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多分ラブラブものってわけではありません。 いろいろ突っ込みどころも多いと思います。 …どうか広い目で。orz 追記:手直ししました。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「でさ、これがその時借りた魔道書なんだよ。なんかいかにもって感じだろ?」 「ああ、だがな魔理沙、何度も言うがお前のそれは借りるんでなく強奪というんだ」 「……」 小春日和の博麗神社。 今日もいつものようにお茶と茶菓子をたかりに来た魔理沙の自慢話を聞かされていた。 「強奪とはひどい言い草だな。ちょっと長期の貸し出しをしてもらってるだけだぜ」 「門番さんから司書(小悪魔)さんから軒並みマスタースパークで吹っ飛ばすののどこが貸し出し手続きなんだよ…」 「……」 俺は一月程前にちょっとした事故でここ幻想郷にやってきた。 昔から霊感があるほうで、霊っぽいものとかをたまに見たりしていたので、状況を受け入れるのは普通の人よりは早かった、らしい。 もっとも、それだけで別に戦闘能力があるわけでも無いから、来てすぐに保護されたのは幸運だったのかな? …そこも妖怪の家だったけど。 「立派な貸し出し手続きだと思うけどな、主には『もう勝手にしなさい』って言われたし」 「閻魔様ー、犯罪者がここにいますよー」 「……」 で、俺がここに来た原因のスキマ妖怪は、なにやら冬眠中だとか(俺の件は寝返りの影響らしい)で、実際に帰れるのは少し先になるらしい。 もうひとつ手が無いではないそうだが、どうも俺がここに来るときにややこしい通り道のあけ方をしたとかで、 微妙にややこしいことになりかねないらしい。そんなに問題のあるやり方だったのか? …まあ、寝ぼけてたそうだしな。 ともあれ、件の妖怪が起きてくるまで、その間の仮宿として、ここ博麗神社があてがわれたのだ。 家主さんには「何で私が」とか当然のごとくいろいろ言われたんだけどね。いかなマヨヒガでもあれだけご同輩がいりゃあそりゃパンクするだろ。 あのときの狐さん(藍さんというらしい)が必死に頭を下げる姿は妙に心に残った。痛々しくて。 「…って言うか、門番って誰だっけ?」 「うわ、覚えてないよこの人! ひど!」 「……」 …そして、そろそろ一ヶ月。 「神社に居候が来た」というので、物見遊山に来た連中がまあたくさん。おかげさまで知り合いも増えた。 仲でも親しくなったのが、今こうしてしゃべっている魔法使いの少女、霧雨 魔理沙と、「香霖堂」という店を営む「香霖」こと、森近 霖之助。そして… 「なあ霊夢、さっきから一っ言も喋らないけど…どうかしたのか?」 「ああ…何つーか、怒ってないか?」 「…別に?」 いや、明らかに怒ってるでしょ、それ。 むすっとしながらそっぽを向いてお茶を飲んでいる少女は博麗 霊夢。 言うまでもなくこの博麗神社の住人にして、俺の「家主」さんだ。 神社で巫女さんをしているらしく、ちょっと見慣れないデザインの巫女服を身にまとい、 迷惑妖怪の退治とか境内の掃除とかお茶の時間とかお茶の時間とかお茶の時間とかしている。…突っ込みはいらんよ? 「…あー、今日はなんだか日が悪いっぽいな、また来る」 「そう? じゃあね」 「おー、またなー」 言いつつ魔理沙は苦笑とともに帽子をかぶりなおし、そのままほうきに乗って飛んでいった。 普通に家に帰るのか、それともどこかで時間をつぶすか…たぶん後者だな。それも図書館。まだ奪い足りないのか、あいつは。 魔理沙はよく神社に遊びに来るので、霖之助さんとは霊夢の買い物の荷物もちで香霖堂に言ったときに知り合い、親しくなった。 魔理沙の第一声、「おーい、霊夢が男連れ込んだってー?」にはびっくりした。まあ速攻で「夢想天生」食らってたけど。五・六回。 …大概タフだな。幻想郷の住人は。 「…でもどうしたんだ今日は?」 「べつに?…ああそうそう、明日霖之助さんの所に行くから、荷物持ちお願いね?」 「ああ…」 またいろいろと「貰い」に行くのか。まあ今は俺もそのお世話になっているから何も言えんが…お金くらいは払おうよ、やっぱり。 霖之助さんは…正直親しみやすかった。客商売というのもあってか、非常に人当たりが良く、また親切にいろいろ教えてくれた。 こっちも「外からの品」とやらの使い方をいくつか解説してあげたりした。最も知ってる人はほかにもいるらしく、ほとんど補足ばっかりだったが。 「さて、少し早いけど夕御飯の支度でもしますか。あ、悪いけど残りの部分の掃除、お願いできる?」 「了解」 で、霊夢は…正直最初は難儀した。 何せいきなり男女二人が一つ屋根の下だ。向こうはどう思っているかはよく分からないが、正直かなり気を使った。居候の身としても。 とはいえ慣れとは怖いもので、一週間もするころには別段普通に接していた。まあ気を使いすぎるよりはいいが。 彼女は彼女でかなり早いうちから慣れてしまっていたらしい。それはそれでどうだろう? 無頓着というかなんと言うか。 台所に消える霊夢の背中を眺めつつ、なんともいえない気分になる。一緒に住むことを認めてくれたのはうれしいんだが、 何かこう、男として見られていないようにも思えて。 「早めに済ませてよー?日が暮れちゃうからー」 「っと、いかんいかん」 台所から聞こえる声で、ボーっとしていた自分が引き戻され、あわてて自分の仕事に移る。 さすがに一ヶ月も手伝っていると、こういうことにも慣れてくる。霊夢ほど上手くは無いが、それでもそれなりに早く、しっかりと境内を掃いて回る。 こういう時間も、お茶を飲んでいるときとはまた違ったまったり感が感じられて、意外にいいものだな。 それから程なくして、言われた分を掃き終えると、霊夢の声が聞こえる。夕飯の時間だ。 ほうきを片付けて食卓に向かうと、霊夢がほかほかの御飯を俺の茶碗によそってくれているところだった。 「はい、どうぞ」 「ありがと。それじゃあ…」 「「いただきます」」 しばし、箸の音だけが響く。 特に会話もなく、季節柄、虫の声もなりを潜め、静かなものではあるが… しかし、まったりとした、暖かな時間が流れる。 食後のお茶を楽しんでいると、ふと、霊夢が口を開く。 「…昼間の事なんだけど…」 「ん?」 霊夢は、どこか申し訳なさそうな顔をしている。昼間というと…魔理沙と話していたときか。 「昼間、私が機嫌を悪くしてるっていってたでしょ」 「ああ、そのことね…どしたん?」 「…正直、自分でも分からないのよ。なにがなんだか」 「?」 「休憩にしてからすぐ、かぎつけたかのように魔理沙が来たじゃない? あれで用意していたお茶菓子とかが足りなくなって、 新しいのをとりにいったんだけど…」 「そのときになにか?」 「ううん、その後。戻ってきたとき」 首を振る霊夢に、首を傾げる俺。あの時は特に何があったってわけでもなかったと思うが… 「あの時あなた、魔理沙と話してたじゃない?」 「ああ、あの自慢話な。どっちかというと話してたというより、聞き専門に回ってた感じだけど」 「うん…その時あたりからなのよ、なんかもやもやしちゃって」 「もやもや?」 「ええ、あなたと魔理沙が楽しそうに話してるのを見てたら、なんだか…。話の中にも、入っていけなかったし」 「そういえばいつもは適当に相槌打ってるのに、今日はなかったな」 「何でなのか、自分でもよく分かんないんだけど…」 「んー、なぜだろう…」 うつむく霊夢に、いつもの覇気のようなものは感じられない。思ってもみなかった事態に、困惑しているのだろう。 二人して首をひねる。十分ほどもそうしていたが、答が出ることはなかった。 「…ごめんね、変な事言って。…片付けましょうか、もう遅いし」 「あ、いや…。…手伝うよ」 「ありがと」 その後、風呂に入って寝るまで、二人ともこの話題は出さなかった。 しかし、やはり気にかかるのか、霊夢の表情は曇りがちだった。…かくいう俺もそうだが。 「何があったんだろうな…」 布団の中で、そんなことを呟く。ノーヒントの激ムズクイズ番組にでも参加した方がまだましな気分だ。 そう思いつつ、霊夢のことがかなり気になっている自分を自覚する。 かりそめの…とはいえ、家族のようなものといって差し支えない少女、いつもどこかふわふわした、春のような少女。 そんな彼女に対して感じる、かすかだがしっかりした…気持ち。 どうにか力になってやりたい。だがどうすればいいのか。 「…困ったときは、人に聞く…か」 マヨヒガでであった、あの元気な猫の少女の口癖を呟きつつ、とりあえず目を瞑った。 せっかくだし、明日霖之助さんにでも相談してみよう。そう心に決めながら。 ―その後、まあいろいろとあるのだが、その辺は置いておく。 とりあえず、がんばることができた。それだけ。 「さて、明日はどうしよっかな…。そろそろ霊夢のところもいろいろ切れるころだし、香霖のところにでも顔出してみるか、 あいつもたぶん来るだろうしな。…次は何みせてやろっかなー」 ―ごたごたも、たくさん。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― こういうのは初挑戦です。だがわけわかめ。orz 一応霊夢もののつもりで書きました。ちょっぴり三角関係テイストもこめて。 これから彼がどうなるかは…皆さんの胸の中に(マテ 無責任ですみません。これが俺の限界です。 もっと短くまとめられたら少しは違ってくるのでしょうが…。 後、まとめの人、いつも乙です。 ほんと大好きです。ありがとう。 <追加あとがき> ども、作者です。改めてみたら誤字だらけ、わが事ながらいささか呆れました。 つか神社の名前を間違うかよ…orz 上で「三角関係」なんて書きましたが、ごめんなさい、どろどろしたのじゃなくギャグで、しかも… とにかくそういうのを期待した方には申し訳ない結果のプロットでした。 今回一緒にあげる予定の(というかあがってるはずの)エピローグのほうに詳しく載ってます。 最初に書いたときはあまり気にしてませんでしたが、改めてプロットをチェックしたら 何か5・6話位軽くいきそうなことが分かって、せっかく2話目を書いていたのですが、さっさとあきらめてしまいました。 短くまとめる能力って大事ですよね。そういう力のある人ってうらやましいです。 次があったらがんばってみます。 関係ない話ですが、 この話のシチュエーション、意外と応用利く気がします。 預ける場所を変えればヒロインとかいかようにもなりそうだし。 …書く時間無いけどね。 ─────────────────────────────────────────────────────────── 前回書いた霊夢ものの続きです。つーかエピローグ化しました。 何話かあるものを無理やりまとめたので 無駄に長いです。ごめんなさい。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ようやく迎えた春、花たちが目覚める季節。 おなじみの(といっても俺は始めて見るが)ほんわか妖精が、満面の笑顔で春を伝えるこの良き日に、 「○○~、準備できたの~?」 「ああ、今行く!」 俺は帰り支度を整えていた。 俺がひょんなことからここ幻想郷に足を踏み入れることになったのは、去年のこと。 正しく人災――いや、妖怪が起こしたから妖災か?――に巻き込まれた俺は、そうして俺をここに「招いた」妖怪に仕える、九尾の狐の八雲 藍さんの計らいで、博麗神社という所に厄介になっていた。 「運がよかったよな、正直」 神社での暮らしは新鮮だった。 初めのうちは男女一つ屋根の下という事もあってかなり緊張したが、一月とたたないうちにいつもの調子を取り戻せた。 というか、家主である博麗霊夢が、そういったことをまるで気にせずいつもどおりだったので、何か気にするのが ばかばかしくなった。というのが正しい。 今にして思えば、あのころはなんというか、男として見られてなかったような気がしてちょっと気が滅入る。 「そういえばそのあたりからだよな、霊夢の様子がおかしくなったのは」 「私がどうかした?」 「うわっ!?」 ふと、思い出したことを口にすると、いつの間にかそばに来ていた霊夢が返事をする。 突然のことだったので、ちょっと驚いてしまった。 「何よその驚き方は…。いつまでも出てこないから様子を見に来てあげたのに」 「あ、ははは。悪い、ちょっとな」 あわてて謝る。 いかんいかん、考え事で周りが見えなくなるのは俺の悪い癖だな。 「まあいいけど…で? 私がどうしたの?」 「ん…、いや、俺がここに来てからの事を思い返してたんだ」 苦笑しつつ聞いてくる霊夢に、俺は最後の荷物をかばんにつめつつ答える。 俺の言葉に、霊夢は人差し指をあごに当て、しばし考えるしぐさをする。 「あれから3ヶ月…か」 「正確にはもうちょっと長いんだがね。まあそのくらいか」 「改めて考えると意外に短かったのね。もっと前から暮らしてた気になってたわ」 「はは。…で、ここに世話になってから一月程した頃、霊夢から相談されたろ」 「あ、…あの頃の事ね…なんか恥ずかしいなぁ」 ここの暮らしに慣れ始めた頃、霊夢の様子がおかしくなった。 普段はいつもどおりなのだが、時折ひどく不機嫌…と言うか、情緒不安定になるのだ。 本人曰く、俺が別の人――例えば、霊夢の友人で魔法使いの少女、霧雨魔理沙とか――と話をしているのを見ると、 だんだん心がもやもやしてきて…そうなるらしい。 今にして思えば「ああ、そういうこと」と思わず「ニヤソ」としてしまうような話だが、 「自分は男として見られていない」と信じていた当時は原因がまったく分からなかった。 いや、可能性のひとつとして考えてはいたが、「ありえない」と切り捨てていたというのが正しいだろう。 霊夢に対して淡い思いを抱いていたその頃の俺は、何とか霊夢の力になりたいとその方法を模索していた。 その一環として、霊夢がよくお世話になっている、俺もいろいろとよくしてもらった古道具屋の主、森近 霖之助さんに相談した。 「あの時妙に遅いと思ったらそんなことを…」 「早いほうがいいと思ったんだよ」 「それで? 霖之助さんはなんて言ってたの?」 「うん…」 結局のところ、処置なしというのが結論だった。 もっと正確に言えば、これは霊夢自身でどうにかすべき問題であり、周りがちょっかいを出すべきでない、と。 「まあ、そうでしょうね」 「ああ」 そして、同時にこうも言われた。 「もしも君が霊夢の力になりたいのなら、そのことこそが大事だ。ならば、今はだめでも、いずれ君が力になれるときも来る」 …と。 「なったかしら? なってないわね」 「ひでえ」 「冗談よ。あなたには助けられたわ、いろんな場面で。…多分」 「多分かよ」 「そうですねぇ、いろいろありましたもんねここ最近。いやはや、記事がたくさんかけて助かりました」 「……」 「……」 「? どうしました? お二方とも黙りこくって…」 突然増えた声に、しかし今度はあわてず騒がず、声の主のそばへ向かう。 「あれ? 何で○○さんは私の後ろに…? 霊夢さんは霊夢さんで何か笑顔がこわ「ど・の・ツ・ラ・さ・げ・て・んな事言うかこのデバガメ天狗はああっ!!」みぎゃあああっ!?」 握り拳に懇親の力をこめて声の主の側頭部を挟み込みグリグリする。 古典的お仕置き法として親しまれているだけあって、妖怪にも効果は高かった。 この声の主、こいつの名前は射命丸 文といい、「文々。新聞」という新聞を書いている新聞記者だ。 鴉天狗という、幻想郷の外でも(日本限定ながら)割と馴染み深い種族の彼女は、しかしその多くの人が抱いているであろう 天狗のイメージを、多分木っ端微塵に砕いてくれる。 何せ彼女ときたら、幻想郷の女の子達の噂を求めて西東、天狗仲間からも情報を集めたりするうち、どんどん話が大きくなっていく。 最終的に彼女が記事にする頃には、事実が1、嘘が3、大嘘が6くらいの割合になっているらしい。だれかJAROに連絡しろJAROに。 しかも、聞くところによればジャンルの違いこそあれ、天狗という種族は大なり小なりそういう傾向にあるらしいという。 …俺の幻想を返せよ。 「うう…ひどいです。私が何したって言うんですかぁ」 「自分の胸に手を当ててよく考えてみろ」 「分かりません」 「即答!?」 「当たり前じゃないですか。私はただ真実を見出し、事実を記事にしただけです。それの何が悪いんですか」 「あんたのその自称「真実の記事」とやらのおかげで、こっちはいらない迷惑をこうむったのよ」 「あの時は大変だった…」 霊夢の件で悩んでいた頃、こいつは一体どこをどう誤解したのか、事もあろうに俺と霊夢と魔理沙の間で 三角関係が出来ているなどと書きやがったのだ。 確かに魔理沙とは親しくしていた。話していて楽しいし、飽きない。それに、いろいろと世話になっていたりもした。 例えば、外から来た何の力も無い俺のために、わざわざコネを使って護身用に特注の呪符を用意してくれた。 後で、それを理由に堂々ととある図書館に入り浸っていたという話を聞いたあたり、本当に好意かと思ったりもしたが。 しかし、俺も魔理沙もあくまで友人としてお互いに好意を持っていたのであって、恋愛対象ではなかった。 なのにこの記事が出たおかげで、人形遣いやら図書館の主やら吸血鬼姉妹の妹の方やらに何度か殺されかける羽目になったのだ。 同様に詰め寄られた霊夢もかなり嫌そうな顔をしていた。あの頃は(俺への感情とかの)自覚もなかったので、別の意味でも かなり不機嫌だった。 「何であなたなんかと…」 と、食事時のたびにぶつくさ言われて胃に穴が開くかと思った。 魔理沙は魔理沙であの頃から何かの研究を始めたらしく、人を寄せ付けずにお篭りしだした。 そのため、新聞に気づいて誤解を解きに動き出すまで結構間があり。それも事態の混迷化に拍車をかけた。 要するに苦労したのだ。マジで。 「それを貴様は…」 「で、でも結局はこうなったんだからあながち間違っては…。そうですよ、私はむしろお二人の恋を支援したんです。 て言うかキューピッド? だからそんな風に言われるのは心外です!」 「反省の色無いよこいつ…」 「…○○」 「ん?」 お騒がせ天狗娘のあまりといえばあまりな開き直りに、むしろ呆れが生まれてくる。 そこに霊夢が声をかけてきて、そちらを向くと、霊夢はこぶしを握り親指を立てていた。 「……」 無言でそのこぶしを反転、親指で地面を指す。その意味するところを理解した俺は 「みぎゃあああああっ!! いたいいたい地味に痛いです、ごめんなさいごめんなさいもうしません、もうしませんから力抜いてあああああーっ!!?」 私刑執行。 しばらく後、涙目で頭を抱えうずくまる文に、霊夢は素敵な笑顔で説教をしていた。 うん、見たくない。夢に出るよあの笑顔は。 ややあって、俺は外に出た。霊夢はまだ文に文句を言っている。 境内には、俺のためにわざわざ見送りに来てくれた人たちがいた。…ありがたい話だ。うん。( T-⊂) その中に、談笑をしている魔理沙を見つける。向こうもこっちに気づいたようで、声をかけてきた。 「よ、おそかったな」 「ああ、ちょっと片付けながら思い出に浸ってた。」 「なんだそりゃ、年寄りじゃあるまいし」 「悪いか。…所で霖之助さんは?」 「香霖は店だ。お前によろしくってさ。」 「そっか」 なんともいつもどおりな調子の会話。とてもこれから自分の世界に帰るなんて思えないほどに。 だがまあ、その気楽さが微妙にうれしかった。 霖之助さんに会えないのは残念だが、まあ仕方ないか。 「今日でお別れね」 「向こうでも元気にやりなさいよ」 「ああ。ありがと」 そう声をかけてくれるのはアリス・マーガトロイドとパチュリー・ノーレッジ。どっちも魔理沙の知り合いで、魔法使い。職業ではなく、種族の。 二人とは魔理沙がらみの件で特に親しくなった。誤解で殺されそうになったあの件だ。 「取り乱してしまってすまない」と、本当に申し訳なさそうに謝る二人に、何だかこっちが悪い気がしてしばし謝罪合戦になったのは ちょっとほほえましい思い出である。その後ろにイイ笑顔の紅白と黒白がいなければ。 「そうだ。パチュリー、これ」 「なに?」 言って取り出したのは3枚の呪符。魔理沙が俺のため(と図書館入りびたりのため)に彼女に特注してくれたスペルカードだ。 「ああ…。そういえば結局お詫びの新しいカードは渡せずじまいだったわね」 「そうだね」 このカードは、外の世界から来た何の力も無い俺のために用意された特別のスペルカード。 ふつうのカードはひとつの「属性」及び「効果」に特化したものが多いのに対し、このカードは「属性」こそ単一だが 「効果」が一定ではない。イメージによって多彩な効果を発揮できる汎用性に優れたカードだ。 どちらかといえばそういう「便利な」カードは上級に分類され、簡単なことならむしろ自前の魔力・霊力でこなしてしまう。 しかし俺の場合、そもそもその「力」が無い。 ということで、動力源となる魔力を蓄える電池の能力と、実際の効果を発動するスペルカードの能力を併せ持つこのカードが生まれたのだ。 まあ、なれないカードの扱いをしかも一度に二つ三つの効果を併用させて…なんてするより、「飛ぶ」とか「飛び『ながら』撃つ」 という感じで、出来るだけひとつのイメージにまとめてしまえたほうがいいのでは? というところから来ているのだが。 初心者向けな分効果は弱いし限定的ではあるが、その辺は仕方が無い。 