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作詞:梨本P 作曲:梨本P 編曲:梨本P 歌:初音ミク 翻譯:yanao 詐騙師微笑之時 被愛的人吶 可不是你 而是我自己啊 朝著聲音傳來的方向 跪下來 朝拜天空 紅得 像是生鏽的顏色 很想死的小丑 連妝也沒化 一臉蠢樣 熬夜也要適可而止 快要天亮囉 不逃不行了 要逃到哪 很容易被騙的在床上也很好搞定 他人的不幸嚐起來味道甜得像蜜 淫蕩的貴婦人 脫到全裸 這個人世間呀 到處都是蠢蛋 當詐欺師露出微笑之時 請一邊炫耀自己廉價的不幸然後給我你的眼淚吧~ 當詐欺師露出微笑之時 發狂哭喊的善人 純粹的人為災害 像是在都市中綻放的花朵一般 如果沒被注意到的話 就沒意義的存在 好想在後天的這個時候 忘掉那副 醜陋的身體 我對映像管另一端的屍體 一點興趣也沒有 反正又不是真的 如果真的那麼恐怖的話 那就好好的 念個佛吧 南無阿彌陀佛 運送著幸福的 青色小鳥 要是拔掉羽毛的話 就只是個垃圾 被被騙的蠢蛋 給騙了的蠢蛋 既然都是蠢蛋 那就乾脆笑吧 當詐欺師露出微笑之時 就跟我說一些你那個又輕又薄的自尊吧 當詐欺師露出微笑之時 大聲嚷嚷著自稱教主 那樣子真是醜到不能看 已經是老套的情歌 無聊得過頭已經不想聽了啦 比起尋找著愛的形式 在那之前明明就知道該做些什麼吧 從夢中醒來的 羊群 睡也睡不著 轉呀 轉的 要到何時 要到何處 如果是迷路的孩子 來過來吧 更加地讓妳感到愛地強力吸吮 深到骨髓為止 當詐欺師露出微笑之時 請一邊炫耀自己廉價的不幸然後給我你的眼淚吧~ 當詐欺師露出微笑之時 發狂哭喊的善人 純粹的人為災害 像是在都市中綻放的花朵一般 只要五分鐘就會被忘記的存在 好想在後天的這個時候 忘掉那副 醜陋的身體 送給懷抱敬意的你這句話 去死吧。 2012.08.09 修改幾處年輕不懂事時的錯誤
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ギガペテン レア 闇 6 1000 キマイラ E・ソウル ■ブロッカー ■このクリーチャーは攻撃することができない。 ■このクリーチャーが破壊される時、相手は自身の手札を2枚選んで捨てる。 (F)ウシくんカエルくん、そんな血まみれでどうしたんだい。――ギガペテン 作者:まじまん 収録 「王金編(エルドラード・フォークロア) 第1弾」 評価 名前 コメント
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問題編をラノで読む 問題編その2へもどる 3 久しぶりに母さんの夢を見た。 ぼくたちが子供のころに死んでしまった母さん。 顔はあまり覚えてない。写真も父さんが全部捨ててしまったからだ。だから夢の中の母さんはモザイクがかかってるみたいに顔がぼやけている。 大きくはないけど、それでも温かかった夏目の実家で、母さんはぼくたち五兄弟に優しくしてくれた。感情を持たない不気味なぼくの頬を優しく撫でてくれた母さん。いや、ぼくだけじゃない、賢治兄さんもユキ姉もアキ姉も龍之介も、みんな何かが欠落している。欠陥人間の兄弟だった。それなのに母さんはみんな平等に愛してくれた。 春の暖かい木漏れ日の中、ぼくたち全員に母さんは優しく微笑みながらよく言っていた。「あなたたち一人一人は不完全な人間だけど、一人が欠けているものを四人が補えばきっとそれだけですべてうまくいくわ。だから助け合って生きなさい。強く生きなさい」 その言葉だけが、ぼくと母さんの思い出だった。 「中也くん!」 眠りから覚めると、アキ姉の顔が目の前にあった。 「アキ姉……」 アキ姉は顔をくしゃくしゃにして泣いている。涙も鼻水もぼくの顔に落ちてくる。でもそれを汚いなんてぼくは思えない。とても綺麗だ。 目だけを横に向けると、見慣れた景色が広がっている。狭い畳の部屋。壁のシミに顔みたいな木目がある天井。ここはぼくとアキ姉が住んでいる島のアパートだ。安い家賃で借りているオンボロアパート。それでもアキ姉と二人で住むには十分だった。 「もう中也くん大丈夫? 本当に心配したんだからね!」 アキ姉は泣き叫びながら、身体を起こしたぼくに抱きついてきた。アキ姉のぺったんこの胸がぼくの胸と重なり鼓動が聞こえてくる。温かい。 「ばかばかばか! いつもお姉ちゃんに心配かけて!」 アキ姉はぎゅっとぼくを抱きしめ、ただただ泣いて、怒っている。 そうか、ぼくはあのレインコートの人物に暴行を受けて、龍之介に助けられたんだ。 「――っ」 意識が覚醒し始め、体中の痛みが一気に襲ってくる。特に蹴られた顔が熱を帯びてジンジンする。自分の手で顔に触れるとガーゼや包帯でぐるぐる巻きになっていて、どうやらアキ姉がやったみたいだ。不器用なのに慣れないことをするから包帯の巻き方がめちゃくちゃだ。でも、アキ姉はきっと必死にやったのだろう。それだけは伝わってきた。 「ごめんアキ姉。心配かけて。大丈夫だから……」 しゃっくりしながら泣いているアキ姉を抱き返し、ぼくは頭をぽんぽんと叩く。するとようやくアキ姉はぼくから顔を離し、涙を拭っていた。 「もう、お姉ちゃんをこんなに泣かせるなんてひどい弟ね。罰としてしばらくオヤツ抜きにするわ!」 泣きやんだアキ姉は、今度はぷいっと顔を背けてしまった。まったく、本当に感情の起伏が激しいなアキ姉は。羨ましい。 「“そんなアキ姉。ぼくはアキ姉の作るオヤツを至福だと思ってるのに。オヤツを抜きにされたら死んじゃうよ”」 ぼくがペテンを使ってアキ姉にそう言うと、ぱあっと表情がたんぽぽのように明るくなり、自慢げに微笑んでいた。 「でしょでしょ、だからもう絶対こんな怪我しないって約束してね」 「わかってるよ。わかってるさアキ姉」 アキ姉はぼくの手を握ってぶんぶんと振り、笑ってる。さっきまでいた暗く、痛みが支配する暴力の世界にいたのが嘘のように思える。 「やっと起きたのか兄貴」 ぼくとアキ姉がそうしていると、台所から龍之介がやってきた。龍之介はぼくたちとはまた別の寮に住んでいるのだが、ここにいるということは、龍之介がここまでぼくを運んできてくれたのだろう。龍之介は勝手に冷蔵庫からジュースを取り出しがぶ飲みしていて、顔には酷い青あざができている。 「まったく兄貴をここまで運ぶのには骨が折れたぜ。俺はどれだけ痛めつけられても気絶できないからいつも兄貴の世話をしなきゃならねーし」 龍之介は頭をがしがしと掻きながら座布団を持ってきて、ぼくたちの前に胡坐をかいて座っていた。 「あのなあ。ぼくはお前の頼みを聞いてこんな目に合ったんだぞ。もっといたわってくれよ」 「いいじゃねーか。助けるの間に合ったんだし。腕も無事だったろ」 そう言われぼくは自分の肩に手を置く。まだ腕が軋むが、しばらくすれば痛みもおさまるだろう。ぼくの腕を容赦なく折ろうとしたレインコートの男は誰なんだ。 「龍くん顔大丈夫? すごく顔腫れてるけど……病院行く?」 アキ姉は龍之介の腫れあがった顔を見て心配そうに撫でている。異能の力で殴られた龍之介の方が実際の怪我の度合いが酷い。龍之介は小さいビニール袋に氷水を入れて、それを顔に当てて冷やしていた。 