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「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司る五角形(ペンタゴン)。 我の……」 ルイズがこれで十数回目の召喚の呪文を唱え終わろうかというその時だった。 呪文の途中だというのに突如、ルイズの目の前に電流走る。 そこから突然現れたのは、四つんばいになった男だった。 しかし、そのとき偶然目を閉じていたルイズにはそれが見えるはずもなく…… ……運命に従いし『使い魔』を召喚せよ!」 呪文を唱え終えてしまった。 「ここはどこ…ぬわーーーー!!!」 哀れ、ルイズが杖を振り下ろすと爆音と共に光が炸裂し、 爆発に巻き込まれた男の独白は誰にも聞かれることはなかった。 目を開いたその時、ルイズの瞳に煙の向こうの何かが映った。 まさかと思い、爆発の中心に駆け寄るルイズ。 「……なに?」 煙が晴れ、そこで見たのはまるで人の骸骨のようなスーツを着用した金髪の男だった。 もっとも、爆発にまきこまれてウェルダン一歩手前だったが。 平……民?とルイズが思ったその時 『未来が変わってしまった!!タイムパラドックスだ!』 どこからか渋い男の声が聞こえてきた。 え……?と思考が停止したのもつかの間、 『未来を変えてはいけない!未来を知ることだ!』 渋い男の声とともに、使い魔になる(とルイズが思っていた)男は 電流に包まれ、そのまま消えてしまった。 あとに残されたのは途方にくれるルイズと野次を飛ばす外野、 そして絶句するコルベールのみだった。 終わり …MGS3のシークレットシアターMETAL GEAR RAIDEN snake eraserより、雷電が迷い込み即退場
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虚ムネのルイズ 日が沈み、ろうそくの明かりがほんのりと部屋の一角を照らしている。 俺はルイズの部屋で一人、義手の手入れをしている。頭のタンコブがひりひりする。 ルイズはいま、キュルケの誕生パーティーに招待されて部屋には居ない。 小一時間前、ピンクのドレスでおめかしして部屋を出て行った。 その時、ドキッとしたのを隠そうと「ハッ、馬子にも衣装だな!」と言ってしまったのがタンコブの原因。 まだしばらくは戻ってこないだろうから、退屈しのぎに手入れをしている・・・と、扉をバタン!と乱暴に開けてルイズが戻ってきた。 「あ~、ムカツクムカツクムカツク!!」 肘まである白い手袋を無造作に脱ぎ捨てながら1人荒れている。 「お・・・おい、どうしたんだよ?パーティーで何かあったのか?」 ピタッ、と体と一瞬止め・・・ゆっくりとこちらを振り向く。目が怖い。 そして、ゆっくりとこちらに歩いてくる。 目の前で止まり、うつむき小声でポソリ、と言う。 「あなた、ジンタイレンセイっての研究してるんでしょ?」 「あ・・・あぁ、そうだけど。」 「・・・・・・して。」 「 え?よ、よく聞こえなかったけど」 きっ、と俺の目を見て今度ははっきりと言う。 「私の胸を今すぐジンタイレンセイで大きくしなさい!」 「はぁ?な、なに言ってるんだよ?ちょ、冷静に」 「私は冷静よ!早くしなさい!」 なりふり構わずまくしたてる。 「(う~ん、困ったな。たぶんキュルケになにかからかわれたんだろうけど、そんな事で人体練成なんてやる訳にはいかねーし・・・あ、そうだ!)」 「わかった、ルイズ。じゃあ、今すぐ練成するから、そのまま立ってて」 「え・・・あ、うん・・・」 急にOKして拍子抜けしたのか、おとなしく指示に従ってる。 「よし、じゃあ今からやるから。そのまま目をつむって。」 「このまま?ドレスは・・・」 「ああ、大丈夫大丈夫。心配しないで。さ、始めるよ。」 そして、練成陣をイメージしながらパン!と両手を合わせる。 そして、そのまま両手を前に・・・ルイズの胸をタッチ! 「ふぇ?」 ルイズがパチッと目を開けて呆然と自分の両胸に当てられた手を見ている。 突然の事で思考が止まっているのか。 「エ、エ、エド・・・・あんた、何してるのよ?」 明らかに怒ってるなー。でも、もう練成が完成する。 バチバチバチッ ドレスの胸の部分がどんどん盛り上がっていく。A・・・B・・・C・・・D・・・・・ 「な、なこよこれ?」 「どうだ、完成だ。名付けてDカップドレス!」 そう、巨乳ドレスを練成したんだ。 「何言われたかシラネーけど、人体練成は禁忌。くだらない事には使わないよ」 その時、ドアをコンコン、とノックする音。そのままドアを開けて入ってくる人影。キュルケだ。 「ルイズ、開けるわよ。ごめんね。みんなの前でスリーサイズをバラしちゃって。私の完璧なスタイルを際立たせようと思って、つい口が滑ったのよ。」 あ~、そういう事か。でも、キュルケ、ちょっと顔が赤く高揚してるな。まさか、酔ってるのか? 「あ、謝ったって許さないんだから!それにそれだけじゃない。きょ・・・」 口篭る。 「ん?ああ、【ゼロムネのルイズ】って言ったこと?だってB・Wほとんど同じなんだもん。つい・・・ね。」 うへ~、それは酷いなぁ。 その時、キュルケがルイズの胸に気づく。 「え?ルイズ、その胸・・・何?」 「・・・エドに大きくしてもらったの。」 「ほんとに?ちょっと見せてよ。って、これパッドじゃない。」 胸の谷間から中身を覗き込みながらキュルケは言った。そして、ニヤ~と顔を弛ませて、 「あっははは!サイコーだわ!これが本当の【虚ムネのルイズ】ね!!みんなに教えないと!」 笑いながら部屋を飛び出していった。 しばしの静寂が戻った部屋。後からみんな見にくるんだろーな。ちょっと気の毒。 「エ・ド・ワ~・ド~~~」 ルイズが鞭を取り出す。 ぴしっ!ぴしっ! みんなが来るまで、ルイズの手が休まることは無かった。
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朝もやの中、ルイズとギーシュが馬に鞍をつけていると、ギーシュが心配そうに何かをルイズに頼み始めた。 「頼みがあるんだが…」 「何よ?」 「ぼくの使い魔を連れて行ってもいいかな?」 「連れて行けばいいじゃない?さっさと連れてきなさいよ」 「いや、もうここにいるんだ」 そういってギーシュはみかんのいるあたりを指した。 「え?わたし?」 「ちょっとギーシュ!!みかんは私の使い魔でしょうが!!調子に乗ってんじゃないわよ!!」 「違う、そうじゃないんだよ。おいでヴェルダンデ!!」 途端みかんの足元が盛り上がったかと思うとビッグモールが顔を出した。 「もぐらさん?おっきい!!」 「ああ!!僕のヴェルダンデ!!いつ見ても可愛らしいよ!!」 「あんたの使い魔ってビッグモールだったのね」 ルイズがヴェルダンデを覗き込むとヴェルダンデもルイズを見上げ、そして襲った。 「ちょ!!何よこいつ!!」 「ああ、ルイズ、君の指輪に反応してるんだよ。ヴェルダンデは宝石が大好物だからね」 「ふざけないでー!!」 ルイズとヴェルダンデが格闘していると一陣の突風が吹き荒れヴェルダンデを吹き飛ばす。 「な!!誰だ!!僕の可愛いヴェルダンデに何をする!!」 ギーシュの問いかけに上空よりグリフォンに乗った羽帽子の貴族が返答を返す。 「いや、すまないね。婚約者がモグラに襲われていたものでつい、ね」 「こんやくしゃ?」 グリフォンが降り立ち、長身の男がルイズを抱きかかえる。 「ああ、僕はグリフォン隊隊長ワルド子爵だ」 一向が港町ラ・ロシェールにつく頃にはすでに日が傾いていた。 皆一刻も早く休みたいとそうそうに宿を決め酒場で今後の方針を話し合う。 ちなみに部屋割りはルイズ・みかん、ワルド・ギーシュである。 ルイズがワルドとの相部屋を恥ずかしがったための部屋割りだ。 ワルドが小さな女の子の前で食い下がることに気がひけたことや、ギーシュの意見もありこの部屋割りとなった。 まずワルドが口を開いた。 「さて、明後日にならねば船が出港しないことや途中襲ってきた盗賊の話などいろいろ話たいことはあるのだが、何よりもまず君たちは一体何だ?」 キュルケが嬉しそうに答える。 「はじめましておじ様♪私は微熱のキュルケ。こっちは雪風のタバサ。あんまりにもおじ様が素敵だからこっそり後をつけてきましたの」 ワルドは少し困ったよう答える。 「そうか…。助けてもらっておいて何だが、僕にはルイズという婚約者がいるのでね。残念だが君の気持には答えられない。」 「そんなぁ~!!」 キュルケがなおもワルドに言い寄っている隣では、タバサがみかんを見つめていた。 「……」 「な、なぁに?タバサお姉ちゃん?」 「別に」 「…(やっぱりあやしまれてるのかな?もういっそ話しちゃう?…でも、やっぱり秘密にしといた方がいいよね)」 みかんが自分の力を下手に秘密にするべきではなかったかと少し後悔し始めるころには話合いが終わっていた。 「じゃあ、今日は解散にしようか?ああ、そうだ、ルイズ」 「なにかしら?」 