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霊応力(れいのうりょく) +目次 登場作品ゼスティリア ゼスティリア ザ クロス ベルセリア 関連リンク関連項目 類似項目 登場作品 ゼスティリア 天族や憑魔を知覚できる力。高い霊応力を持つ人間は天族を認識でき、また身体を器として捧げる事で天族の力を行使できる一方で、穢れから生まれた憑魔に狙われやすい。 声が聞こえるだけよりも、視認もできる人間の方が霊応力は高い傾向にある。また、天族を認識するには憑魔を認識するより高い霊応力が必要。その為、怪物・魔物の伝承は多く遺されているが、天族についての伝承は少ない。 導師の霊応力は、試練の神殿で試練を乗り越える事により上げる事が可能。 スレイやロゼが生まれつき高く、アリーシャも平均よりは高い。 ▲ ゼスティリア ザ クロス 一部のキャラの霊応力の高さが原作とは異なる。 アリーシャ(ルナールの憑魔化に気付く、イズチで天族の視線・気配を感知、従士契約前でもスレイの領域にいる間は天族の声が聞こえる)やヘルダルフ(ミケルにマオテラスの元へ案内された際、マオテラスの姿が見えている)は原作より高い。 逆に、ロゼ(デゼルがずっと自分の傍にいた事を、スレイに指摘されるまで全く気付いていなかった)は原作より低い。 ▲ ベルセリア 聖隷や業魔を認識する特殊な能力。ただし、業魔よりも聖隷を認識する方が高い霊応力を必要とする。 対魔士になるには当然聖隷を認識出来なくてはいけない為、霊応力の高さは対魔士になれる基準となる。 なお、訓練等で高くなる事は無いとされている。 +ネタバレ 聖主カノヌシの加護は、人間の霊応力を高める事が出来る。 故に開門の日には業魔は全ての人間に見えた一方聖隷も見える人間は限られていた(マギルゥ、アルトリウス、ラフィ等)が、降臨の日から全ての人間に聖隷もまた見えるようになり、対魔士の数が大幅に増加、アルトリウスが救世主の立場を確立する事となった。 なお、霊応力が高い人間は十二歳病を発病しやすいという仮説が提唱されている。 実際に、十二歳病の罹患者には高い霊応力を持つ者が多く、降臨の日前から聖隷の存在を認識できていた者も少なくない。 ▲ 関連リンク 関連項目 導師 対魔士 ▲ 類似項目 ▲
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魔王:EX (ミヒラクラ) 生前のイメージによって、後に過去の在り方を捻じ曲げられた怪物。能力・姿が変貌してしまう。 バーサーカーの場合、正しき教え(正法)が滅尽され、人も世も荒廃し尽くした末法の権化として顕現し暴威を振るう。 数多の仏教伝承にて仏法の大敵たる悪名を一身に浴びたバーサーカーは、このスキルを規格外のランクで保有している。 魔王:A (織田信長(帝都聖杯寄譚)) 生前のイメージによって、後に過去の在り方を捻じ曲げられた怪物。能力・姿が変貌してしまう。 アーチャーの場合、生前の本人が自称してしまってる事から任意発動、任意解除が可能。 デメリット無しにその恩恵を受けることが出来る。 つまりロリからボインになったりできるってことだ。無辜の怪物とは似て非なるスキル。 魔王:A (メフメト2世(リメイク)) 生前のイメージによって、後に過去の在り方を捻じ曲げられた怪物。能力・姿が変貌してしまう。 メフメトの場合、自身の存在を拒否された時発動。15ターンの間その恩恵を受けることが出来る。 彼は芸術を愛する賢君にも、血に塗れた怪物にもなり得る。無辜の怪物とは似て非なるスキル。 魔王:A (魔王フリードリヒ2世) 生前のイメージによって、後に過去の在り方を捻じ曲げられた怪物。能力・姿が変貌してしまう。 アヴェンジャーの場合、反救世主の烙印を受けた皇帝として神聖なる存在の敵対者と化し暴威を振るう。 …しかしアヴェンジャーの根底にあるのは聖性を盾に欺瞞と奸悪を弄する、偽りの信仰への義憤。魔に堕ちて尚、アヴェンジャーの神の忠実なる使徒としての矜恃は揺らぐことはない。 魔王:A (フランシスコ・ピサロ) 生前のイメージによって、後に過去の在り方を捻じ曲げられた怪物。能力・姿が変貌してしまう。 フェイカーの場合、生前に先住民から「白い神」と見誤れ、それを侵略に利用したことから、 任意発動、任意解除が可能でありデメリット無しにその恩恵を受けることが出来る。 平時は「白い神」を騙って他者を欺くが、その後にインカ帝国を滅ぼした、 征服者、魔王としての側面こそが彼の本性である。
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―――地下通路 テンプルナイト「唯様!アルカディアへ行かれるのですね ささ、どうぞお通りください」 唯「あ、ありがとうございます……って……え?」 唯「へ、部屋?」 ドアを開けた唯は戸惑いを隠せなかった いつもならドアを開けると 唯を新鮮な外の景色が迎えてくれたはず だが、目の前に飛び込んできたのは 転送ターミナルが設置された 無機質な光景だった 第五章 メシアッテナニ? 和「ああ、アルカディアだけは何故か この転送ターミナルからしか入れないのよ」 唯「そ、そうなんだ」 声「アームターミナルヲセツゾクシテ アクセスシテクダサイ」 唯「こうかな……」カチャッ ピッ 声「テンソウヲカイシシマス」 ―――アルカディア 唯「うわあ~!!キレイ~!!」 和「ホントここは楽園と呼ぶにふさわしい場所ね」 市民「おや、センターの方ですね?」 唯「はい!ムギ…紬さんに会いにきたんです」 市民「私たちが平和に暮らせるのは全て 紬様のおかげなんですよ~!」 市民「紬様なら木々の間を 通りぬけた奥の館におられます」 …… ……… 紬「お久しぶりね!唯ちゃん!」 唯「へっ……」 紬「私よ!琴吹 紬!!」 唯「ムギ……ちゃん……」 和「ごめんさない、唯はまだ記憶が完全に戻ってないの」 紬「そう……」 紬「唯ちゃんどう?アルカディア・エリアは? あなたが行方不明の間に私は このエリアを理想の世界につくり上げたの!」 唯「へぇ~!全部ムギちゃんが作ったんだぁ!!」 紬「ミレニアムが千年王国の実現を 目指しているのは知ってるわよね? このアルカディア・エリアは千年王国が 実現した後どんな世界ができるかの テスト・ケースなの」 和「素晴らしい結果が出せたじゃない」 紬「うふふ、ありがとう」 紬「ここでは悪魔との戦いも人同士の 争いもなくてみんな平和に暮らしてるわ 世界中がアルカディアのようになった時 初めて千年王国が実現したと言えるのよ」 紬「唯ちゃんもここが気に入ったなら いつでも来て!美味しいお菓子と お茶を用意して待ってるわ」 唯「お菓子~~!?」 和「急に話に食いついたわね」 紬「唯ちゃんなら大歓迎よ! それじゃあアルカディアは大成功だと センターの澪ちゃんに伝えてもらえるかしら?」 和「ええ!伝えておくわ」 …… ……… 唯「アルカディアかぁ……」 和「気に入ったの?」 唯「え?う……うん! ムギちゃんもいい人そうだったし!」 唯(なんだろう……この感じ…) 唯(とってもいい所のはずなのに 何か足りないような……) ―――センター 和「……!?唯!剣を抜いて!!」 唯「えっえっ!?」 和「悪魔の気配がする……」 唯「ここは悪魔がいないんじゃなかったの!?」 和「わからない……一体どうしたの……」 唯「あっ!澪ちゃん!」 澪「おっ!唯に和!! 大変なことが起こったの! 急いでるから話している時間が…… くわしい事は司教に聞いて!!」 唯「行っちゃった……」 和「管制室へ行きましょう!」 …… ……… 司教「大変です…… ついにセンター内まで悪魔達が 入ってきました」 和(やっぱり……でもどうして!?) 司教「しかしそれよりも大変な事に にせのメシアが現れました」 唯「ニセメシア!?」 司教「にせ救世主は人々の心をたくみに 掴んでいてこのまま放っておけば ミレニアムは混乱してしまいます」 司教「にせメシアの情報はホーリータウンと ヴァルハラから入っていますが 現在どこにいるのかわかっていません」 司教「誰が何のために救世主を 名乗っているのか? ぜひ確かめて下さい」 和(こんな時になに悠長なことを……) …… ……… 和「唯……どうする?」 唯「ん~~……ホーリータウンから行こう!」 ―――ホーリータウン 唯「どこから探せば……」 和「まずは情報収集よ!あんまり行きたくないけど…… BARなら有力な情報を得られるかも」 唯「私お酒飲めないよ~?」 和「むしろこの状況でお酒飲む気なの……」 …… ……… バーテンダー「いらっしゃいませ……」 和「と、とりあえずカウンターに座りましょ」 バーテンダー「お客様、お飲み物なのですが……」 唯「あ!えと……えと……」 バーテンダー「あちらのお客様から……」スッ 唯&和「へ?」 ブロンドの男「やあ……… 君と会うのは初めて……じゃないな」 和(唯!知ってるの……?) 唯(ううん……初めて見る人だよ……) ブロンドの男「私の名はルイ・サイファーだ 今後ともよろしく……」 ルイ・サイファー「君の事はよーく知っているよ ユイ・ヒラサワ……」 唯「な、なんで私の名前を!?」 ルイ・サイファー「ふふ…何かと御活躍のようだからな 私はメシア教徒達が作ったという ミレニアムを見に来たのだが…… さすがに君のいるセンターだけは チェックが厳しくて入れなかったよ」 和「すっかり有名人ね唯」 唯(ルイ・サイファー……) 和「唯?」 唯「あ?あはは……やめてよ和ちゃん~」 ルイ・サイファー「では、私はこれで失礼させてもらう また会おう、ユイ・ヒラサワ……」 和「なんか……謎の男って感じだったわね……」 唯「う、うん……」 女「あなたがメシア~~!?」 唯「うわわっ!(……お酒くさ~い)」 和「ええ、そうよ」 女「ウソ言わないで!!メシアは梓様よ 梓様はヴァルハラへ行ったわ!!」 唯「梓!?やっぱり梓って人が……」 和「唯、行くわよ」 唯「うん!」 …… ……… 唯達が外にでると 街頭のビジョンでは臨時ニュースが流れていた ニュースキャスター「M.N.N. ミレニアムニュースネットワーク ミレニアムの最新情報をお伝えします 最近ミレニアム内で多くの人々を救い メシアではないかと言われる人物が ヴァルハラのスタジアムに現れました ヴァルハラでは……」 和「さっきの情報は本当のようね」 和「さ、急ぐわよ」 唯「………」 ―――ヴァルハラスタジアム 男「やって来たかチャンピオン…… 今日はライブじゃねぇ あんたはここで梓と 戦うことになっている その話はわかってるな?」 唯「え!!聞いてないよそんな話!!」 男「じゃあ話しておこう…… 梓は近頃ミレニアムでメシアではないかと 言われているヤツだ」 男「ヤツが真のメシアは自分だと言って それをはっきりさせるため あんたと戦いたいと言ってきた どちらもメシアと噂される あんたと梓の戦いなら こっちとしても悪い条件じゃない そこでスペシャル・マッチを 組ませてもらったというわけだ…… ……わかったか?」 唯「そんな……」 和「唯、ここまで来たら行くしかないわね」 和「大丈夫、私がセコンドでついていってあげるわ」 唯「う、うん!」 男「じゃあ行きな…… 梓はもう中で待ってるぜ」 …… ……… ワアアアァァァ 「現れましたね平沢 唯!! 偽りの救いの手を伸ばして人々を 惑わすアンチ・メシア!!」 ワアアアァァァァ …あーずーさ! あーずーさ!!… 梓「よく逃げずにここまで来ましたね」 唯「に、逃げたりなんかしないもん!!」 梓「でも……ニセモノのあなたはここで 消えるのが神の思し召しです! 平沢 唯!!覚悟!」 戦士 中野 梓が 1体出た! 唯(こんなちっちゃくて可愛い子と戦えっていうの!?) 梓「来ないならこっちから行きますよ!!」ダッ 唯「きゃあっ!!」サッ 唯「坤竜丸!!」スラァ…… 唯「坤竜丸、私この子を殺したくないの!!」 ……おかしなことを言う奴だ…… ……わかった……やってみよう…… 唯「ごめん梓ちゃん!!」ズガッ 梓「い……たたた」 梓「私は救世主です! メシアの名にかけてあなたを倒す!!」 戦士 中野 梓が 1体出た! 唯「もうやめて!!」 梓「隙あり!!」ドゴッ 唯「うぐっ!!」 唯「…………」 梓「!?」 唯「…………」ブンッ バチィ! 梓「きゃあっ!!」 梓「うう……つ、強いですね……」 梓「負けるか…これが真のメシアの力!!」 梓「マハジオンガ!!」 ズドン!! 唯「いやあああ!!」 唯「か、体が痺れて……」 梓「なかなかしぶといですね! でも……これで最後です!!」 梓「さようなら……平沢 唯」 唯「う……」 梓の手がまばゆい光を放つ 梓「メギドラ………」 和「危ない!!唯!!よけて!!!」 カッ!!! 和「ああああああ゛あ゛あ゛!!!!」 唯「-------!!!!!」 梓「え………」 梓「な、仲間を盾にするなんて!! 許せない!!」 唯「あ、ああああああああ」 唯「ああああああああああ!!!」スラァ ザシュッ…… 梓「うぐ……は………」 …… ……… 梓「なんで私が…… 救世主のはずの私が負けるの……? なんで……」 唯「…………」チャキッ 唯はためらいもなく梓の頭に銃口を向ける 梓「ひ………」 和「やめて……殺しちゃ…ダメ……」 梓「!!」 唯「…………… 和……ちゃん?」 和「私の……話を 聞いて、唯……ごぼっ」ヒュー ヒュー 唯「和ちゃん!!」 和「私……もうダメ…… だから… 彼女に生きて…ほしいの…… そして… あなたにも……」 和「私の定めは…あなたを助けること… 短い間…だったけど…… あ、あなたと……一緒で……」 和「………………」 唯「ーーーーーーーー!!!!!!」 梓「くっ…… この恨み……決して忘れません!!」 梓は逃げていった 司教「自ら救世主を名乗った 中野 梓は倒されました! 神の言葉通り人を惑わせる アンチ・メシアが現れ 真のメシアの手によって倒されたのです!」 気が付くといつの間にか 司教がセンター市民を引き連れ スタジアムのステージに立っていた 司教「唯こそ真のメシアなのです! ついに神は私達のもとへ救世主を つかわされたのです!」 唯「…………」 ……救世主 唯 ばんざーい!!…… 子供「ヘンなおやじがこれを 渡してくれって!ほら!」 唯(人が一人死んだんだよ? 和ちゃんが……) 唯はメモを受け取ると 紙に目を落とす ―――――――――――――――――― 君に真実を伝えたい スラム街1階にあるガイア神殿の裏まで 来てほしい 目加田 ―――――――――――――――――― 唯「…………」 司教「唯よ……?」 司教「唯……どこへ行くのだ……?」 唯はスラム街へ走った 悲しみで胸が引き裂かれそうな中 和の最後の言葉を繰り返し思い出す 唯は自分にできることを 精一杯考えていた 和の遺志を無駄にしないために…… 第五章 メシアッテナニ? 完 8