「大丈夫だってばアキ姉。俺は痛みを感じないわけじゃない、理解できないだけだ。だから自分の身体の調子はわかるって。こうやって冷やしておけば平気だって」 へへへと龍之介は笑ってるが、まだ子供の頃は痛みが理解できないせいでそうとう無茶をしてきた。知らないうちに骨が折れていたり、病気に気付かずに死にかけていたことも一度や二度じゃない。今はもう痛いということが自分にとってどういう感覚なのか研究し、誰よりも自分の身体に対して敏感になっていた。こうして怪我の治療をよく自分でやっている。 それでもアキ姉は心配そうにその腫れあがった顔を見つめていた。 「でもでも、顔がアンパンマンみたいになってるよ」 「ひでえ! まあ確かにこんな顔じゃせっかくのハンサム顔が台無しだな。また明日もデートだってのに」 「もう、龍くんったら何人の女の子とつきあってるの? 毎日違う人とデートしてるじゃない!」 「いいじゃん。こうやって色んな女の子と楽しく過ごせるのは学生のうちだけだし。それに告白してくるのは向こうのほうからだぜ」 いつも女の子を泣かしている龍之介にアキ姉はぷんすかと怒っていた。たしかに龍之介は女関係にだらしなく、過保護なアキ姉にとっては心配の種なんだろう。同じ兄弟だというのにぼくのほうはまったくそういったこととは無縁なんだけど。 「もう龍くんなんて知らない。龍くんがこんなちっちゃいときは『お姉たんと結婚するんだ』って言って、幼稚園の女の子たちを追い払ってたのにぃ。お姉ちゃん悲しい……」 アキ姉はさめざめと泣きながらぼくの背中に隠れてしまった。 「よくそんな子供の頃のこと覚えてるな。なんか恥ずかしいや。いいじゃん、アキ姉には兄貴がいるしよ」 「そうよ、中也くんはわたしとずっと一緒にいてくれるもんね。龍くんみたいな女たらしでもないし、賢治お兄ちゃんみたいにどこかへ行ったりしないよね」 アキ姉はうっとりとした表情でぼくの腕に絡まってきた。こんな顔をされたらぼくはもう何も言えなくなってしまう。実の姉とはいえ、顔が熱くなり、また傷が痛みだしてきてしまった。 「そ、そんなことより龍之介。ぼくたちを襲ったレインコートの男は誰だったんだろう。『野村桃子から手を引け』って脅していたけど……」 ぼくはアキ姉の甘い吐息から気を紛らわせるように龍之介に話題を振った。実際今重要なのはそのことだろう。龍之介も真剣な表情になり、少しだけ考え間を置き、口を開いた。 「俺たちを襲ったあいつはまず間違いなく桃子ちゃんのストーカーだろうな」 「やっぱり……そうだよな……」 野村さんに関してぼくたちが襲われる理由はそれしかない。ならあのレインコートの人物がそのストーカーだったのだろう。あのときこそがストーカーを捕まえるチャンスだったのだけど、やはりぼくたちのような無力な人間では異能者を直接相手にするのは無理がある。 「だけどなんでぼくたちのことを知られてたのかな。それにまるで待ち伏せしてるみたいだった」 「さあね。でも俺たちの情報がストーカーに筒抜けなのは確かみたいだ」 「まいったね。野村さん大丈夫かな。あんなのがストーキングしてるなんて、今夜も危ないんじゃ……。いや、確か野村さんのところに彼氏が来るって言ってたな。なら今日のところは大丈夫かなあ」 「ああそうだ兄貴。その彼氏のことは俺も聞き込みをしてて聞いたんだよ。三年の浅木《あさぎ》昭雄《あきお》。クラスでも評判のいい好男子だと。俺は実際に見てないけど、桃子ちゃんとはいつもいちゃいちゃしてるって話だ。羨ましいね!」 「ねえ、何の話をしてるの?」 ぼくと龍之介が“部活”の話をしていると、アキ姉が不思議そうな顔で尋ねてきた。 「ストーカーってなんのドラマの話? それとも映画? 小説?」 無邪気な瞳でぼくたちを見つめ微笑んでいる。 ぼくと龍之介はそんなアキ姉を見て少しだけ顔が暗くなる。 アキ姉はストーカーという存在をフィクションの中にしか存在しないと思っている。いや、アキ姉はこの世界には悪人なんていない、悪い事は全部テレビの中、本の中の出来事だと思っているのだ。 ぼくが感情を理解できないように。 龍之介が痛みを理解できないように。 アキ姉は人の『悪意』を理解できない。 戦争や悲惨な事件があってそれをニュースで見ても、ドラマかなにかだとしか思っておらず恐らくぼくたちが怪我したことも『転んだ』程度にしか考えていない。どうみても暴力を受けた痕なのに、加害者の存在を考えない。人が人を傷つけることが理解できないのだ。 それは子供のころからずっとそうだった。 そんなアキ姉は当然周りの空気を読むことができず、学園に来る前の小学生の頃はよく他の生徒たちからの嫌がらせを受けていた。靴に画びょうを入れられたり、教科書を隠されるなんて日常茶飯事だった。だけどアキ姉はその生徒たちの『悪意』に気付かない。『教科書はきっと妖精さんが持って行っちゃったのね』なんて楽しそうに笑っていた。 イジメに気付いた賢治兄ちゃんと龍之介は、アキ姉のクラスメイト全員に対して報復を果たしていた。一人一人追い詰め、不登校になった子供や、家が半焼した子供もいたらしい。『怒り』がわからないぼくはその報復には参加しなかったのだけれど、それでもイジメを受けてもそれに気付けないアキ姉を見ると胸が痛んだ。 兄弟の残りの四人が、一人の欠けた部分を補え。そう母さんは言っていた。 だからぼくたちはアキ姉に降りかかる悪意の総てを遮断するのだ。そして、ぼくが怒ったり泣いたりできない代わりに、アキ姉は表情豊かに怒ったり泣いたりしてくれる。 ぼくたちは五人で一人の人間なのだから。誰か一人が欠ければ、ぼくたちはバランスが保てなくなって壊れてしまう。 「“なんでもないよアキ姉。ぼくお腹が空いたよ、何か作ってくれない?”」 ぼくが優しくそうペテンをかけると、アキ姉は「仕方ないなぁ中也くんは。甘えんぼさんなんだから。それじゃあおいしい夜食を作ってあげるね」と言って台所へ向かった。アキ姉がいなくなったので、ぼくは龍之介との話を進める。 「それで龍之介。ほかに何か収穫はあったのか?」 「ああ、そのストーカーなんだけど。桃子ちゃんの周囲を洗っていて怪しい奴を見つけたんだよ」 「怪しい奴?」 龍之介はこくりと頷き、顔に氷水を当てたまま話を進めた。 「二週間前くらいに桃子ちゃんに告白したやつがいるんだよ。そいつは見事にふられて、その後桃子ちゃんは先輩の浅木と付き合い始めたんだ」 「じゃあそのふられた奴ってのが――?」 「そいつがストーカーって線が一番でかい。でもな兄貴。そのふられたやつってのは奥瀬《おくせ》裕也《ゆうや》っていうんだが、その奥瀬と桃子ちゃんの彼氏の浅木は大親友だったらしい」 「なんだって?」 それを聞いて、そのストーカーがなぜあんなにも陰湿に、異常なまでにストーキングしているのかわかった気がする。 親友が自分の好きだった相手と付き合い始めた。その奥瀬という男は、親友と想い人を同時に失くしてしまったのだろう。そんな彼が深い闇を抱えることになっても、なんの不思議もない。 「だから明日、俺はその奥瀬ってやつに会いに行ってみるよ。もしそいつが犯人なら、俺が与えたスタンガンの火傷の痕が顔に残ってるはずだ。それで全部わかる。