約 4,271,078 件
https://w.atwiki.jp/newgenreschool/pages/168.html
【渡辺さん】新ジャンル♪スクール【弁当無し】より 男「うおおおおおおおおぉぉぉぉ!」 俺「どうした?ヒートの真似か男」 男「違う!そうじゃないんだ!ついにこの日が来てしまったんだぞ!」 友「何をそんなに慌てて……」 俺「しまったぁ!あの日か!」 友「お前まで何を……」 男「判ってくれたか俺君!此処は共同戦線で!」 俺「危機を回避!」 友「……行っちまった。あいつ等一体どうしたんだ?」 ヒート「おおおおおおおおおおお男はどこだああああああああああああぁぁぁ!!」 友「そんな勢いでドアを開けると壊れるぞ」 ㍉「ターゲットを見失った。各自散開して探すんだ」 ツン「べ、別に私はなんとも思ってないんだからね!」 クー「その割にはちゃんと用意しているようだが?」 ツン「き、気の所為よ!一時の気の迷いだわこんなの!」 渡辺「男君どこなんだよ~」 狂「見つけて見つけて見つけ出して私、わた、私と一緒にいいいいぃぃぃ!」 日下「……(どきどきどきどき)」 鮫「はぁ、くだらないわ」 女衆『ともかく見つけ次第捕獲!!』 ドドドドドドドドドドドドド……! 友「……なんだありゃ。あー、よく見りゃ今日はバレンタインだったか」 ㍉「ターゲットその一(俺)を発見。直ちに確保した後に情報収集を開始する」 ヒート「さああああああああぁぁ!言うんだぁ!男はどこだああああぁぁ!」 俺「五月蝿い。鼓膜が破れる。奴なら裏庭に行くのを見たぞ」 ㍉「嘘ではあるまい?もし虚偽を申告した場合は……」 俺「タガーナイフを何処に仕込んでやがる。別に嘘じゃあない」 ヒート「そうかああああああ!私はお前を信じるぞおおおおぉぉぉ!!」 ㍉「ヒーちゃんはもっと人を疑う心を持ちなさい。……そうね、ここで時間を潰すよりは実際に現地に行って確かめた方が早いわね」 俺「おう。達者でなー」 ドドドドドドドドドドド……。 俺「行ったぞ」 男「よし。上手く撹乱して逃げ切るぞ」 俺「……次はお前の番だ」 男「OK。お前にエクレアを渡そうとする『男共』からの逃亡だったな」 俺「ちくしょー!聞いてて悲しくなる!」 一方その頃 ア「今年はお店で買ってきた」 男「賢明な判断です」 ア「けどラッピングはがんばったんだぞ?」 男「うむ、しわくちゃだがそれなりに愛を感じる」 ア「ふふん」 男「ところで、ひとつ聞きたいんだがな」 ア「?」 男「包み終わるまで、どれくらいかかったかな?」 ア「一時間くらいかと」 男「箱の形がすごく見覚えあるんだが、中身は?」 ア「ピノだが」 渡辺「ところで皆ぁ、どんなチョコ持ってきたの?」 シュー「米とチョコの割合が10:0のチョコだ」 狂「豚の内臓と生き血を……」 バカ「私は普通のチョコを買って来たわ」 クー「それはチョコではなく猪口だ。男に酒でも勧めるのか。私は手作りだ。愛を込めてな」 渡辺「あれれ~?私のチョコがないよぉ?」 ドロ「さっきそこで拾ったのをあげる事にするわ」 佐藤「……(また盗んだわねこの子。でも大丈夫、私が作って持ってきたから)」 B「なんつーか、こういうイベント時だと更に悲しくなるっすね」 先生「諦めろ。それが大人になるって事だ」 その裏で 友「……なんかそこらじゅうから破砕音が聞こえる気がするんだが」 葬男「死体が出たら俺の仕事が増えるからやめてほしいな」 内藤「そういう問題じゃないと思うんだお」 ユウヤ「日和は俺にくれないのか?」 日和「何を?」 ユウヤ「何を、じゃ無くてだな、その……」 日和「なあに?」 ユウヤ「いや、あの、その……」 日和「?」 ユウヤ「もういいです。ごめんなさい」 日和「?」 友「哀れユウヤ。ところでお前はもらえたのか?」 葬男「な、なんの事だかさっぱり……」 内藤「その調子じゃ脈無しなんだお。僕だって一つもらってるんだお!」 友&葬男&ユウヤ「!!」 店長「なあに。私だってもらってないさ」 全員「「「「「店長!!」」」」」 俺「なんとか逃げ切っているが……」 男「そうだな。少し休むか」 俺「確か此処、空き教室だったはず」 がら。 変「さあ!私を食べて!」 俺「うわあああぁぁ!変態っ!」 男「あんまりな言葉だがこれ以上に合う言葉が見つからないっ!」 変「何が変なのよ。全裸で亀甲縛りで吊るされてるだけじゃない」 二人『充分変態だ!』 変「もちろん、アナルにチョコを入れて『チョココロネ』ってゆう基本も忘れてないわ」 男「どこの世界の基本だ」 俺「逃げるぞ。どうせこの変態は動けない」 男「そうしよう」 たったったったったったった。 変「あぁん!放置プレイね!感じるわ!」 男「はあ、はあ。……どこまで逃げればいいんだ?」 俺「いっそ校外に出るか?」 男「それはそれで問題だと思うが……」 俺「いや、朝から放課後まで逃げ続けて授業サボってる俺等が言うセリフか?」 男「それもそうだな。だが下駄箱はきっと張られている」 俺「その可能性があったか。開けたらどかん!くらいやりかねない連中だからな」 男「……冗談に聞こえないから嫌だ」 俺「俺もだ。……っと、保健室発見」 男「あそこは内側から鍵を掛けられたな。よし、占領しよう」 がらがらー。 男「……よし、誰もいない」 俺「気を抜くな。一瞬の判断ミスが死を招くぞ」 男「……だから冗談に聞こえないんだよ」 俺「このベッド、まだ直ってなかったんだな」 男「この間のか」 俺「弾痕焼痕破壊痕に鋭利な断面。確かお前が腹痛いって寝てた日だったよな?」 男「ああ。起きたらうちのクラスの女子が殆ど倒れてたから驚いたよ」 俺「それは凄惨な現場だな」 男「あー、走り回ったから疲れたよ。寝る」 俺「馬鹿。俺が先だ」 男「……」 俺「……」 男「めんどいし」 俺「もう寝ちまえ」 幽(うふふふふ。私の存在に気付いてないわね) 男「Zzz」 幽(可愛い寝顔) 俺「……くかー」 幽(……わ、私より可愛い寝顔!) 男「……それは鰻だ」 幽(寝言かしら?それにしても鰻って……) 俺「……いいや鮪だ」 幽(二人してどんな夢を見てるのかしら……) 男「……(びく!)」 俺「……寝びく……Zzz」 幽(さてさて、観察はこれくらいにしておいて本命のチョコを……。って、あれ!すり抜けちゃうわ) 先生(それくらい最初に気付くべきだぞ) B(先生、何か見えるんすか?) ざわ……ざわ……ざわ…… 男「……ん?なんかざわざわ五月蝿いな……、ってうおわ!皆揃ってるし!」 全員「……」 男「ん?なんだ皆して黙って?」 ヒート「男おおおおおぉぉぉ!私はお前にそんな趣味があろうと好きだぞおおおおおぉぉ!」 男「はぁ?」 クー「私もだ。私はお前の全てを愛すると決めているのだ。だから隠さずとも良かったのに」 男「???」 狂「うふふふふ。やっぱり、殺して殺しておけば……」 男「だから一体全体何だってんだ?」 渡辺「あー、俺君気持ち良さそうに眠ってるー」 俺「う~ん、……大好きぃ(エクレア)」 男「おま!こんな状況でさらに眠るか!」 俺「らめぇ……。おっきくって口に入りきらないよぉ(エクレアが)」 シュー「私にとって米が必要であるように、お前にとっても俺氏が必要な訳だな」 男「何意味不明な事言ってやがる」 変「3Pね。これからは3Pが始まるのね」 男「お前は黙れ!」 俺「うあぁ、こんなとろとろで甘いのぉ……(しつこいようだがエクレアが)」 男「てめぇも起きろおおおおぉぉぉ!」 そんな男のホモ疑惑が生まれた散々なバレンタインデーだった。 B「ぎぶみぃちょっこれーと……」
https://w.atwiki.jp/akb48otoge/pages/308.html
音石購入でおまけキャンペーン バレンタインダス レアリティ:★5 属性:緑 アクセサリ:ねこみみ メンバー名 パフォーマンス(初期) パフォーマンス(最大) メンタル(初期) メンタル(最大) スキル 松井 珠理奈 28954 62992 100 510 熱烈の鼓動 渡辺 美優紀 28318 61928 100 510 熱烈の刹那 大場 美奈 29017 61497 100 520 熱烈の鼓動 佐藤 すみれ 29169 61844 100 510 熱烈の旋律 山内 鈴蘭 29279 61457 100 500 熱烈の歌声 古畑 奈和 28707 62049 100 500 熱烈の刹那 松井 玲奈 28552 61062 100 500 熱烈の瞬間 須田 亜香里 29079 61941 100 520 熱烈の一時 宮澤 佐江 29133 61869 100 510 熱烈の瞬き 柴田 阿弥 28736 61428 100 500 熱烈の旋律 山田 菜々 28706 62124 100 510 熱烈の刹那 大矢 真那 29235 62457 100 510 熱烈の刻 高柳 明音 28861 61437 100 520 熱烈の音 二村 春香 29325 61668 100 520 熱烈の歌声 古川 愛李 28645 61069 100 520 熱烈の交響 磯原 杏華 28591 61370 100 500 熱烈の音 岩永 亞美 28532 61252 100 520 熱烈の旋律 木本 花音 29023 62286 100 510 熱烈の刻 梅本 まどか 28320 61468 100 500 熱烈の一時 矢方 美紀 29030 62372 100 520 熱烈の瞬き 阿比留 李帆 29233 62278 100 520 熱烈の瞬間 斉藤 真木子 28726 61667 100 520 熱烈の鼓動 小林 亜実 29199 61498 100 510 熱烈の歌声 東 李苑 29154 61093 100 520 熱烈の瞬き 犬塚 あさな 29000 62089 100 520 熱烈の一時 北川 綾巴 28745 61512 100 500 熱烈の刹那 後藤 理沙子 29185 62325 100 500 熱烈の旋律 佐藤 実絵子 28434 62797 100 500 熱烈の交響 竹内 舞 28647 61863 100 510 熱烈の瞬間 田中菜津美 28644 61935 100 520 熱烈の音 都築 里佳 28719 61963 100 500 熱烈の刻 中西 優香 28343 62215 100 500 熱烈の瞬間 野口 由芽 29294 62286 100 500 熱烈の鼓動 松本 慈子 28482 62964 100 510 熱烈の一時 宮前 杏実 28800 61603 100 520 熱烈の交響 荒井 優希 29030 62625 100 520 熱烈の旋律 石田 安奈 28933 61189 100 520 熱烈の瞬き 内山 命 29039 61132 100 500 熱烈の音 江籠 裕奈 28771 61658 100 520 熱烈の歌声 北野 瑠華 28841 61890 100 520 熱烈の刻 神門 沙樹 28315 62076 100 520 熱烈の瞬間 惣田 紗莉渚 29068 62456 100 520 熱烈の刹那 高木 由麻奈 28957 62595 100 500 熱烈の交響 髙塚 夏生 29125 61591 100 500 熱烈の瞬き 日高 優月 28690 61559 100 520 熱烈の音 山下 ゆかり 28324 61516 100 510 熱烈の歌声 市野 成美 29205 62940 100 510 熱烈の鼓動 加藤 るみ 28903 61771 100 510 熱烈の一時 熊崎 晴香 28862 61426 100 520 熱烈の刹那 小石 公美子 28613 61784 100 510 熱烈の歌声 酒井 萌衣 28741 61350 100 520 熱烈の一時 髙寺 沙菜 28393 62126 100 520 熱烈の鼓動 谷 真理佳 28444 61171 100 510 熱烈の瞬間 福士 奈央 29189 62198 100 520 熱烈の音
