約 495,191 件
https://w.atwiki.jp/macrossf-eparo/pages/26.html
390 名無しさん@ピンキー sage 2008/05/19(月) 11 06 41 ID cai8ZsRA 「さあ、アルト、たーくさん用意しておいたわ」 「こ、これは……」 シェリルが示した撮影用の衣裳、その種類の多さにアルトは絶句した。楽屋のなかには、10や20ではきかなさそうな数の衣裳類が所狭しと並べられている。 「今度のアルバム・ジャケットは、日本の伝統文化をフィーチャーするの。 そこで、アルトの出番ってわけ」 「それにしたって、この量はなんだよ」 抗議する口調で言ってはみたものの、心のどこかで浮き立つような気分を味わっていた。 役者の家系で育った身としては、きらびやかな衣装を見ると血が騒ぐ。 「今日はカメラテスト用ね。いくつかアルトに着てもらって、会議にかけるの。 まずは、それからお願いしようかしら?」 シェリルが指定したのは十二単だった。 背後に控えていた着付けのスタッフやメイクアップアーティストがよってたかってアルトを平安時代の姫君に仕立て上げた。 「その衣装はさっきよりシンプルだけど、神秘的な感じがするわ」 次の衣裳に着替えてホリゾントの前に立つアルトに、シェリルが声をかけた。 「これ、巫女の装束じゃないか……なんで女物ばっかりなんだよ」 「あら、そうだったの? アルトに似合いそうなのを片っ端からピックアップしただけなのよ」 「それは男の人の衣裳でしょ?」 次の衣裳に着替えて出てきたアルトは、シェリルの言葉を聞いてがっくりした。 「いや、白拍子だから女の装束だ。狙ってやってるんじゃないだろうな?」 「えーっ、だってカタナをつけてるじゃない」 「確かに太刀を佩(は)いているけどな、女が男装して舞うのが白拍子なんだよ」 「ややこしいのね」 「どうしてチャイナドレスが混じってるんだよ?」 赤い絹の生地に鳳凰の刺繍が入ったチャイナドレスをまとったアルトがスタジオに登場した。 撮影スタッフの間からどよめきが漏れる。 きわどいところまで切れ込んだスリットから、すらりとした脚線美をのぞかせる。 胸や尻はパッドとコルセットで補正しているため、見事な曲線を描いていた。 「素敵、予想以上だわ」 シェリルも目を輝かせた。 「お前な、俺を着せ替え人形にして遊んでいるだろ?」 「そうよ」 あっさり肯定されて、アルトは拍子抜けした。 「これで最後にしましょう」 振袖姿のアルトを撮影して、シェリルが宣言した。 「ふぅ、着せ替え人形も楽じゃないな」 アルトがボヤいた時、ハプニングが起こった。 「誰か、そいつを捕まえて!」 女性スタッフの叫び声。 控え室の方から、何かを抱えた男がこちらへ走ってくる。 アルトの脇を通り抜けようとした瞬間、アルトは袖を握って男の顔の辺りに袂を叩きつけた。 ガツンという硬質な音がして男の足が止まる。 そこへ男性スタッフやら警備員が飛びかかって取り押さえた。 後に判ったことだが、男はシェリルの熱狂的なファンで、控え室からシェリルの私物を盗み出そうとしていた。 「アルト大丈夫?!」 顔色を変えてシェリルが駆け付ける。 「大丈夫、問題ない。それにしてもアイツ、運がなかったな。振袖姿の俺の前にくるなんて」 「どういうこと?」 アルトは袂をシェリルの手に持たせた。袂の一番下の部分に何か固い物が入ってる。 「なにこれ?」 「袂落としって言って、袖の形を整える重し。とっさの時は今みたいに護身具として使える」 「アルトは意外性のカタマリね」 軽口を叩いてはいるが、シェリルはホッとした様子だった。 「雇い主に時間外労働の手当が欲しいぜ、まったく。 撮影に来て荒事がついてくるとは思わなかった」 「そうね…ご褒美あってもいいかも。アルトは何が欲しい?」 「そうだな」 何が欲しいと言われると、アルトは困った。思いつかない。 「一日だけ、私が奴隷になってあげましょうか?」 シェリルが、あの悪戯っぽい微笑みとともに囁いた。 「ねえ、ちょっとグレイス聞いてよ!」 シェリルの口調からグレイスは次に続く話題が予測できた。 「パイロット君のことかしら?」 二人分のハーブティーを淹れるとティーカップに注いで、ひとつはシェリルに、ひとつは自分用にとテーブルの上に置いた。 「あのカボチャ頭ったら、私の誘いを断ったのよ。ほっといてくれ、だって。信じらんない。この、シェリル・ノームの誘いを、よ」 「カボチャ……あんなにハンサムなのに、カボチャはないんじゃないかしら?」 「カボチャで十分よ」 シェリルは自分の携帯端末を取り出すと、アルトのグラフィカル・シンボルを似顔絵からカボチャに変更している。 「でも、そういう所、気に入っているんでしょう? シェリル」 「それはそうだけど……にしたって限度があるわ。鈍すぎよ」 ハーブティーを飲みながら、グレイスの頭脳は素早く計算を続けていた。 芸能界で異性関係が破滅的なスキャンダルに発展した例は、有史以来数限りない。 アルトとの関係も、少しひやひやしながら見守っているのが正直なところだ。 しかし… (故郷に戻れない歌姫と、彼女の為に戦場を駆けるパイロット……絵になる構図だわ) ルックスも素晴らしいし、経歴も華やか。シェリルの相手として不足はない。 今のところは、シェリルとの関係に付け込んでシェリルの行動に介入してこようとはしていない。 この関係を、どんな形でメディアに公開したら、シェリル・ノームにとってプラスになるか。 笑顔の下で冷徹な計算を働かせるグレイス。 「あー、何かまた悪だくみしてるでしょ?」 シェリルの指摘を、笑顔で受け流す。 「次のオフはどうします?」 「そうね……」 返事をしようとしたところで、シェリルの端末に着信のサインが出た。 カボチャのアイコンが明滅している。 シェリルは携帯端末を取り上げた。 「もしもし…」 アルトの声が聞こえてくる。なんとなく気分が沈んでいるようだ。 「ハイ、何の用?」 「ええと、だな……新統合軍からの依頼なんだが。 その、シェリルに軍のためのキャンペーンソングを作ってもらえないかっていう話があって」 いつものアルトらしから歯切れの悪さ。いかにも気が進まない、という口調だ。 「ああ、その話。私のところに直接オファーが来たけど、断ったの。 戦争みたいな状態だから、協力は惜しまないけど、政治とかからは距離を置きたいから。 なんでアルトから、そんな話が出てくるの?」 「いろいろ、しがらみってヤツさ。いいんだ。 お前に一応、話すだけは話してみるってことで、説得は俺の仕事じゃない。 お前のスタイルに合わないなら、断るってことだな。じゃ」 そこで通話が切れた。 シェリルはカボチャのアイコンが消えていく様子を見つめていたが、顔を上げてグレイスを見た。 心得顔のグレイスはインプラントされたインターフェイスを使って、フロンティア内部のネットワークにアクセス。高速で検索を終了した。 「早乙女アルトと新統合軍で検索したら、ヒットしました。アルト君、軍用機の無許可・無免許使用で軍に告訴されかかっているわね」 「なにそれ?」 「フロンティアでのファースト・ライブ直後の事件だわ。 バジュラが船内に侵入したことがあったでしょう? その時に戦闘機に乗って派手に活躍したみたい。 バジュラに襲われたという状況から見て、止むを得ない緊急避難だと思うのだけど……法的措置に乗り出すようよ。 シェリルの歌と引き換えに、一種の司法取引みたいなものかしらね?」 「馬鹿、意地っ張り」 シェリルは唇を引き結んだ。なぜ、その事情を先に言わない。 答は判っている。 (私に無理強いしないため) シェリルは立ち上がり、部屋の中をイライラと歩き回った。 ふいに立ち止まると、にっこり笑ってグレイスを振り返った。 「ねえ、グレイス。統合軍は私を利用したいみたいだけど、私も軍を利用させてもらってもいいわよね?」 「悪だくみを思いつきましたね?」 グレイスのメガネがキラリと光った。 SMSマクロス・クォーターの居住区画。 「そーゆーわけで、シェリルの答えはNoだ、キャサリン・グラス中尉殿」 「しかたありません、早乙女アルト准尉。軍は法的措置を講じます。後悔しても遅いのよ?」 アルトは携帯端末をポケットに突っ込んだ。 「軍もなりふりかまってないな。俺みたいなガキを脅すなんて」 キャシーは深いため息をついた。 「どうしてSMSの連中は……ま、いいわ。終わったことです」 アルトにも心積もりがあった。今は戦時下。 人口の限られた都市宇宙船では人手は貴重だ。何らかの刑事罰が下るにしても、執行を猶予されるか、状況が落ち着いてからのことだろう。 その時、アルトの端末が振動した。 手に取ると、相手はシェリルだった。 「はい……え、いいのかよ? 無理しなくって……えっ……あ、ああ。交渉してみる」 アルト通話を切ると、なんとも釈然としない面持ちでキャシーに報告した。 「シェリルはキャンペーンソングを引き受けるとのことです」 「まあ、どういう風の吹き回しかしら? でも、ありがとうアルト准尉」 「別に俺が説得したわけじゃ……ついてはシェリルの方からの依頼があります」 結局、キャシーと新統合軍は、シェリルの要求を呑むことになった。 複座型VF-171のコクピット。 タンデム配列の前席にはシェリルが、後席にアルトが乗り込んでいる。 二人ともきちんとパイロットスーツを身に着けた姿だった。 VF-171は巨大な機械腕によって飛行甲板へと搬出されつつある。 「どんな手を使ったんだよ?」 アルトは機内だけで通じる回線で話しかけた。 「銀河の妖精は魔法が使えるのよ」 澄まして答えたシェリル。しかし表情は好奇心できらめいていた。初めて見る軍用艦の内部やキャノピーを隔ててみる宇宙空間に目を見張る。 シェリルは軍のキャンペーンソングを制作する代わりに、取材としてバルキリーへの搭乗を願い出た。 統合軍は訓練用の機体を貸し出してくれた。 シェリルの表情が素材になるかも知れないということで、コクピット内部を写すカメラも設置されている。 パイロットはアルトを指名していた。 「答えになってないって。でもな……ありがとう。正直、助かった」 「ふふっ」 素直なアルトの感謝が耳に心地よい。 「こちら管制、シルフィード1、発進位置に着いた」 管制がコールサインでアルトを呼び出した。 「こちらシルフィード1、発進位置を確認した」 「シルフィード1、発進許可が出た……銀河の妖精とデートとは羨ましいねぇ。帰ってきたら袋叩きに遭うぞ」 「管制、忠告感謝する。発進」 スロットルを押し込むと反応炉が出力を上げた。 機械腕が機体を解放する。 リニア・カタパルトの与える加速が体をシートに押し付けた。 蹴りだされるようにVF-171は虚空に躍り出る。 現在、フロンティア船団が停泊しているのは、ガスジャイアント型惑星の近傍宙域だった。ここで補給物資を収集している。 「さあ、訓練風景を見ていこうか」 新統合軍が射爆訓練を実施している宙域へと向かう。 途中でシェリルが声を上げた。 「あ、光った。あそこで訓練しているの?」 ガスジャイアントから、宇宙空間に向けて電光が閃いた。 「あれは違う。フラックス・チューブ(大電流束)だ。 ガスジャイアント型惑星の周りには強力な磁界があって、その中を衛星が通る度に発電する。 遠いから細く見えるが、地球がまる焦げになるぐらいのサイズはあるぞ」 「すごーい。大きな電子レンジみたいなものね」 「そう……とも言えるな」 「でも、音が聞こえないと迫力ないわ」 「聞こえるぜ」 「ほんと?」 アルトは通信機のノイズ・キャンセリング機能を止めた。 ガガガガガ…ガガガガガガガガガガ…ッ!!! 巨大な何かを引っかくような音がスピーカーから飛び出した。すぐに人間の耳に害のないレベルまで音量が下がる。 「どうだった、天上の音楽は?」 アルトの質問にシェリルは頭を振った。 「あまりに刺激的」 木星タイプ・ガスジャイアント型惑星の周囲には、環が5つ、衛星が10個ほど確認されていた。 複雑な空間構成で見所が多い。 ところどころで少し寄り道してゆきながら訓練宙域に到達する。 「こんな世界を、いつも見ているのね」 シェリルの声が寂しそうに聞こえたのは気のせいだろうか? 「そろそろ見えてくるはずだ…」 キャノピーにいくつかの記号が表示された。友軍機のシンボルだ。 「こちらシルフィード1、グリフィン・リーダー応答願います」 すぐに返事がきた。 「こちらグリフィン・リーダー、シルフィード1歓迎する。特等席へご招待だ」 座標を指定してくるので、誘導に従って飛ぶ。 今日の訓練は母艦のような巨大な目標への攻撃訓練だった。 電子的に作り出された実物大ダミーめがけて、小隊単位での攻撃をしかけている。 砲火をかいくぐり、対艦ミサイルが射出され、命中とともに巨大な火球が生まれる。 「グリフィン4、貴様は撃墜された。離脱せよ」 グリフィン・リーダーの判定に、翼を翻すグリフィン4。 新統合軍は高性能の無人戦闘機に頼りすぎていた。 強力なジャミング能力を持つバジュラの前に、人間のパイロットが再び重視されてきてはいるが、錬度不足は否めない。 「ね、アルト、参加してみたくならない?」 シェリルが声をかけてきた。 「ちょっと待て、子供の遊びじゃないんだぞ。事前の計画に沿ってやらないと…」 アルトが嗜めるのも聞かず、シェリルはグリフィン・リーダーに呼びかけた。 「こちらシェリル・ノーム。グリフィン・リーダー聞こえますか?」 「感度良好。まさか軍用の回線でシェリルさんの声が聴けるとは思ってませんでしたよ」 「飛び入り参加させてもらってもいいかしら?」 しばらくの沈黙があって、グリフィン・リーダーが返答した。 「いいでしょう。その代わり、怪我をしても知りませんぞ」 「ありがとう、グリフィン・リーダー」 キャノピーに表示されたグリフィン・リーダーの映像に向かって投げキスを飛ばすと、シェリルはアルトをけしかけた。 「許可が出たわよ」 「お前なぁ……舌を噛まないように歯を食いしばってろ」 使い慣れない新統合軍のVF-171だ。頭の中でスペックの違いをチェックしながら、攻撃位置に遷移した。 機載コンピュータに訓練の設定、使用するダミー武装のデータが入力されきた。 「行け、シルフィード1」 グリフィン・リーダーの合図とともに、標的艦へと加速する。 個艦防御システムの砲火をひらりひらりと回避し、バトロイドに変形して砲火を潰し、再びファイター形態にシフトして、実体の無いダミー弾を射出する。 「おお……」 通信回線にグリフィン小隊一同の声が響いた。判定は敵艦の撃沈。 アルトにしてみれば、バジュラの母艦と相対した時のことを思えば、たいしたことはない。 「さすがだ、シルフィード1」 グリフィン・リーダーの賞賛とともに、小隊各機がバンク(小さく翼を振る)して同意を示した。 「飛び入り許可、感謝する……大丈夫か?」 礼を述べると、前席のシェリルに声をかけた。 「め…目が回ったけど……だ…だいじょぶ……でも、疲れたわ」 「OK、帰投しよう」 アルトは機種をアイランド・ワンへと向けた。 格納庫へ戻り、アルトはVF-171から降りる。 シェリルは案外しっかりした足取りで、コクピットから出てきた。 整備士たちが拍手で迎えるのに手を振ってこたえた。 「帰りましょう」 アルトと並んで更衣室へと戻る。 通路の角を曲がって、周囲に人がいなくなったところで、ぐらりとシェリルの足元が揺れた。 思わず抱きとめるアルト。横抱きにして、顔色を見る。 「あ…あは……足に来たみたい……アルト、激しくするから」 顔色は悪くなかったが、大量の汗が流れ落ちている。 「冗談言えるぐらいなら大丈夫だな」 シェリルを抱き上げたままアルトは、グレイスの運転する迎えの車に乗り込んだ。 アルトは自分史上最大のいたたまれなさを味わっていた。 シェリルが宿泊している高級ホテル。一泊いくらするのか見当もつかないスウィートルーム。 ぐったりしたままのシェリルを運び込み、ダブルサイズのベッドに横たえたところで、グレイスに呼び出しがかかった。 インプラントした通信端末を経由して何事か話していたグレイスは、すぐに外出した。 「シェリルのこと、お願いしますね」 そう、言い置いて。 「お願いしますねって……」 シェリルを見る。 バルキリーパイロットのスーツは体を締め付ける構造になっているので、少しばかり苦しそうだ。 逡巡したが、アルトはスーツを脱がせることにした。 「うーん……」 全てのホックやジッパーがはずされると、シェリルが小さな声で唸った。 「だ、大丈夫か?」 シェリルは目を閉じたまま、起きる様子はない。 ため息をついて、アルトはスーツを取り払った。 シンプルな白いアンダーウェアに汗がしみこんでいて、肌に貼りついている。 かなり目のやり場に困る。 「ええと…」 さすがに下着に手をかけるのはまずい気がしたので、スーツを壁にかけると、自分もスーツの上半身を脱いだ。 シェリルの顔を覗き込む。 呼吸はさっきより楽になったようだ。長いまつげが震えてうっすらと瞼が開いた。 そしてアルトを認めると微笑む。 「良かった。疲れてただけみたいだな」 アルトは胸を撫で下ろした。 「…もう」 シェリルの腕がアルトの頭を抱き寄せる。 「うわっと」 「ちゃんとキスしてくれないと、フロア中に響く悲鳴をあげるわよ」 シェリルがアルトの耳元で囁いた。 アルトの中で何かが堰を切ったようにあふれ出た。 「このっ…!」 シェリルの唇を奪った。 シェリルは叫ぶために大きく息を吸ったところで口づけられたので、吸い込んだ空気は熱い吐息に変わった。 「……んっ」 アルトは全てを貪るような勢いで、吐息を吸い、しなやかな体を抱きすくめた。 舌を花びらのような唇の狭間へ突きいれる。シェリルもそれを迎え入れ、同じようは猛々しい動きで舌を動かした。 長いキスの後、アルトはようやく唇を離した。 「あ……はぁっ……」 ほんのり上気したシェリルの表情は微笑んでいるかのようだった。 その笑顔をはぎとりたくて、アルトは動いた。汗で濡れて貼りついたシェリルのアンダーウェアをむしるように取る。ブラを取ったところで、汗の匂いが立ち上った。 シェリルは腕で胸をかばう。微笑みが、羞恥の色に変わった。 「ダメっ…今はっ…汗っ」 アルトは、シェリルの腕をこじ開けシーツの上に押さえつけた。思わず顔をそむけるシェリルの首筋に唇を押しつけた。ぴりっと汗の味がする。 「…っ」 ピクンと体を震わせるシェリル。 アルトは唇を離し、吐息のかかる距離でシェリルを見つめた。 