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国連・表現の自由に関する特別報告者(Frank La Rue氏)による報告書:表現の自由に対する子どもの権利 意見および表現の自由に対する権利の促進および保護に関する特別報告者の報告書 A/69/335(2014年8月21日) 配布:一般 原文:英語 日本語訳:平野裕二〔日本語訳PDF〕 目次 I.はじめに II.特別報告者の活動 III.表現の自由に対する子どもの権利A.国際人権法上の表現の自由に対する権利 B.第13条:表現の自由に対する子どもの権利 C.第12条:自己の意見を自由に表明し、かつその意見を正当に重視される子どもたちの権利 D.第17条:情報にアクセスする子どもの権利 IV.表現の自由に対する子どもの権利の制限 V.表現の自由に対する比例性を欠いた制限の正当化事由として利用される子どもの保護 VI.子どもの表現の自由の促進A.団体を作り、かつ政治に参加する子どもたちの自由の奨励 B.子ども主導型アドボカシーの奨励 C.さまざまな情報源からの情報へのアクセスの確保 D.メディアの自主規制の促進 VII.子どもたちによるインターネットへのアクセスA.比例性を欠いた制限が採用されることについての懸念 B.インターネットの利用に関する子どもたちのエンパワーメント C.調査研究の拡大 VIII.結論および勧告 I.はじめに 1.特別報告者は、人権理事会決議25/2にしたがって提出される本報告書において、表現の自由に対する子どもの権利に焦点を当てる。 2.子どもの権利条約では、子どもを権利の全面的主体として認識することが強調されている。条約にしたがい、子どもが未成熟であることを、子どもから権利を剥奪して当該権利を成人のみが享有するようにすることの正当化事由として利用することは受け入れられない。子どもは、ミニチュアサイズの人権を認められたミニチュアサイズの人間ではないのである。それどころか、条約は子どもの市民的および政治的権利の保護を拡大するとともに、すべての子どもがその人格を可能なかぎり最大限に発達させることを確保するための具体的措置をいくつか掲げている。また、条約にしたがい、表現の自由に対する権利は子どもの成熟にともなって漸進的に行使されるべきである。 3.子どもを害から保護することおよびおとなが子どもを指導する義務の重要性について疑義を唱える者は誰もいない。しかしながら、年齢が低いことおよび相対的に未成熟であることの結果として子どもが直面する可能性のあるリスクが過剰に言いたてられ、表現の自由に対するおとなおよび子ども双方の権利を不当に制限することの弁明として利用されることがあまりにも多すぎる。このような不当な制限は、何が有害情報であるかについての定義の曖昧さおよび幅広さから生じることもあれば、単に学校、家庭および社会一般における権威主義的態度が暗黙のうちに受け入れられていることによって固定化されることもある。 4.インターネットが開発と人権を促進するための不可欠な手段として広く認められるのであれば、インターネットが子どもにとって不可欠な手段であることも理の当然である。しかし、暴力または虐待の目的でこれらの手段を利用することについての懸念が生じている。デジタル・コミュニケーションの利用を広範に制限することおよび検閲を行なうことは、単に受け入れられないのみならず、これらの懸念の解決策としても実効性を持たない。人権規範が求めているのは、コミュニケーションに対する制限が必要性および比例性の厳格な基準に一致する形で行なわれる、バランスのとれたアプローチである。 5.特別報告者は、本報告書で、表現の自由に対する子どもの権利が国際人権条約でどのように規定されているか、子どもの権利条約にとくに注意を払いながら明らかにする。続いて、この権利の実現を妨げている重要な障壁(表現の自由および情報へのアクセスに対する子どもの権利の直接の制限、ならびに、表向きは子どもの保護を目的としているものの実質的に表現の自由に対するおとなの権利も制限している全般的制限を含む)について詳述する。また、表現の自由に対する子どもの権利の保護および促進に関わる若干の経験についても述べる。インターネットが現代社会に与えている未曾有の影響に鑑み、特別報告者は、子どもの権利の促進にとっての新たなテクノロジーの重要性と、この分野で浮かび上がりつつあるいくつかの具体的懸念についても取り上げる。最後に、国際人権法が定める関連の基準に国内法および国内実務を適合させることに関する勧告を行なう。 II.特別報告者の活動 6.(略) 7.(略) 8.本報告書の作成にあたり、特別報告者は、表現の自由に対する子どもの権利に関する関連の研究の検討および専門家との協議を行なった。また、Child Rights International Networkが蓄積した情報も活用している。加えて、特別報告者は、リオデジャネイロ(ブラジル)、フィレンツェ(イタリア)、メキシコシティおよびヨハネスブルグ(南アフリカ)でこの問題に関する専門家協議を開催した。 III.表現の自由に対する子どもの権利 A.国際人権法上の表現の自由に対する権利 9.表現の自由は、市民的および政治的権利に関するすべての国際・地域人権文書に掲げられている [1]。市民的および政治的権利に関する国際規約第19条では、表現の自由に対するすべての者の権利(国境にかかわりなく、あらゆる種類の情報および考えを求め、受けかつ伝える権利を含む)が承認されている。同条に基づき、あらゆる形態の表現およびその普及手段が保護の対象となる(第2項参照)。この権利には、規約第19条第3項および第20条に掲げられた制限に服することを条件として、他者に伝達しうるあらゆる種類の考えおよび意見の通信を行ないかつ受けることも含まれる。 [1] 世界人権宣言第19条、市民的および政治的権利に関する国際規約第19条、欧州人権条約第10条、米州人権条約第13条および人および人民の権利に関するアフリカ憲章第9条参照。 10.子どもも規約に定められたすべての市民的権利から個人として利益を得る [2] にもかかわらず、従来、表現の自由に対する権利は子どもたちと関連づけられてこなかった。ジュネーブ子どもの権利宣言(1924年)および〔国連・〕子どもの権利宣言(総会決議1386 (XIV))など、子どもについて取り上げた従前の国際文書では、子どもは未成熟さゆえに意味のある選択を行なうことはできないという憶測に基づき、この権利に関するいかなる言及もなかった。子どもの権利条約は、子どもの権利および固有の尊厳の保護における分水嶺である。従前の国際法文書とは異なり、条約は、子どもに対するおとなの義務を基盤とするアプローチ(子どもの権利宣言参照)から権利の保有者としての子どもに焦点を当てるアプローチへの、重点の劇的な転換を促している。 [2] Official Records of the General Assembly, Forty-fourth Session, Supplement No. 40 (A/44/40), annex VI, para. 2. B.第13条:表現の自由に対する子どもの権利 11.子どもの権利条約は、表現の自由に対する子どもの権利を宣明した最初の国際法文書である [3]。第13条の文言は、市民的および政治的権利に関する国際規約第19条第2項および第3項の文言を緊密になぞっている。一部の論者によれば、第13条は規約第19条の規定を、子どもに適用するための試みをほとんど行なうことなく「剽窃」したものにすぎないため、それ自体ではほとんど価値がない [4]。しかし、意見を聴かれる権利および情報にアクセスする権利を保護する条約第12条および第17条に掲げられた規定とあわせて読めば、第13条は、表現の自由に対する子どもの権利について、規約第19条による保護よりも優れているとまではいかなくとも、同等の水準の保護を与えているということができる。 [3] 子どもの権利および福祉に関するアフリカ憲章(1999年発効)第7条も参照。 [4] Sylvie Langlaude, "On how to build a positive understanding of the child s right to freedom of expression", Human Rights Law Review, vol. 10, No. 1 (2010), pp. 33-66. 12.第13条では子どもの発達しつつある能力について言及されておらず、また表現の自由に対する権利を行使するための最低年齢もしくは一定の成熟度も定められていない。この意味で、表現の自由には発達の側面があると捉えられてきた。表現の自由の目的は、子どもたちが、社会において他者とともに精神および自分自身を発達させ、かつ公的生活に参加する市民へと成長していけるようにするところにあるからである [5]。子どもの表現の自由は、子どもが自律的に意見を表明する能力を身につけたときまたは子どもがティーンエイジャーになったときから始まるのではないし、そのようなことはありえない。子どもが、事前に機会を与えられることもなく発達し、18歳という魔法の年齢に達した途端に自律的な存在として社会に参加するようになるなどと期待することはできないのである [4]。 [5] Herdis Thorgeirsdottir, A Commentary on the United Nations Convention on the Rights of the Child Article 13 - The Right to Freedom of Expression (Martinus Nijhoff Publishers, 2006). 13.とはいえ、子どもはおとなではなく、子どもが発達しつつある能力を有しているという事実を回避することもできない。子どもの権利条約第5条に掲げられたこの原則は、単純に、子どもの「子どもらしさ」を考慮する必要性と、子どもの発達および権利行使のあり方はおとなのそれとは異なるという事実を反映したものにすぎない。条約第5条に基づいて親および子どもに責任を負う他の者に付与されている役割が示唆するのは、子どもが表現の自由に対する権利を享有する度合いは、実際上、子どもに特化したものではない国際人権文書において同様の文言で表されている権利をおとなが享有する度合いほど幅広くはないということである [6]。表現の自由に対する権利の行使は子どもの成熟とともに拡大する一方、第5条に基づいて親が行なう適切な指示および指導はそれにしたがって後退していく [4]。 [6] Aoife Nolan, Human Rights Law in Perspective Children s Socio-Economic Rights, Democracy and the Courts (Oxford, Hart Publishing, 2011). 14.条約第13条の文言は全体として規約第19条の文言をなぞっているが、一部の規定は省略されている。第一に、第13条には、干渉されることなく意見を持つ権利(規約第19条第1項)が含まれていない。ただしこの権利は、第13条第1項に黙示的に含まれているか、または条約第12条もしくは第14条に包含されていると推論することもできよう [7]。第2に、第13条には規約第19条第3項の第1文(「2の権利の行使には、特別の義務および責任をともなう」)が含まれていない。現代的表現媒体の強力な影響力ゆえに規約に導入されたこの1文を含めることは、子どもの表現の自由との関連では必要ないと判断されたものと思われる [7]。 [7] Sharon Detrick, A Commentary on the United Nations Convention on the Rights of the Child (Martinus Nijhoff Publishers, 1999). 15.表現の自由に対する権利の適用範囲はかなり広い。子どもの権利委員会によれば、条約第13条は、国家に対して行使できるだけではなく、家庭、コミュニティ、学校、公共政策の決定および社会においても行使できる権利を付与するものである [4]。 16.とくに、家庭は、表現の自由に対する子どもの権利の実現におけるもっとも重要な柱のひとつと考えられている。親が子どもの養育および発達について第一次的責任を負っており、かつ子どもの最善の利益を基本的関心事としていることは、広く認められているところである。委員会は、家庭の構造を、子どもが自由な意見表明を学び、それによって社会に参加するために必要なスキルを身につけられるような参加型のものにすることを奨励している。家族構成員の義務には、子どもの意見を聴き、かつそれを真剣に受けとめる義務や、条約上の権利の実現について子どもを支援する義務が含まれる(CRC/C/43/3, paras. 999-1,002〔訳者注/「意見を聴かれる子どもの権利」に関する委員会の一般的討議の勧告、パラ16-19〕参照)。 情報を求める権利 17.情報を求める権利(子どもの権利条約第13条第1項)は、情報、とくに公的機関が保有する情報にアクセスする権利としばしば関連づけられてきた。この権利は、子どもが国内外の多様な情報源からの情報および資料にアクセスできるようにすることを目指す、条約第17条の規定とも密接に関連している。 18.情報を求めることおよび情報にアクセスすることは、子どもの発達にとって必要不可欠であるとともに、社会生活への参加に欠かせない前提条件である。したがって、子どもの権利委員会はこの権利を、公的機関が保有する情報にアクセスできるようにする積極的義務を国に課すものと解釈してきた。自由権規約委員会の見解によれば、この権利を実効あらしめるために、国は、公益に関わる情報に容易に、迅速に、効果的かつ実際的にアクセスできることを確保するためにあらゆる努力を行ない、かつ、ある者が(情報の自由法などの手段により)情報にアクセスできる必要な手続を制定するべきである(CCPR/C/GC/34、パラ19参照)。 情報を受ける権利 19.子どもは、あらゆる種類の情報および考えを受ける権利も有している。子どもの権利委員会がその総括所見および勧告でこの規定に言及することは多くない。打ち立てられつつある原則は、子どもを異なる文化に親しませるための措置がとられなければならないこと、メディアは子どもが他の文明について学ぶのを援助しなければならないこと、および、すべての子どもを対象とした児童文学の刊行、普及および提供を奨励するための措置がとられるべきであることぐらいである [4]。 20.情報を受ける権利は、教育に対する子どもの権利を締約国が承認した第28条、および、子どもの教育においてはとくに子どもの人格、才能ならびに精神的および身体的能力を最大限可能なまで発達させることを目指すものとすると強調されている第29条と、密接に関連している。 情報を伝える権利 21.最後に、子どもは他者に情報を伝える権利を有する。情報を受ける権利の場合と同様、子どもの権利委員会の先例にはこの権利への言及がほとんど見られない。委員会は、たとえば、子どもには子どもの雑誌、テレビその他のメディアに寄与する権利、学校の内外で政治的活動に従事する権利およびインターネット上のチャットルームを開設する権利があると述べている [4]。 許容される制限 22.子どもの権利条約第13条第2項では、表現の自由に対する権利の行使には一定の制限を課することができると明示的に規定し、当該制限を掲げている。子どもの権利委員会は、この権利に対する制限として許容されるものについての包括的先例を発展させていない [4]。ただし、規約第19条第3項の解釈および適用について自由権規約委員会が行なった分析は、表現の自由に対する子どもの権利についても必要な修正を加えて当てはめることができる(CCPR/C/GC/34、パラ21参照)。 23.第1に、制限は公衆がアクセスできる法律によって定められ、かつ、個人が自己の行動をしかるべく規制できるよう十分に精確に定式化されていなければならない。第2に、制限は、第13条第2項(a)および(b)に掲げられた事由、すなわち他の者の権利または名誉の尊重および国の安全、公の秩序または公衆の健康もしくは道徳の保護に基づいてのみ課すことができる [8]。第3に、制限は必要性および比例性の厳格な基準に一致するものでなければならない。 [8] 子どもの権利条約の起草過程においては、制限の正当化事由に追加する形で「子どもの霊的および道徳的福祉」への言及を含めるという提案が、そのような制限を子どもにのみ課すのは不公正となること、および、その問題は情報へのアクセスに関する第17条ですでに扱われていることを理由に却下されている。Sharon Detrick, A Commentary on the United Nations Convention on the Rights of the Child参照。 C.第12条:自己の意見を自由に表明し、かつその意見を正当に重視される子どもたちの権利 24.子どもの権利条約第12条は、国際人権法において他に例を見ない規定である。これは子どもだけが有する権利であって、おとなが有する権利ではない。子どもは、市民的および政治的権利に関する国際規約に明示的に掲げられた、自己に関わるあらゆる状況について意見を表明する一般的権利を有していないためである [4]。子どもの意見に常に耳が傾けられるわけではないという事実が、意見を聴かれる一般的権利を条約に含めることの正当な理由となる。第12条の目的は、おとなが有する全面的自律権を有しない一方で権利の主体でもある子どもの法的・社会的地位に対応するところにある(CRC/C/GC/12、パラ1参照)。 25.同条第1項は、自己の意見をまとめる力のある子どもに対し、自己に影響を与えるすべての事柄に関して自由に意見を表明する権利と、その後、その子どもの年齢および成熟度にしたがって当該意見を正当に重視される権利を付与している。第2項は、自己に影響を与えるいかなる司法的および行政的手続においても意見を聴かれる子どもの権利を定めている。 26.意見を聴かれ、かつ真剣に受けとめられるすべての子どもの権利は、条約の基本的価値観のひとつを構成するものである。子どもの権利委員会は、第12条を条約の4つの一般原則のひとつに位置づけてきた。これは、同条はそれ自体でひとつの権利を定めているというのみならず、他のあらゆる権利の解釈および実施においても考慮されるべきであることを強調するものである(CRC/C/GC/12、パラ2参照)。 27.第12条にしたがい、締約国は、当該権利を自国の法体系において承認する義務、子どもに影響を与えるすべての行動および意思決定プロセスへの子どもの積極的関与を容易にするために適切な機構を整備する義務、および、表明されたこれらの意見を正当に重視する義務を履行する義務を負う。子どもの権利委員会は、子どもの意見に耳を傾けているように見せることは相対的に難しくないものの、子どもの意見を正当に重視するためには真の挑戦が必要であると指摘してきた。委員会によれば、子どもの意見に耳を傾けることは、それ自体が目的とされるべきではなく、むしろ、国が、子どもたちとの交流および子どもたちのための行動において、子どもの権利の実施にこれまで以上の配慮を払うようにするための手段として見なされなければならない(CRC/GC/2003/5参照〔パラ12〕)。 28.表現の自由に対する権利は、第12条に掲げられた、意見を聴かれる権利と混同されることが多い。子どもの権利委員会は、どちらの条文も強く関連し合っているとはいえ、これらの条項は異なる権利を定めたものであって混同されるべきではないと考えている。第12条は、子どもに影響を与える事柄について具体的に意見を表明する権利、および、子どもの生活に影響を及ぼす行動および決定に関与する権利に関連している。この規定が、締約国に対し、子どもに影響を与えるあらゆる行動および意思決定への子どもの積極的参加を容易にし、かつ表明されたこれらの意見を正当に重視する義務を履行するために必要な法的枠組みおよび機構を導入する義務を課している一方、表現の自由は、締約国によるこのような関与または反応を要求するものではない。ただし委員会は、子どもの自由な意見表明を可能とする環境をつくり出すことは表現の自由に対する権利を行使する子どもの能力の構築にも寄与すると考えている(CRC/C/GC/12、パラ81参照)。 29.表現の自由との関連で第12条が有するもうひとつの興味深い側面は、参加が重視されていることである。この文言は同条では用いられていないものの、子どもの権利委員会は、さまざまな機会に、子どもは社会に参加することによって意見を聴かれ、公共の問題に関する見聞を広め、かつ自国の生活において役割を果たせるようになると指摘してきた(たとえばCRC/C/SR.379、パラ55参照)。参加は、家庭、学校および社会一般において奨励されるべきであり、政治的、社会的、経済的および文化的生活に関わるものであるべきであり、かつ、既存の諸制度を通じておよび子どもに特化した機関の創設を通じて行なわれるべきである。子どもの参加権を奨励することの理論的根拠は、子どもの発達を促進するところにある。子どもが学校およびコミュニティの生活に参加する経験を持たなければ、長じて社会の全面的構成員になることは期待できないからである(たとえばCRC/C/SR.277、パラ50参照)。 D.第17条:情報にアクセスする子どもの権利 30.子どもの権利条約第17条は、情報にアクセスする子どもの権利を扱うとともに、そのような情報の提供をマスメディアに対して奨励する際の国の役割について取り上げている。この規定の目的は、子どもが国内外の多様な情報源からの情報および資料(とくに自己の福祉および健康の促進を目的とするもの)にアクセスできるようにすることである。同条は、マスメディアが果たす重要な機能も認めるとともに、第17条に基づく子どもの権利を実施するために締約国がとる必要のある多くの措置を列挙している。これらの権利には、とくに書籍、雑誌、新聞、テレビ、ラジオ番組および図書館を通じて情報を求めかつ情報にアクセスする積極的権利も含まれる。 31.締約国は、第17条(e)に基づき、子どもの福祉に有害な情報および資料から子どもを保護するための適切な指針を発展させるよう求められている。したがって、子どもは成熟にともなってますます広範囲の資料へのアクセスを認められるべきであるが、その発達しつつある能力次第で、発達にとって有害となる可能性がある資料から保護されるべきでもある。委員会の先例では、「有害な資料」の包括的定義は示されておらず、暴力的、人種主義的またはポルノグラフィー的資料への一般的言及が見られる程度である。 32.この権利は、条約第13条に掲げられた、情報を求める権利と密接に関連している。この権利の行使は、子どもが見聞を広め、よって社会生活に参加できるようにすることを目的とするものだからである。子どもの権利委員会は、この権利を充足することは意見を聴かれる権利(第12条)の効果的行使の前提条件であるとも指摘してきた。委員会は、子どもは自己に関わるすべての問題についての、子どもの年齢および能力にふさわしい形式による情報(たとえば子どもの権利、子どもに影響を与える手続、国内法令および国内政策、地元のサービスならびに不服および苦情の申立て手続に関連する情報)にアクセスできなければならないと説明してきた。 33.委員会はまた、メディアが、子どもの意見表明権に関する意識を促進することおよびそのような意見表明の機会を提供することのいずれにおいても重要な役割を果たすとも指摘してきた(CRC/C/GC/12、パラ83参照)。この規定に基づくメディアのその他の義務には、さまざまな情報源からの情報へのアクセスを提供すること、若者が社会に対して行なう前向きな貢献を描くこと、子どものためのサービス、施設および機会に関する情報を普及すること、平等主義的な原則および役割を促進すること、ならびに、ポルノグラフィー、薬物および暴力の描写水準を最低限に留めることが含まれる(総会決議45/112付属文書〔リャド・ガイドライン〕参照)。 IV.表現の自由に対する子どもの権利の制限 34.子どもたちは、子どもの自由なコミュニケーションを認めることのリスクを過剰に言い立て、かつ子どもの主体性を過小評価することの多いパターナリスティックな態度が確立されていることの結果として、表現の自由に対する権利の実現を妨げる特有のハードルに直面している。加えて、子どもたちの権利は、おとなの表現の自由を阻害するすべての障壁の影響も受ける。 35.子どもの権利委員会は、多数の国々に対し、家庭、学校および社会一般を含むあらゆる領域で子どもに対する伝統的態度が残っていることにより、自由な自己表現に対する子どもたちの権利の受容が引き続き遅れていると指摘してきた(たとえばCRC/C/SGP/CO/2-3〔シンガポール〕、パラ33およびCRC/C/ECU/CO/4〔エクアドル〕、パラ40参照)。子どもたちの表現の自由を妨げる障壁は、子どもに対するおとなの権力に疑問が呈されないままの環境においてとりわけ蔓延している。教育現場は、子どもは自分自身の権利、意見および気持ちを有する人間であるという認識と子どもに対するパターナリスティックな見方との間に存在する緊張の一部が、特段のわかりやすさをともなって浮き彫りになる環境である。 36.教育の目的に関する一般的意見1号のパラ8で、子どもの権利委員会は次のように述べている。 「子どもは校門をくぐることによって人権を失うわけではない。したがって、たとえば教育は子どもの固有の尊厳を尊重し、かつ第12条第1項にしたがった子どもの自由な意見表明および学校生活への参加を可能にするような方法で提供されなければならない」 37.しかしながら、多くの国では、教育とはおとなが子どもをあらかじめ定められた形に成型するための手段であるという考え方のゆえに、子どもたちが自由な自己表現の権利を否定されている。このことは、たとえば生徒に学校の運営方法についての意見表明をさせないことが多い、権威主義的な学校環境および教育手法の蔓延(CRC/C/KOR/CO/3-4〔韓国〕、パラ40参照)に明らかである。場所によっては、意見を発展させかつ表明するよう子どもに奨励する参加型の教育手法ではなく、暗記学習が引き続き標準とされているところもある(CRC/C/15/Add.148〔サウジアラビア〕、パラ39)。 38.生徒が団体を作ることおよび政治的意見または論争を招きかねない意見を表明することを認めていない学校は多い。1969年のティンカー対デモインズ独立コミュニティ学校区事件(Tinker v. Des Moines Independent Community School District)は、おそらく子どもの表現の自由の保護に関する最初の重要判例であろう。1965年12月、3人の生徒(13歳、15歳および16歳)が、ベトナム戦争に抗議するため、平和のシンボルをあしらった黒い腕章を着けて学校に行くことを計画した。その抗議の計画を耳にした地方学校当局は、学校における腕章の着用を禁止し、関与した生徒らを停学にした。生徒らはアメリカ自由人権協会の支援を得て裁判所に不服申立てを行ない、その申立ては、1969年、アメリカ合衆国最高裁判所によって認められた。 39.司法制度は、根深い権威主義的慣行を修正するうえでしばしば重要な役割を果たす。いまのところ、表現の自由および情報へのアクセスに対する子どもの権利を確認した裁判所の決定例はほとんどない。しかし、とくに米国では教育現場における実例が増えつつある。たとえば、フロリダのある高校生は、学校でゲイの権利を支持するいかなるシンボルも着用してはならないとされた。校長が、虹をあしらったいかなるシンボルも生徒にゲイの人々のセックスを連想させると考えたためである。連邦裁判所判事は、前述のティンカー事件判決を引用した決定で、学校は当該生徒の権利を侵害したと判示した [9]。 [9] American Civil Liberties Union, "Federal judge rules that students can t be barred from expressing support for gay people" (13 May 2008). 40.生徒が運営する刊行物は、生徒が意見を表明できるもうひとつの重要な手段である。これらの刊行物は、若者にとっての関心事であり、おとなが議論に居心地の悪さを覚えるかもしれない問題についての報告が掲載されることから、支援の供給源となる。しかし、生徒の記事は、ティーンエイジャーの妊娠や親の離婚の影響等の問題を取り上げているという理由で検閲の対象とされてきた。生徒によるソーシャルメディアへの投稿もますます監視の対象とされるようになっており、場合により、子どもが学校の批判を投稿したという理由で退学になることもある。 41.文化的活動への子どものアクセスも、正当な理由なく検閲の対象とされる場合がある。1993年のドゥンドゥズ・チシザ対ケイト・カインジャ大臣事件(Dunduzu Chisiza Jr. v. Minister Kate Kainja)で、マラウィの裁判官は、公立学校で独立系グループが行なうすべての劇その他のパフォーマンスを禁じるのは表現の自由の侵害であると異議を申立てた役者の申立てを認容した [10]。一部の学校が宗教的理由で音楽の自由を禁じているという報告もある。 [10] Article 19, "Kid s talk freedom of expression and the UN Convention on the Rights of the Child" (1999)参照。 42.学校カリキュラムの内容の制限も、多様な情報源からの情報に対する子どものアクセスに影響を及ぼす場合がある。これとの関連で、学校管理者が支持する考えに逆行する考えを記載した書籍および教材が禁じられることも、もうひとつの懸念事項である。たとえば、1982年の教育委員会対ピコ事件(Board of Education v. Pico)で、米国の裁判所は、思想上の理由で書籍を学校図書館から取り除くことはできないと判示している。 43.情報を直接禁止することに加え、一部の学校カリキュラムでは、歴史に関する偏った見方または特定の集団(女子、セクシュアルマイノリティ、民族的マイノリティまたは障害のある子どもなど)に対する偏見のある見方が提示される場合もある。自分自身の意見を形成する子どもの自由に悪影響を与え、かつ逆に差別を固定化させることにつながる可能性があるこのような状況については、さまざまな国連条約機関が各国に対する勧告のなかで提起してきた。 44.この問題については欧州社会権委員会も取り上げている。同委員会は、2009年、性教育を取り上げたクロアチアの学校カリキュラムが性的指向を理由とする差別を行なっていると認定した。同委員会は、カリキュラムに掲げられた一部の説明は同性愛者にスティグマを付与するものであり、かつ否定的な、歪められた、非難されるべき、かつ品位を貶めるステレオタイプに基づいていると指摘している [11]。 [11] International Centre for the Legal Protection of Human Rights v. Croatia. 45.表現の自由に対する子どもの権利を制限することの影響は、校門の内側には留まらずに公的生活にも及ぶ。子どもたちは、おとなとまったく同様に、政治的意見を表明したことを理由に過度の暴力または恣意的拘禁の対象とされる可能性がある。たとえば、子どもの権利委員会は最近、シリア・アラブ共和国に対し、南部の街であるダルアで、校舎の壁にペンキで反政府的な落書きを行なったとして罪に問われた8~15歳の児童生徒の集団が逮捕および隔離拘禁の対象とされたこととの関連で、このような人権侵害があったことを強調した(CRC/C/SYR/CO/3-4、パラ46参照)。ベラルーシに対しても、2010年12月の大統領選挙との関連で行なわれたデモの際に青少年が拘禁されたことについて懸念を表明している(CRC/C/BLR/CO/3-4、パラ35参照)。 46.法律による比例性を欠いた制限は、おとなおよび子ども双方の権利への干渉となる。これには、たとえば表現の自由は「イスラムの原則」に照らして解釈しなければならないという要件を引用する曖昧な文言の制限条項を掲げた法律や、安全保障に対するリスクの過度に広範な解釈が含まれる。これは、子どもの権利条約第13条第2項および第15条に定められた制限を超える可能性がある(CRC/C/15/Add.254〔イラン〕、パラ40およびCRC/C/PRK/CO/4〔北朝鮮〕、パラ27-28参照)。 47.平和的集会に対する子どもの権利の不当な制限には、子どもの表現の自由を妨げる一般的な障壁の一部が反映されている。平和的集会および結社の自由に対する権利に関する特別報告者は、最近の報告書で次のように指摘している。 「若者が一部のデモに参加することについて安全上の懸念があることもあろう。しかし、……マレーシアの法律のような法律〔15歳未満の子どもはデモに参加できないとするもの〕は、そのような懸念に具体的に対応するのに十分なほど限定されたものとなっていない。むしろ、特定の年齢の個人を対象とする全面的禁止は、住民のある層全体について平和的な集会に参加する権利を例外なく消滅させるものであって、子どもの権利条約第15条に反している」(A/HRC/26/29、パラ24参照) V.表現の自由に対する比例性を欠いた制限の正当化事由として利用される子どもの保護 48.分野によっては、一部のタイプの情報へのアクセスに関して子どもの安全および福祉を懸念すべき正当なかつ理解できる理由が存在する場合もある。たとえば、多くの国は、とくに子どもの保護を目的として放送(とくにテレビ)を規制している。国による規制にはたとえば何らかの年齢別放送制限システムが含まれ、かつそのシステムを執行するための独立機関が設置されていることが多い。子どもにはふさわしくないと一般的に考えられている内容には、性的に露骨な内容、暴力および攻撃的言葉が含まれる。ただし、規制はメディアの自由に相当の影響を与えかねない。そのうえ、何が有害な情報にあたるかの定義は主観的なものである。したがって、子どもの保護を目的とするあらゆる規制および当該規制を執行するために設けられた機構は、おとなおよび子ども双方の権利を縮小させる比例性を欠いたまたは恣意的な制限が課されることを防止する目的で、開かれた、かつ透明なやり方で定期的に再検討することが求められる。さらに、これらの規制の執行を委ねられた機関の独立性を確保することはきわめて重要である――たとえば当該機関の構成に関する規則は、とくに政治的勢力または経済的利害によるいかなる干渉からも保護されるような形で定めることが求められる。 49.たとえばインターネットのフィルターの設定方法の決定にあたって有害な情報を曖昧かつ広範に定義すれば、結果として、十分な情報に基づく決定を行なうための支えとなりうる情報(性教育および薬物の使用等の問題に関する誠実な、客観的なかつ年齢にふさわしい情報を含む)に子どもがアクセスできなくなりかねない。これは、リスクに対する子どもたちの脆弱性を軽減するのではなくむしろ悪化させてしまう可能性がある(さらに詳しくはインターネットについて取り上げた後掲VII参照)。 50.有害な資料から子どもを保護するために事前検閲を行なうことは、国際人権基準に逆行する比例性を欠いた制限の一例である。たとえば、『最後の誘惑』(オルメド・ブストスほか)対チリ事件(The Last Temptation of Christ (Olmedo Bustos et al) v. Chile)において、米州人権裁判所は、チリ政府が子どもの道徳を保護するためにマーティン・スコセッシの映画『最後の誘惑』を禁止したことは米州人権条約第13条(思想および表現の自由)の違反であったと判示した。同裁判所は、判決理由として、映画館への子どもの入場を規制することなど、事前検閲よりも制限度の低い措置をとることによって子どもを保護することは容易であったと述べている。 51.事前検閲に関するより最近の判例(南アフリカ印刷媒体連合ほか対内務大臣ほか〔Print Media South Africa and Another v. Minister of Home Affairs and Another〕事件)で、南アフリカ高等法院は、南アフリカ映画および出版物法(1996年法律第65号)の改正は表現の自由に対する憲法上の権利を侵害していると宣言した。同改正は、子どもが年齢にふさわしくない資料に接することを防止し、かつ児童ポルノを禁止する目的で、出版者に対し、出版物を提出して事前の承認を得るよう(若干の例外を除いて)要求するものであった。同決定は、事前抑制システムについての懸念ならびに出版物の分類に関する曖昧かつ過度に広範な基準についての懸念を指摘している。 52.子どもを保護しなければならないという主張は、情報への子どものアクセスのみならずおとなの権利に対する制限をも正当化するために子どもがますます利用されるようになってきているという、新たなパターンの一部となっている。多くの場合、制限は、子どもを有害な情報から保護したいという、真摯なかつ善意に基づく願いに根ざしたものであるが、差別および検閲を擁護するために子どもが利用される場合もある。 53.もっとも憂慮されるのは、子どもを保護しなければならないという主張が、たとえばレズビアン、ゲイ、バイセクシュアルおよびトランスジェンダーに関する問題についての情報へのアクセスを妨げるために、またそれによってセクシュアルマイノリティへの差別を正当化するために利用されていることである。ロシア連邦では、子どもを有害な情報から保護する行政法の改正が2013年7月に施行され、子どもたちの間で「伝統的ではない性的関係を宣伝すること」が違法化された [12]。平和的集会および結社の自由に対する権利に関する特別報告者は、他の委任受託者らとの合同声明で当該法についての懸念を公に表明した。子どもの保護を理由としてロシアの反同性愛者法を正当化しようとする論拠は、欧州人権裁判所によっても、2011年のアレクセイエフ対ロシア事件(Alekseyev v. Russia)において拒絶された。このような批判にもかかわらず、他の国々も追随している。ウクライナでは、2013年、子どもを対象とする「同性愛関係の宣伝」を禁止する法案を議会が検討するべきである旨の勧告が行なわれた [13]。同法案では、「宣伝」は、同性間の関係に関する情報の拡散を目的としたあらゆる公的な活動と定義されている。2014年6月には、キルギスタン議会の人権委員会が、「伝統的ではない性的関係に対する肯定的な態度の形成を目的とした」情報の普及を犯罪化する法案を承認した [14]。 [12] ロシア連邦法第135-F3号(2013年7月29日)参照。 [13] 子どもを対象とする同性愛関係の宣伝の禁止に関する法案第1155号(2011年6月)参照。 [14] 子どもの健康または発達にとって有害な情報からの子どもの保護に関する法案(2014年)参照)。 VI.子どもの表現の自由の促進 54.表現の自由に対する子どもの権利の保護することとは別に、国は子どもの表現の自由を促進する義務も負っている。子どもの表現の自由を保障するためにおとなが組織する音楽、芸術および演劇等の活動への子どもの参加を奨励するだけでは十分ではない。子どもたちは、処罰を恐れることなく、自分たちの意見を口頭またはその他の手段で詳しく述べる、満足に足る機会および空間を持てるべきであり、かつ多様な情報源からの情報に国境を越えてアクセスできるべきである――このことは、すべての子どもに対し、差別なく適用される。このような積極的義務は、公立図書館、音楽指導等の活動および遊び場等の施設のための資金が真っ先に削減されることの多い経済危機の際にも留意されるべきである。子どもたちの表現の自由を積極的に促進するために考えられる方法の若干例を以下に示す。 A.団体を作り、かつ政治に参加する子どもたちの自由の奨励 55.若者市長制から子ども議会に至るまで、子どもたちが政治に参加するための仕組みがますます用意されるようになりつつある。アイスランドでは、財政危機後の2008年、市民による憲法の書き換えを行なうことが合意された。この一環として、憲法改正プロセスで子どもおよび若者の意見も考慮されることを確保する目的で「若者憲法プロジェクト」が設置された。ドミニカ共和国では、学校における安全な飲料水の供給等の問題を扱う自治会評議会が創設され、若者による選挙でその構成員が選ばれている。 56.政治に新たな世代の子どもたちの関与を得ることは、政治文化を刷新し、かつ選挙への参加を増進させるために役立つ。最低投票年齢を16歳に引き下げた国もいくつかあるが、これは、子どもたちの意見の正当性を公的に認め、かつ子どもたちの政治参加を奨励することにつながる前向きな一歩である。あらゆる年齢の子どもたちが、自ら希望するのであれば、公共政策に関する政治的プロセスおよび協議に何らかの形で関与する機会を与えられるべきである。 B.子ども主導型アドボカシーの奨励 57.子どもたちが主導するキャンペーンは、重要な議論を喚起し、かつ社会全体に利益をもたらしてきた。子ども主導型アドボカシーの取り組みを展開する際には学生連合が中心的役割を果たすことが多い。たとえば2011年には、チリの高校生および大学生数千人が法外な教育費負担への抗議を行なった。これらの学生による動員の政治的影響は、チリの教育制度に関して続けられている議論のなかで引き続き感じられている。教育費負担に対する同様の学生による抗議はいくつもの国で行なわれてきた。 58.韓国では、教育制度内の権威主義的慣行に反対する大規模な社会的動員を高校生が進めてきた。生徒によって喚起された公的議論の結果、2012年、ソウル特別市議会は児童生徒権利条例を採択した。これは、とくに生徒の抗議権、体罰の禁止、宗教的活動への参加義務の撤廃ならびにレズビアン、ゲイ、トランスジェンダーである生徒ならびに妊娠した生徒の差別からの保護を確保するものである。この動員の流れで韓国の生徒により結成された韓国青少年権利行動は、引き続き生徒の積極的活動を推進している。 59.英国の13歳の少年は、自分が通う学校の差別的な服装規則(夏期に女子のスカート着用を認めながら男子の短パン着用は認めない)に反対して立ち上がった。クリス・ホワイトヘッドは、男子のスカート着用は禁じていないという、制服に関する学校方針の抜け穴を利用した。仲間の生徒約30名が抗議に加わり、これがきっかけとなって学校は政府に関する方針を見直した。