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平成14年憲法第1問 平成14年憲法第2問 平成14年民法第1問 平成14年民法第2問 平成18年憲法第1問
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総則・物権 【編集】 自分の学習用に作成、変更しております。 誤りがあるかもしれませんので、予めご了承下さい。 <時効> ポイント 時効による所有権の取得につき、第三者に対抗するには、登記を要する。 しかし、時効完成時の所有者に対しては、登記なしに、所有権の時効取得を主張できる。 時効完成前に所有権を取得し時効完成後に登記を備えた第三者に対してもそう。 図解 丙(時効取得者) ↓時効完成 --------------→ (1)↑ (2)↑ 甲(売主)→乙(買主)の売買が、 (1)、(2)いずれの時点においてなされたか。 (1)時効完成時の権利者乙に対しては、丙は登記がなくても対抗できる(甲も乙も物権変動の当事者とみる)。 (2)時効完成後に現権利者甲から譲り受けた者乙に対しては、丙は登記がなければ対抗できない(二重譲渡に類似)。 合格ゾ民上P304、306より <無権代理と無権利者による他人物売買> (1)AはBの承諾を得ないで、Bのためとして、B所有の絵画をCに売却。→無権代理 (2)AはBの承諾を得ないで、自己の物として、B所有の絵画をCに売却。→他人物の売買 B(絵画の所有者) | | A -→ 所有権移転→ C(買主) 比較 (ア)CがAの無権限について善意無過失の場合、即時取得の適用は? (1)適用なし (2)適用あり (イ)BのCに対する追認によりCは絵画の所有権を取得するのか? (1)取得(116) (2)取得 (ウ)本人Bが無権限者Aを相続、CがAの無権限について悪意のとき、Bは、Cからの引渡債務の履行を拒絶できるか? (1)拒絶できる (2)拒絶できる (エ)Aが絵画の所有権を取得しCに移転できなかった場合、CがAの無権限について悪意のとき、Cは、Aに対し売買契約の債務不履行に基づく損害賠償請求できるか? (1)損害賠償請求できない(契約の当事者は本人Bと相手方Cなので) (2)損害賠償請求できる(買主Cは、悪意であっても。→なぜか?) (オ)Aは、自分が無権限であることについて善意である場合において、絵画の所有権をCに移転できないとき、Cとの売買契約を解除できるか? (1)解除できない(無権代理者からの解除権は認められていないため) (2)解除できる(善意の売主を保護する趣旨から認められている。) 合格ゾ民上P175より <物権総論> ポイント 不動産の共有者の一人が自己の持分を譲渡した場合における、譲受人以外の他の共有者は、177条の第三者に当たる(最判昭46.6.18)。 AとBの共有の土地 Aの持分→Cへ譲渡 持分移転登記をしていない譲受人Cは、他の共有者Bに共有持分の取得を対抗できない。 合格ゾ民上P342より <不動産の物権変動と対抗関係> 基本 甲土地が、次の通り転々と売買された。 A→B→C Aは、Bの債務不履行を理由に契約解除 しかし、AB間の契約解除前に登記を備えているCは、Aに対抗できる。 二重売買 背信的悪意者登場 甲土地が、次の通りBとCに二重売買され、CからDへと売買された。 登記は、C→Dへ。 A→B(登記なし) | └→C(背信的悪意者)→D(善意者) (1)Bは登記がなくても、Cに対抗できる。 (2)登記のないBは、登記のあるDには対抗できない。 (背信的悪意者からの転得者Dは、自らが第一譲受人Bとの関係で背信的悪意者に当らない限り、登記を得れば、自己の所有権を対抗できる。) 【2007年版 司法書士試験 合格ゾーン過去問題集 民法(上)】より 【2007年版 司法書士試験 合格ゾーン過去問題集 民法(下)】より 【2007年版司法書士試験 合格ゾーン過去問題集 不動産登記法(上)】より 【2007年版司法書士試験 合格ゾーン過去問題集 不動産登記法(下)】より 更新日時:2007年11月22日 (木) 09時06分31秒
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支部が主催する法律相談会 神奈川県司法書士会厚木支部では、各地で相談会を開催しています。 開催される相談会には、神奈川県司法書士会のイベントの1つとして行われる、法の日の相談会事業に基づくものと、各市区町村とタイアップして開催する相談会などがあります。 参考:法の日 毎年10月1日は,「法の日」です。「法の日」は,国民の皆さんに,法の役割や重要性について考えていただくきっかけとなるようにと,裁判所,検察庁及び弁護士会の協議で提唱され,昭和35年,政府によって定められました。 (出典 裁判所ホームページ 法の日の記事) 法の日の相談会は、この10月1日を中心に、各市町村で臨時の相談会を開催しています。開催日時は、イベント会場などの都合もあり、各市町村で多少のばらつきがあります。 支部で開催している相談会は、無料の相談会ですので、お気軽にご相談ください。 この他、各市区町村と連携し、市役所等で毎月開催している常設相談もありますので、ご利用ください。 -> 常設相談会 開催予定の法律相談会 開催日時が近いものからご紹介しています。 本年度予定されている支部主催の法律相談会は全て終了いたしました。 ご相談のあるかたは、各市の常設相談会にお申し込み頂くようお願いいたします。 終了した法律相談会 平成26年10月25日 秦野市行政・法律合同特設相談会 日 時 平成26年10月25日(土) 午前10時から午後4時 場 所 秦野市保健福祉センター 要予約、先着順 なお、秦野市の相談会は、秦野市民限定となっておりますのでご注意下さい。 問合せ先 秦野市役所広聴相談課 TEL 0463-82-5128 平成26年10月4日 伊勢原市・法の日の相談会 日 時 平成26年10月4日(土) 午前10時から午後4時 場 所 伊勢原市民文化会館 予約不要、当日直接相談会場へご来場ください。 問合せ先 神奈川県司法書士会 TEL 045-641-1372 平成26年10月4日 愛川町・法の日の相談会 日 時 平成26年10月4日(土) 午前10時から午後4時 場 所 愛川町中津公民館 予約不要、当日直接相談会場へご来場ください。 問合せ先 神奈川県司法書士会 TEL 045-641-1372 平成26年10月4日 厚木市・法の日の相談会 日 時 平成26年10月4日(土) 午前10時から午後4時 場 所 アミュー厚木 予約不要、当日直接相談会場へご来場ください。 問合せ先 神奈川県司法書士会 TEL 045-641-1372 平成26年9月28日 座間市・法の日の相談会 日 時 平成26年9月28日(日) 午前10時から午後4時 場 所 座間市市民文化会館 ハーモニーホール 予約不要、当日直接相談会場へご来場ください。 問合せ先 神奈川県司法書士会 TEL 045-641-1372 平成26年9月27日 大和市・法の日の相談会 日 時 平成26年9月27日(土) 午前10時から午後4時 場 所 大和市生涯学習センター303号室 予約不要、当日直接相談会場へご来場ください。 問合せ先 神奈川県司法書士会 TEL 045-641-1372 平成26年9月20日 海老名市・法の日の相談会 日 時 平成26年9月20日(土) 午前10時から午後4時 場 所 海老名市文化会館122大会議室 予約不要、当日直接相談会場へご来場ください。 問合せ先 神奈川県司法書士会 TEL 045-641-1372 平成26年8月2日 大和市みんなの生活展 日時 平成25年8月2日(土) 午前10時から午後4時 場所 オークシティ イオンモール大和1階 ライトコート 大和市主催のみんなの生活展にて、相談ブースを設けて、相談会を開催します。 予約不要、当日直接相談会場へご来場ください。 問合せ先 大和市市民経済部 市民相談課 TEL 046-260-5174 -> みんなの生活展のパンフレット 平成26年7月5日 秦野市行政・法律合同特設相談会 日 時 平成26年7月5日(土) 午前10時から午後4時 場 所 秦野市保健福祉センター 要予約、先着順 問合せ先 秦野市役所広聴相談課 TEL 0463-82-5128 平成25年10月26日 清川村・法の日の相談会 日 時 平成25年10月26日(土) 午前10時から午後3時 場 所 清川村交流促進センター清流の館 予約不要、当日直接相談会場へご来場ください。 問合せ先 神奈川県司法書士会 TEL 045-641-1372 -> 平成25年度法の日の相談会パンフレット 平成25年10月26日 厚木市・法の日の相談会 日 時 平成25年10月26日(土) 午前10時から午後4時 場 所 厚木ヤングコミュニティーセンター5階大会議室 予約不要、当日直接相談会場へご来場ください。 問合せ先 神奈川県司法書士会 TEL 045-641-1372 -> 平成25年度法の日の相談会パンフレット 平成25年10月19日 秦野市行政・法律合同特設相談会 日 時 平成25年10月19日(土) 午前10時から午後4時 場 所 秦野市保健福祉センター 要予約、申込締め切り10月10日、先着順 問合せ先 秦野市役所広聴相談課 TEL 0463-82-5128 -> 秦野市 行政・法律合同特設相談会 平成25年10月5日 海老名市・法の日の相談会 日 時 平成25年10月5日(土) 午前10時から午後4時 場 所 海老名市文化会館122大会議室 予約不要、当日直接相談会場へご来場ください。 問合せ先 神奈川県司法書士会 TEL 045-641-1372 -> 平成25年度法の日の相談会パンフレット 平成25年9月29日 座間市・法の日の相談会 日 時 平成25年9月29日(日) 午前10時から午後4時 場 所 座間市市民文化会館 ハーモニーホール 予約不要、当日直接相談会場へご来場ください。 問合せ先 神奈川県司法書士会 TEL 045-641-1372 -> 平成25年度法の日の相談会パンフレット 平成25年9月29日 伊勢原市・法の日の相談会 日 時 平成25年9月29日(日) 午前10時から午後4時 場 所 伊勢原市民文化会館 予約不要、当日直接相談会場へご来場ください。 問合せ先 神奈川県司法書士会 TEL 045-641-1372 -> 平成25年度法の日の相談会パンフレット 平成25年9月28日 大和市・法の日の相談会 日 時 平成25年9月28日(土) 午前10時から午後4時 場 所 大和市生涯学習センター303号室 予約不要、当日直接相談会場へご来場ください。 問合せ先 神奈川県司法書士会 TEL 045-641-1372 -> 平成25年度法の日の相談会パンフレット 平成25年8月3日 大和市みんなの生活展 日時 平成25年8月3日(土) 午前10時から午後4時 場所 オークシティ イオンモール大和1階 ライトコート 大和市主催のみんなの生活展にて、相談ブースを設けて、相談会を開催します。 予約不要、当日直接相談会場へご来場ください。 問合せ先 大和市市民経済部 市民相談課 TEL 046-260-5174 -> みんなの生活展のパンフレット 平成25年7月6日 秦野市行政・法律合同特設相談会 日 時 平成25年7月6日(土) 午前10時から午後4時 場 所 秦野市保健福祉センター 要予約、申込締め切り6月28日、先着順 問合せ先 秦野市ホームページでご確認下さい。-> 行政・法律合同特設相談会 開催日時が近いものからご紹介しています。 本年度予定の無料相談会は終了し、現在予定されている無料相談会はございません。 常設の各市で開催されている常設の相談会をご利用下さい。 -> 常設相談会
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hello21c@wikiへようこそ こちらは、hello21c の司法書士試験合格のための学習ノートです。 2011年合格目標!! 【編集】 <留意事項> このサイトの編集権限は、管理者のみ(一部は登録メンバーにも)に限定されています。 記載内容に、多少誤りがあるかもしれません。 あまりきちんと分類整理されていません(几帳面にやりすぎるのもどうかと・・・)。 このページに起因する、いかなる損害に対しても当方ではその責めを負いません。 予めご了承ください。 → hello21c のブログ「司法書士への階段」へ おすすめリンク いろは行政法務労務管理事務所のページ ~親友のiroha21c氏のホームページです。 いろは行政法務労務管理事務所のブログ ~親友のiroha21c氏のブログです。 このサイトのタグ一覧 抵当権 設定 変更 移転 所有権 共同 処分 根抵当権 抹消 相続 更正 未分類 メモ 買戻 共有物 農地 転抵当権 共有 保存 合併 代位 更新日時:2010年11月12日 (金) 10時07分30秒 ウィキはみんなで気軽にホームページ編集できるツールです。 しかし、このページは自由に編集することができません。 まずはこちらをご覧ください。 @wikiの基本操作 用途別のオススメ機能紹介 @wikiの設定/管理 おすすめ機能 気になるニュースをチェック 関連するブログ一覧を表示 その他にもいろいろな機能満載!! @wikiプラグイン @wiki便利ツール @wiki構文 バグ・不具合を見つけたら? お手数ですが、こちらからご連絡宜しくお願いいたします。 ⇒http //atwiki.jp/guide/contact.html 分からないことは? @wiki ご利用ガイド よくある質問 @wikiへお問い合わせ 等をご活用ください
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設問1 第1 提起すべき訴訟 中止命令に対する取消訴訟(行訴法3条2項) 第2 法令違憲 1.中止命令規定は21条1項に反する。 2.保護範囲 表現の自由の保障根拠→多様な情報流通が公共の利益に資することに基づく ∴有用な情報流通させる行為一般を保護 →Z機能画像の提供=有用な情報流通させる行為 ∴Z機能画像の提供は表現の自由により保護される。 Z機能画像の提供される情報 →ユーザーの利便性向上に役立つ 詐欺被害を未然に防止 →特に有用な情報を提供 ∴要保護性極めて高い 3.権利の制約 中止命令=従わなければ公表される(法8条4項) →社会的信用が重要な営利企業にとって極めて強度の制約 4、審査基準 権利と制約の態様からして極めて厳格な審査基準によるべき。 ①目的の重要性②目的と手段との間の実質的関連性、LRAの有無 ①→「国民生活の安全と平穏」(法1条) この意味が「国民の不安感に対する保護」程度の意味なら表現の自由の制約を正当化するに足りるほど重要といえない。 「国民のプライバシー権に対する具体的な危険からの保護」といった意味のものと解するべきで、これなら目的は重要。 ②→規制対象の画像は行動から見る事のできる範囲のもので、プライバシー権による保護の範囲外の情報しか提供していない ∴実質的関連性なし また、画像提供全体ではなく、プライバシー侵害情報が掲載されている部分だけを提供中止にすればよい(LRA有) 第3 適用違憲 目的との実質的関連性を審査 Xは法遵守しているから、Xにより提供される画像は「地上から1メートル60センチメートルの高さ」(法7条1項)からのものに限られる。 →通常人が公道から見た風景と変わらない。 →プライバシーとして保護に値しない情報 →目的との間に実質的関連性なし
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〔基本書〕 ☆江頭憲治郎『株式会社法』有斐閣(2011/12・第4版)……本来は実務家向きに書かれた本だが、学界においても現時点における最高の体系書としての評価が確立しており,多くの合格者も利用している。ほぼ全ての論点を網羅しているが、結論を端的に指摘するのみにとどまる部分や、司法試験レベルでは不要な部分も多い。また、本書を使いこなすには関連分野の予備知識も含めた相応の実力が必要である(本書の記述が会社法プロパーではないため)。とはいえ、全体としては制度趣旨から分かり易く書かれているので、参考書ないし辞書としてならば初学者にとっても有用であろう。本文の記述はきわめて簡潔ながら、詳細な注釈にこそ重要なことがらが書かれているところに特徴がある。したがって注釈を飛ばして読もうとすると本書の価値をほとんど生かせない。もっとも、学習が進めば、簡潔なように見える本文にも実は深い意味が込められているということが分かってくるだろう。会社法に精通した者であれば本文だけ追うことにより択一用にも使えると言われる。第4版ではフォントが変更されている。 伊藤靖史・大杉謙一・田中亘・松井秀征『リーガルクエスト会社法』(2012/01・第2版 補訂)……東大・京大出身の若手有力学者らによるやや薄めの「教科書」。もっとも,百選での引用頻度もそれなりに高く,学界からも注目を受けている一冊であると思われる。内田民法を意識したケースメソッドを会社法の基本書として初めて本格的に導入。学生はもとよりプロの法律家からの評判も良い。伝統的な論点に対する解説が薄い代わりに、先端的な論点を解説するコラムが充実している。記述が平易で分かりやすいことはもちろん、(江頭説以外の)学説を批判し判例の立場に立つことが多い上、記述は上場会社に偏っており、議決権行使書面の書式まで載せているというまさしく新司法試験向きの教科書である。引用判例には百選や商法判例集の番号もふっている。判例の引用が大ざっぱだとか、著者達の個性が強く出ているため初学者向きではないとの意見もあるが、発展的な知識を手軽に得ることのできる好著である。 神田秀樹『会社法』弘文堂(2011/03・第13版)……改訂は早春の風物詩。第13版では30ページ増加の大幅改訂。教科書指定する学部・ローが多く、初学者も安易に手を出しがちだが、神田会社法については次のような両極の評価が存在している。すなわち、(1)薄すぎて初学者にはとっつきにくく、お勧めできない(=中上級者向け)という評価と、(2)大枠を押さえることに適しており、初学者にも幅広くお勧めできるという評価である。※前者の評価をするものとして、法セ07択一解説[上柳]参照。一例を挙げると、定款の絶対的記載事項のひとつに発行可能株式総数があることの根拠として、本書は単に(37)という条文番号を記載するのみである。もっとも、新株発行の節まで読み進めると、授権株式制度として発行可能株式総数の説明がなされている。さしずめ、辞書的に使用するには不適切であるが、通読して会社法を学ぶことには適していると言えよう。本書の記述の大部分は条文と結論のみで構成されており、択一カバー率は驚異的に高いものの、それは裏を返せば「何も書いていない」ということを意味している。いわゆる論点に対する記述は大変短い。脚注を多用しており、そこではしばしば高度なことがさらりと書かれているため、それらを丁寧に読み進めていくと薄さの割に時間がかかる。また、脚注の中で判例の結論を紹介しつつ、本文ではそれと反対の結論をとることもあり、本書は決して判例・通説をコンパクトにまとめることを意図した本ではない。 前田庸『会社法入門』有斐閣(2009/12・第12版)……制度趣旨から会社法理論を懇切丁寧に解説しているベーシックな基本書。脚注に頼らずにありとあらゆる規定の趣旨を丹念に述べていった結果、横書き800頁超という驚異的な厚さを達成した。徹底したクロスリファレンスと、ほどよく咀嚼された分かりやすい説明に定評がある。多くの論点で伝統的通説を採用しているため安定感はあるが、最新の重要論点への踏み込みは浅く、判例の引用も類書に比べてかなり少ない。脚注がなく、改行もそこそこに、同じサイズの文字で細かな条文までびっしりと説明するため、「入門」と銘打たれてはいるが、初学者には重要なところとそうでないところとの区別がつきにくく、その厚さもあってそもそも通読することすら難しい。もっとも、いったんそれに慣れてしまうと、分かりやすさゆえに逆に離れられなくなる。細かい要件も網羅しているため(例・360条3項「回復することができない損害」の意義)、参考書として江頭と併用するのもよい。六法を片手に、地道に条文を引きながら読み進めていけばとても理解が進む。 弥永真生『リーガルマインド会社法』有斐閣(2009/11・第12版) ……11版から大幅リニューアルして薄くなった。旧司時代はおそらくトップシェアだったが、新司時代になってからは神田や江頭に押され気味である。冒頭に会社法の分析視座が提示されており、論点的なため旧司法試験の論文式試験向きといわれていた。12版からは旧商法に関する記述を削り、神田やリーガルクエスト並みの厚さの本にリニューアルした。この本の大きな長所の一つは、概念の定義がきちんと書かれていることである。たとえば、株主総会決議における特別利害関係のある株主とは、どのような者をいうのか。あるいは、利益相反取引における間接取引とは、どのようなものをいうのか。他の基本書で、これらの定義がきちんと書かれているものは、かなり少ない。他の基本書の多くは、いくつかの具体例を挙げるのみである。しかし、この本には、定義がしっかりと書かれている(もちろん、上掲のような抽象度の高い概念は、定義も抽象的であるが)。新司法試験では、長文の事例のなかから、一定の概念に当てはまる事実を抜き出さなければならない。そのとき、概念定義を正確に覚えていると、それにあてはまる事実を、適切に拾うことができる。しかし、概念定義を覚えておらず、典型例を覚えているのみだと、答案に事実をただ羅列し、その概念に該当する、という結論言切型の答案になってしまう。これでは、よい評価は得られない。弥永の基本書のように、概念定義が丁寧な本は、長文の事例から事実を拾い、一定の概念に当てはめなければならない、新司法試験においても、大きな威力を発揮する。 龍田節『会社法大要』有斐閣(2007/05)……著者は今では現役を退いた感が否めないが、学士院会員であり、江頭以前の第一人者である。新法対応に伴い書名変更。高度な内容でかつ分かり易い。「なじみ型」「ミニ取締役会」などユニークな表現多し。文章は接続詞が少なく単文をポツポツつなげるスタイルで弥永の対極にある。「…黄金株と呼ばれることもあるが、おこがましい名称であり、ウイルス株とでも呼ぶのがふさわしい。」などの皮肉な記述が散見され読み飽きない。改訂が待たれる。 〔その他〕 大隅健一郎・今井宏・小林量『新会社法概説』有斐閣(2010/03)……大隅(元最高裁判事)は1998年他界。今回の改訂は主に小林によるものと思われる。会社法施行後の研究の蓄積を踏まえた内容で、とても新しい。章立ては多少独特だが、解釈論ではおおむね「現在の」多数説を採用している。本文の記述は簡潔ながら要領よくまとめられているが、それゆえ初学者には余り向かないかもしれない。他方で、注釈ではしばしば江頭もカバーしていないような最新の重要論点に深く踏み込んでいる。そこでは最新の文献もきちんと引用されており、発展的学習へのつながりも良い。新司法試験の問題意識にも丁寧に応えている。横書き600頁ほどだが、この詳細な注釈によって本書はかなり重厚な体系書に仕上がっている。なお、執筆陣が京大系であるためか、『会社法事例演習教材』とかなり相性がいい。計算規則の改正に従い素早く改訂されたところを見ると、今後は京大系のテキストの代表格となっていくと思われる。 近藤光男・柴田和史・野田博『ポイントレクチャー会社法』(2009/12)……共同執筆による会社法の講義用テキスト。初学者を主たる対象としており、解説が平易であるだけでなくレイアウトにも工夫が見られ、項目立てがすっきりしており余白も大きくとられている。また、予備校本のように何が論点であるのかが視覚的にもはっきりと分かるため、とても読みやすい。叙述のスタイルはいたって標準的(『リーガルクエスト会社法』のようなケースメソッドは用いていない)。執筆陣の個性は完全に消されており、時折新しい問題意識を交えつつ、現在の判例・通説を江頭や前田を頻繁に引用しながら解説していく。