「大事な話があるんだ、ちょっとついてきてくれ」 「ええ、分かったわ」 席を立った二人を見てキュルケが口を開く。 「じゃぁ、タバサ、お部屋に戻りましょうか、明日も早いみたいだし」 視線を本から話すことなくうなずくタバサと驚きを隠せないギーシュ。 「なんだい?もう君たちが来た目的は無意味になったじゃないか?まだ付いてくるのかい?」 「あら、確かにおじ様は振り向いてはくれなかったけど、なんだか面白そうな話じゃない?」 「面白そうだからって君、これは内密な任務で」 「それじゃあおやすみなさい♪」 気にする風もなく酒場を後にするキュルケ。 「全く…しょうがないな」 ギーシュ自身偶然一緒に来ることになっただけだということはあまり覚えていないらしい。 ギーシュとみかんが少しだけ談笑をした後に各々が部屋に帰ると、困惑気味のルイズがベッドに腰かけていた。 部屋に入ってきたみかんに気づいていないわけもないだろうに何の反応も示さないルイズにみかんは違和感を覚え声をかけた。 「ねぇ、ルイズお姉ちゃん、どうしたの?」 「私、この任務が終わったら結婚するわ」 「え?!」 いきなりそんなことを言われればだれだって驚く。 みかんだって驚く。 しかもこんな状況ならなおさらだ。 「けっこん?!いきなり?!」 「いきなりではないわ、婚約者だもの。いずれ結婚することはずっと前から決まっていたもの」 確かにいいなずけ同士が結婚したところで何もおかしくはないんだが、なぜこのタイミングで? それに、ルイズが手放しで喜んでいるようでないことも気になる。 いくら年が離れているとは言ってもみかんも女性である。 恋の悩みに関しては少なくとも男よりは敏感である自信がある。 「でも、あんあまりうれしそうじゃないよ、どうして?」 言葉に詰まったようにうつむくルイズを見てみかんはこれはいよいよたたごとではないかもしれないと思い始めた。 結婚そのものも重大な問題ではあるが、それ以上にルイズを悩ませている何かがあるとすればそれはいったいどれほど大きな問題なのだろうか? しばらく悩んだ後に、みかんはルイズにはっきりと声をかけた。 「ルイズお姉ちゃん」 「何?」 「なにかなやみがあるなら、なやめばいいよ。答えを出すのは本当に今じゃないとダメ?」 「……!!」 ハッとした。 確かにその通りではないか。 ワルドの強引な求婚に少しばかり混乱してしまっていたようだ。 別に今結婚する必要はない。 それでワルドが自分を突き放すようになるかもしれないという不安もあるにはあったがその程度まぁ待ってくれるだろうと楽観して考えることができた。 いや、今すぐに結婚することには自分自身もともと否定的だったではないか。 自分は誰かにそれを肯定してほしかったのだ。 そう考えると一気に気が楽になり途端に疲れを強く感じたのでベッドに潜り込んだ。 みかんと逆の方向を向いて、ぼそぼいそと、しかし聞こえるようにつぶやく。 「…ありがとう」 その声を聞いたみかんはルイズと左右反対にベッドに潜り込んだ。 ここで下手に返事を返すほどに野暮ではない。 しばらくして、部屋には二人と一頭の規則正しい寝息のみが残された。 早朝、みかんは昨日の疲れが幼い体にはきつかったのか、誰よりも遅く目を覚ました。 隣で待機していたオルトロスを連れ一階に降りると、ルイズをワルドが説得しているのが目に入る。 どうやらまだ任務が終わってすぐの結婚をあきらめていないようだ。 しかしルイズにまともに取り合っている様子はない。 ワルドの勇敢さや有望さを褒めつつも結婚はもう少し後だとはっきりと口にしていた。 それどころか自分をなだめるワルドの言葉に酔っているようにも見える。 それに気付かないワルドでもないのだろう、どちらかといえば本気というよりもいかにルイズを満足させるかを考えて言葉を選んでいるように見える。 苦笑交じりにみかんが二人に近づくとワルドがこっちに気づいたのか手を振ってくる。 こちらも振り返そうとはしたのだが、周りに集まっていた面々の微妙な表情を見てその手が止まった。 タバサの表情こそいつもと同じだが、明らかにおかしい。 「どうしたの?みんな?」 ルイズが俯き、ギーシュが申し訳なさそうに答える 「いや、実はだね……」 その言葉を引き継ぐかのようにワルドが口を開いた。 「君に決闘を申し込みたいのだよ」
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戻る マジシャン ザ ルイズ 進む マジシャン ザ ルイズ (2)心の傷 神聖アルビオン共和国皇帝クロムウェルの秘書ミス・シェフィールド。 彼女は今、一人女豹のように森を疾走している。 背後からは執拗な追跡者の影が迫る。 そういう意味では、今の彼女は女豹というよりは、狩人に追い立てられる兎そのものだ。 ―はははは、どこへ行ったのかなミス・シェフィールド― 森の奥から楽しい追いかけっこに興じる子供のような、楽しそうな声。 どうやら彼女が先頃放ったガーゴイルは既に倒されたらしい。 ミス・シェフィールドはガリア国王ジョゼフがレコン・キスタに送り込んだ間諜である。 いや、間諜という表現では適正ではない。 彼女こそ裏からクロムウェルを操り、延いてはレコン・キスタがアルビオン王国を打倒するという演目を用意した立役者であった。 ウェールズ王子が討たれ、無事アルビオンが貴族派の手で制圧されたのが暫く前のこと。 それまでは、何もかもが順調であった。 しかし、その思惑に異変が生じ始めたのが数日前のこと。 まずは、自分同様に、ガリア王国から送り込まれた他の工作員達との連絡が途絶したことが発端であった。 直ちにクロムウェルにこの件を問いただすべく面会を求めたが、これも断られた。 この時、この国を脱出していれば……彼女はそう後悔してやまない。 だが彼女は健気にも、狂い始めた歯車を元に戻そうと躍起になってしまった。 あらゆる手段、あらゆる情報網から、今アルビオンで何が起こっているのかを把握しようと努めた。 そして知ってしまった、城に巣食っている、幽鬼の如き一団を。 その中には、シェフィールドの手駒であったはずのクロムウェルの姿も含まれていた。 不幸なことに、不用意なことに、彼女は更に一歩足を進めてしまった。 彼らを統べるものの存在を知ってしまった。 彼女の虚無の使い魔としての能力を持ってしても、理解の外にある存在のことを。 即座に城から脱出したシェフィールド。 しかし、すでに何もかも全てが遅すぎた。 彼女の脱走後、すぐに追跡を開始した『彼』。 「みいつけた」 そして、今に至る。 彼女の目の前にいる男、ジャン・ジャック・ド・ワルド。 「折角君とそのご主人を招待する為に宴の準備をしていたというのに、逃げ出すなんてあんまりじゃないか」 久しぶりに出会った親愛なる友人に語りかけるような、穏やかな笑顔。 「ひっ…!」 シェフィールドは今来た道を取って返して走り始めた。 そして、その前方、木の陰から現れる男、ワルド。 「酷いなぁ、人を見て逃げ出そうとするなんて」 背後には先ほどのワルド。 道を外れて草むらの中に逃げ込もうとする。 草むらの先に、白い影―――ワルド。 「どうしたんだい?幽霊でも見たような顔をして」 「いや、いやあっ!」 三人のワルド、逃げ道は無いかと周囲を見回すシェフィールド。 草木の影から、池の中から、木の上に、空中に、 ワルド、ワルド、ワルド、ワルド。 風の遍在? ありえない、例えスクウェアメイジだとしても、こんな数の遍在はありえない! では幻術?それも無い、彼は確かにそこにいる。 シェフィールドの額のルーン文字が輝きだす。 目の前の存在を理解しようとする、目の前の存在から逃げる術を探そうとする。 しかし、彼女の持つミョズニトニルンの能力は『彼』を知る力を有していない。 ―追いかけっこは満足したかい?― こだまする様に、四方から響くワルドの声。 ―君は予想以上に早く、知りすぎたんだ― シェフィールドの歯が恐怖でガチガチと打ちならされる。 ―それじゃあ― 君の頭の中を見せてもらおうかな 「いやあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」 ニューカッスルの城が落城してから二ヶ月が経過した頃、ルイズはトリステイン王宮に来るようにとの命令をうけた。 アンリエッタは、ウェールズ皇太子が亡くなられたことを酷く悲しみ、それ以来、度々体調を崩すようになっていた。 公務の合間を縫っては泣き、床については泣き、遂には公務の最中に泣き出すに至って、マザリーニ枢機卿もいよいよアンリエッタが尋常の状態ではないことに気付き、一切の公務を取りやめ、王女を半ば城に閉じ込めるような形で休養を取らせたのであった。 「ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール。ただ今参上いたしました」 「お入りなさい」 ルイズがアンリエッタの私室に通されると、そこには床に伏せったアンリエッタの姿があった。 アルビオンへの旅が終わってから、ルイズがアンリエッタに会うのは、これが初めてである。 