約 125,184 件
https://w.atwiki.jp/mheroes/pages/306.html
専門技術/金属武器 熟練工レシピ更新 --
https://w.atwiki.jp/mainichi-matome/pages/2515.html
基礎データ ブランド名 アイム・キンキ理容美容専門学校 アイムキンキ理容美容専門学校 会社名 学校法人辻本学園 アイム・キンキ理容美容専門学校 電話番号 Fax番号 メール 企業分類 専門学校 現在の問合せ結果 × 現在のコメント メール返信なし 最終更新日 2009/03/13 特記事項 基礎データ特記事項 アイム・キンキ理容美容専門学校2008年1月01日の毎日朝刊に広告あり 他、広告多数 03/12 ×(メール返信なし) 特に新聞に広告を出している企業は毎日新聞にとって泣き所となるようです 問合せ 問合せ先一覧 / 毎日新聞に広告を出していた企業(日付別) / 毎日jpに広告を出していた企業 / 電話問合せのコツ 結果別一覧 ◎◎-◎-○ / △ / ×(記号、数字、ローマ字) / ×(ひらがな) / ×(カタカナ・ア行~ナ行) / ×(カタカナ・ハ行~ワ行) / ×(漢字・あ行~か行) / ×(漢字・さ行~た行) / ×(漢字・な行~は行) / ×(漢字・ま行~わ行) 分野別一覧 製造業 / 製造業その他 / 小売、卸売 / サービス業、娯楽 / 医療、医薬 / 建設、不動産 / 金融、運輸、IT、その他 / マスコミ、出版 行政等一覧 行政、各種団体等 / 教育機関等 / 政治家、著名人 毎日新聞系列 【その1】 【その2】 【その3】 【その4】 【その5】 【その6】 【その7】 【その8】 【その9】 問合せ報告 毎日新聞関係の凸結果を淡々と張り続けるスレ7 ※「電凸」とは「電話問合せ」のインターネットスラング(俗語)です。(詳細は用語集) 対応評価の大まかな目安 ◎◎ 広告打ち切り・今後広告を出さない・今後広告を出す予定はない ◎ 良対応・厳重な抗議 ○ 普通、中立対応・対応検討中、今後注視 △ 保留・問合せの返答結果待ち(3日以内に回答なければ×) × 悪対応・無回答・処分は十分毎日の姿勢を容認・広告続行 このテンプレを編集 アイム・キンキ理容美容専門学校 2008年1月01日の毎日朝刊に広告あり 他、 広告多数 03/12 ×(メール返信なし) 「日本の母は息子の性処理係」毎日新聞が捏造記事160 http //changi.2ch.net/test/read.cgi/ms/1235566659/744 744 名前:名無しさん@自治スレにてローカルルール議論中[sage] 投稿日:2009/03/12(木) 23 40 55 ID jDhWYeEG0 メールのお返事です アイムキンキ理容美容専門学校 →メール返信無し 検索 2008年10月30日の毎日朝刊 広告一覧 2008年11月27日の毎日朝刊 広告一覧 2008年12月01日の毎日朝刊 広告一覧 2008年12月02日の毎日朝刊 広告一覧 2008年12月08日の毎日朝刊 広告一覧 2008年12月09日の毎日朝刊 広告一覧 2008年12月16日の毎日朝刊 広告一覧 2008年12月17日の毎日朝刊 広告一覧 2008年12月22日の毎日朝刊 広告一覧 2008年9月24日の毎日朝刊 広告一覧 2009年10月07日の毎日朝刊 広告一覧 2009年11月18日の毎日朝刊 広告一覧 2009年1月05日の毎日朝刊 広告一覧 2009年1月06日の毎日朝刊 広告一覧 2009年1月08日の毎日朝刊 広告一覧 2009年1月12日の毎日朝刊 広告一覧 2009年1月13日の毎日朝刊 広告一覧 2009年1月19日の毎日朝刊 広告一覧 2009年1月20日の毎日朝刊 広告一覧 2009年1月26日の毎日朝刊 広告一覧 2009年1月27日の毎日朝刊 広告一覧 2009年2月02日の毎日朝刊 広告一覧 2009年2月11日の毎日朝刊 広告一覧 2009年2月13日の毎日朝刊 広告一覧 2009年2月16日の毎日朝刊 広告一覧 2009年2月17日の毎日朝刊 広告一覧 2009年2月23日の毎日朝刊 広告一覧 2009年2月24日の毎日朝刊 広告一覧 2009年3月02日の毎日朝刊 広告一覧 2009年3月03日の毎日朝刊 広告一覧 2009年3月09日の毎日朝刊 広告一覧 2009年3月10日の毎日朝刊 広告一覧 2009年3月16日の毎日朝刊 広告一覧 2009年3月17日の毎日朝刊 広告一覧 2009年3月23日の毎日朝刊 広告一覧 2009年3月24日の毎日朝刊 広告一覧 2009年3月27日の毎日夕刊 広告一覧 2009年3月30日の毎日朝刊 広告一覧 2009年3月31日の毎日朝刊 広告一覧 2009年6月25日の毎日朝刊 広告一覧 2009年6月29日の毎日朝刊 広告一覧 2009年7月08日の毎日朝刊 広告一覧 2010年1月06日の毎日朝刊 広告一覧 教育機関等への問合せ結果
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3166.html
前ページヘルミーナとルイズ トリステイン西部の海岸沿いに位置する辺境部に、ダングルテールと呼ばれる一帯がある。 そこに点在するいくつもの廃村。その中でも、別段の不吉さをもって語られるものが一つ。 かつて起こった新教徒狩りを目的とした政府による住民虐殺事件、通称『ダングルテールの惨劇』。 その忌まわしい歴史の爪痕を残す廃墟。事件から四十年が経過した現在も、住み着くものがいない闇へと葬られた地。 今はそこに、一人の魔女が住み着いていた。 呪われた地に住まう魔女。 魔女の住む一帯には常に深い霧に包まれており、彼女に会おうとした誰かが足を踏み入れたとしても、必ず道を見失い、霧の外へと戻ってきてしまうという。 そんな不気味な場所に居を構える魔女に対して、人々は様々な噂をた。 ある人は言う、邪悪なる人食い魔女と。 ある人は言う、死者を冒涜する術を使う忌まわしい魔女と。 ある人は言う、すべての知識を持ち合わせた、万能の力を得た魔女と。 彼女に関する噂は枚挙にいとまがなかったが、ただ一つ共通するのはその呼び名。 人は彼女を『ダングルテールの魔女』と呼ぶ。 春が来た、夏が来た、秋が、冬が、そしてまた春が来た。 四季は巡り、止まることなく時間は流れ続ける。 アルビオン崩壊から二十年。 七万の兵士に立ち向かった使い魔の少年が命を落とし、人々の記憶からもその勇姿が忘れ去られるのに、十分なほどの時間が流れていた。 多くの人から『ダングルテールの魔女』と呼ばれているかつて少女であった女性は、今は少数の人々から『錬金術師ルイズ』とも呼ばれている。 当時から近隣の住人であっても近寄りたがらなかったダングルテールの廃村を、住処と定め工房を構えてから早十年。 ルイズに錬金術の教示を与えたもう一人の錬金術師、ヘルミーナの姿はもう隣にはない。 彼女はルイズに己の知りうる限りの知識を授けたあと、己の世界へと帰っていった。 すべての機材と資金を引き継いだルイズは、その後数年間に渡り、ガリアに工房を構え続けた。 ヘルミーナがいなくなってから最初の一年目にしたことといえば、世界をまわり、四人の弟子をとることだった。 ルイズはヘルミーナと過ごした数年間で、錬金術というものが実に広大な海原のようなものであると理解していたし、故に己一人の手での目的へと辿り着くことができないであろうことも理解していた。 ルイズは四人の弟子たちに、己の納めた錬金術の知識と技術とを、四年の年月をかけて教え伝えた。 それも全員に同じものを教えたわけではない、それぞれの弟子たちには適性ごとに別々の事柄を教え込んだ。 自分の限られた時間では辿り着ない境地へと、弟子の誰かが辿り着く未来を願って。 そうして四年間かけて、彼らを一人前の錬金術師に育てたあと、彼女は弟子たちにこう言ったのである。 「錬金術を、世に広めなさい」と。 その一言から、十年以上の歳月が流れた。 たった二十年、それだけの時間で世界は容易く変化する。 様々な部分で、小さく、大きく。 人は年をとったし、真新しかった石畳は薄汚れた。 美味しかったパイの店は主人が引退して息子に代替わりしてから評判が落ち、草木が育たないと言われていた荒れ地も、開墾と土壌改良によって実りをえた。 