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モラン Moran 【製造企業】テトラ 【所属分隊】アンダーワールドクイーン 【使用武器】AR ドラゴンヘッド 【二人称】弟 【CV】依田菜津 【BlaBla】怖い人ではありません。 概要 牡丹会のボス。 本当は気が弱いが、敵には頑張って強気な態度で接する。 組織への忠誠心が強く、部下を家族のように大事にしている。
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アーロンモララー クリーチャー - モララー 4/4 畏怖 アーロンモララーはブロックに参加できない。 アーロンモララーが攻撃に参加するたび、戦闘終了時、すべてのプレイヤーはクリーチャーを1体生け贄に捧げる。 12版カード モララーだからな!(12)に採用済み [部分編集] イラスト /| / | ∥ | ∥ | ∥ | ∥ | .∧_∧ ⊆⊇( メ∀・) ∥⊂ ⊂/ ) /_|_| (__)_)_____∧___オマエは父親ソクーリだな
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前ページ次ページThe Legendary Dark Zero 金髪の巻き毛が自慢である少女、〝香水〟のモンモランシーは趣味で秘薬作りに勤しんでいる。 彼女の実家のモンモランシ家はトリステインの由緒正しい伝統ある名家であるが、色々な事情があって領地の経営だけで精一杯の状況である。 故にモンモランシーも小遣いを自分で稼ぐために香水を作ってはそれを街女や貴族の女性らに売り捌いていたのだ。 彼女の香水は独特の香りがすることで中々評判があり、結構な高値で売れるのである。そうしてお金を稼いでは、珍しい秘薬の材料を手に入れて作るのである。 もっとも、それらはコレクションを目的としているために使う機会はほとんどないのだが。 あくるの日の夜のことである。寮の自室でモンモランシーはいつも以上で真剣に秘薬作りに熱中していた。 「見てなさいよ……絶対に振り向かせてみせるんだから」 ぶつぶつと呟きながら、るつぼの中の秘薬をすりこぎでこね回していた。 今作っているのははただの秘薬ではなく、国法によって作成と使用を禁じられている品である。 これまでコツコツと貯めていた小遣い1000エキュー以上を費やして禁断の秘薬を作るための高価な秘薬を購入していたのであった。 見つかったら大変な罰金が科せられると知りつつも、モンモランシーはその秘薬を作らねばならなかった。 自分の大切な人が今、奪われようとしている。しかもあのスパーダという男と一緒にいたためかギーシュは以前とすっかり変わり果てた姿になりつつあった。 その時の男らしい気迫ある姿は悪くないとは思いつつも、そんなのは本当の彼ではない。ギーシュはキザっぽいのが一番似合っているのだ。それが変わってしまうのが嫌だった。 だがあのスパーダという男にすっかり入れ込んでおり、まともな手段では元のギーシュには戻せないだろう。 だからこそ、これから作る秘薬に全てを賭けているのだ。 滑らかにすり潰した香木に竜硫黄、マンドラゴラ、そして闇市でなければ手に入らない肝心の秘薬……香水瓶に入れられたほんの少量のその液体をるつぼの中に入れていく。 ちょうどこの一滴が闇市で扱っていた最後の一品。しかも今後、入荷の予定はないというので本当にギリギリだったのだ。決して、失敗は許されない。 少しずつ、少しずつ……こぼさぬように細心の注意を払って一滴一滴をるつぼの中へ落としていき、慎重にかき混ぜていく。 大切な人を何としてでも取り戻すために、モンモランシーは徹夜で禁断の秘薬を作り続けていた。 アルビオンより帰還してもう一週間以上が経っていた。 その日は虚無の曜日、多くの男子生徒達は朝からヴェストリ広場でスパーダの行なう剣術の稽古に参加していた。 この稽古によって己の状況、環境が変化した生徒が何人かいる。 まず、ルイズと同じクラスの同級生で〝風上〟の二つ名を持つマリコルヌ・ド・グランドプレ。 元々、彼がスパーダの稽古に参加したのは女の子にもてたいからという理由であった。小太りな体格である彼は女子には全くもてたことがない。 故にギーシュが師事しているスパーダから剣術を習って少しでもモテるためのきっかけを作ろうとしていたのだ。 スパーダの稽古は昼休みの合間、そして時々午後の授業が終わった夕方近くにも行なわれる。 それが何週間もほぼ毎日続けられており、マリコルヌにとっては極めて辛い運動となっていた。 「君、最近少し痩せたな?」 共に稽古を受けているギムリはマリコルヌの体を見て思わず呟く。 そう。結果的にその稽古をほぼ毎日受けていたのが功を成したのか、マリコルヌのぽっちゃりとした体は以前より少しではあるが逞しいものへと変わっていた。 出ていた腹も少し引っ込み、脂肪の多かった体などには筋肉がつき始めている。 「よぉしっ! もっともっと、修行に取り組むぞー!」 その指摘を受けたマリコルヌは、いつになく張り切っていた。女の子にモテる様を想像して、思わず顔がにやけてしまう。 「あっ! おい!」 「うげっ!」 結果として、組み手の相手をしていたギムリの木剣を腹へまともに受けることになってしてしまった。 「ワルキューレ!」 スパーダの直接の弟子であるギーシュ・ド・グラモンはいつにも増して戦士としての気迫を発揮していた。 剣を片手に杖を振り、青銅のゴーレムを作り出すと正面に立つスパーダ目掛けて突進させていく。 スパーダは腰の閻魔刀は手にせず左手に篭手のデルフを装着しており、向かってきたワルキューレに一発フックを叩き付けた。 バゴンッ、と鋭く重い打撃音と共に粉々に砕かれるワルキューレ。 だが、ギーシュは既に武装したもう二体を作り出して左右から時間差で向かわせていた。 「てやっ!」 さらに、スパーダ目掛けて自らの剣を投擲する。 勢いよく真っ直ぐに飛んでいく剣をスパーダはひらりと体を横に捻ってかわした。 右から来たワルキューレがメイスを振り下ろそうとする。だが、スパーダはそのまま体を勢いよく左に一転させる。 遠心力を利用して繰り出された左手の裏拳がワルキューレのメイスを腕ごと吹き飛ばし、もぎ取っていた。 砕かれた青銅の残骸が草地に放られるようにして転がる。 左から時間差で向かってきたもう一体のワルキューレもまたメイスを薙ぎ払おうとしていたが、一転し終えたスパーダはそのまま腰を低く落として足払いを繰り出した。 軽々と宙を舞ったワルキューレだったが、スパーダの頭上をギーシュの剣が回転しながら通過していくのをはっきりと耳にしていた。 「てえりゃあっ!」 念力で剣を引き戻したギーシュは即座に、立ち上がろうとしているスパーダへと駆け寄り斬りかかろうとした。 だが、スパーダは草地に叩きつけられていたワルキューレを蹴り上げ、再び宙へと舞わせていた。 「おっと!」 今までずっと、スパーダが腰だめに構えていた左拳を目にしたギーシュは慌ててその場で倒れるようにして伏せる。 直後、先ほど以上に鋭く凄まじい衝撃音と共にワルキューレが吹き飛ばされていた。 「危ない!」 「きゃあっ!」 まるで砲弾のような勢いで飛んでいったワルキューレを観戦していたギャラリー達は慌てて道を開けるようにして左右によける。 そのまま学院の外壁まで飛んでいったワルキューレはそれに衝突し、バラバラに砕け散っていた。 「ひゅーっ! 飛んだ、飛んだ!」 正拳突きを繰り出したスパーダの左手、装着されているデルフが歓声を上げていた。 「おおおっ!」 ギーシュは回避に成功したことを確認してすぐに起き上がり、そのままスパーダに斬りかかっていた。 袈裟に振り上げ、体を捻りつつ斬り返し、懐目掛けて突くなど、次々と剣の乱舞がスパーダに繰り出される。 矢継ぎ早に繰り出されるその剣を、スパーダは子供をあしらうかのように篭手で全て防ぎきっていた。 「素敵よ! ギーシュ様!」 乱舞を次々と繰り出すギーシュの表情はまるで獅子のように勇ましく、ギャラリーの女子達から黄色い声が上がっていたがギーシュの耳には届いていなかった。 「――うわあっ!」 スパーダに乱舞を繰り出し続け、剣を振り下ろそうとした途端、激しい閃光が瞬いた。同時にギーシュは自分の胸に風魔法のエア・ハンマーが叩きつけられた時以上の強烈な衝撃を感じていた。 ギーシュの体は軽く10メイルは吹き飛ばされ、剣を手放し草地に叩きつけられてしまう。 スパーダは左手を突き出したまま、静かに立ち尽くしている。 「ふぅ……。突っ込み過ぎだったなぁ、貴族の坊主」 蓄積されていた衝撃を開放されたためにどこかスッキリした様子でデルフは言った。 「痛い……」 まともに魔力開放によるカウンターを食らってしまったギーシュは草地の上で仰向けになったまま、起き上がれないでいた。 全身が痺れてほとんど動けない。 ちらりと、ギャラリー達の方を見やる。……初めはそこにいたモンモランシーの姿は、どこにもなかった。 (何故だ? どうして、僕を見てくれないんだい) 哀しそうな面持ちで、ギーシュは溜め息を吐いた。 アルビオンから帰ってきてからというものの、モンモランシーは何故かギーシュを避けるようになっていた。 以前、二股をかけてしまった件はあったものの、ギーシュの本命はあくまでモンモランシーである。 だから積極的に愛の言葉を囁いたり、薔薇の花を贈ったりなどして気を引いたり、共にお茶を飲んだりもしていた。 彼女もまんざらではないのか、表面上は仕方なさそうにギーシュに付き合ってくれたのだ。 ところが最近はどれだけ彼女の気を引こうとしても無視されてばかりであることにギーシュは困惑していた。 その理由を、「自分が弱々しいから」と判断していたギーシュはいつも以上に剣の修行に取り組むことにしたのである。 自分がモンモランシーを守れるようにもっと強くなることで振り向いてもらいたかったのだが、どうやらまだまだ彼女に認めてもらえる強さにはなっていないようだ。 そのためにもこうして更なる特訓に打ち込み、それが終わった後には諦めずにモンモランシーにアタックするのである。 体を起こしたギーシュは未だビリビリと痺れる胸を押さえる。 「……そ、そういえばどうしてタバサはいないのかな。また手合わせを頼もうかと思ったのに」 「実家に帰ったそうだ」 スパーダは左肩を揉みつつ回しながら言った。 タバサは今のギーシュの練習相手としてはちょうど良い相手であり、暇な時は手合わせをしてくれることに了承してくれていた。 しかし、いざそれを頼もうかと思ったら今日は朝食が終わってからシルフィードに乗ってどこかへ行ってしまった。 おまけに親友であるキュルケも面白そうだから、という理由で同行したためにここにはいない。 タバサは時々、授業を休んだり抜け出したりして留守にすることが多い。その際、伝書フクロウが必ず飛んでくるので何か特別な用事のようである。 そもそも彼女の実家はどういった場所なのかよく分からない。ガリアからの留学生だということは分かるのだが。 まあ、何にせよタバサとの手合わせができなかったので師匠のスパーダにこうして直接、手合わせをしてもらったのである。 スパーダとの手合わせは本気の殺し合いに等しいものだった。 以前にもたっぷり味わった悪魔としての本性を露にしていた組み手はタバサの時と違って、絶対に気は抜けない。 少しでも気を緩めれば確実に殺される。故にギーシュも本気を出し切らねばならなかったのだ。 結果的にギーシュは殺されはしなかったものの、スパーダの体術で徹底的に痛めつけられることになった。 顔こそ傷つけられることはなかったものの、体中に無数の痣をつけられている姿は実に痛々しい。 それでもモンモランシーは以前のように彼を介抱してくれることはなかったが、ギーシュ本人はこの傷だらけの姿を彼女に見せることで自分はさらに強くなったことを示すのだ。 「ああ……待っててくれよ、モンモランシー。今、君の元へ……」 足取りはおぼつかず、剣を杖にしなければまともに歩くことはできなかったが。 (ギーシュもこりないわね。あんなにボロボロになるまで続けることないのに) 始祖の祈祷書を抱えながらルイズは呆れたように嘆息する。 朝食を終えてからというものの、式で告げる詔を自室や図書館、そしてつい先ほどまでこの広場と回って初めの文程度までは考え付いていた。 そこから先で停滞してしまったので、気分転換をするため一時中断しているわけである。 「それからどうだ。何か詔は考え付いたのか」 庭の隅のベンチに腰掛けるスパーダに近づくなり、何の前触れもなく単刀直入に尋ねてきたためルイズは渋い顔をした。 「ありきたりなものかもしれないけど……」 「では、思いついたのを述べてみろ。だが、あまり批評には期待しないでもらおうか」 「ま、あまり固くなるなよ? どうせ、ほとんどは王宮の奴らに手直しされるんだから」 左手に装着したままのデルフがけらけらと笑うと、ルイズはムスッとした顔になる。 「うるさいわねっ。黙って聞いてなさい」 こほん、と小さく可愛らしい咳をしてルイズは考え付いた詔を読み上げていく。 「この麗しき日に、始祖の調べの光臨を願いつつ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。畏れ多くも祝福の詔を詠みあげ奉る……」 「どうしたい? 続けろよ」 そこで黙り込んでしまうと、デルフが急かしてきたので拗ねたように唇を尖らせた。 「これから火に対する感謝、水に対する感謝……順に四大系統に対する感謝の辞を、詩的な詞で韻を踏みつつ読まなきゃならないの。 でも、詩的な表現なんてそう簡単には思いつかないわよ」 かと言ってスパーダは芸術などにはあまり関心がなさそうなので助力は求められないし、デルフなど論外だ。 「……詩、か。では、ギーシュにでも聞いてみてはどうだ」 黙って詔を聞いていたスパーダが提案するが、ルイズは渋面を浮かべた。 「嫌よ。だって、ギーシュの考え付くのなんてどうせキザ臭いものばかりじゃない。そんなもの詔になんかしたら恥よ」 「それじゃあがんばって、自分で考えるこったなぁ」 他人事のように笑うデルフにうぅ~、と唸るルイズ。 「ねぇ、スパーダ。本当に何か良い詩とか知らないの?」 「そうだな……」 あまり芸術に興味がないスパーダとて、何もそういった分野に無知というわけではない。世を渡り歩いていると自然に耳にしてしまうものもあったりするものだ。 が、やはり今のルイズに必要なものをスパーダは耳にしたことがない。 「すまんな。やはり力にはなれん」 「……もういいわ。まだ時間はあることだし、ゆっくり考えることにする。さ、お昼ご飯にしましょう」 残念そうに溜め息を吐いたルイズは、既に生徒達は解散して自分達以外に誰もいない広場をスパーダと共に後にしていた。 昼食が終わって一時間ほど経った後、ルイズは詔を考えるのは一日中断することにし、スパーダを連れて学院裏手の草原へと訪れていた。 詔を考えるのも大事だがもう一つ……ルイズにはやらなければならないことがあるのである。 そのために昼食が終わった直後、スパーダに頼み込むことでこうして来てもらったのだった。 この場所を選んだのはヴェストリ広場では人が来るかもしれないため、スパーダの悪魔の力を見られる恐れがあるからである。 「それじゃあ、お願いね」 「うむ」 杖を抜き身構えるルイズに対し、スパーダは自分の左右に無数の赤い魔力の刃、幻影剣を浮かべていた。 