年を――」 その、幽香の一言に、彼がふと、眼を細める。 「そーいや」 「ん?」 「凄く久々に、名前で呼んでくれた」 「そうねえ、みーんな『ダブり君』だとか、『留年皇』だとか」 「ごめ、凄く止めてマジでやめて」 唐突に彼が脱力し、あ゛ー、と幽香に寄り掛かってきた。 余程、嫌なのだろう。 「ご、ごめんなさい」 「そこまで謝らなくても良いけど、さ……」 そこで、彼は何かに気付く。 「どしたの?」 「いやー、改めて、さ。 女の子って、柔らかいね。胸とか」 「んなー!?」 羞恥より、普段の彼からは有り得ないような台詞に慄いて、思わず跳び退る。 「……そういうのも、セクハラなんだけどな」 「え?あー!?御免、あああ泣かないで」 僕だって男なのさ、とさめざめと泣き始めた彼を、必死で宥める幽香。 一般的には、逆の構図だと思われるが。 「と、ところで、一ついい?」 「ナンデスカユウカサン?」 あからさまな話題転換に、冷ややかな視線。 幽香は何とかそのいたたまれなさに耐え、話題を振った。 「す、凄く気持ちよさそうに寝てたけど――何かあるの?寝床」 「――ん?」 その問いに何を思ったか。 彼は席を立ち、寝室の入り口へと足早により、手招きした。 「見たほうが早い?」 「ん。そゆこと」 そうして、幽香から先に、寝室へと入っていく。 「あ、寒っ」 すっかり部屋は暗く、空も曇り、アンティークライトの弱い明かりだけ。 暖房もあったが、火鉢もストーブもヒーターも全て広間に移していたため、床暖房のみ。 部屋の空気は、頬に触る程度には冷たくなっていた。 「んで、何がある――」 「そぉい」 「ひゃあ!?」 改めて問おうとした幽香の足元を、彼が足で払う。 気の緩みと薄暗さにより隙の合った幽香は、容易く足を取られて、 「わぷ」 ベッドの敷布団に、顔を減り込ませた。 「な、何するのよ」 「分からない?」 突拍子も無い行動に慌てる幽香の耳元で、声が囁く。 「ひゃ」 「……分からないかな、やっぱ」 彼が、幽香の隣に寝転がっていた。 「さ、さっきから奇行極まってない!? 大丈夫? 主に頭!?」 平静も何もあったものではない。 混乱の最中にある彼女の前で、彼は、何処か酔った様に緩み、赤い顔をしていた。 「……この中で、僕にマトモでいろって言うのが無理」 え、と呟いた幽香の前で、 彼は、『鼻を利かせた』。 「――君の、匂いがする」 「あ」 幽香の頬が、一瞬で朱に染まった。 既に耳まで赤い。 「掃除をするときに、これだけは何時も困るんだ」 一瞬で切羽詰った幽香の前で、 「ここにいると、いつも君の匂いに包まれて、寝てしまう」 『とどめ』の一言が放たれた。 「……やっぱ、わかんない」 困ったような、照れるような。 そんな微妙な表情で、幽香も、それに倣う。 紅潮を隠すよう、照れ隠しとばかり、敷布団に顔をすり寄せる。 「……あ」 ふと、その動きが止まる。 「これ、解る」 「あ、解るんだ」 「自分の匂いは解らないわよ、野良の獣じゃあるまいし」 ただ、ね。 そう呟いて――青年に身を寄り沿わせる。 「――のにおい」 「ん?」 「あなたが寝てたところ。 ちゃんとあなたのにおいがする」 艶やかな瞳どうしが、暗い部屋の中で見つめ合い、 「ん――ぅ」 「んむ――ふ」 唇が、交わされ。 「ふ……ほんと邪ね、人間って」 「108つも……あるからね」 言葉が、交わり。 「――全部、私に」 「っ――願っても、ないね」 「卑しい、でも、嬉し――んぁ」 想いが、重ねられた。 次の年が明け、日の出を見るまで、ずっと。 想いを、重ね合わせ続けていた。 そして、おそらくは。 これからも、ずっと。いつまでも。 おまけ1。 「さて、初詣のお誘いをしようと思った私、射命丸文です。 ただ今、件の家の前にいます」 (そーっと、聞き耳を立てる) 「……ど、どうも、お取り込み中のようでありまして。 