何でも、適切なレクチャーと訓練、そして相性のよさがあれば、こういう「初心者向け」のアイテムは誰でも使えるものだそうで、 俺もまた自分と相性のいい属性を調べてもらい、その属性のカードを作ってもらったのだ。 ちなみに俺の場合、風、雷、そして土の系統との相性がよかったらしい。 お詫びの…とは、記事の件で殺しそうになってしまったことへのお詫びに、アリスにも協力してもらって、より性能のいい カードを作ってもらう約束をしていた件である。 完成したそれを受け取りに行く途中妖怪に襲われ、死ぬ思いをした。 その後のごたごたもあって結局うやむやになり、新しいカードはお蔵入りとなってしまったのであった。 「返しておこうと思って。向こうでは使わないから」 「何だ、返すのか?もったいない」 「いいの? もしものときのことを考えたら、あったほうがいいと思うけど」 「そうよ、無くて困るよりはいいわよ?」 そういってくれる三人に、俺は首を振った。 「どっちみち充電しなきゃ使えないし、俺には過ぎた力だよ」 「そう…」 差し出されたカードをじっと見つめるパチュリー。ややあって顔を上げると、彼女は笑顔でそれを受け取った。 「そういうことなら受け取っておくわ。でもよかった。あなたが力の使い方を誤るような人種じゃなくて」 「そうね、魔理沙みたいにいろいろ間違いまくってるのも困るし」 「心外だぜ、私のどこが間違ってる」 「吹き飛ばすことしかしないじゃないの」 「この前私の人形コレクションがひどいことになったのは誰のせいかしら?」 「う…。お、おい、お前からも何か言ってくれ。ひどい言いがかりだぜこれは」 「俺は力の使い方とかそういうのの基準はよく分からんが…少なくとも邪魔者を吹き飛ばしながら本とかを強奪しておいて 『借りただけだ』とか嘯くのはいろいろ間違ってると思う。わりと」 「ひどいぜ…」 魔理沙、轟沈。 ひとしきり笑いが起こる。 「でも残念ね、あなたならこのカードのさらに面白い使い方を考え出してくれそうだったもの。…あんな無茶をするあなたなら」 「それを言うなよ…」 新しいカードをもらいに行く途中、妖怪に襲われて死に掛けた件のことだ。 湖で⑨な氷精に思いっきり迷子にされ、さらに追い討ちをかけるように宵闇の妖怪に追い回されたのだ。 「何だ、そんなやつにてこずったのか」なんて考えたやつ前に出ろ。同じ状況に放り込んでやるから。 カードのおかげでそれなりに戦えると言っても、所詮は素人。 ましてや比較的平和な外の人間の俺では、(幻想郷の)一般人レベルにすら勝てるかどうかである。 そんなやつに期待できるものじゃない。 真っ向勝負は自殺行為と即座に判断した俺は、とにかく知恵をめぐらせて姑息に生き残る事を選んだ。 スペルカードの「イメージしだい」という特性のおかげで、そういう小手先の手段は想像力の限り用意できる。 カードにプールされた魔力が尽きなければ…という制約付きではあるが。 あるときは風で匂いや音を操って相手の捜索を逃れたり、またあるときは土くれで人形を作ってそちらを追いかけさせたり… 結論から言えば、それは成功した。 しかし、こうむった被害もまた甚大だった。 何せ、最終局面ではカード3枚中2枚が魔力切れ、相手が気紛れに放った光線(ムーンライトレイというらしい)を受けて 右腕が大やけど、天候は最悪の嵐、さらに相手はここ数週間何も食べていないらしく異様な執着――そうでなければとっくに逃げれただろう――を見せる。 いや、もう終わったよ。と正直思った。 いい加減覚悟を決めるか、そう思ったとき、霊夢の顔が頭をよぎった。 俺は、霊夢のことが好きだった。 でも、そのことを告げることをせず、胸に秘めたまま元の世界に帰るつもりだった。 相手にされていないと思っていたから。玉砕するのが怖かったから。 霖之助さんにかつて相談したとき、そのことを突っ込まれた。 「力になりたいのが、好きだからという理由なら、なぜ、そう言わないのか」と。 俺はその時、 「いずれ別れるからだ」と答えた。「どのみち別れ別れなら、言うだけ無意味じゃないか」と。 霖之助さんは何も言わなかった。俺もそれ以上言わなかった。 霖之助さんは気付いたから、俺もわかっていたから。 「それは、タイムリミットを理由にした逃げだ」と。 単に怖かった。今のまったりした関係が壊れるのが。 単に嫌だった。彼女のそばにいづらくなるのが。 言えば壊れる、すべてが変わる。 いいほうに変わる保証なんて無い。なら…今のままで。 …でも、その日、その瞬間。 「それこそ二度と、あえなくなる」 そう理解した、その瞬間。 何よりも、ただそれだけが、 それだけが、怖かった。 ……その後のことを、詳しくは覚えていない。 治療してくれた永遠亭の薬師さんによれば、かなり強引な「見立てスペル」による緊急離脱を行ったらしい。 生命の危険に際し、カードがイメージのリミッターを外し、多少強引な解釈も受け入れて術を行使したのだという。 その結果、俺は右腕のみならず全身がボロボロの状態で境内で発見されることとなった。 ちょうど、探しに出てくれていた魔理沙たちが一度戻ってきた頃だったため、発見が早く、手遅れは免れた。 ただ、第一発見者の霊夢――心配のあまり暴走寸前で、魔理沙たちに待機を厳命されていた――は、 俺の惨状を見てそのまま気絶してしまった。 俺が横になっている間、霊夢はほとんどそばを離れなかった。 散々怒られた。 甘んじて受けた。はたかれたりもした。 完治がちょっと遅れた。 ある日彼女に、あの時感じたことを言った。 散々泣かれた。 痛くてろくに動かせない体に抱きつかれ、散々泣かれた。 完治がもうちょっと遅れた。 でも、 得たものは大きかった。 さすがは蓬莱の薬師といった所か、かなりのダメージだったはずが割と早く治った。 が、大事をとってもう少し療養することになり、帰るのが少し遅れた。 少しだけ伸びたタイムリミットを、二人で有意義に過ごした。 そして、今日に至る。 「あんなまねは多分二度と出来ないよ。したくも無い」 「そうね。好き好んで死にたがるようなのはそういないわね」 肩をすくめる俺に、苦笑するパチュリー。 まあ、自分が同じ目に遭えなんていわれたら困るわな、そりゃ。 「そういうわけだから、勘弁。まあ、どうせもう帰るんだけどさ」 「ふうん、やっぱり帰るのか」 「ん?」 またも突然の声にそちらを向く。そこに立っていたのは… 「声はすれども姿は見えず…」 「…貴様、どっちを見て言っている?」 「んー? 上のほうかな」 「殺して欲しいのか?」 「いやいや、待てちみっこ。悪かった、わざとだ、誓って悪気があった」 「殺すぞ。それにちみっこって言うな」 「却下だ」 「本気で殺すぞ」 「全力で逃げるぞ」 「貴様な…」 憮然とした表情で俺に文句を言うのはレミリア・スカーレット。パチュリーが住んでいる「紅魔館」の主で、小柄ながら強力な吸血鬼の少女である。 しかしながら、初めて会った宴会の席で、酔っ払った彼女が見せた幼児化「れみりゃ変身」のインパクトのせいか、どうにもいまひとつ怖いと思えない。 結果、「ちみっこ」なる、おそらく本人にとっては甚だ不本意であろうあだ名で呼ぶのが俺脳内で定着してしまったのである。 …ちなみに、本当はもう一人ちみっこがこの神社にいるはずなのだが、最近ふらりとどこかへ行ったきり宴会のとき以外は戻らない。 …どこかに寄生してるのか? あの鬼っ娘は 「まったく…、これから帰るというから見送りに来てやれば何だその態度は」 「人一人殺しかけた妹に向かって、その被害者候補(つーか俺)の前でこともあろうに『まじめに殺れ』などとぬかすやつに 言われたかぁ無い」 「あれはお前が霊夢を取ろうとするかr「はいはい」…頭ポンポンするな。…なでるな! 子ども扱いか貴様!」 「注文の多い吸血鬼だなこのちみっこはまったく。いっそ逆レストランでも開いたらどうよ?」 「何の話だ…」 毎度毎度こんな調子。 どうにか威厳を見せようとするレミリアと、ことごとくスルーする俺。 俗に言う雑魚妖怪とやらにも勝てない癖して、何なんだろねぇ、俺のこの微妙な心の強さは。 まあ単に本気を出されて無いだけなんだろうが。 と、レミリアがあきらめたように深くため息をついた。 「はあ…もういいわ。今回は紅魔館を代表して見送りに来たの。仮にも『あの』霊夢が選んだ男だしね… まあ、ありがたく思いなさいよ?」 それはそれは、と礼を言おうとして、しかしいるはずの人物がいないことに気づく。 「あの人畜有害メイドはどうした? あと、それならさっきひとしきり噛み締めた」 「咲夜が有害なのは敵に対してだけよ。例えばいつまでも礼儀をわきまえない誰かさんとかね。 とりあえず、感謝してるようならいいわ。後、咲夜は今フランの相手してるわ」 十六夜 咲夜。レミリアの従者で、紅魔館のメイド長。何でもそつなくこなし、ナイフ投げが得意。 彼女には何度額を割られかけたことか…。 そして、フランドール・スカーレット。レミリアの妹で、アリスやパチュリーともども俺を「消し」に来た一人だ。 あの時はひどくいやな予感がして、とっさに土の符で地中深くもぐって逃げた。 最もすぐばれたが、あわやと言う所で魔理沙が現れ、矛先がそっちに向いてくれて助かった。 あの破壊力は耐え切れん。て言うか日中に来るなよ、夜でも困るが、愛の力か? 「さすがメイド長、あのじゃじゃ馬の相手とは。しかしお前が代表か? パチュリーが代表だと思ったが」 「私は個人的な知り合いとして見送りに来てるのよ」 素朴な疑問にパチュリーのほうを向くと、即効でそう答えが返ってきた。 「ということ。咲夜のほうも心配ないわよ、優秀な肉の盾もあるしね」 「そういうことなら納得。しかし、門番さんも不憫なこって。メイド長もひどいねー」 即「盾」の意味が分かる俺もあれだが。ちなみに門番さんの名前は紅美鈴(ホンメイリン)、あだ名は中国。不憫。 「それが仕事でしょ? …さて、意外と話し込んじゃったわね。まだ挨拶して無い面子が要るんでしょ? 行ってきたら?」 「ん? …ああ、はいはい」 言われてそのままよそに送り出される。まあ、今日が最後なんだから最低一言は直接礼を言わんとな。 と、鳥居の方を向くと珍しい取り合わせの二人がいた。 片やブレザーにうさみみ、以前俺を治してくれた永遠亭の薬師、八意 永琳(やごころ えいりん)さんの弟子で、月の兎の鈴仙・優曇華院・イナバ (れいせん・うどんげいん・いなば)。 永琳さんの助手としていろいろがんばってくれた。 片やでっかい人魂持ち、冥界の白玉楼という屋敷で、主の亡霊姫、西行寺 幽々子に仕える半人半霊の護衛兼庭師、魂魄 妖夢。 宴会のときに知り合い、短い間ながら戦いの基礎を教えてもらった。俺はかじる程度だが剣道をやっていたので、少しは応用の利くものがあるかも、と思ったのだ。 この二人、生真面目な従者つながりといったところだろうか、話が弾んでいるようだ。 「や、二人とも来てくれたんだ。ありがと」 「ああ、○○。こんにちは」 「こんにちは。その後の経過はどう?」 「至って順調。剣が振れる位には回復したよ。木刀だけど。永琳さんにもお礼を言っといてくれる?」 「了解。がんばった甲斐があったってものね。…まあ、師匠が出張ったんだから当然だけど」 「ええ、本当によかった」 得意げな鈴仙と、わがことのように喜ぶ妖夢。ごめんな、心配かけて。 「でも無理は禁物ですよ、体というものは鍛えただけ強くなるけど、酷使しただけ壊れるのも早いんですから」 「その辺のバランスを見極めろってことね」 「ええ。向こうに帰っても、精進を怠らないように」 「肝に銘じるよ」 でもしっかりと釘は刺される。まあ、無理して体を壊すのは俺もいやだし。 と、なにやら二人がごそごそと自分のポケットをあさりだす。なんだなんだ? 「そうそう。これ、私が作った薬。師匠にもちゃんと見てもらったから、効果は保障するわ」 「こっちはこれを、幽々子様お手製のおいしい食堂のリストです」 「お、サンキュ…って、座薬かよ。言っちゃ何だが、使いどころが難しいな…効能は何なんだ?」 「疲労回復とストレス解消、後すり傷とかの治療かな」 「どー言う座薬だよ! しかも傷って、それじゃ痔にしか使えねえよ!」 「しょうがないでしょ、師匠の課題もかねてるんだもん。材料と製作工程はは師匠のお墨付きだから大丈夫よ…多分」 「俺実験台!?」 「人聞き悪いなあ…。モニターよ、モニター」 「あのなあ…。で、こっちのリストは…って、まっさらのノート!?」 「このお手製ノートに、外のおいしいお店を場所からお勧めから網羅してくるようにと…」 「俺が書くのこれ!? つーか外の世界にまで食いに来る気かよあの食いしん亡霊は!」 「えーと、その…強くあってください」 「いやいや、強くとか言う問題と違うと思うよ、妖夢さん!」 「いいから持ってく!」 「お願いします…」 「マジかよ…」 畜生、意外な落とし穴だ。 よもやこの娘らに胃痛を覚えさせられる羽目になろうとは。 「あはは…まあ、礼は言っとく。ありがと。…とりあえずあとでな?」 何かどっと疲れたのでその場を辞する。うう、癒してマイハニー。 「何やってんの?」 グッド・タイミィィィン!! …って、 「何だ、萃香か」 伊吹 萃香(すいか)。先ほど述べたもう一人の「ちみっこ」にして、幻想郷でさえ姿を見せなくなったという「鬼」の少女。 平たく言えば酔っ払い。 「ご挨拶だなー、せっかく今回はわざわざ気を利かせてみんなを萃(あつ)めてやったっていうのにさ」 「お前の仕業なの? …ならまあそこは礼を言うが…一体今までどこにいたんだ?」 「別に? いたよここに」 「(゚Д゚)ハァ?」 キョトンとする俺に、赤ら顔の萃香はケタケタと笑いながら 「だから、気を利かせたって言ったでしょ? せっかく二人っきりなんだから、邪魔しないように『散って』たんだよ」 「…それデバガメとかいわね?」 「どうだろ? ヘンな事はして無いんだしいいんじゃない? むしろプラトニックすぎていらいらしたけど」 「デバガメじゃねーか…ってちょっと待て、ここにいたってんならもしかしてあの嵐の日も…」 「ああ、あんたが大怪我したあの日? うん、いたし知ってたよ、あんたの居場所も。でもあんたが頑張ってたから手を出すに出せなくてね」 こともなげに言い放つ。おいおい、勘弁してくれよ。 「出してくれてたらあんな怪我は…」 「でもそれ以上のものを手に入れたじゃん」 「…まあ、な」 「結構気に障ってたんだよね、あんたたちの煮え切らなさが。だからまあ、どうにかなるならそのほうがって。結果オーライだね」 「…そういわれると怒れないわね…」 「って、霊夢?」 いつの間にか外に出ていた霊夢が、そういいながら話に加わる。ふと出入り口のほうを見ると、真っ白くなった天狗の姿。 とりあえず黙祷をささげた。「自業自得」と。 「まあ、聞かれてたら答えたんだけどね? でも霊夢ったら気が動転して私のことすっかり忘れてたみたいだし」 「あれは迂闊だったわ。うん」 「でもまあ、いい方に転がったんだからいいじゃない。あんな霊夢の姿はそうそう見れないから、私も得したしね」 「忘れなさい。それは」 ニヤケる萃香。天狗を圧倒した霊夢の凄みも、酔っ払い相手に赤面しながらでは効き目が薄いらしい。 「その後の告白も…いやー砂糖吐くかと思った」 「ってちょっと待て、お前まさか…!」 「ん。聞いてたよ? 一言一句逃さず」 「キャーーーーーーーーーーー!!!!」 うわやべえよ、あんなの聞かれてたよおい、助けてー! 「ほほう、それは面白そうだ」 どっから沸いて出た魔理沙! 「で? どんな感じだったんだ?」 「キメ台詞は確か『ただ霊夢のところに帰りたかったんだ』…っかー! やっぱ極限状態だということが違うねー!」 「あははははは! たしかになー!」 あうあうあー! 勘弁してくれー! 「さらにそのときの霊夢と来たらぶぁっ!?」 おもむろに吹っ飛ぶ萃香。突然のことに驚き、呆然とする魔理沙。 俺は思わず、自分の隣を見た。 神、再臨。 「…お、落ち着け、話せば分かる。な?」 すっかりおびえた魔理沙。見ると萃香もなにやら隅っこでガタガタ震えている。 絶対的な恐怖が支配する中、霊夢が口を開いた。 「○○」 「お、おう」 「ちょっと先に紫のところに行っててくれる? 私はこいつと話があるから」 「いえす、まむ!」 触らぬ神にたたりなし。なにやら酔いが醒めたっぽい青ざめた顔で、助けを求め哀願するような顔でこちらを見る魔理沙と萃香に、さわやかな顔で手を振りつつ全速で後退する。 本日の犠牲者カウント、3。 「なにやら楽しそうね、霊夢は」 「そうっすね」 「というか私はあの二人がかわいそうに思えるのですが…」 「あら、じゃああなたが止めに行く?」 「…謹んで辞退します」 「らんさまー、こわいー」 「落ち着け橙、つーかそこは俺の頭だ。首折れるから、おい」 「こら○○、お前は橙が重いというのか!?」 「人間の身体強度を常識で考えてくれ」 相変わらず親ばかチックな藍さん。 そんな藍さんになつきまくりな猫又の橙(ちぇん)。 そして彼女らを従える、スキマ妖怪、八雲 紫。 マヨヒガに住まう幻想郷最強クラスの妖怪一家、満を持しての到着だ。 「でもよく分かったわね、私がそうだって」 「明らかに藍さんとかを従えてたじゃないか。水戸○門みたいで分かりやすいことこの上ない」 「あらあら、でも最近のあの番組少し微妙じゃない? 昔のキャスティングとかに慣れてるとちょっと違和感が…」 「見てるの!?」 「ドラ○もんもどちらかというと前のキャストのほうが好きだなぁ」 「そっちまで!?」 だめだ、この人はいろいろ桁違いだ。かなわねぇ。 「それはそれとして…今回は悪かったわね」 「ん? …ああ、いや」 すまなそうな顔で言う紫さん。 すっかり忘れてたが、そういえばこの人が原因で俺はここに来たんだった。 紫さんは一転、真剣な目で俺に言う 「今日、あなたを元の世界に帰します。やり残したこととかは無い?」 「ああ」 俺の答えに、紫さんの目がやや険しくなる。 「…本当に?」 「? …ああ、無いが」 「そう…」 言いながら、紫さんは霊夢のほうを見る。 なにやら複雑な感情をたたえた目だ。一体何なんだ? 「…言っとくけど、また来るぞ?」 「え?」 こっちを振り向き、ほうける紫さん。うん、ナイスキョトン。 「だから、また来ると言ったの。向こうでまだやり残した事があるんだよ、挨拶しときたいやつもいるし、片付けなきゃならない事とか色々」 驚いた表情を見せる。ああ、やっぱそこを気にしてたのか。 「……でも、ここを出たら…」 「知ってる。もう入れないんだろ? 少なくとも同じ手では。霊夢に聞いた。その上で決めた。また来るって」 「…どうやって?」 「どうやっても何も…おあつらえ向きに、この神社だけはこっちにも向こうにもあるだろ? だから探すんだよ、ここを」 「簡単じゃないわよ」 「承知の上。長く待たせることになるから、そこだけ霊夢に謝ったけどね」 「霊夢はなんて?」 「なるべく早く帰って来いってさ」 「…そう」 「ああ。なんてったって、ここは俺が一番帰りたい『家』だからな」 「ん。…分かった、どうやら杞憂だったみたいね。でも、約束は果たすのよ?」 「当然。」 笑顔に戻った紫さんに、ぐっと親指を立てて答える。紫さんは満足そうに頷き、背を向けた。 「そろそろお茶の時間でしょ? 送り返すのは一服入れてからにしましょ。藍、○○も、みんなを呼んでくれる?」 「はい」 「りょーかい」 一足先に縁側に向かう紫さんを尻目に、俺は霊夢たちを呼びに行った。 しばしの休息の後、俺たちは鳥居の前に集合した。 「さて…じゃあ、準備はいい?」 「いつでも」 紫さんが俺に声をかける。もうすぐ、一時ながらこの世界に別れを告げることになる。 「短い間だったが、楽しかったぜ」 「カードのほうは、また来たときのためにちゃんと調整しといてあげるわ」 「私も手伝ったんだから、楽しみにしてなさいよ?」 魔法使い三人娘のお言葉。ああ、楽しみにしとく。 「また会うまでに、もう少し目上の者に対する礼儀を学んでおきなさい」 ちみっこ吸血鬼。いや、たぶん無理っしょ。 「使い心地はレポートで提出してね」 「すみません、最後に変なこと頼んで…」 兎と半霊。似てると思ったらこんなところで対照的。て言うか兎よ、実験台にも愛をくれ。 「またいい記事のネタ、期待してますね?」 「お土産は酒とつまみー」 天狗と鬼。て言うか懲りろ、お前ら。 「向こうでも元気で」 「またねー」 式神 s。ああ、そっちも元気で。 「○○…」 そして霊夢。…俺は霊夢のそばに行き、彼女を軽く抱きしめた。 霊夢もまた、俺の背に手を回す。 「じゃあ、行ってくる」 「…あんまり、遅くならないようにね?」 「ああ」 霊夢から離れ、紫さんの待つ鳥居のそばへ。 そこにはすでに、「穴」のようなものが出来ていた。 「じゃあ、しばしのお別れね」 「ええ」 「…まあ、頑張ってみなさいな。…応援くらいは、してあげる」 「ありがとう」 振り向き、今一度みんなの方を見る。 「みんなありがとう! …じゃあ、また!」 そういって手を振る。みんなも思い思いに手を振ってくれている。 俺は、目の前の「穴」に…飛び込んだ。 「…君、君。大丈夫かね?」 「…え?」 気がついてみると、見知らぬ場所。 俺が住んでいた町の…確か、近くの林。 ほんの数ヶ月のことなのに、木々の隙間から見える町並みが、ひどく「合わない」と感じた。 起こしてくれた背広のおじさんに礼を言って別れ、俺は久方ぶりの町を歩き始めた。 さて、「家」に帰るか…。 あれから、どのくらい経っただろう。 今日もいつも通り。境内を掃き、お茶を飲み、たまに来る客の相手をし、休む。 単調な日々のようで、一日一日がまるで違う日常を送る中、私はあいつを待ち続けた。 