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本稿では、アーケード版とドリームキャスト版を併せて紹介します。 判定はアーケード版が「賛否両論」、ドリームキャスト版が「判定なし」です。 燃えろ!ジャスティス学園 概要 特徴・前作からの変更点 評価点 問題点 総評 燃えろ!ジャスティス学園 (DC) 概要(DC) 「燃えろ!熱血青春日記」のシステム 評価点(DC) 賛否両論点(DC) 問題点(DC) 総評(DC) 余談 その後の展開 燃えろ!ジャスティス学園 【もえろ じゃすてぃすがくえん】 ジャンル 格闘ゲーム 対応機種 アーケード(NAOMI) 販売・開発元 カプコン 稼動開始日 2000年12月 プレイ人数 1~2人 判定 賛否両論 ポイント グラフィックやシナリオの向上、駆け引き要素も満載キャラクターの性能差も激しく、バグも存在 ジャスティス学園シリーズリンク私立 LOH / 熱血青春日記2 / 燃えろ! 概要 『私立ジャスティス学園 LEGION OF HEROES』の続編。 ストーリーも前作の事件から1年後となっており、多数の高校を巻き込む謎の事件に生徒(+教師)たちが再び立ち向かう。 前作のマイナーチェンジ版である『熱血青春日記2』からのキャラクターや、本作からの新キャラクターも登場する。 特徴・前作からの変更点 基本的なシステムは前作を引き継いでいるので、そちらも参照。 プレイヤーキャラクターが2人から3人へ変更 2本以上の先取制では1戦終了ごとにメインの使用キャラクターを変更する事が可能。 パートナーキャラクターは「愛と友情のツープラトン」や「正義と勇気のスリープラトン」等で戦闘中にサポートする。 根性ゲージの変更点 前作では9本までゲージストックが可能だったが、本作では最大ストック数が5本に減少した。 「愛と友情のツープラトン」の変更点 パートナーが2人になったため、弱PKでパートナーAの、強PKでパートナーBのツープラトンを選んで発動できるようになった。 前作までは発動時に打撃に対して無敵だったが、本作ではスーパーアーマー状態となり、打撃で潰されることはないが少しダメージを受けてしまう。そのダメージで体力が0になった場合、当然負けになる。 前作までは後出しでツープラトンを出すことで後出し側が一方的に打ち勝つことが出来たが、今作ではスーパーアーマーへの変更および後述の「ツープラトン返し」の導入により後出し自体が不可能になった。 「ツープラトン返し」 「愛と友情のツープラトン」を当てた際に、当てられた側が一定時間内に同じ強さのPKを同時押しすることで、根性ゲージを1本消費して発生する。 5秒間の間パートナー同士の戦闘が発生し(この際には必殺技やゲージ消費技、ハイジャンプは出せない)、ツープラトン返しを発生させた側が時間内に攻撃を当てる事が出来ればツープラトンを止める事が出来る。 ツープラトン使用側が攻撃を当てた場合や、時間内にどちらも攻撃を当てる事ができない場合にはツープラトン返し失敗となり、通常通りツープラトンに移行する。 ちなみに投げを決めた場合は、投げモーションに触れた時点で成功(失敗)となる。 ストーリーモードでは、ツープラトン使用側のメンバー数が2人の場合使用できない(3人目に攻撃を当てる必要があるため。)。 「正義と勇気のスリープラトン」 5ゲージ全てを消費して3人全員で攻撃する技で、こちらには上記のような返し技はない。また、前作のツープラトンのように発動時は打撃に対して無敵となる(このため、ツープラトンとかち合った場合、必ず打ち勝ってスリープラトンを決めることができる。)。 ツープラトンで繰り出される技は呼び出したパートナーに準拠するが、こちらは使用中のプレイヤーキャラクターの所属校によって技が決まる。太陽高校のみ2種類存在。 ゲージ全てを使うだけあって(相手の体力値次第で変動するものの)、4割~6割程度の体力を奪えるが、ゲージ効率は極めて悪いので無闇に出せない奥の手。投げに対しても弱い。 「エアバースト」の仕様変更と「ショートエアバースト」の追加 エアバーストは基本的に熱血コンボから繋げる事が出来なくなった。単発で当てないといけないため、主にスカリ反撃や、相手のスキの大きい技をガードした時の根性カウンターで狙っていく必要がある。 一部のキャラクターのみ熱血コンボの浮かせ方に気を付ければエアバーストを繋げる事も可能。 ショートエアバーストはエアバーストと異なり熱血コンボから繋げる事が出来るようになっているが、代わりに低く打ち上げコンボも長く繋がらないようになっている。 追加キャラ 新キャラの他に、前作家庭用初代と『熱血青春日記2』の追加キャラクターも全員参戦。 初代家庭用で追加されたアキラの兄の醍醐、外伝漫画に登場した隼人、『熱血青春日記2』で追加された流、ランはアーケード初登場となった。 ストーリーの舞台となる新たな高校として、女子校の聖純女学院が追加。前作で外道高校の所属だったあきらはこちらに転校、素顔状態がデフォルトになった。 前作のヘルメットバージョンは隠しキャラクター「パワードアキラ」として、外道高校所属で参戦。 前作のキャラクターの中では忌野雷蔵とゲストキャラクターのさくらのみ削除。 雷蔵に関しては一部の技が新キャラの九郎とヴァツ(バツに変装した九郎)に引き継がれている。 + 参戦キャラクター 下線付きは家庭用からの追加キャラクター、太字は今作での新規キャラクター。 太陽学園:バツ、ひなた、恭介、隼人、ラン、委員長、バーニングバツ(隠)、ヴァツ(隠) 五輪高校:将馬、夏、ロベルト、流(*1)、もも 外道高校:エッジ、岩、醍醐、ワイルド醍醐(隠)、パワードアキラ(隠) 聖純女学院:あきら、ザキ、ゆりか パシフィックハイスクール:ボーマン、ロイ(隠)、ティファニー(隠) ジャスティス学園:英雄、響子、九郎(隠)、雹(隠)、デモン雹(隠) 上記のほか、衣装違いのひなた2、将馬2、ボーマン2が居る。 評価点 グラフィックの向上 基板がPS互換基板であるZN-2からDC互換基板のNAOMIに変わったことで、前作の見た目がかなり粗いポリゴンだったのに対し、今作では当時としてはかなり高水準のポリゴンへとグラフィック面はかなり良くなった。 2Dグラフィックに相当近づいた形になったため、キャラ人気は断然本作のほうが高い。 シナリオ面 前作に引き続き王道の学園物としてのシナリオの出来は良い。 今作では学園ごとにシナリオが分かれており、場合によっては途中でシナリオ分岐があったりと何度も楽しめるようにもなっている。 シナリオ分岐を発生させるとシナリオで使用可能なキャラが増えたり、隠しキャラクターが使えるようになる。 条件を満たすと、正義の味方を潰して回るという王道に逆らうシナリオの敵側の学園シナリオも選べるようになる。 駆け引き要素 受け身やカウンター要素は健在。ツープラトン返しの追加もあって、戦闘中の駆け引き要素は多い。 操作性や爽快感も前作より向上している。 DC版との連動要素 ビジュアルメモリを持ち込む事で、DC版で作成したキャラクターをアーケードの対戦で使用可能。 問題点 キャラクターの性能差が激しい 特にももとロベルトは稼働当時猛威を振るった。 ももは小技が繋げやすい為やたらとコンボが繋がり、さらにエアバーストをコンボに組み込む事が出来る為、一つ一つは低火力のキャラクターでありながらコンボ火力は非常に高い。ゲージも稼ぎやすく、お手軽にツー(スリー)プラトンをコンボに組み込む事も可能。リーチのなさでけん制能力が低すぎる難点はあるが、共通システムでの立ち回りである程度カバーできるので、最終的にはリターンの大きさで猛威を振るった。 ロベルトは飛び道具のけん制能力や、ノーゲージで高火力コンボを出せるのが強み。発生の速い技のおかげで切り返し能力も高い。弱点という弱点も特に無く、ハイスタンダードなキャラクター。 上記以外も強キャラ、弱キャラの差は非常に大きい。 近年の研究の成果ではももは強キャラではなくなり、ロイ・九郎・響子・雹などが大幅にランクアップし、最上位キャラ争いに名を連ねている。ただし、いずれも要求されるテクニックがそれなりにあるため、ロイはともかく他のキャラクターは「初めて動かした人が使っても強い」キャラクターではない。 隼人も単純に強い。こちらはリーチや発生に優れ、単発でのヒット確認が容易な小足や、リーチの長い強Pからの1ゲージコンボが強力。このコンボを3回決めれば勝てるためプレイヤーからは「3回体罰(*2)すれば勝てるキャラ」とも。レシピも始動→強P→後ろ強P→完全燃焼アタックと単純のため、初心者にもしばしば勧められる。 英雄の「強空中強正波拳(*3)」をバックジャンプで逃げながら連射し、危なくなったら高性能の逃げ技である雷影蹴を使って逃げる。バツ、バーニングバツ、ヴァツでひたすらバックステップで距離を取りながら飛び道具を連射する、など、対処しづらい厨戦法もわずかながら存在する。 最弱キャラは委員長(*4)。通常技や根性カウンターの性能など光る点もなくはないが、低火力、低装甲、唯一エアバースト始動技なし等、意図的に弱くされている『ストリートファイター』シリーズのダンのようなキャラクター。ハンデや趣味(*5)でもなければメインとして使われる事はまずないが、ツープラトンの使い勝手が良い(*6)為、そこでバランスはとった模様。実際、サブキャラクターとしてはそれなりに使用されていた。 恭介の浮遊バグ 特定の操作をする事で空中に浮いたままにする事が出来、それを繰り返すことで手の届かない超上空まで逃げる事が出来た。 本体の位置判定は地上に残っている為、飛び道具を撃つと地上から出てくるが、食らい判定は見た目通り空中にあるので、ダメージを食らう心配のないまま飛び道具を撃ち続ける事が出来る。 対処法としては投げられ判定のみ地上に残っているので、投げれば地上に戻す事が出来る。また、ジャンプしたり攻撃を食らうなどで空中に浮かべば通常の空中状態に戻る。とはいえ、そこで浮遊バグの再入力が可能なので、あまり意味はない。 対処法を知らなければ分からん殺しをされ、対処法を知っていても逃げに徹されると投げるのも難しい…という事もあって、(仮にバグを使う気がなくても)恭介を使用されるだけで嫌な顔をするプレイヤーも多かった。 別衣装選択時のフリーズバグ 今作にも別衣装として「ひなた2」「将馬2」「ボーマン2」があるのだが、これらの別衣装を使用した試合後、キャラクターセレクトのカーソルが変な場所に移動してしまい、場合によってはフリーズを起こしてしまうというカーソル関連のバグがある。 総評 各種パワーアップが施された良質な続編と言えるゲーム。 ただし、シナリオ面などキャラゲーとしての評価が高い一方で、対戦ゲームとしてはゲームバランスに難があり、根性カウンターやツープラトン返しを読み合っての純粋な格ゲーとして楽しむ人もいたが、早期に一部キャラクターばかりが使用されるという状況になってしまった。 とはいえ、2017年現在も一部のゲーセンでは対戦コミュニティが存在しており、根強いファンも多いゲームでもある。 また、キャラクター人気が高い事もあり、続編やクロスオーバーでの出番を望むファンも多い。 恭介の浮遊バグ等も含め、もう少しバランス面が良ければ…と言ったタイトルである。 燃えろ!ジャスティス学園 (DC) 【もえろ じゃすてぃすがくえん】 対応機種 ドリームキャスト メディア GD-ROM 1枚 発売元 カプコン 発売日 2000年12月7日 定価 5,800円(税別) プレイ人数 1~4人 レーティング セガ審査 全年齢推奨 周辺機器 アーケードスティック、ドリームキャスト・キーボード、ぷるぷるぱっく対応 廉価版 ドリコレ2003年9月11日/2,800円(税別) 判定 なし ポイント AC版の大味な対戦バランスは相変わらず人気モード「熱血青春日記」はシミュレーションからボードゲームにモデルチェンジ 概要(DC) 『MVC2』と同じく、アーケードとの連動要素込みで同時期に発売された家庭用版。 AC版がDC互換のNAOMI基板だったこともあり、ゲームバランスやバグ等もアーケードほぼそのままである。 「燃えろ!熱血青春日記」のシステム 以下では本作でのエディットキャラクター作成モード「燃えろ!熱血青春日記」について述べる。 育成システムは今作ではボードゲーム形式になっている。 ボード上にはパラメータ変動や必殺技習得、単位獲得といった様々な効果のあるマスが配置されている。 また校舎1F~3F/屋上などエリアの設定もある。中でも「部室棟」はパラメータ変動幅が大きいエリアとなっている。 ターン数は40ターン。 各プレイヤーは順に移動やカード使用が可能。行動ごとにHPを消費し、HPが0になると1回休み。 ジャスキャラのいるマスに止まった場合、そのキャラクターを仲間にすることができる(3人まで)。バトルの際に様々な効果をもたらす。 ちなみに本編では不出場の雷蔵も登場し、仲間にはできないものの複数のパラメータを上げてくれる。 他プレイヤーのいるマスに止まった場合、バトルが発生する。 勝敗はルーレットで決まった3つのパラメータの合計値で決定される。 買ったプレイヤーは負けたプレイヤーから単位を奪うことができる。 単位は5×5のビンゴカードとなっており、列をそろえると様々な効果が出る。 40ターン終了後、各プレイヤーのキャラクターでAI対戦を行い、その結果込みで最終的な順位が決定される。 作成したキャラクターはビジュアルメモリに保存してアーケードでの使用が可能なほか、パスワード化して他プレイヤーとの交換も可能。CPUに使わせたときの必殺技の使用傾向も設定でき、パスワードにも影響する。 評価点(DC) 以下はDC版独自の評価点。 アーケード版からのほぼ完全移植 発売が同月であるため、ゲームバランスも含めアーケード版と遜色ない内容となっている。 そのためDC版で練習したコンボをAC版でもそのまま使用することができる。 ストーリー閲覧モードなどの家庭用ならではの追加要素 クリアしたストーリーはバトルなしでも自由に閲覧可能。 その他トレーニングや対戦といった定番のモードもある。 賛否両論点(DC) DC版特有の賛否両論点。 熱血青春日記の大幅な路線変更。 前作までの恋愛シミュレーションゲーム形式ではなく、ボードゲーム化したことでキャラゲーとしての魅力が大幅に低下した。 会話の内容自体は過去シリーズの雰囲気を踏襲しており選択肢も豊富に用意されているためバリエーションはあるのだが、学園生活1年間を描いた過去シリーズから学園祭の1日へと大きくスケールダウン。学園祭以外の話題はほとんど出てこない。 会話シーンも立ち絵から顔アイコンに変更されたため演出においても少々地味になっている。 ボードゲームになったことで複数人同時プレイが楽しめるようになった。 対戦格闘そっちのけで友達とボードゲームとして楽しむといった遊び方もできる。最終決戦の対戦アクションはコンピュータどうしの対戦となるため、格闘ゲームが苦手なプレイヤーでも対等に楽しめる。 2人以上でもプレイできるようになったことでジャスキャラたちの会話イベントをより多くの人に楽しんでもらえるようになったと見ることもできる。 1年分のイベントをこなす必要がなくなったためキャラクター作成モードとしての簡便さは向上した。 必殺技は過去シリーズではステータスによって数パターンの組み合わせの中から選ばれる仕様だったが、本作ではコマンドごとに用意された「必殺技マス」で任意で習得できるようになり自由度も向上した。なお、一切取らなかった場合の専用タイプや、全て完全燃焼アタックとなるタイプも存在する。 さらに多人数プレイが可能なのを利用し、育成したいメインの1人を育てるため他3人を捨て駒にして圧倒的に一人勝ちさせるといったことも可能。そのため、前作よりははるかに育成の計算がしやすい。逆を言うと、それくらいしないと強いキャラクターにし辛い、とも言える。 オリジナルキャラクターをアーケードに持ち込めるといった連動要素も。 このように、本作の熱血青春日記は「どう見るか」によって評価が大きく異なるものとなっている。 問題点(DC) 以下はDC版での新たな問題点。浮遊恭介などAC版と共通の問題点はそちらを参照。 「燃えろ!熱血青春日記」のキャラクター作成時のフリーズバグ 性別→所属校の順に指定する関係上、最終確認でキャンセルして選択しなおすことで「外道高校所属の女性キャラ」「聖純女学院所属の男性キャラ」という選択ができてしまい、該当の3Dモデルが存在しないためハードウェアレベルでのフリーズが起きる。 選びなおす際にカーソルの初期位置が以前の選択のままのため、本来不可能なこの2パターンでも決定できてしまう。選択順を逆にしてこの2校なら性別を選べる方で固定してしまう、もしくはこの順番でも選びなおす際の初期位置を太陽学園に戻すといった対策が取れたはずではある。 別カラーキャラクターがDLCとしての配信のみ 上述の衣装違いキャラクターはDC版ではオンラインでのDLC配信となっており、当時の環境で言えば入手のハードルは非常に高い部類だった。 公式サイトからのダウンロードの他、DC版『CAPCOM VS. SNK 2 MILLIONAIRE FIGHTING 2001』の予約特典として付いてきた『CAPCOM対戦ファンディスク』(カプコンの格闘ゲームのコンプリートデータが収録されたディスク)でも入手可能であった。 ネットワークのサービス終了後は当然公式サイトからのダウンロードは不可能であり、今となっては入手困難なファンディスクでしか入手する方法はない。 総評(DC) AC版の大味な対戦バランスはそのままで恭介の浮遊バグも修正されていない。 そのため、ガチな対戦ツールとしての評価は微妙だが、簡単な操作で爽快感のある対戦が楽しめるという点で友達とワイワイ遊ぶぶんには十分に楽しめる。 何より、魅力的なキャラクターたちや思わず笑ってしまうような技の数々はライトユーザーが近寄りにくい格闘ゲームというジャンルにおいて異彩を放っていたと言えよう。 その一方で、上記のようにキャラクターの魅力が非常に大きな評価点だった本シリーズにおいて「燃えろ!熱血青春日記」においてキャラゲー要素が大きくオミットされてしまったのは無視できない問題点といえる。 しかし過去シリーズにはない追加要素や評価点があるのも事実で、一概に悪化したと断言できるものではない。 対戦アクション・熱血青春日記のどちらも、良い意味でも悪い意味でも「深くは遊べないが広く浅く遊べる」といった作品である。 余談 ゲームバランスの問題だが、ロケテスト段階ではボーマンが目立って最強キャラだった。 そこでの結果を受け、製品版では大幅な調整により弱キャラとなってしまった。 だが主に対女性キャラ用の愛と友情のツープラトン要員としてボーマンをメンバーに加えている人もいたという(同様の理由で流を使う人もいたとか。)。理由は推して知るべし。 本作はバツが通常のバツ、偽者のヴァツ、バーニングバツと三種類いる。これら三人でチームを組むことも勿論できる。 バツとバーニングバツは細かい調整が異なるマイナーチェンジのコンパチだが、ヴァツは設定どおり九朗の要素が強い別モノ。 英雄の必殺技「雷鋭蹴(らいえいしゅう)」のボイスで、明らかに「雷鋭脚!!(らいえいきゃく)」と叫んでいる。 前作までは技名を叫ばず「でやぁー!」と叫んでおり、後の『NAMCOxCAPCOM』ではちゃんと「雷鋭蹴!(らいえいしゅう)」と叫んでいる。 発売当時のアーケードゲーム専門誌アルカディアによると、本作の没になったタイトル候補には「私立ジャスティス学園V」や「さらばジャスティス学園」「くたばれ!ジャスティス学園」などがあった模様。 本作でジャスティス学園が炎上していることから「燃えろ!」になったらしい。それにしても「くたばれ!」はどうなんだ。 その後の展開 本作を最後に長らく続編は出ていないが、外部出演等はちらほらある。ただ、主人公以外が抜擢される、参戦予定作がお蔵入り、せっかく出ても扱いが微妙等、バツは本作主人公でありながら外部出演では残念な扱いが目立った。 『CAPCOM VS. SNK 2 MILLIONAIRE FIGHTING 2001』には主人公であるバツ(ひなたともども恭介のスーパーコンボの演出で登場しているけど)ではなく、恭介が参戦となった。 しかしエアバーストの性能の調整が難しかったのか、製品版ではロケテストよりもさらに攻撃力が下がり、性能面では最弱争いをするレベル。一応コンボだけは多彩なのだが実戦的ではなく、付いたあだ名がコンボムービーでのみ活躍する男。 『NAMCOxCAPCOM』ではせっかくのさくらとの共演の機会にも拘らず英雄と響子のみの参戦。一応序盤のストーリーには絡み、リュウ・ケンとの作品を超えたスリープラトンもあるものの、性能面でもシナリオ面でもパッとしない結果に。 3D格闘『カプコンファイティングオールスターズ』にバツとあきらが参戦決定…したものの、ゲーム自体お蔵入りになってしまった。その後、同作の代わりに出た2D格闘『CAPCOM FIGHTING Jam』では既存グラフィックの流用が大半だった関係上『ジャスティス学園』粋がないので参戦できず。 マウスを使う異色のネット格ゲー『ストリートファイターオンライン マウスジェネレーション』にバツとアキラが参戦…したのだが、ゲーム自体の知名度がいまいち低く、早期にサービス終了してしまった。 『タツノコ VS. CAPCOM CROSS GENERATION OF HEROES』でバツが参戦し、当初は強キャラ扱いされていたが、最終的には対策が出来上がり最弱扱いに。 + 更に個別エンディングでは… 『タツカプ』内におけるバツの戦いは、バツ自身が眠っている間に見ていた夢という扱いになっており、同作の他キャラと違い他作品とのクロス的な要素も無い。 ただしこの夢が切っ掛けで、『燃えろ!』における隠しキャラ「バーニングバツ」としての覚醒に繋がった事が示唆されている。 『PROJECT X ZONE』にバツが参戦したものの、シナリオ面では空気(*7)、性能面でもエアバーストを再現した所為でクロスしづらいという使いづらいキャラクターに。 続編では作品の入れ替えも多く、ジャスティス学園はリストラ。その為、2023年冬現在、バツの外部出演はPXZがラスト。 『ストリートファイターV チャンピオン エディション』のシーズンVロードマップにて追加キャラクターとして、2021年夏に風間あきらの参戦が発表。同年8月16日に実装された。実に20年ぶりの登場である。醍醐もあきらの一部の技で登場する。 声優が名前繋がりなのか関根明良氏にバトンタッチ。演出で登場する醍醐は大塚明夫氏が続投している。 『ストV』では最上位じゃないにしてもそれなりに高い評価を得たため、「ジャス学キャラは出ても弱い」というジンクスは一応破られたか。