こ、今回は、つつつ謹んで、ええ遠慮したいと(ぶッ)おみょみぃまふ」 「(文ー、鼻血、鼻血)」 「(鼻を拭いて)……あのお」 「(あー……すまん、流石にコレは、無理)」 「(だ、だれもそこまでは言ってないで(ぶツっ)ひょぉぅ)」 「(うぉ倒れた)」 おまけ2。 「で、何です?手続きとは」 「俺と映姫の、今の関係についてだ」 「え――」 「……別れ話ではない」 「(ほっ)……って、それって」 「今の関係を続けていくのも、白黒が曖昧で、不埒というものだ」 「で、挙式はいつにする」 「……あなたはいつも、いきなり過ぎる」 「そうか」 「でも――届けは、出しておこうかしら」 「問題ない」 「既に、用意してたのね……」 おまけ3 「なあ、霊夢」 「なあに?」 「俺が、お前の何に惚れたと思う?」 「全部、って答えれば、何か当たり引くわね」 「悪いな。全部で当たりだ」 「……怠け癖も、がめつい所も?」 「そうだと答えたら、お前は嫌か?」 「……ずるいわ」 「お前もね」 おまけ4。 日の出が出てから見ると、よりHAPPY? 「明けまして、おめでとう、あなた」 「明けまして、おめでとう、幽香」 「日の出ね」 「ほんとに、夜が明けたね」 「……寝よ、おやすみ」 「ええ、お休みな……くー」 「……そうだ、あなたぁ?」 「むー、何か」 「……これからも、お互いの匂いが解る布団で、眠れるといいわね」 「……至上屈指の、爆弾発言だよ、何気に、色々と」 おまけのおまけ。ほんとにさいご。 「そうかぁ」 「どうしたんだ?」 「一年前辺りからなのよね、『貰い過ぎた』のも」 「……返答に、困るね」 「恥ずかしがることじゃないわ。 ――それが無ければ、この子は居ないものね」 「そっか――そうか」 次の年も。また次の年も。 おひさまのしたの すべてのいのちに。 おひさまのような しあわせがありますように。 11スレ目 696 ─────────────────────────────────────────────────────────── 「幽香」 「何?あなた?」 「僕に黙っている事が無いか?」 (ガチャンッ!) 「っあー!?勿体無っ!?(え!?もしかしてバレたッ!?)」 「ほら、布巾」 「御免なさいねー、折角淹れてもらったのに(ほ……セーフセーフ)」 「いやぁ、里で目出度い事があったんだよ」 「へえ?新年早々ね」 「うん――里の花屋、知ってるよね」 「(ギクッ)そりゃ勿論。何せ、ねえ」 「まーね。手伝いの女の人から受け取った花、勘違いしてくれたからねぇ」 「(あ、なんだ、その事?)ごめんなさいね?思いっきり殴っちゃったから」 「まさか等身大で○覇豪掌閃されるとは思っても無かったなあ……」 「私もガチで人体が岩貫通するなんて、思っても無かったわ……」 「まあ、さておき」 「そこの娘さんから、相談を受けたんだよ」 「え?」 「店長さんの事が好きで、でも、店長さんは昔惚れた人に操を立ててる。 どうしたら良いか、ってさ」 「(あの馬鹿……)ふぅん?で?」 「流石に堪りかねて、ねぇ? 店長さんに言ってあげた。 『僕の奥さんはそんなウジウジして過去引き摺ってんのが一番嫌い』だって」 「ぶ ふ ぅ ッ !!?」 「で、どうにか吹っ切れさせて、現在進展中……ってばっちいねコラ。 君がそんなリアクションするのは初めてだな」 「げほッ、げほ、し、知ってたのッ!?」 「うん。――後でけーねさん尋問したんで。 寺子屋の子供たちの前で『嘘はいけないなあ』って。一発だね?」 「この鬼畜ー!?」 「見取り稽古だ。君の。 で、君がどういう返答をしてたのかも、勿論聞いた」 「あ、あのーそれは、その」 「僕は一番でなくても、構わないんだが?」 「……そう言われると、返答に困るって、知ってるでしょ?」 「じゃあ、言わなくて良いよ」 「嫌よ。だって……」 「だって?」 「そっ!?その先も言わせる気なの!?」 「君が勝手に喋ってるだけだ」 「だったらニヨニヨすんなぁー!?」 「はいはい、偶にからかってみただけだ。どうぞ?」 