https://w.atwiki.jp/viptndr/pages/2091.html
28 名前:1/3[] 投稿日:2012/02/26(日) 20 06 56.52 ID mAAZgust0 [5/18] バレンタインデーのチョコの渡し方に悩むツンデレ その3 『ハァ……』 勉強机の前に座り、何度目かになるか分からないため息をつきながら、私は別府に渡 すはずだったチョコの入った箱を眺めていた。 『ホントに……これ……どうしよう……』 自分で食べちゃおうかとも何度も思った。けれど、男に渡せなかったチョコを自分で 食べるなんて痛々しいし、なんか苦い味しかしなさそうだと思ったら、食べる気にはな れなかった。 『思い切って捨てちゃおうかな…… でも、自分なりに頑張って作ったのにな……』 中身は、ハート型のミニチョコレート。一応手作りだ。もっとも、溶かして固めただ けっていう、実にシンプルなものだけど。でも、ミントやらストロベリーやらホワイト チョコやらと二層構造にしたり、ちょっとトッピングしたりと工夫もしたのだ。 『これ……捨てちゃうんだったら……あの時間はなんだったんだろな……』 やっぱり、どうしてもチョコを作ってる時は、いろいろと妄想してしまうものだ。ど うやって渡そうかとか、どんな風に食べてくれるんだろうとか、どんな感想を言ってく れるんだろうとか。そんな想いまで、全部ゴミ箱に捨ててしまう、そんな気がした。 『……6時……ちょっと前か……』 携帯で、時間を確認する。今頃、別府は何しているんだろう? あの、可愛らしい女 子から貰ったチョコを食べているんだろうか? もしかしたら、一緒に過ごしてのかも しれない。 『渡すんだったら……今が、最後のチャンスよね……』 携帯のアドレス帳を見る。一緒に文化祭実行委員をやった時、連絡用に交換したメア ドが、まだそのまま残っていた。もっとも、最近はずっと、メールのやり取りなんてし てないけど。 『でも、もし彼女と過ごしてる最中だったら……』 それを思うと、胸が苦しくなる。諦めて携帯を一度閉じたが、私はまたすぐに開いた。 『メールで……送ってみよう。もし、すぐに返信が来なかったら、諦める。すぐに返っ て来たら、その時は……』 29 名前:2/3[] 投稿日:2012/02/26(日) 20 07 17.65 ID mAAZgust0 [6/18] これは、賭けだ。私の、今年のバレンタイン最後の。捨てるか、渡すか。その選択は、 アイツに……別府に預けよう。 『いきなりチョコ云々じゃ、気付かなくて後で見た時に、変に気遣わせるわよね。じゃ あ、シンプルに……暇だからメールしてみたんだけど、今何してる?とか。よし、これ で行こう』 女の子らしく、絵文字も散らして私は送信ボタンを押した。そして、机の上に投げる ように置くと、私は机に突っ伏す。 ――私は……どっちを望んでいるんだろう? 返事が、来ない方がいいのかな…… そ れとも……来た方が…… ドキドキしながら、携帯をひたすらに、じっと見つめていた。 ――来ない…… しかし、目覚まし時計を見ると、まだ1分しか経っていない。全く、何て時間が経つ のが遅いんだろう。 『待てるのは……30分よね。それで、来なかったら……』 キュッとドキドキする胸を押さえる。呼吸が、苦しい。自分で選択した賭けなのに、 待つのが辛かった。 『お願い……早く、来るなら……来てよ……』 堪えきれなくなって呟いた、その時だった。携帯が、某人気アイドルの曲の着メロを 奏で始める。 『き……きたあっ!!』 ガバッと体を起こして、携帯を手に取る。着信メール1件。胸を高鳴らせながら私は 携帯を開くと、声に出して文面を読んだ。 『えっと…… よお。椎水からメールって珍しいな。俺は今、ゲームしてた。そっちは? って、答えられる訳ないじゃないのよそんなの!!』 まさか、別府にチョコ渡そうかどうか、悶々と悩んでたなんて書ける訳ない。少し考 えてから、私は再び携帯に手を伸ばし、メールを打ち始める。 『だから、暇してたって言ってるでしょ? それより今、時間ある? ちょっと用事あ るんだけど』 送信する前に文章を見返して、何か変に勘繰られないか不安になった。バレンタイン デーに用事って、これだけで気付かれちゃうかも知れない。 30 名前:3/3[] 投稿日:2012/02/26(日) 20 07 46.01 ID mAAZgust0 [7/18] 『いやいやいや。どーせ渡すんだから、今気付かれたって関係無いってば。期待を裏切 る訳じゃないんだし』 ベシッと送信ボタンを強く押す。また、延々と続くような緊張の時間を過ごした後で、 ようやく届いたメールに私はかじり付く。 『7時には飯だからあんまり時間取れないけど、それまでなら。で、用事って何? ……かぁ…… ワザとぼかしてんのかなぁ』 向こうからしてみると、期待してるような事書くと、違った時に恥掻くかも知れない と思ってるのかも知れない。 『ちょっとだけ出て来れる? 親水公園の前で、10分後に。何の用事かは、来れば分か るから……っと。こんなもんかな?』 文化祭の前には何度か夜遅くなって家の近くまで送って貰った事もあった。その時、 分かれたのが公園の所だったのだが、確かそこから10分くらいと言っていた記憶があ る。ちなみにうちからだと、2、3分の距離だ。 送信ボタンを押して待っていると、今度は意外と早く返信が来た。 『了解。じゃあ、これから出るわ……か。よしっ!!』 グッと拳を握り締めて気合を入れる。あんなにグズグズ迷っていたのに、ここまで話 が進むと、不思議と性根が座って来た。私はクローゼットを開け、自分のお気に入りの 服を引っ張り出す。 『……せっかくだもん。オシャレしなくちゃ。格好だけでも……ね……』 続く。 42 名前:1/5[] 投稿日:2012/02/26(日) 21 10 44.79 ID mAAZgust0 [9/18] バレンタインデーのチョコの渡し方に悩むツンデレ その4 公園の前まで行くと、既に別府はやって来ていて、寒そうに体を震わせつつ、こっち を見ていた。すぐに私に気付き、手を上げる。 『……お待たせ。ゴメン……待った?』 「いや。1、2分かな? で、用事って何?」 『急かさないの。ちょっとここだと人が通るから、奥行こ』 時折通る帰りがけのサラリーマンや学生の姿を気にして、私はそう誘いかけた。その 間にも、別府の視線が私の手に持つ紙袋に行っているのに気付く。やっぱり、期待され ているんだと思うと恥ずかしくなる。 「あ、ああ。いいよ」 彼が了解するのを確認して、私は公園の奥に足を進めた。人目につかなくなる程度の 場所まで来ると、周りを確認して誰もいないのを確かめる。そして、クルリと振り向い て、後をついて来た別府と向かい合うと、私は紙袋ごと手を差し出した。 『えっと……用事って言うのは……これ!!』 「これって……やっぱりその……あれだよな? バレンタインの……」 『そ……そうよっ!! わざわざ今日に、他に一体何を渡すってのよ!!』 戸惑い気味の別府に、私はつい、けんか腰に近い態度を取ってしまった。 「あー、いやその……ちょっと意外だったからさ。まさか椎水が俺にチョコくれるとか、 思ってなかったし……」 『なっ……何よ!! 私がチョコ渡しちゃ悪いとか?』 思いもかけず困惑した態度を取られてしまい、私もパニくってしまい、ますますけん か腰になってしまう。すると別府が慌てて両手でそれを否定した。 「いやいやいやいや。そんな事ないけどさ。ただ、何ていうの? そんな雰囲気無かっ たし…… だからちょっと驚いたけどさ。その……素直に嬉しいとは思ってるから」 しかし何というか、言葉ほどには別府から嬉しさが私に伝わって来ない。まだ戸惑い の方が大きいのか、それとも本命はもう貰ってるから、やっぱりそっちの方が嬉しいのか。 『でも、お昼の子から貰ったチョコほどじゃないんでしょ?』 43 名前:2/5[] 投稿日:2012/02/26(日) 21 11 15.42 ID mAAZgust0 [10/18] 思わず口をついて出た言葉に 私自身がビックリしてしまった。何か嫉妬してること を曝け出してしまったみたいで、凄くみっともない。差し出した手を引っ込め、ギュッ と両手を体にくっ付けて縮こまってしまう。 「ああ、あれ……見てたんだ。やっぱ目立つよなぁ……」 困ったような嬉しいような、そんな答えを返してくる。視線を落とし、顔を見ないよ うにしつつ、無言で私は続きを待った。 「後で他の奴らからも散々からかわれたんだけど、勘弁して欲しいよな。あんな渡し方。 あれじゃあ本命と誤解されてもしょうがねーよ」 ビクッ、と私の体が震える。本命と誤解されても……という事は、あれは本命じゃな いという事なのだろうか? 顔を上げて別府の顔を見ると、今度は向こうが、顔を横に 背けて頭を掻いた。 「全くあいつ等…… 確かにチョコくれるのはありがたいけどよ。何も部活の女子全員 からの義理チョコ配るのに、あんな仰々しく渡す必要ないだろってばよ」 『部活の……女子全員から……?』 鸚鵡返しに聞くと、別府は照れ臭そうにしつつも、苦い顔で頷く。 「ああ。そこまで見たか分かんないけど、綺麗にオシャレな袋に詰めてリボンまでかけ てあったけど、中身は徳用の詰め合わせチョコだぜ。それを男子の人数分に分けて、教 室回って配ってたってだけでさ。なのに、いつの間にあんな可愛い彼女作ったんだよと か、散々突付かれてさ。ホワイトデーのお返しのことも考えると、蒙った被害の方がでかいぜ」 ぶつくさ文句を言う彼を前に、私は別府が何の部活をやってたかを思い起こした。 『別府って……確か、ギター部だったっけ? 文化祭の時、弾き語りやってたよね?』 私の問いに、別府が頷く。 「ああ。今日持って来たのは、そのギター部の一年二人だよ。バレンタインデーは恒例 で、女子全員で買ったチョコを男子に配ってくれるんだけど、今年はやらかしやがったなあ」 『でも、結構可愛かったじゃない。別府はその……気になったりとか、しないの?』 部活で一緒だと、私なんかよりも遥かに一緒に過ごしている時間は多いはずだ。当然、 絆だって深まるだろう。