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第六話「明かされる真実」 1、鬼人族の無念 翼人族の集落を後にして、カリスト村を目指して街道を南下するアーデルハイト達は、その途上、リマという名の宿場町に辿り着き、それぞれに町中を情報収集しながら散策していた。 そんな中、残りの指輪型印章に関する情報を集めていたカープは、町の片隅で一人の大柄な女性と遭遇する(下図)。その女性は頭部から三本の角を生やしており、一目見て鬼人族(オウガ)と分かる風貌であり、その手には巨大な戦槌が握られていた。 「指輪を集めているというのは、お前か!」 そう言って、彼女はカープに向かって戦槌を振り下ろそうとするが、例によって例のごとく、カープはそんな彼女に対しても、笑顔で口説き始める。 「おぉ、これは美しいお嬢さん。あなたのお名前は?」 「な……、お、おま……、いきなり、何を……、あ、いや、そうじゃなくて、その、だから、指輪をだな……」 頬を紅潮させながら明らかに動揺した彼女を翻弄しながら、カープはいつも通りに「自分のペース」に持ち込み、彼女はいつの間にか自分の身の上を語り始める。 彼女の名はマーニー。指輪型印章を受け継ぐ鬼人族の一族の末裔であったが、その指輪を「救世主」に奪われ、その奪還を目指して、「協力者」達と共に各地を旅しているらしい。当初、彼女はカープをその「救世主」の一味と勘違いしていたが、彼から一通りの事情を聞くと、やや訝しげな表情を浮かべながらも、カープに対して一つの提案を示す。 「救世主を倒すということであれば、手を組まないか? 協力者を紹介する」 そう言われたカープは、ひとまず皆と合流した上で相談するために、マーニーを連れて自分達の宿へと戻ることになった。なお、その過程の会話を通じて、どうやらマーニーには、既に「いい仲」になりつつある男性がいるらしい、ということを察したカープであったが、特にそれで落胆するようなこともなかった。どうやら彼の中では「美しい美女を口説く」という行為そのものに意義があるのであって、相手を手に入れられるかどうかということには、それほど強いこだわりは無いようである。 2、獣人族の邂逅 同じ頃、いつも通りに「自分が預かっている指輪を託すべき同族」を探していたサリアは、遂にこの町で、見覚えのある獣人族の青年(下図)と再会する。 「お前、サリアか!? 無事だったんだな!」 先に声をかけてきたのは、その青年の方であった。彼の名は、ホルン。サリアの「二番目の故郷」出身の若者であり、里が襲撃された時には、所用で里を離れていたため、結果的に生き残ることになった(なお、その「所用」とは、実は「花嫁探し」だったのだが、そのことまではサリアは聞かされていない)。 そして、ホルンは故郷に伝わる指輪型印章の存在を長老から聞かされていたため、サリアの首飾りにつけられた指輪を見て、驚愕の表情を浮かべる。 「お、おい、その指輪……、なんでお前が!? てか、なんでそんな形で持ってるんだよ!?」 「長老から預けられたの。そして、こうやって目立つようにしておけば、『敵』が私を見つけて、あっちから勝手に近付いて来てくれるかな、と思って」 サリアにそう言われたホルンは、今の彼女が「里を滅ぼした者」と戦おうとしていることを察して、納得したような顔を浮かべる。 「俺も今、里を滅ぼした奴の手がかりを探しているところだ。お前、何か知ってるか? 今のお前には、他に仲間はいるのか?」 ホルンのその問いに対して、サリアが簡単に大まかな事情を話すと、ホルンは共闘を申し出る。どうやら、彼の仲間もまた、この宿場町に来ているらしい。サリアは、ホルンとその仲間達が泊まっている宿屋の位置を聞いた上で、仲間達と合流してからその宿に向かうと約束し、一旦その場は別れることになった。 3、猫人族の受難 一方、その頃、アイルーは町の裏路地で、見覚えのある人物から声をかけられていた。オデット村の湖の近くで銀の槍の殺戮者と戦い、破れて逃亡した、救世主四天王筆頭Dr.エベロの五虎将軍の一人、ヤヤッキーである。彼はアイルーの鼻先に、明らかにカヴィーナスの体毛と思しき猫毛を突きつけた。 「この猫毛の匂いに、嗅ぎ覚えはありませんかねぇ?」 下卑た笑いを浮かべながらそう問いかけるヤヤッキーに対し、アイルーは不快な視線を送りながら匂いを嗅いでみると、それは間違いなく、疎開中の彼の恋人、メラルーの匂いであった。 「貴様! メラルーを……!?」 「いやー、あの子の毛並みは素晴らしいですねぇ。あー、早く帰って、また思う存分、モフモフしたいなぁ。あ、ちなみに、ワタクシが帰らなかったら、彼女を殺すように命じてあるので、あしからず」 そう言いながら卑猥な手つきを見せるヤヤッキーに対し、アイルーは怒りを爆発させるが、ここで殺すわけにもいかない以上、煮え繰り返るはらわたを抑えながら、話を聞き続ける。 「この猫毛の持ち主を返して欲しければ、お前とお前の仲間達の持つ指輪を全て持って来なさい。そうすれば、無事に返してあげますよぉ。アナタ、他人を欺くのは得意なのでしょう?」 現状、アイルー達が持っている指輪の数は四つ。ヤヤッキー達がそこまで情報を正確に把握しているか否かは不明だが、いずれにせよ、ここは彼の要求に従う姿勢を見せなければ、メラルーを奪還する術はない。そう考えたアイルーは、苦渋の表情を浮かべながら、ヤヤッキーから「受け渡しの場所と時間」を聞いた上で、宿屋へと帰還するのであった。 4、二つの血脈 こうして、仲間達がそれぞれに悲喜こもごもの遭遇に直面している中、町外れの一角を調査していたオリバーは、突然、奇妙な「歌声」に遭遇する。それは、明らかに特殊な「魔力」が込められた呪歌であり、自分の精神が内側から破壊されようとするほどの強力な「奇跡(大破壊)」の力であることを、彼は瞬時に実感する。 このままではまずい、と瞬時に判断したオリバーは、自身の内側に秘められた「天真」の奇跡でその呪歌の力を搔き消し、その歌が聞こえる方向へと向かう。すると、そこにいたのは、アーデルハイトと同じくらいの年齢と思しき、一人の少女であった(下図)。ただし、その瞳からは全く生気が感じられない。 「アナタ、私ノ歌ガ効カナイ……、ナゼ?」 焦点の合わない瞳で、カタコトのようにそう語る彼女に対し、どこか不気味な違和感を感じるオリバーであったが、その直後、今度は後方から、先刻と全く同じ「歌声」が聴こえてくる。オリバーが振り返ると、そこにいたのは、今目の前にいる彼女と全く同じ姿の少女であった。 困惑するオリバーであったが、この状況を打破する方法が見つからないまま、彼はその「二人目の少女」の歌声に悶え苦しむ。だが、オリバーの心身が完全に破壊される前に、その「二人目の少女」の足元が爆発し、その圧倒的な火力によって二人目の少女の体はバラバラの破片となって飛び散った。 その爆炎の向こう側から現れたのは(オリバーにとっては翼人族の集落で遭遇して以来の再会となる)セリーナであった。彼女は「一人目の少女」に対して強い視線で睨みつけると、「一人目の少女」は無機質な表情のまま、その場から逃げ去っていく。 オリバーは今一つこの状況がよく分からないままであったが、ひとまず助けてくれたことを感謝すると、セリーナは彼に対してこう告げた。 「あなたと二人で話がしたい。アーデルハイトとレオは抜きで」 セリーナ曰く、彼女個人としては、オリバー達が救世主と戦う気であるなら、敵対することを望んでいないらしい。殺戮者全般に対して恨みを抱くオリバーではあるが、セリーナに関しては、自分と同じ「プルートーの力を受け継ぐ者」である以上、(少なくともエレシスでレオに対して血液を提供していた時点では)殺戮者になっていなかったことは確認しているので、ひとまずここは彼女の話を聞いてみることにした。 セリーナはオリバーを自身の宿へと連れ込むと、彼に対して、自分の知っている限りの情報を提供する。彼女曰く、先刻の少女達は、救世主達の手で作られた「量産型の機械人形」であり、その原型は、レオ達と同じ「七人の機械人形」の一人の「アイレナ」であるという。現在、オリジナルのアイレナはおそらく救世主の手の元にあり、救世主陣営は彼女の量産型を大量生産しているらしい。そして、レオはそのような形で「自分達の量産品」を作ろうとする手法が気に入らず、それが、彼が救世主陣営と相容れられない最大の理由であるらしい。 もっとも、現時点ではまだその「模造品」の性能は、オリジナルには遠く及ばない。ただ、それでも「12の印章」を「プルートーの血」で捺印すれば、彼女達のような量産型にも、レオ達と同じ「世界を揺るがすほどの力」が宿る可能性はある、というのがセリーナの見解である。 そして、その「世界を揺るがすほどの力」についても、セリーナはその詳細を父親から聞かされていた。彼女が父親から聞いたところによると、七人の機械人形の身体の中には、「聖痕の奇跡」と同等の効果を、聖痕の力を消費することなく発動出来る特殊な回路が埋め込まれているらしい。ただし、その使用回数自体に制限はないものの、その力を用いれば用いるほど、その心は闇に落ちやすくなるため、機械人形が闇に落ちそうになったら、その力は使えなくなる制御機能が組み込まれているという。 とはいえ、この「擬似奇跡回路(仮称)」は、使いようによっては、一人で十人以上もの聖痕者を相手に戦うことも可能なほど強力な力であることは間違いない。そして、プルートー達はこの機械人形達を、当初は「魔神」の脅威から人々の社会を守るために作ったらしいのだが、彼等の出資者であった貴族が、この力を自分が人間社会の中で支配者となるための道具として用いようとしていることが分かったため、時限停止装置を組み込むことにしたという。 現在、救世主達が、この力を手に入れた上で、最終的に何をやろうとしているのかまでは、セリーナも把握していない。ただ、救世主陣営はセリーナの「血」を手に入れるために、彼女の実家を襲撃し、彼女の両親を殺し、そして彼女を連れ去ろうとしたらしい。 そんな彼女を助けたのが、レオだった。それは、純粋な義侠心というよりは、救世主への反感だけに基づく衝動だったのかもしれないし、自分自身が力を取り戻すためにセリーナの血を欲していただけなのかもしれない。ただ、いずれにせよ、その戦いにおいて、レオはセリーナを守るためにその力を使い尽くした結果、殺戮者へと堕ちてしまったのである(擬似奇跡回路の使用以外の闇堕ちに関しては、彼等の内部の制御機能では防げない仕様になっていたらしい)。 「私は、私を救ってくれたレオのことを、これから先も、最後まで支え続けたい。それがたとえ、唯一神アーの教えに反することであっても」 セリーナは強い決意の瞳でそう主張する。その上で、彼女はオリバーに対して、前々から気になっていたことを問いかけた。 「あなたにとって、『彼女』は何? 『一人の女性』としては、どう思っている?」 「……考えたこともない」 苦笑しながらオリバーはそう答えるが、セリーナは真剣な表情で忠告する。 「あなたが仮にそうであっても、レオはあなたに対して、明らかに嫉妬している。だから、あなたは『彼女』から離れた方がいい。あなたが『彼女』と一緒にいればいるほど、レオの中であなたへの憎悪は溜まっていく」 セリーナの言いたいことは理解したが、だからと言って、オリバーとしても、今更ここで彼女の元から離れる訳にもいかない。よって、ひとまずは妥協策として、当面は「互いに遭遇しないように配慮する」という方針で一致した。レオが力を取り戻すには、オリバー達が持っている指輪が必要だが、ここまでのオリバー達の戦績を考慮すれば、レオの力を解放しなくても、共闘すれば救世主を倒せるのではないか、とセリーナは考え始めていたのである。 もっとも、救世主を倒した後、放っておけばレオもアーデルハイトも機能停止してしまう。