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スレ>>945-947 午後の保健室 午後の木漏れ日も優しく、窓からは秋だというのに暖かい日差しが舞い込んでくる。 きょうは一日静かだったな。保健室がこんなに大人しい日は久しぶり。外から生徒たちの声が聞こえてくる。 カチッカチッと秒針は一日の終わりを迎え入れようとしている。それにしても眠いな。本当に眠い。 髪を掻き揚げ、わたしはデスクに肘付いてため息。保健室独特のクスリの匂いもわたしにとっては落ち着く香り。 この白衣だっていちばんのお気に入り。この服さえ着ていれば、どんな怪我でも治してしまう自信さえ出てくる。 大事なのは身体で感じる事、感性って物は不思議だ。ネコであるわたしは感性のまま、生きるのがベストなのか。 今まで教師になる為に、勉強してきた『理屈』って物を全てぶっ壊してしまえと言うのか、と最近ふと思う。 ほかのネコたちはこの時間、時の流れを感じるまま居眠りでもしているのだろうに。それにしても、眠い。 しかし、無自覚な扉はわたしの睡魔を追い払ってくれる。仕事だぞ、シロ。 「シロせんせいー。痛いニャー」 コレッタが膝をかばいながら保健室にやって来る。学校中を走ってばかりいるから、転んだりするんだ。 そう、優しく諭しながら丸椅子に座らせ、痛くないとコレッタを安心さながら消毒薬を棚から取り出そうとする、が。 …わからない。どれだろう…。いつも使っているはずだぞ、いつもの消毒薬。考えれば考えるほど、分からない。 後ろではぐずりながら膝を手で押さえて、必死に痛みを堪えるコレッタ。その子を苦しみから解き放つクスリを扱えるのは わたしなんだぞ。なのに、わからない。棚のガラスに映るわたしの困り果てた顔は呆れるぐらい情けなかった。 「せんせい…、ぐすん…」 どうする、シロ。正念場だ。子ネコが泣いている。困った顔は見せられない。カチッカチッと秒針は責め立てる。 再び入り口が開く音がわたしのネコミミに入ってくる。小さな影が入って来た気がする。誰だ、わたしの背中を叩くヤツは。 もしかして、その手でわたしの誇りである白衣を破りにやって来たのか。言っておくけど、今、わたしは非力だ。 土砂降りの中一人木陰に取り残された、ずぶ濡れの細いネコだ。ここから一歩も動けないなんて、きみが見たら笑ってしまうだろう。 「ぼくに任せてください!シロ先生!!」 聞き覚えのある大きな声。もしかして、わたしに傘を差し伸べてきてくれたのか。きみはわたしが知っているヤツのはず。 後ろは怖くて振り向けない。わたしはきみを信じていいのか。その傘の持ち主は見覚えのある顔。 小さな身体で学校中を駆け回る、サン・スーシ先生。 「ほら…右から三番目の瓶ですよ。ほら!」 「ええ?」 「それです!それ!今度はピンセットにガーゼを用意しなきゃ!」 「え、えっとお…どれだったかな」 消毒薬片手にまごつくわたしに、テキパキと保健室の勝手を知っているかのように指示を出すサン先生。 サン先生の指示を受ける度に、だんだんと少しずつ何かを思い出していった。大切なのは感じる事なのだろうか。 「えっと、次は…そうだ!ガーゼで患部を…」 「いててててて!!!!痛いニャー!」 「そうです!そうです!さすがシロ先生は上手いなあ」 染みる消毒に声を張り上げるコレッタの姿に不安を感じたが、そんなものサン先生の声で吹き飛んだ気がする。 ―――治療も無事に終わり、絆創膏を貼ったコレッタはぐすんと泣きながら保健室を後にした。 「あの…サン先生」 「ん?」 「大変申し訳ございませんでした」 わたしは謝った。頭をブンと下げて感謝の意味を示す。そしてわたしの不甲斐なさをサン先生に見せてしまったわたしを サン先生はどのように思っているのだろうか。鼻でせせら笑ってもかまわない、侮蔑の目で見下げてもかまわない。先生、答えは…なんですか。 「シロ先生、格好よかったですよ」 何でもない、短い言葉にわたしは救われた気がする。土砂降りはいつの間にか上がり、外は青い空に美しい虹。 その空の下、照れくさい気になる細いネコ。そんな寒さに震える細いネコをふっさふさの毛並みで暖めてくれているのは …紛れも無くサン先生だ。そんなサン先生は背中を見せながら、わたしに労いの言葉をかけてくれたのだ。 「ふう…悪いが…わたしなんだか疲れて…」 「ははっ、先生もネコなんですね。お昼寝がお仕事のようなものでしょ?」 「うるさい、サン!」 「ははっ」 いつの間にか戸棚からコーヒーカップを取り出し、あっつあつのコーヒーをわたしに勧めるサン先生、 その優しさにいたく感激しながら、わたしのメガネを湯気で曇らせる。ハンカチでメガネを拭くと、視界が開ける。 その晴れ渡ったメガネの視界から、コーヒーカップを持っているサン先生のメガネも、わたしと同じく曇らせているのが見えた。 ……誰だ。こんなマンガ描いたのは。しかもわたしのデスクの上に、おもてにして置いていったヤツは。しかも絵が上手い。 どうして、わたしがサン先生の助けでコレッタの怪我の世話をしてやっているんだ。かすり傷ぐらい、自分で治療できるぞ。 『サン先生、大変申し訳ございませんでした』って、台詞。言うもんか、こんなこと。 犯人は分かっている。これ以上はもう言わない。証拠がベッドに残っている。このイヌの毛は…サン先生だ。 今度会ったら説教だ。そして…マンガの中とは言え、わたしのコーヒーを勝手に飲むな。 おしまい。 関連:白先生 サンスーシ先生 コレッタ
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第1T終了後 保健室は暗闇の中に 浜星 昇が意識を取り戻したのは日が沈み一般生徒が帰宅した頃だった。 (ここは…保健室のベッドの上か?) 未だ視界は志筑 綴子の奥義『絶招・殺一警百』に眼球を抉られた時のまま暗黒に閉ざされていた、 しかし眼球があるという感覚はする、恐らく魔人能力によって高速治癒されたのだろう。 (クソッ一歩届かなかった…だが確かに打撃での手応えはあった) 今の時刻は本来ならば夕食をたらふく食い特訓に励む時間だろう、 しかし眼球を抉られた痛みとその眼球を再生する痛みが容赦無く再び意識を刈り取ろうとしていた。 (掴む物はあった…これを特訓でモノにしたいが…今日は…) そして明朝の鬼雄戯大会2日目に向け治療を優先することを選択、そのまま浜星は眠りについた。 応援作品へ移動<<|メニューへ移動|>>浜星 昇の個別ページへ移動
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人間名:保田療花(やすだ りょうか) 妖怪名:保健室のベッド CP:346 (未使用cp:4 ) ■能力値 小計:70 ST 10 0 DX 9 -10 IQ 15 60 HT 12 20 基本致傷力 突き 振り 移動 基本移動力 5.25 移動力 5 荷重 無荷 軽荷 並荷 重荷 超重荷 防御 受動防御 1 計 能動防御 よけ 受け 止め 防護力 妖力 11 11 鋼の体 3 3 計 14 14(いずれも叩き半減の熱2倍) ■特徴と癖 小計:-40 特徴 消費CP 備考 美声 10 不幸 -10 乗り物酔い/船 -10 慈悲深い -15 酒に弱い -5 方向音痴 -3 性格傾向:おせっかい -2 仮病は許さない -1 癖 人間形態でも寝転がった姿勢が好き -1 癖 白衣でメガネをふく -1 癖 白い物がすき -1 癖 アルコールは飲み物ではなく消毒用 -1 癖 ■技能 小計:50 技能名 消費CP 技能Lv 医師 10 18 応急処置 2 16 ドイツ語 2 15 英語 2 15 診断 4 15 外交 4 15 演技 2 15 脅迫 4 16 礼儀作法 0.5 14 格闘 8 12 生理学 2 13 電子工学 0.5 12 神秘学 2 15 映画知識 1 14 催眠術 1 13 毒物 1 13 ■反応 恐怖判定 ■武器と装備 攻撃型 致傷力 技能 重量 備考 ■長距離射程武器 抜き打ち 正確さ 半致傷距離 最大射程 備考 ■妖力 小計:220 妖力名 レベルなど 増強/限定 CP 妖怪基本セット ー 我慢強さ/妖怪時のみ 97 美醜/びっくり 5 人間変身 衣服も 18 追加HP 30+20 15+PA 防護点(全て) 11 24+PA 鋼の体 3 欠点を隠せる 30 布の体 欠点を隠せる 19 追加疲労点 5 15 再生 1 眠っている間、3m内に人間がいると無効 PA ■妖術 小計:66 妖術名 型 威力Lv 増強 CP消費 技能Lv CP消費 合計CP 備考 治癒 5 病気も、-2の必要器官(ふとん)、接触のみ、1日4回(50%) 8 15 8 16 怪しい薬品(実体=化学) 6 妖怪時のみ、瞬間、神経毒、追加打撃、手加減無用、蒸留水でない液体が必要(60%) 22 14 28 50 ■弱点 小計:-55 弱点 影響 獲得CP 華奢な部位/両手足 20 ころぶと起き上がれない 15 行為衝動/ケガした人間は診察する 10 行動規制/人間は殴れない 10 動物に嫌われる 多分変な薬品臭 PA 核を封じると蘇生しない PA ■人間としての顔 小計:35 CP CP 身元 偽造 5cp 我が家 賃貸 0cp 職業 養護教諭(研究者扱いでいいよね) cp 月収 23万 - 財産 貧乏 15cp 地位レベル 0 cp 容貌 魅力的 5cp - - - ネットワーク 中規模 10cp たまり場 cp ■人間への態度 小計: 人間への態度 友好 態度パック B CP計算 能力値 cp 妖力 cp 有利な特徴 cp 妖術 cp 不利な特徴 cp 弱点 cp 癖 cp 人間としての顔 cp 技能 cp 態度 cp 小計 cp 小計 cp 合計 cp 設定 保健室のベッドの付喪神。 あと色々な「保健室のお姉さん」のイメージが中途半端に混ざっている。 妖怪的な語り 見た目は俺の手持ち女PCで多分一番年上だけど、実際はかなりのニオファイトだ!優しくしてやってね! 人間社会での生活的語り 保健室の先生をやってます。 明らかに本職の医者なみの医術力があるのは、小学生とか本当のお医者さんだと思ってるからです。 その他お好み 未使用CPで呼び出す用途:治療、英語とドイツ語、生理学、神秘学、診断、催眠術、毒物 言い訳 箒神と技能とか被ってる?うん、そうだね。 名前 コメント
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「はいみんな席に着いてー。授業始めるよー…ってあれ?」 教室に入ってきた矢部っちこと担任が不思議そうな顔をした。 「緒方さんに伊藤さん、それに加藤さんは?」 「三人とも給食のあと気分が悪いって保健室に行ったっスよー」 ふたばがこう答えると、教室がにわかにざわつき始めた。 「あの変態集団がそろって…」 「絶対に何か裏があるわね」 「そしてその原因というか目的はおそらく…」 クラス中の視線が俺に集まってくるのをひしひしと感じる。 「お前だな、佐藤」 千葉よ、なぜこういう事になるとお前はそんな恨めしげな目で俺を見るのか。 関係ないだろ、と反論しようと思ったが、自分でもさすがに全く関係なくはない気がする。 「あいつらだって、病気になることぐらいあるだろ?」と言ってみるが、 「佐藤以外の男子と接触した時とかね」 「まあ常日頃から病気みたいなもんだと思うけど…」 「恋の病だねっ><」 「三人と佐藤君の間には前世の恐ろしい因縁があるに違いないわ!」 だめだ、何を言っても説得力がない… 「じゃあ、しんちゃんがお見舞いに行けばきっと治るっスよ」 「それもどうかと思う…」ボツリ 「ねー、授業始めたいんだけど、いいかなー……」 結局三人が教室に戻ってこないまま、終業のチャイムが鳴った。 俺はふたばと千葉の誘いを断って、保健室へと足を運んだ。 別に責任を感じたわけじゃない。いやそもそも何の責任だよ。ただ少し気になっただけだ。 俺はこんな調子だから「良くも悪くも優等生」なんて言われるのかな、と思いつつ、保健室のドアを開けた。 「失礼しま…」眼鏡の保健医は居なかった。 保健室には三つのベッドがある。その内二つは空いていた。 残り一つはカーテンで覆われている。少なくとも今保健室で寝ているのは一人だ。 中を除いて誰が寝ているか確かめる、なんてことはするべきじゃない。女子だし。 もういいや、帰ろう、と思ったその時だった。カーテンの奥から声が聞こえてきた。 「ん…コホ、コホッ…。くる、し、助け、て、コホ、コホッ……」 心臓がギクリと高鳴った。苦しそうな女の子の声だ。誰の声かはわからなかった。 廊下を見渡したが先生が帰ってくる気配はない。それどころか誰もいない。 女の子の咳はだんだんゲホゲホと激しくなり、助けを求める声は苦しげになっていく。 ダメだ、照れてる場合じゃない。ベッドに駆け寄ってカーテンを開けた。 信じられないような光景がそこにはあって、俺の思考は数秒の間完全に停止してしまった。 「うふ…佐藤くんなら来てくれるって…信じてた…」 ベッドの上に横たわっていたのはクラスメイト、伊藤詩織だった。 それだけなら驚かない。伊藤はあろうことか一糸まとわぬ姿だった。 女の子の裸なんて見たのは何年ぶりだろうか。ふたばと最後に風呂に入ったのは…。 そこで俺は我に返った。あわてて目をそらす。 「いっ、伊藤!?だ、大丈夫なのか!?」 