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お約束 ローカルルール(LR?)ジャニーズ2板編 ジャニーズ2板のお約束(全部読んでから参加すること) ◇この板は「2003年以降」に「CDデビューして」「ジャニーズWEB?に独立カテゴリーが設けられた」ユニットもしくは個人タレントを扱います。(NEWS、関ジャニ∞、KAT-TUN) (※万が一ユニットが消滅しても他板への移動は無し) ・SMAPの話題は【スマップ板?】へ ・TOKIO、KinKi Kids、V6、嵐、タッキー&翼、近藤真彦、少年隊、岡本健一、内海光司、赤坂晃、佐藤アツヒロ、 その他OBの話題は【ジャニーズ板?】へ ・ジャニーズJrの話題は【ジャニーズJr板?】へ ■2ちゃんの基本とルール 【使い方】 【FAQ?】 【書き込む前に読んでね】 ■ジャニーズ2板初心者の方へ ・【初心者案内スレッド?】を必読 ・タレント個人・ユニット・各種コンビ・アンチ(タレント叩き)の話題はそれぞれ本スレッド1つのみ(重複不可) ・事務所を辞めてしまったタレントやオリキに関しては既存の総合スレッドを使用すること ・「○○君のスレッドが見つからない」「このスレッドは立てるべき?」など迷った時は【くだらない質問はここに?】スレッドで相談(age進行) ・801?話禁止 ■一般人のプライベート情報の書き込みは禁止 ●個人の特定出来る書き込みを見つけたら→【削除要請板?】 ジャニーズ2板での実況?・チャット厳禁 実況は各実況chへ
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BBCS2(PSP/3DS)版 下りJ2C(アレグレットキャンセル)>5B>5C>6D>JC>5B>6B>カンタービレ>5C>2D>Bヴィヴァーチェ>5C(hjc or jc)>JBJAJB(jc)>JBJC ポイント MISSION8の頭の部分が少し変わっただけなので「下りJ2C(アレグレットキャンセル)>5B」の部分がしっかりできれば簡単になる。 ここで注意しておきたいことはカルルの通常技からニルヴァーナの攻撃をつなぐときはその攻撃の一つ前に挟めること。 カンタービレやアレグレットがあるときはそれらがヒットしたすぐ後にコマンドを入力すること。
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南イタリア ネアポリス空港 両替所にて、クロノはある程度まとまった金を両替した。 「すまない、市内までタクシー代はどれくらいかかるだろうか?」 「4000~5000ってとこかね」 「そうか、ありがとう」 金を財布に入れ、もう一人の同行人の元に戻ると、札束の半分辺りを手渡す。 「おおよそ、10、20万あるはずだ、ある程度雑貨品も買い込む必要があるし足りなくなれば言ってくれ」 「お金の管理はちょっと苦手かも…ユーノ君お願い出来るかな?」 「いいけど、持つときは複数の場所に分けてね、スられた場合の保険に」 肩にフェレット、ユーノを乗せた高町なのは。いつもの制服ではなく私服なので、多少は周りに溶け込めていた。 「こういう服はあまり着た事無いから…ちょっと慣れないな」 「似合ってるよクロノ君、普通の人みたい」 「いや、普通の人だが」 対してクロノはいつもの執務官服ではなく、黒の上下に藍色のジャケットを羽織っていた。 二人とも少々大きめのスーツケースを引いている。ぱっと見は単なる旅行者以外の何物でもない。 「普段は普通に見られていなかったのか…」 「さて、タクシーで拠点に向かおうか、なのは」 がっつりと落ち込むクロノはあえて無視する。 「そ…そうだね…」 「ねえ、タクシー探してる?」 二人(と一匹)に声をかける者がいた。 「アルバイトでこれから帰る所だから安くしておきますよ…8000でどう?」 服は胸元がハートの様な形に開いた、暗い配色の…制服…だろうか? 輝く様な金髪の前髪を3つ丸めて束ねている、年の瀬はクロノより少し年上なのだろうか。 「厚意はありがたいが、ちゃんとタクシー乗り場で乗る事にするよ…流石にそこまで暴利ではね」 「く…クロノ君…」 なのはは物言いを多少咎めるのと同時にタクシー乗り場に目をやった。 乗り場にはかなりの長蛇の列、タクシーが来る時間の割合を考えると1、2時間で済むだろうか…? 「…あっちの客には声をかけないのか?」 「君達が断るなら…これから…、じゃあ、2000円ならどうかな?」 「…いきなり安くなったな」 「チップは無しなんだから、荷物は自分で助手席に積んでくれ、そっちのレディは別だけどね…」 「…わかった、それでいい…なのはは後部に荷物と一緒だ、僕は荷物を前に載せて後ろに」 「うん」 かなり大きめの荷物を前に乗せるクロノ。 「ちゃんと指定の場所まで送ってくれよ?僕らはただの観光客じゃないんだからな…」 「正直に送り届けますよ」 そして、なのはとクロノが後ろに乗り込もうとした時 「ただし、空のバッグだけを、ですがね」 車が急発進した。 「…ふぇぇ!?ま、まだ乗ってないよ!」 「早速か…やれやれ…誰も手をつけたがらないのも納得だ…」 「止めるよ!」 少年はバックミラーで二人の表情を確認した。呆気にとられて慌てる少女と頭に手をあてやれやれと首を振る少年。 だが、追ってくる様子すらない、奇妙に思ったが振り切ってしまえば此方の物だ。 「チャオ」 だが空港を抜けようとしたその時、車がガクン!!と前につんのめり、止まった。 タコメーターはエンジンの不調を訴えてはいない、ガソリンも十分。だがタイヤは地面を空回りするばかりで前に進まない。 「ユーノ君……凄い…」 「一瞬でこれだけのバインドを編んだのか…」 一般人には見えないが、二人には見えていた。周囲にあるガードレールや電柱に縦横無尽に絡まり車を二重三重に捕縛したチェーン・バインドが。 「僕だって一応修行してるんだよ、ま、奴への引導は二人にお願いするけど」 クロノは焦る事無くゆっくりと車に近づく。運転している少年はまだ車を弄っていた。 「言っただろう?ただの観光客じゃないって…」 声をかけ、助手席の扉に手をかけると、流石に感づいた様で少年は運転席から飛び出した。 「荷物だけ置いていけばいい、追う必要もない…」 当然、クロノはこの少年が計画が失敗した事でパニックと罪悪と敗北の表情をするだろうと思った。 しかし…彼はそのどの表情もしなかった…少年は微笑んでいるのだ…… ただ平然ともの静かに微笑んでクロノを見ていた……… その表情には『光り輝くさわやかさ』さえある様にクロノには感じられた………。 少年はそのまま、さっと踵を返し何処へと消えた。 「クロノ君、大丈夫?」 「ああ…だがちょっと奇妙な奴だった…しかし、」 「二人とも…後ろの二人がちょっと面白い事を話してる…」 クロノの話を遮ってユーノが割り込んできた。二人はそのまま聞き耳を立てるが旨く聞こえない。 「念話で聞こえる様にするよ…」 「案外万能なんだな…」 「ユーノ君の一族遺跡発掘のプロだからね、言語、念話関連は凄く得意みたいだよ」 話の内容を漏らさぬ様に、急いだユーノのお陰ですぐに声が聞こえてきた。 「…ョルノの奴エンストして失敗したみたいだぞ」 「あいつ、半分日本人のくせして日本の旅行者をだまそうとするからバチが当たったんだ」 「もっとも、あの髪の色じゃあジョルノ・ジョバーナを日本人とわかる奴はいないがな…」 「いや…染めたんじゃないらしいぜ、黒い髪だったのがここ最近、急に金色になったらしいんだ、妙な体質だな…」 「本人はエジプトで死んだ父親の遺伝と言っている…」 「ジョバーナ…?」 クロノは胸元から写真を取りだした、黒髪の少年で、此方の組織と取引している条件…体組織の採取するべき少年だ。 「ジョルノ・ジョバーナ…汐華初流乃………初ルノ…シォハナ…」 「それ…さっきの人なのかな?」 なのはに言われて、先程の男の顔と当てはめてみる、確かに似てはいるが、まだクロノには今ひとつ確信が持てない。 「わからん…組織とコンタクトをとってより情報が手に入れば良いんだが…」 「クロノ、ところで君の荷物は…?」 言われて助手席に目をやるが、先程確かに自分で助手席に積んだ筈のスーツケースだが、それが今は影も形も無い。 「無い…だがさっきの奴は何も持っては……?」 よく見ると、助手席のところに何かへばりついている。粘性のボールの様な『それ』は更に内部に何かが入っている。 「これは…僕の荷物…なのか!?」 先程のクロノのスーツケースについていた名札『黒野』と言う文字が中に見える。 しかしそれは何度か鼓動を脈打ちながら別の物に変化…いや成長してゆく。 『それ』は呆気にとられているクロノの目の前で生物に変わってしまった。 『カエル』に 「魔法なのか…聞いた事もないぞこんな魔法はッ!!」 カエルはぴょいっとクロノの手にのっかる、ペトリとした粘性の手足の感触、重量、それは蛙に他ならない。 「生き物だ…変化魔法の類や幻術でもない…本物のカエルだ…」 「で、でも…最初はスーツケースみたいだったし、生き物だとしたらクロノ君の荷物は…?」 狼狽える二人を尻目に、カエルはクロノの手を飛び降り、そのまま排水溝から下水へと消えた…。 「…なのは、すまないが別行動だ僕はあいつを捜してみる、拠点の住所は覚えているだろう?そこに向かっていてくれ…なのはを頼むぞユーノ」 「はいはい」 「あまり無理しないでね…」 クロノはそのまま、市街へ向かって駆けだしていった。 「で、どうしようか、なのは」 「地図で見ると…少し歩くけどケーブルカーがあるみたい…そっちの方が良いかな」 二人は流石にこれからタクシーに乗る気は起きなかった。 ジョルノ・ジョバーナを探しに市街方面に向かったクロノだったが、その本人はまだ空港敷地内にいた。 滑走路の外れ、離陸する飛行機を眺めているジョルノ、待ち合わせしている様にもみえる。 相手はすぐに現れたようだ。先程のカエルが側の排水溝から、ジョルノの手の上に飛び乗った。 「よし…」 そのカエルは見る間に膨れあがり、先程のクロノのスーツケースへと戻った。 その場で中身を改めるジョルノ、だが容量の割に中身は少なく金になる物はせいぜい衣類か宿泊セット、目的のパスポートや財布は鞄の中ではなかったようだ。 「……やれやれ…無駄骨か…これだから無駄な事は嫌いなんだ、無駄無駄…」 前へ 目次へ 次へ
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『わかりました、引続き調査を続行するように。それと・・・』 モニターの向こう側、757調査捜索部隊長・オーリス・ゲイズ一佐がフェイトからの報告を聞き、指示を出す。 『何か改めて必要なものは?』 「ありがとうございます。お借りしている二個機動小隊で十分ですが・・・」 フェイトは最近昇進したらしい上官の質問に笑顔で答える。 『どういたしまして。なお詳細はまだ不明ですが航空の71任務部隊がレイブンと交戦、貸し出していた 9号特殊機材・ノーヴェが中破しました。他にも一名が軽傷とのことです』 (なのはの隊が?) フェイトにとってなのはと彼女の直卒班が遅れをとったことが驚きだった。 『今後十分注意して事に当るように』 「分かりました。では後ほど・・・」 「部隊長は何と?」 執務官補のティアが新しい指示を受ける為に、入室する。 とはいえ、基本的にドアを閉めていないので誰でも入れる状態だが・・・。 「引き続きジャック・Oの追跡に当たるようにだって。“アビス”への到着予定は?」 「艦橋からの連絡では残り十二時間程度の行程だそうです。 でも部隊長はすごいですよね・・・。軍から小型とはいえ高速輸送艦を借りてくるなんて・・・」 「お父さんの下で働いていたからあまり知られていないけど、本人もすごく有能な人なんだよ」 ティアナは改めてオーリス・ゲイズ一佐の人脈に舌を巻いた。 殆どは父・レジアス・ゲイズから受継いだ物だがそれを維持し利用するのは唯の親の七光の二世では出来ない。 海側が艦船の貸し出しに難色を示し、部隊は機材や兵員を受領し編成ができたが部隊が他世界へ動くための 手段の確保が問題となった。海側の気まぐれで利用できるような艦船を当てにするのは論外であり、 纏まった数で動くためにはそれ相応の輸送手段が必要となる。 オーリス一佐の本領はここからだった。 彼女は海が非協力的であるのを理解すると直ちに父のかつての友人達-内部にも外部にもいた-に掛け合い、 話を持ちかけ取引したのだ。 その結果手に入れたのはミッドチルダ政府軍から高速輸送艦をドック入り前に借用し、さらに装輪装甲車をリースで入手、その他各種物資・ 人員を手に入れてきた。 その手に入れてきた物品が搬入されるのを見たとき誰もが目を疑った。 そして誰もが彼女はやはりレジアス中将の娘なのだと再確認することとなった。 「執務官の受け持つ職務の範囲は広いから各所に人脈がないと厳しい仕事だからね。 一人だと手に負えないよ」 「必要なのは経験と才能ですね・・・」 ティアナの困った顔を見てフェイトは苦笑する。 「みんなは格納庫で訓練?」 「はい、トーレさんとセッテさんが来てから随分訓練も充実して来ました。私の幻術だと限界がありますから・・・」 「ティアナの幻術だと耐久力が無いからね。・・・久しぶりに皆の訓練の相手をしてこようかな」 「たぁぁーー!!」 「遅い、ISを使うまでも無いぞ!!」 自身のアームド・デバイス「ストラーダ」を構えるエリオ・モンディアルの声が響く。 それを正面から迎え撃つのは元ナンバーズ前線リーダーNo3:トーレ。 現在は自身直卒のセッテと共に執務官付“民間協力者”-なお扱い上管理局から給料無し-を勤める。 二人が刃を打ち合っているのは船内格納庫。 本来なら積載されるべき車両は無く、天井の低い狭い空間を訓練用として使用していた。 「これでも・・・?!」 「それではディードにも後れを取る!!」 エリオが一瞬で距離を詰め、ストラーダを振り上げるとトーレの頭上から速度を活かして近接、 ストラーダと重さと自身の魔力を重ねて振り下ろす。 だがエリオ渾身の一撃をトーレは左手二の腕で受け止めるとま だ動きを繋げれないエリオの腹を右拳で打つ。 「・・・ぐっ!!げほ!!げほ!!」 一応手は抜いているが右拳を二発連続で鳩尾に打ち込まれればさしもののエリオも堪らない。 前屈みになり、体内の空気と中身を内臓を出しそうな勢いで吐き出す。 「どうした、終わってはいないぞ!!立て!!」 手だけでなく足を積極的に使うノーヴェと違い、トーレは手を中心に攻撃を組上げる。 前屈み状態のエリオの後頭部に拳を振り下ろす。 「はい、そこまで。・・・トーレ、いつも言ってるけどもうちょっと手加減してあげてくれないかな?」 何時の間にか間に入ったのかフェイトがトーレの右手を押えていた。 トーレもセッテも手加減をしない。相手のエリオとガリューはやればボロボロ、他の小隊員も半死半生になる。 「申し訳ありません、フェイトお嬢様。ですが私やチンクが妹達を少々甘やかしすぎた経験から言えば訓練でも実戦でも手加減は無用です」 「チンクちゃんは甘かったというより優しい子だと思うけど?」 