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R-NumberSP 鋼髏(Gang Lou) 【がん・るぅ】 情報 作品名 コードギアス 反逆のルルーシュR2 カテゴリ SIDE KMF 定価 3,150円 受注開始 2011年05月27日(金)16 00 受注締切 2011年08月03日(水)16 00 発送開始 2011年10月26日(水) 商品全高 約90mm 付属品 手首:無し 武器:無し その他:連結パーツ、ディスプレイ用ジョイント 商品画像 機体データ 所属:中華連邦→黒の騎士団 分類:第四世代ナイトメアフレーム相当 開発者:中華連邦 形式番号:TQ-19 全高:5.67t 重量:13.08t パイロット:洪古他 中華連邦の主力機である非人型KMF。 技術力不足の為二足歩行が出来ず、背面部から伸びるランドスピナーで自立と走行機能を補っている。 コックピットハッチが前方を向いており、頭部の代わりに胴体上部にある2本のスリットからセンサーが覗く。 武装は実体弾による在来火器であり、ブリタニア/黒の騎士団陣営の持つエネルギーシールドには全く通用しない。 ブリタニア製KMFに見劣りする性能を補うために数で押す物量作戦を基本としており、一時はランスロットをも追い込んだが、援護に駆け付けたガウェインのハドロン砲で一掃されてしまった。 超合集国建国後はカゴシマ租界攻略戦に参戦し、中華連邦軍艦隊の艦上固定砲台として使われた。 『第2次スーパーロボット大戦Z 破界篇』ではガンダム00の「人類革新連盟」および作中オリジナル組織「WLF」の戦力として登場した。 商品解説 魂ネイション2010展示アイテムの1つ。 中華連邦のマイナーKMFまでもが試作されていたことに驚きの声も聞かれ、注目を集めた。 商店のページや解説では全く触れられていなかったが、内部のコクピットや作業用マニピュレータの展開もしっかりと再現されている。 背面のランドスピナーで鋼髏同士を連結可能なROBOT魂オリジナルギミックがあるが、単品販売なので楽しむには複数体の購入が必須。 おそらくは量産機である本商品を複数体そろえたい人向けの販売促進目的でもあるのだろう(中には8体購入した猛者もいるとか)。 評価点 問題点 不具合情報 股関節の接続パーツの向きが合っていない個体が確認されている。 このパーツは左右で形状が異なっており、左右が入れ替わっているケース以外に両方が同じパーツだったという例も報告された。 前者であれば分解して組み替える、という事もできなくはないが、後者の場合はサポートセンターに送る以外解決方法はない(前者でも地震が無い場合は同様の対処を行った方がいい)。 関連商品 神虎 コメント 名前 コメント
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R-NumberSP νガンダム(サイコフレーム発動Ver.)(ν Gundam Phycho Frame Ignition Ver.) 【にゅーがんだむ(さいこふれーむはつどうばーじょん)】 「解ってるよ!だから、世界に人の心の光を見せなけりゃならないんだろ!」 情報 作品名 機動戦士ガンダム 逆襲のシャア カテゴリ SIDE MS 定価 4,500円 発売日 2013年03月01日(金)~03日(日)(魂フィーチャーズvol.5) 販売受付開始 2013年03月06日(水)16 00 販売受付終了 2013年05月07日(火)23 00 発送開始 2013年05月23日(木) 商品全高 約140mm 付属品 手首:×9(握り手×2、開き手×2、持ち手×2、銃持ち手×2、サザビーコックピット持ち手・右) 武器:ビーム・ライフル、ニュー・ハイパー・バズーカ、ビーム・サーベル、ビーム・サーベル(予備)、フィン・ファンネル×6 その他:シールド、ファンネル用エフェクトパーツ×3、ファンネル用コネクトパーツ一式 商品画像 機体データ 所属:地球連邦軍(ロンド・ベル隊) 分類:ニュータイプ専用汎用試作型モビルスーツ 開発:アナハイム・エレクトロニクス社 形式番号:RX-93 全高:24.2m 重量(本体/全備):27.9t/63.0t パイロット、基礎設計:アムロ・レイ 商品解説 魂フィーチャーズvol.5開催記念商品。 今回の魂フィーチャーズは台湾のみの開催となる為、国内流通は魂ウェブ商店での抽選のみとなる。 評価点 問題点 不具合情報 関連商品 νガンダム νガンダム 拡張フルセット νガンダム フィン・ファンネルセット 法術師ニューガンダム コメント 名前 コメント
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. 【作品名】有機戦士バイオム 【名前】バイオム 【属性】地球人のクローン 【大きさ】中年男性並み 【攻撃力】成人男性の腕に何度も噛みつき骨を露出させるほどのダメージを与える 【防御力】中年男性並み 20分も歩けば息が荒くなる 【素早さ】中年男性並み 【特殊能力】毒痰:淋菌をたっぷり含んだ痰を吐く 敵の生物の目に当たれば風眼になり失明させられる バイオム本人には淋菌に対する免疫がある 【備考】AMR-0という機械生命体が体内で操縦している コックピットは胃袋の上、肺と心臓の間にある 【戦法】取っ組み合いになったらどこでもいいから噛みつく 機会があれば痰を吐いて目潰しもする 35スレ目 参戦 760 :イラストに騙された名無しさん:2011/06/05(日) 21 48 32.23 ID XpFMLa16 バイオムの考察 痰吐く中年男性 ○笈川哲雄 ぎり勝ちでないかな ○デュティユル 成人男性と中年男性でちょい劣るが目潰しや噛みつきで勝ち ○?高須竜児 ほぼ同上 ○?涼宮ハルヒ 身体能力劣るが男性なので体格は上回るか、取っ組み合って噛んで勝ち ×御堂鞠花 毛だらけ、パワーアームで負け ?×高坂京介 身体能力、若さで劣るのでぎりぎり負けか ×佐野康一 ふるぼっこ負け ×姉原聡史郎 身体能力、若さで劣るだろう負け ×岳山剛 角材で殴られて負け この辺は能力に差がなくて妙に難しいな 御堂鞠花>バイオム>涼宮ハルヒ ここらか、もしくは佐野康一の近くか
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目次 - 開ク モーラン・ヴァッカ(Moron Vacca)パーソナル人物 研究分野 戦闘スタイル “ジーニアス(Genius)” 交友 モーラン・ヴァッカ(Moron Vacca) パーソナル 種族 バーチャルキャラクター 職能 量産型キャバリア/悪霊 キャバリア名 “ジーニアス(Genius)” コードネーム “マッド(Mad)” 所属委員会/役職 保健委員/一般 関連企業 Gifted Laboratory 既知設定 【A1】【B1】 人物 自称“狂気の天才科学者”を自称する白髪の男。 その正体は、かつてとあるマッドサイエンティストが己の意識をコピーした電脳体。 性格は自己中心的で、一般生徒たちを“凡夫”と見下す傾向にある。とにかく性格に難がある一方で、才覚がある者や能力に優れる者へのリスペクトは厚い。能力至上主義者。 Gifted Laboratory と呼ぶ非公認の自称研究所を立ち上げ、そこで独自に研究・開発を行っている。開発物などの詳細に関しては該当ページ参照。 研究分野 研究分野は食材や胡散臭い機械、新兵器の開発からプラントの解析、エネルギーインゴットの高効率化運用方法の研究など多岐に渡る。 実際に様々な分野で成果を上げているものの、その研究や実験では頻繁に爆発事故が絶えない。 また医療品、食料品は無断で生徒を(半ば詐欺のような形で)被験者にするなどの問題行動が多発している。 新聞では紙面を賑わせ、風紀委員や公安、生徒会には要注意人物としてマークされているとかなんとか。 あまりにも問題行動が多すぎたため、バーチャルキャラクターという種族でありながら半ば強制的に「監視」の名目で私立新世界学園へ編入。 風紀委員には監視されて毎日のように反省文や始末書を書かされ、生徒会には研究・開発許可を取りけなければならない状態。 戦闘スタイル 量産型キャバリアを改造した専用機“ジーニアス”に機乗して戦う。 自作したトンデモ兵器を次々に繰り出し、奇襲と手数で攻めるのが主。得意分野は機動戦や対拠点戦。 一方で、専用ではない量産型キャバリアを使っているため航空戦(特にドッグファイト)や、消耗戦、持久戦を苦手とする。 “ジーニアス(Genius)” DATA 搭乗者 モーラン(Moron)・ヴァッカ(Vacca) 製造 美聖重工(推定) 形態 改造量産型キャバリア 頭頂高 5m(計測時点) 本体重量 20t(計測時点) 全備重量 50t(計測時点) 動力 エネルギーインゴット 環境適応 陸 B 空 D 水 D 改造に改造を重ねられた量産型キャバリア。 元となる機体は美聖重工製だったのではないかと推測されているが、比較してもその外見の面影は見る影もない有様。 改造・整備・修繕はすべてモーランが行っており、数々の新兵器が取り付けられている。 最も特筆すべき改造点はコックピットの撤去だろう。 バーチャルキャラクターであるモーランはキャバリア本体の電子機器へ直接干渉し、“憑依”する形で機乗するため、不要なコックピットを撤去することで空いたスペースに燃料の増設や新兵器の内蔵を行った。 憑依の都合上、機体へのダメージはモーラン本人への痛覚という形でフィードバックされる。 特殊な加工の施された装甲を採用しており、耐久性が非常に高い。 新兵器の過剰な積載を行う都合上、自重は非常に重い。しかし、動力炉を独自の改造によって出力を向上させており、自重を出力によって無理やり捻じ伏せる形で機動戦を行っている。 高機動、高耐久、高火力と三拍子揃った夢の機体のようであるが、オブリビオンマシンなどと比較すれば精々が中の中か中の下程度の性能でしかない。その上、各種改造によって安全性や信頼性が大きく損なわれているため、常に爆発の危険性を孕んでいる厄介な機体。 交友 二人称 呼び方(印象) アイオライト・セプテンバー アイ公 アリスアイリス・ムーンクレイドル リス公 アレッサ・トラヴィアータ トラ公 イーリス・ヴァイデンフェラー ケチンボ イオリ・カクトゥス イオ公/心の友 イドール・シアンス イド公 火翅・ナナ バネ公 九嶺・ユノハ ツル公 クリームヒルト・クロスクロイツ 広報 クロエ・ミディリィ クロ公 ナイナイナ・スヴェルノスキー イナ公 ベリーム・ジャストロ ジャム公 ユウ・キリヤマ クソメガネ ヨルゲン・エリクソン クマ公 ラスト・バレット バレ公/心の友 犬伏・あかり イヌ公 開条・セサミ セミ公 哭・桃香 モモ公 風祭・ヒュウガ 風公(カゼコウ) 美聖・らふる ミゼ公 南・七七三 ナナ公 八神・沙織 エテ公
