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SMP/W82-085 カード名:“夏の日差し”鴎 カテゴリ:キャラクター 色:青 レベル:0 コスト:0 トリガー:0 パワー:2000 ソウル:1 特徴:《サマポケ》・《海賊》 【自】このカードが手札から舞台に置かれた時、あなたは自分の山札を上から1枚見て、山札の上か控え室に置く。 【自】[このカードを手札に戻す]あなたのクライマックスがクライマックス置場に置かれた時、あなたはコストを払ってよい。そうしたら、あなたは自分のキャラを1枚選び、次の相手のターンの終わりまで、パワーを+1000。 号令! レアリティ:U Summer Pockets REFLECTION BLUE収録
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autolink LB/W06-068 カード名:日差しの中の美魚 カテゴリ:キャラクター 色:赤 レベル:2 コスト:2 トリガー:1 パワー:9000 ソウル:2 特徴:《本》? では、すみません。お言葉に甘えます レアリティ:C illust.ヒナユキウサ 2/2赤バニラ。 赤にはバニラが多いため単純な性能としては特徴による取捨選択程度。 しかしながら、木陰で休む美魚によってレベル1から場に出る事も出来るため、他の2/2バニラより活躍の機会は多い。 リトバス限定の《本》?デッキではメイド服の美魚と並びメインアタッカー候補となる。 水着の美魚&美鳥が1枚いるだけで相手ターンに10000となるだけにバニラとはいえ馬鹿に出来ないし、 ソウル2のためソウル不足を心配する事も無く、何よりコモンの為財布にも優しい。 上述早出しの利点とも合わせて、非常に使いやすいカードと言える。 ・関連カード カード名 レベル/コスト スペック 色 備考 木陰で休む美魚 1/1 5500/1/1 赤 ・関連ページ 「美魚」?
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珍しく妹に叩き起こされる事なく目を覚ましたと思ったらそこは閉鎖空間だった。 今まで散々理不尽なことに巻き込まれてきたが、こんなに酷いのは初めてだな。 俺が見る限り、ハルヒはここ最近人が変わったんじゃないかと思うくらいにニコニコしてたぞ? 何が不満でこんな不機嫌空間を生み出しやがったんだ。 「とぼけるのですか?」 突然の声は、 「古泉か」 また、赤い人間もどき。 「あなたはなんでそんなに落ち着いていられるのですか」 不機嫌な声とは珍しいな。 「何でと言われても、なあ? ハルヒがなんでこんなことしたか分からんからな」 「なぜか分からない? 冗談でしょ? 僕が今まで聞いた中で一番面白くない冗談ですよ」 冗談なつもりは、これっぽっちもない。 「なあ、何でそんなにカリカリしてんだよ」 「あなたは自分のした事の重大性に気付いてないのですか?」 どうも話がかみ合わねえ。 「だから、俺が何をしたんだ? 特に大したことはしてないだろ」 古泉が声を荒げて、 「まだとぼける気ですか! それとも、自分は涼宮さんに気にいられてるから何をしてもいいとでも!?」 待て待て待て待て。なんでそんなに責められなきゃいけないんだ。 それに俺はそこまで傲慢じゃない。 「ああ……、なるほど。 自分は死んだんだから世界がどうなろうと知ったことではないと言うんですね。 あなたがそこまで腐った人だったとは……」 「待てよ。俺が……死んだ? 何のことだ」 「……」 なんでそこで黙る。 「……ふざけてるんですか?」 「俺はまじめだ」 「……おかしい。なんでここまで話がかみ合わないんだ?」 俺が聞きたいくらいだ。現世には全く絶望してねぇよ。 「待って下さい。あなたは今日首を吊って自殺した。そこはあってますよね?」 何と言うか……。 「スタートから違う。俺は死ぬまでにやりたい事がまだまだあるんだ」 古泉もどきは首をひねって、 「おかしいな。本当にあなたですか?」 俺がお前に訊きたいくらいだ。お前の知ってる俺は本当に俺か、って。 「見た目は……、そうですね。でも中身が違う。僕の知っているあなたは常に怯えていた」 何にだ? 消えた朝倉か? 「涼宮さんですよ」 「はい?」 お前の目は節穴か? 俺はハルヒにうんざりした事はあれど、怯えた事はないぞ。 「やはり、別人ですね……」 だろうな。 「僕の知る限りあなたは涼宮さんの一所有物でした。 そしてあなたはそれを嫌っていたにも関わらず何も言わなかった」 所有物だと? 例えば? 「例えも何もありません。あれをやれと言われれば何も言わずに実行してました。 つい最近ですと着衣寒中水泳させられてましたよ。 理由は……朝比奈さんを見ていたから、でした」 「暴君だな」と、溜め息混じりに言う。 「僕もそう思いまして一度訊いてみた事があるんです。『どうして何も言わないのか』と。 そしたらあなたは『約束だからしょうがない』って言って笑いましたよ。 あんな砂漠みたいな笑い声聞いた事ありませんよ」 どんな俺だよ。やれやれ、どうやらまた別の世界らしいな。 「……お前の推測でいい。俺がお前の記憶にある俺と違うのはなぜだ?」 「一つの可能性としては、あなたはパラレルワールドの住人で涼宮さんに呼び出された。 もう一つの可能性として、あなたはこれから始まる新世界における涼宮さんのパートナーとして 新たに作りだされた存在と考えられます」 俺は前者の可能性を信じたいものだな。後者は救いがなさすぎる。 「それは神のみぞ知るといったところですね。仮に前者だろうとあなたには時間が残されていない。 もう、こちらの世界の八割は閉鎖空間に包まれています。あと一時間あるかないか。 それを過ぎれば涼宮さんの作り出した新たな世界が始まります」 「……長門あたりに聞けば正確な事は分かりそうだな」 そうつぶやくと古泉はすっ頓狂な声で、 「ああ、そういえばお二人から伝言を預かってました」 そんな大事な事を忘れるな。 「すいません。なにぶんさっきのあなたの印象が強烈でして。 それで朝比奈さんからは 『キョン君は『禁則事項』の『禁則事項』で『禁則事項』です』、だそうです」 わけが分かりません、朝比奈さん。 「あの雰囲気からして未来の新しい罵詈雑言じゃありませんかね。 怒った朝比奈さんなんてはじめて見ましたよ。もっとも泣きながらでしたけど」 ああ、そうかい。 「それと長門さんからは前と同じです。『パソコンの電源を入れるように』と」 そして、古泉は消えた。 全くどうなってやがるんだ。俺は俺のいた世界に帰るぞ。 「……とりあえず部室に行くか」 部室に入るなりパソコンの前に座り電源を入れた。 点滅する白いカーソル。 YUKI.N 見えてる? 『ああ』 YUKI.N 馬鹿。 なんてこと言い出すんだ。 『待て。詳しくは何とも分からないが俺はお前たちの』 動きだしたカーソルが俺の文章を遮る。 YUKI.N 知ってる。言ってみたかっただけ。 「……」 YUKI.N あなたが別の世界から来たかどうかはわたしには分からない。 でも、あなたと言う存在に対して涼宮ハルヒの力が働いたのは事実。 『……どうすりゃいい?』 YUKI.N 何も。 『なんでだ?』 返事がなかなか返ってこない。ようやくかえって来たと思ったら――。 YUKI.N さよなら。 画面が暗転し、パソコンがOSの起動画面をうつしだす。 俺はパソコンの電源を落として、 「……さよならってどう言うことだよ、長門」 「そのまんまよ、キョン」 この声は何と言うか、 「ハルヒ、か?」 怖くて振り返れない。 「そうよ。……ねえ、なんであたしに背を向けたままなの?」 肩に触れる冷ややかな手。俺は意を決して振り向いた。 「よう」 そこにいたのはハルヒであってハルヒにあらず、そういうのが一番適切だった。 顔を笑顔の形に歪め、 「そんなことより、言うことあるでしょ?」 ハルヒの白い手が俺の首元へのびる。 「……」 「なんで黙っちゃうのよ? ほら、あたしに黙って死んじゃったじゃない、あんた。言うこと、あるでしょ?」 首にかかったハルヒの手。少しづつ力が込められる。 「ッ……、悪かった。もうしない」 不意にハルヒの手の力が抜けた。 「そう、それでいいのよ」 ハルヒの顔がまともに見れねえ。どこで狂っちまったんだよ、この世界は。 「学校で岡部に話を聞かされた時は驚いたわよ」 ハルヒは笑った。 「そのあとあたしだけ職員室に呼ばれてね、手紙を渡されたの」 ハルヒの腐った水のように濁った目が俺を見る。 「あんたの遺書よ」 また、ハルヒの右手が持ち上がる。 「そこに書いてあったのは一言だけ」 ハルヒの左手が右手の後を追うように持ち上がる。 