その段階において、最終的には指輪の捺印を巡る戦いが発生する可能性はあるのだが、ひとまず今は、「救世主」という得体の知れない敵と戦うために、当面は「潰し合い」は避けた方が良い、という認識を共有した二人であった。 5、暗黒の聖母 プルートーの血を受け継ぐ遠縁の二人の間でそんな「密約」が交わされていた頃、アーデルハイトもまた、この町で「予期せぬ人物」と遭遇していた。もっとも、オリバー達とは異なり、こちらは初対面の関係である。だが、「相手方」(下図)はアーデルハイトのことをよく知っていた。 「ごきげんよう、アーデルハイトさん。あなたとお話しがしたいのです」 そう言ってアーデルハイトの前に現れたのは、黒いローブを身に纏い、顔の半分が薄手のヴェールで覆われた、長身で年齢不詳の一人の女性であった。見知らぬ人物から、突然、(あまり知られていない筈の)自分の名前を呼ばれたアーデルハイトは驚き、警戒するが、彼女は物腰柔らかな口調で語り続ける。 「あなたも知りたいでしょう? あなた自身に秘められた力のことを。マリウスが教えてくれないのであれば、私が教えて差し上げますよ」 「マリウス」とは、おそらくカープが連れているあのマリモのことであろう。この女性が敵か味方かも分からないが、少なくとも、何らかの重要な情報を知っていることは間違いないと判断したアーデルハイトは、ひとまず彼女に言われるがままに、町の宿の一つへと案内された。 宿の一室で、その女性はアーデルハイトと共に向かい合う形で椅子に腰掛けると、彼女は穏やかな笑顔を浮かべながら、こう問いかけた。 「あなたは、この世界が『いびつな構造』にあると思いませんか?」 唐突な「重すぎる質問」に対して、アーデルハイトがどう答えるべきか迷っている間に、彼女はそのまま話を続ける。 「あなた達は『力』を持つ者。その一方で、力を持たない者もいる。しかし、力を持ちすぎると、今度は排斥の対象となる。そこにどんな事情があろうと、問答無用で。あなたも今、その原則故に『親しき友』を討たねばならないという葛藤に、苦しんでいるのではありませんか?」 おそらく彼女が言っているのは、殺戮者と化したレオのことであろう。そこまでの事情を知っている人物である以上、彼女が現在の「指輪型印章の争奪戦」に関わる人物であることは間違いない、ということをアーデルハイトは確信する。 「全ては、神の都合。聖痕自体が、『神』と『闇』との不毛な争いの末に生まれたもの。ならば、その理不尽な秩序から人々を解放するには、どうすれば良いと思いますか?」 先刻から、形式的には問いかけるような形で話しているが、明らかに彼女は「アーデルハイトからの答え」は期待していない。実際のところ、そのように問いかけられても、まともに答えられる者など、まずいないだろう。おそらくこれは、彼女が自分の考えを語る上での「前振り」に過ぎない。アーデルハイトがそこまで察していたかどうかは不明だが、ひとまず彼女はそのまま黙って聞き続けた。 「『聖痕の力』を持たぬ人々にも、同じ『力』を与えれば良いのです。そうなれば『力』を巡る対立も差別も葛藤も発生しない世の中が訪れる。『私達』は、そのような世の中を実現するための研究を続けてきました。そして、その実現の鍵を握るのが、『あなた達』なのです」 その女性はそう言った上で、アーデルハイトに対して、彼女の内側に存在する「擬似奇跡回路」の存在について説明する。その内容は(この時点でのアーデルハイトが知る由もないが)オリバーに対してセリーナが語っていた情報とほぼ同じである。その上で、この女性は、その回路を機械人形だけでなく「聖痕を持たない人間」にも移植することが出来るのではないか、という仮説を提示する。 彼女曰く、この世界に住む人々には、聖痕の力に目覚めていなくても、その内側には必ず(自身の運命を指し示す)三つの使徒(アルカナ)の力が埋め込まれているという。全ての人間がその力を「擬似奇跡」として発動出来るようになれば、「刻まれし者」と「刻まれぬ者」の格差は存在しなくなる、というのが、彼女の主張である。 「無論、これはあくまでも仮説です。しかし、実際に『私達』は、あなた達の内側の回路について調べた結果、それを量産して『人』に対して移植することも不可能ではない、という結論に達しました。ただ、その回路の構造を完全に理解するためには、やはり、一度その力を完全に発動させなければならないのです。そのためには、あなたのお仲間の人達が持っている『指輪』と『血』が、どうしても必要になるのですよ」 あまりにも突拍子もない空想話を聞かされたようで、アーデルハイトはしばし呆然となるが、この女性が言っていることが本当なら、もし仮に自分が「真の力」に目覚めたとしても、同じ力を誰もが持てるようになることで、それは相対的に「世界にとっての脅威」ではなくなるのかもしれない。そう考えると、少し気が楽になるのも事実だが、とはいえ、それはそれでまた様々な「新たな問題」が発生させることは、容易に想像出来る。 「誰もがそんな力を手に入れるようになったら、それは確かに平等ではあるでしょうけど、世界は大混乱に陥ってしまうのではないですか?」 「そうかもしれません。しかし、それでも最終的には、その『新しい世界』の中で、何らかの形で、今とは異なる『新たな秩序』が形成されることになるでしょう。その過程において、多くの血が流されることになるかもしれませんが、それでも、人の魂は巡るもの。また新たな生を受けて、この世界に帰って来れば良いだけの話です」 彼女は変わらず微笑を浮かべたまま淡々とそう語る。ただ、そう言い終えた後で、思い出したかのように付言した。 「もっとも、『私達』は、その輪廻の輪から外れてしまった存在ですから、『私』や『彼等』には、もう『次』はありません。だからこそ、私も『彼等』を無駄に死なせてしまったことは残念に思っています。ですから、出来れば穏便な形であなた方に協力して頂きたいと思い、こうして直接お話させて頂くことにしました」 この口振りからして、彼女が「救世主」の陣営の一員である可能性は極めて高い。そう判断したアーデルハイトは、婉曲的にそのことを聞いてみると、彼女はあっさりとこう答えた。 「私自身が『救世主』などと名乗ったことは一度もないのですけどね。いつの間にか、周囲の人々からそう呼ばれるようになっていました」 どうやら彼女は、「救世主の一味」ではなく、「救世主本人」であったらしい。これまで戦ってきた仇敵達の首領が、自分の中の想像とはかけ離れた理知的な人物であることにアーデルハイトは驚愕する。だが、それでも彼女の部下達がこれまでやってきたことを考えると、いくら彼女の主張が「それなりの正論」であっても、彼女に対して無条件で協力する気にはなれない。 また、先刻の彼女の主張から察するに、彼女の元にいると思われる仲間達(フェルマータとアイレナ?)が、その体内回路の調査のために、何かひどい扱いを受けているのではないか、という懸念もある。そのことをアーデルハイトが問いかけると、彼女は淡々と答える。 「アイレナさんの身体は、現在、一時的に解体させてもらっています。あなた達の内側の構造を理解するためには、どうしても必要なことですからね。もちろん、指輪を揃えて、『完全体』としての回路構造を理解した後で、ちゃんと元に戻すつもりですよ。もっとも、それが出来るのは私と、Dr.エベロだけですけど」 表情一つ変えぬまま、「救世主」はそう語る。アーデルハイトは改めて彼女に対して怒りと不信感を抱きながらも、現状では実質的に仲間を一人「人質」に取られているような状態である、ということを理解する。もしかしたら、フェルマータもその状況故に彼女にやむなく従っているのかもしれないが、それについては本人に確認してみなければ分からないであろう。 「とりあえず、今はまだ気持ちの整理もつかないでしょうし、ゆっくり考えてくれればいいです。もし、協力してくれる気になったら、いつでも来て下さい。ただ……」 そう言いかけたところで、「救世主」は初めて、やや表情を強張らせながら、アーデルハイトに忠告する。 「どうやら今、この宿場町には、『私達』のことを快く思わない者も来ているみたいです。お気を付け下さい」 彼女が言うところの「私達」というのが『どこまでの範囲の人々』を指しているのか、そして、彼女達を快く思わない者というのが何者なのかもさっぱり分からない状態ではあるが、ひとまずここは一旦、仲間と合流する必要があると考えたアーデルハイトは、彼女の部屋を後にする。 ちなみに、「彼女」の名はオーレリア。「失われた聖母」もしくは「暗黒の聖母」と呼ばれる人物であり、800年以上前に失踪した教皇オーレリア1世その人であるとも言われているが、その正体は定かではない(詳細は『グラウンド・オブ・ヴァラー』128頁参照)。 6、裁く者 こうして、オリバーとアーデルハイトが、それぞれに敵対陣営の人物の滞在する宿での交渉が長引いている間に、カープ、サリア、アイルーの三人は自分達の宿に帰還する。そして、カープの傍らには鬼人族のマーニーの姿があった。カープから、「マーニーの協力者」と会うことを提案された二人は、(アイルーとしては、メラルーのことが気がかりではあったが、言い出せるタイミングを逃していたので)ひとまずその方針に同意し、三人でマーニーの宿を訪れることになる。 そこで、そこで彼等を出迎えたのは、先刻サリアと遭遇した獣人族のホルンと、そして、オデットの村でカープやアイルーと遭遇した、あのバルゴという名の魔術師風の少女であった。どうやら、この三人は現在、協力関係にあるらしい。 「お久しぶり。やっぱり、あなた達、指輪を集めるためにあの村に来てたのね」 バルゴにそう言われたカープは素直に肯定しつつ、逆に彼女達の目的を問おうとしたが、そこに彼女達の「主人」が現れた(下図)。女性のように長く美しい黒髪を持つ、眉目秀麗な風貌のその男は、名を聞かれると、あっさりと答える。 「隠し事をするのは私の流儀ではないからな。私の名はオクルス。この世界を裁く者だ」 オクルス、という名に対して、カープとアイルーは聞き覚えがあった。それは、この世界に存在する魔神の一人の名である。「人」の姿をして現れることもあり、その時は「冷たい雰囲気の秀麗な青年の姿」で現れると言われている。それはまさに今、彼等の目の前にいる青年の姿そのものであった。 なお、同じ魔神でも、サリアに花押を与えたアーグリフとは対照的に、オクルスは理知的な性格の魔神であり、唯一神アーの秩序そのものの破壊は望まない。あくまでも世界全体のバランスを考えた上で、長期的な視点から世界を闇に陥れるための策謀を巡らせている。 そんなオクルスは現在、「七人の機械人形」の復活を危惧しているという。セリーナが語っていた通り、アーデルハイト達は元来、魔神と戦うことを想定して造られた存在であり、オクルス達にとっては、まさに不倶戴天の敵であった。それ故に、彼は「救世主」達がその力を復活させるのを阻止するため、救世主陣営に恨みを持つマーニーやホルンに花押を与えることで、その「力」の復活を阻止しようとしているらしい(なお、バルゴはそれ以前からの彼の部下らしいが、その詳細については語らなかった)。 その上で、オクルスはカープ達に対して、彼等が救世主達と戦うのであれば、条件次第で協力しても良い、という提案を持ちかける。その条件とは、アーデルハイトを破棄もしくは完全に封印することである。オクルスにとっては、救世主達を倒したとしても、アーデルハイトが「完全体」になってしまっては、自分を含めた魔神達にとっての脅威となる以上、それは彼等に協力するための絶対条件であった(もう一つの選択肢として「指輪を壊す」という道も考えたが、オクルスが見たところ、12個の指輪型印章には、たとえ火山の火口の中に放り込んでもその原型を保っていられるほどの特殊な耐久性が備わっているらしい)。 なお、元来の「指輪の継承者」としての使命を考えれば、マーニーもホルンも、世界を正しい方向に導くためであれば、機械人形に捺印することを認めるべき立場なのであるが、どうやら二人とも、今はその使命よりも、故郷の同胞達の無念を晴したい、という衝動の方が強く、それ故に、彼等は「指輪は誰にも捺印しない」という約定を交わした上で、オクルスの花押を刻むことになったらしい。 そして実際のところ、それに関してはサリアも同様の心境であったのだが、彼女は既にアーグリフの花押を刻んでいる身である以上、今からオクルスの眷属となることは(理論上、不可能ではないが)難しい。 一方、カープとしては、アーデルハイトの「力」を復活させずに彼女を救う道を模索しているものの、現状でその道筋が立っていない以上、最終的に自分の持つ印章を彼女に捺印するという選択肢を完全に捨てることは出来ないし、ましてや彼女そのものの破棄という条件など、同意出来るはずもない。 また、アイルーに関しては、既に捺印済みなので、ある意味、ここからどう立ち回ることも可能な立場ではあるのだが、今の時点で彼の心はメラルーを心配する気持ちだけで一杯一杯で、そもそもまともに判断を下せるような心境ではなかった。 このように、彼等が自分の提案に対して今一つ乗り気ではないことを察したオクルスは、あっさりと交渉を打ち切り、今後は彼等が救世主陣営と「潰し合う」のを静観すると宣言する。その上で、「生き残った方」が、自分達にとっての脅威であると判断した時は、全力でその芽を摘み取ると宣言した上で、カープ達の前から姿を消した。 