しかし別府は、ちょっと考えてから首を振った。 「確かに可愛いっちゃ可愛いけど……何か生意気な妹抱えてるって感じで、そんな雰囲 気になった事ないなぁ。あと、他の女子とも普通に仲はいいけどそれだけってだけで。 もう彼氏いる子もいるし」 44 名前:3/5[] 投稿日:2012/02/26(日) 21 11 36.97 ID mAAZgust0 [11/18] それを聞いて、私はちょっと心が落ち着く。少なくとも部活には、特別に仲の良い女 子はいないんだ。もっとも、だからといって油断はならないけど、少なくとも私のチョ コが脇役にならなくて済んだのは事実だ。 『じゃ、じゃあその……あらためて、これ……』 一度引っ込めた手提げ袋をもう一度差し出す。今度は、別府はすぐにそれを受け取っ てくれた。 「サンキュ。意外だったけど、正直嬉しいよ。ありがとう」 まっすぐに笑顔を向けてお礼を言われ、恥ずかしくなって私はつい叫んでしまった。 『そ……そんなに喜ばなくたっていいわよ。私のだって……その……義理、なんだからねっ!!』 自分でも顔が火照っているのが分かる。両腕でギュッと自分の体を抱き締めて、顔を 背けてしまった。 「そんなおっきな声で言われると、何だかなあって感じなんだけど」 『うるさいっ!! あげたんだから何だっていいでしょ!! いちいち変な事言わなく ていい!!』 もう目的は達成したし、早いところケリを着けて帰りたいと思った。しかし、睨み付 けた私に、別府はチョコと私を見比べて肩を竦めてみせる。 「いや。義理でも嬉しいは嬉しいんだけどさ。一つ気になることがあって…… 何で椎 水は、俺にチョコあげようなんて思ったんだ? そこがイマイチ釈然としないんだけど」 首を傾げる別府相手に、私は思わず小さく呻き声を漏らした。ホントの事なんてもち ろん今は言えないけど、だからと言って、言わずにおいてまた変に私の心を探られるの も困る。悩んだ末に、ボソッと小声で私は答えた。 『……しょうがないでしょ? だって……作っちゃったんだもん。だから……』 「作っちゃった?」 意外そうな声で聞き返す彼を、私はキッと睨み付けた。 『そうよっ!! 夕実の奴が一緒にバレンタインチョコを作ろうなんて言い出すから…… 私はあげる人なんていないって言ったのに、付き合ってくれるだけでいいとか……だから……』 もちろん、これは嘘である。いや、誘われたのは事実だが、あげる人がいないから嫌 だって断ったのだ。そのくせ私は、家で一人でこっそりと、別府の為にチョコを作って いた訳だけど。 45 名前:4/5[] 投稿日:2012/02/26(日) 21 12 03.30 ID mAAZgust0 [12/18] 『で、作ったからにはどうにかしなきゃいけないでしょ? だけど、あげる人なんてい ないし、バレンタインデーに自分で作ったチョコを自分で食べるのも痛々しいし、かと いって捨てるのももったいないじゃない。そしたら、フッとアンタの顔が浮かんだから……』 一度口を突いて出ると、スイスイと不思議なくらいに嘘がしゃべれる事に自分でも驚 いてしまう。 『い、一応さ…… 文化祭実行委員として、半年以上一緒にやった訳だし、だからあげ てもいいかなーなんて…… そんだけ!! 本当にそれだけなんだからね!!』 私の気持ちがバレないよう、ついムキになって強調してしまった。そしてそれから、 ふと不安になってしまう。あんまり義理を強調し過ぎて、別府の気を悪くさせてはいな いだろうかと。そしたら、せっかくのバレンタインチョコも台無しになってしまう。 しかし、別府は思わぬところで、感心したような声を上げた。 「へーっ。じゃあこれ、椎水の手作りなんだ。すげーな」 それを聞いた途端、私の頭がまた沸騰状態になってしまった。動揺してあわあわと手 を振りながら、一生懸命否定する。 『ちちち……違うの違うの!! 手作りって言ったって、その……ととと、特別な意味 とかホントなんもなくて、私はただ付き合いで作っただけだから、だからその誤解しな いでってば!!』 すると別府は、クスリと笑って頷いた。 「分かってるよ。でもさ。男子高校生としちゃ、バレンタインに女子の手作りチョコを 貰えるってだけでも、そりゃスゲー事なんだぜ。同じ義理でも、部活の女子一同なんか から貰ったチョコより、よっぽど価値あるぞ、コレ」 紙袋を顔の高さまで持ち上げて感心する別府に、私の興奮が最高潮に達してしまう。 『そそそ……そんなの分かんないわよっ!! それにそのっ……く、口に合うかどうか も分かんないのに……勝手にそんな事言わないでよねっ!!』 正直、そこまで喜ばれると気恥ずかしさばっかりが先に立って、まともに物すら考え られなくなっていた。 「ま、不味くてもそれはそれで、下手でも一生懸命作ったっていうプレミア価値が付く けどな。ただ、手作りっていうだけで大した物なのに、これで変に美味かったりしたら、 どんなお返しすれば釣り合い取れるのか分かんなくなるよな」 46 名前:5/5[] 投稿日:2012/02/26(日) 21 13 00.01 ID mAAZgust0 [13/18] 『変にとかいうなっ!! ちゃんと……味見くらいはしたもん…… ただ、別に別府に あげようと思って作った訳じゃないから、その……好みに合うかどうかは分からないっ てだけで……』 まるで美味しかったら却って困るような言い方をされたので、私は黙ってられなくて、 つい突っ込んでしまった。しかもその態度が何故かおかしかったのか、別府にクスリと 笑われてしまい、余計に恥ずかしくなってしまう。 「なら、多分大丈夫だろ。こりゃ、ホワイトデーまでは無駄遣い控えないとダメだな。 今月末発売の曲とかあるけど……まあ、ちょっとの間我慢するか」 『え?』 別府の言葉に、私は顔を上げて彼の顔を見つめた。 『ホワイトデーって……お返し、くれるの?』 私の問いに、別府はさも当然とばかりに頷いた。 続く。 67 名前:1/4[] 投稿日:2012/02/26(日) 22 51 46.46 ID mAAZgust0 [15/18] バレンタインデーのチョコの渡し方に悩むツンデレ その5 「そりゃそうだろ。これだけのもの貰っといて、お返ししなかったらバチ当たりどころ じゃないぜ。それこそ日本中のチョコ貰えなかった男子の怨嗟で呪い殺されちまう」 冗談ぽく言って肩をすくめる別府に、気持ちをほぐされて私は思わず笑ってしまった。 『……だって、全然期待してなかったから…… お返し、なんて……』 正直言えば、渡す事にいっぱいいっぱいで、そんな所に気を回す余裕なんて全く無かっ たと言うのが正しいのだが。しかし、別府はさも心外そうな顔つきをしてみせる。 「あれ? もしかして俺って、バレンタインチョコ貰っておいて、お返しもしない男だ とか思われてた? そんなに信用ないかなあ?」 『そりゃそうでしょ。アンタの一体どこを信用すればいいって言うのよ』 すっかり心に余裕が出来て軽口を叩くと、別府は舌打ちして文句を言い返して来た。 「そんな事ねーよ。こう見えても俺は義理堅い男って事で有名なんだぜ。椎水にもいま まで、ノートとか世話になった分、お返ししたろ? 学食で限定10食の黄金色のメロ ンパンゲットしてやったりさ」 『そういえば、そんな事もあったわね。忘れてたわ』 しれっと答えるが、もちろん私は覚えていた。こっちが何かしてあげた事はちゃんと 覚えていて、いつもそれ以上のお返しをくれる事を。そういう所も、惹かれた一要素で はあったのだ。 「椎水の方がひでーじゃん。あれ、ホントに手に入れるのにどれだけ苦労したと思ってんだよ」 『だって頼んだわけじゃないもん。ホワイトデーのお返しもね。でも、男だったら一度 口に出した事はちゃんとやり遂げてよね。私は期待しないけど』 別府の非難を軽く受け流すと、彼は降参したように片手でバンザイしてみせる。 「はいはい。椎水の手作りチョコを超えるってのは難しいけど、何とかチャレンジして みるかね」 『せいぜい、頑張りなさいよね。もし、期待外れだったらやり直しさせるから、宜しく』 澄ました顔でプレッシャーを掛けると、別府がうげ、と呻いた。 「勘弁してくれよ。つか、期待してないのに期待外れってどういう意味だよ、それ」 『中を見てがっかりしたら、って事。やっぱり、それなりの物じゃないと受け取れないしね』 「ちぇっ。前から思ってたけど、ホントお前って厳しい奴だよな」 68 名前:2/4[] 投稿日:2012/02/26(日) 22 52 09.01 ID mAAZgust0 [16/18] 『うっさいわね。大きなお世話よ』 フン、と鼻息荒く怒ったように言いつつも、私は内心嬉しかった。だって、こんな風 に別府とくだけて話せるなんて、文化祭実行委員やってた時以来だったから。とはいえ、 いつまでも引き止めておく訳にも行かなかった。心に余裕が出来ると、どうしても時間 も気になってしまう。別府もご飯までって言ってたし、そろそろ帰らないといけないだろう。 『……それじゃあ、そろそろ私、帰るね。渡すもの渡したし』 「え? あ、ああ……」 一瞬、驚いた顔をしつつ、顔を上げて公園の時計で時間を確認した別府が頷く。 「それじゃ、食べたらちゃんと感想言うよ。つか……メールの方がいいか?」 私はその問いに頷く。下手に学校なんかで言われたら、私がチョコを別府に渡した事 がみんなにバレてしまうので、その方がむしろありがたかった。 『……別にどうでもいいけど。まあ、期待しないで待ってる』 私の返事に、別府がちょっとムッとした顔を返した。 「あ、また期待してない言われた。確かに俺は文章とか上手くねーけどよ。でも、心を 込めることはいくらだって出来るんだぜ」 『はいはい。だから、待ってるわよ。期待しないでね』 「ちっ。ちくしょうめ。覚えてろよ」 まるでヤクザの三下のようなセリフの後、別府と私は思わず顔を見合わせた。そして お互い笑ってしまう。 『全く、くっだらないわね。もう』 「いーんだよ。俺はくだらない事にも全身全霊をかける主義だからさ」 呆れたような私の態度に、別府はちょっと自慢げに返す。それから、軽く手を上げた。 「それじゃあ、また明日な」 『うん。また、明日』 こうして、無事別府にチョコを渡すというミッションを終了した私は、家に帰ってか ら、母親に文句を言われつつ風呂に入った。湯船の中で気持ちを落ち着かせ、今日の出 来事を反芻する。 69 名前:3/4[] 投稿日:2012/02/26(日) 22 52 32.17 ID mAAZgust0 [17/18] 『……お昼休みはどうなるかと思ったけど……でも、良かった。ちゃんと渡せて。アイ ツもあんなに喜んでくれて……あんなに……』 私の手作りだって聞いた時の別府の嬉しそうな顔を思い浮かべる。すると、なんか体 がくすぐったくって身悶えしたくなり、私は湯船の中で身をよじった。 『これ、椎水が作ったんだ。スゲーな、だって。エヘヘ。別府に凄いって言われちゃった……』 今にして思うと、何をあんなに悩んでいたんだろうと思う。確かに死ぬほど恥ずかし かったけど、でもあんなに喜んでくれるなら、最初からああやって二人きりで渡せば良 かったんだ。