約 128,332 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/353.html
ゼロの使い魔への道-1 『ギーシュ危機一髪 その1』 『ギーシュ危機一髪 その2』 『ギーシュ危機一髪 その3』 『キュルケ怒りの鉄拳 その1』 『キュルケ怒りの鉄拳 その2』 『キュルケ怒りの鉄拳 その3』 『燃えよドラゴンズ・ドリーム その1』 『燃えよドラゴンズ・ドリーム その2』
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/147.html
深夜 ドッピオはルイズから渡されたカードを使っていろいろと不思議に見せるための特訓をしていました ちなみに渡されたカードはトランプでした。案外この世界に流れ着いているこちらのものはあるようです カードの扱いに慣れてきたところでもう眠気がきたので寝床に就こうとしますが コッ・・・コッ・・・ 物音が聞こえます。これは足音でしょうか コッ・・・コッ・・・・・・・・・ ルイズの部屋の前で足音は止まりました ・・・こんな深夜に誰かと思いドッピオはドアを開きました 「・・・あれ?」 そこには誰もいませんでした。確かに足音は聞こえていたはずですが・・・ 「あの」 「うひゃい?!」 突然左から話しかけられました。そこにいたのは 「・・・どちら様でしょうか」 「あの・・・アンリエッタと申しますが・・・貴方がルイズの使い魔ですか?」 「はい、そうですけど・・・ルイズさんに用ですか?」 「はい・・・」 よく見ると服装も学院生とは違う服装です 「・・・ルイズさん。起きて下さい」 ユサユサとルイズを起こします 「・・・なによ。こんな時間に・・・」 寝ぼけ眼で起き上がるルイズですが 「・・・?!」 アンリエッタを見た瞬間とても驚いた顔をします 「・・・ルイズさん?」 「す、すいません!このような無礼な格好で・・・」 いきなりあわただしくするルイズを見てドッピオは (・・・もしかしてアンリエッタさんは偉い人なんですか?) 小声でルイズに聞きます。帰ってきた返答は (当たり前じゃない!トリステイン王国の王女・・いや、今は女王になった方よ!) そう返されました 「早く部屋へお入りください。この様なところにいたと知られれば・・・」 そう言ってルイズはアンリエッタを手招きしました 「そうですね。でもそんな言葉遣いなんてしなくていいですよルイズ ―――私たち、友達でしょう?」 友達という言葉に一瞬気を取られそうになったルイズですが 「いえ、たとえ幼少時の遊び相手である私でも失礼に値するような言葉遣いなんて・・・」 そう言って自制しました 「・・・ところで」 アンリエッタの視線はドッピオに流れました 「これが貴女の使い魔ですか・・・」 その言葉にルイズは 「あ、あのえっと・・こ、こんな平民でもとても強くて―――」 「分かっています。なの土くれのフーケを倒したのでしょう?」 「え?」 ルイズはなぜ知っていると言う顔でした 「王家から守れと言われている破壊の杖を学院は秘密裏に取り戻したつもりだったんでしょうが そんな一大事が発生したら王家からの諜報が働きます。活躍も聞きましたよ、ルイズ」 「そ、そんな・・殆どこの使い魔が倒したようなものですし・・・」 ルイズはしどろもどろになりながらそう答えました 「・・・明日の品評会。楽しみにしていますよ」 「はい!」 そう言ってアンリエッタは戻っていきました ドッピオは結局何も喋らずじまいで女王さまを見送りました 「・・・女王様と知り合いだったんですね」 「ええ・・・」 ドッピオはアンリエッタが品評会を楽しみにしていると言うことを聞いて 「もしかして見に来ちゃったりしますか?」 そういうことかと思って聞いてみました 「そうよ・・・だから絶対ドジ踏んだりとかしちゃダメよ」 ようするにルイズはいいところを友人に見せたいのです 「それにしても驚いたわ。まさか前日にたずねてくるなんて」 「案外行動力のあるお姫様なんですね」 「そうね・・・子供のころはいっつも私が連れまわしてあげてたんだけどね・・・」 遠い昔を見つめるように窓から空を見上げているルイズ 「・・・絶対に失敗は出来ないな」 少しでも友人にいいところを見せたいと願う主人に愛らしさを覚えながらも明日の品評会に熱意を燃やすドッピオでした 14へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/603.html
ギーシュとの決闘から一週間が過ぎた。次第に落ち着いてきたポルナレフの生活は一週間前想定していた最悪のそれとは著しく異なっている物となっていた。 まず食事だが、決闘の日の夕食前に使用した無断貸借のテーブルクロスを律義にも洗濯し、返しに行くと マルトーがポルナレフを『我らの剣』と呼び、無断で持ち出したことを許して貰えたばかりか食事の面倒も見てくれることになった。 次に、ドットとはいえメイジを倒した平民として学園中に噂が広まり、決闘を挑まれるようになってしまったのである。 迷惑この上ないと思い、ルイズに了承を得た上で、見せしめとして 1番最初に挑んできたマリコルヌを容赦無く『針串刺しの刑』に処したのだが、それでもまだ収まらなかった。 ちなみにマリコルヌは今日も医務室で寝ている。(全治二週間) そして、これがポルナレフにとって最も大切な問題なのだが、とうとうルイズに亀の『ミスター・プレジデント』がバレたのである。 初日にルイズの目の前で入ったりしたが、それを見たルイズが混乱したために無視されていた。 (どうやら先住魔法を使ったのだと思っていたらしい。) しかし、決闘でもそれを利用したりしたため、流石に怪しまれ始めた。 それにポルナレフが気付かないわけが無く、ルイズの部屋の一角に藁を持ち込み、 ルイズが寝息をたて始めるまでそこで寝たふりをし、それから亀の中に入り寝るようにしたのだが、それも三日で見破られ、亀に入った瞬間、首根っこを掴まれ尋問されることになった。 そして亀の中の部屋を見て、「使い魔が主人と同等あるいはそれ以上の部屋に住むのは許可しないィィィィ!」と言って亀の鍵は没収してしまった。 その後鍵を取り戻すまで藁の中で寝る事になった。 (お陰で鍵を取り上げられてから寝不足気味である。) 「隙だらけだ!小僧!」 「ゲファッ!」 ドサァッと本日二人目がポルナレフの肘打ちを鳩尾に喰らい悶絶した。 ポルナレフはつかつかと近寄っていき、相手の杖を踏み潰した。 ギャラリーから歓声が上がる。 「惜しかったなぁ~」 「結局またゼロの使い魔の勝ちかよ。」 「ていうかなんでナイフしか持ってないのに勝てんだ?」 「たった一つのシンプルな答えだ。『奴は平民を怒らせた』」 (蛇足であるがギーシュとの決闘でメイジにもスタンドは見えない事ははっきりしている。 だからポルナレフはナイフで戦っている振りをしている。) 一週間もたつと挑んでくる数は少なくなるが、ラインより上が挑んでくるようになったため、睡眠不足も伴って疲労も生傷も絶えなかった。 現に今のは三年生の水のトライアングルだった。 この疲労だと今日はもうきつい。失礼だが今日は止めておこうと考えた。 その時、普通のギャラリーとは明らかに違う視線を二つ感じた。十年以上戦い続けて来ただけあってそういうのには鋭いのだ。 ちらりと数が減り出したギャラリーに目をやると、キュルケの使い魔であるサラマンダー『フレイム』が目に入った。 そういえば最近自分が行く先でよく目にすることを思い出す。 ポルナレフは何だか嫌な気がし、これが一つだな、と確信した。 さてもう片方は…と捜すが見当たらない。気のせいか、と思ったが、視界の端に何か白いものが走り去っていくのが見えた。 よく見えなかったが白鼠だったみたいである。 ポルナレフはどちらも特に何も害が無さそうだと推測すると、その場から立ち去って行った。 ----------- 場所は変わって学院長室。 中では学院長オスマンの他、コルベールと秘書のロングビルが三人共壁に掛かっている鏡を見ていた。 「また勝ちましたね。」 「これで何連勝かのう?ミスタ・コルベール。」 「多分二十ぐらいじゃないかと。」 「ふむう…」 彼等が見ている鏡は『遠見の鏡』と言い、離れた場所を見ることが出来るマジックアイテムだ。 