約 845,521 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/372.html
前ページ次ページゼロのアトリエ 心配そうに二人を見守るヴェルダンデ。 そこから正三角形を描くように対峙するギーシュと、ヴィオラート。 ルイズがヴェルダンデの鳴き声に気付いた時には、既に周りを生徒達が取り囲んでいた。 「ヴィオラート!」 ルイズの声に反応し、人垣が通路を作る。 「何で、あんた決闘なんか…ギーシュも、女の子と決闘なんて何考えてんの!?」 「ミス・ヴァリエール。男には絶対に引けない時ってものがあるのさ。」 「ルイズちゃん…ごめんね。あたし、努力しないで後悔するのは嫌だから。」 二人はそれだけ答えると、ルイズの到着を合図にしていたかのように動き始める。 「ああもう! 使い魔のくせに、ちっとも私の思うとおりに動かないんだから!」 ルイズは、諦めの言葉を吐いた。 ヴィオラートなら何とかするだろう、そう思ったから。 ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師7~ 「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね?」 創り出した『ワルキューレ』の後方で、自信満々に宣言するギーシュ。 だが、ヴィオラートの反応はギーシュの、いや集まったギャラリー全員にとって予想外のものだった。 「かわいいゴーレムだね。」 「なっ…!! このうえ、僕のワルキューレを愚弄するか!」 かわいいゴーレムと言い放ったヴィオラートの言葉に、周囲の空気が変わる。 数々の石人ゴーレムや、鉄人ゴーレム…金剛ゴーレムまで屠ってきたヴィオラートにしてみれば、実に自然な、むしろ好意的な評価であったのだが…ギーシュ達が、その事実を知るよしもない。 「かわいそうだが、痛い目にあわないと理解できない性分のようだね。」 ヴィオラートに向けてそう言い放つと、ギーシュはワルキューレを突進させる。 「あたしは、錬金術師だから。」 ヴィオラートはバッグからトゲだらけの何かを取り出し、ワルキューレに狙いを定める。 「錬金術師の戦いを、見せてあげるね。」 ヴィオラートの額のルーンが、輝きを放ち始めていた。 所変わって、ここは学院長室。コルベールの長い長い説明が、ようやく山場を迎えたようだ。 「つまり、あの使い魔は、始祖ブリミルの…何じゃったかな?」 「『ミョズニトニルン』です! このルーンはミョズニトニルンの証に他なりません!」 コルベールは、禿頭に光る汗を拭きながらまくし立てた。 「ふむ、確かにルーンは同じじゃ。しかし、それだけで決め付けるのも早計かもしれん。」 「それは…そうですが。」 コルベールもようやくオスマンとの温度差を感じたのか、学院長室に微妙な空気が流れる。 ちょうどその時、ドアがノックされた。 「誰じゃ?」 「私です。オールド・オスマン。」 扉の向こうから、ミス・ロングビルの声が聞こえてきた。 「ヴェストリの広場で、決闘している生徒がいるようです。」 「全く、暇な貴族ほど性質の悪い生き物はおらんな。で、誰が暴れておるんだね。」 「一人は、ギーシュ・ド・グラモン。」 「あのバカ息子か。親に似て女好きな奴じゃ、どうせ女の取り合いじゃろ。相手は誰じゃ?」 「それが、メイジではなく…ミス・ヴァリエールの使い魔だという話で…」 オスマン氏とコルベールは顔を見合わせた。 「教師達は、決闘を止める為に『眠りの鐘』の使用許可を求めています。」 オスマン氏の目が、鷹の様に鋭く光った。 「ふん、子供のけんかじゃ。放っておけと伝えよ。」 「わかりました」 ミス・ロングビルが去っていく足音が聞こえた。 「オールド・オスマン。」 「うむ。」 オスマン氏が杖を振ると、壁の鏡にヴェストリ広場の様子が映し出された。 ヴィオラートは驚いていた。ウニを持った瞬間、ウニの成分・能力・産地までもが手に取るように判った。 そしてまるで、ウニが体の一部、手の延長にでもなったかのような一体感。 「うにー!!」 ヴィオラートの叫びが、ヴェストリの広場に響き渡った。 (栗だ) (栗だよな) (くり。) (それは栗だ) (どう見ても栗だ) (どちらかといえば栗だな) その瞬間、ギャラリーの心が一つになる。 ウニと名づけられた何かが、迫るワルキューレに接触したその瞬間――― ウニは、ワルキューレを巻き込んで大爆発し、ワルキューレごと粉みじんになった。 (ウニって、こんなに強かったっけ…) ヴィオラートは、額のルーンに関係あるのかな? と、ほんの少し考えを巡らせた。 「ば、爆弾!? どこからそんなものを手に入れ…いや、決闘に爆弾を使うなど、卑怯…」 ギーシュの発言は、そこで止まった。ヴィオラートがほんの少し、真剣な顔に変わったから。 「言ったでしょ?あたしは錬金術師。これはあたしが自分のために、自分の力で用意したんだよ?」 ヴィオラートが一歩前に出る。ギーシュが一歩下がる。 「ギーシュくんも、冷静になって、ちゃんとお話できれば、誤解だってわかると思うんだけどなあ。」 ヴィオラートは歩を止め、あくまでも穏やかな笑顔でギーシュに語りかける。努力のあとは認められるが、意識して穏やかな笑顔を作っているというのがまるわかりな、威圧感たっぷりの笑顔で。 「ね? お話を聞いて?」 「く、来るな!」 ギーシュは慌てて薔薇を振る。花びらが舞い、新たなゴーレムが六体あらわれる。 「どうして、わかってくれないのかな…」 ヴィオラートは哀しげにそう呟き、バッグの中から渦巻状のハーモニカを取り出す。 「あんまりはりきりすぎると、こうなるんだよ…ギーシュくん。」 額のルーンが輝きを増し、渦巻状のハーモニカが不思議な旋律を奏でる。 「あ…れ…? こんな、ちかりゃが、はいらにゃ…」 まるで心そのものを削られたかのように、ギーシュは脱力し、地面に倒れ伏す。 広場に、歓声が轟いた。 オスマン氏とコルベールは、遠見の鏡で一部始終を見終えると、顔を見合わせた。 「オールド・オスマン。」 「うむ」 「あの平民、勝ってしまいましたが。」 「うむ」 「見ましたよね!? 不思議な道具を使いこなす、これぞミョズニトニルンの証ではありませんか!」 「うむむ…」 「オールド・オスマン! 早速王室に報告して、指示を仰がないことには…」 「それには及ばん」 オスマン氏は、重々しく頷いた。白いひげが、厳しく揺れた。 「どうしてですか!? これは世紀の大発見ですよ? 現代に蘇ったミョズニトニルン!」 「ミスタ・コルベール。大発見だからこそ、慎重にならねばならん。」 「はあ」 「王室のボンクラどもに過分の力を与えて、どうしようというのだね? 戦争でもしようと言うのか?」 「そ、それは…」 「そしてまあ、間違いの可能性もまだ無いとはいえん。報告するにしても、拙速に過ぎる。」 「ははあ。学院長の深謀遠慮には恐れ入ります。」 「この件はわしが預かる。他言は無用じゃ。」 「は、はい! かしこまりました!」 オスマン氏は杖を握ると窓際へと向かった。歴史の彼方へと、思いを馳せる。 「伝説の使い魔『ミョズニトニルン』か。どんな姿をしておったのかのう…」 夢見るように、そう呟いた。 前ページ次ページゼロのアトリエ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/639.html
前ページ次ページゼロのアトリエ ラ・ロシェールを挟む峡谷の上。険しい岩山のわずかな平地に人影がある。 フーケが、大の字になって倒れていた。 「あの女どころか…あんなガキどもにまでやられちまったよ!くそっ!」 もはや満身創痍、体中傷だらけではあるが致命傷は一つも食らっていない。 飛ばされている途中に『フライ』をかけて『アイス・ストーム』の向かう方向へ飛んだ。 簡単に言ってしまえば、死んだフリをしてやり過ごしたのだ。 「私にトライアングル二人の足止めさせといて、自分は愛しいルイズ様の騎士役だって?ハッ!」 あの女とガキどもは当然として、あまりに自己中心的な仮面の男に対しても怒りがこみ上げてくる。 仮面の男に限らず、組織そのものがフーケには肌に合わなかった。 フーケは自己の判断で自分の気に入らない貴族を襲ってきたし、それを変えるつもりも無かったのだが、 ご立派なお題目を掲げたレコン・キスタは勝手な行動を許してくれない。 せいぜい手駒として役に立てとばかりに、休みなしに勝手な命令を伝えてくるだけだ。 少し休もう。いい機会だ。自分が『アイス・ストーム』に飛ばされる姿は何人もが目撃している。 杖を握れぬほどの怪我を負ったので静養していた、とでも言えば何とかなるし、 気が向かなければこのまま消えるのもいいかも知れない。 「誰も知らない所で…あの娘の所にでも行こうかねえ」 フーケは懐の宝石を確認し、ゆっくりと、助かった事を確認するかのように立ち上がる。 あいつらがいなくなった後、次の船あたりでこっそりアルビオンに向かおうと計画を立てた。 ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師20~ その木の中は吹き抜けになっていて、各枝に通じる階段が所狭しと並んでいた。 ワルドたちは目当ての階段を見つけて駆け上る。 木の階段がきしむ音を聞きながら、途中の踊り場に差し掛かった時。 ヴィオラートは、きしむ音にもう一つの足音が混じっている事に気付く。 さっと振り向くと、黒い影が翻りルイズの背後に回る。 先ほどフーケのゴーレムに乗っていた、白い仮面の男だった。 (え?) その男には見覚えがあった。見覚えのある男が仮面を被っていた。 だって、髪の色も、気取った仕草も、走る姿だって同じなのだから。 ヴィオラートは杖を向けると同時にルイズに怒鳴った。 「ルイズちゃん!」 ルイズが振り向く。一瞬で男はルイズを抱え上げた。 (まさか…まさか!) 男は軽業師のようにジャンプする。そのまま地面に落下するような動きだった。 即座にワルドが杖を振り、風の槌に打ち据えられた仮面の男は思わずルイズから手を離す。 ワルドは仮面の男を無視し、ルイズに向かって急降下していく。 ヴィオラートは一つの実験を試みる。 あるものが他のあるものと同一であるかどうか、同一条件で試し実証する。 対象は仮面の男、条件は杖の火球。 「えーい!」 仮面の男に向かって飛んだ火球は、予想通り… 風の魔法に散らされて、逆にヴィオラートを襲う。 だが、ヴィオラートは今度は額のルーンを光らせ、ほんのわずかデルフリンガーに顔を出させた。 「やいこら、またおめえはこんな時だけ急に―――」 背中のデルフリンガーに火球の全てが吸い込まれる。 「どぅあちぃぃぃぃ!!」 デルフリンガーの付け根あたりが黒いすすで覆われ、 その間に、ルイズを受け止めたワルドが『フライ』の呪文で階段に戻ってきた。 そして、仮面の男にもう一度『エア・ハンマー』を叩きつける。 仮面の男は力を失い、地面に向かって落下していった。 しばらく経っても、戻ってこなかった。 階段を駆け上った先は、一本の枝が伸びていた。 その枝に沿って一艘の船が停泊している。 ワルドたちが船上に現れると、甲板で寝込んでいた船員が起き上がった。 「なんでえ、おめえら!」 「船長はいるか?」 「寝てるぜ。用があるなら、明日の朝改めて来な。」 船員は、酒の瓶を啜りながらそう言い放った。 「貴族に二度同じことを言わせる気か?僕は船長を呼べと言ったんだ。」 ワルドは杖を抜き、船員に照準を合わせて脅す。 「き、貴族!」 船員は立ち上がると、船長室にすっ飛んでいった。 「何の御用ですかな?」 船長はうさんくさげにワルドを見つめる。 「女王陛下の魔法衛士隊隊長、ワルド子爵だ。」 「これはこれは。して、当船へどういったご用向きで…」 相手が身分の高い貴族と知って、船長は急に相好を崩す。 「アルビオンへ。今すぐ出航してもらいたい。」 「無茶を!」 「無茶でもだ。僕の『風』も力を貸す。僕は風のスクウェアだ。」 