約 492,596 件
https://w.atwiki.jp/shousetsu/pages/871.html
「な・・・・・・に・・・・・・?」今まで光を失っていた男の目に、力が戻った。 星光(シングァン)は言った。「カ.マをかけてみたが、図星か」男は目を大きく見開いたまま何も言わない。 星光は挑発するように片眉を上げた。「刺客が拷.問を受けてまで守ろうとするもの。忠誠か、そうでなけ れば家族くらいのものだ。貴様は誰かの盾では無さそうだ。ならば忠誠ではないだろうな」 男は震える唇から言葉を搾り出した。「貴様・・・・・・何をするつもりだ・・・・・・!」「言っただろう?お前が協 力的なら、助けてやると言っているんだ。」「助けるだと・・・・・・どういう意味だ」星光はフンと鼻を鳴らして 言った。「しらばっくれるな。貴様の主人に、家族を人質に取られているんだろう。例え死.んでも口を割ら ぬようにな。貴様の態度によっては俺が保護してやってもいい。一生貴様の主人が手を触れられぬよう 俺の庇護下に置いてやる」 男は眉間にギュっと皺を寄せていた。しかし、それは拷問の痛みのためではなかった。 「信じられるものか・・・・・・そんなことが」「信じる信じないは貴様の勝手だ。だが、どちらにしろお前は 協力しざるを得ないぞ」「・・・・・・何?」 そのときだった。隣の部屋から声が聞こえた。まぎれもない、聞きなれた女と赤ん坊の声・・・・・・。 星光は肩をすくめて言った。「さっきお前が口を滑らしてから、外の部下に合図を出した。優秀な情報網 を持って俺は幸せ者だ」 また女の声が言った。「あの……そろそろ教えてはいただけませんか?突然つれてこられて混乱して おります」それに答える星光の兵士の声「すぐに分かる。もう少し待て」星光引き取って言った。「貴様の 態度次第だがな」 男は歯をギリギリと音がするほどかみ締めた。「なんという汚い男だ・・・・・・これが一国の皇子とはな」 星光派バ.カにするように笑った。「お前の言う汚い皇子を汚いやり口で消そうとしたのは誰だったか」 男は星光を睨みつけた。従わなければ妻と子は間違いなく殺.されるだろう。それは間違いなかった。 もう男に選択の余地は無かった。 空が薄明るくなったころ、星光と紅兎は星光の宮へ戻る道をゆっくりと歩いていた。紅兎には星光が数 時間前に比べ相当やつれたように見えた。眼は落ち窪み隈が出来ている。足取りもなんとなくフラフラと 頼りない。それに、明け方の光にぼんやりと照らされているにしても、顔があまりにも青白かった。 刺客の男から聞きだした情報か、はたまたその直後の男の処刑に立ち会ったせいか、何がこの若い皇 子をここまでやつれさせたのか、紅兎にはわからなかった。 「紅兎」星光が急に立ち止って言った。「俺は正しいことをしたと思うか?」紅兎は答えなかったが、星光 は構わず続けた。「分からないんだ。あの男を殺.す必要があったのか、あそこまで苦しめてまで聞き出 す必要があったのか。俺の手には、お前の太刀でやつの指を切り落としたときの感触がまだ残ってる。 戦場で人を斬るのとは違う、斬らなくともよかったもしれない指だ」星光の手は震えていた。紅兎は思っ た。この皇子はあまりにも優しすぎる。 「・・・・・・恐れながら、殿下」紅兎は言った。「あくまで個人的見解としては、殿下は必要なことをなさった と思っております。全てが、御身を傷付けた賊を引きずり出すために、必要なことでした」紅兎が言うと 星光は自嘲気味に笑って言った。 「俺の身か・・・・・・何の役にも立たない第二皇子を傷付けたために、奴は殺.され、これから何人も 死.ぬのか」星光はまた歩き出した。紅兎はゆっくりと思考を巡らしながら、その小さな背を追った。 NEXT 12話
https://w.atwiki.jp/shousetsu/pages/769.html