幻想郷という「隠れ里」 そこに至る者は多くない。 多くは事故でここに迷い込み、あるものは妖怪に食われ、あるものは野垂れ死に、一部の運のいいものは自力なり保護されたりで、ここにたどり着く。 今日はたまたま迷い込んだ子供を、元の世界に帰してあげた。 …あいつは、いなかった。 「まったく…のんびりしてるんだから」 そういいながら、布団を敷く。せっかく干しておいたあいつの分の布団は、今日も無駄になってしまった。 「早く…帰ってきなさいよ」 ぽつりと言って、布団にもぐる。ふと、言いようの無い寂しさがこみ上げて来る。 誰と…魔理沙と一緒でも、ぬぐえないこの感覚。やっぱり、慣れない。 「…っ」 また今日も枕がぬれる。あの馬鹿、帰ってきたら枕の直しはあんたの仕事だからね! そしてまた、一日が始まる。 春が来る。 あいつが行ってしまった季節が。 暖かなはずのこの季節は、しかし最近私をブルーにする。 ほんとに…いつまでかかってるんだか。 何度目かの正月を迎えた、朝。 お雑煮は暖かいけど、どこか寒かった。 だから、食べる気がしなかった。 去年も帰って来なかった。今年は…どうだろう。 寂しい、寂しい、寂しい。 寂しさで気が狂いそうになる。 こんなことなら、あいつを送り出すんじゃなかった。 こんなことなら、あいつを引き取るんじゃなかった。 こんなことなら、あいつを好きになるんじゃなかった。 そうすれば、こんな気持ちにならなかったのに。 そうすれば、私はいつもの私でいられたのに、 そうすれば…。 …でも、きっと寂しいのは変わらなかった。 ただ、気づくか否かの違い。 「馬鹿…」 コタツに突っ伏して、ポツリと呟く。 もう、耐えられないよ…。 「…あれ?」 不意に、ある音が耳に響く。 私の感覚に間違いが無ければ、あれは… 「お賽銭の…音?」 酔狂なやつもいたものだ。 ここ数年、あの賽銭箱にはろくにお金が入っていない。 まあ、幻想郷のものはそういうことはあまりしないから、 よくは分からないが、とりあえずお金を入れる気になったやつがいたのは驚きだった。 鈴の音が響く。 どうやら拝んでいるらしい。 本当に物好き。 ご利益なんて期待しないでよー。 …そう思いながらも、足が向く。 幻想郷のものは、賽銭なんて入れないから。 賽銭なんて入れるのは、本当に気が向いた暇人か、あるいは… はたして、そこにいたのは。 「…何してんのよ?」 「ん? …初詣。今日元旦だし」 「あんたね…一体今日がいつの元旦だと思ってるのよ?」 「元旦は元旦だろ? お参り位してもいいじゃないか」 「そりゃあね。でも…」 「?」 「その前に…挨拶くらい…しな…さいよ…」 「…ああ、そうだった」 ああ、もう。 こいつはほんとに相変わらずなんだから。 いつでも、馬鹿ばっかり言って。 いつでも、痛い目にあって。 そのくせ、約束だけはちゃんと…、 「まあとりあえず、明けましておめでと。…なんか食うもの無い? 体冷えちゃって」 「はいはい、冷えたお雑煮でよければね」 「えー、あっためなおしてくれないの?」 「火の無駄よ」 「ひでぇ」 お雑煮は冷めてたけど、どこか暖かかった。 だから、本当においしかった。 もう、どっかに行っちゃわないでね…。 あとがき―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴm(ダマレ orz 上手くかけない…。 こんにちは、退避所の37です。 前回あげた分の続き…と言うか、まとめてエピローグにしちゃいました。 いろんな人に励まされ、調子に乗ってキーボードを叩いてみました。 やってみるとホント大変ですね、こういうのって。 改めて職人の皆さんのすごさを痛感します。 これからもがんばってください。 この下のチルノの裏は愚痴です。スルー推奨。(マテ ~チルノの裏~ ていうか何だこれ…。 いろいろと書きたいことがあったはずなのに、上手く文章に出来ない。 もっと上手い表現などいくらでもあろうに…。 今回の主人公君には賛否両論…と言うか文句? 出ると思ってます。いろいろ変なものつけすぎました。 すべてわが不徳のいたすところです。orz プロットの内容を考えると楽に5話近く行く計算に…。オネガイ、ナカッタコトニ>orz エピソード解説がキャラ解説っぽいものと一緒に行われている感じで、霊夢ものなのに中盤までは出番少ないし。 何気にこのあとがき部分も途中まで書いてた第2話のあとがきの流用だったりもするし。 もうちょっと短くまとめる力がほしいです。 ごめんね、おいらじんせいけいけんあんまりないから、ごめんね。 ~ここまで~ ─────────────────────────────────────────────────────────── 前回書いた霊夢ものの続きです。 あらすじはこの前の「まとめてエピローグ」にて紹介してしまったので目新しい部分は無いのが申し訳ないですが、 とりあえずお送りします。 ちょっとシリアス気味です。 途中で一回だけ視点変更があります。ご注意を。 後、ごらんになる方はそれなりの覚悟を ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「なるほど、そんなことがねぇ…。 どおりで、いつもと少し感じが違うと思ったよ」 「ええ…って、やっぱり分かるものなんですね」 「はは、伊達に何年も霊夢と付き合ってはいないからね」 ここは幻想郷の古道具屋、香霖堂…の、蔵。 ひょんなことからここ幻想郷に滞在することとなった俺は、博麗 霊夢という少女が巫女をつとめる、博麗神社にお世話になっていた。 今日この店を訪れたのは、俺という突然の居候の影響でお茶やらなにやらのたくわえが心もとなくなってきたので、 その辺の補充に来たのである。 ここで俺は、補充に来たいくつかの品の蔵出しを手伝いながら、店主である霖之助さんにちょっとした相談をしていた。 それは割と唐突だった。 最近ほぼ毎日のように神社に来る、魔法の森在住の普通の黒魔術師、霧雨魔理沙。 霊夢と並び、幻想郷に来て特にお世話になった一人だが、彼女と雑談をしていたとき、ふと霊夢の様子がおかしくなったことに気づいた。 何と言おうか、彼女にしては珍しく、とてもイライラしているようだったのだ。 そのくせそれを指摘すると、「何でもないわよ」の一点張りで、にべも無い。つーか怒ってんじゃん。 しかし、後になって落ち着いた彼女から話を聞くと、自分でもなぜあんな態度をとってしまったのかまったく分からないそうで、 非常に戸惑っていた。 分かったことといえば、どうも原因が魔理沙との雑談にあるらしいということくらい。 あの時話していた内容は取り留めの無い、それこそいつも話しているような内容で、特に何かの問題なり何なりがあるとも思えなかった。 …内容が犯罪じみていた(また魔理沙が図書館を襲撃した件)のは確かだが。 結局、二人で考えたが理由やその他の結論などは浮かばず、そのまま寝ることになった。 お世話になっていることや、その他もろもろの理由を含め、霊夢の力になりたかった俺だが、一人でどうにかするには いろいろと足りないと思い、幸いにも翌日――つまり今日の事だが――こうして霖之助さんをたずねることになっていたので、 人生の先輩に相談しようと思ったのだ。 「結論から言ってしまえば、たぶんそれは僕の出る幕じゃないと思うよ。霊夢が自分で気づくか何かしないことには…ね」 いきなり役に立たねえなこの道楽店主 「何かひどいことをいわれた気がしたけど?」 …はっ!? なんだったんだ今の(心の)声は… いえ別に思ってませんよ? へんなこと考えてませんよ? 「…まあ、気のせいだろうけど」 「はあ…。でも、それじゃ俺はどうしたらいいんでしょう?」 「と、いうと?」 「その…なんていったら言いか、俺、どうにか霊夢の力になりたいんですよ。 お世話になったからってのもあるけど、その…」 顔周りの温度が上がるのを感じる。きっと今俺の顔は誰が見ても真っ赤になっているのだろう。 「俺は、たぶん、霊夢の、事が…「ああ、ストップ」?」 「大体分かった。とりあえず、その言葉はいずれ本人に言うべきだ」 言われた言葉に、思考が、止まる。 それは一瞬のことだったろう。しかし、それが俺に突きつけたものは… 「…はあ」 「少なくとも、その気持ちがあれば大丈夫だろう。君は霊夢のことを大切に思っている。そのことこそが大事だと思う。 ならば、今はだめでも、いずれ君が力になれるときも来るさ」 「…はい」 霖之助さんの言葉に、うつむいたままの自分。 シンプルで、たぶん正解であるはずの言葉。でも、心は晴れない。 「…何か、あるのかな?」 霖之助さんが、俺に聞いてくる。 俺は、その問いかけに… 「おそかったのね、○○も霖之助さんも、そんなにへんなものを頼んだ覚えはなかったんだけど」 「ああ、ちょっと奥まったところに入り込んでいたのがあってね。いささか難儀したよ」 「魔理沙じゃあるまいし、ふだんから整理しておけばいいのに」 「いやここ店だから、整理整頓基本だから。つかそこで彼女を引き合いに出すのもどうだろな…」 思いっきり嘆息する霊夢の物言いに、思わず突っ込みを入れる。しかし本人はどこ吹く風。まあ、霊夢らしいというか何と言うか。 「まあいいわ。ちょっと待ってて、お茶入れてきてあげるから」 「ああ、ありがとう」 「サンキュー。って、それ香霖堂(ここ)のお茶であって神社のお茶じゃ…」 「はは、まあいつものことだしね」 「そこであきらめるんですか霖之助さん…」 そして始まるまったりタイム。俺たち以外の客がいない店内で、しばし静かな時間が流れる。 霊夢のほうもこの時間を楽しんでいるらしく、ニコニコしている。うん、よかった。そこへ… 「…お、いたいた、やっぱここだったか。おーい香霖、邪魔するぜー」 台風上陸。 「…で、そのときに幽々子のやつがな?」 「はいはい、その夜雀も災難なこって。…霊夢?」 結局また魔理沙のペースになる。昨日の今日で少しは気にしてるかと思ったが、全然そんなことは無いらしい。 それはそれで、また霊夢が昨日のようになっちゃいないかと心配になってくる。今は霖之助さんと話をしているようだが、 ちょっと声をかけてみる。 「え、なに?」 「えっとその…大丈夫か?」 「何が?」 「いやほら、昨日の…」 最後まで口には出さない。分かるだろうし。 「…ああ、大丈夫よ。そう何度も来るものでもないみたいだし」 「そうか、ならいいんだけど…」 お茶を飲みながら、湯飲みを持ってないほうの手をひらひらさせる霊夢。 一応大丈夫そうではある。が、油断は出来ない。 「何だ? 霊夢どうかしたのか? そういえば昨日もなんか様子が変だったけど…」 「うん、ちょっとね。…大丈夫よ、何かあるってわけでも無いから。体調もいいしね」 「そうか? なら、いいんだけど…」 「うん、ありがと」 魔理沙も霊夢を心配するが、霊夢の答えにやや釈然としないものを感じつつも引く。 こういうときの彼女は時に驚くほど強情だからだ。 「はは、さて、そろそろ時間も時間だし、戻ったほうがいいんじゃないか? 特に霊夢たちは荷物もあるだろう」 「え?」 言われて外を見ると、日暮れまであと一時間半ほどというところだった。 「ありゃ、結構話し込んじゃったな…」 「そうね、そろそろ帰りましょうか。じゃあ霖之助さん、今日はありがとね」 「今日の分はつけにしておくよ」 「魔理沙の?」 「待てこら霊夢、そこでなんで私になる」 「なんとなくよ。○○、荷物はよろしくね」 「へーいへい」 そして飛び立つ霊夢と俺。なぜ一般人の俺が飛べるかについては気にするな。 魔理沙の知り合いの魔法使いにその手のマジックアイテムを都合してもらっただけだ。 しかし今回は荷物が多い。普段からそんなに早く飛べるわけが無いが、さすがに今回はちょっともたつくしふらつく。 難儀していると前を行っていた霊夢が、 「ほら、早くしないと日が暮れちゃうわ。少し持ってあげるから、早く」 そういって俺から荷物を半分ほどひったくり、再び前へでる。彼女のこういうところが結構かわいく思えるのは俺だけだろうか。 荷物が軽くなってもそんなにスピードが増えるわけでも無いので、しばしのんびり空の旅。 しばらくするとまた霊夢が俺に並ぶ。やや神妙な顔をして。 「…さっきはごめんね」 「何が?」 首を傾げる俺。 「お店で、心配してくれたでしょ、私のこと」 「ああ、まあね」 「実を言うと…また、だったの」 「え、そうなの?」 「うん」 やっぱりそうか、と思う。霖之助さんがいるとはいえ、シチュエーション的には昨日とほぼ変わっていなかったから。 俺と魔理沙が話しているのを見て、“もやもや”したのだろう。 「本当に…どうしちゃったんだろう、私。いつもはこんなこと無いのに、最近になって…」 「うん…」 霊夢の表情が暗くなる。自分の中で何が起こっているのかわからないのだ。 しかしそれは、霖之助さんの言葉を借りるなら、霊夢自身でどうにかしないといけないもの。何とかして力になりたい俺だが、 それでもおそらく、こうして聞き役に回るとか、ほんの少し支える程度のことしか、出来ることは無いだろう。 …いや。 実のところ、本当にうぬぼれていいのなら、心当たりが浮かばないでは無い。 だが、それはあまりにも自意識過剰な想像で、ある意味「こうであったら」という俺の願望そのものともいえる。 あるいはそれが正解かもしれない。というか、それ以外にすぐ浮かんでこない。 しかし…、それを俺が口に出すことは彼女を振り回すことになるのではないか? それに違ったら違ったで失礼極まりない話だ。 よしんば正解だとしても…それならなおさら、俺にはどうすることも出来ない。 どうすることも… 「理由を、教えてもらえるかな?」 「結果はどうあれ、いずれ、別れることが分かっているからです」 『霊夢には気持ちを告げられない』…。そういった青年は、僕の問いかけにそう答えた。 「俺は異邦人です。事故によって紛れ込んだイレギュラー、本来あるべきでない要素。 次の春が来ればここを離れ、おそらく二度とここに来ることは無い。…たとえ可能性があるとしても、結果の決まった勝負に、 出るつもりはありません」 そういう彼の顔は、しかし、自分で自分の言葉に納得してはいないようだった。 彼は、平たく言えば逃げていた。現実に立ち向かうこと、結果を出すことから。 なるほど、拒絶されれば確かに気まずくなる。多少はつくろえても、いい思い出とするにはやや時間がかかることだろう。 万が一にも結ばれたなら、それはそれで究極の遠距離恋愛だ。二度と会えない遠くなど、いくらなんでも。 とりあえずのタイムリミットを言い訳に、先延ばし…いや、うやむやに済ませてしまえればと考えているのだ。 そして、そんな考えを自覚し、嫌悪してもいる。 …挑むことにおびえ、そのことに憤り、でも一歩を踏み出せない、悪循環。そんな感じの顔だった。 言葉で、諭すのは簡単だろう。でもそれでは届かない。何か、きっかけが要る。彼にも、霊夢にも。 「けど、それを僕が与えてやることは不可能…か」 「? 何の話だ香霖?」 「いや、ちょっとね」 二人が去ってから、僕は外を眺めつつ先ほどの会話を思い返していた。 己の変化に戸惑いを隠せない霊夢と、それを支えようとしていながら、自らもまた薄氷の上にいる彼。 どちらかに転機が訪れない限り、この先にいいことはあまり無いだろう。 といって自分に出来ることは僅かだし、その少ないレパートリーの中には、すぐ役に立つような何かは無い。 つまるところ、適当なときにアドバイスをあげるのが関の山で、余計な手出しをせず静観するのが精一杯なのだ。 彼が霊夢を傷つけることは無い。少なくとも自発的には。 だが結果的にそうなってしまうことはある。そして往々においてそういうときのダメージは馬鹿に出来ないのだ。 そう考えると、早いうちに何とかしないといけないのだが…その割にどこか落ち着いている自分を自覚する。 どこか、言うほどに心配していない自分を。 …まああれだ、「あの」霊夢だ。 そしてその霊夢が、無自覚ながらも見初めた男だ。 そう簡単にはへこたれやしないだろうし、何より周りがそうさせまい。 これまでがそうだったように、これからも一筋縄の日常ではいかないことはわかりきっている以上、そうあわてずとも、 きっかけはおのずからやってくることだろう。 冬以外限定の常連の、あの少女の言葉ではないが、幻想郷はどこまでも残酷だ。 だが同時に、どこまでもやさしい世界でもあるのだ。 後は、彼らの想いの強さ次第、といったところなのだろう。 「僕に出来るのは応援だけか。まあ、それはそれでいいんだけどね」 「だから何の話だよ」 「ああ、また口に出てたか。何、ちょっと考え事をね」 「そうか? まあいいけど。…さて、あいつらも帰っちゃったし、そろそろ私も行こうかな」 「はは…」 実に淡白な魔理沙の言葉に苦笑する。と、ふとあることを思い出す。 「そういえば魔理沙、聞きたいことがあるんだけど…」 「ん?」 「彼のこと、どう思う? 今日もよく話していたみたいだったけど」 「ああ、あいつか? そうだな、好きだぜ」 「そ、そうなのか?」 「ああ。いろいろ外の面白いことを教えてくれるし、反応も面白いし、話していて楽しい。」 「そうか…」 一瞬びっくりした。 まさか魔理沙も…と思ったが、彼女の「好き」はどうやら友達としての「好き」のようだ。 もしこの娘が加わったなら、かき回し役としてそれはそれはいろいろやってくれそうだと思ったが、とりあえず言わない。 しかしこの言い方だと、聞きようによってはちょっと誤解を招きそうな気がするのは気のせいだろうか? 「最近はさ、どんなことを教えてやろうかとか聞かせてくれるかとか結構楽しみなんだよなー。 特に外の世界で人気の物語の話なんか笑えたぜ? ぜんぜん違う話の振りして何気にワンパターンだったりとかさ」 「へえ、それは興味深いな」 「今度聞かせてもらうといい。さて、じゃそろそろ…」 「ああ、引き止めて悪かったね」 「いいさ、後これもらってくな。じゃーなー!」 「ああ、って魔理沙! それは最近流れ着いたばかりの、こらー!」 そのまま飛び去っていく魔理沙に、思わずため息をつく。 まあいつものことだし、どうせ明日にも使い方の説明でも聞きに来るだろうからと、すぐに気持ちを切り替える。 また、あの二人のことが浮かんだ。 彼女のように、彼らもまた、このまったりと騒がしい幻想郷の日常の中で、立ちはだかるものを笑って突破できる力を得られることを 祈りつつ、僕は店じまいの準備を始めるのだった。 ~チルノの裏~ (近くの茂みにて) ―ガサガサ、ゴソゴソ。 「…面白いことを聞きました。これは調べなければですね」 ―うん、やっぱり騒がしい。 ~ここまで~ あとがき―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― こんにちは、退避所の37です。 こんなんでも待っててくださる方がいるなんて…( Tд⊂)アリガトウ というわけで一応の「2話目」です。 相変わらずヘタレでスマソ。 こーりんです。 真面目こーりんです。 褌は多分出ません。 最近ごたごたしてるので次がどのくらいかかるか分かりませんが、次あたり文とかアリスとか出るかと。 では。 ─────────────────────────────────────────────────────────── 霊夢ものクリスマス特別変(←誤字にあらず) まったく持って最近は寒い。 火鉢にコタツ、どてらも動員してようやっとノーマルレベル。 さすがは大自然の冬。あの頃のエネルギーに満ちた俺ならともかく、今の俺では…。 「年はとりたくないねぇ~(-ヮ-)」 「藪から棒に何言い出すのかしらこのコタツムリときたら…(-ヮ-)」 「れーむにいわれたかにぇ~~ぃよ~~~ぅ(-ヮ-)(たれ)」 「語尾延びてるわよ~~~ぅ(-ヮ-)(たれ)」 俺の向かい側でコタツに入ってたれてる霊夢。 まったく、久しぶりに会ってすっかり女らしくなったと思えば相変わらずだなぁ。 …と、再開直後には思ってた俺だったが、さすがに2シーズン目ともなると俺にまで伝染してくる。 うん、俺のこのたれっぷりは霊夢のせいだ。間違いない。 多分どっちもどっちだ。ってけーねが言ってた。 「寒いぜ寒いぜ~…っと、何だ、久しぶりに見るなぁ霊夢のコタツムリ」 毎度おなじみの声が響く。 これまた驚くほどきれいになったが、成長しても男言葉と、いたずらっ子チックの笑みは変わらない魔理沙だ。 彼女は勝手知ったるなんとやらとばかりにあがりこみ、そのままコタツに入り込む…って、 「こら~、まりしゃ~。なに○○のとなりにはいってりゅのよ~ぅ」 「しょうがないだろ、外は寒いんだ。少しでもあったかくするにはあったかい物に近づくのは基本だぜ」 「だからって俺に密着するなよ…」 おかげでまどろんでた頭がかなりはっきりした。冷たくて。 「む~…ならわたしもとなりいくぅ」 「おいおい待て霊夢、狭いから、狭くなるから!」 「まりしゃはよくてわたしはだめなの~ぉ?」 「そういうわけじゃなくてさぁ…」 しばし言い合い。 結果。 「えへへ~」 「あ~…(赤面)」 「いやいや、ここまで来ると暑いぜ」 なぜか霊夢をひざの上に乗っけることに…。 つか、霊夢の奴コタツムリ化したついでに幼児化して無いか? 今のお前はかなりスタイルが良いから俺の理性が危険度数倍なんですが? 魔理沙は魔理沙でとっとと向かい側に退避しやがるし…。 「しかし珍しいな、お籠りは順調じゃないのか?」 「そういうわけでもないぜ。