「大丈夫…佐藤君が来てくれたんだもん♪」 「ひょっとして、さっきまでの声は…」 「私の演技、なかなかのものでしょ? 栗山っちを騙すのは簡単だけど、佐藤くんは上手くいくか心配だったの…」 てことは、もしかして先生がいないのも計画通りだったのだろうか。 「緒方と加藤はどうしたんだよ?」 「あの二人は私と違って本当に体調が悪いの。だから早退したよ。 心配しないで。長引かないように加減はしたつもりだから」 「お前……。わかった、お前がすごいのはわかったから、頼むから何か着てくれ」 「…やっぱり佐藤くんはパンツはいてるほうが好きなんだね」 「否定しないからパンツ以外も頼む、お願いだ」 「…いいこと思いついちゃった♪ 私が今ここで悲鳴挙げたら、佐藤くんはどーなるかなぁ? 寝ている間に佐藤くんに脱がされちゃいましたってみんなに言ったら、どーなるかなぁ?」 「おっ、おま…やめろよ、そんなこと…卑怯だぞ!」 「卑怯なんかじゃない」 伊藤の声が別人のように変わった。 「私はなんにも間違ってない。ただ佐藤くんが好きなの。 おがちんも、真由美も、佐藤くんのことがほんとうに好きなわけじゃないの。 おがちんは佐藤くんを追いかける事のほうが佐藤くんそのものよりも好きなの。 真由美もそういうおがちんに付き合ってあげてるだけよ。 もうあの二人には合わせてられない。私はほんとうに佐藤くんが好きだから。 二人とも最初は泣くだろうけど、きっとその内また別の男の子を好きになるわ」 「いや…でも、俺には、その…」 「ふたばがいる、でしょ?知ってるよ、佐藤くんがふたばを好きだってことくらい。 でもね、あの子はあの子のパパと佐藤くんを重ね合わせてるだけ。 あの子が恋愛感情ってものを知るまでにはだいぶ時間がかかると思うわ。 それまで佐藤くん、我慢できる?中学生になってもだよ?」 伊藤が俺の襟元に手を伸ばしてきた。 「私の顔見て、佐藤くん… 私じゃだめ?私、佐藤くんになら何されてもいいよ…今すぐでもいいの…」 首筋に伊藤の吐息がかかる。俺は伊藤が泣いていることに気付いた。 「好き…佐藤くん、好き…」 俺の頭はすでに相当混乱していたが、この涙は演技ではないと思った。 首から下を見ないように努めて、伊藤と向かい合った。 伊藤の泣き顔を見たら、なぜだろうか、抱きしめなければならない、と思った。 経験がないのでぎこちなかったが、伊藤の背中に腕を回した。暖かかった。 「…わかった。伊藤の気持ちはわかったよ。 でも、何されてもいいとか、そんなこと言っちゃ…だめだ。 伊藤はそんなこと言わなくてもいいから…俺も伊藤の事…好きになるから…」 「さとう、くん…」 伊藤の目からさらに大粒の涙がこぼれた。 「だから、その…服、着よう、な?」 「うん♪」 ──────── 伊藤はカーテンの向こうで服を着ている。 「ねえ…佐藤くん…」 「?」 「ずっとそばにいてくれる…?」 「うん」 今日は伊藤を家まで送ってあげたほうが良さそうだ、と思いながら答える。 明日以降クラスでどう生存していくかは、それから考えよう。 「…伊藤には、俺がついてるから」 ガラガラッ 「話は聞かせてもらったわ!!」 「ま、松岡っ!?」 「やっぱり伊藤さんには佐藤君が憑いてたのね?私は最初から今日の件は生き霊の仕業と踏んでたの。 さあ、生き霊!!…にしては実在感あるけど。覚悟っっっ!!」 「やっ、やめろーーーーーー!!!」 END
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コーヒーと保健室 ぼくが気付いたときには、保健室のベッドの中にいた。 そう言えば、「ヒカルくん!ヒカルくんがあ!!」って声が微かに聞こえた気がする。 お昼休みはとっくに終わっているのだろうか。 被さる布団を上げて起き上がろうとすると、シロ先生が無理するなとぼくを諌める。 「……ぼくは」 「ヒカル、聞いたぞ。風邪気味なのに無理してたなんて」 キャリアウーマンである母の出張が長引き、物書きをしている父と二人で家を守っている今。 人の良さだけがとりえの父は、ぽんぽんと安請け合いで仕事を引き受け、 椅子に根を生やしてしまったようにPCの前に座り続ける。 自分で自分のことを苛めているようにぼくには映る。しかし、父は笑いながら物書きに没頭する。 「ははは。わざわざ仕事を持ってきて頂いたのに、断っちゃ悪いよね…ヒカル」 それで、ぼくが家事を任されたのだが、このところの季節の変化についてゆけず、体調を崩してしまった。 父も心配をしていたのだが、学校だけは行っておきたいと父を振り切って、重たい身体を起こして家を出た。 しかし、そんな傷だらけの身体で無理して登校したぼくがバカだった。 「保健委員の…ほら、アイツが『ヒカルくんが図書室の前で倒れたッス!』って慌てていたぞ」 「…ぼく、ゴホン!!」 「無理するな。鼻も乾いているし、毛並みのつやが無いのを見れば、素人でもすぐ分かることだぞ」 シロ先生に言われてぼくの鼻を触ってみると、確かに濡れていない。ふと見た手の毛並みも酷いもんだ。 頭がくらくらして周りが見えていなかった。 それにかまけて、自分のことをずいぶんとなおざりにしていたのがよくわかる。 棚に置いてある魚の形をしたシロ先生の置時計は、 「お前は今、泊瀬谷先生の授業をすっぽかしているぞ」とぼくを責め立てる。 「そういえば…あの…」 シロ先生はコーヒーを入れながら、ぼくが聞こうとすることを答えてくれた。 ぼくの考えていることを見抜くシロ先生は、隙が無い。サイフォンの声だけ響く保健室にシロ先生の声が加わる。 先生曰く、ぼくが倒れたお昼休みに『保健委員のアイツ』が、 ぼくをここに連れてきたあと、ぼくのことを心配しながら 授業の為に教室に戻ったとのこと。そのときのことは、全く記憶が無い。非常に歯がゆい。 小さい体でここまで連れて来た『アイツ』に布団の中で感謝していると、「アイツは本気の目をしていた」と、 ぽたぽたと雫をたらすサイフォンを覗きながら、『アイツ』のことをシロ先生は振り返る。 もうすぐ、授業を終わらせる鐘が鳴る。 シロ先生は、先生の愛用する魚の絵のマグカップにコーヒーを注いでいると、ふと思い出したように呟いた。 「ヨハンのヤツ…、忘れてるんじゃなかろうか。 わたしの読んでいた詩集が読みたいって言うから持ってきたのに。一週間待ったぞ。 …ふう、ずいぶんとほったらかしにされたもんだな、わたしも。ヒカル、わたしは少し外に出るから」 用を思い出したのか、マグカップを置き、ぽんと机に置いてあった一冊の本を軽く叩き、 ガラリと保健室の扉を開けて表に出て行った。 シロ先生が外に出た隙に、ぼくは重い身体を起こし机の上の本に目を向けると、見覚えのある名前が飛び込む。 『いぬがみゆたか・詩集』 そう、いぬがみゆたか・犬上裕はぼくの父だ。 ヨハンは、知ってか知らずかぼくの父の本を読みたいと言っていた…か。 ヨハンのことだ。きっと尻尾を振って、出任せにシロ先生のご機嫌でも取ろうとしたんだろう。 そんな発想、ぼくにはない。 ただでさえ頭がぐらつくのに、ヨハンのだらしなさを思い出すと、余計に頭が痛くなってきた。 ヨハンも父の本のことなんか忘れているに違いない。ヤツはああいう男なんだ。 再び、扉の音が聞こえる。シロ先生か?いや、足音が違うことぐらいイヌ族なら直ぐに分かる。 「ははは!ヒカルくんも、医学の神・アスクレピオスも裸足で逃げ出すと言うシロ先生に診て頂いて果報者だな!」 あの能天気な声はヨハンだ。こんなところではち合うなんて、今日はとことんついてない。 やはり、ヤツの声を聞くと頭が痛い。いや、その上を行く『頭』の『頭痛』が『痛い』…か。 そんなくだらないことを考えながら、ヨハンに背を向けて布団を頭の上まで被る。 尻尾が寒い。ベッドからはぼくの尻尾だけがはみ出しているけど、面倒くさいので引っ込めない。 「ヒカルくんは、なかなか面白いね。白いイヌだけに…」 涙を誘うくだらな過ぎるヨハンの言葉を耳にしたので、急いで尻尾を引っ込める。 布団の隙間からヨハンの様子をこっそり見ているとヤツはコーヒーの香る保健室に入ってきて、 机の上の『いぬがみゆたか・詩集』を拾い上げ、ぱらぱらとページを捲っていた。 長い髪を揺らしながら、その本を心底嬉しそうに眺めるヨハンは、少女漫画に出てくるようなワンシーンに見えた。 もっとも、少女漫画のことはよく知らない。しかし、ヤツから放たれる何かは、そういう感じがするのだ。 「この作者の本はね、読んでいてとても豊かな気持ちになるんだよ。作者が『ゆたか』だけにね」 「……」 「いや、冗談で言っているわけじゃないよ。ぼくが好きなのは、作者の人柄のよさがよく現れているところだね。 言葉遣いが実に面白い。 そして、砕けすぎず固すぎず…ぼくは好きだな、この人の文は。作者は何かの縁できみと同じ苗字だ。 一度、きみも読んでおくことをオススメするね。女の子を誘うときのセリフの参考になるかもね」 ……こんな本、家に何冊も山積みになっている。同じ本が何冊も部屋を埋め尽くしている。 きっと、ヨハンは知らないのだろう、『いぬがみゆたか』がぼくの父であることを。 しかし、父の『人の良さ』だけは完全に見抜いてしまったヨハンの嗅覚には感心。 言の葉だけでの書いた者のことを見抜くヨハンは、隙が無い。 「ヒカルくん!」 飛び込んできたのは、授業を終えた泊瀬谷先生。抱えている出席簿が息苦しそうでもある。 シロ先生曰く、ぼくが休み時間にぐっすりと寝込んでいるとき、一度保健室にやってきたらしい。 が、休み時間が終わってしまい、先生は保健委員の『アイツ』と一緒に、授業の為に教室へ。 そして、再びここに戻ってきたのだ。 泊瀬谷先生の柔らかな手のひらがぼくの額に触れる。しかし、泊瀬谷先生のことを心配 させるような感覚がする。 動揺してか隠れているはずである泊瀬谷先生の爪が、ぼくの額に突き当たっているのだ…。 ヨハンは見かねたのか、泊瀬谷先生の肩を叩きいつものように、歯がゆい言葉をかける。 「泊瀬谷先生、ご心配なく。ヒカルくんの毛並みは、みるみるうちに光りを取り戻しています。 先生もお疲れでしょう。ささ、先生の為にコーヒーを入れておきましたよ。冷めないうちにどうぞ」 まだ湯気の立てている、魚の絵のマグカップを泊瀬谷先生に差し出した刹那、再び保健室の扉が開き、声が響く。 「それは、わたしのコーヒーだ!!」 おしまい。 関連:ヒカル シロ先生 ヨハン先生 泊瀬谷先生 保健委員
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出会い …ぷっは~♪ああ、おいし~ほら、[名前]君も遠慮しないでどうぞ。ああでも、お酒は駄目だからね。これは、成人してからのお楽しみ、ね? マイページ 通常 さーて、仕事も終わったし、飲もうかな? 熱は無いようね…のぼせてるだけかなぁ? やだ、先生、本気になりそう…。 私のこと、どう思ってるのか知りたいなぁ。 [名前]くんって呼んでもいいわよね? 日直 バトルは日直に有利な仕組みになってるの。 キミが日直?見込んだ通りって事ね。 保健室の片付け手伝ってくれる?日直君。 登校 朝 朝から忙しいわ。一時間目が始まる前なのにね。 朝ご飯かぁ…食べる気力が沸いてこないわ…。 昨日は楽しいお酒だったのよ。[名前]君もいたらなぁ。 太陽が憎い…なんでこんなに眠りを妨げるの? 登校したら、保健室に来て。先生、待ってるから。 昼 お昼寝したいなぁ…すぐそこにベッドもあるしなぁ。 学生の頃は、私も勉強って好きじゃなかったのよ。 今日は誰もこないなぁ。保健室に遊びに来ない? 私の場合、お蕎麦とおうどんだと、お蕎麦が好みね。 私も学食利用してみようかなぁ。オススメとかある? 夜 今、お風呂から出たとこ。もしかして想像してる? 先生達で呑んでるとこよ。[名前]君の話題も出てるわ。 電話しちゃおうかな?[名前]君の声、聞きたいな。 ビールだけじゃ、今夜は物足りないなぁ。ね? 夜の診察が受けたい?アレは大人になってからよ。 アルバイト 二人で働くのって新鮮ね。なんだかドキドキするわ。先生、興奮してるのかも? 好感度レベルアップ 先生って思わなくってもいいのよ。男と女。シンプルに考えましょ♪ 好感度MAX お酒とタバコは、大人になってから。タバコは大人でもお勧めしないけど。そこは先生でなくても大人として、ちゃんとしておかないとね~まあ、それ以外で少々ハメ外しても、そこは見守っておいてあげるけど。ま、固いことはこれくらいにしといて、あとは楽しんで帰りましょう?…先生、もっと飲んじゃおうかな! デート 約束 当日 男の子の成長って早いものね~。子どもっぽいと思ってた矢先に、急に大人びた表情をするんだもの。ふふ…今度、ゆっくりとキミの事を調べてみようかしら。 ボス戦 先生、若い頃は負け知らずだったのよ。それでも勝負を挑むつもりなのかなぁ? 勝利 今でも負け知らずね。先生、まだまだ現役だわ。 敗北 やっぱり若い子は凄いなぁ。でも…二度目は負けないから。 バトル 先生に勝利を見せて! 声援 さあ、勝ちなさい! 勝利 景気よく祝杯をあげましょうか。もちろん、[苗字]君はジュースだけどね。 私、強い子って好きだなぁ。だから、[苗字]君のことも…ね。 敗北 あー…やっぱり落ち込んでるのね。だけど吹っ切ってみせなさい。男の子でしょ。 反省会しましょーか。だけどお酒は飲んじゃダメよ?先生もビールは封印するから。 タッチボーナス おいし〜 ほてってる?