7、古城の決戦 その後、それぞれの交渉を終えた五人は宿に集結し、その概要を互いに説明する。皆がそれぞれに困惑する中、ここでようやくアイルーも、自分の恋人が救世主陣営にさらわれていることを皆に明かし、協力を要請した。レオやオクルスの動向も気がかりではあったが、まずは仲間の窮地を救うことに専念するという方針で一致した彼等は、皆で話し合った上で、一計を案じる。それは、ヤヤッキーに指輪を渡すフリをしながら、アイルーが「真名」の奇跡の力で彼を誘導し、彼の「神移」の力でメラルーのいる場所へと皆を転送させる、という作戦であった。 翌日、この作戦を決行するために、指定された受け渡し場所(町の外れの廃屋)へと向かった彼等は、見事にヤヤッキーの誘導に成功し、「メラルーのいる場所」へと全員まとめて瞬間転移させることに成功する。そこは、見たことがない石造の建物の一室であり、そこにいたのは、縄で縛られた状態のメラルーと、警護の兵達と、そして片眼鏡をかけた一人の壮年の男性(下図)であった。 「ヤヤッキー、なんだそいつらは? 私は、指輪を持って来るように命じただけで、そいつらを全員連れて来いとは言ってないぞ」 その男性がそう言ってヤヤッキーを問い詰めている間に、アイルーはメラルーの周囲にいた兵士達を「大破壊」の奇跡で吹き飛ばし、そして彼女の身柄を確保する。この時点で、アイルー達に従順の意思がないことを確信したその男は、鋭い視線を彼等に向けながら、名乗りを上げる。 「私が名は、救世主様の四天王の筆頭、Dr.エベロ。我が部下達を次々と奪った上で、我が城にまで土足で踏み入ったその罪、もはや死以外では償えぬと思え!」 彼はそう宣言すると同時に、オリバー達に向かって「爆破」の奇跡を四連続で放つ。カープやオリバーの奇跡によって彼等がかろうじてそれを耐えきると、今度はアイルーやサリアが魔法と魔剱で襲いかかるが、それらを「無敵防御」の奇跡で全て弾き飛ばす。文武両道・攻防一体型の四天王筆頭は、これまでの敵幹部達とは明らかに別格の存在であることを、彼等は身をもって実感させられた。 だが、それでも、これまでの戦いを通じて培ってきた彼等の実力は、そんなエベロの百戦錬磨の戦闘力をも上回っていた。絶え間なく繰り出されるアーデルハイトやサリアの攻撃によって、遂にその絶対的な防御体勢に綻びが生じたところで、オリバーの支援を受けたアイルーの怒りの魔法の一撃が炸裂し、エベロはその身を木っ端微塵に四散させる。それは、断末魔の叫びすら残せぬほどの圧倒的な破壊力であった。 アーデルハイトとしては、アイレナを元に戻すための選択肢として、彼を生かしたまま捕らえたい気持ちはあったが、さすがにここで手加減するほどの余裕はなかった以上、この結果もやむをえないと受け入れるしかなかった。 そして、残されたヤヤッキーは「自分は今まで、Dr.エベロに洗脳されていただけ」と主張したものの、「何も話せる情報がないなら、生かしておく必要はない」とカープに脅されたことで、あっさりと自分の知っている情報を全て話し始める。 どうやら、今彼等がいるこの地は、ハイデルランド北部に位置するブレダ公国の辺境の一角に位置するクロストン男爵領の中心に位置する古城であり、Dr.エベロはこの地の領主であったらしい。もともと、彼はこの世界に内在する構造的な矛盾に疑問を抱いていたが、数年前に彼の元に現れた「黒衣の女性」の教えを聞いて彼女に心酔し、彼女のことを「救世主様」と呼び、崇めるようになったという。 その意味では、この地こそが「救世主」陣営の本拠地とも言える訳だが、現時点でここに救世主本人の姿は見あたらない。そして、残る四天王最後の一人である女魔術師アンザの姿もまた、見つけることは出来なかった。
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ああ、救世主様。私の救世主様。 私の為に花を摘んでくださる救世主様。 私の為に花冠を作ってくださる救世主様。 疲れた私を抱きかかえてくださる救世主様。 はぁ、まるで天国みたい……。 ……いいえ、これは必然。 私と救世主様が結ばれる事は、前世から決められた運命なの。 それを邪魔する事は、誰にも出来ない。 たとえ暗黒神の配下が襲って来ても、私達の愛の力で乗り切ってみせるわ! 「!!」 あら? 救世主様、どうしたの? 急に怖い顔して………!! 何かが凄いスピードでこっちに来る! この妖気………もしかして…! 「見つけたわよー! 麓でウロウロする侵入者!」 「違います。山には入ってないので、侵入者ではなく不審者です」 天狗、それも二人! 片方は鴉天狗の射命丸 文、もう片方は白狼天狗の犬走 椛ね。 二人とも天狗の中でも相当な実力者よ。 一体、何の用かしら。 「デート中に訪問とは感心しないね。用があるなら後でにしてもらえないかな」 「そうもいかないわ。貴方は危険な妖怪として調査命令が出ている。逃がしはしないわ」 調査命令……まさか山がすでに暗黒神の配下に乗っ取られてるって事なの!? ……これは一大事よ。 妖怪の山は幻想郷有数の大組織、それが敵の手に堕ちたとなれば……。 「雛、下がって。こいつらは悪の手先だ」 「ええ、分かってる」 「……来い! 僕が相手だ! 雛には指一本触れさせない!」 なんて勇ましいの、救世主様。 大丈夫、救世主様が負けるなんてありえない。 だって救世主様はすべての悪を斬り捨てる、この世の救世主なんだから! 私は信じて待てばいいの。 救世主様の一点の穢れもない完璧な勝利を。 「ふふふ、元より私達の狙いは貴方一人よ! 覚悟しなさい!」 「……そうやってすぐ出しゃばる。だから文様と組むのは嫌なんですよ」 く、来る! もの凄いスピードよ! さすがは鴉天狗、動きが違うわ。 救世主様にかわせるかしら…。 いいえ、信じるのよ。 救世主様なら必ず勝ってくれる! 私達の愛の力は無限大なのよ! 「私のスピードに追い付けるものか!」 「雛が信じてくれてる。それなのに僕が負ける訳にはいかないだろ!!」 「ぐあああああ!!」 や、やった! 文の動きを読んで、逆に斬り付けたわ! ………え。 でも……血がいっぱい流れて……。 ………文が…………死んじゃう。 「そん…な…………幻想郷最速と云われた……この…私が…………」 ああ……文が…文が死んじゃった……。 こんな、こんな筈じゃ……。 私は救世主様に負けてほしくなかっただけで、そんな殺すなんて……。 !! う、後ろに椛が! 「救世主様、後ろ!!」 「!? ……ぐっ!」 ああ! 救世主様が! そんな……救世主様が負けるなんて……。 …………嘘よ。救世主様が、こんな簡単に死ぬ筈ないわ。 だってやっと出会えたのに……またお別れなんて……。 「嫌あああああああぁぁ!! 救世主様死なないでええぇぇ!!」 「無駄ですよ。確実に急所を狙いました。もう死んでます」 「嘘よ! 私の救世主様が死ぬ筈ないわ!」 「………勝手にしてください」 どうしよう………血が止まらない……。 私は……何をすればいいの? どうしたら救世主様を助けられるの? ………そうよ、救世主様には神の御加護がある筈よ。 救国の為、悪と戦い続ける為の大いなる御加護が。 そんな救世主様を神々が見捨てる筈がないわ。 お願い、悪を滅する正義の神々よ。 どうか救世主様に、もう一度悪に立ち向かう力を……。 ……………………!! な、何か私の体から光が……。 ………ああ、私の光が救世主様の中に入っていく。 ……………救世主……様? 「……………………雛…」 「!! 救世主様!」 「なっ! そんな筈が!」 「……どうやら雛の愛が奇跡を起こしてくれたようだ」 「そんな奇跡って……………やはりお前は…」 「ありがとう雛、君が僕を想う気持ちが強かったおかげだ」 「救世主様……」 やっぱり救世主様は負けたりしないわ。 どんな悪にも私と救世主様の力が合わされば勝てるの。 二人の絆は無敵、誰にも引き裂けない。 私達の愛に勝るものは何もないのよ! 「…………………」 「まだやる気かい? 君達の目的は調査だったと思うけど」 「やりますよ。文様を殺した相手を生かす理由はありません」 「そうか」 大丈夫よ。さっきは不意打ちだっただけ。 正面から戦えば救世主様が負ける筈ないわ。 信じるのよ。救世主様の勝利を。 ………でも…椛も殺してしまうの? 確かに天狗組織は暗黒神の配下に乗っ取られてるかもしれない。 だからといって皆、殺さなくちゃいけないの? 救世主様は正義感が強いから、悪は許しておけないのでしょう。 でも………私にとっては……ずっと近くにいた……。 「!!」 「…………………」 …………………勝った。 救世主様が勝ったわ。 でも椛は生きてる。 救世主様が斬ったのは、椛の右腕だけだから。 「……やって…くれましたね」 「僕は負ける訳にはいかない。雛が傍にいるからね」 「…………いいのですか? 殺さなくて。私はお前の正体を知った。私を帰せば不利益になりますよ」 「……雛の辛そうな顔は見たくない」 「………立派な救世主様ですね。腕を斬れば無力だとでも思いましたか。天狗をなめるなよ。 次会う時は必ず殺してやる。お前のその低劣な舞台、いつか私の牙でぶち壊してやりますよ」 ………ああ、行ってしまった。 あんな大怪我して大丈夫なのかしら。 でも救世主様が私の想いを察して、椛を殺さないでくれたわ。 これも二人の絆の力かしら。 救世主様は私の事、なんでも分かるのね。 「ごめんね、雛。怖い思いをさせてしまった」 「いいの。悪と戦う事は救世主様の使命だから」 「雛は優しいんだね」 「救世主様こそ」 「愛してるよ」 「私もよ」 辛い戦いの後、お互いの愛を確かめ合う二人。 こんな日が来る事を、今までどれだけ待ち望んだかしら。 救世主様は私の願いを、何でも叶えてくれるわ。 きっとあの日、救世主様は私を救い出す為だけに暗黒神の城にやって来てくれたのね。 今日は救世主様は悪と戦う為にお出掛け中。 私はにとりに呼ばれて、滝壺の近くに行く所よ。 未だに、にとりが暗黒神の配下の手先かどうかは分からない。 でも私はにとりは敵じゃないと思うわ。 だって私を狙ってるなら、いつでも襲えた筈だもの。 それなのに、にとりはずっと私と話しをするだけだった。 きっとにとりは暗黒神とは関係ないのよ! そうよ! そうに決まってるわ! にとりが敵の筈がない。 救世主様もちゃんと分かってくれるわ。 そしたら改めて紹介しましょう。 私の親友と愛する方を。 「にとり~」 「………雛…」 最近にとりの様子がおかしいのも、救世主様の事を理解しきれてないからよ。 それもそうよね。 いつも話してはいたけど、直接会うのは初めてだもの。 でも時間をかけてじっくり話しあえば大丈夫よ。 だって二人とも私の大切な方だから。 「実はにとり、貴方に話したい事が…」 「雛、ごめん!」 え? なんで? 頭にガツンって何か。 意識が…遠く……。 そんな……。 どうして……にと…り……。 …………うぅ……。 ……此処は…………神社? ああ、私縛られてる。 どうしてこんな………なんでなの、にとり…。 「気がついたようだね」 貴方は八坂 神奈子様……。 かつては国を次々と侵略し恐れられていた貴方が、悪の手先に落ちぶれるなんて。 暗黒神の支配は想像以上に広がっていたのね。 油断したわ……。 「早く来な、にとり」 「………雛…」 「……どうしてよ……」 「…………………」 「貴方は私の味方じゃなかったの!? 騙したのね!? にとりは……にとりだけは味方でいてくれると思ったのに!」 「………強引に連れ出した事は悪いと思ってる。でも私は今も雛の味方のつもりだよ」 「じゃあどうして!」 「……………雛、落ち着いて聞いてほしい」 な、何よ。改まっちゃって。 何を言われたって、私は屈しないわよ。 私と救世主様の絆は無敵なんだから。 「……いないんだよ」 「…………………え? 何が?」 「救世主だよ! あれは! 雛の妄想なんだよ!」 「…………………………はい?」 何を………言ってるの? 救世主様がいない? おかしな事、言わないで。 だって、いるじゃない。 実際に、ずっと傍に。 「最近、奇妙な妖怪が幻想郷に入り込んで来たんだ。それも外界からじゃない。幻想郷内の別の空間からさ。 その妖怪は変な能力を持っていてねぇ、誰かの誰かに会いたいという気持ちを感じて擬似餌を作るんだ。 擬似餌は会いたいと思ってる獲物の、会いたい相手へのイメージに忠実に作られる。 その能力は獲物の想いの力に比例して、より強く精密な擬似餌を作るんだ。 だから現実には存在しない生物でも、獲物が強く会いたいと思えば擬似餌は作られる。 そして擬似餌をその獲物に接触させて親しくなるんだ。その後は獲物を自分の巣穴に引き寄せるのさ。 その妖怪は獲物の願いを喰う。つまり……………取り込むんだ。永遠に擬似餌と戯れ食料を作り続ける家畜として」 ……………何? 何の話? 理解出来ない。 にとりが何を話してるのか分からない。 「………雛、救世主ってのは前世で知り合ったんでしょ? じゃあなんで前世と同じ姿なのさ。 おかしいじゃないか。生まれ変わったら見た目も変わる筈でしょ?」 そ、それは……。 でも そんなの。 「それに性格だってそうさ。救世主って世界を救う者じゃないか。なんで雛をずっと捜してるの。 それじゃあ雛の理想の救世主であって、世界を救う為に戦う救世主じゃないだろう」 あああ…。 違う。 嘘よ。 出鱈目よ。 何もかもでっち上げよ。 私の救世主様がそんな……そんな……… ありえない。 