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前 この作品は以下のものを含みます。 ゆっくり対ゆっくりの構図 虐待でも愛ででもないそれは全く新しい(ry)お兄さん ドスまりさ ゆっくり改造 この作品は以下のものを含みません。 人間によるゆっくりの虐待・虐殺 愛で ギャグ ↓それでもよろしければ、お進みください。 復讐のゆっくりまりさ(中) その日、ゆっくりしていたどすまりさの下に、群れのテリトリーに人間が立ち入ったとの情報がもたらされた。 しかもその人間は、二ヶ月前、群れを追い出されたまりさと一緒だというのだ。 何か良くないことが起きているような、そんな予感をドスは覚えた。 「分かったよ。わたし自らが出ていって、話をするよ」 ドスが広場に出てくると、そこには確かに、男に抱えられたあのまりさがいた。 広場には群れ中のゆっくりが集まり、男とまりさを遠巻きに見ていた。 男は何の変哲もないただの男だが、まりさは左目に、二ヶ月前にはなかった眼帯をしている。 誰一人近寄るものがいないのは、二人の纏う異様な雰囲気に近寄りがたいものを感じていたためだ。 その感覚は、ドスにも理解できた。 広場に入り、あのまりさに見つめられた瞬間、言いようのない寒気がドスを襲ったのだ。 ドスは二人の手前五メートルの位置まで来ると、足を止めた。 「まりさ、おかえり」 そしてまず、生きて群れに戻ってきたかつての仲間に、そう声をかけた。 だがまりさは答えない。ドスは諦めの息を吐き、改めて問いかけた。 「二人とも、今日はここになんの用なの? お兄さんは、ゆっくりできるひと?」 まず男が答えた。 「俺はただの付き添いだ。お前らをどうこうしようって意志はない。敵でも味方でもない。 二ヶ月前、俺はこのまりさを助けた。そしてまりさがどうしてもしたいことがあると言うから、それを手伝い、ここまで連れてきた。それだけだ」 ドスの視線が、男の腕の中のまりさに向く。 「……まりさは、何がしたいの?」 まりさは、答えた。 「復讐だよ」 その一言は、群れ全体にさざなみのように困惑を伝播させていく。 一匹のゆっくりが群れから一歩飛び出し、怒りに満ちた声を張った。まりさの父だった。 「まりさ! どうしてそんなこというの!? やっぱりおまえはゆっくりできないゆっくりだよ! さっさとここから──」 「うるさいよ」 静かに。 ただ静かに告げられたまりさの一言が、群れの空気を押さえつけた。 他者の心の機微に総じて鈍感なゆっくり達だったが、そこに込められた、研ぎ澄まされた暗黒の感情は明確に感じ取ったのだ。 まりさは、周囲の皆が自らに抱く恐怖を和らげるために、口元だけの笑みで言葉を発する。 「おねがいだから、みんな、静かにしていてね。まりさは、ドスにだけ用があるんだよ。 そして──ゆっくりよく聞いてね! ドスは、みんなが思ってるようなゆっくりじゃないよ!」 再び困惑の波が、まりさを中心に押し寄せていく。 その中に、まりさは愛しいれいむの姿を見つけた。得体の知れない不安に包まれたかのように、身を震わせている。 そんなれいむに、まりさは心の中だけで微笑みかける。だいじょうぶだよれいむ、まりさがれいむを、みんなを助けるから。 「ゆ! 何をいってるのまりさ! わたしは群れのみんなのことをちゃんと考えて──」 「ドス、釈明は、まりさがさいごまでしゃべってからだよ!」 「ゆ……」 またしても、ドスはまりさに気圧された。 たった一匹の、男の腕に抱かれるほどの大きさしかないまりさに、である。 この時点で、ドスはまりさに対する警戒を強めた。明らかに、普通のゆっくりではない。 ここぞとばかりに、まりさはドスの罪を暴きにかかる。 「ドスは、いえの中にたくさんのしょくりょうをため込んでいるよ! たべものがとれないときのためだって言うけど、あれは明らかに多すぎるりょうだよ! ドスは、みんなからあつめたたべものの一部を、自分のものにしようとしてるんだよ!」 ザワッ、と一際大きく群れがどよめく。 確かに、皆普段から取ってきた食料の一部をドスに預け、保管するようにしてきた。 それが群れ全体のためであると聞かされていたし、それならば、と了承してきたのだ。 だが物の量を正確に把握できないゆっくり達には、ドスが一体どれほどの量の食料を保管しているのか分からない。 冬が近くなり、取れる食料が少なくなってきた今、まりさと同様の疑いを持ち始めていたものも群れには何匹かいた。 「ゆっ、た、たしかめてくるよ!!」 そう言って、数匹のゆっくりが群れを離れてドスの巣へ向かおうとする。 それを視線で追おうとするドスだったが、その前にまりさの声が飛んだ。 「ドス! まだ話はおわってないよ! あのいえの中にたくさんのゆっくりをつれ込んで何をしているのか、まだきいてないよ!」 そしてまりさはドスの返事を待たず、皆を振り仰いだ。 「みんなも知ってるはずだよ! ドスのいえの中にはいっていったゆっくりは、ゆっくりできなくなって出てきてたよ!」 ざわざわと、そこかしこでゆっくり達が話を始める。 「ゆっ、うちのこもたしかにつかれてでてきたよ……」 「でもどすがべんきょうをおしえてるって……」 「だからって、つぎのひもつかれたからだのまま、どすのところにいっちゃってた……」 群れの中に、今まで妄信的に尽くしてきたドスに対しての疑念が芽生えつつあった。 まだ不信感というほど大きなものでなくとも、一度生まれた『もしかして』は中々消えるものではない。 「ゆ! まってみんな! わたしのはなしもちゃんときいてね!」 ドスが声を張り上げるが、ざわめきは収まらなかった。 ドスを支持するものとしないもので、意見の衝突が起き始めているのだ。 まりさは更に声高に語りかける。 「ドスがどんなりゆうをつけてるのか知らないけど、みんなをゆっくりさせないドスを、まりさはゆるせないよ! ううん、もうおまえなんかドスじゃない! ドスの名をかたるにせものだ! このゲスまりさ!」 「ゆ゛ぅぅぅぅっ!!! そのことばはききずてならないよ! あやまってねまりさ!」 とうとう、ドスが激昂する。 ドスは、これまで群れのために尽くしてきたつもりでいた。 そのために多少厳しいこともやってきたが、だからといって『ゲス』とまで言われて黙っていられるはずもなかった。 まりさはキッと片方だけとなった眼でドスを睨み付け、宣戦布告を行う。 「そう思うなら、ここでまりさとしょうぶをしてね!」 それを聞いて、まりさ以外の全てのゆっくりが言葉を喪った。 ドスに勝つ。 そんなこと、普通のゆっくりにはできるはずもない。ドスは人間でさえそうそう手出しできないほど強大なゆっくりなのだ。 そのドスに、ただの一匹のゆっくりでしかないまりさが勝つなど、平時なら一笑に伏されるようなありえない話だった。 だが誰一人茶化すものがいなかったのは、まりさにそうさせないだけの何かがあったからだ。 「おまえが本もののドスだというのなら、まりさなんかにまけるはずがないよね! 逆にまりさがかてば、おまえはドスなんかじゃない、ただ大きいだけのまりさだよ! このにかげつ……まりさはおまえにかつためだけに、おまえよりつよくなるために、がんばってきた。 みのあかしを立てたいというのなら、まずはこのまりさをたおせ、にせものめ!!」 溜まりに溜まった怒りをぶつけるように、まりさはドスを挑発する。 「ゆ……どうしても、やると言うんだね」 そしてそこまで言われて黙っていられるほど、ドスもまたプライドの低いゆっくりではなかった。 今の自分には、この群れのリーダーとしての立場がある。 まりさの言うことは一面では事実だが、しかし、それだけのことではないのだ。 そのことをきちんと説明すれば、群れの皆は分かってくれる。ドスはそう信じている。大丈夫、皆良いゆっくりだから。 ──だがそれもこれも、目の前のまりさを黙らせてからだ。 「分かったよ、まりさ。そのちょうせん、受けてたつよ!」 普段は温厚に垂れ下がっている眦を、今日ばかりは怒りの形に吊り上げ、ドスはまりさを睥睨した。 「双方合意したと見ていいな?」 睨み合う両者の間に、男が割って入る。二匹それぞれの表情を確かめ、頷いた。 そして懐から十数枚の御札を取り出すと、何やら呟き、空中に放った。 御札は光の線となって、広場を円形に周回し始める。 「「「ゆゆゆっ!?」」」 突然の出来事に、円の内側にいたゆっくり達は、慌てて外側に逃れていく。 やがてリング状になった光線はゆっくりと高度を下げていき、それが地についたとき、薄い光の壁が出来ていた。 広場の中心、半径二十メートルほどの円形の空間に、まりさとドスまりさの二匹のみが残される。 男は全てのゆっくりに聞こえる声で言う。 「聞け! この結界の中が、まりさとドスまりさのための闘技場だ! ドスに加勢したいならば入るがいい! ただし一度入ったら、どちらかの陣営が全て倒れるまで出られない!」 それを聞いて、ドスに加勢しようと動き出したゆっくり達もいたが、 「大丈夫だよ! みんなは下がっていて! まりさは、わたし一人でかってみせるよ!」 ドスの言葉に、渋々といった様子で引き下がる。 とはいえ、結界の外のゆっくり達は、その全てがドスの勝利を確信していた。 まりさによって疑念を喚起されたとはいえ、ドスの強さは群れの全員が知っていたからだ。 一部ではむしろまりさの無謀を嘆き、または嘲る声すら聞こえてくる。 だがまりさは、それらを全く意に介さず、ただドスだけに憎悪を注いでいる。 「ドスまりさ、戦う前に俺から言っておくことがある。このまりさには、お前の『ゆっくり光線』も幻覚も効かない。 間違っても使うなよ。それはお前に決定的な隙を生むことになる。その隙を、このまりさは逃しはしないぞ。 加えて言うならば、このまりさは『武器』を持っている。純粋な力比べになるとは思うなよ」 「……どうしてそんなことをわたしにおしえるの?」 不可解そのものの表情で、ドスは男に訊いた。 「俺は、別にそのまりさの飼い主なんかじゃないからな。 ただまりさがお前に勝ちたいと言ったから、俺はまりさを助け、そして戦う術を与えた。それだけの関係だ。 言っただろう、俺は敵でも味方でもないと。だから、どちらか一方が極端に有利になるような状況にはしたくない。 何よりこれは、まりさ自身が望んだことでもある」 驚きの表情で、ドスはまりさに視線を戻した。まりさは静かに、憎悪を漲らせながら、言う。 「とうぜんだよ。ふいうちでおまえにかったところで、うれしくもなんともない。 みんなが見ているまえで、正面からせいせいどうどう、おまえをたおしてやる」 まりさは殺意を隠そうともしない。それにドスまりさは、ほんの少しだけ、哀しそうに息を吐いた。 「どちらも、準備はいいな? では、────始め!」 決闘開始と同時、まりさは弾かれたように飛び出した。 その速さは他のゆっくりの比ではない。硬化剤の継続投与によって、身体は強い弾力性を持つに至った。 その弾力性を最大限に活用して、まりさは地面を低く、しかし早く跳ねていく。ただの一歩で、一メートルもの距離を詰めていく。 対し、ドスまりさはまずは様子を見るつもりであった。 だがまりさの尋常ならざるスピードを前に、決して余裕を持って戦える相手ではないと判断した。 ドスはどっしりと構え、まりさを正面から弾き飛ばす算段を立てた。まりさは武器を持つというが、大抵のものはドスには通用しない。 まりさは構わず、正面から突っ込んでいく。 『ドスパークは始めのうちは警戒しなくていい』 まりさの頭の中で、男が教えた対ドス戦術が再生されていく。 『他のゆっくりを巻き込む恐れがあるから、戦闘開始直後にはまず使わないと見ていい。 もし使うとしても、溜め時間が長いから、お前ならば如何様にも対処できるだろう』 だからまりさは、ひたすら距離を詰めていく。ドスが全身の皮を収縮させ、こちらを弾き飛ばすつもりであるのを理解した上で、だ。 その通りにドスはまりさが目の前に来た瞬間、その身体を前に押し出そうとして、 「──ゆ?」 まりさの姿を見失う。 次に感じたのは、右側面の皮への鋭い痛みだった。 「ゆぐぅぅぅぅぅ!!??」 つい今まで目の前から突進してきたと思っていたまりさが、いつの間にか真横に回り込み、皮に喰らいついていたのだ。 『お前とドスじゃウェイトの差は明らか。正面からぶつかりあって勝つのは絶対に不可能だ。 だから決して正面切って戦うな。お前の武器は小回りの利くその身体だ。ドスの死角に回り込め』 ドスの射程圏内に入る直前、まりさは弾力を最大限に活かして横っ飛びし、ドスの視界から消えたように見せたのだ。 強く噛み締めた前歯が、ぶつんと皮を噛み切った。 ドスの硬い表皮を噛み千切るそれは、当然、普通のものではない。 一度全て歯を抜かれ、男の手によってセラミック勢の鋭い歯が埋め込まれていた。これがまりさの『武器』だ。 だが浅い。ドスの分厚い表皮は、まりさの一噛みでは餡子にまで届かなかった。 ドスが振り向いても、もうそこにまりさはいない。またあまりに身体が大きすぎるため、足元まで視界が及ばなかった。 本能的な勘だけを頼りに、ドスは前方へ跳んだ。その直後、まりさの歯がガチンと鳴る音がした。 ドスはまりさから距離を取り、再び、決闘開始時と同じ距離を取った。 違うのは、ドスの皮の一部が喪われていること。 それはドスの体躯からすればほんの些細な傷だが、群れに与えた衝撃は大きかった。 無敵だと思っていたドスが、戻ってきたまりさに手傷を負わされた。 それだけあのまりさが強いのか、それともドスが弱いのか──ゆっくり達には、判断がつかない。 大小二匹のまりさは、お互いの隙を突かんと、一進一退の攻防を繰り返している。 ドスは先程の攻撃への警戒から、まりさを見失った瞬間には大きく距離を取るように跳躍した。 対し、まりさはなんとかドスのサイドを取ろうとするが、回り込む動作の分だけ一手遅れる。 どちらの攻撃も当たらない──そんな状況が長く続く。 『長期戦は不利だ』 男の声が餡子の深い位置から響いてくる。 『体躯の差がそのまま体力の差と言っていい。千日手になったら、ドスが痺れを切らすより、お前の体力が尽きるほうが早い。 だからそうなる前に、早々に状況を打破することが必要だ』 ドスの死角に入る。ドスは再び警戒して、大きく跳躍する。だがまりさは、攻撃する素振りすら見せなかった。 そしてドスが次に振り向いたとき、まりさはわき目も振らず自分に突っ込んできていた。 来る──ドスは予感する。あと次にまりさが着地したとき、再び自分の視界から消える。 連続してジャンプするのは正直辛いが、あの歯の威力は侮れない。 だがこうして逃げ回っていれば、いつかまりさにも体力の限界が来る。卑怯と言われようが、背に腹は変えられない。 (ごめんね! ころしたりなんかしないから、どうかわたしに大人しくやられて!) そう思えるだけの余裕がまだドスにはあった。 だがそれが大きな間違いであることに、ドスは愚かにも気づかない。 所詮己の生来の力を頼みにしてきたものに、己を捨てて強さを得たものの力を理解することはできないのだ。 まりさが着地し──消えない。 だが代わりに、その頬は大きく膨らんでいて── 「ぷッ!!!」 まりさが吐き出したのは、人の拳大ほどもある尖った石だった。 それは過たず、ドスの両目の間を直撃する。 「ゆぎゅっ!?」 普段感じることのない痛みに、ドスの動きが一瞬止まる。 致命的な隙が生まれる。 コンマ一秒の空白の次に、ドスの右目が映したのは、帽子から次なる『武器』を取り出して迫るまりさの姿。 そしてそれが、右目が映した最後の光景だった。 ザグン。 「ゆぎゃあああああああああああああ!!!」 まりさの咥えたノミが、ドスの右目の表面を抉る。 『目は、日中行動する陸上生物ほぼ全てに共通の弱点だ。その重要性に反し非常に脆くできている。 だから、狙えるならまず目を狙え。位置的に厳しいが、それだけに見返りは大きい』 面積としては浅いダメージだが、しかしそれだけで目は目としての機能を喪った。 「はな゛れろ゛ぉぉぉおぉぉぉおおお!!!!」 ドスが身を揺すると、まりさが突き飛ばされる。思わず口からノミが放り出されるが──ノミはまりさの動きに追随するように一緒に跳んでいく。 ノミの柄は、紐によってまりさの帽子と繋がっている。 そして帽子は、まりさの頭に直接縫い付けられていた。 まりさ種にとって命の次に大事な帽子は、今のまりさにとっては今や命と等しい価値を持つ『武器庫』だった。 ドスに突き飛ばされたものの、まりさはすぐさまノミを咥えなおし、再びドスへ突進する。 このとき、ドスは初めて恐怖した。 まりさの目に宿る、尋常ならざる暗黒の視線が、ドスの一つだけになった目を射抜いたのだ。 加えてあのノミからは、とてもゆっくりできない何かを感じる。目を抉られてそれを理解した。 ──ドスは知る由もない。そのノミが、つい先日、百を越えるゆっくりの餡子を吸ったものであることを。 ノミの刃先から溢れ出すおどろおどろしい何かが、獣の顎となって残る目を狙っているような錯覚が、ドスを襲った。 「ゆ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅ!!!!」 まりさとは見当違いの方向に、ドスは跳躍した。『回避』ではなく、それは『逃亡』に等しいものだった。 このとき、ドスは二つのミスを犯す。 一つには、恐怖に駆られ、まりさの動きを良く見ずに逃げたこと。 もう一つには、着地後、既に喪われた右目の側から振り向いたこと。 「──ゆ!?」 過ちに気づいたときにはもう遅い。まりさの姿はどこにも見当たらなかった。 その時、まりさはとうとうドスの背後を取っていた。 「ぷっ!」 まりさが再び口から何かを吐き出す。それはドスの髪の毛に当たって割れ、内包していた液体を撒き散らした。 まりさが吐き出したのは、透明な液体の入ったガラス球だった。 「ぷっ!」 ドスが音の発生源に気づく前に、更にもう一つ。また別の場所に当たって割れる。 「ゆっ! うしろにいるね!」 ドスが振り返る直前、三度、まりさは口から『武器』を吐き出す。 まっすぐに飛んでいくのは、紐で繋がれた小さな石。 それはドスの髪の毛で受け止められ、小石同士がぶつかり──火花を発した。 「見つけたよまりさ! いいかげん、おとなしくしてね!」 ドスはまりさを説得しようと試みた。それは慈悲というよりも、これ以上戦えば自分がゆっくりできないと悟ったからだ。 まりさは明らかに異常だ。 男はまりさの『手伝い』をしたというが、それは単純に鍛えたというだけのことではないに違いない──そのことに、ようやくドスは思い至った。 ──それは、あまりにも遅すぎる発見であった。 ふとドスが気づくと、何やら自分の後ろが騒がしい。それでも目の前のまりさに対し警戒を緩めるわけにはいかなかった。 だが折り重なる激しい悲鳴の中から、一匹のゆっくりの言葉を聞き分けたとき──ドスは自分を見失った。 「どずのがみがもえでるぅぅぅうううう!!! れいぶのりぼんんんんんんん!!!」 「ゆ゛あ゛あ゛あああああああ!!!???」 ドスが叫ぶのと、後頭部の熱を自覚するのは、同時だった。 まりさが投げたのは、油の入ったガラス球と火打石だった。まずドスの髪に油を撒き、その後火打石で着火したのだ。 『ドスをドスたらしめているのは、他のゆっくり達からの信頼の証であるリボンだ。 それを破壊すれば、直接的なダメージは少なくとも、精神的には多大な負荷をかけることができるだろう。 周りに他のゆっくりもいればなお良い。みすみすリボンを壊されたドスは、その失態を責められるだろうからな』 『最も効果的なのは焼き払うことだ。ゆっくりの髪は兎角燃え易い。 だがそれはお前にとっても同じことだ。火種を持ってうろつくわけにもいかない。 多少手間だが、この二段階の手順を踏むことで、ドスの髪を燃やすことはできるだろう。 もっとも、もしお前がこれを自分の頭の上で割ろうものなら、お前自身が焼け死ぬことになるがな──』 あらかじめ提示されていたリスク。それを承知で、まりさは帽子の中に油と火打石を仕込んでおいた。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あああああ!!! も゛え゛る゛うううううううう!!!」 ドスは無様にそこら中を転げまわって、火を消そうと躍起になっている。 だが火はあとに投げた油に燃え移り、より焼失範囲を広げていくばかりだ。 「どずのばがああああああああああああああああ!!!!!」 「どうじでりぼんもやずのおおおおおおおおおおおおおお!!!???」 遠慮のない罵声がリングの外から飛び交った。ドスの信頼は、喪われたリボンの数に比例して貶められていく。 あまりに無様な敵の姿を見て、まりさはしかし何も思うことはなかった。 そうだ。これこそが、自分の求めていたものだ。これでドスは、今までのように皆から信頼されることはなくなる。 少なくとも、ドスに復讐するというまりさの目的は、この時点で既に達成されつつあった。 ドスを負かし、その傲慢な自信を打ちのめし、その後は── その後は? 「まりざああああああああああああああああああああ!!!!!!」 一瞬、思考の淵に沈みそうになった意識を、ドスの怒号が引っ張り戻した。 ようやく火を消したドスの姿は、哀れなものだった。髪の毛は半分が真っ黒に焼け焦げ、帽子も三割ほど喪われてしまっている。 群れのリーダーとしての落ち着きはどこへいったのか、猛烈な赫怒を以てドスはまりさを睨みつけていた。 「ごろずっ!!! ごろじでやるぅぅぅぅぅぅ!!! よぐもまりざのりぼんをおおおおおおおお!!!」 その顔は般若もかくやというほどの、怖ろしい形相と化していた。群れのゆっくりですら、ドスの変貌に恐れ慄いている。 「ようやく本性をあらわしたな! ゲスめ!」 それを見て、まりさは改めて確信した。 このゆっくりは、やはりドスなどではない。自分が誅すべき、群れの、いや全てのゆっくりの敵なのだ! 「ゲズはお゛ま゛え゛だあああああああああああああああああああああああああ!!!!!」 慈悲も、恐怖も、一切合財を灼熱の怒りに塗り固めて、ドスは正面からまりさに突っ込んでいく。 『冷静さを見失った相手ほど扱い易いものはない』 対するまりさの心は冷え切っていた。そうだ、教わったとおりやればいい。そうすれば、このような下劣なゆっくり程度、自分の敵ではない。 体格差を物ともしない、知識と経験に基づいた自信が、まりさの根幹を支えていた。 