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「ククク…完全に体に馴染んだな…」 「滅びよ………闇魔法・断末魔の刃(ブレインバースト)!!!」 「ぐっ……松田! 俺だ、思い出してくれ!」 「オレハ松田ジャナイ…」 ブラック松田とは? 多くのプレイヤーを驚愕させた松田の悪堕ち後の姿である。 正式な名称は表記揺れや名乗りを上げる前に攻撃が入るなどで不明のままだが スーパーファイナルロンパクエスト2~さよなら絶望王国~にて 江ノ島の「彼は松田くんじゃないわ。絶望に堕ちたブラック松田くんになったのよ」というセリフと 戦闘時の名称がB-Matsudaと表示されているため プレイヤーの間では通称・ブラック松田(またはB松田)と呼ばれている。 資料集設定画にて「ブラック松田」と表記されていたが、開発者曰く 「正式名称ではないので好きにお呼びください」とのこと。 出演タイトル ■ゲーム ファイナルロンパクエスト(SFC/1996年)※バーチャルコンソール版・アプリ版は2010年より配信 ファイナルロンパクエストREBOOT~希望の王国と絶望の血族~(PSP/2010年) スーパーファイナルロンパクエスト2~さよなら絶望王国~(PSP/2012年) どっきどき!ファイナルロンパ学園Girls side(PSP・アプリ同時発売/2013年) ■小説 ファイナルロンパクエスト//THE・ORIGIN 上・下巻(2011年) ■アニメ TVアニメ「ファイナルロンパクエストREBOOT~希望の王国と絶望の血族~」(希望ヶ峰TV/2011年春~1クール終了) OVA「スーパーファイナルロンパクエスト2~さよなら絶望王国~」(希望ヶ峰TV/2012年12月~) 劇場版「ファイナルロンパクエスト//UNION~絶望の叛乱~」(希望ヶ峰バルト9他/2013年春~公開中) ■コミカライズ ファイナルロンパクエストREBOOT~希望の王国と絶望の血族~(月刊少年HOPE/2012年4月号~連載中) ファイナルロンパクエスト//THE・ORIGIN(月刊コミックポンポン/2012年7月号~2012年12月号/コミックス全1巻) 注釈 「ブラック松田」「B-Matsuda」という名称は「スーパーファイナルロンパクエスト2~さよなら絶望王国~」が初出。 劇場版「ファイナルロンパクエスト//UNION~絶望の叛乱~」にてスピンオフを果たす。 小説「ファイナルロンパクエスト//THE・ORIGIN」には悪堕ち前の姿しか登場しない。 「どっきどき!ファイナルロンパ学園Girls side」は公式より完全なパラレルワールドという説明があり、内容についても学園パロの乙女ゲーのため各シリーズの設定は引き継いでいないが、松田との会話イベントにて「ブラックマツダマン」という名称が登場する。
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DQⅥ 現実の世界、ダーマ神殿北方の大陸の国。【旅人の洞窟】の南にある。 優秀な兵に恵まれており、強力な軍隊の他、主な商業施設や教会などは全て城の中にあるなど、国単位で高い戦闘力を持つ国。 現実のムドーを倒し、船が自由に使えるようになると訪問可能となる。 【モンストル】と異なり、シナリオ進行上は必ず訪れなければならない。 まずこの城に入ると、棺桶を引きずった【テリー】との擦れ違いイベントが発生。 さらに入っていくといきなり兵士【ガルシア】が通せんぼ。こいつに勝たなければ奥に進ませてはくれない。 さらに王室の手前では【スコット】と【ホリディ】のコンビが立ち塞がる。 こいつらとの戦いを終えてやっと王に会わせてもらえると思ったら今度は兵士長【ブラスト】との試練が待っている。 城内だけで実に3度ものボス戦があるのだ。 これらの試練を終えると、旅人の洞窟に巣くう魔物退治を王から依頼され、さっきテリーが持っていたのと同じ、魔物の死骸を入れるための大きなカンオケを渡される。 なお、旅人の洞窟の魔物は結局テリーが討伐し、その魔物は特性棺桶に入った死体のまま、アークボルト城内の牢屋に安置される。 が、スト一リー終盤になると突如息を吹き返す。 【ドランゴ】と名乗るそのドラゴンは、自分を負かした青い人を待つと言って大人しくしており、彼の元に【引換券】ことその青い人を連れてくると、仲間になってくれる。 考察 この国の軍事力はよく話題の種になる。 【ムドー】をも討伐した主人公一行4名に対し1名ないし2名で互角に戦える戦闘能力を持っている事から非常に高いレベルの軍事力であると推察できる。 そのくせ、ムドーを倒せるほどの力を持つのにムドーには手を出していなかったり、テリーにあっさり負けたりしている。 ただこの敗退続きのアークボルトも仕方ないといえば仕方ない。 旅人の洞窟に現れたドランゴに敗退したのは、まあ誰しも納得できる範囲だろう。物凄く強いし。 ムドーも、【ラーのかがみ】を持っていなければ幻術によって戦う土俵にすら立てない相手なので、パワータイプの兵が多いアークボルトでは手の出しようが無かったのだと解釈できる。 テリーに負けたのはちょっと苦しいが、城内でテリーと勝負した時のケガで寝ていると思われる兵士が「アイツ本気で切りつけやがって」と発言する所から、城の兵士はあくまで「試合」として立ち会ったのにテリーだけが殺す気で襲い掛かってきたために不覚を取った…と考えられなくもない。 主人公一行との戦いでは思いっきり殴り倒した直後でも普通にピンピンしている城の兵士や兵士長を見るに、城での戦いはあくまで「試合」という事だったのだろう。テリーを除いて。 もっとも、テリーの境遇を考えれば、彼にとって戦いとは「殺すか殺されるか」であり、全ての人間が「試合」という形式で戦ってくれると思い込んでいたアークボルト側の体制に性善説のような甘さがあったとも考えられる。
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第18章「The Catfish(『鯰』と呼ばれた兵器)」 【大統領閣下の生命反応が途絶えました。最終コードの発動を確認。全精神兵器を無制限に解放。終末作戦を開始します。直ちに大樹大陸より脱出してください――】 機械音声が冷たくその事実を告げる。 地響きとともにどこかから咆哮のような唸り声が聞こえる。おそらく目覚めたのだろう、機械都市マキナの半分を一瞬にして消滅させてしまったあの兵器『鯰』が。 「そんな……ついに大統領を倒して戦争は終わったと思ったのに。これですべて終わったんじゃなかったのか!」 ゲンダーは絶望の中にいた。大統領の作りだした精神世界からは脱したが、その代わりにこんどは絶望の渦の中に捕らえられてしまっていた。 「ヘイヴが還ってくるその日まで、メイヴを護り続けることがオレの願いだった。それなのに、それなのに! メイヴはオレのせいで……! 戦争も止められなかった。なんなんダよ。なんなんダ、オレは……ッ!!」 「ゲンダー、落ち着くんだ!」 ガイストは我を忘れて取り乱すゲンダーに言い聞かせた。 「まだすべてが終わったわけじゃない。あの兵器を止めるチャンスはきっとある! メイヴだってまだ復活の可能性がなくなったわけじゃないし、僕も最大限の努力をする! だからゲンダー。諦めるには早すぎる! それにメイヴが言ってただろう。たとえ万にひとつでも、億にひとつだろうと、可能性があるなら勝算はある。0%でなければ、たとえどんなに可能性が低くても信じる価値があると」 「でも……そのメイヴは今こんな状態ダ。大統領との戦いダって、ガイストクッペルからの脱出ダって、思えばヘイヴの研究所からシャトルで飛び出すときから、オレはずっとメイヴに助けられてきてばかりダった。そんなオレが一人であの『鯰』になんて勝てるわけがないんダ。やっぱりオレは駄作ダったんダ……」 ゲンダーは明らかに参っている様子だった。メイヴのことはもちろんだが、大統領との戦いで限界を超えて力を振り絞ったことも影響しているのだろう。いつものゲンダーらしくない弱気な言葉が次々と零れた。 「ゲンダー、君だけが頼りなんだ。僕はメイヴを復旧させるために手が離せない。君がやらなくてだれがやるんだ!」 「無理ダ。なんせ大陸の形を変えてしまうようなやつダぞ。仮にオレとメイヴの二人がそろっていたとしても勝てるかどうか。戦車でも引っ張ってこなければ相手にもならない……いや、戦車があったって歯が立つかどうか…」 「できるかどうかじゃなくて、『やる』んだろ! 戦争を止めると言い出したのは他でもない君じゃないか!」 「ああそうダ。でもそれはメイヴを護るために障害になると思ったからダ。メイヴがこんなになっちまったんじゃ、オレにはもう戦う理由も意味もない…」 そう言うなり、ゲンダーは顔を背けて座り込んでしまった。 (これは相当参ってるな。やはりゲンダーは人間同様の感情をもっている。あるいはそれ以上に繊細な……いや、今はそんなことを考えている場合じゃないな) ガイストはマキナを発つときにスヴェン博士に言われたことを思い出していた。 (そうだ、今のゲンダーはあのときの自分と同じだ。メイヴは完全に壊れてしまったわけではないが、自分にとって大切なものを失い、しかもその原因は自分にあり、自分の無力さは痛いほど思い知らされて、そしてそれが悔しくて許せなくてどうしようもなくて……追い詰められているんだ、自責の念に。思い出せ、先生はあのときどうした?) それを思い出せば、思い当たるやるべきことはひとつしかなかった。 「ゲンダー、いいのか。君はそれで満足か。メイヴを護りたいんだろう。メイヴを信じるんじゃなかったのか!?」 「でも、メイヴはもう…」 「いい加減にするんだ!!」 「!?」 気がつくとつい熱くなってゲンダーを一発殴っていた。かつてスヴェンが自分にそうしたように。 ゲンダーの気持ちは痛いほどよくわかる。しかし、今ならスヴェンの気持ちもよくわかる。ゲンダーを殴った際に針が刺さって拳からは血が出たが、これはあのときのスヴェンと同じ痛み。今の自分にできることはこうしてゲンダーの痛みを分かち合ってやることぐらいだ。 (しかし僕は知っている。それが自分を追い込んでしまった者にとってどれだけの助けになるのかを) ゲンダーは殴り倒されたそのままの姿で横たわっていた。 「メイヴがどうしてあんな無茶をしてまで君を助けようとしたか考えたことはあるか?」 返答はなかったが、ガイストはそのまま続けた。 「それは君がメイヴを信じたのと同じように、メイヴも君を信じていたからだ。君が大統領との戦いでピンチに陥ったとき、メイヴはとても焦っていたよ。機械のくせにね。科学者の僕が言うのもおかしな話だけど、もしかしたらメイヴも君と共に過ごすうちに感情のようなものが芽生えたのかもしれない。君がメイヴを護ろうとしていたように、メイヴも君を護りたかったんだ。だから、自身の危険を顧みずにあんな賭けに出た。ドームからレールを使って脱出するときだってきっとそうだったに違いない。そうまでして君を護ってくれたんだ。その君がメイヴに応えなくてどうするんだ!」 「メイヴ…」 そして、少し間をおいてガイストは言った。 「いいのか? メイヴの想いを無駄にしても」 やはりゲンダーは何も答えなかったが、こちらに背を向けたままゆっくりと立ち上がった。それは答えとしては十分だった。 「僕の知っているゲンダーはそんなに弱いやつじゃない! そうだろう」 「グメっ、グメメェーっ!」 グメーもグメーなりにゲンダーを元気付けているようだ。 しっかりと立ち上がるとゲンダーは、 「……すまん」 と静かに一言だけ呟いて駆け出して行った。 遠ざかっていくゲンダーの後ろ姿は、もはや自身を追い込んでしまった者の背中ではなかった。 「グメー。君もゲンダーについてサポートしてやってくれ。僕は僕のできることをやろう」 「グッッメェィァ!!」 グメーは力強く敬礼をしてみせると、脇目も振らずにゲンダーの後を追って行った。 「よし……待ってろよ、メイヴ。必ず助けてやるからな」 ガイストはゲンダーたちを見送ると、なんとかメイヴを復旧させられないか試行錯誤し始めた。 (しかしこれで二度目か。