それにその奥瀬ってやつは身体強化の異能者らしいし、まず間違いなだろうね」 ぼくはさっきの光景を思い出す。あの高圧のスタンガンを受けたのだ、顔に焦げ跡が残っててるはずだ。もし奥瀬が犯人ならそれが決め手になるだろう。 そこからあとは龍之介の真骨頂だ。 相手に圧倒的で絶望的な恐怖と痛みを刻みつけ、心を二度と立ち直れないほどに折ってしまう。『痛み』がわからないから、限界を超えたことを龍之介にはできるのだ。龍之介の拷問を受ければストーカーも大人しくなるだろう。 「はあい中也くん、龍くん。お待たせ。お姉ちゃん特製のもやしたっぷり味噌ラーメンだよ!」 ぼくがぼんやりと考えていると、アキ姉が台所からラーメンを二杯持ってきていた。食欲を刺激する臭いがぼくたちの鼻先をくすぐる。夜食といえばやっぱりラーメンだな。 「うおお、美味そう! ちょうど腹減ってたんだ。サンキュ、アキ姉!」 テーブルに置かれたラーメンに龍之介が手を伸ばそうとすると、アキ姉がそのラーメンをすすり始めた。 「ええ!」 「駄目よ龍くん。これはわたしと中也くんの分なんだからね。龍くんは女の子たちに作ってもらいなさい」 そう言いながらラーメンをずるずると食べていた。ぼくも耐えきれずラーメンに手を伸ばす。龍之介のうらめしそうな目が痛いが無視しよう。 「アキ姉、こんな夜にラーメンなんか食べると太るよ」 「え?」 龍之介の鋭い言葉にぎくりとアキ姉は箸を止めた。そして葛藤するようにラーメンと睨めっこをしている。 「ほら、アキ姉が太らないように俺がそのラーメン食べてやるって。兄貴だって太ったアキ姉を見たくないだろ?」 突然ぼくに話をふってきたので、ぼくは噴き出してしまう。 「い、いや別に。とうかアキ姉は痩せすぎだし少しくらい太ったほうが――」 「だよな兄貴。太った女はいやだよな。わかるぜー」 ぼくの言葉をさえぎり勝手なことを龍之介は言いだした。するとアキ姉は自分のお腹をじっと見つめ、 「じゃあ半分! 半分だけあげるわ!」 半泣きで龍之介にどんぶりを明け渡した。 「やりぃ。じゃあ俺あとで残り汁にごはんぶっこも」 「やめてよ龍くん。行儀悪いよ」 「ばーか。知らないのかアキ姉。ラーメン雑炊はめっちゃ美味いぞ」 そんなことを言いながら、ぼくたちはラーメンを食べ終え、満腹になったアキ姉は眠ってしまった。寝息を立てて幸せそうに眠るアキ姉を起こさないようにきをつけながら布団に転がす。もうぼくも寝た方がいいだろうな。また明日も疲れるだろう。 「お前はどうする龍之介。もう遅いしここに泊ってくか?」 「いや、いいよ。俺は自分の寮に戻るさ。明日用の教科書も用意しなきゃならねーしな。じゃあな兄貴。寝てるアキ姉に変なことするなよ」 「バカ。しないよ。それより帰り道気をつけろよ、もしかしてまたストーカーが襲ってくるかもしれない」 「大丈夫だろ。あの電圧食らったんだ、今頃あいつも家でひーひー言ってるだろうよ。ほんじゃおやすみ」 「おやすみ」 ばたりと玄関のドアが閉じられ、アパートの階段をカンカンと降りる音が聞こえる。ぼくは戸締りをして電気を消し、アキ姉が寝ている隣の布団へ潜り込んだ。 身体を休めようとすると、猛烈に疲労感と痛みがじんわりと襲ってきた。はあ、今日は色々なことがあったな。 ストーカーに野村さん。 さっきまで気絶して寝てたはずなのに、ぼんやりとそのことを考えているうちにぼくは深い眠りに落ちていく。 その日見た夢は母さんじゃなく、なぜか昼に読んだ『泣いた赤鬼』の夢だった。 友を想い、一人寂しく去っていく青鬼。 本当に大切なものを失って、ただ後悔するしかない赤鬼。 彼らが望んだ幸せとはなんだったのだろうか。 4 翌日の放課後、ぼくと龍之介は奥瀬裕也に会いに行った。 直接奥瀬裕也の教室へと向かったのだが、彼の席には誰も座っていない。クラスメイトの話を聞いたところ、今日は風邪で休んだという。 「どう思う龍之介」 「どうもこうも。ズル休みだろ。顔怪我してるわけだし、出て来れないんだろうね。見てみろ兄貴、俺たちの顔見てみんなドン引きだよ」 確かに今日自分のクラスに登校したときも、クラスメイトたちは大騒ぎしていた。適当にペテンを使って誤魔化したけど、顔が腫れてるぼくら二人が並んでいるのはかなり奇妙だろう。 「奥瀬裕也の寮に行こう。直接会いに行くんだ」 「そうだな兄貴。それが一番手っとり早い」 ぼくたちは学園を出て奥瀬裕也のいる寮へと向かう。途中朝顔くんに電話をし、野村さんの様子を見ておいてくれと頼んだ。ストーカーの正体は奥瀬裕也に間違いないだろうが、念のためだ。 『おっけーわかりました中也さん。こっちは任せてください。といっても、今、野村さんは女友達とカフェでお茶してますよ。大丈夫でしょう。ボクは遠くからそれを眺めてるだけです』 連絡を入れるまでもなく、朝顔くんは野村さんの傍にいるようだ。優秀だ。実に優秀だ。うんうん。そういうことにしておこう。 「じゃあ頼んだよ」 『あっ、二人とも気を付けてくださいね。昨日みたいなことにならないように慎重にやってください。追い詰められた獣は何するかわかりませんからね。奥瀬は浅木と一緒のボクシング部に所属していたようですから』 ボクシング部。ぼくはあのレインコートの人物の構えを思い出す。やっぱり奥瀬が犯人である可能性が高いのだろう。 電話が終わるころ、ちょうどぼくたちは奥瀬裕也の寮へとついた。男子寮で、ぼくたちのボロアパートよりマシとはいえ、野村さんたちの寮と比べるといくつかグレードが低い。いかにも体育会系の男子寮といった感じだ。 「“すいません。ぼくたち奥瀬先輩のお見舞いに来たんですけど。入らせてもらっていいですか?”」 ぼくは寮の玄関にいたジャージ姿の中年の管理人にそう尋ねた。ヤクザみたいな怖い顔だが、ぼくがペテンを使ったため、にこりと笑い、「奥瀬のやつは二階の一番右奥の部屋だよ。まあ風邪引いてるらしいから、あんまり長居しないように」と言い、すぐに箒をもって掃除を始めてしまった。 「行こうぜ兄貴」 ぼくたちはそのまま木造の玄関をくぐり、ギシギシと軋む木造の階段を上って行く。すれ違う寮の生徒たちもぼくたちの顔を見てぎょっとしている。まったく、早く治さないとおちおち街も歩けない。 管理人さんに言われたとおりに、ぼくたちは奥瀬裕也の部屋の前に辿りついた。ドアにはきちんと『奥瀬』と書かれたボードが張られているので間違いないだろう。 ぼくは深呼吸してから数回ノックをした。 「あのぉ、奥瀬先輩。いますか? 探偵部の夏目ですけど少しお話したいことがあるのですが」 そう言って返事を待つが、向こうからの応答はない。痺れを切らした短気な龍之介は、どんどんと思い切り扉を叩き始めた。 「おい、いるんだろストーカー野郎! 野村桃子について話があるんだ、開けろ!!」 ついには蹴破ろうと助走をつける始末だった。落ちつけって。 すると、がちゃりと、扉が開かれていった。 「ほ、ほかの寮の生徒に聞こえるからやめてくれよ……」 そんな細い声が聞こえて、扉の顔から覗かせている顔は、どこにも怪我をしていなかった。とろんとした目つきで、顔が赤くマスクをしている。本当に風を引いているみたいだった。 「あ、あなたが奥瀬裕也さん? 本当に?」 「嘘をついてどうするんだよ。