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一般 当たり外れが非常に大きいように感じる。 スライドや音声の使用にとどまらず、英語そのものへの勉強論などから先生方の個性が見られる。 + 先生一覧 一般 英語科大竹美保子先生 服部雅史先生 中須賀孝之先生 中島雅斗先生 中廣大先生 腰山俊行先生 山下裕矢先生 宮城 智彦先生 河合 太紀先生 加藤 吉博先生 八谷信先生 戸松治彦先生 野村克也先生 斎藤美紀先生 武山凪沙先生 酒向智子先生 冨永双葉先生 リッチー(Ritchie) ガジェン オリベ スコット(Scott) ババツンジーハリス ニック(Nich) デカ・キン ジョセリン(Jocelyn) ケイティ(Katy) 英語科 大竹美保子先生 単語マスター 言語学を学ばれていたようで授業では単語などの語源に触れながら解説を行う。授業前の小テストは英作文がメインで次の授業の始めに答案が返される。長文の内容とニュースの内容を絡めて話されることが多い。滝OG。南山大学出身であるが、名古屋大学を蹴ってわざわざ進学したらしい。掃除は5回までサボれる(実体験)。aikoに似ている。歌が上手い。エスト出版をとても推しており生徒の中には何か繋がりがあるのではと思っている者もいる。師が作るテストには一癖あり、解けない人には本当に解けない。ただし本質をついており入試の枠を超えた英語力が身につく。多分入試を作っておられるが良問が多い。犬山在住で、学生時代犬山駅のロッテリアでバイトをされていた。2024seiに姪っ子の大親友がいるらしく、少々ビビっている模様。 「アッびっくりしたーのアッ(uの発音の説明にて)」 「これもさぁ、何回目かわかんないんだけどぉ、、」 「dependはon!」 「広島大学、、、、旧帝ですね、、、」 「3年日誌出して」 服部雅史先生 神戸大学国際文化学部卒 優しい。とにかく優しい。生徒から慕われている。別名まさしぱぱ 滝OB。前述の大竹先生とは小学生の頃からの知り合いで、滝中高の同期である。 いいずなからキックバックを受け取っている(?) 競技かるた部の顧問とバスケ部の顧問を数年間隔で行き来しているが、かるた部の方がやりたいらしい(真偽不明)大学生の時に競技かるた部を友達と一緒に設立する程かるたは好き。 授業展開は文構造を重視するスタイルであり、英作文なども丁寧に見てくださるが、あまりに優しいvoiceのためか眠ってしまう学生もちらほら。発音が得意ではなく、RとLの違いを説明しなさっていた際、何もわからなかった。早口なうえ話している途中だんだん声が小さくなっていき、語尾が聞こえなくなるのがデフォルト。 とことんリスクを避ける性格があり、年度ごとの方針を同学年に在籍した他の英語教師に全て合わせる。 その結果最近は対訳シートをこよなく愛してらっしゃる。 神戸大学の英語は良問だと言っていた。 定期考査のリスニング音源を流し間違えリスニングの大問を丸々消し飛ばしたことがある。テスト監督をしていた学年主任の元へ説明しに来た時は死にそうな顔をしていて可哀想だった。 「〜〜〜。では、go」(モニターの問題を解かせる時) 「スイッチ、交代してください」 「ストーップ!ペンソーダーン」 「はい、殺しまぁす」(“はい、号令お願いします”が早すぎてこのように聞こえることが多い) 中須賀孝之先生 TGIFの精神を常に持っている金曜日の番人。 口調は「私にはこんな先輩がいます」や「このtheの意味ってやったよね共通認識やーん」、「君たちに先輩にこんな人がいます。」と言ってくる。滝のスペコンを作った張本人であり、そもそも滝の英語の授業の基礎を作った偉大なる人物。 ちなみに滝の内進のOB。中学は卓球部、高校は合唱部に所属していた。留学経験はもちろんのこと、様々な国へほぼ身一つで行っていたらしい。高校で現在の奥さんと出会う。ものすごいカープファン。カープのグッズはほぼ全て持っていると言っても過言では無い。ちなみに幼少期に一時期広島の離島に住んでいたかららしい。謎のデカいアタッシュケースを毎回持ってくる 師は昔担任だったクラス全員に禁煙できなかったら焼き肉を奢ると発言し出来なかったため奢る羽目になった。 焼肉屋を予約したまではよかったものの最後に割り勘にしてしまった。 肉が嫌いで、給食が嫌だったため中学受験し、滝に入学。 鶯谷に行ってしまった(でも絶対忘れない) 中島雅斗先生 竹岡先生をリスペクト滝の英語教師といえばこの人。生徒の指導そのものが上手で師が受け持ったクラスは体育祭、球技大会等で必ずと言っていいほど上位に君臨する。東大、京大志望の方は講座、添削のどちらかで必ずお世話になる。特定の生徒に英作文を黒板に書かせ、他の生徒の前で公開添削をしてくださる。人によっては地獄かもしれないが確実に力は着く。以前、中学の授業中は全て英語ですることをしていたが、後に意味のないことに気がつきやめる。教室にaとtheの違いがわかる本を置いているが今日まであの本を読破した者は観測されていない。学級文庫は自身の所有物であることを強調しているが、あまり面白い本は入っていない。というのも、師の本は全て学術的な本であり我々の拙い知識ではあまり楽しめない。文庫本などは少ないのだ。参考書マニア。名駅の三省堂に出没する。自身の授業をサブキャラと言われた時には落ち込んでおられた。電車が好きである。国鉄時代には生まれていないくせに国鉄を愛している。あさま号がお好き。様々な国に留学に行っており、その話を聞くのも授業の楽しみの一つ。教授の知り合いが多数いる。よく理科の荒先生とご飯に行っており、退院祝いと称し足が折れている荒先生を無理やり焼肉に連れていった。荒先生と前野先生とでラーメン同好会を運営している。とても生徒思いで、今年の入試の日には東大、名大、京大に出没した。体が3つあるのかもしれない。倉地先生と同期で、仲が良いように見える。でかい車に乗っており、ふかしている。昔酔った勢いで名駅のスタバに行ったところ、多数の滝生と遭遇したためスタバには警戒している。データを用いた進路指導に定評がある。スマホを使っている生徒を見つけても取り上げない。中等部ではバリバリ生徒にブチ切れ怒鳴り散らかしており、その怒鳴り声は同じフロアの全教室に響き渡っていた。しかし高校になってからあまり怒らなくなる。曰く、高校生に怒っても時間の無駄との事。単純に高校生は知恵をつけてあまり怒られないだけかもしれない。師曰く、様々な制度を改革したために1部から不満を買っているらしい。我々生徒からしてみるとどれも素晴らしいものであった。師が主導で行った夏の講座は過去最高の数だったとか。師のクラスは総じて模試の英語の成績が高いことからもその実力が伺われる。リモート授業の際、声がデカすぎてクレームが入った。 「ただ春の夜の淫夢のごとし。俺の現地発音も遂にはほろびねぇ。ひとへに、チェリーを捧げた、『あの女』に同じ。」 「なんか空気悪くない?」 「まぁぁぁぁぁ、、、、京大らしいねぇ」 「out of the question」(論外の意味で使われる) 「私はZ会ではありません。」 「お前は伸びない‼️」 「イキッてOne wex とか行ってる人いると思いますが〜」 中廣大先生 授業の際に机をスクリーンが見やすいように移動させる生徒は東大京大の合格率が高いという法則を発見。雑談のレパートリーが豊富。たまに家族の悪口を言うが、江南駅付近で仲良く歩いていたのを目撃されたことがあり、実は意外と仲が良いのかもしれない。また大竹先生が教師となるための模擬授業を行った時の傍聴役。ヘビースモーカーかつカフェイン中毒。以前は、普通に生徒に体罰を加えていたと言っている。 -現在確認されている雑談のタイトルを以下に記す。 岐阜大学の酔っ払った先輩の話 ウツボ身代わり事件の話←おすすめ CoCo壱10辛の話 北海道新婚旅行の話 大学時代のラーメン屋の話 JALにブチギレた話 娘の大学受験の英語の話 文化祭土下座事件の話 生徒会ブチギレ事件の話 車のエンジンで猫を殺してしまった話 家の裏の山火事で一家が燃えかけた話 柿拾いのバイトで脚立から落ちた話 飼い猫が逃げた話 娘の旦那が九州男児なのに酒が呑めない話 家のポストの中に蜂がいた話 嫁の飯が不味すぎて自分でツマミを作っている話 「オオケイ?」 「すてでぃぃすてっぷすとぅーらいつっを出してください」 「俺ちっちゃい頃な、ジャカルタにいてな」 「嫁さんね、、早く○んでくれないかな」 「よろしくお願いをします」 「はよ挨拶せんかたわけ」 部活やら生徒会やらを全部押し付けられていて非常に多忙らしい。一年中革新派の生徒と揉めている。あまり文化部に予算を割いてくれないのが原因かもしれない。 腰山俊行先生 引退なされた。滝学園の誇る「白老」先生。圧倒的な経験値を武器に、淡々と授業を進める。普段はとても温厚だが、たまに気分を害されている時はその穏やかな見た目に反して1番前で寝ている生徒の机を蹴り飛ばすことも。(半年に一度)「bald」の意味の説明でよく使われる。 「英作文は英借文です」 「aroundは違いますねぇ惜しい!」 「まぁこんな頭ですから、、」 「たいふーん!」 「ハイっ、ター⤴︎ゲット出してぇ〜⤴︎」 「○○行ってみよー」 「あれ、○○予習忘れちゃったのぉ〜?」 内職をしている生徒には直接注意はせず、その生徒以外の人全員に問題を解かせ内職に気づいていると言うことを伝える。 山下裕矢先生 アメリカケンタッキー州出身。滝OB。師曰く、何かと鳥に縁があるらしい。身長が低く、童顔のため学生に間違えられることがあるらしい(今年30歳)幼い頃からテニスに親しんでおり、現高校男子テニス部顧問。高校時代、テニスでは背の高い人間に勝つことができないと悟り、中須賀先生に憧れ教師になった。声が大きく、宮木先生の声はかき消される。(2クラス隣で授業をしていても聞こえる)帰国子女だがイギリス英語も学んだため、混ざっている。しかし発音がよいため、多くの生徒からの支持を獲得している。 昨年度結婚した。本人は隠すつもりで居たらしいがほかの先生がぽろっともらしてしまった。 熱血教師なため好き嫌いがだいぶ分かれるが、授業はとても分かりやすく好評だ。今年度高1の学年を中1から見ておりベテランの雰囲気を醸し出している。 悩みを抱えている生徒にはとことん真摯に向き合ってくれる。 仕事大好きテニス大好きの師はとても仕事がはやく、定期考査翌日に全クラス分テストが返却されることもある。(生徒は蔭でしごできと呼んでいる)OBのため学生時代から見てきた先輩の教師陣は師のことを「とても優秀な生徒だった」「とても優しくてリーダーシップのある子だ」などと称えている。 「俺、明後日結婚式やから明日休みます」などと自分から急に明かした。高い外車に乗り、仕事もできて、料理もできる師が唯一苦手なのは片付けらしい。いつもプリントが散乱している。 生徒に会うと「元気?」「疲れてるね笑元気ないじゃん笑」など言ってくる。質問対応もすごく丁寧で生徒一人一人に寄り添ってくれる人気の教師である。フランクな性格で生徒を下の名前で呼んでいる。 自ら過労死コースへ突っ走っている。 宮城 智彦先生 沖縄出身。初任2020sei高1その後一緒にグアムには行けず中学に行ってしまった。中学では現在2年生を担当している。日本語での説明はとても分かりやすいが英語の発音が悪いと一部生徒からは酷評されている。小テスト中に問題の日本語を読むため、集中できないなどの厳しい意見もある。 よく授業で「〜さー」と方言を多用しているが時の流れと共に消えつつある。 加藤先生と仲が良い 「リピートアフターミー」のタイミングが微妙 午後でも挨拶は「good morning」 沖縄県民のため、雪を生で見る機会が滅多になく、雪が降った際は興奮したそう。 2024年より中学野球部へ異動。 編集者は野球部ではないが、野球部のために努力されているのと聞くので、野球部のメンバーは感謝しているのではないだろうか 河合 太紀先生 愛知教育大学卒 加藤 吉博先生 ジャンケンルーザーニキ。サインを加トと書くのでカロトと呼ばれている。英語に親しみすぎて日本語に英語の発音が混ざっている、意識して聞くとちょっと面白い(慣れすぎて?分からない人も多数)。大体の発言の語尾が上に上がっている。授業内でペアワークをする時、ジャンケンで役割を決めるが、その時の「ジャンケンルーザー✋」が何故か頭に残る。モノマネがしやすい。 掛け声が大体「ハイ!」または「ホイ!」。 Mr.Nakasugaを尊敬している。 初めて師の職員室の机を見る者は机に貼ってある「今日も元気にSmileで!」にど肝を抜かれる。 カナダの大学へ留学していることやBMWに乗っていることが自慢 毎日香水の良い匂いを漂わせている。ビトンの香水らしい。 辞書は英英辞典を使う。 授業の文法の説明に必ず学年の先生を事実から勝手に話を膨らませ、無断で使用している。また、声がでかいので、2クラス先の授業が聞こえる。理科の師先生にスライドの文法の説明に師先生を使ってもいいかと聞いたら鼻で笑われたそう。 猫ミームにハマっていた時期があり、文法の説明時に猫ミームを多用していた。 女子テニス部顧問。テニス部の生徒にはヨッシーと呼ばれている。 国語科の長村とは離島のサウナまではるばる行くような仲。 滝で初めて来た年に教えた学年では、授業中に喋っている生徒を注意する際によく言っていた「ちょっとちょっと〜」を生徒が揶揄い過ぎてあまり言わなくなった。 掃除がダントツの長さであるため、師を知らない生徒は後輩などの情報から、「掃除が長すぎる先生」と認識されている。 他の先生曰く綺麗好きらしい。 朝礼では他愛ない(しょうもない)日常話が聞かされる また、テスト期間中は旅行に行くためによく休む。 たまに第三ボタンが空いている。 インスタ(鍵垢)が特定されている。 最近翻訳の国家試験を取ろうとしているらしく、なぜか歴史を勉強中。翻訳の技能に問題はない。 八谷信先生 謎のバナナを持ちながら授業をする。それを含めて全体的に猿っぽい人だ。 内職に厳しく、つい最近の授業ではブチギレて生徒のノートをバナナで打ち上げた。ペアワーク至上主義のため、何をするにもペアワークをさせてくるが、単語の意味などを確認させる時の時間が極端に短いため、8割の生徒は何も話さずに時間が終わる。 話を聞いていると眠くなるが、寝ると隣の人に迷惑をかける気がして安心して眠れない。 ペアワークで本文を読ませることが多いが、読むメリットを感じない生徒が大多数であるため、ほとんどの生徒が世間話をしている。 ペアワークの時役割を指定してくるが、稀にその指定方法が誰も幸せにならないもの(例 将来有望じゃなさそうな方の人)であり、あまり仲良くない人とペアを組んでいると気まずくなる。そんな時は沈黙が正義である。 「受験生なら知ってないとヤバいですよ」 「この単語、なんて意味?廊下側の人」 「出席番号が○○に近い人」 「靴のサイズが大きい人」 なおキレると何かしらの強い言葉を小声で呟くが、人語の暴言は言い慣れていないため、頑張って捻り出しても「どっか行けよ」「馬鹿馬鹿しい」「しょーもねぇ」程度である。 しかし、生徒思いの優しい一面もある。 師は、バレーボール部の顧問を長年勤めているが、本人は野球部出身のため生徒の練習になるように個人でたくさん練習をし、鋭いスパイクを打てるようになられた。また、教育熱心で休日も朝から晩まで部活に時間を費やし、時にはポケットマネーを出してコートを借りたり、備品を買ってくれたりと生徒のために尽くしてくださったこともある。勉学以外でも、生徒の人としての成長をサポートしてくれる思いやりのある人物である。 毎練習後アドバイスを求めると、親身になってお話をしてくださり、技術面以外でもスポーツを介して人として大切なことを気づかせてくださる。人との関わり方、挨拶や礼儀、自分で考えて打開する力など沢山のことを学ばさせてくださる。 但し、超絶鬼コーチなため、部活中に担架で運ばれていく生徒は少なくない。 エリマキトカゲ顔負けのガニ股である。 なお、面談週間の面談が五分くらいで終わる。終礼が終わるのが速いのでバスが混む前に乗ることができる。そうして我々が油断していたところで保護者と先生との面談で高3で唯一クラス全員を三者面談にした。当たり前だが阿鼻叫喚となった。 高3生になっても授業で扱った本文のコピペ出題や英語が全く関係ない社会や理科に関する問題を出すなど正気とは思えない行動を繰り返している。教師は趣味なのだろうか 戸松治彦先生 脳卒中で数年前に入院してから舌が回らなくなったらしい。s下のクラスを担当しがちだが、師の英語レベルは非常に高く授業はとてもわかりやすい。多くの生徒が内職したり寝たりしがちだが1度ちゃんと授業を聞いてみることをお勧めする。質問にもとても丁寧に答えてくれる。確信を持って言い切れないことは後で調べてから返事をしてくださる。何故かhaveをひゃぶと発音する。 野村克也先生 温厚な先生である。 haveをひゃぶ、whenをふぇん、whichをふぃっち と発音する。 「みんな満点取りますから!」とお願いすると小テスト前に単語を見せてくれることもある 斎藤美紀先生 斎T、斎ばぁ、みきちゃんなどと呼ばれている。動物性の商品は食べない。思想強め。心配になるほど足が白くて細い。 本人曰く猫と喋れるらしい。 コロナ禍の前からマスクを2重にしていた。先見の明があるのかもしれない。 授業の説明中はずっと数歩歩いて数歩下がるを繰り返している。滅多に注意しないため、ほとんどの人は寝てるか内職するかの二択。しかし師の英語レベルは非常に高く、理屈の通った授業を展開なさる。質問対応もとても丁寧で、手書きで説明されたプリント(参考辞書のコピー付き)がもらえることがある。あととても褒めてくれて嬉しい。 30年以上前の滝の卒業アルバムに担任として写っている師はとても美人である。 動物性の食品を食べず、ファストフードを負の食べ物と呼んでいる。風邪をひいたとき薬を飲んだら負けらしい。 たまに余談として人生を熱く語って下さる。 武山凪沙先生 中学1年生相手に試験でカレーの作り方を英語にして並べ替え問題を出したことがある。清楚版ブルゾンちえみ 酒向智子先生 英語の守護神 京大法学部卒。 呼び捨てやサコチコなどと呼ばれる。 現滝中3-E担任(2024) 基本穏やかで優しい。 また、名前の読み方は「ともこ」でなく「もとこ」である。絶対読んでもらえないらしい。 滝高校にいらっしゃる酒向先生の奥さんである。 宿題を出さない生徒には終わらせるまで絶対に逃さない。 呼び出しを無視したら走って追いかけられる。でも捕まることはない。女子から好印象。 冨永双葉先生 今年から滝にいらした。20代。 中学女子バスケ部顧問。 酒向先生と仲が良い。 常滑生まれ常滑育ちで、非常に地元愛が強い。 ちなみに名前の読み方は「ふたば」ではなく「ふたは」である。 ボブがとてもよく似合われている、笑顔が素敵な先生。 Scott先生が好みらしい。 Scottはボクシングが趣味であるため、師もボクシングジムに通うようになった。 リッチー(Ritchie) 本名は、リッチー・クローン(Ritchie Crone) ジョン・ウィックに似ている。ALT界の重鎮。他のALTの先生が数ヶ月から数年で交代していく一方で、リッチーだけは滝に骨を埋めている。オーストラリアのパース出身。かっこいいオージーイングリッシュを話す。同じ女性と2度離婚しており、現在は独身。娘さんがいらっしゃる。車に乗り込む姿はまるで洋画のワンシーン。滝研ではよくエナドリを飲んでいる。OWがお好き。 InstagramでRitchieと調べるとアカウントが出てくる。 ガジェン スタイルがとてもいい。イケメン。優しい。 オリベ いきなり消えてしまったが、理由は定かではない。 噂では、妊娠した説、実は痩せてケイティーになった説などなど。 スコット(Scott) 背がとても高い。 jocelynと並ぶと親子のようである。 スカートというあだ名で呼ばれることがある。 ババツンジーハリス ニック(Nich) 英3の授業中に盛り上がっていると生物の某先生に「うるさい」といわれ、その先生に「f○ck you!!」と言った結果飛ばされたといううわさが飛び交う。真偽は不明 デカ・キン 数年前のALT教師、デンマーク出身。髪の毛が薄めなユーモアのある教師である。 ジョセリン(Jocelyn) スカート丈が短い。香水の匂いが強い。 生徒のことをchildrenと呼ぶ。最近はkidsとも呼んでいる。 色白小顔美人で可愛い 一部の生徒からガチワトソンと呼ばれている。 字は筆記体であることが多数あるため読めない。 江南駅などで手を振ると振り返してくれる。 最近はワセリンと呼ばれている Scott先生と帰っている所をよく目撃されている 「いいですか!わかーりますか! たの⤴︎しい⤵︎ですか!」 ケイティ(Katy) 2年前に世界を旅したい(多分嘘)と言って母国に帰った。リッチーに引けを取らない身長で足がスラリと長く、スタイル抜群である。(生徒が数えたところ8等身は確実にあった、もしかすると9等身あったかもしれない。)アメリカ出身のブロンドで小顔の誰も勝てない圧倒的美女。その上性格もとても優しくて、いつも笑顔で話してくれた。絶対世界どこでもモテる。BTSのファンで推しはジミン。BTSの最盛期には同じくBTSファンの生徒と新曲の話題で盛り上がっていた。学校を去る際に生徒にサインを求められ、リッチーに貰ったBTSのカードにサインをして渡した。その時リッチーは「僕があげたやつじゃん」と言ってちょっとしょげていた。