一方、クリス・ホワイトヘッドは自由人権賞候補にノミネートされた [15]。 [15] Lucy Sherrif, "Chris Whitehead, schoolboy who wore skirt to school, up for human rights award", Huffington Post (21 November 2011). 60.インドでは、「児童婚に反対する女子クラブ」ネットワークのメンバーが、若年婚の有害な影響に関する啓発活動を行なうことにより、娘を幼くして婚姻のために手放すことがないよう家族を説得する支援をしている。このような活動は、家族の圧力に抵抗したいと考える女子だけではなく、ジェンダーを基盤とする期待にさからえば娘が排斥されたままになると恐れる親にとっても命綱となっている [16]。 [16] Melanie Kramers, "Indian girls persuade parents they are too young for marriage", Guardian, 29 June 2011. C.さまざまな情報源からの情報へのアクセスの確保 61.子どもたちが自分自身の意見を形成し、かつ見識および責任のある市民になれるようにするためには、さまざまな情報源からの情報にもアクセスできなければならない。このようなアクセスは、多くの子どもたち、とくに孤立したコミュニティで暮らす子どもおよび自由を奪われた子どもにとっては限られたものとなっている。子どもの権利委員会も、マイノリティ集団にとっての情報のアクセス可能性(情報がこれらの集団のニーズに十分に関連しておらず、またはこれらの集団自身の言語でアクセスできるようになっていない可能性)および障害のある子どもにとっての情報のアクセス可能性の問題を提起してきた。 62.委員会は、「子どもとメディア」に関する一般的討議をもとにまとめられた勧告において、子ども向けの書物、雑誌、演劇その他の形態の表現の制作および普及を確保するための国による予算的支援の重要性および国際協力を通じた援助の重要性を確認している(CRC/C/15/Add.65、パラ256)。コミュニティ放送および公共放送への投資は、多様な情報源からの情報へのアクセスを促進するうえで、また子どもたちの声をメディアに反映させるうえで中心的役割を果たすことが多い。たとえばアルゼンチンでは、通信および視聴覚サービス法により、公共放送機関を対象として、子どもたちのための、および商業放送によって軽視されているその他の層のための番組を放送する時間を確保する義務が定められている。同法の実施の監督を委ねられている公的機関は、通信および視聴覚サービスについて議論するための公聴会(子どもたちを対象とするものを含む)を推進している。また、最近では、生徒が主導して自分たちの学校で行なうラジオ放送活動も支援してきた。さらに、アルゼンチン教育省は、コンテンツ制作への子どもの積極的参加を通じたものも含む、子どもに配慮した教育番組制作の促進を目的としたチャンネルの開設を支援している。 D.メディアの自主規制の促進 63.予算的支援を提供することに加え、国は、メディア団体に対し、子どもたちの取り上げ方および関与のさせ方に関する自主規制を奨励することができる。国際ジャーナリスト連盟は子どもに関連する問題についての報道に関する指針案および原則案を策定してきたが、これは70か国のジャーナリズム団体によって採用されている。これには、ステレオタイプの使用および子どもが登場する話のセンセーショナルな提示を回避することについての規定も含まれている。 64.子どもたちはメディアへの参加権も有しており、刊行物のなかには完全に子どもたちによって運営されているものもある。前述の一般的討議をもとにまとめられた勧告で、子どもの権利委員会は、メディアに対する子どもたちの参加権を促進しながら、生徒はメディアとの関わりおよびメディアの活用を参加型の方法で実践し、かつ広告を含むメディアのメッセージの解読方法を学習できるようにされるべきであると主張している(CRC/C/15/Add.65、パラ256)。 VII.子どもたちによるインターネットへのアクセス 65.インターネットは、世界のすべての地域に住む子どもたちおよびおとなの、迅速かつ安価にコミュニケーションをとる能力を劇的に向上させてきた。そのためインターネットは、子どもたちが表現の自由に対する権利を行使するための重要な手段のひとつであり、また子どもたちが他の権利(教育、結社の自由ならびに社会的、文化的および政治的生活への全面的参加に対する権利を含む)を主張するのに役立つツールになりうる。インターネットはまた、子どもたちを含むすべての市民の関与が必要とされる開かれた民主的社会の発展にとっても不可欠である。しかし、インターネットの規制をめぐる議論では、子どもによるインターネットへのアクセスと関連した潜在的リスクについても突出した形で取り上げられ、保護のための政策において、インターネットが有するリスクにもっぱら焦点が当てられて、インターネットが子どもたちのエンパワーメントにつながる潜在的可能性は見過ごされる傾向がある。さらに憂慮されるのは、子どもを保護したいという真の思いからか、または検閲の隠れみのとしてかにかかわらず、比例性および有効性を欠いた措置(すべての人を対象としてオンライン上のコミュニケーションを阻害する、広範で配慮を欠いたフィルタリングおよびブロッキングのシステムなど)を利用する国もあることである。 66.インターネットが広がったことにより、数百万人の人々が前例のない規模で学習、発信およびコミュニケーションをすることができるようになった。インターネットは、学校における双方向的利用の可能性およびそこで利用可能とされる広範囲の情報を通じ、大いなる教育的利益を提供しうる。たとえばウルグアイの「プラン・セイバル」(Plan Ceibal)は、教育制度を通じてインターネットへのアクセスを促進する注目すべき実例である。より具体的には、子どもの権利委員会が提案するように、インターネットは、通学することのできない子どもたちに対し、インターネットに依拠した移動学校プログラムを通じて教育を提供できることから、教育において重要な役割を果たす(CRC/C/GC/11、パラ61)。 67.インターネットはさらに、若者が公の議論に参加するための他に例のない経路となる。たとえば米国では、17歳の少年が、学校で同性愛について話し合うことを教師に禁ずる法案に抗議するためのツイッター・キャンペーンを組織したという [17]。 [17] Shira Lazar, "Is it okay to say gay? Devon Hicks protests Tennessee bill", Huffington Post, 25 May 2011. 68.ソーシャルネットワーキングサイトも、人間関係を育み、かつ情報交換および交流を容易にする手段として、子どもたちにとってますます重要なものとなっている [18]。子どもたちの報告によれば、ソーシャルネットワーキングは、創造性を助長し、仲間の好みを参考にした選択および意見形成を可能にし、議論を促進し、かつオフラインでは利用できない自己表現の場を提供してくれるものである [19]。これらのサイトは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアルおよびトランスジェンダーのコミュニティなど、このような場がなければ孤立感を覚えるかもしれないマイノリティ集団のメンバーにとってとりわけ重要な役割を果たす可能性がある [18]。 [18] UNICEF Innocenti Research Centre, Child Safety Online Global Challenges and Strategies (May 2012). [19] Child Exploitation and Online Protection Centre, Understanding Online Social Network Services and Risks to Youth Stakeholder Perspectives (2006). 69.とはいえ、インターネットの利用には子どもたちにとって若干のリスクがともなうのも事実である。インターネットの利用に関連するリスクとして広く認知されているものには、ポルノグラフィ―的資料にさらされること、ネット上での性的勧誘およびネットいじめなどがある。 70.たとえば性的搾取の場合、テクノロジーの進歩(インターネット接続の高速化や、インターネットサービスプロバイダを迂回する新たな資料伝達方法を含む)により、児童虐待をともなう画像の共有が容易にされてきた。ネット上での性的勧誘にもインターネットが用いられているが、現在では、性的虐待を行なう目的で子どもまたは若者と「仲良く」なり、オンライン上で性的接触を図ることまたは実際に会うことがその目的となっている [18]。犯罪者は、このような目的で、チャットルーム、ソーシャルネットワーキングサイトおよびインスタントメッセージのようなオンライン上のフォーラムを利用することが多い。これにより「伝統的なプライバシーの境界が解体され」、子どもたちがリスクにさらされる結果が生じている [18]。最後に、最後に、ネットいじめとは、情報通信技術を通じておとなまたは他の子どもが行なう心理的いじめおよびいやがらせと理解されている。ネットいじめは、脅迫および威嚇、いやがらせ、ネットストーキング、中傷および名誉毀損、排除または仲間からの拒絶、なりすまし、私的な情報または画像の勝手な公表ならびに自分の思い通りに行動させようとすることなど、さまざまな形態をとりうる。これは、ただでさえ社会のなかで弱い立場にあると考えられている集団にとってはとりわけ問題である [18]。 A.比例性を欠いた制限が採用されることについての懸念 71.インターネットはすべての子どもにとって危険であるという一般的な恐怖心は誤解につながりやすく、インターネットは特定の状況下で有害にも有益にもなりうるという現実を過度に単純化している。オンライン上のリスクに対する子どもたちの脆弱性をより幅広い社会的・文化的視点から理解することにより、これらの懸念がどのような性質のものであり、かつそれをどのように捉えるべきかについて、より深い知見を得ることが可能である。子どもたちによるインターネットの利用状況、その行動およびリスクに対する脆弱性は年齢によって異なり、かつ個々の子どもによっても変わってくる。保護のための措置は、子どもおよびおとなに同様に悪影響を与える絶対的ブロックまたは検閲の措置を利用するのではなく、子どもたちの発達しつつある能力を認めようとするものでなければならない [18]。 72.平和的集会および結社の自由に対する権利に関する特別報告者はかつて、インターネットに対する制限が増えていることを懸念とともに指摘していた。たとえば、活動家および批判者を標的にして沈黙させ、かつ合法的表現を犯罪化する目的でオンライン上の活動のブロックおよび監視を行なうことなどである――一部には、政府がそのような措置を正当化するために制限的法律を制定したケースもある(A/HRC/17/27、パラ23参照)。このような制限は透明性を欠く形で課されることが多いため、検閲問題の報告が困難になる。さらに、たとえ若干の水準の制限は正当化される場合があるとしても、不法な内容以外の資料を一括して禁ずることは保護という目的との関係で比例性を欠く(前掲、パラ44)。それどころか、そのような措置は、表現の自由に対するおとなの権利を過度に制限してしまうことから、オンライン上のリスクに関する議論を抑止することで子どもたちをいっそう危険な状況に置いてしまうことに至るまでの、意図しない影響ももたらす。 73.特別報告者は、親および学校当局が、インターネットへの子どものアクセスを管理するためのソフトウェアを利用し、かつオンライン上の安全について子どもたちを指導することができる場合、国の関係機関による全面的禁止は必要とされないと指摘している(A/HRC/17/27、パラ27参照)。それどころか、国の関係機関がそのような広範な禁止を決定することは、インターネットへの子どものアクセスに関する判断権を親および養育者が行使することの妨げとなるので、子どもの権利条約第18条と両立しない。加えて、自主規制戦略に関してコンテンツ提供者を援助するためのプロジェクトもいくつか進行中である。 74.子どもたちによるインターネットの利用状況に関する理解が限られているために、子どもの保護を目的とした、より制限的なアプローチがしばしば採用される [20]。実のところ、子どもおよび若者の圧倒的多数は、オンライン上の自分たちの振舞いが被害または危害につながるとは考えていない。子どもたちはすでにインターネットから身を守るためのさまざまな戦略を活用しており、これにはオンラインまたはオフラインの友人に相談すること、望まないコンテンツをブロックしまたは無視すること、プライバシー設定を変更することなどが含まれる [18]。調査によれば、親および教師がインターネットのことをよく知らない場合に、子どもたちはオンライン上でよりリスクの高い振舞いをすることが明らかになっている [20]。逆に、親が十分な情報を得ており、積極的に関与しようという姿勢を有しており、かつインターネットおよび自分の経験について子どもたちと話し合うことこそ、より安全なオンライン経験を確保するためのもっとも強力な保護措置であることも、証拠により示唆されているところである [18]。このことは、親および養育者がとる措置のほうが、広範な制限を課すことに傾斜する現在の傾向よりも、子どもたちを保護するうえでより効果的であることを示唆していると思われる。 [20] Sonia Livingstone and Monica E. Bulger, "A global agenda for children s rights in the digital age recommendations for developing UNICEF s research strategy" (September 2013). B.インターネットの利用に関する子どもたちのエンパワーメント 75.インターネットを含む情報通信技術が、安全も促進しつつ子どもたちの権利および発達を促進するような方法でこれらの技術を活用できるように子どもたちのエンパワーメントを図るという観点から規制されかつ監視される環境をつくっていく必要がある(CRC/C/GC/13参照)。欧州委員会による「子どもたちのためのインターネットの改善に関する欧州戦略」は、オンラインにおける子どもたちの安全を向上させるための戦略の有益な実例である [21]。ただし、エンパワーメントとは、インターネットを子どもたちにとってより安全な空間にするというだけの話ではない。インターネットがどのように情報アクセスツールおよび子どもたちの批判的思考を支援するツールとなっているかという点に注意を向けることも必要である。 [21] Brian O Neill, "Policy influences and country clusters a comparative analysis of Internet safety policy implementation" (London School of Economics, 2014) も参照。 76.子どもたちのエンパワーメントには、子どもの発達しつつある能力を念頭に置きながら子どものインターネット利用を支援するための、親を対象とした訓練および子どもとともに働く専門家を対象とした訓練が含まれなければならない [18]。オンライン上の安全および子どもの発達にとって有益な情報を紹介する積極的方法のひとつは、情報通信技術に関する学校方針の策定に子どもたちの関与を得る等のやり方も含め、学校カリキュラムを通じてそれを行なうことである。非政府組織および公共通信(ラジオなど)は、学校に行っていない子どもたちに対して同様の支援を提供することができる [16]。子どもの安全を確保するための取り組みの例をいくつか挙げるとすれば、「セイファーネット・ブラジル」、「スロバキア・セイファーインターネット・センター」、ベネズエラ・ボリバル共和国の「マノス・ポル・ラ・ニニェス・イ・アドレッセンシア」(子ども・青少年のための手)などがある。 77.インターネット上の保護およびインターネット利用促進のための戦略を策定する際には、子どもたちのニーズを満たし、かつ子どもたちがすでに用いている多様な知的戦略および創造的戦略を活用するために子どもたちの関与を得ることが、とくに子どもおよび若者は最新技術にいっそう親しんでいる傾向があるだけに、重要である。このような関与戦略は、信頼関係の構築および開かれたコミュニケーションの奨励にも役立ちうる。子どもの権利委員会は、すべての国が、保護のための子どもにやさしいヘルプラインをともなった、アクセスしやすく子どもにやさしい通報制度を設置するよう勧告している(CRC/C/GC/12、パラ120参照)。 C.調査研究の拡大 78.子どもの権利の行使におけるインターネットの役割を明らかにするためには、とくに、子どもがインターネットをどのように利用しているか、子どもはインターネットの安全な利用法をどのように学習しうるか、および、どのようにすれば親、養育者および国はインターネットを破壊的なツールではなく肯定的なツールとしてとらえられるかということとの関連で、いっそうの調査研究が実施されなければならない。また、インターネットについて現在行なわれている利用制限を注意深くかつ批判的に検討することにより、子どもおよびおとなにとっての潜在的悪影響を明るみに出し、インターネット上の安全に関わる懸念の実際的解決策を奨励し、かつインターネットにおける子どもたちのための機会を最大化することも重要である。 VIII.結論および勧告 79.表現の自由に対する子どもの権利は、すべての子どもの権利の保護にとって画期をなした子どもの権利条約を含む国際人権条約によって十分に確立された権利である。実際上、子どもたちを権利の全面的主体として承認すること――条約に掲げられた理念――は、法律、政策および態度の転換を必要とする。表現の自由に対する子どもの権利を尊重し、保護しかつ促進することは、このような転換の中核である。 80.世界人権宣言と市民的および政治的権利に関する国際規約は、第19条で表現および意見の自由に対する権利を定めているが、この権利を享有するのはもっぱらおとなであるとは述べていない。それどころか、規約前文では、国際連合憲章において宣明された原則にしたがい、人類社会のすべての構成員の固有の尊厳および平等のかつ奪いえない権利を認めることが世界における自由、正義および平和の基礎をなすものであると定められている。前文ではまた、これらの権利がすべての者に固有の尊厳に由来するものであることも認められている。 81.子どもの権利条約が世界のほぼすべての国によって批准されたにもかかわらず、表現の自由に対する子どもの権利を実効あらしめるためにとられた措置はあまりにも少なく、子どもたちにとってのこの権利の実現を妨げる多くの障壁が依然として残っている。学校および家庭では、異議を申し立てられないままの権威主義的な態度がおとなと子どもとの関係を形づくっていることが多い。より憂慮されるのは、通信技術の進展とともに一部の国が表現の自由に対する比例性を欠いた制限を採用し、それを、実質的に子どもおよびおとなの権利を制限するものでありながら、子どもたちを危害から保護するための措置として打ち出していることである。 82.国が子どもたちを保護する基本的義務を負っていること、および、子どもに指導を行なうのがおとなの義務であることは明らかである。しかし、子どもの保護と表現の自由を対立する目標として扱ってはならない。逆に、子どもたちが優れたコミュニケーションスキルを発達させ、かつ新たなテクノロジーの積極的活用を学べるよう支援することによってこそ、危害から身を守る子どもたちの能力を増進させることができるのである。 83.子どもたちはおとなと同じ成熟度に達していないかもしれないが、子ども時代とは変化のプロセスであり、その過程で成熟が徐々に進んでいく。意見を発展させかつ明確に表現する能力は、人生の最初期の段階から開始される学習プロセスより生じるものであり、当該プロセスの完遂のためには適切な尊重および奨励が必要である。子どもを危害から保護する義務の懈怠が重大なリスクをもたらすとすれば、子どもたちがその精神、批判的思考および意見を発達させる余地を否定することも同様の結果につながる。特定の事柄に関する情報を奪い、かつ公的議論への参加を禁止することは、子どもたちの孤立および政治的疎外を強化させるだけになりかねない。子どもが意見を聴かれる権利を行使できるようにすることは、義務であるだけに留まらず、保護措置の有効性の増進にとってもきわめて重要なのである。 84.国は、あらゆる公共政策の最前線に子どもの最善の利益という目標を据え続けることをけっして忘れてはならない。これには、子どもたちを危害から保護するための規制の規範を確立することとともに、同時に、すべての規範において表現の自由に対する権利に関連する国際基準が遵守されるようにすることが含まれる。 85.特別報告者は、各国が次に掲げる措置をとるよう勧告する。 子どもの表現の自由に対する不当な制限を撤廃する目的で法令および政策を見直すこと 86.国は、国際人権基準との一致を図る目的で、子どもの自己表現の権利および情報へのアクセス権を制限する国内法令および国内政策を改正するべきである。おとなまたは子どもの表現自由を制限するいかなる法律においても、この権利の制限について確立されている3つの基準、すなわち曖昧さのない法律による規定、正当な目的の追求ならびに必要性および比例性の原則の尊重も遵守されなければならない。 87.国は、放送活動、インターネットおよび他のあらゆるメディアにおける子どもの保護についての法令を注意深く改正するべきである。たとえば、放送活動における子どもの保護のための番組類別制度は受け入れられるが、いかなる特定の表現についても、それが公表される前に事前検閲の対象とすることは受け入れられない。通信に関する規則の執行権限を与えられた機関の独立性は、政治的および経済的干渉から保護されるべきである。 88.国は、子どもの主体性の促進において学校が中心的位置を占めることに鑑み、教育制度における権威主義的な規範および実践を取り除くことに特段の注意を払うべきである。 表現の自由に対する子どもの権利を促進すること 89.国は、表現の自由に対する子どもの権利(情報へのアクセスを含む)をあらゆる場面で積極的に促進するべきである。家庭、学校および社会一般を含むあらゆる領域で見られる、子どもたちへの伝統的な権威主義的態度に異議を申し立ててもよい。とくに国は、子ども主導の活動のための回路の創設に注意を払うべきである。 90.国は、子どもたちが学校で多様なコミュニケーション形態(口頭、文書およびあらゆる形態の芸術を含む)を用いることを奨励するべきである。学校カリキュラムにおいて、社会的コミュニケーション、メディアおよびジャーナリズムについての知識を伝達することが求められる。 91.国は、異なる年齢層の子どもを対象とした教育的および娯楽的内容を有する番組づくりならびに内容を子どもたちが制作する番組づくりを促進するべきである。 インターネットへのアクセスおよびオンライン上の安全を促進すること 92.国は、あらゆる場面で子どもたちによるインターネットへのアクセスを促進するために積極的措置をとるべきである。教育制度において、子どもが有するすべての権利(とくに表現の自由に対する権利、公的生活に参加する権利および教育に対する権利)の促進におけるインターネットの中心的役割を考慮することが求められる。インターネットを、否定的なまたはその他の点で危険な媒体と見なすのではなく、肯定的な――個々の子どもおよび社会全体にとっての利益を有する――資源として捉え直すための努力が行なわれるべきである。たとえば、すべての社会的出身の子どもにとって、インターネットは書籍にアクセスするための優れた手段となる。 93.国は、子どもたちの安全を脅かすインターネットのリスクに対し、オンライン上の危害から身を守るための利用者の能力の増進を含むホリスティックな戦略を通じて対応するべきである。戦略には、親を対象とする訓練および子どもとともに働く専門家を対象とする訓練を含めることが求められる。オンライン上の安全の促進を目的とした取り組みの立案および実施には、子どもたちの積極的関与を得るべきである。インターネットが子どもたちの生活に及ぼす影響についても、さらなる調査研究が必要とされる。 表現の自由に対する子どもの権利への国際的関心を高める 94.表現の自由に対する子どもの権利の侵害に対し、すべての国際人権保護機構によって常に注意が払われるべきである。とくに子どもの権利委員会は、各国に対する勧告のなかで第13条および第17条を組織的に取り上げていくことができる。 更新履歴:ページ作成(2015年4月10日)。
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子どもの権利委員会・一般的意見25号:デジタル環境との関連における子どもの権利 一般的意見一覧 関連資料一般的意見25号最終草案(有料記事) 参考資料欧州評議会 デジタル環境と子どもの権利ガイドライン(2018年) CRC/C/GC/25 配布:一般 2021年3月2日 原文:英語 日本語訳:平野裕二(日本語訳PDF) 子どもの権利委員会 デジタル環境との関連における子どもの権利についての一般的意見25号(2021年) I.はじめに 1.この一般的意見のための協議に参加した子どもたちは、デジタルテクノロジーは自分たちの現在の生活および未来にとってきわめて重要なものだと報告している――「デジタルテクノロジーで、世界中から情報を手に入れることができる」、「(デジタルテクノロジーは)自分のアイデンティティをどう考えればいいかについて、大切な視点を与えてくれた」、「悲しいときには、インターネットが楽しめそうなものを見つけるのに役に立つ」[1] 。 [1] “Our rights in a digital world”, summary report on the consultation of children for the present general comment, pp. 14 and 22. https //5rightsfoundation.com/uploads/Our%20Rights% 20in%20a%20Digital%20World.pdf より入手可能。子どもたちの意見に関するすべての言及は同報告書による。 2.デジタル環境はやむことなく変化・拡大しており、情報通信技術(デジタル化されたネットワーク、コンテンツ、サービスおよびアプリケーションを含む)、インターネットに接続された機器および環境、バーチャルリアリティおよび拡張現実、人工知能、ロボティクス、自動化システム、アルゴリズムおよびデータ分析、バイオメトリクスならびに人体埋め込み型テクノロジーが含まれる [2]。 [2] 用語集は委員会のウェブページより入手可能である。https //tbinternet.ohchr.org/Treaties/CRC/Shared%20Documents/1_Global/INT_CRC_INF_9314_E.pdf 3.デジタル環境は、教育、政府のサービスおよび商業を含む社会的機能が徐々にデジタルテクノロジーに依存するようになりつつあるなか、危機の時期を含め、子どもたちの生活のほとんどの側面を通じてその重要性を増しつつある。デジタル環境は、子どもの権利の実現のための新たな機会を提供すると同時に、これらの権利が侵害されるリスクをもたらすものである。子どもたちは、協議の際、デジタル環境は自分たちの安全かつ公正な関与を支援し、促進しかつ保護するようなものであるべきだという意見を表明した――「政府、テクノロジー企業、先生たちには、オンラインの当てにならない情報に対応する手助けをしてほしい」、「自分のデータが実際どうなるのかについて、はっきりさせてほしい。……誰がデータを集めるの? どんなふうに集められるの?」、「自分のデータがシェアされることが心配」[3]。 [3] "Our rights in a digital world", pp.14, 16, 22 and 25. 4.デジタル環境においてはすべての子どもの権利が尊重され、保護されかつ充足されなければならない。デジタルテクノロジーの革新は、子ども自身はインターネットにアクセスしない場合でさえ、子どもたちの生活および権利に広範かつ相互依存的なやり方で影響を及ぼす。デジタルテクノロジーに意味のある形でアクセスできることは、子どもたちが自己の市民的、政治的、文化的、経済的および社会的権利を余すところなく実現することの支援につながり得る。しかし、デジタルインクルージョンが達成されなければ、すでに存在する不平等がますます大きくなる可能性が高く、かつ新たな不平等が生じかねない。 5.この一般的意見は、締約国報告書を審査してきた委員会の経験、デジタルメディアと子どもの権利に関する一般的討議、人権条約機関の先例、人権理事会および特別報告者の勧告、コンセプトノートおよび発展版草案に関する各国、専門家その他の関係者との2度にわたる協議、ならびに、複数の地域の28か国において多種多様な状況下で暮らしている子どもたち709人との国際的協議を踏まえたものである。 6.この一般的意見は、委員会が発表した他の関連の一般的意見、および、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する条約の選択議定書の実施に関する委員会のガイドラインとあわせて読まれるべきである。 II.目的 7.委員会は、この一般的意見において、デジタル環境で子どもたちの権利の促進、尊重および保護を図る際の機会、リスクおよび課題に照らし、各国がデジタル環境との関係で条約をどのように実施すべきかについて説明するとともに、条約およびその選択議定書に基づく自国の義務の全面的遵守を確保するための関連の立法上、政策上その他の適切な措置に関する指針を示している。 III.一般原則 8.以下の4つの原則は、条約に基づく他のすべての権利の実施の際に持つべき視点を提供するものである。これらの原則は、デジタル環境との関連における子どもたちの権利の実現を保障するために必要な措置を決定するための指針とされるべきである。 A.差別の禁止に対する権利 9.差別の禁止に対する権利により、締約国は、すべての子どもが、子どもにとって意味のあるやり方で、平等かつ効果的にデジタル環境にアクセスできることを確保するよう要求される [4]。締約国は、デジタル面での排除を克服するためにあらゆる必要な措置をとるべきである。これには、専用の公共空間において子どもたちが無償でかつ安全にアクセスできるようにすることや、すべての子どもが、教育現場、コミュニティおよび家庭において負担可能な費用でデジタルテクノロジーにアクセスし、かつこれらのテクノロジーを賢く利用することを支える政策およびプログラムに投資することが含まれる。 [4] 一般的意見9号(2006年)、パラ37-38。 10.子どもたちは、デジタルテクノロジーの利用から排除されることによって、またはこれらのテクノロジーの利用を通じてヘイトスピーチ的な通信または不公正な扱いを受けることによって、差別される可能性がある。情報フィルタリング、プロファイリングまたは意思決定につながる自動化されたプロセスが、バイアスのかかった、部分的なまたは不正に入手された子どもに関する情報に基づいて進められる場合、その他の形態の差別が生じる可能性もある。 11.委員会は、締約国に対し、性、障害、社会経済的背景、民族的もしくは国民的出身、言語または他のいずれかの理由に基づく差別、ならびに、マイノリティおよび先住民族の子ども、庇護希望者、難民および移住者である子ども、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインタセックスである子ども、人身取引または性的搾取の被害者およびサバイバーである子ども、代替的養護下の子どもならびにその他の脆弱な状況に置かれた子どもに対する差別を防止するため、積極的措置をとるよう求める。 B.子どもの最善の利益 12.子どもの最善の利益は、特定の文脈にふさわしい評価を必要とする動的な概念である [5]。デジタル環境は、もともと子どもたちのために設計されたものではないが、子どもたちの生活で重要な役割を果たしている。締約国は、デジタル環境の整備、規制、設計、管理および利用に関するすべての行動において、すべての子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保するべきである。 [5] 一般的意見14号(2013年)、パラ1。 13.締約国は、このような行動に、子どもの権利の充足を監督する国および地方の機関の関与を得るべきである。締約国は、子どもの最善の利益を考慮するにあたり、情報を求め、受けかつ伝える権利、害から保護される権利および自己の意見を正当に重視される権利を含むすべての子どもの権利を顧慮するとともに、子どもの最善の利益の評価および適用された基準に関する透明性を確保するよう求められる。 C.生命、生存および発達に対する権利 14.デジタル環境によって提供される機会は、子どもたちの発達にとってますます決定的な役割を果たすようになりつつあるとともに、とくに危機の状況下においては子どもたちの生命および生存にとってきわめて重要なものとなる可能性がある。締約国は、子どもたちをその生命、生存および発達に対する権利へのリスクから保護するため、あらゆる適切な措置をとるべきである。コンテンツ、接触および契約に関連するリスクには、とくに、暴力的および性的コンテンツ、ネット上の攻撃およびハラスメント、賭け事、搾取および虐待(性的な搾取および虐待を含む)、ならびに、自殺または生命を危うくする活動(犯罪者によるものまたはテロリストもしくは暴力的過激主義者の指定を受けた武装集団によるものを含む)の促進または扇動が含まれる。締約国は、子どもたちが直面している特有のリスクの性質に関して子どもたちの意見を聴くことなどの手段により、多様な状況下で子どもたちが直面する新たなリスクの特定およびこれへの対処を図るべきである。 15.デジタル機器の利用は、害をともなうものであるべきではなく、また子どもたち同士のまたは子どもと親もしくは養育者との直接の相互交流にとって代わるべきでもない。締約国は、脳がもっとも可塑性に富んでおり、かつ子どもの認知的、情緒的および社会的発達のあり方の形成において社会環境(とくに親および養育者との関係)がきわめて重要である乳幼児期におけるテクノロジーの影響に、具体的注意を払うべきである。乳幼児期には、テクノロジーの設計、目的および利用のあり方によって、予防的対応が必要になる場合がある。デジタル機器の適切な利用に関する訓練および助言を、デジタルテクノロジーが子どもの発達(とくに乳幼児期および思春期の神経学的成長加速の臨界期における発達)に及ぼす影響についての調査研究を考慮しながら、親、養育者、教育者その他の関係者に対して提供することが求められる [6]。 [6] 一般的意見24号(2019年)、パラ22および一般的意見20号(2016年)、パラ9-11。 D.意見を聴かれる子どもの権利 16.子どもたちは、デジタル環境が、自分たちに影響を与える事柄について声が聴かれるようにするためのきわめて重要な機会を与えてくれていると報告している [7]。デジタルテクノロジーの利用は、地方、国および国際社会のレベルにおける子ども参加の実現に役立つ可能性がある [8]。締約国は、子どもたちが個人としておよび集団として自分たちの権利を効果的に唱道する存在になれるよう、子どもたちが意見を表明するデジタル手段についての意識およびこれらの手段へのアクセスを促進し、かつ、子どもたちが大人との平等を基礎として、必要な場合には匿名で参加するための訓練および支援を提供するべきである。 [7] "Our rights in a digital world", p.17. [8] 一般的意見14号(2013年)、パラ89-91。 17.デジタル環境との関連における子どもの権利についての法律、政策、プログラム、サービスおよび訓練を発展させる際、締約国は、すべての子どもたちの関与を得て、そのニーズに耳を傾け、かつその意見を正当に重視するべきである。締約国は、デジタルサービスの提供者が、製品およびサービスの開発にあたり、適切な保障措置を適用しながら積極的に子どもたちの関与を得て、かつその意見を正当に考慮することを確保するよう求められる。 18.締約国は、関連する立法上、行政上その他の措置について子どもたちと協議するためにデジタル環境を活用するとともに、子どもたちの意見が真剣に考慮されること、および、子ども参加が、プライバシー、思想および意見の自由に対する子どもたちの権利を侵害する不当な監視またはデータ収集につながらないことを確保するよう奨励される。国はまた、協議のプロセスが、テクノロジーへのアクセスまたはテクノロジーを利用するスキルを欠いている子どもたちを包摂するようなものであることを確保するべきである。 IV.発達しつつある能力 19.締約国は、子どもが能力、理解力および主体性を徐々に身につけていくプロセスを扱った、権利行使を可能にする原則としての子どもの発達しつつある能力 [9] を尊重しなければならない。このプロセスは、子どもが親および養育者の監督からいっそう独立して参加できるデジタル環境においては、特有の重要性を有している。デジタル環境への子どもの関与に関連するリスクおよび機会は、子どもの年齢および発達段階に応じて変わっていく。締約国は、デジタル環境で子どもたちを保護し、または子どもたちによるデジタル環境へのアクセスを促進するための措置を立案する場合には常に、これらの考慮事項を指針とするべきである。年齢にふさわしい措置の立案に際しては、さまざまな学問分野から得られる、利用可能な最善かつ最新の調査研究を参考にすることが求められる。 [9] 一般的意見7号(2005年)、パラ17ならびに一般的意見20号(2016年)、パラ18および20。 20.締約国は、現代世界における子どもたちの変化しつつある位置づけおよび子どもたちの主体性、スキルおよび活動の諸分野全体で不均等に発達する子どもたちの能力および理解力、ならびに、関連するリスクの性質を考慮するべきである。これらの考慮事項については、支援のある環境において自己の権利を行使することの重要性ならびに個人のさまざまな経験および状況との衡量が図られなければならない [10]。締約国は、デジタルサービスの提供者が、子どもの発達しつつある能力にふさわしいサービスを子どもたちに提供することを確保するべきである。 [10] 一般的意見20号(2016年)、パラ20。 21.子どもの養育責任の履行にあたって親および養育者に適切な援助を与える国の義務にしたがい、締約国は、子どもの発達しつつある自律性、能力およびプライバシーを尊重する必要性に関する親および養育者の意識を促進するべきである。締約国は、デジタル環境における子どもたちの権利(保護に対する権利を含む)の実現に関して子どもを援助することに関して親および養育者を手助けするため、デジタルリテラシーおよび子どもたちにとってのリスクに関する意識の獲得に関して親および養育者を支援するよう求められる。 V.締約国による一般的実施措置(第4条) 22.デジタル環境における子どもの権利の実現および子どもの保護のための機会は、広範な立法上、行政上その他の措置(予防的措置を含む)を必要とする。 A.立法 23.締約国は、デジタル環境が条約およびその選択議定書に掲げられた諸権利と両立することを確保するため、国際基準にのっとって国内法の見直し、採択および改定を図るべきである。立法は、テクノロジーの進歩および新たな慣行の誕生のなかで妥当であり続けることが求められる。締約国は、デジタル環境に関連する法律、予算配分およびその他の行政決定に子どもの権利を確実に位置づける目的で子どもの権利影響評価の活用を指示するとともに、デジタル環境に関連する公的機関および企業の間でその活用を促進するべきである [11]。 [11] 一般的意見5号(2003年)、パラ45、一般的意見14号(2013年)、パラ99、一般的意見16号(2016年)、パラ20。 B.包括的な政策および戦略 24.締約国は、子どもの権利に関連する国家的政策においてデジタル環境が具体的に取り上げられることを確保するとともに、規制、業界規範。設計基準および行動計画(これらはすべて定期的な評価および改定の対象とされるべきである)を実施するよう求められる。このような国家的政策においては、デジタル環境への関与から利益を得る機会を子どもたちに提供すること、および、子どもたちによるデジタル環境への安全なアクセスを確保することが目的とされるべきである。 25.オンラインにおける子どもの保護が、子どもの保護に関する国家的政策に統合されるべきである。締約国は、子どもたちをリスク(ネット上の攻撃、ならびに、デジタル技術によって促進されるおよびオンラインで行なわれる子どもの性的な搾取および虐待を含む)から保護するための措置を実施し、このような犯罪が捜査されることを確保し、かつ被害者である子どもたちに救済および支援を提供するよう求められる。締約国はまた、(必要な場合には関連のマイノリティ言語に翻訳された)子どもにやさしい情報を提供するなどの手段により、不利な立場または脆弱な状況に置かれた子どもたちのニーズにも対応するべきである。 26.締約国は、子どもがデジタル環境にアクセスするすべての現場(家庭、教育現場、ネットカフェ、ユースセンター、図書館ならびに保健ケアおよび代替的養護の現場を含む)において、オンラインにおける子どもの保護のための効果的なしくみおよび安全確保方針が運用されることを確保するべきである。 C.調整 27.デジタル環境が子どもたちの権利に及ぼす分野横断的な影響に網羅的に対処するため、締約国は、中央政府の諸部局および各レベルの行政機構の間で子どもの権利関連の政策、指針およびプログラムの調整を図る任務を委ねられた政府機関を指定するべきである [12]。このような国家的調整機関は、部門横断的にならびに国、広域行政圏および地方のレベルにおいてデジタル環境に関連する子どもの権利を実現するため、学校および情報通信技術部門との連携ならびに企業、市民社会、学界および諸団体との協力を図るよう求められる [13]。