なお、デルフを幻影剣にしたままだとうるさくなるために篭手にして装着している。 高速で回転する幻影剣を学院の外壁に向かって射出する。呪文を唱えていたルイズはその刃に向けて杖を振り下ろした。 「ファイヤー・ボール!」 別に呪文など何でも良かったが、ルイズはこの魔法を選んでいた。 ルイズがイメージしたのは、幻影剣の少し先の空間に爆発を起こすことだ。 ――ドンッ! 何もない空間に一瞬、透けた魔力が収束したのが見えた途端、その場所を中心にして爆発が起きた。 「おっと、おしかったなぁ」 篭手のデルフが呟く。 狙いは僅かに外れており、爆発は飛んでいった幻影剣のすぐ横で発生している。ピンポイントで狙えなかったのがルイズは悔しかった。 もっともその爆風によって幻影剣は砕かれていたのだが。 「まだまだ続けるわよっ。スパーダ、お願い!」 ルイズはさらに杖を構えてはりきっていた。スパーダは無言で幻影剣を自分の周囲に作り出していた。 自分の魔法は本来ならただの失敗に過ぎないものだ。四代系統魔法のどれにも当てはまらない。 だが、スパーダが助言をしてくれたおかげでその失敗を自分なりに活かすという道に進ませてくれた。 コモン・マジックならば何とか使いこなせるようになったとはいえ、この失敗も更に活かすことが大切だ。 ルイズの目標は多くの人に認められる立派なメイジとなることなのだから。 気分転換にもちょうど良い。 スパーダの放つ幻影剣を的にしてルイズはこの爆発の失敗……〝バースト(炸裂)〟と名付けることにした魔法を撃ち続けていた。 今のように射出され、高速で飛んでいく幻影剣を一発のバーストで撃ち落したり、大量に放たれた幻影剣を小さなバーストを連鎖的に同じ場所で発生させて一掃するなど様々なバリエーションで魔法を行使していた。 それは夕方になるまで続き、スパーダは黙々と自分の魔力から作った幻影剣を的にしてくれていたが、ルイズは次第に精神力を消耗してきて頭がクラクラしていた。 「今日はもはや打ち止めだな」 「まだよ。あともう二、三発くらいは撃つわ」 だが、それでもルイズは虚勢を張って続けようとした。 「おいおい、娘っ子。あまり無理すんなよ? 引き際が肝心だぜ」 「うるさいわね。アンタを的にしてあげなかっただけでも感謝しなさい」 茶々を入れてきたデルフに言い返すと、ルイズは改めて杖を振り上げようとした。 「あ……」 その途端、これまで以上の目まいがルイズを襲い、さらに視界もぼんやりと霞みだす。 ルイズの体はくらりと、力なく倒れそうになるがスパーダが左手で支えてくれた。その拍子に、左手で抱えていた始祖の祈祷書が足元に落ちてしまう。 「限界だ。自重しろ」 スパーダはルイズを支えたまま諌めてくる。 「もう……こんな時に……」 「だから無理すんなって言ったじゃねえか。メイジの魔法は無限じゃねえ。いくらイレギュラーな魔法つったって、精神力の消耗は他の魔法とそう変わらないんだからな」 ルイズとしてはもう少し特訓を続けたかった。 スパーダはギーシュ達に何時間にも渡って剣の稽古を付けているのだから、自分にだってそれと同じくらい特訓に付き合ってもらいたい。 悪魔であるスパーダの体力はそれこそ人間の何十倍もあるだろうが、人間であるルイズの体力や精神力はそう高くはない。 「ねぇ、スパーダ。例のデビルスターって秘薬……」 「残念だが、今は切らしている。どの道、戻らねば作れん」 悪魔の秘薬に縋ったが、やんわりとスパーダは断っていた。 「うぅ~……」 やはり、今日はもう切り上げた方が良いのかもしれない。悪魔であるスパーダの忠告はある意味、的を得ているものばかりだ。それを拒めばどうなるか分からない。 ルイズは仕方がなく、その言に従うことにする。落としてしまった始祖の祈祷書を拾おうと屈みこんだ。 「やだ……本当に今日は休んだ方がいいみたい」 「何だ」 篭手のデルフをしまったスパーダが尋ねる。 「気にしないで」 開かれていた祈祷書の1ページ、白紙しかないはずのそこに一瞬、文字のようなものが見えた気がした。 次に目を凝らしてみてもそれは霞のようにページの上から消えてしまっており、もうそこには何も見えなかった。 本当に疲れてしまっているようだ……。 拾い上げた祈祷書を抱えてルイズはスパーダのコートに寄りかかったまま、共に学院へと戻っていった。 右手の指にはめている、アンリエッタ王女から任務の褒賞として貰った水のルビーが仄かに光っていることに気づくことはなかった。 同じ頃、学院本塔正面の中庭にて、モンモランシーは設けられたテーブルの一席についていた。 頬杖を突いていた彼女は恐る恐るポケットの中から手の中に収まるほどの小さな香水瓶を取り出すと、それを両手で包んだままじっと見つめていた。 「今のうちに入れちゃおうっと……」 誰も人がいないことを確認し、モンモランシーはテーブルの上に置かれていたワインを二つのワイングラスに注ぐ。 そして、今しがた取り出した香水瓶の中にある液体をほんの一滴……僅かな量だけを片方のグラスに落とした。 あまり量が多すぎると効果が強くなりすぎるらしいので、これくらいがちょうど良い。 後は、ギーシュの到着を待つのみ。 昼間、スパーダと組み手をしたおかげでボロボロの姿になって現れたギーシュはいつものようにモンモランシーに愛の言葉を囁いていた。 「僕はこんな姿になるまで、彼の稽古を受けていたんだ」とか、「君を守れる強い男になれるなら、この程度の痛みなど、問題ないさ」などと言ってきたのである。 そんな風に熱心に口説かれると、モンモランシー自身は悪い気はしなかった。 もっとも、そんな姿を見せられた所でモンモランシーはツンとした態度で彼をあしらう。そうすることでギーシュはさらに必死になって自分に食いついてくれる。 モンモランシーがずっと彼に対してつれない態度をとり続けていたのは、そうすることで自分へもっと目を向けるように仕向けたのであった。 そして、仲直りをするということで夕方、一緒に一杯やろうということになった。……だが、ただの仲直りではない。 「でも、本当に効き目あるのかしら……?」 たった今、ワインに注いだポーションの正体は国法で作ることを禁じられている惚れ薬だ。 何故、そのような物を作ったのか。理由はただ一つ。 ギーシュはあのスパーダという男の元で貴族であるはずなのに剣の稽古を受けるようになったことで彼に夢中になってしまったのである。 おかげで自分と過ごす時間は大幅に減ってしまい、おまけに自分の知らない姿になりつつある。 それを阻止するためにも、何としてでも自分へと振り向かせてやるのだ。そのためには、たとえ違法である惚れ薬を作ることさえ躊躇わない。 スパーダは女子だけでなく、多くの男子でさえ惹きつけられるほどの強いカリスマを持った男だ。 まともにやったのではまるで勝ち目がないからである。 ……しかし、当のギーシュはいつになっても現れない。 スパーダに痛めつけられたダメージが祟ったのか、この密会の約束をしてからすぐに気絶してしまい、今は自分の部屋で寝かせてある。 あれから大分経っているのにまだ起きていないのだろうか。 だが、いずれ起きるのだからモンモランシーはそれまで待つことにした。 取り出した手鏡で髪の調子などを整え、いつ彼が来ても良いように準備をする……。 「こんな所で何してるの?」 突然、誰かに声をかけられた。振り向くと、そこにはギーシュを奪ったスパーダとルイズの姿があった。 何だかやけに疲れている様子で、スパーダに寄りかかっている。 傍から見れば父と娘みたいに見える姿である。 「ギーシュを待ってるのよ。あれだけボロボロになるまでがんばったんだから、ちょっとだけ許してあげることにしたの」 「ふぅん。今までずっとギーシュにつれない態度だったのに、急に許してあげるなんて。どういう風の吹き回し?」 「べ、別に良いでしょ。ルイズには関係ないわ」 「あっそ……。これ、もらうわよ」 すると、ルイズが手を伸ばしたのはテーブルの上に乗っていたワイングラス。 しかも、それは惚れ薬を仕込んだやつだ。 それを見たモンモランシーは慌ててルイズに飛び掛る。 「……あっ! 駄目よ! それはギーシュに飲んでもらうんだから!」 「いいじゃないの。あたし、疲れて喉が乾いてるんだから。減るもんじゃないでしょ」 「駄目だったら駄目なの!」 ルイズが手にしたワイングラスを取り返そうと、モンモランシーは彼女と取っ組み合いになった。 その拍子でワイングラスの中身がいくらか飛び散り、その一部がまだテーブルに乗っているワイングラスの中へ落ちたことにモンモランシーは気づかなかった。 スパーダはその様子を黙って傍観しているだけであったが、ふと近づいてくる人影に気づきそちらを振り向いた。 「何をこんな所で騒がしくしているのかしら」 学院長の秘書、ロングビルであった。 彼女は休日ということで朝早くからトリスタニアの修道院を訪れ、ティファニアに会ってきたのだ。 そして、たった今こうして帰ってきたばかりなのである。そこで目に付いたのが、隣で騒いでいる二人の女子とスパーダだった。 「気にするな。それより、彼女の様子はどうだ。変わりはないか」 「ええ。他の子達ともよくやっているわ。すっかり馴染んでいるわよ」 「うむ。何か異変が起きたら私にも知らせろ。スカロンにも相談をしておくといい」 ロングビルはあのオカマの男の顔を思い浮かべ、思わず渋い顔を浮かべていた。 ……気持ち悪いったらありゃしない。 「……ところで、あなた明日明後日は用事があるかしら」 「何か用か?」 「あの子があなたに会いたいっていうのよ。あなたのことをずいぶんと気に入っているみたいでね」 ティファニアがスパーダの話題を切り出すと、妙に明るくなっていたのをロングビルは思い起こす。 スパーダは魔法学院でどのようなことをしているのか、自分とはどのような関係なのかといったことを熱心に聞いてきたりするのだが、あれはまるで身内のことを知りたがる子供のような姿だった。 たとえスパーダが悪魔であろうとその内に秘めたる人間らしさは分かっているようで、また会って話をしたいなどと言ってきたのだ。 「別に今のところは用はない。付き合ってやってもいいぞ」 「そう。それじゃあ、明日は平日だから私の仕事が終わったら行くことにしましょうか」 隣では未だルイズとモンモランシーがいざこざを続けていたが、二人は気にせずに話を続けていた。 ふと、ロングビルはテーブルの上に乗っていたワイングラスへゆっくりと手を伸ばした。 帰ってきたばかりで喉が渇いていたこともあるが、スパーダと会話を続けていたためにほとんど無意識な行動であった。 ロングビルはくいっ、と中に注がれているワインを一飲みしていた。……安物のようだが、まあ悪くはない味だ。 「素直にすれば良いのよ。それじゃ、貰うわね」 一方、腕っ節は強いルイズはモンモランシーをようやく組み伏せ、奪い取っていたワインを同じように一口で飲み干してしまった。 「あっ!」 それを見たモンモランシーは青ざめた顔で声を上げる。 もう、全てが台無しだ。……このままでは。 「やあ、遅くなってすまないね。モンモランシー。僕はこの通り、すっかり回復したよ……」 と、そこへ今になって現れたのはモンモランシーが待ちわびていた男、ギーシュであった。 ルイズはあの惚れ薬が入ったワインを飲んでしまった。もしも、ここでギーシュを見てしまったら……。 「わああああああっ!」 起き上がり、上に乗っているルイズを弾き飛ばしたモンモランシーはそのままギーシュに向かって体当たりした。 二人はそのまま草地の上に倒れこんでしまう。 「おっとっと……ど、どうしたんだね。そんなに僕が待ちきれなかったのかい?」 何も知らぬギーシュはそんな彼女の行動に酔ったように笑っていた。 「いたた……何すんのよ、モンモランシー! たかがワインの一つや二つくらいでそんな……に……」 体を起こし尻餅をついていたルイズの視界に入ったのは、スパーダの姿。 その姿を目にした途端、ルイズは己の胸が熱くなるのを感じていた。 スパーダはルイズにとって、いわば尊敬できる教師か父親のような存在であった。 自分の失敗を活かせるように導いてくれただけでなく、強大な剣技をもって自分達を守ってくれた。 おまけに彼は人間のために力を尽くした正義の悪魔であり、人間の愛を知って故郷と決別したのだという。 その彼の偉業を思い出し、ルイズは更にスパーダに対する憧れを強くしていた。彼のように強くなってみたい、と。 だが、その憧憬はたった今、好意へと変わった。あのワルドに抱いていたようなまやかしなどではなく、心の底から彼を愛する思いが膨れ上がった。 たとえ悪魔であろうが、そんなことは関係ない。自分は、彼が好きなのだ。 ルイズ自身でさえ当惑するほどにその感情は大きかった。 とろんとした目つきで、スパーダを見つめる。 そして、そんな彼の傍にいつの間にかいるロングビルに対する嫉妬心が大きくなっていた。 一方、同じようにワインを飲み干したロングビルにも変化があった。 ロングビルは密かにスパーダに対して強い思いを抱いていた。 初めは同じ没落貴族ということで親近感を抱き、次は自分のために色々と手助けをしてくれた挙句たった一人残された身内までも助けてくれた彼に恩義を抱いていた。 ロングビルはそんな彼に対していつかその借りを返したいと思い、その中でスパーダに心惹かれていた。 たとえ彼が悪魔だろうと、それは変わらない。 もっとも、スパーダが自分に振り向いてくれるとはさすがに思ってはいなかった。だから、それ以上の思いを抱くことは自ら封じていた。 ところが、そのスパーダをこうして間近で見た途端、彼女もまた心の奥に秘めていた彼への思いがより大きく膨れ上がった。 この男に対して、どんな女が色仕掛けをしかけようが振り向くことなどありえないことだろう。 だが、それでもロングビルは濁流のように膨れ上がった自らの思いを抑えることはできなかった。 自分はこの男に尽くす。そう決めたのだ。 惚れ込んでいた男の顔を見て、ロングビルの顔は仄かに赤く染まった。ぽろりと、手にしていたグラスが落ち、カシャンと音を立てて割れた。 妖艶な目付きで、じっとスパーダの顔を見つめてくるロングビル。 そして、スパーダの胸にそっと自分の頭をうずめて抱きついていた。 スパーダは自分に抱きついてきたロングビルを平然としたまま見下ろしている。 「ああ……スパーダぁ……」 いつもの彼女とは思えぬ色気のある声で呟く。 「ねぇ、お願いよ……私を抱いて……」 「だめぇっ! スパーダはあたしのものなの! 他の女の人と一緒にいちゃ嫌ぁ!」 ルイズがロングビルに飛び掛るが、彼女は敵意を剥き出しにした表情でルイズを睨みつけていた。 「……うるさいわねっ! 子供が大人同士の恋路に入り込むんじゃないよ!」 「あたし、子供じゃないもん!」 二人の女は一人の男……悪魔を巡って争い合った。 倒していたギーシュの上から起き上がったモンモランシーはその様を見て唖然とした。 「へ? な、何でミス・ロングビルまで……」 「な、何がどうなってるんだね? これは一体……」 これが惚れ薬の効果なのだろう。どれほどの効果があるか少し不安だったモンモランシーだったが、これで納得ができた。 結局、それをこのギーシュに飲ませるのは失敗したが……。 しかしルイズがあんな姿を見せるのは分かるが、何でロングビルまで? 見ると、テーブルに乗っていたもう一つのグラスがない。先ほどの音と草地に散らばっているガラスの破片からして、彼女が飲んでしまったのだろう。 だが、どうしてあのグラスに惚れ薬が? 全く理解できないモンモランシーとギーシュは、二人の女が争い合う姿を見ているしかなかった。 それに対し、二人が取り合おうとしている当のスパーダはというと、 「Did you even feel madness?(気でも狂ったのか?)」 などというあまりに素っ気ない反応であった。 前ページ次ページThe Legendary Dark Zero