トリステイン王国は貴族によって寡占されていた職種の一部で、広く平民を登用することを決定した。 ガリア王国では国が分裂し、その片方が共和政府を名乗り今でも内乱を続けている。 ゲルマニアは相変わらずらしいが内部での政争はその激しさを増しているらしい、ロマリアでは弾圧され力を失っていたはずの新教徒たちが力を盛り返し、年々その発言力を増していると聞く。 ここ数百年なかったような、急激な変動が世界に起こっている。 そして、その一端には錬金術の存在があった。 魔法を使えない平民でも容易に扱うことのできる錬金術によるアイテムの存在。更には平民出身でも錬金術師にはなれるという事実そのものが、絶対的であった貴族の権威を揺るがし、貴族に対する平民の地位の向上へと繋がりつつあるのである。 が、このことはルイズとしては別段どうでも良いことである。 ヘルミーナとルイズがガリアにいた頃から平民に貴族に、表に裏にばら蒔いた錬金術とその成果は、やがては四人の弟子たちにも受け継がれ、世界各地へと波及していった。 四人の高弟たちは、各地に錬金術を広める傍らに弟子をとり、更なる錬金術の広まりに貢献した。 最初は争いの場に、やがては貴族たちの社交の場に、そしてついには平民たちの生活の場にまで錬金術は手を伸ばした。 早くから錬金術が広まったガリア王国には、錬金術を専門で研究する機関を設立する気運が高まっているとも聞く。 分裂し、国力を殺がれたとはいえ、格式と伝統の国ガリア。彼の国で錬金術が認められたとなれば、各国ともそれを追随せざるをえまい。 それもこれも何もかも、すべてはルイズの思い描いた通りに。 工房地下に作られた廃棄処理施設、ルイズはそこで失敗作を破棄する作業を行っていた。 かつては美しかった桃色のブロンドも今はくすみ、その鮮やかさの面影を残すのみとなっている。 三十路半ばの盛りを過ぎた体は全盛期の美しさは失っていたが、逆に円熟した大人の女性を感じさせる。 露出を抑えつつも色気を発露させている黒いイブニングドレスを身に纏った姿は、妖しいとか、艶やかという言葉がよく似合う。 だが、それらの魅力と氷のように冷たい眼光とが合わさって、一種近寄りがたい雰囲気を醸し出していた。 失敗作を炉に放り込んで再生成し、新たなる錬金術の礎とする。錬金術師なら誰でも行っている行程である。 薄暗い地下で、こぼれ落ちる汗も気にせずに、根気よく作業を続ける。 錬金術というものは、これでなかなか力仕事が多い、今回のそれもなかなかに重労働であった。 弟子がいた頃にはこういった面倒な作業はすべて彼らに任せっきりにしていたことが、今は懐かしい。 手の平大のものから一抱えもあるものまで、様々な失敗作や欠陥品を焼却台の上へと並べていく。 そうして、最後の一体に取りかかろうとしたところで、光源を最低限に抑えてある地下に不意に光が差し込んだ。 「ん……?」 ルイズは視線を上げて階段の上、闖入者の姿を確認しようとする。 逆行になってその顔は確認できなかったが、背格好とほのかに香った香水の匂いで、それが女性であることだけが知れた。 「『ダングルテールの魔女』さん、であっているかしら?」 ヒールの音をたてながら降りてくる声には女性的な瑞々しさが溢れており、推測が正しかったことが証明された。同時、ルイズはその声に引っかかるものを感じたが、そちらの方は無視することにする。 ルイズがじっと見つめる中で人影は石段を下り、残りが数段になる頃には、その姿をはっきり見て取ることができた。 燃えるように赤いロングウェーブに褐色の肌。身長はルイズよりも高い、百七十サントほどはあるだろうか。 どこか見覚えのあるような青いのローブと緑のマントを着用したその女性は、口元に不適な笑いをたたえている。 「ふん……初対面の相手を前にしたら、まずは自分から名乗りなさいってこともゲルマニアでは教わらないのかしら?」 先ほどの違和感を表へと出さぬように、『ダングルテールの魔女』は普段通りの対応で客を出迎えた。 「あら、随分と変わったなと思ったのに、悪態の付き方だけは昔のままなのね。ゼロのルイズ」 久しく耳にしていない名前で呼ばれ、面食らうルイズ。 『ゼロのルイズ』自分をそう呼んだ赤髪の女性、古い古い記憶の中に一人だけ心当たりがあった。 「……キュルケ?」 遠い記憶の肖像画と、目の前の女性とが重なった。 「あの高名な『ダングルテールの魔女』に名前を覚えていて貰って光栄だわ」 あの頃と変わらずに、腰に手を当てて、自信に満ちた顔と仕草で微熱のキュルケが微笑んでいた。 「その派手な特徴を忘れろって方が無理があるわね。それで一体何のようかしら、同窓会の誘いならお断りよ」 皮肉げな声と表情で、作業を続けようとするルイズ。 半ば予想していたとはいえ、目の前の女性の過去と現在の差異にキュルケは小さく嘆息した。 「ふう……それにしてもここは熱いわね。長くなりそうだから上で話したいんだけど、駄目かしら」 キュルケの言葉にルイズは作業の手を止める。 「さっさと上に行きたいならそっちの方を持って頂戴。これをそこの台の上にのせるから」 そう言ってルイズが失敗作の端を指さすと、キュルケもそちらの方へ目線を移した。 「これ? ええと、この辺を持てばいいのかしらね?」 「それで良いわ。合図をしたら持ち上げるわよ。……いち、にぃ、さんっ!」 重い何かを二人で持ち上げ、少し離れた場所にある台まで運んでいってその上にのせる。今日の分はこれでお終いである。 「ところで、これって……」 キュルケが自分が持ち上げた袋状のものに入れられた何かを指さす。渡り百五十サント以上はありそうな大きな長細い袋、中には所々弾力のあるごつごつしたものが入っているようだった。 「ただの失敗作さ」 応えるルイズであったが、たまたまキュルケの指さしたその袋の一部が破れており、中身が覗けるようになっていることに彼女は気がついた。 好奇心で中にあるものを覗き込むキュルケ。 直後、彼女はそのことを後悔することになる。 そこから見えたのは、眠るように目を閉じたあの使い魔の少年の顔だった。 作業を終わらせたルイズはキュルケを伴って階段を上り、彼女の居住空間も兼ねている工房へと戻っていた。 煩雑にものが散らかった工房に、申し訳程度に置かれている丸いテーブル、そこに向かい合い座っている二人。 周囲には色とりどりの瓶や良く分からない鉱物の欠片、果てにはバナナの皮なんかも落ちている。 ふと何かが動いた気配を感じてキュルケがそちらを見ると、箒とちり取りがひとりでに動き回り掃除をしているところだった。 訪れる前に想像していた以上に、そこは『魔女の住処』じみていた。 失敗作の正体と、それを無造作に炉へ放り込むルイズに顔色を失ったキュルケだったが、今は立ち直ったのかそんなことはおくびにも出していない。 「それで、長くなる用向きとは何かしら?こう見えても暇じゃないものでね、さっさと済ませたいのだけど」 「そうね。さっさと用件を済ませたいのはこちらも同じだわ」 そう言ってキュルケが続けようとしたとき、工房の奥から小間使いの少年が現れて二人の前に紅茶の入ったカップを置いていった。 その小間使いの少年は、サイトの顔をしていた。 「……」 それを見て、開きかけた口を再び閉じて押し黙るキュルケ。 「ここは魔女の工房さ。そんなことで一々驚いてちゃ身が持たないよ」 言いながら優雅な仕草で、運ばれてきたカップを口元へと運ぶルイズ。 その姿は確かにあの頃の片鱗を思わせたが、それ以上に『魔女』の凄みを感じさせた。 「ええ、あなたがとびっきりイカれてるってのはよく分かったわ」 「あらそう。ありがとう」 運ばれてきた紅茶に手をつけぬまま、キュルケは懐から一通の書簡を取り出して、それをルイズに手渡した。 「これは?」 「読めば分かるわ」 ごもっとも、と答えて封筒の端を手でちぎり、その中に入っていた一通の手紙に目を通す。 そこにはキュルケの服装を見てから予想していた通りの用件が、事務的に書かれていた。 「こんな用件のためだけにあの霧を抜けてきたなんてね、とんだ酔狂がいたものだわ」 くすりと声を漏らしてから、白魚のような指で手紙を破り捨てる。その様子を見てもキュルケは何も言わなかった。 「伝えて頂戴。答えはノー、私には余計なことに関わっている時間はないと言っていたと」 細かな紙切れとなって床に落ちていく手紙に書かれていた内容は、ルイズをトリステイン魔法学院の教師として迎え入れたいという旨の打診であった。 