俺熱あるんだから騒がないでよ。頭痛いんだから……」 ごほごほと咳をしている彼を見て、これは演技じゃないなとぼくも龍之介も思った。これはどういうことだ。彼があのレインコートの男じゃないのか。 「あ、あの。ぼくたち野村さんのストーカー被害について調べてるんですけど。奥瀬先輩、あなた何か知りませんか?」 ぼくがそう言うと、少しだけ戸惑った様子を見せたあと、「入りなよ。風が映るかもしれないからマスクつけな」と言ってぼくたちを部屋に通してくれた。 中はカーテンが締め切られ薄暗く、雑誌やゴミが散らかっている。座るところを探すのに苦労した。 「まあ適当に座ってくれよ。ジュース飲む? ああ駄目だ。賞味期限一年前のだった……」 ぼくたちは視線を奥瀬先輩の顔に向ける。やはりそこには火傷の痕はない。ぼくは肘で龍之介をつつき、ぼそぼそと小声で話しかける。 「どういうことだ。本当にスタンガンは当たったのか?」 「手ごたえはあったさ。火花がかすっただけでも火傷くらいするはずだ。なのにどこにもない。汚い髭が生えてるだけだな」 奥瀬先輩はぼくたちにお茶を出し、自分はベッドの上へと腰掛けた。そのお茶はなんか変な色なので飲むのはよしておこう。 「それで、きみたち探偵部の人だって? 桃子のストーカーの話しだとか……」 「はい。奥瀬先輩。あなたは野村さんがストーキングされていたことは知ってたんですか?」 「ああ……。知ってるよ……。そうは言っても無言電話とかくらいだって言ってたし、浅木のやつと付き合い始めてもう被害はないだろ?」 「いえ、ぼくたちは彼女の部屋に盗聴器と盗撮カメラを発見しました。それにまるで脅すような写真や手紙が部屋に残されていました」 それを聞いて奥瀬先輩は見を見開き、信じられないといった風に手を震わせている。なんだこの反応は。 「そ、それは本当なのか……」 「はい。ぼくはあなたが野村さんに告白してふられたということを聞きました。それで――」 「それで俺を疑って尋ねてきたわけか。まあ無理もないな」 奥瀬先輩は悲しそうな目で、俯きながらそう言った。物憂げなその瞳からはストーカーのようなあの狂気じみた印象を受けない。どういうことなんだ。奥瀬先輩は迷ったように目を泳がせたが、ゆっくりとその重い口を開き始めた。 「桃子にストーカーがいたのは、俺が桃子に告白する前からだよ。でもその時は無言電話や、たまに後をつけてくる人影を見たというくらいだった。まさかそこまでエスカレートしてるなんて……。俺はてっきり、浅木のやつと付き合い始めてもうストーキング被害はないだろうと思ってたんだが……」 ぶつぶつと、まるで自分に話しかけるように奥瀬先輩は呟いている。龍之介は何か考え込むように顎に手を置き、顔を険しくしていた。 「なあ奥瀬先輩。あんた昨日の夜どこにいた? 俺たちのこの顔を見てくれ、これは昨日そのストーカーっぽい男に襲撃されたんだ。あんたと体格も似てる。本当にあんたはストーカーじゃないのか」 龍之介が怖い顔でそう尋ねると、奥瀬先輩はびくりとしながらも、龍之介の目を睨みながら答える。 「昨日は熱っぽかったから早退して、あとはずっとここで寝込んでたよ。寮の人たちにお粥も作ってもらったりしたし、証人ならいくらでもいる。断じて俺はストーカーじゃない」 奥瀬先輩はガラガラ声でそう断言した。ぼくと龍之介は顔を見合わせ、どうしようかと悩んだ。すると龍之介はすっと立ち上がり、ぴしっと手を腿にそろえ、折れ曲がりそうなまでにぺこりと頭を下げた。 「すいませんでした奥瀬先輩。疑ってすいません。ご協力ありがとうございました」 恐ろしい目をしていた龍之介が、突然頭を下げたので、奥瀬先輩もぎょっとしていた。ぼくも慌てて立ち上がり頭を下げる。 「“すいませんでした。風邪を引いて辛いところを突然訪れて申し訳ありません”」 すると面喰った奥瀬先輩は慌てて「あ、頭下げてくれよ。別にいいよ」と言ってくれて、困ったような顔になっている。きっとこの人は本当にいい人なんだろうとぼくは思えた。 「キミたちが俺を疑うのは無理もない。キミたちだって桃子のことを思ってのことなんだろう」 「俺たちはストーカーから桃子ちゃんを護らないといけない。そのために奥瀬先輩の話が聞きたいんだ」 龍之介は丁寧語を崩し、失礼なタメ口に戻るが、芯の通った力強い声でそう言い、奥瀬先輩も龍之介の真摯な態度に少しだけ気を緩めたようだった。 「……何が聞きたいんだ?」 「浅木先輩のことで。浅木先輩は奥瀬先輩と親友だったんだろう。なぜ桃子ちゃんのことを二人は好きになったんだ?」 それを聞かれ、奥瀬先輩は苦い顔をしながらも、昔のことを思い返しながら言葉を紡いでいった。 「桃子とは、ボクシング部の試合のときに出会ったんだ。試合を見に来てたみたいでね。そこ俺はすぐに惚れちまったよ。可愛かっただろ? でも後で気づいたんだ、なんで桃子が観戦に来たのかを……」 「桃子ちゃんが見に来たのは、浅木先輩の試合だったってことか……?」 龍之介に言い当てられ、奥瀬先輩は心が痛んでいるかのように顔を歪ませている。野村さんのことを本当に好きだったのだろう。でもぼくには失恋の『悲しさ』はわからない。慰めの“言葉《ペテン》”をかけることはできるけど……。 「そうさ。俺の恋は最初から破れてたのさ。桃子は最初から浅木目当てで試合を見に来てたんだ。俺はそれに気付かず、ずっと桃子に想いを寄せていた。彼女と親しくする機会があってよく遊びに出掛けていた俺は、きっと脈があるだろうと思いこんでた。でも告白した俺はあっさりとふられ、その後に告白した浅木と桃子は当然付き合った」 「え? 告白したのは野村さんじゃなくて浅木先輩のほうなんですか?」 思わずぼくは驚き口をはさむ。浅木先輩に惚れている野村さんが告白したのかと思っていた。 「そうだよ。ストーカー被害の相談を受けたのは俺だけじゃない、そこには浅木もいた。それで浅木はストーカーから桃子を護ろうとよく一緒にいることが増えた。そこからだろうな、浅木が桃子に魅かれていったのは。それで相思相愛になった二人に、俺が付け入る隙なんか微塵もないよ」 それを聞き、龍之介は目を瞑り、深く考え込んでいるようだった。 「なるほど、ね」 そしてそう呟くと、奥瀬先輩に頭を下げた。 「ご協力感謝します。おかげでわかったよ。ストーカーの正体が」 ぎらりと目を光らせ、龍之介はそう言った。ぼくも奥瀬先輩も驚き、龍之介の顔を食い入るように見る。 「だ、誰なんだそれは?」 奥瀬先輩は恐る恐る尋ねるが、龍之介は不敵に笑い、 「奥瀬先輩。この真実を、あんたは知らない方がいい。あんたはいい人だ。こんな汚い真実で心を汚す必要なんかない。壊れてるのは、俺たちだけで十分だ」 そう言ってもう一度頭を下げ、部屋から出て行った。ぼくも慌ててその後を追い、龍之介の腕を掴む。 「ま、待てよ。犯人がわかったって誰なんだ?」 「慌てるなよ兄貴。ここからが面白いとこさ」 そう言って龍之介は携帯電話を取り出し、誰かに電話をかけたようだった。 『はーいこちら朝顔です。どうしました龍之介くん。ボクにラブコール送るなんて珍しいじゃないか。愛されるなぁ。』 「うるせえ殺すぞ。そこにまだ桃子ちゃんはいるのか?」 『ああいるよ。今はデパートで買い物してる。ああ野村さん、あんな大胆なパ、パンツを選んでどうするんだ!!』 「うるせえ殺すぞ。いいから桃子ちゃんに話しかけて電話変わってもらえ」 『人使いが荒いなぁ。ドSだなぁ。まあいいや、ちょっと待っててね』 そして少しだけ間を置き、野村さんの細い声が聞こえてきた。 『あ、あの。お電話代わりました野村です。びっくりしました、ずっと朝顔さんが見てたんですね』 「ああ、ボディガード役にね。そいつのことは空気とでも思っててくれ。それより桃子ちゃん。話があるんだ。電話じゃなんだから場所を指定するから朝顔と一緒に来てくれ」 『え? なんの話ですか?』 「犯人がね、わかったんだよ。ストーカーのね」 それを聞き、野村さんは戸惑ったように声を震わせていた。 『だ、誰なんですか……?』 龍之介はまるで悪魔のような微笑みで、とても楽しそうにその言葉を放った。 「犯人は、ストーカーは浅木昭雄。キミの愛しい恋人だ」 解決編へすすむ トップに戻る 作品保管庫に戻る