「雛、救世主なんていない。あれは雛の願望を形にしただけの擬似餌なんだ」 「嘘よ!!」 「………雛……」 「そうよ! あんた暗黒神の手先じゃない! 私達の絆を裂こうって魂胆ね! 騙されないんだから!」 「はです…? あんた何言ってるんだい」 「……雛、辛いかもしれないけど現実を見なきゃ。雛は厄神なんだ。暗黒女神じゃない」 「五月蝿い! 五月蝿い五月蝿い五月蝿あぁぁい! 救世主様は無敵なのよ! 最強なのよ! あんた達、悪党が何人来ようが負けたりしない! 私と救世主様は深い愛情で結ばれてるのよぉ!!」 「ダメだ雛! 願っちゃいけない! 奴は願いを喰うんだ! このままじゃ雛の心が喰い尽くされてしまう!」 そうよ。 全部、私を誑かす為の嘘なのよ。 救世主様はいる。 私を助けてくれる。 助けを呼べば、いつでも駆けつけてくれる。 ……ほら。 やっぱり来てくれた。 「雛、無事かい? ごめんね、すぐに助けに来れなくて」 「大丈夫。来てくれるって信じてたから」 「あんたが文を殺った奴かい! 覚悟しな! 叩き潰してやる!」 「…………無駄だよ。雛がいる限り、擬似餌をどんなに叩いても意味がない。何処かに隠れてる本体を潰さないと」 「……くっ!」 見なさいよ。 何も出来やしない。 救世主様には誰も敵わないわ。 私達の愛に不可能はないのだから。 「だからって……だからってこのまま帰す訳にはいかないだろうがぁぁ!!」 「……やるのか。雛、下がって」 「ええ」 それは相手が神だって同じ事。 救世主様は暗黒神を倒したのよ? こんな奴に負けたりしない。 「うぐっ!」 「急所は外しておいた。君の為じゃない、雛を悲しませたくないからさ」 私達は無敵なのよ。 誰にも恋路を邪魔する事なんて出来ない。させない。 二人の前に立ち塞がる者は、すべて薙ぎ倒される運命な………。 「………にとり…」 「行かせない!」 「離して」 「嫌だ! 今行かせたら、もう雛を助けられない!」 助ける? 馬鹿言わないで。 私を救えるのは救世主様だけよ。 「離して」 「ダメだよ雛! あいつに取り込まれたら、一生食料を与え続けるだけになっちゃう! お願いだよ……行かないでよ…」 「……………………………………」 分かってる。 本当は分かってるわよ。 にとりが言ってる事が嘘じゃない事も。 救世主様が偽物だって事も。 でも、もう耐えられないのよ。 人間の為に頑張って でも人間には避けられて。 ずっと厄神なんて辞めたいと思ってたわ。 もっと誰かに好かれる存在になりたかった。 だから抱いたのよ。 私を愛してくれる存在を。 私の救世主様を。 今までは、ただの夢だった。 でも今は違う。 手が届く位置にいるの。 今、救世主様は存在してるのよ。 確かに偽物かもしれない。 でも私の理想通りの救世主様がいるのよ? 偽物って何? 私を幸せにしてくれるなら、もう本物の『私の救世主様』じゃない。 にとりが言ってる事は分かってるつもりよ。 こんなものは紛い物の幸福。 でも縋りたい。 紛い物でも救世主様は確かに此処にいるの。 叶わない筈の夢が、すぐ傍で手を差し伸べているのよ。 ………にとり。 お願いだから行かせて。 身勝手だって思われても構わない。 もう厄神なんて嫌なの。 私の一生でいいなら差し上げる。 家畜でも何でもいいから『私の救世主様』と一緒にいさせて。 理解出来ないなら無理にしなくていい。 だからただ黙って行かせて。 これが これだけが私が幸せになれる道なのよ。 「………雛…」 「さようなら、にとり」 「………やだよ。行かないでよ、雛ああああぁぁぁ!!」 ああ、救世主様救世主様救世主様救世主様救世主様救世主様メしアサまアアああぁァぁァァ!! 私だケノめしアサま!! カっコよクて優しイ大好キナめシアさマあァァ!! モう体トか、ガーでぃアンと一つにナッちゃッテ自由に動ケなクナっタけド めシアさマがイれバ私、ソれだケデ幸セよ!! コンな体ニなッテカらも献身的に看テくレルし 本当にメシあさマハ素敵ナお方!! こレ以上ノ幸せナンて、何処ヲ探しテモ見ツカらなイワ!! コレかラモ、ずット二人デ幸せに暮ラしマしょウね!! フふフ、アハははハはハハはハ!! あーあ -- 名無しさん (2010-11-08 14 08 07) 蟹が本体だったのか 本人が幸せならそれでいいのかなあ -- 名無しさん (2010-11-09 01 29 01) 見てて悲惨 -- 名無しさん (2011-05-10 09 35 21) なんか最後見てゾクッとした -- 名無しさん (2015-12-02 01 13 09) 名前 コメント
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入り組んだ道を大柄の黒人がゆっくりと足を進める。黒コートに身を包んだ彼は、周りの闇に溶け込むようであった。 幾何学的なパネルで構成された薄暗い迷宮。上空に広がるのも広がる空とは呼べない歪な空間。 そのいずれもこの世のものとは思えない。およそ現実離れした空間。 だが、彼はこの空間の存在にはさほど驚きも戸惑いも感じていなかった。 (マトリックスの中……それも通常の空間ではないな) 彼――モーフィアスは思考を巡らせる。 突如として拉致され、殺し合いを強制された。この突然の出来事をどう解釈すべきか。 先ずこの異常な空間はマトリックスである。そのことは恐らく疑いようがない。 現実――機械との戦争が日夜繰り広げられる世界――にこのような場があると思えない以上、それは明らかなことだ。 このような異常な空間も、マトリックス内でならばありうる。アーキテクトへの到る道の途中にあった延々とドアの続く空間のように、機械側が限定的にこのような空間を作り上げることは可能だろう。 では、あの榊という男は一体何者だ。 機械側のエージェントに類するものか、あるいはメロビンジアンの手のものか。または全く別のエグザイルか。 サカキ……音から判断するに日系人のようだが、その思惑は図れなかった。 (ネオ) モーフィアスは仲間の――自分の信じる救世主のことを考えた。 ネオ。彼はマトリックスで目覚め、救世主として覚醒して以来、確かな活躍をしてきた。 オラクルの預言を信じるならば、彼は戦争を終結へと導く真の救世主である。 だが、今の彼は意識を失っている。 アーキテクトへと至った彼が、そこで何を見ているのかは知らない。が、現実での彼はマトリックス内での意識をロストし、眠り続けている。 その彼を救うべく、同じネブカドネザル号の仲間であるトリニティ、オラクルの側近であるセラフと共に行動をしていた。 が、その最中で彼はここに呼ばれた。これらのことは何か関係があるのだろうか。 不意に音した。 そして、白い幻影が躍り出た。 「……!」 突然の攻撃だったが、モーフィアスは落ち着いて対処する。長年マトリックス内で戦ってきた経験が身体に染みつき、もはや呼吸するかのように臨戦態勢に入る。 アイテム欄から既に確認していた武器を取り出し、構え、敵の初撃を受け止める。 甲高い金属音が響いた瞬間、モーフィアスは敵を見た。 「お前は」 白い髪、色白の肌、真っ白なスーツ。見覚えのある姿だった。 記憶を探り、敵がメロビンジアンの配下にいた者であることを思い出す。 この敵は倒した筈だ。となると、何らかの方法でプログラムを修復したか。 初撃に失敗した敵は一度下がり、再び武器――大鎌を構える。白ずくめの彼だったが、それだけは黒かった。 対するモーフィアスも袖から双剣を覗かせ、構える。 剣の名は『最後の裏切り』――あまり縁起のいい名前ではないが、剣自体は中々のものだということは分かっていた。 鎌と双剣が再び交差する。振るわれる鎌を時には避け、時には剣で受け止めることでモーフィアスは防御する。 ナイフの扱いはプログラムで脳にダウンロードしてある。それに自らの経験から独自アレンジを加えることでより巧みな扱いを可能にする。 一方、敵は少々戦いにくそうであった。原因は武器の種類だとモーフィアスは当たりを付ける。 何せ鎌だ。一般的とは言い難く、向こうとしても扱いづらいであろう。 その隙を突き、モーフィアスは敵に迫った。刃を潜り抜け、敵に対し刃を一閃。 避けられた。が。コートの生地が僅かに切れている。相当ギリギリのところだったようだ。 距離を取った敵に対し、モーフィアスは「Hey」と挑発ように呼びかけた。 敵は白い無表情を崩さなかったが、その裏に僅からながら苛立ちが隠れているのをモーフィアスは見抜いた。 今度はこちらから仕掛ける。 剣を構え、敵へ真直ぐに向かっていく。 が、その途中で足を止めた。背後に気配を感じたからだ。 白い拳が迫っていた。剣を交差し、それを受け止め、一先ず二人の敵から距離を取る。 もう一人の敵もまた白かった。コート、髪、肌、そのどれもが白く、先の男の瓜二つの容姿だ。 その隣に、鎌を構えた敵が幽鬼のように移動した。二人並んだその姿は全く同一のものであり、双子という言葉が似合う。 そう、この敵は確かにこのような性質を持っていた。それを知っていたが故にモーフィアスは回避に成功した。 メロビンジアンがどのような思惑を持って近くに置いていたかは知らないが、白い二対の暗殺者というのがこのエグザイルの特徴だった。 「…………」 沈黙がそこに流れる。剣を、鎌を、拳を、それぞれが構え、緊迫した空気が流れた。 勝てるか。モーフィアスは警戒を怠ることなく、冷静に思考を回す。 今の自分は一人だ。以前こいつらと戦った時は、キーメイカーを守る必要があった。しかし今は自由に動くことができる。 それはプラス要因だが、同時に今は味方も居ない。楽な状況とは思えなかった。 が、それは向こうも同じだったようだ。彼らはその身体を影のように薄めていき、その場を離れた。 逃げた。理由としてはモーフィアスの戦闘能力、そして面倒な武器か。何にせよ、ここは退くことを向こうは選んだのだ。 しばらくの間、周りを警戒し、更なる奇襲に備えたが、何もない。 敵の撤退を確認すると、モーフィアスは小さく息を吐いた。いきなり襲われるとは。ここは思った以上に、危険な場らしい。 「そうだな……」 今の交戦でこの場について、モーフィアスにはある仮説も思い浮かんでいた。 先ず、奴らのようなエグザイルが不慣れな武器に苦戦しているところを見るに、この場はメロビンジアンの一派によるものではない。 しかし、機械奴らをわざわざ修復するとも思えない。古くなり用済みとなったにも関わらずソースに還ることを拒否したプログラムがエグザイルだ。 そのような者を機械が修復するとも思えない。粛清の対象にしかならないだろう。 となると、この空間を形成しているのが機械らによる場とも思えない。 ならば、この空間はマトリックスの中でも機械たちも把握できていない部分か。 救世主のようなイレギュラー要素。それがこの空間だという説をモーフィアスは考えた。 無論、仮説に過ぎない。自分が機械の掌の上だという可能性もある。この点についてはまだ情報が足りないだろう。 そこまで考えて、モーフィアスは歩き出した。とにかく情報が足りない。この空間について知らねばならない。 時間がない以上、迅速に動くことが要求される。他の参加者との接触も図りたい。 同時に、ネオのことも考える。 自分の持つ仮説――この空間がマトリックスのイレギュラー部分であることが確かなら、この場にネオがいる可能性があった。 このようなイレギュラー空間に叩き込まれていたのなら、マトリックス内で意識がロストしていたことにも説明が付く。 オラクルが言うにはメロビンジアンの下にネオは囚われているとのことだったが、そのメロビンジアンの一派すら取り込まれているような状況だ。 ネオを捕えていたメロビンジアン本人もこの空間に取り込まれているのかもしれない。 何にせよ、時間がない。ウイルスのこともだが、ザイオンのことも気に掛かる。 人類最後の砦に、センチネルの総攻撃が迫っている最中、ネオは今や最後の希望と言ってもいい。 どうにかして見つけ出し、脱出しなくてはならない。人類の為にも。 【B-9/ウラインターネット/1日目・深夜】 【モーフィアス@マトリックスシリーズ】 [ステータス] 健康 [装備] 最後の裏切り@.hack// [アイテム] 不明支給品0~2、基本支給品一式 [思考] 基本:この空間が何であるかを突き止める 1 (いるならば)ネオを探す 2 トリニティ、セラフを探す 3 ネオがいるのなら絶対に脱出させる [備考] ※参戦時期はレヴォリューションズ、メロビンジアンのアジトに殴り込みを掛けた直後 【ツインズ@マトリックスシリーズ】 [ステータス] 健康 [装備A] 大鎌・棘裂@.hack//G.U. [装備B] なし [アイテム] 不明支給品0~2、基本支給品一式 [思考] 1:生き延びる為、他者を殺す [備考] ※消滅後より参戦 ※二人一組の存在であるが故に、遠く離れて別行動などはできません。 支給品解説 【最後の裏切り@.hack//】 クリア後に参入する楚良が装備している双剣。Lv99。プレイヤーは入手不可だったりする。 パッシブスキルはクリティカル(一定確率でダメージ二倍) 使用可能スキルは以下の通り。 魔双邪哭斬 炎舞紅蓮 雷神独楽 【大鎌・棘裂@.hack//G.U.】 Lv101の大鎌、タメタイプ。 ブレグ・エポナの店で買うことができる。 021 三者三様 投下順に読む 023 Sword or Death―選択― 021 三者三様 時系列順に読む 027 し あ わ せ 000 プログラム起動 モーフィアス 032 貴方の魂にやすらぎあれ 初登場 ツインズ 041 破軍の序曲
