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ラノで読む 騒がしい保健室の事件記録 『真贋考察』 後編 ■4 「そも、なんでコイツはテスト用紙なんかを金庫から取り出したんだと思う?」 そんな質問を私達に放り投げてから、先生は取り出した二本目の缶コーヒーを開けて喉に流し込む。 「え? いや、そりゃあテストで良い点数を取る為に、盗もうとしたんじゃあ?」 実際に金庫からテスト用紙が取り出されている。テスト用紙を盗むのは、そのテストの為だと考えるのが普通なんじゃないのかな。 記憶がない私だって、そう考えるのだから。 「だったら」 缶を口から放し、能都君の模範的な回答に質問が重ねられる。 「なんでバレないように行動しないんだ?」 ポケットから煙草と電子ライターを取り出す。副流煙の事などお構いなしに火をつけて、美味しそうに一服する。 「ええと……?」 「ソイツが、犯行直後に転んで、机の角で頭を打ち、発見されるまで気絶するなんていうドジを踏んだからバレたと思われてるが──」 紫煙が天井に吹き付けられる。 ニコチンの独特な刺激臭が、私達の嗅覚と味覚を同時に攻め立てた。 「よく考えてみろ。明らかにピッキングと分かる痕跡を残し──」 田邑さんから手渡されたファイルから写真を選んで机の上に放り投げる。職員室の扉を写した一枚。 「金庫に指紋を残し──」 開け放たれた金庫。指紋採取の状況写真。 指紋照合の結果を書いた書類。 「広範囲に撒き散らしたテスト用紙──」 あちこちに散乱したテスト用紙の写真。 「まるで『瑞樹奈央がやった事』だとバレてくれと言わんばかりだ」 それに、と言葉を継ぎ足す。 「テスト用紙を『盗んで』しまったら、痕跡を残してなかろうと即バレだろ。そうなれば当然テストは中止。問題も全て差し替えだ」 私が瑞樹奈央なら、こんな阿呆な事などしないと、先生が擁護してくれた。 「お前達、映画とか見ないのか? スパイはこういう場合、カメラで書類を撮影してから金庫の中に戻すものだ。 つまりこれは『盗み』が目的じゃない」 「しかし先生……逆説的な推測では、証拠になり得ない」 両の拳に力を込めて、田邑さんは歯噛みする。思わぬ人間から反撃を受けて困惑している様だった。 「だろうね」 あっさり認める先生。 も、もうちょっと頑張ってよ先生!? 「じゃあ別のアプローチをしてみようか。 ……テスト用紙は、どうしてこんなに散らばってるんだ?」 最後に机の上に放り投げた写真を、先生は田村さんに投げてよこす。 「──え?」 「転んだ拍子にばら撒いた? 違うな。 仮にそうだとしても、紙が散らばっている位置がおかしい。転んだ拍子に床に落としたのなら、なんで少し離れた位置にテスト用紙が散乱するんだ」 写真を見ていた田邑さんが「あっ」と声を上げる。そうだ。私が起きて見たテスト用紙は、私から少しはなれた位置に散乱していた。 「つまり、誤って転ぶ前、既にテスト用紙は床の上にばら撒かれていたんだよ」 堀衛先生は煙草とコーヒーを交互に飲み、順番が逆であることを指摘した。 「あれ?」 何かに気付いたのか、田邑さんとは別の種類の声を能都君も上げた。 「でもそれって瑞樹が犯人である事を否定する材料にはなりませんよね?」 余計な事に気付くなよ四角いのっ! 下手に鋭いと厄介だなあ、もう! 「なるぞ?」 おお、いいぞ先生。その調子だ! 「最初の『盗みが目的じゃない』という推測と、今の推理を踏まえるとだな。犯人の目的はテスト用紙じゃなく、あくまで『瑞樹奈央に罪を被せる』事こそが本当の目的って事に……なるだろう?」 飲み終わったコーヒーの缶で、煙草を揉み消し、缶の中へ吸殻を入れる。そのまま流れるような動作で私達を見渡した。 かっこいいですよ先生! ハードボイルドっぽいですよ先生! なんか自分でも私は無実なんだって確証が得られてきましたよっ! 「で、だ。計画が順調に進んで気分が高揚してたんだろうな。踊るなり何なりしたのかもしれんが──そこで足を滑らして転んだ。 そして頭部への衝撃で一時的に記憶を失い──今に至るという、実に間抜けな話だ」 なるほど! ……ん? あれ? 「あ、あのう、先生?」 思わず被告人であるところの私が、弁護士の主張に意見を挟む。 「なんだ」 「その流れだと、そのう……結局、私が犯人になっちゃうじゃですが?」 「そうだよ」 ですよねー。あー驚いた。 ……って、はああああっ!? 私は耳を疑った。 能都君も田邑さんも、二転三転する先生の主張に目を白黒させている。 「だ、だ、だって先生っ! さっき私は犯人じゃないって言ってたじゃないですか!」 私は混乱しながら必死になって主張する。 頭の中がグルグルし始めて、つられて目が回りそうだ。前後左右が不覚に陥る。 煙草の吸殻が入った缶コーヒーを持ち上げ、それを振ってカラカラと音を鳴らす。 何が面白いのか、先生はニヤニヤと笑っていた。煙草を吸ってるくせに、こぼれ見える歯がやけに白い。 「お前が犯人じゃないなんて、私は言ってないぞ? 私は『瑞樹奈央は犯人じゃない』と言ったはずだが」 「だから! 私は犯人じゃないんでしょう!? 真犯人に突き飛ばされて記憶を失った可能性だって」 「いいや、お前が犯人だ」 訳が分からなくなってきた。この人は私を擁護を、弁護をしてくれてたんじゃなかったのか。どうして検察側に立場を逆転させてるのか? これが本当の逆転裁判とか、うまい事を言ってる場合じゃないぞ私。 「だって瑞樹奈央は──私は、犯人じゃない……そうでしょう……?」 泣きそうな声で最終確認。 「いや、だって」 灰皿になった缶を机に置く。 「お前、瑞樹奈央じゃないだろ」 カルシウムで出来た下弦の月が、保健医の口元を切り裂く様に生まれ出た。 ■5 「え? あ? は?」 