要するに教科書に徹している。便宜上、全体を28+2のUnitに分けて構成しており、内容は大規模公開会社を前提とするものにやや偏っているが、通常の会社法の概説書に求められる程度の網羅性はキープしている。本文は横書き420頁ほど。ロースクール未修クラスや、学部の講義のお供に好適。択一の肢のほとんどをカバーしており、(なぜか事業譲渡に関する記述が欠けている点を除けば)直前期にさーっと通読するのにも使える。 柴田和史『会社法詳説』商事法務(2009/09)……著者は現職の新司法試験委員。「神田は薄すぎる、かといって他の教科書は厚すぎる」という学生には本書がお薦め。リーガルクエストとの違いは、(1)単一著者による「体系書」であること、(2)設例やコラムの類がないシンプルな作り、の2点に求められる。横書きで450頁あるが、フォントが大きいので1頁あたりの文字数は少なく、高速で読める。 北村雅史・柴田和史・山田純子『現代会社法入門』有斐閣(20010/04・第3版)……基本的には初学者向けであるが、司法試験であれば、これ一冊で必要十分。著者は3人とも司法試験委員経験しており、その記述には安心感がある。 石山卓磨『現代会社法講義』成文堂(2009/03・第2版)……会社法に対応してアップデート。論点網羅。標準的な体系で会社法制度の変遷・概要を淡々と説明している。文章は非常に読みやすく、判例も丁寧に紹介しており、全体的に無難なつくりとなっている。残念ながらライブ本のようには面白くない。中立的な本のため、入門書としても使える。 関俊彦『会社法概論』商事法務(2009/12・全訂第2版)……著者は鈴木竹雄門下。全体として自説の主張が強い。少数説を採用したり、結論自体は通説と同じでも理由づけがそれと異なっていたりするところがちらほら見られるが、文章自体は読みやすく、神田以上江頭未満の標準的な厚さなので、とっつきやすい。章立てなどを見ると学習者に対する配慮もうかがえる(会社の設立を後回しにして株式から解説する、など。)。たまに意味の分からない日本語があるが、全体として“読ませる文章”となっており、横書きで500頁あるが、余白も多く、比較的学習の進んだ者であれば一回しするのにそれほど時間がかからないだろう。冒頭の会社法総論ともいうべき記述が充実しているところに著者の個性がみられる。良書だが判例索引がないのが玉に瑕。 落合誠一・神田秀樹・近藤光男『商法II(会社)』有斐閣S(2010/04・第8版)……コンパクト。知識確認用。 近藤光男『最新株式会社法』中央経済社(2011/02・第6版)……厚さ標準的。知識整理通読用。有力説で解釈立体化。 田邊光政『会社法要説』税務経理協会(2006/04・新版)……注のない流れるような文章。簡潔な記載、脇道に逸れない。横書き。『会社法読本』中央経済社(2008/06)……誤植がやや多いとの声がある。 加美和照『会社法』勁草書房(2007/08・新訂第9版)……判例・学説を網羅。会社法改正の歴史を丁寧に踏まえた記述が特徴。一方最新の議論には余り配慮していない面もある(例・株主平等原則や買収防衛策についての記述)。昭和20年代からの改正を確認できる基本書はこれだけである。 青竹正一『新会社法』信山社(2010/04・第3版)……判例紹介が充実。学説は自説の主張が強く自著を頻繁に引用する。最もその点に目をつぶれば、論点についての記述も比較的充実しており内容は悪くない。しかし、第3版では値段が3000円近く上がり、学生があえて買うような本ではなくなった。 宮島司『新会社法エッセンス』弘文堂(2008/09・第3版)……体系書と比べて、独自の見解がそれほど強くない。 森田章『上場会社法入門』有斐閣(2010/09・第2版)……タイトルの通り、特に会社法では例外扱いになってしまう上場会社を踏まえた本。何故か上場会社しか出題されない新司法試験の論文向きのようにも思われるが、少数説満載のため思ったほどは使えない。いわゆる野心的な著作。 高橋英治『会社法概説』中央経済社(2010/08)……枝葉の議論は思い切って簡略化し、重要事項に焦点をあてて解説している。余白が少ない。事例問題の解き方の解説が載っている。 木俣由美『VIRTUAL会社法』悠々社(2008/04・第3版)……著者は日本笑い学会理事も務める。ゲームソフト開発・製造・販売を営む「ランダム社」を舞台に、多くのキャラクターが登場する。とはいっても内容は本格的で、図が多く、また条文が注に引用されている等、非常に親切につくられている。入門書と基本書の間くらいに位置する本か? 〔入門書・実務書等〕 近藤光男『会社法の仕組み』日経文庫(2006/08)……実務上大半を占める取締役会設置会社をベースに会社法を解説。 中島茂『株主総会の進め方』(2009/01・第2版)『取締役の法律知識』(2005/11・第2版)……企業法務弁護士による会社法実務書。会社法において重要なウェイトを占める機関について概観するのに最適。 河本一郎他『日本の会社法』商事法務(2008/03・新訂第9版)……元はオランダのエンサイクロペディアの原稿として書かれた。記述は平板かつ淡白で不親切な部分もあるが、論点は網羅的に取り上げられている。良書だが、初学者が入門書として読むべき本ではない。 滝川宜信『リーディング会社法』民事法研究会 (2010/03・第2版)……元デンソー法務部長による会社法テキスト。 成和明哲法律事務所編『実務会社法講義』民事法研究会(2011/03・第3版)……図や表が豊富。 長島大野常松法律事務所『アドバンス新会社法』商事法務(2010/09・第3版)……会社法施行直後に2版刊行、改正のあった点を重点的に解説していた。2版が絶版となって久しかったが、待望の3版が出版された。きわめて実務向けの本で、実務に重要かどうかで事項解説の濃淡も分かれる。 ☆東京地方裁判所商事研究会編『類型別会社訴訟I・II』判例タイムズ社(2011/12・第3版)……実務向け。実務的に極めて影響力が強い東京地裁商事部(民事8部)の見解がわかる本。取締役の解任訴訟や新株発行差止め訴訟などにおける訴訟要件、必要な書証などがわかる。また、実務的に重要な論点についても見解が示されている。訴状や仮処分命令申立書などの書式付。第3版においては、17章に「役員の地位を仮に定める仮処分」の項目を追加、18章に「株券電子化に伴う会社訴訟における留意事項について」という項目を追加。 東京地方裁判所商事研究会編『類型別会社非訟』判例タイムズ社(2009/07)……取締役会の議事録閲覧請求や検査役選任請求などの非訟事件についての論点を整理。書式付。 東京地方裁判所商事研究会編著『リーガルプログレッシブ2・商事関係訴訟』青林書院(2006/07)……会社関係訴訟を類型別に解説。マニアックな訴訟類型は省略している。『類型別会社訴訟』の簡略版(著者も同じ)。 葉玉匡美・郡谷大輔編著『会社法マスター115講座』ロータス21(2009/04・第3版)……会社法立案担当者ビジネスの一環。表や図を用いた入門書。 相澤哲編著『一問一答 新・会社法[改訂版]』(2009/09)……会社法立案担当者ビジネスの一環。立案担当者による立案趣旨の回答集。Q A形式で254問。最近改訂したが、立案担当者の見解を否定した2008年2月22日の最高裁判例に対応していないなどの改訂漏れも見られる(24頁)。 相澤哲・葉玉匡美・郡谷大輔編著『論点解説新・会社法―千問の道標』商事法務(2006/06)……会社法立案担当者ビジネスの一環。辞書。Q A形式で1000問。内容が古すぎるためか現在は絶版になっている。 浜田道代・岩原紳作編『会社法の争点』有斐閣(2009/12)……いわゆる争点シリーズ。基本的な論点を中心に解説している。議決権行使書面による議決権行使などの比較的新しい論点も取り上げられている。 宍戸善一監修、岩倉正和・佐藤丈文編著『会社法実務解説』有斐閣(2011/12)……実務家が会社法実務について実際の書式例を挙げて解説した実務書。主たる読者対象は実務家であるが、基本書だけでは知ることができない会社法実務について詳しく解説されている。書式例が掲載されているので具体的イメージを掴むことができる。本書を一回しすれば会社法の苦手意識は相当程度解消されるだろう。 〔コンメンタール〕 江頭憲治郎ほか編『会社法コンメンタール(1),(4),(6),(8),(10),(11),(12),(16),(17),(18),(21)』商事法務(2008/03-)……実務必携の詳細な注釈書。全22巻(予定)。新会社法に対応した文献を中心に解説・解釈がなされており、特に(8)機関は学生にとっても有用である。なお、(1)巻のはしがきと附属の月報では会社法立案担当者に対するかなり強力な批判がされている。(21)罰則のうち、島田執筆の特別背任罪の解説は刑法の背任罪の解説としても秀逸。 酒巻俊雄・龍田節編『逐条解説会社法1-5巻』中央経済社(2008/06-)……中規模コンメンタール。全10巻(予定)。会社法コンメンタールに比べて広い範囲をカバーしているが、執筆者の自説主張がやや強い。 奥島孝康・落合誠一・浜田道代編『新基本法コンメンタール 会社法(1)-(3)』日本評論社(2010/09,2010/09,2009/08)……中規模コンメンタール。全3巻完結。 弥永真生『コンメンタール会社法施行規則・電子公告規則』商事法務(2007/03)……会社法施行規則についての注釈書はかなり少ない。実質的に選択肢は本書しかないが、多少古い上にとても高い。改訂が待たれる。 弥永真生『コンメンタール会社計算規則・商法施行規則』商事法務(2009/09・第2版)……計算部門が何故か出題されない司法試験レベルではまず不要。 〔判例集(含商法総則・商行為法、有価証券法)〕 ☆江頭憲治郎・岩原紳作・神作裕之・藤田友敬編『会社法判例百選』有斐閣(2011/09・第2版)……収録判例数は103件。旧版から実務的であり多くの文献で引用されてきたが、今回の改訂では旧商法下の判例の会社法改正後の実務の扱いを踏まえた記述がなされており、さらに参照価値が増した。 倉澤康一郎・奥島孝康・森淳二朗編『判例講義会社法』悠々社(2007/04)……判例収録数は百選よりも多い(150個)が解説は全体的に薄味。 岩倉正和・佐藤丈文編『企業法務判例ケーススタディ300 企業組織編』金融財政事情研究会(2007/12)……企業法務に携わる弁護士の立場から会社法判例を解説。解説の内容は充実しており、判例を踏まえた実務上望ましい取り扱いを解説しているのが特徴。独占禁止法などの関連法分野にも触れている。この巻の判例収録数は100。 酒巻俊雄・尾崎安央編『会社法重要判例解説』成文堂(2008/10・第3版増補版)……会社法の判例を見開き2頁で収めている。会社法の判例収録数は類書で最大だが、判旨・解説ともにやや舌足らず。2006年の第三版に増補しただけなので内容はやや古い。 『手形小切手判例百選』有斐閣(2004/10・第6版) 『商法(総則・商行為)判例百選』有斐閣(2008/12・第5版) 弥永真生『最新重要判例200 商法』弘文堂(2010/03・第3版)……コンパクトに会社法、商法総則・商行為、手形小切手法の判例を解説している。タイトルは200だが、第3版では222判例を収録している。 山下友信・神田秀樹編『商法判例集』有斐閣(2010/10・第4版)……商法全分野の判例集。解説は短めだが、判旨の引用は百選よりやや長い。 〔ケースブック(含商法総則・商行為法、有価証券法)〕 ☆丸山秀平他『ケースブック会社法』弘文堂(2011/03・第4版)……スタンダードなケースブック。裁判例が長めに掲載されており、教科書では省略されている会社法の関連知識も書かれている。 小塚荘一郎編著『ケース会社法-会社法判例・資料集』商事法務(2008/10) 小塚荘一郎『ケース商行為法―企業取引法判例集』商事法務(2007/04) 〔演習(含商法総則・商行為法、有価証券法)〕 中村信男・受川環大著『ロースクール演習 会社法』法学書院(2009/03) ……受験新報の誌上答練過去問から新司法試験向きの長文事例問題36問を選別したもの。雑誌掲載時の解説がアップデートされ、図や出題の意図、答案作成のポイントも加筆されている。百選掲載判例や近時の重要判例を元ネタにした問題が多い。答案はない。 ☆伊藤靖史・伊藤雄司・大杉謙一・齊藤真紀・田中亘・松井秀征『事例で考える会社法』有斐閣(2011/12)……「事例で学ぶ刑法」に続く、司法試験対策の長文演習問題。新進気鋭の若手学者6人による連載が単行本化されたもの。なお、書籍化にあたって収録順が変更されている。全24問。各設問の難易度は標準ないし高度で、ボリュームも司法試験本番のそれと比べてそん色ないため(その気になれば3時間でも4時間でもかけられる問題が並ぶ)、全問を解くにはかなり骨が折れるが、解説が丁寧なので何とか頑張れる。全問解けば重要論点は漏れなく拾える。司法試験対策の決定版。 石山卓磨『石山教授の新会社法 論文演習』辰已法律研究所 (2007/03) ……短文の事例問題・一行問題集。初学者向け。会社法の問題33問、商法総則・商行為の問題4問。そこそこの長さがある事例問題は19問。論点の網羅性は比較的高い。参考答案は一通のみ。 弥永真生『演習会社法』有斐閣(2006/05)……法学教室連載の単行本化。新会社法にいち早く対応した学者系演習書だが、旧法との違いを論じるような過渡期的性質を持つ。 前田雅弘・北村雅史・洲崎博史『会社法事例演習教材』有斐閣(2007/12)……京大教授による会社法演習書。解答・解説はサンプルを除いて存在しないが、同シリーズの民法と比べれば、基本的な設問、教科書的な内容が多く、そのような問題は引用文献を参照すれば難なく解ける。とはいえ、もちろん発展的内容も多い。新試対策として使える会社法の事例問題集が乏しい中、発売以来、ロースクールでは優秀層を中心に使用者を増やしていると思われるが、使用者の実力次第では自滅する危険性も有している。そもそも独習には向かないので、使用する際は“優秀者と”ゼミを組むべきであろう。なお、増刷の際に江頭2版の頁数に対応しているので刷数には注意すべきである。 葉玉匡美・会社法立案担当者の会『新・会社法100問』ダイヤモンド社(2006/11・第2版)……会社法立案担当者による会社法演習書。立案担当者の一人説が当然のように書かれているため内容を鵜呑みには出来ないが、立案担当者の見解を知るのは本書一冊で十分という意味では良書である。改訂予定だったが再版された。 田邊光政『旧司法試験 論文本試験過去問 手形法小切手法』(2004/11・新版)……平成16年度までの旧司法試験の過去問につき田邊教授が解説講義をした講義録が元となっている。新版では平成16年度までの問題解説が追加されており、手形法・小切手法の演習書としては極めて評判が高かった。特に手形法についての理論的進展、重要判例はないので、現在でも第一級の本である。絶版になっていたが、オンデマンド版で復活している。とはいえ、手形の衰退に伴い、新司法試験でも手形法は軽視されているためここまでやる必要があるかは疑問がある。 丸山秀平『演習講義 手形・小切手法』法学書院(2001/02・第2版)……旧試験チックな有価証券法の事例問題集。全37問で難易度も旧試験レベル~やや簡単め。交付契約説ベースの解説。ちなみに最後の商行為法のある分野が絡む問題は論点を知っていること自体マニアック。
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【基本書】〔メジャー〕<行為無価値論①> <結果無価値論①> 〔その他〕<行為無価値論②> <結果無価値論②> <その他> 【その他参考書】〔実務関連書〕 【入門書・概説書】 【注釈書・コンメンタール】 【判例集・ケースブック】〔判例集等〕 〔ケースブック〕 【演習書】 【基本書】 〔メジャー〕 <行為無価値論①> 大塚裕史・十河太朗・塩谷毅・豊田兼彦『基本刑法I——総論』『同II——各論』日本評論社(2019年3月・第3版、☆2023年4月・第3版)……「判例説」の立場から書かれた共著の教科書。「学者の書いた予備校本」といった趣。判例の立場を支持し、その内在的な理解を説明することに主眼が置かれており、学説対立については試験対策上必要な範囲で述べるに留められている。判例のエッセンスを抜き出して平易に解説することに関しては他の追随を許さない。著者の一人である大塚は、本書を学説から出発する「理論刑法学」ではなく、判例実務から出発する「実務刑法学」の視点に立ったものであると表現している(法学セミナー729号74頁参照)。全体のおおまかな構成は、まず学説について概説した上で判例の立場を述べ、その判断要素などを最後にまとめるという形を採る。具体的な叙述については、答案のように一つ一つどの段階の問題なのかを省略せずに記述しており、また、重要性に応じてフォントサイズを変えるなど、初学者にも十分に配慮している。類書には見られない特徴として、設例に対する学説のあてはめをきちんと行っていることが挙げられ、あてはめのやり方が分からないような場合に有用であろう。コラムでは試験対策上躓きやすいミスなども指摘されている。共犯の射程を唱えた十河執筆の共犯論は必読と言うべきであるが、一方で肝心の射程部分が少ないとの声もある。なお、判例説という立場を採る以上は仕方のないことであるが、本書は厳密な意味での行為無価値論に立脚するものではなく、体系的一貫性や理論的な精緻さといった学術的な面でやや心許ないことは否めない。もっともそうした点は現在の司法試験においてはさほど問題にならないため、もっぱら試験対策という観点から見れば、本書は極めて有用であると言えよう。各論に関しては、定義編と論点編が分離されており、特に後者は収録事例から論点を検討する形式を採ることから司法試験対策として実践的なものとなっている。特に大塚と十河執筆の財産犯は、判例の考え方を平易な文体で分かりやすく解説しており、一読の価値がある。総論(第3版)において、法改正・新判例が踏まえられ、「正当防衛」「実行の着手」「共犯」は全面改訂された。各論(第2版)は、2017年改正対応。全30・23講。A5判、536頁・610頁。 裁判所職員総合研修所監修『刑法総論講義案』司法協会(2016年6月・4訂版)……通称『講義案』。本書は元裁判官の杉田宗久(2013年に逝去)による書記官への講義レジュメが元になっている。書記官の研修用テキストということもあって、学術的な議論には深く立ち入らず、判例と伝統的通説(伝統的行為無価値論)に基づいて淡々とまとめられている。そのため、総論における激しい学説対立に辟易した受験生から一定の人気を得ている。理論刑法学を割り切るのであれば、選択肢としては真っ先に本書があげられよう。もっとも、本書のみでは、近年論文式試験において出題されるようになった、複数の理論構成を問うような問題への対応は難しいと思われるため留意されたい。4訂版は、3訂補訂版(2008年9月)以降の法改正に伴う修正が行われ、また、危険の現実化や退避義務論、中立的行為による幇助など近時の学説の展開を踏まえつつ、新たな判例が補充され、大幅な加筆修正が行われた。A5判、514頁。 井田良『講義刑法学・総論』『同・各論』有斐閣(2018年10月・第2版、☆2023年12月・第3版)……著者は伝統的行為無価値論(団藤、大塚、大谷等)とは一線を画する、いわゆる「新しい行為無価値論」(=道徳から切り離された行為無価値論)の旗手。井田説は行為無価値論の中でも理論的に高度で独自色が強いものであるが(例えば、消極的構成要件要素の理論、責任故意・責任過失の否定、緊急行為での有責性考慮、緊急避難の類型論など)、本書は学生向けの概説書に徹しており、判例・通説等の解説を主眼に置いている。自説を主張する場合はその旨を明記しており、なぜそのように考えるべきなのかも説明されているから、読み手を惑わす心配もない。叙述の論理は非常に明快であり、社会倫理規範や社会的相当性というような曖昧な概念をマジックワードとして用いて論争点の解決を図ることはない。そして、論点・学説も豊富に取り上げており、その解釈は非常に秀逸である。総じて、行為無価値論の基本書としては、現在最良のものの一つと言えよう。学説の整理も行き届いており、近年の出題傾向にも対応しうる。アドホックで一貫性に欠けるところのある『基本刑法』を読んでいて違和感を覚える者は、透徹した理論によって貫かれた本書を手にとってみるのもよかろう。総論・各論ともに第2版にて性犯罪規定の改正ならびに初版刊行以降の判例をフォロー。各論第3版にて2022年・2023年刑法改正に対応。全30・41章。A5判、700頁・762頁。同著者の『死刑制度と刑罰理論——死刑はなぜ問題なのか』岩波書店(2022年1月、四六判、240頁)は直接的には死刑制度を論じた著作であるが、刑罰理論としてヘーゲルを起源とする規範保護型の応報刑論を提唱する。 <結果無価値論①> 山口厚『刑法総論』『刑法各論』有斐閣(2016年3月・第3版、☆2024年8月予定・第3版……平野門下。元最高裁判事。総論・各論ともに非常にレベルが高く、司法試験合格レベルを想定するならばややオーバースペックとも思われるが、理論的な曖昧さを嫌う学生にとっては、安易なマジックワードなどを用いることなく、結果無価値論の最先端を示した本書は好適である。総論は、基礎的な事項を大胆に省いているため体系書としては薄く、そのうえ、正犯性等の従来の教科書レベルでカバーされなかった議論を載せているため、あらかじめ従前の議論を学ばずして本書を読みこなすことは困難であろう。初版(2001年8月)では、実行行為概念否定論など、過激な学説が多く見られたが、第2版、第3版と判例の立場に沿う方向での改説が随所でなされ、版を改めるごとに試験的には使いやすくなっている。各論は、総論に比べてかなりの厚さであるが、その分丁寧な解説で読みやすくなっている。また、判例を元にした緻密な分析が特徴的であり、総論で山口説以外を採る場合であっても、辞書的に利用する価値は大いにあるだろう。山口自身も総論より各論の教科書の完成度に自信があるとコメントしている。なお、総論については第3版補遺が、各論については第2版補遺が公開されている。A5判、428頁・690頁。 山口厚『刑法』有斐閣(2015年2月・第3版)……1冊本。通称『青本』。司法試験受験生のみならず、学部の講義用テキストとしても芦部憲法並みの多くのシェアを誇る。本書は初学者を主たる対象として、判例および全ての学説の前提となっている通説の解説に主眼を置いた教科書である。上記の二分冊の体系書に比べると、判例・通説の解説を主眼とする本書の性質上、自説はかなり控えめになっているが、一部に自説への誘導を図ろうとしていると思しき記述も見受けられる。また、広く浅い掘り下げのため、行間を読むことが要求されることから、初学者には正確な文意は理解できないとの声もある。前述の通り、本書は初学者向けに書かれたものであるが、刑法学の第一人者が判例と通説を平易に且つ網羅的に解説しているということもあり、刑法全体を一通り学んだ後や試験直前期のまとめ用として用いる学生も多い。行為無価値論を採る学生でも使用する者は多いが、特に結果無価値論を採る学生にとっては事実上の国定教科書に近い存在ともいえる。なお、第3版補遺あり。A5判、548頁。 西田典之(橋爪隆補訂)『刑法総論(法律学講座双書)』『刑法各論(同)』弘文堂(2019年3月・第3版、2018年3月・第7版)……平野門下。原著者の西田は2013年に逝去。各論は、結論の妥当性や実務で使える議論であることを強く志向しており、分かりやすさとバランスの良さに定評がある。また、判例解説や論文で代表的見解として引用されることも多い。ただし、西田は少数説を採ることも少なくないため、特に総論で西田を使わない場合は食い合わせに注意すべきである(例えば、身分犯の共犯など)。総論は、学生有志によって録音された、著者の東大での講義をテープ起こししたものが元になっており、講義録的な要素が強く残っているため、各論とは大きく趣が異なっている。