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登録日:2021/06/05 Sat 22 07 08 更新日:2024/06/16 Sun 16 57 42NEW! 所要時間:約 4 分で読めます ▽タグ一覧 100カノ うさみみ かわいい それいけ!巻き寿静ちゃん むっつり サンリオ サークレットラブストーリー ヒロイン マスコット枠 主人公より先に立った項目 吃音症? 合法ロリ 君のことが大大大大大好きな100人の彼女 図書委員 天使 失語症? 好本静 小動物 幼女バーガーの片割れ 強風が吹くと吹き飛ばされる女 恋太郎の恋太郎を見た唯一の彼女 恋太郎ファミリー 文学少女 本好き 歌うだけで人を吹き飛ばす女 母との不和 毒舌 毒親育ち 涙腺崩壊 涙腺崩壊→初登場回と家族回 無口 王冠恋物語 番犬に庇護される侵入者 石見舞菜香 積極的 究極のか弱さ 結構暗い過去持ち 自然界最弱のミジンコウサギ 被食者の戦い方 複雑な家庭事情 語彙力の高さに定評がある人 読み上げアプリ 軽量 長縄まりあ 静指姫 類い稀なるあまりの弱さ 高校一年生 高校生 いつも優しく 膝に乗せてくれたり肩に乗せてくれたり あなたは本当に優しくてあたたかい人で そんな—— 大好きな恋太郎君と出会えたことが 私が生まれてきた中で一番の幸せです 好本(よしもと) 静(しずか)とは『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』のヒロインであり、愛城恋太郎の3人目の彼女。 CV:石見舞菜香(ボイスドラマ)/ 長縄まりあ(アニメ版) ◆概要 お花の蜜大学附属高等学校に通う高校一年の女子生徒。誕生日は11月1日 (*1) 。 図書委員を務めており、入学から一ヶ月程度しか経っていないにもかかわらず図書室内にある本は全て把握してある。 恋太郎と同じクラス(1年4組)(*2) 。 ◆容姿 クセっ毛の紺色の長髪が特徴的な小柄な少女。 制服時はブレザーではなくブルーグレーのベストを着ており、左上腕に図書委員のバンドをつけている。スカート丈は校則の模範そのままみたいな長さ。 私服時はお団子ヘアにしていることが多い。 ◆性格 恋太郎君だって言ってた…!! 「できるかなんて分からない」けど “精一杯頑張る”だけだって…!! 私もそう思ったからここに来たんだ!! 一人称は「私(わたし)」。 臆病で内気な性格をしており、それに加えて声を発することが苦手。 人と関わることができないあまり、本の世界にのめり込むようになっていった文学少女。 平時は自分が伝えたい内容に該当する手持ちの本の文章を指差し、それを相手に読んでもらって意思疎通を行なう、言わば書談をしている。 しかし、静自身はコミュニケーションを忌避していないもののビクビクした態度も相まって他者からはマトモに接してもらえず、母親(CV:米澤円)からはその会話方法を治すように体罰と言っても過言ではないやり方で叱られ続けており、トラウマレベルでコンプレックスを抱いていた (*3) 。 ただしこうした振舞いから普段使う機会が多い「ごめんなさい」は自然に喋ることができる。 こうした人生を過ごしてきたので、自己肯定感が著しく低い。 仲が深い面々の前でも(あるいはだからこそ)かなりの勇気が必要になるものの、歌うことは問題ない。 一方で、発声ができなくなったきっかけは明かされていない。魂シャッフル回の描写から肉体的な問題ではないとも受け取れるが、135話では乳児期や幼児期にもすでに吃音らしき症状が出ていた描写がある。 肉体的・精神的な脅威度は圧倒的ドベであり、あまりの弱さゆえ明らかな侵入者なのに番犬にすら庇護の対象にされたほど。 浮き輪をつけていても満足に泳げないし、肉体のリミッターが外れても恋太郎に追いつけずに転び、マウントを簡単に外される。 ただこの人とは反対に、基礎身体能力が低いのであってセンスの面ではそれほど壊滅的というわけではない模様。実際、プロのコーチや恋太郎の指導のもとでアイドルのステージパフォーマンスを練習した際には、最終的に目立ったミスもなくステージをやりきった。 また、一口が小さく必然的に噛む回数が増え、結果的によく噛んで食べているため顎の力は割と強く、フードファイト回でもしっかり活躍した。 なお、成績は上の下といったところ。かなり分厚い小説の文章を一字一句場所まで間違いなく覚えていることから記憶力は高いことがわかる。 笑う際はくすくすとこぼすように笑うのが愛らしい。ただし大笑いするときは声を出さず普段の会話方法で大笑いを示す異常者。 ◆恋太郎との馴れ初め 初登場は第3話。 図書室に来ていた恋太郎と同じ本に手を伸ばし、目が合ったことでビビーンと一目惚れをする。 恋太郎の問いかけに書談で対応しつつ、「恋愛小説が欲しい」という恋太郎のために図書室内の恋愛本を全てかき集めて以降、彼との交流が始まった。 当初は戸惑いこそあったものの、静の奇怪な話し方に恋太郎が何も気に留めずに「普通に」仲良く接してくれたこと、そして自分を頼ってくれたことで嬉しさのあまり恋太郎に幸せな恋心を抱いていた。 しかしある日、恋太郎には既に彼女が2人(羽香里と唐音)いて、それぞれからほっぺにチュー(?)を受けてイチャついている場面を見て失意の底に。 「こんな変な子と話してる時間なんて 誰にもあるわけないんだ」と、幸せな時間を自ら手放そうとする。 足しげく通ってくれていた恋太郎がぱったり来なくなったこともあり、そのままなかったことにようと、自然消滅的に忘れようとする。 しかしその後、静の沈んだ気持ちとは裏腹に嬉しそうに顔を出してきた恋太郎に一つの提案をされる。 それは静がいつも持ち歩いてる本「王冠恋物語(サークレットラブストーリー)」の内容をスマホの読み上げアプリに読ませることで「静が相手の眼を見て会話をできるようにする」という心がこもった提案だった。 恋太郎がしばらく顔を見せなかったのは分厚い小説一冊分の文章を徹夜でテキスト読み上げアプリに打ち込んでいたからだったのだ。 「それが一番いいことだとしても、声を出して会話をすることが(静にとって)どれだけ難しいことかわからないから、がんばって声を出せるようになろうなんて言えない」という優しさを受けたことで、本当は心にしまっておくはずだった——忘れようとしていた涙と本心があふれ、それをこぼれるまま恋太郎にぶつけた。 【好きです】 【ごめんなさい 気になさらないでください】 【返事が欲しいわけではないのです】 【あなたに許(•)嫁(•)がいることは知っています】 【ただ最後にどうしても伝えたくて…!】 この決死の想いを聞いて恋太郎は、それまで微かに心の中にあった「運命の人だから」「付き合わないと彼女は死んでしまうから」という義務感を捨て、ただひたすらに静の想いに答える形で、静と付き合うことを決意。 『私もあなたを愛しています』 【ですが私達は 愛し合ってはならない定め——】 『そんな運命などはね除けてしまえばいい!』 『共に行こう——』 静! 嬉しさと幸せのあまり滂沱の涙を流す静を優しく抱きしめる恋太郎。 こうして静は恋太郎の3人目の彼女になったのだった。 ◆恋太郎ファミリー加入後 と……言うわけで 好本静ちゃんを新しい彼女として迎え入れさせて頂いてもよろしいでしょうか 脳みそ腐ってんのかおめー!!!! 脳みそ!!!! 腐ってんのかおめえええええええええ!!!! 返す言葉もございません… ぷるぷるぷるぷるぷる 以降完全に本作のテンプレと化す「新しい彼女を迎え入れさせていただく」パートだが、静はその最初の事例であった。 そのためさすがにちょっとしたゴタゴタが起きたものの、恋太郎の「ハラを切るから」という狂気めいた覚悟と、羽香里の脳みそピンク、唐音の善性で解決。 ちなみに二人に紹介される時はかわいそうなぐらい恐縮して震えていた。そらね。 そして最初こそ控えめな性格と後ろめたさから遠慮がちな態度を取り、カノジョになった以上あくまで対等を望む唐音から叱責を受けるも、羽香里と唐音が非常に素敵な女性であると混じりっけのない称賛をし、だからこそ「恋太郎君に二人と比べられるのが怖い」……という理由であったため、その無垢で素直な性格と天然の愛くるしさをもって唐音と羽香里は見事ノックアウト。 それ以降は他のメンバー達からも部外者からも他所の家の番犬からも「守ってあげたい」欲求を著しく刺激する、可愛いナチュラル小動物キャラに収まった。 むしろ小動物が過ぎて年下のメンバーからも幼子扱いされている程。ぶっちゃけ合法なんたらの域である。 スク水が似合いすぎる体型のためか、一応唐音含めてナイスバティのカノジョ達には羨望の眼差しを向けていて、目を輝かせるような一面もある。 その愛くるしさに楠莉の調合した薬品でブーストがかかったカラオケ回では、静と(対策してくぐり抜けた)恋太郎を除く全員が ただただ純粋な可愛さ 「声を出して歌う静」という新鮮さとギャップ それがどれほど勇気がいることか知ってるから感じる健気さ といった可憐さのあまりカラオケ店の壁を突き破りバーストされちゃう程である。 なお、バーストされた彼女達は恋太郎が全員空中キャッチして救出したのでご安心を。 恋太郎の彼女が増えることに対しては、続く凪乃の時点で【我自身追加戦士の身故 異論などない】と受け入れている。追加戦士って言うな。そもそもどんな場面の台詞なんだそれ。 自分の立ち振る舞いを個性だと認めてくれて、自分らしく居座らさせてくれる恋太郎ファミリーのことは心の底から大好きで、加入当初に「もっと遠慮なくいていい」と励まされてからは遠慮することがいい意味で少なくなり、特に恋太郎とのイチャラブに関してはファミリー入りの初日のキスを皮切りに、割と自発的に動くように。その積極性には恋太郎や周囲も虚を突かれ驚くこともしばしば。 そもそも一目惚れした相手とはいえ自分の愛読書を初対面の異性に貸すのが初動な子であったので、案外こちらが生来の性格なのかもしれない。 日常の一コマでは大好きな人達に囲まれ、幸せそうに頬をゆるめてほわほわと笑う光景が見られる。 恋太郎に熱々にほだされて羞恥心と道徳心が消し炭になっている恋太郎ファミリーの中では比較的常識人寄りで、メンバーに危機が迫ったときは「どうにかしたい」思いが先行して飛び込むことが多い。 多い……が一生懸命が過ぎて己の非力さをも忘れ、飛び込んだはいいものの自滅してることもしばしば。 「なにやってんのだ?」 逆にメンバーが恋太郎の風呂をのぞこうとしたときは、ただひとり皆を止める立場に回っていた。そして布団で巻き寿司にされた。 ちなみにその結末として、静は破廉恥淫乱親子達を差し置いて、恋太郎ファミリー内で唯一恋太郎の陰部を目に焼き付けている。 【“キリン”さんが好きです。でも“ゾウ”さんの方がもっと好きです。】 折に触れて純真なことは描かれていたが、どうやら純真過ぎて周囲から浮くこともしばしばあり、学生だからと何の疑問も持たずプールデートで学校指定水着を着てから認識のズレに気づいたり、普通に人がいる時間帯に校内の廊下で異性(恋太郎)の肩に乗せられて微笑み合うという奇行行為を素直に喜ぶ精神性の持ち主。 ただしまったく世間一般的な感覚がないわけではなく自分の中で住み分けができているだけのようで、精神退行していた18歳が本来の年齢ではお人形遊びを恥ずかしがっているのに当事者として遭遇した際は、誰に言われずとも15歳の素できゃっきゃしてたことに赤面する場面もあった。 腹黒な羽香里のように策を講じて挑発しようとしたり、有利な展開に持っていったりする邪さは持たないものの、キスに積極的なことからもわかるとおり、恋人間の当然の幸せとしてそういうことにも興味津々。そういう意味でも純真な子。無垢であっても無知ではない。文学少女だしね。 なお前述のようにゾウさんを目撃した際は劇中トップレベルで赤面し鼻血を噴いて倒れているため、あまりに直接的にそっちに寄ると閾値を超え刺激が強くなり過ぎるようである。 既に読み上げ機能での意思疎通はとっさの笑い声として上げられるほど身についている。 【“高らかに笑った” “高らかに笑った” “高らかに笑った”】 「想像していたのと別の次元の何か」 「えっ わ…笑うのすら台詞(それ)なの!?」 【“悲しい哉 それが現実であった”】 しかしながら、勇気を振りしぼって助けを求めたときや、羽香里のピンチに無我夢中で駆け出した際にうめき声程度だが声を出している。徐々に前進している……のだろうか。 恋太郎からは現状、「静が自分から望めば全力で手伝うが、そうでなかったら絶対に強要しないし、発声を暗に促すような状況にも置かない」といったスタンスで見守られ中。 ◆王冠恋物語(サークレットラブストーリー) 作中に出てくる静の愛読書。筆者は本尾(ほんお)角夜(かくよ)。 大まかなあらすじは「イオ姫と騎士カマクルによる多くの困難と運命に阻まれた恋の物語」だとのこと。 作中ではまだ続刊しており、静が新刊を買うところも描写されている。 アニメの追加台詞によるとまだ電子書籍にはなっていないとの事。 壮大なファンタジー系の世界が舞台であるらしく、様々な登場人物が出てくる模様。そして静はそれらの台詞や地の文を一言一句暗記したうえで満遍なく読み上げアプリで使用するため、会話が苦手なキャラでありながらエッジの効いた台詞を切り返せるようになっている。 ちなみに恋太郎のことを台詞でハッキリ「狂戦士」と評したのは静。 静はあからさまな悪役やコメディリリーフの台詞も躊躇なく使っており、当人的には何でもない一言がギャップボケになっていることもしばしば。ファンタジー物には出てきそうにない単語も部分部分を継ぎ合わせて無理矢理再現するため、傍目には『王冠恋物語』のボキャブラリーが豊富を通り越してカオス化しているように見える。 小説版「君のことが大大大大大好きな100人の彼女 番外恋物語~シークレットラブストーリー~」では本書がピックアップされており、「第四話『王冠恋物語』より」では恋太郎ファミリーが王冠恋物語の世界に転生してしまい、本来のストーリーから逸脱してしまったのでみんなで埋め合わせに奔走して何とか元のストーリーを再現する話である。 この物語の一番の特徴はこれまでに静が引用していたセリフが王冠恋物語本来の形で執筆されている所にある。更に単体の物語としても破綻がないように華麗な補完がされており非常に面白い。 原作やアニメを見た後に読めば「このセリフ、あの時言ってた!」となること間違いなしである。 ◆恋太郎ファミリー内での関係 ファミリー内では、主にちびっこ同士の楠莉や知与、同じく物静かなタイプの凪乃と一緒にいることが多い。 特に凪乃とは何はなくとも一緒に買い物に出かけたりするほどで、凪乃も静関連の展開になると感情が普段以上に動いたり本人も制御できない言動が飛び出すなどバグった挙動が多くなる。 楠莉、知与とはロリトリオとして並び立っているシーンが多く、恋太郎にサンリオ扱いされたり羽々里の母性を刺激したり山女に肩車されたりしている。 無害さや純真な部分がシンパシーで安心するのか、注目されると逃げ出してしまう愛々にとっても一緒にいて問題ないようで、一緒に編み物しては笑い合ったり、触れられる至近距離にいても平静を保っている。ミスディレクションの際にも静の元へ隠れることが多く、静もそれを受け入れている。 (誰であっても変わらないのは前提として)皆を慕い大切に想う健気さ、優しさからファミリー内の全員から深く愛されている。 それ故に、そんな彼女のどうしても自己評価を高く持てない弱気な部分をことさらなじったりして静を傷つけることは恋太郎ファミリーで最大級のタブーであり、恋太郎は言うまでもなく、どれだけ温厚なカノジョであっても例外なく人格が変わって見えるほどブチギレる事態となった。 ◆好本家 家族構成は父と母と三人家族。 父は仕事でほとんど日本にいないということのみしか明らかにされていない。そこそこ裕福な家庭。 そのため母と二人暮らし同然の状態である。 静の母 実の母親。小動物的な愛らしい可愛さを持つ娘とは真逆に吊り目でクールな雰囲気の美女。初登場は134話からであるが、それまでも静の回想でセリフだけは出ていた。 夫がほぼ家にいないこともあり、会話がろくにできない娘の書談に対して厳しく叱り続けており、一時期は静のトラウマになっていた。さらにはいつまでも治らないどころか、テキスト読み上げアプリで会話するようになったことから悪化していると見て静からスマホを取り上げてしまった。 しかしそれは「こんなことでは社会に出た時にどうなるのか」「自分がいなくなった時に静はどうなってしまうのか」「直らないのは厳しさが足りなかったせいでは」「自分が静に甘えたせいでは」という強迫観念と娘への愛から来た行動であり、本心では「静がこうなったのは母である私のせい」と思っている(*4)。 恋太郎と共に母と向き合う覚悟を決めた静の「生の声」を聞き、己も娘と向き合うべきと気づいたことからスマホを返却し和解。 単行本のおまけでは娘に料理を教えている微笑ましい姿も描かれている。 ◆余談 名前の由来は「本好き」のアナグラムと「図書室では静かに」と言うルールの組み合わせ。 上述の通り初登場は第3話だが、実は第1話で恋太郎が廊下を歩くシーンの背景に静らしき姿が写り込んでいる。よって厳密に言えば劇中で最初に登場したヒロインは彼女だったりする (*5) 。 彼女の愛読書である「王冠恋物語(サークレットラブストーリー)」は原作の中村氏の初の連載漫画、「シークレットラブスクーリー」の捩りである。 【どれだけ項目が増えようと十分すぎるほど追記修正をくれる故 恐れるものなど何もない!!】 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 純真風だけど、10連キスしてたり夢が夜のプロレスだったりと十分不純組に染まってんだよな -- 名無しさん (2021-06-05 22 24 00) 純真なのと旺盛なのは矛盾しない、むしろ純粋だからこそそういうことにも抵抗がないというか。ほら、童話でちゅっちゅっするカップルが不純かというと違うじゃない。あんな感じ。文学少女だから知識自体は豊富だし。 -- 名無しさん (2021-06-05 22 41 04) 何気にヒロインの記事化第一号か -- 名無しさん (2021-06-05 22 57 29) 唐音あたりが最初に来るかと思ってたので意外 そう来たかぁ -- 名無しさん (2021-06-05 23 10 39) ↑4、3のやり取りで「心が叫びたがっているんだ」の主人公も言葉が話せなくてムッツリ疑惑あったのを思い出した -- 名無しさん (2021-06-06 00 32 51) 負けヒロイン出るから絶対やらないだろうけど人気投票あったら相当上の方に着けそう -- 名無しさん (2021-06-06 20 11 55) 名有り登場キャラの多くがトラウマや重い過去を持っている100カノで特に重いと言われる娘 -- 名無しさん (2021-06-06 20 50 49) 結構追記。といっても元記事の削除された部分を引っ張ってきただけだけど。 -- 名無しさん (2021-06-06 21 41 22) 告白シーンはこの漫画随一のエモいシーンだと思う -- 名無しさん (2021-06-21 03 46 37) 最近はルールを破ってデッドリンクを貼り付けるのが流行ってるの? -- 名無しさん (2021-07-17 12 29 43) 親は今のところ回想のみの登場っぽいけど、本格的に出たら出たで恋太郎ファミリーが殺人事件起こしかねないからなぁ……。 -- 名無しさん (2021-07-25 02 39 00) ↑でも、親御さんの気持ち考えると中々辛いものがあるのも事実だしな…今は恋太郎ファミリーがいるからどうとでもなるけれど、当時は将来とかメチャクチャ心配だったろうし(大学は厳しいし、就職はほぼ完全にアウト)。お母さんをやっつけるよりも、救ってあげてほしい気もする… -- 名無しさん (2022-03-11 17 05 29) サイン会でショックのあまり作画崩壊してるのかわいすぎかよ -- 名無しさん (2022-03-31 20 59 01) ↑2親の根っこの心情次第だろうね。本気で心配してるんなら救われる余地はあるだろうし、「自分(親)の足引っ張んなダメ娘」なスタンスならやっつけられた方がいい。判断するには出番が少なすぎるからまだ何とも言えないね。 -- 名無しさん (2022-04-29 15 57 46) “高らかに笑った。” -- 名無しさん (2022-11-04 08 58 21) ファミリー内では恋太郎に次いで他カノジョ達から一番愛されてるキャラだろうなぁ。 -- 名無しさん (2022-12-29 13 54 41) 野球回で、敵チームメンバーになじられた静が泣きじゃくりながら自分の声で他カノジョ達に「足引っ張ってごめん」って言ってるシーンは結構心に来るものがある -- 名無しさん (2022-12-29 13 57 00) アニメで登場したら電子音声とモノローグはボイスドラマのように声優は共通だろうか。 -- 名無しさん (2023-06-21 00 46 45) 家族回、「互いに歩み寄れてよかった」って感想が一番に来た。お母さんもお母さんで悩んでいたんだよなあ -- 名無しさん (2024-04-12 22 13 04) 長縄さんの演技でより庇護欲を駆り立ててくれる感がマシマシに -- 名無しさん (2024-06-08 15 01 18) 名前 コメント
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計画 by岡山県 「もう、本当にこなちゃんは空気読めないんだから~」 「お話も分かり難いですしね」 「……」 私が虐められ始めて、もう2ヶ月にもなる。 最近はクラスの人たちも私を無視するようになってきて、いよいよ私の居場所が無くなって来た。 でも、それ以上に嬉しいことがあった。 先生が虐めを無くす為の努力をしてくれていることと、かがみが私の擁護に回ってくれることだ。 かがみに私が虐められていることを知られたときにはもうだめだと思ったけど、かがみは私の味方になってくれた。 「何で相談してくれなかったの!」 あの時のかがみの言葉を思い出す。 俯いて顔を真っ赤にしながら泣いているかがみを見て、私はとても申し訳ない気持ちになった。 ホントは前から、かがみのことは信じてた。 信じてたけど……やっぱりどこかでばれたらつかさ側に回るんじゃないかっていう不安があった。 だから、その反動からか気づいたら私がかがみに依存するようになっていた。 かがみがいる時はつかさもみゆきさんも私に強く言えないらしく、実質的にかがみは私を守ってくれていると言っていい。 それに加えて、黒井先生がクラスみんなに虐めをやめるように呼びかけてくれている。 あのフランクな性格からか黒井先生を慕っている生徒は結構多いから、無視程度の虐めで済んでいるのは先生のおかげかもしれない。 昔みたいな生活に戻るのはもう無理だと思うけど……もしかしたら虐めがなくなるのも時間の問題かも知れない――最近はそんな期待さえ出始めた。 「こなちゃん、私十円しか持ってないけどジュース買ってきてくれる?」 「私もお願いします」 ……この生活ももう少しで終わるはず。 そう期待しないと胸が押しつぶされてしまいそうになる。 ジュースを買っているときに鳴ったチャイムを聞きながら、積極的に希望を持とうと決意した。 「なんや、泉遅かったなぁ。そんなに私の授業はイヤか?」 「えっ!?いや……その……」 「もう受験生なんやから、ジュース買って遅刻するようなマネなんかすな」 「……はい」 教室へ戻ったとき、開口一番で言われたのがそれだった。 おかしい。 先生なら、こんな明らかな虐め、分からないはずがない。 何か考えがあるんだろうか――そう考えていると、先生が私に問題を当ててきた。 「……を中心に剣奴たちが反乱を起こした。泉、一年の復習やで。答えてみい」 ……しまった、授業内容を全く聞いてなかった。 「えぇっと~。わかりま……」 コツン。 答えようとしたとき、後ろから飛んできた消しゴムが私の頭に当たった。 「あはは、ごめんごめん。消しゴムが手から滑っちゃって」 投げたのはつかさだった。 今までつかさたちは先生にばれないように私を虐めてきたから、こんな堂々としたものは初めてだった。 それもあって、先生はつかさたちに強く言えなかったけど、目の前でこんなあからさまな事をしたら、先生に叱られるのは目に見えていた。 先生の言葉でつかさが反省してくれたらと思ったけど、次の言葉でその願望は打ち砕かれた。 「……なんや、柊か。気ぃつけぇや」 ……え?先生……。 「で、泉。答えは何や~?」 嘘でしょ……先生……。 「泉~」 先生……。 世界史の授業が終わるまで、私は魂が抜けたように感じた。 なんで? 何で黒井先生が? 本気で、私を守ってくれるって、約束したのに。 「こなちゃん、さっきはごめんね~」 「……つかさ」 「私、ドキドキしちゃった~。こなちゃんに消しゴムぶつけちゃったから虐めだと思われるんじゃないかな~って」 「黒井先生は虐めに関しては過剰なまでに反応しますからね。でも、先程の反応は変でしたね。つかささんは人一倍黒井先生から虐めに関して注意されてましたので何か言われるのではないかと思ったのですが」 「うん、そうだよね~。