分かっていれば、あんな風に悶々と悩む事もなかったのに。 『しかも部活の女の子から貰ったチョコより何倍も価値があるとか……フフッ!!』 私のチョコってそんな価値があるんだろうか? しかし、そこで私はフッと思い当た った。女子の手作りチョコって言ってたけど、もし私以外の子から手作りチョコを貰っ ていたら、それは私のと同等かそれ以上になるのだろうかと。 『止め止め止め。仮定の話なんて考えてもしょうがないって』 湯船に頭からザブンと浸かり、黒い気持ちを払拭する。 『今年は手作りチョコあげたのは私だけなんだから…… もし、来年誰か他の子があげ たとしても、それより価値の高いチョコを作ればいいだけなんだもん。うん』 風呂から上がると、携帯が着信を告げるランプを明滅させていた。思わず飛びつくと、 新着メール1件の表示があった。操作ももどかしく、受信ボックスを開く。 『……別府からだ……』 逸る心を抑えつつ、メールを開く。 『えーっと、何なに? さっきはホントにありがとな。とりあえずビターっぽいの食っ てみた。甘さとほろ苦さがちょうどいい感じでスッゲー美味かったよ。こりゃ、マジで 凄いお返し考えないとな。もったいないから、一日一個ずつで食うんで、今日はここま で。また明日メールするわ。じゃ』 そのままの姿勢で、私は天井を見上げて呟いた。 『美味かったって……すっげー、美味かったって……』 それから、堪え切れずにベッドにダイブする。 70 名前:4/4[] 投稿日:2012/02/26(日) 22 53 37.62 ID mAAZgust0 [18/18] 『やっったああああっ!! 超喜んでくれてんじゃん!! あああああ……ホントに渡 せてよかったあああああ!!』 枕を抱き締めて、私は人が見たら絶対にキモがられるほどに、ニヤニヤし続けたのだった。 ちなみに、ホワイトデーのお返しは、高級スイーツと、それとディ○ニーランドの、 ペアチケットだった。誰と行ったかって? それはもちろん秘密です。夕実にも言って ないしね。エヘヘッ!! 終わり
https://w.atwiki.jp/wiki15_you/pages/224.html
バレンタイン哀愁 作者:隆 時は二月十四日。この日は、恋する男女にとっては切っても切り離されぬ縁のあるもの。そう、「バレンタインデー」である。 「フフフ……遂に来たぞ、この時が!」 ある一人の男が、レストラン・ミュークトの扉を開け放ち、意気揚々と叫び声を上げた。 そう、この男とはアリオスト=シューレン、ミュークトきっての超絶イケメンにして超絶ネタキャラである。 「ネタキャラ言うなボケ!」 アリオストの毎度ながらのアホいツッコミが聞こえてきたような気がするが、ここは無視させて頂く。 「……ん?」 アリオストは、ミュークトに入るや否や、少し唸った。どうやら先客がいたようだ。 「お、何だ、エーガじゃないか」 「ん? あー、その声はアリオストか。こんばんやー」 イケメン同士で――エーガの創造主曰く「エーガは非イケメン」との事だが、ここはイケメンと通させて頂く――何だかんだで気の合う二人。そして、今日は二月十四日という運命の日。話題は一つしかない。 「今日はバレンタインデーだなー」 「……だからどうしたよ?」 「あぁ? エーガは楽しみじゃないのか? 俺もお前もイケメン同士、貰ったチョコを勘定するのは一種の愉悦だぞ?」 「ハン、楽しみでも何でもねーな。俺は、お前と違って、色恋沙汰にはまるで興味ねーんだよ」 エーガは半眼でアリオストを睨み、こう言い放った。 「……その割にはしょっちゅう女口説いているじゃないか」 「ありゃ口説きでも何でもねー。ていうかな、あっちから構ってくる以上、無視する訳にもいかねーだろ?」 「嘘つくな」 ああだこうだと男二人の会話の最中、ミュークトに客が訪れた。 「エクレール様、いらっしゃいませ~!」 ミュークトのウェイターの声が響いた。どうやら客人はエクレールのようだ。 「こんばんはだ、エクレール」 「ん、こんばんやー」 アリオストとエーガは、入ってきたエクレールに挨拶をした。しかし、エクレールの様子がどうも変である。妙にそわそわしているようで、後ろに何かを隠しているようにも見える。 「む、こ、こんばんはだ……」 くどいようだが、今日は二月十四日である。そんなとき、一人の恋する乙女がする事と言ったら、一つしかない。 「エクレール、様子が変だぞ? ……はっはーん、さては、俺とエーガにチョコを渡すって寸法だな? フッ、モテる男は辛い」 「何を言っている貴様? 取り敢えず、これは今宵の土産だ」 エクレールはそう言うと、茶化してきたアリオストへチロルチョコを一個、無造作に投げ放った。 「……へ?」 きょとんとするアリオストを尻目に、エクレールはエーガの前へと移動した。そして、アリオストの視界には、豪華なデコレーションを施してある箱を背中に隠しているエクレールの姿があった。 「お、エクレール? どうしたんだお前? 顔、真っ赤だぞ?」 「エ、エ、エーガ……我はその、貴様に……その……」 「もっとはっきり言えよ。どもっていちゃ、分からないぜ?」 ククッ、とエーガはニヒルな笑みを浮かべ、エクレールの顔をまじまじと見つめた。そうすると、エクレールはますます照れのために顔が赤くなっていき、喋りもどもっていく。 「お、俺が、俺のような超絶イケメンに……義理とはいえ……チロルチョコ一個!?」 落胆し、項垂れているアリオスト。彼のプライドはズタボロである。よもや、アリオスト如きが本命チョコを貰えるとでも思っていたのだろうか。 「何が『如き』だってぇ!?」 またクソウザい声が聞こえてきたが、気にしないでおく。 相変わらず、エーガに本命チョコを手渡せず、しどろもどろしているエクレール。 その時、 「ジーニア様、いらっしゃいませ~!」 「サクリファイス様、いらっしゃいませ~!」 「サリシェラ様、いらっしゃいませ~!」 「シフォン様、いらっしゃいませ~!」 というウェイター&ウェイトレスの声が聞こえ、次々と客がやってきた。 「こ、こんばんはだ、何か大勢」 「お、こんばんやー。一気に来たなー」 アリオストは項垂れたままで、エーガは至って平静な面持ちで客人を迎えた。 全ての人がチョコを持っている。そう、またまたくどいようだが、今日は何の日かを忘れてはならない。 そして――オール面子はアリオストスルーで、エーガの方へと向かっていった。 「何々、エクレールだけずるいじゃん、あたしもエーガにチョコ渡したいのよー?」 「サ、サクリファイス……」 「え? アリオストもいたの? どーせ来ると思って、あんたにも一応チョコ持ってきてやったわよー」 サクリファイスはそう言うと、市販の板チョコ1枚をアリオストへ向けて放り投げた。 「そ、そんな……。……ジ、ジーニア!」 「アリオストさんですか。生憎、私はアリオストさんに本命チョコを渡す気など皆無なのです。私の本命はエーガなのです」 「……サリシェラ!」 「エーガに………渡すチョコだもの…あなたの分は……用意していない……」 ことごとくフラれ続ける、フラレマン・フォーエヴァー・アリオスト。 「ったく、こんな日にミュークトなんか来るんじゃなかったぜ、やれやれ」 贅沢な悩みを口にし、一人一人を律儀に応対しているエーガは、本日の完全な勝者である。 「……」 「ん、シフォンもいるのか。ってか、お前、今日は家にいるんじゃなかったのかよ」 先程やって来たシフォンの様子が変だ。というか、明らかに怒っているかのような面持ち。 「エ、エーガ……コイツ等なんかのチョコを貰って食べるの?」 「食べるっつーか……こんなにチョコを貰っても困る訳だが。というか、俺はいいから、あそこでウジウジしているアリオストにやってやってくれや」 完全に辺りから忘れ去られていたアリオストだが、エーガのフォローでようやくオールシカト状態から解放された。 だが、 「テメェの慈悲なんぞ受けん!」 この期に及んで意地を張る、バカもいいところなアリオスト。 「エ、エーガ! 我は貴様に渡す為に慣れぬチョコ作りをしたのだ! アリオストには既に義理チョコをやった!」 「あたしもエーガに渡す為にわざわざ高級チョコ買ってきたのに~」 「アリオストに本命チョコ渡すぐらいなら死んだ方がマシなのです」 「…エーガ……私の…………私のチョコ………」 「エ、エ、エーガのバカぁ!」 アリオストは、彼女等の言葉によって次々と心が抉られていった。 「うぅ……イケメン度ならエーガより上のはずの俺が、何故……」 それは、アリオストがミュークトでは屈指のネタキャラだからに他ならない。 「うーん……参ったなこりゃ」 辺りは、「エーガにチョコを渡すのは我だ!」だの「いい気になンじゃないわよ~」だの「エーガは渡さないのです」だの「エーガは…………私の事……」だの「みんな死んじゃえー!」だの、と、完全にエーガ争奪戦へと及んでいた。 そして、それにとどめを刺すかのように、ある来訪者が現れた。 「サッチー様、いらっしゃいませ~!」 このウェイターの言葉に、辺りは一気に沈黙した。 「ダァーーーリィーーーン!!! アタシはこの日をどんなに待ち望んでいた事か!」 「げ……一番厄介な奴が現れやがった」 あのエーガも流石に冷や汗をかいている。こういうケダモノが現れたときの、最も手っ取り早い対処法。それは……。 「おーい、アリオスト、アイツをちゃっちゃと追い払ってくれ。それが出来るのは、お前だけだからよ」 「ハ、ハァ!?」 そう、サイボーグ改造を経て超人と化した、人造兵器アリオストの利用である。 「んー、何だ蟻じゃない。ダーリンの足元にも及ばない矮小な存在ね」 「……ざけんなテメェ!」 アリオストの咆哮と斬撃と共に、サッチーは海王星までホームランされた。 「あ、蟻如きにこのアタシがぁ!? ダァーリィーン、死んでも愛だけは不滅よー!」 「ハイハイ、勝手に言ってろ……フゥ」 厄介者が現れたと思ったらすぐに消えた、ミュークトのカオスっぷりに、エーガはやれやれとばかりに嘆息した。 しかし、サッチーを追い払った功労者に待っていた運命は。 「……まぁ、チロルチョコをもう一つ追加してやる」 「頑張ったわね~アリオスト、エライじゃん」 「なかなかやるのです。少しは認めてやってもいいのです」 「……ちょっとだけ凄い……かも…」 「ぶっちゃけ、アリオストが一番ウザいじゃん」 この程度である。シフォンに至っては罵倒している。 「……。……ウワァンオレモウカエル!」 アリオストは情けない声を上げ、ミュークトから足のブーストで彼方へと飛んでいった。レストラン入店直後の自信は完全に失われて。 「アイツはああだからこういう扱いって分からんのかな。つーかアリオストは所帯持ちだってのに、何考えていたんだか」 サッチー来訪により中断していたエーガ争奪戦がいつの間にか再開され、それをエーガは冷ややかな目で見つめていた。 イケメンなのにモテないネタキャラアリオストに乾杯。 関連キャラ アリオスト エーガ エクレール サクリファイス ジーニア サリシェラ? シフォン サッチー?
