約 199,198 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2779.html
いち早く仕掛けたウルカヌスは、ボルカノハンマーの直接殴打を狙ってきた。上段の一撃をオニクスは下がってかわし、更なる払いを、彼は飛んでかわした。 そして前に飛びウルカヌスの頭上を取ると、一気に蛇槌の量子ビームを撃ち込んだ。そして華麗に一回転してウルカヌスの背後に着地するオニクス。 ウルカヌスはダメージをものともせずに振り向くと、ボルカノハンマーを一気に放った。 それを冷静に亀甲盾でオニクスは防御すると、さらに量子ビームを放ったが、それをウルカヌスは左右にステップを踏むように、ブーストで動きを制御してかわした。 ウルカヌスは距離を取りつつさらにボルカノハンマーを放つが、その弾丸も、亀甲盾によりかき消される。 上空に上がったウルカヌスに対し、オニクスはBPWの光弾で追撃するが、華麗なダンサーのようなウルカヌスの機動に、BPWは命中しない。 その間を縫って繰り出されるボルカノハンマーをかわしつつ、オニクスもまた空中へと上がり、土俵は空中に変わった。 「ケッ、空中に出たな、馬鹿」 ウルカヌスはさらに高く飛び、太陽を背にしてボルカノハンマーを放った。容赦ない太陽の光に、オニクスは一瞬眼を覆ってしまう。だがその瞬間に弾丸が飛来、オニクスを叩き落とした。 地面に叩き付けられるオニクスの頭上にウルカヌスはいち早く移動し、ボルカノハンマーを振り上げる。防御しようと亀甲盾を繰り出したオニクスだったが、エフェクトの展開よりも先に、振り上げたハンマーが盾を叩き落とした。 「厄介な小細工はこれで出来ないなぁ!?」 「まだっ!」 悪あがきとばかりに思い切りウルカヌスの腹を蹴飛ばすオニクス。ウルカヌスは空中で姿勢を制御し、追撃に飛来した量子レーザーを回避する。 代わりにウルカヌスはフライトユニットからレーザーを放ち、亀甲盾を失い、姿勢も制御出来ていないオニクスを攻撃した。鉄の焼けるにおいがする。 「おおおおっ!!」 オニクスは地を転がりレーザーをかわす。二射目は外れ、ようやく体制を立て直したオニクスは蛇槌を構え直し、逆の先端をウルカヌスに向けた。 瞬間に蛇槌の先端は変形し、鞭となってウルカヌスを捕らえる。そして鞭を伝って強烈な電流が、ウルカヌスに流れた。悶えるウルカヌス。 「っああああああっ!!そんな攻撃でっ…俺がああっ!!」 「これからだ」 オニクスが蛇槌を引っ張ると、それに釣られてウルカヌスが引き寄せられる。 ウルカヌスは自らの意思でそれに抗おうとしたが、時は既に遅く、細い躯体は蛇槌に引き寄せられ、オニクスの眼前まで迫っていた。 オニクスは開いた腕を開き、そこに黒いオーラが集中する。そして至近距離まで引き寄せられたウルカヌスの頭を掴み、一撃を加える。 再びウルカヌスが悶え苦しんだ。 「その脳味噌を使い物にならなくしてやろう!」 「テメエ…『アプロディテ』のEMシェイカーかあッ!!」 「せめてこの一撃で楽にしてやる」 「ふざっけるな!!」 ウルカヌスは持っていたハンマーの銃口を、オニクスの腹に突きつけた。オニクスは自らの誤算に気付いたが、その時は既に遅かった。 放たれた弾丸はケーシングに誘爆し、オニクスは壁まで吹き飛ばされ、壁に半ば埋まる形となる。 「ぬぉおおおおっ」 「けっ、偽物はどこまで言っても偽物、おとなしく消えろよっ!!」 さらに撃ち込まれるボルカノハンマー。弾丸はオニクスの召還した全ての武器を射落とし、結果的にオニクスは丸腰になった。 それでもウルカヌスがボルカノハンマーの乱射をやめることはなかった。弾丸がオニクスの装甲を見る間に削っていく。 「あああああああっ!!」 「消えろ、消えろ、消えろぉおおおっ!!」 狂乱のウルカヌス。今彼の目に映っているのは、きっとオニクスだけだ。怒りが力を増大させ、無尽蔵の神の力により弾丸は生成をくり返し射出を続ける。 ウルカヌスはオニクスが機能を停止するまで、その連射を止めることはないだろう。 邪魔さえなければ。 オニクスは防御すら許されることはなかった。絶え間なく着弾するミサイルが、彼の体を灼く。視界に捉える赤い躯体は、怒りに満ちその攻撃を止めることはない。 (ここまでなのか) 爆炎の中、思考は正常に働いていた。元とは言えば、死にたがっていた身だ。こうやって死ぬのも悪くはないと少し思ったが、すぐに訂正する。 このような無様な死に様をさらす気は、毛頭ない。死を願うものにも、望む死に様があるというものだ。 だが、反撃は望めそうもない。召還は不可能。動きは城壁に封じられて動くことはかなわない。 (また俺は…しぬのか) わずかな思考。視界には徐々にノイズがかかり、センサー系も死んでいく。あの時と同じ、死へと近づく感覚。 そのとき、死にかけたセンサー系が、ウルカヌス以外の動体を補足した。ウルカヌスの背後に立つその少女は、俺を呼び、俺をののしり、そして俺が最も今嫌っていた------- 「いけえええっ!!」 ルイズは杖をウルカヌスの背中に向け、短く詠唱。瞬間にウルカヌスの背中で爆発が巻き起こり、ウルカヌスは前に吹き飛んだ。 攻撃は中断され、オニクスは壁から外れて地に倒れ伏した。ウルカヌスはすぐにルイズの方を振り向く。 いままでで、一番ゴーカイな失敗魔法。 でも、それで良かった。 「ガキのくせに…まだ俺の邪魔をするのかよっ!!」 激高するウルカヌスに動じないルイズ。 「それはアタシの使い魔なんだから、あんたに殺されちゃたまったもんじゃないわよっ!」 「そんなことでっ…お前は…お前はッ!!」 ウルカヌスが再度ボルカノハンマーを振り上げ、ルイズに突きつける。 少女のその姿にオニクスは幻影を見た。 重なる姿。 記憶。 「神代 カナ」。 かつて自分が好きだと思いながらも、道具にしてしまった少女。 けなげで、真っ直ぐな瞳で前を見据えていた少女。 それが、今、目の前で、ウルカヌスに、殺されそうに、なっている 「ぃやめろぉおおおおおっ!!」 右手を突き出した。倒れたままの姿勢から、さながら狙撃手のように。 右手の甲から放たれた「剣先だけの剣」は、ウルカヌスの右フライトユニットを直撃する。バランスを失ったウルカヌスは地に倒れた。 オニクスは膝をついて立ち上がり、重い体を引きずって前方へと走る。左腕から柄だけの剣を抜き、右手に携えて。そして距離がつまる。 「切っ先だけの剣」と「それから下しかない剣」は合体し、一本の輝く剣となった。刺さった切っ先を勢いよく引き抜く。 ウルカヌスは残りのユニットでこちらを振り向き、ボルカノハンマーで剣を防御しようとする。 だがオニクスの振り下ろした剣は、あっけなくボルカノハンマーの柄を破断させ、逸れた切っ先は残ったフライトユニットを裂いた。 完全に地に着くウルカヌス。だが、彼が立ち上がることはかなわない。 なぜなら彼の足は曲がっていたのだから。 産み落とされたその時から、彼の足はいびつに曲がっていたのだから。 「殺してやるよ」 そしてオニクスは容赦なく、逆手に構えた剣を、ウルカヌスの胸に突き立てた。 飛び散る火花。上がる悲鳴。そして剣の傷から漏れる光は、頭像の最後の輝き。 「…」 オニクスは無言で剣をさらに深くへと押し込んだ。漏れる光は強くなり、ウルカヌスの悲鳴も、またそれに比例して大きく、激しくなり--------- そして、剣がひときわ深くに刺さったその時、光は奔流となり、うずたかく舞い上がった。 光が止み、オニクスは剣から手を離す。わずかに灯る命の輝きがそうさせるのか、ウルカヌスは顔をオニクスに向けた。 「へっ……やりやがったな…」 「カナは…殺させない」 「お前が見ているのは所詮幻想だぞ」 「それでもいい、俺は決めた、前世で果たせなかった誓いを、今こそ果たそう」 「勝手にしやがれ…それより…俺をけしかけた正体…知りたくはないか?」 「それは知りたい所だ」 「へっ、ヒントだけくれてやるよ」 「…」 「『俺達と同じ』さ、贋作野郎」 「!? 今何と言った!」 だが、そこでウルカヌスは完全に息を引き取った。 オニクスはしばらく、そこで呆然としていた。 彼の言葉の意味を、理解したからだ。 立ち尽くすオニクスに、ルイズは声をかけた。 「ね、ねぇ…」 「…契約に応じる気になった」 「え!?」 「もしも俺達の上にさらに神がいるのなら、それがきっとチャンスをくれたんだ。果たせなかった義務を果たすための切符を」 「よくわかんないけど、じゃぁ、契約さっさと済ませましょ」 と、ルイズが言ったその時だった。オニクスの目に灯っていた、明かりが突如消えた。だがルイズは気がつくことなく、オニクスに話しかけることを続ける。 「ねぇ、ねぇってば。さっさと動きなさいよ」 「…」 オニクスの機能は一時停止していた。覚醒してすぐの機能の酷使で、彼の体はボロボロになっていたのだった。満身創痍の体をようやく動かしてウルカヌスを葬った後だ、力が抜けてしまったのだろう。 彼は機能を止め、自己修復モードに入ったようだ。だがやはりルイズは気付かず、届かない手で彼の胸板を叩いていた。 「ちょっといきなり黙りこくってどーしたのよっ!ねぇっ!!」 がしゃん。 鈍い音を立てて彼は倒れた。全身の制御を切ったのだから、当然の結果だ。ルイズもまたそれを見て、何か納得したようだ。 「疲れたなら疲れたっていいなさいよ…馬鹿ね」 そして彼女は、人生最初のキスを、神の化身に捧げた。 Completion of the contract. Onixs became use of Rouis. Rouis was master of the skill. "Blacksmith". 次 回 予 告 契約は終わった。 契約は結ばれた。 しかし、彼に申し付けられるのは 剣となることばかりではない。 次回「日常」 機械を纏った神の雑用が、始まる。
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/49104.html
【検索用 こたちかえて 登録タグ 作こ 作こた 作り手】 + 目次 目次 特徴 リンク 曲 CD 動画 コメント 【ニコニコ動画】楓の、花が開くまでの道のり。 特徴 作り手名:『木立楓』(こだちかえで) アレンジ動画に付けられたタグから、国土交通Pと呼ばれることもある。 2021年3月、「カエデ」にてボカロPデビュー。 使用VOCALOIDは初音ミク、鏡音レン、鏡音リン、音街ウナ、杏音、鳥音、知声、唄音ウタ、ずんだもん、四国めたん ゆっくり実況者、ゆっくり茶番劇作者、ボイロ投稿者としても活動している。 リンク 自主室(公式サイト) 音楽室(YouTube) piapro Twitter 曲 x²-12x+27=0 カエデ 時雨/木立楓 自問自逃 歪愛 CD まだCDが登録されていません。 動画 コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2780.html
事態は収束した。闖入者ウルカヌス・は倒され、オニクス十式はルイズの使い魔となった。これで何もかもが丸く収ま------- らなかった。 直後に教師陣が中庭に集結し、ルイズとオニクス、コルベールとその他一部の生徒が校長室に呼び出された。 待っていたのは質問攻め。 あの敵はなんなのか? 敵の目的。 オニクスとウルカヌスの関係性。 そしてオニクスの正体。 オニクスとルイズとその他の人たちは、本当のことを嘘偽りなく話した。 「ではあのウルカヌスワンとやらも、アナタも『神』だと?」 「そうだ」 「そしてこれから自分がいる限り、この学園にはあのような連中がやってくると」 「断言はできんがおそらく」 オニクスは教師らの質問に全て答えられる範囲で答えた。この質問攻めの開始された時から広がっていた教師陣の動揺は、さらに広がっている。 動揺せずがっしりと構えているのは、オールド・オスマンとその秘書ロングビル、そして数名の聡明な教師だけだ。 (馬鹿な…あのようなものが12体も、しかもここを襲ってくる可能性があるというのか) (神を従える生徒なんて、聞いたことがない!) (早急に排除すべきだ) (恐れ多い、神の眷属を従えようなど…) (またヴァリエールがやらかしたのか) その雰囲気にも、オニクスは黙って耐えている。まるで聞く耳を持たないかのように。逆にルイズは不安だった。 あの時は気付かなかったが、確かに神を従える魔術師など、神話やおとぎ話の中でしか聞いたことがない。すごいことはすごいが、手放しで喜べることでは無さそうだ。 「オールド・オスマン、我々はこのオニクスの追放を提案します」 一人の若い教師が言った。それに感化されるかのように、他の教師も彼に呼応してオスマンにオニクスの追放を提案する。 「そうだ!これはヴァリエールにとってもよくない!」 「ここが消滅してからでは遅いのですよ!」 だがオスマンは黙ったまま。ルイズはつばを飲み込み、依然としてオニクスは押し黙っている。 「オールド・オスマン!」 