約 1,185,230 件
https://w.atwiki.jp/meidaibungei/pages/155.html
2006年05月09日(火)22時34分-逢風 Welcomeのプレートがさがった飴色の木のドアを押し開ける。さすがに午後三時、広くはないがカントリー風に装飾されたどこか可愛らしい店内は閑散としていた。カランカランというベルの音にかぶさる「いらっしゃいませー」の声。 小走りで駆けつけてきたウェイトレスが、僕の顔を見て「あっ」という表情になる。が、それも束の間のこと、彼女はすぐウェイトレスの顔に戻り、 「一名様ですね。どうぞこちらへ」 と言って、僕を店の奥へと導いていく。 案内されたのは、光の差し込む窓側の席。ニスを塗られてつやつや光る正方形の木のテーブルを間に挟んで、編み上げたバスケットのような椅子が二つ、向かい合って置かれている。見た目よりずっと丈夫なその椅子の一方に腰を下ろすと、先ほどのウェイトレスがメニューとおしぼりと水の入ったグラスを白いトレイに載せて運んできた。それらが手際よく目の前に並べられていくのをぼんやりと眺めながら、僕は近くて遠い記憶の中へと吸い込まれていく。 そう、あの日も僕はこの席に座っていた。 *********************************** あの日は、半年近く付き合った彼女にフラれてちょうど一週間経った日曜日だった。 失恋以来、全てにやる気を失って抜け殻のように過ごしていた僕を見かねて、友人たちが僕を遊びに連れ出した、その帰路のことだった。「元気だせ」だの「泣きたきゃ泣け」だの、それができないから困ってるんだと言い返したくなるような台詞を目一杯浴びせられた後に皆と別れ、一人駅に向かっていると、突然大雨が降ってきた。生憎傘は持っていなかったし、駅まではまだ十五分ほど歩かなければいけない。ゲーセンだのカラオケボックスだのとあちこち連れ回されて疲労していた僕の足では当然走る気にもなれなくて、雨宿りついでに一休みしようと近くの喫茶店に飛び込んだ。玄関に立ち、運よくバッグに入れていたスポーツタオルで身体を拭きながら、僕はこの喫茶店がよく知っている店だということに気が付いた。 ―――彼女との映画鑑賞の帰り、何度か立ち寄った店だった――― いつの間にか僕は席に案内され、メニューを前にしていた。湯気の立ちそうなおしぼりを手で弄びながら、規則正しく並んだ文字に目を走らせていくうち、僕はふと思い出してデザートのページを開いた。その六文字は変わらずそこに載っていた。「チーズケーキ……370円」と。 彼女はこの店に来ると、いつもチーズケーキを注文していた。そのことに気付いたのは彼女と三度目にここへ来た時で、そんなに何度も頼みたくなるほどおいしいのかと気になったが、男の僕が甘いもの、しかも彼女と同じものを頼むなんて、なんとなく気恥ずかしくてできなかったのだ。とはいえ、やっぱり気になって、彼女に分けてもらった一口ばかりじゃ足りなくて、彼女と同じサイズの、同じチーズケーキを食べてみたいと思っていた。そう、次に来た時こそは自分もチーズケーキを注文しようと思っていたのだ。あの時は。 「……チーズケーキを」 気付けば僕はメニューから顔を上げないまま、無機質な声でそう注文していた。ウェイトレスがさらさらとペンを動かしているのを気配で感じる。無意識に自分の口から出ていた言葉に、僕は少なからず動揺していた。 「ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」 「……はい」 頷くのに少し時間がかかった。 「少々お待ち下さい」 どこかで聞いたことがあるようなよく通る声を残して、そのウェイトレスは厨房の奥へと歩いていった。 窓の外、色とりどりの傘をさした人たちが通り過ぎていく。灰色の空に浮かぶ信号機の赤が、やけにはっきりと目に映る。交差点を右折してきた大型トラックが盛大に水しぶきを撥ね上げ、歩道を駆け回っていた子供たちがわあっと悲鳴を上げる。 雨はなかなかやみそうにない。僕は窓ガラスを流れる水のカーテンを眺めながら、小さく溜息をつく。 「お待たせいたしましたー」 不意に、今の空に似つかわしくない明るい声がして振り向くと、先ほどのウェイトレスが二枚の小皿をテーブルに並べているところだった。一枚の小皿には、彼女がおいしそうに口に運んでいたものと寸分違わないチーズケーキ。もう一枚には、注文したおぼえのないホットコーヒー。一瞬の当惑の後、僕は勢いよく顔を上げた。 「あの……」 間違ってますよと言おうとした途端、ウェイトレスは無言のまま伝票を僕の顔の前に広げて見せた。右上のところに銀色のクリップが付いていて、薄桃色の小さなメモ用紙がとめられている。そこには小さくて丸っこいけど整った字で「コーヒーは私のおごりです」と書いてあった。何が起こったのかよくわからず、ぽかんと口を開けた僕に向かって、彼女はにっこり微笑んだ。 「ごゆっくりどうぞ」 窓の外は、相変わらず雨が降っていた。 僕はぼんやりしたままチーズケーキを少しすくって口に入れた。舌の上で溶けていく、まろやかな甘み。かといって甘すぎもせず、レモンがしぼってあるのだろうか、どこかさわやかな味がした。ホットコーヒーには、なんとなく、ミルクも砂糖も入れずに飲んだ。ほろ苦さと熱が、雨に濡れて少し冷えた身体にじんと染み渡る。 不意に指先がしびれたように震えた。カップから立ち上る白い湯気が大きく揺らいで、だんだん目の前が見えなくなる。 彼女と別れてから初めて、僕は声を上げて泣いた。カップに添えられた銀色のスプーンが、いつの間にか雲間から顔を出していた太陽の光を反射して、白く輝いていた。 *********************************** その時のウェイトレスが、一年前大学の授業で一緒にグループ発表をした矢島さんだったことに気付いたのは、その日の帰りの電車の中だった。くじ引きで決められた僕らのグループは運悪くリーダーシップのとれない人間揃いで、誰からともなく慌てて発表の準備を始めたのは例の如く発表一週間前だった。同じグループの人間とまともに会話したのは最後のまとめの時くらいしかなかったし、教え合った携帯番号も事務連絡以外の用途で使用することはなかった。そんな状況だったから、グループの一員であった矢島さんのことも、顔を見てもすぐに思い出せなかったのだ。 あの日以来、僕はこの店によく出入りするようになった。 「ご注文はお決まりでしょうか?」 彼女―――矢島さんが僕の傍らに立ち、事務的な口調で訊ねる。 「チーズケーキとホットコーヒーを」 僕ももう決まり文句となったその言葉で返事をする。 「かしこまりました。少々お待ち下さい」 他の客に見せるのとまるで違わない営業スマイルを投げかけて、彼女は僕に背を向ける。 ふと背中越しに視線を感じて首をめぐらすと、近くのテーブルに座っていた女子高生三人組が、気まずそうに目を逸らした。きっとまた「なんであの人、梅雨ももう終わるのにホットのコーヒーなんだろう」とでも噂していたんだろう。でも、こんなことにはもう慣れっこだ。 ここに通い、毎回同じものを注文する僕のことを、彼女―――矢島さんがどう認識しているのかは知らない。玄関に立つ僕を見つけると必ず「あっ」という表情をするところを見ると、あの雨の日曜日のことを憶えているに違いない。しかし、僕と大学のグループ発表で一緒だったことや、デートで三回この店に来ているということまで憶えているかはわからなかった。彼女がこの店で僕に特別な待遇をすることも、あの日以来一度もなかった。唯一、僕を他の客と違う目で見ていることの証明である「あっ」も、後に続くのが「あっ、また来てくれたんだ」なのか「あっ、また来たんだ」なのか、僕には未だに判別できていない。 もう一度同じ講義室で授業を受けることは、少なくともこの半年間はなさそうだし、たとえ偶然どこかで会ったとしても、挨拶すら交わさずすれ違うのかも知れない。少し寂しいような気もしたし、それでいいような気もした。 