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加配教員とは 児童・生徒数によって決まる各都道府県の教員定数に上乗せして文科省が配置する教員のことである。きめ細かい指導を行うことなどを目的にした「第七次公立義務教育諸学校教職員定数改善計画」に基づく。現在は、少人数指導、不登校対策など、配置する教員ごとに目的が定められている。(1) 文部科学省は1992 年度より「日本語教育が必要な外国人児童・生徒」の日本語教育および適応指導を担当する専任教員の加配措置を掲げている。その中でも加配教員が配属されている学校では、特定の時間内に日本語教育の必要な児童生徒を原学級から日本語教室に取り出して日本語指導の実施を進めている。教科学習の補助指導を行っている公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律施行令の一部改正については、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律施行令の一部改正等について」(文部科学省初等中等教育局長通知・平成一四文科初第二七号・平成一四年四月一日)により通知がなされた。今回の一部改正により、教育上特別の配慮を必要とする児童又は生徒に対する特別の指導に係る加配措置に関して、新たに「学習指導上、生徒指導上又は進路指導上特別の配慮が必要と認められる事情を有する児童又は生徒に対して当該事情に応じた特別の指導」が行われる場合に教頭及び教諭等定数の加算(以下「児童生徒支援加配」という。)を行えるようにするとともに、地域の社会的条件についての教育上特別の配慮を必要とする事情に係る加配措置に関して、新たに「市町村の合併の特例に関する法律(昭和四〇年法律第六号)第二条第一項に規定する市町村の合併が平成一七年三月三一日までに行われ、かつ同法第五条第一項の規定に基づき作成された市町村建設計画に基づく統合のため教育上特別の配慮を必要とすると認められる」場合に教頭及び教諭等定数の加算(以下「市町村合併加配」という。) を行えるようにしたという。(2) 加配教員の配置は県教委レベルで決定されるが、それに対して加配教員の研修は教育事務所レベルで実施される。中部教育事務所では毎年6月に、静岡市にある県中部総合庁舎会議室を会場に研修会を行っているという。1997 年度までは管内の加配教員のみを対象としていたものが、1998年度からは、加配教員だけでなく、加配措置の取られていない学校で外国人児童生徒教育を担当している教員にも、研修への参加を認めた。実際のところ,1998 年度の研修会では前者よりも後者の参加が多かったという。研修会の内容は、相談員からの講話、実践事例報告、指導主事からの文部省での研修報告,地区ごとのグループ討論などからなる。グループ討論での意見交換を通じて,加配教員や外国人児童生徒教育担当教員の間で横のつながりが生まれてくるという。 公立学校に在籍している日本語指導が必要な外国人児童生徒(4,020人)に対して、加配教員による「取り出し教育」が施行されている。しかし、配置基準により実際に加配教員が配置されているのは、日本語教育の指導が必要な児童生徒が在籍する全校数(およそ600校)の約25%にとどまっているという。(3) 外国人児童生徒の指導形態と教科指導の概要(4)-取り出し授業とティームティーチング- 外国人児童生徒たちは、日本語指導のみならず日本の学校のカリキュラムに沿った教科指導も受ける。しかし、日本語の能力の不足のために原学級で行われる授業を理解できない子どもたちも少なくないという。日本語を媒介しなくても理解できる音楽・図工・美術・体育や算数・数学(とくに計算問題)は外国人児童生徒に好まれる傾向にあるが、日本語の理解が不可欠な国語・社会・数学(とくに文章問題や証明問題)は嫌いな教科として挙げられていることが多い。(4)これらのいわば「嫌いな教科」の大半はとして挙げられる理由の大きな一つとして日本語がどれほど理解できているか否かに関係している。授業の中で日本語が理解することができないと、必然的につまらなくなく感じてしまうことがあげられるのはそのためであろう。そこで、特に日本語の理解力が要される国語・社会の時間を取り出し授業による日本語指導に充てている学校が多い。教科指導の形態として挙げられるのは、「ティーム・ティーチング(通称T.T)指導」によるものと、「取り出し授業」によるものが代表的である。また,一斉授業の中で指導の工夫をする場合もある。 