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公式通知038 競技規則の変更 2012.11.07 ニコニコ耐久選手権 LMP1・LMGTE Pro競技規則およびLMP2/LMGTE Pro競技規則を、下記の通り一部変更します。 【変更内容】 LMP1・LMGTE Pro競技規則 第23条「レース設定」 LMP2・LMGTE Am競技規則 第9条「レース設定」 アップデートによる変更に対応し、今までに記載されていなかった事項についても追記しました。 赤字にて表記されている事項が新しく追加・変更された内容です。 レギュレーション設定 クルマの絞り込み 絞り込みなし パフォーマンスポイント 各クラス指定のPP 馬力 制限なし 車重 下限なし 駆動方式 全てチェック タイヤ制限 制限なし 車両のチューニング 制限なし※ スキッドリカバリーフォース 禁止 アクティブステアリング 禁止 ASM 禁止 ドライビングライン 許可 TCS 許可 ABS 許可 ※改造範囲は、車両規則に準じます。 イベント設定 ゲームモード ノーマルレース 周回数 規定の周回数 スタートタイプ グリッドスタート グリッドソート タイムによるグリッド ブースト なし ペナルティー なし 自動レース開始サイクル 無効 勝者決定後のレース継続時間 120秒→60秒 車両の破損表現 ON メカニカルダメージ 強い 衝突判定を無効にする OFF スリップストリームの強さ 弱い タイヤ、燃料の消耗 ふつう 雨・コース外でのグリップ低下 リアル 天候 晴れ固定
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無煙焼却炉の販売に際し,燃焼中に灰出し口の扉を開けると危険である旨を取扱説明書等に記載せず,かつ口頭でも説明しなかったことが,製造物責任法上の指示・警告上の欠陥に該当するとして,損害賠償請求が認められた事例 平成17年12月20日判決言渡 平成16年(ワ)第289号 損害賠償請求事件 判 決 主 文 1 被告は,原告A株式会社に対し,2000万円及びこれに対する平成16年1月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,10万円及びこれに対する平成16年1月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 訴訟費用は被告の負担とする。 4 この判決は,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 主文と同旨 第2 事案の概要 1 本件は,被告製造の焼却炉を購入して使用していた原告らが,同焼却炉の欠陥により発生した火災等によって損害を被ったとして,被告に対し,製造物責任法3条に基づき,損害の賠償を求めた事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがない。) (1) 原告A社は,木製サッシの製造販売を業とする会社であり,原告Bは,その従業員である。 被告は,焼却炉の製造販売を業とする会社である。 (2) 原告A社は,被告との間で,平成15年12月,被告の製造にかかる無煙型焼却炉J-4型1基の売買契約を締結して同焼却炉(以下「本件焼却炉」という。)を購入し,被告は,同月25日,富山市a町b丁目c番地所在の原告A社の工場(以下「本件工場」という。)内に据え付けを完了した。 (3) 平成16年1月20日午後7時30分ころ,原告Bが本件焼却炉で焼却作業中に同焼却炉の灰出し口の扉を開いたところ,バックファイヤー(燃焼爆発)が発生した(以下「本件バックファイヤー」という。)。 (4) 翌21日午前4時過ぎころ,本件工場において火災が発生した(以下「本件火災」という。)。同火災は,火災報知器で警備会社に知らされ,消防車により消火された。 (5) 被告が原告A社に交付した取扱説明書(甲2。以下「本件取扱説明書」という。)には,焼却炉で燃焼中に灰出し口の扉を開けないようにとの記載はない。 3 争点及びこれに関する当事者の主張 (1) 設計上の欠陥の有無 (原告らの主張) ア 本件バックファイヤーにより,本件焼却炉からは3m程度の火柱が上がり,火の粉が飛散した。焼却炉は,大量の可燃物を燃やす設備であり,強い火炎が発生するから,炉外に大量の火炎が噴出するなどの危険がないように設計すべきところ,本件のように灰出し口の扉を開けるとバックファイヤーが発生して大量の炎が噴出するのは,明らかに設計上の欠陥である。 イ 原告A社で従来使用していた焼却炉では,燃焼中に燃焼の状況や灰の状況を見るためなどに頻繁に灰出し口の扉を開けていたものの,バックファイヤーが起きたことはなかった。本件焼却炉が燃焼中に灰出し口が開けられることがあり得ないという前提で設計がされているとしたら,その設計思想に欠陥があり,設計上の欠陥であることを露呈している。 ウ 原告A社に既設のサイロ(以下「本件サイロ」という。)は,従来これを使用していて問題が発生したことはない。 (被告の主張) ア 燃焼中に灰出し口を開けて外気が燃焼室内に入った場合にバックファイヤーが起こるのは,本件焼却炉に特有のことではなく,以下で定義する改正基準に適合する高温で焼却する焼却炉においては,すべてそうである。したがって,灰出し口の扉を開けて炎が噴き出したからといって,設計上の欠陥にはあたらない。 燃え殻(灰)を取り出すために灰出し口は必要である。そもそも焼却炉で燃焼中に灰出し口の扉を開けることはあり得ず,その必要性は全くない。 イ 本件焼却炉は,平成13年3月26日改正の廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)施行規則により平成14年12月1日から施行された改正後の産業廃棄物を焼却する場合の焼却設備の構造基準(以下「改正基準」という。)に適合したものである。 改正基準では,焼却炉燃焼中は「空気取り入れ口と煙突の先端以外に焼却設備内と外とが接することなく,燃焼室において発生するガスの温度が摂氏800度以上の状態で定量ずつ廃棄物を焼却できるものであること」が要件とされており,これは公知のことである。そして,燃焼中に灰出し口の扉を開けると外の空気が焼却炉内に入り,燃焼室の温度が800度以下になって改正基準に反することになるから,改正基準に適合する焼却炉は,燃焼中は灰出し口の扉を開けることはあり得ないことになっている。 ウ 本件焼却炉に接続した本件サイロでは,木屑が定量ずつ送られず,燃焼室内で燃焼したりいぶったりの状態で,バックファイヤーが起こらざるを得ない状態であって,本件焼却炉を適正に稼働させるには欠陥があった。しかし原告A社は,被告の指摘にもかかわらず,本件サイロの入れ替えをしなかった。常に一定量の木屑がサイクロンへ投入されるサイロであったならば,燃焼状態は一様で,万一誤って灰出し口の扉を開いても,バックファイヤーが起こる可能性はない。したがって,本件サイロが本件焼却炉を適正に稼働させるには欠陥があり,原告が本件サイロを入れ替えなかったことが原因で,本件バックファイヤーが起きた可能性が高い。 (2) 指示・警告上の欠陥の有無 (原告らの主張) ア 本件バックファイヤーにより,本件焼却炉からは3m程度の火柱が上がり,火の粉が飛散した。本件焼却炉が,設計上,灰出し口の扉を開けるとバックファイヤーによる多量の炎が噴出する危険性があるのであれば,取扱説明書等にその旨明確に記載するとともに,口頭説明においても特に注意してはっきりと説明すべきところ,被告が原告A社に交付した本件取扱説明書にはその旨の記載がなく,また,平成15年12月24日に被告の従業員Cが据え付け工事をして取扱説明を口頭でしたときも,簡単に操作手順を説明しただけで,灰出し口の扉の開閉についてやバックファイヤーの危険性については何ら説明がなかった。本件焼却炉に貼付されたステッカー(甲21)にも,燃焼中に灰出し口の扉を開けてはいけない旨の表記はない。 イ 原告らは,燃焼中に外気と接触しないため,また燃焼室内の温度を800度より下げないため,燃焼中に灰出し口の扉を開けてはならないとの説明を受けていないし,その旨の取扱説明書の交付も受けておらず,そのことを知らなかった。原告Bは,焼却炉の取扱いについて専門的な資格や知識を有しているものではない。 ウ 被告は,燃焼中に灰を取り出すなど危険で絶対にしないことであると主張するが,それだからこそ,口頭及び取扱説明書でしっかりと説明すべきであったのである。なお,本件火災後に原告A社に交付された書面(甲3。以下で定義する本件マニュアルである。)には,燃焼中は灰出扉等は絶対に開けないでくださいと書いてある。 (被告の主張) ア 焼却炉で燃焼中に灰出し口の扉を開けて急に外気を燃焼室に入れるとバックファイヤーが起こることは,焼却炉を取り扱う者にとってはごく常識的なことである。焼却炉で燃焼中に灰出し口の扉を開ける必要はなく,これを開けることを予見することは不可能である。したがって,仮に,被告が焼却炉で燃焼中に灰出し口の扉を開けないように使用上の説明をしなかったとしても,それをもって指示・警告上の欠陥があるとはいえない。 イ 被告の営業技術課長のCは,念のため,平成15年12月24日の本件焼却炉の試運転時に,個人的に作成したマニュアル(甲3。以下「本件マニュアル」という。)を見ながら立ち会った原告A社の担当者に説明をし,燃焼中は灰出し口の扉を開けないよう注意した。さらに,本件サイロが定量スクリューサイロではないためにバックファイヤーが起きたので,これに対処するため,Cは,平成16年1月7日及び翌8日,投入扉及び灰出し扉等の完全密閉工事等の追加改造工事を行った。このことからも,原告らは,本件焼却炉で燃焼中には灰出し扉を開閉してはならないことをさらに知ったものである。 ウ そもそも,原告A社は,富山県知事ないし富山市からの立入り調査や行政指導を受けて,改正基準に適合した焼却炉を設置する必要に迫られ,本件焼却炉を被告から購入することとした。本件焼却炉は,改正基準に適合する焼却炉であるから,このような焼却炉においては,燃焼中に灰出し扉を開閉することは絶対にしてはいけないことは一見して明らかである。原告らは,従来の焼却炉が使用できなくなった理由や,新たに設置する本件焼却炉は改正基準に適合しなければならないことを十分に知っていたのであるから,本件焼却炉がいかなる焼却炉であるか十分に知っており,燃焼中に灰出し扉を開閉してはならないし開ける必要もないことを知らなかったはずがない。燃焼中に灰を取り出すなど危険で絶対にしないことであるし,する必要も理由もない。 仮に原告Bがそのことを知らなかったとしても,原告A社の上部の者は,焼却炉を取り扱う担当の原告Bに説明等すべきであったのであるから,原告A社の上部の者から原告Bに一切の説明がなされなかったことについて,被告に責任はない。また,被告において,原告らがそのことを知っていると思ったのも当然のことであり,そう思ったことについて被告に落ち度はない。 焼却炉で燃焼中に灰出し口の扉を開ける行為は,改正基準に適合する焼却炉として通常予想される使用形態とは言えない。 (3) 原告Bにおける損害の発生及び額,因果関係 (原告Bの主張) ア 原告Bは,本件バックファイヤーによる火炎を浴びて顔面と右手に火傷を受け,治療約10日間の負傷をした。被告は,これに対する慰謝料として10万円の賠償責任がある。 イ よって,被告は,原告Bに対し,製造物責任法に基づく損害賠償として,10万円及びこれに対する損害発生の日である平成16年1月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務がある。 (被告の主張) 原告Bは,何の必要も,目的も,理由もなく,本件焼却炉で燃焼中に灰出し口の扉を開けた。したがって,原告Bが火傷を負ったことが事実とした場合,それは自損事故である。 (4) 原告A社の損害 (原告A社の主張) ア 本件火災の原因 本件バックファイヤーが発生した際,「ドーン」という音とともに3m程度の火柱が上がり,炎が火の粉を伴って舞い上がった。ただし,一瞬のことであり,また,何かに燃え移って燃焼したのではなかった。しかし,周辺にいた作業員4名程度はすぐに駆け寄って,直ちに床や壁面に多量の水をかけ,まもなく本件焼却炉の火を止めて作業を終了した。その後,原告A社の従業員Dが午前1時ないし2時ころまで残業しながら,本件バックファイヤーのあったことを気にかけて,臭いなどの火の気配に注意しながら監視していた。 本件火災の原因は,本件バックファイヤーで本件焼却炉から飛散した火の粉が防火壁の隙間から入り,その中の木材研磨粉又は周辺の木材研磨粉に入り,無煙燃焼により発見されない状態になり,かなりの時間が経過してから発火したものと推測されており,消防署も同様の見解だったようである。 イ 本件火災により,富山市a町b丁目c番地所在の原告A社の工場3棟(①原告A社所有,鉄骨造亜鉛メッキ鋼板葺3階建工場,各階の床面積173.52㎡,②原告A社代表者所有,鉄骨造スレート葺2階建工場,1階317.37㎡,2階272.67㎡,③原告A社代表者所有,鉄骨造亜鉛メッキ鋼板スレート葺3階建工場,1階548.18㎡,2階128.00㎡,3階122.72㎡)がいずれも全焼した。なお,上記②の1階の一部が燃え残ったが,建物の効用としては全焼である。 ウ 本件火災による原告A社の損害は以下のとおりである。 (ア) 商品(完成品)の焼失による損害 3543万8400円 (イ) 機械装置の廃棄処分による損害 1023万2848円 (ウ) 工具・器具・備品の廃棄処分による損害 108万7593円 (エ) 工場借賃 391万5000円 本件火災後,当月から本訴提起に至るまで他社の工場を借りて操業しているが,その賃料は1か月43万5000円である。原告A社は本訴提起時までの9か月分を請求する。 (オ) 引越費用 1152万4815円 (カ) 休業損害 1827万7992円 原告A社は,本件火災により,12日間の稼働日を休業した。 原告A社の1年間の売上高 4億1141万9733円 稼働日数 268日 1日平均売上額 153万5148円 1年間の水道・光熱費 321万1230円 1日平均の水道・光熱費 1万1982円 計算式:(1,535,148円-11,982円)×12日=18,277,992円 エ 原告A社は,上記損害のうち2000万円を請求する。 オ よって,被告は,原告A社に対し,製造物責任法に基づく損害賠償として,上記損害のうち2000万円及びこれに対する損害発生の日である平成16年1月21日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払義務がある。 (被告の主張) ア 本件火災の原因について 本件焼却炉もこれに接続された本件サイロも何ら燃えていない。本件焼却炉周辺を囲んでいた壁材から火が発した事実は否認する。 仮に灰出し口から噴き出した火が飛散して木材研磨粉に付着して本件火災となったことが事実であれば,本件火災の原因は,本件焼却炉の消火作業に従事した原告Bにおける後の処置が不適切であったことにある。原告Bや原告A社従業員において,出火が予想されるところ全部に水をかけるなどしていれば,本件火災に至らなかったことは明らかである。 したがって,本件焼却炉の灰出し口から火が噴き出し,その火が残り,8時間後に本件火災に至ったとしても,この火の噴き出しと本件火災との間に相当因果関係はない。 イ 原告A社の主張イにつき,本件火災で原告A社主張の3棟の建物が全半焼した事実は認める。建物所有者は不知。 ウ 原告A社の主張ウは不知ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 証拠(甲1ないし3,5,21ないし23,乙1ないし5,乙6の1ないし4,乙7の1ないし5,乙8の1及び2,調査嘱託の結果,証人E,証人C,原告B本人)及び弁論の全趣旨によれば,前記前提事実のほかに,以下の事実が認められる。 (1) 原告A社は,平成17年7月現在の社員数は42名であるが,焼却炉を扱う資格者はいない。原告Bは,原告A社に勤めて5年程度であり,主に木を削る作業をしていて木屑が多量に出るので,原告Bが中心となって焼却炉を動かしていた。ただし,原告Bが焼却炉を扱うようになったのは原告A社に入社してからであり,焼却炉に関する特別な資格や知識はない。 被告の社員は11名であって,Cは,平成13年2月に入社し,営業技術課長である。 (2) 改正基準は,ダイオキシン対策等として制定されたものである。原告A社においては,改正基準施行後も,その基準に適合しない焼却炉を使用していたことなどから,平成15年9月から10月にかけて,富山市による立ち入り調査及び文書による行政指導を受け,同月14日付けで,既設の焼却炉の使用の中止を文書で指導された。