能都君が間抜けな声を三連発で短く発した。 「先生、どういう事なのか説明を要求したいのだが」 さすがの田邑さんも眉をひそめる。 私は何も、何も言えずにいた。 「別に瑞樹奈央がテスト用紙を盗もうが、誰かを陥れようが──正直、知った事じゃない。 勝手にすればいい」 言いながら二本目の煙草を咥え、火を灯す。吐き出される燻ぶった白い煙が、保健室に停滞していく 「人間、誰だって『魔が差す』瞬間ぐらいはあるだろう。だから『瑞樹奈央は、そんな事をする人間じゃない』等という偏った性善説に基づく思考停止的な感情論を振りかざす気なんて毛頭ないぞ」 妖しいというよりも。 厭らしい笑顔を浮かべて。 保健医が論ずる。 「では、証拠があると?」 田邑さんが身を乗り出す。 「うん。実は決定的なのが二つもある」 それを聞きながら、何故か私の身体は震え始めていた。カタカタと手足が揺れて収まらない。ガタガタと身体が揺れて定まらない。ガチガチと奥歯がぶつかり鳴り止まない。 「実はコイツが保健室に入ってきた時から偽物だとは気付いてたんだ」 「ええええっ!? 先生、それこそ早く言ってくださいよ!」」 能都君が驚きのあまり立ち上がる。 「てっきり私は瑞樹の偽者を捕まえた時に怪我をさせたものだと思ってたんだ」 しれっと、堀衛先生が言う。 物証があると聞き、田邑さんの目が真剣なものに変わる。私も震える身体を抱えながら、弱々しく先生を見た。 「後頭部の治療する時、念のために身体のあちこちをチェックしたんだがな」 私は思い出す。 他に怪我が無いかと、この保健医にセクハラみたいなチェックを受けた事を。 「コイツの身体、女だぞ」 ──え? そんな意味が分からない事を、頭から黒い滝を流している様な女は口にした。なにを当たり前な。私は女子の制服を着ている。 見なくても触らなくても、自分の身体なのですぐに分かる。 私は女だ。 それがどうした。 「なん……だと……?」 けれど。 能都君も田邑さんも、驚いた目で私をマジマジと見るのだ。 「どうやら服装を含めた外見を変化させるのが、お前の能力みたいだな。 指紋まで再現できるという事は、随分と能力の精度が高いらしい」 ニヤニヤと笑いながら「実に興味深い」と呟く。机に右肘を置き、頬を乗せ、私を舐める様に眺める堀衛先生。 身体の震えが止まらない。ビキビキと、私の頭の中で「誰か」が這い出し始める。 「しかし瑞樹奈央が男だという事までは知らなかったらしいな。つまり『知らない事』までは再現できないのかな? 指紋は自分で採取した物を変身時に組み込んだのか?」 質問を受けるが、私には答えられない。 失われた物が少しずつ復元されていく。 回復し、修繕され、修復し、補完されていく。それは開放と安定を意味するはずなのに不安と恐怖は拭えない。回答なんてできる訳が無い。私は今、ナイフを首筋に当てられている状態なのだ。 「ど、どうして……っ」 「うん?」 「どうして、保健室に入った段階で、そんな段階で偽者だって……っ!?」 私は、震えたままの声を絞り出す様に床へと落とす。 まるで。 あの時のテスト用紙みたいに。 けれど堀衛先生は即答せず、チラッと腕時計を見ただけだった。 「一時間。そろそろか」 そんな事を呟いた。 違う、私が聞きたいのは、そんな言葉じゃなくて──! 「ぷひゅるるる~っ」 すると、不思議なイビキが。 保健室の中から──カーテンで仕切られたベッドの方から聞こえてきた。 「え?」 私が能都君に連れられて保健室に来た時。 先生は目を丸くして驚いていた。 私が治療を受けている時、カーテンで仕切られたベッドを見ると、先生は「アレの事は気にするな。もうお前には関係ない」と言っていた。 何故この先生が、あんなにも驚いたのか。 何故「『もう』関係ない」と言ったのか。 まさか。 まさか。 「瑞樹奈央は能力者でな。能力者は一人一能力が原則。変身能力を有している以上、お前が瑞樹奈央であるはずが無い」 先生が立ち上がる。 カーテンで仕切られたベッドまで歩み寄る。 「瑞樹奈央は『常に女装状態になる』という何の役にも立たん能力の持ち主でな。 しかも私の保健室に何度も寝泊りするという、風紀委員にあるまじき巫山戯た奴だ」 カーテンに手をかける。 「寝始めて一時間後には、今みたいなイビキをかく。役立たずな上に迷惑な奴なんだ」 シャッと、カーテンを開ける。 そこには。 おそらく自分専用の抱き枕を抱きしめながら、幸せそうな寝顔を晒す──瑞樹奈央の姿があった。 「え、じゃ、じゃあ奈央は最初から此処に?」 呆然と、女物のパジャマを着た瑞樹奈央を見下ろす能都君。今なら田邑さんが言っていた事が分かる。 明らかにスケベな目をしていた。 「では、彼女は……いや彼なのか?は、一体誰なんですか」 田邑さんは、私から視線を外さず、先生に尋ねた。やめて。頭が痛い。傷のせいじゃない。ガンガンと内側を叩いてくるような。 私が、私の中から── 「能都、今日の朝から何の連絡も無しに欠席している生徒がいるはずだ。確認を取ってみろ。 何人かいるかもしれんが、たぶん二年生か三年生だ。瑞樹に取り締まりされた記録がある奴なら、かなり絞り込めるはずだ」 「あ、は、はい!」 あわててモバイル学生証の端末を操作し始める四角形。頭を支配する痛みが増していく。 やめて。やめろ。上手く行っていたんだ。 あの時までは上手く行っていたんだ。 畜生。煙草だって一本吸っただけじゃねぇか。それなのにアイツが。それで停学なんて。 今の私が崩壊し始める。 俺の体を維持できなくなる。 やめてくれ。やめてくれ。 頭の中が痛い、痛いんだ! 「それが、コイツだよ」 その言葉が耳に届くよりも早く。 私は痛さに耐え切れず、意識を失った。 ■6 「え? ボクが寝てる間に、そんな面白い事があったの?」 