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父親と子供 パイロットとキャビンアテンダント テイクオフからランディング いつものフライトのはずだった・・・ しかしそれが悲劇に変わったら・・・ 航空界に刻まれた惨劇を関係者や目撃者の再現で小説で再現 メーデー!2/航空機事故の真実と真相 離陸後まもない、ボーイング767型機に異常が起こりました、 機体は、突然失速し、燃えながら空中分解してしまったのです。 機体の残骸は、バンコクの森林に広がり、生存者は、いませんでした。 なぜ機体は、突然失速したのでしょうか・・・ 航空機事故は、偶然の産物では、ありませんなんらかの連鎖的な出来事の結果です航空機事故は、なぜ起きてしまったのか? その答えは、このメーデー!2/航空機事故の真実と真相に隠されています これは、コックピットボイスレコーダーと目撃証言によって再現された真実のストーリーです 第5話 ~巨大な火炎弾~ the big bomb ~パート1~ 1991年5月26日、ラウダ航空004便は、乗客213人乗員10人の 計223人を乗せ、香港の啓徳空港を離陸しました。 004便は、タイ・バンコクのドンムアン国際空港経由オーストリア・ウィーンの ウィーン国際空港行きの便でした。 機体は、ボーイング767-300ER型機でこの機体は、 ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトと呼ばれていました。 004便は、離陸後、何も問題なく、きれいな青空の中を飛行していました。 しかし離陸25分後・・・悲劇が起きるのです・・・
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MOD情報(For Windows PC) RaceDepartment(マシンスキンや雨効果・明るさ効果やカメラなどのMODが豊富) http //www.racedepartment.com/dlcat-f1-2010-game-89/ [RDDev] Realistic Cameras v1.3 (視点移動タイプのコックピットMOD) Download http //www.racedepartment.com/f1-2010-mods/43235-new-file-added-rddev-realistic-cameras.html Realistic Sun Mod (標準の黄ばんだ画質を変更し、明るさが増す) Download http //community.codemasters.com/forum/f1-2010-game-1316/432285-realistic-sun-mod.html [RDDev] Season 2011 Total Conversion (2011年のマシンモデルに変更) Download http //www.racedepartment.com/f1-2010-mods/55291-download-rddev-season-2011-total-conversion.html ※ テクスチャサイズが大きくとても重いようで、デフォルトだとかなりのスペックを必要とするようです。 MODDING WAY(投稿数は少ないが、こちらもMOD情報サイト) http //downloads.moddingway.com/game/93.html 最近では、日本のスキン制作者さんやMOD開発者さんもいるようです。
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コックソ ◆Bri4XYAdtc 概要 スロ板から流れてきた固定である。 何かとよく固定の名前を騙ることから特にらますから付け狙われている し、付け狙っている 温厚な庵も付け狙っている、決して色目は使ってない、決して。 面識のない固定でも気軽に話せる人見知りの無さは自己板でもナンバーワンであり もんじゃには「秋刀魚OFFしような!」と面識がないにも関わらず あたかも面識があったのかのように振る舞った 更には変装も得意であり堂々とコックソの固定を名乗りながら 「もんじゃが知っているから聞いてみな」と没個性的なカレーを名乗ることから とてつもない何かを感じざるを得ない。 情報 年齢は不詳だが自分を「おちゃん」という おっちゃんでもオッサンでもない「おちゃん」 PCを持っていない、使えもしない 携帯はドコモ 複数端末持ちには嫉妬し自演や潜伏を疑うレスで噛み付く 趣味はパチンコパチスロ、クジ、競馬、たまにニダラン 関東住み(おそらく神奈川) クレクレ厨(狐ポないと死ぬ) 食べ物の話題を好む 成りすまし厨 同じネタを引っ張る(今は死ね!がマイブーム) 女固定のスレまたはそれっぽいスレタイのスレを好んで開いてると思われる とにかく馴れ合いたいのに調子に乗ってすぐ池沼行動に走るため、せっかく受け入れてもらえてもアッサリ嫌われる 故に常駐スレはないというかできない 名言 「専ブラを知らないのか??  ̄- ̄) 彼氏専用ブラジャーの略」 スキル オレオレ?(リンク未作成;;) 騙り?(リンク未作成;;) 所属 スロ板の狂人達?(リンク未作成;;) 交流固定 庵 らます ダーク 魅愚 コメント 名前 コメント コックソの48%は保存料で出来ています。コックソの38%は純金で出来ています。コックソの9%は怨念で出来ています。コックソの3%は汗と涙(化合物)で出来ています。コックソの2%は欲望で出来ています。 - 固定ハンドル名簿へ ふふふ!このページ見てるのは、お前だ!俺には分かるぞ!!!! お知らせ 特にありません^^ ニュースカテゴリ新着
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* 主要幹線道路を我が物顔で走行したスプリガンはショッピングモールを目測で捉えると 住宅街が密集する路地にその巨体を向けた。 脚部のローラーを引っ込め、無骨な爪を展開し民家のブロック塀や電柱をなぎ倒しながら爆進する。 スプリガンが通過した後には土煙が濛々と立ちこめ、切断された電線からは火花が散った。 勢いをつけたスプリガンはそのままショッピングモールの正面玄関に頭から突っ込み 1階天井を機体上部でえぐりとりながら吹き抜けのセンターホールへ向かった。 轟音と土煙と共にやってくるスプリガンには目もくれず センターホール脇にあるコーヒーショップでミラーはコーヒーを立てていた。 センターホール中央に到着した瓦礫とホコリまみれのスプリガンは動きを止め 放熱用蒸気を排出した後、誰も乗っていないコックピットを開放した。 そしてそのまま身を屈め待機モードに移行する。 ミラーはコーヒーをマグカップに入れ終わるとコインを1枚店のレジに置いた。 黒曜石を溶かしたような黒い液体を胃に流し込む。 苦い。しかし力強く、野性味あふれる懐かしい味だった。 「ふむ……やっぱりコーヒーはコスタリカ産に限るな」 カップを持ったままミラーはスプリガンに近付く。 スプリガンのセンサー部分がミラーを捕らえた。 『タダイマ』 「ああ、おかえり」 数分後、スネークはバイクのアクセルを全開にしたままショッピングモールの敷地内に入った。 オタコンの通信によるとスプリガンは既にショッピングモールに着いたのだと言う。 食料品売り場入り口のガラスを突き破りスネークが乗るバイクは建物内に進入する。 そのままスピードを落とさずセンターホールに向かうと嫌でもその巨大なシルエットが目に入る。 「……メタルギア」 スネークはホールに入った所で急ブレーキをかけ、車体で半円を描くとその場で停止した。 蟹の化け物のようなメタルギアの頭部のコックピットには平沢唯がヘッドギアをつけられ すやすや寝息を立てている。しかし妙なのはギターケースごとベルトで固定されていることだった。 「彼女がギターを離そうとはしなかったんでね。相当大切らしい」 声がした方にアサルトライフルを向ける。 「心配するな、彼女には夢を見てもらっている。 一定の脳波を維持するために彼女が食べたいものを食べる夢を、な 食欲中枢の刺激は案外デリケートなんだ」 銃のサイト越しに写った人物を見てスネークが動揺しなかったと言えば嘘になる。 「マスター……ミラー。アンタ、生きていたのか!」 マグカップに入ったコーヒーを飲み干すとミラーはカップをコーヒーショップのガラスケースの上に置いた。 「久しぶりだなスネーク。どうだ?1杯」 各国原産のコーヒー豆が詰まったケースをミラーがコンコンと叩く。 「お前が今回の事件の首謀者か?答えろ!」 スネークが吼える。 「そうだとして、お前はどうする?罪を裁き俺を殺すか?」 「俺の任務は彼女の護衛だ。俺は人殺しじゃない。 死んだと思っていた……何故なんだ!」 「変わっていないな、スネーク」 ミラーはスネークに向かってゆっくりと歩き出す。 「リキッドが欲しかったのはマスターミラー死ではなくマスターミラーとしてお前の行動をつぶさに監視することだった。 俺の死がフェイクかどうかなんてどさほど問題じゃなかったさ。それどころか俺はリキッドに感謝すらしてる」 「何?」 「当時フォックスハウンドのサバイバル教官に所属すると言う事は愛国者に操られるコマになることと同義だった。 気がついたときには俺はシステムの1部だった。 逃げ出そうとしても逃げられない。 お前もその中の1人だった。 ビッグボスを再起不能にし愛国者に対する唯一の抑止力を奪うという大役を演じたんだからな。 リキッドが与えてくれた虚偽の死はお前たちだけじゃなく、愛国者からの開放を意味していた。 俺は……自由を手に入れたんだ」 「愛国者は死んだ!もう武器は必要ない!」 「愛国者が統治した世界は戦争経済という鞘に落ち着いた。 機械が人を殺す狂った世界だ。 スネーク、平和とは何だ? 大国が世界を統治する事か? 第二の愛国者が、AIが世界を統治する事か? 小国大国が入り乱れて戦争する事か? 核を撃ち合って人類が滅ぶ事か? 愛国者がいなくなった今、この世界には抑止力が必要なんだ。 統治じゃない、互いの力が均衡するバランスの取れた世界だ。 そしてそれはフェアでなければならない。 国同士の利権争いや宗教や思想、歴史に縛られない抑止力。 今世界は新たな形を成そうとしている。俺たちは何も無いその土壌に新しい法を根づかせる! その為には力が必要だ、大国に匹敵するだけの力が!!」 