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AKB0048 2013年1月25日発売。 BEFORE:俺の妹がこんなに可愛いわけがないスペシャルパック NEXT:生徒会の一存 Lv.2 第27弾。2012年春アニメ『AKB0048』のカードを収録。 全129種類。スターターデッキと同時発売。 2012年6月9日に行われた「プレメモ&プリコネパーティー2012in東京」で発表された。 当初は2012年12月21日発売予定だったが、2012年10月19日に公式サイトで発売延期が発表された。 BOX購入特典は《あっちゃん(P002)》と《ゆうこ(P003)》の2種類。 第2期の放送に合わせて発売される。 収録カードリスト ()はサインカードのレアリティ。 ☆はパラレルあり。 ※はスターターにのみ収録。 キャラクターカード ナンバー カード名 色 C S AP DP 星 01-001 《園 智恵理》※ 青 3 1 30 40 3 01-002 《園 智恵理》 2 2 20 30 3 01-003 《園 智恵理》☆ 2 2 20 30 3 01-004 《園 智恵理》☆ 3 2 30 30 3 01-005 《園 智恵理》 2 2 20 30 2 01-006 《園 智恵理》☆ 3 2 30 40 1 01-007 《園 智恵理》 0 2 - - 1 01-008 《園 智恵理》☆ 3 2 30 40 2 01-009 《横溝 真琴》※ 3 1 40 20 3 01-010 《横溝 真琴》 2 2 20 10 2 01-011 《横溝 真琴》☆ 2 2 30 10 3 01-012 《横溝 真琴》☆ 3 2 40 30 3 01-013 《横溝 真琴》 2 2 30 10 2 01-014 《横溝 真琴》☆ 3 2 40 30 1 01-015 《横溝 真琴》 0 2 - - 1 01-016 《横溝 真琴》☆ 3 2 40 30 2 01-017 《さえ》☆ 2 2 30 20 3 01-018 《さえ》☆ 5 2 40 40 4(5) 01-019 《さやか》☆ 2 2 30 20 3 01-020 《さやか》☆ 5 2 40 40 4(5) 01-021 《さやか&さえ》 0 2 - - 1 01-022 《まゆゆ》☆ 2 2 20 30 3 01-023 《まゆゆ》☆ 5 2 40 40 4(5) 01-024 《ツバサ》 1 2 - - 1 01-025 《藍田 織音》※ 緑 3 2 20 50 3 01-026 《藍田 織音》 2 2 20 30 2 01-027 《藍田 織音》☆ 2 2 20 30 3 01-028 《藍田 織音》☆ 3 2 20 50 3 01-029 《藍田 織音》 2 2 20 30 2 01-030 《藍田 織音》☆ 3 2 30 40 1 01-031 《藍田 織音》 0 2 - - 1 01-032 《藍田 織音》☆ 3 2 30 40 2 01-033 《岸田 美森》※ 3 2 20 50 3 01-034 《岸田 美森》 2 2 20 30 2 01-035 《岸田 美森》☆ 2 2 20 30 3 01-036 《岸田 美森》☆ 3 2 30 30 3 01-037 《岸田 美森》 2 2 20 30 2 01-038 《岸田 美森》☆ 3 2 30 40 1 01-039 《岸田 美森》 0 2 - - 1 01-040 《岸田 美森》☆ 3 2 30 40 2 01-041 《神崎 鈴子》※ 3 2 30 40 3 01-042 《神崎 鈴子》 2 2 20 30 2 01-043 《神崎 鈴子》☆ 2 2 20 30 3 01-044 《神崎 鈴子》☆ 3 2 30 40 3 01-045 《神崎 鈴子》 2 2 20 30 2 01-046 《神崎 鈴子》☆ 3 2 30 40 1 01-047 《神崎 鈴子》 0 2 - - 1 01-048 《神崎 鈴子》☆ 3 2 30 40 2 01-049 《たかみな》☆ 2 2 30 20 3 01-050 《たかみな》☆ 5 2 40 40 4(5) 01-051 《ゆきりん》☆ 2 2 20 30 3 01-052 《ゆきりん》☆ 5 2 40 40 4(5) 01-053 《たかみな&ともちん》 0 2 - - 1 01-054 《牛山先生》 0 1 - - 1 01-055 《一条 友歌》※ 黄 3 2 40 20 3 01-056 《一条 友歌》 2 2 30 10 2 01-057 《一条 友歌》☆ 2 2 30 10 3 01-058 《一条 友歌》☆ 3 2 40 0 3 01-059 《一条 友歌》 2 2 0 0 2 01-060 《一条 友歌》☆ 3 2 40 30 1 01-061 《一条 友歌》 0 2 - - 1 01-062 《一条 友歌》☆ 3 2 40 30 2 01-063 《東雲 楚方》※ 2 1 30 10 3 01-064 《東雲 楚方》 2 2 30 10 2 01-065 《東雲 楚方》☆ 2 2 30 10 3 01-066 《東雲 楚方》☆ 3 2 40 20 3 01-067 《東雲 楚方》 2 2 30 10 2 01-068 《東雲 楚方》☆ 3 2 40 30 1 01-069 《東雲 楚方》 0 2 - - 1 01-070 《東雲 楚方》☆ 3 2 40 30 2 01-071 《ともちん》☆ 2 2 30 20 3 01-072 《ともちん》☆ 5 2 40 40 4(5) 01-073 《東雲 彼方》※ 赤 3 1 40 30 3 01-074 《東雲 彼方》 2 2 30 10 2 01-075 《東雲 彼方》☆ 2 2 30 10 3 01-076 《東雲 彼方》☆ 3 2 40 30 3 01-077 《東雲 彼方》 2 2 30 10 2 01-078 《東雲 彼方》☆ 3 2 40 30 1 01-079 《東雲 彼方》 0 2 - - 1 01-080 《東雲 彼方》☆ 4 2 40 20 2 01-081 《本宮 凪沙》※ 3 2 20 30 3 01-082 《本宮 凪沙》 2 2 20 20 2 01-083 《本宮 凪沙》☆ 2 2 30 10 3 01-084 《本宮 凪沙》☆ 3 2 30 30 3 01-085 《本宮 凪沙》 2 2 30 10 2 01-086 《本宮 凪沙》☆ 3 2 30 40 1 01-087 《本宮 凪沙》 0 2 - - 1 01-088 《本宮 凪沙》☆ 3 2 40 30 2 01-089 《あっちゃん》☆ 2 2 20 30 3 01-090 《あっちゃん》☆ 5 2 40 40 4(5) 01-091 《ゆうこ》☆ 2 2 20 30 3 01-092 《ゆうこ》☆ 5 2 40 40 4(5) 01-093 《こじはる》☆ 2 2 20 30 3 01-094 《こじはる》☆ 5 2 40 40 4(5) 01-095 《こじはる》 2 2 20 20 1 イベントカード ナンバー カード名 色 C S 星 01-096 《ゼロから学ぶAKB》☆ 青 0 1 1 01-097 《芸能解放ライブ》☆ 1 2 1 01-098 《先聖センセイ》 0 2 1 01-099 《プロモーションビデオ》 0 1 1 01-100 《初めてのアンチ》 0 2 2 01-101 《穴があったら入りたい》 1 2 1 01-102 《リーダーとしての意地》 0 2 1 01-103 《円陣》 0 1 1 01-104 《スイーツパラダイス》☆ 緑 0 2 2 01-105 《選ばれし光》 0 2 3 01-106 《第77期研究生誕生》☆ 0 1 1 01-107 《熱狂的なファン》 0 2 1 01-108 《あふれるフェロモン》 0 2 1 01-109 《握手会》 0 2 1 01-110 《アンダー》 0 2 1 01-111 《揺れる心》 0 2 1 01-112 《それぞれの休日》☆ 黄 0 2 2 01-113 《投げキッス》 0 1 2 01-114 《ダンスレッスン》 1 2 1 01-115 《ショッピング》 0 1 1 01-116 《推しメン》 1 2 1 01-117 《芸能禁止》 1 1 2 01-118 《幻の谷間を作る方法》 1 2 1 01-119 《グラビア撮影》 1 2 1 01-120 《AKB0048》☆ 赤 0 2 3 01-121 《愛をうたうアイドル》☆ 0 1 2 01-122 《光のステージへ》☆ 1 2 1 01-123 《センターノヴァ》☆ 1 2 2 01-124 《夢に向かって》 2 2 3 01-125 《まっすぐな想い》 0 2 1 01-126 《同時多発ライブ》 1 1 2 01-127 《研究生お披露目公演》☆ 0 2 1 01-128 《光り輝くアイドル》☆ 1 2 2 サポートカード ナンバー カード名 色 C S 星 01-129 《キララ》 青 0 2 1 関連項目 『AKB0048』 編集
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赤目の依頼 赤目の依頼暗殺任務 救出任務 警護任務 決闘任務 強奪任務 護衛任務 襲撃任務 収集任務 全滅任務 偵察任務 到達任務 泥棒任務 誘拐任務 輸送任務 連作任務 暗殺任務 任務名 対象 場所 難易度 特約 メモ ○○屋に着服の疑い 商人 館・屋敷 5 − 金欠時発生 武器商人の○○屋は用済み 商人 館・屋敷 6-9 − − 暗殺!奥義書を持つ商人 商人 館 8 − − 商人○○屋を消せ 商人 屋敷 2 − 敵方警護任務の可能性あり ○○(大名)侍大将・××を消せ 侍大将 砦 12 - − 討て!一条侍大将・○○ 侍大将 村雲砦 11 より多く殺すべし − 消せ!貞女侍大将・○○ 侍大将 木阿弥砦 8 より多く殺すべし − 好機 ○○(大名)侍大将を消せ 侍大将 砦 8-13 より多く殺すべし 敵勢力に警護任務発生 今度こそ侍大将を討て! 侍大将 館 5 - 「侍大将を誘い出せ」より派生 信じておる 侍大将 砦 14 - - 好機! ダンダラ峠に侍大将 侍大将 峠 7 - 敵勢力に警護任務発生 手薄の侍大将・○○の暗殺 侍大将 砦 5 - 「○○(大名)侍大将を混乱させよ」より派生 すかっとさせんかい 侍大将 砦 15 より多く殺すべし 敵勢力に警護任務発生赤目のストレス解消 蛮族兄を退治せよ 蛮族兄 森 4 より多く殺すべし − 山岳に巣食う悪魔 熊 六道の谷 5 − − 熊を退治せよ 熊 森 7 − − 熊退治 丙 熊 森・谷 5・6 − − 熊退治 乙 熊 森・谷 7 − − 熊退治 甲 熊 谷 10 − − 暴れ熊を狩れ 熊 漁人街 10 − − 己の不始末 熊 漁人街 5 − 熊退治任務失敗で派生 一条に引導を 一条信輝 宇高多城 15 − − 一条信輝を暗殺せよ 一条信輝 宇高多城 17 より多く殺すべし − 阿無璃他教を壊滅せよ 貞女 双胎楼 10 - - 貞女を討て 貞女 双胎楼 11 - - 救出任務 任務名 対象 場所 難易度 特約 メモ 蛮族より町娘を救え 町娘 六道の谷 4 より多く救い出すべし - 行方知れずの娘達を助け出せ 町娘 六道の谷 6 より多く救い出すべし - 町娘を取り返すべし 町娘 砦 14 より多く救い出すべし 敵誘拐任務後発生 姫を救出せよ 姫 砦 11 - 姫が誘拐されると発生 姫を連れ戻せ 姫 砦 14 - - 商人を捜索せよ 商人 谷 16 - - 商人の敵陣脱出 商人 砦 11 - - ○○屋を奪還せよ 商人 木阿弥砦 13 - 貞女の「赤目お抱えの○○屋をさらえ」より派生 警護任務 任務名 対象 場所 難易度 特約 メモ 侍大将・○○を護りきれ 侍大将 金剛関 4-7 − 侍大将危険時出現 侍大将○○の危機 侍大将 森 7 − - 侍大将の付き人 侍大将 ダンダラ峠 8 − - 米問屋を警護せよ 商人 街 3 - 米不足時に発生 喪巣忍者、襲来 商人 町・街・館・屋敷 5 − 敵:喪巣忍者 強襲、多羅場忍者 商人 屋敷・館・町・街 5 - 敵:多羅場忍者 護れ!○○(奥義書・設計図) 商人 屋敷 7 − - わしの命があぶない 赤目影虎 不動城 4 − 赤目窮地時に発生 早く来てくれ 赤目影虎 不動城 7 − 赤目窮地時に発生 決闘任務 任務名 対象 場所 難易度 特約 メモ 腕試し 用心棒 暗鬼の森 1 − - 辻斬りの始末 用心棒 暗鬼の森 4 − − 抜け忍を仕留めよ 中忍 暗鬼の森 1 − − 果たし状 赤目影虎 不動城 3 - - 強奪任務 任務名 対象 場所 難易度 特約 メモ 米を頂こう 各武士 峠 7 − − 輸送中の米俵を奪い取れ 各武士 峠 8-12 − − 奪って米を補充せよ 各武士 町 9 − − 権利書強奪 各武士 町 7 何者も殺めるべからず − 商人家の隠し財産を奪え 赤目武士 峠 13 何者も殺めるべからず - 護衛任務 任務名 対象 場所 難易度 特約 メモ 米と牛車を守れ 牛車 谷 7-11 − − 補給牛車を守りぬけ 牛車 街 7 − 敵勢力に襲撃任務発生 起死回生の牛車護衛 牛車 金剛関 7-12 − 牛車が引っ掛かり動けなくなる事が多い 大事な牛車を護れ 牛車 谷 11 − 敵勢力に襲撃任務発生 戦術部隊を護衛せよ 牛車 町 10-12 − 敵勢力に襲撃任務発生 増援部隊を護衛せよ 牛車 峠 9 − 赤目侍大将暗殺失敗で発生 本陣増援部隊を護衛せよ 牛車 峠 9 − 赤目暗殺失敗で発生 千軒町に牛車を通せ 牛車 町 13 − - 襲撃任務 任務名 対象 場所 難易度 特約 メモ 戦術牛車の破壊 牛車 町 12 より多く殺すべし 敵勢力に護衛任務発生 破壊せよ!戦術牛車 牛車 街 15 より多く殺すべし - 兵糧輸送牛車を壊せ 牛車 六道の谷 8 より多く殺すべし - 金を積んだ牛車 牛車 街 16 より多く殺すべし - 牛車保険 牛車 ダンダラ峠 8 より多く殺すべし 対象が赤目勢なので殺せば殺すほど報酬が減る 牛車襲撃!本町下屋敷 牛車 屋敷 11 より多く殺すべし - 討て!忍びと牛車 牛車 峠 14 より多く殺すべし - 増援牛車を破壊せよ 牛車 峠 12 より多く殺すべし 敵窮地時の牛車護衛で派生 逆転の牛車襲撃 牛車 街 17 より多く殺すべし - 収集任務 任務名 対象 場所 難易度 特約 メモ 食べられそうなもの きのこor草 森・峠 1 より多く入手すべし − 飛鳥の○○ きのこor草 飛鳥の里 1 より多く入手すべし - 全滅任務 任務名 対象 場所 難易度 特約 メモ わしの薬 熊 暗鬼の森 19 − 訪問イベント発生 蛮族の退治 蛮族 峠 2 − − 地域貢献 蛮族 街 2 − 金欠時発生 今度はうまくやれ 蛮族 町 5 − 「蛮族兄を退治せよ」の失敗後発生 ○○(大名)侍大将を混乱させよ 各武士 町 5 − - ××(館・屋敷)が危ない 蛮族 館・屋敷 6 味方を護るべし − 密かに殺せ 各武士 町 3 何者にも気付かれるべからず − ××(場所)の○○(大名)兵を消せ 各武士 森・谷 4-7 − − 空腹の○○勢を襲え 各武士 町・街 6 − − 空腹の○○勢を楽にしてやる 各武士 街 2 − − ○○(大名)の精鋭を叩け 用心棒 館・谷 9 − − 最強部隊を叩け 用心棒 館 11-12 − − 無謀なる挑戦 用心棒 館 10 − − 蛮族大量発生 蛮族 谷 9 - - 暴れ熊一家から民を守れ 熊 町 11 味方を護るべし − おぬしへの恨み 蛮族 館 5 - 低御蓮時に発生、報酬0文 おぬしとわしの再出発 各武士 町 8 - 低御蓮時に発生 誠意という語を知っているか 熊 森 9 - 全勢力低御蓮時に発生 偵察任務 任務名 対象 場所 難易度 特約 メモ 町で暴れまわれ 各武士 町 1 より多く殺すべし - ○○陣営は何している 各武士 砦 3 何者も殺めるべからず - 森林浴 蛮族 暗鬼の森 1 − 御蓮60以上 御百度を踏め - 谷 1 - 任務失敗で派生 探れ、宇高多城 一条軍 宇高多城 7 何者にも気づかれるべからず 4章のみ? 双胎楼偵察 貞女 双胎楼 6 - ○○勢を陽動せよ 各勢力 館 1 より多く殺すべし - 到達任務 任務名 対象 場所 難易度 特約 メモ 泥棒任務 任務名 対象 場所 難易度 特約 メモ 商人○○屋より書類を失敬 金庫 屋敷 3 - − 傭兵目録を欲す 文箱 屋敷 1-3 − 侍大将危険時出現 誤った書状を回収せよ 文箱 館 2 5分以内に終わらせるべし − わしの書物 文箱 館 2 何者にも気付かれるべからず − 金になる文書 文箱 屋敷 8 - - 敵陣より米俵を盗み出せ 米俵 館 4 より多く入手すべし − 商人家より米を拝借 米俵 館 5 何者にも気づかれるべからず − ○○(大名)本陣より米俵を盗み出せ 米俵 城・楼 10-15 より多く入手すべし − 隠し米を捜しだせ 米俵 谷 3 より多く入手すべし - ○○(大名)から大金をせしめよ 金庫 谷 6 より多く入手すべし 金欠時発生 豪商の隠し財産 金庫 館 7 何者にも気付かれるべからず − 一条の宝 宝箱 宇高多城 12 - 光る石獲得可能 わしの兵糧を返せ 米俵 砦 10 より多く入手すべし 米俵を奪った後派生 わしの金じゃ 金庫 砦 10 より多く入手すべし 金庫を奪った後派生 わしの金を盗み出せ 金庫 不動城 8 何者にも気づかれるべからず 赤目を殺害可能 奉公の誓書 文箱 館 6 - - ○○○の○○○ 設計図・奥義書 双胎楼・宇高多城 10 - - 一条の赤裸々日記 文箱 宇高多城 14 - - 誘拐任務 任務名 対象 場所 難易度 特約 メモ 町娘を誘拐せよ 町娘 町・街・屋敷 7 − − ○○(大名)の間近より姫を連れ去れ 姫 宇高多城・双胎楼 16-17 − − ○○(大名)ゆかりの姫君をさらえ 姫 屋敷 10 − − ○○(大名)ゆかりの姫君をお呼びせよ 姫 屋敷 11-12 − − 商人○○屋に御足労願え 商人 屋敷 5 何者も殺めるべからず − やり手商人○○屋を誘拐せよ 商人 館 9 − 金欠時発生 ○○(大名)お抱えの○○屋をさらえ 商人 館・屋敷 11 − − 迷子の密偵娘 娘 森 1 − 赤目の任務失敗で発生 侍大将を誘い出せ 娘 砦 8 − 敵大将暗殺失敗時に発生 ○○砦の士気を落とす 町娘 砦 10 − − 輸送任務 任務名 対象 場所 難易度 特約 メモ 密かに書状を輸送せよ 文箱 谷 1 何者にも気付かれるべからず − やらかしてもうた 文箱 館 1 何者にも気付かれるべからず − ○○(大名)の悪口 文箱 町 4 何者にも気付かれるべからず − 運べ!○○(奥義書・設計図) 文箱 町・館・峠 2-5 − 敵勢力に強奪任務派生 足止め 文箱 砦 6 − 赤目侍大将が窮地で発生 脅迫状の送達 文箱 木阿弥砦 8 - 「貞女ゆかりの姫君をお呼びせよ」成功後に発生(連鎖任務?) 金を届けて戦力を削ぐ 金庫 館 13 何者も殺めるべからず − 金庫を輸送せよ 金庫 町・峠 7 五分以内に終えるべし − 包囲を突破せよ 米俵 町 1 − − 連作任務 任務名 種類 敵 場所 難易度 メモ まずは、商人に接近 警護 貞女・一条 館 5 - つづいて、大金が消える 泥棒 貞女・一条 館 7 -
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紅雲//月下美人//慧音(人間)-慧音(人間)-レミリア-慧音(妖怪)- IMZ//demonbaneF//霧雨 魔理沙-霧雨 魔理沙-博麗 霊夢-博麗 霊夢- IMZがデッキをロードし、ニューゲームが始まりました。 紅雲の呪力は今1(+1)です。 賽が投げられて、紅雲の先攻になった。 IMZ 請多指教˙˙ 紅雲 多多指教=w= 紅雲の呪力は今0(-1)です。 配置:未来「高天原」 Turn 2 - IMZ//体力20( 20) 呪力1( 0) 手札7( 6) 山33( 34) スペル0( 1) 配置:恋符「マスタースパーク」 Turn 3 - 紅雲//体力20( 20) 呪力2( 1) 手札6( 6) 山33( 33) スペル1( 1) 手札:隠蔽//禁弾「過去を刻む時計」//月下美人//転世「一条戻り橋」//天罰「スターオブダビデ」//三種の神器// 配置:禁弾「過去を刻む時計」 Turn 4 - IMZ//体力20( 20) 呪力3( 2) 手札7( 5) 山32( 33) スペル1( 2) 配置:神技「八方鬼縛陣」 Turn 5 - 紅雲//体力20( 20) 呪力5( 3) 手札6( 6) 山32( 32) スペル2( 2) 手札:隠蔽//月下美人//転世「一条戻り橋」//天罰「スターオブダビデ」//三種の神器//頭突き// イベント(紅雲):隠蔽 紅雲 ? IMZ 怎麼丟啊 IMZ 無作為 之後自丟? 紅雲 無作為一張,自選一張 IMZはピンポイントを無作為に捨てました。 IMZは妖怪退治を手札から捨てました。 IMZ ˊˋ 紅雲は隠蔽を場から捨札に送りました。 配置:天罰「スターオブダビデ」 起動:天罰「スターオブダビデ」 Turn 6 - IMZ//体力20( 20) 呪力6( 1) 手札5( 4) 山31( 32) スペル2( 3) 配置:魔空「アステロイドベルト」 IMZは妖怪退治をIMZのリーダーにつけました。 Turn 7 - 紅雲//体力20( 20) 呪力4( 1) 手札5( 3) 山31( 31) スペル3( 3) 手札:月下美人//転世「一条戻り橋」//三種の神器//頭突き//頭突き// 戦闘:紅雲 - 天罰「スターオブダビデ」(相手スルー) 結果:紅雲 - === 2 dmg - IMZ 配置:転世「一条戻り橋」 Turn 8 - IMZ//体力18( 20) 呪力5( 4) 手札4( 4) 山30( 31) スペル3( 4) 配置:光撃「シュート・ザ・ムーン」 起動:神技「八方鬼縛陣」 Turn 9 - 紅雲//体力20( 18) 呪力8( 2) 手札5( 3) 山30( 30) スペル4( 4) 手札:月下美人//三種の神器//頭突き//頭突き//転世「一条戻り橋」// イベント(紅雲):頭突き 紅雲は頭突きを場から捨札に送りました。 戦闘:紅雲 - 天罰「スターオブダビデ」(相手スルー) 結果:紅雲 - === 2 dmg - IMZ 配置:転世「一条戻り橋」 紅雲は月下美人を紅雲のリーダーにつけました。 紅雲は三種の神器を紅雲の未来「高天原」につけました。 Turn 10 - IMZ//体力16( 20) 呪力6( 3) 手札4( 1) 山29( 30) スペル4( 5) IMZ 倒數計時...慘 戦闘:IMZ - 神技「八方鬼縛陣」 vs 天罰「スターオブダビデ」 - 紅雲 結果:IMZ - Dmg 0 3 Dmg - 紅雲 配置:光撃「シュート・ザ・ムーン」 起動:神技「八方鬼縛陣」 Turn 11 - 紅雲//体力17( 16) 呪力9( 3) 手札2( 3) 山29( 29) スペル5( 5) 手札:頭突き//月下美人// 起動:未来「高天原」 IMZ 等等...剛才好向應該打4 紅雲 月下 IMZ 咦..