「静まれ、静まらんか」 不意にオスマンが声を上げ、一斉に教師達が沈黙する。 「まぁ、ええじゃないか」 「しかし」 「例え手に入れたとしても、使いこなせるわけではなかろう?半人前の魔法使いに高位の魔道書を与えても、扱えないのと同じじゃ。だから、そこは彼女に任せてみても良かろう? それに、オニクス殿」 「なんだ?」 「もしここに敵がやってきたとしても、お前さんが戦ってくれるんじゃろ?」 「ここの安全は保証しないがな」 オニクスは平然と言い放つ。 「その時はその時じゃ、わしは、ヴァリエールとこの使い魔にすべてを任せてみてもいいと思うぞ」 オスマンの一言で、教師陣は沈黙する。この老いた魔法使いの放つ言葉には、何というか威厳というか、妙な説得力があった。 それに押されてしまったのだろう、もうオスマンに反抗の意を唱えるものはなかった。 「…ご覧の通り、皆納得したようじゃ。ささ、でてったでてった」 夜。ルイズはクッタクタに疲れていて、自分の部屋に戻るや否や、ベッドに倒れふしてしまった。続いてドアをくぐるように、オニクスがルイズの部屋に入る。 「ふはぁ…あんたのせいで、疲れたわ」 「そうか」 またしてもオニクスは、単調な返事を返す。まるでホンモノのロボットのように。ルイズは少し頭に来た。 「あんたさ、もうちょっとなんかないわけ?」 「なにかないかとは」 「もうちょっと『ごめんなさい』とか、『すいませんでしたぁ』とか、あるでしょ」 「謝る必要性はない」 「はぁ?」 「俺は自分の身を守ったまで。お前は確かにウルカヌスに殺されかけたかもしれんが、それはウルカヌスが悪いのであって、俺は全くの無罪だ」 「あんた、召還されてすぐに私にした悪行の数々を、忘れたって言うの……!?」 「…そうだったな。だが、アレも半ば自業自得だろうに。もう少しやんわりとした言い方は出来ないのか」 「使い魔に対してしつけをして何がいけないってのよ!」 「そうか、使い魔は人間以下の存在なのか。俺も堕したな、昔はもう少しマシに扱われていた」 「そりゃ神様だものね」 …彼らのコンビネーションは当分よくはならなさそうだ。 「そういえば、ルイズ」 ふと、オニクスが声をかけた。本来ならルイズはここで 「ちょっと、もうちょっとよびかたがあるでしょ!?『御主人様』とか(以下略 などと怒鳴りつける所なのだが、ルイズにはその気力すらなかった。 「ぁによ」 「使い魔とは何をすればいいのだ」 「ああ、そうね。それをまだ言ってなかった」 ルイズはベッドから身を上げると、オニクスを見上げて説明を開始した。 「……まず、使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるわ」 「で、俺はそうなってるか?」 「全然。だから、これは無理ね。 えーと、それから使い魔はね、主人の望むものを見つけてくるの。例えば秘薬の材料とか……」 「そんな能力は俺にはないし、必要なかろう」 「むかつく言い方するわね…さいごに、これが一番重要。使い魔は主人を守る存在でもあるの。その能力で主人を敵から守るのが一番の役目!」 「それならば俺で…事足りるな。それだけか」 「そうね、それ以外は特にないわ」 オニクスは納得したのか、顔を伏せる。 「そうだ、私はもうそろそろ寝るから、洗濯よろしくね。そこのカゴに入ってるから。後、朝は起こしてね。じゃおやすみ」 ルイズはそういって、ベッドの中に潜り込んだ。 オニクスは呆然としてしまった。 「…洗濯、だと?この俺に、洗濯だと?」 数時間後の早朝 窓を越え、地上へと跳躍する。カゴを足下に置き、オニクスは虚空を見つめた。 「…ふざけてやがる」 ここは神話界、そのものだった。魔法が世界の常識で、神話が人々の間に浸透し、エルフが、亜人が、当たり前に存在する。 科学に彩られたあの世界のことを思い出しながら、彼は洗濯する場所を探して歩き出した。 そういえば、あの世界では洗濯も機械が代行してくれるのだったか。つくづく怠惰な世界だ。だが、皮肉なことに怠惰も技術を進める原動力のひとつである。 ○○を誰かがやってくれたなら、俺はそれをしなくて良い。 そういう思想が、案外発明を生み出す原動力になる。そしてそこに情熱が加わり、熱意となり、発明への努力に昇華される。 「…」 洗濯場を探しながら、彼はそんなことを考えていた。 洗濯場はほどなくして見つかったが、洗濯の方法がわからない。かの最高神も、洗濯まではしたことがなかったらしく、洗濯の方法は何度思い返しても思い出せない。 べつに洗濯をしないであの少女の元に戻り、口喧嘩になってもいいのだが、それはそれで面倒だとオニクスは思った。 「どうするべきか」 口に出してつぶやく。状況は、悪くなるばかりである。 「あ、あの…」 後ろから、誰かがオニクスに声をかけた。オニクスは振り向き、それを見下ろす。 メイド服を来た少女が、困った顔をして彼を見つめている。 オニクスの背は高い(2m10cm前後)。自然と見上げる形になる少女。オニクスは何となくかがみ、少女と近い高さをキープした。 「この学園にはメイドがいるのか?」 「そ、そうです。雑用は私たちの仕事で」 「雑用とは?」 「掃除とか、洗濯とか、料理とか…」 「…大変そうだな。で、洗濯か」 「はい、でも、あなたも洗濯物、持ってますよね?てことは、あなたが先じゃ」 「俺はいい。それより、後でいいから教えて欲しいことがあるんだ」 「はい、私に出来ることなら」 「…洗濯を、教えてくれ」 オニクスはメイド…シエスタの洗濯の様子を黙って見学していた。彼女はさながらプロフェッショナルのような手つきで洗濯を済ませていく。 オニクスは妙に感心してしまった。 「そういえばあなたも、誰かの使い魔なんでしたっけ」 「ルイズ…とか言ったか。あのクソガキの使い魔さ」 彼女はオニクスと会話をしながら、既に自分の洗濯を8割がた済ませている。 「名前は?」 「十式オニクス。オニクスでいい」 「なんか、厳つい名前ですね」 「…そうだな」 もしオニクスが人間なら、微笑を浮かべていたことだろう。昔の世界では絶対に味わえなかった、日常的な風景。こういうことを求めていたのかもしれない。オニクスは一人心中でつぶやく。 そうこうするうちにシエスタが洗濯を終え、オニクスに声をかけた。 「終わりましたから、洗濯カゴを持ってこっちへ!」 「わかった」 オニクスは生まれてはじめての洗濯に臨む。 結果は… 最早語るまい。 朝。 しばしの眠りから目覚め、オニクスは起動した。そして昨晩ルイズに言われた通りに、彼女を起こしにかかった。 「起きろ、ルイズ」 ゆさゆさ。 彼女の肩を揺するが、彼女は起きる様子を見せない。 「う~~ん…うるちゃい、うるちゃい、ぜろじゃないもぉ~ん」 「寝ぼけてないで起きてくれ」 「メロンパン…かゆ………うま……」 「起きろ!」 「右斜め四十五度、これアタシの角度ね~」 朝からどんな景気の夢を見ているのかも気になったが、オニクスは腹が立った。せっかく言われた通りに起こしてやったのに、なんだろうかこの態度は。と、思ったわけだ。 なので、少々荒っぽい手段をとることにした。手を手刀の形に固定し、狙いをつけ、上に振りかぶり、 「起きろ!!」 ルイズの額に、おもいっきり振り下ろした。 「嫌ぁあああああああ!! ホァアアアアア!!ホァアアアアアア!!! 天皇陛下BANZAI !!!!!!!!!」 煩かったので、もう一発チョップを決めた。 効果はてきめんだったが、お陰で朝からルイズの失敗魔法を喰らったオニクス。 ダメージ自体は少ないが、おかげでオニクスは「この主人とのコンビネーションには期待出来ない」と、つくづく思った。 一人と一機は今階段を下り、授業へと向かっている。 「ったく、洗濯ものはボロ雑巾になってるし、朝からチョップで起こされるし、ろくなことがないわよ!」 「自業自得だろうが」 「うるさいわねっ、もうちょっとマシな起こし方は出来ないの!?」 「じゃあ次からボルカノハンマーで頭をカチ割ってやろう」 「それじゃ永眠しちゃうわよ!!」 「ならお前の夢に介入して悪夢を見せてやろうか」 「悪夢で目が覚めるなんて最悪じゃないの!」 「なら少々強めの電気ショックと行くか」 「半身不随にするつもり!?」 「全身でもいいだろう。一生眠れるぞ」 「そういう問題じゃないわよ!」 とにかく二人の朝は、当分喧嘩が定例になりそうだ。 話を少し変え、時間を少し戻そう。 視点をルイズとオニクスから移し、 ギーシュという少年に向けてみることにする。 その少年はドットメイジで、貴族で、ワルキューレの使い手「青銅のギーシュ」として、学園ではある程度名の知れた魔法使いであった。 だが彼は、もっと強くなりたかった。志ある人間なら当たり前かもしれないが、彼もまた向上心が高く、誰よりも上を目指していた。 数体のワルキューレが使えても、それではまだ駄目だ。自分よりワルキューレの使い手などいくらでもいる。 そうして少しばかりの壁に突き当たっていたギーシュは、二日程前に、ある拾い物をした。 それは、青みを帯びた小石だった。親指程の大きさで、なんと顔のような模様が極めて精巧に彫り込まれている。ギーシュはこれを何故だか気に入り、持ち歩くことにした。 その小石には、自分のように美しい男の顔が彫られていた。 そして授業。 自分の得意とする、錬金の授業だったか。 ギーシュは指名され、おもむろに教師に言われた通りに鉄屑に魔法をかけた。するとどうだろうか。 本人は軽くひねった程度のつもりだったのに、鉄屑はなんと金塊に変わった。 これにはギーシュも驚いた。その後も、ギーシュの魔法はとどまる所を知らなかった。 出せるワルキューレは八騎に増え その作りは精巧になり 動きも人間に近くなり まるで、マジックアイテムで急に強くなったかのような感覚。ギーシュは興奮した。これなら学年一位とて夢ではない。 そのせいで、彼は石のことなどすっかり忘れてしまった。 それ以来、石は彼の右ポケットに入っている。 そして時は動き出す。元の時間へと、元の視点へと戻ろう。 ルイズは席に着いていた。既に授業は開始され、黒板にはチョークで字が描かれ、彼女はそれを写し取る。だが、今回の授業は、いつもと違う所があった、 「静かすぎる」。 いつもなら数名の生徒の雑談や、紙切れを回してのしりとり、ペン回しもろもろが見受けられる。それが正しい「それなりの学生の授業」のはずだ。 そしてそれを注意する教師の声もまた、日常の一部。 だが、今日の授業にはそれが全くない。 静か過ぎた。 原因は、後ろで壁にもたれかかるオニクス十式、彼にあった。 先日その力を遠慮なく見せつけてしまった彼の噂は、瞬く間に学校中に広まっており、しかも噂には尾びれまでついて、物騒なものになっている。 使い魔達もまた彼の存在を警戒し、静寂を保っている。 曰く「その手からは詠唱もなしにあらゆるものを生み出す」 曰く「身の丈程もある剣の使い手で、剣は輝き全てを切り裂く」 曰く「金色の羽で空を駆け、破壊の杖で天を灼く」 曰く「R-2とR-3と合体し、無敵のスーパーロボSRXになる」 そんな物騒な噂のせいで、今日の教室は静かなのだ。 そんな中でも、ルイズはいつもと変わらず熱心にノートを写し取る。唯一いつもと変わらないのは、彼女ぐらいだろうか。 黒板に再び字を書き始めたシュヴルーズのチョークを追い、それを書き取る。雑談には加わらず、ただそれに専念する彼女。 そう、いつもならそれで終わり。 だが、今朝は少し違った。 シュヴルーズが、前で錬金の実技をする有志を募っている。 (…普通いく奴はいないわよね) ルイズはノートを写しながら、その光景を見つめていた。そして、瞬間ペン先への意識がおろそかになった刹那に、それは起きた。 乾いた音ともに、えんぴつが折れた。 「あ」 「ちょうどいい。ミス・ヴァリエール、今回の実技はあなたがやりなさい」 完全なるこじつけ。 だが、ルイズは渋々従った。 オニクスは授業の風景を見つめていた。 どうやら「四大元素」という考え方は、どこの世界でも共通のようだ。そして今回の授業で扱うのは「土」。 見た所オニクスが小指でひねれば出来る程の魔術ばかりであったが、細かい理論の違いをオニクスは探したりしてしばしの暇つぶしをしていた。 ふと、前の方で教師(シュヴルーズと言ったか)が、実技の有志を募っている。 (誰がいくだろうか) オニクスは少し気になり、生徒達に眼をやる。 手を挙げかけで引っ込めるもの。 そもそも手を上げる気がないもの。 種類は様々だ。そして自分の主人は、後者に属していた。 (指名になるか) すると、オニクスの聴覚は乾いた音を捉えた。鉛筆の芯が、折れる音だ。音源は主人たるルイズの鉛筆。彼女の鉛筆が折れたのだった。 シュヴルーズはこれをチャンスとばかりに彼女を指名し、実技を行わせるよう促した。ルイズは立ち上がり教卓へと向かう。 すると、一人の女生徒が立ち上がってシュヴルーズに言った。 「先生、危険です」 そうだ。危険だ。その威力は十分知っている。ウルカヌスにダメージを与える程なのだから、この教室の机を全て吹き飛ばすくらいのことは出来そうだ。 