船長と船員は顔を見合わせる。 「ならば結構で。料金は弾んでもらいますが…」 「積荷全てと同額出そう。」 商談は成立し、船長は矢継ぎ早に命令を下す。 「出港だ!もやいを放て!帆を打て!」 帆が風を受けてぶわっと張り詰め、船が動き出す。 「アルビオンにはいつ着く?」 ワルドが尋ねると、 「明日の昼過ぎには、スカボローの港に到着しまさあ」 と船長が答えた。 ヴィオラートは舷側に乗り出し、地面を見た。『桟橋』大樹の枝の隙間に見える、 ラ・ロシェールの明かりがぐんぐん遠くなってゆく。結構な速さのようだ。 小さくなる桟橋を見つめながら、ヴィオラートは深い思索の海に沈みこむ。 ワルドはルイズにとっての敵だ。それは間違いない。 しかし、それをルイズに納得させるだけの材料は残念ながらない。 ヴィオラートが見つけた根拠は全て主観で、あるのは経験則による自己流の判断だけ。 例えそれが正しくとも、気のせいと言われれば返す言葉はない。 それにルイズは今、信じたいものを信じようとしている。そんな時の人間に届く言葉は、ない。 もしかしたら、最悪の状況でワルドと対峙することになるかもしれない。 そこで、あるいはその前に何としてもルイズの目を覚ます。 ヴィオラートはひそかに覚悟を決めて、前を向いた。 その隣にはルイズが立ち、同じように地面の方をじっと見つめている。 二人は一言も発せず、遠ざかる地面を同じように眺め続ける。 そんな二人の元に、ワルドが近寄ってきた。 「船長の話では、ニューカッスル付近に陣を配置した王軍は、攻囲されて苦戦中のようだ。」 ルイズがはっとした顔になった。 「ウェールズ皇太子は?」 ワルドは首を振った。 「わからん。生きてはいるようだが…」 「どうやって…連絡を取ればいいかしら。」 「…陣中突破しかあるまいな。」 ルイズは緊張した顔で頷いた。それから尋ねる。 「そういえば。あなたのグリフォンはどうしたの?」 ワルドは微笑んで、口笛を吹いた。グリフォンは甲板に着地し、船員達を驚かせる。 ヴィオラートは舷側に座り込んだ。とりあえず今は機会を待つしかない。 延々と続けられているルイズとワルドの会話を子守唄に目を閉じる。 どうやらまた危険な事になりそうだ、そんな予感を胸中に抱えて。 前ページ次ページゼロのアトリエ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/430.html
前ページ次ページゼロのアトリエ 二つの月に照らされた、夜のトリステイン魔法学院。 その光が、宝物庫の外壁を歩く人影を浮かび上がらせる。 「ふん。物理攻撃が弱点、とはよく言ったものだわ。」 強力な『錬金』で全てを土くれに変える、というその手口から 土くれのフーケと名づけられた、メイジにして大怪盗。 「かかってるのは固定化だけみたいだけど、この厚さは私のゴーレムでも無理ね…」 苦労して手に入れた情報も、決定的なものではなかったということか。 「さて、一体どうしたものかね。」 考えながら外壁を降りるフーケ。 瞬きする間に、土くれのフーケはその存在を消し去っていた。 ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師10~ 錬金術の勉強を始めたルイズ達は、心持ち以前より良好な関係になっていた。 「何をしてるの?」 「あ、ヴァリエール。いや、ちょっと魔法の練習をね。」 ほんの少し、魔法に関するものごとを除いては、だが。 「…」 たしかにルイズに対して侮蔑の感情をあらわにすることはなくなったが、そのかわり、 キュルケの言葉にあわれみのようなものが混じるようになったことが気に入らない。 実に気に入らない。 「私もやる。」 「でも。」 「やるって言ったでしょ。」 ルイズの固い決意を読み取ったキュルケは、諦めたように両手を腰に当てる。 「しょーがないわねえ。じゃ、とりあえず空にファイヤーボールでも飛ばしてみる?」 「…やるわ。」 杖を構え、ファイヤーボールのルーンをよどみなく詠唱するルイズ。 「ヴァリエール。強力なファイヤーボールが飛ぶ所を心に強く思い浮かべるのよ。」 今度こそ。何百度目かのルイズ渾身のファイヤーボールを天に向かって放った、のだが。 なぜか、脇の宝物庫が大爆発を起こす。 ルイズ達の周りに重苦しい空気が漂う。 中庭の植え込みで、その一部始終を見ていた者がいる。フーケだ。 ルイズの魔法で宝物庫の壁にヒビが入った。一体あの呪文は何だろうか? 疑問が浮かぶが、ともあれ今がチャンス。 フーケは長い詠唱を完成させ、地面に向けて杖を振る。 轟音を立てて、巨大なゴーレムが立ち上がった。 「ゴーレム!?」 最初に気付いたのはルイズ。 ゴーレムは一目散に宝物庫へ向かい、巨大な拳で宝物庫を攻撃する。 「ちょ、ちょっと、何これ!?」 キュルケが思わず頓狂な声を上げると、ゴーレムがこちらの頭上に足を持ち上げた。 間一髪、タバサの使い魔、ウィンドドラゴンが滑り込み、 キュルケ、ルイズ、最後にタバサをつかんで、ゴーレムと足の間をすり抜ける。 「ふふ、頑張ってね…」 既に目的は達したのか、フーケは何かのルーンを呟くと、どこかに飛び去った。 (…ラート、ヴィオラート…!) 「ルイズちゃん?」 溶鉱炉の内部で仕上げに取り掛かっていたヴィオラートは、 ルイズの声を聞いた気がして我に返る。ルーンが光り、 ゴーレムに襲われるルイズ、という光景が眼前に飛び込んできた。 「ルイズちゃん!」 フライングボードに飛び乗り、宝物庫に急行する。 すぐに、巨大な土のゴーレムを確認したヴィオラートは三叉の音叉を取り出し、 フライングボードの勢いを生かしたまま、ゴーレムの頭に思い切り撃ちつけた。 あたりに澄み切った重低音がこだまする。 三叉音叉が、ヴィオラートの額のルーンと同じ色の輝きに包まれ、光が溢れ… 土のゴーレムは跡形も無く崩れ去った。 「大丈夫だった?ルイズちゃん!」 そう言ったヴィオラートの顔は汚れ放題で、服は土まみれ。 でもルイズはそんなヴィオラートの姿を認めた瞬間、何かが溢れそうだったので かわりに、微笑んだ。 翌朝。魔法学院では、朝から蜂の巣をつついたような騒ぎが続いていた。 巨大なゴーレムで壁を破壊する、などという派手な方法で「破壊の像」が盗まれたのだ。当然である。 破壊された宝物庫の周りには学院中の教師が集まりざわめいていた。 壁には、土くれのフーケの犯行声明が描かれている。 「破壊の像、確かに領収いたしました。土くれのフーケ。」 教師達は好き勝手に責任を擦り合っているようだ。 「土くれのフーケ!ついに我が学院にも現れたか!」 「衛兵は一体何をしていたんだね!」」 「平民など当てにならん!それより当直の貴族はどうしていたんだね」 「当直など、誰も真面目にやってなかったではないか!」 (なんで、こんなみっともない貴族ばかりなの!ヴィオラートに、貴族のこんな姿を見せたくない…) ルイズはふがいない貴族の実態に憤りを感じ、せめて自分だけは貴族たらんと決意を新たにする。 「さて」 教師達が集まりきるのを待っていたのか、オスマン氏が悠々と姿をあらわした。 「犯行の現場を見ていたというのは、君達かね?」 「は、はい!」 ルイズ、キュルケ、タバサ。そしてヴィオラート。 「ふむ、君達か。」 オスマン氏は興味深そうにヴィオラートを見つめた。 「詳しく説明したまえ。」 ルイズが進み出て、見たままを述べる。 「あの、大きなゴーレムが、ここの壁を壊して…たぶん「破壊の像」を、盗み出したんです。」 「それで…肩に乗ってたメイジはゴーレムを飛び越えて、そのままどこかに…」 「ゴーレムは、ヴィオラートが破壊しました…」 「ふむ。後を追おうにも、手がかりはなしか…」 「ときに、ミス・ロングビルはどうしたね?」 「それがその…朝から姿が見えませんで…」 「この非常時に、どこに言ったんじゃ?」 「どこなんでしょう」 そんな風に噂をしていると、ミス・ロングビルが現れた。 「申し訳ありません、朝から、急いで調査をしておりまして。」 「調査?」 「ええ。土くれのフーケの情報を。」 「仕事が速いの。で、結果は?」 「はい、フーケの居所がわかりました。」 「誰に聞いたんじゃね?ミス・ロングビル。」 「はい。近所の農民からの情報です。森の廃屋に、黒いローブの男が入って行くところを見たと。」 ルイズが叫ぶ。 「黒いローブ?フーケです!間違いありません!」 オスマン氏は目を鋭くして、ミス・ロングビルにたずねた。 「そこは近いのかね?」 「はい。徒歩で半日、馬で4時間といったところでしょうか。」 「ふむ…」 周囲が、オスマン氏の次の言葉を待つ。 「では、捜索隊を編成する。我と思うものは、杖を掲げよ。」 周囲が、静まり返る。 「おらんのか?」 教師達は静まり返り、誰一人としてオスマン氏に向き合おうとすらしない。 ルイズはうつむいていたが、すっと杖を顔の前に掲げた。 「ミス・ヴァリエール。君は生徒じゃないか。」 「誰も掲げないじゃないですか。」 ルイズはまっすぐな目で、オスマン氏を見返す。 ルイズが杖を掲げているのを見て、キュルケも杖を上げた。 「ふふ、ヴァリエールには負けられませんわ。」 それを見て、タバサも杖を掲げた。 「タバサ。あんたはいいのよ?」 そう言ったキュルケに、タバサは 「心配」 とだけ告げ、ちらりとルイズを見る。 キュルケは嬉しそうに、タバサを見つめた。 ルイズも感動した面持ちで、タバサにお礼を言った。 「ありがとう…タバサ…」 そんな三人の様子を見て、オスマン氏は破顔する。 「そうか。では、頼むとしようか。ミス・ロングビル、案内役を頼む。」 「はい」 そう命じられたミス・ロングビルの顔には、場違いなほど妖艶な笑みが浮かんでいた。 前ページ次ページゼロのアトリエ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7991.html
前ページ次ページゼロの双騎士 「何で平民が私の使い魔なのよっ!!」 むっつり黙って怒りのオーラをぶちまけつつ廊下を歩いていたルイズは、いきなりそんな事を言い出した。 「平民ではないと言ったろう?私は元グランべロス帝国将軍、兼皇帝親衛隊隊長。その後はオレルス解放軍で将軍職を拝命していた。 支配階級と平民という分け方をするなら、私が前者であることは理解できるはずだが」 「何言ってんのよ。魔法使えないなら平民じゃないの。っていうか何で魔法使えない人間が貴族になれるのよ、ワケ分かんない」 …どうやら、魔法を使えることがこの国における人民支配の前提条件らしい。 確かにオレルスでも、ウィザードやプリースト、ワーロックなどといった魔法使い達は国に所属している場合が多い。 しかし、基本的に魔法の技能は剣の腕や政治の知識などと同じく、個々の能力の一種に過ぎない。 魔法使いが国家に所属しているケースが多いのは、軍における遠距離攻撃用魔法戦力として、あるいは治癒・補助魔法による後方支援部隊として有用だからだ。 そうでなければ、国家の魔法研究機関の研究員である。 基本的に魔法使いはどこでも重宝される。国家お預かりなら俸給も割と高い。 国家に所属していない魔法使いなら魔法医療を活かして医者に、あるいは攻撃魔法を活かして傭兵になるかだ。 いずれにせよ魔法が使えれば食うに困ることはそうそうない。 国政に携わる魔法使いも、特別少ないわけではない。 事実、ゴドランドは魔法技術が非常に発達した国だ。ゴドランド政府の要職にある人物はほとんどが魔法使いだった。 だが、魔法使いだから国政に携わる、などという考えはオレルスには存在しない。 国家の要職に就き、国土の統治に当たる者に必要とされる資質は政治能力であって、魔法ではないはずだ。 …というような事をルイズに話してみたのだが… 気のせいか?ルイズの体から立ち上る怒りのオーラが一層濃くなっている気がする。 不意に顔を上げたルイズが杖を此方に向けて… 轟音。 そう表現するのが馬鹿らしいほどの音が鼓膜を揺さぶった。 思い切り吹っ飛ばされたことを知覚した私の意識は、そこで途絶えた。 +++++ まだ意識が朦朧としている。 やたらと重いまぶたを開いて、ぼやける目でその光景を見た。 こちらを覗き込んでいる少女の顔。 不意に、その少女が顔を近づけてきて… いきなり左手に走った痛みが、無理矢理意識を覚醒させた。 全く、最悪な寝起きだ。 …などと暢気なことを考えている辺り、結構私も大丈夫そうだ。 痛みは気合と覚悟で耐えられる。戦場で生きてきたのだから、気が狂う程の激痛すら幾度も経験しているのだ。 まぁ、それでも痛いものは痛いのだが、死にさえしなければどんな傷も瞬時に治す、明らかに狂った性能の治癒魔法や回復薬があったのだ。 気づけば、見知らぬ部屋にいる。 私が寝ているのと同じようなベッドが複数。 各ベッドを隠せるような形になっているカーテン。 壁の棚にはいくつもの薬瓶。 恐らく医務室なのだろうが…何故ここに? 顔を顰めてルイズを見やる。 何をした?と言わんばかりに。 「大丈夫よ。使い魔のルーンが刻まれてるだけ。すぐ収まるわ」 本当にすぐ収まった。 左手を見ると、良く分からないマーク。 使い魔のルーン、とか言っていたか。ならば恐らく使い魔の証か何かだろう。害はないはず。 使い魔というものが何をするかはオスマンから聞いていたが、一生を共にする使い魔を害するようなメイジはそうそう居ないはず。 一度ルイズに吹っ飛ばされたような気がしたが、まぁ気のせいなのだろう。 …気のせいなはずだ。 気のせいだと思いたい…。 こうして私は、名実共にルイズの使い魔となった。 一抹どころではない不安と共に。 +++++ 「だから、使い魔の仕事は簡単に言えば『感覚の共有』『秘薬の採取』『主の守護』の三つになるわね」 あの後ルイズの私室へ来た私は、ルイズから使い魔の役目について詳しく聞いていた。 「ふむ…戦闘は私の本分だから守護は問題ないな」 皇帝親衛隊隊長だ。護衛任務に関してはプロである。 …何やら疑うような視線を向けられている。不本意だ。 「次に感覚の共有だけど…できてる気配が無いわね」 「感覚の共有とは具体的にどのようなことなのだ?」 「例えば視覚の共有ね。使い魔が見ているものを主も見られる…はずなんだけど」 視覚の共有はできていないらしい。であれば、聴覚や触覚なども同じだろう。 秘薬の採取も難しい。 秘薬とは鉱石・硫黄や植物など、魔法の媒介、あるいは魔法薬の材料にするための特定の自然物のことらしい。 私の知らない植物や鉱石もあるだろうし、どこにあるかも分からない。 険しい地形に分け入って戦うことはあっても、そこで物探しをしたことなどないのだ。 山や森に潜む敵兵の探し方は分かるが、石や草の探し方など知らない。 「はぁ…役に立たないわねぇ」 一方的に呼び出しておいて、酷い言い草だ。 怒る気にもなれず、溜息をついた。 気づいたらもう夜である。 ルイズもいい加減休むと言い出した。 私もどっと疲れが出てきたが…忘れていた。 「私はサラマンダーに餌を与えてくる。先に休むといい」 「あの竜のこと?…私も行くわ」 どうやら竜に興味があるらしい。 『パルパレオス!サラマンダーに会いに行きましょ!』 よくそういって私を連れまわした恋人の顔が脳裏に浮かぶ。 「そうか、では行こうか」 先ほどよりかは幾分明るくなった顔で、サラマンダーの元へ向かった。 +++++ 「ねぇ、パルパレオス。この子、なんていうドラゴンなの?」 サラマンダーはルイズにもすぐに慣れた。 ルイズに頭を撫でられて、気持ち良さそうに目を細めて甘えるように鳴いている。 「個体名はサラマンダー。フェニックス種のドラゴン…だったはずなのだが…」 今のサラマンダーは明らかにフェニックス種の形をしていない。 フェニックス種は、白銀の羽毛のような柔らかい鱗を持った羽と尾のある鳥に似た竜である。 だが、このサラマンダーは赤い炎のような鱗。考えるまでもなく別種だ。 しかし、これがサラマンダーであることは間違いない。 幾度も戦場を共にしたサラマンダーの声を聞き間違えることなど無い。 そもそも、ドラゴンの鳴き声は個体差がとても大きいのだ。 いかにもドラゴンという雄雄しい鳴き声の個体もいれば、下手な犬の物真似としか聞こえない珍妙な鳴き声の個体もいた(容姿すらも珍妙だった)。 初めて聞いた時は思わず吹き出してしまった。本当に「ワン!」と鳴くのだ。吹き出さない方がどうかしている。 直後に、気分を害したそのドラゴン(確かムニムニという名前だった)の翼でひっぱたかれたから、アレは今もよく覚えている。 (進化したのだろうか?そのような話は聞いていなかったが…) 神竜の故郷、アルタイルの独占支配を目論んだ神竜アレキサンダーの打倒。 その戦いを終えてグランべロスに帰った彼は、しばらくかつての戦友と連絡を取り合っていた。 帝国の支配が終わった後、各国政府の再編と独立、国交回復のためにパルパレオスは奔走していたのだ。 慣れない交渉事をいくつもこなしたり、各国の国益にも配慮した貿易体制を確立させたり。 国力と軍事力を鑑みて、各国のパワーバランスを調節しながら保有できる軍事力に制限を設ける条約を成立させたりもした。 幾度も国家間会議に出向いていたから、かつての戦友達と顔を合わせる機会は多かった。 カーナ、キャンベル、マハール、ダフィラ、ゴドランド、そしてグランべロス。 オレルス解放軍に所属する戦士たちの出自は様々だった。 戦いが終わった後、彼らは皆祖国へ帰り、ある者は国王に、ある者は祖国の軍や政府で要職に、薬屋を開いた者もいる。とにかく、皆様々な道へ進んだ。 誰と誰が結婚しただの、誰がどの国でどんなことをしただのと、会議の合間にそんな歓談を交わすこともよくあったのだ。 オレルス中の人間から憎まれていた彼だが、それでも解放軍の中核メンバーには親しく接してくれる者もいたのだ。 恋人にしてカーナ女王に即位したヨヨともよく話していた。戦竜隊のドラゴンの話も聞いていたのだが、サラマンダーが進化したとは聞いていない。 (進化したと言っても、一体何に…?) フェニックスの時点で既に伝説級のドラゴンなのだ。 基本的にドラゴンは進化して弱くなるということは無い。 であれば、今のサラマンダーはフェニックス以上の力を持っているということだ。 実際、パルパレオスはサラマンダーから流れ込む魔力の質・量ともに大きく上がっていることを感じていた。 ドラゴンの魔力を借りて様々な技や能力を行使するのがオレルスの戦士・魔法使いの戦い方であるから、その力の変化は敏感に感じ取れるのだ。 (まさか、マスタードラゴンか…?) ドラゴンの食は本当に幅広い。草や酒、キノコなどの食用物はもちろん、剣や鎧などという無機物まで平気で食らう。 しかもそれを効率よく己の力へと変換するのだ。 ただ、中には取り込めないエネルギーを帯びた物もある。 それが溜まりすぎると、うにうにと呼ばれる変なドラゴンになる。 更に溜め込むと、終いにはグレてしまうのだ。ブラックドラゴンという凶暴なドラゴンになる。 あるいは、ドラゴンに冷たくしすぎると、ストレスから逃れるために、孤高を好む性質のドラゴンへと変貌したりもする。 育成ミスでこのような姿になったドラゴンを、パルパレオスは見たことがある。 幸い、そのドラゴンは育成方針の転換で元の姿を取り戻したのだが、それはさておき。 このサラマンダーはうにうにでもブラックドラゴンでも孤高のドラゴンでもなかった。 である以上、マスタードラゴン以外には考えられないのだ。 完璧な育成、長きに渡る訓練、膨大な労力。 それらを費やしてなお届かぬほどの高みに位置する、伝説中の伝説。 ドラゴン育成の専門家であるビュウに、死ぬまでに一度は育ててみたいと言わしめた竜である。 「ちょっと、何を考え込んでるのよ?」 苛立つような声に、意識を引き戻された。 「あ、あぁ…すまない。このサラマンダーはマスタードラゴンと呼ばれる種の竜だ」 「マスタードラゴン?さっきフェニックス種って言わなかった?」 疑問を挟むルイズに、オレルスのドラゴンについて少し説明してやった。 最も、ほとんどはビュウの受け売りなのだが。 「へぇ…何度も変身するんだ…アハッ」 感心とも感嘆ともつかぬ声を上げるルイズに、サラマンダーが頭を擦り付けてくる。 どうやら、すっかり懐いたらしい。 生まれた時から人に育てられてきたサラマンダーは、本当に人懐っこいのだ。 「さて、餌なのだが…何かあったかな」 持ってきた荷物袋を漁る。 基本的にドラゴンは何でも食べるので、要らないものがあればどんどん食わせる。 究極の雑食な上に大食漢、しかも常に腹を減らしているのがドラゴンなのだ。 そのくせ、何も食わせなくても痩せ細ったりしないのだから本当におかしい。 魔力を操るドラゴンだから、自然の力でも取り込んでいるのだろうか? いずれにせよ、エネルギー効率が尋常じゃないのだ。 ドラゴンの身体を調べて技術転用すれば産業革命の二度や三度、軽く起こせるのではないか。 などと、どうでもいいことまで考えてしまった。 ともあれ、何も食わせないのも可哀想である。 使う予定のないロングソードとレザーアーマーがいくつかあったので、一つずつサラマンダーの顔の前へ置いてやった。 「ちょ、ちょっと…!何食わせてんのよ!」 驚くルイズをよそに、平然と武具に食らいつき、噛み砕いて飲み干すサラマンダー。 満足だとばかりに一つげっぷをくれて、地面に丸まった。 喰うだけ喰って、寝るらしい。 自由気ままなサラマンダーの様子に思わず苦笑してしまった。 「さて、戻ろうかルイズ」 悠然と寮へ歩き出したパルパレオスを、ルイズはただ唖然と見守るだけだった。 +++++ 前ページ次ページゼロの双騎士
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/945.html
前ページ次ページゼロのアトリエ トリステインの王宮は、物々しい雰囲気に包まれていた。 隣国アルビオンを制圧した貴族派『レコン・キスタ』がトリステインに侵攻してくる、 という噂がまことしやかに流れていたからだ。 よって王宮の上空は幻獣、船を問わず飛行禁止令が出され、衛士隊の警戒は最高潮であった。 そんな時だったから、王宮の上に一体の風竜が現れた時、蜂の巣をつついたような大騒ぎになった。 当直のマンティコア隊衛士が一斉に飛び上がり、警告を発する。 しかし、風竜はその警告を無視して中庭に降り立ち、 さらに風竜の影から板、そしてホウキに乗ったメイジが姿を現した。 風竜に乗っているのは金髪の少年と燃えるような赤毛の女、そしてメガネをかけた小さな女の子。 ホウキに乗っていたのは桃色の髪の美少女であり、 少し気まずそうに板を小脇に抱えているのは茶色の髪をした妙齢の女性。 ラ・ロシェールから直接王宮に向かった、ヴィオラートたちご一行であった。 ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師25~ マンティコアに跨った隊員たちが、5人を取り囲んだ。 腰からレイピアのような形状をした杖を引き抜き、一斉に掲げる。 いつでも呪文が詠唱できるような姿勢をとると、髭面の隊長が大声で怪しい侵入者達に命令した。 「杖を捨てろ!」 一瞬、侵入者達はむっとした表情を浮かべたが、青い髪の小柄な少女が首を振って言う。 「宮廷」 一向は仕方なくといった面持ちでその言葉に頷き、命令されたとおりに杖を地面に捨てる。 「今現在、王宮の上空は飛行禁止だ。ふれを知らんのか?」 その問いに、ホウキを持った桃色の髪の少女が進み出て、毅然とした声で名乗りをあげた。 「私はラ・ヴァリエール公爵が三女、ルイズ・フランソワーズです。姫殿下にお取次ぎ願いたいわ」 隊長は口ひげをひねって少女を見た。ラ・ヴァリエール公爵夫妻なら知っている。高名な貴族だ。 「ラ・ヴァリエール公爵さまの三女とな」 「いかにも」 ルイズは、胸を張って隊長の目を真っ直ぐに見据える。 「なるほど、見れば目元が母君そっくりだ。して、用件を伺おうか」 「それは言えません。密命なのです」 「では取り次ぐわけにはゆかぬ。