『正面から突っ込んでくる敵を、正面から相手にする必要があるか? ──否だ。 さっきも言ったとおり、どう足掻いてもお前じゃドスの体格には対抗できない。 よしんば攻撃を加えることができたとして、ただの一度で貫徹できるほど、ドスの表皮は軟くないはずだ。 ──だから、狙うならば、既に一度攻撃を加えた箇所。一度目で防御を削り、二度目で渾身の一撃をくれてやるんだ』 まるで暴風のようなドスを前にして、まりさは一歩も退かない。 ただ機を伺うようにじっと身を低くし──衝突の瞬間、横っ飛びに跳んだ。 帽子の中のガラス球を割る心配がなくなったまりさの跳躍は、今までで一番速かった。 跳んだのは、ドスの右側。 全てはこの瞬間のための布石だ。開始直後、右の頬を噛み千切ったのも。右の目を抉ったのも。冷静さを奪ったのも。 「じねええええええええええええええええ!!!!!!」 咆哮するドスは、だが気づいていない。ドスの下にまりさはいない。 まりさの帽子から、先端の尖った竹が落ちてくる。それを咥え、捻るように全身を収縮させて跳躍し。 「死ぬのはお前だああああああああああああああああああああ!!!!!」 貫いた。 「ぶぉぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」 一度噛み千切られ、薄くなった皮は、竹の侵入を容易に許した。 管状になっていた竹は、そのままドスの餡子を噴出す間欠泉と化す。 ドスほどの巨体であれば、小さな穴が空いたところで皮同士の圧力によってすぐに塞がってしまう。 だがそこに管となるものを突き刺してやれば、逆に皮の圧力がそれを固定し、穴は永遠に塞がらない。──今のように。 「あ゛っ、あ゛っ、あ゛っ、あ゛っ、あんごぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!! わたぢのあんごがあああああああああああああああああああああ!!!!」 勢い良く、細い竹からドスの餡子が流れ出していく。 勝った。まりさは勝利を確信した。ほどなくドスの餡子は生存に必要な分を垂れ流し、その命を奪うだろう。 だがそこで、まりさにとって思いもよらぬことが起きた。 「ゆあああああああああああああ!!!!」 「ゆっ!?」 ドスは餡子が流れ出すのにも構わずに、まりさに体当たりした。 潰されぬよう、咄嗟に飛びのいて空中でそれを受け止めたまりさだったが、ドスのぶちかましは強烈だった。 たった一撃で体内の餡子が揺り動かされ、まりさは天地の認識を喪う。 ボールのように地面を転がり、ようやく体勢を立て直したとき、ドスが大きく口を開いてまりさのほうを向いていた。 「げじどべええええええええええええええええええええええ!!!!!」 口腔内にドスパークの光が溜まっていく。最早群れへの被害など考えず、まりさを抹殺するつもりだ。 逃げようと思ったが、足が震えて動かなかった。恐怖ではない。先程の体当たりで、一時的に麻痺してしまったのだ。 逃げられない。まりさは悟った。 『──もしドスがドスパークを使うなら──』 この戦いの前、男が最後に教えてくれたことを思い出す。 『もし、ドスがドスパークを使うなら、お前の喪われたその左目に埋め込んだモノを使え。 発射直前のドスの口の中に放り込むんだ。だがこれは、非常に危険だし、タイミングを誤ればお前が死ぬだけだ。 だからこれは、本当に最後の手段だ。どうしてもドスパークを避けられないときにだけ、命を賭けて使うんだ』 「まさに今が、そのときだよ!」 まりさは大きく息を吸い込むと、口、そして左目を閉じる。 「ふん゛っ!!!」 そして口に含んだ大量の空気を飲み込むと同時、全身の力を右目に集中させた。 逃げ場を喪ったエネルギーが、右目から鉄砲水のように放たれる。 バツン、とまりさの眼帯が弾け飛び、その下にあったもの──喪われた眼球の位置に埋め込まれていたものを、若干の餡子と共に発射した。 まるで人間が全力で投げたボールが如きスピードで、山なりにではなく直線的に、ドスの口目がけて飛んでいく。 それは過たず、ドスパークの光の中心のキノコに向かっていき── ──爆発した。 「あqwせdrftgyふじこlp;!!!!!」 ドスパークの熱量とまりさが投げたものが激しく反応し、ドスの口内で暴発したのだ。 男がまりさに持たせたのは、いわゆる打ち上げ花火だった。当然、火薬の塊にも等しい。 花火は打ち上げられたあと、中心の火薬が爆発することで、『星』と呼ばれる小さな火薬玉が四方八方に飛び散り美しい色を色彩を見せる。 だがドスパークによって引火した花火は、『星』それぞれが滅茶苦茶な方向に飛び散って、ドスの口内をずたずたに切り裂いてしまった。 「あ゛、あ゛、あ゛、あ゛…………」 爆発の衝撃で、ひときわ大量の餡子が頬の穴から流れ出ていた。 そのとき一緒に突き刺していた竹も飛び出したようで、それ以上の餡子の流出はなかったが、そのことはもうドスにとって何の救いにもならない。 ドスの体躯は、元の半分ほどの大きさにまで潰れてしまっていた。 ぐるんとドスが白目を剥き、重々しい震動と共に地面に倒れ伏した。 「…………」 そして、そのまま起き上がることはなかった。 まりさは、ドスに勝利したのだ。 あとがき 饅頭のバトルってどう書けばいいんだ。 また20KB越えたのでまた分割しました。自重しろ。 しかし……これは……ゆっくり虐待SSどころか、ゆっくりSSなんでしょうか…… どちらにしろここまで来たので、最後まで書き上げたいと思います。 ちなみにお兄さんが使った御札は霊夢から買ったものです。お兄さん自身はちょっとだけ腕に覚えがある程度。 ただしお兄さんは、『外敵から身を護る結界』を、内側と外側を逆にして使っているのですが…… 次でエピローグです。 今までに書いたもの ゆっくり実験室 ゆっくり実験室・十面鬼編 ゆっくり焼き土下座(前) ゆっくり焼き土下座(中) ゆっくり焼き土下座(後) シムゆっくりちゅーとりある シムゆっくり仕様書 ゆっくりしていってね! ゆっくりマウンテン 復讐のゆっくりまりさ(前) 続き このSSに感想を付ける
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前? この作品は以下のものを含みます。 ゆっくり対ゆっくりの構図 虐待でも愛ででもないそれは全く新しい(ry)お兄さん ドスまりさ ゆっくり改造 この作品は以下のものを含みません。 人間によるゆっくりの虐待・虐殺 愛で ギャグ ↓それでもよろしければ、お進みください。 復讐のゆっくりまりさ(中) その日、ゆっくりしていたどすまりさの下に、群れのテリトリーに人間が立ち入ったとの情報がもたらされた。 しかもその人間は、二ヶ月前、群れを追い出されたまりさと一緒だというのだ。 何か良くないことが起きているような、そんな予感をドスは覚えた。 「分かったよ。わたし自らが出ていって、話をするよ」 ドスが広場に出てくると、そこには確かに、男に抱えられたあのまりさがいた。 広場には群れ中のゆっくりが集まり、男とまりさを遠巻きに見ていた。 男は何の変哲もないただの男だが、まりさは左目に、二ヶ月前にはなかった眼帯をしている。 誰一人近寄るものがいないのは、二人の纏う異様な雰囲気に近寄りがたいものを感じていたためだ。 その感覚は、ドスにも理解できた。 広場に入り、あのまりさに見つめられた瞬間、言いようのない寒気がドスを襲ったのだ。 ドスは二人の手前五メートルの位置まで来ると、足を止めた。 「まりさ、おかえり」 そしてまず、生きて群れに戻ってきたかつての仲間に、そう声をかけた。 だがまりさは答えない。ドスは諦めの息を吐き、改めて問いかけた。 「二人とも、今日はここになんの用なの? お兄さんは、ゆっくりできるひと?」 まず男が答えた。 「俺はただの付き添いだ。お前らをどうこうしようって意志はない。敵でも味方でもない。 二ヶ月前、俺はこのまりさを助けた。そしてまりさがどうしてもしたいことがあると言うから、それを手伝い、ここまで連れてきた。それだけだ」 ドスの視線が、男の腕の中のまりさに向く。 「……まりさは、何がしたいの?」 まりさは、答えた。 「復讐だよ」 その一言は、群れ全体にさざなみのように困惑を伝播させていく。 一匹のゆっくりが群れから一歩飛び出し、怒りに満ちた声を張った。まりさの父だった。 「まりさ! どうしてそんなこというの!? やっぱりおまえはゆっくりできないゆっくりだよ! さっさとここから──」 「うるさいよ」 静かに。 ただ静かに告げられたまりさの一言が、群れの空気を押さえつけた。 他者の心の機微に総じて鈍感なゆっくり達だったが、そこに込められた、研ぎ澄まされた暗黒の感情は明確に感じ取ったのだ。 まりさは、周囲の皆が自らに抱く恐怖を和らげるために、口元だけの笑みで言葉を発する。 「おねがいだから、みんな、静かにしていてね。まりさは、ドスにだけ用があるんだよ。 そして──ゆっくりよく聞いてね! ドスは、みんなが思ってるようなゆっくりじゃないよ!」 再び困惑の波が、まりさを中心に押し寄せていく。 その中に、まりさは愛しいれいむの姿を見つけた。得体の知れない不安に包まれたかのように、身を震わせている。 そんなれいむに、まりさは心の中だけで微笑みかける。だいじょうぶだよれいむ、まりさがれいむを、みんなを助けるから。 「ゆ! 何をいってるのまりさ! わたしは群れのみんなのことをちゃんと考えて──」 「ドス、釈明は、まりさがさいごまでしゃべってからだよ!」 「ゆ……」 またしても、ドスはまりさに気圧された。 たった一匹の、男の腕に抱かれるほどの大きさしかないまりさに、である。 この時点で、ドスはまりさに対する警戒を強めた。明らかに、普通のゆっくりではない。 ここぞとばかりに、まりさはドスの罪を暴きにかかる。 「ドスは、いえの中にたくさんのしょくりょうをため込んでいるよ! たべものがとれないときのためだって言うけど、あれは明らかに多すぎるりょうだよ! ドスは、みんなからあつめたたべものの一部を、自分のものにしようとしてるんだよ!」 ザワッ、と一際大きく群れがどよめく。 確かに、皆普段から取ってきた食料の一部をドスに預け、保管するようにしてきた。 それが群れ全体のためであると聞かされていたし、それならば、と了承してきたのだ。 だが物の量を正確に把握できないゆっくり達には、ドスが一体どれほどの量の食料を保管しているのか分からない。 冬が近くなり、取れる食料が少なくなってきた今、まりさと同様の疑いを持ち始めていたものも群れには何匹かいた。 「ゆっ、た、たしかめてくるよ!!」 そう言って、数匹のゆっくりが群れを離れてドスの巣へ向かおうとする。 それを視線で追おうとするドスだったが、その前にまりさの声が飛んだ。 「ドス! まだ話はおわってないよ! あのいえの中にたくさんのゆっくりをつれ込んで何をしているのか、まだきいてないよ!」 そしてまりさはドスの返事を待たず、皆を振り仰いだ。 「みんなも知ってるはずだよ! ドスのいえの中にはいっていったゆっくりは、ゆっくりできなくなって出てきてたよ!」 ざわざわと、そこかしこでゆっくり達が話を始める。 「ゆっ、うちのこもたしかにつかれてでてきたよ……」 「でもどすがべんきょうをおしえてるって……」 「だからって、つぎのひもつかれたからだのまま、どすのところにいっちゃってた……」 群れの中に、今まで妄信的に尽くしてきたドスに対しての疑念が芽生えつつあった。 まだ不信感というほど大きなものでなくとも、一度生まれた『もしかして』は中々消えるものではない。 「ゆ! まってみんな! わたしのはなしもちゃんときいてね!」 ドスが声を張り上げるが、ざわめきは収まらなかった。 ドスを支持するものとしないもので、意見の衝突が起き始めているのだ。 まりさは更に声高に語りかける。 「ドスがどんなりゆうをつけてるのか知らないけど、みんなをゆっくりさせないドスを、まりさはゆるせないよ! ううん、もうおまえなんかドスじゃない! ドスの名をかたるにせものだ! このゲスまりさ!」 「ゆ゛ぅぅぅぅっ!!! そのことばはききずてならないよ! あやまってねまりさ!」 とうとう、ドスが激昂する。 ドスは、これまで群れのために尽くしてきたつもりでいた。 そのために多少厳しいこともやってきたが、だからといって『ゲス』とまで言われて黙っていられるはずもなかった。 まりさはキッと片方だけとなった眼でドスを睨み付け、宣戦布告を行う。 「そう思うなら、ここでまりさとしょうぶをしてね!」 それを聞いて、まりさ以外の全てのゆっくりが言葉を喪った。 ドスに勝つ。 そんなこと、普通のゆっくりにはできるはずもない。ドスは人間でさえそうそう手出しできないほど強大なゆっくりなのだ。 そのドスに、ただの一匹のゆっくりでしかないまりさが勝つなど、平時なら一笑に伏されるようなありえない話だった。 だが誰一人茶化すものがいなかったのは、まりさにそうさせないだけの何かがあったからだ。 「おまえが本もののドスだというのなら、まりさなんかにまけるはずがないよね! 逆にまりさがかてば、おまえはドスなんかじゃない、ただ大きいだけのまりさだよ! このにかげつ……まりさはおまえにかつためだけに、おまえよりつよくなるために、がんばってきた。 みのあかしを立てたいというのなら、まずはこのまりさをたおせ、にせものめ!!」 溜まりに溜まった怒りをぶつけるように、まりさはドスを挑発する。 「ゆ……どうしても、やると言うんだね」 そしてそこまで言われて黙っていられるほど、ドスもまたプライドの低いゆっくりではなかった。 今の自分には、この群れのリーダーとしての立場がある。 まりさの言うことは一面では事実だが、しかし、それだけのことではないのだ。 そのことをきちんと説明すれば、群れの皆は分かってくれる。ドスはそう信じている。大丈夫、皆良いゆっくりだから。 ──だがそれもこれも、目の前のまりさを黙らせてからだ。 「分かったよ、まりさ。そのちょうせん、受けてたつよ!」 普段は温厚に垂れ下がっている眦を、今日ばかりは怒りの形に吊り上げ、ドスはまりさを睥睨した。 「双方合意したと見ていいな?」 睨み合う両者の間に、男が割って入る。二匹それぞれの表情を確かめ、頷いた。 そして懐から十数枚の御札を取り出すと、何やら呟き、空中に放った。 御札は光の線となって、広場を円形に周回し始める。 「「「ゆゆゆっ!?」」」 突然の出来事に、円の内側にいたゆっくり達は、慌てて外側に逃れていく。 やがてリング状になった光線はゆっくりと高度を下げていき、それが地についたとき、薄い光の壁が出来ていた。 広場の中心、半径二十メートルほどの円形の空間に、まりさとドスまりさの二匹のみが残される。 男は全てのゆっくりに聞こえる声で言う。 「聞け! この結界の中が、まりさとドスまりさのための闘技場だ! ドスに加勢したいならば入るがいい! ただし一度入ったら、どちらかの陣営が全て倒れるまで出られない!」 それを聞いて、ドスに加勢しようと動き出したゆっくり達もいたが、 「大丈夫だよ! みんなは下がっていて! まりさは、わたし一人でかってみせるよ!」 ドスの言葉に、渋々といった様子で引き下がる。 とはいえ、結界の外のゆっくり達は、その全てがドスの勝利を確信していた。 まりさによって疑念を喚起されたとはいえ、ドスの強さは群れの全員が知っていたからだ。 一部ではむしろまりさの無謀を嘆き、または嘲る声すら聞こえてくる。 だがまりさは、それらを全く意に介さず、ただドスだけに憎悪を注いでいる。 「ドスまりさ、戦う前に俺から言っておくことがある。このまりさには、お前の『ゆっくり光線』も幻覚も効かない。 間違っても使うなよ。それはお前に決定的な隙を生むことになる。その隙を、このまりさは逃しはしないぞ。 加えて言うならば、このまりさは『武器』を持っている。純粋な力比べになるとは思うなよ」 「……どうしてそんなことをわたしにおしえるの?」 不可解そのものの表情で、ドスは男に訊いた。 「俺は、別にそのまりさの飼い主なんかじゃないからな。 ただまりさがお前に勝ちたいと言ったから、俺はまりさを助け、そして戦う術を与えた。それだけの関係だ。 言っただろう、俺は敵でも味方でもないと。だから、どちらか一方が極端に有利になるような状況にはしたくない。 何よりこれは、まりさ自身が望んだことでもある」 驚きの表情で、ドスはまりさに視線を戻した。まりさは静かに、憎悪を漲らせながら、言う。 「とうぜんだよ。ふいうちでおまえにかったところで、うれしくもなんともない。 みんなが見ているまえで、正面からせいせいどうどう、おまえをたおしてやる」 まりさは殺意を隠そうともしない。それにドスまりさは、ほんの少しだけ、哀しそうに息を吐いた。 「どちらも、準備はいいな? では、────始め!」 決闘開始と同時、まりさは弾かれたように飛び出した。 その速さは他のゆっくりの比ではない。硬化剤の継続投与によって、身体は強い弾力性を持つに至った。 その弾力性を最大限に活用して、まりさは地面を低く、しかし早く跳ねていく。ただの一歩で、一メートルもの距離を詰めていく。 対し、ドスまりさはまずは様子を見るつもりであった。 だがまりさの尋常ならざるスピードを前に、決して余裕を持って戦える相手ではないと判断した。 ドスはどっしりと構え、まりさを正面から弾き飛ばす算段を立てた。まりさは武器を持つというが、大抵のものはドスには通用しない。 まりさは構わず、正面から突っ込んでいく。 『ドスパークは始めのうちは警戒しなくていい』 まりさの頭の中で、男が教えた対ドス戦術が再生されていく。 『他のゆっくりを巻き込む恐れがあるから、戦闘開始直後にはまず使わないと見ていい。 もし使うとしても、溜め時間が長いから、お前ならば如何様にも対処できるだろう』 だからまりさは、ひたすら距離を詰めていく。ドスが全身の皮を収縮させ、こちらを弾き飛ばすつもりであるのを理解した上で、だ。 その通りにドスはまりさが目の前に来た瞬間、その身体を前に押し出そうとして、 「──ゆ?」 まりさの姿を見失う。 次に感じたのは、右側面の皮への鋭い痛みだった。 「ゆぐぅぅぅぅぅ!!??」 つい今まで目の前から突進してきたと思っていたまりさが、いつの間にか真横に回り込み、皮に喰らいついていたのだ。 『お前とドスじゃウェイトの差は明らか。正面からぶつかりあって勝つのは絶対に不可能だ。 だから決して正面切って戦うな。お前の武器は小回りの利くその身体だ。ドスの死角に回り込め』 ドスの射程圏内に入る直前、まりさは弾力を最大限に活かして横っ飛びし、ドスの視界から消えたように見せたのだ。 強く噛み締めた前歯が、ぶつんと皮を噛み切った。 ドスの硬い表皮を噛み千切るそれは、当然、普通のものではない。 一度全て歯を抜かれ、男の手によってセラミック勢の鋭い歯が埋め込まれていた。これがまりさの『武器』だ。 だが浅い。ドスの分厚い表皮は、まりさの一噛みでは餡子にまで届かなかった。 ドスが振り向いても、もうそこにまりさはいない。またあまりに身体が大きすぎるため、足元まで視界が及ばなかった。 本能的な勘だけを頼りに、ドスは前方へ跳んだ。その直後、まりさの歯がガチンと鳴る音がした。 ドスはまりさから距離を取り、再び、決闘開始時と同じ距離を取った。 違うのは、ドスの皮の一部が喪われていること。 それはドスの体躯からすればほんの些細な傷だが、群れに与えた衝撃は大きかった。 無敵だと思っていたドスが、戻ってきたまりさに手傷を負わされた。 それだけあのまりさが強いのか、それともドスが弱いのか──ゆっくり達には、判断がつかない。 大小二匹のまりさは、お互いの隙を突かんと、一進一退の攻防を繰り返している。 ドスは先程の攻撃への警戒から、まりさを見失った瞬間には大きく距離を取るように跳躍した。 対し、まりさはなんとかドスのサイドを取ろうとするが、回り込む動作の分だけ一手遅れる。 どちらの攻撃も当たらない──そんな状況が長く続く。 『長期戦は不利だ』 男の声が餡子の深い位置から響いてくる。 『体躯の差がそのまま体力の差と言っていい。千日手になったら、ドスが痺れを切らすより、お前の体力が尽きるほうが早い。 だからそうなる前に、早々に状況を打破することが必要だ』 ドスの死角に入る。ドスは再び警戒して、大きく跳躍する。だがまりさは、攻撃する素振りすら見せなかった。 そしてドスが次に振り向いたとき、まりさはわき目も振らず自分に突っ込んできていた。 来る──ドスは予感する。あと次にまりさが着地したとき、再び自分の視界から消える。 連続してジャンプするのは正直辛いが、あの歯の威力は侮れない。 だがこうして逃げ回っていれば、いつかまりさにも体力の限界が来る。卑怯と言われようが、背に腹は変えられない。 (ごめんね! ころしたりなんかしないから、どうかわたしに大人しくやられて!) そう思えるだけの余裕がまだドスにはあった。 だがそれが大きな間違いであることに、ドスは愚かにも気づかない。 所詮己の生来の力を頼みにしてきたものに、己を捨てて強さを得たものの力を理解することはできないのだ。 まりさが着地し──消えない。 だが代わりに、その頬は大きく膨らんでいて── 「ぷッ!!!」 まりさが吐き出したのは、人の拳大ほどもある尖った石だった。 それは過たず、ドスの両目の間を直撃する。 「ゆぎゅっ!?」 普段感じることのない痛みに、ドスの動きが一瞬止まる。 致命的な隙が生まれる。 コンマ一秒の空白の次に、ドスの右目が映したのは、帽子から次なる『武器』を取り出して迫るまりさの姿。 そしてそれが、右目が映した最後の光景だった。 ザグン。 「ゆぎゃあああああああああああああ!!!」 まりさの咥えたノミが、ドスの右目の表面を抉る。 『目は、日中行動する陸上生物ほぼ全てに共通の弱点だ。その重要性に反し非常に脆くできている。 だから、狙えるならまず目を狙え。位置的に厳しいが、それだけに見返りは大きい』 面積としては浅いダメージだが、しかしそれだけで目は目としての機能を喪った。 「はな゛れろ゛ぉぉぉおぉぉぉおおお!!!!」 ドスが身を揺すると、まりさが突き飛ばされる。思わず口からノミが放り出されるが──ノミはまりさの動きに追随するように一緒に跳んでいく。 ノミの柄は、紐によってまりさの帽子と繋がっている。 そして帽子は、まりさの頭に直接縫い付けられていた。 まりさ種にとって命の次に大事な帽子は、今のまりさにとっては今や命と等しい価値を持つ『武器庫』だった。 