約 342,504 件
https://w.atwiki.jp/ro-vita/pages/274.html
+ ハロモナススパイク ハロモナススパイク 攻撃力90 攻撃属性:打撃 報告可能回数5 番号 報告可能回数 オーダー内容 強化内容 受注条件 1-1 3回 オーク討伐 16.0pt 武器攻撃力+3 なし 1-2 2回 ハティ討伐 1.0ptウルフ討伐 4.0pt 武器攻撃力+8 1-1クリア 2-1 1回 C3-5フレイヤ逆尖塔調査 2回 スキル1 サンクチュアリ効果アップLv1 なし 2-2 1回 フレースヴェルグ討伐 1.0ptグレンデル討伐 0.5pt スキル1ランクアップ 2-1クリア 2-3 1回 氷狼の甲鎧 5氷狼の尻尾 2氷狼の大剣骨 2氷狼の銀翼 1 スキル2 サンクチュアリ性能アップ 2-2クリア 3-1 1回 薄汚れた剛毛 4垢まみれの太爪 2沼のバングル 2おとしもの 2 スキル1 サンクチュアリ範囲拡大 なし 3-2 1回 C4-5遅れた作戦指令 1回C4-8オーキッシュグリーン 1回 スキル2 サンクチュアリ効果アップLv1 3-1クリア Aルート 1回 C5-4有閑ラプソディー6 1回 スキル1 メイス強化Lv2 なし A1-1 1回 C6-1天空神殿調査 1回 武器攻撃力+3 なし A1-2 1回 絶氷の塊 3グルファクシの残骸 2 武器攻撃力+8 A1-1クリア A2-1 2回 炎狼の甲鎧 4炎狼の尻尾 2炎狼の金翼 2灼熱腰巻き 2 武器攻撃力+8 なし A2-2 1回 フルングニル討伐 1.0pt 武器攻撃力+15 A2-1クリア A3-1 2回 スコル討伐 1.0pt スキル1ランクアップ なし Bルート 1回 ゼロピー 12べとべとする液体 5 スキル1ランクアップ なし B1-1 1回 ファフニール討伐 1.0pt 武器攻撃力+5 なし B1-2 1回 ヒャハニール討伐 1.0pt 武器攻撃力+10 B1-1クリア B2-1 1回 黄金の円輪 3リフレクター 2 武器攻撃力+2スキル1 カウンター性能アップ なし B2-2 1回 大怪鳥の風切羽根 4薄汚れた剛毛 5絶氷の塊 3 武器攻撃力+5スキル2 カウンター強化 B2-1クリア B3-1 2回 C6-6雲海の神座 1回 スキル1ランクアップ なし B3-2 2回 C6-10強襲、最果ての砦! 1回 スキル2ランクアップ B3-1クリア + ハロモナスグランドクロス ハロモナスグランドクロス 攻撃力99 攻撃属性:打撃 報告可能回数5 番号 報告可能回数 オーダー内容 強化内容 受注条件 1-1 2回 メニア討伐 1.0ptフルングニル討伐 1.0pt 武器攻撃力+2 なし 1-2 2回 フェニア討伐 1.0ptフルングニル討伐 1.0pt 武器攻撃力+3 1-1クリア 1-3 2回 C7-10丘の巨人の姉妹 2回 武器攻撃力+6 1-2クリア 1-4 2回 C8-3有閑ラプソディー10 1回 武器攻撃力+10 1-3クリア 2-1 1回 ドモヴォイ討伐 13.0ptドンドモヴォイ討伐 2.0pt スキル1 サンクチュアリ効果アップLv2 なし 2-2 1回 ハチ蜜 20ふかふかの胸毛 12空きビン 4 スキル2 サンクチュアリ性能アップ 2-1クリア 3-1 1回 C7-7 トール火山掃討戦 2回 武器攻撃力+5 なし 3-2 1回 発達した頭角 15突き出た肋骨 10硬い肉球 3 スキル1 スタン効果アップLv3 3-1クリア 4-1 1回 ポリン討伐 12.0ptドロップス討伐 20.0ptポポリン討伐 12.0ptマーリン討伐 20.0pt 武器攻撃力+1 なし 4-2 1回 ポイズンスポア討伐 8.0ptスポアハゼル討伐 12.0pt 武器攻撃力+2 4-1クリア 4-3 1回 丘の巨人討伐 6.0pt丘の巨人チーフ討伐 6.0pt 武器攻撃力+2 4-2クリア 4-4 1回 飛び出た黒毛 3動力制御弁 3 武器攻撃力+3 4-3クリア 4-5 1回 おとしもの 10 スキル1 バーサークLv1 4-4クリア Aルート 1回 C8-4 脂が乗った石竜子 1回 スキル1 メイス強化Lv3 なし A1-1 1回 モックルカーヴィ討伐 4.0pt 武器攻撃力+5 なし A1-2 1回 葉っぱの大槌の破片 1グロッティの花弁 6葉っぱのフリル 6 武器攻撃力+9 A1-1クリア A1-3 1回 スルト討伐 2.0pt 武器攻撃力+30 A1-2クリア A2-1 1回 ヒャハニール討伐 3.0pt 武器攻撃力+5 なし A2-2 1回 不健康な舌 1青いクチバシ 8大怪鳥の爪 8 武器攻撃力+7 A2-1クリア A2-3 1回 C9-2イザヴォル平野防衛戦 1回C9-3フニトビョルグ防衛戦 1回C9-4トール火山防衛戦 1回 武器攻撃力+10スキル2 メイス強化Lv4 A2-2クリア A3-1 1回 C8-2炎中の円舞譚 2回 武器攻撃力+4 なし A3-2 1回 C8-5ミーナの贈り物 2回 武器攻撃力+8 A3-1クリア A3-3 1回 立派な肩当て 10立派なナタ 4立派なツメ 2 スキル1 カウンター性能アップスキル2 カウンター強化 A3-2クリア Bルート 1回 黄色いヒレ 1発光物質 1 スキル1 ランクアップ なし B1-1 1回 スコル討伐 3.0ptハティ討伐 3.0ptウルフ討伐 6.0ptファイアウルフ討伐 6.0pt 武器攻撃力+3 なし B1-2 1回 巨人の苔 3巨人の霜 3 武器攻撃力+5 B1-1クリア B1-3 1回 C9-5 決戦、白夜の広場 2回 武器攻撃力+3スキル1ランクアップ B1-2クリア B1-4 1回 C9-7 決戦、極寒の見張り台 2回 武器攻撃力+3スキル2 ディポーションLv3 B1-3クリア B2-1 1回 デスロック討伐 12.0ptポイズンチュッピ討伐 6.0ptグリズリ討伐 12.0pt 武器攻撃力+7スキル2 ガード力アップ なし B2-2 1回 フレースヴェルグ討伐 4.0ptコナ・フレースヴェルグ討伐 4.0pt 武器攻撃力+7 B2-1クリア B2-3 1回 氷粉 2欠けた棍棒 4 スキル1ランクアップ B2-2クリア B3-1 1回 オークヒーロー討伐 4.0ptオーク討伐 45.0ptオークチーフ討伐 10.0ptハイオーク討伐 24.0pt 武器攻撃力+5 なし B3-2 1回 炎粉 2ヴァルハラソード 4 スキル1ランクアップ B3-1クリア + ハロモナスソードメイス ハロモナスソードメイス 攻撃力105~114 攻撃属性:打撃 報告可能回数15 番号 報告可能回数 オーダー内容 強化内容 受注条件 1-1 1回 スポア討伐 60.0ptポイズンスポア討伐 50.0pt 武器攻撃力+3 なし 1-2 1回 ファフニール討伐 30.0ptヒャハニール討伐 30.0pt 武器攻撃力+4 1-1クリア 1-3 1回 薄汚れた剛毛 30垢まみれの太爪 20沼のバングル 30おとしもの 20 武器攻撃力+6 1-2クリア 1-4 1回 フルングニル討伐 15.0pt霜の巨人討伐 60.0pt霜の巨人チーフ討伐 50.0pt 武器攻撃力+6スキル1 ギガントチャージLv1 1-3クリア 1-5 1回 絶闘の証 1蒼の発光器官 30凍った前垂れ 21巨人の霜 16 武器攻撃力+6スキル1 ギガントブレイクLv3 1-4クリア 2-1 1回 AC1-5有閑ラプソディー 斬龍 10回 武器攻撃力+3 なし 2-2 1回 ドモヴォイ討伐 50.0ptポリン討伐 70.0pt 武器攻撃力+4 2-1クリア 2-3 1回 オークの爪 30チーフの角兜 20立派な肩当て 20 武器攻撃力+6 2-2クリア 2-4 1回 オークキング討伐 50.0ptオーク討伐 30.0ptオークチーフ討伐 30.0ptハイオーク討伐 30.0pt 武器攻撃力+6スキル2 オーク闘魂術Lv1 2-3クリア 2-5 1回 王者のスリッパ 12欠けた棍棒 12チーフの肩当て 12立派な爪 12 武器攻撃力+6スキル2 オーク闘魂術Lv3 2-4クリア 3-1 1回 フェニア討伐 45.0ptメニア討伐 45.0pt 武器攻撃力+3 なし 3-2 1回 瑞々しい葉脈 30グロッティの花弁 40葉っぱのフリル 40 武器攻撃力+4 3-1クリア 3-3 1回 グレンデル・サンタン討伐 25.0pt 武器攻撃力+6 3-2クリア 3-4 1回 世界樹の塔:下層125階の制圧 7回 武器攻撃力+6スキル1 メディタティオLv3 3-3クリア 3-5 1回 世界樹の塔:下層150階の制圧 7回 武器攻撃力+6スキル1 メディタティオLv4 3-4クリア 4-1 1回 ドモヴォイ・レンジャー討伐 3.0pt 武器攻撃力+3 なし 4-2 1回 輝く布 10古木の枝 10ペンペンウィード 10カラカラの木屑10 武器攻撃力+4 4-1クリア 4-3 1回 ガプータン 20ガプーテイル 15ガプー液 10 武器攻撃力+6 4-2クリア 4-4 1回 AC2-12魅する霧、逢魔が時 10回AC2-13迷霧を払え 10回 武器攻撃力+6 4-3クリア 4-5 1回 世界樹の塔:下層175階の制圧 10回 武器攻撃力+6スキル2 ヒール効果アップLv2 4-4クリア + ハロモナススパナ ハロモナススパナ 攻撃力121~130 攻撃属性:打撃 報告可能回数15 番号 報告可能回数 オーダー内容 強化内容 受注条件 1-1 1回 ヒャハニール討伐 40.0ptレーシー討伐 60.0ptアルプレーシー討伐 60.0pt 武器攻撃力+5 なし 1-2 1回 奪龍の体脂 5黄色いヒレ 20発光物質 20 武器攻撃力+5 1-1クリア 1-3 1回 超古代の石片 15超古代の歯車 15超古代のネジ 15 武器攻撃力+5 1-2クリア 1-4 1回 ドモヴォイ・シーフ討伐 20.0ptドモヴォイ・レンジャー討伐 10.0pt 武器攻撃力+5 1-3クリア 1-5 1回 ウートガルザ・ロキ討伐 40.0ptリンドブルム討伐 40.0pt 武器攻撃力+5 1-4クリア 1-6 1回 世界樹の塔 上層50階の制圧 7回 武器攻撃力+6 1-5クリア 1-7 1回 黒竜の長角 15黒竜の魔角 2黒竜の棘束 15黒竜の翼膜 20 武器攻撃力+6 1-6クリア 1-8 1回 グレンデル・サンタン討伐 35.0pt 武器攻撃力+6 1-7クリア 1-9 1回 オーラ馬毛 30輝く槍の穂先 2屍卿の頭骨 15壊れた盾の欠片 15 武器攻撃力+6 1-8クリア 1-10 1回 世界樹の塔 上層75階の制圧 7回 武器攻撃力+9 1-9クリア 1-11 1回 世界樹の塔 上層125階の制圧 12回 武器攻撃力+10スキル1 超回復 1-10クリア 2-1 1回 世界樹の塔 上層100階の制圧 5回 武器攻撃力+6スキル2 ヒール効果アップLv2 なし 3-1 1回 絶闘の証 2巨人の霜 25霜の仮面 30霜の結晶 25 武器攻撃力+5 なし 3-2 1回 カプラの手袋 35カプラのブーツ 30カプラのエプロン 25深淵の仮面 30 武器攻撃力+5 3-1クリア 3-3 1回 リンドブルム討伐 40.0pt 武器攻撃力+6 3-2クリア 3-4 1回 世界樹の塔 下層150階の制圧 10回 武器攻撃力+6スキル1 ギガントチャージLv1 3-3クリア 3-5 1回 世界樹の塔 下層175階の制圧 10回 武器攻撃力+6スキル1 ギガントチャージLv2 3-4クリア 3-6 1回 世界樹の塔 下層200階の制圧 10回 武器攻撃力+9スキル1 ギガントチャージLv3 3-5クリア 4-1 1回 ホロホロ討伐 70.0ptホロホロン討伐 70.0ptホロホロス討伐 70.0pt 武器攻撃力+5 なし 4-2 1回 屈強な脚 15突き出たクチバシ 30黒いクチバシ 30ホカホカするクチバシ 30 武器攻撃力+5 4-1クリア 4-3 1回 ニーズヘッグ討伐 30.0ptロードオブデス討伐 30.0pt 武器攻撃力+6 4-2クリア 4-4 1回 世界樹の塔 上層75階の制圧 10回 武器攻撃力+6スキル2 癒やしの心 4-3クリア 4-5 1回 世界樹の塔 上層100階の制圧 10回 武器攻撃力+6スキル2 ゴリン! 4-4クリア 4-6 1回 世界樹の塔 上層125階の制圧 10回 武器攻撃力+9スキル2 ゴゴリン!! 4-5クリア + ハロモナスメイス ハロモナスメイス 攻撃力:70 攻撃属性:打撃 報告可能回数10 番号 報告可能回数 オーダー内容 強化内容 受注条件 1-1 1回 スポア討伐80.0ptポイズンスポア討伐80.0pt 武器攻撃力+3 なし 1-2 1回 デスロック討伐60.0ptマグマデスロック討伐60.0pt 武器攻撃力+3 1-1クリア 1-3 1回 モィモィの耳15天然苔15蒼の発光器官20 武器攻撃力+3 1-2クリア 1-4 1回 下層125階の制圧5回 スキル1 ガード防御力アップLv1 1-3クリア 2-1 1回 ファイアウルフ討伐100.0pt 武器攻撃力+3 なし 2-2 1回 ホロホロス討伐100.0pt 武器攻撃力+3 2-1クリア 2-3 1回 リフレクター20ホカホカした羽毛20ホカホカの翼20 