https://w.atwiki.jp/ikenuma-yui/pages/207.html
池沼唯とバレンタイン 世間は今、バレンタインの準備で大忙し。 女はあたふた、男はそわそわ。 時に桜ヶ丘女子高も例外ではなく、そこに通う高校生、平沢憂も2月13日には,チョコ作りに精をだしていた。 しかし、彼女は姉に池沼の姉を抱えていて,チョコを作るのも一苦労なのであった。 憂(お姉ちゃん昼寝してる。今のうちに下準備しておいたのつくっちゃおう。) 憂はバレンタインデーに友達とチョコを交換する為、精巧なチョコをつくっていた。 十分後、生ける公害、池沼唯は目を覚ました。 唯(あぅ、いいにおいする。) 呆れたものである。食べ物の匂いで目を覚ますとは。 唯「あーう!うーい!ゆいもちょこたべるー!(^q^)/」 憂「お姉ちゃん…起きちゃったのね…」 唯「あう、ちょこー( q )」 憂「あのねお姉ちゃん、バレンタインデーはね女の子はチョコレート食べられないの。」 これを聞いて唯はびっくり。 唯「あう?ゆいたべれない?(゚q゚)」 憂「そうよ、だから今日は諦めてね。」 唯「やー!ゆいおんなやー!たべるー!("q")」 憂「ああもう!いちいちうるさいな。静かにして。」 唯「ゆいもたべたいー!ばえんたいんわるいこー!」 パン! 間髪入れず憂は平手打ちをした。 憂「もう!わめかないの!」 唯「びぃーん!いちゃいー!おしおきやー!("q")」 憂「静かにして謝んないと次はもっと痛いわよ。」 唯「むぅー、ゆいしずか、ごめんなたい!(°p°)」 憂「それでよし。そうだ、お姉ちゃんに良い事教えてあげるね。」 唯「あう?(゚q゚)」 憂「チョコをつくってね、誰かに渡すとその後お返しが貰えるのよ。」 唯「ほんとでつか?ゆいちょこつくる!(^q^)/」 憂「じゃあこの板チョコを一つあげるから飾り付けたり形を変えたりして、オリジナルのチョコを作ってね。 あと、チョコを自分で食べちゃうと二度とお菓子が食べられなくなる呪いにかかるからね。」 唯「ゆいのろいやー!ちょこあげておかえちもらう!(^q^)」 フンス! 唯は鼻息を大袈裟に吐き、二階に行きチョコ作りを始めた。 憂「うふふ。お姉ちゃん、どんなのつくるんだろ。」 憂は微笑みながら姉を見守った。 唯の部屋 唯「んひっ、んひっ(^q^)」 「あうー、だあー(^q^)」 時折奇声を発しながら唯は板チョコを手でこねて、団子状にしていた。もうこの時点で汚なさ全開である。 唯は、ここで憂の言葉をおもいだす。 唯(うーいは飾り付けって言ってた!) 唯「あー!あー!(^q^)」 唯はなんと自らのヘアピンをチョコにねじ込んだ! 唯「かわいーでつよ!(^q^)/」 さらにそれにこんどはギターのピックを埋め込むと池沼さんは満足した様子で下へ駆けて行った。 唯「うーい!うーい!できたー!♪(^q^)」 憂「あらー↓よくできてるじゃない↓。」 若干憂の語尾が下がりがちだが、憂はとりあえず褒めてみた。 唯「ゆいじょーず!ゆいじょーず!(^q^)」 憂「そうね、お姉ちゃん上手よ。」 唯「あうー、じょーず、んひっ、んひっ(^q^)」 唯は珍しく褒められて有頂天になっていた。 でも池沼さん、何か大切なこと忘れてません? 憂「で、誰に渡すの?」 唯「ゆいわたちてくるー!(^q^)」 ダダッ 唯は家を飛び出した。 憂「あれ、私じゃないんだ…」 憂は期待が裏切られてちょっぴりがっかり。 その頃唯は道ゆく人でお返しをくれそうな人を物色していた。 男A「なんやあね池沼ちゃんのもってる茶色団子は。」 男B「ウンコとちゃう?投げられる前にはよ行こな。」 男A「せやな」 このように道ゆく人は唯の持つチョコをわらった。 もっとも唯にそれは聞こえてないがなんとも失礼な話だ。 しばらくすると、立派な身形のオジサンが歩いてきた。 唯(お返しやばそー!) 唯「んひっ、んひっ(^q^)」 唯はいきなりオジサンの前に立ち、チョコを差し出しました。 オジサン「な、なんだいお嬢ちゃん?」 唯「ばえんたいんちょこ!ゆいちょこあげる!」 オジサン「今日は13日だけどな… ハハ」 唯「おじさんゆいにおかえしする?( p )」 オジサン「その前にオジサン、お嬢ちゃんのこと知らないし、ごめんな、じゃな。」 たったかたったか 当然の結果だろう。相手が池沼でなくてもこのケースでは受け取る人は少ないだろう。 唯「うーうー(`q′)」 唯は気に入らない様子で唸っていた。 その後も、 兄ちゃん「えと、ま、またの機会に。」 男A「まじ勘弁。」 チャラ男「くせーんだよ池沼!」 キモオタ「ひ、人違いでは、」 澪厨「唯とか池沼wwwwwww」 こんな様子で失敗を重ねていった。 最初こそ不機嫌に唸っていた唯だが、今回柄にもなく落ち込んでいた。 折角作ったものがこのようにされては池沼とはいえ刺さるものがあったのだろう。 唯「あぅー…(uqu)」 唯はとぼとぼと公園へ歩いて行った。 公園にはいつもの男子三人組がいた。 男子A「バレンタインとか気にしてねーしwwwww」 男子B「チョコあんま好きじゃないんだよねwwwww」 男子C「明日期待とかしてねーしwwwwww」 唯はこの三人組にチョコを渡そうと考えた。 男子B「おい、あの池沼が来たぞ。」 男子C「なにごとだ。」 唯「ゆいちょこあげる(^q^)」 唯は溶けたけた、うす汚いチョコを差し出した。 男子A「なんじゃこら!きったねー!」 男子C「これが食いもんかよ…」 唯「あう?( q )」 男子B「自重しろよカス!」 グシャ なんと男子達は唯のチョコを地面に叩きつけたのだ。 無情にも崩れ去るチョコ塊。 男子A「ヒュー!ナイス!」 男子B「いい気味だぜ!」 男子C「お、おい、見ろよ。」 唯は落ちたチョコを拾って再び差し出した。この池沼の前に悪口などもはや無力である。 唯「あう、おとしちゃうどじさん( p )」 「はい、ちょこ!(^q^)」 男子B「い、良い加減にしろや!」 男子Bは憂顔負けの回し蹴りを唯にお見舞いした! ゲシッ 唯「あうぅ!いちゃいれす!("q")」 衝撃で服はチョコまみれになってしまった。 男子A「もう行こうぜ…」 たったかたったか 唯「びー!まっちぇー!びえーん!("q;)」 どすどすどす、どてっ!べちょお 唯は追いかけるがコントばりに頭からこけてしまった。 しかもチョコが顔に潰されてしまったのだ。汚いという言葉しかでてこない。 やがてチョコの中にねじ込んだヘアピンが逆襲する。 唯「あうー、ん?びーー!いちゃーい!("q")」 ヘアピンが額に刺さっていたのだ。はたからみれば滑稽だが当人にとっては一大事でパニックに陥っている。 唯はヘアピンを引き抜いた。 唯「びわーん!いちゃいよおー!!」 唯(もう散々だよお、、、そうだ!うーいにあげよう!) やれやれやっと気づいたのか。 しかしチョコはもはや原型をとどめていないし、服も顔も汚れ放題で大目玉を食らいそうだ。 唯「うーい!うーい!(^q^)」 遠くから姉の鳴き声がしたので憂は振り向いた。 憂「チョコ誰にあげたのかな」 どすどすどす 唯「はひぃー、はひぃー( q )」 「ちょこうけとってくだたい!(^q^)」 憂(あちゃー、やっぱり誰も受け取らなかったか。) 憂がチョコを受け取ろうとすると唯の体中がチョコで汚れているではないか。 ぶちぶちっ 憂「もう!どうしたらこんなに汚くなれるの!」 憂は唯のチョコ?をひったくると地面に投げつけた。 ひゅんっ、ぐしゃ 唯「ああー!ゆいのちょこー!(゚q゚)」 「あうあうあう!うーいわるいこー!しーね!(`Q′)」 憂「お前が死ねー!」 憂は唯の手を引くと風呂場まで連れて行った。 憂「汚いから本当に!」 憂は唯を温めてない冷水の湯船に投げ込んだ。 唯「ひぃー!ちゅめたいよー!うーいだしてー!!("q")」 それは不可能である。何故なら憂が押さえ付けて離さないから。 唯「びー!びえーん!びー!!」 憂「うるさいなあ!」 唯「あばばば、ごぼがぼがぼがぼ、あばば(×q×)」 チーン… 憂「黙ったか。」 否、気絶しただけである。 憂は唯をゆいのからひきあげ、浴室に放置して出ていった。 そのあと憂は唯に作った分のチョコを1人で食べるのであった。 ~fin~ 池沼唯のSS に戻る (2011.02.13-2011.02.15) カウンター 今日 - 昨日 - 合計 -
https://w.atwiki.jp/kannnaduki-no-miko/pages/271.html
神無月の巫女 エロ総合投下もの 前世のバレンタイン 屋敷内のある場所にて。 「あ、あの…姫さまっ」 「え?」 「きゃー姫さま~」 勇気を出した千歌音が物陰から声をかけようとするがイズミ達の声により遮断される。 「私達、姫さまのために手作りチョコ作りました♪」 「そう、ありがと…」 イズミ達取り巻きに囲われる姫子に声などかけられない。 今日はバレンタインデー…千歌音も用意をしていた。 もちろん、心から愛する姫子のために。 だが姫子は何十年と続く名家の一人娘であり。 村のシンボルであり、皆のアイドル的存在、それに引き換え自分は仕える身。 そのような恋心などしてはいけない、だけれど…。 千歌音も病弱ながら手作りチョコを作るはずだった。 が、調理場はイズミ達に占領された上、材料も全て使われた。 だから姫子に上げるチョコなどない、お金もない千歌音は…。 その夜、姫子の部屋を訪ねた、姫子の専属侍女である真琴以外はあまり出入りできない。 そもそもこのような時間にお嬢様の部屋を訪ねるなど許されることなどではないけれど…。 「…………」 「千歌音、居るのね?」 「あっ…は、はい、申し訳ありません、このような遅い時間に」 「構わないわ、入りなさい」 「あ、は、はい……」 静かに開けると…中に入る。 「どうしたの?辛いことでもあったの?」 布団から起きた姫子が起き上がる。 「いえ、私…その、姫さま――」 「千歌音、二人きりのときはその呼び方はやめて頂戴といつも言ってるでしょ?」 真顔になりそう言ってきた姫子に自分に確かめるようなすると。 「あ、は、はい…ひめ…こ」 「それで、なにかしら?言いたいことがあるのでしょう?」 「その、わ、私だけ…姫子にチョコを上げられなかったから…」 「あら、いいのよ…その気持ちだけで嬉しいわ、千歌音の言葉だもの」 「だ、だから…、そ、その…私」 と着物に手をかけ脱ぎ始める千歌音――。 「やめなさい!」 その仕草を見て姫子が声を張り上げ震える千歌音の手を止める。 驚いて顔を上げる千歌音に姫子はお日様の笑顔で優しく微笑んだ。 「体が震えているわ…大丈夫、無理しなくていいのよ千歌音」 「で、でも私はいつも姫子に迷惑かけて、こ、こんなことくらいしか――」 「バカね…ふふ、ほら、一つ真琴から貰ったチョコがあるけれど…食べる?」 と寝床の背後にあるチョコを取り出すと千歌音の口元へと差し出す。 「い、いえ私がそのような――」 「食べなさい、命令よ千歌音」 顔を近づけ耳元でそう囁く姫子に千歌音は――。 「は、はい……」 と、姫子から差し出されたアーモンド入りのチョコを一口舐める。 本来、お嬢様の前でそのような行為は許されないのだが~。 千歌音は美味しそうに舐めながら頂く、口の中に甘い香りが広がっていく――。 そして食べ終えた千歌音が顔をあげると――。 姫子の顔があった。 そして目の前に顔を寄せていた姫子にそのまま唇を押し付けられる。 「んっ………」 チョコの甘い香りと姫子の蜜のような甘い唇が交錯し色んな味をかもし出していく。 そのまま抱き寄せられ、驚いて目を開けていた千歌音も…心地よいキスの香りに…ゆっくりと 目を閉じた――。 「あっ……」 千歌音から唇を開放すると姫子は微笑む。 慌てて唇を手で押さえると奪われた感触を確かめながら千歌音は頬を染めている。 「千歌音、貴女から甘いチョコを頂いたわ…どんな味にも変えられない究極の――」