ドスに突き飛ばされたものの、まりさはすぐさまノミを咥えなおし、再びドスへ突進する。 このとき、ドスは初めて恐怖した。 まりさの目に宿る、尋常ならざる暗黒の視線が、ドスの一つだけになった目を射抜いたのだ。 加えてあのノミからは、とてもゆっくりできない何かを感じる。目を抉られてそれを理解した。 ──ドスは知る由もない。そのノミが、つい先日、百を越えるゆっくりの餡子を吸ったものであることを。 ノミの刃先から溢れ出すおどろおどろしい何かが、獣の顎となって残る目を狙っているような錯覚が、ドスを襲った。 「ゆ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅ!!!!」 まりさとは見当違いの方向に、ドスは跳躍した。『回避』ではなく、それは『逃亡』に等しいものだった。 このとき、ドスは二つのミスを犯す。 一つには、恐怖に駆られ、まりさの動きを良く見ずに逃げたこと。 もう一つには、着地後、既に喪われた右目の側から振り向いたこと。 「──ゆ!?」 過ちに気づいたときにはもう遅い。まりさの姿はどこにも見当たらなかった。 その時、まりさはとうとうドスの背後を取っていた。 「ぷっ!」 まりさが再び口から何かを吐き出す。それはドスの髪の毛に当たって割れ、内包していた液体を撒き散らした。 まりさが吐き出したのは、透明な液体の入ったガラス球だった。 「ぷっ!」 ドスが音の発生源に気づく前に、更にもう一つ。また別の場所に当たって割れる。 「ゆっ! うしろにいるね!」 ドスが振り返る直前、三度、まりさは口から『武器』を吐き出す。 まっすぐに飛んでいくのは、紐で繋がれた小さな石。 それはドスの髪の毛で受け止められ、小石同士がぶつかり──火花を発した。 「見つけたよまりさ! いいかげん、おとなしくしてね!」 ドスはまりさを説得しようと試みた。それは慈悲というよりも、これ以上戦えば自分がゆっくりできないと悟ったからだ。 まりさは明らかに異常だ。 男はまりさの『手伝い』をしたというが、それは単純に鍛えたというだけのことではないに違いない──そのことに、ようやくドスは思い至った。 ──それは、あまりにも遅すぎる発見であった。 ふとドスが気づくと、何やら自分の後ろが騒がしい。それでも目の前のまりさに対し警戒を緩めるわけにはいかなかった。 だが折り重なる激しい悲鳴の中から、一匹のゆっくりの言葉を聞き分けたとき──ドスは自分を見失った。 「どずのがみがもえでるぅぅぅうううう!!! れいぶのりぼんんんんんんん!!!」 「ゆ゛あ゛あ゛あああああああ!!!???」 ドスが叫ぶのと、後頭部の熱を自覚するのは、同時だった。 まりさが投げたのは、油の入ったガラス球と火打石だった。まずドスの髪に油を撒き、その後火打石で着火したのだ。 『ドスをドスたらしめているのは、他のゆっくり達からの信頼の証であるリボンだ。 それを破壊すれば、直接的なダメージは少なくとも、精神的には多大な負荷をかけることができるだろう。 周りに他のゆっくりもいればなお良い。みすみすリボンを壊されたドスは、その失態を責められるだろうからな』 『最も効果的なのは焼き払うことだ。ゆっくりの髪は兎角燃え易い。 だがそれはお前にとっても同じことだ。火種を持ってうろつくわけにもいかない。 多少手間だが、この二段階の手順を踏むことで、ドスの髪を燃やすことはできるだろう。 もっとも、もしお前がこれを自分の頭の上で割ろうものなら、お前自身が焼け死ぬことになるがな──』 あらかじめ提示されていたリスク。それを承知で、まりさは帽子の中に油と火打石を仕込んでおいた。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あああああ!!! も゛え゛る゛うううううううう!!!」 ドスは無様にそこら中を転げまわって、火を消そうと躍起になっている。 だが火はあとに投げた油に燃え移り、より焼失範囲を広げていくばかりだ。 「どずのばがああああああああああああああああ!!!!!」 「どうじでりぼんもやずのおおおおおおおおおおおおおお!!!???」 遠慮のない罵声がリングの外から飛び交った。ドスの信頼は、喪われたリボンの数に比例して貶められていく。 あまりに無様な敵の姿を見て、まりさはしかし何も思うことはなかった。 そうだ。これこそが、自分の求めていたものだ。これでドスは、今までのように皆から信頼されることはなくなる。 少なくとも、ドスに復讐するというまりさの目的は、この時点で既に達成されつつあった。 ドスを負かし、その傲慢な自信を打ちのめし、その後は── その後は? 「まりざああああああああああああああああああああ!!!!!!」 一瞬、思考の淵に沈みそうになった意識を、ドスの怒号が引っ張り戻した。 ようやく火を消したドスの姿は、哀れなものだった。髪の毛は半分が真っ黒に焼け焦げ、帽子も三割ほど喪われてしまっている。 群れのリーダーとしての落ち着きはどこへいったのか、猛烈な赫怒を以てドスはまりさを睨みつけていた。 「ごろずっ!!! ごろじでやるぅぅぅぅぅぅ!!! よぐもまりざのりぼんをおおおおおおおお!!!」 その顔は般若もかくやというほどの、怖ろしい形相と化していた。群れのゆっくりですら、ドスの変貌に恐れ慄いている。 「ようやく本性をあらわしたな! ゲスめ!」 それを見て、まりさは改めて確信した。 このゆっくりは、やはりドスなどではない。自分が誅すべき、群れの、いや全てのゆっくりの敵なのだ! 「ゲズはお゛ま゛え゛だあああああああああああああああああああああああああ!!!!!」 慈悲も、恐怖も、一切合財を灼熱の怒りに塗り固めて、ドスは正面からまりさに突っ込んでいく。 『冷静さを見失った相手ほど扱い易いものはない』 対するまりさの心は冷え切っていた。そうだ、教わったとおりやればいい。そうすれば、このような下劣なゆっくり程度、自分の敵ではない。 体格差を物ともしない、知識と経験に基づいた自信が、まりさの根幹を支えていた。 『正面から突っ込んでくる敵を、正面から相手にする必要があるか? ──否だ。 さっきも言ったとおり、どう足掻いてもお前じゃドスの体格には対抗できない。 よしんば攻撃を加えることができたとして、ただの一度で貫徹できるほど、ドスの表皮は軟くないはずだ。 ──だから、狙うならば、既に一度攻撃を加えた箇所。一度目で防御を削り、二度目で渾身の一撃をくれてやるんだ』 まるで暴風のようなドスを前にして、まりさは一歩も退かない。 ただ機を伺うようにじっと身を低くし──衝突の瞬間、横っ飛びに跳んだ。 帽子の中のガラス球を割る心配がなくなったまりさの跳躍は、今までで一番速かった。 跳んだのは、ドスの右側。 全てはこの瞬間のための布石だ。開始直後、右の頬を噛み千切ったのも。右の目を抉ったのも。冷静さを奪ったのも。 「じねええええええええええええええええ!!!!!!」 咆哮するドスは、だが気づいていない。ドスの下にまりさはいない。 まりさの帽子から、先端の尖った竹が落ちてくる。それを咥え、捻るように全身を収縮させて跳躍し。 「死ぬのはお前だああああああああああああああああああああ!!!!!」 貫いた。 「ぶぉぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」 一度噛み千切られ、薄くなった皮は、竹の侵入を容易に許した。 管状になっていた竹は、そのままドスの餡子を噴出す間欠泉と化す。 ドスほどの巨体であれば、小さな穴が空いたところで皮同士の圧力によってすぐに塞がってしまう。 だがそこに管となるものを突き刺してやれば、逆に皮の圧力がそれを固定し、穴は永遠に塞がらない。──今のように。 「あ゛っ、あ゛っ、あ゛っ、あ゛っ、あんごぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!! わたぢのあんごがあああああああああああああああああああああ!!!!」 勢い良く、細い竹からドスの餡子が流れ出していく。 勝った。まりさは勝利を確信した。ほどなくドスの餡子は生存に必要な分を垂れ流し、その命を奪うだろう。 だがそこで、まりさにとって思いもよらぬことが起きた。 「ゆあああああああああああああ!!!!」 「ゆっ!?」 ドスは餡子が流れ出すのにも構わずに、まりさに体当たりした。 潰されぬよう、咄嗟に飛びのいて空中でそれを受け止めたまりさだったが、ドスのぶちかましは強烈だった。 たった一撃で体内の餡子が揺り動かされ、まりさは天地の認識を喪う。 ボールのように地面を転がり、ようやく体勢を立て直したとき、ドスが大きく口を開いてまりさのほうを向いていた。 「げじどべええええええええええええええええええええええ!!!!!」 口腔内にドスパークの光が溜まっていく。最早群れへの被害など考えず、まりさを抹殺するつもりだ。 逃げようと思ったが、足が震えて動かなかった。恐怖ではない。先程の体当たりで、一時的に麻痺してしまったのだ。 逃げられない。まりさは悟った。 『──もしドスがドスパークを使うなら──』 この戦いの前、男が最後に教えてくれたことを思い出す。 『もし、ドスがドスパークを使うなら、お前の喪われたその左目に埋め込んだモノを使え。 発射直前のドスの口の中に放り込むんだ。だがこれは、非常に危険だし、タイミングを誤ればお前が死ぬだけだ。 だからこれは、本当に最後の手段だ。どうしてもドスパークを避けられないときにだけ、命を賭けて使うんだ』 「まさに今が、そのときだよ!」 まりさは大きく息を吸い込むと、口、そして左目を閉じる。 「ふん゛っ!!!」 そして口に含んだ大量の空気を飲み込むと同時、全身の力を右目に集中させた。 逃げ場を喪ったエネルギーが、右目から鉄砲水のように放たれる。 バツン、とまりさの眼帯が弾け飛び、その下にあったもの──喪われた眼球の位置に埋め込まれていたものを、若干の餡子と共に発射した。 まるで人間が全力で投げたボールが如きスピードで、山なりにではなく直線的に、ドスの口目がけて飛んでいく。 それは過たず、ドスパークの光の中心のキノコに向かっていき── ──爆発した。 「あqwせdrftgyふじこlp;!!!!!」 ドスパークの熱量とまりさが投げたものが激しく反応し、ドスの口内で暴発したのだ。 男がまりさに持たせたのは、いわゆる打ち上げ花火だった。当然、火薬の塊にも等しい。 花火は打ち上げられたあと、中心の火薬が爆発することで、『星』と呼ばれる小さな火薬玉が四方八方に飛び散り美しい色を色彩を見せる。 だがドスパークによって引火した花火は、『星』それぞれが滅茶苦茶な方向に飛び散って、ドスの口内をずたずたに切り裂いてしまった。 「あ゛、あ゛、あ゛、あ゛…………」 爆発の衝撃で、ひときわ大量の餡子が頬の穴から流れ出ていた。 そのとき一緒に突き刺していた竹も飛び出したようで、それ以上の餡子の流出はなかったが、そのことはもうドスにとって何の救いにもならない。 ドスの体躯は、元の半分ほどの大きさにまで潰れてしまっていた。 ぐるんとドスが白目を剥き、重々しい震動と共に地面に倒れ伏した。 「…………」 そして、そのまま起き上がることはなかった。 まりさは、ドスに勝利したのだ。 あとがき 饅頭のバトルってどう書けばいいんだ。 また20KB越えたのでまた分割しました。自重しろ。 しかし……これは……ゆっくり虐待SSどころか、ゆっくりSSなんでしょうか…… どちらにしろここまで来たので、最後まで書き上げたいと思います。 ちなみにお兄さんが使った御札は霊夢から買ったものです。お兄さん自身はちょっとだけ腕に覚えがある程度。 ただしお兄さんは、『外敵から身を護る結界』を、内側と外側を逆にして使っているのですが…… 次でエピローグです。 今までに書いたもの ゆっくり実験室 ゆっくり実験室・十面鬼編 ゆっくり焼き土下座(前) ゆっくり焼き土下座(中) ゆっくり焼き土下座(後) シムゆっくりちゅーとりある シムゆっくり仕様書 ゆっくりしていってね! ゆっくりマウンテン 復讐のゆっくりまりさ(前) 続き このSSに感想を付ける
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「王は愛する」ZE A出身イム・シワンが少女時代ユナに、母親の復讐を助けると話す。 MBC月火ドラマ「王は愛する DVD」でワン・ウォン(イム・シワン) は、王の力をどう利用すれば良いか聞くために、泉隠寺(チョンウンサ) に泊まっているイ・スンヒュ(オム・ヒョソプ) の元を訪れた。イ・スンヒュはワン・ウォンに「帝王韻紀」を渡す。 イ・スンヒュはウンサン(ユナ) が母親を亡くした衝撃で味覚を失ってしまったことを伝えた。そして「自分だけ楽しければ良い人がいて、ハベクの新婦 DVD他人が幸せであってこそ自分が楽しくなる人がいる。ウンサンはそんな人だ。あなたにもそのような君主になってほしい。人々が楽しくなってこそ、王が楽しくなる、そんな人になってほしい」とアドバイスした。 ワン・ウォンはウンサンに宮殿に戻るように言う。しかし、ウンサンは父親の病気を治せる医者を探しに大食國(アラビア) へ行くという。王は愛する DVDしかし、ワン・ウォンは「君は僕と一緒に宮殿に行くんだ」と命じる。 また、ワン・ウォンはウンサンの母親に死についても触れた。品位のある彼女 DVDワン・ウォンは「遅すぎてしまって申し訳ないが、これからでも一緒に探そう。誰がなぜそんなことをしたか。僕が助けてやるから。君の母親の復讐を」と伝えた。
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「おい…何のマネじゃ?」 書庫から出て、執務室に向かうハーゴンたちの前にその行く手を阻むようにジタンが立ちはだかる。 その剣呑な雰囲気はただ事ではない。 「よくも…騙してくれたな」 「何の話じゃ?」 「俺達を犠牲にして、テメェたちだけで逃げようと思っていたんじゃねぇのか?」 それを聞いてハーゴンは無心ぎくりとしたのだが、勤めて平静を装う。 (そのテメェの中にワシは入っておらんがの…だが似たようなもんじゃ) 「何を言うかと思えば、いいか?不安なのは分かる、じゃがの……」 「だったらこれは何だ!」 ジタンはハーゴンへと何かを投げつける、それはセーラの首だった。 それを見て導師がひぃと声を上げる。 「調べたら傷のほとんどが背中についていた…どう考えても逃げようとしている所を強引に襲ったとしか思えない」 「俺達もああいう風にするつもりだったのか!答えろ!」 それを見るとハーゴンも流石に平静ではいられなかった。 「バカな…わしはそこまでしろとは命じてはおらぬ!」 確かにセーラを供物にしようと思ったことは事実である、だがそれはあくまでも後々のことで、 今この場で手を下すつもりなど無かった、万が一を考えマゴットにはイザというとき攻撃的に動けるよう、 軽い暗示をかけていたが・・・。 もしや…もうすでに自分の力を思うように操る事が出来なくなっている…だからほんの軽い暗示も、 思わぬ形でマゴットへと影響を及ぼしたのか…。 「それで、マゴットは…マゴットはどうした!…まさか」 答えを聞くまでもなく、ハーゴンは執務室へと走る、そしてその扉近くで物言わぬ骸と化したマゴットを見たとき、 「なんと…なんということじゃ…」 ハーゴンはふらふらとマゴットの亡骸に歩みより、その場にへたり込む まぶたを閉じればここまでの数々の画策が甦ってくる、あと少し…あと少しで上手く行くはずだったのに。 ハーゴンは自分を呪わずにはいられなかった、確かに手を下したのはジタンだ、しかし元を正せば 策を弄した挙句の結果である、彼は人の心を操るのに長けていたが故に人の心を侮り過ぎたのである。 「このロンダルキアはワシにとっては……聖地などではなく死地でしかなかったのかぁ~~~」 するとハーゴンの身体からしゅうしゅうと煙が上がり、肌にはシワが刻まれ、その髪は白くなり抜け落ちていく 力の源であったシドーを失って以来、その肉体・魔力の崩壊を必死で食い止めてきたハーゴンだったが この衝撃は大きかった、そしてついに力を繋ぎとめていた儚き1本の糸がぷつん、と切れたのだった。 「おっさん…」 後から追いついたジタンが見たものそれはただの無力な老人、ただ眼光だけは未だに鋭いままの姿だった。 実はジタンも不安だった、1時の感情に流され、人を殺めてしまった事に対する後悔。 だから彼は願っていた、自分の思っていた通り、ハーゴンとマゴットが自分を騙していて欲しかったと、だが。 その結果は皮肉なものだった。確かにハーゴンは自分を謀っていたのだろう、しかし…マゴットの亡骸のそばで うなだれる姿は彼の想像していたものとはかけ離れていた。 「おっさん……そこまでしなきゃいけなかったのか?」 「ああ、必要ならばワシは神でも殺した、いわんやおぬしらごとき」 「騙したワシが…憎いか?殺したいか?」 そのハーゴンの呟きにジタンは答える事が出来ない。つい数分前まではそうだったのに。 (ちくしょう…おれこれじゃバカじゃないか…ちくしょう) そんなジタンの内面の葛藤も知ってか知らずか、ハーゴンはジタンへと頭を下げる。 「だが、ワシはまだ殺されるわけにはいかぬ!ワシの全てを奪ったあの者にせめて一糸報いるまでは!」 「改めて頼む!この通りだ……お前の力をワシに貸してくれ!その後でならこの命くれてやる」 枯れ枝のようになった身体の何処にそんな気力があったのだろう? しかもハーゴンが…この尊大な男が恥も外聞もなく血涙を流しながら土下座をしているのである。 その鬼気迫る姿にジタンは圧倒された。 重苦しい沈黙の中、ようやくジタンが口を開く。 「あんたのためじゃない…殺さなくても良かったのに、殺しちまったマゴットのためだ…」 「そうか」 ハーゴンもそれ以上の言葉は発さない、ただ。 「こっちへこい」 ハーゴンはジタンを連れてまた別の部屋へと向かう。 「導師、お前もじゃ」 その言葉で物陰から様子をうかがっていた導師も、はっ、と気がついたように後を追うのであった。 それからしばらく経過して、ハーゴンの私室内。 「良いか、これの術式が完璧に解ける者でなければ連れてきても無駄じゃ、30分以内に解けぬ者は失格として扱え」 ジタンは数枚の紙を手渡されている、そこにはぎっしりと何やら難しい字が書きこまれていた。 どうやら魔法の公式のようだ。 「それと、これも持って行け」 ハーゴンが続いて茶ばんだ紙を渡す。それには地図が記されている。 「このロンダルキアの地下には縦横に通路が通っておる、そのマップじゃ」 「地上を歩くのとでは距離にして4倍は得が出来る、うまくやれば全土を十分回れるはずじゃ」 ワシはもう少しは保つかもしれんが、おそらく明日の朝までの命、それまでに必要な知識を全て伝えねばならぬ。 じゃからこの時計で0時になるまでに戻ってきてくれんかの」 ジタンは手渡された時計を見る、現在15時、ということは後9時間しかない……。 一方。 「これは単純に魔力の強さや知識のみを問う問題ではない、ぶっつけ本番で儀式を成功させるには、 特別なセンスが必要、つまりこれはそのセンスを計るのが目的、それに魔力は人数でカバーできるしの」 そう声をかけるハーゴンの隣で導師は先ほどから例の術式にかかりっきりだ、 白魔法マスターの彼がてこずるあたりが問題の難易度を物語っている。 「おい、お前は行かないのか?」 ジタンの言葉に導師は申し訳無さ気に答える。 「僕は残るよ…病人を放ってはおけないから、そうだ、君にこれを」 導師は星降る腕輪をジタンへと差し出す。 「君は足が速いからきっと役に立つよ、それとお願いがあるんだけど、ここのすぐ東の森に、 ティファって胸のおっきな女の人と、デッシュってちょっとちゃらちゃらした男の人がいると思うから よろしく伝えといて!」 「ああ、じゃあもう行くぜ」 「無理をしないで!危ないと思ったら逃げてよ」 ジタンは導師の言葉に背中越しに手を上げて応じると、そのまま足早に部屋を後にしていった。 それを見送るハーゴン、全てはジタンがどのような魔法使いを何人連れてくるかにかかっている。 それによって儀式の内容、方法も、果ては結果までもが変わってくるだろう、 そのための準備は整えておかねば……頭を抱えながら問題に取り組む導師の隣で、 ハーゴンは震える手で書物のページを紐解いていくのであった。 【ハーゴン(呪文使用不能、左手喪失、衰弱・老化) 所持品:グレネード複数、裁きの杖、ムーンの首、グレーテの首、首輪 第一行動方針:儀式の下準備 第二行動方針:不明 最終行動方針:ゲームの破壊】 【現在位置:神殿自室】 【導師(MP減少) 所持品:天罰の杖 首輪 第一行動方針:問題を解く 第二行動方針:ハーゴンの看病 最終行動方針:不明】 【現在位置:ハーゴンの自室】 【ジタン 所持品:仕込み杖、星降る腕輪、グロック17、ギザールの笛、グレネード複数 試験問題・解答用紙複数(模範解答も含む)、時計 第一行動方針:魔法使いを探す 第二行動方針:サマンサとピサロの殺害 最終行動方針:仲間と合流、ゲームから脱出】 【現在位置:神殿から外へ】 ←PREV INDEX NEXT→ ←PREV 導師 NEXT→ ←PREV ジタン NEXT→ ←PREV ハーゴン NEXT→