「……私は、はじめから、あなたが一番、なん、だっ……て」 (じゅうぅっ) 「僕は一番じゃないよ」 「え――」 (ぎゅ) 「僕には、後にも先にも、君しか居なかったんだ。 目移りのし様も無いじゃあないか」 「――ぁぅ」 (ぼむっ) 「とまあ、珍しく攻めに回っている訳だけど」 「……い、いぢわるぅ」 「らしくないな。いつもみたいにすればいいじゃないか」 「……こういう私、嫌い?」 「嫌いだと思う?」 「……あなたこそ、何で今日、こんなに意地悪なのよぅ」 「簡単だ」 「僕からは、造花の向日葵しか送ってないからな」 「……拗ねてるんじゃないの、やっぱり」 「妬んでるんだよ。そんなセンスの良いもの、僕は贈れない」 「え!? 花、育ててるのに?」 「花壇の前で、花言葉を考えた事なんて、あんまり無い。 初耳だろう?」 「う、うん」 「まあ、贈る花と、眺める花は、僕の頭の中では別だから、なんだけどね」 「へえ?」 「ちなみに君は、愛でる方だけど」 「*@ %#$ーーーーーーーーーーッ!?」 (じたばた) 「うーむ、偶にいぢる側に回ると楽しいなあ。 これは予想外の仕返しになった。はっはっは」 「かッ『花鳥風げ――」 「愛しているよ?そういう君もひっくるめて」 「(ぴた)」 「今は、ちょっと気にしてるんだろ?彼を無碍にしたのも。 何より、それを僕に隠してたのも」 「――」 「いいよ。どう思ってても。そう思って無くても。 そんな事に関わり無く――君に最初に『愛してる』と言ったのは、僕だからね」 (ぎ……っ) 「……珍しく、独占欲の強い事を言うのね」 「君が居なくなると、とても悲しいからね。釘を刺しとくに限る」 「……この私を、自分の花壇に据えるつもり?」 「人んちの庭を花壇にしたのは君だ」 (がたんっ!) 「ひゃ――ん」 「――過程は兎も角、どんな箔がついていようと」 「――え、ちょ、っと」 「どんな花言葉だろうと、知ったこっちゃ無い」 「ねえ、いきなり」 「今、君が居るのは、僕の庭」 「待っ」 「綺麗だと思って、愛でて、愛を注いで、悪いことは何も無い」 「だから、って」 「――ご不満?」 「ぁ――うん」 「何か?」 「――足りない、から」 「どうする?」 「頂戴、いっぱい」 「じゃあ、君の愛が欲しいな」 「――あげる。いっぱい」 (かたん) ――あなたが わたしを あいしてくれるなら―― ――わたしは あなたのために きれいに さくでしょう―― 11スレ目 892 ─────────────────────────────────────────────────────────── 【桜花之恋塚・いんたーるーど 「自称・幻想郷一イイ女」】 窓一つ無い、病室。 薄碧で統一された壁。真ん中には清潔そうな白いベッド。壁際には細々と机・椅子が少々。 完全防音の密室。 ベッドにて身を起こし、パラパラと本を捲る人影がひとつ。 病人服を纏った、か細く、華奢で頼り無い、緩やかな曲線の組み合わさった、女性の輪郭。 垂れた前髪から覗く緋色の瞳は何処か儚げで、暗い。 ウェーブの掛かった、長い碧髪を指で弄びながら、ページへ眼を走らせていた。 その手が、前触れ無く、ページを捲る半ばで止まる。 「……どなた?」 目線だけで彼女が意を向けた先は、一つしかない部屋の出入り口。 紫檀の頑健な扉が、静かに其処に有るのみ。 ノックの音など、一度も無い。 「ああ、待って。当ててあげる」 しかし、無言の戸口に構わず、彼女は続ける。 先程までの物憂げな表情から一転、愉しそうに眉根を動かし、、瞳を動かして、何事かを思慮する。 「……永琳ね?」 伺うように、視線は再度、扉へ。 程なく、答えるように扉が開き、 「……本当、よく当てられるわね」 現れたのは、幻想郷きっての薬師、まさにその人であった。 いつもの天球をあしらった服に、白衣を羽織り、手には白い琺瑯のトレー。 「私を誰だと思っているの?」 と、自慢げに諸手を広げ、彼女――風見幽香は不敵に笑った。 「採血よ。手を出して」 永琳は幽香の左側に座り、トレーの中身を検め始めた。 