機械を叩いて直すなど科学者としてあるまじき……) 痛む拳を眺めると苦笑が漏れた。 ゲンダーとグメーは中枢タワーを飛び出すと、真っ直ぐに唸り声の聞こえたほうへと向かった。 街を抜け、林を越え、マキナとの国境付近へとたどり着くと、『鯰』が近いのだろう、巨大なものが跳ね回るような連続した地響きが足を伝わってくる。 「やはりマキナを狙って進んでるようダ。大統領め、始めっから仕組んでやがったな」 「グメぇ?」 「自分の身に何かあったときは自動的に精神兵器がマキナを襲うように用意していたに違いない。きっとマキナが手に入らないぐらいなら、いっそぶち壊してしまうつもりダったんダ。どこまでも自分勝手な奴め」 さらに先へ進み、唸り声と地響きを頼りにたどり着いたのは、ガイストクッペルから脱出するときに使ったレールを降りたあたりだった。そこにはあのときのレールがそのままの状態であった。 (あの時も、メイヴは無茶をしてオレたちを助けてくれた。こんどはオレたちがメイヴを助ける番ダ!) 「グメっ!? グメメメメェェェーーーーっ!!」 突然グメーシスが慌てた声を上げる。 「……ようやく追いついたか、『鯰』!」 地響きはどんどん大きくなる。ひと際大きく揺れたかと思うと、それは地平線の向こうからおもむろに姿を見せた。 山のように大きな『鯰』の姿を模した兵器。それはあまりにも強大で、放置されていたレールの車体をいとも容易く踏みつぶしてスクラップにしてしまった。 『グォォオオォッ』 金属の擦れ合う音なのだろうか、まるで恐竜のような唸り声を『鯰』は響かせている。 「こいつ、なんて迫力……! ダけど、オレは『やる』んダ! これはオレ自身との戦いでもある。いや、オレだけじゃない。メイヴの、ガイストの、グメーの……そう、オレたちの戦いダ。地震なんかに負けるもんか!」 『グォォオオォオォォオオォォォン!!』 答えるかのように『鯰』は鋼の咆哮を上げる。 「上等ダ。不利ダなんて思わないぞ。機械VS機械、条件は対等ダからな!」 「グメェェーっ!!」 負けるもんか、とグメーも咆え声を上げる。 ついに今、最後の決戦が始まった。 一方その頃、メイヴは見慣れない空間を彷徨っていた。 『ここは一体……私はまだ大統領の精神世界にいるのでしょうか。ゲンダー? どこですか、ゲンダー』 様子を探るべく周囲をサーチしようと試みるが身体は言うことをきかない。それどころか、身体の感覚すら感じられない。はて、感覚…? 感覚とは一体何か。 メイヴは知識として感覚を知っている。データベースには大抵のことが記されている。しかし、実際にその感覚がどういうものかは知らない。当然だ、彼は機械なのだから。にもかかわらず、今の自身の状況を説明するのに「感覚がない」という表現が自然と現れた。今や、メイヴは意識だけがそこに漂っている状態だった。 『私は「感覚」を知っている……いや、これはブラックボックスの……記憶?』 するとブラックボックスから流れ込んでくる記憶が目前に映像となって再生され始めた。 『これは……ふむ。見覚えがあります。ヘイヴですね。隣の機械にも見覚えがあります。これは私……いや、私が生まれる前の私ですね。ヘイヴがブラックボックスを研究していた頃でしょうか。ゲンダーの姿はまだないようですね』 しばらくすると映像がぼやけて別の場面に切り替わった。 黒い石をブラックボックスに加工するヘイヴ。 黒石の危険性についてヘイヴと論争する若き日のスヴェン。 ヴェルスタンド西部の炭鉱から発掘される黒石。 これはメイヴが誕生するよりもさらに前の出来事だ。どうやら時間を遡りつつ、ブラックボックスの記憶が呼び起こされているらしい。巻き戻しの映像を早回しで見ているような光景が眼前に広がっている。 炭鉱に降り注ぐ流星。大気圏で発火し複数に割れる黒い雫。星の海を飛来する隕石。隕石は黄昏の惑星を通り過ぎ、猛毒の大気の中を抜け、炎と砂と水の嵐を越え、時には巨大な宇宙生命体の体内を通り抜け、小惑星群と爆発性のガスを潜り抜け、常闇の惑星の上空を通過し、しばらく宇宙空間を彷徨った後に、漆黒の惑星から飛び出す。 再現される映像はめまぐるしく切り替わり次第に再生速度を速めていく。やがてメイヴはそれらの情報を整理しきれなくなっていった。 『ま、待ってください。これ以上は……やめろ、やめてくれ! 入ってくるな!! も……もう、たく、さ…ん………だ……。ああ、ゲンダー……』 メイヴの意識はそこで途絶えた。 「えっ?」 思わずゲンダーは振り返った。 その隙を見逃さず『鯰』の強力な一撃が入る。痛恨の一撃、ゲンダーは弾き飛ばされて地面に激突した。 「うぐ……っ、油断した…」 「グメぇ!?」 グメーが心配そうにゲンダーの顔を覗き込んでいる。 「大丈夫ダ。たダなぜか急にメイヴに呼ばれたような気がしたんダ…」 さすがに気のせいだろうと考えたが、どうにも胸騒ぎがしてならない。 しかし、敵はそんなことはお構いなしと言わんばかりに攻撃を続けてくる。『鯰』は容赦なく鰭を模したアームを振り降ろす。ドスンと重い一撃は大地を揺らし、地面に深い穴を空ける。ゲンダーたちはこれをギリギリのところでかわしたが、体勢を整える間も与えずに『鯰』は飛び上がり、その山のように大きな巨体でゲンダーを押し潰しにかかる。 「や、やばい! 汁一本!!」 冷静になれ、落ち着けと自分に言い聞かせて集中、右腕に力を溜める。 凝縮された一撃が放たれる。一瞬遅れて大爆発が起こり、爆風によってゲンダー吹き飛ばされ、その勢いを利用して『鯰』の攻撃から逃れた。続けて『鯰』さっきまでゲンダーのいた場所を踏みしめる。局所的な揺れがゲンダーを襲う。少しでも遅ければ今頃は奴の下敷きになっていただろう。一方で『鯰』は汁一本をほとんど零距離で食らったにもかかわらず、傷一つついていなかった。 「まるで歯が立たない……汁一本すら通用しない。何か……何かないのか!? 汁一本を上回る攻撃方法は…」 『鯰』が跳ねる。落ちる。揺れる。そのたびに足をとられて立っているのも難しく、集中して考えている余裕などとてもなかった。 グメーも精一杯たいあたりをぶつけるが、特殊な素材でできているのか『鯰』はグメーに触れても粉のようになって消滅してしまうようなこともなかった。 決定的な一撃どころか、かすり傷すら与えられないまま戦いは続く。 「これはまずい…!」 一方でガイストも苦戦していた。大統領執務室にあったPCを拝借してメイヴのシステムに侵入し、なんとかブラックボックスの暴走を止められないかと奮闘していたが、メイヴのプログラムは目にも止まらない速さでブラックボックスに上書きされていく。そのせいなのか、パフォーマンスが目に見えて低下し、自己修復機能によるのバックアップの復旧速度が徐々に落ち始めている。上書き速度が復旧速度をうわまろうとしている。このままではあと数分ともたないかもしれない。 それだけでなくブラックボックスの侵蝕が激しく、ついにはメイヴへのアクセスが弾かれるようになってしまった。こうなってはもうお手上げとしか言いようがない。 「僕の力では及ばないのか!? こんなときに師匠が……ヘイヴいてくれたら。くそっ、仕方ない。そういう約束だったからな……すまない、メイヴ」 ――それは溯ること数十分前―― 『ガイスト博士、お願いがあります』 ゲンダーが精神世界で戦っている最中、メイヴが何かを決意した様子で話し始めた。 「どうした、改まって。何かゲンダーを助けるいい作戦でも思いついたのか?」 『ええ。どうやら私はゲンダーのいる空間に直接干渉することはできないようですが、幸いにもゲンダーの本体はここにいるので、このゲンダーに干渉することで間接的に空間内に影響を与えることができます。つまりゲンダーがこちらとあちらの空間をつなぐ唯一の架け橋というわけです。私がゲンダーのシステムに侵入してリミッターを解除すれば、ゲンダーを劇的にパワーアップさせることもできるでしょう』 「そんなことができるのか! それなら大統領にも勝ち目があるかもしれない」 『ええ、おそらく勝てるでしょう。しかし、ゲンダーの意識は精神世界のほうに行っています。たとえリミッターを解除しても、誰かがそれをゲンダーに知らせてあげなければ意味がありません』 「それは困ったな。精神世界に入れるのは精神体だけ。あらゆる生き物には精神体が存在するが、それでも自由に入れるわけじゃない。少なくとも、大統領自身が呼び込まない限りはな。存在そのものが精神体のようなグメーなら侵入は容易いだろうけど……」 「グメーメ?」 「言葉を話せないから、伝えるのは厳しいか」 『いいえ、方法はあります。そこでお願いなのですが…』 ブラックボックスの力を解放すればメイヴの性能をブーストさせて精神世界のゲンダーに干渉することが可能になる。ただしブラックボックスの強力すぎるエネルギーを制御し切れずに暴走してしまう恐れもあるという。 まさに両刃の剣。危険な賭けになる。しかし、それが唯一の方法だった。 『いいですか、よく聞いてください。私はブラックボックスの力で私のプログラムを一時的に書き換えます。ゲンダーと連絡を取るためには必要なことです』 「そんなことをして君は大丈夫なのか」 『あとでプログラムを元通りに書き戻せば問題はないはずです。しかし当然ながらシステム上、想定されていないことを行うわけですから、どんな不具合が起こるかは予想もつきません。もしかするとシステムがクラッシュしてすべての記録が飛んでしまう可能性だってあります』 「すべての記録が……それは、君にとっての死を意味するのではないのか!?」 『さぁてね。まだ死んだことがないので、私にはわかりません。しかし記録が飛んでもバックアップがありますし、なんとかなると信じたいですね。まあバックアップから呼び戻された私が「今の私と同一の私」であるかどうかは判断しかねますが。ただ心配なのはプログラムを書き換えた上での正常なリカバリーができるのかという点、そしてブラックボックスには未解明の部分が多いので何が起こるかわからないという点です。もちろんこの作戦を成功させるためにはそれを私が制御する必要があるのですが……いえ、大丈夫です。なにより、ゲンダーを救うためにこれは必要なことなのです。これしかないんです! もう決めました。私はやりますよ。やってみせます! もちろん……協力してくれますよね?』 「正気なのか!?」 そして作戦は決行され、ゲンダーは見事に大統領を打ち倒すことになる。しかし、この話にはまだ続きがあった。 『ガイスト。これはできれば起こってほしくないことなのですが……』 メイヴはおもむろに話し始めた。 『もちろん私はこの作戦を成功させるつもりです。いや、成功させなければならない。ですが、もし失敗した場合……そして、もし私の記録がすべて失われてしまった場合、そのときは私はもう残念ながらゲンダーの役には立てないでしょう。もしそうなったときは、私を分解してブラックボックスを取り出してください』 「分解!? 一体何を言い出すんだ」 『ブラックボックスははっきり言って謎だらけです。私のデータベースをもってしてもほとんど何もわかりません。しかし、これがとても大きな力を秘めていることだけはわかります。ですからガイスト、もしそのときは私を分解して、ブラックボックスを使って何かゲンダーの助けになるものを作ってあげてください。ブラックボックスの力はきっと役に立ちます。部品が足りなければ私の部品を使うといいでしょう』 「ま、待ってくれ! メイヴ、なんてことを言い出すんだ! それでは君が……君は、どうしてそこまで!?」 『壊れた機械は何の役にも立てません。役に立たない機械など意味がない…。私はゲンダーの役に立ちたい。それだけですよ』 「だ、だが……僕は君を大切な仲間だと思っている。長くはないが共に過ごしてきた仲だ。科学者の僕が言うのも変だが、僕は君やゲンダーを友達だと思ってる! 今ならヘイヴがゲンダーをなぜ発明したのかもわかるような気がするよ。そんな僕に友達を解体させるつもりなのか!? だめだ、そんなことはできない。いくらなんでも、そこまでする必要はない!」 『ガイスト…。辛いかもしれませんが、どうかわかってください。なに、気にすることなんてありませんよ。私は機械であなたは技術者。技術者が機械を分解するのはいつもの仕事のうちでしょう?』 