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872 :イラストに騙された名無しさん :2006/08/07(月) 14 49 40 ID f+Dh4eZH 871 彼らを待ち受けているのは絵本園樹かフィアグールかドクターメフィストか、 はたまた病院坂黒猫か魔女のカヴンかS黄尾探偵団なのか。 874 :イラストに騙された名無しさん :2006/08/07(月) 16 59 44 ID ZOXE1mmv 871 唯一まともな青い果実(本名・蜂谷)がいたとしてもどうしようもないな 874 青い果実「失礼ねー、こちとられっきとした保健の先生よ?」 田村「ツッコミを入れたいのに入れられない自分にツッコミを入れたい次第であります軍曹」 青い果実「うみゅ、言葉の意味はよくわかんないけどとにかくすごい説得力よ田村二等兵」 田村(何がうみゅなんだ。歳を考えろ歳を……いや待てよ? こいつはウチのおかん(43)とダブるけど二十代に見えなくも無いわけで……) 青い果実「たみゅらきゅーん? 急に黙り込んでにゃ~に考えてるのかにゃ~?」 田村「やかましい! 考えてみたら二十代だとしてもその言葉遣いは充分イタイじゃないか!」 ぐは……ぁ……、と苦しげな吐息を漏らして右半身から崩れ落ちる青い果実。実は三十路を迎えていたのか? 田村「で、偉そうに胸を張ったなら解決法はあるんだろうな? あの鉄卸納戸良子(どこまでが名字でどこからが名前なんだ?)とか言う奴が作るまで待つとかいうのはナシだぞ?」 青い果実「ふぉっふぉっふぉっ、舐めてもらっちゃ~あ困るわね。そんなベタなオチつけないわ。ちゃんとこっちから手を施すのよ」 田村「ほう?」 青い果実「というわけで田村くん。上条くん呼んできてくんない?」 田村「却下だ」 青い果実「えー、なんで?」 田村「それこそ(このスレとしては)ベタなオチだろうが! ていうかお前は何もやってないし! もっと医学的な方法はないのか!?」 青い果実「ふ……そうまで言われちゃあ仕方ないわね。でも田村くん、少しくらいは手伝ってもらうわよ?」 田村「ほほう? よし、どんとこい」 青い果実「ルイズちゃん爆発させてきて! その後リウイくんのツテでジェニ最高司祭さんに蘇生してもらうから!」 田村「馬鹿者オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!」 876 :イラストに騙された名無しさん :2006/08/07(月) 20 56 50 ID ZOXE1mmv 875 いや、上条呼んでも無理だろ。あれは科学の産物だから。 しかしなんていうか青い果実自重しろw CAST ・わたしたちの田村くん 青い果実 田村 ・魔法戦士リウイ リウイ ジェニ
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《遅延》《公開済》SEV001111 シナリオガイド 公式掲示板 保健室に行く理由は十人十色。そこには様々なドラマがある!? 担当マスター 凪社奏真 主たる舞台 蒼空学園イルミンスール魔法学校シャンバラ教導団百合園女学院薔薇の学舎波羅蜜多実業高等学校葦原明倫館空京大学天御柱学院 ジャンル 学園生活 募集スケジュール 参加者募集開始日 参加者募集締切日 アクション締切日 2011-03-23 2011-03-25 2011-03-29 リアクション公開予定日 [部分編集] 募集時公開予定日 アクション締切後 リアクション公開日 2011-04-08 2011-04-12 2011-04-13 0時5分ごろ公開 サンプルアクション (シナリオ参加者の方にお願い、サンプルアクションの具体的な内容を補完していただけないでしょうか)(サンプルアクション名の下の四角をクリックするとでてくる「部分編集」をクリックすると登録できます)(もしくはサンプルアクション登録用掲示板へお願いします。) 授業中に保健室に行く +... [部分編集] ▼プレイヤーの意図 ▼キャラクターの目的 ▼キャラクターの動機 ▼キャラクターの手段 保険委員として保健室で待機する +... [部分編集] ▼プレイヤーの意図 ▼キャラクターの目的 ▼キャラクターの動機 ▼キャラクターの手段 保険の先生として保健室に在中する +... [部分編集] ▼プレイヤーの意図 ▼キャラクターの目的 ▼キャラクターの動機 ▼キャラクターの手段 その他補足等 [部分編集] 【タグ:SEV イルミンスール魔法学校 シャンバラ教導団 凪社奏真 天御柱学院 学園生活 波羅蜜多実業高等学校 百合園女学院 葦原明倫館 蒼空学園 薔薇の学舎 遅延公開済】
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前作 菫「失礼します」ガラ 宥「失礼します……」 憩「弘世さんに松実さん。ってことは……あはは、今日もやってもうた感じか」 宥「ごめんなさい……」 菫「本人は大丈夫だと言い張るんですが、何分血が出てて……」 憩「傷口そのままにしとくんは危ないからなぁ。消毒するからこっち来てー」 宥「はい……」 菫「宥の運動音痴は筋金入りだな……」 憩「今日はどうしてもうた感じ? この前はバレーで転けて、その前はバスケで突き指してたけど」 宥「マラソンの最中に足がほつれて転んじゃって……」 憩「はは、マラソンで転んだか。松実さんはおもろいなぁ」 菫「笑いごとじゃありません……」 宥「私、いつもいつも菫ちゃんに迷惑かけて……先生にも……」 憩「うーん、別に気にせんでもええと思うで? ウチはこれが仕事やし」 憩「弘世さんもこうやって二人で授業抜け出せて、満更でも無さそうやし」 菫「なっ……」 宥「えっ……?」ドキッ 憩「こんなちょっとした怪我でおんぶしてくるなんて、なぁ?」ニヤニヤ 菫「わ、私は宥の大事を取っただけでそんな下心は……!」 憩「あはは、冗談冗談。ほい、終わりっと。二日もすれば綺麗に治ってると思うわ」 宥「あ、ありがとうございます」 憩「松実さんももうちょっと気を付けや? 体育するたびに怪我するのも嫌やろ」 宥「ごめんなさい……」 憩「こんなしょっちゅう来られるとワザと怪我してるんかな思ってまうわ」ケラケラ 宥「そそそ、そんなことは……!」 憩「保険委員でも無いのに毎回弘世さんが付き添ってきたり、ホンマ二人は仲良しやね」 宥菫「「……」」カァァ 憩「そんじゃま、いつもどおり見学届け渡しとくわ」 憩「……寄り道してもええけど、怪しまれん程度に戻りや?」ニッコリ 菫「寄り道なんてしません!!」 コンコン 憩「どうぞー」 玄「失礼します……」 憩「はいはい。あ、初めてやんな? この入室確認書ぱぱっと書いちゃって」 玄「は、はい」カキカキ 憩「ありがとー……ふむふむ、松実玄さん。3年生に松実宥さんっていうお姉さんおったりする?」 玄「え、どうしてお姉ちゃんの名前を……?」 憩「お姉さんはここの常連さんやからなー。二回も来てくれれば顔と名前は覚えるわ」 憩「うん、確かにお姉さんによく似てる……」ジーッ 玄「そ、そんなにまじまじ見られると恥ずかしいです……」 憩「今日の4限目もお姉さん来とったで。マラソンで転んだとかで」 玄「ほ、本当ですか!?」 憩「まあ大した怪我やないから」アハハ 玄「そうですか……」ホッ 憩「二人は仲良さそうやね、そんなにも心配して」 玄「お姉ちゃん昔から怪我とかよくしてたし、目が届くところにいない時は少し不安です……」 憩「そっか。でも大丈夫やと思うで? 松実宥さんには過保護なくらい親身に接してるクラスメイトがおるから」 玄「えっ……そ、それって、誰ですか……?」 憩「弘世菫さん、って子なんやけど、知らん? 濃い青髪でロングヘアーで、真面目そうな弓道部の子」 玄「もしかして、あの時の……!」 憩「あの時?」 玄「す、すみません、こっちの話です……」 憩「二人ともホンマに仲良くてなぁ。よく二人でここに来るんやわ」 玄「それは一体どういう理由で……?」 憩「体育の時間に怪我した松実さんを弘世さんが連れてくる、ってパターンがよくあるかな。週1くらい」 玄「そうですか……」 憩「お姉さん取られたみたいで寂しかったりする?」 玄「っ……い、いえ。そんなことは……」 憩「察するに、嫉妬半分安心半分って感じやね」 玄「……先生はすごいですね。ほんの少ししか話してないのに」 憩「まあスクールカウンセラー兼任やから、そっち方面の勉強もしとるんやわ」ニコ 玄「なるほど……」 憩「たぶんお姉さん昔からあんな感じで、自分がしっかりせえな、とか、お姉ちゃん守らな! とかっていう気持ちが強かったんやろうけど」 憩「お姉さんもええ年やし、ちゃんとお姉さんのこと見てあげてる子も今はおるから、妹ちゃんがそこまで気張らんでええと思うで?」 玄「……」 憩「まあお姉ちゃん好きで、お姉ちゃん離れでけへん、って言うんやったら話は別やけども」アハハ 玄「そ、そんなことないです! たぶん……」 憩「それやったらお姉ちゃんのことは任せて、自分のことももうちょっと考えな」 玄「自分のこと……」ドキッ 憩「用件に相談、って書いてあるけど。今日はどういった相談? お姉さん関係あったりする?」 玄「お姉ちゃんのことは……気になるけど、しばらく見守ろうと思ってて」 憩「なるほど」 憩(思ったより理性的な子やなー) 玄「今日は、その……別の相談が」 憩「ふむふむ。内容はどんなもん?」 玄「先生は、そのっ……初対面の相手に好き、って言われたら、どうしますか……?」 憩「……えっ?」 憩「えっと、恋の相談?」 玄「こ、恋、かどうかは、自分でも正直分からないです……ただ……」 憩「とりあえず、何があったか説明してくれる?」 玄「は、はい」 ――――――――― 憩(要約すると、初対面の先輩に告白されてキスを迫られたそうです) 憩(そして流されるがままに唇……とまではいかなくてもおでこにキスされたと) 玄「……どう思いますか、先生?」 憩「ど、どう思うって言われても……」 憩(すごい話やなぁ、っていうのが正直な感想なんやけども……) 玄「私、その人にいきなり告白されて、すごくドキドキして……」 玄「で、でも! これって普通じゃないですよね……? 普通だったら、付き合ってください、とか、お友達になりましょう、とか……」 憩「いくら惚れたから言うても、いきなりキス迫るようなアホはそうおらんとは思うわ……」 憩(それで迫られるがままにキスされたこの子も相当アレやと思うけど……) 玄「あの人はどういう気持ちで私にあんなことをしたんでしょう……」 玄「キスし終えると、お礼だけ言って帰っちゃったし……」 憩「うーん、どういう気持ちで……」 憩(ホンマに惚れとるんやったらいきなりそんなこと出来るわけないし) 憩(ってことは……罰ゲームとか? いや、そんなことでそこまで必死にはならんか) 憩「うーん……」 憩「ごめんなぁ、妹ちゃん。ちょっと相手側が考えてることはウチにも分からんわ」 玄「そう、ですか……」 憩「相手さんに訊いてみるのが一番早そうやな……名前とか分かる?」 玄「えっと……3年生の宮永照さん、です」 憩「!?」 憩「え、そ、それはホンマなん? 間違いとかじゃ……?」 玄「赤い髪の毛でおもちがあまり無くて、すごくカッコいい人、ですよね……?」 