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【ミリマス】大晦日、吹雪の夜 執筆開始日時 2014/12/31 元スレURL http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1420018701/ 概要 P「2人共大晦日で寒いのによく頑張ってくれたよ。」 桃子「この位桃子なら簡単にできるもん。て言うかもっと大きな仕事を取ってきてよお兄ちゃん」 P「はいはい…それにしても吹雪いているな…着いたぞ、荷物降ろすから先に別荘に行ってストーブを付けといてくれ」っ鍵 育「分かった、プロデューサーさん」 今日は社長の知り合いが経営しているスキー場でミニライブと握手会があった。今日は遅いので3人で社長の別荘に泊まって明日帰る予定だ。 タグ ^中谷育 ^周防桃子 まとめサイト えすえすログ ポチッとSS!! SSびより wiki内他頁検索用 Pドル いちゃコメ ミリオンライブ 中谷育 周防桃子 安価
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昨日の京は今日のシロ 京太郎「あの、案内してくれるのはとても助かるんですが・・・」 シロ「なに?」 京太郎「なぜ俺が白望さんをおんぶしてるんですか・・・」 シロ「気にしない気にしない」 シロ「それに役得でしょ?」 京太郎「なんでです?」 シロ「だってさっき駅のホームで胸ばっかり見てた」 京太郎「 」 シロ「良かったね今京太郎の背中に当たってるのはさっきまで京太郎がガン見してたものだよ」 京太郎「 」 シロ「女の子は男子のそういう目線に敏感だから注意しないとすぐ嫌われちゃうよ」 京太郎(モモのおもちガン見しててもモモには何も言われなかったのに・・・・) シロ「この先の交差点を左に」 京太郎「はいはいっと」スタスタ シロ「ここ」 京太郎「え? ここってただの家じゃないですか?」 シロ「だからここ」 京太郎「?」 シロ「私の家」 京太郎「!!?」 シロ「案内したから」 京太郎「いやいや俺は旅館の方に案内してほしかったんですけど!」 シロ「ここに泊まったらいい」 京太郎「会ってまだ3時間くらいしか経ってない人をそんなことの誘っちゃダメです!」 京太郎「いいですか白望さん。女の子はそう簡単に男を家に入れちゃいけないんですよ。じゃないと狼さんが現れて女の子を襲ってしまうからです!」 シロ「京太郎はそんなことしないでしょ?」 京太郎「しないですけど、でもダメですってば」 シロ「ちぇー仕方ない。今日は諦める」 京太郎「なんですかその明日もみたいな」 シロ「だって家族旅行でしょ? 何日いるか知らないけど」 シロ「それと携帯持ってる?」 京太郎「持ってますけど・・・」トリダシ シロ「じゃ、赤外線送して」 京太郎「俺のなんかでいいんですか」ポチポチ シロ「京太郎のがいい」 京太郎「・・・・・わざとっすか?」ソウシン シロ「ばれたか」ジュシン シロ「今日ありがと。帰ったらメールしてね京太郎」ガチャ 京太郎「いやあの、俺の宿泊先は!?」 シロ「隣のホテルでしょ?」 京太郎「!?」 シロ「じゃ」バタン 京太郎「まさか本当に隣のホテルだとは思わなかった・・・白望さんってすげー」 シロ(ふふ・・・初めて男の子のメアド手に入れた) シロ(早くメール来ないかな・・・・) シロ(やる気出しすぎた・・・もうだめ・・・ダルい)zZZ わんこの名前にシロってつけること多いよね 京太郎「岩手といったらやっぱりわんこそばだよな!」 シロ「そうだね」 京太郎「あのいい加減降りてくださいます?」 シロ「それは出来ない相談」 京太郎「さいですか・・・」 シロ「あと、わんこそばだけじゃないよ」 シロ「冷麺とかじゃじゃ麺もある」 京太郎「じゃじゃ麺ってなんです?」 シロ「甘辛い肉味噌味の麺料理」 京太郎「なるほど・・・」 シロ「食べ物ならたくさんある」ドヤッ 京太郎「全部まわりませんからね!」 シロ「あ、そうだ」 京太郎「どうしました?」 シロ「慰霊の森の近くにだけは絶対行かないでね」 シロ(京太郎には私が乗ってるから大丈夫だよね) 京太郎「確か日本最恐の心霊スポットって前テレビで放送されてましたね」 シロ「うん、だからダメだよ」 京太郎「そんなとこは行きたくないですよ流石に」 シロ(京太郎が呪われたらおぶってもらえなくなるし) シロ「ほら早くしないとわんこそばが逃げるよ」 京太郎「全く・・・白望さんは歩いてないじゃないですか」 シロ「細かいこと気にしてると嫌われる」 京太郎「わかりましたよー」 ※この後わんこそばとじゃじゃ麺と冷麺を制覇したのは別の話っす シロもお世話好き? 京太郎「なんかすいません」 シロ「気にしてないから大丈夫」 京太郎「こっちの土地勘ないんで頼れる人が白望さんしかいなくて」 京太郎「迷惑だったら遠慮しなくて言って下さい」 京太郎(なんで白望さんはワンコールで電話に出れるんだろうか・・・) シロ「どうかした?」 京太郎「ちょっと考え事をしてて」 シロ「そっか」チョンチョン 京太郎「なんです?」 -- >  ̄ ` 、 __ / ム __ `/ ヽ _ ム > | '' < ,' お ,´ -- ` > ´ ..-||  ̄T ニ二 ! .ん | ヽ / Y 。 || i | -―― | ぶ | \ , 乂 ||/ =- / し | ヽ. / 〃/  ̄! て | / ` / -‐ ''"/ ', : | ヽ l !} i/ ∧. : / l ', __ 〃| / 、___/ } | / 、 Y 。 || //! イ / ,' ! ̄ \ \ 乂 || 〃 イ/ ' / 、\ \_ \ ||// / / / ヽ \ ´ ヽ>x / ./! / /ヽ 、 / \ ヽ ー、 / / / / ヾ 、 / ヽ / ー‐/ 〃 / / ' .{/ヽ } } !ヽ. / |!〃 !∥ / 从 | |! l j リ } シロ(やっぱりこの背中・・・落ち着く)クンクン シロ(それにいい匂いもする・・・) 京太郎「あの、首元に息がかかってくすぐったいんですけど」 シロ「どんまい」 京太郎「ちょっとなんで俺が励まされてるのかわかんないんですけど」 シロ「うるさいなぁ」 京太郎「・・・・・・」ユッサユッサ シロ「そんなに背中に押し当てたいの?」 京太郎「違います! 無言の抵抗ってやつですよ!」 シロ「仕方ないな・・・ういやつめういやつめ・・・・だる・・・」 京太郎「はじめからやらなきゃいいのに・・・」 シロ「そういえば今日は私がお弁当作ってきた」 京太郎「明日は槍が降るんですか外には出ないでおこう」 シロ「そんなこという人には食べさせない」 京太郎「冗談です。白望さんのお弁当たべさせてくださいっ」 シロ「仕方ないなぁ」 シロ「じゃあ、そこの広場の芝生にいこっか」 京太郎「了解っす!」 京太郎「で、シロさんなにしてるんです?」 シロ「なにって食べさせてあげようかと」 京太郎「いやいやいやそれくらい自分で食べられますしそこまでしてもらわなくても大丈夫ですから」 京太郎「他の箸あります?」 シロ「だるいから持ってくるの忘れた」 京太郎「 」 シロ「ほら早く口あけて」 シロ「あーん」 京太郎「アーン」モグモグ シロ「どう・・・かな?」ウワメヅカイ 京太郎「めちゃくちゃ上手いっす」ニコッ シロ「そっか」 シロ「まだまだあるからたくさん食べてね」ニコニコ 京太郎「もちろんっす!!」 ※京太郎に全部あーんで食べさせましたがそれは別の話・・・だるいし さよらなは言わないよ また会おうね 京太郎「白望さん」 シロ「なに?」 京太郎「やっぱりおんぶさせるんですね」 シロ「もちろん」 シロ(もうこの背中には乗れないかもしれない・・・ね)クンクン シロ(この匂いとも・・・・) 京太郎「泣いてます?」 シロ「そんなわけない」 京太郎「そうですよね。白望さんには涙は似合わないっす」 京太郎「いつも通りだるそうにしてくれた方が白望さんらしいっす」 シロ「そっか」 シロ「もう降ろして」 京太郎「自分から言い出すなんて珍しいですね?」 シロ「もう電車来ちゃうからね」 <○○セン デンシャガトマリマース <ハクセンノウチガワマデオサガリクダサーイ 京太郎「そうみたいっすね」 シロ「だね」 京太郎「なんか岩手に来て白望さんに会えてすげー楽しかった っす」 シロ「私も」 京太郎「長野に帰っても白望さんのこと忘れません」 シロ「シロ」 京太郎「え?」 シロ「白望じゃなくてシロでいい」 京太郎「・・・・はいっ! シロさん!」 シロ「最後に京太郎へプレゼントあるから」 京太郎「え、マジっすか?」 シロ「だから目を瞑ってくれる?」 京太郎「わかりました」メヲトジル ふわりと鼻をくすぐるような匂い――――。 何度も嗅いだことのあるシロの匂い――――。 その刹那、唇を何かが触れる。 とても柔らかくそれでいて少しだけ湿っているそれは感触を確かめることも出来ず唇から離れていった。 驚いて目を開くとそこには視界いっぱいにシロの顔があった。 シロは悪戯っぽく微笑み イ/ > '" / / ,, - ''"‐‐- ,,_ , /! = 、 ` ‐-- ''"/ -( ´ ヽ、 ̄` - 彡 / ゝ- ,, ー-- ニ==彡 イ / / ヽ -= ヽ、 __ (〃 イ イ "'' - ,, ヽ ヽ -=` イ ,' ,' l 丶 `"''<"''< } > / / /! ! , ! ヽ ,, ヽ ) /"' -‐< ( / // ! l 、 \~"''< ヽ ./ ヽ、 { /〃 il  ̄ 三 \ゝ - ,,斗= ミ ヽ} ヽ }\ 、` ゝ { ヽ l}/弐芯示 ´ 以 ゚ リ/ l } l/ 丶) ヽ) j 、! ゝ‐ ' `¨´ ' / 丶 ヽ / l lヽ', ' ''' ,' ' } ', } あんだのごと / l 、 / / / /〃 好きだって言ってっぺ。 ∧ 、、 、 ヽ - /ノ, ノイ ノイ `  ̄ ミ゙丶 __ , イ ≦´ ̄ ̄`ヽ , ' _ ノ〔.リ ,、‐-彡/ / / ', _/ ´ ム ハ ゞ=く . } ., ー- ..,,__/ / } γ {/ { . . // `ヽ__ ', > ´ ̄、ヽ / )' ァ--- == 、 __},,.> |. _r ´ __, ヽヽ}/ ; '> `¨´ ヽ ̄ r。 ! l {(´/_,,..-≦--´ー==チ } | {、 | > ´ / . .;.' . /ィ"´ ノー-rォ- 彡ヽ ! r ´ , . . . ' . . ′ {. | | } | i `ミ、,! . . . . . .{ . | | | y' リ. ! ! . . . . . . | . !. |」 | {. ', . |. . . . . . . | . ' .} } ! | ハ . ! . . . . . . .| ,. ' .| ヾ |. / ヽ . . | . . . . . . . ,.ィ´ / ´ ハ ミ、 ' `ー-、 | . . . . . . . ! "´ ' { 〉. { ', ';. . . . ./! ´ } / } } ';. /| | ハ / ! / ハ | | \ / ヽ _ ,,..イ | '/.', Vハ `゙ ヽ ゝ __ ,,..ィ } ∧ ', { / ;′ / ∧ハ. ヽヽ その後のことはあまり覚えてない。 聞いた話によると顔を真っ赤にしてずっと茫然としていたらしい。 ただ一つ言える事は京太郎のファーストキスもこの時奪われてしまったらしい。 テルスさんの悪夢 桃子「京さーん」フリフリ 京太郎「……」スタスタ 桃子「あれ? 聞こえなかったっすか?」 桃子「京さーん!」 京太郎「………」スタスタ 桃子「ぐぬぬ」 桃子「絶対からかってるっすね!」 桃子「なんで目の前にいるのに無視するっすか! 酷いっす!」 京太郎「………」スタスタ 桃子「…京さん」 桃子「京さん…」グスッ 京太郎「………」スタスタ 桃子「……うわぁぁぁん」ポロポロ 桃子「京さんが…京さんが…」ポロポロ 桃子「私のこと見えなくなっちゃったっす……うわぁぁぁぁぁん」 桃子「京さんっ京さん京さんっ////」スリスリ 京太郎「 」 桃子「京さんっ京さんっ////」スリスリ 京太郎(あ、ありのまま今起こったことを話すぜ…。身体に重くて目を覚ましたらモモが俺の上に乗って身体を擦り付けていた。何を言ってるかわからねぇと思うが俺も何をされてるかわからねぇ…。おもちとかステルスとかそんなもんじゃ断じてねぇ…。もっと恐ろしい者の片鱗を見た気がするぜ…) ※二時間くらいスリスリされたようですが京ちゃんはなんとか理性を保ったそうですが別の話です ポンコツナース 咲「京ちゃん…大丈夫?」 京太郎「ちょっと熱あるくらいだから寝てればすぐ治るさ」 咲「うん分かってるよ京ちゃん」 京太郎「えっと咲? 目が怖いんだけど」 咲「京ちゃんはいつも無理しちゃうから今回も無理してるんだよねっ」 京太郎「ちょっと待てその手に持ってるものはなんでしょうか…?」 咲「うふふ…これは座薬って言ってね、京ちゃんのお尻の穴にいれるものなんだよ?」 京太郎「いやいいそんなことしなくて大丈夫だから!」 咲「これは京ちゃんのことを思ってのことなんだからちゃんと受け入れなきゃダメなんだよ!?」ゴッ 京太郎「ひぅ!」ビクッ 咲「さぁ京ちゃん」ズイッ 咲「早くズボンを脱いで」 咲「座薬を入れさせて?」ニッコリ ※この後ステルス少女に見つかり京ちゃんのお尻の処女の危機になりますがそれは別のお話です ステルスヤキモチ 桃子「京さんおんぶっす」 京太郎「ダメ」 桃子「おんぶっす」グイッ 京太郎「なんでそんなにおんぶに拘るんだ?」 桃子「旅行先では別の女の子にしたのに私には一回もしてくれないからっす」 京太郎「なぜバレてる…」 桃子「京さんのお義母さんに聞いたっす!」ニッコリ 京太郎「なんか違和感合ったんだけど気のせいか?」ウーン 桃子「気のせいっす!」 桃子(だって京さんは私の旦那様っすから!!) ※この後めちゃくちゃおんぶした クンカッカークンカクンカー 桃子「これより第一回を始めるっす」 咲「おー」パチパチ 照「おー」ポリポリ 桃子「まずは私からいくっすよ!」ガサゴソ 桃子「じゃじゃーん」 咲「そ、それはっ!」 桃子「この前( )京さんの家に行ったときに拝借したYシャツっす!」ババーン 桃子「今日は皆でこれをクンクンするっす」 咲「え…いいの? だってこれはモモちゃんの宝物なんでしょ?」 桃子「いいっす」 桃子「これを一人でクンクンしても得られるのは少ないっす」 桃子「でも、ここにいる皆で共有して京ちゃんの素晴らしさを確認しあいたいっす」 咲「…モモちゃん」ウルウル 桃子「…咲ちゃん」ウルウル 照「どれどれ」クンクン 桃子「あー照さん独り占めはズルっすよ!」 咲「お姉ちゃん! 次は私に貸してっ!」ゴッ 桃子「京さんのものは私のものっすよー!」 京太郎「あれー、俺のYシャツどこやったかなぁ」ガサガサ ※この後京ちゃんのYシャツを皆で仲良くクンカしました 京太郎はおもちすき 桃子「京さんっ」ムギュゥ 京太郎(うおぉぉぉぉナイスおもちビバおもち!) シロ「京太郎…おんぶ」 京太郎「はい喜んで!」ヨッコイセッ 咲「京ちゃんっ」ダキッ 京太郎「フッ…」アワレミノメ 咲「 」 咲「京ちゃんが大きなおもち好きになったのはあなた達のせいだよっ!」ウガー 桃子「計画通り」キリッ シロ「どうでもいい…」ダル 咲「絶対京ちゃんを更生させるんだからっ!」ゴゴゴ ※咲の更正の結果、お尻好きにもなりました。 進学先 京太郎「進路希望調査表かぁ」 咲「そういえば京ちゃんはどこの高校にするの?」 京太郎「家に近いし清澄にしようかなって思ってるんだけどさ」 京太郎「咲はどうするつもりなんだ?」 咲「私は…まだ決まってないかな」 咲「というか京ちゃんはモモちゃんにどこに行くか聞かないの?」 京太郎「聞かないよ」 咲「どうして?」 京太郎「確かに同じ高校になれれば楽しいだろうけど」 京太郎「違う学校になってもこうやって一緒に遊んだり出来るしな」 京太郎「無理に同じ高校入らなくてもいいんじゃないかって思う」 咲「ふーん」カキカキ 京太郎「咲?」 咲「出来たっ」 咲「私、清澄に行くことにする」ピラッ 咲「高校行っても京ちゃんと一緒にいたいから」ニコッ 京太郎「…咲」ドキッ 咲「なんてねっ」 咲「京ちゃんは私がいないと寂しくて泣いちゃうから仕方なく一緒の高校に行ってあげるだけだよーっだっ」 咲(モモちゃんには悪いけど私だって負けるつもりはないんだからねっ!)
