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終幕――鋼の救世主 ◆Wv2FAxNIf. 誰も動かなかった。 狭間とゾルダの足さえ恐怖に震え、頬を流れた冷や汗が顎を伝い落ちる。 だが赤い魔神がカシャリと一歩踏み出した事で、二人は弾かれたように駆け出した。 狭間が斬鉄剣を振り下ろし、ゾルダが別の角度からギガランチャーを撃ち込んだ。 シャドームーンは回避は疎か、防御すらしない。 パキン。 冗談のような軽い音を立てて斬鉄剣が折れた。 シルバーガードに触れたという、ただそれだけの事で。 斬鉄剣は紛れもなく名刀だが、飽くまで人の手によって打たれたもの。 究極の王を斬る事は叶わなかった。 弧を描いて落ちていく刀身を、シャドームーンの背に当たった砲弾から広がる爆炎を、狭間は呆然と見詰める。 「最早釣り合わんな」 二つの王の石が並んだシャドーチャジャーが輝き出す。 狭間が我に返った時には遅い。 「マカラカー、」 後ろから学制服の襟を引かれ、詠唱が途切れる。 狭間の頭があった位置をビームが通過していき、当の狭間はゾルダによって小脇に抱えられていた。 ゾルダがマグナバイザーツヴァイを連射しながらシャドームーンと距離を取る。 ギガランチャーは通用しないと判断し、早々に放棄したようだ。 「しっかりしてよね、頼りにしてるんだから」 「すまない……」 狭間を下ろしたゾルダがデイパックから素早く取り出したのは、ジェレミアが最後に使っていた日本刀。 炎髪灼眼のフレイムヘイズが愛刀・贄殿紗那だった。 狭間がそれを鞘から抜き、改めて構える。 シャドームーンはまだ自分から仕掛けるつもりはないようだった。 「試したい事があるんだけど、時間稼いでくれる?」 「……余り期待はしないでくれ」 「まぁ、そりゃあね。 なるべく急ぐよ」 ゾルダが退き、狭間が残る。 刀を握る手が汗でべたつき、己の鼓動がいつになく騒がしい。 怯えている。 魔界を制した狭間であっても、この先にそびえ立つ壁を乗り越えられる気がしなかった。 「まだ諦めないか」 「あぁ……貴様が誰であろうと、僕達は負けられないからな」 「それでこそ、この私が敵と認めた人間だ」 シャドームーンが上へと手を翳し、再び二振りのシャドーセイバーが形成される。 この二刀によって串刺しにされる己の姿が容易に想像出来た。 逃げ出したくなるが、逃げ場はない。 何より、思い出が狭間を踏み留まらせる。 シャドームーンが地面を蹴る。 たった一歩で狭間の間合いを侵略し、頭上に高く掲げた剣を下ろした。 狭間が仰け反るように回避すると、もう一本のシャドーセイバーが横薙ぎに狭間を襲う。 それを狭間はもう一歩退き、避ける。 “究極の王”が振る剣は、最早目にも映らない速さ。 狭間にも見えていない。 それをかろうじて躱せているのは、偏に無意識の海がもたらした「勘」に助けられているからだ。 心のないシャドームーンの剣筋を読むのは至難だが、五十九人の経験が挾間の体を突き動かしていた。 明治の剣豪、侍の末裔、ブリタニア帝国の騎士、フレイムヘイズ、刀や剣と共にあった者達の知識に助けられている。 「今度は私の真似か」 「あるものは何だって使う。 そうでなければ、貴様は倒せない……!」 狭間が吸収しているのは皆の知識や技だけではない。 目の前で相対しているシャドームーンの動きすら、間近に見る事で盗んでいる。 その場で得たものをその場で使う付け焼き刃に過ぎないが、手段を選んでいる余裕はなかった。 二刀流のシャドームーンに対し、贄殿遮那一本で立ち向かう狭間。 身体能力や技術だけでなく手数においても不利を強いられ、戦いが始まった頃とは逆に狭間が防戦一方となっていた。 ただしシャドームーンがしていたように、相手の斬撃をいなす事は出来ない。 力の差は歴然で、受け止めるどころか太刀筋を変える事さえ困難なのだ。 狭間に出来るのは、ひたすら躱す事だけだ。 「無駄な足掻きだ……世界はこの月が支配する。 貴様達に夜明けは訪れない」 「させないと言っているだろう……!!」 とは言え、見えない攻撃をいつまでも躱せるはずもない。 鋭く斬り込んできた赤い剣が狭間の胸を貫く。 「ッ……!!!」 贄殿遮那で僅かに切っ先を逸らし、致命傷だけは避ける。 そして致命傷でさえなければ、【魔人】イフブレイカーの恩恵を得た今の狭間なら持ち堪えられる。 「ディアラハン……!」 シャドーセイバーが引き抜かれてすぐに傷を回復させ、続く攻撃を回避する。 攻撃の隙は一瞬たりとも与えられず、死は常に目の前にある状況。 それでも心折れずに居られるのは、集中を切らさずに居られるのは、信頼があるからだ。 シャドーチャージャーに急速にエネルギーが集まるのを見て戦慄する。 だがすぐにそれは光が収まり、シャドームーンは攻撃の手を止めた。 「……時間稼ぎとしては優秀だったな」 「!! 北岡……」 ゾルダが余裕のある歩みで挾間の横へと並ぶ。 ゾルダの疲労も蓄積しているはずだが、それはおくびにも出していなかった。 「もう一本、折れない剣持ってきたよ」 北岡が手にしているのはマグナバイザーツヴァイ一つだった。 狭間が疑問を表情に出すと、ゾルダは指を差す。 「上だよ」 空気が振動する。 シャドームーンは今の姿になってから初めて回避行動を取った。 シャドームーンが立っていた場所へと落下してきたのは、ゾルダと同じ緑を基調とした巨人である。 マグナギガがサバイブによって進化したミラーモンスター、マグナテラ。 だがそのサイズはミラーモンスターのものから大きく逸脱している。 見上げるようなその大きさは。 その目に宿った光は。 背負った大剣は。 呆然とする狭間の前で、ゾルダは答えを口にする。 「“夜明け”のヴァン」 一度は敗北し、パイロットと共に眠りについたはずの機体。 ダンが姿を変え、再度シャドームーンと相見える。 ▽ 「志々雄みたいだから、やりたくなかったんだけどね」 ――AD VENT―― マグナテラを召還しながら、『それ』を前にしてゾルダは語る。 死体に鞭打つこの行動は、出来れば避けたかった。 生粋の悪。 黒を白に変えるスーパー弁護士の力をもってしても染まらない黒。 一緒にされたくない――心底そう思った男と、同じ手を使おうとしている。 だが狭間と同様、ゾルダもまた手段を選べない状況にあるのだ。 「休んでるとこ、悪いんだけどさ」 マグナテラを従え、語り掛ける相手はダン・オブ・サーズデイ。 役目を終え、操縦者と共にその機能を停止させた巨大兵器ヨロイ。 装甲は傷付き、大破寸前と言っても良い状態だった。 話を振ったところで返事があるはずがないが、ゾルダは続ける。 「あんたとは碌に話もしなかったけど、こっちはあんたの事を知ってるんだ」 目的。 願い。 幸せな結婚式、幸せな夢。 無意識の海を通して、全てを見ている。 「あんた、これでいいの? 偉そうな剣を一本折ったぐらいで満足するような奴がさ……何年も飽きずに仇討ちなんて考えるわけないじゃない」 ダンのパイロット、ヴァンにとってシャドームーンの存在は通過点。 見ていたのは『未来』、最愛の花嫁の仇を討って手にする『明日』。 しつこく、一途で、ただただ愛に生きた純粋な馬鹿。 ヴァンという男を、ヴァンという男が関わった者達を、北岡は知っている。 「あんたが負わせた傷、月の力で全回復だって。 しかもますますパワーアップって、ムカつくでしょ」 敗北に終わった戦いの記憶を。 その時の煮え滾る感情を。 北岡は共有している。 「だから、もう一度だけ」 今の北岡は自分の為だけではなく、他人の為にも戦っている。 背負うものが増えすぎた。 だからこそ。 光る粒子がダンを包み込む。 それは、アルターの光だった。 アルター能力者は生まれる前から『向こう側』の世界を認識し、そのアクセス方法を知っている。 アクセスする事で、物質を変換し己のエゴを具現化するのだ。 その方法は言語化出来るようなものではなく、多くのアルター能力者は無意識に行っている。 「何となく」、という言葉が近いのだろう。 そしてその「何となく」もまた――無意識の海の中を漂っていた。 北岡はそれを、うっすらとそれを感じ取った。 それだけではない。 この場所は、nのフィールドを通じて全ての世界と繋がった場所。 そして、クーガーが命を燃やした場所。 ラディカル・グッドスピードによってアルター粒子が濃くなった特殊な空間である。 故に、間接的な知識しか持たない北岡でもアクセスが可能となったのだ。 ダンが消える。 そして再構築される先はマグナテラ。 融合装着型アルターのように、マグナテラが鎧としてそれを纏う。 北岡のエゴが形となったその鎧は、マグナテラと良く似た形態を取った。 その質量はダンと同じだけのものであり、圧倒的な巨体を誇る。 しかしそこに、誤算があった。 『めんどくせぇ……俺はな、眠いんだ』 気だるげな男の声が聞こえ、ゾルダは仮面の下で目を見開いた。 アルターは己のエゴそのものであり、魂そのものである。 だからただの足場を変換するよりも誰かの思いの残ったものを使った方がいいと、そう考えての行動だった。 こんな事まで計算に入れていたわけではない。 しかし「あり得ない」とも思わず、ゾルダは笑みを作る。 『だから、さっさと終わらせる』 「……有り難いね。 俺ももううんざりだからさ」 ドラグレッダーに魂を捕食された劉鳳は“魂の反逆”を起こし、真司に己の魂そのものであるアルターを発現させた。 それは本来起こり得ない、奇跡のような出来事であった。 だがその時と同じ敵を前にして、奇跡は再び起こる。 目的を果たせないまま敗北した男の意志は、まだ死んでいない。 マグナテラに取り込まれても魂の形を失う事なく、どころかマグナテラの体の主導権を奪い取ったのだ。 「『こんな所で終われない――そう思うだろ、あんたも!!!』」 『明日』を奪おうとする敵を討つ為に。 夜明けをもたらす為に。 北岡のアルター『マグナテラ』の目に、ダンと同じ色の光が宿る。 ▽ シャドームーンに振り下ろされるその巨大な剣に、名前はない。 ただ“ダンの剣”と呼ばれていた。 パイロットと同様、立派な名前を持たない――ただ斬れればいい。 ヴァンの生き様を反映したとも言えるその剣を、シャドームーンは交差させた双剣によって受け止めた。 マグナテラの重量と力によってシャドームーンの足場が陥没するが、剣と剣はなおも拮抗していた。 「まだ足掻くか……やはり、面白い!!!」 マグナテラの動きにかつての鈍重さはない。 北岡が相手取ったKMFのように、元となったダンのように、全ての関節がしなやかに動く。 そしてその出力は、本来のマグナテラの力にもダンのマシンスペックにも依存していない。 ただ北岡とヴァンの意志が、出力を決める。 二人の願いの強さがそのままマグナテラの力になる。 今、このアルターは赤い魔神と渡り合うだけの強さを手にしていた。 マグナテラの大剣がシャドームーンを薙ぎ払う。 吹き飛ばされるシャドームーンだが、大剣を振るわれた方向に向かって自ら跳んで威力を相殺しているだけだ。 斬撃を完璧に防いでおり、ダメージは皆無。 しかしこうしてシャドームーンが防御しているという事は、当たればシャドームーンとて無傷で済まないという事だ。 戦いは成立している。 危なげなく着地したシャドームーンのシャドーチャージャーが輝き出す。 如何に創世王であっても、これだけのサイズ差のある敵を斬るのは至難。 故にビーム主体の攻撃となるのは必然である。 そしてそれを迎え打つべく、マグナテラの全身の砲門が開いた。 シャドービームとマグナテラのミサイルが誘爆を引き起こし、爆炎が辺りを埋め尽くした。 しかし視界が晴れるのを待たず、炎と煙の中で両者は再び剣戟を打ち鳴らす。 ▽ 巨人と魔神の攻防を背景に、狭間は一時的に戦線を外れた。 戦況を見守りたい気持ちもあったが、後方の事がずっと気に掛かっていたのだ。 「柊……」 「大、丈夫です……」 つかさは座り込んでいた。 起き上がれない状態からは回復したようだ。 しかし俯き、前髪で隠れた表情は見えない。 頬を伝い落ちた水滴が汗なのか涙なのかも、狭間からは判断がつかなかった。 「ごめんなさい、狭間さん……私……」 「僕があの時倒せていれば、こんな事にはならなかった。 柊は悪くない」 つかさに対し、もっと適切な態度はきっとあるはずだ。 翠星石を失った――それも自分のせいで失ってしまったと思っている今のつかさに。 だがそれ以上の言葉は出て来なかった。 ジェレミアを失った直後と同じように。 優れた頭脳を持っていようと、新しい生き方を始めようと、狭間に出来る事は余りに少なかった。 「……柊、僕と北岡のデイパックを預かっていてくれないか」 「それ、って……」 「余計な意味はないから大丈夫だ。 単に僕も北岡も、荷物が邪魔になっただけだから」 後で必ず取りに来るからと告げ、二つのデイパックを渡す。 つかさが顔を上げる事はなかったが、渡されたデイパックを固く握り締めていた。 狭間が一つ、息を吐き出して体の力を抜く。 傷は全て塞いでいるものの、失血と疲労が体に重くのし掛かっていた。 一時だけの休息を取り、そしてすぐに緊張を取り戻す。 マグナテラとシャドームーンの剣の打ち合いは未だ続き、その度に空気がビリビリと震えて身を締め付けてくるのだ。 すぐに戻らなければならない。 「狭間君、その、話があるんだが」 戦場に足を向けた狭間を呼び止めたのは、深刻な表情をした上田だった。 顔は深刻、しかし聞き流して良い話である事の方が多いと、狭間は経験則で知っている。 とは言え初めから聞かないわけにもいかず、狭間は続きを促した。 「実は君達が戦っている間に、私の天才的な洞察力によって大きな収穫を得たんだ。 大きいと言っても私の器ほどではなかったが、きっと役に立つはずだ。 しかし私が取りに行こうにも、今の柊君を一人にするわけには――」 「何があったんだ?」 不必要な情報が多すぎた為、耐えかねた狭間が答えを急がせた。 そして結果的に上田は、この戦いで大きく貢献する事になる。 ▽ 巨大な力と力がぶつかり合うその場所は、惨状と呼ぶに相応しい状態になっていた。 足場は爆発や斬撃でめくれ上がり、空間のあちこちに穴が空いてnのフィールドを覗かせている。 それでもマグナテラとシャドームーンの攻防は終わる気配を見せなかった。 七つの賢者の石を有するシャドームーンのエネルギーは無尽蔵。 マグナテラも、弾薬が尽きればゾルダが足場をアルター化させて次弾を補っている。 しかし長く続いた攻防は唐突に終わりを迎える。 マグナテラが大剣を薙ぎ払う――それをシャドームーンは受け止めるでも受け流すでもなく、跳躍して回避した。 着地するのは他でもない、その大剣の上である。 そしてマグナテラが振り払うよりも速く、シャドームーンは大剣の上を駆け抜けた。 マグナテラの間合いの内の内、超至近距離に迫る。 全長約四メートルから五メートル程に収まるKMFに対し、ヨロイ――今のマグナテラは約二十五メートル。 