三人はそれを通してポルナレフをギーシュとの決闘の時から決闘の度に監視していた。 その理由は平民がメイジに勝ったなどという安っぽい理由だけではない。 一番重大な理由は別にあった。それは一週間前のギーシュとの決闘の時からしばしば目撃されていた物だった。 ----------- 「オールド・オスマン!!」 オスマンの部屋にU字禿がトレードマークのコルベール駆け込んで来た。 その時オスマンはロングビルと水パイプの是非を討論していた。 「あーえっと…ミスタ・プラント?」 「コルベールですッ!」 「ああ、スマンスマン、ミスタ・ボーンナム」 ダン! コルベールが思いっきり壁を殴り付けた。壁にひびが入る。 「私の名前はコルベールだ…プラントでもボーンナムでも無い…コルベールだ…二度と間違えるな…」 「いや、本当にゴメン。ところで何かね?」 「先日ミス・ヴァリエールが呼び出した使い魔についてですが…」 ちらりとロングビルの方を見て 「二人だけでお願いできますか?」といった。 「ミス・ロングビル。スマンが少し席を外してくれ。」 オスマンはロングビルを退室させ、コルベールと向かい合った。 「さて話を聞こうか。ミスタ・コルベール。」 「はい。」 コルベールはポルナレフのルーンのスケッチを取り出した。 「このスケッチはあの平民の左手に刻まれた使い魔のルーンですが、 今まで見てきた様々な使い魔のルーンにこれと同じものを見たことが無かったので、気になり調べて見たのですが、このルーンが…」 今度は机の上に『始祖ブリミルの使い魔達』を置き、しおりを挟んでおいたページを開け、そこに描かれている絵を指差した。 「ガンダールヴのものと一緒なのです。」 オスマンは呆れた。何言ってんだ、この禿は。初めて見るルーンや似ている事ぐらいいくらでもあるだろうが。 「……冗談も休み休みにしたまえ。ミスタ・ペイジ」 「いや、大マジですから!あとコルベールです!」 その時コンコンと誰かがドアをノックした。 「すいません、オールド・オスマン。もう入っても宜しいでしょうか?お伝えしたいことが…」 ドアの向こうから聞こえてきたのはロングビルの声だった。 「いいぞ」 「え、ちょ…」 ガチャリとドアが開きロングビルが入って来た。 「ヴェストリ広場でまた決闘が…」 「またか。全く…校則で禁止しておるのに…で、その阿呆共は誰と誰かね?」 「ギーシュ・ド・グラモンとミス・ヴァリエールの使い魔です。」 最後の言葉を聞き、オスマンは意地悪く笑いコルベールの方を向いた。 「お主が言ったガンダールヴ君の実力を見てみようかのぉ?ミスタ・ジョーンズ」 明らかに挑発しつつ、遠見の鏡を使い決闘を観戦しだした。 途中、左手のルーンが光り二体のワルキューレの腕を切り落とした時の動きにも驚いていたが、(この時コルベールは何度も「ガンダールヴだ!」と叫んだ) それ以上に鏡に映った『者』がその場にいた三人を驚かせた。 そしてこれこそがポルナレフを監視する理由となったのだ。 「なんでしょうか?これは?」 「さあ…ゴーレムじゃないのですか?」 「ゴーレムかと思うかね?じゃあなんで透けてるんじゃ?」 鏡に映った『それ』は透けていた。隠れるはずの後ろがうっすらと見えるのである。 「ゴーレムじゃないとすれば一体…」 「ガンダールヴですよ!」コルベールが誇らしげに言った。 「きっとガンダールヴの力で…」 「ガンダールヴにそのような力があると聞いた事が無い。それにわしらには見えておるが、どうも広場にいる者達には見えとらんらしい。」 コルベールの意見を全面否定してオスマンが言った。「いずれにせよ、メイジに平民が勝つとは…。わしらでしばらく監視を続けることにしよう。」 「おかえり、我が使い魔モートスルニル。…ふむふむ。」 「オールド・オスマン、どうだったのですか?」 「やはり『あのゴーレム』は見えんかったらしい。」 ううむ、とオスマンは唸った。 「やはり遠見の鏡を通さないと見えないのですか…。やっぱり本人を呼び出しますか?」 コルベールはどうやらポルナレフがやけに気になるらしい。言葉に力が篭る。 「…しょうがあるまい。あれで宝物庫とかをどうかされても困るしのう…あそこの壁を破れるとは思えんが…」 こうして後日、ポルナレフは学院長室に呼び出されることになった。 なお、コルベール、オスマン両者ともに気付かなかったが、宝物庫という言葉が出た時、ロングビルは少しだけ冷汗をかいていた。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1089.html
グェス……グェスはいねえがあ……悪いグェスはどごだあ……。 「ミスタ・コルベール。わたしの使い魔見ませんでしたか?」 「見たといえば見たが……廊下を北に向かって走っていたな。しかし君、ミスタ・グラモンの使い魔を見たかね。凄いねあの老人は」 わたしから逃げられるとでも思ってるのかしら。 宝物庫の前で何やらゴソゴソやっていたミス・ロングビルを発見。 この人相変わらずいいプロポーションしてるわね。オスマンの狒々爺に触らせるのがもったいないくらい。 「ミス・ロングビル。わたしの使い魔見ませんでした? 平民の女なんですけど」 「全力で走っていた犯罪者風の人? それなら男子寮の方へ向かわれたようですけど」 男子寮? ははーん、ミキタカを味方につける気でいるわけね。 ミキタカやぺティが何と言ったって全力でぶったたいてやるんだから。扉の前でノックノック。 「ミキタカ? グェスいる?」 「いりませんよ」 ん? んん? えーっと……どういうこと? 「入るわよ」 扉を開けた先にはここ数日で見慣れた部屋とミキタカ、せいぜいぺティがいるくらいだと思っていたけど、ぺティではなくなぜかシエスタがいた。 二人並んでベッドに腰掛けているその光景からは、朴念仁だって甘いひと時が想像できる。 何よ阿呆ミキタカ。先にシエスタに目をつけてたのはわたしなのに。だから嫌よ男って。いやらしいことしか頭に無いんだから。 ああ、シエスタの貞操は無事かしら。この阿呆貴族に隠れ巨乳揉みしだかれてたりしないといいけど。 有無を言わさず必殺のルイズヒップドロップを敢行、二人の間に無理やりお尻をねじ込んだ。 咄嗟にシエスタが立とうとしたけど、腕を掴んで押さえ込む。 「シエスタ、あなたグェスを見なかった?」 「ええと……」 相変わらず怯えてるシエスタ。わたしとしては精一杯フレンドリーなつもりなんだけどなぁ。何がいけないんだろ。 シエスタはわたしの頭越しにミキタカを見て、ミキタカは小さく頷き返した。何この二人は恋人的空気。 「私がお見かけした時は食堂にいらっしゃいました」 「ふーん……食堂ね。ありがとうシエスタ」 「あ、あの、ミス・ヴァリエール!」 シエスタが立ち上がりかけたわたしの袖を引く。 「私、負けませんから!」 ……誰が? 誰に? 何で? 主語も述語も目的語もはっきりしていない。 「す、すいません。ご無礼をお許しください」 で、目が合うと謝るし。この娘も情緒不安定ね。お年頃ってやつ? 何かよく分からないけど、わたしはシエスタから挑戦されたらしい。 挑戦か。嫌な響き。またえらく嫌われたもんね……この娘に嫌われるとなぜだかへこむわ。 本当ならわたしを好いてくれるのが基本形だった気がするんだけど、どう考えても妄想以外の何者でもなくさらにへこむ。あーあ。 こんなわたしの傷ついたハートも全てグェスのせいと結論付けて、さらなる怒りを胸に食堂へと足を向ける。 食堂は西日が射して磨いたばかりのテーブルは照り返し……もう夕方だったのね。わたし何時間走り回ってたんだろう。 そこにもグェスはいなかったけど、パイプをふかすぺティとモンモランシーと大蛙と……知らない人間が見たら打ち捨てられているとしか思えない大釜が鎮座ましましていた。 「ねえモンランシー。あなた達グェス……」 「しっ! 静かに!」 何よ何よ。皆でわたしのこと邪魔者扱いして。どうせわたしなんてゼロよ。胸も才能もゼロよ。 「老師、お願いです。今のぼくには生きるための力が必要なんです」 「ねっ。力が必要なんだよ、ねっ」 なになに、弟子入りしようっていうの? 弟の使い魔に? ギーシュ必死すぎじゃない? 「背中を見せれば死ぬ。そのことに絶望していました」 あ、それで釜かついで動いてたのか。そりゃわたしでも絶望するわ。釜背負って外出てくるあたりは大物よね。 「ですが、老師の力を目の当たりにしてぼくの考えは変わりました。