私に対して注意できない理由でもあるのかな~?」 私に対して……? 「そうですねえ。色々な予想が出来ます。例えば先生がつかささんを気に入ってる場合など……ですが先生は公私はきちんと分ける方ですし、何より泉さんを一番気に入ってるので可能性は低いかと思われます」 「だよね~、他に何かあるかな?」 「はい、他の理由としては……教育委員会の力が働いたということも挙げられます。最近は厳しいですからね」 「おお~、流石ゆきちゃん。私もそれだと思うな」 「ちょっと待ってよ……なんで黒井先生が教育委員会に?」 「あっはは、こなちゃん自覚ないの?いつもこなちゃん、黒井先生に体罰受けてたじゃない」 へ……? 「ええ、私もよく覚えていますよ。眠っていたときなど、黒井先生にこぶが出来るくらいに殴られていましたね」 「私、それ見てこなちゃんがかわいそうに感じてさ~」 うそ。 「ついつい通報しちゃったんだよね~」 やめて、それ以上言わないで。 「教育委員会に」 今までの希望が、音を立てて崩れていくように感じた。 「それはいいことをしましたね、つかささん」 「ありがとう、ゆきちゃん。そう言ってくれるとすごく助かるよ。黒井先生に少し悪かったからさ。……あ、結局なんで先生は私に注意しなかったのか分からないや」 「つかささんに注意したら、また通報されると思ったからじゃないでしょうか?虐めの罪を着せられた、などと」 「う~ん、私そんな事しないのになぁ。それはそうとこなちゃん!」 泣き出したい私の頭を荒っぽくにつかみ、つかさの方に強引に引き寄せられた。 近くで、しかも向かい合っているつかさの目を見てなおさら泣き出したくなった。 「感謝してね?私のおかげでこなちゃん、つらい思いせずに済むんだから」 「……うん」 「あっはははははははははは!」 つかさが声高らかに笑い、みゆきさんは対照的にクスクスと笑っていた。 望みが一つ消えてしまい、私は今までの精神的疲労がどっと押し寄せてくるのが分かった。 もう何も見たくなくて、私は机に顔を伏せる。 「……かがみ、助けて」 誰にも聞こえることは無い。 隣にいるつかさが狂ったように笑っていたから……。 「つかさ、今日かがみは?」 「お姉ちゃん?今日も休みだよ」 三日間も連続で、かがみが学校を休んでいた。 「……何で休んでるの?」 「一昨日から言ってるじゃない、こなちゃん。ただの風邪だよ」 嘘だ。 間違いなく、つかさとみゆきさんが手を回したんだろう。 つかさの性格上、かがみにはそんな酷いことをしないだろうけど、やっぱり心配だった。 心配だったけど、携帯に電話も通じないのでどうしようもなかった。 家に電話したところで、つかさに出られるのがオチだ。 今の私は、何も出来ない。 抑止力が無いことによって何時も以上に加速する虐めを、ただ一身に受け続けるしかなかった。 「こなちゃん、私今日お弁当忘れちゃったの。買って来てくれる?」 「私もお願いします」 ただ、一身に受け続けるしかなかった。 「ただいま」 「おう、お帰りこなた……ってもう上に上がるのか?」 「いや~受験生だから疲れててね~」 「そうか。まあ、あんまり無理はするなよ。かがみちゃんたちと思いっきり遊んで良い思い出を作ると良いさ」 「ははは……本人達にそんな暇があったらね」 良い思い出……か。 私にとってはそんなものは未来ではなく過去に期待するしかないのに。 起きていても嫌な想像しかできないので、最近はさっさと寝るようにしているけど、自分の部屋に入ると意外な人物がいた。 「……ゆーちゃん」 「お帰り、お姉ちゃん……。今日、高良先輩と柊先輩……つかさ先輩が来たんだけど……お姉ちゃんが虐められてるって本当?」 「……ゆーちゃん、何もされてない?」 「うん……わざわざ何もするつもりはないって私に言ってきたの……」 「ならよかった……さっきの話だけど……虐められてるっていうのは、本当」 「お姉ちゃん大丈夫なの……?そうだ、おじさんに言ったら……」 「それはダメッ!!」 突然の大声に、ゆーちゃんは驚いたようだった。 「あ、ご、ごめん、ゆーちゃん。でも私、お父さんにだけは心配かけたくないの。絶対責任感じちゃうだろうから……」 「わかった……」 ゆーちゃんはしょぼくれるように答えた。 「ゆーちゃん、一応言っておくけどあの二人に関わっちゃダメだよ……?何もしなかったらゆーちゃんは大丈夫だと思うけど、関わったらなにされるかわかんないから……」 「う、うん……」 「それでよろし~い。じゃあゆーちゃん、私はもう寝るから。お休み~」 「うん、お休み……」 外で鳥が鳴いている。 もう、朝か。 もっと寝ていたかったけど、時間がそれを許してくれなかった。 今日はかがみは来てるかな? そんなことだけが気になって、学校に行くまで上の空だった。 「お姉ちゃん?今日も来てないよ」 「そう……」 なんとなくはわかってた。 やっぱり今日も、昨日までと変わらない日か……少しだけ、偶には違う一日が来たって良いのに。 「ああ、そういえば泉さん」 「……どうしたの?」 「先ほど小早川さんがいらっしゃいまして、私たちに言ったんですよ」 「お姉ちゃんを虐めないで~ってね。あはは、良い子だね。ゆたかちゃん」 「ゆーちゃんが来たの!?何もしてないよね?何もしないよね!?」 「ええ、約束したとおり、何もするつもりはありませんよ」 「あ~、でもゆたかちゃんとっても調子悪そうだったよ~?」 「まだ一時間目も始まっていないのに保健室に行きましたからねぇ」 「大丈夫かな~、ゆたかちゃん。今頃保健室で一人、泣いてるんじゃないかなぁ?」 つかさの言葉を聞き終えると同時に、私は保健室に向かって走り出した。 「あれ~、こなちゃん何処行くの?」 「何処でしょうかね?」 白々しい。 ゆーちゃんの身に何かあったら絶対、許すつもりはないからな。 「ゆーちゃん!」 「あ、お姉ちゃん……」 「大丈夫?何もされてない?」 「え?うん……何もされてないけど……」 それを聞いて安心した。 ゆーちゃんが嘘をついているようには見えないからだ。 「それよりごめん、お姉ちゃん……あの二人を説得したんだけど……途中で具合が悪くなっちゃった」 「ううん、ゆーちゃん……ありがとう」 小さなミスをした子供のように、ゆーちゃんは言った。 多分、すごく辛かっただろう。 虐めをしている上級生二人を説得しようとしたんだから。 「ゆーちゃんから勇気をもらえたよ。私、これで今日はいつもよりがんばれるよ」 「あはは……ありがとう、お姉ちゃん。授業まで時間がないから、そろそろ戻った方がいいよ?」 「おお、本当だ。じゃあね、ゆーちゃん。お大事に~」 「うん、またね。お姉ちゃん」 ゆーちゃんに別れを言って、保健室から出る。 本当はもう少し、つかさたちがいない空間にいたかったんだけど……。 「って、あれ?」 つかさたちのいない空間? 「あ、そうだ!今電話かけたらかがみと話できるじゃん!なんで今まで気づかなかったんだろ!」 かがみと久しぶりに話が出きるというだけで、心が躍る。 「ごめん、ゆーちゃん!もうちょっとだけここにいるよ!」 「え、ええ?いいけど……どうしたの?」 携帯を取り出して、かがみの家に電話を掛ける。 早く出て、早く出て……一刻一秒も惜しい。 この時間帯なら、叔父さんと叔母さん、そしてお姉さんがいるはず……。 『はい、柊ですけど』 繋がった! 声からして、出たのは叔父さんのようだ。 「あ、もしもし!泉ですけど、かがみと、かがみと代わってください!」 『泉……?』 優しげな声から、一変してトーンの落ちた声になる。 まるで、私の名前に反応したかのように。 『悪いけど、君にかがみと話をさせるわけにはいかないな。悪いけど、もううちに電話を掛けてこないでくれ』 「へっ……?」 がちゃ、つー、つー。 電話の切れた音は、私の感情なんて知ったこっちゃ無いというくらいに冷酷だった。 「な、んで……」 いや、そんなことはすぐ分かる。 こうなるのを、初めから予測済みだったんだろう……。 「つかさ……」 私は、本気でつかさを怒らせたみたいだ。 普通、自分の家族にまで手を回さないだろう。 恐ろしい……。 つかさへと感じた新たな感情を前に、私は何も考えることが出来なかった。 ガタンガタン、ガタンガタン。 今日は何時も通り学校が終わって、何時も通り駅から家に帰ろうとしている。 ……もう、私はどうすればいいの? あんなに楽しかった学校に居場所が無い。 唯一の在り処のかがみもいない。 次の電車まで時間があるので、私はもう一度、トイレの中で今度は携帯の方に掛けて見た。 ……繋がらないと分かっている電話なんて、ただの気休めだ。 五日も繋がって無いのに、繋がるはずもない。 そう思っていたとき。 「はい、もしもし」 ……繋がった。 驚きで何を喋ればいいかわからない。 「あ、かがみ、その……」 「あんた……こなた……よね。携帯にもそう表示されてるし」 「うん……。かがみ、何で学校に来ないの?」 愚痴ならいくらでも聞いてあげよう。 弱音ならいくらでも励ましてあげよう。 そう思っていた私に突きつけられたのは、そのどちらでもない言葉だった。 「あんた、いいご身分ね……。自分が助かったからって私に学校に来いって?」 「え?何言って……」 「虐めが終わった人はいいわね~。他人のことを考える余裕ができるんだから」 「かがみ、何言って……」 「で、何?今日私に電話を掛けたのは哀れみ?」 「ち、違……」 「私をこんなのにした原因はあんたなのにいまさら学校に来い?はっ、何それ?本当ならあんたの変わりに私がそこにいるはずなのに……」 「……っ」 「あんたが居なかったらこんなことにならずに済んだのに!私が代わりに虐められずに済んだのに!ふざけないで、声も聞きたくない!」 がちゃ、つー、つー。 電話が切れる。 そっか、全部分かった。 「なぁんだ、全部私が悪いんじゃん……」 ゆい姉さんは言ってた。 ゆーちゃんは病は気からという言葉を地で表すような娘だって。 私が心配掛けたから、ゆーちゃんは具合が悪くなったんだ。 私がいたから、かがみは虐められたんだ。 私が生まれたから、お父さんの大好きなお母さんが死んだんだ。 涙さえ流れなかった。 携帯電話をしまって、駅のホームへ向かう。 どうやら話をしている間にいい感じの時間になっていたようで、電車が来ることを知らせるアナウンスが入る。 「……番線に電車が入ります。危険ですので白線までお下がり下さい」 とうとうかがみにまで嫌われて、居場所はおろか、心の在り処さえも無くなった。 こんな私に生きる価値ってあるのかな。 ……もう、どうでもいいや。 これから、あの世に行くんだから……。 じゃあね、みんな……次は、前みたいに仲良く、一生を終えようね。 グ シ ャ ――朝 学生はあわただしく登校の準備をし、社会人もまたあわただしく出社の準備をする時間。 生憎、ここ柊家の大黒柱は多少普通ではない仕事なのでいつも世間一般と比較してのんびりとしたものだが、今日は違った。 三女である、柊かがみが三日連続で学校へ行きたくないというのだ。 「つかさ、かがみは学校で何かあったのか?」 いつもとは違う、多少きつい表情で柊ただおはつかさに聞いた。 つかさはと言えば、その目線に何も感じることもなく答えた。 「こなちゃんのせいだよ」 「こなちゃん……っていつもつかさたちと仲良さそうにしているあの子か?」 「そうだよ」 「それは……本当かい?つかさ」 「……本当だよ?嘘だと思うならお父さんがお姉ちゃんに聞いてみたら?」 「……わかった。ありがとう、つかさ」 そう言うとただおは、つかさに背を向けて立ち去った。 ただおは顔には出さなかったが、つかさは父親に怒気が満ちあふれているのをありありと感じた。 そのつかさはというと……今にも吹き出しそうになるのをこらえていた。 すべて、つかさのシナリオ通りなのだから。 勿論、不登校の原因がこなたのせいというのは真っ赤な嘘だ。 事実、ただおがかがみに聞いていれば間違いなく否定しただろう。 だが、つかさはただおがかがみに問いつめることはないと100%――確信していた。 ただおの性格上、気を遣ってかがみ本人にいじめについて聞いたりはしない。 プライドの高い人間にそんなことを聞いたら、間違いなく心に深い傷を負うことをただおは知っているからだ。 ただおの性格上……いや、つかさの性格上、ただおに信じられるのは当然だった。 なぜなら、つかさは「悪意なんて一つもないいい子」なのだから。 そして自分の愛娘がいじめられるなどという今まで経験したことのない問題に直面して、ただおのようなお人好しが平静でいられるはずがない。 「ふふふふふふ……っははははははは……」 そう、これは全部―― 「あっはははははははははははははは!!」 ――つかさのシナリオ通りだった。 「お姉~ちゃん」 かがみの部屋の前で、猫撫で声でつかさが言った。 「……話しかけないでくれる?」 「そんなこと言わないでよ~。せっかくいい報告があるのに」 クスクスと、つかさは笑い出すのがこらえきれないようだった。 「……いい報告?」 「こなちゃん、虐められなくなったよ~。お姉ちゃんのおかげでね」 「……そう」 安堵、驚愕、喜び、嫉妬……ただの二文字に、様々な感情が入り交じっていた。 もちろん、こなたのいじめが無くなったというのは全くの嘘だが。 「虐められなくなった……か。虐めの張本人がよく言うわね……」 「え~?私も少し反省したんだよ~?」 この大嘘つき――かがみは反射的にそう感じた。 最も、今の心理状況では先ほどの嘘は見抜けなかったようだが。 「信じてないみたいだね、お姉ちゃん。わかった、これ返したげる」 つかさはかがみの怒りに触れないよう、そっと、少しだけ扉を開け、あるものを投げた。 「これ……私の携帯?」 「そう、充電もしておいたよ~。お姉ちゃんが暇にならないようにね」 「何考えてるのよ……」 「……反省したのに」 ぐずったような声とは裏腹に、扉の前のつかさは笑っていた。 これから起こることが楽しみで仕方ないといった風に。 「じゃあ、お姉ちゃん。私時間無いから学校行くね?いってきま~す!」 「……」 「あ、そうそう」 つかさが立ち止まる。 再び扉に近寄り、かがみに言った。 「こなちゃんが言ってたよ。学校、とっても楽しいからかがみも早く来なよ、ってね。じゃあ行って来るね~」 「……っ!ま、待ちなさいつかさ!私からもこなたに伝言伝えて!」 「あっはは~。お姉ちゃん、何のために携帯電話返したと思うの?言いたいことがあるなら自分で言えばいいのに」 「ちょ、つかさ!」 「行ってきま~す」 一人取り残されたかがみは、苛々した気持ちを人形にぶつけた。 それだけでは足りなかったので、壁に人形を思いっきり叩きつけた。 それでも、まだ足りない。 「……なにがかがみも早く来なよ、よ。誰のせいでこんな事になってるとおもってんの……」 初めはとても小さなものだった。 だが世の中には、初めに怒りを爆発させるタイプと、時間が経つ毎に怒りが貯まっていくタイプの二種類がいる。 不幸だったのは、かがみが後者だったことだ。 「こなちゃん、いつ電話するかな~」 つかさには解っていた。 その電話がこなたの自殺スイッチであり、かがみの命のカウントダウンを宣告するものであるということを。 「お葬式、面倒だなぁ~」 ま、ご馳走食べられるからいっか―― そう考えて、つかさはこなたが自殺スイッチを押すのはいつかを考えていた。
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システム・オブ・ブラック 16KB ※M1あきさんの黒バッジの絵に触発されて書きました ※独自設定垂れ流し 「ゆっくちしちぇいっちぇね!」 「ゆ! ゆっくちしちぇるね!」」 「ゆっくち! ゆっくちぃ!」 部屋の中では百匹にも及ぶ赤ゆっくりが賑やかに遊んでいた。 大きな部屋だ。ちょうど一般的な学校の体育館を思わせる広さで、たくさんの赤ゆっくり がいても手狭には感じない。 床には緑のカーペットが敷かれており、壁には緑の木々や青い空に白い雲が描かれている。 湿度も気温も快適に保たれ、じつにゆっくりとした雰囲気に溢れていた。 部屋の各所には飼いゆっくり向けの餌場や遊具、あるいはトイレなどが備えられている。 ゆっくりに詳しい者が見れば、ここがゆっくり育成用の施設であることがすぐにわかるだ ろう。 だが、そうした者がなにより目を惹かれるのは、施設そのものよりゆっくり達に違いない。 「ゆっくち! ゆっくち!」 艶やかでしとやかな黒髪。 宝石みたいな大粒の黒い瞳。 鮮やかに形の整ったおりぼん。 ふっくらもちもちしっとりしたお肌。 太陽の暖かさを詰め込んだような明るい声。 なにより、全身から溢れるゆっくりとした雰囲気。 全てがれいむ種。それも、極上のれいむ種だった。 ここはゆっくりの育成施設の中でも特別なものだ。 ゴールドバッジゆっくりとなるべく産まれ、ゴールドバッジゆっくりとなるべく育てられ る。ここは、そんな高級ゆっくりを育成するための施設なのだった。 システム・オブ・ブラック 「ゆああーっ!?」 「ゆんやぁぁぁぁぁぁ!」 「ゆっくちできないよぉぉぉ!」 ゆっくりの教育は悲鳴から始まる。 「逃げるな。よく見ろ。人間の言うことを聞かないゆっくりは、この『黒バッジ』をつけ られて、『永遠にゆっくり』することになるんだ」 ブリーダーの男が潰れた赤れいむを見せつけるように掲げる。 そのおりぼんには、男の言葉取り黒いバッジが不気味に輝いていた。 今ここにいるのは、施設に運ばれてきたばかりの赤れいむ達だ。全てゴールドバッジ取得 済みのゆっくりを親に持つ。 ゴールドバッジを持つ親が居るなら、その親に育てられた子も優秀――普通はそう考える。 だが、ゆっくりにゆっくりを教育させるとどうしても質にばらつきが生じる。ゲスになっ てしまうことすらある。ゴールドバッジだろうと、所詮ゆっくりはゆっくりなのだ。 だからこの施設では、赤ゆっくりを親ゆっくりから隔離して育てる。 潰された赤れいむは、いくら男が言い聞かせても親ゆっくりを求めて泣き喚いたゆっくり だ。 「静かに! ゆっくりしろ!」 張りのある声に、赤れいむ達はびくりと身体をすくませる。 「いいか、よく聞け! お前達はこれから、ゴールドバッジを取る為に生きる! それだ けがお前達の生きる意味だ! ゆっくり理解しろ!」 「おとーしゃんや、おかーしゃんとあっちゃいけないの……?」 「必要なことは全て私達人間が教える! 親は必要ない!」 「どぼじでぇぇぇぇ!」 何匹もの赤れいむが泣き叫ぶ。 中には反抗するものもいた。 「ちねぇ! ちねぇ!」 「おかーさんとゆっくちさせてくれないじじぃは、ゆっくちちねぇ!」 ぽすぽすと、男に体当たりを繰り返す二匹の赤れいむ。 この段階で、この二匹はゲスと呼ぶには至らない。なぜなら「親ゆっくりといっしょにい ないとゆっくりできない」というのは本能に刻まれたことであり、この行動はある種必然 的なことなのだ。 男は素早く二匹を捕まえ、黒バッジをつける。そして、両手それぞれに掴むと、赤れいむ の群れに見せつけた。 「言うことをどうしても聞かないゆっくりは、この『黒バッジ』だ!」 そして、掴む手に徐々に力を加える。 「やべちぇぇぇぇ!」 「ちゅ、ちゅぶりぇりゅぅぅぅ!!」 赤ゆっくりの身体は脆い。圧力に押され餡子が口から漏れ始め、飛び出さんばかりに開い た目からは目玉が飛び出そうだ。 「やめちぇ! やめちぇね!」 「いちゃがってるよ! やめちぇあげちぇね!」 「ダメだ。黒バッジは許されない」 赤れいむ達の抗議など意に介さず、男は黒バッジのゆっくりを時間をかけて苦しませ、潰 し殺した。 残された赤ゆっくり達は、ショックのあまり静まりかえった。 「いいか、もう一度言う! 聞き分けのないゆっくりは、『黒バッジ』だ!」 そして、男は透明な箱を取り出す。 「ゆううううううう!?」 「ゆんやぁぁぁぁぁぁ!!」 「ゆっくちできないぃぃぃぃ!」 絶句していた赤れいむ達が再び騒ぎ出す。それも無理はない。一抱えほどもある透明な箱 の中は黒バッジでいっぱいだったのだ。それはゆっくりには到底数えきれない数。 全ての赤れいむが、自分が黒バッジをつけられた姿を想像して恐怖した。 「いいか! お前らのすることは『ゆっくりする』ことじゃない! 『人間をゆっくりさ せること』だ! そのために必要なことは全部教えてやる! 考える前に従え! そして ゆっくりするんだ!」 男の言葉は、恐怖と共に餡子脳に刻み込まれた。 基本的に、ゆっくりは頭が悪い。言葉だけでは教育が出来ない。ゆえに痛みと恐怖で一つ ずつ教えていかなくてはならない。 この育成所では、最初に仲間を潰して絶対の力関係と恐怖を刻み込む。 これは恒例の儀式のようなものだ。実は潰すゆっくりはあらかじめ用意されていた。育成 対象より低いランクのゆっくりを綺麗に見えるよう細工したものだ。つまり、あれは出来 レースだったのだ。 通常の教育では痛み――即ち体罰を与えることで教育する。だが、どうしても言うことを 聞かない場合、見せしめに仲間を潰す。 そのために使われるのが「黒バッジ」だ。 ゆっくりは頭が悪い。ゆえにわかりやすい記号が求められる。育成のなか、黒バッジは行 儀の悪いゆっくりの象徴として繰り返し使用される。 だが、使用機会はそう多くはない。黒バッジをつけられたゆっくりは死ぬ。つまり、育成 所にとっては損失になる。可能ならば黒バッジは使いたくない物なのだ。 だが、それでも黒バッジは必要になる。 「むーしゃ、むーしゃ、しあわちぇー!」 「だめだ。れいむ、『むーしゃむーしゃ、しあわせー』は食べた後にやるんだ。食べなが らするんじゃない。」 「ゆゆ? でも、ちゃべにゃがらしあわしぇー、しゅると、しゅごくゆっくちできりゅよ! にんげんしゃんをゆっくちさせちぇあげりゃりぇるよ!」 ブリーダーはれいむに黒バッジをつけると、赤れいむを潰した。 「いいか!? ゆっくりできるかどうかを決めるのはお前らじゃない! お前らを飼う人 間だ! 『むーしゃむーしゃ、しあわせー』を、大抵の人間は嫌がる! やっていいと言 われたときだけやれ! いいな!?」 「ゆ、ゆっくりりかいしたよ!」 赤れいむ達は、恐怖に震えながら理解した。 「ゆ~♪ ゆ~♪ ゆ~♪ ゆっくちしちぇいっちぇね~♪」 「れいむ、おうたをやめろ。おうたの練習の時間は終わりだと言ったはずだ」 「ゆゆ? おうたはとっちぇもゆっくちできりゅんでしょ? いっぱいうちゃえば、にん げんしゃんもいっぱいゆっくちできりゅよ! ブリーダーはれいむに黒バッジをつけると、赤れいむを潰した。 「いいか!? ゆっくりできるかどうかを決めるのはお前らじゃない! お前らを飼う人 間だ! 人間にはおうたを聞いているとゆっくりできない時もある! やめろと言われた やめるんだ、いいな!?」 「ゆ、ゆっくりりかいしたよ!」 赤れいむ達は、恐怖に震えながら理解した。 黒バッジを使うとき――それは、ゆっくりが「人間のことを思って」間違ったことをやっ た ときだ。 ゆっくりの「ゆっくり」と、人間が「ゆっくりに望むゆっくり」には違いがある。 所詮不思議ナマモノと万物の霊長、相容れない部分があるのだ。 飼いゆっくりを育てると言うことは、その違いをゆっくりに押しつけることだ。それはゆ っくりにとって理不尽なことであり、いくら言葉を費やそうと理解できるものではない。 そのための黒バッジだった。 やがて、理不尽を受け入れたゆっくりだけが生き残り、金バッジの試験を受けることにな る。 