「『もう、涼宮には付き合い切れない』よ?」 また、首に触れる。 「笑わせるわっ!」 一気に力が込められる。目の前に星がちらつきはじめる。 「あんたがあたしのいう事をなんでも聞くっていったんでしょ!?」 「ハル……、ヒ」 意識が飛ぶ直前、肺に空気が入って来た。 「なのに、何が……何が付き合い切れないよっ!」 いつの間にか床にはいつくばっていた俺の髪をハルヒが掴む。 「あんた去年の五月、あたしにここで言ったわよね。 『俺がお前の言う事を全部かなえてやるから元の世界に帰ろう』って」 なるほど、こっちの世界で俺はハルヒにあれをしなかったのか。 「なのに、あたしに付き合い切れないって……馬鹿じゃないのっ?」 ハルヒが俺の顔を見て唇の両端を持ち上げる。 「でも、いいの。許してあげる。条件付きでね」 ハルヒは笑顔のつもりだろうが俺にはそうは見えない。 「もう一回約束してくれたら、許してあげるわ」 ……俺はこのハルヒとやっていけるか? 答えはノーだ。 「断る」 ハルヒの顔が固まった。 「……なんて言ったの?」 「断る。俺はお前のものじゃない」 ハルヒが壊れた。 「違うわ、あんたはあたしのよ。そうなの、あたしが決めたから。駄目よ……駄目なのよ」 どこのガキだ。 「じゃあな。お前のものになるくらいなら消えてやるよ」 俺はハルヒに背を向け部室を出ようとした。 「行かないで!」 泣き声を無視し、ドアに手を掛けた。 「行かないで。行くな……、行くなっ!」 怒号が響く。 そして、扉が開かなくなった。 「くそっ」 力任せに引いても押しても開かない。そんな俺を見てハルヒは笑っている。 「なんだ、ここはあたしの思い通りになるんじゃない! さ、キョン。こっちに来なさい」 嫌だね、と言おうとして俺は驚愕した。床が動いてる! 「よしよし」 ハルヒはまるで犬でも扱うように俺の頭をなでる。 そんな俺は手錠で手と足を固定されている。こんな時に自分の力を自覚すんな。 「ねえ、キョン。約束してよ」 「断固拒否する」 「なんで? いいじゃないの、別に」 「……」 ハルヒは溜め息を吐いて、 「しょうがないわね。あんたがその気になるまでみくるちゃんで遊ぶ事にするわ」 「いない人間で何をするって?」 俺としては痛烈な皮肉のつもりだったんだが、 「いなければ呼べばいいじゃない」 ハルヒが言い終わるやいなや、朝比奈さんが現れた。 「ひぃっ……」 もはやこのハルヒは正気じゃない。いつの間にかナイフを握ってやがる。 「あんたがちゃんと約束してくれれば被害者、少なくてすむわよ」 「ぴっ……」 朝比奈さんは気を失ったようだ。 「……もし俺が後で約束やぶったらどうなる?」 「言わなくても分かるでしょ?」 にらみ合う俺たち。 「……あーあ。時間切れ」 何を言っているか咄嗟にはわからなかった。 「一人目よ。ゴメンね、みくるちゃん」 「馬鹿、よせっ!」 制止にもかかわらず飛び散る血。 「いたっ、いたいよぅ……なん、で?」 ナイフを引き抜いたハルヒは言った。 「さあ? キョンに聞いてね」 倒れる朝比奈さん。次いでハルヒのそばに長門が現れた。 それからどれくらいの時が流れただろう。部屋にこもる異臭。 「これで三人よ? ……あんたも強情ね」 俺は目を開いていたが何も見ていなかった。何も聞いていなかった。 ただ決断するのに少し時間が掛かっただけの話だ。 「分かったよ。約束する。これからずっとお前がやれって言えば必ず……」 「良かった。さすがに妹ちゃんとかには手を出したくなかったしね」 こいつは……。 「じゃあ、まずそれを外したげる」 手錠が足と手から外れる。同時に俺は飛び起き、ハルヒの手からナイフを奪い――。 「……キョン、何、で?」 俺はもうお前をハルヒと思わないってことだよ。 「馬鹿ね、あんたせっかく、生き……返れたのに」 「団員を殺す団長と暮らすよりはましさ」 「嫌、行か……ないで。約そ……」 ハルヒが倒れたのを確認する。 結局俺は元の世界に帰れないで終わるのか。やれやれだ。 最後のひとときを血まみれの死体とすごすという 最悪の終わり方を迎えようとしていた俺の人生に一筋の光明がさした。 突然起動するパソコン。 これは……。 YUKI.N 見えてる? まじか、まじで長門か? 『ああ。でもどうして』 YUKI.N あなたがいるのは私たちとは別の世界。今、古泉一樹がそちらに向かっている。 『俺は助かるのか』 YUKI.N そう。 良かった。安堵すると同時に、扉が開く。 『じゃあ、またそっちで会おうな』 YUKI.N わかった。 「これは」 古泉が部屋の中を見渡す。 「なかなか刺激が……」 そういえばこの部屋には――。 「時間がありませんので、すぐ出ますよ。つかまってください」 俺は古泉に不本意ながらつかまった。 「ちょっときついですよ。長門さん謹製の脱出プログラムですから」 そういって古泉が目を閉じた。突然襲う立ち暗み。 俺も思わず目を閉じ――。 目を開けるとそこは俺の家だった。 射して来る日差しが眩しい……って今何時だよ。昼くらいじゃないか? 時計の方に視線をやるとそこに、 「ハル、ヒ……」 背中を汗が伝う。こいつは、あっちの世界のハルヒだ。一目で分かる。 なんでここに? 「ふふふ……。ねえ、キョン。約束やぶったら、どうするって言ったっけ?」 ハルヒが俺に血まみれのナイフを見せつけた。 「ねえ、キョン……約束よ?」 FIN.
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SMP/W82-086 カード名:“夏の日差し”紬 カテゴリ:キャラクター 色:青 レベル:0 コスト:0 トリガー:0 パワー:2000 ソウル:1 特徴:《サマポケ》・《ヌイグルミ》 【永】他のあなたの《サマポケ》のキャラが2枚以上なら、このカードのパワーを+1000。 【自】CXコンボ このカードがアタックした時、クライマックス置場に「さいごまで……お願いします」があるなら、次の相手のターンの終わりまで、このカードは次の能力を得る。『【自】相手のアタックフェイズの始めに、次の2つの効果のうちあなたが選んだ1つを行う。『あなたはこのカードを手札に戻してよい。』『あなたはこのカードを前列のキャラのいない枠に動かしてよい。』』 おっぱいの見立てや、成長度合いを外すとは、 シズクらしくないです レアリティ:U Summer Pockets REFLECTION BLUE収録 ・対応クライマックス カード名 トリガー さいごまで……お願いします 1・門
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SMP/W82-032 カード名:“夏の日差し”美希 カテゴリ:キャラクター 色:緑 レベル:1 コスト:0 トリガー:0 パワー:5000 ソウル:1 特徴:《サマポケ》・《武器》 【自】CXコンボ あなたのクライマックス置場に「たくさんキスしような」が置かれた時、他のあなたの《サマポケ》のキャラが2枚以上なら、あなたは自分の山札を上から4枚まで見て、《サマポケ》のキャラを1枚まで選んで相手に見せ、手札に加え、残りのカードを控え室に置く。 R しろはも一緒に教わろう SR 今年こそ、25メートルを泳ぎきる目標なんだ レアリティ:SR R Summer Pockets REFLECTION BLUE収録 ・対応クライマックス カード名 トリガー たくさんキスしような 袋
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※このSSは某幻想郷のキャラをいぢめるスレの設定を使っています。やたらと嫌われて いる魔理沙がそれです。 ※難しいかもしれませんが、魔理沙が好き勝手やった結果1人ハブられたと思って読んで もらえると嬉しいです。手抜きな書き方して済みません。 ゆっくりれいむ達が森の中を歩いていた。 「ゆっくりしようね!」 「わたしがとかい派のすごしかたをおしえてあげるわ!」 「むきゅー」 れいむの後をゆっくりありすにゆっくりぱちゅりーが続いていく。親と離ればなれにな ってからも生き延びてきたれいむにとって、心強い2人の仲間だ。 遅れがちな、ゆちゅりーの速度に自然と合わせる2人の姿が、仲の親密さを物語ってい た。 「ゆゆっ! いちごだよ!」 「ほんとうだわっ! とかい派にはぴったりのおやつね」 「めのまえのいちごをゆっくりおいしくたべられるほうほうは……」 れいむは背を大きく伸ばし、口で咥えて採るとありす達に渡していく。 「おいしいね、おいしいね!」 「とかい派のくちにあういちごよ!」 「むきゅー……おいしい」 口を赤く染めたまま、お互いに笑い合っていた。 楽しく話をしながら、れいむ達は奥へ進んでいく。 