憩(初対面の相手にはあの子がカッコ良く見えるんか……てかなにやってんねん……) 憩(あー、でも。なんとなーくやけども事情が見えてきたような……) 玄「先生……?」 憩「とりあえず相手側のことは置いとこか。またウチから詳しく話聞いて、また妹ちゃんに知らせるわ」 憩「それで、妹ちゃんは好きって言われてどう思ったん?」 玄「え、えっと……ドキドキ、しました……」 憩「そっか。それでなし崩しでもキスされて、相手のことが気になって仕方が無いと」 玄「はい……」 憩(これは呼び出しやなぁ……場合によっては鉄拳制裁せんと) 玄「これって、その……恋、なんでしょうか……?」 憩「う、うーん、そうやなぁ……他人に好意向けられて嫌な気分する人なんておらんし」 憩「そういう嬉しいと思う気持ちと恋心をごっちゃにしとる可能性がある、と思うかな」 玄「なるほど……」 憩「まずは思い込みすぎず、冷静になることやな」 憩「ウチもめちゃくちゃタイプの人に好きって言われたり」 憩「でこチューさせてって本気で言われたら、冷静じゃなくなってええよ言うてまうかもやし」アハハ 玄「そうですよね……わ、私が別段おかしいってわけじゃないですよね……」 憩「う、うん。だからそんなに思い詰めんでも大丈夫やで。でこチューくらいスキンシップみたいなもんやよ」 玄「そうですよね! スキンシップですよね!」 憩「そうそう。なんならウチでも妹ちゃんにでこチュー出来るで」ニッコリ 憩(とりあえず、どんな事情があっても妹ちゃんが傷つかんようにだけ心持ちを上向きにせんと) 憩「とりあえず相手側の事情についてはウチから訊いとくから、また後日知らせるわ」 玄「ありがとうございます。私、直接訊けるような勇気なかったから……」 憩「まあそれが出来ればウチに相談なんてせえへんわな」アハハ 玄「荒川先生、今日はどうもありがとうございました。おかげで、胸がすっと楽になりました」 玄「私、ずっとそのことばかり考えてて、自分はおかしいんじゃないかと思っちゃって……」 憩「妹ちゃんは何にもおかしくないから心配せんで大丈夫やで」ニコ 玄「先生……」ウルウル 憩(この子も涙もろいんやなぁ) 玄「あっ、もうこんな時間……料理研でミーティングあるので、失礼します」 憩「はーい。思い詰めすぎず、気楽に構えなさいね」 玄「はい! 改めて、ありがとうございました」ペコリン 憩(とりあえずは相談解決……かな?) ――――――― 憩「今日はまあ、今のとこはいつもくらいの訪問者かな……」 胡桃「失礼します」ガラ 憩「あ、胡桃ちゃん。こんばんはー」 胡桃「こんばんは先生。今日も……いいですか?」 憩「ええよ。ほんじゃ、早速しようか」ニコ 胡桃「よろしくお願いします」ペッコリン 憩(鹿倉胡桃ちゃん。2年生。その小さい身体がコンプレックスなのか、月2回ほどこうやって身長を測りに来ます) 胡桃「今月こそ伸びてるはず……!」 憩(相変わらずちっちゃいなぁ……小学6年生でも十分通用するわ) 憩「えーっと……130cm。ぴったりやね」 胡桃「み、ミリも変わってないですか……?」 憩「残念ながら」ニコ 胡桃「そんな……」 憩「みんなまったく伸びへんなぁ。1年生の頃から測ってるつもりやけど、誰一人として成長してないような気がするわ」 憩「この前も天江さんと薄墨さん来とったけど、まったく変わり無しやったし」 胡桃「あの二人も……!」 憩「ウチとしては同じ学年クラスなんやし、三人まとめて来て欲しくはあるんやけども」アハハ 胡桃「身長を気にしてるなんて普通知られたくないです……」 憩「まあそうやわな。普段仲良くしてても、身長に関してはみんなライバルやもんな」 胡桃「衣に負けたくも無いし、初美にもいつか勝ちたいです。そのために毎日牛乳飲んで9時に寝てるのに……」 憩(優等生やなぁ……てか三人ともぱっと見まったく変わらんけども) 胡桃「先生……どうすれば身長って伸びますか?」 憩「難しい質問やなぁ。一般的には胡桃ちゃんがしてるみたいな方法って言われとるけど、結局は遺伝が大きいから」 胡桃「い、遺伝……」 憩「まあその遺伝もあやふややから、体質って言った方がええかな?」 憩「身長伸びる人はなーんもせんでも180cm超したりするし、逆に胡桃ちゃんらみたいな子たちもおるし」 憩(かなり珍しいけども) 憩「背高い人に話聞いたりしたら面白いかもな」 胡桃「背が高い人って言えば……」 憩「胡桃ちゃんらと同じクラスで2年の井上さんとか、あとは有名人で3年生の姉帯さんかな」 胡桃「純に姉帯さん……」 憩「まあ二人とも女の子にしてはかなり規格外やね。姉帯さんは井上さんもびっくりしてたくらい大きいけど」 胡桃「その二人に話を訊けば、何かヒントが……!」 憩「でもまあ正直、あんまし期待できんとは思うかなぁ」 憩「あの子らも胡桃ちゃんらがちっちゃいのと同じ理由でおっきい訳やし」アハハ 胡桃「ですよね……」はぁ 初美「失礼しまーす……げっ、胡桃」 胡桃「あ、初美!」 憩「あらら。なんとも奇遇やね」ニコ 初美「な、何してるですか胡桃? こんなところで」 胡桃「そ、そういう初美こそ保健室に何か用なのかな? 超健康優良児のクセに保健室なんて」 初美「うるさいですねー……私だって保健室に用の一つや二つくらい……」 憩「はっちゃんも身長測りにきたのー?」 初美「せ、先生それは言わない約束!」 憩「まあまあ。胡桃ちゃんもよう来とるから」 胡桃「ちょ」 憩「普段仲良いって聞くのに、身長のことになるといがみ合うんやね」アハハ 初美「同類はみんなライバルですよー……!」ゴゴゴ 胡桃「ただでさえ小さいのにその中でも小さいなんて屈辱以外の何物でもないからね……!」ゴゴゴ 憩「あはは、なるほどなー」 憩(二人ともかわええわぁ) 憩「それじゃあ早速はっちゃんも測ろうか。ちなみに胡桃ちゃんの身長は」 胡桃「せせせ、先生!!」 憩「トップシークレットらしいわ」 初美(気になる……) 憩「はっちゃんこっち来てー」 初美「はいですよー」 胡桃「てか胡桃、水泳部は? この時間帯なら絶賛部活中だと思うけど」 胡桃(だから鉢合わせにならないようにこの時間帯狙ったのに……) 初美「排水溝? が壊れたとかでプール使えないらしいんですよー。一日でも水に浸かっていないなんて落ち着かないです」 胡桃「なるほど。そんなことってあるんだ」 初美「胡桃も部活は……って、あんなお遊びサークルは基本自由参加ですか」 胡桃「まあね」 憩「んじゃそろそろ身長発表するね。ひゃく……」 初美「せ、先生!?」 憩「あはは、冗談冗談」 胡桃(気になる……!) 憩「そんじゃま、耳打ちで」ニコ 初美「当たり前ですよー……」ジトー 憩「……」ボソボソ 初美「うぅ……」 胡桃(よし、伸びてない) 憩「ま、はっちゃんも気にしないで。な?」 初美(胡桃より高いのか気になります……) 胡桃(たぶん負けてると思うけど、もしかしたら……) 憩(熾烈な戦いやなぁ) コンコン 憩「ん? 今日はえらい多いな。はーい、どうぞー」 衣「失礼する」ガラ 胡桃「あ」 初美「あ」 衣「あっ……お、お前らなんでここに……!?」 憩「今日は面白い日やわぁ。三人が同時に揃うなんて初めてやでー」ニコニコ 胡桃「そ、そういう衣こそ、放課後のこんなところに何の用かな?」 初美「ひ、引きこもりの衣には似合わない場所ですねー」 衣「ふ、二人も十分に似合わないと思うが?」 憩「衣ちゃんも身長測りに来たの?」 衣「衣『も』? ってことは……」ジロジロ 胡桃「な、なに?」 初美「なにか文句あるですかー……」 衣「ふっ」 初美「あー! 今鼻で笑いましたよコイツ!」 胡桃「私たちの中で一番ちっちゃいクセに生意気だね……!」 衣「何を言う! お前らなんかに遅れを取った覚えなどない! 寝言は寝て言え!」 憩(小学生の喧嘩にしか見えない……) 胡桃「遅れは取らないとか言っちゃって……見た目でも衣が一番『こども』なのは明白なのにね」 初美「その通りなのですよー。衣ほど乳臭い高校生なんてこの世に存在しないです」 衣「そんなことはない! 衣が一番お姉さんだ! てかこども言うな!!」 憩「まあまあ三人とも落ち着いて。身長のことで熱くなんのは分かるけども」タハハ 衣「憩! この中で誰が一番お姉さんに見える!?」 憩「へっ?」 胡桃「私だよね先生!? こんな小学生にしか見えない二人と比べたら一目瞭然だよね!?」 憩「え、っと……」 初美「何をふざけたことを言ってるですかー!」 初美「ちんちくりんで色気の欠片もない胡桃と衣に比べたら私が一番レディーに決まってます! そうですよね!?」 憩「」 衣「憩!」 胡桃「答えを!」 初美「聞かせてください!」 憩(きゅ、究極の選択や……先生としてウチはどういう答えを出せば……) 憩「えっと、そうやな……ここは分かりやすく、身長の高さで決めよか」 「「!」」 憩「ほら、ウチの主観が必ずしも正しい答えやとは限らんし」 憩「そういう不明瞭な尺度で順序を決めるのは良く無いから……」アセアセ 衣「確かに一理ある……」 胡桃「ちゃんとした基準がある方が言い訳もつかないしね」 初美「それじゃあそれでいいです。衣、身長ちゃっちゃと測ってください」 衣「ふっ、そんな強気でいいのか? 衣の身長を聞いたとき、泣く事になるのは貴様だぞ?」 初美「ほざくのも今のうちですよー……!」 胡桃「先生! やっちゃって!」 憩「了解でーす……」 憩(胡桃ちゃんと初美ちゃんの身長は同じやった) 憩(まあミリ単位の違いはあるけど、それは伝えてないから問題ないとして……) 憩(重要なのは衣ちゃんの身長やな) 衣「よ、よろしく頼んだ」ドキドキ 憩(もしこの子の身長が130cmより大きかったり小さかったりしたら……)ドキドキ 胡桃「……」ジーッ 初美「……」ジーッ 憩「うっ」 憩(128cm……) 衣「な、何センチだ?」 憩「……」 憩「……」ボソボソ 衣「本当に!?」 胡桃「!?」 初美「な、何センチですか衣!?」 衣「130cm! 2センチも大きくなった!!」 「「えええ!?」」 胡桃「ってことは……」 初美(まったく同じ……) 衣「ふっふーん、どうした二人ともー? 私の身長に高さにぐうの音も出ないかー?」 初美「な、何を言うですか! 私も130cmです!」 胡桃「ええ!? 初美も!?」 衣「ほ、本当なのか憩?」 憩「う、うん。全部本当だよ」 憩(衣ちゃんの身長以外は……) 胡桃「ってことは……」 初美「引き分けですねー……」 衣(二人とも意外と大きかった……成長してなければ負けていた……) 衣「ふ、ふっ、それでこそ我がライバルであり同胞だ」 胡桃「まさか衣と同じとはねー……なんかショックだなぁ……」 初美「私もですよー」 衣「失礼なー!」 憩(まあ、優しい嘘ってことで……) 憩「いやぁ、三人ともまったく同じ身長なんてびっくりやわー」 胡桃「ま、良い勝負だったね」 初美「次やるときは私が一番でしょうけどねー。運動してるし」 衣「成長期に入った衣に勝てるわけあるまい! 次来たときには3cmは伸びてるはず!」 胡桃「どうせ2年くらい測ってなくてその結果でしょ」 初美「なるほど。それなら納得です」 衣「そんなわけあるか!」 憩「まあまあその辺にしといて」 初美「しかし、なんか気が抜けちゃいましたよー……」 胡桃「まさかの展開だしね……」 衣「衣は身長が伸びて嬉しい!」 