魔法学院とはいえ、国の抱える高等教育機関。その教員ともなればそれなりの名誉には違いない。 けれど、ここ数年このような願いが各地からルイズの元へと寄せられる度に、彼女はそのすべてを断っていた。 その多くはルイズの持つ錬金術の奥義を己がものにしようとする政府や組織の意向によるものばかりで、本当の意味で教師や職員として迎えようなどというものは一つとして無かったからである。 「私は誰かの子飼いになって研究するつもり気はさらさらないわ。別に援助なんて受けなくとも資金面での苦労なんてしていないもの」 そう言い放ち、話はこれまでと腰を浮かせるルイズの手を、キュルケがさっとつかんだ。 「学院はあなたを子飼いの研究員にしようとなんてしてないわ! ただあなたを純粋に錬金術の講師として雇いたいと言っているの!」 「ふん、口だけなら何とでも言えるわね。手を離しなさい、話は終わったわ」 「終わってないわ!」 振りほどこうとするルイズだが、キュルケはつかんだ手を頑として離そうとしない。 「良いから聞きなさい! 学院は来年度新設される平民向け教育カリキュラムに、錬金術を取り入れる予定よ」 平民向け教育カリキュラムという聞き慣れない単語に、ルイズの目が細まった。 キュルケはその仕草でルイズの興味を引けたことを確信すると、話をたたみかけた。 「トリステイン魔法学院は来年度、出自を問わない専門課程として錬金術を中心としたクラスを設立することに決定したの。生徒の数は十五人、修学期間は三年間。教育費用は王国が大部分を負担、その上で奨学金制度を用意するわ」 「離しなさい」 今度こそキュルケの手を振り払い……腰を下ろす。 「ガリア王国で三年後に設立される予定のアカデミー、それを受けてトリステイン王宮内でも錬金術教育を進めるべきという声が上がって、その先駆けとしてトリステイン魔法学院に錬金術教育部門が新設されることになったのよ。 そして、その目玉として『ダングルテールの魔女』であるあなたを、教師として迎え入れたいというのがオールド・オスマンのお考えよ」 「……正気かい?」 『ダングルテールの魔女』と言えば、確かに最初に錬金術を伝えた『旅の人』より直々に手ほどきを受けた、その道の第一人者。錬金術を少しでも囓った人間でその名を知らなければモグリであろう。 しかし同時に、多くの戦争兵器や毒薬を生み出した残虐な魔女としても名が通っている。 彼女が歩いてきた道は、決して綺麗な道などではない。屍に屍を重ねて作った血塗られた道だ。 そんな人間だと知ってなお教師として雇おうなど、ルイズが学院長の正気を疑うのも無理はなかった。 「ええ、正気よ。大真面目よ。だからあなたも真面目に答えて頂戴。トリステイン魔法学院で、錬金術の教鞭を執るつもりはないかしら?」 「……考えさせて貰うわ」 途端、キュルケが右手を握ってテーブルを叩いた。 「これはあなたのためでもあるのよ! 確信したわ、あなたはここにいたら駄目になる」 キュルケの激昂にもルイズは動じない、ただ小間使いの少年にお茶のお代わりを持ってくるように言いつけるだけ。 「さっきのアレは何? お人形さんにサイトの格好させてサイトの顔させて、おまけに失敗作って言って眉一つ動かさずにゴミ扱い!」 彼女自身こんなことを言うつもりはなかったのだが、キュルケの二つ名は微熱。その名に恥じない情熱と感情の迸りを、思うがままに放埒に言葉にのせる。 「もう二十年よ!? 忘れたって良い頃合いだわ! 第一彼があなたのそんな姿を望んでると思っているの!?」 年を重ねても、そんなところこだけは当時のままだった。 懐かしい、と思わないでもない。 しかし、 「黙りなさい」 そんなことでは揺るがない。 静かに言ったその一言は、ルイズがそれまで積み重ねてきた二十年、その重みを感じさせるような暗く淀んだ声。 「あなたに何が分かるって言うの? 私はこの二十年間、必死にサイトを取り戻そうと努力してきた。私はあなたが二十年をどう過ごしてきたか知らない、でもあなただって私がこの二十年 をどうやって過ごしてきたのか知らないはずよ。あなたは何をもってそれを否定しようとするのかしら? あなたの正しさはあなたが決めなさい。でも、私の正しさは、私が決めるわ」 この二十年、一日たりともサイトを忘れた日はなかった。 それでも年月は人の記憶を薄れさせる。 嬉しかったことも、悲しかったことも、苦しかったことも、全部、全部。 ある日気づいた。サイトの声が思い出せなくなっている自分に。 はっきりと覚えていたはずのサイトの顔も、おぼろげになっていることに気づかされ、そんな自分に愕然とした。 忘れないと、サイトを忘れないと誓ったはずなのに、月日の流れは残酷にも岩を削る川の流れのようにして、彼女の記憶を風化させていた。 ルイズは恐怖した。 いつか自分がサイトの顔も、サイトへの想いも忘れてしまうのではないかと気が狂ってしまいそうなくらい恐怖した。 だから作ったのだ、サイトの写し身を。 彼を忘れないために。 サイトのパーカーから抽出した血を用いて、ルイズは人工生命を作り出した。 彼はサイトの声で喋り、サイトの顔で微笑んだ。 だが、それはサイトではなかった。 肉体の複製は作れても、そこに宿る魂はサイトのものではない。 サイトの魂の復活なくしては、それはただのサイトの形を模した人形に過ぎないとルイズはこのとき知った。 加えて彼は、かつての恩師ヘルミーナがルイズに教えた通りの欠陥を抱えていた。 それは寿命。 人の手により生み出された彼のそれは、人間のものに比べて余りに短かったのである。 最初のサイトは、二十日で動かなくなった。 改良を加えた二人目も、三十日でその生を終えた。 ルイズはそれからもサイトを生み出し続けた、何人も、何人も。 けれど、どれほどの業を用いたかも分からぬ今になっても、その問題は解決できないでいる。 今この工房で生きているサイトは、都合百二十五日目を迎えていたが、ルイズの予測ではあと四十日ほどで寿命を迎えるはずであった。 欠陥だらけの失敗作、それがルイズの下したサイトたちへの評価だった。 だが、それでもルイズは彼女の作品たちを愛した。 彼らに罪はない。罪があるとすれば、それは己の無力さが罪なのである。 そうしてルイズは何度も何度もサイトを失った。 最初は一人のサイトが死ぬ度に、心が軋み、悲鳴をあげた。発狂するような痛みが心を貫いた。 だが、二人、三人、やがて何十人と繰り返すうちにそれも慣れてきた。 折れた骨が太く硬くなるように、ルイズの心もまた堅く強ばっていった。 ルイズは工房の窓から、霧の中へと去っていくキュルケの後ろ姿を黙って見つめていた。 その背中は何かを語っているようであったが、キュルケの最奥を知らぬルイズがそれを理解することなど、適うはずもない。 周辺を覆う霧は推薦状無しに訪れたものを拒む効果があったが、それがあろうとなかろうと、出て行くものには干渉しない。 キュルケがこの工房へと辿り着たのは四人の高弟の一人、今はトリスタニアに工房を構えているらしい彼女の推薦状があったからだったのだが、それも既に取り上げた。 これを燃やして話を聞かなかったことにすれば、今回の件は終わりだ。 二度とキュルケがここを訪れることはないだろう。 窓辺を離れる。 この先やらなくてはいけないことは山積みされている。 工房の機材の中、持っていくものと残していくものを選別しなくてはならない。 大き過ぎるものや取り扱いが難しいものは、推薦状を渡した高弟のところへ出向いて巻き上げる算段をたればいいだろう。 以前自分がヘルミーナから渡されたレジュメも探さなくてはいけない。 まあ、何よりもまず工房の中を整頓するのが最優先に違いない。 保留ということでキュルケに返事をしたが、実際のところ、ルイズは今回の誘いを引き受けるつもりでいた。 彼女が言っていたことは実に傲慢かつ正論ぶった内容で、とても気に入らなかった。 だが、その中で一つだけルイズにも同意するところがあるとすれば、それは「ここにいたら駄目になる」という部分。 それはルイズ自身にとっても、本当は気がついていたことだったのだ。 この工房には定期的に世界に散った高弟たちから、各地で行われている錬金術研究の成果が送り集められてくる、そういう仕組みになっていた。 ダングルテールにいながら、ルイズの元には常に世界中の最新の情報が集められてくる。 正に隠者として過ごすならば理想的な環境、研究をするだけならば工房にいるだけでことは満ち足りる。 人目を避けて外界を拒絶し、孤独に一人研究を続ける。