用件もなしに取り次いではこちらの首が飛ぶ」 困った声で、隊長が言う。 ルイズも困って、思わずヴィオラートのほうに視線を泳がす。 ヴィオラートは少し考えて、良さそうな回答をひねり出した。 「ルイズちゃん、『水のルビー』があるじゃない」 「あ、そうね」 ルイズは懐を探り、預かりものの『水のルビー』を取り出す。 「姫殿下より、身の証にとお預かりした『水のルビー』です」 そう言って水のルビーを指に嵌め、輝きを見せ付けた。 沈黙して水のルビーを見つめる衛士たちに、 ようやく納得してもらえたかと一息ついたヴィオラートたちだったが、事態は予想外の展開を見せる。 「…失礼かと思いますが、我々の中にその真贋を見分けられる者がおりませぬ」 そう言った隊長の言葉に、とぼけた顔で頷きあう隊員たち。 ルイズ達は思わずあっけに取られ、ヴィオラートの笑顔が笑顔のまま、動きを止める。 「…真贋の見分けがつかないなら、とりあえず『ルイズ・フランソワーズが来た』と伝えて頂ければ…」 「そのような連絡は受けておりませんし、曖昧な用件で取り次ぐわけにはまいりません」 隊長に直接提案したヴィオラートに、衛士たちが一斉に警戒の視線を向ける。 そして隊長はヴィオラートをあえて避け、ルイズに言い放った。 「素性のわからないお連れがいらっしゃるなら、尚更です」 ヴィオラートの笑顔が、『敵意のないことを表現する』微笑へと進化を遂げた。 それを見たルイズはヴィオラート本人以上に焦り、言わなくて良い事を口に出してしまう。 「わ、ワルドの裏切りについて、至急報告しないといけないの!だから、はやく姫殿下にお取次ぎを…」 その言葉を聞いて、隊長は目を丸くした。 ワルド?ワルドというのは、あのグリフォン隊のワルド子爵のことだろうか? そのワルドが、裏切り?どういう意味だ? 隊長は、ワルドとルイズたちを天秤にかけ…隊長なりに、結論を下す。 同じ場所で働き、知己もあったワルドと、実際に会うのは初めてのルイズ。 隊長がその決断、間違った決断を下したのも、まさに当然と言ったところであったのだろう。 「貴様ら何者だ?とにかく、殿下に取り次ぐわけにはいかぬ」 隊長は杖を構えなおし、硬い調子で言った。話がややこしくなりそうだった。 「あの、あたしたちは杖を捨てたわけですし、お姫様もそんな少しの手間を惜しむような人じゃ…」 最後まで和解の道を探ろうとするヴィオラートの言葉に、しかし隊長は目配せを交わす。 一行を取り囲んだ魔法衛士隊が、再び杖を構えた。 「連中を捕縛せよ!」 隊長の命令で、隊員たちが一斉に呪文を唱え始める。 「ヴィ…ヴィオラート?」 「大丈夫…お城は、傷つけないから」 不安げなルイズの視線にヴィオラートが素早く答え、バッグから…青く冷たく光る何かを取り出そうとした時。 「お待ちなさい」 けして大きくはなく、しかし良く通る声が中庭を通り抜ける。 ルイズの帰りを今か今かと待ちわびる、アンリエッタその人であった。 キュルケとタバサ、そしてギーシュを謁見待合室に残し、 アンリエッタはヴィオラートとルイズを自分の部屋に入れた。 小さいながらも精巧なレリーフがかたどられた椅子に座り、アンリエッタは机にひじをつく。 ルイズは、アンリエッタに事の次第を報告した。 道中、キュルケたちが合流した事。 フーケに襲われた事。 アルビオンに向かう船に乗ったら、空賊に遭遇した事。 その空賊が、ウェールズ皇太子だった事。 ウェールズ皇太子に亡命を勧めたが、断られた事。 そして…ワルドと結婚式を挙げるために、脱出船に乗らなかった事。 結婚式の直前、ヴィオラートがワルドの裏切りを暴き、追い払った事。 しかし、無事手紙は取り返してきた。ゲルマニアとの同盟は、守られたのだ… そこまで聞いたアンリエッタは、深い悲しみを滲ませて、思わず呟きを漏らす。 「あの子爵が…まさか、魔法衛士隊に裏切り者がいるなんて…」 姫はすっと立ち上がり、ヴィオラートの手をとって…泣いた。 「本当に…本当にありがとうございます、ヴィオラートさん。貴女は裏切り者を使者に選んだわたくしを、 この愚かなわたくしを、ウェールズ様の殺害という罪から救ってくださいました…」 はらはらと涙を落とすアンリエッタに、ヴィオラートは首を振る。 「王子様は…元から死ぬつもりでした。もう、今頃は…」 「それでも…それでも、何回感謝してもし足りるという事がありません…」 しばし、王女のすすり泣く声だけが部屋に響く。 熱い湯が冷水になるほどの時間が経ち、ようやくアンリエッタは落ち着きを取り戻した。 「皇太子は…ウェールズ様は、何と仰っていましたか?」 ヴィオラートは一字一句違えることなく、淀みなくウェールズからの伝言を伝える。 「ウェールズは最後まで勇敢に戦って死んだと。そう伝えてくれと」 寂しそうに、アンリエッタは微笑んだ。薔薇のように綺麗な王女がそうしていると、 空気まで沈鬱に沈むようだった。ルイズは哀しくなった。 「…姫様、これ、お返しします。」 ルイズはポケットから、いったんしまった水のルビーを取り出す。 「それは貴女が持っていなさいな。せめてものお礼です」 「こんな高価な品をいただくわけにはいきませんわ」 「…ルイズ・フランソワーズ」 アンリエッタは哀しそうに、小さな声を絞り出して言葉を放つ。 「それは、ウェールズ殿下との約束の証なのです」 ルイズはもう、それ以上何も言えなかったので。 だから無言で、貰った水のルビーを、ポケットに戻した。 王宮から魔法学院に向かう空の上、ルイズは黙りっぱなしだった。 キュルケが何やかや話しかけてきたが、ヴィオラートも喋らない。 「なあに、教えてくれないの?あの子爵が裏切り者とか、わけわかんないじゃない?」 そう言って、ヴィオラートに気だるい視線を送る。 「でも、ヴィオラートがやっつけたのよね?」 「うん。でも、逃げられたし…」 「それでも凄いわ!ねえ、一体どんな任務だったの?」 「うーん…」 ヴィオラートはにんじんを頭に当てて考える。ルイズが黙っている以上、話すわけにはいかない。 その様子を見たキュルケは、つまらなそうに嘆息し、挑発した。 「ルイズ、ゼロのルイズ!なんであたしには教えてくれないの!ねえタバサ、バカにされてると思わない?」 キュルケは、本を読んでいるタバサを揺さぶった。タバサの首が、がくがくと揺れる。 ルイズはそれを見て、ようやく求める答えを少しキュルケたちに与えた。 「…大体予想はついてるんでしょ?」 それだけで、キュルケと…タバサは大方の事情を悟る。 「まあ予想はつくけど。じゃあやっぱりその手紙ってのは、アレね」 「うん、そのアレかな」 ヴィオラートの肯定に満足したキュルケは、「そっか」と呟いただけで、静かになった。 その静寂に取り残されたギーシュは、急に静かになった女性陣をきょろきょろ見渡した後、 今がチャンスとばかりに自らの疑問を口に出す。 「その…ミス・プラターネ?」 あらたまった口調で…とりあえず、一番話しやすそうなヴィオラートに問いかける。 「姫殿下は、その、何か僕のことを噂しなかったかね?」 ヴィオラートはちょっとギーシュがかわいそうになった。 今の暗黙の了解を一人だけ理解できていないというのもそうだが、 アンリエッタはギーシュの『ギ』の字も話題に上らせなかったからだ。 「頼もしいとか、やるではないですかとか、追って恩賞の沙汰があるとか…」 「ギーシュくんは、頑張ったよね」 それだけ答えると、ヴィオラートはいつもの笑顔に戻って、黙り込んだ。 「その、何か噂しなかったかね?」 「…」 「その、姫殿下は、ぼくのことをなんと評価してたかね?」 ヴィオラートは笑顔のままわずかに首を傾げ、答礼を返す。 「もしかして密会の約束をことづかってある、とか…」 今度は逆側に、首を傾げた。 ぽかぽかと太陽が照らす中、二人のやりとりは魔法学院にたどりつくまで続いたという。 前ページ次ページゼロのアトリエ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1940.html
「そういえば、あなた名前は?」 召喚した少女を連れて自分の部屋に戻ってきたルイズは、ドアを閉めて大きく伸びをすると、少女に向き直った。 儀式を失敗し続けたせいで疲れきっていたため、すぐにでも寝たかったが、やっぱり名前ぐらいは聞いておくことにしたのだ。 「・・・なまえ?」 少女は澄んだ瞳でルイズを見つめている。 「いくら平民でも、名前ぐらいある・・・わよね?」 一応“使い魔”なので、ルイズが自分で名づければいいのだが、本名も知っておくにこしたことはない。 呼びやすいものならそのまま使えばいいし。 「グゥです」 「グゥ?一応聞くけど、それってあだ名とか二つ名じゃなくて、本名?」 「はい」 “グゥ”がにっこりと笑って返事をする。 ルイズは何故かその笑顔にドキッとした。 ちょ、調子狂うわね・・・ 変わった名前、語呂はともかく二文字って短すぎない?平民だから? 「わたしはルイズ・ド・ラ・ヴァリエール。ルイズって呼んでくれていいわよ、グゥ。 あなたはわたしの使い魔として“サモン・サーヴァント”で呼ばれたの。 今日からはここ、トリステイン魔法学院女子寮のこの部屋があなたの家よ」 「ルイズ・ド・ラ・・・ヴァリエール・・・・・・ルイズ・・・・・・よろしく、ね」 「ええ、よろしく」 ルイズは改めてグゥを眺めた。どう見ても子供だ。おガキ様だ。しかも平民の。 それにしてもいきなり召喚されたというのに、そのはにかんだような笑顔からは悪意も動揺も感じられない。 実は凄く剛胆な性格なのかもしれない。 そしてやたら可愛い、まあ可愛いのはもちろんいいんだけど。 この子、使い魔としては何ができるのかしら? 使い魔になれば普通、ちょっとした集中で視聴覚等の共有ができる(と教わった)が、少なくとも今は全くできない。 秘薬とかの材料を集めてくるとか・・・集め・・・あつ・・・。 いくらなんでもそれは無理がある。 そして、使い魔は主人を守ると聞く。 現状どちらかと言えば、ルイズの方がグゥを守らないとまずそうな雰囲気である。 ならわたしの身の回りの世話でもさせてみようか。 ちゃんとできるのかしら?この子、10歳?それとも9歳なの?うう・・・。 ・・・明日以降、ゆっくり考えよう。 ルイズはとりあえず考えることを放棄してグゥに声をかけた。 「今日はもう疲れたし、寝ましょうか。このベッド一応ダブルだし、わたしの隣でいいわよ。 そうそう、わたしより早く起きたら、起こしてね。じゃ、おやすみ」 「はい、おやすみなさい」 相変わらずの笑顔で頷いたグゥは、すぐに軽い音を立ててベッドに滑り込んだ。 ルイズもパジャマに着替え、それに続いた。 翌朝。 誰かがルイズの頭をぺしぺし叩いている。 「うーん、何よ、もう朝?っていうか誰?」 そういえば、昨日使い魔を召喚したんだっけ、なんかやたら可愛い子を。 「ふぁあ、おはよう、グゥ・・・」 「おはよう・・・」 背後から子供にしては妙に低い、呟くような声がする。 グゥってこんな声だったかしら? 「ぎゃーーーーーーーーーーーーーー!あ、ああああああ、あんた誰よ!」 ルイズが振り返ると、そこにはなんとハの字眉に三白眼で、その上強烈な威圧感を全身から発する謎の子供が立っていた。 「グゥだが」 そそそそんなわけあるか、昨日の子とは何もかもが違う。 それ以前にこいつどこから入ってきたの?ねえここの警備ってザル!? 「いやあんたマジで誰!グゥはどこ行ったの!ねえ!ねえってばあああああ!」 ルイズは絶叫した。 途端、部屋のドアが猛烈な勢いで開き、燃えるような赤い髪の女が飛び込んできた。 「ルイズあなたねえ、何早朝から叫び声上げてんのよ!迷惑にも程があるわ!」 「なな、何でキュルケがわたしの部屋に?」 「自分のその小さな胸に聞いてみなさいよ。それより何、どうしたの?」 「小さなって失礼ね!あんたのが無駄に大き・・・」 はっ、今はこいつの軽口にかまっている暇はないんだわ。少しでも情報を。 「わわわわたしの召喚した使い魔がいないのよ!」 「何を言っているの?