「お待たせいたしましたー」 彼女がいつも通り二つの小皿を運んでくる。いつものチーズケーキと、いつものホットコーヒー。使わないことがわかっているミルクとスティックシュガーに、銀色のスプーンを添えて。 「ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」 「はい」 僕が頷くと、彼女はテーブルの隅に置かれた透明な筒の中に「会計 ¥620」と書いた紙をまるめて差し込んだ。 「ごゆっくりどうぞ」 彼女はまた僕から離れていった。事務的だけど明るく、よく通る声を残して。 窓の外、額に汗をにじませた人たちが、うつむき加減で足早に通り過ぎていく。点滅する青信号を見て、一組の親子が慌てて道路に駆け出す。横断歩道を越えて交差点の真ん中で立ち往生していたワゴン車が、ぼーっとしているのか信号が変わっても発進しない前車に苛立ち、クラクションを鳴らす。 どうして急ぐ必要がある? 今日はこんなにいい天気なのに。 白い湯気の立つホットコーヒーを一口飲む。ほろ苦さと熱が、日射しに火照った身体にすうっと染み渡った。 サークル賞用の作品です。 ちょい短めですかね…f(^-^;) とりあえずよろしく☆
https://w.atwiki.jp/hangugo/pages/95.html
韓国語 커피 関連語 마시다
https://w.atwiki.jp/resortworld/pages/69.html
アロマコーヒーハウス 【建設可能レベル】15 【価格】120000$ 【初期売上/蓄積時間】3000$/6時間 【電力消費量】70 【所要人数】10人 【サイズ】5x5 【建設経験値】180 【修理経験値】 【破壊経験値】 【建設時間】2日 【設置可能地形】 【アップグレード】 回数 必要費用($) 売上($) 1段階前との比較 1 2 3 4 5 【アップグレード所要時間】 【アップグレード経験値】 【コメント】 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/oyatu1/pages/1095.html
──地下鉄はあまり好きになれない。 ──ときどき車窓の向こうに ──黄泉の国が見えそうな気がするから。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『コーヒーブレイク/カネフォーラ』 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 喉が渇いていた。 この電車に乗り換える時に、何か買っておけばよかったかも、と少しだけ思う。ま、いまさら後悔しても手遅れだけど。 白々しい蛍光灯の光で照らされた車内。充満する猛烈な騒音に閉口しながら、私は軽く右手を曲げて腕時計で時間を確認する。このペースなら、こなたのバイト先には午後のシフトが終わる前に到着できそうだ。かれこれ百年近く前に、この路線を建設するのにかかわった多くの人たちに感謝したくなる。 日本、というより極東地域におけるもっとも長い歴史を持つこの地下鉄は、一九二七年に浅草~上野間で営業運転を開始した。当時のポスターでは『東洋唯一の地下鉄道』というキャッチコピーが使われたという。もしそれを考えた人が、今や十数本の地下鉄が縦横に走る現在の首都圏の様相を見聞したら、果たしてどんなコピーをひねり出してくれるだろうか。 平日のラッシュアワーであれば、おそらく呼吸困難を覚えるくらい混雑するのだろうが、幸い今は日曜の午後ということもあってか、混み具合はそれほどでもない。窓の外は当然のことながら真っ暗闇。渋野あたりまで行けば少しは地上の風景も楽しめるはずだが、残念ながら今日はその予定はない。 それでも、目の届く範囲のほとんどの席は埋まっている。立っている人も何人か。なぜか自分の右隣だけは空席になっているけど。 横向きの長いバケットシートには、さまざまな人たちがそれぞれの思いを抱えて座っている。たとえば、まだ十代前半と思われるカップル。何年たってもかしましさだけは抜けないおばさん達。ひたすら読書にふける初老の紳士。なにやら汗をかきながらノートPCと格闘しているビジネスマン。ベビーカーに乗せた赤ちゃんを幸せそうに眺める若い夫婦。さらには何人かコーカソイド系、アフリカ系、東南アジア系と思われる人の姿も見える。このあたりは、さすが国際都市東京とでも言うべきか。 地下鉄特有の騒音だけはどうしようもないが、それでもシャカシャカとヘッドフォンを鳴らす莫迦、通路の真ん中近くまで汚い足を投げ出して眠りこける莫迦、大声で携帯電話を怒鳴りつけている莫迦、そういった連中が目の届く範囲にいないだけでもマシなのだろう。 飲み物を買うことをためらったのは大した理由じゃない。地下鉄だって、こなたに半ば無理やり押し付けられた回数券がなければ、あえて利用しようとは思わなかったはず。つまり、今日の財布はかなり軽いのだ。こんな遠出をする予定じゃなかったから。 たまには、自分もバイトのひとつくらい、と思うこともないわけじゃない。みんなと帰り道に寄るマクドナルド、たまに出かける時の電車代、はやりの洋服、きれいな靴、かわいい小物、教養を深める本など、お金の使い道は果てしないから。でもそれは、できる限り避けたい道でもある。 まだ高校生だから、学業が忙しいからと言うのも、まるっきりウソじゃない。だからといってお小遣いをせびるわけにもいかない。ふたりの娘を私立の高校に、さらに上の娘を大学にまで通わせているのだ。家計が決して楽ではないことくらい容易に想像がつく。 バイトがしたい、と言えば、きっと父は反対しないだろう。ただ、ほんの少しだけ悲しそうな顔をして。おそらくそれが、私にとって最大の障害なのだと思う。 だからせめて高校生の間くらいは、なんとかやりくりできる範囲で人生を楽しむように努力したい。やがて通うことになる大学、それも私立大学ともなれば、否応なしに頼らざるを得なくなるのだから。 これもまた、自己満足という名の偽善にすぎないのだろうか。 さて、と。車内の行先表示に目を向ける。もうすぐ目的地か。それにしても、なあ。 うーん。 うーん。 うーん。 ……。 ……。 ……。 困った。 本当に困った。 なんか勢いでここまできちゃったけど。じゃあ、こなたに実際に会って。いったい何て言えばいいんだろうか。仕方がないから、軽くシミュレーションでもしてみるか。そうだなぁ……。 たとえば、私と付き合ってください、とか……? たとえば、こなたのことが好きっ、とか……? たとえば、お嬢さんを私にください、とか……? いや、それだけは絶対に間違ってる。それはこなたのおじさんに言う台詞だ。 それで、もしも、もしも、よ。 付き合おう、とかいうことになったら。 やっぱ、デートとかするのかな。 早起きして可愛いお弁当作ったりとか……いやそれだけは無理。 ってか、むしろそれはあいつの得意分野だし。 じゃあ、とりあえずいっしょに出かけて。 どこか歩いてみたり。 喫茶店でお茶してみたり。 おバカなトークに花を咲かせてみたり。 ……って、これじゃいつもと変わらんな。 じゃ、じゃあ……手、つないでみたり。 それも指なんか絡めてみたり。 それで別れ際には、 ぎゅーっと抱きしめたり。 そのうち夜景をバックに、 キス……したり。 それで、ある日、あいつの部屋に上がりこんで。 ゲームしたり、本読んだり、そのまま泊まったり。 それで、なんか妙に盛り上がって。 そのままひとつのベッドに……。 ちょっと待て。女同士でも、その……エッチとかあるのか。 男の子とかなら、まだわかるんだけどな。 要するにアレよね、入れて、出すわけでしょ。 でも、こなたにそんなのついてる訳ないし。 だから、そうだよね。 きっとこんな感じで、指とか掌とか……それと、 舌……とかが……。 ……わっ、わわわっ。 ス、ストッープッ! 今のなし。なしなしなしっ! やばいよ、超リアルに想像できるよ。 しかも意外に悪くないかも。 おまけに、なんかこう……ドキドキしてきた。 