手牌好少ˊˋ 紅雲 =w= 起動:転世「一条戻り橋」 Turn 12 - IMZ//体力16( 17) 呪力8( 0) 手札4( 2) 山28( 29) スペル5( 5) IMZ 不...我要強慾之壺 紅雲 禁弾效果 紅雲は月下美人を手札から捨てました。 戦闘:IMZ - 神技「八方鬼縛陣」 vs 転世「一条戻り橋」 - 紅雲 結果:IMZ - Dmg 1 3 Dmg - 紅雲 起動:神技「八方鬼縛陣」 Turn 13 - 紅雲//体力14( 15) 呪力5( 5) 手札2( 4) 山28( 28) スペル5( 5) 手札:頭突き//なかったことに// イベント(紅雲):頭突き 紅雲は頭突きを場から捨札に送りました。 IMZ ...NO,抽就這張嗎ˊˋ 紅雲 pass? IMZ 思考 戦闘:紅雲 - 未来「高天原」(相手スルー) 結果:紅雲 - === 5 dmg - IMZ 起動:転世「一条戻り橋」 Turn 14 - IMZ//体力10( 14) 呪力10( 0) 手札5( 1) 山27( 28) スペル5( 5) 戦闘:IMZ - 神技「八方鬼縛陣」 vs 転世「一条戻り橋」 - 紅雲 結果:IMZ - Dmg 1 3 Dmg - 紅雲 起動:光撃「シュート・ザ・ムーン」 Turn 15 - 紅雲//体力11( 9) 呪力5( 6) 手札2( 5) 山27( 27) スペル5( 5) 手札:なかったことに//プレインエイジア// 戦闘:紅雲 - 未来「高天原」 vs 光撃「シュート・ザ・ムーン」 - IMZ イベント(IMZ):疾風怒濤 IMZは陰陽玉を手札から捨てました。 IMZは疾風怒濤を場から捨札に送りました。 結果:紅雲 - Dmg 2 回避 - IMZ 紅雲 忘了掉……囧 IMZ 掉? 紅雲 禁弾 IMZ 哦..XD 起動:未来「高天原」 Turn 16 - IMZ//体力9( 9) 呪力7( 0) 手札4( 2) 山26( 27) スペル5( 5) 紅雲はなかったことにを手札から捨てました。 戦闘:IMZ - 光撃「シュート・ザ・ムーン」 vs 未来「高天原」 - 紅雲 IMZ 咦,首牌什麼時候少1的 IMZ 哦沒試 結果:IMZ - Dmg 2 4 Dmg - 紅雲 配置:大結界「博麗弾幕結界」 紅雲の呪力が+1 (1) IMZ 啊..對哦 起動:大結界「博麗弾幕結界」 Turn 17 - 紅雲//体力5( 7) 呪力7( 3) 手札2( 3) 山26( 26) スペル5( 6) 手札:プレインエイジア//新史「新幻想史 -ネクストヒストリー-」// 配置:新史「新幻想史 -ネクストヒストリー-」 起動:未来「高天原」 Turn 18 - IMZ//体力7( 5) 呪力9( 2) 手札4( 1) 山25( 26) スペル6( 6) 戦闘:IMZ - 大結界「博麗弾幕結界」(相手スルー) 結果:IMZ - === 2 dmg - 紅雲 配置:神技「八方鬼縛陣」 起動:光撃「シュート・ザ・ムーン」 Turn 19 - 紅雲//体力3( 7) 呪力8( 5) 手札2( 3) 山25( 25) スペル6( 7) 手札:プレインエイジア//歴史喰い// イベント(IMZ):問答無用 紅雲はプレインエイジアを手札から捨てました。 IMZは問答無用を場から捨札に送りました。 IMZ 可+1 紅雲の呪力が+1 (9) 戦闘:紅雲 - 未来「高天原」 vs 大結界「博麗弾幕結界」 - IMZ 紅雲の呪力は今8(-1)です。 IMZ 咦咦...難道還能攻+1 紅雲 不能……OTZ 結果:紅雲 - Dmg 2 6 Dmg - IMZ 起動:未来「高天原」 紅雲は歴史喰いをIMZのリーダーにつけました。 Turn 20 - IMZ//体力1( 1) 呪力10( 1) 手札3( 0) 山24( 25) スペル7( 6) 紅雲 lost www IMZ 我能充填馬上丟嗎@@ 紅雲 yes IMZ 那樣就不會下去了哦 紅雲 所以我lost www IMZ 呼..差點 紅雲 來一張隠蔽or改竄就勝了www IMZ 對哦 改竄就OWATA 紅雲 玩完這回吧 IMZ 好險 IMZは陰陽玉を手札から捨てました。 IMZの呪力が-1 (9) IMZの呪力が-1 (8) IMZの呪力が-1 (7) IMZの呪力が-1 (6) IMZの呪力が-1 (5) IMZ 我沒法丟? 紅雲は歴史喰いを場から捨札に送りました。 戦闘:IMZ - 光撃「シュート・ザ・ムーン」 vs 未来「高天原」 - 紅雲 結果:IMZ - Dmg 2 4 Dmg - 紅雲 紅雲 lost
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紅雲//幻想の神風//東風谷 早苗-洩矢 諏訪子-八坂 神奈子-射命丸 文- 田之上//上白沢慧音//慧音(人間)-慧音(人間)-慧音(妖怪)-慧音(妖怪)- 田之上は山札をシャッフルしました。 賽が投げられて、紅雲の先攻になった。 田之上 どぞ 配置:風符「風神一扇」 Turn 2 - 田之上//体力20( 19) 呪力1( 1) 手札7( 6) 山33( 34) スペル0( 1) タイマー00 01(00 05) 配置:産霊「ファーストピラミッド」 Turn 3 - 紅雲//体力19( 20) 呪力3( 1) 手札6( 6) 山33( 33) スペル1( 1) タイマー00 05(00 06) 手札:パワーアップ//準備「神風を喚ぶ星の儀式」//疾風招来//フェムトファイバーの組紐//奇跡 -乾-//神遊び// 配置:準備「神風を喚ぶ星の儀式」 Turn 4 - 田之上//体力20( 19) 呪力3( 3) 手札7( 5) 山32( 33) スペル1( 2) タイマー00 05(00 09) 配置:倭符「邪馬台の国」 起動:産霊「ファーストピラミッド」 Turn 5 - 紅雲//体力19( 20) 呪力6( 2) 手札6( 6) 山32( 32) スペル2( 2) タイマー00 07(00 13) 手札:パワーアップ//疾風招来//フェムトファイバーの組紐//奇跡 -乾-//神遊び//神祭「エクスパンデッド・オンバシラ」// 配置:神祭「エクスパンデッド・オンバシラ」 紅雲はフェムトファイバーの組紐を田之上のリーダーにつけました。 Turn 6 - 田之上//体力20( 19) 呪力4( 3) 手札7( 4) 山31( 32) スペル2( 3) タイマー00 11(00 16) 配置:転世「一条戻り橋」 田之上 考えます 紅雲 dz Ping sent. Turn 7 - 紅雲//体力19( 20) 呪力7( 4) 手札5( 6) 山31( 31) スペル3( 3) タイマー00 13(01 34) 手札:パワーアップ//疾風招来//奇跡 -乾-//神遊び//疾風招来// 起動:準備「神風を喚ぶ星の儀式」 Turn 8 - 田之上//体力20( 19) 呪力7( 2) 手札7( 5) 山30( 31) スペル3( 3) タイマー01 31(00 23) 配置:倭符「邪馬台の国」 起動:転世「一条戻り橋」 田之上は三種の神器を田之上の転世「一条戻り橋」につけました。 Turn 9 - 紅雲//体力19( 20) 呪力5( 2) 手札6( 5) 山30( 30) スペル3( 4) タイマー00 19(02 09) 手札:パワーアップ//疾風招来//奇跡 -乾-//神遊び//疾風招来//準備「神風を喚ぶ星の儀式」// 戦闘:紅雲 - 準備「神風を喚ぶ星の儀式」 vs 産霊「ファーストピラミッド」 - 田之上 紅雲は疾風招来を手札から捨てました。 結果:紅雲 - Dmg 0 5 Dmg - 田之上 あげ@OBが観戦を始めました。 配置:準備「神風を喚ぶ星の儀式」 起動:風符「風神一扇」 Turn 10 - 田之上//体力15( 19) 呪力6( 4) 手札6( 4) 山29( 30) スペル4( 4) タイマー02 07(00 36) 戦闘:田之上 - 転世「一条戻り橋」 vs 風符「風神一扇」 - 紅雲 田之上は三種の神器の1番目の特殊能力を使いました。 田之上は三種の神器の『攻撃UP』を選択しました。 結果:田之上 - Dmg 1 5 Dmg - 紅雲 配置:転世「一条戻り橋」 起動:転世「一条戻り橋」 Turn 11 - 紅雲//体力14( 14) 呪力9( 1) 手札5( 5) 山29( 29) スペル4( 5) タイマー00 32(02 29) 手札:パワーアップ//疾風招来//奇跡 -乾-//神遊び//奇跡「白昼の客星」// 配置:奇跡「白昼の客星」 起動:風符「風神一扇」 起動:準備「神風を喚ぶ星の儀式」 Turn 12 - 田之上//体力14( 14) 呪力6( 3) 手札6( 4) 山28( 29) スペル5( 5) タイマー02 22(00 58) 戦闘:田之上 - 転世「一条戻り橋」 vs 風符「風神一扇」 - 紅雲 結果:田之上 - Dmg 1 4 Dmg - 紅雲 起動:転世「一条戻り橋」 起動:産霊「ファーストピラミッド」 Turn 13 - 紅雲//体力10( 13) 呪力8( 1) 手札5( 6) 山28( 28) スペル5( 5) タイマー00 44(03 20) 手札:パワーアップ//疾風招来//奇跡 -乾-//神遊び//幻想入り// Ping sent. 戦闘:紅雲 - 準備「神風を喚ぶ星の儀式」 vs 産霊「ファーストピラミッド」 - 田之上 紅雲は幻想入りを手札から捨てました。 結果:紅雲 - Dmg 0 5 Dmg - 田之上 起動:準備「神風を喚ぶ星の儀式」 起動:奇跡「白昼の客星」 Turn 14 - 田之上//体力8( 10) 呪力6( 1) 手札7( 4) 山27( 28) スペル5( 5) タイマー02 44(02 07) 田之上 死ぬ……w 紅雲 w 戦闘:田之上 - 転世「一条戻り橋」 vs 奇跡「白昼の客星」 - 紅雲 イベント(田之上):パターン避け 田之上はパターン避けを場から捨札に送りました。 結果:田之上 - 回避 4 Dmg - 紅雲 配置:新史「新幻想史 -ネクストヒストリー-」 Turn 15 - 紅雲//体力6( 8) 呪力6( 3) 手札5( 5) 山27( 27) スペル5( 6) タイマー01 23(04 12) 手札:パワーアップ//疾風招来//奇跡 -乾-//神遊び//魔獣「鎌鼬ベーリング」// イベント(田之上):霊撃 田之上は霊撃を場から手札に戻しました。 紅雲 えw イベント(田之上):隠蔽 紅雲は神遊びを無作為に捨てました。 - 隠蔽 紅雲は魔獣「鎌鼬ベーリング」を手札から捨てました。 田之上は隠蔽を場から捨札に送りました。 田之上の呪力が+1 (-1) 田之上の呪力が+1 (0) 紅雲 MP- 戦闘:紅雲 - 準備「神風を喚ぶ星の儀式」(相手スルー) 対象や使用条件が不正なため、使うことができません。 対象や使用条件が不正なため、使うことができません。 紅雲はパワーアップを手札から捨てました。 田之上 ん 田之上 押せなくなったw 紅雲 w 結果:紅雲 - === 5 dmg - 田之上 田之上 押せた 起動:神祭「エクスパンデッド・オンバシラ」 オートドローがスキップされました。 Turn 16 - 田之上//体力3( 6) 呪力6( 4) 手札4( 2) 山27( 27) スペル6( 5) タイマー03 32(03 38) 田之上はリーダーを慧音(妖怪)・上白沢 慧音に設定しました。 戦闘:田之上 - 転世「一条戻り橋」 vs 準備「神風を喚ぶ星の儀式」 - 紅雲 紅雲は疾風招来を手札から捨てました。 田之上 だよなあ…… 紅雲 あw 田之上 え? 紅雲 いえ、 紅雲 dz 田之上は三種の神器の1番目の特殊能力を使いました。 田之上は三種の神器の『攻撃UP』を選択しました。 イベント(田之上):霊撃 田之上は霊撃を場から捨札に送りました。 結果:田之上 - Dmg 2 6 Dmg - 紅雲 紅雲 乙ー 田之上 おつ 田之上 なにもなかったw 紅雲 神www器www 田之上 侵略でも奇跡でも新出たのに 紅雲は奇跡 -乾-を手札から捨てました。 田之上 死んでた 田之上 え 田之上 あ、そうか 紅雲 手☆が 田之上 手札ww 紅雲 ではーw 紅雲 ノシ 田之上 ノシ
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こっち2//奇襲作戦No.4 ~肉弾戦//八雲 紫-紅 美鈴-紅 美鈴-小野塚 小町- ナミビアの泉//ムーンライトホーン//慧音(人間)-レミリア-慧音(妖怪)-伊吹 萃香- こっち2は山札をシャッフルしました。 賽が投げられて、こっち2の先攻になった。 ナミビアの泉がデッキ(2e83a111)をロードし、ニューゲームが始まりました。 ナミビアの泉は山札をシャッフルしました。 ナミビアの泉 dz こっち2 では 配置:光符「華光玉」 Turn 2 - ナミビアの泉//体力20( 21) 呪力1( 1) 手札7( 6) 山33( 34) スペル0( 1) 配置:産霊「ファーストピラミッド」 Turn 3 - こっち2//体力21( 20) 呪力3( 1) 手札6( 6) 山33( 33) スペル1( 1) 手札:シエスタ//式神「八雲藍」//彩華「虹色太極拳」//式神「八雲藍」//肉弾戦//シエスタ// 配置:式神「八雲藍」 Turn 4 - ナミビアの泉//体力20( 21) 呪力3( 3) 手札7( 5) 山32( 33) スペル1( 2) 配置:転世「一条戻り橋」 Turn 5 - こっち2//体力21( 20) 呪力6( 3) 手札6( 6) 山32( 32) スペル2( 2) 手札:シエスタ//彩華「虹色太極拳」//式神「八雲藍」//肉弾戦//シエスタ//明治十七年の上海アリス// 配置:彩華「虹色太極拳」 起動:彩華「虹色太極拳」 Turn 6 - ナミビアの泉//体力20( 21) 呪力6( 2) 手札7( 5) 山31( 32) スペル2( 3) 配置:必殺「ハートブレイク」 起動:産霊「ファーストピラミッド」 Turn 7 - こっち2//体力21( 20) 呪力5( 5) 手札6( 6) 山31( 31) スペル3( 3) 手札:シエスタ//式神「八雲藍」//肉弾戦//シエスタ//明治十七年の上海アリス//彩翔「飛花落葉」// 戦闘:こっち2 - 彩華「虹色太極拳」 vs 産霊「ファーストピラミッド」 - ナミビアの泉 結果:こっち2 - Dmg 2 3 Dmg - ナミビアの泉 こっち2の体力が+1 (20) - 彩華「虹色太極拳」 こっち2の体力が-1 (19) 配置:彩翔「飛花落葉」 起動:彩華「虹色太極拳」 Turn 8 - ナミビアの泉//体力17( 19) 呪力9( 1) 手札7( 5) 山30( 31) スペル3( 4) ナミビアの泉 いや、20で合ってると こっち2 攻撃側から処理するはずなので こっち2 いや、いいのか ナミビアの泉 相手リーダーの体力が20点以上の場合 ナミビアの泉 ですから ナミビアの泉 あ ナミビアの泉 いえ ナミビアの泉 合ってました ナミビアの泉 すいません こっち2 dsyn 配置:新史「新幻想史 -ネクストヒストリー-」 起動:転世「一条戻り橋」 起動:新史「新幻想史 -ネクストヒストリー-」 Turn 9 - こっち2//体力19( 17) 呪力5( 0) 手札6( 6) 山30( 30) スペル4( 4) 手札:シエスタ//式神「八雲藍」//肉弾戦//シエスタ//明治十七年の上海アリス//光符「華光玉」// 戦闘:こっち2 - 彩華「虹色太極拳」 vs 転世「一条戻り橋」 - ナミビアの泉 結果:こっち2 - Dmg 2 3 Dmg - ナミビアの泉 こっち2の体力が+1 (18) - 彩華「虹色太極拳」 配置:式神「八雲藍」 起動:彩翔「飛花落葉」 起動:彩華「虹色太極拳」 Turn 10 - ナミビアの泉//体力14( 18) 呪力4( 0) 手札7( 5) 山29( 30) スペル4( 5) 戦闘:ナミビアの泉 - 新史「新幻想史 -ネクストヒストリー-」 vs 彩翔「飛花落葉」 - こっち2 結果:ナミビアの泉 - Dmg 0 4 Dmg - こっち2 ナミビアの泉はリーダーを慧音(妖怪)・上白沢 慧音に設定しました。 起動:転世「一条戻り橋」 Turn 11 - こっち2//体力14( 14) 呪力5( 0) 手札6( 7) 山29( 29) スペル5( 4) 手札:シエスタ//肉弾戦//シエスタ//明治十七年の上海アリス//光符「華光玉」//肉弾戦// 戦闘:こっち2 - 彩華「虹色太極拳」 vs 転世「一条戻り橋」 - ナミビアの泉 結果:こっち2 - Dmg 2 3 Dmg - ナミビアの泉 こっち2の体力が+1 (13) - 彩華「虹色太極拳」 配置:光符「華光玉」 起動:彩華「虹色太極拳」 Turn 12 - ナミビアの泉//体力11( 13) 呪力5( 1) 手札8( 5) 山28( 29) スペル4( 6) 配置:包符「昭和の雨」 起動:転世「一条戻り橋」 Turn 13 - こっち2//体力13( 11) 呪力7( 1) 手札6( 7) 山28( 28) スペル6( 5) 手札:シエスタ//肉弾戦//シエスタ//明治十七年の上海アリス//肉弾戦//明治十七年の上海アリス// 戦闘:こっち2 - 彩華「虹色太極拳」 vs 転世「一条戻り橋」 - ナミビアの泉 結果:こっち2 - Dmg 2 3 Dmg - ナミビアの泉 こっち2の体力が+1 (12) - 彩華「虹色太極拳」 起動:彩華「虹色太極拳」 Turn 14 - ナミビアの泉//体力8( 12) 呪力7( 3) 手札8( 6) 山27( 28) スペル5( 6) 起動:転世「一条戻り橋」 ナミビアの泉は三種の神器をナミビアの泉の転世「一条戻り橋」につけました。 Turn 15 - こっち2//体力12( 8) 呪力9( 2) 手札7( 7) 山27( 27) スペル6( 5) 手札:シエスタ//肉弾戦//シエスタ//明治十七年の上海アリス//肉弾戦//明治十七年の上海アリス//肉弾戦// 戦闘:こっち2 - 彩華「虹色太極拳」 vs 転世「一条戻り橋」 - ナミビアの泉 ナミビアの泉は三種の神器の1番目の特殊能力を使いました。 ナミビアの泉は三種の神器の『迎撃UP』を選択しました。 結果:こっち2 - Dmg 3 3 Dmg - ナミビアの泉 こっち2の体力が+1 (10) - 彩華「虹色太極拳」 起動:彩華「虹色太極拳」 Turn 16 - ナミビアの泉//体力5( 10) 呪力7( 5) 手札8( 7) 山26( 27) スペル5( 6) 起動:転世「一条戻り橋」 起動:包符「昭和の雨」 Turn 17 - こっち2//体力10( 5) 呪力11( 0) 手札8( 8) 山26( 26) スペル6( 5) 手札:シエスタ//肉弾戦//シエスタ//明治十七年の上海アリス//肉弾戦//明治十七年の上海アリス//肉弾戦//明治十七年の上海アリス// 戦闘:こっち2 - 彩華「虹色太極拳」 vs 転世「一条戻り橋」 - ナミビアの泉 結果:こっち2 - Dmg 2 3 Dmg - ナミビアの泉 こっち2の体力が+1 (9) - 彩華「虹色太極拳」 起動:彩華「虹色太極拳」 こっち2はシエスタを手札から捨てました。 Turn 18 - ナミビアの泉//体力2( 9) 呪力5( 7) 手札9( 7) 山25( 26) スペル5( 6) イベント(こっち2):シエスタ こっち2は明治十七年の上海アリスを手札から捨てました。 こっち2はシエスタを場から捨札に送りました。 ナミビアの泉は威厳を手札から捨てました。 Turn 19 - こっち2//体力9( 2) 呪力8( 5) 手札6( 8) 山25( 25) スペル6( 5) 手札:肉弾戦//肉弾戦//明治十七年の上海アリス//肉弾戦//明治十七年の上海アリス//香霖堂// イベント(ナミビアの泉):頭突き ナミビアの泉は頭突きを場から捨札に送りました。 イベント(ナミビアの泉):頭突き ナミビアの泉は頭突きを場から捨札に送りました。 こっち2は肉弾戦を手札から捨てました。 こっち2は肉弾戦を手札から捨てました。 こっち2は肉弾戦を手札から捨てました。 こっち2は明治十七年の上海アリスを手札から捨てました。 戦闘:こっち2 - 彩華「虹色太極拳」 vs 包符「昭和の雨」 - ナミビアの泉 結果:こっち2 - Dmg 1 3 Dmg - ナミビアの泉 こっち2の体力が+1 (9) - 彩華「虹色太極拳」 こっち2 ありがとうございましたー ナミビアの泉 ありがとうございましたー ナミビアの泉 サポートこんなにいらない こっち2 うわぁ・・・ ナミビアの泉 すわぁ・・ こっち2 こっちはむしろスペサポが欲しかった ナミビアの泉は山札を丸ごと見ました。 ナミビアの泉は山札をシャッフルしました。 ナミビアの泉は山札を見るのをやめて、山札をシャッフルしました。 こっち2 肉弾上海アリス3なのにスペサポ0w ナミビアの泉 www ナミビアの泉 こっちはスペルがこないから呪力が足りない ナミビアの泉 そもそも受けが戻り橋は重い>< こっち2 普通に受けファーストピラミッド ナミビアの泉 当たらないwwww こっち2 ? ナミビアの泉 あー こっち2 当たりますよ? ナミビアの泉 拡散だと思ってたら ナミビアの泉 集中だったorz こっち2 >< ナミビアの泉 では、戻りますorz こっち2 はいー こっち2 ノシ ナミビアの泉 ノシ
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宝 地区 コスト 宝 備考 19-1 12 (神器) 無双・白煙土グモ 無双・群雲イタチ ぬえ 19-2 12 白腹だるま 黒焔車 輪入道 ぬえ 19-3 12 (神器) 白骨鬼 うわばみ 輪入道 19-4 12 白腹だるま 白骨鬼 無双・群雲イタチ 輪入道 【ボス】貴人 20-1 12 (神器) 無双・白煙土グモ 無双・群雲イタチ 大首 20-2 12 白骨鬼 黒焔車 大首 ぬえ 20-3 12 (神器) 白骨鬼 黒焔車 陰魔羅鬼 20-4 12 無双・白煙土グモ 黒焔車 うわばみ 大首 【ボス】貴人 21-1 13 (神器) 無双・白煙土グモ うわばみ 大首 21-2 13 ぬえ 大玉ねずみ 無双・闇首 大首 21-3 13 (神器) 大玉ねずみ うわばみ 陰魔羅鬼 21-4 13 無双・白煙土グモ 大玉ねずみ 無双・闇首 陰魔羅鬼 【ボス】貴人 【報酬】(式神)貴人 関連式神 属性 名称 ヨミ レア度 最大Lv 召喚コスト 初期能力 能力MAX 単位能力 成長傾向 奥義 売却価格 備考 攻 防 攻 防 攻 防 攻 防 名称 効果 闇 水虎 スイコ ★★★ 40 13 2400 2300 5600 5900 430 453 平均 平均 - - 2200 【神器】破魔矢コンプ 幻 貴人 キジン ★★★ 40 13 2700 2100 6500 5500 500 423 平均 平均 - - 2700 【討伐】地区21クリア