何処から見ても女の子にしか見えない奈央が、事件の経緯を聞かされてそんな感想を口にする。 能都が箱、田邑が鈍器、堀衛がナイフなら、奈央は『精巧な人形』であった。身体も心も男だが、見かけは完全な美少女である。 しかしその可憐さには、どこか造り物めいた雰囲気が漂う。実際、奈央が装飾している物のほとんどは、常に発動し続けている能力が創り出している物である。 ストレートロングの髪、女子生徒用のブレザー一式、カチューシャ、薄化粧、さらには下着まで。全てが造り物なのだ。 『常に女装状態にある』能力。 ゆえに漂う人造感と人形感。この姿も奈央本人ではなく、偽者であるとも云えるだろう。 だが奈央自身は、そんな偽者の自分を全て含めて「今の自分」なのだと考えている。 自分の能力に悩んだりもした。友人にからかわれたり、近所から奇異な目で見られたりもした。目に見えない重圧が、このまま奈央を押し潰してしまうものと思われた。 しかし元々ネガティブな性格の持ち主ではなかった。悩んで自分に負けるよりも、開き直った方が勝ちだと。まずは「楽しむ」事にした。女装な自分で堂々と過ごしたのだ。 すると不思議な事に、世界が向こうから開けた感じがしたと、奈央は後に語っている。 自分を認めることで、真の意味での本物を──自分自身を得る事ができたのであった。 双葉学園の高等部に入ってから風紀委員に立候補したのは、自分を認められずにいる人の手助けをしたいと思っての事だった。 清濁真贋を併せ持つ「本物」。 それが瑞樹奈央である。 テスト盗難未遂事件の翌日。 いつもの保健室で、いつもの四人が食事を摂っていた。白衣のポケットから缶コーヒーを取り出しながら、堀衛が迷惑そうに彼らを眺めて口を開く。 「お前達。別に登校拒否生徒って訳じゃないだろう、何で毎日毎日、私の保健室で昼飯を食べるのだ」 学食で販売しているメロンパンをポケットから取り出すと、袋を破ってかぶりついた。 「えー、いいじゃないですか先生。みんなで食べる食事は楽しいですよ」 日の丸弁当を食べながら、能都がそんな事を言う。白米に梅干だけのシンプル過ぎる昼飯をガツガツト食べている。 「麻太郎。いつも日の丸弁当じゃ飽きない? オカズ分けてあげるよ?」 「本当か奈央。いつもすまんな」 心配そうに友人の弁当を覗き込む奈央に、夏鈴が辛辣な口調で制止する。 「能都の企みは明白だぞ奈央。君からの施しこそが奴の狙い。実に浅ましい奴だ。 そこまでして奈央の手作り弁当が欲しいのか」 「オカズには困ってないクセになあ」 堀衛が夏鈴の言葉に同調しようとして、絶妙な匙加減で同調し切れなかった。 「ふえ?」 「なななななな、何を言うんだ夏鈴に先生! い。いや、別にいいじゃないか、俺と奈央は結婚の約束をしてるんだから、これぐらいの先物取引は当然だ!」 オカズの意味を探る奈央の思考を遮る様に、立方体人間が大声を張り上げる。 「あ、麻太郎っ!? 幼稚園の約束なんか持ち出すなよぅっ!?」 あわあわと、隣に座る能都に、奈央は猛然と(しかし迫力の欠片も無く)抗議する。 「そうだな。幼稚園の時の約束など、契約の根拠にはならん。まして男同士ではないか。 ならば男女間で正当な結婚の約束をした私が奈央の弁当を先物取引する権利がある」 奈央の抗議を後押ししながら、夏鈴は親友の弁当からエビフライをつまんで食べた。 「ああっ、ボクのエビフライが一口でっ! 酷いよ夏鈴ちゃんっ!」 左隣に座る夏鈴の方へ、慌てて振り向く。 常時発動している能力が具現化するロングヘアのウィッグが、ふわりと揺れた。 完全に翻弄されている。 「実に喧しい」 堀衛は溜息をついた。もう諦めている様子である。そして自分の言葉で思い出したのか、話題を再び昨日の事件へと戻す。 「そういえば、瑞樹の偽者だったアイツ。誰なのか分かったのか?」 「ああ、それなら」 半泣きで抗議する親友から視線を外すと、夏鈴は学生証を開いた。 「先生の言われた通り、3-Dに所属していた平野彩人(あやと)でした。 学園側への能力申告に、意図的に記載していない能力があった事も、今回判明した」 学園側には単に『同性限定だが、自由に姿を変えられる』とだけ申告していたらしい。 異性にも姿を変えられるばかりか、データさえあれば服装や指紋、DNAまで再現可能だった事を意図的に隠蔽していたそうだ。 「割と前、奈央に喫煙現場を発見されて騒がれて停学処分くらってました。高等部を卒業したら自動車工場で働く予定だったそうですが、この停学処分のせいで白紙になってます」 夏鈴の説明に、能都が補足した。 「あー。なんかねー、覚えてるよ、その人ー。 煙草吸ってるのを見付けたんで騒いだら、人がたくさん来てもんで、逃げようとしたら通りかかった副会長さんに『お仕置』された人だよねー?」 お返しとばかりに、奈央は夏鈴の弁当からミートボールを略奪する。それをモグモグと食べながら、記憶の糸を手繰り寄せた。 「それで瑞樹を逆恨みして、今回の嫌がらせを計画したわけか。完全に自業自得だな」 なんとまぁ器の小さい、と呆れた声で堀衛が呟いた。副会長に恨みを抱かなかったのは『お仕置』のトラウマが酷すぎたせいもあるのだろう。 「でも、なんで上級生だと分かったんです?」 平野が気絶する前に、堀衛が出した指示を思い出しつつ、能都が尋ねた。 ポケットから二個目のメロンパンを取り出した白衣の保健医は「あれか」と頷いた。 「瑞樹と同級なら、女装能力の事ぐらい耳にしてるだろうからな。という事は、噂も耳に届かないほど関係性が薄い立場にあり、瑞樹を実際に見た上で『女だ』と勘違いした奴が犯人という事になる」 学園外の人間が犯人だった可能性は、考慮してなかったらしい。 単純な消去法だ、と彼女は言う。 