この森は比較的危険な動物たちが少なく、捕食種達も見かけないので、れいむ達にとっ て頻繁に訪れる庭のような場所だ。 しかしそんな場所で、今日は新たな出会いが待ち受けていた。 「ゆっ!?」 草むらをかき分けて進んでいくと、昨日までは進めた場所に大きな山が出来ていた。 「なに? とかい派のありすのじゃまをするの!」 「むきゅー……ゆっくりげんいんを……」 突然現れた邪魔に2匹が口々に愚痴を吐く。 ただれいむだけが、目の前の山がなんなのか理解していた。 「このひとたおれてるよ! たすけてあげないと!」 山は、地面に倒れた人間だった。 口で酌んできた水を助けた人に浴びせて、目が開いた時、れいむはようやく安心した様 子で息を吐いた。 「よかった、気がついたんだねおねえさん!」 「……ここは」 自然と体を起こし、すぐさま走った頭痛に頭を押さえる女性。 「ここはれいむたちの家だよ! ゆっくりしていってね!」 「……家……?」 女性が辺りを見渡す。周りは暗く、下は石。すぐ横には岩の壁がそびえ立ち、離れたと ころに見える広場には、多くの緑が生い茂っている。 れいむが家と言ったそこは、大きな崖の麓だ。 日陰になっているので雨は凌げるが、大嵐でも来ればゆっくり達はひとたまりもない。 この付近は地盤が緩んでいるのか、崖崩れが何度か起きており、落石も多いので捕食種 たちがほとんどいない。天敵のいない安心感から、れいむ達はここを巣として生活してい た。 「だいじょうぶかしら……とかい派としてすごくしんぱいだわ」 「むちゅー……ゆっくりれいむをたすけるほうほうは……」 聞こえた声に女性が後ろを振り向くと、ありすとゆちゅりーが揃って奥へと身を隠して いた。岩陰から覗き見ようと少しだけ体を出している。 「ゆー……」 そんな2匹の様子に、れいむは寂しげに声を出す。 れいむには、どうして人間をあんなに警戒するのかまるでわからなかった。 「そうか……私は倒れたのか……」 女性は口を大きく開け、笑顔でれいむに話しかけた。 「お前がたすけてくれたのか? ありがとな」 女性の笑顔に、れいむはますます心配になる。 「おねえさん大丈夫?」 笑えば笑うほど頬の窪みは目立ち、目の隈も大きく見える。 なにより紫色に近い顔色が、彼女の状態を表していた。 「ははっ、ゆっくりに心配されたらおしまいだ……」 明るく笑っていたが、すぐさま口を閉ざした。 「……私を心配してくれる人なんてもういなかったぜ」 肩を落とし、黙ってしまう。 慌ててれいむが声をかけた。 「おねえさん! ゆっくりしようよ! 一緒にゆっくりしよっ!」 遠くから2匹の悲鳴が聞こえてくるが、れいむは気にせず女性へ訴えかける。 れいむは暗く沈んだ顔を見るのが嫌いだった。 いつでも明るく元気でゆっくりするのが何よりだと信じていた。 だから女性にもずっと笑顔でいて欲しかった。 「……お前はいいゆっくりだな」 女性の手がれいむに伸び、頭を撫でられる。 その暖かな心地よさに、れいむは懐かしさを感じていた。 「お前……名前なんてないよな」 「ゆっ? れいむはれいむだよ?」 途端、目を逸らして頬を掻く女性。 れいむには、なぜ女性が困惑しているのかわからない。自分は間違ったことを言ってい ないと自信を持っていた。 「そりゃそうだな。……私は魔理沙だぜ」 「ゆっ! まりさだね! おなじなまえのともだちがいるよ!」 「大福なやつだな」 「今はいないけど、こんどしょうかいするね!」 「……また、来てもいいのか?」 「うん、いっしょにゆっくりしよ!」 「……ありがとうだぜ、れいむ」 それから別れるまで、魔理沙に頭を撫でられて、れいむは幸せだった。 ずっと魔理沙が笑顔でいてくれて、れいむは凄く嬉しかった。 それからしばらく魔理沙は定期的にれいむ達の住処を訪れていた。 当初は警戒してばかりだった2匹も、ご飯を持ってきてくれたり他の人間とは違うこち らを気遣ってくれる態度に、次第にうち解け、崖の麓では3匹と1人の楽しげな声が聞こ えるようになった。 しかしれいむの中には、常に一抹の不安が残る。 常に笑顔を振りまいているが、魔理沙の顔色はむしろ悪化しているようだった。 「きょうもゆっくりしようね!」 「みんなでゆっくりしようね!」 恒例となった挨拶を終えて、れいむ達は1日を過ごしていく。 今日は日差しも強く、昼間から出かけるのはゆちゅりーにとって大きな負担になる。ご 飯の貯蔵はあまりないうえ、遅くなると捕食種達が現れる危険もあるが、今日のご飯探し は夕方にしようと3匹達は決めていた。 どこかで、魔理沙がまたご飯を持って来てくれる事を期待しながら。 「ゆぅ~……」 正午近くになると、れいむは1人じっと遠くを見つめ始めた。その方向から、いつも魔 理沙はやって来るのだ。 れいむの待ちわびている様子に、思わず2匹はため息をついた。 「れいむはあの人にむちゅうね」 「むきゅぅ。……れいむはこいするおとめのよう」 「こいするおとめ! とかい派なことばね! わたしもおとめになるわ!」 れいむはじっと動かない。 森の木々が風に揺られて葉っぱの音色を奏でた時、樹の間から黒い帽子が見えた。 「ゆっ!」 自然とれいむは前へ向かって走っていた。 強い日差しは饅頭なれいむにとって有害なものだが、まるで気にせず進んでいく。 「おねえさーーんっ!」 「おおっ!」 走ってきた勢いをそのままにれいむは飛び跳ね、魔理沙の胸へ飛び込んだ。 背負っている網かごが大きく揺れる。 魔理沙は落とさないようにれいむを両手でしっかり抱えるが、勢いは止められず、蹌踉 めいて尻餅をついた。 「ゆっ!?」 「ふぅっ……なんだれいむ、今日も元気だな。私にもちょっと分けて欲しいぐらいだぜ」 魔理沙が笑いかけてくるが、れいむの表情は浮かない。 以前、同じように飛び込んだ時はしっかり支えてくれたのをれいむは覚えていた。 「ゆうぅぅぅ……」 「ほら、今日もご飯を持ってきたぜ」 魔理沙はれいむを片手で持ち帰ると、背負っていたかごを地面へと下ろした。 「ゆっ!」 「どうだ、大量だぜ!」 中にはかごの約半分まできのこで埋め尽くされていた。これだけあれば、5日はれいむ 達がご飯で困る事はない。 「ゆー♪」 思わずその場かられいむはかごの中へ飛び込んだ。近くにあったホンシメジを一口食べ る。 「しあわせー♪」 そのまま食べ続けるれいむ。魔理沙はかごの中にれいむを入れたまま背負い、崖へ向け て歩き始めた。 「おいしいよおねえさん!」 「今日は大量だったから、気にせずゆっくり食べるんだぜ」 「ありがとうおねえさん!」 次の茸へ口をつけるれいむ。お腹が空いていたせいで勢いが止まらない。 むーしゃむーしゃと、れいむの可愛い声がずっと聞こえてくる。 「またいつもの3人で遊んでいたのか?」 「うん! まりさはまだ来てないよ」 「お前達はいつも仲良しだな」 「うん! ありすもゆちゅりーもまりさもみんなともだちだよ!」 「そうか……」 奥から好物のクリタケを見つけ、思わずれいむはまとめて2個同時に食べようとする。 必死に口へ詰めていたせいで、魔理沙の呟きはれいむには届いていなかった。 「ん?」 ふと、魔理沙の足が止まった。 「ゆ? どうしたのおねえさん?」 「れいむ、ちょっとこっち見てみろ」 呼ばれて、れいむはかごから肩へと飛び移る。大きく飛び跳ねればれいむの重さからま りさの肩を痛めてしまうだろう。しかしれいむの飛び方は乗り慣れた、とても優しいもの だった。 肩に飛び乗ったれいむへ手を伸ばし、頭を撫でながら魔理沙が言う。 「なんだかもめてるみたいだぜ?」 「ゆっ?」 れいむが住処の方へ目をやると、そこには大量のゆっくりに囲まれたありすとゆちゅり ーの姿があった。 「ゆっ!?」 思わずれいむが肩から飛び降りる。 「お、おい!」 魔理沙の声も気にせずに、れいむは住処へと一目散に走っていく。 ちょうどれいむがありす達の元へたどり着いたのは、ありすが突き倒された瞬間だった。 「いたいわね! とかい派のありすでもおこるわよ!」 「むきゅーっ!」 「ありすぅううぅっ!」 ゆっくりとありすの前に割って入るれいむ。 「れ、れいむっ?」 「どうしてそんなことするの? ゆっくりしようよ!」 突然横から現れたれいむに、ゆっくりまりさはため息をついた。 「ゆっくりしようよ、だって」 「おお、わらえないわらえない」 まりさの言葉に、周りを囲んでいた子まりさ達も声を揃えて叫ぶ。 友達の険悪な雰囲気に、れいむは悲しい気持ちに包まれた。 「ゆー……どうしたのまりさ、なんでこんなことするの?」 瞬間、目尻の下がったまりさの目が一気につり上がった。 「れいむたちがやくそくをまもらないからだよ!」 「ゆっ?」 困惑するれいむ。頭の中を探しているものの、約束の心当たりが見つからない。 代わりに、れいむの後ろから声が上がった。 「なにいってるの! やくそくはちゃんとまもったわ! とかい派をなめないでよ!」 