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前へ そうか、春からはお姉ちゃんも大学生か。 高校生のお姉ちゃんに会えるのもあとちょっと、たったの3日間なんだ。 「高校生活はあと3日間って、さっき仰いましたよね。卒業式が3日後なんですか」 「はい、そうです」 ちょっと間をおいて、お姉ちゃんが意を決したように僕に語りかけた。 「あの・・・・ その日、お時間の都合はつけられますか?」 えっ!? それって、卒業式の日に僕に会って欲しいってことでしょうか! 僕にそんなこと聞いてくるなんて、やっぱりお姉ちゃん僕のことをそんなに・・・ わかりました、都合は必ずつけます! その日は普通に学校の授業がありますけど、お姉ちゃんがそう言ってくれるなら、もちろん授業よりも大切な卒業式という大事な儀式を最優先しますから! 卒業式の日にお姉ちゃんと会う(2人っきりでだったりして!)。 そのことの意味を考えると、これから3日間僕は普通に過ごすことが出来るのだろうか。夜も眠れなくなりそう。 ひょっとして、その日は僕にとっても記念すべき日になったりして!大人の階段を昇(ry ところが、話しはここからちょっと変な方向に展開し始めるのだった。 「卒業式の日は、ぜひ彼女に会いに行ってあげて欲しいなと」 彼女? ・・・なーんだ、お姉ちゃんじゃないのか。 って、ちょっと待って? 彼女って誰だろう? 僕に会ってほしいってことは、僕のことを知っている人が学園にいるのか? 学園の卒業生の人で僕のことをそんな風に思ってる人がいるなんて! ! 僕はもう今にも舞い上がりそうになる気持ちをかろうじて抑えていた。 僕には思い当たる人などいないから、やっぱり僕の知らない人ってことか。 でも、あの学園の上級生なんだから、きっと清楚で美しいお姉さんに違いない。いったいどんな人なんだろうか。 思いがけないことを聞かされて、ちょっと困惑した表情を浮かべていたのかもしれない。 そんな僕にお姉ちゃんが説得するように言葉に力を込めた。 「最近、あなたのことをよく言ってるから。それは本当に嬉しそうに。 ぜひ会ってあげて下さい。その日が2人にとって特別の日になるように」 「あなたが来てくれたら、きっと喜びますよ、桃子」 ・・・・はい?? いま、桃子って言いました?? 卒業式で僕に会いに行って欲しい人が桃子さん? すみませんお姉ちゃん、なに言ってるのかちょっとわかんないんですが。 何故そこで桃子さんの名前が出てくるのだろう。 どうして僕が卒業式で桃子さんに会いに行くべきなのだろう? 全く予想もしていなかったお名前が登場したことに僕は混乱を隠せなかった。 何だそれ、どういうことなんでしょうか。全然意味がわからないです。 お姉ちゃんはいたって真面目な顔で、僕に話しを続けてくれる。 「桃子が他人のことを楽しそうに話してくれるなんて、とても珍しいことなので驚きました。昔の彼女からは想像もできなくて」 「やっぱり私は鈍いんですね。今まで全く知りませんでした。桃子にそんな人がいたなんて」 ・・・・・・ 僕はもうずっと絶句してしまう。 何かお姉ちゃんは、ものすごい勘違いをされているのではないでしょうか。 妄想の得意な僕でさえも、僕に対してそんな好意的な桃子さんなど全く想像もつかないんですが。 お姉ちゃんは自分で言ったことに自分の中で盛り上がって納得しているようで、したり顔で頷く。 「人とつながることの温かさ、それに彼女もやっと気付いたんでしょうね」 そこで僕に笑顔を向けてくれたお姉ちゃん。 何か自分お一人で盛り上がってますけど、その情報は完全に間違ってますよ。 どこからそのような重大な勘違いをされてしまったのだろう。 ひょっとして・・・・ これは桃子さんの罠なんじゃないだろうか。 あぁ、なるほど。 分かった。きっとそうだ。間違いない。 これを聞いてノコノコと卒業式までやってきた僕を大笑いするつもりなんだ。 そう考えると、いかにも桃子さん(andもぉ軍団)のやりそうなことだ。 そのためにお姉ちゃんなんていう超大物まで使って・・・ さすが軍団長、スケールが大きい。 なんて、ちょっと感心してしまった。 そんな疑心暗鬼になっている僕の心の中と対照的に、あくまでも爽やか笑顔のお姉ちゃん。 何か思い出したように、あ、そうだ!って感じで手を叩いたお姉ちゃん。 とても楽しそうな表情で僕に教えてくれたこと、それはとても意外性のあふれる内容だった。 「あぁ見えて、桃子は意外と女の子らしいところもあるんですよ。 デートではメリーゴーランドにお姫様抱っこをして乗せてもらいたいそうですから」 www なんですかそれw 桃子さん面白いなあ。そんな乙女チックなこと考えてるんだw とても面白いことを聞いた。 これは使えるかもしれない、とほくそ笑む。 さすがのお姉ちゃんも、これは今伝える必要がない情報だと気付いたのか、そこでまた表情が凛々しい顔に切り替わった。 そして咳払いをひとつ。 「彼女の想いに応えてあげてください」 「式に出席していただく事は無理ですけど、桃子の高校生活の最後の日を見送ってもらえないでしょうか」 あくまでも真面目な顔のお姉ちゃん。 しかし、どこがどうなれば、そういうことになるのだろう。 あの桃子さんが僕のことをそんな風に思ってるなんて、全く持ってありえない。 お姉ちゃんのお願いでもあるし、まぁ桃子さんの卒業をお祝いしてあげたいというのもやぶさかではないのですが・・・ でも、やっぱりこれは僕をハメようとしている悪ふざけとしか思えない。 真剣な表情のお姉ちゃんのお願いを断るのは忸怩たる思いですが、君子危うきに近寄らず、って言うじゃないですか。 「ごめんなさい。その日は普通に学校があるので卒業式には伺うことが出来ないです。申し訳ありません」 「そうですか・・・」 2人の間に沈黙が流れる。 お姉ちゃんが立ち止まった。 ここから林道を歩いていくお姉ちゃんとはここでお別れ。 そう、ここでお別れだ。 「それでは、わたしはこっちなので」 お姉ちゃんは僕に背を向ける前に、最後に微笑を向けてくれた。 「はい、またいつか・・・」 いつかまた会えますよね! そう言おうとしたけれど、言葉が出てこなかった。 林道を歩いて行くその凛とした後ろ姿、僕は決して忘れない。 僕が学園の制服姿のお姉ちゃんを見たのは、この時が最後になったのだ。 次へ TOP
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原曲・菊池桃子 作詞・売野雅勇、作曲編曲・林哲司 女性アイドル歌手の菊池桃子が1986年に発表した楽曲。 【登録タグ 1986年の楽曲 J-POP アイドルソング 菊池桃子】 カバーした声優 釘宮理恵 後藤沙緒里
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目次 【時事】ニュース白浜あずさ ガチピンク 春菜桃子 RSS白浜あずさ ガチピンク 春菜桃子 口コミ白浜あずさ ガチピンク 春菜桃子 【参考】ブックマーク 関連項目 タグ 最終更新日時 【時事】 ニュース 白浜あずさ ジュニア県展 入賞・入選632点決まる 来月1日から各地で展示 /和歌山 - 毎日新聞 ガチピンク gnewプラグインエラー「ガチピンク」は見つからないか、接続エラーです。 春菜桃子 準々決勝のカードは「愛媛×岐阜」「千葉×愛知」「徳島×京都」「大阪×神奈川」に! 「全国レディーステニス大会」大会2日目、3回戦の結果【テニス】(Tennis Classic) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 準決勝の対戦カードは「岐阜×千葉」「京都×大阪」に決定! 「全国レディーステニス大会」大会2日目、準々決勝の結果【テニス】(Tennis Classic) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 石川佳純が2連勝 女子1部は3チームが全勝で並ぶ<後期日本卓球リーグ埼玉大会> | 卓球メディア|Rallys(ラリーズ) - 株式会社ピンポン 飯窪春菜が2.5次元の舞台に出演「愛をもって演じたいと思っています」(ウォーカープラス) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 近藤春菜の恋愛事情「今が1番キスしたい」 理想の男性像は「“先”が想像できる人」(ENCOUNT) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 近藤春菜 吉高由里子との“寸劇動画”に反響「最強タッグ」「めちゃくちゃ笑った」の声 - スポーツニッポン新聞社 声楽部門大学の部、10人が本選へ 学生音コン東京大会 - 毎日新聞 - 毎日新聞 近藤春菜、9人のNiziUと初対面 “寮母感”あふれる記念ショットに反響 - クランクイン! 星野源との2ショットでにやける近藤春菜に「ミキ亜生かと思った」の声 - クランクイン! 近藤春菜、菊池桃子結婚で新ネタ構想明かす「『新原浩朗じゃねーよ!』の準備は出来てる」加藤浩次も興奮「マジで!?いけるか」 - スポーツ報知 RSS 白浜あずさ #gnews plugin Error gnewsは1ページに3つまでしか使えません。別ページでご利用ください。 ガチピンク #gnews plugin Error gnewsは1ページに3つまでしか使えません。別ページでご利用ください。 春菜桃子 #gnews plugin Error gnewsは1ページに3つまでしか使えません。別ページでご利用ください。 口コミ 白浜あずさ #bf ガチピンク #bf 春菜桃子 #bf 【参考】 ブックマーク サイト名 関連度 備考 ピクシブ百科事典 ★★ 白浜あずさ 関連項目 項目名 関連度 備考 参考/みつどもえ ★★★★ 登場作品 参考/大原桃子 ★★★ キャスト タグ キャラクター 最終更新日時 2013-05-29 冒頭へ
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前へ 「遅い!!」 店のドアを開けるやいなや、僕の耳に大きな声が飛び込んでくる。 その声がした方向を見ると、いつものテーブル席には既に3人の方が陣取っておられた。 もぉ軍団が勢揃いしているのか。 なんでまた今日のこのときに限って・・・ 果たしてそれは僕にとって“吉”なことなのか、はたまた“凶”となるのだろうか。 まぁ、珍しくここに来ている梨沙子ちゃんを見て、そこだけは救われるような思いを感じたんだけど。 りーちゃん・・・ 何というその可愛らしいお姿。こんなときじゃなければ僕は思う存分その姿を・・・(←) 足取りも重く、軍団の人たちが座るテーブルへと歩を進める。 僕の姿を認めるとミョーに楽しそうになったように見える桃子さん。 いじっているスマホに目を落としたままの梨沙子ちゃん。 そして、腕組みをして真っ直ぐに僕を見据えている熊井ちゃん。 ・・・・・怖すぎだろ。 「突っ立ってないで座ればぁ?」 目の前の現実を見て固まりかけた僕の耳に、桃子さんのぶりぶりとした声がとてもわざとらしく響く。 言われるままに、空いていた梨沙子ちゃんの隣りの席に座った。 (ずっとスマホに夢中のりーちゃんは無反応) そんな緊張気味な僕のことを、大きな熊さんがジロリと見下ろしてくる。 そして掛けてきたその声はといえば、あからさまな詰問口調だった。 「ここに来るだけで何でこんなに時間がかかるの?」 「ご、ごめん」 「最近ホントたるんでるよね。このあいだも席取りをサボってシメられたばっかりなのに、もう忘れたの?」 僕を睨みつけてくる熊井ちゃんの肉食獣を思わせる鋭い眼光。怖すぎる。 「このあいだって、なーにそれ?くまいちょー」 「うん。なんかね、軍団の席取りを勝手に放り出してもつ鍋を食べに行ったらしいんだよね。信じられないでしょ」 「へー、そうなんだ。任務放棄とか、そりゃーくまいちょーがお怒りになるのもごもっとも!」 「そんなことがあったばかりなのにさー」 喋っているうちに自分の言った言葉で感情が高ぶっていく大きな熊さん。 僕にとって状況は悪化の一途だ。 「その物覚えの悪さはなんとかならないのかなー。本当に鳥頭なんだから!」 この時点で既に大きな熊さんのご機嫌はこの通りなんだ。 ・・・・まずいよ、これ。 大きな熊さんのこのテンション、この後の展開を考えると僕にとっては絶望的じゃないか。 「まぁ、いいや。それより抹茶メロンパンは?早く早く!!」 「いや、それが・・・・」 「ん?どうしたの?」 「無いんだ」 「無いって・・・どうしてよ?」 「ここに来る途中で強盗に襲われて」 「・・・・・」 僕の言ったことを聞いた熊井ちゃんの表情が固まった。 そのやりとりに、頬杖をついてスマホをいじっている梨沙子ちゃんが呆れたように呟く。 「もっと上手いウソは考え付かなかったのかゆー」 熊井ちゃんのその切れ長の瞳がみるみる吊り上がっていく。 「それで奪い取られたっていうの!? ぬわんですってぇぇ!!!11」 憤激した熊井ちゃんの髪が逆立ってるように見える。 僕の目には、その背後からは炎がのぼってるように映った。 「なんで死守しなかったの!? 自分の命に代えても守り通しなさいよ!」 「えっ? その言い訳を信じたの、熊井ちゃん!?」 「ウフフ、面白いなぁw くまいちょーたちはw」 「命を懸けた戦いに挑んでこそ男でしょ!? それなのに何? 少しは男ってものを見せたの? うちはね、盗られたという結果のことを言ってるんじゃないの。事に際して何もしようとしないその性根が(ry 僕の胸倉を掴んで来そうな勢いの熊井ちゃんだったが、そんな彼女に対して隣に座っている桃子さんが言ったのは意外な言葉だった。 「まぁまぁ、くまいちょー。そんなに言ったらかわいそうだよ。少年も反省してるみたいだしさ」 興奮する熊井ちゃんを穏かな口調でたしなめる桃子さん。 えっ? 桃子さんが僕を庇ってくれているのか?(信じられない・・・) 「ねっ、少年。反省してるんでしょ?」 「えぇ、もちろんです」 「とりあえずさ、謝っちゃえば?」 「え?」 「はっきりとした謝罪の言葉があれば、くまいちょーだって穏便に収めてくれるよ、きっと」 なるほど、確かに僕は動揺のあまり、まだ熊井ちゃんに対してその言葉を言っていなかった。 ここで誠意を見せておく必要はあるだろう。 「ほら、ちゃんと謝って?」 「はい、そうですね・・・」 きっと立場上ってことなんだろうけど、仲介してくれる様子の桃子さん。 そんな軍団の長たる人の優しさに心温まる思いを感じながら、僕は熊井ちゃんに向き直ると改めて頭を深々と下げた。 「熊井ちゃん、どうか許してください」 「違うでしょ? 謝るときはこう」 そう言って、猫のようなポーズをする桃子さん。 とても楽しそう。 なるほど、それがやりたかっただけなんだな。 だが、桃子さんが言ったことはこれで終わりじゃなかったんだ。 軍団長は更に言葉を繋いで、今度は熊井ちゃんに語りかける。 「聞いたでしょ、くまいちょー。少年がこうやって頭を下げてるんだよ? 自分がしたことを反省するのは大切だからさ、それでいいじゃん」 穏かな表情でもって話しの落とし所を提示するような、そんな理知的な軍団長の姿勢が今の僕にはとても心強く感じられて。 ・・・桃子さんって、やっぱり大人なんだ。 大学生ともなると、やっぱり僕なんかとは器量が違うものなのかな。 きっと、さっきのも場の雰囲気を和らげるために、あんな冗談(だったのか?)を挟んだのだろう。 「桃子さん・・・」 「それにしょうがないでしょ。取られちゃったのも、悪いのは少年じゃなくて盗っていく人の方なんじゃない?」 それでも大きな熊さんはお怒りがそうそう簡単には収まらない御様子。 「もも!甘やかさないで。緊張感が無いからそんな大切なものを奪われたりするんだよ!」 「でも、相手が悪かったんでしょ。くまいちょーが頼んだものを少年が渡しちゃうような相手なんだよ?」 なおも僕のことを庇ってくれているように見える桃子さんが次に言ったこと。 「どんな相手だったんだろうね?」 そう言って僕を見た桃子さんのその表情。 ?? なんで口角が上がってるんだろう? 「よっぽど怖い人だったんじゃない?」 「その、そういうあれでは・・・」 「くまいちょーが楽しみにしてたモノを盗っていった相手だからね?やっぱり極悪人としか思えないよ」 「その言い方もちょっと・・・」 「それにしてもひどいことするよね。人が買ったものを奪い取っていくなんてさ。そんなの人としての道から外れてるよね」 「いや、そこまで言わなくてもいいんじゃないですか?」 「なに言ってるの? その人のした行為はね、許されることじゃないでしょ。それって犯罪だよ」 全く無関係の彼女があらぬ誤解で汚名を着せられそうになっているのが僕には我慢できなかった。 だから、桃子さんの言ったことを聞いた僕は反射的に叫んでいたんだ。 「愛理ちゃんはそんなことしてません!!」 僕がそう叫んだ瞬間、桃子さんの目が細められた。 実に満足そうなものとなったその表情の変化は、桃子さんの前に座っている僕にしか見えなかっただろうけど。 「えぇっ!? その相手って愛理のことだったのぉ!?」 目を見開いた桃子さんが、いかにも驚いたように言った。 なんてわざとらしい口調なんだろう・・・ 桃子さんはそのことに最初から気付いていたのだろうか。 それとも話しの途中のどこかで? この人、本当に恐ろしすぎでしょ。 僕に対して妙に優しいように見えた桃子さんの態度。 今となれば全てが思い当たる。 なるほど、ここまでが一連の流れだったんだな。 桃子さん、強すぎです。 僕はこの人には永遠に敵わないということを改めて実感させられる出来事だったよ・・・ いや、そんなことはどうでもいい。 それよりも今僕が可及的速やかに対処しなければいけないのは、目の前にいるこの見るも恐ろしい表情に変わった自称リーダーへの対応だ。 これ以上ないぐらい目が吊り上っている熊井ちゃん。 その瞳は怒りのあまり瞳孔が開いてしまっているようにも見えるぐらいにして。 ここまでの恐ろしい形相を目の前にして、僕はもう気絶してしまいたい思いでいっぱいだった。 本当に気を失うことができればどんなに楽なことだろう。 「そんなウソまでついて!! か、覚悟しなさい!!!!11」 その熊井ちゃんの剣幕は、相変わらずスマホと睨めっこしていた梨沙子ちゃんが一瞬顔をあげるぐらいだった。 (でも、別に珍しいことでもないからか、すぐにまたスマホ弄りに戻られたけど) すさまじい形相で僕を睨みつける熊井ちゃん。 彼女の言う覚悟はもうとっくに決まってますけどね。 頭が真っ白になりつつある僕の視線は、この場をとても楽しそうに眺めている桃子さんの姿を捉えていた。 そのワクワクとした表情。そう、ショータイムの始まりを今か今かと待っているかのようだったんだ。 次へ? TOP