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やつらは暗い深みで、笑い続けながら待っている。 They wait in darkened depths, laughing eagerly. 時のらせん 時のらせんリマスター 【M TG Wiki】 名前
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ペテン C 水文明 (1) 呪文 ■S・トリガー ■相手は次の効果から1つを選ぶ。 ●自分は自身のクリーチャーを1体選んで持ち主の手札に戻す。 ●相手のクリーチャーを1体選んで持ち主の手札に戻す。 選ぶのは相手でも、自分が発動者です。 つまり、戻す対象をある程度相手に決められるスパイラル・ゲートです。 空打ちだって当然します。 フレーバーテキストに似たような言葉をしゃべっていた奴がいた気が・・ 作者:仙人掌 フレーバーテキスト またまた騙されちゃった♪ 評価 名前 コメント
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_ -─―- _ γ `、 ; : ,ト-----------.i _,.-=ニ二ニニニニニニニ==-.,_ V;メTtyJ} {}TtYtYyIJlLIi メヌ .,_ ヌニニん---こニニ""''// _γ丶ヽ、γ; ヘ へ_、丶`/,ィzzュ,`、Ⅲ,rュzzzzト芍Vミh。/ .{マムム マ \γ/ ̄T;o Oj―入O oV } ̄ ̄.弋/ ム ム。~~マムメ { .ム γ ̄/ ̄弋o Oノ, ---弋O oノT ̄ ̄| ̄丶、 /Y//ヌムj `丶、/^`丶、_i__{,,.。*'"[][][]``ミxっニニニニニニ」---{ん マヌムコ }/ V O / } [],.。*'丶、[]、 { 入 O / V {コココ. \ ハ o/ },.。*o O O o`o丶コ V o { ,.。*V-^ \/~~-Y {-----=-=-------}. `¨¨¨{,...。*' ||||||||||/\|||||||||||||| |||||||||| |||||||||||||| L,,.。*'L__」 `ヽ、 ...」 ハ`ヽ γγ } / ヽ、} .{ j `ヽ j .} t .j i ヽ / t `¨|¨´ / ヽ / t | { ヽ 名前:バラペテン 性別:男 超力戦隊オーレンジャー 一人称:俺様 二人称:お前/あんた 口調:フーテン口調 特撮‐スーパー戦隊シリーズ‐19超力戦隊オーレンジャー.mlt マシン帝国バラノイアのマシン獣の一体。 ペテンの名の通り、人間態で怪しげな水晶玉を売りつけ人間を意識だけ若返らせて無力化させる侵略活動を行う。 敵を撃破すると元通りになるのは戦隊などではお約束だが、改良前の催眠水晶については付属のスイッチが精神の切り替え又は開放を行う。 このため敵に痛打を与えてすらいないAパート終わりでいったん被害者の一部が開放される描写もある。 戦闘手段としては上記とは別の水晶玉に敵対者を閉じ込めることが出来る。 親機と子機のようなシステムになっており、手元の水晶から相手水晶の内部に火や回転を起こし中身を苦しめるが、手元のものが破壊されると相手も解放される。 額の水晶(*1)からの光弾や腹巻きの中央から(*2)火炎放射という攻撃手段も持つ。 額の水晶は改良型催眠用水晶のコントロール機でもあったらしく、巨大化戦で破壊された際に購入家庭の中にある水晶から火花が散るカットが挟まれている。 上にある「よくある怪人撃破による全員解放」の理由が明確なパターンと言えるだろう。 人間態のあるマシン獣の一体でモデルはフーテンの寅次郎。 硬質なスプレー缶を簡単に潰すシーンがあるなど、マシン獣体だけではなく人間態でも戦闘能力は高い。 足跡の深さ=体重が人間ではありえないことが発覚の一因であったり、足から放ったサンダルがブロック塀をへし折ったりと重さが描かれている。 デザイン画の時点ではボンバー・ザ・グレートの仲間を想定していた。 Wikipedia 怪人まとめ アニヲタWiki ニコ百 ピクペ 運用法 AAは一話限りの怪人にしては8枚もある。 中には「それでも町は廻っている」の嵐山歩鳥らしきキャラを映した映像AAもある。 他には全身図のAAが1枚ある。 原典に忠実な特撮怪人以外には「ロックマン」のボスや「熱血最強ゴウザウラー」の機械化帝国の構成員や 歯車王編辺りのバーナー等の機械化獣とかもよい。 「遊戯王」のAA化されていない機械族モンスターカード等の代役も可能。
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「言ったことに責任持つ」=退陣条件で菅首相http //www.jiji.com/jc/c?g=pol_30 k=2011080900897 菅直人首相は9日夜、首相官邸で、特例公債法案の成立など退陣条件に挙げた3案件が実現した場合に辞任するのかと記者団がただしたのに対し、「これまで自分が言ったことについては、きちんと責任を持ちます」と述べた。 3条件整えば首相は「辞める」 民主・岡田幹事長http //sankei.jp.msn.com/politics/news/110809/plc11080917290011-n1.htm 民主党の岡田克也幹事長は9日、民主党の主要政策見直しを確認した民主、自民、公明3党の幹事長会談終了後、菅直人首相が掲げた退陣3条件が整った場合、首相は「辞める」と明言した。 自民党の石原伸晃幹事長は岡田氏に対し、8月中に菅首相を辞任させて後継首相を選出するよう求めた。 この2つのニュースを見比べただけでもわかるとおり、岡田は平然とあからさまなペテンを繰り返している。菅直人は辞めるとは言っていない。 また、菅直人が責任を持つといっているが、そもそも復興に一定のめどが立ったら辞めるなどといっていたが、すでに仮設住宅も立ち始め、関連法案成立に動いており、とっくの昔に復興のめどが立っているにも関わらず、復興のめどが立ったらこれまでの言葉がまるでなかったかのように次々と妄言を繰り返している。 菅直人が首相にしがみついているのは、在日韓国人からの違法献金、北朝鮮工作組織の偽装組織である市民団体への資金提供などの刑事罰に対する逮捕を逃れようとしていること、および全世界に対して放射能をまき散らす原発の大事故を引き起こす決定打となったヘリでの遊覧飛行に対する国際的な追及を逃れるために他ならない。 ペテン師の口先ほど信用していけないものはない。責任を持つという言葉を信用してほしければ今すぐ首相と国会議員を辞任し、己の犯した犯罪に関して包み隠さず白状して、刑罰に服すこと。および今回の放射能テロに対して全世界に責任対して命を賭して罪を償うことを実行してから言わなければならない。