洗練された各論と比べると記述は冗長であり、ページ数の割にその内容は薄く、また、体系的な整理も各論ほど丁寧ではない。以上のように、各論と比べれば完成度という面では大きく劣るものの、講義を元にしたものというだけあって、読み手を飽きさせない。体系は平野説に比較的忠実であり、山口に比べて全体的に穏当な見解にまとまっている。なお、構成要件を違法構成要件と責任構成要件に分割する独特の体系(すなわち、違法構成要件→違法阻却事由→責任構成要件→責任阻却事由という判断プロセスを辿る体系)を採っている点には注意を要する。総論第3版及び各論第7版の改訂は、弟子の橋爪によって行われ、旧版の記述は基本的に原形のまま残し、刑法に関する新たな動きを補訂したものとなっている。新法令や法改正については本文に修正を施し、最近の判例・裁判例についての加筆箇所は本文とは異なるレイアウトで追記している。補訂作業にあたり、橋爪個人の見解を示すことは避け、客観的な記述に徹している(はしがきより)。A5判、520頁・588頁。 〔その他〕 <行為無価値論②> 高橋則夫『刑法総論』『刑法各論』成文堂(2022年10月・第5版、2022年10月・第4版)……西原門下。新しい行為無価値論。総論は、最新の学説や問題意識が随所に織り交ぜられており、それらが著者の深い法哲学の素養と相俟って、行為無価値論の最先端を示すものに仕上がっている。いわゆる総論の総論の部分だけでも50頁超に渡るなど、近年では珍しい真剣勝負の理論書。特に客観的帰属論に関する記述は秀逸であり、明確な判断基準が示されているため論証化しやすく、大いに参考となるであろう。総論・各論ともに、判決文の紹介に多くの紙面を割き、判例解説も非常に充実している。また、具体的事案の処理に際しての思考過程も適宜示されており、受験生にも使いやすい本となっている。行為規範と制裁規範という独自の体系を採るなど、著者のアクが前面に出ているものの、結論は概ね判例・通説に近い。もっとも、結論よりも論証過程が重要である試験において、この点で使いづらいともいえる。他の基本書に比べ、やや独自色が強いため、中上級者向けであるとの声もある。A5判、676頁・816頁。著者による一般向けの入門書『刑の重さは何で決まるのか』筑摩書房(2024年4月、ちくまプリマー新書、新書判、208頁)も参照されたい。 大谷實『刑法講義総論』『同・各論』成文堂(2019年4月・新版第5版、2019年12月・新版第5版)……刑法の機能に法益保護に加えて道徳的価値の保護も含まれるとする「伝統的行為無価値論」。旧司法試験時代の定番書。現在も改訂は重ねられており、論点も網羅的に取り上げられているが、著者高齢のためか、議論に古さを感じさせる部分も見受けられる。大谷説は改説が比較的多いことで知られ、特に総論においてその体系的一貫性にしばしば疑問が呈されている。もっとも、そのような点は前掲『基本刑法』同様、現在の司法試験ではそれほど問題となるものではない。また、大谷説は「社会的相当性」という判断基準をマジックワードとして用いることで、大半の論点で強引な解決を図っているという批判がされることがあるが、実際に総論において「社会的相当性」を用いて強引に解決が図られているところは正当業務行為と自招防衛程度である。各論については、大谷が実務との関連を意識していることから(はしがきより)、比較的判例・通説寄りであり、結論も穏当なものが多く、記述も整理が行き届いていることから、非常に使いやすい。収録判例数が多いことも評価できる。西田各論が肌に合わないという者は大谷各論を用いるのも悪くない選択肢であろう。A5判、638頁・732頁。 大谷實『刑法総論』『刑法各論』成文堂(2018年4月・第5版、2018年4月・第5版)……通称「薄い方」。『刑法講義』を判例・通説中心にコンパクトにまとめた、通読向きの概説書。量として必要十分なまとめ本に仕上がっており、試験前の総まとめに向く。『刑法講義』より大谷説を理解しやすいとの声あり。A5判、352頁・464頁。 中森喜彦『刑法各論』有斐閣(2015年10月・第4版)……著者は関西における行為無価値論の第一人者。本書は西田各論などの陰に隠れがちであり、あまりシェアは高くないものの、その内容には定評がある。他の基本書に比べて非常にコンパクトにまとめられており、また、基本的に穏当な見解が採られながらも、論点への鋭い踏み込みもあるなど、まさしく「簡にして要を得た」という表現がふさわしい基本書となっている。なお、刑法総論は執筆しないことを著者自ら公言している。A5判、348頁。 小林充原著、植村立郎監修、園原敏彦改訂『刑法』立花書房(2015年4月・第4版)……実務家による一冊本。原著者は著名な元刑事裁判官(2013年に逝去)。第4版は第3版(2007年4月)以降の関係法令・判例・学説等の進展を踏まえて、植村立郎(弁護士・元裁判官)監修のもと、現役判事の園原敏彦が改訂。実務経験の裏打ちを基に判例の考え方を簡潔に説明。自説は少ない。A5判、512頁。 伊東研祐『刑法講義・総論(法セミ LAW CLASS シリーズ)』『同・各論(同)』日本評論社(2010年12月、2011年3月)……夭折の天才・藤木英雄(東大最後の行為無価値論者)の弟子。団藤=大塚ラインとは一線を画する、洗練された行為無価値論を採る。法学セミナーでの連載を単行本化したもので、著者曰く未修者向け。総論は、著者の講義を聴講しない独習者にも理解できるよう著者の特異な独自説はあえて載せていない(もちろん自説主張が全くないという意味ではなく、著者の法哲学見地(『総論』第1章参照)からまとめられた体系に沿った主張もある)。学説の引用元を表示していない点、類書に比べ判例の紹介・引用がやや少ない点は賛否がわかれるところだろう。各論も総論と同じく特異な独自説は少なめだが、新たな視点からの記述も多く参考になる。判例に批判的な箇所も多いが実用上支障はない。著者の文体は非常に難解であり、容易に読み進められないが、一方で読み応えがあるという評価もある。A5判、480頁・488頁。なお、同著者による、より初学者向けの基本書として『刑法総論(新法学ライブラリ 17)』新世社(2008年2月)がある。 橋本正博『刑法総論(法学叢書12)』『刑法各論(同13)』新世社(2015年2月、2017年2月)……著者は福田門下。最近の問題意識に応接しながらも、全体的に安定感がある記述となっている。著者は「違法性とは実質的に全体としての法秩序に反することである、と解する規範違反説的考え方に基づく定義が基本的には妥当である。……社会的相当性からの逸脱が違法性の重要な部分を占める」と明言しており、福田の影響が見てとれる。また、結果無価値論と行為無価値論は「原則として排他的なものではない」と述べているが、試金石ともいうべき偶然防衛については「行為者に行為規範を与えることも考慮する行為無価値論の視点を含める以上、防衛の意思で行われるからこそ正当化が認められる」としている。共犯論は、著者の有名なモノグラフィー『「行為支配論」と正犯理論』有斐閣(2000年2月)の内容を踏襲したものとなっており、説明の仕方にはやや独自色が見られるが、結論自体は現在の刑法学界の共通認識を踏み越えない穏当な所に収まっている。なお、細かな解釈論については井田『講義刑法学』及び『刑法総論の理論構造』を参照させる場面が多いため、それらが手元にあると便利。A5判、392頁・576頁。 川端博『刑法総論講義』『刑法各論講義』成文堂(2013年4月・第3版、2010年3月・第2版)……団藤門下。最新の議論にはあまり触れられていないが、基礎的な理論や論点については詳細かつ丁寧な説明がなされている。記述はレジュメ調に整理されており、判例・学説・自説を歯切れよい文章でたんたんと説明する。A5判、798頁・814頁。 川端博『刑法』成文堂(2014年3月)……1冊本。放送大学テキストの改訂版。判例・通説を中心にコンパクトにまとめられている。特に上記の2冊本を基本書としている者にはまとめ本として好適。A5判、428頁。なお、本書の各論パートは、令和5年刑法改正等の加筆修正を施され、川端博・明照博章・今村暢好『刑法各論』成文堂(☆2024年3月、A5判、240頁)として出版された。 佐久間修『刑法総論』『刑法各論』成文堂(2009年8月、2012年9月・第2版)……大塚仁門下。いわゆる団藤=大塚ラインの系統。改訂により文章の読みにくさはかなり改善されたが、結果無価値論からの批判に対する目新しい再反論はあまりみられない。A5判、516頁・512頁。他に『刑法総論の基礎と応用——条文・学説・判例をつなぐ』成文堂(2015年10月、A5版、410頁)、雑誌「警察学論集」の連載に増補・加筆して単行本化した『実践講座・刑法各論』立花書房(2007年3月)等がある。 斎藤信治『刑法総論』『刑法各論』有斐閣(2008年5月・第6版、2014年3月・第4版)……「社会心理的衝撃性」なる独特の概念を用いる。学説紹介が詳細。巻末にユニークな設例つき。A5判、470頁・488頁。 高橋則夫ほか『法科大学院テキスト刑法総論』『同・刑法各論』日本評論社(2007年10月・第2版、2008年4月)……行為無価値論者による共著。執筆陣は豪華だが、総論はちぐはぐ感が否めない。各論はよくまとまっており、論点ごとの判例・学説・文献カタログとして使い勝手が良い。A5判、432頁・392頁。 大谷實編著『法学講義 刑法1 総論』『同2 各論』悠々社(2007年4月、2014年4月)……主に大谷門下の関西系行為無価値論者による共著。刑法の基本部分の解説を中心としつつ、従来の教科書から一歩前へ進めた議論も紹介しており、行為無価値論版リークエとも呼べる一冊。A5判、400頁・404頁。 立石二六『刑法総論』成文堂(2015年3月・第4版)……A5判、438頁。 伊藤亮吉『刑法総論入門講義』『刑法各論入門講義』成文堂(2022年9月、2022年4月)……著者は野村稔門下。「入門」とあるがちゃんとした基本書。総論・各論とも、多くは条文の指摘程度であるが、各節の末尾で関連する特別刑法にも言及しているのが特徴的。ですます調。A5判、492頁・552頁。(評価待ち。) (古典) 団藤重光『刑法綱要総論』『同・各論』創文社(1990年6月・第3版、1990年6月・第3版。創文社オンデマンド叢書にてOD版対応。)……行為無価値論の重鎮による一冊。元最高裁判事。2012年に逝去。実務的影響力は今なお大きく、現在でも刑法実務で通説といえば、おおむね団藤説(ないし大塚説)を指す。定型、形式を重視するシンプルですっきりした体系。法律論としての美しさには定評があるものの、共謀共同正犯を肯定したことで若干の綻びもみられる。半世紀前の初版の時点で体系そのものは完成しており、それがそのまま現在の刑法解釈学の基礎をなしている。因果関係、不作為犯、実行行為性、共犯論など多くの分野において、判例・学説は近時さまざまに実質論を展開しており、形式を重視する団藤説は発展的に解消されつつあると言われる。電子書籍版あり。A5判、623頁・696頁 大塚仁『刑法概説・総論』『同・各論』有斐閣(2008年10月・第4版、2005年12月・第3版増補版)……著者は伝統的行為無価値論の大家。行為無価値論の論客として長く主導的地位にあり、団藤とともに伝統的通説(いわゆる「団藤=大塚ライン」)を形成した。実務的影響力は今なお大きく、刑法実務で通説といえば、概ね大塚説(ないし団藤説)を指す。ただし、本書では論理的一貫性の観点から、優越支配共同正犯説、不法領得の意思不要説など、実務通説と一部異なる見解を支持する。人格的行為論をはじめとして団藤説の多くを継承しているためやや議論が古く、特に総論は最新の議論に対応し切れていない部分も見受けられる。しかし、伝統的通説の立場から、終始一貫した論理で刑法を網羅的に解説する本書は、刑法学の理解に未だ有用であろう。なお、概説、入門共に改訂予定はあったが、著者逝去のため白紙になった。A5判、658頁・782頁。 福田平『刑法総論』『刑法各論』有斐閣(2011年10月・第5版、2002年5月・第3版増補)……団藤門下。2019年に逝去。著者は戦後昭和期の代表的な目的的行為論者であり、井田も私淑している。厳格責任説、共謀共同正犯否定説といった立場を採り、論理の一貫性においては師である団藤を上回るとも。曖昧さや倫理性を排し、基礎理論に根ざした福田説は現在でも説得力を持つ。団藤・大塚らの伝統的学説を立体的に理解するためにも有用である。なお、各論は非常に簡潔な構成となっている。A5判、408頁・340頁。 藤木英雄『刑法講義・総論』『同・各論』弘文堂(1975年11月、1976年12月、OD版:2003年10月)……団藤門下の夭折の天才。1977年に逝去。実質的犯罪論、可罰的違法性論、新・新過失論、誤想防衛の違法性阻却、間接正犯類似説など、現在の学説にも示唆を与える啓発的内容が特徴だが、その理論体系に師匠ほどの緻密さはないと言われている。A5判、458頁・466頁。入門書として、板倉宏との共著『刑法案内1・2』勁草書房(2011年1月)がある。 板倉宏『刑法総論』『刑法各論』勁草書房(2007年4月・補訂版、2004年6月)……団藤門下。2017年に逝去。判例を重視した学説。A5判、432頁・400頁。概説書として、1冊本『刑法(有斐閣双書プリマ・シリーズ)』有斐閣(2008年2月・第5版)がある。 平川宗信『刑法各論』有斐閣(1996年1月)……団藤門下。仏教思想を元にした独自の刑法学を構築。保護法益による3分体系をとらず、憲法を基準に個人の重要な生活利益を選び出し体系化。刑罰規定の解釈論に加えて、立法論・法政策論を含むのが特徴。A5判、598頁。 西原春夫『刑法総論 上巻・下巻』成文堂(1998年5月・改訂版、1993年1月・改訂準備版)……早稲田大学第12代総長。信頼の原則の提唱者。交通事犯における過失論で有名。A5判、354頁・540頁。 木村龜二著・阿部純二増補『刑法総論(有斐閣法律学全集)』有斐閣(1978年4月・増補版、OD版:2004年3月)……名著。目的的行為論の古典。著者は1972年に逝去。A5判、502頁。 阿部純二『刑法総論(BUL双書)』日本評論社(1997年11月)……木村龜二門下。2017年に逝去。目的的行為論、厳格責任説、違法性阻却事由の一般的原理における目的説、緊急避難の法的性質における二分説(生命対生命、身体対身体の場合に責任阻却)、不能犯論における主観的危険説、正犯と共犯の区別における決意標準説、共犯と身分における義務犯説など。コンパクトながらもドイツの学説も紹介している。B6判、320頁。 野村稔『刑法総論』成文堂(1998年10月・補訂版)……西原門下。A5判、526頁。他に、学生向けの参考書として『刑法演習教材』成文堂(2007年11月・改訂版)がある。 <結果無価値論②> 前田雅英『刑法総論講義』『刑法各論講義』東京大学出版会(☆2024年6月・第8版、2020年2月・第7版)……平野門下。かつて大谷とシェアを二分した旧司法試験時代の定番書。前田説は、論理的な体系の構築よりも判例法理の抽出に重点を置いた学説である。規範・考慮要素がしっかり提示されているため、論述に用いやすく、かつ判例と一致する結論を導きやすい。法律の体系書として初めて横書きを採用したり、二色刷りで図表を多用するなど視覚的効果に富んでおり、記述も詳しいことから、非常に理解しやすい。ただし、著者は結果無価値論者であるものの、行為無価値論者の藤木と同様の実質的犯罪論に基礎を置き、西田・山口・佐伯といった結果無価値の主流派とは異なる独自の立場から書かれているため、他の学説と比較して考えると混乱するおそれが非常に大きく、前田説のつまみ食いは危険である。本書を利用するのであれば前田説と心中する覚悟が必要であろう。総論は第6版および第7版、各論は第6版の改訂時に全面リニューアルし、大幅な減頁(総論は計176頁、各論は192頁)がなされ、司法試験に必要最小限の論点のみを凝縮した書となった。A5判、488頁・576頁。 木村光江『刑法』東京大学出版会(2018年3月・第4版)……前田門下による1冊本。上記の前田『講義』二分冊を圧縮したような内容となっており、同書と相性が良い。司法試験に必要十分な知識がコンパクトに押さえられており、記述も学生の目線に合わせたわかりやすいものとなっている。なお、各項目末尾にあった「まとめ」は第4版から削除された。A5判、480頁。同著者による演習書として、『演習刑法』東京大学出版会(2016年3月・第2版)がある。 今井猛嘉・小林憲太郎・島田聡一郎・橋爪隆『刑法総論(LEGAL QUEST)』『刑法各論(同)』有斐閣(2012年11月・第2版、2013年4月・第2版)……伝統的論点から最新の議論までコンパクトにまとめられた学生向けの教科書。西田・山口門下による共著であるため、共著の弊害としてしばしば挙げられる立場のばらつきは少ない。しかしながら、総論については、橋爪執筆の正当防衛論や島田執筆の共犯論及び罪数論が秀逸である一方、今井執筆部分が総じて微妙であったり、小林の執筆部分がもはや教科書レベルを超えていたり(特に構成要件論は高度で難解)等、執筆者によって内容の質にばらつきが大きいという点で、共著の弊害が感じられるものとなっている。各論は西田・山口をコンパクトに整理したような趣になっているため、こちらは案外使い勝手がいい。なお、内容がやや古くなってきているが、島田の逝去及び残る共著者の不和から、今後の改訂の予定はないとの噂がある。A5判、500頁・516頁。 松宮孝明編『ハイブリッド刑法総論』『同・各論』法律文化社(2020年4月・第3版、☆2023年3月・第3版)……法学部とロースクールを架橋するテキスト。関西刑法読書会のメンバーによる共著だが、関西結果無価値論の主張は控えめ。最新の論点にもそれなりに言及している。リーガルクエストに比べ情報量は劣るが、クセは少ない。「総論」の第3版において、性犯罪規定の改正など各論分野における法改正を反映させ、正当防衛・過失の共同正犯、実行の着手などに関する重要判例を盛り込んだ。「各論」の第3版において、令和4年刑法改正に対応。A5判、338頁・400頁。 小林憲太郎『刑法総論(ライブラリ 現代の法律学)』新世社(2020年6月・第2版)……著者は西田門下。原理的かつ高水準の議論を展開しており、東大系結果無価値論の最先端を示す体系書に仕上がっている。初版(2014年10月)は非常に簡潔な記述が特徴であったが、読者から「もっと親切な教科書にしてほしい」という要望があったことから、第2版では、レベルの高さは保ちつつも、自説の解説がわかりやすいものとなり、さらに、他説紹介もかなり丁寧になるなど、初版に比べると学生の使いやすさが向上した(そのため頁数も192頁と大幅に増加した)。若干の文献の引用もあり、そのほとんどは当該分野に関する最新あるいは代表的な研究書であるため、とても参考になる。また、コラムの内容も、実務に対するメッセージを意識しているとみられるものが多く、非常に示唆的である。なお、本書を読んで理解困難な箇所については、後掲の『ライブ講義 刑法入門』や『刑法総論の理論と実務』、本書を補完する判例教材である『重要判例集 刑法総論(ライブラリ 現代の法律学 JA13)』を参照するとよい。A5判、416頁。 町野朔『刑法総論(法律学の森)』信山社(2020年1月)…… 平野門下。「もはや教科書のレベルを超え、極めて優れた高度な学術書」(小林憲太郎)と評されていた『刑法総論講義案I』信山社(1995年10月・第2版)の全面改訂版。刑法の問題がどのような形で起き、実務はどう考えたかを知るために、判例を約800件と極めて多く引用している。条件関係における論理的結合説、抽象的事実の錯誤における不法・責任符合説、片面的共犯全面否定説などの異説が特徴的。本書で従来の見解を改説した箇所がいくつかあるので注意されたい。なお、罪数論を含む刑罰論が収録されていない(著者曰く準備不足のためとのこと)ので、基本書とする場合にはその点に留意する必要がある。A5変型判、480頁。同著者による他の書籍として、『プレップ刑法』弘文堂(2004年4月・第3版)、『犯罪各論の現在(いま)』有斐閣(1996年3月)がある。 浅田和茂『刑法総論』『刑法各論』成文堂(☆2024年2月・第3版、☆2024年1月・第2版)……著者は2023年に死去。関西結果無価値論。原理原則を重視する理論派で、背景知識もしっかり書かれている本格的体系書。社会的行為論、主観的違法要素否定説、違法性阻却の一般原理における法益衡量説、緊急避難の法的性質における違法性阻却中心の三分説、厳格故意説などが特徴だが、具体的事実の錯誤における構成要件上の客体の同一性を基準とする具体的符合説、抽象的事実の錯誤における形式的構成要件的符合説、原因において自由な行為における否定説など自説の落としどころとして疑問を感じる箇所がままみられる。共犯論においても、要素従属性において、正犯なき共犯を広く認め、間接正犯を認めない一般違法従属形式を採る(いわゆる関西共犯論)ので使いづらい。A5判、600頁、634頁。 松原芳博『刑法総論(法セミ LAW CLASS シリーズ)』『刑法各論(同)』日本評論社(2022年3月・第3版、2021年3月・第2版〔☆2024年8月・第3版改訂予定〕)……曽根門下だが、行為を独立の犯罪要素としない三分体系をとり、構成要件については西田説と同様、違法構成要件と責任構成要件に分割する体系を採用し、共同正犯論においては共同意思主体説を採用しないなど、その立場は平野門下の立場に近い。内容は高度であり、山口説や西田説をふまえて最新の論点(たとえば具体的法定的符合説における故意の個数)を盛り込みつつ、事例を用いて平易に解説している。『各論』は保護法益論などで理論的に詰められているものの、名誉毀損罪の真実性の錯誤についての故意阻却説、財産罪の保護法益についての本権説など、自説の落としどころとして疑問のある箇所が多々みられるが、学説を広く引用しているので調べもの用には適している。条文索引があるのは至便。各論第2版において、性犯罪規定の改正含む初版刊行以降の法改正ならびに最新の判例をフォロー。A5判、632頁(本文597頁)、760頁(本文723頁)。 松宮孝明『刑法総論講義』『刑法各論講義』成文堂(2018年8月・第5版補訂版、2018年8月・第5版)……著者は中森門下だが、採る立場は結果無価値論(違法一元論)。理論刑法学を究めたい刑法マニア向けの一冊。著者の研究成果がふんだんに盛り込まれ、理論的にかなり突っ込んでいるため、内容は非常に高度かつ難解。少数説も多く、司法試験的には使いづらい。ドイツや日本における学説の変遷や法律の改廃の歴史といった背景的知識も記述されており、基本書でそうした知識を得るにはこの本をおいて他にないが、それが司法試験合格に無用であるのは言うまでもないことである(ただし、本書は刑法”学”を学ぶための教科書として執筆されたことを意識する必要がある)。章末には演習問題と題した設問が付されているが、そのいずれもが理論面や体系面を問うものであり、あくまでも刑法”学”を意識した出来となっている。なお、松宮説はドイツのヤコブスの説に基づいた見解を採ることが多く、こうした松宮説を理解するには『レヴィジオン刑法I-III』成文堂(1997年11月-2009年6月)の松宮執筆(発言)部分を用いるのが吉。ただし、司法試験のレベルを遥かに超えていることに注意。A5判、420頁・558頁。著者のブログはこちら。 日髙義博『刑法総論』『刑法各論』成文堂(☆2022年5月・第2版、2020年6月)……著者は不作為犯の研究で著名。ドイツの学説も比較的詳しく紹介されているなど、本格派の体系書となっている。本書の最大の特色は「跛行的結果反価値論」の主張にある。跛行的結果反価値論とは「法益侵害説を土台にした結果反価値論を出発点にしているが、二次的に違法性を減少・滅失させる方向で行為反価値性の判断を機能させようとするものである」(204頁)。例えば、可罰的違法性では、絶対的軽微は「結果反価値の減少により可罰的違法性が欠ける」が、相対的軽微は「結果反価値性はあるものの……、行為反価値性が減少して可罰的違法性を欠く」(211頁)。また、緊急避難を責任論に位置づけている点も注目される。