「『無能』と『阿呆』が悪魔合体して生まれた様な瑞樹奈央に、あんな馬鹿馬鹿しい嫌がらせをする馬鹿なんて、風紀委員に取り締まられた人間しかいないだろ」 「なるほど」 「……夏鈴ちゃん、その深い納得は、いまの説明の何処の部分に対して? ねぇ?」 大きく頷く夏鈴に 、ジト目の奈央が解説の委細を求めた。 平野は「虚偽申告」と「著しい風紀違反」を理由に、近く退学になるそうである。 一応は行政機関によって保護監察となるが、実質的に醒徒会が預かる形になるという。 風紀委員が彼を処罰しない事について、能都が小声で注釈を入れる。 「噂だと、白虎の二泊三日レンタルで、ウチの委員長が取引に応じたそうです」 おそらく、会長達の下で『更正』させられるのだろう。真人間になるよりも、まず人の形を保った状態で戻ってきて欲しいものだと堀衛などは考える。 「それにしても、ボクも見てみたかったなぁ。 先生の名探偵オンステージ」 目撃できなかったのか、かなり悔しかったようである。奈央は、しきりにそんな事を口にした。 「推理と言っても、お前という答がすぐ隣で寝てただけなんだがな」 御謙遜を、立方体が茶化す。 解剖するぞ、とナイフが脅して黙らせた。 それでも御見事でした、と鈍器が笑う。 いいなーいいなー、と人形が悔しがる。 風紀委員の中でも「騒がしき保健室チーム」と呼ばれる彼等の、これは普通の日常風景。 騒がしいと呼ばれていても、此処は異能が集う双葉学園。事件が起きれば騒ぎも起きる。 彼等が騒がしくない理由など、この学園にはひとつとしてないのだ。 「笑顔で騒げるうちが一番の平和か」 喧騒の一部である保健医が、小さく呟いた。 季節の変わり目を知らせる風の音に混じり溶け、生徒達には届かない。 そうやっていつの間にか、次の季節は到来して来るのであった。 考察終了 トップに戻る 作品保管庫に戻る
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足下の砂利を踏み鳴らして、私は星の少ない夜空を見上げた。 かなたに見えるはずの下弦の月は雲の向こうに姿を隠している。 その様がまるで都市の光から逃げているように見えて、私は生まれてはじめてこの街に良くない感情を抱いた。 畑の真ん中の自販機コーナーでは3台の自動販売機が薄ぼんやりと周囲を照らしている。 道路を挟んだ向かい側には駐車場があったが、今は自動車の姿は1台もなかった。 視線を横にやると、道路からこの自販機コーナーを隠すようにそびえ立つ大きな貸看板の裏側が目に入る。 (この看板があったから、私が飛び出すのに気づけなかったんだな……) 私は道路の左右を見渡して、自動車の気配が無いことを確認してからその真ん中に立った。 スマートフォンのライトで足下を照らすと、アスファルトの真ん中に引かれた白線が闇に浮かぶ。 そこに私はかすかな変色のあとを認めたが、よほど注意深く見なければ気づかないだろうと思った。 私の体から流れ出た血液はすっかりあの時降っていた夕立に洗い流されてしまったのだ。 私はどういうわけかひどく鮮明にその情景が想像できた。 その直後私は遠方からのエンジン音を聞き、あわてて駐車場へと避難する。 ややあって、猛スピードのミニバンが数台道路を駆け抜けていった。 側面に貼られた派手なステッカーや悪趣味な車体の色から察するに、 ときどき町外れで見かける暴走グループだろう。もしかしたら私を撥ねたのも彼らのうちの1台だったのかも しれないが、確かめる術は無かった。 私は彼らの騒音が聞こえなくなるまで待って、それからあらためて周囲を見渡す。 ……静かな場所だった。 子供のころから通っていた場所だった。 小学生のころ、初恋の人とやってきた場所だった。 中学のころ、部活の大会で負けて、ひとりで泣いた場所だった。 高校のころ、将来のことを考えるためによく通った場所だった。 そして、私はここで死んだんだ。 私は目をつぶる。 私は昼間の八意との会話を思い出していた。 「私は死んでいた……」 私が同じ言葉をただ繰り返すたびに、八意はていねいに頷いてくれていた。 私は彼が用意した椅子に腰かけ、湯気のたつ紅茶のマグカップを両手で持っている。 「いきなり全てを理解しようとしても、貴様の頭では無理だろう。ひとつずつ、確実にだ」 そんなふうに言う八意はこちらに背を向けたまま薬学台の上で怪しげな薬品を調合している。 私にはそれが彼なりの優しさなんだと理解した。 「私は死んでいた」 「ああそうだ」 八意はまた静かにそう言った。 私は紅茶をすする。体が温まるとともに血管が広がって、しびれた脳がリラックスしていくのがわかった。 「じゃあ……」 私は静かに疑問を口にした。 「今ここにいる私は……誰なんだ……」 「考えるまでもないだろう」 八意は調合した液体を丸フラスコから直接ぐいと飲み、顔をしかめる。 「酸味が強すぎたな……考えるまでもなく、今そこにいる貴様は、志野真実だ」 「証拠はあるんですか」 私が睨みつけると、八意は手をわきわきといやらしく動かす。 「自身が真に自身であるということの証明は誰にもできやしないさ。ただ私が保証する。 医学的に見れば貴様は完全に健康体であるし、遺伝子学的に見ればDNAの塩基配列は 志野真実と100%一致している」 「でも……」 「貴様はあのとき、あの場所で、死んだ。 それはなによりも貴様自身が確信しているのだろう?」 私は頷き、しかしすぐに頭を振った。 「でもそれなら、今ここにいる私の説明がつかない」 「難しく考えすぎだ」 八意はあきれたように言うと、薬学台から別のフラスコを手にとり、薬品を注ぐ。 「死んだ人間が今ここで喋っているのなら、きっとそいつは生き返ったのだろうさ。 『バタリアン』を観たことは?」 「ゾンビってことですか……? そんな非現実的な――」 私がそう言った直後、ばん、と弾ける音がして、肉塊と化した八意のそばの物陰から新たな八意司が現れる。 