あなたが昨日召喚した子はそこに居るじゃない。 いくら平民を召喚したからって、現実逃避はよくないわ“ゼロのルイズ”?」 ルイズの頬が怒りで朱に染まった。 「あんたこそ何言ってるのよ、“これ”と昨日呼んだ子は全ッ然!何ひとつ一致してないわ!!!」 キュルケがかわいそうなものを眺めるような表情でルイズを見つめる。 「じゃあ、あなたの言うところの昨日召喚した使い魔ってどんなのよ?」 「えーと、肌が白くって」 「白いわね、透けるみたいに」 「あんまり見ない顔でー」 「そうね、少なくともトリステイン人じゃないわね」 「小柄で痩せてる・・・」 「小柄で痩せてるわよ?いい加減現実を見なさい」 ああ・・・でも違う・・・違うのよ・・・ ルイズが頭を抱えてうずくまる。キュルケは溜め息をついた。 そのとき、キュルケは昨日ルイズが召喚したという少女がドアの外、自分の背後を興味深そうに見つめていることに気づいた。 そこには、キュルケの使い魔である幻獣サラマンダーが待機している。 「あなた、お名前は?」 「・・・グゥです」 「ふうん、変わった名前ね。わたしは“微熱のキュルケ”。グゥちゃん、わたしのフレイムが気に入ったの?」 グゥはこくこくと頷く。 「もしかしてあなた、主人よりものを見る目あるんじゃない? この子は火竜山脈のサラマンダー。強いし、高いのよ」 「・・・すごいですね」 「・・・すごいわよ。さて、ルイズも静かになったみたいだし、わたしはもう少し寝るわ、お先に失礼。またね」 キュルケはひらひらと手を振ると、パタンとドアを閉め自室に戻っていった。 「さよなら」 グゥも手を振った。しかし。 「ふぅ」 グゥがいきなり溜め息をつき、無愛想に戻る。 そのやりとりを呆然と眺めていたルイズは開いた口がふさがらない。 「あなたが確かにグゥだってことはわかったわ」 「・・・」 それが判ったところで、神経をすり減らすような無言の威圧感が軽減されるわけではまったくなかったが。 使い魔として何ができるか以前に、どうコミュニケーションを取るかということが当面の課題となりそうである。 「ね、ねえ、なんで顔・・・変わるの?」 グゥの変貌度たるや、水+風の魔法“フェイス・チェンジ”に匹敵する。 しかし、少なくともルイズにとっては魔法を使っているように感じなかった。 「これ?」 再びグゥの顔が愛想のいい美少女に変化する。 「そう!それよ!」 「特技。・・・営業用?」 瞬時に顔を戻したグゥがぽつりと呟いた。 「そ、そう。あんまりにも怪しいから、できるだけやらないでね・・・」 起き抜けにひどい精神ダメージを受けたルイズには、そう言うのが精一杯だった。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/636.html
食堂に向かう道の途中、一人の使用人が尻餅をついていた。 名はシエスタと言い、身に着けたメイド服がよく似合っている、可愛らしい少女だ。 その彼女は今、尻餅をついたまま何かを探しているように、 困惑した表情で何度も何度も同じ風景を見回していた。 「あれ? おかしいなぁ……?」 ポツリと呟いて首をかしげる。 頭の上にクエスチョンマークを浮かべ、脳裏についさっきの出来事を再生し始めた。 ~ゼロの平面4~ 少し前――食堂に向かって足を速めた際、不意に『何か』とぶつかった。 しっかりと前を見て、障害となるものが何も無いと確認したにもかかわらず、 シエスタは正面から縦に細い『何か』にぶつかり、2、3歩とよろめくと重力にしたがって尻から床に落ちた。 「いたたたたた」 腰をさすりながら、シエスタは考える。 感触から、ぶつかった物は一本の棒みたいに細いものだったが、 道先に棒みたいなものはどこにも無かったはずだ。 もし、悪戯好きの貴族がわざと低級な魔法で転ばしたとしたらたちが悪い。 何かしらの因縁をつけ、貴族の立場を利用して虐めるに決まっている。 ぶるっと肩が震え、途端に畏怖の念が真摯なシエスタを襲った。 背筋に凍るような寒気を感じ、顔から血の気が引くのが自分でわかる。 早急に、謝らねば! しかし……一つ、問題があった。 自分とぶつかったはずの何かが、どこにも見当たらない。 呆けた顔で何度も何度も辺りを見回すが、相手の影も、形も、何処にも無いのだ。 「気のせいだったのかな……?」 それにしては、やたらと現実的な衝突を実感した。 でも、今はそんな疑問以上に湧き上がる安堵の念が胸を埋め尽くす。 (きっと疲れていたんだ。幻覚を見るくらいに) 目を閉じて、頭の中に染み渡るように反芻すると、 解ったとばかりにうんうんと頷く。 『ビ――――ッ』 耳を劈くような音が、足元から聞こえてきた。 次の瞬間、シエスタが足元を覗くよりも素早く、 両足に踏まれていた黒い影が滑るように抜け出した。 「え、きゃあっ!?」 足を取られ、再び尻餅をついてしまう。 そして、間髪居れず落ちて低くなったシエスタの視覚を、真っ黒いものが映り、覆い尽くした。 「え? え……? なに、これ……?」 ややおびえたように未知なる物を見つめる。 目の前の黒すぎるそれをシエスタは理解できなかった。 鼻の先すぐにあるそれは、近すぎて輪郭すら見えない。 ただ、それが『貴族』でも『平民』でもないことだけは解った。 ビ――――ッ!! ビ――――ッ!!! 黒いものから、さっき聞こえた音がうるさく響いた。 聞いていたら頭の痛くなりそうな音の襲来に、シエスタは思わず耳をふさぐ。 しかし、音は鳴り止まない。 その代わりに、黒いものはスッと身を引いた。 音がやや遠くなって、じょじょに輪郭が姿を現す。 『それ』は、意外にも人の形をしていた。 ただその上背はかなり低く、人間の子供以下。一メイルもないだろう。 丸々とした頭にはポコッと膨れた団子鼻がついていて、それでなぜか顔のバランスが取れている。 よくよく見てみれば、なかなか可愛らしい形をしている。 そして、体色は頭のてっぺんから足先まで黒一色だ。黒い。 黒すぎる。 身体的特徴から、シエスタはこれに対する一つの情報を導き出す。 これは、つい先日から話題となっていた『ミス・ヴァリエールの使い魔』ではないか? ――と。 そう思うと、ほんのわずかだが恐怖が和らいだ。 未知の魔物ならともかく、メイジの使い魔ならむやみに人を襲うことは無いからだ。 ……だが、どんな見てくれだろうとやはり貴族の使い魔。 しかもあの気の短くてプライドの高いことで有名なミス・ヴァリエールの使い魔。 下手をすれば何を言われるか解ったものではない。 「えっ、と。あなたはミス・ヴァリエールの使い魔ですよね……?」 シエスタはなるべく下手に出て、気分を損ねないようにと気を使った。 尤も、この使い魔に言葉が通じるのかわからないが。 ……ビ――――ッ! くるりと使い魔は背を向けた。 といっても、両面が等しく黒すぎるため、どっちが正面なのかは図りかねる。 「――――あっ!」 シエスタは異変に気づいた。 と同時に、これがこの使い魔をうならせている原因だと、 それは私のせいなのだといっぺんに理解した。 使い魔――Mrゲーム&ウオッチの背面真ん中辺りに、白い足型が スタンプのようにはっきりくっきりへばり付いていた。 「す、すみません! あの、私の不注意で……」 持ち合わせの布でゲーム&ウオッチの背(腹?)を拭きながら、 使い魔ことゲーム&ウオッチの、あまりのぺらぺらさに、シエスタは胸の内で驚嘆していた。 何で立てるんだろう? とか、 何で歩けるんだろうか? とか、 何で音が鳴るんだろうか? とか 何で動きがかたくて、一々ピコピコ言うのだろうか? とか、 何食べるんだろうか? それ以前にものを食べれるんだろうか? とか そんな疑問の数々でさえ、彼(性別もあるのか……?)の立ち振る舞いを見ていればたいした意味など無く、 ただ、『彼は歩けるから歩いてるんだよ』としか答えようが無かった、思いようが無かった。 彼に対するシエスタの第一印象は、不思議とか仰天とか通り越して、もはや『謎』の一言に尽きた。 「こぉ~ら~っ!!」 パタパタとした慌しい足音に2人が同時に振り向くと、 そこには杞憂だったと頭をかがめ、ばらばらと息を吐くルイズの姿があった。 ビ――――ッ♪ 確認するなりゲーム&ウオッチはどこかうれしそうに体をぴこぴこ鳴らし、 横向きのままやや歩きにくそうにルイズに駆け寄ったところで…… 「こぉの、バカッ!!」 ビィ――――ッ!!? ……ルイズに首根っこをおもいっきりつかまれてる。 ご主人(と思っているかは不明。)の突然の出来事に理解不能と必死に手足をバタつかせるゲーム&ウオッチだが、 いかんせん小柄で、しかもぺらぺらな彼はやはり見た目どおり軽いらしく、 首根っこをつかまれたまま人としては小柄で非力なルイズに軽々と宙に持ち上げられてしまった。 「あ、あの~。ミス・ヴァリエール……」 完全に腰が引けつつも、事態を飲み込めないシエスタが恐る恐るルイズに話しかける。 ルイズはやや怒気を含んでいるものの、比較的常識のある言葉でメイドを追い返した。 「あ――、アンタがここでこいつを捕まえてくれたんでしょ?一応お礼は言っておくわ。…………ありがと」 「えっ、ど、どうも。光栄です!」 最後の言葉は彼女が背を向け、やや照れくさそうにもぞもぞとしていた為か、あまり聞こえなかった。 ただ、それはしっかりとシエスタの耳に届いていたらしく、 シエスタはルイズの予想外な答えに驚き、このときだけは貴族への恐怖をどこへやらに投げ捨てた。 「さぁ行くわよ! 全く、私はまだ朝食とってないんだからね!!」 ビ――――ッ! 背を向けたまま、ごまかすように速いペースですたすたと歩き出す。 ルイズに引きずられた真っ黒い使い魔は片手をカタカタ細かく振ってビ――ッと鳴いた。 多分バイバイと言っているのだろう。 なんとなくおかしい光景に、自然と微笑みが漏れた。 片手を控えめに振って応えると使い魔はうれしいのか、 幼子のようにはしゃいで見せると余計にビ――ッとうるさく鳴き、今度は両手をカタカタと振り始めた。 やがて角を曲がってその姿が見えなくなるまで、シエスタは手を振り続けていた。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/476.html