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「父さんが教えてくれた正義を、僕はこの力で貫くんだ!」 パーソナルデータ http //dragoncage.upper.jp/parabura/hero_list/list.cgi?id=529 mode=show 他キャラクターとの関係(同行5回↑、もしくはPC設定や性格・考え方に変化を及ぼした場合) 名前 呼び方 関係 コメント 本庄 吹雪 吹雪さん 恋人 あなたが好きです。あなたを支えるために、僕は強くなる。 比平木 正子 正子さん 仲間 パワフルでおいしそうなにおいのする人。頼りになります。 セッション履歴 回数 日付 タイトル 経験 GM 参加者 01 2012/11/19 山中に轟くtake5 Lv1-2 160/20 大海さん 一条 雷、闇上 貴志、小山田 有信 02 2012/11/25 一体何がしたいんだ!【2-3】 190/20 のなさん 霧島 憐、本庄 吹雪、比平木 正子、高峰 晴 03 2012/11/30 「悪魔憑き講習会」Lv2-3 180/30 Hornetさん 本庄吹雪、霧島憐、星野綺羅、比平木正子 04 2012/12/8 『永遠に美しく Take5』 Lv2-3 160/38 真夜さん 比良坂 夜月、一条 九朔、翠川 こいし、坂上 鈴鹿 05 2012/12/20 「我が都は海の上 Take2」Lv4-5 170/55 Hornetさん ブルー、狩羽鈴音、氷堂蒼真 06 2012/12/22 動物からの頼みごと LV4-5 160/66 木の人さん 九頭龍 梅、ステイン、比平木 正子、初野 メイ 07 2012/12/28 地獄極楽、おいでませ!【4-5】 150/31 音怨テト羅さん エリー、本庄 吹雪、比平木 正子、空見 叶 08 2013/1/4 鋼鉄の咆哮2080【5-6】 180/0 のなさん 新橋 輝美、焔心 進、リア、山縣 八千代 09 2013/1/14 「秘密の宝石屋さん」Lv4-5 190/50 Hornetさん 刃霧 悠悟、片霧 耕哉、翠川 こいし 10 2013/2/19~20 LV5-6 殲滅戦 take2 180/232 両生金魚さん ステイン、氷堂 蒼真、辻森 斗真、平賀 司 11 2013/2/24 釣・ザ・王!【5-6】 150/260 音怨テト羅さん 本庄 吹雪、近松 見星、狐塚 深尋、ウィーバー・ルー 12 2013/4/26 LV5-6 「この戦いに正義はない-そこにあるのは… 110/106 万真さん 四阿 小刀祢、初野 メイ、氷堂 蒼真、不蓮陀 13 2013/4/29 秘密の花園潜入作戦!【5-6】 150/46 音怨テト羅さん 川村 寿々、一条 九朔、皆守 衛、四阿 小刀祢 14 2013/6/29 ねこねこ大作戦!take2! 【5-6】 150/114 音怨テト羅さん 比平木 正子、本庄 吹雪、獅子 歩姫、一条 雷 15 2013/8/31 「a longest day」LV5-6 130/68 トロさん 天城 燐火、狐塚 千歳、刃霧 悠悟 16 2013/12/22 「僕らの季節」 Lv6 150/180 コオロさん 青空 太陽、白玖、不蓮陀、闇上 貴志 17 2014/9/12 「這い寄る恐怖 リテイク!」 Lv7 130/134 コオロさん 氷堂 蒼真、リア 18 2014/ / / さん 同行履歴 5回 比平木 正子、本庄 吹雪 4回 氷堂 蒼真 3回 2回 一条 雷、一条 九朔、初野 メイ、霧島 憐、ステイン、刃霧 悠悟、不蓮陀、翠川 こいし、闇上 貴志、四阿 小刀祢、リア 1回 青空 太陽、天城 燐火、ウィーバー・ルー、エリー、焔心 進、小山田 有信、片霧 耕哉、狩羽鈴音、川村 寿々、九頭龍 梅、狐塚 千歳、狐塚 深尋、坂上 鈴鹿、獅子 歩姫、空見 叶、高峰 晴、近松 見星、辻森 斗真、新橋 輝美、白玖、平賀 司、比良坂 夜月、ブルー、星野 綺羅、皆守 衛、山縣 八千代 投入GMP
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(5) 今、二つの熾烈な戦いの内の一つに、終止符が打たれようとしている。 ようやく空を濁らせていた暗雲が消え、青い空が覗く。そんな清々しい青空と、燦然と輝く太陽の元で、二人の男が対峙する。 一人は、手元に握っている拳銃の銃身を変形させ、剣の様な形状にすると共に、銃口からビームによって成形された刃を放出させている白いスーツの男、ハクタカ。 そしてもう一人は、鍛え上げられ、完成された筋肉を赤いスーツ越しに誇示する、己の拳のみを武器とする男、シロガネマッスル。 二人の距離は遠からずも近からず。しかし互いに踏み込めば即座に、戦闘状態となる。なのだがどちらも、自ら踏み込んでこようとはしない、 荒野で相手が振り向くのを待っているガンマン同士の如く。鞘から刀を抜き、隙あらば一刀両断せんとする武士の如く。 先に動いた時点で、勝負が決まる。そう考えている為か、ハクタカもマッスルも、自ら動こうとはしない。 ただ、睨み合う。睨み合い、仇が先に動くのを待つ。――――――――そうして、息が詰まりそうな膠着状態へと陥る、手前。 その空気を切り裂く様に、ハクタカの方が先に動いた。手元の拳銃を逆手に持ち変える。大きく踏み込んで、駆け出す。 『――――――参る』 そう呟きながら、ハクタカは正面からマッスルへと向かってくる。拳銃を持っている右腕を伸ばして、右方へと反らしながら。 マッスルは考える。何をしてくるのかと。一番考えられるのは、持っているあの武器で斬りかかってくる、だろうか。 ならば後ろに避けるか? いや……避けるまでもない。 受け止めてやろう。受け止めてその珍妙な武器を潰す。潰すのは拳銃だけじゃない。プライド、矜持、自己。 ハクタカ、その全てを潰してやる。マッスルはヘルメットの中で心の奥底から楽しそうに口の端々を上げて笑う。 笑いを浮かべながら、荒々しく声を上げて、自らも正面から走り出す。 『来い……ハクタカァ!』 ハクタカとマッスルは互いに真正面から衝突する事も辞さない勢いで疾走する。 有利なのはどちらかと言えば、剣の様に変形させた拳銃を持つハクタカの方だ。 刃は稲妻の様にバチバチと光が踊っており、只ならぬ威力を持っていそうだ。それにリーチも長い。 一方、マッスルにはハクタカの様に武器を持ってはいない。 己のプライド、もとい信念により武器を持たず生身で戦う事を好むマッスルにとって、武器なんて無用の長物に過ぎない。 このままぶつかり合えば、間違いなくあの刃で切断される事になる。さて、どうした物か……上空に跳ぶしかないか? と思っていると。 ハクタカは拳銃を逆手持ちから、瞬時に通常の持ち方へと変える。……自分からリーチを短くしてどうする? そう思いながらも、マッスルは内心ほくそ笑む。ならその油断、突かない理由は無い。 『自ら油断を誘うか……』 両足の筋肉を一時的に増幅させる事で、スーツを突き破る程に筋肉を強化し、地を抉り取りながら一気に距離を詰める。 地面に三日月を彷彿とさせる、曲線の傷跡を作りだしながら、マッスルは急接近した。早い、早、過ぎる。 懐へと強襲を掛けてきたマッスルの迅速さに、ハクタカは反応できない。拳銃を振ろうにも刃が届かない、目と鼻の先にまで近づかれてしまった。 『甘いぞ! 小僧!』 マッスルは左手でハクタカの右手を握って身動きを封じる。抵抗させる間も与えず、決定打を与える為に。 右手を固く握りしめて、右腕全体に今までで一番の威力を叩き込む為、有らん限りの力を込める。抵抗を諦めたのか、銃口の刃が儚く消えてゆく。 ハクタカを引き寄せながら上半身を思いっきり捻って、マッスルはハクタカの腹部へと全力でアッパーをぶち込んだ。 『散れっ!』 ―――――――消える。視界も思考も一瞬、プツリと消える。 無意識に、ハクタカの右手から拳銃が落下する。マッスルはぶち込んだ拳を突き上げて、ハクタカを持ちあげる。 決してやわではなく、常人以上に鍛練を積んでいる筈のハクタカの腹筋を直撃したその拳は、メリメリと食いこんで内臓にまで深々とダメージを与え続ける。 完璧な形で腹部に攻撃を食らい、思わずハクタカ、の中の青年は盛大に吐血する。マスクが赤黒く濁って染まる。気持ちの悪い、独特の鉄臭い匂いが充満する 次に襲ってくるのは、のた打ち回りたくなる痛み。身体から内臓という内蔵が飛び出してきそうな位、痛い。だが、ハクタカは堪える。必死に痛みから、耐える。 左手を離して、恐るべき事に右腕だけでマッスルはハクタカを宙へと持ち上げている。巨木の様な剛腕は伊達では無いようだ。このままでは地面に叩きつけられてしまうが……。 ハクタカの目は死んでいない。寧ろ――――――――このチャンスを待っていたかの様に、鋭い眼光を放っている。 『重力……制御』 ハクタカの中の青年がボソリと呟きながら、瞳孔を紅色へと瞬く間に変化させていく。そして。 『起動!』 紅色の瞳孔を眩く発光させて、青年は叫んだ。 ぶら下がっていた下半身を曲げて、両足を振りハクタカはマッスルの腕へと、最初の戦闘時と同じく絡めようとする。 『まだ生きていたか……だが!』 さっきの一撃で沈まなかった事にマッスルは怒号を上げて、右腕を地へと振り下ろす事で、ハクタカにトドメを刺そうとする。 『今度こそ終いだ! 小僧!』 その瞬間を、待っていた。マッスルはハクタカを地面に叩き付けようと、右腕を振り払い、ハクタカを落とす。 が、ハクタカは全身を大きく反らせると、両足を離すと同時に両手を地面に付いて逆立ちする様に着地する。 世界が逆さまに映ったこの瞬間に、反撃の狼煙を、高らかに上げる。形勢をこの景色の様に、逆転させる。 流れる様な動作で、ハクタカは両腕の力のみで勢い良く飛び跳ねた。重力など存在しないかの様な、非常に俊敏な動きだ。 『何だと?』 あの殴打を浴びても動けるのかと、驚嘆とも感嘆とも言える表情を浮かべているマッスルが目下に見える。 ハクタカは両足を揃えてマッスルに向かって飛び下りてくる。否、ただ、落ちてくる訳ではない。半身を回転させて、右足を突きだして胴体目掛けて飛び蹴りする。 『ぬおっ!』 右足は狙い通りに、マッスルの胴体へと減り込む。予想だにしないハクタカの反撃に、マッスルは思わず後方へとよろけてバランスを崩した。 そのままマッスルを蹴り上げ、くるりと宙返りして着地する。同時に、ハクタカは振り返って前を見据えながら体勢を立て直す。 今までの戦いの中で隙も油断も見出せなかったマッスルに、ようやく隙が出来る。多少なりにでも利いているのか、マッスルの息が荒いでいる。 これで、勝負を決める。ハクタカは迷う事無く、マッスルへと駆け抜けていく。無論、マッスルも只やられるのを待つ訳ではない。 向かってくるハクタカへと左右に踏み込みながら剛腕を振るう。だが、ハクタカは振られてくる剛腕を軽々と踏み台にすると、マッスルの両肩を両足で蹴り飛ばして跳躍する。 派手に宙返りしながら太陽を背に、ハクタカは倒すべき相手を定める。天高く右足を振り上げ、この長き戦いにケリを付ける、最後の攻撃を仕掛ける。 マッスルは両腕を交差させる事で防御態勢を取り、天を見上げるが―――――――既にハクタカの姿が、迫る。 『うおおぉぉぉぉぉぉ!』 天空より落ちてきたハクタカの右足の踵が、マッスルの頭部を守っているヘルメットへと幹竹割りの如く真っ直ぐに叩き込まれた。 有りっ丈の力と共に、全体重を加重して鋭く斬り込む様に放たれたその踵落としに、マッスルは反撃も抵抗も出来ず、だらしなく両腕を下げる。 ヘルメットにヒビが入っているのだろう、軋む音が聞こえてくる。やがて、ヘルメットは粗雑な音を出しながら左右に割れた。 落下音から推測するに、相当な重量でかつ、防御力を持っていただろうヘルメットを、ハクタカは破壊した。まだ原型が残ってはいるが、 華麗に宙を二回転して、ハクタカは地上へと着地する。そして油断する事無く、マッスルを見据える。 これが今のハクタカに出来る最大にして、最後の攻撃だ。これが効かぬなら……勝てる術はもう、無い。 ヘルメットが割られたせいで、中のニックの顔が露わになる。これで倒れるかと思いきや……ニックは堂々と仁王立ちしている。 頭部、いや、額から豪快に血を噴き出しており、顔半分を真っ赤にしているにも関わらず、だ。 「ふっ……ふふ……ふはは……ふははははは!」 ヘルメットどころか、頭までかち割った、とハクタカは思っていた。 比喩でも自惚れでも無く、あの蹴りはそこまで言い切れる威力……だった筈だ。それを直に食らっただろうに、ニックは笑っていた。嬉しそうに、笑っていた。 半端ではない流血をしているにも拘らず、全く意に介さない豪快な笑い声を発しながら、ニックはハクタカへと話しかけてきた。 「やったな……。やられたぞ……ハクタカ!」 闘志は折られていない、それどころか、ニックの闘志は以前にも増して燃え滾っている様だ。その証拠に、ニックは嬉しさを抑えきれない、そんな表情を浮かべている。 ハクタカは運が良い事に、近くに転がっている拳銃を拾い上げて立ち上がる。再び銃口から刃を放出させて剣の様に変形させて、腰元へと構える。 あれでまだ倒せないなら……だが正直不味い、不味いなと、ハクタカは心の中で強く舌を打つ。 数分前に食らったマッスル、もといニックのアッパーは、予想以上に深刻なダメージを身体に与えていた様だ。 少しでも動くと、呼吸が出来なくなる位痛みが身体を抉っている。骨をやられたか。あるいは、内臓をやられたか。 恐らく両方だ。両方やられている。もしも下手に動けば、ニックに抗う以前にこっちが沈む。最悪、再起不能になるかもしれない。 率直に言えば、死だ。これじゃあ、どう足掻いても、死ぬ。しかし、ハクタカは動く事を選択する。それは何故か。 今、目の前のこの男に、トドメをさせるチャンスがあるからだ。 拳銃を両手持ちし、居合抜きの体勢を取りつつ、ハクタカはニックへと一歩踏み出す。 対するニックも、何も言わぬまま、ハクタカへと両手を握り拳にしてファイティングポーズを取る。 次こそ本気で、この二人の男の戦いにケリが付く。 その結末は、神ですら知らない。 ×××××× ゼノブレイカーの胸元に歪な傷痕を刻みながら着地した一条は、枯れている喉を必死に震わして神守に叫ぶ。 弓矢を撃て、と。早く胸を狙い、その弓矢を放てと。しかし神守は弓矢を持ったまま、動く様子が無い。 一条が起こした決死の行動、リヒターが突き刺した銀凰を、力一杯に振り下ろす事で、今まで頭部や右腕を失っても動いていたゼノブレイカーにようやく大きなダメージを与える事が出来た。 動力源である、ブラックキューブを護っていた胸部のガラス部分には、不器用に切り開かれた、縦方向の傷痕が出来ている。 その隙間から見えているのは、朧げに光っているブラックキューブ。そこを撃ち抜ければ、全て終わらせる事が出来る。 だが、そんなチャンスだというのに神守は動けない。恐らく、手が血まみれである一条に驚き戦いているのだろうが、一条は思わず張り詰めた声で叫ぶ。 「神守さん! 惚けていないで! 早く!」 一条のその叫びに、神守は目が覚める。 そうだ、惚けている場合では無い。一条さんはあんな……あんな怪我をしてまで、チャンスを作ってくれたんだ。 しゃがんでいる一条の足元には、目を背けたくなる、何とも痛々しい血の水溜りが浅く広く出来ている。 と、一条の手から銀凰がするりと抜けて、その水溜りに落ちる。一条はふらふらと揺れており、どことなく限界が近い様に思える。 いけない……! 神守はすぐさま、傍らに置かれている三本の弓矢を拾い上げて、一つにする様に手の中で纏める。 そしてゼノブレイカーへと身体を向けつつ、その三本を弦へと引っ掛ける。 すると、一本一本バラバラであった三本の弓矢が重なる様に融合していくと――――――――次の瞬間、一本の弓矢へと変化した。 その弓矢は正に光、で出来ている。思わず息を飲む、美しく光り輝く蒼き光の弓。または、マナの結晶体というべきか。 神守は力強く弦を引いて、ブラックキューブへと狙いを定める。後は、引くだけ。狙いを定めて、この弦を引いて弓矢を撃つ、だけ。 しかし、足元がゆらりゆらりと揺れており、ゼノブレイカーは不規則に動いている為、中々狙いを定める事が出来ない。外したら……全部、おしまい。 全部、おしまい? ふと、神守の中で不吉でネガティブなイメージが、過ぎる。 もし狙いを外したら、あるいは急所を外せば、全てが終わる。終わってしまう。何もかも、終わってしまう。 そういう考えが幾度も頭の中で渦巻き始めて、覚悟を決めた筈の神守の手は次第に震えてきた。それも、激しく。 私が……私がもし失敗したら、私は死ぬ。それどころか、一条さんの命も……一条さんだけじゃない、もしかしたら私の大切な人達も……。 どうして? さっきまで一条さんに、絶対に勝つって啖呵を切ったのに。どうして私の手はこんなに震えているの? 神守は自分の手が異常に震えて、狙いを定めるどころか、弓をまともに持つ事すら出来なくなっている事に気づく。 頭の中に、「もしも」「終わってしまう」という、暗く絶望的な単語が渦巻いては身体の自由を奪う。もしも失敗したら。もしも倒れなかったら、もしも……。 無意識に神守は弓を手放しそうになる。あまりにも、あまりにも私にこの役目は……重荷過ぎる。私何かに……私なんかにあの怪物が……倒せるの? やっぱり、無理だ。私には、私みたいな普通の子には……。 その時、ゼノブレイカーの動きがピタリと止まると、神守の方へとゆっくりと、身体を向けてきた。 消えかけていたブラックキューブが黒々しく光りだす。左腕のイレイザ―ポイズンが起動し、粒子の様に見えるナノマシンが活発に動き出す。 神守を排除すべき対象と判断したゼノブレイカーは、体勢を低く構えて、一気に走りだそうと―――――――。 「行かせる……かよ!」 喉の奥から絞り出す様な低く、しかし迫力に満ちた声で一条はそう言いながら、踏み出そうとした両足へとタックルする。 小さな体からは想像出来ない、凄まじい怪力で、進もうとするゼノブレイカーの両足を一条はタックルしつつがっしりと両腕で抑え込む。 神守の元へと行かせない。絶対に行かせないという確固たる意思と気迫を発しながら。 「一条さん!」 「今だよ……」 驚いて、声を掛けてきた神守へと一条は振り向かずに言う。非常にドスの効いた声だが、不思議な事に威圧感は無く、優しさを感じる。 「私が……コイツを抑えてる隙に……撃って」 神守はハッと、気付く。 一条が抑えてくれている事で、偶然にもゼノブレイカーは、神守から見て真正面に向いており、胸元が非常に狙いやすくなっている。 はっきりと、ブラックキューブが見えている。迷う事無く……これで迷い無く、狙う事が出来る。 「狙い……付けられるから。だから……早く……早く撃って……神守、さん」 狙える。狙えるけど、私……。 両手をじっと見る。凄い汗が滲んでいて、動悸が早くなる。胸が苦しくなる。 出来ると、出来ない、二つの思いがせめぎ合い、弓矢も弓も構えられない。出来ない。出来ないかもしれない。 「迷うな!」 今まで聞いた事の無い険しく厳しい声で、一条が神守にそう叫んだ。 「もう……迷うな! 神守……遥!」 「一条さん……」 「あんたには……あんたにはコイツが倒せる、絶対、倒せるんだ! あんたにはそれが出来るんだよ! 神守、遥!」 一筋の汗が、額から頬を伝う。神守は弓矢を弦に、掛けていた。 出来る。私には、怪物を倒す事が出来る。そうだ……私は、変わるんだ。自分で自分を見限っていた自分を……変えるんだ! 「撃て……遥! あんたが信じる……あんたを信じろ!」 一条が発した、心からの、心の奥底からの、絶叫。 その絶叫に、神守の目が見開く。弓の弦を強く強く、これ以上引けないって位に、引く。 もう何も迷わない。絶対に迷わない。守るんだ。私が好きなこのセカイを……守ってみせるんだ! 私の、力で! 神守の意思に応える様に、弓矢の光の輝きが増大する。溢れ出て、発散されていくマナは、神守を守っている出入り口の壁という壁を、淡い光の粒子へと、昇華していく。 神守の三つ編みを結いでいる、ゴムヘアも昇華されていき、神守の髪型が三つ編みから、一条と同じロングヘアに変わる。 ようやく、神守の手から弓矢が放たれた。そのまま真っ直ぐ、一直線にゼノブレイカーへ、そして、ブラックキューブへと、飛んでゆく。 「「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」」 神守と一条の叫びが完全にシンクロする。 ゼノブレイカーはソーラーキャノンの要領で、イレイザ―ポイズンを胸元へと動かして打ち消そうとする。 しかし弓矢は打ち消される事無く、イレイザ―ポイズンへと突き刺さると、ナノマシンを昇華し、左腕を消失させながら―――――――隙間を突き抜けて、ブラックキューブへと命中した。 弓矢は命中するに留まらず、流星の様な軌跡を描きながら、ゼノブレイカーを連れて空へと急上昇していく。やがて、弓矢も、ゼノブレイカーも見えなくなっていく。 大気圏に入る手前、まだ目視出来る空域まで弓矢は上昇すると、ゼノブレイカーの全身に蒼い光を走らせ―――――――瞬間、昇華させた。 ゼノブレイカーが存在ごと、大気の中へとうっすらと消えていく。弓矢は無へと、輝きながら還っていく。静寂を取り戻す、空。 神守から放たれた、マナの結晶体である弓矢はゼノブレイカーを完全に消滅、もとい昇華させた様だ。 あまりにも込められたマナが強すぎて、神守の周辺には何も残っていない。目の前の壁が全て、光にされてしまった。 神守の手に握られている弓矢が、元の部活動に使う、何時もの姿に戻る。 神守はゼノブレイカーが自分の力……否、一条の手助けもあって、倒せた事が自分自身信じられないのか、肩で息をしながら、呆然と立ち尽くしている。 と、うつ伏せに倒れている一条を見、神守は思わず弓を落として急いで駆け寄る。倒れて動かない一条の近くにしゃがんで声を掛けた。 「一条さん!」 ぐったりとしている上に、掌が……一条の両手は指先まで真っ赤で、深い切傷が見える。 このままじゃ不味い、早く……止血しないと。そう思いながら、神守は渾身の力で穿いているスカートを引き千切り、応急処置的に一条の両手に巻いた。 次に救急車、救急車呼ばなきゃ……と、携帯を探るが何処を探っても全く見つからない。どこかで落としたかもしれない。 どうしよう、どうしよう、このままじゃ一条さんが、一条さんが……! 神守が慌てふためいていた、そんな時。 どこからか、笑い声が聞こえてくる。何の笑い声……と思っていると、その笑い声は紛れもなく、一条の笑い声だった。 神守が一条に目を向けると、一条はまるで……神守と買い物をしていた時の様に、穏やかで、それでいて幸せそうな感じに笑っていた。 物凄く久々に聞くがする。一条さんのそういう、笑い方。神守は唖然としながらも、冷静にそう思う。 ごろりと、一条は仰向けに寝転がる。寝転がって、屈託の無い笑顔で、神守に言った。 「……勝てたね。私達。あいつに」 相当酷いレベルの怪我をしているだろうに、そんな事に全く気付いていない様子で、一条は笑いながらそう言った。 神守は上手いリアクションというか反応が出来ず、惑いながらも、こくんと頷き恐る恐る、聞く。 「う……うん。勝てたね。……ねぇ、一条さん」 「何?」 「手、痛くないの?」 神守から冷静な口調でそう言われて、一条はどれどれと、自分の両手を見てみる。 血で滲んで薄く透けている傷口をじぃっと一条は観察する。すると、一条の顔はみるみると青ざめてくる。 そして左右に激しく転がるというオーバーリアクションで、両手を抑えて痛がる。凄く凄く、痛がる。 