人間大の敵を相手にするには余りに巨大で、懐まで踏み込まれた時に抗う手段が限られてしまう。 何より、相手にしているのはシャドームーン。 少々の攻撃では傷付かない頑強さを、装甲さえ斬り裂く剣を、ヨロイを破壊するだけの火力を、全てを兼ね備えた王である。 「この距離ではミサイルは撃てまい」 マグナテラの手首まで到達したシャドームーンが、腹部に向かって跳ぶ。 そしてシャドーチャージャーに蓄積したエネルギーを解放し、シャドービームを展開する。 威力、範囲共にRXの時よりも更に上。 マグナテラの巨体をビームが覆い尽くし、蹂躙する。 「がぁぁあああぁあああああああ!!!!!」 ゾルダが膝を着く。 アルターである以上、マグナテラのダメージは本体であるゾルダにも反映される。 そしてシャドームーンはマグナテラの胸に剣を突き立て、下へと振り抜こうとしていた。 それに対しマグナテラは、砲門を己へと向ける。 「!! まさか、」 シャドーセイバーを抜いて跳び退くが、砲弾はそれよりも速く。 シャドームーン諸とも、マグナテラの全身が爆炎に包まれた。 爆風に煽られて高く舞い上げられたシャドームーンだが、マグナテラから遠く離れた地点に降り立った。 赤い体を煤で汚す事になったものの、外傷はない。 マグナテラは未だ炎の中にあったが、シャドームーンのマイティアイはその内側の虹色の光を捉えた。 同時に大剣が炎の壁を斬り裂いて道を作る。 そこに居たのは、マグナテラではなかった。 「まだ、終わらないでしょ……」 『当たり前だろ。 俺はまだ、あいつをぶったぎってないからな』 「そうだ、だから……!!」 シャドームーンを倒す、殺す――ゾルダとヴァンがその思いを一つにした事で、ゾルダのアルターに変化が起きた。 ヴァンのエゴが反映された白い機体。 推定頭頂高24.8m、本体重量unknown。 “神は裁き”と名付けられた、元囚人惑星エンドレス・イリュージョンを統率したオリジナル7の内の一機。 「『Wake Up……ダン!!!!』」 その機体の名は、ダン・オブ・サーズデイ。 重火器を捨てたその体は、マグナテラよりも更に速い。 シャドームーンの回避にすら追い付き、その頭上に大剣を振り翳す。 一際大きな地響きが起きた。 シャドームーンの双剣がダンの剣を防ぎ、その重量によって足場が砕けたのだ。 しかしシャドームーンの四肢はなおも大剣による一撃を支えている。 「『うぉぉおおおおおおおおおおおおっ!!!!!』」 ヴァンとゾルダの叫びが重なり、ダンの出力が増大する。 無尽蔵のエネルギーを注がれていたにも関わらずシャドーセイバーが軋み、二振りが同時に折れた。 だが即座にシャドームーンは両腕を交差させ、落ちてきた大剣を受け止める。 「貴様……!!」 「これで、落ちろッ……!!!」 シャドームーンの腕の強化外装に亀裂が走る。 そして足場が更に砕け、シャドームーンが片膝を着いた。 「この私が、膝を!?」 シャドームーンは驚愕の声を上げ、シャドーチャージャーからビームを発射する。 ダンは跳躍してそれを躱し、更に上昇していく。 ――FINAL VENT―― ゾルダがカードをベントインする。 ゾルダサバイブのファイナルベントは、マグナテラが戦車へと変形して砲撃と共に敵に体当たりするというもの。 そのマグナテラがダンと一体化した今、そのカードを使うなら。 ファイナルベントは別の形を取る事になる。 ダンが跳ぶ。 天井の存在しない空間の中を上へ上へと跳び、やがて止まる。 一度目の決着の時と同じ、上空約二百メートル。 違うのは、ダンが変形したという点。 その形は、一本の剣だった。 オリジナル7の機体が大気圏に突入する際に取る形態である。 普段は宇宙にある機体が地上に降りる時、わざわざ剣の形を取る事には意味がある。 囚人惑星エンドレス・イリュージョン。 地球――“マザー”と呼ばれる星の犯罪者を収容するのが、この惑星の元々の役割であった。 そしてオリジナル7は、そこに住む囚人達を統治するべく開発された機体。 その形状によって囚人達に畏怖を知らしめ、反乱の意志を奪ったのだ。 今、眼下にいるのは囚人ではない。 相手の姿形で恐れ慄くような敵ではない。 しかし“神は裁き”の名に従い、ダンはシャドームーンに断罪を下す。 遙か下、一滴の血痕のように見えるシャドームーンに向けてダンが急降下する。 この攻撃を、シャドームーンは避けないだろうという確信があった。 膝を着けられた相手。 その相手の最大の攻撃を避ける事は、シャドームーンの矜持が許さない。 遠くから見ればそれは、一筋の流れ星のようであっただろう。 巨大な一振りの剣が、落ちる。 そして再び双剣を生成したシャドームーンがそれを迎え討つ。 その瞬間の衝撃は境界の向こう、nのフィールドの先の扉さえも破壊する程のものだった。 空間の境界は最早意味を成さなくなり、穴だらけになった景色の中で、魔神と大剣が意志をぶつけ合う。 シャドーセイバーが持ち堪えたのはほんの数秒だった。 シャドームーンは折れた剣を放棄し、その両腕で剣の突進を受け止める。 シャドービームがダンの巨体を包むように襲うが、その勢いに衰えは微塵もない。 対するシャドームーンの赤い強化外装は既に剥がれ、露出した人工筋肉から火花が飛び散っている。 「何故……私が、二度までも……!!」 『てめーは俺が!!!! ぶっ殺すっつっただろうがぁあああああああぁあああああああああッ!!!!!!』 ビームの出力に、ダンの装甲が砕けていく。 しかしゾルダはその一撃に注力する傍ら、翠星石の如雨露が作った水溜まりからミラーモンスターを出現させた。 一体や二体ではない。 先程シャドームーンに破壊されたモンスターを除く全てである。 ――UNITE VENT―― 核となるのはマグナテラ、即ちダン。 ミラーモンスター達を新たな鎧として纏い、ダンは更なる突進力を得る。 しかしダンが強化される程に、二つのキングストーンが輝きを増していく。 ダンの破損が進み、ゾルダの体が灼かれていく。 「この創世王に、勝てると思うな!!!」 「それでも俺は……!!」 諦められるはずがない。 既に、願ったのだ。 ゾルダは誰より強く命の音を鳴らし、叫ぶ。 「俺は、『明日』が欲しいんだよッ!!!!」 それはV.V.にバトルロワイアル開催を決意させた、始まりの一言だった。 最初の『願い』だった。 ズドン、と。 大剣が地面へと突き立った。 そして半拍遅れ、赤い腕が落下する。 “究極の王”となったシャドームーンは、転がった左腕を呆然と見詰めた。 「……この、創世王の……腕が」 それまでの轟音が嘘だったかのように、辺りは静まり返っていた。 風一つなく、ただ変わり果てた景色と大破した大剣が、戦いの激しさを物語っている。 大剣――ダンは動かない。 そしてゾルダもまた地に伏し、起き上がる事はなかった。 ▽ カシャン、カシャン、カシャン。 シャドームーンは一人、歩を進める。 左肩から先を失いながら、それでもその神々しさは薄れない。 「……」 切断された肩が再生しない。 それだけが少々気に掛かったものの、創世王は歩みを止めない。 倒れたゾルダにとどめを刺すべく為に。 だがその前に、立ち塞がる影があった。 「シャドームーン!!!! …………さん!」 上田だった。 勇ましく呼び掛けようとしたものの途中で怖くなり、さん付けに変えてしまった。 しかし図体こそ大きいものの、誰よりも小心者にして小物だった上田が、たった一人で王と対峙している。 これだけで一つの奇跡である。 「き、君に願いはないんだろう。 わざわざ私達を殺して、自在法と呼ばれるものに頼る必要もないはずだ。 私達が負けを認めれば、そそ、それで充分なんじゃないか?」 完全に腰が引けている。 だが上田は何とか生き残ろうとして、シャドームーンを相手に交渉しているのだ。 しかしシャドームーンの視線は冷ややかだった。 表情は読み取れないのだが、冷ややかとしか思えなかった。 「上田、次郎。 随分早い段階から、私の視界の端でうろついていたな」 上田がシャドームーンと遭遇してしまったのは、第一回放送前の事である。 この場に残っている誰よりも早く接触し、その脅威を目の当たりにしている。 故に、当然、分かっているのだ。 「貴様達を全員殺す事でのみ、私の矜持は満たされる。 運良くここまで生き延びた貴様なら、それも分かるだろう」 丸腰というわけではなく一応腰にブラフマーストラを差しておいたのだが、抜けるような状況ではない。 上田は尻餅をつき、震えながら後ずさる。 シャドームーンが歩みを再開し、上田に向けて手を翳した。 「北岡、上田、ありがとう」 少年の声がそこに割り込んだ。 上田が四つん這いになって逃げ出すと、代わりに狭間偉出夫がシャドームーンに相対す。 「皆のお陰で、僕はまだ戦える」 「……二刀流か」 狭間が携えるのは二振りの刀剣。 贄殿遮那――そして、ヒノカグツチ。 「いいや……僕が使うのはヒノカグツチだけだ」 狭間は目を閉じ、そして決別する。 それまで狭間と重なり合っていた黄色の影が狭間から離れていき、狭間の隣りに立った。 そして、その言葉を口にする。 「……“Alter”」 己のガーディアン、【魔人】イフブレイカーを触媒として『向こう側』の世界にアクセスする。 そして顕現するのは、参加者の一人。 軽小坂高校の制服に身を包んだ男子学生、蒼嶋駿朔だった。 「行くぞ、蒼嶋。 ふざけた“もし”をぶっ壊しに」 狭間がヒノカグツチを構え、蒼嶋は贄殿遮那を握る。 終わりは確実に、近付いている。 時系列順で読む Back 終幕――その旋律は夢見るように Next 終幕――果ての果て 投下順で読む Back 終幕――その旋律は夢見るように Next 終幕――果ての果て 176 終幕――その旋律は夢見るように シャドームーン 176 終幕――果ての果て 柊つかさ 北岡秀一 狭間偉出夫 上田次郎
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終幕――その旋律は夢見るように ◆Wv2FAxNIf. 戦闘の煽りを受けないよう、つかさと共に遠く離れた位置から戦況を見守っていた上田。 狭間へ送る視線は真剣そのものだった。 「狭間君、そうだったのか……」 彫りが深く、少々日本人離れした濃さの顔にはイタリア人温泉技師も真っ青。 そんな上田が眉間に大きな皺を刻んで考え込む。 狭間は天才だが、この男もまた天才。 故に狭間に可能な事は、上田にとってもまた可能なのである。 「つまり……私も……訓練を積めば、飛天御剣流の使い手に!!!」 「ええっ、凄いです上田先生!」 上田の台詞を聞いていたつかさは素直に感嘆の声を上げた。 残念ながらこの場にはツッコミ役がいない。 気を良くした上田が己の肉体美について語るうちに、戦っていた四人は「外」へと戦場を移した。 取り残された二人。 つかさの隣りにて、上田は所在なげに待つ。 外がどうなっているのか、上田達が立っている場所からは見えない。 だが二人はその場から動かない。 彼らを追い掛ける術を持たず、また追い掛けたところで足手纏いにしかならないのは明白だからだ。 空間にぽっかりと空いた穴を覗く事すら危険を伴い、躊躇われる。 故に戦況を窺う事もなく立ち尽くしているのだが、とにかく手持ち無沙汰だった。 しかもミーディアムとなったつかさとは違い、上田は何の役割も負っていない。 流石に何かした方がいいのではないかと、そわそわと落ち着きなく視線を彷徨わせ始める。 「上田先生」 挙動不審、の一言で表現出来る状態にあった上田に、つかさの声が掛かる。 見詰めてくる彼女の顔は僅かに紅潮しており、上田の心拍数が跳ね上がった。 「と、突然改まってどうかしたのか……? サインならまた今度に、」 「さっき、応援してくれてありがとうございました。 それから……こなちゃんの事と、みなみちゃんの事も」 「さっき」とは、シャドームーンに啖呵を切った時の話だろう。 そして泉こなた。岩崎みなみ。 つかさの同級生と後輩。 小早川ゆたかを失い、心を蝕まれた二人。 「記憶を見て、私が悪い事をしたって知っても……それでも上田先生や翠星石ちゃんが味方してくれて、嬉しかったです。 それに、こなちゃんを止めてくれて……みなみちゃんと最後まで一緒にいてくれて、ありがとうございました」 ルルーシュ・ランペルージと浅倉威の殺害。 それは確かに悪だが、記憶を見ていれば片や事故、片や正当防衛のようなものだと分かる。 上田にとって、つかさの印象を大きく変えるようなものではなかった。 そしてこなたを止めた――ものの、結局彼女が正気に戻る事はなく、ミラーモンスターに捕食された。 みなみと最後まで一緒にいた――のは事実だが、彼女の心を救ったのは南光太郎である。 上田の心情を無視してはっきりと記すなら、上田はどんな場面でも大して役に立っていない。 総合すれば、つかさは礼を言う程でもない事に礼を言っている事になる。 自意識過剰な上田でも、それは少々決まりが悪かった。 役立たずな上田の姿を見ていた者達。 彼らの記憶を垣間見ているはずのつかさだが、上田を責めようともしない。 上田ですら実は密かに役立たずの自覚があるというのに、つかさはまるで気に留めていないようだった。 頭を下げて感謝する――竜宮レナが、狭間偉出夫に対してそうしたように。 「こなちゃん達は私と同じで……悪い事を、しました。 気持ちは凄く分かるんです。 大事な人がいなくなるのは……いなかった事になるのは……寂しくて、悲しくて……。 だから上田先生が傍にいて良かったって、思うんです」 先程の興奮がまだ残っているのか、熱っぽく語るつかさ。 桃色に染まった頬とほんの少し潤んだ瞳に、上田は目を奪われる。 「だから、ありがとうございました」 「礼を言うなら…………私もその、ビーフシチューを……」 遠慮がちに言うと、同時に腹が鳴った。 この一日、隙を見ては支給された食料を貪っていたのだが、落ち着いた食事は全く取れていない。 杉下右京も認める最高級ワイン・パルトネールで作ったビーフシチューの晩餐が、正直なところ羨ましかった。 「また作りますから」 つかさが微笑み、上田は胸を撃ち抜かれる。 「まさか君は、私に恋を――」 「翠星石ちゃんにも食べて貰いたいんです。 それに今度は狭間さんも同じテーブルで食べられたらいいなって」 ついつかさの手を取ろうとした上田だが、失敗した。 つかさに悪気がないだけに落ち込んでしまう。 しかしすぐに立ち直った。 天才は細かい事をいちいち引き摺らない。 「しかし、その前に聞いておきたいんだが。 君はこの後どうするんだ?」 「え?」 「理由があったにしても、君達がしたのは悪い事だ。 事故でも、正当防衛でも」 「そう、ですね……右京さんやLさんも、きっとそう言います。 悪い事は、悪い事です」 殺人は悪い事。 誰でも知っている。 上田とて、その罪を暴く側の人間だ。 しかし上田はつかさに対し、はっきりとした態度を取る事が出来なかった。 