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前へ 「あら、大きな熊さんもご存知なの? さすがにお二人は仲がいいのね。ウフフ」 「へー、そうなんだ!! 舞ちゃんにねぇ・・・」 桃子さんがわざとらしい笑顔で僕を見る。僕は恥ずかしさのあまり思わず顔を伏せてしまう。 そして、桃子さんはお嬢様に向き直ってこう続けた。 「でも、ちさとはそれでいいの?」 「え? どういうことかしら」 「だってさ、舞ちゃんを取られるかも知れないのにそれでもいいの? ちさと的には」 桃子さん! いい質問です!! それは僕がずっと聞いてみたいと思っていたことです。 でも、その答えを聞くのは怖い。ひとり緊張感が走る。 「ウフフフ、取られるだなんて表現がおかしいわ桃ちゃん。それに、その答えを出すのは舞自身ですから」 お嬢様は動揺を全く見せずにそうお答えになった。 お嬢様のそのお答えは、どういう意味を持っていたのだろう。 僕の思いを許してくれているのだろうか。 それとも、それを知った上で舞ちゃんが僕を選ぶ訳が無いと確信しているのだろうか・・・ 深く考えたわけではなくその答えなのか、それとも・・・ その答えの意味を考えれば考えるほど僕は不安になる。 でもどちらだったにしても、その自信たっぷりに見える余裕あふれる答えに、僕は絶望的な気分になった。 最初から分かりきっていることだけど、絶対かなうわけないじゃん。お嬢様相手に。 だって、舞ちゃんにとってお嬢様は・・・ そんな僕の心境を知ってか知らずか、お嬢様が真顔で僕のことを見つめてきた。 その茶色い澄んだ綺麗な瞳に見つめられ、僕の視野にはお嬢様以外のものは入らなくなる。 「ひとつお聞きしたいのだけれど・・・」 「はい、なんでしょう?」 「舞に何があっても、舞のことを全力で守ってくださる?」 お嬢様は真剣な表情で僕のことを見ている。その時のお嬢様はやけに大人っぽく見えた。 その質問、よくぞ聞いてくださいました。 ここぞとばかり、僕は自信たっぷりに答える。 「そんなの、もちろんです」 お嬢様は真剣な表情を崩さずに話しを続ける。 が、何か言葉を選んでいるような口ぶりになった。 「例えば、その、これはもしもの話なんですけど、舞がもし幼児化したりしてしまったとしても?」 ?? 何て言ったんだろう。よく聞き取れなかった。 ようじか? 幼児化?? 意味が分からない。 でも、お嬢様が舞を守ってくれるのかと聞かれているのだ。思わず背筋が伸びる。 僕の答えを聞いてくださいお嬢様。 「何があっても絶対に僕が守ってみせますよ。必要とあらば暴力を使うことも辞さない覚悟です。こう見えても僕はケンカで負けたことは一度も無いんですから」 これは本当です。 まぁ、ケンカしたことが無いんですけどね。 「まぁ、頼もしいわ。そこまで舞のことを」 「でも暴力はダメよ、ウフフ」 このお嬢様の御質問には僕のテンションが上がった。 舞ちゃんのことを全力で守る、そのシチュエーションを想像すると、今晩はたぶん寝れなくなりそう。 「素晴らしいわ。ねえ、桃ちゃん」 お嬢様が瞳を輝かせてくれたのと対照的に、桃子さんのその表情は何といいますか、とても懐疑的でジトっとした視線だった。 「どうだろ。男の子は平気でそういうこと言うからね。言うだけならタダなんだから」 「まぁ、桃ちゃんったら」 「第一、そこまで舞ちゃんが好きなのに、愛理に見とれてたんでしょ」 桃子さんは何かいちいち引っ掛かる言い方をする。まだそこにこだわりますか。 僕がピンクのペンライトを持たなかったのがよっぽど気に障ったんだろうか。 でも、アイドルの子を好きになるのと、実際の女の子を好きになるのは、「好き」の持つ意味が違いますから。 恋愛の対象として好きなのはただ一人、舞ちゃんだけですから! そこは、はっきりとしておきたい。 「や、あの、愛理ちゃんは一人のアイドルとして好きっていうか。彼女に対する想いは何かバーチャルな感じであって、好きの意味がそこは違うわけで。 それに、舞ちゃんの他で好きな女の子って言うならます第一におじょ・・・いやその何を言いたいのかと言うと、つまり現実として僕が一番好きな女の子は舞ちゃんなんです!」 あ、ついムキになってテンパって思わず凄い重大な発言を・・・。 初めて自分の口から宣言してしまった。 見事に誘導尋問に引っかかったような気がする。 完全に桃子さんの思い通りに展開されている感じが・・・ 「おー!!少年、熱いねぇ。青春してるねー。若いって素晴らしい!ヒューヒュー」 「桃ちゃんったら、そんなからかったりするのは失礼だわ」 お嬢様、お気遣いありがとうございます。 その横で桃子さんは、まるでゲームを楽しんでいるかのような楽しそうなその笑顔。 彼女の手のひらの上で遊ばれてるんだろうなあ僕は。 桃子さんに完全に面白がられているのが分かる。 ニヤニヤとした顔で僕を見ている桃子さん。 「ふーん、愛理はアイドルなんだ、少年にとって」 「へ?まあそうですね。Buono!は僕にとって一線の向こう側って感じで」 「ってことは、もぉもアイドル? そういうことだよね、もちろん」 「も、もちろんです。Buono!の中でも、桃子さんこそが真のアイドルって感じがしますよー。あははは」 ここはこう言わざるを得ないだろう。 ステージではやっぱり愛理ちゃんに一番見とれちゃうなあ、ということは心の奥底だけにしまっておく。 せっかく桃子さんの機嫌が良くなってきているのだ、この流れを止めないようにしなくては。 いやまあでも、お世辞じゃなくBuono!の3人は本当にアイドルオーラが凄いなと思うけど。 「じゃあ、その少年にとってアイドルであるBuono!の曲のなかで一番好きな曲は?」 Buono!の曲かあ、いい曲が多くて選ぶのは悩むな。 消失点かな、カタオモイもいいな、ホントのじぶんも捨てがたい、MY BOYも盛り上がるし。 でもこの質問、あの答えを使うのは正に今この場面なのではないだろうか。桃ヲタに教えてもらったあの曲名。 「・・・・あいにーじゅー、デス」 「そっかー! I NEED YOUが好きなんだ。意外といいセンスしてるんだね、少年」 僕に対する桃子さんの態度が少し柔らかくなったような気がする。 桃ヲタから聞いた情報が役に立つ日がくるなんて。 「でも少年、I NEED YOUって失恋の想いを歌った曲なんだけどねー。その気持ちに共感するんだウフフ」 そうなのか・・・聴いたこと無いので知らなかった・・・ 「またBuono!のライブがあったら見に来てくれる?」 「もちろんです。今回のライブは最高でしたから。来年の学園祭も期待してますよ!」 「ウフフ。じゃあ、来年の学園祭、楽しみにしてるといいよ。爆発しないようにね少年」 「そうねウフフフ。来年はどうなるのかしら。まだ先の話しすぎて。でも楽しみだわ」 「はい、本当に楽しみにしています」 顔を見合わせて笑いあう桃子さんとお嬢様。いいなあ、この2人。 そう思っている僕に桃子さんが真面目な声でつぶやく。 「I NEED YOU が好き、か」 「でも、まぁ少年の気持ちは分かった。そっか、そこまで本気なんだ舞ちゃんに」 真っ直ぐに僕を見る桃子さん。さっきまでのからかうような表情と打って変わったその真剣な眼差しに僕の背筋が伸びる。 心の中まで見透かされてしまいそうな桃子さんの眼差し。 「もぉは人のことには干渉しない主義なんだけど、勿体無いなあと思うこともあるんだよね」 何だろう、話しが見えないぞ。 「舞ちゃんもせっかく素晴らしい才能を持ってるんだから、もう少し世界を広げたほうがいいのかもね。千聖べったりじゃなくてさ」 「そういうことで、少年!応援してあげようか?」 桃子さんがにこやかにそう言ってくれる。 望外の言葉を頂いて、思わず身を乗り出してしまった。 「本当ですか!?」 この人を味方につけたらそうとう心強そうだぞ。 これは追い風全開じゃないか。いよいよ僕の時代到来なのかそうなのか。 おもわずそう思ったのが表情にはっきり出てしまったようだ。 そんな僕をからかうように、甘い表情を一変させてニヤリと冷たく笑う桃子さん。 「なわけないじゃん。調子に乗らないの。世の中そんなに甘くないよ、少年」 「桃ちゃんったら、もうウフフフ」 「ね、見たでしょ千聖?今の顔。完全に引っかかったよね。男ってホント誘惑に弱いよねー。ころっと騙されるんだから。男っていうのはこういう単純な生き物だからね、ちゃんと見ておくんだよちさと」 ・・・・・・ やっぱり、この人に遊ばれてる。 なんだろう、この人は今までに出会った学園の人達とは全く違うぞ。なんか、さすが軍団長だ。 そんな桃子さんの横で誇らしげな表情の微笑で桃子さんを見つめている千聖お嬢様。 その表情からも、この2人の間にある絆のようなものが感じられる。 桃子さんと千聖お嬢様、今日おふたりにお会いできたのは僕にとって得るものがあった気がします。ありがとうございました。 あれ? そういえば、彼女のことをすっかり忘れていた。 熊井ちゃんはどうしたんだろう? さっきからずっと静かじゃないか? 彼女が話しをかきまぜてこないなんておかしすぎる。 そう思って、視線を熊井ちゃんに向けて見ると・・・ 彼女は壁にもたれかかって寝ていたのだった。それはそれは幸せそうな寝顔を浮かべながら。 次へ TOP
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声がした方を振り返ると、そこにはBerryz工房の嗣永桃子がニコニコしながら立っていた。 最近バラエティとかに頻繁にでるようになったのは、テレビを見ているので絵里も知っていた。 だけど、卒業する前だってあまり周りの人と関わらないのが桃子ちゃんだったはず。 真野ちゃんに話しかけるならまだしも、なんで生田衣梨奈なんかに話しかけてきたのだろうと、絵里は少し構えた。 「えりぽんさ・・・、やっぱなんでもない。おはよ!」 「あ、おはようございます。」 桃子ちゃんはそのまま真野ちゃんの方へと行ってしまった。 桃子ちゃん、何か言いたいことでもあったのかな? もしかして気づかない内に、えりぽんらしく無いことでもしてたかな・・・?! 桃子ちゃんに限って気づかないよね。そうだよね。 絵里は自分自身に言い聞かせて、心を落ち着けた。 少し経ち、メンバーが続々と集まりリハが始まった。 絵里は今まで一緒にコンサートをやってきたベキマスのメンバーと、こうやってまたリハをやったりできるのが嬉しい反面、この生活がいつまで続くのかと不安になった。 分からないダンスの振りについて同じ振りをする雅ちゃんにきいたり、矢島ちゃんは色々と優しく指摘してくれたり。 モーニング娘。に後輩が増えて、ベリキューのメンバーもいよいよ先輩らしくなってきたなぁと絵里は感じた。 正直、こうやってダンスや歌のリハをやっている間は、えりぽんと入れ替わったことを忘れられるから楽だ。でも、家にいるえりぽんはすごく不安に違いない。えりぽんの気持ちを考えると不安や申し訳なさでつぶされそうになる。 「大人の私がしっかりしなくちゃ。」 絵里は自分自身に言い聞かせ、自分を奮い立たせた。 リハの昼休憩に入り、各自お弁当を選ぼうとしている。れいなはまた唐揚げ弁当に野菜ジュースか。きっと朝食もろくにとってないのだろう・・・。 そんなことを考えながら絵里も適当に弁当を取り、とりあえず9期の近くかガキさんのところで一緒に食べようと思っていた。 「あ~~!えりぽんえりぽん!ちょっとちょっと!」 「は、はい?」 外見が生田衣梨奈の私を呼んだのは、桃子ちゃんだった。 「えりぽん、お昼一緒に食べない?」 「あ、良いですよ!でも、桃子ちゃ・・嗣永さんは真野さんと食べなくて良いんですか?」 「言うなら『もーもーちー!』でしょ?あ、真野ちゃん?良いの良いの。真野ちゃんは舞台の台本読んだりしてて忙しいみたいで、さっき誘ったんだけどふられちゃったんだ。」 「そうなんですね。えりで良ければ全然大丈夫ですよ。」 Berryz工房のメンバーともあまり絡まない桃子ちゃんが、本日2回目の生田衣梨奈への辛み。絶対何かある。絶対おかしい。 絵里は不安げな顔を隠しきれないまま、嗣永桃子について行った。 二人で椅子に座り昼食をとりはじめると、間もなくしてして口を開いたのは、この状況に我慢出来なかった絵里だった。 「つ、嗣永さん!えりに何かご用でも?」 「よーくーぞ、きいてくれたよえりぽん!ウフフ。ウフフ。」 小指をたてて勢いよく絵里を指さした。 「なんですかー?」 「ももさ、最近テレビに出る機会が多くなったじゃん。みっしげさんほどじゃないけど。」 「はい、嗣永さんの出てる番組チェックしてますよ。」 「さーすがえりぽん。ありがと。それでね、えりぽんはおはスタやってるじゃん。」 「はい。」 「生放送じゃん。で、今後生放送の番組にでたときってどうすれば良いのかなーって。」 「あ~、嗣永さんの場合だと、ネタとかをどのタイミングで・・・とかってことですか?」 「ネタとかいーわーなーいーで!ウフフ。ま、ネタなんだけどさ。そうそう、そういうことだよ。収録だと編集でなんとかしてくれるから、あまり気にしてないんだけどね。」 桃子ちゃんも、一時期のさゆの様に色々と悩んでるんだなぁと絵里は感じた。 さゆもあのときすごく頑張ってたっけな、一人でバラエティ番組とかでてて・・・。 私は家でさゆが出てる番組をチェックするだけだし。 でも、あの時さゆから相談を受けてたのは私だし、後輩であり、努力家である桃子ちゃんには何かアドバイスしてあげたいと切に思ったのは確かだった。