「いっ……いててててて! 痛い痛い痛い!」 「今気付いたの!?」 「何で、何で私の手こんなに血がドクドク出てんの!? いやホント、洒落なんないよ!」 「あ、無駄に動くと傷口、開くかも……」 ピタリと動きを止めて、一条は掌にふーふーと息を吹きかける。しかしそれで治る筈も無い。 ゼノブレイカーと戦っていた時はまるで別人な一条に、神守は何故だか無性に、おかしくなって、失礼だとは思うが笑う。 笑ってはいけないと思いながらも、何だか頬が緩んで、自然に笑ってしまう。 「笑ったね、神守さん」 一条が、神守に顔を向けてそう言った。その時の一条の、優しく安心する感じもまた、戦っている時は別人の様だ。 「あ、ごめん……笑っちゃって」 「良いよ良いよ。そうやって笑ってた方が、神守さんらしいから」 それから、一条も神守も、何がおかしいのか分からないけど、笑いあった。二人の笑い声が、空へと吸い込まれていく。 長く、それでいて苦しかった戦いに終止符を打てた。失ったモノは多く、守れなかったモノも多かった。あまりにも、犠牲が多い戦いだった。 だけど、勝てた。あいつに勝つ事が、報いる事が出来た。今はその事実だけが、神守と一条に安堵感を抱かせている。これ以上ない、安堵感を。 神守の両膝がその場にすとん、と力無く突いた。神守はそのままうつ伏せに、一条の傍に倒れた。 「神守さん……? 大丈夫?」 一条が心配そうに聞くと、神守は失笑混じりに答える。 「ごめんね、一条さん……。私も……力、使いきっちゃったみたい。早く救急車呼ばなきゃ……いけないのに」 神守の言葉に、一条は首を大きく横に振り、良いよ、別にと、明るく笑って言う。 「この程度の傷、舐めれば治るよ。私、体だけは頑丈だから」 「舐めればって……」 とことん……この人には敵わないな。と、神守はあっけらかんと笑う一条を見て思う。けどあの根性を見るに、ホントに舐めたら治ってそうで困る。 両足の感覚が遠い。遠いというか、一時的だろうが無くなっている。立ち上がろうにも、立ち上がれない。 仕方ないなと思いながら、神守は一条の近くに寄り添う様に、身体を仰向けへと寝転がらせる。二人して、仰向けになって空を眺めている。 二人の両目に映っているのは、済みきっていて、雲一つ無い真っ青な空。ただ、太陽だけが暖かな存在感を示している、だけだ。 するとポツリ、ポツリと神守と一条の頬に、水滴が落ちてくる。一滴だけでなく、やがてその水滴は小雨となって降り注いできた。 何かと思えば、どうやら天気雨の様だ。太陽の陽が反射でもしているのか、雨は切なげな光を宿しており、キラキラと輝いている様に見える。 まるで空が、長い長い戦いの末の勝利を祝福している様で、神守の涙腺は妙に緩んでいた。両手でごしごしと拭って泣かない様に堪える。 「綺麗だね」 一条がそう言うと、神守は答える。青い空も、降り注ぐ雨も、太陽もどれも、綺麗だ。 「うん、凄く綺麗。空を……空を見て感動するのって、初めてかも」 「私も。こんな……何とも言えない気持ちで空を見るの、初めて」 二人はそれ以上言葉を交わさず、しばらく空を見上げる。言葉が浮かばないんじゃない。 言葉はいらなかった。きっと、思っている事は同じ事だから。今はこうして、二人で寝転がって、空を眺めていたい。 こうして絶望の淵から這いあがり、全力で掴み取った勝利を、二人で分かち合っていたい。今は、このまま。 「神守さん」 ふと、一条が神守の方へと身体を向けつつ、話しかけてきた。神守も一条に身体を向ける。 三つ編みが解かれていてどちらもロングヘアとなっている。何だか三つ編みの時よりもずっと、一条と神守はそっくりに見える。 「神守さん……私に何時か、聞いたよね。私が何で、戦うのかって。どうしてセカイを周ってるのって」 神守は自分がそんな事を聞いたのか、正直に言うと思い出せない。 激しい戦いの中で、日常の記憶が軽くすっ飛んでしまっているのかもしれない。とはいえ、言ったっけ? とは言えないので……。 取りあえず、うん、と神守は頷いてみる。一条は神守の目を見つめながら、にこっと微笑んで、言った。 「これが、私の生きる意味。私が、戦う理由なの」 「……どういう意味?」 「こうやって……」 再び仰向けになって、血が大分乾いてきている両手を、太陽に透かしながら一条は語る。 「こうやって、大事な人を護りたい。大切なセカイを護りたい。そういう事を考えながら、私は何時も戦ってるの。 そういう絶対に無くしちゃいけないモノは、私にとって生きる意味を与えてくれる。私が、私である事を示してくれて、励ましてくれる」 そして、神守へと身体を向け、柔和な表情で、ドキッとする位、大人っぽい表情で一条は言い放った。 「だから私はこうして、戦ってる。私を私でいさせてくれる、そんな存在を悪い奴から護る為に。 どんなセカイにいようと、それは同じ。私にとって守りたいのは私の周りだけじゃなくて――――――――セカイ、その物だから」 「……私も」 神守は自分の言葉に自信がまだ持てないのか、一条に小声で尋ねる。 「私も……一条さんみたいになれるのかな? 大切な人達や……大事なモノを、護れるのかな。私……やっぱり」 「護れるよ」 一条は笑顔で即答する。その笑顔は包容力に溢れており、まるで聖母の様だ。 「だって神守さん、あいつにやられそうになってた私を、助けてくれたじゃない。それに……あいつを倒したのは誰でも無い、神守さんの力だよ。 大丈夫。神守さんなら護れるよ。だから、自信を持って」 「うん……けどどこかまだ……不安というか……」 「……神守さん」 一条は何かを手渡そうと、神守の前に閉じた右手を差し出した。 何だろうと神守が思っていると、一条は閉じている右手を開ける。 「一条さん、これ……」 そこには、一条が使っている、髪の毛を纏め三つ編みにする為のヘアゴムがあった。神守が使っているヘアゴムと同じ色の。 「私のヘアゴム。もし……もし不安になる時や、自分に自信が無くなる時があったら、これを見て思いだして」 神守はそれを受け取って、ぎゅっと抱きしめる。一条は、言った。 「私の事。私は何時だって、神守さんのそばにいるから。神守さんの事を、思ってるから」 ―――――――堰を切った様に、神守の両目から涙が流れる。悲しい訳でも無ければ、悔しくも痛くもない。 けれど神守は、泣いていた。今まで溜めていた物、堪えていた物が一気に溢れてきて、止められなくなる。 目の前が涙で滲んでいて見えない。一条の顔を見なきゃ、見なきゃと思うが、幾ら目を擦って、涙が止まらない。 「ありがとう……一条さん……忘れない、私絶対に、忘れないから。一条さんの、事」 「私の方こそありがとう、神守さん。私も忘れないよ、神守さんの事」 号泣する神守の、ヘアゴムを握り締めている両手を、一条は両手で包む。手を繋ぎ合い、二人は目を閉じる。 何も無いビルの屋上で、二人の少女はしばしの眠りに付く。それは、長き戦いの末の、つかの間の休息。 一つの勝負に、幕が降りる。勇気ある二人の少女、否、勇気ある者達の勝利という、幕が。 ×××××× 神守と一条の寝ている屋上から大分離れた、廃墟となっている巨大なビルの一フロア。 白スーツら、戦いを高みで眺めていた連中の一人であるサングラスは、口をあんぐりと開けて唖然と、双眼鏡を覗いている。 まさかゼノブレイカーが……ゼノブレイカーが本気で倒されるとは思いもしなかった。 リヒターはおろか、シュタムファータァすら倒したアレが、人間に倒されてしまった。訳の分からない攻撃で。その事がサングラスには、到底理解できない。 数多の自動人形、だけでなく、様々なロボットをスクラップに変えてきたゼノクレスが、ゼノブレイカが―……と。 「いやぁ……いやはや……参り、ましたねぇ」 ヒクヒクと、両頬を引き攣らせて無理やり笑いを浮かべながら、サングラスは双眼鏡を外す、 そして白スーツとその仲間へと、弁明を開始する為に振り向く。 「こんな筈では……こんな筈ではなかったのです。あまりにも想定の範囲外な事が起こりすぎて……ねぇ? し、しかし! しかし任せて下さい! まだ手はありますよ! 早急に次の刺客を呼びましょう! 次はオートマタでも」 だがしかし、サングラスの周りには最早誰も、いなくなっていた。 ハクタカを見つけて飛び出したシロガネマッスルはともかく、白スーツも睡眠中も読書中もいつの間にか姿を消している 今、この場にいるのは苦笑いを浮かべているサングラスと、ポツリと放置されたリラックスチェアとその上の乱雑に置かれた女性雑誌だけだ。 どうやらゼノブレイカーが敗れた瞬間、白スーツはサングラスを見限り、自らの手でケリを付けに行った様だ。 サングラスははぁ……と、わざとらしい深い溜息を吐くと、何処かに電話を掛けようと衣装とお揃いの真っ黒な携帯電話を取りだした。 「どこに電話を掛けるつもり?」 聞き覚えの……ある、女性の声が聞こえてきた。 その声の持ち主に、サングラスは顔を向ける。持ち主はサングラスのすぐ横に立っていた。さっきまで気配がまるで無かったが……。 地味目な色調のロングスカートに、やけに大きな胸が目に付く白いシャツ。その上に白衣を羽織った、メガネを掛けた女性が立っている。 女性はサングラスの頭部に、真紅なだけでも派手なのに、黄金色の煌びやかな装飾が施された拳銃を突き付けている。 拳銃を突き付けたまま、女性は平坦なトーンでサングラスを問い詰める。 「この世界にワルサシンジゲートは無いわよ、イッツァミラクルさん。また悪いお仲間と手を組んだのかしら?」 銃口がこちらに向けられているにも拘らず、サングラス――――――――イッツァミラクルは慌てる事無く、むしろニヤニヤとしながら答える。 「これはこれは……お久しぶりですね、マチコ・スネイルさん。この世界には観光でいらしたのですか?」 「質問に質問で返す男、私嫌いなのよね。貴方こそ何の用事でこの世界にいらしたのかしら。聞くまでもないだろうけど」 携帯を仕舞い、ミラクルは両手を上げ抵抗はしない、というポーズを取りつつ、言う。 「えぇ、わざわざ口に出さずとも貴方なら分かりますよね。蛇の道は蛇、悪の思考は悪にしか分かりません」 「私はもう、そっち側で生きる事は辞めたわ。貴方みたいなのと一緒にしないでほしいな。それに……」 スネイルの目付きが静かに、鋭く、冷める。声は平坦なままだが、それ故に冷徹で無感情に感じる。 「あの子達にこれ以上、余計な事をしてみなさい」 「もしも……手を出したら?」 音もなく忍び寄り、スネイルは直接、ミラクルの額に銃口を突き付けた。ミラクルの表情から、笑みが消える。 「殺す。警告で済むレベルじゃない事、分かってる?」 ミラクルはスネイルのその威圧に―――――――ニタリと口元を吊り上げて、不愉快な笑みを浮かべながら、言った。 「申し訳ありませんが、私にはまだ仕事がありますので……おさらばです」 「何?」 途端、ミラクルはスネイルを軽く蹴り飛ばすと、窓へと走りだして、颯爽と飛び降りた スネイルは起き上がって窓へと駆け込み、下を覗きこみながら拳銃を向け、引き金を幾度か引く。 だが既に、ミラクルの姿は影も形も無くなっていた。逃げられた。逃げられて、しまった。 拳銃をカードに戻すと、スネイルは髪を掻きながらポツリと、自嘲気味に呟いた。 「甘くなったなぁ……私。昔なら即座にぶち抜いてたのに」 ×××××× また別の屋上。互いにボロボロの状態となったハクタカとニック。双方とも、呼吸を整えながら、相手が動くのを待つ。 下手に動けば死ぬ可能性がある故、慎重にならざるおえないハクタカに比べ、頭部から流血しているというのに仁王立ちしており追い詰めらている様子が全く無いニック。 しかしニックに、自ら動く気配は無い。認めたくは無い。認めたくは無いが……さっきのは、効いた。 闘志が燃え滾り、尚且つやっと本腰というかやっとやる気が出てきたのだが、ハクタカの踵落としは正直結構効いた、ニックの視界は時折揺らめき、滲んではぼやける。 この状態でもしも、ハクタカがさっきの踵落としの様な攻撃をしてきたら捌ける自信が無い。今度は腕一本、持ってかれるかもしれない。 もう早くは動けない。平衡感覚が大分グラついており、ハクタカが素早く動いてきたら、捉える事が出来ない気がする。 しかし、しかしだ。易々と戦線を離脱する事はしたくない。それはニックのプライドが許さない。 ようやく体が温まってきて、本気で戦いが、血沸き肉躍る、本当の戦いが出来る状況にまでハクタカを追い詰められた事が出来たというのに。 この状況を見逃すのは、ニックの戦士としての血が拒む。しかし……と、ニックが悩んでいる時。 割れているヘルメットから、途切れ途切れにニックへの通信が入ってくる。その声は、リーダーである白スーツの声だ。 <シロガ……マッスル……そこまで……しておけ……> 「……エビルか?」 <ゼノブレイカ―……敗北した……任務を切り替え……排除……> そこでヘルメットはもくもくと煙を出して、ゴロンと転がった。最後の仕事を終えた様だ。 通信を盗み聞きしていたハクタカは、神守と一条がゼノブレイカーに勝利したのだと気付き、ホッとする。ホッとできる状況では無いのだが。 ……しかしすぐに気付く。戦いの果てに力尽きた二人に、ニックに通信を入れた人物―――――――白スーツ達が向かっている事に。 不味い……早く……早く勝負を付けて、二人を守ら……ねば……。 が、ハクタカの意思とは関係なく、ハクタカの片膝は地を付く。 呼吸が追いつかなくなり、少しでも身動きすると、どうしようもない痛みが駆け廻り、やがてもう片方の膝も地に付いてしまう。 もう一歩も動けない。体力がとっくに底を尽く。それどころか、命がそこを尽こうとしている。 「……仕方ない、か」 ニックは踵を返し、戦線を離脱する為、ハクタカに背を向ける。その間際、ハクタカに顔を向けて、最後に言い残す。 「この傷、確かに刻んだぞ、ハクタカ。次こそは……必ず」 『待て……』 「必ず、倒してやる」 拳銃を剣の形態から、本来の形態に変形し、ハクタカはニックの背中に拳銃を向ける。 だが、定まらない。手が小刻みに震える上、視界の半分が薄暗くなっており狙いを付ける所かニックの姿すら見えなくなっている。 撃てない。マッスルが、倒すべき存在が目の前で逃げていくというのに、撃つ事が出来ない。 『待……て……』 ハクタカはぐらり、と前方に倒れた。倒れた拍子に、拳銃が手元から滑る様に離れて、勝手にカードへと戻る。 視界が、目の前が暗くなっていく。腕も足も、何処も動けない。もう、何も、出来ない。 こんな所で、死ぬわけにはいかないと自分を奮わせようとするものの、肉体はハクタカの命令を拒否する。 やがて、視界が完全に閉じて、ハクタカは意識を失う。もしかしたら永久に、目を開ける事は無いかもしれない。 すみません、スネイルさん……ごめん、メルフィー……。それにもう一度……再会……したかっ 変身が強制的に解除され、ハクタカ――――――――の変身前である青年は、深い闇へと堕ちた。堕ちて、しまった。 降り注がれていく光の雨が、青年を冷たく打ち付ける。太陽も空も雨も、青年に手を差し伸べる事は、出来ない。 その時、青年の近くに一つの人影が差す。その人影は歩み寄り――――――――。 小雨が止んできた中、神守と一条が深い眠りに落ちている屋上に、二人の人間が音も出さず静かに着地する。 二人とも、マッスルの様に戦闘用のスーツを着ているが、勿論細部が違う。 一人は、マッスルとはまた違う紅。毒々しいまでに紅く自己主張が激しい、ボディーラインがハッキリと分かるスーツを着た妖艶な女性。 もう一人は、肩から爪先まで純白、そしてアクセントとして腕や足に、鳥の翼を思わせる黒き模様を織り込ませた、スーツを着ている細身の男性。 二人とも、マッスルと同じく、頭部をすっぽりとヘルメットに隠しており、素顔を見る事は出来ない。 『マッスルは来ないの?』 呆れ気味に女性――――――――シロガネブレードこと、斬り裂きのジャンヌが、両腕を組んで男性にそう言った。 ブレードの質問に、先程まで遥達とゼノブレイカーの戦いを眺めていた白スーツの男、そして今は白きスーツの男がブレードに顔を向け、言葉を返す。 『通信は入れておいたが、恐らく彼は来ない』 『何で?』 『通信に出ない事を考えるに、ハクタカとの戦いでヘルメットを破壊されたのだろう。それか倒されたか……まぁ、それは無いな』 『何にせよ支障は無いわね。私達の任務には』 『そういう事だ』 その男――――――――シロガネソニック、カッコマンエビルはそう言い、数メートル先で眠っている遥達を見下ろした。 ソニックが片手を上げると、遠方のビル屋上から、ソニックへと鏡を太陽に照らした小さな光が反射している。何者かがサインを送っている様だ。 その屋上、一見すると猟銃、に見えるデザインが施された特製ライフルを構え、スコープからソニックを覗きこんでいる男が、鏡を下ろした。 男はソニックらと違い、一人だけヘルメットを被っておらず素顔だ。義眼、らしき目を伸縮させてスコープを覗きこんでおり、微動だに動かない。 落ち着いた色調の、黄色のスーツを着た男―――――――シロガネスナイパー、スナイパーガマンは乱入者に備えて見張っている。 一応牽制はしておくが、今屋上にいるのは、神守と一条、それと、ブレードとソニック以外誰も、いない。 このシロガネソニック、ブレード、スナイパー、そしてマッスルといった四人は、シロガネ四天王という、別の世界から来た刺客だ。 この四人は、リヒターの破壊、並びに一条遥の抹殺という任務を何者かから授かり、世界を渡ってきた。 しかし同業者であり、得体の知れぬサングラスことイッツァミラクルが、ソニックにゼノクレスを使っての共同戦線を申し込んできた。 最初こそソニックは、ミラクルの介入を拒もうとした。が、任務を下してきた何者かがミラクルとの共同戦線を認めた為、渋々協力関係となった。 だが、激闘の内にゼノブレイカーが敗れた為、ソニックはブレードとスナイパーと連れてミラクルを見限り、自らトドメを差すべく、屋上に訪れた訳だ。 『にしてもつまらない任務ね。こんな状態で倒しても面白くもなんともないじゃない。ほっといてあげない?』 別に一条遥に同情心や憐れみを持っている訳では無く、直接戦って倒せない事に不満げな様子で、ブレードはそうぼやく。 一方、ソニックは一条の元へと歩んでいきながら、片手の指を真っ直ぐに揃えて手刀にする。 『僕かて不服さ。こんな使いっぱしりみたいな任務。しかし、一条遥の存在は僕達の計画に於いて、必ず重大な障害となる。なら』 手刀を大きく右腕を伸ばして構える。自らを殺めようとしている存在が近づいているが、一条も、神守も起きる様子は無い。 『排除しない道理は、無いよ』 一条の前に立ち止まり、ソニックは右腕を振り上げると、息の根を手刀を突き刺す事で止めようと考える。 『悪いね、一条遥。けれど―――――――力を持ち過ぎた君が、悪いのさ』 振り上げた刀手を、ソニックは振り下ろす―――――――瞬間。 「もう良いだろ」 突如として一人の男が、ソニックの目前に立ち塞がった。 男は反応が遅れて、惚けているソニックに向かって宙を舞い、綺麗な回転蹴りを放つ。 気配を一際感知させず、それでいて元からそこにいたかの様な男の虚を突くその攻撃を、ソニックは両腕で防ぎつつ、後方へと後ずさる。 事態を見守っていたブレードも、何時の間にか乱入してきた男に驚く。まるで瞬間移動でもしてきたかのように、突然現れたからだ。 『……貴様』 すたっ、とスマートに着地し、男は特徴的な赤い髪の毛を強風に靡かせる。 口元に不敵な笑みを浮かべて、挑発的に拳銃に見立てた指を向けながら男、リヒト・エンフィールドは言った。 「悪事の邪魔して悪いな、お前ら。けどな、動けない女の子を殺そうとするのは、趣味が悪すぎるんじゃねえか?」 両腕を離して、ソニックはリヒトを睨み上げながら、聞く。 『何時頃から……潜んでいた?』 「潜むも何も、さっき来たんだぜ。お前らが全く気付かなかっただけで」 ソニックとブレードがすぐさま戦闘態勢を取っているにも拘らず、リヒトは淡々とした口調で、ソニックに言う。 「おぉ、怖い怖い。力んでるとこ悪いが、お前らの仕事は終わりだよ。さっさと帰ってくれ。 この子達を運ばなきゃいけないから、時間が無いんだ」 ……挑発、しているのか? 妙な猜疑心を抱きながらも、ソニックは臆せずリヒトに言い返す。 『大した自信だな、リヒト・エンフィールド。だが状況が理解出来ているのか?』 ソニックの発言は決してハッタリでは無い。実質、今の状況はリヒト一人に対して、ソニック、ブレード、そしてスナイパーと三人。 一対三だ。それにスナイパーの姿はリヒトには見えず、実質スナイパーの指先一つでリヒトの命を狩り取る事が出来る。 スナイパーはスコープ越しに標的であるリヒトを捉える。 『飛んで火に入る夏の虫……か』 一度狙撃状態に入ったスナイパーは、いかなる事態が起きようと標的を狙い撃つまで微動だにしない。 リヒトはスナイパーに狙われている事に気付いておらず、ソニックへと挑発し続けている。後は引き金を引けば、一瞬で事が収まる。 神経を研ぎ澄まして一点、リヒト・エンフィールドへと集中させる。スナイパーは引き鉄へと指を掛ける。後はこの指を、引くだけ。 世とは何と無情なのだろう。今から放たれる弾丸一発で、命の灯火が消える。その瞬間が、スナイパーに取ってこの上なく、至福。 『さよならだ』 スナイパーは標的へと最後の言葉を贈りつつ、引き金を引こうとした――――――――その、瞬間。 自らに向けられた、強烈な殺意を感じ取る。獲物を食らう肉食獣の如き、刺々しい殺意を その殺意に撃ち抜かれる前に、スナイパーは反射的に特製ライフルを担いでその場から駆け出して回避する。 数秒後、スナイパーがさっきまで構えていた場所が爆発し、スナイパーは爆風に吹き飛ばされぬ様に低く身構えた。 コンクリートの粉塵が舞い落ちてくる中、スナイパーは振り向く。そこには、狭く深いクレーターが出来ていた。明らかに殺す気、いや、殺す事を目的にしている。 もし少しでも逃げるのが遅れていたらタダでは済まなかった。スコープを覗いて、殺意、いや、ハッキリと殺しに来た輩を覗きこむ。 「おいリヒト、精度悪いぞ、これ」 スナイパーに当てる事が出来ず、次弾を込めながらヘンヨは耳に掛けたヘッドフォン越しに、リヒトに話しかける。 ヘンヨがスナイパーに向かって撃ち放った武器は、今回の依頼の一つ、神守遥に弓矢を届ける依頼の報酬として、リヒトから受け取った試作型大型汎用ライフルだ。 通常のライフルとして使う事が出来る他、マシンガンやショットガンとして変形させて使う事も出来、拡張機能でグレネードも撃つ事が出来る。 ヘンヨ自身は精度が悪いとぼやくものの、至っていつも使っているスナイパーと同じ感覚で使う事が出来る。狙いはしっかりと、スナイパーに向けられていた。 だが、スナイパーは途中で気付いてしまい、結果、回避されてしまった。その事がヘンヨには悔しく、精度が悪いとぼやいた訳で。 恐らく次は外さないだろうと、思う。しかし撃ってから何だが、グレネードはやめておいた方が良かったと、ヘンヨは思う。 下で通行人とかが何の騒ぎかと騒然しているのを見るに。 耳栓の様なイヤホンからヘンヨの通信を聞き、それに対してリヒトは胸元のマイクから返事する。 「もしかして外したのか?」 「狙いにくいだよ、このライフル。挙句避けられちまったし」 「しっかりしてくれよ。高かっただぞ、それ」 「報酬がこれだけじゃ頑張れないんだよ。もっと弾んでくれ。弾薬とか」 「弾薬費はそっち持ちだろ。甘えんな」 ソニックをスルーするかの様に、リヒトはヘンヨと能天気な会話を交わす。 何秒経っても、スナイパーがリヒトを狙撃しない事に、ソニックは気付く。