このような機関は、必要に応じて政府内外の技術的専門性および他の関連の専門性を活用できるべきであり、かつ、その義務の履行における有効性に関して独立の評価の対象とされるべきである。 [12] 一般的意見5号(2003年)、パラ37。 [13] 前掲、パラ27および39。 D.資源配分 28.締約国は、デジタル環境における子どもの権利の全面的実現およびデジタルインクルージョンの向上を目的とする法律、政策およびプログラムの実施のため、公的資源の動員、配分および活用を図るべきである。このような対応は、デジタル環境が子どもたちの生活に及ぼす影響の高まりに対処し、かつ、サービスおよびコネクティビティへのアクセスの平等および負担可能性を促進するために、必要とされる [14]。 [14] 一般的意見19号(2016年)、パラ21。 29.資源が企業セクターから拠出されまたは国際協力を通じて獲得される場合、締約国は、自国の委任事務、歳入動員、予算配分および支出に関して第三者による干渉または阻害が行なわれないことを確保するべきである [15]。 [15] 前掲、パラ27(b)。 E.データ収集および調査研究 30.恒常的に更新されるデータおよび調査研究は、子どもの権利にとってのデジタル環境の意味合いを理解し、デジタル環境が子どもたちに及ぼす影響を評価し、かつ国の介入の有効性を事後に評価することにとって、きわめて重要である。国は、しっかりした包括的なデータが十分な資源を得たうえで収集されること、および、データが年齢、性別、障害、地理的所在、民族的および国民的出身ならびに社会経済的背景によって細分化されることを確保するよう求められる。このようなデータおよび調査研究(子どもたちとともにおよび子どもたちによって実施された調査研究を含む)は、立法、政策および実務の参考とされるべきであり、かつ公有物とされるべきである [16]。子どもたちのデジタル生活に関するデータ収集および調査研究では、子どもたちのプライバシーが尊重され、かつ最高度の倫理基準が満たされなければならない。 [16] 一般的意見5号(2003年)、パラ48および50。 F.独立の監視 31.締約国は、国内人権機関および他の適切な独立機関の委任事項においてデジタル環境における子どもの権利が対象とされ、かつこれらの機関が子どもおよびその代理人からの苦情申立てを受理し、調査しかつこれに対応できることを確保するべきである [17]。デジタル環境関連の活動を監視する独立の監督機関が存在している場合、国内人権機関は、子どもの権利に関する委任事項を効果的に遂行するため、当該機関と緊密に協力することが求められる [18]。 [17] 一般的意見2号(2002年)、パラ2および7。 [18] 前掲、パラ7。 G.情報の普及、意識啓発および研修 32.締約国は、とくに子どもたちに直接または間接の影響を及ぼす行動に従事している人々に焦点を当てながら、デジタル環境における子どもの権利に関する情報の普及および意識啓発の実施を進めるべきである。締約国は、子どもたち、親および養育者ならびに一般公衆および政策立案に携わる人々を対象とする、デジタル製品およびデジタルサービスに関連した機会およびリスクに関わる子どもの権利に関する知識を増進させるための教育プログラムを促進するよう求められる。このようなプログラムには、子どもたちがデジタル製品およびデジタルサービスからどのように利益を得られ、かつデジタルリテラシーおよびデジタルスキルをどのように発達させられるか、子どもたちのプライバシーの保護および被害化の防止をどのようにして図るか、ならびに、オンラインまたはオフラインで加えられる害の被害を受けた子どもをどのように認識し、かつどのように適切に対応するかについての情報が含まれるべきである。このようなプログラムにおいては、調査研究ならびに子どもたち、親および養育者との協議を参考にすることが求められる。 33.子どもたちおよび企業セクターのためにならびに子どもたちおよび企業セクター(テクノロジー産業を含む)とともに働く専門家は、デジタル環境が複合的状況下で子どもの権利にどのように影響を及ぼしているか、子どもたちがデジタル環境でどのように自己の権利を行使しているか、および、子どもたちがテクノロジーにどのようにアクセスしかつそれを利用しているかに関するものを含む研修を受けるべきである。これらの専門家はまた、デジタル環境への国際人権基準の適用に関する研修を受けることも求められる。締約国は、あらゆる教育段階で働く専門家を対象として、その知識、スキルおよび実践の開発支援を目的とした、デジタル環境に関連する着任前研修および現職者研修が実施されることを確保するべきである。 H.市民社会との協力 34.締約国は、子どもの権利に関連する法律、政策、計画およびプログラムの策定、実施、モニタリングおよび評価に、市民社会(子どもの権利の分野で活動している子ども主導のグループおよび非政府組織を含む)およびデジタル環境に関係している人々の組織的関与を得るべきである。締約国はまた、市民社会組織が、デジタル環境に関連する子どもの権利の促進および保護に関わる活動を実施できることも確保するよう求められる。 I.子どもの権利と企業セクター 35.非営利組織を含む企業セクターは、デジタル環境関連のサービスおよび製品の提供に際し、子どもたちの権利に直接・間接の影響を及ぼしている。企業は、子どもたちの権利を尊重し、かつ、デジタル環境との関連で子どもたちの権利侵害の防止および救済を図るべきである。締約国には、企業がこれらの責任を履行することを確保する義務がある [19]。 [19] 一般的意見16号(2013年)、パラ28、42および82。 36.締約国は、自社のネットワークまたはオンラインサービスが子どもの権利(プライバシーおよび保護に対する権利を含む)の侵害を引き起こしまたは助長するようなやり方で利用されることを防止する義務、ならびに、子ども、親および養育者に対して迅速かつ効果的な救済を提供する義務が企業によって遵守されることを確保するため、法律、規則および政策の策定、モニタリング、実施および評価などを通じた措置をとるべきである。締約国はまた、企業に対し、子どもたちによる安全かつ有益なデジタル活動を支援するための公的情報およびアクセシブルで時宜を得た助言の提供も奨励するよう求められる。 37.締約国には、企業体による権利(デジタル環境におけるあらゆる形態の暴力から保護される権利を含む)の侵害から子どもたちを保護する義務がある。企業が有害な行為の実行に直接関与するわけではない場合もあるとはいえ、企業は、デジタルサービスの設計および運用などを通じ、暴力からの自由に対する子どもたちの権利の侵害を引き起こしまたは助長する可能性がある。締約国は、暴力からの保護に対する権利の侵害の防止、ならびに、デジタル環境に関連して生じる権利侵害についての捜査、判決および救済を目的とした法令を整備し、モニタリングしかつ執行するべきである [20]。 [20] 前掲、パラ60。 38.締約国は、企業セクターに対し、デジタル環境が子どもたちに及ぼす、それぞれ異なった、かつ時として深刻になることもある影響をとくに考慮しながら子どもの権利デューディリジェンス(相当の注意)を履行すること、とくに子どもの権利影響評価を実施しかつ公衆に開示することを求めるべきである [21]。締約国は、企業による子どもの権利侵害を防止し、モニタリングし、調査しかつ処罰するために適切な措置をとるよう求められる。 [21] 前掲、パラ50および62-65。 39.締約国は、法律および政策の策定に加え、デジタル環境との関連で子どもの権利に影響を及ぼすすべての企業に対し、自社の製品およびサービスの設計、エンジニアリング、開発、運用、流通およびマーケティングに関する最高水準の倫理基準、プライバシー基準および安全基準にしたがった規制枠組み、業界規範および利用規約を実施するよう求めるべきである。これには、子どもたちをターゲットとする企業、エンドユーザーに子どもたちがいる企業またはその他の形で子どもたちに影響を与える企業が含まれる。締約国は、これらの企業に対し、高水準の透明性およびアカウンタビリティを維持するよう求めるとともに、子どもの最善の利益にのっとった革新のための措置をとることを奨励するべきである。締約国はまた、子どもたちに対するまたは乳幼児の親および養育者に対する、利用規約についての年齢にふさわしい説明を要求することも求められる。 J.商業広告およびマーケティング 40.デジタル環境には、収益創出コンテンツまたは有料コンテンツのターゲティングを目的とする個人データの処理に財政的に依拠している企業も含まれており、このような処理が、意図的か否かにかかわらず、子どもたちのデジタル経験に影響を及ぼしている。これらのプロセスの多くに複数の事業提携先が関与していることから、子どもの権利侵害につながる可能性がある商業活動および個人データ処理の供給網がつくり出されている。このような子どもの権利侵害には、子どもがより過激なコンテンツに向かうことを想定しかつ誘導する広告デザイン上の特徴、睡眠を妨げる自動通知、または商業的動機によるコンテンツであって有害である可能性があるもののターゲティングを目的とする子どもの個人情報もしくは位置情報の利用を通じて行なわれるものが含まれる。 41.締約国は、子ども向けのおよび子どもがアクセスできる広告およびマーケティングを規制する際、子どもの最善の利益を第一次的に考慮するべきである。スポンサーシップ、プロダクトプレイスメントおよび商業的動機による他のあらゆる形態のコンテンツは、他のあらゆるコンテンツと明確に区別されるべきであり、かつ、ジェンダーまたは人種に基づくステレオタイプを固定化させるようなものであるべきではない。 42.締約国は、実際の属性または推定された属性のデジタル記録(グループデータもしくは集約データ、相関分析によるターゲティングまたは嗜好性プロファイリングを含む)に基づいて子どもたち(年齢を問わない)を商業目的のプロファイリングまたはターゲティングの対象とすることを、法律で禁止するべきである。製品、アプリケーションおよびサービスの販売促進を目的としてニューロマーケティング、感情解析、没入型広告ならびに仮想現実および拡張現実の環境下における広告に依拠する慣行についても、子どもたちに直接または間接に働きかけることを禁止することが求められる。 K.司法および救済措置へのアクセス 43.子どもたちは、さまざまな理由により、デジタル環境との関連で司法にアクセスする際に特段の課題に直面する。このような課題は、とりわけ、デジタル環境にとくに関連する子どもの権利侵害について制裁を科す法律が存在しないこと、証拠の取得および加害者の特定が難しいこと、またはデジタル環境における子どもの権利についてもしくは何が子どもの権利の侵害に当たるのかについて子どもたちおよびその親もしくは養育者が知らないことから生ずるものである。子どもたちが機微なまたは私的なオンライン活動の開示を求められる場合、または仲間からの報復もしくは社会的排除に対する恐れを理由として、さらなる課題が生じる可能性もある。 44.締約国は、デジタル環境に関連する子どもの権利侵害についての適切かつ効果的な司法的および非司法的救済の仕組みが、すべての子どもおよびその代理人にとって広く周知され、かつ容易にアクセスできることを確保するべきである。苦情申立ておよび通報のための仕組みは、無償で、安全で、秘密が守られ、応答性が高く、子どもにやさしく、かつアクセシブルな形式で利用可能であることが求められる。締約国はまた、クラスアクションおよび公益訴訟を含む集団的苦情申立て、ならびに、デジタル環境においてまたはデジタル環境を通じて権利を侵害された子どもに対する法的その他の適切な援助(専門サービス機関によるものを含む)についても定めるべきである。 45.締約国は、このような事案を付託し、かつ被害を受けた子どもに効果的支援を提供するための枠組みを確立し、調整し、かつ定期的にモニタリングおよび評価を実施するべきである [22]。枠組みには、被害を受けた子どもの特定、治療およびフォローアップケアならびに社会的再統合のための措置を含めることが求められる。付託のための仕組みには、被害を受けた子どもの特定に関する研修(デジタルサービス提供者を対象とするものも含む)が含まれるべきである。このような枠組みのなかでとられる措置は、捜査過程および司法手続を背景として生じる子どもの再被害および二次被害を防止するため、複数の機関が関与する、子どもにやさしいものであることが求められる。そのためには、秘密を保持しかつデジタル環境に関連した害を是正するための特別な保護措置が必要となる場合もある。 [22] 一般的意見21号(2017年)、パラ22。国連総会決議60/147付属文書〔訳者注/著しい国際人権法違反および深刻な国際人道法違反の被害者の救済および賠償に対する権利に関する基本的原則および指針〕も参照。 46.適切な被害回復措置には、原状回復、補償および満足が含まれ、かつ、謝罪、是正措置、不法なコンテンツの削除、心理的回復サービスへのアクセスその他の措置が必要となる場合もある [23]。デジタル環境における権利侵害との関連で、救済のための仕組みにおいては、子どもたちの脆弱性ならびに継続的および将来的被害を迅速に終了させる必要性が考慮されるべきである。締約国は、関連の法律および政策の改革ならびにその効果的実施などを通じ、侵害が再発しないことを保証するよう求められる。 [23] 一般的意見5号(2003年)、パラ24。 47.デジタルテクノロジーは、国境を越えて行なわれる場合もある子どもに対する犯罪の捜査および訴追をいっそう複雑なものとする。締約国は、デジタルテクノロジーの利用が子どもに対する犯罪の捜査および訴追をどのように容易にしまたは阻害し得るかについて対処するとともに、国際的パートナーとの協力なども通じ、防止、執行および救済のために利用可能なあらゆる措置をとるべきである。締約国は、デジタル環境ととくに関連する子どもの権利侵害に関して、国際協力なども通じ、法執行官、検察官および裁判官を対象とする特別研修を実施するよう求められる。 48.子どもたちは、デジタル環境において企業体による権利侵害を受けた場合に、とくに当該企業が世界的に操業している状況下では、救済を得ることに関して特段の困難に直面する可能性がある [24]。締約国は、企業による域外での活動および操業との関係で、自国と当該行為との間に合理的な結びつきがある場合には、子どもたちの権利を尊重し、保護しかつ充足するための措置を検討するべきである。締約国は、企業が効果的な苦情申立ての仕組みを提供することを確保するよう求められる。ただし、これによって、国を基盤とする救済措置に子どもがアクセスできなくさせられるべきではない。締約国はまた、子どもの権利に関連する監督権限を有する機関(健康および安全、データ保護および消費者の権利、教育ならびに広告およびマーケティングに関連する機関など)が、デジタル環境における子どもの権利侵害に関する苦情申立ての調査および十分な救済措置の提供を行なうことも、確保するべきである [25]。 [24] 一般的意見16号(2013年)、パラ66-67。 [25] 前掲、パラ30および43。 49.締約国は、子どもたちに対し、子どもの権利、ならびに、デジタル環境に関連して自己の権利が侵害された場合に利用可能な通報および苦情申立ての仕組み、サービスならびに救済措置についての子どもに配慮したかつ年齢にふさわしい情報を、子どもにやさしい言語で提供するべきである。このような情報は、親、養育者ならびに子どもとともにおよび子どものために働く専門家に対しても提供することが求められる。 VI.市民的権利および自由 A.情報へのアクセス 50.デジタル環境は、子どもたちが情報にアクセスする権利を実現するための、比類のない機会を約束するものである。この点に関しては、デジタルコンテンツおよびオンラインコンテンツを含む情報通信メディアも重要な機能を果たす [26]。締約国は、子どもたちがデジタル環境で情報にアクセスできること、および、当該権利の行使の制限が、法律で定められており、かつ条約第13条に規定された目的のために必要な場合以外には行なわれないことを確保するべきである。 [26] 一般的意見7号(2005年)、パラ35および一般的意見20号(2016年)、パラ47。 51.締約国は、子どもの発達しつつある能力にしたがった、年齢にふさわしくエンパワーメントにつながる子ども向けのデジタルコンテンツを提供しかつその制作を支援するとともに、子どもたちが、文化、スポーツ、芸術、健康、公民・政治問題および子どもの権利に関する多種多様な情報(公的機関が保有する情報を含む)にアクセスできることを確保するべきである。 52.締約国は、多様な形式を活用し、かつニュースメディア、放送事業者、博物館、図書館および教育・科学・文化組織を含む国内外の多数の情報源から発信される、このようなコンテンツの制作および普及を奨励するべきである。締約国はとくに、障害のある子どもおよび民族的、言語的、先住民族その他のマイノリティの子どもを対象とする多様な、アクセシブルなかつ有益なコンテンツが提供されることを増進するために努力するよう求められる。子どもたちが理解する言語で関連の情報にアクセスできることは、平等に対して相当に肯定的な影響を及ぼし得る [27]。 [27] 一般的意見17号(2013年)、パラ46および一般的意見20号(2016年)、パラ47-48。 53.締約国は、すべての子どもたちが、オンラインの多様かつ良質な情報(商業的または政治的利益集団から独立したコンテンツを含む)についての情報を提供され、かつこれらの情報を容易に見つけられることを確保するべきである。締約国は、自動化された検索・情報フィルタリング(推奨システムを含む)において、商業的または政治的動機を有する有料コンテンツが、子どもたちの選択よりも、または情報に対する子どもたちの権利を犠牲にする形で、優先されないことを確保するよう求められる。 54.デジタル環境には、ジェンダーのステレオタイプを反映した情報、差別的、人種主義的、暴力的、ポルノ的および搾取的な情報のほか、虚偽の言説、誤情報および偽情報ならびに不法なまたは有害な活動への関与を子どもに奨励する情報(武装テロ集団による情報を含む)が含まれている可能性がある。このような情報は、他のユーザー、商業的コンテンツ制作者、性犯罪者またはテロリストもしくは暴力的過激主義者の指定を受けた武装集団を含む、多様な主体から発信されている場合がある。締約国は、有害コンテンツおよび信頼できないコンテンツから子どもたちを保護するとともに、関連の企業その他のデジタルコンテンツ提供者が、子どもたちをその権利および発達しつつある能力にしたがってこのような有害な資料から保護しつつ、情報および表現の自由に対する子どもたちの権利を認識して、子どもたちが多様なコンテンツに安全にアクセスできるようにするためのガイドラインを策定しかつ実施することを確保するべきである [28]。情報普及のためのインターネットを基盤とするシステム、電子的システムその他のシステムの運用に対するいかなる制限も、第13条にのっとっていることが求められる [29]。締約国は、いかなる地域においても、部分的にか全体的にかを問わず、電力供給、移動体通信ネットワークまたはインターネット接続を意図的に妨害しまたは他者に対してそのような妨害を認めるべきではない。このような妨害は、情報および通信に対する子どものアクセスを阻害する効果を有する可能性がある。 [28] 一般的意見16号(2013年)、パラ58および一般的意見7号(2005年)、パラ35。 [29] 自由権規約委員会、一般的意見34号(2011年)、パラ43。 55.締約国は、子どもたちが利用するデジタルサービスの提供者に対し、たとえばコンテンツの年齢へのふさわしさまたは信頼性に関する、簡潔明瞭なコンテンツのラベリングを行なうよう奨励するべきである。締約国はまた、子ども、親および養育者、教育者ならびに関連の専門家集団を対象とする、アクセシブルな指針、訓練、教育資料および通報機構の提供も奨励するよう求められる [30]。年齢にふさわしくないコンテンツから年齢またはコンテンツに基づいて子どもたちを保護するためのシステムは、データの最小限化の原則に一致しているべきである。 [30] 一般的意見16号(2013年)、パラ19および59。 56.締約国は、デジタルサービス提供者が、関連のガイドライン、基準および規範を遵守し [31]、かつ法律にのっとった、必要かつ比例的なコンテンツモデレーション規則を執行することを確保するべきである。コンテンツ管理、学校フィルタリングシステムおよびその他の安全指向技術は、デジタル環境における情報への子どもたちのアクセスを制限するために用いられるべきではない。これらの技術は、有害な資料が子どもたちに供給されることを防止するためだけに用いられるべきである。コンテンツモデレーションおよびコンテンツ管理においては、子どもたちのその他の権利、とくに表現の自由およびプライバシーに対する権利とのバランスを図ることが求められる。 [31] 前掲、パラ58および61。 57.ニュースメディアその他の関連組織が定める職業行動規範には、子どもたちに関わるデジタル関連のリスクおよび機会についての報道のあり方に関する指針が含まれるべきである。このような指針は、被害者およびサバイバーである子どもの身元を明らかにせず、かつ国際人権基準にしたがった、エビデンスに基づく報道につながるようなものであることが求められる。 B.表現の自由 58.表現の自由に対する子どもの権利には、自ら選択するすべての媒体を使って、あらゆる種類の情報および考えを求め、受けかつ伝える自由が含まれる。子どもたちが報告するところによれば [32]、デジタル環境は、子どもたちの考え、意見および政治的見解を表明する相当の機会を提供するものである。不利な立場または脆弱な状況に置かれた子どもたちにとっては、自分の経験をシェアしてくれる他の子どもたちとの、テクノロジーによって容易になる相互交流は、自分自身を表現する一助となり得る。 [32] "Our rights in a digital world", p.16. 59.デジタル環境における表現の自由に対する子どもたちの権利のいかなる制限(安全措置を含むフィルターなど)も、法律にしたがっており、必要であり、かつ比例性を有するものであるべきである。そのような制限の根拠を透明なものとし、かつ子どもたちに対して年齢にふさわしい言葉で伝えることが求められる。締約国は、他者の権利および尊厳を尊重し、かつ法律(憎悪および暴力の扇動に関連するものなど)に違反しないようにしながらこの権利を効果的に行使する方法(とくにデジタルコンテンツを安全に制作しかつシェアする方法)についての情報および訓練の機会を、子どもたちに提供するべきである。 60.子どもたちがデジタル環境で自己の政治的その他の見解およびアイデンティティを表明する際には、批判、敵意、脅迫または処罰の対象とされる場合がある。締約国は、ネット上の攻撃および脅迫、検閲、データ漏洩およびデジタル監視から子どもたちを保護するべきである。子どもたちは、デジタル環境で意見を表明したことを理由として訴追されるべきではない(ただし、条約第13条と両立する刑事法で定められた制限に違反した場合、このかぎりではない)。 61.特定の世界観を推進しようとする商業的および政治的動機が存在することに鑑み、締約国は、情報フィルタリング、プロファイリング、マーケティングおよび意思決定に関する自動化されたプロセスの利用が、デジタル環境において自己の意見を形成しかつ表明する子どもたちの能力を代替し、操作しまたはこれに干渉しないことを確保するべきである。 C.思想、良心および宗教の自由 62.締約国は、デジタル環境における思想、良心および宗教の自由に対する子どもの権利を尊重するべきである。委員会は、締約国に対し、デジタル環境で(たとえば感情の解析または推論によって)思想および信条の自由に対する子どもたちの権利を操作しまたはこれに干渉する慣行を特定し、定義しかつ禁止するデータ保護規則および設計基準を導入しまたは改定するよう、奨励する。自動化システムは、子どもの内心に干渉するために利用される可能性がある。締約国は、子どもたちの行動または感情に影響を与えもしくはこれを左右すること、または子どもの機会もしくは発達を制限することを目的として自動化システムまたは情報フィルタリングシステムが利用されないことを確保するべきである。 63.締約国は、子どもたちがその宗教もしくは信条を理由として処罰されず、または他のいかなるやり方によっても将来の機会を制限されないことを確保するべきである。デジタル環境において自己の宗教または信条を表明する子どもたちの権利の行使に対しては、法律にのっとった、必要な、かつ比例性を有する制限しか課すことができない。 D.結社および平和的集会の自由 64.デジタル環境は、子どもたちが自己の社会的、宗教的、文化的、民族的、性的および政治的アイデンティティを形成し、かつ、仲間として結びついたコミュニティならびに熟議、文化交流、社会的結束および多様性のための公的空間に参加することができる [33]。子どもたちが報告するところによれば、デジタル環境は、関心を共有する仲間、意思決定権者その他の人々と会い、交流しかつじっくりと議論する、貴重な機会を与えてくれるものである [34]。 [33] 一般的意見17号(2013年)、パラ21および一般的意見20号(2016年)、パラ44-45。 [34] "Our rights in a digital world", p.20. 65.締約国は、自国の法令および政策において、部分的にまたはもっぱらデジタル環境で活動している団体に参加する子どもたちの権利が保護されることを確保するべきである。デジタル環境における結社および平和的集会の自由に対する子どもたちの権利の行使には、法律にのっとった、必要でありかつ比例性を有するもの以外のいかなる制限も課すことができない [35]。このような参加が、それ自体として、これらの子どもたちに対する否定的な結果(停退学、将来の可能性の制限もしくは剥奪または警察による個人ファイルの作成など)につながることがあるべきではない。このような参加は、安全であり、プライバシーが守られ、かつ官民の機関による監視から自由であるべきである。 [35] 自由権規約委員会、一般的意見37号(2020年)、パラ6および34。 66.デジタル環境における公的な注目およびネットワーキングの機会も、子どもが主導する行動主義を支え、かつ人権擁護者としての子どもたちのエンパワーメントにつながり得る。委員会は、デジタル環境によって、人権擁護者である子どもたちおよび脆弱な状況に置かれた子どもたちが、相互にコミュニケーションを図り、自分たちの権利を擁護し、かつ結社を結成できるようになることを認識する。締約国は、特別なデジタル空間の創設を促進するなどの手段によりこれらの子どもたちを支援し、かつその安全を確保するべきである。 E.プライバシーに対する権利 67.プライバシーは、子どもたちの主体性、尊厳および安全ならびに権利行使にとってきわめて重要である。子どもたちの個人データは、子どもたちに教育上、健康上その他の利益を提供する目的で処理されている。子どもたちのプライバシーに対する脅威は、公的機関、企業その他の組織によるデータの収集および処理からも、個人情報の不正な取得・利用のような犯罪活動からも生じ得る。脅威はまた、デジタル環境における子どもたち自身の活動からも、家族構成員、仲間その他の者の活動(たとえば親が写真をオンラインでシェアすることまたは見知らぬ者が子どもに関する情報をシェアすること)からも生じ得る。 68.データには、とくに子どもの身元、活動、位置情報、通信、感情、健康および人間関係に関するデータが含まれる場合がある。生体データを含む個人データのある種の組み合わせは、子どもを一意的に特定するために利用し得る。自動データ処理、プロファイリング、行動ターゲティング、義務的本人確認、情報フィルタリングおよび大量監視のようなデジタル慣行が、当たり前に行なわれるようになりつつある。このような慣行は、プライバシーに対する子どもたちの権利への恣意的または不法な干渉につながる可能性がある。このような慣行は子どもたちに悪影響をもたらす可能性があり、子どもたちは人生のその後の段階においても影響を受け続ける場合がある。 69.子どものプライバシーへの干渉が認められるのは、それが恣意的または不法でない場合のみである。したがって、このようないかなる干渉も、法律で定められ、正当な目的の達成を狙いとし、データの最小限化の原則を維持し、比例性を有しており、かつ条約の規定、目的および趣旨に抵触しないものでなければならない。 70.締約国は、子どものデータ処理を行なうすべての組織によっておよびそのようなデータ処理が行なわれるすべての環境において子どもたちのプライバシーが尊重されかつ保護されることを確保するため、立法上、行政上その他の措置をとるべきである。法律には、強力な保障措置、透明性、独立の監督および救済措置へのアクセスを含めることが求められる。締約国は、子どもたちに影響を及ぼすデジタル製品およびデジタルサービスへの、プライバシー・バイ・デザインの統合を要求するべきである。締約国は、プライバシーおよびデータ保護に関する法律を定期的に見直すとともに、手続および実務によって、子どもたちのプライバシーの意図的または偶発的侵害が防止されることを確保するよう求められる。暗号化が適切な手段であると考えられる場合、締約国は、子どもの性的搾取・虐待または子どもの性的虐待表現物の発見および通報を可能にする、適切な措置を検討するべきである。このような措置は、法律適合性、必要性および比例性の原則にしたがい、厳格に限定的なものとされなければならない。 71.子どものデータ処理に対する同意が求められる場合、締約国は、同意が、子どもによって(または、子どもの年齢および発達しつつある能力に応じてその親もしくは養育者によって)、十分な情報に基づいてかつ自由に与えられ、かつ当該データの処理の前に取得されることを確保するよう求められる。子どもの個人データを処理するのに、子ども自身の同意では不十分であると考えられ、親による同意が必要とされる場合、締約国は、同意が十分な情報に基づく意味のあるものであり、かつ子どもの親または養育者によって与えられたことを、このようなデータの処理を行なう組織が確認するよう要求するべきである。 72.締約国は、合理的かつ法律にのっとった制限に服することを条件として、子どもおよびその親または養育者が、保存されているデータに容易にアクセスし、不正確なまたは古くなったデータを訂正し、かつ、公的機関、私人またはその他の機関によって不法にまたは不必要に保存されているデータを削除できることを確保するべきである [36]。締約国はさらに、データ管理者がデータ処理のための正当なかつ優先されるべき理由を示せない場合には、子どもが同意を撤回しかつ個人データ処理に異議を唱える権利を確保するよう求められる。締約国はまた、子ども、親および養育者に対し、子どもにやさしい言葉およびアクセシブルな形式で、このような事柄に関する情報を提供するよう求められる。 [36] 自由権規約委員会、一般的意見16号(1988年)、パラ10。 73.子どもたちの個人データへのアクセスは、定期的監査およびアカウンタビリティ措置のような適正手続上の保障を遵守しながら当該データを処理することについて法律に基づく指定を受けた公的機関、組織および個人に対してのみ、認められるべきである [37]。定められた目的のために収集された子どもたちのデータは、いかなる場面(デジタル化された犯罪記録を含む)においても保護され、かつ当該目的のためにのみ用いられるべきであり、また不法にもしくは不必要に保持されまたは他の目的のために利用されるべきではない。ある場面で提供された情報を他の場面で(たとえば学校教育および高等教育の文脈で)利用することが子どもにとって正当な利益となり得る場合、そのようなデータの利用は透明であり、説明責任が確保され、かつ子ども、親または養育者の同意に適宜服するものであることが求められる。 [37] 前掲および子どもの権利委員会、一般的意見20号(2016年)、パラ46。 74.プライバシーおよびデータ保護に関する法律および措置によって、子どもたちのその他の権利(たとえば表現の自由または保護に関連する権利)が恣意的に制限されるべきではない。締約国は、データ保護法がデジタル環境との関連で子どものプライバシーおよび個人データを尊重することを確保するべきである。継続的な技術革新を通じてデジタル環境の範囲は拡大しつつあり、ますます多くのサービスおよび製品(衣服・玩具など)も含むようになっている。自動化システムに接続された埋込センサーの利用を通じて、子どもたちが時間を費やす環境が「接続した」状態になっていくなか、締約国は、そのような環境に寄与する製品およびサービスが、データ保護およびその他のプライバシーに関わる確固たる規制および基準の対象とされることを確保するべきである。これには、路上、学校、図書館、スポーツ・娯楽施設および商業施設(店舗や映画館を含む)のような公的な場所ならびに家庭が含まれる。 75.子どもたちを対象とするいかなる監視も、関連する自動化された個人データ処理とともに、プライバシーに対する子どもの権利を尊重して行なわれなければならず、かつ、日常的に、無差別に、または子どもが(もしくは乳幼児の場合にはその親もしくは養育者が)知らないところで実施されるべきではない。そのような監視は、商業的場面ならびに教育およびケアの場面において、当該監視に反対する権利が認められないまま行なわれるべきでもなく、かつ、所期の目的を果たすために利用可能なもっともプライバシー干渉度の低い手段が常に考慮されるべきである。 76.デジタル環境は、プライバシーに対する子どもの権利の尊重に関して、親・養育者に特有の問題を生じさせる。安全目的でオンライン活動をモニターするテクノロジー(追跡デバイスや追跡サービスなど)は、慎重に運用されなければ、子どもがヘルプラインにアクセスしたりデリケートな情報を検索したりすることの妨げとなる可能性がある。締約国は、子どもたち、親および養育者ならびに公衆に対し、プライバシーに対する子どもの権利の重要性について、また自分自身の対応が当該権利をどのように脅かしかねないかについて、助言を提供するべきである。どのように対応すれば、子どもたちの安全を保ちつつ、デジタル環境との関連で子どもたちのプライバシーを尊重しかつ保護できるかについても助言を提供することが求められる。親および養育者による子どものデジタル活動のモニタリングは、比例性を有しており、かつ子どもの発達しつつある能力にしたがって行なわれるべきである。 77.身元を保護するオンラインアバターまたはオンライン名を使用している子どもたちは多く、このような対応は子どもたちのプライバシー保護に関して重要なものとなり得る。締約国は、匿名による実践が有害なまたは不法な行動(たとえばネット上の攻撃、ヘイトスピーチまたは性的搾取・虐待など)を隠すために常用されないことを確保しつつ、匿名性に対するセーフティ・バイ・デザインおよびプライバシー・バイ・デザインを統合したアプローチを要求するべきである。デジタル環境における子どものプライバシーの保護は、親もしくは養育者自身が子どもの安全にとって脅威となっている場合または子どもの養育をめぐって紛争中である場合に、きわめて重要になり得る。このような事案では、プライバシーに対する子どもの権利を保護するため、さらなる介入および家族カウンセリングその他のサービスが必要となる場合がある。 78.デジタル環境における子どもたち向けの防止サービスまたは相談サービスの提供者は、子どものユーザーが当該サービスにアクセスするために親の同意を得なければならないとするいかなる要件からも免除されるべきである [38]。このようなサービスは、プライバシーおよび子どもの保護に関する高い基準の遵守が求められる。 [38] 一般的意見20号(2016年)、パラ60。 F.出生登録およびアイデンティティに対する権利 79.締約国は、保健、教育および福祉を含むサービスへのアクセスを促進するため、すべての新生児が国の公的機関によってその出生を登録されかつ公式に承認されることを可能にする、デジタル身元確認システムの活用を促進するべきである。出生登録が行なわれないことは、条約およびその選択議定書に基づく子どもたちの権利の侵害を助長する。締約国は、とくに遠隔地の子ども、難民および移住者である子ども、危険な状況にある子どもならびに周縁化された状況にある子どもを対象として出生登録へのアクセスを確保するため、移動登録班を含む最新のテクノロジーを活用するとともに、デジタル身元確認システムの前に出生した子どもも対象とするべきである。このようなシステムが子どもたちにとって有益なものとなるようにするため、締約国は、意識啓発キャンペーンを実施し、モニタリング機構を設置し、コミュニティの関与を促進し、かつ、民事登録担当官、裁判官、公証人、保健担当官および子どもの保護機関要員間の効果的調整を確保するよう求められる。締約国はまた、プライバシーおよびデータ保護に関する確固たる枠組みが整備されていることも確保するべきである。 VII.子どもに対する暴力 80.デジタル環境は、子どもが暴力を経験する状況や自分自身または他者に害を与えるよう感化される可能性がある状況を助長することにより、子どもたちに対して暴力が加えられる新たな道を開く可能性がある。パンデミックなどの危機にあっては、このような状況では子どもたちがバーチャルプラットフォームで過ごす時間が増えることに鑑み、オンラインにおける害のリスクが高まるおそれがある。 81.性犯罪者は、性的目的で子どもを勧誘したり、オンラインでの子どもの性的虐待に(たとえばライブビデオストリーミングによって、子どもの性的虐待表現物の製造および頒布によってならびに児童エロチカを通じて)参加したりする目的で、デジタルテクノロジーを利用する可能性がある。デジタル化で容易になる諸形態の暴力および性的搾取・虐待は、子どもが信頼する人間関係のなかで、家族もしくは友人によってまたは思春期の子どもの場合には親密なパートナーによって行なわれる場合もあり、またネット上の攻撃(いじめおよび名誉への脅威を含む)、同意を得ずに行なわれる性的テキストまたは画像の作成またはシェア(誘惑や強要による自製コンテンツなど)および自傷行動(刃物による自傷、自殺行動または摂食障害など)の促進などが含まれ得る。子どもがこのような行動をとった場合、締約国は、可能な場合には常に、関係する子どもを対象とする予防、安全確保および修復的司法のアプローチを追求するべきである [39]。 [39] 一般的意見24号(2019年)、パラ101およびCRC/C/156〔子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書の実施に関するガイドライン〕、パラ71。 82.締約国は、デジタル環境における暴力から子どもたちを保護するための立法上および行政上の措置をとるべきである。これには、デジタル環境におけるあらゆる形態の暴力に関わってすでに認識されているリスクおよび新たに生じつつあるリスクから子どもたちを保護する確固たる法令上および制度上の枠組みを定期的に見直し、改定しかつ執行することが含まれる。このようなリスクには、身体的または精神的暴力、傷害または虐待、ネグレクトまたは不適切な取扱い、搾取および虐待(性的搾取・虐待を含む)、子どもの人身取引、ジェンダーに基づく暴力、ネット上の攻撃、サイバーアタックならびに情報戦が含まれる。締約国は、子どもたちの発達しつつある能力にしたがって安全措置および保護措置を実施するべきである。 83.デジタルテクノロジーは、テロリストまたは暴力的過激主義者の指定を受けた武装集団を含む非国家集団が、暴力への関与または参加を目的として子どもたちを募集しかつ搾取するための新たな道を開き得る。締約国は、テロリスト集団または暴力的過激主義者集団による子どもの募集が法律で禁じされることを確保するべきである。このような文脈で刑事上の罪を問われた子どもは第一次的には被害者として扱われるべきだが、告発される場合には子ども司法制度を適用することが求められる。 VIII.家庭環境および代替的養護 84.多くの親および養育者は、デジタル環境との関連で子どもたちを援助するための技術的理解、能力およびスキルを発展させるために支援を必要としている。締約国は、親および養育者がデジタルリテラシーを獲得し、テクノロジーがどのように子どもの権利の支えになり得るかを学び、かつオンラインの害の被害を受けた子どもを認識して適切に対応するための機会を持てることを確保するべきである。不利な立場または脆弱な状況に置かれた子どもたちの親および養育者に対し、特別な注意を払うことが求められる。 85.デジタル環境に関する支援と指針を親および養育者に提供するにあたり、締約国は、子どもの発達しつつある能力にしたがって子どもたちの自律性の高まりおよびプライバシーの必要性を尊重することに関する意識を促進するべきである。締約国は、子どもたち(親および養育者が想定するよりも低い年齢の子どもたちを含む)はデジタルな機会をしばしば積極的に利用して実験するものであり、かつリスクに遭遇する可能性があることを考慮するよう求められる。子どもたちからは、とくに親および養育者のアプローチが懲罰的であり、過剰に制限的であり、または自分の発達しつつある能力にあわせて修正されていない場合に、自分たちのデジタル活動に関してもっと支援と励ましがほしいと報告する声もあった [40]。 [40] "Our rights in a digital world", p.30. 86.締約国は、親および養育者に提供される支援と指針が、親子関係の特殊性および特有の性質に関する理解に基づくものであるべきことを考慮するよう求められる。このような指針は、親が、禁止または管理よりも相互の共感と尊重に基づき、子どもの保護と高まりつつある自律性との間で適切なバランスを維持することを支援するようなものであるべきである。親および養育者が親としての責任と子どもの権利とのバランスを維持する一助とするため、子どもの発達しつつある能力の考慮とあわせて適用される子どもの最善の利益を指導的原則とすることが求められる。