「俺はイヤじゃない……」 シェリルは小さく頷いた。軽く頭を持ち上げて、唇をアルトの顎の先に押し付ける。そこで滴となっていた汗を舐めとった。 そして、二人は汗にまみれたまま、肌を重ねた。 アルトの指がシェリルの敏感な部分に触れた。 奥まった場所にある花びらは繊細な形をしていた。 指を滑らせると、含んでいた蜜がこぼれ、自然に指が内部へ導き出された。 「……ぅ…ん」 声を漏らしたシェリルを見つめる。 「痛くしたか?」 「ううん…」 シェリルは首を横にふる。そしてアルトの頭を抱きしめて、自分の胸に押し付けた。 繊細な指がアルトの髪をかきまわす。 髪をまとめていた紐が解け、黒髪がはらりと広がる。 シェリルはアルトが自分の中心へと入ってきた瞬間、思わず声を上げた。 かすかに予想していた摩擦も痛みもなく、自然に、あまりに自然に一つになった。 自分がどれだけ濡れているのか感じられた。 思わず顔をそむけたくなるような羞恥と、どこまでも求めてしまう欲望、相反する気持ちが体の中でぶつかり、大きなうねりとなる。 そのうねりを突き破るようなアルトの動きが、シェリルの感じる全てとなった。 ベッドの上で愛し合った後、二人でバスルームへ。 互いの長い髪を洗う。 シェリルのストロベリーブロンドをアルトの指がシャンプーの泡を立て、アルトの黒髪をシェリルの指が梳いた。 ヨーロッパスタイルの狭いバスタブに二人で収まる。 アルトに背後から抱かれながら、シェリルは頭をアルトの肩に乗せた。 「ふふっ……」 理由はないが、気恥ずかしさが混じった笑い声が漏れてしまう。 アルトはシェリルの耳元で囁く。 「お前……シェリル……綺麗だ」 「なぁに? 今頃気づいたの?」 「ベッドの上で、ここから上が…首も、顔も……」 アルトの指がシェリルの胸を横切るように肌の上を滑る。 「あ…」 ほてりを残した肌は敏感になっていて、思わず声が出る。 「綺麗な桜色に染まって…」 「さくら…色?」 「淡いピンク……かな」 「そんなの、見てたの?」 シェリルは体を起こした。バスタブの水面が揺れる。 「何もかも見逃したくなかったから」 「ずるい」 シェリルは腰をねじって、アルトを見た。 「え?」 「ずるい! ずるい!」 湯を手ですくってアルトにかける。 (私は何も覚えてないぐらい夢中だったのに、そんなの見てるなんて!) 「わっぷ……やめっ…」 至近距離での水しぶきは、たまらない。アルトはシェリルを抱きすくめて動きを封じた。 しばらくアルトの腕の中で抗っていたが、シェリルは再びアルトの肩に頭を乗せた。 「アルト、見せなさい」 「何を?」 「私だけ見られているなんてアンフェアだから、私も見るわ。そこ、座りなさい」 シェリルの言う通り、アルトはバスタブの縁に座った。 「服着てると、そんなに思わないけど、胸板が厚いわ」 シェリルは手のひらでアルトの胸板を撫でた。その手が腹から腰へと滑る。 「ん…」 思わずアルトが声を漏らした。 「ふぅん、こんな形なのね」 アルトの膝の辺りにシェリルは顎を乗せた。手をのばしてアルトの陽根に触れる。すぐに反応し、見る見るうちにシェリルの手の中でそそり立った。 「見れば見るほど不思議なカタチ」 「しょうがないだろう。生まれつきこうなんだから」 アルトの頬は湯のためばかりではなく、上気していた。 「でも、全部、アルト」 シェリルの目はトロンとしていた。そして手の中のもの、その先端に唇を落とした。すぐに唇を離すと、アルトを見上げてほほ笑む。 「おい…」 アルトは目を丸くした。 シェリルはそのまま立ち上がった。完璧なプロポーションにそって湯が流れ落ちる。 「上がりましょう」 「お前なぁ」 「どうしたのアルト?」 いきり立ったものをもてあまし気味のアルトを不思議そうに見るシェリル。 「いや、いい。……いい加減のぼせそうだしな」 アルトはバスタブを出た。 それから、二人はベッドの上で眠りに落ちるまで戯れた。 全裸で待機されたら、アップしないわけにはいきません。 しかしながら、ご期待に沿えたかどうか不安です(汗
https://w.atwiki.jp/fairy-waterfall/pages/151.html
503 名前:your trick or treater [sage] 投稿日:2011/10/30(日) 01 11 04.67 「楽しかったわね、アルト!」 ベクタープロモーションが企画したハロウィン・イベントは大成功の内に幕を閉じ、シェリルは上機嫌だ。 元々は抽選で選ばれたファンのみが参加できるイベントであったが、シェリルとランカの希望により別枠で子供達を多く、特に戦災孤児を優先して招待した。 子供達を代わる代わる抱いて慈しむような微笑みを絶やさないシェリルに、アルトは自分達の未来を重ねて目を細めた。 ーーいつか、俺たちの間にも子供ができる日が来るんだろうな… 警備という名目でSMSの隊員も招集され、打ち上げは飲めや歌えのどんちゃん騒ぎとなった。 その打ち上げも終わり、早乙女邸に帰宅したシェリルはアルコールも回って上機嫌だった。 夜半過ぎということもあり、裏口からこっそり離れに入る。 「おい。上がる前にコート脱げよ」 作法に厳しいアルトに咎められ、シェリルが口を尖らせる。 「お行儀が悪いのはわかるけど、ここで脱いだら寒いじゃない。もしかして、あたしの衣装もっと見たいの?」 コートの下はセクシーなハロウィン・ウィッチ。魔女の衣装だ。 (こいつの酒癖の悪さは直らないな…) アルトは大きくため息をついて、シェリルを室内に押し込んだ。 こんな所を兄弟子に見られたら何を言われるか分かったものではない。 「Un bonbon sinon un mauvais tour?」 「は? 何て言ったんだ?」 「知りたい?」 打ち上げ前までの聖母のような表情はどこへやら。 今や小悪魔的な微笑みを浮かべている。 「キャンディをくれないと、魔女が攫っちゃうってことよ」 コートを脱ぎ捨て、アルトの首に腕を絡ませる。 魔女というより、女王様と呼びたくなるようなボンデージ衣装。 そして、今にも唇が触れ合いそうな距離。 アルトは酔っ払いの戯れ言に惑わされるな、と己に言い聞かせながらも、シェリルから目が離せなかった。 「攫うってどこにだ?」 「イ・イ・ト・コ・ロ!」 「うわっ」 シェリルが勢いのままにアルトを布団に押し倒す。 「うーん、キャンディはどこかしら?」 アルトのジャケットを剥ぎ取り、シャツをたくし上げる。 「これ?」 シェリルはそう言うなりいきなりアルトの乳首を舐めた。 「お前…!」 シェリルの思いもよらない行動に狼狽える。 「甘ーい」 舌で突ついたり転がしたり。 アルトの腹部にはたわわな胸乳が押し付けられ、その眺めは壮観だ。 「でも…もっと美味しいの、隠してるでしょ?」 シェリルの細い指が腹部を撫で、それを追うように唇が這う。 アルトの背中をゾクゾクとしたものが走る。 「お前酔い過ぎだろ、水持ってくるから」 「酔ってないわよ! このあたしを誰だと思ってるの? シェリル・ノームがあの程度で酔っ払うわけないじゃない!」 言い終わるや否や、ベルトに手を掛けあっという間にアルトのペニスを引っ張り出した。 「みーつけた」 アルトの愚息は既にパンパンに膨れ上がり、血管が浮き出ている。 当然のことだろう、普段プライベートでは性的なことに稚いと言っても差し支えないほどのシェリルが、これだけ積極的に変貌して、興奮しない男がいるだろうか? シェリルは竿をねっとりと万遍なく舐め上げながら、アルトのボトムスを剥ぎ取る。 双球を片方ずつ口に含みながら、アルトの顔を見上げた。 「気持ちいい?」 「ああ…」 刺激による気持ち良さもさることながら、シェリルの姿に何より興奮していた。 数える程しか口淫を経験していないというのに、この淫らさと技巧。何事も飲み込みが早いシェリルに舌を巻く。 そして、アルトを焦らすことまで覚えている。肝心な部分は避けたままだ。 「シェリル…キャンディが欲しいんだろ?」 半ば強引に先端をシェリルの口に含ませる。 初めは苦しそうにしながらも、くびれや鈴口、そして亀頭全体に隈なく舌を這わせる。 舌での刺激の合間に、シェリルの熱い吐息が股間にかかる。 たまに覗く赤い舌が何ともエロチックだ。 それが全て相成って、アルトを追い詰めた。 「シェリル…! ダメだ、出る…!」 「ん…!」 シェリルはその全てを口の中に受け止め、亀頭からちゅっ、と音をたてて唇を離した。 アルトは放精感とそのくすぐったさに魂が抜けるかのような感覚を覚えたが、我に返った。 「わ、悪い! まずいだろ、口から出せよ」 慌ててタオルを差し出す。 しかしシェリルはきょとんとしている。 「飲んじゃったわよ」 「は!? 」 「だってミシェルがくれたビデオではこうしてたわ」 あいつ…! と心の中で苦々しく思いながらも、僅かに悪友に感謝しないでもなかった。 「それに…」 シェリルが覆いかぶさるようにして耳元で囁いた。 「アルトのものは…全部私のものにしたいの」 アルトの胸に締め付けられるような愛しさが込み上げた。 「お前の言葉は心臓に悪い」 「きゃっ!」 瞬時に身体を起こして、シェリルがアルトの腿に載せられる形になった。 アルコールと羞恥と興奮が綯い交ぜになってシェリルの頬は紅潮している。 シェリルの後頭部を支えるようにして深く口付けた。嗅ぎ慣れた自分の精液の青臭さがシェリルの口腔内にあることに不思議な感覚を覚える。自分で飲めと言われても到底飲めるとは思えない。それをシェリルが何でもないことのように自ら受け入れてくれた事が胸を熱くした。 「アルトがイくところ初めて見たわ。ああいう顔するのね」 照れ隠しにぶっきらぼうに返す。 「いつもは見てないのかよ」 「見てる余裕なんてないもの」 赤い頬を更に染めて恥ずかしそうに顔を背ける。 「じゃ、次は俺がその顔を見せてもらう番だな」 向き合ったまま、下着の隙間から蜜壺に指を差し入れる。 「ちょっと…! あ!」 「俺のを舐めてるだけで興奮してたのか?」 下着は既に濡れそぼっており、用を成していなかった。 「ここもすごいな」 「いやあ…っ!」 愛液で濡れた指でクリトリスを撫で付ける。そこは硬く膨れ上がり、シェリルが興奮していたことは明らかだった。 「…だって…いつもこれが入ってきてるんだって思ったら…」 アルコールが入っているせいか、シェリルの言葉は普段より素直で赤裸々だ。 「可愛いな、お前」 耳朶をねぶり、片手でクリトリスと膣口の間を愛撫しながら、ビスチェを外すと白い乳房が目の前にこぼれ落ちた。ガーターベルトも外し、ショーツも取り去る。 「や…アルト…こんな明るいところで恥ずかしい…」 シェリルはアルトを跨いだまま膝立ちになり、絶えず与えられる快感に身悶えた。 「お前が先に仕掛けたんだろ? 」 アルトは乳房の感触を愉しみながら、陰部を掌で包み一番敏感な部分を強く刺激した。 「そこ…! 気持ちいい…! あると…イっちゃう…!」 シェリルはアルトの肩を爪痕が付く程強く掴み、全身を震わせたかと思うとそのまま崩れ落ちた。アルトの胸にぐったりと身体を預けて肩で息をしている。 シェリルはアルコール弱く、酔うと虎になることに辟易していたアルトだったが。たまには酔わせて乱れるのを愉しむのもいいものだ、と独りほくそ笑んだ。 その今までにない痴態に、既にアルトの雄は復活して欲望の行き場を求めていた。 「シェリル、入れるぞ」 「…もう…?」 少し呼吸が落ち着いたシェリルの腰を支え、十分潤っている泉に己を沈めた。 「あああ…!」 自らの重さで思いがけない深い部分にアルトが到達し、シェリルは身体を強張らせた。 「どうした?」 「おく…アルトが…あたって…!」 その間にもアルトが下から突き上げ、痛みと快感と何か分らないものが渦になってシェリルを襲う。 シェリルは無意識に腰を揺らし、更なる快感を求めている。 その愉悦に歪む美貌も、白磁の肌に玉のように浮き出た汗も、しなやかな肢体も、伸びやかな喘ぎ声も、全てがアルトを狂わせる。 このままではあっという間に果ててしまいそうだった。 体勢を入れ替え、シェリルを組み敷く。 「あん…!」 アルトはシェリルの細いうなじから乳房へ口付けを落としながら、滑らかな肌を二の腕から背中や脇腹まで忙しく撫でる。 愛おしい。シェリルの全てが。 「アルト…アルト…!」 触れられた部分から粟立つような痺れを感じて、シェリルは瞼を震わせた。 そして、今まで一体感とぼんやりとした気持ち良さを感じていただけの挿入から、別の何かを呼び覚まされそうな予感が生まれていた。 「シェリル…もう持たない…!」 アルトの熱い吐息と、切なげな表情が胸を高鳴らせた。 彼を興奮させているのは、快感を与えているのは、他でもない自分なのだと。 「アルト…中に…ちょうだい…」 アルトに激しく揺さぶられ、背中に縋り付きながら途切れ途切れに言葉を紡ぐ。 「シェリル…!」 抽送がより一層激しくなり、より深いところを犯され、そのまま欲望の全てが吐き出された。 抱き合ったまま横に転がり、アルトはシェリルに甘い口付けを送る。 「愛してる、シェリル」 「あたしのほうがいっぱい愛してるわ、アルト」 アルトが愛おしげに目を細めてストロベリーブロンドの髪を梳くと、シェリルはくすぐったそうにする。 「ねえ、アルト…あたし、ノルプラントを摘出しようかと思って」 思わずアルトが目を瞠る。それはつまり… 「お前、まだ酔ってるのか?」 「とっくに醒めたわよ! 酔ってそんなこと言うわけないでしょ! ばか!」 シェリルは咄嗟にアルトの頬を張ろうとしたが、アルトに手首を掴まれ、その手の甲に口付けられた。 「きっとお前はいい母親になるよ」 「ほんとに?」 「ああ」 「アルトは…あたしでいいの?」 「今更そんなこと聞くな。お前以外いないだろ」 アルトの穏やかな微笑みに、シェリルは嬉しさで胸が一杯になり、何も言えなくなってしまった。 「どうした?」 「…あたし、すごく幸せだわ」 そのままアルトの胸にしがみついて、涙を隠した。 「何年か先のハロウィンは賑やかになるな」 アルトはシェリルの頭を優しく撫でながら、額に唇を落とした。 アルトはバレンタインやクリスマスに並んで企業戦略に踊らされた行事など子供じみて馬鹿馬鹿しい、と思い込んでいた自分が滑稽に思えた。 愛する人と一緒なら、何もかも大切な時間になる。 今年のハロウィンも、その次も、またその次も。 シェリルとの思い出が紡がれていくのだろう。 【 the trickiest 兄さん 】 幸せな時間を過ごした翌朝は、大抵災厄が待ち構えている。 現に、まさしくその元凶が母屋に続く長い板間の先に立っている。 「おはよう、兄さん」 「おはようございます。有人さん」 この笑顔の下にどんな刃を隠しているやら。 「有人さん、シェリルさんはあまりお酒がお得意ではないのですから、程々になさるよう有人さんが留意なさってくださいね。あとで離れに軽い朝食を運ばせますから」 「…ああ」 今朝のシェリルは二日酔で、朝餉の席に着くことができなかったのだ。 「それと」 きた! とアルトは身構えた。 「シェリルさんは声量がおありですから、お酒が入った時は特にお気を付けくださいね。若い弟子も多いですし、人払いする身にもなってください」 アルトはまた、言い返す言葉を見つけられず押し黙るしか無かった。 そんな兄にも慣れてきた、晩秋の朝だった。
https://w.atwiki.jp/fairy-waterfall/pages/98.html
明かりを8割ほど落とした寝室のベットの背にもたれながらぼんやりとしていたアルトの元に、ようやく支度を終えたシェリルがやって来ると勢い良くアルトの胸に抱きついてきた。 久しぶりのシェリルのオフに合せてアルトが休みを取っていてくれたのがよほど嬉しかったらしく、一緒に出かけないかと誘った夕食の時間からシェリルの機嫌がすこぶる良い。 普通にデートするだけなのに、しかも行き先はアイランド3のカバウシ牧場という色気もへったくれもない場所でのピクニックという健全極まりない企画だというのに、シェリルは話を終えたときから終始ニコニコ顔だった。 スタイリストから新しく買ったのだといって可愛らしい感じの白地に青のリボンがところどころに通されたワンピースを着て見せ、嬉しそうにしながらアルトに感想を聞いてくる。 誘って本当によかったなと、はしゃぐシェリルを身ながらアルトはほっと胸をなでおろし、優しく胸の辺りに顔を埋めているシェリルを優しく抱き返す。 柔らかい肢体の感触と巻き起こった小さな風に乗った甘いシャンプーの香りがアルトの鼻腔を刺激し、胸をぐっといっぱいにする。 ほんの少しだけ苦しくなる感覚をかみ締めながら、アルトはシェリルを大切そうにもう一度抱きしめた。 ************** 「・・・・で、もう最高なんスよ!!」 「へぇ~。今度会わせろよ」 「いやっスよ~。大~丈夫ですって!先輩にもすぐに彼女できますから~そしたら”して”くれますってw」 「ッノヤロー!!!お前、ちょっとばかし可愛い彼女ができたからって調子乗ってんなぁっ?!」 「テテテテテテテテッ!!ギブギブギブ!マジギブですって!!!ッ、だぁ~死ぬぅ~!!!」 「何やってるんだ、お前達?」 「あぁっ!!たいちょーコイツ彼女が出来たからって自慢してるんですよ~」 「へへっ!でも、マジ可愛いんスよ!!潤んだ瞳で、こっち見上げて『キスして…っ』っとか言っちゃうんですよ?! もう俺爆発しますって!!!隊長ならあの時の可愛さ分かってくれますよねっ!!」 「・・・・・・・」 「隊長?」 「えっ、あ、あぁ・・・まぁ・・って、俺まで巻き込むんじゃないっ!!!」 「だぁって、普段女王様なシェリルがどんなになるのか知りたいじゃないスかぁ~!つーことで、そこんとこ詳しくお願いします。」 「言うわけないだろっ?!っというか、お前たち訓練終わってそんなに騒ぐ体力残ってんなら明日からメニュー変えた方がいいな。」 「「げぇっ・・・・あーそうだ俺たち用事がまだ・・・・ってことで失礼しまぁすっ(するっス)!!」」 訓練を終え、シャワールームで汗を流していたアルトが脱衣所に戻ってきた時に繰り広げられていた会話がコレだった。 初めは一体何のことかと思っていたのだけれど、どうやら 彼女のキス の強請り方についての自慢らしく、あまりの五月蝿さに注意に入ったはずのアルトは気が付けばその会話に巻き込まれでいた。 