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http //ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1361874491/ 智美「鶴賀麻雀部の健闘を祈って……かんぱーい!!」 一同「かんぱーい!!」 京太郎「こうしてるといよいよ大会だって気がするな!」 桃子「と言ってもお菓子食べたりするだけっすけどねー」パクパク 智美「まあ練習しないで休むことが目的だからなー。1人でいたらなんだかんだ休めそうにないし」ワハハ ゆみ「確かにここのところ1人でいるとつい大会のことを考えてしまうな」 京太郎「ここのところ……?」 ゆみ「なんだ?」 京太郎「い、いえ。なんでも」 桃子「私もそうっすけど、先輩でも緊張するんすね」 ゆみ「それはまあ私にとっても初めての大会だしな」 京太郎「鶴賀の麻雀部は先輩と部長で作ったんでしたよね」 ゆみ「ああ、最後の最後で大会に出られるほどメンバーが集まってよかったよ」 桃子「そういえば、先輩はなんで麻雀部のある高校に行かないで鶴賀に来たんすか?」 ゆみ「ん? 元々は麻雀をやる気はなかったから、単純に通いやすさや校風を考えて選んだが」 智美「女子校の中からなー」ワハハ ゆみ「う、うるさい!」 京太郎「……あれ、麻雀部作ったのは1年のときで、作ったのは本格的に麻雀をやりたかったからですよね?」 ゆみ「ああ、そうだな」 京太郎「最初は麻雀続ける気なかったんですか?」 ゆみ「続ける? そもそも高校を選ぶときは麻雀をやっていなかったんだが」 京太郎「え?」 桃子「え?」 ゆみ「ああ、言っていなかったか。私が麻雀を始めてやったのは1年の文化祭だ。本格的にやろうと思ったのはそれからだよ」 京太郎・桃子「ええっ!?」 ゆみ「そ、そんなに驚くことか?」ビクッ 桃子「ゆみ先輩って昔からの達人とかそういうのじゃないんすか……?」 ゆみ「麻雀歴ならモモのほうが長いと思うぞ」 桃子「うはー」 京太郎「麻雀歴2年ちょっとでそんなに強いんですか……」 ゆみ「私が始めて1ヶ月の頃は京太郎くんよりずっと弱かったさ」 京太郎「自分が2年でゆみ先輩くらい強くなれるとは思えないです……」 ゆみ「それは私の教え方が上手くないということか?」シュン 京太郎「そ、そんなことないですよ!」 ゆみ「冗談だ」フフッ ゆみ「とはいえ私が教えられることは全て教えるつもりだ。3年生のときには、少なくとも今の私より強くなって貰わないとな」 京太郎「ど、努力します」 桃子「京太郎、責任重大っすねー」 ゆみ「モモ、お前もだ。ステルスは確かに強いがそれに頼りすぎているようではダメだぞ」 桃子「うっ、藪蛇だったっす……」 智美「まあまあ、ゆみちんもその辺で。今日はそういう話は置いとこう。ほら、むっきーと佳織を見習って」 京太郎「え?」クルッ 睦月「おおお……! 小鍛治プロのキラカードだ!!!」 佳織「わー縁起がいいね!」 ゆみ「……結局プロ麻雀せんべいを買ったのか」 睦月「い、いいじゃないですか! 1袋くらい!」 京太郎「でも小鍛治のキラカードってトップレアでしたよね? ほんと幸先良いですよ!」 睦月「だよね! 京太郎くん、分かってくれて嬉しい!」 京太郎「なんか分かり方が違う気がしますが、とりあえずおめでとうございます!!」 睦月「ありがとう!!」 智美「テンション高いなー。私たちも見習うかー」 ゆみ「あれは見習っていいのか……?」 智美「何事も気からだぞー」 佳織「運が向いて来そうだね」 桃子「テンションについて触れない辺りさすがっすね」 佳織「?」 桃子「あ、いや、何でもないっす」 京太郎「小鍛治健夜プロって国内無敗の伝説のプロなんですよね。憧れるなあ」 睦月「うむ、かっこいい。この写真も数少ない姿を収めたんだろうね」 桃子「どれどれ……レアカードってもっとこう、凛々しい感じのほうがいいんじゃないっすかね?」 睦月「レアだから普段見れない姿を載せてるんだよ」 ゆみ「前に見せてもらったときも、かっこいいというよりはその……親しみやすい姿が多かったように思うんだが」 睦月「普段やらない姿をカードにするなんて優しいですよね」 佳織「……普段からそ──」 智美「佳織、そこまでだ」 佳織「」ムググ 京太郎「でもジャージ姿は珍しいですね」 睦月「健夜っていう名前の通り、健康に気を使って運動も欠かさないんだろうね。文武両道、かっこいいなあ」 桃子「名は体を表すって言うっすけど……ううん?」 ゆみ「まあ体力があるかどうかは見た目では判断しづらい、が……」 智美「名は体を表すかー。ウチの部ではどうなんだろうなー?」 桃子「そうっすね、私は……あんまり桃っぽくはないっすね」 佳織「そうかな? そんなことないと思うけど」 桃子「桃って花も実も結構目立つじゃないっすか。私とは大違いっすよ」 京太郎「……十分桃らしいな」ボソッ 桃子「そうっすか? どのへんが桃っぽいんすか?」 京太郎「えっ、聞こえたか!?」 桃子「聞こえたっすよ。どのへんっすか?」 京太郎「い、いやほら、か、顔とか?」 桃子「なんで疑問形なんすか……んーまあ丸っぽいっすからねえ」 京太郎「そ、そうだな」アハハ ゆみ「……京太郎くん、さっきはモモのどこを見ていたんだ?」ゴッ 京太郎「ひっ!」ビクッ ゆみ「どうした? 素直に言ってくれればいいんだ」 京太郎「か、顔ですよ……」アハハ ゆみ「ふむ、そうか」フッ 京太郎「は、はい」ホッ ゆみ「……」ツネリ 京太郎「痛っ!?」 桃子「2人は何してるんすか?」 智美「気にするなー」ワハハ 桃子「むっちゃん先輩はどうっすか?」 睦月「私は1月生まれで睦月だからあんまり意味とかはなさそうかな」アハハ 京太郎「でもなんか月ってクールな感じするじゃないですか」 智美「それならむっきーにピッタリだなー」ワハハ 睦月「そ、そうですか?」テレ 桃子「プロ麻雀カードのときは……」 ゆみ「それは触れてやるな」 智美「私の名前もむっきーに負けず劣らずピッタリだと思うんだー」 京太郎「ああ、蒲の穂ってカマボコの語源らしいですね」 智美「なんでそんなこと知ってるんだ!? というかカマボコって何のことだー!?」 佳織「あー智美ちゃんよく笑うから確かにピッタリだね」 智美「佳織まで! だからカマボコはなんなんだ!?」 睦月「口の形ですよ」 智美「あー……って、私がピッタリって言ったのはそっちじゃなくて智美の智の方だー!」ワハハ 桃子「智に適当って意味なんてあったんすか」 京太郎「さすが智って名前にある人の話は勉強になるな」 智美「しまいにゃ泣くぞ―!」 ゆみ「2人ともその辺りにしておけ」 京太郎・桃子「ごめんなさい」ペッコリン 智美「謝る気あるのか!?」ワハハー! 佳織「まあまあ」 智美「佳織の漢字はどういう意味なんだー?」 佳織「私? 調べたことないから……」 ゆみ「妹尾の佳は美しいという意味だよ。佳人とか言うだろう?」 桃子「さっぱりっす!」 京太郎「初めて聞きました!」 ゆみ「お前たち……」 佳織「そういう意味なんですね。名前負けしちゃってるなあ」アハハ 智美「そんなことないと思うぞ?」 睦月「うむ、妹尾さんによく合っていると思う」 佳織「えっ、ええっ!?」テレテレ 智美「京太郎はどうなんだー?」 京太郎「よくぞ聞いてくれました。俺は……」 桃子「語感っすよね。苗字が2文字だと名前が長いほうがバランスいいっすし」 京太郎「ああそうだよ! よくわかったな!!」 桃子「本当にそうだったんすか……」 京太郎「ウチの親適当だからな……」トオイメ ゆみ「つけた理由はそうかもしれないが、私は合っていると思うぞ?」 京太郎「え?」 ゆみ「京には人の集まるところという意味があるんだ。部員が集まったのは京太郎くんがいるからという部分もあるしな」 京太郎「ゆ、ゆみ先輩……」ウルウル 睦月「そんな意味があるんですね。京太郎くんに合ってると思うよ」 佳織「ピッタリだね!」 京太郎「睦月先輩、佳織先輩……」ウルウル 智美「私には負けるけどなー」ワハハ 桃子「罪悪感がなくなったっすよ!」 京太郎「そこの2人」 京太郎「ゆみ先輩も佳織先輩と同じですよね」 ゆみ「ん? どういうことだ?」 京太郎「え? ゆみって名前じゃないですか」 ゆみ「ああ、そういうことか。私の名前はひらがなで"ゆみ"と書くんだ」 京太郎「へー。なんとなく意外ですね」 ゆみ「まあひらがなの丸いイメージは私には合わないだろうな」 京太郎「ああいえ、そうじゃなくて」 ゆみ「うん?」 京太郎「美しいって漢字が入ってると思ったんでピッタリだなーと――」 京太郎「……はっ!? すみません今のナシで!」 ゆみ「……うぁ」カアァァ 桃子(相変わらずっすねー) 睦月(前から思ってたけどわざとやってるのかなあ) 佳織(確かにピッタリだなー) 智美「京太郎、早く直そうなー」 京太郎「」 ………… ……… …… … ゆみ「そういえば京太郎くんの幼馴染は麻雀部に入ったのか? ほら、チャンピオンの親戚とか言っていた」 京太郎「あ、言ってませんでしたね。入ったみたいですよ」 智美「チャンピオンの親戚かー。その子も強いのかなー?」 京太郎「親戚というか咲……あ、俺の幼馴染ですけど、咲はチャンピオンの妹だったみたいです」 一同「妹!?」 京太郎「わっ!?」ビクッ ゆみ「なんだそれは本当なのか!?」 京太郎「そんなことで嘘つくようなやつじゃないんで、本当だと思います」 桃子「ダークホース出現っすね……」 睦月「ま、まあ妹と言っても強いとは限らないし」 佳織「そ、そうだよね!」 京太郎「ええと……」 ゆみ「知っているなら言ってみてくれ」 京太郎「小さい頃は両親と宮永照と咲で家族麻雀してたらしんですけど、咲は狙って点数を±0にしていたらしいです」 桃子「そ、想像以上にエグいっすね……」 睦月「狙って±0って……」 京太郎「ま、まあ少なくとも小中学校で麻雀はしてなかったからブランクもありますし」 京太郎「宮永照だってその頃からずっと強くなったから個人戦2連覇してるんですよ!」 佳織「でもきっと強いよね……」 ゆみ「ちなみにその宮永はどこの高校へ行ったんだ?」 京太郎「清澄って高校に行きました」 睦月「清澄……どこかで聞いたことがあるような……」 ゆみ「大会の牌譜は大体見たはずだがその名前は見覚えがないな」 京太郎「ええ、清澄も今年部員が揃ったみたいで、大会に出るのも初めてって言ってました。ウチと一緒ですね」 桃子「風越とかならどうしようと思ったっすけど、それならまだ勝ち目はありそうっすね!」 佳織「当たるのはいつになるんだろう」 智美「えーと、順調に勝ち進んでも決勝だなー」ワハハ ゆみ「だいぶ先だな」 桃子「当たる可能性は低そうっすね」 睦月「……あ、そうだ!」 智美「どうかしたのかー」 睦月「清澄ってインターミドルチャンプの原村和が行ったところですよ! 前に雑誌でなぜ無名校にみたいな特集がありました」 桃子「い、インターハイチャンプの妹と、インターミドルチャンプがいる高校っすか……」 ゆみ「中々手強そうだな」 京太郎「手強そう……ってことは負ける気は全然ないんですね」 ゆみ「元々私たちは初出場で相手はどこも格上だ。1つ格上が増えたくらい、いまさら変わらないさ」 智美「ゆみちんの言うとおり今から怖がってもしょうがないしなー。私たちはまず1回戦突破を目指さないと」ワハハ 睦月「……そうですね。そんな先のことを考えられる立場じゃありませんでした」 桃子「負ける気はないっすけど、確かに部長とゆみ先輩の言うとおりっすね」 桃子「そういえば京太郎の方はどうなんすか?」 京太郎「俺か?」 桃子「自分たちで手一杯で気が回らなかったんすよ。勝てそうなのか聞きたいっす!」 京太郎「んーネトマではそれなりに勝ててるけど……」 睦月「雀荘に行ったりはしなかったの?」 京太郎「何度かは行きましたよ。ただ本格的にやってる人はあんまりいなかったです」 智美「それじゃああんまり参考にはならないなー」ワハハ 睦月「他の高校と試合出来ればよかったんだけどね」 京太郎「人数が揃ってる女子でも無理だったんですし、1人だけの男子ならなおさらですよ」 ゆみ「決勝リーグに進んでもおかしくない実力は付いているよ。それは保証する」 桃子「おかしくないってことは行けないこともあるんすね」 ゆみ「それはそうだ」 京太郎「うぅ……」 ゆみ「結局はあの2人に当たったときにどうなるかだな。無難にやり過ごせれば決勝リーグに行けるさ」 京太郎「他人次第って不安ですね……」 桃子「初めて1ヶ月で決勝に行けるかもしれないってだけで十分っすよ」 京太郎「それはそうなんだけどな」 智美「まあ麻雀なんて水物だからなー。そんなに気負っちゃダメだ」 京太郎「そうですね。男子1人の個人戦なら何があっても自分の責任ですし、精一杯頑張ります」 佳織「っ!」ビクッ 智美「佳織もだぞー」 佳織「ふぇっ!?」 智美「初心者の佳織を無理言って麻雀部に入れたのは私たちなんだから、勝てないかもなんて気にしなくていいんだぞ」 ゆみ「そんなことを気にしていたのか。団体戦はチームでやるんだ。少々失敗しても私たちが挽回すればいい」 佳織「智美ちゃん、加治木先輩……ありがとうございます」 佳織「でも私も鶴賀麻雀部の一員ですから、役に立てるように頑張ります!」 睦月「うん、期待してる」 桃子「かおりん先輩、役満頼むっすよー!」 佳織「そんな、無理だよー」アハハ 一同(……絶対1度は役満で和了るんだろうなあ) 智美「それじゃあそろそろお開きにしようか」 ゆみ「そうだな。あまり遅くなっては明日がつらい」 桃子「いよいよ明日は大会っすね。腕が鳴るっすよー!」 京太郎「俺は明後日からだから、明日は応援だな」 桃子「ちゃんと横断幕は用意したっすか?」 京太郎「今からしてやろうか?」 桃子「出来るもんならしてみるがいいっす!」 京太郎「俺が本気を出したら一晩で完成させられるぞ?」 ゆみ「そんなところで本気を発揮しなくてもいい」 睦月「というかそもそも掛ける場所ないからね」 佳織「そっか。明日はもう大会なんだね」 智美「何だ佳織、そんなことも知らなかったのかー?」ワハハ 佳織「ち、違うよ! そうじゃなくって実感がわかないなって思って」 睦月「みんなが集まってから1ヶ月経ったんだね……確かに実感わかないや」 智美「3人のときも楽しかったけど、6人になってからはもっと楽しかったなー」 ゆみ「そうだな、ようやく部活らしくなった気がしたよ」 桃子「……大会が終わったらゆみ先輩たち引退しちゃうんすよね」 京太郎「……!」 智美「うん、私たち3年は引退だなー。でも部活には顔を出すと思うぞ。な、ゆみちん」 ゆみ「ああ。大会に出られなくても麻雀は出来るし、後輩の様子も見たいしな」 ゆみ「まあ受験勉強があるから毎日というわけにはいかないが」 智美「……ワハハー」 ゆみ「おい、なぜ目をそらす」 智美「ゆみちんは気が早いなー」ワハハ ゆみ「むしろ遅いくらいだ」 佳織「応援しかできないけど頑張ってね」 智美「ついに佳織にも見捨てられたかー……」 佳織「智美ちゃん3年生じゃない」 智美「佳織は厳しいなー」 ゆみ「ほらみんな、いい加減帰るぞ」 智美「佳織に付き合ってたらいつまでも帰れそうにないし帰るかー」ワハハ 佳織「私のせい!?」 睦月「まあまあ」 桃子「ほら京太郎も帰るっすよー。……京太郎?」 京太郎「ん? あ、ああ。大丈夫、帰るよ」 桃子「どうかしたんすか?」 京太郎「何でもないから大丈夫」 桃子「ならいいっすけど……」 ゆみ「なんだ、どうかしたのか?」 京太郎「大丈夫ですって! ……ゆみ先輩、今日は送らせて貰っていいですか?」 ゆみ「え?」 京太郎「ほら、俺は明日試合がないけどゆみ先輩はあるじゃないですか。疲れを残しちゃいけませんし」 桃子「それなら私も送ってくれていいんすよ?」 京太郎「お前は自転車じゃないだろ」 桃子「贔屓っすー」ブーブー 京太郎「話は自転車を持ってきてからだ。……それでゆみ先輩、どうですか?」 ゆみ「まあ君がそう言ってくれるならお言葉に甘えようか」 京太郎「ありがとうございます!」 ゆみ「こちらこそ、ありがとう」 智美「青春だなー」 睦月「そうですねえ」 佳織「2人ともああいうことあったの?」 智美「……むっきー、抑えてろー」 睦月「はい」ガシッ 佳織「えっ、な、何? ど、どうしたの急に……あ、アハハハ!! く、くすぐったいよ! や、やめてー!!」アハハハ 智美「そういうこというやつはお仕置きだー!」コチョコチョ ――帰り道―― 京太郎(寂しいけど、ゆみ先輩とは大会が終わったら会えなくなるかも知れないんだよな。少なくとも、今よりは絶対に会えなくなる) 京太郎(ゆみ先輩は受験勉強もあるから、これから先俺とゆみ先輩が会う時間はどんどん減ってく) 京太郎(待てば今より仲良くなれるか? ……ダメだ。考えるほど疎遠になるんじゃないかって考えちまう) 京太郎(それなら、今日告白したほうが……) ゆみ(京太郎くん、今日はあまり話しかけて来ないな。明日が大会だから気を使っているんだろうか……そんなこと必要ないんだがな) ゆみ(京太郎くんに送ってもらうのはこれが何度目だろう。足の怪我が治った後も何度か送ってもらったしな……) ゆみ(……まあいいか。今日は静かな分京太郎くんの鼓動がよく聞こえて、これはこれで落ち着く)ギュッ ゆみ(最初の頃に比べると随分鼓動が落ち着いているのは喜ぶべきなんだろうか)ウムム ゆみ(……大会が終わったらこれも出来なくなるのか。それは、少し寂しいな――) 京太郎「ゆみ先輩、着きましたよ」 ゆみ「ああ、ありがとう」 京太郎「その…… ゆみ「今日は」」 ゆみ「っと、すまん、先にいいぞ」 京太郎「い、いえ。ゆみ先輩が先に」 ゆみ「そうか。まあ大したことではないんだが、今日は最近の君にしては珍しくあまり話さなかっただろう?」 京太郎「そ、そうでした?」ギクッ ゆみ「いや、別にだからどうだというわけではないんだが……ちょっと考えこんでしまってな」 京太郎「考え込む?」 ゆみ「ああ。大会が終わったら京太郎くんとこうして帰ることもなくなってしまうのかと思うと少し寂しいな、と」 京太郎(ゆみ先輩も俺と同じことを感じて――) ゆみ「つまりその、後1ヶ月程度しか君と2人で帰ることが出来ないと思うと凄く嫌で、だからもっと君と……」 ゆみ「ああ、もう! 私は何を言っているんだ! すまない忘れてくれ!!」カアァァ 京太郎「え?」 ゆみ「だ、だから忘れてくれ! 大会前で少し気が動転して――」 京太郎「あ、いえそうじゃなくて。後どの程度って言いました?」 ゆみ「だから本心ではな――いや本心じゃないわけじゃないんだが……」 ゆみ「ってうん? 1ヶ月程度と言ったんだ。全国に行けばそのくらいになるだろう?」 京太郎「……!」 ゆみ「それより私のさっきの発言は忘れて――」 京太郎「大丈夫です。正直よく聞いてませんでした」 ゆみ「そ、そうか……」シュン 京太郎「?」 ゆみ「それじゃあ次は君の話を……」 京太郎「いえ、そっちは大丈夫です」 ゆみ「私の時間なら問題ないぞ?」 京太郎「何でもなかったんです。また後でちゃんと言います」 ゆみ「ん、そうか。応援期待しているぞ」 京太郎「任せてください! 自分の個人戦以上に気合を入れて応援します!」 ゆみ「それはやりすぎだ。……まあ楽しみにしているよ」フフッ 京太郎「はい、期待しててください!」 ゆみ「ああ。また明日」 京太郎「はい、また明日」 京太郎「あー……俺はバカか。全国に行けばもっと長く部にいてくれるなんて、言われれば当たり前じゃねえか」 京太郎(ゆみ先輩はやっぱカッコいいな……。いやまあ、そういう人だから好きになったんだけど) 京太郎(大会が終わったら言いますとか言ったけど、俺がゆみ先輩に告白する資格なんて元からないんじゃないか……?) 京太郎「……まあ大会で勝てばいいんだよな。上手く行けば決勝、奇跡が起きれば全国だ! やってやる!」 ――大会会場―― 智美「ついに来たぞー!」 ゆみ「いよいよ本番だな……」 桃子「腕が鳴るっすよー!」 佳織「緊張してきたよ……」 睦月「私も……ちょっと気分が」フラッ 京太郎「む、睦月先輩!? 試合はまだですよ!?」 智美「むっきーはプレッシャーに弱いなー」ワハハ ゆみ「まあ試合をこなせば慣れるだろう」 睦月「先輩たちは全然緊張してませんね……」 智美「いやーそんなことないぞー」ワハハ 京太郎「えっ、どこがですか?」 智美「失礼だなー。佳織なら分かるよなー?」 佳織「え? う、うん。もちろんだよ!」 智美「ほら、佳織を見習えー」ワハハ 桃子「どこで分かるか聞かないんすね」 ゆみ「ああ、察したんだろう」 京太郎「にしても人多いですねー」 ゆみ「年々参加者が増えているらしいぞ」 佳織「麻雀人気って凄いんですねえ」 智美「佳織みたいに全く知らないってのは珍しいと思うぞ」 佳織「か、簡単なルールは覚えたよ!?」 智美「結局全部の役は覚えられなかったなー」 佳織「特に役満だけど、麻雀は役が複雑すぎるよう……」 睦月「妹尾さんは役満を真っ先に覚えるべきだったとは思うよ……?」 佳織「でも役満って出づらいんだよね? なら出る役から覚えたほうが……」 睦月「う、うむ。それはそうなんだけど……」 ゆみ「まあ麻雀は水物だ。3つ揃えるということさえわかっていれば後はなんとかなるさ」 ザワザワザワザワ 京太郎「なんか騒がしいですね」 ゆみ「あれは……」 「風越女子だ!」 「部員80人を擁する強豪!!」 京太郎「あれが風越ですか。部員80人ってすげー」 ゆみ「ウチの10倍以上か……」 桃子「なんの、こっちは少数精鋭っすよ!」 佳織「えっと、桃子さん。初心者の私が鶴賀にはいるんだけど……」 桃子「……団体戦は5人いれば十分っすよ!!」 京太郎「仕切り直した」 智美「あっちは80人からの精鋭だしなー」ワハハ 桃子「そこ、うるさいっすよ!」 ゆみ「お前たちは緊張しないな」ハァ 睦月「あはは、でも見てると気が楽になりました」 ゆみ「ああ、そうだな」 ザワザワザワザワ 京太郎「また騒がしくなりましたね」 「四天王は2年になっても健在だ!」 「目立ってなんぼですわ!」 ゆみ「今度は龍門渕か」 京太郎「なんかあのメンバーの中から声が聞こえたような……」 智美「目立つのが好きなんだろー」 京太郎「……あれ、4人しかいないみたいですけど龍門渕は部員少ないんですか?」」 睦月「あそこは団体戦メンバーの5人しかいないみたい」 京太郎「それで全国……まさに少数精鋭」 桃子「団体戦は5人いれば十分って証明っすね!」 ゆみ「龍門渕と同じと考えれば私たちもやれる気になるな」 睦月「ものは考えようですね」 佳織「が、頑張りましょう」 智美「気楽になー?」 智美「それじゃあ対局室見に行くかー」 京太郎「はい、わかりまし……ってあれ?」 ゆみ「どうかしたのか?」 京太郎「あいつは……すみません、ちょっと待っててください」タッタッタ ゆみ「あ、おい――」 咲「うぅ、ここどこ……」キョロキョロ 京太郎「おい」ポンッ 咲「ひぅっ! わ、私違います!!」ビクッ 京太郎「何が違うんだよ……咲、俺だよ」 咲「え?」クルッ 咲「きょ、京ちゃん!?」 京太郎「おう、久しぶりだな」 咲「うん、久しぶり! ……ってもう、脅かさないでよ! ほんとにびっくりしたんだから!!」 京太郎「久々に見つけたと思ったらいきなり迷ってるんだぜ? そりゃ脅かしたくもなるって」 咲「どんな理屈なの!?」 京太郎「まあまあ、案内してやるから機嫌直せよ」 咲「私を脅かしたような人の案内なんて……!」 京太郎「いらないのか?」 咲「……お願いします」ウゥ… 京太郎「分かればよろしい」 京太郎「それじゃあ先輩たちに断ってくるから咲も来い」 咲「先輩たち?」 京太郎「……お前俺がなんでここに来てると思ってるんだ?」 咲「えーと……女の子の物色?」 京太郎「あ、そうだ。迷子なら事務所に運んで放送してもらったほうが速く合流できるよな」グイッ 咲「じょ、冗談だから!! それはやめて!!」アセアセ 京太郎「まったく……それじゃほら、付いて来い」 咲「う、うん……」オドオド 京太郎「人見知りまだ直ってないんだな」 咲「そ、そんな早く直らないよ」 京太郎「麻雀部の仲間とは上手くやれてるのか」 咲「うん! みんな良い人たちだよ」 京太郎「そっか。ならよかった」ポン 咲「あ、頭撫でないでよ……」 京太郎「悪い悪い」 桃子「あ、戻ってきたっすよ」 京太郎「すみません、こいつが……」 智美「会場に着くなりナンパはどうかと思うぞー?」 桃子「さすがの私もドン引きっすよ」 睦月「ちょっと擁護できないかな」 佳織「いいことじゃないと思うよ?」 ゆみ「京太郎くん……」 京太郎「違いますよ! こいつは何度か話した幼馴染の咲です! 迷ってたから連れてきたんですよ!」 京太郎「……ていうか俺そんなことするやつだと思われてたんですか!?」 智美「日頃の行いだなー」ワハハ 咲「京ちゃん部活で何してるの……?」 京太郎「真面目に練習やってるよ! 畜生、なんだこの扱い!」 桃子「まあ冗談は置いといて、あんたが宮永咲っすか……」ジロジロ 咲「な、何ですか?」ビクビク 桃子「……京太郎と付き合ってたりするんすか?」 京太郎・咲「え?」 ゆみ「」ピクッ 桃子「身体の距離が近かったり頭撫でたり手引っ張ったりしてたじゃないっすか。もしそうなら……」 咲「あはは、やだなー。私が京ちゃんと付き合うって……そんなことあるわけないじゃないですか」 京太郎「そうそう。俺が咲と付き合うなんてありえねえ」 咲「どういう意味?」ムッ 京太郎「お前も同じ事言ってること忘れてないか?」 咲「私が言うのはいいけど、京ちゃんに言われると腹立つ」 京太郎「めちゃくちゃ言ってんなお前!」 桃子「……まあ違うならいいっすよ」 佳織「2人とも仲いいねえ」 京太郎「あーまあ、幼馴染ですから」 睦月「そんなに仲良くなるものなの?」 京太郎「そんなもんですよ」 京太郎「それで、こいつ迷ってるみたいなんで清澄のところに送って行っていいですか? すぐ戻りますから」 咲「ま、迷ってるって……」 京太郎「いや迷ってんだろ?」 咲「そうだけどそんなにはっきり言わなくたって……」アセアセ 智美「送ってきてもいいぞー。私たちは対局室見たら控え室に行ってるから」 京太郎「すみません、部長」 咲「あ、ありがとうございます!」ペッコリン 智美「気にするなー。初出場同士、お互い頑張ろうなー」ワハハ 咲「は、はい!」 京太郎「それじゃちょっと行ってきます」 睦月「気をつけてね」 京太郎「咲、部員はどこにいるんだ?」 咲「組み合わせ見てるって言ってたかな……?」 京太郎「よし、じゃあまずはそこ行くか……咲、そっちは逆だ」 咲「えっ!?」 京太郎「お前よく1人で東京行けたな……」 咲「下準備をこれでもかってくらいやったんだ」 京太郎「……うん、お前のそういうところは偉いと思うよ」 咲「でしょー」エヘン 智美「あれが宮永咲かー」 佳織「見た目は普通の女の子って感じだったね」 桃子「そうっすねー。見た目で麻雀の強さはわからないっすけど、チャンピオンの妹っていうからもっと威圧感あるかと思ったっす」 桃子「ただそれより……」 睦月「うむ。幼馴染とは聞いていたけど、想像よりずっと仲良かったね」 ゆみ「」ピクッ 智美「……ゆみちん、さっきから全然喋らないなー」 ゆみ「え、なっ、何のことだ?」ビクッ 智美「それで誤魔化してるつもりなのかー……?」 桃子「まあ私も付き合ってたらお仕置きしてやろうと思ったっすけど、あの反応は本当に付き合ってないと思うっすよ?」 ゆみ「そ、そうかな」 睦月「そうですよ。幼馴染だとあのくらい仲良くなるもんだって言ってたじゃないですか」 智美「そうだぞー。私と佳織も仲いいだろー?」ワハハ ゆみ「確かにそうだが、しかし男女であれは……」 佳織「幼馴染だと男女とかより家族って感じだと思います。だからそんなに落ち込まないでください!」 ゆみ「なるほど家族か……って、だ、誰も落ち込んでなんていない!」 佳織「ええっ!?」 智美(地雷踏んだなー) 桃子(相変わらず躊躇なく行くっすね) 睦月(私も妹尾さんの強さは見習いたいなあ) ゆみ「た、ただ私は京太郎くんがああいうことを人前でするのは、あまりよくないのではないかと思ってだな……」ワタワタ ゆみ「だから、べ、別に京太郎くんが仮に付き合ってたとしても、人前でああしないなら私は特に……何も……何も、うぅ」シュン 智美「ほら佳織、あんまりゆみちんをいじめちゃダメだぞー」ワハハ 佳織「わ、私何かした!?」 睦月「無自覚なのが一番怖いよ」 桃子「大物っすねー」 佳織「えっ!?」 智美「ゆみちん、対局室見に行こうか」 ゆみ「ああ……そうだな。そうしようか」 智美「それじゃあ行くぞー」ワハハ 京太郎「組み合わせ表はこの先か」 咲「うん……あ、みんな!!」 優希「咲ちゃん! 探したじぇ!」 和「心配しましたよ」 咲「ごめんね、ちょっと迷っちゃって……」 久「まあすぐ見つかってよかったわ。それでそっちの彼は?」 咲「何度か話に出した、私の幼馴染の京ちゃんです」 久「ああ、あの彼ね。初めまして、私は清澄高校麻雀部部長の竹井久よ」 京太郎「初めまして。鶴賀学園1年の須賀京太郎です」ペコリ 京太郎(……あの?) まこ「おい、今何度かというたか?」ヒソヒソ 優希「言ってたじょ。一時期なんか毎日のように話してたのに……」ヒソヒソ 京太郎(視線を感じる……) 久「鶴賀? 聞いたことないわね……」 京太郎「ああ、ウチも清澄と同じで初出場なんですよ」 久「そうなの。どおりで……お近づきの印にお互い情報交換でもしない?」 京太郎「なんか怖いので……すみません」 久「ちぇっ」 和「須賀さん、咲さんを送って頂きありがとうございました」 京太郎「いえいえ、昔から俺の役目なんで」 咲「昔から私が迷ってたみたいな言い方……!」 京太郎「迷ってたろ?」 咲「……迷ってたけど」シュン 久「咲は須賀くんに随分助けられてたのね」クスクス 京太郎「高校に入ってからもメールで色々やってますからね。もう生活の一部ですよ」 咲「京ちゃんのバカ」ムッ 京太郎「なんでだよ!」 咲「なんでも!」 和「仲がいいですね」クスクス まこ「妬けるのう」 優希「羨ましいじぇ」 京太郎「それじゃそろそろ戻るんで……」 久「ええ、ありがとう。人数ギリギリだし助かったわ」 和「鶴賀学園でしたよね。戦えるのを楽しみにしてます」 京太郎「伝えときます。それじゃ失礼します」 咲「京ちゃん、またね!」 京太郎「ああ、またな」 優希「さて、それじゃあ咲ちゃん……」 まこ「キリキリ話してもらおうかのう」 咲「え? 何をですか?」キョトン 久「とぼけようったってそうはいかないわよ。咲の話してたとおり中々いい子だったじゃない。見た目も70点ってとこかしら」 咲「とぼける……? でも見た目は高すぎですよ」クスクス 久「……あれ、低いって言ってくると思ったのに意外ね」 咲「だって京ちゃんですよ? せいぜい50点です」 久「き、厳しいわね」 まこ「基準があれじゃから辛口なんじゃろうか」 優希「なるほど……」 和「試合の前に何をやってるんですか……それに悪趣味ですよ」ハァ 久「まあまあ、少しくらいいいじゃない。それで咲、須賀くんとは月にどのくらい会ってるの?」 咲「月にですか? 高校に入ってから会うのは今日が初めてですけど……」 久「ダメよ、ちゃんと手綱握っておかなきゃ。遠距離だからって何ヶ月も会わなかったら逃げられちゃうわよ?」 咲「逃げられる……? ……あ! もしかしてみんな勘違いしてます?」 優希「勘違い?」 咲「えっと、私と京ちゃんは別に付き合ったりはしてませんよ? 単なる幼馴染です」 和・優希・久・まこ「えっ!?」 咲「鶴賀の人にも言われたんですけど、私と京ちゃんが付き合うわけないじゃないですか」アハハ 咲「……あれ、みんなどうし――」 和「じょ、冗談ですよね!!??」ガッ 咲「わっ! ど、どうしたの和ちゃん!?」 和「毎日メールしてたり須賀さんのこと毎日のように話に出したりしてるじゃないですか!」 和「それで付き合ってないなんてそんなオカルトありえません!!」 咲「そ、そう言われてもメールしてるのは幼馴染だからだし、話は、その、話題が思いつかなくて……」 和「読書とか園芸とか色々あるじゃないですか!?」 咲「……あー」 和「天然ですかっ! 可愛いですねもうっ!」 優希「の、のどちゃん落ち着くじぇ」 和「はっ! ……すみません、取り乱しました」 咲「和ちゃん意外と早とちりなんだね」アハハ 和「……」 久「和。言いたいことは色々とあると思うけどここは私たちに代わりなさい」 まこ「咲よ、おんしにとってあやつはどういう存在なんじゃ?」 咲「京ちゃんは麻雀部に入れって背中を押してくれたり、中学のときも人見知りな私のことたくさん気づかってくれたりして……」 咲「本人には言えませんけど、大切な存在です」 久「咲から見た須賀くんってどういう人なの?」 咲「えーと……京ちゃんって見た目軽そうですけど根は真面目で優しいんです」 咲「私が上手く話せなくてもずっと待っててくれますし、私のことからかったりはするけどバカにすることは絶対ないですし」 咲「ちょっとバカでエッチで私のこと子供扱いしてきますけど、でもすっごく頼りになる幼馴染です!」 優希「……メールは毎日1時間してるんだっけ?」 咲「うん。……あ、1時間は最低で、普段はもっと長くやってるからね!?」アセアセ 優希(何の話をしてるんだじょ……?) 和「あくまで咲さんと須賀さんの関係は幼馴染だと言うんですね?」 咲「? うん、そうだよ?」 和・優希・久・まこ「…………」 咲「え、えっと?」 和「そんなオカルトありえません……」 優希「のどちゃん。私も信じられないけど世の中には色んな付き合いがあるってことだじぇ」 久「……まあ本人がそういうならそうなのね。あまり追及するのもやめましょう」 まこ「そうじゃな。ほれ、試合が始まるし移動じゃ」 咲「はい! 強い人と戦えるのが楽しみです!」 久「やっと咲に共感できたわ……! それじゃ登録したオーダーを発表するわよ――」 ゆみ(……女の子らしい女の子だったな。京太郎くんはずっと彼女と……やはり好みもああいう子なのだろうか)ソワソワ ゆみ(いや、それ以前に京太郎くんはああ言っていたけど実は付き合って……いやいや、信じないでどうする。だがしかし……)ソワソワ 京太郎「すみません、戻りました!」 桃子「ようやく来たっすか」 智美「中々戻らなかったからゆみちんがそわそわしてたぞー」 ゆみ「なっ、別に私は――」 京太郎「え? なんでですか?」 ゆみ「っ……その、だな。君と宮永との関係は……」 京太郎「幼馴染ですよ? さっき言ったじゃないですか」 ゆみ「……すまない、聞きたいのはそういうことじゃなかった。……京太郎くんは彼女のことをどう思っているんだ?」 京太郎「どうと聞かれると難しいですけど……可愛い手のかかる妹みたいな感じです」 ゆみ「妹……そうか。変なことを聞いたな。ありがとう」 京太郎「いえ、別に気にしてないですけど……やっぱり対戦相手と思うと気になるんですか?」 智美「まーそんなところだ。あんまりいじめてやるなー」 京太郎「いじめ……ええ!?」 桃子「女の敵っすねー」 睦月「京太郎くんは悪い男だね」 佳織「もっと周りを気にしてね?」 京太郎「俺何かしました!?」 ゆみ(……されたよ。バカ) 智美「ついに試合だなー」 桃子「念願の晴れ舞台っすね!」 佳織「ドキドキしてきました」 睦月「私は緊張で気分が……」ウッ ゆみ「さっき緊張がほぐれたと言っていたじゃないか」 睦月「まさか先鋒だとは思わなかったからですよ……」 京太郎「先鋒だと何かあるんですか?」 睦月「先鋒で突き放せたほうが有利だから、団体戦だとエースを先鋒に持ってくることが多いんだ……」 京太郎「なるほど、エース対決……それだとゆみ先輩かモモのほうがよかったんじゃないですか?」 ゆみ「それも考えはしたんだが龍門渕の大将はおそらく天江衣だ。私でも間違いなく力不足だが、それでも任せるわけにもいかない」 佳織「桃子さんが先鋒じゃないのはなんでですか?」 ゆみ「どこまで効果があるのかわからないが、ステルスを活かすにはあまり目立たないほうがいいと思ってな」 ゆみ「先鋒で不自然な振り込みが続けば他校の中から異常に気付く人間も出てくるかもしれん。まあ気休め程度だが」 睦月「私が一番最初で躓いたりしたら……ああ、考えるのが怖い!」 智美「まあまあ。取り返すために私たちがいるんだぞ」ワハハ ゆみ「ああ、それに別に消去法で選んだわけじゃない」 睦月「え?」 ゆみ「津山なら多少流れが悪くとも大崩れはしない」 ゆみ「どんな状況でも確実に後ろにバトンを繋いでくれると思っているから先鋒を託したんだ」 睦月「先輩……」 ピンポンパンポーン 「1回戦が始まります。各校先鋒の選手は対局室へ集合してください」 京太郎「始まるみたいですね」 ゆみ「ああ、津山。行ってこい」 智美「期待してるぞー」ワハハ 桃子「頑張るっす!」 佳織「ふぁ、ファイトっ!」 睦月「は、はい!」ガチガチ 京太郎(まだ緊張してるな……よし) 睦月「そ、それじゃあ行ってきます」 京太郎「」コソッ 睦月「」スタスタ 京太郎「えいっ」メカクシ 睦月「ひゃあ!?」ゴスッ 京太郎「ぐぉっ!?」 ゆみ「何をやっているんだ君は……」 京太郎「い、いえ。緊張をほぐそうといたずらをしたら肘打ちが……」ウゥ… 睦月「ご、ごめんね?」