そのため,原告A社は,同年11月1日ころ,木工機械の展示会に赴いて改正基準に適合する焼却炉を探し,被告から,改正基準に適合し,しかも取扱いに特別な資格のいらない本件焼却炉を購入することとした。 原告A社は,平成15年11月10日,正式に本件焼却炉を被告に発注し,被告では,その後Cほか1名の従業員が原告A社に赴き,同年12月23日ないし25日ころにかけて,その据え付けをし,試運転をして原告A社に引き渡した。ただし,焼却炉に接続するサイロは,従来から原告A社で使用していた本件サイロを使用することとしたが,本件サイロが本件焼却炉と適合する定量スクリューサイロではなく,焼却中にバックファイヤーが発生するなどうまく作動しなかったため,被告においては,平成16年1月7日ころにも,灰出し口の扉等を密閉するなどの改良工事を行った。 本件焼却炉は,外気と遮断して摂氏800度以上の高温で燃焼させるものであり,定量スクリューサイロを接続したとしても,燃焼中に灰出し口等を開けると外気が急激に燃焼室内に入ってバックファイヤーが発生する可能性があり,その場合には,火炎が炉外に噴出するおそれがあった。 (3) 平成15年12月25日ころの上記試運転と引渡しの際には,原告A社専務のE,工場長のFと,原告Bが立ち会って,Cから口頭の説明を受けた。しかし,その説明は数分間程度の短時間であり,操作手順の説明が主であって,バックファイヤーが起こる可能性があるので燃焼中は灰出し口の扉を開けないこと,開けると危険であることなどについては,何ら説明がなかった。Cは,その際本件焼却炉貼付のステッカー(甲21)を読むよう説明したが,同ステッカーにも,上記指摘や警告はなかった。また,Cは,本件マニュアルを個人的に作成しており,そこには「サイクロン自動投入燃焼中は投入扉灰出扉等は絶対に開けないで下さい。バックファイヤー等で火が吹き出して危険です。」との記載があるが,上記説明の時点で,これに沿って原告らに説明することも,この文書を原告らに渡すこともなかった。さらに,被告は,その時点では本件焼却炉の取扱説明書は作成しておらず,原告A社に交付した本件説明書は旧型の焼却炉のものであったが,これにおいても,上記の危険性については触れるところがなかった。ただし,被告が本件火災後に作成した本件焼却炉の取扱説明書(乙5)には,「燃焼中は危険ですので後部バフラーの灰出扉は絶対開けないでください。」「サイクロン等により自動投入して焼却中又は焼却炉燃焼中は投入扉や排出扉等は絶対に開けないでください。炉内のエアーバランスが崩れてバックファイヤーが発生し火が扉から吹き出して大変危険です。」との記載がある。 なお,この点Cは,上記試運転の日に,本件サイロが定量スクリューサイロではないためにバックファイヤーを起こして危ない旨を伝えたと証言するが,同時に,(その理由はともかくとして)あまり時間がなく,危険性を説明する時間があまりなかったとも証言しており,他の供述や証言等に照らし,バックファイヤーについて説明した旨の上記Cの証言は採用できない。 (4) 原告Bは,平成16年1月20日午後7時10分ないし30分ころ,遅くなったので早く燃やそうと思い,本件焼却炉の中の木屑が燃えやすいよう攪拌しようとして,灰出し口の扉を開けた。原告Bは,従来の焼却炉でも同様のことを頻繁に行っていたが,何の事故も起きなかった。しかし,本件焼却炉の灰出し口の扉を開けるのは,このときが初めてだった。 原告Bが灰出し口の扉を開けたところ,その瞬間にドカーンという音がして火炎が前へ噴き出し,火の粉が上へ舞い上がった。これは,本件バックファイヤーによるものである。その後直ちに,原告A社の従業員数名が,周囲の床や壁に水をかけるなどした。その後,原告A社の従業員Dが,翌21日午前1時45分ころまで,残業しつつ監視していたが,その時点では何も起こらなかった。 (5) 本件火災の原因は,本件バックファイヤーにより本件焼却炉から火炎が噴出し,舞い上がった火の粉が本件工場の2階床下に溜まっていた木屑等に着火し,無煙燃焼により発見されない状態を継続して,かなりの時間が経過してから出火したものである。 2 争点(1)について判断する。 前記認定のとおり,本件焼却炉は,改正基準に適合した焼却炉であり,外気と遮断した上燃焼室の温度を摂氏800度以上の高温に保つ必要があるから,このような焼却炉においては,燃焼中に灰出し口の扉を開けると,外気が急激に流入してバックファイヤーが発生し炉外に火炎が噴出する可能性があることは,やむを得ないことであるといえる。しかし,焼却後に灰を取り出すために灰出し口を設置すること自体は必要であるから,燃焼中に灰出し口の扉を開けるとバックファイヤーが発生し,火炎が炉外に噴出することがあるとしても,これをもって,本件焼却炉に設計上の欠陥があるということはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。 3 争点(2)について判断する。 (1) 一般に,ある製造物に設計,製造上の欠陥があるとはいえない場合であっても,製造物の使用方法によっては当該製造物の特性から通常有すべき安全性を欠き,人の生命,身体又は財産を侵害する危険性があり,かつ,製造者がそのような危険性を予見することが可能である場合には,製造者はその危険の内容及び被害発生を防止するための注意事項を指示・警告する義務を負い,この指示・警告を欠くことは,製造物責任法3条にいう欠陥に当たると解するのが相当である。 これを本件についてみると,前記認定のとおり,本件焼却炉は,燃焼中に灰出し口の扉を開けるとバックファイヤーにより火炎が炉外に噴出するおそれがあり,その場合には,その周囲にいる者が受傷し,又は設置場所を焼損するなどする危険性が高い。そして,製造者である被告や焼却炉に詳しい者にとっては,同おそれはいわば常識といえることは被告の主張からも明らかであるから,燃焼中に灰出し口を開けてはならないのであるが,本件焼却炉はその取扱いに特別の資格等を必要とするものではなく,改正基準や焼却炉の取扱いに詳しくない一般の人が使用することもありえ,その場合には,改正基準に適合した焼却炉といえども,炉内を攪拌するためなどに燃焼中に灰出し口の扉を開ける可能性も考えられることからすれば,製造者である被告が,本件焼却炉を原告A社に販売した当時,上記のような危険性を予見することは可能であったといえる。このことは,本件マニュアルにその危険性を指摘し警告する注意書きがあることからも明らかである。 したがって,被告は,本件焼却炉を原告A社に販売する際,原告A社に対し,燃焼中は灰出し口の扉を開けないこと,これを開けるとバックファイヤーが発生して火炎が炉外に噴出する危険性があることを指示,警告する措置を講じる義務があったというべきである。 ところが,前記認定事実のとおり,被告は,本件焼却炉を原告A社に引き渡した際,上記危険性を指摘した本件マニュアルは原告A社に交付せず,これに基づいて口頭で指示,警告することもなく,本件取扱説明書にも上記危険性については何ら触れるところがなかったのであり,他に,被告において上記措置を講じたというに足りる事実は証拠上認められない。 そうすると,本件焼却炉には製造物責任法3条にいう欠陥があり,被告は,原告らに対し,この欠陥によって原告らが被った損害を賠償する義務を負うというべきである。 (2) 被告は,原告らは本件焼却炉が改正基準に適合したものであることを知っていたことや,灰出し口の扉の密閉工事を行ったことなどから,原告らは燃焼中に灰出し口の扉を開閉してはならないことを知っていたとか,被告において原告らが上記のように灰出し口の扉を開けること予見することは不可能であるなどと主張する。しかし,原告らが改正基準についてや本件焼却炉が改正基準に適合したものであることを知っていたとしても,また被告において密閉工事を追加して行ったことを考慮しても,そのことから直ちに,焼却炉の専門家ではない原告らにおいて,燃焼中に灰出し口の扉を開けてはならないことを知っていたとか,開けることが絶対にあり得ないということはできず,この点の被告の主張は採用することはできない。 また,被告は,原告らが燃焼中に扉を開けてはならないことを知っていると思ったことについて被告に落ち度はないなどとも主張するが,原告Bが焼却炉の専門家ではないことは据え付け時の対応等から予想できたと思われることや,原告らの知識の程度を被告において確認することは容易であったことなどに照らし,被告の主張を採用することはできない。 4 争点(3)について判断する。 (1) 証拠(甲5,原告B本人)によれば,原告Bは,本件バックファイヤーによる火炎の噴出により,顔及び右手に熱傷を負い,外用療法により約10日間で治癒したと診断されたが,それまでは顔の傷口がただれるなどし,また傷跡が消えるのに1年ほどかかったことが認められる。 被告は,自損事故である旨主張するが,原告Bは,前記認定のとおり,従前の焼却炉と同様のつもりで,早く焼却するために,灰出し口の扉を開けたのであるが,被告より明確な説明を受けていれば同扉を開けることもなかったと認められるから,被告の上記主張は採用しない。 上記受傷により,原告Bが相応の身体的精神的苦痛を被ったことは明らかであるところ,灰出し口の扉を開けた原告Bにも不注意な点があったことは否めないが,これを考慮しても,慰謝料としては10万円が相当である。 (2) したがって,原告Bの本訴請求は理由がある。 5 争点(4)について判断する。 (1) 前記認定事実によれば,本件火災の原因が本件バックファイヤーによる火炎の噴出にあることは明らかである。この火炎の噴出に対し,原告A社として相応の対処をしたことは認められるから,因果関係がない旨の被告の主張は採用しない。 (2) 本件火災により,原告A社主張の工場3棟が全半焼したことは当事者間に争いがなく,これと調査嘱託の結果を総合すると,その内部の商品(完成品)や機械装置,工具・器具・備品が焼失したこと,原告A社の工場を移転する必要があったことは明らかである。 (3) 商品(完成品)の焼失による損害 2752万3800円 証拠(甲8,24の1,24の3,24の4,24の7,24の8,証人E)によれば,原告A社が焼失したと主張する物件の金額3543万8400円のうち,G商会(H邸)282万1000円及びI建設(J邸)327万7200円の金額は,受注金額である各199万5000円を超えることはないと認められる。同様に,K邸の焼失物件の金額(原告A社主張は55万9300円)は52万5000円を,L邸の金額(原告A社主張は165万5600円)は36万7500円を,それぞれ超えることはないと認められる。 したがって,証拠(甲8,甲24の1ないし13,証人E)によれば,商品(完成品)の焼失による損害は,合計2752万3800円の限度で本件火災による損害と認める。 (4) 機械装置の廃棄処分による損害 1023万2848円 証拠(甲6,9,証人E)によれば,上記金額が本件火災により焼失した機械装置の損害額として相当であると認められる。 (5) 工具・器具・備品の廃棄処分による損害 108万7593円 証拠(甲6,9,証人E)によれば,上記金額が本件火災により焼失した工具・器具・備品の損害額として相当であると認められる。 (6) 工場借賃 345万円 証拠(甲10ないし12)及び弁論の全趣旨によれば,原告A社が工場の仮の移転先として建物を賃借したのは平成16年2月からであり,平成16年2月の賃料は2物件合計40万5000円,同年3月以降は3物件合計で月額43万5000円であったと認められる。原告A社は,本訴提起(平成16年9月9日)までの月の賃料を請求しているから,平成16年2月分から同年9月分までの賃料合計345万円を本件火災による損害と認める。 (7) 引越費用 1095万3565円 証拠(甲13,甲14の1ないし3,甲15の1及び2,甲16,甲17の1ないし6,甲19,20)及び弁論の全趣旨によれば,原告A社の仮工場への移転に伴い,移転先でのダクト工事,機器移設据付工事,電気工事等のために上記金額の支払を要し,これらは,本件火災による損害と認められる。 しかし,原告A社が引越費用として請求していると思われる金額のうち,本件火災により焼失した作業台等を購入したとする費用34万1250円(甲18の1ないし3,弁論の全趣旨(証拠説明書))については,焼失した工具・器具・備品(上記(5))として計上されている作業台に替えて購入したとも考えられ,上記(5)の損害のほかにこの購入費用を本件火災による損害として認めるのが相当であるというべき主張立証はない。 (8) 休業損害 0円 証拠(証人E)によれば,1日平均売り上げが約152万円であった旨の証言はあるものの,これを裏付ける証拠はなく,また,経費についても,その詳細は不明である。具体的な休業日数についての立証もない。そうすると,本件火災により,原告A社に何らかの休業損害が発生していることは明らかであろうと思われるものの,具体的に原告A社主張の額の損害の発生を認めるに足りる証拠はないと言うほかない。 (9) 以上のとおり,原告A社主張の損害の一部は認められないものの,原告A社は,損害額の内金として2000万円を請求しているから,原告A社の本訴請求は結局理由がある。 6 よって,主文のとおり判決する。 富山地方裁判所民事部 裁判官 剱 持 淳 子
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このページ [#c7a62e78] ■ 機能和声 ■ [#z193a3b7] そもそも和音とは [#c0e568c0] 和音の3機能 [#ed719f44] T [#y8ac67e9] D [#w6ad198a] SD [#x82831f2] SDmの扱い [#ea605ab3] ■ コードを並べる ■ [#t7c3a040] 基本的な連結 [#v96845db] 代理コード [#t9f17cc9] トライトーン代理、裏コード [#oe1f06a1] セカンダリードミナント [#fe6dcc87] II-V分割 [#p411c728] 補足:セカンダリードミナント挿入とII-V分割のコンビネーション [#n7edb618] 補足:裏II(II-V分割とトライトーン代理のコンビネーション) [#ef0c8596] 偽終止(Deceptive Cadence) [#wc48ce6c] ■ 1つのコードの響きに関して ■ [#n9d260ff] テンションノート [#aa46db8b] アヴォイドノート [#y2e753b0] 構成音の省略(omit) [#q301c3dc] スラッシュコード、onコード [#ebe209aa] アッパー・ストラクチャー・トライアド(UST) [#nc27e902] ■ メロディーを書くために ■ [#hf5a49bf] アヴェイラブル・ノート・スケール [#od57e315] このページ 主に機能和声を扱う。楽典修了(楽譜が読める)必須。 曲例は完全に思いつき。 ■ 機能和声 ■ そもそも和音とは 基本的な意味は「高さの違う同時的に鳴る音(注)」である。 細かい説明は省略するが、一般的に和声と言えば3度構成の3和音や4和音を基本的な和音とする。簡単に言えば、1つとばしで3つか4つ音をまとめたもの(ドミソ、ドミソシ)。とりあえずここでは4和音を基本とする。 (注:分散和音という形もあるけど大ざっぱに同時的とした。) ドファシミのような4度構成和音、ドソレラのような5度構成和音もあるが、機能和声から逃れるために使われることが多い。 和音の3機能 機能和声においては、「和音には大きく分けて3つの機能がある」とする。 トニック(T) ドミナント(D) サブドミナント(SD) (サブドミナントマイナー(SDm)) (注1:サブドミナントマイナーについては後述。) (注2:日本における古典和声学習の権威的著書「和声―理論と実習」「総合和声」においてはDにつながるSDはD2とする立場を取っている。) T 最も基本的なトニックはI(主音上)の和音(C majorにおけるC、c minorにおけるCm)。 最も安定感のある響きを持っていて、その調の中心になる機能。 進行規則:次にどこにでも進める。 D 最も基本的なドミナントはV(5度上)の和音(C majorにおけるG7、c (harmonic, melodic) minorにおけるG7)。 進行規則:Tに進みたくなる。Tを強調する。調の確定に重要な役割。 SD 最も基本的なサブドミナントはIV(4度上)の和音(C majorにおけるF、c minorにおけるFm)。 進行規則:Tに進むか、Dに進む。 SDmの扱い サブドミナントマイナーという語は一般的に「短調のSDを、長調の音楽の中で使っている時」に用いられる(ex. C majorでのFmはSDm。c minorでのFmは単にSDと言うことが多い)。 