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∧_∧ ∧_∧ (,,・∀・)b ∩ili ゚∀)) ノ y 〈 `〉 〉| く___ゝ く__ノ 名前:モラン・シュヴァイツァー 職業:Alchemist(錬金術師) 性別:♂ 年齢:?歳 種族:モララー族 初登場:Recipe 58 ある冬の日に 本編 125 補足 モナーブルグのはずれ、北のほう(?)に住んでいる錬金術師。自称:稀代の錬金術師 モナーブルグを目指し南下中だったオロナルが訪ねてきた際に、弟子兼家事手伝いとして住み込みをお願いした。 自画自賛が激しい質だが、実際は大山羊に鳴かれただけで失神するヘタレ あと家事は全くダメらしい。 人物相関 キャラ キャラとの関係 初遭遇 オロナル 弟子兼家事手伝い Recipe 58 ある冬の日に 登場作品 Recipe 58 ├ある冬の日に
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キャラクター名 モラン子Pスキル:★愛情 : 厨房度 :★★★★★★★★★★ ランカークラス Master S(デッド的な意味で) キルクラス Master D デット数 非常に多い 所属部隊名 専修大学 名言 ボケっと見てねーで助けろクソカスnoobども 勝ち馬属性 知恵袋ですら負けフラグ 戦闘スタイル 勝手に死ぬ 総評 授業料が3000円で良かったな 本人への要望 BANおめでとうございます 本人より ランカーです 2011年2月1日、ホル民念願のモラン子BAN。 暴言と工作による100%本人に責任がある自業自得のBANでありながらも晒しスレで火病を起こす。 オーブが3000円ほど残っているからと馬鹿丸出しで騒ぎ、スレ住人の失笑を買った。 25 名前:モラン子[] 投稿日:2011/02/01(火) 23 52 18 ID kBilIRIK0 [4/6] 知恵袋で質問してきたわ 垢とかこの際どうでもいいからぜってー金とりかえす 徹底的にやってやるよクソ運営が 27 名前:モラン子[] 投稿日:2011/02/01(火) 23 59 12 ID kBilIRIK0 [5/6] いやなんか送られてきてたメールみてみたら永久停止だった 俺の所有物であるオーブ(リアルマネー)を運営が返さなくていいってどういう商売やねん 規約だか何だか知らんが法律的にいいの?そんなことがまかり通って 31 名前:モラン子[] 投稿日:2011/02/02(水) 00 04 02 ID tw5vEOFR0 [1/3] 28 あ?マジで言ってるにきまってんだろうがクソ童貞が ゲーム内アイテムだろうがなんだろうがリアルマネー使って買ってしかもそれがまだ残ってるわけ だいたいBAN理由も多分ちょっと前のレイクパスかアシロマかなんかでの暴言だろうけど、あれ煽られたから吐いたわけで、煽ってたやつらはお咎めなしか? 33 名前:モラン子[] 投稿日:2011/02/02(水) 00 07 47 ID kBilIRIK0 [6/6] 32 まぁぶっちゃけ3000円分程度だからどうでもいいっちゃいいんだが、金額の問題じゃない。 「BANされたらリアルマネーだろうが帰ってこないのが当たり前」というのが常識みたいになってること自体が腹立つ この後、スレ住人がモラン子が質問した知恵袋を発見する。 3000円が4000円になってた。見得張っちゃったよ可哀想。 http //detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1354835468 更に過去の質問歴から、エロサイト徘徊してウイルス感染というアホっぷりを確認される。 +現役時代のモラン子さん 現役時代のモラン子さん 若葉時代から裏方一切放棄のカス。 未強化装備低レベル前線余裕でした、注意しても一切無視。 特にダガーでの戦争が酷い。 びっくりするくらい弱く、びっくりするくらい死ぬ。 最近範囲茶を覚えたのか、銃の糞ピアで味方のチャンスを潰しながら煽る。 そのピアで確実に敵が助かっているので、味方に対して煽っているとしか思えない。 敵側にモラン子がいる際は、数回ほど粘着してやれば顔を真っ赤にする。 イーグル粘着するならもっと精度あげてからこい、な? 只でさえ貢献出来ない銃をお前さんが使っては戦犯もいいところだ 今すぐ、羽使って片手にしてくれ どれだけサンドバックにされようが、10数回はバッシュ出来るだろ? 片手なら基本覚えつつ貢献出来るしな 今からでも遅くないから率先して裏方もしような 参戦後、キプクリに目を向けず即前線へ向かうとか勘弁してくれ お前さんのオナニープレイに付き合う為に戦争している訳ではない事くらいそろそろ気づいてくれ ↑どんな私怨があるのか知らんがここまで酷くはないだろ 時々変なピアはあるがそこそこ仕事できてる部類だと思うぞ ただデドコメが痛いのは減点だが ↑ここまで酷くないっていうか、これ以上に酷いぞ実際は。 今モラン子が大剣持っててノイムで一緒の戦争だったが、あいつの動きはマジで酷かった 後方でウロチョロして弓にツルーでチクチクされて下がっての繰り返しで、前出る時も、はまぐちする時くらい。 それでいてほぼフル前線で10kもいってなかったし。 ホルのダメな歩兵の代表格だろマジで。 +モラン子自演編集内容 モラン子さんがこのページを自演編集したらこうなった キャラクター名 モラン子Pスキル:★★★★★★愛情:★★★ 厨房度:★★★★ ランカークラス Master A キルクラス Master B デット数 3~4 所属部隊名 専修大学 名言 運は天 鎧は胸に 手柄は足にあり 勝ち馬属性 鬼葦毛 戦闘スタイル 超絶強化 総評 軍神 本人への要望 邪魔です 本人より 我、毘沙門天の化身なり 2009年某月、突如としてB鯖ホルデインに爆誕した毘沙門天の化身。 彼の誕生と時を同じくして、王女ワドリーテを含む全ての国王が密かに核の保有を決意したと言われる。 驚くべきスピードであらゆる用兵術、白兵戦術を身に付けた彼はまたたく間にホルデイン全土を平定、名実ともにホルデインの風雲児A・クラウスと肩を並べるほどの2トップにまで成り上がった。 その様はまさに軍神と呼ぶに相応しい。 戦争では大剣、各種スカウト、各種ソーサラー、セスタスをどれもオールマイティーにこなすオールラウンダー。フェンサーは苦手だったらしい。 バンクでもA・クラウスと共に日夜熱い戦闘を繰り広げ、A・クラウスのドラゴンテイルは大地を裂き、モラン子のソードランページは天を裂くと言われた。 そんな稀代の寵児ともいえる彼が、2011年2月1日、彼を快く思わない一部の反逆軍の陰謀によりBANに追い込まれてしまった。 この出来事はホルデインのみならずB鯖全土を揺るがし、多くの民衆が涙した。 龍が天から堕ちるか・・・(撤退) この厨っぷりは心底気持ち悪いです^^;
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エモランとは 2020年8月26日エモモRUNシーズン1開催 遊び方 ギフト ※宝箱ギフトのギフトガチャは、通常のギフトガチャと同様に贈った視聴者さんもエモモアイテムを獲得できます ※宝箱ギフトのギフトガチャのかぶりポイントは、同時に開催しているギフトガチャイベントのかぶりポイントと共通です ※かぶりゲージが一杯になった場合は、エモモ画面で★4確定かぶりガチャを開けることができます ※ビッグコインギフトは、一定距離を進むと出現します ※無敵ギフトはGETするとすぐに発動しますが、発動後は次の発動までインターバルが必要です ※贈られたギフトは、配信者さんが獲得するまでストックされます スコアを稼ぐコツ リボン🎀 シーズン45から3位リボンが追加されました はじめまして( . .)"エモランwiki作成者です! これからエモランを始める方などに楽しさが伝わればいいなと思い作成しました!! まだまだエモランの楽しさを伝えるには説明が足りないので良ければ書くのお手伝いして頂けるとうれしいです(*´˘`*)
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前ページ次ページウルトラ5番目の使い魔 第61話 魔法学院新学期、アラヨット山大遠足! えんま怪獣 エンマーゴ 登場! 透き通るような青い空、カッと照り付けてくる日差し、そして背中に背負っている弁当の重み。 「夏だ! 新学期だ! 遠足だ! いえーい!」 「いえーい!」 早朝のトリステイン魔法学院にギーシュたち水精霊騎士隊と才人の能天気な叫び声がこだまする。その様子を、ルイズやモンモランシーら女子生徒たちはいつもながらの呆れた眼差しで見つめていた。 「まったくあいつらと来たら、これがカリキュラムの一環の校外実習だってわかってるのかしら?」 「ほんと、男っていくつになっても子供ね。あの連中、落第しないでちゃんと卒業できるのかしらね?」 校庭に集まっている全校生徒。彼らはがやがやと騒ぎながら、待ちに待ったこの日が晴天になったことを感謝していた。 今日は魔法学院の全校一斉校外実習、いわゆる遠足だ。しかし魔法学院ゆえにただの遠足というわけではなく、彼らが浮かれている理由はこれが年に一度だけ採集を許される特別な魔法の果実、ヴォジョレーグレープの解禁日だからである。 「ヴォジョレーグレープは普段は不味くて何の役にも立たない木の実です。ですが年に一度だけ、この世のものとも思えない甘味に変わる日があって、そのときのヴォジョレーグレープで作るワインはまさに天国の味! 魔法学院の皆さんも、年に一度のその味を楽しみにしておられました。そしてそれが今日、この解禁日なのです!」 「うわっ、シエスタ! あんたいつの間にここにいたのよ?」 ルイズはいきなり後ろから解説をしてきた黒髪のメイドに驚いて飛びのいた。しかしシエスタは悪びれた様子もなく、わたしもついていきますよと、背中にすごい量の荷物を背負いながら答えた。 「えへへ、ワインといったらわたしを外してもらうわけにはいきませんからね。タルブ村名産のブドウで培ったワインの知識は伊達ではありませんよ。ほら、ちゃあんとマルトー親方の許可もいただいています」 「んっとに、最近見ないと思ってたら忘れたころにちゃっかり出てくるんだから。でも忘れないでね、ヴォジョレーグレープは味のこともだけど、そのエキスは解禁日にはあらゆる魔法薬の効果を増幅する触媒にもなるすごい果物になるのよ。それを使って、魔法薬の配合の実地訓練をおこなうのが校外実習の目的。食べるのは余った分だけなんだからね」 「はいはーい、毎年実習で使うより余る分が多いのはよく存じておりますとも。持ち帰った分は親方がすぐに醸造できるよう準備してますから、ミス・ヴァリエールも楽しみにしていてくださいね」 「はいはい、わかったからあっち行きなさい。ったく……」 ルイズは頬を紅潮させながらシエスタを追い払った。内心では、ほんとにあの胸メイドは、と思いながらも口の中にはよだれがわいている。 だが無理もない。ヴォジョレーグレープで作るワインは、満腹の豚さえ土に飲ませずというほど、嫌いな人間のいない絶品で、ルイズもむろん大好物であった。しかも原木が人工栽培は不可能な上に、作っても数日で劣化してしまうために市場にはまったく流通していない幻の産物であった。味わう方法はただひとつ、解禁日に収穫、醸造してすぐに飲むことだけなのだ。 むろん、楽しみにしているのは生徒だけではない。教師たちを代表して、オスマン学院長が壇上から集まった生徒たちに挨拶を始めた。 「えー、諸君。本日は待ちに待った解禁日じゃ。諸君らも、今すぐにでも出発したいところじゃろうが、焦ってはいかんぞ。ヴォジョレーグレープの生えている山は自然のままの姿で保存され、険しいうえに獣や亜人が出る危険性もある。普段は盗人を退けるために、山の周囲は特殊な結界で覆われておるが、今日だけはそれが解かれる。じゃが、そうなると邪な者も入ってこれるということになる。くれぐれも気を抜くでないぞ、よいな」 オスマンの説明に、才人はごくりとつばを飲んだ。さすがは魔法学院の遠足、楽なものではない。 「しかし諸君らは貴族、身を守るすべは心得ておろう。それに、この遠足は今学期より入ってきた新入生と在校生との親睦を深める意味もある。スレイプニィルの舞踏会で歓迎を、そしてこの実習で団結力を深めるのじゃ。在校生諸君、先輩としてみっともない姿を後輩たちに見せてはいかんぞ。そして新入生諸君は先輩を見習い、一日も早くトリステイン貴族にふさわしい立派なメイジになるよう心がけるのじゃ。では、詳しいことはミスタ・コルベールに頼もう、よく聞いておくようにの」 「おほん、新入生諸君、学院で『火』の系統を専攻しているジャン・コルベールです。よろしくお願いします。では、本日の校外実習のルールを復習しておきましょう。在校生は三人が一組になって、新入生ひとりをつれてヴォジョレーグレープの採集をおこなってもらいます。採集するのはひとりが革袋ひとつ分までで、それ以上を採ったら全部没収させてもらいます。そして、集めた分だけを使ってポーションを作っていただき、私たち教師の誰かに合格をもらえば残りは持ち帰ってかまいません」 生徒たちから、おおっ! と歓声があがった。だが、陽光を反射してコルベールの頭がキラリと冷たく光る。 「ですが! もしグループの中で、ひとりでも合格が出なかった場合はグループ全員の分を没収させてもらいます。これは、団結力を高めるための実習だということをくれぐれも忘れないようにしてください。助け合いの気持ちを忘れずに、我々はちゃんと見張ってますからズルをしてはいけませんよ。では、全員が合格しての笑顔での帰還を祈って、全力を尽くすことを始祖に誓約しましょう。杖にかけて!」 「杖にかけて!」 生徒たちから一斉に唱和が起こり、場の空気がぴしりと引き締められた。一瞬のことなれど、その威風堂々とした姿は彼らがまさに貴族の子弟であるという証左であった。 そしてコルベールは満足げにうなづくと、最後に全員を見渡して告げた。 「では、これより出発します。在校生はあらかじめ決められた三人のグループになってください。新入生はひとりづつクジを引きに来て、引いたクジに書かれているグループのところに行ってください。合流したグループから出発です、皆さんの健闘を祈ります、以上です」 こうして解散となり、ルイズたちは自分たちを探しに来るであろう後輩の目につきやすいように開けたところに出た。 ルイズのグループは、ルイズ、モンモランシーにキュルケを含めた三人と決まっていた。なお才人は使い魔としての扱いであるので頭数には入っていない、しかしルイズはキュルケと同じグループというのが気に入らなかった。 