育成所のゆっくりの育成は極めて厳しい。しかし正しく優れたものであり、生き残ったほ とんどのゆっくりが試験に合格する。 そして、金バッジの授与。この育成所では、その授与に一風変わった方法が採られる。 「きょうは『きんばっじ』をもらえるんだってね!」 「『きんばっじ』はすごくゆっくりしできるんだってね!」 「とってもたのしみだね! ゆっくりできるね!」 一室に集められたもう子ゆっくりと呼べるほどに育ったれいむ達。もう赤ゆっくり言葉も 抜けたこのゆっくり達は、いずれも金バッジ試験に合格したものである。 それぞれが透明な箱に入れられているが、不安な様子はない。箱に収められるのも飼いゆ っくりにはよくあることであり、その時の行儀作法も当然教育済みなのだ。 こうして賑やかに話しているのも、人間にあらかじめ許可されたからだ。勝手に喋ったり はしない。その声もまた人間にとって耳障りなものではなく、とてもゆっくりした綺麗な 声であり、適度な声量だった。 「これから金バッジの授与を始める!」 大きなダンボール箱を台車に乗せ、ブリーダー達が部屋に入ってきた。ゆっくり達が色め き立つ。 ダンボールの中には小さな箱が入っており、その中には豪華な金バッジが収められている。 ブリーダー達は一匹一匹に金バッジをつけていく。 「おにいさん、ありがとう! とってもゆっくりできるよ!」 ゆっくり達は喜びに興奮しながらも、人間への感謝の言葉を忘れない。本能に流されがち なゆっくりがきちんと教育された証拠である。 まだ金バッジをもらえないゆっくりは、まだかまだかとそわそわする。しかし、決して箱 をカタカタ言わせたりするような粗相はしない。だからこその金バッジである。 だが、そんな落ち着かない時間も終わる。 最後のゆっくりに、バッジがつけられた。 「ゆゆぅぅぅぅ!?」 「ゆええええええ!?」 「どうしてえぇええええ!?」 ゆっくり達は驚きの声を上げた。 なぜなら、最後のゆっくりにつけられたバッジ――その色が、黒だったからだ。 そして、黒バッジれいむは部屋から運び出された。 残された金バッジのれいむたちは押し黙っている。 「お前ら、どうしてあのれいむが『黒バッジ』なのかわかるか?」 どのれいむも答えない。 部屋にいるゆっくり全てが同じ施設で同じように育てられた姉弟のようなものだ。当然黒 バッジをつけられたれいむのこともよく知っていた。 だが、わからないのだ。 あのれいむは自分たちと同じぐらい優秀だった。自分たちとの違いがわからない。 その疑問がれいむ達を黙らせていた。何が間違いかわからないのだから、下手なことをす れば自分も今すぐ黒バッジをつけられるのではないか――そんな恐怖があった。 今まで金バッジを目指して頑張ってきた。今やそれが自慢のおりぼんにつけられている。 それなのに、安心できない。ゆっくりできないのだ。 「お前、わかるか?」 一匹のれいむが問いかけられる。しかし、答えられない。 ブリーダーが部屋を見回すが、どのれいむも視線を逸らし、答えられそうもない。 「そうだ。それでいい。わからないのが当たり前だ」 ブリーダーの言葉に、れいむ達は驚き目を剥いた。 「いいか? 人間はお前らよりずっと頭がいい。お前らごときが人間の考えすべてを理解 できるわけがない。あのれいむに『黒バッジ』をつけた理由も、お前らに話したところで 理解は出来ない。だから説明は無しだ」 れいむたちは混乱した。 今までなにか悪いことしたら、かならず説明があった。それを学んでゆっくりしてきたの だ。それができない。 「理解しろ。お前達は所詮、ゆっくりに過ぎない」 愕然となった。自分たちは、厳しい教育を受け、難しい金バッジ試験を受けた優秀なゆっ くりのはずだった。他とは違うはずだった。 でも、結局、ゆっくりに過ぎない。いつ黒バッジをつけられるか――いつ人間に殺されて しまうか、わからないのだ。 金バッジをつけた誇らしい気持ちは今やコナゴナになってしまった。 暗く沈むれいむたちを、ブリーダーはじっと眺める。全員、打ちひしがれたのを確認し、 十分な時間をおいてから再び声をかける。 「いいか、この育成所でおぼえたことを決して忘れるな。そうすれば、お前達は人間をゆ っくりさせられる。人間がゆっくりできれば、お前達もゆっくりできる。お前達が今まで 必死に覚えてきたことだけが、お前達の生きる唯一の道だ。それを、決して忘れるな」 れいむ達の心にわずかな明かりが灯った。 自分たちがゆっくりするために学んできたこと。それは無駄な事じゃない。その証が金バ ッジだ。 人間はゆっくりより強い。難しいことを考えることが出来る。そんなことはこの施設に初 めてきたとき、仲間の死で思い知らされたことだ。 初心に帰り、そして今までしてきたことを思い出す。積み上げてきたことは無駄ではなく い。 金バッジは「貰った」ものではない。自分の力で「勝ち取った」ものなのだ。 おりぼんについた金バッジが、その重みと輝きを増したように思えた。 「お前らに最後の言葉を贈る――ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 今までの教えに従い、金バッジれいむたちは、聞いた誰もが心からゆっくりできる素晴ら しい声でゆっくりの定型句を唱和した。 その声には、金バッジを受け取った誇りと、これからなお一層のゆっくりに励もうという 揺るがぬ決意があった。 黒バッジのれいむは震えていた。透明な箱の中で、脂汗にまみれて震えていた。 なぜ。 なにがわるかったのか。 どうしてこんなゆっくりできないことになってしまったのか。 尽きぬ疑問と死の恐怖に、れいむは答の出来ない疑問を餡子脳の中で繰り返すばかりだっ た。箱を運ぶブリーダーには聞けない。聞いた途端、ゆっくりできないことになってしま いそうに思えたからだ。 やがて、れいむは部屋の中に運び込まれた。真っ白な、殺風景な部屋だ。 ここに自分の黒い餡子が広がるのだろうか。その想像にれいむは震え上がった。 れいむは透明な箱に入れられたまま、部屋の床に置かれた。 そして、ついに、ブリーダーから決定的な言葉を投げかけられた。 「れいむ、おめでとう!」 理解できなかった。 しかし、やがて言葉の意味を知る。ゆっくりでもわかるシンプルな祝福の言葉だった。 「お、おにいさん……おめでとうって……どうして?」 「れいむ。お前は特別優秀なゆっくりなんだ。だから金バッジよりすごいバッジをもらえ たんだ」 「で、でも! 『くろばっじ』はゆっくりできないよ!」 「れいむ。お前はひとつ勘違いしている。『黒バッジ』は『ゆっくりするためのもの』だ」 「ゆ、ゆゆ!?」 れいむはすっかり混乱してしまった。黒バッジをつけられたら潰されてしまう。ゆっくり できない。だから黒バッジはゆっくりできないもの――それは、れいむの餡子脳の奥の奥 まで刻み込まれた恐怖だ。 「ほら、思い出してみるんだ。確かにお前の仲間が黒バッジをつけられ、潰された。だが、 そのたびお前はゆっくり出来るようになっただろう?」 言われ、れいむは気がついた。 確かに黒バッジを見るたびに、れいむは一つずつ、人間と暮らす上で大切なルールを覚え ていった。飼いゆっくりとして、ゆっくりできる方法を身につけていった。 「お前は一番ゆっくりしたゆっくりだった。だから、金バッジ以上のバッジ……黒バッジ が与えられたんだ。ほら、見てごらん」 ブリーダーは鏡を見せた。そこには黒バッジをつけた自分の姿が映っている。 そして、れいむは気がついた。今まで見ていた黒バッジは、丸いだけでなんの飾り気もな い安物だった。だが、れいむがつけているのは金バッジ同様に、細かい細工が施された立 派なものだったのだ。 「れいむ、お前は特別なゆっくりなんだよ。だが忘れてはいけない。死んでいったゆっく り達がいたからこそ、お前は特別なゆっくりになれたんだ。そのバッジはとても大切で価 値のあるものだ。お前はそれに相応しいゆっくりとして、人間をゆっくりさせるんだ。い いね?」 れいむは理解した。このバッジはただのバッジじゃない。犠牲になった仲間達の餡子で黒 く染まったか、けがえのないバッジなのだ。 れいむは誇らしさと同時にその責任の重さを感じだ。だが、厳しい教育を乗り越えたれい むは、その重さに負けなかった。 「お前に最後の言葉を贈る――ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 今までの教えに従い、黒バッジれいむは、聞いた誰もが心からゆっくりできる素晴らしい 声でゆっくりの定型句を叫んだ。 その声には、黒バッジを受け取った誇りと、これからなお一層のゆっくりに励もうという 揺るがぬ決意があった。 黒バッジ。 この育成所においては見せしめの象徴。 だが、世間における公式な扱いは違う。 表向きには、金バッジの教育を受けたが、何らかの障害を持つゆっくりに与えられるもの とされている。 金バッジゆっくりは最高の品質を求められる。だから身体に障害を持ったゆっくりから金 バッジは剥奪されてしまう。だが、厳しい教育を受けたゆっくりにそれはあんまりではな いか――最初は、そんな声から生まれたものだった。 しかし、現在、裏では別の意味を持つ。 即ち、「公認虐待バッジ」だった。 金バッジを受けるほど優秀なゆっくりは、当然虐待を受けることなど社会的に許されない。 だが、黒バッジゆっくりは違う。どんな虐待をしても罰せられることはない。 あんよを焼くことも、目を抉ることも全て許される。なぜなら黒バッジを与えられたゆっ くりは障害を持っているはずなのだから、どんな傷を負っていても「そういうゆっくり」 ということで通ってしまうのだ。 虐待を目撃されても、「治療行為だ」と言い張れば多くの場合は許される。ゆっくりの生 態は謎が多く、何がゆっくりを癒すかわからない。だからあからさまな虐待であっても、 「障害をなんとかなおしたいと願う飼い主の行きすぎた行為」と見なされることが多いの だ。 あんよを焼いても「悪い患部を焼き切っただけ」、針を無数に刺しても「針治療」、生ゴ ミを喰わせても「特殊な食事療法」と幾らでもヘリクツが利く。裏では黒バッジ用の虐待 言い訳例集まで売られているくらいだ。 しかも、表向きは金バッジと同等のゆっくりだ。迷子になれば保護されるし、飼い主の許 し無く虐待すれば罰せられる。まさに虐待おにいさん垂涎のゆっくりなのだ。 ゆっくり育成所では、この黒バッジに目を付けた。 元々、ゆっくり育成所では金バッジ取得後のゆっくりをランダムに一匹殺していた。これ は金バッジの「選民意識」をなくすためである。 金バッジ取得は難しい。ゆえに、金バッジゆっくりは他のゆっくりを見下す傾向がある。 これにより、金バッジのゆっくりと言えどゲス化することがある。所詮、ゆっくりはゆっ くり。金バッジを一度は取得しても、転落するゆっくりは少なくないのだ。 それを防ぐため、ゆっくり育成所では金バッジ取得ゆっくりを見せしめに、無作為に潰し ていた。そうすることで「自分はいつ殺されてもおかしくない、他のゆっくりと変わらな い饅頭に過ぎない」ということを思い出されるのだ。 だが、潰してしまうのは明らかに損失だ。 そこで黒バッジに目を付けた。金バッジゆっくりの質を高め、なおかつ黒バッジゆっくり を出荷することで利益を得られる。一石二鳥とはこのことだ。 このゆっくり育成所から出荷される黒バッジゆっくりは優秀だ。金バッジ以上のゆっくり であるという自負があり、躾も性格も金バッジを持つに相応しいものだ。 しかし、このゆっくりの未来は真っ暗で、真っ黒だ。 飼いゆっくり。 それは人間に理不尽を押しつけられる存在。 黒バッジとは、その理不尽の象徴なのかも知れない。 了 by触発あき 元ネタ絵 byM1あき 触発あきの作品集 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る ↓↓ゆっくりんぴーす -- 2016-01-31 15 23 54 チッ虐待されるとこ書いてねーのかよ -- 2015-01-01 21 29 08 豆の名前みたいな団体ってどこだ?汗 -- 2012-12-11 17 09 12 元ネタの >これでも 豆の名前みたいな団体が 難癖つけてくるのは 変わらないだろうがな 笑えたwww -- 2012-05-02 21 26 31 元ネタ絵の さて、スキンシップの時間だ あまりに綺麗な髪なのでカミソリとバリカンを新調してしまったよ クソワロタw -- 2011-12-22 17 04 01 >れいむは理解した。このバッジはただのバッジじゃない。犠牲になった仲間達の餡子で黒 >く染まったか、けがえのないバッジなのだ。 ここだね。 最後の方の、別室で試験に合格したれいむに黒バッジを付けた理由を話しているところ -- 2011-11-02 21 50 20 読んでるうちに何処だったか忘れてしまいましたが(、)がずれている箇所がありました。 -- 2010-09-10 02 34 16 挿絵じゃなく元ネタだからだ -- 2010-08-01 16 20 27 絵↑何故まりさ -- 2010-06-24 16 00 39
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※某ゲームのパロディです。 ゆっくり。人間の生首にも似た、言葉をしゃべり動き回る不思議な饅頭。 世界中にゆっくりが現れだして数年、人々が彼女らに見せた反応は様々なものだった。 無邪気に虐待をしたり、可愛がったりという人間ばかりとはいかない。 生理的に受け付けない、宗教上の理由から生物として認められないなど、 この奇妙な食べ物の存在を受け入れられない人々は、当然のことながら世界中に少なからずいた。 そして中には、ゆっくりの存在自体を蔑視、或いは『人類の敵だ』などと危険視し、 ゆっくりは絶滅させるべきだと主張するような過激な集団もあった。 北欧の或る地方、人里離れたゆっくりの集落。そんなカルトの一団の影が、ゆっくりと忍び寄っていた。 「それじゃあね、まりさ!」 「れいむ、ごちそうさま!またこんどゆっくりたべさせてね!!」 ここは木の根元に掘られたゆっくり一家の巣。 住んでいるのはれいむ・まりさ夫婦と、その子供達だ。 母親であるれいむとまりさ、そして長女子れいむが一匹に、赤ちゃんれいむとまりさが二匹ずつの計七匹家族である。 今夜は長女れいむが友達のまりさを招き、家族を伴って夕食会を開いていた。 お客さんと一緒に食べるごはんは、いつもとはまた一味違った美味しさがあった。 まりさの言う冗談はとても面白く、食べ方も誰とも違って豪快で、 明るく笑顔の絶えない、ゆっくりした食卓を囲むことが出来た。 赤ちゃん達はまりさのどこか粗野な雰囲気にかっこよさを感じ、すっかり懐いていた。 「あしたもゆっくりあそぼうね!」 「ゆゆっ!あしたはきれいなかいがらをさがしにいこうね!」 「「「「まりしゃおねーちゃん、またあしょびにきちぇね!!」」」」 暗くなった森の中を駆けていくまりさの背中を見送るれいむ。 このあたりには補食種もおらず、多少暗くなっても巣の外を出歩くことが出来た。 さて、晩御飯を食べ終わったらそろそろお休みの時間。 一日のゆっくりを締め括る、最高にゆっくりしたひとときである。 「もうよるもおそいから、みんなですーやすーやしようね!」 「おふとんをしこうね!」 「ちびちゃんたちのぶんはおねえちゃんがしいてあげてね!」 親達の号令で、子供達は一斉に寝る準備に入る。 と言っても赤ちゃん達は、お姉ちゃんれいむが寝藁を床に敷いてくれるのをゆっくり待っているだけである。 この日もいつものように、子れいむが赤ちゃん達の寝藁を部屋の隅から引っ張り出そうとしていた。 すると普段とは違い、ゆっくりしているはずの赤ちゃん達から声が上がった。 「ゆっ、まっちぇねおねーちゃん!」 「まりしゃたち、もうじぶんでおふちょんしけゆよ!」 「おひるにれんしゅうちたんだよ!!」 「ゆゆゆ!ほんとう!?」 これには子れいむもびっくりである。 少し前まで、柔らかい葉っぱさんすらも一人では食べられなかったようなおちびちゃん達が、 自分達で寝床の面倒を見れるようになっていたなんて! 赤ちゃんの成長は、何と速いのだろう。 「ゆゆっ、おちびちゃんたちすごいよ!!」 「ゆっくりおふとんをしいてみてね!!」 両親も我が子の成長ぶりを見ようと大興奮で駆け寄ってくる。 赤ちゃん達は乱雑に集積されている藁束から、端っこの数本を口にくわえて引っ張り出した。 「ゆっ・・・ゆっくちぃ!」 「ゆんしょ!ゆんしょ!」 がんばって引っ張り続けるが、絡み合った藁は赤ちゃんの小さな力ではなかなか引き出せない。 ようやく一匹の赤まりさが数本の藁をずるずると引きずり出し、寝室の真ん中へと運んでいく。 「ゆっふひ!ゆっふひ!」 寝藁を口にくわえながら掛け声をかける赤まりさ。 たった数本の藁であるが、小さな身体にとってはかなりの重さなのだろう。 一生懸命なその姿は、赤ちゃんの小ささ、儚さを感じさせ、可愛らしさをより際立たせていた。 眺めていた両親からも、自然と笑みがこぼれだす。 「ゆふふふ!あかちゃん、がんばってね!」 「ふふふ、もうちょっとでおふとんがしけるよ!」 「ゆ?おかーしゃん、どうちてわらってゆの?」 「ゆっ!それはまりさがとってもかわいいからだよ♪」 「ゆゆっ!まりしゃきゃわいい?ゆふーん!」 赤まりさは身体を伸ばして恥ずかしそうに笑い、両親に媚を売ってみせる。 そんなことをしている間に他の姉妹達はどんどんおふとんを敷いていき、それに気付いたまりさは慌てて作業に戻る。 その様子を見て、またも両親からは愛玩の笑みがこぼれるのだった。 一家の姿を眺め、子れいむも思わず笑いを浮かべる。 れいむは、長ぱちゅりーが言っていた「笑う門にはゆっくり来たる」という言葉が大好きだった。 ゆっくりすると笑顔になる。笑顔になるとますますゆっくり出来る。 きっと自分達の毎日は、それを繰り返してゆっくりと過ぎていくのだろうと思う。 未来に広がり続けるゆっくりという希望を、れいむは全く疑おうともしなかった。 おふとんを敷き終わり、「ゆっくりおやすみなさい!」と家族全員で宣言すると、一斉に睡眠に入る。 家族みんなの幸せそうな寝顔を見回して「ゆふふ」と微笑んだれいむは、自らもゆっくり目を閉じた。 れいむは夢を見る。大好きなまりさや家族達、そして群れのゆっくりみんなが笑って暮らす夢だ。 「おきてね!ゆっくりしないでおきてね!!」 れいむの幸せな夢は、親れいむの悲鳴にも似た呼び声によって無理矢理中断された。 「れいむはたのしいゆめをみてたんだよ!」とぷんぷん怒ろうともしたが、 母親のゆっくりしていないただならぬ様子に、事態の把握に努めることが先だと悟った。 「おかーさん、どうしたの?」 「「「「まだねみゅいよー・・・」」」」 外からは赤い光が差し込んでいる。朝焼けの光だろうか、とれいむは思った。 「わるいにんげんたちがせめてきたんだよ!ゆっくりしないではやくにげてね!!」 「ゆ・・・?ゆゆゆゆ・・・・!?」 れいむは何を言われているのか解らなかった。 自分達はずっと平和に暮らして来た。人里離れたこの地で生まれ育ったれいむは、人間を見たことがない。 その人間が外敵として、暴力を振るってくる……その全く未知の恐怖を、すぐには想像出来なかったのだ。 しかし親達は人間の脅威を知っているのだろう、その慌て様はれいむが生まれて初めて見るものだった。 「ゆ?にんげんしゃんたちがきちゃの?」 「まりしゃたちどうなっちゃうの?」 「みつかったらころされちゃうよ!!ゆっくりにげてね!!」 「「「「ゆゆゆゆゆ!?」」」」 赤ちゃん達はれいむ以上に困惑している。まだ生まれて間もなく、家族の愛しか知らない赤ちゃん達は、 暴力というものに対する知識や想像力を全く持ち合わせていなかった。 怖いことが起こっているということは何となく理解出来ても、それ以上の認識は持てなかったのだ。 「むぎゅうううううーーーーーー!!!」 その時、絹を引き裂くような悲鳴が巣の中に飛び込んでくる。 親れいむと子供達は、みな一様に身体をビクリと震わせた。 「い、いまのはぱちゅりーのこえだよ!!」 「おかーしゃん、ぱちゅりーおねえちゃんどうしちゃの!?」 「ゆっくちできない・・・こわいよぉぉ・・・・・」 「ぱちゅりーはにんげんにつかまっちゃったんだよ!みんなもにげないとつかまっちゃうよ!!」 知人の死というリアルな恐怖に晒され、現実を認識し始めた赤ちゃん達の目から涙が溢れ出す。 れいむも例外ではない。ぱちゅりーとは仲良しで、まだ教えてもらいたいことが沢山あったのに。 気付いてみれば、外からはゆっくりの悲鳴や何かを叩くような音が絶え間なく聞こえ続けていた。 「ゆっ・・・ゆぇ・・・・・」 「ゆわあぁぁぁん、やぢゃやぢゃやぢゃ!!れいみゅいたいのやぢゃよぉぉぉぉ!!」 「おかーしゃん、にゃんとかしちぇね!!まりしゃたちをゆっくちたしゅけてね!!」 恐慌状態に陥った赤ちゃん達は、巣の中を暴れるように跳ね回り、悲鳴を上げて助けを求めた。 れいむはお姉さんとしてそれを抑えなければならないと思ったが、一緒になって泣き叫びたい気持ちでいっぱいだった。 すると、親れいむが子供達をキッと睨み付ける。 「しずかにしてねっっ!!」 「「「「ゆっ!!」」」」 いつも優しいお母さんが、初めて見せる鬼の形相。 赤ちゃん達はあまりの恐怖にすくみ上がり、お母さんの方を向いて静かになった。 「うるさくしてるとにんげんにみつかっちゃうよ!!みんなころされちゃってもいいの!?」 「や、やぢゃよ・・・」 「だったらおかあさんのいうことをきいてね!!」 親れいむはこれからすべきことについて、子供達に説明する。 木の根元に掘られたこの巣には、木の真下をくぐって反対側に非常口が作られている。 一度も使われたことはなく、落ち葉に覆われているので見つかることは絶対に無い。 そこから出た先の森にはゆっくりは住んでいないので、人間の襲撃の手が回ることもないだろう。 真っ直ぐ行って三本目の木の近くに、親れいむが昔親まりさと一緒にかくれんぼをした洞穴がある。 そこに潜んで、人間達が去るまでやり過ごして欲しい、と。 特に子れいむには、妹達を守ってあげてほしいとよく言って聞かせた。 「ゆ、ゆっくりわかったよ!それじゃあおかあさんもいこうね!!」 「ゆっ・・・だめだよ!おかあさんはおうちにのこるよ!!」 「ど、どうして!?にんげんさんにつかまっちゃうよおおおぉぉぉ!!」 「ゆっくりのおうちにゆっくりがいなかったらあやしまれるよ!! おかあさんたちがにんげんたちをくいとめておくから、ちびちゃんたちはゆっくりにげてね!! まりさもいりぐちでがんばってくれてるよ!!」 「いやだよ!!いやだよ!!おかあさんがいないとゆっくりできないよぉぉぉぉぉ!!」 「おかあさんのいうことをゆっくりしないできいてねっ!!」 どん、と親れいむから体当たりを受けてしまう子れいむ。生まれて初めて味わう親からの体罰だった。 そしてそれは、自分達のためにお母さんがどれだけ必死になってくれているのかということを、そのまま子れいむに伝えた。 痛みと悲しみから目に涙を滲ませながら、子れいむは親を置いて逃げ出す決心を固める。 