「いいえ、あいつとセインが甘すぎたから妹達があんな育ち方をしたのです」 「そうです、チンク姉様とセイン姉様は少々無駄が多いように感じます」 『またこれだ・・・』 流石のフェイトもこの元戦闘機人二人の頭の固さに頭を抱えるしかない。 「ごほ・・・、すいませんフェイトさん・・・」 「キャロ、ルーテシア、エリオをお願い」 「「は、はい!!」」 いつものことだが、トーレやセッテの相手する模擬戦での雰囲気に萎縮していたのか動けずにいたキャロとルーテシアを呼んでエリオを運ばせる。 「あ、ありがとうございます。・・・って、あの二人とも?」 右をキャロ曳かれて、左をルーテシアに曳かれて行くエリオ。 なお二人は火花が飛ぶぐらい睨み合う。 それをいつも見るであろう他の隊員もはやし立てる。 トーレとセッテはJS事件の時、フェイトに捕獲された。問題はこの後、管理局内で戦闘機人の取り扱いが 議論されていた時、二人は何故かそのまま局の有力者たるハラオウン家の保護下に入っていたのである。 元々二人は-特にトーレ、セッテも若干-フェイトに入れ込んでおり、フェイトが保護扱いにしたことで 二人は再教育プログラムの受講資格の埒外にいた。 無論、管理局内では好ましい状態ではない、という結論になったが相手は何せ元から現役まで執務官を 多数輩出しているハラオウン家と言う事もあり、失脚を狙う一派からあそこに任 せておけばいいだろうという一派等の思惑が重なり合って現在の形に落ち着いた。 「そうだ、トーレ、セッテ、妹さんのノーヴェが怪我したって・・・」 「不出来な妹の事です。大方昔のように見境をなくして挑みかかったのでしょう」 「・・・」 「今回のことでボロボロになって少しは成長するでしょう」 「そ、そうかな?」 思ったとおりの反応にフェイトは苦笑する。 トーレはいつものように妹達に厳しい。セッテは相変わらず冷たくあしらう。 三女はともかく七女はどんな感情を抱いてるのかまったく推し量れない。 だが二人は二人なりに一応は心配しているのだ。それは少しだけ動く顔の表情を見れば分かる。 「あとチンクちゃんからまた連絡があってね、『トーレ姉様と セッテに形だけでもいいから 更生プログラムを受けて欲しい』って」 この時は二人と他の娘達との窓口とも言うべきチンクの名前を 出せば簡単に陥落する。 最近だがフェイトはそれに気が付いた。 「はぁ・・・、またですか。あいつは、何度言えば分かるのか 、まったく・・・」 「連絡だけでもしてあげればいいと思うよ」 「今回の作業が終わったら連絡することにします。セッテ、お 前も手伝え」 トーレがこう言えばほぼ確実に妹達に連絡を取る。フェイトは 心の中でトーレの意外と家族思いの深さに微笑む。 「分かりました」 セッテが喋っているのを聞いてその会話を盗み聞きしていたで あろう隊員たちがどよめく。 よほどセッテが喋ることが珍しいのだろう。 「じゃあ、トーレ、セッテたまには私の相手をしてもらおうか な?勿論手加減無しで」 バルディッシュを起動、バリアジャケットを着用。二人に対し自信に満ちた笑顔を向ける。 「判りました、手加減なしでお相手します」 トーレは少しだけ楽しそうに構えをとり、セッテはトーレを支援するポジションへ移る。 なおエリオはというと・・・。 「私がエリオ君の看病をするの!!」 「・・・ダメ、私がする・・・」 「あの、二人とも、僕は大丈夫だから・・・」 「大丈夫じゃないよ!!あんな深い打撃を受けたんだから!!」 「お母さんが・・・、持たせてくれた薬があるから・・・」 「ルーちゃん・・・」 「なに・・・?」 エリオは睨み合い火花を散らす二人から這い蹲って離れると壁に体を預ける。 「キュク?」 「ありがとう、フリード。心配しなくても大丈夫だよ」 『今度トーレさんとやる時はハンデをつけてもらおう』 そう思いながら今だ安定せぬ頭を働かせてフェイトとトーレ・セッテ組の模擬戦に目を移す。 「やっぱりフェイトさんはすごいな・・・。ストラーダ、記録よろしくね」 <ヤボール> そう呟くと三人の動きを追う。 射撃はは厳禁。これは安全上守らなければならない。 必然、格闘戦になるのだが狭い空間では殆ど速度も出せない。 だが三人はそんなハンデを感じさせないような動きで模擬戦を繰り広げ その場にいる全員に力量と技術の違いを見せ付けていた。 フェイトが正面から間合いに入ればトーレはそれをセッテと協力して受け止めチャンスを探す。 逆にトーレとセッテが同時に攻めればフェイトは攻撃を受け流し、相手を分断できる動きをとる。 それを分かっている二人は一瞬でも分断されないようお互いをカバーする。 『いつかあの中には入れればいいな・・・』 エリオは三人の動きを追いながら漠然と考えていた。 戻る 目次へ 次へ
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雪の降る寒い夜が明け朝日が昇る。 エリオは天幕内、自分専用に割り当てられたスペースの簡易ベットで目を覚ました。 他の隊員達は天幕内に並ぶ簡易ベットで毛布に包まり仮眠中。 天幕の中心に置かれたストーブは火勢を最大にして過酷な重労働に従事している。 休憩中の他の隊員を起さない様、静かに起き上がり、そのまま着替えることなく―シャワーは浴びれなかったので 防寒具を着たまま横になっていた―天幕外に出る。 雪は止んでおり、積もった雪を踏みしめ不寝番の隊員達とすれ違いに軽く挨拶をし、小さな宿営地を歩く。 早起きは機動六課在隊時に身についた習慣。その後の自然保護隊に転属した後も続く習慣。 「ルー?どうしたの?」 そんなエリオの視界に入ってきたのはただ一人膝まで積もった雪の中に佇むルーテシアだった。 雪は止んでいる。だが音の気温は寒いと感じるぐらい冷え込んでおり、防寒具を着込んでいるとはいえ流石に応える。 「・・・ガリューが、・・・ここに別の何かがいたって」 「それって・・・、フェイトさんには伝えた?」 「まだ」 ルーテシアが首を小さく振りながら答える。 「今は?」 「雪のせいで・・・、痕跡が見つからないって・・・」 「そうなんだ・・・、じゃあ後でフェイトさんに話そうよ」 会話する二人を照らすように朝日が昇る。 今日の任務は簡単、過去の遺跡を調査し、ある人物の痕跡を探す。 誰かが言う「簡単な任務さ」。 フェイトは自身に割り当てられた輸送艦内の部屋での安眠から目を覚まし、バルディッシュを起動、BJを羽織る。 部屋から出れば長い艦内廊下。それを歩き、格納庫へ。そして格納庫か下ろされたランプから地上に降りる。 「おはようございます」 「おはよう、ティアナ。みんなは?」 「小隊長二名と分隊長六名は天幕の中に」 「調整ありがとう、ティアナ。でもこれからはもっと難しい部隊間の調整をする事になるよ」 「うわぁ・・・、脅さないで下さいよ」 指揮官と部下の会話、序列上はフェイトが最先任、ティアナは次席となる。 「フェイトさん」 「エリオにキャロ、それにルーテシア?どうしたの?」 「それがルーが此処に何かがいたって・・・」 エリオの話にフェイトとティアナは顔を見合わせる。 だがルーテシアから話を聞いたフェイトの切り替えは早い。 『トーレにセッテ、周囲はどう?』 小さな宿営地には寄り付かず、恐らくは外周のどこかにいるであろう二人に念話を飛ばす。 トーレは廃墟のビルの屋上で腕を組んで待機中、セッテはトーレから少し離れた廃墟に潜み不寝番中。 『セッテ、周囲はどうだ?』 『周辺異常なし』 セッテはイクシードオービット(EO)を四基展開し周囲を警戒監視を行っていた。 これは本来なら指揮官用のシステムを持つトーレ―元ナンバーズ前線リーダー―が持つべき装備品。 だが元々は魔導甲冑のコアに積載されるものではあり、トーレは全体のシステムの高速処理に不具合をきたす として受け取りを拒否した。 そもそもEO自体は攻撃的な性格が強い。ただ攻撃方法が射撃系ということもあり、あまり飛び道具を好まない 武人・トーレにはそれが気に食わなかったようである。 なおトーレは知らないが実はセッテは四基すべてに名前をつけている。 「意外とかわいいところがあるんだよ」 そういったのはフェイトである。だがそれを言われた他の隊員はまず信じない。 「ガリューは今は・・・居ないみたい・・・って」 ルーテシアが呟く。昔に比べればだいぶ改善されたという事ではあるが、やはり聞き逃す事の多い声量で喋る。 「・・・どうしますか?陣地変換して搬入口に船を含めて移動しますか?」 ティアナが些か不安に思うのか代案を出す。 目標の施設のすぐ近くに乗り付けるのは確かに迅速な方法。だが施設自体に何かされていた時に一網打尽となる。 「いや、予定通り任務を実施しよう。ただ、ちょっと布陣を変えようか」 フェイトはしゃがんでルーテシアの視線に併せると 「ルーテシア、ありがとう。こういう情報も、貴重なんだよ」 その言葉を聴いたルーテシアは顔を赤らめてそっぽを向く。 そんな二人を見て頬を膨らませて見ているキャロ。 負のオーラをまとう主人を怖がったのかフリードはエリオの肩に止まって知らん振りを決め込んだ。 命令下達は出来る限り簡潔で判り易いものが望ましい。 その点フェイトも今回指揮下にある二個小隊も飲み込みが早い。 任務手順は昨日のモノと殆ど変わらない。 宿営地の残置・警戒に一個小隊とエリオ・キャロ・ルーテシア。 スミカに示された施設の物資搬入口から突入するのはフェイト自身とティアナ。 入り口と施設の上層を確保するために一個小隊、それにトーレとセッテ。 だが彼我不明の部隊が居る可能性が高い、その可能性を考えると部隊を二手に分けるのは上策ではない。 本来なら二個小隊間の連絡線確保の為に絶えず斥候を出したいところではあるが、戦力の分散を少しでも避けるため 通信線の確保のみにとどめることにした。 フェイトは命令下達終了後、作戦着手前の報告を部隊指揮官たるオーリス一佐に送信、通信機付の隊員に 一声かけると天幕の外に出る。 宿営地内の動きは慌しい。 一個小隊は装輪装甲車の中、もしくは車外に出て待機中。 残置されるもう一個の小隊は今だ残る道路を瓦礫等を使いバリケードや防護壁を作る。 積雪は隊員の歩いた所は大分溶けてはいる。だが、積もった雪はまだ溶ける気配を見せていなかった。 フェイトは同行する小隊の指揮車となる装甲車に乗り込む。 車長と運転手は車両の足回りの点検に暖機運転、通信機のチェックと忙しい。 本来なら空を飛んで行く筈ではあるが自分と"民間協力者”の二人しか飛行できない。 自身のみが先行して施設内に突入するような任務ではないのであくまでもチームで動く。 『そもそも、警戒監視ならあの二人に任せておけばいいか』 車長のすぐ後ろ通信機の前の席に座る。 「ブリキ缶にようこそ。ハラオウン執務官、コーヒーです」 点検を終わらせたのか車長の隊員が備え付けの保温ポッドから注いだコーヒーを差し出す。 「うまいコーヒーですよ、ゴールドコースト・ブレンド」 ブラックコーヒーは苦手だがこうも満面の笑みで勧められれば断れる筈もない。 「頂きます・・・、砂糖やミルクは・・・」 「ないですよ」 「フェイトさん、居残りの機動小隊、配置完了だそうです」 こちらもBJを着用したティアナが車内に乗り込む。 「準備完了、小隊はいつでも出れます」 その後ろには同行する機動小隊の隊長と副官を従えていた。 「了解、では行きましょうか」 小隊長は出発命令を下達、運転手はランプを閉めゆっくりと車両を進ませ、他の車両もそれに倣う。 徒歩の隊員は周囲を警戒しつつ歩き始めた。 ふと、フェイトが上面ハッチを開け、周りを見回す。 見送る隊員達の中にエリオ達を見つける 『じゃあ、行って来るね』 『はい、フェイトさん、お気をつけて』 『気をつけて下さい』 『気をつけて・・・』 『大丈夫だよ。みんなこそ気をつけてね』 通信を送り、手を振る。エリオ達も手を振り替えした。 「フェイトさん、大丈夫かな?」 「大丈夫だよ、心配要らないって」 「キュクー」 心配性のキャロを安心させるようにエリオとフリード―なぜかルーテシアの腕の中―がが声をかける。 「さ、配置につこう」 「うん」 「わかった・・・」 とはいえ宿営地の警戒防護は機動小隊の役目。 三人の任務は遊撃戦力として待機することだった。 目標の物資搬入口まで直線で約五キロ、この距離なら普段ならそんなに時間はかからない。 だが、たどり着くまでに歩くべきは廃墟に囲まれ、大なり小なりの障害物が行く手を阻む。 そしてその廃墟から何かが今にでも飛び出してくるのではないか? 交差点で死角になっている所にも何かが潜んでいるのではないか? 行進する隊員達は絶えず不測の事態に備え歩き、または車両から目を光らせる。 「到着、指示された座標はここですね」 車長が現在地を機器を使って確認、それをフェイトに示す。 「ありがとうございました、小隊長?」 「了解、全周警戒、散開!!」 小隊長は通信機に怒鳴る。そんなに怒鳴る必要はないのに・・・。ティアナはとりとめもなくそう思った。 陣形は円状に広がる全周防御。だが、小隊規模の部隊では大して大きな円陣を作れるわけでもない。 広くなり、薄くなってしまった隊員たちを結ぶ線を支援するための遊撃戦力はトーレとセッテ。 周囲には雪が残っている。建物が崩壊し視界が拓けている側にも廃墟にも雪は積もったままだった。 「ここが物資搬入口・・・、一応地下鉄とかの入り口に偽装してあるみたいですが・・・」 「ちょっと予想外だったかも・・・」 廃墟とはいえ目立つ道路沿いに、おそらくはまだ強度を満たしているであろう地下鉄の路線を利用し、 施設を建設していたようである。 「ウェンズデイ機関が確か旧暦時代の施設を利用していたようですが・・・」 「この地下にあるみたいだけど・・・」 「座標しか貰ってないんですよね・・・。洞窟探検はちょっと・・・」 「私もあまりしたくはない・・・」 フェイトにとってはスカリエッティのラボで、ティアナは廃ビルで、閉所での交戦はあまり良い思い出はない。 「愚痴はここまでにして、ティア、行こう。トーレ、セッテ、じゃあ後はお願いするよ」 上空に腕を組んで仁王立ちするトーレとその横でブーメランブレードを二振り構えるセッテに声をかける。 『お任せください。たとえ敵がいても遅れはとりません』 トーレから帰ってきたのは自信に満ち溢れた言葉。 「さすが二人とも、頼りになるね」 フェイトのその言葉には二人に対する口には出さない暗黙の信頼が深い事を示していた。 「で、早速シャフトですか?」 ティアナがあきれる。 「そうだね。電源が生きてるかどうかだけど・・・。バルディッシュ?」 <システム自体は休止モードのようです。すぐにでも動かせます> 「バルディッシュ、操作よろしく。行くよ」 ハーケンフォームのバルディッシュのコアが数度点滅したかと思うとシャフトが動き始めた。 それと同時に館内灯が灯る。 「よかった・・・。真っ暗闇の洞窟探検なんていやよ、まったく・・・」 ティアナがぼやく。 「大きい施設ですね。通路が余裕で車ですれ違える位ですよ」 「この辺は物資の保管するところかな?ティアナ、マッピングを忘れないで。バルディッシュも」 「了解」 <イエッサー> 二人で歩く通路、それがT字路に差し掛かかっていた。この道から右に進む道があるところを見ると 今自分達が歩いてきた道が施設の外壁ということらしい。 T字路に差し掛かったときフェイトがゆっくりと立ち止まる。 「ティアナ?」 