武器攻撃力+3 2-2クリア 2-4 1回 AC2-3キノコはお好き?12回 武器攻撃力+5 2-3クリア 2-5 1回 大粒の体液2ボロボロの羽毛20ふかふかの胸毛20 スキル1 メイス強化Lv1 2-4クリア 3-1 1回 EX1-6蜃気楼の砂海にて8回 武器攻撃力+3 なし 3-2 1回 オークキング討伐30.0ptオークヒーロー討伐30.0pt 武器攻撃力+3 3-1クリア 3-3 1回 オークシャーマン討伐30.0pt 武器攻撃力+3 3-2クリア 3-4 1回 下層125階の制圧10回 スキル1 スタン効果アップLv1 3-3クリア 4-1 1回 ホロンホロンする羽毛20くまの足の裏20 武器攻撃力+3 なし 4-2 1回 木の実の枝20ふさふさの頬毛20べとべとする液体20 武器攻撃力+3 4-1クリア 4-3 1回 デビルチ討伐80.0ptミニデモ討伐50.0pt 武器攻撃力+3 4-2クリア 4-4 1回 スケルボーン15死者の遺品15死者の刃片10 武器攻撃力+5 4-3クリア 4-5 1回 竜蜴歯2緑竜の蜴角10緑竜の翼膜10 スキル1 ディボーションLv1 4-4クリア ハロモナスメイス 分岐 報告可能回数1 番号 報告可能回数 オーダー内容 強化内容 受注条件 1回 世界樹の塔:下層150階の制圧10回 形状変化 スラッシュメイス<吹雪> なし 1回 世界樹の塔:下層150階の制圧10回 形状変化 ヒーリングメイス なし メイス上ルート第1形態 スラッシュメイス<吹雪> 攻撃力:最大104 攻撃属性:切断 報告可能回数10 番号 報告可能回数 オーダー内容 強化内容 受注条件 1-1 1回 スポアハゼル討伐80.0pt 武器攻撃力+3 なし 1-2 1回 どくどくキノコ 20毒の胞子 20爆ぜるキノコ 20爆ぜる胞子 20 武器攻撃力+3 1-1クリア 1-3 1回 乾いた獣の骨 15砂漠狼の牙 20飛び出た砂毛 15 武器攻撃力+3スキル2 APリンク:キリエエレイソン 1-2クリア 2-1 1回 サンドロック討伐60.0ptデザートウルフ討伐60.0pt 武器攻撃力+3 なし 2-2 1回 焔の巨人討伐75.0pt焔の巨人チーフ討伐50.0pt 武器攻撃力+3 2-1クリア 2-3 1回 回転草 15苔むした放射器官 25天然苔 15 武器攻撃力+3スキル2 ヒール効果アップLv1 2-2クリア 2-4 1回 乾いた木屑 15きれいな腕輪 15猛獣の双角 15術者の腰巻き 15 武器攻撃力+5 2-3クリア 3-1 1回 EX1-13 I've Blown It All Sky High10回 スキル1 ランクアップスキル2 ランクアップ 1-3クリア2-4クリア 4-1 1回 死霊カプラ討伐75.0pt 武器攻撃力+3スキル2 メディタティオLv2 なし 4-2 1回 ガプー討伐60.0ptガガプー討伐50.0pt 武器攻撃力+3 4-1クリア 4-3 1回 フェニア討伐30.0ptメニア討伐30.0pt 武器攻撃力+3 4-2クリア 5-1 1回 錆びた鉄 15鉄 15硬い鉄の欠片 15鋼鉄 15 武器攻撃力+3スキル2 ワイドレンジガード なし 5-2 1回 真っ赤な爪 1子悪魔の翼 20スケルボーン 20スケルボボーン 20 武器攻撃力+3 5-1クリア 5-3 1回 AC2-14終末を告げる魔翼10回 武器攻撃力+3 5-2クリア 5-4 1回 EX1-12 砂塵の幻想譚10回 武器攻撃力+5 5-3クリア 6-1 1回 世界樹の塔:下層175階の制圧10回 スキル1 ビートハイヤードLv1スキル2 ランクアップ 4-3クリア、5-4クリア スラッシュメイス<吹雪> 分岐 報告可能回数1 番号 報告可能回数 オーダー内容 強化内容 受注条件 1回 ロードオブデス討伐1.5pt 武器攻撃力+3スラッシュメイス<吹雪>:最終 なし 1回 世界樹の塔:下層200階の制圧20回 形状変化 スラッシュメイス<風塵> なし スラッシュメイス<吹雪>:最終 攻撃力 最大141 攻撃属性:切断 報告可能回数4 番号 報告可能回数 オーダー内容 強化内容 受注条件 7-1 2回 丘の巨人討伐60.0pt丘の巨人チーフ討伐40.0pt 武器攻撃力+9 なし 7-2 1回 プラコン20エンベルタコン20オリデオコン20 武器攻撃力+13 7-1クリア 7-3 1回 特大の体液1 武器攻撃力+26 7-2クリア 8-1 1回 黒鉄の外殻40冷えた溶岩35焔鎚の突片5 スキル2 メイス強化Lv3 なし 8-2 1回 世界樹の塔:下層175階の制圧15回 スキル1 戦棍の心得:初級 8-1クリア 9-1 1回 死霊カプラ討伐100.0pt スキル2 サンクチュアリ効果アップLv3 なし 9-2 1回 世界樹の塔:下層175階の制圧5回 スキル1 カウンター性能アップ 9-1クリア メイス上ルート第2形態 スラッシュメイス<風塵> 攻撃力:最大138 攻撃属性:切断 報告可能回数10 番号 報告可能回数 オーダー内容 強化内容 受注条件 1-1 1回 刃の牙 40折れたツノ 30 武器攻撃力+3 なし 1-2 1回 くまの胸角 25くまの爪 20 武器攻撃力+3 1-1クリア 1-3 1回 世界樹の塔:上層50階の制圧5回 武器攻撃力+3スキル2 SP最適化 1-2クリア 2-1 1回 フレースヴェルグ討伐40.0ptグレンデル・サンタン討伐15.0pt 武器攻撃力+3 なし 2-2 1回 コナ・フレースヴェルグ討伐40.0ptグレンデル討伐30.0pt 武器攻撃力+3 2-1クリア 2-3 1回 AC3-5 有閑ラプソディー<衝角>8回 武器攻撃力+3スキル2 AP回復量アップ 2-2クリア 2-4 1回 絶氷の塊 25撃退の証 20氷塊刃の破片 35グルファクシの残骸 35 武器攻撃力+5 2-3クリア 3-1 1回 オークキング討伐45.0ptオークヒーロー討伐45.0ptオークシャーマン討伐45.0pt スキル1 ランクアップスキル2 ランクアップ 1-3クリア2-4クリア 4-1 1回 黒竜の硬鱗 25黒竜の呪血 20黒竜の長角 18黒竜の翼膜 30 武器攻撃力+3スキル2 よろめき耐性アップLv1 なし 4-2 1回 ヒャハニール討伐60.0pt 武器攻撃力+3 4-1クリア 4-3 1回 フェニア討伐45.0ptメニア討伐45.0pt 武器攻撃力+3 4-2クリア 5-1 1回 EX1-18 酔眼が眺めた奇異8回 武器攻撃力+3スキル2 スタン減少 なし 5-2 1回 リンドブルム討伐 45.0ptソルジャースケルトン討伐50.0ptジェネラルスケルトン討伐35.0pt 武器攻撃力+3 5-1クリア 5-3 1回 重い木材 15古木の枝 15硬い鉄の欠片 15鋼鉄 15 武器攻撃力+3 5-2クリア 5-4 1回 闇の発光器官 25闇の前垂れ 20闇石の欠片 15 武器攻撃力+5 5-3クリア 6-1 1回 ニーズヘッグ討伐45.0pt スキル1 エウカリスティカLv3スキル2 ランクアップ 4-3クリア、5-4クリア スラッシュメイス<風塵> 分岐 報告可能回数1 番号 報告可能回数 オーダー内容 強化内容 受注条件 1回 闇石の欠片3深淵の闇石3 武器攻撃力+3スラッシュメイス<風塵>:最終 なし 1回 世界樹の塔:上層100階の制圧25回 形状変化 スラッシュメイス 雷滅 なし スラッシュメイス<風塵>:最終 攻撃力 最大141 攻撃属性:切断 報告可能回数4 番号 報告可能回数 オーダー内容 強化内容 受注条件 7-1 2回 世界樹の塔:下層150階の制圧5回 武器攻撃力+8 なし 7-2 1回 大粒の体液 2壊れた盾の瘴手 2 武器攻撃力+13 7-1クリア 7-3 1回 フルングニル討伐 40.0ptスルト討伐 40.0pt 武器攻撃力+26 7-2クリア 8-1 1回 黒竜の核片 1黒竜の棘束 20 スキル2 メイス強化Lv3 なし 8-2 1回 竜蜴歯 3輝く槍の穂先 2 スキル1 戦棍の心得:初級 8-1クリア 9-1 1回 世界樹の塔:上層50階の制圧5回 スキル2 サンクチュアリ効果アップLv4 なし 9-2 1回 ロリルリ討伐80.0pt スキル1 カウンター性能アップ 9-1クリア メイス上ルート第3形態 スラッシュメイス 雷滅 攻撃力 攻撃属性 報告可能回数 番号 報告可能回数 オーダー内容 強化内容 受注条件 1-1 1回 欠けた棍棒 25期限切れトリュフ ? 武器攻撃力+3 なし 1-2 1回 AC4-2月灯りテルツェット 10回 武器攻撃力+3 1-1クリア 1-3 1回 AC4-5無窮なる冥勅 7回 武器攻撃力+3スキル2 地上 メイス修練 1-2クリア 2-1 1回 オークチーフ討伐 100.0ptハイオーク討伐 100.0pt 武器攻撃力+3 なし 2-2 1回 デスロック討伐 60.0ptチュッピ討伐 60.0ptキラーアント討伐 60.0pt 武器攻撃力+3 2-1クリア 2-3 1回 死者の遺品 25死者の刃片 20ガプータン 25 武器攻撃力+3スキル2 SP回復量ダウン 2-2クリア 2-4 1回 グリズリ討伐 80.0ptレイブオルマイ討伐 60pt 武器攻撃力+5 2-3クリア 3-1 1回 黒竜の魔角 3壊れた盾の瘴手 3 スキル1 ランクアップスキル2 ランクアップ 1-3・2-4クリア 4-1 1回 モックルカールヴィ討伐 30.0pt 武器攻撃力+3スキル2 スタン効果アップLv3 なし 4-2 1回 世界樹の塔 上層125階の制圧 5回 武器攻撃力+3 4-1クリア 4-3 1回 ウィアドルーン 5朽ちたメイス 8 武器攻撃力+3 4-2クリア 5-1 1回 ドモヴォイ・シーフ討伐 50.0ptドモヴォイ・レンジャー討伐 4.0pt 武器攻撃力+3スキル2 カウンター強化 なし 5-2 1回 ギンヌンガガプの闇 20朱月の海砂 20死者の鉄材 20 武器攻撃力+3 5-1クリア 5-3 1回 ペンペンウィード 20カラカラの木屑 20フヴェルゲルミルの露 20 武器攻撃力+3 5-2クリア 5-4 1回 AC4-8超獣ギガ 15回 武器攻撃力+5 5-3クリア 6-1 1回 世界樹の塔 上層150階の制圧 10回 スキル1 戦棍の心得 上級スキル2 ランクアップ 4-3・5-4クリア 分岐 スラッシュメイス 雷滅 最終 リンドブルム討伐45.0 スラッシュメイス 天牙 成長の研ぎ石1、皆伝の証 戦棍20 メイス第4形態 スラッシュメイス 天牙 攻撃力 攻撃属性 報告可能回数 番号 報告可能回数 オーダー内容 強化内容 受注条件 1-1 1回 オークキング討伐 100.0pt 武器攻撃力+3 なし 1-2 1回 黒竜の硬鱗 30朱竜の爛鱗 20緑竜の柔鱗 30 武器攻撃力+3 1-1クリア 2-1 1回 レイドリック討伐 100.0ptエインヘリヤル討伐 100.0ptレイドリックアサルト討伐 100.0pt 武器攻撃力+3 なし 2-2 1回 Ex2-11滅竜の英雄と呼ばれて 10回 武器攻撃力+3 2-1クリア 3-1 1回 モックルカールヴィ討伐 40.0ptレイドリックアサルト討伐 80.0pt スキル1 ランクアップ 1-2・2-2をクリア 3-2 1回 皆伝の証 戦棍 10壊れた盾の瘴手 10 スキル2 ファイティングスピリッツ 3-1クリア 3-3 1回 皆伝の証 戦棍 10壊れた血盾の赤端 5 スキル2 サンクチュアリ強化 3-2クリア 3-4 1回 皆伝の証 戦棍 10朱竜の神角 5 スキル2 サポート能力強化 3-3クリア 3-5 1回 Ex2-12ブルータルドラゴンラッシュ 15回 武器攻撃力+120 3-4クリア 4-1 1回 霜の巨人討伐 120.0pt 武器攻撃力+3 なし 4-2 1回 霜の巨人チーフ討伐 100.0pt 武器攻撃力+3 4-1クリア 5-1 1回 深淵の巨人討伐 120.0pt 武器攻撃力+3 なし 5-2 1回 深淵の巨人チーフ討伐 100.0pt 武器攻撃力+3 5-1クリア 6-1 1回 皆伝の証 戦棍 8 スキル1 ファイティングスピリッツ 4-2・5-2クリア 6-2 1回 皆伝の証 戦棍 8 スキル2 サンクチュアリ強化 6-1クリア 7-1 1回 ガーディアン討伐 100.0pt 武器攻撃力+3 なし 7-2 1回 Ex1-23二人の小夜譚 15回 武器攻撃力+3 7-1クリア 8-1 1回 ウートガルザ・ロキ討伐 45.0ptリンドブルム討伐 30.0 武器攻撃力+3 なし 8-2 1回 Ex2-4ヨトゥン殲滅戦 15回 武器攻撃力+3 8-1クリア 9-1 1回 皆伝の証 戦棍 8 スキル2 サポート能力強化 7-2・8-2クリア 9-2 1回 皆伝の証 戦棍 8 スキル1 サンクチュアリ強化 9-1クリア 10-1 1回 ロードオブデス討伐 60.0pt 武器攻撃力+20 なし 10-2 1回 ロードオブダークネス討伐 20.0pt 武器攻撃力+35 10-1クリア 10-3 1回 朱竜の爛鱗 30朱竜の邪爪 20竜炎舌 5朱竜の新棘10 武器攻撃力+50 10-2クリア ファイティングスピリッツ シールドチャージとスピンアタックと乱打の ダメージとスタンさせる力がアップする 攻撃後に素早く行動できるようになる フィニッシュルート強化のダメージアップは、 シールドチャージ:+20% (地上なら116%→136%) スピンアタック:+20% (地上なら118%→138%) 乱打:+8% (地上乱打の最後の一撃なら100%→108%) となっている。 