一方で、教科指導にまでの対応をすることが出来ず、外国人の子どもたちへの教科指導に対する特別な配慮を欠いている学校も少なくない。T.T 指導では,原学級において加配教員等が外国人児童生徒の隣について、学級担任ないし教科担任が行う授業の内容を補足説明する形態を取る。このため,別名「入り込み授業」あるいは「くっつき指導」とも呼ばれる。T.T 指導の言語は日本語を用いる場合がほとんどだが、まれに母語を部分的に援用することもある。学校によっては、取り出し授業で一定の成果を見せた外国人児童生徒に絞り、現学級と連携をしT.T 指導を併用した教科指導を実施するところもある。この方法は、取り出し授業による外国人児童生徒のみを対象とした指導に比べ、原学級で日本人の児童生徒たちと同じ内容の授業が受けられる点での教科内容の理解につながる効果的な方法ということができるという。(4)取り出し授業では日本語指導が中心となるが,日本語能力の不足を補うこと,専門用語を解説したりしながら,国語,社会,算数・数学の教科指導を行う場合もある。 上記の太田市も浜松市も取り出し授業を行っている。取り出し授業のメリットとしては、当該児童生徒のレベルに合わせた指導をできる点にある。一方デメリットとしては、日本人児童生徒との「分離教育」を行うことで当該児童生徒に劣等感を植え付けてしまう可能性がある。 指導の仕方としては、複数を対象として日本語教員が個別指導をするパターンやドリルなどの個別課題を課すパターン、一人を対象として指導を行うパターンなど多種多様である。教室内では一貫して日本語を使用するか日本語が主で必要に応じて児童生徒の母語を使用することが多い。取り出し授業を行うときの判断基準は、話す力、読む力、書く力、学級担任と相談してなど様々である。 在籍学級との学習内容が同じになることは稀なので、学級担任と教科担任との連携が不可欠となっている。 [課題] 児童生徒により,日本語がほとんど話せない子や生活言語としての日本語が話すことができる子まで、日本語の習熟度がそれぞれ異なっているために、複数の教員や補助員による対応が必要とされている。そして、日本語指導を行なうにあたって、日本語で日本語を教授することは相当な時間と労力が要される。 よって、日本語指導に欠かせないとされる外国人児童生徒の母語であり、彼らの母語であるポルトガル語・スペイン語などに堪能である教員は非常に少ないことも問題視されている。 また、「取り出し教育」を行なうことにより、生活言語としての日本語を身に付けることが可能になったとしても、学習言語としての日本語を習得するためにはさらに時間と労力を要することになる。 学習言語が身についてないことにより、中学進学後に授業についていけなくなってしまったり、進学を断念せざるおえない状況におかれている生徒たちも少なくないという。 (1)読売新聞HP 2004年8月12日(木) 全国 朝刊 33頁(3社) 01段 124文字 http //plus.yomiuri.co.jp/article/words/%E5%8A%A0%E9%85%8D%E6%95%99%E5%93%A1 (2008/10/25閲覧) (2)文部科学省HP http //www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/t20020401002/t20020401002.html(2008/10/25閲覧) (3)文化庁文化審議会国語分科会日本語教育小委員会提出資料『多文化共生社会における日本語教育について』愛知県 2008,4.24 http //www.bunka.go.jp/kokugo_nihongo/bunkasingi/nihongo_08/pdf/shiryou_2.pdf (2008/10/25閲覧) (4)静岡県立大学短期大学部,研究紀要13-3 号(1999 年度)-2 『静岡県小笠郡の中学校におけるブラジル人生徒教育の現況と課題』 -日本語,母語,教科学習,そして進路-http //bambi.u-shizuoka-ken.ac.jp/~kiyou4228021/13_3/13_3_2.pdf 下のは文科省改正版↓ ●文科省、改正版↓ 公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律施行令の一部改正については、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律施行令の一部改正等について」(文部科学省初等中等教育局長通知・平成一四文科初第二七号・平成一四年四月一日)により通知しているところですが、今回の一部改正により、教育上特別の配慮を必要とする児童又は生徒に対する特別の指導に係る加配措置に関して、新たに「学習指導上、生徒指導上又は進路指導上特別の配慮が必要と認められる事情を有する児童又は生徒に対して当該事情に応じた特別の指導」が行われる場合に教頭及び教諭等定数の加算(以下「児童生徒支援加配」という。)