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┏━━━━━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━┳━━━━━━━━━━━━━━━┓ 【名前】 キング・ブラッドレイ 【レベル】40 【アライメント】中立・中庸┣━━━━━━━┳━━━━━━━┳━┻━━━━━┳━━━━━━━╋━━━━━━━┳━━━━━━━┫ 【筋:C】30 【耐:D】20 【敏:C+】40 【魔:D】20 【運:C】30 【宝:-】-┣━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┻━━━━━━━┫ /. .ヽ /. /~¨ヽ≧{ ハ /. | Vム 、 _ . | { __/Vム ヾ ム=< V | | ;イ / ハム ¨´ ヽ. } ! /´V / ヾ / / Vム_ ニ キ ミ /. ′ / / ! へ. / Vム | { / { { ′シ ゞ¨弋ぅx_,、 Vム ___|__ ハ /_ ヽ. |{ 二彡' V////////≧x' } / ハ '、!′、 ¨ V//////////}ニ{;′ j | ヾ ヾ///////// !ノ / 」! }〃´ .′}` <///Xム / / /∧ / / ′´ 、¨´ィヾ′´ .′ ∧ 、 __/ _.} Y /¨ | { ∧ r' x≪//介=介∧ 、 | /ヽ /. ヽ∧ {  ̄¨ニ=‐-=ミ 、 ′イ } _/ `∧ . '⌒ヽ .. ` //. !... --‐= ニ { { ヽ /. |┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫【スキル】○宗和の心得: C 同じ相手に同じ技を何度使用しても命中精度が下がらない特殊な技能。 [DATA] ランダムステータスの選択の際、どれか一つの候補を、 既に選択されている【筋】【耐】【敏】のいずれか一つに変更する事ができる。○心眼(真): B 修行・鍛錬によって培った洞察力。 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す“戦闘論理”。 逆転の可能性が1%でもあるのなら、その作戦を実行に移せるチャンスを手繰り寄せられる。 [DATA] 勝率を計算し宝具を使用する前の時点で自陣の勝率が「1%~49%」の時に使用できる。 ステータス比較の中から1つを選択し、選択した自陣の数値を未使用のステータスに変更しても良い。 この効果で戦力の優劣が変化した場合、勝率の再計算を行う事。○憤怒の魔眼: A 身体能力は並の人間程度だが全てを見抜く“最強の眼”を保有している。 自らの戦闘論理と合わさりサーヴァントの動きすら見切るその手腕は悪魔的とさえいえる。 [DATA] 1戦闘に1回、ステータス比較の際に魔力を30点消費して使用する。 その比較では戦力の優劣に関わらず自陣が「戦力の優位」を得られる。○反救世主: A+ アンチクライスト。神の子の教えに背く者。偽メシア。 「契約」を交わした者に「聖痕」を授けて力の一端を与える反面、 任意でその身から魔力を搾り取る権能の一端。 神の呪いを浴びた穢れた聖杯であり『偽メシア』、『666』、『救世主の敵対者』としての属性も兼ねている。 [DATA] このスキルは以下の効果を持ち、「契約」を行う事により他者に与える事ができる。 「契約」事態は両者の合意があれば即座に適用され、スキルを与えなくても契約は可能。 「契約者」が死亡した場合、あなたは対象の持つスキルまたは宝具1つを習得できる。 ・「契約者」が魔力消費量や魔力回復の計算時、増減する魔力を任意の対象に振り分ける事ができる。 誰に何点振り分けるかはこのスキルを所持するキャラクターが決定できる。 ・1ターンに1回、Aランク以下の宝具の効果を無効化できる。 ・戦闘の開始時に使用する事により、お互いの陣営は戦闘から離脱する事が出来なくなる。(敗北時、即死亡する) ただしAランク以上の宝具の効果による離脱のみ、適用される。┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫【使い捨て礼装】○タリスマン×1┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┫ 戻る
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3◆◆◆ 「消し飛べえっ! 《ドリリングヘッド》ッ!」 フォルテの怒号と共に、 Gospel の頭部がドリルの如く高速回転を起こす。声量を上回る程の回転音を響かせながら、獅子の顔はユイ/イニスを目がけて発射された。 速度と Gospel 自身のサイズから推測すると、直撃すればユイ/イニスでもプロテクトを破壊されかねない程に驚異的な威力を誇る。《ドリリングヘッド》の回転は世界を容赦なく抉り、この憑神空間すらも砕きかねない。 射線に位置するエネミー達が回転に巻き込まれる音を聞きながら、ユイ/イニスは冷静に次の一手に移る。迫りくる Gospel の頭部を高速移動で回避しながら、両腕を掲げながら突進した。 「《惑乱の飛翔》を受けなさいッ!」 フォルテ/ Gospel の目前に瞬時に迫って、ユイ/イニスは両腕を力強く振るう。 キリトやアスナ達がソードスキルで数多の敵を打ち倒したように、ユイ/イニスもまた《惑乱の飛翔》による攻撃を選んだ。フォルテ/ Gospel の巨体を崩すには、同じ規模の武器になるイニスの両腕が必要だった。 飛行から生まれる勢いを乗せた一撃は、フォルテ/ Gospel を吹き飛ばす。 「ぬっ……!」 案の定、フォルテ/ Gospel の呻き声が聞こえて、確かな手応えを感じた。 矢継ぎ早にユイ/イニスは両腕を振り回し、フォルテ/ Gospel の体躯を守るプロテクトに傷をつけていく。黒の剣士キリトの戦いを真似るように。 フォルテ/ Gospel の頭部は瞬時に再生したが、反撃を許してはいけない。そのまま、フォルテ/ Gospel を破壊するために一撃を降り下ろそうとしたが。 「……《ゴスペルキャノン》ッ!」 フォルテ/ Gospel は逆上して、大きく開いた口に膨大なエネルギーが収束されていく。 目が眩むほどの輝きを前に、ユイ/イニスは自らの姿を透明にしながら回避行動を選んだ。しかし、フォルテ/ Gospel が放射した灼熱の勢いは凄まじく、回避が間に合わずにユイ/イニスの巨体に直撃する。 「きゃああああああぁぁぁぁっ!?」 巨体を揺るがす程の衝撃に、ユイ/イニスは悲鳴を発しながら吹き飛ばされていく。 元より、イニスは接近戦を得意とせず、また攻撃力及び耐久性は他の憑神と比較して高くない。その為、碑文とAIDAが共鳴し合い、爆発的な進化を果たした Gospel の技を一つでも受けてはプロテクトが大幅に削られてしまう。 『痛み』の信号がユイ/イニスのアバターに駆け巡るも、彼女は堪えながら体勢を立て直す。覚醒したイニスから湧き上がる力が、ユイに勇気を与えていた。 (やはり、無暗に接近するのは危険です……ここは遠距離から仕掛けていかないと!) 不幸中の幸いか、フォルテ/ Gospel の《ゴスペルキャノン》を受けて、距離が大きく開いている。相手が得意とする接近戦に持ち込まずに、上手く攪乱することが可能だ。 遠く離れたフォルテ/ Gospel に標的を定めて、無数の光弾を発射した。しかし、その全てがフォルテ/ Gospel の周囲で静止し、そして映像の逆再生の如くユイ/イニスを目がけて反射された。 (弾丸の反射!? まさか、プリズムのような特性もAIDAは持っているのですか!?) ユイ/イニスは驚愕するものの、自らの速度さえ活かせば難なく回避することができる。 問題はゴスペルが弾丸を回避する能力を持っていることだ。シノンはエージェント・スミスに立ち向かう時、プリズムというアイテムで攻撃を反射させたことがあるらしい。 厳密にはプリズムはダメージを周囲に拡散させる効果だが、フォルテ/ Gospel も同等のスキルを保有していると考えるべきだ。つまり、弾丸などの射撃攻撃はゼロ距離でなければ意味を成さなくなっている。 遠距離からの攻撃は通用しないことを、ユイ/イニスは悟ってしまった。 フォルテ/ Gospel は自らに宿す『救世主の力』によって、ユイ/イニスの光弾を反射させていた。 『救世主の力』はマトリックスそのものを根本から変革させる程の力を持ち、救世主ネオはその力で数多の危機を乗り越えている。 フォルテはネオを打ち倒すことで『救世主の力』を奪い取り、更なる進化を果たした。AIDAの支配すらも打ち破り、そして自ら一体化させた Gospel も『救世主の力』の影響を受けている。 ネオはフォルテとの最終決戦で、『救世主の力』を利用してフォルテの弾丸を防いだ。同じように、フォルテ/ Gospel もまた『救世主の力』でユイ/イニスが放つ光弾を静止させて反射させていた。 「ユイと言ったか? まさか、この期に及んで怖気付いたのではないだろうな?」 次の一手を思考を遮るように、フォルテ/ Gospel の冷淡な声が世界に響く。 「まぁ、それも当然か! キサマは所詮、キリト……いや、あの負け犬に成り下がった人間の娘なのだからなッ!」 そして、フォルテ/ Gospel の叫びに込められた確かな侮蔑を、ユイ/イニスは感じた。 「ぱ、パパが負け犬……!? 何を言っているのですか!? パパは――――!」 「ヤツはただの負け犬だ! 剣を砕かれ、全ての力をこの俺に奪われて、惨めに震えるだけの負け犬だろう? キサマに戦いを任せて、自分一人は何もせずに隠れるような臆病者だ!」 「ふざけないでください! パパを……パパを侮辱することは許しませんッ!」 フォルテ/ Gospel の嘲りに耐えきれず、ユイ/イニスは怒りのまま飛翔する。 案の定、フォルテ/ Gospel は口から衝撃波を発射するが、ユイ/イニスの機動力を活かせば回避可能だ。横を通り過ぎていく衝撃を他所に、感情のままで双剣を振るったが、フォルテ/ Gospel は跳躍する。 追いかけるようにユイ/イニスが振り向くと同時に、フォルテ/ Gospel は散弾銃の如く勢いで光弾を連射したが、負けじとユイ/イニスも光弾を放つことで相殺した。 「侮辱だと? 俺は事実を言ったまでだ! あの負け犬は俺に敗れ、そして戦意を失っているだろう? キサマを守ると言いながら、キサマに戦いを投げ出している! もしかしたら、今もどうやってここから逃げ出せるのかを考えているかもしれないぞ?」 「そんなはずはありません! パパは今まで、どんな危機に陥ろうとも必ず立ち上がってきました! あなただって、過去に二度もパパに負けたはずです!」 「だが、この三度目は俺が勝利を手にした! そしてキサマの言葉が正しければ、どうして今すぐに立ち上がろうとしないのだろうな? あの時も、キサマがいなければ確実に負け犬はデリートされていた……奴は負け犬として、敗北を認めたのだ!」 「絶対にありえませんッ!」 フォルテ/ Gospel が侮蔑する度に、ユイ/イニスは激高と共に光弾を発射した。 その速度とエネルギー量は先程に比べて向上しており、フォルテ/ Gospel に着弾してダメージを与えている。まるで、ユイの怒りがイニスに共鳴しているようで、弾丸反射すらも使う余裕を与えなかった。 フォルテ/ Gospel の巨体が揺れると同時に、ユイ/イニスは再び突進を仕掛けて剣を叩き込もうとする。しかし、フォルテ/ Gospel はその巨大な口でユイ/イニスの一閃を受け止めた。 ダメージを与えられていくが、ユイ/イニスの勢いはこの程度で止められない。ただ、フォルテ/ Gospel の撃破だけを考えていたからだ。 ユイ/イニスはもう片方の剣を突き刺そうとしたが、身を捻ったフォルテ/ Gospel に放り投げられてしまい、またしても吹き飛ばされる。 「くっ……まだです! まだ、私は……!」 それでも、ユイ/イニスは瞬時に立ち上がった。 全ては愛するパパを守るため。パパは戦えなくなっているだけで、本当はとても強いことを娘であるユイ自身が証明したい。父の命だけでなく、誇りだって守りたかった。 もちろん、フォルテ/ Gospel を打倒するための切り札をユイ/イニスは持っている。 イニスの碑文に覚醒したことでデータドレインも会得したため、まともに受ければフォルテ/ Gospel でもひとたまりもない。だが、無策にデータドレインを放っても回避されるだけであり、何よりもフォルテ自身も碑文について知っているはずだった。 (フォルテから、イニスの碑文とよく似た反応が検知できる……やはり、フォルテも碑文使いとして覚醒しているのですか!?) 波長自体は微妙に異なるが、今のフォルテ/ Gospel からは碑文の波動が感じられた。 AIDAと碑文は互いに惹かれ合い、そして一つになることで力が爆発的に向上する。スミスに感染した蜘蛛のAIDAがイニスを取り込んだことで強化されたように、フォルテ/ Gospel も碑文の影響で膨大な情報量を得たはずだ。 