これは、「跛行的結果反価値論の立場からすると、転嫁行為には法益侵害性が認められることから違法性を否定しえず、危険回避の行動を責任の領域で評価し、責任阻却として処理することが適切」であるとの理由からである(381頁)。著者の代表的著作である『不真正不作為犯の理論』が、本書でどのように展開されているかも注目されるところであるが、「構成要件的等価値性」を提唱し(150頁以下)、学説の批判も考慮してか「先行行為説」は強調されていない。錯誤論では、師である植松正に倣って「合一的評価説」を採る。これは「錯誤論の使命が刑の不均衡を是正すること」から出発し、「結果の抽象化を排除し故意の抽象化を推し進める一方、観念的競合を排除して合一的評価を取り入れて1個の重い罪だけで処罰する」ものである(322頁)。この説は、結論の妥当性を重視するあまり、なぜこのような合一的評価が可能なのかが説明されていないように思われる。最後に形式面であるが、全部で38の設例を用意し、それに解説を加えることで、初学者にも配慮している。また、重要判例については、事実の概要を詳しく記し、それに対してコメントを加えている(云わば百選のスタイル)。これは新しい形の教科書と云えよう。このような事情で、判例・学説の引用は必ずしも網羅的ではない。A5判、636頁・792頁。 大越義久『刑法総論(有斐閣Sシリーズ)』『刑法各論(同)』有斐閣(2012年12月・第5版、2012年12月・第4版)……平野門下。細かい議論には立ち入らず、結果無価値論の立場から刑法理論をコンパクトに解説。試験対策としてはさすがにこれだけでは薄すぎるが、結果無価値論を採る学生の通読用としては適している。四六判、262頁・256頁。 曽根威彦『刑法総論(法律学講義シリーズ)』『刑法各論(同)』弘文堂(2008年4月・第4版、2012年3月・第5版)……著者は齊藤・西原の弟子だが、結果無価値論者。全体的に非常に簡潔な記述となっている。行為を独立の犯罪要素とする四分説を始めとして、所々で少数説を採っているが、そのような少数説もあっさりとした記述で流すことがあるので注意。A5判、324頁・356頁。 曽根威彦『刑法原論』成文堂(2016年4月)……一冊本ではなく、曽根刑法学の集大成となる重厚な刑法総論の体系書。なお、刑罰論は含まれていない。学説紹介がとりわけ詳しく、ところどころで少数説を採っているものの(主観的違法要素否定説、共謀共同正犯否定説など)、通説や有力説も詳細に解説しているので調べ物用にも耐える。上掲『刑法総論』から重要な改説をしている箇所(形式的構成要件的符合説に改説、383頁。構成要件的過失と責任過失との区別について、337頁)があるので注意。A5判、698頁。 関哲夫『講義 刑法総論』『同・各論』成文堂(2018年11月・第2版、2017年10月)……著者は住居侵入罪の研究で有名。口語調で設例を用いて丁寧に基本原則を解説していく。各章末に格言が書かれており、刑法の学習者を鼓舞している。判例や学説の整理が類書とは比べ物にならないほど丁寧で判例の引用数も多いが、少数説をとったり、通常とは違う独自の用語を用いたりするので注意が必要。A5判、592頁・734頁。 山中敬一『刑法総論』『刑法各論』成文堂(2015年8月・第3版、2015年12月・第3版)……2冊合わせて2000頁を超える浩瀚な体系書。著者は結果無価値に加えて危険無価値によって違法性を判断する立場(結果無価値論に近いが、違法一元論ではない)を採る。客観的帰属論を全面的に展開。共犯はいわゆる関西共犯論。なお、総論(第3版)の正誤表あり。A5判、1224頁・944頁。他に『ロースクール講義・刑法総論』成文堂(2005年4月、A5判、498頁)がある。 須之内克彦『刑法概説各論』成文堂(2014年4月・第2版)……学部生や未修者向けの各論のテキスト。著者は関西系の結果無価値論者だが、比較的中立的な立場で講じられている。自説を明示しない箇所が多い。各節の冒頭に簡単なレジュメを掲げているのも特徴。A5判,474頁。 林幹人『刑法総論』『刑法各論』東京大学出版会(2008年9月・第2版、2007年10月・第2版)……平野門下。著者は財産犯研究の第一人者。著者の学説は、「許された危険」の法理を多用することで知られる非常に独自色の強いものであり、その独特の体系が故、総論はあまり使い勝手がよくない。一方、各論の記述は非常に簡潔であり、その意味内容を正確に把握するためには著者の論文を読む必要があるため、こちらも使いこなすのは難しい。A5判、536頁・536頁。他に同著者による判例集・演習書として、『判例刑法』東京大学出版会(2011年9月、A5判、440頁)がある。 大野真義ほか『刑法総論』『刑法各論』世界思想社(2015年4月・新装版、2014年6月)……総論はオーソドックスな因果的行為論、結果無価値論の立場から一貫して読むことができる。ただし、自説を明記しない箇所が多いので初学者は混乱するかもしれない。また、加藤執筆部分(有責性〔故意・過失含む〕、責任阻却事由)のできはイマイチ。A5判、434頁、472頁。 生田勝義・上田寛・名和献三・内田博文『刑法各論講義(有斐閣ブックス)』有斐閣(2010年5月・第4版)……学部生向けの教科書。総論はない。第4版において、凶悪・重大犯罪の厳罰化等の法改正を織り込むとともに重要な判例等を補充。 A5判、362頁。 齋野彦弥『基本講義 刑法総論(ライブラリ 法学基本講義 12)』新世社(2007年11月)……学士助手時代の指導教官は内藤謙。実行行為概念を否定するなど、その立場は山口・刑法総論の初版時に近く、結果無価値論と親和性が高い。もっとも、著者は「行為無価値論と結果無価値論の対立」として問題を扱うことを党派刑法学であると断じ、予め刷り込まれた立場から解釈論の帰結を導くことは自分自身で考えることを放棄するものだと指摘する。このような立場ではあるが、決して独自説の主張を強調するわけではなく、初学者の理解を目指すため判例・通説を厚く扱っている。A5判、400頁。 (古典) 佐伯千仭『刑法講義総論』有斐閣(1981年3月・4訂版、OD版:2007年9月)……平野刑法に多大な影響を与えた名著。著者は2006年に逝去。社会的行為論、客観的違法論、可罰的違法性論、可罰的符合説、準故意説、規範的責任論、期待可能性の国家標準説、共犯論における行為共同説、一般違法従属形式説、共謀共同正犯否定論など。A5判、496頁。なお、本書は『佐伯千仭著作選集 第1巻 刑法の理論と体系』信山社(2014年11月、A5変型判、584頁)にも収録されている。 平野龍一『刑法総論I・II』有斐閣(1972年7月、1975年6月、OD版:I・IIともに2004年8月)……著者は2004年に逝去。法益侵害説中興の祖。日本の結果無価値論刑法学のバイブル的存在。平野体系は、いわゆる結果無価値論の中でもスマートで理解しやすく、西田や山口に対してとっつきにくさを感じる人には現在でもお薦めできる。平野刑法学のエッセンスが抽出されたものとも言うべきなので、深く理解したい時は平野執筆の論文に当たった方がいい。A5判、208頁・232頁。『刑法概説』東京大学出版会(1977年2月、A5判、328頁。MJリバイバル(丸善・ジュンク堂限定販売)によるOD版あり。)も簡にして要を得た、今もなお参照に値する1冊本。かなり高度な議論を前提とした記述になっているので、ある程度勉強してから読み返すと、なお有意義。 荘子邦雄『刑法総論(現代法律学全集25)』青林書院(1996年3月・第3版)……刑罰の本質は応報にあるとする。純粋な結果無価値論ではないが、行為は主観と客観とを統合した全一体であるとして、主観的違法要素をきわめて限定的にしか認めない(処罰し得る絶対的不能未遂の場合の未遂故意のみ主観的違法要素とする。)。正当防衛において積極加害意思ある防衛者について急迫性を否定する判例を支持する。防衛行為は、避難し得る不正に対する「反撃」の手段として認めるべきであるとして、過失による侵害行為者や責任無能力者の侵害行為に対して正当防衛を認めない異説(緊急避難しか認めない)を採る。因果関係の因果性(条件関係)における合法則的条件説、緊急避難の法的性質における二分説(生命対生命の場合に責任阻却)、故意と過失の区別における動機控制説、共謀共同正犯の限定的肯定説など。A5判、527頁。 内田文昭『刑法概要 上巻・中巻』『刑法各論』青林書院(上巻:1995年4月、中巻:1999年4月、1996年3月・第3版)……上巻・中巻は刑法総論に相当(ただし刑罰適用論は含まれない)。下巻として上記刑法各論を改訂予定だったが未完。客観的目的的行為論、新過失論などを採るが、主観的違法要素否定説などその内容はむしろ結果無価値論の立場に近い。『概要』で従来の見解(『改訂 刑法I 総論(現代法律学講座)』青林書院(1997年4月・補正版、A5判、426頁)における)を改説した箇所がいくつかあるので注意されたい。A5判、467頁、690頁、714頁。 内藤謙『刑法講義 総論 上・中・下1・下2』有斐閣(1983年3月~2002年10月、OD版対応)……著者は2016年に逝去。団藤弟子だが徹底した結果無価値論者(主観的違法要素否定説)。法教に長期連載された「基礎講座・刑法総論講義」を書籍化したもので4分冊、1502頁の大著。上(刑法の基礎理論、行為論、構成要件論)、中(違法性論)、下1(責任論)、下2(未遂犯論、共犯論、刑罰論)。各学説を詳細に検討しており、調査目的に至便。A5判、308頁・454頁・492頁・306頁。他に、1冊本として『刑法原論』岩波書店(1997年10月、A5判、236頁)がある。 堀内捷三『刑法総論』『刑法各論』有斐閣(2004年4月・第2版、2003年11月)……平野門下。体系は師説に比較的忠実。責任の本質を非難ないし非難可能性に求めるのではなく、犯罪の防止という実質的観点から理解しようとする実質的責任論を採り、責任の判断においては一般人を基準に据える客観説が妥当であるとする。専門である不作為犯論では、具体的依存性説を採る。因果関係論につき基本的には客観的相当因果関係説が妥当としながらも、相当性の判断において考慮されるのは一般人が利用可能な事情にかぎるとする。不能犯も予防目的の下で検討されるので、危険の有無は(理性的な)一般人を基準にして行われ、具体的な事情を基礎にして一般的・類型的に判断されるとする(修正された)具体的危険説を採る。A5判、420頁・410頁。 中山研一『新版 口述刑法総論』『同・各論』成文堂(2007年7月・新訂補訂2版、2014年9月・補訂3版)……関西結果無価値論。著者は2011年に逝去。各論は2014年に松宮孝明によって補訂された(松宮は中山門下ではないが、中山主催の刑法読書会の一員)。A5判、358頁・384頁。『刑法総論』成文堂(1982年10月・A5判・638頁)は名著。 <その他> 佐久間修・橋本正博・上嶌一高『刑法基本講義——総論・各論』有斐閣(☆2023年4月・第3版補訂版)……一冊本。ケースメソッド形式。初版時(2009年4月)には「『いわゆる』通説・判例ベースの体系だが、佐久間・橋本(行為無価値論者)執筆部分と上嶌(結果無価値論者)執筆部分とにズレがある」との批判があったが、第2版の改訂時に記述の統一が図られた。体裁や形式が、佐久間毅『民法の基礎』と似ているため、同書の愛読者は親しみやすいと思われる。第3版補訂版において、拘禁刑の創設や侮辱罪等の法改正に対応。A5判、584頁。 伊藤渉ほか『アクチュアル刑法総論』『同・各論』弘文堂(2005年4月、2007年4月)……主に西田・山口門下の結果無価値論者と中森門下の行為無価値論者による共著。齊藤と島田は各論のみ執筆。総論は行為無価値論に立つ成瀬・安田により、最近の行為無価値論的に仕上がっているものの、他の結果無価値論の筆者との関係でチグハグ感が残る。基本概念・基本判例よりも新しい判例・学説の展開に重点が置かれており、かなり深い議論も取り扱われている。使い勝手の良いところだけつまみ食いで使うのがベスト(特に安田の責任論などは必読である)。A5判、368頁・576頁。 葛原力三・塩見淳・橋田久・安田拓人『テキストブック刑法総論』有斐閣(2009年7月)……関西系学者による、比較的初学者向けの共著テキスト。葛原(結果無価値論)が因果関係・主観的構成要件・共犯、塩見(行為無価値論)が客観的構成要件・未遂犯・罪数と、立場の違いが顕著に現れる分野を異なる論者が執筆しているため、論理の一貫性に欠けるという難点がある。学説検討がかなり詳しく、最先端の議論にまでフォローしているが、学説相互の批判に欠ける。A5判、366頁。 町野朔・中森喜彦『刑法1・2(有斐閣アルマSpecialized)』有斐閣(2003年4月・第2版)……内容的に中途半端で、共著の悪い面がでてしまっている。四六判、278頁・336頁。 鈴木茂嗣『刑法総論』成文堂(2011年8月・第2版)……著者は京大系刑事訴訟法学の大家。本書では、著者独自の犯罪体系である「二元的犯罪論」が展開されている。著者の主張の大筋は、伝統的刑法学が陥っているとする認識論的犯罪論からの脱却であり、刑法学は単に「犯罪とはなにか」を究明する性質論を志向すべきであるというものである。そこでは、ドイツのベーリングによってもたらされた構成要件論を基軸とする性質論から認識論への転換を「失敗」であったとし、再度構成要件論以前の体系への再転換を図るべきであるとする著者の主張が述べられている。このため、従来の教科書とは構成を大きく異にしており、必然的に試験対策的観点からは本書は無用と言わざるを得ない。したがって、本書は専ら研究者や刑法マニアを読者として選ぶものだと言える。A5判、358頁。なお、鈴木説を簡潔に叙述したもの(論文集)として『二元的犯罪論序説』成文堂(2019年10月・補訂版、四六判、120頁)がある。『序説』という言葉で入門書的役割を期待しがちだが、内容的には刑法を一通り修めた者がその価値を理解できるレベルである。 (古典) 高窪貞人ほか『刑法総論(青林教科書シリーズ)』『刑法各論(同)』青林書院(1997年2月・全訂版、1996年4月・全訂版)…… 刑法総論執筆者(高窪貞人・石川才顕・奈良俊夫・佐藤芳男)、同各論執筆者(高窪貞人・佐藤芳男・宮野彬・川端博・石川才顕)。平成7年改正刑法に対応。A5判、344頁・384頁。 【その他参考書】 大塚裕史『応用刑法I——総論』『同II——各論』日本評論社(2023年1月、☆2024年4月)……下掲『思考方法』の実質的な後継シリーズ。同名の法学セミナー誌連載(総論:729~760号・全32回、各論:761~818号・全54回)の単行本化。「個々の事案に対する裁判所の解決方法を分析し、そこから判例実務に共通の思考枠組みを抽出し、それを既存の刑法理論を参考にしつつ理論化し、さらにその射程や限界を明らかにする」(はしがき)実務刑法学の入門書という位置付け。そのため、判例の立場をもっともよく説明できるのはこれこれの見解であると言い切ってくれているので安心して使用できる(なお、実行の着手時期における進捗度説、一部実行の全部責任の根拠付け法理としての全体行為説などの萌芽的学説への言及はない。)。また、そのまま論証に用いることができる記述が多く、いわゆる論証パターンこそ付されていないものの、何をどう論証すればよいかは書かれており、受験対策に特化した内容といえる。各論は上記54回の中から重要度のより高い38回分をセレクトし大幅に加筆修正を行ったもの。A5判、576頁・592頁。 大塚裕史『刑法総論の思考方法』『刑法各論の思考方法』早稲田経営出版(2012年4月・第4版、2010年12月・第3版)……著者は学者だが、かつて若宮和彦名義で予備校で指導していた経験を持つ。大谷・前田が受験生のメジャーな基本書だった時代に、それらに親和的な内容の副読本として広く読まれていた。現在でも刑法が苦手な学生にはなお有用。これ以上ないほど丁寧で平易な説明がなされており、学説の整理も詳しく、あてはめのやり方までしっかりと示されているなど、至れり尽くせりの内容となっているため、手元にあると何かと役に立つだろう。なお、総論・各論ともに出版社品切れ。A5判、690頁・604頁。 橋爪隆『刑法総論の悩みどころ(法学教室ライブラリィ)』『刑法各論の悩みどころ(同)』有斐閣(2020年3月、☆2022年12月)……同名の法学教室連載(総論:403号~426号)(各論:427号~450号+業務妨害罪、文書偽造罪につき書き下ろし。)の単行本化。刑法学修にとり「悩みどころ」となる重要論点について学生にもわかりやすく自説を展開。A5判、全19章・480頁。全23章・544頁。また、警察幹部向けの連載として「判例講座・刑法総論」(警察学論集連載・2016年1月号~2017年12月号、全18回)、「同・刑法各論」(警察学論集連載・2019年10月号~2021年9月号、全20回)あり。 佐伯仁志『刑法総論の考え方・楽しみ方(法学教室ライブラリィ)』有斐閣(2013年4月)……平野門下。法学教室での連載(283-306号)に、正当防衛論(3)、責任論、共犯論(3)(共犯と身分、必要的共犯、過失犯の共同正犯、不作為と共犯)を新たに書き下ろして単行本化したもの。総論のほとんどの論点を解説しているが、罪数論や刑罰論は内容に含まれていない。はしがきにもある通り、あくまで「刑法総論の基本的な考え方を理解し、自分で考えることの面白さをわかる」ことが本書の目的であり、受験的な効用を過度に期待することは禁物である。佐伯説は、故意過失を責任要素として構成要件に含む3分説を採り、兄弟子である西田や山口に比べ、行為無価値論を採る読者にも馴染みやすい体系となっている。因果関係論、不作為犯論、正当防衛論、被害者の同意論は著者の論文のダイジェスト版ともいうべき内容であり、とくに不作為犯論と正当防衛論は試験対策にも有用と言える。全22章。A5判、458頁。なお、各論編(法教355号-378号)は校正作業を続けている段階であり、出版の具体的な目処は立っていないとのことである。 井田良『刑法総論の理論構造』成文堂(2005年6月)……井田が自説を詳細に展開した『現代刑事法』誌上での連載を単行本化したもの。いわゆる「新しい行為無価値論」における代表的文献。本書で井田は、それまで"停滞"していた違法性をめぐる議論に一石を投じており、結果無価値論を徹底的に批判して、ドイツにおける議論を参照しながら、曖昧さを許さない透徹した理論によって行為無価値論(違法二元論)の正当性を主張している。例えば、行為無価値論が重視する一般予防の観点からは刑罰法規は国民に個別状況下で行為規範を差し向けるものでなければならず、またその規範に従って行動する限りはその行為が違法と評価されることはなく、したがって違法と適法の境界が明確になり罪刑法定主義の要請に応えることができるとする。そのため、法益侵害結果を因果的に惹起したことを理由に行為規範に適合する行為を違法と評価し、ただ責任が否定されて処罰を免れるに過ぎないとする結果無価値論は、犯罪の成立条件を明確にするあまり国民に対して違法行為と適法行為との分水嶺を提示することができず(一般予防や罪刑法定主義の要請を果たせず)、「ふろの水と一緒に赤ん坊まで流してしまう」理論であるとして激しく非難する。また、このような行為規範は行為者の認識した事情を基に与えられるものであり、客観的には殺人罪の構成要件に該当する行為でも行為者が客体を人ではなく熊だと認識していた場合には殺人罪の行為規範は行為者に対して無力(規範は行為者の認識を正すことについて無力)であるから、違法性の錯誤のうち事実面に関する錯誤は直ちに構成要件的故意を阻却するとする(制限責任説のうち違法性阻却説)。これに対し違法性の錯誤は、一般予防の観点からまさしく刑法が保護しようとする規範の安定性が動揺されられる場面であるから、行為者が錯誤に陥ったことに相当の理由がある場合(→違法性の意識の可能性の問題として責任が阻却される)を除いてこれに寛容であることはできないとする。なお、本書は総論に関する「コンパクトな論点書」として刊行されたものであり、総論の体系を全体的に網羅するものではない。差し当たり、行為無価値論版『問題探求』といったところか。A5判、488頁。 ☆安田拓人「刑法総論の基礎にあるもの」(法学教室連載・487号~510号、全24回)……著者は中森門下で京大系二元的行為反価値論者による待望の刑法総論連載。ひととおりインプットを終えた中上級者向けで、ドイツや最新の学説を引用するなどそのレベルは高い(したがって、本連載のタイトルの「基礎」とは団藤『法学の基礎』と同じ用法とみるべき。)。結果反価値論と行為反価値論の対立はいまやさして重要でないとの見解が有力だが、なぜ(二元的)行為反価値論でなければならないかを論証する内容となっており通説的見解の肉付けに最適と思われる。 ☆髙橋直哉『刑法の授業 上下』成文堂(2022年2月)……著者がロースクールで行っている授業を、できるだけリアリティを保ちながら紙上で再現するというコンセプト(はしがき)。基本事項と課題判例を素材とする刑法講義の実況中継の趣で基本書と演習書のいいとこどりしたような内容(上巻=総論、下巻=各論)。アカデミックでありつつも、試験戦略的な内容(例えば、間接正犯の正犯性の一般的説明はいわゆる道具理論のフレーズで十分である。)も含まれていること、何説を採るべきかという空中戦よりも、具体的にどういう要件要素を書くべきかに注力していること、注において著者自身の率直な悩みを見せていることなどが特徴。答案作成に有用で実践的な内容が盛り込まれておりオススメできる。A5判、298頁・292頁。 山口厚『問題探究 刑法総論』『同・刑法各論』有斐閣(1998年3月、1999年12月)……刑法学界の碩学が、犯罪論・犯罪各論の重要論点を深く掘り下げ、文字通り問題探究を行った意欲的な書であり、「我が国の刑法学史における最も重要な業績である。」(小林憲太郎)と評する声もある。もっとも、現在では改説されている部分も多々あり。縦書き。A5判、302頁・358頁。 川端博『刑法総論(新・論点講義シリーズ)』弘文堂(2008年9月)……ケース・メソッドで刑法総論の重要論点を解説。模範解答の書き方まで学ぶことができる珍しい著作。B5判、288頁。 井田良・佐藤拓磨『刑法各論(新・論点講義シリーズ)』弘文堂(2017年12月・第3版)……ケース・メソッドで刑法各論の重要論点を解説。刑法総論の内容を多く取り入れ、各論と総論を有機的に関連付けながら学習できるように工夫されている。また、一般的な体系書には十分な説明がない、それぞれの犯罪類型に関する基礎的な事項が詳述されている点に特色がある。2色刷で、図表を豊富に取り入れるなど、初学者でも理解できるよう配慮されている。本書は初学者から中級者への橋渡しを目的として執筆されたものであるが、司法試験に対応できる水準は十分に確保されている。第3版から弟子の佐藤が執筆者に加わった。B5版、306頁。 塩見淳『刑法の道しるべ(法学教室ライブラリィ)』有斐閣(2015年8月)……法教連載を元に新たに三つの章(第6章 間接正犯・不作為犯の着手時期、第9章 住居侵入罪の保護法益・「侵入」の意義、第13章 偽造の概念)を書き下ろしたものを単行本化。理論的に明快な有力説(侵害回避義務論、法益関係的錯誤説など)を批判的に検討し、通説的な理解からさらに一歩進めた自説を示すというスタイル。司法試験的には有力説をとれば明快で書きやすいと思われるが、実際にはそう簡単に割り切れるものではないというのが塩見説。したがって、答案には書きにくく難易度は高いものの、一読の価値はあると思われる。全14章。A5判、274頁。 西田典之・山口厚・佐伯仁志編『刑法の争点』有斐閣(2007年10月)……全130項目。 B5判、264頁。 山口厚・佐伯仁志・井田良『理論刑法学の最前線1・2』岩波書店(2001年9月、2006年5月)……現在の刑法学をリードする三人の論文集。決まったテーマごとに一人が論文を執筆し、残りの二人がその論文を批評するという形式。佐伯執筆部分は連載と合わせると面白い。司法試験レベルは遥かに超えている。A5判、248頁・264頁。 