「もう、せっかく年に一度の日だっていうのに、よりによってキュルケと組になるなんて最悪だわ」 「あら? わたしはラッキーだと思ってるわよ。ゼロのルイズがどんな珍妙なポーションを作るか、間近で見物できるなんて願ってもないチャンスだもの」 「ぐぬぬぬ、人のこと言ってくれるけどキュルケのほうこそどうなのよ? ポーションの調合なんて、火の系統のあんたからしたら苦手分野なんじゃないの?」 「あら? わたしは心配いらないわよ。だって、わたしには水の系統ではすっごく頼りになる……頼りになる……え?」 「どうしたのよ?」 調子に乗っていたキュルケが突然口を閉ざしてしまったため、ルイズが白けた様子で問い返すと、キュルケは困惑した様子で答えた。 「いえ、水の系統が上手で頼りになる誰かがいたはずなんだけど……おかしいわね、誰だったかしら……?」 「はぁ? キュルケ、あなたその年でもうボケはじめたの? だいたい、学院中の女子から恋人を奪っておいて散々恨みを買ってるあんたとまともに話をするのなんて、わたしたちと水精霊騎士隊のバカたちくらいじゃないのよ」 「そ、そうね……おかしいわね、けど本当にそんな子がいたように思えたのよ。変ね……こう、振り向けばいつも隣にいるような……」 「ちょっとしっかりしてよ。あんたは入学してからずっと一人で……一人で、あれ?」 キュルケが頓珍漢なことを言い出したのでルイズが文句を言おうとしかけたとき、ふとルイズも心の片隅に違和感を覚えた。そういえば、キュルケの隣にはいつも…… しかし、ルイズが考え込もうとしたとき、同じグループになっているモンモランシーがじれたように割って入ってきた。 「ねえ、ルイズにキュルケ、起きながら夢を見るのはギーシュだけにしてくれないかしら? そんなことより、もうすぐわたしたちのところにも新入生が来るわよ。ちょっとは先輩らしくしてないと恥をかいても知らないからね」 言われてルイズもキュルケもはっとした。確かにわけのわからないデジャヴュに気を取られている場合ではなかった。 それにしても、今学期からの新入生は見るからに粒の大きそうなのが多そうだ。ルイズたちが他のグループを見渡すと、多くのグループで新入生の女子が先輩たちを逆に叱咤しながら出発していくのが見えた。その大元締めはツインテールをなびかせながら先頭きって歩いていくベアトリスで、聞くところによると彼女たちは水妖精騎士団というものを作って男に張り合っているらしく、さっそく下僕を増やしているようだ。 ほかに目をやれば、ティファニアが遠くから手を振ってくるのが見えた。彼女も今学期から魔法学院で学ぶことに決め、新入生として入ってきたのだ。もちろん才人は迷わずに手を振ってティファニアに応えた。 「おーいテファーっ! っと、テファの引いたグループはギーシュのとこかよ。ギーシュの奴、一生分の幸運を今日で使い果たしたなこりゃ」 ティファニアの隣を見ると、よほどうれしかったのかギーシュが泣きじゃくりながら始祖に祈っているのが見えた。才人は、気持ちはわからなくもないけど、ありゃ遠足が終わった後は地獄だなと、自分の隣で怒髪天を突きそうなモンモランシーを横目で見て思った。 けど、それにしても自分たちのとこに来るはずの新入生が遅いなとルイズたちは思った。もう組み合わせのくじ引きは全員終わっているはずだ、どこかで迷子にでもなっているのではと心配しかけたとき、唐突に声がかけられた。 「あの、すみません。こちら、ティールの5の組で間違いないでしょうか?」 振り返ると、そこにはフードを目深にかぶった女性とおぼしき誰かが立っていた。ルイズはやっと来たかと思いつつ、先輩風を吹かせながら答えた。 「ええそうよ、よく来たわね。わたしはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。こっちとこっちはキュルケにモンモランシーよ、歓迎するわ。あなたはなんていうの?」 「アン……と、お呼びください。ウフフ」 新入生? は、短く答えるとルイズの目の前まで歩み寄ってきた。相変わらず顔はフードで覆ったままで口元しか見えないが、微笑んでいるのはわかった。しかし、先輩を前にして顔を見せないとはどういう了見だろうか? 「アン、ね。それはいいけど、吸血鬼じゃあるまいし顔くらい見せなさいよ。礼儀がなってないわね、どこの家の子よ?」 「フフ、どこの家と申されましても、先輩方もよくご存じのところですわよ。ただ、お口にするのは少々遠慮なされたほうがよろしいですわ」 その瞬間、ルイズたちの反応はふたつに割れた。ルイズやモンモランシーは無礼な口をきいた新入生への怒りをあらわにし、対して第三者視点で見守っていたキュルケは「この声はもしかして?」と、口元に意地悪な笑みを浮かべてルイズたちをそのまま黙って見守ることにしたのだ。 「あんた、どうやらまともな口の利き方も知らないようね。顔を見せないどころか、このラ・ヴァリエールのわたしに向かって家名すら名乗らないなんて舐めるにも程があるわ! どこの成り上がりか知らないけど、今すぐその態度を改めないなら少しきつい教育をしてあげるわよ!」 ルイズは杖を相手に向け、フードを取らないなら無理やり魔法で引っぺがしてやるとばかりに怒気をあらわにする。才人が、「おいそりゃやりすぎだろ」と止めに入っても、プライドの高いルイズは才人にも怒声を浴びせて聞く耳を持っていない。 しかし、杖を向けられているというのに、その新入生? は少しもひるんだ様子はなく、むしろからかうようにルイズに向けて言った。 「ウフフ……相変わらずルイズは元気ね。まだわからないのですか? わたくしですわよ、わたくし」 「はぁ? わたしはあんたみたいな無礼なやつに知り合いな、ん……ええっ!?」 ルイズは、相手がフードをまくって自分たちにだけ見えるようにのぞかせた顔を見て仰天した。それは、涼しげなブルーの瞳をいたずらっぽく傾けた、トリステインに住む者であれば見間違えるわけのないほどに高貴なお方。すなわち。 「ア、アア、アンリエッタじょお、うぷっ!」 「駄目ですわよルイズ、わたくしがここにいることが他の生徒の方々にバレたら騒ぎになってしまいます。このことは内密に頼みますわ」 叫ぼうとしたルイズの口を指で押さえ、アンリエッタは軽くウインクして告げた。だがルイズは落ち着くどころではなく、隣で泡を食っているモンモランシーほどではないが、可能な限り抑えた声で必死で、こんなところにいるはずがないアンリエッタ女王に詰め寄った。 「どど、どうしたんですか女王陛下! なんでこんなところにいるんです? お城はどうしたんですか!」 「だってルイズ、最近あんまり平和が続きすぎて退屈で退屈でたまらなかったんですもの。それでルイズたちが楽しそうなイベントに向かうと聞いて、いてもたってもいられなくなったんですの」 「女王陛下たるお方が不謹慎ですわよ。いえそれよりも、お城はどうなさったんです? 女王陛下がいなくなって大変な騒ぎになってるんじゃないんですか?」 「大丈夫ですわ。銃士隊の方で、わたくしと体つきが似ている子に『フェイス・チェンジ』の魔法を使って身代わりになってもらいましたから、今日の公務は会議の席で座っているだけですからバレませんわよ」 笑いながらいけしゃあしゃあとインチキを自慢するアンリエッタに、ルイズは放心してそれ以上なにも言えなくなってしまった。この方は女王になって落ち着いたかと思ったけどとんでもない、根っこは子供の時のままのおてんば娘からぜんぜん変わってなかったのね。 自分のことを棚に上げつつ頭を抱えるルイズ。才人は、そんなルイズにご愁傷さまと思いつつ、微笑を絶やさないでいるアンリエッタに話しかけた。 「つまりお忍びで女王陛下も遠足に参加したいってわけですね。けど、あのアニエスさんがよくそんなことに隊員を使わせてくれましたね?」 「ええ、もちろんアニエスは怒りましたわ。でも、アニエスとわたくしはもう付き合いも長いものですから、お願いを聞いていただく方法もいろいろあるんですわよ。たとえば、アニエスが国の重要書類にうっかりインクをぶちまけてしまったりとか、銃士隊員の方が酔って酒場を破壊してしまったりとか、わたくしはみんな知っておりますの。もちろん、オスマン学院長からも快く遠足に参加してよいと許可をいただいてますわ」 にこやかに穏やかに語っているが、才人やルイズは「この人だけは敵に回したらいけない」と、背筋で冷凍怪獣が団体で通り過ぎていくのを感じた。モンモランシーはそもそも話が耳に入っておらず、キュルケは「よほどの大物か、それともよほどの悪人か、どっちの器かしらね」と、母国の隣国の総大将の人柄を観察していた。 とはいえ、今更「帰れ」と言うわけにもいかないので、ルイズたち一行はアンリエッタを加えて遠足に出発した。 「本当にうれしいですわ。ルイズといっしょにお出かけなんて何年ぶりでしょう。モンモランシーさん、今日のわたくしはただの新入生のアンですわ。仲良くしてくださいね」 「は、はい! 身に余る光栄、よよ、よろしくお願いいたしますです」 舌の根が合っていないが、王族からすればモンモランシ家など吹けば飛ぶような貧乏貴族であるからしょうがない。モンモランシーにはとんだとばっちりだが、ルイズにも気遣ってあげるほどの余裕はなかった。 万一女王陛下にもしものことがあれば、その責任はまとめて自分に来る。そうなったら確実にお母様に殺される、人間に生まれたことを後悔するような目に合わされてしまう。 すっかりお通夜状態のルイズとモンモランシーに対して、アンリエッタのルンルン気分はフードをかぶっていても才人にさえ感じられた。四頭だての馬で、目的地の山まではおよそ二時間ほど、それまでこの異様な雰囲気の中でいなければいけないのかと才人は嫌になった。 けれど、そこでいい意味で空気を読まないのがキュルケである。 「ねえ女王陛下、目的地まで時間はたっぷりあることですし、楽しいお話でもいたしません? たとえば、ルイズの子供のころの思い出話とかいかがかしら?」 その一言に、アンリエッタの表情は太陽のように輝き、対してルイズの表情は新月の月のように暗黒に染まった。 「まあ素敵! もちろんたくさん思い出がありますわよ。まずどれがいいかしら? そうだわ、あれは幼少のわたくしがヴァリエール侯爵家へお泊りに行った日の夜」 「ちょ、ちょっと女王陛下! あの日のことはふたりだけの秘密だって約束したはずです! って、それならあれはって、いったい何を話す気ですか、やめてください!」 ルイズは天使のような笑みを浮かべるアンリエッタがこのとき悪魔に見えてならなかった。 まずい、非常にまずい。ルイズは人生最大のピンチを感じた。アンリエッタは、自分の人に聞かれたくない過去を山ほど知っている。アンリエッタは聡明で知られるが、特に記憶力のよさはあのエレオノールも褒めるほどだった。つまり、ルイズ本人が忘れているようなことでさえアンリエッタは覚えている可能性が非常に高い。 これまで感じたことのないほどの大量の冷汗がルイズの全身から噴き出す。ただしゃべられるだけならともかく、聞いているのはキュルケに才人だ。しかもモンモランシーまで、さっきまでのうろたえようから一転して好奇心旺盛な視線を向けてきている。もしも、自分の恥ずかしい過去の数々がこいつらに聞かれようものなら。 ”まずい、まずすぎるわ。こいつらに聞かれたら絶対に学院中に言いふらされる。そうなったら『ゼロのルイズ』どころじゃないわ、身の破滅よ!” 過去の自分を止めに行けるものなら今すぐ行きたい。しかしそうはいかない以上、できることはなんとかアンリエッタを止めるしかない。 「じょ、女王陛下! おたわむれを続けると言われるのでしたら、わたしも女王陛下の子供のころの」 「何をしゃべろうというのですかルイズ?」 その一声でルイズは「うぐっ」と、口を封じられてしまった。王族の醜聞を人前で語るほどの不忠義はない、それにしゃべったとしてもキュルケやモンモランシーがそれを他人に話すわけがないし、誰も信じるわけがない。 絶対的に不利。ルイズに打つ手は事実上なかった。まさか女王に向かって力づくの手をとれるわけがない、ルイズは公開処刑前の囚人も同然の絶望を表情に張り付けて、これが悪夢であることを心から願った。 だがアンリエッタは「ふふっ」と微笑むと、してやったりとばかりにルイズに言った。 「ウフフ、本当にルイズは乗りやすいわね。冗談よ、わたくしがルイズとの約束を破るわけがないじゃないの。昔話もいいけれど、わたくしは今のルイズのお話を聞きたいわね」 「なっ! じ、女王陛下……は、はめましたわね!」 証拠はアンリエッタの勝ち誇った笑顔であった。ルイズは、自分が最初からアンリエッタに遊ばれていたことをようやく悟ったのである。 ルイズの悔しそうな顔を見て、アンリエッタはうれしそうに笑う。キュルケは、ルイズの面白い話が聞けなくて残念ねと言いながらも笑っているところからして、こちらも最初からアンリエッタの意図を読んでいたらしい。 しまった、焦って完全に陛下の術中に陥ってしまった。この人は昔から、笑顔でとんでもないことを仕掛けてくるのが大好きだった。姫様が意味もなく笑ってたら危険信号だと幼いころなら常識だったのに。 「もうルイズったら、昔のあなたならこのくらいのあおりにひっかからなかったのに。わたくしと遊んでくださっていた頃のことなんて、もう忘れてしまったのですか?」 「そ、そんなこと言われても。もうわたしたちだって子供じゃありませんし。それに最近はいろいろあって気が休まる暇もなかったじゃないですか!」 「そうね、最近は……あら、そういえば最近なにかあったような気がするけど、なんだったかしら? ルイズ、最近どんなことがありましたかしら?」 「もう女王陛下、そんなことも忘れてしまったのですか! ついこのあいだトリステインはロマリアとガリアを……えっ?」 思い出せない。トリステインは、ロマリアとガリアを相手に……なんだったろうか? ルイズは思わず才人やキュルケ、モンモランシーにも尋ねてみたが、三人とも首をかしげるばかりだった。 「そういや、なんかあったっけかな? てか、おれたちここ最近なにしてたっけか?」 「うーん、なにか忙しかったような。えっと、なんだったかしらモンモランシー?」 「あなたたち何を変なこと言ってるのよ。ここしばらく、事件みたいなことは何もなかったじゃない。トリスタニアの復興ももう終わるし、世は何事もなしよ」 このときモンモランシーは自分が矛盾を含んだ言葉を口にしていることに気づいていなかった。 なにかがおかしい。だが誰もなにがおかしいのかがわからないでいる。 「んーん、なんだっけかなあ? けどまあ、思い出せないってことはたいしたことじゃないんじゃないか?」 「そうね、サイトの言う通りかもね。あーあ、なんか頭がモヤモヤしてやな気分になっちゃったわ。話題を変えましょう。女王陛下、最近ウェールズ陛下とのお仲はどうなのですか?」 キュルケが話を振ると、アンリエッタはそれはさぞうれしそうに答えた。 「はい、今はそれぞれの国で離れて暮らしておりますけれども、毎日のようにお手紙のやりとりをしてますので、まるでわたくしもアルビオンにいるように感じられますのよ。それに、もうすぐ全地方の領主の任命がすみますから、そうすればしばらくトリステインでいっしょに暮らせるんですの、楽しみですわ」 アンリエッタとウェールズの鴛鴦夫婦ぶりは、もうトリステインで知らない者はいないほどだった。 のろけ話の数々がアンリエッタの口から洪水のように飛び出し、キュルケやルイズは楽しそうに聞き出した。モンモランシーも、ギーシュもこうだったらいいのになとしみじみと思いながら聞き入っており、蚊帳の外なのは才人だけである。 「なあデルフ、おれあと二時間もこれ聞かされなきゃいけねえのか?」 「はぁ、こういうことがわからねえから相棒はダメなんだよ」 デルフにさえダメ出しされる才人の鈍感さは、もはや不治の病と呼んでもいいだろう。デルフは、少しはまじめに聞いて参考にしやがれと才人に忠告し、才人はしぶしぶ従ったが、デルフは内心どうせダメだろうなとあきらめかけていた。 蒼天の下をとことこと進む四頭の馬。楽しそうな話し声が風に乗って流れ、女子たちの笑顔がお日様に照らされて輝き続ける。先ほどの違和感のことを覚えている者はもうひとりもいなかった。 前ページ次ページウルトラ5番目の使い魔