「お、おかあさん・・・ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくりしていってね、れいむ・・・おかあさんたちになにがあっても、 れいむだけはぜったいにいきのびてね!!ちびちゃんたちをまもってあげてね!!」 互いに泣き顔を伏せ、背を向け合う。 れいむはおろおろしている赤ちゃん達を半分は頭に載せ、半分は口に含み、巣の奥へと駆け出す。 後ろの方から、親まりさの「いだいよ!!やべでね!!!」という声が聞こえてきて、ぎゅっと目を瞑った。 (おかあさんたちごめんね!!れいむはおかあさんのぶんもゆっくりいきるよ!! いきてまりさといっしょにゆっくりするからね!!) 閉じられた非常口を体当たりで押し開け、言われた通りの場所へと、音を立てないように急ぐれいむ。 赤ちゃん達の半分はれいむの口の中だし、もう半分はれいむの髪の毛に口を使って必死にしがみついているので、 悲鳴を上げる余裕などなかった。赤ちゃん達を口に含んでいるれいむも静かにならざるを得ない。 途中何度か振り返って様子を見てみると、ゆっくり集落のあちこちが炎に包まれ、 まだ深夜の暗闇に包まれる森の中を赤々と照らしていた。 どれほどか昔、なぜか人間がこの森に作り捨てていった、小さな木の小屋。 群れをまとめてくれた長ぱちゅりーが住んでいたそれは、既に黒い炭を残すのみとなっていた。 れいむはそれを見て、(もうむれはおしまいなんだ)と嫌でも悟らざるを得なかった。 ゆっくりの返り餡を浴びた何人もの人間達が、炎に照らされて狂乱の宴を繰り広げている。 その手には各々、ゆっくりを屠殺するための何種もの武器が握られ、風を切って唸りを上げていた。 これが本物の恐怖。 れいむは、動かなくなりそうな足を引きずり……お母さんの言っていた洞穴へと辿り着いた。 「ゆっ!ここまでくればもうだいじょうぶだよ!!」 何せ、あのお母さんが用意してくれた隠れ場所。見つかるはずがない……そう信じたかった。 口の中の赤ちゃんを吐き出し、頭に載せていた赤ちゃんもゆっくり降ろしてやる。一同はようやく一息つくことが出来た。 おうちに比べれば遥かに狭い洞穴の暗闇で身を寄せ合いながら、赤ちゃん達はプルプルと震えている。 「ゆぅ・・・にんげんしゃんきょわいよぉ・・・」 「ぜんぜんゆっくちちてない・・・どうちてあんなことしゅるの・・・」 「ほんとだね・・・にんげんさんがあんなにこわいなんて・・・」 頭の上から人間の蛮行を目の当たりにした赤ちゃん達は意気阻喪し、へたりと潰れて弱弱しく泣いている。 ゆっくり達を潰して回る人間達の表情は、みな一様に笑顔だった。 れいむですら、食べ物である虫を殺す時に罪悪感を覚えることがある。 食べるのは生きてゆっくりする為に、生き物誰にでも必要なことだ。そう自分に言い聞かせ、尊い犠牲を摂取している。 しかしあの人間達は、食べるでもなく、ただゆっくりを殺戮する事に快感を覚えていた。 れいむには理解できぬ死生観……聞いていた人間というイメージとは違う、異形の怪物がそこにいるような気がした。 「ゆゆっ!ゆっくちできにゃいにんげんしゃんなんて、まりしゃおねーちゃんがやっちゅけてくれゆよ!」 「まりしゃおねーちゃんはちゅよいんだよ!!いぬしゃんにもかったことがありゅんだよ!!」 口の中にいた赤ちゃん達が、他のみんなをそう言って励ます。 まりさお姉ちゃんとは、れいむの親友のまりさのことだ。 お食事会の時、じゃれてきた赤ちゃん達にまりさは自らの武勇伝を語って聞かせていた。 野犬に襲われた時に、まりさが知恵と体力の限りを尽くして撃退した現場には、れいむも居合わせた。 その時のまりさの姿は、この世の何よりも強く頼もしく、かっこよく映ったものだ。 れいむはイメージを反芻し、自分を勇気付ける。あの強いまりさなら、人間達にも負けはしない……。 「ゆぎゃあああぁぁぁ!!やべでっ!やべでねえぇぇぇぇ!!ばりざにひどいごどじないでねぇぇぇ!!」 「ゆっ・・・このこえ!!」 その時森の方から聞こえて来たのは、紛れも無い大好きな親友、まりさの声だった。 「ゆぎっ、ぞれはやべで!!ほんとうにいだいがらやべでね!!ぞれはほんどうにだべなのぉぉあびびびびびび!!」 聞いたことも無いような声。 野犬に噛まれて餡子がはみ出した時も、「こんなのなんともないよ!」と言っていたまりさ。 そのイメージは、霞のようにれいむの中から消え去ろうとしていた。 「やだ、やだよぉ・・・もうごろじでね・・・ゆびっ!?な、なんでおがあじゃんがあぁぁぁぁぁ!!」 一度は絶望の底に追いやられたらしいまりさの声に、再び恐怖という生気が宿る。 何が起きているのかは全く解らない。窺い知ろうとも思えない。 ただただ、その場の「おそろしさ」だけが、まりさの悲鳴を通じてれいむ姉妹に届けられていた。 「まりざじにだぐないよ!!だずげで!!だずげでれいむぅぅぅぅぅ・・・ゆぎゃっ!」 それきり、何も聞こえなかった。 「ま、まりざっ・・・」 思わず声が漏れ、はっと口を噤むれいむ。 「あしたはきれいなかいがらをさがそうね!」と言うまりさのゆっくりした笑顔が脳裏に浮かぶ。 そのイメージすらもガラガラと消え去る。れいむの精神的支柱は崩壊したのだ。 もしも両親がいなくなっても、大好きなまりさと一緒なら生きていけると思っていた。 人間に殺されているかも知れない。だとしても人間達が去るまで、その可能性には触れまいと思っていた。 しかし、思わぬ形で最悪の現実を目の当たりにしてしまう。既にれいむの感情を縛るものは何もなかった。 もう生きていてもしょうがない。悲しい。怖い。沢山泣いて楽になってしまおう。 そう思い始めたれいむだったが、赤ちゃん達のすすり泣きに出鼻を挫かれてしまう。 「ゆぁ・・・まりしゃおねーちゃん・・・どぼちて・・・」 「うしょだよ・・・まりしゃおねーちゃんはちゅよいんだよ・・・にんげんしゃんにゃんかにまけにゃいよ・・・」 まりさを絶対のヒーロー視していた赤ちゃん達にとって、 憧れのお姉さんが惨めに助けを求めながら死んでいったのは大きなショックだった。 小さな身体が枯れ果ててしまいそうなほどの大粒の涙を流し、泣き声は次第に大きくなっていく。 「ゆっ・・・ゆええぇぇん・・・・」 「おかーしゃぁん・・・おねーちゃん・・・・まりしゃおねーちゃぁん・・・」 「どうちてれいみゅたちをいじめゆの・・・かわいいれいみゅをいじめちゃだめなにょにぃ・・・」 「ゆぇぇ・・・ゆっくちちたい・・・ゆっくちちたいよおぉぉぉむぐ!」 大声を出しそうになった赤ちゃんまりさの口を、咄嗟に舌を伸ばして塞ぐれいむ。外に漏れるような悲鳴は防ぐことが出来た。 口から抑えられた悲鳴がそのまま涙となったかのように、小さな瞳からはぼろぼろと砂糖水が溢れて来る。 そうだ。生まれて間もないこの子達は、きっと自分よりも大きな恐怖を味わっているはず。 この子達には、生きることの喜び、ゆっくりすることの素晴らしさを沢山知ってもらいたい。 まだ成体ですらないれいむにそこまで思わせたのは、 「ぜったいにいきのびてね!!」という親れいむの力強い言葉だった。 自分だけは恐怖に呑まれるわけにはいかない。赤ちゃん達の為にもしっかりしなければ。 そのまま舌を使ってよしよしと身体を揺すってやり、赤まりさの気を落ち着けてやろうとする。 「お、おねーちゃ・・・」 ようやく落ち着いて来た頃、後ろから赤れいむの声がかかる。 れいむは洞穴の奥を向いて赤まりさを抑えていたため、外の様子を見ることが出来なかった。 振り返ったれいむが目にしたものは、自分達を覗き込む、大きくつぶらな瞳。 人間だった。 何故? 「俺は人よりちょっと鼻が利くんだよねぇ。お前らの涙って甘ったるくて、そう……クセぇからさあ。 クセぇニオイが森の外れまで続いてるなぁ、泣いてるゆっくりがいるんだなぁ〜〜〜って、すぐ解っちゃったんだよねぇ」 その手に巨大なナイフを弄びながら、男がれいむの疑問に答えた。 焼きゆっくりや潰れゆっくりの甘い匂いに満ちた森の中で、一筋の涙の匂いを人間が嗅ぎ分けるのは、 もはや嗅覚よりも遥かに強い、ゆっくりへの執念のようなものを感じざるを得なかった。 今れいむ達は男に洞穴から引きずり出され、森の中央にある広場に連れて来られていた。 周囲では幾人もの人間達が、ニヤニヤとれいむ達が震えるのを眺めていた。 他に動くものの姿は無い。そこかしこに散乱した原型を留めないゆっくりの死体が、群れの全滅を雄弁に語った。 「大きな声を上げなきゃ見つけないでいてくれるとでも思ったのかな? でもそんなクセーもん撒き散らしてたら片手落ちも良い所だよなぁ〜〜〜」 「ゆっ!ま、まりしゃのなみだはくしゃくにゃいもん!!ぷくぅ!!」 一番多量の涙を流して脅えていた赤まりさが、勇敢にも人間に食って掛かる。 れいむはそれを見てギョッとしたが、赤まりさもれいむと同様、 憧れていたまりさの死を受け入れ、強くあらねばならないと思ったのかも知れない。 「“ほうしぇき”みたいななみだだっておかーしゃんがいっちぇくれたもん!! くしゃいのはおにーしゃんだよ!!ゆっくちあやまっちぇね!ぷんぷん!!」 「俺が臭い? だろうなぁ。お前らのお仲間の餡子をたっぷり浴びてるから、全く鼻が曲がりそうだぜぇ〜〜」 「ゆぅぅぅぅぅ!!ちね!!ゆっくちできにゃいにんげんしゃんはゆっくちしにゃいでちねぇ!!」 「あん……?」 男が眉をひそめ、ナイフを握って赤まりさに近づく。赤まりさの頬から息が抜け、「ゆわぁぁぁ」と泣き出してしまう。 まずいと思ったれいむは間に飛び出し、ぷくぅぅぅと膨らんで男を威嚇する。 「ん? 何だコイツ」 「や、やめてね!!れいむのかわいいいもうとにひどいことしないでね!! どうしてもやるなられいむにやってね!!れいむはぜんぜんこわくないからね!!」 チョンチョンと男の爪先に突かれ、その度に底知れぬ恐怖を受けながらも、れいむは必死に赤ちゃん達を守った。 赤ちゃん達はれいむの膨らんだ身体の陰に隠れてゆぅゆぅ泣いている。 「そっかぁ……それならお望み通りにしてやるよッ!」 「ゆっ!!」 男がナイフを振り上げたのを見て、れいむは目を瞑る。 何があっても最期まで赤ちゃん達は守り抜く。そう思い痛みを覚悟した時。 「おやめなさい」 ゆっくりいじめ系1770 らふぃんぐゆっくり・後編?に続く
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命、その価値は ホクトが死んだ。 余りに呆気なく。 ボンという音と一緒に命が消えた。 ホクトだけじゃなかった。 他にも6つの音が。 つまりは七人逝ったという事。 「畜生……くそおおおおおおおおお」 ガンと地面に拳を殴りつける。 唯、咆哮が暗い暗い土をくりぬいたような洞窟に響く。 涼しい風が俺に当たる。 ジメッとした湿気が何となくイラつく。 俺――倉成武――は悔しかった。 何もできずに失った息子。 倉成ホクト。 俺には何時の間にか出来た子供。 本当にいつの間にかだった。 愛したつぐみを助けて一眠りをしたら。 17年たっていた。 ……悪い冗談のようだ。 でもそれは紛れも無い事実。 あの地獄のような7日間。 その間に俺は不老不死になった。 キュレイウィルスによって。 キュレイウィルス―――詳しくは俺も分からないが未知のウィルス。 感染したものはキュレイウィルスによって細胞を書き換えられ不老になる。 そして自然治癒力が上がり不死に近い状況になるらしい。 治癒力は怪我に関しては全治2ヶ月、元通りにに歩けるようになるまで更に数ヶ月を要するほどの重傷が1日で回復し、歩きまわれるようになってしまうほどだ。 そして副次的効果として運動能力の上昇もみられるらしい。 最も俺もよくは分からないが。 そのキュレイをもともとの感染者であった小町つぐみから感染してもらった。 生き残る為に。 そしてその7日間の間に俺はつぐみを好きになり屈折あったが結ばれた。 その時に出来た子供が二人。 ホクトと沙羅という双子。 まぁその後色々あって俺が目が醒ましてのは7日間を過ごしてから17年後。 気がつけば37歳でパパだ。 昨日まで20歳だったのに。 いや、心は20歳だ。 うん 本当ビックリだ。 それでもよかった。 あの地獄のようなサバイバルを終えやっと幸せな日々になると想ったんだから。 愛してるつぐみと子供たちと。 だけど。 奪われた。 殺し合いという名のふざけたゲームに。 ホクトとの命と共に。 悔しかった。 息子の死に何も出来なかった自分が。 悔しくて。 哀しくて。 だからこそ。 「壊してやる、こんなゲーム……命の重みを知らない奴らなんかに……絶対に負けてたまるか」 俺は。誓う。 この殺し合いを壊す事を。 主催者のいう通りになってたまるかと 命の大切さを知らない奴らに。 この参加者の命……絶対に上げるわけにはいかない。 それがホクトの死に何も出来なかった自分の償いになると信じて。 頑張ろうと。 俺はここで挫けるわけにはいかなかった。 ホクトは言った。 『パパ……ママ。頑張って。殺し合いなんかに負けないで。絶対に負けないで』 と。 俺は……死なない。 絶対に死なない。 絶対に負けない。 頑張ってみせる。 死んでたまるか。 「見てろ……ホクト。絶対勝ってみせる。生きてみせる」 なぁホクト。 俺は頑張るから。 絶対。 絶対死なない。 「……さて、行こう。まずはつぐみ、少年と合流しよう」 小町つぐみ、少年――桑古木涼権――。 愛する者と七日間を過ごし生き抜いた大切な仲間。 殺し合いに乗ってるわけがない。 だからとりあえずそいつらとの合流を。 「んーどっちを行こうか」 ランタンを掲げて道を照らす。 今俺がいるのは洞窟見たいな所。 一本道になっており長さは分からないが幅はかなりある。 前か後ろ、どっちに行こうか思案している時だった。 「きゃぁあああああ!?」 「!?」 前方の方から少女の叫びが聞こえたのは ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 「……ぐす」 暗い暗い洞窟から少女の啜り泣きが響く。 少女は黒い制服を纏い灰色の髪をしていた。 髪に飾り付けられている碧のリボンがゆれる。 少女は少し怖くて泣いていた。 この状況が余りにも異質で。 彼女を照らす灯は手に持ったランタンと壁に取り付けられてる灯のみ。 光はそれしかなくて後は闇が支配するのみ。 その闇に少女は唯怯えた。 少女―――リセルシア・チェザリーニ―――はよくわからなかった。 突然広い場所に連れてこられて殺し合いをしろと綺麗な女の人が言った。 そして情報をまとめようとする内に沢山の人の首が飛んだ。 怖かった。 哀しかった。 沢山の人の死に。 そして気がつけばこんなくらい場所に。 名簿を見た。 そこには見知った名前が4つほど。 よく知ってる人と名前しか知らない人。 クリス・ヴェルテイン。 最近リセと仲良くしてくれる人。 不思議な人だった。 自分の唄に興味を示して近づいてくる。 人付き合いが苦手で離れるのについて来る彼がとても不思議でそしてリセにとって嬉しかった。 そのクリスまでいる。 彼がこの島に居ることがリセにとって嬉しいような哀しいような複雑な気分だった。 ファルシータ・フォーセット。 自分に良くしてくれる同じ学校の生徒会長。 同じ孤児院出身でとても利発的な人だった。 後はクリス伝いから聞いた名前のみ。 トルティニタ・フィーネ。 アーシノ・アルティエーレ。 よく知らないけど無事であるといいなと唯そう想った。 「……どうしよう」 溢れる涙を拭いながらもリセは考える。 いつまでも泣いてるわけにはいかないから。 恐怖はいつでも傍にある。 こんな命の危険を晒されることなどなかったけど。 それでも恐怖は日常からあったのだから。 哀しい事にリセルシア・チェザリーニは恐怖に慣れていた。 痛みに慣れていた。 リセは孤児であった。 それをフォルテールを扱える、その一点で拾われた。 有名な音楽家がであり今の父に。 父の教えは厳しくて。 失敗すると飛んでくる体罰。 怖かった。 痛かった。 それでも頑張った。 頑張って父に認められること。 それでも自分は父を愛してくれたから。 父が自分を愛してると想っているから。 リセは傷つきながらも生きていた。 だから、恐怖は慣れっこだった。 きっと……きっとその先に幸せがあると思って。 「……うん。大丈夫。大丈夫」 怖いと想う。 充満した死の臭い。 血の臭い。 今でも頭に残っている。 でもリセは生きなきゃと想う。 理不尽な死にたくなかった。 誰もが想うしにたくないという感情。 でもそれでも誰かを傷つけることなど考えたくなかった。 結局リセは優しい人間だから。 殺し合いという理不尽で哀しいものに参加するなんて考えたくなかった。 だからこそ小さな勇気を振り絞る。 この地獄の場所で生きようとするために。 「……まずはこの暗い所から出たいな」 よたよたと歩き始める。 彼女の体には不格好のディバックを持ちながら。 この絶望に満ちた場所で希望を見つけるために。 「……暗いなぁ」 それでも闇がリセの心を不安にさせる。 少しでも明るくさせようとランタンを掲げた瞬間。 「……ひゃぁ!?」 幽鬼の如く目の前に立っていた少女。 青い髪で端整な顔立ち。 白い服と黒のロングスカートを纏っていた。 彼女は目の前のリセを見つめ口を開く。 「貴方……」 「……ひゃい?」 リセはおどおどしながら口を開く。 まさか人がいると想ってから。 それにリセは人付き合いというのになれて居なかった。 リセはいつも孤独だったから。 級友から嫌悪されていつも一人。 リセが部屋に入ると皆が出て行ったり食事も独りだった。 いつも独りで。 だからつい戸惑う。 どう接せばいいかと。 そんなリセにかまうことなく少女は続ける 「……依人。森宮依人知ってる?」 「……貴方は?」 「森宮蒼乃。依人の姉」 そっけなく少女―――蒼乃は呟く。 リセを一瞥しつつただ返答待っていた。 リセは驚いてる自分の心を抑えながら返答をする。 「知りません……えと、私は蒼乃さんが始めてです」 「そう……」 それで会話は途切れる。 リセはえっとと口ごもりをしどう切り出そうかと。 貴方は何をしてるんですかと聞こうか。 それとも自己紹介をすべきかと。 いくつもの言葉が頭に浮かんでは消えていく。 思案し迷うリセを尻目に蒼乃はふぅといきをつきそして告げる。 「……じゃあ、死んで」 永遠の死を。 もう、必要なかったから。 森宮依人という彼女の全てを知らない少女は蒼乃にとって要らなかったから。 「え?」 リセが呟いた瞬間蒼乃は右手を挙げる。 その時何もない所から現れるは白くて薄いもの。 そして蒼乃が手を振った瞬間、それはリセに向かう。 そうそれは紙。 白く鋭い紙。 紙が舞いそしてリセの視界を覆った。 「きゃぁあああああ!?」 目の前の異常。 そして命の危険。 そのことに怯えたか、はたまた偶然か。 リセは咄嗟の判断で横に避ける。 だか一枚の紙が鋭くリセの頬を切り裂いた。 「あぅ……いたぃ」 頬から流れる紅い紅い血。 その頬を抑えながら恐怖に怯えながらも蒼乃を見つめる。 何故? どうして? そんな困惑がリセの頭を支配する。 「……何故ですか」 「依人の為……」 ストイックにそれだけを蒼乃は告げまた手を掲げる。 今度は仕留めるつもりで。 その行動に躊躇いもなかった。 目は唯冷静に。 「……そんなの」 それでもリセは想う。 依人がどんな存在かはリセには分からない。 でも大切なのだろうとだけは解る。 それはリセの勘も入っているけど。 何れ自分は死ぬだろう。 その事に恐怖を感じる。 だけど……それよりも。 この目の前の感情の起伏が薄い森宮蒼乃が。 どうしようもなく。 たまらなく。 「……哀しいですね……うん……哀しい」 「……何が」 「貴方が、森宮蒼乃さんが……哀しい」 哀しかった。 これからリセを殺すだろう。 そしてそれはこの人の業になるだろう。 それを蒼乃が重荷に感じるとは想わない。 だけどそれでも哀しかった。 蒼乃がその大切な人の為に業を背負うことが。 人殺しという業を。 大切な人を想うが余り。 決して赦されない業を背負うのが。 またその選択肢しか選べなかった蒼乃が。 リセにとって森宮蒼乃そのものが余りにも哀しいものだった。 自分の命が永遠に失われる事よりも。 自分が耐えがたい痛みに襲われる事よりも。 何よりも蒼乃の事が哀しくて可哀想だった。 結局の所、リセルシア・チェザリーニはどうしようもなく優しくて。 優しすぎて。 自分よりも他人のことを考えてしまう。 他人が悲しむのを考えてしまう。 とても、優しくて……そして誰よりも哀しい子だった。 「それがどうしたというの?……死になさい」 だけどその思いは蒼乃には届かない。 リセの悲しみや優しさは森宮蒼乃には絶対に届かない。 フワッと現れる3枚の紙。 それはリセに向かい鋭く向いていた。 「可哀想……」 願うくは森宮蒼乃の明日に希望を。 リセはそれを想い目をつぶる。 ―――紙は舞った。 「させるかぁあああああ!!!」 されどそれはリセの命を奪うなかった。 リセの眼前には一人の男。 手に持った華麗な装飾がされている剣。 それで紙を切り捨てていた。 濃い紺色の髪を持ち白に真ん中にラインが入ったTシャツとジーパンを纏う一見普通の男。 されど目には怒りと闘志を湛え蒼乃を睨む。 その男の名は倉成武。 息子を理不尽にうばれ尚も殺し合いに反逆するものだった。 そして誰よりも命の尊さを知る男。 その男が今、何の躊躇いもなく命を奪おうとしている少女を睨んでいた。 「てめぇ……何のつもりだ」 「……見たとおり」 「命がどんなに大切か解ってるのかよ! それを奪おうとするのかよ!」 「……それが?」 武の憤怒に蒼乃は涼しい顔で返す。 躊躇いなど要らない。 再び無数の紙を現し空に浮かべる。 邪魔が入ったがやることは変わらない。 「邪魔をするなら……倒すだけ」 紙は鋭い矢のような形に変質し武の方を向く。 蒼乃の手が振り下ろされればそのままむかえるように。 武は舌打ちしつつ後ろのリセに向かって言う。 リセは悲しい目を唯、蒼乃に向けて。 「俺は倉成武……危ないから下がってろ」 「え……はい。私はリセです……助けてもらって有難うございます……」 「気にすんな」 「……はい」 リセは一度礼をし後ろに下がっていく。 それを見届けるまもなく武を剣を構え唯蒼乃に向かっていく。 「俺は命を蔑ろにするやつを絶対に赦さない!」 目の前の蒼乃に唯吼え向かっていく。 殺し合いを止める為に。 しかしそれはただの蛮勇の様で。 「……」 何も語らず蒼乃は手を振り下ろす。 そして向かうは矢の如く鋭い紙。 それは一直線に武の下に。 「なっ!?……ぐぅ!?」 武は向かう紙を切り刻んでいくも全部を切ることができず、左肩、右足にに刺さっていく。 紙とは思えない鋭さで深く刺さっていた。 紙に紅い血が滲む。 それでも走りをとめない。 止まれば即ち死。 武だけではなくリセまでも。 「うぉおおおおおおおおおお!」 向かっていく。 唯蒼乃の元に。 命の重要さ知る武だからこそ。 絶対に赦すわけには行かない。 だが 「……終わり」 それでも蒼乃は武の想いなど知らない。 蒼乃は唯想うのは一つ。 依人と。 そして目の前の敵を殺すこと。 手を掲げた先にできるもの。 それは壁。 白い白い壁。 暗い暗い洞窟に唯、唯埋め尽くす白。 幾千の紙。 それが織り成す白い紙の壁だった。 「……依人」 蒼乃は唯、手を振り下ろす。 その合図と共に紙が唸りを上げた。 襲うは紙の嵐。 襲い狂う竜の如く。 圧倒的な質量を持って武に唸り向かい襲い掛かる。 無数の紙が。 