川端博・山口厚・井田良・浅田和茂編『理論刑法学の探究 1-10』成文堂(1:2008年5月、2:2009年6月、3:2010年6月、4:2011年5月、5:2012年5月、6:2013年6月、7:2014年6月、8:2015年6月、9:2016年6月、10:2017年7月)……国内外の優れた学者による論文と書評を収録。刑法理論の深い理解に資すると思われる。A5判、224頁・222頁・241頁・256頁・274頁・302頁・318頁・247頁・334頁・306頁。 川端博『集中講義刑法総論』『同・各論』成文堂(1997年6月・第2版、1999年7月)……中・上級者向けの論点本。A5判、486頁・494頁。 大谷實・前田雅英『エキサイティング刑法 総論』『同 各論』有斐閣(1999年4月、2000年3月)……かつて基本書のシェアを二分していた大谷と前田が、刑法の重要論点についてそれぞれの立場から議論を展開した対談集。A5判、340頁・354頁。 曽根威彦『刑法の重要問題 総論』『同・各論』成文堂(2005年3月・第2版、2006年3月・第2版)……A5判、412頁・412頁。 曽根威彦・松原芳博編『重点課題刑法総論』『同・各論』成文堂(2008年3月)……A5判、276頁・286頁。 高橋則夫・杉本一敏・仲道祐樹『理論刑法学入門 刑法理論の味わい方 (法セミ LAW CLASS シリーズ)』日本評論社(2014年5月)……杉本と仲道が毎回設定されたテーマについて理論刑法学の観点から自由に語り下ろし、それに高橋がイントロダクションとコメントを付すというスタイル。現代哲学などの隣接諸科学の知見を採り入れるなど、その内容は非常に興味深く刑法学専攻志望の学生にはオススメできるが、司法試験とは無関係。全11講。A5判、360頁。 高橋則夫・田山聡美・内田幸隆・杉本一敏『財産犯バトルロイヤル——絶望しないための方法序説(法セミLAW CLASSシリーズ)』日本評論社(2017年5月)……全24講。A5判、340頁。 井田良・丸山雅夫『ケーススタディ刑法』日本評論社(2019年9月・第5版)……丸山は町野門下。「ケーススタディ」とあるが、ケースそのものの解説というよりも、ケースに関連する刑法総論上の諸論点を淡々と解説する論点解説集となっている。全32章。A5判、424頁。 〔実務関連書〕 幕田英雄『捜査実例中心 刑法総論解説』東京法令出版(☆2022年10月・第3版)……旧書名は『実例中心 刑法総論解説ノート』。著者は元最高検刑事部長。著者の言うところの実務通説である、いわゆる団藤=大塚ラインをベースに書かれている。警察官や検察官向けの書籍であり、一般的な教科書とは性格を異にするが、具体的事案の処理を強く意識した内容となっており、司法試験受験生の参考書としても有益な一冊である。ただし、団藤=大塚ラインがベースになっているだけあって、理論的に古さを感じさせる部分も散見される点には注意されたい。第2版では、判例がアップデートされ、初版(2009年11月)では言及されていなかった危険の現実化など最新の議論についてもフォローされた。全43設問。A5判、792頁。 司法研修所検察教官室『捜査実例中心 刑法各論解説』東京法令出版(2020年6月)……現役の検察官によって執筆された、上掲『捜査実例中心 刑法総論解説』の姉妹本。平成29年6月から令和元年5月までにわたって「捜査研究」(東京法令出版)に連載された「刑法各論」に加筆・修正を加え、通貨偽造罪、犯人蔵匿罪・逃走罪及び競売入札妨害罪に関する設問を新たに追加して単行本化したもの。捜査実務上扱うことが多い犯罪類型に絞って解説されている。全28設問。A5判、392頁。 河村博『-実務家のための-刑法概説』実務法規(2018年12月・9訂版)……実務家用の1冊本。著者は元名古屋高等検察庁検事長。実務に直結した実例と判例を中心とした解説。判例は平成30年6月までの1220件以上を掲載。総論と各論の解説が参照頁で紐付けされているなど関連した内容が統一的に理解できる。刑法以外の関連特別法も内容に多く盛り込まれており、かつ、解説中の特別法の条文がすべて掲載されているので特別法との関連がわかりやすい。事項索引が詳細に作られており、辞書としても使いやすいものとなっている。9訂版で平成29年刑法改正に対応し、また、判型を変更するなど内容を刷新。A5判、692頁。 粟田知穂『条文あてはめ刑法 事案処理に向けた実体法の解釈』立花書房(2019年8月)……警察官向けの書籍だが、法曹志望者にとっても有益。A5判、384頁。 小林憲太郎『刑法総論の理論と実務』『刑法各論の理論と実務』判例時報社(2018年11月、2021年5月)……判例時報連載「刑法判例と実務【総論編】(1)-(30)」に新章(第31章 犯罪論の体系)を書き下ろしし、加筆修正して単行本化したもの。主な読者層が法曹実務家であるため、「本書では、刑法総論の理論と判例実務に関する基本的に穏当な解釈が述べられている(はしがき)」と理解してよいとする。毎章リードとなる仮想対話に引き続き本編解説が付されるというスタイルで、毎回クスッとさせられる内容で、著者にしては読みやすく、実務的にも参考になる内容となっている。小林説は構成要件を不法類型とし、構成要件的故意・過失を認めない古典的な結果無価値論だが、過失責任を犯罪論のベースとし、「故意責任=過失責任+α(故意)」とする。すなわち、故意犯にも過失犯の客観的要件及び主観的要件(=結果の予見可能性)の具備が必要であるとする異説を採る。受験対策上、本書を通読するのはオーバースペックだが、上掲の小林『刑法総論(ライブラリ 現代の法律学)』を読んでわからなかった箇所をチェックするとよいだろう。『各論』は同連載【各論編】(31)-(60)の書籍化。体系的な順序にこだわらず、重要な論点を採り上げている。巻末には「イチケイのカラス」で有名な漫画家浅見理都氏の漫画「あるスーパーでの出来事」が収録されている。A5判、790頁、654頁。 松宮孝明『先端刑法総論——現代刑法の理論と実務』『同各論』日本評論社(2019年9月、2021年9月)……法学セミナー連載〔『現代刑法の理論と実務・総論』759(2018年4月)-771(2019年4月)号、全13回〕の単行本化。実務を目指す読者に「実務にとって刑法総論の理論がどういう意味で重要か」を理解して、考えることを楽しんでもらう(はしがき)内容であり、大塚裕史らの「実務刑法学」の対極に位置する著作。刑法総論の主要テーマ13(責任の本質、不真正不作為犯については著者の研究不十分のため現時点では論じられていない。)につき考究。「刑法の学習を一通り終えている方」を想定読者としており、その内容は高度で、ドイツ刑法の基礎知識がないと理解できない箇所もある。近年の司法試験の傾向とは全く合致しないし、松宮説が判例実務に採り入れられる可能性は低いものの、実務家にとっても有益・示唆的な内容が多数含まれており、一読の価値がある。全13章・全20章。A5判、288頁・284頁。 佐伯仁志・高橋則夫・只木誠・松宮孝明編『刑事法の理論と実務』成文堂(1:2019年7月、2:2020年6月)……研究者および実務家対象の最新かつ高度な専門書。研究者・実務家執筆の論文を収録し、理論刑法学と判例・実務の架橋を目指した著作。A5判、312頁・282頁。 【入門書・概説書】 井田良『入門刑法学・総論(法学教室ライブラリィ)』『同・各論(同)』有斐閣(2018年11月・第2版、2018年3月・第2版)……法教連載(「ゼロからスタート☆刑法”超”入門講義」)の単行本化。著者の立場は行為無価値論(違法二元論)。『各論』第7講・危険犯は、体系的整合性の観点から、通説的理解とは若干異なる立場から説明されているが、特に支障はない。「総論(第2版)」において、「各論(第2版)」とのクロスレファレンスに対応。全12講・12講。A5判、288頁・282頁。なお、同著者による刑事法全体を通覧する入門書として『基礎から学ぶ刑事法(有斐閣アルマBasic)』がある。 亀井源太郎・和田俊憲・佐藤拓磨・小池信太郎・薮中悠『刑法Ⅰ 総論(日評ベーシック・シリーズ)』『同Ⅱ 各論(同)』日本評論社(☆いずれも2024年2月・第2版)……慶應系中心の5名の研究者による共著。『総論』では、初学者への配慮から、体系を一部崩して解説しているが、個々の解説そのものは、オーソドックスであり、安定感がある(各論も同様)。情報量も司法試験との関係では必要かつ十分なもの。第2版はR4(侮辱罪の法定刑引上げ、拘禁刑の創設等)、R5(性犯罪規定の改正等)刑法改正に対応。全10章・17章。A5判、296頁・336頁。 内田幸隆・杉本一敏『刑法総論(有斐閣ストゥディア)』有斐閣(2019年11月)……曽根門下による共著。初学者向けの「ハンディ地図」を目指したテキスト。司法試験的にも必要十分な内容にまとめられている。著者らは結果無価値論者だが、構成要件的故意・過失を認めるなど、実務にも配慮した立場を採る。ケースや図表を用いて学説を整理しており、初学者にも理解しやすいと思われる。序章(刑法総論の見取り図)+全11章。A5判、294頁。 辰井聡子・和田俊憲『刑法ガイドマップ(総論)』信山社(2019年5月)……コンセプトは「歩きながら考える」。実務刑法学入門とされている。入門書だが、刑法総論を一通り勉強した者のまとめノートとしても使える。著者の一人が和田であることもあり、後掲『どこでも刑法』と相性がいい(もっとも、細かいところで説明が異なる箇所はある)。「初学者のための答案の書き方」、「平成22年・23年司法試験〔第1問〕の解答例」あり。序章(「犯罪論」をイメージしよう)+全13章。A5変型判、212頁。 和田俊憲『どこでも刑法#総論』有斐閣(2019年10月)……著者の講義レジュメを元にした概説書。本書の特徴は1冊で刑法総論を2巡させるところにある(あとがき)。基本的には初学者向けの体裁であり、刑法総論の主要な分野を、すべての項目において4~6頁でわかりやすく解説しているが、その内容のレベルは高い。最新の判例実務の上澄み(たとえば、相当因果関係説などの過去の学説には言及していない)も解説されており、上級者の総まとめ用としても使える。なお、構成要件の概念の説明なしに、因果関係の説明に入るなど、わかりやすさを重視するあまり、体系的な視点が犠牲にされている点には(特に初学者は)注意されたい。四六判、208頁。放送大学の講義テキスト『刑法と生命(放送大学教材)』放送大学教育振興会(2021年3月、A5判、196頁)もある。 島伸一編著、山本輝之ほか『たのしい刑法I 総論』『同II 各論』弘文堂(☆2023年3月・第3版、2017年10月・第2版)……二色刷り・図表多用。解答例付きのケーススタディあり。各論の第2版において、2017年6月に成立した性犯罪に関する法改正に対応。A5判、368頁・416頁。 高橋則夫『<授業中>刑法講義——われ教える、故にわれあり』信山社(2019年12月)……行為無価値論者による1冊本。ライブ的な色彩を持った刑法概説(はしがきより)。冒頭に法的三段論法についての説明があるなど、本書は法学初学者のための入門書として執筆されたものだが、まとめ用途に使われることも想定されている(著者曰く、学部生にとっては「一夜漬けでマスターできる刑法本」、司法試験受験生にとっては論点チェックに便利かもしれないとのこと)。著者による体系書である『刑法総論』『刑法各論』成文堂(2018年10月・第4版、2018年10月・第3版)の参照ページが適宜挿入されているが、本書自体はオーソドックスな内容なので、高橋説を採らない読者でも特に支障はない。難点は判例を事件名で呼称し、年月日等の記載がないこと。序(刑法が得意になるための方法序説)+全43講+最終講(ルールの学習―野球のルールから法をみる)。四六変型判、240頁。 仲道祐樹『刑法的思考のすすめ——刑法を使って考えることの面白さを伝えたいんだよ!』大和書房(2022年3月)……高橋門下。縦書き。四六判、272頁。 小林憲太郎『ライブ講義 刑法入門(ライブラリ 法学ライブ講義4)』新世社(2016年11月)……結果無価値論者による1冊本。「ですます調」と著者による手書きの板書書きが相俟って刑法入門講義の実況中継といった趣。コンパクトながらも重要判例の要旨も載っている。また、高水準の内容を保ちながらも、著者が執筆した文献の中では比較的わかりやすい。ただし、本書はあくまで「小林説」の入門書であることに注意が必要である。本書を導入として上掲『刑法総論』その他発展的な基本書を読むとよいだろう。2色刷。A5判、264頁。 川端博『レクチャー刑法総論』『同・各論』法学書院(2017年10月・第3版、2018年2月・第5版)……団藤門下による入門書。学部生やロースクール未修者を対象としている。わかりやすさを重視した、噛み砕いた説明が特徴。全35講・12講。A5判、368頁・336頁。 浅田和茂・内田博文・上田寛・松宮孝明『現代刑法入門(有斐閣アルマBasic)』有斐閣(2020年3月・第4版)……関西結果無価値論の学者による入門書。全6章。四六判、354頁。 只木誠『コンパクト刑法総論(コンパクト 法学ライブラリ 10)』『同各論(同11)』新世社(2022 年10月・第2版、2022年3月)……著者は罪数論・競合論の大家。ケースや設問を用いて、初学者向けに刑法総論の基礎を解説する。基本的に行為無価値論(違法二元論)ベースだが、独自説はあまり見られず、比較的中立的な立場から解説しているため、読み手を選ばない。学説の位置づけについての指摘が的確で、設問に対する解答も各説に対応させている。2022年刑法改正に対応。『各論』は風俗に対する罪が載っていない難点がある。総論:全34章・設問30問、各論:全20章・設問28問。2色刷。四六判、360頁・384頁。 大塚仁『刑法入門』有斐閣(2003年9月・第4版)……検察事務官の研修用テキストとしても使われている良書。口語体で、かつ、わかりやすく書かれている。入門書というよりは、実務や通説的見解の解説を刑法全体についてコンパクトにまとめたものであり、内容は濃い。全2部、全21章。A5判、380頁。 山口厚『刑法入門(岩波新書)』岩波書店(2008年6月)……全4章。新書判、238頁。 中山研一『刑法入門』成文堂(2010年10月・第3版)……著者は2011年7月に逝去。全7章。A5判、194頁。 木村光江『刑事法入門』東京大学出版会(2001年3月・第2版、オンデマンド版:2013年5月・第2版)……刑事法をとおした入門書。全20章。A5判、256頁。 町野朔・丸山雅夫・山本輝之『ブリッジブック刑法の基礎知識(ブリッジブックシリーズ)』信山社(2011年7月)……全9章。四六判、264頁。 高橋則夫編『ブリッジブック刑法の考え方(ブリッジブックシリーズ)』信山社(2018年11月・第3版)……刑法学習の基礎体力づくりのために。執筆者(川崎友巳・高橋則夫・中空壽雅・橋本正博・安田拓人)。全20講。四六変型判、272頁。 井田良・佐藤拓磨編著『よくわかる刑法(やわらかアカデミズム・〈わかる〉シリーズ)』ミネルヴァ書房(2018年5月・第3版)……第3版は、平成29年刑法一部改正ほか最新情報を踏まえて改訂された。B5判、240頁。 藤木英雄・板倉宏『刑法案内1・2(勁草法学案内シリーズ)』勁草書房(いずれも、2011年1月)……1と2を併せて刑法総論全般を扱う。藤木が1977年7月に急逝した後は板倉が引き継いで執筆した。2019年10月にオンデマンド版。全22章。 B6判、256頁・260頁。 藤木英雄著、船山泰範補訂『刑法(全)(有斐閣双書)』有斐閣(2013年9月・第4版)……はじめて刑法を学ぶ読者のために、学習上必要とされる基本的な事項を解説。平成23年・平成25年の通常国会で成立した刑法改正の内容(強制執行妨害罪の細分化、不正指令電磁的記録に関する罪、刑の一部の執行猶予に関する規定等)を盛り込んだ最新版。四六判、310頁。 船山泰範『刑法がわかった』法学書院(2017年7月・改訂第6版)……平成29年法改正「性犯罪厳罰化等」に対応。A5判、400頁。なお、同著者による入門書として他に、『刑法を学ぶための道案内』法学書院(2016年10月、A5判、272頁)、『刑法の礎・総論』、『同・各論』法律文化社(2014年5月、2016年5月、A5判、268頁・288頁)がある。 船山泰範編著『ホーンブック新刑法総論』、『同各論』北樹出版(2017年4月・改訂2版、2015年4月・改訂3版)……全12章・16章。A5判、236頁・260頁。 船山泰範編『刑事法入門(Next教科書シリーズ)』弘文堂(2014年2月)……刑法哲学入門。全12章。A5判、224頁。 設楽裕文編『法学刑法1 総論』『同2 各論』信山社(2010年4月)……B6判、144頁・208頁。 設楽裕文・南部篤編『刑法総論(Next教科書シリーズ)』、沼野輝彦・設楽裕文編『刑法各論(同)』弘文堂(2018年8月、2017年4月)……全11・11章。A5判、292頁・308頁。 裁判所職員総合研修所監修『刑法概説』司法協会(2017年1月・8訂版)……A5判、190頁。 佐々木知子『警察官のためのわかりやすい刑法』立花書房(2015年8月)……著者は元検察官。警察官を始めとする初学者を念頭に置いて、学説には深入りせず、判例を中心とした実務的な内容で、刑法の全体像をつかめる。A5判、336頁。同著者によるその他の書籍として『誰にでも分かる刑法総論』『同・刑法各論』立花書房(2011年4月、2012年2月)がある。 渡辺咲子『基礎から学ぶ刑法』立花書房(2015年11月)……著者は元検察官。「警察公論」の連載が元となっている。A5判、480頁。 津田隆好『警察官のための刑法講義』東京法令出版(2022年7月・第2版補訂2版)……著者は現役の警察官(警察政策研究センター所長)。「警察官の、警察官による、警察官のための」概説書。第2版において、平成29(2017)年12月までの情報(法改正、裁判例)を反映。全2編、全57章。A5判、368頁。 デイリー法学選書編修委員会編『ピンポイント刑法』三省堂(2018年4月)……法学部生・ビジネスマン・一般読者向けの最新法学教養シリーズの刑法編。四六判、192頁。 松原芳博『刑法概説』成文堂(2022年10月・第2版〔☆2024年8月・第3版改訂予定〕)……性犯罪改正等の最新の法改正及び重要判例に対応。総論は全9章、各論は全13章。A5判、248頁。 佐久間修編著『はじめての刑法学』三省堂(2020年5月)……刑法総論・各論の基本的な26の問題を解説した入門書。執筆者(小野晃正・川崎友巳・品田智史・十河太朗・豊田兼彦・安田拓人)。全26項目。A5判、320頁。 佐久間修・橋本正博編、森永真綱ほか著『刑法の時間』有斐閣(2021年4月)……四六判、268頁。 飯島暢・葛原力三・佐伯和也『定義刑法各論——財産犯ルールブック』法律文化社(2021年12月)……A5判、186頁(評価待ち)。 山中敬一・山中純子『刑法概説I [総論]』『同II[各論]』成文堂(2022年4月・第2版、☆2023年4月・第2版)……第2版より山中純子が新たに著者に加わった。A5判、316頁・342頁。 本庄武編著『ベイシス刑法総論』『同・各論』八千代出版(2022年4月、2022年10月)……A5判、360頁・388頁。(評価待ち。) 小島秀夫編著『刑法総論——理論と実践』法律文化社(2022年5月)……増田豊門下による行為無価値一元論を採る総論教科書。凡例の引用文献は増田のモノグラフィ4冊と判例百選のみとかなり硬派な内容となっている。志向的行為論、故意犯における法的因果関係論としての故意帰属論、過失の標準における個人的過失(個別化)説、主観的違法性論、行為無価値一元論、違法性阻却原理としての行為価値衡量説、正当防衛権の正統化根拠としての個人主義的アプローチ、認識的自由意志論に基づく批判的責任論、正当化事由の錯誤における法律効果指示説、不能犯における修正された客観的危険説、共犯の処罰根拠における惹起志向説、共謀共同正犯論における共謀行為=実行行為説、正犯と共犯の区別に関する自己答責性原理、具体的な処罰行為の正統化根拠としての消極的応報刑論、制度としての刑罰の正統化根拠としてのコミュニケーション的一般予防論などが特徴。全15章。A5判、264頁(本文249頁)。 葛原力三・佐川友佳子・中空壽雅・平山幹子・松原久利・山下裕樹『ステップアップ刑法総論』法律文化社(2022年10月)……犯罪の基本型→変化型→理論という順序で叙述。まず判例・通説の立場を説明し、理論面の解説は最後に行うことにより、実務刑法学と理論刑法学のいいとこ取りを狙った内容となっている。短文の網掛けテーゼ(例:狭義の相当性について、判例・学説ともに危険現実化説を採用している。)と囲み事例により初学者にも理解しやすい内容でオススメできる。A5判、234頁。 ☆照沼亮介・足立友子・小島秀夫『一歩先への刑法入門』有斐閣(2023年12月)……法学部でこれから刑法を学ぶ学生を対象とした入門書。体系については中立的な立場から両論併記しており読み手の立場を選ばない。総論・各論の主要論点(網羅的ではない)を採り上げており基本的論点にとどまらず発展的な論点にも言及している。また刑法学を学ぶ意義や論述式答案の書き方も載っている。刑法講義や基本書独修のサブテキスト用途としても使える内容となっておりオススメできる。全29Unit。A5判、364頁。 【注釈書・コンメンタール】 大塚仁・河上和雄・中山善房・〔佐藤文哉〕・古田佑紀編『大コンメンタール刑法〔全13巻〕』青林書院(第1巻:2015年7月・第3版、第2巻:2016年8月・第3版、第3巻:2015年9月・第3版、第4巻:2013年10月・第3版、第5巻:2019年7月・第3版、第6巻:2015年12月・第3版、第7巻:2014年6月・第3版、第8巻:2014年5月・第3版、第9巻:2013年6月・第3版、第10巻:2006年3月・第2版、第11巻:2014年9月・第3版、第12巻:2003年3月・第2版、第13巻:2018年7月・第3版)……我が国最大級の刑法典注釈書。実務法曹及び研究者による顕名執筆。判例・裁判例は公刊物未登載のものも含めて網羅的に収録されているが、学説紹介についてはムラがあり、一世代前の学説の紹介に留まっている解説がある。しかし司法試験・予備試験の合格のためには最新の学説よりも使い古された通説をまずは学ぶべきであり、網羅性ある本書は所謂基本書より使いやすい。A5判、第1巻〔序論・第1条~第34条の2〕:824頁、第2巻〔第35条~第37条〕:780頁、第3巻〔第38条~第42条〕:618頁、第4巻〔第43条~第59条〕:502頁、第5巻〔第60条~第72条〕:912頁、第6巻〔第73条~第107条〕:530頁、第7巻〔第108条~第147条〕:488頁、第8巻〔第148条~第173条〕:484頁、第9巻〔第174条~第192条〕:312頁、第10巻〔第193条~第208条の3〕:596頁、第11巻〔第209条~第229条〕:680頁、第12巻〔第230条~第245条〕:504頁、第13巻〔第246条~第264条〕:930頁。 西田典之・山口厚・佐伯仁志編『注釈刑法(有斐閣コンメンタール) 第1-4巻〔全4巻(予定)〕』有斐閣(第1巻 総論 §§1~72:2010年12月、第2巻 各論(1) §§77~198:2016年12月、第4巻 各論(3)§§235~264:2021年12月)……旧版(団藤重光責任編集『注釈刑法』全6巻)に比べ、大幅にスリム化された。理由として、(1)読者対象に法科大学院生や学部学生をも考慮に入れたこと、(2)原則として戦後の重要な判例・裁判例のみとりあげる方針としたこと、(3)判例・裁判例の引用を極力控えたこと(はしがき)、があげられている。執筆者はいずれも編者らの門下生であり、したがって、東大系結果無価値論の立場からの記述で一貫しており、立場のばらつきは少ない(ただし、執筆者間に意見の相違がある箇所もないではない。因果関係の錯誤など)。また、そのレベルは高く、最新の理論刑法学の研究成果が盛り込まれているといっても過言ではなく、東大系結果無価値論の一つの到達点である。ただ、これに対しては現在樋口亮介教授らの批判により体系的綻びが生じつつあることに注意が必要である。