あるいはこれが自分の終着点であると思った時期もあった。 けれど、この工房で十年を過ごし、何人ものサイトと触れあって分かったことがある。 これでは、駄目なのだ。 ただ一人で過ごし、サイトの死を諾々と受け入れ続ける自分。 そんなことを続けていけば、サイトへの想いはやがて変質する。 本来あるべき形を失って、歪んだ何かへと変わってしまうかもしれない。 それは到底認められないことだった。 人間は摩耗する。気力は衰え、在り方は変容する。 人は外部からの刺激無しに己を貫くことはできない。 だが同時、刺激に対して反応し、変化せずにはいられない。 ルイズは自分がなぜこんなところに隠れるように住まうようになったかを分かっていた。 怖かったのだ、何もかも変わっていく風景が。 恐ろしかったのだ、サイトを忘れろと語りかける周りの声が。 だから逃げ込んだのだ、何も見えず、何も聞こえないこの場所へと。 しかし、孤独は彼女を救いはしなかった。 変化を避けて逃げた先に待っていたものは変質であった。 そのジレンマに気がついて以来、ルイズは如何にすれば自分を保つことができるかを考え続けていた。 朝も夜も昼も考えた。 そうして今、彼女は一つの答えへと辿り着いている。 それは、伝えること。 サイトのことを漏らさず余さず、すべてを伝えること。 自分の気持ちと共に、それを伝えるということが、ルイズの見つけた答えであった。 例え自分の中でサイトが薄れても、伝えた誰かが覚えてくれている。 分からなくなったら、誰かの中にあるサイトを確認すればいい。 伝えられた人の中でもきっとサイトの姿は変化するだろう。 だが、何百人何千人と伝えることで、彼らの中にある真実の断片を繋ぎ合わせて、本物に近いサイトを見つけることができるはずだ。 そうして、伝えながら常に自分でも確認するのだ、サイトへの想いを。 キュルケの誘いは、外の世界へ踏み込めないでいたルイズへの、最後の一押しとなった。 孤独の中で変質するか、困難であろうとも人の中で自分を貫くか。 ルイズが選んだのは後者。 もう恐れはしない、変化する世界を、人々の声を。 だから伝えていこう、錬金術を、サイトへの想いと共に。 いつの日か、本当にサイトが蘇るその日まで。 ◇◇◇ 「先生! ツェルプストー先生! またルイズ先生が!」 火の塔、キュルケの研究室への扉を騒々しく開けて飛び込んできたのは、錬金術科の女生徒。 「あらら、どうしたのかしら?」 ある種の予感をもって、キュルケの手が机の引き出しの一番上、書類などを納めたそこへと滑る。 「先生! ルイズ先生ったら酷いんです! 魚をとりたいって言ったら薬をくれて……それを使ったら川の魚が全部浮かんできたんです!」 「また人騒がせな……」 こめかみを抑えてキュルケが呻く。 伸ばした手で引き出しの金具をつかんで引く、そうしてそこから一枚の書類を取り出すと、そこには「始末書」の文字が躍っていた。 ルイズは錬金術科の統括教師、一方キュルケは一年生の学年主任をしている。 駆け込んできたのは錬金術科とはいえ一年生、キュルケの管轄には違いない。 加えて彼女はルイズがこの学院へと赴任して以来、何か問題を起こした際にはその後処理を行う役目も任されていた。 そもそも、当初学院において評判の悪い魔女であり、不名誉きわまりない退学者であるルイズを召致するという思い切ったことを主張したオールド・オ スマンを強く支持したのは、このキュルケくらいだったのである。 学長が自分の権限を使いルイズを呼び寄せた今、自然とルイズが何か問題行動を起こした場合に、面倒ごとに巻き込まれるのはキュルケというのが、一つの決まり事となりつつあった。 「まったく酷いんですよルイズ先生ったら! この前はこの前で畑の収穫を増やしたいって言ったら……」 そこから先はキュルケが続けた。 「畑の養分をすべて作物に変える苗を渡した、だったかしらね」 ルイズの問題行動はこれが初めてでも、ましてや二回目や三回目というわけでもない。 無論、それぞれオスマンからのフォローも入っていたが、細々とした書類上の処理などはキュルケが行っている。 何か起これば一蓮托生、それが現在のルイズとキュルケの関係なのである。 「そうなんです! あの人は魔女です! きっと悪魔に魂を売り渡してるんです!」 そう言って地団駄を踏む生徒を見ながら、キュルケは嘆息した。 そして更に詳しい事情を女生徒から調書する。まあ、それによれば自分で調合せずに手抜きをしてルイズを頼った生徒の自業自得とも受け取れる内容であったのだが…… 「あー、はいはい、落ち着いて落ち着いて。そっちの方は私の方から彼女に言っておくから」 「ツェルプストー先生! 確か先生とルイズ先生って同期なんですよね? ルイズ先生ってば昔からあんなに根性ひん曲がった人だったんですか? あんな性格が異次元な人、わたし他に知りませんよ!?」 半泣きになりながら訴える生徒をぼんやり聞き流しつつ、指先でペンをくるくると回す。 「んー……昔はだいぶ違ったんだけどねぇ……」 キュルケにすれば何の気は無しに漏らした一言だったのだが、それがいけなかった。 とたんに女生徒の目は輝き、おもちゃを見つけた子猫のように、その動きをピタリと止める。 「え? ルイズ先生って昔からあんな感じだったんじゃないんですか?」 女生徒の顔が好奇心に燃えるのを見て、キュルケは先ほどの自分の失言に気がついた。 「あちゃー……」 「いいじゃないですか! 教えてくださいよ!」 「うーん、そうねぇ……」 しばし頭をひねって考える。するとキュルケの頭に何とも素晴らしい妙案が思い浮かんだ。 「話しても良いけど、これから聞いたことを絶対誰にも口外しない、勿論ルイズにも。あとそれから今回の件は忘れること」 ルイズの過去と、今回の面倒事とを秤にかけて、結局後者が勝ったのだ。 「いいですいいです! それで先生、昔のルイズ先生ってどんな感じだったんです?」 「そうねぇ。どこから話せばいいか迷うけど、彼女と最初に会ったときのことから話しましょうか……」 椅子を引っ張り出してきて、その上にある書類をどかして勝手に座る女生徒。 彼女を前にしてキュルケは語り始める、長く切ない過去の話を…… これはとある女性の人生の、ほんの一部分だけを抜き出した物語。 彼女は色々なものを失って、ほんの少しを手に入れた。 長い時間の中で、姿や考え方、性格まで変わってしまった彼女。 けれど、変わりゆく流れの中で、己の本質だけを守り通そうとした、そんな強い彼女の物語。 最後に、この物語を閉じるにあたり、彼女が初めて教壇に立った際に口にした言葉をここに記し、幕引きに代えることとしよう。 初めは誰もが無力だった。 不死身の勇者も、高名なる錬金術士も王室料理人も 初めは何の力もないごく普通の人間だったのだ。 だが、彼らは誰よりも夢や希望を強く抱き、追い続けた。 だからこそ世に名を轟かすほどの存在になれたのだ。 夢は、追いかけていればいつか必ず叶うものだから…… ――ルイズ 前ページヘルミーナとルイズ
https://w.atwiki.jp/harmonizeexplorer/pages/50.html
最上級専門職‐特殊系 上記のどれにも分類出来ない、特殊な職業。 炎闘家のように複数の職業を掛け合わせて転職する『合成進化職』と、 そもそもが異端的な真の意味で特殊な『異端職』の、二つに大別できる。 職業補正は様々で、一概に傾向を述べることは出来ない。 目次 テンプレ 職業名 役割 職業補正 前提条件・コメント 職業解説 上位職・コメント テンプレ 役割 職業補正 前提条件・コメント 職業解説 上位職・コメント
https://w.atwiki.jp/harmonizeexplorer/pages/45.html
最上級専門職‐戦士系 PTの最前衛として敵を引き付け、味方を守る所謂『前衛壁職』。 武器攻撃を多用する職業もあるが、武器攻撃系との違いとしてHPとMPが挙げられる。 戦士系は職業補正として、HPが高め、MPが低めの傾向にある。 目次 テンプレ 職業名 役割 職業補正 前提条件・コメント 職業解説 上位職・コメント テンプレ 役割 職業補正 前提条件・コメント 職業解説 上位職・コメント
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9288.html