しかし、フォルテ/ Gospel の情報密度は蜘蛛のAIDAを遥かに凌駕している。碑文の他にも、何らかの力を取り込んで強化している可能性があった。 (だとすると、パパが戦えなくなったのはデータドレインでスキルを奪われたから……!?) だが、ユイ/イニスが抱くのはフォルテ/ Gospel に対する恐怖ではなく怒り。 フォルテは碑文使いに覚醒したことでデータドレインも手に入れて、キリトのスキルを強奪したのだろう。データドレインは防御不可能であり、システム外の力を持たないキリトでは対抗する術を持たない。 (ならば、私のデータドレインさえ使えば、フォルテからパパのスキルを奪い返すこともできます!) そんな突拍子もない考えが、ユイ/イニスの中で芽生えた。 奪われたなら、奪い返せばいい。カイトもデータドレイン砲でスミスから碑文を奪ったように、イニスのデータドレインがあればキリトのスキルを取り戻せる可能性もある。フォルテ達を撃破して、レオの力を借りればキリトも復活できるはずだ。 父の力を取り戻せる希望が芽生えた瞬間、アバターの動きを阻害する痛みが和らいだことを感じて、ユイ/イニスは自らの剣を構えて飛び上がる。 「フォルテ! あなたがパパから奪ったものを……私が絶対に取り戻します!」 「面白い……やれるものなら、やってみろ!」 フォルテ/ Gospel に負けないほどの闘争心を漲らせながら、ユイ/イニスは距離を詰めていく。 ユイ/イニスは無数の光弾をフォルテ/ Gospel に目がけて放つ。フォルテ/ Gospel の力で全ての弾が停止し、反射させられるが問題ない。自らのアバターを透明化させれば、着弾することはなかった。 その機動力でユイ/イニスは敵の目前にまで迫ると同時に姿を現し、巨大な双剣でフォルテ/ Gospel を吹き飛ばす。 「むっ!?」 (いける……これなら、いけます!) 苦悶の声を漏らす死神を前に、ユイ/イニスは確かな手ごたえを感じた。 先程からいくども繰り返したが、やはりフォルテ/ Gospel には幻惑の攪乱から不意打ちを仕掛ける戦法こそが有効だ。フォルテ/ Gospel 自身のパワーは驚異的だからこそ、機動力と幻惑を活かして回避し続けることができる。 (やっぱり、私が強く願う度にダメージ量も増えています! ならば、いずれフォルテを撃破することも不可能ではありません!) 光弾の威力と速度は向上し、剣の重みも増していた。 月海原学園で得た情報によれば、碑文使いの感情に呼応して憑神もまた力を増幅するらしい。ならば、ユイの怒りに応えてイニスも力を増幅し、ダメージも増えたと考えるべきだ。 やがて、碑文使いの心の闇を増幅させるが、比例してイニス自身も強化されるはず。ユイがフォルテに対する怒りを燃やす程、いずれイニス自身も相応の力を発揮する。 「覚悟しなさい、フォルテ! 私はあなたを絶対に許しませんし、パパを侮辱した罪はその命で償ってもらいます!」 激情に比例してイニスの紋章も激しく輝いて、世界は大きく震えた。 碑文から膨大な力が無限に溢れ出し、気持ちが昂っていく。このまま力を得れば、フォルテやオーヴァンだけでなく、このゲームを仕組んだGMもろとも世界全てを破壊できそうだ。 「手始めとしてフォルテを破壊して、それからママの敵討ちにオーヴァンを跡形もなく消し飛ばしてみせます! 私の力なら――――!」 ――――その叫びは、唐突な鼓動によって遮られる。 ノイズと共に時間が静止し、自分自身が遠くに放り込まれるような奇妙な感覚を抱いた。 一体何が起きたのか? そんな違和感が生まれた瞬間、イニスの大きな叫び声が耳に響く。 「えっ……? 何が起きたのですか?」 そんな疑問を他所に、イニスはフォルテ/ Gospel に飛びかかった。 ユイの意思を無視するように暴れて、双剣を振り回す。怒涛の勢いで振るわれる刃はフォルテ/ Gospel の巨体を確実に抉っていくも、敵は灼熱を発射してイニスを吹き飛ばした。 イニスは僅かに呻き声を漏らすが、ユイは痛みをほとんど感じない。ただ、猛獣のように暴れるイニスがフォルテ/ Gospel と戦う光景を、俯瞰するように見るしかなかった。 「ど、どうして……!? どうして、イニスをコントロールできないのですか!?」 ユイは気付かない。 怒りと憎しみによって強化されたイニスが、ユイではコントロールできないほど暴走したことを。 憑神は碑文使いの感情に呼応して強化される。ユイ自身の考案は間違いではないが、憑神は心の闇を増幅させる意味を真に理解していなかった。負の感情に任せて力を振るえば、いずれ憑神が制御できなくなる程に暴走する。 ユイは高性能を誇るAIであり、キリトやアスナたちの戦いを幾度も見守り、時にアドバイスを行った。しかし、ユイ自身が戦闘に参加した経験は非常に少なく、その為に自らが力に溺れる可能性に至らなかった。 加えて、フォルテからの嘲りで怒りが更に湧き上がり、力を発揮することを優先してしまう。ユイ自身はイニスから与えられた力に溺れ、復讐を優先してもっとも大事な覚悟を失ってしまった。 大切なもの失う覚悟と、大切なものを守る覚悟。その二つを。 『ガアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァッ!』 そんなユイに対する罰や嘲りのように、イニスは咆哮し続けた。 フォルテ/ Gospel から与えられるダメージなど気にも留めず、巨大な剣を振るって攻撃をし続ける。その姿は凶悪なボスモンスターと変わらず、これほど醜い怪物が自分から生まれたことがユイには信じられなかった。 フォルテ/ Gospel を確実に押していくが、その姿にユイは恐怖を抱いた。 「待って! 待ってください、イニス! 私の言うことを聞いてください!」 先程までの怒りや戦意が嘘のように、不安の表情でユイは叫ぶが届かない。 自分の願いを叶えるように力を発揮しているが、これは違う。だからイニスの名前を呼び続けるけど、その叫びを無視して攻撃し続けていた。 やがてフォルテ/ Gospel を遠くに吹き飛ばす。それほどの力が発揮されたことに、今のユイは恐怖で震えていた。 「ククク……そうだ! その力だ! キサマが力を振るってこそ、破壊する意味がある! 俺と同じように、破壊し続けろッ!」 愉悦を込めたフォルテの叫びは、ユイの心を深く抉る。 「ち、違います……! 私は、パパ達を守りたかったから……! 破壊するために、イニスの力を使ったのではありませんっ!」 必死に否定するユイの呼吸は荒くなるが、その声を聞く者は誰もいない。後ずさろうとしても足は動かず、むしろイニスの暴走は激しくなる。 一方、フォルテ/ Gospel は《ゴスペルキャノン》を発射するが、イニスは天に高く跳躍したことで軽々と回避した。 そのままイニスがフォルテ/ Gospel を見下ろした瞬間、ユイは見てしまう。ユイが守りたかったキリト達が、不安そうにイニスを見上げる姿を。 「ぱ、パパ……!?」 ユイが名前を呼ぶと同時にイニスの周囲にエネルギーが集まった。 圧倒的な輝きとエネルギー量が感じられた瞬間、ユイの全身に悪寒が走る。 「ま、まさか……! やめてください、イニス! あそこには、パパ達がいます!」 だからユイは必死に叫ぶが、イニスは止まらない。 「逃げてください、パパ! ここからすぐに逃げてください! このままじゃ、イニスが……パパ達を……パパ達を……! 逃げて、パパ! 逃げてええええええええぇぇぇぇぇぇぇっ!」 せめてキリト達だけでも逃がしたかったが、ユイの叫びは誰にも届かない。 暴走したイニスに捕らわれた彼女の声は、もう誰も聞くことができなかった。 『グガアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァッ!』 無情にも、ユイの願いを踏みにじるようにイニスはエネルギーを開放した。 同じタイミングでフォルテ/ Gospel が口から発車した灼熱と衝突し、盛大な爆発を起こして世界を容赦なく震撼させる。 しかし、フォルテ/ Gospel から外れた光弾が、キリト達を目がけて進んでいた。 「パパッ! いやああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」 ユイはそれを否定するようにその光景から目を逸らし、直後、無情にも響き渡った更なる爆発音に、堪らず悲鳴を上げる。 自分のせいでパパ達を傷付けてしまったのか? フォルテ達を相手に戦えるという驕りが、この結果を招いたのか? こんなのは違う。ただ、パパを守るために戦いたかっただけで、こんな結末を望んでいたわけがない。 その願いを叶えてくれるために、イニスは力を貸してくれたのではないのか? そんなふうに、ユイはキリト達へと目を向けることもできず、自らが引き起こしてしまった結果に絶望する。 「来たれ、『再誕』――――――――コルベニク!」 だがその現実を覆すかのように、ポーン、と唐突に響いたハ長調ラ音と共に、唯一にして最悪の救世主の名前が宣言される。 続くように、 蒼炎の守護神(Azure Flame God) を遥かに凌駕する情報密度と共に、神々しい純白の輝きが世界を照らした。光はほんの一瞬で収まった瞬間、ユイ/イニスとフォルテ/ Gospel を遥かに凌駕する巨神が顕在していた。 「『再誕』のコルベニク…………オーヴァンなのか!?」 圧倒的な存在感を放つ巨神に息を呑んだ瞬間、男の声がユイの耳に響く。 我に返りながら振り向くと、キリト達の姿が見えた。現れた巨神は、まるでキリト達を庇うように顕在しており、思わず安堵を抱いてしまう。 「その通りさ。お前にこの姿を見せるのは、これで二度目になるな」 しかし、続くように発せられた男の低い声で、ユイの心はほんの一瞬で憎しみに染まる。 何故なら、この男は愛する母・アスナの仇であり、キリトを絶望のどん底に叩き落とした憎きオーヴァンだからだ。事実、キリトからも名前を呼ばれていて、何よりも巨神の左肩からは生えたどす黒い爪はAIDAの反応が感じられる。 「ま、まさか……オーヴァンにパパを助けられた……!?」 「どうやら、俺はユイからキリトを守った恩人になってしまったみたいだ。あと一歩遅かったら、キリト達はユイに殺されていたからね」 オーヴァン/コルベニクにとっては何気ない一言で、言葉では言い表せない衝撃と共にユイを再び絶望へ叩き落とした。 母の仇によって、父の命を助けられてしまう。しかも、父の命を奪おうとしたのは他ならぬ娘自身だ。信じたくなかったけど、オーヴァンの言葉は全て紛れもない真実で、否定できない。 このままオーヴァンがコルベニクを顕現させなければ、確実にキリト達の命は奪われていたから。 「お前が恩人だと!? ふざけるな! お前は、アスナやシルバー・クロウ達の命を奪い、黒雪のことも傷付けただろうが!? そんなお前を恩人と認めてたまるかっ!」 「だが、事実としてお前達はユイに殺されかかった。結果としてだが、暴走したユイから戦えないお前達を俺が守ってやったことに、何の間違いがあるんだ?」 キリトは必死に叫んでくれるが、オーヴァンはあっさりと切り捨てる。 オーヴァンの言葉は毒のようにユイを蝕んでいき、その瞳から澎湃と涙が溢れ出した。高性能のAIであるが故に現実逃避も許されず、ただ事実を受け入れるしかない。 醜い怪物となった娘から愛するパパを守ってくれたのは、他ならぬオーヴァンであることを。 「オーヴァン……キサマ、何のつもりだ!?」 「悪いが、これ以上は見ていられない。ここで終わらせてもらうぞ」 フォルテ/ Gospel の叫びを無視して、オーヴァン/コルベニクはイニスに振り向く。 本能で何かを察したのか、イニスの狂気が僅かに揺らぐ。僅かに芽生えた隙を付き、オーヴァン/コルベニクはイニスへと突貫しながら、左腕の刃を振るった。 イニスは双剣を交差させて防ごうとするが、オーヴァン/コルベニクの一閃に打ち負けてしまう。がら空きになったイニスの体躯を目がけて、 Tri-Edge の爪が振るわれ続けて、ユイの視界が大きく揺らいだ。 「きゃああああぁぁぁぁぁっ!?」 「ユイ!? ユイいいいいいぃぃぃぃぃぃぃっ! やめろ、オーヴァン! やめてくれえええぇぇぇっ!」 ユイの悲鳴とキリトの叫びが重なるが、オーヴァン/コルベニクは止まらない。 Tri-Edge と共に力を発揮すれば、暴走したイニスなど赤子も同然だった。 例え暴走によりどれだけ力が増幅されていようとも、イニスは直接戦闘に向いた憑神ではない。 対してコルベニクは”最強”と畏れられる憑神であり、 Tri-Edge はそのコルベニクですら除去の敵わない0番目のAIDAだ。 その凶暴性はもちろんのこと、憑神の切り札であるデータドレインすらも通用せず、また撃破されても『再誕』の力で復活を可能とする。 元より戦闘力で劣り、手札も全て把握され、さらには暴走までしているイニスに、圧倒的な戦闘力を持つオーヴァン/コルベニク/ Tri-Edge を倒す方法など存在しない。 「終わりだ」 反撃はおろか、防御や回避すらも許さない Tri-Edge の一閃により、イニスの勢いは弱まる。そしてオーヴァン/コルベニクは頭上に渦球を形成し、炸裂させて無数の針をイニスに突き刺した。 《掃討の魔針》を正面から受けて、何かが砕ける音を耳にした瞬間、ユイは自分から力が失っていくのを感じた。 