って、まだ付き合うとかいう以前の段階なのに、何考えてるんだ、自分。 軽く頭を振りながら、妖しげな方向に全力疾走を始めたシミュレーションを中断する。さっきから何度やってもこの調子。これでは、こなたと会うことができてもロクな結果になりそうにもない。あーあ、もう一度最初からやり直すか。 たとえば……。 「さっきからひとりで何やってんだ?」 「うひゃう!」 急に声をかけられ、私は現実へと引き戻された。 ──胸の鈍い痛みとともに。 ◇ 「なー、ここ空いてっか? 空いてるよなっ」 私の返事も待たずに、声の主は私の右隣の空席に座り込んだ。 「おま……なんでこんなところにいるんだ?」 彼女の名前は日下部みさお。私との仲は高校の同級生、というよりは中学からずっと同じクラスという、もはや腐れ縁的レベルにまで達している。背格好は私と似たようなものだが、部活で陸上をやっているだけあって、やや脂肪少なめで筋肉多め。おまけに思考パターンにいたるまで見事に体育会色に染まっている。ショートカットに八重歯、それがよく似合う笑顔がウリという元気いっぱいなヤツだ。ただ、どうにも飽きっぽいのが弱点なのだけど。 「柊は冷てーなー。愛ゆえに決まってんだろ」 「ストーカー行為は犯罪だぞ」 「やだなー。軽いジョークだよ、ジョーク」 にこやかな笑顔を浮かべながら日下部は答えた。そう言いながら、鈍い銀色をはなつ杖を両脚で器用にはさみこむ。 「なんで杖なんか……怪我でもしたの。部活とかで」 「まあ、そんなとこ。大したことはないんだけどさ、念のため、かな。たまにみしっと痛んだりするし」 「だったら、家でおとなしく寝てたほうがいいんじゃないのか」 「いやー、そりゃそうなんだけど。なんかこう、もったいないじゃん。せっかくの休日を寝て過ごすってのも」 「妙なところでアクティブだな。ところで今日はひとりなんだ。峰岸は?」 「今日は……デート。兄貴と」 「そっか。あんたもいろいろと……けほっ……大変ね」 なんとなくむせてしまう。やっぱり何か買って飲むんだったと、今日何度目かの後悔を繰り返す。 「ん、喉の調子でも悪いのか」 「まあね」 すると日下部は、ブルゾンの左右のポケットからひとつずつ何かを取り出すと、厳かな口調でこう言った。 「よろしい、私は命をふたつ持ってきた。そのひとつをお前にやろう」 「それ、何かのネタなのか」 「え、これって常識じゃね?」 「いったいどこの国の常識だよ」 激しい頭痛とめまいを覚えながら私は答えた。なんか知らんがこいつ、だんだんこなたに似てきたな。 「そういえばさー、白雪姫ってあるじゃん?」 「白雪……姫?」 「そそ。知ってっか? 白雪姫が王子のキスで目覚めるってのは……」 「ディズニー映画の改変なんでしょ。知ってるわよ、そのくらい」 「ウソ、マジで。これって世間の常識だったのか」 「あ、あたりまえでしょ。そのくらい」 あとでみゆきに何かお礼しとかなきゃ。内心で冷や汗をぬぐう。あくまでも気分の問題だけどね。 すると今度は、左手で缶コーヒーを持ち上げしげしげと眺めながら、日下部がこんなことを言い出した。 「じゃあこれは知ってっか? レギュラーコーヒーの豆は基本、アラビカ豆の系統だけど、缶コーヒーやインスタントコーヒーの豆はカネフォーラっていうんだ」 「へー、そうなんだ」 まさか日下部の口からコーヒーの、しかもずいぶんとディープな話題が飛び出すとは。 「じゃあモカとかケニアってのは、実は全部同じ種類なの?」 「そゆこと。レギュラー系の名前は産地なんかから付けられてるだけ。その土地の気候風土によっても味が変わるから、ってことらしいぜ」 「そうだったのか。そんなこと今まで考えたこともなかったな」 「ふふふふ、驚け敬え。話はまだまだ続くぜー」 そんなことをつぶやいてから、日下部はさらに言葉を重ねていく。 「缶コーヒーの表示はさー、『コーヒー飲料などの表示に関する公正競争規約』に基づく区分で、製品内容量百グラム中の生豆使用量によって、三種類に分けられるんだな」 「へえ」 いろんな意味で意外だった。こいつの口からこんな仰々しい台詞が出てくるとは思わなかったし。そもそも『公正競争規約』ってなんだよ。 「コーヒーは五グラム以上、コーヒー飲料は二.五グラム以上五グラム未満、コーヒー入り清涼飲料だと一グラム以上二.五グラム未満って感じだ」 「ずいぶん詳しいな」 「まーな」と、日下部は自慢げに鼻をこする。 「製品に乳固形分を三%以上を含むものは『乳及び乳製品の成分規格等に関する省令』に基づき『乳飲料』になっちまう。カフェオレ、カフェラテ、コーヒー牛乳なんかがそうだ」 「……ほんとに詳しいな」 なんだろう、この微妙な敗北感は。 そんな私の思いも知らず、日下部は右手でプルタブを引き開けると、ごくごくと美味しそうに缶コーヒーを飲み始めた。そして顔を身体の正面に向けながら、誰に話すでもなく口を開いた。 ──再び胸が鈍く痛むのだ。 「そもそも缶コーヒーって日本の発明なんだぜ」 「あー、それ知ってる。UCCでしょ」 「まあ、普通はそう思うよなー」 ニヤニヤと笑みを浮かべながら日下部がちゃちゃを入れてくる。 「え、違うの?」 「歴史的には、UCCが缶コーヒーを発売する四年前、一九六五年に開発された『ミラ・コーヒー』が世界初の缶コーヒーって話」 「へー、それは知らなかった」 「もっともいろいろあってすぐ製造中止になったらしいから、あんまり知られてないんだよな。だから柊の認識もそんなに間違っちゃいないぜ」 再び缶コーヒーをあおってから、日下部は続けた。私もつられて缶コーヒーに口をつける。甘ったるくてチープな味が口の中に広がり、カラカラに干からびた喉が癒されていく。まあ、たまにはこういうのも悪くないか。 「で、UCCな。一九六九年に上島珈琲が、コーヒー牛乳にヒントを得て日本初のミルク入り缶コーヒー『UCCコーヒー ミルク入り』を発売した。当時は瓶入りのコーヒー牛乳が外出先で購入できる一般的なコーヒー飲料だったけど、缶コーヒーの登場によって人々は自由にコーヒー飲料を持ち歩けるようになった。ただしアレは乳固形分の比率が高いから、実は『乳飲料』なんだけどな」 「さっきの『なんとか省令』ってやつね」 「そーそー。コーヒー五グラム以上というコーヒー規格の缶コーヒーは、一九七二年に発売されたポッカレモンの『コーヒープレミアムタイプ』なんだ」 「ほー」 「でもって、一九七三年。コーヒーは温めても冷やしても飲まれることに目をつけたポッカは、冷却と加熱の切り替えが可能な自販機を開発したわけ。これで、夏の飲み物だった缶コーヒーは一年中飲まれるようになったんだ」 「それまでは冷たい缶コーヒーしかなかったわけか。あんまり真冬には飲みたくないわね」 「そりゃそーだ。ポッカさまには感謝しなきゃ」 そう言って日下部は、飲み終えた缶コーヒーを座席の下に置きながら、人なつっこい笑顔を私に向けた。 「じゃあこれはどうよ。銀座線は日本で……」 「日本で最初に出来た地下鉄、でしょ。それだって一般常識だろうに」 「ちっ、ちっ、ちっ。私の話はそこからさっ」 人差し指を立てて軽く左右に振りながら、日下部は再び口を開いた。 「銀座線は最初の地下鉄だったから、他の線に比べ乗り場が浅くて、田原町や末広町、虎ノ門、外苑前、あとは……ま、いいか。とにかくほとんどの駅じゃ、階段を降りるとすぐに改札口があって、改札口の先にすぐホームがあるって感じになってんの」 「……ああ、そういえば、そうかも知れない。そんな気がする」 「それとさ、相対式ホームの駅だと、線路の間の柱がリベット組みの鉄骨なんだよな。これが日本で初めての地下鉄の歴史ってヤツらしいぜ」 「へえ、それは気がつかなかった。次の駅で気をつけて見てみようかな」 「そうしてみて。あ、じゃあ、こういう話はどう?」 なにを思いついたのやら。一段とイタズラっぽい表情を日下部が浮かべる。それにしてもこいつ、ずいぶんと楽しそうじゃないか。 ──なんだろう、この胸の鈍い痛みは。 「最初の計画では、新橋から浅草まで一挙に開通させるはずだったけど、関東大震災後による不況で資金不足になっちゃって。