気付いて恨めしそうにリヒトに、言う。 『……伏兵を仕込んだのか。スナイパーガマンに備えて』 「そういうこった。だから帰ってくれ。さもなきゃお前らが苦しくなるぞ」 『腹立つくらい自信満々ね。……けどニ対三になった所で、状況は何も変わらないわよ』 背後に回っており、お手製のナイフを持ったブレードが、リヒトにそう言う。 前にはソニックがおり、後にはブレードが待ち構えている。リヒトは挟み撃ちにされており、逃げ場が無い。 ヘンヨはスナイパーを抑えており、リヒトの方までは対応できない。もしも同時に攻撃を仕掛けられたら、回避も防御も間に合う可能性は低い。 だが、リヒトに怯む様子も慌てる様子も、ましてや恐怖に陥る様子もない。威風堂々と身構えている。 『ソニック!』 『そういう事だ、リヒト・エンフィールド。苦しむ間もなく、終わらせてあげるよ』 するとリヒトは、ニヤリと笑って見せ――――――――言った。 「誰が、二人しかいないって言った?」 『―――――――推参』 突然、リヒトを守る様に激しい疾風が巻き起こる。その風に、ソニックとブレードは怯んで立ち止まった。 徐々に風が晴れていくと、リヒトの背中に一人の人間が立っている。一瞬で間に入り込み、その人物はリヒトを助太刀する。 ソニックに対する様に全身を黒色に染めた、それでいて身軽ながらも屈強で頑丈な鎧、というべきスーツを着た男が。 被っているマスクのバイザー内に二つの目、鷲の眼の様に鋭いツインアイが光を放つ。 ブレードとソニックは、その男の名を、呼ぶ。 『……田所』 『カッコマン……生きていたのか』 田所カッコマン、と、呼ばれたその男に、リヒトはフランクな口調で声を掛ける。 「よっ。遅いぞカッコマン。何してたんだ?」 カッコマンはリヒトに顔を向ける事無く、低いトーンで、しかし良く通る声で答える。 『……答えるまでもない、小事だ』 「そうかそうか。つーか、偉く良いタイミングで助けに来たな。もしかして狙ってたのか?」 冗談めいた事を言うリヒトに、カッコマンは何も答えない。 しかしその代わりに、黙ってソニックへと身体を向ける。 カッコマンとソニック、否、カッコマンエビル。別の世界での宿敵が、この世界で相見える。 『まさか君もこの世界に来ていたとはね……』 『俺から貴様に言う事は何も無い』 両手を握り締め、カッコマンは倒すべき宿敵に向けて、言い放った。 『田所カッコマンの名において――――貴様を、断罪する』 「こういう訳だ。これで三対三、丁度いい塩梅になった。さぁ」 今までゆるんでいた表情を引き締めて、真剣な面持ちになったリヒトはソニックへと、宣戦布告する。 「やろうぜ、エビル。戦いたかったんだろ。俺達と」 空気が逆転する。限りなく、ソニック達に有利だった状況が、カッコマンの登場で引っ繰り返った。 否、リヒトが言う様に、これで三対三、各々の相手が見つかったは見つかった。 だが、勝機の風はリヒト達へと吹雪いている。今の空気では、どうしようとリヒト達が勝つ。そんな予感をひしひしとソニックは感じて仕方が無い。 戦うべきか、戦わざるべきか――――――――そう考え、ソニックは何故か、苦笑する。 「何がおかしい?」 リヒトの質問に、ソニックは笑うの止めると、自嘲交じりな口振りで言った。 『ここは引かせて貰うよ。君の要望通りに』 「逃げるのか?」 『逃げる? 馬鹿な事は言わないでくれ。今君達と戦っても、こちらに益が無いだけだ。それに、君達と戦うのにあまりにもこの世界は狭すぎる』 ソニック、ブレード、そしてスナイパーは何処からかコードが付いている筒を取り出した。 そして間を置かずコードを引き抜いて、筒を放り投げた。落下した瞬間、筒の両端から凄まじい勢いで白煙が噴出する。 屋上一面を真っ白に隠すほどの白煙の中で、リヒトはどうにかソニック達を捉えようとするが、何も見えない。 「くっ……お前ら!」 『次の舞台で待っているよ。その時こそ』 『君達を、殺す』 次第に白煙が晴れてきて、屋上は元の姿を取り戻した。 激しく咳込みながらも、リヒトは周囲に目を向ける。だが、ソニック達は忽然と姿を消していた。 「ちっ……まんまと逃げられたか」 悔しさを現すリヒトに反して、カッコマンは意外な事に特に反応を示さず、リヒトに背を向けると歩き出した。 「それにしても助かったぜ、カッコマン……って」 リヒトの言葉を待たずして、カッコマンは立ち去ろうとする。 そのまま帰られてはいかんと、リヒトは懐からとある物体を取りだした。 「カッコマン!」 リヒトがそう強く呼び掛けると、カッコマンは歩いている足を止めて、僅かに振り向く。 リヒトはカッコマンに向けてその物体を放り投げた。その何かを、カッコマンは手を上げてしかと、受け止めた。 人懐こい笑顔を浮かべながら、リヒトはカッコマンへと伝える。 「今回の報酬だ。余裕が出来たら聞いてやってくれ」 カッコマンは返事する事無く再び背を向けた。周囲から吹いてくる風を纏わせた途端、カッコマンは姿を消した。 と、ヘンヨが通信を入れてきた。リヒトはそれに応える。 「あいつに掻っ攫われたな。お前の見せ場」 「敢えて譲ってやったんだよ。俺一人でも充分だった」 「まぁそういう事にしといてやるよ。つうかあいつ、何処行ったんだ?」 「俺にも分からん。だがまぁ、やる事があるんだろ。カッコマンにはカッコマンなりに」 「そういうもんかね。あ、この依頼の報酬忘れんなよ。ついでに弾薬費と修理費も」 一方的にヘンヨからの通信を打ちきり、リヒトは眠っている一条の元へと近寄ってしゃがんだ。 目の前である種の戦いが繰り広げられていた事も全く知らず、子供の様な寝顔を浮かべている一条の頬に手を当てて、囁く。 「良く頑張ったな、遥。それに」 神守に顔を向けて、感謝する。 「遥を護ってくれてありがとな。こっちの世界の……いや」 「神守、遥」 そう言えばハクタカとの連絡が付かないが……恐らく大丈夫だろう。多分。 ×××××× ゼノブレイカーが敗れ、シロガネ四天王とイッツァミラクルが撤退し、全てに決着が付いた、その数分前。 シロガネマッスルこと、ニック・W・キムとの死闘に一先ずの決着が付いた。が、ハクタカは性根尽き果てて、倒れた。 変身が強制的に解除されて、ハクタカとなる前の青年の姿に戻っている事が、その事実を物語っている。 起き上がる様子はまるで無い。本気で力尽き、尚且つ死の淵を彷徨っている。しかしそれももう、長くは持たないだろう。 その横に、何者かが立っている。黒色のア―マ―に身を包んだその人物―――――――田所カッコマンは、ハクタカを両腕で、抱き起こした。 『奴に……シロガネマッスルに単身挑んだのか……』 カッコマンはそう、呟いた。首を小さく横に振り、言う。 『……馬鹿な、事を』 その時、別の気配を背後に感じ、カッコマンは青年を抱き抱えて立ち上がり、振り向く。 耳にペンを挟み、髪の毛を掻いているスネイルが、カッコマンに話しかけてきた。 「久しぶり~、田所君。もしかして鈴木君を助けてくれたの?」 『……俺は何もしてない。戦っていたのはハクタカ自身だ』 「そう……けど、貴方が目印になってくれたお陰で早く見つけられたわ。ありがとね」 カッコマンはスネイルへと、青年を引き渡した。 細身に反し、スネイルは普通に青年を、両腕で受け止める。去ろうとするカッコマンに、スネイルは聞く。 「せっかくだから付いてこない? 彼が目を覚ますまで」 『いや、良い。まだ俺には、やらねばやらない事がある』 「そう……鈴木君、貴方に会いたがってたんだけど……」 答えず、カッコマンは歩き続ける。 「それなら、次は何時会えるのかしら」 立ち止まり、カッコマンはスネイルに振り返ると、答えた。 『次は……』 一度、言い留める。しかしすぐに、留めた言葉をカッコマンは、言った。 『次は、互いに素顔のままで会える……そんな平和な、世界で』 ×××××× カッコマンは佇む。ビルの一角に、佇む。 リヒトからの報酬である物体、この世界ではボイスレコーダーと呼ばれている物体を、耳元に当てる。 先端の再生ボタンであろう、そんなスイッチを押すと、録音されたメッセージが再生される。 流れてきたメッセージの声は、ハクタカ……に変身する前の、青年の声だった。 本当なら直接君に伝えたい、寧ろ直接伝えるべきメッセージだと思う。 けれど、俺と君では成すべき戦いも、向かうべき目標も違う。だから多分今後、会える機会は無いかもしれないし、これから二度と会えないかもしれない。 だからこそ、こうしてメッセージを残してリヒトさんに渡しておく。これから俺が話す事を出来るだけ、記憶に留めておいてほしい。 もしも俺が戦いの末に力尽きて倒れたら、君が……俺の代わりに世界を救ってくれ。イルミナス……いや。 イルミナスだけでなく、世界と次元、人の未来その物を脅かす存在を、君の手で倒してくれ。 こんな事を頼むのは至極、無責任だとは思う。けれど、俺は真剣にこの願いを託したい。 君ならそれが出来ると、俺は思っている。それが出来るほどの力と信念を、君は持っているんだ そして……互いに道を違えて、俺が敵になる事があったら、俺を倒してくれ。 俺が出来なかった事、達成出来なかった事。それらを叶えてほしい。 それと、君の後ろには、君を支えてくれる仲間達が居る。 もしも行き詰まったり、窮地に陥っても諦めないでくれ。君は、一人じゃない。 最後に、例え違う世界で戦っていても、俺達は仲間だ。 戦う理由も、向かうべき最終地点が違っても、世界の平和を願う、そんな共通の目的を持った仲間だ。 次に会う時は、互いに仮面を外して素顔で語り合える、そんな平和な世界で会おう。田所カッコマン……いや。 田所、正夫。 メッセージが途切れる。カッコマンは掌の中で、ボイスレコーダーを強く、握りしめた。 そして真正面を見据えて、誰ともなしに、言った。 『……約束しよう』 ビルからカッコマンは飛び降りた。 彼の行方を知る者は、誰も、いない。 ×××××× ……ぼんやりと、青年は目を開けた。……死んでない。死んで、ない? 正方形の蛍光灯が眩しい。鼻をくすぐる、あまり好きじゃない薬品の据えた匂い。両手、両足、その他の感覚が戻っている。 がばっと青年は起き上がるが、途端に腹を殴られた様な、ジンジンとした痛みを感じ、歯を食い縛る ふと、隣に目を向けると顔馴染みである眼鏡……いや、ある種上司であるスネイルが足を組んで座っていた。 「病み上がりだから無理しちゃ駄目よ。どう? だいぶ良くなった?」 リンゴの皮をナイフで途切れさせる事無く、するすると器用に剥き続けながらスネイルが話しかけてきた。 「えぇ、どうにか……ご迷惑をお掛けして、すみません。回収して頂き、有難うございます」 「礼なら私じゃなくて田所君に言いなさい。彼が助けてくれなかったら危なかったから」 「田所が……」 もしマッスルに負けていなかったら会えたかもしれない。そう思うと、青年はどうしようもない思いに駆られ、シーツをグッと握った。 そうだ、リヒトさんはあのボイスレコーダーを彼に渡してくれただろうか。……後で聞いてみよう。渡せてなかったら渡せてなかったで、諦めよう。 「今リンゴ切ってるけど、食べられそう?」 「はい……ありがとうございます。あ、そうだ……遥さんと、神守さん、それに……」 青年が心配そうにそう聞くと、スネイルはリンゴを切りつつ、微笑みを浮かべて青年に答える。 「どっちの遥も治療を終えて休んでるわ。それに、安田君と紫蘇ちゃんも。 四人ともそれなりに怪我が多いけど、大事には至らないから安心して。あー……一条さんの両手がちょっと手を焼いたけど、一日か二日すれば治るとは思う」 「一条さん、どうしたんですか?」 「何をどうしたのかは分からないけど、両手にパックリと切傷が出来ててね……。生命力が異常に高いから、一応塞がれてるけど傷が傷だから油断はできないな。 リヒト君はずっと、ダブル遥に付き添ってる。ヘンヨ君……は、また別の用事でどっか行っちゃった。まぁ、忘れた頃に逢えるでしょ、多分」 「そう……ですか。にしてもパックリって……あの人、また凄い事しますね……」 「とはいえ、そういうトンデモない事を臆する事無く出来る度胸の良さが、一条さんの強みだからね」 色んな意味であの人には敵わないな、と、青年は神守と同じ感想を抱く。 ……神守と言えば一つ、青年には気になる事があった。 「……あの、スネイルさん」 「ん?」 「自分には直接……関係無い話ですけど」 「何でも言ってみなさい。分かっている事しか答えられないけど」 「それじゃあ……神守さんはこれから、どうなるんですか?」 リンゴの皮を全て剥いて二つに切り、片方を青年に手渡しつつ、スネイルはその質問に返答する。 「記憶を消去するわ。一条さんに関わった事、身に降りかかった事、そしてゼノクレスを倒した事、その一切合財をね。ただし」 「ただし……何です?」 「その代わりに、スイッチを仕込んでおいたから。その時が来たら全てを思い出せるスイッチをね。 もしも神守さんが窮地に陥る様な事態になったら、すぐさまそのスイッチが入る様に調節してあるから心配しなくても大丈夫。 それに、そういう記憶が即座に蘇ってきても、あの子の精神力なら耐えられるだろうし」 青年はスネイルの返答に何か言いかける。言っていいのかどうか迷っているだが、意を決したのか、ハッキリとスネイルに、聞く。 「……スネイルさん。その、神守さんの記憶ってどうしても……消さなきゃ、駄目なんですか?」 「今までの「遥」の因子を持つ子達にそうしてきた様に、神守さんも例外じゃないの。 感覚共有は必要な能力だけど、まだ一条さん以外の「遥」には過ぎた能力、強すぎる能力だからね。一段階上のレベルとなった神守さんは特に。 ……彼女達には、一条さんの代わりに各々の平穏な日常を過ごして貰う。感覚共有が必要な時になるまで」 「その必要な時は……いつか来るんでしょうか」 「来なければ良いわね。それが一番幸せだから。一条さんにとっても。その時が来ないように頑張りなさい、鈴木君」 ハクタカ――――――――の中の青年である鈴木は、スネイルに小さく、頷いた。 「一先ず難しい話はここまで。お疲れ様、鈴木君。安田君と紫蘇ちゃんは無事に回収できたし、ついでにシロガネ四天王の一人も退けたし、大活躍だったわ」 「大活躍なんてそんな……ただ、任された任務をこなしただけです。それに……奴には実質惨敗しました」 「そう? だけど貴方が居たおかげで助かった命はあった事は事実だし、必要以上の被害が防げたと思う。胸を張っていいわよ」 「だけど……」 と、スネイルは鈴木に、薄っぺらいカードを指に挟んで差し出してきた。鈴木はそれを受け取ってみる。 そのカードは暗く半透明で、カードというより、非常に薄い液晶モニターの様だ。すると真ん中のモニターらしき部分に数秒程、砂嵐が映り込む。 やがて砂嵐が徐々にクリアになっていくと、何者かが映り込んだ。軍服らしき服を着た女性の上半身だ。 銀色の麗しい髪の毛を肩まで伸ばした、端正な顔付きの女性が鈴木の事をじっと、見つめている。 鈴木はしばし、その女性と見つめ合うと、ポツリと、その女性の名を発した。 「メルフィー……」 鈴木に名前を呼ばれた、メルフィーという女性は、鈴木をじっと見つめていたが何か気に入らないのか深く俯いた。 どうしたのだろうと鈴木が心配していると、メルフィーは俯いたまま、小言で何か呟いている。 「……馬鹿」 鈴木は気付いていないが、メルフィーの目は潤んでおり、少しづつ涙が溜まっている。 「ん? メルフィー、今なんて……」 聞き返すが、メルフィーは俯いたまま小声で呟くだけだ。いや、その声はだんだん大きくなっている。 「馬鹿……」 「すまない、もう一回言ってくれ」 「馬鹿、馬鹿……」 「……ハッキリと言ってくれ。馬鹿って言ってるのか?」 それから、メルフィーは一旦無言になる。鈴木は疑問符を浮かべ、もう一度呼びかける。 「おーい、メルフィー」 「馬鹿! 馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿! 隆昭さんの馬鹿!」 大きく顔を上げて、メルフィーは泣きじゃくりながら大声で隆昭を馬鹿と罵倒した。 驚いて鈴木はベッドから転げ落ちそうになる。これ程、メルフィーが感情を露わにするのも珍しいからだ。 「い、いきなり何だよ! ビックリしただろ!」 整った顔立ちが、涙で豪快に崩れている事も気にせず、メルフィーはひたすら激しく、泣き続ける。 「無茶しちゃ……無茶しちゃ駄目って、あれほど言ったのに……。何で死にかけてるんですか!」 「何か、ごめんな。想像してたよりダメージが深くてさ。俺自身、ここまで響くとは思わなかったんだよ……」 「マチコさんから……話を聞いた時に私、本気で、本気で隆昭さんの事、心配したんですからね……」 その泣き顔を、鈴木は自分を心配してくれている故のモノだと分かっていながらも、凄く可愛いと思う。 悪いとは思いながらも、ひたすら頭を撫でてあげたくなる衝動に襲われる。けれど液晶の前では何も出来ないので、せめて指先でメルフィーの頭を撫でる。 撫で撫でしていると、メルフィーはやっと泣くのを止めた。何だか励まされる筈が逆に励ましている気がする。 「もう良い大人だし泣くな、メルフィー。俺はこの通り元気だからさ。一応」 「ホント……ですか? 無理……してないですか?」 「心配し過ぎだよ、お前は。俺はそう簡単に死なないよ。間違った未来を変えるまで、俺は絶対に死なない。約束する。 だから安心してくれ。今の傷を治して、すぐに君の元に戻るから」 溜まっている涙を手で拭いながら、メルフィーは優しげに笑う。 「約束……ですよ。必ず元気になって、戻ってきて下さいね」 「あぁ。サンドイッチでも作って待っててくれ。腹が空いて仕方ないんだ」 鈴木がそう言うと、メルフィーは明るい笑顔を浮かべて、大きく頷いた。 「美味しいの作って、待ってます」 「頼んだよ。楽しみにしてる」 メルフィーとの通信を切り、鈴木は一息吐く。 ふと、ニヤニヤとしているスネイルと目が合い、何だが鈴木は無性に恥ずかしくなる。 「お熱いわね。これで娘じゃなかったら、ねぇ」 「その事は言わないで下さい……あっ」 ふと、鈴木の目は窓の外へと目を向ける。 七色の美しいアーチを描いた虹が、空に掛かっていた。 見事な曲線をなぞっているその虹は、鮮やかな青空と相まって一つの絵画の様だ。 「綺麗ですね、虹」 「綺麗ね。こんなに綺麗な虹が見えるなんて、何か良い事があるかもしれない」 鈴木は虹を見て、言う。 「色々な世界を周ってますが、見かける虹ってどれも綺麗ですよね」 「えぇ、そうね」 THE STRANGE DREAM (6) 虹を眺めて、スネイルはポツリと、自虐的に呟いた。 「虹だけは、ね」 次回、正真正銘、最終回
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パラべラム!×廻るセカイ ―――――――××××××――――――― 嘘だと、遥は我が目を疑った。もう二度と会えないと思っていた人が、両目に映った。 わざと大きな瞬きをしてみたが、その人の姿は確かに映し出されている。遥の数メートル先を、ゆっくりと歩いている。 幻じゃないかと、まやかしじゃないかと思った。けれど、幻でも無ければまやかしでも無い。 その人は、遥の視界、右から左へと買い物客の中に紛れながら、徐々に消えてゆく。呆然と眺めている内に、消えてしまった。 「うそ……」 遥は自分が間抜け面になっているのにも気付かず、呆然と口を開けている。目の前にいる彼方が不思議そうに首を傾げているのが、まるで見えていない。 もうとっくの昔に、遥の中でその人はこの世界からいなくなったと思っていた。もう旅立っていたと、そう思っていた。 しかし、両目に映していたその人の姿、全身を包み隠す黒色のローブに、揺らめいている布からちらりと見える、特徴的な三つ編み。 何より右手に握っている、ローブとお揃いな色調の杖。何と表現すれば良いのか、この世界に居てこの世界に居ない、不思議な違和感。 恰好や雰囲気からして買い物客が一人でも気付きそうな物だが、誰一人としてその人に気付く様子は無い。 まるで――――――――気付いていないかのようだ。左右を行き交っている人々の誰も、その人の存在に気付いていない様だ。 それなのに、遥にだけは分かる。遥にだけは、見える。それが何故かは遥自身には分からない。分からないがとにかく、遥だけは気付いた。 寧ろ、その人は遥にだけ存在を気付かせようとしているのかもしれないが、あくまで推測の域を出ない。 「お姉……ちゃん?」 急に静かになって、呆然と口を開けて何処かに目を向けている姉が心配になり、彼方は不安げに呼び掛ける。だが、姉の目に彼方は入っていない、様に見える。 彼方は何か珍しい物でもあるのかと思い振り返ってみるが、なんて事は無い。そこに広がるのは到って普通の光景。 食料品コーナーの一角として、季節の野菜物やらが陳列されているだけだ。それと、談話を楽しみながら買い物を嗜む数人の主婦、だけ。 一体全体姉は何を見たのかと、大いなる不安に駆られつつも、彼方は姉を目覚めさせる。 「お姉ちゃん!」 振り向き直して、彼方は遥に鋭く短い一声を掛ける。 彼方の声にハッと、遥は口を閉じて我に帰る。周囲の音も、彼方の声すらも聞こえていなかった。というより、何も聞こえていなかった。 それほどの状態になるほど、遥に取ってその人―――――――否、もう一人の自分と言える存在、一条遥、らしき人物を見かけた事は衝撃的であった。 失っていた記憶を取り戻した後、遥の中では一条遥は、この世界から旅立ったと思った。倒すべき敵を倒したこの世界にもう、目的は無いだろうから、と。 それと同時に、恐らくもう二度と会える事は無いんだろうな、と一抹の。いや、泣きたくなる程の寂しい思いも、遥は抱いている。 怪物――――――――ゼノクレスとの死闘の末、一条がヘアゴムをくれたのは、プリクラをもう一回、一緒に撮ろうと約束したが果たせなかった事に対する詫び、だろうな、とも。 だからこそ、遥は決めた。記憶と感覚共有という力を取り返した時、遥は決意した。 別の世界にいる遥として、恥じる様な生き方はしないと。誇りを持って、一条さんに胸を張れる生き方をしようと。 もう二度と会えない。会えないけど、きっと何処かで同じ空を見ていて、一条さんは応援してくれている。そう思う事で頑張ろうと考えた。 だが、一条はこの世界にいた。まだ、この世界から旅立っていなかった。 遥自身、目の前の出来事を信じる事が出来ない。頭の中で、冷静な自分がアレはまやかしで、疲れから来る幻だと言っている。 まだ一条さんに未練があって、その未練が幻でも夢でも見せているのかも、チラつかせているのかもしれない。 そう思うと、遥はしっかりと気を持たなきゃと自分で自分を叱る。まだまだ病院での疲れが取れていないんじゃないのかと。 疲れから来る幻覚という線もある。もう……しっかりしなきゃ。しっかりしないと、一条さんに合わせる顔が無い。会えないけど。 遥は両頬を両手で自らビンタする。一瞬の痛みの中で意識を切り替えようとする。姉が突然、自分で自分でビンタしたのに彼方は驚く。 「だ、大丈夫?」 心から心配そうに尋ねる彼方に、遥は笑顔を取り繕って答える。遥本人は気付いてはいないが、その笑顔は非常に不自然だ。あからさまに、作り笑いだと分かる。 「大丈夫……大丈夫。さ、買い物の続きしようよ、彼方」 遥自身はまるで気付いていないが、動揺と衝撃のあまりに、遥の感情はモロに表に出てしまっている。 顔を深く俯かせて、視線を床へと向ける。遥は俯いたまま、何処かへと歩き出す。何処に向かっているのか分からないが、とにかく早足で歩いている。 