アセアセ 桃子「謝らなくていいっすよ」ハァ 智美「ほら、遅れるから対局室へ急げー」ワハハ 睦月「は、はいっ」タタッ 京太郎「うぅ…まだ痛む」 ゆみ「緊張をほぐすにしてもあれはないだろう」 京太郎「驚かすのが一番だと思ったんです……」 智美「試合前にあれはなー」 桃子「緊張を解くのに何が一番か、京太郎はわかってないっすねー」 京太郎「む、じゃあモモは知ってるのかよ」 桃子「当たり前じゃないっすか。むっちゃん先輩ならすぐ出来るっすよ」 京太郎「じゃあなんで言わなかったんだ?」 桃子「言ったら意味ないっすからね。ほら、始まるっすよ」 京太郎「?」 ゆみ「私たちが言うのもなんだが、初戦の相手に強豪はいない。津山なら普通に打てば見劣りしないさ」 智美「むっきーは堅実だからなー。配牌も悪くないし上手く行けば1局目で……」 佳織「あ、聴牌しました!」 京太郎「立直はしないんですね」 ゆみ「すべきだとは思うが……まあ緊張からだろう。だがこれで」 睦月『ロ、ロン! 3900です!』 京太郎「やった!」 智美「むっきーいいぞー!」 桃子「流石っす!」 ゆみ「肩の力も抜けたようだな」 京太郎「え? あ、ほんとですね。見て分かるくらい……」 桃子「」ドヤァ 京太郎「……その顔はなんだモモ」 桃子「さっき言ったじゃないっすか。緊張を解くための方法」 京太郎「言ってはねえよ!?」 桃子「細かいっすねー。要するに一度上がれば緊張なんて取れるもんすよ」 京太郎「あーなるほど」 ゆみ「津山も長くやっている。緊張しているといっても全く上がれないことはないと思っていたが、1局目で上がれたのは幸運だったな」 京太郎「じゃあ後は大丈夫ですか?」 ゆみ「まあ相手はおそらく各校のエースだ。楽な勝負とはいかないだろうが、津山に任せよう」 京太郎「はい……睦月先輩、頑張って下さい!」 睦月「た、ただいまー」 京太郎「睦月先輩お疲れ様でした!」 睦月「うん……ありがとう」 佳織「区間2位おめでとう!」 睦月「ありがとう……でも1位になれなかったのは悔しいな」アハハ 智美「この欲張りさんめー」ワハハ ゆみ「よくやった。後は任せろ」 睦月「はい。ゆっくり応援してます……」 京太郎「飲み物どうぞ」リョクチャ 睦月「うん、ありがとう」ゴクゴク 桃子「気がきく……ってそのペットボトルいつ用意したんすか!?」 ゆみ「対局中は外に出ていないはずだが……」 京太郎「来るときに用意してたんですよ。今日は出ないですしこれくらい用意しておかないとって思ったんで」 智美「なんかデカイ箱持ってるなと思ったらクーラーボックスだったのかー」 京太郎「全員の好きなの持ってきたんでよければ飲んでください」 佳織「わあ、ありがとう! 頑張ってくるよ!」オレンジジュース 桃子「私も1本貰うっす」モモノテンネンスイ 智美「応援頑張ったし私も飲もうかなー」コーラ ゆみ「私も貰おうかな。ありがとう、京太郎くん――」ハッ ゆみ(好きな飲み物なんて話した覚えがないな……) ゆみ「京太郎くん、この飲み物は……」 京太郎「え? ああ、俺からの差し入れですよ。気にしないでください」 ゆみ「そういうことじゃ――いや、それはそれで後で払おう」 ゆみ「そうじゃなくて私がレモンティーを好きだなんて話した覚えがないんだがどうして知っていたのかと」 京太郎「ああ、そっちですか。1ヶ月も一緒にいればわかりますよ」 ゆみ「ん、そうか……」 桃子「あーそれで私が桃天好きだって知ってたんすね。隠してたつもりなんすけどねー」 京太郎「毎日のように桃天飲んどいてどこが隠してんだよ!?」 ゆみ「え」 智美「私のコーラ好きもバレてたかー」 京太郎「モモほどじゃないですけどよく飲んでますしね」 ゆみ「な」 睦月「私は……」 京太郎「あれだけせんべいと緑茶飲んでればそりゃわかりますって」 睦月「いや、実はストレートティーのほうが」 京太郎「じゃあせんべいも紅茶と一緒に食べてくださいよ!?」 睦月「そこは相性の問題だね」 京太郎「なんで誇らしげなんですか……はい、ストレートティーです」 睦月「あるんだ!? いや、流れに乗っただけで緑茶も好きだし、こっちで大丈夫。わざわざありがとう」 京太郎「じゃあしまっておくんで後で飲んでください……あれ、ゆみ先輩どうしました」 ゆみ「なんでもない……」 ゆみ(私だけじゃなかったんだな)ハァ 京太郎(ゆみ先輩は色々飲んでるからわかりづらかったけど当たってよかった……!) 京太郎(遊びに行ったとき飲んでたのをよく覚えてた! 偉いぞ俺!) 桃子「なんかまた2人でやってるっすね」 智美「一回戦とはいえ余裕だなー。というかいい加減にしろー」ワハハ 佳織「うぅ……すみません……」 京太郎「ドンマイです。4万点差くらいどうとでもなりますよ」 佳織「でも区間4位で役立てなくて……」 ゆみ「昨日も言ったじゃないか。1ヶ月前に入れるなんて無理を頼んだのは私たちだ。妹尾の取られた点棒は私たちが取り返す」 桃子「かおりん先輩の後は部長に私にゆみ先輩。まさに盤石っすよ!」 智美「そうそう気にするなー。佳織の敵は私が取るぞ」ワハハ 佳織「みんな……」ウルウル 智美「ワハハー。それじゃ逆転してくるかー」 ゆみ「ああ、行ってこい」 睦月「お願いします!」 桃子「ファイトっすー!」 ………… ……… …… … ゆみ『ツモ。2000・4000』 一同「…………」プルプル 京太郎「か、」 智美「勝ったぞー!」 睦月「勝ったんだ……」ヘニャ 佳織「よかった……!」 桃子「みんな喜びすぎっすよー。初戦突破なんて通過点っす!」ニヘラ 京太郎「その顔で言うなよ」ハハ 桃子「嬉しいんだからしょうがないっすかー」バシバシ 京太郎「痛っ!」 桃子「もー大げさっすねー」バシバシバシ 京太郎「やめい! ほんと痛えよ!?」 睦月「あはは、夢じゃなさそうだね」 佳織「うん、痛がってる」フフ 京太郎「微笑ましそうにするのやめてください!」 桃子「やーでも私たち勝てたんすねー。夢じゃないんすねー」ニヘラ 京太郎「部長、モモ、ゆみ先輩が区間1位だぜ。順当だよ」 智美「ワハハ、そんな褒めるなー」 佳織「智美ちゃんありがとう!」 睦月「モモも先輩たちも、やっぱり凄いですね」 智美「2人が踏ん張ってくれたからだぞー。……そろそろゆみちんが帰ってくるなー。ちゃんと迎えよう」 桃子「そうっすね! 盛大に出迎えるっす!」 ガチャ 京太郎「ゆみ先輩! おめでとうございます!!」 ゆみ「」ポー 京太郎「飲み物どうぞ……ってどうしたんですか?」 ゆみ「私たちは勝ったのか……?」ポー 京太郎「何いってんですか! ゆみ先輩なんて一度も振り込まずに圧勝したくせに!」 ゆみ「実感がない……京太郎くん、ちょっと後ろを向いてくれないか?」ポー 京太郎「? はい」クルッ ゆみ「ん……」ピト 京太郎「はい!?」ビクッ 桃子・智美・佳織・睦月「!?」 ゆみ(いつもの……いつもよりは速いか? でも聞き慣れた京太郎くんの鼓動だ……) ゆみ「……うん、ありがとう。ようやく現実に戻ってきた気分だ」 京太郎「」 ゆみ「京太郎くん?」 智美「……あー、現実に戻ってきたところ悪いんだけどなー?」 ゆみ「なっ、え!? なんでお前た……あ」 桃子「これは本気で私たちのこと忘れてたっぽいっすね……」 睦月「しゅ、集中力凄いですね」 佳織「凄い慣れててこっちが赤くなっちゃいました」 ゆみ「い、今のは、その……忘れてくれ……」カアァァ 智美「ちょっと難しいなー」ワハハ 桃子「というか今さら1個忘れたくらいじゃどうにもならないっすよ?」 ゆみ「なら今までの全部だっ!」 睦月「あ、自覚がないわけじゃないんですね」 佳織「私は無自覚って言われたましたけど、さすが加治木先輩ですね!」 ゆみ「うぅ……」シュン ゆみ「京太郎くん……」ジッ 京太郎「」 桃子「京太郎?」 京太郎「……はっ。一瞬意識が飛んでたぜ」 智美「いつから飛んだんだー?」 京太郎「その、ゆみ先輩が俺の背中に……」 ゆみ「……そこからは記憶にないんだな?」 京太郎「ええと、そうですね」 ゆみ「……ならまあ」 桃子「いいんすか!?」 智美「それくらいいつもやってるって感じだなー」 京太郎「よくやられてますけど、やっぱ心の準備してないと驚きますね」アハハ 佳織「よくやってるってほんとに慣れてたんだ……」 京太郎「ところで俺の意識が飛んでる間に何が」 ゆみ「いいから! ほら次の試合が始まるぞ!」 桃子「……今さら何が恥ずかしいんすかね」ヒソヒソ 智美「ほら、自覚があるって思われると恥ずかしいんじゃないか?」ヒソヒソ 睦月「なるほど」ヒソヒソ ゆみ「聞こえてるぞ!」 ゆみ「……どう思ってるかなんて自分でもよくわからない」ボソッ ゆみ(京太郎くんとまだ一緒にいたいと思うのは、蒲原たちと一緒にいたいと思うのと違うものなんだろうか……) 京太郎「佳織先輩、あっちで何か話して……」 佳織「い、いやあの……そ、それより私ちょっと喉が渇いたから飲み物が欲しいかな!?」 京太郎「あ、はい。どうぞ」 智美「2回戦はさっきより手強いなー」 桃子「さすがは1回戦を突破しただけあるなー」 京太郎「睦月先輩苦戦してる……休憩がほとんどないのは辛いですね」 ゆみ「確かに辛いがそれは相手も同じだ。裾花に天竜に高瀬川……やはり一筋縄では行かないな」 佳織「津山さん! 頑張って!」 ………… ……… …… … 睦月「すみません、もっと点数取って繋げたかったんですが……」 ゆみ「なに、相手はそれなりの強豪だ。その先鋒を相手にして2位と僅差の3位なら十分だよ」 睦月「2位の次は3位……このままだと次は4位に」ウゥ… 智美「相手は強くなっていくわけだしなー。でもエースを相手に踏ん張ってくれるってのはそれだけでありがたいんだぞ?」 桃子「そうっすよ。最終的にチームが勝てば問題なしっす!」 ゆみ「まあもちろん勝ってくれるのが一番だ。決勝は期待しているぞ」 睦月「……はい、切り替えます!」 佳織「わ、私も差を広げられないよう頑張ります!」 智美「そうだなー。まずは目の前の試合に勝たないと。期待してるぞー!」ワハハ 京太郎「佳織先輩、頑張ってください!」 佳織『よ、よろしくお願いします』ペッコリン 桃子「かおりん先輩は緊張が解けないっすねー」 智美「緊張というかあれはよくわからなくて戸惑ってるんじゃないかー?」 京太郎「起家ですか。配牌はよさそうですね」 ゆみ「ああ。……いや、よさそうというかこれはもしや」 睦月「ま、まさか……」 佳織「3つずつ、3つずつ……」 裾花次鋒「……その、ごめんなさい。速く切ってもらいたいんだけど……」 佳織「ご、ごめんなさい! ええと、これは……」 裾次(初心者の子なのかな。初心者がいて勝ち進むなんて要注意ね) 佳織「うーん? これはどうすればいいんだろう……?」 3人「?」 佳織「最初からでもいいのかな。ええと、ツモのみ、です。500オールかな?」 3人「なっ!!?」 佳織「えっ!? 間違ってました!?」ビクッ 天次「……最初から揃ってるときは天和って言って役満になるの。点数は……16000オール」 佳織「これも役満なんですか!? わあ……」 京太郎「さ、さすが佳織先輩……」 ゆみ「起家で天和とは……恐ろしい」 智美「やってくれるとは思ってたけどここまでやるとはなー」ワハハ 桃子「かおりん先輩カッコいいっす!」 睦月「妹尾さん凄いな……私も次こそは!」 佳織「ただい――」 智美「よくやったぞ佳織ー!」 京太郎「区間1位おめでとうございます!!」 佳織「あ、ありがとう。でも運がよかったよ」アハハ 桃子「開幕天和は凄まじかったっすねー」 ゆみ「相手も動揺したのかベタオリが多かったからな。妹尾の独特の捨て牌にも翻弄されたようだ」 睦月「実際その後も倍満とか上がってますからね。凄いなあ」 佳織「一回戦の分、取り返せてよかったです」エヘヘ 智美「私もこの流れを切らないようにしないとなー」ワハハ ゆみ「ああ、期待しているぞ」 京太郎「頑張ってください!」 智美「ワハハ、任せろー」 ………… ……… …… … 智美「ワハハ……」 京太郎「お、お疲れ様です」 智美「区間4位とはなー……」 ゆみ「まあそういうこともあるのが麻雀だ。気にするな」 睦月「そうですよ! 配牌は悪かったですけど、悪い打ち方した訳じゃないですし」 桃子「私とゆみ先輩が取り返すから問題ないっすよ!」 佳織「総合順位はまだ3位だし大丈夫だよ」 智美「……そうだなー。これからは応援頑張るぞー!」 桃子「頼んだっすよー! それじゃサクッと逆転してくるっす!」 京太郎「おいおい、そんな甘く見てて大丈夫か?」 桃子「大丈夫っす。言葉の綾っすよ。まあ私が1位にしてくるのは本当っすけどね!」 ゆみ「最悪私で逆転するつもりだが、頼んだぞ」 桃子「任されたっす!」 桃子(さて、ああは言ったけど裾花も天竜も強敵っすね。中々振り込みそうにないっす) 桃子(序盤はおとなしくして終盤勝負っすね。我慢比べになりそうっす) 裾副(配牌はいい、今日は好調ね。リードを守るなんて考えるよりこのまま差を広げましょう) 天副(裾花やっぱり強い……! ここでなんとか巻き返さないと) 高副(4位だけど諦めるわけにはいかない! 全員捲ってやるわ!) 京太郎「硬直してますね……」 ゆみ「実力はモモのほうが上だと思うが……相手も強豪校でレギュラーを取っている選手だ。中々上手くはいかないな」 睦月「まだ消えられてないみたいですね。打牌が慎重です」 智美「冷静に考えると消えられてないって凄いこと言ってるよなー」 佳織「応援頑張るって言ったのはどうしたの!?」 桃子(……消えられたみたいっすね。南2局までかかるなんてやっぱりこの人達強いっす) 桃子(まあゆみ先輩ほどじゃないっすけどね!) 裾副「立直」 桃子(立直っすか。あの捨て牌は……。ちょうどいいっすね。反撃開始っすよ!) 裾副(今日は絶好調! 二-四-五-七待ちならすぐ上がれそうね) 桃子「」タン 天副「」タン 高副「」タン …… … 高副「うー」タン 裾副「ロン! 裏ドラは……」 桃子「ちょっと待った! ダメっすよ。捨て牌はちゃんと見ないと」 裾副「は? 何言って……っ!!?」 天副「え!?」 高副「なっ!?」 裾副「ちょ、ちょっと! すり替えたりしてないわよね!?」 桃子「審判がいてカメラで撮影されてるのに出来るわけないじゃないっすか」 裾副「そんな、見落としてたなんて……」 桃子「ともかくチョンボっすから罰符っすよ」 裾副「くっ……」 京太郎「いやーほんとえげつないなあ」 ゆみ「あれに関しては回避しようがないからな。ロン上がりを放棄するか運に任せるしかない」 智美「私は事故みたいなものだと思って無視してたなー。罰符を何度払ったか数えてないけど」ワハハ 京太郎「俺も何度あれにやられたことか……」 睦月「わかっててもショックだよね。上がれると思ったのに罰符を払うことになるなんて」 ゆみ「ああ、そして相手はモモのステルスを知らない。受ける衝撃も数段上だろう」 京太郎「見るからに落ち込んでますね。気持ちわかるなあ」 佳織「私は何故か桃子さんのステルスで罰符払ったことないんですよね。なんででしょう?」 京太郎「……佳織先輩だからですよ」ニコッ 佳織「な、なんか喜べないな……」 桃子「宣言通り1位になってきたっすよー!」 京太郎「すげえぞモモ!」 ゆみ「よくやった」 桃子「私にかかればこんなもんっすよ!」ドヤッ 智美「ワハハー、生意気だなー」ウリウリ 桃子「ちょ、ちょっと部長!」 智美「凄いぞモモー」ワハハ 桃子「わかったからやめて欲しいっすー!」 智美「……ありがとなー」 桃子「……チームなんだから当然じゃないっすか」 佳織「これで1位ということは……」 睦月「後ちょっとで決勝……!」 京太郎「ゆみ先輩、頑張ってください」 ゆみ「みんながここまで繋いでくれたんだ。必ず守り切るさ」 智美「飛ばしてしまっても構わないんだぞー?」 ゆみ「無理をする必要がどこにある……行ってくる」 桃子「頼んだっす!」 ………… ……… …… … 京太郎「決勝進出だー!!」 桃子「なんで私たちより喜んでるんっすかー!?」ニヘラ 京太郎「お前も十分喜んでるだろ!」ニヘラ 智美「まさかここまで来れるとはなー」ワハハ 睦月「2回戦に行けただけで嬉しかったのに、まさか決勝に行けるなんて……」 佳織「私も凄い嬉しくて……」グスッ 智美「こらこら、泣くのはまだ早いぞ」 佳織「なんか気が抜けちゃって……」 ゆみ「気を抜くのはまだ早い。明日は決勝だぞ」 京太郎「ゆみ先輩! おかえりなさい、おめでとうございます!!」 ゆみ「ありがとう……だがみんな、明日はもっとキツイ試合になる。喜ぶのはいいが疲れは残さないようにな」 京太郎・智美・桃子・睦月・佳織「……」 ゆみ「な、なんだ?」 智美「……一回戦の後何したか忘れたのかー?」 ゆみ「うっ」 桃子「棚に上げるってレベルじゃないっすよね」 ゆみ「よ、喜んでいたわけじゃないしいいじゃないか!」 智美「浮かれっぷりは飛び抜けてたと思うぞ?」 桃子「周りが目に入ってないってああいう事をいうんすねー」 ゆみ「なんで私はあんなことを……!」 京太郎「ま、まあまあ。ゆみ先輩が言ってることは正しいじゃないですか」 佳織「確かにそうだね。そっか、明日で決まるんだね……」 睦月「明日で最後にしたくないね……ここまで来たら全国に行きたい」 桃子「後1勝だけっすしね。負けたくないっす」 ゆみ「ああ、私もだ。明日も早いし今日は帰ってゆっくり休もう」 智美「そうだなー。私たちの家は遠いし帰るかー。明日は頑張るぞー!」 