それで、当時は日本一の繁華街で高収益が見込める浅草から上野までの建設だけ先行させたの。開業当初は物珍しかったから、乗車時間わずか五分の区間に乗るため二時間待ちの行列ができたんだって。その後の経営も順調で、一九三四年──つまり昭和九年までに全面開通したの」 ちょっと待て。 「それと、当時は新橋までは東京地下鉄道、そこから先は東京高速鉄道って別々の会社だったのね。だから、新橋には実は地下の駅がふたつあったの。もっとも片方の駅は現在では使われてないけど。そういうわけで、普段そこは立ち入り禁止。で、たまにイベントの時だけは一般の人も見学の為に入れるみたい。そんな事情があるから、鉄道ファンなんかの間では『幻の新橋駅』って呼ばれてるんだって」 何よ、これ。 「それから、『劇場版機動警察パトレイバー2 The Movie』ってあるでしょ。あれの後藤隊長と荒川さんの最後の対決のシーンって知ってる? その場所にも使われたんだよ」 もう私は答えない。さきほどから抱いていた疑念は、すでに確信へと変わっていたから。 ふーっ。 長く長く息を吐く。さらに三回深呼吸して気分を落ち着かせてから、考えに考えた台詞を口にする。 「いい加減、正体をあらわしたらどうなの。あんたが日下部じゃないってことぐらい、莫迦でもわかるわ」 「……どうしてそう思うの?」 きょとん、とした顔。 「日下部はウンチクをたれるタイプじゃないの。そもそもアニオタじゃないしね。それに……」 「それに?」 小首を傾げる。 「あんたはさっき、缶のプルタブを右手で開けてたわよね。でも日下部は左利き。だからいつも左手で開けるのよ」 「あ、そっか。それは気がつかなかったよ。やだなぁもう、少し調子に乗りすぎたみたい」 にぱっと笑顔を浮かべる日下部……じゃない。日下部の姿をした何か。 「ごめんなさい。どうしてもおねーさんに一度会ってお話してみたかったの。ひかるがいつも気にしてるから。そして、どうやら似たような境遇みたいだし」 私の沈黙を肯定と受け取ったのか、にこにこと笑いながら彼女は続ける。 「なんか、ひかるがいろいろ言ったみたいだけど、あんまり気にしないで。おねーさんはおねーさん達のことを考えて行動してほしい。あたしは強制とか好きじゃない。だってこれって、人間の信条とか生き方にかかわる問題だと思うから」 そう言ってから、ふと表情に暗い影が差す。 「ひかるとふゆきは、今はあんな風になってるけど、きっと時間が解決してくれると思う。実を言うと、おねーさん達がふたりになにか変化をあたえてくれればなっていう期待も、少しはあった。認めちゃいます。でもね、やっぱりよくないと思ったな。さっきの──高良みゆきさんだっけ? あの人の行動には一片の私情もなかった。そして喪失という高い代償まで支払って。あれこそが高貴なる魂、とでもいうべきものなのかな」 先ほど喫茶店『地球の緑の丘』で別れた、晴れやかな笑顔のみゆきの瞳に満たされた、深い哀しみの色を私は思い浮かべる。 「そうね、そうかもしれない。みゆきには本当に申し訳ないことをしてしまったわ」 「でも、それを重荷に思ってはいけないと思うの。背中を押されたことを言い訳にしてはいけないと思うの。全ての行動の最終的責任は自らが負うべき。でなければ、周りに責任を押し付けて生きるだけの愚か者になってしまう。あたしはそんな風に思うんだ」 不思議なことに、日下部の仮面を外した彼女はぐっと知的な雰囲気を増してきた。もっとも、話の内容とその口調とがまるっきりかみ合っていないのがアレだが。そんな風変わりな少女に対し、どういうわけか私は興味と親しみを覚え始めていた。 「ところで、あなたのことを私はなんて呼べばいいのかしら」 「うーん、どうしようかな。別に教えてもいいけど、それじゃ少しつまらない」 おとがいに手を当て、わずかに考える仕草を見せてから。 「そうだ、ひかるかふゆきに聞いてみてよ。たまには、あたしのことも思い出してもらいたいから。あ、でも二人とも、あたしのことなんか忘れちゃってるかも。そうだなー、身長一五〇センチくらいの、ちょっぴり発育不良で片足の不自由な中二の女子に心当たりがないか、って聞いてみて。そう言えば、きっと思い出してくれるから」 にっこりと微笑んだ。まるで地上に舞い降りた、いや、迷える魂に手を差し伸べるために地下世界を訪問した大天使のような微笑だった。しかしそれもすぐに崩れてしまい、今度は何か探るような顔で私を見つめてくる。 「あ、そうだ。あたしからもおねーさんに質問があるんだけど、いいかな」 「私に答えられることなら」と予防線を張りながら私は答えた。この娘にもわからないことなんてあるんだろうか、などと思いながら。 すると、彼女は予想もしない質問を投げかけてきた。 「中学と高校って、どう違うの? 高校に通ってよかった、と思う?」 ふたつの瞳が私の心を射抜く。 果たして、これほどまでに返答に窮した質問を今まで受けたことがあっただろうか。 「ごめんなさい、ヘンなことを聞いちゃって。ただ、とってもうらやましかったから。一度でいいから、女子高生ってモノになってみたかったなー」 うっとりと夢見るような表情を浮かべる少女。 許されない。 このどこまでも真っ直ぐな心根の問いに、嘘も逃げもごまかしも許されない。 私はいったい、何と答えればいい? だけど。 「ああ、ごめんなさい。そろそろ行かなくちゃ」 残念そうな表情を浮かべながら。 「ふたりによろしく。それから、おねーさんとお相手さん、それから高良さんにも幸運を。きっとこれから先、いろいろと大変だと思うから」 「あ、ちょ、待って。まだ話は終わってない」 立ち上がろうとする彼女を引きとめようと、思わず手を伸ばしてしまう。空になったコーヒー缶が私の手を滑り、甲高い音を立てて電車の床に跳ねた……。 たちまちいくつかの視線が集中する。床を転がっている空き缶。手を離れ飛び去ってしまったそれを回収すべく、私はあわてて席から立ち上がる。さきほどまで右隣に座っていたはずの彼女の姿は、すでに影も形もなかった。 さっきのあれは夢だったのだろうか。 そんな風に思いながらも缶を拾い上げて振り返り、先ほどまで自分が座っていた席に戻ろうとした時、まるで小さな墓標のように座席の下に置かれた、もうひとつの空き缶が目に入った。 夢や幻のたぐいじゃない。確かに彼女はここにいたのだ。つい先ほどまで。 私は通路にしゃがみこんでその空き缶を手に取ると、すでに何の気配も感じられない虚空へと視線を向けた。 ──またいつか、どこかで、必ずや再会を。 ──名前も知らない、天原先生の可愛い恋人さん。 果たして私の声は、彼女に届いただろうか。 ◇ 間抜けな音を立てて開いた電車のドアをくぐり、私はホームへと降り立った。 どうしようかと迷ったが、空き缶を両手に握りしめて街中を歩き回る図、というのはあまりにも恥ずかしすぎる。後ろ髪を引かれるような思いを感じながら、構内のゴミ箱に捨てていくことにした。 ただしその前に、二本の空き缶を床に並べ、ケータイで写真撮影しておくことにする。もちろん、誰に見せるわけでもない、私自身の記憶のひとつとして大切に保存しておくためだ。なにやら周囲の同情的な視線を感じるが、かまうもんか。 写真を撮り終えてから、あらためて缶を拾い上げ、ゴミ箱に一本ずつ放り込んだ。 ごめん。 チープな味だなんて言ってごめん。 あなたのおかげで喉の渇きも癒えたから。 そして。 私はいかにも、という感じの人々に混じって自動改札を通り抜けた。そこで、さきほどの彼女の言葉をようやく思い出し、もう一度ホームへと目を向ける。先ほどの話どおりに、線路の間の柱はリベット組みのむき出しの鉄骨で出来ていた。 それを確認すると、やや歩みを速めながら地上に出る階段へと向かった。 懐かしい光が、生命の光が見えてくる。 地下世界から地上世界へ。 黄泉の国から常世の国へと私は帰還する。 階段を昇り切って歩道へと出る。 東京都千代田区外神田。 ただし、ごく一部では別の名前で呼ばれているようだ。 聖地、秋葉腹と。 しばしの間、照りつける陽光を一身に感じて。 それから私は再び歩き出す。 さあ、行こうか。 私たちの運命が待ち受ける場所へ。 (Fin) コーヒーブレイク/キャラメル・ラテへ コメントフォーム 名前 コメント (๑ ◡ ๑)b -- 名無しさん (2023-06-24 07 47 09) 投票ボタン(web拍手の感覚でご利用ください)