ちなみに、フィニッシュルート強化は修練とは別枠で、上限は+20%。 ガード修練と同じタイミングでガードやステップができる。 ちなみに、乱打の出始めをガードでキャンセルすることは、 ガード修練には可能だが、DS状態だけでは不可能。 戦棍の心得:上級では、ガードでもステップでもキャンセルできない。 DSには劣るものの連続ステップも可能。 地上で連続ステップするにはレバーを入れる必要がある。 非DS型で機動性を確保したい人向け。 サポート能力強化 ブレッシングとグロリアの効果がアップし AP消費量とクールタイムが減少する ブレッシング 基礎攻撃力の30% → 55% 基礎防御力の50% → 75% 消費AP:750 → 525 クールタイム:20秒 → 14秒 ちなみに、“APリンク:ブレッシング”と併用した場合は、 消費APが900になるだけで、上昇量は変わらない。 グロリア クリティカル確率:+30%ぐらい → +60%ぐらい 消費AP:750 → 525 クールタイム:20秒 → 14秒 ヒーリングメイス(下ルート) 攻撃力:オーダーによる 攻撃属性:打撃/魔法 報告可能回数10 番号 報告可能回数 オーダー内容 強化内容 受注条件 1-1 1回 ウルフ討伐80.0ptグリズリ討伐60.0pt 武器攻撃力+2 なし 1-2 1回 EX1-9月と太陽の矛盾律10回 武器攻撃力+2 1-1クリア 1-3 1回 世界樹の塔:下層175階の制圧5回 武器攻撃力+2スキル2 グローリーペイン 1-2クリア 2-1 1回 炎狼の甲鎧20炎狼の尻尾20炎狼の日蝕牙35灼熱腰巻き15 武器攻撃力+2 なし 2-2 1回 サンドロック討伐60.0ptデザートウルフ討伐60.0pt 武器攻撃力+2 2-1クリア 2-3 1回 不思議な発光物質25大繁殖する苔20ナガルザルの衝角の欠片15泥の手枷30 武器攻撃力+2スキル2 ディボーションLv2 2-2クリア 2-4 1回 ハティ討伐50.0pt 武器攻撃力+4 2-3クリア 3-1 1回 AC2-14終末を告げる魔翼10回 スキル1 ランクアップスキル2 ランクアップ 1-3クリア2-4クリア 4-1 1回 ヒャハニール討伐50.0pt 武器攻撃力+2スキル2 クリティカル確率アップLv1 なし 4-2 1回 オークキング討伐30.0ptオークヒーロー討伐30.0pt 武器攻撃力+2 4-1クリア 4-3 1回 乾いた獣の骨15回転草15乾いた木屑15綺麗な砂岩5 武器攻撃力+2 4-2クリア 5-1 1回 世界樹の塔:下層150階の制圧10回 武器攻撃力+2スキル2 クリティカル威力アップLv1 なし 5-2 1回 フェニア討伐30.0ptメニア討伐30.0pt 武器攻撃力+2 5-1クリア 5-3 1回 AC2-10雲衝く雷槍10回 武器攻撃力+2 5-2クリア 5-4 1回 巨人王の仮面20堕落するトネリコ20無幻の心眼20 武器攻撃力+4 5-3クリア 6-1 1回 黄昏の焔2運命の天眼6 スキル1 ヒール効果アップLv1スキル2 ランクアップ 4-3クリア5-4クリア ヒーリングメイス 分岐 報告可能回数1 番号 報告可能回数 オーダー内容 強化内容 受注条件 1回 ロードオブデス討伐1.5pt 武器攻撃力+3ヒーリングメイス:最終 なし 1回 世界樹の塔:下層200階の制圧20回 形状変化 ヒーリングスプリンクラー なし ヒーリングメイス:最終 攻撃力 オーダーによる 攻撃属性:打撃/魔法 報告可能回数4 番号 報告可能回数 オーダー内容 強化内容 受注条件 7-1 2回 薄汚れた剛毛25垢まみれの太爪25おとしもの15 武器攻撃力+7 なし 7-2 1回 大粒の体液2特大の体液1 武器攻撃力+11 7-1クリア 7-3 1回 世界樹の塔:下層200階の制圧3回 武器攻撃力+20 7-2クリア 8-1 1回 スルト討伐15.0ptリンドブルム討伐15.0pt スキル2 ガード防御力アップLv3 なし 8-2 1回 炎粉8氷粉8 スキル1 メディタティオLv2 8-1クリア 9-1 1回 世界樹の塔:下層175階の制圧5回 スキル2 メイスチャージ速度アップ なし 9-2 1回 ロードオブデス討伐15.0pt スキル1 鉄壁 9-1クリア ヒーリングスプリンクラー 攻撃力:オーダーによる 攻撃属性:打撃/魔法 報告可能回数10 番号 報告可能回数 オーダー内容 強化内容 受注条件 1-1 1回 EX1-12 砂塵の幻想譚7回EX1-13 I've Blown It All Sky High7回 武器攻撃力+2 なし 1-2 1回 遠征軍の証25突撃兵の鎧20突撃兵の兜15 武器攻撃力+2 1-1クリア 1-3 1回 ミニデモ討伐60.0pt深淵の巨人チーフ討伐60.0pt 武器攻撃力+2スキル2 黄昏の共鳴Lv1 1-2クリア 2-1 1回 カプラの手袋25カプラのブーツ20カプラのエプロン15 武器攻撃力+2 なし 2-2 1回 エルニウム原石20エルニウム20希少なエルニウム15 武器攻撃力+2 2-1クリア 2-3 1回 AC3-9 渇望する咎人10回 武器攻撃力+2スキル2 ビートハイヤードLv1 2-2クリア 2-4 1回 オークシャーマン討伐30.0ptハイオーク討伐50.0pt 武器攻撃力+4 2-3クリア 3-1 1回 真っ赤な爪3黄色い太爪25乾燥おとしもの10 スキル1ランクアップスキル2ランクアップ 1-3クリア2-4クリア 4-1 1回 スポアハゼル討伐60.0pt焔の巨人討伐80.0pt焔の巨人チーフ討伐40.0pt 武器攻撃力+2スキル2 ガード力アップ なし 4-2 1回 スコル討伐40.0ptファイアウルフ討伐70.0pt 武器攻撃力+2 4-1クリア 4-3 1回 スルト討伐30.0pt 武器攻撃力+2 4-2クリア 5-1 1回 ツヤツヤな剛毛20焦げたバングル20乾燥おとしもの10 武器攻撃力+2スキル2 サンクチュアリ効果アップLv3 なし 5-2 1回 ソルジャースケルトン討伐100.0ptジェネラルスケルトン討伐80.0pt 武器攻撃力+2 5-1クリア 5-3 1回 AC3-8 深淵より這い出し者ども10回AC3-9 渇望する咎人10回 武器攻撃力+2 5-2クリア 5-4 1回 世界樹の塔:上層75階の制圧10回 武器攻撃力+4 5-3クリア 6-1 1回 スコル討伐60.0pt スキル1 SP回復量ダウンスキル2ランクアップ 4-3クリア5-4クリア ヒーリングスプリンクラー 分岐 報告可能回数1 番号 報告可能回数 オーダー内容 強化内容 受注条件 1回 闇石の欠片3深淵の闇石3 武器攻撃力+3ヒーリングスプリンクラー:最終 なし 1回 世界樹の塔:上層100階の制圧25回 形状変化 ヒーリングサークル なし ヒーリングスプリンクラー:最終 攻撃力 オーダーによる 攻撃属性:打撃/魔法 報告可能回数4 番号 報告可能回数 オーダー内容 強化内容 受注条件 7-1 2回 フレースヴェルグ討伐50.0ptコナ・フレースヴェルグ討伐50.0pt 武器攻撃力+6 なし 7-2 1回 ニーズヘッグ討伐20.0ptリンドブルム討伐20.0pt 武器攻撃力+11 7-1クリア 7-3 1回 深淵の闇石25黒竜の核片3緑竜の泪30 武器攻撃力+20 7-2クリア 8-1 1回 屍卿の頭骨25コープスファー25壊れた盾の欠片25壊れた盾の瘴手2 スキル2 ガード防御力アップLv4 なし 8-2 1回 世界樹の塔:上層50階の制圧8回 スキル1 メディタティオLv3 8-1クリア 9-1 1回 グレンデル・サンタン討伐30.0pt スキル2 メイスチャージ速度アップ なし 9-2 1回 世界樹の塔:上層75階の制圧10回 スキル1 鉄壁 9-1クリア ヒーリングサークル 攻撃力:最大152 攻撃属性:打撃/魔法 報告可能回数10 番号 報告可能回数 オーダー内容 強化内容 受注条件 1-1 1回 ジェネラルスケルトン討伐50.0ptガプー討伐80.0pt 武器攻撃力+2 なし 1-2 1回 大怪鳥の風切羽根25大怪鳥の翼骨10大怪鳥の極彩羽根25屈強な脚10 武器攻撃力+2 1-1クリア 1-3 1回 闇の発光器官30闇の前垂れ30闇石の欠片20 武器攻撃力+2スキル2 癒やしの心 1-2クリア 2-1 1回 AC4-2 月灯テルツェット10回 武器攻撃力+2 なし 2-2 1回 AC4-7 ニヴルヘイム攻略戦15回 武器攻撃力+2 2-1クリア 2-3 1回 深淵の放射器官30深淵の仮面30深淵の闇石20 武器攻撃力+2スキル2 DSハイリスク 2-2クリア 2-4 1回 世界樹の塔:上層125階の制圧8回 武器攻撃力+4 2-3クリア 3-1 1回 ドモヴォイ・シーフ討伐50.0ptドモヴォイ・レンジャー討伐4.0pt スキル1ランクアップスキル2ランクアップ 1-3クリア2-4クリア 4-1 1回 世界樹の塔:上層100階の制圧6回 武器攻撃力+2スキル2 戦棍の心得:初級 なし 4-2 1回 サボテンの枝30ボサボサの頬毛30日よけの切れ端30 武器攻撃力+2 4-1クリア 4-3 1回 グレンデル・サンタン討伐30.0ptガーディアン討伐50.0ptメトス討伐40.0pt 武器攻撃力+2 4-2クリア 5-1 1回 EX1-19 有閑ラプソディー<圧殺>5回 武器攻撃力+2スキル2 メイス強化Lv2 なし 5-2 1回 ポリン討伐150.0ptドロップス討伐150.0ptポポリン討伐150.0ptマーリン討伐150.0pt 武器攻撃力+2 5-1クリア 5-3 1回 スポア討伐150.0ptポイズンスポア討伐150.0ptスポアハゼル討伐150.0pt 武器攻撃力+2 5-2クリア 5-4 1回 毒々しいトリュフ40パチパチトリュフ40べとべとする液体40ねばねばする液体40 武器攻撃力+4 5-3クリア 6-1 1回 世界樹の塔:上層150階の制圧10回 スキル1 APリンク:ブレッシングスキル2ランクアップ 4-3クリア5-4クリア 戦棍の心得:上級 攻撃後に素早く行動できるようになる 乱打の出始めをガードキャンセルできないなど、ガード修練には少し劣る。 ヒーリングサークル 分岐 報告可能回数1 番号 報告可能回数 オーダー内容 強化内容 受注条件 1回 リンドブルム討伐 45.0pt 武器攻撃力+3ヒーリングサークル:最終 なし 1回 成長の研ぎ石 1皆伝の証 戦棍 20 形状変化 ヒーリングフェザー なし ヒーリングサークル:最終 攻撃力 最大179 攻撃属性:打撃/魔法 報告可能回数4 番号 報告可能回数 オーダー内容 強化内容 受注条件 7-1 2回 世界樹の塔:上層150階の制圧3回 武器攻撃力+6 なし 7-2 1回 ダーク馬脈 15暗黒卿の赤籠手 12血鋼玉 10 武器攻撃力+10 7-1クリア 7-3 1回 ユグドレイク討伐 15.0pt 武器攻撃力+20 7-2クリア 8-1 1回 フルングニル討伐 30.0ptウートガルザ・ロキ討伐 30.0pt スキル2 ガード防御力アップLv5 なし 8-2 1回 枯れ果てた葉 25枯れ果てた枝 25枯れ果てた花 25皆伝の証 戦棍 3 スキル1 メディタティオLv4 8-1クリア 9-1 1回 AC4-13ニヴルヘイム サガ 5回 スキル2 メイスチャージ速度アップ なし 9-2 1回 超古代の石片 25超古代の歯車 25超古代のネジ 25澱んだ槍の穂先 3 スキル1 鉄壁 9-1クリア ヒーリングフェザー 攻撃力:最大176 攻撃属性:打撃/魔法 報告可能回数10 番号 報告可能回数 オーダー内容 強化内容 受注条件 1-1 1回 グレンデル討伐 100.0pt 武器攻撃力+2 なし 1-2 1回 ガガプー討伐 80.0ptロリルリ討伐 80.0pt深淵の巨人討伐 120.0pt 武器攻撃力+2 1-1クリア 2-1 1回 丘の巨人討伐 150.0pt 武器攻撃力+2 なし 2-2 1回 ドモリボン 11キンピカの頬毛 8ドモクラウン 3 武器攻撃力+2 2-1クリア 3-1 1回 ニーズヘッグ討伐 30.0ptユグドレイク討伐 30.0ptリンドブルム討伐 30.0pt スキル1 ランクアップ 1-2・2-2をクリア 3-2 1回 皆伝の証 戦棍 10壊れた盾の瘴手 10 スキル2 神性強化 3-1クリア 3-3 1回 皆伝の証 戦棍 10壊れた血盾の赤端 5 スキル2 治癒 3-2クリア 3-4 1回 皆伝の証 戦棍 10朱竜の神角 5 スキル2 キリエエレイソン強化 3-3クリア 3-5 1回 Ex2-12ブルータルドラゴンラッシュ 15回 武器攻撃力+60 3-4クリア 4-1 1回 霜の巨人討伐 100.0pt霜の巨人チーフ討伐 100.0pt 武器攻撃力+2 なし 4-2 1回 果実の枝 30テカテカの頬毛 20ドモスェット 