「はい」 フェイトはバルディッシュを、ティアナはクロスミラージュを構える。 「後ろは大丈夫でしょうか?」 「今来た道ならほぼ安全化していると見ていいよ問題はどのくらいいるか・・・」 フェイトはバルディッシュを構えているとはいえほとんど自然体。ティアナには余裕すらそこから感じられた。 「ティアナは横へ!!正面は私が応戦します」 「わかりました!!」 しゃべり終わるのが終わるか終わらないかの前にフェイトが動く。 ほぼ同時にティアナはすばやく反応、右側の通路へ動く。 二人の正面には、戦車の砲塔に足を四本つけたやや小ぶりな機動兵器が出現していた。 「妨害するのならをするなら実力で排除します!!」 フェイトが通信を飛ばし、叫ぶ。 「前に同じ!!」 ティアナも同じよう(?)叫ぶ。 彼らの返答は銃身から放たれる魔力弾のシャワーだった。 「え?・・・何か来る?」 周囲に飛ばしたインゼクト達の話を聞いていたルーテシアが聞き返す。 「ルーちゃん?」 「周りの子達が・・・何かが来るって・・・」 「隊長さん!!」 「どうし・・・」 エリオが留守を預かる小隊長に警報を伝えようとする。 だが、一瞬の差でそれは遅れた。 『長距離誘導弾接近!!各員遮蔽物へ退避、急げ!!』 通信機と直接繋がっているスピーカーががなりたてる。 「く!!」 エリオがキャロとルーテシアを抱え、ビルの陰へと逃げ込む。 警報から数瞬遅れて輸送艦のCIWSが作動、こちらも誘導弾を発射、迎撃コースを取る。 それ専門に調整されたストレージデバイス扱いの長距離誘導弾と制御用の簡素なAIしか積んでいない迎撃誘導弾、 誘導弾同士の戦いはすぐに終わる。迎撃の網を通り抜けて巡航誘導弾が着弾。 『小隊異常ないか?すぐに来るぞ!!』 着弾し、爆音が響く中、小隊長が通信機越しにがなり立てる。 『輸送艦より各隊、センサーに反応多数、お客さんだ』 センサーを統括して管理する輸送艦からの警告。一瞬の静寂、だがそんなものはすぐに途切れる。 「来る・・・!!」 地面が少しだけ揺れている。付近で動いているものは?自分たちしかいない。 他の存在は?先ほどの長距離誘導弾を考えればそう簡単に“お話”を聞かせてはくれそうにない。 エリオがストラーダを構え、道路から出てくるであろう存在を待ち受ける。 「見えた!!キャロ!!」 廃墟側、道路の先から現れたのは四脚の機動兵器。 「うん!!」 キャロによる魔力ブースト、上限をあげるのは無論、エリオの加速とスピード。 「行くよ、ストラーダ!!」 現れた四脚機は両腕の部分に装備された連装機関砲で弾幕を張る。 エリオはその中をシールドを張ることなくジグザグの機動で突破、相手へと肉薄する。 「!?」 突然弾幕が止む。エリオは一瞬驚く。だが、動きを変えることなく相手の懐へ向かう。 はずであった。エリオと四脚機の間に割り込んできたのは青い鳥のような足をした大型の二脚機。 二脚機の左腕が振り上げられ、エリオのストラーダと正面から衝突。 「くっ!!」 ストラーダの穂先と左腕がぶつかった衝撃でエリオの勢いが殺される。 だがそこで只で引き下がるようなエリオではない。ストラーダを振り上げ攻撃を当てようとするが 「まだいる?」 他の期待からの射撃。回避機動を取り若干距離をとる。だが複数の攻撃を流すのは簡単に出来ることではない。 追撃をかわし何とか態勢を立て直す。 「トーレさん、セッテさん!!エリオです。敵性勢力と接触、交戦中!!」 突然割り込んできた青い二脚機数機と交戦しながらエリオが通信を飛ばす。 「判った、だがこちらにもお客さんだ」 『そんな・・・、判りました。自力で対処します』 トーレが腕を組みながら雪煙を上げながら接近する影を見る。 「こちらは増強小隊規模・・・か。セッテ、ノーヴェのように遅れは取るまいな?」 彼らは雪の中に潜んでいた。不寝番のセッテの目と耳を掻い潜って配置につくほどの手錬。 雪をカモフラージュに使い、さらに音も消す。寒冷地仕様に改修しているとしても下手にAPUを動かせば センサーに感知される。それを避けるために機内のヒーターも使ってはいない筈。 先ほどの通信でエリオ達も所属不明部隊と遭遇、フェイトは最奥部に突入したと聞いた。 いきなり分断されたのはまずいがエリオたちヒヨッ子でも三人束になれば難しいわけでもない。 フェイトについては心配は要らないし、していない。 あの元ツインテールも不出来な妹達とはいえ妹を三人、単独で下した相手、心配は無用だろう。 「心配は無用、遅れなど取りません」 不寝番で遅れをとったのが少し応えたのか柄にもなく力をこめて返事を返すセッテに少し驚くトーレ。 これが戦闘機人の完成型だな。そうトーレはセッテを評した。 他の騒がしい妹達を、正直に言えば能力は認めるが不出来な失敗作だと思う。 だが妹のチンクは『私はセインにノーヴェやウェンディのあれは個性だと思います・・・、多分・・・』。 最後は何故か自信なさげに答えていたが・・・。 『こちらはどうする?』 周囲に展開している機動小隊の隊長が通信を送ってくる。 『下手に手を出されてはこちらの戦闘機動の邪魔だ。全周警戒のまま防御円陣を小さくしろ』 『わかった、頼む』 通信を切る。正直トーレの考える先頭においては戦闘において足手まといにしかならない。 「私が前側を掃討する。セッテ、後ろ側を頼む」 「分りました。お前達もよろしく」 セッテがEOを展開し無機質に、だが少しだけ感情がこもった声で答える。 「IS発動、ランドインパルス!!行くぞ!!」 「スロターアームズ!!行きます!!」 戻る 目次へ 次へ
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最初に出てきた一機に高速で肉薄。新手のまったく同じ機体が後方から動こうとするが 一機がそれを右手で制するような動作をする。 「一機で十分って言うのか!?」 一機が迎撃体制に入る。左肩の大型火器ではなく右肩の誘導弾を発射。 二発の誘導弾はすこしづづ違う軌道をとりながら急速に距離を詰める。 ノーヴェはジェットエッジをさらに加速。直撃など受けはしない。先ほどのように近接信管が起動する前に 一気に距離を詰め、自分のリーチに入り込む。 「まずは一機!!」 至近距離なら外しはしない。ノーヴェには自信があった。 至近距離から相手がばら撒くパルスライフルの弾幕を左二の腕のシールドで防御。さっきのエネのハンドガンに 比べれば熱も持たなければ一発も重くない。 「もらった!!」 右手に意識を集中。金色に光る右の拳は通常でも威力のあるノーヴェの拳がさらに強化されたということを意味する。 必中の間合い、一撃で倒せなくても当れば確実にダメージは通る。 だが、赤と黒の機体は振り上げられたノーヴェの右手の動きを読むかのように後方にステップ。 ノーヴェの右手は空を切った。それを狙ったのかのように左手のブレードに刃を形成、ノーヴェを狙う。 今度はノーヴェが受ける番。だがノーヴェは落ち着いて身を屈めてブレードを回避。そのまま左足を起点に一回転。 右足のジェットエッジを点火、加速させる。狙うのは相手の胴体と脚の接続部分、つまり一番弱い部分。 「はぁぁーー!!」 気合を乗せて蹴りを打ち込む。当れば生身だろうと魔導甲冑だろうが只ではすまない、・・・筈だった。 「っが!!」 ノーヴェの右足は受け止められた。しかも右手一本で。 「くそ!!・・・こいつ、離せよ!!・・・ぐぁ!!」 掴んだ右足をさらに強く握りこみノーヴェを持ち上げると地面に向かって振り下ろした。 地面の衝撃にノーヴェの視界にノイズが走る。体が受け止め切れなかった衝撃が与えるダメージの警告が 表示される。痛みもダメージもすべてノイズとしてカット。 「・・くそ!!離せよ!!」 だがまだ掴まれたままだった。そのまま何度も振り上げられては地面に叩き付けられる。 まるで甚振れる獲物を見つけたの喜ぶかのように頭部のレンズが光った。 それを見たノーヴェの心を恐怖が支配する。 『くそ・・・、こんな所で!!』 必死に人間的な感情を押しつぶす。腹筋部分を使い上半身を上げ、拳を叩きつける。一瞬、右足を握る腕の 力が緩んだ。その一瞬を使い左足裏を打ち込む。そのまま必死に転がり距離をとる。 頭の中で警告が鳴り響く。そのすべてを消去し相手に集中する。骨格・関節はまだ大丈夫、神経接続、 人工臓器・筋肉もダメージはまだ許容範囲!! 『こんな所でやられる訳には行かないんだ・・・。ギンガ姉に教えてもらった技術がどこまで通じるか 証明してやるんだ!!・・・それがあたしなりの恩返しなんだ!!』 ノーヴェが構える。相手の赤と黒の機体は不気味なぐらい静かに、本当にボロボロの機体なのかと 疑いたくなるくらいに静かに、そして動いている。 「ちくしょう、余裕を見せてるつもりか!?」 それがノーヴェの癇に障った。自分は余裕をなくしていた。ギンガとチンクが、 姉達が一番心配しているノーヴェの性格的な欠点が危険なところで表に出てきていた。 「うおぉぉぉーーーー!!」 一直線に突っ込む。そこに誘導弾を打ち込まれ、さらにパルスライフルが火を吹く。 「うぉぉぉーーー!!」 左右両手のシールドで体の前面を防御。魔力片が当ろうが、破片が掠めようが、魔力弾が装甲を削ろうが お構いなしに定めた相手を目指して突っ込む。 両手のガンナックルの先に力を集中。一撃で当らないのなら打撃を繰り返すのみ!! 必要以上に力を入れた動きほど読まれやすいものは無かった。 ノーヴェの続けて打ち込む拳を一機は簡単に避ける。面白がり、ノーヴェを弄ぶように・・・。 「・・こいつ!!こいつ・・・!!」 闇雲に拳を振り上げる。それが終わるのはあっという間だった。 「ぐっ!!」 相手の左拳が正確にノーヴェの胸を打った。思わず態勢が崩れるノーヴェ。そこに追撃で膝が伸びる。 膝が腹部に入る。ふらつきながらそれでも上半身を立ち上げるノーヴェの額をライフルの握把で叩く。 ふらつきながらなおも立つノーヴェの首を左手で掴み締め上げ、体ごと持ち上げる。 頭の中で警報音が鳴り響く。必死に振りほどこうとするが、まったく歯が立たない。 意識が遠くなり、耳も目も機能不全を起こしつつある体を赤と黒の機体は狙い、右手を構えた。 『畜生・・・!!うご、うごい・・・、から・・・だ・・・』 機能不全を起こしつつある体で一瞬轟音が耳に届いたような気がした。 次に感じたのは自分が振り回される感覚と左腕のごく至近で相手がパルスライフルを発砲したため、 知覚できた熱風だった。 その次に感じたのは自分が放り投げられ、飛んでいく感覚。 「私の妹を!!離しなさい!!」 一瞬誰かの声が聞こえた。だが先ほどのダメージでまだ体は麻痺していた。動けない。 頭から落ちればいくら頑丈な自分でも、もう・・・。 『ごめん、チンク姉、ギンガ姉・・・。ハチマキ・・・、出来の悪い妹で・・・』 機能が低下し、ぼやける視界に左肩のグレネードランチャーがこちらを向くのが見えた。 閉じた目でも感じれるほどの赤い光と爆発音、そして思ったより軽い衝撃。 最後には誰かにやさしく抱きかかえられる感触がした。固く結んでいた目を振るえながら目を開ける。 「・・・ハチマキ?」 「よかった・・・、首を掴まれてるのを見た時はもう駄目かと思った・・・」 スバルの展開したウイングロードの上でスバルはノーヴェをキャッチ、抱きかかえていた。 「スバル・・・姉・・・?」 「・・・大丈夫?・・・まだ痛いところはある?」 スバルの両目に涙があふれているのが見えた。自分のために泣いてくれている。本当の血の繋がった妹でもなく、 同じ遺伝子モデルを使っているわけでもない。幾度も血塗られた戦いを演じ、今でも些細なことから喧嘩をする。 「・・・ごめん、・・・スバル姉、ごめんなさい・・・」 「駄目だよ泣いちゃ・・・」 スバルが汚れるのも構わずバリアジャケットの袖で汚れたノーヴェの顔を拭いてやる。 「スバル、ノーヴェ、無事を確かめるのは後よ。今は目の前の敵を倒すわよ」 「うん、ギン姉!!」 まだ戦闘は終わっていない。ギンガは一機と相対し、遅れてドーム内に突入したなのはは様子見していた もう一機に照準を合わせていた。 「ノーヴェはここで待ってて。すぐに終わらせるから・・・」 そういうと壁にノーヴェをもたれ掛けさせ、休ませる。戦闘の場所においておくのは危険だが 今はゲートの向こうに送り届けるのは難しい。 「大丈夫だ!!まだ・・・、まだやれる!!」 体内と装備品の状態をスキャン、損傷・大破した部位との接続・修復機能を停止。修復を切断された神経系、 破損の軽い人口筋肉・関節に集中。それでも体の動きは硬くぎこちない。 「ギンガ姉、スバル姉、わたしはまだ出来る、まだやれるから・・・!!」 それを聞いたギンガが振り返りやさしく微笑みながらうなずく。スバルは一瞬きょとんとした顔をしたかと思えばすぐに いつもの精悍な笑顔を見せる。 「うん、それでこそ私の妹だよ」 「・・・ああ」 「スバル、私の右に、ノーヴェは左に」 ギンガが指示を発する。すぐにスバルが位置に付き、遅れてノーヴェが位置に付く。 二人のデバイスと直接リンクする。 <大丈夫ですか?> リンクしたマッハキャリバーが心配して聞いてくる。 『大丈夫だ、けどうまく機動出来ないかもしれないからサポートしてくれ』 <了解。お任せください> 「ミッドチルダ方面管区、108捜査警ら隊・第一捜査中隊、ギンガ・ナカジマ曹長!!」 「スバル・ナカジマ陸士長、陸上総隊総監直轄、特別救助隊所属!!」 「末妹、ノーヴェ・ナカジマ、ミッドチルダ方面管区第757調査捜索部隊、えーと・・・本部班の備品!!」 名乗りを上げた後、三人がそれぞれウイングロードとエアライナーを展張。 「「「行きます!!」」」 三人同時に加速。一人たりとも遅れることは無い。すべてが一致した加速。 目標は一つ、末妹を傷めつけてくれた一機!! 先頭は長女のギンガが受け持ち、相手に向かって突撃する。右翼、やや下がった位置にスバル。 『ノーヴェは立ち位置を変えて、ギン姉と私のシールドの内側に!!』 『了解、スバル姉!!』 目標となった一機は誘導弾と火器で弾幕を張り、中量二脚の利点を活かし高機動を活かして左右に上に動く。 動き回る相手の張る弾幕を大きいダメージを受けているノーヴェには破片ひとつでも致命傷に なりかねないための処置。 『接近すればグレネードランチャーは使えないわ。接近戦で撃破します!!』 『『了解!!』』 三人で息を合わせて正面と左右から相手の逃げ場を無くしつつ追い込み、相手を撃破する。 三姉妹の特性を活かしたは取れないが、三姉妹がリンクしおそらくは誰にも真似が出来ない正確に動きは出来る。 「トライシールド!!」 まずはギンガが近接戦闘を挑む。シールドでパルス弾に誘導弾、すべてを受け止め肉迫。 『すごい・・・。やっぱり防御魔法が使えれば・・・』 それを見たノーヴェが感想を漏らす。 ギンガは飛び上がる相手を逃さないようにウイングロードを展帳、さらにブリッツキャリバーで加速。 つづいて左手のリヴォルバーナックルのカートリッジをリロード。 魔力の籠められた左手の拳を打ち込む。 それを相手は右手の篭手で正面から受け止める。だがまだギンガの連撃は終わってはいない。 「ブリッツキャリバー、カートリッジロード!!」 左手のリヴォルヴァーナックルを下げ、もう一度打ち込む。同時に右手に魔力を収束。 