ぼくは……ぼくはまだ生きたい。やりたいことはたくさんあります。モンモランシーをもっと愛したい」 カアアアア……ペッ! アア胸糞悪い。何この学院。カップル率高すぎ。そうですか。独り者に死ねと言いますか。 「な、何言ってるのよギーシュ」 洪水のお嬢さん、顔が赤いですよ死ね。何よ目ぇ潤ませたりして。上も洪水下も洪水ですって? バーカバーカ。 「キーシュが言っていました。老師の前身は修行者だと。その技は修行によって身につけたものだと。お願いです、その技を……温かく、力強いその技をぼくに教えてください!」 「わたしからもお願いします、老師。ギーシュは馬鹿で浮気者だけど、それでも死ぬのは……」 モンモランシーも頭を下げた。こいつら何で使い魔相手に敬語使ってるのかしら。 「それはできん相談じゃな」 ぺティ冷たい。考えるふりくらいしてあげてもバチは当たらないでしょうに。 「老師!」 「そんな……!」 「冷たいねっ、ねっ」 ぺティはパイプの火を落とし、大事そうに懐へしまいこんだ。 すげなく頼みを断った爺さんとも思えない、好々爺丸出しの笑顔で大釜に手を当てた。 「この技は習得に骨が折れる。才能のある者でも数年はかかるじゃろう。今のまま挑めば過程で死ぬ」 そりゃそうよね。背中見せられない人間じゃ修行は無理でしょ。 「それにのう少年よ。そなたには必要の無い技なんじゃよ」 どうせ死ぬから必要ないよなんて言わないでしょうね? 「この技術がなぜ生まれたか分かるかね? ある者に近づこうとしたからじゃ」 「ある者……?」 「君の背中にとりついている者、と言えば分かりやすいかな」 大釜の中で、何かが打ち付けられる音が響いた。たぶん立ち上がろうとして頭ぶつけたんだろう。 「ふざけないでください! ぼくは! ぼくはこいつのために!」 「ふざけてなどおらんとも。わしの技……波紋は、人ならぬものに近づくため人間が編み出した技術体系に過ぎん」 「老師! ぼくは! ぼくは!」 大釜が揺れていた。顔が見えなくても何を思っているかはよく分かる。 「……そなた、使い魔を知ろうとしたかね」 「ぼくは……は?」 大釜の揺れが収まっていく。わっかりやすい。 「背中を見せれば主が命を落とす。そこで止まっていたのではないかな」 「それは、その。だって死ぬんですよ」 「誰であろうと一度は死ぬ。その運命から逃れることはできん。死は言い訳にならんよ」 厳しい意見ね。そこまで覚悟してる人ってそうそういないと思うけど。 「使い魔と話し合ってみるといい。何ができ、何ができないのか。それを知るだけでも益はあろう」 「そうそう。もっと話そう話そう。ねっねっ」 ぺティはギーシュのことを話していたんだろう。でもその言葉はわたしにも当てはまった。 そっか……そうよね。わたしはグェスのできることを考えていなかった。 グェス本人がただの平民であることを忘れ、無謀な戦闘行為に付き合わせようとしていた。 使い魔なら従って当然だと思っていた。ふんぞり返って上から押さえつけようとしていた。 そんなの、グェスじゃなくたって逃げて当たり前だ。 「そなたは大地」 「ぼくが……大地?」 「砂か、泥か、岩か、土か、決めるはそなたのみ。芽吹いた植物を生かすも枯らすも己次第と知れ」 大地。ちょっとかっこいいな。わたしも大地になれるだろうか。 「ぼくが……大地……」 アドバイスに対し、御礼の一つも言うつもりだったんだろう。大釜が持ち上がり、そこからギーシュが顔を出した。 ギーシュにとって不幸だった……いやこれは幸運か。幸運だったことは、この場にはぺティだけではなく、モンモランシーがいたということ。 地面から上を見上げれば、当然モンモランシーも視界に入る。モンモランシーのスカートの中も。 「白……? 白? 白! 白! 白かったであります!」 ギーシュの視線を追い、ギーシュの言葉を聞き、その意味を捉え、モンモンシーの表情が哀から怒へと一変した。 モンモランシーのパンツは白、と。メモメモ。ギーシュもたまには役に立つ。 「いい加減にしなさい! あなたの頭の中そればっかりじゃないの!」 「待って! し、仕方ない! これは仕方ない! どうしようもない!」 うん、仕方ない。それは本当に仕方ない。 スカートを押さえて大釜を蹴りまくるモンモランシーに対し、ギーシュは鉄壁の篭城作戦で対抗する。 じゃれあう二人をいつもの笑顔で見守るぺティ。何このトリオ。楽しそうじゃないの。 ていうかわたし完全に無視されてるよね。グェスのこと聞いたのに忘れられてるよね。もういいよ、もういい。 「ちょっとそこの矢印つけた蛙」 「は? 私めのことでしょうか」 あんた意外にそんなのがいますかっていうのよ。 「胡乱な平民の女見なかった? わたしの使い魔なんだけど」 「怪しい方なら中庭の方で見かけたように思いますが……ゲロッ」 これもグェスの計略だったりして。学院中をぐるぐると歩き回らされている。 ま、ご主人様の義務だと割り切ろう。使い魔放っておくわけにはいかないもんね。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/121.html
ルイズは魔法で空を飛んでいくクラスメイトたちを眺めながらため息をついた。 もし、大型の鳥や竜を召喚できていれば自分もあの中にいたのだ。だが、所詮 それは自分の力ではない。彼女にまとわりつく劣等感を消し去ってくれるよう なものではないのだ。深呼吸をして甘えを捨て、傍らに座っている男に声をか けた。 「ンドゥール、いくわよ!」 「魔法学院とやらにか?」 「そうよ。最初に言っとくけど、盲目だって言ってもあんたは使い魔なんだか らね。ちゃんと私に従いなさいよ!」 「………まあ、それはかまわん。おおよその事情は聴いて理解した。どうやら 俺はお前に助けられたようだからな。おかげであの方の不利になるようなこと もない」 「あの方?」 「なんでもない」 ンドゥールはよどみない動作で立ち上がった。杖を突いているが、しっかりと した足取りでルイズの傍に近寄った。彼女はその大きな背と体格に気圧されて しまう。 「どうした? 行かないのか?」 「行くわよ。いわれなくても」 ルイズは男に背を向けて歩き出した。早足で草原を闊歩し、遥か先を飛んで いる連中を見ていた。さすがに気になったので後ろを振り向くと、ンドゥール はまっすぐ彼女の後ろをついてきていた。ためしに立ち止まってみると、彼も ルイズの傍で止まった。 「あんた、本当に目が見えないの?」 「ああ。そうだ」 「その割には私の居場所がちゃんとわかってるみたいじゃないの」 「足音でわかる。目が見えない分、耳が発達したのだよ。なんならお前のクラ スメイトの会話を教えてやるが」 「いらないわよそんなの!」 ルイズは大声で却下した。だが、何の取柄もない男ではないということには 少し安堵した。しかし、うそをつくようには見えなくとも本当にそんな聴力が あるのかどうかは疑問に思ってしまう。なので、その能力を確かめるためにこ んなことを尋ねた。 「ねえ、ンドゥール。あいつらの名前を適当に並べて」 「ギーシュ、キュルケ、モンモランシー、タバサ……」 「本当、みたいね。もうあんな遠くにいるのに」 ルイズの視線の先に豆粒ほどの小ささになった同級生の姿があった。彼らは今、 使い魔にどんな名前を付けるかで考えが一杯なのだろう。もしくは彼女を揶揄 する会話で忙しいか。 「そういえばルイズ、念のために聞いておくがエジプトという国はあるか?」 「なにそれ。初めて聞いたわよそんな国?」 「知らなければかまわんよ」 ンドゥールはほんの少し憂いを帯びた表情になった。ルイズは彼の『あの方』 という言葉を思い出した。もしかしたら大事な人だったのかもしれない。自分 のせいで引き離してしまったのかもしれない。 彼女の心に罪悪感が湧いてきた。 「ンドゥール、あの方って誰のことなの? あなたの恋人?」 その質問に彼は、ほんの一言だけ答えた。 「俺が唯一忠誠を誓った人だ」 ンドゥールは誇らしげだった。そこにはルイズの知るどんな騎士よりも高潔で 頑なな意思があった。しかし、彼女の心にはそれを素晴らしいと思う気持ちと 同時に恥や悔しさに似たものまでもが生まれた。 彼は『唯一』といったのだ。つまり、ルイズには忠誠を誓っていない。 使い魔に忠誠を誓われていないメイジ。 幼い心に棘を作るには十分な事実だった。 