胡桃(素直に羨ましいなぁ……) 初美「そんじゃま、衣の130cm祝いに三人でどこか行きましょうか」 衣「おお! それは良いはみれす行こう!」 胡桃「なんでお嬢様なのにそこでファミレス?」 初美「お嬢様だからこそじゃないんですかー」 憩(ふふ、仲良しで微笑ましいわ……) 胡桃「っと、先生、今日はどうもありがとうございました。またよろしくお願いします」ペッコリン 憩「喜んで」ニコ 初美「次来る時はなんかお土産持ってくるですよー」 衣「ばいばい憩! また会おう!」 ―――――――――― 憩「昨日はなんだかんだで忙しかったなぁ」 憩「一日誰も来ないときもあるし……今日はどんなもんでしょう」 コンコンコン 憩「お、3限目にして遂に」 憩(しかもこのノックは……) 憩「どうぞ、園城寺さん」 怜「こんばんは。ノックで分かるとは、先生は流石やなぁ」 憩「アンタが一番保健室によう来るからな。んで、今日はどないしたの? はい入室確認書」 怜「今日は、まあ……こんなところで」カキカキ 憩「……持病て」 憩「せめて症状くらい書きなさいよ」ハァ 怜「別にええやん。ウチと先生の仲やし」 憩「サボりやったら帰って欲しいんやけどもなー」 怜「そんな殺生なこと言わんとってや。藤田先生の理科がウチには難解過ぎて、頭痛が酷くなったんや」 憩「藤田先生にそのまま言っときますわ」 怜「やめてー」 憩「ふふ。ま、いつもの場所空いてるから、寝ていき」 怜「おおきに」 ――――――――― 怜「……なぁ、憩」 憩「学校でその呼び方はやめて欲しいんやけど……」 怜「ええやん。どうせウチら二人きりやし」 憩「はぁ……」 怜「ところで、なんかナース服変わってない?」 憩「!」 怜「図星か」 憩「まさか気付かれるとは……」 怜「ウチで気付かんかったら誰も気付かんやろ」 憩「ふふ、まあそやろな」 怜「スカートの丈短くなってるよな?」 憩「うっ」 怜「寒くなってくる季節やのにまたなんでやろ、思って」 憩「……別になんでもええやろ。黙って寝とき」 怜「ええー、気になるやん。教えてや。誰かに色目使ってたり?」 憩「そんなことしてません」 怜「またまたー。でも憩と仲良い人なんてパッと思い浮かばんしなぁ……ウチくらいしか」 憩「と、友達少ないみたいな言い方やめてくれへん?」 怜「だって本当のことやん。年の差結構あって、先生らとも心の底から打ち解けてる雰囲気なさそうやし」 憩「それは怜が先生らと過ごしてるウチを知らんだけや」 怜「……へぇ」 98 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします 2012/10/14(日) 10 42 33.78 ID IE4Q/Mkh0 憩「先生らの中でもここによう来る人はおるから、その人らとは仲ええつもりやでー」 怜「例えば?」 憩「恒子さん……じゃなくて福与先生とか、えり……じゃなくて、針生先生とか」 怜「ふーん」 憩「あと誰やろ。あー、理事長とか三尋木先生もたまに来るわ」 怜「あの二人が……想像できん……」 憩「スクールカウンセラーは生徒以外の相談にも乗るからなー」 怜「……どんな話すんの?」 憩「えらい突っ込んでくるんやね。らしくないやん、園城寺さん」 怜「その呼び方やめて」 怜「二人きりなんやから、いつも通り怜って呼んでや」 憩「ウチは公私混同はせえへんの。社会人の常識や」 怜「むかつくわぁ……年下のクセに……」 憩「……何度も言っとるけど、年齢について他の子に話したら怒るからな」 怜「ウチと憩だけの秘密やな」 憩「先生方は知っとるけどな」 怜「……ホンマ、おもろないこと言うんやなぁ」ハァ 憩「本当のことやからねー」 怜「……寝るわ」 憩「おやすみ」 ―――――――――― コンコン 憩「はーいどうぞー」 「すみません先生、ちょっと擦りむいちゃって……」 憩「あらら。とりあえず見せてくれる?」 怜(憩はいつも通りやなぁ) 怜(ウチと接するのも他の子と接するのも、大して変わらずに……) 怜(……特定の生徒に対してえこひいきすんのはアカンやろうし) 怜(公私混同せん、ってのも立派やとは思うけど) 怜(……やっぱりおもろないなぁ) 怜(ウチと憩、二人だけの空間に誰かが入ってくるのも気に食わんわ……) 憩「はい、出来上がり♪」 「ありがとうございました、先生」 憩「お大事にねー」 憩「ふぅ……」 怜「お疲れさん」 憩「こんなもんで疲れてたら身体もたんわ。てか起きたてたんや」 怜「さっきからずっと起きてるで」 憩「頭痛いんとちゃうかったっけ?」 怜「うーん、この枕固いからなぁ。あんまり良くはならんなぁ」 憩「そんなことばっか言って……」ハァ 怜「……今って何時?」 憩「うーんと……11時ちょうどくらいやから、授業終わるまであと20分ほどかな」 怜「そっか……」 憩「授業参加する気になった?」 怜「うぅー、元素記号がウチの前頭葉を襲うぅ……」 憩「なんやそれ」アハハ 怜「……なあ憩」 怜「膝枕してくれへん?」 憩「嫌です」 怜「辛辣やなぁ……」 憩「どこの学校に生徒に膝枕する先生がおるの」 怜「憩が第一人者やな」 憩「アホ言いなさんな」 怜「……そんなこと言わんとやってや」 憩「言ってるやろ。公私混同はせえへんて」 怜「……ええやん。ちょっとくらい。他の生徒と同列なんて、嫌や」 憩「あのなぁ……」 怜「なー。やってーやー。ひーざーまーくーらぁー」 憩「駄々こねない。それでも年上か……」 怜「……膝枕してくれへんかったら憩の年齢言うからな」 憩「なっ」 怜「本当はきゃぴきゃぴのセブンティーンや言いふらしたる」 憩「……そ、そんなこと言ってもやらんからな」 怜「うぅ……憩のアホ……」 憩「アホはと……園城寺さんでしょ。そんなに元気やったら教室戻りなさい」 怜「あぁ、貴重な時間が……次の時間も休もかな」 憩「こら」 怜「膝枕してくれるまで絶対に動かへん……無理やり連れてこうもんなら教育委員会訴えたる……」 憩「……今日はどうしたん、我がままばっか言って。お利口さんな園城寺さんらしくないで」 怜「憩がそんな呼び方でウチのこと呼ぶからや」 憩「保健室ではいつもこうやろ」アキレ 怜「……アホ」 憩(学校外では頼りになるお姉ちゃんやのに、どうしてここまで変わるのか……) キーンコーンカーンコーン 憩「あ、チャイム」 怜「……」 憩「動く気なして」 怜「……学校終わるまで動かんもん」 憩「……はぁ。ホンマ、しょうがないんやから……」 怜「!」 憩「……4限目のチャイム鳴ったらすぐに帰るんやで」 怜「うん……」 憩「はぁ。短い時間でも居留守使うなんて、養護教師(保健室の先生)失格や……」カラン 出張中 怜「鍵も締めて」 憩「当たり前や……」 怜「憩、早く」 憩「はいはい」トサッ 怜「……やっぱり、丈短い。太ももの面積広なってる」 憩「別にええやろ。……ウチかってたまにはそういう気分になるの」 怜「セブンティーンやもんな」 憩「うるさい」 怜「それじゃあ、失礼するな……」 憩「っ……」 憩(やっぱこのくすぐったい感じ馴れへんわ……) 怜(憩の膝枕……久しぶりや……) 怜「はぁ……気持ちいい……」 憩「チャイム鳴ったら終わりやで」 怜「そんな寂しい事言わんとってや……あったかいんやから……」 憩(うぅ、いくらプライベートで親交が深いとは言え、一人の生徒と先生がこんなことしてるなんて……) 怜(この背徳感というか、学校でみんなに内緒で憩とこういうことしてる、ってのがたまらんわ……) 怜(校内屈指の人気者、荒川先生。そんな人の素性を知ってて、下の名前で呼んでるのはウチだけか……) 怜「ふふ……」 憩「はぁ……」 怜「……なぁ。憩」 憩「なんですか」 怜「下の名前で呼んでや」 憩「これ以上は何も出来ません」 怜「ケチ」 憩「十分大盤振る舞いしてるつもりですけどもー」 怜「呼んでくれるまで離さへんから」ギュッ 憩「なっ」 キーンコーンカーンコーン 憩「ほ、ほら、チャイム鳴ったで! 約束守って!」 怜「嫌や」 憩「と、怜!?」 怜「別にええやん。昼休みまで……」 憩「あ、あのなぁ」 怜「ええやん、憩も一緒に寝よ」グイッ 憩「きゃっ……ちょ、ちょっと……!?」 怜「おやすみー」 憩(結局昼休みまで付き合う事になりましたとさ) ―――――――――― 憩「はぁ……酷い目に遭った……」 憩「おかげで午前中に終わらそうと思ってた仕事残してまうし……」 憩「今日は残業かもなぁ……」 洋榎「失礼しまーす……」ガラッ 憩「はいはい……って愛宕さん。珍しいね、愛宕さんが授業中に保健室やなんて」 洋榎「体育の授業中にちょっとぼーっとしてもうて……」 憩「ぼーっと? ……とりあえず、どこ怪我したの?」 洋榎「この辺にデカいたんこぶが……」 憩「あっちゃー。また派手にやったなぁ……軽い打撲かもやでこれ」 洋榎「とりあえず冷やしといたら治る感じのアレやないの?」 憩「まあマシにはなるけど……でも病院行くほどじゃないかな」 洋榎「そらよかったわー」 憩「はい、氷。とりあえずこれ当て続けて」 洋榎「ほーい。って冷めたっ……こういうのって氷持ってる手が痛くなってくるよなー」 憩「あるあるやねー。タオルあげるわ、これ使って持ったらマシちゃう?」 洋榎「さすが憩ちゃん。至れり尽くせりやで」 洋榎「ところで。授業戻ったらアカン?」 憩「うーん、出来ればここで安静にして欲しいかなぁ」 洋榎「そっか……んじゃあそうするわ」 憩(なんか、聞き分けが良い愛宕さんって不気味やわ……) 憩「で、何やっててこんなんなったの?」 洋榎「ソフトボールやな。フライ取り損ねて」 憩「愛宕さんが?」 洋榎「情けない話やけどもなー」 洋榎「まあウチも人間やから。フライの一つくらい取り損ねるで」タハハ 憩(信じられない……体育の授業で初心者が打ち上げるようなフライをあの愛宕さんが……) 洋榎「ふいー。冷たい冷たい」 憩(妙に大人しいというか、しおらしい雰囲気も気になるし……ちょっとお話してみようかな) 憩「最近ソフトボール部はどんな感じ?」 洋榎「まあ基本的には普段と変わらず……やけども」 憩「?」 洋榎「副部長がここ最近めちゃくちゃ不機嫌やなー……」 憩「ソフトボール部の副部長といえば……末原さん?」 洋榎「そうそう。ちょっと前に面倒なことがあって、それ以来なぁ」 憩「それは部外者が訊いてもいい感じの話?」 洋榎「もちろん。普通やったら笑い話にもならんくらいくだらん話やで」 洋榎「ただ、どうしてかそれが恭子の逆鱗というか、なんか気に入らんことに触れたらしくて」 憩「何があったんか訊かせてや。面白そう」 洋榎「えっとな……」 ――――――――――― 憩(簡潔にまとめると、生徒会長……もとい竹井さんの悪ふざけで愛宕さんがキスされて、その現場を見られたそうです) 洋榎「まあ確かにウチが目撃した立ち場としても、練習が始まってるにも関わらずそんなふざけたことしとる部員がおったら蹴っ飛ばすと思うわ」 洋榎「ただ、それにしては尾を引きすぎてるというか……ウチとしてはいつまでそんなくだらんこと引きずんねん、って感じで……」 憩(うーん、これは末原さんが憤慨するのも無理はないかなぁ……) 憩(てか竹井さん……あの子も本当に厄介というか、面倒ごとを起こすというか……) 洋榎「なぁ、どう思う憩ちゃん? いくらなんでも怒りすぎやと思えへん?」 洋榎「一週間前くらいから今までずっとやで。