「……わたしたちはちゃんとまもった、まもってないのはあなたのほう」 2匹の声に、れいむはようやくまりさの言っている約束が何のことか理解した。 まりさを含めた4匹は今までずっと一緒だったが、まりさに子供ができ、この住処だと 手狭になったので別れて暮らすようになった。 ただ別れた後も仲は変わらず、れいむ達とまりさはお互い交互に手に入れたご飯を分け 合っていた。まりさが怒っているのはそのことだろう。 ただありす達の言っている通り、最後に分けたのはれいむ達の筈だった。 「それじゃ渡した事はおぼえてる? どうやって渡したかゆっくりおしえてよ!」 まりさの言葉に、ありす達は同時にれいむを見た。あの時、まりさにご飯を渡しにいっ たのはれいむだったからだ。 しかしれいむは答えられなかった。いくら思い出そうとしても、渡した記憶が出てこな い。 思い出せるのは、暖かい手で優しくしてもらった事ばかりだ。 「ゆー……」 「ど、どうしたのれいむ? このいなかもの達におしえてあげて!」 「むきゅー」 押し黙ってしまったれいむに慌てるありす達。 しかしどれだけ考えても、れいむは思い出すことが出来なかった。 まりさ達の口元がにやける。 「……なに揉めてるんだお前ら?」 「ゆっ!」 その場の空気を変えたのは、上から降ってきた声だった。 「お、おねえさんっ!」 れいむの声に手を振る魔理沙。 まりさ達は一斉にれいむ達から距離を取り、お互いに呟き始めた。 「にんげん……にんげんだよ」 「にんげんはゆっくりできないよ」 「れいむといっしょに仲良くしているよ、あぶないよ!」 「おかあさん、はやくにげよう!」 急に現れた人間に怯え戸惑っている。 ただ唯一、親まりさだけは怯えてなかった。 苦々しく唇を噛み、幸せそうなれいむの顔をにらみつけていた。 「どうした、友達なんだろ? 友達とは仲良くするのが一番だぜ?」 「ゆぅー……」 れいむは魔理沙に事情を話した。 「……なるほど。簡単な事だぜ」 「ゆっ?」 魔理沙はそのままかごを下ろすと、まりさ達に向かって中身をばらまいた。 「ゆっ!」 「ゆっ、ゆっくりできないよ!」 突然、飛んできた何かに蜘蛛の子を散らすように離れる子まりさ達。 しかしそれが茸だと気づくと、恐る恐る戻ってきた。 「それが今回のご飯だぜ、みんなで仲良く食べてくれ」 魔理沙の言葉に子まりさ達は警戒しながらも、きのこへ近づいていく。 「……ゆっくりできる?」 「きのこだ! おいしそうだよ!」 「おなかすいたよ! たべよう!」 「だめだよ! ゆっくりできなくなるよ!」 食べたい意見が殺到する中、大きさ的に年上な子まりさ達が宥めようとする。 しかし目を盗んだ1匹の子まりさが、そのまま茸に食らいついていた。 「あっ!」 「……ゆ、ゆっくり……できる?」 食べた子まりさはぷるぷると痙攣しながら、目を輝かせた。 「うめぇ! めっちゃうめぇ!」 瞬間、子まりさ達は一斉に茸へと群がった。 思いがけない大量のご飯に、口に入るだけ入れ、体を膨らませて立ち去っていく。 ただ親まりさだけは、変わらず憎たらしげにれいむを見ていた。 「つぎはわすれないでね!」 「ゆぅ……」 まりさの捨て台詞がれいむの心に突き刺さった。落ち込んでいるのが、体のしぼみ具合 で伝わってくる。 「だいじょうぶよれいむ! とかい派はおなじしっぱいはくりかえさないわ」 「しっぱいはせいこうのまざー」 後ろから体を擦り合わせる。慰めてくれる2匹に、次第にれいむも元気を取り戻した。 「ゆー♪」 元気になったれいむは、おねいさんの持ってきてくれたかごへ2匹を案内する。 ばらまかれた分だけ少なくなっていたが、3匹にとって充分すぎる量の茸がそこにはあ った。 「むきゅー♪」 「ぱちゅりー、とかい派はいそいでたべないものよ。じょうひんにたべた方があじもより ……うめぇ! めっちゃうめぇ!」 2匹も美味しい茸を満喫している。 来る途中で食べたれいむは、少し離れたところで2匹を見守っていた。 「れいむ」 「ゆっ?」 振り向くと、魔理沙が遠くを見つめていた。 「さっきのがともだちのまりさなのか?」 「うん、そうだよ」 「そうか……」 魔理沙はもう何も言わず、その場で立ちつくしている。 「ゆっ……」 れいむは声を掛けたかった。どこか元気のない魔理沙を慰めたかった。 ただ魔理沙の悲しい横顔に、何も言えなくなってしまった。 れいむ達が、いつもの3匹で森の中を歩いていく。れいむ達にとって、とてもありふれ た光景。 しかし、その日はまるで様子が違っていた。 「ゆぅ~……」 いつも元気を振りまいていたれいむが終始、落ち込んでいた。 「……げんきだしてれいむ。とかい派がそんなことだとしめしがつかないわ」 「ちゃんとかんがえたら、ただいそがしいだけ。まっていたらきてくれる」 「……ゆっ」 2匹の励ましにも力のない声を返してしまう。 あれから突然、魔理沙がれいむ達に会いに来なくなった。 最初はただ忙しいだけだと思っていたれいむも、ずっと会えないと頭の中は不安で一杯 になる。 れいむ、なにか気にさわることしたのかなぁ……。 考えれば考えるほど、身に覚えのない罪悪感に蝕れていた。 目に見えて落ち込んでいるのはれいむだけだが、ありす達も内心、魔理沙を心配してい る。あれだけ一緒に遊んでくれた人が突然来なくなるなんて、何かあったとしか考えられ ない。 しかしそれよりも、ありす達の不安は今後のご飯だった。 最近は魔理沙がご飯を持って来てくれた為にあまり蓄えがなく、今ある物だけでは、次 にまりさ達へ渡す分が不足している。 突然、手に入った楽な暮らしに甘えていた結果だった。 落ち込んでいるれいむに気を遣うものの、状況に余裕はまるでない。 気づけば全員の歩みは速まり、普段はあまりいかない奥地へと足を運んでいた。 「ゆっ……ゆっ……」 一生懸命に体を動かすれいむ。動いている事で不安も忘れがちになるが、代わりに疲れ が全身を襲う。いつもと違い、貯蓄しようと住処へ何度も戻っていたので尚更、普段とは 比べられない疲労感だ。 「と、とかい派のありすはきゅうけいをていあんするわ!」 「むきゅー……さんせい」 「ゆっ……ゆっくりしようね!」 3匹はお互いに背を預けるようにして道で体を沈めていた。普段はしっかりとした丸い 体が崩れ、3匹とも楕円になっている。 「ゆー……」 風がれいむの皮を撫でる。疲れもあり柔らかくなった皮を引き締める涼しさが、今のれ いむには心地よかった。 朝から探し続けた甲斐もあり、ご飯の量には余裕が見えてきた。もう少し集めれば、ま りさへのご飯も確保出来るだろう。 「……つぎ、ごはんがみつかったら、かえりましょう」 「そうね! とかい派がよふかしはいけないわ! もんげんはまもるのよ!」 「うん! 帰ってゆっくりしようね!」 お互いに同意する。周りの風景は森の中でも見慣れないものだ。普通の森に比べて安全 とは言っても、あまり足を踏み入れない場所。いつ何かに襲われるかわからない。危険を 考えて言ったゆちゅりーの意見に、反対する理由はなかった。 「……ゆっ?」 そろそろご飯探しを再開しようとそれぞれが体を戻した時、れいむがあらぬ方向に目を 向けた。 「どうしたのれいむ? 早くいきましょう」 「むきゅー」 2匹に声を掛けられても振り向かず、そのまま見つめている。 「……ゆっ」 れいむは目の前の風景を見つめているわけではなかった。 ただ静かに、じっと、耳を澄ませていた。 「なにか声が聞こえるよ」 「声?」 「むきゅ?」 2匹も集中して音を聞き取ろうとする。 樹の揺らぎと風の鳴る中、僅かながらに人の声がれいむ達の耳に届いた。 「ほんとうね! とかい派のきれいなみみにもしっかりきこえたわ!」 「ひとりじゃない、ふくすうきこえる……」 途端、れいむが飛び出していく。 「ちょ、ちょっとれいむ! とかい派は、もっとゆうがにこうどうするものよ!」 「むきゅーっ! あせりはきんもつ、あぶないばしょにちかづいたらだめ!」 慌てて2匹も後を追いかける。 2匹はまるで気づかなかったが、れいむは声を聞いたその時から予感がしていた。 「……ゆっ! ゆっ!」 砂利の目立つ土を飛び、草をかき分ける。 そして最後の草をかき分けた時。 拓けたその場にいたのは、れいむの想像通りの人だった。 「ゆっ!?」 しかし想像とはまるで違う光景だった。 「すまない、この通りだぜ!」 「……」 そこでは、魔理沙が見知らぬ人へ必死に頭を下げていた。 「おいついた……れいむどうした──」 「……むきゅー、びっくり」 ようやく追いついた2匹も、予想していなかった光景に目を奪われた。 「頭を下げられてもね……もう私に関わらないでって言ったわよね?」 「……い、言われたよ。でももう頼れる奴がいなくて……悪かったと思っているんだぜ?」 