また、刑法学界を総動員して執筆された旧版に比べて量的にも内容的にも網羅性が損なわれているとの評価も少なくない。現時点で第3巻のみが未刊行。A5判、1038頁・892頁・頁・696頁。 前田雅英編集代表、松本時夫・池田修・渡邉一弘・河村博・秋吉淳一郎・伊藤雅人・田野尻猛編集委員『条解 刑法(条解シリーズ)』弘文堂(☆2023年3月・第4版補訂版)……実務家向けのコンパクトな注釈書。執筆者はほぼ全て実務家で占められており、条解刑訴と同じく編集委員らの合議による修正がなされているため、各執筆者の分担区分は掲記されていない。文字が大きく余白も多いため、他の条解シリーズに比べ情報量がやや少ない。A5判、960頁。 浅田和茂・井田良編『新基本法コンメンタール 刑法(別冊法学セミナー)』日本評論社(2017年9月・第2版)……第1版(2012年9月)は、刑の時効、強制執行を妨害する犯罪、サイバー犯罪に関する改正など、平成23年までの法改正に対応。第2版は、2017年通常国会で成立した性犯罪規定の改正までが反映され、第1版(2012年9月)以降の判例・学説の動きもフォローされた。事項索引・ 判例索引あり。B5判、688頁。 松宮孝明・金澤真理編『新・コンメンタール 刑法』日本評論社(☆2021年1月・第2版)……伊東研祐・松宮孝明編『学習コンメンタール 刑法』(2007年)を改題のうえ改訂したもの。改題後も、初版は伊東と松宮が編者であった。インターネットコンメンタールとしても提供されている。A5判、544頁。 川端博・西田典之・原田國男・三浦守編集代表、大島隆明編集委員『裁判例コンメンタール刑法 第1巻・第2巻・第3巻』立花書房(第1巻:2006年7月、第2巻:2006年9月、第3巻:2006年11月)……刑法全条文の意義・要件等を下級審から上級審までの裁判例を探ることによって解説する。A5判、第1巻〔第1条~第72条〕:680頁、第2巻〔第73条~第211条〕:664頁、第3巻〔第212条~第264条〕:664頁。 【判例集・ケースブック】 〔判例集等〕 佐伯仁志・橋爪隆編『刑法判例百選I 総論』『同・II 各論』有斐閣(いずれも、2020年11月・第8版)……解説付き判例集の筆頭。百選に掲載されているということが、当該判例の重要度を示すメルクマールになるので、まずは百選から頭に入れていくのが無難と言えば無難。ただし、解説は玉石混淆(判例の解説でなく、論点解説をしているようなものも散見される)。第8版から、編者の一人が山口厚から橋爪隆に変更された。I 総論:107件、II 各論:124件を収載。B5判、224頁・256頁。 前田雅英・星周一郎『最新重要判例250 刑法』弘文堂(☆2023年3月・第13版)……260判例を収録。コンパクトに多くの判例を解説している。ただし、前田説に沿う形で判例を取り上げ、解釈する傾向があるので、前田『講義』や木村『刑法』を基本書としていない者が使用する場合には注意を要する。2色刷。B5判、298頁。 西田典之・山口厚・佐伯仁志・橋爪隆『判例刑法総論』『同・各論』有斐閣(☆2023年3月・第8版)……解説なしの判例集。下級審裁判例まで網羅しており、総論・各論を合わせると収録数は1000件を超える。山口青本、西田刑法など、クロスリファレンスがなされている基本書を使用するならとりわけ便利。それらを利用しない場合でも、解説は一切不要だと考える学生はこちらを選択するべきだろう。A5判、574頁・592頁。 山口厚『基本判例に学ぶ刑法総論』『同各論』成文堂(2010年6月、2011年10月)……単一著者による重要判例の解説本。事案の解説のみならず、当該判例を起点に、関連する重要論点も平易に解説。A5判、316頁・340頁。 山口厚『新判例から見た刑法(法学教室ライブラリィ)』有斐閣(2015年2月・第3版)……最近の判例を題材にした解説。山口説に立たなくても、鋭い問題意識や分析は、判例の重要性や出題可能性と相俟って一読の価値がある。A5判、386頁。 井田良・城下裕二編『刑法総論判例インデックス』『刑法各論判例インデックス』商事法務(2019年12月・第2版、☆2023年3月・第2版)……見開き2ページで簡潔に説明している。事実関係をイラストにより図示しており、イメージを持ちやすい。というか笑える。また、解説は簡潔であるが、判プラ同様に項目ごとに執筆分担がなされているので、一貫した理解が進むと思われる。総論175件、各論184件を収載。A5判、400頁・416頁。 井田良ほか『刑法ポケット判例集』弘文堂(2019年3月)......文字通りポケットサイズのコンパクトな判例集。総論・各論の基本判例226件、概要のみのAppendix100件を収録。四六判、256頁。 成瀬幸典ほか編『判例プラクティス刑法I』『同II』信山社(2020年3月・第2版、2012年3月)……通称「判プラ」。Iは総論、IIは各論。Iの収録判例は481件、IIは543件と上掲『判例刑法』に迫る収録件数。1ページに事案・争点・判旨・解説と盛り込み過ぎの感が。若手・中堅の学者が、特定の分野の複数の判例の解説を執筆しているので、判例理論の一貫した理解に資すると考えられる。B5判、470頁・558頁。 十河太朗・豊田兼彦・松尾誠紀・森永真綱『刑法総論判例50!(START UPシリーズ)』『刑法各論判例50!(同)』有斐閣(2016年12月、2017年12月)……刑法を初めて学ぶ学生に向けた判例教材。予備校本のようなポップな体裁。2色刷。B5判、156頁・150頁。 高橋則夫・十河太朗編『新・判例ハンドブック刑法総論』『同各論』日本評論社(いずれも、2016年9月)...…重要判例の概要・判旨・解説を1ページでコンパクトに紹介。総論203件、各論175件を収録。四六判、240頁・208頁。 大谷實編『判例講義刑法1 総論』『同・2 各論』悠々社(2014年4月・第2版、2011年4月・第2版)……大谷門下による判例集。刑法総論は、平成24年末までの29件の新判例を取り込み、合計154判例を、各論は、平成21年3月までの153判例を収録。出版社廃業により絶版。 林幹人『判例刑法』東京大学出版会(2011年9月)...…著者が『判例時報』などに掲載した判例研究を項目別にまとめ直し、各項目に複数の設問を付したもの。設問は「~(判例)は、どういう事実につきどういう判断を示したか」といった事案分析型のものが中心で、著者による判例研究は設問に取り組む際の参考にして欲しいとのこと。いわゆる「ケースブック」と異なり、そのままの判決文等が掲載されていないので、判例研究や設問で指示されている(一項目につき複数の判例が指示される)判例については、別途、判例集なり裁判所HPからのダウンロードなりで入手したうえで取り組む必要がある。A5判、440頁。 松原芳博編『刑法の判例 総論』『同 各論』成文堂(2011年10月)...…A5判、326頁・302頁。 ☆松原芳博編『続・刑法の判例 総論』『続・同 各論』成文堂(2022年11月)...…A5判、262頁・288頁。 川端博『刑法基本判例解説』立花書房(2012年7月)...…総論66件、各論90件、合計156件を収録。A5判、352頁。 奥村正雄・松原久利・十河太郎・川崎友巳『判例教材刑法I 総論』成文堂(2013年4月)...…B5判、512頁。 小林憲太郎『重要判例集 刑法総論(ライブラリ 現代の法律学 JA13)』新世社(☆2022年7月・第2版)...…小林『刑法総論』における判例情報の不足を補う趣旨で作成された判例教材。しかしながら、単体の教材としての使用も想定されている。著者によると、「できる限り客観的な説明を心がけ」ており、また「判例の数も、引用の分量も、そして解説の量もかなりスリム化されている」(はしがき)とのことであるが、"コバケン節"とでも言うべき衒学的な独特の文体は相変わらず健在である。A5判、240頁(本文231頁)。 船山泰範・清水洋雄編『刑法判例ベーシック150』法学書院(2016年3月)...…A5判、336頁。 ☆成瀬幸典・安田拓人編『判例トレーニング刑法総論』信山社(2023年3月)……B5判、224頁。 〔ケースブック〕 岩間康夫ほか『ケースブック刑法』有斐閣(2017年3月・第3版)……京大系。法科大学院の双方向型授業を想定した学習教材。設問は判例分析よりも、理論面や細かな学説を問うものが多く、司法試験対策としてはほとんど無用の長物と言ってよいものだったが、近年、司法試験に学説問題が出題されるようになったことによって、そうとも言えなくなった。第2版(2011年4月)で総論・各論をまとめて一冊になった。第3版において、判例、設問が厳選され、大幅なコンパクト化が図られた。全20章。B5変型判、390頁。 笠井治・前田雅英編『ケースブック刑法』弘文堂(2015年3月・第5版)……主に前田門下の学者らによるケースブック。全30講。A5判、594頁。 町野朔・丸山雅夫・山本輝之編『ロースクール刑法総論』『同各論』信山社(2004年4月、2004年10月)……2冊計25テーマ、計80の判例を取り扱う。B5判、160頁・156頁。 山口厚編著『ケース&プロブレム刑法総論』、『同刑法各論』弘文堂(2004年12月、2006年9月)……生きた法である判例を素材にした演習書。「ケースブックとは異なり、基礎的な設問から応用的な設問へとステップをふみながら、法的思考力と事案解決能力が身につく自習も可能な演習書」とされている。全12章・11章。A5判、410頁・336頁。 (古典) 町野朔・堀内捷三・西田典之・前田雅英・林幹人・林美月子・山口厚『考える刑法』弘文堂(1986年10月)……A5判、384頁。 【演習書】 十河太朗『刑法事例演習——メソッドから学ぶ』有斐閣(2021年4月)……事例問題を解くためのルールや手法をMethod、その手順をStepとして解説。基本書には載っていないが、論文答案を作成する際に当然のこととされている約束事を言語化しており、初学者にとり有用と思われる。まずはここから。A5判、270頁。 嶋矢貴之・小池信太郎・品田智史・遠藤聡太『徹底チェック刑法——基本をおさえる事例演習』有斐閣(2022年6月)……刑法をひととおり勉強した人・勉強中の人が、長文の事例問題を解けるレベルに至るまでの橋渡しをすることを目的とした(はしがき)短文事例演習書。総論・各論の主要論点をほぼ網羅しており、また、解説も判例およびその標準的理解をベースにしているため、論点まとめ本・論証集としても使用できる内容となっている。大塚『応用刑法総論・各論』のエッセンスを凝縮して1冊本にまとめたイメージ。論点の抽出ができない、論証の仕方がわからないという人にオススメ。全43講。A5判、310頁。 ☆嶋矢貴之・小池信太郎・鎮目征樹・佐藤拓磨『刑法事例の歩き方——判例を地図に(法学教室ライブラリィ)』有斐閣(2023年12月)……法教連載(法教463-486号・全22回)の単行本化。『徹底チェック刑法』(基礎的な事例演習本)と『刑法事例演習教材』(発展的な事例演習本)の間を埋める中級レベル向けの事例演習本。というわけで、徹底チェック刑法よりアカデミック(萌芽的学説の紹介、参考文献の摘示等)かつ、刑法事例演習教材より実務刑法学・司法試験を意識した内容。参考答案こそないものの判例・学説の現状の解説のみならず、事例へのあてはめのやり方もきちんと解説していること、司法試験の出題動向等にも触れていることなどが特徴。全20講。A5判、554頁。 井田良・佐伯仁志・橋爪隆・安田拓人『刑法事例演習教材』有斐閣(2020年12月・第3版)……見てのとおりの第一線執筆陣による、司法試験を意識した長文事例問題集。設例は52個で、そのひとつひとつに遊び心が込められており、学生を飽きさせない。巻末には事項索引と判例索引も付いていて便利。難易度としては中級者以上向けで、独習することができる程度の解説があるがその理論水準はかなり抑えられており、相応に高度な論点が問題に含まれているのにほとんど言及がなかったり、多少匂わせるに留まったりするので、要注意である。また、解説ではあてはめの問題は基本的にスルーしているので、別途補完する必要がある。B5変型判、290頁。 只木誠編著、北川佳世子・十河太朗・髙橋直哉・安田拓人・安廣文夫・和田俊憲著『刑法演習ノート——刑法を楽しむ21問』弘文堂(2022年3月・第3版)……司法試験考査委員や元最高裁調査官といった豪華な執筆陣による司法試験向けの長文事例問題集。司法試験合格者が書き下ろした実践的な解答例が全ての設問に付されている。ただし、解答例は、学者による当該設問の解説と必ずしも一致していない部分もあるので注意が必要である。あくまで参考答案の一つと捉えるのが適当であろう。A5判、436頁。 井田良・大塚裕史・城下裕二・髙橋直哉編著『刑法演習サブノート210問』弘文堂(☆2024年4月・第2版)……上掲『刑法演習ノート』の姉妹本。刑法の基本中の基本を網羅的に学ぶことができる、初学者向けの演習書。設問・解説ともに1頁ずつで主要論点をコンパクトに網羅している。解説が判例ベースの穏当な見解でまとめられている点は評価できるが、1頁という紙幅の都合のためか、全体的に舌足らずの感は否めない。そのため、基本書を一周した程度の初学者にとってはやや取り組みにくいであろう。他方、網羅性が非常に高くコンパクトであることから、中級者以上が論点を総ざらいするのには好適であると思われる。A5判、460頁。 佐久間修・高橋則夫・松澤伸・安田拓人『Law Practice 刑法』商事法務(2021年7月・第4版)……基本問題56問と発展問題12問から成る、学部~ロースクール1年生向けの演習書。問題はいずれも事例問題ではあるが、事案の分析・処理が求められるようなものではなく、実質的に1行問題に近いものも散見される。A5判、320頁。 島田聡一郎・小林憲太郎『事例から刑法を考える(法学教室ライブラリィ)』有斐閣(2014年4月・第3版)……法教連載を書籍化した事例問題集。問題文は長めだが、司法試験ほどではない。答案作成を意識した実戦的なアドバイスも豊富に盛り込まれている。設問もよく練られており、司法試験対策の演習書としての完成度は非常に高い。ただし、司法試験のレベルを優に超えた問題もあるなど難易度は非常に高く、使用者の実力によっては消化不良に陥る可能性がある。また、解説が非常にマニアックになってしまっている箇所もある。なお、第3版の改訂作業は、島田の急逝以後は小林のみによって行われた。A5判、518頁。 井田良・田口守一・植村立郎・河村博編著『事例研究 刑事法I 刑法』日本評論社(2015年7月・第2版)……現役の裁判官・検察官を中心とした執筆陣が事例問題を解説。設問の数は総論8問・各論9問と少なめで、論点を網羅することはできないが、各設問末尾の関連問題まで潰せば、重要論点については広範囲をカバーすることができる。主要な判例・学説の対立のみならず、先例的価値の大きな判例については、それが掲げる具体的な考慮要素にも多く言及がなされている。実務家の解説が多いこともあり、あてはめを鍛えるのにも有用。A5判、460頁。 大塚裕史『ロースクール演習刑法』法学書院(2022年6月・第3版)……受験新報の誌上答練を書籍化した、全36問からなる司法試験を意識した長文事例問題集。もっとも、問題文の長さ自体は本番ほどではない。答案例こそ付されていないが、「解説を要約すればそのまま答案が完成できるようになっている」(出版社の紹介文より)ため、独習用の教材としても好適。難点をあげるとすれば、論点相互が絡み合うような捻りの効いた問題が少なく、論点をただ単に足し合わせただけのような、もっぱらボリュームで勝負してくる問題が多いことか。また、問題文の表現にあいまいな部分も散見され、解説を読んで思わぬ論点落とし(?)に驚かされることも。A5判、544頁(本文519頁)。 池田修・杉田宗久編『新実例刑法〔総論〕 刑法理論と実務を架橋する実例33問』青林書院(2014年12月)……下掲『新実例刑法総論』の「設問や執筆者を変え〔替え〕、近時の学説・判例を踏まえた内容に改めた全面的な新版」(はしがき)である。「裁判員制度による影響とその可能性について意識したため、執筆者は裁判員裁判を担当した経験のある、実務経験十数年以上の裁判官」(はしがき)が執筆している。旧版と比べて新たな学説への目配りが効いているが、特定の学説に偏ることなく判例・裁判例を尊重しつつ手堅く解説しており、その姿勢は答案作成上参考になるだろう。裁判員裁判を踏まえてどのように裁判員に説示すべきかを論じているのも特徴のひとつ。とりわけ、最新判例をフォローした、正当防衛関連(5問)、共謀共同正犯の成否、承継的共犯などは必読である。目次及び設問。A5判、500頁。 池田修・金山薫編『新実例刑法〔各論〕』青林書院(2011年6月〔2014年12月2刷にて、その後の法改正についての補注あり〕)……法科大学院を意識して、総論よりも事例はやや長め。こちらもすべて実務家(ほとんどが現職の刑事裁判官36名)が執筆している。百選改訂の折には新たに選出されることが予想される、直近の重要な最高裁判例をモデルにした事例(全36項目)が並んでおり、できる限り目を通しておきたい。A5判、500頁。 前田雅英『司法試験論文過去問LIVE解説講義本 前田雅英刑法(新Professorシリーズ)』辰已法律研究所(2016年2月・改訂版)……司法試験論文本試験解説書。平成18年から平成27年までの問題について、「模範答案」1通と、「再現答案」2通を使いながら解説。A5判、294頁。 松宮孝明編『判例刑法演習』法律文化社(2015年3月)……刑法総論と各論を有機的に結びつけ、応用できることを目標とした演習書。まず、判例の事案と判旨が示され、次に当該判例において問題となる論点を検討し、最後に判例の射程を検討するという形式となっており、書名のとおり、判例の内在的理解に重きを置いた内容となっている。執筆者は、松宮、安達光治、野澤充、玄守道、大下英希の5名。A5判、346頁。 田中康郎監修、江見健一編集代表『刑事実体法演習 理論と実務の架橋のための15講』立花書房(2015年11月)……司法試験の刑事系科目である刑法(総論・各論)に関する主要なテーマについて、現役の刑事裁判官が、理論と実務の架橋をめざして学説と判例の接点を分かりやすく解説した演習書(はしがき)。「捜査法演習」・「刑事公判法演習」の姉妹書である。刑法の修学と題した序説では、司法試験の採点実感等を掲げて刑法学修のポイントを示す。問題は全15講。いずれも長文の事例問題に、解説を付すスタイル(答案例は付されていない)。「実務と学説の双方に通じた裁判官の事案解決型の思考過程を追体験」(はしがき)することができる。特徴は、犯罪事実記載例を掲げていること。なお、現在出版社品切れ。A5判、560頁。 木村光江『演習刑法』東京大学出版会(2016年3月・第2版)……全23問からなる長文事例問題集。全問に答案例が付されている。著者が前田門下ということもあり、前田の基本書との相性が極めて良い。A5判、480頁。 安田拓人・島田聡一郎・和田俊憲『ひとりで学ぶ刑法』有斐閣(2015年12月)……3段階に分類された問題群(Stage 1 Schüler(概念と論点を正確に理解する):全20問、Stage 2 Sänger(事例問題を解く基礎的な力を身につける):全11問、Stage 3 Meister(複雑な事例を解く):全3問 )からなる演習書。A5判、422頁。 町野朔・丸山雅夫・山本輝之編『プロセス演習 刑法〔総論・各論〕(プロセスシリーズ)』信山社(2009年4月)……全24章。B5判、362頁。 植村立郎監修『設題解説 刑法(二)』法曹会(2014年11月)……刑法総論の重要テーマを含む短文の事例問題(全30問)につき裁判官(裁判所職員総合研修所の教官?)が解説し、これに監修者の植村が辛口の【補論】を付すスタイル。設問の前に、いきなり当該設問において問題となる論点が一通り示されているため、論点抽出能力は全く養われない。裁判官が執筆しているため、概ね判例に沿った解説で信頼できる。なお、因果関係は相当因果関係説の立場から解説がなされている。雑誌『法曹』連載を単行本化したもので、題名に(二)とあるが本巻のみで総論の主要論点はカバーされている。全30章。新書判、536頁。なお、(一)は絶版の模様。 関根徹『実戦演習 刑法——予備試験問題を素材にして』弘文堂(2020年3月)……平成23年度~平成30年度までの司法試験予備試験論文問題の解説。参考答案付。A5判、264頁。 高橋則夫編、岡部雅人・山本紘之・小島秀夫『<授業中>刑法演習——われら考える、故にわれらあり』信山社(2021年3月)…… 上掲『<授業中>刑法講義——われ教える、故にわれあり』の姉妹本。レアケース・例外事例、あるいは長文で複雑な事例を挙げてある演習書に進む前に、典型的・基礎的な事例を処理する能力を身につけるための演習書。したがって、司法試験で問われる発展的な論点(例えば、因果関係の錯誤や共謀の射程)は省略されている。そのため初学者向け。四六変判、248頁。 佐久間修『新演習講義刑法』法学書院(2009年8月)……旧試対策問題集だった旧著『演習講義 刑法総論』法学書院(1998年5月)及び『同 刑法各論』法学書院(1997年10月)の改訂版。問題は旧試をイメージしたものであるが微妙にズレたものが多い。さらに、解説は難解なうえに、問題から離れた派生論点についての説明を延々と続けたり、少数説よりの自説の主張に終始したりしている面もあり、使い勝手は悪い。A5判、368頁。 設楽裕文編『法学刑法3 演習(総論)』『同4 演習(各論)』信山社(2010年8月)……B6判、216頁・232頁。 船山泰範・清水洋雄・中村雄一編著『刑法演習50選 入門から展開まで』北樹出版(2012年4月)……刑法を初めて学ぶ人と、法学部を卒業したレベルの人のための刑法演習書。刑法総論と各論について、それぞれ、入門編と展開編が設けられている。A5判、254頁。 甲斐克則編『刑法実践演習』法律文化社(2015年10月)……第I部から第III部までの構成のうち、第I部は精選された計24件(総論12件、各論12件)の最新重要判例の解説、第II部・第III部は司法試験の過去問(論文・択一)の解説となっている。第II部・第III部については、「司法試験問題(論文・択一)を徹底的に解剖」と謳っている割には、論文問題の解説はお世辞にも徹底的になされているとは言えず、択一問題に至っては体系順に問題が並べられているだけで、解説がほぼ皆無なうえに取り上げられている問題も少なすぎるなど、謳い文句からは程遠い中途半端な内容となっている。A5判、328頁。 (古典) 大塚仁・佐藤文哉編『新実例刑法〔総論〕』青林書院(2001年2月)……刑法の論点本。すべて実務家(ほとんどは現職の刑事裁判官30名)が執筆している。イメージ的には、論点ごとの重要判例の調査官解説をほどよく要約したようなもの。したがって、必ずしも斬新な議論が紹介されている訳ではないが、団藤・大塚らの伝統的行為無価値論とは親和性が高いので、これらの本を使用する者であれば、参考書として座右に置くのも良いだろう。編者が交代した新版が出たものの、設問によってはいまだに使える。A5判、460頁。 船山泰範『司法試験論文本試験過去問 刑法』辰已法律研究所(2004年5月・新版補訂版)……旧司法試験の過去問集。船山教授の解説講義を書籍化。問題解説、受験生答案検討、教授監修答案からなる。平成1-15年度の問題30問、昭和の問題13問の全43問。絶版だったがオンデマンドで復刊された。少数説が多い。 川端博『事例式演習教室 刑法』勁草書房(2009年6月・第2版)……初版(1987年5月)から22年ぶりに全面改訂された総論・各論全45問からなる短文問題集。元々が旧司500人時代に出版されたものであることから、「事例式」と銘打ちながらも事例は短いうえに、一行問題も混ざっているなど、問題形式がかなり旧司チックな演習書となっている。論点整理には有益。縦書き。現在、出版社品切れ。A5判、328頁。 斉藤誠二・船山泰範編『演習ノート刑法総論』法学書院(2013年4月・第5版)……全100講。A5判、276頁。 岡野光雄編『演習ノート刑法各論』法学書院(2008年7月・第4版)……全110講。A5判、240頁。 藤木英雄『刑法演習講座』立花書房(1984年1月)……藤木説を理解するためには必読の演習書。出版社在庫なし。 石川才顯・ 船山泰範編『刑法1 総論(司法試験シリーズ )』、『刑法2 各論(同 )』日本評論社(1993年12月・第3版、1994年1月・第3版)……B5判、頁・頁。 福田平・大塚仁『基礎演習刑法(基礎演習シリーズ)』有斐閣(1999年8月・新版)……総論・各論あわせて66問。出版社在庫なし。四六判、308頁。 前田雅英『刑法演習講座』日本評論社(1991年4月)……A5判、518頁。 前田雅英『Lesson刑法37』立花書房(1997年4月)…解答例付き。A5判、446頁。 → このページのトップ:刑法に戻る。 → リンク:刑事訴訟法、刑事実務