あの事件の後、すぐにでも風竜シルフィードに乗ってアンリエッタ王女に手紙を届けるつもりのルイズであったのだが、例の光の柱の影響か、アルビオンから脱出し、トリステイン領内に入った頃には高熱を出し、やがては昏睡状態に陥ってしまったのだ。 すぐさまトリステイン魔法学院へと戻ったキュルケ達は、ルイズをベットに放り込み、交代しながらの看病を続けた。 この間、ウルザがオスマンに事情を説明し、手紙と風のルビーがアンリエッタの手元に届くように手配したのであった。 久しぶりに見たアンリエッタは、以前の健康的で薔薇のような美しさはなりを潜め、かわりに儚げな白百合の美しさが漂っていた。 「姫さま………おやつれに、なられましたね」 「ああ、ルイズ。私の大切なお友達…こんな姿ですみません。何せ皆、わたくしをここから出させて下さらないのですもの」 この段に至り、ルイズもマザリーニ枢機卿の意図を理解した。 今のアンリエッタに必要なのは、おべっかを使う貴族でも、政治的判断を述べる政治家でも無い、彼女を真に理解する友人なのだと。 「ウェールズ皇太子の、お話をしてくださらないかしら」 「…分かりました」 ルイズは全てを話した。 ウェールズとの出会いから、私室でのやり取り、その夜の晩餐会、そして、礼拝堂でのワルドの裏切り。 すべては二ヵ月前の、過去の出来事。 しかし、アンリエッタ王女の中では未だに現在の出来事なのであろうことは、容易に察することができた。 「わたくしが…わたくしがウェールズさまを殺したようなもの。わたくしがあの時ワルドを選びさえしなければ…」 「いいえ、違います、姫さま。 ウェールズ皇太子は、例えあの場で殺されなくとも、きっと城に残ったに違いありません」 「なぜです!?なぜ!ウェールズさまは、亡命して下さらなかったのですか!? ルイズ!あなたはどうして彼に亡命してくださるように説得してくださらなかったの!」 「姫さま……やはり、皇太子に亡命をお勧めになったのですね」 「ええ、そうよ、死んで欲しくなかった!愛していたのですもの!」 泣き崩れるアンリエッタ、その痛ましい姿にルイズも目線をそらす。 「姫さま、私も皇太子に亡命を勧めました。けれど、皇太子は私に、姫様が亡命など勧めていなかったと仰いました」 「なぜ!?どうしてです!私はちゃんと書きました、書きましたのよ!?」 「………」 半狂乱になりながら、ルイズの肩を掴むアンリエッタ。 その美しい爪が、ルイズの肌に食い込み血を滴らせる。 「ウェールズさまは、わたくしを愛しておられなかったの!? わたくしよりも、名誉が大事だったの!? 答えて!?答えなさい!ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール!!」 ルイズは堪えるように唇を噛み、真正面からアンリエッタの瞳を見返した。 「姫さま、皇太子は姫さまと、このトリステインに迷惑をかけぬ様に、国に残られる覚悟をなされたのです。 決して、名誉を守るために残られようとした訳ではございません!」 思わず強く言い返され、呆然とするアンリエッタ。 「わたくしに、迷惑をかけない、ため………?」 「勇敢に戦い、勇敢に死んでいった、それだけを伝えて欲しいと、皇太子は仰られました」 それを聞き、アンリエッタはくしゃりを顔を歪め、ルイズの胸に顔を押し付ける。 「それでも…それでも生きて、欲しかった。生きて欲しかった! 生きていてさえすれば!わたくし、わたくし!国だって捨てられるつもりでしたのに!!」 泣き崩れるアンリエッタ、その嗚咽を聞きながらじっと目を閉じる。 そうして、決心がついたルイズは、アンリエッタの肩を掴み、力任せに引き離した。 「姫さま、ご無礼いたします」 そう言いながら深々と頭を下げる。 その次の瞬間、ぱんっという音が響き、アンリエッタの頬にルイズの強烈な張り手が見舞われた。 「姫さまっ!皇太子は、皇太子は!愛する者を守る為に戦ったのです! それが王族の勤め、男の勤めだとして戦ったのです! それを、姫様はどうして分かろうとしないのです! 皇太子は、立派に責任を果たしました! その皇太子を、どうして姫さまが問うことが出来ましょう! どうしてその強さを認めようと、しないのですか……っ!」 ただ呆けたようにルイズを見つめるアンリエッタ。 むしろ逆に泣き出してしまいそうな顔のルイズを見て、アンリエッタの心の中でも、一つの決着がついた気がした。 「私も……強く、なれるかしら」 「姫さまが、そう望むなら、きっと」 自嘲気味に呟くアンリエッタに、精一杯の力を込めながら、ルイズは返したのだった。 強さとは、心が流した涙の数で決まる ―――ギーシュ回顧録第四篇 戻る マジシャン ザ ルイズ 進む
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ルイズと幽香は他者と一歩送れて朝食の席を立つ。 これから、幽香を入れての、初めての授業である。 「・・・むきゅー。この本、興味深いわ。ここの世界の魔法も会得して、 絶対に魔理沙をぎゃふんと言わせてやるわ」 第4話 こんどこそ すごい 本領発揮 他の生徒から数分遅れてルイズと幽香が教室に入る。 すると、赤い髪をしたスタイル抜群の女性がルイズの姿を認めると、近づいてくる。 「あらルイズ、おはよう」 「・・・おはよう、キュルケ」 ルイズは心底嫌な顔を、キュルケは悪戯を楽しむような顔をしている。 「この人が貴方の召喚した使い魔?」 「そうよ、幽香こそ「使い魔じゃないわ。あくまでルイズとは対等のつもりよ」ってちょっと」 キュルケの質問に、ルイズが自慢げに答えようとしたところ、幽香の口から驚きの言葉が漏れた。 「ち、ちょっと、前に一応ではあっても敬おうって言ってたじゃない」 「いや、なんかやっぱり慣れない事はするもんじゃないわねって事で」 「余りにも酷いわ・・・」 ルイズの絶望感に満ちた声が漏れる。もちろん、それはキュルケにも聞こえていたわけで。 「あははは、ルイズ、なんだかとんでもないのを召喚したみたいね?」 「ふ、ふん!これでも実力は本物・・・なんだからねっ!多分!」 「多分って何よ、私は本気さえ出せれば分けはあっても負けたことは無いわ」 「ふふ、でもあたしはちゃんとした使い魔を召喚したのよ?おいで、フレイム」 すると、教室で他の使い魔と話して(?)いたオレンジ色のトカゲの様な大きな生き物が歩いてきた。 「あら、火の象徴の生き物?」 微妙に不快そうな顔をする幽香。 「そうよ。この尻尾、素晴らしいと思わない?」 確かに、とルイズは思う。この尻尾から見るに、サラマンダーの中でもそれなりに 高位にあるのだろう。と、容易に想像が付く。 「ふーん・・・知能の割に力はあるのね。花、燃やさないでね」 「ふふ、あたしが指示したりしなきゃ、そうそう火なんて吹かないわよ」 「ふーん、ならいいわ」 完全にルイズは蚊帳の外である。 「ちよっと幽香、せめて他人の前では使い魔らしく振舞って頂戴よ」 「嫌よ、逆にルイズしか居ないんなら・・・考えなくも無いけど、他人の前で使い魔 ・・・と言うより、ルイズより下だなんて思われたくないわ」 「ふふ、ルイズ、貴方、使い魔に忠誠も見せて貰えないようだからモテないのよ・・・」 「私はアンタみたいに他人に媚を振り分けるほど暇じゃないのよ」 ルイズが反論をするが、キュルケは幽香に興味があるようだ。 「ねぇ、貴方はなんて名前なの?」 「あら、こちらの貴族は相手に先に名乗らせるの?」 「そうね、こちらから名乗りましょうか。あたしはキュルケ。微熱のキュルケ。」 キュルケはそこで一旦区切ると、ルイズにあてつけるように胸を張り、幽香に向かって艶かしい視線を送る。 「ささやかに燃える情熱は微熱。でも、世の男性はそれでいちころなのですわ。あなたと違ってね?」 キュルケは視線を幽香の胸に移動させ、その後視線をルイズの胸に固定し、嘲るような笑みを浮かべる。 「じゃ、失礼?」 そのまま、キュルケはさっそうと歩いていく。歩く姿でさえ何か色気のような物があった。 「キィィィッ!くやしいっ!何よ何よ!絶対幽香のほうが使い魔としての格は高いんだからっ!」 「・・・・・・」 「どうしたのよ、幽香?」 「胸で・・・負けたわ。そうそう負けることは無かったのに・・・」 「・・・そう」 幽香は割りと本気で悔しがっているようだ。 そこに何故かキュルケが戻ってくる。 「ルイズ、貴方、タバサの部屋に入った何か、見なかった?」 「・・・? いえ、見てないけど?」 「うーん。やっぱりルイズも見てないか・・・」 「どうしたのよ?」 「ううん、ただ、タバサが後で戻ってはいるとはいえ、本が減ったりしてるって嘆いてたのよ」 「ふぅん・・・普通、生徒ならタバサの部屋じゃなくて図書室に行くと思うけど・・・」 「だから妙なのよ。まぁいいわ。見つけたらあたしに言ってね。それじゃ」 こんどこそキュルケは男性の群れに戻っていく。 「変なの・・・」 「へぇ、この学園、図書室なんてあったんだ」 「えぇ、まぁ、一般生徒じゃ入れないところもあるけどね」 「ふぅん・・・まぁいいわ、前に居るの、先生でしょ?」 