を行えるようにするとともに、地域の社会的条件についての教育上特別の配慮を必要とする事情に係る加配措置に関して、新たに「市町村の合併の特例に関する法律(昭和四〇年法律第六号)第二条第一項に規定する市町村の合併が平成一七年三月三一日までに行われ、かつ同法第五条第一項の規定に基づき作成された市町村建設計画に基づく統合のため教育上特別の配慮を必要とすると認められる」場合に教頭及び教諭等定数の加算(以下「市町村合併加配」という。)を行えるようにしたところです。 ついては、児童生徒支援加配及び市町村合併加配については、左記の点に十分に留意され、適切な運用を図るようお願いします。 記 [Roman1 ] 児童生徒支援加配 一 児童生徒支援加配の趣旨 児童生徒支援加配は、学習進度が著しく遅い児童又は生徒が在籍する学校及びいじめ、不登校、暴力行為、授業妨害など児童又は生徒の問題行動等が顕著に見られる学校等、特にきめ細かな指導が必要とされる学校において、児童生徒の状況に応じ、特別な学習指導、生徒指導、進路指導が行われる場合に教員定数を加配するものである。 二 定数加配の対象となる特別の指導の範囲 学習指導、生徒指導、進路指導に関する特別な指導については次のような指導とする。 (例) (一) 学習指導に関すること [cir1 ] 児童生徒の学力の調査・分析 [cir2 ] 習熟度別指導への参加 [cir3 ] 学習進度の遅い児童生徒に対する補充指導(ティームティーチング、放課後・長期休業期間中の個別指導) [cir4 ] 出席停止期間中の家庭への訪問指導 (二) 生徒指導に関すること [cir1 ] 円滑な学級経営が困難な場合の援助活動(ティームティーチング等) [cir2 ] 深刻な問題行動を起こす児童生徒や不登校児童生徒等に対する個別指導・支援(校内の別室指導、保健室登校への対応、適応指導教室等との連携協力など) [cir3 ] 児童相談所、警察などの関係機関との連絡・調整 [cir4 ] サポートチームへの参加 (三) 進路指導に関すること [cir1 ] 就職活動の支援(進路情報の収集・提供、職場開拓など) [cir2 ] 進学の支援(進路情報の収集・提供、校種間連携など) [cir3 ] 奨学金制度等に関する情報収集・提供、相談 三 定数加配を行う上での留意事項 (一) 児童生徒支援加配は、従来の同和加配とは異なり地域を限定して加配するものではなく、児童生徒の状況に着目し、学習指導上、生徒指導上又は進路指導上特別の配慮を行う必要性に照らして措置するものであること。 (二) 児童生徒支援加配は、毎年度、各都道府県内の学校及び児童又は生徒の実情を的確に把握した上で、客観的な判断基準の下、指導上の困難度が高い学校から優先的、重点的に定数加配を行うこと。従って、前年度に加配した学校であるという理由のみでの定数加配は行わないこと。 (三) 定数加配が行われた学校に対しては、都道府県教育委員会、市町村教育委員会は、特別の指導が適切に実施されているか計画的に学校訪問を行うほか、学校長等からの報告を求めるなどにより、正確な把握に努め、この定数加配がその趣旨に反して活用されることがないようにすること。 [Roman2 ] 市町村合併加配 一 市町村合併加配の趣旨 市町村合併加配は、市町村合併に伴い学校が統合された場合に、当該学校の児童又は生徒については、もともと異なる市町村等の学校に通学していたことなどから、より一層教育上の配慮が必要であると考えられるため、統合された学校について教員定数の激変緩和措置を講ずるものである。 二 定数加配の対象となる特別の配慮を必要とすると認められる場合の範囲 特別の配慮を必要とすると認められる場合については、異なる市町村等に存在していた学校を統合した場合又は同一市町村等内に存在する学校を統合した場合であって、異なる市町村等にまたがる通学区域を設定した場合等、異なる市町村等の学校に通学していた児童又は生徒が、統合された学校に相当程度通学することとなる場合とする。 三 加配の方法 市町村合併加配については、例えば小学校の場合、第一学年の児童が第二学年になる際に統合が行われた場合、当該第二学年の児童が卒業するまでの五年間措置することが必要であることから、小学校については五年間、中学校については二年間を加配措置の継続期間とする。 