前ページ次ページBIOHAZARD CODE Zero 闇がある。 何処までも広がっているかのような、深い闇。 まるでこの国のようだ、と男は思う。 数か月前に起きた世界規模のテロ事件。被害者の総数は15万人ともそれ以上とも言われ ている。標的の一つとなったアメリカもまた、大統領と7万人の国民を失った。 全てを飲み込むような目の前の暗闇は、まるでアメリカの、いや、この世界の行く末を 暗示しているようではないか。 ――だとすれば、まだ希望の光は残ってるって事か。 フラッシュライトの小さな光が、男の眼前を照らし出していた。 そうだ。まだ大統領と志を共にした、自分達が残っている。そして、世界各地で同じ理 想を目指して戦っている盟友達がいる。 「だからこそ――その光を遮るこいつらを放ってはおけない。そうだよな、アダム……」 大統領であり友であった男に語り掛けながら、男――レオン・S・ケネディは、光の中 に浮かび上がった影へと、静かに銃口を向けた。 BIOHAZARD CODE Zero 大統領の死による混乱が続く中、情報部が入手したテロリストの潜伏情報。その情報が 久方振りの休暇をどのように過ごそうかと思案していたレオンの元に伝えられたのが、全 ての始まりだった。 ――俺はトム・クルーズじゃないんだがな。 休暇を邪魔されるのはいつもの事だ。もはや諦めてはいるものの、次に休暇が取れるの はいつの事になるのだろう……そう思うと、一言ぼやかずにはいられなかった。 「――泣けるぜ」 本来であれば、テロリストの制圧は大統領直轄のエージェント組織『DSO』――Divisio n of Security Operationsに所属するレオンの仕事ではない。しかし、テロリスト達がB.O. W.を所持しているとなると話は別だ。 B.O.W.――Bio Organic Weaponと名付けられたそれは、核兵器以降に誕生した最悪の 非人道的武器であり、使用はもちろん所持でさえも国際法で禁じられている。 B.O.W.を根絶し、バイオテロの脅威から国家を守る。それこそが、DSO所属のエージェ ントの使命であると同時に、バイオテロによって人生を狂わされたレオンにとっての存在 意義でもあった。 テロリストのアジトとして利用されていた、今は使われていない地下水道。光の届かぬ 暗闇の中、レオンはその最悪の兵器と対峙していた。 筋肉組織だけでなく、脳すらも剥き出しとなった異形の肉体。長い手足の先についた鋭 い鉤爪。カメレオンのような長い舌。舐めるもの――リッカーと名付けられたその生物兵 器が、かつては人だったなどと誰が信じられるだろうか。 辺りに散乱している肉片は、テロリスト達のものだろう。 馬鹿な事を、と思う。B.O.W.は人の手に負えるようなものではない。奴等が敵も味方も 関係なく、全てを奪っていく光景を、レオンは嫌になるほど目にしている。 黒板を引っ掻いたような不快な叫び声が、レオンの意識を呼び戻した。 軽く舌打ちし、構えていたAK-47のトリガーを絞る。分間600発の弾丸がリッカーの体 を撃ち貫いた。 しかし、身を裂かれながらも、リッカーは怯まない。体を素早く左右に揺らし、器用に 致命傷を避けながら、両手両足でレオンの元へと素早く這い寄ってくる。 レオンは知っている。この悪魔の使いを地獄へ送り返すには、脳髄を破壊する以外に方 法がない事を。 銃口が獲物の頭部を捉えたと同時に、リッカーの逞しい後肢が地面を蹴った。 死を目前にしながらも、レオンは冷静だった。 上半身を引き、テロリスト達を解体した鉤爪の一撃を寸前で躱す。そのまま仰向けに倒 れ込んだレオンの頭上を、勢い余ったリッカーが飛び越えた。 逆境が瞬時にして好機へと転じる。 レオンは目の前にある獲物の無防備な腹部に、ありったけの弾丸をお見舞いした。 これには流石のリッカーも無事ではいられなかった。真っ黒い血液を撒き散らしながら 転がるように着地すると、レオンから距離を置こうと駆け出す。 邪魔だと言わんばかりに、レオンはアサルトライフルを地面に転がした。弾倉が空にな っている。周りには複数の空になった弾倉と、二体のリッカーの骸が転がっていた。 ――調子に乗って、サービスしすぎたか。 すかさずサイドアームへと手を伸ばす。 右太腿のレッグホルスターに収められているH K VP70では力不足だ。体の向きを反転 させながら起き上がると同時に、黒のレザージャケットの下、左脇のショルダーホルスタ ーから拳銃を引き抜き、そのまま膝射の姿勢をとる。 一分の無駄もない、流れるような動きだった。 その手で握られているのは、カスタム10インチ銃身付きのデザートイーグル50AE。ハ ンドキャノンの異名を持つ、イスラエル製の大口径オートマグナムもまた、新人警官時代 からの愛用品だ。 約20メートル先を駆けるリッカーの後頭部に照準を合わせる。 後は引き金を引けば―――― 瞬間。辺りは眩い光に包まれた。 Chapter.1 「何でよ……何で出てこないのよ……」 辺り一面に広がる豊かな草原の真ん中で、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ ラ・ヴァリエールは一人途方に暮れていた。 ハルケギニア大陸の西方に位置する小国、トリステイン王国。その中に存在するトリス テイン魔法学院の二年生へと進級するルイズ達が、試験も兼ねて初めに行う儀式、それが 『春の使い魔召喚の儀式』だった。 メイジの手足となる使い魔を召喚するだけでなく、使い魔の能力により主の今後の属性 を固定し、専門課程へと進む為の神聖かつ重要な儀式。 その日はルイズにとって、汚名を返上する絶好の機会となるはずだった。 昨日もクラスメイトに宣言したばかりだ。私を馬鹿にした奴等全員でも及ばない、神聖 で美しく、そして強力な使い魔を召喚してみせると。 呪文を唱え、杖を振る。それで使い魔が呼び出される。決して難しい事ではない。現に ルイズより先に儀式を行った級友達は、使い魔の能力の差異はあれど、一人の例外もなく 儀式を成功させている。 それなのに。 のどかな風景に場違いな爆発が巻き起こる。 ――まただ。 そう、ルイズが何度杖を振っても爆発が起きるだけで、使い魔となるべき生物は現れる 気配すらない。 「どうした、ゼロのルイズ! また失敗か!?」 嘲笑が浴びせられる。気が付けば召喚を終えていないのはルイズ一人となっていた。 その声につられて笑った生徒は半数程度か。残りの半分は、後何度同じ光景を見せられ なければならないのかと、もはや呆れて物も言えないといった様子だ。 悔しさから、グレーのプリーツスカートの裾を握る。 見れば爆風を間近で浴び続けたせいで、スカートのみならず、白いブラウスも黒いマン トもボロボロである。桃色がかったブロンドの髪も、透き通るような白い肌も煤で汚れて しまっている。 自分の惨めな姿に涙が零れそうになり、ルイズは慌てて天を仰いだ。 しかし、諦めるわけにはいかない。私は由緒正しき名門中の名門、ラ・ヴァリエール公 爵家の三女なのだ。 震える手で杖を構え直すと、もはや何度唱えたかも分からない呪文を唱える。 「宇宙の果てのどこかにいる我が僕よ! 神聖で美しく強力な使い魔よ! 私は心より求め 訴えるわ! 我が導きに応えなさい!!」 今までにも増して大きな爆発。 爆風で巻き上げられた土煙により、視界が遮られる。 辺りから生徒によるものであろう溜息が聞こえた。 ――また、失敗なの……? 「お、おい! 何かいるぞ!!」 「嘘っ、ゼロのルイズが成功したの!?」 もう召喚を行う気力もない。精も根も尽き果て、項垂れていたルイズであったが、周囲 の反応に慌てて顔を上げる。 確かに、土煙の中に黒い影のようなものがゆらゆらと動いている。 ――ほ、本当に成功した!? 影は主を認識したのか、低い姿勢でルイズに向けて歩を進め始めた。 生徒達の好奇の視線が影へと集中する。 ゼロのルイズが呼び出した使い魔。きっと矮小な生物に違いない。それともまさか、本 当に強力な使い魔が――? 「あ、あれが、ルイズの使い……魔……?」 ようやく影が土煙の中から姿を現した時、その場の空気は凍りついた。 ハルケギニアの子供達が醜悪な生物と聞いて思い浮かべるのは、狂暴で野蛮なオーク鬼 だろうか? それとも、ファンガスの森に住むという合成獣だろうか? 少なくとも、この場にいた子供達は例外なく認識を改める事となった。 どのような生物も目の前の異形――リッカーと呼ばれていた生物に比べれば可愛いもの だと、心からそう思った。 