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【種別】 自在法 【初出】 SII巻 【解説】 “徒”の運び屋集団[百鬼夜行]の運転手である“輿隷の御者”パラが使う自在法。 体を構成している黒い翳りをばら撒き、それを取り憑かせた物体を幾十百も操作することができる。基本は取り憑かせたあらゆる乗り物を“燐子”に変えるための術であるが、物質に浸透しての情報収集も可能なようだ。 戦闘(という名の逃走の準備)時には、無数の岩塊に取り付きフレイムヘイズ『儀装の駆り手』カムシンの瓦礫の巨人まがいの岩で出来た大蛇の形にもなった。 【由来・元ネタ】 フィンランドの民族叙事詩「カレワラ」に登場する、森に宿る悪霊、あるいは森そのものの呼び名であるヒーシ(Hiisi)から。 【コメント】 ☆これで取り付いて操作する物が“燐子”になるってソースは?本文からの推測ならアレなんで、コメントアウトしておいた。 ☆↑SII巻p154より「あらゆる物を“燐子”に変化させる技巧者パラ」とあり、実際にバス2台が“燐子”だったという事は作中でも触れられている。しかし“燐子”のはずの『温柔敦厚号』がゼミナに傷付けられた時、パラが痛みを感じている描写がある(p84)。“燐子”を傷つけるどころか爆弾のように使っていたフリアグネや[革正団]のドゥーグにそんな反応が見られない以上、前後の繋がりからもこの自在法が鍵となっている事は明白だろう。 ☆↑“燐子”の性質は固体毎に違う。パラの“燐子”が痛みを伝えるからといって、それが『ヒーシの種』で作ったからとは断定できない。 ☆仮にパラの身体で“燐子”を作ってると仮定しても、その力の名称が『ヒーシの種』っていうか分からんしね。この自在法と“燐子”作りを脳内補完して無理に関連付けるのは早計と言わざるを得ないだろう。 ☆という訳で再びコメント化。納得行かないようなら議論板で相談しましょう。 ☆コメント欄での上記の論議は、XXII巻222ページでFAとなった。 ☆情報収集の自在法は他に[仮装舞踏会]の捜索猟兵ウィネの『知覚の伝染』とロフォカレの『千里眼』があった。 ☆もしハボリムの『熒燎原』と併用されたら大変だっただろうな。 ☆『棺の織手』ティスやノースエアや『儀装の駆り手』カムシンやザムエル・デマンティウスや『理法の裁ち手』ヤマベやピエトロ・モンテベルディやゾフィー・サバリッシュ相手にも使用してほしかったな。 ☆アニメ第3期で登場・使用された。
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解決編をラノで読む 解決編その1へもどる 6 夢を見なかった。 目が覚めたときには白い天井と、泣きながらぼくを見下ろしているアキ姉の顔が見えた。白い壁に白いシーツに白いカーテン。鼻を刺激する清潔な匂い。ここはどうやら病院のようだ。そうか。ぼくはあの後倒れて運ばれてしまったようだ。 「中也くん、目を覚ましたのね。本当によかったわ……」 アキ姉はそう言ってぼくの身体を思い切り抱きしめてくる。涙で顔をくしゃくしゃにしていて、目も真っ赤だった。痛い。痛いよアキ姉。体のあちこちが折れているのに抱きついてくるなって。でもぼくは、そう文句を言う前に、 「ごめんアキ姉。また心配かけて」 自然とそんな言葉が口に出た。それは|嘘の言葉《ペテン》ではなくぽつりと出た本心の言葉。ぼくはアキ姉の頭を撫で、頬に軽くキスをした。するとアキ姉は驚いたように顔を真っ赤にして跳びはねた。 「もう、中也くんずるい! そんなことされたらお姉ちゃん怒れないじゃない!」 「へへ。先手を打ってやったよ。いつものお返しだ」 ぼくは顔を赤くして俯くアキ姉の頭を撫でようと手をシーツから手を出そうとするが、ずきりと激痛が走った。 「駄目だよ中也くん無理しちゃ!」 ぼくの右手の指には包帯が巻かれている。 奥瀬裕也によって切り落とされた人差し指が確かにそこにあった。 「よかったね中也くん。すぐに救急車が来て処置してくれたおかげで指もちゃんとくっつくって」 ぼくも自分の指を見て安心した。指が無ければ食事の時や勉強とのときに困るからね。 「……龍之介は?」 ぼくは大怪我を負っていた龍之介の安否が気になっていた。あれだけの怪我だ。もし死んでしまっていても不思議じゃない。 「龍くんはね、今もまだ集中治療室だって……。でもなんとか一命は取り留めたってお医者様が言ってたからきっと大丈夫よ」 ぼくはそれを聞いて安心する。龍之介のことだ。即死じゃない限りあいつは死なないだろう。ゴキブリ以上に生命力の強い奴だから。 「姉さん。ちょっと喉渇いたから飲み物買って来てくれないか」 「うん。わかった。じゃあ中也くんの好きなおしるこおでんジュース買ってくるね!」 ぼくがそう頼むと、とびきりの笑顔でアキ姉は病室を飛び出て行った。そしてぼくもゆっくりと痛む身体を立ち上がらせ、病室を出ていく。 アキ姉がいると面倒だ。 今のうちに済ましてしまおう。 ぼくはそのへんを歩いていた看護師に浅木先輩《・・・・》の病室を教えてもらい、その病室まで壁に手をつけながら歩いていく。 ぼくより大怪我の浅木先輩も入院しているだろうと踏んだがどうやら正解のようだ。 なんとか浅木先輩の病室へ辿りつき、ノックをする。 「はあい。どうぞ」 すると、中から女の子の声が聞こえてきた。 がらりと引き戸を開けると、虚ろな目でベッドに横になっている浅木先輩と、それを看病していた野村さんがそこにいた。 「あっ、中也さん。大丈夫なんですか?」 「うん。彼よりよっぽど軽傷だよ。それよりちょっといいかな」 「あっ、はい。でもちょっと待って下さい」 野村さんは浅木先輩の折れた両腕に自分の手を重ねていた。そして驚くことにその手は薄く光っている。 これは異能、か。 「治癒能力者《ヒーラー》なのかい、野村さんは」 「はい。傷をちょっと癒す程度ですけど……。こんなのこんな大怪我にはほとんど意味無いものですけど、私にできるのはこれくらいですし……」 それを聞いて足りなかったパズルのピースがそろいぼくは確信《・・》した。誰が青鬼で、誰が赤鬼なのかを……。 「野村さん。ぼくは今起きたばかりだからよくわからないんだけど、奥瀬先輩はどうなったの?」 「はい。今は警察病院にいるみたいですけど、異能犯罪者として裁かれると思います。