それに促され、幽香もまた左袖を捲る。 「毎度悼み入るわ、貴女の研究もあるでしょうに」 自分で圧迫用の止血帯を巻き、消毒用ガーゼで腕を拭う手付きは、随分と手慣れていた。 「その一環でもあるわ」 お気になさらず、と苦笑いし、注射器に採血セットを取り付け、点滴針を開封する。 「前回は、どうだった?」 「漸く、あなたの平常、って云う物が視えて来たところ」 その回答が意外だったか、幽香は眼を丸くする。 「私たちの遠い遠ぉーい御先祖、その興りに関わる、月の天才が?」 半眼の、疑いの眼差し。 永琳は手を止め、返答の代わりに、両手を横に広げた『お手上げ』をしてみせた。 「力ある妖怪というのものに、一代一種というのは、珍しくないのだけど。 その中でも一番に、貴女は軸が飛んでるわ」 「あぁーん?あの隙間はどうしたのよ」 随分不服な評価なのか、半眼は不機嫌なものに変わる。 しかしそこは天才、澄ました顔をして、切り返す。 「アレが採血させてくれる?」 「貴女なら無理矢理にでも出来そうね」 「こないだ調べたら、まんまトマトジュースだったわ」 「あんの全身手品女……」 落胆し、項垂れながらも、捲った腕を差し出す。 柔肌に針が立てられ、管の中を人と同じ紅が流れ、採血カート内に血液が満ちる。 「にしても失礼ね。具体的にはどう飛んでいるのよ」 「こんな風に、人に酷似した生体を持ちつつ――」 永琳はカートを引き抜き、保存用のケースへと挿し込むように収めていく。 「人間より頑丈なのが信じられないわ。主に物理的な意味で」 止血帯を解くが、針と管は刺さったまま。 「それは皮肉?」 管は、採血器から点滴へと繋ぎ換えられていた。 「正直、良く保っているわよ。 経口での栄養摂取もそれなりに必要な筈なのに、丸3日、食を絶っている」 「それも、一睡もせず、ね」 とても飢餓状態とは思えない表情で、幽香は笑う。 しかし、その笑顔も直ぐに憂いに傾き、 「ほんとタフよね」 憎らしい、恨めしいわ、と。 淡々と、搾り出すように、呟いた。 「あの人は?」 静かに眼を瞑り、弱々しく尋ねる。 永琳は穏やかな表情のまま、首を横に振った。 「低体温状態からの回復だもの。 神経や脳そのもの、そして五臓六腑に筋骨問わず、賦活には時間が掛かるわ。 自発呼吸も弱々しい。まだ眠っていなくては駄目ね」 「そう」 この日より、ほんの少し前。 里で水害があり、一人の人間が、それに巻き込まれ、幽香の手で救助された。 その彼は――。 「大丈夫なのね?」 「そこは任せて? 生きる気が有る生命で、私が助けられないものがあって?」 「二言、無いわね?」 「何度問われても同じ。必ず完治させるわ――あなたの大切な人」 風見幽香が。幻想郷で最も恐れられる妖怪が。 心を許し、恋焦がれる、一人の青年。 「そう」 ありがとう。 そう言って、幽香は右の手で、本を再び手に取る。 しかし、永琳はその姿を何処か傷ましく見つめる。 「貴女は」 生きる気は、あるのか。 厳しい語調の問いに、幽香は――笑った。 声無く、口元だけで、何かを嘲笑うように。 「そうね」 ふと眼を薄く開き、永琳を見つめ返す。 それは、相槌だったのだろうか。 「確かに、タフね」 こんなに、生き苦しくても、まだ生きているのだから――。 彼女は、あくまで淡々と、嘲笑っていた。 「幽香」 咎める声にも、不敵な表情を消さず、続ける。 「そうよ。頼まれなくって頑丈ですとも――」 本を持つ手が、ぴくりと動き、力が入り。 「こんな程度に」 指先だけで、本が縦に引き裂かれた。 「ね?」 「本も、タダでは無いのよ」 至って平静な顔で、的外れな事を言う永琳。 しかし、その額を汗が流れていった。 「やっぱり脆いのね。人間に合わせた道具って」 人間と同じね? そうとでも言いたげな彼女の目線に、永琳は目を逸らす。 「簡単に壊れるのよね、人間」 そんな永琳の反応の何が愉しいのか、幽香は笑う。 おもむろに、裂いた本の一欠けらを摘み上げる。 