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※このページは偏った目線での情報が掲示されています。必ず一度メインページをご確認の上で ご利用いただきますようお願いします。 フランシュシュ フランシュシュ(ふらんしゅしゅ/英 franchouchou)は佐賀唐津市を拠点に活動する日本の女性アイドルグループである。*1 目次 メンバー 活動(デス娘時代) 活動(フランシュシュ時代) 楽曲 出典 関連リンク(外部) メンバー 偽名か本名かは不明であるが、フランシュシュのメンバーは0号から6号の番号を名乗って活動している。 0号 フランシュシュで唯一、ダンスのみを担当するメンバー。ライブでも原則として声を発することはないのだが、フランシュシュが佐賀県内で知られるきっかけともなったドライブイン鳥のCMで0号が披露したニワトリの鳴き真似は本物と聞き違えるほど似ており、話題となった。 キャラ作りのためか、ステージ外では一見奇行にも見える仕草を徹底していることも特徴で、時には手近な人に噛みつくなど、破天荒なキャラ付けも人気。 (ドライブイン鳥のCMでもコッコ君に噛みつく演技が確認できる。ただし、ステージでは普通にダンスを披露しているため、あくまで演技と思われる) 1号 センターヴォーカルを務めるメンバー。ロングヘアにリボンが似合う。0号とペアで動くことが多く、暴走を止める役に回ったり、チェキ会でも単独ではなく0号とペアでの列になる。 2号 フランシュシュのリーダー。荒っぽい言葉遣い、マイクを使わずメガホンで挨拶など、不良を思わせるキャラ付けが特徴。 彼女がメインボーカルを務める『特攻DANCE』には『九州制覇から全国制覇』というセリフがあり、フランシュシュは佐賀から九州、九州から全国へと活動の範囲を広げたいという意志を持ってメンバーをリードしている様子が伺える。 3号 ダンスの得意なメンバーで、難易度の高いパートは3号が割り当てられる事もある。緊張に弱いのか、サガロックではなかなか歌い出せないアクシデントがあった。 4号 歌唱力に定評のある4号。チェキ会など、直接フランシュシュのメンバーと触れ合える類のイベントは本人の意向によりNGで、そうしたイベントでは代わりに撮りおろしサイン入りブロマイドの販売とするなど、ファンとの距離感が他のメンバーと異なる。 5号 和風な雰囲気を好み、チェキ会では撮影用に屏風も用意されるほか、キセルを咥えて撮影に臨むこともある。芸事の経験があるのか、2018年の嬉野温泉夏祭りのステージでは三味線を披露していた。 6号 メンバー最年少と見られる6号。他メンバーとの体格の差も苦にせず、とびきりの笑顔で元気にステージを跳ね回る。イベントで会話してみると、見た目からすれば驚くほどハキハキした受け答えが見られる。 活動(デス娘時代) 公式ページでは語られていないが、彼女らはフランシュシュとして活動する前に、別名での活動歴がある。 デビュー時期は不明。今もミニライブの会場としてフランシュシュが利用するライブハウスGEILSでの目撃情報がある。 当時は名前の通りのデスメタルバンドで、激しいヘッドバンギングを披露していたという。 また、当時は7人全員が現在の0号のようなキャラ付けで、2018年4月13日にライブハウスGEILSで行われたライブではとうとう彼女らが暴走し、ライブを中止に追い込んでしまった。観客にふりでなく本当に噛み付くなど、とても危険なステージだったという。彼女らがいかに尖ったグループだったかが伺える。 鯱の門ふれあいコンサートではデス娘の名でエントリーしたものの、ステージでは何故か『グリーンフェイス』と名乗り、活動スタイルもキャラ付けもガラリと変えて手品とラップを披露していた。同コンサートが前述のライブ中止事件の翌々日であった事から、事件がデス娘としての活動終了のきっかけとなった可能性も考えられるが、公式はデス娘とフランシュシュの関係について明らかにしていないため、真偽は不明のままである。 なお、前述したメンバーが番号で呼ばれるという特徴はこの頃からのものである。この事から、デス娘と同一のグループである事を否定するわけでも明らかにするわけでも無いという公式のスタンスが窺える。 活動(フランシュシュ時代) 遅くともあの有名なドライブイン鳥のCMへの出演から現在まで、彼女らはフランシュシュ名義で活動している。*2 ドライブイン鳥CM出演 佐賀県内では有名だった同CMに起用され、2018年5月ごろより放送された。楽曲はもともと有名だったCMソングをカバーし、フランシュシュver.としてCMに使用している。 第34回ガタリンピック ガターザンにて0号が優勝。同月に放送され始めたばかりのCMをイメージしてか、ドライブイン鳥のTシャツを着て出場していた。0号は優勝者インタビューでもキャラを崩さず、喋る代わりに鶏の鳴き真似で応じた。 サガロック ニューカマー枠として参加。当日は朝からあまりよくない空模様だったが、彼女らの順番になってついに雨が降り出し、さらには曲の途中でステージに雷が直撃した。 フランシュシュLIVE in ARPINO 佐賀史上最大の降雪量と言われる悪天候にも関わらずライブを決行。 積雪荷重にイベントホールが耐え切れず、屋根の一部が倒壊し、ステージも一気にでなく少しずつ崩ていったにも関わらず彼女らは歌うのを止めなかった。そしてついにステージが足場ごと崩落。幸い客席には被害が無く、観客は彼女らを心配していた。そんな中メンバーが立ち上がれる者から立ち上がり、機材が壊れ曲も流れない中、歌を再開。全員が立ち上がり歌に戻れる頃には機材の復旧が間に合い、ライブを再開。その奇跡に1曲目とは思えない盛り上がりを見せた。 1曲目とはいえあまりの事故だったためそこまででライブは終了となる雰囲気だったが、彼女らはアンコールに応えてその日に発表予定だったのであろう新曲まで披露してくれた。彼女らのライブにかける情熱はもちろん、スタッフの仕事ぶりにも驚かされるばかりである。 楽曲 彼女らの楽曲は現状CDが市販されておらず、ダウンロード販売やライブBD等の発売もないため、実際にライブへ足を運ぶか、ライブ配信を視聴しなければ聞くことができない。 デスメタル時代を終えての活動である為か『蘇れ』『死んでも』など、死にを乗り越える歌詞が目立つ。 ヨミガエレ 最初期から歌われ続けており、彼女らのライブを見ていれば1度は聞いたことがあるであろう楽曲。 どんなことが起こっても負けずに何度でも這い上がり立ち向かう事を力強く歌う、ある意味最も彼女ららしい楽曲。 目覚めReturner 逆境に負けず力強く突き進むヨミガエレとは対照的に、抱いている不安を仲間の協力で振り切って憧れを叶える、彼女らの内面を歌い上げたような楽曲。 アツクナレ サガロックで披露された新曲。 メインボーカルの異なる曲とは明言されていないが、1号のソロパートよりも3号や4号のソロパートのほうが多い楽曲。 サビ部分の締めが必ず1号→3号と繋がる事から、3号がメインを担当する 楽曲ではないかという声もある。(一方、パート分けが比較的均一な目覚めReturnerも締めは3号である為、たんにダンスの都合で締めが3号になりがちなだけという見方もある) To My Deareest メインボーカルを1号でなく6号が担当する楽曲。 特攻Dance メインボーカルを1号でなく2号が担当する楽曲。 2018年12月新曲(曲名不明) フランシュシュLIVE in ARPINOで披露された新曲。2018年12月現在、アンコールで1度披露されたのみであるため、曲名は明らかとなっていない。 希望の旗を掲げて旅に出ようという、自信と期待と希望に満ちた明るい楽曲。これから活動の幅を一層広げるであろう彼女らの姿に重なる。 『Ready Go!』(曲の始まりと終わりのコールより)や『フラッグをはためかせろ』(サビ部分で繰り返し謳われる歌詞より)や『旅に出よう』(サビの歌詞より)あたりが曲名の候補だろうか。 ドライブイン鳥 -フランシュシュVer.- 彼女らの楽曲として表記すべきではないが、彼女らの歌う中で恐らく最も有名な曲。 出典 1.サガジン 2018年9月号特集 『サガロックに舞い降りた天使たち!』 2.公式ページの履歴では最初にCM出演の旨が記されている 関連リンク(外部) フランシュシュ ドライブイン鳥公式ホームページ
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前ページ次ページブラスレイター コンシート トリステイン魔法学院が悪魔の襲撃を受けてから3日が経過した。 学院長室は事件発生時から現在に至るまで、夜中でさえ部屋の明かりが消えないままであった。 オールド・オスマンは、ときおり左手で頭を抱えながらも、ペンを握る右手をほとんど止めずに書類を書き進める。 普段は魔法でペンを浮かせて書類を書くオスマンであったが、ここ数日は無駄な精神力の消費を控えるために自分の手を使わなければ続かない程に処理しなければならない仕事が有る。 いつもは水ギセルを控えるよう口出しする秘書のミス・ロングビルも、この時ばかりは煙が眠気覚ましになるというオスマンの言い分を認めて黙認していたせいで、部屋内は煙が濃く立ち込め司会が微かに白く霞んでいた。 「そろそろ食事の時間です」 まだ処理しなければならない書類は山ほどあったが、だからこそしっかりと食事を取らなければならないとロングビルが促す。 彼女も最低限の睡眠と食事以外はほとんど休憩も取らずに仕事を続けているせいで、目の下に疲労の色が見える。 そんなロングビルの言葉を合図にオスマンから深い溜息が吐き出される。 「そうじゃの」 暇があればロングビルへのセクシャルハラスメントを欠かさないオスマンであったが、ルイズが“伝染病持ち”を召還してしまった日からそんな暇はほとんど無くなっていた。 そればかりか、先日の悪魔の襲撃によって失われた多くの人命を始めとする数々の損害への処理に追われ、心なしか、顔の皺が深みと数を増やしている様にも見える。 オスマンがペンを置くと同時に扉を軽く叩く音がした。 「…お、お食事をお持ちしました」 扉の向こうから聞こえるメイドの声が怯えを含んでいる事に違和感を感じたのはオスマンとロングビルの両名。 どちらからともなく顔を見合わせ、オスマンはロングビルに対し、扉の向こうに声をかけるよう促す。 「どうぞ、お入りください」 貴族に対して畏まる事が身に染み付いてしまっている平民も、メイジではあるものの貴族では無いロングビルが対応するならばいくらかは気が楽になるでであろうとの配慮である。 「食事はそちらの来客用テーブルに置いて頂けますか?」 ロングビルは扉を開き、出来る限り疲労を隠して穏やかな口調と表情を崩さずに、来客用テーブルに食事を置くようメイドに促す。 「は、はい」 対応をしているのが貴族ではない女性だからだろうか、少しは落ち着きを取り戻したらしいメイドはそれでも小刻みに震える手で来客用テーブルに食事の乗ったトレイをなんとか置いた。 食事は先日まで厨房で出されたものとは比べるまでもなく質素なスープと大雑把に野菜を添えただけのサラダ、そして微妙に硬めのパンといった、まるで辺境の村の平民が食するかのようなメニュー。 それでも、マルトーの作る料理に劣るものの、意外と言うべきかそれなりと言うべきか程には美味しくはあるのは救いである。 悪魔の襲撃の際で惨殺現場となった厨房を再び使うわけにはいかず、教師であるミセス・シュヴルーズを中心とした土のメイジによって最優先で一日のうちに厨房自体は新設された。 だが、厨房常勤の全員が今回の事件で死亡した為に、新設の厨房には現在、料理の心得のあるメイド数名が厨房に入っており、今用意されている料理はその彼女達の作ったものだ。 なお、新しい厨房の人員の派遣を要請する伝書を伝令に持参させたのは今朝である。 学院全体に伝染病の疑いが立ってしまった現状、三日目となった今日になってやっと外部に人材要請を始めとした伝令の派遣が出来る状況になったからだ。 そう、『伝染病』だ。 オスマンは、事件発生時は、この部屋で指揮を取りながら『遠見の鏡』で巨躯の悪魔と蒼い悪魔の戦闘を見ていた。 予見できなかった事とはいえ、厨房での悪魔の出現の報を受けるなり教師陣に速やかな撃退という指示を出し、使用人や生徒達の避難をおざなりにした為に、多大な犠牲という大きな失態を『遠見の鏡』を通してつきつけられた。 遅れて生徒や平民の避難を指示する頃には、蒼い悪魔が巨躯の悪魔を倒して逃げ出す姿が魔法の鏡に映っていた。 その後、援助を申請する前に、その理由となるこの過失をどう報告するべきかと頭を悩ましたオスマンであったが、その緩慢とさえ言える行動の為、結果として更なる愚を犯す前に、息をきらせながら学院長室に飛び込んだコルベールの報告で『伝染病』の事を知ったのだ。 コルベールの口から告げられる“人間を悪魔に変える伝染病”などという前代未聞の脅威。そして、それがもたらしたのが今回のこの被害。 脅威の伝染病の存在は、学院にいた多くの貴族の子息や教師に付け足して学院で働く平民の死をはじめとした様々な問題の処理以上に、オスマンの頭を悩ます。 二日の間、伝染病の拡散を抑えるため、学院の人間の外出行動を止めた。 勿論、内部から強い不満が出るだけでなく、更なる混乱の誘発の恐れさえあったが、結局は伝染病の潜伏期間とされる二日のうち、特に大きな問題が報告される事無く三日目を迎えることが出来た事は不幸中の幸いであった。 「顔色が優れませんがどうかしましたか?」 ロングビルの心配そうな声に気づき、オスマンは思考を中断して顔を上げる。 だが、ロングビルはオスマンではなく、そのまま部屋を去ろうとしたメイドに向かって声をかけたのだ。 「貴族のボンクラ生徒どもが悪さでもしとるのかの?」 内心、自分の心配ではないのかと年甲斐もなく少し拗ねたオスマンではあったが、そのメイドの顔色と言うべきか先ほどからの態度は気にはなる所だったので、気遣いの言葉をメイドにかける。 だが、オスマンの言葉にメイドは過剰に反応し、慌てて引き下がろうとするが、そんな彼女の手をロングビルが握ってとめる。 「大丈夫ですわ。オールド・オスマンは貴族と平民分け隔てなく接してくれるお方です」 「悩みがあるならここでひとつ吐き出してみんかね? それで少しは心が軽くなればそれで良いのじゃが」 反応があまりにもおかしい事に内心訝しげにしつつも、あくまで穏やかに接するオスマンとロングビルに対して、メイドは折れるように、すがるように、それでいて何処か安堵するような表情で、ぽつりぽつりと、ここ3日のうち自分の周囲で起こった事を語りだした。 