【名前】 ダル 【性別】 男 【職業】 アクアリウム学校3年 【ES色】 青(大分黒っぽい) 【サモン】 木刀 キャラ紹介- ビジュアル:天パ、髭面。かなりゴツイ。右目が一重ゆえ、右目だけ若干細目。 制服については、だらしなく着崩している。 ベルト代りに、剣帯をつけている。 性格:能天気、面倒くさがり屋、楽天家。 自分のやりたいことしか興味を持たず、興味のない授業や話しのときは専ら寝ている。 赤点ギリギリで進級してきた問題児。 親類のショウとは、相対的。 入学当初は、かなり期待されていたらしい。 年々黒くなるESは仕様。 サモンの木刀はかなり使えるが、実技の授業以外で出したことがほとんどない。 ただ、サモンをだす瞬間だけ、ESが綺麗な青になる。 実家は神主と軍人の家系らしいが、事実関係は不明。 兵学を修めているので、指揮術には定評あり。 親類のショウとは、学年を超えて交流をしている。 其の為、ニ年生と勘違いされる事が多々ある。 一応寮長。 口癖:「やれやれ……」
https://w.atwiki.jp/shousetsu/pages/106.html
男はまだ走っていた。 だが、一行として住宅街から抜けることができなかった。 息が白い。空気が澄んだ・・むしろ沈んでしまった夜空が星を一杯に散りばめられていた。 走るのに少し余裕を見つけてしまったのか、男は夜空を見上げた。それはトウキョウとは思えないような夜空だった。 「美しい夜空だ。」男はそう呟いてしまった。 だんだん足が止まっていくのを感じた。だが、止めようとは思わない。無気力に体が夜空に持っていかれてしまったのだ。 そう、空さえも誘惑の悪魔と化していたのだ。 嗚呼、このまま終わってしまうのだろうか・・そう心が囃す・・だが、冷え切ってしまった体が動こうとしない。さっきまで滾らせた汗が冷えに冷えた。寒い。美しい。疲れた・・重く圧し掛かる無常感・・ だが突如!! 「ゥヒィッ!アヒアィ~ァ~~!!」 謎の悲鳴が聞こえた!!男はビクリと震え上がった。 後ろを向くと、一人の電柱によしかかった『酔っ払い』がいた。 男は野良犬が立小便しているような目で酔っ払いを見た。 酔っ払いはとうとう精神破損してしまったのか、倒れた。 咄嗟に男は酔っ払いに肩を貸した。 電柱までの足、2,3歩を動かしたのは男が困ってる人を放っておけない性格からだった。 女がただの平サラである男を好きになった理由はそこにあった。故に男は首をかしげ、愛した女がよっぽどのことがない限り振るはずがない。そう思っていた。 やがて酔っ払いは酔っ払いらしいシャックリをして、 「兄ちゃん・・ヒヒ・・今日の空はきれいだねえ・・やがて明けようって言うのに、まだ夜空が太陽を制している。」 男は妙に意味深なことを言った後、突拍子もなくさらに甲高く叫んだ。 「知ってるかぁ?年末までに3つの願い事をやっておくと神さんが、イィイヒィィ~~事してくれるんだと。。」 あまりに欠落した言葉たちの寄せ集めだったが、男はその言葉に似たことを聞いたことがある。 それは女との結婚式の最中だった。 男は教会で女の着替えたウェンディングドレスに舌鼓していた。男にとっては良い意味だった。得に何の問題もなく、家族の承認を得て、そして、暖簾 に手押しの幸せな未来がやってくるのだ。だが、それが現実でも一瞬一瞬が男にとっての語りつくせない幸せとは感動、楽しみ、次期に実る新たな生命・・数え 切れないものばかり・・コレもその一瞬だった。 教会の表口に誰でもどうぞ?っと言うように雑誌のように置いてある、【聖書】が目に留まった。 その中の第何章かは忘れたが、ペラペラめくりその一文に、 「天国に行き、生き返るときは神に3つの願い事を言う。それが生まれ変わって記憶のない身体で叶えれば、もう一度、生まれ変わる・・・」と。 「そうか・・」 男は一人夜が明けかけた空に呟いた。 