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復讐少女 ~rachen Sie Madchen~ ◆qwglOGQwIk 「あったです」 翠星石がD-4で探していたもの、それは裏切りの証拠であるスタンガンであった。 吹き飛ばされたスタンガンは破損こそしているものの、スイッチを入れるとパチリと電撃が流れることを確認できた。 梨花が使っていたスタンガンはおもちゃの様な生易しいものでなく、人間を殺す立派な武器だった。 「チビ女にデカ女、あいつらやっぱりグルだったですか……」 チビ女こと古手梨花が翠星石に向かって突きつけようとしたスタンガン、それは翠星石の仮説が正しいことを証明していた。 お互いに仲良く接していた魅音と梨花、梨花の不可解な言動、そして魅音が水銀燈が逃れてきた訳、銃を欲しがっていた訳、 そして梨花が翠星石に襲い掛かってきた理由、これらを繋ぎ合わせると出てくる結論。 『園崎魅音と古手梨花はローゼンメイデンの関係者で、水銀燈の協力者である』 翠星石がそう結論付けると、その人形の可愛らしい顔が憎しみに歪む。 「なあんだ、そういうことだったです……水銀燈……」 翠星石があの時ジュンを救えなかったのも、つまり水銀燈の協力者である魅音と梨花の二人がグルになって妨害したということになる。 翠星石は考える、じゃあ何のためにこんなことを? 翠星石と桜田ジュンが再会して困る人物、それは水銀燈以外に居るはずが無い。 とするとあの爆発は水銀燈の仕業ということになるのだが、いかに姉妹の中でも強力な水銀燈の力を持ってしてもあのようなことは不可能であるはずだ。 「スィドリーム」 翠星石がその名を呼んでも、今までと同様に人工精霊を呼び出すことが出来ない。翠星石は明らかにおかしいと感じていた。 翠星石がここに来てから何度試しても人工精霊のスィドリームを呼び出せない。 それに雑貨店の鏡からnのフィールドに移動しようとしてもできない等、明らかに自分達ローゼンメイデンの力は制限されていると想像が付く。 ローゼンメイデン全てが制限を受けるならば、当然水銀燈もその能力を制限されるはずである。 仮に水銀燈がその制限を受けないとしても、受けたのならなおさら大爆発を起こす程の力を行使することは不可能だと考える。 じゃあ水銀燈の仕業じゃなく、仮説が間違っているのだろうか。でもそれにしては不可解な点が多すぎた。 とはいえ真紅にジャンクにされたはずの水銀燈は一度復活したこともあるし、水銀燈ならこのぐらいはやってしまうかもしれないという思考が頭に残る。 「……さっぱり訳が分からないです」 ため息をついた翠星石は、こういう推理は自分には不向きと考えて頭を切り替える。 こういうことはチビ人間や真紅、それに自称ローゼンメイデン一の頭脳派の……えーっと誰だったっけ? 「あーん、もう訳がわかんな過ぎてむかつくですぅー! 」 翠星石は頭を掻き毟って薔薇乙女とは言いがたい動作で一人わめくが、ここがどういう場所だったか思い出して動きを止める。 翠星石は状況を整理することにし、名簿を開く。 警戒しなければいけないのは魅音と梨花が知り合いといっていた前原圭一、竜宮レナ、北条沙都子、そして園崎魅音。 魅音と梨花がグルだった以上、奴らの知り合いも当然危険と考えられる。この中に水銀燈のミーディアムも居るかもしれない。 「水銀燈のミーディアム、ミーディアム…」 水銀燈のミーディアム、何かが引っかかる。そしてもう一つのフレーズを思い出す。 それが正しければこの大爆発にも説明がつく。水銀燈を従えるだけの力を持つ人間。 「カレイドルビーですか……」 水銀燈を従わせられるだけの力を持つカレイドルビー、魅音の証言が本当ならばこの大爆発にも説明は付く。 元々強力だった水銀燈にそれだけ有能なミーディアムからの力が供給され、しかも本人もその水銀燈を抑えるほどの力を持つ。 しかし、魅音の言うカレイドルビーというのは何者なのか? 名簿に名前が無かった所から考えて偽名で間違いないだろう。 カレイドルビーは何故偽名で、それは一体誰なのか。 アリスゲームにおいて翠星石達は結局の所、水銀燈のミーディアムは知ることができなかった。 つまり、水銀燈が意図的に隠していると考えれば魅音の証言には筋が通る。 ならば翠星石を含むローゼンメイデンの関係者は十人、つまりカレイドルビーは前原圭一、竜宮レナ、北条沙都子、…あるいは園崎魅音か カレイドルビーがそれだけの力を持つとすれば、あの大爆発でチビ人間を焼き殺すだけの力があるとしても何もおかしくない。 そして大爆発を起こす間に翠星石達が邪魔にならないように隔離する魅音と梨花、彼らはあわよくば翠星石を殺そうとすらしていた。 「とんでもねえ奴らばっかですぅ……」 背筋が薄ら寒くなるとともに、心配になるのは妹の蒼星石。 翠星石じゃとてもかなわないような強者、カレイドルビーと水銀燈。もしあいつらに蒼星石が会ったら…… なおさら心配になる。真紅はともかく、蒼星石はこの庭師の鋏が無い。 水銀燈と以前戦った時にはあった鋏が今は無い。そのような状態では水銀燈相手に戦いにならないだろう。 翠星石はまず、自分がやらなければいけないことを定める。 「デブ人間は翠星石がついていてやらないといけないですが…まずは蒼星石ですぅ」 も、勿論デブ人間も心配だから後で探してやるです! と心の中で付け加えてから行動を開始する。 向かう先は人間が集まりそうなホテル。水銀燈を初めとする危険人物が居るかもしれないが関係ない。 そんな危ない奴らは殺すまで、と手元の銃を見る。 庭師の如雨露が無い以上、不安ではあるが頼れる武器はこれしかない。 やれるかどうかは分からない、でもやるしかない。 翠星石にとっては嫌な奴で、翠星石のミーディアムとしての自覚が足りなかったチビ人間、桜田ジュンのことを思う。 そんな嫌な人間ではあったが、それでも人間にしては見所のある奴だから、殺されたのは今でもとても悲しい。 「水銀燈、絶対に殺してやる……です」 そうして人形は市外を低空で飛行しながら移動を始めた。 頭にあることはただ一つ、チビ人間の敵討ち。 ジャーッという水音とともに、野原みさえはその場所から出てくる。 「本当にトイレが使えてよかったわ」 みさえは手を洗い、鏡に映った自分の顔を見る。まだ半日も立っていないのにだいぶ疲れたように感じている。 といっても、みさえがサトーココノカドーのバーゲンセールで行う争奪戦の終了後ほどではなかったが。 「まさか、こんなところで三日ぶりのお通じが来るとはあたしも神経が太くなったもんね~ 」 はははと能天気に笑い飛ばしたかった所だが、しんのすけがどうなっているかを考えたら笑う気にはならなかった。 お通じが来てこれだけ気分が悪いのは初めてだが、ここは無理してでも笑っておこうと思い、いつものように笑ってみることにした。 みさえが必死につくろった馬鹿笑いは、ほんの僅かな時間で破られることになった。 「ホールドアップ、動くなです人間」 みさえは素直に従って手を上げる。後頭部に当てられた金属のひやりとした感触がそうせざるを得ないと判断したからだ。 「翠星石の質問に正直に答えろです。嘘なんか付いたらどうなるか分かるですか? 人間」 「ううう嘘なんか付く気無いわよ、ええ! 全然!!!! 」 明らかに動揺した声でみさえが答える。翠星石は質問をする。 「最初の質問です人間、水銀燈を知っているですか? 」 銃口を更に押し込み、反応を見る。 「ししし知らない! なによ水銀燈って、灯りのこと? 」 「水銀燈の奴はランプなんかじゃなくて、最低の性悪人形です」 みさえの動揺は更に強くなる、この状態で嘘をつけるとは思えないと翠星石は判断する。 「二つ目の質問です。カレイドルビー、前原圭一、竜宮レナ、園崎魅音、北条沙都子の名前に心当たりはないですか? 」 「……沙都子って子なら知ってるわ」 「そいつとどういう関係ですか? 」 「金髪の小さな女の子だったわね。最初は私達を襲ってきたけど、ガッツに殺されそうになったところを助けたのよ。 その後、…色々あってお寺に一人残してきたの」 「賢明な判断です。まったく、水銀燈の知り合いにはろくな奴が居やがらないです」 「だからその水銀燈ってのは何?沙都子ちゃんとどういう関係?」 「水銀燈は水銀燈です。沙都子の奴は水銀燈の仲間で、殺人者です」 「確かに沙都子ちゃんは私達のことを襲ってきたけど…」 「黙れです、無駄口叩かず次の質問に答えるです」 さっぱりなみさえをよそに、翠星石は次の質問を投げかける。 「…知らないと思うですが、真紅と蒼星石という人形に心当たりはあるですか? 」 「知らないわよ、さっきから変な質問ばかりして、本当に私は何も知らないわよ! 」 「お前は立場が分かっているのですか人間、お前はただ黙って翠星石の質問に答えればいいのです」 そう言って翠星石は後頭部のそれに力を込め、ヒステリック気味だったみさえを黙らせる。 「次の質問です、庭師の如雨露について心当たりは無いですか? 」 「知らないわ、ガッツが何やら色々弄ってたみたいだけど、如雨露みたいなのは見なかったわね」 「それは本当ですか? 」 「そういわれても私は遠目で見ただけだから、ちゃんと確認しないと分からないわね」 翠星石は嘘かどうか考えるが、みさえの反応からしてまず嘘ではないだろうと判断する。 それより気になったのは先ほどから頻出しているガッツという単語である。恐らく同行者だろうと考える。 「次の質問です、お前の仲間のことを教えるです」 「…ガッツって大男に、キャスカって女の人、ゲインさんって重症の男の人、これが今ホテルにいる私の同行者ね。 それとは別にセラスっていう婦警さん、クーガーって馬鹿、光ちゃんになのはちゃんって女の子が今人探しに出ているわ」 「なるほどです、ではその仲間の所に翠星石を案内するです」 「…どうするつもり」 「別にお前ら人間をどうするつもりは無いです。水銀燈の仲間を殺すのに協力してくれればいいだけです」 「殺すってあんた! 」 「うだうだ無駄口叩かずにさっさと案内しやがれです、お前は翠星石に逆らうとどうなるか本当に分かってるですか? 」 「わ、分かったわよ…」 さすがのみさえも後ろの感触の前では逆らうことが出来ず、そのままホテルの一室に翠星石を誘導する。 そのうち後頭部の感触は消え、横を見れば銃を構えた人形が空をふわふわと漂っていた。 「それにしてもお前、よく見るとばば臭い奴です」 ばばという言葉に怒りを募らせるみさえだったが、銃口が目の前ではその怒りは発散することが出来ない。 ただ黙ってこの銃を向けた人形を案内するほか無かった。 隻眼隻腕の男ガッツは、気絶したきり動かない小型化したキャスカをホテル備え付けの机の上で眺め、たまに手で弄んでいた。 ガッツの目から見たそのキャスカは、ガッツの目の狂いなどではなくキャスカにしか見えなかった。 不可解な点は一つ、何故目の前のこいつは鷹の団時代の甲冑を着ているのか。 鷹の団はあの蝕で崩壊してから、キャスカとリッケルト以外の生き残りは居ないはずであり、この甲冑が誰かの予備とは考えられない。 そしてキャスカ自身の甲冑は、……あの時に無くなったはずであった。 甲冑だけでも不可解なのに、蝕で病んだキャスカの心が元通りになっていること。これも腑に落ちない点であった。 グリフィスやゴットハンドへの復讐は重要であったが、それとはまた別に重要なのがキャスカの精神だった。 あの蝕から救出された後、言葉も記憶も、…そして全てを失った白痴状態のキャスカ。 それが何故か他者とコミュニケーションを取り、あろうことか自分の意思で戦闘まで行っている。 キャスカはゴドー達の手厚い看護を受けたが、砕け散ったその精神は決して元には戻らない。 そのキャスカの心と甲冑、両方を元通りにするだけの力を持つあの仮面の男は相当ヤバイ存在だということが容易に理解できる。 その力はゴットハンドにも匹敵、……もしかするとゴットハンドよりも強力な力を持っているかもしれない。 ガッツは仮面の男について考えるがただ虫の好かない野郎だということでしかなく、考えはまとまらなかった。 ガッツがもう一つ不可解に思っていた点、キャスカがガッツのことを知らないこと これはつまり、文字通り"元通り"にしたとしか考えられなかった。今目の前に居るキャスカは俺のことを知る前にまで元通りにされた。 そう考えるとあの対応にも理解が出来る。目の前のキャスカはまるで鷹の団として戦場を駆けていたときの表情をしていた。 その表情こそがガッツにこの結論を裏付けるだけの証拠となっていた。 そこへドアノブの回る音がする。ガッツの思考はみさえへと移る。 みさえの奴がトイレへと行くとき、契約だし危険だから付いていくといった。 しかしみさえの奴はキャスカとゲインを見てろ、私は一人でも大丈夫と言ってしまった。 確かにトイレへと付いていくのはやりすぎかもしれないが、この殺し合いの中では絶対という確証はない。 戦場とは違い敵がはっきりしないからこそ、油断をせずに石橋を叩いて渡る戦略を取っただけなのであった。 ドアが開かれ、目の前に現れたのはみさえ、そしてみさえに銃を突きつけ、空中浮遊している小さな少女。 「あっはっはー、……ドジ踏んじゃった」 「ドジどころじゃねえだろうが、まったくよ……」 みさえの乾いた笑いに対する対応は、ガッツの悪態で切り替えされた。 「そこのデカ人間、動くなです」 「ああ、言われなくたって動けねえよ」 ガッツは黙って手を上げ、降参のポーズを取る。 「ガッツって男はお前のことですか? 」 「ああ、ガッツは俺だが」 達観した表情のガッツは、もうどうにもならないといった趣で翠星石の質問に答える。 「ゲインと、キャスカはどこですか? 」 「そこのベッドでぐっすりしてるのがゲインだ、そしてこいつがキャスカだ」 そういってガッツは手のひらサイズのキャスカを翠星石に見せる。 「たしかに、嘘ではなかったようですぅ」 「嘘ってそんな、嘘を付くなって言ったのはあなたじゃない! 」 「黙れです」 そう言って翠星石は銃口を再び後頭部へと突きつける。そこへガッツが言葉を投げる。 「で、あんたは結局の所どうしたい訳だ?そこの女は殺されたら困るから解放してもらいたいんだけどよ」 「翠星石の命令に従うなら、こいつを解放してやってもいいです」 「で、命令とやらはどんなもんだ?俺の命を取るとかは止めてくれよ」 「簡単な話ですデカ人間、水銀燈の知り合いを殺す手伝いをしてくれればいいです」 「水銀燈?誰だそいつは」 「お前達は水銀燈には会ってないみたいですが、翠星石もお前達もそいつの知り合いにひでえ目に会わされたですからね」 「俺たちが水銀燈の知り合いに会ったって? 誰だそいつは」 疑問だらけのガッツ、何か言いたそうなみさえの疑問に答えるように翠星石は言葉を続ける。 「北条沙都子ですよ。お前達も一度死にそうな目にあったと聞いてるのです」 「…ああ、確かに殺されかけたよ。んでそのクソガキと水銀燈にどんな関係があるって言うんだ? 」 「まったく、人間はバカで困るです。物分かりの悪いお前達にも分かるように、翠星石が特別に説明してやるです」 みさえの様子は更に変化する。その中に詰まった文句は一つ二つで済まない様な表情をしていた。 一方ガッツはというと、もうどうなってもいいと言った様子で翠星石の話を聞くことにした。 「翠星石がデブ人間を助けてやった後、やたらコソコソしてるチビ女の奴を拾ってやったのです」 「ちょっと待ってくれ、デブ人間やらチビ女とか言われても俺にはまったく訳が分からないぞ」 「黙って聞くですデカ人間、質問はあとでまとめて答えてやるです」 そういって翠星石は知る人にしか分からない、要領を得ない説明を続ける。 「…その後チビ女の知り合いのデカ女が現れて、水銀燈とカレイドルビーとかいう奴に襲われたと嘘を付いたのです。 デカ女の捜している知り合いの中に、北条沙都子、前原圭一、竜宮レナという奴がいたです。 デカ女とチビ女は翠星石を騙してミーディアムの、…チビ人間から翠星石を遠ざけ、水銀燈に殺させる手伝いをさせたです。 水銀燈とカレイドルビーはでっけえ爆発を起こして、…アホで間抜けなチビ人間の奴を、…殺しやがったです」 翠星石がその部分を話す時、チビ人間の件には特に強い感情を込められていたのを二人は感じる。 「それがあの大爆発だったって訳か」 「そうです、翠星石達が爆発音を聞きつけた時、……チビ人間の奴が、……動かないのを発見してやったです。 それからチビ女の奴が翠星石を殺そうとしたので、逆にぶっ殺してやったです。 その後デカ女も翠星石を殺そうとしたので逆にぶっ殺そうとしたら、デブ人間の奴が翠星石をふっ飛ばしやがったのです」 「お前、翠星石という名前か? 残念だが全く話が掴めないし、水銀燈と俺達にどう関わりがあるんだ? 」 「話は最後まで聞きやがれです」 ガッツの一言を押しとめ、翠星石は疑問に答えるかのように次の言葉を進める。 「翠星石を殺そうとしたチビ女とデカ女は水銀燈とグルで、そいつが話した知り合いの中に北条沙都子がいやがったのです。 聞けばお前達も沙都子に襲われたとかいうじゃないですか。奴らはグルで水銀燈と一緒に人間を殺しまわってるです。 話はこれで終わりです、分かったですかデカ人間」 ガッツはというと達観を通り越して、諦めの表情で翠星石を眺めていた。 「全く訳が分からないぜ、まずデカ人間とかチビ人間とか言われても誰なのか俺には分からん。 それに空中に浮かんでるお前は何者なんだ? 翠星石」 「そっから説明しなけりゃいけないですか、まったくデカ人間は本当に物分かりが悪いです」 「あーあーそうですか、じゃあ翠星石様に人間に分かるように説明してもらえますか? 」 嫌味たっぷりにガッツが受け答えし、翠星石が説明を始める。 要約すると、翠星石はローゼンメイデンという人形で、その姉妹である水銀燈は殺人狂で得体の知れない奴。 そして圭一、レナ、沙都子、魅音、梨花という奴が水銀燈の協力者で皆やる気満々。 それでやる気満々の梨花が襲い掛かってきたので返り討ちにしたということだ。 そしてカレイドルビーの正体は梨花を除いたこれらのうちの誰かで、水銀燈を従えるほどの強力な力を持っているという話らしい。 「……というわけです。いい加減に理解できたですかデカ人間」 「理解は出来たが、それでどうするんだ? 」 「決まってるですデカ人間、翠星石に協力するかしないかさっさと選びやがれです」 「協力しなきゃ殺すんだったら、協力するしか無いだろうが……」 「…なんかいまいち煮え切らない返事ですぅ」 ぶつくさ言いながらも翠星石はみさえに突きつけていた銃口をはずし、空中から地上へと着地する。 みさえは銃口のプレッシャーから解放されたというのに、ぷるぷる震えたまま次の動作をしようとしていなかった。 一目で見たそれはまさに爆発寸前という表現がぴったりであった。 「じゃあデカ人間、そこのどでかい剣と荷物を持ってさっさとついてくるです」 「あのなぁ……俺達は一応人待ちでこの場所にいるんだが……」 「そんなの関係無いです。蒼星石が今この瞬間誰かに襲われてるかもしれないのに、一々お前達人間の都合聞いてやれるかです」 ガッツは何度目になるかわからない盛大なため息をつき、いつでも使えるように壁に立てかけていたカルラの剣を手に取る。 次から次へと訳の分からない単語で要領を得ない説明をされ、デカ人間と馬鹿にされたガッツが怒っていない訳が無かった。 結局の所ガッツはこの状況を打開する手段として翠星石に協力したふりをして後ろから真っ二つにし、黙らせようという結論に至った。 しかしガッツが制裁を下すまでもなく、動いたのは野原みさえその人であった。 「いぎゃああああああ、痛い痛い痛いですぅぅぅ! 」 「さっきからうだうだうだうだ訳の分からない話ばっかしおってぇぇ何様だおまえはぁぁぁ!! 」 ぎゃーぎゃー喚きながら野原みさえ必殺のぐりぐり攻撃を受け、翠星石は頭の痛みにもがき苦しんでいた。 ガッツはその二人をわき目に、ぐりぐり攻撃に耐え切れず地面へと落下した拳銃、FNブローニングM1910を回収する。 更に酷くなるその喚きを止める為、ガッツは一言。 「おい、もういいぜ。こいつは没収だ糞人形」 それから数秒後、ようやくみさえのぐりぐり攻撃がやみ、翠星石は解放された頭を押さえる。 「はぁ~、痛かったです……マジで死ぬかと思ったですぅ。……ん? 」 翠星石がおかしな点に気が付く。手にはあるべき物が無い。 ガッツの方をみれば、手には先ほどまで脅しに使っていた拳銃が。 「ああああー、この泥棒人間、さっさと返せですぅぅぅ! 」 と、翠星石がガッツの手元目掛けて飛び上がるが…… 「話はまだ終わってないのよ、翠星石ちゃん」 みさえが翠星石の腕を掴み、がっちりとその場に押さえる。 翠星石が不満タラタラで後ろを振り向くが、その烈火のごとき表情を見て逆に萎縮する。 「いやあああ、暴力人間に殺されるですぅぅぅ」 「暴力人間とは何よ性悪人形、さっきから人質にババアだのフケだの、私はまだピチピチの29歳じゃ! 」 と、怒りの火山が再度火を噴こうとしたところで、ガッツが一言。 「もう止めとけみさえ、糞人形苛めたって何も出てこないだろ。今度はこっちが質問する番だ。」 「でも、この収まりきらない怒りはどうすればいいんじゃぁぁぁ! 」 「た、たた助けてくれですデカ人間」 と、今度はガッツの後ろに隠れてプルプル震える翠星石。ガッツはどうどうといった様子で暴れるみさえをなだめる。 それから数分して、どうにかみさえの怒りを一旦止める事に成功する。 「ふうー、助かったですデカ人間」 「それじゃあ情報交換といきたいところだが……」 と、ガッツは翠星石の頭を鷲掴みにし、顔の前へと持ってくる。 「俺の名前はさっき言ったと思うがガッツだ、間違ってもデカ人間なんて呼び方するんじゃねえぞ糞人形」 「ひぃぃぃぃ、わわわ分かったですぅぅぅ……」 ガッツが作った表情に本気で怯える翠星石に構わず、ガッツはさらに話を続ける。 「知っていることを全部話して貰おうか、まず蒼星石ってのは何なんだ? 」 と、それからガッツの質問攻めが続き、翠星石がその質問に答える。 嘘の一つもついてよかった翠星石は、ガッツの怖い顔による脅し文句のせいですっかり逆らう気はなくなっていた。 「これで全部話したです。もう翠星石を逆さにして引っぱたいても何も出てこないです」 と、宙ぶらりんにされていた翠星石はようやくガッツの手から解放され、その場にへたり込む。 ガッツはというと翠星石にはもう興味が無いといった様子で、ベッドで寝ているゲインの様子を見た後、再び机の上のキャスカを見つめる。 ようやくガッツから解放された翠星石はというと、次はみさえのお説教を受ける羽目になってしまった。 「…大体殺す殺さないとか物騒な話ばっかりして、一体全体どういうつもりよ! 」 「話を聞いて分からなかったですかf…人間。 翠星石はチビ人間の敵は取ってやらなきゃいけないし蒼星石を探してやらないといけないです」 「だからそれが間違ってるって言うのよ! どうして殺す殺さないなんて過激な話になるわけ、普通誰も殺し合いなんてする訳無いでしょ! 」 「あー、はいはいそうですそうですぅ」 みさえの説教は暖簾に腕押しといった様子で、翠星石の興味は別の方向へと向かっていた。 当然みさえもその様子には気が付き、しんのすけを黙らせるために使っていたあの技を繰り出す。 げん こつ 「いったああああい、ななな何をするですか人間! 」 「人の話は真面目に聞きなさい! 」 「ううう助けて蒼星石、人間に苛められている哀れな姉を早く助けてください……」 みさえ必殺のげんこつを受けた翠星石は頭をさすり、ついには助けるはずだった妹に逆に助けを呼ぶほどに落ちぶれていた。 