「げ、危なかったわ。ありがと幽香」 「どういたしまして」 前に来た先生、シュヴルーズ先生が口を開く。 「おはよう皆様、私はこの季節に召喚された使い魔を見るのが好きなのですよ・・・ 本当に皆さん、色々な・・・色々な・・・」 シュヴルーズはルイズの隣に居る幽香を見て凍りつく。 「・・・えー、本当に色々な使い魔が居るのですね・・・」 「ちょっと、ミセス・シュヴルーズ!人の使い魔みて硬直するのは止めてください!」 「そうよ、使い魔を一通り見てみたけど、私以上の生き物・・・いや、かろうじて対抗できそうなのは、 そこの青もやしの竜しか居ないわよ?」 幽香は青もやし・・・いや、タバサを指差して言う。 タバサは反応しない。それに対してキュルケが反応する。 「ちょっとそこの使い魔、タバサをもやし呼ばわりとは、 礼儀がなってないんじゃない?」 「あら、すいませんね。昔、そこのタバサ、だっけ? に似た人が紫もやしと呼ばれて居たので、つい呼んでしまいましたわ。 非礼をお詫びします」 「くっ・・・わ、わかればいいのよ!」 周りからは明らかに喧嘩を売りに行ったキュルケを上手く受け流すほどの知慧を 見せた幽香に控えめながらも感嘆の声が漏れる。 ルイズは幽香の耳元でささやく。 (よくやったわ幽香!) 「ゃん!」 「え?」 しかし幽香はそれに気づかなかったようで、ルイズの息が幽香の耳に入り、 思わず嬌声を上げてしまう。 その声はやけに色っぽく、何人かの男子生徒が反応してしまう。 その耳を押さえて甘い声を上げながら顔を赤らめるという動作を 幽香のスタイルとルックスを見ていたギーシュは直視してしまった。 「・・・可憐だ。薔薇たる私が、あの花を手に取らない?そんなことはあり得ない。そんなことは―――!」 ギーシュは、ルイズの最初の召喚、そう、コルベール場外ホームラン事件を見ているのだ。 もちろん幽香の名乗り上げも聞いている。 「そうだ、花だ!全ての美しい花は私の物、ならば私が薔薇である必要は何処にもなくて―――!」 気障なギーシュがなにやら叫んでいるが関係ないことである。 しかし、ミセス・シュヴルーズ先生は耐えられなかったらしい。 「ふがっ!」 「しばらく黙っていなさい。では授業を始めましょう」 「ふがふぐふもっふー!」 ギーシュの喚く声が五月蝿いので生徒達によって窓から落とされる。 これは痛い。 「では、今日は使い魔を召喚して皆さん疲れているでしょうし、土魔法の基本、錬金 のおさらいをしましょう。それでは・・・」 シュヴルーズ先生が錬金の理論を説明している。 しかし、ルイズにとっては実技が出来ない分、座学はかなり優秀な方である。 そんなルイズにとっては、非常に退屈な授業である。 しかし、幽香はしきりに頷きながら、その授業の内容を咀嚼している様であった。 「幽香、意味わかるの?」 「うーん、分からないわけじゃないんだけど、どうにもピンと来ないわ。 せめて、一回でも実技が見れれば・・・」 「・・・貴方、実は頭良い?」 「・・・伊達に数百年生きてないわ」 「うそっ!貴方、そんなに生きてたの!?」 「言ってなかったかしら?妖怪は軽く千年は生きたりするわよ。 ま、種族にもよるけどね」 「・・・何か、常識が崩れて来たわ」 この時、ルイズは不覚にも大きな声を上げていてしまった。 「ミス・ヴァリエール!」 「はっ!はい!」 「随分と余裕のようですね。では、私がやるつもりだった 錬金の魔法を実演していただきましょう。大丈夫です。 貴方はとても優秀な生徒と聞いています。さぁ」 途端に周りがザワザワと騒ぎ始める。 「あの・・・先生、やめさせた方がいいと思います」 「もう爆発は見たくありません!」 「触ると爆発する技ってあったわね」 周りの生徒達が口々に止めろ止めろと騒ぎ立てる。 その様子を見て、なおルイズはその指名を受けた。 「やります!」 ルイズのこの宣言で、生徒達が隠れようとした。 「―――静かにしてくださらない?」 しかし、ルイズの隣に居た女性、いや、使い魔の幽香が、 この喧騒の中でもやけに響く、重く、低く、人間の本能に直接語りかけるような 声を、いや、もはやこれは号令だ、を掛ける。 「ミセス・シュヴルーズ?」 「は、はい?」 幽香が、非常に優しい声でシュヴルーズに声を掛ける。 周りの喧騒は、幽香の先ほどの一声で静まり返っていた。 「普通は生徒の前に、先生が手本を見せる物じゃなくて? ―――ミセス・シュヴルーズ?」 幽香の、「異論は許さない」と言う、確固とした感情の籠められた言葉は、 それは言霊となってシュヴルーズの考えを侵食する。 「え、えぇ、そうですね。わかりました。では私が手本を見せます」 そう言ってシュヴルーズは、土を出すと、それに魔法を掛ける。 するとその土は、金の輝きを放つ金属に変化する。 「あら、凄いですね先生。それは金ですか?」 幽香は心底感心した風でシュヴルーズを見て、声を掛ける。 それに対してシュヴルーズは自嘲したような 笑みを浮かべながら言葉を紡ぐ。 「いえ、これは真鍮です。私は二つしか属性を掛け合わせられませんから。」 シュヴルーズの自分を見下すような言葉に、幽香はポツリとつぶやく。 「ふぅん―――なんだ、これなら、まだ魔界の人形の魔法の方が高度だわ」 「え?」 幽香のぽつりと言った一言は、近くに居たルイズにしか聞こえていなかった。 「ミセス・シュヴルーズ?」 「は、はい、何でしょうか・・・?」 「よろしければ、私に一度やらせて戴けません事?」 「え?」 シュヴルーズは、不思議そうな表情をしながら、疑いの念の篭った声を上げる。 その幽香の申し立てに、ルイズが反応する。 「や、やめてよ幽香!私が恥かいちゃうじゃない!」 「見てなさいルイズ―――これが、私の実力って言う物よ」 幽香は、あたかも自分がこの空間の支配者のごとく、 いや、事実そんな状況だ。誰もが、学園長室に居る三人ですら、 遠見の鏡を使ってこの状況を覗き見ている。 「行くわよ―――」 幽香の宣言に、全員が息を呑む。 そして―――幽香の魔法、土を真鍮に変える魔法が使われた。 それは、貴族の使う杖と言う、それなりの長い時間を掛けて作られる杖と言う 魔法媒体無しで振るわれた。 「―――出来たわ」 そして、その土は見事金の輝きを放つ別の金属、真鍮に成り代わっていた。 「――――――!!」 その歓声は、どこまでも無音であった。 ただ、ルイズを初めとする、学園全員を、震わせ、叫ばせる物であった。 そして、幽香は言う。 「ルイズ?」 幽香の突然の呼びかけに、ルイズは驚く。 「な、何よ?」 「ルイズ、こっちにいらっしゃい。もしかしたら、 貴方に魔法を使わせられるかも。」 「なっ!」 「「「なっ!?」」」 教室のほぼ全員が驚きの言葉を上げる。 もちろん、校長室の三人も、である。 「どうするの?ルイズ?私のやり方―――やってみない?」 「当然、やるわ!」 ルイズは、もしかしたら今までの自分の評価をひっくり返せるかもしれない その考えだけで、走ってやってきた。 それはそうだろう。幽香は、完全に魔法の素人の筈なのだ。 その幽香が一発で魔法を成功させた。つまり、それは自分にも 魔法が使えるのではないか―――? そう、考えさせるのに十分であった。 「偉いわねルイズ・・・よく来てくれたわ」 ただ、ルイズには、一つ心配なことがあった。 何故か、幽香に良く解らない迫力と言うか、 周りの人に、一切の反論を許さない、ナニかが渦巻いていたのだ。 「待ってね・・・」 幽香は、またシュヴルーズの用意した土に何処からか 出した種を蒔き、宣言する。 「フラワーマスターの名において宣言するわ。 ―――咲きなさい」 すると、ルイズ、この中で最も博識なタバサですら見たことの無い花を咲かせる。 その花を、ルイズの花に近づけると、ルイズは意識を失った。 「ふふ、いいわ。さぁ―――!」 その光景を見ていたオールド・オスマンと、コルベールは、ほぼ同時に叫んだ。 「いかんっ!」 すぐさまその幽香の行動を止めに行くが、幽香の鏡越しの視線と、 満面の笑みを見ると、一瞬でそんな考えが吹き飛ぶ。 元々、動くことすら出来なくなっていたロングビルは、「ひっ」 と言う声を上げて、失神した。 使い魔は、そのメイジと実力差があると、メイジから主従の関係を取り除こうとする。 幽香は、正にそれをしようとしていたのだ。 幽香は、嬉しそうに叫ぶ。 「さぁ、これで私の使い魔生活も終わり―――よっ!」 光が走った。
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Team Andante様の副管理人。 破滅の女神ルインを溺愛しており、無限回収している。 いつも店でルイン様を買い占めているため、ルイン様を 購入しようと店員に声をかけた所「ルインですね?」と返されたことがある。 2010年4月18日現在414枚所持している。 目標は年内に500枚超え。 また、ほぼ全ての言語の全てのレアリティをコンプリートしている。 ルイン様を全て積み重ねた写真と床一面に敷き詰めた写真をうpしてメンバーを驚かせた。 ルイン様以外にもノースウェムコやフレイヤ等も回収している。 ルイン様×ウェムたんこそ正義だと思っている。 エタバトおよびチャットアイコンは遊戯王OCGの「破滅の女神 ルイン」