なお、加配措置数については、初年度については、統合前の各学校について算定した教頭及び教諭等の数の合計数と統合後の学校について算定した教頭及び教諭等の数の合計数との差とするが、第二年次以降については、特別の配慮が必要な児童又は生徒が減少していくことから、当該期間において、小学校については五分の一ずつ、中学校については二分の一ずつ逓減させるものとする。 文部科学省HP http //www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/t20020401002/t20020401002.html
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愛あるせいかつ by ◆QKZh6v4e9w 温泉郷から戻って来てひと月が過ぎた。 相も変わらず花やしきや地元商店街にて客を消したり笑い者にされたりしながら、腸天才美人マジシャン山田奈緒子は、心穏やかでない日々を過ごしていた。 身辺に黒門島の気配が!──とかいういつもの最終回的展開ではない。 ではないが、奈緒子の心身を脅かすに充分な日々がこのひと月というもの続いているのである。 原因は上田だ。 生まれついてのひどい巨根を嘆く姿がつい哀れになり、何かの間違いでうっかり相手をしてやったのが悪かった。 不惑に近い年齢で初めて開かれた人並みの性行為の世界にすっかり嵌ったらしい上田次郎は、あれからというもの奈緒子に、照喜名か秋葉が乗り移ったかのような行動をたびたび見せるようになったのである。 いや、照喜名や秋葉レベルならいい。彼らは奈緒子に手出しはしないからだ。 アパートに戻れば奈緒子の部屋で勝手に人の茶を啜っているのは……いつもと同じか。 道を歩いている時なども、最近なぜだか偶然次郎号が通りかかる確率が増えたような気がする。 「パンの耳が袋に三つか、大漁だな。you、重いだろう?送ってやる。ほら乗れ!ほら!」 断ろうにも腕を引っ張られ、強引に車内に拉致される。すでに誘拐の域である。 あるいは、弱々しい声で「…もしかしたら俺は数十年後に死ぬかもしれない」と訴える電話が深夜にかかってくる。 早く死ねと言って電話を切ると「なぜ心配して来ないんだ!」と訪ねてきたでかい図体に押し倒される。 こんな日々が、ひと月。 奈緒子ならずとも心穏やかに過ごすにはキビしい毎日である。 * そして今奈緒子は、日本科学技術大学上田教授の研究室にて、ごたついた大きな机に某有名老舗和菓子店の紙袋を叩き付けていた。 どうせなにかの罠だから来たくはなかったのだが、上田が今朝電話でどうしてもとある場所に手みやげに持って行く都合があるから必要なんだと泣きついてきたのである。 お駄賃は十万円だと口走るので奈緒子はついその金額に目がくらんだのだ。 誰が貧しい彼女を責められよう。 「羊羹だ。売れっ子マジシャンがこの忙しいのにわざわざ仕事を抜けて買ってきてやったんだぞ、ありがたく思え」 上田は読んでいた学術誌を置き、目の前に差し出された奈緒子の掌を見た。 「なんだ?」 「お駄賃ははずむって言ったじゃないか、上田」 「言ったっけ」 「言った!」 上田はごそごそとあちこちのポケットを探り、一枚の五百円硬貨を取り出した。 奈緒子は憤慨し、掌を激しく上下に打ち振った。 「十万円!じゅ、じゅーまんえん!!」 「残りの九万九千五百円は後日改めてという事で…どうだ…」 「…当然、利息はつけるんですよね?」 「…いいだろう」 「じゃあ、トイチで」 「おいっ」 上田は五百円玉を摘んだまま椅子をひき、立ち上がった。 思わずびくりと胸をそらした奈緒子にむけ、制止するようにもう片方の手をあげる。 「まて…よかろう。それより、まず確実にここにある現金を手渡してやる。欲しいだろう……動くなよ、you…」 「………」 じりじりと奈緒子は後ずさろうとした。 はげしくいやな予感がする。 本当は即座に逃げたいが銀色の硬貨の魅惑的な輝きからなかなか目が離せない。 貧乏とはつくづく悲しいものだ。 奈緒子はちらりと横目で、入り口ドアまでの距離を測った。 幸いなことに、無闇に大きな机が二人の間にはある。 この大男が周囲を回り込んでくるまでの時間を利用すれば、きっと…。 いきなり上田が椅子を背後に蹴倒し、長い脚で机に飛びあがった。 雑誌、紀要、学生のレポート、学内のお知らせの類がマ○リックスの静止画像のように空中に散乱した。 まさかそう来るとは思わなかった奈緒子は口を開け、目を見開いた。 それが命取りになり、次の瞬間には床に飛び降りた上田に肩をがっちり確保されてしまっている。 