「お前たちがそんな力を持つなんて事は不可能だ。そんな絵空事が通用するほど世界はヤワじゃない」ミラーの足がぴたりと止まる。 スネークが向ける銃口の目の先だ。 「確かにリスクは高い、ピースが噛み合うかも分からない。けれど隊を危険に晒す、それだけの価値はある」 ミラーは手を差し出す。 「新しい時代を作ろうスネーク。俺達にはそれが可能だ」 「俺はお前たちに加担するつもりは無い!」 「そうか……残念……だっ!」 ミラーはスネークが構えたM4を一瞬で絡めとり分解する。 「ちいっ!」 すぐさま拳銃を構えようとするが顎と腕を持たれそのまま床に叩きつけられる。 拳銃が手から離れ床を転がった。 「がはっ!」 仰向けになったスネークの喉元にナイフが突きつけられる。 「ぐっ……愛国者のAIを今手に入れた所で何になる?自衛隊にすぐ制圧されるだけだ!」 「勝算はあるさ」 ミラーはナイフをそっと引っ込めた。 「平沢唯とゼロAIのリンク処理に後5分間時間がある。それまでに俺を倒してみろ。 リンク処理が終われば後は全てプログラムが行ってくれる。スリーピングビューティーは誰にも止められない」 スネークはゆっくりと立ち上がりCQCの構えを取る。 「そうだ、それでいい。 結局俺たちは、戦う事でしか自分の価値を見出せない。 戦う事でしか自分を表現できない。 ならば戦う事でそれを体現すればいい」 スネークがジャブを放つ。 しかしその初弾はあっという間にミラーの両腕に捕まった。 体勢を崩され両足を踏ん張るも、軸足を払われ姿勢を崩される。 そこにミラーの膝が顔面に飛んだ。 「ごふっ」 顔を上げるとミラーの右ストレートが立て続けにスネークの顎を刈った。 ミラーの手を離れ数歩足が下がる。 しかしそれをミラーは見逃さなかず数発拳を打ち込む。 最後の打撃の軌道が甘い事をスネークは見逃さなかった。 手の甲で軌道を逸らし反撃しようとするももう一方の手でそれを受け止められる。 「お前は接近戦において最も合理的な方法で最も素早く相手にダメージを与えようとする」 ぐにゃりとスネークの腕をひねる。 「ぐああああああ!」 「だから軌道を読まれる、応用を利かせろ!」 さらにその腕に力が入る。 「ビッグボスはこんなものじゃ無かったぞ!」 スネークの体が弧を描き再び地面に叩きつけられた。 「これでお前は二度死んだ」 「はぁ…はぁ…いや、まだだ」 背中を軸に体を反転させ両足でミラーの足を挟み体勢を崩す。 四つんばいになったミラーにスネークが素早くチョークスリーパーをかける。 「ぐが……ぐ……」 スネークのこめかみに3度パンチを食らわせるとようやくその拘束から逃れる事が出来た。 しかし上からスネークが全体重をかけ後頭部目掛けてかかとを振り下ろす。 後頭部に凄まじい衝撃を受けた後、ミラーは地面とキスをした。 二人はふらふらと立ち上がる。 そこからは互いに根競べだった。 1発殴っては1発殴られ、また殴っては殴り返す。 ダメージは確実に体に蓄積し次第に拳の重みが落ちてくる。 先に膝をついたのはスネークだった。 ミラーはスネークの顎をサッカーボールのように蹴り上げる。 「がぽっ!」 ミラーはスネークの上に馬乗りになった。 「ぜぇ…ぜぇ…俺の……勝ちだ!」 ミラーは体内に残った力を振り絞り拳を振り下ろす。 「今だ!オタコォォォォン!」 そう叫んだ瞬間スネークのスニーキングスーツから強烈な電撃が流れた。 生命維持に使われるエネルギーを電気エネルギーに変え一気に放電したのだ。 「ぐおおおおおおおお!」 「ぐうううううっ!」 バチバチと花火のような音を立て、二人の体は離れた。 スネークは歯を食いしばり体から細い煙を立てながら立ち上がる。 『システム起動マデ後20秒、作業員ハ離レテクダサイ』 スプリガンからアナウンスが流れる。 スネークはよろよろと走り出した。 ミラーはゆっくりと顔を上げる。 走るスネークの背中が見える。自分も追いかけようとするが体が動かない。 『9、8、7、6……』 スネークがコックピットに手を伸ばす。 非常停止用のボタンが見えた 『5、4、3……』 スネークの足に衝撃が走る。 「何!」 咄嗟に自分の足を見ると強化外骨格をまとった兵士の1人がスネークの足にしがみつきタックルを放ったのだ。 『2、1……システム起動。T・J、A・L、T・R二アクセス開始』 コックピットが閉まりメタルギアの駆動音が唸る。 スネークにタックルをかました兵士はスネークと共にタイルの上に叩きつけられた。 「ぐはっ……ぜぇ……良く、やった……よく、彼女を守ってくれた……礼を言う」 ミラーはゆっくりと立ち上がる。 その兵士は物資搬入口でミラーに敬礼した兵士だった。 スネークは力を使いすぎたのか小さく息をしつつもうつ伏せのままだった。 「大丈夫ですか!?司令!」 兵士はミラーに自分の肩を貸す。 「俺もまだまだ青さが抜けて…ぐふっ……いないな。後は……スプリガンと、世界中に散った仲間がやってくれる…… 時代は……俺たちを選んだんだ」 6
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―馬鹿は二種類。馬鹿する奴とさせる奴― 勢いを止めることを知らない日差しが荒野を照らし続けている。 何時の時代も、それだけは変わらなかったはずである。 太陽だけが、常に平等だったはずである。 荒野に二機のACが倒れ込んでいる。 二機の戦闘不能となったACの傍らに、ジル・ドラクロワとジグザグの両者がいた。ジグザグは、荒野に座り込んでジル・ドラクロワを睨み付けているが、そのジル・ドラクロワは無残な姿となった愛機を前に膝をついて頭を抱え肩を振るわせている。38520Auもの金額をかけた装飾が全て台無しとなっているのだから当然と言えば当然であるが、そんなものにそれほどもの金額と時間をかけるのだから必然と言えば必然である。 「そんなに大事なら、美術館にでも飾っておきなさい。兵器は傷つくものよ。特に近接はね」 「……暫し、黙っていてくれない? エリー。私の芸術が……」 「……だから、戦闘兵器を意味なく飾ってどうするのよ」 エリザベートがラファールとは逆に非常にシンプルな塗装だけ施されたファントム・ウィンチから降りながらあきれたように言った。本当に大事なら、何故戦闘で使うのかという矛盾があるのだが、それもまた彼の美学であろうか。 「それで、いつまでそうしているの? 相打ちよ。さらに予定が狂ったけど、どうしてくれるの? 積荷は半分だけ置いていくって事で手は打とうと思うけど」 「……それもそうか。そうだな……まずは彼の健闘をたたえなくては」 両足を引きずるように、ジル・ドラクロワがジグザグのいる方向に向かっていくが、途中で立ち止まり。 「すまない。勝利を捧げられなかった」 エリザベートの顔も見ずに、落ち込んだ声での謝罪であった。しかし、彼女としては殊勝なところもあると認めるわけではなく、そう思うなら最初から予定を狂わせないで欲しいと切に願うわけである。 ジグザグの前にジル・ドラクロワが立った。ジグザグの周りには、ノーブル・スカッドの何人かが機体から降りて様子を見ていたようだが、これといって負傷はないようだ。ただ、何も言わず、非常に鋭い眼光でジル・ドラクロワを睨み付けている。 エリザベートは、ジグザグの素顔を初めて見たが、雰囲気からして当然のことながら素人ではない。 「良い試合だった。ブレードさばきはもとより、あれほど変化自在に動く相手は初めてだった。大きく重心をずらして、さらに緩急を大きくつけるとは興味深い移動技術だ」 そう言って、ジル・ドラクロワが手を差し出す。だが、ジグザグは、ジル・ドラクロワを睨み付けていた目を伏した。長髪が彼の表情を隠す。 「……互いに残念な結果だったが、良い手合わせだった。私は、まだ出場権をもっていないが、いずれアリーナで再び戦いたいと思う。互いにリベンジといこうじゃないか? その時には、美学王として、さらに機体の美しさに磨きをかけておこう」 エリザベート及びノーブル・スカッド一同としてはそこは腕を磨いて欲しいところであるが、綺麗にまとまりかけているようなので何も言わない。ノーブル・スカッドの中には、美しい戦いを見たといった様子で涙ぐんでいる者もいる。いや、その中にはジグザグの雇い主のミグラントまで混じっている。親方と呼ばれている男など、腕を組んでしきりに頷いている。 「……」 「どうか手を差し出して欲しい」 黙り込み、俯いているジグザグは腰に手を伸ばす。武器か何かでも取り出すのかと思ったが、短い棒状のものだ。ジグザグは片手を振ると棒は伸びていく。特殊警棒かと場の何人かが身構えるが、ジグザグはそれを地面に立てて、俯いたまま立ち上がった。ただの折りたたみ式の杖だった。ジル・ドラクロワはその様子にやや戸惑ったようだが、それでも互いの健闘を称える悪手を求め、右手を差し出す。が、ジグザグは杖でその右手をゆっくりと振り払った。 「幾ら何でも、あきらめが悪いわ。潔くないわよ」 思わず、エリザベートが口を挟む。その手を拒むということは、下手すると美学を第一の行動指針としているノーブル・スカッドを丸ごと敵にすることになる。一体、何故彼は機体を失ったというのに抵抗するのか。 「そうじゃねぇんだ。エリー」 俯いたままジグザグが、怒りが混じった声色で言う。 「……なんであんたにまでエリーって呼ばれるのよ」 「エリー、黙っていてくれ。彼の相手は私だ」 「ジル。あんたも、いい加減にエリーって呼ばないでくれる? それで呼ばれるの嫌だっていってるでしょ」 エリザベートの苦情を無視するように、ジル・ドラクロワは無残な愛機を見つめるよりも厳しくジグザグを睨む。 「……君とはわかり合えるのではないかと思っていた。刃で語り合えたと思っていたが、どういうことだ? 」 「どういうこともなにもあるかバカヤロウ! 五月蠅い! そっちから勝負しかけてきたんだろうが! 勝手に引き分けにするんじゃねーよ! 」 「あまりしつこいのは美しくないと思うのだが。すで、互いの機体は動かない。だから、勝負は次に」 「バカヤロウ。勝負はまだついてねぇだろうが! お互い、生身が残っているだろうが! 第二ラウンドだバカヤロウ! 一騎打ちだのバカヤロウな事言い出したんだ! 最後までバカやるぞバカヤロウ! 」 一同が黙り込んだ。発言が斜め上だった。 ただ、それだけで荒野にさらなる沈黙を作り出した。が、数秒後、予想外の展開に盛り上がったのか、各々から歓声があがった。もちろん、その各々にエリザベートは含まれていない。彼女は頭痛で気が遠くなりそうになっていたのだから。 ☆ 偶然にも、たぐいまれな偶然にも当時現場に居合わせたエルヴィーネ嬢(仮名 35歳)は当時の出来事について、遠い目をしながら次のように語る。 ―あの場面での発言ですが、どう思われました? ― 「あそこで綺麗に終わればいいのに、なんでって思いました。あそこで終わるなら、まだわかると思います。でも、馬鹿って、想像以上に斜め上だから馬鹿なのでしょうか。あと、匿名希望なんだから年齢まで掲載しないでくれない? 」 APC所属ガブリエル・ピーターズ箸『ミグラント珍事件簿パート4』より一部抜粋 ☆ 「……生身とは言うが、見たところ脚が悪いのでは? それでは公平な勝負と言えるのか? 」 ジル・ドラクロワからつい美学を怪我されたと思えての怒りは消えたが、杖をつく男の左足を差しながら言う。ハンディを受けて、このまま勝ってしまえば自分の美学が許さない。彼は常に美学を貫く。なぜなら(自称)美学王だから。誰にも理解できなくても、それが美学だから。王は孤独である。 「一騎打ちだの言い出すあんたは頭が悪いだろうがバカヤロウ! それでイーブンだバカヤロウ。この美学バカ」 それはお互いだから、全くイーブンになっていないだろうと幾人かが思ったが、口にしない。 「ふむ、美学バカか。褒め言葉として受け取ろう」 受け取るなそんなもの。 「ならば、互いの魂をぶつけ合い、いざ、勝負といこう! 」 「おう。来いよ来いよバカヤロウ! 」 というわけで、第二ラウンドである。対戦者同士はヘルメットを脱ぎ捨てている。ジグザグは長い髪を紐で縛って、両手で構えており、見たところ軍隊格闘術と思われる。対するジルはボクシングスタイルだ。二人を取り囲むようにノーブル・スカッドとミグラント達が観客となっていて、荒野が即席のリングとなっていた。ラファールの残骸にチョークでなにやら書き出し、賭をしている者まで出始めている。 「……もう勝手にして」 今日はもう、何度口にしたか判らない言葉を口にし、エリザベートは力無くゴングを鳴らす。当然、本物のゴングなど無いので、適当に拾ってきた鉄切れでラファールの脚部シールドを叩いて鳴らしたのだが。 ジル・ドラクロワが一気に駆けてストレートを放つが、ジグザグはそれを手の平で交わして流れるような動作で肘撃ちを放つ。みぞおちに入るまでに、ジルが腕でガードし、小さくジャブを撃ち出す。が、再び手の平で拳を流してから、両手で地面を掴み、両足からの蹴りがジルに飛んでくる。打撃と言うよりは、鞭のようにしなるような蹴りであり、ジルの身体を掴もうとする動きだ。もし捕まれば、倒されて関節技が決ったが、辛うじて交わして体勢を立て直す。 ACでの近接戦を行う者達の中には、参考にするために格闘技を学ぶ者達がなかにはいるという。当然、ACでの戦闘に現実の人間が人間相手に使う格闘術がそのまま流用できるわけではないのだが。逆に、一種のトレーニングとして、ACの動きを格闘技の動きとするようなこともあるという。 そんなことを思い出しながら、エリザベートは両者の戦いを眺めていた。荒野の照り返しは激しく、砂まみれの風が全身を埃まみれにしていく。既に、否、相当前に状況のコントロールを諦めたエリザベートとして、早々に帰りたい気持ちしかない。 ジル・ドラクロワが軽やかなフットワークから鋭いパンチを繰り出しては、ジグザグは、ガードしつつカウンターとして拳や蹴りを自在に繰り出す。先ほどのAC戦とは攻めと守りが逆になっているような戦い方である。応酬が続く中、ジル・ドラクロワの拳がジグザグの顔面へと突き刺さる。ジグザグが、よろけたと思えた瞬間に、両手でジル・ドラクロワの頭を抑えて、ボディに膝蹴りがヒットした。両者よろめきながら距離を離していく。 「ったく、いってーなバカヤロウ! 」 「けほっ……けほっ、これでこそ全力で挑まなくては失礼というものだ」 頬をさすりながらジグザグが吠え、咳き込みながらジル・ドラクロワが再び構える。 それでも動きの鋭さは増しながら、応酬が再開される。 互いの打撃がより直線的になり、華麗さは失い、より直接的な暴力へ変質していく。そして、なにやら互いに怒号が飛び交い始めていく。 「ったく、カラーリングにそんな金使うバカヤロウなんざ初めて見たぞ! 」 と言いながらのシャイニング・ウィザードが放たれたと思えば。 「私の芸術品を馬鹿にすることだけは許さない! 」 とストレートナックルが返される。 「私の美学への愛は誰にも譲れない! そう、あの人に伝え、自分のものにしたい気持ちと同じく! 」 とローキックが炸裂し。 「何の話か知るかバカヤロウ! あとお袋が自分のものにしたいなら恋! LIKE! 自分の全てを捧げてもいい気持ちが愛! LOVE! って言われているんだよ! 親父も一緒に何か言っていたが、どうでもいいから覚えてない! 」 とブラジリアン・ハイキックが炸裂する。 「それはともかく! 」 「カラーリングにバカヤロウなことしているんじゃねーよ! そういうのをな、恋愛で例えるぞバカヤロウ! 3ヶ月間アプローチし続けて、ピザが有名なイタリアンに連れて行って、ファンキーな会話とファンタスティックな会計が終わった後に、じゃあ今日はこれでね。ごちそうさま、お休みなさいだったら納得できるわけねーだろ! ファンタジーな夜で終わりってどういうことだバカヤロウ! 」 例えが全く例えになっていないまま、キャラメル・クラッチをジル・ドラクロワに仕掛け。ジル・ドラクロワは強引にそれに耐える。タップは美学が許さない。 「なんだと? 」 「はぁ? 」 「なんだと! 」 「はぁ!? 」 「二人きりで食事できただけ十分幸せじゃないか! 決して有名な店でなくても構わない、料理が普通でも構わない、二人だけで過ごすことができるだけで幸せだ! 」 「どういうことだ、バカヤロウ! お前の頭の中はバラが咲き乱れているのか! 」 「バラならば、幾らでも咲き乱れている。なぜなら、私は美学王! 」 と強引にキャラメル・クラッチから逃れる。 「この天然記念物保護区脳内バカヤロウ! 」 とギャラリーの半数が同意、半数が異を唱えるような恋愛雑談が混じる。さらに応酬は続き。 「バカヤロウ! 」 と言いながらのシャイニングスープレックスを仕掛けようとし、 「美学! 」 と叫びながらのジャンピング・ツームストン・パイルドライバーを仕掛けようとする。 両者のパイロットスーツは砂埃と技の応酬でボロボロに汚れていく。 不毛な意地の張り合いは、日が暮れるまで続いてしまった。 そして、たぐいまれな偶然にも当時現場を目撃したエルヴィーネ嬢嬢(仮名 35歳)は次のように語っている。 ―勝負はどうなったのですか?― 「勝負がどちらがどうなんてどうでもいいわ……クロスカウンターから引き分けになったみたい。漫画みたいな結末ね」 ―では、結局どのような決着を?― 「襲撃を受けたミグラント側が、良いものを見せて貰ったからと物資の半分を置いていきましたね。どのみち、傭兵のACを回収していく必要があるから気にするなと。方や競争のためにせこい襲撃を依頼し、方や、試合見物料代わりに物資を置いていく様子を見て、器が違うように思えました―」 ―そうですか。では、最後に珍事件の感想を頂いても宜しいですか?― 「好きなように生きて、好きなように死ぬって言ってもさ、限度ってもんがあるでしょ……」 ―なるほど。インタビューを受けて下さり、ありがとうございました― APC所属ガブリエル・ピーターズ箸『ミグラント珍事件簿パート4』より一部抜粋 ☆ 「というわけでだ。ビジョップをC-2」 顔に三枚ほど絆創膏を貼ったジグザグが、ノートPCを見ながら今回受けた依頼のあらすじを語った。PCには、放送中の昼ドラが映っている。場所は蜥蜴重工のガレージであり、彼はオーガクローの赤く塗られた肩関節に座っていた。 「全然、意味がわからないですねねー……ルークをB-3へ」 オープンになっているコックピットの中から女性の声が返ってくる。 「ふーむ。そう来たか……あ、やられた? おいおい、あんたチェスのチャンピオンか何かか? 軍に時場所選ばず老若男女構わずにセクハラするクロード・デュバルつーおっさんが強かったが、それ以上だぞ」 そう言って誰も見ていないのに、本日何度目かのキングを倒す真似をする。そもそも、盤を使わないチェスだ。盤は二人の頭の中にある。 「さーて、どうだったでしょうかね? それにしても、クロード・デュバルって女性でもありそうな名前って感じですね? 」 コックピットから作業服をきた整備員、キサラギが顔を出す。 「おう、そうもそうだな」 バンガードのクロード・デュバルはれっきとした女性であるが、れっきとしたおっさんであることも間違いないので、彼は何一つとして訂正する気がない。 「さーて、おにいさん、調整してみましたから、試してみてください」 「おう」 とジグザグがPCを持ったまま器用に脚だけで立ち上がって、コックピットへと入る。キサラギは早々にコックピットから出ており、コックピットをのぞき込むようにコアに座っている。 「ん? あんたのほうが年上じゃね? 」 「早く試してくださいねー」 流されて、色々と突っ込むところはあるのだが、母親が女性は自分が思った年齢のマイナス5程度で扱っておけば人生イージーモードよ。というありがたい教えを思い出し黙っておくことにする。母親の教えは、おっさんなら畑のこやしにでもしておきなさいと続き、その発言をしていた母親の背後には簀巻きにされ木に吊された父親の姿があった。彼の幼少期ではよくあることなので、何故そうなってそんな発言をしたのかまでは、逐一覚えていない。 思い出を胸に、ジグザグはコックピットに通常通りに座り込み、左足でフットペダルを踏み込む。足裏が抵抗なくフルスロットまで踏み抜いていた。駐車場に停車している自動車のアクセルなら間違いなく、なにか事故が起きているだろう。 「暖簾に釘、ぬかに腕押しなんとやらと」 「暖簾に穴があいて、手が汚れちゃいますよ」 「逆だって突っ込めバカヤロウ! 」 「はい? 」 「あー、知らんか。東洋の言葉で手応えのないことらしい。俺は田舎のいい年して若いねーちゃんをナンパしまくるファンキーじいさんに教えて貰った」 「やっぱり、軽すぎて、調整ききませんか? 」 と、フットペダルの重さを調整したキサラギが工具を手にもったまま言う。 「疲れてくると、これぐらいが丁度いいかもしれんが……。出撃し始めだといくらなんでも軽すぎるな」 「難儀ですねー」 「ひとまずは、重さは1割増しってところに頼む。そいつで一度出撃してみるからよ」 「わかりましよ。それはそうと、あのレーザーブレード積むんですか? 」 キサラギが、ACの正面にクレーンで吊られたままのレーザーブレード『ULB-13/L UTICA』を工具で差す。彼方此方が焦げ付いて変形しているが、金色の装飾の痕跡がある。 「機体バランスが崩れるから、暫く置いておいてくれ。使うかどうかは後で考える」 「それぐらいならサービスでしますけど、お互いの健闘を称えてムラクモと交換したんですよね? 