いや、ただ一人だけ、例外が存在した。 「あ、あなたが……私の使い魔、なのね」 ルイズは泣き笑いの表情を浮かべ、ゆっくりと自分の使い魔へと近付いていく。 気持ちが悪くないわけではない。それでも、この生物は自分の呼び掛けに応えてくれた のだ。それが嬉しかった。 「ほぉら見てごらんなさい! 私の言った通りだったでしょ!? そりゃ火トカゲや風竜も 凄いわよ? でも、こんな使い魔、見た事ある!?」 自分を馬鹿にしていた級友達を振り返り、高らかに勝利宣言をしてみせる。 もっとも、それに対する反応は何一つ返って来なかった。 凄いと言えば凄いのかもしれない。しかし、あれを使い魔にしてもよいと言われたら、 果たして自分は嬉しいだろうか? 考えれば考えるほどどう反応すればいいか分からず、彼等はただただ呆然としていた。 唯一リッカーだけが、主のあげた騒音に反応した。 不快そうに首を回すと、ルイズに向け、大きく口を開く。 「お、おい!」 「へ?」 高速で射出されたそれは、もはや舌ではなかった。 当たれば肉を裂き、骨を砕く、肉色の槍。 後ろを向いているルイズには何が起きているのか分からない。いや、正面を向いていた 生徒達でさえも、咄嗟の事に声をあげる事しか出来なかった。 そんな中、青い髪の小柄な少女だけが、状況を冷静に判断していた。 自分の身長ほどもある長い杖を一振りすると、不可視の風の槌がリッカーを横殴りに弾 き飛ばす。エア・ハンマーと呼ばれる魔法だ。 「ちょっと、タバサ!?」 彼女の隣にいた赤毛の少女が驚いたように声をあげた。 生徒達の中では有数の実力者である彼女をもってしても、瞬時に目の前の状況を理解す る事は困難だったようだ。 「あれは、危険」 タバサと呼ばれた少女は短く呟く。 理由は分からない。しかし、あの生物を見た瞬間に直感した。 あれは、この世界にいてはならないものだ。 吹き飛ばされたリッカーは空中で一回転し体勢を整えると、着地と同時に跳躍した。 ――まずい。 子供達の引率者であるジャン・コルベールは慌てて杖を構える。タバサと赤毛の少女も 危険を感じ取り、怪物に杖を向けた。 直後、タバサは自分の読みがまるで甘かった事を痛感する。 先程放った渾身の魔法は、怪物に致命傷を与えていないどころか、動きを制限するにも 至っていない。唯一開いたルイズとの距離も、その驚異的な跳躍力の前では時間稼ぎにさ えならなかった。 「あ……」 三人に遅れて怪物の方に向き直ったルイズは、ようやく目の前の生物が友好的でない事 を理解した。死は既にルイズの目と鼻の先まで迫っており、その鋭い鉤爪は今まさに振り 下ろされんとしている。 殺される―――― 反射的に、目を瞑る。それが無力なルイズに出来る小さな、唯一の抵抗。 暗闇の世界に、轟音が響き渡った。 生暖かい液体が肌を伝う。 目を閉じていても、それが血だという事ははっきりと分かった。 これが死か。 痛みを感じる間もなかったのは、不幸中の幸いだったのかもしれない。でも、贅沢を言 うなら、心臓を一突きにされた方がよかった、と思う。 母や二人の姉譲りの美貌は、魔法の才能がない自分にとっての数少ない自慢だった。頭 が潰れた死体を見て、皆は私だと分かってくれるだろうか。 いや、もうそんな事を考える必要もないのだ。 ああ、父さま、母さま、姉さま、ちいねえさま。先立つ不孝をお許し下さい―― ――? あれ? どこか釈然としないものを感じ、恐る恐る潰れた頭部へと手を伸ばす。 ぬるぬるとした不快な感触。しかし、真っ二つに裂かれたはずの頭は、意外にも綺麗な 球形を保っている。 目も鼻も口も、元あった位置にちゃんとある。それどころか、傷口らしきものさえ何処 にも見当たらない。 ――私、生きてる……? ゆっくりと瞳を開く。 まず飛び込んできたのは、真っ赤に染まった自身の両手。そして、その先に横たわる、 血溜まりに浮かぶ自らの使い魔の姿。 剥き出しの脳に穿たれた大きな穴を見て、ルイズは自分を濡らしているのがこの生物の 血液だと理解した。 ――誰がやったの? この場で一番の実力者であろう引率の教師は、杖を構えたままの姿勢で固まっている。 コルベールだけではない。そこにいた皆は同じ様に一点を見つめ、立ち尽くしていた。 ルイズも我知らず、皆の視線を辿る。 あれは先程自分がサモン・サーヴァントを行い、使い魔を呼び出した場所ではないか。 ――何か、いる。 先程の恐怖がフラッシュバックし、ルイズは思わず体を強張らせた。 それは、人間の男性だった。 見た事のない黒い衣服に身を包んだ、金髪の男性。片膝をつき、その両手には銀色に鈍 く光る奇妙な形の銃が握られている。 鋭い碧眼が真っ直ぐにルイズを捉えていた。 ――何が起きた。 激しい光に包まれ、レオンは眼を細めた。 光がリッカーの前方に集束していく。 そこに現れたのは強い光を発する鏡――としか言いようのない物体だった。 何の前触れもなく現れた鏡に、リッカーは気付いていない。この生物は露出した脳髄が 眼球の部分までせり出している為に、目が見えないのだ。 いや、仮に視覚能力を有していても、突然すぎる障害物の出現に反応出来たかどうか。 ぶつかる――レオンがそう思った瞬間、リッカーはまるで魔法のように姿を消した。 鏡の中に吸い込まれた。そうとしか説明しようのない状況に、レオンは考えるよりも先 に駆け出していた。 恐れも迷いもなかった。 B.O.W.を世界から根絶する。これ以上奴等によって苦しむ人間を増やさない。その目的 だけが彼を突き動かしていた。 後には静寂と闇だけが残された。 受け身を取りつつ回転し、片膝をつき、姿勢を整える。 おびただしい土煙によって視界は完全に塞がれているが、空気の流れから、自分が室外 に出た事だけはかろうじて理解出来た。 ――奴はどこだ? 瞬間。突風がレオンの横を通り抜け、土煙を晴らす。 開かれた視界に飛び込んできたのは、桃色の髪の少女と、少女に向かい爪を振り上げる 仇敵の姿だった。 レオンは一瞬の躊躇もなく、引き金を引く。 ハンドガンの中でも最大級の威力を誇る.50AE弾はリッカーの脳髄へと吸い込まれ、少 女の頭上を抜けていった。 数秒の後、少女は目を開いた。 少女の無事を確認し、レオンは安堵する。 「な、ななな……」 少女の可愛らしい唇がわなわなと震える。あんな化物に襲われたのだ。無理もない。 驚かせてすまない。怪我はないか? そう声を掛けるよりも早く、少女の口から発せられたのは、レオンにとって思いもよら ない言葉だった。 ルイズは混乱していた。 サモン・サーヴァントを行ってから僅か数秒の間に起きた様々な出来事は、彼女の情報 処理能力のキャパシティを大きく超えていた。 ようやく皆を見返せたと思った。嬉しかった。涙が出そうになった。 次の瞬間には、死を覚悟した。怖かった。皆ともう会えないかと思うと、悲しかった。 そして、目を開けたら、これだ。 結局何が起きたのか、まるで理解が追い付かない。あれこれ考えるうちに様々な感情が ない交ぜになり、そして、爆発した。 「――何すんのよ、私の使い魔に!!」 それは異様な光景だった。 ボロボロの服を着て、体中を赤く染めた少女が、突然現れた男に向かい怒鳴り声をあげ ている。しかも、その少女は男が救ったはずの少女ではなかったか。 これにはレオンも流石に面食らったものの、怒鳴られた事自体は問題ではなかった。 B.O.W.の根絶、彼はそれを自分に与えられた使命だと思っている。決して称賛を求めて やっている事ではないのだ。 問題は彼女が放った言葉、その内容だ。 使い魔、と少女は言った。まるで魔女か何かのような言い方が気になったが、その言葉 が意味するものは一つしかない。 「お前がリッカーを操っていたのか!?」 思わず声に怒気が孕む。 確かにレオンは、人間がB.O.W.をコントロールする術を知っている。それが同時に、文 字通り人である事を捨てる結果になるという事も。 少女は一瞬怯んだ様子を見せたが、再びレオンを睨みつける。 「そ、そうよ! 何回も……何回も失敗して、ようやく成功したのに……」 怒りとも悲しみとも付かぬ表情で、う~~と唸る少女を尻目に、レオンは素早く周囲を 見渡した。 土煙のせいで今まで気付かなかったが、黒いマントを羽織った子供達の集団に取り囲ま れている。 ――今から楽しいハロウィンパーティー……ってわけじゃないよな。 そう、レオンを囲んでいるのは子供達だけではない。