「大体あんたの話は根本からおかしいのよ! 沙都子ちゃんが殺人者? 水銀燈の協力者? そんな話は沙都子ちゃんの口からは一言もでなかったわよ! 」 「だから話を聞いてなかったですか人間、あいつらはグルになって水銀燈のミーディアムが誰か分からないように工夫してるです」 「ミーディアムとかローゼンメイデンとか言われても、高卒の私には分からないんじゃぁ! 」 「ひぃぃぃっ! 」 みさえの怒りがまたふつふつと沸き上がるその最中、ガッツが一言口を挟む。 「…だが糞人形が言ってることが全部おかしいとは考えにくいぜ、クソガキに殺されそうになったのはどこのどいつだ? 」 「た、たしかに沙都子ちゃんは私達に襲い掛かってきたけど、こんな場所に居て平然としてる方がおかしいのよ! 」 「だからって人殺しに走るのか? 実際に殺されかけた身として言うが、そんな奴は遅かれ早かれ殺しをやるんだよ……」 「殺し合いとか何とか言われて、平然としているあんたたちのほうがおかしいのよ! 私はSFとかファンタジーとかそういうのが大嫌いなんだから! 」 「どちらかと言えば、あの状況でクソガキを助ける気になるお前の方がむしろおかしいぜ」 「クソガキクソガキって、沙都子ちゃんって名前があるんだからちゃんと読んであげなさいよ! それにあんたの思考はドライすぎるのよ!デリカシーってものがないわね! 」 「そのデリカシーのせいで人質になった奴の言葉とは思えないな……」 「うっ…、それはその……」 みさえの怒りの矛先はガッツへと向き、翠星石は一旦解放される。 「翠星石のことを無視するなです、このバカ夫婦! 」 「ば…」「バカ夫婦だと……」 一瞬沈黙、そして爆発。 「何言いやがるんだ糞人形……」「何言ってんのよ!この性悪人形! 」 口は災いの元という言葉を今身をもって知りつつある翠星石に、二人が近づいてくる。 それぞれが脅し文句とともに、翠星石から見ればこの世のものとは思えない表情で近づいてくる。 ああ、翠星石はチビ人間の敵も討てずに、蒼星石を守ることなく死んでしまうのですね。 蒼星石、こんなおバカな姉を許してください。 …と心の中で辞世の句を読み上げながら、プレッシャーに耐え切れずバタンと気絶。 「「あらま」」 「はぁ、疲れたぁー……」 「俺はもっと疲れたぜ……」 それぞれが思い思いに溜息をつく。 「…でも、脅迫から解放してくれたのには礼を言うわ、ちゃんと仕事はするのね」 「当然だ、受けた仕事はちゃんとする」 ガッツは翠星石からディパックを回収した後、再びキャスカの下へと戻る。 みさえはゲインの様子を見るべく近くの椅子へと腰掛ける。 「…キャスカさん、まだ目覚めないの」 「……ああ」 それきり会話は止み、ガッツはキャスカの様子を、みさえはゲインの様子を見る。 ガッツは考えていた。キャスカの気絶が未だ解けないことについて。 あれだけギャーギャー喚いていたのだからゲインかキャスカ、どちらかの意識が取り戻されてもおかしくはなかった。 重病人であり絶対安静必須、深い眠りの中に付いたゲインはともかく、かなり時間が立ったにもかかわらず目覚めないキャスカ。 戦場で意識が飛ぶこと、それはすなわち死を表す。だから傭兵は仕事柄意識の回復が早いはずだったが、キャスカは目覚める気配すらない。 あまりに一発が重すぎたかもしれないキャスカを目覚めさせるために一度水をたらしたが、それでもキャスカは目覚めなかった。 ガッツの知るキャスカだったら、水をかけた時には飛び上がってくるものだった。 しかし現実に目の前の小さな女は目覚める気配は無い。この人物はキャスカではなくキャスカによく似た別人なのか? そんな考えすら湧き起こるが、やはりガッツにはキャスカそのものにしか見えなかった。 ガッツは再び、目の前の縮小化されたキャスカについて考えを巡らせていた。 【D-5/ホテル3階の一室/1日目/夕方】 [共有道具]: バトーのデイバッグ:支給品一式(食糧ゼロ)、チョコビ13箱@クレヨンしんちゃん、煙草一箱(毒) 爆弾材料各種(洗剤等?詳細不明)、電池各種、下着(男性用女性用とも2セット)他衣類 茶葉とコーヒー豆各種(全て紙袋に入れている)(茶葉を一袋消費) ロベルタのデイバッグ:支給品一式(×6) マッチ一箱、ロウソク2本 9mmパラベラム弾(40)、ワルサーP38の弾(24発)、極細の鋼線@HELLSING、医療キット(×1)、病院の食材 ドラムセット(SONOR S-4522S TLA、クラッシュシンバル一つを解体)、クラッシュシンバルスタンドを解体したもの 支給品一式四人分、オレンジジュース二缶、ロベルタの傘@BLACK LAGOON、破損したスタンガン@ひぐらしのなく頃に ハルコンネン(爆裂鉄鋼焼夷弾:残弾5発、劣化ウラン弾:残弾6発)@HELLSING、ビール二缶、庭師の鋏@ローゼンメイデンシリーズ 【ガッツ@ベルセルク】 [状態]:全身打撲(治療、時間経過などにより残存ダメージはやや軽減)、精神的疲労(中) [装備]:カルラの剣@うたわれるもの、ハンティングナイフ、ボロボロになった黒い鎧 [道具]:エクスカリバー@Fate/stay night、スペツナズナイフ×1、銃火器の予備弾セット(各120発ずつ) FNブローニングM1910(弾:5/6+1)@ルパン三世、首輪、支給品一式、デイバック2人分 [思考] 1:ホテルでセラスらの帰りを待つ 2:契約により、出来る範囲でみさえに協力する。 他の参加者と必要以上に馴れ合う気はない。 3:まだ本物かどうかの確証が得られてないが、キャスカを一応保護するつもり。 キャスカに対して警戒、恐怖心あり。 4:殺す気で来る奴にはまったく容赦しない。 ただし相手がしんのすけかグリフィスなら一考する。 5:ドラゴン殺しを探す 6:首輪の強度を検証する。 7:ドラえもんかのび太を探して、情報を得る。 8:翠星石の証言どおり、沙都子達ひぐらしメンバーが殺人者か疑っている。 9:グリフィスがフェムトかどうか確かめる。 基本行動方針:グリフィス、及び剣を含む未知の道具の捜索、情報収集 最終行動方針:ギガゾンビを脅迫してゴッド・ハンドを召喚させる。 【ゲイン・ビジョウ@OVERMANキングゲイナー】 [状態]:睡眠中、腹部に重度の損傷(外傷は塞がった)、峠は越した [装備]:パチンコ(弾として小石を数個所持)、トンカチ [道具]:支給品一式×2、工具箱 (糸ノコ、スパナ、ドライバーなど) [思考・状況] 1:まだ安静にすべき。 2:市街地で信頼できる仲間を捜す。 3:ゲイナーとの合流。 4:ここからのエクソダス(脱出) 【野原みさえ@クレヨンしんちゃん】 [状態]:中度の疲労 [装備]:スペツナズナイフ×1、悟史のバット@ひぐらしのなく頃に、ウィンチェスターM1897(残弾数3/5) [道具]:基本支給品一式、糸無し糸電話@ドラえもん、銃火器の予備弾セット(各40発ずつ) ウィンチェスターM1897の予備弾(30発分)、石ころ帽子@ドラえもん、スモールライト@ドラえもん(電池切れ) [思考] 1:本心では居ても立ってもいられない。 2:翠星石が起きたらお説教の続きをする。 2:ホテルでセラスらの帰りを待つ。 3:契約によりガッツに出来る範囲で協力する。 4:しんのすけ、無事でいて! 5:しんのすけを見つけたら、沙都子の所に戻る。キャスカを監視。グリフィス(危険人物?)と会ったらとりあえず警戒する 基本行動方針:ギガゾンビを倒し、いろいろと償いをさせる。 【キャスカ@ベルセルク】 [状態]:気絶?、左脚複雑骨折+裂傷(一応処置済み)、魔力(=体力?)消費甚大 10分の1サイズ、鼻血(鼻穴に布を突っ込んで処置している)、両手を縛られている [装備]:なし [道具]:支給品一式(一食分消費) [思考・状況] 1:不明 2:混乱 3:他の参加者(グリフィス以外)を殺して最後に自害する。 4:グリフィスと合流する。 5:セラス・ヴィクトリア、獅堂光と再戦を果たし、倒す。 【翠星石@ローゼンメイデンシリーズ】 [状態]:気絶、全身に軽度の打ち身 左肩は若干強い打ち身、頭が痛い、服の一部がジュンの血で汚れている 左肩の服の一部が破れている、人間不信 [装備]:無し [道具]:無し [思考・状況] 1:この凶暴で約束も守れない人間達からさっさと逃げるです、でもむかつくから隙を見て殺してやるです。 2:真紅や蒼星石と合流するです。 3:まずは魅音を殺してやるです。 4:水銀燈達が犯人っぽいから水銀燈の仲間は皆殺しです。 5:水銀燈とカレイドルビーを倒す協力者を探すです、協力できない人間は殺すです。 6:庭師の如雨露を探すです。 7:デブ人間は状況次第では、助けてやらないこともないです。 基本:チビ人間の敵討ちをするため、水銀燈を殺してやるです。 ※ガッツ、みさえは翠星石の話を話半分ですが信じています。 時系列順で読む Back 調教 Next 【黒禍】 投下順で読む Back 調教 Next 【黒禍】 186 THE TOWER~ 塔 ガッツ 207 「ゼロのルイズ」(前編) 186 THE TOWER~ 塔 ゲイン・ビジョウ 207 「ゼロのルイズ」(前編) 186 THE TOWER~ 塔 野原みさえ 207 「ゼロのルイズ」(前編) 186 THE TOWER~ 塔 キャスカ 207 「ゼロのルイズ」(前編) 178 最期の四重奏―それぞれの誓い― 翠星石 207 「ゼロのルイズ」(前編)
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注意 一部グロ表現有り 宣戦布告する数日前の出来事 青年はこの時、始めてゆっくりを殺した。罠を仕掛けている途中に出くわしたゆっくりまりさを 持っていた棒を突き立てただけで簡単にその命は終わってしまった こんな脆いものに殺されてしまうほど妹が衰弱していたのを知り悲しくなった その後にやってきたのは空腹感だった 餡子の甘ったるい香りが青年の鼻腔をくすぐる 頭を裂いて、中身の餡子を掬う。それを恐る恐る口に運んだ 久しく舌で使っていなかった神経が反応する。“甘い”を『甘い』と脳が理解するまで数秒時間がかかった 美味いと思ってからは早かった、犬のように顔を突っ込んで貪った 極限まで縮んだ胃にものが詰め込まれて押し広げられていくのを直に感じた 信じられないことに、一匹のゆっくり全部が青年の胃に納まった 久しぶりに彼の胃が満たされた。満腹感こそが幸福感に最も近い感情なのだとこのとき初めて実感した もし村が『不可侵協定』を結ばなければ、妹にもこれを腹いっぱい食べさせられたのにと悔やんだ 冬だって越せた。家を荒らされることも無かった ゆっくりが村に来なければ、少なくとも妹は死ぬことはなかった 気づけば自分はまた泣いていた その涙はなかなか止まらなかった *** 夜中、巣に帰ってきたゆっくりのつがいは仰天した 洞窟の前に有刺鉄線が張り巡らされていた、今日の朝ここを出たときにはこんなものは無かった 「これじゃあ、おうちにはいれないよ!! ゆっくりできないよ! さっさとどかしてね!」 つがいが鉄線の向こうにいる仲間に呼びかける だが、巣の中の仲間が次に言うセリフは決まっていた 「「「にげてぇぇぇぇぇぇぇ!!!」」」 力いっぱい叫んだ 「ゆ?」 背後に気配を感じつがいが同時に振り返った 月を背負った怪物が長い棒を振りかぶっていた 飛び散ったつがいの餡子が有刺鉄線と仲間にかかった 『ある愚者の孤独な復讐 ー後編ー 』 死んだつがいの死体を茂みの中に捨てる 『ゆぎぎぎぎぎぎいぎぎぎぎぎ・・・・・・』 ドスまりさの歯軋りが聞こえる 宣戦布告されてから、もう何匹が屠られたかわからない 青年は巣の入り口に張り付いて、帰ってきたゆっくりを全員撲殺していた 閉じ込められたゆっくりたちはその光景を何度も見せ付けられていた この危機を外部に知らせたくても青年に見張っている以上それはできなかった 青年は一睡もせず巣にやってきたゆっくりをひたすら殺し続けたが 日の出に近づくのつれて段々と巣に帰ってくるゆっくりたちの数が減ってきた このあたりの森や山はゆっくりの天敵は少なかったため巣に戻らず野宿するものが大勢いた 30分ほど経ってもゆっくりは来なかったので青年は彼は痺れをきらしはじめた 今は一分一秒が惜しかった 仕掛けた罠の成果も気になった だから一時間だけここを離れようと考えた 有刺鉄線の向こうのドスまりさたちを一瞥してから茂みの中に入っていった すでに太陽が地平線から姿を現していた その頃。巣には戻らず、木の虚穴(うろあな)で寝ていたゆっくりの親子が目を覚ました 以前青年の妹に子供を攫われたと勘違いした親子だった 父まりさと母れいむが寝ている子供を優しく揺すって起こした それから近くの小川で水を飲みコナラの木から落ちたドングリを咀嚼する 一家全員が朝食をすませてから、餌集めを開始した 「ゆっきゅきゅ~~♪」 心地良い朝日を浴びて陽気に歌いながら姉妹に囲まれて進むのは赤ん坊のゆっくり こうして家族といっしょにいられるのもあの人間のお姉さんのお陰だと、心から感謝しながら歌っていた その人間がどうなってしまったかなど、この子供に知る由は無い あの時、母の口に入れられて巣に連れ戻され親から2,3質問されたが幼いこの子には質問の意味がよくわからなかったため首をかしげるだけだった その質問こそ兄妹の人生を大きく左右したものだとも知らずに 一家は先頭が父まりさ、その次に子供達、一番後ろが母れいむという並びで林道を進んでいた 突然。家族が見ている目の前で、道の少し先を行く父まりさの体が地面に沈んだ 「ゆぐっ!」 そこに落とし穴が掘ってあったらしく、どうやら父まりさはそこにはまってしまったらしい 母ゆっくりは頬をぷくりと膨らせて不快感を表した 「もおぅ、だれっ! こんなことしたのは! ゆっくりできないよ!! まりさだいじょうぶ? 」 「・・・・ぃ・・・・ぎ・・・・・・ぅあぁぁ・・・」 穴に体の半分がすっぽりとはまってしまった父まりさの様子がおかしい。なにか傷みを堪えるように震えている 「どうしたのまりさ?」 「おとーさんだいじょうぶ?」 家族の全員がまりさの前に回り込もうとする 「いぎゅっ!」 今度は母れいむの体が地面に沈んだ 落とし穴は父まりさの前方にも掘られていた 「いぎゃああああああああああああああああああぁぁああぁあぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁあああああ!!!」 落ちた瞬間母れいむは絶叫した 「ざざっでるうううううううううううう!! れいぶのがらだになんがざざっでるうううううううううううう!!」 穴に落ちた瞬間、母れいむは自分の体の底が急激を感じた 子供たちは何が起きているが分からず、姉妹で身を寄せ合ったまま後ずさった 「「「ゆ゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛うううううぅぅぅぅ!!」」」 そこで穴に落ちた 穴の底にあった尖った細い杭によって落ちた姉妹は全員仲良く串刺しになった 赤ん坊一匹だけが体の小ささが災いして致命傷を負いながらもすぐに死ぬことができずうめき声をもらしていた 山中にいた他のゆっくりにも似たようなことが起きていた 一週間前、青年は復讐の方法を考えていた 自分一人で出来ることは限られている だから巣を直接襲うのとは別に、待っていても効率的に殺せる罠を作ろうとした そして思いついたのが“これ”だった クワで3,4回掻いてできた小さな穴に鉛筆ほどの大きさの尖った杭を何本か立てるという単純なつくりだった 時期も紅葉と落葉の中間というのが幸いして、枯れ枝を併用すると穴は簡単に隠せた ゆっくりは他の野生動物とは違い、体の性質上通りやすい人の整備した道を選ぶことはわかっていたので有効そうな場所は大体読めた 他にも虎バサミ等の獣用の罠を勝手にくすねて設置したりもした 一週間のほとんどをこの時間に費やした 実は宣戦布告する前から罠にかかり死ぬゆっくりは結構いた そして村の人間にさとられては困るので村人が利用しやすい道付近は宣戦布告する前々日まで設置するのは避けた ゆっくりを敵に回すとうことは村を敵に回すといことだった 青年が消えてしばらく後 巣のまわりにまた数組のゆっくりの家族が戻ってきていた 青年がいない間にドスまりさたちは巣から出るために様々な手段を講じた しかし無理に通ろうとした仲間の何匹かが怪我を負っただけだった 穴を掘ったが地面が予想以上に堅かったため断念し 外に仲間に杭の周りを掘り起こしてもらおうとしたが、杭の周りには大小さなざまな岩が詰まれており困難を極めた そしてついにドスまりさは決断した 『みんな。ドススパークを撃つから離れてね!!」 今まで青年が近くにいたためその彼に妨害される恐れがあったのと、一発が体に大きな負担がかかるとういう理由から撃つのを控えていた その言葉で周りが沸きあがる 「ゆ! そうだよ!! どすすぱーくならそんなひもいちころだね」 「さすがどすまりさ!」 「どすはやっぱりかっこいいんだぜ!」 全員が退いたことを確認してドスまりさは口を大きく開きドススパークを放った 高熱の吐息が鉄線に吐き付けられる かつて村人が戦慄した光だった 『ぜぇぜぇぜぇぜぇぜぇぜぇ・・・・・・どう?』 体に大きな負担をかけた成果を確認する 有刺鉄線は赤く白熱し、その熱で僅かに弛んだだけだった 一匹のゆっくりまりさが近づく 「おお・・・まっかっかなんだぜ」 『だめだよ離れて!!』 慌てて注意するが遅かった 「? ・・・・・・・・・・・・がぎゃあぁああああああ!!」 知らずに近づきそれに触れたゆっくりまりさは頬に火傷を負い転げまわった けが人がまた一匹増えたが、脱出の手段をドスまりさはついに見つけた 一匹のゆっくりれいむが必死に山の中を全速力で跳躍していた 体の弾力性を最大限に活かし前へ前へとひたすら地を蹴る 「こっちにこないでね!! さっさとどっかいってね!!」 自分を執拗に追いかけてくる者にそう言った 追う人間の手には長い木の棒が一つ。その先は餡子がこびりついていた。そのれいむの家族たちの餡子だった 命を懸けた鬼ごっこ。死と言う名の鬼がれいむに触れようと迫る れいむの頭の中にはもう死んでいった家族のことは浮かばす、ただ生の渇望だけが丸い体を埋め尽くす 奮闘するもあっという間に追いつかれ、棒の一振りが頭を抉る 「ぶべへぁぁあ゛あ゛あ゛!!」 餡子を撒き散らしながら転がり、さらに痛みでのた打ち回った 致命傷を確認すると青年はとどめを刺さずその場を離れた 山で出会ったゆっくりは全て顔の一部を吹き飛ばしたら放置した。もちろん長く苦しんで死んでもらうために 次の獲物を探そうとあたりを見回したとき 彼は巣の方角で強い光を見た それを見て青年は焦った 罠の成果を確認している途中にゆっくりの一家を見つけ、追いかけていたら時間がかかってしまい一時間以上巣から離れてしまっていた 長い時間巣の前を離れたことを青年は後悔した 急ぎ巣に向かい駆け出した ふいに青年はこの状況が何かに似ていると思った 「ああなんだ・・・・“缶けり”か・・・」 昔、村で遊んでいたころを思い出して苦々しく笑った 彼は少しだけ冷静さを取り戻した ドスまりさは大きく息を吸い込む 『バハァァァァァァァァァァァァァァァァ!!』 何度目かのドススパークを撃つ しかし照射時間は先ほどよりずっと短い 『ゆふぅーー・・・・・ゆふぅーー・・・・・・」 撃ち終わった後の息も荒くなっていた 「どすだいじょうぶ・・・・・?」 子供が心配して声をかけてくれた 『ぜ、ぜんぜんだいじょうぶだよ!!』 ドススパークの連発で体力をかなり消耗していた だが仲間を安心させるために強がった 有刺鉄線もほんの僅かだが、先ほどよりさらに熱で弛んでいた ひょっとしたらひょっとするかもしれないと希望が見えてきた 周囲からドスまりさを讃える声が次々に上がっていた 『みんな待っててね! まりさがここを出て村に行ったあと、おにいさんをやっつけるからね!』 しかし、そう言った直後ドスまりさの表情が固まった いつからそこにいたのか、自分を讃える外の仲間たちの背後に青年が立っていた ゆらりと棒を振り上げる 『や゛へ゛ろ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛オ゛オ゛オ゛オォォォォォォ!!』 再び巣の前の広場で殺戮が起こった クモの子を散らすように逃げ惑う大中小様々なゆっくりたちの叫び声が広場を埋め尽くす 身を挺して子供だけでも逃がそうとする親。子を置いて我先に逃げ出す親 姉妹を押しのけて逃れようとする子供。妹を守ろうとする姉。泣き出して母の名を叫び続ける子供 それらに平等で容赦なく棒が襲い掛かった あるものは刺され、あるものは叩き潰され、あるものは踏まれた 巣に閉じ込められた幼いゆっくりにその光景は、賑やかな祭りのようにも見えた 広場にいたゆっくりを粗方殺し終えた青年の肩は激しく上下していた 彼は有刺鉄線の向こうの疲労の色が濃いドスまりさとその仲間を見た しかしまさかドススパークで有刺鉄線を溶かして切ろうとするとまで青年は想定していなかった 予想していないわけではなかったが、あんなにも連発できるとは思っていなかった だが有刺鉄線の形が若干変わっていた程度で、まだ十分耐えられる規模だったのを見て焦燥感を振り払う 流石のドススパークも金属を蒸発させることはできなかった 猛獣のような目が青年を見ていた 『ごのお゛にぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!! あ゛ぐまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』 青年は口元を吊り上げてドスまりさに近づく 「自分の大切な家族を殺されてどんな気持ちだ?」 「こ゛ろ゛し゛て゛や゛る゛う゛う゛うううう・・・・・・お゛ま゛え゛は゛せ゛っ た゛い゛に゛こ゛ろ゛し゛て゛や゛る゛う゛う゛・・・・」 その返答に青年を歯を剥き出しにした笑みで返す。でもまだ妹の無念を晴らすには程遠い まだ足りない。この山にはまだ多くのゆっくりたちがひしめきあっている 彼が殺したのはそのほんの一部だった 「もっと大勢殺してやる、楽しみに待ってろ」 それだけ言って青年はまた山へ向かい歩いていった 「ゆがぁぁぁぁぁぁぁぁああああぁぁぁぁぁぁあぁあああああぁあぁ!!」 