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戻る マジシャン ザ ルイズ マジシャン ザ ルイズ (10)超肉弾戦 始祖ブリミルの像が置かれた礼拝堂で、ウェールズは新郎と新婦の登場を待っていた。 王族の象徴である紫のマント、帽子にはアルビオン王家の象徴である七色の羽飾りがゆれている。 その顔は式が終われば死に行く運命であることなど感じさせない、凪いだ穏やかな表情である。 扉が開き、ルイズとワルドが現れた。 ルイズは呆然とした様子だったが、ワルドに促されウェールズに歩み寄った。 「今から結婚式をするんだ」 ワルドはそう言って、アルビオン王家から借り受けた新婦の冠をルイズの頭に載せた。 そしてルイズの黒いマントを外し、乙女なる新婦にのみ許されぬ純白のマントを纏わせた。 この間もルイズは無反応であったが、ワルドはそれを肯定の意思表示と受け取った。 「では、式を始める 新郎、子爵ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド。 汝は始祖ブリミルの名において、このものを敬い、愛し、そして妻とすることを誓いますか?」 ワルドは重々しく頷き、杖を持った左手を胸の前に置いた。 「誓います」 ウェールズはその言葉を聞き、にこりと笑って頷くと、次にルイズに視線を移した。 「新婦、ラ・ヴァリエール公爵三女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」 止めて欲しかった。 止めて欲しかったから、あの夜のベランダでルイズはウルザに結婚すると宣言した。 けれど、彼が返したのは、いつもどおりの背中。 誰かに止めてほしかった、誰かに導いてほしかった。 なんて 甘ったれた自分。 止めてほしい、導いてほしい、魔法を使えるようにしてほしい、幸せにしてほしい、好きになってほしい。 何という甘え、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエールはいつからこんなに弱くなったのだろう? …多分、あの大きな背中を見たときから。 あの背中が自分を弱くした、あんまりに大きくて、寄りかかってしまった。 彼はそこにあっただけなのに、全てを決めるのは自分なのに。 強くならなくてはならない。 そう、あの背中にもう寄りかかってしまわないように、強くならなくては。 夜の晩餐会、死に行く貴族達。 その強さが、ルイズに小さな決意と覚悟をもたらしたのだった。 「新婦?」 「ルイズ?」 二人が怪訝そうな表情でルイズを見つめている。 そんな二人を見て、思わず笑いそうになってしまう。 決意したとたん、ルイズの中で心に圧し掛かっていた何かがすとんと落ちた。 「誓えません」 高らかなる宣言。 「ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは誓えません。 お二方には、大変な失礼をいたすこととなりますが、私はこの結婚を望みません」 それこそが始祖ブリミルに捧げる詔であるかの様に、堂々と謳い上げるルイズ。 流石にこの展開にはワルドも唖然とし、続いて顔を怒りで朱に染めた。 それを見たウェールズは最初は困ったように、続けて労わる様な目でワルドに語りかけた。 「子爵、誠にお気の毒だが花嫁が望まぬ式を、これ以上続けるわけにはいかない」 しかし、ワルドはウェールズを無視し、ルイズの手を取った。 「君は緊張しているんだ。そうだろう、ルイズ。君が僕との結婚を拒むわけが無い」 「いいえ、違うわワルド。私はあなたと結婚しない。 確かに私はあなたに憧れていた、でも今は違うわ。あなたと一緒にはなれない」 はっきりとした拒絶の言葉に、ワルドがルイズの肩を掴む。 その目はつり上がり、表情は普段の優しいものではなく狂気を含んだものに変貌する。 「世界だルイズ、僕は世界を手に入れる!その為に君が必要なんだ!」 豹変したワルドに対しても、ルイズは正面から言い放つ。 「私は世界なんていらないわ!」 興奮したワルドは両手を広げ、ルイズに詰め寄る。 「僕には君が必要だ!きみの能力が!君の力が! ルイズ、いつか言ったことを忘れたか!君は始祖ブリミルに劣らぬ、優秀なメイジに成長するだろう! 君は自分で気付いていないだけだ!その才能に!君の才能が僕には必要なんだ!」 「答えは変わらないわ。例え私にどんな才能があっても。 それを利用するだけで、私自身を見ようとしないあなたに従うことは出来ない!」 流石にこの段になると、ワルドの剣幕を見かねたウェールズが間に入りとりなそうとする。 「子爵……、君は袖にされたのだ、こうなったら潔く…」 ウェールズがそう言いかけたとき、ワルドは『閃光』の二つ名に恥じぬ素早さで杖を引き抜き呪文を完成させる。 そして、風に舞うように身を翻らせ、ウェールズの胸をその輝く杖で穿ったのだった。 「き、貴様……」 ウェールズが床に崩れ落ちる、無惨に血で染め上げられる紫のマント。 「何をするのワルド!?」 「次は君の番だ!」 ウェールズの胸を貫いた杖、それでルイズの命をも奪おうとした、その時であった。 「あまり私の主人に手荒な真似はよしてくれないかな、若者よ」 中空から突き出された杖が、ワルドの杖を受け止めている。 不可解なる闖入者に、ワルドは距離を離す。 突き出された杖の先、そこから徐々に肉体が広がっていく。 腕、胴体、手足、白い髭に色眼鏡、左手に杖、右手にデルフリンガー。 多重世界ドミニアにあって、最も罪深きプレインズウォーカーの姿がそこにあった。 ファイレクシアに察知される危険を犯してまでプレインズウォーカーの力を行使し、空間を渡りルイズを助けたのである。 「貴様…なぜ分かった」 「感覚の共有。悪いとは思ったがミス・ルイズの目を借りさせてもらった」 「覗き見とは趣味が悪いなご老体!」 ワルドが呪文を唱え、その杖をしならせた鞭を打つように叩きつける。 「ウインド・ブレイク!」 風の暴風圏、その安全地帯―ワルドの懐。 そこに素早く飛び込むウルザ、杖による強打がワルドの腹を打ち、後退させる。 間を空けずに、火弾群が杖から放たれワルドを狙う。 その殆どをステップでかわしながら大きなものだけをエア・ハンマーで相殺する。 杖による強打は自ら後退することでダメージを減少。 「まさかこんなところで計画が邪魔されるとは思っていなかったよ!」 エア・カッター、不可視の刃がウルザを襲う。 杖を掲げ、ウルザは自身の周囲に魔法の皮膜を作り出す。 広範囲の皮膜では威力を減衰し切れずに、その頬を切り裂いた。 「僕の目的は三つあった!一つはルイズ、君を手に入れること!」 ウルザが杖を掲げ、弧状を描く稲妻が走る。 ワルドが横っ飛びに避ける、それを追いかけるように進路を変える稲妻。 咄嗟に剣を地面に突き立て避雷針とする。 「二つ目は、アンリエッタ姫の手紙!」 火弾で砕かれた床片を錬鉄、それらを宙に放りながら呪文を唱える。 「エア・ストーム! そして最後の目的はウェールズの命だ!」 巨大な竜巻、多数の鋭く錬鉄された石を含む風の獣が、ウルザを飲み込む。 ワルドの視界の隅、動く影。 咄嗟の防御体勢、間に合わない。 「これでも食らいなさい!」 ルイズ、渾身のファイアーボール、失敗。 普段の失敗魔法よりも一回り強力なそれがワルドに牙をむく。 「おおおおおお!?」 何とか直撃は回避、激昂、憤怒の面を被る。 「おのれぇ!大人しくしておればいいものを!」 ウインドブレイク、ルイズの体が10メイルほども吹き飛び、壁に打ち据えられる。 刹那、刃の竜巻から一条の閃光が走り、ワルドを貫かんとする。 判断以前の直感、倒れるように無様に身を伏せって大事を回避。 大竜巻がやむと、そこには杖から放たれる神々しい光を纏ったウルザの姿―無傷。 倒れたルイズ、ピクリとも動かないが、左手に輝くガンダールヴの共感作用で無事であることを察知する。 「さあ、これで邪魔者は消えたぞ!じっくりと嬲り殺しにしてやろう!」 「面白い、年季の違いを見せてやろう、小僧!」 激しい攻防、魔法接近を問わず、主導権のリレーが始まる。 ウルザは、今回の戦いも、以前の模擬戦も、通してプレインズウォーカーとしての能力を行使していない。 召喚を使わないこともその一つの表れである。 ファイレクシアの闘技場において、ウルザはプレインズウォーカーとしての力を封じられ、ジェラードとの戦いに臨んでいる。 しかし、ワルドとの二度の戦いは制限など無い。 確かに強力なクリーチャーの召喚は、この世界をファイレクシアに察知される危険性を孕むということがある。 しかし、召喚を行わずとも、そもそもプレインズウォーカーとは強大な魔法との親和性を持つ存在である、一つの魔法を取ってみても、ウィザードが使用するスペルとプレインズウォーカーが使用するスペルは何倍もの威力の差が存在する。 