親および養育者向けの指針では、デジタル環境における子どもたちの社会的活動、創造的活動および学習活動が奨励されるべきであり、かつ、デジタル機器の利用が、子どもたち同士のまたは子どもたちと親または養育者との、応答性に満ちた直接の相互交流にとって代わるべきではないことが強調されるべきである。 87.家族と離れ離れになった子どもがデジタルテクノロジーにアクセスできることは重要である [41]。科学的知見が示すところによれば、デジタルテクノロジーは、たとえば親が別居している場合〔もしくは〕子どもが代替的養護に措置された場合に家族関係を維持するうえで、子どもと養親または里親の候補との関係を確立するうえで、または人道危機の状況下にある子どもが家族と再会できるようにするうえで、有益なものとなる。したがって、家族が離れ離れになっている状況下で、締約国は、子どもの安全および最善の利益を考慮しながら、子どもたちおよびその親、養育者またはその他の関係者を対象として、デジタルサービスへのアクセスを支援するべきである。 [41] 一般的意見21号(2017年)、パラ35。 88.デジタルインクルージョンを増進させるための措置は、親もしくは他の家族構成員または養育者(同居しているか別居しているかを問わない)が子どもを危険な状況に置く可能性がある場合には、子どもを保護する必要性とのバランスが図られるべきである。締約国は、このようなリスクが、デジタルテクノロジーの設計および利用を通じて(たとえば人権侵害を行なう可能性のある者に対して子どもの位置情報が明らかにされることによって)発生する可能性があることを考慮するよう求められる。締約国は、これらのリスクを認識して、セーフティ・バイ・デザインおよびプライバシー・バイ・デザインを統合したアプローチを要求するとともに、親および養育者がこのようなリスクおよび子どもを支援しかつ保護するために利用可能な戦略について十分に認識していることを確保するべきである。 IX.障害のある子ども 89.デジタル環境は、障害のある子どもたちが他の子どもたちと社会的関係を結び、情報にアクセスし、かつ公的意思決定プロセスに参加する新たな経路を開くものである。締約国は、このような新たな経路を追求するとともに、新たな障壁が生み出されることを防止し、かつデジタル環境に関連して障害のある子どもたちが直面している障壁を克服するための措置をとるよう求められる。 90.さまざまな態様の障害(身体障害、知的障害、心理社会的障害、聴覚障害および視覚障害を含む)がある子どもたちは、コンテンツの形式がアクセシブルではないこと、家庭、学校およびコミュニティにおける負担可能な支援テクノロジーへのアクセスが限られていること、学校、保健施設その他の環境でデジタル機器の使用が禁じられていることなど、デジタル環境へのアクセスに関してさまざまな障壁に直面している。締約国は、障害のある子どもたちがアクセシブルな形式のコンテンツにアクセスできることを確保し、かつ、これらの子どもたちに差別的影響を及ぼす政策を廃止するべきである。締約国は、とくに貧困下で暮らしている障害のある子どもを対象として、必要な場合には負担可能な支援テクノロジーへのアクセスを確保するとともに、障害のある子どもたち、その家族および教育施設その他の関連の現場の職員がデジタルテクノロジーを効果的に活用するための十分な知識およびスキルを身につけられるよう、意識啓発キャンペーンおよび訓練の実施ならびにリソースの提供を図るよう求められる。 91.締約国は、さまざまな態様の障害がある子どもの必要を満たす技術的革新を促進するとともに、デジタル製品およびデジタルサービスが、すべての子どもが例外なくかつ調整を必要とせずに利用できるよう、ユニバーサルアクセシビリティを目指して設計されることを確保するべきである。デジタル環境における障害のある子どもたちの権利の実現に影響を及ぼす政策、製品およびサービスの設計および提供には、障害のある子どもたちの関与を得ることが求められる。 92.障害のある子どもたちは、デジタル環境において、ネット上の攻撃および性的搾取・虐待を含むリスクにいっそうさらされる可能性がある。締約国は、障害のある子どもたちが直面するリスクを特定しかつこれに対処して、これらの子どもたちが直面する過剰な保護または排除につながりかねない偏見に対抗しつつ、デジタル環境がこれらの子どもたちにとって安全であることを確保するための措置をとるべきである。デジタル環境に関連する安全情報、保護方策および広報情報、サービスならびにフォーラムは、アクセシブルな形式で提供することが求められる。 X.基礎保健および福祉 93.デジタルテクノロジーは、保健サービスおよび保健情報へのアクセスを促進し、かつ妊産婦、新生児および児童期・思春期の子どもの身体的および精神的健康ならびに栄養のための診断・治療サービスを向上させ得る。デジタルテクノロジーはまた、不利な立場もしくは脆弱な状況に置かれた子どもたちまたは遠隔地の子どもたちにサービスを行き届かせる重要な機会を提供するものでもある。公の緊急事態または保健上もしくは人道所の危機の際には、デジタルテクノロジーを通じた保健サービスおよび保健情報へのアクセスが唯一の選択肢となる場合もあり得る。 94.子どもたちが報告するところによれば、子どもたちは、健康およびウェルビーイングに関連する情報および支援(身体的健康、精神的健康、セクシュアル/リプロダクティブヘルス、第2次性徴および避妊に関わるものを含む)をオンラインで検索することを重視している [42]。とくに思春期の子どもたちは、精神保健およびセクシュアル/リプロダクティブヘルスに関する、無償で、秘密が守られ、年齢にふさわしくかつ差別的ではないサービスにオンラインでアクセスしたいと考えている [43]。締約国は、子どもたちが、信頼できる保健情報および保健サービス(心理相談サービスを含む)に安全に、安心してかつ秘密が守られる形でアクセスできることを確保するべきである [44]。これらのサービスは、サービス遂行のために必要な限度を超えて子どもたちのデータを処理するべきではなく、かつ専門家または適切な訓練を受けた者によって提供されるべきであり、また規制された監督の仕組みをともなっていることが求められる。締約国は、デジタル化された保健製品および保健サービスによって、対面型保健サービスへの子どもたちのアクセスにおける不平等が生じまたは強化されないことを確保するべきである。 [42] "Our rights in a digital world", p.37. [43] 一般的意見20号(2016年)、パラ59。 [44] 前掲、パラ47および59。 95.締約国は、子どもたちの特有の保健ニーズに焦点を当て、かつ技術の進歩を通じて子どもたちにとっての肯定的な健康アウトカムを促進するような調査研究および開発を奨励し、かつこのような調査研究および開発への投資を行なうよう求められる。デジタルサービスは、子どもたちに対する対面型保健サービスの提供を補完しまたは向上させるために利用されるべきである [45]。締約国は、規制の導入または改定により、保健テクノロジーおよび保健サービスの提供者に対して、その機能、コンテンツおよび頒布の中心に子どもの権利を位置づけるよう要求することが求められる。 [45] 前掲、パラ47-48。 96.締約国は、誤情報ならびに子どもの精神的または身体的健康を害する可能性がある資料およびサービスの拡散を防止するため、既知の害に対して規制を行なうとともに、公衆衛生セクターで新たに判明した調査研究の結果およびエビデンスを積極的に考慮するべきである。デジタルゲームまたはソーシャルメディアへの不健康な関与を防止するための措置(子どもたちの発達および権利を阻害するデジタルデザインの機制など)も必要になる場合がある [46]。 [46] 一般的意見15号(2013年)、パラ84。 97.締約国は、身体活動および社会的活動を含む健康的なライフスタイルを促進するためのデジタルテクノロジーの利用を奨励するべきである [47]。特定の食料品および飲料品、アルコール、薬物ならびにタバコその他のニコチン製品を含む不健康な製品の販売促進に子どもたちがさらされることを防止するため、締約国は、ターゲティングによるまたは年齢にふさわしくない広告、マーケティングまたは他の関連のデジタルサービスを規制するよう求められる [48]。デジタル環境に関連するこのような規制は、オフライン環境における規制と両立しかつ足並みを揃えるようなものであるべきである。 [47] 一般的意見17号(2013年)、パラ13。 [48] 一般的意見15号(2013年)、パラ77。 98.デジタルテクノロジーは、休息、運動ならびに仲間、家族およびコミュニティとの直接的相互交流の必要性とのバランスがとられている場合には、子どもたちが健康およびウェルビーイングを向上させる多くの機会を与えてくれる。締約国は、子どもたち、親、養育者および教育者を対象として、デジタル活動と非デジタル活動および十分な休息との健康的バランスの重要性に関する指針を策定するべきである。 XI.教育、余暇および文化的活動 A.教育に対する権利 99.デジタル環境は、質の高いインクルーシブな教育(フォーマルな学習、インフォーマルな学習、子どもたち同士の学習および独学のためのリソースを含む)への子どもたちのアクセスをおおいに可能にしかつ増進させることにつながり得る。デジタルテクノロジーの活用により、教員・生徒間および学習者間のエンゲージメントも強化される可能性がある。子どもたちは、教育へのアクセスを向上させ、かつ学習および課外活動への参加を支えるうえでデジタルテクノロジーが重要であることを強調している [49]。 [49] "Our rights in a digital world", pp.14, 16 and 30. 100.締約国は、多様かつインタラクティブなデジタル学習リソース(先住民族に関するリソースを含む)および子どもたちが理解できる言語でのリソースに子どもたちがアクセスできるようにするため、文書館、図書館および博物館のような教育・文化施設を支援するべきである。これらのものをはじめとする貴重なリソースは、子どもたちが自分たち自身の創造的、市民的および文化的実践に従事することの支えとなり、かつ他者の実践について学べることにつながる可能性がある [50]。締約国は、オンライン学習および生涯学習のための子どもたちの機会を増進するべきである。 [50] 一般的意見17号(2013年)、パラ10。 101.締約国は、学校その他の学習現場における技術インフラに対して公平な投資を行ない、十分な数のコンピューター、良質かつ高速なブロードバンドおよび安定した電源、デジタル教育テクノロジーの活用に関する教員研修、アクセシビリティならびに学校テクノロジーの時宜を得たメンテナンスが利用可能でありかつ負担可能であることを確保するべきである。締約国はまた、多様かつ良質なデジタル教育リソースが子どもたちの理解できる言語で制作されかつ普及されることを支援し、かつ、既存の不平等(女子が経験している不平等など)が悪化しないようにすることも求められる。締約国は、デジタルテクノロジーの活用が対面型教育を阻害しないことおよび教育目的のために正当なものであることを確保するべきである。 102.学校に物理的に出席していない子どもたちや、遠隔地に暮らしておりまたは不利な立場もしくは脆弱な状況に置かれている子どもたちにとっては、デジタル教育テクノロジーによって遠隔学習または移動学習が可能となり得る [51]。締約国は、遠隔学習のために必要な基本的便益(機器、電気、接続環境、教材および専門的支援へのアクセスを含む)にすべての子どもたちがアクセスできるようにするための適正なインフラが整備されることを確保するべきである。締約国はまた、学校が親および養育者に対して家庭での遠隔学習に関する指針を示すための十分な資源を有すること、ならびに、デジタル教育のための製品およびサービスが、対面型教育サービスへの子どもたちのアクセスに関する不平等を生じさせまたは悪化させないことを確保するべきである。 [51] 女性差別撤廃委員会の合同一般的勧告31号/子どもの権利委員会の合同一般的意見18号(2019年)、パラ64ならびに子どもの権利委員会、一般的意見11号(2009年)、パラ61および一般的意見21号(2017年)、パラ55。 103.締約国は、学校と、価値のある教育上の利点の提供を増進させることを目的として教育テクノロジー・教材の調達および利用に責任を負うその他の関連機関を対象とする、エビデンスに基づいた政策、基準およびガイドラインを策定するべきである。デジタル教育テクノロジーに関する基準においては、これらのテクノロジーの利用が倫理にかなっておりかつ教育目的にとって適切であること、ならびに、子どもたちが暴力、差別、個人データの悪用、商業的搾取またはその他の権利侵害(子どもの活動を記録し、かつ子どもが知らないまままたは子どもの同意を得ずに当該記録を親または養育者と共有するためにデジタルテクノロジーを利用することなど)にさらさないことを確保するよう求められる。 104.締約国は、デジタルリテラシーが、就学前の段階から全学年を通じて基礎教育カリキュラムの一環として学校で教えられること、および、このような教育方法がその成果に基づいて評価されることを確保するべきである [52]。カリキュラムには、幅広い範囲のデジタルツールおよびデジタルリソースを安全に取り扱うための知識およびスキル(コンテンツ、制作、合作、参加、社会化および市民的関与に関連するものを含む)を含めることが求められる。カリキュラムにはまた、批判的思考、信頼できる情報源を見つけ出しかつ誤情報およびその他の形態のバイアスがかかったまたは虚偽のコンテンツ(セクシュアル/リプロダクティブヘルス関連の問題を含む)を判定する方法に関する指針、デジタル環境における子どもの権利を含む人権ならびに利用可能な形態の支援および救済措置も含まれるべきである。締約国はまた、コンテンツ、接触、行動および契約に関連するリスク(ネット上の攻撃、人身取引、性的搾取・虐待その他の形態の暴力を含む)にさらされることによって生じる可能性のある悪影響と、害を低減させるための対処方策ならびに自分自身および他人の個人データを保護する方策および子どもたちの社会的・情緒的スキルとレジリエンスを構築するための方策に関する意識を、子どもたちの間で促進するべきである。 [52] 一般的意見20号(2016年)、、パラ47。 105.子どもたちが、デジタル環境(そのインフラ、事業慣行、巧みな誘導戦略ならびに自動化処理および個人データの利用ならびに監視を含む)と、デジタル化が社会に及ぼす可能性のある悪影響について理解することは、ますます重要になっている。教員、とくにデジタルリテラシー教育およびセクシュアル/リプロダクティブヘルス教育を行なう教員は、デジタル環境に関わる安全確保についての研修を受けるべきである。 B.文化、余暇および遊びに対する権利 106.デジタル環境は、子どもたちのウェルビーイングおよび発達にとって不可欠である、文化、余暇および遊びに対する子どもたちの権利の促進につながる [53]。すべての年齢層の子どもたちが、自ら選んださまざまなデジタル製品およびデジタルサービスに関与することを通じて喜び、興味および気晴らしを経験したこと [54] とともに、他方で、デジタル環境での遊びがどれほど大切か、またそれを友達とどのように共有できるかについて大人がわかってくれないかもしれないと心配していることを報告している [55]。 [53] 一般的意見17号(2013年)、パラ7。 [54] "Our rights in a digital world", p.22. [55] 一般的意見17号(2013年)、パラ33。 107.デジタルな形態の文化、レクリエーションおよび遊びは、子どもたちの支えおよび利益になり、かつ子どもたちのさまざまなアイデンティティ、とくに文化的アイデンティティ、言語および遺産を反映しかつ促進するようなものであるべきである。このことは、子どもたちの社会的スキル、学習、表現、音楽・芸術などの創造的活動、帰属感および共有された文化の促進につながり得る [56]。オンラインでの文化的生活への参加は、創造性、アイデンティティ、社会的結束および文化的多様性に貢献する。締約国は、子どもたちが、情報通信技術を試し、自己表現し、かつオンラインで文化的生活に参加するために自由時間を利用する機会を持てることを確保するべきである。 [56] 前掲、パラ5。 108.締約国は、デジタルテクノロジーおよびデジタルサービスであって余暇時間の子どもたち向けのもの、余暇時間に子どもたちがアクセスするものまたは余暇時間の子どもたちに影響を及ぼすものが、文化、レクリエーションおよび遊びに関する子どもたちの機会を増進させるようなやり方で設計され、頒布されかつ利用されることを確保するため、規制を行ない、かつ専門家、親および養育者向けの指針を示すとともに。デジタルサービス提供者と適宜連携するべきである。これには、子どもたちの自律、人格形成および楽しみを支えるデジタル環境での遊びおよび関連の活動に関する革新を奨励することも含まれ得る。 109.締約国は、デジタル環境における文化、余暇および遊びの機会の促進と、子どもたちが生活している物理的場所での魅力的な選択肢の提供とのバランスがとられることを確保するべきである。とくに乳幼児期には、子どもたちの言語、協調、社会的スキルならびに感情的知性は、もっぱら身体運動および他者との直接の対面型相互交流をともなう遊びを通じて獲得される。年長の子どもたちにとっては、身体活動をともなう遊びおよびレクリエーション、チームスポーツならびにその他の野外レクリエーション活動は、健康上の利益ならびに機能的および社会的スキルの獲得をもたらし得るものである。 110.余暇時間をデジタル環境で過ごすことにより、子どもたちは、たとえばそれとはわかりにくい広告もしくは誇大広告または著しく誘導的もしくは射幸的なデザイン上の特徴を通じて、害を受けるリスクにさらされる可能性がある。締約国は、データ保護、プライバシー・バイ・デザインおよびセーフティ・バイ・デザインのアプローチならびにその他の規制措置を導入しまたは活用することによって、企業が、これらの技法および子どもの利益よりも商業的利益を優先させることを目的としたその他の技法を用いて子どもたちをターゲットとすることがないようにするべきである。 111.締約国または企業が、デジタル環境における特定の形態の遊びおよびレクリエーションに関して指針の提示、年齢によるレーティング、ラベリングまたは認証を行なう場合、それらの指針等は、デジタル環境全体への子どもたちのアクセスを縮小し、または子どもたちの余暇機会もしくはその他の権利に干渉しないような形で作成されるべきである。 XII.特別な保護措置 A.経済的、性的その他の形態の搾取からの保護 112.子どもたちは、デジタル環境との関連で、その福祉のいかなる側面にとっても有害なあらゆる形態の搾取から保護されるべきである。搾取は、児童労働を含む経済的搾取、性的搾取・虐待、子どもの売買、取引および誘拐ならびに犯罪活動(サイバー犯罪を含む)に参加させるための子どもの募集など、多くの形態をとって行なわれる可能性がある。子どもたちは、コンテンツを制作しかつシェアすることによってデジタル環境で経済的主体となり、その結果として搾取される可能性もある。 113.締約国は、子どもたちが経済的、性的その他の形態の搾取から保護され、かつ、デジタル環境での仕事に関わる子どもたちの権利および関連する報酬の機会が保護されることを確保するため、関連の法律および政策を見直すべきである。 114.締約国は、適切な執行の仕組みが設けられることを確保するとともに、適用される保護へのアクセスに関して子どもたち、親および養育者を支援するべきである [57]。締約国は、子どもたちが有害な物品(武器もしくは薬物など)またはサービス(賭け事など)から保護されることを確保するための法律を制定するよう求められる。子どもたちが自己所有または自己使用のために不法な製品およびサービスにアクセスすることを防止するため、しっかりした年齢認証システムが利用されるべきである。そのようなシステムは、データ保護および安全確保に関わる要件に一致したものであることが求められる。 [57] 一般的意見16号(2013年)、パラ37。 115.人身取引(その構成要素である行動および関連の行為を含む)を捜査し、訴追しかつ処罰する国家の義務を考慮し、締約国は、人身取引対策法を策定しかつ更新して、テクノロジーによって容易になる犯罪集団による子どもたちの募集が禁止されるようにするべきである。 116.締約国は、デジタル環境で発生する犯罪(詐欺および個人情報の不正な取得・利用を含む)子どもたちを保護し、かつデジタル環境における犯罪が捜査および訴追の対象とされることを確保するために十分な資源を配分することを目的とした、適切な法律が整備されることを確保するべきである。締約国はまた、このような犯罪のリスクを最小化するため、子どもたちが利用するデジタルサービスおよびデジタル製品に関して高水準のサイバーセキュリティ、プライバシー・バイ・デザインおよびセーフティ・バイ・デザインを要求することも求められる。 B.子ども司法の運営 117.子どもたちは、サイバー犯罪法に違反したとして申し立てられ。罪を問われまたは認定される可能性がある。締約国は、政策立案者が、このような法律が子どもたちに及ぼす影響を考慮し、防止に焦点を当て、かつ、刑事司法上の対応に代わる選択肢を設けかつ活用するためにあらゆる努力を払うことを確保するべきである。 118.子どもたちによる自撮りの性的表現物であって、本人の同意を得て、かつ自分たち自身の私的利用のみを目的として所持しかつ(または)シェアするものは、犯罪化されるべきではない。性的にあからさまな自撮りコンテンツに関して子どもたちが安全に助言および援助を求められるようにするための、子どもにやさしい回路が設けられるべきである。 119.締約国は、犯罪の防止、捜査および訴追において配備されているデジタルテクノロジー、監視機構(顔認証ソフトウェアなど)およびリスクプロファイリングが、刑事犯罪について容疑をかけられまたは告発されている子どもを不公正に対象とする目的で使用されず、かつその権利、とくにプライバシー、尊厳および結社の自由に対する権利を侵害するようなやり方で使用されないことを確保するべきである。 120.委員会は、裁判手続のデジタル化によって子どもとの対面での接触が行なわれなくなる場合、子どもとの関係の発展を踏まえた更生措置および修復的司法措置に悪影響が生じる可能性があることを認識する。このような場合には、また子どもが自由を奪われている場合にも、締約国は、裁判所に意味のある形で関与する子どもの能力および子どもの更生を促進するため、対面での接触を行なうようにするべきである。 C.武力紛争下の子ども、移住である子どもおよび他の脆弱な状況に置かれた子どもの保護 121.デジタル環境は、脆弱な状況下で暮らしている子どもたち(武力紛争下の子ども、国内避難民である子ども、移住者、庇護希望者および難民である子ども、保護・養育者に付き添われていない子ども、路上の状況にある子どもならびに自然災害の影響を受けている子どもを含む)に対し、その保護にとってきわめて重要な死活的情報へのアクセスを提供し得る。デジタル環境はまた、これらの子どもたちが、家族との接触を維持し、教育、保健その他の基礎的サービスにアクセスし、かつ食料および安全なシェルターを手に入れることも可能にし得る。締約国は、このような子どもたちがデジタル環境に安全に、確実に、秘密が守られかつ有益な形でアクセスできることを確保するとともに、あらゆる形態の暴力、搾取および虐待からこれらの子どもたちを保護するべきである。 122.締約国は、子どもたちがデジタル環境を通じて紛争(武力紛争を含む)で徴募されまたは使用されないことを確保するべきである。これには、たとえばソーシャルネットワーキングプラットフォームまたはオンラインゲームのチャットサービスを通じてさまざまな形態で行なわれる、テクノロジーによって容易になる子どもたちの勧誘およびグルーミング〔性的目的での勧誘〕を防止し、犯罪化しかつ制裁の対象とすることが含まれる。 XIII.国際的および地域的協力 123.国境および国家を超えるデジタル環境の性質により、国、企業その他の主体がデジタル環境との関連で子どもたちの権利を効果的に尊重し、保護しかつ充足することを確保するためには、強力な国際的および地域的協力が必要となる。したがって、締約国が、国内的および国際的非政府組織、国連機関、企業ならびにデジタル環境との関連における子どもの保護および人権を専門とする組織と個別かつ多面的に連携することは、きわめて重要である。 124.締約国は、専門的知見および優れた実践の国際的・地域的交流を促進しかつこれに貢献するとともに、デジタル環境における子どもたちの権利のすべての国による実現を可能とする能力構築、資源、基準、規則および保護措置を、国境を越えて確立しかつ促進するべきである。締約国は、デジタル環境における犯罪の共通定義の策定、共助ならびに証拠の共同収集および共有に努めるよう求められる。 XIV.普及 125.締約国は、この一般的意見が、デジタルテクノロジーも活用しながら、すべての関係者、とくに議会および政府機関(横断的および部門別デジタルトランスフォーメーションを担当する機関を含む)ならびに司法機関、企業、メディアおよび市民社会の関係者、公衆一般ならびに教育舎および子どもたちに広く普及され、かつ、複数の形式および言語(年齢にふさわしいバージョンを含む)で利用可能とされることを確保するべきである。 更新履歴:ページ作成(2021年4月28日)。
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子どもの権利委員会の報告プロセスへの子ども参加に関する作業手法 (第66会期、2014年5月26日~6月13日) CRC/C/66/2(2014年10月16日) 原文英語〔Word〕 日本語訳:平野裕二 I.序および目的 1.意見を聴かれ、かつ真剣に受けとめられるすべての子どもの権利は、子どもの権利条約の基本的価値観のひとつである [1]。これはすべての子どもの権利であって、例外はない。子どもの権利委員会は、意見を聴かれる権利(第12条)を条約の4つの一般原則のひとつに位置づけてきた。このように、意見を聴かれる権利はそれ自体としてひとつの権利であるというのみならず、他のすべての権利の解釈および実施においても考慮されるべきものである。国際的レベルでは、委員会の活動への子どもの関与は、締約国による条約およびその選択議定書の実施に関する報告プロセス、一般的意見 [2]の作成、一般的討議の開催、国内訪問およびその他の行事におけるものも含めて、特段の関連性を有する。報告プロセスとの関連では、締約国は、子どもが委員会への締約国報告書の作成に参加するよう奨励され、かつ参加できることを確保する義務を有する。 [1] 子どもの参加権は条約第12条、第13条、第14条、第15条および第17条に掲げられている。 [2] 委員会は、人権規定の内容に関する委員会の解釈をテーマ別論点についての一般的意見の形式で公にしている。 2.条約第45条(a)に基づき、委員会は、専門機関、国際連合児童基金(ユニセフ)およびその他の資格のある機関に対し、条約の実施に関する専門的助言を提供するよう要請することができる。子どもが主導する団体またはグループは、条約の実際の実施に関する専門的助言を提供することができる「資格のある機関」(competent bodies)の定義に該当する。意見を聴かれる子どもの権利に関する一般的意見12号(2009年)で、委員会は、子どもが主導する団体および子ども代表者が報告プロセスで果たす役割を明示的に承認した。同一般的意見のパラ131で、委員会は、「締約国による子どもの権利の実施状況を監視するプロセスにおいて、子ども団体および子どもたちの代表から提出される文書による報告および口頭による追加情報を歓迎し、締約国およびNGOに対し、子どもたちが委員会に意見を提供することを支援するよう奨励」している。 3.この作業手法は、報告プロセスにおける子どもの有意味な参加を定義し、促進し、かつ推進するためにまとめられたものである。一般的討議への子ども参加など、委員会の他の活動分野に関する指針はあらためて作成される。この作業指針は、委員会の一般的意見12号のほか、委員会の作業手法、手続規則および会期前作業部会へのパートナー(NGOおよび個人専門家)の参加に関する指針(CRC/C/90, annex VIII)に基づくものである。ここでは、子どもから提出された文書の検討、子どもたちとの会見(後掲パラ23参照)および意見を聴かれる子どもの権利についての一般的討議(2006年)における委員会の経験も参考にされている。 II.報告参加への子ども参加の基本的要件 4.国際的レベルにおける子ども参加が効果的かつ意味のあるものとなるためには、子ども参加が一度きりのイベントではなくプロセスとして理解されなければならない。子どもたちに対しては、可能なかぎり、継続的な監視プロセスの一環として自分たち自身の団体および取り組みを組織するよう支援および奨励が行なわれるべきである。このような団体および取り組みは、自分たちの権利について話し合い、かつ条約およびその選択議定書の実施における自国の進展状況について意見を表明する環境づくりにつながることになろう。 5.NGOおよびユニセフは、国別審査の際、報告プロセスにおいて子どもが意味のある形で参加しかつ代表されることを確保するよう、強く奨励される。 6.報告プロセスへの子ども参加を促進するすべての者(締約国、NGOおよびユニセフを含む)は、報告プロセスにおいて代弁される利益および優先課題が子どもたち自身のそれであって、子どもたちがともに活動するおとなまたは団体のそれではないことを確保するべきである。 7.一般的意見12号にしたがい、子どもが意見を聴かれかつ参加するすべてのプロセス(報告プロセスを含む)において、以下の9つの要件が尊重されなければならない。 (a) 透明かつ情報が豊かである:子どもたちは、自己の意見を表明し、かつその意見を正当に重視される権利ならびにこのような参加が行なわれる方法、その範囲、目的および潜在的影響についての、十分な、アクセスしやすい、多様性に配慮した、かつ年齢にふさわしい情報を提供されなければならない。 (b) 任意である:子どもたちが意思に反して意見表明を強要されることはけっしてあるべきではなく、また子どもたちにはどの段階でも関与をやめてよいことが知らされるべきである。 (c) 尊重される:子どもたちの意見は敬意をもって扱われなければならず、また子どもたちにはアイデアおよび活動を主導する機会が提供されるべきである。子どもたちのためにおよび子どもたちとともに活動している者および組織は、公的イベントへの参加に関して子どもたちの意見を尊重するべきである。 (d) 子どもたちの生活に関連している:子どもたちが意見表明権を有する問題は、その生活に真に関連しており、かつ子どもたちが自分の知識、スキルおよび能力を活用できるようなものでなければならない。加えて、子どもたち自身が関連性および重要性を有すると考える問題に光を当て、かつ対処できるようにする余地も設けられる必要がある。 (e) 子どもにやさしい環境:環境および作業方法は子どもたちの力量に合わせて修正されるべきである。子どもたちが十分に準備を整え、かつ意見を表明する自信および機会を持てることを確保するため、十分な時間および資源を利用可能とすることが求められる。 (f) インクルーシブである:子どもたちは均質的集団ではなく、参加は、いかなる事由(年齢を含む)に基づく差別もなく、すべての子どもたち(周縁化されている子どもたちを含む)に対して均等な機会を提供し、かつ、あらゆるコミュニティ出身の子どもたちに対して文化的配慮を行なうものでなければならない。幼い子どもおよび周縁化されたコミュニティ出身の子どもを包摂するための特別措置がとられるべきである。 (g) 訓練による支援がある:おとなには、子ども参加を効果的に促進するための準備、スキルおよび支援が必要である。子どもたちにも、たとえば効果的参加、権利意識、公の場での話およびアドボカシーに関する訓練が必要とされる。 (h) 安全であり、かつリスクに配慮している:おとなはともに活動する子どもたちに対して責任を負っているのであり、子どもたちに対する暴力、搾取、または参加にともなう他のいずれかの否定的結果のリスクを最小限に留めるために、あらゆる予防措置をとらなければならない。報告プロセスへの子ども参加を促進する組織は、このプロセスに関連する活動に参加するすべての子どもを対象として、明確な子ども保護戦略を策定しておかなければならない。。 (i) 説明責任が果たされる:子どもが主導する団体、子どもグループ、NGOおよびユニセフは、子どもたちが、報告プロセスにおいて、またより具体的には委員会との会見において自分たちが有している役割を明確に理解していることを確保するべきである。フォローアップおよび評価に対するコミットメントが欠かせない。報告プロセス――それが調査であれ、協議であれ、報告書の起草であれ、または委員会との会見であれ――に参加した子どもたちには、その意見がどのように解釈されかつ活用されたかについての情報が提供されるべきである。 III.報告プロセスへの参加の方法 8.子どもたちが委員会の報告プロセスに参加できる主な方法は次のとおりである。 (a) 事前質問事項の採択および締約国報告書の審査に向けた、子どもたち自身のまたはNGOを通じた提出文書。 (b) 会期前作業部会の会合における口頭でのプレゼンテーション。 (c) 会期前作業部会の会合における委員会の委員との非公開の会見。 (d) ビデオ会議への参加。 (e) 委員会の本会議への参加。 A.背景情報 9.委員会は、第12条にしたがって子どもの意見および子どもから提供されるその他の形態の情報を正当に考慮することが、委員会の報告審査機能の不可欠な一部でなければならないことを強調する。委員会は、子どもたちに対し、条約およびその選択議定書が自国でどのように実施されているかについての視点を提供する目的で、NGOの報告書に貢献するか、または子ども主導の団体、非公式な子どもグループまたはNGOを通じて情報を提供するかのいずれかの手段により、報告プロセスに参加することを強く奨励する。このことは、当該国における条約およびその選択議定書の実施について委員会がよりよく理解することを可能にするとともに、事前質問事項、当該国との対話および総括所見で活用される情報の提供につながろう。 10.子ども主導の団体、子どもグループ、NGOおよびユニセフは、周縁化された状況および被害を受けやすい状況に置かれた子どもたち――女子、幼い子ども、貧困の影響を受けている子ども、路上の状況にある子ども、施設の子ども、障害のある子ども、難民および避難民である子ども、法律に抵触した子どもならびに先住民族集団およびマイノリティ集団に属する子どもなど――が他の子どもたちと平等に報告プロセスに参加することを奨励されかつ可能にされることを確保するための、特別措置をとるべきである。 11.委員会は、同伴するNGOおよびユニセフの代表に対し、代表団に参加する子どもたちおよびおとなが、会合に出席する他の人々の場合と同様に、子どもたちの秘密保持およびプライバシーについて情報を提供され、かつこれを尊重することを確保するよう、期待する。 B.子どもたちによる委員会への提出文書 12.委員会は、子どもたちの意見および勧告を反映した、子ども主導の団体および子どもグループから提供される情報(子どもたちによる報告書、映画、研究、写真および絵画など)[3] を歓迎する。このことは、他の非政府系の関係者から提供される報告書その他の形態の情報(NGOのオルタナティブレポートなど)の場合と同様である。 [3] 子どもたちの報告書には、条約で定義されているとおり18歳未満の子どもたちの意見のみが反映されるべきである。成人した若者の意見はNGO報告書に反映させることもできる。 13.委員会は、子どもが作成したまたは子どもの意見を反映した提出文書において、基本的要件に合致した報告プロセスに意味のある形で参加するために子どもたちがどのようなプロセスを経て選抜されたかについて、また子どもたちの意見を集め、解釈し、かつまとめるためにどのような手法が用いられたかについて、詳述するよう要請する。委員会は当該プロセスに関する詳細な情報を歓迎するものの、名前または写真によって子どもたちが特定できる状態になるべきではない。 14.委員会はまた、子ども主導の団体もしくは子どもグループによってまたはNGOもしくはユニセフを通じて提供される情報を、会期前作業部会の会合が始まる2か月前までに委員会の事務局に提出することも要請する。書面による情報の場合、可能であれば各文書について20部が事務局に提供されるべきである [4]。提供された情報は守秘の対象であると推定される。ただし、提出文書でそうではないことが明示されており、かつ公表に関する同意書が含まれている場合はこのかぎりでない。 [4] このプロセスにおける事務的対応の援助については、Child Rights Connect〔訳者注/旧「子どもの権利条約のためのNGOグループ」〕に問い合わされたい。 C.会期前作業部会 15.会期前作業部会の会合は、委員会が、締約国報告書の予備的検討を行ない、かつ、特定の国における子どもの権利の状況についての追加情報を非政府系の関係者(子どもたちを含む)から得るための機会である。委員会は、年に3回、4週間ずつ(3週間の会期と1週間の会期前作業部会)会合を持っている。委員会による会期前作業部会中の予備的検討は、当該締約国の報告書審査が予定される会期の2会期前に行なうのが通例である。 16.会期前作業部会の会合において、委員会は、国際連合の専門機関、子ども主導の団体、NGOおよび国内人権機関の代表ならびに子どもたちの代表と会見し、事前質問事項、当該国との対話および総括所見において活用される差し迫った問題についての意見を聴く [5]。事前質問事項とは、締約国報告書で提供された情報を明確にしもしくは補完するために、または報告書の提出以降、最近になって何らかの変化があれば当該変化について委員会の最新情報を提供するよう締約国に要請するために、委員会が作成する一連の質問または問合せである。 [5] 会期前作業部会、その作業手法および手続規則についてさらに詳しくはwww.ohchr.org/EN/HRBodies/CRC/Pages/WorkingMethods.aspx#a2aを参照。 17.会期前作業部会の会合は非公開であり、公衆に対して公開されておらず、かつ何人の傍聴も認められない。これらの会合において議論されたすべての内容および出席した人々または組織の身元は秘密のままにされるべきであり、当該会合に参加しなかったいかなる者に対しても伝えられるべきではない。この秘密保持条項により、すべての出席者が率直に発言できることが確保される。このことは、出席者および発言内容を明らかにすることが危険である場合もあるため、とりわけ重要である。子どもたちが仲間にフィードバックすることを望むのであれば、詳細に立ち入ることなく、議論されたトピックについて話すことはできる。 1.会期前作業部会への子どもの参加 18.会期前作業部会は子どもたちとの会見(後掲2参照)よりも技術的な性格のものであってそれほど子どもにやさしくはないが、子どもたちには、他の非政府系の関係者とともに作業部会の会合に出席して委員会にプレゼンテーションを行なう機会が与えられる。子どもたちは、締約国報告書についての意見を明らかにするとともに、自国で子どもたちが直面している主要な懸念および問題を強調することができる。議長は、子ども代表に対し、限られた数の主要な懸念事項および勧告を強調した短い導入的発言を行なうよう求めることになろう。 19.これらの会期前会合は公衆に対しては公開されないが、国内人権機関、国際連合機関およびNGOの代表も出席する場合がある。子どもたちは、これに加えてまたはこれに代えて、委員会との非公開の会見を要請することもできる(後掲2参照)。 20.作業部会の会合に参加したいと考える子ども主導の団体またはグループは、委員会への書簡でその旨はっきり述べることが求められる。委員会はその後、書面による情報の受領を確認し、かつ作業部会が当該報告書を検討する日時に出席するよう子ども代表を招請する書簡を送付する。委員会に文書を提出できる子どもたち(前掲III B参照)が優先されることになろう。委員会は、例外的な場合に、招請される子どもたちの人数を制限する権利を留保する。事務局は、Child Rights Connectと連携して、要請に応じ、出席するよう招請された子どもたちへの技術的援助を提供する。 21.2名以上の子ども代表が会合に出席する場合、その子ども代表は、自国の子どもたちのさまざまな集団および懸念を可能なかぎり代表していることが求められる。周縁化された状況および被害を受けやすい状況に置かれた子どもたちが会期前作業部会および子どもたちとの会見に参加できることを確保するため、NGOおよびユニセフを含むすべての主体によって特別な努力が行なわれるべきである。委員会は、このような子どもたちの出席の便宜を図るために可能なあらゆる措置をとる。 22.委員会は、子どもたちとの会見または会期前会合に参加する子どもたち個人の生活を改善する目的で直接介入することはできないので、子どもたちに対しては、同伴するNGOまたはユニセフによって、これらの会合は特定の締約国における条約および/またはその選択議定書の実施に影響を与えるさまざまな問題についての子どもたちの見方を示すための場であること、および、委員会は子どもたちの貢献によって当該締約国における子どもの権利の状況をより完全に理解できるようになることについて、十分な告知が行なわれるべきである。同伴者または支援者である子ども主導の団体、NGOおよびユニセフは、会期前作業部会の会合に出席する子どもたちが現実的な期待を持つこと、および、これらの子どもたちに対し、作業部会の会合または非公開の会合への参加が結果にどのように影響を及ぼしうるかについて明確な情報が提供されることを確保するよう求められる。子どもたちはまた、フォローアップ活動への参加も認められるべきである。 2.会期前作業部会中の子どもたちとの会見 23.会期前作業部会の会合への出席に加えて、子どもたちのグループまたは団体は、会期前作業部会の会合中、委員会または国別報告者と非公開で会見すること(以下「子どもたちとの会見」という)を要請することができる。このような非公開の会見を持つことにより、子どもたちは、委員会の委員と非公式にやりとりすることができる。このような会見の要請は委員会の事務局に対して送付されるべきであり、その要請に応じるかどうかは委員会が決定する。 24.子どもたちとの会見は、会見の時点で18歳未満である子どもたちをもっぱら対象とする。成人した若者が、18歳未満のときに子どもたちによる提出文書の作成に関与していた場合、おとなである他の代表と同様に、子どもたちとの会見中に――子どもたちから要請があれば――子どもたちに支援を提供するか、または会期前作業部会に参加するかのいずれかの対応をとることが可能である。委員会は、子どもたちとの会見に出席するおとなの人数を制限する権利を留保する。 25.子どもたちとの会見は1時間以内で行なわれ、また審査対象である国についての会期前会合と同じ週に設定される。この会見は子どもたちから提出される情報に焦点を当てるものであり、また会期前会合よりも子どもにやさしい形式がとられる。これらの会見の正式な進行方法は定められていないものの、子どもたちが口頭でまたはビデオを通じて主要な問題および勧告を提示するのが通例である。委員会の委員にも、当該国の状況についての理解を向上させられるよう、子どもたちに質問する時間が割り当てられる。 26.子どもたちとの会見は委員会の公式会合以外の時間帯に設定されるため、国際連合による通訳の提供は行なわれない。子どもたちが英語を話さない場合、子どもたちに同伴するおとなは、子どもたちの母語から英語への通訳を確保することが求められる。 27.子どもたちとの会見で主として発言するのは子どもたち自身である。会見中に子どもたちに同伴して支援を提供するおとなは、通訳するときまたは子どもたちに説明を行なうとき(必要不可欠な情報を明確にする必要があり、かつ子どもからおとなに要請があった場合、もしくは子どもが支援を必要としており、かつ明示的に支援を要請した場合)を除いて、発言するべきではない。同伴するおとなは子どもたちの支援に集中するべきであり、自分自身の意見を表明することまたは子どもたちの意見に影響を与えようと試みることは控えるべきである。同伴するおとなはまた、子どもたちが会見時以外の議論でコミュニケーションを図り、かつ当該議論に参加できることも確保するよう求められる。 28.委員会は、同伴するおとなの非常に重要な役割を認識するとともに、子ども参加を促進する国内関係者に対し、同伴するおとなが、そのケアのもとにある子どもたちの安全および福祉に対する第一次的責任をいかなるときも忘れないようにすることを期待する。委員会は、このような責任が、子どもたちが渡航のために親/養育者のもとを離れたときに始まり、かつ、帰国後、親/養育者に安全に引き渡されたときに初めて終了することを想起するものである。同伴するおとなが子どもたちをケアするやり方は、その子どもたちの年齢および成熟度にふさわしいものであることが求められる。 D.ビデオ会議による子ども参加 29.テクノロジーによって、子どもたちがさまざまな経路を通じて委員会とやりとりできるようになり、また距離または経済的状態によって生じる障壁が軽減されている。委員会は、周縁化された集団および遠隔地の子どもたちにとって、ジュネーブで委員会と交流する資源および機会が限られていることをとりわけ懸念する。委員会は、もっとも効果的かつ適切な手段を活用しながら、離れた場所で子どもたちとの会見を実施するために努力するつもりである。委員会は、たとえば電話またはビデオ会議を通じ、他の場所在住の子どもたちが報告プロセスに参加し、かつその意見および勧告を共有できるようにすることが可能かもしれない。委員会は、テクノロジーを通じてこのような子どもたちとやりとりするかどうか決定する際、子どもたちの保護を正当に考慮する。そのようなやりとりによって子どもたちおよびその家族に安全上のリスクが生じる場合にはなおさらである。 E.委員会の本会期 30.締約国報告書についての議論は委員会の公開会合で行なわれ、その際には締約国の代表および委員会の委員の双方が発言する。関連の国際連合機関、NGOおよび報道機関の代表は、ジュネーブで開かれる会期に出席して直接傍聴するか、ウェブキャストの生中継を通じて自国で会期をフォローしている。委員会は、子どもたちに対し、本会期に出席することおよび/またはウェブキャストを通じてさまざまな国との双方向的対話をフォローすることを奨励する。 31.子どもたちは、ジュネーブで委員会の会期が開かれている際、当該締約国を交えた公式審査が行なわれる前に、委員会の報告者または審査対象国を担当する委員会の委員(国別担当班)との非公式な会見を要請することもできる。 更新履歴:ページ作成(2015年3月29日)。