「こう、ちょっと我武者羅に引っ張っただけで――」 千切る。 「ぷち、って、ね」 千切られていく紙切れを見る瞳は、次第に昏さを増していく。 その千切られる紙屑の様に、ある何かの像を重ねて。 「あの人の手、やっぱり柔らかかったのかしら」 千切るだけ千切り、今度は、その紙片を紙縒る。 人差し指と中指で、くるくると。 紙切れが、無抵抗に捻られ、紙縒りとなる。 あの雨の日、彼女が我武者羅に引いた、青年の腕のように。 「……幽香」 「なあに?」 その内心にそぐわぬ、満面の笑みの幽香へ、永琳は息を呑む。 「少しは、前向きに――」 「そうね、前向きな方が良いわね」 ふと、その手が止まった。 満面の笑みを崩さず、上体を永琳へと。 「最近、良い事を思いついたのよ」 「何かしら」 永琳の顔を伝う汗の筋が、増えていく。 幽香は、それを満足げに見つめ。 「よっ」 軽いひと声と共に。 立っていた永琳の姿がブレて。 肉が潰れる時の、独特の打撃音が、響いた。 「――が」 永琳は、この一瞬で、壁際まで移動していた。 脇腹に、点滴用のスタンドを突き立てて。 「ごほっ――か」 一瞬で、壁に突き込まれた事を悟るのと、喉下から熱が込み上げ、溢れるのは同時。 (内臓が最低でも二つ……片肺も破れた……!) 既に、痛覚の域は超えている己の負傷を、瞬時に判断する。 「痛い?」 声が、耳元に聞こえた。 「ごめんなさいね」 その一瞬、永琳は全てを忘れた。 「すぐ、済ませるわ」 耳元から、見つめていた。 余りに艶やかに、余りに昏い瞳が。 「――!?」 絶叫は、首を絞める左手により、掠れて消えた。 そして、幽香は空いた右手を、鋭く構え――、 「我慢してね?」 突き入れた。 掠れた叫びが響き、夥しい『紅』が、白衣越しに飛沫く。 腕が動くたびに、身が捩られ、床を、壁を、そして二人を紅く染める。 「そうよ、簡単よね」 一際強く、深く捻り込みながら、艶やかな笑み、闇に満ちた瞳で、血の気が失せていく永琳を見つめる。 「丈夫になる薬、持ってるじゃない」 ちょーだい? そんな、おどけた呟きを、弓なりの笑みで口ずさんでいた。 「ちょーだい?」 「うあ゛っ――は」 「駄目じゃないの、死んでは」 その一言と、『死んでいた』永琳の意識が復旧するのも、また同時だった。 「ごふっ!ごほっ!?」 「あら?」 何度目かの吐血に、幽香が押さえていた手を退ける。 そして、血濡れの永琳の頬を撫で、自分の方へと向かせた。 「どうしたの?言ってみなさい?」 何度目かの吐血を受け、永琳と同じ、血染めの顔に笑みを張り付かせ、その意を伺う。 「っごほ――わ、わたしは」 漸く、喋れる程度に蘇生したのか。 今だ血の赤と肌の青二色となった表情で、しかし、 「私、も、ばけ、もの、っごほっ」 「……そうね」 「――だけど」 強く、しかし悲しみに潤んだ瞳で、 「こんな事をして……彼に、好きでいて欲しいと、思えるの……?」 喀血と涙に咽びながら、言い切った。 「――ふ」 幽香の、血染めの微笑に、涙が溢れる。 「ふ、ふ」 湧き水のように、唐突に、止め処なく。 「ふ、ふふ、あはは、は」 やがて、その奔流は、仮面の笑みも、彩る赤も、瞳を濁す闇も。 「は――」 全てを飲み込んで。 「あ――あああああぁぁぁぁ――!!」 押し流し、破り、突き崩した。 「ぐ」 幽香が泣き崩れたことにより、串刺し状態から開放される。 苦悶を浮かべながらも、手早く、慌てることなく、懐から二枚の符を取り出す。 それを血止めのように、痕と言うには余りに大きい、二つの『孔』にあてがう。 それだけで、床に零れる血が止まった。 「……幽香」 脇腹を庇いつつ、顔を覆い、泣き崩れる幽香に歩み寄り、 「……美人が、台無しよ?」 「あ――」 目線を合わせて、微笑む。 手にハンカチを取り、その態度に呆然とする幽香の顔を、優しく拭っていく。 「なん、で」 「別に、構わないわ」 八意思兼命。 まさにその通りの、女神のように。 