ギーシュ・ド・グラモンが目を覚ましたのは三日目の朝食時間を過ぎた頃だった。 目立つ外傷こそ無かったものの、文字通り精神力を使い果たしていたギーシュが回復するにはそれだけの時間を必要としたのだ。 その彼は、今、女子寮のある一室の前に立っていた。 基本的に女子寮だけに男子禁制ではあるが、ギーシュはこの部屋の主への面会をするよう、部屋の主の友人に懇願されたからだ。 部屋の主の名はケティ・ド・ラ・ロッタ。ギーシュとは一学年下の少女で、ギーシュと交際していた少女であった。 扉の前で俯くギーシュは、目に涙を浮かべ、震える声で謝罪の言葉を呟く。 「ケティ……すまない。君の危機に駆けつけることが出来なかった……ぼくを――」 許してくれ、と口に出しそうになるが、かぶりを振ってその言葉を飲み込む。 許して貰える筈が無い。それ以前に許しを請う事自体、それは自分の恥を上塗りする意外の意味がないとギーシュ自身が自覚したからだ。 ケティは三日前の悪魔の襲撃で犠牲になっていたのだ。 しかも、ケティが存在した事の最大の証となる彼女の躯も、既に浄化の火によって灰へと還って低調に葬られたと聞かされている。 だから、ギーシュは彼女が存在していた事を証明する、まだ手をつけられていないケティの部屋の前で彼女の死を悼んでいた。 (……何が、薔薇は多くの人を楽しませるために咲く、だ!) グラモン元帥の息子、誇り高い軍人の家系の男が聞いて呆れる。 思わずギーシュは歯を食い縛り、拳を変色するまで強く握る。 「ここにいたのね、ギーシュ」 女の声はしたが、その声はギーシュには届いておらず、その声の主の少女が彼の肩に手を置く事で、やっとギーシュはその彼女を認識する。 「……モンモランシー」 声の主はモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ。 ギーシュと交際している少女である。 「聞いたわ。その子の事」 モンモランシーの口調は、ギーシュへの憤りを含んでいた。 当然だ。重婚制度があるわけでもないトリステインで二股がけなど不埒以外の何物でもないのだから。 「……すまない」 本当に自分が嫌になる。 以前、モンモランシーに対して、ケティとは何も無かったと嘘を告げた。 同じようにケティにも好きなのは君だけだと囁いた。 それは結局モンモランシーとケティに対する不義に他ならず、この場においてギーシュは自分の不甲斐無さに、無力さに、不誠実さに怒る事しか出来なかった。 「でも、ギーシュはわたしを護ってくれた」 モンモランシーは『わたしを護る為に駆けつけてくれた』とは口に出さない。 その言葉はケティという犠牲者に対する『死人に鞭打つ』行為に他ならないからだ。 むしろ、今のモンモランシーの心に浮かぶのは、ケティという少女に対する哀れみだった。 唯、偶然同じ男を想っていただけで、片や護られ、片や孤独に命を落とす。 それが、モンモランシーにとってはケティが享受すべきささやかに幸せになる権利さえも、自分が奪ってしまったように思えてしまったのだ。 そして思う。 確かにギーシュの浮気は許し難い。だけど、それでも自分はギーシュが好きなのだと。 「……ごめんなさい」 だから、モンモランシーの口から、自然とケティへの謝罪の言葉が漏れてしまっていた。 この先、ギーシュの心を自分へ向けさせる事に対して。 「すまない、ケティ」 再びギーシュがケティに謝罪の言葉を向ける。 この先、自分の心がモンモランシーに向けられる事に対して。 「すまない……」 ギーシュがモンモランシーに謝罪の言葉を向けようとするが、そのモンモランシーが彼の口を掌で押さえ、眉を潜めながら今一鈍感な男に諭す。 「ギーシュ、彼女の前よ」 流石にその意味を理解したギーシュは、口をふさいだままではあったが本当にすまなそうな視線をモンモランシーにしばし向け、視線をケティの部屋の扉に向け直した。 しばらくの間、ケティの部屋の前で彼女の冥福を始祖ブルミルに祈った二人は女子寮の外に出た。 そろそろ昼食の時間だったが、お互い食欲は無かったものの、特に目覚めたばかりでまだ朝食すら取っていなかったギーシュ、この三日間、水のメイジという治癒魔法の使い手として生き残った生徒、教師、使用人の為に奔走していたモンモランシーは、お互いの体調を気にした結果、ムリにでも食事を取るという選択を取って、食堂に向かっていた。 最初は無言のままのギーシュであったが、ふと、横に並んで歩くモンモランシーに言い出した。 「モンモランシー、君は優しいんだな」 勿論、モンモランシーへの気遣いや、彼女の気遣いに対する感謝や感心がそこにはる。 が、ケティが死んでしまった事の哀しさから、癒しを求めるように声を出てしまった所が大きいのは、ギーシュ自身は口に出してから漠然と感じた事だ。 「違うわ。優しいわけじゃない。唯、わたしはこんなに哀しい事が許せないの」 返って来たのは、褒められた事への照れ隠しなどではなく、微かな憤りと強い決意の篭る意思を感じさせる言葉だった。 三日前の悪魔の襲撃の後、悪魔に対峙した者は無残な躯となっているか、ほぼ無傷かの両極端であった為、即時的な肉体的な治癒という面では水のメイジはほとんどやる事が無かった。 だが、その直後に伝えられた伝染病の脅威に事前に対処する事や、多くのものを失った事で傷ついた心を癒すのも彼らの役割である。 更なる脅威を未然に防ぎ、良き相談役になり、時には魔法の薬で体を心を癒す。 彼らがいる事で、学院は大きな混乱を誘発しないで済んでいると言って過言では無い。 「わたしは水のメイジ」 モンモランシーの脳裏には、あの日、救えたかもしれない、しかし救えなかった、変貌した教師の姿が、そして、その脅威から自分を護ってくれた少年の姿が浮かぶ。 「だから、私の周りに悲しみがある事が許せないの」 この三日、彼女は自分の力不足への後悔と、自分が救われたことへの感謝を胸に刻み、心の癒し手として奔走した。 「だから癒さなくちゃ気がすまないのよ」 そんな彼女の気丈な振る舞いを、ギーシュは尊敬の念で見つめ、理解する。 つまりは彼女も貴族であり、前線で武器や杖を振るう兵士や騎士とは違う“戦い”に身を投じる癒し手なのだと。 「――――せん!」 突如耳に悲鳴の様な切羽詰った声が微かに届く。 「え!?」 「モンモランシー?」 この三日で、そういったものに過敏になっていたモンモランシーは声の方に振り向いて駆け出す。 何事かと後から追いかけてくるギーシュを尻目に、駆けつけたモンモランシーが見たものは、散乱するティーカップとポットの破片、跪き泣きながら許しを請うメイドの少女、そしてそれを怒鳴り散らす貴族――格好から三年の生徒であろう――であった。 「なんだ、平民が叱られているだけ――」 何か粗相をしてしまった平民が貴族に許しを請うという場面に出くわす事はそう珍しい事では無く、普通ならば程度の差はあれ、貴族が平民を口で注意――あくまで貴族の視点ではその程度の認識でしかない――をする程度で終わる事だ。 大事になるわけでないのならば関係が無い事だろうと、さして気にする事無く視線を外すモンモランシー。 だが、 「メイド相手なんかに杖を向けるなんて、あいつらは何をしているんだ!?」 モンモランシーから少し遅れてそれを見たギーシュが驚愕の声を上げるのを耳にして再びメイドの方を向く。 そこには、威嚇とばかりに魔法の炎でメイドの足元の地面を焼く貴族の姿があった。 「ち、ちょっと!? 本当に何やっているのよ!」 平民に向けて魔法を振るう事は、平民にとっては恐怖を植え付けられる事と同義であり、それにおいては貴族側も多少なりに理解している事だ。 だというのに、謝罪する平民に対して明らかな攻撃魔法を向けるということは過剰の暴力を振るう事に他ならず、既にそれは誰が見ても“注意”の範疇を超えるものだった。 モンモランシーが予想外の事態に驚く側で、ギーシュはすぐさま薔薇の造形をした杖を取り出し、呪文を唱える。 だが、既にその貴族の生徒は再び呪文を唱えており、ギーシュの介入が間に合うかどうかの瀬戸際だった。 (――間に合わないっ!) そして、ギーシュの呪文が完成するかしないかという状況で、メイドに杖を向けた生徒の呪文は完成し、あとは杖を振るうだけとなった、その瞬間。 「――モガッ!?」 その貴族の口に突如として赤土の粘土が詰め込まれ、その突然の事態に彼は法を放つ事も止めて慌てふためく。 ちなみに、メイジが魔法を使う為にはまず杖が必要であり、それと同じく呪文を詠唱しなければ結局は魔法を使う事は出来ない。 つまり、メイジを無力化させるならば、杖を奪う他にも、声を奪えばいいわけで、これによって彼は口の中の粘土を吐き出すまで、魔法を使う手段を遮られた事になる。 「おやめなさい! 力無き民に杖を向けるなど、貴族としてしてはならない恥ずべき行為です!」 無様としか言いようの無い貴族の生徒に対し、よく通る声で杖を向けるのは紫のローブをまとった中年のふくよかな女性。 この学院の教員にして土のトライアングルメイジであるシュヴルーズである。 彼女は日常の授業で騒がしい生徒に使う赤土を口につめるという口封じの魔法をこの場で使い、彼の口を封じたのだ。 突然口に赤土を押し込まれた貴族の生徒は、暫く両手を使いながら必死に口の中の粘土を吐き出し、荒い息を吐きながら口を塞いだシュヴルーズに講義する。 「ミ、ミセス・シュヴルーズっ! お、お言葉ですが、こいつはっ――」 礼節と身分を重んじる貴族の子息が、生徒という立場にありながら明らかな目上である教師を前にしても激昂を抑えず口答えするというのは珍しい。 それこそ、二つ名を汚されたり家名を貶められたといった、名誉を極端に貶められ、日常で貴族であろうと平民であろうと、うかつにそのような事はしないような事態になった場合位のものだ。 例外的に、モンモランシーのクラスでは頻繁に見られる事ではあるのだが、この場では関係ない事だ。 「おだまりなさい! これ以上口答えするならば――」 シュヴルーズの剣幕に、その貴族の生徒は黙って引き下がるが、その顔には強い怒りが浮かんだままで、鋭い視線を相変わらずメイドに向けていた。 「大丈夫ですか?」 シュヴルーズは、その生徒とメイドの間に割って入り、憤怒の表情を浮かべたままの貴族の顔をメイドの視線から遮りながら、手を差し伸べる。 「あ……」 だが、そのメイドはシュヴルーズの差し伸べた手を見て、びくりと身を怯ませる。 「いいのですよ。もうお行きなさい」 だが、そのようなメイドの態度に対してもあくまで軟らかい表情を崩さずに、シュヴルーズは、メイドが逃げるようにその場を去るのを見送った。 「全く失礼な平民ね。ミセス・シュヴルーズに助けられたというのにお礼すらせずに逃げ出すなんて」 その一部始終を見ていたモンモランシーがまず抱いたのは、恩知らずと言っていいメイドの態度に対する不快感。 次に浮かぶのは、シュヴルーズがそれに対してさえ、特に気にするそぶりを見せていない事だ。 モンオランシーは、ふと、この人には貴族としての面子は無いのだろうかとシュヴルーズに不信感を抱く。 「ミセス・シュヴルーズ。少しよろしいでしょうか?」 と、モンモランシーが思案している横で、ギーシュが進み出て声を上げる。 「何でしょう?」 シュヴルーズに向ける、ギーシュの視線は教師に対する視線と言うには微かに鋭い。 何か不審なものを見るような視線だ。 「なぜ、先ほどの平民が何をしたのかさえ問質さずに肩を持ったのです?」 その言葉にモンモランシーは納得する。 場を抑えるにしても貴族側を理由も聞かずに一方的に『悪者』と断じる姿勢は、伝統と名誉を重んじるトリステインでは考え辛い行為だからだ。 「仕方ないのです。今のあのメイドにとって貴族は恐怖の対象でしかないのでから」 そのシュヴルーズの返答に、今一要領を得ずに口を閉じ内心で首をひねるギーシュ。 そんなギーシュに代わるようにして、先ほど粘土を口に込められた生徒が怒鳴り声を上げる。 「貴族は悪魔ではありません! むしろあいつらこそ僕達に悪魔をけしかけた張本人じゃないのですか?!」 どういうことだろうと、ギーシュとモンモランシーが耳を傾ける。シュヴルーズも、今度は彼の言葉を遮ることなく無言で耳を傾ける。 「僕は聞いた! 彼女が厨房の連中が生きていればこんな事にならなかったと呟くのを!」 「はぁ?」 その一言にギーシュは思わず疑問の声を上げて首を傾げる。 最初にその言葉で連想出来るのは、厨房の人間がいなくなったので、食事の質が落ち、それを嘆いている、若しくはなれない厨房仕事に不満を漏らしたものだと思える言葉だ。 ギーシュの脳内では、とてもその単語と悪魔とは結びつかない。 「……」 だが、横にいるモンモランシーは合点がいったという溜息を苦虫を潰した表情で漏らす。 目の前のシュヴルーズもモンモランシーと似たような表情をしている。 「モンモランシー、どういうことだい?」 「件の悪魔は最初、厨房で目撃されたそうなの」 そこでギーシュも合点がいった。 つまり、この生徒は悪魔が厨房から出てきたことから、厨房の人間が悪魔に変化して学院を襲い、メイドが再びそれを望んでいるものと解釈したのだと。 「それは貴方の思い込みです」 シュヴルーズは生徒に対して断言する。 ギーシュもこの生徒は、思い込みが過ぎるのではないかと思うが、逆に考えると仕方ないことなのかと思い浮かぶ。 ギーシュは見たからだ。教師が異形へと変貌する瞬間を。 となれば、むしろ貴族が悪魔となったと思われるのが当然で、そうなればメイドのあの態度も仕方ないのではないかと思い立ったからだ。 「それに、少なくとも彼らは悪魔では無く、普通の平民。ならば私達貴族が護る対象ではあっても、決して杖を向ける相手では無いでしょう?」 流石にその言葉には少々無茶があるとギーシュは思う。 いくら平民とはいえ、明らかに自分達に歯向かう相手だとしたらそれは護るべき対象ではなく敵である。 それ以前に、先ほどの彼女は終始許しを請う普通の平民であり、確かに杖をむけていい相手では無いのだが。 暫くしてシュヴルーズと件の生徒がその場から去った後、その場に立ち尽くすようにして残っていたギーシュとモンモランシー。 二人は、それぞれ、今起こった事と先ほど二人で話していた事とを頭の中で考えていたのだ。 「難しいものね……」 誰にともなく呟くモンモランシー。目の前で起こった出来事を思い返し、先程自分が口にした決意は上辺だけではないのかと重い気分になったものが声になったのだ。 「うん」 だが、ギーシュは理解する。 この言葉は、モンモランシーがそれらと向き合っているからこそ洩れる言葉だと。 だからギーシュの口から、自然と洩れた。 「頑張ろう、モンモランシー。ぼくも頑張る」 食事を終え、メイドが後片付けをして部屋を去った後、オスマンは書類に手をつけようとしながらも手がほとんど動かずに思わず溜息をつく。 「……ふうむ」 問題に問題が増えていく事に嫌気がさしているのだ。 メイドの話を聞き終えたオスマンは、顎鬚をさすりながら今更になって問題が起こっていなかったわけではなく、問題が見えなかっただけだという事を知った。 常々、貴族が平民をないがしろにしている現実を知らないわけでは無い。 