思わず流されそうになっていた自分にはっとし、うやむやなまま答えを与えたまま後輩達をシャワールームから追い出すことに成功したまでは良かったのだけれど、その時からアルトの中には一つの疑問が浮かんでいた。 不安 と言ってしまえるほど大きなものではない。 けれどやはり不確かな ソレ は確かにアルトの心を揺り動かす。 自覚によって生まれた小さな寂しさにも似た感情にアルトは小さくため息をついた。 早乙女アルトはシェリルと正式に付き合うようになってからというもの、彼女からのキスやキスのおねだりをされた経験がなかったのだ。 シェリルからの キス はむしろ付き合う前にだけもらっていた。 ほとんどが不意打ちと言われるようなもので、きちんと付き合う前のキスはどれもそんな感じで一方的に奪われていたのだ。 けれど、最近を思い返すと自分からのキスだったり、挨拶程度に頬や額に軽くされることしかない。 唇同士を触れ合わせようとするのはいつも自分からだった。 *************** 「なぁ、シェリル。」 「なぁに?」 アルトが呼べば、胸へ押し当てるようにしていた顔を上げてシェリルが笑う。 背中に回されたままの腕に捕まえられていることを少し嬉しく思いながら、アルトがそっとシェリルの輪郭を指でなぞればくすぐったいのか小さな声が上がった。 空色の瞳がまっすぐアルトを見つめ、どうしたの?と優しく問うように小首が傾げられる。 その様子に頬を緩ませながら、アルトはそっと言葉を紡いだ。 「その・・・・キス、してくれないか?」 「・・・・・・・」 ストンッと滑り落ちるようにして言われた静かな言葉に、シェリルの瞳が見開く。 何を言われたのか分かっていないようだった表情にゆっくりと色が生まれ始め、やがて頬が赤く染まった。 いつもしていることを改めて言葉にされると恥ずかしくなるのか、目に見えてうろたえ出したシェリルにアルトが笑う。 耳まで赤く染まった様子はどうしようもなく可愛くてたまらなかった。 相手の好意が本物なのだということを知ると嬉しくなる。 どんなに一緒に居ても、どんなに心を許しあっていても、そうやって好意を示されると嬉しくなる。 アルトはそれを伝えるように優しくシェリルの髪に触れた。 「・・・・どうして・・急に・・・」 「・・・ダメ、か?」 「だ、だめじゃないわよっっ!!そんなわけないじゃないっ!」 「じゃあ、シて?」 「ッ・・・・・」 アルトの言葉に僅かな沈黙が二人に降りる。 アルトのおねだりに恥ずかしさからかシェリルはぱっと瞳を反らしてしまったけれど、アルトの上から逃げたり、離れようとはしなかった。 着ている夜着を通してシェリルの熱が上がるのを感じる。 アルトはシェリルをそっと抱き寄せるとその肩口に顔を埋めた。 湯上りの良いにおいがアルトをくすぐる。 ふわふわの髪がアルトの吐息にゆらゆらと揺れる。 それをぼんやりと見つめながら、アルトはシェリルに甘えるようにしてすりよった。 こうして相手に触れることはとても気持ちいいのだということをアルトは初めてシェリルで知った。 肌や手を重ねるのとはまた違って、温かくひどく心地よいのだ。 触れる全てが優しく、自分を受け止めてくれるということは何にも変えがたい安らぎをくれる。 欲を言えば頭を預ける先がシェリルのふとももで、頭をなでてもらえればもっと嬉しかった。 「なぁ、シェリル。」 「・・・・・・・」 耳元で囁くアルトの声は甘く、シェリルの母性本能を刺激する。 滅多に見られないアルトの姿にシェリルの心がざわつき、思わず笑みがこぼれた。 抱き寄せられたままの状態からゆっくりと手を伸ばし、アルトの髪紐を手探りで探す。 日ごろから良く触れていることもあってか、簡単に見つかったソレの端をそっと引けばサラッという音を立てて髪が解けた。 いつ見ても雅やかだと思える光景にシェリルの口から感嘆の声が零れる。 そのまま優しく手を伸ばし、触れられる範囲で髪を撫でてやれば肩口に顔を埋めたアルトから漏れた満足そうな吐息が聞こえた。 まるで、警戒を解いて日向に寝そべる大きな犬のようだ。 一度心を許されればどんなに無防備な様子さえも自分に見せてくれる。 ありありと分かる自分への信頼がシェリルには嬉しかった。 いい子。 いい子。 と言うようにシェリルの手が優しく何度もアルトを撫でる。 アルトに触れている部分から心地よい体温がじんわりと伝わってくるのがなんだかとても幸せに思えた。 「なぁ、シェリル。キース」 「・・・・・・・。」 せっかくいい雰囲気だったというのに、それをなんとも無遠慮なアルトの言葉が見事にぶち壊してくれた。 シェリルの背中にまわされていたアルトの手はシェリルの髪の毛を一房ほど絡めとり、忘れないでというように2,3度引く。 無粋すぎるアルトの行動に少しだけ腹が立ったけれど、そんな感情もすぐにこみ上げてきた可笑しさに掻き消されてしまった。 トン、トンとアルトの背中を叩きアルトの体を起こさせ、アルトの腕の中から逃げ出してからそっとアルトの頭を両手で包み込む。 キスをしようにも高さがほんの少し足りなかったからアルトの足を跨いで膝で立った。 琥珀色の綺麗な視線がじぃっと子犬のようにこちらを見上げる。 その一途な様子が可愛くて、シェリルは小さく噴出すと同時にたまらず破顔した。 そのまま顔を近づけ、唇でアルトに触れた。 最初は額。 次に瞼。 それから頬。 大事な宝物を扱うように静かに触れながらその感触を確かめ、丁寧にキスを落としていく。 一つキスをするごとにアルトの視線が少しだけ恥ずかしそうに、そして嬉しそうに揺れるのが嬉しかった。 ほんのりと染まった頬を見ながらシェリルは自分から言い出したくせにっと心内で呟く。 けれど、思い返せば出会った頃のアルトはいつもこんなかんじだった。 何気ないことで頬を染め、ぱっと視線を反らしては動じてない振りをするのだ。 格好付けで、まっすぐで、時々妙に意地悪で、でもとても素直で可愛い男なのだ。 手を繋いで一緒にファンから逃げただけで真っ赤になっていた自分たちを思い出すと、なんだか微笑ましくなる。 そんなに昔のことではないはずなのに、あの時の記憶がなんだかとても懐かしく思えた。 照れるアルトをバレないように観察しながらシェリルはゆっくりとキスを落とし続ける。 こめかみや鼻先などいつもアルトがしてくれる場所に全て触れながら唇へと下っていくとバランスが取りにくくなってくる。 ぐらつく体をアルトの肩や胸に手を置くことで支えると、シェリルは最後にそっと唇を啄ばんだ。 ふるんという弾力のある感覚がシェリルの唇を押し返す。 しっとりとした口付けは甘美で、ただ唇を押し当てているだけなのに頭が熱に当たったようにくらくらする。 離れてしまうのがなんだかとても寂しかった。 「なぁ、もう一回。」 閉じてられていた琥珀色の瞳が開かれ、シェリルの空色と絡むと、アルトは幸せそうに笑んでからもう一回と囁いた。 名残惜しいと感じたのは自分だけではなかったのだと安堵したシェリルはそれを嬉しく思いながらアルトのリクエストに唇で応える。 触れ合っているだけのキスはいつの間にかとろけるように甘いキスへと変わっていった。 軽く開いた唇の隙間から舌先がねじ込まれ、もう一つを見つける。 愛しげに触れてくるそれに触れ返してやれば、途端に勢いを増して絡み付いてきた。 息苦しさと嬉しい感情が頭の中で互いを主張し合う。 シェリルの背中に回っていたアルトの腕がゆっくりと背中を這い上がりやがて首筋へと優しく絡みつく。 角度を変えて舌先で触れ合う度にくちゅくちゅという水音が零れた。 『もう一回。』 息が続かなくなって離れる度に、アルトがそう耳元で囁く。 少しだけ荒く、熱く火照った声が耳へと流し込まれる度にシェリルの背筋にぞくりっとする感覚が走る。 どれだけ長いキスをしてもアルトの想いは満たされないようで、濡れたように見える切なげな瞳でそう繰り返すアルトは独特の色香を放ち、その妖艶さはその命に従って喜ばせてみたくなる程にシェリルを虜にしていった。 二人分の唾液を口内に流し込まれながらシェリルは必死にアルトに応える。 時々擦りあわされ、きつく舌を吸い上げられるとジンッと腹の奥が疼いた。 もう何度目か分からない濃厚なキスに、体の奥で熱が燻り始めている。 アルトの指先が肌に強く押し当てられたり、硬い爪が当たるのを感じるたびに、もっと強く ソレで 擦り上げられたいという欲求がシェリルの奥底で静かに生まれ始めていた。 息が上がるのにつられて体温も上がってゆく。 熱い息が肌にかかると、思わず先ほど放したばかりの唇を塞いでしまいたくなる。 頭が徐々に回らなくなり、思考がどろどろに溶け、唇をむさぼることしか頭の中に残っていない。 惰性のままに全身に広がっていくそんな感覚がひどく気持ちよくて堪らなかった。 口内をくすぐり上げ、舌先を舐め合い、ちゅっというリップ音を響かせながらもう一度口付ける。 唇の先で食んだ相手のソレがほどよい弾力を伝え、軽く吸い上げると今度は自分が絡め取られる。 攻守がくるくると入れ替わりながら、弄び時に本気になって相手を攻め立てる。 抜けそうになる力を必死に留めすがり付かせていた指先は流れ落ち、アルトの胸に頼りなく置かれたままだ。 すとんとアルトの太ももの上に堪えられなくなったシェリルが座り込むと、首筋に巻かれたアルトの腕が抱き込んだストロベリィーブロンドがふんわりと緩く撓んだ。 唇が離れた隙を狙ってアルトが膝を持ち上げ、シェリルの体を自身に持たれかけさせる。 体制を整えた上で再びシェリルを抱きしめれば、荒い呼吸を整えていたシェリルの瞳が少し嬉しそうに微笑む。 それに優しく笑い返しながら、アルトはシェリルの顎を持ち上げ再び唇を塞いだ。 さすがにこれだけ長いキスをしていると、疲れてきたのかシェリルが少しぐったりとしてくる。 アルトはゆるゆると手を滑らせると、今度は腰を抱き寄せた。 自分の太ももの上で僅かに体制の崩れたシェリルの背中はいつもより妖艶な曲線を描いていた。 アルトの胸に頭を寄せて体を支えているせいで胸元はアルトに近く、腰は胸元から少し遠い位置にある。 アルトは何度もそのラインを確かめるようになぞった。 「ッ、はぁっ・・・んんっ・・」 息も吐かせないアルトからのキスにシェリルの肢体の自由がゆっくりと奪われていく。 アルトに助けられなければ、体を起こしていることすらできないのだ。 酸欠と舌で弄ばれる感覚に溺れそうになりながらシェリルは必死にアルトを受け止める。 アルトに触れられているところが、異様に熱く感じた。 ドクン、ドクンと打つ心臓の音が酷く耳にうるさい。 熱い体温がもどかしく、火照った体が妙に疼く。 体の奥底でジリジリと燻る熱が、ゆっくり、ゆっくりとアルトの欲を飲み込んでいく。 熱と快楽にすでに溺れかけていた理性が己を飲み込んでゆく欲望に太刀打ちする力など、今のアルトには残っていなかった。 腰を抱き寄せていた腕が段々と舌に落ちていき、柔らかな双璧を撫でるとシェリルがぴくんっと反応を返す。 そのまま手をゆっくりと動かし、滑らかな太ももを擦って感触を楽しみながら足の付け根に這わせばシェリルの体が再び震えた。 下着の上から軽く爪を立てて秘部の上を滑らせる。 爪の硬い感触が柔らかな布を引っ張りながらその感触をダイレクトにシェリルに伝えた。 アルトの唇に塞がれたシェリルの口から、意味を成さない声が漏れる。 けれど、アルトはそれに気づかなかった振りをしながら何度も指先でカリカリと布を掻いた。 シェリルが震え、止めて、助けてと救いを求めるようにアルトの胸に置かれたままの手に力を入れようとするけれど、すでにアルトの力に抗うだけの力はシェリルに残っておらず、逃げようにも逃げられない。 アルトにしつこく触られるたびに、熱くなった体が勝手に反応して危うく腰が揺れそうになってしまう。 シェリルは羞恥と恥辱に焼かれながら、必死にアルトのイタズラが終わることを祈った。 が、アルトはシェリルが逃げようと腰を僅かに浮かした瞬間を見逃さずそのまま下着の隙間から押し入ってくる。 左手でがっちりと体を支えられ、唇を塞がれていたシェリルはアルトの指に犯されることを止めることができなかった。 細い、繊細な指がぐちゅりという淫乱な音を立ててとろとろの暖かな海へと沈む。 腰を下ろせばさらに奥へと指が突き立てられてしまうためにシェリルは腰を浮かせたままでいるしかなかった。 己を暴かれた恥ずかしさが身を焼くけれど、顔を背けることすら許してもらえず、シェリルはアルトにされるがままだ。 秘部を煽られる度にくちゅくちゅという水音と荒い息遣いが部屋に零れ落ちる。 まともな思考はすでにそのほとんどが奪い去られ、己の欲のままに突き進む男とそれを受け入れる女の色情にまみれていた。 長い口付けから開放された唇からは、しどけない声が上がりさらに男を煽る。 どこまでも情欲に溺れていく感覚が気持ちよくてたまらない。 「んぁ・・・・っ、はっ・・・あぁ、・ぁ・・ん」 漏れてくる甘い声をもっと引き出してやろうとアルトは指で掻きまわした。 ようやく顔を背けることを許されたシェリルは下を向いたままで、その表情が見えない。 いやいやと頭を振る様子は大変可愛らしくアルトの嗜虐心を唆す。 赤く染まった耳元に下を這わせ、ねっとりと舐め上げてやれば、びくっと体が震えた後で戸惑うような視線が僅かにすがり付いてきた。 「アッ・・・ルト・・・ん・・・あっ、やぁっ・・・」 『普段女王様なシェリルがどんなになるのか知りたいじゃないスかぁ~!』 ふっと頭の中にリフレインする声。 それに物騒に笑いながらアルトは心内で言葉を返す。 シェリルの こんな 姿を誰が教えてなどやるものか、と。 俺だけが知っていればいいのだ、と。 俺以外は知らなくていいのだ、と。 最大限に潤んだ瞳や真っ赤に染まった頬。 荒い息と零れる嬌声。 敏感に反応を返す身体。 その全てを組み敷いてしまいたいという乱暴な欲求がアルトを満たしていく。 そんなアルトに翻弄され、乱れた服の隙間や裾からシェリルの白い肢体が覗く。 滑らかな石膏のような肌はところどころが浮かんだ汗にしっとりと濡れ、ほんのりと赤く染まっていた。 「んっあッ・・ァ・・ッ・」 アルトが中を掻きまわしていた指を止め、抜いてやるとこわばっていたシェリルの身体から力が抜ける。 まだ、軽くしか煽ってないというのにすでにとろとろのそこからは抜いた指にはたっぷりとシェリルの愛液が絡み付いていた。 倒れこみそうになる身体を支えてやりながらアルトはシェリルを胸に抱く。 肩紐は緩み、半分ほどあらわになっていた乳房は柔らかな光を受けてたまらなく艶やかだ。 アルトはそっとその肩紐を落とすと、すでにぷっくりと立ち上がっていた先端の蕾を口に含んだ。 寝る間際だったために下着を着けていなかったシェリルにとっては全てが刺激となっていたのだろう。 舌先でころころと転がしてやれば、気持ちいいのか再びシェリルが震える。 この期に及んでもまだ逃げようとするするシェリルをの右手を引き止めることで静止しながら、アルトは乳房を指先で弄り倒しつつ舐り、豊満な胸を揉みしだきながらシェリルを高めていく。 柔らかいふにふにとした感触も温かさも少しだけしょっぱい肌の味も全てが気持ちいい。 アルトはシェリルに夢中で触れた。 乳房や先端を指先で煽り、首筋にキスを落とす。 なだらかな膨らみに沿って舌を這わせ、所々に歯を立て吸い付く。 ビクビクとシェリルが震える様子を楽しみながら、気の向くままに唇を落とせば各所に赤い花が咲いた。 胸元を滑り落ちたワンピースは腰の辺りでを露にして止まり、ほのかな光の中に照らされた肌が浮かび上がる。 赤い所有印に染まった胸元と違い、下腹は滑らかなまま光を受ける。 アルトは大切そうにシェリルに触れると、捕らえていた右手をそっと離した。 開放されたことにほっとしたのか、シェリルがそっと息を吐く。 アルトはシェリルに優しく微笑みながら、言葉を発した。 「全部、見せて。」 口調だけは穏やかなもののそこには有無を言わせぬ独特の雰囲気がある。 それでも断ることはできるのだけれど、ここで放置されれば後まで辛いのは自分だということをシェリルは知っていた。 なんとか立ち上がろうとするのだけれど、うまく力が入らずその場にへたり込んでしまう。 どうしようかとアルトを見れば、綺麗な琥珀色がじっと自分を見つめていた。 「止めるか?」 すでにほとんど裸に剥かれ、身体を覆う布は下肢に落ちたワンピースと汚れた下着だけだ。 アルトの思うがままに翻弄され、今ですら行動の一つ一つまでを視姦されているというのに、さらに追い討ちをかけるかのようなアルトの声にシェリルが慌てる。 ここまでは好き勝手に脱がせてきたくせに最後は自分で脱がせようとしたり、引き返せないところまでこちらを高めていることを知りながら途中で放り出すかもしれないなどという可能性をチラつかせるこんな時のアルトは本当に意地が悪いとシェリルは羞恥に潤んだ瞳でアルトを憎らしげに見つめた。 けれど、そんな反応すらアルトにとっては楽しい見世物らしい。 シェリルの視線を楽しそうに受け止めながら、お前がいいならと言って今にも布団の中へと包まってしまいそうになる。 体中で燻る熱を開放させるための手段はシェリルにはもう他に残されてはいなかった。 ワンピースの裾に手をかけ、ゆっくりと持ち上げていく。 濡れた下着がアルトの視線にさらされることが何よりも恐ろしかったけれど、ここで止めたら本当にアルトは途中で止めてしまうかもしれないという恐怖心だけがジリジリとシェリルを動かしてゆく。 少しめくり上げるたびに、心臓がどくどくと五月蝿くなり、顔が火照った。 「そのまま、止まれよ。」 半分ほどワンピースが持ち上がり、ちょうど下着が全て露になりかけた頃にアルトから静止の声が掛かる。 愛液に濡れ、紫色の濃淡でその様子がありありと相手にも伝わるだろうということがシェリルをさらに辱める。 うろたえるシェリルにアルトは不敵に笑う。 不意に伸ばされたアルトの綺麗な指が再び濡れた下着に触れるとぷちゅっという気泡の弾ける音がした。 そのまま下着の上から執拗に触られ、シェリルの下着から愛液が染み出していく。 とろみを帯びたそれは潤滑油のように指のすべりをよくするばかりで、決定的な刺激を与えてはくれない。 緩急をつけて煽られる度にシェリルの身体にアルトに触れられる嬉しさと気持ちよさが広がっていった。 「・・やぁ・・っ ・まっ・、ふぁっ・・・ッある・、・と」 「もうぐちょぐちょだな。そんなに感じた?」 「んっ・・・んっ・・・・ぁ・・や・・はぁッ・・」 「シーツまで染み込みそうだ。」 