「年季が違うのよ」 僅かな悪戯心さえ覗かせて、 「小娘の癇癪ぐらい、なんともないわ」 微笑んで、抱き締めた。 「……幽香?」 暫し経ち、幽香の嗚咽が止まった事に気付いた頃。 「ししょー、まだ診察ty――ちょッ!?何――」 漸くやってきた、弟子の口を、人差し指で制する。 「久々に、眠っているのよ」 「え?」 腕の中の幽香は、永琳の胸に身を預け、頬に涙の痕を残しながら、寝入っていた。 数日振りの、穏やかな寝顔に安堵しつつ、鈴仙へと向き直る。 「身体を拭いて、着替えさせてあげて。部屋の片付けも。 私の方は自分でやるから」 「は、はい」 「起きたら、悪い夢でも見た?って言ってあげなさい――お願いね」 鈴仙へ彼女を預けると、先程までの事が嘘の様な足取りで、部屋を後にした。 「おかえり」 「姫?」 永琳の書斎には、先客が居た。 湯浴みで身体を洗い、服を着替えた永琳を出迎えた、彼女の主。 机の上に肘をつき、苦笑いで『お待ちかね』を全面に出していた。 「御免なさい、里に出る予定でしたけど」 「それはいいのよ、もう」 先約を無碍にした事は不問、と笑い、それよりもと、永琳を手で招く。 「何か――ひゃ」 袖を引っ張られて、輝夜の方へと倒れこみ―― 「お疲れ様」 「ひ、ひめ?」 今度は永琳が、輝夜に抱き締められていた。 「――辛いでしょう?」 か細い手が、解いたままの銀髪を撫で。 慈しみに満ちた呟きが、永琳の耳を小突く。 「そんな――」 「溜め込むと潰れるわよ」 強いることはせず。 しかし、拒むこともせず。 優しく、優しく、従者の髪を、撫で続ける。 「……なにが」 「ん?」 誰に向けたのではない呟きが、零れ始めた。 「何が、天才、よ」 「……そうね」 銀の輝きが、輝夜の手の中で震え、 「私は……私は……」 「……永琳」 「自分にとって……!零に近い齢の女の……ぉ!」 嘆き、 「……」 「恋心さ……ぇっ、……っひぅっ……助、けて、ぁげられな……ぁ……ぃっ!!」 咽び、 「ええ、辛いでしょう?」 「さ、泣きなさい」 「うぅ――わぁぁあぁあぁぁぁぁぁぁあーー!!」 慟哭した。 「……まったく、世話焼けるわ」 机に伏せ、寝息を立て始めた永琳に、上着を掛けながら、苦笑いする輝夜。 「……さあ、て」 音無く、諸手を合わせて、眼を瞑る。 そうしていたのは一瞬で、息も吐かず、本棚へと駆け寄る。 「ここが、こうで、あと、アレを動かして」 本棚の前で、音を立てぬよう作業すること、一刻。 「……うん、これ」 輝夜の手には、厳重に封をされた、拳骨ほどの小さな薬壷が置かれていた。 それを左手に掲げ、再び眼を閉じ、一呼吸。 そして、続けて掲げた右手には、 「じゃーん♪」 まったく同じものが、もう一つあった。 「因果複製・転写による増殖チート、上手く行ったわぁ♪」 片方を元通りに納めながら、一人ほくそ笑む。 「さぁて」 あくまでも静かに、しかし隠さず。 引き伸ばされた一瞬の中で、ひとり呟く。 「良い女泣かせときながら、ぐーすか眠りこけるだけでは飽き足らず」 薬壷を定めるように睥睨し、 「挙句、えーりんを泣かせた責任」 悪役の笑みを浮かべて、 「もはや、死では生ぬるいわ。 きっちり、取ってもらわなきゃね」 竹取の姫は、その謀へと動き始めた。 うpろだ778 ───────────────────────────────────────────────────────────
https://w.atwiki.jp/bitacolle7/pages/1821.html
名称:爛漫な遊撃騎士・ベディヴィエール レアリティ:☆8 属性 木 一覧番号 0990 入手先 入手先1:進化 ベディヴィエール入手先2:入手先3: レベル 1(99) HP 4824(6804) 攻撃力 834(1231) 治癒力 124(167) コスト 8 売却価格 ??? 進化必要素材 鎌鼬の髑髏(進化)虹結晶(進化)虹結晶(進化)虹結晶(進化)虹結晶 進化先 ベディヴィエール&鎌鼬の髑髏 必殺技:ブライブレイン 必要ターン数 25(15) 効果(Lv1) 発動時、味方木属性攻撃力3倍。味方全体の必殺技カウントを2減少。 効果(Max) 発動時、味方木属性攻撃力4倍。味方全体の必殺技カウントを2減少。 リーダースキル:爛漫な遊撃騎士 木属性の攻撃力4倍かつ、65%の確率で4thリールの火を木に変化。