クリーチャーの召喚など行わずとも、プレインズウォーカーが単なる魔法使いに遅れをとることは無い。 それでもウルザはそれらの力を一切使用しないことを選んだ。 なぜならば 人間として、この男を叩きのめしたいと思ったからだ。 魔法戦闘、接近戦闘、その複合。 ありとあらゆる戦い方で、二人は戦う。 魔法、斬激、刺突、牽制、偽攻、連激、騙討。 己が持ちうる限りの殺人技術を用い、目の前の敵を抹殺しようと試みる。 既にお互いの魔法の手札が尽きて、何十合目か分からぬ剣戟が交差した。 「死ねぇ!死ね!大人しく死ぬがいい!」 「それは!こちらの台詞だ!」 憎悪。 憎しみが己の限界を超える力を生み出し、疲れきった肉体に活力を供給し続ける。 更に何合もの剣戟。 その中の一合、一際力を込めた一撃がお互いを捕らえる。 そしてそれをお互い振り払う。 結果、血ですべり、握力から開放された二振の剣が宙を舞い、離れた場所に転がった。 両者、既に手に杖は無く、徒手。 聖なる礼拝堂に乾いた音が響きわたる。 振りかぶったワルドの拳がウルザの顔面に炸裂。 仰け反りつつウルザも反撃、お返しの拳がワルドの顔面を捉えた。 「私は/僕は お前が気に入らない!」 拳と拳、人間の最も原始的な闘争の形、殴り合いが始まる。 「気に入らない気に入らない!お前の顔が、目が、行動が気に入らない!」――ワルド 「そっくりそのままお前に返そう!お前の全てが気に入らない!」――ウルザ 両者は理解した。 目の前の男に執着する理由。 それは、同属嫌悪。 模擬戦闘の後、落ち込んでいたような自分、原因の分からない苛立ち。 そう、それら全ての元凶こそは目の前の男、自分の鏡面存在、ワルドであったことをウルザは理解する。 「お前はミス・ヴァリエールを利用するだけだ!」 「ルイズは僕が利用してこそ価値がある!そういうお前こそ、ルイズを利用しているのではないかな!?」 「その通り!私もミス・ヴァリエールを利用しようとしているさ!」 「認めたな!それなら僕がしようとしていることを非難する資格はお前に無い!」 血しぶきが飛ぶ、壮絶な拳闘。 ウルザの目の前にいる男、それは彼自身でもある。 いや、正確には彼の過去を映す鏡だ。 カイラを利用し、国中の資源を消費し、弟ミシュラとパワーストーンを奪い合った。 サイリクスの力を解放し、アルゴスの大地を消滅させ、敵味方、そして弟ミシュラの命を奪った。 聖なるセラの次元を崩壊させた、トレイリアの時間移動実験では多数の被害者を生んだ。 その他数々の悲劇を自らの手で生み出した自分が、目の前にいる。 己の罪を自覚もせず、目的の為に手段を選ばず、ただ己の理想に邁進する道化。 それが目の前の男。 憎い、憎い、憎い、憎い、目の前のこの男が憎い。 一方のワルドも、目の前の男が自分と鏡合わせの存在であると気付く。 この男は全てを利用し、どのような方法を用いることも躊躇してこなかったのだろう。 自分自身の延長上の存在、そう思えばむしろ尊敬さえ出来るのかもしれない。 だが、この男は折れている。 自身がこれまで達成してきた偉業の数々に疑問を持っている。 利用すべきただ一つのものに執着している。 そのような姿を、ワルドは到底認められない。 全てを利用し、全てを手に入れる、それがワルドの未来の姿のはずなのだ。 憎い、憎い、憎い、憎い、目の前のこの男が憎い。 決して引くことが出来ぬ、お互いの過去・未来を否定する殴り合いは続く。 「お前のような男ではルイズは守れない!」 「だがお前はミス・ヴァリエールを守ることをしない!」 ウルザは、何もガンダールヴのルーンに刻まれた洗脳効果によってルイズを守っているわけではない。 既に悠久の時を、目に収まった二つのパワーストーンに封じられたグレイシャンの苦悩の呻きに晒され続けた彼に、その程度の小さな声など届かない。 ルイズを守るということ、それは正しくウルザの意志である。 少女を利用し、また今度も殺してしまうかも知れないことへの、小さな、ほんの小さな心の引け目。 だが、そんなことすらもワルドは許せない。 自分ならルイズを正しく利用しつくす。そこに良心の呵責などあるはずが無い。 目の前の老人は、正しい道から外れた、汚らわしい存在であるように感じられた。 激しい殴り合いが続く中、ルイズの可愛らしい瞼が弱々しく開いた。 頭を打ったのか、ぼうっとして頭が混乱している。 なぜ自分はベットではなくこんな所で寝ているのだろうか? その答えを思い出そうとした途端、全てを思い出した。 慌てて飛び起きて周囲を見回す。 ここはアルビオン、ニューカッスルの城、礼拝堂。 ワルドに連れられて、結婚式を執り行おうとしていた。 そして突然、豹変したワルドがウェールズ皇太子を… 「そうだわ!?殿下!」 ルイズは部屋の片隅で倒れているウェールズを見つけると、一目散に駆け寄った。 倒れたウェールズ、その周囲には赤い染みが広がっている。 一目見て分かる、ウェールズは、もう…… 「ウェールズ殿下…」 ルイズはウェールズを抱き起こすと、母のように優しい手つきでその瞳を閉じさせた。 自分にはこんなことしか出来ない、せめて… そう思い、残された者の為に、ルイズはウェールズが薬指に嵌めている指輪を外すと、それを懐にしまった。 「次は……」 ルイズが首を向けた方向、そちらでは恐ろしい形相のウルザとワルドがいまだ格闘戦を繰り広げていた。 どうしてあのようなことになっているか分からないが、ここは自分の出番である。 礼拝堂の外も騒がしく、反乱軍の大攻勢は既に始まっているらしい。 長くここに留まれば、やがては彼らに捕まってしまう。 ここは杖を持つ自分が、ウルザを援護してワルドを倒さなくてはならないと考えた。 「大丈夫、やれる…やれるわ、やってみせるんだから!」 眼を閉じて、精神を集中する。 ただ一度だけ成功したあの魔法。 あの感覚をもう一度… 自分の中、奥深くを見つめる。 そこには以前と変わらず、うねる混沌がある。 その中から、白と黒を分離・抽出してゆく。 意識の覚醒。 自分自身を覗き込む刹那の時間を体験し、ルイズは確かな手応えを感じて瞳を開いた。 しかし、最初に目に入ったのは驚くべき光景であった。 「な、何で私飛んでるの!?それに指輪!指輪が!?」 まず、ルイズは地上1メイルほどの高さに浮いていた。 もう一つの異変、それはルイズの指にある水のルビーが輝き、懐の風のルビーと虹のアーチを作り出していることだった。 そして、新たな変化が生まれる。 水のルビー、風のルビーが一瞬瞬くように強い光を発したかと思うと、ルイズに何かが強烈に流れ込んできたのである。 急激な圧迫感に、呼吸することが出来ないルイズがぱくぱくと口を動かす。 ルイズという風船に、多すぎる空気が吹き込まれたように、その内側では膨らみ続ける力が出口を求めて暴れ始める。 (もう、駄目……っ!) ルイズを中心に発生した、天を突く巨大な光の柱。 それによってニューカッスルの城の礼拝堂の上に位置していた万物は等しく消滅した。 平衡感覚が狂う、立っていられない、その場で座り込むルイズ。 「何よ…これ………」 ルイズは、城をクッキー型で切り取ったかのような円形の孔を見つめて戦慄する。 「ミス・ルイズ」 いつの間にかルイズの隣には、傷だらけで厳しい顔をしたウルザが立っていた。 「わ、ワルドは!?」 「先ほどの光で何処かに消えてしまったようだ」 「そ、そう…」 「立てるかね?手を貸そう」 ルイズがウルザの手に掴まって、立ち上がろうとしたとき。 突如ルイズのいる隣の地面がぽこりと盛り上がった。 ウルザが警戒して杖を構えようとしたところ、床石が割れ、茶色の生き物が顔を覗かせた。 「あ、ああああ!あんたギーシュのところのモグラじゃない!?」 ―勿論僕もいるよ!― モグラのヴェルダンデの下からはギーシュの声も聞こえる。 ルイズとウルザはお互い頷くと、ヴェルダンテを蹴落として、その通路を開けさせた。 ―きゅー― ―おおおおお!なぜヴェルダンデが転がってくるんだ!?― ―おじさま!助けに来ましたわ!― こうして、ルイズ達は頼もしい仲間達の救援によりアルビオンからの脱出に成功したのであった。 いいわ、じゃあ今度は拳で分からせてあげるわ! ―――虚無魔道師ルイズ 戻る マジシャン ザ ルイズ