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子どもの権利委員会・一般的討議勧告:子どもの権利のための資源配分――国の責任 一般的討議勧告一覧 (第46会期、2007年10月5日採択) 原文:英語(ワード) 日本語訳:平野裕二 III.勧告 法的枠組み 22.委員会は、第4条において、条約で認められた権利を実施するために立法上の措置および他のあらゆる適当な措置をとる締約国の義務が強調されていることを想起する。子どものための資源が十分に優先されることを確保するため、一部の国は、とくに子どものためのものとして使途を指定された資源が十分に用意されるようにするため、国家予算のうち具体的に何パーセントを子どもに配分しなければならないか、国内法そのもので定めるところまで踏みこむに至った。公的機関が子どものための資源の利用について説明責任を果たすよう、子どものための予算配分について国内法に法的編入を行なうというこのアプローチを、子どもへの投資に対する各国のコミットメントを奨励すべく、委員会も支持するものである。 23.十分な法的枠組みを設けることが子どもに対する公正かつ効果的な資源配分の不可欠な前提条件であることを認め、委員会は、すべての国に対し、子どもに配分されるべき公的支出の具体的割合の法制化を検討するよう奨励する。このような立法とあわせて、子どもに関する公的支出の体系的かつ独立の評価を行なえるようにする機構も設けられるべきである。 「利用可能な資源」の概念 24.委員会は、条約が定義する子どもの権利を実施するために資源を配分するのはまずもって国の責任であることを再確認する。「利用可能な資源(手段)」には国際援助を通じて国際社会から入手する資源も含まれるが、これは国レベルで利用可能な資源を補完するべきものである。資源は、財源のみならず、経済的、社会的および文化的権利の実現に関連する他のタイプの資源(人的資源、技術的資源、組織的資源、天然資源および情報資源等)も包含するものとして理解されなければならない。資源はまた質的観点からも理解されるべきであり、量的観点からのみ理解されるべきではない。 25.委員会は、締約国に対し、子どもの権利を達成するために利用可能な経済的、人的および組織的資源ならびに子どもの権利の実施のために実際に利用されている資源を定期的に特定するとともに、利用可能な資源の評価において両者を結合させるよう奨励する。委員会はとくに、締約国に対し、子どもの経済的、社会的および文化的権利の実施に寄与する財政措置を超えて「利用可能な資源」の評価を行なうよう奨励するものである。これとの関連で、委員会は、子どもにとってもっとも重要な「利用可能な資源」に数えられる親および家族を体系的に支援することの重要性を強調する。 予算策定プロセス、社会政策および人権 26.委員会は、予算政策および金融政策を含む公共政策の究極的目的は権利の普遍的履行でなければならないこと、および、経済的成長および安定はそれ自体が目的なのではなく人間開発に向けた手段と見なされるべきであることを、強調する。委員会は、経済政策と社会政策との間でバランスを確保することがきわめて重要であると考えるとともに、社会投資は、社会サービスへのアクセスおよびその質の向上を達成することのみならず、長期的には、教育、健康および栄養への投資による人的資本の向上を通じて生産性および競争力の増進に直接的に比例することを、力をこめて強調するものである。 27.「子どもにふさわしい世界」において、各国は、国内的にも国際的にも新たな追加的資源を動員しかつ配分すること、ならびに、条約を指針としながら予算配分で子どもを優先することに対するコミットメントを再確認した。「子どもへの投資」は、公正かつ持続可能な人間開発を達成するための最善の保障として、またあらゆる政府の社会的および経済的優先順位の基本的要件として、広く受け入れられるようになった概念である。これとの関係で、委員会はまた、すべての人権は相互に依存しておりかつ不可分であること、ならびに、経済的、社会的および文化的権利の享受は市民的および政治的権利の享受と分かちがたく結びついていることも強調する。 28.委員会は、地方分権化の進行度、国および地方の計画プロセス、行政裁量ならびに市民社会の役割のような諸要素がどのような形で資源配分の大きな決定要因または影響要因になるか、ならびに、これらの配分がどのような形で実際に子どもに届き、かつその経済的、社会的および文化的権利の享受を増進させるかを、強調する。 29.委員会はさらに、よい公共財政管理システムはある国で十分な資源配分を行なうための前提であることを強調する。これとの関連で、締約国は、予算策定の方法論に関する適切なシステムおよび予算分析のための高い能力が自国の行政内に存在することを確保するべきである。 30.子どもへの投資は経済的見返りが大きいことに鑑み、かつ子どものために配分される投資その他の資源が子どもの権利を履行するための手段となることを確保するための努力の一環として、委員会は、締約国が以下のことをするよう勧告する。 (a) 利用可能な限られた資源が最大の見返りをもたらすことを確保するための手段として、予算配分において子どもを優先すること。また、子どもに配分される資源を詳細に積算することを通じ、国家予算において子どもへの投資を可視化すること。 (b) 権利を基盤とする予算のモニタリングおよび分析、ならびに、いずれかの部門への投資がどのように「子どもの最善の利益」にかなっているかに関する子ども影響評価の活用を検討すること。 (c) とくに、子どもに対応する省庁を特定し、かつ、他の省も自省の予算およびプログラムがどのように子どもの経済的、社会的および文化的権利の実現に合致しているかを実証できるようにすることにより、子どもの経済的、社会的および文化的権利に対して包括的アプローチをとること。 31.委員会はまた、経済成長を目的とした配分が社会部門支出を犠牲にして重視されないようにすることを勧告する。これとの関連で、成長目標に関するマクロ経済的枠組みは、子どもの権利条約ならびに差別の禁止、子どもの最善の利益、参加、普遍性および説明責任の原則を基盤とする人間開発枠組みと調和するものとされるべきである。この枠組みの策定においてはまた、ミレニアム開発目標(MDG)、「子どもにふさわしい世界」、権利を基盤とする貧困削減戦略書、および、条約にしたがって策定された国家的行動計画も考慮に入れることが求められる。 資源の配分・利用における透明性および説明責任 32.国家予算は政府の優先順位を反映する中心的政策文書であるから、予算がどの程度子どもの権利の実現のための手段として機能しているかは、予算がどの程度効果的かつ効率的に運営され、かつ子どものための投資を優先しているかということと密接に関係している。したがって、締約国が内部的にも外部的にも予算配分プロセスの透明性を一貫して確保することは、きわめて重要である。内部的透明性とは、歳入および歳出に関する情報が、支出に関する主要な決定がどのように子どもに影響する可能性があるかについての影響評価を実施しているすべての政府機関に利用可能とされることを含意する。外部的透明性とは、予算は市民社会を含むすべての関係者に対して公開されかつアクセス可能とされるべきであり、かつ、予算上の選択および配分に関する情報が、公衆に対し、子どもにやさしい方法により、包括的かつ理解が容易な言葉で利用可能とされるべきであることを意味するものとして理解される。 33.予算データは入手および検証が困難な可能性があり、かつ、場合によっては予算に関わる能力が貧弱なことによって、またときには汚職によって影響を受けている可能性もある。したがって、データおよび指標を正確に体系化し、かつ予算を効果的に分析することは、子どものための経済的、社会的および文化的権利の実現に向けた努力を監視するうえでとりわけ重要な要件である。 34.委員会は以下のことを勧告する。 (a) 締約国が国家予算に関する公の対話を奨励すること。予算プロセスは透明かつ参加型であるべきである。国家予算の編成および実施の指針となる基準(資源配分の指針となる優先順位を含む)についての情報は、説明責任および公の吟味を奨励するため、理解が容易な言葉で公に利用可能とすることが求められる。 (b) 資源の配分および利用に関する効果的な資源追跡システムならびに子どもに関する包括的なデータ収集システムを開発および実施すること(金融データ、および国際比較が可能でありかつ定期的審査の対象とされる共通指標も含む)。 (c) 締約国が子どものための予算策定をどの程度重視しているかについて委員会が十分に評価できるようにするため、条約に基づいて提出される締約国報告書に、さまざまな予算配分に関する分析的な統計情報を記載すること。これらの統計データにおいては、利用可能な資源および子どもへの配分率を部門別に示すことが求められる。このような情報においては、政府の他の優先課題(軍事予算の配分および軍事支出を含むが、これに限られない)に対する子どもに関する配分および支出の割合が明確に示されるべきである。 (d) とくに予算分析に関するリテラシーを促進および奨励するための努力を通じ、国レベルのあらゆる関係者が予算プロセスに関与するようにすること。 (e) 締約国、政府省庁および政府職員ならびに子どものための予算策定に関与している他の関係者の、一貫したかつ制度的な説明責任が確保されるべきであること。このような説明責任が一貫して適用されるようにするため、締約国は、非効率および資源の無駄を是正するための措置をとり、かつ公職者に対して自己の行動に関する説明責任を果たさせるための効果的機構を確立するよう、奨励される。 (f) 条約に基づく締約国報告書を委員会の前で説明する代表団に財務省の代表を含めること。 子どもその他の関係者の参加 35.委員会は、条約の他の規定の実施の不可欠な一部として条約第12条を実施する締約国の義務を再確認する。これとの関連で、委員会は、資源配分のプロセスができるかぎり参加型のものであること、および、子どもおよびその親が予算プロセスの策定、実施および監視に最初から関与することを確保することの重要性を強調するものである。委員会はまた、適切な場合には政策および予算の策定プロセスに市民社会が効果的に関与することの重要性も強調する。 36.「意見を聴かれる子どもの権利」に関する2006年9月の一般的討議に照らし、かつ、国家予算に関する透明かつ民主的な決定プロセスが経済的、社会的および文化的権利に与える肯定的影響を認め、委員会は、締約国に対し、とくに親、教員、養育者および子ども自身が予算上の決定に参加できるようにすることを通じて予算プロセスへの子ども参加を促進するよう奨励するとともに、参加型プロセスを通じて達成された結果について委員会に情報を提供するよう要請する。 37.委員会は、締約国が、第4条に関わる予算配分に関してのみならず、このような配分がどのようなプロセスを通じて行なわれたのか、および、子ども、親およびコミュニティが意思決定プロセスにどの程度関与したのかに関しても、委員会に報告するよう勧告する。報告書にはまた、子どものための国家的行動計画および子どもに関するその他の政策文書が国レベルの予算プロセスにどのように関連しているのかに関する情報も含まれているべきである。 資源の「最大限」の利用 38.委員会は、「利用可能な資源(手段)を最大限に用いることにより」が正確なところ何を意味するのか、および、それをどのように測定できるのかという問題が、締約国、子どものために活動している国際社会および委員会自身にとっての難問であることを認識する。委員会はまた、統計変数には限りがあり、かつ、人権指標ではさまざまな文脈における個々の人権の複雑性および個別性をとらえられないことも認識するものである。しかし委員会は、資源の利用における評価手段の重要性を強調するとともに、締約国が条約によって定められた子どもの権利の実施における進展を監視および評価することを援助するため、測定可能な指標を開発することの必要性を認識する。 39.委員会は、包括的かつ細分化された共通人権指標を開発するためにOHCHRが現在進めている取り組みを称賛しつつ、ユニセフに対し、子どもの権利を実施するための政策の策定、監視および評価を向上させることに関して各国を援助する目的で、子ども固有の指標を開発するよう促す。このような指標システムは、期限を定めた具体的目標(ミレニアム開発目標のような国際的に承認されたものを含む)とあいまって、人権にかかわる課題を明らかにするうえで役に立ち、かつ子どもの権利の実現における進展または後退の評価を可能とするであろう。 子どものための資源の配分・利用における優先順位 40.委員会は、条約に掲げられた差別の禁止の原則により、条約で保障されたすべての権利がすべての子どもに対して認められるべきであることが要求されていることを想起する。これとの関連で、委員会は、締約国が条約に基づいて受け入れた義務をいかなる意味でもないがしろにしまたは減殺することなく、周縁化された集団および不利な立場に置かれた集団の子どもを特定しかつ優先する必要があることを認識するものである。 41.委員会は、締約国が、それぞれの国内的文脈のなかで子どもの権利の実施を優先させるための努力を進めていくにあたり、資源配分に関して条約の4つの一般原則を指針とする国家的優先順位を定めることを検討するよう勧告する。このような優先順位は、もっとも周縁化された集団および不利な立場に置かれた集団の子どもに特別な注意を払いながら、権利基盤アプローチを用いて定められるべきである。 42.国は、子どもに関する国家的優先順位が、実際に効果を発揮するようにすべく、定期的に独立の立場から監視されうることを確保するべきである。議会審査の文脈でこのような監視を行なうことも可能であろうが、委員会は、国が、子どもが実施にどの程度権利を享受しているかとの関連で国家的優先順位の外部的審査を行なえるようにする監視機構を設置し、かつこれに勧告権限を与えるよう強く勧告する。国家的優先順位の審査の結果は、委員会に対する定期報告書に記載されるべきである。 子どもの経済的・社会的・文化的権利の裁判適用可能性 43.立法(前掲パラ22および23参照)に加え、国は、経済的、社会的および文化的権利を含むあらゆる人権に関して司法的救済が利用できることを確保することも要求されている。委員会は、条約で定められた経済的、社会的および文化的権利の多くが、法的に執行可能な権利としてすでに広く受け入れられていることに留意する。たとえば、無償のかつ義務的な初等教育は多くの国の国内法および実行に反映されている権利のひとつである。しかし、子どもの全面的発達およびウェルビーイングにとって根本的重要性を有する経済的、社会的および文化的権利の多くを、裁判所で適用可能なものとしてまだ認めていない国も多い。委員会は、条約で掲げられた子どもの経済的、社会的および文化的権利に全面的効果を与えるために、これらの権利が国内的かつ実際的に裁判適用可能なものとされなければならないことを認識する。 44.委員会は、締約国が、子どもの経済的、社会的および文化的権利の全面的実現を確保するため、国内の裁判機関がこれらの権利に全面的な裁判適用可能性を与えられることを確保するよう勧告する。 45.締約国は、司法手続が子どもに配慮しかつ子どもにやさしいものであること、および、適切な場合にはとくに子どもオンブズパーソンまたは国家人権委員会を通じ、アクセスしやすくかつ独立の立場からの法的助言を子どもおよびその代理人が利用できることを、確保するべきである。 漸進的実現 46.経済的、社会的および文化的権利の「漸進的実現」の問題に関して、委員会は、漸進的実現の原則がしばしば、これらの権利は即時適用されるものではなく希望的性質のものにすぎないことを意味するものとして誤解および解釈されていることに留意する。 47.委員会は、漸進的実現が、条約締約国に対し、子どもの経済的、社会的および文化的権利の全面的実現に向けて可能なかぎり迅速にかつ効果的に進んでいくために的を絞った措置をとる即時的義務を課すものとして理解されるべきであることを勧告する。委員会はとくに、利用可能な資源の水準に関わらず即時的実施が要求される義務、すなわちこれらの権利の享受において差別されないことを保障する義務およびこれらの権利の実施に向けて即時的措置をとる義務があることを強調するものである。また、経済的、社会的および文化的権利の享受を阻害する可能性があるいかなる後退的措置もとらない義務も、これらの権利の漸進的実現に向けた義務に内在すると考えられる。 48.漸進的実現の概念に並行して存在するのが、国の「最低限の中核的義務」という考え方である。中核的義務とは、少なくとも人が尊厳をもって生活できる最低条件を確保することを意図している。経済的、社会的および文化的権利に関する委員会(CESCR)はこの義務、すなわち不可欠な食料、プライマリーヘルスケアへの平等なアクセス、基礎的な居住場所および住居、社会保障または社会扶助の適用、家族の保護ならびに基礎教育の提供に関して最低水準の保護(最低限の中核的内容)をいかなるときでも保障する国の義務を系統だった形で強調してきた。すべての国は、その発展水準に関わらず、これらの義務を実施するために優先事項として即時的措置をとるよう要求される。利用可能な資源が目に見えて不十分である場合でも、当該国はなお、自国で支配的な状況下において関連する権利が可能なかぎり広く享受されることを確保するために尽力することを要求される。このように、権利の中核に関わる義務の遵守は資源の利用可能性に依存するものとして理解されるべきではない。 49.委員会は、締約国は少なくとも経済的、社会的および文化的権利の最低限の中核的内容を充足させる義務を負うと考えるとともに、締約国が、子どもの経済的、社会的および文化的権利を保護、尊重および充足するためにとった措置が「十分」であるかどうかの自己評価を行なうにあたり、経済的、社会的および文化的権利に関する委員会が「利用可能な資源の最大限の利用」に関する声明で定めた基準を綿密に検討し、かつ子どもとの関連でこれを適用するよう勧告する。 国際協力の役割 50.委員会は、第4条における国際協力への言及が国際開発援助、とくに第4条で述べられている権利の実現のための援助を行なう締約国の法的義務まで課すものかどうかについて、多様な意見が存在することに留意する。 51.委員会は、子どもの権利については先進国および開発途上国が責任を共有していると信じるものである。締約国は、例外なくすべての国の子どもの経済的、社会的および文化的権利を尊重および保護しなければならず、かつ――協力を行なう立場にあるときは常に――開発協力を通じてこれらの権利を充足するためにあらゆる可能な措置をとらなければならない。同時に、資源面で深刻な制約を有している国には、国際的な協力および援助を求める責任がある。このように、外部からの支援に依存しているというだけで不作為を正当化することはできないのであって、このような国は少なくとも、自国で支配的な状況下において関連する権利が可能なかぎり広く享受されることを(とくに社会でもっとも不利な立場に置かれたおよび周縁化された構成員または集団を対象として)確保するため、能力の及ぶかぎりであらゆる可能な努力を行なったことを実証する責任を負わなければならない。 52.委員会は、「条約の実施に関する一般的措置」についての一般的意見5号(2003年)[4] で述べた見解を想起および補強し、以下のことを勧告する。 (a) 締約国は、国際的に合意された目標(国内総生産の0.7%を国際開発援助に充てるという国連の目標を含む)を達成するとともに、開発途上国およびドナー諸国の共通の責任として、すべての人が最高度の質の基礎的社会サービスに持続可能な形でアクセスできることを達成する目的で、20/20イニシアチブの目標を追求するためにあらゆる可能な措置をとること。 (b) ドナーである締約国は、子どもに直接間接に関わる国際開発援助の枠組みとして条約を考慮すること。ドナー諸国のプログラムは権利を基盤としたものであるべきであり、かつ、国際支援の一定割合は子どもの権利の実施のために用いるよう使途指定が行なわれるべきである。これとの関連で、委員会は、締約国が行なう二国間および多国間の開発協力で対象とされているすべての部門で子どもの権利が尊重および保護されることを確保すべく、条約の原則および精神にしたがって国際的な援助および協力に関する立法が制定されることを歓迎および奨励する。 (c) 国際援助を受領している締約国は、優先課題として、その十分な部分をとくに子どもに対して配分すること。 (d) 国際金融機関は、恒常的かつ組織的に、その国際支援の一定割合を子どもの権利の実施のために用いるよう使途指定を行ない、かつコンディショナリティーを含むその活動が子どもの権利に与える影響を評価すること。また、その政策の策定および実施において子どもの最善の利益が第一義的に考慮されるようにすること。 (e) 国際金融機関その他の国際政府間機関ならびに非政府組織は、国家予算において子どもの権利を基盤とする予算策定を実施する受領国政府の能力を増進させ、かつ援助が効果的に調整されることを確保するため、受領国政府と協働するべきであること。 (f) 二国間および多国間の国際援助には、子どもならびに他の周縁化されたおよび不利な立場に置かれた集団の権利に否定的または有害な影響を及ぼす可能性のあるいかなる条件も付されるべきでないこと。 [4] 一般的意見5号(2003年、CRC/GC/2003/5)、パラ61-64。 委員会がフォローアップすべき勧告 53.委員会は、条約に基づく義務の実施についての報告に関して締約国を援助する目的で報告ガイドラインを発展させるため、継続的に尽力することの重要性を認識する。 54.委員会は、このイベント中に議論された問題に関わる条約第4条の実施に関連した問題について一般的意見を作成する可能性を追求する。 更新履歴:ページ作成(2011年6月11日)。
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今年度の施設の子どもへの支給が「安心子ども基金」であること、また来年度は「検討事項」であること -- (名無しさん) 2010-03-22 17 29 18
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第1回 子ども手当再審要求ビラ配り ※終了しました 日時:2010年3月13日(土) 13 00 ※途中参加歓迎(メールフォームより管理人までご連絡を) 場所:丸の内ビルディング ロクシタン前に集合 http //www.marunouchi.com/marubiru/access/index.html http //www.marunouchi.com/marubiru/search/floor/all_view.html#tabs1f 丸の内でのポスティングに内容が変更となりました! 途中参加の方はメールフォームよりご連絡ください!!! 持ち物:子ども手当再審議を要求する強い心 あと、少しの勇気 ※配布用のビラは現地でも配布いたしますので、てぶらでも結構です 活動報告 今日は、ビラ配りやポスティングなどの活動をされている方を紹介してもらい、 どのように子ども手当の再審議要求、阻止に繋げていくかを話しあいました。 以下、意見をまとめました。 まず、参加希望を増やすために、人が参加しやすいスレタイとテンプレを作る。 次スレ現行案 【デモ】子ども手当がひどすぎる【しよう】 ↑テンプレ含め、皆さんの意見をお待ちしています。 活動はあくまでも「子ども手当の再審議要求、もしくは反対活動であること」を明記。 (子ども手当自体に反対の方もいれば、外国人への支給のみに反対の方もいるので) 他の法案まで手がまわらないので、あくまで「子ども手当」についてのみ ビラ配りについてもデモについても、まず参加者の安全を考えて行動する。 参院通過が3月以内が考えられるので、それまでに一度大々的にデモをしたい。 一人でも多く参加者を集めるため、メジャーな団体と連絡を取り、一緒にデモができないかお願いする。 もし、大きな団体で反対デモがあるようなら、そちらに参加する。 配るチラシの文章とデザインの見直し。 ビラ配りの場所の見直し。 ビラ配りの参加希望をどうやって増やすか。 前のレスにあったように、大学生への周知活動ができないか考える。 周知しやすいように、wikiを携帯で見れるようにしたい。(←これは参加者のお友達にお願いできるかもしれません) なお、上記レスであがっているデモの危険性ですが、前のレスに書いた通り、 大きな団体(チャンネル桜等)に働きかけて一緒にできないかと考えています。 人数も集められるだろうし、人数が多いということはその分安全なので。 とりあえず、参議院での法案可決(にならないと良いのですが)がいつになりそうか、 週明け自民党に問い合わせます。 参加表明、激励の言葉、改善案などなど、 下記のコメント欄に記入をお願いします! 丸の内になったのですね。夕方以降なら行けそうなんですが -- (ぴい) 2010-03-13 15 11 31 参加できませんが応援してます。 -- (日本人-1) 2010-03-13 19 00 58 実際の行動 頭が下がります。 -- (感謝) 2010-03-13 20 58 16 自民時代は政治に興味がなかったです。まさか毎日新聞2面から見るようになるとは。頑張ってください。メール、FAXで応援させてもらいます。 -- (ニッポニアニッポン) 2010-03-14 02 04 38 頑張りましょう。私も地元北海道でポスティング。 -- (woody) 2010-03-14 03 02 55 こんな法律を野放しにしてちゃダメだ! -- (一国民) 2010-03-14 04 01 54 北海道なので参加できませんが応援しています! -- (北海道人) 2010-03-14 11 22 22 参加したいのですが。遠方より応援してます。 -- (保守) 2010-03-14 16 08 13 今知りました。参加したいです。毎朝違う駅で配りたいです。 -- (もも) 2010-03-15 00 06 29 応援してます!こちらも地道に周知活動がんばります。 -- (大和) 2010-03-17 22 07 05 名前 コメント すべてのコメントを見る
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子どもの権利委員会・一般的意見11号:先住民族の子どもとその条約上の権利(1) 一般的意見一覧 子どもの権利委員会 第50会期(2009年1月12日~30日)採択 CRC/C/GC/11(原文英語〔PDF〕) 日本語訳:平野裕二〔日本語訳全文(PDF)〕 目次 はじめに 目的と構成 第30条と国の一般的義務 一般原則 市民的権利および自由 家庭環境および代替的養護 基礎保健および福祉 教育、余暇および文化的活動 特別な保護措置 締約国の義務および条約の実施の監視 はじめに 1.子どもの権利条約の前文で、締約国は「子どもの保護および調和のとれた発達のためにそれぞれの人民の伝統および文化的価値の重要性を正当に考慮」するとしている。条約に掲げられたすべての権利は、先住民族であるか否かに関わらずすべての子どもに適用されるが、子どもの権利条約は、先住民族の子どもへの具体的言及が多くの規定に含まれている、初めての中核的人権条約である。 2.条約第30条は次のように述べている。「民族上、宗教上もしくは言語上の少数者、または先住民が存在する国においては、当該少数者または先住民に属する子どもは、自己の集団の他の構成員とともに、自己の文化を享受し、自己の宗教を信仰しかつ実践し、または自己の言語を使用する権利を否定されない」 3.さらに、条約第29条は、子どもの教育が、「すべての諸人民間、民族的、国民的および宗教的集団ならびに先住民間の理解、平和、寛容、性の平等および友好の精神の下で、子どもが自由な社会において責任ある生活を送れるようにすること」を目的として行なわれると規定している。 4.条約第17条も、締約国は「マスメディアが、少数者集団に属する子どもまたは先住民である子どもの言語上のニーズをとくに配慮することを奨励する」として、具体的言及を行なっている。 5.条約における先住民族の子どもへの具体的言及は、これらの子どもがその権利を全面的に享受するためには特別な措置が必要とされているという認識を示すものである。子どもの権利委員会は、条約締約国の定期報告書の審査において、先住民族の子どもの状況を一貫して考慮してきた。委員会の見るところ、先住民族の子どもは自己の権利の行使において相当の課題に直面しており、委員会はその総括所見においてその旨の具体的勧告を行なってきている。先住民族の子どもは、条約第2条に反し、保健ケアおよび教育へのアクセスを含むさまざまな分野で深刻な差別を経験し続けており、そのためにこの一般的意見を採択することが必要となったのである。 6.先住民族の子どもの状況およびこれらの子どもが差別を受けない権利への対応においては、子どもの権利条約に加え、さまざまな人権条約が重要な役割を果たしてきた。とくに、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(1965年)、市民的および政治的権利に関する国際規約(1966年)ならびに経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約(1966年)がある。 7.独立国における先住民族および種族民に関する国際労働機関第169号条約(1989年)には、先住民族の権利を前進させる規定が含まれており、かつ、教育の分野における先住民族の子どもの権利が具体的に強調されている。 8.国連人権委員会は2001年に「先住民族の人権および基本的自由の状況に関する特別報告者」を任命し、これはその後2007年に人権理事会によって追認された。同理事会は、特別報告者に対し、先住民族の子どもの状況に特段の注意を払うよう要請してきており、特別報告者の年次報告書および現地訪問報告書に掲げられたいくつかの勧告では、これらの子どもの具体的状況に焦点が当てられている。 9.2003年、国連・先住民族問題に関する常設フォーラムは先住民族の子どもと若者をテーマとする第2会期を開催した。同じ年、子どもの権利委員会は、恒例の一般的討議を開催して先住民族の子どもの権利について取り上げ、主として締約国を、しかし国連機関、人権機構、市民社会、ドナー、世界銀行および地域開発銀行も対象とする具体的勧告を採択した。 10.2007年、国連総会は「先住民族の権利に関する宣言」〔市民外交センター仮訳(PDF)〕を採択した。同宣言は、多くの分野で先住民族の子どもの権利に具体的に言及していることを含め、先住民族の権利に関する重要な指針を提供するものである。 目的と構成 11.子どもの権利条約で規定されている先住民族の子どもの権利に関するこの一般的意見は、これまでに概観した法的発展および取り組みを参考にしたものである。 12.この一般的意見の第一義的目的は、各国に対し、先住民族の子どもとの関連で自国の条約上の義務をどのように実施したらいいかという点に関する指針を提供するところにある。委員会がこの一般的意見の基盤としているのは、先住民族の子どもとの関連で条約の規定を解釈してきた自らの経験である。さらに、この一般的意見は、先住民族の子どもに関する2003年の一般的討議後に採択された勧告をもととし、先住民族の子ども自身を含む関係者との協議のプロセスを反映している。 13.この一般的意見は、先住民族の子どもが自己の権利を全面的に享受できることを阻害する具体的課題について探求し、かつ、先住民族の子どもの権利の効果的行使を保障するために国がとる必要のある特別な措置を浮き彫りにしようとするものである。この一般的意見ではさらに、望ましい実践を奨励し、かつ先住民族の子どもを対象とした権利の実際的実施における積極的アプローチを強調しようと試みている。 14.条約第30条ならびに文化、宗教および言語の享受に対する権利が、この一般的意見の主要な要素である。しかしその目的は、先住民族の子どもとの関連で実施するさいに特段の注意が必要とされるさまざまな規定について探求するところにある。とくに重視されるのは、関連する規定同士の相互関係、とりわけ委員会が特定した条約の一般原則(すなわち差別の禁止、子どもの最善の利益、生命、生存および発達に対する権利ならびに意見を聴かれる権利)との関係である。 15.委員会は、条約ではマイノリティの子どもおよび先住民族の子どもの両方に言及されていることに留意するものである。この一般的意見で言及している内容の一部はマイノリティ集団の子どもにも関連する場合があり、委員会は今後、マイノリティ集団に属する子どもの権利について具体的に述べた一般的意見を作成する可能性がある。 第30条と国の一般的義務 16.委員会は、子どもの権利条約第30条と市民的および政治的権利に関する国際規約第27条との緊密なつながりを想起するものである。いずれの規定も、自己の集団の他の構成員とともに、自己の文化を享受し、自己の宗教を信仰しかつ実践し、または自己の言語を使用する権利をとくに定めている。ここで確立された権利は個人的権利でも集団的権利でもあるととらえられており、先住民族の文化における集団的伝統および価値を認めた重要な規定である。委員会は、先住民族同士で文化的権利を行使する権利が、伝統的領域の使用および当該領域の資源の利用と密接に関係する場合があること[1]に留意する。 [1] 自由権規約委員会・第27条に関する一般的意見23号(CCPR/C/Rev.1/Add.5、1994年)、パラ3.2、7、ならびに子どもの権利委員会・先住民族の子どもに関する一般的討議勧告(2003年)、パラ4。 17.第30条は否定的文言で表現されているが、にも関わらず、同条は「権利」の存在を認め、かつその権利が「否定されない」ことを要求している。したがって、締約国には、この権利の存在および行使が否定されまたは侵害されることのないよう保護されることを確保する義務があるのである。委員会は、締約国自身の行為(立法機関、司法機関または行政機関のいずれによるものであるかは問わない)のみならず、締約国内の他の者の行為にも対抗するための積極的な保護措置が必要であるという点について、自由権規約委員会[2]と見解を一にするものである。 [2] 自由権規約委員会・第27条に関する一般的意見23号(CCPR/C/Rev.1/Add.5、1994年)、パラ6.1。 18.この文脈において、委員会はまた、先住民族の際立った文化、歴史、言語および生活様式を、国の文化的アイデンティティを豊かにするものとして、かつその保全を促進する目的で認識しかつ尊重するよう締約国に求めている点について、人種差別撤廃委員会も支持するものである[3]。 [3] 人種差別撤廃委員会・先住民族に関する一般的勧告23号(1997年、A/52/18 Annex V所収)。 19.先住民族の存在は自己認識によって確定されるのであり、これは先住民族の存在について判断する基本的基準である[4]。先住民族がその権利を行使するためには締約国が先住民族を公式に承認しなければならないという要件は存在しない。 [4] 独立国における先住民族および種族民に関するILO第169号条約第1条2項。 20.締約国報告書を審査してきた経験にもとづいて子どもの権利委員会が見るところによれば、多くの締約国は、条約上の自国の義務を実施するにあたり、先住民族の子どもの権利およびこれらの子どもの発達の促進に対して十分な注意を向けていない。先住民族の子どもを保護するために立法および政策を通じてとる特別措置は、当該コミュニティと協議しながら[5]、かつ条約第12条で定められているとおり協議のプロセスに子どもの参加を得ながら、とられるべきであると委員会は考える。委員会は、締約国の公的機関その他の機関が、文化的に適切であり、すべての当事者に情報の入手可能性が保障され、かつ双方向的なコミュニケーションおよび対話が確保されるような方法で、積極的に協議を行なうべきであると考えるものである。 [5] ILO第169号条約第2条、第6条、第27条。 21.委員会は、締約国に対し、条約の実施において第30条に十分な注意が向けられることを確保するよう促す。締約国は、条約に基づく定期報告書において、先住民族の子どもが第30条で定められた権利を享受できるよう保障するためにとられた特別措置についての詳しい情報を提供するべきである。 22.委員会は、条約第30条に定められた文化的慣行は条約の他の規定にしたがって実践されなければならないのであり、子どもの尊厳、健康および発達にとって有害であると見なされる場合にはいかなる状況下でも正当化できないことを、強調する[6]。有害な慣行、とくに早期婚および女性性器切除が存在するのであれば、締約国は、その根絶を確保するために先住民族コミュニティと協働するべきである。委員会は、締約国に対し、態度の変革を目的とした意識啓発キャンペーン、教育プログラムおよび立法を発展させかつ実施するとともに、有害な慣行を助長するジェンダー上の役割およびステレオタイプに対応するよう、強く促す[7]。 [6] UNICEF Innocenti Digest No. 11, Ensuring the Rights of Indigenous Children, 2004, p.7. [7] 子どもの権利委員会・「思春期の健康」に関する一般的意見4号(2003年)、パラ24。 一般原則 (条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 23.第2条は、自国の管轄内にある子ども一人ひとりの権利を、いかなる種類の差別もなく確保する締約国の義務を定めている。