「俺は今知ったんだ・・いや、思い出したんだ。俺は3つ願いを叶える!」 酔っ払いはまだ起きていた。黙ってその独り言を聞き終えたのか、 「んじゃぁ、何かしらねぇが・・もう正月だけど・・まだぁ、、俺には間に合う気がするんだわぁ・・頑張れよぉ・・う~っひ!」 最後に8秒にも及ぶゲップを浴びせ、酔っ払いは去った。酔っ払いが去った背からサンシャインが追いかけていった。 「もう、時間は過ぎてる・・でも、やらなければ!」 男にまた火がついた。何かさっきとは違う火だ。 靴はまだボロボロじゃない。息も出来る。眼鏡はもうこの際捨てよう。ネクタイも上着も要らない! 太陽を見つめ、男は光の中に足を伸ばした。 男は走った。 走り抜けた。小さな小道、デコボコ小砂利道、倒したゴミ箱、群がる烏、猫踏んじゃった。 男は感じてきた。男は『何とかハイ』と呼ばれる状態になったのだ。気持ちよくて仕方がない。正直名前などどうでも良い!疲れなど何処吹く風、男は無敵だ! そして、とうとう住宅街を抜けた。 そこにはタクシーが一台止まっていた。 ドライバーが暇そうにしてる。すると、男にドライバーは気付いたのか、 「乗ってくかい?」 と一言。 これに乗れば男は無事に着ける。 だが、男は自分の中でそれを否定した。何とかハイが胸を打つのか、それとも別のものか・・男は利益である、理性を尊重し、 「はい。」 と言ってしまった。 「乗りなぁ。」 ドライバーはスイッチを押し、助手席のドアを開けた。 助手席からは、臭いがした。あの酔っ払いの臭いだ! 「やっぱ臭いますかい?前の人が中国人か!って言うぐれぃ、良くゲップをしたもんで。」 男はドアを閉めた。 「止めるんですかい?」 ドライバーは少しがっかりした顔で男を見た。 「申し訳ございませんが・・」 「やっぱ、臭いもんナァ・・いい!いい!すまんって!」 ドライバーは身振り手振りでそんな事を言った。慣れているのか良く作られた作り笑いだった。 「私は走ります。それに意味があるのだと思うのです!」 酔っ払いは天使だった・・ 男が女に真実を尋ねること、娘たちと三人で御節を食べること、そして走りぬくこと。それが男の願いだったのだ! 男は最後のクラウチング体勢を切って走り始めた。
https://w.atwiki.jp/shousetsu/pages/863.html
例えば家。 マンションや一軒家などマイホームを持ったとしても住民税、固定資産税等の税金も掛って仕方がない。マンションはさらに管理費なるものがかかり、更に負担が増加している訳である。例えば私が住んでいる此処なんかは無駄に管理費が高く、三十年近くしたら同じマンションがもうひと部屋変えるくらいある。正確には月二十万強。まあ無駄に高いが、管理費が高いだけあって設備もしっかりしており、全室防音設備があり、住居の部屋以外には地下にカラオケルームやスポーツジムなどあり、温水プールなんてものもある絵に描いたような高級マンションである。一度も使ったことないけど。 後は週に数回何処かのシェフにルームサービスとして料理を作って来て貰える。管理費からその食費は出ているようだが、一応月に五万までと決まっている。これは私としては管理費から出ている訳であって、使わないのも勿体無いので限度ギリギリまで利用している。恐らく割増に取られている気がしないでもないが、そこそこ美味しいので気にはしていない。食材も普通に高そうなのも含めて。 他には風呂や水道、ガスが使えなくなるような故障が起こった時は修理の業者も呼んでもらえる。これも管理費から出るようなので、ここでは管理費はどちらかというと保険でもあるような気がする。 私はここに住み始めて三年近く経つ。立地も日当たりも良く、マンションから少し歩けばいくつも有名なブランドショップが争っているような激戦区があり、何でも揃っているかの様な大型百貨店もあるが、私は住み始めた時は良く行っていたが、最近では出歩くことも少ないので、いいとこその周辺に並んでいるコンビニくらいしか行った記憶がない。 