10 武器攻撃力+2 4-1クリア 5-1 1回 AC4-9銀色の奏鳴譚 10回 武器攻撃力+2 なし 5-2 1回 焔の巨人討伐 100.0pt焔の巨人チーフ討伐 100.0pt 武器攻撃力+2 5-1クリア 6-1 1回 皆伝の証 戦棍 8 スキル1 神性強化 4-2・5-2クリア 6-2 1回 皆伝の証 戦棍 8 スキル2 治癒 6-1クリア 7-1 1回 死霊カプラ討伐 200.0pt 武器攻撃力+2 なし 7-2 1回 未知の金属 5葉っぱの大槌の破片 10種実の大槌の破片 10 武器攻撃力+2 7-1クリア 8-1 1回 レイドリック討伐 100.0ptエインヘリヤル討伐 100.0ptレイドリックアサルト討伐 100.0pt 武器攻撃力+2 なし 8-2 1回 Ex1-25黄昏の幻影 15回 武器攻撃力+2 8-1クリア 9-1 1回 皆伝の証 戦棍 8 スキル2 キリエエレイソン強化 7-2・8-2クリア 9-2 1回 皆伝の証 戦棍 8 スキル1 治癒 9-1クリア 10-1 1回 ロードオブデス討伐 60.0pt 武器攻撃力+15 なし 10-2 1回 ロードオブダークネス討伐 20.0pt 武器攻撃力+20 10-1クリア 10-3 1回 朱竜の爛鱗 30朱竜の邪爪 20竜炎舌 5朱竜の新棘10 武器攻撃力+25 10-2クリア 治癒 ヒールとコルセオヒールの全てが強化される ヒールとコルセオヒールのクールタイム0.7倍、AP消費量0.7倍、回復量15%UP ヒール効果アップLv2のカードがあったので刺してみたが回復量は変わらず 神性強化 マグヌスエクソシズムのダメージがアップする HPとAPの自然回復量がアップする SP取得量がアップする マグヌスのダメージがアップで上昇量はメイス強化Lv4と同じ メイス強化Lv4をつけても更にダメージが増えたりはしなかった HPAPの自然回復量アップは正直あまり実感できなかった SP取得量アップはドラゴニックハウルやフォースオブバンガードより少し多い程度で太陽喰いには劣る キリエエレイソン強化 キリエエレイソンの全てが強化される キリエエレイソンのクールタイム0.7倍、AP消費量0.7倍、効果時間は2分と変わらず 耐久値についてはスルトの溶岩で検証、1発あたり275のダメージに対して スキル無しの状態では5回まで耐え、スキル有りの状態では12回まで耐えることができた 大雑把にしか調べてないけど耐久値は倍近くなっていると思われる 表テンプレ + 武器テンプレ 武器名称 攻撃力○~○ 攻撃属性○ 報告可能回数○ 番号 報告可能回数 オーダー内容 強化内容 受注条件 1-1 回 1-2 回 1-3 回 1-4 回 1-5 回 2-1 回 2-2 回 2-3 回 2-4 回 2-5 回 3-1 回 3-2 回 3-3 回 3-4 回 3-5 回 4-1 回 4-2 回 4-3 回 4-4 回 4-5 回
https://w.atwiki.jp/gods/pages/82961.html
ガイウスアウレリウスウァレリウスディオクレティアヌス(ガイウス・アウレリウス・ウァレリウス・ディオクレティアヌス) ディオクレティアヌスの別名。
https://w.atwiki.jp/krsk_souko/pages/39.html
“でーもんぷりーすと”レイチェル・タリスマン 性別:女 年齢:15 ■基本データ 【コロナ】 星詠み 【ミーム】 オリジン/パンデモニウム 【ブランチ】クレリック/デーモンロード 【消費経験点】15(能力値:0 特技:15 装備:0 パスの追加:0 ブランチの追加:0) ■能力値/耐久力 【能力値】 肉体:9 技術:5 魔術:14 社会:5 根源:3 【戦闘値元値】 白兵:6 射撃:7 回避:3 心魂:8 行動:14 【戦闘値修正値】 白兵:6 射撃:7 回避:3 心魂:8 行動:34 【HP】 元値:24 修正値:50 【LP】 元値:6 修正値:6 ■宿命/特徴/闘争/邂逅 宿命:祝福 特徴:超記憶 特徴効果:1度見聞きしたことを忘れない 闘争:平和 邂逅: ■初期パス 【因縁】“暁の大天使”ルシファーからの庇護 ■準備された装備 部位:名称(必要能力/行動修正/ダメージ/HP修正/射程/備考/参照P) 右手 :手袋 (必:技3/行:+10/ダ:-/HP:8/射:-/SC153) 左手 :ホーリーシンボル (必:-/行:+10/ダ:-/HP:-/射:-/LF192) 胴部 :神官服 (必:肉5/行:-/ダ:-/HP:18/射:-/SC152) その他: (必:―/行:―/ダ:―/HP:―/射:―/―) 乗り物: (必:―/行:―/ダ:―/HP:―/射:―/―) ■コロナ特技 【SC100/自/オ/フ1】◆女神の祝福 自分以外の対象の判定の[達成値]を+[フレア] 【SC100/自/オ/フ全】◆再生の車輪 〔Sin1〕[死亡][戦闘不能][覚醒]を解除し【HP】1【LP】1にする 【SC100/心/メ/5H】盾の乙女 対象が次に行なうメジャーアクションの[達成値]を+[達成値] 【SC100/自/オ/フ1】天上の霞 〔TLv+2〕。対象の[BS]を全て回復する 【SC101/自/セ/フ1】夜明けの星 [Lv+1]体までの対象のダメージ属性をターン終了時まで〈根〉に変更 ■ミーム特技 【SC113/自/ダ/3H】◆星光召喚 対象のダメージを[【魔】×2]だけ減少 【SC113/自/メ/6H】癒しの光 対象の【HP】を[【魔】×3]回復 【SC113/自/オ/4H】聖なる加護 [ブランチ:クレリック]特技の対象を[範囲]にする。[対象:自身]の特技には不可 【LF103/―/自/常/なし】最高司祭 《星光召喚》《癒しの光》の効果に+【魔】(計算済み) 【LF154/自/オ/フ1】◆魔神召喚 宣:セor登場時。1シーン【最大HP】【HP】+[Lv×20]。効果が解除されても、増えた【HP】は減少しない 【LF154/自/常/なし】◆パートナー指定:イナンナ 指定した《契約》系特技の代償を半分にする。《シンセンス》にも有効 【LF154/自/常/なし】契約:ピクシー ランクC。【魔】+2。12を越えても良い。《シンセンス》不可。《シンセンス》の元にする場合は4H扱い 【LF156/自/セ/フ2】契約:イナンナ ランクS。[白攻][射攻][突返]のダメージ+[差分値]。対象がこのターンに最初に行なう[白攻][射攻][突返]にのみ有効 ■装備 [SC153]手袋/ラウンドシールド相当(部:片/射:-/HP +8/) 【回】+2。 [SC152]神官服/チェインメイル相当(部:胴/射:-/HP +18) 情報収集の達成値+1 [SC165]輝く紋章(部:片/射:な/HP +0) 【行】+10。盾に描く場合は盾のコスト+10/+5(手袋に描かれている) [LF192]ホーリーシンボル/ガンターミナル相当(部:片/射:な/HP +0) [ブランチ:デーモンロード]専用。【行】+10。 「ミーム:グレズ」「ブランチ サイバーパンク」には装備不可 ■属性防御 肉体:× 技術:× 魔術:× 社会:× ■戦術、設定、メモなど レイチェル 「ねえイナちゃん、勇者様はどこいるんだろーねー」 でーもん様(ルシファー)を崇める神官。 ある晩、「勇者を助け造物主から世界を守るのです」というでーもん様のお告げを夢で見る。 翌朝目覚めると、枕元には拳銃型をしたでーもん様のホーリーシンボル(ガンターミナル:レイチェルはホーリーシンボルと言い張っている)とそれに抱きついて寝こけるイナンナの姿があった。 これはもうでーもん様のお告げ確定運命確変突入したことを確信したレイチェルは、イナンナと共に勇者を捜す旅に出た。 イナンナのことは「イナちゃん」と呼ぶ。 イナンナ 「イナちゃんゆーな。わしは戦の神、イナンナぞえ。敬ってへつらえ」 外見年齢10歳くらいの闘いの女神。 性格は尊大にして横暴、好戦的で短絡的。 とはいえ、自ら手を下すことより、下々の者を戦わせる方が好き。 大食らい。
https://w.atwiki.jp/moekenkyu/pages/88.html
■メカクレ(目隠れ) 異称:目隠れっ娘、目隠しっ娘、隠れ目 目を隠したキャラクターの略称、総称。 ■類義要素 ■対義要素 ■関連要素 眼帯 サングラス ■上位要素 ■下位要素 両目隠れ 片目隠れ ■派生要素 ■相性要素 ■備考 ■リンク メカクレリストWiki 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/mainichi-matome/pages/877.html
毎日新聞(大阪本社・兵庫版)8月4日朝刊 広告掲載企業 毎日新聞(東京版)8月4日朝刊 広告掲載企業 毎日新聞(茨城版)8月4日朝刊 広告掲載企業(抜粋) 関連ページ 毎日新聞(大阪本社・兵庫版)8月4日朝刊 広告掲載企業 第1面 [題字下]:ケンコー(カメラ) 第1面 [天気欄]:YKKap(固定) 第1面[書籍雑誌]:法学書院、国際語学社、栄光出版社、アクセス、アートヴィレッジ、平原社、現代書林、主婦の友社 第1面 [その他]:日本製紙株式会社、代々木文化学園 第2面:自社広告(毎日新聞社の本)、ダイヤモンド社 第3面:清流出版(下段3分の1広告) 第4面:リヨン社、自社広告(週間エコノミスト) 第5面:サンマリエ(下段3分の1広告) 第6面:がくぶん特選館(下段3分の1広告) 第7面:ヒガシマル醤油株式会社(下段3分の1広告) 第8面:日本新聞博物館NEWSPARK(下段3分の1広告) 第9面:AC(3R推進団体連絡会・下段3分の1広告) 第10面:アデランス、大杉製薬株式会社 第11面:自社広告(毎日新聞メークアップセミナー)、加茂繊維株式会社(高機能繊維の腹巻・岡山県・下段3分の1広告) 第12面:アダプトゲン製薬株式会社(下段3分の1広告) 第13面:アンターク本舗(ネオシーダー・1段常連)、自社広告(毎日新聞社の本) 第14面:自社広告(毎日新聞セカンドライフセミナー・下段3分の1広告) 第15面:自社広告(月間『NEWSがわかる』・毎日通販・遺骨ダイヤの近販KINPAN、つまり一面全部自社広告) 第16面:江原堂「KohGenDo」(化粧品・下段2分の1広告) 第17面:SEGAセガ(ゲームソフト「北京オリンピック2008」・下段2分の1広告) 第18面:オリックス生命(下段3分の1広告) 第19面:エポック社(野球盤・一面モノクロ広告) 第20面:三菱東京UFJ銀行(新システムへの移行に伴うATMサービスの一時休止の告知) 第21面:小林製薬(サプリメントの通販・下段3分の1広告) 第22面:ライフサポート(通販・一面カラー広告) 第23面:自社広告(毎日新聞メンタルヘルスセミナー・下段3分の1広告) 第24面:アークレイマーケティング株式会社(野菜カレー通販・主業は検査機器製造・一面モノクロ広告) 第25面:(広告なし) 第26面:(特集「読者とつながる新聞」)自社広告(求人サイト「JOB毎日」) 第27面:株式会社イエタス(下段3分の1広告) 第28面:自社広告(スポニチ・ラジオ欄小枠) 第29面:(地域面)岸田写真館(宝塚市)、田中佛檀店(神戸市)、ココロ株式会社(キトサン製造)、クレリif共済会、 食心坊(焼肉・神戸市)、甲東園法務司法書士事務所、甲南チケット、播新(美術品・神戸市)、 自社広告(まいまいクラブ、まいにちガイド(広告掲載)) 第30面:自社広告(まいまいクラブ、サンデー毎日)、そとやま司法書士事務所、アクセスインプラントセンター、 杉山司法書士事務所、コスモトラベルサービス(下段3分の1広告) 第31面:大田胃散(1段広告)、懐石料理徳「のり」(大阪)、浜屋(仏壇)、ハイファイ堂(大阪、京都)、 グランドギャラリー(ピアノ買取)、七宝(貴金属買取・大阪) 第32面:(TV欄)新日本製薬(化粧品・下段5分の1広告)、プロミス(カラー)、自社広告(毎日フォトバンク、 オーバルホール」) 【全面広告】:自社広告(第15面・毎日新聞社とグループ企業の広告で一面全部使用) エポック社(おもちゃメーカー・第19面) 毎日新聞(東京版)8月4日朝刊 広告掲載企業 01面:株式会社ケンコー(題字下)、YKKap、代々木文化学園「文化書道」、地球丸、実務教育研究所、マキノ出版、がくぶん総合教育センター、株式会社リベラルタイム出版社、聖教新聞社、日本製紙株式会社 02面:株式会社ベースボール・マガジン社、エクスナレッジ 03面:毎日新聞社の本 04面:加美乃素本舗「カミクローネ」、ハウス食品「潤粋ヒアルコラーゲン」 05面:毎日新聞社「週刊エコノミスト」、リヨン社「わが子のうつ病を治す12の方法」 06面:椿山荘「目白シンラート2008」、Newsがわかる 07面:ラブレ創健株式会社「ラブレスルー」 08面:㈱明装、全軽連、アトラス商事㈱、㈱プロT 09面:毎日新聞セカンドライフセミナー2008”自然夫婦の生活論”(協賛:大和ハウス工業株式会社) 10面:毎日新聞社広告局「暑中見舞い」、東洋インキ製造株式会社、北海道毎日輸送株式会社、株式会社高速オフセット、 キャタピラー教習所株式会社、日本新聞インキ株式会社、有限会社トレンタ・トレ、明治安田生命保険相互会社、 日本通信紙株式会社、丸全昭和運輸株式会社、サカタラボステーション株式会社、株式会社八洋、株式会社ナルジュ 11面:株式会社ユーラシア旅行社「ジャカランダの花咲く、南部アフリカへ」(半面) 12面:国立科学博物館「金GOLD黄金の国ジパングとエル・ドラード展」 13面:アークレイ マーケティング株式会社「京優 カロリー80の野菜カレー」 14面:江原道株式会社(半面) 15面:株式会社セガ「北京オリンピック2008」 16面:オリックス生命 17面:株式会社エポック社「野球盤エース」(全面) 18面:三菱東京UFJ銀行 19面:がくぶん特選館「朝までクール、オムロン耳穴式補聴器」 22面:毎日小学生新聞 23面:株式会社ジョウコウ 24面:毎日通販、鹿児島ますや「黒豚ハム・ソーセージ詰め合わせ」、加計呂麻島「伝統手作り西田の純黒糖」、由比桜エビ・しらすセット 25面:まいまいクラブ 26面:小林製薬「エディケア」 27面:高砂食品株式会社「青じそ蕎麦」、翠雲堂、全国伝統的工芸品センター 28面:グリーンハウス株式会社「楽臭生活」、アデランス、株式会社太田胃散 29面:京都きものプラザ「大B反市」、毎日文化センター「シーボーンアート1日体験教室」、 毎日フォトバンク、株式会社グランドギャラリー、㈱結婚情報センター「ノッツェ、両想いマッチング」、 毎日検定バンク、毎日新聞旅行「社会見学に行こう! 