前ページ次ページゼロのアトリエ 学院長室で、オスマン氏は戻った四人の報告を聞いていた。 「ふむ、ミス・ロングビルが土くれのフーケじゃったとはな。」 「一体、どこで採用されたんですか?」 脇に控えたコルベールが問いかける。 「町の居酒屋じゃ。彼女は給仕をしとっとのじゃがな、この手がついっと、その、尻を。」 「で?」 コルベールが先を促す。 「それでも怒らなかったんじゃよ。だからつい、秘書にならないかと言ってしまった。」 「なぜです?」 本当に理解できないといった表情でコルベールが言った。 「うむ、今思えばあれもフーケの手じゃったに違いない。全く、女は魔物とはよく言ったものじゃのう。」 コルベールはその時、今更ながらフーケのその手にやられ、宝物庫の弱点について語った事に思い至った。 「そ、そうですな!美人はそれだけで、いけない魔法使いですな!」 あの一件は自分の胸だけに秘めておこうと思いつつ、オスマン氏に調子を合わせる。 「その通りじゃ!君はうまいことを言うな!コルベール君!」 ヴィオラートとルイズ、タバサとキュルケの四人は呆れ返ってそんな二人の様子を見つめていた。 ゼロのアトリエ ~ハルケギニアの錬金術師12~ 生徒達の冷たい視線に気付くと、オスマン氏はことさらに厳しい顔を作って見せた。 「フーケは捕らえ、破壊の像は無事に宝物庫に収まった。一件落着じゃ。」 オスマン氏は、一人ずつ頭を撫でる。 「君達三人の『シュヴァリエ』の爵位と、ミス・タバサの『精霊勲章』の授与を宮廷に申請しておいた。」 ルイズ・キュルケ・タバサ、三人の顔がぱあっと輝いた。 「本当ですか?」 キュルケが、驚いた声で言った。 「本当じゃ。君達はそれぐらいのことをした、当然の結果じゃよ。」 ヴィオラートが、怪訝な顔で尋ねる。 「それって、あたしもですか?」 「うむ、見事な魔法でフーケを捕らえたという功績があれば、何も問題あるまい。」 そういうと、オスマン氏はウインクをして見せた。 「なあに、駄目だとぬかしよったらこの私がねじこんでやるわい。」 何というかごめんなさいだった。 「さてと。今日の夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。」 キュルケの顔の輝きが、さらに強くなった気がする。 「そうでしたわ!フーケの騒ぎですっかり忘れておりました!」 「今日の舞踏会の主役は君達じゃ。用意をしてきたまえ。」 三人は、礼をするとドアに向かう。 ヴィオラートだけが、微動だにせずオスマン氏に視線を送る。 「先に行ってていいよ。」 ヴィオラートは言った。三人は心配そうに見つめていたが、頷いて部屋を出て行く。 「なにか、私に聞きたいことがおありのようじゃな。」 オスマン氏は、コルベールに退室を促す。 わくわくしながらヴィオラートの話を待っていたコルベールは、しぶしぶ部屋を出て行った。 「言ってごらんなさい。できるだけ力になろう。」 コルベールの退室を見届けた後、ヴィオラートが口を開く。 「あの、『破壊の像』は、あたしが元いた世界の道具です。」 オスマン氏の目が光った。 「ふむ、元いた世界とは?」 「あたしは、こっちの世界の人間じゃないんです。」 「本当かね?」 「本当です。あたしは、ルイズちゃんの『召喚』でこっちに呼ばれたんです」 「なるほど、そうじゃったか…」 「あの、破壊の像…あれをここに持ってきたのは、誰なんですか?」 オスマン氏は目を細めた。 「もう…何年も昔の話じゃ」 「森を探索していた私は、ワイバーンに襲われた。そこを救ってくれたのがその「破壊の像」の持ち主じゃ。」 「彼は、ワイバーンの最後の一撃で怪我を負い、それがもとで命を落とした…」 「死んでしまったんですか?」 オスマン氏は頷いた。 「フィンデン王国に帰りたい、元の世界に帰りたいと繰り返してな。彼は君と同じ世界から来たんじゃろう。」 「俺の不幸な人生を、考えさせる…そう言い残して彼はこの世を去った…」 オスマン氏は虚空を見つめる。珍しく澄み切った瞳で、しばし黙考し。 オスマン氏は、次にヴィオラートの額を見つめた。 「おぬしのこのルーン…」 「はい、これについても聞きたかったんです。」 オスマン氏は、話そうかどうかしばらく悩んでから、口を開いた。 「これなら知っておるよ。ミョズニトニルンの印じゃ。伝説の使い魔の印じゃよ。」 「伝説の使い魔のしるし?」 「そうじゃ。その使い魔はあらゆる『魔法の道具』を使いこなしたそうじゃ。」 ヴィオラートは、首をかしげた。 「どうして、あたしがその伝説の使い魔なんかに?」 「…わからん。」 「…そうですか。」 「おぬしがどういう理屈でこの世界にやってきたのか、私なりに調べようと思う。しかし。」 「わかるとは限らない。とくに初めてのことなら、手がかりなんてあるわけがない。」 ヴィオラートの指摘に、オスマン氏は驚愕の表情を浮かべる。 「だから、帰る手段は、あたし自身で創り出そうって。そう思います。」 「おぬしは…」 オスマン氏はヴィオラートをしばし見つめると、万感の思いを込めて言葉を贈る。 「うむ。おぬしならきっといつの日か、帰る手段を見つけ出せるであろうよ。」 ヴィオラートはぺこりと頭を下げ、退室する。 「神の頭脳、か。やはり、それに相応しいものに与えられた、ということじゃろうか…」 オスマン氏はヴィオラートの消えた扉の先を、いつまでも見つめていた。 食堂の上の階が、大きなホールになっている。舞踏会の会場である。 ヴィオラートはバルコニーの枠にもたれ、バッグに溜め込んだ料理を粛々と平らげていた。 「ここにいたの。」 「あ、ルイズちゃん。」 いつもの服のままのルイズが、近寄ってきた。 「ヴィオラート、あなた魔法が使えること隠してたのね。しかもあんな強力な、先住魔法」 非難するように問いかける。 「え、べつに隠してたわけじゃ…」 「隠してた。」 頬を膨らませたルイズが、ヴィオラートに詰め寄る。 「でもでも、あたしのいた世界だと、珍しい事じゃないし…」 「そうなの?」 「うん。皆一つくらいは、不思議な特技が使えるから。」 「変わってるのね。まあ、私は信じてあげる。皆は、そうは行かないだろうけど。」 強力な魔法を使い、フーケを撃退した。それは既に周知のものとなっている。 「だから人前では、杖を使うふりくらいしなさい。じゃないとエルフだって勘違いされちゃうからね。」 「エルフ?それは、さすがにまずい、かな。」 とりあえず、明日からは杖の素振りでも始めないとダメかな? ヴィオラートがちょっとブルーになったその時、 「あ、いたいた。」 ようやくノルマ…『つきあっている』男性の相手を終えたキュルケと、 何かに満足した顔のタバサが顔を出した。 「こんな所にいたのね、準備、できてるわよ。」 「…入場。」 「え?え?」 ヴィオラートはキュルケとタバサに腕をつかまれ、連れ出された。 その後を、ルイズがしてやったりの笑顔で追いかけていく。 ホールの壮麗な扉が、音を立てて開いた。 「ヴァリエール公爵が息女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢!」 「そしてその使い魔、ヴィオラート・プラターネ嬢の、おな~~り~~~」 会場の喧騒が途切れる。 ルイズは長い桃色掛かった髪をバレッタにまとめ、ホワイトのパーティードレスに身を包んでいる。 肘までの白い手袋が、ルイズの高貴さをいやになるぐらい演出し、 胸元の開いたドレスがつくりの小さい顔を、宝石のように輝かせていた。 ヴィオラートは基本的にルイズに合わせた服装、ただし胸元が強調され、 七色に輝く不思議なアンクが首筋を彩っている。そして、キュルケに施された薄化粧が、 普段のヴィオラートからは想像もつかないような美しさを見事に引き出していた。 主役が全員揃ったことを確認した楽師たちが、小さく、流れるように音楽を奏で始めた。 ルイズとヴィオラートの周りには、その姿と美貌に驚いた男達が集まり、盛んにダンスを申し込んでいた。 今までゼロのルイズとからかい、また土まみれの田舎娘と馬鹿にしていたノーマークの女の子の美貌に気付き、 いち早く唾を付けておこうというのだろう。 「ど、どうしよう、ルイズちゃん~!」 ヴィオラートが困った顔で、珍しくルイズを頼った。 「あなたのそんな顔が見れただけで、私の見立てたこの服の倍の価値はあるわね。」 ルイズがニヤニヤしながら、ヴィオラートの困窮顔を鑑賞する。 見かねたキュルケが、老婆心ながらの忠告をヴィオラートに与えた。 「大丈夫、適当にエスコートしてもらえばいいの。身元も割れてるから安全よ。」 それだけ言うと、キュルケは人の波の向こうに消える。 仕方ない、覚悟を決めたヴィオラートがおそるおそる発言し… 「え、えーと、ダンスとか、あんまり得意じゃないんだけど…いいかな?」 男達の何かの回路に、盛大に放火してしまった。 「ぜひ僕と!」 「いやいや、初々しいレディのエスコートにはこのギーシュ・ド・グラモンこそが相応しい!」 「僕にだって権利はあるはずだ!」 「マリコルヌは自重しろよ!」 「どうかこの僕にお慈悲を!」 ブリギットあたりなら、さっさと相手を選んで華麗に踊るところなんだろうなあ。 そんなことを考えながら、誰を選べばいいのかヴィオラートは悩んで、天を仰いだ。 そんな様子をバルコニーから眺めていたデルフリンガーがこっそりと呟く。 「おでれーた!」 二つの月の光がロウソクのそれと溶け合い、ホールの中に幻想的な雰囲気を作りあげる。 「相棒、てーしたもんだ!」 踊る相棒とその主人を眺めながら、デルフリンガーは、おでれーた!と繰り返した。 「ご主人様と一緒に舞踏会の主役を張る使い魔なんて、始めて見たぜ!」 前ページ次ページゼロのアトリエ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/3405.html
前ページ次ページゼロの夢幻竜 第十六話「漆黒の森へ」 翌朝、魔法学院ではいつもと変わらぬ情景が……あるはずも無かった。 昨夜遅くに起きた騒ぎは収束の気配を見せる事無く続いていた。 賊の手から守り続けていた秘宝中の秘宝である、『深海の宝珠』が盗まれたのだから無理も無い。 宝物庫の壁にでかでかと開いた穴は事件直後に何事かとやって来た教師陣の口を開きっ放しにするのに十分だった。 そして別方向の壁には『土くれ』のフーケの犯行声明。 「『深海の宝珠』、確かに領収いたしました。土くれのフーケ」 噂に違わぬ貴族の面々を馬鹿にした文言。 教師達は学院長室に程近い一室に集められたものの、好き勝手な事ばかりを言っていた。 「土くれのフーケめ!貴族の邸宅を荒しまわるだけに飽き足らず魔法学院にまで手を付けるとは!メイジの風上にも置けんやつじゃないか!盗人の時点で元々とも言えるがな!」 「大体、昨晩の衛兵は何をやっていたというのだ!」 「君は衛兵如きに安穏として全幅の信頼を置いていたというのかね?!連中は所詮平民だぞ!それよりも責任を問うべきは先日の当直者ではないのかね?!」 言葉の力に物理的な力があるのだとすれば、正に矢で射す様な勢いを持った言葉だった。 それに「ひっ」と小さい声を上げて反応したのがミセス・シュヴルーズ。 通常当直というのは夜通し門の付近にある詰め所にて待機していなければならない。 しかし彼女はというとその時、魔法学院を襲うなどという輩がいるなどとは露程も思わず、当直の任を怠って自室で呑気に眠っていたのである。 「ミセス・シュヴルーズ!昨夜の当直はあなただったはずですよ!どういう事なんですか?!」 教師の一人が追及を始める。 オスマン氏がこの場にいないので、その前に責任の所在がどこにあるのかというのをはっきりさせておこうというのだろう。 「も、申し訳ありません!」 「泣いたところで宝物が戻ってくる訳ではないのですぞ。 ミスタ・コルベールの談に因ればあれは魔法でも冶金でも複製する事は不可能で、金銭的にも学術的にも天文学的な価値を持つ代物との事。 故に!賊から守る為首都から離れたこの魔法学院の宝物庫において厳重に保管していたのに如何なされるおつもりですか?!」 「そ、それは……」 「これこれ。女性を苛めるものではない。」 その場に現れたオスマン氏が追及をしていた教師ことミスタ・ギトーを宥める。 しかし彼は厳しい口調を崩さず答えた。 「しかしですな、オールド・オスマン!ミセス・シュヴルーズは当直であったにも拘らず呑気に自室で眠っていたのですよ!これは彼女の責任問題であるはずです!」 口泡飛ばし激論するミスタ・ギトーを余所に、オスマン氏は髭を撫でる。 「ミスタ……なんだったかのう?」 「ギトーですっ!しっかりしてください!」 「そうそう、ギトー君じゃったな。感情に走ると見えるものも見えてこんぞい。という事で訊こう。この中で学院に就任して以来まともに当直を果たした者がいるかの?おったら手を挙げなさい。」 言われて挙がる手の数はゼロ。 教師達は暫くああだこうだと言っていたが、オスマン氏がやけに目立つ咳払いをした後は自分達の不甲斐無さに思いきり肩を竦めていた。 オスマン氏は小さく一息吐き話を再開させる。 「ご覧の通りじゃ。この一件、ミセス・シュヴルーズだけに責任があったということではない。我々全員が責任を感じ折り入って恥じるべきじゃろう。 賊は魔法学院という場所、そして多くのメイジがいるという条件を逆手にとってこれだけ大胆な犯行に及んだ。勘違いしておる者もおるようじゃが、これは学院における誇りの問題じゃ。 加えて、誰が始めに言い出したかは知らんが衛兵はあの時いち早く現場に駆けつけておったぞ。わしは彼らの対応を批判するつもりは無いがどうじゃ?異論のある者はおるか?」 その言葉に周りは一瞬水を打ったようにしんと静まり返る。 オスマン氏は壁に開いた大穴を撫でながら続けた。 