ただ今日はあれだからな」 「~~♪(もぐもぐ)」 とりあえず落ち着いてお茶を飲む3人。 霊夢だけはみかんを食っているが。 「あれって言うと…クリスマスか?」 「正解だぜ。で、プレゼントでも…と思ったんだけどな、この寒さで持ってくるのを忘れてしまったんだ」 「それはそれは」 お前の場合貰う方専門じゃないのか? 「○○~、みかん~」 「はいはい」 あーん、と口をあける霊夢の口に、むいていたみかんを一房入れてやる。 幸せそうに口をむぐむぐと動かす霊夢の姿は、何と言うか… 「まるで鳥の雛だな、親鳥は大変だねぇ」 ち、先に言われた。 「なによぅ、いいじゃない、別に」 「はははは…」 「まあ良いや、とにかくそういう訳で、何かくれ」 ゴン 頭打った… 「お前な…」 何がそういうわけだ? 何が。 大体今までクリスマスのことを忘れてた俺らに何を期待する? 「冗談だ。実は香霖のところで面白い本を見つけてな? ちょっと作ってみたものがあるんだ」 「ほう」 「なに?」 「これだ!」 そういって持ってきた風呂敷包みをあける。その中には紙の箱。そしてさらにその中には… 「…ケーキ?」 「クリスマスケーキだぜ」 「なるほど、ってことは本ってのはお菓子作りの本か…ってええっ!!? 魔理沙がお菓子ぃっ!?」 「私だってこのくらいやるさ。じゃあ、ケーキは持ってきたから…」 「はいはい、飯は頼むってんだろ」 「そういうこと」 「あー、じゃあ作りにいくか。そういうわけだから霊m」 「むー(ぎゅ)」 だきつくなー 「…ここに飯たかりに来たのは間違いだったか?」 「そっちもその「やれやれ」なジェスチャーはやめれ。霊夢、とにかく飯作らんことには始まらんから、な?」 「うー…(離れ)」 「なぁ、何か最近霊夢が幼児化してないか?」 「あー…ノーコメントだぜ」 「しかし…クリスマスに鍋ってのもなんだかな」 「文句があるなら食うなよ、いいじゃねぇか、あったまるんだからさ」 「ま、確かに」 「そうそう、おいしいからいいのよ(はふはふ)」 というわけで晩御飯。 とりあえず渋る霊夢(またひざに乗ろうとした)を説得し、コタツの3辺それぞれに座る。 渋っていたわりに鍋をつついてご満悦の霊夢。この様子なら問題ないか。 魔理沙は魔理沙で文句を言いつつもパクパクと食べている。 そんなわけで、クリスマスの鍋パーティーはつつがなく進行したのだった。 「あ、魔理沙それ私のお肉!」 「早い者勝ちだぜ。霊夢だってそんなに確保してるじゃないか」 「いや待てこら、俺なんかいまだに肉一切れも食べて無いぞおい! ってもうねぇーっ!?」 …進行したのだった。(T-T) 「おじやのあとのケーキってのも…」 「作ってきたのは魔理沙だろ?」 「そうそう、それによくできてるじゃない? おいしければいいわよ」 ケーキタイム中。 魔理沙が作ったのはチョコレートケーキだった。 まあイチゴとかはさすがにこの時期は手に入りにくいもんな 「しかしまさかこの前の注文がこれのためだったとは…」 「外の行き来は基本的にお前だけだしな。しかしホント、食べ物の季節感が無いんだな、外って」 実は以前、魔理沙に頼まれ、霊夢と紫さんに許可を得て外に買出しに行って来た。 お賽銭が無くて食べ物の調達とか(主に持ってかれる霖之助さんあたりが)大変だと思い、お土産の意味で向こうの食材を 持っていったら、そのあまりに季節感の無い取り合わせにかなり驚かれた。 で、たまたま遊びに着た魔理沙が大騒ぎしたのだが、今回はそれを利用されたわけだ。 ちなみに紫さん達にはお礼ということで向こうの隠れた名酒の類を大量に買っていった。 「本当はいけないことだけど…また頼もうかしら?」 などといわれた。 それでいいのか、幻想郷の裏鎮守。 「まあ、いろいろあってな。そういえばそれで思い出したが、今日は萃香はどうしたんだっけ? 見ないけど」 「紫のところ。あんたの持ってきたお酒で宴会するって」 「あー、そっち行くって手もあったか」 「ははは…って、最近そういう誘いが来ないなー。何でだ?」 「そりゃぁ…」 魔理沙がある一点をあきれた目で見る。そこには… 「なによ(ぬくぬく)」 ケーキをきるときに再びひざの上に乗っかった霊夢がいた。 「当てられるってもんだぜ」 「あー…」 「最近あのメイド長も顔には出さないけど焦ってるみたいだったからなー」 「へー、あのお嬢様至上主義者がねぇ…」 「いや、むしろお前らに当てられた一般メイド達が、『お姉様っ! 私達も負けてられません、さあ!』って、迫りまくってるから らしいぜ」 「…あー…」 そりゃ処置なしだ。 「まったくあいつには門番がいるのにな」 「マジっすか!?」 「知らなかったの? 結構有名よ」 「うわー…」 「そんなわけあるかぁーーーーーーっ!!!!(ダッシュ)」←メイド長 「「「「「お姉様ーーーーーーーっ!!!!!(追いかけ)」」」」」←メイド軍団 「時間止めて逃げればいいのに…なんでしないの? お姉様(首かしげ)」←悪魔の妹 「私が禁じたから(にやにや)」←紅い悪魔 「うわレミィひどっ(にやにや)」←図書館長 「咲夜さん…(同情)」←門番 「あはははは!(爆笑)」←いたずら小悪魔 「えーっと…(汗)」←司書小悪魔 まさに外道。 以上、クリスマスパーティーの宴もたけなわな某紅い館からお送りしました。 「何か電波が…」 「大丈夫?」 「風邪はひくなよ、霊夢が泣くから」 「泣くか!」 「じゃ泣かないか? 絶対に?」 「ごめんなさい」 「謝るの早っ!?」 もう驚き通しですよ今日は!? つか霊夢…それは喜んでいいのかどうか…(赤面) 「…じゃあ、今日はそろそろ帰るぜ」 「え? もう?」 「いつもなら『まだ夜はこれからだ』ってうるさいくらいなのに」 「あー、私がどう思われてるかについては今度じっくり聞かせてもらうことにして、今日は帰る。いい加減邪魔したくは無いからな」 「邪魔っt「あ、分かった。じゃあね」って霊夢!?」 「今夜はせっかくのクリスマスだし、二人きりの時間ぐらいあってもいいだろ?」 「あっ…う…(赤面)」 「もっとも…」 と、もう一度俺達二人を(くどいようだが霊夢は俺のひざの上だ)眺め回して、一言 「私がいてもいなくても気にしてなさそうだったが」 「うん」 「マテ」 「ははっ、じゃあなお二人さん。そうそう、あとで外に出てみるといいものが見れるかもしれないぜ」 「え?」 「またなー」 そういって魔理沙はとっとと外へ行ってしまった。 あとには俺と、ひざの上の霊夢が残るのみ… 「…結局ご飯食べに来ただけだったみたいね」 「ああ…あ、『ケーキご馳走様』って言うの忘れてた」 「それは今度でいいでしょ」 「まあな…で、霊夢、そろそr「や」いや、そういわれても…」 「…寒かったから」 「え?」 「ずっと寒かったから、○○がいない冬は」 「…」 「凍え死ぬかと思った。体でなく、心が。だから…」 「…ああ」 「今までの分…もう少しだけ、暖めてほしい」 「…了解、それくらいなら、いくらでも暖めてやるさ…」 「ん…」 静かな時間が流れる。 暖かな時間が流れる。 あれから結構たち、すっかり大人になった霊夢。 でも、その体は男の俺からすればやはり小さく、すっぽりと包み込むように抱きしめることも簡単だった。 ずっと、その小さな体で、待ち続けていてくれたんだな。…俺のことを。 「○○…?」 抱きしめる力を強くする。霊夢も俺に身を任せ、前に回した俺の腕を抱きしめる。 暫しの時。 腕の力をゆっくりと抜く。そして俺は、霊夢を伴って立ち上がった。 「外、行こうか」 「うん」 魔理沙に言われたとおり外に出てみる。そこはまさしく銀世界だった。 「うわぁ…」 思わず声を上げ、境内に出る霊夢。 俺もそのあとを追う 「ホワイトクリスマスか…なんかできすぎだな」 「これじゃ明日の雪かきが大変ね」 「目をつけるのはそこかよ…」 苦笑する俺。霊夢はにっこりと笑って俺と腕を組んだ。 「これから、末永く、…よろしくね、あなた」 「…ああ、よろしく」 深々と降り積もる雪。 その中で俺達は、静かに、唇を… 「「「「「「「「メリー、クリスマーーーーース!!!」」」」」」」」 パン!パパパン! 「「………」」 硬直する俺達。そこにいたのは… 「いやー、いいもの見せてもらったぜ」 白黒の魔法使い 「やっとゴールインか、おめでと、霊夢」 七色の人形遣い 「よっしゃー! 祝い酒だー!」 酔いどれ鬼娘 「ふふ、だから言ったろ? 最高のタイミングは逃さない。そういう運命だって」「おめでとう」 紅い悪魔にメイド長 「えーと、こういうときのお祝いに最適なのは…」「「おめでとうございまーす!!」」 七曜の魔女に小悪魔 s 「か、感動しました…」 門番 「おめでとうございます!」「うんうん、いい家庭を築きなさいよー」 庭師に月兎 「あー、クラッカーの音でシャッターチャンスを逃しちゃいました…あの、もう一回いいですか?」 デバガメ天狗 「ご馳走様ね、うふふふふ」「おめでとう」「おめでとー!」 スキマ妖怪に式神 s そのほかetcetc、いるわいるわ。 俺はこのあまりの状況の変化に固まってしまった。 「あ…あの…」 「ん、おい、どうやら肝心のは未遂らしいぞ」 「え、ひょっとして邪魔しちゃった!?」 「気にしない気にしない、何ならもう一回やりゃいいじゃん」 「あ、それ名案!」 「「「「「「「「「アンコール! アンコール!」」」」」」」」」 「って、できるかぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!!!!!」 絶叫する俺、しかしこいつらが止まるはずも無く…って 「霊夢?」 突然霊夢に引っ張られ、そちらを向かされる。そして 「「「「「「「「「おおぉーーーーーー(カシャカシャカシャ)」」」」」」」」」 確かな感触。つか誰だ、撮ってるの 「あ、あの、霊夢?」 困惑する俺を見上げる霊夢の顔は、すっかり真っ赤だったが、天使のような顔だった。 思わず見とれてしまう俺。そんな俺を、霊夢は引っ張り、位置を変える。 ちょうど、みんなから見て俺が霊夢の影に入るような形で、霊夢はみんなの方を向いた。 「…これで満足?」 さっきまでの『やんや、やんや』という皆の歓声が、ぴたっ…と、止まる。 俺のほうからは見えない。が、霊夢がどんな表情をしているかは、皆の顔で想像がつく。 だってほら、あの吸血鬼やスキマ妖怪、さらには亡霊姫や蓬莱の面々にいたるまで、みんながみんな顔を青くし、汗を滝のように 流しているから。 「そう、なら…」 ああ、今の彼女は、きっと女神のような微笑を浮かべていることだろう。 ただし… 「死ね(ダーイ)」 司る物は、多分『滅び』だ。 「『夢想天生』×100」 こうして俺の、幻想郷に定住して初めてのクリスマスは、幕を下ろす。 壊れた境内の修理と掃除は、紅魔館と白玉楼とマヨヒガと永遠亭その他が全面負担することになったとだけ言っておこう。 ---------------------------------------------------------------------------------------------------- 37です。 第3話の前にエピローグ後のエピソード、クリスマス変(←誤字にあらず)をお送りしました。 つかクリスマスに間に合わなかったorz 浮かんだの夜の10時ごろだしなぁ… 前回書いた霊夢ものの続き2です。 あらすじはこの前の「まとめてエピローグ」にて紹介してしまったので目新しい部分は無いのが申し訳ないですが、 とりあえずお送りします。 第3話にあたる今回の話ですが、非常に長いです。 現在確認できているだけでも、このAパートからEパートまでの5話分以上は軽くかかることが確認されてます。 読んで下さる方、どうかお覚悟とご理解の程を。 あと、真面目なこーりんが好きとおっしゃっておられた239氏スマソ。こーりんの出番は今回望み薄です。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「号外ー、号外だよー。 幻想郷一早くて確かな真実の泉、『文々。新聞』の号外だよー」 幻想郷の冬の朝に、そんな声が響く。 寒さに負けじとばかりに響くその声とともに、ばら撒かれる新聞。 いつものごとく、天狗が書き連ねる真実の割合10%未満(推定)の新聞。 その新聞が、騒ぎの絶えない幻想郷の、今日の騒ぎの種火であった。 「これを読まないと、あなたに明日は無いよー」 元気な声とともに振ってくるその号外のうち、神社に落ちてきた一部を小さな手が掴み取る 「へぇ…これは面白いことになるかも♪」 そう言った声の主は、楽しそうに笑うと、その号外ごと薄れて消えた。 まるで、初めからそこに誰もいなかったかのように。 後日、とある関係者は言う。 「むしろあれを書いた奴と読んだ連中のせいで、俺は明日をなくしかけた」と…。 「はぁ…はぁ…はぁ…」 今、俺は追われている。 「くそっ…なんだってこんなことに…」 どうにか、相手の猛攻から逃れ、今は神社のそばにある森の中にいる。 「あの目は…確実に殺る気の眼だったぞ…」 そう、「彼女」は本気だった。 「体勢を…立て直さないと…」 鍛えていたおかげで、体力にはまだ若干の余裕がある。だが精神的にはそうもいかない。 「次は…殺られる…!」 とにかく今は、生き抜かねば。 俺は、持っていた小太刀…を模した2本の木刀を握り直すと、両腕のリストバンドの内側に仕込んだ計3枚のスペルカードを 確認する。 そして呼吸を整え、そのまま「彼女」の動きを待った…。 こうなったのはあまりにも唐突だった。 というか…いや、マジで訳が分からん。 確か今日は妖夢に稽古をつけてもらってたんだよな…。 「せいっ…はぁっ!」 気合の声とともに振るわれる俺の木刀。 多少うぬぼれてもいいのなら、そのスピードは(俺の世界の)一般的なレベルに比べても、それなりの域に達していることだろう。 だが、そんな俺の剣を、目の前の相手はあっさりとかわし、捌き、いなしていく。 当然だろう。この幻想郷では、この程度のレベルではやっていけない。 冒険を始めたてのひよっこ戦士が、いきなり物語中盤から終盤のフィールドに放り出されるようなものだ。 考えてみればよく馬車にいるだけでレベルアップできるなあのゲーム。ああいうシステムが現実にもほしいよ。いや、マジで。 「ほら、剣筋が乱れてきてますよ! もっと集中して!」 「応!」 相手役である半人半霊、魂魄妖夢(こんぱくようむ)の叱咤が飛ぶ。 いかんいかん。今は真面目にやらねば。 冥界で、白玉楼という屋敷の庭師の仕事をしている彼女。そこの主である西行寺幽々子(さいぎょうじゆゆこ)の護衛でもある 二刀使い。 俺は彼女に無理を言って、たまに剣術の指導をしてもらっていた。 今日は忙しい中わざわざ時間をとってもらったんだ、この中で出来るだけ学び取らないと…。 しばし、風切り音と木刀の打ち合う音が、神社のそばの森に響く。 俺が事故でこの世界、幻想郷に迷い込んでからかれこれ一月と十日。 その間、俺は暇を見てはなるべく鍛えるようにしていた。 ここは基本的に弱肉強食の世界といえる。力が無ければあっさり妖怪に食われるし、だからこそ生き抜いている者の平均レベルが 非常に高い。 外の世界で凡人レベルだった俺は、つまりここでは最底辺ということで、もしも霊夢に神社で保護してもらってなかったら多分 とっくの昔に誰かの腹の中だったろう。 俺のようなケースは実は珍しく無いと、俺を最初に保護してくれたとある式神さんは言っていた。 で、おとなしく保護された人もいれば…錯乱した挙句飛び出し、お決まりのコース一直線だった人も…いた。 定員オーバーのために俺だけがここ、博麗神社に回されたが、幻想郷の台風の目とも言うべきこの神社。そのおかげで図らずも 多くの知り合いができ、妖夢のように親身になって協力してくれる人に合えたわけで、そういう意味では、俺はかなり運がよかった といえる。 少なくとも、ただ護られるだけのお荷物ではなく、自分の身を自分で護れる程度の力を得る機会には恵まれたわけだから。 「はい、では今日はここまでにしましょう」 「押忍! ありがとうございましたーっ!」 ビシッという音でも聞こえてきそうな礼をする。と、妖夢がなにやら渋面をしている。 「…その体育会系のノリはどうにかなりません?」 「いやまあ、何と言うか、気を引き締めるというか…」 少し赤面し、頬を掻く俺。妖夢は苦笑して、 「いいですけどね。私もおじい様に学んでいた頃はあなたほどじゃないけどそんな感じでしたし」 「そういってくれると助かる。」 しゃべりながら木刀を片付ける。 ちなみに4本、俺と妖夢がそれぞれ2本ずつ使った。 もともと俺は一刀流だったのだが、どうにも違和感がぬぐえず、物は試しと妖夢の真似をしてみたら意外としっくりきたので それからは二刀で通している。 もっとも妖夢のように「太刀」と「脇差」(…と言えばいいのか?)の二本なのではなく、どこぞの漫画キャラのような「小太刀」の 二刀流だ。 …そのせいで本当に剣術を学ぶというより「戦い方」を学ぶ感じが強くなった。まあ明らかに流派が違うし。 ちなみに、実際の剣道では二刀流は大学生以上しか許可されておらず、内訳も太刀と脇差(小太刀)の組み合わせだそうで、 小太刀の二刀流というのはどちらかというとスポーツチャンバラとかで見られるタイプなんだとか。 しかもこちらも正式な試合では太刀と小太刀の組み合わせが基本らしい。 …俺ってひねくれてる? なお、俺が剣道を学んだのは学校の体育でのことなので、知識に誤りがあるかもしれない点に注意のこと。 「どうしたんです? いきなり押し黙って…」 「え? いやちょっとトリビアを…」 「?」 キョトンとする妖夢に、とりあえずお茶を濁す俺。 とはいえさして興味があったわけでも無いらしく、すぐ話が変わる。 「まあ、それはともかく。○○はこのあとどうするんです? 私は幽々子様のお世話があるので、一旦神社に顔を出したらすぐ 戻りますけど…」 「んー…、俺はとりあえず…霊夢の手伝いかな」 「そうですか」 「ああ、ありがとな、時間作ってもらって」 「いえ、私もいい修行になりました。人に教えるのって、自分でも基本を再確認することになるから意外とためになるんですよ」 「へぇー」 などと話しながら家路(?)につく。 神社では、霊夢がコタツに入ったまますやすやと寝ていた。 「コタツムリ…」 「あはは…」 幸せそうに惰眠をむさぼるその姿に、なんとなく苦笑する俺たち。 まあ、いつものことだし、俺が霊夢なら多分寝てたな、やっぱり。 「じゃあ私はこれで、霊夢によろしく言っておいてください」 「ああ。って、もう行くのか?お茶くらい飲んでったって…」 「気持ちだけいただきます。いい加減戻らないと幽々子様が「おなかすいたー」って言って暴れだしちゃうんで」 食欲王ユユコンガーZ恐るべし。その胃袋は鉄の城か? 「そういうことならしょうがないか…。分かった、じゃあまたな」 「ええ、では」 そういって冥界に帰っていく妖夢。 しばらく彼女を見送った後、俺は自分の木刀を袋に入れて背に負うと、ほうきを取り出して庭を掃き始めた。すると…、 「…見つけた」 上空から声がした。 「?」 見上げてみると、そこにいたのは… 「…あれ? 確か…アリス・マーガトロイド…だっけ?」 魔法の森に住む魔法使い、人間の魔理沙と違い、種族そのものが魔女。…まあ、魔理沙の話では正確にはほんの少し違うらしいが。 そのいでたちや、人形を用いた魔法を得意とすることなどから、ついたあだ名が「七色の人形遣い」 その彼女が、なにやら紙束のようなものを握り(潰し)つつ、上空からこちらを睨みつけるように見下ろしている。 …俺、何かしたか? 「久しぶりね、○○。…この前の宴会以来かしら?」 「ああ、そうだな…で、何の用だ? 霊夢なら…」 「いいえ、今日はあなたに用があってきたのよ、○○。来たときには見かけなかったからどこへ行ったのかと思ったけど」 応える彼女の声はやはりどこか怒りのようなものを孕んでいる。間違いない、怒ってる。 「ああ、今日は妖夢に稽古をつけてもらってたから…。で、…用件は?」 正直聞きたくないのだが、聞かないと話が進まないので聞く。 …ひょっとして、イエローゾーン? 「ええ…ちょっとごみ掃除をね」 「…はい?」 「思えばあの時排除しておけばよかった…。そうすれば魔理沙もこんな奴に…」 「あのー、話が見えないんですけど…」 「そう、白を切るのね。霊夢だけで飽き足らず、魔理沙まで…なのに…」 …いかん、これはイエローゾーンどころじゃない、これはむしろ…。 俺は持っていたほうきをその場に置き、背の木刀袋を確認する。 「あんたが…魔理沙を…」 「おーい、アリスー?」 ニゲローニゲロードアヲアゲロー…って、ドア無いし。…いや落ち着け俺、ここはとにかくどうにかして彼女を落ち着かs 「アンタガマリサヲォォォォォッ!!!!!」 WARNING! WARNING! WARNING! 思わずロッ○マンエッ○ス・ゼ○シリーズのあの演出が脳内にこだまする。つーか続編まだかなぁ。 「とか言ってる場合じゃねぇぇぇぇっ!!!」 とっさにバックステップする。直前まで俺がいた位置に特大弾が着弾、穴が開く。ああ、せっかく掃除してたのに…。 などと現実逃避をする間も惜しく、即座にスペルカードを起動、風をまとい、ホバー移動モードに入る。 「こ、こらアリス、殺す気か!? 今のは洒落にならんぞ、マジで!」 「当然デしョ、殺巣気だmono。さ亜、大人死苦当たリなsai!」(当然でしょ、殺す気だもの。さあ、大人しく当たりなさい!)) 「レオノフ入ってるーっ!?」 