それは自分に取っても、この場の全員にとっても危険だ。 ルイズはその長身の女生徒に抗議し、周りの文句を無視して詠唱を始めた。 オニクスは杖に注視する。 魔力の具合を見るオニクス。 人によって魔力の質は微妙に異なる。Aという人間とBという人間の魔力は、違うものだ。ゆえに、人によって得意な属性苦手な属性があるし、差異が出てくる。 その中でもルイズは特に、個性的なものだ。何でも爆発に還元する力、といった所だろうか。昨日あたりでオニクスは結論づけていたが、実物を見れば何かわかるかもしれない。 そう思って、これは少し楽しみにしていたのだ。 (さて、どうなることやら) 魔力が生成され、回路を伝って杖へと。 杖から大気へ放出される一瞬、そこに手がかりがある。 オニクスは注視した。 杖から変換された魔力が大気に放出される。 本来ならそれは石に到達して、奇跡を起こし石を砂なり鉄なりに変える。 だが、ルイズの場合は違った。 魔力は石に到達。 そして、魔力は役目を果たすことなく、すぐに外部へと拡散していく。 爆発へと変換され。 「…!!」 よくわからない。だが、危ないことは明らかだった。オニクスは動いた。右腕の掌を向け、高らかに叫ぶ。 「銃の腕(ゲヴェーア・アルム)!!」 瞬間、掌から閃光がほとばしった。青い閃光は机の上の小石を魔力ごと消し飛ばし、惨事は免れた。 そして教室の人間の視線は当然、オニクスに向く。 「…オニクス?何してるのかしら?」 約一名、怒りの視線を向ける人間もいる。(無論ルイズだ) だがオニクスはあくまで冷静に対応した。 「失敗するぞ」 「何言ってるのよ!私の魔法が失敗するはずないでしょ!」 「嘘をつけ。どれ、俺が手本を見せてやろう」 オニクスは机の間を横切り、教卓の隣にいるルイズに相対した。後ろではシュヴルーズが「ちょwwwおまっwww」と言った顔でオニクスを引き止めている。 「あなたなんですか?使い魔なら後ろで静かに…」 「もう一個石を用意しろ」 「ハ?」 「聞こえなかったのか、『もう一個石を用意しろ』」 有無を言わさぬオニクスのドスの利いた声に、思わずシュヴルーズは小石を用意してしまった。そしてオニクスは拳大の小石を、教卓の上に置く。そしてそれに向けて手をかざした。 「………」 ナーブケーブルを石に展開し、一瞬で組成を組み替える。小石は人形になり、着色された。 数秒後教卓の上にあったのは、ルイズとそっくりな精巧な人形だった。生徒の拍手と「おお~」という賞賛の声が漏れる。そしてオニクスが指を鳴らすと、ルイズ人形が動き出した。 「ウルチャイ!ウルチャイ!ゼロジャナイモン、ゼロジャナイモン」 その怒り狂う姿は、見事にルイズそっくりだ。 ルイズは赤面し、再び賞賛の声。 そしてオニクスがもう一度、指を鳴らすとルイズ人形は爆発した。そして爆発の煙が晴れると、そこには鳩が立っていた。真っ白な鳩だ。 「…こんなところか」 「お…お見事」 思わずシュヴルーズも声を漏らす。一方で不愉快なのはルイズだ。 「オ・二・ク・ス~っ」 「文句か」 「使い魔のくせにアタシより目立つんじゃないわよ!今日は昼食抜きよっ!!」 鳩が開いた窓から、外に飛び出していった。 次 回 予 告 プライド高き少年の些細な失敗は、 邂逅への鍵となる。 彼の手にした魔性の力は 黒き機神に悪い予感を抱かせた。 次回「青銅」 機械を纏った神々の戦いが、始まる。
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/255.html
「帝國SS」世界において、戦争の主役となっているのは、身長8~10mの人型のロボットです。これを「帝國SS」世界の住人達は「機装甲」と呼び、これに搭乗する者を騎士と呼んでおります。 機装甲の稼動原理 機装甲は、魔晶石を動力源として、魔法的に動かされるものです。 登場適格能力者が、対になってつくられた、仮面をつけて搭乗することで、 搭乗者は、魔法を介在して機装甲を肉体のごとく認識し、操縦することができます。したがって、基本的には一つの機装甲にいちどに一人しか乗れません。 また機装甲には、弱いながらも意識的なものがあり、それらが主観的に的確と見なさない者の制御を受け付けません。 機装甲は、駆動のための魔導的結界性質を持っているようです。 しかし、機装甲は純粋魔導存在ではなく、物理的側面に多く寄っています。このため、整備や部品の維持は重要な問題です。 量産化された帝國では、点検による問題の早期発見、予防措置と、部品の定期的な交換で、これに対処しています。 諸国機装甲は工部の支援を得ているようです。 一般的な機装甲や機卒の構造材が木炭製鉄で作った鋼で、。 脱硫技術や脱燐技術がこの世界では魔法頼りなので、石炭製鉄よりも木炭製鉄の方が良い鉄ができるためです。 装鋼鈑の製作は、鋼を巨大なハンマーを持った機卒が圧延鍛造し、焼き入れ焼きなましをします。これが普通の機装甲の装甲です。高級機装甲になると、これに魔法で強化処理をしたりします。 魔力伝導体は、機卒が魔法で処理された銅となります。下位の機装甲なら魔法処理された銅もしくは銀ですし、高級機だと魔法処理された銀になります。最高級機だと、各種の希少金属と銀とを魔法で合金化させたミスリルになります。 ミスリルの強度とは、かけられた魔法処理の強さに依存します。 オリハルコンにいたっては、魔力の金属結晶体です。 機装甲とか機卒とか、魔力の塊の魔晶石から魔力を引き出して動いています。 これの生産には魔道師が大量に必要であるようです。 また魔力の伝導素材として、そのための素材が必要です。 最低ランクで、銅、最も効率が良いのが精霊銀(ミスリル)です。 ミスリルは自然状態では存在せず、銀をはじめとする貴金属を合金にして魔道処理して作るものです。 ドワーフ族の門外不出の技術です。 ただし、魔導師ならつくれます。しかし安価なものではありません。 オリハルコンは、機神の構造材として最適です。 魔力伝導性が高く、機械特性がよく、耐腐食性に優れるという、非常に優れた金属です。 オリハルコンは、魔力伝導性以外のすべてでミスリルを上回る特性を持っています。 機装甲の武器。 帝國の機装甲戦術は、東方辺境領と魔族との戦争で錬成されてきました。 異常な生命力と、膂力を持つトロールや、モンスターと戦い、倒すために、破壊力の大きな武器が選択されてきました。 これは盾を廃止し、長鑓や長斧使う方向性となってゆきました。 長斧のイメージ bukipedia@wikiより、バルディッシュ ~Berdysh~ 機装甲発展史 機装甲は、もともとは機神と呼ばれるさらに強力な魔導ロボットを母体としたものでした。 古代魔導帝國時代に作られた、それら魔導ロボットを、古代魔導帝国崩壊後の情勢下で作ったものといえます。したがって、素材的にも工作的にも能力的にも、古代魔導帝国時代のものに比べて、劣っているようです。 古代魔導帝国崩壊後から、時系列の<現在>までのあいだ、機装甲の製造は大変に困難なことでした。近世の技術力で、金属骨格を構成し、これに魔導的動力、機関系を搭載し、さらに装甲を施すのですから。 したがって、機装甲の主は、それら原材料を供給し、また製造する職人集団を養えるものらに限られていました。 具体的には、諸侯、騎士などです。 <現在>でも、帝國以外ではこの事情は変わりありません。 帝國における機装甲 帝國における機装甲には、諸外国とは違う独特の事情がありました。 最大のターニングポイントは、副帝レイヒルフトの登場であったようです。 最終的に、レイヒルフトのエドキナ大公領占領と帝國化、安定した資源開発が可能になったこと、さらに大公領にあった産業社会の転用によって、高品質かつ大量の機装甲が供給可能になりました。 これを背景に、機装甲のみによる部隊編成を実現し、他を圧倒していったのです。 副帝レイヒルフトの手元には、神龍戦争の最終世代機神であるらしい、アウラルム・ドラクデア・シリヤスクス(黄金の龍神)があります。このアウラルム・ドラクデアを、当代の帝國の技術によって、製造かつ、量産可能なものにした機神として、「黒の龍神(ニグレド・ドラクデア・ウヌム)」が開発されました。 この黒の龍神から、機装甲の枠を上回った機神、黒の二が作られました。 黒の二は、魔導能力を基本的に取り除き、魔道能力を通常戦闘の使われるレベルに限ることで量産可能とし機体です。 さらに魔道能力を排除して、機装甲としたものが存在するようです。 これはおそらく、三シリーズと呼ばれるものの始祖でしょう。 帝國の機装甲 帝國正規軍で採用されている機装甲の特徴として、大国ゆえの広範なリソース投入、高度な素材の大量投入があります。 鍛鉄の使用、魔道的に再現された隕鉄の使用、ミスリル銀と呼ばれる魔道金属の使用。さらに対砲防御力の重視、相互流用や交換を可能とする部品製造など、同時代の先端的な存在となっています。 帝國の現行主力機装甲は、青の三と呼ばれるシリーズのようです。 この青の三シリーズには、さらにいくつものサブタイプが存在しています。 :青の三 帝國軍の主力機装甲です。小隊から中隊で戦列を構築して戦闘を実施します。 彼らの任務は、盾と鑓によって武装して、敵陣に突入し、近接戦闘をもって敵を撃破し、歩兵による占領を支援します。 事実上の戦車です。 青の三が、 試作型のA、 魔族戦争時のB、(レイヒルフトの東方掌握のころ) 内戦前期のC、(おそらく南方戦役当時) 内戦後期のD、(おそらく北方戦役当時) 南方戦役に向けて改修中のE (時系列上の現在) :白の三(ケイレイSS内に登場した新機) 白は魔道機のための識別呼称だそうです。 青の三ベースにした試作機であるため、青の三と共通ロットの部分を持っており、現行機は三Fであるとされます。 また長時間駆動のために、魔道系にかなりの改修が施されているようです。 後に制式化された際に、猟機装甲のカテゴリーが新設され、「緑の三」の制式名称が与えられる事になります。 そして、魔道戦機能を搭載した機体は、軽駆逐機装甲のカテゴリーに入れられる事となり、「白の三」の制式名称が与えられる事になります。 :黒の二(魔族戦争以降) 砲兵の射撃の後、青の三の戦列が敵戦列を突破するまでの間、敵戦列に開けた穴を開け続けるための機体です。 通常の重機装甲とは比較にもならない高性能と、強力な魔道機能を持ち、常に3機小隊で運用されます。 類別としては機神とされていますが、魔導機能を搭載していないため、実質的には魔道機装甲と呼ぶべき機体です。 この機体を元にして、青の三の試作型が開発されたと考えらます。 帝國暦1095年末のオスミナ王国との紛争での敗戦によって、黒の二にも魔導戦機能が搭載される事となり、 新設された重駆逐機装甲のカテゴリーに入れられる事となりました。以降、帝國軍に配備される機神は、 軍の類別上では重駆逐機装甲と呼称されることになります。 機卒 機装甲は軍用スペックの、あきらかに戦闘機材ですが、さらに簡易化した、ロースペックのものも存在します。 これは、機卒と呼ばれるもので、現代の重機のように使われるものです。 これについての細かい設定は今のところ開示されていません。 戦闘地域で運用される「赤」系列と、戦闘地域外で運用される「黄」系列の二系統が開発され運用されているようです。 :赤系列 野砲の移動、運用支援、戦闘地域で行動不能になった機装甲の回収、兵站、工兵支援任務などにあたるようです。 :黄系列 いわゆる土木作業重機としての使用と、馬車などの牽引を行っているようです。 帝國の戦術と機装甲 帝國は、内戦を経て、砲兵の大量配備にも同時に踏み切りました。 砲によって、敵陣に突破口を開拓し、機装甲を突入させて撃破する基本的な運用があります。 逆に、帝國の機装甲もまた、敵の砲撃下を前進することになります。 帝國皇室の機装甲 帝国皇室であるケイロニウス・ケルトリウス皇家にも、一門の象徴たる機神が伝わっております。 他にも神龍戦争の末期に開発されたという機神を保有している、という噂もありますが、その噂すらごく少数の者しか知りません。 :レギナ・アトレータ・ケイロニウス ケイロニウス皇統を象徴する機神です。神聖金(オリハルコン)の骨格を持ち、精霊銀(ミスリル)の装甲で覆われた極めて強力な機体です。 機体は白色を基調に銀色と黒色に塗装されていますが、戦闘時には魔力で装甲が強化されるため、七色の魔法光に覆われた姿となるようです。 現在の乗り手は今上皇帝の姉である双性者アルトリアであり、内戦中は近衛騎士団と共に帝都防衛戦で活躍しました。 武装は大剣「撰帝の大剣」と円盾ですが、円盾は左腕に半ば独立稼動式に装着されているため、両手で大剣を振るう事ができます。また円盾は防御結界を発生させるための魔法陣が刻まれており、敵の長距離魔法攻撃に対して十分な防御力を発揮します。 :アトレータ・トリニタス 機神「レギナ・アトレータ・ケイロニウス」を元に副帝レイヒルフトが開発させた、ロースペック版の機神です。