https://w.atwiki.jp/llss_ss/pages/76.html
元スレURL かのん「コーヒーどうぞ」 概要 かのんコーヒー Liella!の反応 タグ ^澁谷かのん ^Liella! ^短編 ^ほのぼの ^かのハー 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/12675.html
【検索用 ふらっくこーひー 登録タグ 2010年 CD CDふ NexTone管理曲 U-SUKE U-SUKECD U-ji U-jiCD VOCALOID つみれ ふ オカヒジキ 全国配信 初音ミク 曲 曲は】 + 目次 目次 曲紹介 KarenT配信曲目 歌詞 コメント 作詞:U-SUKE 作曲:U-ji 編曲:U-ji イラスト:オカヒジキ・つみれ 唄:初音ミク 曲紹介 「ぼく」と「きみ」(と店長)のショートストーリー 曲名:『ブラックコーヒー』。 KarenTレーベルよりダウンロード販売が行われている。「Cafeでのひととき」企画で配信された作品の1つ。 KarenT配信 前作 今作 次作 NEVERLAND -君はピーターパン-CHIP TEARS E.P. ブラックコーヒー Imaging Cross Sympathy ~交差する想像共感 SIDE-M~ 流通:配信 発売:2011年10月24日 価格:¥150 レーベル:KarenT ジャケットイラスト:オカヒジキ iTunes Storeで購入 曲目 ブラックコーヒー (feat. 初音ミク) 歌詞 携帯電話を眺めて ブラックコーヒーが冷めてしまう前に 君からの連絡を待つの 心穏やかになる 午後の昼下がり やりかけの仕事は 後回しにして 「ヘイ マスター ブラックコーヒー 1つ」 出来立て コーヒー飲みながら 僕は一人 思いにふける 太陽も挨拶 いい天気 こんな穏やかな日でも 僕はいつも君を思うよ 今の君は何をしてる? 明日の君は何をしてる? 携帯電話を眺めてしまうよ ブラックコーヒーが冷めてしまう前に 君からの連絡を待つの 緩やかな風吹かれ 飛行機雲眺め カフェミュージックに 耳を傾けて 「へイ マスター ハウスミュージック 1つ」 ノリノリ 音楽聞きながら 僕は一人 音に身をゆだね 椅子に腰掛けて 深呼吸 心地よい空間でも 僕はなぜか君が浮かぶよ 今の君はどこにいるの? 明日の君はどこにいるの? 携帯電話を眺めてしまうよ ミュージックが止まってしまう前に 君からの連絡を待つの 「ヘイ マスター ブラックコーヒー 1つ」 出来立て コーヒー飲みながら 僕は一人 思いにふける 太陽も挨拶 いい天気 こんな穏やかな日でも 僕はいつも君を思うよ 今の君は何をしてる? 明日の君は何をしてる? 携帯電話を眺めてしまうよ ブラックコーヒーが冷めてしまう前に 君からの連絡を待つの 心地よい空間でも 僕はなぜか君が浮かぶよ 今の君はどこにいるの? 明日の君はどこにいるの? 携帯電話にメールが届いた ブラックコーヒーが冷めてしまったけど 僕からの返事を打つよ コメント これが1番好きです! -- 名無しさん (2011-01-04 05 45 17) 聴いてて気持ちいいです -- 名無しさん (2011-09-03 22 13 50) すきです -- 名無しさん (2013-02-03 01 24 19) ほんわかしますね!! -- 名無しさん (2013-02-06 11 57 32) はまってしまいました^^v -- 名無しさん (2013-04-14 11 27 57) ちょーはまる!ふんわりした曲すきー #9825; -- 名無しさん (2014-12-14 12 09 11) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/dgrpss/pages/721.html
――最近、苗木君の様子がおかしい。 そう気づいたのは1週間ほど前。 私は過去の失敗から、無闇に人と関わらないようにしていた。極力自分からは話しかけず目立つ行 動も避けていて、端から見れば私は『無愛想な女』といった感じだと思う。中学の頃も同様で、そんな 私に関わろうとする物好きは居なかったし――私を強引に連れ出す、年上の変わった人は居たけど ――むしろ寄せ付けないようにしていた。そしてこの希望ヶ峰学園に入った時もそれを変えるつもりは なかったけれど、彼が――苗木君がそうさせなかった。 あれは、学園の生活が始まってまだ5日目のこと。 「霧切響子さん、だよね?」 「……そうだけど、何か用? 苗木、誠君」 終礼後、皆が一斉に帰り支度を済ませてぞろぞろと教室を去る中、苗木君が私の席まで来た。彼を 見ると、少し緊張しているようだった。それならば最初から話しかけなければいいのにと思う。 「僕の名前覚えてくれてたんだ! 何か嬉しいな!」 「クラスメイトの名前くらい覚えていても別に不思議じゃないと思うけれど。 それで? 私に用があった んでしょ?」 「うん、そうなんだ。 あの、霧切さん明日の休み何か予定ある?」 「……今のところはないわ」 私は、「用事がある」と嘘をつこうとも思ったけれど、わざわざこんな無愛想な女の所まで来て話しか けてくるのだから、彼はよほどの用があるはず。そう私は思ったのだけど、それは大いにはずれてしまっ た。 「良かったら、僕と一緒にどこか出かけない?」 「……え?」 「あっ、嫌だったら別にいいんだよ!? 無理しなくても……」 「えっと、理由を教えてくれるかしら?」 彼の意図が全く分からなかった。 超高校級の幸運として、平均的な学生の中から抽選で選ばれた彼は本当にどこにでも居そうな普 通の少年だった。けれど、5日間の様子を見た所、彼は優しくて誰とでも分け隔てなく接することがで きる性格で、そこには人が惹きつけられる魅力があるらしい。学園が始まったばかりだというのにいつも 彼の周りには人が溢れ、笑顔に溢れていたのがその証拠だ。 だから彼が私を誘う意味が分からなかった。他にいくらでも誘える相手は居るのに、わざわざ話した ことも挨拶の言葉さえ交わしたこともない私を選ぶ意味が。 「霧切さんのことが知りたいと思ってさ」 「…………どうして私のことを苗木君に知られなければならないの? ちょっと唐突すぎてあなたの意 図が分からないわ」 彼の言うことは予想外すぎる。柄にもなく私は感情的になり、ついきつい言い方をしてしまった。案の 定彼は申し訳なさそうな顔をして肩を落としている。意図は分かりづらいけど、そういう感情的なものは 分かりやすい少年だと思った。 「ほら、霧切さんいつも一人でいるでしょ? 話したのだって今が初めてだし。せっかく同じクラスになっ たんだからもっと仲良くしたいと思って。 大人数が苦手なのかと思ったからほかのみんなは誘ったりし てないんだけど……ダメかな?」 「……分かった。いいわよ、別に」 今思えば、この時点で彼にかなり興味を抱いていたのかもしれない。断る理由はいくらでもあったの に私は彼の誘いを受けることにした。これまでの私だったら絶対にありえないこと。 「えっ!? いいの!?」 「ええ。 さっきも言ったけれど別に予定もないし、あなたみたいな予想外な行動をする人を観察して みるのも悪くないから」 「予想外って……そんなことないと思うけどなぁ。ていうか何で僕なんかを観察するの?」 「探偵だから。知らないことは知っておいた方がいいわ」 「そっか。霧切さんは超高校級の探偵だったね。やっぱり探偵って色んなことを知ってるものなの?」 「……専門分野とかその人の考え方によると思うわ。