死んでいった仲間を思いドスまりさは獣のような咆哮をあげて涙した 青年が去ってしばらくすると、他の仲間と同様食べ物を集めにいっていたれいむとまりさ数匹が茂みから姿を現した あの殺戮からの数少ない生き残っだった 「どす! わたしたちむらにこのことをつたえてくるよ!」 村にこのことが伝われば青年の暴走は終わらせることができるとドスまりさは確信を持っていた 『お願いするよ!! 村に知せにいってね!!』 「「「ゆううううううううう!」」」 勇み、数匹が村に向かい出発した 広場から村に続く道へ行くために茂みに飛びこもうとした瞬間、茂みの中から棒が飛び出し一匹を貫いた 青年はまだ消えてはいなかった、生き残りがいたのは知っていた。出て行ったふりをして待ち構えていた 青年がこちらを見て笑っていた。笑顔を不気味だとハッキリと感じたのは生まれて初めてだった 希望の灯火が唐突に消えてしまい呆然とするドスまりさを尻目に、青年は村へ向かうゆっくりを皆殺しにした そして巣の周辺にゆっくりがいないことを確認すると青年は今度こそその場所から立ち去った 復讐する上で一番困るのがドスまりさによる村への被害届けだった 目的を完遂するために宣戦布告から3日は自由に動ける時間が欲しかった そのために最低でもドスまりさを1日以上はこの場所に封じ込めておきたかった 先ほどのように、ほかのゆっくりが伝令で走るとう可能性もあったが 村まで行く道筋は大体決まっているためそのあたりに罠を仕掛けるか待ち伏せで対処した 仮にたどり着いたしても上手く説明できず結局取り合ってくれないだろうと踏んでいたがそのあたりは博打だった この復讐に抜けが多いことを彼自身十分自覚していた 罠とゆっくりの巣の入り口を何度も往復していたら時刻はもう昼を回っていた 林道を歩きながら青年は考えていた 主にドススパークについて これ以上ドスまりさにドススパークを撃たせるわけにはいかなかった まだしばらくは有刺鉄線はもちそうだがこのままでは今日中に切断されてしまう いくら疲弊しているとはいえあれが自由になるのは避けたかった ドススパークを撃たせないようにするにはどうすれば良いか? 青年は必死に考えを巡らせる 一番手っ取り早いのは有刺鉄線を追加することだが、小屋に行く途中で杣師に会ったら面倒だった 次が有刺鉄線の前に生きている仲間をくくりつけておくことだが、今生きているゆっくりは手持ちに無いためすぐに調達できる保証は無い 要はドスまりさが撃てなくなる状況を作れれば良いと思い立った 「油・・・・・・獣脂保管庫・・・」 青年は閃いた 川原に油をまとめて貯蔵する倉庫があるのを知っている。中には獣脂が一番多く保管されいるため皆そこを獣脂保管庫と呼んでいた あそこには食用に使う油から行灯に使う灯火用の燃料まで幅広く置いてある 巣の入り口に行灯の油をぶちまければ、様々な危険性からドスまりさは撃つこと躊躇うと予想した どこにいるかわからないゆっくりを捕まえてぶら下げるよりも、そちらの方がはるかに早いと思った さっそく青年は川原の倉に向かった 川原には思ったより早く到着した 壁に『火気厳禁』と大きく赤い文字でそう書かれていた 蔵の鍵を落ちていた石で壊し中に入る 中には抱えられるほどの大きさの壷が所狭しと並んでおり、種類ごとに区分けされいていた その中で『菜種油』または『魚油』と書かれた壷を探す それを見つけて、一つの壷の蓋を開けて中身が入っていることを確認してから持ち上げる 意外と重く。持って行くためには、ここに棒を置いていかなかればならなかった 零さぬよう気をつけながら巣まで慎重に運んだ 戻ったら新しい棒を調達しなかればならないかった 壷を持って巣に近づくと子供のゆっくりが尋ねてきた 「ゆ? おにいさん。それなあに? おかし?」 その子供を無視して巣の中に向かって中身を半分ほどぶちまけた 「ゆべぇぇぇ! なにごれ゛えええええ!? からだがおもいいいいいいいい」 その声に奥で体を休めていたドスまりさや成体のゆっくりが出てくる 『この子になにしたの!?』 近づいてきたドスまりさに残りの半分をかけた 『ゆっ!! なにごれぇ!?』 未知の液体をかけられて困惑するゆっくりたち 「いいこと教えてやる。火達磨になりたくなかったらドススパークは使うな」 鉄を白熱させるほどの熱なら十分この油の発火温度に達する ドスは必ず殺すが、それは今じゃない 『ゆ゛うううううううう』 青年の言葉を半信半疑で受け取っているが その戸惑いの表情から、これでドススパークを撃てなくなったと青年は確信した これで心置きなく巣の前から離れられた あれから山や森で出会ったゆっくりたちを惨たらしく殺し続けていると、気づけば空が段々と橙色に染まり始めていた もうすぐ日没だった 宣戦布告をしてから丁度丸一日が経った 巣に戻ると巣の中のゆっくりたちが睨みつけてきたが無視する 青年は岩肌の露出した壁にもたれる 徹夜して山を駆け回り体はもうクタクタだった 殺したゆっくりを食べてお腹も膨れていたのと、ドスまりさを押さえられたことに安堵したことが相まって目蓋が重くなる ここで仮眠を取らないと体力が続かないと判断した青年はいったん眠ることにした 近くにあった見晴らしの良さそうな木に登り、太い枝に体を預ける 念のため自分がドススパークの射程圏外にいることを確認する 「・・・・・にぃちゃん、絶対にやり遂げるからな・・・・・」 さよならさえ言うことも出来ずに逝ってしまった妹を想う 夢の中で良いからもう一度妹に会いたかった。会ってちゃんと別れの言葉を交わしたかった 自分が涙脆いことを最近になって彼は気づいた 日が沈むのとほぼ同時に彼は眠りについていた 青年が眠りについた時分。ドスまりさの腹心であるゆっくりまりさとゆっくりれいむが巣に戻ってきた 今の状況が明らかに非常事態だと二匹は理解した 「どす! いったいどうしたの!!」 ドスまりさは簡潔に起きた出来事を説明した 「「わかったよ!! いってくるよ!!」 村の人間にこのことを知らせるために二匹は最も罠の多い道に向かい進んでいった ドスまりさは二匹を見送ったあと自分がここを出る方法を考えていた 油は仲間の何匹かにべったりとかかっている、歩けばナメクジのように油の線が引かれた。飛び跳ねても結果は同じだった 下手にドススパークを撃てば仲間が発火する恐れがあった。油の付着した自分も同様に 仲間を奥まで下げてから撃っても良かったが、油の性質を必要以上に警戒してしまい。それもしなかった 『ゆう~~~~~~~~』 結局ドススパークで消耗した体力を少しでも回復させるために自分も眠りにつくことにした そうせざるを得なかった 続き? 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前 この作品は以下のものを含みます。 ゆっくり対ゆっくりの構図 虐待でも愛ででもないそれは全く新しい(ry)お兄さん ドスまりさ ゆっくり改造 この作品は以下のものを含みません。 人間によるゆっくりの虐待・虐殺 愛で ギャグ ↓それでもよろしければ、お進みください。 復讐のゆっくりまりさ(中) その日、ゆっくりしていたどすまりさの下に、群れのテリトリーに人間が立ち入ったとの情報がもたらされた。 しかもその人間は、二ヶ月前、群れを追い出されたまりさと一緒だというのだ。 何か良くないことが起きているような、そんな予感をドスは覚えた。 「分かったよ。わたし自らが出ていって、話をするよ」 ドスが広場に出てくると、そこには確かに、男に抱えられたあのまりさがいた。 広場には群れ中のゆっくりが集まり、男とまりさを遠巻きに見ていた。 男は何の変哲もないただの男だが、まりさは左目に、二ヶ月前にはなかった眼帯をしている。 誰一人近寄るものがいないのは、二人の纏う異様な雰囲気に近寄りがたいものを感じていたためだ。 その感覚は、ドスにも理解できた。 広場に入り、あのまりさに見つめられた瞬間、言いようのない寒気がドスを襲ったのだ。 ドスは二人の手前五メートルの位置まで来ると、足を止めた。 「まりさ、おかえり」 そしてまず、生きて群れに戻ってきたかつての仲間に、そう声をかけた。 だがまりさは答えない。ドスは諦めの息を吐き、改めて問いかけた。 「二人とも、今日はここになんの用なの? お兄さんは、ゆっくりできるひと?」 まず男が答えた。 「俺はただの付き添いだ。お前らをどうこうしようって意志はない。敵でも味方でもない。 二ヶ月前、俺はこのまりさを助けた。そしてまりさがどうしてもしたいことがあると言うから、それを手伝い、ここまで連れてきた。それだけだ」 ドスの視線が、男の腕の中のまりさに向く。 「……まりさは、何がしたいの?」 まりさは、答えた。 「復讐だよ」 その一言は、群れ全体にさざなみのように困惑を伝播させていく。 一匹のゆっくりが群れから一歩飛び出し、怒りに満ちた声を張った。まりさの父だった。 「まりさ! どうしてそんなこというの!? やっぱりおまえはゆっくりできないゆっくりだよ! さっさとここから──」 「うるさいよ」 静かに。 ただ静かに告げられたまりさの一言が、群れの空気を押さえつけた。 他者の心の機微に総じて鈍感なゆっくり達だったが、そこに込められた、研ぎ澄まされた暗黒の感情は明確に感じ取ったのだ。 まりさは、周囲の皆が自らに抱く恐怖を和らげるために、口元だけの笑みで言葉を発する。 「おねがいだから、みんな、静かにしていてね。まりさは、ドスにだけ用があるんだよ。 そして──ゆっくりよく聞いてね! ドスは、みんなが思ってるようなゆっくりじゃないよ!」 再び困惑の波が、まりさを中心に押し寄せていく。 その中に、まりさは愛しいれいむの姿を見つけた。得体の知れない不安に包まれたかのように、身を震わせている。 そんなれいむに、まりさは心の中だけで微笑みかける。だいじょうぶだよれいむ、まりさがれいむを、みんなを助けるから。 「ゆ! 何をいってるのまりさ! わたしは群れのみんなのことをちゃんと考えて──」 「ドス、釈明は、まりさがさいごまでしゃべってからだよ!」 「ゆ……」 またしても、ドスはまりさに気圧された。 たった一匹の、男の腕に抱かれるほどの大きさしかないまりさに、である。 この時点で、ドスはまりさに対する警戒を強めた。明らかに、普通のゆっくりではない。 ここぞとばかりに、まりさはドスの罪を暴きにかかる。 「ドスは、いえの中にたくさんのしょくりょうをため込んでいるよ! たべものがとれないときのためだって言うけど、あれは明らかに多すぎるりょうだよ! ドスは、みんなからあつめたたべものの一部を、自分のものにしようとしてるんだよ!」 ザワッ、と一際大きく群れがどよめく。 確かに、皆普段から取ってきた食料の一部をドスに預け、保管するようにしてきた。 それが群れ全体のためであると聞かされていたし、それならば、と了承してきたのだ。 だが物の量を正確に把握できないゆっくり達には、ドスが一体どれほどの量の食料を保管しているのか分からない。 冬が近くなり、取れる食料が少なくなってきた今、まりさと同様の疑いを持ち始めていたものも群れには何匹かいた。 「ゆっ、た、たしかめてくるよ!!」 そう言って、数匹のゆっくりが群れを離れてドスの巣へ向かおうとする。 それを視線で追おうとするドスだったが、その前にまりさの声が飛んだ。 「ドス! まだ話はおわってないよ! あのいえの中にたくさんのゆっくりをつれ込んで何をしているのか、まだきいてないよ!」 そしてまりさはドスの返事を待たず、皆を振り仰いだ。 「みんなも知ってるはずだよ! ドスのいえの中にはいっていったゆっくりは、ゆっくりできなくなって出てきてたよ!」 ざわざわと、そこかしこでゆっくり達が話を始める。 「ゆっ、うちのこもたしかにつかれてでてきたよ……」 「でもどすがべんきょうをおしえてるって……」 「だからって、つぎのひもつかれたからだのまま、どすのところにいっちゃってた……」 群れの中に、今まで妄信的に尽くしてきたドスに対しての疑念が芽生えつつあった。 まだ不信感というほど大きなものでなくとも、一度生まれた『もしかして』は中々消えるものではない。 「ゆ! まってみんな! わたしのはなしもちゃんときいてね!」 ドスが声を張り上げるが、ざわめきは収まらなかった。 ドスを支持するものとしないもので、意見の衝突が起き始めているのだ。 まりさは更に声高に語りかける。 「ドスがどんなりゆうをつけてるのか知らないけど、みんなをゆっくりさせないドスを、まりさはゆるせないよ! ううん、もうおまえなんかドスじゃない! ドスの名をかたるにせものだ! このゲスまりさ!」 「ゆ゛ぅぅぅぅっ!!! そのことばはききずてならないよ! あやまってねまりさ!」 とうとう、ドスが激昂する。 ドスは、これまで群れのために尽くしてきたつもりでいた。 そのために多少厳しいこともやってきたが、だからといって『ゲス』とまで言われて黙っていられるはずもなかった。 まりさはキッと片方だけとなった眼でドスを睨み付け、宣戦布告を行う。 「そう思うなら、ここでまりさとしょうぶをしてね!」 それを聞いて、まりさ以外の全てのゆっくりが言葉を喪った。 ドスに勝つ。 そんなこと、普通のゆっくりにはできるはずもない。ドスは人間でさえそうそう手出しできないほど強大なゆっくりなのだ。 そのドスに、ただの一匹のゆっくりでしかないまりさが勝つなど、平時なら一笑に伏されるようなありえない話だった。 だが誰一人茶化すものがいなかったのは、まりさにそうさせないだけの何かがあったからだ。 「おまえが本もののドスだというのなら、まりさなんかにまけるはずがないよね! 逆にまりさがかてば、おまえはドスなんかじゃない、ただ大きいだけのまりさだよ! このにかげつ……まりさはおまえにかつためだけに、おまえよりつよくなるために、がんばってきた。 みのあかしを立てたいというのなら、まずはこのまりさをたおせ、にせものめ!!」 溜まりに溜まった怒りをぶつけるように、まりさはドスを挑発する。 「ゆ……どうしても、やると言うんだね」 そしてそこまで言われて黙っていられるほど、ドスもまたプライドの低いゆっくりではなかった。 今の自分には、この群れのリーダーとしての立場がある。 まりさの言うことは一面では事実だが、しかし、それだけのことではないのだ。 そのことをきちんと説明すれば、群れの皆は分かってくれる。ドスはそう信じている。大丈夫、皆良いゆっくりだから。 ──だがそれもこれも、目の前のまりさを黙らせてからだ。 「分かったよ、まりさ。そのちょうせん、受けてたつよ!」 普段は温厚に垂れ下がっている眦を、今日ばかりは怒りの形に吊り上げ、ドスはまりさを睥睨した。 「双方合意したと見ていいな?」 睨み合う両者の間に、男が割って入る。二匹それぞれの表情を確かめ、頷いた。 そして懐から十数枚の御札を取り出すと、何やら呟き、空中に放った。 御札は光の線となって、広場を円形に周回し始める。 「「「ゆゆゆっ!?」」」 突然の出来事に、円の内側にいたゆっくり達は、慌てて外側に逃れていく。 やがてリング状になった光線はゆっくりと高度を下げていき、それが地についたとき、薄い光の壁が出来ていた。 広場の中心、半径二十メートルほどの円形の空間に、まりさとドスまりさの二匹のみが残される。 男は全てのゆっくりに聞こえる声で言う。 「聞け! この結界の中が、まりさとドスまりさのための闘技場だ! ドスに加勢したいならば入るがいい! ただし一度入ったら、どちらかの陣営が全て倒れるまで出られない!」 それを聞いて、ドスに加勢しようと動き出したゆっくり達もいたが、 「大丈夫だよ! みんなは下がっていて! まりさは、わたし一人でかってみせるよ!」 ドスの言葉に、渋々といった様子で引き下がる。 とはいえ、結界の外のゆっくり達は、その全てがドスの勝利を確信していた。 まりさによって疑念を喚起されたとはいえ、ドスの強さは群れの全員が知っていたからだ。 一部ではむしろまりさの無謀を嘆き、または嘲る声すら聞こえてくる。 だがまりさは、それらを全く意に介さず、ただドスだけに憎悪を注いでいる。 「ドスまりさ、戦う前に俺から言っておくことがある。このまりさには、お前の『ゆっくり光線』も幻覚も効かない。 間違っても使うなよ。それはお前に決定的な隙を生むことになる。その隙を、このまりさは逃しはしないぞ。 加えて言うならば、このまりさは『武器』を持っている。純粋な力比べになるとは思うなよ」 「……どうしてそんなことをわたしにおしえるの?」 不可解そのものの表情で、ドスは男に訊いた。 「俺は、別にそのまりさの飼い主なんかじゃないからな。 ただまりさがお前に勝ちたいと言ったから、俺はまりさを助け、そして戦う術を与えた。それだけの関係だ。 言っただろう、俺は敵でも味方でもないと。だから、どちらか一方が極端に有利になるような状況にはしたくない。 何よりこれは、まりさ自身が望んだことでもある」 驚きの表情で、ドスはまりさに視線を戻した。まりさは静かに、憎悪を漲らせながら、言う。 「とうぜんだよ。ふいうちでおまえにかったところで、うれしくもなんともない。 みんなが見ているまえで、正面からせいせいどうどう、おまえをたおしてやる」 まりさは殺意を隠そうともしない。それにドスまりさは、ほんの少しだけ、哀しそうに息を吐いた。 「どちらも、準備はいいな? では、────始め!」 決闘開始と同時、まりさは弾かれたように飛び出した。 その速さは他のゆっくりの比ではない。硬化剤の継続投与によって、身体は強い弾力性を持つに至った。 その弾力性を最大限に活用して、まりさは地面を低く、しかし早く跳ねていく。ただの一歩で、一メートルもの距離を詰めていく。 対し、ドスまりさはまずは様子を見るつもりであった。 だがまりさの尋常ならざるスピードを前に、決して余裕を持って戦える相手ではないと判断した。 ドスはどっしりと構え、まりさを正面から弾き飛ばす算段を立てた。まりさは武器を持つというが、大抵のものはドスには通用しない。 まりさは構わず、正面から突っ込んでいく。 『ドスパークは始めのうちは警戒しなくていい』 まりさの頭の中で、男が教えた対ドス戦術が再生されていく。 『他のゆっくりを巻き込む恐れがあるから、戦闘開始直後にはまず使わないと見ていい。 もし使うとしても、溜め時間が長いから、お前ならば如何様にも対処できるだろう』 だからまりさは、ひたすら距離を詰めていく。ドスが全身の皮を収縮させ、こちらを弾き飛ばすつもりであるのを理解した上で、だ。 その通りにドスはまりさが目の前に来た瞬間、その身体を前に押し出そうとして、 「──ゆ?」 まりさの姿を見失う。 次に感じたのは、右側面の皮への鋭い痛みだった。 「ゆぐぅぅぅぅぅ!!??」 つい今まで目の前から突進してきたと思っていたまりさが、いつの間にか真横に回り込み、皮に喰らいついていたのだ。 『お前とドスじゃウェイトの差は明らか。正面からぶつかりあって勝つのは絶対に不可能だ。 だから決して正面切って戦うな。お前の武器は小回りの利くその身体だ。ドスの死角に回り込め』 ドスの射程圏内に入る直前、まりさは弾力を最大限に活かして横っ飛びし、ドスの視界から消えたように見せたのだ。 強く噛み締めた前歯が、ぶつんと皮を噛み切った。 ドスの硬い表皮を噛み千切るそれは、当然、普通のものではない。 一度全て歯を抜かれ、男の手によってセラミック勢の鋭い歯が埋め込まれていた。これがまりさの『武器』だ。 だが浅い。ドスの分厚い表皮は、まりさの一噛みでは餡子にまで届かなかった。 ドスが振り向いても、もうそこにまりさはいない。またあまりに身体が大きすぎるため、足元まで視界が及ばなかった。 本能的な勘だけを頼りに、ドスは前方へ跳んだ。その直後、まりさの歯がガチンと鳴る音がした。 ドスはまりさから距離を取り、再び、決闘開始時と同じ距離を取った。 違うのは、ドスの皮の一部が喪われていること。 それはドスの体躯からすればほんの些細な傷だが、群れに与えた衝撃は大きかった。 無敵だと思っていたドスが、戻ってきたまりさに手傷を負わされた。 それだけあのまりさが強いのか、それともドスが弱いのか──ゆっくり達には、判断がつかない。 大小二匹のまりさは、お互いの隙を突かんと、一進一退の攻防を繰り返している。 ドスは先程の攻撃への警戒から、まりさを見失った瞬間には大きく距離を取るように跳躍した。 対し、まりさはなんとかドスのサイドを取ろうとするが、回り込む動作の分だけ一手遅れる。 どちらの攻撃も当たらない──そんな状況が長く続く。 『長期戦は不利だ』 男の声が餡子の深い位置から響いてくる。 『体躯の差がそのまま体力の差と言っていい。千日手になったら、ドスが痺れを切らすより、お前の体力が尽きるほうが早い。 だからそうなる前に、早々に状況を打破することが必要だ』 ドスの死角に入る。ドスは再び警戒して、大きく跳躍する。だがまりさは、攻撃する素振りすら見せなかった。 そしてドスが次に振り向いたとき、まりさはわき目も振らず自分に突っ込んできていた。 来る──ドスは予感する。あと次にまりさが着地したとき、再び自分の視界から消える。 連続してジャンプするのは正直辛いが、あの歯の威力は侮れない。 だがこうして逃げ回っていれば、いつかまりさにも体力の限界が来る。卑怯と言われようが、背に腹は変えられない。 (ごめんね! ころしたりなんかしないから、どうかわたしに大人しくやられて!) そう思えるだけの余裕がまだドスにはあった。 だがそれが大きな間違いであることに、ドスは愚かにも気づかない。 所詮己の生来の力を頼みにしてきたものに、己を捨てて強さを得たものの力を理解することはできないのだ。 まりさが着地し──消えない。 だが代わりに、その頬は大きく膨らんでいて── 「ぷッ!!!」 まりさが吐き出したのは、人の拳大ほどもある尖った石だった。 それは過たず、ドスの両目の間を直撃する。 「ゆぎゅっ!?」 普段感じることのない痛みに、ドスの動きが一瞬止まる。 致命的な隙が生まれる。 コンマ一秒の空白の次に、ドスの右目が映したのは、帽子から次なる『武器』を取り出して迫るまりさの姿。 そしてそれが、右目が映した最後の光景だった。 ザグン。 「ゆぎゃあああああああああああああ!!!」 まりさの咥えたノミが、ドスの右目の表面を抉る。 『目は、日中行動する陸上生物ほぼ全てに共通の弱点だ。その重要性に反し非常に脆くできている。 だから、狙えるならまず目を狙え。位置的に厳しいが、それだけに見返りは大きい』 面積としては浅いダメージだが、しかしそれだけで目は目としての機能を喪った。 