「『非現実的な――』なんだって?」 私は口をつぐみかける。 「で、でも、いくら魔学でもそんなこと……」 すると八意は不愉快そうに眉を潜めた。 「魔学は『魂』『精神』『肉体』を自在に操る技術だぞ! どうして死者の復活程度のことができないことがあろうか!」 「じゃあ、私を蘇らせたのは誰なんですか!」 自分で言ってハッとした。 八意は軽くため息をつき、それから同情するような目でこちらを見る。 私は耐えかねて視線を落とした。 「……そんなの、ひとりしかいないじゃないか……」 私は自分に向かってそう言った。 耕平だ。 あの時点で私と魔学のつながりはそこしかない。 「じゃあ、耕平は、私のことがショックで……?」 「証拠は無いぞ」 八意は試すような視線を向けてきた。 私は首を振る。 「思い当たる節はあります」 「ほぅ?」 「確認したいんですが……『死んだ人を蘇らせる』だなんて、やっぱり、 まともなことじゃないですよね? 」 「ああそうだ。この宇宙が始まって、最初の生命が誕生してから一度も破られたことのないルールだ。 それに反するなんて、ろくなコトじゃあない」 「でも耕平はその方法を知っていた……いや、そのために知ったんだ。 ここの資料庫の禁書棚にある本で」 私はいつだったか、天照研究所の資料室の奥にある極秘資料室に侵入したときのできごとを思い出していた。 禁書棚に納められていた異様な本、『三千大千世界外法総覧』。 『外法』……きっとあれに死者を生き返らせる方法が記されていて、耕平はそれを読んだんだ。 部屋の入り口の扉を開けるのに必要なパスコードを知るために、私があの部屋で撮った過去の写真に 写っていたあの手は耕平の手だったんだ。高天原の説明はそれをごまかすためのウソだったんだ。 ――高天原さんはどうしてウソをついたんだろう――? (そんなの決まってる) 私は再び目を伏せる。 (『実はあなたはすでに死んでいて、今のあなたは魔学によって復活させられたゾンビなんです』なんて、 本人に言えるわけないじゃないか。 私にさとられないために。だから天照研究所の人たちは耕平の話題を避けていたんだ) 思い返すとそうとしか思えなかった。 高天原も因幡も天照恵もマイケルも、みんな最初から全て知っていたんだ。 なのにあえて黙っていたのは―― 「――もしも私が何も知らないまま全ての『×』を倒していたら、全ては隠蔽されていた……?」 「そうなったはずだ。君には天照耕平なんて恋人はいなかったし、彼によって現世に呼び戻されもしていない、 ただの平凡な女子大学生として生活を続けることになっていただろう。 そして天照恵はそれを望んでいた」 「そんなの!」 「それが一番貴様を魔学に関わらせない方法だったのだ」 八意はメガネを指で押し上げた。 「魔学の危険性を誰よりも理解している天照恵の立場からすれば、重要な事実を隠蔽してでも、 全てを丸くおさめる方法をとるだろうよ」 「……そのために天照研究所は私の記憶を奪ったんですか……!?」 私は腹が立ってきていた。つまり私は天照研究所の勝手な都合のために頭の中をいじられて、 過去を奪われたというのか。 だが八意は顔の前で指を左右に振る。 「解を導くにはまだ早いぞ」 私は彼をぎっと睨む。八意は先程薬品を注いだフラスコを掲げ、照明に透かして色を確認しつつ言った。 「ここでひとつ忘れていることがある」 「それはなんですか」 「『×』についてだ」 彼はフラスコを傾け、薬品を飲み干した。 「うむ、美味い……ここまで話せば、いくらカンの悪い貴様でもうすうす気づいているとは思うが、 『×』がこの街に現れた理由も解っているだろう」 私はゆっくりと頷いた。 「『私が生き返った』から……『×』が前に言っていた『償え』って言葉は、 そういうことだったんですね」 「ではあらためて確認しよう!」 八意は私を指さし、ポーズをきめる。 「いまさらあらためて説明する必要もないだろうが、『×』は『罰』であり、 この世界のルールをねじ曲げたことに対する世界の報復である! ならば訊こう、志野真実、貴様が犯した『罪』とはなんだ!?」 「それは――」 言葉にしようとして、詰まった。 私はまだ正確な理解をしていない。 『×』は『罪』への『罰』だ。それはいい。 じゃあ、私の犯した罪とはなんだ? (『死者を生き返らせること』が罪ならば、罰せられるべきは生き返った私じゃなく、 生き返らせるまじないをした耕平のほうじゃないのか……? 私は巻き込まれただけで、悪くないんじゃないのか……? それともまさか――) 「――『生きていること』それ自体が『罪』なんですか……?」 自分の声が震えていることに気づいた。 そんなこと、認められない。認めたくない。 しかし八意は言った。 「そのとおりだ」 「……ひどいよ! 」 私は叫んでいた。 両の瞳にまた涙が溢れ出し、冷めた紅茶のマグカップが指から滑り落ち、 床にぶつかって重い音を立てる。ぶちまけられた紅茶がブーツと床を濡らした。 「私だって……望んで生き返ったわけじゃないのに……!」 「じゃあ死にたかったのか?」 「それは……そんなわけない」 「『死ぬより生きるほうがマシ』程度か?」 「なんなんですか……! さっきから、八意さん……!」 「答えろ」 その言葉のあまりの冷たさに私は八意がいつの間にか私の味方でなくなっていることを知った。 彼は真顔だった。 両手を白衣のポケットにつっこみ、眼鏡の奥の瞳には、いつもの常軌を逸しているがキラキラと輝く光は 無い。ただ無感情な、まるで路傍の石でも見るような視線だ。 (いや違う――)私は思った。 彼は見定めようとしているのだ。 今まで天照研究所が私に対してしてきたことが、果たしてどのような結果を生み出したのかを。 