」 「だが、バランスが崩れるからな」 「そのへんはバカしないんですね」 「バカがバカしかしないと思うなバカヤロウ」 ジグザグは、焦げ付いたレーザーブレードを一瞥してコックピットから出るとキサラギが猫のようにするりと頭からコックピットへと入っていく。座席の上で作業服に包まれた臀部が突き出すような格好になる。手元が動く度に、作業着がピッタリと張り付いて無防備な臀部が左右に振れていく。 「おにいさん。お尻ばっかりみないように」 「見てねぇよバカヤロウ」 事実、レーザーブレードを再び見ていたので濡れ衣である。しかしながら、修理の終わったオーガクローの右腕には物理ブレードが装備されている。機体のコンセプトは軍に居た頃とほぼ同じである。それでも、相違はあり、ようやく慣れてきた機体のバランスを崩す気はない。せいぜい、必要があれば、ショルダーウェポンの兵装を換装するか、今回のミッションのように、適当な射撃兵装でも追加で持って行くかどうかといったところである。とりあえず、今回の戦果は良い試合だったという感想付で、気前の良いミグラントは成功報酬をまるごとくれ、あとは物理ブレードと交換した半分壊れたレーザーブレードである。 「ったく、なかなか、世の中にはバカヤロウばっかりだな。面白くなってきた……いや、軍もバカヤロウばっかりか」 「だから、おにいさん。お尻ばっかりみないでください 」 「なんで今の言葉から尻見ていることになるんだバカヤロウ! 」 とジグザグがキサラギを軽く蹴る。尻を蹴った。彼の暴力の対象は、男女問わない。例え死にかけの老人だろうと、蹴らねばならないときは蹴る。その点は、見事なまでに母親譲りである。ちなみに父親は蹴らねばならないときに蹴られる側である。 「痛っ! ちょっと、セクハラです! 」 頭からコックピットに突っ込んだままのキサラギが若干態とらしく声を挙げる。 「うるせぇバカヤロウ。いい加減にしとかねーと、本当にえげつなくセクハラするぞバカヤロウ! 」 この蜥蜴重工のやたらとチェスの強い整備員しかり、一騎打ちから殴り合いにまで発展した件のミグラントしかり、気前の良い依頼主のミグラントしかり、ミグラントというのも変わった人間揃いのらしい。これもミグラントになったことで知ったこと。軍に居た頃は、政府軍時代もバンガードとなってからも、ミグラントにこれほど生身で接したことがあっただろうか。少なくとも、前線の使い捨てられる駒に過ぎない彼は、ミグラントとまともに会話した覚えはほとんど無い。 知ったミグラント達は、奇妙な人間揃いのようであり、それは彼にとっては興味の対象だ。そういった好奇心を最大の原動力として動く彼にとっては、天職かもしれない。全く持って、何故はじめからミグラントをしていないのかであるが、それは彼が軍のポスターを見て入ってしまった故である。その故の結果は、左足の後遺症だ。良いか悪いかで言えば、悪いのだが、奇妙な邂逅を繰り返す日々に飽きていないのも事実である。 「よし、こうしましょう。チェスに勝ったら触っても良いですが、負けたら触ります」 「あんたがセクハラし放題だバカヤロウ」 そうは言いながらも、ジグザグは頭の中にチェス盤を用意しはじめる。頭の中のテーブルにはカストリカの地図が広げられており、都市中心部に点在する銀行にマーキングされて、模型の車が幾つか転がっている。それらを豪快にはらいのける。テーブルの上にかつての上官にちょっとした悪戯をするために手放したチェスセットが置かれる。 「どうせやることもないからワンモアゲームといくか。まずは――」 過去の選択の違い、現在の選択の違い、結果は全てifでしかない。 ifだからこそ、後悔し、割り切れない。 それでも、彼は例え走れなくなったとしても、まだ歩けるのだから歩んでいく。 はじめの一手の駒を動かした。 次回予告 湯治中にマフィアとギャングのドラッグ抗争に巻き込まれたドクター・スミルノフだったが、事件の証人を守るために、一丁のハンドガンと患者から教わり習得したコマンドサンボを武器に戦うことを決意する。高級車を爆破し、コンビニエンスストアを爆破し、クレーンを爆破し、ガスタンクを爆破し、作業用MTを爆破しながら無効化していくも、狙撃によって身動きがとれなくなってしまう。しかし、狙撃を行ったスナイパーは、幼なじみのヴァネッサであり、両者はそうとは知らずに戦いを繰り広げていく。 第十一話 アンリミテッド・ブレイク Back/Home/Next (リンク切れ)
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■第三十一章 俺とブルーがその場に停止している間、生き残ったジオンの歩兵達はブルーを狙い執拗に攻撃していた。 小銃弾や拳銃弾等の実体弾が命中する、高く澄んだ音が装甲を伝わり俺の耳に届く。 …再起動は不可能だ。 俺の操縦でガタが来たのと、『マリオン』が擬似的にノーダメージの状態で『EXAM』を発動させたため、 OS関係のソフト面は正常に作動しても、駆動系や関節系のハード面、下手をすればフレーム系も一部損傷をしているかもしれない。 蒼き死神、ブルーは今や『燃え尽きた』状態にあるのだ。 俺は苦笑した。 「パイロット失格だな…。これじゃアルフに笑われるな…。いや、号泣してくれるか…?」 『ヤザンさん、上!』 「な…!あの…馬鹿野郎っ!ミデアで来るか?!戦場の只中に?!引き返せ、アルフ!危険だ!」 「…悪いがお断りだ…。オレのブルーとオマエを…見捨てはしない…!…機械化歩兵部隊を投下する。…付近の掃討は彼等の任務だ…。…ヤザン…礼を言うぞ…ブルーの頭部をよく無傷で…こんな状態になっても…。…しばらくそのまま待機してくれ…。…時間は取らせん。オレも降りるからな…」 空を舞うミデアから、次々と落下傘を装備した車両が投下されて行く。 俺はようやく思い出していた。 この部隊が『第11独立機械化部隊』では無く、『第11独立機械化『混成』部隊』である事を。 各種兵科が一通り揃っている部隊なのだ。 …俺は無意識の内に、MSにこだわり過ぎていたのだ。…俺には仲間がいた。 通信が、入る。音声のみだが、味方の名も知らぬ奴等からだった。 俺は回線をフルオープンにした。 「我が部隊の看板エースに傷を付けちゃあ、第11独立機械化混成部隊の名が泣きますからね!少ぉし待ってて下さいや、ユウ中尉殿!すぐに足元のジオンの奴等なんぞ、追っ払ってやりますから!」 「汚ェぞ!ライル!中尉にポーカーの借りが有るのは、手前ェだけじゃ無ぇんだ!このぉ!」 「待ってて下さいね、中尉…。アルフ大尉を乗せて、この私が優雅に空から舞い降りますから…」 「…アンタ、それ、公私混同だよ?ヴァネッサ?変な自己主張しないの!あ、アタシはケイね?」 ブルーのコックピットに続々と通信が入ってくる。 皆、俺の事を、いや、ユウ・カジマの事を思って語りかけて来てくれるのだ。 俺は言いようの無い嫉妬に駆られた。 …俺の一年戦争時代に居た部隊は、こんなに暖かくは無かった。 同じ最前線に配置された部隊でも、天と地ほどの差が有る。 …俺は見捨てられたのに。 『…ヤザンさん…そんな事が…?!酷いっ…!味方なのに…そんな事を…するなんて…!』 「…半分は俺の蒔いた種だ。一人で戦争を戦っているのだと勘違いした、俺の…な…」 ミサイル基地が完全に掃討され、俺とブルーが回収されたのは、アルフの通信よりきっかり2時間後だった。 コックピットの惨状を一目見たアルフは、黙って俺を抱き締め、言った。 『…オマエの…せいではない…』と。 アルフの奴はようやく信じる気になったのだ。 『マリオン』と言う、NTに覚醒『してしまった』少女の存在を。 ■第三十二章 本隊と合流し、俺達は移動命令に従って、転戦しつつある連邦軍基地の研究施設へと向かっていた。 俺は連邦のこの時期のMSの殆どが、パーツ類の統一規格化を進めていた事実に始めて心から感謝した。 回収されたブルーは、首から下だけが塗装が剥げ、銀と蒼の虎縞模様状に傷ついていた。弾痕の水玉模様も痛々しい。 しかし、外観を見た限りでは、ブルーの装甲板に致命的なダメージは見当たらない。 「…見て見るか?…ブルーのアクチュエーターに各部ショックアブソーバーの損傷具合を?」 何時の間にか俺の背後に立ったアルフは、厭味ったらしく手に持った紙資料を渡して言ったものだ。 見ると、丸々一機分を調達出来る程のパーツリストが羅列してあったのだ。 内部のダメージが深刻らしい。 「…パーツの手持ちのストックが危うい。…逆に言えば、一回の補給でここまで良く持たせたものだ…」 「テスト機体は大事に扱え、といつも上の方から言われていたのでな?陸戦型ガンダムのパーツなど本当は無いんだろう?パーツ交換する毎に微妙に反応が鈍くなって来ているのだがな?アルフ?」 「…東南アジア方面で大攻勢が始まるらしく、必要数が確保出来なかった…。オマエは、騙せんな…?」 「量産試験機の陸戦型GMの物だろう?フィットさせるオマエの腕を今回も信じているよ、アルフ…」 「!!…知っていたのか?!人が悪いな…ヤザン…。…コックピットはもう修理した。入っても構わん」 俺はアルフに軽く頷き、再塗装前のブルーのコックピットに歩き出す。 …何故かハッチが、開いていた。 「よお?『モルモット隊』のトップエースさんか?先にお邪魔してるぜ?…いい機体だなぁ、おい?この俺様が惚れ惚れしちまうってのは、そうザラに無いな。ま、いずれは俺のモノに…」 自分の特徴と欠点を思い切り醜悪にして、目の前に戯画(カリカチュア)化されて、これがお前自身だ、とこれ見よがしに突き付けられた者が、どんなやりきれない気分になるか、他に誰か理解できるだろうか? …俺はそいつに皆まで言わせる程、忍耐力は無かった。 大事な『娘』を他の男の手で汚された『父親』のような怒りが、今の『俺』を俺自身で殴り倒させる原動力となった。 …この『ヤザン・ゲーブル曹長』を。 「…転属してきたヤザン・ゲーブル『曹長』だな?相も変わらず、口の聞き方を知らん奴だ…」 「…ふん、俺の知ってるユウ・カジマとは少々勝手が違うようだなぁ?『声』の言う通りだな…」 切れた唇を拭いながら、奴は言った。意外だった。 この当時の『俺』ならば、殴られたならば100倍どころか1000倍以上にして『その場で』返す、単純明快な奴だった筈だ。 決定的な『あの事件』が無かったならば。 睨み据える『上官』の『俺』に、奴は立ち上がり、唇に不敵な嘲笑すら浮かべながら堂々と言った。 「いいか、ユウ・カジマさんヨォ?テメェの中身なんざこの俺様にとっちゃあ、どうでもいい事だが、これだけは言って置く!俺が来たからには、もうデカイ面はさせネェ!俺がのし上がる踏み台位がテメェには丁度お似合いなんだよ!今に撃墜数でも追い抜いてやる!わかったか『中尉殿』…?!」 