倒れそうになるシェリルを左手で支えてやりながらアルトはそのままシェリルの秘部を煽り続ける。 そのままイってしまえない強さで次々に攻められる度にシェリルの口から嬌声が零れ、注ぎ込まれる艶やかな声がシェリルをさらに刺激する。 しがみ付くことを許されないもどかしさとともにシェリルはワンピースの裾をつかんで耐えるしかなく、布越しでしか触ってもらえないことに切なさが増した。 「ると・・・・あるとッ・・・・ぁ・・待・・っ・」 「っ、・・・何だ?気持ちいいんだろう?」 「・も・・だ・・めぇ・・・・・脱、がせ・・て・・・・もっと、・・・・シて」 シェリルがとうとう堪えきれなくなり、絶え絶えになりながらアルトに懇願する。 アルトは僅かに瞳を見開くと、愛撫の手を緩めた。 「そのまま体重を後ろにかけて。」 「足、閉じるなよ。」 「そう、いい子だ。」 アルトの言葉に従って、シェリルが体制を崩していく。 最初はなんとか支えていた身体も徐々に力をなくし、それを見越したアルトがベットの上へと押し倒した。 押し寄せる快楽の波から逃げ遂せておることで無防備になった身体にアルトが静かに覆いかぶさり、軽く胸を食む。 肌に再び優しく触れてやりながらアルトはシェリルの下肢から下着を静かに取り払った。 すでにアルトによってとろかされた秘部からは愛液が溢れ出し、シーツへと零れ落ちようとする。 アルトは身を屈めると愛液の溢れ出す秘部へ優しく口付けた。 くちゅという水音が跳ね、シェリルの身体が軽くしなる。 ぴちゃぴちゃと舐め取る音がシェリルを十分に辱めることを知っていたアルトはわざと聞こえるように音を立てながら舌を這わせた。 長時間のキスと愛撫によって弄り倒されたそこはすでに盛大に潤んでおり、このまま腰を薦めても十分受け入れられるように思えてしまう。 アルトは軽くくにくにと秘部に指を這わせた後で、ゆっくりと中に挿しいれていった。 シェリルのナカはすでに熱くとろけており、待ちわびた侵入に内壁がすぐに絡み付いてきた。 出し入れを繰り返しながらシェリルの準備ができていることを確かめると、アルトは着ていた服を乱暴に脱ぎ捨て、裸になる。 挿入する前にシェリルに覆いかぶされば、切なく潤み、熱に犯された瞳がアルトを誘った。 「くッ・・・・・」 狭さの取れきっていないナカへと己を押し込むと、先ほど指に絡みついたのとは比べ物にならないくらいの熱さが迫ってくる。 ナカに押し入れれば入れるほどキツく絡みつかれ、どれだけシェリルが自分を欲していたのかが分かった。 いじめ過ぎたのかもしれないっとアルトは小さく苦笑する。 けれど、そんな余裕もすぐに押し寄せてくる波に飲み込まれてしまった。 熱くうねる壁がアルトを逃がさぬようにと絡み、締め付けてくる。 息を吐く一瞬も気が抜けなくて、動けないもどかしさがさらに自分を辛くする。 力任せにナカを穿てば、擦れあう感覚に思考が飛びそうになってしまう。 アルトは必死に意識を繋ぎとめながら、シェリルを蹂躙した。 奥へ、奥へと侵入し、ギリギリのところで引き抜いてやる。 強く扱かれる感覚に背筋が泡立ち、一気に持っていかれそうになる。 それをやりすごしながら、アルトは何度もシェリルのナカを掻き回した。 溢れてくる愛液がアルトに絡み、動くのを助けてくれる。 奥へ自身を突き立ててやるとシェリルが震えながら何度も自分の名前を呼んだ。 自分だって限界だろうに、必死に自分にしがみ付いてこようとする様子は可愛くて堪らない。 もっと気持ちよくなりたくて、 もっと気持ちよくさせてやりたくて、 感じるままにアルトは腰を振った。 甘さを増した嬌声がアルトの耳を侵して行く。 空色の瞳から零れる涙も、上気した頬も綺麗で美しい。 ふるふると揺れる乳房を吸えば、自分を包むナカが一際強く絞まった。 「あっ・・・あっ・・・ぁぁぁッ!!」 強く、弱く擦り上げればシェリルが逃げる。 腕の中でシェリルが乱れる様子は、アルトをさらに高めていく。 シェリルが自分しか見ていないのだと分かるこの瞬間が嬉しくてたまらなかった。 名前が呼ばれるたびに幸福な感情が心に満ちていくのが分かる。 もっともっと激しくしてやりたい、乱してやりたいという感情と身体の奥底から生まれる愛おしい気持ちとがぶつかり合いたまらなくなる。 アルトは夢中でシェリルを揺さぶった。 額にキスをして、 瞼にキスをして、 頬にキスをした。 体中に触れて、 落とした赤い所有印を撫で上げて、 白い肌をまさぐった。 熱いところも、 しっとりとしたところも、 やわらかいところも、全てが気持ちよくて、大切に思えた。 髪の毛はいつの間にかくしゃくしゃに乱れ、 荒い息遣いと汗に濡れていた。 舌で触れると、ところどころが少しだけしょっぱかった。 シェリルの指が、時々背中に甘い痛みを植えつけた。 限界に近づくたびに頭の神経が焼ききれるような感覚が走る。 体中に乳酸がたまり、くったくたになっていくのが分かる。 アルトは優しくシェリルの唇に触れた後で、一気に己を追い詰める。 引き抜き、押し込むたびにシェリルの足がシーツに擦れ、白い波が広がった。 擦れるたびに生まれる摩擦の熱で解けてしまうような気さえした。 ジャンプ台までの距離が段々と縮まっていくのが分かる。 背中に走る感覚が徐々にアルトを限界へと押し上げていく。 とうとう限界だと感じた瞬間、遠くなっていたうねりが一気に押し寄せてきた。 シェリルがイったのだと感じると同時に、硬く膨らんだ自身が弾けた。 腹が震え、その度に白濁がシェリルの中へと注がれていく。 熱いほとばしりは何度もアルトを震わせ、そしてその全てを繋がったシェリルへと流し込んでいく。 強い波が起こる度に白濁が吐き出され、それを受け止めたシェリルは少しだけ嬉しそうに微笑むとアルトに向かって甘えるように手を伸ばしてきた。 細い腕が自分の首筋あたりに絡みつく。 それを甘んじて受け入れながら、アルトは肘を突いたままシェリルの上に覆いかぶさる。 荒い呼吸音だけが部屋を満たしていた。 「ねぇ、キスして?」 ふっと沈黙を破ったのはシェリルの声。 ベットに横たわったままアルトを見上げ、そして少し恥ずかしそうにしながらもう一度同じ言葉を口にする。 シェリルの言葉にアルトはあぁ、なんだっと苦笑した。 この女王様は素直でないときと素直なときとのギャップが激しいことを忘れていた。 だから、こうして妙に可愛くなってしまう時でないとあんなセリフが聞けるはずがなかったのだ。 アルトは自分の思い違いを苦く笑いながら、シェリルに優しく口付ける。 開いた唇に舌を差し込んでやれば、子犬のような仕草でぺろぺろと舐め返された。 誘うようなそれを思い切り、ディープなものに変えてやった後でアルトベットに寝転がり、シェリルを上にして抱きしめる。 アルトの胸の上に寝転がったシェリルは幸せそうに笑って言った。 ねぇ、アルト。ずっとそばにいてね ―――と。 END
https://w.atwiki.jp/utamacross/pages/1.html
愛・おぼえていますか 天使の絵の具 小白竜 TRY AGAIN アナタノオト ダイアモンド クレバス 星間飛行 アイモ 私の彼はパイロット ねこ日記 What bout my star? トライアングラー ニンジーン Loves you yeah! インフィニティ Welcome To My FanClub s Night! ユニバーサル・バニー ノーザンクロス ギラギラサマー(^ω^)ノ ルンがピカッと光ったら 不確定性☆COSMIC MOVEMENT いけないボーダーライン 一度だけの恋なら 恋! ハレイション THE WAR AXIA~ダイスキでダイキライ~ ジリティック♡BEGINNER ロックされた楽曲名 解除に必要な楽曲名 縦軸がロックされた歌姫 横軸が解除に必要な歌姫 愛・おぼえていますか 縦軸がロックされた歌姫 横軸が解除に必要な歌姫 ミン バサ ミレ シェ ラン フレ 美雲 カナ レイ マキ ミンメイ バサラ ミレーヌ シェリル ランカ フレイア 美雲 カナメ レイナ マキナ 天使の絵の具 縦軸がロックされた歌姫 横軸が解除に必要な歌姫 ミン バサ ミレ シェ ラン フレ 美雲 カナ レイ マキ ミンメイ バサラ ミレーヌ シェリル ランカ フレイア 美雲 カナメ レイナ マキナ 小白竜 縦軸がロックされた歌姫 横軸が解除に必要な歌姫 ミン バサ ミレ シェ ラン フレ 美雲 カナ レイ マキ ミンメイ バサラ ミレーヌ シェリル ランカ フレイア 美雲 カナメ レイナ マキナ TRY AGAIN 縦軸がロックされた歌姫 横軸が解除に必要な歌姫 ミン バサ ミレ シェ ラン フレ 美雲 カナ レイ マキ ミンメイ バサラ ミレーヌ シェリル ランカ フレイア 美雲 カナメ レイナ マキナ アナタノオト 縦軸がロックされた歌姫 横軸が解除に必要な歌姫 ミン バサ ミレ シェ ラン フレ 美雲 カナ レイ マキ ミンメイ バサラ ミレーヌ シェリル ランカ フレイア 美雲 カナメ レイナ マキナ ダイアモンド クレバス 縦軸がロックされた歌姫 横軸が解除に必要な歌姫 ミン バサ ミレ シェ ラン フレ 美雲 カナ レイ マキ ミンメイ バサラ ミレーヌ シェリル ランカ フレイア 美雲 カナメ レイナ マキナ 星間飛行 縦軸がロックされた歌姫 横軸が解除に必要な歌姫 ミン バサ ミレ シェ ラン フレ 美雲 カナ レイ マキ ミンメイ バサラ ミレーヌ シェリル ランカ フレイア 美雲 カナメ レイナ マキナ アイモ 縦軸がロックされた歌姫 横軸が解除に必要な歌姫 ミン バサ ミレ シェ ラン フレ 美雲 カナ レイ マキ ミンメイ バサラ ミレーヌ シェリル ランカ フレイア 美雲 カナメ レイナ マキナ 私の彼はパイロット 縦軸がロックされた歌姫 横軸が解除に必要な歌姫 ミン バサ ミレ シェ ラン フレ 美雲 カナ レイ マキ ミンメイ バサラ ミレーヌ シェリル ランカ フレイア 美雲 カナメ レイナ マキナ ねこ日記 縦軸がロックされた歌姫 横軸が解除に必要な歌姫 ミン バサ ミレ シェ ラン フレ 美雲 カナ レイ マキ ミンメイ バサラ ミレーヌ シェリル ランカ フレイア 美雲 カナメ レイナ マキナ What bout my star? 縦軸がロックされた歌姫 横軸が解除に必要な歌姫 ミン バサ ミレ シェ ラン フレ 美雲 カナ レイ マキ ミンメイ バサラ ミレーヌ シェリル ランカ フレイア 美雲 カナメ レイナ マキナ トライアングラー 縦軸がロックされた歌姫 横軸が解除に必要な歌姫 ミン バサ ミレ シェ ラン フレ 美雲 カナ レイ マキ ミンメイ バサラ ミレーヌ シェリル ランカ フレイア 美雲 カナメ レイナ マキナ ニンジーン Loves you yeah! 縦軸がロックされた歌姫 横軸が解除に必要な歌姫 ミン バサ ミレ シェ ラン フレ 美雲 カナ レイ マキ ミンメイ バサラ ミレーヌ シェリル ランカ フレイア 美雲 カナメ レイナ マキナ インフィニティ 縦軸がロックされた歌姫 横軸が解除に必要な歌姫 ミン バサ ミレ シェ ラン フレ 美雲 カナ レイ マキ ミンメイ バサラ ミレーヌ シェリル ランカ フレイア 美雲 カナメ レイナ マキナ Welcome To My FanClub s Night! 縦軸がロックされた歌姫 横軸が解除に必要な歌姫 ミン バサ ミレ シェ ラン フレ 美雲 カナ レイ マキ ミンメイ バサラ ミレーヌ シェリル ランカ フレイア 美雲 カナメ レイナ マキナ ユニバーサル・バニー 縦軸がロックされた歌姫 横軸が解除に必要な歌姫 ミン バサ ミレ シェ ラン フレ 美雲 カナ レイ マキ ミンメイ バサラ ミレーヌ シェリル ランカ フレイア 美雲 カナメ レイナ マキナ ノーザンクロス 縦軸がロックされた歌姫 横軸が解除に必要な歌姫 ミン バサ ミレ シェ ラン フレ 美雲 カナ レイ マキ ミンメイ バサラ ミレーヌ シェリル ランカ フレイア 美雲 カナメ レイナ マキナ (ギラギラサマー(^ω^)ノ) ギラギラサマー(^ω^)ノ 縦軸がロックされた歌姫 横軸が解除に必要な歌姫 ミン バサ ミレ シェ ラン フレ 美雲 カナ レイ マキ ミンメイ バサラ ミレーヌ シェリル ランカ フレイア 美雲 カナメ レイナ マキナ ルンがピカッと光ったら 縦軸がロックされた歌姫 横軸が解除に必要な歌姫 ミン バサ ミレ シェ ラン フレ 美雲 カナ レイ マキ ミンメイ バサラ ミレーヌ シェリル ランカ フレイア 美雲 カナメ レイナ マキナ 不確定性☆COSMIC MOVEMENT 縦軸がロックされた歌姫 横軸が解除に必要な歌姫 ミン バサ ミレ シェ ラン フレ 美雲 カナ レイ マキ ミンメイ バサラ ミレーヌ シェリル ランカ フレイア 美雲 カナメ レイナ マキナ いけないボーダーライン 縦軸がロックされた歌姫 横軸が解除に必要な歌姫 ミン バサ ミレ シェ ラン フレ 美雲 カナ レイ マキ ミンメイ バサラ ミレーヌ シェリル ランカ フレイア 美雲 カナメ レイナ マキナ 一度だけの恋なら 縦軸がロックされた歌姫 横軸が解除に必要な歌姫 ミン バサ ミレ シェ ラン フレ 美雲 カナ レイ マキ ミンメイ バサラ ミレーヌ シェリル ランカ フレイア 美雲 カナメ レイナ マキナ 恋! ハレイション THE WAR 縦軸がロックされた歌姫 横軸が解除に必要な歌姫 ミン バサ ミレ シェ ラン フレ 美雲 カナ レイ マキ ミンメイ バサラ ミレーヌ シェリル ランカ フレイア 美雲 カナメ レイナ マキナ AXIA~ダイスキでダイキライ~ 恋! ハレイション THE WAR 縦軸がロックされた歌姫 横軸が解除に必要な歌姫 ミン バサ ミレ シェ ラン フレ 美雲 カナ レイ マキ ミンメイ 〇 バサラ ミレーヌ シェリル 〇 ランカ フレイア 美雲 〇 カナメ 〇 レイナ マキナ ジリティック♡BEGINNER 縦軸がロックされた歌姫 横軸が解除に必要な歌姫 ミン バサ ミレ シェ ラン フレ 美雲 カナ レイ マキ ミンメイ バサラ ミレーヌ シェリル ランカ フレイア 美雲 カナメ レイナ マキナ
https://w.atwiki.jp/fairy-waterfall/pages/70.html
913 名前:えっちな18禁さん[sage] 投稿日:2009/05/18(月) 01 36 46 ID ihxi0OWh0 昨日、全裸待機してくれてた同士の方々へ。 風邪を引いていませんか?もし、よければ風邪薬の代わりにどうぞ 『アルシェリ 風邪曜日』 ******* 「っ・・・くしゅんっ」 春から初夏へと移りだすこの季節は様々なことが重なって体調を崩しやすい。 例えば、進級しただとか、新しい学期になったとか、住居を変えたとか。 人によってその理由は様々だけれど、症状は大抵同じだ。 早乙女有人もその例に漏れず、体調を崩した一人だった。 「アル・・・」 「絶対、来るな・・・」 「でも・・・」 「お前が俺の側に来ないでいいように、実家に移ったんだぞ・・・」 境界線は畳の縁。 それを真ん中にして、アルトを心配そうに見守るシェリルと布団に寝たままのアルトがにらみ合っている。 すぐ近くに寄ってアルトの看病をしたいシェリルとそれを頑なに拒否するアルトのにらみ合いはもう何時間も続いていた。 正直なことをいえば、早く眠ってしまいたかったのだけれど眠ったら絶対にシェリルは縁を越えてやってくるに決まっている。 自分一人ならまだしも、シェリルにまで風邪を引かせるわけにはいかなかった。 人を呼ぼうにも、矢三郎はシェリルが看病をするのだといって張り切って散らかした自分たちの家を片付けに行っているし、他の者ではきっとシェリルの迫力に負けてしまう。 っとなると、自分が頑張るしかなかった。 「!!。そうだ。シェリル」 「何?」 「りんご。」 「えっ?」 「りんごが食べたいんだ。・・・買ってきてくれないか?」 アルトがそう言えば、すぐにシェリルの瞳が輝きだす。 まるで初めてのおつかいを頼まれた子供のように嬉しそうになった。 「いいわよ!すぐに買ってくる!あと、欲しいものある?」 「・・・桃缶」 「分かった。・・・ちゃんと寝ててね?」 「分かってる。」 りんごと桃缶を頼んだときはあんなに嬉しそうに笑ったくせに、次に自分に寝ているようにいう様はすこし偉そうで、見ていて飽きない。 くるくると変わる表情に苦笑しながら、アルトはシェリルを見送った。 障子戸が閉まり、パタパタと軽い足音が遠ざかってゆくと、途端に部屋が静かになった。 ようやく得られた安息のはずなのに、やはりどこか寂しく感じる。 ぼんやりと天井を見ながら横になっているとやはり睡魔がすぐに迫ってきた。 夢の中でまた会えるだろうなどと、本人には絶対に言えないことを考えながらアルトはその心地よい誘いに身を任せた。 ********* 「あっ、起きた?」 冷やりとした感覚を気持ちよく感じた瞬間、アルトの意識が浮上する。 まだ重たいまぶたを押し上げると、目の前には先ほどまで夢の中で一緒だった彼女の笑顔があった。 「・・・しぇりる?」 「なぁに?あっ、今だけよ。後でちゃんと向こうに行くわ」 ぼんやりとしたまま名前を呼ぶとすぐに返事が返ってくる。 口を開こうとするアルトに何かを察したのか、すぐにシェリルが『今だけ』っと付け加える。 まだ納得はできなかったけれど、側にいて欲しい気持ちも確かにあったから、アルトは何も言わなかった。 病にかかると無性に人恋しくなるのはどうしてなのだろうか? 相手を巻き込みたくはないと危惧するくせに、いてもらえるとほっとする。 身体はまだずっしりと重く、動くのも億劫だったから、手の届く範囲にシェリルがいてくれることが嬉しかった。 「りんご買ってきたの。食べられそう?」 「・・・あぁ。少しもらう」 「そう。よかった」 アルトの返事にシェリルがにっこりと笑い、側に置いていた器を手に取る。 小さなティースプーンで中身を掬うと、ゆっくりとアルトの口元へ運ばれた。 器の中のりんごは、アルトが飲み込みやすいように摩り下ろされ、パウダー状になった氷の粒が入っている。 ほのかに甘いりんごの果汁と冷たい口当たりが、火照った身体に心地よい。 