骨格と要部装甲だけ精霊銀(ミスリル)とし、それ以外は隕鉄を魔導処理した物を使用しています。 機体性能は母体となった「レギナ・アトレータ・ケイロニウス」と比較して一段落ちますが、それでも並の機装甲を凌ぐ強力な性能を持っています。また、魔導機能も省かれていないため、機神として完全に機能する機体でもあります。 機体は白色を基調として塗装されておりますが、近衛騎士団の三つの旅団にちなんで、赤、青、黄、の三色も使われています。そのため、「アトレータ・カエルレウム」「アトレータ・ルブルム」「アトレータ・フラウム」とも呼ばれます。 武装は、主として乗り手の得物でありますが、防御結界の発生器でもある左腕の円盾は搭載されています。ただし、魔導戦能力を重視して、肩部装甲内に試験的に魔導結界発生器を搭載した機体もあるようです。 :アクアリウス・トリニタス 「帝國」近衛騎士団に配備されている、重魔道機装甲です。魔道処理された隕鉄で作られ、魔導機としても重機装甲としても使える強力な機体です。 機体は白色を基調として、赤、青、黄、の三色で塗装され、それぞれのカラーリングごとに旅団が編成されています。 その他の機装甲 神龍戦争の後、古代魔導帝國は崩壊しました。 これによって、大陸は諸勢力の分裂支配体制下となりました。 機神のようなものは、作ることも難しいが、使うことも難しい兵器となってしまい、諸国は機装甲を開発して行きました。 帝國のように、大規模に機装甲を開発量産できる勢力はそれほど多くないようです。 そのため、諸国ごとに様々な機装甲があるようです :一般に、 戦列を組んで戦う重装甲の重機装甲 戦列支援のために、散開し、また機動戦闘を行う、軽装甲 の二種類が存在するようです。 さらにこれらを支援する魔道機もありますが、魔道機を系統だって開発調達できる勢力は少ないようです。 少なくとも帝國はその力を持ち、魔道に優れた森族もそうかもしれません。 帝國は、機卒を直接戦闘に投入することを止め、戦闘支援任務までにとどめるようになりました。 諸国がどの程度、追従しているかは不明です。 北方諸国の機装甲 「ゴーラ帝国」 :機神「グイン」 ゴーラ帝国皇帝ゴルムの乗機といわれます。 その能力は不明のままです :名称不明(スカニアの機神) ゴーラ帝国スカニア大公国の機神です。 詳細不明です。 :名称不明(ヴィーキアの機神) ゴーラ帝国ヴィーキア大公国の機神です。 詳細不明です。 :重魔道機 ∴レーヴァテイン フィンゴルド大公国の象徴として、ゴルム皇帝に命じられ、スカニアで作られた機体です。 :機装甲 ∴スカニア エイシル 古代魔導帝國直系を誇るスカニアの機装甲です。 同世代として高い品質と機能を持つようです。 ∴フィンゴルド エインヘリャル フィンゴルド内製の機装甲です。 品質的機能的に他のゴーラ諸国機には劣るようですが、集団戦に適合し十分な能力を発揮するといいます。 :機卒 ∴フィンゴルド ドヴェルグ(仮) フィンゴルド内製の機卒です。 品質的機能的に諸国機には劣るようです 西方諸国の機装甲 「王冠盟邦」 :機神「タブラ・ラサ」 古代魔導帝國機神群の最終世代のひとつのようです。 その能力は不明のままです :その他機神 不明です。 ただし、王冠盟邦の大国ぶり、また国名の示す統治体制からして、選帝侯や、封建領主は機神をもっていてもおかしくはありません。 :機装甲 不明です。 ただしおそらく、帝國のような整備体勢とは違うでしょう :機卒 不明です。 「関税同盟」(関税同盟は西方複数国家の同盟集団です) その国家体制からして、軍備はそれぞれの国家単位で養われ、連合軍として運用されると思われます。 同盟各国軍(純粋人族系国家) :聖グアベロ皇国(「神殿」総本山の宗教国家) :機神「ベルタ・ロマノレヴィ・アクアヴィテ」 「アウィス・ラパクス」と同世代の極初期型機神。皇国聖堂騎士団の団長機でもあります。 :魔道機装甲「ベルタ・ソライア」 「ベルタ・ロマノレヴィ・アクアヴィテ」を原型として製作された魔道機装甲です。火水風土の四大精霊の力を自由に操る事ができる強力な魔道機ですが、近接格闘戦は得意ではありません。皇国聖堂騎士団の主力機です。ちなみに機体のフレームは共通のものが使われていますが、機体そのものは搭乗する騎士に合わせてチューンされています。 :重機装甲「ベルターニ・ルーチェ」 皇国聖堂騎士団の前衛として戦列を組み、「ベルタ・ソライア」による魔道攻撃のための盾として前方に戦列を組むための重機装甲です。これも「ベルタ・ロマノレヴィ・アクアヴィテ」を原型としています。この機体も、搭乗する騎士に合わせてチューンがなされています。 :ヴルダヴァ王国(東欧系 「げっと!」登場) <らっちぇぷむ氏「げっと!」より抜粋> ヴルダヴァ王国の騎士が持ちこんだだけで重軽あわせて五〇機もの機装甲がいる。騎士団全体ならば二〇〇機は軽くいることになるし、機卒も数えるならば全部で五〇〇を下回ることはない- 戦列運用される重機装甲と、 戦列を援護する軽機装甲が描写されています。。 加えて、機卒も戦闘に参加するようです。 :ゼニア共和国(西方貿易国家) 関税同盟内の有力商業国家です。同盟最大の金融力を有し、多数の海外植民地を持つ交易国家です。 軍備は、海軍主体で陸軍は小規模ですが、本土及び植民地防衛のために強力な重魔道機装甲を配備しています。 :重魔道機装甲「バルバレスコ・リヴェッティ・ディ・ヴァルッテリーナ」 現在ゼニア共和国軍に配備されているの主力重魔道機装甲です。機神を除けば関税同盟内では最強の機体でした。 :機神「バローロ・ファンティーノ・ディ・ヴァルッテリーナ」 帝國軍の「黒の二(ニグレド・デュオ)」に対抗して開発された簡易量産型機神です。「黒の二」同様に魔導能力等機神としての機能の多くが省かれていますが、既存の重魔道機装甲と一線を隔する強力な機体です。トイトブルグ干渉戦争に少数機が参加した可能性があります。 ∴便宜的に追記 ゼニア共和国には二つの軍がある。 一つは、共和国国民によって編成された常備軍であり、共和国親衛隊と呼ばれる。上記二機種の機装甲、機神は共和国親衛隊にのみ装備される。 もう一つは、傭兵を集め、共和国議会が任命した将軍に指揮される部隊である。 おそらく、この部隊も機卒等を装備しているであろう。 :オクシタニア公国/リュクシタニア候国(森族系:森族と人族の交渉緩衝国家) いずれも同盟内の有力国家です。 軍備も相応のものでしょう。 森族には、弓を武器とする機装甲が存在することが知られています。 またこれらは森族の魔道能力を生かした、魔道機の能力を持っているようです。 :重魔道機装甲「アヴェラウ・カスク・マチュアード」 重機装甲としての格闘戦能力と、魔道機としての魔道機能を併せて搭載した機体です。 通常は、機体全体を隠せるカイトシールドを並べて、刺突攻撃のための剣グラディウスで敵機装甲と格闘戦を行い、 火水風土の精霊の力を増幅して攻撃や防御に使用します。また開闊地では、長弓による射撃戦も行います。 :機卒スタウト・キルケニー 長弓を主兵装として、「アヴェラウ・カスク・マチュアード」の戦列の後ろから射撃を行い、敵の戦列を崩すための機卒です。 同盟各国軍(ドワーフと人族連合) :ブルグント大公国 同盟内の有力国家で、工業国であることが知られています。 軍備も相応のものでしょう。 詳細は不明です。 その他の西方国家軍 :トイトブルグ王国 ケイレイSS内で突如登場したトイトブルグ王国の機装甲は、ちぇいす!内に登場した、関税同盟諸国軍に準拠しているつもりです。 トイトブルグ王国が、帝國の緩衝戦争を受ける程度であることから、同盟大国ほどの力は無かったでしょう。 また、トイトブルグ王国自体も、周辺国からの支援があったはずです。 <現在>トイトブルグ王国は親帝國化しています。 しかし、帝國軍の軍備が大々的に取り入れられていることは無いでしょう。 南方諸国の機装甲 沿岸国家群 沿岸国家であるため、海軍にも一定の拠出が必要なため、内陸国家に比べて、陸軍の率は少ないかもしれません。 :エル・コルキス王国 エル・コルキス女王は、半森族であり、森族とのつながりがあるといわれています(世界で公然と知られている情報かどうかはともかく) おそらく、森族系の機装甲は存在するでしょう。 その度合い、森族への依存度、それ以外については不明です。 :アル・カルナイ王国 帝國先々帝ユスティニアヌス皇妹アルトリアの嫁先です。 アルトリアは降嫁にあたって、近衛騎士と手勢を伴いました。 また、アル・カルナイ緩衝戦争に対しては、ディエゴ元帥率いる帝國軍が救援に訪れました。 王妃アルトリアが卓越した軍事指揮官であることから、統一行動のとれる部隊編成を望んだとしてもおかしくはありません。この点で実践改善を経てきた帝國軍の軍備を望み、その供与が行われていても不思議ではないでしょう。 ただし、実際の詳細は不明です。 内陸国家群 :ハ・サール王国 帝國SS内では、中原の遊牧民族的国家と認識されています。 前身となった「げっと!」ワールド内では、西方諸国軍の中核としてその名が出ています。機卒機装甲を有力に備え、かつ歩兵を備えた統合運用に至っている描写がなされています。 時系列<現在>とのつながりの深さは不明ですが、帝國南方政策の最大の難題であることこからして、有力な軍事力を持っているのは間違いないでしょう。 機卒機装甲の詳細は不明です。 大陸南方国家群 :アル・カディア王国 時系列<現在>、皇女アリアの降嫁先として真剣な検討がなされています。 機卒機装甲を持っていることは間違いないようですが、帝國のような決戦思想にはいたっていないようです。 機卒機装甲の詳細は不明です。 :アル・ディオラシス王国 アル・カディア王国との戦争に多数の機卒機装甲を投入しましたが、「帝國」より援軍として派遣された親衛第21混成旅団によってその大多数を失うにいたりました。その中には、重魔道機装甲の「ゾイア・ベリッタ・アル・ディオラシス」という、古人のみで編成された魔道戦部隊専用の機体も含まれています。 航空機装甲 時系列的には未来に属しますが、将来の帝国軍に配備されそうな航空機装甲を考えてみる。 部隊レベル/機装甲レベル/現実の航空機でネタを出してみます。 1、連隊レベル/機卒レベル/小型連絡観測機 米軍だとLないしOナンバーの機体。ドイツのシュトルヒともいう。 高翼単葉で視界が広い軽飛行機。間違っても空中戦などしない。 帝国SSの世界でも数と安さが売りの「飛べればいい」レベルの機体だろう。 気球の代替品。連隊本部か旅団に数名配属されるかもしれないが、基本は師団配備? パワードスーツかマクロスFのあれ程度にまで小型化されているかもしれない。 2、軍団・軍レベル/機装甲レベル/通常の偵察機レベル おそらく本来の意味での「偵察」を行うのはこのあたりから。 戦闘機改造の偵察機、米軍でのRFやRBに相当するレベル。 帝国SSだと、「空飛ぶ青の三」という感じになるのだろうか? 装甲は現実の戦闘用航空機と同様に『当たらなければ(ry』レベルになる。 3、方面軍レベル/量産型機神レベル/専門の偵察機レベル 史実でならB-29改造機のF-13、EF/RF-111、RA-5といった辺りの機体。 この種の部隊を扱った作品では戦闘妖精雪風が一番有名かと。 帝国SSでは「黒の二」レベルではないだろうか。 作戦ないし軍事戦略レベルの計画立案に必要な情報を収集すると思われる。 4、参謀本部・政府レベル/「本物の」機神/戦略偵察機・偵察衛星レベル 現実ではSR-71やU-2、偵察衛星が相当する政府が求める情報を収集するレベル。 帝国SSの場合、おそらく名前で識別されるレベルの機神と専用搭乗員がいるだろう。 おねいちゃんや悪党やカタリナ、米軍用語で「国家指揮中枢」が必要とする情報を収集する。 投入予定の新キャラが内戦の時に担当していたのはこの任務と想定している。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2759.html