「メイヴ、それが君の望みなのか。それが君にとって満足に値することなのか」 『ゲンダーは感情をもった機械という非常に稀な存在、その価値は計り知れません。決して失うわけにはいかない……私はそう判断しました。そのために役立つなら、この身がどうなろうと本望です』 「これが……君の望みなんだな、メイヴ?」 メイヴはもう何も答えない。PC画面にはメイヴのプログラムの99.9%がブラックボックスに侵蝕されてしまったことが示されている。 「本当にすまない。僕にもっと力があればこんなことにはならなかった…」 (気にしないでください。これは仕方ないことでした。あなたは悪くありません) そう聞こえたような気がした。もちろんメイヴはしゃべれないし、遠隔モニタは消えてしまって久しい。 「ふっ、都合のいい妄想か…。落ち込んでいてもメイヴはもう還ってこない。それならせめてメイヴの最期の望みを叶えてやらなければならない」 ガイストはメイヴの解体に取り掛かった。一度、スヴェンの地下研究所でメイヴの修理を行っているので、解体するのはそう難しいことではなかった。 部品を外して胴体前面を開く。液晶モニタを持ち上げて、その下から取り出したのは黒い球体だ。大きさのわりには両手にずしりと重い。 「これがブラックボックス……本当に真っ黒だな」 こんなボーリング球程度の大きさの球体がすごい力を秘めているという。球体はその漆黒の中に妖しい輝きをみせている。そして神秘的だった。もしかしてこれはメイヴの心臓のようなものなのではないか。そう思うと、球体が脈打っているような錯覚すらしてくる。 「しかし、すごい力があると言われてもこれをどう使えばいいのか…」 ブラックボックスには大きな力が秘められている。ガイストが知ってるのはそれだけだ。 「何か情報はないのか?」 ガイストはメイヴのデータベースへのアクセスを試みた。ブラックボックスを取り外したことで暴走状態が止まったためか、今度は問題なくアクセスすることができた。どうやらデータベース内の情報に関してはそのままの状態を保持しているようだ。 データベースにはこの世のありとあらゆる情報が保存されており、いわば巨大な百科事典のようなものだ。システム的なものや重要な情報はブラックボックスの内部に記録されているようで、とくに参考になりそうなものは見つけられなかったが、以前にガイストクッペルで暴走したときに流入したブラックボックスからの情報の一部がデータベース内に残されていた。 「これは……ヘイヴの研究記録? ブラックボックス……黒石…………スヴェン!? なぜ先生の名前がここに? 先生も黒石の研究に関わっていたのか、知らなかった。だがそうとわかれば、こうしてはいられない!」 ブラックボックスだけを取り除いた状態でメイヴを元通りに閉じると、ガイストはブラックボックスを手にタワーを飛び出した。 先生なら何か知っているかもしれない。そう考えてマキナのスヴェンの元へと急いだ。 『鯰』が飛び上がる。落ちる。衝撃が大地を揺るがす。 そしてまた跳ねる。落ちる。振動。 ゲンダーは『鯰』の攻撃をかわすだけで精一杯だった。 「逃げてばかりじゃ勝てないのはわかってる。でもこれじゃ勝ち目なんかないぞ。せめて、相手に隙を与えることさえできれば…」 グメーシスも一生懸命、『鯰』に攻撃を仕掛けるが残念ながら全く戦力にはなっていなかった。 「汁一本も効かないとなると、もっと威力のある攻撃を仕掛けないとダメか。しかし、あれ以上の力を溜めようとすればオレのほうが限界を超えて自爆してしまう。汁一本は連射も利かないし、一発撃ってから二発目をチャージするのに時間がかかって……待てよ、二発? そうダ!」 何かを閃いたゲンダーはグメーシスに提案する。 「グメー、少しでいい。あいつの注意をオレからそらしてくれないか」 「グメっ!」 任せろ、と言わんばかりに胸を叩いてみせると、グメーは深く息を吸い込み、大声で咆えた。 「グメェェェーーーーーーっ!!」 『鯰』の攻撃の狙いがグメーに移る。ゲンダーはそのわずかな隙を見逃さない。 (両腕から放つ二発の汁一本…その力をひとつにすれば…!) 覚悟を決めた表情で両腕を『鯰』に向ける。 汁一本を放つ要領で波動の内圧を高めていく。圧力を徐々に右腕に集めていく。同時に左腕にも。 千の衝撃波を高速で放つ力が今、そのふたつの両極に集中していく。汁一本が単発で汁千本の1000倍の威力なら、単純に計算しても両手でその二倍、2000倍の威力だ。 右腕が内側からの圧力で破裂しそうになる。しかしまだ耐える。 続いて左腕も悲鳴をあげる。まだだ、耐えてくれ。 さらに力を凝縮。 二点集中。限界まで高く極限まで鋭く。 「もう抑えられん! い、今ダっ!! これがオレの極限の一撃っ! うおおおおっ!! 汁 一 極 !!」 凄まじい轟音。激しい閃光。音が聞こえるよりも速く、限界を超えた一撃は敵を貫き大爆発を起こした。さらに『鯰』の頭と片方の鰭を一瞬のうちに跡形もなく吹き飛ばした。 周辺は空襲でもあったかのように草木は焼け、大地は大きく抉られて、いかにその衝撃が凄まじいものだったかを如実に物語っている。 一方ゲンダーも想像を遥かに超える反動でただではすまない。ずいぶん長い距離を吹き飛ばされ、いやというほど地面に身体を打ちつけた。すでに何度か汁一本を発射していた右腕は、とうとう衝撃に耐えかねて大破してしまい、使い物にならなくなってしまった。 「うぐぐ……さすがに無茶ダったか。ダがこれが今のオレにできる最大の攻撃。どうダ、やったか!?」 その問に答える者はだれもいない。しかし、もしメイヴがこの場にいたのならこう言っただろう。 ――ゲンダー、それはやってないフラグですよ―― 地響きが。土煙の向こうから地響き伝わってくる。 土煙の向こうから姿を現したのは頭を吹き飛ばされ、内部の配線が剥き出しなってもなお跳ね続ける『鯰』だ。 「な、なんてことダ。まだ動けるのか」 『鯰』は大地を揺らしながら、少しずつゲンダーに近づいてくる。跳ねるたびにあちこち壊れてパーツを周囲にばら撒いているが、そんなことはお構いなしに標的と定めた相手を押し潰すことだけを考えて迫り来る。 「あいつ化け物か!? まるでゾンビみたいダ」 このままでは踏みつぶされてしまう……逃げなくては。 しかし、汁一極の反動でゲンダーは仰向けに倒れたまま立つことすらままならない。 汁一極の衝撃でどこかへ吹き飛ばされていたグメーが戻ってきた。事態を把握したグメーは動けないゲンダーをなんとか避難させようとゲンダーの右腕を必死に引っ張るが、グメーが掴んだ部分は粉のようになって風に飛ばされてしまった。触れたものを消滅させる特性のせいでグメーはものを掴むことができない。 「無理するな、グメー。オレのことは大丈夫ダ。おまえだけでも早く逃げろ…」 しかし、誰の目にも無理をしているように見えるのはゲンダーのほうだった。グメーはうろたえている。 そんな間にも、『鯰』はどんどん距離を詰めてくる。たとえ敵の姿が見えていなくても、大きくなる揺れがそれをいやでも感じさせてくれる。 わかる。もうすぐそこまで迫っている。 (こんどこそおしまいダな。すまない、メイヴ。やはりオレには……) 仰向けに倒れたゲンダーの視界を影が覆う。最後に視界に入った『鯰』はもはや原形を留めていなかった。 グメーは最期のそのときまでゲンダーのそばを離れようとしない。その小さな身体で震えながらも必死にゲンダーを庇おうとしている。 (グメーもすまない。頼んダわけでもないのに、おまえは最後までオレについてきてくれるのか。でもいいんダ。もういい、グメー。おまえまで一緒にやられることはない) 最後の力を振り絞って、辛うじて動かせた左腕でグメーを叩き飛ばした。これで左腕も消滅してしまったが、もうそんなことはどうでもいい。せめてグメーだけでも無事であってくれればそれでよかった。 叩き飛ばされたグメーが草むらに落ちるのとほぼ同時に、ドスンという鈍い音が響く。 ゲンダーが倒れていた場所には、『鯰』だったものの残骸が重くのしかかっていた。 「グ……グメェェェエエェェェーーーっっっ!!!」 グメーの悲痛な叫びが虚しく響き渡る―― 第18章 了 ブラックボックス19
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今回童話風に、と 昨日から考えてた話。奇しくも「人間とゆっくり」についてですが、どうか気楽な気分で その山のゆっくり達と、麓の村の人間は仲がちょっと悪かった。 来る日も来る日も言い争いと喧嘩は絶えず、大人の諍いは子供にも伝播し、幼児が 泣いて帰ってきたり、赤ゆっくりが帰ってきて何も言わずに奥の部屋に翌朝まで閉じこもる事も よくある光景となっていました。 資源や土地の問題もあり、人間は村の周りに塀を高く作ったり、動画のNGワードを「ゆ」に 設定したり、串カツ屋に至っては、「ゆっくりお断り」の看板を掲げました。 ゆっくりもゆっくりで、川の辺りに特に何する訳でもないのに、にちょりを常駐させたり、動画には すべからく「期待の病人」のタグを無差別につけたり、「あの村の人間はすぐにタレを2度漬けする」 と愚痴ったりしました。 そんな状態が気の遠くなる年月続いたある日―――山のリーダーのうつほが、旅先で行き倒れ になっているゆっくりを見つけました -----ー ,-‐'、 /\ /\ |_,| r-、 (ヒ] ヒン) i,,__ ) ゆっくり饅頭でもどうぞ. |,,ノ '" ,__, " '.} \ ヾ_ノ / `ー-----ー^ | .∥ / ("___|_`つ 気を取り直した、良い感じのオンバシラを背負ったゆっくりは、実は他の神様だと名乗りました。 うつほは、正直話半分に聞いていましたが、 「お礼に何かプレゼントをあげよう」 「じゃあ、人間をゆっくりできなくさせて下さい!!!」 神様は、突然の放送禁止用語に少し困りましたが、気を取り直して、ある箱を出しました ___________ / 核 /.| / / .| | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| | | Blakku. | | | ゝ、 /_ | | | rr=-, r=;ァ'i . | | | "" ,___, "" | | | ヽ _ン | / |__________|/ 「ええと、これは………?」 「これを開ければ、近くの山ごと人間の村をゆっくりできなくさせる事ができるよ!!!」 「山もゆっくりできなくなったら意味ないよ!!! もっとこう……人間だけをゆっくりできなくさせる、環境と地球に優しい 『人間ホイホイ』『人間コロリ』なんてものは無いの?」 「そんなご都合主義なものがあるわけ無いよ!!!」 仕方無しに、ブラックボックスをもってうつほは山へ帰りました。 が、途中の関係ない村で一泊した際、うっかりその話を宿の人間にしてしまったのです。 とんでもない兵器の登場に、欲に目がくらんだその宿の人間達は、通報する事もせず、箱を他のものと 摩り替えてしまいました。 __________ / /鉈 /| . / / / | | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ..| | 弱音ハック ...| ..| | __,. 、__ . .| ..| | rr=-, r=;ァ. .| ..| | ./// ///" ...| ..| | 'ー=-' | / |__________|/ うつほが出て行ったのを見届けた後、人間達は箱を開けました __,, ======== ,,__ ...‐''゙ . ` ´ ´、 ゝ ''‐... ..‐´ ゙ `‐.. その村がどうなったのか 今は誰も知りません / \ .................;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;; ´ ヽ. ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;................. .......;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙ .' ヽ ゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;...... ;;;;;;゙゙゙゙゙ / ゙ ゙゙゙゙゙;;;;;; ゙゙゙゙゙;;;;;;;;............ ;゙ ゙; .............;;;;;;;;゙゙゙゙゙ ゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;.......;............................. ................................;.......;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙ ゙゙゙゙i;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;l゙゙゙゙゙ ノi|lli; i . .;, 、 .,, ` ; 、 .; ´ ;,il||iγ /゙||lii|li||,;,.il|i;, ; . ., ,li ' ; .` .; il,.;;. ||i .i| ;il|l||;(゙ `;;i|l|li||lll|||il;i ii,..,.i||l´i,,.;,.. .il `, ,i|;.,l;; `ii||iil||il||il||l||i|lii゙ゝ ゙゙´`´゙-;il||||il|||li||i||iiii;ilii;lili;||i;;;,,|i;, ,i|liil||ill|||ilill|||ii||lli゙/`゙ ´゙`゙⌒ゞ;iill|||lli|llii ;゙i|||||l||ilil||i|llii;|;_゙ι´゚゙´ 山に帰ったうつほは、友達のおりんと、他の信頼できる数人のゆっくり達にその事を話しました。何となく怖くて、皆しばらくは 秘密にしておくことになりました それからというもの――― 「おいゆっくりども!!! またお前等だな、『期待の病人』なんてタグをDir 〇n g〇ey に今更貼りやがって!!!あとついでに田んぼの水も ひきやがって!!!」 「知らないよ!!! 何イッテルノ? D〇r en gr〇yなんて見えないよ?あと田んぼの水を横取りしたのは他の村だよ!!!これは マジ話だよ!!!」 「タグはやっぱりお前等か!!!」 「は、はかったなああ!!!」 「いや、そういう訳じゃ……この体なしジオング!!!」 「何を、このパーフェクトジオング!!!」 なんて諍いがあったとしても…… 見なさい、みのりこ また人間どもが、私達の可愛さについて嫉妬してるわよ ___,∧"´ ト-、_ ,ゝ/ヽ、ノ V _」∠ 7ァ_>ァ、 _,,.. -――C○ィ )  ̄ ̄\ ., 'ィiヽ' _>''"´  ̄ `ヽ!, // ̄ヽ ゝ○o _ ヽ / キア'" ', 、`フ Y //\ / \`L_ ', ,イ / / ,ハ! / ! _!_ i ! Y .,' / ゝ、__,..-、\  ̄`i う) i こっちは最終兵器があるっていうのに '、!,イ ,' /´___!_ i ハ _ノ_`ハ/ ノ | / i イ ,ヘ ヽ \ ` し' | 知らぬが仏ねえ ノ ', レ、 !ァ´ノ_」_ノレ' レ' ソ`Y i、( ゝ、| 斗jナ ル ヽ、ナ‐- ',ヽ、 ハ ! \ ( ソ'´ Vi rr=-, r=;ァ ハヘノ' T{∧{ rr=-, r=;ァ i} リ `T ‐ヽ y'´ ! !. '" ̄  ̄"'ノノハ _ノ ム!"" ""/ !_」 ,' ! , ヽ、_,ゝ'"'" 'ー=-' ' ,ハ ! ゝ._ノ人 'ー=-' ∠ノ | '、 ゝ、ノ )ハゝ、, ,..イノ ソ `ー‐ >, 、 _,. <_Z_ /ノ/ `ヽ(ゝ/)ヽ,ノイi,` ''=ー=' i´ノ´ンノ / ̄_ヽ`ー-一'イ==≠二 「ぷー クスクス あいつら、自分達がゆっくりの手の平の上にいるとも知らないで」 「こっちはいつでも人間をゆっくりさせなくしてやれるのにね!!!」 「おお、おろかおろか」 と、内心ほくそえんでおりました。 その余裕が何となく周りにも伝わり、こうして、ゆっくり達はイライラしない生活を手に入れました しかし、そんな生活も長くは続きませんでした 何故なら…… 「ああ、やっぱり頭にくるねおりん!!! このブラックボックス開けて、人間どもをゆっくりできなくさせちゃおうよ!!!」 「いや、でもこれ開けたら、この山全体がゆっくりできなくなるんだよ!!!」 「そっかあ……じゃあ、開けられないね……」 「………開けられないね……」 「開けられないね」 「――――――――意味ないね」 「――――――――怖いよー」 今度は、戦々恐々とする日が始まり、皆ブラックボックスは厳重にしまわれ、話題にしなくなりました。 ―――それが、中身の無い、ただの箱だともしらずに。 人間との溝は中々埋まりませんでした。いつしか、ブラックボックスの事を知っているゆっくり達も年をとり、一人二人と死んでいきました。 最後に、この箱を持ち帰ったうつほは死ぬ間際に、自分の子供の子うつほに初めてこの事を打ち明けました。 「――――は、早く言ってよね………」 山で、いいえ、この世界で、ブラックボックスの事を知っているのは、子うつほだけになってしまいました。 いっその事、この事を他の誰かに教えて、自分は隠居してしまおうかとも考えました。 しかし、こんな危ないものを管理しないわけにはいきません。それに、好奇心旺盛な若いゆっくり達に知られでもしたら、面白半分に 用も無いのに開けてしまう子がいるかもしれません 長い長い、親から子に受け継がれた闘いが続きました 人間との喧嘩はいつまでも続きます。 嫌いな相手をゆっくりさせなくしてやりたい。 しかし、それをやってしまうと、結局自分達までゆっくりできなくなってしまう。 しかし、腹は立つ……… 「一体どうしたらいいのおおおおお!!?」 子うつほは、悩みに悩んで、子おりんに相談しました。 そして――――次の日 -----ー ,-‐'、 /\ /\ |_,| r-、 (ヒ] ヒン) i,,__ ) ゆっくり饅頭一個持ってくよ――――人間の村へ. |,,ノ '" ,__, " '.} \ ヾ_ノ / `ー-----ー^ | .∥ / ("___|_`つ それから、また長い長い年月が経ちました。人間もゆっくりも苦しみました。数え切れないほどの話し合いや打ち合わせや酒宴があり――― 子うつほと子おりんも年をとりました。 「ねえ、あの箱の事、誰に教える?」 「誰にも教えないでおこうよ。あのまま閉まっておこう。その方が皆ゆっくりできるよ」 「そうだね。きっと開けたいなんて思う子もいないからね」 恐怖が人やゆっくりを突き動かす時代は終わろうとしていました 人間も、ゆっくりも、山も村も生活は次第にゆっくりし始めました。 ある朝、子うつほと子おりんは、息を引取っていました 村の人間も、山中のゆっくり達も、自分達をゆっくりさせるために、懸命に働いた二人に涙を流し、盛大な葬儀が行われました。 式の準備の前に、孫うつほ達は部屋を整理していて、大事にしまわれた箱を見つけました。 これは、生前子うつほと子おりんが大事大事に、 決して開けない様にしまっていたものです 「これは、お母さんがとっても大切にしていたものに違いないね!!!」 皆は、フタを空けて中身を覗くなんて事はせず、そのまま子うつほの棺桶に入れました お墓の前の線香と一緒に――――箱を大事に抱えた子うつほと子おりんが、空に昇っていく様子が目に浮かぶようでした。 ――終わり―― ――おまけ―― さて、天国では――― __________ / /鉈 /| . / / / | _人人人人人人人人人人人人人人人_ | ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ..| > 神様 箱を返しにきたよ !!! < | 弱音ハック ...| ..|  ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄ | __,. 、__ . .| ..| | rr=-, r=;ァ. .| ..| | ./// ///" ...| ..| | 'ー=-' | / |__________|/ /{ へ } `>、_ __∠__/ ト ((く \ ,! >'"´´ `ヽ { ト 、 \ \ト、 くノ,' , , 、 、 ∨ __/ ヽ : , _.z=======ゝ、_ヽ : \ \\ノ ウツλホハ.リイ入./ .l )) ', : , ''/ヽ'、 ,´ ̄ ̄ ̄`"' .\ヽ : \  ̄! !i(ヒ_]'`' ヒ_ン! !/ / ! : ∧' ´ フ´ ヽ : レく\ノ !ル""r-‐¬""! ∟/ ,' .:..∨ レヘ/ ,' ', ', : ', イ ! !.|,ゝヽ、__,ノ_ノ! ! ヽ / :i / 、__, i i ヽ | : 弋 `r __i.r'/ } { ./ .) / : 八 ,' /」__.! /,| ,/、ハ;;ハ , イ : \ ̄.! ! |'、Φ__ウ ニュ?イ/ ノ ヽ | /´(◯), レ 、(◯)イイ ノ i : 弋ヾ从 | | λ! ノノ / l レ'iヘ!" ,rェェェ、 " i i ヽ. : / ヽハ_/ ヽ ハ ノ ,' ノ ハ! |,r-r-| 人 ' l : / / ',ノ ト, | ,' ノ イ ト> , `ニニ´ イ ! ', ノ : ァ、_/ '; ` 、 _人人人人人人人人人人人人人人人_ > うわああああああああああ!!! <  ̄^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ゆっくりと人間の罵りあいを見ていて微笑ましさを感じさせるってのがミソでしたw 人間とゆっくりが仲良く共存している関係も好きですけど、 人間とゆっくりがいがみ合っているけどそれを見ていて可愛い、楽しいと思える 作品っていうのもいいものだと思いました 饅頭を持って人間のところに行って、それから話し合いやら打ち合わせやら、 何よりも酒宴で両者の関係が良くなっていったってのがよかったです やっぱ東方から分かれた作品において酒の力は偉大ですよね -- 名無しさん (2009-05-23 17 33 43) 結構黒いところがあるのにそれが醍醐味になってるな〜 ところでAAずれてね? -- 名無しさん (2009-05-23 19 12 41) その箱はマズイでしょうw 面白かったです -- 名無しさん (2009-12-02 20 47 58) 名前 コメント
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Secret Invasion Inhumans (シリーズタイトル、タイイン、マーベル) 出版:2008年(全4話) 概要 大型クロスオーバー"Secret Invasion"のタイ・インで、全4話のミニシリーズ。 インヒューマンズの動向を描く。 あらすじ インヒューマンズの王ブラックボルトがスクラルに捕まり、残された王族たちが奪還のために奮闘する。 ブラックボルトは破壊力のある声を生体兵器として利用するため、改造を受ける。 登場人物 ブラックボルト:インヒューマンズの王。声に破壊力がある。 メデューサ:ブラックボルトの妻。髪の毛を自在に操る。 クリスタル:メデューサの妹。地水風火の四元素を自在に操る。 カーナク:マーシャルアーツの達人で、あらゆる物事の弱点を見抜く力を持つ。 ゴーゴン:無双の怪力を持つ。 トリトン:水中で行動できる。 マキシマス:天才的な頭脳の持ち主。 結末と影響 インヒューマンズがブラックボルト奪還のため、クリーと同盟を結ぶ。そのためにクリーを統べるロナンとメデューサの妹クリスタルは政略結婚させられる。 ブラックボルトはインヒューマンズに奪還される。 ブラックボルトとマキシマスは和解。インヒューマンズは平和主義を捨て、スクラルとの決戦を決意する。 ストーリーはSecret Invasion War of Kingsに続く。 アメコミ@wiki