アルトが軽く咀嚼して飲み込むとシェリルが新たに一口分を掬ってくれた。 「・・・悪いな。」 「んー?でも、アルトが動けないのってなんだか新鮮だわ。いつも私がしてもらってるし、たまにはいいじゃない?」 1/4個分ほどを食べ終えたアルトがそういうとシェリルが嬉しそうに答えた。 優しい手がアルトの頭を何度も撫ぜる。 幼い頃を思い出させるその感覚にアルトが笑えば、シェリルも小さく微笑む。 何気ないことのはずなのに、それが異様に嬉しくて、でも、それをシェリルにあまり悟られたくなくて、アルトは顔が隠れるくらいまで布団を引っ張り上げた。 「・・・・・・」 「・・・・・・」 アルトが隠れてしまったがために、二人の間には沈黙が下りる。 どんな顔で出て行けばいいのかも分からなかったから、そのままもう一度眠ってしまおうとしたアルトの額にコツンと何かがぶつかった。 おそるおそる布団をずらせば自分の顔のすぐ横にシェリルの顔があった。 「・・・・っ・・・」 反射的に叫びだしそうになった自身を必死の努力で押し込めると、アルトはドキドキしながらそっとその様子を眺めた。 アルトの好きな空色の瞳は閉じられ、何かを感じ取ろうとするかのようにシェリルはじっとしている。 髪と同じストロベリーブロンドの長い睫毛が時々ぱさぱさと音を立てた。 肌理の細かい白い頬。 すっと通った鼻。 ふっくらとした唇。 眺めれば眺めるほど愛おしくてたまらなくなる。 言ったらキスをしてくれるだろうかと一瞬考えたけれど、アルトはすぐにその考えを霧散させた。 「・・・・分からないわね。」 瞳を開いたシェリルが少し困ったように呟く。 何がだ?っと問えばシェリルが苦笑しながら『体温』と答えた。 意味が分からず、さらに問えば、矢三郎にそうするものだと教わったという。 違うの?っと首を傾げて訊くシェリルに一瞬どう答えたものかと考えたが、ある意味間違ってはいないので結局そのままにしておいた。 「だいぶ楽になったから、大丈夫だ。」 「ならよかった。明日には全部下がってるといいわね。」 「下がらなきゃちょっと困るな。」 「どうして?」 「軍も学校もできるだけ休みたくないからな。」 「そうなの。」 「まあな。」 アルトの答えにシェリルが少し考えるようなそぶりを見せる。 もう少しだけ寝るよっと言えば、シェリルがオヤスミっと言って、額に口付けてくれた。 ******** 唇に口付けて、その瞳を見つめれば少しはにかむ。 それを見つめた後で唇を割ると、甘い吐息と舌が絡む。 髪に手を差し入れて何度も何度も梳きながら、深く深く口付ける。 そして、お互いの熱が高まっていくのを肌で感じる。 首筋を辿って、胸元へ下り、乳房の先を愛撫する。 ピクン、と返ってくる反応を嬉しく思いながら下へ、下へと降りてゆく。 締まった腹部に頬を寄せて、下腹部を撫ぜ、もっと下へと下る。 秘部に口付ければ、恥ずかしそうに膝小僧を擦り合わせ、ぎゅっとシーツを握り締める。 そして、自分はソコを侵すのだ。 指をナカへと差し入れてクニクニと動かしたり、射しぬきを繰り返せば、甘い声が漏れる。 逸る心を精一杯押しとどめながら自分はその声を聞く。 指と舌に絡む愛液をナカへ塗りたぐりながら、奥へ奥へと入っていく。 しばらくそうしていると、やがて耐え切れなくなったシェリルがアルトを呼ぶ。 『おね・・が、い』と。 『いれて』と。 じんわりと涙が浮かぶ瞳に見つめられ、そう言われれば、アルトは優しくその頭を撫でる。 それが答えだ。 手と手を繋ぎ、ゆっくりとゆっくりと埋めていく。 離さぬようにと絡みつく内壁。 動くたびに震える身体。 途切れ途切れになりながら、何度も呼ばれる自分の名前。 全てがアルトを高めていく。 夢中でアルトもシェリルを掻きまわした。 けれど、何かがいつもと違う。 これ以上どうにもならないほどに熱は高まり、後ははじけるだけだというのに、何故か上り詰めることができない。 熱い感覚も絡む感覚もいつもと同じなのに最後の坂を駆け上がることができない。 もどかしくてたまらなくなり、ついつい手を伸ばす。 『ん?』 手に触れたのは、いつもと違う感触だった。 っと急に、心地よかった感覚が引いていく。 急いで後を追ってももう戻ってきてはくれない。 欲張りすぎて全てを失ったのだと実感したら、全身から一気に力が抜けた。 「・・・あぁ、夢か・・。ったく、なんてリアル・・な・」 目を開けた瞬間、映ったものは見慣れた天井だった。 残念そうな、少し切なそうな声でそう呟くとアルトは額に手を当てる。 先ほどの夢のせいかそれとも熱のせいかは分からなかったけれど、額には汗が滲んでいた。 「・・・はぁ・・」 思わず零れそうになった疑問。 風邪でダウンする前はほとんど毎日のようにシェリルとベットで戯れていたというのにこんな夢を見てしまうほどに自分は欲求不満なのだろうか? 限界を知らない自分の欲求が少し怖くなる。 シェリルが気付いて怯えたりしなければいいなとアルトはぼんやりと思った。 「・・・・ん?」 「ッタ・・・」 ごろりと寝返りを打とうとした自分の下半身が何かを蹴る。 慌てて布団の足のほうを見ると、こんもりと膨らんでいた。 「!!シェリル?!」 「・・・いたい・・」 一瞬真っ白になった頭を必死に動かし、とりあえず布団をめくるとソコには小さく身体を曲げたシェリルがいた。 っということは先ほど自分が足蹴にしたものは、必然的に彼女ということになる。 よく見ればしきりに頭を撫でていた。 「お前、何してんだっ?!・・・ってか、なんで肌蹴て・・・えっ?!」 自分の足元に蹲っていたシェリル。 そして肌蹴た自分の浴衣。 それから、気付かれたくない先ほどの夢。 いろいろなことがアルトの頭を一杯にしていく。 呆然としながらシェリルを見ると、涙を浮かべたその空色の瞳と目が合った。 一瞬の沈黙の後、ボンッと軽い爆発が起きたようにシェリルの顔が赤く染まり、視線が下へと反らされる。 それでもストロベリーブロンドからちょこっとだけ覗く耳たぶは同じくらい真っ赤になっていた。 それを眺めていたアルトが噴出しそうになる。 とりあえず、身体を丸めたままシェリルを上から被さるようにして抱きしめてみた。 途端にシェリルがジタバタと暴れだす。 その様子に笑いながらアルトはもう少しだけ力を込める。 布越しに感じる体温。 甘い髪の香り。 丸く、柔らかい肌の感触。 全てが愛おしい。 「また、兄さんに何か言われたのか?」 「・・・・っ・・・なんで、起きてるのよ。」 「眠っただけだからな。そりゃ覚めれば起きる。」 「だって・・・薬飲んでたじゃない・・・。」 「あれも調整してあるんだよ。・・・で、今度は何を言われたんだ?」 悔しいのか恥ずかしいのか、どっちなのかは分からないけれど、シェリルが下を向いたままもごもごと言いよどむ。 自分とシェリルのこととなるとアルトさんのために!と妙な使命感を燃やし、どこか間違った方向へ暴走しがちな義兄の考えることなど、今更シェリルに問わずともある程度は予想がつく。 それでもすこし騒ぐイタズラ心のままにアルトはシェリルをいじめてみる。 シェリルがすぐに答えられるはずもなく、また少しの沈黙が下りた。 「・・・アルト・・・と・・・」 「俺と?」 「~~~~~~っ」 「何?」 「・・・エッチ、したら、熱下がるってっ!!や、矢三郎さんが・・・」 「・・・・」 しどろもどろになりだしたシェリルが最後はやけっぱちのように早口でそう言った。 あらかじめ予想はしていたが、やはり間違いないことが分かると少しだけ複雑だ。 アルトは静かに天を仰ぐと、そんなことをシェリルに堂々と宣った矢三郎の脳内を半分本気で見てみたいと思った。 そして、そんなことにこんなにも簡単に引っかかるシェリルの頭の中も。 ミシェル。 俺は、流石にココまで世間知らずじゃないぞ。 俺よりひどいヤツがココにいる。 ばたばたと暴れるシェリルを抱きしめながら、心の中でアルトはそう呟いた。 「離しなさいよっ!風邪移るって言ってたじゃない!!」 「・・・・・・そうだな。」 抱きしめたまま離さずにいるアルトに向けてシェリルから非難の声が上がる。 必死にもがくシェリルの指摘にそれもそうだとアルトは我に返った。 力を緩め、敷いた身体の上から退いて床に座る。 するとすぐにシェリルがアルトをにらみつけてきた。 少しの時間とはいえアルトに羽交い絞めにされ、それを解こうと懸命に暴れたせいで、その瞳は潤み、頬はバラ色に淡く染まっている。 迫力など皆無だ。 思わずアルトが笑うと、シェリルが悔しそうに顔を背けた。 「・・・・離れるんじゃなかったのか?」 「言われなくてもそうするわよっ!!」 アルトがそう言うと反射的にシェリルがそう言い立ち上がる。 すたすたと歩く様子に少し寂しさを感じたけれど、シェリルは縁の先まで歩くとその場に正座した。 律儀にアルトの言うことを守りながら、あの場所で看病を続けるらしい。 未だに顔を顰めながらも自分が面倒をみるのだっといわんばかりのその態度に、嬉しさと笑いとが一気にアルトの胸にこみ上げてくる。 一瞬本気で息ができなくなった。 「ぐっ・・・げほっ・・ゴホッ・・」 思わず噴出しそうになったけれど、そんなところをシェリルに見られでもしたら今度こそ怒って部屋を出て行ってしまうに違いない。 アルトは慌てて笑いを噛み殺すけれど、間に合わず、それは盛大な咳がとなって部屋へと落ちる。 震える身体を見られるまいと、アルトはいそいそと布団に潜り込んだ。 「ねぇ、大丈夫?」 「・・・・・・・」 「・・・・アルト?」 急に潜ってしまったアルトにシェリルから心配そうな声がかかるけれど、答えは返ってこない。 当人は咳や熱に苦しむわけでもなく、笑いを抑えるのに必死なわけだから答えられるはずもないのだけれど、それをシェリルが知るはずもない。 自分が先ほど無理をさせたのだろうかと一瞬青ざめたシェリルは急いで席を立つと、矢三郎の元へと走った。 「・・・・っ・・・あれっ、シェリル・・・・?」 ようやく笑いを押し込めてのろのろと布団から這い出たアルトは先ほどまでいた場所にシェリルの姿がないことに驚き慌てて身を起こした。 布団から起き上がり、開いたままの障子戸の隙間から廊下の先を窺ってみても、耳を済ませても足音一つ聞こえない。 しんっと静まり返った部屋の様子に軽く息を吐くとアルトは身体から力を抜き、パタンッと布団へ倒れこむ。 自分の熱に温まった布団は火照った身体に少しだけ不快だった。 瞳を閉じて腕を伸ばし、布団の先をまさぐる。 どれだけ手を伸ばしても手に触れるのはシーツばかりだ。 頭では分かっているはずなのに、 誰 にも触れられないことがもどかしかった。 彼女 をこの手に抱きしめられないことがとても不満だった。 「アルト?」 自分を呼ぶ声にうっすらと目を開けると、開けっ放しの障子戸に手をかけるような形でシェリルが立っている。 慌てて身体をそちらに向けると、シェリルが目を丸くし、ほっと息を吐いたように見えた。 そして、そのまま障子戸を閉めるとゆっくりとアルトのほうへ歩いてくる。 傍に来てくれるのだろうと思ったアルトは急く気持ちを必死に抑えながらそれを待った。 アルトの枕もとに正座すると、シェリルはそっとアルトの額へと手を伸ばす。 触れたシェリルの手はヒヤリとしていて、氷のように冷たかった。 よく見ると、もう片方の手で小さい氷嚢を持っている。 「熱、上がったわけじゃないのね?」 「・・・なんで、そう思うんだ?」 「さっき、いきなり咳き込んで布団に潜ったまま返事をしなかったのは誰?」 「・・・・・・・・」 子供を嗜めるような口調にアルトが少しつまらなそうな顔をする。 無言のままこちらに来いという仕草をされ、シェリルがそっと顔を寄せると腕を一気に引き寄せられた。 咄嗟のことにシェリルがバランスを崩し、アルトの上へと倒れこむ。 シェリルが軽いためか、間に布団があるせいかあまり衝撃は伝わらなかった。 「・・った・・・もう、アル・・・」 背中に回された腕が強く、強くシェリルを抱きしめる。 引き倒されたことに文句を言いそうになったシェリルの口がゆっくりと閉じられ、小さく笑った。 「・・・なぁに?今度は甘えるわけ?」 「・・・・・」 シェリルの少し得意そうな問いかけにアルトは答えない。 アルトがシェリルを抱きしめたまま離す気がないことを悟ると、シェリルはゆるゆると肢体から力を抜いた。 抱きしめる力強い腕の感触に、シェリルがそっと目を閉じる。 やがて、シェリルの背中に回っていた片方の腕が離れ、その手が愛しむようにシェリルの頭を何度も、何度も撫でた。 一度撫でられる度に、温かな気持ちが胸に込み上げて来て、嬉しくてたまらなくなる。 抱きしめてくれる相手が愛おしくて、愛おしくてたまらなくて、少し胸が苦しくなった。 それを押し込めるように、シェリルは小さく足をバタつかせながらそっとアルトの胸があるあたりに顔を寄せる。 規則正しく布団が上下する。 アルトの体温が布団を通して伝わる。 頭を撫でる優しい手が、何度も何度もシェリルの心を一杯にしていく。 ずっと、ずっとこうしていたいと思った。 「・・・・シェリル?」 優しく名前が呼ばれる。 ゆっくりと顔を上げるとアルトがシェリルを見つめていた。 「何?」 問うシェリルに答える声はない。 けれど、アルトの言葉を伝えるように優しく右手がシェリルの横髪を撫ぜた。 一瞬の沈黙の後、シェリルがそっとアルトに近づく。 そして、静かにその唇が重なる。 触れるだけのキス。 気持ちを伝えるように。 言葉を伝えるように。 答えるように。 また、一つキスをする。 そっと触れ合うだけのキスをそうやって何度も何度も繰り返した。 「あっ・・・」 「?・・・んんっ――――!」 アルトの声に一瞬不思議そうに目を見張ったシェリルが、今度は少し苦しそうな表情になる。 いつの間にか髪に触れているだけだったアルトの手がシェリルの頭をがっちりと固定し、ほぼ無理やりのような形で唇を割られたのだ。 驚きに一瞬シェリルの身体がビクッと震えるけれど、口内を蹂躙する舌は絶え間なくシェリルを煽り続ける。 一度は拒むように突っ張った手からいつの間にか力が抜け落ち、されるがままになるシェリルの瞳がじんわりと潤んでいく。 アルトはそれをぼんやりと見つめた後で瞳を閉じ、手探りでシェリルの手を見つけ出す。 引き寄せ、繋いだ。 「っ・・・・・」 一度火のついた欲望は止まらない。 触れたいと思う気持ちが加速していく。 柔らかい髪 甘い匂い 潤む瞳 もっと、もっと見たくて、 もっと、もっと感じたくて、 もっと、もっとシたくなる。 一応抗ってはみたものの、うまくはいかなかった。 「ちょ・・・・と、アルトっ・・・」 「悪い・・・」 唇を離すとちゅっという軽いリップ音が立つ。 途切れる息を必死に整えながらなんとか声を発するシェリルをアルトがぎゅっと抱きしめるとシェリルが押し黙った。 「・・・シェリル」 「・っ・・・・・・ずるいんだから・・」 耳元で紡がれる切ない声に、ぞくりとする感覚が走る。 きっとこの先の行為に自分たちが溺れていくしかないのだということだけは分かっていた。 アルトがシェリルを布団の中へと引き込み、組み敷く。 一瞬の間をおいてもう一度キスをする。 先ほどまではそのことで頭の中が一杯になるほど緊張して、焦っていたというのに実際にこうやって向き合ってしまえば、不思議と心は安らぐのだ。 見つめた先の空色の瞳が小さく笑み、アルトもそれにつられる。 身体を繋げる行為がただ互いの欲望だけを満たすことでないのだと、毎回毎回教えてもらえる。 自分もシェリルに与えることができ、そして、シェリルも自分に与えてくれるのだ。 自分一人では得られない感情。 本当に愛する者としか分かつことのできない感覚。 ゆっくりと満たされていくその感覚は、何モノにも変えることができない。 愛しくて、 愛しくて、 ただ、愛おしくて。 その気持ちだけで一杯になる。 目を開ければ、少し恥ずかしそうにしながらも笑うシェリルにアルトの心がきゅっと縮む。 たまらないと思った。 止まれないっと思った。 「シェリル」 名前を呼んだ。 それから、布団に両手を付きその間に閉じ込めるようにしたシェリルの唇と額に軽くキスをした。 くすぐったそうに、でも嬉しそうに目を閉じて笑うシェリルにまた、アルトの心臓が軽く跳ねる。 首筋に頬を寄せて、ゆっくり、ゆっくり下へと降りていった。 シェリルのお気に入りの桜色のワンピースは胸元の切れ込みが少し深いから、軽く胸の谷間が見える。 外をシェリルと歩くたび、男共の視線が集まるような気がしてあんまり好きだとは思わなかったけれど、こうして自分だけの前ならやっぱり可愛いと思った。 つくづく若い男の独占欲なんて、子供の持つ独占欲の延長線上にあるものなのだと実感する。 自分だけに笑って欲しい。 自分だけを側において欲しい。 自分だけに、全てを預けてほしい。 きっと言葉にしたら笑われてしまうだろうから、絶対に口にはできないし、見せたくもない。 けれど、それでもやっぱりそういう感情は心にあるのだ。 こういう感情はいつか消えるものなのだろうか? それは分からなかったけれど、でも、それはそれで少し寂しい気もした。 「アルト・・・?」 「ん?」 「今、どっかに飛んでなかった?」 シェリルがアルトの名前を呼び、問いかける。 飛んだとしても一瞬のはずなのに、どうしてか分かってしまうのか、少し不思議だった。 視線でそれを訊くと軽く鼻先を摘まれる。 そして、『アルトもそうゆうときあるでしょ?』といわれた。 答える代わりに顔を肌へ寄せると、甘い匂いがする。 柔らかな膨らみの上部を啄ばみ、鼻先を使って服の内側へと押し入っていく。 小さい子犬みたいだとシェリルが笑った。 その首筋に軽く歯を立て、甘噛みする。 今度はその痕を優しく舐めると、シェリルが身をよじった。 左ひじを突き、シェリルの頬に触れながら、アルトは右手を使って服を引き下ろす。 まだ、下着に収まったままの右胸が覗いたとき、シェリルがアルトの手を止めた。 恥ずかしそうに視線を外しながら、服がダメになると小さく呟くシェリルにそれもそうだと思ったアルトが少しだけ身体を起こすと、シェリルもゆっくりと起き上がる。 裾に手をかけ、おずおずとワンピースから身体を抜いた。 淡い色をした上下の下着がほんの一瞬だけ垣間見えたのだけれど、すぐに着ていたワンピースをその胸元に押し付けるようにして隠してしまった。 今更だろ?っというアルトに、シェリルが慣れないのっと小さく反論する。 頬を真っ赤に染めたその様子がなんだか可愛くて、アルトはそのままシェリルを押し倒す。 