「はな゛れろ゛ぉぉぉおぉぉぉおおお!!!!」 ドスが身を揺すると、まりさが突き飛ばされる。思わず口からノミが放り出されるが──ノミはまりさの動きに追随するように一緒に跳んでいく。 ノミの柄は、紐によってまりさの帽子と繋がっている。 そして帽子は、まりさの頭に直接縫い付けられていた。 まりさ種にとって命の次に大事な帽子は、今のまりさにとっては今や命と等しい価値を持つ『武器庫』だった。 ドスに突き飛ばされたものの、まりさはすぐさまノミを咥えなおし、再びドスへ突進する。 このとき、ドスは初めて恐怖した。 まりさの目に宿る、尋常ならざる暗黒の視線が、ドスの一つだけになった目を射抜いたのだ。 加えてあのノミからは、とてもゆっくりできない何かを感じる。目を抉られてそれを理解した。 ──ドスは知る由もない。そのノミが、つい先日、百を越えるゆっくりの餡子を吸ったものであることを。 ノミの刃先から溢れ出すおどろおどろしい何かが、獣の顎となって残る目を狙っているような錯覚が、ドスを襲った。 「ゆ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅ!!!!」 まりさとは見当違いの方向に、ドスは跳躍した。『回避』ではなく、それは『逃亡』に等しいものだった。 このとき、ドスは二つのミスを犯す。 一つには、恐怖に駆られ、まりさの動きを良く見ずに逃げたこと。 もう一つには、着地後、既に喪われた右目の側から振り向いたこと。 「──ゆ!?」 過ちに気づいたときにはもう遅い。まりさの姿はどこにも見当たらなかった。 その時、まりさはとうとうドスの背後を取っていた。 「ぷっ!」 まりさが再び口から何かを吐き出す。それはドスの髪の毛に当たって割れ、内包していた液体を撒き散らした。 まりさが吐き出したのは、透明な液体の入ったガラス球だった。 「ぷっ!」 ドスが音の発生源に気づく前に、更にもう一つ。また別の場所に当たって割れる。 「ゆっ! うしろにいるね!」 ドスが振り返る直前、三度、まりさは口から『武器』を吐き出す。 まっすぐに飛んでいくのは、紐で繋がれた小さな石。 それはドスの髪の毛で受け止められ、小石同士がぶつかり──火花を発した。 「見つけたよまりさ! いいかげん、おとなしくしてね!」 ドスはまりさを説得しようと試みた。それは慈悲というよりも、これ以上戦えば自分がゆっくりできないと悟ったからだ。 まりさは明らかに異常だ。 男はまりさの『手伝い』をしたというが、それは単純に鍛えたというだけのことではないに違いない──そのことに、ようやくドスは思い至った。 ──それは、あまりにも遅すぎる発見であった。 ふとドスが気づくと、何やら自分の後ろが騒がしい。それでも目の前のまりさに対し警戒を緩めるわけにはいかなかった。 だが折り重なる激しい悲鳴の中から、一匹のゆっくりの言葉を聞き分けたとき──ドスは自分を見失った。 「どずのがみがもえでるぅぅぅうううう!!! れいぶのりぼんんんんんんん!!!」 「ゆ゛あ゛あ゛あああああああ!!!???」 ドスが叫ぶのと、後頭部の熱を自覚するのは、同時だった。 まりさが投げたのは、油の入ったガラス球と火打石だった。まずドスの髪に油を撒き、その後火打石で着火したのだ。 『ドスをドスたらしめているのは、他のゆっくり達からの信頼の証であるリボンだ。 それを破壊すれば、直接的なダメージは少なくとも、精神的には多大な負荷をかけることができるだろう。 周りに他のゆっくりもいればなお良い。みすみすリボンを壊されたドスは、その失態を責められるだろうからな』 『最も効果的なのは焼き払うことだ。ゆっくりの髪は兎角燃え易い。 だがそれはお前にとっても同じことだ。火種を持ってうろつくわけにもいかない。 多少手間だが、この二段階の手順を踏むことで、ドスの髪を燃やすことはできるだろう。 もっとも、もしお前がこれを自分の頭の上で割ろうものなら、お前自身が焼け死ぬことになるがな──』 あらかじめ提示されていたリスク。それを承知で、まりさは帽子の中に油と火打石を仕込んでおいた。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あああああ!!! も゛え゛る゛うううううううう!!!」 ドスは無様にそこら中を転げまわって、火を消そうと躍起になっている。 だが火はあとに投げた油に燃え移り、より焼失範囲を広げていくばかりだ。 「どずのばがああああああああああああああああ!!!!!」 「どうじでりぼんもやずのおおおおおおおおおおおおおお!!!???」 遠慮のない罵声がリングの外から飛び交った。ドスの信頼は、喪われたリボンの数に比例して貶められていく。 あまりに無様な敵の姿を見て、まりさはしかし何も思うことはなかった。 そうだ。これこそが、自分の求めていたものだ。これでドスは、今までのように皆から信頼されることはなくなる。 少なくとも、ドスに復讐するというまりさの目的は、この時点で既に達成されつつあった。 ドスを負かし、その傲慢な自信を打ちのめし、その後は── その後は? 「まりざああああああああああああああああああああ!!!!!!」 一瞬、思考の淵に沈みそうになった意識を、ドスの怒号が引っ張り戻した。 ようやく火を消したドスの姿は、哀れなものだった。髪の毛は半分が真っ黒に焼け焦げ、帽子も三割ほど喪われてしまっている。 群れのリーダーとしての落ち着きはどこへいったのか、猛烈な赫怒を以てドスはまりさを睨みつけていた。 「ごろずっ!!! ごろじでやるぅぅぅぅぅぅ!!! よぐもまりざのりぼんをおおおおおおおお!!!」 その顔は般若もかくやというほどの、怖ろしい形相と化していた。群れのゆっくりですら、ドスの変貌に恐れ慄いている。 「ようやく本性をあらわしたな! ゲスめ!」 それを見て、まりさは改めて確信した。 このゆっくりは、やはりドスなどではない。自分が誅すべき、群れの、いや全てのゆっくりの敵なのだ! 「ゲズはお゛ま゛え゛だあああああああああああああああああああああああああ!!!!!」 慈悲も、恐怖も、一切合財を灼熱の怒りに塗り固めて、ドスは正面からまりさに突っ込んでいく。 『冷静さを見失った相手ほど扱い易いものはない』 対するまりさの心は冷え切っていた。そうだ、教わったとおりやればいい。そうすれば、このような下劣なゆっくり程度、自分の敵ではない。 体格差を物ともしない、知識と経験に基づいた自信が、まりさの根幹を支えていた。 『正面から突っ込んでくる敵を、正面から相手にする必要があるか? ──否だ。 さっきも言ったとおり、どう足掻いてもお前じゃドスの体格には対抗できない。 よしんば攻撃を加えることができたとして、ただの一度で貫徹できるほど、ドスの表皮は軟くないはずだ。 ──だから、狙うならば、既に一度攻撃を加えた箇所。一度目で防御を削り、二度目で渾身の一撃をくれてやるんだ』 まるで暴風のようなドスを前にして、まりさは一歩も退かない。 ただ機を伺うようにじっと身を低くし──衝突の瞬間、横っ飛びに跳んだ。 帽子の中のガラス球を割る心配がなくなったまりさの跳躍は、今までで一番速かった。 跳んだのは、ドスの右側。 全てはこの瞬間のための布石だ。開始直後、右の頬を噛み千切ったのも。右の目を抉ったのも。冷静さを奪ったのも。 「じねええええええええええええええええ!!!!!!」 咆哮するドスは、だが気づいていない。ドスの下にまりさはいない。 まりさの帽子から、先端の尖った竹が落ちてくる。それを咥え、捻るように全身を収縮させて跳躍し。 「死ぬのはお前だああああああああああああああああああああ!!!!!」 貫いた。 「ぶぉぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」 一度噛み千切られ、薄くなった皮は、竹の侵入を容易に許した。 管状になっていた竹は、そのままドスの餡子を噴出す間欠泉と化す。 ドスほどの巨体であれば、小さな穴が空いたところで皮同士の圧力によってすぐに塞がってしまう。 だがそこに管となるものを突き刺してやれば、逆に皮の圧力がそれを固定し、穴は永遠に塞がらない。──今のように。 「あ゛っ、あ゛っ、あ゛っ、あ゛っ、あんごぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!! わたぢのあんごがあああああああああああああああああああああ!!!!」 勢い良く、細い竹からドスの餡子が流れ出していく。 勝った。まりさは勝利を確信した。ほどなくドスの餡子は生存に必要な分を垂れ流し、その命を奪うだろう。 だがそこで、まりさにとって思いもよらぬことが起きた。 「ゆあああああああああああああ!!!!」 「ゆっ!?」 ドスは餡子が流れ出すのにも構わずに、まりさに体当たりした。 潰されぬよう、咄嗟に飛びのいて空中でそれを受け止めたまりさだったが、ドスのぶちかましは強烈だった。 たった一撃で体内の餡子が揺り動かされ、まりさは天地の認識を喪う。 ボールのように地面を転がり、ようやく体勢を立て直したとき、ドスが大きく口を開いてまりさのほうを向いていた。 「げじどべええええええええええええええええええええええ!!!!!」 口腔内にドスパークの光が溜まっていく。最早群れへの被害など考えず、まりさを抹殺するつもりだ。 逃げようと思ったが、足が震えて動かなかった。恐怖ではない。先程の体当たりで、一時的に麻痺してしまったのだ。 逃げられない。まりさは悟った。 『──もしドスがドスパークを使うなら──』 この戦いの前、男が最後に教えてくれたことを思い出す。 『もし、ドスがドスパークを使うなら、お前の喪われたその左目に埋め込んだモノを使え。 発射直前のドスの口の中に放り込むんだ。だがこれは、非常に危険だし、タイミングを誤ればお前が死ぬだけだ。 だからこれは、本当に最後の手段だ。どうしてもドスパークを避けられないときにだけ、命を賭けて使うんだ』 「まさに今が、そのときだよ!」 まりさは大きく息を吸い込むと、口、そして左目を閉じる。 「ふん゛っ!!!」 そして口に含んだ大量の空気を飲み込むと同時、全身の力を右目に集中させた。 逃げ場を喪ったエネルギーが、右目から鉄砲水のように放たれる。 バツン、とまりさの眼帯が弾け飛び、その下にあったもの──喪われた眼球の位置に埋め込まれていたものを、若干の餡子と共に発射した。 まるで人間が全力で投げたボールが如きスピードで、山なりにではなく直線的に、ドスの口目がけて飛んでいく。 それは過たず、ドスパークの光の中心のキノコに向かっていき── ──爆発した。 「あqwせdrftgyふじこlp;!!!!!」 ドスパークの熱量とまりさが投げたものが激しく反応し、ドスの口内で暴発したのだ。 男がまりさに持たせたのは、いわゆる打ち上げ花火だった。当然、火薬の塊にも等しい。 花火は打ち上げられたあと、中心の火薬が爆発することで、『星』と呼ばれる小さな火薬玉が四方八方に飛び散り美しい色を色彩を見せる。 だがドスパークによって引火した花火は、『星』それぞれが滅茶苦茶な方向に飛び散って、ドスの口内をずたずたに切り裂いてしまった。 「あ゛、あ゛、あ゛、あ゛…………」 爆発の衝撃で、ひときわ大量の餡子が頬の穴から流れ出ていた。 そのとき一緒に突き刺していた竹も飛び出したようで、それ以上の餡子の流出はなかったが、そのことはもうドスにとって何の救いにもならない。 ドスの体躯は、元の半分ほどの大きさにまで潰れてしまっていた。 ぐるんとドスが白目を剥き、重々しい震動と共に地面に倒れ伏した。 「…………」 そして、そのまま起き上がることはなかった。 まりさは、ドスに勝利したのだ。 あとがき 饅頭のバトルってどう書けばいいんだ。 また20KB越えたのでまた分割しました。自重しろ。 しかし……これは……ゆっくり虐待SSどころか、ゆっくりSSなんでしょうか…… どちらにしろここまで来たので、最後まで書き上げたいと思います。 ちなみにお兄さんが使った御札は霊夢から買ったものです。お兄さん自身はちょっとだけ腕に覚えがある程度。 ただしお兄さんは、『外敵から身を護る結界』を、内側と外側を逆にして使っているのですが…… 次でエピローグです。 今までに書いたもの ゆっくり実験室 ゆっくり実験室・十面鬼編 ゆっくり焼き土下座(前) ゆっくり焼き土下座(中) ゆっくり焼き土下座(後) シムゆっくりちゅーとりある シムゆっくり仕様書 ゆっくりしていってね! ゆっくりマウンテン 復讐のゆっくりまりさ(前) 続き このSSに感想を付ける
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【GM】 では、自己紹介のほうを 【良歌】「三峯良歌・・・探偵だ。カルテル桜花楼の下請けもしているが・・・ヒロインという言葉には、慣れない。無理に貰った力だしな・・・」 【良歌】「そうだ、復讐のために、私は力を得た。そのために今は戦っている。」 【良歌】「・・・成し遂げなければ、私は、士郎、パートナーの顔をもう正面から見れない・・・それは、そんなのは、嫌だ。」 【良歌】 http //www.grifis.net/trpg/wiki/wiki.cgi/15thmoon/HCA?page=%BB%B0%CA%F7%CE%C9%B2%CE 【GM】 【GM】 【GM】 Heroine Crisis TRPG Advanced 【復讐者と薔薇姫 -出会い-】 【GM】 【GM】 オープニング:良歌の探偵事務所にて 【GM】 現状手がけている仕事も無く、手持ち無沙汰にしていた頃 【GM】 【電話】トゥルルルルル、トゥルルルルルル 【良歌】「・・・はい。こちら三峯御嶽探偵事務所」物憂げな表情で、電話を取る。パートナーは未だ入院中で、その分がらんとした事務所だが・・・看板から彼の名前は意地でも消さない。 【GM】 【電話】「良歌か?こちら桜花楼だ」電話は探偵としてではなく、ヒロインとしての仕事を求める者で 【良歌】 【電話】「どんな用件?」事務的に応じる。慣れないヒロインであれ、探偵行であれ・・・今は心が凍っている。情熱的な受け答えは出来そうに無い。ある例外を除けば。 【GM】 【電話】「相変わらず、か」その態度は既になれたものなのか気にも留めず「まあいい、ちょっとした情報提供だ」 【GM】 【電話】「お前を襲った魔族だが、たしか巨大なスライムの類だったな?」既に話した情報を確認するように問いかけてくる 【良歌】 【電話】「・・・聞かせて。」ぴくり、と背筋が動く。士郎の治療のほか、もうひとつ桜花楼に頼んでいることがある。情報収集・・・今の良歌が執着する、ただ一つの情報を求めている。 【良歌】「っ・・・そう、よ。」思い出してしまう。あの淫獄・・・思い人の前での、淫らで無様な蹂躙。・・・唇を噛み、同意の言葉を吐き捨てる。 【GM】 【電話】「同一の個体かどうかは確認されて居ないが、先日こちらで保護したヒロインがそのような魔族に襲われていたのでな」電話の相手は淡々と語調を変えることなく告げる 【良歌】「・・・ヒロインの証言、場所、時系列の資料を、もらえる?・・・仕留めるわ。私が探している個体であっても無くても、それが齎す被害から人を守護するのが桜花楼なんでしょう?」仕事として受けよう、と告げる。 【GM】 【電話】「対象はこちらの送った増援を容易く蹴散らし姿をくらまし…ああ、すぐに送る。……すまんな、助かる」 【GM】 【電話】「奴は手ごわい、気をつけろ。」そう告げると電話は切れ…直後、FAXが着信を告げる 【良歌】「・・・ヒロインをも護る組織なのだから、あまり無茶をさせるな。私のような覚悟を決めた者から、投入するべきだ。」と、クールな口調ながら、復讐以外に残った感情が、他のヒロインへの心配がにじみ出るが。 【良歌】「・・・もし、もしアイツ、だったら。」電話を切り、FAXを手に取るその時には、その美貌には峻烈な怒りが燃えている。 【良歌】「この手で・・・必ず!」握り締められ、FAX用紙がぐしゃりと歪んだ。 【GM】 【GM】 【GM】 ミドル1:調査 【GM】 魔族に敗れた桜花楼所属のヒロイン達、彼女達からは資料以上の証言は得られず……現在は襲撃の現場となった場所を調べている 【GM】 現場には未だ瘴気と淫臭がのこり、ここで起こった陵辱の激しさを物語る 【良歌】「・・・酷い匂い。無残な現場ね。・・・これが人間の犯罪者なら、これだけ荒らした場を残していれば、私たちならあ目を瞑っていても行き先をあげられ・・・っ。今は、一人、か。」現場を見て、思わず独り言が漏れ・・・彼が居ないという現実が、戦意に燃料をくべる。 【良歌】「けれど、相手は魔族・・・人間相手の調査じゃ、追いきれない」思えば襲われたあの時も、そういった「人ならざると思える」事件を追っていた。深入りした、結果だったのだろうか。だが・・・ 【良歌】「けど・・・今の私なら。」一通り探偵として調べ終わった後・・・それだけでは足りない手掛かりを求めることも、手掛かりの先にあるものと戦うことも出来る、今なら。 【良歌】「・・・目覚めろ、私の獣。」押し殺した声で、呟くと同時。彼女の耳は狼の耳となり、彼女の身体を覆うものは、女性もののスーツから、皮革と毛皮で出来た戦闘服へと変わり、その狼の尾も生え、手足には鋭い爪が生える。 【良歌】 これが、良歌が復讐のために強引に得た力・・・「ウールへジン(狼の皮を纏う戦士)」だった。 【GM】 では、魔力か知力で気配を探る(一般判定)をどうぞ 【良歌】 狼耳(いぬみみ相当)使用、知力で判定 【良歌】 - 5+3D6 = 5+[2,3,6] = 16 【GM】 十分です。濃密な気配の渦から、外へと向かう一筋の匂いを感知します 【良歌】「・・・追える。探偵というより、まるで警察犬だな・・・しかし・・・」顔をしかめる。数万倍に強化された感覚が・・・現場に残され、まだ篭っている淫気まで、敏感に感じてしまうのだ。 【良歌】「・・・まあ、いい。人通りは少ないが・・・早く捕捉しなければ。」感情の乱れを押し殺して、追跡を開始する。 【GM】 かすかに残された痕跡の帯、まだ昼間だというのに人通りも無いそれを辿っていくと 【GM】 袋小路にたどり着き、その隅、人では通れないような小さなコンクリートの隙間へと匂いは消えていく 【良歌】(この人通りの無さ。人払いしているのか 【良歌】 ・・・隠れ家へ帰るためか、誰かを襲うためか。あるいは・・・私か?) 【GM】 その一帯の臭気は異様に濃く、おそらくいつもそこを通り道にしているのだろう 【良歌】「・・・ねぐら、か。これには、流石に入れない・・・ならば。」 【GM】 そう思案していると、背後からコツ、コツと足音が聞こえる 【良歌】「!」咄嗟に振り返り、相手を見る。相手がまだこちらに気付いていない民間人なら変身を解除、相手が気付いている民間人なら、身体能力にまかせて壁を蹴り上げて即座撤収、敵なら臨戦態勢! 【GM】 まだ気付いていない民間人ですね 【GM】 【少女】「エグ…ヒック……」迷子になったのでしょうか、真っ赤なゴシックロリータのドレスを着た少女が泣きながら歩いています 【良歌】「!・・・ふう、君、どうしたの?」刹那の間に変身を解き、困っている少女に話しかける。泣きながら歩いていたのであれば、こちらを注視する暇は無いと判断しながら。 【良歌】 少女に振り向くと相手の巣穴に背を向けることになるが、後方への注意は怠らない。 【GM】 【少女】「道…迷ったの…」しゃくりあげながら、不安そうに答える。魔力など無い一般人でも、ここの異常さは感じ取れるほどなのだろう 【良歌】「分かった。私が、案内してあげる。だから、泣かないで・・・いきましょう?家が分からない?それとも、母親からはぐれたのか?」こういう子供への相手はむしろ士郎が得意だったのだがと思いながらも、とにかく彼女を巻き込むまいと誘導を試みる。 【GM】 【少女】「家が分からないの…」なだめられれば安心したのか、泣き止んでぎこちなく話し始める 【GM】 名前はライア、海外からやってきたばかりで道に迷ってしまい…せめて大通りに出れば帰ることが出来るだろう、と聞き出せたのはそんな内容で 【良歌】「通りまで、ね。それだけでは心配だから、もう少し付き合うかもしれないけれど・・・案内するわ。大丈夫。」では、手をとって彼女を導こうとします・・・とにかく、相手が出てくるまでにここを離れなくては。出来ればすぐ見張りに戻りたいが、目の前の困っている少女を捨て置くのは探偵の道理に悖る。 【GM】 【ライア】「うん…」手を繋げば安心した様子で、そのまま素直に引かれて歩き出す 【良歌】「・・・うん、いい子ね。」素直な少女に、かすかに、今はかすかにしか出来ないからそれだけ精一杯微笑んで、彼女と共に表通りに出て・・・ 【GM】 【ライア】「あ…ここ…!」表通りに出れば現在地を理解したのか、その顔は喜色にほころぶ 【良歌】「大丈夫?分かる?」顔色の変化を見て、確認するように問う。 【GM】 【ライア】「うん、ありがとうお姉ちゃん!」華がほころぶような笑み、とはこんな笑顔なのだろう。満面の笑みで良歌に頭を下げ、背中を向けると 【GM】 町のほうに駆け出していく 【良歌】「・・・」眩しいように目を細めて、平和な世界を見送り 【GM】 【ライア】「……本当に、ありがとう」にやり、と…背中を向けたその顔には……先ほどまでとは異なる、毒華のような笑みが浮かんでいた 【GM】 【GM】 【良歌】「けど、今の私には・・・必要なのは、戦い。」それには気付かぬまま、小声で呟き、表情を決意に染めると、路地裏へと戻っていきます。 【GM】 クライマックス:仇と…黒幕と 【GM】 袋小路へと帰り着いたときには、空は暗く…魔がその生を謳歌する刻限になっている 【良歌】「・・・まだ、居るようだな。」と、進入不能の巣穴を確認して 【GM】 記憶にあるそこと状態は変わって居ないはずだが……暗さを増した所為だろうか、どこかのしかかるようなプレッシャーを感じる 【良歌】「・・・悠長に待って、またぞろ誰か着ても面倒だ・・・目覚めろ、私の獣」気配に屈せず、むしろ戦意を増した表情で呟き、再びウールヘジンの姿となる。 【良歌】「どうせ、気付いているのだろう?もう何人ものヒロインを倒しておいて・・・今更、私がヒロインだと知ったから、怖気づいたわけでもなかろう。」 【良歌】 あたかも、そこにいる誰かに語るうように言う。 