口聞いてくれへんし……」 憩「ウチは末原ちゃんの気持ちわかるかなぁ」 洋榎「えっ……ほ、ホンマに? なんで恭子はそんなに怒っとんの?」 憩(洋榎ちゃんは鈍感なんかなぁ……結構賢そうに見えるけども、恋愛は別なんかな?) 憩「自分が何とも思ってない人がそんなことしてたら、何やってんねんコイツ、くらいで済むんやろうけど……」 憩「末原ちゃんにとって愛宕さんはそうじゃなかったってことやなー」 洋榎「ウチの部長という立場がまずかったんか……」 憩(うーん、そうじゃないねんなぁ)アハハ 憩「まあでも、それも半分くらいは理由になってそうやねー」 洋榎「半分くらい?」 憩「末原ちゃんはソフトボール部一筋やから、めちゃくちゃ部を愛してると思うねん」 憩「で、その愛する部の象徴とも言える愛宕さんは、生徒会の役員でもあるわけやん」 洋榎「うんうん」 憩「自分が末原ちゃんの立場としたら、なんかそれだけでも嫌じゃない?」 洋榎「む……」 憩「例えば、自分が本気で好きな人が自分のとこだけやなく、別の人らのところでも仲良さげ楽しげにしてるというか……」 洋榎「それは確かに気に食わんな。どっちかハッキリせえ! ってなる」 憩(うん、いやまあ、まさにその通りなんやけど……) 洋榎「つまり恭子は、ウチがソフトボール部と生徒会を掛け持っとるのが嫌なんか……?」 洋榎「でもウチは両方本気でやっとるし、疎かにしたことなんて無いって断言出来……!」 憩「うん、まさにその通り。だから愛宕さんが部と生徒会を両方やってることについては、末原ちゃんも認めてるし納得いってるねん」 憩(心の奥底ではこっち一本にして欲しいとか、そういう気持ちはあるやろうけど) 洋榎「じゃあなんで……?」 憩「今度はこれが部と生徒会じゃなくて、末原ちゃんと竹井さんに置き換えて考えてみ?」 洋榎「!」 憩(愛宕さんは恋愛ごとに鈍感なだけで、頭も良いし勘も鋭いから……) 洋榎「ひ、久に嫉妬した、ってこと……?」 憩「そういうこと」ニコ 憩「まあそれに加えて、もっとドロりとした感情もあるやろうなー」 洋榎「つまり、恭子はウチのこと……」 洋榎「……!!」 憩(やっと分かったか) 憩「まあ、そんな生徒会のボスでもあり恋敵でもある竹井さんと」 憩「ソフトボール部の部長で主将で、自分の好きな人でもある愛宕さんがキスなんてしてるとこ見た日には……ね?」 洋榎「……」 憩(愛宕さん可愛い顔しとるなぁ……相当動揺してるみたいやけど……) 憩「しかも愛宕さん、竹井さんに無理やりキスされたわけじゃないんやろ?」 憩「それってつまり竹井さんを受け入れたってことで、愛宕さんは軽い気持ちでやったことかもしれんけど……」 憩「生徒会とソフトボール部とか、末原ちゃんの気持ちとかもろもろ考えたら……相当まずいことしたと思うで?」 洋榎「……!!」 憩「まずはちゃんと謝って、自分がどう思ってるのかを話さんとな」 憩(しかし、竹井さんはホンマにトラブルメイカーやなぁ……何の目的でそんなことを……) 洋榎「……すまん、憩ちゃん。いや、ありがとう。頭思いっきりぶん殴られた気分やわ」 洋榎「恭子のとこ行ってくる」ダッ 憩「ちょ、まだ授業中……」 憩「行ってもうた……」 憩「思い立ったらすぐに行動で、愛宕さんらしいなー。安心したわ」 憩「これも青春、なんやろうなぁ……」 憩(……ウチまだ17やのに、なんでこんな年寄りみたいなこと……) 憩(後日談。愛宕さん3ーC乱入事件は後の伝説になりましたとさ) ――――――――― 憩「言うてる間に放課後かぁ」 憩(愛宕さんどうなったんやろ……) 憩(まあ、あの子も有名人やし、そのうち風の噂として耳に入ってきそうやな) コン… 憩(……ん? 今のは……ノック?) 憩「はーい、どうぞー」 尭深「失礼します……」ガチャ 憩「初めて……だよね? これぱぱっと書いちゃってくれる」ニコ 尭深「……」コク… 尭深「……」カキカキカキ 憩(これまた保健室には似合わないくらいに奥ゆかしい子が来たなぁ……) 憩(どういう用件だろう?) 尭深「どうぞ……」 憩「ありがとー」ニコ 憩(渋谷尭深さん。2ーB、茶道部……部長、か) 憩「茶道部の部長なんだね。二年生なのにすごいわぁ」 尭深「部員が少ないから、必然的に……」 憩「それでも何かの集団の長になるってことはすごいことやで。もっと誇ろう!」 尭深「……」 憩(顔赤いけど……シャイな性格なのかな?) 憩(保健室に来る子は黙ってれば勝手に喋りだすような子ばっかりだから、こういうこの相手は大変かも……) 憩(さて、用件はっと……その他……) 憩「えっと渋谷さん、今日はどういったご用件で保健室に?」 尭深「……猫」 憩「え?」 尭深「……付いて来て、欲しいです……」 憩「う、うん……?」 尭深「……」ギュ 憩「あっ、ちょ……し、渋谷さ……」 ――――――――― 憩(手を掴まれ連れ出されてしもた) 憩(見た目よりずっと積極的なんかなぁ……) 尭深「……」テクテクテク 憩「なぁ渋谷さん。一体どこに向かっとるの?」 尭深「……茶道部室」 憩「茶道部室……そういえば茶道部って部員何人くらいおるの?」 尭深「……私を入れて、5人くらい?」 憩「ぎ、疑問系で訊かれても困るかな……」 憩「そういえば、茶道部って普段なにしてるの?」 尭深「……お茶を淹れて、飲む」 憩「そっか……お茶飲むのかー……また用事は済んだらでいいから、私にも淹れてもらえるかな?」 尭深「……どうして?」 憩「うーん、どうして、か……渋谷さんが淹れたお茶を飲んでみたいから、かな?」 尭深「……」 尭深「……分かった。用事が終わったら、淹れる」 憩「ふふ、楽しみにしとくわ」 憩(相変わらず用事が何なのか分からないままやけど……ま、なんとかなるか) 憩(茶道部室に行けば他の子から事情を訊ける、はず……) ―――――――――― 尭深「着いた」 憩「ほえー。茶道部室ってこんな場所にあるんやね……」 友香「あ、尭深先輩帰って来た!」 美幸「やっと帰って来たよもー……」 尭深「二人ともただいま」 憩「えっと、お二人は……?」 尭深「茶道部の部員。この子が1年で」 友香「ども!」 尭深「この人が3年」 美幸「あ、よろしくお願いします……」 憩「あ、三年生いるんや……」 美幸「茶道部は代の移り変わりが早くて、この時期にはもー部長は変わるんです」 友香「まだ他にも部員はいるっすけど、今日は私ら三人以外休みです!」 尭深「……休みです」 憩「な、なるほど……」 憩(まあ、こういう部活は基本自由やからなぁ……) 憩「っと、で、用事って何かな? ウチ、渋谷さんに何も告げられずにここまで連れて来られてんやけど……」 友香「せ、先輩……」 美幸「尭深ちゃん、ちゃんと訳は話さないとー……」 尭深「……ちゃんと言った。猫って」 憩「猫? あ、そういえば……」 美幸「猫、だけじゃ普通分からないってもー……」 友香「えっと、説明させてもらうと、茶道部室の窓から見えるところに猫がいて、そいつが怪我してるんです……」 憩「猫が怪我……」 尭深「……足のところから血が出てて、動けないみたい。助けて欲しい」 憩「あー、なるほど。そういうことなんやなー」 美幸「説明不足でごめんなさい……」 友香「自分からも謝るんでー……」 尭深「……ごめんなさい」 憩「あはは、まあようあることやから気にせんとって」アハハ 憩(しかし、なるほどなー……猫、か……) 尭深「来て。案内する」 憩「おー、かなり本格的な和室やねー……」 友香「私らいつもここでお茶淹れたりしながらくっちゃべってます!」 美幸「茶道部ではお茶は立てる! 何度も言わせないでよもー……」 憩(なかなか雰囲気良さそうな部やな……全然どんな部か知らんかったけど……) 尭深「……あそこ」 憩「あー……本当だ。素人目で見ても酷そうだね……」 尭深「……助かる?」 憩「助ける、やで」ニッコリ 尭深「……!」 友香「カッコいい……」 美幸(保険の先生って、動物治せるのかな……?) 憩(さて、大口叩いたは良いものの、まったくどうすればいいんか分からへん……) 憩(保険の先生言っても、人と動物なんて処置の仕方絶対違うやろし……) 憩「……とりあえず、なんでも出来そうな人呼ぼか」 「「?」」 ――――――――― 戒能「ハロー、みなさんこんばんは」 憩「どうも、お忙しいところすみません」 美幸「か、戒能先生……」 友香「ど、どういうことでー……?」 尭深「荒川先生……?」 憩「いや、ごめんな渋谷さん。ちょっと専門外やわ。素人が下手なことするより、ある程度知ってそうな人のがええかな、と思って」アハハ 戒能「で、荒川先生。私は何をすればいいんでしょう? 猫の悲しげな鳴き声が聞こえますが……」 憩「いや、戒能先生、アフリカで獣医の助手してたらしいとかっていう噂聞いたから……」アハハ 友香「噂!?」 美幸「どういうことなのよもー……」 戒能「なるほど。あの猫は怪我をしているんですね。了解です。応急処置だけならなんとかしてみます。とりあえず、保健室からこれだけの道具を……」 憩「ふむふむ……」 友香「マジでー!?」 美幸「この人めちゃくちゃだよー……」 尭深「治りますか……?」 戒能「あの状態なら、早い段階で処置してちゃんとした獣医に見せればノープロブレムです」 尭深「……!」パァァ 憩(いやぁ、戒能先生は頼りになるなぁ……大抵のことは出来るって聞いたけど、まさか本当やとは……) ――――――――――― 憩(戒能先生の応急処置の後、猫は動物病院に連れて行かれました) 憩(怪我の具合は見かけだけで、戒能先生が大雑把な作業はやっていたので消毒とかしかすることはなかったそうです) 憩「……以上が猫ちゃんの経緯でした」 尭深「良かった……」ホッ 美幸「心配して損したよもー……」 友香「遅くまで学校に残ってる意味なかったですね」アハハ 憩「応急処置をした上に、動物病院にまで連れて行ってくれた戒能先生にあとで土下座せえなな」ニコ 尭深「……先生。本当に、ありがとうがとうございました」ペッコリン 美幸「ございましたー……」ペコ 友香「感謝です!」 憩「いえいえ。ウチ、なんもしてないし」 憩(割とホンマに) 尭深「……きっと先生を呼んでいなければ、私たちだけで無理に獣医に連れて行こうとして……」 尭深「猫の様態が酷くなっていました」 尭深「本当に、ありがとうございました」ペッコリン 憩「……自分の力じゃどうにもならんときに人のこと頼れるって結構すごいことなんやで?」 憩「ま、三人ともよく出来ました、ってことで」ニコ 尭深「先生……」 憩「さて、三人とももう帰り。日落ちとるわ」 美幸「本当だ……もーこんな時間……」 友香「ずっと猫の心配してましたからね」アハハ 憩「渋谷さん。今日は遅いから無理やけど、また遊びに行くからお茶お願いな?」 尭深「……はい」ニコ 荒川(……さて、ウチは残業やなー……こういう仕事と承知でやってますけども……) ―――――――――― 憩(昨日はホンマに忙しかったなぁ……) 憩(午前は怜に振り回され、午後は愛宕さん、立て続けに渋谷さんで……) 憩「それに関係あるかは知らんけど、今日は放課後まで特に何もなかったなー……」 憩(ウチが働かんでええのが一番幸せな状態なんやと思うけど……) コン コン 憩(そういう訳にもいかんよなぁ) 憩「はーい。いますよー」 咲「失礼します……」ガチャ 憩(1年生かな? 何にせよ初めてやなー……) 憩「どうもこんばんわ。