そりゃ確かにあいつも「パペットマスター」だけどさぁ…。 …とか言っている間に見る見るうちに展開されていく人形達。いかん、囲まれる。 「ちっ!?」 これ以上神社を荒らすわけには行かない。この場を乗り切っても霊夢に殺される。 何より上を取られている以上こちらが圧倒的に不利。ここは…逃げの一手! 俺はアリスの方を向いたまま、近くの…さっきまで稽古をしていた森へとダッシュをかけた。 「待血na砕!」(待ちなさい!) アリスの声とともに一斉に弾を放つ人形達。しかし、運よく(?)すべてが自機狙いだったらしく、移動している俺には当たらない。 そのまま俺は森へと逃げ込み、さらにいくらか移動して…冒頭のシーンに至るのであった。 「一体全体何なんだ? …良くも悪くもあいつとは交流がほとんど無かったから、俺が何かしたって訳でも無いだろうに… いや、魔理沙がどうとか言っていたから魔理沙がらみか? あいつは魔理沙と親しそうだったからな… だが別に俺は何もして無いぞ? せいぜい外世界の…例えばゲームの魔法の話とかしたくらいで」 適当な木の陰に潜伏しつつ、あの暴走の原因を考える俺。どうにかして糸口を見つけないことには死あるのみだからだ。 まともに戦ったところで彼女に歯がたつわけは無い。 当然だろう、彼女はかつて魔理沙や霊夢と何度もやり合い、時には手を組んで戦ったこともあるとか。 つまり、幻想郷でもかなりのクラスの相手ということだ。 そんな相手に、幻想郷でもやっと一般人レベルになれたかどうかの俺が敵うものかよ。 長期戦はもってのほか。隙をうかがう前にこっちの精神がまいりかねないし、カードに蓄積された魔力にも限りがある。 ほかの妖怪に食われるかもしれないことも考えれば、ほとぼりが冷めるまで身を隠すこともできない。 というわけで、どうにかして彼女を落ち着かせ、おそらく誤解であろうそれを解くことが急務となる。 「一体、何がアリスをここまで…」 「アリィスハァネェ、カァミキレミテタァノ!」 「カミキレミテター」 …? 「…えっと?」 「ソォシタラ、ブゥルブルフルェタァノ!」 「カオマッカダッタノー」 いやそうではなく、とりあえず直接の原因がその紙…多分、あの時握ってたあれだろうことは分かったが、それよりもまず… 「…君達は? 確か…」 「シャンハーイ!」 「ホラーイ!」 そう、上海人形と蓬莱人形だ。アリスのお気に入りの。 「で、二人は何してるの?」 「ヒトォサガシテェタ!」 「ヒトサガシー」 「…誰を?」 「「○○-!」」 二人そろってうれしそうに俺をビシッと指差す。うん、失礼に当たるから気をつけようね。 「そ、そーなのかー。じゃあ、俺は二人に見つかっちゃったんだねー」 「ウン! ミツケェタ!」 「ミツケター」 「ホォライ、ァリィスニシラセヨォ!」 「アリスニシラセルー」 「ああストップストップ! ちょっと待ってくれ!」 今ここで彼女を呼ばれたら非常にまずい! つーか終わる! この場は何とかしてこの二人を説得し、報告を思いとどまらせるしかない! 「ナァニィ?」 「ナニー?」 首をかしげながらこっちを見る。 よし、止まってくれた! 俺はそのまま二人を手招きし、顔を近づける。いわゆる内緒話の体勢だ。 「いや、アリスに知らせる前に少し相談に乗ってもらえないかと思ってね、うん」 「ソォダァン?」 「ソーダンー?」 キョトンとする二人。 「ああ…ちょっとアリスのことについて聞きたくてね…。今日の彼女、何か様子がおかしくないか? 俺が知ってる限り、いつもの彼女はあんな感じじゃないと思うんだが…」 「ソォダネェ」 「ヘンダネー」 二人が顔を見合わせる。やはりこの二人はかなり高度かつ独立した思考能力を持っているらしい。 ちゃんとアリスの変化に気づいていたみたいだ。 「だろ? …で、なにやら紙切れを見てたらああなったという事らしいけど…ほんと?」 「ゥン!」 「ソダヨー」 なるほど。と、なると…。 「んー…で、彼女の言葉も含めて考えると…、その紙に、俺が原因、かつ魔理沙がらみで、アリスが怒り出すような何かが 書いてあったわけだ。…どんなことが書いてあったか分かる?」 「シラナァイ」 「ミテナーイ! ナンデー?」 首を振る二人。まあ、最初にその紙を読んでからずっと持ってたようだし、無理も無いか。 「そっか…いや、それが分かれば謝るなり誤解を解くなりできたのにな…とか思っただけ。…手詰まりか…」 「ンゥ」 「コマッタネー」 三人そろって腕を組む。が、文殊の知恵は降りてこず、解決策はでなかった。 「…はあ、しょうがない。もっと手がかりを探すしかないか。…あ、ところで二人とも、俺のことをアリスに伝えるのはもう少し 待ってくれない? 今の彼女に見つかったら確実に殺されちゃうかr」 「ァリィス、ィタヨー」 「アリスー、イター」 「お約束っつーかドライだね君らぁぁぁぁっ!!(脱兎)」 再び始まる鬼ごっこ。 俺はとにかく走りまくった。今を生き抜くために。 ちょうどその頃、神社のほうに、もう一人来客が来ていた…。 「…で、突然現れたと思ったら何よ一体? ○○ならまだ妖夢と稽古でもしてるんじゃないの?」 「そう…彼にも話を聞いておくつもりだったんだけど、吹き飛ばされる前に申し開きの機会ぐらいは与えてあげるつもりだったから」 「だから一体何なの? さっきから聞いててチンプンカンプンなんだけど。後なんだか目がイってるわよ、あなた」 「気にしないで」 そういいながらお茶を飲んでいるのは魔女のパチュリー・ノーレッジ。 吸血鬼が住まう館「紅魔館」の一角を占める大魔法図書館の主である。 私、こと博麗霊夢は、突然やってきたこの魔女にせっかくの至福の時間を邪魔されてしまった。 コタツの中でまどろむのは気持ちがいいのに…。 「いいから事情を説明しなさい。くだらない事で叩き起こしたってんならそれなりの対応をするわよ」 ちょっとだけ殺気を籠めて言ってみる。するとパチュリーは怪訝な顔でこちらを見つめ返した。 「…知らないの? 今幻想郷中を騒がせている話なんだけど」 「だから何なのよ」 知らないから聞いてるんでしょうが。まったく。 「つまり見てないのね、今日の号外」 「号外? またあの『文々。新聞』?」 「ええ。…これよ」 言いつつパチュリーが件の紙切れを見せる。そこには…、 「な…何よこれぇぇぇぇぇっ!!?」 あとがき―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― こんにちは、37です。 「3話目」の「Aパート」をお送りします。(マテ つか霊夢がほとんど出て無い…こんなんで大丈夫か自分。 文でなく妖夢のほうが本格的に出てきてましたね。予告を守れんですみませんorz とりあえずBパートに続きます… ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 霊夢もの第3話、Bパートです。 本格的な戦闘描写に入ります。 …大丈夫かなぁ…(汗) ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 突然だが、今俺は追われている。 いわれの無い(少なくとも俺にとってはだが)疑いでアリスに追い掛け回されているのだ。 あれから一進一退の状態が続いている。 平たく言うと、追いつかれては煙に巻き、また追いつかれ…という繰り返しが続いているわけだ。 「いい加減に観念しなさい!」 (言葉だけは)まともに戻ったアリスが、息つく間もなく攻撃を繰り出してくる。 槍を持った人形が飛び出し、乱れ突きを放ってくる。 「観念なんてできるかっ!」 俺は手にした2本の木刀に土の加護を、自分の腕に風の強化を施し、その乱撃を捌く。 妖夢に稽古をつけてもらって、何より弾幕ごっこに備えて動体視力の訓練(?)をつんでいなかったらできなかったであろう芸当だ。 もっとも完全に捌けるはずもなく何発かは食らうが、基本的に掠めるだけで致命的なものは何とか防げている。 そうこうしているうちに俺の左右に剣を持った人形が配置される。回転斬りか? 突進か? 槍を持った人形が下がり、剣の人形が寄ってくる。構えは…突進! 「させっかっ!」 俺はすかさず両手の木刀に風をまとわせ、左右の人形に投げ放つ。木刀は上手い具合に人形達を牽制し、突進をキャンセルさせた。 「余所見は危ないわよ!」 「!?」 いつの間にか前に出ていたアリスが、そのまま蹴りを繰り出す。まずい、木刀を手放した俺に迎撃の手は無い! 俺はとにかくよけようと動き、そして… 「いってぇ~っ!」 …情け無い話だが、運に助けられた。 どうにかアリスの蹴りをよけようと体をのけぞらせたとき、思いっきり足を滑らせたのだ。 が、これのおかげで蹴りをよけることができたばかりか、そのままゴロゴロ後ろに転がった事で距離をとる事もできた。 …すぐ後ろの木に頭をぶつけて、今後頭部を押さえてるところだけど。 そんな俺のところに、投げた木刀がまとった風に導かれるようにして戻ってきた。 すっこ~ん! 「☆*■※⑨…!」 いや、おれ今後頭部に手が行ってたから! 受け取れないから! ね!?(錯乱) 「……」 あ、アリスが何かバカにしたような哀れむような目で見てる。 畜生、どーせ俺は三枚目ですよ。 額を直撃した木刀はとりあえず足元に落ちたようで、俺はじんじんくる頭の痛みをこらえつつ木刀を拾い上げ、構える。 それを見たアリスはふわりと優雅なバックステップを見せ、俺からさらに距離をとった。 「…なんだかんだと言っても、ここまで粘るなんてね。森の中だから接近戦の方が良いかと思ったけど… 素直に弾幕で行った方が良かったわ」 言いながらゆっくりと浮かび上がるアリス。 よく言うよ、本気でかかられたら確実に最初の一撃でアウトだっただろうに。 少し前の俺では気づかなかっただろうが、アリスはなんだかんだ言いながら実はかなりの手加減をしていた。 本当に殺す気なら最初の一撃にもっと力か速さを籠めるだけで、俺はあっさり吹き飛ばされて事は成っただろうし、 先の人形による攻勢にしても、槍の攻撃はゆるかったし、もっと多くの人形で四方八方からいっせいに斬りかかられたら 確実に殺られていただろう。 聞く所によれば、アリスは戦い…主に弾幕ごっこにおいて、なかなか本気を出さない傾向にあるらしい。 今回の場合も、俺の実力をある程度読み取って、その上で俺を消せる最低限のレベルの力を振るっているのだろう。 馬鹿にされているのではあろうが、俺にしてみればむしろそれはありがたい話だった。 そのおかげで、とりあえず生き残れているのだから。 だが、いい加減彼女が焦れた様子を見せた事で、そうも言ってられなくなってきた。 少なくとも、これでアリスがギアを上げた可能性が大きいからだ。 「魔法とか霊力とかも使えないあんたがよくまあここまでがんばったものね、魔理沙の言ってた特製スペルカードのおかげかしら?」 「たぶんな」 俺は、自分のリストバンドの中のカードをに目を向ける。 魔理沙が、俺のために知り合いの魔女…とある魔法図書館の主、パチュリー・ノーレッジにたのんで作ってもらったというカード。 それは、充電機能を持ち、単一の属性に特化した汎用スペルカードであった。 基本的に、スペルカードというものは効果がカードごとにある程度決まっている。 しかし、例えば魔理沙の『ブレイジングスター』のように、基本は攻撃だが使おうと思えば移動補助にもなる。といった、 複数の使い道を持ちうるカードというのも無いではない。 汎用性に優れたカードは、効力こそ他のカードに比べて弱いことが多いが、汎用性があるというそれだけで上級に分類されうる。 それはなぜか、何のことは無い。できる内容のレベルが、それでも十分高いからだ。 というより、簡単なことなら自前の魔法でどうにかなるので、わざわざそんなカードを作る必要が無く、作るとしたらそれなりに 高度な術式の補助として用いられる場合が多いからである。 …が、それは力があるものの話。 俺のように魔力の魔の字も無いような人間には、そもそもその『簡単なこと』すらできない。 しかし、ここ幻想郷にいる以上、そんなことではいつ妖怪に食われるとも分からないので、見かねた魔理沙が骨を折ってくれた 結果が、今俺の持っている3枚のカードなのである。 魔法の術式に疎い俺のために、イメージで効力を規定できるようなシステムを構築し、そもそも俺には魔力が無いことを考慮して、 他者の魔力を蓄積(要は充電)し、それを用いて効果を発揮できるように調整してくれた。 結果、そちらにポテンシャルを割いた事で汎用性がやや低下したが、それでも初心者の俺には十分すぎるだけのカードに仕上がった。 3枚あるその属性はそれぞれ風、土、そして雷の3つ。 魔力の有無にかかわらず存在するという属性との相性を調べた結果こうなった。 ちなみに、作ってくれたパチュリーに礼を言ったら、 「久しぶりに初心に帰って作ってみたら、なんかいいアイディアが浮かんできたのよ、おかげで研究が一つまとまったわ。 こっちこそありがとう」 と言ってくれた。いい人だ。 人じゃないか。 「…さて、そろそろ覚悟を決めてもらうわよ」 とか何とか考えている間に、人形に囲まれていた。ぴーんち。 「まさかスペルカードまで使う事になるなんてね…。褒めてあげるわ、…さよなら」 右手の木刀は乱れ突きの特にヤバ目のを捌いたりしたのでボロボロ、左手のはまだましだがまず一本では意味を成すまい。 頭の痛みのほうはまあどうにか我慢できそうなレベルなのがせめてもの救いか。 とりあえず邪魔になる右手のほうだけ腰のベルトの後ろにさしておく。 如何にかしてこの状況から抜け出さないとならない。しかし四方八方を人形に囲まれたこの状況では…。 …人形? 「……」 試してみる価値はあるか。 人形達の手に魔力がみなぎり始めてきた。 …来る! 「蒼符『博愛の仏蘭西人gy」 「うりゃっ!」 その瞬間を狙って右手を突き出す。 一瞬閃光で視界が満たされ、雷光が網目のようにスパークする。 「っ!!?」 わずかにひるむアリス。さすがに宣言の真っ最中に攻撃を食らうと言うのは…意外にあるかな? まあとにかく。 俺はその『効果』を見届けると即座にその場を離れる。 …とりあえず『死』は先送りにできた。 「く…最後の最後まで悪あがきを…!」 閃光にくらんだ目がようやく慣れてくる。 気づいてみればあいつを追いかけ初めてからかなり経っているようで、すでに日は傾き始めていた。 まったく、手加減してやっていたとはいえここまで粘るとは、生き汚いと言うか何と言うか。 「まあ、それもここまでなのだけど」 とりあえず人形達に号令をかける。今度こそあの『魔理沙と私の敵』に引導を渡してやらねば。 そして… 「…? あなた達?」 人形達の動きがぎこちない。いつもなら号令一つですぐ応えるのに。 と言うかそれぞれがなんともギクシャクしている。 腕が動かない子もいれば、足が動かない子も。 「どうしたの? …っ!? こ、これってまさか…!?」 糸が、切られている。人形達の操り糸が。 何故? 誰かが切ったから。 誰が? 多分あいつが。 何時? おそらく逃げる直前。 どうやって? 考えるまでも無い。 「あの一瞬の雷は…ただの目くらましじゃなかったってこと…!」 ……拝啓、魔界のお母さん。 私、何か今すごく悔しい気持ちがわいてきてます。 思いっきり殺っちゃっても…いいですか? 心の中のお母さんは、アホ毛も凛々しく私に向かいぐーに親指を立てて応援してくれた。 ありがとう。アリスは殺るわ、お母さん。 「上海! 蓬莱!」 「ハーイ!」 「デバンデバンー!」 「行くわよ!」 これよりわれらは修羅に入る! 「「アリスーっ!」」 「え?」 かけられた声に振り向くと、そこにいたのは… あとがき―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― こんにちは、37です。 「3話目」Bパートです。 ちなみに○○(主人公)のスペルカードには特に名前がありません。 形状はカードというよりお札で、左手のリストの下に風と土の2枚が、右手のほうに雷の符が入ってます。 今回の戦闘描写はどうだったでしょうか、この作品の場合、外から来た一般人の主人公があんまり強すぎても微妙な気がするし、 さりとて弱すぎれば瞬殺されるし…正直に言ってバランスのとり方がよく分かりません。 今回はやや強くしすぎた感があります。 先日のエピローグではこのエピソードの後ルーミアにコテンパンにされる事になっていたのですが…どうやって!? 色々気を使ってはいるんですが…厳しいです。 CMの後もまだまだ続く!(マテ ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 霊夢もの第3話、Cパートです。 新聞のあたりは黙認してくれるとうれしいです。 暴走メンバー追加! さてどうなる事やら。 …本当に大丈夫かなぁ…(汗) ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― アリスとの(俺だけ一方的に)命をかけた鬼ごっこを始めて、かれこれどれだけ経ったやら。 いい加減なんで追い掛け回されてるのか理由が知りたいところなんですがどうでしょう。 …今俺はまたもどうにか彼女を振り切り、落ち着いたところである事を試していた。 「…ふむ、即席にしては良くできたほうか」 俺は、『たった今作ったばかりの』新しい剣の使い心地を試している。 と言っても何のことは無い。土の符の力を借りて、石から木刀ならぬ『石刀』を作っただけの話だ。 土くれや石から武器を作るのは、実は前々から考えていたアイディアで、今回はそのお試しと言うわけである。 …いきなり実戦投入とは思ってなかったが。 まあ、最初に持っていた木刀が2本ともかなりボロく(内1本は致命的)なっているので、仕方ないと言えば仕方ないが。 ちなみにその木刀は、もったいないので腰にさしている。…いや、実は使い道のネタがあってね? 反対の手にはもう一本、表面がざらざらの砂地のような質感の剣がある。これまた小細工の作品だ。 割とエネルギーを使うようでもあるし、とりあえずここまでにしておく。 こうなったら、これでどうにかこの場を切り抜け、霊夢に助けを求めるしかなさそうだ。 次にアリスにつかまったら、生存率はかなり減るだろうから。 「…って、もう来たのか…」 何かが飛んでくる気配を肌で感じる。こんなものまで読める様になるとは、俺も少しは強くなれたんだなぁ。 …こういう形で実感したくは無かったが。 「相当怒ってるな…」 気配の主はかなりのご立腹のようで、怒りの気配がビンビンに伝わってくる。 どうやら最後に逃げたときの小細工がかなり頭に来たようだ。感じるパワーはまるで今までの3倍以上。 と言うか3つに増えてるようにも感じる。紅い角付きもびっくりだ。 「…って、増えてる?」 俺が疑問を感じ、問題の方向を見上げると、そこには… 「○○! 見つけたわよ!」 「……マジかよ……」 霊夢がいた。 アリスと、さらにはパチュリーまで従えて。 …さっきまでのアリスと、同じ目で。 「これは…死んだか…?」 頼みの綱が敵だしなぁ…どないしよ。 あー、頭痛い。 続く。 …とか言ってると続編では墓の下になってそうなんでサクサク行こう。 「現実逃避はすんだかしら?」 「まあ大体は」 つか今でも夢であってほしいんですけど。 「何か申し開きはあるかしら?」 「その前に状況を説明してもらえないものかね」 パチュリーもなんかイッた目をしてる… 「白を切る気? この期に及んで姑息なことね」 「姑息とか以前に基本的なものが欠落してませんか?」 アリスは相変わらずだな。 「どうもよく分からんのだが…、俺は結局なんで皆に命を狙われなきゃならんのだ?」 「だから白を切るなと…!」 「アリス、待って」 再び爆発しそうになるアリスを抑えたのはパチュリーだった。 「何よ」 「…彼、本当に知らないみたい」 「え?」 キョトンとするアリスに、パチュリーが説明をする。 「あの号外を読んでないようなのよ。彼」 「ええ。私もさっきパチュリーに見せてもらって知ったわ」 「ええ?」 霊夢の補足に、さらに驚いた顔のアリス。 なにやら雲行きが変わり始めたか? 「あー、よく分からんが、少なくとも俺は今回何ゆえお前らがそこまで暴走するのかまったく理解出来ん。 ついては何ゆえこんな事態になったのかの、説明を要求したいのだが…。つか号外って何?」 「これよ」 パチュリーが答えとともに何かの紙束を投げ落とす。 …その紙束は俺のところに落ちる前に、風に舞って飛んでいってしまった。 「…」 「…」 「…」 「…」 いやな沈黙。 全員がその紙束の飛んでいったほうを一瞬見…、 コホン、と一つ咳払いした。 「アリス、お願い」 「あー、そうね…上海、届けて」 「ハーイ」 「そうだよな、そこは流すよな…」 「あんたは黙ってなさい」 ややあって、上海人形から渡された紙束は、号外と言う言葉から予想できた通りの『文々。新聞』だった。 で、その内容は… 『黒白・紅白・三角関係!?』 巷で有名な博麗神社の巫女、博麗霊夢と、魔法の森のお騒がせ魔法使い、霧雨魔理沙が、ある一人の男性をめぐって三角関係の 状態にあることが某日発覚した。 話題の男性は、最近博麗神社で居候をしている○○さん(人間)。事故により外の世界からやってきたという彼の話は割と有名だが、 彼に対して、家主であるところの博麗霊夢さんが、どうやら並々ならぬ、おそらくは好意と呼べるものを持っているらしいこと。 さらには、外の世界に興味を持っていたという霧雨魔理沙さんが、彼から外の世界の話を聞くためにちょくちょく博麗神社に 通っていたと言うことはあまり知られていない。 