「ぐがぁああああ!!!!!」 武はその圧倒的な紙の質量に押されその勢いで壁に叩きつけられる。 その威力は一撃で武の動きを封じた。 「……ゴホッ……ガハ……」 武は壁に叩きつけられたまま、ただうごめく。 体は無数の打撲を受けていた。 肋骨が折れたかもしれない。 それぐらいの叩き付けだった。 動こうにも体が動かない。 「……」 蒼乃はそれを一瞥すると紙で形成された剣を作り上げる。 剣は細く鋭いもの。 それをもち唯武に向かっていく。 止めを刺すために。 「……お前はそれでいいのかよ」 武が唯、言う。 何のためらいもなく殺そうとする蒼乃に向かって。 蒼乃がそれでいいのかと。 大切な人の為に殺すのがいいかと。 「……ええ」 剣を向け唯短く応える。 覚悟はした。 というよりもとより蒼乃はそうだ。 蒼乃の全ては依人だから。 剣が掲げる。 命を刈り取る為に。 武の胸に残るのは後悔。 救えなかった。 唯、それだけ。 願うくはリセが逃げ延びる事。 それを思いを死を受け入れようとする。 が 「「!?」」 武、蒼乃の二人が驚愕する。 予測してない出来事に。 「……させ……ない」 腕を目一杯広げて武と蒼乃の間に入ってきたリセ。 体は震え目には涙を湛え。 それでもここは通さないと言わんばかりに立ちはだかっていた。 「……何を?」 蒼乃はたまらず尋ねる。 まさか間に入ってくるとは思わなかった。 唯、リセの行動が不思議だった。 「……殺さないでください……この人を」 リセがいうのは懇願。 蒼乃はある意味呆れそしてまずこの少女からと剣を掲げる。 だけどそれは懇願ではなくて。 「変わりに……私の命だけ……で……」 「なっ!?」 「おい……リセ?」 取引だった。 武を助ける代わりにリセを殺すという。 簡単な取引。 けれどそれはあまりに哀しくて。 武も蒼乃も唯、驚愕するだけだった。 「嬉しかったんです……助けてくれて」 本当に嬉しそうに語る。 リセは嬉しくて。 誰も助けに来ないと思ったのに。 武が助けに来てくれて。 そのとこが堪らなくて嬉しくて。 だから、恩返しをしたかった。 だから助けようとした。 それが恩返しになると思って。 「蒼乃さん……だから私だけ殺してください」 リセは優しすぎて。 他者の事しか考えなくて。 最も大切な自分の命さえ簡単に投げ出してしまう。 ――哀しい子だった。 「……」 蒼乃は語らず。 唯、改めて剣を強く握って。 リセに剣を向けた。 リセは目をぎゅっとぎゅっと瞑って受け入れようとする。 怖い。 でもそれ以上に救えると思うと嬉しくて。 ただ、その時を待っていた。 (させるか!……させるか!……絶対にさせるかああああああああ!) 武は足掻く。 そんな哀しい運命、嫌だった。 自分のせいで誰かが命を散らすなんて絶対嫌だった。 体も動かせるようになってきた。 足掻く。 唯足掻く。 そして、少女を救う為に。 唯、唯足掻く。 デイバックに手にかけ弄る。 何か救えるものを。 絶対に救う為に。 そして取り出したもの。 「……っ!?……これなら!」 取り出したもの。 そして希望があると信じた瞬間。 「……カフッ」 リセは斬られていた。 袈裟懸け気味に。 蒼乃は何の躊躇いも無く。 唯、意志を持って切り裂いていた。 「う……あぁああああああああああああああああ!!!!!!!!」 武は絶望しかけるも止まらない。 そして取り出したものを投げつける。 その瞬間 「!?」 閃光が洞窟を支配した。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 「……日の光ではなかった」 目が次第に慣れてきた蒼乃はただそう呟く。 弱点である日の光。 それではなかった。 一瞬それであると怯んでしまった。 (……あの子) リセとあの子の姿はもう無い。 あの男がリセを抱えて逃げていった。 何故だか追う気にはなれなかった。 あの少女の懇願。 自分は叶えようしたのだろうかと。 自問するも答えは返ってこない。 ただ、リセが一瞬誰かににている気がして。 何故だかわからなかったけど。 でも死んでしまうだろう。 自分が殺したのだから。 後悔もなかった。 「……依人」 思うは大切な弟。 同じく殺し合いの舞台に立っている依人。 彼がいる。 だから殺し合いに乗る。 今はとりあえず少しでも依人が生き残れる可能性を増やす為に。 もし……もし依人が死んでしまった時、優勝して元通りになる為に。 そのために殺し合いに乗った。 それだけだった。 思うは依人の事。 大切な弟の為に。 蒼乃は歩み始めた。 それが血塗れた道であろうと。 蒼乃には関係が無かった。 全ては愛すべき弟の為に。 それが蒼乃の全てだから 【E-2地下洞窟/1日目 深夜】 【森宮蒼乃@sola】 【装備:】 【所持品:支給品一式×1、不明支給品(0~3)】 【状態:健康】 【思考・行動】 基本方針:依人の為に殺し合いに乗る 1:依人の為に参加者を殺す。 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 「死なせるか! 絶対に死なせるか!」 武はリセを抱え地下の道を唯走っている。 武が投げたのは閃光弾。 それでめくまらましをし、リセを救った。 リセの傷は何故かそれほど深くは無かった。 一瞬の手加減があったのだろうか。 武には分からないけど。 それでも幸運だと思い走る。 容態は良くない。 近いうちにリセは死ぬだろう。 そんな事させたくなかった。 何としても。 荒い息。 少しづつ消えていく命の灯火。 それでも武は走る。 救う為に。 絶対に死なせたくないと。 唯走っていた。 ―――リセを救うとするなら……武のデイバックに入ってるキュレイウィルスが入っている注射器。 だがしかし、武は死ぬ事が無い永遠の命をリセに与える事はできるのだろうか? それは未だ誰も分からない――― 【E-1地下洞窟(神社で入り口寸前)/1日目 深夜】 【倉成武@Ever17 -the out of infinity-】 【装備:夜禍殺しの剣@sola】 【所持品:支給品一式×1、閃光弾×5、キュレイウィルス@Ever17 -the out of infinity-】 【状態:全身打撲、右肩、左足刺し傷】 【思考・行動】 基本方針:殺し合いを壊す 0:リセを助ける 1:殺し合いに乗らない 2:つぐみたちと合流 【リセルシア・チェザリーニ@シンフォニックレイン】 【装備:無し】 【所持品:支給品一式×1、不明支給品(1~3)】 【状態:大きな切り傷、出血多量、意識不明】 【思考・行動】 基本方針:殺し合いに乗らない 0:???? 【備考】 ※何もなければ数時間後死にます。 真っ暗な部屋とゴキっぽい妖精と何も知らない私。 <前 次> 闇と光。そして影の少年と向日葵の少女 ▲上へ戻る
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―葉月の頃 その7― 【8月24日 湯屋】① 闇と虫の声に包まれていた山の夜が、ひっそりと明けゆく頃―― 翠星石もまた、夢を見た憶えのないまま、浅い眠りから覚めた。 開け放した障子の向こう、窓越しに仰ぎ見る東の空は、仄白い。 まだ未練がましく居残っている夜の部分さえも、もう淡い紫に色づいていた。 夏の夜明けは早いものながら、こんなに早起きしたのは、久しぶりだった。 空気のニオイとか、マクラや布団が違ったせいかも知れない。 ここ最近、翠星石がベッドを起き出すのは、午前8時を過ぎたくらい。 気温が上がって、暑苦しさに耐えかねた挙げ句に、仕方なく起きるのである。 (ん……いま、何時ですかぁ?) 時間を気にしながらも、翠星石は既に、二度寝モードに突入しかけていた。 抜けきらない眠気に一寸すら抗おうともせず、腫れぼったくて重たい瞼を瞑る。 いつもの調子で、ふぁ――と、大欠伸だって、したい放題。 それでも一応、時刻を確かめる意志は、失っていない。 横たわったまま、寝る前に外して枕元に置いた腕時計を、もそもそ手探りした。 二度、三度……右へ左へ腕を彷徨わせては、指を窄めることを繰り返す。 けれど、彼女の腕は空を切り、指先は悉く、畳を掻くだけだった。 そして、四度目の正直とばかりに、えいやっと大きく振り回した手は―― 時計ではなく、ナニか固いモノを、ぺち! と叩いていた。 (あっちゃぁ~…………やっべぇですぅ) 指先に絡んでくる、細やかな糸状のモノ。触感から、すぐに髪の毛だと理解する。 そして今更ながらに、同じ部屋に泊まっている娘たちの存在を思い出した。 蒼星石、雪華綺晶、薔薇水晶の三人のことを。 いま撲ってしまったのは、誰? 起こしてしまったかな? 少しの間、翠星石は身動きを止め、息を潜めたまま、様子を窺った。 ――すると、次の瞬間っ! ぱくんっ♪ 擬音語にするなら、こんな感じ。 突如として、親指を除く4指が、生温かく湿ったナニかに捕らえられていた。 ただでさえデリケートな翠星石の心臓はキュッと萎んで、身体が硬直した。 (いひぃいぃ――っ!? なな、なんなんですぅ!) 不意打ちに狼狽えた心臓が、カゴの中のリスみたいに、胸の奥でドキドキと暴れだす。 のたのた巡っていた血液は一気に加速され、暴走列車の如く、全身を循環していく。 それによって、まとわりついていた眠気と気怠さも、どこかに運び去られてしまった。 頚を軋ませ、焦りと驚きに見開かれた双眸を、腕の先に向けた翠星石は…… 鮮やかな白のイメージを纏った娘の、幸せそうな寝顔を見つけた。 雪華綺晶は可愛らしい口で、翠星石の指をパクッと銜えこんでいた。 しかも、彼女のナマ渇きの舌が、ねとねとと指先を舐めだしたから堪らない。 くすぐったいやら、気持ちいいやら、筆舌に尽くしがたい感覚だった。 暫くすると唾液が溢れ始めたのか、ちゃぷちゃぷとアヤシイ音まで漏れだした。 その音に誘われるように込みあげてくる、不思議な胸の高鳴り。この感じは、なに? 翠星石の背筋を、悪寒とも悦楽ともつかない震えが、ゾクゾクッと駆け抜けていく。 横になっているにも拘わらず、腰が抜けるような脱力感に襲われていた。 「ふわぁぁ……きらきーのお口の中、あったかいですぅ~」 ……なんて、思わず譫言を口にしたところで、翠星石は我に返った。 ほのぼのと快感に酔いしれている場合ではない。隣には、蒼星石も寝ているのだ。 こんな場面を見られては、あらぬ誤解を受けて、またぞろ面倒なコトになろう。 それは困るとばかりに、翠星石が手を引き抜こうとした折りも折―― いきなりガブッと、たべごろマンマ! 「ひぎっ?!」 咄嗟に空いている方の手で口を押さえて、迸りかけた絶叫を喉元に留めた。 それでも、半端ない激痛に、ブワッと涌きあがってくる涙は止めようもない。 前歯でガッチリかぶりつかれているから、無理に引っ張ったらケガをする。 かと言って、このまま放置していても、大ケガは必至。 そこで、翠星石が採った緊急手段は―― (こうなったら…………くらいやがれですぅ!) 困ったときのハムラビ法典。歯には歯を、ガブッとやられたら、ガブッと。 カタツムリのように布団から半身を乗り出し、雪華綺晶の首筋に顔を近付けると、 翠星石は、芳香を放つ髪の間に表れている彼女の耳に、かぷりと噛みついた。 窮余の一策のハズが、意外にも効果覿面。雪華綺晶は鼻にかかった甘い声を上げた。 僅かでも口が開いたこの隙を逃さず、翠星石は、サッと手を引っこ抜く。 そして、雪華綺晶が完全に目を覚ましてしまう前に、彼女の耳を解放した。 幸いにも、彼女は「やめちゃらめぇ~」と、呂律の回らぬアヤシイ寝言を呟いただけで、 スヤスヤと眠りの世界に戻っていった。 (ひぃぃ、いったぁぁい。もうっ! 私の指は、ソーセージじゃねぇですよっ) 唾液まみれの指には、くっきりと歯形が残っていた。微かに、血も滲んでいる。 涙で曇った瞳で、暢気に寝息をたてている雪華綺晶をジトっと睨めつけながら、 翠星石は噛まれて出血した箇所を、ちろ……っと舌先でなぞった。 そして、ふと雪華綺晶のヨダレも舐めたことに気付いて、トマトみたいに赤面した。 あたふた慌てながら、誤魔化すように枕元の腕時計を摘みあげ、針の位置を読む。 時刻は、5時を少し過ぎたところだった。 いくらなんでも、起きるには早すぎる。もう一度、寝直そうか。 そう思ったが、雪華綺晶のせいで、眠気はカンペキに吹っ飛んでいた。 優雅に朝風呂を満喫するのも良さそうだけれど、ここで人見知りスキル発動。 たった独りで行くのは不安で、考えたそばから、気が引けてしまった。 (しゃーねぇです。早起きは三文の得って言いますしぃ…… 折角だから、誰か叩き起こして、散歩に付き合わせるですよ) こういった場合、蒼星石に白羽の矢が立つのが、いつものパターンだ。 通例に倣い、翠星石は、隣に敷かれた布団に顔を向けた。 ――が、そこに、蒼星石は眠っていなかった。 試みに手を差し入れてみると、布団の中は、まだ温かい。 出ていって間もないようだ。トイレにでも行ったのだろうか? (起こす手間が省けたですね。廊下で待ってりゃ、逢えるハズですぅ) なるべく物音を立てないように、翠星石は布団を抜け出した。 幽かな衣擦れに、雪華綺晶が小さく呻いたが、目を覚ますには至らない。 薔薇水晶に至っては、眼帯が額までズリ上がっているばかりか、 浴衣の胸元がはだけているのに、起きる気配がなかった。 「寝相の悪いヤツですぅ。ほれ……そんな格好してると、風邪ひくですよ」 翠星石は試みに、露わになった薔薇水晶の胸の桃色ボタンを、ぷに……と押してみた。 しかし、覚醒しない。ならばと、ボタンを軽く摘んで引っ張ってみたが、効果なし。 そこでモヤモヤと脳裏に浮かんでくる、第三の選択肢は―― ┏━━━━━━━━━━━━━━┓ ┃ 1:【スイッチぽん!】 ┃ ┃ 2:【押してダメなら引いてみな】┃ ┃⇒3:【吸ってみる】 ┃ ┗━━━━━━━━━━━━━━┛ 自分で考えておきながら、かぁっと赤面した翠星石は、ぶんぶんと頭を振った。 いくら起こすためのイタズラでも、そこまでは出来ようハズもない。 もう知らんです。翠星石は、薔薇水晶をそのままにして、窓際へと移った。 眠りこける二人を余所に、洗面所の鏡を見ながら、長い髪にブラシを入れる。 翠星石は、身だしなみを整えながら、意外に空気がヒンヤリしてるなと思った。 顔を洗うために触れた水も、室内の蛇口だというのに、まるで氷水だ。 ただ立っているだけで、浴衣からはみ出した二の腕や足先から、体温が奪われてゆく。 ここですら肌寒く感じるのだから、夜中、宿の外は、かなり冷え込んだろう。 「そう言えば……あいつ、平気ですかねぇ」 ブルッと身震いして、両腕を掻き抱いた翠星石は、ある人物を思い浮かべた。 あいつ――とは、他でもない。メンバー唯一の男性、桜田ジュンその人だ。 彼は昨夜、みっちゃんの車に宿の布団を運び込み、車泊したのである。 夏休みシーズンということもあり、予約を取れたのは、和室が3部屋だけだった。 倫理的な観点からすれば、ジュンが一部屋を専有することになる。 となると、女性陣は残る二部屋に、5人と6人で分かれなければいけない計算だ。 部屋の広さ的に見て、5人の雑魚寝が、いっぱいいっぱい。 6人だと、誰かが押入で寝なくてはいけなかった。 最善策としては、3部屋に4人ずつ泊まること。 これならば、きちんと布団を敷いて、のびのびと眠れる。 問題があるとすれば、誰か3人が、ジュンと相部屋になることだ。 だからと言って、女の子たちが多数決により、車泊を強要したのではない。 それどころか、彼と同室になることを、密かに期待している娘も居たほどだ。 ジュンも薄々、その雰囲気を察していたのだろう。 後に禍根を残さないため、敢えて、災いの芽を摘む選択をしたまでだった。 「今頃、布団にくるまって、ガタガタ震えてるかも知れねぇですね。 温かい飲み物でも手みやげに、いっちょ様子を見に行ってやるかですぅ~」 翠星石は足音を忍ばせて、そそくさと部屋を出た。 彼が夜気に凍えているようなら、温泉に誘ってみるも良し。 まだ眠っていたら、そっと布団に潜り込んで、二度寝してみるのも一興かも。 ああ、でも……添い寝なんかして、襲われちゃったら……どうしよう? やおら湧いたヘンな妄想が、翠星石の胸をざわつかせた。 ジュンは、そんなコトしない。と言うか、襲ったりする度胸はないだろう。 ――とは思うのだけれど……彼を信じてはいるけれど、やはり……少し怖い。 だが、ココロのどこかでは、そうなることを望んでいるのかも知れない。 でなかったら、こんなご都合バリバリ急展開を、はしたなく期待しやしないだろう。 「わ、私…………やっぱり……今でも、あんな、へっぽこぽこのすけを――」 一度は、想いを伝えた。青い感情を燃えたたせて、胸を焦がしもした。 それは叶わなかったけれど、だからと言って、想いの全てを捨て去るなんて無理。 だって、本気だったから。 誰もが一度は経験する、通過儀礼的な恋愛ゴッコなんかじゃなかったから。 だからこそ、小さな恋の芽は今も、翠星石の胸の中で枯れずに残っていた。 とにかく、行動してみよう。結果を欲するなら、そうするより他にない。 恋愛にカンニングペーパーなど無いのだから、答えを導くには計算式が必要だ。 そう思って、いつになく積極的な心持ちに、翠星石自身ですら戸惑いを覚えた。 何も変わらないかも知れない。あるいは、また傷つくだけかも知れない。 だけど……それでも、逸るココロを抑えきれなかった。 「もし、ジュンが……も、求めてきたら―― ――わ、私……断れないかも……ですぅ」 いゃぁん。翠星石は、桜色に染めた頬に手を当てて、廊下でモジモジ身悶えだした。 彼の腕に抱かれながら、淫らな笑みを浮かべる自分を想像してしまったら、 期待と不安で小刻みに震えだす膝を、止められなかった。 妖しい熱が、翠星石の身体を火照らせ、意識をクラクラさせる。 腰の辺りが奇妙にウズウズして、落ち着かない。 さっさと行こう。胸のドキドキを持て余しながら、彼女は歩き始めた。 しかーし。そうは問屋が卸さない。 3歩と進まない内に、耳を衝く甲高い涙声が、翠星石を呼び止めていた。 また、よりにもよって絶妙のタイミングで、妨害してくれる。 翠星石の火照りは、冷や水を浴びせられたように、しおしおと萎んでいった。 ナニ考えてたんだろう。翠星石は額に手を当てて、はふぅ――と吐息した。 「ぶゃぉわあぁあぁんっ……翠ちゃあぁぁんっ!」 「うっせーですよっ! 朝っぱらから、キンキン声で泣き喚くなです。 おめーは他人の迷惑ってもんを考えらんねぇですか、おバカ苺っ!」 翠星石が、駆け寄ってきた雛苺の脳天に、まさかりチョップを見舞う。 ゴッ! という鈍い音が、冷え冷えとした空気を震わせた。 一応、翠星石の名誉のために断っておくと、これは体罰ではない。 スパルタ乙女の『苦悶式・教育的指導』である。 雛苺は両手で頭を押さえながら、怨みがましく翠星石を睨んだものの、 言いかけた文句を引っ込めて、本題を切り出した。 「トモエが居ないのっ! 昨日の夜、寝るときは一緒だったのにっ」 「だからって、泣くほどのコトですぅ? ちゃんと探したですか」 翠星石の問いに、雛苺は濡れた目頭をこすりこすり、小さく頷いた。 聞けば、宿の中は、ひと通り探してみたと言う。 「オディールは、なんて言ってたです?」 雛苺と巴、オディールの3人は、同じ部屋に寝泊まりしている。 ならば、誰かが部屋を出る気配を、夢うつつに察していたかも知れない。 そんな翠星石の推測に、雛苺は間髪入れず、首を横に振った。 「グッスリ眠ってるの。だから、きっとオディールは知らないのよ」 「なるほど。あぁ、そう言えば、蒼星石も部屋に居なかったです。 どっかで見かけなかったですか?」 「ううん、ヒナは見てないのよ。ひょっとして、トモエは蒼ちゃんと?」 「……どうですかねぇ。蒼星石と巴って、あまり接点ないようですけどぉ」 友達ではあるけれど、いつも一緒に遊ぶほど親しい間柄ではない。 巴は控えめで奥手な感じだし、蒼星石も、過度の馴れ合いを好まない方だ。 そんな二人が、繋ぎ役を介さずに意気投合するだろうか。 仮に、そうだったとして……二人は連れ立って、どこに行ったのだろう? 翠星石と雛苺は、腕組みをして、起き抜けで働きの鈍い頭をフル回転させていた。 と、そこへ―― 「おはよ、二人とも。こんな朝早くに顔を揃えちゃって、どうかしたの?」 宿の正面ホールを横切り、近付いてくる人影が、翠星石たちに話しかけてきた。 それは他でもない、浴衣姿の蒼星石だった。 「蒼星石こそ、独りでドコほっつき歩いてるですか。心配したですぅ」 「ごめん、姉さん。いやさ、なんだか早くに目が覚めちゃってね。 そしたら、ほら……肌寒いでしょ。ジュン君、平気だったのかなって」 「ふぅ~ん。気懸かりだから、あいつの様子を見に行ってたですか」 考えることが同じだなんて、やはり双子ですねぇと、翠星石は破顔した。 だが、ふと……彼女の胸の片隅で、変なざわめきが生まれていた。 もしかして、蒼星石もジュンのことが好きなのだろうか、と。 考えることが似通うなら、寄せる想いもまた、共通してくるものではないか? 双子は同じタイプの人を好きになると、聞いた憶えもある。 ――まさか。しかし、有り得ないコトではない。 そんな予感めいた不安を、翠星石はココロの中で、強引に押し潰した。 「それで……ジュンは、冷たくなってやしなかったですか?」 「杞憂だったよ。ボクたちが気を揉むまでもなく、ジュン君には彼女がいるもの」 鼻の頭を指で掻き掻き、はにかむ蒼星石の態度から、翠星石と雛苺は全てを察した。 雛苺とオディールを部屋に残して、居なくなった巴。 蒼星石が言った『彼女』とは、つまり―― 「……たはぁ~。剣道で培われた勝負勘は、伊達じゃねぇですね。 受けどころと攻めどころを、ちゃーんと弁えてやがるですぅ。 大胆に攻め込んだってコトは、きっと昨夜はお楽しみに……きししっ」 「うゆ? 翠ちゃん。お楽しみって、なぁに?」 「決まってるじゃねぇですか。ジュンと、にゃんにゃ――」 「わ、わぁーっ?! なに言いだすのさ、姉さんっ! 違うよ、雛苺っ! ジュン君と柏葉さんは、そんなコトしてないからね!」 「わかんねぇですよぉ~? 大体、なんで蒼星石は、違うって断言できるですか。 ははぁん……さては、コッソリ覗いてやがったですねぇ~?」 焦りまくりの蒼星石は、姉のニヤケた流し目に晒され、更に狼狽えてしまった。 ロクに反論もできずに「知らないっ」と言い捨て、その場から逃げだそうとする。 そんなナイーブな妹の腕を、翠星石が掴んで、引き留めた。 「あぁん。待つですよ、蒼星石ぃ。冗談を真に受けるなですぅ」 「…………もぅ。ヒドイよ」 恥ずかしさか、からかわれた悔しさか、蒼星石は、ぷーっとむくれた。 翠星石は朗らかに笑って謝りながら、妹の柔らかい髪を、ぽふぽふと撫でる。 そして徐に、右腕で蒼星石の肩を、左腕で雛苺の肩を、グイと引き寄せた。 「さぁて。巴の所在は判ったし、蒼星石とも会えたですから、問題解決ですぅ。 珍しく早起きしたし、気晴らしも兼ねて、ちょっくら散歩に行くですー」 いつもの強引さで、翠星石は実の妹と、妹みたいな親友を引きずり、宿を出た。 二人の肩を抱き寄せたまま、足早に駐車場を横切って、林道の方に向かう。 その際、みっちゃんの車が視界に入ったが、翠星石は努めて顔を背けていた。 内側が結露した車のガラスを見てしまったら、きっとドス黒い感情が噴出してくる。 車内の様子が気になって、覗かずには居られなくなるだろう。 そして、寄り添って眠る二人に嫉妬して、ココロを醜く穢れさせていくのだ。 明け方の林道に、彼女たちの足音と、早起きな鳥の声が谺する。 もう少し気温が上がれば、また煩くセミが啼きだすだろうが、今は静かだ。 木々の間から、朝霧が音もなく浸みだしてくる光景は、とても幻想的だった。 路肩のなだらかな斜面には、斑入りの白い花が、霧に紛れて点々と咲いている。 「わぁっ! ねえねえ見てっ。あれ、ユリの花なのよね?」 「そうだよ、雛苺。あれは、ヤマユリ。花言葉は『純潔』と『荘厳』だったかな」 蒼星石の返答に、雛苺は「うよー」と感嘆して、白い可憐な花に目を注いだ。 鮮やかな緑の葉や茎に、しっとりと降りた夜露が、朝日を受けて煌めいている。 確かに、いま翠星石が見つめている花たちには、花言葉どおりの趣があった。 それに引き替え、ジュンと巴の仲を妬む自分は、なんて醜いんだろう。 翠星石は、胸の痛みを覚えながらも、目を逸らすことなくヤマユリを眺めていた。 (私のココロには……まだ、純真な部分が残ってるでしょうか? あるとしたら、これから先も、ずっと純真なままでいられる……です?) 少しの間、答えを探してみる。そして、一分と経たずに諦めた。 解りっこない。人生は、この林道のようにハッキリと形作られてなどいないから。 未舗装の部分があったり、突然の崖崩れで寸断されることも有ろう。 でも――どんな困難に直面しても、いつだって気高く生きていたいと思った。 願わくば、かけがえのない親友たちと、いつまでも一緒に。 翠星石は、蒼星石と雛苺の肩に掛けていた腕を、そっと背中に降ろした。 そして、溢れんばかりの慈しみに、ちょびっとの恥じらいを滲ませながら、 なにも言わずに、二人を抱き寄せた。 キリリと冷えた山の空気の中で触れ合った、蒼星石と雛苺の温もり。 それは、翠星石のココロに蟠っていた黒い感情を、すぅっと融かしてくれた。 まるで、泥まみれの名残り雪を消し去る、春の日射しのように――