https://w.atwiki.jp/quuta/pages/56.html
くわえチョコリボン付ミルク★ ストライプジャケット ホワイト○ ストライプジャケット レッド○ ストライプジャケット イエロー○ チェックジャケット ホワイト○ ナチュラルショート ホワイト☆ ナチュラルショート レッド☆ ナチュラルショート イエロー☆ バレンタインチョコレート ブルー☆ フード付ミニマント ホワイト○ 恋愛中の貼り紙○ バレンタイントランク ブラック☆ バレンタイントランク ホワイト★
https://w.atwiki.jp/srwkdm/pages/168.html
22代目スレ 2008/02/14(木) 【ダテ家】 ハザリア「おう、いま帰ったぞ」 マリ「ああ」 ハザリア「あぁ、寒い寒い! 暖房が効いている部屋はどこだ」 マリ「わたしだってまだ帰ってきたばっかりなんだ。 コタツもヒーターも暖まってないよ」 ハザリア「仕方がない。強い酒でもあおるか」 マリ「あ、勝手に飲むなよ。減ってるのがバレたら、ラト母さんに叱られるんだ」 ハザリア「ロシア系め」 マリ「ラト母さん、ロシア人なのかな」 マリ「イヤ、ちょっと待て。お前、なんで当たり前のようにうちに帰って来てるんだ!」 ハザリア「俺の湯飲み茶碗はどこに行った?」 マリ「専用の湯飲み茶碗を置くな!」 ハザリア「黙れ、黙れよ! 寮ではルルやルナがうるさくてくつろげんのだ!」 マリ「うちではもっとくつろぐなよ!」 ハザリア「なんだ、迷惑か」 マリ「いや、そんなことは・・・、イヤッ、違うよ! そうだよ!」 ハザリア「どっちだ」 マリ「迷惑だよ! 迷惑に決まってるだろ! 迷惑迷惑大迷惑! 自分ちに帰れッ!」 ハザリア「フン、では帰るとするか」 マリ「ああ、帰れ帰れ! 迷惑だから二度と来るな!」 ハザリア「あまり迷惑迷惑いっておると、邪悪獣が出るぞ」 マリ「出ないよ、邪悪獣なんて!」 【翌日 学校】 マリ「アレ、あいつは休みか」 リトゥ「うん、なんかいないね」 マリ「フン、ちょうどいい。今日は静かに授業を受けられそうだな」 【三日後】 マリ「まだ来ないって、いくらなんでもおかしくないか?」 リトゥ「そんな、気にすることないと思うけど」 マリ「イヤ、でも」 【バルマー寮】 ルナ「そういえば、3日ほど見ていないな」 マリ「ここにも帰ってないのか?」 キャクトラ「また、どこかほっつき歩いているのではないでしょうか」 マリ「どこ行っちゃったんだろ。帰るって、まさか実家まで帰っちゃったのかな」 ルル「あら、それはないでしょう。兄上はあまり地元に寄りつきませんから」 ルナ「お前たち兄妹は、もう少し地元に帰れ」 ルル「だって、つまらないんですもの、地元。 娯楽などありませんし、テレビのチャンネルも2つしかありませんし」 ルナ「ただの地方出身者のようなことをいうでない」 キャクトラ「あながたは、お正月まで地球にいたままだったではありませんか」 ルル「まあ、キャクトラだって今年の年末年始はどこかに出かけていたではありませんか」 ルナ「そういえば、どこに行っていたのだ?」 キャクトラ「いや、あれは音楽的なプライドのぶつかり合いであり」 マリ「な、それよりあいつは」 ルナ「探す必要などないだろう」 キャクトラ「はい、あの方のことで骨を折るなど、まったくムダなことです」 【喫茶店】 ユウカ「そんなの、あたしの知ったこっちゃない」 マリ「どうしちゃったんだろ。まさか、わたしが迷惑迷惑いったから、ほんとに邪悪獣が出て」 ユウカ「邪悪獣ならこないだ1匹出てたけど、あたしがゴッドサンダークラッシュで切り払っておいた」 マリ「出てたんですか、邪悪獣が。できるんですか、ゴッドサンダークラッシュが」 ユウカ「ねえ、敬語で話すのやめてくれる? なにか想像以上に傷付くの」 マリ「やめてくださいよ、その微妙な繊細さ」 【雑居ビル】 マーズ「えー? 見てねーよ。どーも、あーゆーメチャクチャなひとは苦手でね」 【イスルギフード】 ミツハル「僕が知ってるはずないじゃないか」 【ダテ家】 マリ「どこにもいない。それにしても、なんでみんなして妙に冷淡なんだ。 あいつ、ひょっとしてけっこう嫌われてたのかな。 そりゃ、あいつは、口は悪いし手癖悪いし性格ねじまがってるし、 声でかいし、傍若無人だし、法律守らないし、男のくせに力仕事とか女にやらせるし、 性格はもちろん、見た目も決してよくはないよ。 でもさ、でもさ」 マリ「わたしが、あんなこといったからなのかな。 あいつ、ヘンに繊細なとこあるからな。 考えなしでものいうわりに、自分の感情はあんまり口に出さなかったりするし。 なんで、ああいうふうにいっちゃうんだろうな、わたしは。 もうちょっとこう、優しくいってやってもよかったんじゃないかな。 ええと、こう」 ガラッ ハザリア「おぅ、いま帰ったぞ」 マリ「おかえりなさい! 寒かったでしょう」 ハザリア「なんだ、ずいぶん朗らかな出迎えだな。気色悪いぞ」 マリ「そうなんだよな。こういうふうにできたら」 ハザリア「あぁ、寒い寒い! やはりこちらは寒いな。暖房が効いてる部屋はどこだ」ドスドス マリ「エ、あれ? 本物?」 キャリコ「ああ、いけませんよ、坊。上がる前に砂落とさないと。 あ、どうも、すみませんね、マリ嬢」 マリ「キャリコさん?」 キャリコ「これ、お土産です。エジプト名物、微妙にぺちゃんこでパサパサなビッグマックですよ」 ハザリア「なるほど、砂だらけだ。こりゃヒドイな。 おい、シャワーを借りるぞ」 キャリコ「ぃよぉ~し、おじさんがお背中流してあげますよ」 ハザリア「よさんか、気色悪い」 マリ「ちょっと待てよ! お前、なんでいるんだ!」 ハザリア「いちゃいかんか」 マリ「いけなくは・・・・・・、イヤ、ないけど! いけなくはないけど! どこ行ってたんだ、三日も!」 ハザリア「エジプトだが」 マリ「なんでエジプトなんか行ってるんだよ!」 ハザリア「ラーメン屋でテレビを見ていたところ、 エジプトでネコのミイラがオークションにかかっているというのでな。 これはと思い、オッサンを呼びつけて急行した次第だ」 キャリコ「困りますよ。おじさんにだってアフターファイブにはプライベートがあるのに、 あんな気軽に呼びつけられちゃ」 ハザリア「オッサン、ひくほどのテンションで駆けつけてきたではないか」 キャリコ「だって、ネコのミイラですよ?」 マリ「お前、だって、帰るっていってたじゃないか!」 ハザリア「バカバカしい。なぜ俺が貴様の指図通りに動かにゃならんのだ」 キャリコ「あ、ひょっとしてマリ嬢も行きたかったんですか、エジプト」 ハザリア「いい加減断るだろうと思って、声をかけなかったのだが」 マリ「・・・・・・こういうやつだった! そうだよ、こいつ、わりとしょっちゅう学校サボってどっか行っちゃうんだよ。 今までは、わたしも一緒だったから気が付かなかったんだ。 みんなにとってはわりと日常的なことだったんだ。どうりで妙に落ち着いてるわけだよ!」 ハザリア「しかし、ナイルであんな事件に巻き込まれるとはな」 キャリコ「ええ、まさか氷槍メイシスさんの放った銃弾に、あんな意味があったとは」 ハザリア「しかし、フィリオ博士の異常な健康さには、正直ひいたな」 キャリコ「あそこで重震のマグナスさんが男を見せてくれていなかったら、どうなっていたことか」 ハザリア「トーマス氏も男泣きするわけだ」 キャリコ「最終的に、激震のミザル氏に全部持ってかれちゃったのは痛かったですねぇ」 ハザリア「ファーエデンさんがデュプリケートをしてくれていなければ、危なかったな」 マリ「ナイルでなにが起こってたんだよ!?」 ハザリア「で、これがようやっと手に入れたネコのミイラというわけだ」 マリ「ふざけるな! こんなもの、こんなものッ・・・・・・! チョコレートぶっかけて食わせてやる!」 ハザリア「あぁっ、こら、なにをするか貴様ァッ! 返せ、返さんか!」 キャリコ「あ~ぁ、日付変更線行き来したもんだから、日時の感覚がメチャクチャですよ。 いま、なんにちですかぁ? え? 2月14日?」 ハザリア・カイツは目を疑った。 どうと地面を揺らし、巨体がくずれ落ちる。分厚い脂肪が黒く泡立ち、肉の焦げる悪臭 を放っていた。 「馬鹿な、なぜ、貴様が」 重震のマグナスはハザリアを見ると、分厚い唇をわずかに歪めた。笑おうとしたのかも 知れない。 「グフフ・・・、TSUTAYAでの借りは返したぜ、小僧」 「馬鹿な、馬鹿者め! あの程度のことで、貴様は!」 重震のマグナスは答えない。黒ずんだ顔から、見る見るうちに生気が抜け落ちていく。 「マァグナァーッスッ!」 ハザリアは怒りをもって視線を前に放った。 「これはどういうことだ! 答えろ! フィリオ・プレスティ!」 吹き荒れる砂嵐の中で、フィリオ・プレスティはぽつんと佇んでいた。はためく白衣に は、一点の汚れもない。眼鏡の奥で、その目は深い憂いをたたえていた。 「悲しむべきことだ。バルマーの若子よ」 「答えろ! 貴様はなぜ生きている! なぜ死なんのだ! なぜそうも健康なのだ! 答 えろフィリオ・プレスティーっ!」 フィリオがうっすらと唇を開く。 重い金属の音がしたのは、そのときだった。 「重震のマグナス」 トーマス・プラット。常に皮肉な笑みを浮かべている顔が、いまは峻厳に引き締まって いた。拳銃を握りしめる手が、ぶるぶると震えている。砂に吹き付けられる目に、わずか だが光るものが見えた。あれは、涙なのだろうか。 「あいつは、あいつはキンダーハイム時代からのダチだった。許せねぇ。どうあっても許せねぇ」 「君は、気付いていないのだ」 後頭部に拳銃を突き付けられながらも、フィリオは顔色ひとつ変えない。 「君と重震のマグナスがキンダーハイムにいたことなどないと。僕が、この場で生きてい るはずがないと」 「黙りやがれ」 トーマスが拳銃の撃鉄を起こす。 「悲しむべきことだ。その銃口から弾丸が吐き出される様を、僕は見ることができないだろう」 トーマスが叫んだ。 銃声。同時に、湿り気を帯びた音。そしてうめき声。 ぼとと、トーマスが拳銃を取り落とす。だらりと下げた手からは、血が滴り落ちていた。暴発か。 「アン、ラッキー」 トーマスががっくりと崩れ落ちる。 「あなたは気付いていたのですね。あのとき起こった銃声はひとつではなくふたつであっ たこと。そして、私の放ったのが氷の弾丸であったとことを」 氷槍メイシス。怜悧な美貌の持ち主が、静かな足取りで歩く。砂漠のただ中だというの に、その全身からは痛いほどの冷気が放たれていた。 「そこから先は、私が」 小太りの中年男が、バイセクシャルな声を出す。 激震のミザルは、ゆったりとした法衣の腕の中で、ぎゅんぎゅんと回転するドリルを愛 おしそうに撫でていた。 「私は、このドリルに真実を見た」 「真実なんかない! すべてはまやかしだったんだ! ナイルが見せた、蜃気楼だったんだよ!」 ムジカ・ファーエデンが高い声を上げる。 「だからいまこそ、デュプリケート! デュプリケート! デュプリケート!」 そして、ナイル川の中央にまばゆいばかりの光の柱が現れる。 ハザリア「と、まぁ、こういうことが起こっていたわけだ」 マリ「いいから、さっさとそのネコのミイラのチョコレートあえを食べろ!」