私自身も実はいつものようにお茶を飲みに行っていると思っており、まったくのノーマークであった。 ~中略~ この件について、実験等で忙しい中、件の魔理沙さんに話を聞くことができた。 魔理沙さんは「ああ? ○○のことか? ああ、結構好きだぜ。あいつといると楽しいしな。あ、実験中なんでこれで」と、 今回の件を一部肯定する返答を返してくれた。 ほかにも… ~以下略~ ( ゚д゚)…。 (つд⊂)ゴシゴシ (;゚д゚)……。 (つд⊂)ゴシゴシ _, ._ (;゚ Д゚)……!? 「(;゚ Д゚)ハァ? ネタか?」 思わずそう突っ込んでしまうほどにわけの分からん内容がそこにあった。 読み終えた記事によると、俺は霊夢と一緒に暮らしていくうちに好意を持つが、同時に霊夢もまた好意を持っているらしい。 前半部は一応正しいし、これだけなら願っても無い話だが、問題はその次だ。 魔理沙が神社に来るのは俺が好きだから? 確かに外の話はよくするし、ちょくちょく聞きに来るが、それだけだろ? 俺のほうもまんざらでなさそう? そもそもそんなことにまるで気づいて無い人間がどうまんざらじゃないんだよ! 本人の証言にしたって、好きの種類が恋愛か友情か分かんねぇだろそれじゃ! つかこれじゃまるで俺は二人の女の子の恋心をもてあそぶ大罪人のように読めるのだが? ご丁寧に俺と魔理沙が手をつないで見つめ合っているような写真まで添付されている。 いやこれこの前の充電のときだろ、あれは… 「ネタか? じゃ無いわよ! あんた魔理沙をもてあそんでおいてよくもそんなこと言えるわね!」 「魔理沙の頼みだからあなたにカードをあげただけ、恩に着せる気は無かったけど…これが所謂、仇で返されると言う奴かしら?」 「あ・ん・た・はぁぁぁぁーーーーっ!」 何かみんなヒートアップしてます。特に霊夢マテ、ときに落ち着けって。 「てゆーかさ、お前ら落ち着け。これあの天狗が書いたんだろ? 記事にする前に事実関係思いっきり改変してそうなあの天狗が」 「…それで?」 声が届いたか祈りが通じたか、霊夢が少し落ち着いた声でそう聞いてくる。 別にあの天狗が意図的に歪めてるとは言わないが、ゴシップ好きという天狗達の性格は散々聞かされている。 近所のおばちゃん達の井戸端会議が往々にして思いっきりおかしな方向へ飛躍するのと同様、これだって記事にする前にいろいろと 誤解の洗礼を受けていると見えて、ぶっ飛びすぎているのは確かなわけで。 「いやだから、こうして俺どころか霊夢の所にも行ったのなら、魔理沙の所にだって行けばいいだろうが。事実確認ぐらいしてから ここに来てるんだろうな?」 「何言ってんのよ、そんなことできるわけ無いでしょ?」 「なぜ?」 即答するアリスに問うと、代わりにパチュリーが答えて曰く 「そんなことで魔理沙の研究の邪魔をして御覧なさい、下手に失敗なんてことになったら私達が嫌われちゃうわ」 人の生き死ににかかわる重大事をそんなことで片付けないでいただきたい。 「それは明らかに問題だぞおい! つかそれで人をぶっ飛ばそうとすんなよ!」 「うるさいわねぇ…。 分かったわ、なら魔理沙に聞く必要があるかどうか、多数決で決めましょ」 「いや多数決って、明らかにこっちが不利じゃん!」 「大丈夫よ、決めるのは私たち3人でも、あなたでも無いから」 「?」 「では、『魔理沙に聞きに行くまでもなく、ここで○○を殲滅でOK』という陪審員は手を上げて」 ばばばばばっ(←挙手) 「満場一致で即時殲滅に決定しましt」 「おーいこらぁ! 陪審員ってみんなお前の人形じゃないか、んなのありかゴルァァァァァァァァァッ!!!!」 「民主的な決定ね」 「うん、一部のすきも無いわ」 「穴だらけじゃぁぁぁぁっ!」 つか霊夢まで何故に!? まさか… 「他の二人は分かるが霊夢、まさかお前今から魔理沙の家にいくと寒いからだとかじゃねぇよな、反対理由」 「さ、判決はでたわ。覚悟しなさい」 「答えろぉぉぉっ!?」 何か俺今日叫んでばっかしだ… と嘆くまもなく、足元に突き刺さる霊夢の針。 「グダグダ言わない、もうこれは決定事項よ、魔理沙をどうたぶらかしたか知らないけど、女の敵は殲滅するわ」 「そうね、覚悟はいい?」 「これで魔理沙も目が覚めるでしょ」 もう突っ込む気も起きないや… 「…一応、俺は悪くないし、この記事に書いてあるのは誤解だ。といっておく」 「…そう、でも、それを私達が信じると?」 ゆっくり剣を構えながら言う俺に、アリスが人形を展開させつつ問う 「まさか、一応、と言ったろ? 期待しちゃいないよ…。ただ、自分が正しいと思ってるから、抵抗はさせてもらう。 まあ、今まで逃げ回るのに結構頑張ってたから、体力的にもその他的にも次がラストだろうがね」 「好きにしなさい」 腰を低くしつつ、三人のほうを見据えながら答える俺に、パチュリーが魔力を高めながら言い放つ 「…勝ったとしてもホームレス、負けたなら言うまでも無く、運命って残酷だねぇ」 「自業自得でしょ…バカ」 ため息をつく俺に、そんな声をかける霊夢。 さて、ではそろそろ始めるか、この『悪の女たらし懲らしめ劇』を 「行きなさい!」 アリスの号令とともに、上海と蓬莱が弾幕を放つ。 それを皮切りに、魔力弾が、お札が、襲い来る。 「はぁっ!」 構えを取りつつカードに残った風の力を解放、バリア代わりにする。 初めの、おそらくは牽制であろう弾幕がその弾道をそらされていく。 「そんなもの!」 「上海! 蓬莱!」 パチュリーが大きめの魔力弾を形成し、放ってくる。 さらには人形達のレーザーのおまけつきだ。まともにくえば終わるだろう。 が、しかし、こっちは別にバリアで篭城するつもりでこんなものを出したわけではない。 「ぐっ…!」 あわやというタイミングでなんとか魔力弾をかわすも、レーザーに片足を焼かれる。 痛みを通り越した感があるが、とりあえずは如何にか持ちこたえ、踏みとどまって両手の剣を投げ放つ体制をとる。 それぞれの剣に、特に右手の石刀に、バリアだったはずの風が集まってくる。 …さすがに無理をさせすぎたようで、もはや両手がかなり悲鳴をあげている。しかし、止まるわけにはいかない。 「落ちなさい!」 霊夢の針が盛大に体を掠める。目のそばを切った。大丈夫、腕はまだ動く。 「さてと、行こうか…!」 何とはなしに、浮かぶもの。 このつたない最後の抵抗に、ちょっとした、名前を。 「行け…!」 双魔飛刀『風岩・雷砂』 おそらくは最後の力で放たれたのであろう2本の剣は、しかしまったく見当はずれな方向へ飛んでいく。 「っ…!? どっちをめがけて…?」 「気をつけて二人とも! あいつの剣は踊るわ!」 「踊る…? なるほど!」 アリスの警告を理解するが速いか、風をまといブーメランと化した剣が急角度で死角から飛んでくる! 「この程度!」 私はそれを危なげない動きでかわす。伊達に当たり判定が小さいわけじゃない! 「素人にしては面白い使い方だけどね…」 パチュリーもそう呟き、かわしたり捌いたりしている。ちょっと障壁をはって軌道をそらしてやればなんて事は無いようだ。 「その手は何度も見てるのよ!」 アリスもアリスで、優雅に回避運動。とはいえ、○○を攻撃しながら相手するにはちょっと厄介な感じなので、 みんな攻撃の手が少しゆるむ。下では○○が延々と、緩んだとはいえまだまだ激しい私達の攻撃をかわしていた。 …いや、何発か当たってはいるが、すぐ体勢を立て直しているようだ。ガッツあるのね…。 意外と長続きするわね、あいつもこのスペルも…。 「おっとぉ!?」 さらにもう1本の剣が飛んでくる。難易度が上がった? まあかわせるけど。 観察してみると、2本の石の刀を飛ばすスペルのようだ。片方の、滑らかな石でできた方は強い風をまとっており、勢いもあるし、 よく動く。 私たち3人の間を縫うようにして飛ぶそのさまはまるで鳥のようだ。 あとから加わった砂っぽいほうはそう強い風をまとっているわけではないようで、動きは単調。でもよく見るとぱりぱりと 放電しているのが分かる。まともに食らったら気絶するかも? 何気に上手く2本の連携が取れているし。 かわせるけどね。 …よくそんな詳しく分かるなって? 弾幕ごっことかしてると動体視力が良くなるのよ。 そうして2本をかわし続け、回転がゆるくなり始めた頃… 「あつっ!」 不意にアリスが顔を覆って痛がりはじめる。 「くっ!?」 続いてパチュリーまで、でもどうして? 別に刀にぶつかったわけでも、放電に触れたわけでも無いのに。 不意に、こっちに飛んでくる2本目の刀が目に入る。 かなり回転がゆるくなっている様子のそれは、ざらざらした表面が空気摩擦で均されたのか、所々きれいな表面を さらしているようだった。 そう、まるで『木目のような』表面を。 「…まさか…っつぅっ!?」 突然の目の痛みに思わず顔を手で覆う。やっぱりそういうことか…っ! 素人にしては強力な攻撃、しかしただかわせばいいだけのスペル…に見せかけて、実はそれさえも布石。 この攻撃の目的は私達の撃墜ではなく…! 涙目でどうにか半目を開き、あいつを探す。そこには… 「おおおおああああっ!!」 3人の動きが止まり、攻撃がやむとともに、唯一腰に残したボロボロの木刀を手に取る。 ここから先は時間との勝負、向こうが回復する前に落とす! 取り出した剣の柄に、右手のリストバンドの下から取り出した『雷』のカードを押し付ける。 そのまま左手でカードごと握りこむように柄頭を持ち、ちょうど一刀流の持ち方で『八相の構え』をとる。 柄頭の符から剣先にめがけて雷が走り、そのまま伸びて巨大な雷の剣と化す。 そのさまは、まるで話に聞く禁忌『レーヴァティン』の炎の剣のようだった。…まあ俺自身ははそのカードのことは知らなかったが。 「ぐうぅぅぅぅ!」 雷の大剣を構えた両腕が更なる悲鳴を上げる。だがあと少し、この一撃だけもってくれ! 準備ができるとほぼ同じく、回復したのか3人が動き始める! …今しかない! 3人まとめてなぎ払う! 「ぅらあぁぁぁぁぁっ!!!!」 俺は、最後に残った渾身の力で、大剣を振るった。 そしてその直後、衝撃とともに意識を失った。 最後に思った事は、「ああ、俺くだらないことで命張ってんなー」だった。 …誰か愛をください。 あとがき―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― ダンザイ・バーストォ! 藪から棒にすみません。37です。 「3話目」Cパートでした。戦闘シーンはここで一応の一区切り…かな? 霊夢ものの割に霊夢があんまり出てこないと言うか目立たないのがどうにも…(;--) ちなみに、主人公の戦闘スタイルには元ネタがあります。 一つは気付いた方も多いかもしれませんが、「Fate」のアーチャーです。 もう一つはセガサターン・プレイステーション用RPG「ルナ2・エターナルブルー」の主人公 「ヒイロ」だったりします。 彼の技に「クロスブーメラン」と言う、風に乗せて2本のブーメランを投げ放ち一体にダメージを与えるものがありまして、 ○○の剣投げはそれを大きな元ネタにしてます。 最後の一つは…このあとがき最初のアホ発言がヒントです。かなりマイナーらしい格ゲーからです。 もっとも最後の技のイメージネタにしか使ってませんが。 後、風岩・雷砂についてですが、攻撃名でなく実は武器名で、オリジナルだったりします。あんまり関係ないけど。 では、Dパートへどうぞ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 霊夢もの第3話、Dパートです。 一応戦闘もひと段落、ほっと一息です。 …まだまだ先は長いけどねorz ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 「…っと、お……さい! ねぇ、ちょっと! …きな…いってば! ねぇ!」 「う…?」 頭がガンガンする。両腕が痛い。 だが、何か暖かいものに包まれているような感覚。 聞き覚えのある誰かの呼ぶ声に導かれるまま、俺はその目を開いた…。 「…あれ?」 目覚めてみれば森の中、目の前になぜかアリスとパチュリー。ちなみに俺は横になっているようだ。 混乱する頭が目覚め、記憶がはっきりするとともに、現状がゆっくりと、理解できて来た。 「そか…だめだったか、結局」 ポン、と片手を額に置く。 まあ、仕方が無いといえば仕方が無い。むしろあそこまでやれたのが奇跡に近いんだ。 次また同じようにやれと言われても、絶対できない。断言できる。 「ええ…そうね」 パチュリーがそういいつつしゃがみ込み。俺と目の高さが近くなる。 彼女のつむいだ次の言葉は、俺の思考を止めた。 「でも多分…私達の負けよ」 「…は?」 いや、訳が分からん。 俺の最後の一発は結局かわされたんじゃないのか? だから反撃で俺は気を失ったんじゃ… 「訳が分からないって顔ね」 アリスの苦笑しながらの言に、コクリと頷く俺。 「あの時あんたの剣は、確かに直撃コースだったのよ。しかも3人全員にとっての」 「ところが、一番近かった私にあたると思った次の瞬間、剣がふっと消えたの」 「何事かと思ってみれば、あんたが倒れ臥してた訳」 「つまり、すんでの所で私達は、あなたの体力切れに救われたって訳ね」 「試合に勝って勝負に負けたって所かしら?」 やれやれ、と肩をすくめるパチュリーとアリス。いや待てマジかそれ、俺が勝ってた? この3人相手に? 「…冗談にしては笑えんな…」 「冗談じゃないわよ。て言うか、起きたならとっととどいてくれない?」 「え?」 言われて声の方…つまり、俺の真上を見る。 そこには、むすっとした顔の霊夢がいた。って言うか、これってまさか… 「ひひひひひひひひ膝枕っ!?」 叫びとともにあわてて飛びのく俺。 だが、そんな俺の反応が気に障ったのだろう、霊夢がさらにむすっとした顔になった。 「何よそれ…」 「あ…。い、いやすまん。ついその、びっくりしたと言うか、予想外すぎたと言うか…」 「…いいわよ」 そう言ってそっぽを向く霊夢。 (つД`)アチャー、だいぶ怒ってるよ。 って、こっちも殺されかけたんだっけ… 「…で、結局俺はどうなるんだ? この状況からすると、とりあえずあんたらの考え次第ってことになるだろうけど」 とりあえずそう、パチュリーに聞いてみる。 たとえ勝てていたとしても、結局倒れたのは俺だしな。 これが普通の妖怪との戦いだったらとっくに食われてる。 「…ごめんなさいね、あんなことして」 「は?」 思考停止2。つーか今度は何言い出すんだこの人は。 「あー、話の展開が読めないんだが、どゆこと?」 「…あなたが気絶したあとね、私達、揃いも揃ってちょっと呆けてたのよ」 「で?」 「そうこうしてるうちになんだか頭が冷えてきて…何やってるのかな私達はって、なんだか思えてきちゃって」 続けて言うアリスに、そっぽを向いたままの霊夢。 あー、それは要するに… 「…つまり、許す許さないはともかくなんだか馬鹿馬鹿しくなってきたからやーめた、と」 「そういうことともちょっと違うけど…」 「いや、まあいいさ。とりあえず命の危機は去ったようだし。…これで誤解も解けたら言う事無いんだがね」 「その事なんだけど…! ちょっと待って」 何かを言いかけた(多分改めて事実確認をしようとしたんだろう)パチュリーだったが、何かに気づいて止まる 「どうした?」 「…念話が…リトルから…」 「司書さんのほう?」 コクリと頷くパチュリー。 ここで紹介しておこう。 リトルというのは、紅魔館内においてパチュリーが館長を勤める大魔法図書館に住む、小悪魔の姉妹の名前だ。 もっとも、本当の名前では無いらしい。『悪魔は基本的に本名を使わない』というのは、悪魔関連の初歩の知識だそうだ。 本名を知られてしまうとその悪魔の行動に重大なペナルティが科せられるらしいが…よく分からん。 彼女らが図書館にいる理由だが、何でも、パチュリーが、お手伝いさんを募るつもりで召喚したのだが、このときちょっとした 事故があり、目的の存在におまけがついてきたのだそうだ。 姉のほうは、物静かで真面目な、働き者の女の子、悪魔というにはイメージがやや離れすぎたというか、少なくとも普段の彼女を 見る限りは、羽をつけ間違えた天使の様にも思える子である。パチュリーは最初この子のみを呼ぶはずだったらしい。 妹のほうは、元気でやんちゃな、いたずら好きの女の子。姉をそのまま小さくしたような外見だが、行動の節々からして、こっちの ほうがなるほど『小悪魔』チックに見える。事故でこの子がついてきた。 召喚事故に気付いたのが、契約の『名付けの儀式』の後だったらしく、『召喚されたもの』に対して行われた『名付け』は、 結局姉妹二人ともに有効とみなされてしまった。 まあ、妹は姉から離れたがらなかったし、姉は姉で妹をひとり残すのが心配ではあったようなので、ある意味結果オーライと 言えなくは無かったらしい。 結果、姉は司書としてパチュリーの補佐をする事となったが、妹は…いたずらをするようになった。 しかし、変化の少なかった当時の紅魔館においては、彼女の『活躍』はちょっとした変化をもたらし、退屈を吹き飛ばしたため、 心労こそ増えたものの、おおむね歓迎されたのだった。 「で、何だって?」 「今、つなぐのよ…」 どうでもいいけど…なぁ~んかいや~な予感がするんだがなぁ…。 リトルからの突然の念話に、私はいやな予感を感じた。 こういうときの念話は、いい事であったためしが無いからだ。 たいていは悪いほう、それも、クリティカル(致命的)な。 (どうしたの? リトル) (パチュリー様…大変です…妹様が…フランドール様が…) 「妹様が? 何があったの!?」 怪我でもしているのか、かすれた声で途切れ途切れに話すリトルの言葉は、少なくとも私のいやな予感を肯定するには十分だった。 妹様がかかわる話となると…最高にクリティカルだ。 (妹様が…図書館に残しておいた号外のもう片方を…) 「…読んじゃったの!?」 最悪だ。 冷えた頭でもう一度彼の証言を聞こうと思っていた矢先にこの展開とは。 暴走の報いだろうか? まったく魔理沙は…いつもいつも人を散々引っ掻き回すんだから…。(←今回は微妙では?)作者は 黙ってなさい。…作者って誰? (妹(リトル)が読ませてしまったみたいで…) (あの子は…。それで? 二人はどうなったの?) (妹はその…吹き飛ばされて盛大に目を回してます。今も目を覚ましません。フランドール様は…) (どうしたの? はっきり言って!) (その…『○○って奴を壊してくる』と言って…外に出てしまわれました!) 「なぁっ!?」 そんなバカな! 今にも沈みそうとはいえ太陽はまだ輝いている。そんな中を飛び出したら…。 「妹様が飛び出した!? それでどうなったの! 妹様は無事!? 咲夜や門番は何してたの!」 (それが…日光の下なのに平気な顔で…それどころか、いつもならかなりてこずられていた咲夜さんたちお二人のタッグを、 今日に限ってあっさり秒殺してしまわれまして…) 「うそ…」 (おそらく、能力を使用して自分に降り注ぐ日光、もしくは『吸血鬼は日光に弱い』という法則を破壊されたか、あるいは… 『太陽光克服者(デイウォーカー)』の能力に目覚められたのでは…) 「……」 開いた口がふさがらない。 妹様のことだから、おそらく原因は号外の…魔理沙のところだろう。 私でさえ周りが見えなくなったくらいだから、いわんや妹様をや…と思い、隠していたはずなのに…。 愛はいろいろなものを超えると言うけど、もうここまで来るとデタラメだ。 『欲するもの、常に最悪を心がけよ。事態は常に、その斜め上を行く』 何かの本で読んだ内容だが、まさしくその通りだと思った。見事に斜め上を行ってくれた。 (とにかく、フランドール様は最大戦速でそちらに急行中です。急いで対策を…) 「わ…分かったわ。ありがとう、リトル」 そういって念話を切る。とにかくこのメンバーに警告しないと。 「なあ…妹様が飛び出したってどういうことだ?」 「え!?」 何で○○がその事を!? まさか念話の内容を読んだの!? 「いや、声に出てた」 「あ…」 思わず赤面する。しまったわね、この私とした事が。 「で、どういうこと?フランドールが飛び出したって」 「あの傍迷惑な妹が外に出たの?」 霊夢とアリスも問い詰めてくる。それはそうだろう、この二人…特に霊夢は妹様の力を良く知ってる。 外には出せないレベルの強力な存在であると言う事を。 「つかさ…そもそもその…フランドール? って誰?」 場の時間が止まる。ああ、そういえば彼は会った事はなかったわね。うん。 「天中殺か? 今日は…」 話題のフランドールなる人物の事を聞いていてそう思った。 フランドール・スカーレット。 吸血鬼が住まう真紅の館、紅魔館の主にして、500年を生きる吸血姫、レミリア・スカーレットの妹にあたり、 姉を超えるほどの潜在能力と深遠なる狂気を併せ持つ『悪魔の妹』 495年を生きる吸血鬼であるが、その時間の多くを紅魔館の地下で過ごしてきた少女。 去年の暮れごろ、人数が少ないながらも行った宴会で見かけた、あの見た目は少女だが存在感やプレッシャーはとにかくすごく 感じた姉。 その時起こったハプニングのせいで恐怖はだいぶ払拭され、むしろ親しみやすさを感じるようになった彼女だが、もしもそれが 無かったら、あるいは彼女に何らかのトラウマでも植え付けられたかもしれないな。 そんな彼女さえも警戒する『妹様』が、今俺を狙っている。 …あの号外のせいで。 …あの天狗め…化けて出てやる…。 