つまり本来は借用和音であるが、とても使いやすい和音でありポピュラー和声にとって重要であるため、以下便宜上SDmも基本的な機能であるかのように記すことがある。 最も基本的なサブドミナントマイナーは同主短調のIVの和音(C majorにおけるFm) 進行:Tに進むか、Dに進む。 SDに進まない。 ■ コードを並べる ■ 基本的な連結 上記の進む規則からTから出てTに戻ってくる連結を考えると、大きく4つ、SDm絡みで8つとなる。 T - T T - D - T T - SD - D - T T - SD-SDm - D - T T - SDm - D - T T - SD - T T - SD-SDm - T T - SDm - T ※ ブリティッシュロック・パンクなどではDからSDに進むT-D-SD-Tといった進行もよく見られるが、これは機能和声というよりむしろやや旋法寄り(長調ならイオニアンモード寄り)なアプローチのように思われるため割愛する。 最初に書いたがよく見られる進行であって、決して使えないということではない。 (例1) サビはC major:C-F-G-F(T-SD-D-SD)、メロはC major:C-G-F-C(T-D-SD-T)。 http //www.youtube.com/watch?v=cDBlqu6KF4k#t=7s(Green Day - Minority ) (例2) C major:C-G-F-E(T-D-SD-secD。secDについては後述)。 http //www.youtube.com/watch?v=kfR42GOAemI#t=46s(Avril Lavigne - Sk8er Boi) 代理コード 今まで出てきた3つの和音(I・IV・V)しか使えないのかと言うとそうではなく、同じような機能を持ったコードを使うことができる。そのコードを代理コードという。時にはノンダイアトニックなコードを借用して代理することもある。 代理コードは機能的に正しくてもメロディーと合わないことがあるので注意が必要。 (代理の例) C majorにおいてAmはトニック的である。そのため、 C F G C F G C (T SD D T SD D T) を C F G Am F G C (T SD D 代理T SD D T)としても遜色ない。 C F G C-Am F G C(T SD D T-代理T SD D T)長さ半分だけ入れ替えるのも可能 (代理コードの例(これが全てではない)) major 基本 Diatonicな代理 Non-Diatonicなとこから借用して代理 T I VIm7、IIIm7 #IVm7 D V7 VIIm7(b5)、IIIm7(IIIm7/V)、IIm7/V、IV/V bII7(※) SD IV IIm7 IV7 SDm IVm IIm7(b5)、bVI△7、bII△7、bVII7 ※特にこの代理をトライトーン代理(Tritone Substitution)、裏コードと呼ぶ。 minor 基本 Diatonicな代理 Non-Diatonicなとこから借用して代理 T Im bIII△7、bVI△7 D V7(b9) bII7、bVII7 SD IVm IIm7(b5)、bVI△7、bII△7、bVII7 トライトーン代理、裏コード 上にも書いたが、ドミナントV7をbII7で代理できる。 そもそもV7がIに向かう強い動きを持つのは、V7のM3rdとm7thが増4度という不安定な音程だからである。 この2つの音の間は全音3つ分とも解釈できることから、この音程をトライトーンとも呼ぶ。 bII7がV7の代理となるのは、このドミナント7thコードの特徴を決定しているものと同一のトライトーンが、bII7のコードトーンにも含まれている為である。 例えば、CMajorキーに対し、V7であるG7と、bII7であるD♭7は、同一のトライトーンであるFとBを含む。 この時、bII7をトライトーン代理コードや裏コードという。 (裏コードを使った進行例) E minor Em7-CM7-F#m7(b5)-F7 セカンダリードミナント ある和音をスムーズに引き出す・強調するために、そのコードに対応するドミナントを前に置くことができる。 本来のドミナントに対し、それら2次的なドミナントをセカンダリードミナントと呼ぶ。 (例)C major C - Am7 - G7 - C (G7は本来のドミナント。) C - Am7 - D7-G7 - C (Gをトニックとみなし、G majorのドミナントD7を前置して強調) C - E7(b9)-Am7 - D7-G7 - C (Amをトニックとみなし、a minorのドミナントE7(b9)を前置して強調) C - B7-E7(b9)-Am7 - D7-G7 - C (Eをトニックと(ry) C - F#7-B7-E7(b9)-Am7 - D7-G7 - C (いくらでもできる) もちろん前置するドミナントは裏コードでも良い。 C - Am7 - G7 - C C - Am7 - Ab7-G7 - C (Gとトニックとみなし、G majorのドミナント代理Ab7を前置して強調) (注)ダイアトニックコードへのドミナントのみをセカンダリードミナント、ノンダイアトニックコードへのドミナントをエクステンディッドドミナントと呼ぶ人もいるが、あまり意味はないように思う。 II-V分割 先にIIm7はSDの代理と書いたが、それにもまして実はV7ととても仲が良い。 V7はどこでも[IIm7-V7]に分割することができる。 (例)C major C - C7 - F - D7 - G7 - C (T-secD-SD-secD-D-T) C - C7 - F - D7 - [Dm7-G7] - C (G7を分割) C - [Gm7-C7] - F - D7 - [Dm7-G7] - C (C7を分割) C - [Gm7-C7] - F - [Am7-D7] - [Dm7-G7] - C (D7を分割) 補足:セカンダリードミナント挿入とII-V分割のコンビネーション C major: C - G7 - C のG7に対して、セカンダリードミナント挿入とII-V分割を1回ずつ行う場合、順番により2パターンできる。 (1)II-V分割→セカンダリードミナント挿入 C - G7 - C C - [Dm7-G7] - C C - A7(b9) - [Dm7-G7] - C (2)セカンダリードミナント挿入→II-V分割 C - G7 - C C - D7 - G7 - C C - D7 - [Dm7-G7] - C 補足:裏II(II-V分割とトライトーン代理のコンビネーション) (**まだ**) 偽終止(Deceptive Cadence) (**まだ**) ■ 1つのコードの響きに関して ■ 4和音をそのまま使った音楽はわりかし素朴である。ここからは1つのコードを複雑な響きにすることを考える。 テンションノート テンションノートとはコードトーン4音以外の音のうち、コードと一緒に長時間鳴らしても響きが悪くならないもの・機能を損なわないもののことである。単にテンションとも言う。 テンションは原則b9・9・#9、11・#11、b13・13の7種(コードによっては△7もテンションに準ずるものとして扱うことがある)。 例えばC△7(ドミソシ)のノンコードトーンは、レb・レ・レ#(それぞれb9・9・#9)、ファ・ファ#(11・#11)、ラb・ラ(b13・13)。 そのうちC△7と一緒に鳴らしてもキモくないものは、レ(9)、ファ#(#11)、ラ(13)。その他の音はアヴォイドノートと呼ばれ使用に注意が必要である。 また、C major内のC△7だった場合、ダイアトニックなレ・ラをナチュラルテンション、ノンダイアトニックなファ#を特にオルタードテンションという。 コードの種類により使えるテンションはある程度決まっている。 コード名 一般的に使えるとされる _△7 9、#11、13 _7 b9・9・#9、#11、b13・13 _m7 9、11 _m7(b5) 9、11、b13 _dim7 △7、9、11、b13 一般的に、 _7コード以外では、コードトーンとb9の音程になるようなテンションは使用が難しく、アヴォイドされることが多い。 アヴォイドノート コードと一緒に鳴らすとキモいアヴォイドノートであるが、メロディーに短時間・音階の一部に使用する分には全く差支えない。 アヴォイドノートをハーモニー要員として使うには、元のコードトーンからヤバい音程関係になっているものを省略(omit)する。 (例)C7にファ(11th)を入れたい → ミ-ファ(b9の関係)がヤバい → ミを省いてC7sus4とする 上表に書いた以外にも使えるものはある。 「C△7にファ(11th)はキモいよね」という例は良くあげられるが、全く使われないというわけではない。 _m7(13)は比較的使いやすい。_△7(b13)とか。 _7(11)は3度-11度のb9がキツいが使える。3と11の位置を逆にした_7sus4(10)(こんな表記は一般的ではないが・・・)はb9がないため比較的使いやすい。 要は自分の耳で確かめた方が早いということ。 構成音の省略(omit) コードトーンとテンションノートをピアノ右手で全部弾こうとすると指が足りなくなるし、ギターでは弦が足りない。 例えばF△7(9, #11, 13)はファラドミソシレと指・弦が7本必要である。 テンションノートは響きが不安定なので、コードトーンへと解決しようとする働きがある。 例えばG add9はソシレラであるが、「このラ(9th)はソ(root)を1つ上げた音で、ソに戻りたがっている音に聞こえる」というように。 つまりラ(テンション)でソ(解決先)を表せるわけなので、解決先の音を省略(omit)することができる。G add9ならソをomitしてシレラというように。 先のF△7(9, #11, 13)は、9th≒root、#11th≒3rd、13th≒5th、なのでroot・3rd・5thを省略してミソシレ。あとは左手やベースにファを弾かせればよい。 テンション 解決先 b9・9・#9 root。9・#9はまれに3rd。 11・#11 3rd。#11はまれに5th。 b13・13 5th。 (補足1) _6(C6など)に対する△7はテンションに準ずるものとして扱われる。解決先は6。 (補足2) クラシックの和声学など3和音(トライアド)を基本としている場合、「b7・△7はrootを1つ下げた音で、さらに1つ下の音に行きたがっている音」と考える。 なので省略されるのはrootであり、解決先はb7・△7の1つ下の音というふうになる。 例えば、G7(ソシレファ)を3パートで演奏するときに省略するのはrootのソ。ファの解決先はミなので次の和音のC、Am、Abなどで解決(4和音を認めていないのでG6は解決と言わない、とする)。 スラッシュコード、onコード (単なる転回形のスラッシュコードはここでは扱わない。) スラッシュコードは一種のテンションコードである。 ある種のテンションコードを簡単に表記するために用いられることがある。 (例) G7sus4(9) = Dm7/G (どちらもソドレファラ)のようにである。 しかし、逆にスラッシュコードをスラッシュなしで正確に書くのは難しい場合がある。 (例) Gb/C ≒ C7(b9) 一例として、メジャートライアドに対するスラッシュコードのだいたいの感じ スラッシュ だいたい Db/C = Db△7、C7sus4(b9、b13) D/C ≒ D7、C△(9, #11, 13) Eb/C =Cm7 E/C =Caug△7 F/C =F Gb/C ≒ C7(b9) G/C = C△7(9) Ab/C =Ab A/C ≒ C7(b9) Bb/C ≒ C7sus4(9)、Bb(9) B/C ≒ C△7(#9, #11)、Cdim7 上表のように、ベースが勝る場合と上声部が勝る場合がある。 このうちBb/Cはドミナント(C7の代わり)としてとてもとても良く使われる。便利。フュージョン・コードと呼ばれたり。 ちょっと変形でC major:C△---Eaug/F#-F△7やG7---Eaug/F#-F△7 なんて例も。 http //www.youtube.com/watch?v=CkmnW_V5OeU#t=1m18s(槇原敬之 - どんなときも。) C major:[Gm7-C7]-Eaug/F#-F△7とか。下例はテンション・転調など非常に勉強になります。 http //www.youtube.com/watch?v=yE7Q_FiwdEg#t=0m44s(菅野よう子 - プラチナ(坂本真綾)) スラッシュコードの中には複雑な響きのものもあり、機能和声から逃れるために使われることも多い。 例えば、フュージョン御用達の「F/G→G/A→A/B」とか。機能をむりやり考えることはできるかもしれないが、あんまり意味はないと思う。 (例1) C major(元調Eb major): F/G Ab/Bb Cb/Db | Bb/C Ab/Bb G7sus4 | ---- | http //www.youtube.com/watch?v=8_zyyPz-6P0#t=13s(田中公平 - ウィーアー!(きだたにひろし)) (例2) c minor(元調e minor): Eb/Ab Cb/Db Db/Gb Eb/F F/Bb Db/Eb | ---- | Absus4/F Bbsus4/G -- | 。後半は4度構成風。ベースラインがすべて強進行。 http //www.youtube.com/watch?v=ur4BkAkR71w(田中公平 - サクラ大戦 檄!帝国華撃団) (例3) Db/Eb - D/E Eb/F | F/G(omt3) F#/E(omt3) G/F(omt3) G#/F#(omt3) A/G(omt3) | A/G(omt3)--- | 。 後半はUST風。 http //www.youtube.com/watch?v=2IGEDo7jPPE(永田権太 - マリオカート64 スタートグリッドファンファーレ(GP VS)) アッパー・ストラクチャー・トライアド(UST) 例えばC△7(9, #11, 13)はドミソシレファ#ラだが、レファ#ラだけ見るとD△である。 またG7(#9)はソシレファラ#だが、ラ#(=シb)レファだけ見るとBb△である。 このように元のコードから取り出した全く別物の3和音をアッパー・ストラクチャー・トライアド(UST)という。 (4和音以上を取り出しても良い。その場合はアッパー・ストラクチャー・テトラアドとか言わず単にポリ・コードということが多い。) 元のコード進行を下声部で、取り出した新しいコード進行を上声部で演奏させて、2重構造的に響かせることを意図したものが多い。 USTは結構複雑な響きがするので、機能和声から逃れる場合に使われることも多い(戦闘曲とか)。 その場合はわざとキツいテンション・アヴォイドノートを含めるようにすると、すごく緊張感のある音楽になる。 http //www.youtube.com/watch?v=xb--ibjz688#t=3m35s(すぎやまこういち - ドラゴンクエスト5 不死身の敵に挑む) (これをポリコードと言っていいかわからんけど)クラシックでとてもとても有名な「春の祭典」の春のきざしはE△とEb7の混合。 http //www.youtube.com/watch?v=9uMfXh4OOx8#t=3m32s(I. Stravinsky - 春の祭典 春のきざし) ■ メロディーを書くために ■ アヴェイラブル・ノート・スケール 文字通り、「あるコードで使用できる音をスケール状に並べたもの」。 (**まだ**)
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スライムに金棒クラン規則の動画の説明 説明なので動画を視聴した方が早いと思いますが、なんらかの事情によって動画が視聴できない方はこちらをご覧ください。 挨拶は必須!! クランに入る時、または援軍をもらう時は必ず挨拶、お礼を言うこと。 攻撃は理由がない限りする!! 攻撃に参加できない場合は事前にリーダーなどに伝えること。 もし事前にわからなかった、もしくは言い忘れた等ありましたら事後報告でもいいので必ず報告してください! クラン対戦時、攻撃番号の宣言は忘れずにする! 攻撃するときには、クランメンバーがわかりやすいように、また攻撃の応援をしやすいように必ず相手の攻撃する番号を宣言してから攻めてください。また、攻撃する相手のタウンホールをタップして、その上にある一言メモ欄などを活用してもいいです。 援軍申請後、すぐに落ちるのは禁止!! 援軍申請をしたあと、3分程度は待ってから落ちるようにしましょう。援軍をくれた方へのお礼は必須ですのでもらった直後にすぐ言うようにしてください。もし何らかの用事ですぐに落ちなければならない時はできる限り援軍申請はせずに時間のあるときに申請してください。 編集中なのでまだこれから追加されます!!