ふわりとした浮遊感に、シェリルから小さな悲鳴が上がった。 鎖骨、右胸、わき腹、腰、そして、太もも。 なだらかなその流線を覚えるように手を這わせ、同じように胸元に唇を滑らせる。 触れるシェリルの身体はどこも柔らかく、そして、熱い。 まだ触れているだけなのに、ときどき『んっ』と息を詰める。 もっと、もっと聞きたくて、アルトは唇を下のほうへと滑らせていく。 少しだけ、シェリルに体を浮かせてもらって、背中のホックを外した。 下着を押し上げ、その柔らかさを堪能する。 先端を口に含んで転がせば、ぷっくりと立ち上がる。 シェリルの身体が震える。 感じてくれていることが嬉しかった。 だから、何度も、何度も、触れた。 「・・・シェリル。舐めて」 シェリルの口元に指を差し出すと、一瞬迷うように視線が揺らいだ。 それでも口を開き、先を少しだけ口に含ませる。 少しだけ覗いた真珠色の歯が反抗的にアルトの指先をカリッと齧った。 惑いながら窺うも、アルトの表情は変わらない。 やがて罪悪感が勝ったのか詫びるように丁寧にその痕を舐め始めた。 その様子はたまらなく艶やかだった。 「もっと。」 そう言って、もう少し指を押し込む。 自身しゃぶるソレが何に使われるかを感じ取ったシェリルは、少し複雑そうな表情を見せたけれど、もう抵抗しなかった。 ペロリ、ペロリと丁寧に舌が指を這う。 それを感じながら、アルトは再びシェリルを愛撫する。 胸を撫で上げて、揉んで、舌でくすぐる。 指を銜えさせられているせいで、閉じることのできない唇からしどけない声が上がる。 それがひどく耳に心地いい。 頃合を見計らって指を引き抜くと透明な液体が伝った。 それを乾かさぬまま、下肢を覆う下着の中へと入れると自分の指先に絡むものとは違う濡れた感触がする。 すぐに中に入れずに表面を撫で上げるとシェリルの身体が一際大きく震えた。 シェリルをそっと窺うと、羞恥に顔を真っ赤にして必死に目をつぶっていた。 そんな様子を見てしまうと、どういうわけかイタズラ心が刺激される。 アルトは静かに息を飲むと早く重なってしまいたいという欲望を必死に押し込めた。 「や・・やだっ、アルトっ・・・ぁっ・・・ンッ・・・」 指を上下に動かし、時々強く擦り上げると甘い声が漏れてくる。 くちゅくちゅと卑猥な水音が響くたびに声を殺すような音が聞こえてくる。 けれど、数秒後には堪えられなくなってまた零れだす。 あふれ出した愛液にアルトはそっと唇を寄せた。 舌でくすぐり、そっと吸うと口内に蜜の味が広がる。 指を這わせたり、舌で舐め上げるとシェリルの白く細い腕がシーツの上を滑り、シュッという音を立てた。 「ある・・・と・・あっ・・も、・・」 「まだ。」 「・・っ・・・」 途切れ途切れになりながら、先を願うシェリルに、アルトはそっけない態度で返す。 自分自身の押さえももうそれほど利かないことは分かっていたけれど、アルトは素知らぬ振りをした。 もっと、声を上げさせたい。 もっと、求められたい。 もっと、辱めたい。 膨らむ欲はその終わりを知らない。 ツプッと小さな音を立てて指を押入れかき回すと、シェリルの腰が揺れる。 アルトが教え込んできたから、アルトと繋がってきたから そう なるのだ。 くわえ込んだまま離さぬ様子を覚えながらアルトはナカを擦り上げる。 声になりきらない悲鳴の数々がねこの鳴き声のようにも聞こえた。 「・・・・ちょ・・だい?・・・あ・・・のっ・・・」 ギリギリの声にアルトが苦く笑う。 これ以上自分ももう我慢ができなかった。 下着を完全に取り払い、自分も下着を引き下ろす。 着ていたのは浴衣だったから思いのほか早く解くことができた。 太ももを抱え込み、自らの先走りに濡れたモノをその入り口へと押し当てるとソレを感じ取ったらしく軽く引きつく。 宛がわれたものを早く飲み込みたくてたまらなかったらしく、シェリルがもどかしそうにピクピクと反応する。 ほんの一瞬だけもっといじめたいとも思ったけれど、本当に泣かれてしまいそうだったから止めた。 代わりに勢いよく埋めてやる。 「や・・・あ、あっ・・・・・ん」 上がる甘い吐息と音にアルトの中の何かが沸き立つ。 ゾクッとする感覚が背筋を這い上がると共にアルトを達させようとうごめく内壁に思わず息を呑んだ。 熱い。 頭に浮かんだのはソレだけだった。 身体が熱くて、 触れているシェリルの身体が熱くて、 互いを繋ぐ部分が熱くて、どうにかなってしまいそうだ。 トロトロに溶かされてしまいそうな思考を必死に掻き集めながらアルトは必死にナカを穿った。 狭い中を奥へ奥へと押し分けて進み、より深い場所へと潜り込む。 きゅうきゅうと締め付けられるたびに強くなる吐精感を必死に押さえ込んだ。 「くっ・・・・あっ・・・」 「ン、ぁ・・・はぁ、・・・ぁ・・」 揺さぶられ、声が掠れる。 否応なしに寄せる官能の波に全てを持っていかれそうになる。 それは何度経験しても同じものはないから、次にどうなってしまうか分からないという不安は消えない。 律動の速さはだんだんと増していき、次第に何も考えられなくなる。 うっすらと開いた瞳に映ったアルトの姿だけがシェリルを少し安心させてくれた。 「ぁあっ・・・・っ」 安心した途端、箍が外れた。 押し寄せる波はその限界で飛沫となり、シェリルを押し流してゆく。 自身を取り巻くふわふわとした心地よさを感じると共に、アルトの熱が自らの内で弾けたのを感じた。 とくとくと注がれる感覚に意識が再び霧散しようとする。 それに必死で抗ってみたけれど、その攻防も長くは続かなかった。 優しい腕が自分を包み込んでくれるのをぼんやりと感じながらシェリルはそっと夢の中へ落ちてゆく。 柔らかく波打つストロベリーブロンドに埋もれながら眠るシェリルの頬にアルトが大切そうに触れ、影を落としていた横髪を軽く撫でてやる。 露になった顔に満足げに微笑むアルトにもゆるゆると眠りの誘いが下りてきた。 少し前の季節に咲き誇った花と同じ色と甘い香りに包まれながら二人は安らかにまどろむ。 END 09/05/24 加筆完了です。長い文にも関らず、読んでいただいてありがとうございました。
https://w.atwiki.jp/fairy-waterfall/pages/183.html
933:甘いキスはケーキの後で[sage] 2015/01/02 23 56 56 年末年始の移動中に妄想した、平和な学園パラレルを文字にしました。 あんまりにも妄想なので、 エロなしだけど、こっちに投下させてね。 「でさ、何が良いかな」 「そんなの、自分で考えなさいよ」 深夜の電話。 なんとなく甘く聞こえてしまうのは、 一日の終わりに彼の声を聞いて喜んでいる自分のせいなのか。 「苦手なんだよ、そういうの」 「なんて言ってたの、ランカちゃん」 「なんでもいいって」 それとも、彼が声をひそめているからなのか。 「健気よねえ」 「つまんないモノよこしたら許さないから、なんてのたまうどこかの妖精さんと比べりゃな」 「ふ~ん、あっそう。じゃあ、せいぜい頑張って『なんでも』を探しなさいよ」 「…あー、それでだ。…一緒に選んでくれないか」 彼が甘えているからなのか。 「…私…、そんなに暇じゃないの」 「だから早めに頼んだんだろ」 「バースデーパーティの話振ったの、私だったわよね?」 「俺もするつもりだったんだ。だって、お前、忙しいだろ」 彼との約束。 嬉しくてたまらないけれど、仕方がないかのように声を作る。 「ふ~~ん、まあいいわ。 あまり時間は取れないけど、ちょっとくらい協力してあげても良いわよ。 私へのプレゼントは頑張ってくれたみたいだし?」 彼とのお出かけの約束はとても嬉しい。 いわばデートだ。 でも、なんで恋のライバルへのプレゼント選ぶ事になっちゃったんだろ。 電話を見つめながらシェリルはため息をついた。 それこそ、あの娘と一緒に買いにいけば良いじゃない。 そっか、あの娘、まだ売り出し中で、清純派の売り方からしてもスキャンダルは御法度だもんね。 シェリル自身はグレイスの情報管理もあり、比較的自由に行動させてもらっていた。 仕事が忙しくて、フロンティアに来るまではスキャンダルになりそうな行動自体がそもそもなかったシェリルだが、 フロンティアに来てみて、マネージャーの有能ぶりを思い知ったのだった。 ドキュメンタリー番組撮影中に護衛として引き連れていたアルトやミシェルとは、 学校での実習班が同じ友人ということもあり、 撮影終了後も空き時間に二人きりで街を歩く事が多々あった。 目を引くルックスの彼らは芸能記者の目に留りそうなものなのに、大きく取りあげられる事もなく今に至る。 特に、アルトはあの飛び抜けた美貌に加えて元歌舞伎俳優という経歴の上に、 実際、シェリル自身が彼にアプローチをしていているのだ。 短いながらもシェリルはアルトとの時間を苦心して確保しており、それは決して少なくはないはず。 その時間はシェリルにとって邪魔されたくないきらきらと輝いた時間ではあるのだが、 取り上げられないとなると、取るに足らない出来事なのだと言われているようで何だが複雑な気分だ。 学校でもいまだに「女王様とドレイ」扱いだものね。 こんなんじゃ、アルト、振り向いてくれないのかしら。 やっぱり、ああいう可愛いらしい娘が好みなのかしら…。 『あんな学生に毛が生えた程度の子どもにあなたみたいなトップスターの相手が出来る分けないでしょ』 とグレイスには散々諦めろと言われ続けているのだが、 恋心がそう簡単に消せるものでもない。 そもそも負けず嫌いのシェリルが諦めようとは思っていない。 ただ、あの娘の事を嬉しそうに話す彼の声を聞いて ちょっと弱気になってるだけ…。 $$$ $$$ 多忙な妖精さんとデートの約束を取り付けたアルトは、自然とガッツポーズをしていた。 授業中は勿論、昼休みや授業と授業の間は時間の許す限り隣にいたし、 放課後もお互いのスケジュールの隙間を縫って一緒の時間を過ごしてはしていた。 しかし、纏まった時間を過ごすのは久しぶりで、 アルトはうきうきと携帯のスケジュールアプリに予定を書き込む。 自分のあげたプレゼントをシェリルはちゃんと覚えていてくれたし 纏まった時間も確保してくれた。 日々、ポイントを稼いでいる自信は十分にある。 手近で便利な男友達から、一歩ずつ前進するのだ。 アルトがシェリルを恋愛対象として意識し始めて真っ先に気付いた事がある。 シェリルは、多忙にかまけて存外に色事に疎いということだ。 ファンに向けられる目には敏感でも 身近な恋愛事を自分の異次元の世界だと思っている節がある。 自分にしては、なかなか頑張ってアプローチしているつもりなのだが 通じているのかいないのか、恋愛に不慣れな自分には正直わかりにくい。 ったく、どこまでも世話が焼ける妖精さんだ。 そういうところに、惚れちまったんだから仕方がねえ。 「いよう、熱々だねえ」 電話がかかって来て抜け出したSMSの自室に戻ると 2段ベッドの上から悪友のはやし声。 無視して、ベッドの下段に潜り込んだ。 無邪気な笑顔。 憂いに満ちた横顔。 まだ見た事のない涙も、いつか自分が独り占めするんだ、 あの柔らかな身体をかき抱いて愛し合うんだと 暴走し始める妄想をアルトは首を振って振り払う。 見てろよ、シェリル! $$$ $$$ いつもの帰り道の中でも一番短い、 迎えの車の待つ校門までのつかの間の道程。 教室からここまで、他愛もない話しかしてない。 でも、今日はいつもより甘い気がする。 車に乗り込もうとするシェリルにアルトは声をかけずにはいられなかった。 「じゃあ、また明後日。覚えてるよな?」 「明日も学校行くってば」 彼女にしては少し甘えた口調。 帽子を被り直す細い手首すら刺激的に目に映る。 「明日は学校でしか会えない」 「だから、また明日、でしょ」 「じゃあな」 ここで争っても仕方ない。 明日も学校で会える。 明後日はデートだ。 名残惜しい気持ち振り払って、アルトはシェリルを送り出した。 シェリルは明後日が二人きりの予定で、つまりデートだという事をさほど気に留めていないのか、 とアルトは少しがっかりもする。 いや、表情を見ると、照れてるだけなのかも。 遠く立ち去る車を眺めながら、アルトの思考は止まらない。 もう後少しの予定をあれこれ考えてもしようがないだろ、と アルトは、気を取り直して、自分も職場へと向った。 $$$ $$$ プレゼントを選ぶために二人が入った雑貨屋は女子学生たちの定番の寄り道スポット。 定番だけあって、転入して割と早々に案内させられた店だ。 子供っぽい可愛らしさは自分のイメージじゃない、とシェリルが立ち寄ったのはアルトが知る限り1回きりだったが、 その一度きりの時に、目を輝かせていたシェリルは大層かわいらしかった。 プレゼントを探すにはうってつけの店だろうし 連れて行けばきっとかわいいシェリルが見れる(いつでもかわいいんだけど)。 そう考えたアルトの期待は裏切られることなく、 恥じらいと喜びに頬を染めるシェリルの横顔は叫びたくなるほど可愛らしかった。 「コレなんてどうかな」 「あんた…去年のハエたたきと良い勝負」 ぽんぽんと繰り出す言葉の応酬。 「実用的で、あんまり好みが別れないだろ?」 「好みって、ここで趣味の良さを見せなきゃいつ見せるのよ。 自信もって選びなさい。 あんたのあげるモノなら何でも喜んでくれるわよ」 「なら、コレでも良いだろ」 やり取りが心地よくて、 素直に頷きそうになる言葉に敢えて反論したくなる。 「じゃあ、そうしなさいよ」 「…やめとく」 小洒落た雑貨店になぜか置いてある砥石に目がいってしまったアルトが 手を重さから解放する。 「結構いい石だったんだが…」 「…あんたね」 キッチン用品売り場から隣の小物売り場へと前を歩くシェリルはアルトに尋ねる。 「アクセサリーとか…」 「アイツも芸能人だからな。商売道具に口を出したくない」 「意外にちゃんと考えてるのね」 冷やかしてやろうと、シェリルがアルトへと振り返ると アルトはブローチを一つ手にとる。 そして、シェリルの制服の襟元のリボンにそっと添えた。 「こんなカンジの、お前に似合うと思うけど、 お前はこんなプラスチックのおもちゃじゃ駄目だろ」 正面から眩しそうに笑いかけるアルトの笑顔にシェリルはきゅんとする。 悟られまいと、目を逸らして髪を払う。 「と、当然でしょ。私を誰だと思ってるの」 「だよな」 アルトは苦笑いしながら、ブローチをディスプレイに戻した。 「ちゃんとしたアクセサリー屋さん、行く?」 「いや。言っただろ。そういうものは贈れないし、俺らしいものがいいだろ」 「アルトらしいものって?」 「ハエたたき?」 シェリルが吹き出した。 「もう!」 シェリルがぐるりと見回すと、カラフルに壁を彩る布が目に入った。 「あ、あれ!アレなら可愛いじゃない?」 「なんだ?」 シェリルは小走りに布へと向っていき、ハンガーをめくって柄を選び始めた。 「パジャマ!これならカラダのサイズが多少違っても大丈夫よ」 目を輝かせて選ぶ姿が可愛いなあと思いながらアルトはシェリルの横顔を眺めた。 「好みがあるだろ?」 「多少は大丈夫よ」 答えつつも、シェリルはふと気付いたのだ。 プレゼントは『着て見せて欲しい』の意味。 今のアルトにその意図はないとしても ランカに大胆なお誘いをする口実を与えてしまうも同然だ。 男には想像させるだけでも、「効く」ものなのは仕事柄知っている。 あ~、なに、敵に塩おくちゃってんだろ、私。 今更引っ込みがつかなくてシェリルはヤケになってパジャマを物色し続けた。 「じゃあ、お前はどんなの着て寝るんだ?」 シェリルのそんな葛藤も知らず、 ネグリジェとか言われるようなレースの服も似合うが、 パジャマらしいパジャマも可愛いな、と アルトは、シェリルの寝姿を想像して頬を緩める。 振り返ったシェリルの答えはアルトの想像を越えていた。 「何も着ないわ」 「え」 「休息の時に肌を締め付けるのは良くないもの。だから下着もナシ」 「あ」 「私のダイナマイトボディの秘訣ね」 ちょっとだけ事故で見た事がある生。 制服に隠された柔らかな肌。 「ららら、ランカもっ、何着るか分からないから…やめとく」 「そう?気を使い過ぎ何じゃない?」 男には、想像も「効く」のだ。 しどけない寝姿を想像したアルトはシェリルを直視出来ない。 やはり寝間着はやめよう、とアルトはシェリルを置いてその場をすごすごと離れた。 「このスリッパとか」 「クッションとか?」 ぶつぶつと二人で物色するがなかなかピンと来ない。 「あ」 うきうきしたアルトの様子を見ると、ようやく気に入るものが見つかったようで、 嬉しさが伝染するようにシェリルも自然と笑みがこぼれた。 「このふきん、質もわるくなさそうで、柄も可愛いじゃないか」 「消耗品なのね…」 「こういうものにゆとりがあると生活が潤うんだぞ」 あの娘は大事に取っておきたいと思うだろうに、本当にこの男は女心が分かっていない、と シェリルは呆れるのだが アルトはむしろその事を無意識に心得ていて、消耗品につい目がいってしまうのだ。 アルト自身の無意識の行動などシェリルが気付くはずもなく、 シェリルはランカが喜びそうなものを頭をひねって考えていた。 そして、ディスプレイされている、薄い布に目がいく。 「エプロンなんていいんじゃないかしら?」 「お、いいんじゃないか。洗い替え用にいくつか持ってていいし」 (お礼にアルトくんに手料理を食べてもらいたいな) なんて可愛く小首をかしげるランカを想像して また塩を送る己の迂闊さを忌々しく思うシェリルを傍目に アルトはエプロンを選んでいった。 アルトは、すっきりとしたデザインのオレンジ地に白の水玉模様のエプロンを選び出した。 「元気がよくてアイツらしいだろ。水玉がはじけそうだ」 嬉しそうに笑うアルトに釣られてシェリルも微笑むが、ツキリと胸が痛む。 かわいいランカの誕生日を祝ってあげたいのに、 アルトにこんなにも思ってもらうランカに嫉妬している自分が惨めだ。 悪の元凶である目の前の男をからかって気を紛らわそうと、シェリルは口を開いた。 「『あるとくん、エプロンありがとね! お礼に手料理食べて欲しいから、今度、うちに遊びにこない?』 な~んて、誘われちゃうかも。 案外あんたもやるわね」 「おまえな。 『シェリルさん、今日はお手伝いありがとね! お礼に、お茶でもいかがですか?』だ。バカ」 目を丸くするシェリルにしてやったりとアルトは笑う。 