それにしても今でも信じられないです。まさか奥瀬先輩がストーカーだったなんて……。しかもあっくんをこんな大怪我させて……。二人は親友だったのに……」 野村さんはまた涙を流している。ぼくはそれを見ていられなかった。 「野村さん、浅木先輩は大丈夫?」 「はい。命に別条はないですけど、恐怖と奥瀬先輩に裏切られたことがショックだったみたいで、ずっとこんな調子なんです」 浅木先輩はぼけっと口を開け、どこを見るでもなくずっと目を開いたままだ。そこに光はなく、物悲しさを感じさせる光景だろう。生憎ぼくは同情なんて概念がよくわからないのでかける言葉が見つからないが。 「それに、あっくんはもうこれで完全にプロボクサーの道が断たれてしまいました。もう二度とリングに立てないってお医者さんが……」 両手両足を完璧に折られ、心も閉ざしてしまった浅木先輩を、野村さんは愛おしそうに眺めていた。 「大丈夫だよあっくん。私がいるから。私がずっとそばにいてあげるから」 その瞳は慈愛に溢れ、一生浅木先輩に尽くすことを決意しているように見えた。まるで聖母のように、浅木先輩の頬を優しくその細い指でなぞっている。 ぼくは浅木先輩の傍に近寄り、虚ろな目をしている浅木先輩の耳元に言葉を贈る。 「“ストーカーの正体はあなたの親友の奥瀬裕也でした。ですが安心してください。ストーカーは逮捕され、もうあなたたち二人を邪魔するものはいません。末永く幸せになってください”」 それだけを告げると、ぼくは野村さんにぺこりと頭を下げ、病室を出ていく。 これでいい。 これでハッピーエンド。 これで大団円。 もう事件は終わりだ、解決だ。最高だね。 真実《・・》なんて糞喰らえだ。 ぼくは病院の庭に出て、爽やかな風に触れ、青空を見上げた。とても清々しい気分だ。 ぼくがぼんやりとそうして病院の庭で空を見ていると、突然背中に激しい衝撃が走る。 あまりに突然のことにぼくはそのまま地面を無様に転がっていく。ただでさえ怪我をしているのに、そのせいでさらに体中が痛い。その上誰かがぼくの腹を思い切り蹴り、うめくぼくの顔面をさらに蹴りあげた。 ぼくは血を流し地面に仰向けに寝転がり、ぼくを蹴った人物を見上げる。 その女は魔女のような黒いとんがり帽子に、真っ黒なドレス(いわゆるゴスロリファッションというものだ)を着込んでいる。黒い髪を太い三つ編みにして、大きな隈のある目を厳しく細め、ぼくを見下ろしていた。 厚底のブーツを履いていて、つま先のあたりにぼくの血がこびりついている。 その魔女みたいな女をぼくは知っている。知りすぎているくらいに知っている。 「やあユキ姉。久しぶり」 「ええ、久しぶりね愚弟。相変わらず殺してやりたいくらい可愛い顔をしてるわね」 エピローグ(あるいは回答編という名の蛇足) 夏目《なつめ》雪緒《ゆきお》。 夏目家の長女にして恐るべき魔女。夏目五人兄弟最強の女。 ぼくはユキ姉に引きずられて、無理矢理ベンチの上に座らされた。 ユキ姉は自販機で温かい飲み物を買い、ぼくの隣へと座る。アキ姉と良く似た綺麗な顔立ちをしているが、まったく穏やかさもなく、氷のように冷たい表情をしている。 「ありがとうユキ姉」 そう言ってユキ姉が持ってきたホットコーヒーを手に取ろうとしたが、その手の甲に爪を立てられ、血が出た。 「いてえ!」 「これはあたしのよ。お前の分のわけないじゃない」 澄ました表情のまま、ユキ姉は冷たい風が吹く庭で、一人でコーヒーを飲みほした。 「はあ、温まるわ」 「鬼だなユキ姉。ぼくパジャマのままでくそ寒いんだけど」 「あら、あなた自分で買ったらどうなの」 「財布なんてもってないって……。まあいいや」 ぼくは鼻血を袖で拭い、ユキ姉を見つめる。ユキ姉は普段自分のマンションに引きこもっていて、普段学園にも顔を出さないし、ぼくもユキ姉と直接会うのは半年以上前だ。なのになんでここに? もしかしてぼくや龍之介のお見舞い? いや、それはありえないか。絶対にあり得ないな。 なぜならユキ姉には優しさが欠けているから。 ぼくに感情が理解できないように。 龍之介に痛みが理解できないように。 アキ姉に悪意が理解できないように。 ユキ姉は『優しさ』が理解できない。 ユキ姉もまた、夏目家の呪われた性質を持っているのだ。 ユキ姉は自分にも他人にも絶対的に厳しくする。甘えやぬるま湯を絶対に許さず、幸福という概念すらも否定する。 それが夏目雪緒という存在だった。 「ユキ姉。なんでここに来たんだ。何が目的だ」 ぼくがそう尋ねると、ふっと目を瞑り、真っ赤な唇を動かして答える。 「愚弟の尻を拭いによ」 「なんだって?」 「中也。あんたは甘い。甘すぎるのよ。偽善と言ってもいいわ。いいえ、賢治お兄様の言葉を借りれば、そう、ペテンね」 「――っ」 そう言われ、ぼくは何も言えなくなってしまう。 なぜだかわからないがユキ姉は気付いている。真実に。 「何を言ってるのさユキ姉……」 「誤魔化しても無駄よ。探偵部のあの気持ちの悪い男から話は聞いたわ」 「朝顔くんか。なんで部外者に依頼のことを話しちゃうんだよ……」 ぼくは思わず溜息をついてしまう。口が軽すぎだよ朝顔くん。ユキ姉にそんなことを話したら嬉々として踏み込んでくるんだから。 「あら部外者だなんて心外ね。龍之介に探偵部を作れって言ったのはあたしよ。言わばわたしが探偵部のボスってところね」 「げっ、本当かよ……」 ならぼくたちの行動は全部ユキ姉に筒抜けなのか。いやだなそれ。本当に。 「そ、それで。ぼくの何が偽善だっていうんだよユキ姉。犯人の奥瀬裕也が逮捕されてめでたしめでたしだろ」 「そうね。あんたは嘘は言っていないわ。でも本当のことを言っていない。そうね?」 ぼくはどきりと心臓が高鳴るのを感じた。 「な、なんのことさ」 「ストーカーは、真犯人は|野村桃子自身《・・・・・・》だということをよ」 ユキ姉は淡々と告げた。 ユキ姉もぼくと同じ真実に辿りついていたのだ。 全部なにもかも野村さんの自作自演だということに。 そう、野村さんこそが“赤鬼”だったということに。 「甘いのよあんたは。真実を隠したところでその先に未来はないわ」 「何言ってんだよユキ姉。野村さんがストーカーだなんてありえないだろ。なんでそんなことをしなくちゃいけないんだよ」 それでもぼくは真実から目を背けたくて思わず反論してしまう。無駄だというのに。 「それがあり得るのよ。むしろそうじゃなきゃ辻褄が合わないの」 ユキ姉はぐいっとホットコーヒーをぽいっと投げ捨てて近くにあったゴミ箱に見事に入れ、容赦なく言葉を続ける。 「浅木昭雄が犯人ではなく、奥瀬裕也がもし犯人なら野村桃子の部屋に侵入したり、盗聴器や盗撮カメラを仕込むことは不可能だわ。それが全部野村桃子の自作自演なら納得できるでしょう」 「そ、そんなの何かをして侵入したかもしれないだろう。それにぼくたちを襲って、そして掴まったのは紛れもなく奥瀬裕也だ。それが何よりもの証拠だろ」 「そうね、あなたたちを襲い、浅木昭雄に大怪我を負わせたのは確かに奥瀬裕也でしょう。風邪をひいたふりをしていたのは声を誤魔化すためだし、アリバイがあったと言っていても彼のような身体能力者なら凄まじいスピードで寮と野村桃子の寮を一瞬で移動することくらい容易でしょう」 「そうだね。