早速やけど、この紙ぱぱっと書いちゃってくれるかな?」 咲「は、はい」 咲「……」カキカキカキ 憩(物静かな雰囲気の女の子やなー……いかにも文学少女って感じの……) 咲「あ、書けました」 憩「ありがとうね」ニッコリ 憩(……宮永咲。1ーB、文芸部) 憩(うーん。なんか、所々既視感のあるプロフィールやなぁ……) 咲「……」モジモジ 憩(しかし綺麗な字やなぁ……まあそれは置いといて、宮永……宮永……) 憩「あ」 咲「へっ?」 憩「もしかして、3年にお姉ちゃんおる? 宮永照っていう赤髪の」 咲「えっ……あ、は、はい。宮永照は私の姉です……」 憩「なるほどなぁ、通りで……」ジロジロ 咲「あ、あの……」 憩「いやぁ、ごめんな。しかし、お姉さんに似てるね」 咲「えっ……ほ、本当ですか?……」 憩「うん。顔立ちも面影あるし、髪型の特徴もそっくりやし、同じ文芸部やしな」ニコ 咲「そ、そうですか……えへへ……」 憩(この子もお姉ちゃん子なんやろうなぁ……そんなオーラが滲み出てるわ……) 憩(まあ、この学校の妹ちゃんはみんなお姉ちゃん大好きな子ばっかやけど……) 憩「で、今日の用事に相談って書いてあるけど……どんなお悩みで?」 咲「その……お姉ちゃんのことなんですけど……」 憩「宮永さんのこと?」 咲「じ、実は……私……!」 咲「お姉ちゃんのことが好きなんです!!」 憩「……」 憩「そ、そっか。えっと……それはどういう……?」 咲「……」カァァァ 憩(な、なんか。今までで一番ヤバげな雰囲気が……) 憩「う、うん、そうやな。ほな質問変えるわ」 憩「その好きは……その、ライク? ラブ?」 咲「……ライクです。たぶん」 憩「そっか……ライクか……」 憩(限りなく黒に近そうなグレーって感じやな……) 憩「まあ、お姉ちゃん離れでけへん子はいっぱいおるし、そこまでマイノリティでもないと思うで?」 咲「出来れば、お姉ちゃん離れはしたくないです……」ウルウル 憩(何か惹かれるモノがあるんやろうなぁ。松実玄さんにしろ、この子にしろ……) 憩「そっか……お姉ちゃん大好きなんやね」 咲「……はい」 憩「出来ればこの先も末永く今の姉妹関係でいたいと」 咲「……もうちょっと、距離が近くなっても大丈夫、です」モジモジ 憩「な、なるほど……咲ちゃんがお姉さんのこと大好きなんは分かったわ。それを前提にどういったお悩みで?」 咲「実は……最近、お姉ちゃんの周りにたくさん女の人が増えてきていて……」 憩「つまり、お姉さんがどこぞの馬の骨かも分からん誰かに取られるのが怖い、ってことかな」 咲「! ……すごいです先生、その通りです……」 憩「まあ、この会話の流れやったら大体分かるわ」アハハ 憩(ただ単に大好きなお姉ちゃんが取られるのが怖い、ってだけやったらええんや けども) 憩(この子の場合、何かそれ以外の、ただならぬ理由がありそうなオーラが……) 咲「先生、私どうしたらいいんでしょう……?」ウルウル 咲「お姉ちゃんがいなくなったら、私……!」 憩「うーん、正直に言うと、そない心配せんでも大丈夫やと思うで? あの宮永さんが誰かとお付き合いしてる姿なんて想像でけへんし」 憩「そもそも誰かと付き合ったからと言って咲ちゃんを蔑ろにするとも思えんし」 咲「……蔑ろにされなくても、お姉ちゃんが誰かと付き合ったりキスしたりするなんて……嫌です」 憩「神聖なお姉ちゃんに気軽に触れられたくない、ってこと?」 咲「はい……」 憩(ちょっぴり病的な何かを感じるわぁ……)アハハ 咲「昔からの馴染みの人とか、私がよく知ってる人とかならまだいいんですけど……」 憩「ウチが知る限りじゃ、宮永さんの昔からの馴染みって弘世さんくらいかなぁ」 咲「菫さんは、はい。大丈夫です。お姉ちゃんとは幼稚園児のときからのお友達なんで」 憩「ほえー。あの二人そんな長かったんや」 咲「まあ、だからと言って私とかと特別仲が良いってわけでもないんですけど」アハハ 憩「他に宮永さんと付き合い長い人っておるの?」 咲「私と菫さんくらいに長いのは、この学校の1年生で私と同じクラス大星淡ちゃんですね」 憩「あのダンス部の元気な子?」 咲「はい。知ってるんですね」アハハ 咲「幼馴染みで家も隣で」 咲「昔からずーっと一緒に三人で遊んでたように思えます」 憩「そっかぁ。大星さんと宮永さんらがそんな関係やとは……」 咲「この高校に入ってから、お姉ちゃんにも同年代の仲の良い友達が増えてることを知って……」 咲「良い事だとは思うんですけど……やっぱり、私たちが知らないお姉ちゃんがいることは……すごく寂しいです」 憩「なるほどなぁ」 憩(なんか咲ちゃんの気持ちが分かってきたように思えるなぁ……) 咲「あ、そうだ。聞いてください先生、この前、お姉ちゃん知らない女の人にキスしてたんです……!」 憩(松実さんか……)アハハ 咲「私でもキスとかされたこと無いのに……酷いと思いませんか!?」 咲「あんなにも簡単に好きとか言って、キスして……羨ましい……」ブツブツ 憩(なんか羨ましい聞こえたような気が) 憩「そやなぁ……もしかしたらキスされてたその人、宮永さんにとってすごく付き合いが長くて」 咲「あり得ないです。お姉ちゃんにあんな知り合いいませんでした。断言できます」 憩(なんで断言出来るんでしょー……) 憩「えっと、それじゃあ、宮永さんが一目惚れしちゃった」 咲「そんなことあり得ません!!」 咲「……たぶん」 憩「はは、そこは自信ないんや」 咲「お姉ちゃんの気持ちはお姉ちゃんにしか分からないから……」 憩(所々理性的なのが救いやなー) 咲「お姉ちゃんがその人に一目惚れって、あり得ますかね……?」 咲「2年生の松実玄さん、って人らしいんですけど……」 憩(ある程度のことは調べてそうな雰囲気……)アハハ 憩「うーん、あり得へん話ではないんちゃうかな? 宮永さんも人間やし、松実玄さん可愛いし」 咲「そ、そんな……」 咲「……胸、ですか?」 憩「……え?」 咲「私が胸小さいからお姉ちゃんは……」ジワァ 憩「なんでそうなるの!?」 咲「淡ちゃんも小さいです……いや、私に比べればアレですけど、松実玄さんに比べれば……」 咲「それに引き換え私は……」 憩「さ、咲ちゃん落ち着いて。胸の大きさは関係ないと思うから……」 咲「じゃあどうして……?」 憩(まあ、そう言われるとこれと言った答えも浮かばへんのよねぇ) 憩「うーん、考えてもしゃあないし、お姉さんに直接訊いてみたら?」 憩「なんかきっと重大な事情があるんやって」 咲「キスしないと死んじゃう病気とか……?」 憩「いや、そこまで重大でもアホらしくも無いと思うけど……」 咲「でも、お姉ちゃんそういうこと訊くのは……」 憩「ちょっと勇気ない感じ?」 咲「はい……」 憩(宮永さんに関してかなりアグレッシブに動いてそうやのに) 憩(なんで直接ってなったら臆病になるんや……) 憩「……よし。ほんならウチが手伝ったるわ」ニッコリ 咲「えっ……? でもどうやって……」 憩「まあまあ。ちょっと待っといて」 憩「……」 キーンコーンカーンコーン 憩『3年A組宮永さん。宮永照さん。校内にいましたら、至急保健室まで来てください』 憩『繰り返します。3年A組宮永さん……』 ――――――――― 憩「さ、これであとは来るの待つだけやな」ニコ 憩(松実さんの相談に対してもケリ付けなアカンかったし、ちょうどよかったわ) 咲「お、お姉ちゃんがここに……!」アワワ 憩(急にそわそわし出すあたり咲ちゃんも分かりやすいなぁ……) 憩「ま、この際やし、思ってること全部ぶつけたらええで」 憩「もっと構えとか、あんまし知らん子とイチャイチャするなとか」 咲「そう、ですよね……ちゃんと気持ち伝えないと、ダメですよね……」 憩「うんうん♪」 憩(宮永さん、早く来てくれたらええけど……) ―――――――――― 咲「……来ない、ですね」 憩「う、うん……おかしいなぁ、帰ったんやろか」 咲「今日は文芸部あるので、学校にいるとは思うんですが……麻雀部の方に行ってるかもですけど……」 憩「……もしかして、迷ってるとか?」 咲「えっ」 憩「いや、あの子保健室に来るときいつも誰か側におったから……」 菫「失礼します」ガラ 照「失礼します……」 憩「あ、来た」 照「うぅぅぅ……」 憩(弘世さんに首根っこ掴まれとる……) 菫「申し訳ないです先生。遅れました」 憩「いや、全然大丈夫やで?」 菫「コイツ、呼び出された瞬間帰ろうとして」 憩「あらら」 菫「行けと言っても逃げそうな雰囲気だったので……無理やり連れてきました」 照「うぅぅぅ……」 咲「お、お姉ちゃん……」 憩「なるほどなー。ってことは、呼び出されることに対して心あたりがあるわけか」 照「こ、心あたりなんて無いです。私なにもしてないです」 菫「おまえなぁ……」 憩「まあ訊けば分かるでしょ。色々知ってそうな弘世さんもおるし」 憩「じんも……じゃなくて、質問にはちょうどええわ」ニコ 照「」 菫「しっかりと報いを受けろ。あんな連中集めてあんなことしておいて、何も音沙汰が無いわけがないだろ……」 照「うぅぅ……賢者はいつも愚者の犠牲になる……」 菫「殴るぞお前」 憩「まあ、質問するのは私やなくて咲ちゃんなんやけどね」 照「咲……?」 咲「うぅぅ……」モジモジ 憩「ウチらは気にならんように遠く行っとくから、お二人だけでお話して」 憩「さ、弘世さん。こっちこっち」 菫「は、はい……」 照(菫と先生がいなくなった………) 照(これは……チャンス……)ソローリ 咲「あ、あの……」 照「!」ビクッ 照「な、なに……?」 咲「お姉ちゃん一体何をして……?」 照「い、いや、ちょっと花を摘みに……」 菫「アイツ……」 憩「なんかもう見てて気持ち良くなってくるな」アハハ 咲「あの、お姉ちゃん。話があるんだけど……いいかな?」 照「は、はい……」 咲「と、とりあえず座ろうよ。ね?」 照「いや、花を……」アセアセ 咲「お姉ちゃん……?」 照「あ、後で行きます」 咲「……」 照「……」 咲「なんか、こうやって向かい合って話すって珍しいね」アハハ 照「そうだね……なんか悪い事したみたいな気分……」 菫(いやいやいや) 咲「その、ね。今日お姉ちゃんをここに呼び出してもらったのは、私なんだ」 照「咲が……?」 咲「色々と訊きたいことがあって……」 照「それは家では話せないことなの?」 咲「う、うん。淡ちゃんとかもよくいるし、ちょっと話しにくいと言えば話しにくいかも」 照「そっか……」 咲「えっとね……お姉ちゃんは、その、好きな人とか……いる?」 照「す、好きな人……?」 咲「うん……」 照「えっと、それはどういう意味の好き?」 咲「……キスするとかの好き」 照(キスするとかの好き……) 照「……うん。そういう意味なら、好きな人はいるよ」 咲「えっ……!?」 憩「そ、そうなんや……なんか意外やわ……」 菫「いや、アイツのことです。また何か意味をはき違えてそうな……」 咲「そ、それって……私の知ってる人?」 照「咲が知ってる人もいるよ?」 咲(えっ……どど、どういうこと!?) 咲「お、お姉ちゃん? 好きな人だよ?」 照「うん、好きな人」 照「咲のことも大好きだよ」ニコ 咲「!?」ドッキーン 菫「またあんなこと言って……」 憩「松実玄ちゃんが勘違いするのも分かる気がするわ……いや勘違いかはまだ分からんけども…‥」 菫(何の悪気もなく純粋な気持ちで言ってるんだから厄介なんだアイツは……) 咲(お姉ちゃん、私のこと大好きって……) 咲「あぅ……ぁ……」カァァ 照「どうしたの咲? 