差別の禁止は、委員会によって、条約に掲げられたあらゆる権利の実施にとって基本的重要性を有する一般原則のひとつに挙げられてきた。先住民族の子どもは、差別から自由である不可譲の権利を有する。子どもを差別から効果的に保護するため、差別の禁止の原則がすべての国内法に反映されること、ならびに、それが司法機関および行政機関を通じて直接に適用され、かつ適切に監視および執行されうることを確保することは、締約国の義務である。効果的な救済措置が時宜を得て提供され、かつアクセス可能であるようにすることが求められる。委員会は、締約国の義務は公的部門のみならず民間部門にも及ぶことを強調するものである。 24.以前に実施に関する一般的措置についての委員会の一般的意見5号で述べられたように、差別の禁止の義務は、各国に対し、権利を認めかつ実現するために特別な措置が必要となる可能性がある子ども個人および子どもの集団を積極的に特定することを要求している。たとえば委員会は、とくに、差別または潜在的差別が特定できるように細分化されたデータ収集の必要性を強調してきた。差別に対応するためには、さらに、立法、行政および資源配分の変更ならびに態度を変革するための教育上の措置が必要になる可能性もある[8]。 [8] 子どもの権利委員会・「実施に関する一般的措置」についての一般的意見5号(2003年)、パラ12。 25.委員会は、多数の締約国報告書の審査を通じ、差別の原因となる状況を解消することおよびこのような子どもが他の子どもと平等な水準で条約の権利を享受できるようにすることを目的とした積極的措置を必要とする子どもに、先住民族の子どもも含まれることに留意する。締約国はとくに、先住民族の子どもが保健、栄養、教育、レクリエーションおよびスポーツ、社会サービス、居住、衛生ならびに少年司法の分野で文化的に適切なサービスにアクセスできることを確保するため、特別措置の適用を検討するよう促されるところである [9]。 [9] 先住民族の子どもの権利に関する一般的討議(2003年)の勧告、パラ9。 26.締約国がとることを要求される積極的措置のひとつに、先住民族の子どもの差別が現に存在するまたはその可能性がある分野を特定する目的で細分化されたデータを収集することおよび指標を開発することがある。先住民族の子どもの権利の享受に関わる欠陥および障壁を特定することは、立法、資源配分、政策およびプログラムを通じて適切な積極的措置を実施するために不可欠である [10]。 [10] 前掲勧告、パラ6。 27.締約国は、先住民族の子どもの差別に対処するために広報措置および教育上の措置がとられることを確保するべきである。条約第17条、第29条第1項(d)および第30条とあわせて解釈した場合の第2条に基づく義務により、各国は、先住民族の子どもの権利、および、差別的な態度および慣行(人種主義を含む)の解消に焦点を当てた広報キャンペーン、配布用資料および教材(学校教材および専門家向け教材の双方)を発展させることを要求される。締約国はさらに、先住民族の子どもおよび先住民族ではない子どもが異なる文化、宗教および言語を理解しかつ尊重するための、意味のある機会を提供するべきである。 28.委員会に提出する定期報告書において、締約国は、2001年の「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画との関連で先住民族の子どもの差別に対処するためにとった措置およびプログラムを明らかにするべきである [11]。 [11] 先住民族の子どもの権利に関する一般的討議(2003年)の勧告、パラ12。 29.特別措置の立案にあたり、締約国は、多面的な差別に直面している可能性がある先住民族の子どものニーズを考慮するとともに、農村部および都市部の先住民族の子どもが置かれている異なる状況も考慮に入れるべきである。女子が男子との平等を基礎としてその権利を享受することを確保するために、女子に対して特別な注意を払うことが求められる。締約国はさらに、特別措置において、障害のある先住民族の子どもの権利への対応が行なわれることを確保するべきである [12]。 [12] 障害のある人の権利に関する条約前文。国連・先住民族の権利に関する宣言(A/RES/61/295)〔市民外交センター仮訳(PDF)〕第21条および第22条。 子どもの最善の利益 30.先住民族の子どもに対して子どもの最善の利益の原則を適用する際には、特段の注意が必要である。委員会は、子どもの最善の利益は集団的権利としても個人的権利としてもとらえられていること、および、この権利を集団としての先住民族の子どもに適用する際にはこの権利が集団的文化権とどのように関連しているかについて検討する必要があることに、留意する。先住民族の子どもについては、本来対象とされるべき別個の検討が常に行なわれるわけではない。場合によっては、先住民族の子どもの特有な状況が、先住民族にとってのより幅広い関心事に関わるその他の問題(土地に関わる権利および政治的代表のあり方を含む)によって曖昧にされることもあった [13]。子どもの場合、集団の最善の利益を優先させることによって子どもの最善の利益をないがしろにしまたは侵害することはできない。 [13] UNICEF Innocenti Digest No. 11, Ensuring the Rights of Indigenous Children, 2004, p.1. 31.立法機関を含む国の機関がある先住民族の子どもの最善の利益を評価しようとするときは、先住民族であるその子どもの文化的権利、および、これらの権利を自己の集団とともに集団的に行使する必要性を考慮することが求められる。先住民族の子ども一般に影響を及ぼす立法、政策およびプログラムに関しては、先住民族コミュニティが協議の対象とされるべきであり、かつ、先住民族の子ども一般の最善の利益を文化的配慮のある方法でどのように決定できるかのプロセスに参加する機会を与えられるべきである。このような協議には、可能なかぎり、先住民族の子どもの意味のある参加が含められるべきである。 32.委員会は、子ども個人の最善の利益と集団としての子どもたちの最善の利益が異なる場合もあると考える。子ども個人に関する決定、典型的には裁判所による決定または行政決定においては、第一義的関心事となるのは特定の子どもの最善の利益である。しかし、子どもの集団的文化権を考慮することは、その子どもの最善の利益を判断することの一部である。 33.子どもの最善の利益の原則は、国に対し、自分たちの決定および行動が子どもの権利および利益にとってどのような意味合いを持つかを検討することによってこの原則を体系的に適用する立法制度、行政制度および司法制度全体を通じ、積極的措置をとることを要求する [14]。先住民族の子どもの権利を効果的に保障するため、このような措置には、子どもの最善の利益について判断するにあたり集団的文化権を考慮することの重要性について、関連する専門職の研修および意識啓発を行なうことが含まれよう。 [14] 子どもの権利委員会・「実施に関する一般的措置」についての一般的意見5号(2003年)、パラ12。 生命、生存および発達に対する権利 34.委員会は、人口比に照らして不相当に多くの先住民族の子どもが極度の貧困、すなわちその生存および発達に悪影響を及ぼす条件下で暮らしていることに、懸念とともに留意する。委員会はさらに、先住民族の子どもの乳幼児死亡率の高さならびに栄養不良および疾病の多さを懸念するものである。第4条は、締約国に対し、利用可能な資源を最大限に用いて、かつ必要な場合には国際協力を得て、経済的、社会的および文化的権利に対応するよう義務づけている。第6条および第27条は、生存および発達ならびに十分な生活水準に対する子どもの権利を定めている。国は、とくに栄養、衣服および住居に関して文化的に適切な物質的援助および支援のプログラムを提供することにより、親および先住民族の子どもに責任を負う他の者によるこの権利の実施を援助するべきである。委員会は、先住民族の子どもが十分な生活水準に対する権利を享受すること、および、これに関する措置が、進展を測定するための指標とあわせて、子どもを含む先住民族とのパートナーシップに基づいて発展させられることを確保するため、締約国が特別措置をとることの必要性を強調する。 35.委員会は、子どもの発達とは「ホリスティックな概念であり、子どもの身体的、精神的、霊的、道徳的、心理的および社会的発達を包含するものである」という、一般的意見5号で述べた理解 [15] をあらためて繰り返す。条約前文は、とくに子どもの保護および調和のとれた発達に言及しながら、各人〔ママ、条約では「各人民」〕の伝統および文化的価値の重要性を強調している。先住民族の子どものコミュニティが伝統的生活様式を維持している場合、伝統的土地の使用は、子どもの発達および文化の享受にとって相当の重要性を有する。締約国は、生命、生存および発達に対する子どもの権利を可能なかぎり最大限に確保しつつ、伝統的土地および自然環境の質の重要性を緊密に考慮するべきである。 [15] 前掲。 [16] UNICEF Innocenti Digest No. 11, Ensuring the Rights of Indigenous Children, 2004, p.8. 36.委員会は、ミレニアム開発目標(MDG)の重要性を再確認するとともに、各国に対し、先住民族の子どもとの関連でMDGの全面的実現を確保するため、子どもを含む先住民族と交流するよう求める。 子どもの意見の尊重 37.委員会は、第12条との関連で、自己の意見を表明する個人としての子どもの権利と、自分たちに関係する事柄についての協議に子どもたちが集団として関与できるようにする、集団的に意見を聴かれる権利との間には違いがあると考える。 38.先住民族の子ども個人との関連では、締約国には、自己に影響を与えるすべての事柄について直接または代理人を通じて自己の意見を表明し、かつこの意見を子どもの年齢および成熟度にしたがって正当に重視される子どもの権利を尊重する義務が存する。この義務はいかなる司法上または行政上の手続においても尊重されなければならない。先住民族の子どもによるこの権利の行使を妨げる障壁を考慮し、締約国は、子どもの自由な意見表明を奨励する環境を提供するべきである。意見を聴かれる権利には、代理人を指名する権利、文化的に適切な通訳および意見を表明しない権利も含まれる。 39.この権利が集団としての先住民族の子どもたちに適用される場合、締約国は、このような子どもたちの参加を促進するうえで重要な役割を果たすのであり、このような子どもたちが自分たちに影響を与えるすべての事柄について協議の対象とされることを確保するべきである。締約国は、このような子どもたちの参加が効果的なものであることを保障するための特別戦略を立案するよう求められる。締約国は、この権利がとくに学校環境、代替的養護の現場およびコミュニティ一班で適用されることを確保するべきである。委員会は、締約国に対し、条約実施のためのプログラム、政策および戦略を策定、実施および評価するために先住民族の子どもおよびそのコミュニティと緊密に協働するよう勧告する。 市民的権利および自由 (条約第7条、第8条、第13~17条、第19条および第37条(a)) 情報へのアクセス 40.委員会は、条約第17条(d)および第30条にしたがい、メディアが先住民族の子どもの言語的ニーズにとくに配慮することの重要性を強調する。委員会は、締約国に対し、先住民族の子どもが自分自身の言語によるメディアにアクセスできることを支援するよう奨励するものである。委員会は、先住民族の子どもが意見を聴かれる権利を効果的に行使できるようにするため、情報(自分自身の言語によるものを含む)にアクセスするこのような子どもの権利を強調する。 出生登録、国籍およびアイデンティティ 41.締約国は、すべての子どもが出生後直ちに登録されることおよび国籍を取得することを確保する義務を負う。出生登録は無償であり、かつすべての人にとってアクセス可能であるべきである。委員会は、先住民族の子どもが先住民族ではない子供よりも出生登録されないままであることが多く、かつ無国籍となるおそれが大きいことを懸念する。 42.したがって、締約国は、先住民族の子ども(遠隔地に住んでいる子どもを含む)が滞りなく登録されることを確保するために特別措置をとるべきである。関係コミュニティとの協議後に合意されるべきこのような特別措置には、移動班を設けること、定期的に出生登録キャンペーンを行なうこと、またはアクセスしやすさを確保するために先住民族コミュニティ内で出生登録所を指定することなどが含まれうる。 43.締約国は、出生登録の重要性、および、出生登録の欠如が登録されていない子どもにとっての他の権利の享受に悪影響を及ぼす可能性について、先住民族コミュニティが十分な情報を提供されることを確保するべきである。締約国は、先住民族コミュニティが自分たち自身の言語でこの旨の情報を入手できること、および、関係コミュニティと協議しながら公的意識啓発キャンペーンが行なわれることを確保するよう求められる [17]。 [17] UNICEF Innocenti Digest No. 11, Ensuring the Rights of Indigenous Children, 2004, p.9. 44.さらに、条約第8条および第30条を考慮し、締約国は、先住民族の子どもが、その文化的伝統およびアイデンティティを維持する権利にしたがい、その親が選択する先住民族名を得られることを確保するべきである。締約国は、先住民族の親が自分の子どもに望みの名前を選べる旨を定めた国内法を設けることが求められる。 45.委員会は、子どもがそのアイデンティティの要素の一部または全部を違法に剥奪された場合、そのアイデンティティを速やかに回復するために適当な援助および保護が提供されなければならないことを確認した条約第8条第2項に、各国の注意を喚起する。委員会は、締約国に対し、国連・先住民族の権利に関する宣言〔市民外交センター仮訳(PDF)〕第8条を念頭に置くよう奨励するものである。そこでは、先住民族(子どもを含む)の民族的アイデンティティを剥奪するいかなる行為をも防止し、かつそのような行為に対して救済措置を与えるための効果的機構が用意されなければならないと定められている。 家庭環境および代替的養護 (条約第5条、第18条(第1~2項)、第9~11条、第19~21条、第25条、第27条(第4項)および第39条) 46.条約第5条は、締約国に対し、親、または適用可能な場合には拡大家族もしくはコミュニティの構成員が、この条約で認められた権利を子どもが行使するにあたって、子どもの能力の発達と一致する方法で適当な指示および指導を行なう責任、権利および義務を尊重するよう求めている。締約国は、条約第3条、第5条、第18条、第25条および第27条第3項にしたがい、先住民族の家族およびコミュニティが子ども養育責任を果たすのを援助することによってこのような家族およびコミュニティの一体性を保護するために、効果的な措置がとられることを確保するべきである。[18] [18] 先住民族の子どもの権利に関する一般的討議(2003年)の勧告、パラ17。 47.締約国は、先住民族の家族およびコミュニティと協力しながら、先住民族の子ども(里親託置および養子縁組の手続中の子どもを含む)の家族状況に関するデータを収集するべきである。このような情報は、先住民族の子どもの家庭環境および代替的養護に関わる政策を文化的に配慮された方法で立案するために活用することが求められる。子どもの最善の利益ならびに先住民族の家族およびコミュニティの一体性を維持することは、先住民族の子どもに影響を及ぼす発達プログラム、社会サービス・プログラム、保健プログラムおよび教育プログラムにおいて第一義的に考慮されるべきである。[19] [19] 前掲。 48.さらに、国は常に、先住民族の子どもが代替的養護に措置されるいかなる事案においても子どもの最善の利益の原則が至高の考慮事項とされることを確保し、かつ、条約第20条第3項にしたがい、子どもの養育に継続性が望まれることについて、ならびに子どもの民族的、宗教的、文化的および言語的背景について正当な考慮を払うべきである。家庭環境から分離される子どものなかで先住民族の子どもが過度に多い締約国では、代替的養護の対象とされる先住民族の子どもの人数を減らし、かつその文化的アイデンティティの喪失を防止するため、先住民族コミュニティと協議しながら、とくに対象を明確にした政策措置を策定することが求められる。具体的には、先住民族の子どもがコミュニティ外へ措置されるときは、締約国は、その子どもが自己の文化的アイデンティティを維持できることを確保するために特別措置をとるべきである。 基礎保健および福祉 (条約第6条、第18条(第3項)、第23条、第24条、第26条および第27条(第1~3項)) 49.締約国は、すべての子どもが到達可能な最高水準の健康を享受し、かつ保健ケア・サービスにアクセスできることを確保しなければならない。先住民族の子どもは、とくに保健ケア・サービスが劣等であるためまたは保健サービスにアクセスできないために、先住民族ではない子どもよりも健康状態が悪いことがしばしばある。委員会は、締約国報告書の審査に基づき、これが先進国にも開発途上国にも当てはまることに懸念とともに留意するものである。 50.委員会は、締約国に対し、到達可能な最高水準の健康の享受に関して先住民族の子どもが差別されないことを確保するために特別措置をとるよう促す。委員会は、先住民族の子どもの死亡率が高いことを懸念するとともに、締約国には、先住民族の子どもが保健サービスに平等にアクセスできることを確保し、かつ栄養不良ならびに乳幼児、子どもおよび妊産婦の死亡と闘う積極的義務があることに留意するものである。 51.締約国は、先住民族の子どもが保健ケア・サービスに養育にアクセスできることを確保するために必要な措置をとるべきである。保健サービスは、可能なかぎりコミュニティを基盤とし、かつ関係民族と協力しながら計画および運営することが求められる [20]。保健ケア・サービスが文化的配慮を備えたものであることおよび当該サービスに関する情報が先住民族の原語で利用可能とされることを確保するため、特別の考慮がなされるべきである。農村部および遠隔地もしくは武力紛争地域に居住している先住民族、ならびに、移住労働者、難民または避難民である先住民族を対象として保健ケアへのアクセスを確保することに、特段の注意を払うことが求められる。締約国はさらに、障害のある子どものニーズに特別な注意を払い、かつ関連のプログラムおよび政策が文化的に配慮したものとなることを確保するべきである [21]。 [20] ILO第169号条約第25条第1項および第2項。 [21] 子どもの権利委員会・「障害のある子どもの権利」に関する一般的意見9号(2006年)。 52.先住民族コミュニティ出身の保健ケアワーカーおよび医療スタッフは、伝統的医療と通常の医療サービスとの懸け橋として機能することによって重要な役割を果たすのであって、地元の先住民族コミュニティのワーカーの雇用が優先されるべきである [22]。締約国は、通常医療が先住民族コミュニティによってその文化および伝統に目配りしたやり方で活用されることを可能にするため、必要な手段および訓練を提供することによってこのようなワーカーの役割を奨励することが求められる。この文脈において、委員会は、伝統的医療に対する先住民族の権利についてのILO第169号条約第25条第2項ならびに国連・先住民族の権利に関する宣言〔市民外交センター仮訳(PDF)〕第24条および第31条を想起するものである [23]。 [22] ILO第169号条約第25条第3項。 [23] 国連・先住民族の権利に関する宣言(A/RES/61/295)〔市民外交センター仮訳(PDF)〕第24条および第31条。 53.国は、先住民族の子ども、家族およびそのコミュニティが、栄養、母乳育児、産前産後のケア、子どもおよび青少年の健康、予防接種、感染症(とくにHIV/AIDSおよび結核)、個人衛生、環境衛生ならびに農薬および除草剤の危険性など、健康および予防ケアに関わる問題についての情報および教育を受けることを確保するために、あらゆる合理的措置をとるべきである。 54.思春期の健康に関して、締約国は、性および生殖に関する情報およびサービス(家族計画および避妊法、若年妊娠の危険性、HIV/AIDSの予防ならびに性感染症(STI)の予防および治療に関するものを含む)に先住民族の青少年がアクセスできるようにするため、具体的戦略を検討するべきである。委員会は、締約国に対し、この目的のため、HIV/AIDSと子どもの権利に関する一般的意見3号(2003年)および思春期の健康に関する一般的意見4号(2003年)を考慮に入れるよう勧告する。 [24] 子どもの権利委員会・「HIV/AIDSと子どもの権利」に関する一般的意見3号(2003年)および「思春期の健康」に関する一般的意見4号(2003年)。 55.一部の締約国では、先住民族の子どもの自殺率が先住民族ではない子どもよりも有意に高い。このような状況にある締約国は、影響を受けているコミュニティとの協議の後、予防的措置のための政策を立案および実施し、かつ、先住民族の子どもの精神保健ケアに対して追加的財源および人的資源が文化的に適切な方法で配分されることを確保するべきである。根本的原因を分析しかつそれと闘うため、締約国は先住民族コミュニティとの対話を確立および維持することが求められる。 教育、余暇および文化的活動 (条約第28条、第29条および第31条) 56.条約第29条は、すべての子どもの教育の目的が、他の目標のなかでもとくに、子どもの文化的アイデンティティ、言語および価値ならびに自己の文明と異なる文明の尊重を発展させることを志向するべきであると定めている。さらなる目標には、すべての諸人民、民族的、国民的および宗教的集団ならびに先住民族出身者の間の理解、平和、寛容、性の平等および友好の精神の下で、子どもが自由な社会において責任ある生活を送れるようにすることも含まれている。教育の目的はすべての子どもの教育に適用されるのであり、締約国は、これらの目的がカリキュラム、教材の内容、教授法および政策に十分に反映されることを確保するべきである。締約国は、さらなる指針として、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号 [25] を参照するよう奨励される。 [25] 子どもの権利委員会・「教育の目的」に関する一般的意見1号(2001年)。 57.先住民族の子どもの教育は、その個人としての発達およびコミュニティの発展にも、より幅広い社会へのこのような子どもの参加にも寄与する。良質な教育は、先住民族の子どもが、個人的利益のためにかつコミュニティの利益のために経済的、社会的および文化的権利を行使および享受することを可能とする。さらに、人権の保護の向上のために政治的政策プロセスに影響を与えるべく市民的権利を行使する子どもの能力も強化される。このように、教育に対する先住民族の子どもの権利を実施することは、個人のエンパワーメントおよび先住民族の自決を達成する不可欠な手段である。 58.教育の目的が条約と一致することを確保するため、締約国は、条約第2条に掲げられたあらゆる形態の差別から子どもを保護することおよび人種主義と積極的に闘うことについて責任を負う。この義務は、先住民族の子どもとの関係でとりわけ妥当するところである。この義務を効果的に実施するため、締約国は、カリキュラム、教材および歴史教科書において先住民族の社会および文化が公正に、正確にかつ豊かな情報とともに描写されることを確保するよう求められる [26]。文化的および伝統的服装の利用の制約のような差別的慣行は、学校現場では回避されるべきである。 [26] ILO第169号条約第31条。国連・先住民族の権利に関する宣言(A/RES/61/295)〔市民外交センター仮訳(PDF)〕第15条。 59.条約第28条は、締約国が、平等な機会に基づいて初等教育が義務的なものとされかつすべての子どもに対して利用可能とされることを確保しなければならない旨、定めている。締約国は、中等教育および職業教育がすべての子どもにとって利用可能でありかつアクセスできるようにすることを奨励されている。しかし実際には、先住民族の子どもは先住民族でない子どもよりも就学する可能性が低く、かつ中退率および非識字率も依然として高い。ほとんどの先住民族の子どもは、教育上の便益および教員の不十分さ、直接間接の教育費負担、および、第30条にしたがった文化的対応済みの二言語カリキュラムの欠如を含むさまざまな要因により、教育へのアクセスを減殺されている。さらに、先住民族の子どもは学校現場で差別および人種主義に直面することがしばしばある。 60.先住民族の子どもが先住民族ではない子どもと平等な立場で教育への権利を享受できるようにするため、締約国は、そのための一連の特別措置がとられることを確保するよう求められる。締約国は、先住民族の子どもによる教育へのアクセスを向上させることをとくに目的とした政策およびプログラムを実施するため、対象を明確にした金銭的、物質的および人的資源を配分するべきである。ILO第169号条約第27条で定められているように、教育上のプログラムおよびサービスは、関係民族の具体的ニーズに対応するため、当該民族と協力しながら策定および実施することが求められる。さらに、政府は、先住民族が自分たち自身の教育機関および教育施設を設置する権利を認めるべきである(ただし、当該機関が、これらの民族との協議に基づき権限のある公的機関が定めた最低基準を満たすことを条件とする)[27]。国は、先住民族コミュニティが、教育の価値および重要性ならびに就学に対するコミュニティの指示の重要性を認識することを確保するため、あらゆる合理的な努力を行なうよう求められる。 [27] ILO第169号条約第27条。 61.締約国は、先住民族の子どもが暮らしている場所で学校施設に容易にアクセスできることを確保するべきである。必要であれば、締約国は、教育目的のラジオ放送および(インターネットを基盤とした)遠距離教育プログラムのようなメディアの活用を支援し、かつ、遊動生活の伝統を実践している先住民族のために移動学校を設置することが求められる。学校の年間スケジュールは、文化的慣行ならびに農繁期および儀式の期間を考慮に入れ、かつこれらに合わせることを追求するべきである。先住民族コミュニティから離れた寄宿制学校は、先住民族の子ども、とくに女子の就学をためらわせる可能性があるので、締約国は必要な場合にしかこれを設置するべきではない。寄宿制学校は、文化的に配慮された基準を遵守し、かつ定期的監視の対象とされるべきである。また、自分のコミュニティ外で暮らしている先住民族の子どもが、当該民族の文化、言語および伝統を尊重するやり方で教育にアクセスできることを確保するための試みも求められる。 62.条約第30条は、先住民族の子どもが自分自身の言語を使用する権利を定めている。この権利を実施するためには、子ども自身の言語による教育が必要不可欠である。ILO第169号条約第28条は、先住民族の子どもが、国の公用語を自由に操れるようになるための機会を提供される以外に、自分たち自身の言語で読み書きを教えられなければならないことを確認している [28]。二言語のおよび文化横断的カリキュラムは、先住民族の子どもの教育にとって重要な基準である。先住民族の子どもの教員は、可能なかぎり先住民族コミュニティから採用され、かつ十分な支援および訓練を与えられるべきである。 [28] ILO第169号条約第28条。 63.条約第31条に関して、委員会は、スポーツ、伝統的ゲーム、体育およびレクリエーション活動への参加に多くの積極的利益があることに留意し、締約国に対し、先住民族の子どもがこれらの権利の効果的行使を享受することを確保するよう求める。 特別な保護措置 (条約第22条、第38条、第39条、第40条、第37条(b)および(d)、第30条ならびに第32~36条) 武力紛争における子どもおよび難民の子ども 64.締約国報告書の定期的審査を通じ、委員会は、武力紛争の状況または国内不安の状況では先住民族の子どもがとりわけ被害を受けやすい立場に置かれるという結論に達した。先住民族コミュニティは、天然資源のために狙われている地域、または遠隔地にあるため国以外の武装集団の本拠地となっている地域に居住していることが多い。他に、先住民族コミュニティが、複数の国の紛争の対象となっている国境または辺境の付近に居住している状況もある。[29] [29] UNICEF Innocenti Digest No. 11, Ensuring the Rights of Indigenous Children, 2004, p.13. 65.そのような状況下にある先住民族の子どもは、死亡、強姦および拷問、強制避難、非自発的失踪、残虐行為の目撃、ならびに、親およびコミュニティからの別離という結果をもたらす、自己のコミュニティに対する攻撃の被害者となってきたし、そのような被害を受けるおそれに直面し続けている。軍隊および武装集団が学校を攻撃対象とすることによって、先住民族の子どもは教育へのアクセスを否定されてきた。さらに、先住民族の子どもは軍隊および武装集団によって徴用され、時には自分自身のコミュニティに対してさえ残虐行為を行なうことを強要されてきている。 66.条約第38条は、締約国に対し、人道法の規則の尊重を確保すること、文民を保護すること、および、武力紛争の影響を受けている子どもをケアすることを義務づけている。締約国は、敵対行為において先住民族の子どもが直面するリスクに特段の注意を払い、かつ、関係コミュニティと協議しながら最大限の予防措置をとるべきである。先住民族の領域における軍事的活動は可能なかぎり回避されるべきであり、委員会は、この点に関わって、国連・先住民族の権利に関する宣言〔市民外交センター仮訳(PDF)〕第30条を想起する [30]。締約国は、18歳未満の先住民族の子どもの徴兵を要求するべきではない。締約国は、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書を批准しかつ実施するよう奨励される。 [30] 国連・先住民族の権利に関する宣言(A/RES/61/295)〔市民外交センター仮訳(PDF)〕第30条。 67.武力紛争への徴用の被害を受けた先住民族の子どもに対しては、家族およびコミュニティへの再統合のために必要な支援サービスが提供されるべきである。条約第39条に一致する形で、締約国は、あらゆる形態の搾取、虐待、拷問または他のあらゆる形態の残虐な、非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは処罰、または武力紛争の被害を受けた子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を促進するために、あらゆる適当な措置をとらなければならない。先住民族の子どもの場合、このような対応は、子どもの文化的および言語的背景を正当に考慮しながら進められるべきである。 68.避難民または難民となった先住民族の子どもに対しては、文化的に配慮したやり方で特別な注意を向けかつ人道的援助を提供するべきである。安全な帰還ならびに集団的および個人的財産の回復を促進することが求められる。 経済的搾取 69.条約第32条は、すべての子どもが、経済的搾取から、かつ危険がありもしくはその教育を妨げ、またはその健康または身体的、心理的、精神的、霊的、道徳的もしくは社会的発達にとって有害となるおそれのあるいかなる労働に就くことからも、保護されるべきであると定めている。加えて、ILO第138号条約(最低年齢条約)および第182号条約(最悪の形態の児童労働条約)は、一方で廃止が必要とされる児童労働と、他方で子どもによって行なわれる容認可能な仕事(先住民族の子どもが生計手段を獲得する技能、アイデンティティおよび文化を習得できるようにするための活動を含む)とを峻別するための要素を掲げている。児童労働とは、子どもからその子ども時代、潜在的可能性および尊厳を奪い、かつその身体的および精神的発達にとって有害な労働のことである [31]。 [31] ILO, Handbook on Combating Child Labour among Indigenous and Tribal Peoples, 2006, p.9. 70.子どもの権利条約の諸規定は、薬物の不法な製造および取引における子どもの使用(第33条)、性的搾取(第34条)、子どもの人身取引(第35条)、武力紛争における子ども(第38条)に言及している。これらの規定は、ILO第182号条約に基づく最悪の形態の児童労働の定義と密接に関連するものである。委員会は、先住民族の子どもが、人口比に照らして不相応に貧困の影響を受けており、かつ、児童労働、とくに奴隷制、債務労働、子どもの人身取引(家事労働を目的とするものも含む)、武力紛争における使用、買春および危険な労働のような最悪の形態の児童労働で使用されるおそれがとくに高いことに、重大な懸念とともに留意する。 71.先住民族の子どもの間で生じている搾取的児童労働を(他のすべての子どもの場合と同じように)防止するためには児童労働に対する権利基盤アプローチが必要であり、またこのような防止は教育の推進と密接に関連している。先住民族コミュニティで生じている搾取的児童労働を効果的に解消するため、締約国は、教育を妨げている既存の障壁、ならびに、学校教育および職業訓練に関わる先住民族の子どもの具体的権利およびニーズを特定しなければならない。そのためには、教育の重要性および利益に関して先住民族のコミュニティおよび親との対話を維持するために特別な努力を行なうことが必要である。搾取的児童労働と闘うための措置をとるためには、さらに、子どもの搾取の構造的な根本的原因の分析、データ収集ならびに防止プログラムの立案および実施が必要となる。これは、締約国が財源および人的資源を十分に配分し、かつ先住民族のコミュニティおよび子どもと協議しながら進めなければならない。 性的搾取および人身取引 72.第20条の規定とあわせて考慮されるべき条約第34条および第35条は、国に対し、子どもが性的搾取および虐待から、ならびにいかなる目的による誘拐、売買または取引からも保護されることを確保するよう求めている。委員会は、貧困および都市への移住の影響を受けているコミュニティに属する先住民族の子どもが性的搾取および人身取引の被害者となるおそれが高いことを懸念するものである。若い女子、とりわけ出生時に登録されなかった女子はとくに被害を受けやすい。先住民族の子どもを含むすべての子どもの保護を向上させるため、締約国は、子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーに関する選択議定書を批准しかつ実施するよう奨励される。 73.国は、子どもを含む先住民族コミュニティと協議しながら防止措置を立案し、かつその実施のために対象を明確にした財源および人的資源を配分するべきである。国は、侵害のパターンの記録および根本的原因の分析も含む研究を基盤として防止措置を立案することが求められる。 少年司法 74.条約第37条および第40条は、国の司法制度内および当該司法制度との相互作用における子どもの権利を確保するものである。委員会は、先住民族の子どもの拘禁件数が人口比に照らして不相応に高いことが多く、かつ一部の事例ではその原因が司法制度および(または)社会の内部から生ずる組織的差別である可能性があること [32] に、懸念とともに留意する。このような高い拘禁率に対応するため、委員会は、締約国が条約第40条第3項に注意を向けるよう促すものである。同項は、国に対し、刑法に違反したとして申し立てられ、罪を問われ、または認定された子どもを、適当な場合には常に司法的手続によらずに取り扱う措置をとるよう求めている。委員会は、少年司法における子どもの権利に関する一般的意見10号(2007年)および総括所見で、子どもの逮捕、勾留または収監は最後の手段として以外には用いてはならないことを一貫して確認してきた [33]。 [32] 子どもの権利委員会・「少年司法における子どもの権利」に関する一般的意見10号(2007年)、パラ6。 [33] 前掲パラ23。 75.締約国は、先住民族による伝統的な修復的司法制度の立案および実施を、これらのプログラムが条約に掲げられた諸権利、とくに子どもの最善の利益にしたがうかぎりにおいて支援するため、あらゆる適切な措置をとるよう奨励される [34]。委員会は、少年非行の防止のためのコミュニティ・プログラムの発展を奨励する「少年非行の防止に関する国連指針」[35] に対し、締約国の注意を喚起するものである。締約国は、先住民族と協議しながら、先住民族の子ども、その家族およびコミュニティのニーズおよび文化を考慮した、コミュニティを基盤とする政策、プログラムおよびサービスの発展を支援しようと努めることが求められる。国は、先住民族が発展させかつ実施するものも含む少年司法制度に対し、十分な資源を提供するべきである。 [34] 先住民族の子どもの権利に関する一般的討議(2003年)の勧告、パラ13。 [35] 少年非行の防止に関する国連指針(リャド・ガイドライン)(1990年)。 76.締約国は、条約第12条にしたがい、子どもに影響を与えるいかなる司法手続または刑事手続においても、直接にまたは代理人を通じて意見を聴かれる機会をすべての子どもが有するべきであることを想起するよう促される。先住民族の子どもの場合、締約国は、必要なときは通訳者が無償で提供されること、および、子どもが文化的に配慮されたやり方で法的援助を保障されることを確保するための措置をとるべきである。 77.法執行および司法府に関与する専門家は、先住民族の子どもおよび他の特定の集団のために特別な保護措置をとる必要性も含め、条約およびその選択議定書の規定の内容および意味に関する適切な研修を受けるべきである。[36] [36] 子どもの権利委員会・「少年司法における子どもの権利」に関する一般的意見10号(2007年)、パラ97。 締約国の義務および条約の実施の監視 78.委員会は、締約国が、子どもの権利条約を批准したことにより、その管轄内にあるすべての子どもに対して条約上のすべての権利の実現を確保するための措置をとるよう義務づけられていることを想起するよう促す。尊重しかつ保護する義務は、各締約国に対し、先住民族の子どもの権利の行使が、立法機関、司法機関もしくは行政機関による締約国のいかなる行為からも、ならびに締約国内の他のいかなる主体もしくは人の行為からも、全面的に保護されることを確保するよう要求するものである。 79.条約第3条は、締約国に対し、子どもに関するあらゆる行動において子どもの最善の利益が第一義的に考慮されることを確保するよう求めている。条約第4条は、締約国に対し、自国の利用可能な資源を最大限に用いて条約を実施するための措置をとるよう要求している。第42条は、締約国はさらに、子どもおよびおとなが条約の原則および規定に関する情報を提供されることを確保するよう要求される旨、定めている。 80.先住民族の子どもを対象として条約の権利を効果的に実施するため、締約国は、条約にしたがって適切な立法を採択する必要がある。先住民族の子どもが先住民族ではない子どもと平等な水準で自己の権利を享受できることを効果的に確保するため、一連の分野で十分な資源が配分されるべきであり、かつ特別措置がとられるべきである。先住民族の子どもの権利が実施されている度合いを評価する目的でデータを収集および細分化しかつ指標を開発するため、さらなる努力を行なうことが求められる。文化的配慮のあるやり方で政策およびプログラム展開の取り組みを発展させるため、締約国は、先住民族コミュニティと、かつ先住民族の子どもたちと直接、協議するべきである。先住民族の子どもとともに活動している専門家は、子どもの権利の文化的側面をどのように考慮すべきかについて研修を受けることが求められる。 81.委員会は、締約国に対し、適用可能な場合には、先住民族の子どもの権利の実施およびこの点に関わる特別措置の採択についての情報を、委員会に提出する定期報告書によりよい形で統合するよう求める。さらに委員会は、締約国に対し、監視プロセスに先住民族が積極的に参加できるようにするため、条約およびその選択議定書ならびに報告プロセスに関する情報を翻訳し、かつ先住民族コミュニティおよび先住民族の子どもの間で普及するための努力を強化するよう要請するものである。さらに、先住民族コミュニティは、条約を、自分たちの子どもの権利の実施を評価するための機会として活用するよう奨励される。 82.最後に委員会は、締約国に対し、条約ならびに他の関連の国際基準(ILO第169号条約および国連・先住民族の権利に関する宣言〔市民外交センター仮訳(PDF)〕など)に基づき、先住民族の子どもに対して権利基盤アプローチをとるよう促す。先住民族の子どもの権利の実施が効果的に監視されることを保障するため、締約国は、先住民族コミュニティとの直接の協力を強化し、かつ、必要なときは国連機関を含む国際機関の技術的協力を追求するよう、促されるところである。先住民族の子どものエンパワーメント、および、文化、宗教および言語に対する先住民族の子どもの権利の効果的行使は、人権法上の義務と調和しかつこれを遵守する文化的に多様な国の、欠かせない基盤である。 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第4回 子ども手当再審要求ビラ配り ※終了しました 日時:3月21日(日)14 00~16 00 場所:原宿 ※雨天中止予定 集合は神宮橋に14時 時間厳守で!! 地図はこちらです→ GoogleMap より大きな地図で 子ども手当再審議要求 ビラ配り@原宿 を表示 ※途中参加はビラ配布場所にて合流してください。 内容: 駅前でのビラ配りを行います。 チラシや看板などはこちらでご用意しますので、 基本的に手ぶらで参加可能。 会費として準備にかかった費用(印刷代)などを頭数で割ったものを、 徴収させていただく可能性があります。 ※500円程度を想定 持ち物: 子ども手当再審議を要求する強い心 あと、少しの勇気 運営からのお願い: 街頭活動では、参加者のみなさんはこの会の顔としてみられることになります。 できるだけ相手に好印象をもたれるような服装での参加を心がけてください。 (スーツで参加するぐらいの勢いでお願いします) 補足事項: 参加者の安全第一での開催を目指します。 メガホンを使っての呼びかけなどは一切しません。 ノボリ・タスキ・ハチマキ等の使用も今のところ一切考えていません。 あくまでもみんなが参加しやすいクリーンな活動を心がけます。 そのほか、提案などあればメールフォームよりお願いいたします。 参加表明、激励の言葉など、 下記のコメント欄に記入をお願いします! 参加する場合は、よろしければメーリングリストにご登録ください。 ※匿名、メール非公開で参加可能です 参加できませんが、頑張ってください。応援してます! -- (lita) 2010-03-15 23 11 20 中野はどうでしょう? 長妻厚労大臣選挙区ですし、若い子育て世代多いと思います。 -- (nishi) 2010-03-16 09 03 15 衆院が通過してしまい危機感が高まっています。参加できませんが情報を拡散させていただきます! -- (佐々木) 2010-03-16 16 43 47 拡散させていただきます! -- (なな) 2010-03-16 16 45 31 子連れで参加できます? -- (おやじ) 2010-03-16 17 13 53 おやじ様 参加は可能ですが、安全を運営側で保障することはできません。自己責任で判断をお願いします。 -- (運営) 2010-03-16 18 39 16 原宿了解です。 昨日、今日の新聞切り抜きをボードに貼って持って行きます。 「子ども手当て もらえる外国人 もらえない日本人」 「財源不足で無理露呈」 -- (nishi) 2010-03-17 20 02 46 名前 コメント すべてのコメントを見る