上田次郎と山田奈緒子が殺人事件を暴くと、決まって薄暗い真実が待っていた。 いっそ暴かなければ丸く収まっていたような事を掻き回し、後ろめたい結果を残す。 それでいて反省する事なく次の事件を解決する――それが上田と山田というコンビだったのだ。 そんな上田だから今回も変化なく、つかさという「犯人」に対し「何も悪くない」とは言ってやれなかった。 かと言って、上田はあの誰よりも優れた刑事と名探偵のような絶対の信念を持っているわけではない。 「どんな状況下で起きていようと犯罪は法によって裁かれるべき」と、そう断じる事もしないのだ。 故に上田の姿勢は、非常に曖昧だった。 「悪い事をしたからと言って、警察に行っても取り合ってはくれないだろう。 そもそも検証しようにもあの会場に戻るにはどうすればいいのか、私の物理学の知識をもってしても……。 そうなったら君は、どうするんだ?」 許すでも責めるでもなく純粋に、どうするつもりでいるのかを聞きたかった。 悪い事をした多くの人間の末路を知っているから、心配だった。 これから彼女がどんな人生を歩むのか、と。 問われて一瞬だけ表情を強ばらせたつかさだが、すぐに笑顔に戻った。 「皆の分まで、生きます」 はっきりとした口調に、上田は驚かされる。 真っ直ぐな視線を受け、上田の方が目を逸らしてしまいそうになった。 「悪い事をしておいて、勝手だと思います……でも私はそうしないと返せないんです。 償いとか、難しくて、どうすればいいのかまだ分からないですけど……これから時間を掛けて考えます。 その為に、帰ります」 こうして答えられたという事は、つかさの中で既に何度も繰り返されていた問いだったのだろう。 開き直るでもなく。 自己嫌悪に陥るでもなく。 つかさはつかさなりに、自分の犯した罪との折り合いを付けている。 「もう私が教える事は何もないようだな」と、上田は勝手に納得した。 そんな戦いと無縁なやり取りを、轟音が遮った。 未来を信じる会話。 希望に満ちた会話。 仲間を信じているからこその会話――それを終わらせるのは、創世王シャドームーンRX。 上田が轟音の元を辿って目を凝らすと、狭間達が出ていった穴の傍でゾルダが倒れていた。 続いて狭間と翠星石が、穴を通ってnのフィールドから戻ってきた――叩き込まれる、という形で。 シャドームーンが取った行動は単純だった。 後衛に居たゾルダの間合いまで一足で踏み込み、たった一度の蹴りで魔界の外へと追いやった。 勢いはそれでも弱まらず、ゾルダは自らがドラゴンライダーキックで空けた穴を通過して元の空間へ。 先刻魔界まで吹き飛ばされたシャドームーンと逆の結果になってしまった。 そしてシャドームーンはそのまま翠星石にシャドーパンチを食らわせて弾き飛ばす。 翠星石の体を受け止めようとした狭間すら巻き込み、二人はゾルダと同じ軌道を描いて元の空間に叩き戻されたのだ。 転がされた三人が立ち上がる。 シャドームーンも、今やnのフィールドとの出入り口になってしまった穴からゆったりとした足取りで帰還した。 シャドームーンが狭間達をわざわざこの空間に戻したのは、ただ勝つ為だではない。 敵と認めた者達を、一人残らず皆殺しにする為。 つかさも上田も逃がさないという意思表示の為に、戦場を再びこの始まりの場所へ移したのだ。 「人間、ライダー、ドール。 この私を倒すと言うなら見せるがいい。 貴様達の力を……!」 空間の穴から現れたシャドームーンの姿は、以前に増して強い威圧感を放っていた。 感覚だけの問題ではなく大きくなった複眼、太くなった首筋と、外見までもが明らかな変化を遂げている。 上田は気が遠くなった。 ▽ シャドームーンが両手を上げると、それぞれの手から赤い光が伸びて剣の形を作り出す。 そしてそれらが実体化し、二振りの赤い剣――シャドーセイバーとなった。 剣の生成は、本来は記憶喪失という重い代償を払った後で可能となるはずだった。 だが月の光を浴びた王の石は、それを難なく実現させたのだ。 左右で微妙に長さの異なるこの双剣はサタンサーベルと似た姿をしているが、それは見た目だけの話だ。 祭器としての性格が強かったサタンサーベルとは違い、シャドーセイバーはシャドームーンの敵を斬る為にある。 狭間が先陣を切り、斬鉄剣を振り下ろす。 だがそれはシャドーセイバー一本でピタリと止められていた。 シャドームーンは片腕の力しか使っていないというのに、びくともしない。 狭間は持ち堪えるのに精一杯で、攻撃に転じる余裕があるはずもなかった。 退けば死ぬ。 攻めても死ぬ。 狭間が身動きを取れなくなっている間に、シャドームーンはゆっくりともう一方の腕を持ち上げていた。 掲げたシャドーセイバーは、断頭台のギロチンに似ていた。 花弁の群れがシャドームーンを襲うも、最早外装に傷を付ける事すら叶わない。 ――SWORD VENT―― シャドームーンの振り下ろした剣を受け止めたのはドラグブレードだった。 初めて持つはずのその剣は、不思議とゾルダの手に馴染んでいる。 「慣れてないとか言ってる場合じゃないからね」 左右から挟み撃ちにする形で、狭間とゾルダが斬り掛かる。 だがシャドームーンの余裕は途切れなかった。 全力で振るわれる斬鉄剣とドラグブレードを左右のシャドーセイバーで軽々と捌いている。 新しい体の準備運動のつもりなのか、反撃はない。 その状況を黙って見ている翠星石ではなかった。 「だったら、こうするです!!」 双子の姉から受け継いだ庭師の鋏が、シャドームーンに向かって金の軌跡を描く。 しかしシャドーセイバーはその到達よりも早く斬鉄剣を弾き、そこから流れるような動きで鋏を受け止めた。 狭間が構え直して再度立ち向かうが、シャドームーンの蹴りが翠星石に向けられる。 その衝撃そのものはバリアによって受け止められたものの、翠星石の体が浮いてしまった。 結果としてシャドーセイバーが自由に動くようになり、またしても斬鉄剣は阻まれる。 その間、ゾルダはブレードを押す事も引く事も出来なかった。 五本の刃が踊る。 剣戟の音が場を支配する。 しかしシャドームーンには届く気配すらなかった。 「このっ……!!」 感情の高ぶりに合わせ、翠星石の体が赤い光を放ち始める。 脈打つような力の波動は、すぐ傍にいる狭間にも伝わってきた。 「よせ翠星石、その力は――」 「そんな事言ってて勝てる相手ですか!」 狭間が思わず口を噤む。 出し惜しみをしていて勝てる相手なら、このバトルロワイアルはとうに終結している。 如雨露の水が蔦を育て、蔦が骨格となり、鱗となった花弁が骨格を包む。 水銀燈の黒龍よりも強靱、真司のドラグレッダー以上の巨体を持つ龍が、シャドームーンへ牙を剥いた。 花弁一枚の鋭さは刃の如く、掠めただけでシャドームーンの装甲に傷を付けた。 太陽の石の力で満たせば、RXとなったシャドームーンにも通用する。 それを確かめた翠星石は更に力を注ぎ込み、より強くより速く龍を操る。 狭間が翠星石を制止しようとするが、今更止まるはずもなかった。 翠星石とて、太陽の石の力に頼る危険は承知しているのだ。 それでも頼らなければ、生まれ変わったシャドームーンは倒せない。 結局短期決戦に持ち込む他はなく、狭間は歯噛みして手を翳す。 「ブフダイン!!」 狙うのはシャドームーンの関節。 凍結は一瞬で砕かれるとしても、その一瞬が今は惜しい。 ――AD VENT―― 氷が砕かれると同時に、ドラグレッダーが5000℃に達する火球・ドラグブレスを吐き出す。 しかし当たる寸前でシャドービームに阻まれ、シャドームーンまでは届かない。 そして本命であった黒龍の顎もまた紙一重で回避された。 惜しかったのではなく――それだけ最小限の、まるで無駄のない動きで躱されたのだ。 そして黒龍との擦れ違い様、シャドームーンは龍の口角にシャドーセイバーを突き立てた。 襲った際の勢いをそのままに、龍が通り過ぎていく。 僅かも動かないシャドーセイバーが、龍の速度に合わせてその身を斬り裂いていく。 太陽の石の力を存分に注がれた龍は、その強大過ぎるエネルギー故に止まれなかった。 龍の巨体が上下にバクリと二つに割れる。 垂れ下がった下顎が地面と擦れ、花弁や羽を散らせて失速していく。 だが翠星石は更に如雨露を傾け、より多くのエネルギーを注ぎ込んだ。 「まだまだ……!!」 増量した花弁が傷を埋め、体積を肥大化させた龍が再びシャドームーンを襲う。 狭間が細かく魔法を詠唱してシャドームーンの退路を阻み、立ち止まればゾルダの砲撃が待っている。 そして黒龍は翠星石がエネルギーを注ぐ限り、何度でも再生して攻撃を仕掛ける事が出来る。 そこでシャドームーンは新たな手を打った。 「アクロバッター!!」 空間を突き破って現れたのは一台のバイクだった。 その正体は、シャドームーンの進化と呼応して生まれ変わったバトルホッパー。 会場に置き去りにされながらも、創世王の求めに応じて馳せ参じたのだ。 ――FINAL VENT―― ゾルダがバイクへと変形したドラグランザーに乗り込んで走り出す。 ゾルダを援護すべく翠星石が蔦を成長させてアクロバッターのタイヤを捉えようとするが、速い。 ドラグランザーが吐き出す火炎弾も悉く回避され、動きを止める事が出来ない。 アクロバッターの時速は750km。 ドラグランザーの時速は760km。 数値では僅かにドラグランザーが勝るものの、アクロバッターとてただ速いだけの乗り物ではない。 装甲を強化するのはソーラジルコンという、どんな高温・低温にも耐久し得る物質である。 そして搭乗のパワーと融合し、このソーラジルコンにエネルギーが充填されるのだ。 今のシャドームーンはただのRXではなく創世王を吸収したRXであり、ソーラジルコンに注がれるエネルギー量は計り知れない。 アクロバッターの必殺技はただただ単純な体当たり――アクロバットバーン。 だがそれは『必殺』と呼ぶにふさわしい威力を持ち、あらゆる障害物を破壊する。 ドラグランザーとアクロバッターの正面衝突。 隕石の衝突を思わせる程の衝撃。 突風と呼ぶのでは生温い、目に突き刺さるような風が、破壊の音と共に空間を震わせた。 ▽ ドラグランザーは砕かれ、ゾルダの体は地面に投げ出された。 狭間が倒れたゾルダに駆け寄ってディアラハンを掛けるが、すぐには立ち上がれない。 とは言えアクロバッターの前面の装甲も砕け、走りに支障が出る程の損傷を受けていた。 それに乗っていたシャドームーンもまた衝撃の余波を受けているはずだが、見た目からは判断が付かない。 アクロバッターを降りたシャドームーンが一歩、狭間とゾルダの方へと踏み出した。 「菩薩掌!!!」 狭間は膝を着いた状態のまま、体に練り込んだ第五元素を両の掌に集めてイメージを肥大化させる。 その巨大な手が挟み込むようにしてシャドームーンを潰そうとするが、シャドームーンは跳躍してそれを回避。 残されたアクロバッターが音を立てて破壊され、シャドームーンはそれを一瞥もせずに狭間の目の前へと降り立った。 「ぐっ……」 シャドームーンの蹴りが狭間の腹へ突き刺さる。 咄嗟に翠星石が二人の間に花弁の壁を割り込ませたが、それでも狭間を宙高く放り出すに充分な威力だった。 翠星石が黒羽で受け止める事で落下のダメージを軽減させたものの、狭間はうずくまったまま起き上がれずにいる。 「……終わりか」 呆れるような、憐れみさえ含むような声色だった。 それが翠星石の神経を逆撫でし、怒りを増幅させる。 「うるせーです!! 今ぺしゃんこにしてやりますから、大人しくそこで――」 「後ろを見てみろ」 それでもシャドームーンの声は飽くまで冷静だった。 口車に乗ってはならない。 振り返ってはならない。 隙を見せるわけにはいかない。 そう分かっていても、翠星石も北岡も狭間も――同時に後方へ注意を引かれてしまう。 「後ろ」にいるのは、つかさと上田。 守るべき者達。 シャドームーンの罠を疑っても、確認しないわけにはいかなかった。 それに三人共が、危惧してはいたのだ。 ただそれが、狭間が計算していたよりも早く訪れてしまっただけの話である。 「駄目……!」 つかさが止める声は間に合わない。 振り返った三人の視界に入ったのは、力なく倒れたつかさ。 そしてその彼女を助け起こそうとする上田の姿だった。 「ごめん、なさい……」 つかさの不調は明らかだった。 息を乱し、頬を極端に紅潮させ、疲弊を通り越して衰弱している。 重そうな目蓋がつかさの大きな瞳を半ばまで隠しており、意識を保たせるのがやっとのようだった。 全ての原因を理解した翠星石は動きを止める。 ローゼンメイデンは媒介となる人間と契約し、その力を用いて戦う。 翠星石の場合はつかさの力で直接戦うというより、つかさの力で暴走寸前の太陽の石をコントロールして戦っていた。 故に必要とする力は最少限に抑えられ、また翠星石とつかさの感情の同調により無理なく引き出されていたはずだった。 しかし五つのローザミスティカを抱え、太陽の石を制御しながら戦う翠星石が扱うエネルギーは余りに大きすぎた。 「最少限」の力が、つかさの命を脅かす。 翠星石は無意識のうちに、短時間のうちに、つかさの力を限界以上に使ってしまっていたのだ。 「駄目、私は、いいから……っ」 「い、いいわけねーです!! 何を言ってやがるですかこのおバカ!!!」 力を使い過ぎればミーディアムは死ぬ。 それを知っていながら、心乱されずに戦っていられるはずがない。 そしてその隙を、シャドームーンが逃すはずもない。 つかさの下に駆け付けようと空中を移動していた翠星石が、シャドービームに貫かれて地に落ちる。 バリアを展開する余裕はなかった。 腹に風穴を空けて不格好に転がり、つかさに向かって手を伸ばすも届かない。 翠星石を回復させようと狭間が手を伸ばすものの、投擲されたシャドーセイバーがそれを遮った。 狭間が寸でのところでそれを躱して再度詠唱を試みるが、既にシャドームーンは目前まで迫っている。 倒す事だけに集中して戦っても及ばない相手。 他者を守りながらで勝てる道理はないと、シャドームーンは無言にして雄弁に語る。 盾として翳した斬鉄剣は軽く振り払われ、エルボートリガーが狭間の首筋を斬り裂いた。 赤い血を噴水のように飛び散らせ、狭間の体が崩れ落ちる。 白い肌を、白い学制服を、赤に染めていく。 そしてシャドームーンの指先がつかさへと向けられた。 真っ直ぐに伸びた光が、つかさの命を刈り取る。 ――GUARD VENT―― つかさとシャドームーンの間に割って入ったゾルダがゴルトシールドでビームを受け止める。 たった一撃で盾は崩れたが、その後ろに居たゾルダにもつかさにもビームは届かなかった。 「させるわけ、ないでしょ……それだけは」 「そうか」 シャドームーンが通り過ぎた。 立ち塞がっていたゾルダの横を、堂々と。 その速さに、唐突さに、一瞬ゾルダは思考を停止させてしまう。 遅れて理解してシャドームーンを追おうとして、同時に腹部に熱が広がった。 「ッ……!!?」 腹に突き刺さったシャドーセイバー。 