ひげ面がにやりと笑った。 「youを捕まえるのは本当に簡単だな」 「こ、この…!やっぱり罠かっ」 「罠だなどと人聞きの悪い事を……」 上田は五百円玉をズボンのポケットにしまいこむと、奈緒子をひょいと脇に抱えた。 「しかも自分のポケットか!」 上田はじたばたしている奈緒子に斜め高みから眼鏡越しの変なウィンクを寄越した。 「後でyouにやる」 「後…」 何の後だ、と尋ねる気も奈緒子はなくした。 ──どうせ上田の目的はアレにきまっている。 部屋の中央に鎮座する立派な来客用のソファに座らされた奈緒子は、隣に並んで腰掛けた上田の腕を掴んで揺さぶった。 「……今日の講義は。仕事はどうした、上田!」 「大人気の『一般教養・物理』は上田教授の御都合により残念ながら休講だ。既に掲示もされている。安心しろ…」 給料ドロボーとは上田のような人間を指す言葉だろう。 「youをおびき…いや、呼んだのはな、朗報があるからだ」 「ヨーホー…?」 「わざとか。朗報だ、朗報!」 上田はベストの下の胸ポケットから大事そうに小さな箱を取り出した。 目の前に突き出されたそれを奈緒子は観察した。 マッチ箱にしては大きい。 目立つロゴなども無い。上品というか、地味な色合いの、特徴のない箱である。 そして箱には、異様にうまい亀甲縛りで赤いリボンがかけてある。 「…………」 上田にはマジシャンである奈緒子に間抜けなトリックで挑んでくる無謀な癖があるのだが、これもそうか。 この怪しい箱にもなにか仕掛けがあるのだろうか。 「なんですか、これ」 奈緒子はうさんくさそうにリボンをつまみ上げた。 上田はニヤリとひげ面を綻ばせた。 「俺はな。あの温泉から戻ってからすぐ歯医者に行ったんだ。完璧な歯を維持するための、恒例の虫歯チェックにな…」 「はあ?」 いきなり話がとんだので奈緒子は眉をよせた。 「診断結果はもちろんパーフェクトだったよ。当然だ!幼稚園の虫歯デーで習得した技術に独自の論理的改良をくわえた次郎スペシャルブラッシングをずっと施しているからな!そうだ、そういえば、あまりの白さに歯医者が感動して…」 「上田!」 上田は奈緒子に視線を戻した。 「……開けてごらん」 奈緒子の眉間に皺がよった。 「歯医者の話は?」 上田はふっと笑い、ソファに深く腰掛けて膝に肘をついた。 「昨夜、マンションにやっと届いたんだ。youへの……プレゼントだ」 「え…」 奈緒子は、目を少し見開いた。 驚きとも羞らいともつかぬ繊細な表情が生まれ、揺れた。 「上田さんから……?」 「でも……」 奈緒子はリボンを弄った。 頬がほんのりと染まっている。 「そ、その…だな、以前から、お母様にも君の事は頼まれているしな」 上田は早口で言った。 「上田さん…」 「遠慮はなしだ。……俺の気持ちだ」 「…………」 黒髪を揺らし、奈緒子は不安げに上田の横顔を見つめた。 上田は、こちらも照れくさ気にひとつ咳払いをし、虚空をみつめた。 「……黙って受け取ってくれればいい」 「………」 奈緒子はソファにきちんと座り直し、複雑な結び目に苦戦しながらようやくリボンをほどいた。 震える指で箱をそっと開ける。 中には個別包装された男性用避妊具がぎっしりと鎮座していた。 「…やっぱりこれだ!!!」 奈緒子は叫んで膝から箱をたたき落とした。 「何をする!わざわざ特別注文した貴重な品なんだぞ!」 「上田っ!お前、こ、こんなもの私にプレゼントするってどういう気だ」 「歯医者で見てたんだよ、雑誌を。『週間純情女性』だ。俺は普段は女性誌には興味はないんだが、表紙の小特集見出しが『満足してる?彼とのセックス』というやつで…」 「か、彼!?上田、お前、私の、か、か、彼のつもりでい」 「俺はもちろんその特集を熟読した。トータル8回、今でも空で暗唱できるほどにな。それで……最後の匿名座談会に書いてあったんだ…… A恵『なんのかのいって一番最低なのは、避妊しない男よね』 B子『ほんと。バカなエロビデオの見過ぎだっつの。膣外射精してるから大丈夫とか言ってさ、そんなんで100%避妊できるわけねーだろ!死ね!自分のペニス引き延ばして噛んで死ね!』って……」 裏声で座談会を復唱し終えた上田は肩を落とした。 可憐な誌名とは裏腹にかなりアグレッシブな小特集だったらしい。 「………そういうわけだ」 「いや、だから……」 奈緒子は赤くなりながら床に転がっている箱を指差した。 「わ、私にくれなくても……上田が使えば、い、いいじゃないか…」 「you」 上田は哀れっぽい犬のような目つきになった。 「……どうせなら俺はyouにもこれの付け方をマスターしてもらって、優しく、youの手で……そ、装着プレイをしたいんだよ!」 「おいっ!」 