『ギン姉、それって・・・』 『スバル、ちょっと参考にさせてもらったわよ』 右手の魔力塊が形になっていく。スバルのように純粋な魔力弾ではなく杭のような芯を有した魔力弾。 「さすがに・・・、女の子にドリルは恥かしいわよ!!」 一応、あのドリルは恥かしいらしい。 サーベルが振り下ろされる。後退して回避。髪の毛が何本か焼かれる。 「ボディブレイカー!!」 収束した魔力弾を左手で打ち込む。細い一本の黄色の軌跡を残して飛んで行く。狙ったのは腰部。 一直線に飛び命中、直撃。だが当ったのは狙った腰では無く、左足の大腿部。 『慣れない事はやる物じゃないわね・・・。ノーヴェ、次!!』 「了解!!」 ノーヴェが目標のやや左正面、上側からブレイクライナーで接近 「さっきのお返し!!」 右手が光る。先ほどは外したが相手は元々ボロボロの機体。しかも左足は損傷、動きは制限されている。 「私だってやってみせる!!・・・ハンマーダウン!!」 相手がギンガにかまけていた隙を使って接近する。 隙を利用し思いっきり横合いから殴りつける。相手の左胸が思いっきりへこむ。 中の人間は間違いなく気絶する程の衝撃が入るはず。。 「まだまだ!!」 右を打ち込んだ反動を使い今度は左手を下からアッパーで打ち込む。 今度は相手の機体の鳩尾に入った左手を深く打ち込む。 『・・・何だ?この感触?』 一瞬動きに迷いが生まれたノーヴェを掴もうと両腕が動く。 「させないよ!!」 スバルが接近してくる。 「まだ早ぇよ!!」 言いながらノーヴェの右足が見事な軌跡を描き、回し蹴りが飛ぶ。 恐ろしいほどの衝撃が襲い掛かっているはず。それでもふら付きながら立つ、黒と赤の機体。 「なんて奴・・・」 「どんな構造してんだよ・・・」 ギンガが感嘆しノーヴェがあきれる。 「私が行くよ、ギン姉、ノーヴェ、離れて!!」 ギンガとノーヴェが離れ、目標と距離をとる。 それに換わって一直線に伸びるのは青い空の架け橋、スバルのウイングロード!! 「これで・・・、最後!!行くよ相棒!!」 <了解、ロードカートリッジ> 右手のリヴォルバーナックルのカートリッジを二発。 相手は安定せぬ機体を必死に安定させ左肩のグレネードランチャーが発射体勢に入る。 命中時の爆風で自身もダメージを受けるはずだが、もはや形振り構っていないらしい だが、そんなモノを気にもしないでさらに加速、突っ込む。 「リヴォルヴァー・・・」 さらにカートリッジをロード、魔力を高めて右の拳を振り上げる。 さらに至近まで近接した瞬間、相手はグレネードランチャーを発砲。 だが、それを殆ど一心同体のマッハキャリバーに身を任せて回避する。マッハキャリバーは スバルの動きを阻害しない最低限の動きを算出、実行。 「ナッコォォォーーーー!!」 正面から相手を吹っ飛ばす勢い・・・、実際に相手を吹き飛ばし、標的となった赤と黒の機体は 派手に地面を転がりながら壁に当って止まり、完全に機体をダウンさせる。 「やった?」 「スバル、まだ油断しない。ノーヴェ、相手の状況をスキャンして」 「・・・機体は停止してる、中のヤツまではわかんねぇ」 「了解。二人とも散開、警戒しつつ近づいて」 三人がゆっくりと近づく。 「再起動?気を付け・・・」 相手が立ち上がった。不気味なほどの執念のなせる業か、それとも何も感じることが出来ない者が扱っているのか。 「その機体でまだやるの?」 「どうしてもと言うのなら介錯して上げ・・・って、あれ?」 相手は片膝をついた。ゆっくりと倒れこむ。倒れこんだのと同時についていたセンサー類の 光も点滅を繰り返し、消えた。 「終わったぁ・・・」 ノーヴェがへたり込み、そして横になる。 「なのはさんの方も終わったみたいね」 「ノーヴェ、大丈夫?」 ギンガとスバルが心配して駆けつける。 「ごめんちょっと無理しすぎたみたい・・・」 「いいよ、ゆっくりして」 スバルはゆっくりと横になったノーヴェを楽な姿勢をとらせてやる。 ギンガはノーヴェの頭を撫でて妹の戦いを労ってやる。 「姉達・・・、ありがとう・・・」 ノーヴェが一言とポツリとつぶやく。 それを聞いたギンガとスバルは顔を見合わせると姉として最高の笑顔をノーヴェに返してやる 「ちょっと・・・ちょっとだけ、セルフチェックしてもいい?」 「いいよ、何かあってもお姉ちゃん達が守ってあげるから」 「・・・ごめん。セルフチェック開始、重要部品の破損箇所に対して自動修復モードを起動・・・」 そういうとノーヴェは目を閉じる。ひどく無防備な安らかな表情。 「寝ちゃったね」 「酷くやられちゃったみたいだからね。ゆっくり休ませてあげましょうか」 「うん!!」 スバルが横たわっていたノーヴェを持ち上げて背中におんぶしてやる。 「いい夢を見なさい・・・」 「・・・って、ええ?」 三人が落ち着いてた時、なのはの声が聞こえた。 二人が振り返るとなのはが潰した筈のもう一機がしぶとく立ち上がっていた。 「まだやる気なの?どんな精神構造してるのよ!!」 ギンガが率直な感想を漏らした。 「やっぱり時代劇とか見過ぎなの・・・」 ナカジマ三姉妹の名乗りと正面からの突撃を横目に見ながらもう一機の赤と黒の機体と向かい合う。 「・・・力を持ちすぎたもの」 「・・・へ?」 突然、相手がしゃべり始めた。野太い男の声で。 「・・・秩序を破壊するもの」 今度は若い女性の声。 「プログラムには不要だ・・・」 同時に完全に重なった男と女の声。よく聞くと雑音やノイズが混ざっている。 「あっちと男女二人組みって言うことね・・・。いいよ、どちらか分からないけど相手してあげる」 なのはは静かにレイジングハートを構え、相手に向ける。 「レイジングハート、ブラスタービット展開!!」 <展開します> 支援用にブラスタービットを二基、設定は火力支援。レイジングハートは射撃モードへ。 それに併せて同じく自身の周囲にアクセルシューターの射撃スフィアを展開。 「アクセルシューター、シュート!!」 先手を仕掛けたのはなのは。誘導弾のアクセルシューターで相手を包囲し、さらにブラスタービットで 相手の動きをけん制。自分は横に動き回り込む。 アクセルシューターの命中したことを示す明るい魔力光が照らす。 だが相手の機体はそんな事を気にも留めないかのように加速、残弾を回避し、誘導弾を連続発射。 なのはは自分を標的にした誘導弾を残さずアクセルシューターでたらい上げ、破片すら近づけない。 「射撃戦なら負けない!!」 カートリッジを一発リロード。回避した相手に向けて収束した魔力砲を発射。 しかし最小限の動きで回避され、背後の壁に着弾、爆発。 避けた相手は左肩のグレネードを連続発射、今度はなのはが回避する番。 「やるね!!」 一発目を回避。だが回避する機動を読んでいたのか二発目を正面から受ける。 <プロテクション> レイジングハートがオートでシールドを展開。この一人と一基のコンビの生み出す硬いシールドを 一撃で抜けるものは少ない。それが広く普及しているただの炸裂弾ならなおさら。 プロテクションの隙を突き高速で接近してくる機体。だがなのは落ち着いて対処する。 「レイジングハート、魔力刃を展開、接近戦を受けるよ!!」 射撃モードのレイジングハートの下部に銃剣のような魔力刃を着剣、槍のように-杖の筈だが-構えて 接近する相手に向かい合い、ついでアクセルシューターを展開。 袈裟懸けに下ろされる相手のサーベルをレイジングハートで相手の左二の腕を抑え、鍔迫り合いで受け止め、 アクセルシューターを後ろから回り込ませて相手を狙う。 今度は多数が命中、体制を崩す相手からアクセルフィンを使用して頭の上を取りカートリッジをリロード、 注ぎ込まれた魔力の薬莢は三発分。 「ディバイン、・・・バスター!!」 ブラスタービット収束された桃色の魔力砲が標的となった赤と黒の機体を包み込み、吹き飛ばす。 <命中、直撃です。大分至近でしたが大丈夫でしょうか?> 「大丈夫だよ、殺傷設定じゃないからちょっと痛いぐらいだから・・・。あっちも終わったみたいだしね」 そういいながらゆっくりと構えを解く。 <マスター!!> 突然頼りになる相棒が警告を出す。 「レイジングハート、どうかした・・・って、ええ!?」 もう一機がグレネードランチャーを向けていた。 「まだやる気なの?」 なのはが驚きながら再び構える。 『なのはさん、離れて!!』 突然通信が入る。なのははその言葉に反応、アクセルフィンで一気に上に飛ぶ。 次の瞬間、一条の光が通り過ぎた。それは直進し、グレネードランチャの砲身の中に入る。 瞬間、大音響と共に爆発が起こる。すぐ背中で起きた爆発にまた吹き飛ばされ、しこたま体を打ちつけながら 転がっていく機体。 「うわー・・・、絶対中の人って生きてないよね・・・」 スバルがもっともな感想をこぼす。 「エネさん?大丈夫?」 『何とか・・・生きてます・・・』 だがその瞬間、ピースフルウィッシュは機能を停止、強制的にエネを除装。 「・・・ごめんね、うまくつかってやれなかった・・・」 <気になさらずに> 「うん、修理代かかっちゃうね・・・」 <まったくです。あなたの治療費も> 「そうだね・・・。直ったら・・・、またお願いね」 <了解そのときはご協力いたします。システム待機モードへ移行> エネ自身の少なからず怪我を負っていた。ピースフルウィッシュもまた大破、全損に近い被害を受けていた。 「生きていたのね、よかった・・・」 ギンガは負傷したエネを気遣う。 「はい、気が付いたのは本当にさっきですけど・・・」 「体は大丈夫なの?」 「私よりこっちの方が・・・」 エネがドックタグ型の待機状態となったピースフルウィッシュを掌に乗せ示す。 「コアデバイスは基本的なコアさえ生きてれば修理は出来ますが、使用しているパーツによって お金はかかりますけど・・・」 「・・・よければ管理局で負担してあげようか?今回の発端はうちのスバルみたいなものだしねぇ・・・」 なのははノーヴェの世話をしているスバルの方を見る。良からぬ視線にスバルは気づかないふりをした。 「でもどこから出てきたんでしょう?エネさんのゲートから出てきたみたいですけど・・・」 スバルが違う話を持ち込む。 「そうだね、どこから出てきたんだろ?ギンガ、ちょっと見て来てくれる?」 「わかりました」 ギンガは一言言うとそのままブリッツキャリバーを転がし、ゲートを開放、奥へと向かった。 「何だ終わっちまったのか?」 入れ替わりで黄色の汎用魔導甲冑に身を包んだ地雷伍長がようやく合流した。 「遅すぎですよ、伍長・・・」 エネがぼやく。 「まあ、そっちの嬢ちゃんもヤツを相手に死ななかっただけ運が良かったと思っとけ。ヤツが伝説のレイブン、 アリーナの不死身のトップ・ナインボール、つまりハスラー・ワンだ」 その言葉を理解できたのはエネだけだった。 「あれがナインボール・・・?まさか・・・、何年も前に消えたと聞いてましたが・・・」 「まあ、生きてたのかどうか知らんが顔を拝んでみようか」 なのはとエネが倒した一機に近づいてハッチの開閉ノブに手をかけ、まわす。 「どんな顔をしてるか知らんが・・・、こいつはなんだ?」 除装した機体の中は空だった。 「スバル、そっちも開けてみて!!」 なのはの指示を受けスバルがノーヴェを負ぶったまま、接近、同じように開閉ノブをまわす。 「・・・なのはさん、こっちもです!!こっちも空っぽです!!」 「そんな・・・、確かに会話をしたよ?そうだよね、レイジングハート?」 <はい、間違いなく> 『なのはさん?』 「ギンガ?どうしたの?」 割り込みでなのはを呼ぶギンガの通信が入る、だが全員に受信できるようにしてある。 『先ほどは気づかなかったのですが、隠しゲートがありました。ここから出てきたんじゃないでしょうか?』 その通信にその場に居た全員が顔を見合わせた。 「ここ?」 「はい。よく見ると表面に滑ったような跡があります」 「どこに繋がってるんだろう?」 「こんな所にゲートがあったなんて・・・。伍長は知っていましたか?」 「いや、初めて知った。ここは古い施設らしが、大体調査は終わっていると聞いていた」 六人はギンガの発見した隠しゲートの前に立っていた。因みにノーヴェはまだセルフチェック中。 「古い施設なんですか?」 なのはが地雷伍長に聞き返す。 「ああ、話によると旧暦時代の施設らしい。新暦になってから付け足された施設もあるがな」 「へー・・・」 「セルフチェック終了。戦闘機動に制限つきで許可・・・」 「あ、ノーヴェ起きた?」 スバルの背中で寝ていた、セルフチェックを実施していたノーヴェが起きた。 「うん、大体大丈夫みたい・・・って、ハチマキ!!何してやがる!!」 どうやらおんぶされていたのが恥ずかしいらしい。顔を真っ赤にして暴れだす。 「わ、こら、そんなに暴れると・・・、わぁ!!」 暴れた表紙でノーヴェがスバルの背中から落ちる。だが落ちる前にギンガがノーヴェの体をキャッチ、 ゆっくりと下ろしてやる。 「もー、さっきはちゃんと『スバル姉』って呼んでくれたのに・・・」 「呼んでねぇよ!!」 「ちゃんと言ったよねー、マッハキャリバー?」 <はい、確かに。記録もちゃんととってあります> 「いや、あれはその・・・」 ノーヴェが顔を真っ赤にして俯く。 「ノーヴェ、体は大丈夫?」 「はい、制限付の戦闘機動でしたら可能です」 一応は指揮官であるなのはが確認する。 「あまり無理したら駄目よ?」 「うん、ギンガ姉・・・」 やっぱりギンガ姉は優しいな・・・。ノーヴェはそう思った。 「予定外の行動だけど・・・、とりあえず潜ってみようか?いくのは私とスバルとギンガで行こう。 ノーヴェはここで待ってるほうがいいね?」 なのはが決定を下す。 「そんな・・・、あたしはまだやれるって!!」 「ノーヴェ、指揮官の決定には従いなさい。今はなのはさんが指揮官なのよ?」 「・・・ギンガ姉、でも本当に大丈夫だから・・・、足手纏いにはならないから!!」 「伍長はここで誰も入らないようにしておいていただけますか?」 「それでこれは出るんだろうな?」 地雷伍長が親指と人差し指をあわせて丸いサインを作る。 「一定額を捜査協力費でお支払いできるでしょう。ですが後払いですよ?」 指揮官役ののなのはが一応契約を取りまとめる。 「構わんよ、だが期待はするな。俺はなんて言ったってアリーナの万年最下位だからな」 そういうと豪快に笑った。 『『『『・・・万年最下位なのにどうやって機体を維持したり生活してるんだろ?』』』』 エネ以外の四人は同じような疑問を頭に思い浮かべた・・・。だがそれを口に出すほど野暮ではなかった。 「あの私は・・・?」 「エネさんは無理しない方がいいわ。控え室に戻って休んでいたほうがいいよ」 「そうだよ。修理費とかは大丈夫、エネさんの分もちゃんと払ってあげる。・・・スバルのお給料からね」 「そんなぁ・・・」 「自業自得だろ・・・。わたしはそれで死にかけたんだからな・・・」 ギンガがエネを心配し、なのはが報酬を請負い、ノーヴェが恨めがましく言う。 「先頭はギンガ、マークスマンはスバル、次に私。ノーヴェは後衛で警戒。前進速度はそんなに速くなくて いいよ。壁とかに隠されている通路とかに注意。ノーヴェはレイジングハートと キャリバーズと直接リンクしてマッピングしておいて。みんな準備は良い?」 「「「はい!!」」」 三人が各々の利き腕を突き上げ返事をする。本当の姉妹ではないはずだが本当に良く似ている三姉妹である。 