一同「おおー!」 ――帰り道―― 京太郎「ゆみ先輩、今日はお疲れ様でした。カッコ良かったですよ」 ゆみ「ああ、ありがとう。だが明日の相手は正直言ってレベルが違うからな……」 京太郎「龍門渕と風越と……清澄ですね」 ゆみ「そうだな。天江衣は牌譜を見てもわけがわからない」 ゆみ「素人のような打ち筋だが全てが勝ちに繋がっている。実際に打ってみるまで対抗手段は思いつかないだろうな」 ゆみ「池田華菜は火力が凄まじい。9割近く満貫以上で上がっているんじゃないかあれは。あのツモ運は素直に羨ましいよ」 京太郎「咲はどうですか?」 ゆみ「ううん、今年からの出場でデータがないからな。牌譜がないとなんとも……」 京太郎「あ、それならこれをどうぞ」バサッ ゆみ「これは……!」 京太郎「清澄と龍門渕と風越の今年の牌譜です。一応注釈も付けてます。応援で待ってる間に作ってみました」 京太郎「応援だけしか出来ませんでしたから、出来る範囲で役に立ちたくて。まあゆみ先輩ほど上手く注釈出来てないですけど」アハハ ゆみ「いや、あるとないとでは大違いだよ。ありがとう京太郎くん」 ゆみ「ふむ……」ペラリ 京太郎「どうですか?」 ゆみ「軽く宮永のを見たが、1回戦で4万点以上残している相手を飛ばしているのか……さすがというべきだろうか」 ゆみ「打ち方に関しては正直よくわからない。無駄があるように見えるがきっちり勝っている。何にせよ要注意だな」 京太郎「やっぱり強いんですねあいつ……全然そんな感じしないのに」 ゆみ「見た目と麻雀は関係ないが、随分と女の子らしい女の子だったな」 京太郎「女の子らしい女の子って……まああいつがダメなのは中身ですから見た目じゃわからないですね」 ゆみ「そんなふうには見えなかったが……」 京太郎「まず会場入ってすぐ迷子になってる時点で察してください。昔からああなんですよ」 ゆみ「そうか……やっぱり仲がいいんだな」 京太郎「まあそうですね。あんなんですけどいいやつだからほっとけないです」 ゆみ「……」 京太郎「あ、もちろん明日は鶴賀を応援しますよ! 今の俺にはゆみ先輩が1番です! 咲なんかやっつけちゃってください!」 ゆみ「……信じるぞ? その言葉」 京太郎「もちろんです……っていうかわざわざ念を押すほど信用ないですか!?」 ゆみ「ん……そうだな。今日のナンパの一件で君の信用はガタ落ちした」フフッ 京太郎「だから誤解……それ咲じゃないですか!?」 ゆみ「幼馴染を見つけて助けようとするのはいいが、それならもっとちゃんと伝えろ」 京太郎「うっ……すみません」 ゆみ「わかればいい……明日は応援頼んだぞ。ちゃんと私にするように」 京太郎「はい!!」 ゆみ「……絶対だぞ」 ――控え室―― ゆみ「ついに決勝戦だな」 智美「そうだなー。泣いても笑っても今日が最後だー」ワハハ 睦月「2日目にもなると緊張もほぐれてきますね」 佳織「あれ? さっきから右手と右足一緒に出してるから緊張してるのかと思ってたよ」 睦月「……自分に言い聞かせてたんだ」 佳織「ご、ごめんなさい!」 桃子「緊張感のない会話っすねー」 京太郎「これなら今日は大丈夫そうですね」 睦月「まあ昨日の初戦よりは緊張してないと思う。ただ今日は相手が……」 京太郎「風越の先鋒、強かったですね」 桃子「龍門渕の先鋒も10万点飛ばすとかわけわかんないことやってたっすねー」 睦月「うん、私でどこまで離されずにいられるか……」 智美「ダメだぞー初めからそんなんじゃ」 ゆみ「蒲原の言うとおりだぞ。初めからそういう意識では守りに入ってしまう。そこを狙われると最悪だし、それが出来る相手だ」 桃子「そうっすよ。むっちゃん先輩は堅実なとこがウリで元々攻撃的じゃないんすから」 桃子「最初から守りに入ったら上がれなくなっちゃうっすよ」 睦月「でも……」 京太郎「俺が言うのも何ですけど、1人が調子悪くても周りのみんなでフォローするのが団体戦じゃないですか!」 ゆみ「津山を先鋒に置いたのは私なんだから、自分の好きに打ってこい。後のことは任せろ」 ピンポンパンポーン 「決勝戦が始まります。各校先鋒の選手は対局室へ集合してください」 智美「ちょうど始まるみたいだなー」ワハハ 佳織「津山さん、頑張って!」 桃子「期待してるっすよー!」 睦月「……うむ、精一杯やってくる」 京太郎「決勝はルール変わるんでしたっけ?」 ゆみ「ああ、半荘が2回になる。長丁場になるから逆転の可能性は増えるな。逆もしかりだが」 智美「麻雀は運に左右されるから、2回にして実力を発揮してもらおうってことなんだろうなー」 桃子「まあ2回じゃまだまだ運が大きいと思うっすけどね」 ゆみ「1回じゃ味気ないというのも理由なのかもしれないな……さあ、始まるぞ」 京太郎「清澄と龍門渕の配牌がいいですね」 ゆみ「ウチと風越は我慢の展開だな。なんとか耐えて欲しいが……」 桃子「ああ、なんで南を切るんすか!」 京太郎「生牌とはいえ聴牌だしなあ。俺も切りそうだ」 佳織「あそこにいると早く上がりたくなるよね」 ゆみ「オリの判断は難しいが、うーむ……」 智美「まあ今戦ってるのはむっきーだ。私たちは落ち着いて見守ろう」 京太郎「それにしても龍門渕の先鋒は変な鳴きしてますね」 智美「確かになー。それに鳴いたあと清澄のツモが悪くなってないか?」 ゆみ「ふむ、亜空間殺法の使い手なのかもしれないな」 京太郎「あく……なんですか?」 ゆみ「亜空間殺法だ……改めて言わせるな」カアァ ゆみ「コホン。亜空間殺法というのは、簡単に言えば鳴いてツモ順をずらして相手のいい流れを切ったり」 ゆみ「自分に運を引き寄せたりするものだ」 佳織「そんな上手くいくものなんですか?」 ゆみ「私には出来ないな。何か独自の感覚なり理論なりがあるんだろう」 京太郎「なるほど……清澄の先鋒も配牌もツモもいいのに後一歩で上がれてないですね」 ゆみ「あれを狙ってやっているとすると恐ろしいな。10万点飛ばしてのはさすがに運も絡むんだろうが……」 桃子「狙われてないのは幸いっすね。調子がいいほど狙われてるみたいっすからあんまり喜べないっすけど」 智美「清澄には悪いけどこのまま引きつけてて貰いたいなー」 智美「前半戦終了かー」 佳織「龍門渕がリードしてるね」 ゆみ「ああ、しかし風越も目立たなかったが堅実に稼いでいるな」 京太郎「あれ、ほんとですね。最初は調子良さそうじゃなかったのにいつの間に」 桃子「風越のキャプテンは伊達じゃないっすねー」 佳織「津山さん、ため息ついてる……」 ゆみ「先鋒という厳しい中でよくやってくれているんだが……しまったな。対局室の近くへ行っていればよかったか」 智美「直接声かけたほうがよかったかなー」 京太郎「後半戦始まりますね。睦月先輩なら大丈夫ですよ」 桃子「そうっすよ。部長とゆみ先輩にとっては守るべき後輩かもしれないっすけど、私たちにとっては頼れる先輩なんすから!」 ゆみ「……そうだな。一度先鋒を任せた私がうろたえていては津山に申し訳ないな」 智美「どっしり構えるかー」ワハハ 京太郎「はい、睦月先輩を信じましょう!」 ………… ……… …… … 睦月「ただいまー……」 京太郎「お疲れ様です」 睦月「うん……負けちゃった。次は4位なんて冗談で言ってたけどなあ」ハァ ゆみ「……確かに津山の満足な結果ではなかったと思うが、4位とは言っても2,3位とは僅差だ。よくやったよ」ポン 智美「そうだぞー。前半から5000点しか削られてないじゃないか。よく耐えてくれたなー」 桃子「そうっすよ! 前半よりずっとよくなったんすからもっと胸張るっす!」 佳織「あ、後は私たちに任せて」 睦月「妹尾さんまで……うん、ありがとう。後はよろしくね」 智美「佳織も言うようになったなー」 佳織「か、からかわないでよう」 ゆみ「1人浮きなら他の3校も風越を狙うだろうからかえってやりやすいが……妹尾は好きなように打ってこい」 佳織「私も風越をマークしたりしなくていいんですか?」 京太郎「……出来るんですか?」 佳織「……出来ないね」 ゆみ「慣れないことはしなくていい。そんなことをして持ち味を消す必要はないさ。点数調整は私たちの役目だ」 桃子「点数で負けてるのに飛ばすのだけは注意っすよ!」 佳織「そ、それはちょっと無理かな」 智美「ほらほら、話すのはそのくらいにして出陣だー」 佳織「お、押さないでぇー」 ゆみ「次鋒戦の開始だな」 京太郎「……全員メガネっ娘ですね」 ゆみ「言い方に何か違和感を感じるな」 京太郎「気のせいですよ……あれ、1人外しましたね」 桃子「あれで見えるんすかね?」 智美「伊達メガネだったりしてなー」ワハハ 睦月「オシャレしたいのかしたくないのかよくわからないですね」 ゆみ「まあ何か理由があるんだろう。さすがに意味もなく外しているとは思えん」 京太郎「メガネを外すと印象が変わって……」 ゆみ「何を考えている」ゴッ 京太郎「ヒィッ!?」 桃子「少しくらい懲りたらどうなんすか」ハァ 智美「風越がリーチしたなー」 睦月「清澄は堅実にオリてますね」 桃子「かおりん先輩は……あぁ中が」 智美「これは振り込むなー……やっぱり」 京太郎「佳織先輩度胸ありますよね」 ゆみ「それなりには教えているはずなんだが、中々難しいな」ハァ ゆみ「まあこれも含めて妹尾の打ち方だ。あれでも部内断トツビリというわけではないしな」 桃子「そうっすねー。かおりん先輩の調子がいいときは少しくらい削っても役満で一気に取り返されるっす」 智美「今回も出るといいなー」ワハハ 京太郎「……うおお、四暗刻聴牌」 睦月「あの配牌から四暗刻目指すのかぁ……」 智美「まあ本人には目指してるって意識はないと思うけどなー」 ゆみ「何にせよあの捨て牌はそれだけで脅威だな。清澄もオリたようだ」 桃子「私ならステルスでオリなくても平気っすけどね!」 京太郎「なんで対抗してるんだ……というか押したほうが点数的には有利じゃないか?」 ゆみ「結果論ではそうだが、長い目で見ればオリたほうが正解だろう。もちろんこの試合に限れば別だが」 京太郎「お、言ってる間に佳織先輩ツモりましたね。この舞台で役満か……」 ゆみ「スター性というか、何か持っているのだろうな」 智美「無理にでも麻雀部に入ってもらってよかったなー」 睦月「これで相手も攻め込みづらくなるといいですね」 京太郎「佳織先輩防御はからっきしですからねえ。早めにオリてくれるといいな」 ゆみ「いきなり中を切ってしまっているからな……難しいところだが慎重な相手なら可能性はあるか」 桃子「メガネキャラは慎重派って相場が決まってるっすよ!」 京太郎「いや佳織先輩がいきなり違うじゃねえか」 桃子「……何事にも例外はあるっす!」 ………… ……… …… … 智美「佳織ー! 大活躍だったなー!!」 佳織「あ、あれでよかったかな?」 ゆみ「十分すぎる。あの収支に不満などない」 京太郎「区間1位ですよ1位! 凄いですよ!」 桃子「麻雀は何があるかわからないっすね。凄いっす!」 ゆみ「麻雀は運ではないが、決勝でこの結果をだせるのは妹尾の力だろうな」 睦月「なんとか風越が射程内に入りましたね」 ゆみ「ああ、……蒲原!」 智美「ん?」 ゆみ「射程にはいった的を逃すな」 智美「撃ち落せばいいんだろー、風越を!」 京太郎「……あの、ゆみ先輩、智美部長」 ゆみ・智美「うん?」 桃子「……何もそんな死亡フラグ立てなくてもいいじゃないっすか」 ゆみ「な!? い、いやそんなつもりではなかったんだが……」 京太郎[言ってしまったものはしょうがないです。部長、フラグなんかに負けないでください」 智美「新しい応援だな……。まあ頑張ってくるぞー」ワハハ 京太郎「風越の中堅は1年生か。凄いなあ」 桃子「私も1年っすよ!」 京太郎「ウチは人数がいないだろ」 桃子「ぐぬぬ」 ゆみ「まあモモの実力なら風越でもレギュラーを取れるさ」 桃子「フフフ」ドヤァ 京太郎「腹立つわー」 睦月「何遊んでるの……ほら、始まるよ」 京太郎「おっとそうで……龍門渕のあれは手錠?」 佳織「ファッションなのかな?」 桃子「世の中には色んな人がいるんすね」 ゆみ「だから気を散らすなと」ハァ 睦月「あ、清澄が立直しましたね。でもなんで単騎に……?」 京太郎「⑧切りなら5門張ですよね? まあ他の手牌見る限り5門張でも上がれなさそうですけど……」 ゆみ「打牌を見る限り少なくとも一萬を引いたのは偶然だと思うが……」 桃子「和了る確率は間違いなく下がるっすけど、振り込んだときのダメージは大きいっすね」 京太郎「変な待ちだとオリるのも難しくなるしなあ」 睦月「手強いですね……」 ゆみ「蒲原はあれでオリるときはしっかりオリるからそうそう振り込まないとは思うが、やはり厳しそうだな」 桃子「清澄また和了ったっすね」 佳織「風越が2位になってウチが1位だね!」 京太郎「清澄が風越を撃ち落としてくれましたね」 ゆみ「あまり喜べないな……」 睦月「清澄強いですね。あんな待ちで和了れるなんて」 京太郎「狙われてるって感じではないですけど、風越がよく振り込んでますね」 佳織「智美ちゃんは全然振り込まないね」 ゆみ「風越が見かけによらず攻撃型のようだからな。蒲原は守備重視だしその辺りの差だろう」 桃子「後はそもそも当たり牌引いてないっすからね。悪待ちだから引く確率も少なくなるっすし」 京太郎「うわ、清澄またテンパッてる……」 睦月「今度は嵌張待ち……手なりでなったんだろうけどこれなら和了らないかも」 ゆみ「この流れだと厳しそうだが……うわ」 桃子「……凄いっすねあれは」 佳織「ツモった牌を指で弾いてその間に手牌を倒して、弾いた牌掴んで叩きつけて……練習してるのかな?」 京太郎「清澄も今年麻雀部出来たんですよ。中堅の部長の人は1年生のとき1人だったはずなんできっとその間に……」 睦月「冷静に考えるのはやめよう」 ………… ……… …… … 智美「」ワハハー 睦月「横並びですから! 気を落とさないでください!」 京太郎「風越に比べれば全然マシですよ!」 桃子「マシって言い方もどうなんすかね」 智美「リード守れなくてごめんなー……」 佳織「私も運がよかっただけだから」 ゆみ「まだまだ1位を狙える位置だ。後は私とモモでなんとかしよう」 智美「頼んだぞー」 睦月「お願いします!」 桃子「任せるっす! 半荘2回なんてまさに私のためにあるようなルールっすからね!」 京太郎「どういう意味だ?」 桃子「私のステルスは消えるのに時間がかかるんすよ」 京太郎「ああ、知ってるけど」 桃子「半荘が終わったくらいで私のステルス効果が消えることはない……この意味がわかるっすか?」 京太郎「」ゴクリ 桃子「つまり私は半荘1回丸々ステルス状態で戦えるんすよ!」 京太郎「な、なんだってー!」 ゆみ「出番直前だというのに余裕だな。いやまあいいんだが」ハァ 桃子「いやー今からじたばたしてもしょうがないっすからね。出来ることをやるだけっすよ」 智美「ステルスの使える時間が長くなるってのは単純に強いからなー。期待してるぞ」 京太郎「消える前に点数削られないようにな」 桃子「消える前に削るのは散々ゆみ先輩にやられたっすね」 睦月「見てて怖くなるくらい狙われてたね」 ゆみ「し、仕方ないだろう!?」 桃子「わかってるっすよ。おかげで素の実力も上がったっす!」 佳織「頑張ってください、桃子さん!」 桃子「かおりん先輩に負けないくらい稼いでくるっすよ!」 睦月「副将は原村和が出るんですよね。インターミドルチャンプかあ」 ゆみ「決勝で清澄が注目されている理由の1つだな」 京太郎「鶴賀は全然注目されてませんね」 智美「運でたまたま勝ち上がってきたって思われてるんだろうなー」 佳織「……何も言い返せないなあ」 ゆみ「……運も実力のうちだ」 佳織「フォローされてない!?」 京太郎「それで勝ち上がったんですからむしろ凄いですよ」 睦月「無名のまま勝てたらカッコいいよね」 ゆみ「そうだな。最後まで注目されずに勝つというのも面白い」 京太郎「とりあえずはモモ次第ですね。応援しましょう」 京太郎「あれはペンギン……?」 ゆみ「エトピリカになりたかったペンギン、略してエトペンだな」 佳織「可愛いですねー」 智美「ゆみちん詳しいなー」ワハハ ゆみ「た、たまたま知っていただけだ」 智美「恥ずかしがらなくてもいいだろー」 京太郎「でも人前でペンギンを抱えたまま麻雀なんてよく出来ますね」 ゆみ「彼女なりの集中方法なのだろう」 智美「清澄は先鋒から副将までみんなキャラ濃いなー」 京太郎「東場のタコス、メガネを取るメガネっ娘、牌投げ悪待ち、ペンギン抱っこ……確かに」 智美「ウチは佳織くらいかな。モモも対戦相手には強いけど目立てはしないしなー」 佳織「そんなことないと思うけど……」 睦月「私も何かしたほうがよかったのかな」 京太郎「いや清澄以外は普通にしてますから!」 ゆみ「キャラが薄くても別に構わないだろう。試合に勝てればいいんだ」 ゆみ「……それに注目されたら普段通り打てなくなりそうだ。目立つのには慣れていない」ボソッ 智美「1年生の教室で大声で勧誘したのは誰だったかなー」ワハハ ゆみ「だからこそだ!!」カアァァ 京太郎(可愛い) 睦月「あんまり動きがないね」 京太郎「みんな固い打ち手みたいですね」 ゆみ「こういう打ち手にモモのステルスは効果的だろうな」 京太郎「高い手を作るタイプじゃなさそうですから、消えるまでに削られるのも大丈夫っぽいですね」 佳織「でもみんな参考になりますねー。