使い魔召喚の儀式より数日、ンドゥールはルイズより与えられた仕事を黙々 とこなしていった。やれ掃除に洗濯、着替えの手伝いなど召使い同然の扱い だったが文句一つ言うことはなかった。そんな彼は盲目であることから同情 を引くこともあったがほとんどのものはその立場の違いから気遣いを見せる ようなことはない。しかし、平民であればその限りではなかった。 太陽が注ぐ中庭、そこでンドゥールは一人の少女と洗濯に励んでいた。 彼女の名前はシエスタ、この学院で働く平民である。 「どうだ?」 「綺麗に落ちていますよ。もうずいぶん慣れてきましたね」 「君のおかげだ」 ンドゥールは礼を述べた。彼がシエスタと話をするようになったのは、初日 のことだった。ルイズの服の洗濯を命じられたものの、盲目なため汚れが落 ちているかどうかの判断ができなかった。そんなときにちょうどよくやって きたシエスタが声をかけ、手伝いをしたのがきっかけだった。 服と下着を絞り、よく脱水をしてしわを伸ばしてから物干し竿にかけていく。 「それにしてもンドゥールさん、どうしてそんな甲斐甲斐しく世話をしてい るのですか?」 「ルイズのことか?」 「はい。その、なんでも辛く当たっているとお聞きしました。お逃げにはな らないのですか?」 それに、とシエスタは続けたかった。彼が雑用を押し付けられているだけで なく、粗末な食事だけしか与えられていないこと。およそ人間らしい扱いを されていないこと。 だが彼は、ただ首を横に振るだけだった。 「そうするわけにはいかんのだよ」 「なぜ、ですか?」 「俺はあの少女に命を助けられた。ならばその恩を返さなければならない。 それが俺の礼儀だ」 ンドゥールはそう言って宿舎に戻っていった。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1803.html
「…で、俺はなにをすればいいんだ?」 あぐらをかく使い魔。 生徒たちが好き勝手な方向にクモの子を散らすように逃げ去っていった中、 歩いて少女の使い魔の部屋に到着したワムウと少女。 ワムウは、部屋に向かうまで真昼間であるはずの今、遮蔽物もなしに歩けることを不思議に思った。 しかし、それ以上に不思議に思ったのはッ! (月がッ!月が2つあるッ!…どういうことだ?太陽の光も少し体の調子を下げる程度で十分に動ける… 長い間直射を浴びていればダメージを受けるだろうが…風のプロテクターを使うよりもスタミナは安上がりだな…… だが、油断はできんな…シーザーのやったように、鏡などで太陽の光を集中させれば、十分致命傷になりうる… 天敵である波紋使いが今のところ見当たらん…そのためにも唯一の『天敵』である太陽光…もっとも違う世界であるようだし 太陽とは呼ばないのかもしれないが…太陽光には十分気をつけなければいけないな…) 「さっきも言ったように…使い魔は主人の目となり耳となる能力を与えられるはずなんだけど…なにも見えないし聞こえないわね…… 次に使い魔は主人の望むものを見つけてくるのよ。たとえば秘薬とかね。あんたどこの田舎に居たかしらないけど亜人なんだから そういうの詳しくないの?」 「そもそもここはどこだ?それすらわかっていない…魔法学校などと言っていたな、ここはスイスではないのか?」 「スイス?そんなところ聞いたことないわ。トリステイン魔法学院くらいは知ってるわよね?」 「そもそも魔法自体俺は知らん。俺の知らない土地で人間は二〇〇〇年の間にそこまで成長していたのか? ……ああ、ここは違う世界だったな、まあ似たようなものだろう。」 一呼吸空く。 「あ、あんた?なに言ってるの?違う世界から来て、しかも二〇〇〇年前から生きてるなんて言わないわよね?」 「正確には二〇〇〇年前から眠っていたというところか。念のために聞いておくがここは『地球』という言葉を知らないよな? もしくは『Tellus』『Earth』…それに似たような言葉でも構わん。」 「チキュウ?それがあんたのいた国?聞いたことないわね。大体二〇〇〇年間寝てて、ご飯とかどうしてたのよ?他にもいろいろ 生きてく上で必要あることあるでしょ?さすがに私でもそんな嘘にひっかからないわよ。」 「石と同化して二〇〇〇年間眠っていた。食料も二〇〇〇年程度いらん…が、こちらに来てなにも食べていないな。 お前ををまず食ってみようか?」 しばしの沈黙。 「きゃああああァアアアアアアーーッ!!」 大声で悲鳴をあげる。 窓を思いっきりあけ逃げようとする少女。 「冗談だ、それほど騒ぐな」 「冗談って、あ、あんた二〇〇〇年眠ってたってのも?」 「それは本当だ。人間を食うこともな」 「きゃああああァアアアアアアーーッ!!」 二度目の悲鳴。先ほどの悲鳴より強いようだ。 「ルイズッ!うるさいわよッ!」 悲鳴を聞きつけたのか、赤髪のグラマーな女性が彼女の部屋に怒鳴り込んでくる。 「ひとりで逃げるのよキュルケ。あんたを逃がすのは私であり……そこのサラマンダーであり、あたしの魔法 爆発… 生きのびるのよ あんたは『希望』!来いッ!ワムウ!」 「あ、あんた、何を言ってるのよ…脳みそがクソになったの?」 「……なにを勘違いしているんだ。お前の使い魔になったといっただろう。起きている間でも二〇〇〇年やそこら人間を食わなくても済む。 他の…人間どもの一般的な食事があればな」 「な、なんだ……じゃあやっぱり私の使い魔で私を食べたりはしないのね」 「うむ。少なくともお前はとりあえずしばらくの間は食わないし、食う価値も今のところはなさそうだ」 「やっぱ逃げてええええキュルケェえええええッ!」 もう既に赤髪の女は居なかった。 * * * 「先ほどの女はなんだ?そういえばお前の名前も聞いていなかったが。ルイズというのはわかったがな」 「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール、由緒正しきヴァリエール家の三女よ」 「さっきの女、キュルケとやらは?」 「キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。忌々しきツェルプストー家の尻軽女よ。 ああ、憎たらしい!あんな女逃がそうとなんかしなきゃよかったわ。とっくのとうにいなくなってるしね……」 顔を真っ赤にして怒鳴り散らす。 「ツェルプストー家になにか因縁でもあるのか?」 「数え切れないほどあるわよ!キュルケのひいひいひいひいおじいさんのツェプルストーはわたしのひいひいひいおじいさんの恋人を 奪ったのよ!今から二百年前に!それから、わたしのひいひいおじいさんは……」 「人間どものつまらん話など聞く必要はない。それより飯だ。まさか使い魔にはないとは言わないよな?」 先ほどの『食料は人間』という話を思い出す。 顔が青ざめていき、高ぶっていた心は一気に冷めていった。 彼女の口の動力機関はぴたっと止まった。 「え、ええ。食堂はこっちよ。」 (数段ランク落ちたものを食べさせて威厳を見せつけようと思っていたのに、こんなんじゃそんなものあげるにあげられないじゃないッ! はあ、私なにを呼び出しちゃったのかしら……い、いえ!ポジティブに考えるのよ!『ゼロ』だってバカにしてた奴らを追い払うくらいの…) 「どうした、行くんじゃないのか?」 ワムウに声をかけられ、思考は中断する。 「ひゃっ、……は、はい。」 寮の出口へ2人は歩き出した。 * * * 「うーむ、なんじゃあの使い魔は。あんなパワーを持った亜人みたことないぞい……多少鈍っているとはいえ、コルベール君、君が 本気を出して放ったファイヤーボールを片手で止めるとは……」 老人がいすの上で唸る。 「しかも、現状を一瞬で理解したことから、私たち以上といっても過言ではない判断力を持っているといっていいでしょう…… 特に……戦闘の際の判断力は、私が見てきた軍人たちの中から探してもあれほどの人間は居ませんでした。」 髪の薄い男性も唸る。 「で、君が調べたあのルーンは間違いないのかね?」 「はい、私も何度も確かめましたが間違いないでしょう。喜ぶべきなのか困るべきなのか……」 「やれやれ、よりにもよって伝説の使い魔ガンダールヴとはな…」 老人はため息をつく。 「やれやれ、ミス・ヴァリエールもやっかいな者を呼び出したようじゃわい…」 外からノック音が聞こえる。 息を切らした様子の緑色の髪の女性が入ってくる。 