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支部研修会 厚木支部研修会予定 平成26年度 第5回支部研修会 日 時 平成27年1月30日(金)18:30~21:00 場 所 アミューあつぎ市民交流プラザ 6階 ルーム606&607 テーマ 「地域医療との連携~地域のいのち・権利を守る~」 講 師 厚木保健福祉事務所 保健予防課 石塚祥子 様 北里大学病院 精神保健福祉士 山田素朋子 様 協 力 神奈川県司法書士会 人権委員会委員 終了した研修会 平成26年度 第4回支部研修会 日 時 平成26年11月14日(金)18:30~21:00 場 所 海老名市総合福祉会館 テーマ 法テラスの役割及び民事法律扶助の利用の仕方について 講 師 神奈川県司法書士会 法テラス対策委員会 阿部健太郎委員長 平成26年度 第3回支部研修会 日 時 平成26年8月29日(金)18:30~21:00 場 所 大和商工会議所小ホールB テーマ 日常業務の再確認・第2回 講 師 厚木支部役員(グループ司会進行) 平成26年度 第2回支部研修会 日 時 平成26年7月4日(金)18:30~21:00 場 所 アミューあつぎ市民交流プラザ 6階 ルーム610 テーマ 司法書士のためのコミュニケーション 講 師 神奈川県司法書士会 川崎支部 稲村 厚 会員 平成26年度 第1回支部研修会 日 時 平成26年4月23日(水)18:30~20:30 場 所 海老名市文化会館3階 351多目的室 テーマ メディエーション、調停センターの活用 講 師 神奈川県司法書士会 相模原支部 間々田昇 会員 平成25年度 第4回支部研修会 日 時 平成26年3月3日(月)18:30~ 場 所 プロミティ厚木 8階会議室AB テーマ 渉外不動産登記について 講 師 神奈川県司法書士会 横浜西支部 大池雅実 会員 平成25年度 第3-2回支部研修会 日 時 平成25年11月8日(金)18:30~21:00 場 所 あつぎパートナーセンター テーマ こんなに楽しい共同受任 講 師 厚木支部会員有志 平成25年度 第3-1回支部研修会 日 時 平成25年11月8日(金)18:30~21:00 場 所 海老名市文化会館 テーマ 共同受任をやってみた 講 師 厚木支部会員有志 平成25年度 第2回支部研修会 日 時 平成25年10月11日(金)18:30~21:00 場 所 海老名市文化会館351多目的室 テーマ 日常業務の再確認:不動産登記業務 講 師 厚木支部役員(グループ司会進行) 平成25年度 第1回支部研修会 日 時 平成25年7月31日(水)18:30~21:00 場 所 プロミティあつぎ8階 会議室A・B テーマ 税制改正のポイント -相続・贈与の留意点- 講 師 公認会計士・税理士 西 厚夫 先生
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お問合せ先 神奈川県司法書士会厚木支部、このホームページに関することは、メールにて下記までお問合せ下さい。 ホームページ作成担当 厚木支部副支部長 司法書士 下原 明 E-Mail atsushiho@live.jp TEL 046-262-6230
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刑事訴訟法(昭和23年7月10日法律第131号) 最終改正:平成28年6月3日法律第54号 ※最終改正までの未施行法令あり。 刑事訴訟規則(昭和23年12月1日最高裁判所規則第32号) 最終改正:平成28年4月7日同第4号 刑事訴訟法 平成11(1999)年 通信傍受法成立。 平成12(2000)年 大幅改正&犯罪被害者保護法成立。 平成16(2004)年 裁判員制度、被疑者国選弁護制度他。 平成17(2005)年 即決裁判手続き他。 平成19(2007)年 被害者参加制度、損害賠償命令他。 平成22(2010)年 公訴時効改正。(平成22年4月27日法律第26号) 平成23(2011)年 記録付差押え命令等。(平成23年6月24日法律第74号) 【基本書】 〔メジャー〕 宇藤崇・松田岳士・堀江慎司『刑事訴訟法(LEGAL QUEST)』有斐閣(2012年12月)……京大の鈴木茂嗣門下による共著テキスト。判例・通説をそつなく紹介しており、判例分析はとりわけ詳しい。重要な41判例の要旨を掲載しているのも特徴的である。各制度の理論的根拠を示しつつ、個々の要件解釈にもきちんと触れているため、全体的に完成度が高い。特に、堀江執筆の証拠法は白眉である。全体の分量が増えすぎることのないように削らなければならなかった記述も少なくない(はしがき)とのことであり、情報量は、詳細な体系書と有斐閣アルマの中間といったところであろう。捜査・公訴・証拠パートは詳しいが、その他の手続の記述はそれほど厚くないので、コンメンタールや講義案と併用するとよいだろう。A5判、562頁。 上口裕『刑事訴訟法』成文堂(2015年2月・第4版)……著者は「はしがき」で司法試験受験生用の教科書として執筆したと明言している。「迷宮」となりやすい、訴因・公訴事実の同一性・伝聞・裁判の効力等では、基礎から詳述している。受験生向けに基礎から丁寧に説かれている親切な本である。もっとも、記述の粗さや判例の理解の不正確さなどの難点も指摘されている。A5判、676頁。 池田修・前田雅英『刑事訴訟法講義』東京大学出版会(2014年12月・第5版)……最高裁調査官や高裁長官も経験した元刑事裁判官と刑事法学者による共著。通称「イケマエ」。捜査における人権侵害や冤罪の発生は、国民全体の利益を最大化するためにはやむを得ないという独特の立場を採る。しばしば本書の見解が「実務」の見解の代表であるかのように誤解されるが、著者の法解釈は判例・実務とイコールではなく、時代遅れの部分もあるので注意されたい。「裁判員裁判導入前」の典型的な検察官寄り裁判官と警察の御用学者による警察・検察寄りの著書という意識をあらかじめ持った上で読めば、有用であろう。判例を豊富に取り上げているため、初学者が手を出しやすいが、理論的な精緻さに欠け、判例の分析も独自色が強いため、本書で採られている見解が「判例」であると思考停止に陥ることは危険である。A5判、582頁。 田中開・寺崎嘉博・長沼範良『刑事訴訟法(有斐閣アルマSpecialized)』有斐閣(2015年4月・第4版)……定評あるスタンダードなテキスト。基本的事項と判例の説明に重点が置かれており、コンパクトに穏当な見解でまとめられている。記述が平板であることから、最初の一冊としては向かないかもしれないが、薄いながらも情報が凝縮されていることから、まとめ本として好適である。なお、全体的に穏当な見解でまとめられた本書にあって、寺崎執筆にかかる訴因論は、説得的な理由づけもなしに独自説を全面に押し出してきており、非常に分かりづらいため、この部分だけは他の本で補充すべきである。有斐閣ケースブックや『演習刑事訴訟法』などの発展学習へのつながりが良い。四六判、422頁。 〔その他〕 酒巻匡『刑事訴訟法』有斐閣(2015年11月)……東大系学者による久々の単著。法学教室での連載(「基礎講座・刑事手続法を学ぶ(1)~(26・完)」)に大幅な加筆をして書籍化された。判例の規範分析の緻密さと分厚い自説論証が特徴の最高水準の体系書。刑訴法の解釈にとどまらず、憲法の刑事手続関連条項をふまえると、どこまでの法改正が許されるのかという立法論まで言及しているのも本書の特徴の一つ。酒巻説自体は東大系主流学派の学説を盛り込んだいわゆる学界通説に近い。A説、B説があって、自説はこれであるという論述スタイルをとらず、したがって、他説紹介はほとんどない。学説「名」の紹介は一切なく、脚注もないためオリジナルの文献に遡るのが困難であること、上訴・再審の記述が薄いことが難点。H28刑訴法改正法律案に対応。A5判、659頁。 裁判所職員総合研修所監修『刑事訴訟法講義案』司法協会(2015年12月・4訂補訂版)……通称『総研』または『講義案』。裁判官による書記官向けの本だけあって、実務寄り。条文・定義・手続を淡々と説明している。証拠法には定評があるが、捜査が非常に薄く、他の本での補充が必須である。その場合には、同じく実務寄りの幕田英雄『実例中心 捜査法解説』東京法令出版(2012年7月・第3版)など、実務の立場から書かれた書籍を用いるとよいだろう。A5判、564頁。 田口守一『刑事訴訟法』弘文堂(2012年3月・第6版)……西原門下。かつての定番書。刑訴法全体をコンパクトな記述で網羅的に解説している。見解も比較的穏当である。しかしながら、コンパクトな記述ゆえに理論的な深みに欠け、論点の掘り下げは浅い。また、訴因論で独自の見解が採られている、判例の引用数こそ多いが最新の基本書と比べると判例分析が甘い等の短所も指摘されている。前述のように論点の掘り下げが浅く、試験頻出の論点についても記述が薄い箇所があるため、本書をメインの基本書として利用する場合は、他の参考書などを併用して適宜補充することが重要である。A5判、522頁。 渡辺直行『刑事訴訟法』成文堂(2013年3月・第2版)……西原門下。田口の弟弟子。ロースクールの実務家教員による司法試験受験生向けの教科書。田口と同門ということもあってか、田口の記述を敷衍したような内容となっており、基本事項・重要論点の解説・系統立ても田口より丁寧である。第2版は、コアカリキュラム対応を売り文句にしている。実務にあまり重要でない学説・判例等への言及がやや薄いため、判例集・演習書を併用するのがよい。同著者が重要論点を抽出して解説したものとして『論点中心 刑事訴訟法講義』成文堂(2005年3月・第2版)がある。A5判、684頁。 安冨潔『刑事訴訟法』三省堂(2013年6月・第2版)……はしがきにあるように修習生や若手弁護士も読者として意識していることから、情報量が類書と比べ圧倒的に多い。辞書としての使用が主になるだろう。増刷の際に改訂頻繁。B5変型判、712頁。 安冨潔『刑事訴訟法講義』慶應義塾大学出版会(2014年9月・第3版)……上記著者による通読向きの概説書。2色刷り、図表多用。第3版では、各章末に「論点とまとめ」と題された予備校の論証カードのようなものが新たに付され、学者の書いた予備校本といった趣がますます強くなった。A5判、480頁。 白取祐司『刑事訴訟法』日本評論社(2015年9月・第8版)……田宮孫弟子。白取説は徹底して被疑者寄りの少数説で貫かれており、本書では、実務の世界からおよそかけ離れた独自の白取ワールドが展開されている。そのため、初学者がいきなり本書に手を出すのは避けたいところである。もっとも、判例・通説・実務の現状や原理・原則をある程度踏まえた上での展開となっているため、白取説に立たなくても刑事手続について立体的に理解するには有用である。判例・通説をあらかじめしっかりと理解したうえであれば、本書に手を出してみるのもよかろう。また、著者が少数説を採っているということもあってか、学説の紹介に詳しく、調べものなどの役には立つ。捜査や公判については詳細であるが、証拠法ことに自白の記述が弱い。A5判、592頁。 寺崎嘉博『刑事訴訟法』成文堂(2013年7月・第3版)……白取と同門。アルマの共著者の一人。イラストや図表を豊富に使用し(アンパンマンのイラストが使われていることは有名)、重要な用語には適宜マークを付すなど、視覚的な工夫を随所に散りばめた予備校本を思わせるビジュアルが特徴的である。もっとも、肝心の内容は、判例や通説の論理に対して徹底的な批判を加える一方で、説得的な理由付けもなしに独自色の強い自説を延々と展開するなど、読者の混乱を招きかねないものとなっているため、注意が必要である。長所としては、論点および学説を豊富に取り上げており、他の基本書においてはあまり取り上げられることが少ない論点およびその意義について、学生と教授という設定で、ダイアローグ演習形式によって詳しく解説している点があげられる(なお、女子学生F子の独特の口調のせいで、非常に読みづらいものとなっている)。A5判、582頁。 福井厚『刑事訴訟法講義』法律文化社(2012年6月・第5版)……非常に分かりやすく読みやすい叙述であり、判例の正確な紹介と批判、学説の位置づけの的確さ等に定評がある。また、バランスのとれた解釈なので、試験的には使いやすい。A5判、570頁。他にも著書多数。『刑事訴訟法』有斐閣プリマ(2012年10月・第7版)、『刑事訴訟法学入門』成文堂(2002年4月・第3版)、『刑事法学入門』法律文化社(2004年2月・第2版)、『ベーシックマスター刑事訴訟法』法律文化社(2013年4月・第2版)。 渡辺修『基本講義 刑事訴訟法』法律文化社(2014年9月)……A5判、318頁。(評価待ち。) 平良木登規男『刑事訴訟法I・II』成文堂(2009年10月,2010年11月)……元刑事裁判官。「ひららぎ」と読む。旧著『捜査法』(2000年4月・第2版)の改訂版ではなく、全面的に新しく書き下ろされた新著。著者曰く未習者向けテキスト。旧著よりもページ数は減ったが、内容の密度は増した。また、文字のポイントの小ささも増した。上訴・再審なし。『捜査法』は総研との組合せで用いると良いとの声あり。A5判、278頁・343頁。 長井圓『LSノート刑事訴訟法』不磨書房(2008年10月)……レジュメ本。「判例の理論化」という帯がついている。前半はレジュメそのままであり、重要事項であっても説明が軽く流されてしまっているが、途中から説明が丁寧になり詳細な理由付けがなされていくという不可思議な本である。といってもレジュメ形式で書かれていることには変わりなく、やや読みづらい。渥美を擁した中大系ではあるが、特に渥美説を採るわけでもなく、判例・実務よりである。下手な基本書よりは使える。A5変型判、432頁。 加藤康榮『刑事訴訟法』法学書院(2012年3月・第2版)……元最高検検事による教科書。検察よりの立場。捜査法が詳しい。A5判、448頁。 加藤康榮『マスター刑事訴訟法』立花書房(2012年10月・改訂版)……平成23年改正に対応。A5判、448頁。 加藤康榮・滝沢誠・宮木康博・三明翔『ケース 刑事訴訟法』法学書院(2013年9月)……A5判、333頁。 大久保隆志『刑事訴訟法(法学叢書)』新世社(2014年4月)……元検察官による体系書。実務の一端を知るには有用だが、試験には使いにくい。身柄拘束中の被疑者取調べにおいて、出頭・滞留義務を否定しつつ取調べ受忍義務を肯定する異説を採る。A5判、480頁。 上口裕・後藤昭・安冨潔・渡辺修『刑事訴訟法(有斐閣Sシリーズ)』有斐閣(2013年3月・第5版)……新旧の司法試験考査委員が共同で執筆。コンパクトな本に独自説を詰めこんでしまい、受験勉強に使いやすい本とはいえない。四六判、360頁。 小林充原著、植村立郎監修、前田巌改訂『刑事訴訟法』立花書房(2015年5月・第5版)……故小林充(元仙台高裁長官)の著書を前田巌(元最高裁調査官)が補訂し、植村立郎(元東京高裁部総括判事・弁護士)が監修者補注を付したもの。取調べ受忍義務肯定説、別件基準説、証拠能力付与説などいわゆる実務説を採っており、「説得力と安定感ある論証・叙述」(改訂者あとがき)となっている。学説対立の記述はあっさりしており、東大系学説(出頭滞留義務・取調べ受忍義務区分説、実体喪失説、伝聞性解除行為説など)への言及はない。論点は広く浅く(時には深く)拾っており、判例もコンパクトにまとめていることから、まとめ用に向いている。その反面、記述があっさりしているため、初学者にはとっつきにくいかもしれない。A5判、416頁。 ☆亀井源太郎・岩下雅充・堀田周吾・中島宏・安井哲章『プロセス講義刑事訴訟法』信山社(2016年6月)……平成28年5月に成立した刑訴法改正法案の改正ポイント解説を適宜織り込んだ最新テキスト。A5変型判、460頁。 【その他参考書】 酒巻匡「論点講座・刑事手続法の諸問題(1)~(19・完)」(法学教室連載・283号~306号)……松尾浩也・井上正仁門下。捜査法・訴因論の重要論点について、近時の理論を学生向けに説明。通称「酒巻連載」(法学教室355号~394号に連載された「基礎講座・刑事手続法を学ぶ(1)~(26・完)」と区別するために「酒巻旧連載」とも呼ばれる)。証拠法はほとんど扱っていないため、本連載のみでの学習は困難である。なお、教科書出版のための連載であったが、未だに出版予定はない。各回の目次など→雑誌連載・企画 緑大輔『刑事訴訟法入門(法セミ LAW CLASS シリーズ)』日本評論社(2012年11月)……後藤昭門下。書名に"入門"とはあるが、入門書というよりもむしろ、既に一通り基礎知識を修得した学生向けの論点解説書といった方が適当である。基礎から応用へのステップアップとして非常に有用であり、本書を読み通すことができれば、かなりの力がつくことは間違いない。A5判、340頁。 井上正仁『強制捜査と任意捜査』有斐閣(2014年12月・新版)……大家の手になる捜査法に関する論文集。捜査法における最重要文献の一つ。新版の改訂にあたっては、新たに3つの論文が追加され、既収録の論文についても、判例や文献がアップデートされるなど加筆修正が施された。捜査分野における諸論点を重要判例とともに詳細に解説している。論文集ではあるが、収録されている論文には百選や争点に掲載されたものも含まれており、また、法学教室413号の書評で「しっかり刑事訴訟法を学ぶには最適の教材」と評されていることからも、試験対策としても得るところがあるだろう。A5判、526頁。 團藤重光『新刑事訴訟法綱要』創文社(1967年・7訂版)……現行法の立案者による重厚な体系書。戦後の現行法施行直後に出版された初版は、実務家に広く受け容れられ、ほどなく学界が平野・全集を起点として再出発、発展していく一方で、実務では今でもなお團藤説(権力分立・適正手続保障を基礎にしつつも、捜査を除き裁判所職権主義構造論+審判の対象として訴因に公訴事実を折衷的に加える折衷説)が随所で多大な影響力を残していると言われる。刑訴法における團藤説そのものは、刑法における團藤説と異なり、もはや学界で支持されることはほとんどないが、平野説と並び、ほとんどの文献における記述の下敷きになっている。現行法に関する最重要文献のひとつであることに間違いはなく、名著である。 平野龍一『刑事訴訟法』有斐閣(1958年12月)……有斐閣法律学全集の中でも三ケ月章『民事訴訟法』と並び称される不朽の名著。アメリカ寄りの体系に立ち、團藤・上掲書(とくに職権主義構造論と折衷説)を徹底的に批判し、学界で圧倒的な支持を得た結果、戦後の刑事訴訟法「学」の礎として、團藤・上掲書と双璧をなす存在となっている。訴因論などは、今でも一読の価値がある。A5判、373頁。なお、著者が学部生向けの教科書として執筆した『刑事訴訟法概説』(東京大学出版会、1968年)もあるが、平野説に触れたい場合には、より詳細な本書を読むべきであろう。 平野龍一・鬼塚賢太郎・森岡茂・松尾浩也『刑事訴訟法教材』東大出版会(1977年9月)……小説立ての教科書。平野がハーバードに留学した際にアメリカの証拠法の教科書を見て思いついた一冊。刑事訴訟の権威、最高裁調査官経験者が執筆者として名を連ねているが、弁護士、警察官等刑事訴訟に関係する役職全てが目を通しているため、非常にリアルなプロセスを体験できる。書式も全て挿入されている。脚注には問題も設定されており演習書としての機能も備えている。読み物としても面白い。出版されてから大分経つが、今なお亀井源太郎等が参考書として挙げている。 松尾浩也『刑事訴訟法上・下(法律学講座双書)』弘文堂(上 1999年11月・新版,下 1999年3月・新版補正第2版)……2冊組。著者は「精密司法」という用語の発案者であり、ここからもうかがえる通り、平野ほど現行刑事訴訟に絶望しておらず、アメリカ寄りにもなっておらず、わが国の刑事訴訟法のありようを直視したものとなっている。実務家の視点に立った独自の章立てとなっており、当事者ごとにらせん状に手続過程を辿っていく形になっている。網羅的で記述にムラがない分、いわゆる重要論点の論述も相対的に薄くなっている。文章は、客観的かつ平易で極めて読みやすいが、かなり考えられた上で書かれているため、早く読み進めない方がよい。平成12年以降の新判例、法改正、最新のホットトピックについての記述はないが、新しい判例との親和性はおおむね高い(ex.訴因変更の要否に関する最決平成13・4・11と松尾上261頁以下を比較してみれば分かる)。酒巻連載や『演習刑事訴訟法』との相性も抜群である。理論的に最も頼れる基本書と言えよう。A5判、360頁・400頁。なお、2004年までの法・規則改正に関する補遺は、弘文堂HP「訂正表・補遺」からダウンロードできる。 田宮裕『刑事訴訟法』有斐閣(1996年3月・新版)……制度社会学的な観点から刑事法システム全体に目配りしつつ、原理原則に立ち返る明快かつわかりやすい記述が特徴。特に、伝聞法則の基礎理論の解説に定評がある。田宮説といえば、アメリカ判例法に強い影響を受けた適正手続主義が特徴であるが、本書は、教科書という特性から、わが国の判例の解説を重視しており、結論の落とし所も必ずしも実務から離れているわけではない。新しい強制処分説、違法排除説で有名。1998年12月までの動向が補訂され増刷されたものの、1999年に著者が他界し、それ以後の新判例、法改正、論点については記述がなく、近時、急速な判例・立法の進展により、古典としての性格を強めつつあるが、今でも副読本として根強い人気がある。A5判、588頁。 鈴木茂嗣『刑事訴訟法(現代法律学講座)』青林書院(1990年4月・改訂版)……A5判、394頁。 土本武司『刑事訴訟法要義』有斐閣(1991年4月)……元最高検検事。検察よりの実務刑訴。論点落ちあり。A5判、622頁。 三井誠『刑事手続法(1)・2・3・(4未刊)』有斐閣(1997年6月・新版,2003年7月,2004年5月)……「4」は未刊。法学教室での連載をまとめたもの。連載としては完結している。B5判、216頁、A5判、490頁・444頁。 渥美東洋『刑事訴訟法』有斐閣(2009年4月・全訂第2版)…著者は2014年に逝去。反実務・反通説を求めるならば、渥美説は避けて通れない。憲法を基礎にした体系を構築。『渥美刑訴』とも称される独自の体系・用語法、またその日本語表現を問題視する声が多く、司法試験の基本書にはまったく向かない。したがって、読むならば司法試験合格後ということになろうが、上記のとおり反実務・反通説を貫く本書を修習中に読破することの意義もまた見出し難い。もっとも、渥美説そのものはなかなか面白いので、純然たる趣味と割り切ってその晦渋な文章と付き合うならば、良き思い出ともなろう。A5判、688頁。 光藤景皎『刑事訴訟法I・II』『口述刑事訴訟法下』成文堂(2007年5月,2013年7月,2005年11月)……名前の読みは「みつどう・かげあき」。「口述刑事訴訟法」として上・中・下3冊組であったが、上・中は「刑事訴訟法I、II」として改訂。下(上訴・再審)の改訂は、今のところ未定。旧司法試験時代から、証拠法分野には定評がある。IIの証拠法パートでは、アメリカ証拠法の判例・学説を多数引用しており、参考になる。