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下記は、ラリー振興の目的で公開するものですが、誤字脱字等がある場合もありますので、必ず各自の責任でJAF発行の2010年国内競技規則をご確認ください。 第1章 一般規定 第1条 総則 本規定に定める車両は、道路運送車両の保安基準(昭和26年運輸省令第67号)に適合し、公道を走行するにたりる条件を満たしていなければならない。 車両の部品を変更または交換したり新たな部品を装着し使用する場合には、車両の使用者の責任において上記の保安基準に適合させるとともに、常にその適合状態を維持しなければならない。 完全なオープン車体構造の車両は、ハードトップを装着しなければならない。また、コンバーティブル車体構造の車両(開閉または脱着可能な屋根を備えた車両)についても、オープン車体構造の車両に準じた措置をとらなければならない。 なお、本規定は国内規定であり、国際格式ラリーの参加車両についてはFIA規則に従うこと。 第2条 車両の定義 2.1)ラリーRN車両(RN車両) FIAによりグループNとして公認された車両で、道路運送車両の保安基準(昭和26年運輸省令第67号)に適合し、本編に従った自動車登録番号標(車両番号標)を有する車両。 2.2)ラリーRJ車両(RJ車両) JAF登録車両で、道路運送車両の保安基準(昭和26年運輸省令第67号)に適合し、本編に従った自動車登録番号標(車両番号標)を有する車両。 2.3)ラリーRF車両(RF車両)道路運送車両の保安基準(昭和26年運輸省令第67号)に適合し、かつメーカーラインオフ時の諸元が変更されていないもの(当該自動車の自動車検査証の型式指定番号欄に型式指定番号が記載されているもの。ただし、ロールバーの装着やスプリングの変更に伴い改造自動車等の届出を行ったことにより諸元が変更となった車両および乗車定員変更のための構造等変更検査手続きを行った車両は除く。)で本編に従った自動車登録番号標(車両番号標)を有する車両。 2.4)ラリーF車両(F車両) 道路運送車両の保安基準(昭和26年運輸省令第67号)に適合し、本章第1条に従った自動車登録番号標(車両番号標)を有し、ラリー競技開催規定付則第1種アベレージラリー開催規定に則った競技およびクローズド競技のみに参加が許される車両。 2.5)RN/RJ車両について、FIAグループN車両とJAF登録車両の両方の資格を有する場合、当該車両はRN車両として取り扱う。ただし、その車両が2002年12月31日以前に運輸支局等に初度登録されている場合は、RN、RJのいずれかを参加者が選択できるものとする。 第3条 車両の公認、登録および型式に関する定義 3.1)公認 グループNの公認とは、あるモデルの生産台数が、2007年FIA国際モータースポーツ競技規則付則J項のグループNに分類される量産条件に達したことをFIAが公式に証明することをいう。公認申請は、JAFによってFIAに提出され、公認はFIAの規則に基づいて行われる。 公認は前年の1月1日時点で生産継続中であるモデル、また前年の1月1日以降に生産を開始したモデルにのみ与えられる。 公認はそのモデルの生産が中止された翌年から7年を以って無効となる。 3.2)公認書 FIAによって公認されたすべての車両の詳細は、公認書とよばれる書類に記載される。公認書には、そのモデルの識別を可能とするための諸元が記入される。公認記載項目、記入要領ならびに公認申請要領は「FIA車両公認規則」に示される。 競技車両の型式は打刻によって証明される。オーガナイザーは車両検査時に公認書の提示を要求することができる。 当該車両を車両公認書と照合した結果、何らかの疑義が生じた場合、車両検査員はそのモデルの整備解説書を参照するか、またはラインオフ状態の同一モデルと比較して検査を行うものとする。 参加者は自分の車両が生産された国のASNから、その車両の公認書、および必要な場合は公認付属書(正常進化・変形公認の認書等を含む)の交付を受け、常に携帯することが義務付けられている。 3.3)登録車両 JAF登録車両規定に基づいて登録された車両。JAF登録車両での参加者は、車両の主要諸元を証明するための当該自動車製造者発行のカタログ、パンフレット等(新型車解説書、整備解説書等を含む)を常に携帯することが義務付けられる。 3.4)同一車両型式 自動車検査証または当該自動車製造者発行のカタログの型式欄に記載されている「記号および数字(ただし、E、GF、GH等の排出ガス規制を表す記号を除いたハイフン以降の記号部分をいう。TA-AE123とあれば、AE123を指す。)」が同一の車両を同一車両型式として取扱う。 第4条 車体の定義 4.1)車体 車体とは以下のことを意味する。 4.1.1)外側 ボンネット、フェンダー、ルーフ等、外気にさらされる車体のすべての主要部分。 4.1.2)内側 車室内に位置する範囲のすべての部分。 第5条 気筒容積(総排気量)別クラス区分 車両はその気筒容積に従い、次の10クラスに分けられる。 1.気筒容積 660ccを含み 660ccまで 2.気筒容積 660ccを超え1,000cc 〃 1,000cc 〃 3.気筒容積 1,000cc 〃 1,150cc 〃 1,150cc 〃 4.気筒容積 1,150cc 〃 1,400cc 〃 1,400cc 〃 5.気筒容積 1,400cc 〃 1,500cc 〃 1,500cc 〃 6.気筒容積 1,500cc 〃 1,600cc 〃 1,600cc 〃7.気筒容積 1,600cc 〃 2,000cc 〃 2,000cc 〃 8.気筒容積 2,000cc 〃 2,500cc 〃 2,500cc 〃 9.気筒容積 2,500cc 〃 3,000cc 〃 3,000cc 〃 10.気筒容積 3,000ccを超える車両 競技会特別規則では、第10クラス(気筒容積3,000ccを超えるクラス)についてさらにクラス分けすることができる。ただし、その他のクラスを細分することはできない。 上記のクラスの分類は、過給されていないエンジンを備えた車両に対するものである。 JAFによって反対措置が課せられない限り、オーガナイザーはすべてのクラスを特別規則書に記載する必要はなく、またさらに、その競技の特殊事情によっては2つ、あるいは幾つかの相次いだクラスを合体させることは自由である。 また、過給装置付エンジンの車両は、その公称気筒容積に、ガソリンエンジンについては係数1.7、ディーゼルエンジンについては係数1.5を乗じ、それによって得られた値に相当するクラスの車両として扱われる。 第6条 燃料 6.1)燃料 燃料は、石油会社で生産され、通常のガソリンスタンドのポンプから販売されている(潤滑油以外のいかなる添加物も含まない)自動車用無鉛燃料でなくてはならない。 6.2)燃料への混入物 一切の燃料への添加剤の使用は認められない。 第7条 最低重量 各車両の最低重量は下記の通りとし、競技中いかなる時でもこの値以上の重量を有していなくてはならない。 7.1)RN車両については公認書に記載された車両重量に安全装備(ロールケージ等)の重量として35kgを加えた値とする。 7.2)RJ車両についてはカタログに記載された車両重量から当該車両の燃料タンク容量に比重0.74を乗じた値(小数点以下切り捨て)を減じ、これに安全装備(ロールケージ等)の重量として35kgを加えた値とする。 同一車両型式に複数の車両重量が設定されている場合は、その最小値を当該車両の車両重量として適用する。 7.3)RF車両についてはカタログに記載された車両重量から当該車両の燃料タンク容量に比重0.74を乗じた値(小数点以下切り捨て)を減じ、これに安全装備(ロールケージ等)の重量として35㎏を加えた値とする。ただし、本章第 5 条に従い換算した後の気筒容積が2,000㏄以下の車両については、上記35㎏を加えない値とする。 同一車両型式に複数の車両重量が設定されている場合は、その最小値を当該車両の車両重量として適用する。また、同一車両型式に過給器付と過給器なしの両仕様が存在する場合は、各々に設定されている車両重量の最小値を適用する。 7.4)重量計測の条件は下記の通りである。 ①搭乗者、搭載物、エ具およびジャッキの重量は含まない。 ②潤滑油、冷却水、ブレーキ油等の液体は標準容量を満たす。 ③燃料タンク、ウインドスクリーンウォシャータンク、ヘッドライトウォッシャータンク、水噴射タンクは空にする。 ④スペアホイール: ・RN車両については、最大1本までのスペアホイールを搭載する(スペアホイールを2本搭載している場合は、計測前に1本を取り外す)。 ・RJ車両およびRF車両については、スペアホイールの重量は含まない。 7.5)バラストの搭載は安全上の理由から原則として認められない。 ただし、やむを得ずバラストを積む場合は、第1編レース車両規定第3章3.3)に従うとともに、競技会技術委員長の確認を受けなければならない。 第2章 安全規定 第1条 配管類 1.1)配管類の保護 燃料およびオイルとブレーキ配管は、外部から損傷を受けぬよう(飛石、腐触、機械的損傷等)、すべてを考慮して保護策をとらねばならない。また、室内には絶対に火災および償夢を発生および損傷を発生させない配慮を必要とする。 当初の保護物をそのまま維持するのであれは追加の防護は不要であるが、防音材および防振材等を取り除くことにより配管や配線類が露出する場合には適切なる防護策を講じなければならない。 1.2)配管類の取付け 1.2.1)冷却水または潤滑油を収容する配管:車室外部になくてはならない。 1.2.2)燃料または油圧液を収容する配管:車室を通過して良いが、第1図および第2図に従った前後の隔壁部分とブレーキ回路およびクラッチ液回路を除き、車室内部にいかなるコネクターも有さないこと。 1.3)配管および取付け具の仕様 1.3.1)燃料、潤滑油または油圧液を収容する配管が柔なものである場台、これらの配管はネジ山のついたコネクター、はめ込み式のコネク夕ー、または自動的に密閉されるコネクターと、摩擦と炎に耐え得る(燃焼しないもの)外部保護鋼材を有していることを推奨する。 1.3.2)燃料を収容する配管は、135℃(250°F)の最低作動温度で計測した場合に、70bar(1000psi)の最低破裂圧力を有していることを推奨する。 1.3.3)潤滑油を収容する配管は、232℃(450°F)の最低作動温度で計測した場合に、70bar(1000psi)の最低破裂圧力を有していることを推奨する。 1.3.4)油圧液を収容する配管は、232℃(450°F)の最低作動温度で計測した場合に、280bar(400psi)の最低破裂圧力を有していることを推奨する。 油圧システムの作動圧カが140bar(2000psi)を超える場合は、作動圧力の少なくとも2倍の破裂圧力がなければならない。 第2条 安全ベルト メーカーラインオフ時に装備されている安全ベルト(3点式等)に加え、4点式以上の安全ベルト(FIA公認安全ベルトの使用を強く推奨する。)を装備すること。この場合、下記条件に従わなければならない。 ①追加装備する安全ベルトはワンタッチ式フルハーネスタイプとし、第4編付則「ラリー競技およびスピード行事競技における安全ベルトに関する指導要綱」または第4編付則「レース競技における安全ベルトに関付則」または国際モータースポーツ競技規則J項第253条安全装置第6項「安全ベルト」のいずれかに従うこと。FIA国際モータースポーツ競技規則付則J項第253条に定められた取り付け方法も可(第3図~第5図参照)。 ②追加装備する安全ベルトは、既設の安全ベルト(3点式等)の取り付け装置にフック等を用いて用意に着脱できる構造でなければならない。 ③追加装備する安全ベルトは競技走行中のみ装着することが許される。 したがって、それ以外の通常走行時は既設の安全ベルト(3点式等)を装着すること。 ④競技中に4点式以上の安全ベルトを装着する場合には、乗車定員は2名とすること。 ⑤4点式以上の安全ベルトを追加装備することにより後部乗員の乗降性が確保できなくなる場台には、各運輸支局等において乗車定員変更のための構造等変更検査の手続きを行うこと。 第3条 消火器 手動消火装器または自動消火装置を装備することが義務付けられる。 これらの消火装置はFIAの認定を受けたものであることが望ましい。 3.1)手動消火装置 手動消火装置とは消火装置単体をドライバー等が取り外して消火を行うための消火装置をいう。 3.1.1)取り付け 各々の消火容器の取り付けは、クラッシュ時の減速度がいかなる方向に加えられても耐えられるように取り付けなければならず、取り付け方向は車両の前後方向中心線に対し直角に近い状態であること。(リベット止めは禁止される) 金属性ストラップの付いたラビッドリリースメタル(ワンタッチ金具)の装着のみ認められる。 3.1.2)取り付け場所 消火器はドライバー等が容易に取り外せる位置に取り付けなければならない。 3.1.3)検査 下記情報を各消火器に明記しなければならない。 - 容器の容量 - 消火剤の種類 - 消火剤の重量もしくは容量 - 消火器の点検日 3.1.4)消火器の点検日は、消火剤の充填期日もしくは前回点検期日から2年以内とする。(消火剤の充填期日もしくは前回の点検期日から2年を過ぎて使用してはならない。)但し、2年毎の点検を継続したとしても消火器の製造者が定めた有効年数あるいは耐用年数を超えて使用することはできない。 -消火器の製造者が有効年数あるいは耐用年数を定めていない場合、その使用期限は製造期日(または初回充 填期日)から7年間を目処とする。 -消火剤の充填日もしくは前回検査日の表示が年(月)表示である場合、有効期間の起算日は当該年(月)の末日とする。 外部が損傷している容器は交換しなければならない。 3.1.5))仕様 1つあるいは2つの消火剤容器とする。粉末2.0kg以上、または、FIA国際モータースポーツ競技規則付則J項第253条に記された消火剤および内容量を装備すること。 3.2)自動消火装置 自動消火装置とは、車両に固定された消火装置が、車室内とエンジンルームに対し起動装置によって同時に作動するものをいう。 3.2.1)取り付け 各々の消火装置の容器は、いかなる方向にクラッシュ時の減速度が加わってもそれに耐えられるように取り付けられなければならない。 3.2.2)操作・起動 2つの系統は同時に起動しなければならない。いかなる起動装置も認められる。しかしながら、起動系統が機械式だけでない場合、主要エネルギー源からでないエネルギー源を備えなければならない。 運転席に正常に着座し、安全ベルトを着用したドライバーが起助装置を操作できなければならない。 車両の外部のいかなる者も同時に操作できること。外部からの起動装置はサーキットブレーカーに隣接して、あるいは、それと組み合わせて位置しなければならない。また、赤色で縁取られた直径が最小10cmの白色の円形内に赤色でEの文字を描いたマークによって表示されなければならない。 ヒートセンサーによる自動起動装置が推奨される。 装置はいかなる車両姿勢にあっても、たとえ車両が転倒した場合でも作動しなければならない。 3.2.3)検査 下記情報を各消火器に明記しなければならない。 - 容器の容量 - 消火剤の種類 - 消火剤の重量もしくは容量 - 消火器の点検日 3.2.4)消火装置の点検日は、消火剤の充填期日もしくは前回点検期日から2年以内とする。(消火剤の充填期日もしくは前回の点検期日から2年を過ぎて使用してはならない。)但し、2年毎の点検を継続したとしても消火装置の製造者 が定めた有効年数あるいは耐用年数を超えて使用することはできない。 -消火装置の製造者が有効年数あるいは耐用年数を定めていない場合、その使用期限は製造期日(または初回充填期日)から7年間を目処とする。 -消火剤の充填日もしくは前回検査日の表示が年(月)表示である場合、有効期間の起算日は当該年(月)の末日とする。 外部が損傷している容器は交換しなければならない。(凍傷の危険) 3.2.5)放射時間車室内:最短 30秒/最長 80秒 エンジン:最短 10秒/最長 40秒 両方の消火器が同時に作動しなければならない。 第4条 ロールケージ 4.1)RN車両は、FIA国際モータースポーツ競技規則付則J項第253条第8項に従ったロールケージを装着しなければならない。 RJ車両は、JAF国内競技車両規則第1編レース車両規定第4章公認車両および登録車両に関する安全規定に従ったロールケージを装着し、かつ助手席側のドアバーの装着が義務付けられる。また、同規定におけるルーフの補強に関する第4-17A図および第4-17B図の構成は認められない。 また、RN車両およびRJ車両におけるFIA公認のロールケージパッドの使用は任意とする。 FIA/JAF公認ロールケージの使用は許されるが、アルミニウム製ロールケージの使用は許されない。公認ロールケージに対する改造はいかなるものでも認められない。 ロールケージの材質はスチールとし、下記の規定に従うこと。 ①ロールケージを取り付けた状態における乗車装置は、座席面上で座席前端より200mmの点から背もたれに平行な天井(ロールバーが頭部付近にある場合はロールバー)までの距離が800mm以上であること。 ②乗員の頭部等を保護するため、頭部等に接触する恐れのあるロールゲージの部位は、緩衝材で覆われていること。 ③乗員が接触する恐れのあるロールバーは、半径3.2mm未満の角部を有さないものであること。 ④ロールケージを取り付けることにより、前方視界およびバックミラーによる視界を妨げるものでないこと。 ⑤ロールケージを取り付けることにより乗員の乗降を妨げるものでないこと。なお、ロールゲージ取り付けにより後部乗員のための室内高の確保および乗降口等の確保ができない場合には、各運輸支局等において乗車定員変更のための構造等変更検査の手続を行うこと。 ⑥ロールケージ取り付けのための最小限の改造(ダッシュボードの貫通、内張りの切削等)は許される。 4.2 )すべてのRF車両は、下記のロールケージを装着すること。 4.2.1)6点式+左右のドアバーを基本構造とした(第2-6図~第2-7図参照)ロールケージを装着しなければならない。 なお、第1章一般規定第5条に従い換算した後の気筒容積が2,000㏄を超える車両については、少なくとも1本の斜行ストラットを取り付けなければならない(第2-8図~第2-9図参照)。 4.2.2)ロールケージを構成するパイプの仕様 ①材質は冷間仕上継目無炭素鋼(引抜鋼管)とする。 ②円形の断面を有する継目のない1本のパイプを使用すること。 ③最小寸法は40mm(直径)×2mm(肉厚)とする。 ④最小寸法以下のパイプで構成されるロールケージをすでに装着している車両については、当該ロールケージを継続使用することができる。ただし、メインロールバーとハーフ・サイドロールバーのうち、少なくとも一方が最小寸法未満である場合は、第2-10図に示される通り、それらの連結部を補強しなければならない。上記に関わらず、35mm(直径)×2mm(肉厚)未満のパイプの継続使用は認められない。 4.2.3)遵守事項 ロールケージの装着に関して下記の規定に従うこと。 ①ロールケージを取り付けた状態における乗車装置は、座席面上で座席前端より200mmの点から背もたれに平行な天井(ロールバーが頭部付近にある場合はロールバー)までの距離が800mm以上であること。 ②乗員の頭部等を保護するため、頭部等に接触する恐れのあるロールケージの部位は、緩衝材で覆われていること。 ③乗員が接触する恐れのあるロールバーは、半径3.2mm未満の角部を有さないものであること。 ④ロールケージを取り付けることにより、前方視界およびバックミラーによる視界を妨げるものでないこと。 ⑤ロールケージを取り付けることにより乗員の乗降を妨げるものでないこと。なお、ロールケージの取り付けにより後部乗員のための室内高の確保および乗降口等の確保ができない場合には、各運輸支局等において乗車定員変更のための構造等変更検査の手続を行うこと。 ⑥ロールケージ取り付けのための最小限の改造(ダッシュボードの貫通、内張りの切削等)は許される。 4.2.4 )車体への取り付け ロールケージの最少取り付け点数 ・メインロールバーの支柱1本につき1ヶ所。 ・サイドロールバー(あるいは、フロントロールバー)の支柱1本につき1ヶ所。 ・リアストラットの支柱につき1ヶ所。 ① 支柱側の最少取り付け点における車体への取り付け板は、面積60cm2、板厚2.5mm以上を有すること。この取り付け板は支柱に溶接されていなくてはならない。 ②車体側の補強板は、面積120cm2、厚さ3.0mm以上を有し、第2-11図~第2-25図(全周を溶接すること)に示すように取り付けること。 但し第2-11図については、補強板を必ずしもボディシェルへ溶接しなくともよい。 ③各支柱と車体との結合は、下記のいずれかの方法によること。 i) 直径8mm以上(4T以上)のボルトを3本以上使用し、緩み止め効果のあるナット(ワッシャー/セルフロッキング等)で、支柱の周辺に分散して取り付ける。(第2-11図~第2-25図を参照) ii)溶接により取り付ける場合、車体あるいは骨組み(フレーム)に溶接して取り付ける。ロールバーの脚部取り付け板は、補強板無しで、直接ボディシェルに溶接してはならない。 i)およびii)の取り付け方法は最少限を示すものである。ボルトの数を増加することや取り付け点の数を増やすことは許される。また、ロールケージを取り付けるためにヒューズボックスを移動することは許される。 4.2.5 )取り外し可能な連結金具: ロールケージに取り外し可能な連結金具を使用する場合 JAFが認可した方式、あるいはそれに準拠したものを用いなければならない(2-26図~2-33図参照)。 ボルトの最小直径は十分なもので、材質は4T以上のものでなければならない。 第5条 サーキットブレーカー 下記規定に従ったサーキットプレーカーの装着を強く推奨する。 イグニッションスイッチおよび燃料ポンプスイッチは、その位置が確認できるよう黄色で明示しなければならない。イグニッションスイッチおよび燃料ポンプスイッチを変更する場合、ONの位置が上、OFFの位置が下になければならない。 また、運転席および車外から操作できるすべての回路を遮断する各々今独立した放電防止型のサーキットプレーカー(主電源回路開閉装置)を装備しなければならない。これらはすべての電気回路を遮断できるものであり、エンジンを停止することができるものであること。その場所は外部から容易に確認できる位置とし、赤色のスパークを底辺が最小12cmの青色の三角形で囲んだ記号で表示すること。引くことにより機能する車外操作部を持つサーキットブレー力一を運転席の反対側のフロントウインドシールド支持枠の下方付近に設置すること。ただし、車両の構造上フロントウインドシールド支持枠の下方付近に設置することが不可能な場合、運転席の反対側のセンターピラーあるいはクォーターピラーの外部から操作可能な位置に装着することが許される。 第6条 けん引用穴あきブラケット 車両の前後にけん引用穴あきブラケットを取り付けることを強く推奨する。このけん引用穴あきプラケットは、車両をけん引して移動するのに取り付け部分も含め十分な強度を有していなければならない。 車両が砂地に停車したときでも使用が可能な位置に取り付けられていなければならない。 けん引用穴あきブラケットは下記の要件を満たすこと。 ①材質は、スチール製でなければならない。 ②最小内径: 50mm ③内径の角部はRを付けて滑らかにすること。 ④板製の場合、最小断面積(取り付け部分も含む): 1c㎡ ⑤丸棒の場合、φ10以上。 ⑥黄色、オレンジ色、あるいは赤色に塗装されていること。 第7条 飛散防止フィルム 側面および後部のウィンドウに無色透明の飛散防フィルムを貼付することが強く推奨される。 第3章 RN/RJ車両用改造規定 第1条 許可される変更 本規定で許可されていないすべての改造は、明確に禁止される。 改造の範囲や許可される取り付けは下記に規定され、これを除いては、車両に対して行うことのできる作業は、通常の整備に必要な作業、または使用や事故により摩耗・損傷した部品の交換に必要な作業のみとする。当該部品の交換は、市販されている全く同一の部品(当該自勲車製造者が補修用として設定している部品を含む)とのみ行うことができる。 なお、当該車両について分解整備(原動機、動カ伝達装置、走行装操縦装置、制動装置、緩衝装置または連結装置を取り外して行う車両の整備または改造であって道路運送車両法施行規則(昭和26年運輸省令第74号)第3条で定めるものをいう。)をしたときは、遅滞なく点検整備記録簿に整備の概要等を記載しなければならない。ただし業者が当該分解整備を実施したときは、この限りではない。 第2条 部品等 2.1)RN車両については、道路運送車両の保安基準に適合し、本規定で許可されている改造であれば、FIAグループNに有効なオプション変型(VO)、プロダクション変型(VP)または供給変型(VF)として公認されている部品の使用が認められる。 加えて、下記の項目に限り、FIAグループAのオプション変型(VO)として公認されている部品の使用も認められる。 ①当初のものと同一直径・同一重量のエンジンフライホイール(当初のエンジンフライホイールが2分割構造の場合に限る) ②オートマチックトランスミッションのフライホイール ③オートマチックトランスミッション ④安全ロールケージ ⑤座席取り付け具および支持具 ⑥セーフティハーネス(安全べルト)の取り付け点 ⑦2/4ドア変型 2.2)RJ車両については、JAF登録車両と同一車両型式に設定されている純正部品およびメーカーオプションで、改造および加工の必要なく取り付けられるものであれば使用が認められる。ただし、本改造規定が優先される。 第3条 エンジン 3.1)エンジシルーム内の機械部品を覆うことを目的としたプラスチック製エンジンシールドで、美観を保つこと以外に機能を有さないものであれば、取り外しても良い。また、エンジンルーム内の防音材の取り外しは認められる。 3.2)アクセルケーブルの交換または二重化は認められる。また、フライバイワイヤー方式(電気信号により操作するもの)を機械式に変更することも許される。 3.3)ボルトおよびねじは同じ材質であれば変更することが許される。 3.4)点火装置 スパークプラグ、レブ・リミッター、ハイテンションコードの銘柄および型式はその機能が維持されていれば変更することが許される。 3.5)電子制御装置 変更は許されるが、変更されたユニットは当初のものと完全に互換性がなければならない。すなわち、いかなる場合であっても当該ユニットを量産ユニットと交換してエンジンが正常に稼動しなければならず、入力側のセンサーおよびアクチュエーターはその機能を含みメーカーラインオフ状態の仕様と同一であること。 3.6)データロギング(エンジン制御データおよび実走行データ記録装置) データロギングシステムの使用は認められるが、入力側のせンサーはその機能を含みメーカーラインオフ状態の仕様であること。ただし、水温、油温、油圧、エンジン回転についてはセンサーの追加も認められる。 ケーブルリンクおよびチップカード以外の方法による車両のデータ変更は認められない。 3.7)冷却装置 サーモスタット、および冷却ファンの作動開始時の温度は制御方式(ファンクラッチ)を含み自由。ラジエターキャップおよびホース類の変更は自由。 3.8)キャブレター 当初の装置が保持され、かつ燃焼室への燃料の流入量を調整する構成部分が空気量に影響を一切与えないということを条件に改造することが認められる。 3.9)インジェクション 当初の方式を変更することは許されない。エアフローメーターの下流に取り付けられている燃料を調整するインジェクションの構成部品は、いかなる条件においても吸気量に影響を与えないことを条件に改造することができるが、他のものとの交換は認められない。また、電子制御装置への入力側(センサー、アクチュエーター等)は機能を含み当初のままでなくてはならないが、電子制御装置の内部については自由である。 インジェクターは、作動原理および取り付け方法を保持していれば流量を変更するための変更は認められる。 3.10)エアクリーナーエレメントの変更は、当初の方式を保っていれば自由。 3.11)潤滑油系統 オイルパンへのバッフル(仕切り板)の追加が認められる。当初の方式を維持していればオイルフィルターカートリッジの変更も認められる。 オイルクーラーの変更および取付けも認められる。ただし、新たに取付ける場合は、配管については第2章第1条に従った配管とすること。 ターボチャージャー付きエンジンについては、ターボチャージャーの潤滑配管を、第2章第1条に従った配管に置き換えることができる。これらの配管にはスナップ・コネクターを取り付けることができる。 3.12)エンジンおよびトランスミッションマウントのブッシュは、取り付け点の数を維持し同一材質および形状であれば硬度の変更は認められる。 3.13)排気系(エキゾーストマニホールドは含まれない) 変更は許されるが、下記の規定を満たしていなければならない。 なお、オーガナイザーは当該競技会特別規則に規定することによって、音量を規制することができる(マフラーおよび排気管の変更について制限することも含む)。 ①排気管は左または右向きに開ロしてはならない。 ②触媒コンバーター、排気ガス再循環装置、O2センサー、二次空気導入装置等が当初の通り取り付けられていること。 ③遮熱板等の熱害対策装置は同一の構造を有し、かつ同じ位置に備えられ損傷・脱落がないこと。 ④いかなる場合も当該車両の排気ガス規制値に適合していること。 3.14)シリンダーヘッドガスケット 当初の厚さを維持していれば材質の変更は許される。 3.15)オートクルーズ 装置の接続は外すことが許される。 3.16)総排気量 自動車製造者が当該型式原動機の補修用として設定しているオーバーサィズピストンを含み変更は認められない。 3.17)過給器付きエンジンについては下記の規定が適用される。 ①過給器はメーカーラインオフ状態の仕様と同一でなければならない。 ②すべての過給器のコンプレッサーハウジングの吸気側にいかなる温度条件下においても最大内径32mm(外径:38mm未満)のリストリクターを装着しなければならない。ただし、並列する2基のコンプレッサーを有するエンジンの場合、各コンプレッサーの吸気内径は最大22.6mmに制限される。 ③リストリクターの取り付けは、プレードの最上部から50mm以内とし最低でも下流方向に3mmの幅が維持されていること。 ④リストリクターは単一の素材で作られていなければならず、シリンダーに供給される空気はすべてこのリストリクターを通過しなければならない。 ⑤ディーゼルエンジンのリストリクターは、最大内径35mm、外径41mmとする。 ⑥スーパーチャージャー付き車両についてはりストリクターの装着は不要とする。ただし、リストリクター装着車両との性能の均衡が保たれない場合には、本取り扱いを見直す可能性がある ⑦過給器のコンプレッサーハウジングの内径が市販状態で32mm以下である場合はリストリクターの装着は不要とする。ただし,リストリクター装着車両との性能の均衡が保たれない場合には、本取り扱いを見直す可能性がある。 ⑧リストリクターの取り付けについてはFIA国際モータースポーツ競技規則付則J項第254条第6項に準拠するものとし、その取り付けに必要なコンプレッサーハウジングへの最小限の加工は認められる。 第4条 駆動系統 4.1)駆動方式の変更は認められない。(4WD⇔2WD等) 4.2)フライホイール フライホイールは自由。ただし、数の変更ならびにカーボン製の使用は許されない。 4.3)クラッチクラッチディスクおよびクラッチカバーは重量を含み自由。ただし、数および直径の変更、ならびにカーボン製の使用は許されない。 4.4)ギアボックス ギアボックス内部の改造は自由。 4.5)ディフアレンシャル 量産ハウジングを改造(内部を除く)することなく装着できる機械式リリミッテドスリップディファレンシャル(機械式LSD)の装着は認められる。同様に、量産ハウジングを改造することなく装着できるものであれば、ビスカスクラッチ式LSDを機械式LSDに変更することも許される。また、油圧または電気式制御でなければ機械式LSDの方式を変更することも許される。オリジナル車両が油圧または電気式制御を装備している場合はそのまま使用してよい。この場合、電子制御装置の変更は許されるが、変更されたユニットは当初のものと完全に互換性がなければならない。すなわち、いかなる場合であっても当該ユニットを量産ユニットと交換したときにデフが正常に稼動しなければならず、入カ側の七ンサーおよびアクチュエーターはその機能および電気配線の数を含みメーカーラインオフ時の仕様と同一であること。また、LSDの装着に伴うファイナルギアの変更およびアウトプットシャフトの最小限の変更(スプライン数の変更等)は認められる。 第5条 サスペンション プラケットを含むサスペンション部品の補強は同一材質で且つ当初形状に沿っていることを条件に許される。 5.1)コイルスプリング 長さ、コイルの巻き数、線径、外径を含み自由。スプリングの数は、同一軸上に直列に取り付けることを条件として、自由である。また、車高調整式への変更も許される。ただし、当該自動車製造者発行のカタログ等の主要諸元の高さから±4cmの範囲を超えないこと。またその範囲内であっても最低地上高がアンダーガードを含み9cm以下とならないこと。(RN車両については公認書に記載されたホイールハブの中心とホイールアーチ開口部間の最小高さ寸法を遵守し、かつ最低地上高がアンダーガードを含み9cm以下とならないこと)。 5.2)リーフスプリング 長さ、幅、厚さ、キャンバーは自由。 5.3)ショックアブソーバー 数、形式、作動原理、取り付け位置を保持していれば変更は自由。サスペンションに組み合わされるショックアブソーバーのアッパーマウントをピロボール式に変更することは、取り付け部を含む車体側に一切の変更を施さないことを条件に認められる(キャンバー角度等の調整機能を有していても良い)。またりザーバータンクは独立式でもよい。車室内からショックアブソーバーの減衰力を調整する装置を取り付けることは認められない。 5.4)スプリングシート 形状および材質は自由。 5.5)サスペンションブッシュ 当初の方式および材質を維持していれば、その剛性の変更をすることができる。 5.6)スタビライザー ブッシュを含み変更することはできるが、取り外すことは出来ない。また、車室内からの調整式は認められない。 第6条 ホイールおよびタイヤ 6.1)ホイール 下記条件を満たしたホイールの使用が許される。 ①RN車両に装着するホイールは、公認書に記載された最大直径および最大幅を超えていないこと。 ②RJ車両に装着するホイールは、車両の総排気量に従って定められる下記の最大直径および最大幅を超えていないこと。ただし、同一車両型式のカタログに記載されているホイールの直径および幅が下記の数値を超えている場合は、カタログに記載されている数値を最大値とすることができる。 -総排気量が1400cc以下の車両: 最大直径 14インチ、最大幅 6インチ -総排気量が1400ccを超え2000cc以下の車両: 最大直径 16インチ、最大幅 7インチ -総排気量が2000ccを超える車両: 最大直径 17インチ、最大幅 7.5インチ ③部分的であっても複合素材から成るホイールの使用は禁止する。 ④ホイールの材質はスチール製またはJWLマークのある軽合金製(アルミ合金製、マグネシウム合金製など)とする。 ⑤ホイールナットの材質および形状の変更は許されるが、ホイールスペーサーの使用は認められない。 ホイールに間隔保持のための部材を溶接することはホイールスペーサーの使用とみなされる。 ⑥ホイールの寸法を小さくすることは許される。 ⑦いかなる場合にも、車両のトレッドを拡大することは認められない。ただし、ホイールの変更に伴う最小限のトレッドの変化は許される。 ⑧ホイールに追加される排風装置の装着は認められない。 6.2)タイヤ 前項規定に合致したホイールを適用リムとし、これに装着できるタイヤとして JATMA YEAR B00K に記載されているもの、またはこれと同等なものであり、かつ下記の条件をみたしていなければならない。 ①公道走行が認められている一般市販タイヤに限られ、競技専用タイヤの使用はいかなる場合でも認められない。 ②タイヤおよびホイールは、いかなる場合も他の部分と接触しないこと(ステアリングを左右に最大に操作した場合等に、タイヤおよびホイールが他の部分と接触しないこと)。 ③タイヤおよびホイールは、フェンダーからはみ出さないこと。 ④タイヤの溝は常に1.6mm以上あること。 ⑤いかなる場合であっても、タイヤに対する加工は許されない。 ⑥タイヤのウォームアップ、溶剤塗布などは認められない。 ⑦スパイクタイヤの使用は認められない。 ⑧タイヤ内部に空気以外のものを充填することは禁止される。 6.3)スペアホイール 車両には1本または複数のスペアホイールを搭載しなければならない(ただし、当初の車両に搭載されていない場合はこの限りではない)。スペアホイールは必ずしっかりと固定されていなければならない。 第7条 制動装置 7.1)主プレーキ 7.1.1)プレーキライニング(パッド)については、パッドとべースプレートの接触面積が増加していないことを条件に変更することが許される。またその取り付け方式(リべット・接着等)を変更することも許される。 7.1.2)プレーキホースの変更は自由。 7.1.3)バックプレート(保護用プレート)の取り外しまたは改造は自由。 7.1.4)リアブレーキへのプロポーショ二ングバルブの装着は、車両公認書のオプション変型(VO)として公認されたもの、および同一車両型式に設定されたものに限り認められる。 7.1.5)ブレーキキャリバー内のピストンの背後にノックバック防止を目的としたスプリングを追加することは許される。 7.1.6)ホイール内に付着した泥を排除することを目的としたスクレッパーの取り付けは許される。 7.1.7)ブレーキキャリパー、ブレーキディスクの変更は自由、サイズの変更も認められる。ただし、カーボン型ブレーキディスクの使用は禁止される。 7.2)ハンドブレーキレバーの改造は許されるが、当初の取り付け位置および機能を維持していなければならない。 第8条 操舵装置 8.1)パワーステアリングとラックを繋いでいる配管を、第2章第1条に従った配管に変更することができる。 8.2)ステアリングホイールは、外径350mm以上のもので、舵取装置の衝撃吸収装置に影響を与えないものであれば、ステアリングホイールハブを含み変更することができる。 第9条 車体 9.1)外観 9.1.1)ホイールキャップは取り外さなければならない。 9.1.2)ヘッドライト保護用のカバーの取り付けは許されるが、いかなる場合でも空力特性並びに冷却特性に影響を及ぼすものであってはならない。 9.1.3)車体下部を保護することを目的とした空力効果を生じない保護体アンダーガード等)の装着は認められる。 9.1.4)前後ワイパーブレードの変更は許される。 9.1.5)空カ装置については純正装着のものを取り外すことは許される。また交換、追加することも許されるが、その場合は公認書およびカタログに記載されているものを強く推奨される。また、第4編付則「アクセサリー等の自動車部品」の1に該当する部品については、取り付けが堅牢であることを含み、同付則「エア・スポイラの構造基準」に合致しているものであれば装着が認められる。 9.1.6)マッドフラップは、以下の条件で装着することができる。 ①柔軟な材質でかつ排気管等と干渉してはならず、車体外側表面部位は外側に向けて尖っていたり、鋭い部分がないこと。 ②それらは少なくともホイールの全幅を覆い、かつマッドフラップに覆われていない部分が車両の幅の1/3以上であること。 ③リアホイールより前方に装着されるマッドフラップ(センターフラップ)の左右の間には、少なくとも20cmの間隔がなくてはならない。 ④これらのマッドフラップの底部は、車両停止時に乗員なしで地表から10cm以上に位置してはならない。 ⑤垂直投影面にあって、これらのマッドフラップは車体から突出していてはならない。 9.2)内装 9.2.1)前座席は後方に移動してもよいが、当初の後部座席の前縁を通る垂直面を超えてはならない。 9.2.2)後部座席および後部 9.2.2)後部座席および後部座席安全ベルトは取り外しても良い。 9.2.3)ダッシュボードとコンソールは当初のものを保持していなければならない(ロールケージ取り付けのための最小限の切除は除く)。メーカーラインオフ時から構成品が分割されていて、切り離しなとの改造が不要でかつ小物入れやオーディオなどのアクセサリー品を保持するためのものは取り外してもよい。 9.2.4)ドア内張りはドアの形状に変化が生じないことを条件としてドアから防音材を取り外すことが認められる。 内張りパネルは最低0.5mm厚の金属が、あるいは最低1mm厚のカーボンファイバー、もしくは最低2mm厚のその砂の堅固な不燃性の素材で製作することができる。 サイドプロテクションバーの取り外しは許されない。 2ドア車の場合、後部側面ウィンドウより下に位置する内張りについても上記規則を適用する。 電動ウィンドウを手動ウィンドウに交換することが認められる。 手動ウィンドウを電動ウィンドウに交換することが認められる。 9.2.5)ルーフ、荷物室および乗員が着座しない空間の内張りとフロアーカーペットの取り外しは自由。 9.2.6)暖房装置は当初のものを保持していなければならない。ただし、エアコンの取り外しは配管およびコンプレッサー等を含み許される。 9.2.7)2ボックス車の着脱式リアシェルフの取り外しは許される。 9.3)追加アクセサリー 9.3.1)車両の美観または居住性向上などを目的としたアクセサリーは、車両の性能および特性に影響を与えない場合に限り取り付け、取り外しおよび変更が認められる。 9.3.2)操作性向上を目的としたペダルおよびシフトレバーの変更は、当初の原理および機構が保持されていれば認められる。フットレスト等の追加、変更は認められる。 9.3.3)各種メーター(モニター機能のみを目的とするものに限る)の追加、変更は認められる。 9.3.4)障害者用操作装置の装着は認められる。ただし、健常者は使用しないこと。 9.4)座席 変更する場合は下記の規定を満たすこと。 変更の有無に拘らず乗車定員分の座席を有すること。 ①座席の幅×奥行は400mm×400mm以上確保すること。 ②座席面上で座席前端より200mmの点から背もたれに平行な天井までの距離は800mm 以上確保すること。 ③座席および当該座席の取り付け装置は衝突時等に乗員から受ける衝撃力、慣性力等の荷重に耐えるものでなければならない。 ④座席の後面部分(へッドレストを含む)は、衝突等で当該座席の後席乗員の頭部等が当たった場合に衝撃を吸収することができる構造でなければならない。 ⑤追突等の衝撃を受けた場合に乗員の頭部が過度に後傾するのを抑止することができる装置(へッドレスト)を備えるかまたは座席自体が同等の効果を有する構造でなければならない。 ⑥2名乗車車両のシートの車体フレームへの直付け(スライド機構無)は許される。 なお、変更する座席および座席取り付け装置は、上記のほかにFIA国際モータースポーツ競技規則付則J項第253条第16項を満たしたものであることが強く推奨される。 9.5)補強 9.5.1)車体のサスペンション取り付け部を繋ぐ取り外し可能な(ボルトによる取り付け)補強バーの取り付けは許される。ただし、その取り付け点はサスペンションの取り付け点から100mm以内であること。また、メーカーラインオフ時に標準装着されているタワーバーについては、取り付け点を変更しなければ他のものに変更できる。 9.5.2)サブフレーム等の補強は、当初の形状に沿っていることを条件に許される。 9.5.3)スペアタイヤのサイズを変更したことによって、当初の格納カバーが装着できない場合はそれを取り除くことができる。 9.5.4)マフラーの補強は脱落防止を目的としたものであれば許される。 第10条 電気系統 10.1)電装 10.1.1)バッテリーは当初の搭載位置並びに電圧を保持していれば形状、容量、バッテリーケーブルは自由。バッテリーケーブルを室内配線に変更することは許される。 10.1.2)ダイナモをオルタネーターに変更すること(またその逆)は許されないが、発電容量の大きいものへの変更は認められる。 10.1.3)電気系統のヒューズの追加は認められる。 10.2)灯火 10.2.1)前照灯走行用前照灯(ハイビーム)は公道走行要件を満たすことを条件に追加、変更が認められる。 10.2.2)前部霧灯(フオグランプ) 追加、変更は認められるが、取り付けのためやむを得ずバンパー等を切除する場合は、必要最小限の範囲にとどめること。また前部霧灯の取り付け、取り外しに伴う全長の変化は、自動車検査証の長さ欄に記載されている数値から±3cm の範囲でなければならない。また、いかなる場台も下記の基準を満たしていなければならない。 ①同時に3個以上点灯する構造のものでないこと。 ②照射光線は他の交通を妨げないものであること。 ③照明部の上縁の高さが地上0.8m以下であって、すれ違い用前照灯の照明部の上縁を含む水平面以下、下縁の高さが地上0.25m以上となるように取り付けられていること。 ④照明部の最外縁は、自動車の最外側から400mm以内となるように取り付けられていること。 ⑤灯火の色は白色または淡黄色であり、そのすべてが同一であること。 ⑥前部霧灯は左右同数であり(前部霧灯を1個備える場合を除く)かつ前面が左右対称である自動車に備えるものにあっては、車両中心面に対して対称の位置に取り付けられたものであること ⑦取り付け部は、照射光線の方向が振動、衝撃等により容易にくるわない構造であること。 10.2.3)後退灯 後退灯は、ギアレバーの後退と必ず連動していること。 第11条 燃料回路 燃料タンクは燃料ポンプ、燃料配管を含みメーカーラインオフ状態を維持すること。 第12条 ジャッキ ジャッキアップポイントの補強、移動、追加は認められるがあくまでもその改造はジャッキアップを目的としたものに限定される。 第4章 RF車両用改造規定 第1条 改造の制限 本規定で制限されていない改造は許され、車両の部品を変更または交換したり、いかなる部品を装着し使用する場合にも、車両の使用者の責任において運輸省令 道路運送車両の保安基準(昭和26年運輸省令第67号)に適合させた状態とし、常に適合するよう維持しなければならない。 なお、当該車両について 分解整備(原動機、動力伝達装置、走行装置、操縦装置、制動装置、緩衝装置または連結装置を取り外して行う車両の整備または改造であって道路運送車両法施 行規則(昭和26年運輸省令第74号)第3条で定めるものをいう。)をしたときは、遅滞なく点検整備記録簿に整備の概要等を記載しなければならない。ただ し、分解整備事業者が当該分解整備を実施したときは、この限りではない。 1.1)総排気量に関し、自動車製造者が当該型式原動機の補修用として設定しているオーバーサイズピストンを含み変更は認められない。 1.2)ドアの材質変更は認められない。 1.3)ドアの内張りについては、ドアの形状に変化が生じないことを条件としてドアから防音材を取り外すことが認められる。 内張りパネルは最低0.5mm厚の金属板、あるいは最低1mm厚のカーボンファイバー、もしくは最低2mm厚のその他の堅固な不燃性の素材で製作することができる。 サイドプロテクションバーの取り外しは許されない。 2ドア車の場合、後部側面ウィンドウより下に位置する内張りについても上記規則を適用する。 電動ウィンドウを手動ウィンドウに交換することが認められる。 手動ウィンドウを電動ウィンドウに交換することが認められる。 1.4)窓ガラスの変更は認められない。 第2条 競技会における制限 音量規制等で特に必要がある場合には、当該競技会特別規則に規定することによって、当該競技会参加車両の改造を制限することができる。
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環境保護法案と自然環境、生活環境と科学技術の共存政策施行のお知らせ 藩国内の科学技術の発展による近代化に伴い 藩国内の森林を初めとした自然環境と、廃棄物問題等から生活環境を守るために 環境保護法案並びに自然環境、生活環境と科学技術の共存政策を制定させていただきました。 この施政によって科学技術の発展に遅れが出る等の問題が発生する事と思われます 常に政府を支えてくださる国民の方々に負担を強いる事となり真に申し訳ございませんが 自然環境と生活環境を守るための物ですのでご理解していただけるようにお願いいたします。 藩国政府一同より 親愛なる藩国民の皆様へ 環境保護法案 科学技術の発展の副作用で危機的状況にある自然環境と生活環境を保護するため 過度の森林伐採や廃棄物の不法投棄等を抑止するための法案です。 自然環境、生活環境と科学技術の共存政策 科学技術の発展と自然環境と生活環境の維持の両立を目指す政策です。 藩国の様子 提出責任者 ゴロネコ藩国摂政(法官3級) YOT
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毛糸を規則的に縫ってみた クリスマスが目前に迫ったこの12月。近いように聞こえるが、俺が経験している現実はまだクリスマスまではほど遠い。あと3週間ほどであろうか。まあそんな事はどうでもいいだろう。俺にはイブや聖夜を共に過ごすような甘い関係にある間柄の奴はいない。音咲は誘えば好色を示してくれるだろうが、俺にそういう趣味の類はない。俺はノーマルだ。俺は一生涯をノーマルで過ごす。これは既定事項なのだ。どうせイブはいつものやつらでパーティーでもやるんだろうがな。音咲主催で。まあ俺はそのパーティーが来るまでこの平和的な日々を楽しむとするさ。不思議な力を持っていてそれを使って怪物退治をする連中のどこが平和かは俺も異論が夥しいが、とりあえずその当事者の俺が言ってるんだから間違いではない。これを平穏とは言わないって言うやつは、多分シルバニアの世界を極めてきた奴以外にはいないだろう。が、平穏というものは壊される為にあるようで、俺はそれを骨身に染み込ませているにもかかわらずそれを忘れていた。まったく、平穏ほど恐ろしい麻酔はないだろう。 朝、いつものように6時00分に起きる。理由は簡単、弁当を作るからだ。親からの仕送りがないわけではない。だがな?俺の家は中の中くらいの中流家庭だ。仕送るにも限度ってもんがある。だから毎日弁当を買っているとすぐに経済難となって我が家の大蔵省に借りこむか、バイトへ一直線となるのだ。俺もバイトくらいはしてもいいのだが、無論行けないのだ。働き口で困ってるわけではない。それなら音咲に頼めば一発でOKだ。ちゃんと働きたいといっているわけだから異論はないだろう。それよりも、それよりも大事なのは― って時間の無駄だな。決して逃げてるわけじゃないからな?ニート予備軍じゃないからな? 不毛極まりないことを考えつつも、俺の手は律儀に動き続けていたようで弁当箱が二つとも盛り付けられていた。うむ、完璧…っておい!盛り付けたらダメだろうが!理由は母親にでも聞いてくれ。 盛り付けた具材をすべて違うよう気に移し変え、ムラを取る。こうしないと…母親に聞いてくれ。 俺が弁当を作ったのにかかった時間はいつもどおりで30分。このまま七恵を寝かしていると遅刻するだろう。現時刻は6時40分だが、登校時間を考えると7時30分には家を出なければいけないだろう。 「おい起きろ七恵。朝だぞ」 ありきたりなセリフを言う俺。これくらいなら変革があってもいいと思うが浮かばないのだからしょうがない。 もちろん七恵は無反応。俺もこれで起きたら毎朝苦労しないだろう。確か七恵は10月頃からこうなったと思う。普通人の見解では…多分寒いだけだろう。 だが俺もアホではない。こんな状態の七恵がどれだけ手強いか知っている。恐らく、音咲ホモ疑惑が確信に変わっても起きないだろう。じゃあどうする?必殺技を使うしかあるまい。楓さん直伝の。 「1月の空―」 がばっ 「…おはよ…う睦…月」 言い切る前に起きやがった。