「とにかく、私は妹様を探してみるわ。アリス、悪いけど手伝ってくれる?」 「え!? わ、私? あー…。…仕方ないわね…分かったわ」 そういって飛んでいくパチュリーとアリス。 とりあえずこっちもなんか準備しないとだめかな? と言ってもすでに満身創痍なんだがな… 「あ、霊夢、俺の剣とかどこ行ったか知らないか?」 「飛び回ってた奴ならあんたが倒れてすぐ魔力切れになったみたいでどっか行っちゃったわよ。最後に振るってた奴なら…そこ」 そういって指差した先にあったのは…炭と灰だった。 「あー…」 「ま、あれだけ激しい雷を纏わせてたらねぇ…。心配しなくても符のほうは無事だから、はい」 そういって符を渡されるが、受け取ろうと手を伸ばしたとたん激痛に襲われる。 「っぐ…」 「ちょ、ちょっと、大丈夫!?」 「あー、まあ、昼ごろから無理のし通しだったからなー」 「そんなのんきに言ってる場合じゃないでしょ! ああもう!」 どうにか手当てをしようとわたわたする霊夢。ありがたいけどちょっと笑える。 「なによ」 睨まれた。 「はぁ…。まあいいわ。神社に行って薬箱持ってくるから、ここにいなさい。変なとこ行っちゃだめよ!」 霊夢はそういうと、お札で簡易結界を構築しその中に俺を放り込んだ。 「出ちゃだめよ!」 「はいはい」 霊夢の念押しに苦笑しつつ答えると、まだ気になるのかこちらをちらちら見ながら飛んでいった。 さっきまで張り倒そうとしていたくせに、妙に心配性だな。まったく。 「よっ…と。…あ痛つ」 張ってもらった結界はそんなに狭いものでもないようで、とりあえず立ち上がる事ぐらいはできる。 そんなわけで、不測の事態に備える意味でも立ち上がっておく。 どこぞの剣豪じゃあるまいし、座った状態からすぐ反応なんて出来やしないからな。 一応の状況確認。 現在、アリス、パチュリー、霊夢の3人とは停戦状態。 この辺はまあ後々の質疑応答でどうなるか決まるだろう。 目下の問題はフランドール・スカーレット。 俺を探しているらしいが、おそらく神社へ向かった事だろう。となると、先に探しに行ったパチュリーやアリスと、 あるいは神社の霊夢と鉢合わせする可能性が高い。 どっちかが食い止めてくれる事を期待しよう。 俺自身の状態。 両腕がほぼ使い物にならない。かろうじて動かす事はできるが、激痛を伴う。これは筋肉が切れたか…? 片足がきつい。レーザーの直撃で火傷したみたいだ。バランスをとるのに一苦労。 頭は前後にタンコブが一つずつ。片目のそばを切ったんで血が出ている。…いや、今は止まっているか。手当してくれたのかな? その他の部位についてはおおむねOK。弾などがかすったときの傷で血が流れていたが大体止まっている。 武器は…なし。一番近場のはもう炭だし、飛んでいった2本を探すのは今の俺では自殺行為だ。 符は…やはりだめだ。風と雷の符はともに魔力切れを起こしている。土の符の魔力も残り少ない。 風の符なんかは結構充電容量を増やしてもらってたつもりだったんだが…さすがに使い通しだしなぁ。 結論、見つかったら絶望的。 「…さて、問題です」 こういうとき、天中殺の俺にはどんな展開が待っているでしょう? 「3」 「2」 「1」 「…ぜ「見つけた、写真の奴!」」 …やっぱり あとがき―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 37です。 「3話目」も中盤を過ぎ、Dパートまで終了しました。 ここからフランドールとのやり取りになるわけですが、さてどうなる事か… 戦闘描写の予定はありません。と言うか満身創痍の彼ではどうにもなりません。 あってもごく短いものになる予定です。 このあとがきを書いている時点でまだEパートは書き始めたばかりです。 年内に終わるかは微妙なところでしょう。 ひょっとしたら禁断のFパート!? …行きそうです。この調子だとorz とにかく、書くと決めた以上は最後までがんばります。…やめろと言われない限りは。 では、Eパートでお会いしましょう。 ─────────────────────────────────────────────────────────── ずるずる… つるつる… ○○「…ん? 霊夢、始まった、始まった」 霊夢「え? あ、ホントだ」 ○○「ども、おそば食べながらで失礼します。37ワールドの○○と霊夢です」 霊夢「年末年始なんで、折角だから年越し書き込みしてみようという事で、今回37の代わりにここ、神社わきの特設かまくらからお送りしてるわ」 ○○「まずは境内の魔理沙さーん」 魔理沙「霊夢ぅ~○○~寒い~勘弁してくれ~」 霊夢「(無視)魔理沙さーん、皆さんの調子はどうですか~?」 魔理沙「寒いぜ~寒すぎるぜぇ~何で大晦日の夜まで修繕作業やらなきゃなんないんだよぉ~(泣)」 霊夢「クリスマスの件をもう忘れましたか~ぁ?(ギリピキィ)」 魔理沙「私達が悪かったからぁ~謝るからせめて今日と三が日くらいは…」 霊夢「(無視)では次にいきましょ~」 魔理沙「霊夢ぅ~(プツン)」 ○○(お、鬼だ…(汗)) 霊夢「さて、では次のコーナーです」 ○○(コーナー?) 霊夢「37からのレス返しと感想のコーナーよ。はじめるわ」 ○○「まず 328氏から」 霊夢「で、デレデレって、別に私はデレデレして無いわよ!」 ○○「そうそう、二人きりとかあまりにたれたりした時とか以外は全く」 霊夢「○○!(ぽかぽか)」 ○○「あた、あた、あた!」 霊夢「それに言うに事欠いて四十八手って…!」 ○○「うわあ、なんだか余計理性が飛びそう」 霊夢「バカ!」 ○○「でも328さん、俺も最近知ったけど実は対面に座ったときに出来る奴で 「こたつ隠れ」なんてものもあったりとか(どすどすどすっ!)…エクスターミネーションはどうかと…(←瀕死)」 霊夢「フン! だ」 ○○「続いて 342氏と30人目氏」 霊夢「続きのリクエスト、どうもありがとうございます!…なんかなれ初めの紹介って感じで私は恥ずかしいけど…」 ○○「中休みに紹介予定のラジオドラマにて、完全版を放送予定です。お楽しみに~」 霊夢「30人目氏のけねもこものも最高でした! ○○災難でしたね、次も期待してます!…37からでした。」 ○○「何か俺までお尻が痛く…(ハァァ…フゥゥ…)…なんかきこえたぁぁぁぁぁっ!」 霊夢「? …気のせいでしょ? 次いくわよ」 ○○「うす…(ビクビク)」 霊夢「 355(349)氏の妹紅もの」 ○○「何と言うか…壮絶でしたね」 霊夢「ホント…なんかぐっと来たわ。…あんなふうに想ってもらえるって…幸せよね」 ○○「…一応俺もそのつもりなんだk」 霊夢「はいはい、惚気を電波に乗せない!(赤面)」 ○○「うす。355(349)氏、お見事でした!」 霊夢「 356氏もリクエストありがとう」 ○○「衛宮士郎っすか…む~…」 霊夢「戦闘スタイルの元ネタ?ではあるからあながち間違ってはいないんじゃない? 見た目はともかく」 ○○「まあねー」 霊夢「なら…再会後の今はアーチャーかしら?…うわ、似合わな・・・」 ○○「ほっとけ」 霊夢&○○「ともあれ、この後のコーナーをお楽しみにー」 ○○「 358氏のリトルもの~ いやめっちゃウァロタヨー! この○○のぶっ飛びぶりと来たら…」 霊夢「相変わらず見事にわらかしてくれるわ~…というか…いうか…あんの薬師ぃぃぃぃぃっ!」 ○○「どうどう…」 霊夢「あれのおかげであの年は散々な目に遭ったのよ!」 ○○「実話!?」 霊夢「向こうの私が」 がんっ! 霊夢「大丈夫? 額…」 ○○「何とか…」 霊夢「さて、ひと段落着いたところで」 ○○「中休みのラジオ(?)ドラマ」 霊夢「第3話・完全版です」 ○○「大急ぎで仕上げたのでいろいろ突っ込みどころはありますが…とりあえずどうぞ!」 その4へ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 退避所 198(初出 37の改訂含む) 234 326 341 359
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マクロスF三角関係議論スレ より 個人がどう思おうが勝手ですが、根拠や断定が多すぎます。 根拠として持ってくるものが意味不明です。 そしてキャラや他作品をsageすぎですw 657:名無しさん@お腹いっぱい。 :sage:2009/01/07(水) 04 42 15 ID DkjMIpwH (7) アルトの演技の同情で抱かれたのなんか張り合う気にもならないくらい情けないことじゃん アルランの人元気出して 785 名前: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 投稿日: 2009/01/07(水) 21 59 28 ID iU+KGilU いつも思うけど恋愛物の主人公の声優はこういう質問に答えるの辞めてほしい。中村がシェリル派なのはわかってるがなんか不愉快なんだよな。クラナドでも正ヒロイン差し置いてツンデレっぽいキャラを好きだっていってたし。 788 :名無しさん@お腹いっぱい。 :sage:2009/01/07(水) 22 09 46 ID DkjMIpwH (7) 783 ブレラお兄ちゃんはすでにアルランブレの基本の三角形にいるよね 807 :名無しさん@お腹いっぱい。 :sage:2009/01/07(水) 23 20 12 ID DkjMIpwH (7) 中村はシェリル哀れんで答えたんでしょきっと。同情だよ同情 劇場で扱いがきっと悪いから同情してやってんの クラナドのキョウだって当て馬だったしね。 だから調子乗ってる人は冷静になりなよ。はたから見ても痛い 812 :名無しさん@お腹いっぱい。 :sage:2009/01/07(水) 23 32 23 ID DkjMIpwH (7) 808 同情以外のなにものでもないと思うけど。 別に中村=アルトなんて思ってないし。 じゃあもう一つ根拠ね。 ルカ役の福山さん。あの人もギ〇スじゃコー〇リアとか空気ぎみなキャラ好きだったみたいなの。雑誌見ると。 だからシェリルは劇場でも空気なんじゃないかなって思っただけです。 814 :名無しさん@お腹いっぱい。 :sage:2009/01/07(水) 23 36 55 ID DkjMIpwH (7) だいたい中の人がシェリルスキだからってなんなの。 なんもないだろ アルトはアルトだもん中村じゃない 822 :名無しさん@お腹いっぱい。 :sage:2009/01/07(水) 23 45 13 ID DkjMIpwH (7) 813 どう見ても同情 アルトはランカには演技できないけどシェリルにはできる この設定おぼえていますか つかアルトは優しすぎるんだよね あそこは甘やかすべきじゃなかった ビンタくらいして「誰の為に歌う歌なんだ!オレに頼るな!」くらい言った方がよかったのでは。 だって結局勇気やってもアルト爆発?で歌うのやめたじゃんジェリル ちゃんと叱っておけば「自分で歌う」ことができて、歌を途切れさせずにすんだかもしれないのにね。 あの途切れのせいでフロンティア市民の命をシェリルがかなり奪ったよねきっと 劇場アルトは甘ったれには厳しいめのキャラにちょっと変わるといいな 832 :名無しさん@お腹いっぱい。 :sage:2009/01/07(水) 23 57 00 ID DkjMIpwH (7) 825 小説読みなよ アルトはランカに対してはどうしても演技できないというモノローグがある だからランカの前ではアルトは素を出せるんだよ 王子様っぽい言動を演技だって言う奴いるけど あれは今まで女や姫扱いされてたアルトが心の奥でなりたいと望んでいた姿なんだよ それを引き出してくれたランカはやはりアルトの特別な子なんだよ
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「食事禁止か……結構厳しいルールだねえ」 第十回放送を聴いたグッチさんたちは一様にため息をついた。 こんな理不尽な放送を、あと何度聞けばいいのだろう。 「それで、つまりかがみちゃんは6/って人を探してて、その途中でドラゴンになっちゃったんだね」 「まあそうよ」 ハッチポッチステーションの売店の中で、グッチさんとジャーニーとエチケットじいさんはかがみを囲んで話を聞いていた。 なおジャーニーはお尻に座薬を挿しながら話を聞いている。 どうにか落ち着いたかがみがたどたどしく語った話を総合すると、彼女は本当は人間の女子高生で 何かの弾みでドラゴンの姿になってしまったらしい。 ちなみに気絶していてほとんどの放送を聞き逃しているらしく、自分たちが名指しで主催に指名されたことも知らないらしかった。 「そりゃあ、早く元に戻る方法を考えないと大変だねえ」 「うん……でもそれより先に6/と合流しようと思うの。田村さんと一緒っていっても、あいつは良く人に襲われるから……」 「へえ~。随分心配してるんだねえ」 「ば、ち、違うわよ!! ただ、あいつが死ぬと私も色々と困るから!!」 「なんや姉ちゃん随分と素直やないのう。女の子は素直が一番、これ、エチケットやで~!!」 「う、うるさい!! ほっといてよ!! てゆうかそんなんじゃ無いったら!!」 顔を赤くして否定するかがみとそれをからかうエチケット爺さんに聞こえないようにグッチさんがジャーニーに耳打ちする。 (ねえジャーニー、この子と6/って、さっきの放送で言ってたツンデレコンビだよね?) (うん、まあそうだと思うよ) (だったらさあ、今油断してる隙に襲い掛かって縛って主催のところへ持ってっちゃおうか?) 「だ、ダメだよグッチさん!!」 ジャーニーが突然大きな声を上げたので、かがみとエチケットじいさんも驚いて振り向く。 「どうしたの、急に?」 「い、いや何でもないよ」 グッチさんは笑顔で誤魔化しながらジャニーの顔を引っ張り寄せた。 (ちょっと、なんで反対するんだよ?) (だ、だって、……そう、このままかがみさんに協力するフリをして6/さんを探したほうが早く見つかるんじゃない?) (お!? そうか、わかったよジャーニー。かがみちゃんに協力するフリをしておいて、もしツンデレコンビが揃ったら 主催の所へ連れていくわけだね?) (そ、そうそうさすがグッチさん!! 味方を騙すにはまずは敵からっていうからね!!) (いやいやジャーニー、君も中々ワルだねえ、ハッハッハ) 「これ、人の目の前で内緒話をしない!! これ、エチケットやで!!」 エチケット爺さんが杖を振り回しながら二人の会話に割って入る。 「ああごめんごめん。それよりエチケット爺さん、ちょっと耳を貸して?」 グッチさんはエチケット爺さんに、さっきジャーニーに聞いた『計画』を打ち明けた。 (おお、ほら中々ナイスな案やなあ) (だろ? エチケット爺さんも上手く演技してくれよ?) 二人は顔を見合わせて笑い合う。 「ちょっと、人の前で内緒話ばっかりしないでよ!! 感じ悪いわねえ!!」 流石にかがみも怒り出すが、グッチさんはあせらずに笑顔で誤魔化す。 「いやいや、これからどうやって6/さんを探そうかって相談してたんだよ」 「え? あんたたちもあいつを探すの手伝ってくれるの?」 「もちろんさ!! 僕たちはもう仲間だよ、ねえジャーニー?」 「あ……うん……」 かがみの顔を見たジャーニーは、何故か気まずそうに顔を背けた。 「そっか……ありがとうね。あいつに会えたら必ずお礼はするわ。それと、さっきは急に襲っちゃって、ごめんね」 ジャーニーに微笑みかけるかがみ。それを見たジャーニーの鼓動が不意に高まった。 「ようし、そうと決まれば早速出発だ!!」 「善は急がば回れ!! これ、エチケットやで~!!」 こうして、ハッチポッチステーションから三人の人間と一匹のドラゴンが出発した。 (グッチさんにはああ言ったけど、グッチさんたちは本当にこのドラゴンを主催者に突き出すのかなあ? そしたらこのドラゴンは……かがみさんは……) 一行の最後尾を歩きながら、ジャーニーは一人悶々としていた。 (いや、やっぱりここはみんなのために主催者に従うべきだ。それに、かがみさんにはもう大切な人がいるんだ。 僕の役目は、その人のところへ彼女を届けるだけでいい) そう自分に言い聞かせ、自分の気持ちを誤魔化そうとするジャーニー。 「ああ、でも、でも……さっ肛門に差し込まれたかがみさんのち××の感触が…… あの暖かさが……忘れられないよ……」 彼の独り言は、誰に届くことも無く舞い散る雪の中に消えていった。 【二日目・午後二時/東京都ハッチポッチステーション】 【柊かがみ@らき☆すた】 [状態]:ドラゴンの姿 [装備]:なし [道具]:へんげの杖@ドラクエ(変身時は使用不可) [思考] 1:早く◆6/WWxs9O1s氏に会いたい べ、別に心配してるわけじゃないんだからねっ!! 2:◆6/WWxs9O1s氏と再会して自分の非は謝る 3:もとの人間の姿に戻りたい 4:まつりやつかさたちの仇を取りたい 5:放送を信じない味方を集め、主催を倒す 6:自分の胴体と友人、家族を探したい ※第一回放送を聞いていません ※第四回放送も聞いてません(自慰行為のため) ※第六回放送も聞いてません(6/氏をレイプ中だったため) ※第九回放送とその補足も聞いていません ※へんげの杖でドラゴンになってます。丸二日経つか凍てつく波動を受けないと戻れません 【グッチさん@ハッチポッチステーション】 [状態]:健康 [装備]:不明 [道具]:支給品一式 [思考] 1:かがみに協力するフリをする 2:6/氏を探し、かがみと一緒に主催に突き出す 【ジャーニー@ハッチポッチステーション】 [状態]:健康? [装備]:不明 [道具]:支給品一式 [思考] 1:基本的にグッチさんに同意、だが…… 2:出来ればかがみに死んで欲しくない 【エチケット爺さん@ハッチポッチステーション】 [状態]:健康 [装備]:不明 [道具]:支給品一式 [思考] 1:かがみに協力するフリをする 2:6/氏を探し、かがみと一緒に主催に突き出す
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最近、妹の様子が変だ。 いつも落ち着きの無い妹だが、最近は特にそわそわしているように感じる。 この間も俺のところに来て 「もしもサンタクロースがいたら、キョンくんはどんなプレゼントが欲しい?」 などという理解に苦しむ質問をしてきた。クリスマスはまだまだずっと先だというのにだ。 しかも『男子にプレゼントして喜ばれる云々』といった雑誌を読んでいたし……… 状況から推測するに、もしかしたら好きな人ができたのではないだろうか。 まあそれはいい。妹も子供とはいえ女子なのだから、誰か好きな男子ができたとしても、それは自然なことなのだろう。 俺はそんなことにいちいち目くじらを立てるほど心の狭い人間ではないし、むしろ人間的に成長する良い機会だとさえ思っている。 しかし、しかしだ。俺に意見を求めてきたことや、読んでいた雑誌から推測すると、別の問題が浮上してくる。 つまり、あまり考えたくないことなのだが、相手は俺と同じ男子高校生なのではないかということだ。 もちろん分別のある高校生なら、妹からの告白など華麗にスルーしてくれるだろうが、中には谷口のように女に飢えているやつもいるから油断できない。 普段の俺なら、こんなことは考えもしないのかもしれないが、この前谷口が 「お前の妹、もしかしたら将来、ものすごい美人になるかもしれないなあ。そうなったら俺がもらってやるぜ」 などという戯けた事をぬかして、俺をすこぶる不愉快にさせたため、今の俺は少々情緒不安定になっているのだろう。 というわけで、おめかしして出かける妹の後をつけてみようと思う。もちろん何も心配ないということはわかっている。過保護だと笑いたければ笑えばいい。 むしろこれは妹のためというより、谷口の発言により情緒が不安定になった俺自身の精神衛生上の問題である。って俺はいったい誰に言い訳をしているのだろうか。 まあそんなわけで、俺は妹の後をつけるために家を出たのだが、玄関から数メートルも離れないうちに、俺の精神衛生上のもうひとつの問題に遭遇した。 「あれ、キョン、あんた何してるの」 「な、ハ、ハルヒ、お前こそいったいこんなところで何をしているんだ」 「あ、あたしは別に………そう、散歩よ散歩。たまたまあんたの家の近くまで来ちゃったけど」 ちなみにハルヒの家は電車で二駅ほど離れている。とても歩いて来れるような距離ではないはずだ。 「お前、普段こんな遠くまで散歩に来ているのか」 「な、そんなことどうでもいいじゃない。それよりあんたこそ何をしているのよ」 なぜ怒られなければならないか理由はわからないが、とにかく俺は妹の後をつけていることと、その理由を説明した。 「まあそういうわけなんで、俺に用事があるのならまた今度にしてくれ」 「ふーん、それは面白そうね。いいわ、あたしも付き合ってあげるわ」 「面白半分でやっているわけじゃないぞ。俺にとっては重大な問題なんだ」 「あたしにだって重大な問題だわ。もしかしたらあたしの弟になるかもしれないじゃない」 「はあ、なんでお前の弟になるんだ」 そう言うと、ハルヒは顔を赤くしながら少し上ずった声で 「あ、あんたの弟になるかもしれないって言ったのよ。それより早く後を追うわよ。見失っちゃ元も子もないでしょ」 いまさらハルヒに帰れと言っても聞き入れるわけないし、ハルヒの説得に手間取って妹を見失っては本末転倒なので、ハルヒといっしょに妹をつけることにした。 