特にブランドショップでは、服や鞄などには興味がなく、時計を何個か買っていた。とはいっても住み始めた時なので、マンションを購入し、財産も減っている時だったので思いきった事も出来ずに、金で出来ている五十万程度のだったが、一般大衆には高級品には違いないだろう。私も少し前までその一人だったけど、やはり金によって性格は変わるものなのかもしれない。まあその時計は部屋のインテリアとして時を刻んで働いている。やはりといっていいのか、値段が張っていた分見た目だけでなく、性能もきちんとしており、最近多い電波時計でも無いのに、時差はあまりなかった。 しかしブランドショップは繁盛しているのに対して、百貨店というのは結構存続が危ういらしく、最近ではネットでの購入の方が安く済んで楽という点があり、百貨店ではセールをしても年々客が減ると共に比例し売り上げが減少しているそうだ。確かに百貨店というのは大きな土地を必要とし、人件費というのもかなり掛かる。それに対してネット通販なんてものは、土地代は適当な事務所を構えて、倉庫を用意するだけで百貨店よりも安くつくため、値段も下げやすいのだ。 それに最近ではネット通販を扱う場所も多くなり、より一層百貨店というのはきつい商売が強いられるというのには変わりはない。 まあ私にしたらこんな事考えても全く関係ない事だと正直に言っておく。 なんて事を考えつつ、久しぶりに外に出てみる事にする。 良く分からない柄のタンクトップにデニムの半ズボン、千円位で買った日傘に安物のスニーカー。誰がどう見てもその辺の女子である。誰も金を持ってるなんて思わないだろう。財布の中にはクレジットカードと、ないとは思うがクレジットカードが使えなかった時の現金数万円だけが入っている。クレジットカードはブラックなんて事は無く、あれは本当にほんの一握りで私なんかが持つには程遠い。 エレベーターは二基とも最上階の二十階を示しており、その片方が降りてくる。エレベーターが私のいる十一階に降りてくると、私はそれに乗り込み一階まで降りた。 エレベーターを降りた先にはシャンデリアなんかを飾ったりしているエントランスがある。壁にも良く分からないが有名なのかも知れない画家の絵が飾られていたりするのだが、盗まれないのか他人事だが心配になる事もあるが、むしろ盗れるものなら盗ってみろというような印象もする。あちらこちらに防犯カメラが備え付けられているし。 ともかく私はそのエントランスを抜け、先ほど言っていた百貨店に向かってみる事にする。 百貨店に着いた。 が、疲労が激しい。 筋肉痛という運動不足が祟ったようだ。分かっていたけど。 むしろすぐに筋肉痛が起こるだけ若いと、勝手にポジティブに考えてみるが、運動不足には変わらなかった。 私は初めに何か休憩がてら食事でもしていこうと考え、フードコートにでも行く事にする。 ここのフードコートは大型百貨店なだけあって広々としており、店も結構あるものの、平日の昼食時間も過ぎており、人はそんなにいなかったが、さすがに少なすぎるという印象もある。それほど集客率が減っているのだろう。 やはり足を運んでみてみると良く分かる。 まあ、私は一応お腹が空いているのは事実であるので、何か買う事にする。 もちろんセルフサービスなので、私から店に出向くが、何が食べたいという事も考えてないので、少し悩んでみる。 あっさりした和食にするか、それとも最近インスタントばかり食べていたラーメンにするか、或いは定番のカレーに走るか、ちょっと私は場違いなイタ飯にするか、某美食倶楽部支配人が嫌いなハンバーガーなんてものもいいかも知れないと悩んでみる。 悩んだ結果は飲茶だった。 ここの飲茶はちゃんとした感じで、私は適当な茶といくつか餃子や春巻きなど鹹点心だけを買ってみた。 