「ミス・ロングビル、そんなに慌てていてどうしたんじゃ?そんなんだから婚期を逃すんじゃよ」 「婚期は関係ありません!そんなことより、ヴェストリの広場で決闘がおきて大騒ぎになっています! 止めに入った教師たちも、生徒たちに邪魔されて、止めるに止められないようです」 「なんじゃ、そんなことか暇を持て余した貴族ほど、性質の悪い生き物はおらんわい。で、誰が暴れておるんだね?」 「一人はギーシュ・ド・グラモン」 「あのグラモンのところのバカ息子か。オヤジも色の道では剛の者じゃったが、息子も輪をかけて女好きじゃ。 おおかた女の子のとりあいじゃろう。相手は誰じゃ?」 「そ、それが……ミス・ヴァリエールの使い魔です…」 老人は二回目のため息をついた。 「やれやれ、今日は厄日かのう……」 * * * 数十分前の食堂。 ややにぎわっており、生徒たちであふれている。給仕たちや料理人たちもいそがしそうである。 そこに入っていったルイズとワムウ。 教室での騒ぎを知らない者の一部は好奇の目を向け、知っている者はそそくさと立ち去る、ルイズが座る席から離れる、気づかない振りをするなど 多種多様だが、多くは友人たちとの会話や食事を続けている。 ルイズ達が席について少し経つと料理が二人の前に運ばれてくる。 運んできたメイドは、ワムウの顔に少しおびえたのか、目の前に立った瞬間怯んだものの、何事もなかったかのように仕事を再開した。 「なあ、ギーシュ、お前、今誰とつきあってるんだよ!」 「誰が恋人なんだギーシュ!」 気障な少年が数人の友人に囲まれて話をしていた。 「つきあう?僕にそのような特定の女性は居ないのだ。薔薇は多くの人を楽しませるために咲くのだからね。」 今日も絶好調、気障なセリフが全快だッ! 友人の一人がギーシュのポケットの中のふくらみに気が付く。 「なあギーシュ、お前のポケットに入ってるものはなんだ?見せてみろよ」 「や、こ、これはだめだって!」 「いいじゃねえか。見られて困るものじゃないだろ?困るならなにか教えろよ」 「そ、それは……」 友人たちに迫られて後ずさりする。 ギーシュには幸運が二つあった! 友人が迫るスピードが遅かったために彼の影を踏むときにギリギリまで彼から遠くに居たこと! そして! 幸いにも回し蹴りが下半身に行ったこと! そのどちらの幸運がなかったとしても彼の人生は老化して首の骨を折られる以上の悲しい死因だったであろう。しかし彼はその大きな幸運より 目先の不運を恨んだのだった。 「うわらばッ!」 容器が割れる甲高い音と、彼の断末魔に似た声がする。 「な、なにしてるのよワムウ!」 「すまんな、坊主。俺は影に入られるのが嫌いでな。反射的に攻撃してしまった。まあ生きているようだし次からは気をつけるんだな。」 「お、おいギーシュ、大丈夫か?」 「なにか割れた音がしたけど……あれは!」 「モンモンラシーの香水の入った小壜じゃないか!割れてるけど」 「そうか、ギーシュはモンモンラシーとつきあってたんだな!」 「ああああああ!モンモンラシーからのプレゼントがあああッ!」 その嘆きを無視し食堂を出ようとするワムウに少年、ギーシュは叫び声を突きつける。 「お前!貴族になにをしたかわかっているのかッ!そして、お前が割ったのは僕の最愛の人モンモンラシーからのプレゼント! 謝罪ではすまないぞ!」 「ふむ、ではなにをすればいいんだね?」 ワムウが振り向きギーシュを見据える。 「決闘!それがグラモン家の流儀ィイイイイッ!ヴェストリの広場に来やがれッ!」 /|_________ _ / | | ̄| | | \ TO BE CONTINUED .. | |_| |_| \| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1939.html
「なあ、一つお願いしたいんだが…」 アルビオンに向かうために馬に跨ろうとするルイズにギーシュが問い掛ける。 「なによ」 「僕の使い魔を連れて行きたいんだけど」 「好きにしなさいよ」 ルイズは興味を失い、再度馬に跨ろうとする。 「わかったよ、おいで!僕のヴェルダンテ!」 ギーシュが使い魔の名前を叫ぶ。 ギーシュの数歩前の土が隆起し、大きなモグラが姿を現す。 大きさは直径60サント程度だろうか。 「なにこれ、ジャイアントモール?これがあんたの使い魔?」 ルイズが尋ねる。 「そうさ、ヴェルダンテと呼んでくれ!ああ、僕の可愛いヴェルダンテよ!僕とワルキューレとヴェルダンテの 心が一つになれば僕らの正義は100万パワーさ!」 「そう、じゃあ66万パワーで妥協しなさい」 「ど、どういう意味だね、それは。使い魔を連れて行っていいと言ったんじゃないのか?」 「そんな大きなの馬のどこに積むのよ」 「決まってるさ、こう見えても地中を掘る速度は馬にも負けないんだ」 ルイズはため息をつく。 「あんた、姫様の話聞いてなかったでしょ?私たちはアルビオンに行くのよ?これ以上なにか言うなら「ひと言」につき 一発殴るわよ。「何?」って聞き返しても殴る。クシャミしても殴るッ。動かなくても殴る。あとで意味もなくまた殴る」 「ちょっと待ってくれ、最後のはなんだ最後のは」 「問答無用よ」 ギーシュに華麗に左アッパーを決めたとき、なんと使い魔のヴェルダンテがワムウに襲い掛かった。 ワムウは一応手加減しつつも反射的に殴り飛ばし、地面にモグラが転がった。 「な、何をするだァーーッ!」 「それはこっちの台詞だ、急に飛び掛かるなら殴られても仕方が無いだろう」 「うーむ、昨日アンリエッタ姫から貰った指輪に反応したんだろうね、僕のヴェルダンテは優秀な使い魔だから宝石を…」 ルイズが右頬にフックを叩き込む。 「これ以上使い魔の自慢をやるようなら大好きな使い魔と寝ててもらうわよ、急いでるんだから」 ギーシュは頬を抑えながら立ち上がる。 「ルイズ、君なんか変わったなあ…それにしても君たち、僕と使い魔になにか恨みでもあるのかね?」 「ないけどあるわ、さあそろそろ行くわよ」 やっと一行が出かけようとしたとき、朝もやの中から一頭のグリフォンが飛来する。 「やれやれ…どうやら間に合ったようだな」 グリフォンに乗った長身の男は声を漏らす。 「誰だッ!」 それにワムウが襲い掛かろうとする。 「やめてワムウッ!その人は敵じゃないわ!」 「やあ、愛しのルイズ。君の一行なかなか屈強だね、少しビビってしまったよ」 長身の男は明るく笑いながら一行に声をかける。 「お忍びの任務であるゆえ、一部隊つけるわけにはいかない。そこで、姫殿下から僕が指名されたというわけさ」 「ワルドさま…」 ルイズが声を漏らす。 ワルドはルイズに近づき、抱き抱える。 そして、二人のほうを向く。 「自己紹介が遅れたな、魔法衛士団グリフォン隊隊長、ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルドだ、よろしく頼む」 ギーシュは肩書きを聞き、肩をわなわなとふるわせる。 「あ、あのグリフォン隊の隊長だって!? ワムウはギーシュに尋ねる。 「そんなにすごいのか」 「ああ、『背中に目がある』『心臓が核鉄だ』『血管にドーピングコンソメスープが流れている』だのなんだの 言われてるぜ、半分は冗談だろうがもう半分はそうでも言わないと説明できない精鋭部隊さ。そこの隊長だったなんて…」 ワムウは姫の護衛についていることから精鋭部隊であることは察していたが、実戦でもそこまで恐れられているとは 思っていなかった。 「お褒めの言葉ありがとう、同行する仲間であるし、君たちの自己紹介もお願いできるかな?」 「ギーシュ・ド・グラモンだ、系統は土、二つ名は『青銅』です」 「ワムウだ」 ワムウは低く呟く。 「ふむ、もしかしてあのグラモン元帥の親族かい?」 「ええ、末っ子です」 「なるほど、それは心強いな、僕のは風のスクウェア、二つ名は『閃光』、よろしく頼むよ。 そして、そこのワムウくんは……どうやらメイジではないようだが…」 ワムウが答える様子が微塵もないのを察したルイズが代わりに答える。 「私の使い魔です、ワルド様」 ワルドが感嘆の声を上げる。 「使い魔とは思わなかったな、さすが僕のルイズ、こんな屈強な使い魔を召還するなんて! さすが僕のルイズだ!それにしても、なんて頼りになりそうな一行なんだ、 僕も胸を借りるつもりで同行させて貰うよ。