築地・国会・佃島・月島」 30面:三井住友銀行グループ「プロミス」、ビックカメラ、再春館製薬所「痛散湯」、白十字「サルバお肌安心パッド」 特に特殊なものはありません。 新規にゲーム・玩具会社や製薬会社、旅行会社の名前が散見できます。 10面の書中見舞い形式は現在は恒例のようです。 毎日新聞(茨城版)8月4日朝刊 広告掲載企業(抜粋) 27面 常陽銀行(サマーチャンスキャンペーン・ギフトカードプレゼント) 関連ページ 2008年 毎日新聞に広告を出していた企業 2008年毎日新聞紙面数 YKKap アダプトゲン製薬 アデランス アンターク本舗 アークレイマーケティング イエタス エポック社 オリックス生命 グランドギャラリー グリーンハウス ケンコー ココロ コスモトラベルサービス サンマリエ ジョウコウ セガ ダイヤモンド ダイワハウス ノッツェ ハイテクサービス ハウス食品 ヒガシマル醤油 ビックカメラ プロミス ベースボール・マガジン社 マキノ出版 ユーラシア旅行社 ライフサポート ラブレ創健 三菱東京UFJ銀行 京都きものプラザ 代々木文化学園 伝統的工芸品産業振興協会 全軽連 公共広告機構 再春館製薬所 加美乃素本舗 加茂繊維 問合せ結果分野別一覧その3 問合せ結果分野別一覧その4 問合せ結果別一覧 ×対応の企業(漢字で始まる企業名・さ行~た行) 問合せ結果別一覧 △対応の企業 国立科学博物館 大杉製薬 太田胃散 学文社 小林製薬 常陽銀行 救心製薬 日本新聞博物館 日本製紙 明治安田生命保険 栄光出版社 椿山荘 江原堂 清流出版 白十字 翠雲堂 聖教新聞 高砂食品
https://w.atwiki.jp/nagoya_dnd/pages/37.html
『ドレリンの渡し』での買い物情報 gp上限:800gp 総資産:46,000gp 『モルリンの鍛冶屋』 ドワーフの腕利き鍛冶師『モルリン』の店 【商品】 (以下、各1つ) +1バトルアックス +1ロングソード +1鋼鉄製ヘヴィシールド +1ブレストプレート +1チェインシャツ +1アロー50本 通常の出来栄えの武器・防具はすべてあり 高品質の単純武器・軍用武器・全ての盾鎧を取り扱っている。 『ペイロアの社』 近辺では最も高位のクレリック『ブラザー・ダーニー』が寺務を取り仕切る。 【商品】 信仰の巻物(数量は各3本):キュアシリアスウーンズ、キュアモデレットウーンズ、 ディスペルマジック、ブレス、レジストエナジー、レッサーレストレーション また、ダーニーは依頼されれば3Lv以下のクレリック呪文をサービスで提供できる。(翌日覚える事となる) 更に、3Lv以下の巻物を作成することも出来る。(依頼した巻物は注文の翌日夕方に完成する) 『物知りサーティアレンの家』 ハーフリングのウィザード『サーティアレン』の館。街の子供達は幽霊が出ると噂している。 【商品】 秘術の巻物(数量は各2本):インヴィジヴィリティ、ウェブ、ディスペルマジック、 ファイアーボール、フライ、メイジアーマー ポーション(数量は各3本):インヴィジビリティ、キャッツグレイス、フライ その他(数量は各1つ):ブレイサーズオブアーマー+1、リングオブプロテクション+2 サーティアレンは、依頼されれば3Lv以下のウィザード呪文をサービスで提供できる。(翌日覚える事となる) 更に、3Lv以下の巻物・ポーションを作成することも出来る。(依頼した巻物は注文の翌日夕方に完成する) 『ジャレット雑貨店』 黒髪の南方系美女『ジャレット・ナース』の営む雑貨店 【商品】 (右記は数量制限は無し)冒険用具、特殊な物質やアイテム、各種道具と技能用具、衣服、食物、飲料 ポーション(6本):キュアライトウーンズ 『ディロラのうまや』 冒険者上がりの婦人『ディロラ・ザーン』が店主。ディロラは『ソラナ・アニタ』の良き相談相手でもある。 【商品】 乗騎(各一頭):ヘヴィウォーホース、ライトウォーホース、ドンキー PHBp128の乗騎用のアイテム全て(数量は制限なし) 『スティレル旅行用品店』 『ベン・スティレル』氏の営む店。あかつき街道を行き交う旅人に愛される店。 【商品】 (右記は数量制限は無し)冒険用具、衣類、乗騎関連の品々 乗騎(一頭):ライディングホース 移動手段(各1つ、キールボート以下の価格のもの) 『古石』 ハーフエルフのドルイド『アヴァーセル』が管理する地。 【商品】 ポーション(数量は各3本):キュアライトウーンズ、ニュートラライズポーション、 パークスキン、レッサーレストレーション アヴァーセルは、依頼されれば3Lv以下のドルイド呪文をサービスで提供できる。(翌日覚える事となる) 更に、3Lv以下のポーションを作成することも出来る。(依頼した巻物は注文の翌日夕方に完成する)
https://w.atwiki.jp/necklace/pages/18.html
ネックレスとは、首に着ける装身具である。高級品やブランド物もあり、男女問わず首飾りとして親しまれる。真珠や金属、天然石などの色々な素材があり、形も十字架やハート形などがある。首飾りだけではなく、肩凝り解消用や開運用のネックレスもある。ドラマ・アニメなどで使用されたネックレスは人気を呼んでいるが、中にはアレルギー症状を起こすものや偽物など注意を要するものも存在する。 先端にペンダントトップと呼ばれる装飾品がつくものをペンダント、首に巻く部分そのものが装飾になるものをネックレス、ひも状で留め金がないものをラリエットと呼ぶ。 さまざまなネックレス ネックレスには多様な種類があり、高価なものも多い。素材は真珠がよく知られている。一つ一つ糸でつながっていることや、白銀の輝きがあるのが特徴。真珠のネックレスは、主に冠婚葬祭で利用される。正式には、白真珠(白蝶貝・アコヤ貝)は婚礼、黒真珠(黒蝶貝)は葬儀に使う(本来、黒真珠を身につけるのは略装)。現在は、真珠の生産量が減り始め、淡水真珠のネックレスが増えている(透明感のある奇麗な輝きが特徴)。 ただし、真珠は硬度が 3 度ほどのものが多く、傷がつきやすいため、保存には注意を要する。また汗にも弱く、光沢を失う原因になる。真珠をつないでいる糸も弱いため、真珠が外れることもある。 真珠のネックレスは長さによって名称が異なる。 チョーカー (35 cm) 一番多く利用される プリンセス (40 cm ~ 45 cm) ネックレスの基準サイズ マチネー (53 cm) オペラ (71 cm) ロープ (105 cm ~ 107 cm) ロングロープ (142 cm) 金属製のネックレスは、形も様々で、鼻ピアスやイヤリングとともにお洒落として使われる。だが、最近では金属アレルギーが問題視されている(ニッケルなどの溶出により、皮膚のかゆみやかぶれなどが数年続く)。そのため、金属アレルギーを起こしにくく皮膚に優しいチタン製のネックレスが販売されている。チタンは錆びにくく丈夫で、ネックレスには最適である。 肩凝り解消グッズとして、ゲルマニウムネックレスという健康商品がある。これはある芸能人がゲルマニウムネックレスの効果をテレビで絶賛したことから、ブームになったとされる。ただし、喧伝されている効能の中に医学的には証明されたものはない(ゲルマニウムの項を参照)。 天然石で製造されたネックレスの中には、開運目的で販売されるものもある。 形 ネックレスには十字架やハート形、花柄などがある。十字架タイプのものは、ダイヤモンドが埋め込まれている高額なものも多い。海外では、キリストが十字架に貼りつけられたネックレスが販売されている。ドイツでは、ツヴィシェンゴールドパーレンと呼ばれる、十字架がついたネックレスが発見されており、1世紀から2世紀のものと推測されている。明確なことは知られていないが、キリスト教信者がキリストへの敬意を示すためにつけたものと思われている。若者たちが十字架ネックレスを絶賛しすぎていることから、キリスト教関係団体による非難もある。 一方、ハート形には、ハートの上にダイヤモンド数粒を詰めたものや、そのまま一個詰めたものも販売されている。コンパクトタイプのものがあり、小物入れとして利用できる。十字架のキリストとは対照的に、ハート形にはマリアが載っているものが多い。 2005年10月1日、青森でモナリザが刻まれたネックレスが公開された。約 36 カラットのダイヤモンドが使用されており、総額 5~6 億円である。 ドラマで使われるネックレス ドラマ中で使用されたネックレスが反響を浴びて、販売され、人気が出る場合がある。冬のソナタでペ・ヨンジュンが雪だまの中にネックレスを入れ、チェ・ジウがその雪だまを割ってネックレスを取り出すシーンは話題を呼び、このネックレスは商品化されて売れ筋もよかった(星形でダイヤモンドが入ったもの)。だが、偽物の出回りも生じ、日本の会社が偽物を販売したのに対して、販売権を所持するエムトレーディングドットコムは 2000 万円の損害賠償を請求した。 目次 トップページ アクセサリー スタイル アクセサリー ジュエリー リング 指輪 ピアス イヤリング ネックレス ペンダント ブレスレット ブローチ メンズジュエリー 誕生石 ペアリング 婚約指輪 結婚指輪 マリッジリング エンゲージリング ピンキーリング ダイヤモンド ダイアモンド ダイヤ ダイア ジルコニア キュービックジルコニア シルバー ゴールド ホワイトゴールド ピンクゴールド プラチナ 加藤夏希 平山あや 外部ウィキ アクセサリー ジュエリー リング 指輪 イヤリング ピアス ネックレス ペンダント ブレスレット ブローチ 誕生石 ペアリング 婚約指輪 結婚指輪 マリッジリング エンゲージリング ピンキーリング ダイヤモンド ダイアモンド ダイヤ ダイア ジルコニア キュービックジルコニア シルバー ゴールド ホワイトゴールド ピンクゴールド プラチナ 加藤夏希 平山あや アクセサリー通販ショップ ダイヤモンドのリング・ピアス・ペンダント・ネックレスなら、セール価格のジュエリー通販ショップ 「アクセサリースタイル」 リング 指輪 イヤリング ピアス ペンダント ネックレス ダイヤモンド 誕生石 メンズジュエリー 加藤夏希 me. 平山あや with me. メンズジュエリー L&Co 婚約指輪 結婚指輪 マリッジリング エンゲージリング ピンキーリング ダイヤモンド ダイアモンド ダイヤ ダイア ジルコニア キュービックジルコニア 引用元サイト このページの情報の一部は、wikipedia 2008/07/22 から引用しています。
https://w.atwiki.jp/sokulibe/pages/510.html