あれは疲れから来る幻、あれは疲れてるから見るまやかし、あれは……と、そんな風に頭の中で念仏のように、一条らしき人の存在を否定して振り払おうとする。 途中で人にぶつかっても遥は謝りもせず歩き続ける。いつもなら愛想良く謝ったり、ぶつかった人を気遣ったりする筈の姉の変化に、彼方は惑う。 今の姉には、何も見えていない気がする。彼方の事、さえも。 「お姉ちゃん……」 あからさまに分かりやすい、姉の変わり様に、彼方はポカンと緩んでいた口をキッと締める。 カートをその場に置いて、歩き続けている遥へと同じく早足で近寄っていく。そして、右腕でぶらついている遥の左腕を、鷲掴む。 左腕を強く掴まれて、遥はそれ以上動けなくなる。殆ど無意識に歩き続けていた両足も、止まる。 ピタリと動きを止めてくれた姉に安堵しつつも、彼方は本気で心配になる。どうしてこうも唐突に、姉がおかしくなったのか……。 今の遥の中で、色々な感情が激しく交錯して、グチャグチャと混線状態になっている。纏まらない。 如何していいかが分からなくなる。今何をすべきか、私は何をすればいいのか、何も分からない。 遥の意思に従順、寧ろ暴走と言える位、身体が勝手に動いている。歩こう、歩こうと何処に行く訳でもないのに動こうとしている。 滅茶苦茶に動けば疲れて忘れる事が出来るかもしれない。一条、遥の事を。別の事をすれば、気付けば忘れる事が出来ない。 無理矢理にでも、身体は遥を日常に帰らせようとしている。もう忘れよと、一条遥の事を忘れ、元居た日常に戻れと言っている様だ。 遥はそれに抵抗せず、何も考えずに動き回る事で忘れようとする。一条さんに固執していては、いけない。 いけないんだ。私は私の日常に戻らないと、いけない。何時までも記憶を引きずっちゃいけないって……分かって……いるのに。 何故か、遥の瞳から涙が伝っていた。一筋の細い涙が、遥の頬を伝って、落ちる。 如何して……如何して私、こんなに悲しいの? 悲しむ様な事は何もしてないのに。何でこんなに……切ないんだろう? 遥は自分が自分の事が分からなくなっている。感情に抑制が効かない。その証拠に、遥の意思とは関係無く、涙が流れる。 もう二度と会う事が出来ないと思っていた、一条遥に会えたからだろうか。例えそれが、まやかしや幻想の類であったとしても。 ……幻だと決めつけているがもしも、もしも現実にいるとしたらどうする? あの時見かけたのが本当に、一条遥であったのなら……。 そう考えると、遥の中で消えていた灯火が少しづつ、宿りだす。可能性という名の灯火が。 だけど、そんな事ありえるの? もし只の勘違いだったらどうするの? そんな冷静な突っ込みを、客観的な立場から眺めている自分が投げ掛けてくる。宿っていた灯火が、揺らめく。 一条さんの性格上、会いに来るのなら直接会いに来るんじゃないかと遥は考え直す。 あの人が遠くから見守る様な性分とは思えない。もし、伝えたい事や語りたい事があるのなら、まどろっこしい事をせず直に会いに来る筈だ。 ……けれど、こうとも考えられる気がする。会いに来たかったけど、敢えてひっそりと見守りに来たんじゃないかと。 記憶を辿ってみて、遥は一条遥を決死に助けに行った時にまで遡ってみる。あの時の一条の態度や口調から、思い返す。 あの時の一条さんは、私がいつも通りの日常、平穏な日常に戻って欲しいと思うが故に、あんな刺々しい態度を敢えて取っていた。 こんな戦いに巻き込んではいけないと、元居たセカイに遥を帰す為に。 なら、と、遥は一条が、直接会いに来ないのも分かる気がする。 徐々に、元の日常に戻ってきた遥に、一条は直接会いに行くのを遠慮して遠くから見守る事にしたのかもしれない。 非日常そのモノである自分が、元の生活に戻ってきている遥に接触しては予期せぬ事態が起こるかもしれない。そんな風に考えて。 ……それでも。例え、そうだとしても。 遥は、思う。例えそうだとしても、私はもう一度……一条さんに会いたい。 会ってどうしても、遥には言いたい事がある。それは、感謝と、別れの言葉。ありがとうと、さよなら。 その二つの言葉を、直接遥は伝えたいのだ。何があっても構わない。その言葉を、伝えられるなら。 動きを止められても反応を見せない遥に、彼方は悪いなと、姉に酷い事をする事と心を痛めながらも、強引に左腕を引っ張る。 引っ張って、彼方は遥を無理やり振り向かせた。振り向かせて、言う。 「しっかりしてよ、お姉ちゃん! さっきから何かおかし……」 彼方の口はおかしい、と言いかけて止まる。振り返って顔を見せた遥が、泣いていたからだ。 しかし一般的なイメージでの泣く、つまり号泣では無い。何と言えば良いのか……不思議な、涙だった。 遥の表情は涙を流しているのにも拘らず、まるで崩れていない。しかし、涙は流れている。流れているのだが、その事に気付いていない様に見える。 強く掴み過ぎた? いや、只引き留めるだけでそんなに強く握った訳じゃ……と、彼方は戸惑いながら、遥の左腕を握っている手を緩める。 何で泣いてるのお姉ちゃん? 私何かした? ほ、ホントにどうしちゃったの、お姉ちゃん? 何が何だか訳が分からず、彼方の方が泣きたい気分だ。 と、遥がボソッと、何か囁いた。彼方は両耳に神経を集中させて、聞き直す。 「……何? お姉ちゃん」 「彼方……」 遥は深く顔を俯かせたままで、彼方の顔を見ようとしない……いや、見れないのかもしれない。 か細く、少しでも周囲に耳を傾けると聞こえなくなりそうな位ぼそっとした声で、遥は言う。 「私……おかしくなっちゃったのかな。何かね……分かんないんだ」 「分かんないって何が……?」 惑いながらも、ようやく姉が何を考えているのか分かる事にホッとしながら、彼方は遥にそう、聞き返した。 本当に小さな声で聞き逃しそうになりながらも、彼方はしっかりと遥の声を、聞く。 「……さっきね」 「うん」 「一瞬……私にとって今、凄く会いたかった人がいたんだ。いっぱい伝えたい事とか、話したい事がある人が。 だけど……その人はもう、居ないって。ここに居る筈が無いって分かってるのに、私……」 話がぼんやりと、物凄くぼんやりとしているが、彼方は何となく理解する。要するにさっき、姉に取って凄く会いたかった人が、多分通りかかった様だ。 その人は、姉にとって涙を流したくなる位に会いたかった人らしい。ここまで姉を泣かす程の人って、一体どんな人なのかと彼方は疑問に思う。 同時に、ちょっと羨ましいなとも思う。姉に涙を流させる位好かれているなんて……もし、男の人とかだったらどうしよう、と妙な乙女心が顔を出す。 ……ちょっと待って。お姉ちゃん、今その人、いないっていった? いる筈が無いって言ったよね。 彼方は数十秒くらい立ってから、その言葉に気付く。何気にショッキングな事を聞いた気がする。 一体どういう意味でのいない、なのだろうか。地元にはいないのか、もしくはずっと昔に別れたっきりなのか、それか不謹慎ではあるが、この世から……なのか。 どんな意味にせよ、彼方は妹として少しばかりショックを覚える。姉がこれほどまでに、大切に思っている人がいたとは思いもしなかったからだ。 だからか。だからさっき、あんな何かを振り払おうと、忘れようとするような奇行をしていたのかと、彼方はそれとなく納得する。 だけど、それほどの人を見かけたのにそれが気のせいだとか、幻だなんて、こんな残酷な話があるだろうか。 彼方は思う。もしも私が姉の立場だったら、同じ様に取り乱すかもしれない。取り乱して……取り乱して、何をする? 遥は泣いていた両目を掌で擦り、平常心を保とうとしている。掌を離し、彼方に向き合って、謝る。 「ごめん、彼方。折角の買い物だったのに……私のせいで変な気持ちにさせちゃって。 疲れてるんだ、多分。変なモノ見ちゃう位。さっきから迷惑……掛けっ放しだね、私。彼方にも……お父さんとお母さんにも」 遥は姉として、これ以上彼方を心配させない様にだろう。笑みを浮かべて安心させようとしている。 しかしその顔は、彼方から見ても、いや、誰から見ても泣いている様にしか見えない。目尻が下がっていて、無理矢理にでも笑っている様にしか。 ――――――――彼方の中で、何かが切り換わる。妹として、今姉に何をするべきかが、自然に浮かんでくる。 ここで良いよ別に。気にしないで。と、受け流して解決させても、疲れてるんだよ、きっと。早く帰ろうよ、と、励ましつつ有耶無耶にしても良い。どっちも悪くない。 だけどもし、もし限りなく低い可能性だとしても、姉が見たその大切な人が、幻じゃなかったら……。 彼方は思う。一番低い可能性ではあるが、もしもその可能性が当たっていた場合、私はお姉ちゃんに一生、後悔させてしまう事になる、と。 もしも私がお姉ちゃんの立場に立ったとしたら、何をしたい? 何をしようと思う? 自問自答した後、彼方は遥にその答えを話す。もし私が、お姉ちゃんと同じ立場に立ったとしたら――――――――。 「……追いかけて、みれば?」 彼方が発した、予想だにしないその言葉に、遥の瞳孔が広がる。どうやら、彼方がそんな事を言うとは思わず驚いている様だ。 彼方は姉の表情の変化に、手応えを感じつつ笑顔で、次の言葉を紡ぐ。 「お姉ちゃんが見かけたその人、もしかしたら本当にいるかもしれないよ。試しに追いかけてみたら良いんじゃないかな? 私はここで待ってるよ。だから行ってきなよ、お姉ちゃん。その人がどっか行っちゃう前に」 和やかな笑顔を振りまいて、彼方は遥にそう、言った。 遥はてっきり、疲れてるんだよと諭されると思っていた。実際自分でも疲れていると思うから、彼方がそう言うならと、きっぱり諦めようとしていたのに。 彼方は背中を押してくれた。幻かどうかわからないし、追いかけてみなよ、と。 だけど、そんな事をして本当にいいのだろうか。折角学校を休んでまで付き添ってくれている妹を置いてけぼりにして。 それに、一条遥が本物であるという可能性は殆ど無い。精神的な疲労からの幻覚だという可能性の方が常識的に考えてずっと、大きい。 遥は再び深く俯いた。俯いて、遠慮がちな口振りで、呟く。 「けど……悪いよ、そんな。彼方を待たせるなんて」 すると、彼方は迷っている遥の両肩を両肩でパシッと掴む。そしてぐるりと前方へと方向展開させると、明るい音色で言った。 「私に遠慮しないでよ、お姉ちゃん。それに、自分に嘘吐いてもしょうがないじゃん」 ―――――――彼方の言葉に、遥は目覚める。閉じかけていた瞳が開いて、心の灯火に火が付く。 彼方に触発されて、またも遥の中の記憶が過去へと遡る。そして思い出す。弓を託してくれた、あの赤毛の男の台詞が。 あの男の台詞で、遥は気付かされた。自分の心に嘘を吐いている事を。嘘を吐く事で一条遥にも、そして自分自身にさえも背こうとした事を。 また、あの時みたいな事をしそうとしていた。後悔すると分かっていながらも、勝手に可能性を捨てて、諦めて、自分に背こうこ、誤魔化そうとしていた。 あの時、もう二度と、自分に嘘を吐く事はしないと誓った筈なのに。彼方の言葉で忘れる所だった。その、誓いを。 「……彼方」 「何?」 遥は彼方へと身体を振り向かせる。振り向かせて真正面から彼方を見据える。その声も、そして目にも、一切迷いは無い。 「私、追いかけてみる。その……その、大切な人」 「うん。待ってる」 彼方は頷いた。遥は母から預かっている金銭を彼方に渡すと、直ぐに戻ってくるからと言い残し、一条らしきその人を追いかける。 もう遅いかもしれない。あるいは本当に幻かもしれない。しかし、それでも遥は自分に正直になって、追いかけてみようと思う。 立ち止まらない。一度点いた胸の飾り火はもう、消さない。もしも会えたら、必ず伝えよう。あの言葉を。 遥は走り出した。もう一人の自分に、一条遥と再び、出会う為に。 「全く……」 世話の焼ける姉の背中を、呆れ気味に見送りながらも彼方はふと、ポツリと呟いた。 「……私も欲しいなぁ。大切な人」 ―――――――××××××――――――― 見渡す限りの、砂漠。目に入るのは砂、砂、砂。広大と言えば広大だが、奇妙な事にその広大さが逆に寒々とした物を感じる。 草木も無ければ勿論、オアシスと呼ばれる泉すらも無い。そこに広がっているのは、黄土色の砂だけだ。 空を見上げると、太陽を拒む様に、灰色の雲が隙間無く覆っている。今すぐにでも崩れてしまいそうな、砂上の中で一人、青年は立っている。 青年、安田俊明はそんな砂漠の真ん中で何故か一人、呆然と立ち尽くしていた。 何時頃からこんな場所に居るのか、そもそもここは何処なのかすらさえ、俊明には分からない。気付いたらこの場所で、こうして立っていた。 砂漠だというのに暑さも、ましてや寒さも……いや、気温は全く感じない。両足を着いて立っているのにも拘らず、立っている気がしない。まるで幽霊になった気分だ。 俊明は薄気味悪さに、この場から逃げ出したくなる衝動に駆られる。しかし出口はおろか、何処かさえもわからないというのに如何すれば良いのか……。 その時だった。別の人間の存在を察知した俊明は、そちらの方へと振り向いた。何者かが、立っている。 『久方振りだな。安田俊明』 その何者かは俊明へと話しかけてきた。声から判断して男の人の様だ。それでいて、低くノイズがかった、聞き取りにくい声。 何者か、否、その男の恰好は俊明から見て非常に奇妙に見える。あらゆる意味で、この砂漠という環境にそぐわないというか。 男の外見で目に付くのは、まず着用しているスーツだ。 体型がはっきりと浮かび上がる、ライダースーツ、の様なスーツ? しかしライダースーツの様に、シンプル極まるデザインではない。 何と表現すれば良いのか……施されている装飾や、やけにヒロイックなデザイン。言うなれば、特撮物で出てくるようなヒーローが、着用しているスーツ……と言うのが一番イメージに近いか。 それでいて、男は頭部にスーツと同じく、派手ではないものの異様にヒロイックなデザインが目を引くフルフェイス型のマスクを被っている。全身を一瞥し、俊明は正直、思う。 何なんだ、コイツ……と。新手のコスプレイヤーだろうか。だが記憶を遡ってみても、コスプレを好む様な友人知人はいない。 ……記憶? 俊明は記憶、と口にしてみる。急激に頭の中が冴えてきて、同時に稲妻の如く、ある記憶の一片が蘇ってくる。 そうだ、目の前の男はコスプレイヤーでも何でもない。自然に、俊明の口からその男の名が飛び出してくる。 「ハクタカ……」 その男の素性、それは、俊明がパートナーであるシュタムファータァと共にある化け物との戦闘の後……。 力尽きたシュタムファータァを抱き抱えて、ビルから落下し死の淵に立っていた俊明と、シュタムファータァを寸前で助けてくれた男。 ハクタカ。男の名は、ハクタカと言う。だが案の定、コスプレイヤーでないにしろ、一体何者かは不明のままだが。 「どうして、アンタがここに……」 俊明は驚きのあまり、心情をそのまま口にする。 ハクタカは自らが声を掛けてきたというのに、俊明に顔も体も向けない。一体何を眺めているのか、遠く何処かを見ている様だ。 一体ハクタカが何を眺めて、そして何を考えているのかは俊明には分からない。しかし何故だろうか。 今のハクタカの姿には、非常に切なく、淋しい物を感じるのは。と、ハクタカは俊明の方を見ないまま、再び声を掛けてくる。 『思ったより元気そうだな』 どこか無愛想なハクタカの口調に、俊明は引っ掛かる物を感じながらも明るく答える。 「あぁ、元気だ。何が何だかよく分からないけどな。後、シュタムファータァも元気だぞ」 『そうか。なら良かった』 やはり無愛想。無愛想というよりも、感情を感じれない、まるでロボットの様に無機質なハクタカの口調に、どうにも俊明は何か引っかかる。 一応答えてはくれるものの、ハクタカは何処かを眺めているままで、一切俊明に顔を向けようとはしない。 その事に、俊明は正直不満を覚える。不満を覚えるし、疑問も浮かんでくる。 別に感動の対面がしたい訳じゃないし、こんな所に長居するつもりも無い。だからこそ、ハクタカと対面した時は安心した。もしかしたらここが何処か分かるんじゃないかと思った。 だが、ハクタカは俊明の言葉に淡々と対応するだけで自ら話しかけてこようとはしない。その事が俊明には不満に思う。 しかしそんな思いを、そのまま吐露するのは情けない。 代わりに俊明は若干皮肉めいた事を言って、ハクタカの反応を見る事にする。 「随分と愛想悪いな。元々愛想もクソも無いが……。何か雰囲気悪いぜ、今のアンタ。 もっとあの時みたいに気取った事言わないのかよ。俺には過去が無い~みたいな」 俊明の言葉に、ハクタカはほんの僅かに、顔を向ける。ようやく反応が見えたと俊明が思った矢先。 『この砂漠は、俺の過去だ』 ハクタカが発したその言葉に、俊明の顔付きが変わる。あくまで茶化したつもりだったのだが、まさかそんな言葉が出てくるとは思わなかった 俊明の内面で、目の前の砂漠に対する視点が移り変わってゆく。さっきまでは、無味乾燥で面白みのない、本当にただの砂漠、以上の印象は無かったのに。 この広すぎて、空っぽである砂漠が、ハクタカの過去なのかと。過去というよりも、実際は心象風景なのかもしれない。 砂以外に何も見えない。砂以外に何も無い。草花も水も、何も無い。そして何より、見渡す先には何にも無い、こんなにも淋しい景色が。 ハクタカは淡々とした、起伏の無い声で俊明に語る。自らの、心象を。 『この砂漠が俺の全てだ。後ろを振り返っても前を見ても、何処を見ようが何も存在しない。この先を進んでも、何もありはしない。 人々の活気に満ちた街も、安らぎに溢れたオアシスも無い。分かるだろ。本当に、何も無いんだ』 俊明はハクタカの声を聞きながら、息を飲んだ。 歩いても歩いても、何処にも辿り付く事の無い砂漠が、ハクタカを表しているのかと。 休息も無ければ恐らく、仲間? 仲間と触れあえる瞬間も無い。最終的に目的地となる場所も無い。ハクタカ自身が言う通り、何も無い。 何の為に歩いているのか、俊明ならきっと分からなくなる。分からなくなった末に、行き倒れてそのまま……。 ……同情、出来ない。俊明の中で、とある感情が渦巻く。渦巻きだすと共に、俊明は両手を握り拳にして力を込める。 俊明は思う。こんな人生、こんな生き方、俺は……嫌だ。 「……良いのかよ」 俊明は聞く。例え此方を向いてくれなくても関係無い。それでも俊明にはハクタカに聞きたい事がある。 「そんな何も無い人生でアンタは……アンタは本当にいいのかよ」 『俺自身がこうなるのを望んだ訳じゃない』 さっきよりも一層、ハクタカの声は無機質になる。本当にロボットかと思う位、冷たい、声。 『だが、結果はこうだ。こうなってしまった。俺は最初拒んだ。拒んだが、既に何もかもが遅かった。 もう遅い。取り返す事の出来ないモノが、余りにも多すぎた』 「……だけどさ、だけど」 言葉が、出てこない。勇んでみたものの、ハクタカの独白に対して、俊明はそれに対する反論が浮かんでこない。 反論できぬ悔しさからか、あるいはハクタカに対する悲しみからか、握る拳にグッと、力が入る。 ハクタカの過去に何があったのか、一体どんな悲痛な出来事に襲われたのか、俊明は何一つ知らない。 知らないものの、それでも眼下に広がる虚無的な砂漠を見、俊明は思う。 例えどれだけ荒んだ人生を送って来た人間でも、何かしらのオアシスだったリ、帰る場所だったリ、目的地だったリ……そういうのがある筈だ。必ず、ある筈だと。 「……アンタには」 一度、その言葉を言おうとして淀む。こんな事を聞いても良いのかと、良心が問いている。 それほどの質問を、俊明はハクタカにしようとしている。何と返されるのかが分からず、怖さを感じる。 怖さを感じてはいるが、その恐怖を制するほどに、俊明にはハクタカに言いたい事があった。 迷う心を振り切り、思い切って口火を切る。どんな答えをハクタカが返してきたとしても、それを受け入れる覚悟で。 「アンタには、護りたい物だとか、護りたい人とか……そういうのは無いのかよ! 俺にはある。護りたい人も、護りたい物も、護りたいセカイも。ホントはあるんだろ、アンタにも」 ハクタカは黙して、俊明の言葉に耳を傾けている。 只単に、答える事が出来ないのだろうか。それとも、安田の言葉を静かに聞き入れているのか。マスクの中の素顔を伺う事は出来ない。 俊明は臆せず、続けて伝えたい言葉を言い放つ。荒っぽい口調であるし、ハクタカの心を不躾に傷つけている可能性もある。 それでも、それでも俊明は伝えたい。伝えたい事が、ある。 「もしもそういうのが無いのなら、今からでも良い。作っていこうぜ。何だっていい。綺麗な景色を護っていきたいとか、この人を影から護りたいとかさ。 どんな小さい事でも良いから、護るべき物を作ろうぜ。なんだって良いんだよ、何だって。 こんな……こんな花も水も無い、砂漠みたいな人生を俺はアンタに送って欲しくないんだよ。送ってほしく……無いんだ」 ハクタカは最後まで、俊明の伝えたい言葉を聞き続けた。しかし、反応は無い。顔も体も何処かを向いたままだ。 言いたい事は全て言い切った。だが、それがハクタカの心に届いているかは別問題だ。俊明は肩を落とす。 やっぱり……やっぱり、響かなかったのかもしれない。それもそうか。こんな若造の戯言、聞き入れる価値も無いのかもしれない。 俊明がどう言おうが、どう思おうが。 この砂漠、否、この砂漠の様な人生は誰でも無い、ハクタカ自身の物だ。他人が如何こう言える訳でも、如何こうできる訳も無い。 熱が冷めていくと、俊明はどうしようもなく、その場に立ち尽くす。―――――――その時。 『響いたぞ』 今まで黙っていたハクタカが、一言そう、発した。俊明は下げていた頭を上げて、ハクタカへと目を向ける。 俊明の言葉は確かに、ハクタカの心に響いていた、届いていた。その事に驚いているのは俊明本人だ。 今まで正面から、俊明に向き合おうとしなかったハクタカが、ゆっくりと体を、俊明のいる方へと振り向かせる。 ふと、俊明は気付く。ハクタカの広げている掌に、小さな花の種がある事に。 その種は小さく、風が吹けば飛んでいきそうだが、蒼く静謐な光を力強く、輝かしている。 ハクタカは俊明にその種を魅せながら、語る。語っている声には、さっきまでの無感情さも無ければ、冷たさも感じない。 『君の言葉、確かに響いた。心に響いたぞ。一字一句な。 俺は君に問いたかったんだ。この景色を見てどう思うか、そして俺に、どんな事を言ってくれるのかと』 「……俺のこと、試してたのか?」 呆気に取られた様子でそう聞く俊明に、ハクタカは軽く頷き、答える。 『正直に言えばそういう事になる。いや、試すという程でも無い。只、君がどんな事を思うかを知りたかっただけだ。 安心したよ、色々な意味で。やはり君は、見込んだ通りの男だった』 流れが読めないものの、ハクタカに褒められて俊明は、微妙に気恥ずかしい思いを抱く。 どうにも感情的になりすぎて、素面ではとても言えない、小恥ずかしく臭い台詞を言ってしまった。それも熱を揮って。 数秒前の自分の口を塞いでやりたい。お前それは、ハクタカに嵌められているぞと忠告してやりたい。 さっきまでハクタカの事を軽く毒づいていたのに、自分はそれ以上に臭く恥ずかしい台詞を言ってしまった。 沸き上がる恥ずかしさに若干顔を赤くしながらも、俊明はハクタカに聞く。その質問はどうしても、俊明にとって訊きたかった質問である。 「……騙してた詫びに一つ、質問に答えて貰いたいんだが」 『構わんよ。何を聞きたい』 「この砂漠自体は……アンタの過去で間違いないのか」 その質問に、ハクタカはマスク越しに俊明を見据えつつ、言った。 『あぁ、間違い無い。