擦れ違い様に刺されたはずだが、気付く事が出来なかった。 「その娘を囮にして撃っていれば、貴様は私に手傷を負わせる程度の事は出来ただろう。 つくづく愚かしい」 反論する事もなく、ゾルダは倒れ伏す。 つかさが叫ぼうとするが、声すら出なかった。 「柊君、しっかりするんだ!! Why don t you do your b…………はっ」 気付けば、残っているのは上田一人だった。 シャドームーンと目が合う。 仮面の上からではシャドームーンの視線は辿れないのだが、今はどうしようもなく察してしまった。 「メディアラハン……」 上田の顔色が青ざめていくうちに、弱々しく唱えられた呪文が各人の傷を癒していく。 傷が塞がるだけであり、衰弱も疲労も残っている。 だが狭間とゾルダがそれぞれに剣と銃を手にして立ち上がった。 まだ戦いは終わってはいない。 諦めている者は誰もいなかった。 ▽ 一つ、後悔があった。 翠星石に、まだ何も言えていないのだ。 ――仲間がこんな体たらくなら、お前も誰か殺したりしてるんじゃないですか? そう言われた時、つかさは何も答えられなかった。 自分が向き合って、自分が答えを出さなければならなかったのに、北岡やジェレミアに助けられてしまった。 あの時どう答えれば良かったのか、今も分からない。 そして何も分からないまま『友達』になろうと言った――何も答えないまま『友達』になった。 これでは、騙しているようなものではないか。 けれど無意識の海で全てを知った後も、翠星石は何も言わなかった。 何も言わずに味方してくれた、『友達』のままでいてくれた。 この事への感謝も、まだ伝えていない。 言いたい事が、言わなければならない事が、多すぎる。 ごめんなさい。 伏したつかさは何度も、心の中でその言葉を口にした。 せっかく与えられた役割も満足に果たせなかった。 荷物になるばかりだった。 このままでは全員殺されてしまう。 いなかった事にされてしまう。 翠星石にも、北岡にも狭間にも上田にも、何も言えなくなってしまう。 悔しさに歯噛みしても、つかさには何も出来ない。 「つかさ」 目の前に翠星石がいた。 翠星石は膝を着き、倒れたつかさの頭を気遣わしげに撫でる。 そして自身も苦しそうにしながら、微笑んだ。 「『友達』なんだから、隠し事の一つや二つあるですよ。 それぐらいでつかさを嫌いになる程、翠星石は小さくねーです。 翠星石こそ、嫌な事ばっか言う奴だったからいけなかったんですぅ」 指輪を通して、つかさの焦燥が伝わっていたらしい。 受け入れて貰えた事が嬉しい。 だがまたしても助けられてしまった事が、自分から何も出来なかった事が、悔しかった。 同時に――今の切迫した状況下で何故、翠星石がこんな話をするのか。 何故、『今』なのか。 言いようのない違和感と不安を覚えた。 「銀色おばけの事だって、もう心配する必要はねーですよ」 「翠、星石、ちゃん……?」 翠星石が、倒れたつかさの手を優しく取る。 そしてその細い指に填められた薔薇の指輪に、触れるだけの軽い口付けをした。 薔薇の意匠に亀裂が走り、赤く灼けるように色付く。 そして強い光を放ち、つかさが瞬きした後には指輪が消えていた。 それが意味するのは契約の破棄。 「な、何で、これは……っ!!」 「つかさは充分頑張ったですぅ。 だから後は、翠星石のかっこいいとこを見てやがれです」 立ち上がってロングドレスを揺らし、つかさに背を向ける翠星石。 手を伸ばして引き留めようとするも、その手には何も掴めなかった。 「翠星石がちゃーんと、つかさ達を元の世界に帰してやるですよ」 誰よりも小柄な彼女の背はどうしてか――いつか見た、凛とした大人の女性の背に似ていた。 ▽ 狭間が倒れ。 ゾルダが倒れ。 シャドームーンはシャドーセイバーを一振りし、付着した血液を払い落とす。 そして、残った敵へと向き直る。 「……そろそろ返して貰うぞ」 「やれるもんなら、やってみやがれです」 翠星石は振り返らずに歩く。 そして立ち上がろうとしている狭間や北岡を一瞥し、それから目を逸らす。 「お前らもそこで、見てろです。 今まで迷惑を掛けた分ぐらいは、返してやるですよ」 決まり悪そうにしながらシャドームーンの前に進み出る翠星石。 ミーディアムを失って再び制御を失った太陽の石が、翠星石の体内で熱く輝く。 過ぎた力が溢れ、翠星石の胸に痛みが走った。 痛みを顔に出さず、翠星石はゆっくりと歩を進める。 シャドームーンもまた肩をいからせたまま、シャドーセイバーの切っ先を微塵も揺らさずに歩く。 そしてシャドーセイバーの間合いの一歩前で互いに足を止める。 翠星石の目前に立つ王者の背丈は、人形である翠星石の数倍ある。 纏う威圧感、殺意がそれを更に大きく見せる。 しかし翠星石は一歩も退かず、シャドームーンのプレッシャーをその小さな体一つで受け止める。 「はぁぁッ!!」 翠星石の右手から打ち出された薔薇の花弁がシャドームーンを襲う。 跳び退って回避したシャドームーンに、翠星石の左手から伸びた茨が迂回して別の角度から追い立てる。 シャドームーンはそれら全てを最低限の身のこなしで躱しているが、それでいい。 シャドームーンがつかさ達から距離を取る、それが狙いだ。 翠星石は二種類の攻撃を織り交ぜてシャドームーンの退路を限定し、仲間から遠ざけている。 そして仲間を巻き込まないだけの間隔が生まれた事を確かめ、翠星石は黒い翼を羽ばたかせる。 「翠星石、行くな……!」 「ぶっ飛ばしてやるですよ!」 翠星石が狭間の制止の声を振り切って滑空し、シャドームーンを追う。 仲間達を後方へと置き去りにして、翠星石は己の内にある力の全てを解放した。 太陽の石の加護を受けた攻撃であればRXにも通用する事は、既に証明されている。 植物の蔦。 薔薇の花弁と茨。 黒羽。 それらが鋏の如き鋭さをもって、大質量でシャドームーンに伸びていく。 最早それは、避ける余地のない壁。 津波のように、シャドームーンを押し潰さんと襲い掛かった。 蔦や花弁を繰る指が崩れ始める。 胸を中心にして罅割れが広がり、亀裂は頬にまで及んだ。 しかし力の奔流を指先に集中させ、体の内側にあるもの全てを注ぎ込む。 翠星石の感情の昂ぶりに合わせて太陽の石がますます強く輝き出した。 それが体の崩壊を早めても、力を緩めはしない。 この「壁」を前にシャドームーンは怖じ気付くのか。 死を覚悟して立ち尽くすのか、無駄を承知で逃げ回るのか。 答えは否。 そんな相手であれば、城戸真司がとうに決着を付けている。 「シャドーキックッ!!!!」 「掛かって来やがれですぅぅぅぅ!!!!!」 シャドームーンの選択は、シャドーチャージャーの力を足裏へと集めたシンプルな蹴り。 だがそれは数々の怪人を葬ったライダーキックと対を成す、シャドームーン最大の攻撃である。 巨大な「壁」を前に、シャドームーンは防御でも回避でもなく一点突破を選択した。 この判断力と戦闘センスが、龍騎をも破ったのだ。 シャドームーンの蹴りが植物の壁に突き刺さる。 植物で埋め尽くされた翠星石の視界にその姿は映らないが、壁の中を抉り進む光景は容易に想像出来た。 一瞬でも気を抜けば、たちまち壁を突破されるだろう。 そしてこの状態になってしまえば、北岡も狭間も援護のしようがない。 狭間のタルカジャによる強化だけを受け取って、翠星石はキングストーンと五つのローザミスティカの力を解き放つ。 「さっさと……倒れやがれです……ッ!!!」 体が音を立てて崩れていく。 父から授かった体が壊れていく。 足首から先がぼろりと落ちた時は悲鳴を上げそうになったが、もう気にはしていられなかった。 まだ足りない、まだだもっとと力を絞り出す。 劉鳳のように、新一のように、真司のように、クーガーのように、命の一片まで燃やし尽くす。 両の手首から先が崩れ落ちた。 肘の球体関節まで大きな亀裂が刻まれ、ばらばらと破片が飛び散っていく。 力が指向性を失って分散してしまいそうになる、それを気力だけで押さえ付ける。 崩れていく翠星石を支えたのは、小さな手だった。 深い赤のケープ付きワンピースドレスを身に纏い、金のツインテールを薔薇飾りの付いたボンネットで包んだ第五ドール――真紅。 腰まである長い銀髪に、それを映えさせる黒のロングワンピースとレースを合わせた黒羽の第一ドール――水銀燈。 青のキュレットを穿き、短い茶髪に小さな帽子を乗せた少年の如き第四ドール――蒼星石。 薄桃色のパフスリーブワンピース、そしてそれと同系色の大きなリボンで髪を飾った第六ドール――雛苺。 翠星石と並び、生成し続ける壁に力を送る姉妹達。 それは、限界を通り越した翠星石が見た幻覚だったのかも知れない。 そうだとしても、翠星石には充分だった。 姉妹達が――水銀燈までもが協力し合う景色。 蒼星石が居て、真紅が居て、雛苺が居て、出来ればそこに水銀燈も居て、ただ仲良くしていられれば良かった。 幾ら父を愛していてもアリスゲームは嫌で、争う事など考えたくもなかった。 だから今は、幸せだった。 「ほら、見やがれです水銀燈。 ちゃんと出来るじゃねーですか」 ――真紅が私と居たいだなんて、思うはずがないじゃない。 どこか寂しそうにそう告げた水銀燈に、言ってやりたかった。 「お前がちょっと素直になれば、真紅だって応えてくれるです。 そんな事も分からなかったなんて、水銀燈は本当に頑固でお間抜けですぅ」 顔を赤くして怒る水銀燈の表情が見えた気がした。 ムキになった時の真紅の顔に、少し似ている。 姉妹なのだから当然だった。 「たった七人の姉妹、どうして嫌いになれるですか……」 この気持ちは、姉妹の誰も変わらないはずだ。 父の愛を求め、積極的にアリスゲームを進めようとしていた水銀燈でも。 来たるアリスゲームの時を覚悟していた蒼星石でも。 変わり者の真紅でも。 アリスゲームを肯定していた姉妹もいる。 戦う事もあった、楽しい記憶ばかりではなかった。 それでも本当に、心の底から好き好んで争っていた姉妹は誰もいない。 姉妹を愛していたのは、翠星石だけではないのだ。 「これが終わったらジュンの家に帰って、のりに花丸ハンバーグを作って貰うです。 あーんなに美味しいものを食べた事がない水銀燈は本当に残念な奴ですぅ、お裾分けしてやるから有り難く思えですよ。 その後は翠星石の焼いたスコーンでほっぺた落ちやがれです。 真紅も蒼星石も、もうアリスゲームの事なんて考えなくて良いのです。 雛苺が居て、金糸雀も遊びに来て、皆でくんくん探偵を見て、それから……それから――」 オッドアイの両目のうち、エメラルドのような緑色の左目がごろりと零れ落ちた。 そして空洞になった眼窪に幸せな世界が映る。 夢見るようにそれを語る。 「それから――」 それは甘美で、優しくて。 「劉鳳や、新一や、真司やクーガーも、来てくれたら――」 ――どんなに逃げても……あなたの犯した罪からは逃げられない。 とても虫の好い、夢だった。 癇癪を起こして何もかも台無しにしようとした。 大事な人を殺した。 仲間を見殺しにしようとした。 殺そうとした。 敵と手を組んだ。 自分のせいで、人が死んだ。 罪を重ねて、積み重ねて、それでも。 自在法を諦めて、大事な人に別れを告げても。 夢を見てしまう。 そうであって欲しかった夢を、見続けてしまう。 残されたルビーのような深い赤の眼の中に、青い閃光が広がった。 植物の壁を貫通したシャドームーンの蹴りが、すぐそこまで迫っている。 憎悪する敵の姿に、大切な人の面影が重なってしまう。 姉妹に支えられてなお翠星石の崩壊は早かった。 最初にキングストーンを手にしてから、その力に振り回された時間が長過ぎたのだ。 人の命を奪った感触、仲間達からの孤立、偽りの姉妹の裏切り、そうして心に負った傷が終わりを早めてしまった。 とは言えシャドームーンの姿も無惨なものだった。 RXに進化したシャドームーンであっても、太陽の石と相対せば無事で済むはずもない。 右足による蹴りに全身全霊を注ぎ、防御を捨て、左半身は既に失われていた。 全身を守っていたシルバーガードは剥がれ落ち、右半身の各部の赤い人工筋肉を外気に晒している。 体は隅なく切り刻まれ、この姿のまま倒れていたとすれば死んでいるようにしか見えないだろう。 だが、動いている。 戦っている。 戦闘の意志をいささかも失う事なく、王は未だ君臨し続けていた。 「うっ……」 翠星石の腹に蹴りが突き刺さった。 壁を貫くのに力を費やした蹴りは、本来の威力を失っている。 だがかろうじて形を保っていただけの翠星石は、より大きな破片をばら蒔いて宙を舞った。 対するシャドームーンは翠星石を蹴った反動で体勢を整え、朽ちゆく植物を足場にして翠星石に追撃する。 手刀が、翠星石の胸を破った。 つかさの声なき絶叫が響く中、翠星石の背から突き出すシャドームーンの手。 その手には赤い石――キングストーンが握られていた。 「やはり貴様には、過ぎたるものだったな……」 「こ、の、……」 翠星石は藻掻く事すら出来ない。 ローザミスティカが己の身から離れていくのを感じる。 「つ、かさ……」 しかし一つ残った目を動かせば、そこには仲間達がいる。 守りたい者達――劉鳳が、新一が、真司が、クーガーが守りたかった者達。 翠星石の意地が、消えようとしていた力を繋ぎ留める。 「立派なレディに……なれ、ですよ」 五人の姉妹の最後の力を振り絞る。 叫ぶような、祈るような薔薇乙女達の声を乗せて、その光はどこまでも続く広大な空間全体に響き渡った。 ▽ 左半身を失ったシャドームーンは無様に床に落下した。 装甲を剥がされて傷付いた体が転がる。 そしてその傍らに、宙をひらひらと舞っていた深緑のロングドレスが落ちた。 それを目にしていた狭間も、北岡も、つかさも、上田も、すぐには動けなかった。 ローザミスティカさえ残さず、翠星石は砕け散った。 たった今まで隣りに居た者の死――離別は、全員が既に何度も経験している。 それでもこの場でまず何をすべきなのか、瞬時に判断を下せる者はいなかった。 真っ先に我に返ったのは狭間だった。 翠星石が戦っている間に回復を進めた狭間はほんの数秒の思考停止から復帰し、シャドームーンに向かって手を翳す。 「メギド!!!」 シャドームーンまで距離があり、一見しただけでは生死の判別がつかない。 しかし、死んでいない。 翠星石が命を懸けて戦っても、それでもまだ終わらない――同じ「王」を名乗っていたからこそ、狭間は肌でそれを感じた。 何よりも翠星石との決着の間際、シャドームーンは太陽の石を手にしていたのだ。 これで終わるはずがない。 ――SHOOT VENT―― 狭間のメギドに続いて、北岡もギガランチャーで追撃を加える。 爆炎、そして黒い煙がシャドームーンの姿を覆い隠した。 「北岡」 「分かってるって……」 狭間が目配せするまでもなく、北岡はギガランチャーを撃ちながらつかさと上田を庇える位置へ移動する。 北岡と狭間の二人で油断なく、どんな攻撃にも対応出来るよう煙に目を凝らす。 そして――全員の背筋に、冷や水を浴びせられたような悪寒が走った。 