https://w.atwiki.jp/bsr_e/pages/2101.html
「もう一つ食えよ」 と、差し出してやれば素直に受け取った。自分も再び舌の上で甘さを味わい、ふ と思う。 「そういやぁよ、毛利」 「何だ」 応えた毛利の表情が、冷めた顔に戻ってしまったことを少し残念に思う。 「俺の愛は伝わったのか?」 茶化すように問いかけてみた。 「なっ、何を言っておる貴様!」 途端に毛利の顔が真っ赤に染まり、激昂した。 「いや、だって今日はチョコレートを渡した相手に愛が伝わるんだろ?」 貰った相手に渡すのはアリなのか、そもそも俺に毛利の愛が伝わっているのか云 々は置いといて。 「バレンタインは女子が恋い慕う男に行うものぞ!貴様から受け取ったとてどう ともならぬわ!」 「……は?」 恋い……慕う?コイツは何を言っているのだろうか。そんなそぶり、今まで一度 も見せられたことはない。 「じゃあ……男は?」 「一月後に、同じく菓子を以てその想いに返答すればよい」 俺は毛利からチョコレートを渡された。それは、つまり、そういうことで良いの だろうか。 「お前、俺のこと好きなのか?それでわざわざ四国まで……」 「な、なななな何故そのような話になるのだ!」 「お前が言っただろ。恋い慕う男に、って」 その瞬間、毛利はこれ以上ないって程赤く染まった。そして、あたふたと言葉を 吐き散らし始めた。 「わ、我はザビー様に申しつけられて、チョコレートが、布教で、長曾我部、信 者の……!」 「お、おい、落ち着け!」 よほど混乱しているのだろう。でてくるのは支離滅裂なことばかり。 散々暴れた後、力が抜けたようにかくんとその場に座り込んだ。 「迂闊な……。我としたことが……」 声がわずかに震えていて、悪いことをした気分になる。 「毛利」 毛利は顔を上げることで応えた。 その瞳は潤み、頬は上気し、眉は苦しげに寄せられている。 男なら、かなりくる表情だ。それに、コイツは元々端正な顔つきをしている。 「お前の気持ちは嬉しいぜ、嘘じゃねぇ」 そっと屈み込んで目の前の華奢で柔らかな体を包み込む。それに硬直することす ら可愛らしく感じる。 「だからそんなに……、ん?」 毛利の体が震えている。ふるふるってもんじゃない。ぶるぶると。 バレンタイン・サンデー4
https://w.atwiki.jp/viptndr/pages/2088.html
25 名前:1/6[] 投稿日:2012/02/25(土) 19 58 44.74 ID TCFZI+1g0 [7/19] バレンタインデーのチョコの渡し方に悩むツンデレ その1 『……あのさ。チョコって、どうやって渡してんの?』 『はい?』 唐突な私の質問に、前の席に座っていた夕実が変な声で聞き返す。 『だからさ。バレンタインデーって、結構みんな男子にチョコ渡したりするでしょ? ど うやって渡してんのかなーって』 『そんなの、人それぞれじゃない? 彼氏とか親しい男子だったら、休み時間や放課後 に直接渡すだろうし、憧れの先輩、みたいに直接面識がなかったりしたら、下駄箱にメッ セージと一緒に入れたり』 思いつくことをとりあえず並べてから、急に夕実は興味深げな顔になって聞いて来た。 『で、何でそんな事聞くの?』 『べ、別に。私はまだ、男子にチョコとか渡した事ないから、みんなどうしてんのかなっ て気になっただけよ』 何となく予想された質問だっただけに、私は既に用意していた答えを夕実に告げる。 すると彼女は、椅子ごと体を回転させて私の方を向き、興味津々な顔で更に質問を続けて来た。 『ウソ? この年になるまで誰にもチョコあげたことないの? ホントに?』 『わ、悪かったわね。そりゃさすがに、幼稚園の頃とかは別よ。あとお父さんも。だけ ど、その……何て言うのかな。こう……10代になってからは一度もあげた事がないとい うか……』 『そっかー。かなちゃんてさ。確かにあんま男子と親しくしてるの見たことないもんね。 男嫌いかと思ってた』 『別に男嫌いって訳じゃないわよ。ただその……別に話すことがないって言うか、単に 仲良くなるきっかけがなかなか無かったし、無理に話したいほど気になる男子もいなかっ たし……』 あどけない顔で失礼な事を言う夕実に対して、私は仏頂面で答えた。確かに私は異性 と接するのが下手くそというか不器用だとは思うけど、面と向かって指摘されると面白くは無い。 『まあねえ……かなちゃんてば気が強くてプライド高いくせに奥手だからね。見た目は 結構イイと思うんだけど、これじゃあなかなか男の子の方からってのも無理だもんね』 『ちょっと夕実。アンタ私に喧嘩売ってるわけ?』 26 名前:2/6[] 投稿日:2012/02/25(土) 19 59 10.95 ID TCFZI+1g0 [8/19] もっともらしく頷きながら、私の欠点をあげつらう夕実に、私は食って掛かった。す ると夕実は慌てて両手と首を一斉に振って否定の仕草をする。 『いやいやいや。事実の羅列っていうか、かなちゃんは多分、男子との会話に慣れてな いから素っ気無い仕草取っちゃうだけだよね。そういうかなちゃんって可愛くて私は好きだよ』 『何かそれ、ちっともフォローになってなくない?』 どうにも、バカにされてる気分が拭えない。しかし、夕実はニッコリと笑顔でそれを否定した。 『そんな事ないって。で、そんな奥手のかなちゃんが、どういう風の吹き回しで、チョ コなんてあげようって考えたのかな?』 『なっ……!? だ、誰もチョコあげるなんて言ってないでしょ? 参考までに聞こう と思っただけよ。あくまで参考』 探るような夕実の言葉に、私は全力で否定する。まさかこの私が心を動かされた男子 がいるなんて、誰にも知られる訳には行かない。 『ふ~ん。参考に、ねえ?』 いかにも疑わしげな目付きで私を見る夕実に、私は仏頂面で念を押した。 『そうよ。参考までだってば。ていうか、何となく知りたくなったから…… 夕実はさ。 確か毎年あげてる彼氏いたよね? ナオキ君だっけ。C組の』 『まだ付き合ってる訳じゃないから、彼氏じゃないよ。キスもしてないし。幼馴染で仲 良しなのは……まあ、確かなんだけどね』 ため息混じりに頷きつつ、夕実が答える。 『でも、しょっちゅう二人で映画見たりショッピング行ったりディ○ニーランドとか行っ たりしてるんでしょ? ほとんど彼氏みたいなもんじゃない。ね? いつもどうやって 渡してんの?』 あまりこっちの事を詮索されないように、私はひたすら会話を押し続けた。夕実は、 あごに手を当てて、考え込みながら答える。 『んー……でも私のはあんまり当てにならないかなぁ。ナオキ君の部屋に行って、はい これって渡すの。かなちゃん、出来る?』 『無理無理無理!! そんなの絶対無理!! だってだってそんな、まだそんな親しく もないのに家に遊びに行くなんてそんなの出来っこな――』 反射的に全力で否定していると、夕実が興味深げにジーッと私を見つめているのに気 が付いた。慌てて咳払いして、私は平静を取り繕う。 27 名前:3/6[] 投稿日:2012/02/25(土) 19 59 37.84 ID TCFZI+1g0 [9/19] 『と、今のは例え話だからね。私は別にあげる男子なんていないんだから』 『で、誰にあげるの?』 『だーかーらあっ!!』 ニコニコ顔で聞いてくる夕実に、私は思わず怒鳴り声を上げた。しかし、思いっきり 墓穴を掘ってしまった私に怯む様子を全く見せず、夕実は身を乗り出して囁くように私 に話を持ち掛けて来る。 『誰にも言わないからさ。親友の誼で教えてよ。あげる人がいないのに参考まで……っ て言われてもなかなかリアリティのある実例出せないけどさ。相手がいるんだったら、 状況に応じてアドバイスしてあげられるから。ね?』 その言葉に、私の心は揺らいだ。誰とは言わなければ、夕実の事だしそれ以上詮索し てくる事もないのではないだろうか。しかしやはり、いると言ってしまうのは恥ずかし い。そこで私は、妥協案を提示する事にした。 『うー…… じゃ、じゃあその……仮定の話じゃ、ダメ? 仮にあげる人がいたとしてっ ていうか、いるっていう前提で話をする、っていう感じで』 しかし、夕実はこれには乗って来なかった。 『ダメダメ。仮定だって分かっちゃったら面白くないもん。かなちゃんが嘘でもいるっ て言ってくれれば、私も本気出すけど。で、いるんでしょ? あげる人』 私の提案を退けつつ、夕実は逃げ道を残してくれた。嘘でもっていう事は、あくまで 真実味を持たせろっている忠告なんだろう。よし。ここは夕実の提案に乗ってやろうじゃ ないかと私は決めた。 『……嘘でもいいって言うんなら……そ、そのう……一応、候補は、その……いないわ けでもないけど……』 嘘だって言い訳しても、とてつもなく恥ずかしい。しかし、ここで恥ずかしがったら、 却ってホントだと喧伝しているようなものだ。私は逃げ出したくなるような気持ちを必 死で抑え込んだ。 『ホントに? 候補って誰だれ? 教えてよ。ね?』 嘘だって言うのに、夕実は身を乗り出して聞いて来た。私は思わず身を引きつつ、手 でガードしながら答える。 『誰って、そこまで教えられるわけないでしょ? つーかその……嘘なんだから、誰と かまで考えてないし……』 28 名前:4/6[] 投稿日:2012/02/25(土) 20 00 00.05 ID TCFZI+1g0 [10/19] うん。これは自然だと我ながら自画自賛する。そう。これは嘘なんだから、思いつか なくて当然。だというのに、夕実はさらに顔を近付けると、ニコッと微笑んで言った 『じゃあ、当ててあげよっか?』 そして、私の耳元に唇を近付け、囁いた。 『別府君……でしょ』 驚きの余り、私は思わずガタンと椅子を鳴らして夕実から体を遠ざけた。カーッと全 身に熱が回り、考える間もなく私は全力で否定した。 『なっ……ななななな、何でそうなるのよっ!! 何で私がその……アイツなんかにっ…… チョコを、その……あげなくちゃいけないのよ!! 意味分かんない!!』 しかし夕実は、そんな私を黙って見つめてから、クスッと笑ってみせる。 『アハッ。どうやら正解だったみたい……だね』 『違うって言ってんじゃないの!! 何でそれが正解になんのよ!!』 『だって、私の予想を聞いた途端、すっごく驚いた顔してたし、すぐに顔が真っ赤になっ ちゃったし。かなちゃんてば、すぐに顔に出るから分かりやすいよね』 『ぐががががああああっ……』 私は思わずみっともなく呻き声を上げながら頭を抱えた。そんなに分かりやすかった か私は。だとしたら、嘘だなんて言い聞かせた意味ゼロじゃない。 『そんなに恥ずかしがる事じゃないと思うけどなあ。私は結構いいと思うけどな。別府君』 『そんな事ないわよっ!! 大体なんでアイツだなんて思ったのよ。意味分かんないっ!!』 興奮する私を、夕実はまあまあと手で抑える仕草をする。 『だって、かなちゃんが仲良くしゃべる男子って、別府君くらいじゃない? あと他に 思いつかないもん』 『アイツとしゃべったのなんて、一緒に文化祭実行委員やってたからだけじゃない。で、 その、そういう縁からかアイツ、気安くノート借りに来たりとかしてるだけで……仲良 いって訳じゃないわよ』 ブスッと不満タラタラな顔で私は言った。そう。別に仲良い訳じゃない。その原因は 私の方にある訳で、声掛けられてもロクに会話出来なくて、無愛想な態度しか取れない から。