きっとそうやって奥瀬裕也はぼくたちを襲ったんだ……」 「けど、そこで奥瀬裕也が犯人となると矛盾が出来るわね。そう、龍之介がつけたはずのスタンガンの痕が奥瀬裕也の顔にはなかった」 「……」 「なぜ怪我が消えていたか。そんなのは簡単よ、治癒能力者《ヒーラー》に治してもらったに決まってるわ。ここは常識が通じない双葉学園ですもの。そして、彼の近くにいる治癒能力者は彼女しかいないわね」 「……野村さん」 そう、野村さんが治癒能力者だと知り、ぼくもこの真実に確信が持てたのだ。 |野村さんと奥瀬先輩がグルだということに《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》。 ストーカーの被害はすべて野村さんの狂言で、それを狂言だと悟られないように奥瀬先輩はぼくたちや浅木先輩を襲ったのだ、|野村さんのために《・・・・・・・》! 「恋に臆病だったのは浅木昭雄じゃなくて野村桃子のほうだったのよ。浅木昭雄の気を引くために、正義感の強い彼の気を引くためだけに彼女はストーカーの被害を受けていると嘘をついたのよ。最初はほんの少しの小さな嘘だったのがエスカレートしたのね。野村桃子の思惑通りに浅木昭雄は彼女の力になり、二人は付き合い始めた。でもそんな嘘をついて出来た関係性は長くはもたない。野村桃子は嘘をついた罪悪感もあり、ストーカーの被害がなくなったら浅木昭雄は自分から離れるのではないか。正義感の強い彼は、ストーカーの被害がある限り自分の傍にいてくれるのではないかと思い始めたのね」 その時の野村さんの気持ちはぼくにはわからない。だけどきっとそれは胸を潰されるほどの不安だったのだろう。狂言がエスカレートするほどにまで追い詰められていったのだ。 「疑心暗鬼に駆られた野村桃子は、自分の狂言が浅木昭雄に疑われていると思い込み始めたのよ。いえ、実際に浅木昭雄は疑ってたのかもね。そうして思いつめた彼女はとうとうとんでもないことを始めたの」 「奥瀬……先輩か。なんで奥瀬先輩が協力したのかぼくにはわからない。ユキ姉はそれも知っているのか?」 「知ってる、というよりは想像ね。でもわかるわ。恋する者の気持ちはあんたには解らないでしょうけどね。愛する人のために自分を犠牲にする。そう『泣いた赤鬼』の青鬼のようにね」 確かにぼくは恋愛感情というものが理解できない。だからわからない。ふられた奥瀬先輩がなんで犯罪に手を染めてまで野村さんの狂言に協力したのかを。 「奥瀬裕也も野村桃子の狂言に気付いていたのね。そして野村桃子に協力すると言ったのでしょう。彼女からすれば奥瀬裕也の行動が理解できなかったでしょうけど、それでも彼にすがるしかなかった。そこで彼は彼女に言ったのよ『第三者にストーカーの存在を認めさせるのだ』ってね。そこで奥瀬裕也は野村桃子に探偵部のことを話し、ストーカー退治の依頼を持ちかけた。そして奥瀬裕也があなたたちを襲い、ストーカーの存在を認めさせ、浅木昭雄を信用させようとしていたのよ」 そうだ。だからあのレインコートを着込み、ぼくが野村さんの寮を出るタイミングを知っていたのだ。恐らく野村さんから電話で聞いたのだろう。 「でも問題が起きた。ただ脅して終わるだけだったのに、あんたたちは反撃をした。それが誤算だったのね。そして顔に怪我をして、困った奥瀬裕也は野村桃子に傷を治してもらったわけよ」 小さな火傷程度なら、きっと野村さんの能力でも治すことが出来たんだろう。それこそが奥瀬先輩と野村さんが繋がっている確信になった。 「探偵部のあなたたちは脅しても怖がるどころか余計に首を突っ込んできた。きちんと調査されれば狂言だってバレるのは時間の問題。そう奥瀬裕也は考えたのね。だからもっと決定的にするために浅木昭雄も、あなたたちも、徹底的に壊してしまおうとしたのよ」 奥瀬先輩はどんな気持ちで野村さんの“青鬼”になったんだろう。 愛する人を他人の物にするために、自分が消えても相手を幸せにするために鬼になった奥瀬先輩。その気持ちはぼくにはわからない。だけどきっとそれは全員にとって幸福なことではないはずだ。 でもこの真実を語れば、奥瀬先輩が作った野村さんの幸せは消えてなくなる。 この事件で一番の被害者は浅木先輩だろう。自分を壊した親友と、それを頼んだ恋人に気付かず、その愛を受けて生きていかなければならない。 「それでユキ姉。その想像が真実だとして、ユキ姉はどうするつもりなの。なぜこの病院にきたんだ」 ぼくは嫌な予感がしてユキ姉の顔を覗いた。 そこには恐ろしく冷徹な目をした魔女がいる。総ての幸福を、偽りを許さない、絶対的な厳しさを持った目だ。 「決まってるじゃない。野村桃子と、浅木昭雄にこの真実を話すのよ」 「――!」 「偽りの幸福をあたしは許さない。偽りの言葉をあたしは許さない。偽りの愛をあたしは許さない」 そう呟くユキ姉の言葉は雪のように冷たく、ぼくの背筋を凍らせていく。 「甘えやぬるま湯は徹底的に破壊する。それがあたしの役目だから。野村桃子と浅木昭雄が偽りの幸福に身を任せているのなら、完膚なきまでに叩き伏せる」 「そんな、ユキ姉――」 「だってそうでしょう。真実を知った先にこそ真実の愛があり、真実の幸福がある。それに耐えられない愛なんて最初から存在しなくていいわ」 顔をぼくに近づけ、ユキ姉は冷たくそう言い放った。 確かに偽りで作り上げられた幸福や愛は長く持たないだろう。それでも奥瀬先輩が必死で作り上げた野村さんの幸福を、ユキ姉は壊そうというのだ。 そんなこと、許していいのか。 奥瀬先輩の犠牲も、浅木先輩の怪我も、全部無駄になる。 だけどぼくには何が正しいのかわからない。 ユキ姉が言うこともきっと正しいのだろう。 ぼくにユキ姉を止めることはできない。止める言葉を持たない。 「じゃあまた会いましょう中也。あたしは野村桃子のところへ行くわ」 そうしてユキ姉はベンチから立ち上がり、ゆっくりと病院の中へと入っていった。ぼくはただそれを見送るしかない。 ユキ姉の真実をどう受け取るかは、彼らに任せるしかないのだろう。 「ちゅーやくーん」 遠くからぼくを呼ぶ声が聞こえる。 ユキ姉と入れ違いに、アキ姉がホットコーヒーを持ってぼくのもとまで駆け寄ってきた。ぱたぱたと長い黒髪を風に揺らし、寒そうにコーヒーを自分の頬に当てている。 「もう勝手に動いちゃ駄目じゃない! まだ安静にしてなきゃ!」 アキ姉はぷりぷりと怒りながらぼくの隣に座った。そうしてぼくの手にぎゅっとホットコーヒーを握らせ、 「あったかいね」 と、頬を赤らめてそう言うアキ姉を、少しだけ可愛いと思った。 ほんの少しだけ奥瀬先輩の気持ちがわかったかもしれない。きっとこれが愛おしいということなんだろう。 ぼくはアキ姉の肩を抱き寄せ、身を寄せ合った。 「どうしたの中也くん。さっきから変だよ?」 アキ姉は驚き、赤面していた。ぼくはそれに答えず、しばらくの間そうやってじっとしていた。 するとアキ姉もぼくの肩を抱いて、目を瞑っている。 人の温もりも、ホットコーヒーも、この冷たい空気の中では心地いい。 こうしている間だけ、自分が生きているとぼくは実感できた。 おわり トップに戻る 作品保管庫に戻る