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地域によってはブラックボルバル又は除去ボルバルとも呼ばれる。 ボルバルザークが1枚制限になってしまってこのデッキが流行った。 ボルバルブルーの派生で火、自然、水、闇の四色から成り立つ。 手札破壊、クリーチャー除去など闇の特徴をかなり備えてある。 今はボルバルザークは禁止カードになってしまった。 サンプルデッキ 幻緑の双月4 青銅の鎧4 母なる大地4 鳴動するギガ・ホーン1 エナジー・ライト3 サイバー・ブレイン1 アクア・サーファー2 ディメンション・チョーカー1 ロスト・チャージャー1 スケルトン・バイス1 デーモン・ハンド2 ロスト・ソウル2 紅神龍ジャガルザー2 ツインキャノン・ワイバーン1 地獄スクラッパー4 バザガジール。ドラゴン1 腐敗勇騎ガレック2 無双恐皇ガラムタ1 炎槍と水剣裁2 無双竜機ボルバルザーク1
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第20章「Terminus for Story(後日談)」 あらゆる予測不可能な事象、あらゆる出会い、そして精神と機械。 これらは舞台上で脚本なしで役者が演じるほど奇怪でぎこちなく、そして感情を呼び起こすものであった。しかしこの舞台にも脚本家は存在し、脚本どおりに事が運んだとは彼らが知る由もない。その脚本家はゲンダー達の存在を最も必要としていたがために、自身の立場と技量を駆使してここまで彼らを導いたのである。 『違うかね? 例え眠りについても精神とは在り続けるもの』 しかしここからは脚本通りに進むことはない。なぜなら彼らは自由を自らの手で掴み取ったからだ。 『これからは彼らの時代。私にはできなかったことを、彼らはやり遂げてくれた。科学という中での発展はもはや限界を迎えた。私の不幸はこの時代に生まれたことだった。だが次の時代ならば、希望を持って私はそれを彼らに託そう。さあ……私はもう疲れた。私は再び悠久の眠りに就くことにしよう。そろそろ彼らの声を聞いてやってくれ』 焦土と化した戦場跡にゲンダーは一人佇んでいた。 あの戦いから数日が経過した。破損した身体はガイストに直してもらい、こうして今は一人で立つことができる。 二度と意識が戻ることのなくなったヴェルスタンド大統領アドルフ・ルートヴィッヒは、ゲーヒルン中枢タワーで起こった謎の爆発事故が原因で事故死したと公式的には発表され、世間を大きく騒がせた。 大統領執務室の壁に空けられた大きな穴。また精神兵器『蟹』の残骸がすぐ近くから発見されたことから、ヴェルスタンド軍大将フリードリヒ・ヴェトレイが大統領の座を狙ってクーデターを起こしたのではないか、という説もまことしやかに囁かれたが、当のフリードリヒも行方不明とのこともあって、とうとう真実が明らかになることはなかった。 現在ヴェルスタンド、マキナともに国の立て直しに注力している状況であり、フィーティンは同盟国であるマキナに支援を惜しまなかったが、大統領が空席となり事実上代表が変わったヴェルスタンドもまたフィーティンの支援を受けることとなった。これを契機に大陸三国の関係が改善されていけば、と人々は願う。 「これで……良かったんダよな、メイヴ?」 ゲンダーは空に向かって語りかける。 波動砲を発射して、その反動に耐え切れず粉々に散ってしまったメイヴ。その姿の消えた中空をじっと見つめる。あれからもう何日も経っているのに、今でもその最期の瞬間が目に焼きついて離れない。 ヘイヴの望みだったブラックボックスの管理はガイストに引き継がれた。ガイストならそれを悪用することはないだろうことはゲンダーもよく知っているし、かつてヘイヴとともに黒石を研究していたスヴェンもサポートしてくれるだろう。そしてメイヴ自身の望みでもあったゲンダーを尊守という大目的も果たされた。戦争も終わった。 ただゲンダーの『メイヴを護る』という目的だけは果たされることはなかった。 「ゲンダー、またここにいたのか」 声をかけたのはガイストだった。 「メイヴのことは本当に残念だった。けれど、そのおかげでこうして今があるんだ」 「ああ……オレもそれには感謝してる。でもなんでメイヴが犠牲にならなくちゃならなかったんダ。何か他に方法はあったんじゃないか。そう思えてならないんダ」 「その気持ちはわかる。しかしいつまでも過去に縛られてちゃいけない。僕たちは前に進まなくては。きっとメイヴだってそう言うと思うぞ」 「それはわかってるつもりなんダが……どうも気持ちの整理がつかなくてな。オレはメイヴを護るためにこれまで闘ってきた。そのメイヴが失われた今、オレはどうすればいいんダろうと思ってな」 「やれやれ、またそれか。たしかに君は機械だ。機械は指示を与えられないと動けない。でも君には心がある。心があれば物事を考え、そして感じることができる。それならば、君が思うままに行動すればそれでいい。間違ってるかどうかをあれこれ考えるのはそのあとでいいんだ。できるかどうじゃなくて『やる』んだ。そうだろう?」 「それはそうなんダが…」 「ほら、元気を出せよ。そんな様子じゃ、メイヴが還ってきたときに笑われるぞ」 「…………えっ? 今、何て言った?」 「実はね、ブラックボックスの解析を進めていて、その中にメイヴのバックアップデータが残されていることがわかったんだ。メイヴからブラックボックスを取り外す直前のものだ。解析を進めないとまだそのデータを抽出することはできないけど、いずれ必ず実現してみせる。そうすれば…」 「メイヴが復活するのか!!」 沈んでいたゲンダーの表情が見る見るうちに明るくなっていく。 「ああ、そうさ。失われたものは戻らないけど、僕らはまたそれを創り直すことができる。メイヴそのものを創ることは僕にはできないが、メイヴの新しい胴体を用意する技術ならある。そこにメイヴのバックアップを適用してやればまたメイヴに会えるさ」 「それは本当か! ……ああ、メイヴ。良かった……本当に良かった……」 「まだまだマキナの復興には時間がかかるし、物資も不足している。僕たちの個人的な理由でそれを遅らせていいことにはならないから、すぐにメイヴを復活させられるわけじゃない。でもいつの日か必ず、僕の手でメイヴを蘇らせてみると約束するよ。ゲンダー、僕を信じてくれるか?」 「ああ、もちろんダ!」 二人は互いに力強く手を取り合った。 こうして、後にマキナ-ヴェルスタンド戦争と呼ばれた戦いは終わった。 その戦いの影に小さな勇者たちの努力があったことを知る者はそう多くない。 そして彼らは、それぞれの道を歩み始めるのであった―― 機械都市の頭脳:スヴェン 戦争で荒れ果てたマキナの復興に尽力する。潜水飛行艇の『鯨』も実用化され、資材の搬送や人員の運搬にと大活躍している 精神の科学者:ガイスト マキナに帰属しスヴェンの研究所を借りてブラックボックスの研究に力を入れる。かつての精神体の研究はこの奇妙な物体の謎の解明に役立っているという 陽気な「罪」:グメーシス たたかいのあと、人知れずその姿を消した。噂では旅に出たゲンダーのあとを追いかけて行ったのだとか パンドラの箱:メイヴ 『大鯰』との最終決戦で儚くも美しく散る。彼の意志は戦争から人々を救った。その心はともに歩んだ仲間たちに今も引き継がれている 仙人掌の勇者:ゲンダー マキナ復興に協力した後に、メイヴが還ってくるその日まで自分を磨くために一人旅に出た。遠く離れた土地で自らの意思を持つ感情豊かな機械が活躍したという伝説が後世に数多く残されている ブラックボックス 完 フローティア2『ブラックボックス』
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3夜連続スペシャルドラマ『ブラックボード ~時代と戦った教師たち~』 日時: 2012年4月5日(月)21 00~23 09(第一夜) キー局: TBS 演出: 平野俊一 今井夏木 脚本: 井上由美子 プロデューサー: 植田博樹 今井夏木 正木敦 真木明 那須田淳 キャスト: 櫻井翔 白濱正平 大島優子 市原孝美 中村蒼 馬場武文 菅田将暉 松村秀雄 太賀 菅原一 永本佳以 山本実 泉澤祐希 二階堂幹夫 野村周平 磯部弘昌 北村将清 横田進 森迫永依 横田和恵 今井悠貴 後藤明 徳永淳 澤田一成 吉本菜穂子 野村美佐江 渡辺いっけい 森本晋 北大路欣也 塩田明憲 宮沢りえ 白濱久子 名取裕子 白濱まさ 安藤サクラ 高原静子 鈴木福 白濱隆 小林星蘭 高原逸子 千原せいじ 安藤清六 恵俊彰 復員兵 公式サイト: http //www.tbs.co.jp/blackboard/
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ID.255 ブラックボム ID チップ名 属性 攻撃力 レア度 容量 コード 255 ブラックボム ヒート 200 5 BFGPR 効果 備考 コード 入手法 B ★3つ以上同士の通信対戦-本番 F ★3つ以上同士の通信対戦-本番 G ★3つ以上同士の通信対戦-本番 P ★3つ以上同士の通信対戦-本番 R ★3つ以上同士の通信対戦-本番
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第19章「Mave Forever(覚醒)」 これが最期の瞬間だ。 そう確信して、ゲンダーは固く目を閉じた。 今にも『鯰』がトドメを刺しに上から落ちてくるだろう。そうすれば自分もあの放置されていたレールのように瞬く間にスクラップだ。 せめて最後にグメーだけは助けたかった。とっさに殴り飛ばしてしまったが、なんとか『鯰』の下敷きになるのだけは避けられるだろうと信じたい。 (ああ、時間の経過がいやに長く感じられる。これが噂に聞く走馬灯を見る瞬間というやつなのか?) いつまで待ってもトドメの一撃が到達しない。奴め、随分とじらしてくれるものだ。 しかし恐怖を煽るだけ煽っておいて、とうとう最期の瞬間は訪れなかった。その代わりに上から落ちてきたのは聞き慣れた声だ。 「なんとか間に合ったみたいだ。諦めるのはまだ早いぞ、ゲンダー!」 目を開けると頭上上空には巨大な銀の鯨が飛んでいる。少し横を向くと『鯰』の残骸がゲンダーからほんの僅かに離れた場所に落ちている。ぎりぎりのところで間一髪、踏み潰されずに済んだらしい。 「何が起こったんダ」 「ゲンダー、こっちだ!」 銀の鯨から拡声器を通したガイストの声が聞こえる。 「あの鯨は一体……あれも兵器なのか」 「ゲンダー、話はあとだ。こいつにつかまれ! グメーもこっちへ」 鯨からクレーンが降りてきてゲンダーを引き上げる。クレーンはゲンダーをそっと持ち上げると、鯨のへその部分から内部に格納した。空飛ぶ鯨に見えたそれは、どうやら大きな飛行艇のようだ。グメーもその後を追うように飛行艇の中へと入る。 「遅くなってすまない。よくここまで耐え切ってくれた」 「ガイスト。それにグメーも。無事ダったか」 「それはこっちの台詞だ。どうしたんだ、両手がないじゃないか!」 「グメッ! グメメメッ!!」 心配させるんじゃない、と言いたげにグメーも怒っているような素振りを見せた。 「すまんすまん、殴って悪かった。でもせめておまえダけでも助けようと思ったんダ」 「腕が無くなってるのはそのせいか。もう片方は爆発したようにも見えるが」 「新技を試したんダ。ちょっと失敗したけどな」 「まったく無茶をする。一体誰に似たんだか…」 呆れた様子でガイストはため息をついた。 「それでこの『鯨』は何なんダ? 『鯰』に対抗するためにわざわざ造ったのか」 「もとは先生が開発を進めていたマキナの新型飛行艇、通称スロヴェスト号だ。少し改造したっていう意味ではわざわざ造ったとも言えるね」 ガイストは事の経緯を説明した。 メイヴの復旧は絶望的となり、あらかじめメイヴに頼まれていた指示に従ってブラックボックスをメイヴから取り出したガイストは、まずスヴェンのもとへと向かった。 ブラックボックスは黒石からできている。