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虚ムネのルイズ 日が沈み、ろうそくの明かりがほんのりと部屋の一角を照らしている。 俺はルイズの部屋で一人、義手の手入れをしている。頭のタンコブがひりひりする。 ルイズはいま、キュルケの誕生パーティーに招待されて部屋には居ない。 小一時間前、ピンクのドレスでおめかしして部屋を出て行った。 その時、ドキッとしたのを隠そうと「ハッ、馬子にも衣装だな!」と言ってしまったのがタンコブの原因。 まだしばらくは戻ってこないだろうから、退屈しのぎに手入れをしている・・・と、扉をバタン!と乱暴に開けてルイズが戻ってきた。 「あ~、ムカツクムカツクムカツク!!」 肘まである白い手袋を無造作に脱ぎ捨てながら1人荒れている。 「お・・・おい、どうしたんだよ?パーティーで何かあったのか?」 ピタッ、と体と一瞬止め・・・ゆっくりとこちらを振り向く。目が怖い。 そして、ゆっくりとこちらに歩いてくる。 目の前で止まり、うつむき小声でポソリ、と言う。 「あなた、ジンタイレンセイっての研究してるんでしょ?」 「あ・・・あぁ、そうだけど。」 「・・・・・・して。」 「 え?よ、よく聞こえなかったけど」 きっ、と俺の目を見て今度ははっきりと言う。 「私の胸を今すぐジンタイレンセイで大きくしなさい!」 「はぁ?な、なに言ってるんだよ?ちょ、冷静に」 「私は冷静よ!早くしなさい!」 なりふり構わずまくしたてる。 「(う~ん、困ったな。たぶんキュルケになにかからかわれたんだろうけど、そんな事で人体練成なんてやる訳にはいかねーし・・・あ、そうだ!)」 「わかった、ルイズ。じゃあ、今すぐ練成するから、そのまま立ってて」 「え・・・あ、うん・・・」 急にOKして拍子抜けしたのか、おとなしく指示に従ってる。 「よし、じゃあ今からやるから。そのまま目をつむって。」 「このまま?ドレスは・・・」 「ああ、大丈夫大丈夫。心配しないで。さ、始めるよ。」 そして、練成陣をイメージしながらパン!と両手を合わせる。 そして、そのまま両手を前に・・・ルイズの胸をタッチ! 「ふぇ?」 ルイズがパチッと目を開けて呆然と自分の両胸に当てられた手を見ている。 突然の事で思考が止まっているのか。 「エ、エ、エド・・・・あんた、何してるのよ?」 明らかに怒ってるなー。でも、もう練成が完成する。 バチバチバチッ ドレスの胸の部分がどんどん盛り上がっていく。A・・・B・・・C・・・D・・・・・ 「な、なこよこれ?」 「どうだ、完成だ。名付けてDカップドレス!」 そう、巨乳ドレスを練成したんだ。 「何言われたかシラネーけど、人体練成は禁忌。くだらない事には使わないよ」 その時、ドアをコンコン、とノックする音。そのままドアを開けて入ってくる人影。キュルケだ。 「ルイズ、開けるわよ。ごめんね。みんなの前でスリーサイズをバラしちゃって。私の完璧なスタイルを際立たせようと思って、つい口が滑ったのよ。」 あ~、そういう事か。でも、キュルケ、ちょっと顔が赤く高揚してるな。まさか、酔ってるのか? 「あ、謝ったって許さないんだから!それにそれだけじゃない。きょ・・・」 口篭る。 「ん?ああ、【ゼロムネのルイズ】って言ったこと?だってB・Wほとんど同じなんだもん。つい・・・ね。」 うへ~、それは酷いなぁ。 その時、キュルケがルイズの胸に気づく。 「え?ルイズ、その胸・・・何?」 「・・・エドに大きくしてもらったの。」 「ほんとに?ちょっと見せてよ。って、これパッドじゃない。」 胸の谷間から中身を覗き込みながらキュルケは言った。そして、ニヤ~と顔を弛ませて、 「あっははは!サイコーだわ!これが本当の【虚ムネのルイズ】ね!!みんなに教えないと!」 笑いながら部屋を飛び出していった。 しばしの静寂が戻った部屋。後からみんな見にくるんだろーな。ちょっと気の毒。 「エ・ド・ワ~・ド~~~」 ルイズが鞭を取り出す。 ぴしっ!ぴしっ! みんなが来るまで、ルイズの手が休まることは無かった。
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「宇宙の!」 ドッカーーン! 「何処かにいる!」 ドッカーーン! 「清くて!」 ドッカーーン! 「美しい!」 ドッカーーン! 「史上最強の!」 ドッカーーン 春の使い魔召還の儀式。 そこでルイズは何度も何度も失敗して爆発を巻き起こしていた。 「おいおい、どれだけ爆発を起こせば気が済むんだよ。」 「所詮、ゼロはゼロなんだから、いい加減に諦めろよ。」 キッ! 完全にルイズを見下したヤジに殺気を込めた視線を送る。 監督係の教師、コルベールは発言をした生徒の評価を下げる事を心の中で決めてる。 そしてすまなそうにルイズに話しかける。 「ミス・ヴァリエール。他の生徒の召還が残っていますので…」 「わかっています!でも…。いいえ、私は向こうでやっていますから、お願いします!」 ルイズのまさに『必死』と言って良い表情にコルベールも言葉が詰まる。 彼は知っている。ルイズの座学は非常に優秀である事を。 魔法理論において誰よりも努力をしている事を。 そして本来、魔法に失敗しても何も起こらない事を。 「わかりました。あなたが努力家である事は知ってますからね。」 「あ、有難う御座います!」 ルイズは盛大にコルベールへ頭を下げた後、向こうへ走って行った。 既に他の生徒全員が召還を終えていたが、ルイズだけは爆発を起こし続けていた。 当初は鬼気迫る表情で魔法を失敗し続けるルイズに思う所があったのか他の生徒もヤジを飛ばさず見ていた。 しかし、時間が経つ内に厭きだしてコルベールに部屋に戻って良いかどうか聞き出していた。 コルベールは当初、渋い顔をしたが、ルイズがいつまで経っても成功しそうに無い事から、認めるしか無いのであった。 一人、一人、この場から生徒がいなくなる事は気配でわかったが、それでもルイズは召還魔法を唱えては爆発を起こし続けていた。 日も暮れだした頃、その場に残っていたのはコルベール、キュルケ、タバサの三人だけであった。 ルイズの姿は酷いものであった。服はボロボロ、顔は埃まみれ、腕からはところどころ血を流している。 満身創痍としか言いようが無かった。 「どうして、どうしてなのよ!!」 悲痛な叫びと共に杖を振るう。 ドッカーーン! 巻き起こるは非情にも爆発。 「はは、ははははは」 ルイズは笑った。しかしその笑みは虚ろで、何の感情もこもっていなかった。 そしてルイズは何処か晴れ晴れしてた表情でコルベールに頭を下げて言った。 「コルベール先生、有り難う御座います。もう、いいです。」 「…そうかね、ご苦労だった。ミス・ヴァリエール。部屋で休みたまえ。」 「はいっ!」 言ってルイズは走り出した。両目いっぱいの涙を浮かべながら。 「ちょっと、ルイ…」 キュルケの言葉はコルベールによってさえぎられた。 タバサはそんな二人を興味深そうに見ている。 「先生…。」 「ミス・ツェルプストー、ミス・ヴァリエールの事を思うなら今は一人にしてあげましょう。」 真剣なコルベールの表情に軽く頬を染めて、うっとりしながらキュルケは頷く。 タバサはルイズを心配しながら,そんな友人に呆れていた。 ルイズが目を覚ますと真夜中であった。枕もシーツも涙で濡れている。 部屋に戻ってからずっと泣いた。 泣き疲れて眠ってしまい、夢の中でも泣いた。 くぅ~ どれだけ悲しくてもおなかは空く。 食堂は閉じているだろうが何かつまめる物は探せばあるかもしれない。 そう思い、ドアを開ける。 するとナプキンが掛けられ、中に何かが載せられているのがわかる大きめの皿とワインとグラスが置いたトレイがあった。 ナプキンを取ると冷めても食べられるサンドイッチが置いてあった。 誰かが…、キュルケあたりだろう…がメイドに頼んで置かせたのだろう。 トレイを持って部屋に戻り、ワインをグラスについでからもそもそとサンドイッチを食べ始める。 するとルイズの瞳にまた涙が溢れる。 感謝か情けなさか自分でもわからない。 ワインをかなり飲んだがまるで酔いがまわって来ない。 しばし呆然としながら,ルイズは窓から空を見上げる。 今も双月が静かに輝いている。 「この場所から見える月も、これが最後か…」 召還の儀式は進級の試験を兼ねているのだ。 それに失敗したとなれば名家の恥として実家に呼び戻され、一生閉じ込められる事になるだろう。 悔しい! ギュッと杖を握る。無駄だと分かっていながらも口語の呪文が口から零れる。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。我が“運命”に従いし、“使い魔”を召還せよ。」 ゲートが、生まれた。 そりゃあもうあっさりと。 もともとゲートは開けますが何か?と言わんばかりである。 ルイズは呆然となる。 それはそうだ。今日何十回…いや、何百回と言える程唱えては失敗した魔法が成功したのだ。 驚かない方がどうかしている。 ゴクッ… ルイズは思わず息をのむ。 今このゲートの向こう側に自分の属性にあった動物か幻獣がいる筈である。 「な、なにが出てくるのかしら…。」 バサッバサッ ルイズの言葉に応えるように大きな羽の羽ばたきが聞こえてくる。 音の出どころは…ゲートだ。 そして、ゲートから現れたそれは高らかに笑いながら名乗った。 「ふはははは!」 「ふはははは!」 「私は!私は!」 「夜の帝王!!」 現れたそれを一言で言うならば…『かばこうもり』であった。 かばのように巨大な顔、それに対して体は余りに矮小であった。 いや、こうもりの体に比べればずっと大きいが、巨大な顔に対し不釣り合いな大きさであった。 ルイズは混乱の極みにあった。 召還に成功した事実による驚愕。 目の前にいる存在を今まで見た事が無い事。 それがなんと喋った事。 人間の言語を喋る動物は『韻獣』と呼ばれ、希少な存在として知られている。 更に言うなら目の前にいるかばこうもりは自分自身を『帝王』と言ったのだ。 そこまで自分を大きく言うには自信が無いと出来ない。 だが、そんな事よりも、ルイズは、深刻で、どうしても、聞かねばならない事があった。 「ねえ、あんた。自分の事を『夜の帝王』って名乗ったわよね。」 帝王は帝王らしく尊大に答えた。 「うむ。そのとおりだ。」 「ちなみに昼間は?」 やはり帝王は帝王らしく(以下省略)。 「寝てます。」 ツュドム!! 後日、ヴァリエール家に二通の手紙が届いた。 一通はルイズから二年生へ進級の知らせ。 もう一通は、トリステイン魔法学校からルイズによる女子寮半壊に対する請求書であったそうな。