狭間でさえ、生存本能を直接刺激するかのような圧迫感に震え上がる。 北岡も仮面の下で表情を凍らせ、つかさや上田に至っては呼吸すら出来なくなっている。 「クク……」 最初に煙の中から聞こえたのは低く、漏れ出るような笑い声だった。 カシャン、カシャン。 シャドームーンそのものを表すと言っても良い、特徴的な足音が空間を支配する。 深い煙幕を斬り裂くように、銀色の手が現れる。 狭間のメギドも、北岡の弾幕も、全てその手に受け止められたのだ。 王に道を空けるように、煙が急速に引いていく。 初めはぼんやりと浮いて見えた緑色の複眼がはっきりと現れ、その場にいる人間達を威圧する。 カシャン、カシャン、カシャン、カシャン。 全ての煙が晴れ、シャドームーンは再び姿を見せた。 全身を銀のシルバーガードで包み、五体全てに力を漲らせている。 無傷。 掠り傷一つ、見当たらない。 「……馬鹿な」 思わず狭間が口にして、唾液を飲み込もうとする。 だがひりつくように痛む喉に張り付いてしまい、それすら上手くいかなかった。 シャドームーンが放つプレッシャーは、これまでの比ではない。 「この創世王を相手に、貴様達人間は良く戦った。 『存在』が消える、その最後の瞬間まで誇るがいい」 シャドームーンの腹部に埋め込まれているのはキングストーン。 複眼と同じ翠の光を放つ月の石――そしてその隣で赤く輝くのは、太陽の石。 一つでも奇跡を起こし得る、人類の手には届かない未知の石。 それが二つ。 遂にシャドームーンの体内に揃ったのだ。 だがそれだけではない。 シャドームーンの体を薄く包む緑色の光は、キングストーンのものとは違う。 翠星石が所有していたローザミスティカは消滅したのではなく、シャドームーンの中に取り込まれたのだ。 翠星石達が所持していたローザミスティカは、欠片だった。 元々一つであったものをローゼンが割り、それぞれを姉妹達に分け与えたからだ。 故に一つ一つは賢者の石の一片に過ぎない――それをシャドームーンが「まがい物」と称したのも当然であった。 しかし今、シャドームーンは“認めた”。 月の石を持つシャドームーンと幾度も互角に渡り合い、体内にある太陽の石を制御した五つの石。 ミーディアムの力を借りていたとは言え、五つの欠片は不完全でありながらも確かに「奇跡の石」だった。 これらもまた一つの高みに至ったものであると認められ、それ故に吸収されたのである。 シャドームーンの体内にある賢者の石は七つ。 ローゼンメイデン達が“究極の少女”となる為に必要だった数が、一つの肉体に宿っている。 今のシャドームーンは二つのキングストーンと五つのローザミスティカを揃えた“究極の王”。 たった一人、頂点に立つ者となった。 「クックック……ははははははははははは!!!!!」 シャドームーンの哄笑に、空気が怯えるように振動する。 つかさと上田の歯の根が合わなくなり、カチカチと鳴ったまま止まらない。 狭間と北岡ですら、そうならないよう唇を噛み締めるので精一杯だった。 そして、シャドームーンの身に更なる変化が起きた。 じわりじわりと、腹部のキングストーンを中心として体が変色を始めたのだ。 黒い関節部分はそのままに、銀色の装甲は赤に染まる。 それは夕焼けの如き赤。 燃え盛る炎の如き赤。 鮮血の如き、赤。 滑らかな丸みを帯びていた肩には無骨な突起が生え、触角がノコギリを思わせる形へと伸びていく。 「これが、今後『五万年の刻』を支配する創世王の真の姿だ」 凶々しさを超え、最早神々しささえ帯びている。 『赤き魔神』は、王から神の域へ到達しようとしていた。 「光栄に思い、その目に焼き付けるがいい。 貴様らの『存在』ごと、その記憶が消えるとしてもな」 絶望が、そこにあった。 【翠星石@ローゼンメイデン 死亡】 時系列順で読む Back 終幕――月は出ているか? Next 終幕――鋼の救世主 投下順で読む Back 終幕――月は出ているか? Next 終幕――鋼の救世主 175 終幕――月は出ているか? シャドームーン 176 終幕――鋼の救世主 柊つかさ 北岡秀一 狭間偉出夫 上田次郎 翠星石 GAME OVER
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シャシャドク(舎遮獨尊者) 仏教のゴヒャクラカン(五百羅漢)の一人。
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《ハート・エルフィン》 ハート・エルフィン UC 自然文明 (3) クリーチャー:ツリーフォーク 3000+ ■シャドーステルス ■シャドーストレス(シャドー・クリーチャーとのバトル中、このクリーチャーのパワーは2倍になる。) ■相手のシャドー・クリーチャーは、このクリーチャーを可能な限り攻撃する。 フレーバー:暗い影が忍び寄る森で、ハート・エルフィンは動き出した。 関連 シャドー? ストレス?
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「『ありがとう、さようなら』……ってね」 / イ / / /| } } i ヽ . . / / | | / / l | | i| } /| | i ', . ' / | │ / / | | | i| | / | | i ', . {/ │ | / / ,リ | |│ ' | _」L /__| | i } | | | / 厶/ 八│| /'7} __/ ノ--|__| | } │ イ___/ 厶- 、ヽ |/ ノ ン'爪「う'フ リ |ハ ,′ | ハ kf''ア「心 弋 tタ / 川∨ | / ゞ弋_,,タ ''冖゙` / ,ハ) / | /} ハ ´´ . / イ j/ リ / /-'゙ │ / ∧ 丶 く / | / 〃ハ, __, `7 /| | / ' / \  ̄ / /│ リ  ̄フ / ` . / / .| / / / `ト .__, ‐'/ / | / . / / | , | / . / / | / / l_ . / / . | / / ∨⌒ヽ、 . / , . _/ / / \ . / / // / / \ . 【陣営】 新城悪魔相談所側 【名前】 シャドウ 【読み方】 しゃどう 【種別】 悪魔/外道 【個体名】 黄泉 【Lv.】 不明 【現状】 別個体として復活 【出典AA】 喰霊 【人物】 あらゆる者に姿を変えるドッペルゲンガーの上位種。 やる夫の影武者として魔剣グラムを預り、影武者を務めていた。 しかしやる夫を倒さんとする『保守派』四大天使・ラファエルの策略により偽物であることが露見し、メタトロンの奥義によって消し飛ばされてしまう。 雪華綺晶とは天使と悪魔という関係上あまり中は良くなかったがそれなりに親好はあったようで、彼女を滅したメタトロンに対し雪華綺晶は形見であるグラムを手に攻撃を行った。 その後シュバルツバルトの能力で寸分違わぬ姿の"別個体"として再生を果たす。 そして再びレミエルに貸し出されやる夫の影武者として過ごしていた。 相変わらず厳しく接していたようだが、二人の姿は時折、その姿は互いを深く理解した友人同士に見えたという。
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馬具機能 Ver3.8.0より追加された機能。 馬具は メンコ 耳あて バンテージ シャドーロール ブリンカー パシファイア ブロウバンド チークピーシーズ の8カテゴリが存在し、トレーニング合成にてホースの★の数まで装着することができる。 カテゴリ毎に能力値の上昇や特殊効果の発動など、プレイヤーにとって有利になるさまざまな効果が存在する。 所有している馬具は所有馬具にて確認できる。 入手方法 イベント報酬やキャンペーン、特定レースなどで入手できる。 虹色馬具・・・特定のホースのみ装着可能な馬具で現状は期間限定で金の蹄鉄のオマケとして入手できる 「スピシンバンテージ トップガンチーク ミラクルブロウバンド 暴れんぼうシャドーロール キタサンブロウバンド トランセンドチーク マルゼンメンコ ファルコンの耳あて ワカタカバンテージ リッキーパシファイア パサーチーク ダービーメンコ ワールドバンテージ」 雷神バンテージ・・・イベント限定(名手の軌跡~フランスの完璧主義者編~) 真紅のメンコ・・・イベント限定(名手の軌跡~フランスの完璧主義者編~) グローバルシャドーロール・・・イベント限定(パズダビジャパンカップ) 火のメンコ系・・・火曜限定超上級 水のメンコ系・・・水曜限定超上級 風のメンコ系・・・木曜限定超上級 天のメンコ系・・・金曜限定超上級 地のメンコ系・・・月曜限定超上級 耳あて系・・・土曜限定超上級 チーク系・・・日曜限定超上級 ※曜日限定レースは効果1~3%のものがドロップ 装着方法 トレーニング合成のパートナー選択時に「馬具」のタブを選択することで、所持している馬具を選択する。 注意点 進化や転生進化をしても馬具の装着状態は引き継がれる。 同カテゴリの馬具を装着する場合は上書きされ、上書きされた馬具はなくなる。 空きがない状態での未装着カテゴリの馬具を装着する場合は、装着済みの中から選択し消去することになる。 装着した馬具はホースのグラフィックには反映されない。 馬具一覧(所有馬具参照したもの。) 馬具名 カテゴリ 効果 対象 火のメンコ メンコ 火属性のライバル馬からのアタックを1%軽減 炎のメンコ メンコ 火属性のライバル馬からのアタックを2%軽減 業火のメンコ メンコ 火属性のライバル馬からのアタックを3%軽減 真紅のメンコ メンコ 火属性のライバル馬からのアタックを5%軽減 水のメンコ メンコ 水属性のライバル馬からのアタックを1%軽減 蒼のメンコ メンコ 水属性のライバル馬からのアタックを2%軽減 激流のメンコ メンコ 水属性のライバル馬からのアタックを3%軽減 風のメンコ メンコ 風属性のライバル馬からのアタックを1%軽減 嵐のメンコ メンコ 風属性のライバル馬からのアタックを2%軽減 旋風のメンコ メンコ 風属性のライバル馬からのアタックを3%軽減 天のメンコ メンコ 天属性のライバル馬からのアタックを1%軽減 光のメンコ メンコ 天属性のライバル馬からのアタックを2%軽減 天帝のメンコ メンコ 天属性のライバル馬からのアタックを3%軽減 地のメンコ メンコ 地属性のライバル馬からのアタックを1%軽減 岩のメンコ メンコ 地属性のライバル馬からのアタックを2%軽減 不動のメンコ メンコ 地属性のライバル馬からのアタックを3%軽減 マルゼンメンコ メンコ マルゼンスキーのスピードが30%上昇する 装着馬のみ ダービーメンコ メンコ ディープインパクト・シンザン・ナリタブライアンの全能力が10%上昇する 装着馬のみ 安穏の耳あて 耳あて 相手の精神力を1%減少 全体 鎮静の耳あて 耳あて 相手の精神力を2%減少 全体 太平の耳あて 耳あて 相手の精神力を3%減少 全体 安らぎの耳あて 耳あて 相手の精神力を1000減少 全体 気丈の耳あて 耳あて 相手の精神力を2000減少 全体 小康の耳あて 耳あて 相手の精神力を3000減少 全体 ファルコンの耳あて 耳あて スマートファルコンのスピード・スタミナが20%上昇する 装着馬のみ ステイヤーバンテージ バンテージ 適正距離(上限)が100上昇する 装着馬のみ 長距離巧者のバンテージ バンテージ 適正距離(上限)が200上昇する 装着馬のみ ジャンパーバンテージ バンテージ 適正距離(上限)が400上昇する 装着馬のみ スプリンターバンテージ バンテージ 適正距離(下限)が100上昇する 装着馬のみ 短距離巧者のバンテージ バンテージ 適正距離(下限)が200上昇する 装着馬のみ 韋駄天バンテージ バンテージ 適正距離(下限)が400上昇する 装着馬のみ 雷神バンテージ バンテージ 適正距離(上限・下限)が200上昇する 装着馬のみ スピシンバンテージ バンテージ スピードシンボリのスピードが40%上昇する 装着馬のみ ワカタカバンテージ バンテージ ワカタカのスピード・スタミナが20%上昇する 装着馬のみ ワールドバンテージ バンテージ ガリレオ・ディラントーマスの全能力が20%上昇する 装着馬のみ 快速シャドーロール シャドーロール スピードが50アップ 装着馬のみ 特急シャドーロール シャドーロール スピードが100アップ 装着馬のみ 神速シャドーロール シャドーロール スピードが200アップ 装着馬のみ スタミナシャドーロール シャドーロール スタミナが50アップ 装着馬のみ パワフルシャドーロール シャドーロール スタミナが100アップ 装着馬のみ 剛健シャドーロール シャドーロール スタミナが200アップ 装着馬のみ 熱血シャドーロール シャドーロール 勝負根性が100アップ 装着馬のみ ド根性シャドーロール シャドーロール 勝負根性が200アップ 装着馬のみ 火事場力シャドーロール シャドーロール 勝負根性が400アップ 装着馬のみ グローバルシャドーロール シャドーロール スピード・スタミナ・勝負根性が300アップ 装着馬のみ 暴れんぼうシャドーロール シャドーロール ゴールドシップ・オルフェーヴルのスピード・スタミナ・勝負根性が10%上昇する 装着馬のみ 匠のブリンカー ブリンカー スキルターン延長を防ぐことがある 装着馬のみ 名手のブリンカー ブリンカー スキルターン延長を防ぐことがある 装着馬のみ 手練れのブリンカー ブリンカー スキルターン延長を防ぐことがある 装着馬のみ 平穏のブリンカー ブリンカー 行動不能を防ぐことがある 装着馬のみ 傍若無人のブリンカー ブリンカー 行動不能を防ぐことがある 装着馬のみ 百戦錬磨のブリンカー ブリンカー 行動不能を防ぐことがある 装着馬のみ 勝負のパシファイア パシファイア 適正距離ベスト時スピード1%アップ 装着馬のみ・適性有効レースのみ 奮いのパシファイア パシファイア 適正距離ベスト時スピード3%アップ 装着馬のみ・適性有効レースのみ 人馬一体パシファイア パシファイア 適正距離ベスト時スピード5%アップ 装着馬のみ・適性有効レースのみ 地方パシファイア パシファイア 馬場ダート時スピード1%アップ 装着馬のみ・適性有効レースのみ 北米パシファイア パシファイア 馬場ダート時スピード3%アップ 装着馬のみ・適性有効レースのみ 砂神パシファイア パシファイア 馬場ダート時スピード5%アップ 装着馬のみ・適性有効レースのみ リッキーパシファイア パシファイア コパノリッキーのスピード・スタミナが20%上昇する 装着馬のみ スローブロウバンド ブロウバンド ブロック移動時間が0.05秒延長 マイペースブロウバンド ブロウバンド