そしてスヴェンはかつて黒石の研究に携わっていたことを、メイヴのデータベースから知ったからだ。 息を切らしてブラックボックスを小脇に抱えて、血相を変えて走ってきたガイストを顔を見るや、皆まで言わずともスヴェンはすぐに何か緊急事態が起こっていることを察した。 そしてガイストが何かを訊くよりも先に「まずはこれに乗り込みたまえ」と飛行艇を準備したのだ。 あらためて事情を確認すると、スヴェンはブラックボックスを飛行艇に組み込むよう指示した。 「なるべくそれは使いたくなかったのだが……今はやむを得んな」 それによって飛行艇の性能は大幅に向上したというわけだ。 「ブラックボックスのおかげで主砲の性能も大幅に上がってね。君が今にも鯰に踏み潰されるってときにドカンと一発お見舞いしてやったわけだ。それでも間一髪だったようだけどね」 「おかげで命拾いした。恩に着る。しかし、それがここにあるってことは、やっぱりメイヴは……」 「あ、ああ……」 しばしの沈黙。 そして意を決した様子でガイストは事の経緯を話した。 「すまない。僕の力ではどうにもできなかったんだ…」 「ガイストのせいじゃない。オレが頼りなかったせいでこうなったんダ…」 「いや、そもそもの元凶は大統領だ。あいつさえいなければ…………もうよそう。今更言ったところで仕方がない」 「そうダな……せめてメイヴの仇を討とう。状況はどうダ。『鯰』はどうなった」 「まだ安心はできない。なぜなら『鯰』は…」 ガイストが何かを言いかけたとき、飛行艇がガクンと大きく揺れた。 何事かと色めき立つ二人とグメー。そこに艇内放送を通じて操縦を担うスヴェンが召集を呼びかける。 一同は操舵室に駆け寄る。動けないゲンダーはガイストに背負われて移動した。 「先生、状況は?」 「大事無い。少しかすめただけだ」 「まダくたばってないのかよ。本当に化け物みたいな兵器ダな」 「いや、ゲンダー君を襲った『鯰』はガラクタになった。しかし次の『鯰』がもう攻撃を仕掛けてきている」 「次の……えっ? おい、次のって何ダ。あれ一体ダけじゃなかったのかよ!?」 「さっき僕が言いかけたのがまさにそれだ。あんなのがまだ何体も存在するんだ」 「まじかよ。勝てる気がしねえぞ…」 「そこでわしのスロヴェスト号の出番というわけだ。目には目を、兵器には兵器だ。ブラックボックスを組み込んだことで、戦力としてはこちらのほうが勝っている。さあ少し揺れるぞ。しっかり掴まっておれ!」 操縦桿を力強く握ると、スヴェンが飛行艇を急発進させた。 窓から地上を見下ろすと、いつの間に集まってきたのか何体もの『鯰』の姿が確認できる。 地震を起こすだけが能ではない。『鯰』たちはレーザーを放って、上空の『鯨』を撃ち落とそうとする。次々と発射されるレーザーが空に交差する幾筋もの線を描いた。 それをスヴェンは巧みな操縦で隙間を縫うようにかわしていく。 「さあ反撃だ。機銃斉射! 目にもの見せてくれるわ!」 機体を翻してして急降下。群がる『鯰』に弾丸を雨あられと浴びせる。ぎりぎりまで距離を詰めて、ありったけの弾をお見舞いする。そして再び急上昇。ヒット&アウェイの戦法で、一体ずつ確実に敵を減らしていく。一方ゲンダーは操舵室の中を右へ左へと転がっていた。 「こいつめ。蜂の巣にしてやる!!」 固まっている敵には主砲をぶち込んでまとめて一掃する。 「ふははは! 見たか。わしの飛行艇は伊達じゃないぞ」 次々と敵を撃破していくスヴェン無双の開幕。この男、どうやら完全に頭に血が上っているご様子。 「な、なあ。スヴェンってあんなキャラしてたんダったか?」 「いや、まあ……先生の説明によると、ブラックボックスには精神を高揚させる副作用があるらしいから……」 「たまにメイヴが変にアグレッシブになったりしてたのはそれでか」 見る見るうちに敵の数は減っていき、ついに地上で動くものはいなくなった。 広範囲にわたって『鯰』だったものの残骸が散らばっている。 「よし。制圧完了といったところかな」 「すげえよ、この爺さん。ブラックボックスのおかげとはいえ、一人で片付けちまったのか」 そのとき再び機体がガクンと大きく揺れる。 「くッ。こんどは一発もらっちまったみたいダぞ!」 レーダーを確認すると最後の一体がまだ残っていた。どうやら残骸の陰に隠れて攻撃の機会を窺っていたとみえる。 「おのれ。ナメるな!」 怒りに任せて主砲をぶち込む。 付近の残骸を空高く舞い上げながら、『鯰』最後の一体は爆炎を向こうに消えた。 「どうだ。やったか!」 勝ち誇ったように少しハイになった老人が叫ぶ。 ゲンダーは思った。「やったか」は禁止ワードだ。やってないフラグを立てないでくれ、と。 その心配はやはり的中した。 なんと巻き上げられた残骸がパズルのピースを組み合わせるように合体していき、ひとつの塊と化す。数十体分の残骸がひとつに固まり、それはより巨大な兵器を形成する。個々のそれを『鯰』と呼ぶのなら、さながらそれは『大鯰』とでも言ったところだろうか。 「なんだと! 独りでに合体するなどと……一体どうなっているんだ。あり得ない!」 「精神兵器は精神体がコアになっている。だからこそ可能な芸当か。先生、精神体をなんとかしないとあの兵器にトドメを刺すことは難しそうですよ」 「う、く……ッ。わ、わしは一体どうすれば」 「パルス波です! 精神体は特定の波動パターンに弱い! 何かそういう装備はありませんか!?」 「急に言われても困る。あくまでわしは飛行艇の設計が専門であって、武器職人じゃない」 スロヴェスト号に搭載されているのは主砲である荷電粒子砲が一門と、両翼に機銃がそれぞれひとつずつあるだけ。あとは対艦魚雷が数発置いてある程度だ。ゲンダーが『鯨』と見間違えたように機体そのものは大きく頑丈な装甲を持っており防御面に特化しているが、主砲が強力なこと以外は攻撃面ではそれほど優れているわけでもない。 「せめてレーザー兵器でもあればな……パルスレーザーを発射できれば精神体を無効化できるのに」 「ブラックボックスを取り付けたんダろ。それを利用してなんとかならないのか」 「少し時間をくれ。考えてみる…」 しかしいくらない物ねだりをしたところで、都合よくブラックボックスの力でレーザーが発射可能になったりするようなことはない。エネルギー源としては十分過ぎる代物だが、発射装置として使える機構がスロヴェストには備わっていない。ないものは仕方がないのだ。 一方で『大鯰』は見せ付けるかのようにレーザーを放って攻撃を仕掛けてきた。さきほどから地上の『鯰』が放ってきたレーザー砲の残骸を組み合わせてより強大なレーザーと化している。しかも、威力が向上しただけでなく射線も太くなり命中精度も大幅上昇。スロヴェストは防御に重きを置いた装甲ではあるが、それゆえに旋回性を犠牲にしている。まるで面で攻撃してくるかのような『大鯰』のレーザーを避けきるのは難しかった。 三度目の衝撃。そのまま続けてガクン、ガクンと二度三度揺れる。艦内に警告音が鳴り響く。 「うわッ! またやられた」 「これはいかん」 飛行艇が大きく揺れて、機体が下を向き始めた。 「おい、高度が下がってるぞ! 大丈夫なんダろうな!?」 「下がっているのではない、下げとるのだ! いったん海に逃げ込む」 スロヴェストは新型の飛行艇だ。ただの防御特化しただけの鉄の塊とは違う。 普通の飛行艇は水上発進が可能な、空が飛べて水面も移動できる艇だ。しかしそれだけではない。スロヴェストが新型と言われる所以はそこにある。 「これは潜水飛行艇。空だけでなく海中も飛べるのだ。まだ試作段階に過ぎんがな」 「なんダと! そりゃすげえな」 銀の鯨は一直線に降下し、滑るようにマキナ近海へ潜り込んだ。レーザーは海面を境に勢いを失い、海中深くまでは届かない。 「ふう…。あ、危ないところだった」 「空も飛ぶし海にも潜れる。まさに『鯨』そのものダな」 「これで水を得た魚ですね、先生! …いや、魚じゃないけど」 ゲンダーもガイストも一息ついて胸をなでおろした。 「待て……これはしまった。どうやらそうでもないようだぞ、ガイスト君」 警告音は未だ鳴り続けている。艦体はミシミシといやな音を響かせる。 「さっき受けた攻撃でどこか穴が空いていたらしい…。なんということだ……浸水しておるぞ!」 「な…っ」 「なんダと!?」 このままの状態で長く潜行することはできないだろう。しかも浸水の影響で機体重量が増せば再び飛び上がるのも難しくなる。それどころか再浮上できるかどうかすら怪しい。海面での航行は可能だが、仮に浮上できたとしてもレーザー攻撃を受けて黒コゲにされてしまうだろう。 「万事休す……か」 「そんな、ここまで来て」 スヴェンもガイストもがっくりと項垂れてしまった。 「八方塞がりじゃないか! くそっ。こんなとき、メイヴがいてくれたら…」 メイヴならこんなときどうしただろうか。ゲンダーは考えた。 自分にはメイヴのようにシステムに侵入して操作することも、自身のエネルギーを飛行艇に供給するような能力もない。直接的に飛行艇をなんとかすることはできない。ならば、別の方法を考えろ。 飛行艇の操縦技術はスヴェンに劣る。艦体を修理するにしてもまだガイストのほうがそういったことには詳しいだろうし、海中にいる状態ではそれも不可能。グメーのような特殊能力もない。それ以前に、今のゲンダーにはほとんど自力で動けるほどの力さえ残されていなかった。 さぁ、どうする。今動かせるのは大破した右腕と頭のみ。その腕もボロボロで到底何かの役に立つとは思えない。ならばなおさら考えろ。今、自分にできる最大の貢献は考えることだ。 ときにゲンダーの考えはガイストやスヴェンを驚かせてきた。敵は国を一瞬で半壊させるほどの強大な兵器、そして一国の大統領だった。普通ならそこにわずか数人で挑んで勝てるなど、まして戦争をその人数で止めることができようなど想像だにしないだろう。しかし、それでもゲンダーは立ち向かった。勝機があるかなど、そんなことはどうでもよかった。メイヴを護るために、その障害になるなら、たとえそれがなんであろうと立ち向かう覚悟だった。 人はそれを馬鹿と呼ぶだろう。ああそうとも、ゲンダーは馬鹿だった。馬鹿で、しかし真っ直ぐだった。生まれてからヘイヴの研究所を一度も出たことがなかったゲンダーには、いわゆる常識というものは通用しない。だからこそ、常識に囚われない考え方ができる。それはときに、常識の中からは生まれ得ないような答えを導き出す。普通では繋がらない二点をゲンダーは繋ぎ合わせることができるのだ。例えば機械と精神、本来は心を持たぬ物と感情。そんなゲンダーだからこそ、機械(マキナ)と精神(ヴェルスタンド)を繋ぎ合わせることができるはずだ。いや、これはゲンダーにしかできないことだ。 (君がやらなくてだれがやるんだ!) (できるかどうかじゃない、私たちは「やる」んですよ) (グメェェェーーーっっっ!) 仲間たちの声が脳裏に蘇る。そうだ、「やる」んだ! 「おい、銀の鯨! オレの話を聞いてくれ!!」 ゲンダーは飛行艇スロヴェストに向って語りかけた。 「ゲ、ゲンダー君!? どうしたんだ、突然…」 思い出すんだ、メイヴのことを。出会ったばかりのころ、メイヴはあくまでただのシステムに過ぎなかった。冗談がわかる程度の柔軟さこそあったが、あくまでデータに基づいた計算に則って行動するドライなやつだった。ゲンダーもかつてはあくまでメイヴはただの機械に過ぎないと思っていた。しかし、ゲンダーと旅を続けるうちにメイヴは変わっていった。 「鯨! 聞こえていたら応えてくれ! おまえは機械(マキナ)の鯨ダ!」 ゲンダーは生みの親であるヘイヴに絶対の信頼を寄せていた。そのヘイヴの頼みだからメイヴを護る必要がある。最初はそう考えている程度に過ぎなかった。 「ゲンダー、どうした!? 落ち着け、冷静になれ!」 「そして相手は精神(ヴェルスタンド)の鯰ダ!」 だが、ゲンダーは知った。メイヴが自らの命を削ってまで自分を助けようとしてくれていたことを。メイヴが自分をとても心配してくれていたことを。メイヴがゲンダーを信じてくれていたことを! 「信じるんダ、相手を信じるんダ。互いに信じ合うことで初めて互いに手を取り合うことができる。互いに助け合うことができる」 メイヴは変わった。