そんなことより、明日何時にどこへ行けばいい の? 誘うからにはどこか行く当てがあるんでしょ?」 「うん。駅前に新しくオープンしたカフェがあるんだ。そこへ行ってみない? 朝カフェっていうのがある みたいだから9時頃とかはどう?」 「カフェ……。悪くないわね。じゃあ9時前に駅に行けばいいかしら」 私はコーヒーが好きだった。私が知る限り、この学園の近くにあるコーヒーのおいしいカフェは気軽に 行くには少し遠い場所だったから駅前に新しくできたというのは、かなりの朗報だ。あとは、そのカフェ のコーヒーの味が良ければ私は常連になるかもしれない。そう考えると、少し楽しみに思えた。 「そうだ、待ち合わせなくてもさ、部屋が隣なんだから一緒に行こうよ」 「……そういえばそうだったわね」 「時間は……8時半ごろに僕が霧切さんの部屋を訪ねるってことでいいかな?」 「了解したわ。それじゃ、私は帰るわね」 「ちょっと、待って!」 「まだ何かあるの?」 「だからさ、部屋隣なんだから一緒に帰ろうよ」 ――本当に私なんかと一緒に居ようと思うなんて変わった人。 「好きにしなさい」 私は翌日彼との約束通りカフェへ行って、大体は苗木君から色々質問されてそれに答えるといった、 まるでインタビューみたいな時間を過ごした。私も、宣言通り彼を観察していたわけだけど、一週間見 て分かったこと以外に特に新しい発見はなかった。ただ、私と仲良したいだなんて、本当に変な人だ と思った。 以来、苗木君は頻繁に私に話しかけてくるようになり、彼の影響で他のクラスメイトも私に遠慮無く接 するようになった。私は中学の時のように人を寄せ付けない、ということをこのクラスでは無理だと諦め ざるを得なかった。それに、正直少しだけ心地良い、なんて思うこともあったりする。 ちなみに苗木君と行ったカフェのコーヒーは豆の種類も多く、味もなかなかのもので、私は今でもよく 通っている。 それから半年ほどが過ぎた今、苗木君がここ1週間、明らかに私を避けている。もともと人と関わらな いようにしていたから、別段気にする必要もない――と、いつもの私なら気にも留めなかった。今の私 はいつもと違った。最初気づいたときは、気の迷いかとも思ったけど、明らかに私は苗木君のことが気 になっていた。だから、人と関わらないことには慣れていると言っても、そうあからさまに彼に避けられる のはいい気はしない。 彼の行動を見張って原因を暴くことも私にはいとも容易いことだったけど、彼にはそういうことをしたく なかった。でも、訳も分からないままで状態を放置しておくことも私にはできない。 私は放課後になるのを待って、苗木君が教室を出ようと席を立つ前に声をかけた。もし、私が気づ かない内に彼を傷つけてしまっていたのだったら謝りたいと思った。 「苗木君」 彼は一瞬驚いたような顔を見せて、すぐに申し訳なさそうな表情で私を見る。彼が私から逃げるつも りだというのが、すぐに分かった。途端、胸の奥がチクリと痛む。 「あ、霧切さん。ごめん、僕ちょっと今から用事が……霧切さん?」 「何?」 「すごく、顔が怖いけどどうしたの?」 いけない。無意識のうちにやりきれない気持ちが表情に出ていたらしい。私もまだまだ未熟だというこ とね。それに、苗木君を相手にすると普段通りに振る舞えない。私は心を落ち着けて表情を抑えると 彼に直接疑問をぶつけた。 「……私あなたに何かしたかしら?」 「え? 何かって?」 「あなた私を避けているでしょ? 何かあなたを怒らせるようなことをしたのなら謝るわ。遠慮なく言って ちょうだい。それと、今から用事があるなんて嘘が私に通用すると思ってるのなら、私も舐められたもの だわね」 私は捲し立てるように話しながら、かなり後悔していた。彼を傷つけたのなら謝りたい――そう思って 話しかけているのにどうしてこんなきつい言い方しか出来ないのか。彼に表情を指摘された時に私が わざわざ心を落ち着けさせた意味がないじゃない。ほら、あんなに青ざめた表情で苗木君が慌ててい る。 「そ、そんな! 舐めてるなんてありえないよ! 確かに嘘はついたけど……ごめん。でも、霧切さんが 僕に何かしたとかそういうのじゃないから気にしないでいいよ」 「じゃあ、どうして私を避けるの?」 「それは……ごめん、言えない」 「そう。もう、いいわ」 私は暗い顔をして俯く苗木君を置いて教室を出ると、さっさと自分の部屋へ帰った。あのまま苗木君 と話していたら、もっと彼を傷つけるかもしれないことが怖かった。そして、苗木君が私を避けているこ とを否定もせず、理由も話してくれなかったことが悲しかった。 私はベッドへ倒れこんだ。本当に、訳が分からない。苗木君は嘘をついてまで私を避けようとするけ れど、私が彼に何かしたわけじゃないという。だとしたら、なぜ彼に避けられるのか?私の頭の中は苗 木君に避けられる理由のことばかりぐるぐると考えを巡らせていた。 「事件や他の人のことは推理できるのに、一番わかりたい人のことは分からないなんて皮肉なものね……っ――!」 驚いた。私は泣いていた――経験したことのないほどの胸の苦しさ、痛みに戸惑う。けれどいくら考 えたところで、解決策など全然見つからなくて、途方に暮れて――私はいつの間にか眠っていた。 ――ピンポーン インターホンの音に私は目が覚めた。時計を見るとちょど午前0時を回っていた。帰ってから、夕食 も取らずにこんな時間まで寝てしまったことに我ながら呆れる。それにしても、こんな時間に誰? 私は不審に思いながらも、ドアを開けて来客を確かめると、そこには散々私の心を乱した張本人が 立っていた。彼は初めて話した時のような、緊張した面持ちで私の目を見ていた。 「霧切さん。こんばんは。ごめん、こんな時間に」 「……どうしたの? 苗木君。それは?」 彼はラッピングされた箱を抱えていた。とりあえずプレゼントの類だとは思うけれど、誰かにあげるた めに相談か何かあって彼は来たのだろうか。私が新たな疑問について考えを巡らせていると、彼がこ こ一週間私に見せることがなかった無邪気な笑顔で私の疑問を払拭させた。 「霧切さん、誕生日おめでとう!」 「え?」 「え? ……霧切さん、今日誕生日だよね? 10月6日だったよね? あれっ、違った? え、もしかし て僕間違えちゃった!?」 一瞬私は思考が停止していた。たくさんの感情が私の中で渦巻いている。 ――そういうこと、だったのね ようやく働きを取り戻した思考で、これまでの彼の行動が意味するものを理解することが出来た。冷 静になって考えると、彼は意図的に人を傷つけるようなことはしない。苗木君はバカ正直で嘘が下手 なお人好しなのだから。 彼を見るとわたわたと焦り、顔は血の気が引いている。本当にわかりやすい人だ。 「ごめんなさい、予想外の出来事で驚いていたの。私の誕生日、今日で合ってる。よく覚えていたわね。 私自身そういうの意識したことがなかったから失念していたわ……そのプレゼントはもしかして私に?」 「あ、うん。もちろん、霧切さんへの誕生日プレゼントだよ! はいっ! 誕生日間違えたかと思って焦 っちゃったよ。ははははっ……」 困ったように笑う彼から箱を受け取ると、少々重みを感じた。箱の大きさやこの重みからして家電か 何かだろうか。女の子へのプレゼントに家電って一体何が入っているのやら……。そう思っていたらひ やりとした風が玄関へ入ってきた。 「ごめんなさい……肌寒いでしょう? 苗木君、中へ入って」 「え、でも」 「良いから入って。私も寒いから」 「ああっ、そうだよね。ごめん気づかなくて。じゃあお邪魔します」 10月にもなると日中はまだ暑いくらいだけれど朝と夜はかなり肌寒い。そんな場所でで立ち話をする のも悪いと思って、私は部屋に彼を通すと二人でベッドに座った。彼は少し恥ずかしそうにソワソワとし ていた、どうやら異性の部屋に落ち着くことが出来ないようだ。私は、彼に異性として意識されているこ とが少しだけ嬉しい気がした。 「私を避けていたのはこの為だったのね」 「それについては、本当にごめん。