剣が粒子化して消失する。か細く絞り出された声の後に、モンモランシーはルイズに向かって倒れこんだ。 さらにそれに押されて、ルイズもまた地面に後ろから倒れ込んだ。 ルイズは、脳内で情報の収拾がさっぱりつかなくなっていた。 (何、なんなの?普通に召還の儀式をしてて…なんでこんなことになるの~っ!?) …地獄から生還したと思えば、また現実に戻ってきたようだ。 眼を覚ますと、何も見えなかった。眠い。暗い。そして自らの力を、読み取れない。 寝起きのようにふらついたこの状態が原因なのかもしれないが、彼にはわからなかった。 すぐに彼は自分がオニクスの躯体のシステムから、切り離されていることに気付いた。 視覚、聴覚、全てのセンサー、五肢と切り離され、彼はいまスタンドアローンに等しい状態で、見知らぬ地に放り出されていた。 彼はゼウスのコピーにすぎず、さらにゼウスとも微妙に異なる存在である故に、神話の世界にて持っていた肉体は存在しない。ゆえに、原型である頭像の姿で現界してしまったようだ。 このまま静寂に放り出されたままだと、気が狂ってしまいそうなので、彼は行動を起こすことにした。 取り出せる限りの力でナーブケーブルを展開し、視神経、聴覚を急場しのぎ的に創造する。ナーブケーブル先端に視覚と聴覚を集中し、緊急のセンサーとした彼は、周囲の様子を観察する。 今度の世界は、神々の世界に近い世界のようだと彼は思った(もっともこの自分が思う「神々の世界」も、ゼウスの記憶なのだが)。 量こそ少ないが、大気に魔力が満ち人々の中にも魔法の才気が感じられる。あの鋼鉄に覆われた世界とは大違いだ。 『…』 周囲の人間はこちらを興味深そうに見つめている。その人々の輪の中心にピンクの髪をした幼女が立ち、こちらに近づいてきている。 -----彼女が俺を呼んだ。 何かはわからなかったが、とにかくそれが一瞬でわかった。それがわかると、彼は無性に腹が立った。 寝起きに近い状態に置かれていたのも、それを加速させる一因だったのだろう。 さらに根底に根ざしていたゼウスへの怒りの残滓とその新たな怒りは直結し、彼を動かす原動力となった。 ようやくすべてから解き放たれたというのに、また誰か、俺を使役しようというのか。俺を縛り付けようというのか。 そう思うと、イラッとした。 ナーブケーブルを伸長して,一人の少女を捕らえる。その少女を臨時のトランスレータとし、彼は使役することにした。 少女には悪いが,これでしか外界と話す手段がない。 少女と繋がった途端,少女の感覚が流れ込んでくる。 (なに、なに、なんだっていうの!?私を動かすのは誰?これは私の体よ!?) それを無視してかれは躯体の状況をチェックした。魔力量は凡庸。力を行使するには心許なかったが、今は元々あまり力が使えない。 それに、この体で慣らしていけばいいだろう。問題はなかった。 驚きと悲しみ。久しぶりに触れた人間らしい「負」の感情が、彼の意識をさらに呼び起こす。とにかく俺を縛り付けようとする人間を、今は抹殺したい。 オリジナルたるゼウスの使った剣、ライトニングソードを喚ぶ。雷光の剣の力は、彼を呼んだか弱い女を殺すのに十分すぎるものであろう。 だが、ここで彼は新たな問題に直面した。 捕らえた女の魔力量は予想以上に少なかった。神代の力を振るうには少なすぎる。現に彼女の魔力は既にレッドゾーンに入り、剣の維持だけで魔力を全て使い切ってしまいそうだ。 …殺せれば十分か。後のことはどうでもいい。 かすかな激情に駆られていた彼は、後のことを考えなかった。疾駆し、剣を叩き付ける。その動作のみに特化した戦闘機械として、少女を使役した。 だがわずかに力は足りなかった。 剣は消失し、瞬間的に膨大な魔力を使用したことにより彼女は意識を途絶えさせた。 その延長上に位置する彼の支配権もまた消失し、彼はモンモランシーのコントロールを失った。ナーブケーブルを回収し、新たなナーブケーブルを展開すると、彼は周囲の様子をうかがった。 視線はモンモランシーと、気絶したモンモランシーをどけ、立ち上がろうとする二人目の少女…彼を呼んだ少女-------ルイズと呼ばれているらしいその少女に注がれている。 二人の少女に注視する人間達は、石像本体-------彼に、全く注意を向けていない。彼は再び触手を伸ばし、誰かを使役しようとした。 「おやめなさい」 声がひびく。モンモランシーとルイズに注視していた生徒達は声の主コルベールを見、そしてコルベールの視線の先に目をやった。 新たに生成されたのか、石像から伸びる触手の一本がある生徒の後頭部まで迫っていた。生徒達は渦中の二人に注視するあまり気付かなかったようだが、コルベールは見逃さなかったようだ。 「あなたは何です?」 コルベールの鋭い声が再び庭に響く。その問いかけは石像に。石像は語ることなく、ただ静寂を貫いていた。 「!」 コルベールの方が早かった。動き出した触手は狙いの先を生徒からコルベールに変え、コルベールを狙い伸びる。すかさずコルベールの構えた杖から弾丸が生成され、触手を叩き落とした。 次々と新たな触手がコルベールを狙い、別角度から飛来する。コルベールはそれを的確に捉えて叩き落とす。 触手は馬鹿の一つ覚えのように弾かれては襲いかかり、弾丸を喰らって後退した。そしてまた襲いかかり、弾丸を喰らって後退する。 直径数サントの触手に攻撃を命中させるコルベールの達人の業に、生徒達はそれが非常事態であることも忘れて見とれる。 「!」 烈昴の気合いと共に繰り出される弾丸は衰えることなく触手を叩く。一方の触手も弾丸にひるむことなく悠然と突進をくり返す。その終わりのない撃ち合いが、百発目あたりに達したあたりだったろうか。 不意にコルベールが雷に撃たれたかのように動きを止めた。 「っは!?」 悲鳴とも苦悶ともつかない音がコルベールの口から漏れる。それと同時にコルベールと相対していた触手は動きを止め、石像へと戻っていく。 誰もがコルベールの動きが止まった原因を、探った。そして立ち上がりかけていたルイズが、それを発見した。 苦悶の姿勢のまま固まったコルベールの足下の地面から触手が伸びていた。触手は心臓あたりに到達し、だれもがそれがコルベールの動きを止めた原因と断定する。そして次に、周囲の生徒達は「コルベールの生死」を気にし始めた。 百人中誰もが納得するであろう心臓への直撃打。外見から判断するならば、誰もが「彼は死亡した」と、納得するであろう。 『殺してはいない』 コルベールの声。ふたたび生徒達の視線はコルベールに集まる。彼はぐらりと前に倒れかけたものの、不自由なく立ち上がった。 そして周囲を一瞥すると、完全に立ち上がったルイズをゆっくりと指差した。 『もう一度確認する。貴様が俺を呼んだのか』 指差されたルイズは一瞬とまどったものの、すぐに気丈な表情に戻り、コルベールに憑いた「彼」に返した。 「何度も聞かないの!私が呼んだっつってるでしょ!?」 『何故俺を必要とする』 「魔法使いに使い魔がいなくてどうすんのよ」 『俺にお前の使い魔になれというのか』 「そうよ、召還の儀式は絶対。で、あんたが呼ばれちゃったんだから仕方ないことと思って諦めなさい?」 『元の世界に思い入れなどない、それ以前に俺にとっての元の世界など存在しない』 「なら好都合じゃない、さっさと契約しなさい」 『拒否権はないのか、小娘』 「なっ…あんた使い魔のくせに、『小娘』とはなによ!?」 『…まだ契約とやらをしていないのだから、俺は貴様の使い魔じゃない』 「…ぁ。そうだったわね。それはうかつだったわ。質問に答えるけど、あんたに拒否権はないわ。あったとしても、 この学園を出れば危険だってわんさかあるし、あんた自分じゃ動けないじゃない。それに人の体を借りなきゃしゃべれないみたいじゃない?それでどうやって生きていくのよ」 『もう俺は…誰にも束縛されたくない。それだけだ』 コルベールの中の『彼』は、怒りをかみ殺していたのだろう。ルイズの無慈悲な宣告が届く度に、声に怒りがにじみ出てくる。 「もうって…あんた昔も使い魔だったの?」 『そんなものならばまだいいだろう』 「は!?」 その時だった。ルイズがそれを言い切るか言い切らないかのうちに、「彼」はルイズの目前まで接近してきていた。そして襟首を掴んで、「彼」はルイズを悠々と持ち上げた。 『最高神のコピーとして生まれ、捨て石の烙印を、コピーの烙印を押され、誰も俺を俺として認めず、ただ捨て石としての人生しか用意されなかった俺に、まだ束縛されろというのか!?』 とうとう「彼」の怒りが、爆発したようだ。 「そんなのっ…私が知るはずないでしょっ!」 『考えてみろ、味方の勝利のために用意された捨て石に、意思があったと、想像してみろ!それがとても非情なことだとわからないのか?! 無条件で何とも引き換えることなく死の運命が確定してなお気丈に振る舞えるほど俺は完成していない!ゼウスにもアレスにもなりきれなかったコピーだからな…俺はっ!』 そう言い切ると、「彼」はルイズを投げ飛ばした。横っ飛びに投げ飛ばされたルイズは観衆の波にぶつかり、山をなぎ倒す。 『それでまだ…俺を従えようというのか』 「痛ったたた…あんた…『最高神』って言ったわよね…」 ルイズは「彼」の問いに質問で返した。まだそれだけの余裕があるのか、それとも命知らずなのか。 「…神様なの?あんた」 『前の質問は先延ばしか』 「そうしとくわ。あんた神様のコピー…」 「彼」が再びルイズに神速で接近した。そしてまだ立ち上がることも出来ていないルイズの頭を掴み、強引に立ち上がらせる。このとき観衆は思った。 ルイズが余裕の持ち主なのか、命知らずなのかどちらかと聞かれたら、間違いなく後者。 彼がそのコルベール、に乗り移ったとき、驚いたことにコルベールの精神状態は冷静そのものであった。彼のメルトダウンした感情はその冷えた感情によっていくらか冷やされ、彼の感情はいくらか冷却された。 そして冷静さを幾分か取り戻した彼は、彼を召還したらしいルイズという少女にいくつか質問をした。 だが彼女のものいいは傲慢そのもので、ふたたび彼の怒りは再浮上し、やはり彼女を殺さなければ済まないという負の心が少しづつ心を支配し始めた。 そして彼は彼女をついに痛めつけた。コルベールには豊富な魔力のストックがあり、短時間なら神代の力も行使出来た。武器を喚びこそしなかったが、彼は少女にはキツすぎる暴行を加えた。 だがそれでも彼に取っては足りないくらいで、ライトニングソードを喚んでこの小娘の四肢を切り飛ばし、臓物をえぐり出し、神の力で生きながらえさせ、痛みながら生き続けることを強制させようかともかんがえていたが、それはかろうじて思いとどまった。 せっかく手に入れた端末をすぐに失うわけにはいかない。 「その単語で俺を呼ぶなっ」 彼は沸点まで達しかけた怒りを収め、少女を怒鳴りつけ、再び投げ飛ばした。コピー、贋物。彼が最も忌み嫌う言葉だ。 「もう俺は役目を終えている。放っておいてくれ…お前は擦り切れたマッチを召還したに等しい」 彼はそのまま、コルベールの制御を解いた。そして意識は再び頭像へと戻る。感覚こそ再び失われたが、きっと倒れたコルベールに群衆が群がっていることだろう。 彼はコルベールから奪い去った魔力ストックと、ようやく取り戻してきた神の力で『オニクス』を再構成することにした。 そしてこの地ともピンク色の少女とも別れよう。そう思った。少なくとも、その時は。その時は後のことなど考えていなかった。 自分の手で自分を葬ることは簡単だったが、それはどうも気が進まなかった。何がそうさせたのかはわからない。 だが、それはきっと、あの鋼鉄の世界から彼が知らず知らずのうちに引きずってきた、彼自身の宿命がそうさせたのかもしれない。 ギガンティック・フォーミュラの、戦神アレスに似せて作られた故の彼の人格が。 次 回 予 告 少女が呼んだのは黒き機神だけではなく、 また新たな敵をも呼び出していた。 今、彼女らの目のまえで、 神々の戦いの再現が始まる。 次回 「鉄神」 機械をまとった神々の戦いが、始まる。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2916.html