子供達一人一人の傍らには、およ そこの世のものとは思えない異形の存在が寄り添っていた。 尾に炎を灯した大蜥蜴。浮遊する巨大な目玉。中にはドラゴンとしか呼びようのない生 物までいる。 その光景に、レオンはかつてヨーロッパの辺境の村で関わった事件、その黒幕である集 団を思い浮かべていた。 ロス・イルミナドス教団。 あらゆる生物に寄生し、異形の怪物へと変える寄生体『プラーガ』を用い、世界征服を 企んだカルト教団。 レオンの手によりその野望は潰えた。しかし、生き残りがいないとも限らない。 デザートイーグルを握る手に力を込める。 しかし、子供達は戸惑いの表情こそ浮かべているものの、こちらに対する敵意は感じら れない。それは異形の獣達についても同様であった。 ――B.O.W.ではないのか? 「あー……少しよろしいですかな」 どうにも食い違っている様子のレオンとルイズを見かねて、コルベールは口を挟んだ。 「ミス・ヴァリエール、とりあえずあなたは顔を拭きなさい」 どこから取り出したのか、濡れたタオルをルイズに差し出す。体中に血の雨を浴びてい る事を思い出したルイズは、慌ててタオルを受け取ると、顔を拭い始めた。 レオンはこの場にいるおそらく唯一の成人を、ねめつけるように観察する。 黒いローブに禿げ上がった頭という出で立ちは、否が応にもロス・イルミナドスの神父 を連想してしまう。 「ええと、私はコルベールと申します。あなたのお名前を伺ってもよろしいですかな」 コルベールの柔らかな物腰に、レオンの警戒心が僅かに緩む。 確かに、話を聞かなければ何も始まらない。 「レオン……レオン・スコット・ケネディだ」 「では、ミスタ・ケネディ。まずは彼女……ミス・ヴァリエールを救っていただき、あり がとうございました」 予想外の感謝の言葉にレオンは呆気に取られた。ルイズはルイズで、ようやく状況が飲 み込めたのか、バツの悪そうな表情を浮かべている。 「ミス・ヴァリエールが先程の獣とあなたを呼び出したのは事実です。しかし、あの獣を 操っていたのは彼女ではありませんぞ。まだコントラクト・サーヴァントを行っておりま せんからな」 そうでしょう? と水を向けられたルイズは、う……と声を漏らし、口を噤んだ。 確かに、使い魔としての契約を行っていない以上、あの怪物はまだルイズの使い魔とな ったわけではない。 しかし、レオンが反応したのは別の個所だった。 「ちょっと待ってくれ。俺を、呼び出した……?」 それはつまり、あの鏡はこのヴァリエールと呼ばれる娘が作り出した物だという事か? レオンは再度冷静に、自分の置かれている状況を確認する。 豊かな草原と、その先に見える城のような石造りの建築物。少なくとも、自分の記憶の 中にこのような風景は存在しない。 自分は一瞬のうちにまるで異なる場所へと“呼び出された”。さらに、周りを囲む存在 するはずのない生物達…… レオンの頭に最悪の想像がよぎった。 「ミスタ・コルベール、やり直しを要求します! 私の使い魔……候補が死亡した以上、 それは当然の権利のはずです!」 しかし、そんなレオンの思考は、ルイズの怒声によって掻き消される。 「それは駄目だ、ミス・ヴァリエール」 「どうしてですか!?」 「何故なら、君が呼び出した使い魔はまだ生きている」 「なっ……」 ルイズは驚愕の表情を浮かべたまま、ゆっくりと振り返った。レオンの怪訝そうな瞳と 視線がぶつかる。 「まさか……この平民を使い魔に……?」 「そうだ。君も知っての通り、春の使い魔召喚は神聖な儀式。好む好まざるに関わらず、 彼を使い魔にするしかない。例外は認められない」 状況の把握の為に、言い争う二人を静観していたレオンだったが、聞き捨てならぬ発言 に流石に口を挟もうとする。 「待て。誰を使い魔にするだと? 俺を無視して話を進め――」 「ああ、もう! 静かにしてっ!!」 レオンは険しい表情でルイズを眺めていたが、やがて諦めたように肩を竦めた。 警戒を解くわけにはいかないが、どうやら彼等は自分の敵というわけではないらしい。 少なくとも、今すぐに何かをされるという事はなさそうだ。 ならば、情報が何もない今、しばらくは成り行きを見守るしかない。 そんなレオンの事など目に入らない様子で、ルイズは俯いてぶつぶつと一人何かを呟い ていた。 ――平民を使い魔に? そんな話、聞いた事がないわ。前代未聞よ…… それも、決して良い意味での前代未聞ではない。目の前の平民は、自分が宣言した神聖 で美しく強力な使い魔からは大きくかけ離れた存在なのだ。 このままでは、また皆に馬鹿にされてしまう。ゼロのルイズには平民の使い魔がお似合 いだとか何とか。 ほら、現に今だって―― 「は、はは……き、聞いたか? ルイズのやつ、平民を使い魔にするらしいぜ……」 「あ、ああ。ゼロのルイズにはお似合い……だよな……」 しかし、ルイズの予想に反して、生徒達の反応は控えめであった。 呼び出された男は、確かにただの平民のはずだ。 しかし、服の上からでもはっきりと分かる鍛え上げられた肉体が、猛禽類を思わせる鋭 い目つきが、何より、引率の教師ですら止められなかった得体の知れない怪物を、一撃の もとに葬って見せたという事実が、子供達に嘲笑を浴びせる事を躊躇わせていた。 「ねえタバサ、彼、平民にしてはなかなかイケてない?」 赤毛の少女――『微熱の』キュルケは隣にいる友人に囁いた。 長身。健康そうな褐色の肌。洗練されたプロポーションから漂う大人びた色気。ルイズ とは何もかも対照的なこの少女は、他の生徒とは異なる視点からレオンを観察していた。 見ればあの平民は背も高く、なかなか精悍な顔立ちをしている。まばらに生えた不精髭 が顔を覆っているが、逞しい体と相まって、それはそれでワイルドだ。奇妙な服装にさえ 目を瞑れば、名のある騎士といった感じだろうか。 ――あら、珍しい。 自分から声を掛けておきながら、キュルケは意外そうに友人を見つめた。 普段であれば、何が起きようと我関せずという感じで読書に勤しんでいるタバサが、そ の手に開いた本から顔を上げているのだ。 しかし、キュルケはタバサの視線の先にまでは気を回さなかった。 彼女の視線はレオンではなく、その少し手前――血溜りに浮かぶリッカーへと向けられ ていた。 間違いなく、死んでいる。死んでいるはずである。 しかし、今なお拭い去れない、この嫌な予感は何だろうか。 そんなタバサとは違い、ルイズは自分を襲った怪物の事など、すっかりと忘れていた。 正確には、今現在彼女の頭の中にあるのは『この平民を使い魔にして良いのか否か』、 それだけである。この一大事に他の事を気にしている余裕なんてない。 目の前の平民に対する自分の想像とはいささか異なる周囲の反応に、ルイズはうむむと 考える。 これ以上食い下がったところで、ルールだの伝統だのを持ち出され、拒否される事は目 に見えている。 それならば…… ルイズは改めて、不服そうに自分を見下ろしている平民を熟視した。 軍人というわけではなさそうだが、体の鍛え方からして、戦闘を生業としている人間な のは間違いないだろう。主を守るという使い魔の役割は一応こなせそうだ。 というか、気が動転して怒鳴ってしまったが、先程もあの怪物から守ってもらったんだ った。 ――農民や商人じゃないだけ、まだマシか…… ルイズは一人頷くと、覚悟を決め――それでも未だ不機嫌そうな表情のままで――自分 の使い魔候補を見上げた。 「しゃがみなさい」 「……いったいどういうつもりだ? せめて状況を説明しろ」 「いいから! 背が届かないじゃない!」 レオンは諦めて、言われた通りに膝をつく。 相変わらず状況は飲み込めないが、そんな中でも一つだけ分かった事があった。この少 女は我儘だ。しかも、かつて自分が救った大統領令嬢が可愛く思えるレベルの。 そのような事を考えていると、突然少女の左手に顎を固定される。 「おい」 「か、感謝しなさいよね。貴族にこんな事されるなんて、普通は一生ないんだから……」 嫌な予感がする。しかし、まさかとも考える。 このような展開になる予兆など、どこにもなかったはずだ。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司 るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ――」 ――俺の悪い予感はだいたい当たるんだ。 唇に柔らかな感触を感じながら、突然の事に思考停止に陥りかけた頭で考える。 