もしかしたら、傷つけちゃったよね? 僕ってば簡単に表情とかに出 ちゃうから、分かりやすいでしょ? どうしても驚かせたくて黙っていようと思ったんだけど、霧切さんと一 緒に居たら絶対ボロ出しちゃうと思ってさ」 「……良かった」 私は改めて苗木君本人の口から真相を聴くと、彼に嫌われたりしたわけじゃないという実感が得られ て、心から安堵した。同時に、どれだけ自分の頭のなかが苗木君で占められていたのか気付いて、な んだかおかしくなった。ただ探偵であったはずの私が、こんなに普通の女子高生のような思考をするよ うになるなんて考えたこともなかったから。 「プレゼント、開けてもいいかしら?」 「うん、気に入ってくれるといいんだけど……」 「あなたがくれるものなら何でも嬉しいわよ」 「えっ?」 「……なんでもないわ」 私は苗木君が聞き返してきたのを無視して、冷静を装いながら、プレゼントのラッピングを解いて箱 を開けた。 「……コーヒーメーカー?」 「それと、ルアックコーヒーだよ。霧切さんコーヒー好きだから、美味しいコーヒーを気軽に飲んでもらお うと思って、駅前のカフェで取り寄せてもらったんだ」 「そうなの? ありがとう……すごく、嬉しいわ」 素直にうれしかった。だから感謝の気持ちを込めてそのまま言葉にしたのだけど、苗木君を見ると珍 しいものを見たかのようにすごく驚いた顔をしてこちらを見つめていた。 「苗木君、どうしたの?」 「へっ? なんでもないよ!」 「言いなさい」 「うっ……き、霧切さんのそんな満面の笑み見たことなかったから……その、すごく可愛くて……」 「はい? え、可愛いって……」 私は自分には似つかわしくない言葉を言われて面食らってしまった。とりあえず、真意を図ろうと彼を 観察してみたけど、苗木君が嘘ついてる様子はない。可愛い――だなんて、一度も言われたことはな かったし、言われたいとも思ったことはなかった。でも苗木君から実際に言われてみると、その言葉の 攻撃力の強さはすごい。冷静に分析していたら、私は遅れて羞恥に襲われた。 苗木君はいつも、私が経験のないことばかりをぶつけてくるから時々厄介とさえ思ってしまう。お互い 恥ずかしさに俯いていたら、苗木君の方から声をかけてきた。 「はははっ、霧切さんも照れたりするんだね」 「……いちいち言うのやめてちょうだい」 「ごめんなさい」 こんなに恥ずかしい思いをすること自体も初めてかもしれない。私は気を紛らわすために、開けただ けだった箱からコーヒーメーカーを取り出してその全容を見てみた。すると、予想外なタイプのコーヒ ーメーカーだった。 「ねぇ、苗木君。……どうしてこれ、2カップタイプのものなの?」 「それは……あの、霧切さんが良ければなんだけど……霧切さんと二人で一緒にコーヒーを飲みたい と思って」 「あなたと二人で?」 「う、うん。ダメ?」 「あなたからのプレゼントだもの。構わないわ。けれど、理由を教えてくれる?」 「え、理由? それは……あっ! そうだ、霧切さん推理してよ」 「推理?」 「霧切さんが喜ぶことは期待してないんだけどね、その理由は場合によってはもう一つの僕からのプレ ゼントなんだ」 推理してみろと言われて、探偵である私が引き下がれるわけがなかった。情報を整理すると、苗木 君は私を「可愛い」と言ってくれて2カップタイプのコーヒーメーカーで作るコーヒーを私と一緒に飲み たいという。いいえ、飲みたいというのは口実だと考えた方がいいわね。だって、彼はコーヒーが『好き』 というほどではなかったから。つまり……私と一緒に過ごしたい、ということ? それから、今考えてる理 由とやらが場合によっては彼からのもう一つのプレゼントになる――苗木君が私と一緒に過ごしてくれ る……え?もしかして―― 「霧切さん、分かった?」 私が答えらしい考えに当たった瞬間、彼が少し赤らめた顔で笑いかけてきた。思わず私は、目をそら してしまう。私は自分で導き出した答えに少し混乱してしまった。もし、本当に私の推理が正しいのなら …… ――直接苗木君の口から聴きたい 「ねぇ、苗木君。答えらしいものには行き着いたけど、確証が持てない……いいえ、違うわ。苗木君か ら直接教えて欲しいの。その答えを……」 そういった瞬間苗木君の瞳に緊張の色が見て取れた。 「ええっと……困ったなぁ」 「誕生日のわがままだと思って、聞き入れてくれないかしら?」 苗木君は目を瞑りフゥーっと息を吐いた。少し汗をかき、相当緊張しているようだ。再び開かれた目 は覚悟を決めたような、まっすぐな瞳をしていて私はドキリとした。 「僕は、霧切さんのことが好きなんだ。だから、出来るだけたくさんの時間を霧切さんと一緒に過ごした くて、このコーヒーメーカーを選んだんだよ」 「……それは、本当に?」 「本当かどうかなんて、霧切さん分かるでしょ?」 「そう、ね……でも苗木君、その私を『好き』だというのはどういう意味――えっ?」 私は急に苗木君に腕を引かれ、抱きしめられた。頭が真っ白になった。そんなことはお構いなしに、 苗木君は一度体を少し離して私の顔を覗きこむ。少し不安そうな瞳が見えた。 「こういう、意味で好きなんだ――」 いつもより少し低く静かな声が私をゾクリとさせる。次の瞬間――私の口が苗木君のそれと静かに重 なった。急すぎて、驚いた私は後ろに体を引こうと思っても、彼が私の背中に手を回しているせいで動 けない。彼の体温と私の体温が普段より上昇しているのが分かる。 「んっ、はっむ、…ぷはっ…………苗、木君……何、するのよ」 30秒くらいだっただろうか。すごく長い時間のように感じたけれど、ようやく彼の顔が離れて口が自由 になった途端私から出てくるのは非難の言葉。けれど、鏡を見なくても私の顔はかなり赤いだろうという ことが分かるくらい顔に熱を帯びていた。当然だ。気になる人――好きな人と唇を重ねたのだから。私 の体は、いまだ彼の腕に解放されていない為に顔が近い。恥ずかし過ぎてとても目を合わせることが 出来ない。 「霧切さんは僕のこと、どう思ってるの?」 問いかけられてようやく苗木君の顔を見ると、彼もまた赤面していた。けれど真剣な顔で、すごく一生 懸命だということが分かって、なんだか可愛い。そう思ったら私は段々落ち着きを取り戻してきて、つい いじめたくなった。 「……好きかどうかわからない相手のファーストキスを不意打ちで奪うなんて最低ね」 「ご、ごめん! ……ファーストキスだったんだ」 「私がそういう方面に積極的な風に見えるかしら?」 「見え、ないけど。霧切さん美人で優しいからモテると思って……」 私はいつから優しい人間だなんて思われるようになったんだろう? 彼に言われたことで、自分で自 分の言動を振り返ってみたけど、我ながら『優しい』とは思えなかった。 「ちょっとあなたが持つ私へのイメージがよく分からないけど、褒め言葉だと取っておくわ。……それに しても、いきなりキスするなんてあなたは手慣れているようね。意外だったわ」 「そ、それは違うよ! ぼ、僕だって初めてだよ……彼女も居たことないし……ただ、霧切さんに分かっ てほしくて必死で、気付いたら、その……」 「そう、あなたも初めてなのね……もういいわよ、別に…………嫌じゃ、なかったから……」 「え? 今何て……?」 「何度も言わせないで……苗木君のくせに、生意気よ」 「……僕のこと霧切さんも好きだって解釈していいの?」 「…………残念だけど、そういうことになるかしら」 「残念だけどって……でも、良かった!」 本当に言葉通り嬉しそうな顔をして笑う彼はまたギュッと腕に力を込めて私を抱き寄せた。どうしても 恥ずかしさに慣れない私は、彼の胸を押した。 「……そろそろ解放してくれる?」 「あぁっ! ごめん!」 私は体が自由になると、あることを思いついた。 「ねぇ、苗木君。一緒にコーヒーはどう?」 「うん! 是非、いただくよ!」 私は誕生日に、コーヒーメーカーと苗木君とずっと一緒に過ごせる時間をもらった。 ――彼の誕生日には何をあげよう。 