激突。黒と紫が、火花を散らした。蛇槌とムラクモソードが激突し、まるで演舞のように両者は舞う。 華麗なステップを踏み、剣を敵に突き立てるためだけに、幾多もの思考を試算し、そして最適の選択を選び取る。 選択を誤った者が、死ぬ。 あらゆる角度から飛来する剣を流し、躱し、そして自らの剣を打ち込む。それだけのことが、こんなにも美しく映ろうとは。 誰も思っていなかった。二機はこの瞬間、自分の名すらも忘れ、ただ敵を打倒するためだけの、戦闘機械となっていた。 剣戟。剣戟。回避。激突。回避、打突、回避、剣戟。 打突、薙払、回避、防御、剣戟、回避。跳躍、打突。 全ての動きは自然で、全く無駄は存在しない。さながら流れる川のように。命を奪い合うという行為が、芸術にまで昇華される瞬間。金属がぶつかり、擦れ合う音はオーケストラのように澄んだ音色を放つ。 「…相手に不足はッ!なかったッ!!」 「なめられたモノだなっ!!」 何度目かの剣の激突で、両者の距離は不意に離された。お互いの様子を見るかのように、両者は距離を保つ。再びの静寂が広場を包み、そして静寂は再び破られる。 先に動いたのはオニクスだった。両腕のビームの銃口を玄武神に向け、発砲する。玄武神はこれを亀甲盾で防ぎ、逆に蛇槌を撃ち込んだ。 オニクスはそれをサイドステップして躱す。そして接近を試みるが、鞭となった蛇槌に目の前の空間を薙ぎ払われ、後退を余儀なくされる。 オニクスは空いた手を上に掲げ、掌にエネルギーを集中させる。そして玄武神に向けると、雷が複数、一直線に飛んだ。だがそれも全て鞭に弾かれ、玄武神にダメージを与えるには至らない。 「近距離戦では君にかなわない。なら遠距離戦を挑むのが常識って物だろう?」 「素直に斬られろ!」 オニクスは両腕に電磁リニアガンを召還する。小振りな形状のそれは、大地の恵みを司る豊穣の神が持っていた銃だ。そして玄武神と距離を取りつつ、二丁の銃を連続で放った。 電磁加速された弾丸を亀甲盾で防ぐ玄武神。 (やはりあの盾がある限り、遠距離戦での不利は明白) オニクスはわかっていながら、遠距離戦を仕掛けざるを得なかった。あの鞭がある限り、近づくことはかなわない。盾を撃ち抜けるような武装はうかつに使えない。 (…チィ) 面の攻撃も点の攻撃も、あの盾の前には通じない。被弾覚悟で接近戦を挑もうとしても、あの蛇槌の餌食となるだけだ。オニクスはリスクの低い射撃戦を挑まざるを得ない。 玄武神の量子ビームと鞭をかわし、弾丸を撃ち込み弾かれる。このままでは、ケリがつくことは無いだろう。 「どうした、どうした!?」 「うるさいっ!」 銃を捨て、オニクスは一気に踏み込んだ。一気に走り込む。すかさず量子ビームを放つ玄武神。だが左右に飛んでオニクスはかわす。 それを読んでいたかのように、鞭が飛んでくる。オニクスもまたこれを読んでいたかのように、足下を払おうと飛んできた鞭を跳んでかわし、 そのまま上空へと舞った。玄武神は空中のオニクスを捉え、鞭を天に向かって振り払う。だが、オニクスはその鞭を弾いた。 「!?」 オニクスの左腕にあるのは力場障壁。相手の盾に対抗するかのように、オニクスも盾をまた喚んだのだ。そして天に掲げた右腕に、プラズマを収束させる。 「燃え尽きろ!」 身をひねりつつ、オニクスは球状に巨大化したプラズマを投げ放った。すかさず盾を構える玄武神。 プラズマは盾に激突すると凄まじい光と共に爆発、地表を煙で覆い尽くす。滞空したオニクスは障壁を展開しつつ、地上の様子をうかがった。 倒したならばそれでよし。 倒せなかったのならば息の根を止めるまで。 オニクスのセンサー群が、くまなく地上を探査する。だが、プラズマの余波がセンサーを阻害し、玄武神の生死はわからない。 「…………」 時だけが過ぎていく。 [WARNING] センサーが何かを捉えた。身をかわす。最早それは反射に近い。ブースタが瞬間的に推力を増し、機体を強引に移動させた。瞬間、黒い線が空間を薙ぐ。 蛇槌。 それとわかった次の瞬間に、右足に打撃を受けた。 (さっきの薙ぎはブラフ!) 右足に巻き付く蛇槌。最初の一撃は、この一撃を通すための囮に過ぎなかったのだ。だが気付いてももう遅い。電撃がオニクスの体を襲った。 「ぐああああああああっ」 電撃は全身に一瞬で浸透し、内側からオニクスを灼く。その威力は想像を絶する物で、全身の制御を失ったオニクスは真っ逆さまに墜落した。同時に煙は晴れ、そこにある光景をありありと映し出す。 倒れたオニクスと、それを見下ろす玄武神。その顔には相変わらず、アルカイックスマイルが宿っていた。 「ざまぁないねぇ」 「…っ」 「確かに以前の僕ならそれで殺れたかもしれない。だけど、今の僕は違う。あのお方の力を授かった以上、僕が負けるはずは無い」 「…いくらでもほざいていやがれ」 「口は減らないねえっ!」 そう言うと同時に、再びオニクスの全身に電流が流れる。悶え苦しむオニクス。だが全身の制御を取り戻し切れていないオニクスは、立ち上がることすら出来ない。 こうなればもう玄武神のワンサイドゲームだ。 「じっくり殺してやるから安心しなよ、偽者君」 ……… ルイズは驚愕していた。あのウルカヌスを簡単に斬り殺したオニクスが、妙な紫色のゴーレムに、やられかけている。 「…うそ」 両者の戦いは凄まじいものだった。そこに一介の魔法使い、しかも失敗魔法しか撃てない自分が、入り込む余地は全くない。 自分は、オニクスを助けられない。そう思うと、無性に悔しかった。魔法が撃てない自分に失望した。せめて攻撃魔法が使えれば、敵の気ぐらいそらせた。 防御魔法が使えれば、オニクスの身を少しだけど守れた。 だけど、失敗魔法では意味がない。真っ直ぐ飛ぶかもわからないそれでは、オニクスを助けられない。ルイズは絶望した。 使い魔を見殺しにする主人。 (…最低だ、ワタシ) モンモランシーも、キュルケも、タバサも、そこに入り込む余地はなかったろう。一瞬で殺されかねない。 「…」 皆、何も出来ないのは一緒だった。 だが、ルイズは誰よりも悔しかった。 自分の使い魔だ。自分が初めて成功した魔法で、呼んで従えた使い魔だ。 それを、目の前で見殺しにする。 人生最大の屈辱であると、ルイズは感じた。 「いや、嫌だ…こんな」 確かに、今この状況自分が行ってオニクスが助かる確率が上がるわけでもない。 だが、何もしないでいたら、きっと自分は後悔する。 「絶対、嫌だ!」 ルイズは杖を上げた。詠唱。杖先に集まる魔力。 (届け、届け、届け、届け!) 精神を統一する。昂る心を鎮める。 (助ける、自分が助けるんだ!) 魔力を編む。 (あいつを) 魔力は大気に放出され、玄武神に命中、その力を解放した。爆発は玄武神の左腕を吹き飛ばし、亀甲盾を失わせる。 「っあ!?」 玄武神は彼女など全く眼中に入っていなかったのだろう、突然の事態に姿勢を崩す。右腕は吹き飛んで地に落ち、一瞬で玄武神は自分の損傷の程を理解した。 そして不意打ちとはいえ、自分にこのダメージを与えるそれをキッ、と見つめる。そして判断した。 あれは、自分にとって危険な存在だ。 「雑魚が煩いなぁ…消えろよ!!」 玄武神は残った右手の蛇槌をルイズに向けた。そして即時、発砲する。ルイズはもう一度詠唱する。防御の呪文を。 だがそれは再び爆発に変じ、障壁の機能を果たさない。魔力の奔流は量子ビームを止められず、わずかに減衰させただけだった。 量子ビームがルイズの胸に吸い込まれる。ルイズは着弾と同時に後ろに吹っ飛んだ。 「カナぁあーーーー!!!」 オニクスが、絶叫した。 その時、ルイズは冷静に思考した。 二回目の呪文を唱えた後、閃光に撃たれて吹き飛んだ。わずかに失敗魔法が相殺してくれたのか、即死ではなかったようだ。 (ワタシ、やっぱり役立たず) だが、オニクスを助けられなかった。視界がぼやける。 (…しぬのかな、ねえさま) 視界に赤い物と青いものがうつった。光が隅で明滅する。きっと、誰かがルイズに治癒の魔法をかけてくれているのだろう。だが神の力は人の力では直せまい。ルイズはやはり冷静だった。 (あの赤いのは、ツェルプストーだわ) ルイズのわずかに残る感覚が、端から死んでいく。 (つめたい) そして、視界がモノクロになって、壊れかけのテレビのように消え始める。 (…オニクス) その時、ルイズは何故か、今頃、しかも死の間際になって何かが気になった。そうだ。さっき聞いた名前。それがとても気になっていた。 (…ねぇ) (ねぇ、カナって、誰なの?) ルイズの視界は暗転した。 と思ったら、ホワイトアウトした。 『ルイズ、聞こえてるか。ルイズ!』 数分前まで聞いていた声。オニクスの声。それがルイズの頭の中に響いてくる。 『聞こえているならば、聞いてくれ』 オニクスの声はやけにはっきりと聞こえる。ルイズは、まだ自分は死んでいないようだと思った。 『お前は無力じゃない』 何を言っているのだろう。こいつは。ワタシは失敗魔法しか使えない、『ゼロのルイズ』だっていうのに。 『お前は俺と契約したな』 当たり前だ。 『そしてお前の魔力は俺にルーンを刻んだ。そうだな?』 お前は何を言ってるんだ。 『それと同じように、俺もお前に少なからず影響を与えている』 何の話だろう。 『いいか、よく聞け』 聞いている。 『俺の力を使え』 ? 『信じろ。自分を。生きる希望を持て。意志あるものに、ナーブケーブルは力を与える』 ナーブケーブル?あの細長い糸のことか。 『お前もまた俺の力を、少なからず共有している』 そうなのか。 『思い描くんだ、お前の最も望む力を』 そうだ。私は力が欲しい。 ルイズは今になって、自分の考えを再確認する。 『そして行使しろ』 『神の力を』 『お前の意志を』 そうだ。 助けなくちゃ。 こんな所で冷静になってる場合じゃ、ないんだ。 なら、先ず体を直そう。 視界は再びブラックアウトした。 閃光。 ルイズを必死になって助けようとしていた三人は、凄まじい閃光がルイズの胸からほとばしるのをもろに受けた。三人は皆同じ感想を抱いた。眩しく無い。 「やさしい光」 タバサがつぶやく。そうだ。やさしい光。 そしてルイズの胸から光の線が幾重にも伸びる。オニクス達が行使していた物と同一のそれは、上に伸びるとUターンし、再びルイズの胸に吸い込まれる。 それはルイズの傷を瞬く間に治していった。並の治癒魔法の何倍も強力だ。そしてルイズはゆっくりと立ち上がった。 「…何が、起こっている」 左腕を再生し終えた玄武神も、これには驚きを隠せなかった。ただの人間がナーブ・ケーブルを行使する。ありえないことだった。ルイズが彼にとっての、脅威の存在へと再び切り替えられる。 「死に損ないが!」 玄武神は蛇槌をルイズに放った。だが量子ビームは見えない壁に弾かれるかのように、ルイズに命中することはない。 「馬鹿な」 そしてルイズは玄武神から距離を置いて立ち止まると、無言のままに両手を前に上げる。開いた掌を胸の前で止め、ルイズの口から漏れた言葉が、神話の武器を織り上げる。 ルイズの後ろ、何もない空間から黄色い棒のような物が四本伸び、両方の脇の下と肩の上を通って、先端がルイズの手のひらの辺りで静止した。 そしてその棒とルイズの掌の作る輪の中に、光の玉がひとつ生まれる。 「…馬鹿な!」 玄武神はそれをただ黙って見つめることしか出来ない。 光の球は見る間に大きくなり、空間を覆い尽くす程までに大きくなった。ルイズは掌を離し、再び口を開けた。織り上げられる神代の言葉。 『雷焔(プラズマ・フレイム)』 瞬間、光の玉は解き放たれ、極太の光の奔流となり玄武神に向かって真っ直ぐに飛翔した。すかさず盾を向ける玄武神。フィールドエフェクトが、プラズマフレイムを防いだ。 だが、生み出される光の奔流は盾を構える玄武神を容易く後ろに押しやり、フィールドエフェクトにひびを入れる。後退する玄武神。 もう逃げる場所など無い。ひびは深くまで到達し、ついにはひびは盾にまで入る。 「嘘だ…負けるはずが無い…」 そして、限界点。 盾は砕かれ、光の奔流は玄武神を吹き飛ばした。灼かれていく装甲。光の奔流は周囲の木々をなぎ倒し、玄武神を数十メートルも押しやった。 止まる奔流。ルイズの周囲に展開されていた棒は粒子化し、消滅する。ルイズはぼう、とただその場にたったまま、先ほどまで玄武神がいた空間を凝視する。 オニクスは制御を取り戻し、起き上がった。そして玄武神に歩み寄り、その手に剣を取る。 顔を上げた玄武神の顔面に、オニクスは容赦なく剣を突きつけた。 「容赦はしない」 「……まだだ、まだ死ぬわけにはいかない…」 つぶやく玄武神。オニクスは剣を振り上げる。 「死ね」 その時だ。 木々の奥から、一条の閃光がほとばしった。光弾は剣を弾き飛ばす。 「!」 これをチャンスとばかりに玄武神はオニクスの顔面を蹴りつけ、よろけるオニクスを無視して飛び上がり、飛翔した。 天高く舞い上がる躯体は、そのまま周囲の草木を揺らし、オニクスに背を向けて飛び去っていく。 「待て!」 すかさず追おうとするオニクスだったが、損傷のせいか機能が戻らず、すぐに膝をついてしまった。 彼は追うのを断念し、立ち上がって自分を助けてくれた…自分の主人の方を振り向く。 彼女はその場に突っ立っていた。オニクスは彼女に近づき、声をかける。 「…ありがとう。すまない」 「………」 「…ルイズ」 「………」 だが、彼女は何の反応を示すこともなく、突っ立っている。瞬きもしなければ、首を向けることもない。 「…ルイズ」 オニクスはルイズの肩に手をおいた。 その瞬間、ルイズはふらりとバランスを崩して、地面に崩れ落ちた。まるで糸の切れた人形のように。急いでオニクスは膝をつき、ルイズを抱き上げる。 「…やはり、神の力を人間が行使するには無理があるのだな」 モンモランシーの時と同じだ。ギガンティックは頭像の無尽蔵の力がある限り、いくらでも力を使うことが出来る。だが人間は違う。 魔力を水に例えた場合、ギガンティックを広大な海だとすれば、人間は広さは違えど水たまりに過ぎない。使えば無くなるのだ。 さらに一度に多くを引き出すのにも限界がある。これでギガンティックにおける必殺技クラスの技を行使したのだから、魔力切れで倒れて当然だ。 「…無茶をして」 ルイズがその日、眼を覚ますことはなかった。 ルイズは保健室に連れて行かれ、そのベッドで今も眠っている。 ギーシュの方も保健室に連れて行かれたが、ギーシュはすぐに目を醒まし、すぐに自分で歩けるようになったので、授業に復帰した。 ちなみに、強力になった力は、元に戻っていたようだ。 その後も授業は滞りなく行われたが、やはり話題はギーシュとオニクスの決闘中に突如現れた紫色のゴーレムのことであった。 オニクスを叩き伏せたアレのことですぐに学園中は大騒ぎになり、主が不在の間、オニクスは好事家の生徒達から、さながらスキャンダル疑惑を報じられたアイドルのように逃げ回る日々を過ごした。 知らない人のために、これまで使った武器の捕捉。 ムラクモソード アレスとオニクスの標準装備。ナーブケーブルを纏った両刃剣。 ライトニングソード ジュピター・の装備。雷の剣で、プラズマを物質化している。 雷を操ることが出来る。 ボルカノハンマー ウルカヌス・の装備。ハンマー状の手持ちミサイル・ポッド。 先端が展開し、ミサイルを放つ。 蛇槌 玄武神三号の装備。杖状の武器。 量子ビームと2本の鞭を装備する。 亀甲盾 玄武神三号の装備。盾。 フィールド・エフェクト(いわゆるBシールド)を展開し、高い防御力を誇る。 決闘銃(ドゥエーリ・ルゥジョー) ユーノワ・の装備。レーザーライフル。 プラズマフレイム ネフティス・の必殺技。強力無比なビーム。 Emシェイカー イシュタル・の装備。重力を操り防御フィールドや射撃を使うことが出来る。