【GM】 その言葉が通じたのか、小さな穴からズルリ、と粘液が湧き出してくる 【良歌】「それとも・・・私が来たのが、意外だったか?・・・意外なものか。お前に復讐するために、私は力を手に入れたんだ。」いや、居ることに、気付いている。そいつが、こちらを見ていることも。 【GM】 ズルズル、ズルズルと…次第に姿を現し、その全身を晒すとゆっくりと形を整え…からかっているのだろうか?良歌の前で士郎とそっくりの姿をとる 【良歌】「!貴様・・・とっとと、あの時の姿になれ・・・さもなくば、どのみち殺すにしても、尚更酷い殺し方をすることになるぞ。」唸るように、歯軋りするように、表情を引きつらせてその挑発に怒る。 【GM】 そしてそれに気を取られた瞬間、背後の電柱、その天辺に何時の間にか仕掛けられていた小さな針が良歌へ向けて放たれる 【GM】 というわけでポイズニックニードル:尿意が起動します。知力で12を目標にどうぞ 【良歌】 ガッツ使用 【良歌】 - 5+3D6 = 5+[3,5,4] = 17 【GM】 無念、かわされた 【良歌】「お見通しだっ!」まるで後ろに目があるかのように、風を読み相手の意図を読み、最小限度の動作でかわす。 【スライム】「ほ…う…?」感嘆したかのように、かすかに声を洩らす。声帯までも模倣しているからだろうか、その声は士郎にそっくりで 【GM】 [04スライム][良歌] 【GM】 では、戦闘開始で 【良歌】「士郎の声で・・・話すなっ!」怒りが、さらに募る。士郎の姿をしたものを攻撃するのに、心が躊躇を覚えるが 【GM】 まず良歌からですね 【良歌】「お前は仇だ、士郎じゃないっ!・・・死ねェッ!」こんな粘液で作った偶像が、私のパートナーであるものか、似ても似つかないと振り切って、攻撃する! 【良歌】 ガッツ+ピアシング(武器は小型武器相当) 【良歌】 - 14+3D6 = 14+[3,1,3] = 21 【GM】 では、ディフェンシブフォームで軽減して、と 【GM】 反撃のバインディング+通常攻撃 【GM】 - 2D6+12 = [3,6]+12 = 21 【良歌】「ウォアアアッ!!」超高速で突進し、小さいが鋭い爪でスライムを抉る。硬化して防ぐだが・・・ 【GM】 ダメコンとアクトをどうぞ 【良歌】 上の文章の硬化して防ぐ(スライム)だが・・・の部分は、打ってる間に状況が変わって消しそびれたので無視してください。 【GM】 はいはい、了解です 【良歌】 アヴォイド+ガッツで回避。ソードダンサードレス相当の効果も入れて、4d6振り。 【良歌】 - 7+4D6 = 7+[5,4,4,5] = 25 【GM】 そのまま腕を広げ、からめとるように押し付けてくるが… 【良歌】「遅いぞっ、あの時見せた恐ろしさは、ただのマヤカシか!無力でない私には、追いつけもしないか!?」そのまま跳び上がり、空中で蜻蛉を切って着地、凄まじい速度で攻撃を完全に回避する。 【GM】 その動作を追いきれないのか、スライムの腕は空を切り…無防備な背中をさらし 【GM】 というわけでターン回して次どうぞ 【良歌】「思い知れ、化け物!私のっ、怒りを!」路地裏の壁を蹴り、3次元機動で襲撃! 【良歌】 ガッツ+ピアシング! 【良歌】 - 14+3D6 = 14+[4,4,2] = 24 【GM】 む、ではそれは無造作に受け止めて 【GM】 反撃の排泄の呪い+マルチアタックで2回攻撃 【GM】 - 2D6+12 = [4,3]+12 = 19 【GM】 - 2D6+12 = [1,1]+12 = 14 【良歌】 しまった、フルパワーでは回避1回しかできない。ガッツ無しの回避なら2回出来るけど、ヘタすりゃ2回失敗して命中する可能性が・・・ 【スライム】「かか…った」にやり、と邪な笑みを浮かべ、背後から攻撃してくる相手の体を包みこみ…その体に淫らな呪いを刻み込もうとしてくる 【良歌】 BSの関係で、最初の一発にガッツ+アヴォイド、弐発目は受ける・・・ 【良歌】 一発目回避、これは上手くいってくれよ! 【良歌】 - 7+4D6 = 7+[3,5,6,6] = 27 【良歌】 よし、一発目は避けたが・・・弐発目は直撃か。 【GM】 ダメージは何所へ? 【良歌】 レッグガード相当の毛皮で受ける。アクトは「フラッシュバック」を宣言。 【良歌】 レッグガードのAPはこれで0になる。 【GM】 では… 【GM】 はじけたスライムの背中、無数の破片が良歌を襲い…幾つかは避けるが、幾つかはかわしきれずその足に纏わりつく 【良歌】「しまった・・うくっ!?」身を翻したが、足に傷を負い、着地の態勢が乱れ足がふらつく。 【良歌】 地面を思い切り踏みしめた途端・・・ぎくんと、腰が震えた。 【スライム】「ググ…同じ手…かかるか…」まるで侮蔑するように、その目を細めて声をかけ…同時に 【良歌】「ど、毒っ・・・あの時の・・・」反射的に、しなやかな美脚が内股になってしまう。下半身に走る、異常な羞恥と切なさ。 【スライム】「ど…した?様子…変…だな?」次第になめらかに回るようになる舌、なぶるようにその下腹部に手をやり…軽く押してやる 【良歌】「ひうっ!?く、離せ!?私は、私はもうあの時みたいにはならないっ・・・!?」ぎくりと腰が震える。仇の前で怯えたように失禁するなどという無様を、曝したくないと懸命に拒むが 【良歌】 拒むほど、思い出してしまう。あの日のことを。このおぞましい粘塊に圧し掛かられ、殆どあらゆる体液を流しつくしながらのたうった、無様・・・ 【良歌】 無様、だ。無様だ、断じて、それ以外の意味は無い・・・断じて、もう一度あの有様を欲したりはしない! 【良歌】「このっ・・・ひぅっ・・・!」咄嗟にスライムを蹴り飛ばして退けようとして、股を開きかけたことが尿意への抵抗を弱めそうになり、慌ててそれを中止し、何とか逃れようと身を捩るが、その動きにも力が入らない・・・ 【スライム】「いや…なら、何故…また来た?」そう楽しそうにつげると…あの日、良歌にのしかかった姿に戻る。ただしその頭だけは士郎のもののまま 【GM】 では、ターン回って良歌どうぞ 【良歌】「お前を、殺すためだ!復讐のためだ!貴様に抱かれに来た訳じゃないっ!」怒りと体勢のせいか、言わずもかなのことを言いながら、至近距離から爪を振るう! 【良歌】 ・・・ガッツは回避に回して、ピアシングだけ使用。 【良歌】 - 14+2D6 = 14+[1,5] = 20 【GM】 ん…では素で受けて 【GM】 バインディング+怪力で反撃を 【GM】 - 12+5+2D6 = 12+5+[1,1] = 19 【良歌】 とはいえ、最早首から上を残して、かつての襲撃と同じ身長3m近いぶよぶよでのっぺりとした巨人の姿になった相手に、その細腕での打撃はいかにも非力に見え・・・ 【GM】 まるでそれを気にする様子も無く、そのまま腕をたたきつけてくる 【良歌】 アヴォイド+ガッツ+ソードダンサードレスで回避! 【良歌】 - 7+4D6 = 7+[5,4,1,4] = 21 【良歌】「くっ!」至近距離、身体に異常、その悪条件下だが、辛うじて身をひねって豪腕を回避する。 【GM】 ではターン回して次、どうぞ(涙 【良歌】ウォアアッ! 【良歌】 一発でダメなら、倒れるまで何発でも打ち込むのみと、そのまま懐深く潜って爪牙を振るい続ける! 【良歌】 ピアシングオンリー。 【良歌】 - 14+2D6 = 14+[2,1] = 17 【GM】 む……通すと流石になぁ、ディフェンシブフォーム 【GM】 そして…うーん、どうするか… 【GM】 一か八か、バインディングだけ入れて攻撃 【GM】 - 2D6+12 = [1,3]+12 = 16 【良歌】「どうした!?舐めた口たたいて、でかい図体さらして、この程度かっ!」 【良歌】 いつものコンボで回避! 【良歌】 - 7+4D6 = 7+[3,1,4,2] = 17 【良歌】 至近距離から繰り出される触手を、全て爪で切り払う! 【GM】 しかし、その様もスライムには一切の焦りを生じさせることはない。まるで機械の様に淡々と次の攻撃を狙う 【GM】 では良歌どうぞ 【良歌】「くうっ・・・」対照的に、攻める良歌は、啖呵を切った直後に、かすかに腰をもじつかせるが 【良歌】 それでも、連打は止まらない! 【良歌】 ピアシング 【良歌】 - 14+2D6 = 14+[1,6] = 21 【GM】 む……ええい、ここは通す!どのみちそうしないと通らん 【GM】 反撃のバインディング+怪力 【GM】 - 2D6+12+5 = [2,4]+12+5 = 23 【良歌】 アヴォイド+ガッツ+ソードダンサードレス 【良歌】 - 7+4D6 = 7+[3,3,6,5] = 24 【良歌】 回避! 【GM】 スライム「はや…い」淡々と、表情一つ変えずに両腕を振り回すスライム、だがその全身はボロボロと崩れつつある 【良歌】「・・・終りだ、貴様は。ここで、私が殺す・・・!」かわしきって、猛々しく笑う。 【GM】 では回して…どうぞ 【良歌】「・・・死ねぇええええええっ!!!」大きく振りかぶって、一撃! 【良歌】 ピアシング 【良歌】 - 14+2D6 = 14+[2,2] = 18 【GM】 ガードして…14軽減、残り8 【スライム】「ジリ貧…なら…ば…」マルチアタック…だな、せめてAP削ろう 【GM】 - 2D6+12 = [6,1]+12 = 19 【GM】 - 2D6+12 = [4,5]+12 = 21 【良歌】「っ!、いい加減にっ・・・!」 【良歌】 最初の攻撃にガッツ+アヴォイド、次の攻撃は素で受ける。 【良歌】 回避 【良歌】 - 7+4D6 = 7+[2,3,1,6] = 19 【GM】 受動優位だから、避けられたか… 【良歌】 だが、弐発目は直撃だ。 【GM】 どっちか、飛びますか 【良歌】 ・・・腰APを飛ばして、クライシスアクト<張り付く異物>と<お漏らし> 【良歌】 を宣言。 【GM】 はい、了解 【良歌】 いや、<ぎこちない仕草>も・・・入るか?どうかな、GM。 【GM】 んー、演出入れるなら可 【良歌】 入れます>演出 【GM】 では可 【GM】 【GM】 ぐずぐずと溶けつつあるその体、だがそれでも全身を振り回し…その一撃が遂に良歌を捉える 【良歌】「しまっ・・・きゃあ!?」優勢、仇をもう少しで討てる、士郎のところに戻れる・・・その思いが生んだ、一瞬の油断。 【良歌】 攻撃に集中しすぎた良歌は、回避のタイミングを一瞬誤った。内に秘めた尿意も、その焦りの原因だったかもしれない。 【スライム】「とらえ…た…」そのまま腰から下を一気に飲み込み…秘所を攻め立て、下腹を押しつぶすように、しかし決壊しないように緩やかに力を込めていく 【良歌】「このっ、往生際が悪っ・・・やっ、やめろっ!?くうっ・・・」足腰を一気に呑まれたことに、流石に焦ってもがこうとするが・・・あまり大きく足を動かそうとすると、敵の身体である粘液にかかる力で、大また開きにさせられてしまいそうになり、ぎこちなく腰をひねることしか出来ない。 【スライム】「……悪いのは…どちらか…」抵抗できないのをいい事に、尿道の入り口にかすかにもぐりこむと…洩らせぬようにその部分を硬化させ栓にしてしまう 【良歌】「くひいっ!?」予想外の、しかも異物挿入など前提にもしない器官への硬い感触に、思わず奇妙な悲鳴が漏れた。全身が引きつり、変身した狼の耳がびくっと立つ。 【スライム】「出したければ…懇願…しろ…」ぼそぼそと、呟くような声で宣言するとその体に張り付いた部分を、ヴヴヴヴヴ、と言う音をたてて振動させていく 【良歌】「あぎいっ、痛いっ、ふわああっ・・・!?だ、誰が、誰がお前何かに懇願するものかっ・・・!?」尿道を抉られる激痛に、涙を浮かべ叫び声を上げるが、屈服はすまいと気丈に言い返す。しかし痛みと、それ以外の下半身を柔らかく覆う粘体が蠢く刺激に悼み以外の感覚を植えつけられそうになり、それに精神で抵抗するので精一杯なのか、まだ自由になる腕を使っての脱出は遅々としてはかどらない。 【スライム】「勝てず…とも…良い…力…集め…」ぶつぶつと、意味の分からぬことを洩らしながら振動に強弱をつけ、決して慣れるとのが無いように、過剰な苦痛を与えぬようにじわじわと責め立てて行く。まるで自身が滅びても後に続くものがいるかのように 【良歌】「な、何を、言って、お前・・・くうんんんっ・・・!?」スライムの肌に突き、下半身からそれを引き剥がそうとする手に、力が入らずに震える。微細な震動は、良歌を一度に押し上げることをせず・・・加えて、じぐじぐと尿道から苦痛を与え、その奥、魔性の力で満たされた膀胱を懊悩させ、内蔵を圧迫する。(くるっ、しい・・・おなかが、あそこが・・・爆ぜるっ、爆ぜるぅうっ・・・!?) 【スライム】「ヒロイン…狂わせる…役…立たなくなる」何事かを呟くと唐突に栓を解放するとそのまま背後から地面へ押し倒し…4つ這いに下上で腹部のスライムを収縮させ、強制的に搾り出していく 【良歌】「狂っ、わない!私は、ぁあっ、士郎のところに・・・帰る・・・んんっ、だ・・・!」最早疼痛を越えて何か別の者になりそうな感覚を懸命に押さえ込んでいたが 【良歌】「ぐっ、うあ!?私はこんな姿勢っ・・・ひ!?」突然の圧迫に、溜まらず四つんばいになり・・・直後の、意表をつく塞栓からの開放。 【良歌】「ひっ、やっ、漏れ・・・あ、ああああああ・・・・!」奇襲に効し切れず・・・ふるふると四つんばいになって突き出されたきゅっと締まった良歌のヒップと、その先に生えた尻尾が振るえ・・・溜まらず、良歌の秘所は決壊した。 【良歌】「いやあああっ、こんな・・・私、犬みたいに・・・!?」惑乱した唇が、低い路上の視界、そこでの排泄という異常な状況に惑って、言葉を吐き出す。そして、ほとばしってしまった小水が、路地を汚した。 【良歌】「ふぁ・・・・やぁ・・・」極限まで圧迫鬱屈させられた状態からの開放・・・という、歪んだ爽快感を、良歌の体に押し付けて。 【スライム】「墜ちて…いけ…少し…ずつでも……」排泄とともに発せられた極上のミアスマ、それを啜り、その体内に溜め込みながらゆっくりと離れていく 【GM】 と、行ったところで回しますか 【良歌】 はい。 【GM】 では、どうぞ 【良歌】【っ・・・くうっ!」衝撃の事態に翻弄された良歌だったが、直後、見開いて涙を散らした瞳に、獣じみた殺意が宿る。 【良歌】「うぁああああああああっ!!」言葉にならない叫びと共に、跳びかかり、殴打する! 【良歌】 ピアシング 【良歌】 - 14+2D6 = 14+[4,4] = 22 【GM】 む、ガードしても丁度、か… 【GM】 その一撃を受け、スライムはただの、意思の無い粘体へと成りはて… 【GM】 戦闘終了 【良歌】「っ・・・二度も、屈辱・・・・・!けど・・・」スライムに戦衣を溶かされ、露出してしまった下半身を、余った上半身を覆う衣を引張って何とか隠そうとしながら 【良歌】「けど、勝った・・・やった・・・・これで・・・!」しかし、その表情には恥じらいだけでは無く、歓喜がある。これで、罪は濯げた・・・士郎のところに帰れるとの思いは、何より強い。 【GM】 良歌の足元、どろりとした粘体の水溜りは次第に消え…後には小さな核が残る 【良歌】「・・・っ」その核を思いっきりかかとで踏み付けコンクリートで粉砕する。 【良歌】 あとに何も残さないと言うように。 【GM】 その足が小さな欠片を踏み潰そうとした瞬間、その足元を何かが通り抜け……足に伝わるのはただコンクリートだけを踏みつけた感触 【良歌】「、っ!?」そう大きくない核だったが、足に衝撃が伝わる目測を誤った影響は意外に大きく、よろけてしまう。 【GM】 【??】「おっと、いきなり潰されちゃ困るのよね」直後、その頭上からかけられる声 【良歌】「な、何だ!?誰だ!?」そんな小さなものを踏みつける刹那に奪う、というのは、並大抵の速さではない。その事実に驚きながらも、咄嗟に声のするほうを振り仰ぎ、身構える。 【GM】 視線の先にあるのは蜂のような翼を持った女の姿 【良歌】「お、お前も・・・魔族かっ!?邪魔をするな、それを寄越せ!」 【GM】 【??】「にしても、使えない子だったわね…一度下した相手に負けちゃうなんて…再生に必要なミアスマも回収できて無いし」女は良歌のことをまるで相手にせず、その結晶内から力を回収していく 【良歌】「使えない、子・・・!?」その言葉が、酷く引っかかった。まさか・・・「お、お前はまさか、そいつの主、か?・・・そいつを操っていたのは、。お前なのか!?」嫌な予感と共に、問いを叫ぶ。 【GM】 【??】「いいえ?私はこの子の主の……そうね、下宿人ってとこかしら?」まるで意に止めず、はるか高みから見下すように告げると 【GM】 【??】「ああ、これはもういらないわね」ぽい、と既に空っぽの核を無造作に投げ捨てる 【良歌】「下宿人、だと・・・!?それじゃあ、まだ上が居るってのか・・・畜生!」 【良歌】 それでは、仇だと思っていたあいつは、ただの道具じゃないか。復讐は終わってない・・・という事実が、開放されたと思っていた心に凄まじい徒労感を与える。 【良歌】 踏み砕こうとした核が敵の本体ではなく、単なるミアスマタンクだったのも、それに拍車をかける。 【GM】 【??】「それと……」くすり、とからかう様に笑い「下くらい隠したら?それともこの場で犯して欲しいのかしら?」 【良歌】 苛立ち紛れに、落ちてきた核を今度こそ踏み潰したが・・・それでは全然張れない。 【良歌】「え・・・?きゃあっ!?」指摘されて、ようやく、先ほどまで隠そうとしていた下半身を忘れていたことに気付き、慌てて上半身の衣装の裾を掴んで引き下ろすが、それでもスレスレ、といったところだろうか。 【良歌】「だっ、誰がそんなことを思うか!その、主とかいう奴も・・・必ず私が、殺してやる!邪魔立てするなら、お前もだ!」それでも、戦意を、復讐を叫ぶのは忘れない。 【GM】 【??】「ま、今回は奮戦を讃えて見逃してあげるわ…じゃね」言い残すと相手のことなどまったく気にも留めず、風のような速さで飛び去っていく 【良歌】「くっ・・・・!」その飄々としたこちらを歯牙にもかけぬ様子と、追跡して情報を吐かせることすらままなら無い勝者の筈の自分の姿の落差に、唇を噛み締めて、悔しがる。 【GM】 【GM】 【GM】 エピローグ?:路地裏・建物の屋上 【GM】 【ライア】「ふぅん……あの子を倒しちゃったんだ」 【GM】 そこにいたのは赤のゴスロリの少女 【GM】 少し前までの泣き顔が嘘のように、のんびりと真下の戦闘、そしてその後の様子を見守っていた 【GM】 【ライア】「世話役にはちょっと向いてないかもしれないけど……おいしそう、ね」その手にあるのは先ほど砕かれた筈の核、そこに軽く口を突け…おいしそうに力をすする 【GM】 【ライア】「それじゃあ、次は……どうやって遊ぼうかな、お姉ちゃん?」バキリ、と音を立てそのまま核を噛み砕き… 【GM】 一瞬風が吹けば、そこには何も残って居ない…まるで幻のように 【GM】 【GM】 【GM】 Heroine Crisis TRPG Advanced 【復讐者と薔薇姫 -出会い-】 【GM】 完 【GM】 【GM】 【GM】 御疲れ様でした 【良歌】 お疲れ様でした&ありがとうございました! 【GM】 いきなり3レベル相手に初GMは難しいなぁ…目も酷かったし 【良歌】 で、出目と合性のせいですよ、気を落とされずに。 【GM】 まずしばらく低レベルを相手にミアスマを稼ごう、数が足りん( 【良歌】 実際、自分で運用してみても、3レベルで作ったPCってここまでやるもんなのかと驚きはしたが・・・w 【GM】 というか、アヴォイド型は難しいらしいです、当たらないし当たればはかなく散る 【良歌】 それは私もGMとして戦闘シミュレートしてる時に感じたことですなあ・・・・>アヴォイド型は難しい 【GM】 とりあえずCPSPどうぞ 【良歌】 CP6SP2. 【GM】 では経験点が6か 【良歌】 ええ。で、GMが得るミアスマと侵略点がそれぞれ6と2. 【良歌】 あと、苗床を持っているので、ポーン級モンスターが1体増えます。 【GM】 ですね…赤字か 【GM】 まぁ、そちらは後で作っておこう 【良歌】 けど、初期だと、2点の侵略点は5点のミアスマに変換、ですから 【良歌】 それ考えるとミアスマ11点分、1点分黒字といえないことも無いです。 【GM】 とりあえずスライムの再生はもう少し余裕が出るまで置いておいて…ルーク級でなんか作っておくか 【GM】 では、御疲れ様でした 【良歌】 お疲れ様でしたー。
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DS西村京太郎サスペンス2 新探偵シリーズ 金沢・函館・極寒の峡谷 復讐の影 機種:NDS 作曲者:木村嘉明、片岡真悟 発売元:テクモ 発売年:2008 概要 推理作家・西村京太郎の原案・監修の推理アドベンチャー第2弾。 本作では雪国を舞台にしているので冬のイメージの曲が多い。 条件を満たすとサウンドテストである「京太郎くん音楽室」が追加される。 収録曲(サウンドテスト順) 曲名 作・編曲者 補足 順位 西村京太郎サスペンス オープニング 京太郎ラビリンス 京太郎くんパート 或る晴れた日 日常 止まらぬ歩み 予兆 惨劇の幕開け 限りなき欲望 絶体絶命 光へ 決戦の序曲 癒せぬ傷み 思いを胸に…… black Velvet 照彦イベント 悠久の歩み 染谷窯 白銀の華 函館 絡み合う因縁 鮫島邸 真実の追究 推理・対峙など 未完成のパズル 推理 決戦の刻 推理・対犯人 Pride 推理・三章後編 断罪の刃 推理・対三章真犯人 手探りの真実 調査 調査~染谷窯~ 調査・染谷窯 調査~函館~ 調査・函館 調査~洋館~ 調査・鮫島邸 それでもまた歩いていく 妖精たちのノクターン スタッフロール 狡猾な牙 West Village・出題(シリアス) 探求者 West Village・出題 ピエロのロジック West Village・出題(コミカル) 試される知恵 West Village・推理 爆発しちゃ~う! West Village・ミニゲーム WestVillage West Village・メニュー
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