ブロック移動時間が0.1秒延長 熟考ブロウバンド ブロウバンド ブロック移動時間が0.2秒延長 ラッキーブロウバンド ブロウバンド ラウンド開始時パズルナビが発生することがある 不思議なブロウバンド ブロウバンド ラウンド開始時パズルナビが発生することがある 導きのブロウバンド ブロウバンド ラウンド開始時パズルナビが発生することがある ミラクルブロウバンド ブロウバンド ヒシミラクルのスピードが40%上昇する 装着馬のみ キタサンブロウバンド ブロウバンド キタサンブラックのスピード・スタミナが10%上昇する 装着馬のみ スピードチーク チーク スピードタイプのスピード・勝負根性・スタミナが10アップ チーム内 スタミナチーク チーク スタミナタイプのスピード・勝負根性・スタミナが10アップ チーム内 バランスチーク チーク バランスタイプのスピード・勝負根性・スタミナが10アップ チーム内 勝負根性チーク チーク 勝負根性タイプのスピード・勝負根性・スタミナが10アップ チーム内 良スタミナチーク チーク スタミナタイプのスピード・勝負根性・スタミナが20アップ チーム内 良スピードチーク チーク スピードタイプのスピード・勝負根性・スタミナが20アップ チーム内 良バランスチーク チーク バランスタイプのスピード・勝負根性・スタミナが20アップ チーム内 良勝負根性チーク チーク 勝負根性タイプのスピード・勝負根性・スタミナが20アップ チーム内 超スタミナチーク チーク スタミナタイプのスピード・勝負根性・スタミナが30アップ チーム内 超スピードチーク チーク スピードタイプのスピード・勝負根性・スタミナが30アップ チーム内 超バランスチーク チーク バランスタイプのスピード・勝負根性・スタミナが30アップ チーム内 超勝負根性チーク チーク 勝負根性タイプのスピード・勝負根性・スタミナが30アップ チーム内 トップガンチーク チーク マヤノトップガンのスピードが40%上昇する 装着馬のみ トランセンドチーク チーク トランセンドのスピードが30%上昇する 装着馬のみ エルコンドルパサー チーク エルコンドルパサーのスピード・スタミナが20%上昇する 装着馬のみ
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スタイルレベルアップコード ガッツ 02000E60 FF カスタム 02000E61 FF ブラザー 02000E62 FF シールド 02000E63 FF グランド 02000E64 FF シャドー 02000E65 FF バグ 02000E66 FF 現在のスタイル 02001881 装備用スタイル 02001894 00 =未入手状態 01 =ノーマル(エレキ) 02 =ノーマル(ヒート) 03 =ノーマル(アクア) 04 =ノーマル(ウッド) 05 =ノーマル(インビジブル) 06 =ノーマル(マシンガン) 07 =ノーマル(キャノン) 08 =スタイル(ノーマルガッツ) 09 =エレキガッツ 0A =ヒートガッツ 0B =アクアガッツ 0C =ウッドガッツ 0D =スタイル(インビジブルガッツ) 0E =エレキカスタム(マシンガンガッツ) 0F =ヒートカスタム(キャノンガッツ) 10 =スタイル(ノーマルカスタム) 11 =エレキカスタム 12 =ヒートカスタム 13 =アクアカスタム 14 =ウッドカスタム 15 =スタイル(インビジブルカスタム) 16 =エレキブラザー(マシンガンカスタム) 17 =ヒートブラザー(キャノンカスタム) 18 =スタイル(ノーマルブラザー) 19 =エレキブラザー 1A =ヒートブラザー 1B =アクアブラザー 1C =ウッドブラザー 1D =スタイル(インビジブルブラザー) 1E =エレキシールド(マシンガンブラザー) 1F =ヒートシールド(キャノンブラザー) 20 =スタイル(ノーマルシールド) 21 =エレキシールド 22 =ヒートシールド 23 =アクアシールド 24 =ウッドシールド 25 =スタイル(インビジブルシールド) 26 =エレキグランド(マシンガンシールド) 27 =ヒートグランド(キャノンシールド) 28 =スタイル(ノーマルグランド) 29 =エレキグランド 2A =ヒートグランド 2B =アクアグランド 2C =ウッドグランド 2D =スタイル(インビジブルグランド) 2E =エレキシャドー(マシンガングランド) 2F =ヒートシャドー(キャノングランド) 30 =スタイル(ノーマルシャドー) 31 =エレキシャドー 32 =ヒートシャドー 33 =アクアシャドー 34 =ウッドシャドー 35 =スタイル(インビジブルシャドー) 36 =エレキバグ(マシンガンシャドー) 37 =ヒートバグ(キャノンシャドー) 38 =スタイル(ノーマルバグ) 39 =エレキバグ 3A =ヒートバグ 3B =アクアバグ 3C =ウッドバグ 3d =インビジブルバグ 3e =うな!!(マシンガンバグ) 3f =キャノンバグ
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全てを救うなどということは夢想にしか過ぎない。 どうしても救われぬもの、取りこぼされるものは出てきてしまう。 それが人間界に来てからシャドームーンが目の当たりにした人間たちの生きる現実だった。 救われぬまま不幸の中死に絶えることなど、なんら珍しいことではない。 故に人は神に縋る。仏に縋る。 生きているうちは苦しくともせめて死んだあとは天国に、極楽に行けるよう願うのだ。 それが唯一彼らにとっての救いであり、死んだものを救う方法だ。 けれど。 人は奇跡を信じない。 誰しもが神を信じているわけではない。 あるものは神の存在を否定し、あるものは救われる価値がないと自分に見切りをつけ、あるものにいたってはそもそも救われるという考えさえ抱けない。 それでもまだ死そのものが彼らにとっての救いならばいい。 死ぬことで救われる。死んでやっと救われる。 あまりにも悲しい救いだが、それでも、死を選んだ、死を望んだ、死を受け入れた彼らにだってそれぞれの想いがある。 死を彼らが救いと思うなら、それがいかな死に方であろうとも彼らにとっては紛れも無く救いなのだ。 誰が否定しようとも社会に否定されようとも、彼らが彼らの主観で救われることに変わりはない。 救いはある。 そこにある。 彼らはまだマシなのだ。死が救いである者達は死ぬことで救われるのだからまだ幸せだ。 救われぬものではない。 真に救われぬものとは誰か。 それは救いなき人生を送り、そしてその果てでさえ救いのない者だ。 死すら救いでない者達だ。 彼らは死ぬ。 救われぬまま死に果てる。 救われぬまま死んで、そして、そのまま救われることがない。 死んだ以上何も成せない。死んだ以上何もできない。死んだ以上何も変わらない。 永久に、彼らは絶対救われない。 死人を助けたいと思う者だって同じだ。 死んでしまった人間を助ける手立てはない。 宗教は確かに人を死から救う。 ただ救われるのは宗教を信じていたその人自身をだけであり、死んでしまった誰か他人を救うことなど出来はしない。 死者たちが救われますようにと祈りを捧げ、念仏を唱えても、救われるのは死んだ人間ではなく、死者のために何かをなせたと思いたい生者だけだ。 祈りは死者を救わない。救われるのは生きた人間だけなのだ。 それでも、それでも死者を救いたいと願うなら。 人はオカルトに手を染めるしかない。 神に救ってもらうことができないのなら、悪魔の手を借り手でもこの手で救うしかない。 絶対的なものに祈り任せる宗教とは違い、オカルトは超常の力を自らの手で行使する傾向にある。 どうしようもない現実を変えうるには幻想に縋るしかないのだ。 だが、デジタルといえど人間にとっては幻想の側であるシャドームーンには幻想に溺れることすらできない。 進化という数多の可能性を持つデジモンであっても死んだ人間を救う力がある存在など聞いたこともなかった。 せいぜい死んだデジモンを蘇らせ下僕にする力止まり。 シャドームーンが望む力には程遠い。 ならばせめてとシャドームーンは求め続けた。 救われちゃいけないと天国を望めなかったロザリーを救うために。 影を照らす月であってほしいとシャドームーンに願った彼女を照らすために。 本当は誰かに手を伸ばしてもらいたかった彼女を、救われぬまま終わらせないために。 せめて、ロザリーが向かった地獄と呼ばれる世界が本当にありますように、と。 救われますようにでは救えない。誰かに祈っても救えない。 だったらこの手で、いつかこの手でロザリーを救いたいから。 シャドームーンは地獄を求めた。 この世にいなくなってしまったロザリーがいるあの世を、ロザリーが堕ちた地獄を求めた。 ロザリーを救いに行けるよう、デジモンにとっては当たり前な死後の世界が人間にもありますようにと求め続けた。 ▼ シャドームーンの一生は死とともにあった。 力なき幼少の頃、彼は死に追われ、死から逃げるために人間界の門を潜り、死に憑かれたパートナーと出逢った。 パートナーを失ってからは彼女のもとへと行くために死を迎えるその日まで罪を重ね続けることを選んだ。 本当は、本当は。 ロザリーを喪ったあの時にすぐにでも彼女の元へと行きたかった。 けれど、そうするわけにはいかなかった。 ロザリーに助けられた命を無碍にもしたくなかったし、自ら死ぬのは不治の病に侵されて尚必死に生き続けた彼女への冒涜だと感じた。 ほかならぬ彼女にいつかを願われた。この名に込められた祈りに背くことを躊躇したからでもある。 何よりあの時死を選んでいたとしても地獄にはいけないことがシャドームーンは分かっていた。 デジモンは寿命をまっとうして死を迎えると自らを構成するデータを卵に残して再び生まれ変わる。 しかし寿命を全うできず戦闘での死亡などで死を迎えた場合はダークエリアと呼ばれる場所に送られる。 ダークエリアはデジモンたちにとっての地獄でありそこでアヌビモンによって生前の行いを裁かれる。 悪いデータと認識されれば永遠に存在を葬られ、良いデータと認識されればまたデジタマとして生まれ変わる事ができるのだ。 ――それまでの全ての記憶を代償に。 それだけはできない。それだけは耐えられない。 君を忘れたくない。君を忘れたら、君を助けられなくなる。 救いたい、ロザリーを。いつか、この手で。 だからこそシャドームーンが地獄に、ロザリーのもとに行くには罪を犯し戦いの中で死ぬしかなかった。 その選択に未練はない。 救われるのは自分ではなくロザリーだ。 今や彼はデジモンですら無い存在へと変質しかけているがそれでもいい。 デジモンであろうとデジモンでなかろうとも、彼女がくれた名前だけは忘れるものか。 この身はただの力として、それでいてどこまでもシャドームーンとして彼女を救いにいけばいい。 そのためにも――シャドームーンはここでアリスを越えていかねばならない。 ロザリーを苦しめ、追い詰め、救いを求めさせたのは死だ。 彼女を救うというのなら死と戦って勝てなければ話にならない。 全く皮肉な話だ。 死を求めているのにその死を打ち破らねばならぬとは。 駆け抜け踏み込むこちらの足音に対して、翼を羽ばたかせるまでもなく浮遊するアリスは禍々しい刃の駆動音で答える。 穿たれる刃をスカートを揺らしてふわりふわりと避けチェーンソーを振るうアリスだが、戦闘技術ではシャドームーンの方が上だ。 「キャッ!」 カウンターの切り払いでチェーンソーをいなす。 お気に入りの玩具を取りこぼすまいとしチェーンソーに引っ張られバランスを崩しがら空きになったその胴に、スパイクを打ち付ける。 さくり、とあまりに呆気無く少女の胸を杭が穿つ。 その手応えはあまりにもあまりにも軽い……。 それはおおよそ人の姿をしたものを刺した感触ではなかった。 肉の感触はせず血の一滴も流れない。 まるで骨と皮以外はがらんどうのような、そんな、そんな……。 「……そうか。お前はからっぽなんだな」 得心が行く。 この少女は空っぽなのだ。 なにもないからこそ誰よりも貪欲に空っぽの自分を満たそうと何もかもを求め続ける。 それは宝石、それは友だち、それは生命。 飢餓たる空虚に向けて杭を打ち込んだ側のはずのシャドームーンから生命力が漏れだしていく。 エナジードレインだ。 全身を襲う虚脱感にまずいと踏んで距離を置こうとするがもう遅い。 「? おかしなことを言うのね、虫さん。アリスの街も、おもちゃ箱もいっぱいよ。 たとえばほら――虫めがね~」 略奪した生命力で傷を塞いだアリスが五指を合わせ可愛らしく円を作る。 そうして、人間の子どもたちが捕まえた虫にそうするように、無邪気にその円をシャドームーンに掲げて、アリスは。 魔人の少女は。 ――トリスアギオン 陽の光の力を借りることもなくシャドームーンを焼き払った。 ▼ 火は虫と草に強い。 それはどこの世界でも変わらない普遍の理だ。 自然の性質を持つスティングモンでは桁外れの魔力を誇る魔人による極大火炎魔法を前にして耐えられるはずがなかった。 だがここにいるのはただのスティングモンではない。 ロザリーから名をもらい彼女を救うために地獄を目指すシャドームーンだ。 地獄の業火ごときではその歩みは止まらない、止められない。 カシャ カシャ カシャ カシャ カシャ ぱちぱちと爆ぜる火花の音に混じって金属質な足音が響く。 炎に照らされた紅蓮の世界の奥に黒い影が映る。 おもちゃ箱に放り込んだはずのおもちゃが上手く入らなずこぼれ出たことに気づき、ぷくーっと頬を膨らませるアリス。 その表情が打って変わって喜色に包まれたのは炎をかき分け現れた姿が少女好みの宝石に彩られていたからだ。 「そっかー、虫さんならだっぴできてとうぜんだよね! ねぇねぇ、虫さん。そのきれいな“ルビー”わたしにちょうだい?」 ルビー。 そうアリスが見て取ったのも無理は無い。 炎より出でし影――新生したシャドームーンは赤い宝玉の鎧に身を包んでいたからだ。 シャドームーンにはその宝石が宝石などではなく、赤い血の涙にしか思えなかった。 病に苦しむロザリーが流していた赤い涙に。 今も彼に助けを求めて泣いている彼女の涙に。 「貴様にやるものなどない。この身は血の一滴まで全てロザリーのものだ」 「うぇーん、ひどいよひどいよー。わたしのいうこと、きいてくれないんだー」 アリスが何か喚いているが、聞く間も惜しいとシャドームーンは翼を震わせ高速で飛翔する。 進化に伴い新たに生えた白い長髪が風に靡き荒れ狂う。 シャドームーンが進化したジェルビーモンはより人間に近づいたその容姿からは想像できないほどのパワーを秘めていた。 本来なら玉虫色の装甲と宝石を銀と真紅に染め上げ影の月が天へと昇る。 本物の月を背にシャドームーンは手にしたメタルキングのヤリを光速で振るう! 