私はつばを飲み込み、彼の瞳を見返した。 「私は……」 「最初の天照恵が貴様に何と問いかけたか、覚えているか?」 八意はそう言った。私は覚えていた。 「『もし、この先の人生に、死ぬよりもつらい、無数の苦難しか待ちうけていないとしても――』」 「『――それでも貴様は人生を戦うか?』」 そう問いかける八意の声を聞きながら、私は理解した。 あのとき――私がベッドで目覚め、天照恵と初めて出会ったとき――彼女が私にした質問。 あれが分水嶺だったんだ。 もしあそこで私が『いいえ』と答えたら、天照恵と高天原頼人は私を再び眠らせていたに違いない。 そうなれば全ては丸くおさまっていたのだ。女木戸市に『×』が襲来することもなく、 私は死神の予定表通り、あの道路で不幸な死を迎えたことにされていたはずだ。 しかし私は『はい』と答えた。だから天照研究所は―― 「……あ……ああ、あああ……」 私の両目にはさっきよりも一段と熱い涙が溜まっていた。 私は理解し、理解したために胸中に湧き上がるある想いに耐えられなかったのだ。 それは『感謝』だった。 天照恵は私が生きる意思を示したために、研究所をあげて『×』と戦う決意をしたのだ。 莫大な私財を投じ、実の息子を改造人間にして、法に触れるギリギリのところを進みながら、 自分たちの属している組織を敵に回すばかりか、自分の身を文字通り燃やし尽くして、 それでも私を助けてくれていたんだ。 (どうしてそこまで――?) 分かりきっていた。 私が天照耕平の恋人であり、魔学の犠牲者であるからだ。 彼女も『罪』を償おうとしていたんだ――それも、私のために。 そうか。 全ての人間は最初からそのために行動していたんだ。 天照恵、天照耕平……高天原頼人、因幡命、八意司…… 「……あり……がとう……」 私はなんとか椅子から立ち上がり、八意の前に正座をした。 「ありがとう……ございます……!」 そしてそのまま深く頭を下げた。これ以上下げられないのが歯がゆかった。 感謝の念はいくら言葉にしても、床に身を投げ出しても尽きなかった。 私は涙を流し続け、そして感謝し続け、今までの非協力的な振る舞いを謝罪した。 そして「顔を上げろ」との八意の声に視線を持ち上げると、目の前にずいと何かが差し出される。 それは湯気のたつ液体が入ったマグカップだった。 両手で受け取ると、それで暖かみが指から全身へと駆け抜けて、涙を吹き飛ばす。 八意は笑っていた。 「さぁ答えろ」 彼は私が液体を飲み干し、立ち上がるのを待って言った。 「『もし、この先の人生に、死ぬよりもつらい、無数の苦難しか待ちうけていないとしても、 それでも貴様は人生を戦うか?』」 私は目元を手の甲で拭い、ニッと笑ってみせた。 「人生なんだから……戦いますよ、当然!」 私は理解した。 『×』の襲来の理由も、その目的も、天照研究所の人々がひた隠しにしてきたことも。 全ては私の死とその復活が原因であり、全ての物事と人物はそのために動いていたんだ。 「だが、はたして本当にそうかな?」 八意の声に私は顔を上げた。 地下の研究室は相変わらず薄暗く、今外が何時であるのか見当がつかない。 ずいぶん長いことここにいるような気がしていたが、本当はそこまで経っていないのかも。 私はまだヒリヒリする目元をさすった。 「なんのことですか」 「気づかないのか?」 彼はそう言いつつ、椅子に腰かけて何かの紙束に目を通している。 少し無言の間があって、八意は舌打ちした。 「この資料は落丁だ。また印刷しなければ」 「……八意さん」 私は私の声の疲労の色を自覚していた。きっとひどい顔をしていたのだろう。 私の顔をちらりと見た八意は椅子から立ち上がった。 「紅茶だけでは不充分か? チョコレートとクッキーのどっちだ? いや、両方か」 彼は近くのデスクの中からチョコチップクッキーの箱を取り出し、中身を皿に出した。 それを私の近くの台の上に置く。 「私は焼きプリンだ」 そう言って八意は足元の小さな冷蔵庫から焼きプリンのカップとスプーンを取り出す。 その仕草はまるで小さな子どものようで、私は頬がゆるんだ。 「おいちい!」 焼きプリンを頬張る八意を見て、私もチョコチップクッキーをつまむ。優しい甘さだった。 「八意さん」 私はクッキーを嚥下し、再び声をかけた。八意は振り向く。 「なんだね?」 「まだ、何かあるんですか」 「貴様は気づかないのか?」 彼はまた焼きプリンをひとくち。 「『×』襲来の理由は得た。原因も理解した。だがそれだけだ。 それだけでは説明になっていない。 ……まだ理解できないという顔だな。思い返してみたまえ。貴様は今日、 そもそもどうして吾輩のスーパー研究室へ来たのだ?」 私は「あっ」と声をあげた。 「そうだ、忘れてた」 うっかりしていた。 そもそも私がここへ来たのは『×』襲来の原因を知るためじゃない。 「私の記憶を奪った人を探しにきたんだ」 私は私の過去の記憶と、それを失った原因を探るためにここへきたのだった。 今日ここで突きつけられた衝撃の事実の連続で、そのことをすっかり見失ってしまっていた。 「そうだろう?」 「でもそれって天照研究所じゃないんですか? 私が自分の、その、死んだことを思い出さないために……」 しかしそう言いながら、私はその言葉がおかしいことに気がついた。 脳裏に昨日の天照病院での因幡命の言葉がよぎる。 (『私たちは何もしていない』) 「まさか……」 私は額を手のひらで抑えた。 「天照研究所じゃ、ない……? 」 「考えてもみたまえ」 八意は焼きプリンを食べ尽くしていた。 「無理矢理な理由をでっち上げて納得させるより、最初から理由を理解してくれていたほうが、 人を納得させるのは簡単だろう。 天照研究所にとっては、むしろ覚えていてくれたほうが都合がよかったのだ」 驚いた。 