妹は駅のほうに向かうと、あたりをキョロキョロと見回してから、駅前のベンチに腰掛けた。誰かを待っているようだ。 しばらくすると、水素ガスよりも軽そうな、見慣れた男が、手を振りながら、妹の傍へやって来た。 谷口、アイツいくら女にもてないからといって、俺の妹に手を出すとは許せん。 さあ、どうやってとっちめてやろうかと考えていると、ハルヒが不動明王のような表情でふたりの方へずんずんと歩いていくではないか。 「お、おいハルヒ、いったいどうする気だ」 「決まってるじゃない! あのバカをとっちめてやるのよ!」 「気持ちはわかるが落ち着け。まず様子を見てから――――――」 「あんたねえ、あんなのが弟になってもいいの。あたしは絶対に認めないから」 「いや、お前には関係ないだろ」 「関係あるわよ! あんたの弟ってことは…………」 そこまで言うと、ハルヒは顔を真っ赤にして俯いてしまった。 「ど、どうしたんだ。ハルヒ?」 「と、とにかく、SOS団員があんなバカを兄弟に持つことは許されないわ。これはあんた個人の問題ではなく、団全体の問題よ!」 俺たちが人目もはばからずに言い争いをしていると、谷口は妹と別れて何処かに行ってしまった。 まあそうだろう。いくら谷口でもそんな愚行を犯すことは無いと俺は信じていたよ。いや本当だ。 「なによアイツ、紛らわしいことしてくれるわね。後でシメてやらなきゃ気がすまないわ」 ハルヒは、自分が早とちりしたことを棚に上げて、谷口への不満を口にした。 結局、谷口は、結果がどうあれ、ハルヒにシメられる運命らしい。おそらく規定事項というやつなのだろう。 不憫には思うが、同情する気になれないのはなぜだろうか。おそらく奴のキャラクターに原因があるように思われる。 まあ、そんなことはどうでもいい。とにかく今は妹のことが俺の一番の優先事項だ。 そう思い、妹の後をつけていると、次に妹が出会ったのは国木田だった。 ハルヒはふたりが会っているのを見て、口あんぐり状態だ。無理もない。国木田との付き合いが長い俺にも、今の状況が現実とは到底思えない。 ハルヒは俺の視線に気付いたのか、コホンと咳払いをひとつして、 「いいキョン、もう少しふたりの様子を観察するわよ。早とちりしちゃあ、元も子もないんだからね」 珍しく、ハルヒと俺の意見が一致した。いや、誰だってこの状況下では同じ結論に達するだろう。 え、なぜ谷口のときはそういう考えに至らなかったかって? それは禁則事項だ。 しばらくふたりの様子を眺めていると、谷口のときと同じように、少し会話をしただけで、国木田は何処かに行ってしまった。 うんうん、俺にはこの結果は最初からわかっていたがな。しかし、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ不安に思ったのも事実だ。 「まあ、あたしの予想通りね。こうなるなるのは最初からわかっていたわ」 あれ、なぜか今日はハルヒと思考がシンクロしているような気がするなあ。なぜだろう。情緒不安定なせいだろうか。 この後、妹はあっちこっちのデパートを、何かを探しているような感じで、うろつきまわっていた。 途中、鶴屋さんと朝比奈さんのペアや、長門にも出会ったが、特に何もなく、少し挨拶を交わしただけだった。 しかし、わが妹ながら落ち着きのない奴だなあ。もう少し同級生のミヨキチでも見習って欲しいものだ。 そんな妹に、俺とハルヒは一日中振り回され、最後に妹がやって来たところは、光陽園駅前公園だった。 俺たちは物陰から妹の様子を伺うことにした。妹は、俺が朝比奈さんに膝枕をしてもらった、例のベンチに座り、誰かを待っているようだった。 おいおい、もしかしたらこの状況は非常にやばいのではないだろうか。 もし、いま妹の座っているベンチの後ろの草むらから、得体の知れない人物が出てくれば、俺はこの場でパニック状態に陥るかもしれない。 妹がそういうことに巻き込まれていることも問題だし、ハルヒがそれを見ているということが、さらに輪をかけて問題だ。 チラッとハルヒのほうに視線を向けると、ハルヒは怪訝そうに俺の方を見つめている。 「キョン、あんたいったいどうしたの。この公園に来てからなんか変よ」 「あ、ああ、いや、なんでもないんだ。それよりハルヒ、もう遅いし、そろそろ帰らなければならないんじゃないのか」 「はあ、あんた何言ってんのよ。ここまできたんだから最後まで付き合うわよ」 「しかし、夜道の一人歩きは女の子には危険なんじゃないのか」 「だ、だったらあんたが送ってくれればいいじゃない」 ハルヒはそう言うと、俺から視線をそらして、顔を赤らめながら言った。 「あ、あたしは別にひとりでも大丈夫だけど、あんたがどうしても心配だって言うのなら送ってもらってもいいわ」 「そ、そうか、じゃあいっしょに帰ろうか」 「はあ、なんでそうなるのよ。まずはあんたの妹がここで誰と待ち合わせをしているかを確認してからよ」 ハルヒがそう言った後、俺とハルヒの間に気まずい沈黙が流れた。しばらく時間が経った後、ハルヒが俺の方を睨みながら小さな声でつぶやいた。 「キョン、もしかしてあんた、あたしに何か隠してるの」 「な、なんでそうなるんだ。俺は別に何も隠してないぞ」 「うそ、だったらなんであたしを家に返そうとするのよ。この公園にあたしに見られちゃまずいものでもあるわけ」 「そんなものあるわけないだろう。ハルヒの考え過ぎだ―――」 「待って、誰か来たわ」 妹が公園で待っていた相手は、いつも部室で見ているニヤケ面の超能力者だった。 「な、こ、古泉」 「ちょっと、落ち着きなさい。まだそうだと決まったわけじゃないわ」 谷口のときとは違って、ハルヒの落ち着き具合が妙にむかついたが、とにかく様子を伺うことにした。 古泉は妹と二言三言話をすると、懐から綺麗に包装されたプレゼントとおぼしきものを妹に手渡した。 決定、俺がふたりのほうに向かって歩いていこうとすると、ハルヒが止めに入る。 「ちょ、ちょっとあんた何する気」 「決まってるだろう。古泉にことの真相を問い正すんだ」 「まあ、待ちなさいよ。まず、あたしの話を聞きなさい」 そう言うと、ハルヒは谷口のときとは打って変わってとんでもないことを言い出した。 「あんたの気持ちはわからないでもないわ。でもよく考えてもなさい。女の子からしたら古泉くんは彼氏には理想的よ。 やさしいし、頼りになるし、ハンサムだし、だからこのまま見守ってあげてもいいんじゃない」 「な、他人事だと思っていいかげんなことを言うな!」 「他人事だなんて思ってないわ。あたしはあんたの妹のことを自分の妹のように思ってるわよ。これはあたしなりによく考えての結論よ だいたいあんたは妹のことよりも、まず自分のことを………」 なにかいま、ハルヒらしからぬセリフを聞いた気がするが、語尾は声が小さくなってよく聞き取れなかった。 それよりもコイツが妙に古泉の方をもつのが気に食わない。俺は胸にモヤモヤしたものを感じ、それをハルヒにぶつけた。 「だったらお前が古泉と付き合えばいいじゃないか!」 俺がそう言うと、ハルヒは表情を曇らせて俯く。しばらく沈黙が流れた後、ハルヒが声を震わせながらつぶやいた。 「あ、あんた本気で言ってるの」 「ああ、お前と古泉ならさぞかし美男美女のいいカップルになるだろうよ」 俺がそう言い終わるや否や、ハルヒの拳が俺のみぞおちに突き刺さった。 ガフッ 不意を食らって身をかがめたところにハルヒの平手打ちが飛んでくる。 パアン 情けないことに、俺はその場に倒れこんでしまった。これはいくらなんでもやりすぎだろう。俺は起き上がりながら、ハルヒを睨みつける。 「な、お、お前、いくらなんでもやりす………ハ、ハルヒ?」 ハルヒは身体を震わせながら、涙を流していた。一年以上の付き合いになるが、ハルヒが泣いているところなど見るのは初めてだ。 「あんたなんか大っ嫌い!!」 そう叫んで、ハルヒは俺の前から走り去っていった。俺が呆然とその場に突っ立っていると、背後から声が聞こえてきた。 「おやおや、けんかですか。ほどほどにしてくださいね。じゃないと夜中にアルバイトに呼び出される羽目になるので」 振り向くと、古泉がいつものポーカーフェイスで立っていた。 「古泉! 貴様! 俺の妹に――――」 「まあまあ、あなたはどうやら僕を妹さんの恋人と思っているようですが、まったくそんなことはありません。 僕が妹さんに渡したのは、妹さんのあなたへのプレゼントですよ。今日はあなたの誕生日でしょ」 「な、いったいどういうことだ」 「妹さんはあなたへのプレゼントを探していたのです。しかし、お目当てのものが見つからなかったために、あなたのクラスメートや僕に尋ねて回っていた。そういうことです」 古泉の話を聞いて、急に体から力が抜けていくように感じた。いや待て、もうひとつ疑問がある。 「お前、なぜ俺、いや俺たちが誤解していることを知っている」 古泉は不敵な笑みを浮かべて、さらりと俺の質問に答えた。 「ふふふ、あなたや涼宮さんの行動は常に機関が監視してますから、あなたが家を出てから涼宮さんと交わした会話の内容も、 機関は全て把握していますよ。だから僕も知りうることができたのです」 古泉の回答を聞いて、少し背筋がぞっとした。まさか体内に盗聴器が埋め込まれているんじゃないだろうな。 「ご心配なく、公衆の面前であれだけ大きな声で痴話げんかをしていれば嫌でも目立つというものですよ。 むしろあなたの妹さんが気付かなかったことが不思議なぐらいです」 そう言いながら、古泉は両手を広げて肩をすくめた。 「まあそれよりも、涼宮さんには僕のほうから事情を話しておきますので、できれば今夜中に仲直りして欲しいのですが」 「そんなことをお前に指図される覚えはない」 古泉は、俺の回答を無視したように、俺の肩をはたいて「よろしくお願いしますよ」とだけ言うと、そのまま立ち去っていった。 家に帰ると、妹は既に帰宅しており、夕飯の準備ができていた。 普段と同じように夕食を食べ、居間でくつろいでいると、妹が笑顔で俺の傍にやってきて、 「キョンくん、お誕生日おめでとう~」 と言いながら、綺麗にラッピングされた小箱を俺に差し出した。 「開けてもいいか」 「うん、いいよ」 包装をきれいにはがし、箱を開けて中身を確認すると、ブランド物の時計が顔をのぞかせた。 「な、お前、これは高かったんじゃないのか」 「キョンくんのために一生懸命貯金して買ったんだよ。嬉しい?」 そう言いながら顔を近づけてくる妹を見て、不覚にも、少しだけかわいいと思ってしまった。 それに正直、俺はここまでのものを期待はしていなかった。だから妹のプレゼントは、少々驚いたが、素直に嬉しかった。 「ああ、嬉しいよ。ありがとう」 俺がそう言うと、妹は「わーい」と言いながら、シャミセンとじゃれあい始めた。 微笑ましいその光景を眺めながら、今日一日会ったことを思い返し、明日ハルヒにどう言って声をかけようかなどと悩んでいると、不意に携帯電話が鳴り出した。 こんな遅くにいったい誰だと思いながら、番号を確認すると、ハルヒからだった。 「もしもし、ハルヒ?」 「キョン、ごめん、もう寝てた?」 「いや、まだだが………」 いきなりハルヒに謝られたので、少々びっくりした。こころなしかハルヒの声に元気がなく、どこかおどおどしているようだった。 「古泉くんに事情は聞いたわ。でね、今日の公園でのことなんだけど………」 「ああすまん、俺もあの時は気が動転していて、ちょっと乱暴に言いすぎたと思っているよ」 「ううん、そうじゃないの。あの時、あんたに『古泉くんと付き合えばいい』って言われてものすごく悲しかった。 それで、前から思ってたことなんだけど、あの時、やっと自分の気持ちに確信が持てたわ。だから……その……」 「まて、ハルヒ、すまんが俺はお前が何を言おうとしているのかよくわからん」 「あの…ね、あたし…あんたの…キョンのことが…好き…です」 「え!?」 ハルヒの告白を聞いて、今日の出来事、ハルヒの奇妙な言動や、ハルヒの古泉に対する態度が妙にむかついたことなどが脳裏に浮かんでくる。 ああそうか、ハルヒは俺のことが好きだったんだ。そして俺もハルヒのことが……… 「ハルヒ……、俺もお前のことが好きだ」 「キョン……」 「ハルヒ、ありがとう、今日はもう遅いから、また明日ゆっくり話そう」 「うん、わかったわ。じゃあね」 俺が電話を切ると、妹が俺の方をジト目で見つめていた。 「な、なんだ」 「いまの電話、ハルにゃんから?」 「ま、まあそうだが、なんだ……」 「ふーん、キョンくん、ハルにゃんと付き合うことにしたんだ。じゃあ、わたしも誰か素敵な彼氏でも見つけようかな」 「な、どういう意味だ。なんでそうなる。学校に誰か好きな人でもいるのか」 俺が尋ねると、妹は悪戯っぽく微笑んだ。 「クラスメートなんて子供ばっかりだから、もっと年上の人と恋愛がしたいなあ」 妹の言葉を聞いて、妙な不安が頭をよぎる。だいたいお前も子供じゃないかというツッコミは話がややこしくなりそうなので敢えて言わないでおこう。 「古泉さんは……ちょっとわたしじゃ無理かな。すごくモテそうだし、わたしなんか相手にしてくれそうもないなあ」 うんうん、あんな胡散臭い奴は駄目だ。裏で何をしているかわからんからな。 「国木田さんは……あまりそういうことに興味が無さそうだから、かえって迷惑に思われるかな」 うんうん、全くそのとおり、俺もお前と同意見だ、ってまさかこの流れは……… 「というわけで、谷口さんはどうかなって思うの。面白いし、優しいし、古泉さんには劣るけどハンサムだし、わたし谷口さんの彼女に立候補しようかしら」 そう言うと、絶句する俺を残して、妹は居間から出て行った。 ~終わり~
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657 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/01/07(水) 04 42 15 ID DkjMIpwH アルトの演技の同情で抱かれたのなんか張り合う気にもならないくらい情けないことじゃん アルランの人元気出して 785 名前: 名無しさん@お腹いっぱい。 [sage] 投稿日: 2009/01/07(水) 21 59 28 ID iU+KGilU いつも思うけど恋愛物の主人公の声優はこういう質問に答えるの辞めてほしい。中村がシェリル派なのはわかってるがなんか不愉快なんだよな。クラナドでも正ヒロイン差し置いてツンデレっぽいキャラを好きだっていってたし。 788 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/01/07(水) 22 09 46 ID DkjMIpwH 783 ブレラお兄ちゃんはすでにアルランブレの基本の三角形にいるよね 807 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/01/07(水) 23 20 12 ID DkjMIpwH 中村はシェリル哀れんで答えたんでしょきっと。同情だよ同情 劇場で扱いがきっと悪いから同情してやってんの クラナドのキョウだって当て馬だったしね。 だから調子乗ってる人は冷静になりなよ。はたから見ても痛い 812 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/01/07(水) 23 32 23 ID DkjMIpwH 808 同情以外のなにものでもないと思うけど。 別に中村=アルトなんて思ってないし。 じゃあもう一つ根拠ね。 ルカ役の福山さん。あの人もギ〇スじゃコー〇リアとか空気ぎみなキャラ好きだったみたいなの。雑誌見ると。 だからシェリルは劇場でも空気なんじゃないかなって思っただけです。 822 名前:名無しさん@お腹いっぱい。[sage] 投稿日:2009/01/07(水) 23 45 13 ID DkjMIpwH 813 どう見ても同情 アルトはランカには演技できないけどシェリルにはできる この設定おぼえていますか つかアルトは優しすぎるんだよね あそこは甘やかすべきじゃなかった ビンタくらいして「誰の為に歌う歌なんだ!オレに頼るな!」くらい言った方がよかったのでは。 だって結局勇気やってもアルト爆発?で歌うのやめたじゃんジェリル ちゃんと叱っておけば「自分で歌う」ことができて、歌を途切れさせずにすんだかもしれないのにね。 あの途切れのせいでフロンティア市民の命をシェリルがかなり奪ったよねきっと 劇場アルトは甘ったれには厳しいめのキャラにちょっと変わるといいな
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現行スレ 嫉妬・三角関係・修羅場統合スレinラ板 その2 http //love6.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1172035731/ ~テンプレ~ 浅いものはほんのり可愛いヤキモチから、 深いものは好きな人の為に周囲の邪魔者を排除するものまである、 三角関係などの修羅場のライトノベルを扱うスレです。 | | ____| |//. ̄ ̄ ̄,`| / `゙` ゙``|.._ || ; l | ……あの女の所には…行かせない…| l=.| _ |...」 |/ ,、ヽ γ⌒⌒ヽ| ̄ |ノノ"))i クスクス (」l_ハ_l」_ 〉|_ | ヮ ノl| ___ ( ・∀・) あいつときっちり話をしたから、もう大丈夫だろう。l文| と}ソ つ=l|l,、,、,、,、l} ( ) お土産も買ったし、機嫌直るといいけど| ̄ |_lj〉)) 人 ヽノ| |'ノ し(__) 前スレ 嫉妬・三角関係・修羅場統合スレinラ板 http //book4.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1132666398/ 関連スレ ツンデレを語る集いinラ板 Part9 http //book4.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1156874256/ 邪悪なヒロインが出てくるライトノベル http //book4.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1143002626/ ~テンプレここまで~
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2023年1月14日 出題者:タカフミ タイトル:「三角関係」 【問題】 3年2組の仲良し3人組、タカフミ・アキオ・マイ。 今日は卒業式当日。式の間中3人とも泣きっぱなし。 教室では担任の先生も泣きながら歌を唄ってくれたり、大感動の1日だった。 けれど、その日の写真にタカフミは1枚も写っていなかったという。 一体なぜ? 【解説】 + ... 卒業式の少し前、タカフミは留年が決定した。 式当日、「本当なら今頃オレも卒業してたのに…」と家で一人でずっと号泣。 もちろん卒業式の後に撮る写真に写れるハズもない。 配信日に戻る 前の問題 次の問題
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「レベル上げて物理で殴れ。」 ザ・脳筋。破壊神を破壊する女。ローレシア王女、ハルヒ。 「ああ、FC版だから役立たずだよ。ザラキ喰らわすぞ。」 ザ・大器晩成。てつのやり(笑)。サマルトリア王子、キョン。 「犬っていうな。」 ザ・魔法少女。リメイク版強すぎ。ムーンブルク王女、佐々木。 この三人で旅をしているわけだが、今は世界なんてどうでもいい。 水の都、ベラヌール。そこの宿でキョンは、ハーゴンの呪いで倒れたのである。 「ざっまぁ見るのです!無意味に佐々木さんのそばにいるからですよ!」 そうハーゴンは叫んだようだが……佐々木にしてみると、ハーゴンなど靴の裏よりどうでもいい。 いかにして国をキョンと再建するか。ハルヒをいかにして出し抜くか。それが佐々木の興味関心事である。 気を引く為に国を滅ぼし、犬になる呪いまでかけたハーゴンが気の毒でならない。 ハーゴンの呪いを解くには、世界樹の葉が必要らしいが…… 「あんたが行けば?」 「キミが行きなよ。」 二人はキョンを挟んで睨み合っている。キョンの傍から離れるつもりは毛頭なさそうだ。 「世界樹の葉は、すりつぶして口に含ませる……。私という個体は、そう聞いている……」 精霊ルビスが、やむを得ずに二人に話し掛けた。二人の目が輝く……。 「よし、あたしが行ってくるわ!」 「いや、僕が!」 更なる火種となり……ルビスは溜め息と共に言った。 「ユニーク。」 世界の夜明けは遠そうである……。 END 70-373『ドラクエ2な三角関係』2に続く
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新ジャンル「触手とスライムと女の三角関係」 1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。:2007/05/19(土) 00 11 14.62 ID cmWYA1Xt0 女「ふふふ、残念ながら腹筋スレだよー☆」 触「女さん……私にお腹はないのですが」 ス「俺もないな」 女「え、うそ!? じゃ腕立て伏せ!」 元スレ(1) .