「思ってるなら来なければいいじゃない」 頭を上げようとしない魔理沙に、紅白な色の人間が話しかけている。 れいむから見ても、2人の間には険悪な空気が流れているように思えた。 「そんなこと言わないでくれ……私にもう頼る相手なんていないぜ」 「自業自得じゃないの。私だってもうあんたのわがままに付き合うのはごめんよ」 「わがまま……か……」 魔理沙は顔を上げようとしない、ずっと下を向いたままだ。 影になっているせいで、れいむ達にも魔理沙がどんな面持ちなのかわからない。 「……れ、れいむ? どうしたの?」 「むきゅぅ……なかないで」 ただ魔理沙を見ていると、自然とれいむは目が潤んでくるのを止められなかった。 「あんた、本当は反省なんてしてないでしょ」 「そ……そんなことはないぜ……悪かったって思ってるぜ」 「前にも言ったでしょ? いつもいつも文句を言ってたのに態度を正そうともしないで、 無神経に笑いながら同じことを繰り返す。そんなあんたの何を信じろっていうのよ」 「……あれは……ただ、許してくれてるって……思って……」 「ともかく私はあんたと関わりたくないの。金輪際、神社に近づかないでよね」 そのまま踵を返す。 「ま、待ってくれっ!」 「……なによ」 紅白が振り向いた瞬間。 魔理沙は地面に膝と手を付き、さらに身を低くする。 「お願いだ。もう私には頼れる奴がいないんだ。助けてくれ!」 そのまま頭を地面につけ、頼み込んだ。 「……」 紅白は何も言わず、ただ眉間に皺を寄せ、頭を掻きむしる。 「……なんでそんなに必死なのよ」 「……」 「食料ぐらい、茸か何かでどうにかなるでしょ」 思わず、聞き入っていた2匹から声が上がる。 「え?」 「むきゅ?」 「……」 ただれいむだけは、涙を流しながら魔理沙を見つめている。 目の前の魔理沙達に声は聞こえておらず、話はそのまま進められた。 「それに人里に行って盗んで来たらいいじゃない、あんたの得意技でしょ」 「私は泥棒じゃ……」 「食べ物を永遠に借りたらいいじゃない」 「……」 魔理沙は変わらず顔を上げない。 頑として諦める様子のない魔理沙に、紅白の顔から笑みが消えていく。 「言ったでしょ? 私はもうあんたと関わりたくないの」 「……たのむ」 「どうしても諦めないっていうなら……」 「……たのむよ……」 紅白が右手を動かす。その手に握られているのは長い、針。 狙いをつけようと顔の前へ持って行き、そのまま腕を振りかぶった。 「だめぇぇえぇぇぇえぇえぇっ!!」 「ちょ、なに!」 「え?」 聞き覚えのある声に魔理沙が顔を上げる。 最初に見えたのは、見覚えのある肌色の饅頭肌だった。 「お、おまえ……」 「だめだよおねえさんいじめたら! ゆっくりできないよ!」 自分に似た紅白色の饅頭の抗議に、紅白は思わず眉をひそめた。 「何? 相手にされないからゆっくりと仲良くなったの?」 「ち、ちが」 「されないとかするとか関係ないよ! おねえさんをゆっくりさせて!」 紅白の目がさらに鋭くなる。 「見た目といい声といい、いちいち腹の立つ饅頭ね……」 「や、止めてくれ! こいつは関係ないんだ……ただ最近エサをやってただけで……やる なら私を」 「だめぇっ! ゆ゛っぐりざせであげでぇえ゛え゛ぇぇぇっ!」 顔を濡らす涙は饅頭の皮をふやけさせ、霊夢の顔は丸めた紙のようにぐしゃぐしゃにな っていた。 紅白はため息をつく。 「だからあんたとは関わりたくなかったのよ、面倒ごと増やしてくれちゃって……」 肩を落とし、面倒くさそうにしているが、すぐさま目に鋭さが戻った。 「それじゃ、あんたらまとめて──」 「そんなことさせないわよ!」 「むきゅーっ!」 草むらから隠れていた2匹が飛び出してきた。 ありすもゆちゅりーも敵意を込めた視線で紅白を睨み付ける。 「そこのおばさん! 弱いものいじめはいなかもののゆっくりできないひとがすることよ! そんなのとかい派のわたしがゆるさないんだから!」 「せっきょくてきにめのまえのにんげんをおいはらうほうほうは……」 また入った横やりに、紅白は殺意を2匹に送るが、ありす達は怖じ気づかず一歩も引か ないでいた。 「れいむ! このおばさんは私たちがゆっくりさせるから、れいむはおねえさんとにげな さい!」 「ゆっ!? で、できないよそんなこと!」 「むきゅー。それがただしいせんたく、せんじゅつてきてったいよ」 「ここはとかい派のありすにまかせていきなさい!」 「ゆー……できないよ、そんなこと。2人を置いてゆっくりなんて出来ないよ!」 2匹の説得に、しかしれいむは動こうとしない。3匹はお互いに仲間を助けようと必死 に言い争う。 突然、紅白が構えを解いた。 「ゆっ?」 「なに?」 「むきゅ?」 「……馬鹿馬鹿しい、これじゃ私が悪者みたいじゃない」 殺意を消し去った状態で、紅白はいまだ膝をついたままな魔理沙に目を向けた。 「よかったじゃない。友達が増えて」 「……」 魔理沙は何も言い返さない。 「とにかくもう私はあんたと関わりたくないから、もう2度と話しかけないでよね」 「……」 「ゴミクズはゴミクズらしく、ゴミでも漁ったらいいわ」 紅白はもう振り返ることなく、その場を後にした。 「……ゆーっ」 れいむが恐る恐る後ろを振り返る。 手をまた付き、魔理沙は下を向いていたが、しばらくして顔を上げた。 笑っていた。 「……守ってくれてありがとうだぜ」 自然と手がれいむの頭に乗せられる。 それが今日はどこか悲しくて、れいむはまた顔を涙で濡らし始めた。 「ゆ゛ーっ!」 「お、おいおい、泣くなよ。泣かれるのは苦手だぜ」 「ゆ゛ぅう゛ぅう゛う゛う゛ぅう゛う゛ぅっ!!」 魔理沙に応えようと体を左右に振って涙を飛ばすが、どんどん溢れ出して止められない。 どうしても泣き止まないれいむを、魔理沙は静かに右肩に乗せ、残る2匹に話しかけた。 「お前ら、こんな所までどうしたんだ?」 「今日はちょっととおでしたの。とかい派としてもあたらしいしげきはひつようだわ」 「そろそろかえろうとおもってたところ……」 「そうか、それなら私も一緒についていくぜ」 そのまま魔理沙は森へと歩き始め、2匹もその後を追いかけていく。 しばらく歩いていると、ずっと泣いていたれいむが泣き止み始めた。 「ゆぐっ……! ゆぐっ……!」 「やれやれ、やっと泣き止んでくれたか? 泣き虫なお姫様だぜ」 「ゆぅぅ……」 頬が赤くなるれいむ。涙のせいで顔の皮がしわくちゃになり、上手く表情がつくれない。 「ありがとな。実際、助かったぜ。アイツを怒らせるのは不味いからな。私も引っ込みが 付かなくなっていたぜ」 「おねえさん……ご飯たらないの?」 魔理沙はバツが悪そうに頬を掻いた。 「ちょっとな、昨日は食べすぎたんだぜ」 れいむの目にまた滴が浮かぶ。 ほぼ同時に、後ろからありすが叫んでいた。 「うそよ! わたしたちのためにむりしていたんでしょ! とかい派をだまそうとしても むだよ!」 「むきゅー。そのほそいかおでたべすぎはむりがある」 「おねえざん、なんでそんなむりするの! ごはんはいいからゆっくりしようよ!」 れいむ達の言葉にも、魔理沙は困った様子で顔を曇らせる。 「そう言ってくれるのは嬉しいが……それじゃだめだぜ。それに、お前達だって私がご飯 を持ってこなかったら困るだろ?」 「うっ……」 「むきゅ……」 見透かされた言葉に2匹は黙ってしまう。 ただれいむだけは、心外だと激しく反応した。 「ゆっ! そんなことないよ! れいむはごはんなんてなくてもおねえさんとゆっくりし たいよ!」 「私は……もう、甘えるのは止めにしたんだ」 「……ゆっ?」 予想外の台詞に、れいむは唖然として魔理沙を見つめている。 一呼吸置いて、魔理沙は続けた。 「私は今まで人に甘えて勝手気ままに生きてきたから、友達に嫌われてしまったんだぜ。 ……だから一方的に甘えるのはもう辞めたんだ」 れいむの脳裏に、ある光景が浮かび上がる。 「れいむ達の好意は嬉しいぜ。ただ、やっぱり会いに行くならそれなりのお礼や理由は必 要だぜ」 れいむの頭を撫でてくれる暖かな手。 「なにより……今の私には……これぐらいのことしか役に立てないからな」 そして頭に次々と降ってきた、冷たい雫──。 「ゆぅううぅううぅうぅうぅううううっ!!」 突然、耳元で聞こえた大きな声に、思わず魔理沙は耳を塞いでいた。 「……れ、れいむ?」 れいむは泣いている。ただその涙の意味は今までと違う。 顔を真っ赤に染め、魔理沙を睨み付けながられいむは叫んでいた。 「わ、わたしは、私は! おねえさんといっしょにいてたのしかったよ! うれしかった よ! ずっとゆっくりしたかったよ! おねえさんはぢがっだの゛! やぐにだづどがた だない゛な゛んでがんげいな゛いよ゛!! わだじはおね゛えざんとゆ゛っぐりじだいよ ぉおぉっ!!」 またれいむが号泣する。