「じゃあ、なんで私の記憶が……?」 震える声でそうたずねる。 八意は言った。 「それは『罰』だよ。 ただし、貴様への罰ではないがな」 私は訊き返す。 「貴様の記憶が失われて一番つらいのは誰か?」 私は少し考える。 八意は言った。 「この世の理まで破って、それでも助けた相手が自分のことをこれっぽっちも覚えていないなんて、 ひどい話だ」 「じゃあ、耕平……!?」 私の記憶が無いのは耕平に対する『罰』だったのか。 私は想像する。タブー中のタブーまで犯して助けた大切な相手が、 自分のことを知らない人を見る目で見てきたら……。 「ひどいな……それって」 八意と同じ感想が漏れた。世界のルールはこんなにも残酷な罰を与えてくるものなのか。 摂理に反して生きる存在にはその命を奪いにかかり、失われた恋人を求めた存在にはその関係性を奪う。 残酷だけど、こんなにも釣り合った報いは無いのかもしれない。 でも、それじゃあ…… 「カオスマンは?」 私は彼に訊いた。 八意は満足げに頷き、メガネの位置をなおす。 私は耕平がカオスマンになったのは、てっきり私を蘇らせた責任をとってのことだと思っていた。 でなければ、私とのデートの翌日――時間にして12時間程度――であそこまで様子が変わるわけがない。 というか、そう考えなければ、魂と身体を分離させられ、天照耕平個人としての特徴を奪われた 戦闘マシーンにされるなんていう非人道的な行為は、今までの天照研究所の方針からは矛盾するような気がした。 それに天照耕平は天照恵の実の息子だ。そんな残酷な仕打ち、とても彼女にできるわけがない。 「今まで耕平はカオスマンとして活躍していたんですか?」 八意は首をふる。 「身体改造自体は、貴様と知りあうずっと前からされていた。しかしそれだけだ。 彼は『天照耕平として』魔学のトラブルシューティングを担当していた」 「じゃあ、なぜ彼はカオスマンに?」 八意はまた首を振った。 「それがわからないのだよ」 その返答に私はひどく驚き、目を丸くした。まさか彼にわからないことがあるだなんて思いもしなかったためだ。 八意は私のそんな様子を見て、顔の前で指を左右に振った。 「訂正しよう。『私以外の全員はわかっていない』。」 「八意さんは?」 「もちろん知っている。だがしゃべる気は無いぞ。理由はシンプル」 彼はにやりと笑った。 「それでは君が『真実』に到達できない」 「まさか!」 私は衝撃のあまり大きな声を出していた。 「これでも『真実』じゃないんですか!?」 「ああそうだ」 私は足から力が抜けるのを感じ、唖然としていた。 てっきり、今までの話が私が今まで追い求めていた『真実』なのだと、そう思っていた。 「これ以上……いったいなにが……?」 「それを知るにはまだピースが足りない」 八意はそう言った。 「もう一度だ」 彼は優しい声だった。 「もう一度、今までの物語をふりかえってみたまえ。それでもダメなら……」 「ダメなら……?」 「前に進もうとせずに、周りを見渡してみるのもいいかもな」 夜風が頬をなでた。生温かく、まとわりつくようだった。 真夜中の駐車場のどこを見渡しても、ここでかつて耕平が彼のバイクとともに、 道路に転がる私の姿を眺めていた痕跡は無かった。 彼はいったいどんな気持ちで私の死を目の当たりにしていたのだろう。 どのように私を蘇らせる決意を固めたのだろう。彼は解っていたはずだ。それがどれほど重い罪で、 そのためにどれほど重い罰を受けなければならないのか。 ……もし、私が逆の立場だったならどうしただろう。 「決まってるじゃないか……」 私は闇に溶ける道路の果てを睨んでつぶやいた。 「助ける方法が目の前にあるのに、使わないなんてありえない……!」 当たり前の話だった。 誰かを助ける方法があるのに、それを用いないのは『悪』に違いない。 たとえそれが禁じられた方法であっても。 そのときとある疑念が、ふ、と頭をよぎった。 (じゃあ、天照研究所は『悪』なのか?) 「そんなわけがない」 私のその言葉は夜闇にかききえた。
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半分の月がのぼる空 ●4点 ライトノベル原作、重病を抱える少女と偶然同じ病院に入院してきた主人公の少年の物語。全6話。 さすがにWOWOW無料枠だけあって深夜アニメにしては作画は良い方だが、それ以外に褒める所の見つからない作品。 構成はとにかく駆け足で、第1話でほぼ物語して完結して、残りの話が蛇足にしか見えないのはいただけない。 また登場人物の行動が突発的で、終始支離滅裂な印象を受ける。 画面構成も平凡で、映像的な面白みを求める事も出来ない。 面白いというには程遠く、かといってネタになる程駄作でもない、そんなアニメ。
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AB/W11-002 AB/W31-012 カード名:結弦(ゆづる)の心臓 かなで カテゴリ:キャラクター 色:黄 レベル:3 コスト:2 トリガー:1 パワー:10000 ソウル:2 特徴:《死》?・《生徒会》? 【自】このカードが手札から舞台に置かれた時、あなたは自分のクロックの上から1枚を、控え室に置いてよい。 【自】このカードのバトル相手がリバースした時、あなたはそのキャラを思い出にしてよい。 RR:だってあたしは、ありがとうをあなたに言いに来たんだから SR:きっとその誰かは見知らぬあなたに、 ありがとうって一生思い続けるわね レアリティ:RR SR(W19)/R RRR(W31) 初出:キャラ☆メルvol.11 10/08/30 今日のカード。 一番目の効果はCIP能力による回復。 