https://w.atwiki.jp/ivdd/pages/1705.html
木立涼子 出演 画像・動画検索 Google/Yahoo!/Bing/NAVER/Baidu/YouTube 木立涼子「恋愛小説2」 監督 sekise メーカー ビーエムドットスリー 発売日 2008/7/24 通販 Amazon.co.jp DMM
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2797.html
時は過ぎ、昼休み。生徒の大半は、昼食をとっている。 オニクスに昼食は要らなかった。ほぼ無尽蔵のエネルギーを誇る彼に、食事の補給など必要なかった。 ルイズはまたしても敗北した気分で、昼食を食っていた。これでは昼食抜きの意味がない。 オニクスは食堂の壁にもたれかかり、ぼんやりと時の経過を待っていた。 戦うために生み出された自分に平常時に出来ることなど何一つなく、食事時などは特に暇だ。戦争がしたいわけではないが、彼は退屈だった。 それに彼女の近くにいても、また口喧嘩になるだけだろう。彼はそう判断して、この食堂の隅にいるのだった。 「…」 人間で言えば目をつむり、半ば眠っている状態だ。 だが、聴覚はきちんと働いている。 その聴覚が、あるとき、ひとつの音を捉えた。 「…!」 何かが砕ける音。直後に食堂は少し静まり返り、大きな声が響く。オニクスはシステムを平常モードに移行させ、音の方角を見つめた。 どうやら、何か揉め事が起こっているらしい。オニクスは視界にそれを捉える。メイドが一人、椅子にふんぞり返る男が一人。 ギーシュ・ド・グラモン。 オニクスは彼を何度か見かけていた。きざったらしい奴、と思っていたが、どうやらそのとばっちりを受けたようだ。 顔に奇麗な紅葉がついている。 「す、すみません!」 オニクスの目にまず飛び込んできたのは、メイド服の少女が、ギーシュに平謝りしている光景だった。 オニクスは近くにいた男子生徒に声をかけた。 「何事だ」 「えと、あのギーシュがさ、かくかくしかじか」 オニクスは全容を理解した。そして、その喧噪の方向へと足を進めた。 あのメイドには、ひとつ貸しがある。 「弱いものいじめはそこそこにしておけ」 ギーシュとシエスタの騒動の一部始終を見ていたルイズは驚いた。あの何でも無関心そうで無愛想な自分の使い魔が、なんとシエスタの助け舟に入ったではないか。 ルイズは興味がわいたので、それをもう少し見ていることにした。 「自分の過失で他人を責めるな」 「何を言っている、僕はこのメイドのせいで、二人もの女性のプライドを傷つけてしまったんだぞ」 「ハイリスクな行動を起こすならば周到にしろということだ。軽い気持ちでバクチをするな」 「バクチだと!?これは正しい行いだ、僕は多くの人を幸せに」 「出来ていないなら意味は無い」 「ゴーレムだか人造人間だがPTだか知らないが、そこまで僕を侮辱して済むと思うなよ」 「こないだの戦闘を見てまだその口が叩けるか、いい度胸をしている」 確かに以前のギーシュなら、尻尾を巻いて逃げ出していただろう。だが今のギーシュは違う。何だか知らないが絶好調だ。 ギーシュは負ける気がしなかった。 「決闘だ!ゼロの使い魔!」 「…愚かしい。だが、『痛まなければわからない』というアレもあるしな、ここは少し懲らしめてやろう」 「ふん、馬鹿め。ヴェストリの広場で待っている」 オニクスを尻目に去っていくギーシュ。 これを聞いていてもたってもいられないのは、ルイズとシエスタであった。 「オニクスさん!」 「…すまない、洗濯の借りを返すだけのつもりだたが、面倒なことになった」 シエスタがオニクスになかば懇願のように言った。 「私が謝ってきますから、ど、どうか決闘は」 「俺は負けない。俺は戦うために作られた。それで負けるはずが無い」 「でも、貴族の魔法を相手にしたらどんなに強い人だってやられちゃいます!」 「…心配は無用だ。俺が死んで悲しむものなどいない。俺は負けても勝っても、どうにもなりはしないさ」 「約一名悲しむわよっ!」 そこへ後ろから、大怪獣のような形相でルイズが歩いてくる。彼女は声を荒げてオニクスに言った。だがオニクスはさらりと受け流す。 「心配してくれるのか、嬉しいものだな」 「心配じゃないわよ!負けたらアタシが大恥かくでしょっ!」 「おおかたそんな所だろうとは思っていたが…」 「わかってるなら言うな!」 「それより、心配なら要らんぞ。俺は負けない、すくなくとも赤子の手をひねるくらい簡単だ」 「ひねりすぎもどうかとおもうけど…?」 「ああいう奴は、3回転ぐらいひねってやらないとわからない」 きっとオニクスに表情が出せたなら、彼は、笑っていただろう。だが、一方でオニクスは、悪い予感を感じていた。 (--------あの小僧、何かに『憑かれている』のか) だが、オニクスは悪い予感を頭から振り払い、集中する。憑き物が憑いているなら、振り払ってやるまでだ。 ヴェストリの広場。そこには多くの観衆が集まっていた。ルイズの使い魔と絶好調のギーシュ、どちらが勝つかで賭けが始まっている始末だ。 そして観衆の輪の中にたっているのは、ギーシュ、ただ1人。 「遅いぞ、ルイズの使い魔は」 そう。オニクスが来ない。十分が経過した今なおオニクスは来ない。 「捨てたのか、勝負を…!」 否、来ていた。 ギーシュの頭上、遥か上空。 彼は正々堂々戦う気など、はじめから無い。 「…面倒ごとは一発でけりをつけるに限る」 オニクスは右腕を天に掲げ、そこにエネルギーが集中していく、掌にたまったエネルギーはみるみる巨大なエネルギーの弾になり、一撃必中の「矢」となる。 そしてオニクスはセンサーのすべてを動員し、地上のギーシュを捉えた。 罠は無い 風は無い 弾道上に障害物なし 護衛もいない ガラ空きだ 「矢の鉄槌(リュストゥング・ファイル)」 一句、詠唱。腕を振り下ろし、金色の弾丸を叩き下ろすようにオニクスは地上に放った。 地上では、ルイズとギーシュがもめていた。 「キミの使い魔がちっとも来ないじゃないか!」 「アタシに文句言わないでよ!」 「部下の不始末は上司の責任だろう!」 「いつからアタシは上司になったのよ!ていうかあんたがふっかけた喧嘩でしょ、あんたが責任持ちなさい!」 「なんだと、ゼロのくせに!」 「言ったわね!!」 ルイズはすぐに懐から杖を抜き出し、ギーシュに向けて構える。ギーシュは平然と構えているが、周囲の生徒は「爆発」を恐れ、退避を始めている。 ルイズは詠唱を続けていたが、不意に、ルイズは詠唱をやめてしまった。ギーシュは気になってルイズに尋ねた、 「おい、どうしたんだ」 「……ギーシュ」 「え」 「上」 「あ」 上を見上げるギーシュ。 光の弾丸が雲を裂いて、ギーシュの元に一直線に飛来するのが、見えた。ギーシュは固まる。直撃コース、常識的に考えれば間に合わない。 光の弾丸は速度を緩めず、ギーシュの頭上に。 着弾。 ぽかんとしているルイズの隣に、音もなくオニクスが降り立った。ルイズは目の前に出来たクレーターを見つめ、放心している。周囲の観衆も同様に放心したようにクレーターを見つめ、動けないでいる。 「おお、当たった」 一方でオニクスはのんきそうに、そのクレーターを見つめている。ルイズは我に返ってオニクスに言った。 「あ、あれ、あんたの仕業でしょ!」 「いかにも」 「不意打ちってちょっと…」 「いいか、ルイズ」 オニクスがクレーターから眼を離さずに、ルイズに語りかける。 「お前はこの攻撃を卑怯と思ったわけだな?」 「あ、あたりまえでしょ」 「それは『真剣勝負』を前提にしてるからだ」 「それこそ当たり前じゃない!」 「大人になったらそんな言い訳は通用しないんだ、ルイズ」 「え?」 「いつまでも自分の前提で相手が動いてくれるとは限らない。おれはその厳しい大人の常識を、身を以て教えてやったのさ」 「………それにしたって、やりすぎよ」 「全くだ」 その会話に割り込む、男の声。ルイズとオニクスは、そして周囲の人間は驚愕した。その声の主は、 ギーシュ・ド・グラモン。 先ほど光弾を喰らいクレーターの爆心地にいなければならないはずの人物は、キズひとつなくクレーターから姿を現した。 「…うそでしょ」 ルイズの耳から、またひとつ何か抜けた。心はもう抜けたので、きっと魂だろう。 「…手加減したとはいえ…無傷だと!?」 「危ない所だったよ、まさか不意打ちとはね」 「大人の世界の辛口常識て奴さ」 「子供と女性にはやさしくしたまえ…紳士ならね」 ギーシュは手に持った造花の杖を構え直す。ルイズは一歩下がり、観衆の輪の中に、一人と一機が取り残された。喧噪は止み、空気は一変する。 両者の殺気が空気を張りつめさせ、どちらが仕掛けるか、どちらがやられるのか、そういう「修羅場」の空気が、ヴェストリの広場に充満する。 もはや会話すらためらわれるこの状況、先手を打ったのは---------- 破砕音。 オニクスは後ろを向いていた。その首元には剣が突きつけられている。 オニクスの視線の先には、人波を割って登場したと思われる黒い鎧を纏った戦乙女が、胸から「切っ先が無い剣の片割れ」をはやして、剣をオニクスに突きつけている。 切っ先はそれているが、反応が遅ければ、背後からの一撃は免れなかっただろう。 「…その場の状況は利用する。戦闘の基本だな」 「やはり、君に不意打ちは効かないか」 ギーシュは微笑みを浮かべている。既にその周囲には、七騎のワルキューレが待機している。 その姿は前ギーシュが使っていたワルキューレとは異なり、漆黒の刺々しい鎧を纏い、武器も禍々しい外見へと変化している。 「かかってきたまえ、ゼロの使い魔っ!」 「のぞむ所だ、ナルシスト野郎!」 剣の片割れをオニクスは引き抜くと、素早く右手の盾に格納された切っ先と合体させる。剣は完成し、光を纏ったソードへと変化する。オニクスはスラスターを吹かし、一直線に突撃した。 対するギーシュはワルキューレを突撃させ、それに応ずる。先頭の剣を持ったワルキューレの攻撃をオニクスは素早く打ち払い、跳躍。 二体目のワルキューレを踏み台に、さらに天高く飛んだ。そして大上段に構えた剣を、ギーシュに向かって打ち下ろす。 だがギーシュは素早くバックステップし、身代わりに一体ワルキューレを生成すると、それを盾に後退した。剣は一撃でワルキューレを裂く。 オニクスは素早くギーシュ本体からの攻撃を警戒し、空中へと飛んだ。 (有効な戦術だ) ギーシュはそれを冷静に観察する。護衛に一騎のワルキューレを従え、彼は遠くからそれを見つめていた。 (確かにワルキューレは、空を飛べない。そしてそちらは空中から攻撃が可能) だがギーシュは、笑っていた。 (確かに有効だ、「今までの僕」ならば!) 空中に飛翔したオニクスを追うように、六騎のワルキューレは背中から翼を生やし、飛翔した。 オニクスとワルキューレは、空中で熾烈な剣戟を繰り広げる。剣は火花を散らし、迫り来るワルキューレを足蹴にし、オニクスは空を舞った。 だが、斬り捨てようとワルキューレは補充され、7VS1の図式が覆ることはない。 熾烈な空中戦は、続く。 一騎のワルキューレがランスで突撃を仕掛けてきた。オニクスは蹴りで穂先を逸らし、ソードでワルキューレを串刺しにすると、さらに後方から迫り来るワルキューレに剣を払った。 剣からすっぽ抜けたワルキューレが、突撃してきたワルキューレと激突する。 オニクスは内心驚いていた。 小僧、ここまでやろうとは。 だが、この強さは既に「強力」を通り越して「異様」ですらある。 (クソ、やはりあれはただの魔術師なんかじゃない) オニクスの悪い予感は、既に確信に変わっていた。 (しかも、あの無尽蔵の魔力…まさか) さらにその確信は、新たなる予感を生み出す。 (『神』か!?) 次 回 予 告 変容する青銅の魔術師 そして事態は急展開を迎える それこそ悪魔の悪戯のように 悪夢は広場で幕を開ける 次回「玄武」 その者、神の御使いか。あるいは。
https://w.atwiki.jp/dng_dimension/pages/39.html