「ケーキもつけなきゃ許さないんだからね」 「はいはい」 照れてバツが悪そうにもじもじと手を組むシェリルを見るのがアルトは好きだった。 銀河の妖精では決して見せない、可愛らしい表情を彼女から引き出せる自負がアルトにはあった。 よし、もう一押しだ。 $$$ $$$ 「え~、1時間半待ち?」 「これだけ並んでりゃな」 「テイクアウトは待ち時間なしで承っておりますので、宜しければご利用下さい」 以前から話題になっていたケーキを食べたい気持ちはあったが、今、テイクアウトをすると アルトとここで解散という事になってしまう。 「ここの、クレーム・シブースト食べたかったのに。仕方ないわ。他に行きましょ」 ケーキはいつでも食べられる。 そう思ってシェリルは踵を返した。 「シャレた皿でなくていいなら、茶くらいうちで淹れてやるぜ?」 「え」 シェリルの腕を掴んでショーケースにアルトは向う。 「一所にいると、どうせお前、目立つだろ?」 「個室があれば」 「制服で行く店にそんなのないだろ。ほら、茶葉も選べ」 「う、うん」 ちょっと強引だったかな。 シェリルの表情を見る勇気が今はちょっとないアルトは先導して前を歩く。 「そっか、こっちの部屋にもまだ住んでるのね」 穏やかな声を聞いて、ちらっと後ろについてくるシェリルの顔を伺う。 いかにもワクワクしている表情は相変わらず可愛らしい。 が、まるで警戒していない様子を見ると、意識されていないのかなと少し悲しくもある。 「寮だけだと、窮屈だしな。美星はこっちのが近いから便利だ」 「ジャパニーズスタイルなのよね?」 「良く覚えてたな」 シェリルが自分の何気ない話を気に留めていてくれた事が嬉しい。 「だって凄いインパクトの話だったもの。とっても小さくって」 「ほっとけ」 単に珍しいだけかもしれない。 それでも彼女の心に響けば良いのだ。 $$$ $$$ 「おじゃましま~す」 「靴は脱ぐ」 「知ってるってば」 「それはテーブル。座るのは隣の座布団」 「はいはい」 「これ、タオルだけど。膝掛けに使え。正座、だめなんだろ?」 「気が利くわね?」 「お客様はおもてなししないとな」 アルトは居間に座るシェリルに背を向けてやかんに水を入れ湯を沸かし始めた。 アルトの借屋は一間の間取り。 キッチン兼リビンク兼ダイニング兼ベッドルームに想い人を通しているので、 さすがのアルトも照れくさい。 生家で質の良いモノ達に囲まれて育ったアルトには、今の質素すぎる生活をシェリルに見せるのは 正直恥ずかしいところもある。 彼女も一流を知っている女性だから尚更だ。 しかし、飾らない性格のシェリルが、「今の自分」を受け入れてくれるとも信じていた。 「デザート用のフォークとかないけど、大丈夫だよな?」 「駄目って言ってもソレしかないんでしょう?」 「どっちがいい?」 大小のフォークをアルトが差し出すのでシェリルはサイズを確かめるべく アルトのすぐ横に並んだ。 二人きりの部屋で、シェリルの香りが至近距離で香って、アルトは少し緊張する。 「じゃあ、この大の方で」 特に不満もなく淡々とフォークを選んでくれるのは嬉しいのだが、 この距離を気にかける様子もなくフォークを握って確かめるシェリルが恨めしい。 「あら、マグカップはちゃんと二つあるのね」 「こっちはなんかのおまけについてた」 マグカップから目を離してシェリルが振りむいてアルトを見上げると、 微笑むアルトがじっとシェリルを見ていた。 この瞳にずっとこうやって見つめられてたんだ、と思うとシェリルの胸は熱くなって、鼓動が早くなる。 大好きなアルトの部屋が見れる喜びで浮かれていたシェリルだったが 正真正銘二人きりになってしまったという事を、ようやく実感したのだった。 アルトが「男」だと言う事を、シェリルは誰よりも身を以て感じていた。 筋張った少し大きな掌は合わせると暖かい。 発展途上の肩幅はまだ自分より少し大きいくらいだけれど、筋肉がついていて、 シェリルを軽々と抱きかかえてくれる。 長い首筋にはのど仏が出っ張っていて、触るとくすぐったがる。 胸板(薄着のくせに恥ずかしがってあまり見せてくれない)はタンクトップから筋肉が浮いて見えて つい抱きつきたくなってしまう。 『男は狼なの、気をつけなさい』 グレイスにずっと言われ続けて来た。 そして最近加わった言葉。 『たとえ、あの早乙女君でもね』 少しずつ実感して、シェリルは思っていたのだ。 アルトだったら、イイわ。 アルトの、もっともっと近くに行きたい。 「じゃあ、おまけに感謝しなくちゃね。 あんた、湯のみで熱~い紅茶飲むハメになるところだったわ」 一瞬目が合ったシェリルが照れて目を逸らした。 しかし、頬を染めるシェリルが可愛くてアルトは目を逸らせない。 ふっくらとした頬や、つやつやとした唇が艶めいて見える。 この唇が触れたんだと思うと、胸が熱くなる。 浜辺でのキス。 脱出ゲームでのキス。 どちらもシェリルからのキスだ。 少なくとも嫌われてない、と思う。 それなりに好かれてる、と思う。 ただ、どういう意味で好かれてるのかが曖昧で。 綺麗なシェリルを目の前にして、 自分が勝手に盛り上がってるだけなんじゃないかって 少し心配になる。 当たって砕けるのは構わない。 だけど、敬遠されるようになると、辛い。 放課後の寄り道を他のヤツが一緒に行くようになるとか、 宿題を他のヤツが見てやるようになるとか、 考える出すとものすごく不快だ。 だからまだ時期じゃないんじゃないかって 後一歩を躊躇ってしまう。 「あ、あれがアルトのエプロンね」 カレンダーとジャケット程度しかかかっていない質素な部屋の壁に シンプルな紺色のエプロンが壁にかかっていることにシェリルは気付いた。 好奇心のままに近づいて遠慮もなく手にとる。 清潔に保たれているが、使用感がある。 アルトが料理上手なのは良く知っていたが、実際に料理をしているところを見た事はなかった。 アルトのお弁当から少しずつ貰うおかずはどれも美味しくてお気に入りで きっとアルトはよい「嫁」になると、シェリルは本気で思っている。 アルトが手際良く料理をしている様子を想像すると、トキメキいて堪らなくなるのだ。 「ね、アルトこれ着てみせて」 「洗い物する時につけるよ」 「良いから、今着てみせて」 「後でいいだろ」 グレイスが迎えに来るまで、後1時間もない。 洗い物の頃には、部屋を出ないと行けないかもしれない。 この機会を逃す訳にはいかない。 シェリルはアルトにエプロンを着せようと、エプロンを見回して着方を考えた。 (なにしろ、シェリル自身はグラビアでしか着た事がない!) 着方を了解すると、アルトに着せにかかった。 シェリルが本気だと知ると、アルトも抵抗する事なく、なすがままだ。 かといって、協力してくれるわけでもないのが、アルトらしい。 まずは、輪になった紐を首に掛ける。 ポニーテールを避けて通さないといけない。 さらりとしたポニーテールを通そうと、アルトの肩の上から腕をまわすと、 思った以上に距離が近い。 アルトの石けんと汗の混ざったかすかな匂いがシェリルの鼻腔をくすぐる。 凄く近い。 胸元で紐の長さの調節をする。 視界の端、すぐソコにアルトの顔がある。 そう思って視線を上げると、すぐ至近距離にアルトの顔があった。 「あ」 あまりの近さに絶句する。 どちらもとっさに離れる事なく、吐息の触れそうな距離のまま。 離れないといけない。 でも、離れたくない。 相手を近くに感じるその甘い感覚に満たされて、動けない。 切なくて、ドキドキして、でも心地よくて。 ずっとこうしていたい。 近い。 目の前の透き通った肌からは甘い香り上気している。 毎日のようにアルトを誘い、焦がれて来たこの香り。 なんて情けない表情してんだ。 そんな表情もかわいい、なんて。 近くで見ても青い虹彩。 長いまつげはやっぱり少し色が淡くて。 驚いてほんのり開かれたぷるぷるとうるおう唇。 思い出の中のその柔らかさに誘われて、 シェリルの細い肩に手を添えると、アルトは身を軽く屈める。 アルトはそっとシェリルの唇にじぶんのソレを重ねた。 一瞬のような、長い間のような、キス。 とっさの自分の行動に驚いたアルトはシェリルの次の反応を恐れるように身を離した。 本当はそのまま抱きしめたい気持ちを抑えて、一歩離れてシェリルを見つめる。 シェリルからは怒りや照れの表情は見られず、ただ驚きばかり。 「き、キスなんて大した事ない、んだろ…」 堪え兼ねて口を開いた。 相変わらず気の利いた言葉が言えない自分が嫌になる。 ようやくシェリルの表情が動いた。 目を潤ませて、へにょっと眉毛を下げて、柔らかだった唇を噛む。 そんな悲しい顔させたかった訳じゃないんだ。 「けど、俺には一大事なんだ」 畳み掛けるようにアルトは続ける。 もういい、言ってしまおう。 「好きな女としかこんな事したくない」 次に、シェリルは拗ねたような表情になる。 表情豊かな彼女が愛おしくて、胸が締め付けられる。 「だって、アルト。キスシーンしたじゃない」 「あんなのは芝居だ」 シェリルはみるみる困惑と照れと喜びが混ざったような表情になる。 大丈夫だ、と思うと、アルトの口元が緩んでくる。 「あの時大した事ないって言ったの、あんたじゃない」 「芝居だからな」 この湧き出る気持ちはたった一人に向かっている。 あの海辺のキスでこの気持ちに気付いたんだった。 「ランカちゃんとキス、したかったんでしょ」 「芝居なら誰とでもする。芝居じゃないなら、お前としかしたくない」 「うそ」 今度は拗ねだした。 意外に手強い。 焼きもちを焼かれるのはまんざらでもないが、今は譲って欲しい。 「嘘ついてどうする」 「取り敢えず一人キープ?」 「お前みたいな女、一人で十分だ!」 とんでもない汚名についアルトの声が荒がる。 シェリルが驚いて目を見開いた。 ちょっと熱くなり過ぎたか、しかし、ここはきっちりしておかないと、とアルトが葛藤している間に 余裕が出てきたシェリルはアルトの必死さを感じ始めていた。 もしかして、これって本物の告白なんじゃないかしら!? どうしよう、嬉しくて泣きそう。 「アルト…」 続きを促すように、泣きそうになりながらもシェリルはアルトに微笑みを向ける。 かたかたと沸き始めた湯がやかんをゆらす。 シェリルの切なげな微笑みの意味を汲んで、アルトが男を見せようと拳を握った。 やかんがしゅんしゅんと鳴り始める。 「シェリル、おれはお前の事がす ぴーーーーーーーー!!! やかんが勢い良く音を立てた。 湯が沸いたのだ。 「「あ」」 アルトが急いで火を止めると、やかんの笛も鳴り止んだが、 二人の緊張した空気もすっかり緩んでしまった。 「紅茶、淹れるよ…。お前、座ってて良いぞ」 「うん」 「続きは、ケーキ食べた後にしようか」 「ええ」 緊張し過ぎたシェリルは、のろのろとちゃぶ台の前に座り込んだ。 アルトは取り敢えず宙ぶらりんのエプロンを着て、 お茶の準備をづづけた。 (想像した通りにエプロン姿が痺れる程カッコいい) カップとティーポットを湯で温めるアルトの背を眺めながら シェリルは緩んだ頬を掌で押さえて思案する。 振り向いたアルトにどんな顔見せたら良いの? 作業が終わってしまっても、アルトは振り向くに振り向けない。 鼻腔に残る悩ましいシェリルの香りをかき消すように紅茶が香り始める。 3分の砂時計が落ちれば、シェリルと向き合わないといけない。 嬉しいような、怖いような。 一世一代の見せ所だ。 みてろよ、妖精さん。 トレーを抱えたアルトは振り向いた。 きっと、甘いキスが、ケーキの後に待ってる。 アルシェリ視点を交互にいれつつ、ところどころごっちゃにしつつ 勢いで書いちゃったので、読み苦しいところも多々あったかと思いますが このアルシェリを放出しないと一年が始まらないぜ!って思いだったので 推敲も殆ど出来ずすみませんでした! みなさんもよい一年をお過ごし下さい! wiki収録時に加筆修正しました 2015/10/18
https://w.atwiki.jp/fairy-waterfall/pages/36.html
3スレ304 幼馴染3 晩御飯 304 名前:fusianasan[sage] 投稿日:2009/01/19(月) 18 00 59 話ぶったぎってごめんよ。幼馴染の続き↓ 晩御飯は、ほぼ手伝いの者が作ってあったので、それを温めるだけだった。 かぼちゃの煮つけや焼き魚を皿に移しながら、アルトはシェリルに謝らなくてはと思った。 程度をわきまえろと言われておきながら、またもや突っ走ってしまった。 まだ中指の先に残っている、ひだっぽい生温かな感触を思い出して、 アルトは慌てて前かがみになった。 でもなぁー、とアルトは溜め息をつく。シェリルも過剰反応すぎるのではないか。 恋人どうしが一緒に風呂入って、何もしないなんてそんなのありえるのかなぁ、と 中学生のアルトは思うのだった。 ぶすっとした顔で、パジャマ姿のシェリルが表れた。 「よ、よお、さっきは、悪かったな・・・」 アルトは慎重に声をかける。 じろっとアルトを一瞥すると、シェリルはぷいと横を向いた。 「いきなりああいうことする、アルト嫌い」 「ごめん」 赤くなって、うつむいた。 けど、前もって言うのも、なんか変だぞ?シェリル。 「まあ、もういいけど。今日のご飯はナニ?」 いい匂いに興味が移ったのか、シェリルはいそいそとテーブルに着いた。 「かぼちゃと、さばの塩焼きと、ひじき」 料理をシェリルの前に並べていく。 そうだ、とアルトは冷蔵庫にプリンを冷やしておいたことを思い出した。 シェリルの食後のデザートにと、昨日作っておいたものだった。 冷蔵庫から取り出し、ガラスの容器に乗ったプリンを、シェリルに差し出す。 と、シェリルの二の腕に、アルトの手が当たった。 途端にびくっとシェリルが動き、怯えたようにアルトを見上げた。 「・・・なんだよ、なんもしねーって!」 心外のあまりアルトは声を大きくする。 「わ、わかってるわよ!当たり前でしょ・・・!」 耳まで赤らめ、眉を吊り上げたシェリルが叫ぶ。 結構傷ついたアルトがふらふらと食卓につき、二人は重々しく 「いただきます」と言い黙々と食べ始めた・・・。 むすっとしていたシェリルも、アルトのお手製プリンを口にすると それがあまりに自分好みの味だったので、次第に機嫌よくなってきた。 それを目ざとく見てとったアルトは、「悪かったな、風呂場で。怖がらせちまって」 ともう一度謝った。 「怖いですって?あたしが怖がるわけないでしょ、ちょっと驚いただけ」 余裕ぶってシェリルが答える。 「うん、だよな。ごめん」 「もうしない?」 「うん、しない。・・・・・・え?」 「もうしないんでしょ」 念を押すように聞かれて、アルトは返答に詰まる。 そんなこと言ったって、遅かれ速かれするんじゃないかなぁ? しばし言葉の意味を頭の中で反芻する。おそるおそるシェリルに聞いてみた。 「何を、してほしくない?」 「ヤダ。だから、さっきみたいなエッチなことを、よ」 顔を赤らめたシェリルは、スプーンを握り締めてアルトを睨んだ。 今度はアルトが睨む番だった。 「おまえさ、本当に俺のこと好き?」 シェリルは急に何を聞くかと言わんばかりに眼をしばたかせ、 やがて赤面したまま下を向き、好きよ、と呟いた。 このシェリルの反応に嘘はないと、アルトは信じたい。しかし、だからこそ 確かめておくことがあった。 「好きなら、そういうことしたいって思うのが、当たり前なんじゃねーの」 俺たち、キスだってしたじゃねーか。情けない気持ちでアルトは呟く。 「俺のこと、ほんとに好きなのかよ」 シェリルが怒った顔でアルトを睨んだ。しまった、とアルトは思う。 「好きよ!アルトとなら、キスだってしたいし、おっぱい触られたって別にいいし、 子供だって産みたいもん!」 ちょっと最後は話が飛躍したが、まあ分かってるんだなとアルトは少し安堵する。 「じゃあ、なんで?。もうしちゃだめとか言うんだよ」 だ、だって・・・と急にシェリルは指をもじもじさせた。 「アルト、お風呂で変なとこ触ったでしょう」 「ん、ああ」 また、下半身に血が集中し始める。 「あんなとこ触るなんて、信じられないわ。いくらあたしたち付き合ってるとは言っても やっていいことと悪いことがあると思うわ。」 「・・・・・・」 親しき仲にも礼儀ありってやつか・・・?いやいや、違うだろそれ。 だっていずれは触る場所なんですけど、って、え? 「俺、おまえにもう一つ聞きたいことがある」 「あたしも、この際だから聞きたいわ」 真撃な顔でシェリルが、アルトを見つめた。 なんだよ、とアルトが気圧される。 「どうして、あんなところを触ったの?」 しばらくの間を置いてアルトは、シェリル、とかすれた声を出した。 「子供って、どうやって作るか知ってる?」 ぽかん、としたシェリルがすぐにカッと紅潮して叫んだ。「知ってるわよ、バカにしないでよね」 頬に手を当てて、うっとりと言う。 「大人になってもずぅっと好きあってたら、神様から授かるんでしょ」 一瞬すごい頭痛に見舞われたアルトは、額に手を当てて黙り込んだ。 嘘だ、13歳って性教育がまだとか、嘘だ。 アルトは知らなかった。シェリルの通うお嬢様学校では、性教育は 花のおしべとめしべに例えられて教えられることを。 どうしよう、どうしたものかと煮詰まる頭で考え込む。 アルトのパンツの中では、小さなおしべが靜かに受粉の時を待っているのだ。 一旦おわり
https://w.atwiki.jp/directors/pages/4653.html
シェイニー・ゲイベル シェエン・キャロン シェカール・カプール シェリル・デュニエ シェリー・ホーマン シェルドン・ウィルソン シェルドン・レティック シェン・トン シェーン・アビス シェーン・カルース シェーン・クーン シェーン・ブラック シェーン・メドウス ページ先頭へ
https://w.atwiki.jp/macrossf-eparo/pages/20.html