さあ諸君、ではそろそろ出発するぞ!」 ルイズはヴァルキリー、ワムウは巨馬、ギーシュはヘイ!ヤア!という馬(名前のセンスがないとルイズにバカにされた) ワルドはここまで乗ってきたグリフォンに再度跨り、一行はまずは港町、ラ・ロシェールへ駈けていった。 * * * ラ・ロシェールまでは早馬で2日ばかり。ルイズは特技である馬術を生かし、ワムウの巨馬はなぜかスタミナ切れ知らずだったため 数時間おきに休めばワルドのグリフォンにもそれほど離されなかったが、ギーシュの馬および本体はすでに疲れきっていた。 「最後に休んでからいったいどれだけ立っているんだ…ええい!彼らの馬は化け物か!」 「私の馬もいい馬だけど、それだけじゃないわ。私のは『技術』よ、馬術には未知の部分があるわ」 「だいたい、なんで君の使い魔の馬はあんなに大きいのになんで疲れないんだね! 馬力のある馬ほどすぐ疲れるはずなんだ……『エネルギー』使うからなあ…」 「歩幅も大きいんだから大して変わらないわよ」 「いや…おかしい…これは辻褄が合わないッ!これが現実ではないッ!ほら、誰もいないはずの谷だってのに明るいし…」 「ギーシュ、しっかりしなさい」 実際にその谷は明るくなっていた。崖の上から松明が投げ込まれ、無数の矢が飛んでくる。 「奇襲だぞ、君たち!」 ワルドが叫ぶ。 ギーシュに向かってくる矢をワルドの魔法が弾く。 「た、助かった…」 しかし、息をつく暇もなく、二の矢が飛んでくる。 今度はワムウが左手でデルフリンガーを抜き、ギーシュとルイズに飛ぶ矢を弾き、右手で自分に向かってくる矢をつかむ。 「やあ相棒、やっと俺の出番が…」 二の矢が終わると、デルフをしまい、矢をもったまま右手を後方にしならせ、矢を崖の上の敵に向かって射出する。 「MOOOOOOOO!!」 数本の矢がものすごい勢いでワムウの手から崖の上まで飛んでいき、数人の体を貫いた。 「ほお、やるね」 ワルドが驚く。 一行が次の攻撃に備えていたが、急に矢の弾幕が収まる。 「だ、弾幕薄いよー、な、なにやってんだ敵さんは」 ギーシュが震える歯で強がりを言う余裕があるのは次の攻撃が来なかったからである。 竜に乗った少女が崖の上の敵に向かって小型の竜巻を放つ。 もう一人の女性が武装解除を徹底したのち、崖から転がり落とすと竜はこちらに向かって降りてきた。 「シルフィード!」 ルイズが竜の名前を叫ぶ。 竜の上からタバサとキュルケが降りてくる。 「お待たせ」 こともなげに数人の武器を剥いだキュルケが降りてくる。 「お待たせじゃないわよ!何しにきたのよ!これはお忍びの任務なのよ!」 「お忍びだなんて言ってくれなきゃわかんないわよ」 肩をすくめるポーズをとる。 「とにかく、感謝しなさいよね。危ないところを救ってあげたんだから」 ケガで抵抗の出来ない兵士に対してギーシュがいつもの尊大な態度で尋問を始める。 「子爵、こいつらはただの物盗りのようです」 「ふむ、最近は盗賊の集団化も進んでいるらしいしな、懸賞金に興味は無いし急いでいるし放っておこう。 もうすぐラ・ロシェールだ、あそこで一泊して朝一番の便でアルビオンに向かおう」 そして、彼らはもう明かりが見えてきたラ・ロシェールに向かって駆け出した。 To be continued.
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/45.html
状況はどう見ても不利でした 一つに現状で逃げ切れないこと。二つの荷物(この状況ではルイズはお荷物です)を抱えたまま逃げ切ることは不可能です それに跳躍移動して逃げたとしてもそのときに耐えるのは自分の足です。そう何度も使えるものでもありません もう一つに 「・・・なんですかあれ?反則ですよ・・・」 敵のゴーレムです。やたらでかいゴーレムの肩に本体のロングビル・・・フーケがいます 跳躍を使えばすぐにいけるでしょうが迎撃されるのが落ちです (・・・ボス) そう考えたドッピオの判断は自らのボスに任せることでした 自分が出来ないのが不甲斐無いですが自分では防戦一方でフーケを倒すことは出来ないでしょう 「・・・お願いします・・ボス」 小声でつぶやき、ドッピオは自分の表層意識をディアボロに手渡しました ルイズはその小声を聞き逃しませんでした 言った途端、彼の力が一瞬抜け、すぐに持ち直しました 「・・・貴方」 ドッピオからボスと呼ばれたその人が現れたのです 「・・・・・・」 その人は終始無言で目前の敵をにらんでいました 「・・・学院内で貴族を倒した平民」 魔法を使う貴族を何らかの能力で倒した男。ヴィネガー・ドッピオ 「・・・だけどそいつより厄介な存在」 フーケは学院の騒動を聞きつけギーシュとドッピオの戦いを少々見ていました そして 「・・・雰囲気が変わった。今回も現れたようね」 何らかの能力を使って倒すドッピオ以上に厄介な存在。行動を無効化する男 遠くから観戦していたフーケはなんとなく雰囲気が変わるのが分かりました 「手加減は一切しない。最初から全力で・・・」 先に倒さないとこちらがやられる そう思って彼女は敵に対して全力を出しました フーケは土属性のエキスパート。その攻撃は全てが予想外な攻撃でした まずはゴーレム。コイツが直接攻撃してくるのは予測できましたが速さが機敏でした エピタフの未来予知が無ければ回避できないほど速い攻撃を後ろに跳ぶことでかわしますが 「キング・クリムゾン!」 未来の危険を察知し時を飛ばし回避します。飛ばし終わった後起こったのは蟻地獄でした 「くっ・・」 ディアボロは攻めるに攻められませんでした ゴーレムを壊そうとするも相手は土。攻撃が吸収されてしまうのです 肝心のフーケ本体は肩に依然いますが 「ちょっと!速くバーって倒しなさいよ!!」 この主人が邪魔で上手く攻められないのです はっきり言ってルイズはこの戦いで邪魔でした こうして一緒に戦わないと敵の攻撃がルイズに及ぶからです 戦う前、破壊の杖を取り戻し戻ったときのことを考えるとまずルイズを捕まえるつもりなのでしょう もちろんその程度でこちらが怯む理由にはなりませんがもし主人に何かすると使い魔に影響が及ぶならと考えると 「くそ・・・」 下手に放っておけません。どうするかと考えていると 「・・・ボスでいいのかしら?」 己の主にそう問いかけられました 「・・・ディアボロだ」 どうせこの主に名前を教えて問題ないと考えたディアボロはそう素っ気無く返しました 「それじゃディアボロ。はっきり言っちゃっていいから答えて。私が邪魔?」 「ああ」 気を使う必要が無いと考えたディアボロはすぐに返事を返しました こんな受け答えをしている間にもディアボロは高速で動き回り回避しています 「・・・それは主人が捕まるといけないと思っているから? それとも単に役に立っていないだけ?」 「その両方だ」 きっぱりといいました それでスイッチが入ったのか 「・・・上等じゃない」 ルイズはそう言って 「使い魔に戦いを押し付けてられないわ。私だって戦うわ!」 そうとんでもないことを言い出しました 「バカか?お前がどうやって戦うというのだ」 魔法を使えないルイズに戦う術なんて無い、と思うその考えは 「バカにしないで。気を引くことぐらい出来るわ、その隙を貴方が突いて」 「バカはお前のほうだ!いいか、無謀と愚考はどれ程強行しても叶うことは無い 己を未熟を呪うのならば成長しろ。己の過去に打ち勝ち次に自分が出来る最良のことを考えろ」 ディアボロは怒声を放ちました そこにはルイズの犠牲を前提とした作戦をやめろという彼らしくない考えがありました 「じゃあどうしろって言うの・・・私だって」 「『私だってプライドがある』か?そんなものそこらの犬にでも食わせてしまえ 生き残ればどんなことも出来る。成長して再戦し勝つこともな」 「・・・違うわ。私が言いたいのは」 一呼吸おいてから 「もう、アンタが限界だからそういってるのよ!」 「私が限界・・・?」 そう言われて自分の体を見ると 「なっ・・・」 回避し切れなかった攻撃を喰らいズタズタになった体だった 特に跳躍を混ぜた回避に耐えられなくなった足がもう黒ずんでおり痛みさえも感じなかった 「・・もうこれ以上迷惑はかけられないわ」 そう言ってルイズはディアボロの腕からするりと抜けました 「・・・今度は私が相手よ!」 そんなバカな行動をする主を止めようとして 「・・・?」 