ただ今度は誰も止めようとしない。 「……」 ありすとゆちゅりーは心配そうに下から見守り、魔理沙は軽く項垂れながら前に進んで いた。 視線が下を向いていたからだろう。 それを最初に見つけたのは、ありすとゆちゅりーの2匹だった。 「むきゅ?」 「あら? なにかしら?」 2匹の声に、魔理沙も顔を上げる。 そこには、米俵が1俵、置かれていた。 「なんだこりゃ?」 「……ゆっ」 泣いていたれいむも、無造作に置かれていた米俵に目をやる。 この辺りに田んぼはまるで無く、民家さえ見あたらない場所だ。突然、米俵が見つかる 理由が3匹にも魔理沙にも思い当たらない。 「……ゆっ? おねえさん、何かついてるよ」 「なんだなんだ?」 れいむに言われて近づいてみると、米俵の上には文字の書かれた小さな紙が置かれてあ った。 「んー?」 魔理沙は紙を手に取り、黙読していく。 肩に乗っているれいむにもその内容は見えたが、れいむは文字を読むことが出来ない。 紙にはこう書かれてあった。 『重かったから捨てておくわ、好きにしたら。神社に来るなって言ったの忘れないでよ!』 「……ぅ」 「ゆっ?」 呼ばれた気がして、れいむは紙から目を離して魔理沙へと視線を戻す。 「……おねえさん?」 魔理沙は応えない。 紙を持った手が震えている。 「おねえさん、悲しいの?」 「違う」 「……嬉しいの?」 「……違う」 紙が握り潰された。 「わからないんだぜ……自分でもっ、嬉しいのか、悲しいのかっ」 「……おねえさん」 れいむは魔理沙の頬へより寄っていく。 柔らかい感触と共に、体が変形するぐらい近づくと、そのまま口を開けた。 「ゆっ……」 「ん……」 魔理沙の頬をれいむの舌が舐める。 ゆっくりの求愛行動の1つであるそれは、魔理沙の心の心に安らぎを与え。 れいむの想う気持ちのように、頬に流れる涙を1つ1つ受け止めていた。 その日も正午を向かえ、3匹の住処ではいつも通りの光景が広がっていた。 「ゆぅ~」 今か今かと、れいむは魔理沙が来るのを待ちわびている。 2匹はもう慣れてしまったのか、れいむは気にせずにご飯を食べながら雑談をしていた。 あれから、魔理沙はご飯がない時でも3匹の住処を訪れるようになっていた。 れいむの号泣が効いたのか、米俵の影響なのか、魔理沙自身よくわかっていない。 ただ、れいむが自分の為に悲しむのは嫌だと思っている。 米俵のおかげでどうにか栄養の取れたその顔は、以前より遙かに血色がよくなり、れい むの不安も取り除かれていった。 「ゆー……」 変わらず魔理沙をれいむは待ち続ける。 れいむ自身は自覚していないが、昔、れいむは同じようにじっと待ち続けていたことが あった。 親れいむと離ればなれになり、ありす達と出会う前、その間にれいむは人間の女の子に 拾われていた。 子供の頃は手のひらよりも小さいゆっくりに女の子は心を奪われ、毎日ご飯をあげて一 生懸命に育てていった。 しかし、ゆっくりは育てば育つほど大きくなる。 成体まで成長すると随分な場所を取り、手足もない饅頭では人の役に立つこともままな らない。 親からいい加減捨てるように言われた女の子は、れいむを森まで連れて行き、そのまま そこへ置いていってしまった。 れいむは置いていかれたことを覚えていない。そもそも置いていかれたと思っていない。 ただずっと頭を撫で続けてくれた手と、「れいむ、れいむ」と呼ばれた自分の名前だけ はしっかり覚えている。 その後、れいむはじっとして女の子を待ち続けたが、3日耐えた挙げ句、何に耐えてい たのか忘れてしまった。 遠くから、黒い帽子と共に栄える金髪が目に映った。 「ゆーっ♪」 逸る気持ちを抑えることなく、いつものようにれいむは掛けだしていく。 雑談していた2匹もれいむが動いたとわかると、そのまま後を追いかけていく。 れいむの向かう方向には、両腕を広げて待ちかまえる魔理沙の姿。 いつものように飛び込んでくるれいむを、魔理沙はしっかりと受け止めた。 「ゆ~っ!」 「ははっ! 今日も一緒にゆっくりしような!」 「うん! ゆっくりしようね!」 追いついたありす達とれいむの声が重なる 『いっしょにゆっくりしようね!』 3匹の大きな合唱が、広場全体に響き渡った。 冴え渡る青空の下。 今日も広場には、色とりどりの笑顔が咲き乱れていた。 End 某スレネタのゴミクズみたいな魔理沙ならゆっくりを可愛がるんじゃないかと思って書 いてみた。 しかし他スレネタ持ってきておいて、そもそもあまりゴミクズじゃないわ、内容が中途 半端だと、あまり可愛がってなくて済みません。変に可愛がることを意識しすぎた気がす る、反省。 今度書く時は、飼い主がべたべたと可愛がるような話にしたいです。 新鮮でよかたぞい -- 名無しさん (2008-07-30 13 02 25) 霊夢に殺意が湧いたのは私だけでよかとです…ッ -- 名無しさん (2010-04-11 11 41 42) ↑私もです -- 名無しさん (2010-07-03 22 32 36) むしろ霊夢よりもこの話を書いた作者に問題があるかと。キャラアンチなエセ感動物が受け入れられてるというのが信じられん。当時はこんなのばっかりだったのか -- 名無しさん (2010-07-13 18 09 03) 魔理沙は傍若無人な所も含めて可愛いと思う -- 名無しさん (2010-11-28 01 51 45) 巫女さん、後で屋上、な? -- 名無しさん (2012-12-13 21 37 36) 名前 コメント
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珍しく妹に叩き起こされる事なく目を覚ましたと思ったらそこは閉鎖空間だった。 今まで散々理不尽なことに巻き込まれてきたが、こんなに酷いのは初めてだな。 俺が見る限り、ハルヒはここ最近人が変わったんじゃないかと思うくらいにニコニコしてたぞ? 何が不満でこんな不機嫌空間を生み出しやがったんだ。 「とぼけるのですか?」 突然の声は、 「古泉か」 また、赤い人間もどき。 「あなたはなんでそんなに落ち着いていられるのですか」 不機嫌な声とは珍しいな。 「何でと言われても、なあ? ハルヒがなんでこんなことしたか分からんからな」 「なぜか分からない? 冗談でしょ? 僕が今まで聞いた中で一番面白くない冗談ですよ」 冗談なつもりは、これっぽっちもない。 「なあ、何でそんなにカリカリしてんだよ」 「あなたは自分のした事の重大性に気付いてないのですか?」 どうも話がかみ合わねえ。 「だから、俺が何をしたんだ? 特に大したことはしてないだろ」 古泉が声を荒げて、 「まだとぼける気ですか! それとも、自分は涼宮さんに気にいられてるから何をしてもいいとでも!?」 待て待て待て待て。なんでそんなに責められなきゃいけないんだ。 それに俺はそこまで傲慢じゃない。 「ああ……、なるほど。 自分は死んだんだから世界がどうなろうと知ったことではないと言うんですね。 あなたがそこまで腐った人だったとは……」 「待てよ。俺が……死んだ? 何のことだ」 「……」 なんでそこで黙る。 「……ふざけてるんですか?」 「俺はまじめだ」 「……おかしい。なんでここまで話がかみ合わないんだ?」 俺が聞きたいくらいだ。現世には全く絶望してねぇよ。 「待って下さい。あなたは今日首を吊って自殺した。そこはあってますよね?」 何と言うか……。 「スタートから違う。俺は死ぬまでにやりたい事がまだまだあるんだ」 古泉もどきは首をひねって、 「おかしいな。本当にあなたですか?」 俺がお前に訊きたいくらいだ。お前の知ってる俺は本当に俺か、って。 「見た目は……、そうですね。でも中身が違う。僕の知っているあなたは常に怯えていた」 何にだ? 消えた朝倉か? 「涼宮さんですよ」 「はい?」 お前の目は節穴か? 俺はハルヒにうんざりした事はあれど、怯えた事はないぞ。 「やはり、別人ですね……」 だろうな。 「僕の知る限りあなたは涼宮さんの一所有物でした。 そしてあなたはそれを嫌っていたにも関わらず何も言わなかった」 所有物だと? 例えば? 「例えも何もありません。あれをやれと言われれば何も言わずに実行してました。 つい最近ですと着衣寒中水泳させられてましたよ。 理由は……朝比奈さんを見ていたから、でした」 「暴君だな」と、溜め息混じりに言う。 「僕もそう思いまして一度訊いてみた事があるんです。『どうして何も言わないのか』と。 そしたらあなたは『約束だからしょうがない』って言って笑いましたよ。 あんな砂漠みたいな笑い声聞いた事ありませんよ」 どんな俺だよ。やれやれ、どうやらまた別の世界らしいな。 「……お前の推測でいい。俺がお前の記憶にある俺と違うのはなぜだ?」 「一つの可能性としては、あなたはパラレルワールドの住人で涼宮さんに呼び出された。 