「さて、賊の犯行を一部始終見ていたものがおったそうじゃがもう来ているかね?」 「はい、この3人です。」 オスマン氏の問いかけにミスタ・コルベールが答え、当の3人に前へ出るように道を開ける。 その3人とは勿論、ルイズとキュルケとタバサの事である。 ラティアスは元の姿に戻って、滞空した状態でルイズの少し後ろに控えていた。 背中にはこの一件に興味を持ったらしいデルフリンガーが終始黙っている事を条件に抱えられた状態で連れて来られていた。 ラティアスはオスマン氏のように、ある程度事情を知っている者達の前では人間形態の姿も出来るが、誤解を与えないよう一応元の姿になっている。 とは言え、人の形をとったとしても使い魔なのでカウントされる訳ではなかったが。 「ふむ、君たちか。では、その時の様子を出来るだけ詳しく説明してくれんか?」 それにルイズが「はい!」と答え、一歩前に進み出てから見たままを話し出した。 「土ゴーレムが現れて壁を壊しました。肩の辺りに乗っていた黒いマントのメイジ……フーケが宝物庫の中から宝石箱のような何かを……『深海の宝珠』が入っていた箱だと思いますけど、それを取っていきました。 それからまたゴーレムの背中に乗って外に向かったんですけど……城壁を越えた所だと思います。突然ゴーレムは崩れて土になってしまったんです。」 「土というと、あそこにある小さい丘のような盛り土……あれがその残滓と?」 「はい、そうです。そこに駆けつけたら本当に土しかありませんでした。人影も私たち以外は一つもありませんでした。」 「そうか……後を追おうにも手懸かりは無しという訳か。」 オスマン氏は暫しの間考え込んでいたが、何かを思い出したかのようにミスタ・コルベールに尋ねる。 「ところでミス・ロングビルが見当たらんのじゃが、何処に行ったか分からんかね?」 「それが朝から姿が見えないのですよ。」 「この非常時に一体どうしたというんじゃろうか?」 そう噂をしていると当の本人がルイズ達の更に後ろから息も絶え絶えといった感じで現れた。 「ミス・ロングビル!一体何処に行っていたんですか!大変ですぞ!事件ですぞ!」 コルベールは彼女の姿を認めると一気にまくしたてた。 しかし彼女は非常に落ち着き払った声で応対する。 「申し訳有りません。朝から急いで調査をしておりまして……」 「調査?」 「そうですわ。今朝方目を覚ましてみたらこの騒ぎ。そして宝物庫はご覧の通り。壁に今国中の貴族を震え上がらせているフーケのサインを見つけたので調査を行いましたの。」 「うむ。仕事が速いものじゃの、ミス・ロングビル。」 ……その時、誰かが学院長の方をしっかりと見ていたならば気づいたであろう。 彼の目の奥に鋭い一条の光が走った事を。 「それで?結果は?」 「はい。フーケの居所が掴めました!」 「な、何ですと?!」 コルベールは素っ頓狂な声をあげて驚く。 対してオスマン氏は落ち着いた表情でその先を訊く。 「誰にそれを訊いたのかね?」 「はい。近在する農民数人に訊きこんだところ、近くの盛りにある廃屋に入っていった黒ローブの男を見たそうです。恐らく彼こそフーケであり、その廃屋はフーケが隠れ家として使っている所ではないかと。」 「して、その場所はここからどれくらいの距離にあるのじゃ?」 「はい。徒歩で半日、馬なら4時間ほどといった所です。」 その答えにコルベールは興奮しきった表情で反応した。 「オールド・オスマン!早速王室に報告しましょう!王室衛士隊に今回の事を依頼し、兵隊を差し向けてもらわなければ!」 しかしオスマン氏は首をゆっくりと横に振り目をむいて怒鳴った。 「馬鹿者!そんなことをしている間にフーケはもっと遠くに逃げるわ!『深海の宝珠』も遠くに離れてしまうぞい!しかも、自分達を襲う火の粉を自分達で満足に払えんで貴族も何もあるものか! これは魔法学院で起こった問題じゃ。という事は我々だけで解決せねばならん!!そこでじゃ!」 オスマン氏は自分とコルベールのやり取りを見ていた教師陣に対して振り向き、一つ咳払いをした後尋ねる。 「フーケの捜索隊を編成する事にする。我こそはと思うものは杖を掲げよ!」 しかし杖は一本も上がらない。 全員隣の顔を見合わせて『どうしようか?』と囁いているばかりだ。 「これ、誰も杖を掲げんのか?名を上げる良い機会じゃぞ。」 その時すっと一つの杖が上がる。掲げたのはルイズだった。 それを見たミセス・シュヴルーズは驚き声を上げる。 「ミス・ヴァリエール!何をしているのです?!あなたは生徒ではありませんか!オールド・オスマンは教師の方々にお訊きなされたのですよ?ここは教師に任せて……」 「でも誰も杖を掲げないじゃないですか。」 言われてみればその通り。教師陣には反論の余地すらない。 するとラティアスがルイズに話しかけてきた。 「ご主人様。私もご一緒します。」 「当たり前でしょ。使い魔は主人が何か行動を起こすときは、常にその隣にいて付き従うものなのよ。でも……あなたがいるなら、その、凄く安心ね!」 「有り難う御座います、ご主人様。またお役にたつ事が出来ます。」 「ありがと。けどその言葉はフーケを捕まえた時にとっておいた方が良いかもしれないわね。」 ルイズがその言葉を言い終えると同時に、その隣からも杖が上がった。 見るとキュルケが口元に薄笑いを浮かべつつ杖を掲げていた。 それを見たコルベールは驚く。 「ミス・ツェルプストー!君も生徒じゃないか!」 「ヴァリエールには後れを取ってはいけないと思いまして。」 その言葉を聞いたルイズは取り澄ました表情で言い返す。 「別にあんたの助けなんか欲しくないわよ。私一人でも何とかしてみせるわ!」 「ルイズ~?思い上がりって怖いのよ。相手はトライアングルクラスのメイジで、それも『土くれ』のフーケなのにゼロのあなた一人でどうかなるわけないでしょう?」 「な、何よっ!私の使い魔に負けたくせに!」 「あくまでも、あなたの使い魔に、ね。あなた自身は私と勝負してはいないわ。分からない?あなたの今の自信は使い魔あってこそのものだと私は思うけど。 もしラティアスがこの場にいなかったら、あなた名乗り出ていたかしら?」 言われてルイズはその的を射た意見に返す言葉すら無くなってしまった。 考えてみれば今まで自分は強大な力に対しておんぶに抱っこという姿勢はあまり取っていなかった。 貴族としてのプライドがそうする事を妨げていたのかもしれない。 でなければ、自分を尻目にどんどん魔法の才能を現していく姉達に、少しでも追いつきたいという自己顕示の欲求だろうか。 が、それが何年もコモン・マジックも碌に使えない事と平行して、次第に鬱屈した物として溜まっていった事は分かる。 そしてラティアスを召喚した事でそれが一気に昇華されてしまったという事も。 自分はそれから使えるようになった魔法など一つも無く、相も変わらず言われたままのゼロだという事も。 そう考えると無性に悔しくなってきた。 キュルケが言った事が正しいためか、ラティアスも今回ばかりはだんまりを続けている。 と、更にキュルケの横にいるタバサが杖を掲げる。 「タバサ。あんたはいいのよ。関係無いんだから。」 「心配。」 「そう……ありがとう。タバサ。」 キュルケの声に被さるようにタバサは即答した。 若干一名の自信が疑問に感じられる所ではあったが、三人の様子を見たオスマン氏は納得するように頷きながら笑った。 「そうか。では、頼むとしようか。……そう言えばミス・タバサは若くしてシュヴァリエの称号を持つ騎士と聞いておる。良い働きを期待しておるぞ。」 その言葉にそこにいた全員が「えっ?」といった表情でタバサを見つめる。 が、当の本人はなんて事はない様にただ無表情でその場に立ち尽くしているだけだ。 「本当なの?タバサ?」 彼女と親しいキュルケさえも驚いている。 シュヴァリエの称号……それは王室から出る称号としては最下級のものであるが、純粋に個人がなした偉業に対して送られるものだ。 爵位は領地を買ったりする事で獲得できるが、シュヴァリエだけはそうもいかないからだ。 しかもそれをタバサほどの若年者が手に入れている事も驚きに輪をかけていた。 オスマン氏はコホンと咳払いを一つして続ける。 「勿論本当じゃ。そしてミス・ツェルプストーはゲルマニアの優秀な軍人を多く輩出した家系の出で彼女自身が出す炎魔法も強力と聞いておる。」 いきなりの指名にキュルケは慌てて気取ったポーズをしてみせる。 「そして、ミス・ヴァリエールは数々の優秀なメイジを輩出したヴァリエール公爵家の息女であり、えー、将来有望なメイジと聞いておる。 現にその力の現われとも言えるその隣にいる使い魔も大変優秀と聞いたが?」 それを聞いたルイズは少し複雑な心境ながらも澄ました顔で胸を張ってみせる。 オスマン氏は三人をそれぞれ見ながら特にラティアスの方を見ていた。 左手に刻まれたガンダールヴのルーンが正しいのなら、フーケに遭遇する事があったとしても切り抜ける事が出来る確率は高い。 興奮したコルベールがオスマン氏の後を引き取る。 「そうですぞ!しかもミス・ヴァリエールの使い魔はガン……!」 その後は言えない。 オスマン氏がコルベールの口を慌てて塞いだからである。 そしてその頃になると教師達はすっかり黙ってしまっていた。 コルベールの口を片手で塞ぎつつ、オスマン氏は威厳のある声で言う。 「今ここに杖を掲げた三人の意思に勝てるというものがある者は、前に一歩出たまえ。」 出るものは誰一人としていない。 それを確認したオスマン氏は三人の方に向き直る。 「魔法学院は諸君らの努力と貴族の義務に期待する。」 言うとルイズ、タバサ、キュルケは真顔になり、直立して同時に「杖にかけて!」と唱和した。 それからスカートの裾を摘まんで恭しく礼をする。 ラティアスはどうしようかとおろおろしていたが結局身を低くし、頭と首を床に垂れさせる事にした。 「それでは馬車を用意しよう。それで向かうのじゃ。魔法は目的地に着くまで温存しておく事。良いかな?ちなみに三人の本日の授業については免除という事にする。ではミス・ロングビル!」 「はい。オールド・オスマン。」 「彼女達を手伝ってやってくれんか?」 「もとよりそのつもりですわ。」 オールド・オスマンの申し出にミス・ロングビルは頭を下げた。 「うむ。宜しい。壁の修復については、そうじゃな……ミセス・シュヴルーズにやってもらう事にしようかの。では皆、朝食に向かうとしよう。」 オスマン氏はそう言って全員を解散させた。 しかし、その中でたった一人例外がいた。 「あー、ミス・ヴァリエールとその使い魔は朝食の後で私の部屋に来なさい。直々に伝えねばならん事があってな。よいかね?」 「あ、はいっ!分かりました!」 一体学院長先生は何のご用なのかしら? そう疑問に思っていたが、お腹の虫が鳴るのをキュルケに聞かれたルイズは、そんな事などあっという間に忘れて怒りを爆発させていた。 前ページ次ページゼロの夢幻竜
https://w.atwiki.jp/anime_wiki/pages/25954.html