「そういうわけなんだ……」 上田は顔を伏せた。 眼鏡をはずし、テーブルに置く。 あがった顔は爽やかで、なにかが綺麗に吹っ切れたようだった。 「わかったか?じゃあこれから一緒に特訓するぞ!」 「おいっ!!!!」 奈緒子は急いでよけようとしたが大男の動きの方が早かった。 ソファに押し倒されつつ奈緒子は必死で彼の注意を喚起しようとした。 「こ、ここ大学ですよ!だれかが入ってくるに決まって……」 「関係者には明後日まで出張だと通知している。あー、留守中は業者が来て改装する予定だから立ち入り禁止だともな…はっはっは、何の心配もいらないんだよ、ハニー」 石頭のくせに上田はこういうみみっちくこまやかな悪知恵だけは働く男なのだ。 奈緒子は赤くなった。 「なにがハニーだ、バカっ!」 上田は奈緒子の耳に唇を近づけ、低い声で囁いた。 「……照れるなって!」 「照れてるんじゃない、なんだかこのあたりにブツブツが出てきました」 奈緒子は粟立った腕を上田の前にかざして見せた。 「それは俺の声に君の躯が感じているんだ……我ながら罪なセクシーボイスだ……」 「……上田さん、あの」 「なんだい、ハニー」 上田は優しい顔で笑ってみせた──つもりだろうがかなり気色の悪い笑みである。下心が透けているからだ。 奈緒子は真剣に忠告した。 「上田さん、変ですよ。いえ……元々すごく変でしたけど、最近、もっと変ですよ。病院に行ったほうがいいと思います」 「そうか。変か」 いつもなら「失敬な!」と怒るはずの上田の笑顔は微動だにしなかった。 「そうかもしれないな。…全て君のせいだ」 もしジュースを飲んでいたら噴出させていたに違いない。 餅ならばむせた拍子に喉につまらせ、奈緒子の勇気ある○乳生涯は終焉を迎えていたかもしれない。 奈緒子は目を白黒させた。 「う、うえだ……?」 「君も最近おかしいぞ。いつもは素直じゃないくせに、例えば三日前のyouはどうだ……」 上田はうっとりと続けた。 「あの夜、youはいきなり俺のマンションを訪ねてきた……」 「上田さんが三十回以上連続で電話してきたからですよ。近所迷惑だから二度とするな」 「よっぽど俺に逢いたかったんだろう。目を輝かせ、頬を紅潮させ、息をきらせて…」 「だって、最後の電話で松坂牛の特大ステーキを焼いてるって言うから」 「ドアを開けるやいなや俺にとびついてきて…」 「そこ!『に』じゃない!『が』だっただろう!!」 「その場で……まいったよ、はっはっは、俺とした事が…youがあんまり可愛い声をあげるから……」 奈緒子は真っ赤になり、脳内世界にどっぷり浸かって喋り続ける上田の頬をつまみあげた。 「しっかりしろ上田っ!も、戻ってこい!!」 「おおぅ……」 上田はずれた眼鏡をなおしつつ、目の焦点をあわせ、奈緒子を見た。 咳払いをする。 「……ともかく、そういう事なんだ」 「なにが!?」 「君、最近…」 上田は小さな声で言った。 「とてつもなく感じてるだろう。え?」 奈緒子は固まった。 「youが俺を避けるのも、俺との行為に感じている自分を認めたくないからだ………」 「……………」 上田はニヤニヤしながら固まった奈緒子の手をとった。 「二言めには巨根巨根と、あんなに厭がってたのに……なあ!!」 「くっ………!!!」 奈緒子はあまりの屈辱にぶるぶる震え始めた。 「い、厭だって…言ってるのに…お前が何回も何回も、す、するから……!」 「素直になれよ。この照れ屋め!」 上田は奈緒子を抱きすくめてきた。 ギシッとソファが不吉な音をたてる。 「それでいいんだ!感じて、感じて感じて感じ抜いて、『上田様が私の全てです!』と俺の足に縋り付いて泣け!!」 「そっ、そんな恥ずかしい台詞は死んでも言わないぞ!放せ、上田!」 「はっはっは!安心しろ、you……すぐに言いたくなるから」 彼は奈緒子の服の釦を探し始めた。 「やめろってば。……この、や、やりたいだけの、バカ上田め!」 上田がふと手をとめた。 「奈緒子……」 びくっとして奈緒子は上田を見た。 どうも、たまに上田がそちらの名前を呼びたがるのにはいつまでたっても慣れなかった。 「『やりたいだけ』ならyouなんかじゃなくて、もっと胸も性格もどーんと豊かな女性を選ぶとは思わないのか?」 「上田っ!」 「これだから論理的な思考のできない人間は困るんだ。──俺はyouを抱きたいんだよ。たくさん、たくさんな」 あまりにも直球の言葉に、奈緒子は呼吸を忘れて再度固まった。 上田が微笑した。 その笑顔は、なぜか今回奈緒子にはあまり気色悪くは思えなかった。 おかしくなっているのは上田だけではなくて、奈緒子のほうなのかもしれない。 「つまり、『ジュブゼーム』……という事だ」 奈緒子を抱き寄せ、彼は小さく呟いた。 