悪い予感というのは語弊があるかもしれない。しかし、レオンには自分の半分も生きて いないであろう少女に唇を奪われ、喜ぶような趣味はない。 「……終わりましたっ!」 レオンがそのような失礼な事を考えているとは露知らず、ルイズはレオンを突き飛ばす ようにして、前屈みになっていた上体を起こした。 頬が赤く染まっている。ファーストキスだった。 しかし、レオンはレオンでそんな事情など知る由もない。あまりにも理不尽な扱いに抗 議の声をあげようとしたその時、 「っ……!?」 レオンの左手の甲を焼けるような痛みが走った。 「おい、いったい何を……!」 「使い魔のルーンが刻まれてるだけよ。すぐ終わるわ」 言葉にならないレオンの問いに、苛立たしげにルイズが答える。 その言葉通り、痛みは数秒の後には嘘のように引いていた。 レオンは訝しげに左手を視線の先に掲げる。いつの間にか、異国の文字のようなものが 手の甲に浮かび上がっていた。 「ふむ、コントラクト・サーヴァントは一度で成功したようだね。それにしても、これは ……何とも珍しいルーンだな」 いつの間に隣にいたのか、コルベールがレオンの左手を覗き込んでいた。 そこに刻まれたルーンの形状をメモ用紙にスケッチし終えると、どうやら満足したらし い。何の説明もないまま踵を返すと、子供達に教室に戻るよう促し始めた。 「……刻むなよ」 取り残されたレオンは、呆れたように呟いた。 レオンはエージェントとなってから、多少の事では動じなくなっていた。日常的に異形 の怪物と戦っているのだから、当然と言えば当然だろう。 しかし、そんなレオンも、目の前の光景には言葉を失った。 コルベールを視線で追ったその先で、子供達が一人また一人と宙に浮かんでは、城のよ うな建物に向かい飛び去っていくのだ。 ――本当に、俺の悪い予感はよく当たるんだ。 段々と小さくなっていく子供達を仰ぎ見ながら、レオンは自嘲気味に唇を歪めた。 また一つはっきりした事がある。先程頭によぎった最悪の想像は、決して勘違いではな かったという事だ。 この世界は、自分のいた世界ではない。 ドラゴンが存在し、人間が空を飛ぶ世界―― 「……何よ? 何か言いたい事でもあるわけ?」 気が付けば、草原にいるのは自分とこの我儘な少女だけとなっていた。 不機嫌そうな口調とは裏腹に、困ったような表情を浮かべている。彼女自身もこの妙な 使い魔をどう扱っていいか、まだよく分からないのだろう。 「言いたい事、か……」 言いたい事も尋ねたい事も山のようにある。しかし、いったい何から尋ねたものか。 しばらく考えていたレオンだったが、やがて諦めたように左手に刻まれた紋章へと視線 を落とす。そして一言だけ、もはや口癖になりつつある台詞を呟いた。 「――泣けるぜ」 前ページ次ページBIOHAZARD CODE Zero
https://w.atwiki.jp/tvsponsor/pages/1283.html
寺内シモンの肉専門チャンネル(2014.05.24~)
https://w.atwiki.jp/to_dk/pages/113.html
jamバンド課題曲 <△> jamバンドのメンバー、鼓リズムや鼓カノンの歌詞に合わせて作曲する遊び 2009年7月現在、9曲あるStrawberryJam どうぶつのテーマ まました ネギ色ドリーミング スイーツ レシピ シューティング☆スター 黒い月 GIRLS★LIFE 投稿された作品はこちら(zoome) 歌詞のまとめは、Sound PooL JamバンドパックⅡの付録「うたぼん」にある各曲の発表日や発表場所については、zoomeにある記念動画を参照 不足分の情報は、雑談トピックの39番から辿ると確認可能 関連する記事 専門用語 - 鼓リズム 専門用語 - 鼓カノン 専門用語 - jamバンド 専門用語 - MusicMaker タグ jamバンド 専門用語 さ行 39ゲットミク JASRAC管理曲 jamバンド jamバンド課題曲 信託曲 zoome 専門用語 ▼あ行 ▼か行 ▼さ行 ▼た行 ▼な行 ▼は行 ▼ま行 ▼や行 用語一覧 上へ お役立ち度( - ) Copyright ©2008-2010 to_dk. _
https://w.atwiki.jp/teikokuss/pages/426.html
基礎過程は、魔道の発現を手ほどきするものだ。 人はこの世界を知り、愛し、生きて、すごす。また世界に希望し、時には世界に強く求める。 世界にあるのは、人のみではない。世界には、人と違った形で、世界を感じ、愛するものらがいる。 人が、人の他のものらを知るように、 そして、世界を人とは違った形でたゆといながら、世界の移り変わりを早めたり、遅らせたり、あるいは変えるものたちがある。 それは古くより知られていた。それを精霊と呼び、それらのもののうち、よりより強く、しかし隠遁するものを神とも呼んだ。 彼らは時に、人の思い、願いに答えるかのごとく振る舞うことも知られていた。その願いをかなえてもらいやすいものも知られておりまた、それらの願いは、つまるところ四つの枝葉に分かれることも知られていた。火土水風の形である。 故に人は、この世界はそれら四つを元に成り立ち、それらが合従連衡しながら移ろうと信じていた。そして世をそのようにしているのは、世に卓越者があらぬからと考え、世には多くの神があると考えた。 そしてその神に従い、また恩寵を受けることが、世のあるべき、人の形であると考えた。 帝國の民が言う、神殿の神々とは、そういったものであった。 そして帝國の民らも、造物主に作られた世を信じながら、そのほかの神や精霊があることもみとめていた。教えによれば、どのような神も、つまるところ造物主の子だ。 造物主を認め、世界にちりばめられた、様相を読み取り、造物主の求める世界に貢献するものであれば、 「……」 およそ、そういったことが魔道の礎として知られまた教えられている。 人は、生まれながらに四大要素の影響を受けており、それらのうちで、より呼びかける力の強いものは、四大要素の力より、技を示すことができる。 たとえば、ルキアニスは火だった。士官学校で適正を調べられるまで、己がそうであることすら知らなかった。士官学校で習ったことは、その力、火の力を、呼び起こすことの手ほどきだ。 心鎮めて、意を集めて、念じるように願い、導き出す。 ルキアニスも、マルクス・ケイロニウスも、同級のただびとたちがあっけに取られるほど自然に、その力を現して見せた。 彼らだけでなく、そうする力を持つものらもいた。世にまれに古人が生まれるように、それよりずっと多く、魔道の力を呼び起こすことに近しいものらが生まれてくる。やがて彼らは、息をするがごとく、その技を現すようになってゆくのだが。 ルキアニスたちが学校で習い覚えたのは、おおよそそのあたりのことあだった。呼び起こす礎を体得し、あるべきものをあるがまま呼び起こすことが出来るようになると、それをより強く、より巧みに使うことも教えられる。 それは魔術として知られる技の定石であった。 力を現し、力を手の内とし、定石のまま巧みに使ってみせる。 そこまでが、ルキアニスたちの教えられたことどもだった。そこまでのことでも、ルキアニスには、役立った。トイトブルグのあの丘で、求められるままに力を振るい、叩きつける。 「……」 「どうした?」 「覚えてる?」 「忘れたのかよ?」 「忘れちゃいないけど、はい、今すぐやってみせて、二次術式の術陣を書いて、って言われても困る。 ルキアニスは息をつく。基礎で教えられたことは、すっかり身について、それほど苦も無く現せる。 問題は、術の定石の基礎だ。人が呼び起こせる力には、限りがある。その限りにおいて、なしてみせることが基礎。 しかし魔道の真髄は、世にたゆとう力により、一人の力では成せぬことを成すことにある。己の力を呼び水に、
https://w.atwiki.jp/syukensya1990/pages/243.html
大学、大学院等を卒業した学生への学位授与を行う独立行政法人。 概要 所在地 〒000-0000 新都府水田区7丁目1-1 都市開発機構水田再開発ビルディング 所管官庁 教育文化省 理事長 和田 勝 内部組織 総務広報部 学位審査部 管理部 学位 大学院博士課程 博士 大学院修士課程 修士 大学院専門職課程 専門職学位 大学 学士 大学院 学士、修士、博士 短期大学 短期大学士