この砂漠は俺自身の過去、いや、辿ってきた末の現状を極端に表現している。あくまで疑似空間だ。 俺には帰れる過去は無い。それに、安らげる場所も、最終的に何処に向かえば良いかすら分かっていない。 歩けど、歩けど、何処に辿り付けるのか、俺自身も分からん。正にこの砂漠は俺自身だ』 「それじゃあアンタ、やっぱり……」 不安げな表情を浮かべる俊明に対して、ハクタカは種を乗せた掌を広げて見せる。 種自体は小さく豆粒の様だが、その中に宿っている光は強靭さを感じさせており、どんな事があろうと消えそうに無い。 『だが、何も無い訳じゃない。君は聞いたな。アンタには護りたいモノは無いのかと。俺にとって守りたいモノがこれだ。 この、種だ。未来という大きな華を咲かしてくれる、希望という名の、な」 ハクタカは空を見上げる。灰色に塗り潰されていた空は、気持ちの良い青色へと鮮やかに変わっていた。 『全ての事に決着を付けたら、私はこの種をここに植えようと思う。 そして少しづつ、育てていくつもりだ。何れ、立派な華を咲かせるよ。この命が続く限り』 「咲くさ、きっと」 俊明は屈託の無い、爽やかで弾けんばかりの笑顔を浮かべてそう、言った。ここに来て初めて、俊明は心の底から、笑う。 「俺も俺なりに、未来って華を咲かしてみせる。アンタの咲かせる華に負けない位、大きくて綺麗な花をな」 『なら、枯らすなよ』 今度は逆にハクタカの方から俊明へと伝えたい事を伝える。別れる間際に、伝えねばならない、事を。 『君のセカイには、護らねばならない花々が咲き誇っている。何があろうと、どんな事が起ころうと、その花々を枯らしたり摘まれたりするなよ。 護り抜くんだ。それらを護り抜く事が、君の義務であり、使命だ。このセカイに……いや、俺の様になるな。 無くしてはならないモノを無くして、セカイを砂漠にするんじゃないぞ』 ハクタカの言葉に、俊明は頷く。深く頷き、誓う。男の、誓いを。 「分かってるよ、ハクタカ。大切な人も、大切なセカイも……俺は、護ってみせる。何があろうと、絶対に。 だからアンタも、そう簡単に諦めたり……死んだりするな。互いに未来って華を咲かせる為に」 その時、俊明は何故だか、ハクタカが微笑んでいる様に見えた。マスクに覆われて、全く顔は見えない筈なのに。 気のせいかもしれない。気のせいかもしれないが、笑っていて欲しいなと、俊明は思う。 『約束だ』 ハクタカはそう言って、安田に拳を突き出した。 「男の、な」 笑って、安田はその拳に自らの拳を当てた。 次の瞬間、セカイが白い光に包まれて――――――――。 ―――――――××××××――――――― 彼方に背中を押され、遥はスーパーを飛び出すと立ち止まり、一条の姿を探す。 周囲を歩いている人々の波の中で、一条の外的特徴の中でも印象的な、黒いローブを探す。とにかく目を凝らして、探し続ける。 もしもあの光景が幻でなかったのなら、もしもあの存在がまやかしでないのなら。この両目が捉える筈だ。一条遥の姿を。 遥の両目は映しだした。舗道を行き交っている人々の中で、背を向けて歩いている、黒いローブを。 何も考えずに本能のまま、遥は走り出す。自らの両足を大きく振り上げて、疾走する。ネガティブな発想も小難しい理屈も今は出てこない。 とにかくもう一度、一条さんと再会したい。再会して、伝えたい。ありがとうと、ちゃんとしたさようならを。 しかし遥が懸命に走っていく程、一条の姿は遠く、小さくなっていく。全力疾走している筈なのに、走れば走るほどに一条との距離が離れていく。 それでも必死になって、追いかける。時折転びそうになりながらも、人に幾度かぶつかって謝りながらも、絶対に見逃さないに、その背中を追い掛けていく。 遥の目には、一条の背中だけが見えている。気が付けば、周囲の風景が見覚えの無い風景に変わっているが構わない。 次第に、一条の周囲で歩いている人々の数がまばらになっていく。ちょっとづつ、距離が近づいている様に感じる。 今まで生きてきた中でこれ程までに走った事があっただろうか。遥の息は非常に荒いでおり、足腰が疲労によって崩れそうになる。 その度に、一条の背中を見ると消えそうになる灯火に火が灯る。諦めない。再会出来るまで諦めないという、灯火が。 地元に精通している遥だが、今、周りの風景が何処で、自分がどこまで走っているのかが分からない。 だがそんな事はもう、関係無い。只、純粋に願うは一条との再会。それだけが出来ればもう、何も、いらない。 例えこの身が朽ちてしまっても構わない。一条さん、貴方に会えるのなら。 やがてそこには、遥の知識の範囲外であるその場所には、今だに歩いている一条と、走る事を止めない遥しかいなくなる。 どうにか、足がガタガタになるまで走り抜いた甲斐があった。後数メートル位まで、距離を縮める事が出来た。 その時、遥はそれ以上先に進めなくなる。何故だか、片膝が地面に付いていた。体力が底を尽きたのか、まさか限界に達してしまったのか。 後もう少しなのに。後もう少しなのに届かない。遥はぼやけている視界に一条を捉えながら、呟く。 「……一条、さん」 動いてほしい。後少し、後もう少し歩ければ、会える。会って、話す事が出来る。だから……動いてほしい。 「……一条さん」 思わず、感情が込み上げてきて遥は嗚咽を漏らす。溜まっている涙で目が潤み、ぼやけて、前が見えない。 必死に目を擦って、涙を拭おうとするが無駄だ。どうしても、決壊したダムの様に涙が流れては留まらない。 不格好で情けないと思っていても、遥は涙を抑える事が出来ない。遥は叫ぶ。腹の底から、もう一度会いたいその人の名を、叫ぶ。 「一条さん!」 遥の叫びを、つかつかと歩き続けて、一条――――――――らしき少女は遥を振り払おうとする。 すると握っている黒い杖が、人の言葉を発した。杖は少女へと話しかけている様だ。 <マスター……待ってあげてはどうです。神守さん、このままでは> 「駄目……」 感情を押し殺す様な声で、少女は杖へと返答する。 「このまま行かなきゃ……」 杖にそう言われながらも、少女は歩む事を止めない。遥の叫びだけでなく、遥自身を振り払おうとしている様に見える。 しかし、振り払おうとしているにも拘らず、少女の肩は、震えていた。泣くのを堪えているのだろうか。 ……フードから見える目から、光る物が伝っては、地面に落ちる。どうやら、堪え切れず泣いている様だ。 「このまま行った方が……神守さんの、為だから」 遥が思いを振り払う事に対して拒否し、一条との再会を選んだのと対照的に、少女は秘めている思い事、遥を振り払わんとしている。 だが、感情を無理に押し込んでまでも歩いている事や、涙を流している事、そう語る口調が震えている事から、遥の事を思うが故の行動の様だ。 このまま別れた方が、遥にとっては幸せになると――――――――そう考えているが故に、様々な痛みを抱えながらも、非情な選択を選んでいる。 その時だった。 地面を叩く様な音がして、次の瞬間、べシャリと鈍痛音が響く。 その音に気付き、少女はハッとして振り返る。頭に被っているローブが、振り返った拍子に後ろに下がる。 露わになったその顔立ちは、実年齢よりも随分幼く見える。可愛らしくくりっとしているがその実、折れる事の無い、強き信念が籠っている瞳。 器用に編まれている、チャームポイントと言える三つ編み。少女らしい無邪気さと、戦士としての剛健さを兼ねた雰囲気。 その少女、紛れも無く、一条遥、本人である。一条は地面に突っ伏し、うつ伏せに倒れている遥の元へと急いで駆け付ける。 「神守さん!」 駆け付け、遥の傍らにしゃがむと、杖、否、パートナーであるリヒターに伝える。 「ごめん、リヒター……」 <私の事は良いです。それよりも、神守さんを> 「うん……」 リヒターを地に置き、一条は倒れている遥を優しく抱き抱えて、起き上がらせる。そして呼び掛ける。 「神守さん……大丈夫?」 「一条……さん?」 遥は、見れない。ぼんやりとしている意識の中、目の前に居る一条の顔が、涙で滲んでみる事が出来ない。 両親と彼方に病院で対面してても、トラックから少年を護って、失っていた全てが戻った時でも、どうにか抑えてきたモノが、一条に再会した途端、どうしようもなく溢れてくる。 頭の中が真っ白になって、苦しくて、切なくて、けれど、嬉しくて。遥は激しく咳込んで、乱れに乱れている心を落ち付かせようとする。 それに、姉がこんな弱虫では、彼方に合わせる顔が無い。そう自分自身を叱咤しても、一度決壊したモノは、簡単に元には戻せない。 「見ない……で」 両手で両目を覆って、遥は一条に泣き顔を見せない様にする。 見せたくない。こんな情けなくて、ぐちゃぐちゃになった顔、見せたくない。しかし遥がそう思っていても、涙が止まる気配は無い。止まっては、くれない。 立ち上がらなくちゃ……。立ち上がって、言わなきゃ。そう思うものの、遥の両足は立ち上がれない。今やっと、一条の顔をちゃんと見れる位で。 感情が理性を上回っている。今の遥には、一条と再会できた、その嬉しさのあまりに、身体の感覚が麻痺している。 「神守さん……」 「会いたかっ、た……」 子供の様に幼く、遥は泣きじゃくる。泣きじゃくりながら一条に吐露する。 「私……一条さんに、凄く、すっごく会いたかった。会いたかったん……だよ」 目から止めどなく、涙を溢れさせて、遥は一条に抱き付いた。声にならない声で、とにかく、泣く。 もう二度と、会えないと思っていた。会えなくなってしまった、と。だけど、今はこうして二人一緒に居れる。一条さんに触れる事が出来る。その事が、何よりも嬉しい。 泣きじゃくる遥を、一条は小さな体に出来る限りの力で抱き締める。抱きしめて、包み込んであげる。 と、一条は遥の目を見つめながら、言った。 「ごめんね、神守さん」 謝る一条に、やっと涙が収まってきて、冷静になってきた遥は疑問符を浮かべる。 「どうして謝るの? 一条さんが謝る事なんて別に何も……」 遥がそう言うと、一条は首を横に振って、謝った理由を話し出す。 「私、神守さんに謝らなきゃいけない事、沢山あるんだよ。神守さんの日常を壊しちゃった事。神守さんを予期せず、戦いに巻き込んじゃった事。 神守さんを泣かせちゃった事。そいて何より……神守さんに何も言わずにこの世界から旅立とうとしてた事。そっちの方が、良いよねって、勝手に思い込んで」 遥は口を挟まず、一条の話にじっと、耳を傾ける。一条は次の言葉を紡ぐ。 「だけど正直……正直、この世界から出発する前に、神守さんに何か伝えたいなと思って、スネイルさんに相談したの。 そしたらスネイルさんは私の好きにすれば良いって言ってくれたから……私、神守さんと会おうと思った。ちゃんとさよならって言おうかなって。だけど」 一条はそこで一端言葉を区切ると、俯いた。遥は気付く。一条の目に、涙が溜まっている事に。 遥にとってそれは一種の驚きだった。一条が泣く所なんて、今まで見た事が無かったから。 涙はおろか、気弱に陥る事すら無く、気丈に戦ってきた一条が泣き顔を見せるのは初めてだった。 震え混じりの涙声で、一条は告白する。心情を、遥に包み隠さず、話す。 「だけど……神守さんが、彼……妹さんと仲良くしているのを見て、考え直したんだ。やっぱり会わない方が良いなって。 もう……もう、神守さんは、戻るべき日常に戻ってるから……神守さんが普通の生活に帰る為にも、関わっちゃいけないなって。 折角……元居たセカイに戻れたんだからって……ごめん、本当に、ごめん」 そこまで言いきって、とうとう一条は目に溜めていた涙を流し、泣いた。何度も、何度も遥に謝りながら、泣いた。 「ごめんなさい……本当に、ごめんなさい、神守さん」 「そんな事……」 そんな事無いと、遥は言おうとするが、声が出てこない。何か言おうとすると泣いてしまうから、泣いて……。 堪える事が出来ず、一条に誘発される様に、遥は再び泣き出す。遥と、一条の泣き声が空に響く。 すると空からポツリ、ポツリと水滴が落ちてきて、二人の遥を濡らす。少し経つと、小雨が降り注いできた。 小雨は洗い流す。二人の遥の涙も、嘘も、悲しみも、苦しみも、全てを。 雨で涙を洗い流し、一条は俯いた顔をゆっくりと上げる。上げて再度、遥を見つめて、謝る。 「謝ってばかりでごめん、神守さん。私……神守さんを傷つけてばっかりだね」 「そんな事無いよ」 さっきまで言えなかったが、今はちゃんと言える。遥は一条の言葉をやんわり、否定する。 「そんな事無いって、一条さん。一条さんと出会えたお陰で、私は自分に自信を持てた。自分の力を、心から信じる事が出来た。 そういう事が出来たのは、一条さんに勇気づけられたからだよ。一条さんがいなかったら私は……私はきっと、弱いままの私だった」 遥はそう言って、一条の手を借りる事無く自力で立ち上がる。立ち上がって、一条へと手を差し伸ばした。 微笑んで手を差し伸ばす遥に、一条は最初キョトンとする。が、すぐに何かに気付き、リヒターを掴むと共に、その手を掴む。 遥に引っ張られて、一条は立ち上がった。正面から、遥と一条は向き合う。見据え合う。 照れ臭い。こうして正面から向き合うのは何処か照れ臭いが、それでも、良い。 遥は決心する。今、伝えるべき事を一条に伝えようと。その為にこうして、再会を望んだのだから。 「一条さん……私、貴方に伝えたい事があるの。とっても、伝えたい事」 遥のその言葉に、一条はこくんと頷いて聞き入れる。一条の目を見据えたまま、遥はその伝えたい事を、話す。 「私……この記憶だけ、一条さんと過ごしてきた記憶だけが欲しい。 感覚共有は……今は、いらない。使う事が出来なくなる様にしたい」 あまりにも遥の発言が予想外だったのか、一条の表情ははっきりと、驚きの色を浮かべている。浮かべつつ、戸惑う様な口調で聞く。 「そんな……持ってて良いんだよ、神守さん。神守さんなら悪い事とか絶対しないだろうし……それに、神守さんはそれが認められる位凄い事したんだって」 一条はそう言って引き留めようとするが、遥の中では既に、トラックから少年を救いだした時点で、そういう考えが固まっていた様だ。 目を閉じて、遥は頭の中を整理する。この次は本心。本当に伝えておきたい事。 一条の心に届く様に、遥は目を開けてゆっくりと、自分自身に言い聞かせる様に、語る。 「今の私に感覚共有は……この能力はあまりに大きくて、手に余るから。それに悪い事というか、この力を私用に使ったら、それはズルって事だと思う。 ズルして勝利とか、功績とか得ても、それは私自身の力じゃない。私は、私自身の力でちゃんと物事に向き合いたい。自分の力で、勝ち取りたい。 だから一条さん、出来るなら、必要な時が来るまで感覚共有は使えない様にしたいんだ。出来ればその……記憶を消してた、スネイルって人に伝えてほしい」 遥の言葉に、一条は何か思う事があるのだろうか。捻って考えこんでいる。それに、表情には迷いが生じている様にも見える。 数十程、一条は考えた後、考えが纏まったのだろう。遥に向き合い、返答する。 「……分かった。スネイルさんに掛け合ってみるね。だけど……感覚共有だけを消すのは難しいかもしれない。 感覚共有を封じる事と記憶を無くす事はセットで、感覚共有だけを封じるって事は今まで無かったから。だから……もしかしたら私と会った記憶が消えちゃうかも」 「それでも」 遥は堂々と、自分の考えを話す。その口調には、何ら迷いは無い。迷いも無いし、弱気な様子も、惑う様子も無い、 「それならそれで受け入れるよ。元々、無茶な相談をしてると思うし、もし記憶が消えても自業自得だから」 「本当に……良いの?」 遥は大きく頷き、言う。 「うん、構わない」 凛として強く、それでいて良く通る声で、遥は言葉を紡ぎだす。何時の間にか、両足の疲れが無くなっている。 「私の思いは変わらないよ、一条さん。寂しい思いもあるし、また一条さんと別れる事になるのが悲しくないと言えば嘘になる。 だけど、私の思いは変わらないから。感覚共有を封じるって思いは。だから、お願い」 今語った内容は全て、偽る事の無い、遥の本心、そのままの気持ちだ。 一条にはまた寂しい思いをさせてしまう事に、罪悪感を感じるし、色々と引きずりたい思いもある。だけど、ここでそういうの物を、バッサリと断ち切らなきゃいけないと遥は思う。 自分自身の為にも、そして、一条さんの為にも、と。 感覚共有は確かに便利だ。力を借りる事で幾らでも身体能力を伸ばせるし、魔法の様な事も出来る。 だが、遥は思う。封じなければ、何処かでこの力にに頼ってしまう、弱い自分が出てくる。感覚共有を私的に使おうと考えてしまう、弱い自分がきっと。 だから封じる。持っていくのは、もう一人の自分と過ごしてきた、甘くも苦い記憶、だけだ。 「……それが神守さんの希望なら、私も受け入れるよ。スネイルさんへの交渉、頑張ってみる」 「ありがとう……一条さん」 二人は一歩ずつ離れる。すると一条が、三つ編みを編んでいるヘアゴムを解いた。髪型が三つ編みから、サラッとした、華麗な長髪に変わる。 一条はヘアゴムを握った掌を開くと、遥へと向けた。遥は掌の上のヘアゴムを受け取る。このヘアゴムは無くさない。絶対に、無くさない。 「これで……さよならだね」 泣き出しそうになるのを堪え、一条はそう言った。 「さよならじゃないよ」 遥もまた、泣きそうになる自分を堪え、一条に言った。 「またね、だよ。一条さん。必ずまた、ここで会おうよ」 遥がそう言うと、一条は何時かの、太陽の様に眩い笑顔を浮かべて、答える。 「うん。必ず、また」 「また会える日まで、元気でね、神守さん」 「一条さんも、身体に気を付けて。また、ここで」 「バイバイ」 「またね」 「「もう一人の、私」」 ―――――――××××××――――――― 頬に目覚めを促す様に冷たい何かが落ちてくる。ポツリ、ポツリと。 何だろうか……これは。俊明は少しづつ、閉じている目を開いていく。空から中途半端に広がっている鼠色の雲が小雨を降らしている。 そんな雲の隙間から日光が差しており、俊明を照らしている。小雨の勢いはそれほど強くも無く、数分も経てば晴れてきそうだ。 次に気付いたのは、紫蘇が両目を潤ませて見下ろしている事だ。何時の間にか気絶……? していたのだろうか。 俊明はのっそりと、重い体を起き上がらせる。起き上がった俊明に、紫蘇が安堵の表情を浮かべて声を掛ける。 「ヤスっちさん!」 紫蘇が思わず泣きそうになっているので、大丈夫だ、何でもないと言いながら頭を撫でる。起きて早々、紫蘇に泣かれちゃたまらない。 それにしても、如何して俺は眠りに落ちていたのだろうと俊明は考える。確かスネイルが指を鳴らした瞬間、頭の中に膨大な情報が流れ込んできた事は覚えている。 ……いや、情報ではない。あれは、記憶だ。寝ぼけていた頭は覚醒し、勝手にフル回転する。フル回転した結果、俊明は状況を把握する。 スネイルが指を鳴らした瞬間に、失っていた記憶が戻ってきたのだ。ポッカリと大きな穴の様に失っていた記憶が。 あの黄金色の怪物との戦いの記憶、知人に非常によく似た少女と、その少女のパートナーであるロボットとの共闘の記憶、そして力尽き、ビルから転落した記憶。全てを。 あの戦いの中で、安田も紫蘇も凄まじく傷つき本気で死にかけた。思い返してみて、俊明はゾッとする。良くこうして生きていられたな、と。 それにしても、さっきまで見ていた夢は一体何だったのだろうか。 自分と紫蘇を助けてくれた男、ハクタカとの再会。しかし何故、ハクタカとあんな形で再会したのかはまるで分からない。 夢だと断言するには物凄く現実感に満ちている、というのか。まるで現実で会っていた様に感じる。あれは本当に……何だったのか。 「おっはー、安田君」 馴れ馴れしく軽々しい口調で、俊明に声を掛けてくる女性の声。 その声がする方向に顔を向けると、ニヤニヤと悪戯っぽい笑みを浮かべたスネイルが、白衣のポケットに両手を突っ込んで立っている。 数秒程、俊明は頭の中を整理し直す。ようやく、話に筋が通ってきた。 まず第一に分かっている事として、怪物との戦闘で記憶を失っていたのは、目の前に立っているこの女、スネイルの仕業だ。 どんな方法でやったのかは知らないが、安田と紫蘇、それにショッピングモールで怪物で襲われ、病院に運ばれた人々の記憶が無い理由は間違いない。 スネイルが消したのだと、俊明は断定する。そうとしか考えられない。 ならば理由、理由は……何だろうか。一番考えられる理由としては、あんな怪物に襲われた、という記憶で人々にトラウマという傷痕を残さない様に、だろうか? あんな非現実極まりない存在に襲われたとなれば、どんな人間でもトラウマになりかねない。その為、敢えて記憶を消していったのかもしれない。 そう考えると、俊明はスネイルに対して批判や不満をぶつける気にはならない。無論、勝手に記憶を改竄された事には納得いかない節があるが。 一先ず、俊明は一息吐くと、まだ泣きそうである紫蘇の頭を撫でながら、聞く。 「ごめんな、シュタムファータァ。心配掛けて。俺は見ての通りピンピンしてるから大丈夫だ」 「ホントに良かったです。ヤスっちさん、突然その場に倒れちゃうから……。それでその、記憶……戻りました?」 「俺は一応戻った。お前は?」 「はい……私も戻りました。その……スネイルさんのお陰で。それで一通りの事情とか聞きました」 「そうか……」 どんな事情があったのかは紫蘇に聞いた方が早い。早いが早いが、俊明はスネイルの口から直接、その事情を聞きたかった。 スネイルへと顔を向け、俊明は質問をぶつける。どうしても聞いておかねば、収まりが付かない。 「スネイル、一つだけ確認させてくれ。 俺とシュタムファータァ、それに、病院に運ばれた連中の記憶を改竄したのはアンタなんだな?」 俊明の質問にスネイルはニヤけた笑みを崩さぬまま、変わらず馴れ馴れしい口調で答える。 「あったり~。貴方の考えている通り、貴方達の記憶と、病院に居る患者さん達の記憶を消したのは私よ。理由まで話した方が良い?」 「頼む」 「至極単純明快。奴に襲われた人達を、普段の生活に戻りやすくさせる為よ。 あんな得体の知れない化け物に襲われたら、その記憶を引き摺ったまま日常に戻れる人はそれほどいないからね。女性や子供なら尚更。 だから記憶を消させて貰ったの。化け物に襲われた、よりかは、良く分からないけど事故に巻き込まれた……。って方がまだマシでしょ?」 「やっぱりな……で、俺とシュタムファータァの記憶を消した理由は? 俺達は毎回、あんな化け物みたいな連中と戦ってるんだが」 「あぁ、貴方達の記憶を消した理由ね……。ぶっちゃけると、特に無いのよ」 「……無いのかよ」 俊明の半ば呆れ気味である突っ込みに、スネイルは空笑いする。 「百戦錬磨な貴方達が、奴と戦った記憶を持っていても、さほど普段の生活に支障は無いしね。 寧ろ、私自身は戦いに於ける経験値が溜まるから、そのままにしとこうかな? って思ってたんだけど、 私の同僚であるリヒト君ってのがいてね。その人に安田君と紫蘇ちゃんも普段の日常に戻した方が良いんじゃないか、って提案されたからそれに乗ってあげたの」 「じゃあ俺達の記憶が無かったのは、そのリヒトって奴が気を利かせてくれた訳だ」 「そういう事。感謝するならリヒト君にしてね。まぁ、こうして戻しちゃったら意味無いんだけど……」 そこでスネイルはわざとらしい溜息を吐くと、ポケットから手を出して髪の毛をポリポリと掻きながら投げやりな口振りで言う。 「何と言うか、リヒト君にそう言われたのも一つなんだけど、貴方達を見てると、私の可愛がってる男の子と女の子にダブって見えてね。 その子達と貴方達は妙な所で似てるから、情が移ったのかも。