「それ、言うなってば!」 ぞくぞくっとした奈緒子は上田にしがみついた。 「もう何回も言ったと思うが」 「でも、こんなとき、言わないで。ずるいです。それ…プロポーズの」 「ふん。だから言ってるんだ、愚かな女だ…ジュブゼーム。ジュブゼーム……」 「やめて。やめて、上田さん……!!」 腕ではなく背筋を粟だたせているものは奈緒子が快感以上に認めたくないものだった。 歓喜に近い高揚。 身勝手な弱虫の上田ごときに囁かれるその特別な言葉でこのような感情を味わうなどもってのほかである。 これ以上溺れたくない。 上田に溺れたくない。 こんな変人で傲慢な勘違い男に引っ掻き回されず、亀やハムスターとともにもとどおり、穏やかに美しく大人気天才美人マジシャン(自称)として……奈緒子は愕然とした。 元通りの生活。 無神経な大男に煩わされることのない生活。 永遠に上田次郎のいない日々。 それがもはや想像できなくなっている自分に気付いたのである。 まあ、その、性生活は別としても。 目に勝手に涙が盛り上がってきた。 しゃくりあげるように息を押し殺した奈緒子に、上田は不審の目を向けた。 「you…?」 「上田のバカ!」 一声叫び、奈緒子は上田を睨んだ。 「なんなんですか、自分ばっかり。一人で言いたい放題ぺらぺら喋りやがって。この、この」 「天才教授」 「天…変人教授!言いにくい事全部先に言うなんて、ずるいぞ!この」 「高額所得者」 「高が…きゅ、給料ドロボー!…私、わたし、どうすればいいんですか?上田さんばっかり……!この」 「いい男。……いいか。you、もう言わなくていい。何も言わなくていいんだ」 「いいおと……え?」 奈緒子の滑らかな頬を上田の指が愛しむようにゆっくりと撫でた。 「口先でなんと罵ろうと、君が俺の事を以前にも増して慕っているのはわかっている。当然だ。今や俺はyouの献身的な奉仕により唯一の弱点が解消され、いささかの瑕瑾も見当たらない輝かしいまでに完全な存在──言わば『スーパー次郎』になったんだからな…」 「……やっぱり『巨根で童貞』がものすごいコンプレックスだったんだな、上田……エヘヘヘ!」 「うるさいな!」 上田は怒鳴り、顔を近づけて奈緒子の唇を塞いだ。 「………………」 「………………」 顔をはなし、彼は奈緒子に囁いた。 「練習が済んだら、長野に行くぞ」 「……え?長野?」 奈緒子の服が釦のないカットソーであることにようやく気付いたらしい上田は頷いた。 「だから君に羊羹を買ってきてもらったんだ。お母様、お好きだったろう。あの羊羹」 「どうして長野?」 「……挨拶だよ」 「なんの挨……」 「……一緒に来ればわかる」 上田は目を泳がせ、カットソーの裾に手を突っ込んだ。 「それに、youにはほかにもプレゼントがあるんだからな」 「……どんな?…ん…っ」 「……………」 「…………お、い?」 「……九万九千五百円をチャラにするなら教えてやってもいいが」 「上田っ!」 * 上田教授の講義はそれからもごく時たま意味もなく休講になる事があったのだが、それはまた後の話である。 おわり
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どうでもいい戦車クイズに行く 54 39 46 46 1 20 1 46 46 48 48 1 50 50 Tier 自走砲 重戦車(作成中) 中戦車(作成中) 軽戦車(作成中) 中戦車(作成中) 駆逐戦車(作成中) 1 MS-1 2 SU-18 T-26 BT-2 T-60 AT-1 3 SU-26 T-46 BT-7 T-70 → SU-76 4 SU-5 T-28 T-50 A-20 T-80 SU-85B 5 SU-122A KV-1 → KV-1S T-34 → SU-85 6 SU-8 KV-2 → T-150 KV-85 T-34-85 MT-25 A-43 SU-100 7 SU-14-1 S-51 KV-3 IS KV-13 T-43 LTTB A-44 SU-100M1 SU-152 8 SU-14-2 KV-4 IS-3 T-44 T-54 lw Object 416 SU-101 ISU-152 9 212A ST-I T-10 T-54 Object 430 II SU-122-54 Object 704 10 Object 261 IS-4 IS-7 T-62A Object 140 Object 430 Object 263 Object 268 11 ??? IS-9 T-11 T-67 Object 221 Object 430D(作成中) ??? ???