https://w.atwiki.jp/akaisuiseihyakusiki/pages/5.html
更新履歴 @wikiのwikiモードでは #recent(数字) と入力することで、wikiのページ更新履歴を表示することができます。 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/17_117_ja.html たとえば、#recent(20)と入力すると以下のように表示されます。 取得中です。
https://w.atwiki.jp/sixses/pages/7.html
動画(youtube) @wikiのwikiモードでは #video(動画のURL) と入力することで、動画を貼り付けることが出来ます。 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/17_209_ja.html また動画のURLはYoutubeのURLをご利用ください。 =>http //www.youtube.com/ たとえば、#video(http //youtube.com/watch?v=kTV1CcS53JQ)と入力すると以下のように表示されます。
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/9290.html
【検索用 おうからんふ 登録タグ 2010年 VOCALOID お マカラファP 初音ミク 曲 曲あ】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:マカラファP 作曲:マカラファP 編曲:マカラファP 唄:初音ミク 曲紹介 「どうか新宿にも吹き荒れますように……。」 曲名:『桜花乱舞』(おうからんぶ) 歌詞 桜の嵐 町一つの哀しみ掻き消し 吹き荒んで 強くて善い 確かな慈悲が在るなら カタログに並ぶ愛の唄 思いの他 根が張るモンで 「要らない」と 背を向けたアノ日 虚勢に塗れた至りだろう 何故か若さが虚ろなのは 君だけじゃ無いから 桜の嵐 町一つの苦しみ掻き消し 吹き荒んで 烈くて善い 其処に慈悲が在るわ……! 春の青空 染めるなら 時は掛けずに 乱れ舞って 桜の嵐 人の総て消し去るが如く 荒れ狂って 強くて善い 確かに慈悲が在るから コメント 良い極ですな( ´ ▽ ` )ノ -- 庵 (2012-11-11 16 38 30) かっこいい! -- 名無しさん (2013-05-23 17 16 45) 名前 コメント コメントを書き込む際の注意 コメント欄は匿名で使用できる性質上、荒れやすいので、 以下の条件に該当するようなコメントは削除されることがあります。 コメントする際は、絶対に目を通してください。 暴力的、または卑猥な表現・差別用語(Wiki利用者に著しく不快感を与えるような表現) 特定の個人・団体の宣伝または批判 (曲紹介ページにおいて)歌詞の独自解釈を展開するコメント、いわゆる“解釈コメ” 長すぎるコメント 『歌ってみた』系動画や、歌い手に関する話題 「カラオケで歌えた」「学校で流れた」などの曲に直接関係しない、本来日記に書くようなコメント カラオケ化、カラオケ配信等の話題 同一人物によると判断される連続・大量コメント Wikiの保守管理は有志によって行われています。 Wikiを気持ちよく利用するためにも、上記の注意事項は守って頂くようにお願いします。
https://w.atwiki.jp/gunjibu/pages/61.html