元より、フォルテ/ Gospel との戦いで消耗した所に、圧倒的な力を誇るオーヴァン/コルベニクと Tri-Edge の攻撃を受けたことで、限界を迎えてしまったのだ。 プロテクトブレイクで世界が砕け散り、ユイは何も言えないまま落ちていった。 † 「……あ、うぁ……っ……」 イニスの顕現が解除されて、ユイは地面に倒れ伏せている。 憑神による戦闘であるためHPにダメージはないだろうが、精神的はダメージは深いだろう。だが少なくとも致命傷ではない。コルベニクと Tri-Edge には手加減をさせた。 しかしフォルテ/ Gospel に深手を負わされている可能性があり、またこれ以上の暴走は自滅の危険性があった。 ユイだけではない。タルヴォスの碑文に覚醒したフォルテにも暴走するリスクが存在した。オーヴァンが早期決着を選んだのは、碑文を三体以上同時顕現させては暴走する危険が高まるためだ。 その甲斐があってか、こうしてユイのアバターは消去されずに済んだ。 「……ぱ、ぱ…………わた、し、は……」 「悪いが、君には眠ってもらおう。月の下で穏やかに休むといい」 呻き声を漏らすユイに向けて、オーヴァンは月のタロットを使う。 敵を睡眠状態にするという効果のアイテムであり、ユイを捕まえる際に抵抗させない様にと、ウラインターネットに位置するショップで購入していたものだ。 また、念のためにと導きの羽や完治の水も購入した結果、自らのポイントが0になったが、構わない。出し惜しみなど下らないし、今は迅速な帰還とユイの治療が最優先だ。 「待て、オーヴァン! キサマ……俺の勝負に水を差すつもりか!?」 案の定、フォルテは喰ってかかる。いつの間にか、フォルテも Gospel を解除したことで、世界は完全に元通りとなっていた。 コルベニクに警戒したのか、イニスとの戦いで割り込まれなかったことが幸いだ。フォルテの相手をしながらイニスを倒し、ユイを確保するのはさすがに骨が折れる。 だが、一応はフォルテを説得するべきだろう。 「忘れてはいないか? 俺達の目的は最初からユイを確保することで、君もそれを了承したからキリトと戦えたはずだが?」 「ぬっ……」 「俺はユイを連れて先に戻るから、後は君の好きにしてくれ。ちょうど、キリト達も揃っているしな」 「………………チッ」 フォルテは舌打ちをしながらも、戦意を収める。 こちらの説得を受け入れたのか、不承不承だがフォルテも納得ようだ。 ならば、もうここには用がない。ユイの体を抱えながら導きの羽を手に取り、帰還の準備を整える。 「待て、オーヴァンッ! ユイを……ユイを返してくれ!」 「ユイちゃん!」 キリトとジローの叫びが聞こえてくるが振り向かない。 力を失っただけでなく、戦意も既に感じられず、ただ無様に泣き叫ぶだけの彼らなど興味がなかった。 故に、オーヴァンは導きの羽を使って、ユイと共にこの場から去っていった。 next 闇に沈む心
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ストーリー:テイルズオブリンク ストーリー:テイルズオブリンク第1章「石詠みの救世主」第1部 「天の願い」編 第2部 「地の願い」編 第3部 「異空の女神」編 第4部 「世界の祈り」編 第5部 「辿る誓い」編 第6部「蒼紅の御使い」編 終章(第7部)「絆の未来」編 第2章「碧に沈む星の灯」第8部 第9部 終章(第10部) 第1章「石詠みの救世主」 第1部 「天の願い」編 神話の残る世界、リアフィース―― 天界の神々が、地上の人々を見守り、平穏が保たれていた世界 しかしある日、平穏は打ち破られる 何者かにより天界の神殿の封印が破られ、封じられていた“災厄の種”が神々の身体を貫き、天に地に散っていった ――“災厄の種”―― それは、大地のあらゆる災いを引き起こす、かつて封印された魔獣達の核 長きに渡る封印の中で力を蓄え、神々の力を奪って地上に散ったそれらが芽吹けば、 竜の姿となって人里を燃やし、人の姿となって民を欺き、避けようのない大災害となって、地上の平穏を脅かすだろう 偶然にも難を逃れ、天界に一人残された女神レオーネは、事態を収拾するため“災厄の種”の再封印を決意する しかし、レオーネは世界中に広がった“災厄の種”が芽吹くのを抑える為に、天界より力を注がなければならず、 自ら地上に降りて、種を摘むことができない そこでレオーネは、自身に仕える妖精に使命を与えた。 地上に降り、“救世主”を探し出して“災厄の種”を封じよ、と。 ――そして時は経ち―― 何もない草原。目の前に、妖精と少女が現れる。 目的は二つ。 世界に散っていった“災厄の種”をかつてのように封印し、世界を浄化すること。 地上に“災厄の種”をまいた、黒幕を暴くこと。 そして、妖精は言う。 英雄が辿った軌跡―― 聖戦が刻まれた英雄石を紐解く“石読み”のチカラを持ったあなたならそれができる、と。 妖精の願いを聞き入れ、広大な世界を、仲間と共に旅をする。 浄化の旅の行き着く先を知る者は、誰もいない―― ▲ 第2部 「地の願い」編 災厄の種の反応を追って、 大陸中央、山間部に位置するサイラン公国にやってきたサラ達。 サイラン公国は、大陸では大国に入る部類の国。 だが、近年は周囲をとりまく厳しい自然と鎖国的な文化のせいで、発展と維持が難しくなっており、 軍拡主義によって国を発展させていこうという“軍国派”と 周囲の国々との協調姿勢によって国を発展させていこうとする“調和派”の二派によって、 政治が二分されている状態に陥っていた。 サイラン全体を覆う、刺々しい雰囲気を気にしながらも、“種”の情報を求めて奔走するサラ達。 その途中で、サイランに見聞を広める旅に来ていた、隣国オルドレの公子である、赤い髪の青年“ルーク”と出会う。 ──この出会いが、サイランを襲う事件、“地の願い”の争乱の始まりだった。 ▲ 第3部 「異空の女神」編 ──闇の中から声がする。声を糧に、俺は再び目を開ける。ここはどこか──?リアフィースだ── 豊かな大地と自然に恵まれたリアフィースは、今、大きな苦難の時を迎えていた。 災厄の種──人間達が作り出した、魔力兵器はこの地のあちこちで芽吹き、世界を滅びの一途へと向かわせていた。 人間達の撒いた種──にも関わらず、慈悲深き神々は救いの手を差し伸べた。 天に連なる特別な力を持つ“御使い”達を地に送り、地上の“種”を刈り取らせていた。 ここに2名の天界より使わされた、神々の兵“御使い”がいた。 長らく天に仕えてきた彼らは、今回も、「人間を救わん」とする、神の御心のまま、剣となり、 その手に持った、「石詠み」の力で。地上で芽吹く種達を刈っていた。 彼御使いの名は“ゼファー”。その相棒である“アレン”。 共として遣わされた妖精“リッピ”と共に、種を刈る旅を続ける日々。 と、ある日、彼らは2人の少女が、魔獣に襲われているのを見つけ、助ける。 冒険者の一人は少女で、“サラ”と名乗った。 もう一人の少女は“カナ”と名乗り──自らを“未知なる力”の持ち主と語った。 ▲ 第4部 「世界の祈り」編 長く続く、地上に蒔かれた、"災厄の種"を巡る旅―― サラ、リッピ、そして救世主の一行は、これまでに各地を旅し、多くの"種"を浄化してきた。 旅の始まりとなった"東の大陸"での浄化が、一区切りつき-― 彼らは新たな種を探す為、海を越えて"西の大陸"へと、その冒険の舞台を移していた。 西の大陸には、世界でも有数の巨大な国"カイゼル"がある。 複数の民族が互いに覇権を争っていた広大な土地を、武を持って、一つの巨大な国にまとめ上げた"覇王"の国。 ある日彼らの元に届いた、一通の手紙―― それに導かれ、彼らはカイゼルへと足を踏み入れる。 そこでは強大な闇が、地の底で、とぐろを巻いていた。 それは因果の果てへと向かう、"追想の旅路"―― そして―― "想い"を"追いかける"為の冒険でもある―― ▲ 第5部 「辿る誓い」編 巡る螺旋の先に、輝く光を目指して-- 蘇った"記憶"を胸に、決戦を控えた前夜。 星空の下、これまでに歩んだ旅路を思い出す。 久遠の過去から、今この瞬間まで。 強い気持ちを抱きながらも、心には緊張と不安がまとわりつく中、背にかかる柔らかな声に、勇気を貰って-- そして、ついに"組織ニーズヘッグ"との死闘が始まる。 強大な力を持つ者たちを相手に、頼りとなるのは"記憶"だった。 繋いできた、想い全てで、この道を越える。 望んだ場所に、必ず辿り着くと誓って-- ▲ 第6部「蒼紅の御使い」編 この"傷"が、思い出させる―― 記憶の向こうに置いてきた、あいつへの想いを―― 近づく決戦の時――開かんとする扉を前に、彼の頬の傷が疼く。 それは、かつての相棒であった"アレン"との出会いの記憶を蘇らせる。 ずっと昔、リュースへと戻る旅の途中、立ち寄った宿で"ゼファー"なるものが語っていた――。 "二人の御使い"の絆の冒険が、今、紡がれる。 ▲ 終章(第7部)「絆の未来」編 全てを救うため、邪龍ニーズヘッグの体内に向かった"救世主"達。 光を飲み込む暗黒の中、彼らは、道を阻む闇に抗い続ける。 きっと、仲間が来てくれると信じて。 必ず、仲間がそこにいると信じて。 想いは繋がり、久遠に渡る、螺旋の因果に決着の時が訪れ―― そして彼らは歩き出す。 長き旅の果てに紡ぐ、"絆の未来"の物語を―― ▲ 第2章「碧に沈む星の灯」 第8部 あれから、いくつもの冒険を越えて── "救世主"一行は、海の匂い香る地に来ていた。 探知が示した次の旅路の目的地は、小さな島国クラリエ。 そこから海を挟んだ海岸沿いに、マイラという漁村がある。 ひっそりと佇む小さなその村は、サラの故郷であった。 そうと知れば、一目見たいと思うのは、みんな一緒。 クラリエに向かう旅の道中──立ち寄る事に決めた。 仲間の故郷への旅という事で、普段の冒険以上に華やいだ雰囲気を纏う一行。 懐かしい街道の風景に、笑顔を見せるサラ。 その、行く先には── どこまでも続く、深い海が広がっている。 そして、そこにあるのは── 新たな"種"が呼び覚ます、沈んだ風景。 ──彼らの新たな冒険は、この"碧の先"で、再び始まる── ▲ 第9部 災厄の種の反応があった、辺境の島国クラリエ。 サラの故郷、マイラを通って渡ったその国には、 不穏な気配がまとわりついていた。 怪しげな占い師の進言による"古の祭り"を理由に国交を排除し、 兵士達にも、魔法陣による謎の儀式を強いているという。 さらには、最近島に姿を表すようになったという、"人喰いの魔物"の噂も絶えない。 クラリエで姿を消したという、知り合いを探しに来た、ユーリとも合流し、 一行は、二手に分かれて事態の調査に乗り出す。 調べる場所は、"国命による魔法陣が敷かれた兵舎"と"種の反応が出た遺跡"―― その渦の中には、何が潜んでいるのだろうか。 這いずる闇が、静かに、その手を伸ばし始めた―― ▲ 終章(第10部) 「私は、わたしを、 奥に、おくの―― 想いを、おもいを――」 "きみと、ずっと、この手を──" ▲
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【作品名】真女神転生Ⅱ 【ジャンル】ゲーム 【名前】ヒロコ 【属性】救世主の母 【大きさ】成人女性並み 【攻撃力】 通常攻撃は数千kmの巨大な竜にいくらかダメージを与えるくらいの威力。 マハ・ジオンガ:20mほどの範囲に電撃を落とす。威力は通常の攻撃力と同じ。 瞬間発動 射程は数千kmある巨大な竜の後ろからでも敵に撃てるので数千km以上。 【防御力】 数千kmの巨大な竜の攻撃にいくらか耐えられる。 【素早さ】 1秒ほどで雲の上まで登りつめることができる相手の体当たりに20mほどの距離から回避可能。 【特殊能力】 ディアラハン:自身の体力を全回復させる回復呪文。 10度以上使える。 【長所】数千kmの巨大な竜と戦える強さ。 【短所】テンプレがやっつけ。まじめに書けばもう少し強くなるはず 3スレ目 221 :格無しさん:2009/05/11(月) 23 32 22 218 10m程度の天井からの、マシン・ラビの後方支援(対人用レーザー兵器ウラノス)を回避可能にしてみては? 222 :格無しさん:2009/05/11(月) 23 34 15 っていうよりジオ系はあきらかに不思議雷の気がするんだけど 223 :格無しさん:2009/05/11(月) 23 55 58 ラビは武装が無い設定だから、物理スキルの「連射撃ち」がレーザーなんじゃない? 224 :格無しさん:2009/05/12(火) 00 00 32 ヒロコのテンプレ作成者だが、手元に資料がないから記憶を頼りに作ってるんで、 詳しい人は追加で修正してもらって鎌罠いっす。 後マハジオンガは瞬間発動で。 234 :格無しさん:2009/05/12(火) 23 05 19 ヒロコ考察 ○○クジラ、ウサギ 削って勝ち △ミスター・サタン 倒せない倒されない ○○小鳥、オーバーマインド 不思議電撃勝ち △カエデ 倒せない当たらない ○サウザンド・アイズ・サクリファイス 遠距離電撃勝ち ×キツネ 憑依負け ×ワタシ 追放負け ○スペッキオ 電撃勝ち ×サンダルフォン 雲の高さは低めに見積もって2km程度とすると反応速度で負けてることになる ハイパーボリア・ゼロドライブ負け ○クトゥルー 電撃勝ち △大先行者 当たらない倒されない ×ジョーカード 寿命負け キツネ>ヒロコ>サウザンド・アイズ・サクリファイス