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子どもの権利委員会・一般的意見12号:意見を聴かれる子どもの権利(2) 意見を聴かれる子どもの権利(1)より続く A.法的分析(続き) 3.締約国の義務 (a)締約国の中核的義務 48.意見を聴かれる子どもの権利は、適切な情報、必要な場合の十分な支援、意見がどの程度重視されたかに関するフィードバック、および、苦情申立て、救済措置または是正措置の手続へのアクセスを子どもたちに提供する機構を導入するために国内法を再検討しまたは改正する義務を、締約国に対して課すものである。 49.これらの義務を履行するため、締約国は以下の戦略をとるべきである。 第12条に関する制限的な宣言および留保を再検討しかつ撤回すること。 子どもの権利に関する幅広い権限を有する子どもオンブズマンまたは子どもコミッショナーのような、独立の人権機関を設置すること [8]。 子どもとともにおよび子どものために働くすべての専門家を対象として、第12条および実践におけるその適用についての研修を行なうこと。このような専門家には、弁護士、裁判官、警察官、ソーシャルワーカー、コミュニティワーカー、心理学者、ケアワーカー、居住型施設および刑務所の職員、あらゆる段階の教育制度の教員、医師、看護師その他の保健専門職、公務員および公的職員、庇護担当官ならびに伝統的指導者が含まれる。 規則および体制を整えることにより、子どもの意見表明を支援および奨励するための適切な条件を確保し、かつ子どもの意見が正当に重視されるのを確実にすること。このような規則および体制は、法律および機関内規則にしっかりと根ざしており、かつその効果に関して定期的評価が行なわれるようなものでなければならない。 広く蔓延している慣習的子ども観を変革するための公的キャンペーン(オピニオンリーダーおよびメディアによるものも含む)を通じ、意見を聴かれる子どもの権利の全面的実現を妨げる否定的態度と闘うこと。 [8] 独立した国内人権機関の役割に関する委員会の一般的意見2号(2002年)参照。 (b)司法的および行政的手続に関わる具体的義務 (i) 民事上の司法手続において意見を聴かれる子どもの権利 50.子どもの意見が聴かれなければならない主な問題について以下に詳述する。 〈離婚および別居〉 51.別居および離婚の事案において、当該関係のもとにある子どもが裁判所の決定の影響を受けることは明白である。子どもの養育費ならびに監護権および面接交渉の問題は、審判において、または裁判所が主導する調停を通じて、いずれにせよ裁判官によって決定される。多くの法域では、その法律に、関係の解消と関わって、裁判官は「子どもの最善の利益」を至高の考慮事項としなければならない旨の規定を置くようになっている。 52.このような理由から、別居および離婚に関するあらゆる立法には、子どもが意思決定担当者によっておよび調停手続において意見を聴かれる権利が含まれていなければならない。法域によっては、政策上または立法上の問題として、子どもに自己の意見を表明する力があると見なされるいずれかの年齢を定めることが望ましいとされている場合もある。しかし委員会は、この問題が個別事案ごとに決定されることを期待するものである。これは年齢および成熟度に関わる問題であり、そのため子どもの能力を個別に評価することが必要だからである。 〈親からの分離および代替的養護〉 53.家庭内で虐待またはネグレクトの被害を受けているという理由で子どもを家族から分離するという決定が行なわれるときは常に、子どもの最善の利益を判断するためその子どもの意見が考慮されなければならない。このような介入は、子ども、他の家族構成員または虐待もしくはネグレクトを訴えるコミュニティの構成員からの苦情申立てによって開始されることが考えられる。 54.委員会の経験では、意見を聴かれる子どもの権利は締約国によって常に考慮されているとはかぎらない。委員会は、締約国が、立法、規則および政令を通じ、里親養護または施設への措置、ケアプランの策定および見直しならびに親および家族の訪問に関わるものを含む決定において子どもの意見が求められかつ考慮されることを確保するよう勧告する。 〈養子縁組およびイスラム法のカファラ〉 55.子どもが養子縁組またはイスラム法のカファラのために措置され、かつ最終的に養子となりまたはカファラの措置が行なわれる見込みのときは、子どもの意見を聴くことがきわめて重要である。このようなプロセスは、継親または里親家族が子どもを養子とするときにも、子どもと養親になろうとする者がすでに一定期間ともに生活していた可能性もあるとはいえ、必要となる。 56.条約第21条は、子どもの最善の利益が最高の考慮事項であると述べている。養子縁組、カファラその他の措置に関する決定においては、子どもの意見を考慮することなく子どもの「最善の利益」を定義することはできない。委員会は、すべての締約国に対し、可能であれば養子縁組、カファラその他の措置の効果について子どもに情報を提供し、かつ子どもの意見が聴かれることを立法によって確保するよう促すものである。 (ii) 刑事上の司法手続において意見を聴かれる子どもの権利 57.刑事上の手続において、自己に影響を与えるすべての事柄について自由に自己の意見を表明する子どもの権利は、少年司法手続のあらゆる段階を通じて全面的に尊重されかつ実施されなければならない [9]。 [9] 少年司法における子どもの権利に関する委員会の一般的意見10号(2007年、CRC/C/GC/10)参照。 〈罪を犯した子ども〉 58.条約第12条第2項は、刑法に違反したとして申し立てられ、罪を問われまたは認定された子どもが、意見を聴かれる権利を有すべきことを求めている。この権利は、子どもが黙秘権を有する審判前の段階から、警察、検察官および予審判事によって意見を聴かれる権利まで、司法手続のあらゆる段階を通じて全面的に遵守されなければならない。この権利はまた、判決および処分の段階ならびに科された措置の実施の段階全体においても適用される。 59.調停を含むダイバージョンの場合、子どもは自由なかつ自発的な同意を与える機会を認められなければならず、かつ、提案されているダイバージョンの適切さおよび望ましさについて判断するにあたり法的その他の助言および援助を得る機会が与えられなければならない。 60.手続に実効的に参加するため、すべての子どもは、自己に対する被疑事実について迅速かつ直接にならびにその子どもが理解する言語で知らされなければならず、かつ、少年司法手続および裁判所がとる可能性のある措置についての情報も提供されなければならない。手続は、子どもの参加および自由な意見表明を可能にするような雰囲気のなかで行なわれるべきである。 61.法律に抵触した子どもの裁判その他の聴聞は非公開で行なわれるべきである。この原則に対する例外はきわめて限定されたものであるべきであり、国内法で明確に定められ、かつ子どもの最善の利益を指針とすることが求められる。 〈子どもの被害者および子どもの証人〉 62.犯罪の被害を受けた子どもおよび犯罪の証人である子どもに対しては、国際連合経済社会理事会決議2005/20「子どもの犯罪被害者および証人が関与する事案における司法についての国連指針」[10] にしたがって、自己の見解を自由に表明する権利を全面的に行使する機会が与えられなければならない。 [10] 国際連合経済社会理事会決議2005/20、とくに8、19および20条参照。下記URLで入手可:www.un.org/ecosoc/docs/2005/Resolution%202005-20.pdf 63.このことはとくに、子どもの被害者または(および)証人が、審査中の事案への関与に関わる関連の事柄について協議の対象とされ、かつ、司法手続への関与に関する意見および懸念を自由にかつその子どもなりの方法で表明できることを確保するために、あらゆる努力が行なわれなければならないということを意味する。 64.子どもの被害者および証人が有するこの権利は、保健サービス、心理サービスおよび社会サービスの利用可能性、子どもの被害者および(または)証人の役割、「尋問」が行なわれる方法、苦情を申し立てたり捜査および裁判手続に参加したりする際に子どものために用意されている支援のしくみ、聴聞が行なわれる具体的場所および時間、保護措置の利用可能性、補償を受けられる可能性、ならびに、上訴に関する規定について情報を知らされる権利とも関連している。 (iii) 行政上の手続において意見を聴かれる子どもの権利 65.すべての締約国は、第12条の要件を反映した行政手続を立法で策定し、かつ、意見を聴かれる子どもの権利を他の手続的権利(関連する記録の開示、聴聞の告知および親その他の者による代理に対する権利を含む)とともに確保するべきである。 66.子どもは裁判手続よりも行政手続に関与することになる可能性のほうが高い。行政手続はそれほど形式的なものではなく、より柔軟であり、かつ法令を通じて確立することが相対的に容易だからである。手続は、子どもにやさしく、かつアクセスしやすいものでなければならない。 67.子どもたちに関連する行政上の手続の具体例としては、学校における規律上の問題(たとえば停退学等)、学校証明書の発給拒否および成績関連の問題、少年拘禁所における規律上の措置および特権を認めることの拒否、保護者のいない子どもによる庇護申請、ならびに、運転免許の申請に対応するためのしくみなどがある。これらの事案において、子どもは意見を聴かれる権利を認められるべきであり、かつ「国内法の手続規則と一致する」その他の権利を享受できるべきである。 B.意見を聴かれる権利および条約の他の規定との関係 68.第12条は、一般原則のひとつとして、第2条(差別の禁止に対する権利)および第6条(生命、生存および発達に対する権利)のような他の一般原則と関連しており、かつ、とくに第3条(子どもの最善の利益の第一次的考慮)と相互依存関係にある。同条はまた、市民的権利および自由に関わる条項、とくに第13条(表現の自由に対する権利)および第17条(情報に対する権利)とも密接に関連している。さらに、第12条は条約の他のすべての条項とも関係しているのであって、これらの規定は、子どもがそれぞれの条項に掲げられた権利およびその実施について自分なりの意見を有する主体として尊重されるのでなければ、全面的に実施することができない。 69.第12条と第5条(子どもの発達しつつある能力ならびに親による適切な指示および指導、この一般的意見のパラ84参照)との関係はとくに関連性を有する。親が指導を与える際には子どもの発達しつつある能力を考慮に入れることがきわめて重要だからである。 1.第12条と第3条 70.第3条の目的は、子どもに関わるすべての行動において、その行動が公的もしくは私的な社会福祉機関、裁判所、行政機関または立法機関によってなされたかどうかに関わらず、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保することである。このことは、子どものためにとられるすべての行動において、その子どもの最善の利益が尊重されなければならないことを意味する。子どもの最善の利益は、締約国に対し、子どもの最善の利益が考慮されることを確保するための措置を行動プロセスに導入するよう義務づける手続的権利とそれほど変わらない。条約は、締約国に対し、これらの行動の担当者が第12条で定められているとおりに子どもの意見を聴くことを確保するよう、義務づけている。このような措置は義務的なものである。 71.子どもとの協議に基づいて確立された子どもの最善の利益は、諸機関、公的機関および行政の行動において考慮されるべき唯一の要素というわけではない。しかしそれは、子どもの意見と同様に、決定的重要性を有する要素である。 72.第3条ではもっぱら個別事案が対象とされているが、子どもに関わるあらゆる行動において集団としての子どもの最善の利益が考慮されるよう要求していることも明らかである。したがって締約国には、子どもたちの最善の利益を明らかにする際に子ども一人ひとりの個別的状況を考慮するのみならず、集団としての子どもたちの利益も考慮する義務がある。さらに、締約国は、官民諸機関、公的機関および立法機関の行動も検討しなければならない。この義務が「立法機関」に対しても拡大されていることは、子どもたちに影響を与えるすべての法令または規則は「最善の利益」基準を指針としなければならないことを明確に示すものである。 73.いずれかの定義による集団としての子どもたちの最善の利益が、個別の利益を衡量する場合と同じやり方で確立されなければならないことには疑問の余地がない。多数の子どもたちの最善の利益が問題となっているときは、諸機関、公的機関または政府機関の長は、子どもたちに直接または間接に影響する行動(立法上の決定を含む)を計画する際、具体的に定義されていないそのような集団の子どもたちのうち関係する子どもたちから意見を聴き、かつその意見を正当に重視する機会も設けるべきである。 74.第3条と第12条との間に緊張関係はなく、2つの一般原則の補完的役割が存在するのみである。一方が子どもの最善の利益を達成するという目的を定め、他方が子ども(たち)の意見を聴くという目標を達成するための方法論を用意している。実のところ、第12条の要素が尊重されなければ第3条の正しい適用はありえない。同様に、第3条は、自分たちの生活に影響を与えるあらゆる決定における子どもたちの必要不可欠な役割を促進することにより、第12条の機能性を強化している。 2.第12条、第2条および第6条 75.差別の禁止に対する権利は、子どもの権利条約を含むすべての人権文書で保障されている固有の権利である。条約第2条にしたがい、すべての子どもは、第12条で規定されているものも含む自己の権利の行使に関して差別されない権利を有する。委員会は、自己の意見を自由に表明しかつその意見を正当に考慮される権利を、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、民族的もしくは社会的出身、財産、障害、出生またはその他の地位を理由とするいかなる種類の差別もなくすべての子どもに対して保障するために、締約国が十分な措置をとらなければならないことを強調するものである。締約国は、子どもたちが意見を聴かれる権利を保障され、かつ、自己に影響を与えるすべての事柄に他のすべての子どもたちと平等に参加できるようにされることを確保する目的で、差別(権利を侵害されやすい立場に置かれたまたは周縁化された集団の子どもたちに対するものも含む)に対応しなければならない。 76.委員会はとりわけ、一部の社会で、慣習的態度および慣行によりこの権利の享受が阻害されかつ深刻に制限されていることに、懸念とともに留意する。締約国は、条約に基づくすべての子どもの権利の全面的実施を達成する目的で、このような態度および慣行の否定的な影響について意識啓発および社会の教育を行ない、かつ態度の変革を奨励するための十分な措置をとらなければならない。 77.委員会は、締約国に対し、意見を聴かれ、必要であれば支援を受け、自己の意見を明らかにし、かつその意見を正当に重視される女子の権利に特別な注意を払うよう促す。ジェンダーに基づくステレオタイプおよび家父長制的価値観により、第12条に掲げられた権利の女子による享受が阻害されかつ女児に深刻に制限されているからである。 78.委員会は、障害のある人の権利に関する条約第7条において、障害のある子どもが、自己の意見を自由に表明し、かつその意見を正当に重視されることを可能にするために必要な援助および設備を提供されることを確保する義務が、締約国に課されていることを歓迎する。 79.子どもの権利条約第6条は、すべての子どもが生命に対する固有の権利を有すること、および、締約国は子どもの生存および発達を可能なかぎり最大限に確保しなければならないことを認めている。委員会は、意見を聴かれる子どもの権利のための機会を促進することの重要性に留意するものである。子ども参加は、第6条、および、第29条に掲げられた教育の目的に一致する形で子どもの人格の全面的発達および子どもの発達しつつある能力を刺激する手段のひとつだからである。 3.第12条、第13条および第17条 80.表現の自由に対する権利に関する第13条および情報へのアクセスに関する第17条は、意見を聴かれる権利を効果的に行使するために決定的に重要な前提である。これらの条項は、子どもが権利の主体であることを確立するとともに、第12条とあわせて、子どもにはこれらの権利を自分自身で、その発達しつつある能力にしたがって行使する資格があると主張している。 81.第13条に掲げられた表現の自由に対する権利は、第12条と混同されることが多い。しかし、どちらも強く関連し合っているとはいえ、これらの条項は異なる権利を定めたものである。表現の自由は、意見を有しかつ表明する権利ならびにいかなる媒体を通じても情報を求めかつ受け取る権利に関連している。これは、どのような意見を有しまたは表明するかについて締約国による制約を受けない子どもの権利を擁護するものである。したがって、これによって締約国に課される義務は、コミュニケーション手段および公の議論にアクセスする権利を保護しつつ、これらの意見の表明または情報へのアクセスに対する介入を行なわないことである。しかし第12条は、子どもに影響を与える事柄について具体的に意見を表明する権利、および、自分の生活に影響を及ぼす行動および決定に関与する権利に関連している。第12条は、締約国に対し、子どもに影響を与えるあらゆる行動および意思決定への子どもの積極的参加を容易にし、かつ表明されたこれらの意見を正当に重視する義務を履行するために必要な法的枠組みおよび機構を導入する義務を課しているのである。第13条に掲げられた表現の自由は、締約国によるこのような関与または反応を要求するものではない。ただし、第12条に一致する形で子どもの意見表明が尊重される環境をつくり出すことは、表現の自由に対する権利を行使する子どもの能力の構築にも寄与するものである。 82.第17条に一致する形で情報に対する子どもの権利を充足させることは、かなりの程度、意見表明権を効果的に実現するための前提である。子どもたちは、自分たちに関係するあらゆる問題についての情報に、その年齢および能力にふさわしい形式でアクセスできる必要がある。このことは、たとえば、自分たちの権利、子どもに影響を与えるいずれかの手続、国内法令および政策、地元のサービスならびに異議申立ておよび苦情申立ての手続に関する情報について当てはまる。締約国は、第17条および第42条に一致する形で、学校カリキュラムに子どもの権利を含めるべきである。 83.委員会はまた、メディアが、子どもの意見表明権に関する意識を促進する上でも、そのような意見を公的に表明する機会を提供する上でも重要な手段のひとつであることを、締約国が想起するよう求める。委員会は、さまざまな形態のメディアに対し、プログラムの制作に子どもたちの参加を得ること、および、子どもたちが自分たちの権利に関するメディアの取り組みを発展させかつ主導する機会を創設することにいっそうの資源を振り向けるよう、促すものである [11]。 [11] 子どもとメディアに関する一般的討議勧告(1996年):www.unhchr.ch/html/menu2/6/crc/doc/days/media.pdf 4.第12条と第5条 84.条約第5条は、締約国が、条約で認められた権利を子どもが行使するにあたって適当な指示および指導を行なう、親、法定保護者、または地方的慣習で定められている拡大家族もしくは共同体の構成員の責任、権利および義務を尊重しなければならないと述べている。したがって子どもは指示および指導に対する権利を有するのであるが、この指示および指導は、子どもの知識、経験および理解力の欠如を補うようなものでなければならず、かつ、同条で述べられているように、子どもの発達しつつある能力による制約を受けるものである。子ども自身の知識、経験および理解力が高まるにつれて、親、法定保護者または子どもに責任を負うその他の者は、指示および指導を、子ども自身の気づきを促すための注意喚起およびその他の形態の助言に、そしてやがては対等な立場の意見交換に、変えていかなければならない。このような転換は、子どもの発達の固定された時点で生じるのではなく、子どもが自分の意見を表明するよう奨励されるなかで着実に進行していくものである。 85.この要件は、子どもが自己の意見をまとめる力を有しているときは常にその意見が正当に重視されなければならないと定めた条約第12条によって活性化される。換言すれば、子どもが力を獲得していくにつれて、自己に影響を与える事柄の規制に関してますます高い水準の責任を負う資格を有するようになるのである [12]。 [12] 子どもの権利条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)。 5.第12条と子どもの権利一般の実施 86.以上のパラグラフで論じた諸条項に加え、条約のその他の条項も、ほとんどは子どもたちに影響を与える事柄への子どもたちの関与を要求しかつ促進するものである。このような多層的な関与については、参加という概念があらゆるところで用いられている。当然のことながら、このような関与の要となるのは第12条であるが、子どもたちとの協議に基づく計画、活動および発展は条約全体で要求されている。 87.実施の実践においては保健、経済、教育または環境のような幅広い問題への対処が行なわれるのであり、このような問題は個人としての子どものみならず子どもたちの集団および子どもたち一般にとっての関心事でもある。したがって、委員会は参加を常に幅広く解釈し、個々の子どもたちおよび明確な定義に基づく集団の子どもたちのみならず、先住民族の子ども、障害のある子どものような子どもたちの集団、または、社会における社会的、経済的または文化的生活条件によって直接もしくは間接に影響を受ける子どもたち一般のための手続も定められることを目指してきた。 88.子どもたちの参加に関するこのような幅広い理解は、〔国連〕総会第27特別会期で採択された成果文書「子どもにふさわしい世界」に反映されている。締約国は、「家庭および学校ならびに地方および国のレベルにおけるものも含む意思決定プロセスに、思春期の青少年を含む子どもが意味のある形で参加することを促進するためのプログラムを策定および実施する」ことを約束した(パラ32(1))。委員会は、子どもの権利条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号で、「政府が子どもたちとの直接の関係を発展させ、非政府組織(NGO)や人権機関を通じて仲介された関係に留まらないようにすることも重要である」と述べている [13]。 [13] 前掲パラ12。 C.さまざまな場面および状況における意見を聴かれる権利の実施 89.意見を聴かれる子どもの権利は、子どもが成長し、発達しかつ学習する多様な場面および状況で実施されなければならない。このような場面および状況では子どもおよびその役割についてそれぞれ異なるとらえ方が存在しており、それによって日常的事柄およびきわめて重要な決定への子どもの関与が促されたり制約されたりする場合がある。意見を聴かれる子どもの権利の実施に影響を及ぼす方法にはさまざまなものがあり、締約国は子ども参加を促進するためにそれらを活用することが可能である。 1.家庭における実施 90.子どもがもっとも幼い年齢から自由に意見を表明でき、かつそれを真剣に受けとめてもらえる家庭は重要なモデルであり、かつ、より幅広い社会において子どもが意見を聴かれる権利を行使するための準備の場である。子育てに対するこのようなアプローチは、個人の発達を促進し、家族関係を強化し、かつ子どもの社会化を支援するうえで役に立つとともに、家庭におけるあらゆる形態の暴力に対して予防的役割を果たす。 91.条約は、子どもに適当な指示および指導を行なう親その他の法定保護者の権利および責任を認めている(前掲パラ84参照)が、それは子どもがその権利を行使できるようにするためであることを強調するとともに、指示および指導が子どもの発達しつつある能力にしたがって行なわれることを求めている。 92.締約国は、親、保護者および保育者に対し、子どもに関わるあらゆる事柄について子どもたちの声に耳を傾け、かつその意見を正当に重視するよう、立法および政策を通じて奨励するべきである。親に対してはまた、社会のあらゆるレベルで自由に自己の意見を表明し、かつその意見を正当に考慮される権利の実現に関して子どもたちを支援することが望ましいという助言も与えられるべきである。 93.意見を聴かれる子どもの権利を尊重する子育てスタイルの発展を支援するため、委員会は、締約国が、すでにある前向きな行動および態度をもとにそれらをさらに発展させ、かつ条約に掲げられた子どもおよび親の権利に関する情報を普及する親教育プログラムを推進するよう勧告する。 94.そのようなプログラムでは次のような問題を取り上げる必要がある。 親子間の相互尊重関係 意思決定への子どもの関与 家族構成員全員の意見を正当に重視するということの意味 子どもの発達しつつある能力の理解、促進および尊重 家庭内で意見が食い違うときの対処方法 95.これらのプログラムは、女子と男子は平等な意見表明権を有しているという原則を強化するものでなければならない。 96.メディアは、親に対し、その子どもの参加は子ども自身、その家族および社会にとって高い価値を有するものであることを伝えるうえで強力な役割を果たすべきである。 2.代替的養護における実施 97.施設を含むあらゆる形態の代替的養護のもとにある子どもたちが、自分の措置、里親家族またはホームにおける養護の規制および日常生活に関わる事柄について自己の意見を表明でき、かつその意見が正当に重視されることを確保するための機構が導入されなければならない。このような機構には次のようなものが含まれるべきである。 措置、養護および(または)処遇に関わるいかなる計画についても情報を得る権利、ならびに、意思決定プロセス全体を通じて自己の意見を表明しかつその意見を正当に重視される意味のある機会を子どもに認める立法。 子どもにやさしい養護サービスの開発および設置において、意見を聴かれる子どもの権利およびその意見が正当に重視されることを確保する立法。 第3条に基づく義務にしたがい、子どもの養護、保護または処遇の提供について定めた規則および規制の遵守状況を監視するための、権限のある監視機関(子どもオンブズパーソン、子どもコミッショナーまたは査察官など)の設置。このような監視機関には、居住型施設(法に抵触した子どもたちを対象とした施設も含む)に何ら妨げられることなくアクセスし、子どもの意見および懸念を直接聴き、かつ、施設自体によって子どもの意見がどの程度聴かれかつ正当に重視されているかを監視する権限が与えられるべきである。 施設の方針およびあらゆる規則の策定および実施に参加する権限を有する、居住型養護施設における効果的機構の確立(たとえば女子および男子双方の代表による子ども会など)。 3.保健ケアにおける実施 98.条約の諸規定を実現するためには、子どもたちの健康的な発達およびウェルビーイングの促進に関する子どもの意見表明権および参加権を尊重することが必要である。このことは、保健ケアに関する個別の決定にも、保健政策の策定および保健サービスの開発への子どもたちの関与にも当てはまる。 99.委員会は、自分自身の保健ケアに関わる実務および決定への子どもの関与に関わって検討が必要な、それぞれ異なってはいるが関連しているいくつかの問題を明らかにする。 100.乳幼児を含む子どもたちは、その発達しつつある能力に一致した方法で、意思決定プロセスに包摂されるべきである。子どもたちに対しては、提案されている治療ならびにその作用および結果に関する情報(障害のある子どもにとって適切かつアクセスしやすい形式によるものも含む)が提供されるべきである。 101.締約国は、子どもたちが、子どもの安全またはウェルビーイングのために必要な場合、子どもの年齢に関わらず、親の同意を得ることなく秘密裡に医療上の相談および助言にアクセスできることを確保するための立法または規則を導入しなければならない。子どもたちは、たとえば家庭で暴力もしくは虐待を経験しているとき、リプロダクティブ・ヘルスに関わる教育もしくはサービスを必要とするとき、または保健サービスへのアクセスをめぐって親と子どもとの間に食い違いがあるときなどに、このようなアクセスを必要とする可能性がある。相談および助言に対する権利は医療上の同意を与える権利とは異なるものであり、いかなる年齢制限の対象にもされるべきではない。 102.委員会は、一部の国において、子どもが定められた年齢に達した時点で同意権が子どもに移行する制度が導入されていることを歓迎するとともに、締約国に対し、このような立法の導入を検討するよう奨励する。このようにして、当該年齢以上の子どもは、独立した有資格の専門家と協議した後に個別の専門的評価を受けなければならないという要件を課されることなく、同意を与える資格を認められるわけである。しかし委員会は、当該年齢未満の子どもが自己の治療について十分な情報に基づく意見を表明する能力を実証できるときは、この意見が正当に重視されることを締約国が確保するよう、強く勧告する。 103.医師および保健ケア施設は、子どもたちに対し、小児科学研究および臨床試験への参加に関わる権利について、明確かつアクセスしやすい情報を提供するべきである。その他の手続的保障に加えて十分な情報に基づく子どもの同意が得られるよう、子どもたちに対しては当該研究に関する情報が提供されなければならない。 104.締約国はまた、子どもの健康および発達のためのサービスの計画およびプログラム立案に関して子どもたちが自己の意見および経験を提供できるようにする措置も導入するべきである。子どもたちの意見は保健体制のあらゆる側面について求められるべきであり、これには、必要とされているサービスの種類、そのようなサービスを最善の形で提供するための方法および場所、サービスへのアクセスを妨げる差別的障壁、保健専門職の資質および態度、ならびに、自分自身の健康および発達について徐々に水準を上げながら責任を負う子どもたちの能力を促進する方法も含まれる。このような情報は、とくにサービスを利用しまたは研究に参加した子どもを対象とするフィードバック・システムおよび協議プロセスを通じて入手することが可能であり、かつ、子どもの権利を尊重する保健サービスの基準および指標を策定する目的で、地方または国の子ども評議会または子ども議会に送付することができる [14]。 [14] 委員会は、HIV/AIDSと子どもの権利に関する一般的意見3号(2003年、パラ11および12)および思春期の健康に関する一般的意見4号(2003年、パラ6)にも注意を促すものである。 4.教育および学校における実施 105.教育において意見を聴かれる子どもの権利を尊重することは、教育に対する権利の実現にとって根本的に重要である。委員会は、依然として続く権威主義、差別、敬意の欠如および暴力が多くの学校および教室の現実を特徴づけていることに、懸念とともに留意する。このような環境は、子どもが意見を表明することおよびこれらの意見が正当に重視されることに資するものではない。 106.委員会は、締約国が、以下の問題に関して子どもたちが意見を表明しかつその意見が正当に重視される機会構築のための行動をとるよう勧告する。 107.乳幼児期の教育プログラムを含むあらゆる教育環境において、参加型学習環境における子どもたちの積極的役割が促進されるべきである [15]。教授および学習においては、子どもたちの生活条件および展望が考慮に入れられなければならない。そのため、教育当局はカリキュラムおよび学校プログラムの計画に子どもたちおよびその親の意見を含めなければならない。 [15] 「万人のための教育に対する人権基盤アプローチ:教育に対する子どもたちの権利と教育における権利の実現のための枠組み」ユニセフ/ユネスコ(2007年)。 108.人権教育は、子どもが他の子どもたちおよびおとなとともに学び、遊びかつ生活する施設で人権が実践されないかぎり、子どもたちの動機づけおよび行動形成にはつながりえない [16]。とくに、意見を聴かれる子どもの権利は、条約で宣言されているとおり実際に自分たちの意見が正当に重視されているかどうか目の当たりにできるこれらの施設で、子どもたちによる批判的吟味の対象とされている。 [16] 教育の目的(条約第29条1項)に関する子どもの権利委員会の一般的意見1号(CRC/GC/2001/1)。 109.子ども中心の双方向型学習のために必要な協力と相互支援を刺激するような人間関係的雰囲気を教室につくり出すためには、子どもたちの参加が欠かせない。子どもたちの意見を重視することは、差別の解消、いじめの防止および規律維持のための措置においてとりわけ重要である。委員会は、ピア・エデュケーションおよびピア・カウンセリングの拡大を歓迎する。 110.意思決定プロセスへの子どもたちの着実な参加は、とくに、学級会、生徒会、ならびに、学校理事会および学校委員会への生徒代表の参加を通じて達成されるべきである。このような場で、子どもたちは学校方針および行動規範の策定および実施について自由にその意見を表明できる。これらの権利は、それを実施しようという公的機関、学校および校長の善意に依拠するのではなく、立法に掲げられる必要がある。 111.締約国は、学校に留まらず、教育政策のあらゆる側面について地方および国のレベルで子どもたちと協議するべきである。これには、教育制度、子どもたちに「2度目のチャンス」を与えるインフォーマルなおよびノンフォーマルな学習上の便益、学校カリキュラム、教授法、学校の構造、基準、予算策定および子ども保護システムの子どもにやさしい特徴を強化することも含まれる。 112.委員会は、締約国に対し、独立した生徒組織の発展を支援するよう奨励する。このような組織は、子どもたちが教育制度への参加役割を適切に果たすことを援助しうる。 113.次の学校段階への移行または能力・適性別コースもしくはクラスの選択に関する決定においては、意見を聴かれる子どもの権利が確保されなければならない。これらの決定は子どもの最善の利益に深い影響を及ぼすためである。このような決定は行政上または司法上の再審査に服さなければならない。加えて、規律維持に関わる事案においては、意見を聴かれる子どもの権利が全面的に尊重されるべきである [17]。とくに、子どもを授業または学校から排除する場合には、この決定は、教育に対する子どもの権利と矛盾することから、司法審査に服さなければならない。 [17] 締約国は、体罰を解消するための参加型戦略について説明した、体罰その他の残虐なまたは品位を傷つける形態の罰から保護される子どもの権利に関する委員会の一般的意見8号(2006年、CRC/C/GC/8)を参照することが求められる。 114.委員会は、多くの国で子どもにやさしい学校プログラムが導入されていることを歓迎する。これは、子どもたちと青少年が社会で積極的役割を果たしかつコミュニティ内で責任ある市民として行動できるよう準備させる、双方向的な、配慮と保護に満ちた参加型の環境を提供することを追求するものである。 5.遊び、レクリエーション、スポーツおよび文化的活動における実施 115.子どもたちは、発達および社会化のために遊び、レクリエーション、身体的および文化的活動を必要としている。これらの活動は、子どもの好みおよび能力を考慮に入れながら立案されるべきである。自己の意見を表明できる子どもたちは、遊びおよびレクリエーションのための設備のアクセスしやすさおよび適切さについて協議の対象とされるべきである。正式な協議プロセスに参加することができない、非常に幼い子どもたちおよび障害のある子どもたちの一部は、自分の希望を表明する特別の機会を提供されるべきである。 → 意見を聴かれる子どもの権利(3)へ続く 更新履歴:ページ作成(2011年5月2日)。