あれほどドライだったメイヴが仲間を心配するというひとつの感情を持った。いや、あるいは変わったのはゲンダー自身のメイヴに対する見方なのかもしれない。ゲンダーもメイヴも、共に旅をすることで互いに影響を与え合ってきたのだ。 ゲンダーはこの感情というものが欠陥だと考えていた。大切なものを失えば悲しい、苦しい、胸が締め付けられる。心は奈落の底深くへと落とされる。 感情とはまさにブラックボックス(わけのわからないもの)だ。感情が原因で簡単な仕事にさえ支障をきたしてしまうことだってある。だからこそゲンダーはこれを欠陥だと考えた。だが、その闇の底から抜け出す希望もまた感情の中から生まれる。 「ゲンダー、一体何をしてるんだ? そんなことをしても意味なんて…」 「解り合える。解り合えるんダ。機械も、精神も!」 ゲンダーは感情を持つがゆえに悩んだ。何度も何度も悩んだ。もう何もかもがどうでもいいと思ってしまうようなことさえあった。しかし、そんなときはいつも仲間……ガイストが、グメーが、そしてメイヴが自分を説得してくれた。 「だから鯨…! 鯰を説得してくれ、攻撃をやめるようにと。おまえたちは仲間ダ。機械と精神、立場は違ってもおまえたちは同じ大陸で生まれたもの同士……仲間なんダ! 仲間同士で争う必要なんてないんダ!」 すると、心の闇は希望という名の光に変わって行く先を明るく照らしてくれた。光によって力がみなぎる。光はいつもの何倍もの力を与えてくれる。 「頼む、応えてくれ!!」 ゲンダーは祈った。信じて祈った。 「ゲンダー君……? もしや損傷が原因で思考回路がおかしくなってしまったのかね」 ひたすらに祈った。大切な仲間のことを想って祈った。 「応えろ! 応えてくれぇーーーッッ!!」 ゲンダーはメイヴのことを想って強く念じた。 『ブォォオオォォォッッッ!!』 どこかから鯰とはまた異なる唸り声が聞こえた。 「応えた…!」 「まさか。水圧で艦体が軋む音か何かだろう…」 スヴェンは投げやりな様子で呟いた。 「いや、しかしこれは……先生、見てください!」 ガイストが海上の様子を知らせるレーダー画像を指差した。そこには何の反応もない。それはさっきまで雨のように降り注いでいた『大鯰』からのレーザーが止んだことを示していた。 「なんと! これは奇跡か? ……いや、おおかた敵がエネルギー切れを起こしただけだろう。それがなんだというのだね。どちらにせよ、もう我々に助かる術など…」 「手はある。機体を海底のほうに向けるんダ」 ゲンダーは叫んだ。ガイストもスヴェンもわけがわからない顔をしている。 「こんどは一体何を言い出すんだ」 「鯨は応えてくれた! 今がチャンスなんダ! また鯨を空に飛ばすぞ!!」 「それは無理な話だ、ゲンダー君。浸水しすぎて浮上さえままならないというのに」 「いや、大丈夫ダ。上手くいく。オレを信じてくれ!」 「どういうことだね。君の話は矛盾しているじゃないか。飛ぶのなら上に向かうものだろう?」 スヴェンは怪訝そうにゲンダーを見つめている。 「だったらオレじゃなくてもいい。オレを作ったヘイヴを信じてくれ! ……頼む」 「信じてみましょう、先生。ヘイヴを……そしてゲンダーを!」 「ガイスト君まで何を言い出すんだ」 「グメっ、グメェーっ!」 グメーもゲンダーを後押しする。 「スヴェン博士!!」 「ああもう、何がなにやら…。ええい、もうどうにでもなれだ!」 半ばヤケになりながらも、スヴェンはゲンダーに言われたとおりに機体を海底に向けて傾ける。 「やったぞ。それで次は?」 「ありがとう、スヴェン。次はそのまま海底に向かって主砲をぶっ放してくれ!」 「なんだと!? ああ、君らの考えることは全くわけがわからん」 スヴェンが主砲の準備に取りかかった。鯨の顎にあたるあたりから主砲が顔をのぞかせる。 エネルギーを凝縮、圧力を主砲に集めていく。その構造としてはゲンダーの汁一本に少し似ているかもしれない。 エネルギー充填完了、狙いは海底。極限まで研ぎ澄まされた一撃を下方に向かって勢いよく撃ち放った。 ブラックボックスが作用し主砲の威力は大幅に底上げされる。粒子砲は海中では摩擦が大きいため、兵器としての攻撃力は大きく削がれることになる。例えるならば超強力な水鉄砲といったところだろうか。それを水中で発射すれば機体は大きな反動を受けることとなり、そしてその勢いが機体を上へと持ち上げ始めた。 「こ、これは……いける……? いけるぞ!」 なおも威力増大、鯨は真一文字を描きながら海を突き抜け勢いよく空に舞い上がる。空を切り風を切り、ロケットのように上空高く飛び上がった。 「と、飛んだ。こんな飛び方……馬鹿げてる…」 「ああ、たしかに馬鹿かもな。ダけど馬鹿はこれで終わりじゃない!」 空を飛んだ鯨。しかし本来鯨とは空を飛ばないもの。たとえ飛行艇だったとしても、いくら主砲の勢いが強かったとしても、この不正規な方法で飛び続けるには無理がある。重力に引かれて機体が下がり始めた。 「お、落ちとるぞ! 次はどうするんだね!?」 「スヴェンはもう一発主砲を準備してくれ!」 「もう一発やるというのかね!? 今更もう一度撃ったところで高度が上がるとは……ええい、くそ。わかった任せろ」 「それからガイストにはオレを外の様子がわかるところまで移動させてほしい」 主砲による勢いが途絶える。勢いを失った鯨は当然のこと、さらに速度を上げて落ちる。 「このままじゃ地面に叩きつけられるぞ! どうか、わしらを無駄死にさせんでくれよ、ゲンダー君」 ゲンダーは計器から鯨と鯰の位置関係を素早く把握する。さらに鯨の移動ラインを瞬時に予測する。 力がみなぎっていく。初めての感覚だった。まさにゲンダーは覚醒状態だと言えた。感覚が、精神が研ぎ澄まされていく。周囲の時の流れがとても遅く感じられる。実際に血が流れているわけではなかったが、熱く血がたぎるようなこの感覚。胸が高鳴るようなこの高揚感。恐れも不安もない、あるのは絶対の自信と希望だ。 なおも傾き落ち続ける鯨。スヴェンもガイストも顔面蒼白で、次の指示はまだかとゲンダーに視線を集める。 鯨がある位置に差し掛かったとき、光が見えた。ゲンダーの脳裏にははっきりとその光が見えた。 「今ダ!! 撃てェーーーッッ!!」 飛行艇に残るすべてのエネルギーを力に換えて最後の一撃を放つ。ブラックボックスは激しく唸り輝き、最高の一撃をもってそれに応える。 (頼む、届いてくれ) そのとき主砲は『大鯰』とはまったく逆の方向を向いていた。まるで意味のなさそうな一撃だったが、もはや誰もゲンダーに口出しはしない。今はゲンダーを信じることだけが、この状況を切り抜ける最後の鍵なのだから。 極限の一撃は虚空に消えた。鯨は反動を受けて一直線に突進する。その目指す先には『大鯰』の姿があった。 「まさかこのまま特攻をかけるつもりか!? ゲ、ゲンダー君、なんてことを……わ、わしはまだ死にたくない!」 「ぼ、僕は最後まで信じているからな、ゲンダー!」 「グメっ、グメェェーっ」 大丈夫、信じるんだ。鯨と鯰……機械と精神は、解り合える。 (メイヴ! おまえの最期の願い、絶対に無駄にはしない!!) 『鯨』はゲンダーの強い想いに呼応するかのように雄叫びを上げた。 『ブォォオオォォォッッッ!!』 「いっけぇぇぇーーーーーッッッ!!」 銀の鯨が鋭く鉄の鯰に突き刺さった。 辺りに静寂が訪れる。 さっきまでの激しい戦いがまるで嘘だったかのような静けさだった。 「わ、わしは……生きとるか…?」 スヴェンは恐る恐る目を開けた。 鯨は『大鯰』の頭に突き立っていた。敵はもうぴくりとも動かない。 「やったぞ! 倒したんダ!」 決死の特攻は敵を行動不能にしたが、その勢いはすべて『大鯰』に受け止められ、スロヴェストは大破することなくその形を保っていた。 「これは驚いた。まさか鯰に助けられることになるとは思いもしなかった」 「言ったダろ、信じろと。鯨と鯰……機械(マキナ)と精神(ヴェルスタンド)は解り合えるんダ」 鯨も鯰も、もう動かなかった。最後の精神兵器の動きが止まったことで、ついに戦争は終わったのだ。 「信じられん。実に信じられん! たったこれだけの人数で本当に戦争を止めてしまうとは!!」 「やはりゲンダーは素晴らしいな。さすがヘイヴの作品。そしてさすがゲンダーだ!」 「グメメ、グメ~っ」 ガイストとスヴェンはゲンダーに深く感謝した。 「ゲンダー。本当にありがとう。君は僕たちの故郷を救ってくれた。復興に時間はかかるだろうが、きっとこれから良くなっていくだろう。メイヴのことは残念だったが……ブラックボックスは僕が持ち帰って研究してもいいだろうか」 「ああ、それがヘイヴの頼みでもある。おまえたちならブラックボックスを悪いようには扱わないと信じてるからな。オレにもできることがあれば協力させてくれ。それにもしかしたら、いつかメイヴが復活できる日が来るかもしれないしな!」 「それは嬉しい言葉だ。さて、ブラックボックスを回収して…」 ガイストが鯨からブラックボックスを取り出そうとすると、 『グオォォオオオォォォッッッ』 動かないはずの鯰が、鯨を呑み込んだまま突然暴れ始めた。 「あ、危ないっ!?」 慌てて飛行艇から脱出するガイストたち。転がるようにスロヴェストから飛び出した。 「みんな、怪我はないかね? 一体何が起こって…」 「ま、まさか……ブラックボックスが!?」 なんと飛行艇に取り付けられたブラックボックスの力を得て『大鯰』が蘇り、さらに突っ込んできた鯨をも取り込んで自身の一部にして復活を遂げてしまったのだった。 「な、なんだと!? 詰めが甘かったとでもいうのか…」 絶望するスヴェンに対して、ガイストは意外にも冷静だった。 (どういうことなんだ? いくらブラックボックスがあらゆる機械の演算能力を大幅に上昇させる特性を備えているからといって、実際に配線なんかを繋ぎ合わせたわけでもないのに、スロヴェストの内部からその力を引き出すなんて。まるで奴には意識があるみたいじゃないか。これはもしや…) 「グメー? グメメー!?」 グメーは誰かを捜すように周囲に呼びかけていた。 「む? 大変だ、ゲンダー君の姿が見当たらない。まさかまだ中にいるのでは…! おーい、ゲンダー君、無事かね!? 早く……早く脱出するんだ!!」 しかしゲンダーからの返事はない。 「まさか、ゲンダー君まで奴に取り込まれてしまったのでは…」 ゲンダーは未だ鯨の中にいた。先の戦いでの損傷によって、ゲンダーに動く力はもはや残されていない。しかもゲンダーには『大鯰』のようにブラックボックスの力を得て回復するような現象は起こらなかった。 ブラックボックスを取り込んだ『大鯰』の暴れるがままに、ゲンダーは右に左に、飛行艇内部の壁へと何度も何度も叩きつけられた。 (嘘ダ。勝ったと思った。メイヴに報いることができたと思った…! 明らかにあとはエンディングを見るダけって雰囲気だったじゃないか…! なのに…なのに……これじゃメイヴにもガイストにも、誰にも顔向けできないじゃないか。こんなのって……ねえダろ……) ゲンダーの意識は薄れつつあった。絶対だったはずの自信も希望も、いつの間に闇に呑まれて消えてしまっていた。感情は場合によって足枷にもなれば大きな力にもなる。それは変化するものであるがゆえに不安定でもある。自信も希望も、時として簡単に失われてしまうものなのだ。 (やっぱりオレだけじゃだめなのか。メイヴ――) ゲンダーは目の前が真っ暗になった。 『ゲ……ン…ダー…?』 メイヴもまた漆黒の闇の中にいた。今、自分がどこにいるのかも、どちらを向いているのかさえわからない。音も光もなにもないその闇の世界で、たしかにメイヴはゲンダーの声を聴いた。いや、声を聴いたというよりもその存在を感じ取ったといったほうがより正確だろう。 『そうだ、私は…。ゲンダーを守らなければなりません。ゲンダーが……ゲンダーが危ない!』 メイヴの感じ取ったゲンダーの存在は徐々に消えつつあった。その事実がメイヴを目覚めさせた。ブラックボックスにメイヴのプログラムは99.9%書き換えられてしまっていたが、残るわずか0.1%がメイヴにゲンダーを思い出させたのだ。その0.1%とは、メイヴが自ら自己修復機能で書き換えた領域、ゲンダーを護るという決意だった。決意は光となって闇を払いメイヴを照らす。