自説は基本的に人権尊重であるが、判例の分析はきちんとしており役に立つ。A5判、390頁・332頁・150頁。 井上正仁・酒巻匡編『刑事訴訟法の争点(新・法律学の争点シリーズ 6)』有斐閣(2013年12月)……B5判、208頁 川崎英明・白取祐司編著『刑事訴訟法理論の探究』日本評論社(2015年6月)……法律時報誌の連載をもとに、新たな立法・判例の動きを踏まえた最新の理論書。東大系学説及び判例実務説に対して、非東大系学者が批判的検討を加えるというスタイル。判例通説の学修では飽き足らない人向け。A5判、272頁。 ☆川崎英明・葛野尋之編『リーディングス刑事訴訟法』法律文化社(2016年4月)……現在の判例・学説のもととなった基本的な文献を端的に紹介することで、日本の刑事訴訟法学が蓄積してきた知の目録を俯瞰し、現在の、また今後の刑事訴訟法学の基礎としての到達点を個別領域ごとに確認・提示・継承。A5判、432頁。 (実務関連書) 石丸俊彦・仙波厚ほか『刑事訴訟の実務上下』新日本法規出版(2011年3月・3訂版)……裁判官の共著による実務家向けの刑事訴訟法の体系書。刑事訴訟手続部分だけでも、上巻726頁+下巻680頁の大著(本文)。学説については必要最小限の解説しかないが、その分実務の運用や判例の引用が多い(少数意見まで収録している)のが本書の特徴である。書式例の掲載も豊富であり実務のイメージを掴むのに便利である。学説を知らない初学者には向かないが、学説対立に辟易した上級者にならば本書は有用だろう。A5判、1510頁。 三井誠編『新刑事手続I・II・III』悠々社(2002年6月)……1つの論点を判事・検事・弁護士の3つの立場から論じており、実務家の考え方を知ることができる。 新関雅夫・佐々木史朗ほか『増補令状基本問題上下』判例時報社(2002年9月、原著1996年6月,1997年2月)……捜査法の実務的な論点について一行問題・簡単な事例問題の形式で実務家が解説。一粒社倒産のため判例時報社が引き継いだ。A5判、472頁・333頁。 高麗邦彦・芦澤政治編『令状に関する理論と実務I,II(別冊判例タイムズ34,35号)』判例タイムズ社(2012年8月,2013年1月)……令状関連実務について実務家が解説。全2冊。I・・総論、逮捕・勾留。II・・保釈・鑑定留置等・勾引・捜索・差押え・検証等・準抗告・抗告。 石井一正『刑事実務証拠法』判例タイムズ社(2011年11月・第5版)……元裁判官。証拠法分野では他の追随を許さない。実務家必携。もっとも、記述があまりにも実務的かつ各論的すぎるので、司法試験受験生が読みこなせる本ではない。本書を玩味して理解を深めることのできる者は、既に合格水準を優に超えているといえるので、使いどころが難しい。A5判、600頁。同著者の論文集として、『刑事訴訟の諸問題』判例タイムズ社(2014年6月)A5判、720頁。 大阪刑事実務研究会『刑事公判の諸問題』判例タイムズ社(1989年8月)、『刑事実務上の諸問題』(1993年12月)、『刑事証拠法の諸問題上下』(2001年4月)……関西の刑事裁判官による論文集。『刑事証拠法の諸問題上』所収の三好幹夫「伝聞法則の適用」は、伝聞法則を理解するのに有用。 司法研修所検察教官室編『検察講義案』法曹会(2016年6月・平成27年版)…司研テキスト(白表紙)。「隠れた名著」とも言われるが、本書はあくまで司法試験に合格した者に対して「実務的」な知識を習得させることを目的とした書籍である。そのため、全体として試験範囲との齟齬は否めない。司法試験と重複する箇所につき参考書として利用することはできるが、いわゆる基本書としての使用は難しいであろう。「司法研修所」という言葉や「検察実務」という雰囲気に変な期待を持つべきではない。予備試験の刑事実務科目や口述対策に役立つとの評価もある。A4判、230頁。 渡辺咲子『任意捜査の限界101問』立花書房(2013年8月・5訂)、廣上克洋編『令状請求ハンドブック』立花書房(2014年6月)……実務家(捜査官)向けの捜査法のQ A集。B6判、224頁。令状請求ハンドブックは、司法研修所検察教官室の公式本で『令状請求の実際101問』の改訂版。任意捜査と強制捜査の実際を知るためには有益である。A5判、272頁。 【入門書】 三井誠・酒巻匡『入門刑事手続法』有斐閣(2014年3月・第6版)……入門書の定番。最初に条文とともに読むべき1冊。解釈論に深入りせずに、条文に沿って粛々と制度を説明する。A5判、402頁。 渡辺咲子『刑事訴訟法講義』不磨書房(2014年3月・第7版)……元検察官による入門書。基本書としても使えないこともないが、メインの基本書として据えるには、やや心許ない。197条から国民の捜査協力義務を導くなど、独特な記述も散見されるが、全体としては検察実務の考え方を平易に示した好著である。口語調で非常に分かりやすい。書式が豊富。A5変型判、400頁。 福井厚『刑事訴訟法(プリマ・シリーズ)』有斐閣(2012年10月・第7版)……四六判、468頁。 福井厚『ベーシックマスター刑事訴訟法』法律文化社(2013年4月・第2版)……A5判、314頁。 椎橋隆幸編『ブリッジブック刑事裁判法』信山社(2007年4月)……入門書。訴因論については大澤裕が担当しており、分かり易い。訴因論がどうしてもわからないという人や、訴因論で特異な見解が採られている基本書を使用している人は、大澤執筆箇所だけでも読むとよい。四六判、300頁。 椎橋隆幸編『プライマリー刑事訴訟法』不磨書房(2016年3月・第5版)……A5変型判、384頁。 山本正樹・渡辺修・宇藤崇・松田岳士『プリメール刑事訴訟法』法律文化社(2007年11月)……A5判、320頁。 司法研修所監修『刑事第一審公判手続の概要-参考記録に基づいて』法曹会(2009年11月・平成21年版)……司法研修所の刑事裁判テキスト(白表紙)。実際の事件記録を題材に第一審の刑事訴訟手続を解説したもの。手続の流れをつかむのに最適。A5判、284頁。 裁判所職員総合研修所監修『刑事訴訟法概説』司法協会(2012年9月・3訂補訂版)……A5判、120頁(本文103頁)。 水谷規男『疑問解消 刑事訴訟法(法セミ LAW CLASS シリーズ)』日本評論社(2008年3月)……A5判、272頁。 安冨潔『やさしい刑事訴訟法』法学書院(2013年4月・第6版)……A5判、303頁。 渡辺直行『入門 刑事訴訟法』成文堂(2013年9月・第2版)……刑事手続きの全体像を鳥瞰した入門書。「です・ます調」で書かれている。基本的用語について、できる限りその定義を明らかにしており、初めて刑事訴訟法を学ぶ法科大学院未修者や学部学生向けの本である。A5判、372頁。 小木曽綾『条文で学ぶ刑事訴訟法』法学書院(2015年1月)……A5判、230頁。(評価待ち) 廣瀬健二『コンパクト刑事訴訟法(コンパクト法学ライブラリ)』新世社(2015年4月)……著者は、田宮裕門下の元刑事裁判官。特徴は「判例・通説に則ったうえ、私の実務経験を盛り込んで実務の実情を踏まえて概説」(はしがき)しているところであり、本文291頁とコンパクトながらも、主要な論点はほぼ網羅している。基本的に田宮説に依拠し、新しい強制処分説(ただし、盗聴等の権利侵害性の重大なものについては立法による規制を要するとする。この立場が判例実務により整合的であるとされる)、本件基準説、違法排除説を採るが、実体喪失説にも言及している。記述は平板であるが、小文字フォントを使い分けているため、初学者もメリハリをつけて読むことができる。ただし、条文を読めばわかる箇所は記述を省略していること、判例の引用数は多いものの判決内容の引用は少ないことから、六法や判例集に当たることが必要である。まとめ用として好適である。四六判、352頁。 加藤康榮編著、城祐一郎・阪井光平著『警察官のためのわかりやすい刑事訴訟法』立花書房(2015年9月)……警察官向けの概説書。コンパクトに刑事手続を巡る最新の動向や法改正のポイントを盛り込みつつ、捜査に関連する重要事項や判例を解説。 A5判、320頁。 【コンメンタール】 松尾浩也監修『条解刑事訴訟法』弘文堂(2009年12月・第4版〔☆2016年12月頃に4版増補版を刊行予定あり〕)……実務家必携の中型コンメンタール。弁護士以外の実務家中心で合議して匿名執筆しているのが特徴で、そのため記述内容に安定感がある(顕名執筆の大コンメンタール刑事訴訟法や注釈刑事訴訟法と比べると比較的客観的な記述である。)。第3版から実質6年ぶりの改訂となり、第3版増補版から168頁増量され、被害者参加や裁判員裁判を踏まえた記述になっている。条文の注釈に加えて刑事訴訟規則の注釈までついており、規則用の索引までついている。また、文献の引用を基本的に省略している。さらに、文字ポイントが小さく、情報量は多い。試験頻出の条文をさほど詳しく解説しているわけではないものの、条文の文言ごとの実務上の解釈を丁寧に解説している。そのため、刑事訴訟実務の授業や修習などで、実務の考え方を知りたいときに辞書的に用いるのであれば、大いに力を発揮する。執筆陣も豪華で信頼性が高く、新基本法コンメンタールが出た現在でも、実務家が最初に参照するのは本書であろう。ただし、受験生が使うには、価格の面で新基本法コンメンタールの方に分がある。A5判、1272頁。弘文堂HPにてH22,23改正についての追補PDFをダウンロードすることができる。 三井誠ほか編『新基本法コンメンタール刑事訴訟法』日本評論社(2014年4月・第2版)……実務家の手による中型コンメンタール。編者の三井以外の執筆者は全て現役の法曹三者(裁判官、検察官、弁護士)であり、「裁判および検察の分野は、司法研修所の刑事裁判教官室、検察教官室が軸」となり構成されている。現実の解釈に直結しない学説対立についてはほとんど言及されていないが、法曹三者で意見が対立する箇所には【COLUMN】を挿入している(計15本。弁護人の立場からの提言14本+三井によるエッセイ的コラム1本)。『条解』と比べると、執筆者が全体的に若い。執筆者が明示されている点と値段の安さが魅力。『条解』とほぼ同じ記述の箇所が多々みられる。第2版ではH25年までの法改正に対応。B5判、704頁。 後藤昭・白取祐司編『新・コンメンタール刑事訴訟法』日本評論社(2013年9月・第2版)……TKCのインターネットコンメンタールのコンテンツを書籍化した、学生向けの中型コンメンタール。2010年7月に刊行した初版をベースに、2012年までの法改正や新判例を反映したとされている。A5判、1228頁。 田宮裕『注釈刑事訴訟法』有斐閣(1980年5月)……田宮が学生向けに書きおろした学習用コンメンタール。分厚い新書。今となってはさすがに古い。刑事訴訟規則まで引用しているため、条文自体の注釈はさほど多くない。新書判、544頁。 河上和雄・中山善房・古田佑紀・原田國男・河村博・渡辺咲子編『大コンメンタール刑事訴訟法〔全11巻〕(予定)』青林書院(第1巻:2013年2月・第2版、第2巻:2010年9月・第2版、第3巻:2010年7月・第2版、第4巻:2012年4月・第2版、第5巻:2013年2月・第2版、第6巻:2011年4月・第2版、第7巻:2012年10月・第2版、第8巻:2011年12月・第2版、第9巻:2011年4月・第2版、第10巻:2013年9月・第2版、第11巻:年月・第2版)……これまでに蓄積された膨大な判例・学説を集大成した一大コンメンタール。公判前整理手続,即決裁判手続,裁判員制度,被害者参加制度の創設など,初版刊行後数次に渡る法改正と判例・学説の最新動向をつぶさに取り入れる(出版社の案内より)。本邦最高峰の大型コンメンタール。図書館での調べ物用。顕名形式であるため記述にややムラがあり、とくに検察官執筆部分において客観性に疑問のある記述がないではない。A5判、第1巻〔第1条~第56条〕:688頁、第2巻〔第57条~第127条〕:526頁、第3巻〔第128条~第188条の7〕:560頁、第4巻〔第189条~第246条〕:936頁、第5巻〔第247条~第281条の6〕:516頁、第6巻〔第282条~第316条〕:560頁、第7巻〔第316条の2~第328条〕:824頁、第8巻〔第329条~第350条の14〕:480頁、第9巻〔第351条~第434条〕:858頁、第10巻〔第435条~第507条〕:514頁、第11巻〔刑事訴訟特別法〕:頁。 河上和雄・小林充・植村立郎・河村博編『注釈刑事訴訟法〔全8巻〕(予定)』立花書房(第1巻:2011年5月・第3版、第4巻:2012年8月・第3版、第6巻:2015年4月・第3版、第7巻:2012年10月・第3版)……第6巻(2015年4月・第3版)について、10年ぶりの全面改訂。新版発刊以降の法改正・制度改革等を織り込み,実務の動向を正確に記述することを主眼に,実務を支える理論的な支柱を実務の内側から明らかにする(出版社の案内より)。大コンメンタールと同じく顕名形式をとるが、こちらは一家言ある裁判官執筆部分の記述内容が特徴的であり、大コンメとは若干趣を異にしている。A5判、第1巻〔第1条~第56条〕:706頁、第4巻〔第271条~第316条〕:634頁、第6巻〔第317条~第350条の14〕:890頁、第7巻〔第351条~第418条〕:642頁。 井上正仁監修、河村博・酒巻匡・原田國男・廣瀬健二編集代表、大島隆明・三浦守編集委員『裁判例コンメンタール刑事訴訟法〔全4巻〕(予定)』立花書房(第1巻:2015年4月)……A5判、第1巻〔第1条~第188条の7〕:720頁。第2巻〔第189条~第270条〕:予定、第3巻〔第271条~第350条の14〕:予定、第4巻〔第351条~第507条〕:予定。 【判例集・ケースブック】 井上正仁ほか編『刑事訴訟法判例百選』有斐閣(2011年3月・第9版)……他の百選に比べて実務家の執筆者が多い。全体的に穏当な解説がされているので、司法試験受験生は、事案と判旨のみならず、解説まで読み込むべきである。101件+アペンディックス41件を収録。B5判、260頁。 三井誠編『判例教材刑事訴訟法』東京大学出版会(2015年6月・第5版)……圧倒的な判例の掲載数。解説は皆無。判例百選の重要判例を本書で詳細に検討する読み方が、司法試験受験生には有益であろう。A5判、770頁。(第5版については評価待ち。) 葛野尋之・中川孝博・渕野貴生編『判例学習・刑事訴訟法』法律文化社(2015年11月・第2版)……若手から中堅の研究者による判例教材。取り上げられた判例は、102件。これらの判例について、主に論点と結論→事実の概要→法の解釈→法の適用→コメントという順番で書かれている。法の解釈・法の適用・コメントは、論文の際のあてはめに有用であると思われる。B5判、350頁。 ☆川出敏裕『判例講座 刑事訴訟法〔捜査・証拠篇〕』立花書房(2016年4月)……警察学論集誌上での全25回にわたる同名連載に追加・修正を施して単行本化したもの。捜査法及び証拠法に関する重要なテーマにつき判例を素材に検討。警察幹部向けの連載ということもあって判例の緻密な分析がなされており、判例の内在的な理解を深めることができる。必要な限度において学説の解説も行われており、控えめながらも自説主張がないわけではない(わかる人にはわかる内容)。全体的に極めて明快かつ論理的な文章で書かれており読みやすい。訴因論は含まれていないものの、捜査法と証拠法に関する重要論点はほぼ網羅されており、司法試験の論文対策として非常に有用であると思われる。A5判、512頁。 平良木登規男・椎橋隆幸・加藤克佳編『判例講義 刑事訴訟法』悠々社(2012年5月)……刑訴法学者24名が執筆。平成21年9月までの187判例を収録。 前田雅英・星周一郎『刑事訴訟法判例ノート』弘文堂(2014年3月・第2版)……A5判、418頁。 河上和雄『刑事訴訟法基本判例解説』東京法令出版(2008年6月・改訂版)……警察官の実務に特に関連が深い重要判例を精選し、初版以来の73件に、最新判例24件を追加。A5判、280頁。 渥美東洋・椎橋隆幸編『刑事訴訟法基本判例解説』信山社(2012年11月)……203件の重要判例を199項目に分け、1項目ごとに見開きで解説。A5変型判、432頁。 ☆田口守一『最新重要判例250 刑事訴訟法』弘文堂(2016年7月)……単独著者による1頁に1判例の判例ガイドシリーズの「刑事訴訟法」版。最新の重要判例を中心に251判例を収録。B5判、300頁。 〔ケースブック〕 井上正仁・酒巻匡・大澤裕・川出敏裕・堀江慎司『ケースブック刑事訴訟法』有斐閣(2013年10月・第4版)……設問には難解なものが多いが、他のケースブックに比べれば使いやすい。独学には向かないので、授業やゼミでの利用を勧める。B5変型判、720ページ。 笠井治・前田雅英編『ケースブック刑事訴訟法』弘文堂(2012年4月・第3版)……A5判、674頁。 加藤克佳ほか編『法科大学院ケースブック刑事訴訟法』日本評論社(2007年4月・第2版)……B5判、268頁。 後藤昭・白取祐司『プロブレム・メソッド刑事訴訟法30講』日本評論社(2014年8月)……はしがきにもあるように、上記『法科大学院ケースブック刑事訴訟法』を発展させた事実上の後継シリーズ。独習向きではない。A5判、488頁。 高野隆『ケースブック刑事証拠法』現代人文社(2008年11月)……刑事弁護人による証拠法ケースブック。証拠法分野はこれ一冊で完璧。問題集というよりは判例集的な性格が強い。 〔その他〕 渡辺咲子『判例講義 刑事訴訟法』信山社(2009年8月)……中立的な立場から重要判例を分析。一つ一つの判例につき、地裁から最高裁まで丁寧に判決の論理の変化を追うことで判例に対する理解を深めさせるというオーソドックスな形式をとっている。解説が詳しく、しかも講義調でとても分かりやすい。独学が可能な唯一のケースブックである。A5変型判、432頁。 長沼範良・大澤裕「判例講座・対話で学ぶ刑訴法判例」(法学教室連載・307号~340号、全18回。連載打切り)……最近の判例を巡って学者と著名な実務家との対談形式で分析する。上の「酒巻連載」に登場するような近時の学説に対する実務からの評価・論点に関する参考文献一覧も充実しており、新判例と高水準の理論との勉強に有用。 【演習書】 古江賴隆『事例演習刑事訴訟法(法学教室ライブラリィ)』有斐閣(2015年3月・第2版)……著者は元検事。法学教室の連載の単行本化。第2版では、3問追加され、既存の問題についても、解説が一層詳しくなった。学生が混乱するポイントについての解説を加えてあるだけではなく、事例問題の解き方についても冒頭で書かれており、参考になる。検察官出身であるが、実務を追認しているわけではなく、近時の判例のみならず、東大系学説の動向(それらの多くは、基本書レベルを超えており、論文等を参照しなければならないので、初学者が理解するのは困難である)をも踏まえた内容となっており、かなり理論的に詰めて書かれている。主要論点を全て網羅しているわけではないものの、重要論点はほぼカバーしており、演習書というよりも論点集といった趣が強い。また、各設問の解説の後に、参考文献として当該設問に関連する主要な文献が一通り挙げられており、文献ガイドとしても役に立つ。A5判、488頁。 井田良・田口守一・植村立郎・河村博 編著『事例研究 刑事法2 刑事訴訟法』日本評論社(2015年7月・第2版)……刑訴の最重要論点について、現役の裁判官・検察官らを中心とした執筆陣が、かなり自由度の高い解説をしている。設問の数は捜査5問・公判9問と少ないが、各設問の末尾の関連問題まで潰せば広い範囲の論点をカバーできる。A5判、412頁。(第2版については評価待ち。) 亀井源太郎『ロースクール演習刑事訴訟法』法学書院(2014年3月・第2版)……受験新報の巻末演習の単行本化。連載時は、似た問題が本試験でも出るということで評判となっていた。設問はいずれも、近時の重要(裁)判例をモデルにした長文事例問題であり、解説もおおむね穏当で参考になるが、ほとんどの設問で事案が判例そのままとなっているため、上級者の実践訓練用としては、やや物足りないかもしれない。全30問。A5判、頁。 佐々木正輝・猪俣尚人『捜査法演習』立花書房(2008年4月)……検察官派遣教官による捜査法の演習書。憲法解釈や抽象的命題をそぎ落とし、問題をもっぱら刑訴法の条文解釈に局限することで、徹底的に捜査の便宜を重視した解釈論を展開する(同じ検察出身でありながら、古江・演習が主流学派に依拠してバランスの取れた解釈論を展開しているのとは、対照的である)。内容はかなりハイレベルだが、立場の偏りを意識して批判的に取り組めば、相当なレベルアップが期待できる。特に、本書で示されている判例の射程については、著者の見解をたたき台としてよく分析されたい。A5判、424頁。 廣瀬健二編『刑事公判法演習』立花書房(2013年5月)……全国の法科大学院で派遣教員を務める著名な刑事裁判官らが一堂に会し、普通の教科書を読んでいるだけでは学習が難しい公判及び証拠の諸問題について解説している。下記『実例刑事訴訟法』への橋渡し的な位置づけであり、学生向け参考書としては最高水準である。内容はかなり高度であり、きわめて実務的であるが、図表を駆使することで、非常に分かりやすくなっている。特に、訴因や証拠は、しっかりと押さておきたい。各問の解説の後に、参考判例と参考文献(実務家による文献が多い)が掲げられており、参考になる。A5判、386頁。 長沼範良・酒巻匡・田中開・大澤裕・佐藤隆之『演習刑事訴訟法(法学教室ライブラリィ )』有斐閣(2005年4月)……法学教室の連載の単行本化。一行問題が多く、問題集というよりも論点集に近いが、東大系主流学派の問題意識がよく分かるので、学生向けの参考書としてなかなか使い勝手がよい。ただし、解説者によって解説の書き方がバラバラであるため、若干の読みにくさはある。A5判、372頁。 松尾浩也・岩瀬徹編『実例刑事訴訟法I・II・III』青林書院(2012年9月-11月)……定評ある演習書の最新版。執筆陣には、著名な刑事裁判官が名を連ねている。内容はきわめて高度であり、司法修習生向きである。もっとも、司法試験受験生にとっても、気になる論点については一読の価値はある。A5判、416頁・360頁・412頁。 平野龍一・松尾浩也編『新実例刑事訴訟法I・II・III』青林書院(1998年7月)……上記『実例刑事訴訟法』の旧版で旧司時代には種本と呼ばれていた。執筆者は、法曹三者。法改正もあったが、今もなお有用である。A5判、350頁・440頁・370頁。 安冨潔・清水真編『事例演習 刑事訴訟法』法学書院(2013年11月)……A5判、407頁。 安冨潔『旧司法試験 論文本試験過去問 刑事訴訟法』辰巳法律研究所(2004年5月)……旧司法試験過去問解説講義を書籍化。問題解説・受験生答案・答案の検討からなる。全34問。 絶版であったが、オンデマンド版で復刊された。丁寧かつ論理的に問題を検討しており、解説は信頼がおけるものになっている。しかし、受験生答案に細かく注文をつけるスタイルは、好みが分かれるだろう。なお、平成12年度の旧版に平成13-15年度の解説を加えただけなので、新判例に対応できていない。 新庄健二『司法試験論文過去問LIVE解説講義本 新庄健二刑訴法(新Professorシリーズ)』辰已法律研究所(☆2016年3月・改訂版)……元東京高検検事・元司法研修所教官。辰已での新司法試験過去問解説講義を書籍化。平成18年から平成27年までの問題を収録。非常に平易な解説がなされている。特に、多くの受験生が苦手にしている伝聞については、記述が具体的かつ詳細で分かりやすい。A5判、452頁。 高田昭正『基礎から学ぶ刑事訴訟法演習』現代人文社(2015年10月)……A5判、464頁。(評価待ち) 田宮裕『演習刑事訴訟法(法学教室選書)』有斐閣(1983年6月)……四六判、374頁。 上口裕・後藤昭・安冨潔・渡辺修『基礎演習刑事訴訟法(基礎演習シリーズ)』有斐閣(1996年4月)……四六判、320頁。 小木曽綾監修『設題解説 刑事訴訟法(二)』法曹会(2015年11月)……新書判、320頁。 ☆粟田知穂『エクササイズ刑事訴訟法』有斐閣(2016年3月)……A5判、168頁。(評価待ち)