自分の足がもう動かないことに気づきました フーケはもはや限界に達した敵を見て最後の止めを刺そうとしました ですが 「・・・今度は私が相手よ!」 そんな彼の主の声にさえぎられました 「・・・正気?貴女ごときが私に敵うとでも?」 「やってみなくちゃわからないわ」 「そう・・・なら」 止めの一撃の対象を変えてフーケは 「その愚行を後悔するのね!」 土のつぶてを使い魔の主にぶつけようとして 「キング・クリムゾン!」 使い魔にさえぎられたのでした ディアボロは自分の主の危機を察知し咄嗟にスタンドを発動させました そして今、千載一遇のチャンスが来たのです (・・・跳躍!) キング・クリムゾンの力で再度跳躍します。狙いはフーケ本体です 攻撃はルイズにあたりますがそれはこの吹き飛ばした空間で無効化できます そして 「終わりだ!!!フーケ!!!」 その杖を破壊しました フーケは自分が愚行を行ったことに気づいていました ただ、使い魔を守ろうとするその主が自分とは違い、認めたくなく、否定しようとその魔法を発動させました 結果、やはり使い魔の男に邪魔をされ、その男が目の前に来ました 瞬間移動としか取れないほどの速さで接近した男は不可視の力を使い自分を倒すでしょう きっと自分は目の前の男に殺されるだろうと死の決心をしました たとえ殺されなかったとしてもこの高さから落ちればそれが決定打になります 「終わりだ!!!フーケ!!!」 終わりの一撃が来ます。そのときに思ったのは (・・・何を思い出しているんだか) 走馬灯でも、ましてや何も考えない無の境地でもなく この男ではないもう一人の男の子の笑顔だった だが、終わりの迎えはこなかった 「・・・え?」 その驚嘆は自分が出したものと気づくまでに少しかかりました 目の前の敵は殺すもせず、殴るもせず、ただ自分を無力化したのです 「・・・なぜ?」 驚嘆の後の疑問それに男は 「・・運が良かったな。ドッピオは少なからず貴様に好意を抱いていたようだ」 とまるで他人事のように答えた。と同時に ドサッ 「な?!」 ディアボロはフーケに倒れ掛かってきました。突然のことに反射的に受け止めたフーケ そのときに男は言葉を言いました。それは 「・・・もう、こんなことをやめてください。ロングビルさん・・・」 さっきの男ではなく、自分にも優しくしてくれた男の子の声だった ゴーレムが消えていく。それは術者のフーケが魔法を使えなくなったからだ。同時に上の二人も落ちていきます もはやそれは反射的な危機対応能力なのか男は女性に抱えられたような状況の中不可視の力を使って着地します 「・・・なぜ」 最後の最後まで自分に優しくしてくれた男の子には疑問しか見出せなかった 「・・・今はドッピオみたい、ね」 その声はこの男の子の主、学院でゼロのルイズと言われている学院生です 「・・・すいません。ルイズさん」 開口言った言葉は謝罪でした 「謝る必要なんてないじゃない!フーケを倒したのよ?」 そのフーケは今、気絶をしている 「それじゃ後はフーケを差し出して」 「ルイズさん・・・ちょっと待ってください」 「え?」 ここでドッピオが止めるとは思わなかったルイズは言葉に反応して足を止めました 「・・・見逃してあげれませんか?」 「あのね、なんで見逃す必要が」 「今回の目的は破壊の杖を取り戻すことですし・・馬車も無いなら連れて帰れるほどの余裕も無いですよ」 一応筋は通っているがドッピオの本心はそこには無かったのです ただ、盗みとかをやめてくれればドッピオは満足だったのですから 「・・・まあ確かにそうね」 ルイズ自身も渋々納得し今日はこれで帰ることとなりました 11へ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/748.html
「ルイズ…ルイズ…外が騒がしくなってきたわ。そろそろおきたほうがいいんじゃない…?」 ルイズはん~っとかわいらしく伸びをするとずるずるとベットから降りてふらふら歩きながら近くにある椅子にパタンと座り込む。ルイズはう~う~うなっている。 「服、着替えたほうがいいんじゃないの?しわになってるわよ。それ」 トリッシュはルイズの着ている服を指差した。 「服、とってそこのクローゼットの中にあるから」 トリッシュは何も言わずルイズの制服を取ってやる。 「下着もとって。クローゼットの一番下にあるから」 トリッシュはここでも何も言わずに下着を取ってやった。 「服、着替えさせて」 トリッシュは今度こそぶちぎれた。 「ルイズ~!!テメー寝ボケテンノカ!?コノガキガーッ!!サッサト自分デキガエヤガレェー!!」 スパイス・ガールが突如としてルイズの目の前に現れた。ルイズはスパイス・ガールの有無を言わせぬ凄味にルイズは言われるがまますぐに着替えた。 トリッシュは窓際まで歩いていって窓の外を見る。 「ルイズ、もうそろそろ、食堂に行かなくてはならないのでしょう?」 窓の外には食堂へ向かう生徒達がちらほら見え始めていた。トリッシュは前日にコルベールに聞いていたから早く起きたつもりだったが、どうやら少し寝坊したらしい。 都会の生活では十分早起きだったが。 「ちょっと、ちょっとまって服を着替えないと…!」 「…そういえば、私も服を着替えたいわ…。でも、着替えは持ってないし…ルイズよかったら服を貸してくれる?」 『多少』、潔癖症であるトリッシュにとって同じ服を2日続けて着ることは耐えられそうにない。 ルイズは自分の着替えをクローゼットの中から取り出すとその中で一番大きな一着をベットに投げた。 「これをきるといいわ!上等なシルクな服よ!」 ルイズは少し誇らしげにその服について説明した。 トリッシュは一瞥すると多分サイズが合わないことを理解したが、誇らしげなルイズにそれを言うのははばかられた。 「…そう、ありがとう。感謝するわ…」 実際トリッシュがその服を着ると腰は余るし胸にいたってはだいぶきつい。それに小さすぎてトリッシュのおへそがただたっているだけでしっかり覗かせていた。 しかし、着てみるとわかったが、確かにこの服の生地はかなりいいものみたいだ。肌に滑らかな感触だし、着ている重さをほとんど感じなかった。 「さぁ、トリッシュ、食堂へ行くわよ!!」 ルイズはとうに着替えを済ませていたのかさっさと部屋を出ようとしていた。トリッシュも鏡の前で簡単に身だしなみをチェックするとルイズのあとを追って部屋を出た。 部屋を出るとルイズが憎憎しげに赤い髪の胸の大きな女をにらみつけていた。 「(ルイズ…彼女は?)」 「(キュルケよ…あとで説明するわ)」 「おはよう、ルイズ」 「…おはよう、キュルケ」 トリッシュとルイズが小声で話しているとキュルケがルイズに挨拶してきた。 キュルケはにやっと笑いながら挨拶してきたが、なかなかそういうしぐさがさまになる女だった。 ルイズとは、正反対なトリッシュともまた一味違う魅力をかもし出した少女だった。 対してルイズは嫌そうにキュルケに挨拶を返した。 「なに、それが、あんたの使い魔なの?」 トリッシュを指差して、馬鹿にしたようにキュルケは言った。 「そうよ」 「はっはっはっ!すごいじゃない!ほんとに人間を召喚するなんてッ!」 トリッシュは傍らにスパイス・ガールを出してみたが、キュルケにはやはり見えていないようだった。 見えていればルイズの汚名を晴らすことができるのに…とトリッシュはわかっていながらも少し悔しい気持ちになった。 「やっぱり使い魔にするならこういうのがいいわよねぇ~!フレイムッ!」 ドアの開いていた部屋から真っ赤で巨大なトカゲがふわふわと浮かびながら現れた。 トリッシュは一瞬身構えたが、特に危険が無いようなのですぐに構えをといた。スタンド戦において見慣れないものをみたらすぐに戦えるように身構えなくては命はない。 キュルケはめざとくトリッシュをみると笑いながら言った。 「ほっほっほっ!あなたもしかして火トカゲをみるのははじめて?」 「…ええ、かなりここから遠いとこから召喚されたからね」 「怯えているみたいだけど、大丈夫よ、フレイムは私が命令しない限り人は襲わないわ」 別に怯えてはいない、と反論しようかと思ったが負け惜しみにしかキュルケには聞こえないだろう。そう思い、何も言わなかった。 キュルケはさらに饒舌に自分のフレイムがいかにすばらしいかをとくとくと説いている。ルイズはそれを悔しそうに聞いている。 