295 名無しさん@ピンキー sage 2008/05/14(水) 20 27 59 ID NEOvaLM0 バジュラとの戦闘は激しさを増す一方だった。 SMSマクロス・クォーターは激戦のさなか、補給と乗員の休養のため母港アイランド・ワンへと帰投していた。 乗員には半舷上陸の許可が出され、それぞれ短い休暇を街で過ごす。 アルトが向かった先は、シェリルのコンドミニアムだった。 出迎えたシェリルは、長い髪をまとめ、エプロンを着けた家庭的な姿だった。 「お帰りなさい」 「あ……た、ただいま」 意表を突かれて、一瞬絶句したアルト。 「さあ、入って。食事作ってるから、座って待ってて」 アルトの手をとって、居間へと導くシェリル。 「作れるのか…料理」 「失礼ね」 苦笑気味に振り返るシェリル。 「銀河の妖精は何でもできるのよ」 アルトをソファに座らせると、キッチンへと向かう。 かすかに流れてくるのは、美味しそうなチキンとバターの匂い。 シェリルの後姿を見送ったアルトは、手持ち無沙汰を紛らわせようとAVセットのスイッチを入れた。 チャンネルを音楽番組に合わせて、ボンヤリと見る。 こうして、艦内でない場所でくつろいでいると、手足が鉛のように重くなっているのに気づいた。 (疲れているんだ……) 連戦に続く連戦。果てしない激戦。 無意識のうちに、戦場を回想していた。 不意にスピーカーから、ディトーションのかかったギターの音色が飛び出した。 歪んだ音色が、アルトの心を直撃する。 ビクンと胸郭の中で心臓が飛び跳ねた。 (シェル・ショック!) 病名だけは知っていた。兵士の間で戦闘神経症と呼ばれる状態がアルトに襲い掛かってきたのだ。 理性では分かっているが、傷付いた深層意識から湧き上がる恐怖の衝動が体を支配している。 「どうしたの? 顔色が…」 気がつくと、シェリルが心配そうに顔を覗き込んでいた。 ここはシェリルの部屋だ。 しかし、アルトの心はバルキリーのコクピットに戻っている。 「……耳から離れない。アイツの声が」 うつむき、両耳を手のひらで覆うアルト。 戦闘ノイズで歪んだ声が、ヘルメットのスピーカーから響いてきた。 「何もできなかった……すぐそばに居たのに…っ」 ソファの上で崩れるようにかがみ込む。 シェリルはしゃがみ込み、アルトに顔の高さを合わせた。 耳をふさいだ手をそっと外し、唇を寄せる。 アルトの肩をふわりと抱き寄せて、歌い始めた。 「A gentle breeze from hushabye mountain Softly blows o er lullaby bay...」 古い子守唄を、優しい声に乗せて。 戦友の断末魔が刻み込まれたアルトの聴覚に染み込んでゆく歌声。 やがて、アルトの浅く早い呼吸が、ゆったりと深いものになってゆく。 意識と心がようやく現在に戻ってきた。 「かっこ悪いところ、見せたな」 アルトはシェリルから視線をそらして、照れくさそうに呟いた。 「私ね、リン・ミンメイが羨ましくてたまらないわ」 アルトの視線がシェリルに向けられた。 唐突に思えた言葉の続きを待つ。 第1次星間戦争で、ゼントラーディたちの心を溶かした伝説の歌姫の名前が、なぜ出てくるのだろう? 「あの人は、自分の歌で運命に立ち向かったの。本当に、本当の意味で歌に命を賭けたんだわ」 アルトの肩を抱いた腕に、ぎゅっと力が籠った。 「今の私は、アルト達に守られているしかない。ミンメイが羨ましい」 アルトは、いつかシェリルとランカの三人で シェルターに閉じ込められた時を思い出していた。 運命を切り拓いてきた自分に、強烈な自負心を抱いているシェリル。 「アルト……かっこ悪いなんて言わないで。 私たちを守って、戦って、傷ついた人をかっこ悪いなんて言わせない、誰にも」 その夜、アルトとシェリルはベッドで抱き合った。 アルトは性急に求めた。 まだ十分に潤っていなかったシェリルは鈍い痛みを感じた。 だけど、それで良かった。傷付いてもかまわない。 アルトの痛みを少しでも共有できるような気がした。 照明を落とした部屋で、荒々しいアルトの息遣いと、声をこらえたシェリルの呻きが満たしている。 その中で、シェリルは別の音を聴いた。 「…ル……シェリル…っ」 アルトが名前を呼んでいる。まるで、それしか縋るものがないかのように必死に。 その瞬間、何かが弾けた。 体の奥から波が広がり、二人が一つになっている所が潤いを増した。 痛みは無くなり、意識が白熱してゆく。 シェリルは手足をアルトの体に絡め、精一杯抱きしめた。 次の瞬間、体中から力が抜け、頂に達した。 アルトも同時だったようだ。 携帯端末の控えめなバイブ音で目覚めたアルト。 ベッドから起き上がり、時間を確かめる。 原隊復帰の時刻が迫っている。 居心地の良いこの部屋でもう少し長居することもできたが、決心が鈍りそうなのでベッドから抜け出した。 振り返ると、シェリルがこちらに背中を向けて眠っている。 起こさないように静かに着替えてから、ひとめシェリルの寝顔を見ようとベッドの反対側へ回った。 シェリルは両腕で顔を覆うようにしている。 その手をどけようと触れると、ピクンと震えた。 眠った振りをしていたらしい。 「見ないで…」 ベッドの上で寝返りを打って、アルトに背中を向ける。 アルトはシェリルに覆いかぶさると、シェリルの顔から腕をどけた。 その下から現れたのは、涙に濡れた妖精の顔。 「見ないでって言ったでしょ」 大粒の涙が頬を流れている。 アルトは唇を頬に寄せて雫を吸った。涙は熱かった。 「こんなの……私じゃない……シェリルじゃない」 シェリルの腕がアルトの首に巻きついた。 「かまわない。俺もシェリル扱いしないからな」 嗚咽の間から、シェリルが訴える。 「行かないで……ここに居て…ここじゃない…どこか二人きり……」 さっきまで慈母のようにアルトを受け止めてくれていたシェリルが、今はただの少女に戻っている。 バジュラとの戦いはシェリルの心にも影を落としていた。 アルトは腕に力をこめて抱きしめた。 「いいぜ……逃げちまおう。 バルキリーかっぱらって、フォールドブースター積んだら、どっかの移民惑星にたどり着けるだろう」 シェリルはハッと目を見開き、囁く。 「嘘つき……そんな事、考えてもいない癖に」 「本気だぜ」 「アルトは、飛ばないではいられないわ」 シェリルの口調ははっきりしたものに戻っていた。 アルトはシェリルの髪を撫でながら頷いた。 「お前が歌わずには居られないように」 「……そうね」 「おまじないをしようか」 アルトの提案に、シェリルはきょとんとした。 「なに?」 「古くから伝わるおまじない。このジャケットやるよ。 代わりに、シェリルが身に着けてたものをくれ」 アルトはSMSのロゴマークが入ったジャケットを脱ぐと、それをシェリルの肩に被せた。 「それじゃ、イヤリング…」 アルトは首を横に振った。 「イヤリングのご利益は、もうもらったからな。 そうだ、これがいい」 昼間、シェリルの髪をまとめていたバンダナを手に取る。 そして、自分の髪をバンダナでくくった。 「これは、後朝(きぬぎぬ)っていう千年以上昔から伝わるおまじない。 身に着けてたものには、その人の心がこもっているっていう信仰なんだ。 離れても心は一緒に居るっていう意味と、必ず戻ってくる約束でもある」 「きぬ…ぎぬ……不思議な響きだわ」 アルトは立ち上がって、ドアのところまで歩いた。 「行ってくる。必ず戻ってくる」 シェリルはその背中に向けて、いつもの口調で言った。 「戻ってくるのよ。 戻ってこないと、アルトよりいい男見つけて付き合うから。 覚悟なさい」 アルトは手を上げて振ると、振り返らずに部屋を出た。 シェリルは閉まるドアをしばらく見つめていた。 それから、アルトのジャケットを抱いて、ベッドに仰臥した。 ジャケットの上から、下腹部に両手を当てる。 「パパ以上のいい男になって生まれていらっしゃい」 以前、シェリルスレにあげたやつを エロパロ風味を添加して再アップ こんなのシェリルじゃないやいという方は スルーしてくださいませm(__)m
https://w.atwiki.jp/fairy-waterfall/pages/182.html
828:fusianasan[sage] 2014/07/27 22 07 57 2060年7月27日、午後9時 「さ、いただきま~す」 ビュッフェから自分好みのワンプレーとを作ってようやく座ったシェリルは 目の前の美味しそうな品々に目を輝かせる。 元々、シェリル自身が選んだ店で、味は信頼している。 1次会、2次会は主催者として、あまり食事に手が付けられなかったため、 最大の調味料である空腹を手に入れていたシェリルにはこの上ないごちそうだった。 この3次会で役目も終わり。 ようやく落ちついて食事もとれる。 いざフォークを下ろそうとすると、さっと皿が何者かに奪われた。 どれから食べようかと料理に向かっていた視線を上げると、そこには本日の主役、 早乙女アルトが皿を持って立っていた。 「な、何よ!今から食べる所だったのよ?」 「ふ~ん」 憮然とした態度でアルトは皿の中身を確認している。 「同じもの食べたいなら、あっちに、沢山、あるわよ。最初にみんなに説明したでしょ」 せっかくのごちそうを奪われまいとシェリルがビュッフェ台を指差すと、 アルトは皿を返してはくれず、シェリルの腕を引いた。 どうやら、ビュッフェ台に連れて行くつもりらしい。 「しょうがないわね、誕生日だから、特別よ? こんなサービス滅多にしないんだからね?」 ビュッフェ台について行くと、アルトはあっさりと盛りつけてあった皿を返してくれた。 代わりに、新しい皿に盛りつけ始める。 「お前、これ食うよな?」 アルトはシェリルの好みを見事に把握しているようで、シェリルの食べたいと思う料理を色とりどりに盛りつけていく。 「なによ、一緒に食べたいなら、そう言ってくれれば良かったのに…」 シェリルは、終日、主催者として、主役のアルトとは付かず離れずの距離を保っていた。 アルトが楽しんでくれればと裏方に徹しており、パーティーを進行しながらその成功に満足してはいたが、 勿論、大好きなアルトの傍にいたい気持ちがあったのだ。 アルトも、同じように思ってくれているのなら嬉しい。 シェリルの言葉を効いているのか聞いていないのか、アルトはさっさと手を動かし続ける。 「ほら、飲み物選んどけ」 アルトはシェリルに持たせていた皿を取り上げると、さっさとその場を離れていった。 酒に強くないため、ノンアルコールカクテルメニューを見ながら悩んでいると、 アルトが帰って来た。 「違う。そんなの持って帰れないだろ?」 持って帰る・・・? 言葉の意味を考えているシェリルをよそに、アルトは何本かの瓶を選ぶ。 「余ったら、後で飲めばいいだろ。他にないか?」 カクテルが飲みたかったのに、と思いながらも、 美味しそうなスパークリングジュースがいくつか選ばれていて、特に問題はない。 ふるふると首を振ると、アルトはその瓶達とアルト自身が飲むのであろうワインをウエイターに渡した。 「じゃあ、これで」 きょとんとするシェリルをよそに、アルトは主役席まで戻っていき、マイクを手にとった。 「みなさん、俺の誕生日を祝うために集まって下さってありがとうございます」 すっかりで出来上がっている参加者たちから歓声が上がる。 「おかげさまで、今日は本当に楽しい一日でした。これからも宜しくお願いします。 俺は、これで失礼しますが、この会は俺の誕生日の24時まで開催されています。 ゆっくり楽しんでいって下さい」 わっと拍手と歓声が起きる。 おめでとーという誰かの声を聞きながら、シェリルは近づいてくるアルトの姿をぼんやりと見ていた。 「ほら、帰るぞ」 シェリルの手首を握ると、再び声が上がる。 いよっ、色男! 後は銀河一の恋人としっぽりだな! 銀河一の幸せ者~! そんな冷やかしには耳も貸さずに、シェリルの手を引いた。 「後は任せてある。心配ないよ」 引きずられるようにして、シェリルは会場を後にした。 $$$ $$$ 「やっぱり3次会までは疲れちゃったかしら?」 リビングのローテーブルでようやく食事にありついたシェリルは、フォークを置いてアルトに問いかけた。 まだドレス姿で食事にがっついているシェリルをよそに、アルトはシャワー上がりのラフな恰好でワインを傾けている。 「そんな事はないさ」 「なんだか口数も少ないし、怒ってる…? サプライズ・パーティー、気にいらなかった?」 予定は空けておいてくれとは言っていたが、パーティー事は秘密にしていた。 昨年は、大気のある星へ辿り着くためとはいえ、 ガリア4へのフォールド中に日付上の誕生日が丸1日が過ぎてしまっていたので 今年は皆に祝ってもらおうとシェリルが画策したのだった。 「いや、楽しかったよ。それに、ちょっと懐かしかったかな」 「去年は、移動中に誕生日迎えちゃったけど…、その前はどうだったの?」 家を出た年の誕生日はどうしたのだろう。 「それまで人に囲まれて育ったから、なんかやっぱり寂しくてさ、 ぎりぎりまで学校に残ってEXギアいじくってたんだけど、 家帰ったらさ、ミシェルとルカが押し掛けて来てさ。 ルカなんか今よりももっと小さかったのに…」 当時のアルトを思い描いて、シェリルは微笑んだ。 アルトが思い出話をしてくれるのが嬉しくて、アルト以上に素敵なプレゼントを貰ったような気さえする。 アルトとの二人きりの時間を味わいながら、料理に舌鼓を打った。 $$$ $$$ なにしろ、アルトの誕生日は後少ししかないのだ。 いつもよりも入浴時間を短くして、シェリルが風呂を出て来た。 アルトが好みそうだと思ってこの日のために買った淡い色のベビードールを身につける。 (着る前に洗濯してもらってるのでアルトはその存在を知っている) シェリルがそっと寝室に足を運ぶと、アルトがベッドの上でくつろいだ様子で雑誌を読んでいた。 すっかりこの部屋の主のように馴染んでいた。 雑誌だって、いくらか前にアルトがベッドサイドに置いていったシェリルが読みもしない雑誌だ。 キッチンの主は間違いなくアルトで、配置からキッチンツールまで全てアルト仕様である。 シェリルに気がつくと、雑誌をサイドテーブルにおいた。 「やっぱりそれ着て来たんだな。よく似合ってるよ。でも灯りはもう暗くするぞ」 「ふふん、この衣装はね、薄明かりにこそ生えるのよ。シェリル・ノームを甘く見るんじゃないわよ」 衣装じゃないだろ、と心の中で突っ込むアルトをよそに、 シェリルは見せつけるようにゆっくりと歩みを進めた。 白くセクシーな体がうっすらと透ける淡くふわふわしたベビードールを着るシェリルは、 確かに魅力的で、アルトは目を離せない。 シェリル本人は焦らしている自覚がないのだが、焦がれきったアルトの隣に座ると、 本日一番聞いた言葉をアルトの心臓を打ち抜く可憐な満面の笑みで贈った。 「アルト、誕生日おめでとう」 アルトは照れたように微笑み、ちゅっとシェリルの唇を啄んだ。 「ありがとう・・・もうお前にも何回も言われたけどな」 ぎゅっと抱きついて来たシェリルの耳元でささやくと、 何回言っても足りないわなんて笑う声が耳元に返ってくる。 鼻腔をくすぐる甘い香りと柔らかな体の感覚がしみ込んでくるように心地よい。 アルトが理性を総動員して身を離すと、そっと柔らかな頬を撫でて空色の瞳を見つめる。 「今日はありがとう。泊まっていっていいか?」 なし崩し的に泊まっていく事も多々あるのだが、今日は一応、家主に承諾を得る。 「ダメなんて言う訳ないでしょ。 明日は朝から学校に行って、その後も打ち合わせだけにしてるの」 照れ隠しに口づけて来たシェリルを抱き込んでそのまま深く口づけた。 甘い官能を貪るように、二人は深く激しくお互いを絡め合う。 「やっぱり少し怒ってたのかもしれない」 青い瞳を覗き込み、わき上がる喜びと切なさを感じて、自覚した。 「お前近くにいなかったし、当然こういう事も出来ないし」 深く口づけ、舌を触れ合わせると、甘い感触がアルトを痺れさせる。 「欲しいものはないって言ってたじゃない」 唇を話すと、シェリルが不満そうに呟く。 シェリルが自分のために休みを取ってくれているのを知っていたので、 それだけで充分だった、なんて恥ずかしくてとても言えない。 しかも、その後、プレゼントはわ・た・し作戦などを吹き込まれてるのを知ると、 尚更別のものを所望する気にはならなかった、なんて口が裂けても言えない。 「ちょっとくらい気を効かせればわかるだろ?」 「なによ、アルトが寂しがりやのどすけべなんて、知ってたけど!」 軽く抱きしめ合っていた体を離したシェリルが顔を背けた。 「いつも一緒にいるのに、私が独占していいのかしらって…」 いいんだよという気持ちを込めて、 顔を背けたままのシェリルの体をアルトは再びぎゅっと抱きしめた。 お互い少ない余暇をお互いのために費やしている事が確かに多いのだが、 それでも、絶対的に足りてない、とアルトは思っていた。 シェリルが自覚しているのか分からないが、アルトを見つければ目を輝かせて喜ぶし 離れる時にはとても残念そうにしているので、自分と同じ気持ちなんだとアルトは思っていた。 「『私と一緒にいられるんだからありがたがりなさい』ってなんで言えないんだろうなあ」 色々と自信家のシェリルが、こういう所では控えめで、可愛くて困る。 だから、もっともっと一緒にいたいんだ。 自分が知る限りのシェリルの今までの経験を考えると、仕方ないのかもしれないなと、 いっそう愛おしさがこみ上げる。 シェリルが大切で、一緒にいたくて、欲しくてたまらないんだって 態度で示して来たつもりだったが、伝わるまでにまだまだ時間がかかりそうだ。 「『ありがたがりなさい』よ!」 ぎゅっと抱きしめ返して来たのが、負けず嫌いのシェリルらしいと、苦笑い。 「ホント、ありがたいよ。 昨日は、今日の予定があるだろうって、手加減してたから、今晩がなかったら辛かったよ」 「え!? だって、昨日はあんたのせいで日付替わる時におめでとうって言えなくて!」 ちょうど0時ころのシェリルはアルトの腕の中で啼かされていた真っ最中だった。 折角の誕生日だし、日付が変わる時には繋がっていようと思っていたアルトは、 それまでシェリルを寝かせまいと頑張っていたのだった。 朴念仁に見えて、濃い恋愛物に馴れ親しんで育った男であるので、エロ・ロマンチストである。 当のシェリルは、誕生日を迎えるとともに、おめでとうと言いたかったのだが、 前日の晩には散々弄ばれ、日付が変わる頃にはアルトの愛を受け入れており、疲れてそのまま眠ってしまったので、 結局朝になってようやく、おめでとうを言えたのだった。 「俺のせいって、別に口塞いでた訳じゃないだろ」 「あんな状態で、時間なんて分かる訳ないでしょ!」 誕生日だろうが、夜が更けようが、痴話げんかは続く。 無事、誕生日が終わる瞬間も愛し合っていられたよう。 アルト、誕生日おめでとう。 生まれて来てくれて、ありがとう。