なんであの言葉を耳元で言うだけで起きるかは知らないが、便利なことだ。 俺は思い出したように時計を見る。もう7時か。時間が経つのは早い…のか? とりあえず俺は七恵を正気に戻し、朝飯の準備に取り掛かる。もちろん、キッチンなるところからは七恵は見えない。というより俺が見えないようにした。そんな俺の配慮をあまり感謝することなく七恵は着替えている…と思う。なにかと理不尽だなこの世界は。 今日の俺が作った朝飯はフレンチトースト。賞味期限がそろそろやばそうな卵をふんだんに使った環境的配慮が著しい一品だ。食べ物を粗末にしちゃいけないぞ?食べ物から物体Xにするのもな? 賞味期限ギリギリといっても、一応は俺が作ってるわけだから食べれるものになっているはずだろう。というより俺はそこらの主婦よりかは料理が上手いつもりだ。自惚れじゃないことは音咲が証明してくれるだろう。 そんな家での事を済ませて学校に向かう。七恵が俺の家に無断で泊まることにはもう慣れた。鍵閉めて寝たにもかかわらずあいつは家の中に入ってきてたりするからな。いや、慣れたんじゃなくて諦めたのか。 不毛な考え事をしているとホームに電車が来る。学校に行くのに電車を使う必要はあまりないが、親からの数少ない支給品の中に定期が入ってるからな。親父のおかげだ。もっと言うと、学校は1駅行ったところにあるため歩いてもいける。自転車通学も許可されている。定期を崩して家系の足しにするのもいいんだが、それだと親父が哀れだ。まあ、楽できるからいいんだがな。 「今日の授業なんだっけ?」 既に電車内に入ったせいだろう。七恵が小声で聞く。 「数学、世界史、現国、古文、選択実習だな」 俺がうろ覚えの時間割を言う。合っているはずだが…如何せん俺は寝ているからな。需要がないのさ。 「数学の宿題…あったよね?」 もちろん。数学の…今は葛西は毎日宿題を出すからな。強面の黒スーツで園崎組幹部…って噂があるが、嘘だろう。 「睦月はやった?」 もちろんだ。見せてはやらんが、教えてやるならいいぞ? 「それでもいいから助けてね」 授業過程はこの際だから省略する。もし知りたいんなら、雑談の所にでも希望の意を示してくれ。書くから。 そんな色々な過程を経て今日の放課後の部室。今日は珍しくも5限だった為、既に部室は4人の定員を抱えている。俺はいつものように音咲と将棋。楓さんは…何をやっているのだろうか?七恵は…数学の葛西の宿題を攻略しようと頑張っている。…あ、諦めた。 今日もこんな感じで終わると思っていた俺達に、変革を齎すものがやってきた。 コンコンコン 「は?誰だ?」 俺は部室を見回す。誰も心当たりはないようだ。仕方ないので俺がドアを開けようと近づく。 バンッ ガンッ グシャァアッ …物凄い音と共に睦月君が倒れました。倒れた頭のところに椅子が直撃してかなり痛そうです。…落ちてますね。私はとりあえずドアを見る。一応血糊はついてないようです。とりあえずは死ぬような事はないでしょう。次に睦月君を落とした張本人を見ます。…濃緑のショートヘアーに黄色味がかかった綺麗な目。他の誰にも真似できないような、それでいて美人な顔。躍動的なそのボディライン。出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいるモデル体型。外見だけなら誰もが交際を申し込みたいであろう人。 「ようやくこの時が来たわ!」 その人は困惑している私達に目もくれず言い放ちます。 「編み物部部長園絵彩!今このときより部活を始めます!」 ○塾塾長みたいな言い方ですね。それはいいでしょう。私も編み物部員なので異論はありません。部活動説明会の時に12月から部活を開始するとは言ってましたし。12月に入っても始まらないようなのでないのかと思っていたのですけど…一応あったみたいです。言っておきますが、七恵も部員ですからね? 「あれ?楓と七恵は二人も捕まえたの?この二人もやってもらおう!うんそれでいこう!」 困惑している秀に目配せをする。 『無駄です。諦めましょう』 『それがよさそうですね』 「いつまで寝てるの?さっさとおきなさい!」 部長が睦月君に喝を入れている。多分起きるだろう…起きた。 …どうやら俺は生死を彷徨っていたようだ。まさかドアを開けようとしただけでそんな事になるとはな。日常には危険がいっぱいのようだ。気をつけよう。音咲から聞いた話だと、ここにいた奴ら全員で何かを作る事になったらしい。先ほど俺を生死の境で彷徨わせた人は… と色々な説明を音咲から聞き終えた時には外は暗くなっていた。もう本格的に冬だからだろうな。俺は適当に話を切り上げて家路に着いた。二人…いや、三人は既に帰っており、俺と音咲は二人で下校する事になった。因みに、6時40分頃である。ああ、これで雪でも降って楓さんと二人だったら…。 音咲と他愛のない話をして家につく。音咲の家は俺の家の先だからな。 「ではまた明日」 「おう、また明日会えたらいいな」 「敬礼でもしてあげましょうか?」 「いや、明日ちゃんと生きていたいから死亡フラグは上げたくない」 本当に他愛の無い会話を終えて家のドアのノブに手をかける。ほのかに香ばしい香りが漂ってきた…。鍵を渡していないが、多分家の中には七恵がいて夕飯を作っているに違いない。ああ、久しぶりだな。色々と。 俺はノブを引く。案の定ドアは開いた。やはりいるな? 「ただいま」 形式上言わなければいけない言葉を口にする。別に言わなくても誰が怒るというわけでもないんだが、気分だ。 家の中に入ると香ばしい匂いは強まった。ますます楽しみだ。 「七恵?なに作ってるんだ?」 キッチンを覗き込みながら聞く。俺もまだまだ甘かった。 「七恵じゃないけど…、誰?」 …濃緑の髪と黄色味がかった目の結構な美人が俺の家のキッチンで…炒飯を作っている。どういうことだ。いったい誰だ!? 「お前こそ誰だ?ここは俺の家だぞ?」 至極もっともな事を言う。見たところ泥棒ではなさそうだが…なんなんだ? 「ここは七恵の家でしょ?あんたこそ誰?」 それは勘違いだ。ここは紛れもなく俺の家だ。断じて言うが、七恵の家ではない。住所録を見せてやろうか? 今にも争いが始まりそうな雰囲気の中、俺の後ろでドアが開いた。 「あ、お帰り睦月。遅かったね」 …七恵。今すぐこいつの事を説明しろ。そして俺に素直に怒られろ。 「…で、この人は俺達の高校の先輩で編み物部部長なんだな?」 「そうだよ?」 「で、その編み物部部長がなんで俺の家で料理をしてるんだ?」 「彩ちゃん今日は親がいないから可哀相だから泊めてあげよ?」 …よし。お前の頭には重度の障害が認められた。今から病院に連れて行く。これは要望じゃない。命令だ。絶対だ。 「なんでダメなの?睦月がなんかするわけじゃないでしょ?」 確かに俺には甲斐性がないけどな!普通に考えてみろ!どこに寝るつもりだ! 「普通にベッドでだよ?二人くらいなら入れるよ?」 ふざけるな。そんなことしたらどっちかが絶対に風邪引くに決まってんだろ。 「じゃあ睦月の布団を借りていい?」 お前は俺を殺す気か?このクソ寒いのに布団無しで寝ろと?そろそろ怒るぜ? 「じゃあ三人で寝る?」 マジで怒るぞ? 「嫌なの?」 「全然嫌じゃない!むしろ夢のようだ!だがな、お前には『彩ちゃんの家で二人でいる』って選択肢はないのかよ!?」 本当にもっともな事を言う。一応公的には二人は美少女の部類に区別されるだろう。もちろんそう感じるのは俺も同じだ。その二人と一緒に寝る事が嫌か?全然OKさ。だがな?どう考えてもそれは俺の中の理性がダメだって言うに決まってる! 「あ、そうだね。じゃあ行ってくるね」 そう言って七恵は編み物部部長を連れて外に出る。一応8時なので俺もついて行く。SNNが使える俺達にもしもは有り得ないが、もしもというのは可能性論だ。俺も可能性つぶしには付き合ってやるさ。 そう言ってついていくこと2分。園絵さん宅に到着。アレ?近すぎないか? 因みに、園絵さんが連れて行ったんだ。七恵とは初対面とあまり変わらないそうだ。 園絵さん宅は、どこからどう見ても普通の一軒家。変な属性とかそういう類のものは何も感じられない。 が、なんだろう。違和感を感じた。普通の家にはなきゃいけないもの…それが欠けているような感じだ。 結局違和感の正体が不明のまま、二人を無事に送った俺は家に帰る。 ドアノブに手をかけたときに、香ばしすぎる匂いが鼻につく。…焦げ臭い。 俺は中に入ってキッチンを見る。ああ、やっぱりか。 園絵さんは炒飯を作る途中のままここを離れたのか。物凄く弱火だったから俺が送るまでは気づかなかったんだな…。脳内園絵さん評価を改正。『傍迷惑な部長』…はあ……。 「で、俺と音咲にも編み物をしろと?」 昨日という日が過ぎ去った今日の放課後の部室。それまでにも色々あったが全て省略する。 「そうよ!あんた達二人はうちんとこのヒモでしょ?」 ヒモって…。わからないやつはわからないままがいい。それだけはいえる。 「ヒモですか。一応否定しておきますが…無駄ですね?」 諦めモードの音咲。昨日という経験が役に立ったのだろう。俺にもその経験を分けてもらいたいものだ。レベルアップできるかもしれないしな。 「ヒモじゃなくてもやってもらうよ?今回編んでもらうのはマフラー!文句とか異議は作り終わった後気が向いたら聞いてあげる!」 …こうして俺達はマフラーを作る事になった。どうせ暇だから別によかったんだが…ああ、敗北感。 色はくじ引きで決める事になり、俺は黄色を引いた。七恵は濃い青、楓さんは紺、音咲は赤、園絵さんは白だった。 早速マフラーを編もう…なんてことは俺と音咲には不可能だ。俺に料理が出来るという意外な特技があり、音咲に無限の後付設定ができるとしてもそれは無理だ。少年『K』は言った。『マフラーなどの編み物はクリスマスの日に顔を赤らめながら渡されるのが最高に萌えるんだ』とな。野郎が顔を赤らめながらマフラーを渡すシーンを見て誰が萌える?断じて正常な男は萌えないだろう。 そういう理由で俺達にはマフラーを編む練習すらできないのさ。 「じゃあ教えてあげよっか?」 …七恵?俺が教えて欲しいのは毛玉の作り方じゃないぞ? 「私だって裁縫とか編み物くらいできるんだよ?今言った事ってすごく失礼だね?」 あー…すまん。悪かった。教えてください七恵様。 「七恵姫じゃないの?」 こいつは自分のことを姫なんていって恥ずかしくないのか?男が王子様とか言ってるのと変わらないぞ? 「教えてください七恵姫」 まあ、素直な俺は言ってしまうんだ。ああ、素直なやつは損をするんだな。 「おっけぇ!手取り足…足はいいや、教えてあげるねっ!」 なるべく怪我のない指導にしてくれよ?教育と偽ってのチョークはごめんだからな? 「じゃあ私怨としてのチョークにするねっ!」 …言い過ぎた。もうダメかもな…。 「まるで鴛鴦みたいですね」 楓さんの微笑んでる顔が霞んで見える。…トミー?そこにいるのはトミーかい?首は大丈夫か? とりあえず、そんな事があって俺は今人生初の編み物をしている。処女だな。…が、俺の処女は恐ろしく普通じゃないと思う。 どこの世界で美少女二人に囲まれて編み物をする奴がいる?どこの世界でこんな事になる奴がいる? 俺だけだろう。平行世界やループ論、世界に関する論は四十万だが、恐らくどの世界でもこんな経験をしているのは今この世界の俺だけだろう。ああ、幸せだ。などといえるのかは各自で考えて欲しい。先ほどの論を覆すようで悪いが、俺は幸福さと…言い表せない不幸さを感じている。因みに言うと、俺の指導には七恵と園絵さん。音咲には楓さんがいつの間にか指導者となっていた。できれば俺にしてほしかったんだが…ああ、不条理なり。 まあ充分過ぎるほどいい身分だと思うけどな。いや、そう思わないとやってられない。そうだ。俺は幸福なんだ。美少女二人に編み物の指導をされていて時々チョークとかヘッドロックとかかけられるけど幸せなんだ………! そんな茶番を少しだけ書いてみる。 放課後― 俺はいつものように部室に行く。習性といっても差し支えないレベルになっただろう。…帰巣本能というか、その類のエネルギーが働いているのは確かだ。 俺の脚は自然に動く。これだけなら病院送り確実なのだが、俺の中ではこれが日常これが平穏なのだ。今更治そうとは思わない。だが、少し気味が悪いのは、7月の偽者事件(俺命名)の後からこうなった事だ。こじ付けかもしれないが、注意を払っておいて損は…神経をすり減らす事になるが…楓さんに癒してもらおう。それがいい。それと、偽者事件の後から俺の目が時々赤くなるといわれた。…偽者の野郎は俺に結膜炎の持病を残して逝ったらしい。 ああ、傍迷惑なやつだった。 とかこんなことを時折考えつつも俺は手を休めない。休めないだけで止まっている。まあ、編み物を始めて1日目だ。一度も止まらずに完成を見るなんて夢どころか妄想の世界でしか見れないだろう。そして手の止まった俺にここぞとばかりに詰め寄る七恵…園絵さんまで?傍目から見れば非常に羨ましいであろうこの状態。後ろから七恵が俺の手首を血を止めんとばかりに握っており、園絵さんは俺の手を前から掴んで動かそうとしている。えー…っと、七恵。もう手の感覚がないんだが。園絵さん?そのままだと指折れますよね? 「うぎゃああぁあぁあああぁ!!!!!」 情けない悲鳴が部室に響く。 指が折れたとかそういうものではない。俺は二人に先ほどの事をパイプ椅子の上でやられていたのだ。もちろん座っていたが、それでも不安定すぎたのだろう。見事にぶっ倒れた。前か後ろか?残念横だ。悲鳴の意味?俺が倒れる時に嫌なものが見えたからな。恐らく頭に直撃するだろう。 なにかって?それを言うには勇気がいるぜ? ―スーパー分厚いハードカバーの本Ver.長門は戦艦でも強かった版― なあ、なんでこんな本が部室にあるんだ―? 言い切る前に直撃したわけだ。残念ながら二人は上手く体制を保って俺だけ地面と抱擁中だ。ああ、不条理なり。 「大丈夫?思いっきり頭に直撃してたけど」 これが大丈夫そうに見えるならお前の目はバルスにでもやられているだろう。 「大丈夫でしょ!男なんだからさっさと立ち上がる!」 男だからという理由にはなりえないと思いますよ? 「あっ。また敬語使ってる!私と話すときは敬語はやめなさいッ!!」 使いたくて使ってたわけじゃないし敬語でもなく丁寧語がいいとこだ。 「いいからさっさとやるッ!!」 …まったく。いつまでも俺が素直に言う事を聞くと思ってたら大間違いだという事を思い知らせてやるか。 「園絵部長。俺と勝負しませんか?」 我ながら唐突だと思う。だが園絵さんなら引っかかってくれるだろう。 「なんで私が勝負なんかしなきゃいけないのよ!!?」 もっともな事だ。だが、我に秘策あり! 「負けるのが怖いんですか?確かに敗者には×ゲームをさせるつもりでしたがね」 園絵さんの負けず嫌いに油を注ぐ。負けず嫌いかは確信はないが、外見的にはそう見えるだろう。 「クッ…種目は何!?」 種目なんて決まってるだろう。 「園絵部長。昨日炒飯作ってましたよね?それで思いついたんですが、料理対決をしませんか?」 俺が昨日の焦げ炒飯を処理する時に判明したのだが、園絵さんは炒飯を作るのが非常に上手い。恐らく他の料理も同じくらいのレベルだろう。人は自分に自信のあることを断る事は少ないからな。 「料理対決ね!?ふっふ~ん。これは私の勝ちになるみたいね!」 ほら。引っかかった。 「では今週の土曜日。音咲の家でいいな?」 音咲は軽く微笑む。頼むから頷くで勘弁してくれ。そんな毎回毎回微笑まれたら俺の背筋は氷河期を迎えてしまう。 「園絵さんは…七恵か楓さんに案内してもらってください。お題は何がいいですか?」 俺ならどんな料理でもできる。いや、できなくとも3日でマスターしてやる! 「あの、時期が時期なので、シチューなどはどうでしょうか?」 楓さんが言う。この瞬間園絵さんは勝ち誇ったような笑みになった。後で吠え面をかく姿を想像すると…ダメだ!笑っちゃダメだ! 「それで決まりね!」 これで俺への待遇も改善されるかな。 「でもマフラーはちゃんと編んでもらうからね?」 きちんと覚えてたよこの部長は。流石は部長なのか? …今の今まで気づかなかったが、メイド服を着た…誰だ? 俺が不審に思っていると音咲がそれを察したようで、俺に顔を近づけて、 「僕の家のメイドさんです。名前は麻灘さんという人で、優しい人ですよ」 ……戦闘歴は? 「…年齢-7でしょうか」 メイドだって? 「冥奴ですよ」 …とまあこんな事だったんだ。その後の料理対決はもちろん俺が勝ったし(園絵さんのシチューはビーフシチューで俺はホワイトシチューだったのだが、判定である麻灘さんの「この季節にホワイトシチューがあっているのと、旬の食材が味を活かしたまま料理されている堀崎君の勝です」とのことだ)編み物をしている時の指導の方法も少しやんわりとしたものに昇華した。普通に編み物をする分には構わないんだぜ?それに付きまとう副産物である痛みが嫌いなだけだ。そういえば、負けた時の園絵さんは面白かったな…。いや、これはまた今度だ。これ以上書くと際限がなくなること火の如しだ。 そんな過程があって、クリスマスイブイブイブ。つまり22日だ。 「よしっ。終わり!」 俺の作っていたマフラーがやっと完成を見る。二人の熱心な教師に指導と称する肉体的苦痛を味わったが、その分できはいい。俺としても作るときのモットーは『作るときは時間がかかってもいいものを』だからな。誰かの飯を作るときはあまりこだわらないが、時間や相手が許すときはこだわるからな。まあ、七恵は空腹に耐えられず俺を捕食しようとしてくるからさっさと作るのだが。そのほとんど無意味なモットーのおかげか、一番遅く出来上がった俺のマフラー。だが、そのマフラーは上出来だと思う。 「じゃあ今日の部活は解散!明日は休みだけど、とりあえず朝10時にはここにきてね!」 …そう言って園絵さんは部室を飛び出していった。今は雪が降っていて、走っていてはとても危ないのだが…あの人は大丈夫そうだ。七恵なら%で表すでもなくこけるけどな。 「睦月!?私ドジじゃないよ?」 この前―お前、布団干そうとしたら落ちそうになったよな?それから飯運ぼうとしたらぶち撒けたし。 「もういいって!わかったから!」 難なく七恵の撃退に成功した俺。次なるターゲットは…いいか。 「まるで台風のような人でしたね」 音咲が言う。まったくそのとおりだと思う。いきなり来て部外者である俺と音咲まで巻き込んで編み物をさせるとは。 「いいじゃないですか。こんな事がなければ、お二人とも編み物なんて一生しなかったと思いますよ?」 多分そうだろうな。楓さんと七恵は…七恵は微妙な所だが、この二人なら編み物をしててもおかしくはないな。だが…俺達の方は…ないだろう。ほぼ確実にないだろう。そもそも俺が料理ができる事も珍しい特技であるというのに。この世界がループしているのなら2%以下の可能性だろうな。 「ですが、いい先輩でしょう?あの先輩が来るだけで明るくなるんですからね」 別に今までが暗かったわけじゃない。でも、確実にいえるのは前より上の段階になったという事だ。別に計画とかそういうものはないんだが、そういう表現が一番あっている気がするだけだ。気にしないでくれ。 ふと、園絵さんの家族のことを考えてみる。 ……あれ?もしかして園絵さんは両親がいないんじゃないのか? 「あれ?どうしてわかったの?」 やっぱり当たってたか。あの時感じてた違和感はこれだったか。園絵さんの家には、明るさが足りなかったんだな。 「すごいね。そんなすごい観察眼があれば、きっと探偵になれるよ?」 すごくどうでもいいな。名探偵コナソに触発された精神的に可愛い幼子だったら喜ぶのかもしれないが、俺は探偵業には憧れない。理由は簡単。不安定だからな。 「でも、今は彩ちゃんがいないから言うけどね?両親がいなくて本当は寂しいんだよ?」 わかったから。みだりに話すなってことだろ? 「わかったならよし!さ、帰ろ?」 ああ。鍵は俺が持って―いやいやいや!うろたえない!ドイツ軍人はうろたえない! まあ、その日も七恵は俺の家に泊まったわけだが。 釈然としない気持が心の中で渦を巻いたが無視だ。そんなものにいちいち構ってたら心労で廃人になっちまう。 翌日 「睦月!?早く行こう!!?」 「わかったから!手を引っ張るな手を!まだ靴が―!」 あー…話せば長く…ならないな。かなり短い。漢字二字で表せる。 『寝坊』 だ。どうだ?完璧だろ? 「睦月も走ってよ!」 ああ…俺、厄年なのかな。高校生の三年間。ああ、まだ未来なのにその先もこんな日常が続いてる気がしてならない…。ああ、杞憂であれ…。 言われるがままに俺も走り出す。 …全力疾走を続けること2分。そりゃもう国営の展示場に飾れそうなほど見事に俺はへたばっていた。いや、誰だって全力疾走なんか2分も続けたら一歩も歩けなくなるだろ?いや、2分続けられただけすごいと思う。七恵の本気は俺の最速を軽く越えてたからな。それに合わせることを全力疾走って言ったんだ。ああ、俺すごい。 「頼む。休ませろ。死ねる」 現残存体力を生かさず殺さずの勢いで振り絞って出した声。受理されなかったら俺は七恵をどうにかしてしまうかもしれない。例えば―…ごめん。無理。返り討ちに遭う。 「もう…5分だけだからね?」 それで頬を膨らませていってくれたらかなり萌…ゲフンゲフン!いや、なんでもない! 俺は考える事をやめ、自身を休める事にした。 「とってね~!」 七恵の声がする。言葉どおりなら、俺に何かが飛んでくる事だろう。だが、今のところ視界にはなんの異物もない。じゃあ俺の死角から飛んでくるのだろう。さあ、どうする?どうやって避ける? そうだ!伏せよ― グシャッ あ…俺…死ねる。今多分死ねる…。 「だから取ってっていったのに~」 ほう。投げて2秒も経たないうちに直撃する速度で物を投げて取れなかったほうが悪いと? 俺は七恵のいるであろう方角を見る。そこには100mほど離れた自動販売機の前にいる七恵がいた。よし、 秒速は…100mでいいか。 100二乗×…いや、不毛だ。 それにしても…なんでホットの炭酸飲料があるのかな?絶対不味いよな?しかも投げたから振ったと同じじゃねえか。ああ、飲む気失せた。 「あれ?飲まないの?『泡泡珈琲エスプレッソスペシャル』。これおいしいかもよ?」 おい。疑問系なのはなぜだ?飲んだことないな?俺を玩具にしたいんだな? 「絶対飲まない。いや、絶対あけない」 俺がそういうと七恵はそれを取って、 「じゃあ私が開けたら飲む?」 いや、それでも飲まない。絶対不味いだろ。 「じゃあ…私も飲むから睦月も飲んで!」 そこまでそんなものを飲ませたいか?いいだろう。乗ってやる。お前の飲んだときの勇姿は携帯フォルダにしまってやる。 「じゃ、開けるね?」 七恵がそれを開ける。…幸いにもそれは暴発する事はなく、無事に七恵の口へと運ばれた。 七恵がそれを幾らか飲んだ後すぐに、 「睦月。これ逝けるよ」 …いけるんだな? 「すごく逝けるよ?」 OK。飲んでやろうじゃないか。 俺はそれを七恵から受け取り、口に運ぶ。珈琲の匂いと炭酸の風味が合わさって、…なんともいえない気持ち悪さとなっている。やっぱ飲むのやめるか?いや、それはできないようだ。七恵が俺を輝かんばかりの目で見てきてる。ここで飲まなきゃ後々色々されるだろう。 覚悟を少しして一気にそれを口に含む。 ぬぐぅっ!!!!? なんだこの最悪なコラボネーションは!!!!!? ヤバイ! これで人を殺せる! 珈琲以外にも何か入ってやがる! 俺は口に含んだそれを飲み込んでから製品表示を見る。 …コーラに麦茶か。まさか珈琲以外のものが入っていようとは。…なんで七恵は平気なんだ? 「これ、わかる?」 わかるわけがない。確かにコーラっぽい色ではあるが、コーラは固形物じゃない。 「さっきそこで、『夏季限定コーラグミビッグ版』っていうのが売ってたから買ってきたの」 …今冬だぞ? 「おいしいよ?」 そうかい。 「安かったんだよ?」 そうかい。 「あっちで売ってるよ?」 そうかい。 「間接キッスだよ?」 そうか…い? 「私が飲んだ後に睦月が飲んだでしょ?睦月、別に何も意識しないで飲んでたよね?」 ……OK。どこか高いところはないか?どっかのビルの屋上、アパートの屋上でもいいから案内してくれ。 「とりあえず、行かないと怒られちゃうよ?」 俺はなされるがままにしか行動できなくなっていた。なぜかって?味覚と心のショックで脳が少しスリープを要しているからさ。ああ、情けない…のか? 七恵に効果音がついてもよさそうなほど気持ちよく引きずられながら学校に向かう俺達に電話がかかる。もちろん携帯で、音咲から俺へとだ。 「どうした音咲?」 「…それはこちらのセリフですよ?」 「それは失敬。で、なんだ?」 「約束時間の事を忘れていますか?」 いや、予想できてた内容だが、やっぱりこれを言われると反論できないな。 「いや、覚えてはいたんだがな?体がそれを忘れてて、二人揃って寝坊したわけだ」 携帯越しにため息が聞こえてきそうな間を挟んで音咲が、 「『あと5分以内に来なきゃ死刑だからね!』と園絵さんが言っていますので、頑張って下さい」 音咲。伝言を伝える時は普通に伝えろ。園絵さんの声色を真似るな気色悪い。 …切れてるし。 「誰だったの?」 言わずもがないつものやつらだ。 「急いだ方がいいの?」 時計を見ろ。ほら、公園の時計は長い針が真下を指しているぞ? 「歯食いしばってね!」 不吉な事を言うn― 考える暇もなく俺は陸上ジェットスキーを味わう事になった。死ねる。これ死ねる。 俺が死ぬような思いをしたおかげか、はたまた人が死ぬほどの強さで俺を学校まで引っ張った七恵のおかげか俺達は門限である5分以内に部室に入る事に成功した。ミッションコンプリート。報酬はない。 「さーって! どこかの誰かさんが遅れたから遅れちゃったけど」 園絵さんは俺を見ながら言う。俺だけなのか?そして同じ言葉を二回使うとアホっぽいと思われますよ? 「アホって言うな!このアホ!」 「グヒュウッ!」 鳩尾が…! 園絵さんは俺の鳩尾をありえないほど正確に蹴ってきた。しかもありえないというのは、その爪先が筋肉のないところにクリーンヒット。文字通り会心の一撃だったわけだ。 …今気づいたが、麻灘さんもいるようだ。 「あ♪ いいこと思いついた♪」 絶対確実に2那由多%いい事じゃない。断言してやる。 「私に対して睦月はタメ口で話す事!」 「「「「…………」」」」 静まり返った。園絵さんがこの一言を言う前には俺と園絵さん以外でなにかをやっていたようだったんだが、それが中断された。心なしか、音咲と楓さんの視線が俺に『いい反応をしてくださいね?』と語りかけてきているような感じさえする。いい反応ってどんな反応だよ!? 俺は吉本の人間じゃない。じゃあなんだ? 「それでいいのか園絵?」 タメで言う。違和感甚だしいが、そう言わなきゃまた鳩尾に蹴りが来るかもしれないからな。 「彩って読んでね?」 音咲!?楓さん!?なにその『ああ、フラグ立てちゃいましたね』みたいな視線は!?死亡フラグなのか!? 「彩さn…彩。今日はいったい何のために集まったんだ?」 途中で言い直したのは彩の足が動きかけたからだ。ああ、トラウマになるかもしれん。 …ところで、なんで七恵はそっぽ向いていじけてるんだ? 「今日集まってもらったのはね、籤を引いてもらうためなの!」 …正月まだ先だったぞ?曜日感覚でもおかしくなったか彩? 「みんなマフラー作ったでしょ?で、それを籤でみんなに分けようってことなの」 …要はプレゼント交換ってことだな? 「そうよ!さ、籤は作ってあるから引いてね!」 …いや、待て。考えろ俺!KOOLになるんだ堀崎睦月!ここで彩が交換だけで終わらせると思うか?いいや終わらないな。じゃあ他に何がある? …なにもないだろ。 「俺からでいいか?」 俺が引こうと手を前に出す。先陣を切れば、跡に感じる感動が幾らか和らぐだろう。 俺は『くじBOKS SUPER』と書かれた箱に手を入れる。スペルが違う事は指摘しない。鳩尾が疼く。 …俺が引いた籤は………楔文字? 楔文字っぽいそれは、日本語に直そうと努力すると2に見えてきた。2…でいいのか? 俺に続いて全員が『くじBOKS SUPER』に手を入れる。もちろん指摘はしない。俺の二の舞がいやなんだろう。 「みんな引き終わったみたいだから、説明するわ!」 …麻灘さんが籤を引いたことには驚いた。てっきり傍観しているだけかと思ったんだが…。 「今引いた籤に番号が書いてあったでしょ?その番号と同じ人と一緒に24、25日を過ごすの!」 ……俺に野郎と一緒に聖夜を過ごせと? 「まだ決まってないでしょ?もしかしたら私とかもよ?」 …そんな事勘弁してくれ。まあ、この人数でハズレを引くほうが…40%の確立で当たるな。もちろん楓さんと麻灘さんだ。残った七恵と音咲、彩は…来ない事を祈ろう。特に音咲。これだけの美女…がいるのにお前と聖夜を過ごすなんて『ビッグバンが再度起こってそれを撮影しようとしたんだけどシャッター押し忘れて失敗した』とかなるぐらいに惜しい。 「2番引いた人って誰?」 …楓さん?七恵の声色をまねしなくてもいいですよ?あ!麻灘さんですか? 「僕は3番ですね」 「私もですよ」 おい七恵。わざわざ楓さんの真似しなくてもいいだろ? 「私は1番ね!」 「不束ながら、よろしくお願いします」 …疑う余地もないだろう。 「ってことは睦月?紙見せてよ」 俺は無言で紙を出す。 「やっぱ同じだね。じゃあ二日間よろしくねっ」 二日だけなら大歓迎なんだがな。いや、普通の対応でもいいか。 「言い忘れてたけど、何をするかは各自の自由だからね!」 …彩は麻灘さんとだよな?二人がしゃべってる様子が想像できないのは俺だけか? 「心配無用ですよ。麻灘さんは僕もいい人だと思ってますので」 それでも会話が弾むとはとても思えないぞ? 「それは言ってはいけません。これ以上言うと聞こえてしまいますよ?」 俺は音咲の言うとおりに会話を切り上げて抗議に移る。決して組み合わせが悪かったわけじゃ…ないかもな。 「みんなで過ごすって選択肢はないのか?」 一番ベターな案を出す。あ、一番ってベストじゃん。 「それじゃ面白味に欠けるから今みたいにしたの!」 少し怒った様な声で彩が言う。何を怒るんだ?そんなに俺と一緒に居たかったか? 「え!?…あ、え、そんなわけないでしょ!」 なんだ違うのか……って気づかないわけがないだろ!いくら俺が普段『これで気づかないならあなたの五感は機能してないと思いますよ?』といわれるほどに鈍感だとしてもだ!まあ、今の彩の言い方は演技だろうな。リアルワールドにツンデレなんていないはずだ。 「じゃあ音咲か?」 俺じゃなかったら音咲だろう。 「なんで男限定なの!?」 あ、そっか。別に同姓と過ごしても問題はないんだったな。異性の方が問題ありか。 「とりあえずそれは別にいいでしょ!?」 彩が必死になにかを否定する。誰も何を否定しているかわからないために、その姿は酷く滑稽である。まるでピエロだ。解雇が決定されて必死に頑張ってるピエロだ。 「さ、マフラーの交換式を始めるわよ!」 …相手は? 「籤のペアに決まってるでしょ!もうちょっと頭使いなさいこのサナダムシ!」 酷い言われようだな。寄生虫レベルかよ。 しかもそのスペクタクルを音咲、楓さんたちは微笑みながら見ている。ああ、音咲よ。羨ましいぞ。いろんな意味で。 「言い忘れたけど、マフラーは相手の首にちゃんとかけてあげるのよ!?」 それを言った後、音咲は楓さんに何らかの情報伝達を行い、すぐにマフラーを交換し始めた。一瞬、音咲が楓さんの指輪を左薬指につけるビジョンが見えたがそれは俺の妄想だろう。いや、妄想であってくれ。 と俺が見とれている間に俺と七恵以外はすぐに終わってしまったようで、4人が俺をじっと見てくる。 このまま視線を合わせていても不毛なので俺が切り出す。 「七恵、かけるぞ?」 親しき中にも礼儀あり。俺はそれに乗っ取ってマフラーをかけ始める。 …マフラーを一つかけるのがここまで羞恥を孕むものだとは朝露ほども思っていなかった。マフラーをかけるとき、どうしても首の後ろに手を回さなきゃいけないので手を回す。そうするとどうなる?もちろんここにいる奴らは正しく状況を認識できる。だがな。傍目から見ると俺が抱き着いてるようにしか見えない。ああ、羞恥でどうにかなりそうだ。 俺が七恵にマフラーをかけると、音咲、楓さんは二人で並んで俺を温かい目で見てくるし。麻灘さんは『あの人は私を覚えているでしょうか…』みたいなことを考えてるし。彩はジト目で俺を見てくるし。七恵にいたっては全身茹蛸状態だ。その気持ちは俺もわかるが、そんな気持ちだからこそ早く俺にマフラーをかけて終わらせてくれ。 「七恵?」 七恵は我に帰る。今までどこに行ってたかは…決してわからなくていいだろう。 「じ、じじゃあかけるね?」 若干しどろもどろになりながらアポを取る七恵。いつもこんな感じだったら大抵の男なる生物は落とせるであろう。そんな恥ずかしい事をいとも簡単にモノローグに出現させるほどにまあ、その、なんだ。可愛いんだ。 「これで…いいかな?」 不安そうな上目遣いで俺を見上げる七恵。この攻撃の威力は体感しなくてもわかるだろう。いったいどこの誰が不安そうに上目遣いをしてくるやつにダメだしをする?上目遣いのレベル向上ならわからないでもないが、それは『K』に任せておこう。 「大丈夫だ。かけてくれてありがとな」 自分では至極自然に振舞って言ったつもりなんだが…なんだ?なぜみんなの視線がいろんなベクトルで強まる? 「では、僕から皆さんにクリスマスプレゼントを差し上げたいと思います」 音咲がどこかのテレビの司会アナウンサーのように言う。いや、お前は何をやっても似合いやがるな。 「前と同じで籤を引いてください」 俺は言われたとおりに籤を引こうとする。それを止めるように 「もちろんペアで一つずつですよ?」 聞こえた時にはもう遅く、既に七恵は籤を引いてはしゃいでいる。流石は光の能力者。使いどころが三角ねじに+ドライバーで挑むほどずれているが早いな。 はしゃいでいる七恵の隙を見て内容を見る。 ……『USJ』 「音咲。これはどこだ?」 「ユニバーサルスタジオジャパン、関西ですよ」 ほう。で、お前はチケットだけ渡してどうしろと?俺の懐事情を知らないとは言わせないぞ? 「おかしいですね。あなたは一人暮らしで無駄遣いをしないと思っていたのですが」 それに追い討ちをかけるように 「もしかして、誰かと同棲してますか?」 ………一回死ぬか?別に旅行費を出せといってるわけじゃない。とりあえずその態度を改めようか?その白々しい態度だ。さ、矯正しようか? 「遠慮しておきますよ」 俺はSNNで音咲を凍らせる。とりあえず少し頭を冷やせ。20分くらいで溶けるだろ。 「久しぶりに睦月のSNN見たね。そういえば…指令全然来なくなったね」 指令が来ない?おいおい何言ってるんだ。絶賛命令中だぜ?一ヶ月に4回は来てるな。 20分後、解凍された音咲から旅費を恵んでもらった俺と七恵は家に帰って早速旅行の準備をする事になった。なぜ拒否しなかったかって?It`s so easy. 音咲が俺の実家に電話であることないことを告げたためだ。お袋は『お土産はちゃんとお願いね! あと、年頃の女の子と一緒の部屋に寝るんだから気をつけなさいよ?』とか言われた。音咲が何を吹き込んだかは見当もつかないが、とりあえず言えるのは、『あの時凍らせた上で2、3回ぶん殴ってればよかった』本気で思ったね。 ………今気づいたけど、毛糸って縫うじゃなくて編むだったな。 タイトル変更 『毛糸を規則的に編んでみた』
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