Blu-ray 劇場版名探偵コナン ゼロの執行人 豪華盤 発売日:10月3日・12月18日 封入特典 1. 三方背ケース(新規描き下ろしイラスト) 2. 新規描き下ろしを含むアートボード25枚 3. ムービーマークステッカー 4. 青山先生原画ポストカード ここを編集 2018年4月公開。~から紅の恋歌に続く第22作。23作に~紺青の拳がある。 http //www.conan-movie.jp/ 監督 立川譲 原作 青山剛昌 脚本 櫻井武晴 ストーリーエディター 飯岡順一 絵コンテ 立川譲 絵コンテ協力 寺岡巌、金井次朗、菅井嘉浩、許平康 演出 立川譲、菅井嘉浩、平向智子、許平康、宇根信也、鎌仲史陽、重原克也 キャラクターデザイン・総作画監督 須藤昌朋 作画監督 野武洋行、清水義治、堀内博之、岩井伸之、高橋成之、吉見京子、井元愛夕、とみながまり アクション作画監督 金井次朗、寺岡巌、小澤和則 作画監督補佐 本吉晃子、新谷憲、大高美奈、小野可奈子、佐々木恵子、三浦雅子、中島里恵、岩佐裕子 デザインワークス 小川浩 美術監修 石垣努 美術監督 佐藤勝、福島孝喜 美術設定 寺岡巌 3D背景モデリング 長谷川弘行 美術ボード 福島孝喜、佐藤勝、長谷川弘行、政木香里 イメージボード loundraw 色彩設計 加藤里恵 撮影監督・メインタイトルCGアニメーション 西山仁 CG監督 松倉大樹、小岩寛満 特殊効果 林好美 Monitor Works sankaku、わたなべしゅんすけ、中小原明典 グラフィックスデザイナー 志村泰央 編集 岡田輝満 HD編集 藤田育代 HD編集アシスタント 倉田しおり 音響監督 浦上靖夫、浦上慶子 ミキサー 田中章喜、田口信孝 音響効果 横山正和、横山亜紀、山田香織 アシスタントミキサー 小沼則義、鶴巻慶典 音楽 大野克夫 文芸担当 小宅由貴恵 アニメーション制作 TMS/V1 Studio ■関連タイトル Blu-ray 劇場版名探偵コナン から紅の恋歌 劇場版名探偵コナン ゼロの執行人 原画・設定資料集 劇場版 名探偵コナン 新価格版Blu-ray 10巻まとめて購入特典付き 劇場版 名探偵コナン 20周年記念 Blu-ray BOX【2007-2016】 名探偵コナン 安室透/バーボン/降谷零シークレットアーカイブスPLUS 劇場版『ゼロの執行人』ガイド 名探偵コナン 赤井秀一 安室透 シークレットアーカイブス 少年サンデーグラフィック 名探偵コナン 「ゼロの執行人」 オリジナル・サウンドトラック 名探偵コナン ゼロの日常 1 サンデーコミックス 劇場版名探偵コナン ゼロの執行人 上 小学館ジュニアシネマ文庫 名探偵コナン ゼロの執行人 名探偵コナン テーマ曲集4~THE BEST OF DETECTIVE CONAN 5~ 初回限定DVD付 随時更新! pixivFANBOX アニメ@wiki ご支援お待ちしています! ムック本&画集新刊/個人画集新刊/新作Blu-ray単巻/新作Blu-ray DVD-BOX アニメ原画集全リスト スタッフインタビューwebリンク集 最新登録アイテム Blu-ray 魔女見習いをさがして Blu-ray「どうにかなる日々」Blu-ray Happy-Go-Lucky Edition 初回限定生産 Blu-rayDisc付き 『ラブライブ! スーパースター!!』「始まりは君の空」【みんなで叶える物語盤】 BEM~BECOME HUMAN~豪華版Blu-ray Blu-ray 劇場版 魔法少女まどか☆マギカ 10th Anniversary Compact Collection Blu-ray ぐらぶるっ! Blu-ray 映画クレヨンしんちゃん 激突! ラクガキングダムとほぼ四人の勇者 Blu-ray CHRONO CROSS 20th Anniversary Live Tour 2019 RADICAL DREAMERS Yasunori Mitsuda Millennial Fair FINAL at NAKANO SUNPLAZA 2020 ゴブリンスレイヤー Blu-ray BOX 初回生産限定 グリザイア ファントムトリガー THE ANIMATION 03[Blu-ray] 特装版 ラブライブ! サンシャイン!! Saint Snow 1st GIG 〜Welcome to Dazzling White Town〜 Blu-ray Memorial BOX ゾンビランドサガ Blu-ray BOX 初回生産限定盤 Blu-ray 思い、思われ、ふり、ふられ 完全生産限定版 Blu-ray Fate/Grand Carnival 1st Season 完全生産限定版 Blu-ray Fate/Grand Carnival 2nd Season 完全生産限定版 Blu-ray ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかIII OVA Blu-ray 映画プリキュアミラクルリープ みんなとの不思議な1日 BD特装版 Blu-ray アズールレーン 三笠大先輩と学ぶ世界の艦船 ぶるーれい Blu-ray 水瀬いのり Inori Minase 5th ANNIVERSARY LIVE Starry Wishes かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~ 22 OVA同梱版 呪術廻戦 公式ファンブック よつばと! 15 監修 庵野秀明・樋口真嗣など 夢のかけら 東宝特撮映画篇 パラレルパラダイス 13 特装版 アイドルマスター ミリオンライブ! Blooming Clover 9 オリジナルCD付き限定版 美樹本晴彦マクロス画集 軌 わだち― 夜ノみつき 10th EUSHULLY WORKS しらこ画集 ILLUSTRATION MAKING VISUAL BOOK カズアキ画集 Kazuaki game artworks ライザのアトリエ2 ~失われた伝承と秘密の妖精~ 公式ビジュアルコレクション ぼくたちは勉強ができない 第21巻 音声ドラマ ミニ画集付き同梱版 あいきょう 荻pote作品集 ヒョーゴノスケ流 イラストの描き方 TVアニメ『くまクマ熊ベアー』オフィシャルファンブック 押井守原作・総監督 西村純二監督作品 『ぶらどらぶ』 解体新書公式コンプリートガイド OCTOPATH TRAVELER Design Works THE ART OF OCTOPATH 2016-2020 おそ松さん 3rd season SPECIAL BOOK 描きたい!!を信じる 少年ジャンプがどうしても伝えたいマンガの描き方 YMO1978-2043 「小冊子・YMO全トラックリスト2021 Amazon限定表紙版」付き To LOVEる -とらぶる- ダークネス FIGURE PHOTOGRAPHY COLLECTION 斉藤朱夏 CALENDAR 2021.4-2022.3 ラブライブ! サンシャイン!! Aqours DOME TOUR COMIC ILLUSTRATION BOOK ラブライブ! サンシャイン!! Aqours COMIC ILLUSTRATION BOOK 2020 Winter イジらないで、長瀞さん 10 特装版 「はたらく細胞」公式アニメ完全ガイド リスアニ! Vol.43.2「アイドルマスター」音楽大全 永久保存版VII アイドルマスター シャイニーカラーズ 3 CD付き特装版 ウルトラマンマックス 15年目の証言録 ウルトラマンZ特写写真集 じじぃ 人生は深いな 冴えない彼女の育てかた 深崎暮人画集 上 Flat. ぷよぷよ アートワークコレクション 古谷静佳1st写真集 re START THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS STARLIGHT MASTER COLLABORATION! Great Journey ウルトラマンゼロ Blu-ray BOX クロスアンジュ 天使と竜の輪舞 Blu-ray BOX 初回生産限定版 小林さんちのメイドラゴンBlu-ray BOX ゆゆ式Blu-ray BOX スペシャルプライス版 とーとつにエジプト神 Blu-ray 直球表題ロボットアニメ 全話いっき見ブルーレイ 未来ロボ ダルタニアス 一挙見Blu-ray VOL.1 シュヴァルツェスマーケン 全話見Blu-ray ワールドトリガー一挙見Blu‐ray VOL.1 異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術 魔王プレイボックス 初回生産限定 トータル・イクリプス 全話見Blu-ray Blu-ray Cutie Honey Universe Complete Edition 夜ノヤッターマン 全話いっき見ブルーレイ こみっくがーるず Blu-ray BOX 初回生産限定 Blu-ray 幼女社長 むじなカンパニーセット 初回生産限定 ログ・ホライズン 円卓崩壊 Blu-ray BOX 七つの大罪 憤怒の審判 Blu-ray BOX I Blu-ray 水樹奈々 NANA ACOUSTIC ONLINE 『Dr.STONE』2nd SEASON Blu-ray BOX【初回生産限定版】 魔術士オーフェンはぐれ旅 キムラック編 Blu‐ray BOX 今井麻美 Winter Live「Flow of time」 - 2019.12.26 at EX THEATER ROPPONGI - Blu-ray盤 Blu-ray 仮面ライダーゼロワン ショートアニメ EVERYONE'S DAILY LIFE 仮面ライダー一挙見Blu-ray 1号 2号・V3編 仮面ライダー一挙見Blu-ray X・アマゾン・ストロンガー編 スーパー戦隊一挙見Blu-ray 1975-1981 スーパー戦隊一挙見Blu-ray 1982-1986 半妖の夜叉姫 Blu-ray Disc BOX 1 完全生産限定版 裏世界ピクニック Blu-ray BOX上巻 初回生産限定 Levius レビウス Blu-ray BOX【期間限定版】 スーパー戦隊 学研の図鑑 江口寿史美人画集 彼女 アニメディスクガイド80's レコード針の音が聴こえる necomi画集 PHONOGRAPHIC フルーツバスケット アニメ2nd season 高屋奈月 Illustrations 2 彼女、お借りします TVアニメ第1期 公式設定資料集 ドラゴンボール 超戦士シールウエハースZ 超シールガイド ガンダムアーカイヴス『ガンダムビルドシリーズ』編 Angel Beats! 天使画集 Angel Diary PANZER FRAULEIN 野上武志画集 【陸編】 Angel's cage るび様画集 Sweet Dream はすね画集 画集 制服Girl's▼コレクション もりょ作品集 異世界ファンタジーのキャラクターコレクション 劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」公式ビジュアルBOOK アイドルマスター シャイニーカラーズ イラストレーション ワークス VOL.2 Blu-rayDisc付き 八十亀ちゃんかんさつにっき 10 特装版 あんさんぶるスターズ! Ready For Star 2巻 缶バッジ付 Switch エーペックスレジェンズ チャンピオンエディション New ポケモンスナップ -Switch 【PS4】BIOHAZARD VILLAGE PLAMAX 聖戦士ダンバイン サーバイン ノンスケール PS製 組み立て式プラスチックモデル スーパーミニプラ 無敵ロボ トライダーG7 3個入りBOX 魔道祖師 前塵編 完全生産限定版 HGUC 機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ Ξガンダム MG 機動戦士ガンダムSEED モビルジン 1/100スケール カンチ 青 ノンスケール ABS&ダイキャスト製 塗装済み完成品 ☆赤ver 魔女の旅々17 ドラマCD付き特装版 クリストファー・ノーランの世界 メイキング・オブ・インターステラー BEYOND TIME AND SPACE 時空を超えて るるぶアズールレーン からかい上手の高木さん15からかいカレンダーカード付き特別版 「武装神姫」原案イラスト集 ALLSTARS 機動戦士ガンダム サンダーボルト 17 キャラクターブック付き限定版 とある科学の超電磁砲T OFFICIAL VISUAL BOOK Aqours 5周年記念アニメーションPV付きシングル「smile smile ship Start!」【BD付】