+幻影の燈火ララノア 「そっちへ行ったぞ!追え!!」 夜蛍の都ミールの郊外にある森の中に帝国兵の声が響く。 人里から離れ、滅多に人が立ち入る事のない黒の森と呼ばれる森の隅にわざわざ足を運んだ理由は、ミールの村人から聞いた噂話にあった。 『森の中には、人に幻影を見せる魔物が住んでいる』 帝国の支配下に置いたミールの村だったが、村人達は帝国に不信感を持っているようだった。 村人の信頼を得る為にその魔物を討伐してきてやると小隊を率いて森の中に入ったは良いが、目的の魔物の情報は少なく、薄暗い森をただ進む事しかできない。 そんな中で見つけた一軒の山小屋。 煙突からは煙が出ており、どうやら人が生活しているようだ。 しかし、この森は地元の人間でも近付く事のない危険な森だという。 そんな森に建造物があり、ましてや人が住んでいるとなると、何か怪しい空気を感じずにはいられない。 一つ喉を鳴らしてから、ドアをノックする。 「すまない。中に誰かいるか?」 数秒後、ドアが開き出てきたのは、小さな少女だった。 「子ども……?」 「おじさんたちはだれ……?何の用……?」 まだ4,5歳と見られる少女は不安そうに見上げている。 「我々は帝国の者だ。この辺りにいると噂の“幻影の魔物”の討伐にきた。何か知っているか?」 少女の顔が曇る。 すると後ろから少女の母親らしき女性が顔を出した。 「ララノア!どいて!!」 少女がドアの前から姿を消したかと思うと、女性は手に持った鍋を投げ付けてきた。 「うおぉあ!!」 とっさにドアを閉めて飛び退いた帝国兵。 ドアに鍋がぶつかる音がしたかと思うと、下の隙間から湯気を出したスープのようなものが流れてくる。 直撃していたら大火傷を負っていただろう。 「なんだってんだ!!」 ドアノブに手を掛けるが、内側から鍵を掛けられたのかドアは開かない。 「くそっ……!お前ら!ドアをぶち破れ!!」 帝国兵は数人でドアに肩をぶつけて激しい音を立てた。 ミシミシと軋むドアは次の一撃で大きな音を立てて壊れ、帝国兵は山小屋の中に雪崩れ込む。 家の中に土足で踏み入るが人影はない。 「帝国を敵に回したくなければ出てこい!!」 聞き耳を立てるが、返事も物音もなく、家の中は静まり返っている。 「隊長!裏口がありました!ここから逃げたと思われます!」 「子どもを連れた女の足だ。そう遠くには行けないだろう」 隊長の命令を受けて、部下達は森の中を捜索する。 薄暗い森の中といえど、2人の足跡を見つけるのはそう難しい事ではなかった。 「いたぞ!あそこだ!!」 十数分後、女性と少女の背中を見つけた兵士は指を指す。 少女の手を引いて必死に走る女性だったが、男達の足に追いつかれるのは時間の問題だった。 「さぁ、鬼ごっこは終わりだ。知ってる事を話して貰おうか」 女性と少女を囲んだ小隊は、剣を突きつける。 明らかに何かを隠している2人に手荒な真似はする気はないが、抵抗するのであればやむを得ない。 「……」 少女を抱えて沈黙を守る女性。 「そんなに話したくないなら、仕方ねぇな!」 そう言うと、隊長は女性を取り押さえて少女をその腕から取り上げる。 「やめてっ!!!」 少女を抱きかかえた帝国兵に手を伸ばす女性に剣を向けた。 「俺達だって話してくれたら危害を加えるつもりはねぇんだ。幻影の魔物の事を何か知っているのだろう?」 「……」 女性は隊長を睨みつけている。 次の瞬間だった。 女性は少女を抱えた隊長に体当たりをして押し倒す。 「何をっ!!」 隊長の手から少女を取り上げると地面に少女を下ろし、隊長の手から離れた剣を拾った。 「ララノア……あなただけでも逃げて……」 女性は手を震わせながら剣を構える。 少女はどうしていいのか分らないのだろうか、おどおどとしている。 「早く!!」 女性の言葉を聞くと、少女は目に涙を浮かべている。 「この女!!ふざけやがって!!」 立ち上がった隊長は、女性を思いっきり殴りつけた。 「きゃぁああ!!」 「調子に乗りやがって!帝国を敵に回すとどうなるか教えてやろうじゃねぇか!」 女性の肩口から胸にかけて長剣を振り抜いた。 飛び散る鮮血。 「おらぁっ!死にたくなければさっさと話せ!!」 「ララ…ノア……早く……逃げて……」 血を流しながらも尚、少女の事を庇うように帝国兵に立ち向かおうとする女性。 「あなた達には……この子を渡さない!!」 絶対に子を守らんとする母の眼。 ビリビリと威圧する女性からは、何か恐怖すら感じる。 「うぉおおおお!!!」 気付けば、剣を振っていた。 (仕方のない事だ!この女が悪いんだ!俺は何度も話せって言ったのに、抵抗ばっかりしてきやがった!この女が悪いんだ!) 血を流し、倒れこむ女性。 もう助かる事もないだろう。 それだけの感触が手にあった。 「おかぁさん!!!!!やめてよ……やめてよ!!!!!!」 少女の悲痛な声が暗い森に響き渡る。 帝国兵の目に入ってきたものは、信じられるものではなかった。 「なんだっ……!?これは……」 巨大な翼を持った魔物……いや、魔獣と言うべきだろうか。 見たこともないその魔獣からは、圧倒的な力の差を感じる。 (この少女が魔物を召喚したとでも言うのか!?なんなんだ!?) 「うわあああああ!!!」 突然足元にドサっと何かが倒れたと思うと、部下が血を流している。 胸には、斬撃の跡がある。 「どうした!?おい!!」 次の瞬間、部下の一人が剣を振り上げて襲いかかってくる。 「化物めぇええええ!!」 「おい!何してるんだ!?」 剣をなんとか弾くが、何が起きているか分らない。 次の瞬間、目の前の部下の後方で魔獣が真っ赤に燃え上がる。 「畜生!!」 すぐに構えて、部下の後ろに回り込むように踏み込むと、魔獣に向けて全力で剣を突き刺す。 「ぐわああああ!!」 目の前から聞こえたのは、部下の叫び声。 魔獣はフッと消えたかと思うと、自分の剣が部下の胸を貫いていた。 「……っ!!!」 力なく倒れていく部下。 (これは……一体……) 辺りを見渡すと、魔獣が1体…2体…3体……。 その奥に、涙を流す少女が見えた。 ある魔獣は、その姿を禍々しい死神に変えていく。 ある魔獣は、凍てつくドラゴンへと変貌した。 そして、一斉に隊長に向かい襲いかかる。 (まさか……このガキが……幻影の……魔物……) 森の中に、少女の泣き声が虚しく響いた。 ――数年後 商業都市イエルに辿り着いた少女。 少女はあの優しかった母をこの世に復活させる為に、旅をしてこの街に辿り着いた。 様々な人種が集まるこの街ならば、母の読んでくれた絵本に出てきた『魔神の心臓』に纏わる情報が手に入るかもしれない。 “幻影の魔物”と呼ばれ、忌み嫌われた自分に、唯一優しさをくれた母。 あの日、母を失った少女は、母を取り戻す事だけを考えていた。 目を閉じれば、今でも鮮明に母との思い出が蘇る。 ――いい?ララノア。あなたは素晴らしい才能を持っているの。あなたの魔法は、傷ついた人を助ける事ができるのよ。決して、悪いことではないの。周りの人達がなんと言っても、絶対に気にしちゃダメよ? 生まれつき高い魔力を有していたララノア。 その治癒能力は非常に高く、一般的な術士が3日かけて治癒するような重体患者でも、半日程で完治させてしまう程の魔法を使いこなしていた。 しかし、強力すぎるその魔法をかけられた者は、副作用として幻覚症状が現れてしまう。 症状が出た者はララノアに怯え、街の人々はララノアの家族を虐げるようになっていった。 “幻影の魔物” いつしかそんな呼ばれ方をするようになる。 母はララノアの安全を考え、街を出て森の中で過ごす事を決め、あの山小屋でララノアとの生活を始めた。 街から離れて不自由はあったものの、母との幸せな生活。 母は毎晩絵本を読んでくれた。 その中の一つに『失った宝石』という絵本があった。 主人公は幼なじみと共に、宝石を探しに仲間と旅へ出る。 しかし、道中で橋が落ちて幼なじみを失ってしまった。 宝石よりも、大切なものを取り戻すために火山に住む魔神から、“魔神の心臓”を手に入れる。 死者を生き返す事のできる“魔神の心臓”で幼なじみを生き返らせ、失った宝石を取り戻すというストーリー。 母を取り戻す為の唯一の手がかり。 絵本の話が本当の事かどうかは分らない。 それでも、母を生き返らせる事ができる可能性がわずかでもあるならば、それに賭けるしかなかった。 ふと、路地の奥から賑やかな声が聞こえてきた。 導かれるように、騒がしい建物へと入ると、そこには小さなテーブルが並び、酒を飲み交わす男達の姿があった。 突然店に現れたこの場に似つかわしくない少女に、酒場の男達の視線が注がれる。 「どうした?迷子かい?」 男の一人が声を掛けてくる。 「違う……。私は、知りたい事があるの……」 「ほぅ、何が知りたいんだ?俺で知ってる事なら答えてやるぜ。おい!席をひとつ空けてくれ。あと、この子にジュースを」 声を掛けてきた男の仲間であろう強面の男性は、酒を飲みながら煙たそうにララノアを見る。 「おい、ヤンギ……。おめぇそうやって何でもかんでも首突っ込むのやめろよ」 「まぁまぁ!かてぇ事言うなよ!困ったときはお互い様だろ」 「んな事言ってもよ!今だってお前が持ち込んだ面倒事の計画を立ててる最中だろうが!“魔物の巣”を叩くなんて……命が危ねぇかもしれねぇんだぞ!」 同じ席に座っている小柄な男が口を挟む。 「まぁまぁ……あんただってヤンギが助けてくれなかったら、あの時魔物に食われてただろう。そういう奴なんだよ。あいつは」 「ちっ……仕方ねぇな……」 男はつまらなそうに天井を見て貧乏揺すりをしている。 用意された席にララノアを案内するヤンギ。 「で、何が聞きたいんだ?」 ララノアは運ばれてきたジュースに目もくれずに口を開く。 「火山に住む魔神がどこにいるのか知りたいの……」 「わははははは!!」 突然男が笑い出す。 「『失った宝石』に出てくる魔神の事か?そりゃまたすげぇもんを探してるな!」 「まぁまぁ、茶化すのはやめようぜ」 酒を飲みながら大笑いをする男をヤンギが止める。 「お嬢ちゃん名前は?」 「……ララノア」 「そうか、良い名だ。ララノアはもしかして、大切な人を亡くしちまったのか?」 「……」 ララノアの頭に母の顔が浮かぶ。 「まぁ、なんだ。あの話は全部が全部作り話じゃねぇって噂を聞いた事があるぞ」 「ほんと…!?」 「確かに……俺も聞いた事がある。イオの魔神だったか……」 「そうそう、それだ。イオの火山には炎の魔神が住んでるっていう話」 酒場の一角に置かれたテーブルでは、他の者が聞いたら笑われるであろう話が続けられる。 「おいおい、お前らマジなのか?まったく……俺はお伽話には興味がねぇ。“ララノアちゃん”の話が終わったら呼んでくれ。俺は明日の作戦の話をしにきたんだ」 そういうと強面の男は席を立って酒場のカウンターの方へと歩いていった。 「でも噂では、魔神の心臓を取りに行こうとした奴は、それができなかったとか……」 「あぁ、魔神は魂のみで生きてるから実体がねぇって話だよな」 「なんでも……人間にその魂を憑依させなきゃいけないとか…」 「その話はホントかどうか怪しいな……。実際に憑依させた成功例はないんだろ?」 「まず魔神を憑依させる為に、具現化してる幻に勝たないといけないらしいが……兵団が滅ぼされたとか聞いた事があるな…魔神に勝てるような人間じゃなきゃ無理だとかなんだとか……」 「そうだそうだ。まぁ、噂話だからどこまで本当かわからねぇけどな」 ララノアは男達の話をジッと聞いていた。 その話が本当かどうか分からなくても、それが本当ならば、母を生き返す事ができる。 他にあてはない……だからこそ、どんなに小さな情報でもララノアにとっては貴重な情報だった。 ヤンギは笑いながらララノアを見る。 「まぁ、なんだ……世の中にはよ、噂話は沢山ある。暗黒組織“夜の鍵”の存在だろ?800年間名前の変わらないマーニルの魔法学校の学長。コルキドに眠る忘れられた三種の神器。血を求め、奪った魂を使用者に宿すヴァンパイアの魔剣。魔の海域デビルズガーデンから出てきた幽霊船なんてのもあったな」 「ははは!どれが本当で、何が嘘かは分らないけどな」 「だが、俺は全部あると信じてるぜ!だってよ!本当にあるって方が夢があるだろ!?」 「そりゃそうだ!!」 ララノアは、ヤンギ達の話を聞き終えると席を立つ。 「……色々ありがとう」 一つ小さなお辞儀をすると、背を向けて酒場を後にする。 「おい、もういっちまうのか?今晩の宿はあるのか?」 少女はその声に反応する事なく酒場の扉を開き、姿を消した。 この数年で除々に魔力の制御を覚えたララノアは、魔力の強弱や質で魔法を掛けた相手に見せる幻影をある程度コントロール出来るようになっていた。 これにより、資金の調達に苦労はない。 幻影を見せて驚かせば、簡単に財布を奪う事ができる。 それが悪である事を知ってはいたが、目的の為には仕方のない事と割り切り、罪悪感を覚えながら幻影を見せて旅を続けた。 ―――おかぁさん…… イエルを出ようとしていた行商人に幻影を見せて馬車を走らせること数日。 遠くに、山頂が赤々と燃え上がる山が見えた。 その火山の麓(ふもと)に、明かりがポツポツと光る光景。 イオの街に辿り着いた事を少女は確信した。 あの火山に、母を取り戻す為の鍵である魔神がいる。 ララノアは灼熱の火山を登っていく。 険しい山道を登るにつれて体感温度は上がり続け、額には汗がにじみ出る。 それでも母の為に、ゴロゴロと岩が転がる道を必死に登り続けた。 辿り着いた火口では、マグマがゴボゴボと音を立てている。 「……魔神は……いない……?」 マグマを見つめるララノアの表情に不安がよぎる。 その時、マグマが揺れたかと思うと、中央に渦が現れた。 ――ゴゴゴゴゴゴ 渦はその大きさを増したかと思うと、中心から何かが現れる。 「魔……神……」 聞いた噂通り、炎を身に纏い、強大な力を持った魔神。 その巨大で圧倒的な姿に恐怖を覚える。 魔神は少女を見下ろすと咆哮する。 ――グォオオオオオオオ!!!! ララノアは走った。 魔神から一刻も早く逃げなければいけない。 ここで命を失えば、今までの努力が水の泡だ。 その表情は使命感で溢れる。 イオの街まで降りてきたララノアは、早くも次の行動に移る。 (魔神の魂に耐えられる強靭な人間でなければいけないとか……) 強靭な人間……つまりは、大柄で強い人間でなければいけない。 もし失敗すればその人間は死んでしまい、“魔神の心臓”を手に入れる事も出来ないだろう。 だからこそ、この人間の選定にミスは許されない。 イオの街に入ると、まずは宿を探す。 宿屋の主人は、見慣れない少女が一人で宿泊する事に多少の疑問を持っているようだった。 「お嬢ちゃん一人かい?パパやママと待ち合わせかい?」 