「よし、じゃあみんな行こうか」 なのはがレイジングハートを隠し通路にむけた。それを合図にギンガを先頭に暗い通路内に入る。 次にスバルが通路に入り自分の番になった時、後ろに立つノーヴェを振り返る。 「本当に大丈夫?」 「大丈夫です、戦闘機人がこんな事で倒れません」 「なにかあったら…、チンクちゃんやセインちゃんが心配するよ?冷たい事ばかり言ってるけどトーレさんも…」 「はい…、でも大丈夫です。戦って倒れたなら戦闘機人の本望だって、きっとみんな言ってくれますから…」 そういうとノーヴェは笑った。 『普段の生活の中で番感情表現が豊かな娘に育ったんだね。ナカジマ家の教育がいいのかな?』 自身の弟子とも言うべき子は相変わらず感情の起伏が表に出ない娘のままだった。 <マスター、彼女のポテンシャルは落ちています。やはり置いて行くべきでは?> 『彼女なら大丈夫だよ、レイジングハート。でも目を離さないであげて』 <お任せください、マスター> 「じゃあ行くよ。しっかり付いてきてね」 アクセルフィンを展開、一気に加速して先発した二人を追う。 「遅れるかよ…!!」 ノーヴェは三人の後を追う。ジェットエッジを加速させ通路の闇へと消えていった。 「さて、じゃ仕事をするとしますか・・・」 四人が通路に消えた後、地雷伍長がぼやき機体を着座させる。 「仕事って・・・、なんで座ってるんですか、伍長?」 「まあ仕事はここで監視してろって事だろ?それに今、この施設に入ってこれるやつは居ると思うか?」 「それはそうですが・・・」 今現在、シャッターが施設の通路の大半を閉鎖している。今頃来たレイヴンは必死に開けようと苦労しているのだろう。 「分かったらお前もとっとと控え室に戻って応急処置して休んでおけ」 「そうですね・・・、じゃあいったん戻ります」 エネが踵を返して戻る。 「ああ、ちょっと待て」 地雷伍長が呼び止める。 「入っていったあいつらが帰ってきた時の為に茶とか軽食を用意しておいてやれ。それと・・・」 一瞬区切って考える地雷伍長。 「誰か来たら軽食と魔法瓶に入れたコーヒーを俺のところに持って来させてくれ。ただ待つのは勘弁だ」 それを聞いて了解の返事のつもりか崩れた敬礼と笑顔を返すとエネはそのまま通路を歩いていった。 歩いていったのを確認して地雷伍長は頭部ハッチを開放腰部の雑具箱から器用にタバコとライターを取り出し、 一本吸い始め、紫煙を吐き出す。 「まさかとは思うが・・・、こいつは本部か例の秘密工場への隠し通路じゃなかろうな?」 地雷伍長の呟きを聞いたモノは彼のデンジャーマイン以外、誰も居なかった。 戻る 目次へ 次へ
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襲撃から一夜開け、被害を免れた一部の地上本部局員は本局と連携をとり事態の収拾に着手していた。 そして、その甲斐があってか崩壊した機動六課隊舎の瓦礫を早急に除去、避難シェルターの入口を発見し無事救助 更に近くに倒れていたフォワード陣もまた早急に聖王医療院へと搬送された。 一方でスバルの後を追っていたティアナは右腕に怪我を負って倒れているスバルを発見、 ティアナは傷口を見るや否や先端技術医療センターと連絡を取り、その後に現れた搬送車によって搬送、ティアナも同行者として乗り合わせた。 そしてなのはの身を案じていたフェイトは医療院に辿り着くと、うつ伏せの状態で倒れているなのはを発見、 すぐさまなのはを抱え医療院に向かうと院内ではヴァイスとシャッハが治療を施されてる姿があり、 フェイトは二人から事情を聞き、ヴィヴィオが攫われた事を知るのであった。 リリカルプロファイル 第二十二話 扉 …事件から一週間が経ち、ミッドチルダ全土は今回の事件で持ちきりな状態が続いている。 マスメディアの一部はスカリエッティの所業、管理局の失態などを取り扱っているが、その多くは最高評議会の声明を取り扱っていた。 最高評議会は神の三賢人と呼び名を変え、巨大な次元航行船ヴァルハラにてミッドチルダ全土を破壊すると宣告した。 つまり“未曾有の危機”は彼等三賢人の手によって起こされるという事を指し示す声明である。 その事をマスコミは管理局には責任があると報じるが、管理局側は今回の事件は最高評議会の独断による声明で、我々管理局の意向ではないと表明した。 そしてその意を民衆に伝える為、三賢人が関わる事件に関わった人物の逮捕に勤めていた。 今まで三賢人に関わる事件は改ざん、削除、抹消されていたのだが、 ある男の死によって無限書庫に存在する事件簿の情報が復活を遂げ、その情報を基に次々と逮捕する事が出来たのである。 そして今回の逮捕劇の要であるこの情報は功労者の名を取りレジアスレポートと呼ばれるのであった。 話は変わり此処聖王医療院の通路に右手には花束、左手にはフルーツの盛り合わせが入ったバケットを携えたフェイトが歩いていた。 フェイトは今回の事件で負傷・入院をしたエリオとキャロ、そしてなのはの見舞いに来たのである。 そして暫く通路を歩きエリオとキャロの病室に入るフェイト、 二人は窓側にキャロ、その隣にはエリオと並ぶように位置をとっていた。 『フェイトさん!!』 「二人共、お見舞いにきたよ」 そう言うと花瓶に花を生け、台にバケットを置くと二人の間に座るフェイト。 二人はフェイトの顔を見て明るい表情を見せるが、すぐに暗い表情を覗かせる。 二人は今回の戦闘で大きな傷を残していた、それは肉体ではない心の傷である。 ――元々…アナタ達に居場所なんて無いでしょ…―― 二人が対峙した少女、あの少女が放った言葉が今でも二人の心に深く刺さっている。 居場所……二人の居場所である機動六課隊舎は既にもう無い、それは即ち自分達の居場所はもう無いという意味と同義であると考え落ち込む二人、 すると二人の表情を見たフェイトは、椅子から立ち上がり二人に近づくと優しく頭を撫でる。 「大丈夫、私は此処にいる、二人の“居場所”はちゃんと此処にあるんだよ?」 フェイトの言葉に二人はフェイトの顔を見上げる、二人は何も一言もフェイトに胸の内を話してはいなかった。 しかしフェイトにはちゃんと二人の気持ちを理解していたのだ。 そしてフェイトは言葉を続ける、確かに隊舎は無くなってしまった。 でも“居場所”とは自分が“居る場所”だけを指し示している訳ではない、 自分が安心する・出来る所、つまり“拠り所”という意味も指し示していると優しく語る。 「…それとも私じゃ、二人の“拠り所”になれない?」 『そんなことありません!!』 二人はフェイトの問い掛けに声を合わせ力一杯否定する、自分達が此処にいるのはフェイトさんが拾ってくれたから、 もしフェイトさんと出会わなければ、自分達はずっと施設に居たかも知れない。 そう二人はフェイトに感謝の弁を述べると、自分達の心からある感情が湯水のように沸き上がる。 …自分達にはフェイトさんという“居場所”が“拠り所”あるんだ! そんな喜びと安堵の感情を感じた瞬間、二人の瞳から一筋の涙がこぼれ落ちる。 「あっあれ?……悲しく……ないのに…何で?」 「…人は安心した時にも…涙が出るんだよ?」 「…うぅ……フェイトさん!!」 フェイトの屈託のない笑顔に二人はフェイトの胸の中で泣き続け、二人の涙をその胸で優しく受け止めるフェイトなのであった。 そして二人は泣き疲れ眠りにつくと、フェイトは次の目的地であるなのはの病室へと赴く。 その時、向かい側からシグナムが姿を現す、どうやら同じく入院しているザフィーラとシャマルの見舞いを終え、 今度はヴィータの見舞いに向かうところのようである。 フェイトは軽く挨拶を交わすとシグナムは少し影を潜めた表情で返し、フェイトはシグナムの態度に首を傾げる。 するとシグナムはフェイトに、医者に言われた事を話し始める。 シグナムは二人の見舞いに来たところ医者に呼ばれ、二人…と言うよりヴォルケンリッターに関する変化が伝えられた。 本来ヴォルケンリッターとは夜天の書の一システムで、 騎士内でのリンクや主であるはやてから魔力を供給される事で得られる、無限再生機能などが上げられるが、 それらの機能は初代リインフォースの消失によって薄まる、もしくは消失していった。 だが、それらの事は前々から分かっていた事なのであるが、 今回は更に肉体の再生能力が低下し人に近いレベルにまでに至っているという。 つまりは重傷や致命的な傷を負えば“死”が訪れると言う事だ。 だが人に近づいたとは言え、その治癒力は高く、寿命や肉体の成長は起きないと付け加えられたと話す。 「そうですか…皆さんにそんな変化が…」 「あぁ…だがまぁいいさ、せっかく手に入れた“一度きりの生”だ、有意義に楽しむつもりだ」 そして今回の内容をヴィータにも話すつもりであると、人に近づいたとは言え肉体は成長しない… ヴィータはさそがし悔しがるだろうと、意地の悪い顔をしながら笑みを浮かべるシグナム、 その笑みに頬を掻き苦笑いをするフェイトであった。 シグナムと別れたフェイトは、なのはの病室に辿り着きベッドに近づくと、その姿は見受けられないでいた。 するとフェイトはベッドの隣に置いてあるハズの松葉杖が無いことを確認、 恐らく“アノ”場所へと向かったのだろうと判断すると病室を後にした。 此処は医療院の屋上、此処にはブランコや滑り台、砂場などがあり、まるで公園のような造りをしていた。 そしてその場所に存在するベンチにて右側に松葉杖を置き、 右手にはレイジングハートを握り締めた病院服姿のなのはが座り空を見上げていた。 なのはは今回の事件で使用したブラスターシステムの反動により、肉体・リンカーコア共にダメージが蓄積、 魔力は最大値の8%も低下し、肉体も松葉杖がなければ動けない程なのである。 その為此処医療院にて治療兼リハビリを受けているのだ。 そしてなのはの姿を見かけたフェイトは優しく声をかける。 「やっぱり此処にいたんだ」 「あっ…フェイトちゃん……」 フェイトの声に気が付いたなのはは、顔を向けるがすぐに空を見上げる。 その反応にフェイトの表情は少し陰りを見せるもなのはの隣に座る、そして暫く静寂に包まれると一つの風が二人の髪を靡かせる。 その風に髪を乱されたフェイトは、指で髪を解くと、なのはの口が開き始める。 「…私、ヴィヴィオを護れなかった……」 小さくか細い声で言葉を口にすると目線を下ろし遊具を見つめる。 なのはの目にはブランコを漕ぐヴィヴィオや、一緒に砂遊びをしているヴィヴィオの姿が幻影の様に映し出していた。 そしてそれらが蜃気楼の様に消え去ると、今度は目線をレイジングハートに変え握り締めると、ゆっくりと話し始める。 自分はヴィヴィオと約束した、ヴィヴィオを絶対護ると。 そして自分のモットーでもある全力全開でレザードに立ち向かった、 しかし結果はなす統べなく倒され簡単にヴィヴィオは攫われてしまった。 なのはは自分の弱さを歯噛みするも、もう自分には何も出来ないと諦めに近い表情を見せ話し続ける。 するとフェイトはベンチから立ち上がりなのはの前に佇む。 それに気が付いたなのはは顔をフェイトに向けると、辺りに乾いた音が響き渡る。 なのはは痛む左の頬を押さえフェイトを見つめると、フェイトは怒りにも悲しみにも似た表情を表していた。 そしてフェイトの怒号ともいえる声が辺りに響き渡る。 「しっかりしてなのは!そんなの…なのはらしくない!!」 「フェイトちゃん……」 フェイトの怒号の後に風が一つ激しく吹き収まると、フェイトは話し続ける。 十年前、なのはは自分と何度も対峙した、決して諦めずに自分を救おうと、そして友達になる為にも… はやてが闇の書に飲み込まれた時、決して諦めず救おうとしていた、 そして闇の書を消し去る時も管理局の切り札であるアルカンシェルを地上に向けて発射する事に対して、 決して諦めずに策を練り見事、闇の書を撃破した。 八年前の撃墜の時も、二度と飛べないかもしれないと伝えられても、決して諦めずリハビリを受け見事に復活した。 そんないつも諦めない不屈の心を持つなのはが吐く台詞では無いとフェイトは叫ぶ。 「攫われたのなら取り返せばいい、私の知っているなのははそう言う人のハズ……」 「フェイトちゃん……」 フェイトの叱咤の混じった励ましに俯くなのは、暫く沈黙が辺りを支配し 風が二人の髪を靡かせると、なのはは俯いたまま静かに言葉を口にし始める。 「ヴィヴィオ…今頃泣いているかな?」 「そうだね…アノ子は泣き虫だから…」 フェイトはそう言うと俯いたまま一つ笑みを浮かべヴィヴィオを思い返すなのは… 最初ヴィヴィオに出会った時はシャッハにデバイスで脅され泣いていた。 機動六課で引き取った時、ザフィーラの大きさに驚き、ジクナムの顔を見て泣き出したこともあった、 シグナムが珍しく落ち込んでいたのは見物だった… 聖王教会にて話を聞きに向かおうとした時、ヴィヴィオが泣きながら離れず困り果てた事もあった、 あの時程フェイトちゃんがいて良かったと思った事はなかった。 そして…ヴィヴィオは今でも自分を探して泣いているハズである。 そんな時に自分が塞ぎ込むわけにはいかない、ヴィヴィオは自分を待っているのだから! するとなのはは松葉杖を手に持つと歩き始める、その行動に思わずフェイトは声をかける。 「何処行くの?」 「リハビリに行ってくる」 今自分に出来る事は先ず、この体を満足に動かせるようにする事 そう話すなのはの瞳には不屈の炎が宿っていた。 その炎を見たフェイトは、歩幅をあわせなのはの後をゆっくりとついて行くのであった。 場所は変わり此処はゆりかご内に存在するスカリエッティの施設… 部屋ではレザードとスカリエッティがチェスを嗜んでいた。 スカリエッティは今こそ落ち着いてはいるが、一週間前は荒れに荒れていた。 それもそのハズ、スカリエッティは綿密に立てた計画を実行に移し、計画は順調に進み見事地上本部を壊滅させた。 そしてその光景を民衆に見せつけ管理局の無力さをアピールする算段であったのだが、 最後の最後に事もあろうに三賢人に回線を乗っ取られミッドチルダ壊滅を宣言されたのだ。 三賢人はスカリエッティが行っていた計画をお膳立てとして利用し、ミッドチルダの終焉をアピール 更にはヴァルハラと言う次元航行船を見せつける事で、絶望感を与えたのである。 最も忌むべき存在である三賢人にまんまと利用されたスカリエッティはモニターを叩き割るほどに怒りに震え、 その後のメディアの対応に新聞を破り捨てテレビを消すなどと、怒り心身といった状態が続いていたのであった。 「もう、怒りは収まりましたか?」 「……正直、ハラワタが煮えくり返るほどの怒りは残っているが、その怒りは奴らと出会った時に発散するよ」 それよりも今はヴァルハラの分析が優先だとスカリエッティは話しつつ城兵〈ルック〉を動かす。 スカリエッティの見解では、ヴァルハラは此処ゆりかごとほぼ同格の能力を持っていると考えている。 何故ならば、かつて三賢人はゆりかごの解析の為スカリエッティを此処に送り込むが、 スカリエッティはゆりかごを奪取し、此処を拠点としたのだ。 本来では三賢人は奪取されたゆりかごを血眼で探すのが普通であるのだが、捜索は簡単に打ち切られた。 それには訳があったのだ、その頃には既にゆりかごに取って代わるヴァルハラを建造していたのだろう。 つまり、ゆりかごを諦める事が出来る程の能力がヴァルハラにはあるとスカリエッティは考えていた。 