だからせめてチョコでもあげて、想いをアピールしたかったのだ。 『でも、多分一番しゃべってる事は間違いないよね? じゃあ、別府君でいいじゃん。 仮の話なんだから』 29 名前:5/6[] 投稿日:2012/02/25(土) 20 00 21.41 ID TCFZI+1g0 [11/19] 仮の話と言われて、私は言い返す言葉を失ってしまった。そう言われると、ムキになっ て拒否すれば、却って変な勘繰りをされかねない。かといって、夕実の嬉しそうな笑顔 を見ていると、どうも仮で言っているような気がしないのも事実だった。 『分かったわよ。じゃあ、その……別府でいいとして、夕実ならどうやって渡す?』 渋々の体で折れつつ、私は夕実に渡し方を質問した。答えはいともあっさりしたものだった。 『どうやってって、普通に渡すよ。教室で。はい、これバレンタインのチョコ。文化祭 の時、お世話になったからって』 『教室ででなんて渡せるわけないじゃない!! そんなの、私が別府の事が好きだって みんなに勘違いされたらどうすんのよ』 『勘違いって、大げさに考え過ぎだってば。バレンタインデーなんだし、みんなちょっ と仲の良い男子にはチョコあげたりしてるんだからさ。そんな、人の事なんて気にしないって』 夕実は笑ってそう言うが、どう考えても人前でアイツにチョコを渡すなんて出来る訳無かった。 『うーん…… もっと、他の方法無い? もうちょっと目立たないの』 答えはすぐに返って来た。 『目立たないんだったら、彼の家に行って渡せば? 私はナオキ君にはそうしてるけど』 『いっ……いっいっいっ……家っ!?』 カアッと顔が火照る。想像するだけで恥ずかしくなるシチュエーションに、私はブン ブンと激しく首を横に振った。 『無理無理無理無理!! そんなの絶対無理だってば!! だって、そんな……そのっ…… 男の子の家まで行ってチョコなんて渡したら、今度はその……アッ……アイツにバレちゃ…… じゃなくて、勘違いされちゃうかもしれないじゃない!!』 思わず興奮して前のめりになって叫ぶ私に、夕実は咄嗟にノートで顔を防御する。 『うーん…… 確かに男子としては、期待しちゃうだろうね。でもいっそ、仲をグッと 進めたいんだったら、その方が良いかもよ?』 『誰も仲を進めたいなんて言ってない!!』 既に私は、仮定の話なんて事は完全に頭からすっ飛んでいた。別府の家までわざわざ 出かけて行ってチョコを渡すなんて、そんなの好きだって告白するも同然だ。 『もっとこう、恥ずかしくない方法ってないの? 誰にも知られないで渡すだけっての』 なりふり構わず、無茶な要求をする私に、夕実は難しい顔をして考え込む。 30 名前:6/6[] 投稿日:2012/02/25(土) 20 01 05.13 ID TCFZI+1g0 [12/19] 『うーん。例えばさ。朝早く学校来て、机の引き出しの中に入れるとか、下駄箱の中に 入れるとかもあるけど、それって却って男子からすれば期待しちゃうんじゃないかな あ? 私はやっぱり、教室で普通に渡すのが一番だと思うけどね。義理だったら』 『だからそれは無理だってば!!』 夕実の勧めは否定しつつ、私は考えた。教室の机や下駄箱の中に入れるのは、誰かに 見られれば下手な噂を広めてしまうが、朝早くだったら見られなくて済むかもしれない し、何より顔を合わせなくて済む。アイツには後で、義理だってちゃんと断っておけば済む話だ。 『ま、ゆっくり考えなよ。私がアドバイス出来るのはこのくらいだから、後はかなちゃ ん次第だからね。もちろん、本当にあげるなら、の話だけど』 しかし私は、夕実の言葉も聞かずに、自分の考えに没頭していたのだった。 続く 49 名前:1/4[] 投稿日:2012/02/25(土) 21 33 04.67 ID TCFZI+1g0 [16/19] バレンタインデーのチョコの渡し方に悩むツンデレ その2 『……ぬかったわ』 昇降口で、私は頭を抱えていた。最初は机の引き出しに入れておこうかと思ったのだ が、教室に行ったら既に委員長が登校して来ていた。しかも、彼女の席は、おあつらえ 向きに別府の隣だから、絶対バレてしまう。早々に諦めて、下駄箱に入れる方針に切り 替えたのだが…… 『まさか、同じこと考えてる子が結構いるなんて、思わなかったわ……』 決して数が多い訳ではないが、登校してくる人と合わせると、どうしても無人になっ てくれない。いや、他のクラスの人に見られても知り合いじゃなければいいのだが、万 が一その人が別府の知り合いとかで、噂になったりしたらとか、余計な事を考えている うちに、時間だけが過ぎ去っていた。 『わわっ!!』 見知った女子の顔が見えて、私は思わず物陰に隠れてしまった。その子が友達と談笑 しながら教室の方に向かって行くのを確認しつつ、私はため息を吐く。 ――こんなんじゃ……いつまで経っても下駄箱の中に入れられないじゃない…… さっ きより人増えて来たような気がするし…… どんどん、手遅れになっている気がして、私は苛立って来た。気ばかり急いて、全く 実行に移せないなんて、情けなくてしょうがない。 ――あそこにいる人が行ったら……そうしたら、入れに行こう。クラスの誰かが来たら、 その時だけ適当にやり過ごして。うん。そうしよう。 たまたま目に留まった生徒の一人を、区切りに決める。そうやって無理矢理にでも決 断を強いて私は、物陰からその生徒が通り過ぎるのを待つ。多分、今、上履きを取り出 した頃。そして、靴を履き替えて、外履きの靴を仕舞って―― 『あれ?』 予想通りのタイミングにその生徒が出て来ないことに、私は疑問に思う。もしかして、 気付かないうちに通り過ぎたかも、と思った時に、友達と一緒にその生徒が通り過ぎて 行く。たまたま行き会って、もう一人の生徒が靴を履き替えるまで待っていたから、タ イムラグがあったのだろう。何れにしても、もう目安にしていた生徒は行ってしまった。 ――よし。じゃあ……行かないと…… 50 名前:2/4[] 投稿日:2012/02/25(土) 21 33 38.91 ID TCFZI+1g0 [17/19] 臆病な気持ちを奮い立たせて、私はパッと物陰から飛び出した。 「おわっ!?」 『えっ!?』 出た途端、視界が遮られる。同時に、驚いた声がして、私も同じように声を上げた。 「びっくりしたぁ。いきなり物陰から出て来るんだもんな。もう少しでぶつかるトコだったぜ」 聞き覚えのある声に顔を上げる。そして、その顔を見た途端、私は驚いて声を上げた。 『んなっ……!? べ、別府じゃない!! 何でこんなトコにいんのよ!!』 「へ……? って、椎水かよ。いや、何でもクソも、ここってウチのクラスの下駄箱じゃん」 戸惑いつつ答える彼に、私はウッと口ごもる。確かに、自分の下駄箱で靴を履き替え ただけなのに、意外そうに聞かれれば戸惑うだろう。しかし、言った以上は私も引っ込 むわけには行かない。 『それはそうだけど……だって、別府っていつも時間ギリギリにならないと来ないじゃ ない。だっ……だからその、意外に思ったわけで……』 「いや。今朝はちょっと約束あったから。椎水こそ、その……こんなトコでどうしたんだよ?」 そう聞かれて、私は返答に窮した。頭が真っ白になってしまい、何の言葉も浮かんで来ない。 「って…… な、何だよ、おい……?」 別府が怪訝そうな顔で私の様子を窺って来る。焦った私は、ついつい怒鳴り返してしまった。 『なっ…… 何でもないわよっ!! いちいち人の行動詮索すんなっ!! このバカ!!』 パッと身を翻すと、私はそのまま一目散に教室へと駆け戻ってしまった。 『あー……』 午前中の授業も、何だかうわの空で過ごしてしまった。お昼も食べたか食べてないか 分かんない様な状況で、今私は、こうして自己嫌悪に苛まれつつ、自分の机に突っ伏している。 『どしたのホントに? 今日一日、ボケーッとしちゃって、かなちゃんずっとおかしいよ?』 前の席の夕実が、心配して様子を窺って来る。チラリと一瞥しただけで、私はすぐに 机に突っ伏してしまう。 『……何でもないってば。ほっといて……』 51 名前:3/4[] 投稿日:2012/02/25(土) 21 34 02.57 ID TCFZI+1g0 [18/19] 今朝の自分の態度を思い出すと、何というか、ダメ過ぎて死にたくなる。 ――なんで……あんな風に罵っちゃったんだろ…… ビックリしたとはいえ、何にも悪い事してない別府にバカだなんて、向こうも気を悪 くしたに決まってる。これじゃあ、チョコを仮に渡せても、きっと喜ばれないだろう。 『大丈夫だってば。まだチャンスはあるって』 『何の話よっ!!』 訳知り顔の夕実に思わず突っ込んでしまうが、夕実はニコニコと笑っているだけだっ た。変に弁解すると、却ってドツボに嵌まるだけだと悟り、私は諦めて再び机に突っ伏 した。その時だった。 『別府せんぱーいっ!!』 教室の入り口から聞こえてきた黄色い声に、私はガバッと体を起こした。同時に、嫌 な予感を全身で感じつつ、別府の方を見る。するとアイツは、他の男子にからかわれな がら、入り口に立つ女子の方に歩いて行った。 ――嘘……? まさか…… ギュッと心臓が縮み上がる。違う用事であって欲しいと私は心の中で訴え掛ける。し かし、私の視線の先で、それはあっさりと裏切られた。 『……の……これ……から、別府先輩に……』 教室の喧騒の中、途切れ途切れに聞こえる女子の声と、別府の照れたような顔。そし て、差し出されたのは綺麗な金色のリボンで結ばれたラッピングされたオシャレな柄の 袋。嬉しそうな女の子達の顔とはしゃぐ声。 『……何だ……いるんじゃん。アイツも……』 最後まで見ることなく、私はまた机に顔を伏せた。右手で左胸を強く押さえる。 ――何だこの気持ち…… 絶望と、諦めと、悔しさと、他にもいろんな負の感情が組み合わさったような、そん な感覚。私は、ギュッと下唇を歯で噛んだ。 ――落ち込むな、私…… こんな程度の事で……落ち込むな…… 何とか平静を保とうと、私は自分の心に必死に言い聞かせたのだった。 52 名前:4/4[] 投稿日:2012/02/25(土) 21 35 23.47 ID TCFZI+1g0 [19/19] 『そう落ち込まないで、かなちゃん』 『……何の話よ?』 放課後。帰り支度をしている私に、夕実が心配そうに様子を窺ってきた。 『別府君が他の子からチョコ貰ってショック受けるのは分かるけどさ。まだ彼女と決まっ たわけじゃないし』 『関係ないわよ。アイツが誰からチョコ貰おうが』 勝手に私が落ち込んでいる理由まで決め付けて、慰めようとする夕実に腹が立って、 私は突き放すように言った。もっとも、その推測はほぼ百パーセント間違ってはいない わけだが、それでも気分良いわけがない。 『かなちゃん。一緒に帰ろうよ。もし良かったらミスド寄ってこ? 今日は私がドーナ ツご馳走してあげるから』 その誘いには、僅かに心動かされるものがあったが、それでもやはり、憂鬱な気分の 方が打ち勝ってしまう。 『悪いけど、今日はそんな気分じゃないの。何か疲れちゃったし、帰って寝るわ』 どうせ、夕実とお茶したら、バレンタインデーの話題になるに決まってる。その推測 が、最後の未練も軽く吹き飛ばした。私はバッグを持ってさっさと立ち上がる。 『あ、待ってかなちゃん。一緒に帰ろうよ~っ!!』 慌てて帰り支度を始める夕実を尻目に教室を出る。一度立ち止まって振り返り、ため 息をついてから、私は夕実が追いついて来れるよう、ゆっくりと歩き出したのだった。 続く