「スパイクバスター!」 比喩や喩えではない、文字通りその一閃は光の速度に達していたのだ。 それだけの速度で振るわれた槍だ。槍自身の射程を無視して爆発的な衝撃波がアリスへと襲い来る。 光とは時間だ。光速での衝撃波ともなれば槍が振るわれた瞬間にそれは既にアリスへと命中している! 悲鳴をあげる間もなく魔人が吹き飛ぶ。 爆撃もかくやという衝撃波を受け原型をとどめているのは驚愕に値するがもとよりこの程度で仕留めれるとは思っていない。 シャドームーンは“右”の槍を振り切った勢いのまま宙で回転し、“左”の槍で追撃する。 元から所持していたメタルキングのヤリに加えて、進化したことで得たジェルビーモン自身の槍を併用しているのだ! 槍が二本で威力も二倍! 最も本来なら両腕を用いて放たれる斬撃を片手で撃っている以上威力が落ちるのが妥当だが、進化の秘法で得た筋力は常識をも覆す。 加えて槍の名手として名高いクーフーリンをロードした今のシャドームーンには二本の槍を扱うなど造作も無い事だった。 「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」 ロザリーから教わったカラテの掛け声で気合を入れ、空中でコマのごとく回転しながら衝撃波を撃ち続ける。 近づけば生命力を吸われ、回復し続けられる以上、あの魔人を仕留めるには距離をとって一方的に殴り続けるか或いは―― 「!?」 数秒にも満たない爆撃により抉られ、幾つものクレーターを穿たれた元森林で月に照らされ何かが光ったのをシャドームーンは見逃さなかった。 その色は、銀。 シャドームーンが右手に握る槍と同じ色。 「ダメだよ、虫さん。はなびはね、おせんこうよりうちあげるほうが素敵なんだから」 瞬時の判断で今にも放とうとしていた衝撃波をアリスではなく空中に放ち、その反動で無理やり身体を横へと飛ばす。 直後シャドームーンの白髪を紅蓮の炎がかすめる。 間一髪回避に成功したシャドームーンだが、直後今の一撃が囮だったことに気づく。 炎の眩さに目を焼かれたシャドームーンが視界を取り戻した時、彼の目に飛び込んできたのは地上より飛来する銀の弾丸だった。 少女とともに歩むことを選んだエアドラモンが少女を魔銀で包み守り抜いたのだ。 「今度は、アリスの番だね♪」 金属化した十二の翼で身体を包み込み自身を弾丸と化したアリスがシャドームーンに激突する。 秘法の力で進化を重ねた悪魔を断罪するかのように激痛を伴って銀の弾丸はシャドームーンの胴を貫き両断する。 閉じられていた翼をこじ開け、アリスは引きちぎった落ちゆくシャドームーンの下半身へと手を伸ばす。 「アハハハハハハハハハハハハハハッ! わーい、わーい、宝石だ―」 その手が宝石を掴むことはなかった。 「え?」 あと僅かで手が届くというところでアリスを追い抜いた熱光線が宝石を消し炭にしたのだ。 誰のしわざかは言うまでもない。 アリスがそうであったように、シャドームーンもまたティラノモンのデータからヌークリアレーザーを再現し触覚から放出したのだ。 「言ったはずだ。貴様にやるものなどない、と。この身は血の一滴まで、全てロザリーのものだ、と」 この身が彼女以外のものになるなど死んでもゴメンだ。 背中を晒した相手を撃てる機会を逃してまで、不要になった下半身を焼いたのはそんなくだらない想い故だった。 これ以上にない想い故だった。 半身だけで飛行していたシャドームーンの腰から下にかけてが再生していく。 ごぼりごぼりと不気味な音を立てて、一際強く、大きく、太い脚へと生え変わる。 「虫さんは手品師さん? すごいすごーい! それじゃ虫さんの宝石がなくなるまで。アリスがぜんぶとりほうだいしてあげる!」 自然に背いた進化を前にしても、自然の輪から外れた少女の様子が変わることはなかった。 自らもまた常軌を逸した蟲毒の魔物を取り込み、変異を遂げ、それでも尚、何一つ変わることのなかった少女。 それが死だというように死の先を歩む少女がここにいる。 死後を求めたシャドームーンを否定し、生きるために殺し続けたロザリーを嘲笑うかのように。 死んだままこの世に存在し続け、死んだまま殺し続ける少女がここにいる。 ▼ 暗き闇に覆われた空で、満月だけが輝いていた。 眼下で行われる戦いを見守るように、嘲笑うように。 優しく、妖しく、光を放つ。 空に舞台を移した戦いは完全にシャドームーンが押されていた。 完全体に進化した今のシャドームーンなら魔人アリスとなら接戦には持ち込めたかもしれない。 けれど今のアリスは魔人ではなく死導だ。 九の翼から生じる風と光と闇にシャドームーンは阻まれ、よしんば弾幕を潜り抜け傷つけたとしても残る三翼が少女を癒やす。 自らが一刻む間に翼と合わせて二を刻む異界の住民にシャドームーンは力も手数も圧倒的に足りなかった。 このままで足りぬというのなら『進化』するしかない。 けれども、どうやって? 多くの命を取り込んでようやく完全体へと行き着いたのだ。 ティラノモンを殺して以降、誰一匹ロードしていない今、究極体への道は閉ざされたままだ。 ならば進化の秘法の力に頼るか? 確かにそれが確実だろう。 しかし、秘宝による進化が滞っていることにシャドームーンは気付いていた。 蘇れば蘇るほど強靭な肉体へと進化していたのもさっきまでのこと。 今や腕が吹き飛ぼうが、脚が消し去られようが、単に再生するだけだ。 秘宝による進化は止まっていた。 今の進化の秘法には二つ、大事なものが欠けている不完全なものだからだ。 一つは闇の力を増幅する黄金の腕輪。 もう一つは憎しみの感情だ。 前者はシャドームーンが知る由のないことだが、後者はプチヒーローの話から薄々だが察していた。 かつてある魔王が、憎しみの果てに自分を無くしたという。 然るに憎しみさえすれば、進化の先に、さらに先に、突き進めるのではないか。 憎悪にて心身を塗り替え、身も心も全て醜悪なる化け物へと挿げ替えさえすれば……無理だ。 シャドームーンを満たしているロザリーへの感情は憎しみとは対極にあるものだ。 進化を阻害しはすれども、促すものではない。 ならばアリスはどうか。この少女を憎めばよいのではないか。 アリス。 ALICE。 死の先を行く“元人間”。 デジモンとしての本能からだろう。 エアドラモンがそうであったように、シャドームーンもまたアリスに“人間”を垣間見た。 人の姿をしているからなどというレベルではない。人の姿をしたデジモンなど何匹かは存在している。 そうではない、そうではないのだ。 アリスは人間だ。元人間だ。人間だったものだ。 そう強く断言できるのは本能によるものだけではない。冷たくなったロザリーにずっと沿い続けていたからだ。 シャドームーンは知っている。人間の死体を知っている。 ロザリーを弔ってくれる人間はいなかった。 暗殺者として生きた彼女は戸籍上とうの昔に亡くなったことにされており、国が弔ってくれることも期待できなかった。 弔うならばシャドームーンがする他なかったというのに、ワームモンには彼女を埋葬するための腕がなく死体が朽ちていくのをずっと見ているしかなかった。 いっそ燃やしてしまえばよかったのかもしれない。 埋めることはできずとも火をつけることくらいはワームモンの非力な身体でも不可能ではなかった。 だというのにシャドームーンは自らの手でロザリーの身体を燃やすことができなかった。 魂無き身体とはいえロザリーを傷つけることを躊躇してしまったというのももちろんある。 でもそれ以上に、シャドームーンは願ってしまったの。 いつものように彼女が目覚め、シャドームーンの名を呼んでくれることを。 だって、そこに身体があったから。ロザリーの身体があったから。 度し難い考えだと人間は嘲るかもしれない。それを否定するつもりはない。 ただかつてのシャドームーンがありえぬ希望に縋ってしまったのも仕方のないことではあった。 シャドームーンが死体に触れたのはその時が初めてだったから。 死はワームモンの日常だった。 Xプログラムに侵されて消えゆく生まれを同じくしたデジモンたち。 わずかに残った仲間たちもX抗体の奪い合いの犠牲になり、ロイヤルナイツに駆逐された。 Xプログラムに侵されておらず外敵も存在しない人間界に逃げ延びたあの日まで、数え切れぬ死をワームモンは目にしてきた。 だからこそかえってデジタルワールド/情報世界での死に慣れ親しんだシャドームーンには、人間世界/物質世界の死は受け入れられなかった。 デジモンは死体を遺さない。 死とはすなわち消滅であり、デジタマに戻るにせよ、ダークエリアに送られるにせよ、屍を晒すことなどない。 スカルグレイモンのような例外はいるが、彼らはあくまでもアンデッド型のれっきとしたデジモンだ。 魂の核たるデジコアが消失したわけではないのだ。 肉体が残っている以上ロザリーももしかしたら……。 全く、愚かな願いを抱いたものだ。 死んだ人間は蘇らない。蘇った時点で、人間ではない何かだ。 生じた痛みに現実に引き戻されたシャドームーンにアリスへの憎しみはなく、己を自嘲するだけだった。 かつての自分は一体何を願っていたというのか。 こんなものに、こんな怪物にロザリーがなって欲しかったというのか。 こんな、こんな、こんな、シャドームーンの身体が再生する端から満面の笑みで引きちぎりにくる怪物に。 無色のエネルギーを迸らせ、シャドームーンを痛め、弱体化させながらなぶり殺す怪物に。 纏わりつく笑顔を跳ね除けようと槍を振るうも、少女が何かするまでもなく、鋼の翼に弾かれる。 二の槍を振るうも結果は同じだ。 少女の魔翼は主が惨殺に興じる間も邪魔はさせないと健気に尽くす。 その献身も少女になんら変化をもたらさない。 己が翼に見向きもくれず、アリスは新しいおもちゃに夢中で、新しい友だちを欲し続ける。 「『ウィリアム父さんおとしをめして』とおわかい人がいいました」 血の通わぬ華奢な手が伸ばされそっとシャドームーンの胸部を撫でる。 それだけで銀の装甲は輝きを失い崩れ去りゆく。 「『かみもとっくにまっ白だ。なのにがんこにさか立ちざんまい――そんなおとしでだいじょうぶ?』」 進化の秘法がただちに再生を促すも少女に触れられ続けている限り、再生の力はそのまま片っ端から吸い取られていく。 こうなってしまえば二槍で穿とうとも即座に傷を癒され意味がない。 「ウィリアム父さん、息子にこたえ、『わかいころにはさかだちすると、のうみそはかいがこわかった。 こわれるのうなどないとわかったいまは、なんどもなんどもやらいでか!』」 距離を取ろうにも少女は既に積めるだけラスタキャンディを積んでいた。 今のアリスはジ・ハードに晒され弱体化したシャドームーンより圧倒的に強く、硬く、速い。 「『ウィリアム父さんおとしをめして』とおわかい人、『あごも弱ってあぶらみしかかめぬなのにガチョウを骨、くちばしまでペロリ、いったいどうすりゃそんなこと?』」 虐殺が始まる。 無邪気な笑みを浮かべたままアリスは朽ちたシャドームーンの装甲から宝石を無理やり抉り出していく。 データの飛沫が舞い、シャドームーンが激痛に呻き藻掻こうとも少女は止まらない。 「父さんがいうことにゃ『わかいころにはほうりつまなびすべてをにょうぼうとこうろんざんまい、それであごに筋肉ついて、それが一生たもったのよ』」 全ての宝石を抉り取っても満足せず、そのままアリスを引き剥がそうとしたシャドームーンの右手へと手を伸ばし引きちぎる。 左腕を引きちぎる。右足を引きちぎる。左脚を白髪を四枚羽をちぎってちぎってちぎってちぎって切り刻む。 『ウィリアム父さんおとしをめして』とおわかい人、『目だって前より弱ったはずだ。 なのに鼻のてっぺんにウナギをたてる――いったいなぜにそんなに器用?』」 ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ ギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギギ 『しつもん三つこたえたら、もうたくさん』とお父さん。『なにをきどってやがるんだ! 日がなそんなのきいてられっか! 失せろ、さもなきゃかいだんからけり落とす!』」 過ちの歌が終わる頃にはシャドームーンは退化するまでもなく芋虫に逆戻り。 羽をもがれた虫けらは天に座すること叶わず落ちゆくのみ。 月にどれだけ手を伸ばそうとも、その手は何も、掴めない。 ▼ 超高々度から岩盤に覆われた山肌に墜落しながらもシャドームーンは生きていた。 呆れた頑丈さだ、進化の秘法のおかげだろう。 だがアリスから離れたにも関わらず、身体は再生する気配を見せなかった。 命を繋ぎ止めるので精一杯なのか、それともシャドームーンの進化はもう限界なのか。 この程度で。死に敗れるたったこの程度の力で。 悔しさに握りしめる拳すらないシャドームーンは身動ぎ一つできず、ただ空を見上げるしかなかった。 暗き闇に覆われた空で、満月だけが輝いている。 夜闇を照らしてくれる月だが、その光が届くことはない。 頭上に、影が落ちる。 十二の翼を従えた夜空を裂く少女の影が。 「ねえ虫さん、わたし、『えらい小さなハチさん』のおうたをあんしょうしようとしていつもまちがえてしまうの。 『ウィリアム父さんお歳をめして』だってうたえないわ。まちがいだらけなの。なんでかな」 きっとそれは少女の存在そのもの自体が間違いだから。 死んでもなお存在し続けようとしているのが間違いだから。 リビングデッドなどと言われようと死体は死体だ。 命なき存在。ただそこにあるだけのモノ。 どれだけ“お友達”を増やそうとも、少女の心は止まったままで。 神に全てを奪われ、幼くして一人寂しく死を迎えたあの時のまま。 屍鬼として蘇ろうと、魔人と化そうと、天使に死導に変異しようと少女がアリスである限り満たされることはない。 満たされないからこそ少女は、生者を見つけ、殺し、死者へと変えるというプロセスを永遠に繰り返し続ける。 「……哀れだな」 笑みを浮かべ続ける少女を、そして自分自身を嗤い返す。 死んだら終わり。 そんな当たり前過ぎる事実を少女の有り様はこれ程までもなく示していた。 死んでしまった者は変わらない。 死んでしまったら変えられない。 死者は救われることなく、死んでしまえば誰かを救うこともできなくなる。 分かっている、分かっていたさ。 所詮自分が抱いた願いは、叶うことのない絵空事なのだと。 ロザリーを救えたとしたらそれは生きているうちだけだった。 最後の機会があったとすれば彼女が手を伸ばしたあの時だけだった。 その機会を逃してしまった以上、今更腕を手に入れたところで何になる? どうにもならない、無意味なのだ。 全てはあの時、終わってしまっていたのだから。 ロザリーも、彼女を救いたかったシャドームーンも終わってしまっていたのだから。 結局自分もこの少女と同じ。 決して満たされない願いを抱いて永遠に飢え続ける生きた死人に過ぎなかったのだ。 「哀れって、なあに? アリスは幸せよ。