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(かくしてパティシエは厨房にいる) 更新日:2022/09/17 Sat 23 58 05NEW! タグ一覧 宝石が輝きを無くした時、気が付けば懐かしく、安心を覚える場所にいた。オウマがトキの本屋だ。 「戻ったわよ!」 フロートの声に、皆が一斉に振り返る。 「アンコォォォォオオオオ!!!」 猛獣の鳴き声かと思ったが、それはアイベリーの物だった。 「わわ!」 アイベリーにハグされ、驚きの声をあげる。 「良かったぁ!本当に戻ってきたんだよな?良かったぁ!」 「そ、そう、ですよ。恥ずかしながら、戻って参りまし……」 アンコは後ろに倒れた。 アイベリーが体重をかけすぎたせいで、転んだのだ。 「アイベリーさん……」 「にひひ、ごめん。嬉しくて」 アイベリーが手を差し出す。アンコはその手を恐る恐る取った。 「アイベリーお姉ちゃん……」 ピオーネが呆れて声をかける。 「良かった……また会えて……」 淡雪の心の底から安心したような声を背に、メローナは帰ってきた妹に声をかけた。 「お疲れさま、フロートちゃん」 「ふふ、私にかかればこんなものよ。ああヤスカタ、靴を返すわ」 フロートは嬉しそうに胸を張ってから、履いていた靴を脱いだ。 その靴を受け取って、ヤスカタは言う。 「ありがとう……心配していたけど、大丈夫だったみたいね。良かったわ」 本屋がしみじみとした雰囲気に染まったところで、メローナは残してきたホールの子達を思い出し、ハッとした。 「それじゃあ、一度皆の所に戻りましょう。皆きっと、心配しているわ」 「は~い!!!」 本屋にいた従業員が各々返事をする中、アンコは一人離れてそれを見ていた。 「………」 アンコは声を絞り出す。 「ここから………」 そしてまた自嘲気味に笑うのだった。 「ここから独りなのね……」 「皆!アンコが帰ってきたわよ!」 「おお~!」 フロートの凛々しい声とアンコの姿に、ホールの子供達は皆歓声を上げた。 「フロートちゃんのお陰よ♪今日は人一倍、頑張ってくれたの♪」 「す、凄いです!フロート姉さん!」 メローナの話す言葉に、シトロンは目を輝かせた。 「そんなに褒めないでちょうだい。て、照れ臭いのよ」 純粋な妹の眼差しに、顔を隠してもニヤけているのがバレバレなフロート。 「しかし驚いたよ、突然小鳥ちゃんの身体が消えてしまうんだもの」 そう言ったのは、アンコの身体を守っていたピネだった。 「おそらく……魂がこの世に戻ってきたから……だと思う」 ピオーネが解説しようと口を開いたが、長く難しい話になると察したフルーチェが割って入った。 「なんかよう分からんけど、皆無事で良かったなぁ!なあ、アンコ!」 「そう……ですね」 アンコは曖昧に頷く事しか出来なかった。 「それじゃあ、アンコちゃんが戻ってきたお祝いにパーティをしないかい?」 ジュジィの言葉に、くゆりも反応する。 「わぁ~!パーティ!今日はくゆりもご馳走作るよ~!楽しくしよう!店の修繕は明日にシヨ!」 「甘いもの……パーティ……Zzz」 「あたしも……炭酸の……ジュース作る……」 淡雪とろくばんも同意する。 アンコは、この楽しい空間を壊したくなかった。 「……」 だからこそ、しなければならない事も合った。 「アンコ?」 心配そうに呼び掛けたマリネッタを合図に、アンコは皆に告げる。 「私は……皆さんと一緒にいられません……」 アンコの言葉に、皆が静まる。それが嫌で、言葉を続けた。 「皆さんに酷いことを言ってしまったし……オウマがトキもボロボロにしてしまった……」 アンコは溜め息をついて、締め括ろうとする。 「今日限り辞めて、どこかに消えます。それがいい……」 ビタン!と言う音が静かな部屋に響く。 叩いた相手は、マリネッタだった。 「マリネッタさん……」 頬を押さえながら呟くアンコに、マリネッタは低い声で告げる。 「それは駄目よ。許さないわ。それこそもう赦せない」 その瞳には、静かな怒りが灯っていた。 「あんたが悪く思っているなら、それこそ、あんたも手伝うべきよ」 マリネッタは広間を指差す。大好きな場所が、アンコの目に映った。 「オウマがトキの修繕にしろ、皆への詫びにしろ……このまま消えるなんて、絶対だめ」 「せやなぁ……」 皆の中から進み出てきたのは、フルーチェだった。 「うち、バカだからあんまよく分かんないけどさ、アンコはそのままで良いと思うよ。あれがもし素だったなら、それをちょっと出してもいいやん。だから、もう一回、皆でやろう?」 「でも……私の中には……」 「おうアンコ!さっきぶり!」 俯き、目を伏せるアンコに、廊下きらやって来たのじゃロリ猫が声をかけた。 「あ、のじゃロリ猫。今頃帰ってきて……」 「にゃっはっは!ちょっとした用事じゃ!」 いつも通り小言を言うフロートをいなし、のじゃロリ猫は続ける。 「お前が言う"その事"ならばわしが片付けておいたぞ」 「え?」 「まあ、これは後でメローナ達にも話すことじゃから、今はいいとして……そんな事よりアンコよ」 (そんな事……?) 皆が疑問に思ったが、黙っておく事にした。のじゃロリ猫はまた話を続けた。 「お前、無理しとるじゃろ」 「…………」 確信を突くような事を言われて、アンコはたじろく。 のじゃロリ猫はその様子を見てニヤリとした。 「だから消えようとしてる。でもなぁ、ここにはお前が消えると悲しむやつが沢山おるぞ」 アンコは信じられないような目をする。のじゃロリ猫は本当だともと頷いた。 「メローナは好物が食えんくなるし、ピネは師匠がいなくなる。フロートは頼れる妹分がいなくなるし、わしも酒のつまみがたらふく食えんくなってちと困る」 (ええ……) 最後の言葉に、皆空気を読みつつ、声を出さずにツッこんだ。 皆の気持ちを知ってか知らずか、のじゃロリ猫は続けた。 「なあ、アンコ。お主の胸に聞いてみよ。お主は、ここに残るのが本当に辛いのか?嫌なのか?自分を出せばいいんじゃよ。もし間違った事をしたら、わしが責任をもって止める。どうじゃ?これでも嫌か?嫌ならば好きにすればいい……」 アンコは最後まで黙って聞いて、皆の方を見て、問いかけるように呟いた。 「……私、ここにいても……いいんですか?」 「勿論よ、アンコちゃん。ずっとずっと、いていいのよ。私達は、あんな事ではあなたを嫌いにならない。あなたは大切な、従業員さんなんだから」 「私、私……」 メローナの言葉に、アンコは涙を流しながら言う。 「皆と一緒にいたいです……」 アンコは自分の心を皆に吐露する。嘘偽りの無い本心だった。 「皆と一緒にいたい……!もう一度、働かせて下さい……ここで!この喫茶で……!」 それから数日後……。 アンコは再び、喫茶オウマがトキのパティシエとして働いていた。 「ショートケーキ、出来上がりました!」 「お、うまそうじゃな、わしにもおーくれ!」 のじゃロリ猫がニコニコしながら手を伸ばす。 アンコは慌ててお皿をかかえ上げた。 「のじゃロリ猫さん!駄目です!これはお客さんのですよ!」 「えぇ~!ケチ~!一口だけ!一口だけチョーダイ!」 「ダメです!!!」 アンコの態度に、のじゃロリ猫はふてくされた。 「猫パイセン!」 「ふぎゃあ!」 アンコに絡んでいたのじゃロリ猫の頭に、強烈な一撃が走った。 かかと落としだ。 「アンコを困らせんなよ!」 「いったぁ!コラァ!チョコ!師匠に向かって何すんじゃ!」 「今日は真面目に働く気分なんです~!」 チョコと呼ばれたその少女は、手をヒラヒラさせながら答えた。 「こらぁ!真面目に働きなさい!!!」 フロートが入ってきて、のじゃロリ猫をせき立てた。 「世知辛いのじゃ~!」 そんな二人を横目で眺めてから、チョコがアンコに話しかけた。 「ところでアンコ!」 「何?チョコ」 ニヤニヤして言う。 「フロートとは最近どうなの?」 「ば!そんなんじゃ!」 アンコは顔を真っ赤にして否定したが、黄泉の世界に迎えに現れた日以来、アンコがフロートを気にしているのを、チョコは知っている。 「早くあなたも仕事してきなさい!」 「へ~い」 アンコとチョコは、そうして自分の仕事に戻った。 アンコは厨房に、チョコは外回りへ。 今日もオウマがトキは平和だ。きっと明日も平和なのだろう。 アンコが巻き起こした騒動は、こうして終わりを迎えたのだった。