顔が赤い」スッ 咲「ふぁ!?」 咲(お姉ちゃんの手……ほっぺに……!) 照「熱でもある? 先生呼ぼうか?」 咲「だ、だだ、だいじょぶ……」 照(また赤くなってる……) 憩「なんか宮永さんってすごいんやね……」 菫「アイツが人見知りのおかげで被害は最小限で済んでますがね……」 菫(私も昔、本気で……) 咲「あ、あの……お姉ちゃん……」 照「なに?」 咲「お姉ちゃんは……私のこと、大好きなんだよね……?」 照「うん」 咲「それなら、その……」 咲「キス、して欲しいです……」ウルウル 菫(完全にネジを飛ばされてるな……) 憩(あっちゃー……これはまずい気が……) 照「うん、いいよ」ニコ 咲「……!」 咲(私、遂に……お姉ちゃんと……) 照(キスくらい言ってくれればいつでもしてあげるのに) 照「それじゃ、するね」スッ 咲「ま、待って! ここ、心の準備が……!」 照「ふふ、咲は可愛いね」チュッ 咲「ぁ……」 咲(おでこ……)プシュー 照「咲?」 憩「はいストップストップー……」 菫「尋問されて責められるはずがどうしてこうなるんだ……」 照「せ、先生に菫……いたんだ……」 憩「松実玄さんがあんな風になった理由がよう分かりましたわ……」 菫「自制出来ない分、竹井や園城寺よりタチが悪いぞお前……」 照「ふ、二人とも一体何を……」 咲「ふにゃぁ……」 憩(咲ちゃんの相談何一つ解決出来てないと思うけど、本人幸せそうやからこれでいいんかな……ってよくないか) 憩「宮永さん!!」 照「は、はい!」 憩「さっき弘世さんから訊いたで……? 宮永さんずいぶん面白い事やってたみたいやなぁ……」ゴゴゴゴ 照「ひっ!?」 憩「恋する乙女の純情な心を弄ぶような行為は教師として見過ごせません」 憩「反省文、400時詰め原稿用紙20枚分と明日から1週間校内清掃をすること」 照「そ、そんな……何も悪い事してないのに……」 菫「悪い事してる自覚がないのが一番悪いんだよ……」ハァ 憩「分かりましたか?」ニコ 照「あ、あれは高尚な研究であって……」 憩「分かりましたか?」 照「分かりました……」 憩「それとちゃんと松実さんに事情説明して謝る! 他の子も連れて来なさい!」 照「はい……」シュン 菫(あぁ、なんという常識人……)ジーン ――――――――――― 菫(その後、続いて呼び出しを食らった竹井と園城寺も仲良くお説教を食らった) 怜「委員長がチクるから……」セイザ 久「私は反省してたつもりなんだけどなー……」セイザ 照「賢者はいつの時代も愚者の犠牲に……」セイザ 菫(その後、各々謝罪に出向いたりしたのだが……それはまた別の話) ――――――――――― 憩「はぁ……宮永さん、気軽に人に好きって言ったりキスしたらアカンで?」 照「そんなことしてな……」 憩「してなかったら咲ちゃんはこんな風にはなりません」 咲「……ふふっ」ポケー 憩「……そういうことは本当に好きな人が出来たとき、その子だけにしてあげ」 照「私はみんなが本当に好きです」キリッ 憩(いっぺん襲われるかなんかせな分からなさそうやなこの子……)ハァ 憩「まあええわ。いつか身を以て学ぶときが来るから……」 憩「宮永さん、咲ちゃんと一緒にもう帰り。これからはアホなことしたアカンで?」 照「はい。……咲、咲」ペチペチ 咲「ふぇ……? あ、お姉ちゃん……」ポケー 照「帰ろうか」ニコ 咲「うん……」ニヘラ 憩(これで解決……なんかな? いや、ウチではこれ以上何も出来そうにないし、被害出るとしても宮永さんやから別にええか……) 憩(もうこんな時間……明日も明日で大変そうやなー) 憩「ま、楽しいからええけどな♪」 続き
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(その1)お姫様抱っこで保健室に 親父書きが数えたところ、ハルヒスレSSまとめwikiには、キョンがハルヒをお姫様抱っこで保健室に連れて行く場面がある、あるいは誰かがそのことに言及しているSSが17 件ありました。 このなかで、親父書きが選ぶベスト・ワンは、涼宮ハルヒの負傷 (10-330)です。 このシーンを扱った最初期のSSであり、後世に与えた影響は少なくないと、勝手に想像します(「お姫様抱っこで保健室に」というシチュエーションは、ストック・シチュエーション化してますが、誰もが知っている/利用できるシチュエーションだからこそ、粋ないかす書きこなしが出てくるものです)。 この作品のすばらしさは、ハルヒとキョンの感情描写です。感情描写がうまいというよりもーーー言い換えるとどのように(How)感情描写されているかよりも、何故(why)そこでその人物のそうした感情を取り上げてるのか、に見るべきものがあります。 取り上げるべきタイミングで、取り上げるべき感情を描写することによって、感情が行動を引き起し、それがまた次の感情を引き起す、といった連鎖がうまく処理されています。 なぜこの場面でハルヒ/キョンはこうした感情を抱くのか、そして、そうした感情からどんな結果(行動)が引き起されるのか、という感情ー行動の連鎖がしっかりと結びついており、ストーリーをまるでそうなるのが必然であるかのように進める原動力になっています。 逆の言い方をすれば、ストーリーや特定のシーン(たとえばお姫様抱っこで保健室に連れて行く)を登場させるのために登場人物が動かされているのでなく、登場人物同士のやり取りから特定のシーンやストーリーが生まれてくるように感じさせることに成功しています。 この作品全体のトーンは、ツンデレ・メーター(別名SS糖度計)で計るとツン多めのあまり甘くないものですが、愛情に関わる表現を取り上げなくても、感情ー行動の連鎖が緊密なことから、その行動の意図が分かり、その意図から、二人が言い表そうとはしていない「隠れたデレ」が伝わってくる訳です。 涼宮ハルヒの負傷 (10-330)* 「ほんと、キョン君には妙に素直よねー」 「でもさ、キョン君も凄いよね。お姫様抱っこよ。お姫様抱っこ、普通出来る?」 ... そのハルヒの様子をみた保健室の先生は俺に「彼女はきっと不安なんですよ、彼氏らしく一緒にいてあげてください」と囁いた。 ... 髪をなでて欲しい (16-248)* 「とにかく保健室に行くぞ」 ハルヒはどうやら歩くことさえつらそうな様子だった。 しょうがないので、ハルヒをいわゆるお姫様抱っこで運ぶことにする。 「ばか、なにすんのよ、降ろしなさいよ」ハルヒは赤くなって抗議するが、それさえ弱々しい。 ... 56-921 無題* しかしこの状況でハルヒが立てるわけもなく、半ば強引にほら、あれだ、一般に言う「お姫様だっこ」とかいう状態にして、 ハルヒを持ち上げた。 周囲の目なんか関係あるか。俺は全力で保健室に走っていた。 保健室の扉を開ける。 誰もいない。 ... 58-265 無題* 2007年8月30日 ... お、さっきは真っ青だったけど今度は真っ赤だな。 うん、やっぱ保健室行こう! おい、俺ハルヒを連れて行ってくるから! ・・って、なんでお前らまで顔真っ赤なんだ? さ、行くぞハルヒ。 「ちょ・・・!お姫様抱っこは・・・!」 ... 58-742 お題* キョンはそう叫ぶと、固まっているあたしをお姫様だっこして教室から逃げ出した。 「ちょ……! なっ……おろしなさいよ! ... 思わず、保健室を出て行こうとするキョンに後ろから抱きついた。 「! お、おい! や、ヤバいって! お前……あ、当たってるって! ... 積極的すぎるキョン (59-812)* 周りを見渡した。なんと、キョンがお姫様抱っこしている。・・・・私を・・・ 「保健室行くか?」私は何も言えなかった。 私は顔が真っ赤になってる(と思う)のに、キョンは顔色一つ変えない。 もうどうにでもなって・・・ キョンは保健室へと走った。 ... 66-スレ 小ネタ* 2007年11月2日 ... 部屋に着いた時点で真相を看破する古泉は、 「これは…治るような病気ではありませんね(仮病ですから)」 などと誤解を助長する台詞を言う。 その前にお姫様抱っこ(もしくはオンブ)で、激しく目立ちながら保健室まで急行は基本か。 ... 『やれやれ』 (76-798)* 動揺していた俺は、周囲の目も全く気にせずに、両手でハルヒの身体を横に向けて抱きかかえると一目散に保健室を目指そうとした。 はて、後で冷静になって思い返してみれば、これはなんというか、いわゆる『お姫様抱っこ』って奴だったのではないか? ... カミ様はご存知 (77-430)* さて、さっさと保健室へ行くとするか。 所変わって、保健室内。 俺がここまでどうやってハルヒを運んできたか、なんてことは、まあ皆さんのご想像にお任せする。と言ってもなんだかバレバレな気がするのは何故なんだろうな。 ああ、そうだとも。『お姫様 ... 『G』 (78-445)* 僕はこれから朝比奈さんを保健室まで運んで行くことにしましょう。あなたは――涼宮さんをよろしくお願いします」 と、実に自然な様子で古泉は朝比奈さんをお姫様抱っこするが早いか、廊下に出て行ってしまった。 ああ、それはまるでいつぞやの映画のワン ... 『恋の勝利』 (87-766)* 「涼宮さんが体育の時間に転んで怪我したら『お姫様だっこ』して保健室につれていったり。」 「キョンくんが他の女の子とお話してたら『あたしのキョンに馴れ馴れしくしないで!』って言っていたのね。」 「「本当にしょうがないカップルだね(なのね)」 ... Lack of Energy (89-415)* 気をしっかり持て! っていうか、とりあえず、保健室、連れてってやるから」 なによこれ? あたし――キョンに抱き上げられてる。いわゆるお姫様抱っこ状態。 気のせいか、何だかキョンがとても頼もしく見える。正直カッコいい。惚れちゃいそうだわ。 ... 体温計 (98-307)* 2008年9月19日 ... 「いいからすぐ保健室いくぞ!」 「熱じゃないってば~~~」 「すごいのねキョン君、体温計をくわえた時の舌の動きがいやらしくてドキドキしてる涼宮さんに自分がくわえてた体温計をくわえさせて間接キスした上にお姫様だっこでつれてっ .. Dialogue VI 『恥ずかしい』 (98-442)* おい、これから保健室まで行くぞ」 「って、バカ! あたしなら別になんとも……」 「動くなハルヒ! 無理はするなよ。今すぐ俺が……」 ... 涼宮ハルヒが彼に『お姫様抱っこ』なる行為を要求したところ、彼がそれを拒否。その理由は……『恥ずかしい』から」 ... お題「体育祭・アイコンタクト」 (99-728)* それを見たキョンが全速力でハルヒに駆け寄って、お姫様抱っこで保健室に連れて行くのか当然、全校生徒や保護者に見られてるけど、ハルヒの事しか頭にないキョンは何も気付かない翌日からは街中で2人の事が、色々と噂になっているだろう ... 107-スレ 小ネタ* ハルヒ「・・・でも膝すりむいた位でお姫様だっこで保健室に連れて行くのはやりすぎ。」 キョン「そうか?俺は気にしてないが。」 ハルヒ「・・・このエロキョン。」 5組の皆さん 一同『いい加減にしろ!バカップル!』 ...