すると今度はレザードが話し始める、ヴァルハラが陽炎の様に消えた技術、あれはまさしくルーンによる物だと。 つまりヴァルハラにはレザードの世界の呪法が使われているという事である。 レザードの話ではルーンの一部にはレザードの世界でも失われた呪〈ロストミスティック〉と呼ばれるほどの呪式が存在する。 それらが使えているということは、レザードと同じ世界から来た者がいるか、もしくは情報を持っていることを指し示す。 「成る程、それは厄介だ、ところでナンバーズとタイプゼロの方はどうなっているんだい?」 スカリエッティの質問に対し眼鏡を動かし騎士〈ナイト〉を動かすと説明を始めるレザード。 先ずナンバーズであるが、ノーヴェは失った右足の治療を終え現在リハビリを行っている。 次にチンクであるが体に違和感を感じている為、医療ポットで治療、今はそれも終え元気に模擬戦を行っていると。 次に回収した戦闘機人を調査したところ、我々が造り出した戦闘機人とは全く異なり、人に近い造りをしているという。 そして失われた左手はギミックアームとして修理を施し、更に洗脳までも施したのだが、 只の洗脳ではなく心の奥底に存在する感情を利用していると語る。 「彼女の奥に潜む感情……それは自分が地味であるという事 即ち、彼女の地味な性格を利用する事により、もっと目立ちたいという感情を芽生えさせ その結果、派手な破壊工作を行う事が出来るのですよ……」 「…………それは…冗談かね?」 「…………当然、冗談ですよ」 手を広げ肩を竦めるレザード、その態度に頭を押さえるスカリエッティ、 レザードの説明はリアリティがありすぎると窘めると、レザードは眼鏡に手を当て本当の説明を行う。 彼女の根底にある感情、それは妹に対しての愛情、それを引き出すことにより他のナンバーズと連携をとれるようにしてあると語る。 論より証拠、取り敢えず見て欲しいと言わんばかりにレザードはモニターを開き、ナンバーズの様子を映し出す。 モニターにはナンバーズの一人、ノーヴェとギンガがリハビリを兼ねた模擬戦をしている姿や、 セインとウェンディと楽しく談話している様子、更にはオットーとディードと一緒に食事をとり、面倒を見ている様子が映し出されていた。 「………見事に順応しているね」 「えぇ、計画通りです」 ナンバーズには腹違いの姉……もとい生まれが違う姉と紹介したところ、以外とすんなり受け入れられた。 故に此処まで順応しているのだろう、と言うのがレザードの展開である。 「そう言えば聖王はどうです?」 レザードの質問に顔を曇らせるスカリエッティ、暫くすると大きくため息を吐き女王〈クイーン〉を動かし近況を報告する。 鍵であるヴィヴィオの肉体は幼くリンカーコアも弱い、其処でレリックを使って魔力を上昇させ、ゆりかごを起動させるだけの肉体と魔力を補うと話す。 するとレザードから一つの提案が生まれる、それはベリオンに搭載されているリンカーコアを使うと言うものだ。 だがゆりかごは聖王の“遺伝子”がなければ機能しないとスカリエッティが主張すると、更に話を続ける。 先程のスカリエッティの主張通り、ゆりかごを動かすには聖王の血筋、つまり“遺伝子”が必要である。 つまり別に聖王自身が必要というわけではない、“遺伝子”と言う鍵があればいいのである。 故にベリオンのリンカーコアと接続させたレリックからもたらされる魔力を、 “聖王の遺伝子”に通す事により“聖王の魔力”に変えゆりかごを起動させると言うものであった。 「可能なのかね?」 「理論上不可能では無いハズです」 リンカーコアとレリックの強制接続はゼストのデータを基に可能であり、 リンカーコアと“遺伝子”は人造魔導師と戦闘機人技術の応用で何とかなると、 そして“遺伝子”提供は鍵から手に入れればいいと眼鏡に手を当て話すレザード。 「……となると、あの“鍵”はどうするのかね?」 「まぁ、レリックウェポンとしても優秀ですから、戦力として使えるでしょう」 いざとなれば、ベリオンのサブとしても利用価値はあるとレザードは話す。 そしてレザードは笑みを浮かべ城兵を動かし、チェックメイトをかけるのであった。 それから一週間以上が経ったある日、此処聖王教会に存在する会議室では、今後の対策の為の会議が行われようとしていた。 会議室にはカリムを中心に右の席にはクロノとその側近であるロウファにユーノ、 左の席にははやてとその側近であるグリフィスにフェイトとリハビリにより、 体はある程度動けるようになったなのはの姿があった。 そして予定された時間になり会議が開始され、最初にカリムが語り始める。 今回、地上本部壊滅を防ぐことが出来ず、予言は覆らなかった。 更に三賢人の発言によりスカリエッティが“無限の欲望”であると判明、 それと同時にレザードが“歪みの神”であることは間違いないと話す。 そしてレジアスレポートにより復活した無限書庫に存在するデータベースにより、様々な事実が明らかにされたと語る。 そして議題は三賢人に関する内容に移り、ロウファが席を立ちモニターへと赴き説明を始める。 先ずはヴァルハラからの説明であるが、レジアスレポートを元に調査した結果、 ヴァルハラとはミッドチルダの魔導技術を基に、アルハザードの技術とロストロギアであるレリックを使った次元航行船であると言う。 レリックは本局と地上本部に保存されていた物を横流しする事により入手、 アルハザードの技術は三賢人が元々持っていた情報である可能性が高いと指摘、 だがアルハザードの技術の情報はレジアスレポートの情報だけではなく、“独自”のルートによる情報が功をそうしたとロウファは語る。 更にヴァルハラの性能は最新の次元航行船を大きく越えた性能を持つ、まさに現代の技術によって作り出されたロストロギアであると説明を終える。 次にエインフェリアであるが、此方にはルーンと呼ばれる技術が使われており、ヴァルハラと同じ扱いであると簡単に説明を終える。 次に今回の事件の発端でもあるスカリエッティに関する情報であるが、此方はグリフィスが席を立ち説明を始める。 今回の事件でティアナが入手したディスクとレジアスレポートの情報を基に奴らの場所を特定、聖王のゆりかごと呼ばれる次元航行船に存在すると説明する。 聖王のゆりかごとは、古代ベルカの王が使用していた質量兵器で当時は戦船と呼ばれた代物である。 「歴史的価値がある聖王のゆりかごが、このような形で表に出るとは悲しいことです」 「……その通りですね」 カリムの言葉に頷くユーノ、だがグリフィスは更に話を続ける。 ディスクの持ち主の話ではゆりかごにもルーンと呼ばれる技術が使われており、 ゆりかごの他にもヴァルハラ、エインフェリアの動力源に使われ、更には不死者の脳に刻まれた呪印もそうであるという。 このルーンの情報はレジアスレポートによって復活した無限書庫のデータベースを基に手に入れた魔導書によって解ったことである。 更に元々ルーンはロストロギアともアルハザードの技術とは異なる技術で、 無限書庫の奥深くに隠すように保存されていたという。 そしてこのルーンはスカリエッティ側、三賢人側、両方にもたらされている技術であることは間違いないと判断する。 「つまり…おんなじ技術が両方で使われているっちゅう事か……」 誰かが無限書庫の情報を横流ししたのか、それともただの偶然か… だがどちらにせよ、驚異である事には変わりがないと考えるはやて。 次に対策であるが、先ずカリムは居場所が特定されているスカリエッティの方から攻略を始めた方がよいと考えを述べる。 何故ならば予言を考慮すると三賢人は“神々の黄昏を告げる笛”が鳴り響くの待っている可能性があるためだ。 ゆりかごはルーンによって存在次元をずらされているのだが、無限書庫の情報により短い時間ではあるが、 ルーンを中和する事が出来ると判明、その間に潜入・大本であるルーンを解除するという。 その役はカリムの義弟であるヴェロッサと、彼が信頼する仲間が行うという。 次の対抗策であるが、戦力として教会騎士団も協力するとは言うが、一斉に黙り込む一同。 片方は現代の技術によって作り出されたロストロギアの塊で武装した三賢人… もう片方は過去に幾つもの世界を滅ぼしたロストロギアを保有した歪みの神と無限の欲望… この二大勢力に幾ら聖王教会から戦力を借りたとしても満身創痍の管理局が向かったところで勝ち目はない。 「本局に応援要請はでけへんの?」 「…本局は次に狙われる事を考慮して戦力を温存しようとしている、十中八九無理だな」 クロノの発言にそれぞれは落ち込む表情を見せる中、ユーノがそっと手を挙げる。 「現実的じゃないけど、手は無い訳じゃないんだ」 そういうと一つの本を取り出す、本の表紙には円に囲まれ中心には正三角形が均等に並ぶ魔法陣が描かれていた。 レジアスレポートによってもたらされた情報は何も最高評議会だけではない、 削除された為、永久的に解けなかった謎が解け、新たな情報に繋がる場合も存在していたのだ。 そしてこの本は、それによって表に出た本であると説明する。 無限書庫には二通りの情報の保存方法がある、先ずは物質による保存法つまり本である、 もう一つは無限書庫の奥の奥、原初の頃から存在する今でも解析不可能なエネルギーによる電子的な保存法である。 そして物質的な保存法であるこの本には特殊な力場によって時間劣化が起こらないように出来ているという。 恐らく表に描かれている魔法陣による効果であるとユーノは興奮するように説明すると、 周りの冷ややかな目線に気が付き、自重するように一つ咳をすると話を戻す。 この本の題名は流浪の双神と書かれ、ある神の話が書かれているとユーノは語る。 …双神は時間・世界・事象のあらゆる次元を渡り歩く放浪者… 神の名は男神ガブリエ・セレスタと女神イセリア・クイーン… 神は強き者を好み、自らが生み出した世界にて強き者を待っている… そして神が与えた試練を乗り越えた者のみ神と対峙する権利を得られる、 そして神にその強さを認められれば、神は力を貸すという内容なのである。 更にこの本には神の住まう世界セラフィックゲートへの扉の位置が記されているとユーノは語るとクロノが声を荒上げる。 「バカな!こんな世迷い言を信じろと?」 「僕も最初はそう思ったさ、でも此処に記載されている扉は実際に存在するんだ」 ユーノの一言に一同は動揺しざわめく中、話を続ける。 此処に記載されている場所の説明と今の地形、更にこの時代の地形を照らし合わせた結果、その場所は此処聖王教会の地下と判定、 そこでカリムの協力を得て調査すると近くに鍾乳洞があり、そこから地下数千メートルの位置に存在する空洞を確認、 其処には本の表紙に書かれている魔法陣が描かれていたという。 つまりこの本の信憑性が実証されたと言う事である。 神の世界への道は見つけた、次に誰が向かうのかであるが、はやては機動六課のフォワード陣を現地に向かわせる事を提案する。 しかしなのはだけには留守番をするように命じた、何故ならば未だ体が万全ではない為、治療に専念させる為にである。 しかし周りの制止を無視して自分も行くと聞かないなのは、 その瞳には決意と不屈の色が宿っており、はやてはこうなったなのはを止める事は出来ない考え、渋々了承する。 そして現場には明日向かうことで会議は終了、早速なのはとフェイトは今回の決議を他のフォワード陣に伝えるのであった。 その日の夜…、此処聖王教会の敷地内に存在する中庭にて、なのはが一人ベンチに座り物思いに呆けるように夜空を見上げていると、 そこに一つの影が姿を現す、なのははその影に気が付き目を向けると、其処にはユーノの姿があった。 「あっユーノ君…」 「お邪魔だったかな?なのは…」 ユーノの言葉に首を振り屈託のない笑顔を見せると、ユーノはなのはの隣に座る。 辺りは沈黙に包まれ、虫の鳴き声が静かに響き渡る中、静寂を優しく切るようにユーノの口が動き出す。 「……ヴィヴィオの事、考えてたの?」 「……うん」 ユーノの問いかけになのはは一つ頷くと静かに話し始める。 最初はあの男、レザードの言う通り同情の目でヴィヴィオを見つめていた。 しかし共に過ごしていく内に自分の心にヴィヴィオへの思いが広がっていった。 レザードはそれを同情から生まれたの優越感だと罵ったが、自分はそう思ってはいない。 自分の心に広がるヴィヴィオへの思い…それは絶える事無く募っていく。 自分の思いは本物である!そう確信した瞬間、心の底でヴィヴィオの母親になりたいと思うようになった。 そう語るなのはの目には迷いは無く、決心に満ちた色を宿していた。 「もう自分の想いに嘘をつきたくない!」 「そうか……それじゃあ僕も自分の想いに正直になろうかな」 「えっ?」 ユーノの言葉に驚き顔を向けると、ユーノの唇がなのはの唇に重なり合う。 暫く沈黙が続き唇を離すと、なのはは頬を染めユーノに目を向けると、 其処には男の顔をしたユーノ・スクライアの姿があった。 「なのは…愛しているよ」 「ユーノ……君」 「こんな時にこんな事を言うのは卑怯かもしれないけど…」 なのはが自分の想いに正直になったように、自分もまた、自分の想いに正直なろうと。 十年前に出会ってから、二人はそれぞれの道を歩んで来た。 だがそれでも自分は、なのはの支えとなろうと努力してきた。 なのはの支えになる…その想いは昔も、今も、そして未来も変わらない、 二人の絆が消える事は無い、寧ろ堅く結ばれていくのを感じている。 そして照れ臭さそうな笑みを浮かべ更に話を続けるユーノ。 「それに…ヴィヴィオには男親も必要だと思うし……」 そんな事を口走ると今度はなのはから目線を逸らし俯くユーノ、自分はヴィヴィオを盾にして告白する破廉恥な男と感じ恥じていたのだ。 そんなユーノの態度になのはは笑顔で、そんなことは無い…ユーノはヴィヴィオの為を思って言ってくれた言葉であると理解を示し、 更に顔を真っ赤に染め小さく頷くと意を決したように話し出す。 「ユーノ君…私を“女”にして」 そう言うなのはの顔は真っ赤に染まったままだが、その目は真剣そのものである。 レザードの話ではないが、自分は母親になる前にユーノの“女”になりたいと望んでいる。 その言葉にユーノは無言になるが、その目にはなのはと同じく真剣そのものであった。 その目を見たなのはは目をゆっくり閉じると、ユーノは優しく答えるように、なのはの肩を抱き締め 唇を重ね合わせ、二人だけの夜が始まり更けて行くのであった。 夜が明けた次の日、聖王教会によって割与えられた部屋のベッドの上には上半身裸のユーノのが寝ており、その近くではなのはが制服に着替えていた。 すると着替える音に気が付いたユーノが上半身を起こすと、それに気が付いたなのはが目を合わせる。 「あっ起こしちゃった?“ユーノ”」 「ううん、今起きようと思っていたところだよ、なのは」 二人は軽く挨拶を交わすと頬を赤く染め上げるユーノ、どうやら昨晩のことを思い出していたようである。 すると着替え終わったなのはが入り口に向かうとユーノに目を向ける。 「それじゃあ、行ってきます、ユーノ」 「うん、いってらっしゃい、なのは」 二人は挨拶を交わしなのはは部屋を出る、そして凛とした態度で集合場所に向かうのであった。 集合場所にははやてを中心にフェイト、シグナム、ヴィータ、ザフィーラ、シャマルに スバル、ティアナ、エリオ、キャロとフリードリヒが並び立っていた。 そして道案内にユーノの秘書を勤めているメルティーナの姿も見受けられた。 「なのはも来た事やし、いっちょ行ってみますか!!」 「うん!行こう、セラフィックゲートに!!」 なのはの合図に全員は気合いを込めて返事をし、いざセラフィックゲートへと続く空洞へと向かうのであった。 その道中、先頭を歩くメルティーナに続き、はやてとフェイト、少し離れた位置になのはの姿があり、二人はなのはの印象が変わったように見えていた。 いつものような優しい顔だけではなく、ふと見せる凜とした大人の顔が垣間取れていたのだ。 たった一晩で一体なのはに何が起きたのか?…二人は首を傾げていた。 「なのは、昨晩何かあったのかな?」 「さぁ?分からんなぁ~」 「彼女はきっと“女”になったのよ」 二人のヒソヒソ話に耳を傾けていたメルティーナが二人の疑問に答える。 その答えにはやてはニンマリと不気味な…イヤらしい笑みを浮かべ、フェイトはキョトンとした表情を表していた。 メルティーナの“女”の勘では、恐らく相手は十中八九ユーノであろうと小声で話す。 はやては、そんな面白い事があったのなら、なのはの後をついて行けば良かった…と冗談混じりに考えるが、 ディバインバスターにて吹き飛ばされるのは必至と考え身震いを起こし自分の考えを自重する。 そして戻って来れたら色々な意味で祝杯として、はやて直々に赤飯を炊こうと考えるのであった。 それから数時間、道なりに歩き目的の場所である空洞へと赴く一同。 空洞は広く天井も50mはあると思われる程に高く、地面には巨大な魔法陣が描かれており、資料と全く同じ作りをしていた。 「それじゃ、私は帰るわ、後はがんばって」 そう淡白にメルティーナは挨拶を交わすと、そそくさと地上へと戻って行く。 そして一同が残されると、先手をとってなのはが魔法陣に踏み込む。 それを皮切りに次々と魔法陣に踏み込みちょうど中央に集まると、 三角形が一ずつ光り出し、最後に円が輝き出すと周りは白い光に覆われ始める。 「いよいよやな!みんなぁ、気ぃ引き締めていくでぇ!!」 はやての掛け声に一同は気合いを込めて返事をすると扉が起動、 機動六課フォワード陣は光に包まれ、この世界から消え去り神が住まう世界、セラフィックゲートへと向かうのであった…… 前へ 目次へ 次へ