私はそんなことを考えながら、彼がくれたルアックコーヒーの香りに幸せを感じていた。 ~エピローグ~ 「ところで苗木君。どうして、あなたと過ごすことを私が喜ぶと思ったの? あなたが自意識過剰な人と かには思えないから、何かあるんでしょ?」 「ああ、それはね。クラスのみんなが、霧切さんは絶対僕のことが好きだから自信を持って行って来い って励ましてくれたからだよ。……信じられなかったけど、葉隠君が“もし俺達が間違ってて、苗木っち が霧切っちに振られるようなことになったら、俺はこの髪を短くさっぱり切るって約束できるくらい自信が あるべ!”って言うからこの機会に頑張ってみようと思ったんだ。って、霧切さん!? どうしたの!? 顔真っ赤!」 無邪気に笑う彼から、それを聞いた私は、クラス中にそんな風に見られていたのかと思うと、途端に 恥ずかしくなった。もちろんそんな自覚はなかったけど、私はもう少し感情のコントロールをこれまで以 上に気を付けることを心に誓った。 ――本当に、苗木君とあのクラスメイト達は厄介だ。 「苗木君、私……葉隠君の短髪姿に興味があるわ。だから一旦あなたを振ってもいいかしら」 「えぇっ!? それはちょっと、嫌だよ! それに葉隠君が流石に可哀想な気が……」 「ふふっ……冗談よ。私はあなたと、真実を明らかにすること以外に興味ないから」 気晴らしに、冗談を言うのも悪くない。顔を赤くしてコーヒーをすする苗木君に私は大満足だった。 ― END ―
https://w.atwiki.jp/ws_wiki/pages/13217.html
RW/W48-013 カード名:缶コーヒーを買いに 瑚太朗 カテゴリ:キャラクター 色:黄 レベル:1 コスト:0 トリガー:0 パワー:4500 ソウル:1 特徴:《超能力》?・《オカルト》? 【永】あなたのターン中、このカードのパワーを+1000。 【自】[手札を1枚控え室に置く]このカードが手札から舞台に置かれた時、あなたはコストを払ってよい。そうしたら、あなたは自分の控え室の「ヒーコー」を1枚選び、手札に戻す。 待って、これには深い事情が!? レアリティ:U 17/01/13 今日のカード。 ・関連カード カード名 レベル/コスト スペック 色 備考 “ヒーコー切れ”篝 0/0 500/1/0 黄 絆 ヒーコー 1/0 EV 黄
https://w.atwiki.jp/sougohankoku/pages/75.html
作成:稠 部品構造 大部品 蒼梧アオギリコーヒー RD 4 評価値 3部品 概要 部品 アオギリの特徴 部品 コーヒーの代用品 部品 好まれる飲み方 部品定義 部品 概要 蒼梧藩国ではその環境上、アオギリがよく育つため、昔からコーヒー豆の代わりにアオギリの実によるコーヒーがつくられ、広く愛飲されてきた。 部品 アオギリの特徴 アオギリは温暖な土地を好み、日当たりが良い場所なら、土質を選ばず丈夫に育つ。葉が桐に似ていること、また幹でも光合成を行うために緑色をしていることから「アオギリ」と呼ばれる。 部品 コーヒーの代用品 アオギリの種子は古くから食用、薬用にされ、また、炒り、ミルで挽く事でアーモンドチョコのような香りがほんのりとしたコーヒーをつくることができた。 部品 好まれる飲み方 古くからあるため、嗜好する愛飲家が一定数いる。また、ノンカフェインであるため、カフェインが苦手な人も飲むことができる。ただ、香りと味がやや弱いので、シナモンなどのフレーバーを混ぜて飲まれることも多い。 提出書式 大部品 蒼梧アオギリコーヒー RD 4 評価値 3 -部品 概要 -部品 アオギリの特徴 -部品 コーヒーの代用品 -部品 好まれる飲み方 部品 概要 蒼梧藩国ではその環境上、アオギリがよく育つため、昔からコーヒー豆の代わりにアオギリの実によるコーヒーがつくられ、広く愛飲されてきた。 部品 アオギリの特徴 アオギリは温暖な土地を好み、日当たりが良い場所なら、土質を選ばず丈夫に育つ。葉が桐に似ていること、また幹でも光合成を行うために緑色をしていることから「アオギリ」と呼ばれる。 部品 コーヒーの代用品 アオギリの種子は古くから食用、薬用にされ、また、炒り、ミルで挽く事でアーモンドチョコのような香りがほんのりとしたコーヒーをつくることができた。 部品 好まれる飲み方 古くからあるため、嗜好する愛飲家が一定数いる。また、ノンカフェインであるため、カフェインが苦手な人も飲むことができる。ただ、香りと味がやや弱いので、シナモンなどのフレーバーを混ぜて飲まれることも多い。 インポート用定義データ [ { "title" "蒼梧アオギリコーヒー", "part_type" "group", "children" [ { "title" "概要", "description" "蒼梧藩国ではその環境上、アオギリがよく育つため、昔からコーヒー豆の代わりにアオギリの実によるコーヒーがつくられ、広く愛飲されてきた。", "part_type" "part", "expanded" true }, { "title" "アオギリの特徴", "description" "アオギリは温暖な土地を好み、日当たりが良い場所なら、土質を選ばず丈夫に育つ。葉が桐に似ていること、また幹でも光合成を行うために緑色をしていることから「アオギリ」と呼ばれる。", "part_type" "part", "expanded" true }, { "title" "コーヒーの代用品", "description" "アオギリの種子は古くから食用、薬用にされ、また、炒り、ミルで挽く事でアーモンドチョコのような香りがほんのりとしたコーヒーをつくることができた。", "part_type" "part", "expanded" true }, { "title" "好まれる飲み方", "description" "古くからあるため、嗜好する愛飲家が一定数いる。また、ノンカフェインであるため、カフェインが苦手な人も飲むことができる。ただ、香りと味がやや弱いので、シナモンなどのフレーバーを混ぜて飲まれることも多い。", "part_type" "part", "expanded" true } ], "expanded" true } ]
https://w.atwiki.jp/toki_resu/pages/402.html
うぃんなーこーひー【登録タグ くじ レア度レア レシピ 不破評価2 五十音う 伊達評価3 作られる個数5 必要体力23 最大レベル☆10 神崎評価2 辻評価3 追加日20131022 霧島評価2 音羽評価4 飲み物】 カテゴリ 飲み物 習得条件 『HOTひと息 世界のお茶くじ』(10/22~10/31 14 00まで) でレシピ獲得 最大レベル ☆10 必要体力 23 作られる個数 5 レア度 レア レシピ追加日 2013/10/22 習得方法 『HOTひと息 世界のお茶くじ』(10/22~10/31 14 00まで) でレシピ獲得 → ウィンナー・コーヒー 習得 料理レベル別 獲得リッチ・イベント 料理レベル 獲得リッチ グルメ値 習得レシピ 発生クエスト 達成クエスト 獲得アイテム ☆0 65 28 - - - - ☆1 72 31 - - - - ☆2 78 34 - - - - ☆3 85 37 - - - - ☆4 91 40 - - - - ☆5 98 42 - - - - ☆6 103 45 - - - - ☆7 108 48 - - - - ☆8 114 51 - - - - ☆9 119 54 - - - - ☆10 124 56 - - - - キャラ別 花・渦の数 花は正の数、渦は負の数にしてください。 背景色はコメントの文字の色です。(花・渦の区別ではありません。) 料理レベル 霧島 音羽 辻 伊達 不破 神崎 ☆0 -1 2 1 1 -1 -1 ☆1 ☆2 ☆3 ☆4 ☆5 ☆6 ☆7 ☆8 ☆9 ☆10 ▲▲ページ top