なんでそう切ってるのか全然わからないや」 京太郎「佳織先輩はあんまりとらわれないほうがいいと思います」 ゆみ「いや、技術が身についても今の運のままでいられるかもしれない」 京太郎「なるほど……」 佳織「な、なんか扱いがおかしいような……」 智美「気にするなー。お、モモが上がったぞー」 京太郎「龍門渕の副将驚いてますね!」 ゆみ「ふむ、消えたようだな」 睦月「裾花のときもですけど、今回は更に時間かかりましたね」 佳織「最終局でようやくだね」 智美「ここからはモモの独壇場だなー」 京太郎「お、早速龍門渕が振り込んだ!」 睦月「ドラとはいえモモが見えていなければ切りますね」 ゆみ「ここからは安心して見ていられそうだな」 智美「このまま飛ばしてくれればいいんだけどなー」ワハハ 京太郎「そうなればいいですね……ん?」 睦月「清澄がツモらな……!?」 智美「ス、ステルスモードのモモが」 ゆみ「振り込んだだと!?」 佳織「消えられてなかったんでしょうか……?」 ゆみ「いや、少なくとも龍門渕は明らかに不自然な振り込みをしていた」 京太郎「となると原村にはモモが見えてるってことですか……?」 ゆみ「そう考えるのが自然だが……まいったな」 智美「明らかにモモの天敵だなー」 ゆみ「ああ、私のオーダーミスだ。副将に置くべきではなかった」 京太郎「仕方ないですよ。モモが見える相手がいるなんてわかりませんし」 京太郎「わかったところで副将になるかどうかなんて完全に運じゃないですか」 佳織「原村さんに見えてても他の人には見えてないみたいですし、まだまだ有利ですよ」 智美「それに普通の麻雀でもモモは十分強いだろー?」 睦月「そうですよ。元々ネト麻見て勧誘したんじゃないですか」 ゆみ「……そうだな。これで落胆してはモモにも失礼だ。モモを信じよう」 ………… ……… …… … 桃子「いやー参ったっす。どーにも清澄だけ抜くことが出来ませんでした」 京太郎「原村には見えてたみたいだな」 桃子「あんな相手がいるんすね。自信無くしたっすよ」 ゆみ「何を言う。獲得点数を見れば誰が活躍したか一目瞭然だ」 ゆみ「去年トップの2校と原村和を相手に1番点を稼いだんだ。お前が一番だよモモ」 桃子「先輩――」 智美「そうそう、佳織ほど稼いではないけど1位なんだから胸を張っていいぞー」 桃子「最後にそういうこと言うんじゃないっす!!」 智美「褒めてるんだぞ!?」 桃子「どこがっすか!?」 智美「胸を張っていいって言ってるじゃないかー!」 桃子「最初を言わなくてもいいじゃないっすか!」 京太郎「あの2人はほっといて」 佳織「いいのかな……」 京太郎「いいんですよ。……ゆみ先輩、こんなことしか言えませんけど、頑張ってください」 ゆみ「……月並みだな」フフッ 京太郎「う……なんかカッコいいこと言えればよかったんですけど……」 ゆみ「いや、嬉しいよ。……うん、凄く嬉しい」 ゆみ「昨日言ったが、かっこ良くなくても気の利いた台詞じゃなくても、私を応援していてくれればそれでいい」 京太郎「それなら任せてください。ちゃんと対局室に聞こえるくらいの応援しますから」 ゆみ「それは恥ずかしいからやめてくれ」 京太郎「注文が多いですね」 ゆみ「君が無駄な条件を付けるからだ……それじゃ行ってくる」 京太郎「はい、優勝を決めるところを楽しみにしてます」 ゆみ「ああ、期待していてくれ」テクテク --------------------------------------- ゆみ(決勝の対局室は随分と広いな。……広くする意味はあるのだろうか) ゆみ(1人先に来ているな……あれは宮永か) ゆみ「よろしく。決勝で会うことになるとはな」 咲「あ、はい。よろしくお願いします。えっと……昨日はすみませんでした」 ゆみ「京太郎くんがやったことだよ。気にしないでくれ……まあどうしても気になるなら、お手柔らかにしてくれると助かる」フフッ 咲「そ、それはちょっと」アセアセ ゆみ「すまない、冗談だ。君の話は京太郎くんから話を聞いていて一度戦ってみたかったんだ」 咲「きょ、京ちゃんはなんて言ってたんですか……?」 ゆみ「ふむ……宮永照を手玉に取っていたというようなことを聞いたよ」クスッ 咲「京ちゃんやっぱり……! う、嘘ですからね?」 咲「もっとずっと小さい頃で、お姉ちゃんが邪魔しなかったからなんとかですよ!?」アセアセ ゆみ「……そこまでは事実なのか」 咲「あぅ……」 ゆみ「……こんなことはあまり話しても仕方がないか。すまない、試合前に話すことではなかったな」 咲「い、いえ、悪いのは京ちゃんですから。もう……」 ゆみ(……やはり仲がいいのだろうな。きっと私よりも……) 咲「? どうかしましたか?」 ゆみ「いや、何でもない。お互い全力を尽くそう」 咲「はい!」 --------------------------------------- 京太郎「あ、天江衣ってあんな小さい子供みたいな人だったんですか!?」 智美「京太郎達の1つ上だぞー」ワハハ 桃子「あの可愛い見た目で全国トップクラスの打ち手っすか。見た目は当てにならないっすねー」 佳織「あ、加治木先輩が早速立直ですね!」 京太郎「おお、幸先いいですね!」 桃子「そうっすねー……え? 清澄カンっすか?」 睦月「ウチとしてはありがた……!?」 智美「嶺上開花!?」 佳織「これって珍しいことでしたよね?」 桃子「ほとんどないって言っていいんじゃないっすかね……運が悪かったっすよ」 京太郎「……そういえば昨日の1,2回戦の牌譜でも嶺上開花で和了ってたような」 睦月「ぐ、偶然かな?」 京太郎「そうだといいですけど……」 睦月「2度目の嶺上開花……」 京太郎「咲がこんなこと出来たなんて……」 桃子「まあ幼馴染だからって知らないことくらいあるっすよ。ゆみ先輩ならどうにかしてくれるっす」 智美「そうだなー。ゆみちんならどうにかするだろー」ワハハ 京太郎「そう、ですね。応援するって約束しましたし」 佳織「あ、早速聴牌しましたよ!」 睦月「え? 南切り?」 智美「これはまさか宮永を狙ってるのかー……?」 京太郎「うわっ! 槍槓決まった!?」 桃子「先輩最高っすー!!」 ……… …… … 智美「一時は風越が0点にされてどうしようかと思ったけど……」 智美「風越が役満和了ったりゆみちんが天江から直撃取ったり、まだまだわからないなー」ワハハ 睦月「そうですね、まだまだこれから……!?」 桃子「ぬ、脱いでもいいですかって!?」 京太郎「あ、ああ靴か……最初からそういえよ!」 佳織「でもなんで急に脱ぎだしたんでしょう?」 桃子「おっぱいさんのぬいぐるみと一緒で集中方法の一つなんじゃないっすかね?」 智美「それでもなんで今までやらなかったのかわからないなー。京太郎は何か知ってるか?」 京太郎「いえ、俺も全然……」 睦月「力を抑えていたとかだったりは……」 智美「そ、それは笑えないなー」 京太郎「そんなこと出来るやつじゃないと思いますけど……あ! あいつただ単に脱ぐの忘れてたのかも……」 桃子「わ、忘れる? そんなことあるんすか?」 京太郎「咲ならありえる」 桃子「麻雀からは想像つかないっすねー……」 桃子「……終わったっすね」 京太郎「国士無双一向聴……後1巡あれば……!」 智美「ゆみちんが山を見なかったんだ。そういう後悔はしたらダメだぞー」 佳織「悔しいね……」グスッ 睦月「うむ……出れただけで嬉しかったけど、それでも……」 桃子「私がおっぱいさんに見つからないくらいちゃんと消えていれば……」 京太郎「いや、それは無理なんじゃ……」 桃子「それくらいの気持ちってことっす」 智美「みんな全力は尽くしてたし運も向いてたと思うぞー。これで届かなかったんだからしょうがないさー」ワハハ 智美「私たちは長野県3位になったんだ。風越より上だぞー? 胸を張って帰ろう」 一同「……はい!」 桃子「ゆみ先輩まだ帰って来ないっすね」 京太郎「……部長、その、俺……」 智美「ゆみちんのところかー? 迎えに行ってやれー」ワハハ 京太郎「はい!」タッタッタッ ――階段際ベンチ―― 京太郎「ゆみ先輩、お疲れ様でした」 ゆみ「京太郎くん……」 京太郎「……横、座りますね」 ゆみ「ああ……」 京太郎「……」 ゆみ「……今は、悔しいというより残念な気分だ。私はあの場で終わらない祭りを楽しみたかったんだ……」 ゆみ「そして行きたかった。みんなで全国に――」 京太郎「ゆみ先輩……」 ゆみ「……そうか、私は勝ちたいというより、ただ部のみんなと、君ともっと長くいたいとしか思っていなかったんだな」 京太郎「それは勝つ理由になるじゃないですか」 ゆみ「1つの理由になるかもしれないが、麻雀部でなくともいくらでも会えるだろう? 少なくとも君の幼馴染ほど強い理由ではないさ」 ゆみ「神様がいるなら強い思いの方に微笑むはずだ」 ゆみ「私は勝ちたいという意志が足りなかったのだろう。だからきっと肝心な場面で勝ちきれ――」 京太郎「……俺は、嫌です」 ゆみ「うん?」 京太郎「ゆみ先輩が引退して、麻雀部で会える時間が減るなんて、俺は嫌です!」 ゆみ「……私も引退したいわけではないが、いずれ引退するのは分かっていただろう?」 京太郎「それはそれです! 今引退しなくてもいいじゃないですか!」 京太郎「それに、みんなで全国は無理になったかもしれないですけど、個人戦があるじゃないですか!」 ゆみ「個人戦か……負けに行くつもりはないが、しかし今日の試合を見ていただろう? 私が勝ち抜けると思うか?」 京太郎「もちろんです!」 ゆみ「……清澄の原村は今日も十分活躍したが、長期戦でこそ輝くのが彼女だ」 ゆみ「間違いなく上位に食い込むだろう。中堅の竹井も強かった」 ゆみ「天江は出ないにしろ龍門渕は全員全国クラスの打ち手だし、風越の福路はおそらく長野で天江に次ぐ実力者だ」 ゆみ「そしてその天江に打ち勝った宮永……この面々が相手にいるんだぞ?」 京太郎「ゆみ先輩なら勝てるって信じてます」 ゆみ「しかし……」 京太郎「でももしゆみ先輩に自信がないなら、俺がなんとかします」 ゆみ「え?」 京太郎「俺が全国に行きますよ。そうすれば俺の全国が終わるまで、ゆみ先輩は麻雀部にいてくれますよね」 ゆみ「それはそうだが、しかし全国なんて……前に今年は目指さないとも言っていたじゃないか」 京太郎「あのときはあのとき、今は今です。……ゆみ先輩が全国に行けないと思うなら、俺が行くしかないじゃないですか」 ゆみ「……なんでそこまで私と一緒にいたいと思うんだ?」 京太郎「……俺はゆみ先輩が」 ゆみ「っ」ドキッ 京太郎「あなたのことが……」 ゆみ「……」ドキドキ 京太郎「…………俺はあなたが欲しい!!」 ゆみ「!?」 京太郎「俺はあなたと一緒にいたいんです! 少しでも、一秒でも長く!!」 ゆみ「」 京太郎「だから俺は……あれ、ゆみ先輩?」 ゆみ「」 京太郎「……そこまで嫌でした?」ガクッ ゆみ「違う!! 君は! なんでよりにもよってそれを言うんだ!?」 京太郎「告白するときは俺がゆみ先輩と出会うきっかけになったこの台詞しかないかと思って……」 京太郎「場所はあれですけどまあいいかなーと」アハハ ゆみ「そういうことじゃない!! ああ、もう……」ブンブン ゆみ「……そ、そうだ。返事は、だな」カアァァ 京太郎「そ、それはまだいいです」 ゆみ「……は?」 京太郎「俺が全国に行けたらゆみ先輩の返事を聞く資格が持てると思うんです。だからそのときに返事をください」 ゆみ「いや待て。何を意味のわからないことを……」 京太郎「と、とにかく今日は先帰ります。荷物は持って帰るんで明日またー!」ダダダダ ゆみ「ちょ、ちょっと待て! ……あのバカ」ガクッ 智美「いやーあれは酷いなー」ワハハ ゆみ「か、蒲原!? いつからいたんだ!?」 桃子「私たちもいるっすよー。個人戦の話してる辺りからいたっす!」 佳織「ど、どうも」 睦月「まさかあんな話になるとは……」 ゆみ「」 睦月「それで返事はどうするんでしょう」ワクワク ゆみ「……しようとしたらいなくなっただろう」カアァァ 桃子「全国行くなんて無茶苦茶な条件つけて何考えてるんすかね」 智美「ゆみちんどうするつもりなんだー?」 ゆみ「……まあ京太郎くんがああいうことをしてきたんだしな。私にも考えがある」 桃子「この状態でもすぐ対応するのはさすが先輩っすねー」 ゆみ「この状態……?」 桃子「さっきから顔真っ赤っすよ」 ゆみ「っ!?」バッ 睦月「今更隠さなくてもいいじゃないですか」クスッ 智美「ゆみちんは可愛いなー」 ゆみ「あぅ……」カアァァ 智美「それじゃゆみちんからかうのも程々にして帰るかー」ワハハ 佳織「明日の個人戦も頑張ろうね」 睦月「加治木先輩、全国行ってくださいね」 桃子「私も狙うっすよ! 2人で行くっす!」 ゆみ「ああ、目指すよ。だから少し先に行っていてくれ……」カアァァ 桃子「了解っすー」パタパタ 智美「ゆみちん、意気込みはどんな感じだー?」 ゆみ「そうだな……一緒にいたいと思うことがダメなんじゃない。一緒にいたいと思う強さが足りなかったんだというところだな」 智美「何の話だー?」 ゆみ「精神論だよ。気の持ちようだ。……明日は必ず勝つ」ゴッ 智美「……燃え尽きてないかと思ったけど心配はいらなそうだなー。じゃあ帰るかー」 ゆみ「ああ」 --------------------------------------- 和「こんなところであんな告白するなんて破廉恥です!」カアァァ 優希「台詞も凄かったなー。周りがざわついてるじぇ」 咲「……」 優希「でも私は嫌いじゃないな。あれくらい情熱的に告白されたらグラッとくるじぇ」 和「ゆーき、またそんな……」 優希「のどちゃんは嫌か」 和「嫌ですよ! ……まあ気になっている相手からなら、嬉しくないかというとそんなこともないでしょうけど……」 優希「のどちゃんも好きだなー」 和「違います! ……宮永さん? どうかしました?」 咲「えっ!? ううん、何でもないよ? 京ちゃんバカだよね。あんなところで告白なんて……しかもあなたが欲しい!! って」 咲「あんな、あんな恥ずかしい台詞をこんなに人の多い所で言えるくらいあの人のことが好きなのかな」 咲「でもいくら好きだからってこんなとこで……」 和「……」 優希「……」 咲「ほら、2人とも何か言ってあげてよ。京ちゃんからかうのに使いたいんだ」 咲「……あ、話したことないから言いづらいよね! 大丈夫、名前出したりしないから――」 優希「咲ちゃん」 咲「え?」 優希「目の下、触ってみて」 咲「なんで急に……あれ、なんだろこれ。なんで濡れてるんだろ」ポロポロ 和「宮永さん、いいんですよ。優勝しておめでたいときですけど、辛かったら泣いていいんです」ギュッ 咲「……う、うわあっぁっぁぁぁぁあ!!」 咲「京ちゃん、私のことずっと気にかけてくれてて、優しくて、私が中々友達作れなかったときも……」 咲「えぐっ、京ちゃんが助けてくれたの!!」ヒック 咲「違う高校に行ってからも毎日メールしてくれて、私の愚痴とか聞いてくれて、相談に乗ってくれて……!」 咲「ずっと、ずっと京ちゃんのこと大切な幼馴染だって思ってて……!」 京太郎「えぐっ、それだけだと思ってたのに、告白してるとこなんて見ちゃった……」エグッ 和「宮永さん……」ポンポン 咲「京ちゃんが私のそばからいなくなっちゃうんだって思ったら、胸が痛いんだ。 ……なんで気づかなかったのかな」グスッ 咲「私、こんなに京ちゃんのこと好きだったんだ……今更気付いても、もう遅いのに」ヒック 優希「近すぎて気づかないってこともあるじぇ……慰めにもならないけど」ナデナデ 咲「うん……」ヒック 和「気の済むまで泣いていていいですよ。落ち着くまで待っていますから」ポンポン 咲「原村さん、ありがとう……もう少しだけお願い。ちゃんと落ち着くから……」 咲「うあぁぁっぁ……、うわああぁぁぁっぁあぁん……!! うわあぁぁっぁぁぁ――」 ………… ……… …… … ――京太郎自室―― 京太郎「明日はついに俺も試合に出るのか……緊張するな」 京太郎「あ、そうだ咲にメール送ってなかった。こういうときはいつもあいつから来るのに珍しいな」 京太郎『今日はおめでとう、咲ってあんなに強かったんだな。知らなかった。全国では俺たちの分も頑張ってこいよ』 京太郎『それと明日の個人戦は俺も出るから応援頼んだぞ! 咲のことも先輩たちの次に応援してやるから!(笑)』 京太郎「こんなもんでいいか。送信っと」 ――2時間後―― 京太郎「……返信来ないな。珍しいってかこんなことなかったのに」 京太郎「勝ったからって気を使ってんのかな。んなこと気にするなよなあ。まあ優しいのは咲のいいとこだけど」 京太郎『勝ったからって気を使ってんのか? もし気を使ってんならそんなこと全然気にしなくていいぞ』 京太郎『明日はお互い頑張ろうな。お前みたいに俺も全国行ってやるぜ!!』 京太郎「……返信は来ないだろうな。明日もあるしもう寝よう」 京太郎「しかしゆみ先輩に言ったこと我ながら支離滅裂だったな……まあ勝てば問題ないんだけどなあ」ハァ 京太郎「ゆみ先輩、俺頑張ります……!」
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草案 リトルスノー ザマゼンダ:杉崎桃子 ケッキング:朝比奈元春 イノムー:柳主税 某ジムリーダーの名前から 杉崎家 ハハコモリ:桃子の母 ザシアン:藤堂香織 桃子の姉なので チェリム:藤堂櫻子 名前から ラッタ:藤堂大和 某ロケット団員の名前から その他 ユキメノコ:朝比奈小雪 ユキワラシ:朝比奈小春 -- (ユリス) 2020-05-17 19 11 59