ギャンギャン吠えるだけの犬は、今までジェリドの馬鹿だけだと思い込んでいた俺の都合の良さを、俺は心から恥じ入り、ジェリドに心の中で謝罪した。 下には下がちゃんと居るものだ。 俺は『俺』の胸倉を掴み思う存分、1時間後にやっと気付いたフィリップとサマナに静止される瞬間まで、満足するまで『修正』を『ヤザン・ゲーブル曹長』に施してやった。 …奴の反撃などかすらせもしないままに。 これが俺達らしい『初対面』の儀式だろう。 俺は心の何処かに引っ掛かるものを感じながら、倒れ伏し、顔を痣だらけにして気絶し、弛緩し切った奴を見下ろし、思う存分笑ってやった。 …敗者の無様な醜態を。 ■第三十三章 「…奴に、酷い事をされなかったか?『マリオン』…?変な事、言われなかったか?!」 ようやくコックピットに入り、ハッチを閉めた俺が放った第一声が、間抜けにもこの一言だった。 あの汚い手でスティックを無遠慮に撫で回した拍子に触られたか、内装を舐め回さん勢いでジロジロ見ている最中に偶然イメージを感じ取られ、目を付けられた等の心配が『奴』には充分有り得たのだ。 『自分を悪く言うのは…何か可笑しいな…。ヤザンさん?同じ『存在』なのに…』 「腐っても『俺』だぞ?性格の悪さと素行の悪さはこの俺が保証書を付けてやっても良い位だ!」 『でも、行為に明確な悪意が無いもの…。あのヤザンさんには。まるで子供の様にはしゃいでた…』 『マリオン』の声が弾んでいた。 子供に子供と言われる『奴』に何故か、微笑ましさを俺は感じた。 俺のそのイメージを読んだ『マリオン』が遂に笑い出す。 俺もそれに釣られて、笑い出してしまった。 そうだ。新米の頃の俺は、MSと言う大きな機械人形を、自分の新しい玩具か何かの様に思っていた。 「子供のまま、大きくなったモンだからな…アイツは…。周りを取り巻く悪意に気付くまで…」 『…悪意に気付かなければ…幸せなまま生きて行けたのに…解ってしまった…。わたしと…同じ…』 「…人間は誰でも何時かは、大人に為る。アイツは遅すぎて、お前は早すぎた。…それだけの差さ」 あの頃の俺はMSと言う機械人形の戦闘能力に夢中になると同時に、のめり込んだ。 MSの戦闘能力を自分の実力だと思い込み、周囲の人間や状況を見ることをすっかり忘れ、傲慢に振舞い過ぎたのだった。 パイロットの鉄則とも言える『整備屋とは喧嘩をするな』と言う不文律さえも、何処吹く風とばかりに暴れ回り、気に入らなければ口論を吹っかけ、喧嘩を売らせては殴り付け、悦に入っていた莫迦だった。 『…卑怯だよ…その人は…。そんなやり方を…恥ずかしいとは思わなかったの?手抜きだなんて…』 「メカニックを甘く見た高いツケを払っただけさ。…恨むなら機体の点検をしなかった俺自身だよ。…生き延びた今は、そうも言えるが…。あの時は…目の前が真っ暗だった。俺は死ぬんだってな?」 或る日、それは起こった。 敵の目前で、俺の自慢のGM・ライトアーマーの右膝に突然、動作不良が発生したのだ。 …起こる筈の無い、整備不良からのアクチュエーターの焼き付きだった。 擱座(カクザ)した俺は、敵のいい的となる運命を免れ得無かった。 …残った僚機は脱出した俺を回収する事無く退却した。 俺は敵の制圧下を命辛々逃げ延び、やっとの事で生を拾ったのだった。 …誰も俺を捜そうと言う奴は、居なかった。 ただの一人も、居なかった。 俺はその時、悟ったのだ。 俺一人では、何も出来ない事に。 『…生きていてくれて…有難う…。ヤザンさん…。生きていたから…わたしは貴方に逢えたの…』 「それが、昨日に奴に起こった出来事の筈なんだが…?馬鹿なままなのは…何故だ?」 『…どうしてあの人が、コックピットに入れたの?…わたしは、多くを…伝え…られ…』 「…マリオン?どうした?おい?何故答えない?!マリォォォォォォンッ!!」 俺は消えていく『マリオン』の気配を、名を呼ぶ事で繋ぎ留めようとでもするかの様に叫んでいた。 そう言えば奴は『コックピット』に『入っていた』。 アルフと、ブルーのパイロットしか知らないコードを入力して。 人見知りをするアルフが、『奴』に教える訳が無い。 消去法を繰り返せば、残る可能性は…!! …ブルーデスティニーのパイロットにして、『蒼い死神』の異名を持つ…『ユウ・カジマ』ただ一人だった。 ■第三十四章 俺は整備ベッドに横たわるブルーのコックピットから、ハッチを開けると同時に転げ出た。…『俺』を捜すためだ。 付近で若い女性メカニックとイイ雰囲気で観談中のサマナを捕まえる。 血相を変えた俺が『奴』の居所を聞くと、サマナは震える声で『フィリップ少尉が頭に水をバケツで掛けて覚醒させたら、微笑んで『有難う』と言って居住区に行った』と答えた。 『女の前でビビるなよ、サマナ?格好悪いな?』と俺が言ってやると、『そこが准尉のカワイイ所なんです!』とお姉ちゃんに詰め寄られたのは俺の予想外だったが。 …その年で早くも女の尻に敷かれるとは…苦労するぞ…サマナ。 「『有難う』か…。あの俺の調子だと、目覚めた途端、水を掛けた奴を殴るぞ…?やはり奴は…??モーリン?」 俺の、いや、ユウ・カジマの私室の前で、モーリン・キタムラ伍長がドアに後ろ手に持たれつつ、俯きながら待っていた。 俺が声をかけると、体をドアから離しゆっくりと顔を上げる。 …幼さを幾分残したその顔からは、何故か生気が消えていた。 細く、華奢な、ペンより重い物を持った事が無いだろうその両手には、鈍く光を反射するゴツイ軍用拳銃が握られていた。 俺の胸へと真直ぐ、銃身を震えさせる事無くその照準はしっかりと保持されていた。 花弁にも似た可憐な唇が、静かに開く。 「…ユウの声で…私の名前を呼ばないでよ…。ヤザン・ゲーブルっ!ユウから出て行って!ユウを返してっ!」 「…何の事だ?…君は疲れて居るんだよ、モーリン…。俺があの下品なヤザンなワケが無いだろう?さあ、銃を…」 「ユウの声で喋らないで!ユウは私に優しかった!ユウは私だけを気遣ってくれた!貴方みたいな人は違うっ!…貴方は出撃の前に言ったっ!『ヤザン・ゲーブル』ってっ!…私のユウを返して…!今すぐ返してよぉっ…」 …だから女は苦手なのだ。情念ですぐ行動する。 俺を撃ったら自分がどうなるかなど、頭から綺麗サッパリ消えているに違いない。 トリガーに指が掛かって、必要以上に緊張している。 この状態で俺が喋ったら、何かの拍子に引いてしまうかも知れない。 …四の五の考えても仕方が無い。 行動有るのみだと俺が意を決したその時、モーリンの背後に『奴』が現れた。 「?ユウ…?ユウなの…?!?違う…!?でも…雰囲気が確かに…!」 「…済まないな…モーリン…。冷えるだろうが、暫く此処で眠っていてくれ」 奴はモーリンの延髄に手刀で軽く一撃を加えると、失神させる。 崩折れる彼女の体を抱き止め、ご丁寧にも壁に持たれ掛けさせた。 『俺』ならば、こんな気の効いた事は絶対しないだろう。 …何よりも放つ雰囲気が別人だった。 ギラギラした俺の物とは違う。 例えるならば、静かな水面、そう、『水鏡』と言えばしっくり来る。 荒れる事無く、ただ物事を『有るがまま』に受け止める。 自らが動く事無く、状況が変わったならば柔軟かつ冷静に対応する。 俺が『剛』なら、奴は差し詰め『柔』だ。 ただ、気に入らないのは、その雰囲気が『俺』の顔では違和感が有り過ぎて、俺自身が気持ち悪くなって来た事だけだろう。 「…お互いに『始めまして』…と言うべきなのか解らんが…。…『ユウ・カジマ』…だな?俺のオマエは?」 「…ルウムで命を粗末にするなと俺を殴った事をもう忘れたのか?都合のいい頭だな、『ヤザン・ゲーブル』…いや、俺はやはり『始めまして』と言うべきだろうな…。今のお前は此処に確かに居る。『ヤザン・ゲーブル』の体にな」 ルウム戦役の激戦の中、幾つもの宇宙戦闘機隊が全滅した。 そんな部隊の中でもただ一人、幸運にも生き延びる奴等が居た。 俺もそうだが、コイツもそうだ。 仇を討つと息巻いたコイツを殴り飛ばし、医務室で監禁してルナツーまで連れ帰った日を、今の今まで記憶の外に追いやっていた事を。 『今は耐えろ。生きて居ればこそ出来る復讐がある』と、悔恨に悩む男に説いた事を。 『連邦にMSを造る!それが俺達の出来る復讐だ』と。 俺は意地の悪い微笑を唇の端に浮かべ、言った。 「もしかして、あの時の『死にたがりのお莫迦さん』か?大人になったモンだな…?お互いに…。…何が可笑しい?」 「…戦争は人を変える。良い方にも、悪い方にもな…。今のお前は確かにこのお前よりも大人だな?猫を被っている様だ…」 奴は俺には真似の出来無い、静かで綺麗な微笑みを浮かべた。 お互いにさぞ気分の悪い事だろう。自分の顔をした他人を見るのは。 ■第三十五章 俺達は俺の、いや『ユウ・カジマ』の私室に入り、ドアをロックした。 まずは目の前の『俺』の状況の確認が最優先事項だった。 俺が椅子に座り、『ユウ』がベッドに座る。…『俺』がこの部隊に入ってから一度も使っていないユウ・カジマの本人のベッドだ。 ユウが言うには、『無茶を止めるのは辛かった』の一言に尽きた。 俺の体に入った『ユウ』は、余りにもこの馬鹿の自我が強すぎたのか、直接体をこうして動かせたのは初めてだと言う。 その間、声のみでこの阿呆をここまで導いてきたのだから、その忍耐力と指導力には敬服してもまだ釣銭が来る。 「こう言うのも難だが…。『俺』が馬鹿でスマン…。よく生かして連れて来てくれた。…貴官に捧げる謝罪と感謝の言葉も無い」 「…目的を遂げる間に、その手段が楽しくなって、道を見失ってしまったのだろう…。半分は、俺の責任でもある…。気にするな」 『MSを造ってくれ。テストパイロットとして計画をぶち上げろ。必要な時間は、必ず俺が創ってやる。だから生きろ!』と。 その場の雰囲気に酔った、熱くてノリ易い若かりし俺はユウに言ったのだ。 …今は恥ずかしくて良く言えた台詞では無いが。 俺はトリアーエズやTINコッド、セイバーフィッシュで一年戦争初期の戦場を駆け抜けた。 宇宙で、地球上で、ジオンのモノアイどもや体を痛め付けるGと果てしなき格闘を繰り広げた。 宇宙空間では無敵のMSだが、HLV内やガウから降下する一瞬の間は無力になる。 その瞬間を狙って、俺達、戦闘機隊は突撃する。 それを逃せば、待っているのは己の死だ。 神経の何処かが麻痺して、生きているうちに好きな事をやりたがる刹那的な性格にも為る、とユウは言った。 「そうして創った時間で、上層部はMS不要論を振りかざした…。俺達は何も出来なかった…」 「まあ、俺の壊れているのは元々だからな?お前の責任じゃあ無い事は俺が保証するよ、ユウ」 俺はジャブローのモグラどもに向けた殺意を押し殺し、わざと明るくユウに言った。 奴を落ち込ませるのが目的では無い。 飽くまで『俺』の情報が俺は欲しいのだ。 