別に意地悪とかで消した訳じゃない事だけは理解してほしいな」 そう語るスネイルの、何がおかしいのかニヤニヤニヤニヤしている顔付きから、俊明はどうしても、スネイルの事を心から信用できない。 しかし、スネイルがいう事が納得できない訳でもない。もし何も知らないまま、あんな化け物に襲われたとなれば、大の大人であろうと確実に記憶の中で深い傷痕となる。 スネイルが言っていた様に、それが小さい子なら尚更、一生治らないトラウマになるかもしれない。 それだったら、多少居心地の悪さを覚えたとしても、記憶その物を完全に無くした方がまだいい気がする。しかしそれが正しいとは、俊明には断言できない。 俊明はあの時、記憶が無くなった事にとにかく不快感と恐怖を覚えた。 しかしそれは、周囲の人間達も自分と同じ様に記憶を無くしていた、という状況の不可解さから来る不快感からだ。 ……もしかしたら、自分の様に状況の不可解さから同じ様な人が出てくる気がするが、正直そこまで、気が回らない。悪いとは思うが。 「その……スネイルさん」 静かに俊明とスネイルの話を聞いていた紫蘇が口を開く。スネイルへと顔を向けて、紫蘇は謝ると共に感謝を述べる。 「敵だとか味方だとか、変な事を聞いてごめんなさい。 スネイルさんが記憶を消していたのは、私とヤスっちさん、それに……それに、戦いに巻き込まれた人達を、普通の生活に戻す為だって事を知らずに……。 私……スネイルさんの事、どこか疑ってました。訝しんで……ました。凄く失礼ですよね……本当に、ごめんなさい」 「謝らないで、紫蘇ちゃん。そもそも断りも入れず、勝手に記憶を弄った私が悪いんだし。寧ろ謝るのは私の方よ。 今更粛々と謝っても遅いけど、記憶を弄ってごめんなさい。紫蘇ちゃん、安田君」 そう、詫びを入れるスネイルに、俊明も紫蘇に続く様に謝る。 「俺も悪かったよ。いきなりアンタに食って掛かったりして。そういう事情があった事も知らずに」 「悪いと思うならパンと珈琲買ってきて。三十秒で」 「俺には粛々としないのかよ! つかパシんな!」 「ごめんごめん、けど君を見てるとどうもイジリ倒したくなっちゃうのよね……何で?」 「俺が聞きたいよ!」 素早く突っ込んでくる俊明に笑いながら、スネイルは思う。やっぱり。 やっぱり、彼と安田俊明は似ている。俊明の姿が、自分の知っている、とある青年に。紫蘇の姿が、自分の知っている、とある少女に。 予期せぬ出会いから、世界の命運を背負わされてしまった青年と、世界を護る為に、戦いという運命に自ら飛び込んだ少女。 その二人の姿が、スネイルには安田と紫蘇に重なってみえる。……いや、きっと安田と紫蘇だけじゃない。 また別の世界でこうしている間にも、そんな少年少女が増えている。予期せぬ戦いに誘われて、振るいたくない拳を振るって、涙を流している少年少女達が。 イルミナス―――――――その存在はやはり許しておけない。 一人の、大人として。スネイルは心の中でそう密かに、強固な決意を更に固くする。 もうそろそろ良い頃会いか。巻いている腕時計を見、スネイルは歩き出す。 「伝えるべき事は大体伝えたわ。後は二人仲良く水入らずで。 ただ、私達に協力するかの件はよーく考えておいてね。何時か答え、訊きに来るから」 そう言い残し、スネイルは俊明と紫蘇の横を通り過ぎて出入り口である石段の方へと歩いてゆく。 立ち去ろうとするスネイルに、俊明は紫蘇に支えられてて立ち上がる。石段を降りて去っていこうとするスネイルに向かって、俊明は声を張り上げて呼び掛ける。 「スネイル!」 降りようとした手前、呼び掛けられたスネイルは足を止めた。 俊明は大声で、スネイルに感謝する。紫蘇も続いて、感謝する。 「気遣ってくれてありがとな! 何だかんだ……何だかんだ助かった!」 「色々と、ありがとうございました!」 安田と紫蘇の感謝の意を、スネイルは前を向いたまま振り向かず、手をヒラヒラと降って石段を降りていく。 年甲斐も無く、スネイルは久々に照れる。無性に照れ臭くなり、俊明達に振り向く事が出来なかった。 何と言えば良いのか……ああいう風に恥ずかしげも無く素直に、人に感謝する事が出来る……いや、感情を表に出せる俊明と紫蘇この上なく、羨ましい。 長い年月を生きてきた中で、色々なモノを、大切なモノを失ってしまったスネイルにとって、自らを誤魔化す事無く、正直に生きる事が出来る俊明と紫蘇が眩く、感じる。 本来ならば。 本来ならば、あの二人の様な無垢な存在を、凄惨な戦いに巻き込むべきではないとスネイルは思う。 しかし記憶を意図的に失わせた所で、二人が平穏でな日常に帰れる訳では無い。スネイルが何をしようと、あの二人の戦いは、まだまだ、続いていく事だろう。 それならば少しでも、あの二人の……いや、助けを求めている戦士達の手助けをしたい。出来る限り協力して、心や体に圧し掛かる負担を減らしてあげたい。 無論、こちらにも戦わねばならない理由も、倒さねばならない敵もいる。人を気にかけていられるほど、状況に余裕など無い。 しかしそれでも、とスネイルは思う。思わずにはいられない。 セカイを、大切なモノを護りたいという志を持つ仲間を見て見ぬ振りは出来ない。 彼らが、彼女らが傷つくのなら、この身を呈してでも守ってやろうと思う。この身は、彼彼女らが迎えるべき未来を護る為に―――――――捧げよう。 「ホント……お人よしよね」 そう、スネイルは自嘲的に呟いた。その時、懐に入れていた携帯電話が着信を知らせるバイブ音を響かせる。 取り出してスネイルはすぐに、通話ボタンを押す。 「もしもし」 「もしもーし、遥ちゃん。もう一人の自分にはさよなら出来た?」 「はい、すっきりと。空間転移のカード、役に立ちました」 「アレが役に立ったのなら良かった。それじゃあ出発の準備を」 「あ、その前にスネイルさん。ちょっと……」 「何々? 何か頼みごと?」 「はい、頼み事です。その……」 ―――――――××××××――――――― スネイルを見送っていき、俊明はグーっと背筋を伸ばす。 何だか疲れた。どっと、疲れを感じる。別段、戦っても激しく動いた訳でも無いのだが。 紫蘇へと目を向ける。こうして見ると、普通に可愛いなと一瞬思ってしまい、俊明は紫蘇から目を逸らす。 「ヤスっちさん」 と、紫蘇に呼ばれて、俊明は顔を向ける。 「この後どうします? 何か予定とかあるんですか?」 「予定なぁ……今日学校休んじゃったし、別にねえな」 そう俊明が答えると、何故だか紫蘇はもじもじと動いて、頬をほんのりと染めている。 何か言いたい事があるのだろうかと、俊明が疑問符を浮かべていると紫蘇は俊明を見上げて、言った。 「じゃあ……その、パフェとか食べに行きませんか? 私、ずっと緊張してたらお腹……空いちゃって」 俊明は紫蘇の言葉にポカンとしていたが、次第に理解してきて、苦笑する。 俊明が笑っているのを見、紫蘇が恥ずかしそうに顔を赤くして怒る。 「何で笑ってるんですか! 空いちゃったものはし、仕方ないじゃないですか……」 「分かった分かった。食いに行こうぜ」 「ヤスっちさんのおごりですよ!」 「おま、ちょっと待て!」 俊明の制止を聞かずに、紫蘇は走り出した。走る紫蘇の顔は明るく、心から嬉しそうだ。 「しょうがねえな……」 俊明は空を見上げる。今の空は、俊明の心を映す様に蒼く、蒼く、澄んでいた。 眩しい太陽を掌に透かして、俊明は、思う。 アンタも今、同じ空を見てるのかな。ハクタカ。 ―――――――××××××――――――― スーパーの出入り口で、精算を済まして買い物を終わらせた彼方は、買い物袋を持って姉が帰ってくるのを待つ。 一体何処に行ったのか、こうして三十分位、彼方は立っている。空模様が少し悪くなって小雨が降ってきたが、今では青天へと変わっている。 しかしこれだけ待たされるという事は、きっと姉は会いたかった人に会えたのだろうと、彼方は自分の事ではないにも拘らず妙に嬉しくなる。 それにしても、会えたは良いのだがこうして三十分も待たされるのは正直、キツい。只待たされる事が、こんなにもキツイとは。 だがこんなに時間が掛かっているということはつまり、そういう事なのだろう。なら、この待ち時間も悪くは無い。 姉がその大切な人とどんな会話をしているのか、彼方は姉――――――――遥が帰ってきたら聞いてみたいなと思う、その時。 こっちに向かって、誰かが走ってくる。 髪の毛を三つ編みに束ねて……三つ編み? 彼方は小さく首を捻る。 どうして姉は三つ編みになっているのだろう……と思ったが、あぁそうだった。確か手首に巻いていたんだ。 ……あれ? 何か散歩の時のあの件で何故か手首からそのヘアゴムが消えていた様な……気のせいだったかな。 「ごめん彼方! 偉い時間待たせちゃって」 肩で息をして、ぜえぜえと呼吸を荒げながら彼方の元へと駆け付けた遥がそう、謝ってきた。 「良いよ良いよ、そんな謝らなくても。それで……会えたの?」 彼方がそう質問すると、遥は満面の笑顔を浮かべた。浮かべて、答える。 「うん! 会えたし、話せたよ。色んな事」 「そっか。良かったね、会えて」 「彼方のお陰だよ。彼方があの時追いかけてみればって言わなかったら、きっと……」 「ほら、また暗い顔浮かべない浮かべない。はい、お姉ちゃん」 彼方は持っている買い物袋を、遥に差し出した。 「帰りは私が自転車漕いでくよ。お姉ちゃんが荷物持って」 「良いよ。安全運転でお願い」 「分かってるよ」 彼方から買い物袋を受け取って、遥は彼方と共に自転車を置いてきた駐輪場へと向かう。 その途中で、彼方は遥に振り返りつつ、聞く。 「ねえ、お姉ちゃん」 「ん?」 「その大切な人と、どんな事話したの? 会えてよかった、とか」 「……秘密」 「えー何それ。姉妹の間に秘密事は無しだよ?」 「あの人との事は、心の中に秘めておくから。だから彼方にも秘密」 「む~……お姉ちゃんの意地悪」 そう膨れっ面しながらも、彼方は姉がその人に会えた事を心で祝福する。 「何時か教えてよ、お姉ちゃん。私、お姉ちゃんが話してくれるの、何時までも待つから」 「私忘れちゃうかもよ。まぁ……何時か気が向いたら話してあげる」 「絶対話してよ。姉妹同士の約束だからね」 「忘れないよ。忘れない……」 ふと、どこからか最近流行っている曲が聞こえてきた。遥にとってその曲は気にいっている曲だった。 何となく、今の心情にマッチする様な気がして、遥はその曲を鼻ずさむ。 「交わした約束、忘れないよ……」 忘れないよ、一条さん。きっと、忘れない。 ―――――――××××××――――――― 自宅に帰った遥は、彼方と夕刻まで引っ張り出してきたテレビゲームを遊んだり、昔懐かしんだ漫画本を読んだりと。 遊べるだけの事を時間たっぷりに遊んだ。母はしょうがない子達だよと呆れながらも、許容してくれた。 童心……と呼ぶのも何かおかしいが、小さかった時の様に何も難しい事を考えず、彼方と遊んでいる時は非常に楽しかった。 母が作ってくれた昼食も美味しかったし、母と、彼方と協力して作った夕食も、最高に美味しかった。 食事自体は昼はカレー、夜は餃子と物凄く普通なのだが、どちらも遥にとっては特筆に値する美味さであった。父が多忙を極めており一緒に食べれないのが心残りではあるが。 彼方と一緒に風呂に入ると、彼方が色々と成長しているのに比べて、自分はまるで成長していない事にショックを覚える。 少しばかり落ち込みながらもパジャマに着替えて、後は明日、学校へと万全の体調で出かける為に早めに寝る。 そう言えば彼方が明日、寮というか学校へと帰ってしまう。寂しい事には寂しいが、引き留める訳にも行かない。 次に会えるのは大きな休み、夏休みだ。その時を楽しみにしておこう。 「じゃあお姉ちゃん、電気消すよ」 「うん、お願い」 「あのさ、お姉ちゃん」 電気を消す一寸、彼方が話しかけてくる。 「何?」 「今度の夏休み、行こうね。あの河川敷」 「うん。必ず行こうね。だから勉強とか色々頑張るんだよ、彼方」 「お姉ちゃんも頑張ってね。応援してるから。それじゃ、お休みなさい」 「お休み、彼方」 彼方が電気を消した。何も見えない闇一色の中、遥は目を閉じて、意識を落としていく。 明日、帰る。元居た日常へと、帰る。 ―――――――××××××――――――― <聞こえる? 神守さん> <……聞こえます。どなた様ですか?> <初っ端からコレの話し方が分かるなんてやるわね。それとも遥ちゃんと通信機を介して話した事があるのかしら?> <いえ。でも頭の中に語りかけてくるなら、その逆も出来るかなと思って> <ビックリするほど落ち着いてるわね。これをされた人は最初驚いたり戸惑ったりするんだけど> <何だかビックリする事が多すぎて慣れちゃいました。それで貴方は、一体誰なんですか?> <ここ数日で随分神経が太くなっちゃったみたいね。それはさておき、私の名前はマチコ・スネイル。遥ちゃんから話は聞いてるとは思うけど> <貴方がスネイル……さんですか。一条さんから聞いてはいましたが、女の人だったんですね> <普段は少女として暮らしてるけどね。ま、そんな事はどうでも良いけど……感覚共有の件、本気なの?> <本気です。今の私に感覚共有は過ぎた力なんで。まだ私には早いんです。その力は> <そうかな? 私も遥ちゃんと同じ意見なんだけど、貴方なら感覚共有を持っていても大丈夫だと思うの。少なくとも、悪い方向には使わないだろうから> <いえ……そんな事、無いです。私はまだまだ未熟だから、感覚共有を持ってたら多分、頼っちゃいます。自分自身の事で> <別に良いと思うけどね。他者を傷つけたり泣かしたりする為に使う訳じゃなければ> <勿論そんな事はしません。しませんけど……感覚共有って力は諸刃の剣だと思うんです。正直な事を言えば、使っていたいです。色々な事がしてみたいです。 だけどそれは私自身の為であって、誰かを護りたいだとか、そういう事の為に使う訳じゃないから……そんな風に考えたら、私は多分溺れてしまうと思うんです。感覚共有に> <じゃあ人助けとかに使えば良いんじゃない? 分からないな、私には。そこまで貴方が感覚共有を拒む理由が> <……自分でも良く分かりません。分からないけど、駄目だと思います。日常的に使える様になったら私……駄目になると、思います> <ん~……。そこまで言うなら、しつこく強要は出来ないわね。それに遥ちゃんから熱の籠った説得も聞かされたし。貴方の意思を酌んであげる。だけど一つ、念を押させて> <……はい> <過去の記憶を消すという事は、まんま感覚共有に関する記憶も消すという事になるわ。その中から、感覚共有の記憶だけを消すって事は前例が無い。 私にも初めての事になる。遥ちゃんが言っていた事を思い出して。感覚共有だけでなく、遥ちゃんと一緒に居た記憶が丸ごと消えるかもしれない可能性の方がずっと高い事を> <分かっています。どんな事が起きても受け入れる覚悟は出来てます> <……本当に、良いのね。漫画やドラマみたいに奇跡が起きるとは限らないのよ> <承知しています。宜しく、お願いします> <意思は揺るがない、ってことね。オッケー、分かった> <それじゃあ眠ってくれる? 結果は明日の朝……どっちに転ぶかは私にも分からない。良い結果に転ぶ事を、願っててね> <信じてます、スネイルさん。奇跡が……起きる事を> ―――――――××××××――――――― ―――――――朝の光が、眩しい。 私は毛布を巻くって、ベッドから起き上がる。頭の中がやけにキンキンする。カキ氷を食べた訳でも無いのに。 梯子を降りると、下のベッドで何故か彼方が眠っていた。どうして彼方がここに居るんだろう。 彼方は別の、というか進学校に通ってて、それでいて寮に居る筈なのに。不思議だ。 寝ぼけ眼を擦りながら、私はドアを開けて洗面台へと向かう。 水道を捻って水を出し、ジャバジャバと顔を洗う。さっぱりとした気分になると、頭の中もさっぱりした気分になる。 けれど何故だろう。何か大事な事を、凄く大切な事を忘れている気がする。 何だろう……何を忘れてるんだろう。そんな事を思いながらお母さんに挨拶する為に、リビングの隣のキッチンへと向かう。 「おっはよー、お母さん」 フライパンで何を焼いてるんだろう。目玉焼きかな? を焼いているお母さんが振り向いた。 「おはよう、遥。学校に行く準備は出来てるの?」 「準備も何も普通に出来てるよ。何で?」 私がそう聞くと、何故かお母さんは目を丸くした。別に珍しい事を言ったつもりは無いんだけど。 「そう。なら良かった。今出来るから座って待ってなさい」 「はーい」 お母さんに返事をして、リビングに移り、テーブル横の椅子に座る。呼ばれたら朝食をテーブルに運ばなきゃ。 にしても待っているだけだと、眠くなってくる。寝ない様にしっかりしようとしても、どうしても眠気が襲ってくる。 ――――――――何? 急に頭の中に、妙な記憶? 思い出? が過ぎる。 だけどそれはとってもぼんやりと、曖昧としていて、はっきりとしたビジョンじゃない。 けれど、浮かんでくる。何かが、浮かんでくる。自分でも分からない、変な物が。 「おはよう、お姉ちゃん、お母さん……」 私と同じ様に寝惚けた様子で、彼方がリビングに入ってきた。 それにしても、ホントに何で彼方が家が居るんだろう。何か事情でもあるのだろうか。家に戻ってくるような。 事情を訊こうかな? と思って声を掛けようとした矢先、彼方は私の向かい側の椅子に座ると話しかけてきた。 「あ、お姉ちゃん、これ」 そう言いながら、彼方は何かを私に手渡そうと掌を広げた。 ……ヘアゴム? 彼方の掌の上には、淡い色合いが素敵な数本のヘアゴムがあった。 けれど何でヘアゴム? 私、神を三つ編みにする時にこんな色の奴は使ってない。もっと濃い、原色みたいなのを使ってる。 不思議に思っていると、彼方は私に微笑みかけながら、言った。 「昨日の話、凄く面白かったよ。でもやっぱり嘘でしょ?」 「……え?」 「もう一人の自分に会ったって話。凄い興味深い話だったけど、やっぱり信じらんないよ。 お姉ちゃん、私の事からかってるんでしょ? 上手いんだから、もう」 一体何の話……と言いかけて、またあのビジョンが頭の中で蘇ってくる。 次はぼんやりとしていない、ハッキリと思い描けるビジョンだった。知ってる場所が……あのショッピングモールが大変な事になってる。 良く分からないけど、大きなロボットが暴れてる。何故か私がどこかの屋上に立って、光で出来た弓を構えている。それに……。 それに、私とよく似た、小さな女の子。私は、その子に見覚えがあった。それどころか――――――――直接、話した気さえする。 「だけど怒ったりしないよ。だって本当に面白」 「ごめん、彼方」 私はそう言って、彼方の掌からヘアゴムを握り取って、椅子から立ち上がる。立ち上がって、洗面台へと向かう。 ごめん、彼方。ありがとうも言わずにこんな事して。だけど確かめたいの。今すぐにでも、確かめたい。 このヘアゴムを使えば、忘れている事を、とっても大切な事を思い出す気がするから。 洗面台に付いた私は、目の前のガラスを見据えながら、気を集中させる。鼓動が速くなって、ヘアゴムを持っている手が軽く震えてくる。 怖い。怖いけど、やってみるしかない。私はヘアゴムを指先に挟んで、腕を後ろに回す。 三つ編みにするのは何となく面倒だから、このまま髪を通してポニーテールにしてみる事にする。 これで何も無ければ何も無いで良い。何かあったら……何かあった、だ。 早まる鼓動を抑えながら、私は髪の毛を束ねて、ヘアゴムを一気に―――――――くぐらせた。 ―――――――そう、だった。 そうだったんだ。私……思い、出せた。私……頼んだんだ。スネイル、さんに。 感覚共有を封じてほしいって。私は試しに、あの不思議な何かを発現させようと力む。もし感覚共有が使えるなら……。 ……どれだけ力んでも、何も出てこない。封じれたのかな。いや、きっとそうだ。成功したんだ、スネイルさん。 どれだけ低い確率なのかは分からないけど、奇跡は起こせた。起こす事が、出来た。 だけどもし、彼方がヘアゴムを渡してくれなかったら。昨日、つい口が滑って一条さんとの事を話した事を言ってくれなかったら。 私はあのまま、何かあったかもしれない……でそのまま全てを忘れていたかもしれない。 彼方にも感謝したいけど、何より。 ありがとう、一条さん。一条さんがこれをくれたお陰で、私、思いだせたよ。 貴方との、思い出。貴方から貰った勇気。思い出す事が、出来たんだよ。 私はヘアゴムを外して、胸元で両手を合わせて、抱き締める。この思いが、何処かの世界で今も戦っている一条さんに、届く様に。 ヘアゴムを括って、再びポニーテールにしてリビングに戻ると、お母さんと彼方が先にご飯を食べていた。 彼方は戻ってきた私を見て、言った。 「お姉ちゃん、何で泣いてるの? 小指でもぶつけた?」 私は笑顔で、彼方に言い返す。 「嬉し泣きだよ。平和って、良いなって」 ―――――――××××××――――――― 神守遥 ―――――――××××××――――――― 「それじゃあ行ってきます。彼方も気を付けてね」 「うん。お姉ちゃんこそ車とか気を付けて」 ―――――――××××××――――――― 安田俊明 シュタムファータァ(紫蘇) 神守彼方 神守母 神守父 ―――――――××××××――――――― 「こら、遥。アンタお弁当忘れてるでしょ」 「あ、ごめん。うっかり……」 「しっかりしてよ、お姉ちゃん」 ―――――――××××××――――――― リヒト・エンフィールド ヘンヨ・シュレ― 田所カッコマン 鈴木隆昭(ハクタカ) ―――――――××××××――――――― 「それじゃあ改めて。行ってきまーす」 「行ってらっしゃーい」 「あんまり遅く帰ってくるんじゃないよ」 「はいはい。じゃ、またね。彼方」 「次は夏休みでね」 ―――――――××××××――――――― カッコマンエビル(シロガネソニック) 切り裂きジャンヌ(シロガネブレード) ニック・W・キム(シロガネマッスル) スナイパーガマン(シロガネスナイパー) イッツァ・ミラクル ―――――――××××××――――――― 「おはようございます、先輩」 「おはよう、安田君」 「あれ、髪型変えたんスか?」 「どう、似合う?」 「普通です」 「こらっ! 貴方には先輩を敬うって心が……」 「やべぇ遅れる。お先、失礼しまーす」 「……全く」 ―――――――××××××――――――― リヒタ―・ペネトレイタ― ゼノクレス/ゼノブレイカー ―――――――××××××――――――― 「おっはよう、遥」 「あ、悠子。何か久しぶり」 「ホントに久しぶりね。私の顔、忘れてるんじゃないでしょうね」 「まっさか。大事な友達の顔、忘れるわけないじゃん」 「なら良いけど、もうすぐ始業時間だよ」 「嘘!? じゃあ急がないと!」 ―――――――××××××――――――― センジュ・キサラギ メルフィー・ストレイン マチコ・スネイル ―――――――××××××――――――― 「遥? 立ち止まってどうしたの?」 「いや、ちょっと……先、行ってて」 「……遅れても知らないわよ」 ―――――――××××××――――――― 一条遥 ―――――――××××××――――――― ヘアゴムを取る。取って、私は空に掲げる。 そして、別のセカイで、だけどきっと、同じ空を見ている一条さんへと、伝える。 頑張れ、私。頑張れ、一条さん。貴方には―――――――私が、ついてる。 一瞬、一条さんの声が聞こえた気がした。けどそれは多分、気のせい。 次は戦いとか、そういうのが無い、穏やかで優しいセカイで。 また、会おうね。 ―――――――××××××――――――― HARU×haru the strange dream ―――――――××××××――――――― 一条さん。 了