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国連・子どもの権利委員会:一般的討議日への子ども参加に関する作業手法 関連一般的討議のテーマ・勧告一覧 子どもの権利委員会の報告プロセスへの子ども参加に関する作業手法(2014年) CRC/C/155(2018年9月12日) 委員会が第78会期(2018年5月14日~6月1日)に採択。 原文:英語 日本語訳:平野裕二(日本語訳PDF) 子どもの権利委員会の一般的討議日への子ども参加に関する作業手法 目次 I.序および目的 II.子ども参加の基本的要件A.一般的原則 B.子どもの支援団体、付添いの大人および子どもファシリテーターの役割 C.パートナー組織の役割 III.子ども参加の手法A.テーマの選定 B.立案、計画および運営 C.資料の提出 D.一般的討議日および関連のサイドイベントへの参加 E.委員会の委員との非公開会合 F.フォローアップおよび評価 I.序および目的 1.子どもの権利委員会は、条約の内容および意味するところに関する理解を深められるようにするため、2年に1回、通常の会合が行なわれる日のうち1日を、子どもの権利条約のうち1もしくは複数の特定の条文または関連する主題についての一般的討議に充てている [1]。これは一般的討議日として知られている。国、国連人権機構、国連機関および専門機関、非政府組織(NGO)、国内人権機関、ビジネス部門ならびに個人専門家、子どもたちその他の関係者が参加し、かつ意見書を提出する。 [1] 委員会の手続規則(CRC/C/4/Rev.3)および委員会が第61会期に行なった決定による。 2.意見を聴かれ、かつ真剣に受けとめられる子どもの権利は条約の基本的原則のひとつである。子どもたちは、自己に影響を与えるすべての事柄および決定に関して自由に意見を表明し、かつ社会のあらゆるレベルでこれらの意見を考慮される権利を有している [2]。これはそれ自体で権利であるのみならず、他のすべての権利の解釈および実施においても考慮されるべきである。委員会は、子どもたちが一般的討議日に対等な立場で参加する権利を有しており、かつ、条約実施に関連する問題について委員会および関係者がよりよく理解できるようにするうえで重要な役割を果たしていることを強調する。子どもたちは、一般的討議日に自由にかつ積極的に参加し、かつその知識、スキル、意見、経験および勧告を共有するよう奨励されるところである。この目的のため、国連機関および専門機関、NGO、国内人権機関、ビジネス部門ならびにその他の関係者は、子どもの参加を奨励しかつ支援する責任を負う。 [2] 子どもの参加権は条約第12条、第13条、第14条、第15条および第17条に掲げられている。 3.一般的討議日に子どもたちが参加してくれることにより、委員会および参加するすべての関係者は、討議の対象である特定のテーマに関わって、それぞれの国および状況において子どもの権利がどのような状況にあるかについての理解を強化し、かつ子どもに直接影響を与える問題に関する子どもたち自身の見方を理解することが可能となる。委員会は、一般的討議日に対する子どもたちの貢献の価値を認識するとともに、子どもたちの意見、勧告および子どもたちから提供されるその他の形態の情報を正当に考慮することがこのような討議の不可欠な一部とされなければならないことを強調するものである。 4.一般的討議日に参加する子どもたちは、委員会等に対して子どもの意見の中心的重要性を教えてくれるとともに、自分たちの人権についておよびそれが日常生活にどのように関連しているかについての学びを深める機会を持つことになる。このような相互的機会は、委員会および子どもたちにとって、子どもの人権を知りかつ主張することおよび他の子どもの権利を尊重しかつ支持することのためのエンパワーメントにつながりうる。子どもたちは、(とくにそれぞれの自国における)これらの権利の実施を監視するうえで委員会が行なっている活動について、また人権のための活動に関与するその他の機会について、学ぶことができる。子ども参加は、子ども同士の学びを促進するとともに、子どもたちが他の子どもおよび関係者と交流し、かつその知識および経験から学ぶことを可能にする。子ども参加はまた、子どもたちの自信、主体性および声を聴かれる可能性ならびに子どもの権利を擁護する力量の強化にもつながる。子どもたちの声は委員会と共鳴し、権利に対して紙の上のものではない現実の文脈を与えるのである。 5.この作業手法は、一般的討議日への、すべての子ども(とくに不利な立場または脆弱な状況に置かれた子ども)の意味のある参加を容易にしかつ促進することを目的とするものである。ここでは、過去の一般的討議日の実際的かつ多様な経験、子どもたちからの提出物の検討および子どもたちとの会合で委員会が得た経験、意見を聴かれる子どもの権利についての2006年の討議、ならびに、人権擁護者としての子どもの保護およびエンパワーメントに関する2018年の一般的討議日の子ども助言グループとの協議が踏まえられている。この作業手法は、委員会の一般的討議日への子ども参加にとくに関わるものであるが、政府、国連機関および専門機関、NGO、国内人権機関、ビジネス部門ならびにその他の関係者が地域レベルおよび国際レベルでその他の会合を開催する際に活用することのできる原則および指針を掲げるものでもある。委員会は同時に、一般的討議日に参加する関係者の背景、経験および資源はさまざまに異なっており、かつ、この作業手法を柔軟な、協同的なかつ革新的なアプローチで適用する必要があることも認識するものである。 II.子ども参加の基本的要件 6.一般的討議日において子どもたちが効果的にかつ意味のある形で参加しかつ代表されることを確保するため、子ども参加は、ひとつの組織または主体が主導する1度きりのイベントとしてではなく、すべての関係者が寄与する協同的プロセスとして理解されなければならない。子どもたち(不利な立場または脆弱な状況に置かれた子どもたちを含む)が自由に意見を表明し、自分たち自身の団体、グループおよびイニシアティブを結成し、かつ平和的集会に参加できることを確保することによってコミュニティにおける子どもの市民的権利および自由の全面的実現を支援する目的で、子どもたちに対し、意味のある安全なやり方で一般的討議日に関与するための支援が提供されるべきである。子どもたちが参加するやり方は、インクルーシブであり、かつ子どもたち自身の視点に基づいたものでなければならない。一般的討議日のあらゆる段階で子どもたちの関与が求められるべきである。 A.一般的原則 7.子ども参加を確保するためのすべてのプロセスおよび活動において、意見を聴かれる子どもの権利の実施について委員会が掲げた基本的要件が全面的に尊重されなければならない [3]。 [3] 以下の要件は、意見を聴かれる子どもの権利についての委員会の一般的意見12号(2009年)および委員会の報告プロセスへの子ども参加に関する作業手法に掲げられているものである。 (a) 透明かつ情報が豊かである:子どもたちは、意見を聴かれる権利および耳を傾けられる権利がすべての子どもの権利であることを知っているべきである。子どもたちに対し、一般的討議日への参加の範囲、目的、方法、意味合いおよび潜在的影響に関する詳細なかつアクセスしやすい情報を提供することが求められる。 (b) 任意である:子どもたちは、自己の意見の表明は子ども自身の選択であって義務ではないことを理解しているべきであり、意思に反して意見表明を強要されることはけっしてあるべきではない。子どもたちが提示するすべての意見は子どもたち自身のものでなければならず、子どもたちを支援するファシリテーター、大人、団体またはグループの意見であってはならない。 (c) 尊重される:子どもたちの意見は、他の子どもおよび大人の両方から、敬意をもって扱われなければならない。あらゆる年齢の子どもたちに対し、一般的討議日の企画、運営およびフォローアップならびに一般的討議日への参加に際して自分たち自身のアイデアを提出し、かつ積極的役割を果たすための支援が提供されるべきである。意見を表明したことを理由に子どもたちが報復または脅迫の対象とされることはあってはならない。 (d) 子どもたちの生活に関連している:子どもたちは、DGD〔一般的討議日〕のテーマが自分たちの日常生活にとってどのような関連性および重要性を有しているか、ならびに、利用可能なさまざまな方法または子どもたちが提案する代替的方法を通じて討議に参加するために自分たちの知識、スキル、能力および経験をどのように活用できるかについて、理解できるべきである。 (e) 子どもにやさしい:一般的討議日に関連する情報および手続(すべての指針、書式その他の資料を含む)は、子どもに合わせて修正されなければならず、かつ、子どもたちの年齢および発達しつつある能力ならびにさまざまな能力および教育水準によって異なる支援水準および関与の形態を考慮したものであるべきである。 (f) インクルーシブである:一般的討議日への子ども参加はインクルーシブでアクセスしやすいものでなければならず、いかなる形態またはパターンの差別も回避されなければならない。 (g) 訓練による支援がある:子どもたちに対し、人権、効果的参加、コミュニケーション・スキル(文章作成、撮影、人前での話およびアドボカシーなど)およびおたがいの意見を尊重する方法に関する訓練が提供されるべきである。ファシリテーターも、子ども参加の重要性および利点ならびに子ども参加の効果的な準備およびファシリテーションの方法についての訓練を受けることが求められる。 (h) 安全であり、かつリスクに配慮している:子どもたちは危害から保護される権利について知っておかなければならず、また子どもたちと接するファシリテーターには、参加によるいかなる悪影響も最小限に留め、かつ子どもたちをいかなる形態の脅迫もしくは報復またはそのような行為に対する恐れからも保護するために、あらゆる予防措置をとる責任がある。 (i) 説明責任が果たされる:すべてのパートナー組織および子ども参加を支援しまたはファシリテートする者は、フォローアップおよび評価に対するコミットメントを有さなければならない。子どもたちは、自分たちの参加が討議にどのような影響を与えたかおよびどのようなフォローアップ活動が行なわれるかについての情報を提供され、かつ評価プロセスへの参加が保障されるべきである。 B.子どもの支援団体、付添いの大人および子どもファシリテーターの役割 8.国、国連機関および専門機関、NGO(子ども主導の組織および子どものグループを含む)、国内人権機関、ビジネス部門その他の関連機関ならびに子どもの付添いの大人および子どもファシリテーターなど、一般的討議日への子ども参加を支援しまたはファシリテートするすべての者は、以下の対応をとるよう奨励される。 (a) 子どもたちに対し、一般的討議日への参加の範囲、目的、方法、意味合いおよび潜在的影響に関する詳細な、年齢にふさわしい、かつアクセスしやすい情報を提供すること。これには、一般的討議日への参加がなぜ有益かつ有用であるか、および、その経験が国および(または)地方レベルで進行中のイニシアティブまたはプロジェクトにとってどのように参考になりまたはその前進につながりうるかについての情報も含まれる。このことはまた、一般的討議日(提出物および関連のイベントを含む)が公開されることを理解していなければならないということでもある。 (b) 一般的討議日に関連するすべての指針、書式その他の資料のチャイルドフレンドリー版を作成するとともに、それらの資料が、子どもたちに対し、アクセス可能なかつ子どもたちにとって意味のあるやり方で提示されることを確保すること。 (c) 参加は選択であって義務ではないこと、および、プロセスのいかなる段階でも参加を撤回できることを、子どもたちにあらためて保証すること。 (d) 参加について、子どもたちおよび該当する場合にはその親または保護者の同意を書面で得ること。 (e) 表現および思想の自由に対するすべての子どもの権利を尊重するとともに、すべての子どもが表明したすべての意見が尊重されることを確保すること。ファシリテーターは、複数の情報源から得られた多様な情報を提供することによって子どもたちの意見形成を援助し、かつ、さまざまな方法で情報を求めるよう子どもたちに奨励するべきである。大人(家族またはコミュニティの構成員および宗教的指導者または若い政治的指導者を含む)には、自分の意見を子どもたちに押しつけることがないよう配慮が求められる。 (f) 参加する子どもたちの期待に適正に対応し、一般的討議日が目指すものは子どもの人権に関する知識の構築および望ましい実践の収集であって個々の事案への介入ではない旨、念を押すこと。子どもたちは現実的な期待を持つべきであり、自分たちの参加には限界がある可能性があることを承知しておくべきである。 (g) 自分たちの問題および課題設定をもっともよく代弁してくれると考える仲間を子どもたちが選抜できるようにする、子ども同士の選抜アプローチを助長促進すること。透明かつインクルーシブなプロセスを確保するため、明確な選抜基準が設けられるべきである。同時に、テーマに関する事前知識は、必ずしも選抜の要件とされるべきではない。それどころか、組織および個人は、一般的討議日を、人権および選ばれたテーマに関する子どもたち等の能力ならびに子どもたち等のコミュニケーション・スキルおよび(または)アドボカシー・スキルを強化する機会として活用するべきである。 (h) 不利な立場または脆弱な状況に置かれた子どもたちが他の子どもたちと平等な立場で参加することを奨励されかつ可能とされることを確保すること。これには、とくに女子および男子、低年齢の子ども、貧困の影響を受けている子ども、路上の状況にある子ども、施設にいる子ども、障害のある子ども、移住者、難民および避難民である子ども、法律に抵触した子ども、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスである子ども、マイノリティまたは先住民族集団に属する子ども、保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもならびに自らも親である子どもの関与を適宜得るための特別措置が含まれる。 (i) 子どもたちが意味のある参加のためのスキルおよび自信を構築できるようにするための訓練(子ども同士の学習を含む)を提供すること。これには、人権および権利意識、選ばれたテーマ、効果的参加、関連の指針にしたがった提出物および意見、コミュニケーション・スキル(文章作成、撮影、人前での話およびアドボカシーなど)ならびにおたがいの意見を尊重する方法に関する能力構築が含まれる。 (j) 自分たちにとってとくに関連性があり、興味深く、かつ重要である問題および関心事を強調する機会を提供するなど、一般的討議日に関連するすべてのプロセスに参加できるよう、子どもたちのエンパワーメントを図ること。たとえば、子どもたちからの提出物が討議中の活動で使用するために選ばれた場合、その提出物を作成した子どもたちは、当該活動の運営において積極的な役割を果たすことができるべきである。 (k) ファシリテーターが、子ども参加の重要性および利益を理解するための十分な訓練を受け、かつ、子どもたちの準備および子どもたちの参加のファシリテーションを効果的に進めるための適切なスキルおよび態度を獲得することを確保すること。訓練においては、子どもたちの意見に耳を傾け、子どもの発達しつつある能力にしたがって子どもたちを効果的に巻きこみ、参加のプロセス全体を通じて子どもたちの安全を確保し、かつ子どもにやさしい資料を作成するファシリテーターの能力を発展させることが目指されるべきである。 (l) 危害から保護される権利について子どもたちに知らせるとともに、リスクの防止、評価およびリスクへの対応に際して子どもたちの意見を考慮すること。子どもたちにとっては、安全ではないと感じた場合にどうすればよいかおよびどこに通報すればよいかを知っておくことまたは懸念を提起することも必要である。 (m) 国際的イベントへの子どもたちの参加について、一部の集団の子どもが直面する特有のリスクおよびこれらの子どもが援助を得ようとする際に直面する追加的な障壁を認識した、子どもの保護に関わる明確かつ包括的な方針および枠組みを用意すること。このような方針は、国、団体その他の関連機関が防止に対してどのように取り組むかを概観するとともに、子ども参加の結果として悪影響(報復または脅迫など)が生じた場合に適切に対応するための標準手続、方針の実施におけるスタッフの明確な責任(この分野でスタッフの能力構築を図るための関連の支援および研修を含む)、適切な子どもの安全保護手続および付随するモニタリングの枠組みを記載したものであるべきである。 (n) 委員会の作業言語(英語、フランス語およびスペイン語)を話せない子どもたちのために翻訳および通訳を用意し、かつ関連資料が地元言語で利用できることを確保すること。 9.加えて、一般的討議日に出席する子どもたちの付添いの大人および子どもファシリテーターは、以下の対応をとるよう奨励される。 (a) 自分がケアする子どもたちの安全および福祉に対する第一義的責任を常に維持すること。この責任は、子どもたちが渡航のために親または保護者のもとを離れたときに開始し、親または保護者のもとに安全に帰ったときに終了する。付添いの大人等は、たとえば、参加する子どもたちが、参加のプロセス全体を通じて子どもの保護の窓口として行動し、必要に応じて秘密を守りながら支援を提供する少なくとも1名の大人にアクセスできるようにし、かつ、子どもたちが、安全ではないと感じるようなことがあれば当該人物に相談できることを理解するようにするべきである。 (b) 子どもたちに対し、一般的討議日は公開であり、撮影され、オンラインでの投稿その他の用途のためにウェブ中継および録画が行なわれる可能性もあること、および、個別に撮影されることについての本人の同意(および該当する場合には親または保護者の同意)が参加の条件であることを知らせること。子どもたちに対しては、メディアとのやりとりおよびその意味合いについての説明も行なわれるべきである。 10.一般的討議日の後、すべての支援団体、子どもたちの付添いの大人および子どもファシリテーターは、以下の対応をとるよう奨励される。 (a) 子どもたちに対し、討議においておよびフォローアップ活動のあり方の決定において子どもたちの意見がどのように参考にされたかについてのフィードバックを行ない、かつ、自分たちの参加の成果に関する意見表明の機会を提供すること。 (b) 子どもたちが一般的討議日のフォローアップの取り組みを組織しかつこれに参加するのを支援すること。たとえば、参加団体が、選ばれたテーマに関して子どもたちを支援する旨の公的な誓約または決意表明を行なうとともに、第一義的には子どもたち自身が立案しかつ実施するフォローアップ・プロジェクトを組織するための補助金または奨学金を子どもたちに提供することが考えられる。 (c) 一連のプロセスおよび関連の活動の妥当性、有用性および効果に関する子ども参加者の自己評価およびフィードバックなども通じて、一般的討議日において子ども参加を確保するためのプロセスの評価を実施すること。団体はまた、将来の一般的討議日への子ども参加に関して得られた教訓を特定しかつ記録することも、子どもたちに対して奨励するべきである。 C.パートナー組織の役割 11.委員会は、計画の過程でテーマの提案の募集を開始し、かつ、テーマの関連性および一般的討議日を計画しかつ運営する提案団体の能力に基づいてひとつのテーマを選定する。委員会が選定した提案を提出した組織は、当該一般的討議日のパートナー組織となる。パートナー組織を選定する際の基準は、とくに、そのトピックに関する当該組織の専門性および経験、ならびに、一般的討議日への意味のある子ども参加の組織および確保に関わる当該組織の実証された能力、コミットメント、人的資源および財源である。パートナー組織はまた、討議の成果を子どもたちが属するコミュニティに持ち帰る能力、および、一般的討議日の前、最中および終了後に子どもたちによる意味のあるリモート参加を促進する能力も有していることが求められる。 12.選定されたパートナー組織は、明確に特定された役割および責任を有し、かつ金銭的貢献および子ども参加の確保のための活動を行なう、関係者によるアドバイザリーグループを設置するよう奨励される。このアドバイザリーグループは、この作業手法を一般的討議日に適用するための戦略も策定するべきである。委員会は、可能なかぎり早い段階で計画プロセスに子どもたちの関与を得るよう勧告するとともに、このことは、パートナー組織の能力、資源およびネットワークならびに選ばれたテーマの具体的内容に応じた多種多様なアプローチを通じて達成可能であることを認識する。ひとつのアプローチとして考えられるのは、事業に子どもたちの関与を得ている世界中の実施組織が構築している既存のネットワークを活用して、地方レベルで子どもワークショップを開催することである。これらの組織は、自分たち自身のプログラムの関係ですでに知っている子どもたちのグループとともに、それぞれの地元の背景に応じた一連のワークショップを開催することができる。これらのワークショップで、各グループが、一般的討議日でそのグループを代表する子どもをひとりまたは複数選出し、そのためのプレゼンテーションその他の資料の準備をすることも考えられよう。このようなプロセスは可能なかぎり早く、理想的には一般的討議日の12か月前には開始されるべきである。子どもたちの意見は、子ども団体、学校団体および子どもが主導するその他の取り組みを通じて集めることもできよう。 13.パートナー組織は、加えて、たとえばすでに存在する国際的ネットワークと協議しながら、子どもの権利、子どもの権利の促進および保護における地元の努力および優先課題の増進ならびに提案されているテーマへの関心を示してきた子どもたちから構成されるアドバイザリーグループを設置するよう奨励される。アドバイザリーグループの構成員の選抜基準では、年齢、性別、性的指向、障害、民族的出身、国民的出身、地理的所在および経済的背景の多様性が考慮されるべきである。可能であれば、かつ可能な場合には常に、子どもたちが幅広くかつ包摂的に代表されることを目指すよう求められる。アドバイザリーグループの各構成員は、自国の子どものいずれかの集団をそれぞれ代表するとともに、アドバイザリーグループの構成員としての役割の履行に関して援助を提供する組織 [4] の支援を得ることが考えられよう。子どもたちは、地方レベルのワークショップまたはアドバイザリーグループのどちらを通じてであれ、一般的討議日の準備、実施およびフォローアップに関して恒常的に協議の対象とされるべきであり、かつ自分たちの意見がどのように考慮されたかに関するフィードバックを受け取れるべきである。 [4] 支援する組織は、子どもの保護に関する十分な方針(国際的イベントへの子どもの安全な関与のための枠組みを含む)を有し、かつ、子どもアドバイザーの任務が終了するまでパートナー組織との恒常的連絡を維持するべきである。 14.パートナー組織は、各一般的討議日の前に、どうすれば子どもたちが一般的討議日に参加できるかについての情報を広く普及するとともに、子どもたちが(とくに離れた場所から)参加するための適切な回路を提供するべきである。これとの関連で、パートナー組織とは、子どもたちがアクセスしやすく興味の持てるさまざまな意識啓発キャンペーンおよびソーシャルメディアキャンペーンを通じてこのような議論を積極的に促進するため、一般的討議日の十分前に、アウトリーチ戦略を作成しかつ実施することが考えられる。このような戦略の一環として、選ばれたテーマに関する子どもたちの意見を集め、かつ協議から得られた主要なメッセージを一般的討議日へのインプットとしてとりまとめることを目的とした協議(対面型ワークショップ、ディベートおよびオンライン調査を含む)を実施することもできよう。このような協議の際、パートナー組織は、子どもたちに対し、自分たちの意見をさまざまな形式(経験談、写真、アートワーク、音楽および動画を含む)で表明するよう奨励してもよい。 15.パートナー組織は、討議のテーマに関する提出物の準備または開催される可能性があるサイドイベントもしくは一般的討議日のフォローアップ活動に関する意見の共有に関して、この作業手法にのっとって子どもたちをどのように支援するかについての詳細な指針を、大人に対して示すべきである。パートナー組織は、可能であれば、不利な立場または脆弱な状況に置かれた子どもたちおよびマイノリティまたは先住民族の集団に属する子どもたちの参加を確保するための財源を配分するとともに、子どもたちと共有すべき専門用語および略語の用語集を事前に作成するよう求められる。 16.一般的討議日に出席する子どもたちについて、パートナー組織は、子どもたちの付添いの大人および子どもファシリテーターに対し、子ども参加のファシリテーション方法に関する実際的指針(渡航、健康保険、天候、宿泊、滞在費用、登録、後方支援、アクセス、通訳・翻訳および安全に関わって生じる可能性がある問題についての情報を含む)を示すべきである [5]。加えて、パートナー組織は、子どもたちが開催場所に慣れ、委員会の委員と会見し、かつおたがいを知りあえるようにするため、遅くとも一般的討議日の前日にジュネーブでオリエンテーションプログラムを開催することを検討してもよい。オリエンテーションプログラムには、時間に応じて、一般的討議日の詳細(プログラム、確認された参加者およびパネリストの背景を含む)に関する準備トレーニングのような教育的活動、子どもたちがいっしょに問題についてのブレインストーミングを行ない、自己紹介のための共同声明を作成し、かつおたがいにプレゼンテーションのリハーサルを行なって仲間からフィードバックを受ける機会、および、ジュネーブの国際連合施設(一般的討議日の開催場所である会議室を含む)の見学などを含めることができよう。市内見学もしくはみんなで出かけるその他の活動および(または)委員会の委員との会見のような懇親的活動を子どもたちのために実施することも考えられる。 [5] たとえば、NGO Group for the Convention on the Rights of the Child, Together with Children - for Children A Guide for Non-governmental Organizations Accompanying Children in CRC Reporting (Geneva, 2011) に掲げられたガイドラインを参照。 17.一般的討議当日、パートナー組織は、子どもたちが離れた場所からも討議に参加できることを確保するべきである。そのための手段には、討議をオンラインでフォローする方法に関する情報提供、ソーシャルメディアでの生中継、および、子どもたちが離れた場所からパネリストに質問する機会の提供などがある。子どもたちが尊重される環境づくりのため、一般的討議日に参加するすべての関係者に対し、子どもたちの参加に関する情報、および、そのような参加に関して委員会が求めることを議事全体を通じて遵守するための考慮事項に関する情報が提供されるべきである。パネリスト、司会者その他の発言者に対しては、子どもにやさしい言葉遣いおよびアプローチを使用すること、ならびに、討議において子どもたちの意見が尊重されかつ反映されるようにすることを奨励するよう求められる。子どもたちは、可能なかぎり、専門用語および略語の説明を求める質問またはこれらの言葉を理解しようとするための質問をするよう奨励されかつ支援されるべきである。パートナー組織はまた、非公開の会合または非公式イベント(夜のレセプションや戸外での食事会など)のいずれかを通じ、子どもたちが発言者および関心のあるその他の人々と会う機会を設ける便宜を図ることも奨励される。 18.パートナー組織は、一般的討議日の終了後、参加した子どもたちに対し、成果報告書に関する情報および主要な成果をフォローアップするための取り組み(討論その他のイベントなど)に関与する機会を提供するよう奨励される。パートナー組織は、一般的討議日に出席した子どもたちを対象として、学んだ教訓を吟味しかつフォローアップの取り組みを計画するための振り返りを、ジュネーブで1日かけて行なうよう奨励されるところである。パートナー組織はまた、可能であれば、子どもたちがそれぞれの状況を踏まえて一般的討議日をどのようにフォローアップしているかに関する意見および経験談を集め、将来の一般的討議日のために得られた教訓としてそれらの意見および経験談を記録するよう求められる。パートナー組織はまた、一般的討議日に際して子ども参加を確保するためのプロセスに関する評価も実施し、当該評価の結果を成果報告書に記載するべきである。 III.子ども参加の手法 19.子どもたちは、一般的討議日に関連する以下の側面についての参加を奨励される。すなわち、(a) テーマの選定、(b) 立案、計画および運営、(c) 資料の提出、(d) 一般的討議および関連のサイドイベントへの参加、(e) 委員会の委員との非公開会合ならびに (f) フォローアップおよび評価である。 A.テーマの選定 20.各一般的討議日では、委員会が選定し、かつ討議の1年前に発表される特定のテーマに焦点が当てられる。委員会は、テーマに関する提案を歓迎するものである。その提案は、標準的書式(当該テーマを提案する根拠、当該テーマの条約との関連性、範囲、成果、目的、形式および考えられる発言者、ならびに、子ども参加およびそのための資金を確保する方法に関する情報を求めるもの)にしたがって、各一般的討議日の16か月前までに書面で提出することが求められる。子どもたちは、それぞれが関わる子ども主導の団体または子どもグループを通じ、委員会による検討のために提案を作成しかつ提出するよう勧奨される。子どもたちに対しては、提案の作成にあたって団体を支援することも奨励されるべきである。子どもたちの参加がはっきりと実証されている提案は、委員会によって好意的に検討される可能性があるためである。子どもたちに対しては、当該プロセスにどのように参加できるかについての関連の情報を提供することが求められる。テーマの選定に関して委員会が最終的決定を行なった後、提案を提出しまたは提案の作成を支援した子どもたちその他の者は全員、選定プロセスに関する情報を受け取る権利を有する。 B.立案、計画および運営 21.子どもたちは、以下のものをはじめとする方法を通じて、一般的討議日の立案、計画および運営に参加するよう奨励される。 (a) コンセプトおよびプログラム。子どもたちは、一般的討議日のコンセプトノート、背景文書およびプログラムの作成(発言者および分科会のトピックの特定を含む)に貢献するよう奨励される。とくに、プログラムを参加者全員(子どもたちを含む)にとってよりアクセスしやすくかつ興味深いものとする目的で、プログラムに盛りこむべき双方向的アクティビティの立案および実施に関して子どもたちと協議することが考えられる。 (b) 準備。子どもたちは、関連のワークショップに参加し、または関連のアドバイザリーグループの構成員に応募するなどの手段により、一般的討議日に関連するすべての計画上および運営上の問題に関してパートナー組織を援助するよう奨励される。子どもたちは計画・運営プロセスのすべての段階に貢献することが可能であり、これには、該当する場合には協議ワークショップの作業計画または子どもアドバイザリーグループの委任事項の起草、および、一般的討議日に向けた関連資料の作成の参考にするためにそれぞれの国で行なう協議の運営も含まれる。子どもたちは、関連する場合には対面の会合に出席する子どもたちの選出プロセスの決定、および、一般的討議日に参加する子どもたちおよび付添いの大人の訓練についても協議の対象とされるべきである。 (c) 普及。子どもたちは、一般的討議日のために作成された資料のチャイルドフレンドリー版(子どもにやさしい書式およびガイドラインを含む)の作成および普及に貢献するよう奨励される。子どもたちには、一般的討議日への子ども参加の動員およびそのようなプロセスが包摂的なものとなることの確保に関しても援助してもらうべきである。そのための手段には、関連の情報を普及すること、ならびに、不利な立場または脆弱な状況に置かれた子どもたちおよびマイノリティまたは先住民族の集団に属する子どもたちの参加を確保するための戦略を策定しかつ実施することなどがある。 (d) サイドイベントおよび関連の活動の運営。子どもたちは、考えられるサイドイベントおよび関連の活動(展示、パフォーマンス、夜のレセプション、発言イベントおよびワークショップなど)の立案、計画および運営に関する意見および勧告をパートナー組織と共有するよう奨励される。委員会は、サイドイベントの主催者および共催者に対し、子どもたちと協議するとともに、このようなイベントの準備は遅くとも一般的討議日の6~9か月前に開始されなければならないことを念頭に置きながら、子どもたちがこのようなイベントを運営しまたは意味のあるやり方で貢献する機会を提供するよう奨励するものである [6]。一般論として、パートナー組織は、いかなるサイドイベント(とくに展示)についても一般的討議日のプログラムそのものに組みこむことを検討するよう勧告される。 [6] 展示は、政府による後援および国際連合ジュネーブ事務所による事前の承認を受け、かつ、規模その他の詳細に関する具体的要件を満たすものでなければならない。主催者はまた、展示が行なわれるスペースの予約も十分な時間的余裕をもって確保しておかなければならない。 C.資料の提出 22.委員会は、一般的討議日のために選ばれたテーマに関する子どもたちの意見および勧告を反映した、子ども主導の団体および子どもグループからの情報(子どもたちの報告書、研究、写真、アートワーク、動画その他の視聴覚資料など)を歓迎する。子どもたちが作成するまたは子どもたちの意見が反映された提出物は、子どもたち自身の関心および優先事項を代表したものであるべきである。大人は、自分自身の意見を表明する機会として子どもたちの提出物を利用するべきではない。委員会はまた、各分科会のテーマ別焦点分野に関連する問題についての文書の提出も奨励する。このような情報は、一般的討議、成果報告書および委員会が締約国に宛てて採択する一連の勧告へのインプットとなる。このような情報により、委員会は条約の実施に関連する問題についての理解を向上させることもできよう。 23.子どもたちによる提出物はいずれの言語で作成することも可能であり、支援組織は、子どもたちに翻訳を提供するとともに、委員会への提出物がその作業言語(英語、フランス語およびスペイン語)のいずれかで送付されることを確保するべきである。文書による提出物は7ページ(2500語)以内とすることが求められる。子どもたちは、提出物で、問題に関する自分たちの見解を明らかにするとともに、これらの問題または権利に関連してそれぞれの国またはコミュニティで直面している主要な懸念および問題を強調するべきである。また、これらの問題に対処する際の優れた実践に関する情報を共有し、問題点を明らかにし、かつ討議対象のテーマとの関連で委員会がとりうる行動についての勧告を行なうことも求められる。提出物には、選ばれたテーマに直接関連する勧告(それぞれ5行以内)を最大5つ記載し、付属文書として提出物に添付するべきである。 24.子どもたちはまた、一般的討議日の前に、討議の具体的テーマに関してパートナー組織が行なう協議に、対面型ワークショップでの交流またはオンライン調査を通じた意見の提出を通じて参加することも奨励される。協議の結果および主要なメッセージは、パートナー組織によってとりまとめられ、一般的討議日に向けた提出文書として委員会に提出される。各国政府、国連機関および専門機関、NGO、国内人権機関、ビジネス部門ならびにその他の関係者は、子どもたちの関与を得ることおよび一般的討議日への子どもたちの参加を促進することを目的としてこれらの協議を活用するよう、強く奨励されるところである。 25.子どもたちのすべての提出物は、一般的討議日の6週間前までに委員会事務局に提出されるべきである。子どもたちの提出物では、意見を聴かれる権利に関して委員会が掲げた基本的要件にのっとって一般的討議日に意味のある形で参加するために子どもたちがどのように選抜されたか、および、子どもたちの意見を収集し、解釈しかつ展開するためにどのような手法が用いられたかについて、詳しく述べることが求められる [7]。提出物は登録された参加者に配布され、かつ委員会のウェブサイトに掲載されるので、子どもたちが作成する提出物には、当該提出物を公開することに対する子どもたち本人および該当する場合にはその親または保護者の同意書が含まれているべきである(このような同意がない場合、その情報は非公開にされるべきものであると推定される)。委員会は、内容が不正確であるまたは害を引き起こす可能性が高い言葉を含んでいると考えるコンテンツの公開を拒否する権利を留保するとともに、そのような場合、提出物の公開を拒否する理由を子ども(たち)に通知する。 [7] 提出物の作成に関する子どもにやさしいガイドラインとして、Child Rights Connect, "Day of general discussion" 参照。www.childrightsconnect.org/connect-with-the-un-2/committee-on-the-rights-of-the-child/days-of-iigeneral-discussion より入手可能。 D.一般的討議および関連のサイドイベントへの参加 26.委員会は、2年ごとに、委員会の通常会期の最中に一般的討議日を開催している。午前10時~午後1時および午後3時~6時にジュネーブのパレ・デ・ナシオン〔国連欧州本部〕で開催されるのが通例であり、時間外にサイドイベントも行なわれる。一般的討議日の形式はテーマおよびプログラム(子どもたちはこれに貢献することもできる)によって異なる場合があるものの、短い全体会から始まるのが通例であり、そこでは委員会の委員ならびにさまざまな国連機関、市民社会組織および子どもたちの代表による冒頭発言などが行なわれる。その後、意見交換を促進する目的で、参加者は2つ以上の分科会に分かれ、選ばれたテーマに関連する特定の焦点分野について意見交換を行なうのが通例である。最後に、一般的討議日の締めくくりとして閉会全体会が開かれ、各分科会による全体会への報告および委員会のいずれかの委員による閉会発言が行なわれる [8]。 [8] プログラムおよび登録手続に関する情報を含め、一般的討議日についてより詳しくは www.ohchr.org/EN/HRBodies/CRC/Pages/DiscussionDays.aspx を参照。 27.子どもたちには、以下の立場で、離れた場所からまたは直接、一般的討議日を傍聴しかつこれに参加する機会がある。 (a) リモート参加者。すべての子どもは、以下の手段により離れた場所から参加することを奨励される。(i) ソーシャルメディアを含むメディア、および、国連によるウェブキャストが生中継で行なわれるときは当該ウェブキャストを通じて [9]、オンラインで討議をフォローする。パートナー組織が行なうソーシャルメディアでの実況(このような実況が行なわれることは一般的討議日の十分前から積極的に広報されるべきである)としては、一般的討議日全体を通じた同時進行のアップデートおよび動画配信、ならびに、子どもたちが討議に関与する機会(他のオンライン視聴者とのバーチャル討議への参加、トピックに関して行なわれる生アンケートへの投票、直接参加している有名人とのソーシャルメディア上のやりとりなど)の提供などが考えられる。 (ii) 選ばれたテーマに関する質問および意見表明を行なう。パートナー組織は、オンラインで参加する子どもたちに一般的討議日に寄与する機会が与えられることを確保し、かつ子どもたちのリモート参加の調整を行なうべきである。 (iii) テーマに関する意見を表明した短いビデオメッセージ(3分以内)を提出し、一般的討議日の際に流してもらえるようにする。 (iv) 一般的討議日に並行して国内の関係者が開催する関連の議論に参加する。 (b) 直接の参加者。子どもたちは、直接出席し、かつ以下の手段により参加することができる。(i) 分科会の会合で短い発言を行なう。このような発言では、選ばれたテーマに関する意見を述べ、自国で子どもたちが直面している主要な懸念および問題を強調し、かつ国に対する勧告についての子どもたちの意見を共有することなどができる。 (ii) 分科会の議長の要請に応じて、分科会の会合の共同議長を務め、または報告者として分科会の結論を全体会で紹介する。 (iii) 関連のサイドイベント、展示、動画視聴会または討議およびイベント前後のワークショップに参加し、かつ関連の資料を提出する。 (c) パネリストまたはスピーカー。子どもたちは、パネリストまたはスピーカーとして発言するよう招待される場合もある。 [9] 一般的討議日の生放送および録画は webtv.un.org で閲覧できる。 28.一般的討議日に直接参加することを希望する子どもたちについて、支援組織その他の関係者は、子どもたちが登録フォームに記入し、かつ提出期限までに委員会事務局に提出する際の支援を提供するべきである [10]。これは委員会の公開会合なので、登録料はかからない。委員会事務局によって登録の確認が行なわれる。一般的討議日への参加を認められるのは登録の確認を受けた者だけであり、参加者は、パレ・デ・ナシオンに入館するための身分証明バッジを受け取るため、パスポートまたは国際連合が承認する他の形態の身分証明書を警備職員に直接提示するよう要請される。18歳未満のすべての子どもは大人に付き添われていなければならず、子どもおよび付添いの大人の両方が、登録の確認を受けており、かつ身分証明バッジを受け取るためにパスポートを直接提示しなければならない。国際連合は、査証、渡航または宿泊の手配について援助を提供することはできない。参加者および(または)その支援組織は、一般的討議日への参加に関連するすべての費用および手配について責任を負う。 [10] 大規模学校グループについては、5~10歳の子どもの場合は10人ごと、10~16歳の子どもの場合は15人ごとに付添いの大人ひとりが必要である。17歳以上の子どもの大規模学校グループの場合、グループ全体について少なくともひとりの付添いの大人または保護者が必要とされる。11歳未満の子どもの大規模学校グループの場合、付添いの大人(たち)がグループ全体の身分証明バッジを受け取ってもよい。 29.委員会は、関心を表明するすべての子どもの参加を歓迎するものの、席数が限られていることから、各組織または機関ごとに一般的討議日への参加を認められる子ども代表の人数を制限する権利を留保する。登録申請数が利用可能な席数を超えた場合、子どもアドバイザリーグループの構成員および委員会に提出物を出した子どもが優先される。子どもたちはそれぞれの国またはコミュニティのさまざまな集団および懸念を可能なかぎり代表しておりかつ代弁するべきであり、かつ、不利な立場または脆弱な状況に置かれた子どもたちの参加を確保するために特別な努力が行なわれるべきである。 30.委員会は、子どもたちの付添いの大人および子どもファシリテーターが、意見を聴かれる子どもの権利の実施に関して委員会が示した基本的要件を尊重し、かつ、敬意があって子どもの年齢および成熟度にふさわしい方法で子どもたちを支援することを確保することに関して、子ども参加を促進しようとしている国内の関係者に期待している。委員会事務局は、パートナー組織と連携しながら、子どもたち(とくに、不利な立場または脆弱な状況に置かれた子どもたち)の出席の便宜を図るためにあらゆる可能な措置をとるとともに、要請があれば参加する子どもたちに技術的援助を提供する。国際連合では委員会の作業言語(英語、フランス語およびスペイン語)について同時通訳を提供しているが、その他の言語の通訳を必要とする参加者は、自分自身の通訳者をともなって一般的討議日に出席し、かつ当該通訳者が適切な設備にアクセスできるようにするために事務局の支援を求めるよう、要請される。国際連合はさらに、その施設および会合を障害のある子どもにとってアクセシブルかつインクルーシブなものとすることも決意している。障害のある子どもたちは、アクセシブルなドア、傾斜路およびトイレに関する必要な情報を受け取れるよう、アクセシビリティに関して必要な条件および訪れる予定の会議室に関する情報を事前に事務局に提供しなければならない。アクセシビリティに関する具体的な質問および要望は事務局に送ることが求められる [11]。 [11] パレ・デ・ナシオンのアクセシビリティの特徴に関するさらに詳しい情報は、www.unog.ch/80256EE60057F2B7/(httpPages)/FE94243FCCEB3006C125815B0042BB1C?OpenDocument より参照できる。 E.委員会の委員との非公開会合 31.一般的討議日への直接の参加について確認を受けた子どもたちは、討議に関連する問題、とくにとりわけ配慮または秘密保持が必要とされる問題について議論するため、非公式にかつ非公開で行なわれる委員会の委員との会見に招待される。この会見は通常、一般的討議日よりも前に開催され、時間は1時間であり、委員会の通常の会合よりも子どもにやさしい方式で行なわれる。これは会合の時点で18歳未満である子どもたちだけが対象であり、委員会は、会合に出席する大人の人数を制限する権利を留保する。一般的に、付添いの大人がこの会合への参加を認められるのは、通訳のためにその大人の存在が必要な場合または子どもからとくに要請があった場合のみである。 32.委員会は、支援を提供してくれる政府、組織その他の関係者に対し、その代表団の子どもたちおよび大人が、これらの会合に参加する子どもたちの秘密保持およびプライバシーに関して情報を提供され、かつこれを尊重することを確保するよう期待する。これらの会合は委員会の公式会合の時間外に行なわれるため、国際連合による通訳は提供されない。付添いの大人は、委員会の作業言語(英語、フランス語およびスペイン語)のいずれも話すことのできない子どものために通訳を確保するよう求められる。 F.フォローアップおよび評価 33.委員会は、一般的討議日の際に自分たちの参加がどのように支援されたかについての意見(自分たちの参加が貴重なものとして扱われ、かつ自分たちの意見が尊重されたと感じたかどうかを含む)を子どもたちから集めるほか、委員会の将来の活動で子ども参加を確保する方法についての子どもたちの勧告を歓迎する。各一般的討議日の後、参加した子どもたちには委員会事務局が提供する評価フォームに記入してもらうことになる。子ども参加を確保するためのプロセスを評価し、かつ得られた教訓を将来の適用のために記録する目的で、同様の努力が関係者によって行なわれるべきである。子どもたちに対しては、一般的討議日のフォローアップのための取り組みを組織しかつこれに参加するための支援も提供することが求められる。 更新履歴:ページ作成(2020年4月24日)。