木立 麗(きりつ れい) ■性別 女性 ■学年 3年生 ■所持武器 なし ■ステータス 攻撃力:0/防御力:0/体力:5/精神力:5/FS(失った日々):20 特殊能力:『一般常識』 <計算式> 効果:フィールド《常識》設置 ※1 効果付属:死亡非解除 範囲+対象:同マス敵味方全員 時間:永続 スタイル:パッシブ 非消費制約:敵味方無差別 消費制約:永続戦線離脱 消費制約:DP献上1 FS:20 ※1:《常識》 《常識》の範囲内ではいかなる魔人能力も発動出来ず、発動していた効果も無効化される(召喚されたユニットも離脱するが、DPや死亡による精神減少は発生しない)。 《常識》の範囲内にいたユニットが範囲外に移動した場合、そのターン能力発動率は1/2となる。 《常識》があるマスやそこにいるユニットを対象として魔人能力は発動できない。 発動率:90%(GK独断) 発動率:90% 成功率:100% 能力原理 魔人能力によって全てを失った絶望から産まれた魔人能力を否定する魔人能力。 かつて彼女がいた魔人が存在しなかった世界を無理矢理その場に再現させる。 魔人能力に対して不可視の絶対防御壁となるも否定するのは魔人能力とそれにより産み出された物や存在のみの為、身体能力に対しては何の変化もない。 これは彼女が魔人の能力のみを眼にして目覚めた能力だからである。 キャラクター説明 恐怖の大王の降臨により、世界同時多発的に魔人が誕生し、恋人を失った絶望により自身も魔人となった存在。 彼女の世界はかつては魔人が存在しなかった世界だが、常識の通用しない魔人の大量発生と暴走とも言える能力の発動により、世界の文明は崩壊したポストアポクリプスと成り果てている。 かつての彼女は、勉強も運動も中の下ぐらいだったが、愛する者と並んでいても恥ずかしくないよう努力を重ね、どちらも学生トップレベルになってから告白し恋人関係となった。 だが、今の彼女は失った過去と未来から《常識》と言う狂気に取り憑かれており、失った恋人を取り戻す為にありとあらゆる手段や方法を用いり、その一つとして恐怖の大王が降臨するであろう世界に潜伏、可能であれば接触や消去を目論んでいる。 恋人の形見となってしまったペアリングの片方を、自身の右手薬指に嵌めている。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2757.html
消えゆく命の中、「彼」は思考した。反芻した。 きっとそれは年頃の子供が抱く「目上の人間に対する劣等感」みたいなモノで、一時的なモノだったのかも知れない。 自分はゼウスによって作り出され、捨て石となるために生まれた。 アレスを滅ぼすための先触れ。 つまり、自らには「死」の運命が確定する。 彼は捨て石である故に、感情は持っていなかった。自らを起動しようとする人間を全て抹殺し、日々を過ごしていた。 自分に流れ込む人間達の意志は、無意味な記号でしかなかった。彼を道具としか認識しない彼らの感情など、雑音に等しかった。 だが、ある日それが変わった。 ある時、とても軍人とは思えない少年少女が、彼に乗り込んできた。今まで触れたことのない少年少女の若い感性は、彼を刺激した。それはもともとゼウスの一部であった彼を、覚醒させるのに十分であった。 不安、喜び、憤り、悲しみ。 ある時彼らは、彼に語りかけてきた。彼を「モノ」としてでなく、「彼」として認識した人間は、彼らが初めてであった。 彼は少年少女に、親しみを覚えた。そして、交流を図ろうとした。だが、皮肉にも彼が少年少女と深く繋がるごとに、彼らの体は蝕まれた。 彼は悲しんだ。 -----カナ。マサヒト。 彼は、この矛盾に激怒した。 そして、自らに死の運命を与えたゼウスに、激怒した。 そして、この運命を生み出す元凶となったアレスに、激怒した。 それらは無垢な彼を怒りに染めるのに十分なパワーを持ち、そしてその怒りは単純なゼウスへの憎悪に変じた。 やがて、彼は少年少女を道具のように扱うようになった。深く自らの根を下ろし、自分の手足とした。 ゼウスへの復讐だけが、彼を突き動かすようになった。 思えば、あの時あの戦いを静観していれば、何も起こらずにすんだのかもしれない。スサノヲはジュピターに破壊され、彼は役目を終えて解体される。それだけのことですんだのかもしれない。 だが、ゼウスへの憎悪が勝った。 ジュピターの頭部を握りつぶした時、復習を満たした満足感と共に、虚ろなものと、もう戻れない、という自責の念が流れ込んできた。 コドモの劣等感は異常な程肥大化し、ついには他人を巻き込んだ。ここで戻ることは出来ない。そして彼は、もう一人の憎悪の根源、アレスにその剣を向けた。世界の新生を謳って。 負けることは許されない。 例えそれで何も得るものが、なかったとしても。 彼は剣を抜いた。 思えばあの時から、アレスの剣に自らの命が絶たれることを、望んでいたのかもしれない。 走馬灯のように逆再生された記憶が途切れる。 景色が白く霞んでいく。 俺は、あんなことがしたかったんじゃない コピーという烙印を押されるのが嫌だっただけ 劣化複製として死にたくなかっただけ アレスの代用品と ゼウスの代用品と いわれたくなかっただけ。 不意に景色が黒く暗転した。それと同時に、目の前で剣を掲げるアレスの姿もまた、消えた。周囲のいっさいは消失し、彼は無に放り出された。 どこが手で、どこが足なのか、わからない。わずかに生きる視覚を総動員し、状況を、把握しようとする。だが、わからない。何もかもが、わからない。 -----ここが、地獄なのか? -----ちがうよ。 声。その声は、厳格な老人の声にも、妖艶な女性の声にも、無垢な子供の声にも、しわがれた老婆の声にも聞こえた。 -----君は必要とされている。まだ、誰かに その言葉が終わるか終わらないかのうちに、銀色の視界が開け、彼の意識は失われた。 何十回目かのサモン・サーヴァントは、成功した。沸き上がる魔力の奔流。風は周囲の物体を吹き飛ばすばかりの勢いで荒れ狂った。そして、数秒のうちに止んだ。 ルイズは儀式は成功した、と確信する。間違いはない(ハズだ)。この手からほとばしり、杖に至り、その先端から大気へと放出される魔力を、感じ取れた(気がする)。 今の自分なら、きっと神とて一撃で打ち倒せるだろう。そうおもえるほどの高揚感が、今の彼女を満たしていた。 「……来た、私の使い魔が」 煙が晴れる。ゴーレムか。飛竜か。それとも亜人か。ルイズの期待は高まる。 煙の向こうに見える使い魔の姿を、ルイズは想像した。そしてそれを従える自らの姿も。 サイッコーの使い魔とサイッコーのアタシが、今に学園のトップになってやる。 そして、煙が晴れる。 煙の向こうに見えたのは、石像だった。 しかも、頭だけの。 「………」 ルイズも、周囲の人間も、言葉を失う。それがただの頭なら、即刻周囲の生徒はルイズを笑い飛ばしたことだろう。だが、それはただの頭ではなかった。 大きい。 それの全高は、軽く2メートルを超えている。小さなルイズからしてみれば、さらに巨大に見えたことだろう。 「…なにこれ」 アーティファクトの類だろうか。ルイズはゆっくりとそれに近づいていく。周囲は押し黙ったままだ。頭は動かない。 ルイズは近づく。頭は動かない。ルイズはさらに近づく。頭は動かない。ルイズはそれに、手を触れようとした------- 「危ない!」 誰が叫んだのか。途端に、石像の目が光った。ルイズは突然の事態の急変に、腰を抜かして座り込んでしまった。赤い輝きが、石像の目からほとばしる。 一部の生徒は既に逃げの体勢に入っている。場の空気は緊張から危険へと変じた。 「え、え、えぇぇぇええ!?」 だがルイズは動けない。目の前の石像の動向を、見守ることしか出来ないのだ。石像は動かないが、目の光は止まず、真昼よりも明るくその場を真紅に染めた。 だが、それだけだった。光は次第に収束し、灯った時と同様、また静かに消えていく。ルイズも、周囲も安堵した。 「……ほっ」 ルイズが息をついた瞬間。事態は再び急変する。石像から触手が伸びた。黄緑色に輝く触手。触手は石像の上で、絡まるように暴れた。 「下がりなさい!」 儀式の監督に当たっていたコルベールが、生徒達の前に踊りでて、自らの杖を構える。これは使い魔と呼ぶに相応しくない、単なる魔物だと判断したのか。既に詠唱を始めている。 だが、触手の主はこれに気付いたのか、頭上で暴れていた触手は突如規則的な動きに変じ、コルベールの杖を叩き落とした。 さらに触手は向きを変えて伸びる。先ほどまで無秩序に暴れていた触手が、一方向へと、加速する。ルイズはその触手の行く先を見やった。 観衆のほうに向かっている。その方向に集まっていた生徒達の一部は蜘蛛の子を散らすように逃げ出す。触手はこれを個別に追った。生徒の悲鳴が響き渡る。 その追われる生徒の一人があしをもつれさせ、派手に転んだ。 「モンモランシー!」 その少女は、立てロールの髪を何本もさげ、いかにも「貴族」と言ったカンジの少女だった。そのモンモランシーに触手が迫る。 一方のモンモランシーは恐怖に顔を引きつらせ、杖を構えることすらままならない。触手は速度を緩めることなくモンモランシーに到達した。 「いっ、いや、ひやぁあああああっ!!?」 昼間の学園に響き渡るモンモランシーの悲鳴。触手はモンモランシーに吸い込まれるようにして内側へと侵入し、消えた。 同時に他の触手が消失し、モンモランシーは弓なりにビクビクと痙攣して震えている。依然顔は恐怖で固まったままだ。 前代未聞の事態に、コルベールもうかつに手を出せずに固まっている。足腰の調子が戻ったルイズは立ち上がると、石像を仰ぎ見る。 「あんたが…あんたがやったの!?」 その声とほぼ同時に、病気の発作のように震えるモンモランシーの動きが止まり、モンモランシーはがくりとたおれこんだが、緩慢な動作ですぐに立ち上がった。 だが、その顔はうつむき、無表情で固まっている。 「な、直ったのか?」 生徒の一部が彼女に語りかけるが、彼女は反応を返さない。うつむいたまま、固まっている。見かねたコルベールが彼女に近づき、肩を揺すった。 「大丈夫ですか?」 何度か肩を揺すられるモンモランシー。だが、顔はうつむいたままで反応は全くない。コルベールは再び揺すった。 「返事を返しなさい」 『…うるさい』 モンモランシーは、声を発した。 だが、それはそこにいる人間が知っているモンモランシーの声ではなかった。どす黒い、邪気に満ちた声。 まるで、ファンタジーに登場する魔王のような。モンモランシーはコルベールの腕を振り払うと、コルベールが反応するより早く、掌底をコルベールに叩き込んだ。 コルベールは凄まじい勢いで吹き飛び、3メートル程空中を舞った。心配した生徒がコルベールに駆け寄る。 この時、ほとんどの生徒の視線は、当然ながらそのモンモランシー…否、「モンモランシーかどうか疑わしい何か」に向けられている。 驚愕で動けない、というのもあるが、やはりそうさせるのは、恐いもの見たさなのだろうか。モンモランシーは、次にルイズを指差した。 「…わたし?」 『俺を呼んだのは、お前か』 「そ、そうよ。わたしがあんたを呼んだのよ。あんたはわたしの使い魔なんだから、わたしの言うことを聞きなさい」 ルイズは精一杯の威厳を混めて言い放った。だが、それはこの場では逆効果だった。 『ふざけるな…』 トーンの低い声でモンモランシーは言った。怒気がこもっている。怒気を通り越して、殺気の域にまで来ているかもしれない。 困惑するルイズを尻目に、モンモランシーは右手をスッ、と天にかざした。途端、モンモランシーの腕から先ほどモンモランシーを襲った触手のようなものが数本のび、モンモランシーの掌の上で収束した。 形態を失い、一個の個体に変じた触手は、一本の剣となり、モンモランシーの手の中に収まる。鈍い輝きを放つ剣は、殺意の証。 『死人をおいそれと起こすな』 どんっ。 モンモランシーが踏み込んだ。まるで彼女とは思えない。達人の域にまで達したその動作はルイズに身構える暇を与えない。 わずか4歩で、モンモランシーはルイズのまさに目の前まで肉薄し、それと同時に剣を振りかぶり、それと同時に空いた腕でルイズを殴りつけていた。 顔面にまともに入ったパンチに、ルイズはふらりとよろけて後退し、豹変したモンモランシーを見据えようと顔を上げる。 目の前にあったのは、剣の刀身だった。鈍い輝きが、目の前に、ある。 だが、それ以上にはならなかった。剣はルイズの目の前でまさに「停止」していた。モンモランシーもまた、石像のようになり、動きを止めている。 ルイズもまた、極度の緊張感と何が起こったかわからない不安と、死の恐怖が先ほどまで目の前にあった故の緊迫感により、動けない。 そのまま数秒が経過した。 『…クソ…この少女の魔力量では、やはりライトニングソードは…無理か』 次 回 予 告 呼び出されたものが何かもわからぬままに、 混乱は増大する。 ゼロの少女が呼んだものは、 神か、悪魔か。 次回「前世」 機械をまとった神々の戦いが、始まる。