黒おじさんも赤おじさんいてくれて、遊んでくれるお友達もいっぱいいっぱいつくったわ。 でもね、まだまだ足りないの。いっぱいっぱいアリスはお友達が欲しいの。だからね、そろそろ虫さんも」 だからもう、いいのではないか。 あの日願ったように、ロザリーの後を追ってもいいのではないか。 「 死 ん で く れ る ?」 呪殺の剣が世界を覆う。 未だ羽も手足も再生できていない以上、避けるすべはない。 死んでしまえば進化の秘法で蘇ることもできない。 これで終わりだ、終わればいい。 どうせあの時、既にシャドームーンの全ては終わっていたのだから。 なのに。 なのに何故、私は降り注ぐ呪いに抗うようにありもしない手を伸ばしているのか。 なのに何故、私は今も、ロザリーを救いたいと願っているのか。 ああ、そうだ、あの時もそうだった。 ワームモンの私には芋虫には彼女を握る手が無くて。 それでも、それでもと、手を伸ばそうとした。 あるかないかではなく、そうせずにはいられなかった。 今も同じだ。 そうせずにはいられないのだ。 この手を伸ばさずにはいられない。 ロザリーの手を掴まずにはいられない。 彼女を救いにいかずにはいられない。 僕は、僕は。 君と共に、いたいんだ。 「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!」 吠える。 死に抗うように吠える。 吠えて、吠えて、吠え猛る。 死んでしまった者は救われない? それでも、それでも救うのだ。 私が願われたのはなんだ。 私の名に込められた想いは何だ。 救われぬ人をこそ救って欲しい、そう願われたのではなかったのか。 何よりも、ロザリーが、ではない。 ほかならぬシャドームーンが願っている。 ロザリーを救いたいと願っている。 ずっとずっとずっと、シャドームーンはロザリーを救える力を求め続けてきた。 ロザリーを握りしめられる手は得た。ロザリーの元に歩いて行ける脚も得た。 ロザリーを救う力はそれだけで十分だ。 シャドームーンはロザリーに永遠など求めていないのだから。 足りないのはあと一つ。 力以前の大前提。 その存在をシャドームーンはずっとずっと渇望し続けていた。 力を手に入れてもそれがなければロザリーを救いに行けないと嘆き続けた。 けれどもそれは結局願っていただけだ。 願うだけで何もしなかった。 世界がそうあって欲しいと願うだけで、自分にはどうにでもできないとどこか諦めていた。 ならばもし、それが存在しなかったら。 シャドームーンはロザリーを救うことを諦られると? そんなわけない。諦められなどするものか。 だから、どうか ――この手に、“地獄”を ――Xevolution―― 人間界に逃れて以来休眠していたX抗体が目を覚まし、宿主を蝕む死の呪いをデジコアへと取り込んでいく。 強大な闇の力を得たことで進化の秘法が活動を再開する。 術者を蝕む二つの進化の力がシャドームーンを更なる位階へと押し上げていく。 手足と翼の再生などという生ぬるいものではない。 爪が伸び、尾を生やし、第三の目が見開かれ、シャドームーンの身体が丸ごと作り変えられていく。 完全を突き破りし究極の姿へと、進化の秘法とX抗体、二つの禁忌に手を染めしものに相応しい姿へとシャドームーンが変貌していく。 「あれ、赤おじさん? アリスを追ってきてくれたの?」 その姿にアリスが魔王ベリアルを重ねたのも無理は無い。 かのものもまた魔王。 叶わぬ願いをそれでもと求め続ける暴食の魔王。 這う虫の王――ベルゼブモンX抗体。 否。 果たして今のシャドームーンを赤と銀にそまったこのベルゼブモンをデジモンと言えるのだろうか? X進化からして従来のデジモンの枠を大きく逸脱したものだというのに、更にはその身に数多のイレギュラーを宿している。 本来交わることのなかった世界のデータを読み込み、進化の秘法という異界の手段で進化を果たした。 デジタルワールドに戻りでもすれば、Xデジモンだとかそれ以前の問題でイグドラシルとロイヤルナイツに裁かれることは間違いない。 シャドームーンを構成するあらゆるデータはそれほどまでにデジモンとは別のものへと変異してしまっているのだ。 「ううん、似てるけど違う。お兄さんはだーれ?」 「私か。私はシャドームーン。ロザリーのパートナー、シャドームーンだ」 ロザリーに名前をもらっていなかったら、名乗り返す自我さえも失っていただろう。 今のシャドームーンの内側には死が満ちている。 アリスの呪いは、進化の秘法は、刻一刻とX抗体を喰らい尽くしシャドームーンを死の淵へと近づけていく。 単に死ねたのならまだマシだ。 最悪、存在することへの本能が生み出したX抗体は、シャドームーンが死滅しても尚存在し続けようと進化を重ねる。 肉体が朽ち、理性が無くなろうと本能的に他者のデジコアを喰らい続け、死に続け、存在し続ける死のX進化。 死んでもなお存在し続けようとする進化――デクスリューション。 その果てがどうなるかなど今更語るまでもない。 アリスだ。 シャドームーンはアリスになる。 それだけはロザリーのパートナーとして受け入れられない。 生存し続けるために人を殺し続けたロザリーの果てが、存在し続けるだけで人を殺し続けるアリスなのだと暗喩するような結末を認められない。 だからこそ、シャドームーンは自らの力の果てを怪物とは別のものへと変換していく。 即ち、地獄に。 ずっとずっとその存在を願い続けていたものに、願うだけで求めることをしなかったものにシャドームーンは自らを変えていく。 地獄がないというのならこの身を地獄と化せばいい。 地獄が既にあるのなら影を照らす月の浮かぶ新たな地獄に塗り替えればいい。 それをなせる力は手に入れた。 進化の果てに地獄の帝王にして、ダークエリアを統べる七大魔王となった。 その権限を以って、地獄の大公爵であるデカラビアの亡骸ごとロードした地獄のデータを元に自らを書き換えていく。 ロザリーに捧げる地獄へと。月が照らす地獄へと。 「ろざりー? アリスの友だちじゃなくて? だったらいらない。アリスの友だちになってくれないのならお兄さんなんていらない!」 シャドームーンの変質にアリスも気付いたのだろう。 友だちにしようとしていたこれまでと打って変わって、その顔に浮かぶのは拒絶の意思だ。 死の如き少女。死を導く天使。魔人にして怪物。 そんな彼女でも、いや、だからこそ、今のシャドームーンは誰よりも何よりもおぞましいのだと本能で理解している。 かつて少女が神に召されようとしていたのは天国であった。 今の少女なら間違いなく地獄へと堕ちるだろう。 どちらにせよ少女にとっては変わらない。天国でさえも少女には地獄だ。 死を振りまき、死を強要する少女は、それでいて誰よりも死を恐れていた。 永遠の少女は永遠が終わるのを恐れていた。 少女は怪物だ。人間という怪物だ。人間だからこそ他人に死は望んでも自らの死を恐れる。 アリスは必死に不思議の国へとしがみつき、神が敷いた運命へと抗う呪文を口にする。 ――血のディボース―― 愛を知らずに死んだ少女が転じた凶鳥の翼が血の色の涙を流す。 ――テラーフォーチューン―― 人間への幻想を捨てきることができなかった龍の翼が風を黒く染めていく。 ――闇のフォーミーラバー―― 人に作られ人に討たれた邪龍の翼が地をも揺さぶる慟哭を上げる。 ――エクリプスミラー―― 信じていたかった人間たちに裏切られた天使の翼が光を失い闇へと堕ちる。 ――ダークノヴァサイザー―― それら四対の翼であり人間だった怪物の手には真夜中の太陽が顕現していた。 少女を中心に五つの魔法が描くのは惑星直列の如し逆十字。 それは、形を得た死。死の終着にある極点。触れれば全てを無に帰す。 死の後には骸が残る。だがこれは形容すらできぬアリスの抱えた虚無そのもの。 底なしの虚無に飲まれれば死を体得した事実さえ等しく蝕まれ消滅し、死滅する。 「死の“グランドクロス”」 十二の翼を持つ天使より放たれた万魔の十字架は山を消し飛ばし、大地を闇へと沈め――影を照らす月の光の前に霧散する。 「どうして? お兄さんはわたしにいじわるするの? どうして死んでくれないの?」 シャドームーンが地獄だからだ。 もはやシャドームーンを構成するデータは等しく死の属性を帯びており死滅と遺骸で満たされている。 今更そこにどれだけ極大の死を叩き込もうとも、影の月が陰ることはない。 地獄とは死者が行き着く場所であり、死を迎え入れる器なのだ。 アリスがどれだけ駄々をこねようと死んだ少女には地獄をはねのけられるはずがない。 だからもういい、もういいのだ。 お前の終わりなき悪夢も今ここで終わらせよう。 銀翼を広げ、シャドームーンが飛翔する。 魔法で追撃してくる少女をよそに、真なる月をその銀翼で抱き遮り、影の月が天へと昇る。 眼前にはアリス。 死んで、死んでよと乞い続け、チェーンソーで斬りつけてくる少女は泣いているようで、この救われぬものにせめてとシャドームーンは手を伸ばす。 その手には武器であるはずの2丁拳銃は握られてはいないけれど。 きっと、少女を終わらせるにはこれが正しいのだと信じて、シャドームーンは、ロザリーから教わった拳を握りしめアリスを打ち抜く。 「――獣王拳」 それで終わり。 あまりにもあっけない怪物の最後。 防御に回した刃と守りに入った翼ごと砕かれた少女は自らが生み出した惨禍の大地へと堕ちる。 「またわたしだけ、死んじゃうの……?」 “地獄”であるシャドームーンの拳に貫かれた以上、不死者は死者へと還るしかない。 何度も味わった感覚で、誰よりも自分が死ぬのだと分かっているアリスは嫌だ嫌だと地を這い進む。 少女にはもう飛ぶ力も浮かぶ力も歩く力さえ遺されていなくて。 「嫌だよ。助けて、赤おじさん。黒おじさん。わたし、死にたくない。もっともっと友だちが欲しいよ」 自らの墓標に辿り着き、最後にそう口にした少女は、一人ぼっちのままこの舞台から姿を消した。 【死天使アリス@女神転生シリーズ PARADISE LOST】 カシャ カシャ カシャ カシャ 全てが死滅した世界を一人、シャドームーンは歩く。 向かうはアリスの墓標となった地――ターミナル。 何らかの結界でも張られていたのだろう。 あれだけの破壊に晒されて尚、その機械だけは無事だった。 それほどまでにして守られていた施設である以上、何らかの意味はあるのだろうが、シャドームーンには興味なかった。 精々人間たちに邪魔をされたら面倒だと考えた位だったが……どうやら杞憂だったらしい。 あったかもしれない防衛機能も消し飛んだのか、グランドクロスに耐えることに全エネルギーを費やしたからか。 何者にも阻まれることなく、警告すらされず、その場所へと辿り着いた。 或いはターミナル以上に人間たちがかかりっきりにならねばならない何かが起きたのかもしれないが、どうでもいい。 この世界から消えるシャドームーンにはもう関係のないことだ。 ふとターミナルの周りに散らばる白い羽が目に入る。 アリスの背に生えていたものであろう。 少女は間違いなくここで消滅したのだ。 「……」 アリスを貫いた拳を握りしめる。 少女からロードしたデータは確かにシャドームーンの地獄へと誘われた。 けれどもその情報量は一人の人間の魂としては余りにも少なかった。 もしかしたら彼女は元になった人間の少女の魂が幾つにも分かれた一欠片に過ぎなかったのかもしれない。 或いは―― 脳裏をよぎった可能性を打ち消す。 アリスもまたシャドームーンにとってはどうでもいい。 どこかロザリーと合わせ鏡だったからこそ、救われぬままのアリスの永遠を終わらせようとした。 しかしシャドームーンが真に救いたいのはアリスではない、ロザリーだ。 そのためにも、最後にまだ、やらねばならないことがある。 ターミナルへと手を飾す。 使い方はロードしたデカラビアのデータから引き出しているし、デジタルワールドにも同名の類似品がある。 だからこそアリスを追い、ターミナルを目にしたシャドームーンはこれが何か気付き、ここまで歩いてきたのだ。 シャドームーンはこの地で死ぬわけにはいかなかった。 七大魔王としてダークエリアへとアクセスし、始まりの場で死したレオモンの力を引き出そうとした時、気付いたのだ。 本来ダークエリアに送られているはずのこの島で死んだキメラモンやメタルティラノモン、ブイモンの魂がないことに。 それが何故なのかは分からないが、何を意味するのかは理解できる。 この島で死ねば、シャドームーンの魂は消滅させられてしまう。 それではロザリーを救いにいけない。 せっかく、せっかくここまで来たのだ。 あと一歩のところまで来たのだ。なんとしてもこの島を抜けださねばならない。 幸いターミナルは既に起動していた。 アリスの最大火力から耐えるためにそのままエネルギーとして変換しでもしたのだろう。 世界移動にはそれでもまだエネルギーが足りていないようだが、ここにいるのは地獄と化したシャドームーンだ。 バトルレックス、クーフーリン、すえきすえぞー、メタルティラノモン、そしてアリス。 丸ごとではないものも含まれるが、多くのモンスターを喰らい、ロードしたことに変わりない。 ロザリーを救うのに不要な力を捧げさえすれば世界移動のためのエネルギーは十分に足りている。 「ようやく。ようやくだ……」 長かった。本当に長かった。 ロザリーを救うのに不要な部分――僅かに残していたデジモンとしてのシャドームーンが光に解け消えていく。 放っておいても後数秒で自らを満たした死に呑まれ、己が地獄に呑まれていた身だ、躊躇いはない。 「待たせてすまない、ロザリー。ようやく、ようやくなんだ」 デジモンでいられなくなった身体が輪郭を失い領域的なものへとシフトしていく。 設定の完了したターミナルを通じてロザリーが生きた世界に“地獄”が流出していく。 「あと少し、あと少しだけ待っていてくれ―― そして遂に、最後まで残っていたデジコアがこの世から姿を消した。 消える前のデジコアは優しい光を放つ銀色の球体で、まるで月のようだった。 ――かつて君が僕に手を伸ばしてくれたように、今度は私が君に手を伸ばすから その月の名はシャドームーン。 救われぬ君を救う、ロザリーを照らす地獄の月。 【シャドームーン@デジモンシリーズ 君のとなりに】 ※E-6山がターミナルだけを残して吹き飛びました。防衛用の諸々も消滅したのでターミナルは無防備です。 現在ターミナルにどれだけのエネルギーが残っているかは今後の展開にお任せします。 No.77:僕たちは世界を変えることができない。 時系列順 No.80:心重なる距離にある No.77:黒く蝕み心を染めん 投下順 No.79:終焉の物語 No.70:僕たちは世界を変えることができない。 ワームモン 君のとなりに No.70:僕たちは世界を変えることができない。 魔人アリス PARADISE LOST
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