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マジカルヒロイン / MAGICAL HEROINE 【マジカルヒロイン】 いますぐヒロインに変身しちゃいそうなアイドルポップス!キュートなヴォイスにキュンキュンだよ☆ マジカルヒロイン / MAGICAL HEROINE ハイライト発生箇所 収録作品 ロング版収録 関連リンク ポップンミュージック20 fantasiaで登場した楽曲。担当キャラクターはピュアクルリップ。 ラブ☆ゲッター~ピュアクル♡リップ~ / sei☆shin feat.MAI BPM 100→…152 5b-14 N-18 H-27 EX-36 新難易度 EASY NORMAL HYPER EXTRA × 24 33 42 ハイライト 5Buttons / EASY NORMAL HYPER EXTRA 6 / × 6 6 6 18・せんごく列伝の年号ロックでポップンに初登場したsei☆shinによる、ピュアクルリップが活躍する架空の魔法少女アニメの主題歌をイメージした曲。ファンタジーがテーマだけあってか魔法少女ものを思い浮かべた人も多いだろう。作曲者本人が本来得意とする打ち込みが主体となったアイドルポップス系となっていて、可愛くもクールなアニメソングを思わせる。前作の版権曲「only my railgun」のカバーを務めたMAIがボーカルを担当しており、バックにPONの声も。 開始後、歌いだし直前でBPMが加速して152に。ハイパーは前半が左右別フレーズで後半は同時押しメインだが、付点8分や16分が目立つのでリズム感が問われる。ラストの同時押しはハイテンションH等にあるような変則リズムで刻むので、オブジェをよく見て。EXは出だしの「>」押しが絡む箇所や、道中の16分交互連打に32分が混じる箇所があったりとリズム崩しはあるものの、同時押し、階段、乱打がバランスよく配置された総合譜面。ラストの連続する同時押しはタイミングに気をつけてゲージ回復に当てたい。 ハイライト発生箇所 番号 5Buttons / EASY NORMAL HYPER EXTRA 1 BPMが144→152へと段々加速する1小節 2 「♪巡り会うかもね」 3 「♪今日も誰かが~」直前の1小節 4 「♪ハピラキ~」直前の2小節 5 「♪叶えちゃうぞ!」の2小節 6 ラストのコール部分「リーップ!」まで 収録作品 AC版 ポップンミュージック20 fantasiaからの全作品 CS版 ロング版収録 pop n music 20 fantasia original soundtrack pop n music うさぎと猫と少年の夢 Original Soundtrack 20th Anniversary Edition 関連リンク sei☆shin#? 楽曲一覧/ポップンミュージック20 fantasia
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【リリカルTRIGUNA’s】 S2U 高町なのは(A s)に支給。 時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンが持つストレージデバイス。形態は、黒い杖型のデバイスモードと、銀色の金属製カードの形をした待機形態の二つのみ。意思を持たず操作もマニュアル限定だが、引き換えに処理速度が非常に高く、あらゆる種類の魔法を発動出来る万能型。 ヴァッシュのコート キース・レッドに支給。 ヴァッシュ・ザ・スタンピードが常に身につけている真紅のコート。 高い防弾機能や弾薬補充用のパイプラインといったギミックが備えられている。さらに耐魔法加工も施されている。 ヴァッシュの銃 カレン・シュタットフェルトに支給。 リボルバー形式の拳銃。一度に装填できる弾丸は六発まで。平たく長い銃身が特徴的。
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此処はミッドチルダに点在する隊舎内、其処にナンバーズの一人であるセインが存在していた。 彼女はこの隊舎を破壊する為に赴いており、部屋の隅や柱、壁などに時限式の爆弾を仕掛け、 最後の爆弾を設置する為にディープダイバーを用いて隣の部屋へと侵入する。 「これで…さ~いご!」 セインは最後の爆弾を仕掛け終えその場から立ち去ろうとした瞬間、後ろから制止を促す声が聞こえ、 振り向くと其処には教会騎士団のシャッハが身構えていた。 リリカルプロファイル 第三十四話 約束 「魔導師!?いや騎士か!」 「大人しく縛につきなさい!」 しかしシャッハの制止を無視して逃げようとしたところ、シャッハはヴィンデルシャフトを起動、 攻撃を仕掛けセインを壁まで追い詰めると、再度警告を促す。 「ここまでよ、大人しくしなさい」 「それは、どうかな~?」 次の瞬間、セインはディープダイバーを起動させて壁をすり抜ける、 それを見たシャッハは驚く表情を浮かべるが、直ぐに真剣な面持ちとなり、 全身を魔力で覆うと、セインと同様に壁をすり抜けた。 一方壁をすり抜け隣の部屋に逃げ込んだセインはそのまま立ち去ろうとしたが、 後方から先程まで対峙していた人物の声が聞こえ、 驚きの表情を浮かべたまま振り向くと、壁からシャッハが姿を現していた。 「私と同じ能力?!」 「さあ!観念しなさい!!」 そう言うとシャッハのヴィンデルシャフトのカートリッジを一発消費、刀身を魔力で覆いセインに襲い掛かる。 だがセインは体に対消滅バリアを張り、左手でシャッハの攻撃を受け止めると、 続けて右手を握り締め拳を作りシャッハの頭部を狙う、だがシャッハは上半身を仰け反るようにして攻撃を回避した。 しかしセインは続け様に左のジャブを三発、右のフック、左のハイキックを繰り出すが、 そのこと如くが回避されてしまい、苦虫を噛む表情を浮かべるセイン。 一方でシャッハはセインの攻撃力に対し一般的な魔導師や騎士では一撃でやられてしまうだろうと高評価をしていた。 だが動きは荒削りで付け焼き刃的な印象を感じ、シャッハの相手としては些か物足りない相手であった。 そしてこの程度の相手にこれ以上時間をかける訳にはいかないと考えたシャッハは、 カートリッジを二発消費、二本の刀身に先程以上の魔力を乗せると、床を踏み抜く。 「烈風一迅!!」 そして素早くすり抜けるようにしてセインを切り抜け、セインはなす統べなく前のめりに倒れていく、 しかしシャッハの攻撃は非殺傷設定を設けてある為に命に別状無く、 素早くバインドを掛けると仲間と連絡を取り、セインを引き渡すのであった。 一方此処はゆりかご内に存在するスカリエッティのラボ、周囲には生体ポットに保存された検体が並ぶ中、 メガーヌが入った生体ポットの前には、瞳を閉じ肩にアギトを乗せて佇むゼストを発見したアリューゼ。 するとアリューゼの存在に気が付いたのか、ゼストはゆっくりと瞳を開け、アリューゼを見つめていると、 アリューゼはゆっくりと、まるで言葉を選ぶかのように話し始める。 「ゼスト…隊長」 「………かつての部下か?」 「まさか“覚えて”んのか?」 「いや…“聞いた”だけだ」 自分には昔部下がいたという事を聞いた事があるだけであると応え、 アリューゼは静かに佇み暫くすると、ズボンから一つの結晶体を取り出す。 「それは?」 「今のアンタに“必要”なモノだ」 これを届ける為に此処まで来たと告げると、ご苦労な事だと言いながら笑みを浮かべるゼスト。 するとゼストの肩に乗っかっているアギトが信用出来ないと騒ぎ立てるが、ゼストは小さく頭を横に振り、 アギトを黙らせ、そしてアリューゼが手に持つ結晶体に目を向け、何か引かれるものを感じ受け取ると、 ゼストの額から赤い呪印が姿を現し手に取った結晶体が浮き始め、 目の前でまるで解凍されるかのようにして光り輝く球体となり、ゼストに吸い込まれ赤い呪印が消える。 そして暫く辺りは静寂が包み込むと、ゼストはゆっくりと言葉を口にし始めた。 「……久し振りだな、アリューゼ」 「隊長!記憶を!!」 アリューゼの問い掛けに頷き静かに答えアギトは目を丸くする中、ゼストはアギトに目を向け微笑む。 それはつまり昔のゼストの記憶と今のゼストの記憶、両方を持っている事を意味し、 人が変わった訳では無いと知ったアギトは嬉しそうにゼストの周りの飛び回り、 アリューゼもまた嬉しそうな表情を見せるが、直ぐに一変する。 何故ならばゼストの左肩がまるで爆発でもしたかのように飛び散り、血が滴れ落ちたのだ。 「やはり…もう限界か……」 「どういう事だよ!隊長!!」 元々ゼストの肉体はレザードによって損傷していた、だがそれをスカリエッティの手によって修復された。 だがそれだけではなくレリックとリンカーコアの強制接続により肉体を強化させたのだが、 その代償に肉体の劣化が早く進行する事になり、更に今回の戦いにより肉体の劣化は限界に達し、 いよいよ肉体の崩壊が始まったのだと、左肩を押さえながらゼストは語る。 「クソッ!そんなのアリなのかよ!!」 「……アリューゼ、構えろ」 アリューゼが悔しがる表情を見せている中、ゼストはデバイスを起動させると徐に構え始める。 ゼストの肉体は死を待つだけの状態である、ならばと最後にアリューゼとの模擬戦を望んでいた。 だがそれだけではない、たとえ本人の意思では無いとしても今回の事件に加担した、 その罪は償わなければならない、故にゼストはアリューゼと対峙する事にしたのだ。 するとゼストの意志を汲んだアリューゼはデバイスを起動、バハムートティアを肩に構え大きく間を取り始める。 そして静かに構えている中でアギトは立会人として二人の間に立ち、ジッと身構えていた。 暫く静寂が包み込み、二人は集中力を高め呼吸を合わせ始める、 そしてお互いの呼吸が合わさった瞬間、カートリッジを一発ロード、 ゼストが飛び出すようにアリューゼに迫り槍を振り上げる中、アリューゼはゼストに背を向けるほどまでに振りかぶっていた。 『うおおおおおおお!!!』 互いの気合いがこもった叫び声が重なり合いゼストは槍を振り下ろし、アリューゼもまた叩き斬るようにして振り下ろした。 そして互いの位置が反転すると、アリューゼの左肩から血が吹き出す、 一方ゼストは槍を二つに断ち切られ胸元に深い傷を与えていた。 デッドエンド、相手に背を向ける程までに振りかぶり一気に振り抜く、 アリューゼが扱う技の中で最も扱いが難しく、また最も威力のある技である。 「旦那ぁ!!」 立会人であるアギトがいても立ってもいられず駆け寄ろうとしたが、 ゼストは左手を向けて制止を促すと、振り向き右拳を握り殴りかかる。 するとアリューゼはバハムートティアを肩に構えながら振り向きカートリッジを二発消費、 刀身は熱せられたかのように真っ赤に染まると刀身をゼストに向けて突撃、 ゼストの身を貫くと大きく振り上げ、ゼストは爆炎に飲み込まれた。 そして辺りはファイナリティブラストによって燃え盛っていた炎が落ち着きを見せていく中、炎の中央では体に火が付いたゼストが佇み、 アリューゼに小声で「強くなったな…」と述べると、ゼストの姿を発見したアギトは泣きじゃくりながら駆け寄る。 「旦那!今炎を――」 「いや、このままでいい……」 既に肉体は死に絶え後は醜く崩壊を待つのみ、それを知ったアリューゼは、 ゼストに対しせめての手向けとして火葬を行ってくれたのだと、 アリューゼの計らいに感謝する気持ちで応え、右の人差し指でアギトの涙を拭き取る。 「だから泣くな、それに…お前が望む使い手に出会えたのだ」 「旦那……」 アギトの能力である炎変換資質はアリューゼの技と相性も良いし彼なら良く扱ってくれるであろうと語り、 ゼストの言葉に口を紡ぎながら涙をまた浮かべ、ゼストは小さく笑みを浮かべると、今度はアリューゼに目を向け言葉を口にする。 「アリューゼ…メガーヌを頼んだぞ!!」 ゼストの最後の言葉にアリューゼは小さく頷くと、安心したのか微笑みを浮かべ、 炎が顔まで覆い全身を包み隠すと、まるで消えるようにしてゼストは燃え尽きていった。 …そしてアギトは大声で泣きじゃくり辺りに響いていく中、 アリューゼはアギトに目を向け静かに…問い掛けるかの様に言葉を口に始める。 「…お前はどうする気だ?」 「…ヒック…旦那の…最…後の望み…なんだ……だから!!」 「…そうか」 アギトは右腕で涙を拭い決意ある瞳で答えると、アリューゼはメガーヌの入った生体ポットを見上げる、 …生体ポットの中にいるメガーヌは心無しか悲しそうな表情を浮かべているように思えた。 場所は変わり此処は聖王教会付近に存在する森の上空、 其処ではなのはとヴィヴィオが熾烈な争いを繰り広げられていた。 なのはは既にブラスター1を起動させており、ヴィヴィオもまたレリックの一つを起動させている状況であった。 その中でヴィヴィオは先ず五発の虹色のディバインシューターを作り出し、 なのはに向けて螺旋を描く軌道で撃ち抜くが、なのはは縫うようにして回避、 更に体を右回転させながらアクセルシューターを五発ヴィヴィオに向けて撃ち抜く。 