「それにしても…」 キュルケは一通りルイズに自分の使い魔について自慢し終わるとトリッシュに顔を向けじろじろとトリッシュの体をみてくる。 「あなた名前は?」 「…トリッシュ・ウナよ」 キュルケはにやっと笑うとルイズに向かって小ばかにしたように言った。 「ルイズ、みてみなさいよ!あんたの使い魔、あんたよりだいぶセクシーよ!ご主人様なのに…ぷぷっ…使い魔に負けてるなんて…笑いが止まらないわ!!」 ルイズは悔しそうに顔をゆがめてキュルケをにらみつけるていたが、トリッシュがルイズの肩にぽんっと手を置いてルイズに優しくささやく。 「ルイズ、あなたは魅力的よ…私が保証するわ。他人と比較して自分を卑下するとせっかく魅力が半減するわ…それに、ルイズ、あなたはまだまだこれから成長するわ。 もっともっと自分を磨けばそこにいるキュルケなんて目が無いくらいの立派なレディになるわよ」 ルイズはトリッシュにうなずいて見せてから、キュルケに向き直ると得意げに胸を張るキュルケにルイズも負けじと胸を張る。 いかんせん、戦力差は膨大だが。 「キュルケ!あんたなんてすぐに追いつくんだから!私のほうが若いんだから成長性では私のほうが上よ!成長したらあんたなんて目じゃないんだから!!」 ルイズはそれだけ言うとトリッシュと一緒にずんずんと食堂に向かってあるきだした。 一人残されたキュルケは肩をすくめてため息をつきながらつぶやいた。 「…若いたって1才しか違わないじゃないの。それに16でそれじゃあねぇ~」 はぁ~やれやれとキュルケはルイズについていくかのように食堂へむかう。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/846.html
どっと疲れた。もう何が何やら。 わたしがため息をつくとキーシュもため息をついた。 わたしが顔を上げるとキーシュも顔を上げた。 わたしが右手を上げるとキーシュも右手を上げた。 こ、の、お、と、こ、は、あああああああああ……。 ……いや違う。冷静だ冷静だ冷静にならなきゃダメ。こうやって怒らせるのがこいつのやり口。 深呼吸を数度、真似するキーシュを無視して続けると、頭の血も降りてきた。 落ち着こう。毛布の上に寝転がると、キーシュも隣に寝転がった。 あんたねぇ、見る人が見たら絶対に誤解されるわよ。でも指摘したら負けだ。スルー、スルー。 「ねえキーシュ」 「キーシュだなんて。せっかくヒミツを分かち合ったんですから本名で呼んでください」 グググ……耐えろ。苛立たせるのが狙いなんだ。 「そうね、やたら長い上に語呂が悪いからミキタカでいい?」 「とてもいいですね」 名前馬鹿にされてんだから怒りなさいよっ、間抜けっ。 「ねえミキタカ。わたしが失敗した理由はわたし自身が一番よく知ってる」 マリコルヌにさえ馬鹿にされるゼロのルイズだからね。情けない話だけど、事実だからどうしようもない。 「だけどなぜあんたがサモン・サーヴァントを誤魔化そうとしたの。ペットの二十日鼠でどうこうしようって、いくらあんたでもそりゃ無理よ」 「ルイズさん、私はサモン・サーヴァントができないんです」 は? 「私はできる魔法とできない魔法がしっかりと別れているんです。私にサモン・サーヴァントは使えないんです。これは超数学で求めた真理です。間違いありません」 超数学云々はともかくとして、前半部分は理解できた。 そうだ、キーシュ――もうミキタカでいいよ馬鹿――ミキタカは、初歩の初歩が使えなかったり、応用中の応用が使えたりと、とてもちぐはぐなメイジだった。こいつならサモン・サーヴァントが使えないということも……あるかな? 「ですが、あなたは違います。爆発を起こしたことがそれを証明しています。絶対成功不可能な私と違って、ほんの少しの後押しさえあれば問題なく使い魔を呼び出すでしょう」 え……そ、そう? そうかな? やだなぁもう褒めたって何も出ないからね。 「私がその後押しをします」 「後押しってどうするのよ。二人で召喚するわけにもいかないでしょう」 「いいえ、断固として二人で召喚します」 「あのね、妄想もほどほどにしておかないといつか脳みそ爆発するわよ。コルベール先生が許すわけないでしょう」 「まずはルーンの詠唱に合わせて煙幕を焚き、先生の視界を塞ぎます。もちろん魔法は使いません。ルイズさんも私も特殊なメイジとして覚えられているでしょうから、特有の現象ということで納得してもらいましょう」 人の話聞かないのはもう慣れたもんね。だから悔しくなんかないもんね。 「そしてその後、ルイズさんは私を使ってサモン・サーヴァントを唱えます」 ぼうっとしていたせいじゃない。 モットーに従い、疲れきっていながらも頭の中ははっきりとしていた。 はっきりとしていてなお、目の前で何が起きたのか理解することができなかった。 隣で寝転がっていたミキタカの身体が解けた。 「召喚ができないとはいえ、私にも魔力はある。二人の力を合わせれば魔力も、成功率も二倍です」 私はどんな間抜け面でその光景を見ていたんだろう。 徐々にではなく、一斉にばらけていく。ミキタカの身体が、長い金髪が、鼻ピアスが、服が、全てが解け、一つの物体を形作っていく。 わたしは半開きで口を開けてそれを見る。口の中が乾き始めたことにも気づかない。 「二倍の魔力で二倍の使い魔を召喚し、煙の中で私とルイズさんが一体ずつ契約する。二人で呪文を行使する形になりますから、どちらも使い魔と契約できるわけです」 杖だ、これは。メイジの杖だ。 口も消え、耳も目も鼻も消え、ミキタカの痕跡が一切無くなっているのに声は聞こえる。 魔法じゃない。絶対に魔法じゃない。ベッドの上に寝た時点で、すでに杖は手放していたはず。それに一語の詠唱も無かった。それなのに、それなのに発動するなんて、そんな。ありえない。 「これが私のたてた作戦です」 「これ、幻覚?」 やっとの思いで声を出した。発言も発声もどちらも間抜けに聞こえたのは気のせいじゃないと思う。 「幻覚ではありません。現実です」 くっ、こいつに現実とか言われると無性に腹が立つな。 待てよ……そうだ、そういえば。 突然の怪現象に見舞われて混乱していたわたしの頭脳に一筋の光明が差し込んだ。 そうだそうだ、ミキタカの出自だ。母親がエルフという噂があった。 つまりこれは先住の魔法? だから杖が必要なかった? 詠唱も? そうか、ミキタカは先住の魔法を使えるんだ。だから使える魔法に偏りがあった。 特定の魔法のみ天才的に使いこなしたのもそういうことか。 うわ、すっごい腑に落ちた。納得。正体が分かると急に親しみを感じてくる不思議。 いいなぁ先住の魔法かぁ。ちょっとだけ格好いいよね。すっごい強いんだっけ。わたしも使ってみたいな。 「だけど……見れば見るほど本当に杖ね」 「もちろん杖ですよ。ただし振り回したり殴りつけたりはやめてくださいね。感覚はそのまま残っていますから」 何という事はない気持ちで杖に触れた。軽く握り、構えてみる。途端、 「おっおっおっおおおおおお!」 すごいすごいすごいっ。これはすごいよ。わたしの中にとめどなく魔力が流れ込んでくる。 この部屋の風景が、小物の一つ一つから毛布、ベッド、箪笥の裏の埃にいたるまで、全てが輝いて見える。 熱い。身体が熱い。熱風が吹き、吹き返し、わたしの中で轟々と吹き荒れている。 今ならできるような気がする。使うことができなかった、使えないせいで散々馬鹿にされてきた、どうしようもなく手の届かない存在だった、魔法を使えるような気がする。 「私の部屋で魔法はやめてくださいね」 分かってるわよ。何よ、人の心でも読んでるのかしら。 「読んでませんよ」 だったらいいけど。 「お願いします、ルイズさん。私と一緒に使い魔召喚の儀式をやりましょう。助けてほしいんです」 「……助けてほしい?」 「はい。助けてほしいんです」 その言葉には真実味があった。そう、ミキタカにしたってここで退学するわけにもいかないんだよね。 それに。ふうむ。これ、案外いけるかもしれない。それだけの説得力がある。先住の魔法ってやつは。 「どうしてもっ、助けてほしいっ……ていうなら手伝ってあげてもいいけど」 「そうですか。ありがとうございます」 同情ではなく、わたしからの手助けという形なら、ごく自然に協力することができるって寸法ね。 ミキタカめ、ルイズ使いがなかなか上手くなってきたじゃないの。どうせ偶然だろうけど。