ユウ曰く、『操縦技術は凄いが、MSのハードやソフトについての理解が足りない』『機体の事前点検やちょっとした修理に随分とフォローが必要だった』、『周囲が見えていない』との事だ。 流石の俺でも本人の目前で『その絶好の機会をお前がご丁寧にも潰してくれたんだ』との暴言は恐れ多くて、吐けなかった。 「…俺はブルーに乗り、EXAMを拒否して…こうなった。良く我慢しているな…?あんな胡散臭いMSに乗せられて…」 「胡散臭いは無いな?ブルーは優秀なMSで、アルフはイイ奴だ!マリオンは素直だが、ただEXAMが曲者なだけだ!」 「マリオン?…ブルーに初めて乗った時…俺は女の…少女の声を聞いた…。あれが、EXAMの正体なのか?」 俺は思わず『俺』の、ユウの胸倉を掴んでいた。 右腕を振り上げ、拳を作る。瞬時に俺の腸が煮えくり返っていた。 『マリオン』とEXAMを同列に語ったユウを、俺は何故か、許せなかった。 ブルーに乗ってお前は何を感じたんだよと、無性に問い詰めたかった。 …俺は怒っていた。 同じブルーデスティニーのパイロットとしての共感を俺はユウに無意識のうちに求めていたのだろう。 戦闘を強制されている『マリオン』の哀しみを知っているのかと俺は腹の中で叫び、ユウを放した。 「違う!『マリオン』は、『マリオン』なんだ!『EXAM』じゃあ無い!二度と俺の前で一緒にするな!次は許さんぞ!」 「…どうやらお前は何か知っているようだな…?…良ければ話してくれないか?…急に怒りだす位だ。その理由が知りたい」 俺はユウに慌てて謝罪した。 俺が見た『ビジョン』を奴も見ていたとは限らなかったのだ。 俺の狼狽ぶりにユウの奴は苦笑していた。 『まるで自分の母親か恋人が淫売呼ばわりされたような怒り方だ』と。 俺は少し頭に来たが、構わずに残らず話してやった。 MS戦闘中に俺の体験した一体感や『ビジョン』の内容の全てを。 一時間かけて話したが今の『俺』が目覚める気配は少しも無い。 俺が更に話を続けようと口を開いた時、ドアがノックされた。 腰を浮かせかけたユウを手振りで制止し、モニターを覗くと、失神し続けるモーリンを横抱きに抱えた、アルフがそこに立っていた。 俺はロックを開けアルフと眠ったままのモーリンを招じ入れると、夜の明けるまでEXAMとマリオンの差違について議論を繰り広げた。 俺の戦うためだけに浪費されてしまった青春を再び我が手に取り戻すかのように、熱く、長々と語り続けた。 時の過ぎ行くのも忘れて。 ■第三十六章 『そう…EXAMが全ての元凶…。ユウはEXAMのもたらす殺戮の快楽を受け入れず…EXAMは自らに相応しいパイロットをわたしに撰ぶ様に…強制した…。『NTに憎しみを持つ強い魂』を捜す事を…。それが七年後のヤザンさん…』 「俺にこそEXAMが相応しい、か。そうかも知れん…。失うモノなどもうあの時の俺には何も無かったからな…』 出撃待機中のブルーのコックピット内で俺は『マリオン』に一昨日の議論の結果を暇潰し代わりに話していた。 『EXAM』が限り無く臭い、と言う事実をだ。 『マリオン』が今俺に語った事で、その推論は確信へと変わった。 『マリオン』が何か暗い雰囲気を漂わせ始めたのを俺はすぐに『感じた』。 何が気に障ったのか聞こうとする俺を『マリオン』は察し、口籠もりながらも俺に理解し易い様に『言葉』にして伝えて来た。 『酷い…でしょう?ヤザンさんをこんな目に遇わせて…。わたしを…嫌いに…なった?』 「…マリオン…。返って来る答えを知ってて聞くのは、相手の男に自分を嫌な女だと思わせてしまう原因の一つだ。…俺からの忠告だ。もし良ければ覚えて置け。将来、立派な男を捕まえられるイイ女になりたいのならな?」 『わたしは言葉として…聞きたいの…。ヤザンさんの口から…。ねえ、ヤザンさん…わたしは我儘…かな?』 「俺はEXAMに礼を言いたい位だ。偶然でも、オマエに逢わせてくれた。…これ以上はな…俺が照れくさくてな?」 『ヤザン・ゲーブル、GM・ライトアーマー、出るぞコラァ!行くぜェ!ジェロォォニィモォォォォッッ!』 馬鹿が雄叫びを上げてまだ高度も高いと言うのにミデア格納庫から飛び降りた。 空挺作戦か何かと勘違いしている奴に、俺はやり切れなさに硬く目を閉じ、首を左右に振った。 やはり危機を『体験』させなければ『奴』は変わらない。 俺はミデア格納庫の発進作業員の合図を確認する。 OKサインが出た。 …機体への過度の負担は思わぬ事故を呼ぶ元だ。 「…ユウ・カジマ…。BD-1…。出る…」 『ユウ、敵は少ないけれど、気を付けて』 「…有難う…。モーリン…。必ず帰るよ…。君のために…」 俺は議論のついでにユウから徹底的にモーリンへの接し方を『仕込まれた』。 自分の帰るべき身体を傷つけられてはたまらない、とその時奴は俺に大真面目に言ってのけた。 『もしかして気が有るのか?』と俺が聞くと、例の微笑みで巧くかわされてしまったので、十中八九、狙っているに違いないだろう。 …誰の御蔭で俺がいらん苦労をする羽目になったと思っているんだ奴は? お前は良いかも知れんが、俺が『マリオン』を宥めるのに、どれだけ神経を遣うのかお前は経験した事が無いだろう? 俺の居るコックピットにモーリンが入って来た時なんぞ、危うくビームサーベルで二人まとめて焼き殺される所だったんだぞ? 俺にどう行動しろって言うんだ奴は? 何考えてやがるあのムッツリ… 『あの人が邪魔なら、排除を何時でも出来るわ。『EXAM』の発動の責任にしてしまえばいいもの。簡単よ?』 「…っ…あのなぁ『マリオン』!俺から『悪いコト』を学習するな!それは女の子の言っていい事じゃない!」 『…若い方のヤザンさんは『正直だな』って喜んでくれそうだけど。ヤザンさんのその困惑した顔、好きだな…?』 敵の09の3機小隊に、ライトアーマーが果敢に接近戦を挑んでいた。 飛び廻るライトアーマーの姿に俺は意地の悪い微笑を浮かべた。 ユウとの打ち合わせ通り、事は進んでいる。 …細工は流々で、後は仕上げを御覧ぜよと来たモンだ。 機体を事前点検せずに荒っぽい使い方を平気の平左でする罰当たりの末路は、この俺には痛いほど解り切っているのだ。 『酷い事するなぁ、ヤザンさん…。わざわざ細工してまで同じ目に遭わせるなんて…。同じ『自分』なのに?』 「その甘さが、戦場では命取りになるんだ。ここで修正して置かんと…必ず奴はZと殺り合う前に死ぬだろうな」 ライトアーマーの左膝から煙が上がり、脚部が脱落した。 俺は笑いをこらえながら、100㎜マシンガンを奴の機体の周辺に着弾させる。 …何かと格好を付けたがる『奴』の事だ。 見栄を張ってノーマルスーツの下に『オムツ』をしては居ないだろう。 今頃小便を漏らしているに違い無い『奴』の醜態を想像した俺は、久し振りに愉快な気分を味わった。 ■第三十七章 俺はワザとブルーを擱座(カクザ)したライトアーマーに接近させず、100㎜マシンガンでの遠距離戦闘で09を牽制し続けた。 さらに俺は『奴』を置き去りにして後退するフリまで実施した。 敵小隊の一機の09がジャイアント・バズを『奴』の乗ったままの コックピットに突き付け0距離発射をしそうになった時、流石の俺でも焦って腰部ミサイルを3連射して撃破したが、それ以外の攻撃は09が跋扈するままに任せてやった。 しかし、『奴』のライトアーマーの武器を持っているはずのマニピュレータはビームライフルを保持したまま、何時まで経っても動くそぶりも見せない。 恐らく、完璧に自らを襲う死の恐怖に呑まれているのだろう。 「若造!脚をやられたからと言って、攻撃出来んワケが無いだろう!ガッツの有る所をこの俺に見せてみろ!キン○マ縮み上がらせて『ママン、僕怖いの』と何時まで震え上がる心算だ!このクズが!それでも男か!」 俺は舌打ちをした後に、回線をフルオープンにして奴に言った。 味方の誰もが俺と奴の遣り取りが聞こえる様にだ。 すぐにライトアーマーの持つビームライフルが散発的にビームを射出し始める。 …俺の意図に気が付いたのだろう。 此処で泣き言を言えば、奴はもうへタレのまま生きて行くしか無くなるのだ。 それは『あの頃の俺』にとって死も同然なのだ。 臆病者に無能者の2枚看板を背負って生きていくには、まだ『奴』は若過ぎるのだ。 奴は泣いているだろう。 間違い無く出撃前に自分の目で機体のコンディションを確認しなかった己の『甘さ』と『迂闊さ』を悔いている。 『…堕ちろ…堕ちろよ…堕ちろぉぉぉぉぉぉぉッ!!俺はまだ、死にたくネェ、死ねネェんだヨォっ!!糞ォッ!』 『ヤザンさん…もう…あのヤザンさんを助けてあげて…!大きな恐怖が…あの人の思念が…もう少しでっ…!』 「…『EXAM』が発動するのか?!解ったマリオン、もう少しソイツを抑えて置いてくれ。…すぐに片付ける!」 通信回線を通じて聞こえる『奴』の絶叫に笑いが止まらなかった俺は、『マリオン』の告げようとする内容に慄然とした。 …奴の恐怖に、『EXAM』が共鳴し始めているのだ。 『マリオン』が俺を救った時に言った、『生きたEXAM』と例えた言葉が、俺の若い頃の顔と二重写しの様に俺には重なって見えた。 俺が09を仕留めようと100㎜マシンガンを構えたその時、突然耳にあの虫の羽音の様な唸りが聞こえた。 コンソールと前面モニターの両方に紅い表示が明滅する。 「何ィ!『マリオン』っ!どうなっているんだっ!『EXAM』が、動くぞ?!こんな事は聞いていないぞっ!」 『魅かれているのッ!若い方のヤザンさんの過大で純粋な恐怖にっ!もう…駄目ェェェェ!怖いのは嫌ぁッ!」 『EXAMSYSTEMSTANDBY』とシステム音声が無情に告げた。 俺の意識が宙に飛び、ブルーの高い視点に引き上げられ固定される。 09のヒートサーベルで焼かれた風の匂いが俺の鼻をくすぐり、大気を震わせるジャイアント・バズの轟音が俺を不快に苛立たせる。 何よりも強い破壊への欲求が俺の心を蝕んで行く。 背後からかすかに、『止めて』と哀願する少女の声が聞こえて来るが…俺は、あえて無視を決め込んだ。 自分の浅ましい衝動が目の前の奴等で満たされる事を思うと笑みまでこぼれて来る。 堪らなく、いい気分だ。 俺を制止し続ける少女の悲痛な叫びさえも、今の『俺』にはただの破壊への心地よいプレリュード(前奏曲)に聞こえた。 殺せ、壊せ、命を奪え。 お前の餓えを満たす物はそれのみだ、と。 俺は100㎜マシンガンのトリガーを爆発的な歓喜とともに絞った。 迫り来る後続の09小隊と、哀れっぽく叫び、不快な『感じ』を垂れ流し続ける、『味方である』GM・ライトアーマーに照準を向けて。 ■第三十八章 俺は射撃時に出る反動を利用して、左から右にかけて100㎜マシンガンの射線を真横に流して行った。 通常弾の中に、5発に1発の割合で射線確認のため装填されている曳光弾が、オレンジの光の尾を曳いて、09の群れの中に踊り込んで行く。 