しかしヴィヴィオは臆する事無くアクセルシューターを身に覆った虹色の膜で次々に弾いていきなのはに押し迫る、 聖王の鎧、古代ベルカの王が持つ遺伝子レベルに所有する防衛能力で、攻撃・防御共に高い効果を持つ資質である。 そしてヴィヴィオは左手を握り締め拳を作ると真っ直ぐなのは目掛けて振り下ろす、 だが、なのははアクセルフィンを全開にして後方へ移動、ヴィヴィオの攻撃を回避した。 だがヴィヴィオは右手をなのはに向けると手には虹色の魔力球が握られており、加速しているように見えた、 そして右手に二つの環状の魔法陣と足下に円状の魔法陣を張ると――― 「ディバイン…バスタァ!!」 ヴィヴィオは虹色のディバインバスターを撃ち放ち、なのはに迫る中すぐさまレイジングハートを向けてショートバスターを撃ち抜く、 だが威力が違う為見る見るうちに圧されていくがカートリッジを一発ロード、 威力を高めディバインバスターと変わらぬ威力にてヴィヴィオのディバインバスターを相殺して終わる。 先程放たれたディバインシューターに今のディバインバスター、 本来ベルカの人間は接近に特化した者が多く、射撃系は牽制程度が殆どなのであるが、 ヴィヴィオの放った魔法は十分な威力を誇っていた。 恐らくヴィヴィオは資質として魔力の射出・放出を持っているのであろう、 だがそれだけでは無くベルカ本来の接近にも十分順応しているとみるなのは。 そしてヴィヴィオの能力の分析終えたなのはは本来の目的である説得を促す。 「ヴィヴィオ聞いて!ベルカは対話による道を選んだ!もう争う事なんて無いんだよ!!」 「戦わぬベルカなどベルカではない!そしてあんなものを融和と呼べるものか!!」 元々ベルカは戦い勝ち取る事で強く、また大きくなっていった、言うなればそれが矜持、 それを忘れてただ相手の望むまま思うがままの行動をとるなどと融和とは呼べない、 そんなものはただの植民地支配に過ぎないと力強く答える。 「それもこれも今のベルカには王がいないからだ!だからこの私が生まれたのだ!!」 そして生まれたからには自分の使命を逐わなければならない、 ヴィヴィオの使命、それは即ちベルカの威光を復活させる事、その為ならば自らを兵器になる事すら厭わない、 そう語るとヴィヴィオは右拳を握り締めなのはに殴りかかるが、 なのははプロテクションを張り防ぐと、続け様に何度も叩き付け始め今度はなのはが言葉を口にする。 「違う!ベルカは敗戦後自分達の考えを改めた!その結果が今のベルカなんだよ!!」 誰かに強要されたわけでも無く、ましてやミッドチルダに支配されていた訳でもない、 敗戦後生き残ったベルカの人々が自ら考え選んだ道であり、ミッドの人々もそれを受け入れた、 その結果、強力な指導者が必要としなくなり、聖王もまた、 宗教的な意味合いとなったのだろうと応えると、ヴィヴィオは震えるようにして言葉を口に出す。 「ならば…私は何の為に生まれてきたのだ!!」 そして両拳に雷を纏わせ合わせると地上に向けて一気に振り下ろし、 なのはのプロテクションを破壊、一気に地上に叩きつけた。 プラズマアームと呼ばれるバリア破壊効果を持つ雷を拳に纏わせて攻撃する近接魔法である。 だがなのはがゆっくりと立ち上がり森の中に身を隠すとカートリッジを二発消費、ヴィヴィオ目掛けて次々とアクセルシューターを撃ち抜く。 一方ヴィヴィオの目線では、なのはの姿が見受けられず森の中から続々とアクセルシューターが襲いかかり、 聖王の鎧にて攻撃を防いでいく中、左手に巨大な魔力球を作り出し、森の中へと投げ込む、 そして魔力球が森の木々に触れた瞬間、一気に拡散し無数の虹色の魔力弾が辺りの木々を次々に薙ぎ倒していった。 セイクリッドクラスター、対象に接触もしくは目前で爆散し、小型の魔力弾を広範囲に渡ってばらまく圧縮魔力弾である、 しかもヴィヴィオの魔力と資質によって小型の魔力弾も相当な威力を誇っているのである。 「…いないか」 セイクリッドクラスターが撃ち込まれた場所は木々が薙倒れ大きく円を描いており、 今度は他の場所に左手を向けてセイクリッドクラスターを次々に撃ち込んでいく、 その頃なのはは森の中で木々が倒されていく事に警戒し、 上空を見上げるとヴィヴィオの周りにセイクリッドクラスターが五発用意されている事に気が付く。 「ならば!この森ごと葬ってくれる!!」 次の瞬間五発のセイクリッドクラスターはある程度の距離を置いて撃ち放たれ、 森の目前で次々に爆散、無数の魔力弾が驟雨の如く迫ってきていた。 それを目撃したなのははオーバルプロテクションを張り攻撃に備えると、 無数の魔力弾は次々に木々を薙ぎ倒し、辺りは見通しがよい風景へと変貌する。 ヴィヴィオはその風景を目を凝らして見つめなのはの姿を探していると、 倒れいる木々の中から桜色の防御壁に守られたなのはが上空へと向かっていくのを発見、 するとヴィヴィオはソニックムーブを用いて押し迫ると左のプラズマアームで防御壁を破壊し、 更に右手をなのはに向け拳から直射砲を撃ち抜く、 インパクトキャノン、近接戦闘における砲撃で、射撃系魔導師にとって重宝する魔法である。 そしてインパクトキャノンを撃ち抜いたヴィヴィオはその先を見つめると、 其処にはなのはが矛先を向けており、その姿にヴィヴィオは警戒していると、 なのははブラスター2を起動、更にA.C.Sドライバーを発動させて一気に加速、 ヴィヴィオに突撃するがヴィヴィオの聖王の鎧が自動的に発動、なのはの攻撃を受け止める。 だがなのはは臆する事無く突撃を続け、先端部分から魔力素が火花のように散り聖王の鎧にひびが入ると、 すかさずカートリッジを三発消費、すると先端部分の魔力刃が強く輝き出す。 「エクセリオン!バスタァァァ!!」 なのはの叫びと共にエクセリオンバスターは撃ち放たれヴィヴィオは飲み込まれていき、 撃ち放った先を見つめると、エクセリオンバスターを耐え抜いたヴィヴィオの姿があり、 その足下にはミッド式の魔法陣が張り巡らせ、右手をなのはに向けると、虹色の魔力が流星のように集い始める。 「まさか!それは収束砲!!」 「自分の技をその身に受けるが良い!スターライトブレイカァァァ!!」 そう叫ぶと虹色のスターライトブレイカーが撃ち放たれ、なのははラウンドシールドを張り攻撃に備えた。 だがスターライトブレイカーの威力は、なのはの想像よりも高く、 徐々に圧されていきラウンドシールドにひびが入り砕けると、そのまま飲み込まれていった。 そして暫く辺りを静寂が包み込む中、撃ち抜かれた後にはなのはの姿が現れる。 収束砲の使用は流石になのはも驚きの表情を隠せないでいた、 何故ならヴィヴィオが使用した収束砲はなのはのそれと全く同じ技術を用いられていたからである。 おそらくはホテル・アグスタ戦並びに地上本部戦の際に使用したなのはの収束砲を、 レザードもしくはスカリエッティが解析し、その後ヴィヴィオにもたらしたのだと思える。 …それは奇しくもなのはの技術がヴィヴィオに母から子へと引き継がれた事を意味していた。 そして収束砲を受けたなのはは、まるで疲れ切った表情を浮かべていると不敵な笑みを浮かべるヴィヴィオ。 「少し…オイタが過ぎるんじゃないかな?ヴィヴィオ」 「……この期に及んで、まだ母親面をするつもりか!」 自分とは血が繋がってはおらず、既に親子関係すら絶たれている、その事をいい加減理解しろ! …とヴィヴィオは睨みつけながら語るが、なのはは大きく首を振り強く否定する。 なのはと兄恭也そして姉美由希とは血が繋がってはいない、 だがそれでも家族として暮らしていた、血の繋がりが重要なのではない。 一緒に笑い合い泣き合い、時には叱られたり喧嘩したり、 心を許せる存在、それが家族であり仲間であると力強く言葉を口にする。 「ヴィヴィオ!本当の望みはいったい何なの!!」 「わっ私の望みはベルカの復興―――」 「違う!聖王としてじゃなくヴィヴィオ“本人”の望みだよ!!」 聖王とはあくまで役目・役職、個人を指し示すものでは無い、 故にヴィヴィオの本当の望みは違うと考えていたなのはは強く問い掛ける、 するとヴィヴィオの中で何かが砕け散った音が響き、俯き暫く静寂に包まれると、静かに言葉を口にする。 「私の本当の望みは………な――」 ヴィヴィオが自分の想いを告げようとした瞬間、両手で頭を押さえ苦しむ表情を見せると、 体から大量の虹色の魔力が放出、その勢いと輝きになのはは右手で光を遮りながら目を凝らしていると、 額に赤い呪印が浮かび上がり胸元からレリックが二つ現れ、レリックには赤い五亡星の陣が刻まれていた。 ヴィヴィオのリンカーコアには王の印であるレリックを二つ繋がれていたのである。 するとレリックはヴィヴィオの両手袋に備え付けてある結晶体に取り込まれ、 結晶体に五亡星が浮かび上がると両腕から虹色の魔力が放出し体を纏うと、 瞳から光が消え険しい表情のままヴィヴィオはなのはを睨みつけていた。 なのははその変貌に戸惑っていると、ヴィヴィオはソニックムーブを発動、 一瞬にしてなのはの懐に入ると左拳が鳩尾に突き刺さり、引き抜くと同時に左に一回転、 左の肘が脇腹を突き刺し、よろめきながらなのはが一歩下がると右のアッパーがなのはの顎に突き刺さる。 そして上空に跳ねられると左拳を胸に叩きつけそのまま縦に一回転すると同じ場所に右の踵落としを叩き込み、 なのはは勢い良く地上に激突、その衝撃は木々をへし折り地面に大きなクレーターを作り出した。 だがなのはは立ち上がりクレーターの中央でA.C.Sドライバーを起動、一気に加速して突撃するが、 ヴィヴィオは左手に虹色の魔力を纏い、なのはの魔力刃が聖王の鎧に接触する瞬間を見計らって弾くと、 そのままの勢いを利用して左回転からの右の肘打ちを叩き込もうとしたが、 全方向性のオーバルプロテクションを張っていたようで攻撃を防がれる。 ところがヴィヴィオは左の魔力を雷に変えプラズマアームを発動させると、躊躇無く振り抜きバリアを破壊、拳が背中に突き刺さる。 だが攻撃はまだ終わらず右拳からインパクトキャノンを撃ち出し、飲み込まれながら吹き飛ばされるが、 なのははブラスター3を起動、それによって生み出された魔力を使ってインパクトキャノンをかき消した。 「……ヴィヴィオ」 今までのヴィヴィオとは全く異なる、まるで機械のような無慈悲で正確な動き、 それは表情を一切変えない事でまるで兵器を相手にしている印象を強く感じ、 なのはは戸惑う様子を見せるが、已然としてヴィヴィオは険しい表情のままなのはを睨みつけていた。 するとヴィヴィオの瞳から一筋の涙が流れ落ちる、その涙はまるでヴィヴィオの抵抗にも見えていた。 ヴィヴィオは助けを求めている、そう感じたなのはは決意を秘めた瞳で応える。 「助けるよ……何時だって…どんな時だって!!」 そしてなのははカートリッジを全て消費、レイジングハートをヴィヴィオに向け更に囲うように四基のブラスタービットを設置して魔法陣を張ると、 ヴィヴィオもまた両手で四カ所かざし魔法陣を張り、最後に真っ正面に大きな魔法陣を張ると両手を水平に構える。 すると両者の魔法陣に魔力素が流星のように集まり出し、五つの収束砲を作り出すと、なのははレイジングハートを振り上げた。 「全力!全開!!スターライト…ブレイカァァァァ!!!」 なのはの叫びと共にレイジングハートを振り下ろし、ヴィヴィオは両手を合わせて向けると両者のスターライトブレイカーが撃ち放たれ、 辺りを桜色と虹色の魔力光で照らし、魔力素が火花のように散りながら収束砲はぶつかり合っていた。 その中で足を踏ん張り堪えている両者、その衝撃はまるで台風をその身で浴びるように強力で必死な形相で耐え抜いた。 両者のスターライトブレイカーの威力は互角な状態、膠着状態が暫く続き、なのはの額には汗が浮かび上がり、 それでも尚、ヴィヴィオを助ける為に撃ち続けていた。 今度こそ助ける、あの時…地上本部の時に約束した事を今こそ果たす為に… だが徐々になのはのスターライトブレイカーが押され始める、 今のヴィヴィオには自分の意志とは関係無く、両手に繋がれているレリックのエネルギーを、 直接引き出し魔力に変えて撃ち抜いているのである。 それを可能にしているのが額に浮かび上がった呪印で、ルーンの一つでありヴィヴィオの変貌もまたこの呪印が原因なのであるのだが、 不死者などに刻まれているルーンとは異なりある行動をとると、それをきっかけにルーンは発動、 対象の行動を支配・制御し、また思考を停止させて敵対象を殲滅する為の兵器へと変貌させる呪印なのである。 この呪印を施したのは勿論レザード、彼はもしも洗脳が解けた場合に備えて保険として施したのである。 つまりこの呪印とレリックを破壊すればヴィヴィオは元通りなるという事でもあった。 だが兵器と化したヴィヴィオはなのはですら押されてしまう程の実力を持ち、 スターライトブレイカーも徐々にだが、確実になのはが押され始めていた。 「くぅ!……後もう少し…もう少しで助けられるのに!!」 カートリッジは既に消費済み、懐には予備のカートリッジが存在しているが今から交換する事も出来ない… というより余裕が無いのだ、それ程までになのはは切羽詰まっていたのである。 たがなのははこの状況にも関わらず希望を捨ててはおらず、不屈の心は折れてはいなかった、 するとなのはの腰に備え付けてあるミリオンテラーがなのはの意志に呼応するように輝き出し、 白銀の魔力がなのはの体を包み込むと、今まであった負担が一気に軽くなりリンカーコアも活性しているのを感じていた。 「これは!?助けてくれるの?」 突然の助太刀に驚くも感謝を浮かべ、力強く正面を向く、 今の状態ならイケる…そう確信したなのはは力強く叫んだ。 「ブレイクゥゥ…シュウゥゥゥゥゥトッ!!!」 次の瞬間、体を纏っていた白銀の魔力がスターライトブレイカーに混ざり合い螺旋の模様を描きながら、 ヴィヴィオのスターライトブレイカーに激突、見る見るうちに押し返していき、とうとう撃ち破った。 そしてヴィヴィオの体は飲み込まれていくと、額の呪印がまるで風化するようにして消滅、 すると両手に取り込まれていたレリックが現れ、ひびが入ると砕け爆発した。 そして撃ち終えたなのはは肩で息をしながら目先に向けると、 其処には少女の姿に戻ったヴィヴィオがおり、体には聖王の鎧が纏っていた。 どうやらレリックの爆発に反応して発動したらしく、ヴィヴィオの体は奇跡的に無事なようである。 するとヴィヴィオの体に纏っていた聖王の鎧がゆっくりと消えていき落下し始めた。 「ヴィヴィオ!!」 なのははすぐさまヴィヴィオの元へ駆け寄り、ヴィヴィオの体を抱き抱え地上に降りると、 その温もりに気が付いたのかヴィヴィオは意識を取り戻す。 「……なのはママ」 「…ヴィヴィオ!無事だったんだね!」 なのははヴィヴィオの無事な姿に力強く抱き締め大粒の涙を零す、 するとヴィヴィオは今までの恐怖から解放された為か、 それともなのはに抱かれ安心したのか大粒の涙を零しながら、なのはに抱きつく。 「…ごめ…んな゛…さい……な゛の゛は…マ゛マ」 「もう…大丈夫だから……もう…安心していいんだよヴィヴィオ…」 ヴィヴィオは泣きじゃくりながら何度も謝り、そんなヴィヴィオの姿を優しく抱き締め受け止めるなのはであった…… 前へ 目次へ 次へ