もう一つの可能性として、あなたはこれから始まる新世界における涼宮さんのパートナーとして 新たに作りだされた存在と考えられます」 俺は前者の可能性を信じたいものだな。後者は救いがなさすぎる。 「それは神のみぞ知るといったところですね。仮に前者だろうとあなたには時間が残されていない。 もう、こちらの世界の八割は閉鎖空間に包まれています。あと一時間あるかないか。 それを過ぎれば涼宮さんの作り出した新たな世界が始まります」 「……長門あたりに聞けば正確な事は分かりそうだな」 そうつぶやくと古泉はすっ頓狂な声で、 「ああ、そういえばお二人から伝言を預かってました」 そんな大事な事を忘れるな。 「すいません。なにぶんさっきのあなたの印象が強烈でして。 それで朝比奈さんからは 『キョン君は『禁則事項』の『禁則事項』で『禁則事項』です』、だそうです」 わけが分かりません、朝比奈さん。 「あの雰囲気からして未来の新しい罵詈雑言じゃありませんかね。 怒った朝比奈さんなんてはじめて見ましたよ。もっとも泣きながらでしたけど」 ああ、そうかい。 「それと長門さんからは前と同じです。『パソコンの電源を入れるように』と」 そして、古泉は消えた。 全くどうなってやがるんだ。俺は俺のいた世界に帰るぞ。 「……とりあえず部室に行くか」 部室に入るなりパソコンの前に座り電源を入れた。 点滅する白いカーソル。 YUKI.N 見えてる? 『ああ』 YUKI.N 馬鹿。 なんてこと言い出すんだ。 『待て。詳しくは何とも分からないが俺はお前たちの』 動きだしたカーソルが俺の文章を遮る。 YUKI.N 知ってる。言ってみたかっただけ。 「……」 YUKI.N あなたが別の世界から来たかどうかはわたしには分からない。 でも、あなたと言う存在に対して涼宮ハルヒの力が働いたのは事実。 『……どうすりゃいい?』 YUKI.N 何も。 『なんでだ?』 返事がなかなか返ってこない。ようやくかえって来たと思ったら――。 YUKI.N さよなら。 画面が暗転し、パソコンがOSの起動画面をうつしだす。 俺はパソコンの電源を落として、 「……さよならってどう言うことだよ、長門」 「そのまんまよ、キョン」 この声は何と言うか、 「ハルヒ、か?」 怖くて振り返れない。 「そうよ。……ねえ、なんであたしに背を向けたままなの?」 肩に触れる冷ややかな手。俺は意を決して振り向いた。 「よう」 そこにいたのはハルヒであってハルヒにあらず、そういうのが一番適切だった。 顔を笑顔の形に歪め、 「そんなことより、言うことあるでしょ?」 ハルヒの白い手が俺の首元へのびる。 「……」 「なんで黙っちゃうのよ? ほら、あたしに黙って死んじゃったじゃない、あんた。言うこと、あるでしょ?」 首にかかったハルヒの手。少しづつ力が込められる。 「ッ……、悪かった。もうしない」 不意にハルヒの手の力が抜けた。 「そう、それでいいのよ」 ハルヒの顔がまともに見れねえ。どこで狂っちまったんだよ、この世界は。 「学校で岡部に話を聞かされた時は驚いたわよ」 ハルヒは笑った。 「そのあとあたしだけ職員室に呼ばれてね、手紙を渡されたの」 ハルヒの腐った水のように濁った目が俺を見る。 「あんたの遺書よ」 また、ハルヒの右手が持ち上がる。 「そこに書いてあったのは一言だけ」 ハルヒの左手が右手の後を追うように持ち上がる。 「『もう、涼宮には付き合い切れない』よ?」 また、首に触れる。 「笑わせるわっ!」 一気に力が込められる。目の前に星がちらつきはじめる。 「あんたがあたしのいう事をなんでも聞くっていったんでしょ!?」 「ハル……、ヒ」 意識が飛ぶ直前、肺に空気が入って来た。 「なのに、何が……何が付き合い切れないよっ!」 いつの間にか床にはいつくばっていた俺の髪をハルヒが掴む。 「あんた去年の五月、あたしにここで言ったわよね。 『俺がお前の言う事を全部かなえてやるから元の世界に帰ろう』って」 なるほど、こっちの世界で俺はハルヒにあれをしなかったのか。 「なのに、あたしに付き合い切れないって……馬鹿じゃないのっ?」 ハルヒが俺の顔を見て唇の両端を持ち上げる。 「でも、いいの。許してあげる。条件付きでね」 ハルヒは笑顔のつもりだろうが俺にはそうは見えない。 「もう一回約束してくれたら、許してあげるわ」 ……俺はこのハルヒとやっていけるか? 答えはノーだ。 「断る」 ハルヒの顔が固まった。 「……なんて言ったの?」 「断る。俺はお前のものじゃない」 ハルヒが壊れた。 「違うわ、あんたはあたしのよ。そうなの、あたしが決めたから。駄目よ……駄目なのよ」 どこのガキだ。 「じゃあな。お前のものになるくらいなら消えてやるよ」 俺はハルヒに背を向け部室を出ようとした。 「行かないで!」 泣き声を無視し、ドアに手を掛けた。 「行かないで。行くな……、行くなっ!」 怒号が響く。 そして、扉が開かなくなった。 「くそっ」 力任せに引いても押しても開かない。そんな俺を見てハルヒは笑っている。 「なんだ、ここはあたしの思い通りになるんじゃない! さ、キョン。こっちに来なさい」 嫌だね、と言おうとして俺は驚愕した。床が動いてる! 「よしよし」 ハルヒはまるで犬でも扱うように俺の頭をなでる。 そんな俺は手錠で手と足を固定されている。こんな時に自分の力を自覚すんな。 「ねえ、キョン。約束してよ」 「断固拒否する」 「なんで? いいじゃないの、別に」 「……」 ハルヒは溜め息を吐いて、 「しょうがないわね。あんたがその気になるまでみくるちゃんで遊ぶ事にするわ」 「いない人間で何をするって?」 俺としては痛烈な皮肉のつもりだったんだが、 「いなければ呼べばいいじゃない」 ハルヒが言い終わるやいなや、朝比奈さんが現れた。 「ひぃっ……」 もはやこのハルヒは正気じゃない。いつの間にかナイフを握ってやがる。 「あんたがちゃんと約束してくれれば被害者、少なくてすむわよ」 「ぴっ……」 朝比奈さんは気を失ったようだ。 「……もし俺が後で約束やぶったらどうなる?」 「言わなくても分かるでしょ?」 にらみ合う俺たち。 「……あーあ。時間切れ」 何を言っているか咄嗟にはわからなかった。 「一人目よ。ゴメンね、みくるちゃん」 「馬鹿、よせっ!」 制止にもかかわらず飛び散る血。 「いたっ、いたいよぅ……なん、で?」 ナイフを引き抜いたハルヒは言った。 「さあ? キョンに聞いてね」 倒れる朝比奈さん。次いでハルヒのそばに長門が現れた。 それからどれくらいの時が流れただろう。部屋にこもる異臭。 「これで三人よ? ……あんたも強情ね」 俺は目を開いていたが何も見ていなかった。何も聞いていなかった。 ただ決断するのに少し時間が掛かっただけの話だ。 「分かったよ。約束する。これからずっとお前がやれって言えば必ず……」 「良かった。さすがに妹ちゃんとかには手を出したくなかったしね」 こいつは……。 「じゃあ、まずそれを外したげる」 手錠が足と手から外れる。同時に俺は飛び起き、ハルヒの手からナイフを奪い――。 「……キョン、何、で?」 俺はもうお前をハルヒと思わないってことだよ。 「馬鹿ね、あんたせっかく、生き……返れたのに」 「団員を殺す団長と暮らすよりはましさ」 「嫌、行か……ないで。約そ……」 ハルヒが倒れたのを確認する。 結局俺は元の世界に帰れないで終わるのか。やれやれだ。 最後のひとときを血まみれの死体とすごすという 最悪の終わり方を迎えようとしていた俺の人生に一筋の光明がさした。 突然起動するパソコン。 これは……。 YUKI.N 見えてる? まじか、まじで長門か? 『ああ。でもどうして』 YUKI.N あなたがいるのは私たちとは別の世界。今、古泉一樹がそちらに向かっている。 『俺は助かるのか』 YUKI.N そう。 良かった。安堵すると同時に、扉が開く。 『じゃあ、またそっちで会おうな』 YUKI.N わかった。 「これは」 古泉が部屋の中を見渡す。 「なかなか刺激が……」 そういえばこの部屋には――。 「時間がありませんので、すぐ出ますよ。つかまってください」 俺は古泉に不本意ながらつかまった。 「ちょっときついですよ。長門さん謹製の脱出プログラムですから」 そういって古泉が目を閉じた。突然襲う立ち暗み。 俺も思わず目を閉じ――。 目を開けるとそこは俺の家だった。 射して来る日差しが眩しい……って今何時だよ。昼くらいじゃないか? 時計の方に視線をやるとそこに、 「ハル、ヒ……」 背中を汗が伝う。こいつは、あっちの世界のハルヒだ。一目で分かる。 なんでここに? 「ふふふ……。ねえ、キョン。約束やぶったら、どうするって言ったっけ?」 ハルヒが俺に血まみれのナイフを見せつけた。 「ねえ、キョン……約束よ?」 FIN.