だが、自分のいるこの学院で、今回の悪魔の襲撃に関して言掛かりの如く鬱憤の対象にさえされてしまう事態が起こり、なおかつ自分が気づくのが遅れるとは、貴族の堕落ぶりと、それ以上に自分の眼力の衰えをつきつけられるようでもあった。 オスマンが再び溜息を吐くと同時に、扉からノックがかかる。 「オールド・オスマン、シュヴルーズです」 扉の向こうから、中年の女性の声がかけられるのを、オスマンは溜息をする暇も無いのかと、内心うんざりしながらもシュヴルーズに入室を促す。 「入りなさい」 「失礼します」 入室してきた紫色のローブを着た中年女性の教師シュヴルーズは、オスマンの前まで足を進めると、軽く会釈をして口を開く。 「忙しい所を申し訳ありません。ですが、なにぶん急ぎの頼みがあります」 「申してみよ」 「実は――」 「なるほどの」 先ほどシュヴルーズが目撃し対応した、一部の貴族の子息による平民への危害を聞いたオスマンは、先ほどのメイドの言葉が事実である事を再認識する事になった。 シュヴルーズの報告があるということは、問題が教師にも見えるほどに表面化している事に他ならない。 だが、よくよく考えれば仕方無い部分もあるだろう。 悪魔の脅威と正面から対峙したのは貴族だ。だというのに、護るべき対象である平民は貴族への不満を口にし、更に件の巨躯の悪魔も事あるごとに貴族への怨みを口にしていたと言う。 だからこそ、例の悪魔騒ぎ、つまり、この謎の伝染病は、平民が何らかの手段で悪魔と契約して起こしたものではないかという噂まで立ち始めているのだ。 (……何かに原因を求めてしまうのは仕方ないものなのかもしれぬが……浅ましく嘆かわしいの) 原因も判らぬ見えない恐怖に対し、そのはけ口を求めた結果、時として無理やりに原因を“求めてしまう”のは、人の心の弱さが起こす仕方の無い、しかし仕方の無いと言うにはあまりに愚かな行為だと、オスマンは嘆く。 「何か対策を立てなければ、近いうちに罪無き平民から犠牲者が出る可能性が高いのです。この際、一度全使用人を総入れ替えする事は出来ませんか?」 「そんなこと簡単に出来る筈がありません。それこそ伝染病の危険性が有る事を王宮に宣告でもしない限り……」 「ですが、未だ感染症の恐れありと宣告してしまえば、そのまま処分対象になってしまいます!」 「では、どうやってこれだけの人数を追い出してなおかつ新しい人員を派遣してもらうのですか!」 オスマンがさて、どう対応したものかと悩む横では、シュヴルーズとロングビルが言い争いにすら聞こえる討論をしている。 「……ふうむ」 オスマンは顎鬚をさすり、二人の言葉に耳を傾けながらこれからの事を思案する。 今回の発端であるであろう、伝染病の事に気考えを向けたその時だ。 「た、たたた、大変です!」 突然、乱暴に扉が叩くようにして開かれ、頭の禿げた中年男性の教師、コルベールが息を切らせて部屋に駆け込む。 「何事じゃ?」 礼儀も何もあったものじゃない突然のコルベールの来訪に部屋にいた三人は眉を顰めるが、コルベールはそんな事はおかまいなしに息も絶え絶えのまま叫ぶ。 「ミ、ミ、ミス・ヴァリエールの使い魔、い、いえ、感染症持ちのあの男が――」 コルベールの言葉を最後まで聞き終わる前に、オスマンは顔を強く顰める。 名前が出ただけで、既に更なる問題が出た事は間違いないからだ。 そして、コルベールの締めの言葉は、オスマンだけでなく、ロングビルにシュヴルーズの顔を驚愕に変えるに充分なものだった。 「――だ、脱走しました!」 前ページ次ページブラスレイター コンシート
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前ページ次ページゼロと魔砲使い フーケ騒動のおかげで、夜の講習会も一時お休みとなった。 といっても中断されたわけではない。元々夜集まっていたのは、なのはがキュルケ達に魔法の見本を見せてもらうためで、マルチタスクの学習などは、念話さえ通じれば場所を選ばない。 今のところ顔を合わせて指導しなければならないのはルイズとタバサだけである。 ルイズはいつも一緒にいるので別段問題はない。タバサの場合も、スキャナを使って魔力の流れを読み取るためだけなので、自習することそのものには問題がない。 なので学習そのものはなのはが使い魔達のたまり場で念話を送れば事足りた。 もっとも、なんだかんだ言って彼らは優秀な部類なのだろう。 長いこと教導隊として見てきたなのはの経験にさらしてみても、彼らの学習能力はかなり上位に位置する。 実のところ、キュルケもタバサも故国ではいろいろな意味ではみ出し者である。素直に枠に収まらない体質とでも言うのか。ギーシュはそうでもないが、それとて目の前に革新的な『何か』が現れれば充分に引かれる性である。 性格であれ環境であれ、彼らに共通していたのは、『今までとは違う何か』を強く求める心であろう。 キュルケは満たされぬ、行き場のない想いが。 タバサは今までの枠に収まっていたのでは打ち破れない重い枷が。 ギーシュは自分より遙かに優秀な兄たちが。 それを求めさせる原動力となっていた。 そしてルイズは言わずもがなであろう。 そんな彼らの前に現れたのが、未知どころか隔絶した力を振るう存在――なのはだったのだ。 そして今、彼女たちの中の一人、タバサに、彼女を縛る『重い枷』がその締め付けを強化しはじめていた。 騒動の後、タバサは自室でこれまでのことを文書にまとめていた。本国への報告用や自分用の覚え書きなど、いくつか書き分けていたりするので結構大変だ。 今思い浮かんでいたのはなのはの放った光芒のこと。 あれは自分たちの知る魔法とは明らかに断絶した何かだった。光の玉を操る『アクセル・シューター』の魔法ならまだ自分たちと同じ領域だった。優秀な火のメイジなら似たような魔法を操れただろう、と思う。 キュルケがこっそり真似できないかと試していたのをタバサは知っている。真似といっても再現ではなく、『誘導性の高い火球』という魔法を工夫できないかと言うことである。 ファイヤーボールの魔法を元にいろいろ影でやっているらしい。成果は一応あったようだが、『まだ威力に問題あるわね』とつぶやいていたのも知っている。 自分もフライの改良や、『コアを分割して使う』という今までにない発想の元で魔法の練習をしている。なのはの指導を受けて、明らかに変わった点が一つあった。 『魔力』という存在に意識を向けたことだった。 今まで彼女にとって(そしておそらくはキュルケやルイズにとっても。ギーシュは別の理由で除く)魔法とは、 呪文を唱える。正確な発音で。 ↓ 自分の中で精神力が消耗する。 ↓ 魔法が『自然に』発動する。 と、こういうものでしかなかった。 呪文を唱えれば魔法が発動する。それが直接結びついていた。ルーンには一応意味があるが、その意味と魔法そのものの関係はよく理解していなかった。 というか、理解しても意味があると思えなかった、というのが正しい。ルーンの『意味』と魔法の『効果・結果』との繋がりに関しては、今でもアカデミー機関で研究されるレベルのもので、魔法学院レベルではそもそも教えられていない。 呪文は呪文として教えられ、細かい制御などは付随するイメージによって行われている。 練金の授業を思えば判るであろう。どんな物質を練金する際でも、呪文は共通である。特定の物質を練金するのにそれ専用の呪文が必要なわけではない。 練金の呪文は、『イメージで物質の変化を可能にする』という状態に精神を切り替えるものでしかない。実際に何を何に変えるのかを制御するのは、詠唱時に思い浮かべたイメージの方だ。 考えてみれば特異なことである。皆練金を『そういうものだ』と当たり前に思ってしまっているから見逃しているが、これは他の魔法に比べると応用範囲が広すぎる。 広すぎるが故に、ドットの初歩であるくせにスクエアでなければ出来ない変換があったりする。 そしてタバサも、そのことに違和感を感じてはいなかった。それが、なのはの指導を受け、『魔力』という概念を知ったときから、明らかに揺らぎはじめていた。 なのはは魔力を力の源と定義した。森羅万象、この世のすべての存在には魔力が宿っていると。 そして魔法は、自分の中にある、それを動かすための、実体を伴わない器官……心臓や胃のような形ある器官とは別の何か……レゾナンス・コアを通じて魔力を、ひいてはそれが宿る実体を操る術だといった。 この定義に従えば魔法は、 呪文を唱える。正確にコアを振るわせるために。 ↓ 呪文によってコアが振動し、魔力が変化する。 ↓ 変化した魔力に共鳴して、周辺の物質に宿る魔力が動く。 ↓ 動いた結果が、よく知る魔法の効果となって発現する。 という過程を経て発動することになる。 タバサは、こちらの方が正しいと、理論ではなく直感的に理解していた。 論理的にも筋が通っており、これにいくつかの考察を付け加えると今まではただの現象とされていたことにも説明が付くからだ。 成果も出ている。まだラインの独立呪文だとはいえ、フライの改良版の作成に成功したのがそれだ。ルーンの意味と、それがどんな影響をコアに与えているかを、魔力という概念を通して考え、呪文に加えてみた。 そうしたらほぼ予想通りの結果が出たのである。 ちなみにタバサは、これがアカデミークラスの研究だということには気がついていない。 新呪文の創造というのは、本来この段階のものなのだ。 トリステインのアカデミーあたりに今のタバサの思考をレポート化して提出したら、スカウトが飛んでくるのは確実である。 そしてタバサの思考は、自分が今もっとも気にしている領域に突入していた。 最近、呪文を唱え、そのうねりに身を任せているとき、今まで意識していなかった感覚をタバサは感じ取っていた。 原作でルイズが力に目覚めたときに感じた感覚。タバサに限らず、まともに魔法を使えるメイジならおなじみの感覚であるが、最近タバサは、その感覚に今までとは違う何かを感じていた。 なのはの指導を受け、コアの存在を意識し、それを分割して使うという、ある意味前代未聞の練習を始め、そしてわずかながら成果が出たあのときからのものだった。 何かが体の中で回る感覚。それに加え、最近のタバサはそれが全身を流れていくことを意識しはじめていた。 なのはの指導によって、それが『魔力』ではないかと自覚したあたりから、その感覚はだんだんとはっきりしはじめてきた。 最近タバサは、魔法を使うとき、胸の奥に三つの『音』を感じていた。今までは渾然一体となっていて判らなかったそれを、『三音の和音』としてとらえはじめていたのだ。 そしてタバサは思う。これが『鍵』だと。この感覚を突き詰めていけば、自分の何で何かが変わると。 だけど、何かが足りない。今まで学んだことが、どこかでかみ合っていない。そんな焦りにも似た感覚。 ――コトリ。 突然そんな音が意識に乱入し、タバサははたと正気に返った。 傍らの蝋燭を見ると、だいぶ短くなっている。今までのことをまとめようとして、そのまま思索に耽ってしまっていたようだ。 机の上には、せっかくの上気した気分をぶち壊しにするようなものが落ちていた。 故国からの通信筒だ。 中を見たタバサは、ますます落ち込んだ。 とんでもない任務だった。はっきり言って拒否したい。 だが、その内容は二重の意味でタバサを拘束していた。 表の任務が、ラグドリアン糊の増水を調査し、出来れば解決すること。 一見関わりがなさそうだが、彼女の実家が湖畔にある。つまり放置すればあの人に被害が及ぶ。 おまけにこの任務はまたも国王印だ。それが二重の意味を持ってあの人を締め付けてくる。 そして、裏の任務は―― なのはを特定の場に連れ出して彼女をこちらの指定した人物に面会させること、だった。 しかも付帯任務として、結果によってはなのはとその主ルイズを拉致することまで指定されている。 驚異だった。そして脅威だった。この任務が意味することはただ一つ。 ――あの人が、ルイズとなのはに興味を持った。 タバサははっきりと焦る自分を自覚した。以前、幼い頃感じた感覚。当時はただ訳が判らなくて、混乱し、泣き叫ぶしか出来なかった自分。 けれど今、それを感じて、はっきり判ったこと。 自分の心が叫んでいる。今の、感情を殺している自分では口に出来ない言葉。 タバサ自身にはそこまでしか判らなかった。自分の心が叫んでいる、としか。 もし、その声が聞こえたならば、それはこんな言葉だっただろう。 わたしのたいせつなひとをとらないで! タバサに拒絶する術はない。表向き彼女は、任務を果たすべく動き出す。 だが彼女の心の中には、自覚無き炎がともっていた。 氷の心を溶かす、灼熱の黒き業火が。 「なに、あらたまったお願いって」 翌日の昼食後。すっかり友人メンバーになってしまった一同、ルイズ、キュルケ、ギーシュ、タバサ、そしてメイド姿のなのは。彼らが食事後、デザートと共に茶を楽しんでいたときに、タバサが切り出してきた。 協力してほしいことがある、と。 「私には故国への義務として奉仕をしないといけないことがある」 いつもにまして固い口調で、タバサが言う。 「そう言えばたまに長の帰国をしてたけど、そう言うことだったの?」 何となく事情を察していたキュルケが問う。 タバサは頷いて肯定の意を示し、言葉を続けた。同時に普段は隠していた印を見せる。 「それ、シュ……バリエの紋章じゃない!」 ルイズが驚いた声を上げる。シュ、のあたりでキュルケとタバサに押さえ込まれて小声になったが。 「馬鹿ね。何で今まで隠していたと思うのよ」 キュルケに言われてルイズも何となく納得する。注目は浴びたくない、ということだろう。 真実は違ったが、それは幸い問題ではない。 「で、何でまたわざわざ?」 ギーシュの問いに、タバサは説明を続けた。 「トリステインとガリアの境のラグドリアン湖が謎の増水をしているらしい。それを調べてほしい、とのこと」 「ラグドリアン湖?」 ギーシュが何かを思い出したそうに首をかしげた。 「ギーシュ、何か?」 「いや……とりあえず続けてて」 ルイズが訝しがったが、ギーシュ自身もよく思い出せないらしい。 「調査、とは言ってるけど、実質はたぶん水の精霊への警告になると思う。戦いになったら私一人では手に負えない」 「……正気? そりゃあなたなら何とかなるでしょうけど、一人じゃ絶対無理じゃない」 キュルケが言う。正気というのはタバサではなく、命令者に対してのようだ。 「どうして?」 と聞いてくるルイズに、キュルケは少し蔑んだ目を向けていった。 「水の精霊に喧嘩売るなんて、まあトリステインじゃ異端に近いでしょうから考えたこともないんでしょうけど」 トリステイン王国は水の属性に縁が深い。水の精霊も、永遠の約束を司ると言われていたりする。 「何よツェルプストーがエラそうに」 ルイズも反撃するが、以前のようなヒステリックな面がだいぶ弱まっている。 ここのところ彼女と深くつきあう面が多かったせいか、さすがにルイズもキュルケの持つ一面に認めたくはないが気づきはじめていたのだ。 キュルケはその辺は大人の余裕で流して、説明を続ける。 「水は精神を司るわ。敵意を持って触れてご覧なさいな、あっという間に記憶ごと消されて放り出されるわね」 「つまり、戦おうとしたら相手のテリトリーと言える水中に、水に触れることなく進入しなければならないと」 口を挟んだのはなのはだった。この場ではあくまでも使い魔として、主人とその友人方の給仕に徹していたのだが。 「さすがはなのはね。こういう方面のセンスが抜群」 「あたしの使い魔だからね」 そこにあったのは優越感か嫉妬か、微妙なところ。 