作り置きという訳ではなく、私が注文してから作っているようで、少し時間が掛かりそうだったので、先に茶だけ貰って飲みながら待つことにした。 茶は点心の鹹点心という塩味中心のものと逆に甜茶を買ってみた。甜茶は逆と言ったとおり甘い薬草茶である。甜点心を買ってみても良かったのだが、私はそこまで甘ったるいのは好きではなく、甜点心はお菓子という印象があり、どちらかというと昼飯には向いていないと考えて止めておいた。 甜茶は普通に甘みを含んだ美味しいお茶だった。まあどんな葉が使われてるか知らないけど。 軽く茶を啜っていると、注文したものが出来たようなので、とりに行く。 買ったのは定番の餃子、春巻き、そして実は好物の小籠包だ。 餃子は普通に肉と野菜を練り込んだものが餡として入っている。水餃子なんてものもあったが、芸もなく普通の餃子を選択した。醤油に軽く付けて食べる。どうやら韮が多く入っているため、臭いがきつく、大蒜以上の臭いだ。春巻きは口にして分かったのだが、どうやら此処の春巻きは小豆餡を入れた甜点心だったようだ。普通の春巻きだと思って確認しなかったのが間違いだった。そしてここの小籠包は肉汁が多く入っており、口にした瞬間、肉汁が口の中を駆け巡る。肉も味付けは濃くないが、しっかりしていて歯ごたえもある。百点を挙げよう。と料理評論家みたいな事を考えながら一人黙々と食する。 少し離れた所にいたにいたカップルらしき若い男女には中指をこっそり立てておく。 「止めておきなよ」 「珍しいわね、こんなところで声を掛けてくるなんて」 「外に出る方が珍しいよ」 「そうかもね」 「どうして外に出てきたの?」 「外の空気が吸いたくなった。じゃ駄目かな」 「そっか、でもそれで筋肉痛なんてなってたら世話ないね」 「御尤も」 「スポーツジムに行ったらどう?」 「倒れるわよ」 「日々精進だよ」 「日々衰退してるから安心して」 私は視線を感じ、その視線の先を見ると先程のカップルは私の方を見ていて、一人で何を言っているのかと怪訝そうな目をして去って行った。とりあえずもう一度中指を立てておく。そんなことより私の事を颯爽と忘れてほしいのが本音だ。
https://w.atwiki.jp/shousetsu/pages/422.html
そして あれは結局夢だったのか。 もしくは現実か。 今となっては分からないけど、しかし―― +++ 「ひゃははははははははははああああ――っ!」 と。 一人の青年が――可笑しく笑いながら、狂うように叫びながら。 一人の男性へ――真っ直ぐに駆けていき、一目散に駈けていき。 フォルテに向かって、剣を突く――! ……が。 フォルテは間一髪、手に持つステッキを器用に使い、その攻撃を受け止めた。 しかし、青年が繰り出したそれは――速度と強さをもうしぶんなく詰め込んだ類のものであったので、フォルテは剣を受け止めた際に、まともに衝撃を喰らってしまう。 「ぐっ――こ、の、馬っ鹿野朗が!」 そして痺れる腕を気にしながら、フォルテは反射的に悪態を吐いた。 +++ ――少し時間を遡る。 彼は前兆も前置きもないままに、そこに居た。 「……何処だ、此処」 突然現れた彼は、首から上を除いた体全体を鎧覆った格好――大雑把に言ってしまえば、中世の騎士のような容姿である――をしていて、さらに腰には鞘つきの一本の剣を携えている。 するとそんな彼の呟きに答えるように、どこからか不機嫌そうな声。 「おいおいおい、てめえいきなり何言ってやがる。此処は、オレ様の私的空間だぜ?」 「……意味が、不明」 と。 短く青年は再び、何かを我慢しているように――否、抑えているかのように、呟く。 「はっ、意味不明なのはこっちのほうだ。てめえのその格好――仮装でもしているつもりか? この空間に、ハロウィンなんてくだらないイベントはねぇぞ?」 「……ならば、戦う」 「あ?」 