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英名:The Crossroads of Destiny レアリティ:U 絵師:記載無し 番号:BS03-104 収録:闘神の鼓動 コスト:3 軽減:3 シンボル:紫 種類:ネクサス 0-LV1-2:『お互いのアタックステップ』 カードに効果の記述を持たない自分のスピリットが、BPを比べ相手のスピリットに破壊されたとき、 自分はデッキから1枚ドローする。 2-LV2:『お互いのアタックステップ』 カードに効果の記述を持たない自分のスピリットが、BPを比べ相手のスピリットに破壊されたとき、 自分か相手のスピリット1体を疲労させる。 フレーバー 蛇の洞か旧貴族の館、反逆者がどちらに進むか迷う岐路。 どちらに進んでも真の希望は得られない。 ある意味残酷な場所である。 ―放浪者ロロ「異界見聞録」名所千選544― 備考/性能 バニラサポート/ドローソース/疲労効果 フォッガーやスカルデビルなどがチャンプブロックしても、 ドロー効果によって手持ちのカード枚数を保てる為、スピリットの破壊を気にせず、ブロックを強化できる。 また、デス・ハーデスLV2など、高BPのスピリットが居れば疲労効果を活用して相手の防衛ラインを崩すことも出来る。 エピソード/キャラクター 蛇の洞か旧貴族の館 蛇に知恵を乞うか、「今の敵」の敵に抵抗するため「昔の敵」との共闘か。 鬼が出ても蛇が出てもロクな結果にはならないのだろう。 ここを編集
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vcにきたけど挨拶もせずに消えたアルヨー ワタシニホンゴデキナイヒトニガテネー メンバー紹介に戻る 名前 コメント
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乳っこ担ぎ│和(豆州)│人部│ http //www10.plala.or.jp/cotton-candy/momomi2/maki-3540.htm
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シナリオ名「はつしもふもふ」 システム名「艦これRPG」 艦娘は人間だ。だからこそ,愛する者を失いたくはない。いつ失われるか分からない命だから,平時には愛する者と一緒に何かをする。 初春型4番艦,初霜。彼女は多くの艦娘に愛されており,いつも彼女の周りには何人もの艦娘がいる。そんな取り巻き曰く, 「犬のようにかわいい!もふもふしたい!!」 …とのことだ。 君たちもそんな取り巻きの一部分。彼女と一分一秒でも長くいたい,そして彼女をもふもふしたい! …そのためのくだらなーい戦いが,また今日も始まろうとしていた。
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あのひとつしかない指輪 (聖なるアイテム) ターン終了時に、指輪をあなたが占領している地域1つに置く。その地域に隣接している地域にアクティブな種族を1つでも持つプレイヤーから、それぞれ1勝利コインを獲得する。 ▶ 考察 「あの…」ってどの? たぶんロードなリングらしい…。 『指輪』を配置した地域に隣接して(アクティブで)占領地を持つプレイヤーから1コインを奪うもの。 直接プレイヤーから1コインを奪うので、その相手と2コイン分の差となり効果が大きい。 しかも複数のプレイヤーがいれば、それぞれから奪える。 ただ効果対象と隣接した地に配置してターン終了しないといけないため、相手のターンには奪われる危険も高い。 効果が強力で種族の戦法に関係なく恩恵を受けられる分、特に争奪戦が激しくなるアイテムの一つ。 「あの…」も確かに奪い合いが起きていたような…。
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松島の老僧│和(陸前)│人部│ http //wakanmomomikan.yu-nagi.com/momomi3/maki-6459.htm