「お父さんはいない……。おかぁさんに会う為に、ここに泊まらなければいけないの……」 何か訳ありだと感じ取った主人は、怪しみながらも宿泊帳簿を少女に渡す。 「ここに名前を書いてくれるかい」 行商人から手に入れた財布から宿代を払いながら、質問をしてみる。 「この街で、一番力持ちで、強い人をおじさんは知ってる?」 宿屋の主人は不思議そうな顔をした後答える。 「力持ちで強い人……ねぇ……。そうだな。そりゃ、ガルさんしかいないだろうな」 「ガルさん?」 「あぁ、鍛冶屋街で5本の指に入る腕の鍛冶師だ。あの人よりも力持ちっていったら、大陸の中に何人もいないんじゃないか?」 「そうなの……ありがとう……」 「なんでそんな事を知りたいんだ?」 「その人に用事があるから……」 ――翌日 ララノアは早速、鍛冶屋街に足を運ぶ。 宿屋の主人が言っていた通りに道を進むと、他の鍛冶屋と比べると少し小汚い工房が見えてきた。 中からはハンマーで鉄を叩く音が響いてくる。 工房を覗き込むと、大きな背中が見えた。 その背中についたゴツゴツとした筋肉は、強靭な人間という言葉がしっくりくる。 大きなハンマーを振り下ろし、鉄の塊の形を整えているようだ。 ララノアは手に魔力を集める。 あの男に幻影を見せて、火山へ連れて行く。 そして魔神をあの男に憑依させれば、魔神の心臓が手に入るだろう。 幻影さえ見せてしまえば、腰に隠したナイフで心臓をえぐり取る事も容易い…… それが、自分に出来るかどうか…… 人の命…… しかし母を取り戻す為には…… 「おや、お嬢ちゃん見ない顔だな。どうしたんだい?」 ふと掛けられた声で我に返った。 工房の中にいた男がこちらを見ている。 何か心配そうな表情で近付いてくるこの男が「ガルさん」に違いない。 この男を……殺せるかどうかだ。 母の為に……死なせる事ができるかどうか…… 「……おじさんはわたしを助けてくれる?」 「なんだ?ママとはぐれちまったのかい?どっから来たんだ?」 「ママは……いない……。だから……会いたい……」 本心が漏れる。 母の顔を浮かべて心を決める。 「お嬢ちゃん、名前は?」 「私はララノア」 手に魔力を込めて男に放出する。 「おじさんは……もう……私の……」 ―――――幻影の中。 男は頭を抱える。 確実に、ララノアの術にハマっている。 何かをつぶやきながら、工房の外に出て行く男。 男の後を追いながら魔法をかけ続け、火山の方面へと誘導する。 「おう!ガルさん!お出かけかい?」 街の人が手をあげて男に話しかけている。 しかし、男にその声は届かない。 「早く……もっと早く歩いて……」 少し強く魔法をかける。 男は辺りを見渡してから走り出す。 街中を抜けて、火山の山道へと入る。 山頂へ向かい、必死に走る男。 (これでいいの……もうすぐ……おかぁさんが……) 山頂の火口に辿り着いた男は、ボソボソと何かを言いながら頭を抱えている。 ララノアは、火口の近くでマグマを見つめる。 「さぁ……おいで……炎の……魔神……」 あの時と同じように、マグマに渦が発生すると魔神がその姿を表した。 男への魔法はもうかけていない。 そろそろ意識を取り戻す筈だ。 「魔神よ……あの人に憑依して……」 魔神に言葉が伝わっているのだろうか。 ララノアを見つめ続ける魔神。 「どうして……早く……」 その時、太い声が飛んでくる。 「ララノア!逃げろ!!!」 振り向くと、意識を取り戻した男がこちらを見ている。 (何故……逃げなければいけないの……) 次の瞬間、男は走り出し、魔神に向かって跳びかかった。 「グォオオオオオオオ!!!!」 怯む魔神。 (何故この人は、魔神と戦おうとしているの……?) 「貴様の好きにはさせない!この街は俺が守る!ララノアにも指一本触れさせはしない!このガルスタークが相手をしてやる!!」 男は鼻息を荒くしながら、魔神を睨みつける。 (なんで……私が……守られるの……?) 魔神と戦い続ける男。 攻撃を繰り返し、魔神と互角に渡り合っている。 (私は……あなたを……利用しようとしているのに……) 「ぐあっ!畜生………なんの…これしき!!」 (私の事なんて……何も知らないのに……) 「させるかぁあああああ!!!」 気がつけば、ララノアに向かっていた魔神の攻撃。 男は、赤々と燃える魔神を素手で殴りつけた。 (どうして……そこまでするの……?) ――あなた達には……この子を渡さない!! 母の声が頭の中に響く。 (なんで……おかぁさんと……同じように……私を……守ってくれるの?) 「これで終わりだ!!あるべき場所に帰れ!!」 魔神の盾を取り上げた男は、渾身の力で魔神を殴りつける。 「グォオオオオオオオ!!!!」 火口に倒れていった魔神は、マグマの中で暴れているようだ。 そして男はその様子を見下ろす。 (なんで……私を守ってくれるの……) 辺りには不気味なマグマの音だけが響き、戦いが終わった事を知らせていた。 こちらに振り向いて駆け寄る男。 「怪我はないか?ララノア…」 息を切らしながら、ララノアの両肩に優しく手を置く。 その手は、魔神と戦った痕跡だろうか…焼けただれてボロボロになっていた。 いつの間にか、ララノアの頬には涙が溢れていた。 自分の事を守ってくれた。 その姿が母と重なった。 (私は……こんなに優しい人を……殺めようと……) 大粒の涙がボタボタと地面に落ちる。 「なんでそこまで……。今…私が…治して…あげるから……」 怪我を治そうと手に魔力を込めた瞬間、辺りが明るくなったような気がした。 (え……?) 目の前の火口から、炎が吹き出したかと思うと、ララノアとガルスタークに向かって襲いかかる。 (なに……これ……) 「危ない!伏せろ!!」 炎に向かい盾を構えてララノアを守る男。 しかし、襲い来る炎を防ぎきる事はできず、盾の裏へ回り込むようにして男の身体を炎が包み込み、そのまま身体の中へと流れ込んだ。 バタリと倒れこむ男。 ララノアは、泣きながら回復魔法をかけ続ける。 男の皮膚は焼け、助かる見込みは少ないかもしれない。 それでも、必死に治癒を続けた。 自分の罪は消えないだろう……だからこそ、この男を救いたい。 半日ほど魔力を注ぎ続け、男の傷はある程度塞ぐことができた。 しかし、男の身体の様子がおかしい。 赤々と燃えるような色の皮膚は人間とは思えない高熱を発している。 (とりあえず、街に戻らないと……) ララノアは、羽織っていたマントを地面に敷くと、男をその上に乗せて引き摺るように下山する。 マントの端を持ち下り坂をズルズルと引きずっているとはいえ、自分の何倍もある大男を運ぶのは想像以上に難しかった。 それでも、この男をなんとか助けようと、必死に進み続ける。 街の近くまで運ぶと、イオの住人がララノアを見つける。 ガルスタークの異変に気が付いた住人は、彼を運ぶのを手伝い、ララノアと一緒に男の工房まで連れてきた。 住人は、人を呼んでくると言って工房を出て行く。 ララノアは、その間も工房の中で寝かされた男が意識を取り戻すように、回復魔法をかけ続けた。 ――数時間後 「ん……んん……」 祈り続けたララノアの願いが届く。 「気がついた……?」 男の目が開いたのを確認して、嬉しさがこみ上げる。 「ララ…ノア…無事……だった…か……」 この状況でも、自分の心配をしているガルスタークに、また涙が溢れる。 「ごめんね……私のせいで……」 「ララノ…アの…せいでは…ない……泣くな…」 男は何も知らない。 「違うの……私が…」 自分が今回の事を引き起こした。 ララノアはこれまでにない罪悪感で押し潰されそうになる。 全てを話そう。 何もかも…… (きっとこの人は怒るよね……それでも、言わなきゃいけない……話さなきゃいけない……) 「私が――」 「貴様ら…誰だ…!」 男の声でララノアの言葉は遮られる。 後ろを振り向くと、数人の兵士だろうか……鎧を着込んだ男達が工房の入り口に立っていた。 「あなた達は……」 その鎧は見覚えがあった。 あの日、森の中の山小屋にやってきた、母を殺した帝国の鎧…。 「こいつだな……。連れて行け」 兵士は少女の事を担ぎ上げる。 「やめて……!!離して……!!」 「大人しくしろ!!」 そのまま工房の外に連れ出されるララノア。 ガルスタークは、まだ苦しそうにしている。 彼を一人でこんな所に置いて行くわけにはいかない……。 (この兵士達に幻影を見せれば……) しかし、ガルスタークに殆ど1日中魔力を注ぎ込んだララノアには、もはや残っている力はなかった。 もう疲労も限界に達し、腕を上げることもままならない。 (今まで私がしてきた……報いなのかな……それでも……彼は悪く無いのに……) 「よく報告してくれたな。下がっていいぞ」 「はい……」 頭を上げると、イオの宿屋の主人がララノアを見ていた。 「確かに……ミールから報告があったガキにそっくりだ。この街にも張り紙をしておいて良かった」 帝国兵の一人の言葉を最後に、ララノアは疲労から意識を失う。 ――数日後 目を覚ましたララノアは、牢の中に入れられていた。 手枷が付けられて、殆ど身動きがとれない。 時々、帝国兵だろうか、声が聞こえてくるものの、その内容は殆ど聞き取れない。 陽も当たらない部屋で、何日も過ごすことになる。 ――さらに数日後 水や僅かな食料は与えられているが、ララノアの精神は限界に達しようとしていた。 手枷のせいで魔法を放つ事も出来ず、ただただ時間が過ぎるのを待つ。 いっその事、舌を噛み切ろうかとも考える…… が、あの男の顔が脳裏に過る。 (こんな所で死ねない……彼を……治さないと……) その思いだけが彼女をこの世に留める。 ――さらに数週間後 どれくらいの時が経ったのか、もう分からなくなった時だった。 牢の鍵が開けられて、数人の兵士が中へと入ってくる。 「ようやくお前の移送先が決まった。本当に幻影の魔物と言われる程危ない存在なのかは知らんが……生きていられるといいな。よし連れて行け」 男がそう言うと、周りの兵士が目隠しをしてから手枷を外し、ララノアを乱暴に運ぶ。 抵抗する事も出来ず、どこかに降ろされた。 「よし、それじゃあ頼んだぞ」 「はっ!」 馬の鳴き声が聞こえた。 身体が揺れる……きっと馬車に乗せられたのだろう。 どこに連れて行かれるのか、ララノアには見当も付かない。 今が朝なのか、夜なのか……それすらも分らない。 ただ、今はジッと耐え凌ぐ事しかできない。 ――馬車に乗せられてから数日が経った 馬車は揺れ続ける。 時々立ち止まると、兵士の声が聞こえ、また揺れる。 この先どうなるのか、考えても分かる訳がない。 それよりも、あの男の事を考えた。 生きているだろうか…… もし死んでいたら……償う事もできない…… もし、彼が生きていて、再会する事ができたら、今度こそ全てを話そう。 そして、彼が許してくれるならば……彼の身体が元に戻る方法を探そう。 きっと……母ならばそれを許してくれる。 あれだけ優しい母なのだ。 自分のする事を信じて見守ってくれるだろう……。 「おい!なんだアイツは!?馬車を止めろ!!」 突然、帝国兵の慌ただしい声が聞こえた。 急停車する馬車。 剣を抜く音。 「貴様何者だ!?何故道を塞ぐ!!」 どうやら誰かが馬車の前に立ちはだかっているようだ。 誰かは分らない…… しかし、次に聞こえてきた言葉で、ララノアの心は晴れ渡る。 「貴様等……ダナ……」 確かに聞こえたその声は、あの男ガルスタークの声だ。 生きていた…… 彼は生きている…… 想いが天に届いたような、そんな気分だった。 「うわあああああああ!!!」 次の瞬間、大きな衝撃が走ったかと思うと、ララノアは馬車の外に放り出された。 地面に投げ出された衝撃で、手枷は外れ、目隠しが取れる。 突然差し込んだ光に目を細めると、真っ赤に燃えるガルスタークの姿が移った。 何か、様子がおかしい。 自分が乗っていたであろう馬車は横に倒れて燃えている 「なんで……燃えてるの……」 その姿は、あの火山で見た魔神を彷彿させる。 (まさか……魔神が……憑依……して……) 嫌な予感がララノアを包み込む。 イエルで聞いたあの噂。 ヤンギという男達の会話を思い出す。 (嘘……うそだよね……) 「見ツケタ…………貴様……」 男は真っ直ぐララノアに向かって歩を進める。 「嫌……いや……ごめんなさい……ごめんなさい!!」 ララノアは手を前に出して魔法を放つ。 どうにかしてこの状況をなんとかしなければ、命はないだろう。 まず、この男に幻影を見せる。 それから何か……次の手を考えれば…… 「ララノア……?」 彼の声に耳を疑った。 それまでとは一転して、優しさに溢れたあの声…… 「ララノア……何を……ここはどこだ?」 「私が……わかるの……?」 男は、胸に手を当てて何かを確かめている。 「魔神から……肉体を取り戻したのか……?」 「ど……どういう事……?」 男は話し始めた。 あの後、工房で意識を失った事。 次に目を覚ました時には炎の魔神に身体を乗っ取られていた事。 魔神が身体を動かしている中、精神のみでもがいていた事。 そして、魔神はララノアを探し、帝国兵を次々と襲っていた事。 「こんな事……信じろと言われても……無理かもしれないが……」 ララノアは彼の言葉を黙って聞いていた。 そんな事があったなんて、自分はどれだけの事をしてしまったのかと、更に自分を責めようとした。 しかし、今は彼が目の前にいる。 ケジメをつけなければいけない。 