おいおい、脈絡も何もねえことを言うんじゃねえ――と。 フォルテは続けようとした時。 彼は、腰に、手を、伸ばし――剣を、掴む。 刹那。 「いひひ」 と、不気味に不可解に、青年の顔が歪み始めた。 そしてそこで初めて、そして唐突に、彼は名乗る。 「俺っちの名前はベンジャミン――人は俺っちを『狂騎士』って呼ぶけどな。俺っちはやっぱり本当の名前の方が気に入ってるから、ベンジャミンって名乗ることにするぜ。というわけでだ―― ――あんた、俺っちと一緒に熱く殺しあわないか?」 あ、ちなみに拒否権はないぜ? 青年――ベンジャミンは最後にそう締めくくり、大声で笑い始め―― +++ 「楽しいな楽しいね楽しいだろあんたも!?」 「楽しいわけがねえだろうが!」 フォルテはそして必死の形相で、ステッキを持ち上げるように思いっきり剣をかちあげると――何故かそのままステッキを、上へと投げた。 その光景を、ベンジャミンはフォルテに追撃をしないままに、じっと見つめた後、 「……ひゃは、何してるのさ、あんた。降参のつもりか?」 「はっ、誰がするかそんなこと」 そして――ふいに。 ヒュンヒュンと、何かが回る音。 「さらに言うと、オレ様はお前と殺しあうつもりは毛頭もねえ。何故なら殺しあいにならなくなるからだ――」 フォルテは言いながら、ゆっくりと腕を音をする方――上へと伸ばし、何かを掴んだ。 何か、とは。 銀色に鈍く輝く――それは、一刀。 彼はそれを見せびらかすように、ベンジャミンに向けてから、 「――オレ様のほうが圧倒的に、てめえよりも強えからな」 +++ それからは早かった。 いやというよりも、数秒で決着はついた。 その過程は目にも留まらぬ速さだったために、詳細を伝えることはできないが。 ――結果。 フォルテ対ベンジャミンの殺しあいという名の決闘は、前者の勝利でその幕を閉じた。 「……そんな、嘘だ」 「嘘じゃねえ。現実を見やがれ」 と言っても、此処自体は現実じゃねえけどな。 フォルテは言って、縄でがんじがらめに縛られたベンジャミンを見下ろす。 ベンジャミンは所謂、二重人格。 普段は無口で大人しい青年だが――しかし。 剣に触れた瞬間から、彼は『狂騎士』へと変貌する。 それでも、その二つの人格に共通することが在る。 「……俺っち、戦う」 ……戦うの、好きだ。 「…………」 フォルテはそんな独り言のような呟きを、言いがたい意を込めた瞳で見つける。 「ならてめえは、音楽は好きか?」 「……音楽も、好き」 「は、そうかよ」 フォルテは軽く笑ってから――いつもの席へとつく。 それはすなわち、突如闇より現れた――黒いグランドピアノの前。 フォルテはひとつ、疲れたように溜息をついてから、言う。 「オレ様の音楽に、酔いしれろ」 +++ 「ひゃははははははははははああああ――っ!」 と。 一人の青年が――可笑しく笑いながら、狂うように叫びながら。 一人の兵士へ――真っ直ぐに駆けていき、一目散に駈けていき。 そして、宣言する。 「俺っちはもう二度と負けねえからなあああああああ!」
https://w.atwiki.jp/shousetsu/pages/91.html
↑old ↓new 現在99(98)作が保管されておりますよー( * 遠い思い出 ←こちらはハンゲブログ作品の中にあります。 殺人請負ネット 輪廻のミルクティー 涙の氾濫 僕 ぼく ボク 一言 歯車よ 廻れ 歪んだ童話 人形遊び Chocolate ComeBackMyChocolate new year…?? 救世主(はむ) 寄り道――(はむ) 切り離せない合わせ鏡 信(はむ) 兎の眼(はむ) 選択問題(はむ) 男女差別(はむ) 民謡(はむ) 溺死(はむ) 現実逃避(はむ) 『あ』から始まる、愛の歌 『い』から始まる、嫌なやり取り 闇(はむ) 儚き幻想の共有(はむ) 命のトレードができたらいいのに、な(はむ) マリオネット(はむ) 発条仕掛けの玩具(はむ) 青春?