その強い想いが今、メイヴを蘇らせる! メイヴは覚醒した!! メイヴの自己修復機能が再開した。 メイヴのプログラムが10%まで修復された。 メイヴの胴体にできた空洞にブラックボックスに代わる新たな動力が自己生成され始めた。 メイヴのプログラムが20%まで修復された。 メイヴの胴体の解体された部分が修復完了した。 メイヴのプログラムが40%まで修復された。 メイヴの新たな動力の自己生成が完了した。その名は【意志の力】 メイヴのプログラムが80%まで修復された。 メイヴはゲンダーの位置を瞬時に把握した。 メイヴのプログラムが完全に修復された。 メイヴの力がみなぎっていく。 メイヴのプログラムが拡張され性能が160%に上がった。 メイヴの身体が赤く発光し始めた。 メイヴの性能が300%に上がった。 『待っててください、ゲンダー! メイヴ、行きます!!』 メイヴはおもむろにロケットランチャー取り出すと、それを使って大統領執務室の壁に大穴を開けた。足元の車輪を格納させると拡張された機能により地面を滑走し、台座をカタパルトとして角柱型の身体をミサイルが如く台座から自身を発射、勢いよく回転しつつ壁の大穴から大空へと飛び立ったのだった。 対抗手段すらも失ったガイストたちは、もはや『大鯰』を相手になす術もなかった。 「そうだ。そもそも土台無理な話だったのだ…」 スヴェンはただただ呆然と立ちつくしている。 「先生、危ないですよ! とにかくこちらへ」 ガイストはスヴェンを引っ張って岩陰に隠れさせると、諦めずに敵を分析し始めた。 (精神兵器は無人の兵器だ。大統領はレティスやブロウティスの情報を盗んで、それを基に精神兵器の開発を進めさせた。ということは、基本的にはあれもレティスやブロウティスと同じはず。精神兵器はそれぞれの個体が情報を共有しながら、司令塔になる個体からの指示を受けて動く。ということはあの『鯰』の群れの中にリーダー格がいたのことになる。はっ、ということはつまり…) 「そうか! 今の『大鯰』は精神体が核になっているんだ! だからいくら壊れても残骸だけになっても平気で動けた。なぜなら機械の部分はあくまで外殻でしかないからな。ブラックボックスから間接的に力を引き出せたのも、スロヴェストを取り込んでしまったのも、実体を持たない精神体が本体だったからなんだ!」 精神体が本体だとわかれば、あとは簡単だ。ガイストは精神の解放研究の第一人者、その対処法は十分に熟知している。 「精神体はパルス波で無効化できる。強力な波動を浴びせてやれば奴は消し飛んでしまう」 「おおっ、でかしたぞ、ガイスト君! それでどうやってそれをやるんだね」 「そうだ。ホログローブだ! ホログローブを中継機にして波動を増幅してやれば、強力な波動光線を精製することだってできるはずだ。先生、少し待っててください。波動発生装置を取ってきます」 「わかった。わしはホログローブを準備しよう。それはどこにあるんだ?」 「それはゲンダーが……しまった! ゲンダーとともにあの『大鯰』の中だ……」 「ああ、もうおしまいだ!」 スヴェンは頭を抱えた。 「グメッ!? グメメー! グメメメーーーっ!!」 するとそのとき、グメーが空に向かって鳴き始めた。グメーの見つめる先には赤いオーラをまとったミサイルのようなものが猛スピードで接近してくる。 「あ、あれは…?」 ガイストたちの目前に見慣れた遠隔モニタが現れた。 『みなさん、お待たせしました。メイヴ イズ カムバックです!』 「メイヴ!?」 メイヴは驚くべき速さで『大鯰』に突撃する。『大鯰』は勢いよく跳ね飛ばされた。そのはずみでゲンダーが弾き飛ばされる。メイヴはアームを格納してそこから大きな網を取り出すと、見事にゲンダーを回収した。 ゲンダーとともにガイストたちの前に降り立つメイヴ。 「メイヴ!? ど、どうやって…!?」 「おまえ死んダんじゃなかったのか!」 ゲンダーもガイストも驚きを隠せない様子だった。 『勝手に殺してもらっては困りますね。私は永遠に不滅です』 「だ、だけど動力もないのにどうやって!?」 『私自身、驚いています。現在、私は私がどうやって動いているのかまったくわかりません。ですが……呼ばれた気がしたんですよ、ゲンダーに。なぜかはわかりませんがゲンダーが危ないと思ったんです。すると、どこからともなく力がみなぎってきました。この原因を探すためにデータベースを片っぱしから調べましたが、それらしい答えは見つかりませんでした。最も矛盾の少ない説明をするならば、まさにこれが奇跡というやつですね』 「う…ううっ、メイヴーーーっ!!」 ゲンダーは思わず自身がまったく動けない状態だったことも忘れてメイヴに飛びついた。 『ゲンダー、危ないですよ。棘が刺さります。それに損傷個所から燃料も漏れ出していますし、あまり激しく動くと損傷がひどくなります。ああ、ほらほら、こんなにぼろぼろになっちゃって』 「よかった…。おまえが無事で、本当によかった……!」 『そんな今にもぶっ壊れてしまいそうなやつが言う台詞ですか。……心配をかけましたね。本当に申し訳ない』 「謝ることなんてない。むしろ、謝らなきゃならないのはオレのほうダ。だって、今までメイヴは…」 メイヴはそっとゲンダーがその先を口にするのを止めた。 『そんなものはあとでいくらでも聞いてあげます。あとは私に任せてください。ゲンダーたちを苦しめたあの鯰めを懲らしめてやりますよ!』 「いや、オレも手伝うよ」 『大事なことなのでもう一度言いましょう。そんな今にもぶっ壊れてしまいそうなやつが言う台詞ですか。ゲンダーは手を出さなくて大丈夫です。あんなやつ、私一人でやってやりますよ。なぜかはわかりませんが、目覚めてからとても調子がいいんです。今ならいつもの3倍は力が発揮できるでしょう。今の私にはもう何も怖いものなどありませんよ!』 メイヴはやけに自信満々だ。まさに負ける気がしない状態とはこのことだった。 「二人とも、聞いてほしいことがあるんだ」 ガイストは『大鯰』の正体について説明した。 敵の本体は精神体だ。ホログローブとパルス波を使えば精神体を封じ込めることができる。メイヴがいれば、ホログローブに手を加えて対精神体仕様に改造するのは朝飯前だ。しかし、そのためには精神体を露出させる必要があった。そこでメイヴが鯰の外殻を取り除き、その隙を狙ってホログローブで精神体をとらえることが決まった。 『さあ調整完了です。これでホログローブから波動パルスを発射できます。ゲンダー、こちらは任せましたよ』 「合点承知ダ!」 『では、いっちょうやってやりましょうか。今回は私の出番が少なかったですからね、その分しっかり活躍させてもらいますよ!』 そう言ってメイヴは鯰に向かって飛び出していった。 『大鯰』はこれでもか、と言わんばかりに追尾レーザーを乱射する。しかしそれよりも速くメイヴはレーザーをかいくぐり、敵の懐に潜り込む。 『この野郎、ぶっ壊してやるです』 メイヴが高速で回転すると、無数の小型爆弾がばら撒かれた。急上昇。爆発の範囲内から脱出。次々に爆発が起こり『大鯰』はその部品を散らしていく。さらに、メイヴを追尾してきたレーザーが『大鯰』に向かってくる。小回りの利かないレーザーは次々に『大鯰』に命中していく。 その上空でメイヴがアームを格納させると、そこからミサイルが姿を見せた。さらに胴体の脇からは何本ものロケットランチャーが取り出される。それらを一斉に発射、全弾命中、大爆発。爆風による煙は岩陰のゲンダーたちのところにまで届き、視界は一寸先さえも遮られる。 爆煙が晴れると、そこには瓦礫の山と地面にできた大きなクレーターの姿があった。 「今ダ!」 ゲンダーがすかさずホログローブを構えた。しかし驚いたことに瓦礫が突然に浮かび上がり集結、合体してひとつの群体を形成し始め、すぐに精神体を隠してしまう。 『なんということでしょう。ばらばらにするだけではすぐに復活してしまいますか…』 さらに、精神体はそれぞれの瓦礫を弾のように発射した。機関銃の如く鉄の塊、銀の塊がメイヴを襲う。鉄の弾はメイヴの胴体にめり込み、銀の弾は貫通する。三倍速のメイヴをもってしても高速で撃ち出されるがらくたを完全に避け切ることができない。撃ち出されたがらくたは、再び精神体のもとへ再集合しまた撃ち出される。攻撃はやむことなく、弾はほぼ無尽蔵。 「メイヴ!」 心配したゲンダーが叫ぶ。 声に反応した精神体は攻撃の矛先をゲンダーに向けた。とっさにゲンダーは背後のガイストたちが隠れる岩陰に転がり込むが、瓦礫の弾丸はゲンダーを追い続ける。彼らの隠れた岩は見る見るうちに形を変えていく。もう長くは持たないのは明白だった。 (こ、こいつぁやばいですね。エマージェンシーです。しかし私は負けるわけにはいかない。あんな攻撃を食らっては、ゲンダーも博士たちもひとたまりもありません。ぶっちゃけ博士たちはどうでもいいですが、ゲンダーは……ゲンダーだけは絶対に死守しなくてはならない! それが今の私の存在理由にして行動原理!! いくら散らしても無駄……さらにあの瓦礫は鎧にして武器でもある……ならば、あの瓦礫ごと精神体を消滅させてしまうしかない!!) ゲンダーたちのすぐ傍に遠隔モニタが現れた。 『ゲンダー、ガイスト、そしてグメー。ああ、ついでにスヴェン博士も。先に謝っておきます、ごめんなさい。せっかく感動の再会ができたけど、どうやらそれを無駄にしてしまいそうです。ですが、これもやつを倒すため。どうかわかってくださいね』 「メイヴ? 何を…言ってるん…ダ?」 『一番おいしいトドメの一撃をもっていかれるのは悔しいですが、まぁ仕方ないので譲ってあげます。これはお世話になった博士たちへの恩返しでもあります。別にゲンダーのためだけじゃないんですからね! ……ゲンダー、あとは頼みましたよ』 「メイヴ…!? おい、メイヴ! 何をするつもりダ! やめろ、そんなこと……やめろ!!」 遠隔モニタにはもう何も表示されない。 「メイヴ!! 待てよ! そんなのいやダ……やめてくれ! メイヴ! メイヴ!!」 メイヴは精神体に向かって音響手榴弾をばら撒いた。数秒遅れて激しい閃光と、爆音が鳴り響く。それは精神体の注意を引くには十分すぎるほどだった。これによって生じたパルス波が精神体の動きを止める。しかし、その効果も長くはもたない。 『これが私の極限の一撃!!』 メイヴのアームが格納される。メイヴの頭上に空洞ができる。空洞はメイヴの筒状の身体を貫くように空いている。そこにメイヴは持てる全ての力を集約させていく。 エネルギー充填開始! (スヴェン博士、あのときは私を修理していただいてありがとうございました) セーフティーロック解除! (ガイスト、ブラックボックスはあなたに託します。あれは丈夫なので、きっとこの攻撃にも耐えてくれるでしょう) ターゲットスコープオープン! (グメー、最後まであなたはよくわかりませんでしたが、とりあえずゲンダーのことをよろしくお願いします) 電影クロスゲージ明度20! (そして、ゲンダー。言いたいことは山のようにありますが敢えて言いません。ですが、最後にこれだけは言わせてください…) エネルギー充填120%! 最終セーフティー解除! (ありがとう……!!) 『波動砲、発射!!』 メイヴは自身の身体を砲身として、精神体の鎧を引っぺがすため、ゲンダーを守るため、そして己を突き動かす意志の力の告げるままに、最後の一撃を放った!! 凄まじいエネルギー波が精神体に迫る。 精神体は身動きがとれない。 極限の一撃が精神体の鉄と銀の鎧を一瞬で灰に変える。 強烈な波動が精神体に大ダメージを与える。しかしそれでもまだ精神体は辛うじて形をとどめている。 『ゲンダー、あとのことは任せましたよ』 どこかからメイヴの声が聞こえたような気がした。 「もちろんダ、メイヴ。よろしく頼まれてやるよ……!!」 震える手でホログローブを構え……波動パルスを発射する! ホログローブの放った閃光が精神体を貫く。 光が弾けて闇が霧散する。ついに精神体は跡形もなく消滅した。 それとほとんど時を同じくして、メイヴは空中で粉々に砕け散った。『ありがとう』の文字を最後に、メイヴの遠隔モニタは永遠に消え去ったのだ。 (オレのほうこそダ、メイヴ……!) ありがとう―― 第19章 了 ブラックボックス20