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『影の薄いゆっくり』 17KB 愛で いじめ ギャグ パロディ 差別・格差 変態 飼いゆ ゲス 希少種 都会 現代 独自設定 久々のSSです このSSには愛でられるゆっくりとそうでないゆっくりが出ます 虐待はそんなに多くない愛でSSです 作者に都合のよい独自設定があります これを書いたのはHENTAIあきです!久しぶりだから忘れている方は注意してください! それでもいいというひとはゆっくりよんでね! 仕事を終えて家への帰り道の途中、俺は少し奇妙な光景に出くわした。 遠くて分かりづらいが、野良ゆが道行く人に声をかけているようだ。 これだけなら物乞いか飼いゆにしてくれと叫んでいるだけだろうが、問題はゆっくりにある。 まりさのようなとんがり帽子だが何所かデザインが異なり、髪型も違っている。 ゆっくりに関わる仕事に就いているがどうしてもそのゆっくりの名前が思い出せない。 誰からも相手にされないで落ち込んでいるゆっくりを眺めていると、そのゆっくりが俺に気づいたのかこっちに近寄ってきた。 「人間さん、あたしゃここにいるよ!!!」 涙目になりながらそのゆっくりは俺に対して自己主張をしてきた。 「人間さん、人間さんにはあたしがみえるかい?」 不安そうな顔でこちらを窺ってくるみまだが、俺は驚きで動けなかった。 何故なら希少種の中の希少種とも呼ばれるゆっくりみまが目の前にいるのだから。 「あたしゃここにいるんだよ!ここにいるんだって!!何で誰も気づいてくれないんだい!!!」 馬鹿みたいに固まってしまっている俺に、みまは癇癪を起した子供のように泣き始めてしまった。 ようやく我に返った俺はとりあえずみまを落ち着かせる為にも話しかけることにした。 「しんきー!まりさー!あたしゃここにいるよおおおおおおおおおおおおおおおお!誰でも良いから気づいておくれー!」 「ちゃんと気づいているよ。」 「ゆうかでもれいむでもいいから気づいておくれー!あたしゃ寂しいよおおおおおおおおおおおおおおおお!」 「だから!気づいているって言ってるだろ!」 怒鳴る様になってしまったが、それでようやく気付いたのかみまは泣きやんだ。 しかし、こんどは壊れたかのように俺の脚に体を擦りつけてくる。 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 「うわ!ちょっと落ち着け・・・。」 れいぱーのような行動が気持ち悪いが、ここはぐっと我慢だ。 これがれいむやまりさなら即蹴り飛ばすだろうが、相手はみまであるからそうするわけにもいかない。 「人間さん、あたしゃ嬉しいよ!今まで誰も相手にしてくれなくてあたしゃ寂しかったんだから!」 「そうなのか?お前ならゆっくりに詳しい人間なら話しかけて来てもおかしくないんだけどな。」 みまの言葉に俺は首をかしげてしまう。 こんな街中でみまが姿を見せれば、すぐに加工所なりゆっくり愛好家が飛んで来てもおかしくないはずなのに。 だが先ほど見ていた通り、まるでみまが見えてないかのようだった。 「じゃあ同じゆっくりに声をかけたらどうなんだ?別に人間じゃなくても良いだろ。」 「そうなんだけど、皆あたしが見えて無いみたいに気づいてくれないんだよ。」 「なんだそりゃ?」 こいしみたいなステルス能力でもあるのだろうか。 あまりにも希少すぎてみまの生態にはまだ詳しいことが分かっていない。 俺も本の片隅に載っているのを見たことしかなく、実物を見たのがこれが初めてだ。 「人間さん、あたしと一緒に暮らしてくれないかい?もう寂しいのは嫌だよ!」 嬉しいこと言ってくれるじゃない、俺は例え嫌がろうと無理やり連れて帰ろうとしていたところなんだぜ。 希少種は結構気難しいから、飼いゆにしようとしても逃げ出すやつがいるからな。 「どうしようかなー、俺はそんなに余裕があるわけでもないし。」 「そんなこと言わないでお願いだよ!?ご飯さんは自分で集めるし、一緒にいてくれるだけでも良いから!」 わざと悩むふりをしてみると、みまは必死に頼み込んでくる。 まあ元々飼う気はあるけど、ちょっとした悪戯心だ。 「よし、そこまで言うなら良いだろう。だけど俺の言うことはちゃんと聞いてもらうぞ。」 「一緒に住んで良いんだね!やったー!」 嘘って言ったら泣き出しそうだなと考えながら、俺はみまを抱えあげて家へと向かう。 途中野良のれいむが赤ゆと一緒に餌をねだってきたが、邪魔だったから蹴り殺しといた。 みまを拾った翌日、俺はいつも通りに職場のゆっくりショップに出勤する。 餌を置いてみまを留守番させて、大人しく待っているように言いつけておいたが出勤しようとした時にみまが泣きだして困った。 まあ最後はちゃんと分かってくれたが、毎日あれだと少し困るな。 「君、ちょっと良いかね?」 考え事をしながら店内の掃除をしていると、いつの間に来ていたのか店長に声をかけられた。 「店長、急に声をかけないでくださいよ。毎度のことですけど忍者ですか?」 「これはすまないね、気を付けているつもりなんだが中々治らなくてね。」 苦笑しながら頭を掻いているのは、俺の上司でありこの店の店長だ。 ブリーダーとして有能で、この業界では有名な人だ。 ただ少し変わっており、気に入った人間なら誰でも雇ってしまう変な癖がある。 まぁ、その雇った人たち全員が今ではブリーダーとして独立しているようで人を見る目は相当な物だ。 「それで何の用ですか?」 「ちょっと頼みごとをしたくてね。」 何だかすごく嫌な予感がしてきたぞ。 この人の頼み事は大抵無茶なことだからな。 「実は常連のお客さんが買って行ったゆっくりがゲス化したらしくて、何とか元に戻してくれないかって言ってきてね。」 「・・・店長、それ新しくゆっくり買った方が早いじゃないですか。」 「そうなんだが、買って行った人はそのゆっくりに愛着があるらしくて何とかしてくれって泣きつかれてね。」 たまーにそう言う客がやってくることもあるが、俺はそんな客には新しいゆっくりを買うことを勧める。 何故なら一度ゲス化したゆっくりを矯正するのは並大抵のことではないからだ。 「私も断ろうとしたんだが、今日の君を見たら何とか出来そうだと思ってね。」 「何です、その不安な根拠は?」 「頼むよ、駄目でも良いから引き受けてみないかい?上手くいけば特別ボーナスも出すから。」 結局断ることも出来ずに店長の頼みを聞くことになってしまった。 駄目で元々だし、これも良い経験になるだろうと考えてとりあえず引き受けた。 「というわけでこれが問題のゆっくりだよ、今はラムネで眠らせてあるから家に帰ったら開けてくれ。」 帰宅間際に店長から問題のゆっくりが入っている段ボール箱を受け取り、みまが待っている我が家へと帰ることにしよう。 「今帰ったぞー。ってどこいった?」 部屋を見渡しても何所にもみまの姿が見えない。 まさか逃げ出したのか? 「あたしゃここにいるよ!!!」 後ろから急にみまの声が聞こえて来て、振り返るとみまが怒った顔でこっちを睨んでいる。 「さっきから声をかけてるのに、無視するなんてひどいじゃないか!」 どうやら最初から部屋にいたようだが、俺が気づかないでいただけだったようだ。 「お兄さん、その箱さんは一体何だい?」 「これはな、仕事先で良い子にしてくれって頼まれたゆっくりだよ。」 これから一緒に暮らすことになるのだから、ちゃんと顔合わせをしていたほうが良いだろう。 そう思って段ボール箱を開けてみると、そこには俺が予想していたより最悪なゆっくりがいた。 「ゆぴー。ゆぴー。」 「みょおたべられないよ・・・。」 中には丸々と太ったまりさと、赤まりさが気持ち良さそうに寝ていた。 店長からまりさとは聞いていたが、赤ゆもセットだったなんて聞いてないぞ。 「ゆ・・・?ここはいったいどこなんだぜ?」 眠りから覚めたまりさがきょろきょろと辺りを見渡す。 「おはようまりさ、訳あって今日から一緒に住んでもらうことになったからな。」 「みなれないどれいなんだぜ、とりあえずまりさとおちびちゃんはおなかがすいたからあまあまをけんじょうするんだぜ!」 「あみゃあみゃよこちぇー。」 いきなり奴隷扱いとやっぱり酷いなこりゃ。 おまけに赤ゆの方ももはやゲス確定のようで俺に向かってぷくーをしてやがる。 「まりさ!あんた何馬鹿なこと言ってるんだい!」 「ゆ?なんだかなつかしいこえがきこえたきがしたんだぜ?」 「お前の後ろにいるみまの声だよ。」 「うしろ?」 恐る恐る後ろを振り返ったまりさの前に、みまが怒りの形相でまりさを睨みつけていた。 「あたしゃここにいるよ!!!」 「げげ!みまさま!?」 「だりぇ?こにょばばあ?」 赤まりさの言葉にみまが容赦ない体当たりを行う。 手加減はしていたようで赤まりさはころころと転がっていく。 「おちびちゃあああああああああああああああん!」 「何がおちびちゃんだい!半人前の癖におちびちゃんなんて作って、あたしゃそんな風に育てた覚えはないよ!」 気絶して痙攣している赤まりさを心配するまりさに、みまが厳しい言葉を投げつける。 別に育てて貰った訳でもないのに、まりさはしどろもどろに言い訳を始めだした。 「ち、ちがうんだぜ!おちびちゃんはまりさとれいむのたいせつなおちびちゃんで」 「だまりな!あんたみたいな馬鹿弟子がおちびちゃんなんて早すぎるんだよ!」 ガミガミとまりさを説教しているみまに、まりさは何も言えないでいる。 実際このまりさ、野良のれいむを勝手に部屋に入れてすっきりした挙げ句に部屋を汚しているらしい。 番の方は飼い主に殺されたようだが、どうせまりさ似の赤まりさは殺せないで一緒に教育を頼んだのだろう。 「まったくあんたって子は、少しは考えて行動しなきゃ」 「うるさいんだぜ!まりさはさいっきょうだからみまさまなんてこわくないんだぜ!」 説教に耐えきれなくなったのか、まりさが逆切れしてみまに襲い掛かる。 しかしあっさりとみまはまりさの体当たりをかわすと、無様に顔面をぶつけたまりさの上に圧し掛かり踏みつけ始めた。 「ゆげぇ!」 「まったく!いつの間にこんなゲスになっちまったんだい!あたしゃ情けないよ!」 希少種といはいえ結構な能力みたいだ、これならまりさを上手く躾け直すことも出来るかもしれないな。 「まあ今日の所はこの辺にしてあげな、飯食ったらまりさ達と一緒に勉強だ。」 「まだ言いたいことはあるけどしょうがないね、ほら!そこのおちびもいい加減に起きな。」 圧し掛かっているまりさから降りたみまは、気絶した赤まりさを起こそうと体を揺らす。 「ゆ~ん。ゆゆ!まりちゃにひぢょいことしちゃくしょばばあ!」 「あんたには口の利き方を教えないといけないみたいだね。」 青筋を立てているみまをなだめて、とりあえず俺は三匹の餌の用意を始めるため台所に向かう。 後ろから赤まりさの悲鳴が聞こえたが、これも仕事に役立つであろうから放っておくか。 それから俺は昼はゆっくりショップで、夜はみまとまりさ達の教育という生活を送ることになった。 まりさ達は中々ゲス化が酷かったが、みまがいるおかげで随分とスムーズに教育が上手くいってくれた。 「またこのごはんさんなの?まりさはもっとおいしいごはんさんがいいよ!」 「我まま言うんじゃないよ!ご飯さんが食べられるのは誰のおかげだと思ってるんだい?」 「そんにゃのおかあしゃんとまりちゃがゆっきゅりしちぇるかりゃだよ!」 「そんな訳ないだろ!お兄さんが毎日狩りをしてきてくれるからご飯さんが食べられるんだよ!」 「ゆぴぃ!ぶちゃにゃいぢぇぇぇぇぇぇぇぇ!」 何度も行われる体罰のおかげでもあるだろうが、俺が叱りつけるよりも随分と素直に言うことを聞いてくれる。 飼いゆの必要な知識をみまと一緒に教えているが、これなら銀バッジぐらいのレベルになったであろう。 そんなことを考えて店長に報告しようかと思っていたところ、まりさ達に変化が現れた。 「おにいさんおかえりなさい、まりさたちはちゃんとおるすばんしてたよ。」 「うふふ・・・、みまさまにかっちゃった。うふふ・・・。。」 だぜ言葉もすっかり抜けきったまりさと、赤ゆから子ゆに成長した子まりさが変な口調で俺を出迎えた いつの間にかお飾りの帽子と髪まで変色しており、子まりさの変化に驚きつつどういうことかみまに聞いてみる。 「今日ちょっと遊びでおちびちゃんに負けてあげたらああなってたんだよ。」 「うふふ・・・。」 まりさ種の亜種であろうが、俺はこんなまりさは見たことが無い。 とりあえずまりさ達の教育も一通り終えたこともあり、俺はまりさ達を店に持って行き店長に聞いてみることにした。 「ふむ、これはまた珍しい。まさかうふふまりさになるなんて。」 「何ですかそのうふふまりさって?聞いたことないですよ?」 「そうだろうね、まりさ種の中では実に珍しい亜種だからね。」 店長の説明によると、うふふまりさとはまりさ種の中で偶に生まれる亜種のようだ。 まりさつむりや水上まりさと違い、中々野生ではお目にかかれない珍種のようだ。 おまけに下手をすれば退化しているつむりや水上まりさと違い、うふふまりさは向上心や知識への欲求が高く賢い。 しかしながら、何故か同じまりさ種からは目の敵にされていることもあり数が非常に少ないようだ。 「しかしこのまりさは普通のまりさだったはずじゃないか?どうしてまたうふふまりさなんかになってるんだい?」 「そのー、家で飼っているみまと遊んでたらこうなったみたいで・・・。」 「ああ成程、君はみまを飼っていたのかい。それなら納得だ。」 どういうことかと聞いてみると、どうもまりさ種とみま種の関係を説明されることになった。 みま種はまりさ種にとって師弟の関係のようであり、まりさ種には母親のような関係でもあるようだ。 ありす種に対するしんき種に類似する関係で、この二種が番になるとうふふまりさやろりすと呼ばれる亜種が生まれることが多い。 そんな仲であるまりさ種とみま種だが、まりさ種がみま種に勝負事で勝つとこのようにうふふまりさへと突然変異することがあるらしい。 「しかし君もついているね!まさかあのみまを飼うことができるなんて!」 「運が良かったんですよ。それで、このまりさ達どうですか?一応俺に出来ることはしたんですが。」 「ふむ、中々良い目をするようになったようだね。これならお客さんも満足してくれるよ。」 一応飼い主に連絡したところ、躾がなされていればそれで良いとの返事があったようだ。 店長から特別ボーナスを貰い、みまのお土産を買って我が家へと向かう。 「ただいまー、ってまた隠れてるのか。」 もはや日課となってしまっているみまのかくれんぼ。 最初は俺がみまの姿を見つけられないだけだったが、だんだんみまの方が楽しくなってきているのか自分から隠れるようになった。 「まりさ帰ってきておくれ、あたしゃ寂しいよー。」 机の下でみまが寂しそうにしていた。 最初の出会いが最悪だったが、みまはまりさ達に深い愛情を持っていたようだ。 「おーい、今日はお土産に海老フライ買ってきたぞー。」 あえて気付かないふりをしてみまに呼びかける。 するとみまが机の下から勢いよく出てきた。 「お兄さん!エビフライさんって本当かい!?」 先ほどまでとは打って変わり、みまは目を輝かさせてこちらを見ている。 口からはよだれが滝のように流れている。 「本当だぞ、みまが寂しくしてるかもしれないと思って買って来たんだ。」 「あたしゃ寂しくなんかないよ!!!」 少し怒りながらみまが頬を膨らませて抗議してきた。 俺は笑って謝罪しながら、夕食の準備を始める。 寂しくない様にちゃんと相手をしてやらないとな。 まりさを更正させてから俺のもとにはゲス化した飼いゆの更生依頼が続々やってくることになった。 みまと協力しながらまりさやれいむ、ありすといった飼いゆを中心にそこそこ評判になっている。 そんなことを続けるうちに、突然みまが胴付きになった。 上半身は普通の胴付きなのだが、下半身は何故か漫画に出てくるような幽霊のような姿になってしまっている。 頭がポル○レフ状態になってしまったが、別に困ったことになったわけでもなくむしろ今まで以上に助かっている。 「ほらほら!早くテレビのリモコンさんを取ってきな!」 「どぼぢでありすがこんなめに・・・。」 「何言ってるんだい、勝負に負けたら何でも言うこと聞くって言ったのを忘れたのかい?」 寝転がりながら更生を依頼されたありすに雑用を任せているみま。 大抵みまはやってきたゆっくりに勝負事を挑み力の差を思い知らせる。 その後はみまが俺の主人であることを分からせ、飼いゆとしての心得と人間との付き合い方を一から教え込むことにしている。 「おや?電池が切れてるのかい?ちょっとコンビニまで行って電池を買ってきておくれ。」 「できるわけないでしょおおおおおおおおおおおおおおおお!」 「まぁ待て、こういう時はこうやって・・・。」 リモコンの裏蓋を開けて電池を軽く回してみるがやはり動かなかった。 これで結構また動くようになるんだけど。 「しょうがないからちょっとコンビニで電池買ってくるわ。」 「ありすはあまあまさんがほしいわ!」 「何であんたの為にそんな物買ってこないといけないんだい!」 「ちょかいは!」 みまの足で頬を叩かれて転がるありすに爆笑してしまう、さっさとコンビニに出かけることにしよう。 目当ての電池はすぐに見つけ、ついでにみまとありすの為に何か甘いものを買ってやるか。 「よお!久しぶりじゃん!」 何やら声をかけられ横を向くと、そこには高校時代の悪友が立っていた。 「久しぶりだな!何だその似合わないスーツ!」 「何言ってやがる、そっちこそそのダサいジャージまだ着てんのか!」 お互いの服装を笑いながら、軽く体を小突きあいながら思い出話しに楽しむ。 最近じゃ色々と忙しくて連絡を取れないでいたが、やっぱり旧友との再開は嬉しいな。 「何年振りだろうな、お前に会うなんて。」 「卒業以来じゃないか?正直同窓会に参加しないから死んでるんじゃないかと思ってたぞ!」 「え?同窓会何てやってたのか?」 一度も連絡など来たことがないのだが・・・。 もしかして俺って嫌われてたのか? 「あー、そういやお前ってあれだったな。」 「何だよあれって?」 「お前周りから何て言われてたか知ってるか?」 何だろう、何だかすごく聞きたくない気がしてきた。 俺の不安な表情が楽しいのか悪友は楽しそうに笑ってやがる。 「別に悪い意味じゃないんだぞ、ただ見事にお前の特徴を表してるだけなんだ。」 「良いから早くいってくれ。」 「お前ってあんまり目立たないだろ?それで俺が『あいつはパーフェクトプランの使いって』だって言ったら、 皆すごく納得しちゃってな、いつしかお前のあだ名になっちまったんだよ。」 待てよおい!確かに俺はそんなに目立つ方じゃなかったが、存在感まで無くすほどじゃないだろ。 正直周りからそんな風に思われていたとは、こいつだけでも覚えてくれているのが救いか。 「ぶっちゃけ俺もそのジャージ見るまで忘れてた、やっぱりお前存在感が無いな!」 前言撤回、こいつもギルティだった。 「いって!いきなり何しやがる!」 「うるせぇ!これは俺の痛みだ!」 「事実だからしょうがないだろ!」 コンビニで騒いでたら店員に怒られて店から追い出された。 最後はお互い笑いながら連絡先を教えて別れたが、何ともやりきれない気分で家に帰る。 「みま、お前は気分がよく分かったよ。」 「いきなりどうしたんだいお兄さん?」 家で俺の帰りを待っていたみまを、俺は優しく抱きしめる。 みまが困惑しているが、俺はみまが味わっていた孤独が何だかわかったような気がした。 「んほ!にんげんさんとゆっくりとのこいなんてとかいはだわ!」 「馬鹿なこと言ってるんじゃないよ!お兄さんも早く離れておくれ!」 ありすに茶化されてみまが俺を引き離そうとするが、俺はみまを抱きしめ続ける。 結局この日は全員で同じ布団で寝ることになった。 だってこのままだと布団で一人寂しく泣きそうになったから。 おまけ でもみま様の搾乳ならちょっと見てみたいかも・・・ 「何だか最近体が変だね。」 「そうなのか?見た目じゃ良く分からんが。」 「ここだよ、お兄さんちょっと揉んでみてくれないかい?」 「そこは色々とまずいだろ常識的に考えて・・・。」 「そこは何とかお願いだよ、知らない人間さんのお医者さんに触られるのは嫌だし。」 「じゃあちょっとだk、何か出てきたー!?」 少し揉んだとたんに何やら白っぽい液体が出てきて慌てるお兄さん。 みまが大丈夫かと様子をうかがうが、何やら恍惚とした表情で喘いでいた。 その姿にお兄さんはつい手に力を込めてみまをさらに揉み解していく。 翌日、やけにすっきりとしたみまと、ミルクのような白濁液をこっそり飲み干すお兄さんの姿があった。 後書き どうもお久しぶりです、最近色々な諸事情からSSがまったく書けなくなったHENTAIあきです。 理由としては就活や授業や免許といったどうしても避けらない事情から。 あとSSを書く上でのモチベーションが維持できなかったのも理由の一つ。 新作のすばらしいイラスト→むらむらするよ!→んほおおおおおおおおお!→ふぅ・・・ゆっくりよりも大事なことがあるだろう。 SSを書く上で最も重要なのはリビドーであるHENTAIあきでした。 感想等がありましたら下のスレにぜひお願いします http //jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/13854/1274853561/l50