出た時に1点回復は汎用性が高く優秀な効果と言える。 二番目の効果だが、バトルに勝てば相手のキャラを思い出に出来ると言うもの。 「“唯我独尊”佐々美」のストック送り同様にアンコール不可ではあるが、ストック飛ばしと違い相手にアドバンテージをほとんど与えない。 また現状、自身が持つ能力以外で思い出に送られてしまったカードは、 「だんご大好き渚」で回収する場合など、極一部を除いてゲームに戻れる手段はないため、相手主力アタッカーを思い出に出来れば再利用を防げる。 また、「略奪者アッシュ」とは違い任意で思い出へ送るか送らないかを選ぶことが出来る。 相手の「くすぐったい毎日 音姫」の様な面倒な記憶能力持ちが安易に記憶を発動しないようにする場合や、 チャンプアタックされた時などのアンコールされる可能性が低く、 思い出にしてもキャンセル率を上げるだけになる場合はわざわざ思い出に送る必要もないだろう。 もっとも、早出しが出来ない限りはこのカードが舞台に出るのはレベル3になってからなので、 キャンセル率云々に関してはそこまで気にすることもないかもしれないが。 チェンジに対応してないとはいえ、舞台に出た時1点回復+相手主力を思い出に出来る、と能力は単純ながらも優秀。 【生徒会アンコール】?では、新たなレベル3の選択肢として活躍できるかもしれない。 余談ではあるが、このカード名やらフレーバーやら、だいぶネタバレである。 どのようなネタバレかは、実際に本篇を見ていただきたい。 Re Edit再録時、レアリティがレアに降格している。
https://w.atwiki.jp/tsukiusa/pages/118.html
衣装名 等級 旧正月の月ウサギ衣装 ユニーク 所持効果 最大HP 20,000 増加 最大MP 300 増加 移動速度 7% 増加
https://w.atwiki.jp/tsukiusa/pages/117.html
衣装名 等級 サンタの月ウサギ衣装 ユニーク 所持効果 最大HP 20,000 増加 防御力 2,000 増加 会心ダメージ 35% 増加
https://w.atwiki.jp/ameba_pigg/pages/1483.html
春男の月面旅行 moonnight_haruo_0909.swf 2009お月見 代々木公園 お月見エリア パソコン 期間限定 男子限定 ファッション 小物 300アメG
https://w.atwiki.jp/ameba_pigg/pages/1482.html
春子の月面旅行 moonnight_haruko_pk_0909.swf 2009お月見 代々木公園 お月見エリア パソコン 期間限定 女子限定 ファッション 小物 300アメG
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【概要】 日本SF作家クラブにより創設。プロのSF関係者が既成の作家の商業作を対象として与える賞。 【リンク集】 日本SF作家クラブhttp //www.sfwj.or.jp/ >>日本SF大賞:http //www.sfwj.or.jp/list.html Wikipedia日本SF大賞 受賞作 賞回数 年度 作品名 作者 第1回 1980 太陽風交点 堀晃 第2回 1981 吉里吉里人 井上ひさし 第3回 1982 最後の敵 山田正紀 第4回 1983 童夢 大友勝弘 第5回 1984 幻詩狩り 川又千秋 第6回 1985 首都消失 小松左京 第7回 1986 笑い宇宙の旅芸人 かんべむさし 第8回 1987 帝都物語 荒俣宏 第9回 1988 岬一郎の抵抗 半村良 快男児・押川春浪 横田順彌・會津信吾 第10回 1989 上弦の月を喰べる獅子 夢枕獏 特別賞……手塚治虫 第11回 1990 アド・バード 椎名誠 第12回 1991 サラマンダー殲滅 梶尾真治 特別賞……石原藤夫 第13回 1992 朝のガスパール 筒井康隆 第14回 1993 ヴィーナス・シティ 柾悟郎 特別賞……黒丸尚 第15回 1994 戦争を演じた神々たち 大原まり子 女性状無意識 小谷真理 第16回 1995 言壷 神林長平 特別賞……野田昌宏 第17回 1996 ガメラ2 金子修介 第18回 1997 蒲生邸事件 宮部みゆき 新世紀エヴァンゲリオン 庵野秀明 第19回 1998 BRAIN VALLEY(上・下) 瀬名秀明 特別賞……星 新一 特別賞……NHK人間大学『宇宙を空想してきた人々』 特別賞……井上雅彦監修『異形コレクション1~6』 第20回 1999 チグリスとユーフラテス 新井素子 特別賞……光瀬龍 第21回 2000 日本SF論争史 巽孝之 第22回 2001 かめくん 北野勇作 第23回 2002 アラビアの夜の種族 古川日出男 傀儡后 牧野修 第24回 2003 マルドゥック・スクランブル 冲方丁 第25回 2004 イノセンス 押井守 特別賞……矢野徹 第26回 2005 象られた力 飛浩隆 第27回 2006 バルバラ異界 萩尾望都 第28回 2007 星新一 一〇〇一話をつくった人 最相葉月 第29回 2008 新世界より(上・下) 貴志祐介 電脳コイル(テレビアニメシリーズ) 磯光雄 特別賞……野田昌宏 第30回 2009 ハーモニー 伊藤計劃 特別賞……栗本薫『グイン・サーガ』 第31回 2010 ペンギン・ハイウェイ 森見登美彦 日本SF精神史 長山靖生 特別賞……柴野拓美、浅倉久志 第32回 2011 華竜の宮 上田早夕里 特別賞……横田順彌『近代日本奇想小説史 明治篇』 特別功労賞……小松左京 第33回 2012 機龍警察 自爆条項 月村了衛 盤上の夜 宮内悠介 特別賞……伊藤計劃×円城塔『屍者の帝国』