(はむ) 海と、僕と、鴎(はむ) 君に伝えたい、この詩を(はむ) 誕生石 金剛石(はむ) ピーターパン(はむ) ブランコ(はむ) ローレライ(はむ) 月よ、月よ。(はむ) キャンバス(はむ) あれあれ 不思議だって(はむ) ごめんね(はむ) バレンタインネタなので、あえて無題(はむ) 電車の中にて(はむ) 青夢様に捧げる詩(無題ですが) (はむ) 季節リレー(はむ) 私の『愛』(はむ) 路地裏(はむ) 叶わぬ恋(はむ) 卒業式の笑顔(はむ) 桜の花よ 咲かないで(はむ) 蒼白Discord(はむ) ある中学生のひと時(はむ) Last Promise(はむ) 狂う愛故(はむ) 夢幻歌奏(はむ) 黒猫と女(はむ) 露の小人(はむ) 掛け間違えたボタン(はむ) 狐の手袋(はむ) あの頃の私は もういないんだ(はむ) 『ごめんなさい』(はむ) 空と桜と自分(はむ) 狂愛人殺(はむ) くるりくるくる(はむ) 悪戯メール(はむ) ショート(はむ) 滅渦[メカ]心情(はむ) 幸せ病院(はむ) 寿之街 +原作著者dulcitone(はむ) 心理アトマイザー(はむ) 高速降下警報発令(はむ) 私のうるさい鶏さん(はむ) 紅い三日月を浮かべ。(はむ) 白の 小箱”(はむ) 「その……もう一回言い直していい?」 (はむ) 飼い主と子犬(はむ) My hands is dancing(はむ) 嘘吐きな憧れという恋(はむ) 無題1(はむ) 最終詩葬(はむ) 夢物語(はむ) 最初詩創(はむ) ★が☆になることはない(はむ) 橋姫(はむ) 緑眼の女(はむ) 水面に映る世界に貴方がいる気がして(はむ) 七色しゃぼん玉(はむ) 完璧なものなんてないんだから(はむ) 繋祈(はむ) 狂思想(はむ) 今、君に感謝のキスをする(はむ) はちゃめちゃ旅物語(はむ) 真・最終詩葬(はむ) 田舎モン(はむ) 一時の誇りは埃となり消失に変わる(はむ) 求めたものは終焉と共に手に入れた(はむ) はやく気づいてほしいのサ(はむ) 鏡文字の真意(はむ) 蛻の殻に残されたもの(はむ) 相容れることのできない愛なら私は逝く(はむ)
https://w.atwiki.jp/shousetsu/pages/377.html
言葉だけじゃ足りないと 君自身に言われた僕は 不意に君のくちびる奪ったね 君は驚いた顔していたけど すぐに笑ってくれたよね 君の笑顔は可愛すぎて僕は ぎゅっと抱きしめたくなったんだ
https://w.atwiki.jp/shousetsu/pages/204.html
ども♪keyといいます。 けど、あまり書くこと無いなあ・・・。 あ、呼び方はご自由のどぞ♪ 「けい」「きー」「key」 けど、さん付けはやめてくださいね^^; では、下からkeyの作品へどぞ♪ keyの作品
https://w.atwiki.jp/shousetsu/pages/103.html
暇で暇でしょうがなかったから PCで1人でリバーシをした 最初は結構勝ってて いい気分だった ふとクラスメイトからメールが来た とりあえず石を適当に置いて メールを見た 「絶交だからな!」それだけ書いてあった そういや今日悪口浴びせまくったっけ まあこいつ嫌いだからなんてことない リバーシの画面に顔を戻すと 自分の色はことごとく清らかになっていた
https://w.atwiki.jp/shousetsu/pages/563.html
(――前略) そういうわけだから わたしは学校を飛び出した 家へ帰る理由はあったけど なにせタイミングが悪かった 逃げたと思われただろうか 「違うんだ」 そう言い訳する心は汚れていく一方 道路は綺麗じゃない なんて言わないけど 綺麗なものを見たら 泣きそうで うつむいて 歩いた (後略――)