その砲弾は09のコックピット付近に狙った様に吸い込まれ、命中する。 擱座(カクザ)してちょうどその高さに存在したライトアーマーの頭も、射線の終点に位置していたため、巻き添えを食って吹き飛ばされた。 …『俺』に伝わる恐怖が、5割増しになって更に不快感を倍増させる。 …泣き叫ぶのに疲れたのだろうか? …『マリオン』の声が今の俺の耳には最前から聞こえて来なかった。 「情け無い奴!それでもヤザン・ゲーブルかっ!たかがメインカメラが吹き飛んだ位で…!」 『…どんなに愚かでも…。情け無くても…。誰も自分で自分を辞める事は出来無い…!』 『マリオン』の鋭い声が狂気にはやり立つ俺の耳を雷鳴の如く打ちすえた。 09がヒートサーベルを抜き、ホヴァーを利かせて左右から俺を挟み撃ちにしようと突き掛かる。 …危うく胴体を串刺しにされる所だった。 「…どう云う事だっ!何が言いたいんだ!俺に何を求めている、『マリオン』ッ!!」 『今のヤザンさんはあのヤザンさんとは違うっ!同じだけど違うのっ!今のヤザンさんには簡単な事でも、あのヤザンさんには難しい事だってあるのっ!確かに格好悪いかも知れないけれどっ…』 バックパックのスラスターを吹かし、急発進して回避した俺は、急制動できずにお互いを貫いてしまった09のパイロット達の断末魔を『聴いた』。 『間抜けどもが』と俺は腹の中で一言毒づき、次の獲物を探す。 飛ぶように加速し続ける爽快感が、『マリオン』の言葉から生まれた疑念を、俺の心の中より洗い流して行く。 「…そらそらそらそらァ!そんな勢いだけの下手糞を構うよりっ!この俺と踊れィ、09!」 動かないライトアーマーを鹵獲しようとする09を、俺は疾走しながら胸部バルカンと腰部ミサイルで追い散らす。 09の、のけぞる様が糸の切れたマリオネットを思わせ、俺をニヤリとさせる。 あのダルマは踊る事を最早出来まい。 俺に要らぬ手間を取らせるライトアーマーの『奴』の存在が不快感の源なのだ、としきりに頭の中の誰かが囁く。 「…ああ、そうだな…。こんな泣き叫ぶしか能の無い奴が…俺であるはずが無い…。消してしまえば…俺は…」 動く物が最早俺しか居なくなった戦場に残る唯一つの不快感の塊が、この半壊したGM・ライトアーマーだった。 俺は片膝を付いたままのライトアーマーのバックパックに、ビームサーベルのビーム発振部分を強く押し当てた。 ここでビームを発振させれば、推進剤に火を付け、コックピットをそのまま貫いて、『奴』を完全に抹殺できる。 『…誰もが最初から上手な人は居ないっ!完璧な存在でも無いっ!憎まないでっ!!無力な自分をっ!!』 俺は『マリオン』の叫びと同時に、瞬時に覚醒した自分に気が付いた。 薄ら笑いを浮かべ、抵抗出来ない自分を焼き殺そうとした俺に。 強張る指を、俺は握り締めたままのスティックから一本一本、無理矢理に引き剥がした。 指の力加減を間違えたら最後…『奴』は生を此処で終えることになるのだ。 それは俺の目的とする処では…無い。 『EXAMSYSTEM』の紅い文字表示が、恨めしそうに前面モニターとコンソールに2、3度瞬くと、あっさり消えた。 「…忘れていたよ…『マリオン』…。過去の自分を認めなければ…今の自分は無い。全部ひっくるめての…俺だ」 『…わたしはきっと…ヤザンさんなら気付いてくれると…信じていたから…呼び続けたの…でも…自信が…』 「ああ、聞こえていた…。もう、『EXAM』には呑まれん。…済まなかった…有難う…『マリオン』…」 ライトアーマーの開いたコックピットから、涙と鼻水で顔をグシャグシャにした『俺』が、不安そうにブルーを見上げているのに気付いた俺は、ゆっくりとブルーの左手を差し伸べた。 しっかり『教育』を施してやるために。 ■第三十九章 俺は『奴』を連れ帰り、ブルーをアルフに任せると、すぐに『奴』を人目に付かない様にシャワールームに押し込んだ。 『奴』の下着と軍服を用意して、俺は『奴』に声を掛ける事無く立ち去ろうとすると、意外にも『奴』に呼び止められた。 かすかに漂うアンモニア臭が、俺の『奴は小便を漏らしているだろう』と言う予想を、確実に裏付けていた。 「何故…オマエは俺を庇う?誤射で俺を殺しても、文句が出ない状況だったし、オマエに…その…憎まれているつもりだった…。今の情け無い俺をワザと人目に晒す事だってオマエは出来たはずだ。…俺にそんなに恩を着せたいのか?」 「…礼は期待しては居ない。オマエがこの出来事で学んでくれた事があったら、今の俺は嬉しい。…それだけだよ、曹長」 「…信じられんが…『声』が、言っていた…。…笑うなよ?オマエは…本当に…俺…『ヤザン・ゲーブル』なのか?」 「軍に志願する際に、周りの人間に同情されるのが嫌で、ニューヤーク出身って書いて、そのまま通っているはずだな?どっかでテストパイロットやった時、技術者を庇って上の馬鹿どもに爆弾発言かまして最前線送りになった世渡り下手、そして何時も撃墜数リストで自分の上に有る奴の名前を見て悔しがってたな…。家族構成は祖父、父母、弟。実家は…オーストラリア、シドニーだ。小さな頃、ハンティングが趣味の祖父と一緒に北アメリカに旅行してニューヤークに土地勘があった。出身地の偽証や土地の訛りや地名や地区の様子は全部祖父からの知識の受け売りだ…。違うか?曹長?」 俺がここまで語り終えた時、急に奴はシャワーブースの扉を引き開けた。 蒸気と共に現れた『奴』の、見たくの無い所まで、しっかりと観賞する羽目になり、驚愕する『奴』を尻目に、俺は苦笑いを隠せなかった。 俺は奴にバスタオルを投げ渡した。 「…隠せ。男相手に自慢するモノでも無かろう?オマエの『俺』…ヤザン・ゲーブル曹長…?」 「本当に…俺…か?アンタは…その…?正真正銘…ユウ…カジマにしか…見えないンだがな…」 「まずはそれで体を拭け。俺は報告書が、オマエは始末書と各所掌への謝罪周りが待っている。この俺も付き合ってやる。大人しく、俺のやり方を見ていろ。それが終わったら全て話してやる。…オマエに何が起こるか、俺に何が有ったかを」 「…済まんが、もう少し、待ってくれ。ノーマルスーツを…その…な?素人じゃないから…解るだろう?」 「…待ってやる。ちゃんと熱湯でやるんだぞ!匂いが残ってるとすぐバレる。…しっかり洗えよ?」 あわただしく身支度を終え、ノーマルスーツを乾燥室へぶち込んで息を切らせている『奴』を引き連れ、俺は索敵班を始めとする部隊各所掌へ頭を下げに行く『巡礼』に出かけた。 『ウチの新人が迷惑を掛けた』と、MS戦隊長である俺が真っ先に謝罪すれば、後から出てくる各部署からの不平不満は最小限で済む。 勿論俺が『奴』のリーゼントを掴んで下げさせたのは言うまでも無いだろう。 この場合、積もり積もった奴のこれまでの『悪行』の御蔭で、俺の『誠意』だけでは足りなかったのだった。 「これで解ったろう?オマエ一人で戦争をやってる訳では無い事をな…」 俺が報告書を書き終え、奴の私室を訪ねると、奴は早速、手にGMの整備に関するファイルを拡げ、端末の前に座っていた。 目覚めた『奴』の学習能力の高さに、俺は満足して頷いた。 『奴』がベッドに座る様、俺に勧めた。俺は遠慮無く座る。 俺は『まず聞け』と釘を刺し、俺の体験を『奴』に話し始めると、『奴』はメモを取る許可を求めた。 俺は言ってやった。 『お前はそんなに馬鹿だったか?』 それから二度と『奴』は無駄口を叩かなかった。 俺が話し終える頃『奴』は俺に言った。 「…俺は『アンタ』に勝ちたい。だから言う事を聞く。これから指示にも従う。だが忘れてもらっちゃあ困る事が一つ…」 「『ヤザン・ゲーブル』を舐めるな、だろう?誰にモノを言っている?『ルーキー』?…根を上げるなよ?若僧?」 俺達はガッチリ握手を交わした。奴は『今の俺』を超えるために。 そして俺は『過去のZ』を『奴』に超えさせるために。 ■第四十章 俺は着陸したミデアからブルーが勢い良く飛び出てくるのをホバートラックから眺める。 『奴』の本来の乗機「GM・ライトアーマー」は、結局、『奴』が乗るブルーが回収する事になった。 コックピットとマニピュレータと片足は無事なので、「何かのパーツ取りに使える」と俺が判断しての決定である。 正直、『奴』にブルーを、いや、『マリオン』を預けるのは、今の俺に取って、大変に勇気の要る行為だった。 『奴』はEXAMを発動させているのだ。 …『奴』が未だに『大人に為り切れない、子供染みた純粋な感情』を持つが故にだ。 俺は苦り切った顔で、忍び笑いを見せるモーリンからヘッドセットを受け取り、耳を済ませた。 『ヒャッホウ〜!こいつぁ凄ェ!ちょっとペダル踏んだだけでビンビン動くぅ!』 「…遊ぶな糞野郎!ブルーは俺のMSだ!とっととライトアーマーを回収しろ!」 『もう少しイイだろ?な?お…じゃなかった、ユウ中尉…?あと十分!頼む!』 「命令を読んだな?作業完了時刻は何分だ?遅れた時間×10回の、プッシュアップ(腕立て伏せ)決定だ。俺は容赦せんぞ?早くしろ!ヤザン・ゲーブル『曹長』!」 奴が息を呑む様が大きく俺の耳に響く。 『マリオン』の、『本当に嫌そうな顔をしている』との報告が、俺の心に届く。 間髪入れず、『五月蠅い、余計な事言うな!』と『奴』が慌てて『マリオン』に口止めしているのがまた、微笑ましい。 『奴』はどうやら、急速に『何か』に目覚めつつ有るらしい。 『俺の存在が、トリガーになった』と『マリオン』は言ったものだ。 『生命の危機と、プレッシャー…。ヤザンさんは、あの『曹長さん』に『EXAM』で増幅された『それ』を感じさせてしまった…。秘められた『因子』が、動き出したの…』 「…そうなると、俺は、どうなるんだ?『マリオン』?…俺は、『俺』では…」 『無くならないわ。どういう風に、いつ発現するかは…わたしにも…解らないから…』 俺の短い回想を、けたたましい音と震動が瞬時に破ってのけた。 『奴』がGM・ライトアーマを取り落としたのだろう。 上がった土煙がホバートラックを覆い、風で舞い上がった土砂が装甲板を叩く甲高い音が俺を苛立たせた。 頭の中で毒づいた俺の言葉を、多分『マリオン』は細大漏らさず伝えている事だろう。 現にもう、『うへぇ〜…勘弁してくれよぉ〜…』と『奴』が零していた。 「『曹長』!丁寧にやれと言ったろうがっ!俺に勝つまでシミュレータ漬け、決定だ!」 『…せめて、ダメージ半分まで減らせたら、で…。前回、瞬殺されたばかりなんだぜ…俺…』 盗み聞きしているモーリンが、額を押さえる俺の傍で、大っぴらにコンソールを叩いて笑い転げていた。 『奴』相手に漫才をするつもりは無かったが、どうも他人に言わせると『そのもの』らしい。 俺はこの時間を思い出さない時は無いだろう。 『若かりし俺』を鍛えた、笑いが絶えなかった日々を。