「でもまあその通りよ。戦って勝とうと思ったら方法は二つ。風の使い手が水中に気泡を作って領域を確保し、別の使い手がその中から遠隔攻撃力のある魔法で攻めるか」 「湖ごと吹き飛ばすか、ですね」 「正解」 なのはの過激な意見に、キュルケはあっさり頷いた。 「いずれにしても、キュルケかなのはの援護がほしい」 今までの意見をまとめるかのようにタバサが言う。 「もちろん湖を吹き飛ばす真似は出来てもやるわけにはいかない。でも脅迫の材料にはなる」 「ちょっとタバサ、あたしの使い魔をなんだと思ってるのよ」 「ごめん」 ルイズの怒りに対して、タバサは無表情のままそう言う。 「そう怒らないのヴァリエール。タバサが判ってないわけないでしょ」 「当たり前でしょツェルプストー。でもそれはそれこれはこれよ!」 「まあまあ二人とも、今はタバサの話だろ?」 ギーシュになだめられて、キュルケとルイズは矛を収めた。 「で、具体的には?」 話を進めるギーシュに誘導されるように、タバサが説明を再開した。 「最初の方法で攻めるのなら必要なのは単体火力のあるキュルケ。なのはだとちょっと問題がある。でもなのはには最初の方法でうまくいかなかったとき、取引の材料としていてほしい」 「さすがに湖丸ごと消しちゃったら、もっと問題ですものね」 その時一同は思った。不可能じゃあないのか、と。 なのは自身も本当に出来るとは思っていなかったのだが、後々レイジングハートに、試してみなければ判らないが不可能ではない可能性が高いと指摘され、少々落ち込むことになる。 それはさておき、皆もだいたいのところは納得がいった。 「どうしても手元にほしいのがキュルケとなのは、そうすると必然的にルイズも、となるわけか」 「ギーシュの言うとおり」 「ちょっと、私はおまけ?」 「しょうがないでしょ。あなたのあれはこういうのには向かないわ」 意見が飛び交うが、そこにギーシュが新たな波紋を起こした。 「ところでタバサ、水の精霊とは喧嘩しないといけないのかい?」 「そんなことはない。でも私は水の精霊と会話できない。力ずくになると思う」 「なら提案だけど、モンモランシーに頼むといいよ」 意外な名前に一同の動きが止まる。 「水の精霊で思い出したけど、彼女は元々、水の精霊の一族と繋がりがあったって聞いたことがある。交渉も出来るはずだ」 「それはありがたいわね」 キュルケも少しほっとした声で言う。 「今回僕は別にいる必要ないから、タバサ、キュルケ、ルイズ、なのは、モンモランシーで五人。これならシルフィードに全員乗れるだろ?」 無言で頷くタバサ。六人だと少し苦しい。 「それにこれなら全員女性だから揉め事も減るだろ? 普通なら不用心って言うところだけど、このメンバーならそんな心配も無用だし」 「「「どういう意味?」」」 そのとたん、ルイズ、なのは、キュルケから睨まれるギーシュ。タバサも無言なだけで睨むことには変わりない。 「ははは……ごめんなさい」 ギーシュはあっさりと白旗を揚げた。 「いいわよ。但し、タダって言うわけにはいかないわ」 モンモランシーは思ったよりあっさりと同意してくれた。タダではなかったが。 「案外がめついのね」 といわれても彼女は動じなかった。 「別段あなたたちとは深いつきあいがある訳じゃないし」 と前置きした上で、 「ルイズみたいに実家が裕福だと判らないと思うけど、貴族には二種類いるのよ」 「二種類?」 「裕福なのと貧乏なの。いくら収入があっても、それ以上に支出がかさむと、どうしても貧乏になるのよ、貴族は」 言い返せないルイズだった。 「それにね、うちがある意味貧乏になったのも水の精霊がらみだから」 「あら、そうなの?」 「実質的には自業自得だから、文句を言う筋合いじゃないんだけど。全く我が親ながら馬鹿やったものだわ」 何ともいえない不機嫌な顔をするモンモランシー。 「だからかしらね。召喚そのものには費用が掛かる訳じゃないからいいけど、道中の経費や食費その他、全額持ってもらうわよ」 そう言われてルイズ達も気がついた。 「タダじゃないって……そういうこと?」 「当たり前でしょ。うちは外面はともかく実質的にはお金ないのよ。あたしだって香水が売れてなければお小遣いも研究資金もなくなっちゃうんだから。遠出する余裕なんかないのよ」 元々ルイズ達はその分は当然出すつもりだったので問題はないも同然だった。 というか、大金が掛かるほど時間がとれるわけでもない。ダエグの日(こちらの土曜日的な日)の授業後に出発して、虚無の日のうちには片付けて帰ってくるつもりだった。 ちょっとぎりぎりだが、シルフィードの移動速度があれば不可能ではない。 実質的に掛かるのは食費くらいだ。それも今回はタバサが全部持つと言ってきている。 「いい機会かも知れないから……」 と、タバサは何か言いにくそうにしながらも、そう提案してきたのだ。 話はまとまり、ちょっと慌ただしいがラグドリアン湖湖畔への出立が決まった。 ダエグの日の午後、簡単な旅装を整えた一行は、ギーシュに見送られてシルフィードと共に旅立った。 モンモランシーはシルフィードの飛翔にちょっと興奮気味だ。 (今日も飛ばすのね~きゅいきゅい) (相変わらずね。でも気をつけてね。今日は部外者がいるからしゃべっちゃ駄目。念話だけね) (ばれたらお仕置き) (ハイです、なのはさん。ご主人様~) (私がお話ししてあげるから、ご主人様の読書の邪魔しちゃ駄目よ) そんな会話をしつつも、順調にシルフィードは空を切り裂いて飛んだ。 途中で休憩や食事を挟みつつ、シルフィードは夜の帳が落ちきる寸前に目的地に到着した。 「ねえ、ここって、ラグドリアン湖のガリア側よね」 モンモランシーが不安そうに言う。ほかのみんなはそれを聞いて思わず冷や汗を掻いた。 「それじゃあたし達国境破り?」 みんなの意志をまとめるように言ったキュルケに、タバサは平然と言った。 「ばれなければ問題ない」 「自覚してるの!」 悲鳴を上げるルイズ。だがタバサは動じない。 やがて着地地点からタバサに従って少し歩くと、夜の闇の中に一軒の屋敷が浮かび上がってきた。紋章などは暗くて見えない。 が、その屋敷に反応した人物が一人いた。 「タバサ……あれ、って事はひょっとしてあなた、シャルロットなの?」 シャルロット、の一言を聞いたとたん、タバサからまがう事なき殺気が漏れた。 その殺気を向けられて、モンモランシーが硬直する。 「だ、だって、あれ、オルレアン家の本宅じゃないの。だとしたら」 「何で知ってるの」 タバサの言葉は鋭い。 「あ、あたしはモンモランシ家の娘よ! 以前丁度ここの対岸だった家! 今はもう違うけど……。だからうんとちっちゃい頃は、お向かいさんとして招待されたことあったじゃないの!」 「……不覚。覚えてなかった」 納得したのか、タバサは殺気を解いた。が、何故か硬直している人物がまだいた。 キュルケとルイズだ。 「? どうしました? ご主人様、キュルケ」 なのはが話しかけて、やっとそれが解けた。 「ガ、ガリアのオルレアン家!」 「ガリアの王弟家じゃないの!」 だとすれば、タバサは王の姪と言うことになる。 なのはは身分による影響を受ける方ではなかったので実感は出来なかったが、納得は出来た。 その後何となく全員が無口になったまま、一行は屋敷へと向かっていった。 屋敷に到着すると、勝手知ったるとばかりにタバサはアンロックのコモンマジックで、通用門の鍵を開けた。 「入って」 といわれておっかなびっくりルイズ達が中に入ると、明かりを持った男性らしき人影が、慌ててこちらに走ってきた。 「こら、何者だ! ここは……お嬢様! こんな遅くに何故……そちらの方々は?」 「友達、そして今回は仲間」 要領を得ないタバサの言葉だったが、それで彼には充分なようだった。 「友達、ですか……。判りました。急のご来訪ゆえ、何のおもてなしも出来ませぬが、どうぞこちらへ」 近づいてみて判ったが、彼は老人であった。身なりからすると執事であろう。 「ちょっと失礼」 一言断りを入れて、キュルケが杖を振るった。それに答えるように、強い光を放つ火の玉がいくつか浮かび上がり、あたりを照らした。 「ちょっと不気味なのは勘弁してね」 遠目から見ると鬼火みたいで確かに不気味だ。だが足下を照らされているものにはそれは気にならない。 「おお、見事な魔法ですな。感謝いたします」 老執事は感激したように言った。 やがて屋敷の玄関が見えてきた。そこに掲げられているのはまがう事なきがリア王家の紋章。但しデザインが微妙に違う。紋章学に詳しいものなら即座に王弟の紋章だと見抜いただろう。 しかし、その紋章には、大きな×印の傷が刻まれていた。これは不名誉印と言って、紋章の主が不名誉な行いによってその権利を剥奪されていることを示す。 なのは以外には常識だったそれを見て、ルイズ達の口はますます重くなってしまった。 「ちょっと用事がある。後で」 「皆様はこちらへどうぞ」 中に入ってすぐタバサが一行から離れ、残りの面々は老執事の案内の元、客間に通された。 その間、まるで物音がしなかった。屋敷は大きいのに、どうやらほとんど人がいないらしい。 「申し遅れましたが、私はこの屋敷の執事を務めておりまするペルスランと申します。皆様方はシャルロットお嬢様のご友人であらせられるのですか?」 「ええ、私はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。タバサの親友で、ほかのみんなもそれなりに友達よ」 一番彼女と仲のよいキュルケが代表して返事をする。意図的に『タバサ』の名を使って。 ペルスランもそれに気がついたようだった。 「そうですか……お嬢様は『タバサ』と名乗っているのですか」 ため息をつく執事。 「一つお聞きしますが、あなた方はお嬢様のことを特に何も知らないのでしょうか」 「私はほんの少しだけ。もしかしたら覚えておいででないでしょうか。私はモンモランシー・マルガリタ・ラ・フェール・ド・モンモランシ。かつてはここラグドリアン湖の対岸に居を構えていたものです」 「おお! あのモンモランシ家の。覚えておりますとも。お会いしたのは一度だけでしたが、そうか、あのときのお嬢様でしたか。いやはや、大きく、お美しくなられて」 「こちらはタバサを見ても全然気がつきませんでしたわ。恥ずかしながら」 「それは無理もあるますまい。あなたの覚えていられるお嬢様は、今とはまるで違っていたでしょうから」 「そうなの?」 合いの手を入れるキュルケを見て、ペルスランは一瞬目を下に下げ、そして毅然とした様子で顔を上げた。 「お嬢様が何も知らないはずの親友をここに招待したと言うことは、かまわないと言うことなのでしょう。お教えします。モンモランシ様が知らぬうちに、この家に何があったのかを」 そしてまた一礼。 「その前に、茶菓など用意いたしましょう。申し訳ありませんが、充分な夕食はご用意する間がありませぬ。どうしても長いお話になりまするゆえ」 「かまわないわ。タバサもこれを見込んでいたと思うし。道理で日が落ちかかっているのに途中で食事取らせるはずだわ」 キュルケの言を受けて、老執事は退室した。 ワインと菓子を肴に、老執事の長い話は続いた。その内容は、陽気なキュルケが落ち込むほど重いものだった。 王家の争い、その間で心を狂わされた母親。そんな相手に母のために仕えるシャルロット……タバサ。 悲しい話だった。 タバサが戻ってこないわけも察しが付いた。母親と会って、そして……話のとおりに拒絶されたのだろう。落ち込んでいるに違いなかった。 後で慰めに行ってあげるか、とキュルケは思った。 だが、実はそれは間違っていた。タバサに落ち込んでいる暇など無かったのだ。 「ルイズ、なのは」 「ん……誰よ……タバサ? あ、シャルロット、かな……」 「タバサでいい」 「どうしたのですか、こんな夜中に」 屋敷の寝室で寝ていた二人を起こしたのは、タバサだった。 「大事な話がある。少しつきあってほしい」 その表情は、痛々しいくらいに緊張していた。 ただ事じゃない、と、すぐにルイズにも判った。 「なのは、いい?」 「ご随意に」 確認するルイズ。使い魔に異論のあるはずがない。 着替えた後、二人はタバサに連れられて屋敷の裏手へと歩いていった。少し離れたところにこぢんまりとした離宮のようなものがある。 その離宮前の中庭に、何者かが佇んでいた。 すらりとした姿勢の、長い金髪をたなびかせる、若い男に見えた。 だが、それが唯の若者ではないことを示す証が一つあった。 双月の明かりの中、かすかに見えるその耳が、人のものより尖っていた。 それにルイズが気がつくのと同時に、ルイズは妙な違和感を感じた。 それと同時に、なのはの顔が一変する。優しい姉のような顔から、戦士の顔に。 「結界……」 そう一言言ったまま、すっとルイズをかばうように前に立つ。 それを見届けたかのように、眼前の男は口を開いた。 「ご苦労様でした。あなたはもうおやすみなさい。ここから先に関われば、命の保証はいたしません」 そういわれたタバサは首を左右に振る。 「そうはいかない。見届けるのは私も同じ。友達を売るような真似をした私の義務」 ルイズは混乱していた。何、今のやり取りって。それに目の前のあの男の人……ひょっとしてあのエルフ? ルイズは一歩下がったタバサの首根っこを捕まえた。 「ちょっと! どういう訳なのこれ!」 「ごめん。任務とはいえ、あなたたちを売り渡すような真似をした」 無表情なのに、ルイズにはその顔が泣きそうな顔に見えて、思わず毒気を抜かれていた。 「任務、ね……だいたいの事情は執事から聞いたわ。今回もそうなの?」 無言で頷くタバサ。 そんなやり取りを背後に、なのははじっと目の前のエルフを見つめていた。 そしてエルフは口を開く。 「お初にお目に掛かります。私はネフテスのビダーシャルと申します。異界の方よ」 「高町なのはです」 名乗りに名乗りで返すなのは。その様子に、ルイズは少し意外に思った。 なのはが緊張を解いていない。 それれどころか、いつの間にかレイジングハートを左手に持っている。 これが彼女にとっての臨戦態勢にあたることを、ルイズは理解していた。 「私からは念のため一つだけお聞きしておきたいことがあります」 「何ですか」 どんどん緊張が高まっている。タバサは逆に違和感を覚えはじめていた。 館に着いた後、タバサは嫌々ながらもなのは達を彼に会わせるための相談をした。 その時感じた印象は、エルフというのはある意味極端な平和主義、博愛主義的な人物だと言うことだった。約定を重んじ、こちらから手を出さない限りは決して手を上げない、そんな印象を強く受けた。 世間のエルフ評がいかにいい加減なものか、戦地で一敗地にまみれた偏見が混じっているかがよく判るものだった。 なのに今の彼からは、まるで猛々しい戦神のような印象を受ける。 どちらが本性なのかと混乱するほどに。 そしてエルフの人物は、意外な言葉を口にした。 「あなたはテスタロッサを知っていますか」 「……!」 お互いそれで充分だった。なのはの反応を見た瞬間、温厚そのものだったビダーシャルの形相が一変した。 「ならば死んでもらいます、シャイターンよ!」 同時に地面が盛り上がり、土の拳となってなのはに打ち掛かる。迎え撃つは夜を照らす閃光と、 「素直に話し合う気、ないのかな……」 今までで一番きつい目をした、戦装束の使い魔だった。 前ページ次ページゼロと魔砲使い