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SMP/W82-015 カード名:“夏の日差し”しろは カテゴリ:キャラクター 色:黄 レベル:2 コスト:2 トリガー:1 パワー:7000 ソウル:2 特徴:《サマポケ》・《時間》 【永】 他のあなたの《サマポケ》のキャラ1枚につき、このカードのパワーを+1000。 一緒に花火、見ようね レアリティ:U Summer Pockets REFLECTION BLUE収録
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――希望とは、知性体として躍動する為の、極めて現実的な通貨である。 人の世に、善きも悪しきも尽きはしない。 度合いに偏りこそあれ、どちらも紛うこと無く、人の性であるからだ。 しかしそのどちらにせよ、それらを行動として表出させる時、人は希望を消費する。 消費するからには供給がある。 供給が止まれば自壊が起きる。 それは別段希望のみならず、全ての生命が要する栄養素も同じだ。 ――極めて不可解なことに。 希望の枯渇により自壊する生物は、今のところ、人間のみだ。 ◎◎◎ ――赤と青の警告灯がぐるぐると回転し、瞼をちらちらと指してくる。 あまりに遅く到着した警察の暴動鎮圧用弥生部隊が、 既に私がアームキルしてしまったグリディイーターの残骸をすごすごと片付けていく。 パイロットはやはり跡形もなく、既に取り込まれきった後らしかった。 当然というべきか、私は部隊の指揮官らしきパイロットに呼び止められ、事情徴収を色々された。 あっちもあっちで、かつての世界同様にグリディイーターによる事件を既に把握しているらしく、 私はおよそ20分くらい喋らされた後、やっとこさ開放された。 指揮官は最後に「市民の協力に感謝します」とか言って敬礼をして仕事に戻っていったが、 市民という呼ばれ方に対して、私は色々と少し皮肉な気分になっただけだった。 「案外苦戦したな。勇敢な市民」 ムスタングがポケットから取り出したシャケおにぎりを齧りながらそんなことを言ってきた。 「うっさいわね。それに貴方こそ、ジェネラル・リラティビティ出して囮になってくれるだけでこっちは助かったのに」 「解ってたんだぞ。でもお前があんなに神様っぽく見栄張ってたから空気読んだんだぞ」 「……」 「それこそあそこで俺が出たら、全部美味しいトコ――」 「もういい、解った」 「それにしても……なんでグリディイーターは電車を狙ったのかしら」 小癪なムスタングを制しながら、私は最初に抱いたそんな疑念を反芻した。 もはやパイロットがああなっている以上、その心中を測ることは不可能だ。 もしかしたら本当に無軌道に襲ったのか、もしくは何らかの理由があったのか。 「死人に口なしなんだぞ。 本人からはもう何も聞けないが……あれが本人の意思じゃなかったなら、ある程度推測はできるな」 ムスタングが横目でこちらを見ながら、そんなことを言った。 いつの間にか、その手にあったはずのシャケおにぎりは全て食べ尽くされていた。 「パイロットが既にああなってた以上、おそらく本人の意識はほぼ無かったはずなんだぞ。 機体自身がたまたま“沢山の生命反応”を感知して、それを“破壊”すべく襲っただけなら、一応筋は通る」 ――今度はどこからか水筒を取り出しながら、ムスタングは言い切った。 ……もはやいくら考えても真相など解るまい。 そう振り切った私は、気を取り直してその場から歩き出そうとして――その刹那に、背筋が凍ったあの響きを思い出した。 「――最後のアレは、なんだったのかしら」 私はふと、グリディイーターが最後に零した不吉な“声”を思い出す。 ……いや、違う。 「なんだったのか」という疑問は、おそらくは間違っている。 アレが「何の声か」など、私は既に明確な答えを掴んでいる。 「……“彼ら”までもが、ここには再現されているというの」 私は、そんな絶望にも似た言葉を漏らした。 ここは私の夢の世界だ。可能性を探求するための、新たなカンバスだ。 “彼ら”までがここに居るというのなら、それは――可能性の否定に他ならない。 「――そんなはずはないんだぞ」 ムスタングの言葉に、私はとっさに振り向いた。 その紅色の瞳にはいつものような悪意のない悪意はまるでなく。 その奥には、私を諭すような奇妙な色が浮かんでいた。 「あいつらは可能性を否定する存在だ。 あの声が再現された物でも本物でも、ここに居ることは在り得ない。 普通の世界ならばともかく、幻で出来たこの世界は特殊な立ち位置にある。 どの世界とも地続きではない、曖昧な世界。 ――あいつらが、そこすら超えて来られるとは思えない」 「ただ、あいつらそのものではなくとも、 かつてあいつらの干渉を受けた“誰か”程度なら、再現される可能性はある。 あれはきっと、そういう類の奴の意識が、最後の一瞬だけ表出したんだろうな」 ……そう言い切ったムスタングは、フタ代わりにもなるマグカップを水筒に戻した。 「――さてどうする、アシが無くなったんだぞ」 ……ムスタングの急にあっけらかんとした言葉に、私は現実を思い出し肩を落とした。 「世界を救う可能性」を求める旅として、 次なる目標をとりあえずリズに決めて進んでいたのに、まだ御蓮にいる間にこれだ。 「このあたりは田舎だからな。 すぐには復旧しないだろうし、復旧したとしても一時間後じゃないと次の電車出発しないんだぞ」 「……」 「不幸中の幸いというか、時間は嫌になるくらいあるんだぞ。 とりあえず次の駅まではめっちゃゆっくり歩いても全ッッッッッ然余裕で着くぞ」 「……それは不幸中の不幸よ」 ――不意に、誰かに腰をつつかれた。 がっくりと落とした肩が思わず上がり、とっさに振り向いた。 「……あ」 思わず、間の抜けた声が漏れる。 そこには、先程私達に向けて必死に祈っていた、あの少年と少女が立っていた。 二人共、当然ながらまだ少し恐怖に震えていた。 「……おねえさん」 なんとか言葉を絞り出したのは、少女のほうだった。 少年も何かを言おうとしているようだったが、うまく言葉が出てこないようだった。 「――なあに?」 私は、しゃがんで視線を二人に合わせた。 我ながら必死の見栄だ。必死に隠して入るが、さっきから激痛の残留で左腕がピクピクしている。 「………っく……ひっく………」 緊張が解けたのか、少女は泣き出してしまった。 「泣かした!」と喚くムスタングと思わずたじろぐ私の前で、 少年もつられて色々と決壊し、一緒に泣きだした。 どうしたらいいのかも解らない私は、まるで本当に泣かした犯人のようにあたふたするしかなかった。 「……っ………っく……ありが…………ありが、と………りが、と……!」 自分のしゃっくりでぶつ切りにされながらも、 一生懸命に言葉を絞り出したその言葉を、私は確かに聞いた。 少年も少年で、少女の言葉に合わせて必死に口をぱくぱくさせていた。 ……内心、そこはがんばれよと正直思った。 不意に、ムスタングの視線を感じて、居心地が悪くなる。 目くらい逸らせと思いつつ、私は二人に歩み寄った。 「――全部、私が好きでやったことよ。気にしないでいいわ」 ……そんなありきたりな台詞を言って、 二人の頭を不器用に撫でることが、私なりに出来る精一杯の返事だった。 「……はあ」 地面を踏む足取りは、正直軽くはない。 見上げた空は憎たらしいほどに真っ青で、もう少しくらい日差しが弱くてもいいのに、と思った。 「溜息の割にはきりきり歩いてるんだぞ。あの子達に励まされたか」 水筒をぶら下げ、のたのたとした足取りで横に並ぶムスタングの言葉がまたしても耳障りだったので、 風に木々が揺られる心地良い音を聞きながら、私はとりあえず無視した。 ――まあ、まだ進んでやらんこともない。 そう思って、顔を上げて。 私はやっぱり、気怠げな溜息をついてしまった。 ……極めて不愉快なことに、 目の前の真っ直ぐな田舎道は、まだまだ遥かに遠かった。