「全部信じるよ……おじさんの言う事……全部……」 「ララノア……」 「だから、私の言う事も……信じて貰えるかな……?」 今まで自分がしてきた事。 しようとしていた事。 全て……包み隠さず…… きっと彼は怒るだろう。 自分のせいで、そんな身体になってしまったのだ。 怒らない方が不思議だろう。 それでも、言わずにはいられなかった。 少女は涙を流しながら、少しずつ、少しずつ、伝えていく。 「だから……私は……うっ……うっ……おじさんを……」 「もういい……ララノア」 ガルスタークは泣き続ける少女の前に座った。 「今まで、一人でよく頑張ったじゃないか……」 「…………えっ……?」 男は笑っているように見える。 「もういいんだ……」 「私のせいでおじさんはそんな身体になっちゃったんだよ……!?いいわけないよ……」 「鍛冶屋は……廃業かもしれないな。ははは…こんな身体じゃ客がおっかながって逃げちまう」 怒っている様子ではない。 本当に、心の底から、ララノアを励まそうとしているように見える。 「まぁ、こうなったのも俺の運命なんだろう!ガハハ!」 (なぜ……?) 「なぁに悪い事ばかりじゃない!俺の周りは夜だって明るいぞ!」 (どうして……?) 「だからそんな悲しそうな顔するな!なっ?」 (そんなに優しくするの……?) 「ほら、顔をあげてくれ……俺は怒ってなんかいない!」 「なんでそんなに優しくするの!!」 自然と叫んでいた。 「……俺は――」 一つ間をおいて何かを考える男。 「そうだな……俺は、人が悲しんでるのを見るのが嫌いなんだ」 少女に笑いかけるガルスターク。 この時感じた温かさは、彼の身体から出る炎のせいではない。 ララノアの心をそっと包み込んだのは、ガルスタークの純粋な優しさだった。 数週間後―― 「ララノア……あんまり走ると転ぶぞ……」 前を走る少女を心配する炎の男。 「早く“燃え太郎”の身体を元に戻したいの!」 楽しそうにする少女。 「その呼び方はもう揺るがないのだな……」 ある日、“おじさん”と呼ぶのは嫌だと言い出したララノア。 好きに呼んでいいと話すと、何を思ったのかそう言い出した。 元の名前を呼ぶのは、身体が元に戻ってからと言い張り、それ以降この調子だ。 「ほら!燃え太郎も早くきて!あっちに洞窟があるよ!今日はあそこで寝れるかな?」 ガルスタークの見た目では、普通の宿に泊まる事ができない。 ララノアだけでも暖かいベッドで寝て欲しいと打診をしたガルスタークだったが、ララノアは首を縦に振らなかった。 仕方なく、洞窟や廃墟で寝泊まりする生活。 この旅がいつまで続くのかも分らない。 しかし、ララノアに不安はなかった。 「はい、燃え太郎。少しジッとしててね」 洞窟に入ると、手を前に出して魔法を発動するララノア。 ガルスタークの中にいる魔神の精神を抑えこむ。 定期的にこの魔法をかけなければ、ガルスタークの中の魔神の精神はどんどんと大きくなり、やがて身体を乗っ取ってしまう事が分かった。 元の身体にする為の方法を見つけるまでは、一緒に行動をしなければならない。 それはララノアがガルスタークの元を離れてはいけない理由にもなっていた。 「はい、終わったよ!燃え太郎!」 「いつも……すまないな……」 「いいの!今度は私が燃え太郎を守ってあげるんだから!」 ララノアは、明るい笑顔を返す。 その笑顔は母を失って以来、初めて人に見せる笑顔だった。 「やっと…笑えたな……」 ガルスタークも少女に釣られて楽しそうに笑っていた。 +巨亀の巫女ルルーテ 巨大な甲羅を持った亀のような魔物、“アスピドケロン”。 そのあまりに巨大な姿に、魔物だと認知できる者は少ない。 大きな街が甲羅に建設されているのだから無理もないだろう。 外部の人からは、この街が「海獣都市」と言われている事に疑問を持たなければ、その事実にたどり着く事も難しかった。 もちろん、アスピドケロンを操舵するための巫女の存在も、街の住人しか知らない。 その昔から、代々アスピドケロンを操舵し続ける巫女。 強大な水の魔素を身体に宿した巫女は、その生涯を“巫女の間”で過ごす。 巫女の候補として街中から15歳以下の子どもが集められ、体内に宿した水の魔素を測定される。 水の魔素の高い順から、7人の少女が巫女の見習い、“見習い巫女”として選出される。 見習い巫女は、巫女と一部の関係者しか入る事が許されない“巫女の神殿”に通い、更に水の魔素を増強する修行が行われた。 週に一度、修行の成果を見る為に水の魔素の測定が行われ、その度に7人の少女は序列をつけられる。 当代の巫女がいなくなった際に、序列1位の見習い巫女が正式な巫女として任命される。 何故、巫女がいなくなるのか―― 見習い巫女達は知る由もない。 それは幼い少女、ルルーテも同じだった。 「おつかれ様!今回も1位なんてすごいね!わたしなんか全然だめ。なんか憧れちゃうなぁ!」 ルルーテは序列1位の見習い巫女に明るく話しかける。 しかし、返事はいつもと同じように冷たいものだった。 「気安く話しかけないで!…何を狙ってるか知らないけど、私達はライバルなのよ?友達みたいに接するのはやめて」 鋭い目つきでルルーテを睨むと、彼女はそのまま歩いていってしまう。 表情が曇るルルーテの肩にポンポンと手が置かれる。 振り向くと、見習い巫女で唯一仲の良いリナの姿があった。 「ルルーテ、やめときなって。みんなピリピリしてるんだよ。あの子はずっと1位だけど、いつ2位になるか分からないし…それにあんな噂もあるしね……」 あんな噂。 本当かどうか分からない、信じたくもない昔からある噂。 “見習い巫女狩り” 巫女となった少女の家族は、街から莫大な富を与えられ、その後3代は安泰だと言われている。 その為、他の候補の見習い巫女を蹴落とす為に、見習い巫女が殺されることは珍しくないらしい。 見習い巫女は、普段口に出したりはしないが、常に「見習い巫女狩り」の危険に晒されている事になる。 一番危険なのは序列1位だというのは誰でも簡単に想像はついた。 「でも、わたしはみんなとお友達になりたいよ。どうせみんなで修行するなら、楽しいほうがいいもん!」 ルルーテは当たり前のように返す。 その様子にリナはため息を吐く。 「はぁ……あんたに言ったアタシがバカだったわ。まぁ、あんたは万年最下位だし、そんな心配はないんだろうけどさ!」 茶化すように額に手の平をつけながら話すリナに、ルルーテは頬を膨らます。 「むぅ~!リナちゃん!なんかバカにしてない!?」 「あっはっは!大丈夫だよ。ルルーテにはそのまま明るく生きて欲しい!巫女になれなかったとしてもね!」 リナは他の見習い巫女と違いルルーテに笑顔で接してくれる。 ルルーテにとっては見習い巫女の中で唯一の友達。 自分が巫女になることは無理だと諦めていたルルーテだが、どうせならリナに巫女になって欲しいと思っていた。 巫女の神殿での訓練を終えると、ルルーテはいつもお気に入りの場所に向かう。 アスピドケロンの顔に一番近い祭壇で海を眺めながら、アスピドケロンに話しかけるのがルルーテの日課だった。 自分の何百倍もあるアスピドケロンだが、ルルーテからすればペットのような存在なのだ。 「ねぇねぇ!今日ね、リナちゃんが初めて序列2位になったんだよ~!すごいでしょ~!?リナちゃんが巫女になったら、きっとケロンちゃんも楽しいと思うんだよね~。あ、ケロンちゃんは誰に巫女になって欲しいの?」 今日もいつも通りアスピドケロンからの返事はないが、ルルーテはニコニコしながら海を眺める。 水平線に夕日が落ちて、街がオレンジ色に染まる。 祭壇の海に面した柵に座り、足をブラブラさせながら夕日を見つめていた。 「お腹すいてきたな~。あ、ケロンちゃんは何食べるの?ずっと泳いでたら疲れちゃうよね?わたしだったら絶対むりだよー。尊敬しちゃうなー」 その時、どこからか聞いた事のない言葉が響いてくる。 (毎日毎日、頭の上でギャーギャーうるさいんじゃ!!少し静かにしてくれんか!?) 「え!?誰?どこにいるの!?」 ルルーテは辺りを見渡すが、周囲には人の姿はなかった。 「ケロンちゃん…なの?ねぇ、そうなの!?そうだよね!?」 ルルーテは嬉しさでいっぱいになる。 不思議と疑う事を止め、アスピドケロンに話しかけ続ける。 「ねぇ、答えてよ!!もっとお話しようよ!」 さっきよりも大きな声が頭の中に響きわたる。 (誰がケロンちゃんだ!ワシをなんだと思うとる!) 「アスピドケロンだから、ケロンちゃん!かわいいでしょ?」 (かわいい?じゃかぁしいわ!!) ルルーテは頬を膨らませる。 「何よそれ!せっかくお話できたのに!!そんな言い方しなくたっていいじゃん!!」 それ以上何を言っても返事は来なかった。 しかし家までの帰り道のルルーテは、ドキドキと胸を高鳴らせていた。 アスピドケロンと会話をした。 その事がなによりも嬉しかった。 翌日、巫女の神殿でリナと顔を合わせるやいなや、ルルーテは昨日の話をする。 「リナ!聞いて聞いて!ケロンちゃんとお話したんだよ!!」 リナは不思議そうにしている。 「ケロンちゃんって…誰?」 「ケロンちゃんはケロンちゃん!アスピドケロンだよ!」 リナはルルーテの顔を見ずに茶化すように話す。 「え?アスピドケロンと話したの?」 「そうだよ!ケロンちゃんが頭の中に話しかけてくれたの!」 「おお……そうかそうか……そりゃすごいなー!」 「もう!ホントなんだよ!?まだ…仲良くはなってないけど…本当に喋ったんだよ!?」 「あははは!ルルーテ、あんたは本当に面白いね!」 全く信じる様子のないリナは、そのまま話を切り上げてどこかに歩いていってしまった。 ルルーテは絶対に信じさせたい、見返してやろうという思いで燃え上がる。 その日の午後も祭壇へ向かいアスピドケロンへ話しかけ続ける。 「ケロンちゃんは何が好きなの?なんか欲しいものあったら持ってきてあげるから、わたしとお話しようよー!あ、お母さんが焼いたクッキーはすごく美味しいんだよ?食べたい?食べたいでしょ!?」 頭の中にあの声が響いてくる。 (あー!お前はなんでそんなにうるさいのじゃ!!そんなもんいらんわい!) 「あ、喋った!わたしはお前じゃないよ!ルルーテだよ!わたし、ケロンちゃんとお友達になりたいの!」 (友達?わざわざワシじゃなくても、そこらへんにいる人間に頼めば良いじゃろう…。人間の友達も作れないような奴と、どうして友達にならなきゃならんのじゃ) 「わたしはリナちゃんっていうお友達がいるよ!ケロンちゃんはお友達いるの?」 アスピドケロンは少し不機嫌そうに応える。 (友達などいらん…。今までワシと話した人間などおらんしな。こんなにうるさい奴はお前が初めてじゃ) 「お前じゃなくて、わたしはルルーテだってば!!お友達がいないなら、わたしがケロンちゃんのお友達になってあげるよ!」 (はぁ…、物好きにも程があるな…。じゃあ一つだけ頼みを聞いてくれぬか?) 「なぁに?なんでもするよ!何が欲しいの!?」 (ワシの頭の上でバカみたいにでかい声を出さないでくれ。うるさくて敵わん) ルルーテの顔がパァっと晴れ渡る。 「うん!!!わかったよ!!!!ケロンちゃん!!!」 (それをやめろと言っているのじゃ!!) それからも毎日祭壇に足を運び、アスピドケロンと除々に信頼関係を結んでいくルルーテ。 誰に話しても信じて貰えなかったが、今までずっと話しかけていたアスピドケロンと会話が出来るという事に、ルルーテは幸せを感じていた。 「ねぇ、ケロンちゃん!今日は前に話してたリナちゃんを連れてきたよ!」 リナは苦笑いをしながら楽しそうなルルーテを見る。 「あのさ…ルルーテを疑ってる訳じゃないんだけど…なんか…ちょっと…怖い…かも…」 ルルーテは明るくリナの手を握る。 「大丈夫だよ!ケロンちゃんは全然怖くないから!ちょっと口は悪いかもしれないけど、すごく良い子なの!」 握った手の感触に違和感を覚えたルルーテは、手元を確認する。 リナの右手には包帯が巻かれていた。 「あれ?リナ、その手どうしたの?」 一瞬、リナの顔が曇ったように見えたが、すぐに笑顔に戻り、頭を掻きながら照れくさそうに見せる。 「いやぁ、昨日ちょっと転んじゃってさぁ…アタシってドジっ子属性あったんだね~あっはっは~」 ルルーテは包帯の巻かれた手を握りながら、心配そうにもう片方の手で優しく擦る。 「もう、気をつけなきゃダメだよ?リナは巫女になれそうなんだから!」 序列2位となったリナは、その後も水の魔素を増やし続け、1位の少女を抜くのは時間の問題だと言われていた。 ルルーテはリナを誇りに思い、自分の事のように喜んでいる。 「あはは…そんなに心配しなくても大丈夫だって…。あぁ、でもママがちょっと心配しちゃってたから、今日はそろそろ帰るわ!」 「えっ?もう帰っちゃうの?まだ、ケロンちゃんとお話出来てないよ?」 「ごめんごめん、今度また来るからさ!じゃあね!あ、アスピドケロン…じゃなくて…ケロンちゃん??もバイバイー!」 リナは手を振りながら、祭壇から去っていく。 残されたルルーテはポカンとしながら手を振り、リナの影が見えなくなると海の方に向き直る。 「もう!ケロンちゃん!なんでリナちゃんとはお話してくれないの?」 (大事な友達なのだろう?そんな子をいきなり連れてきて…怖がらせるなんて、どういうつもりじゃ……) 「ケロンちゃんがお話してくれたら、リナちゃんだって信じてくれると思ったのに!」 (ワシは人間などと話をする気はない。大体、信じさせた所でどうするのじゃ?) 「わたしと話してるじゃん!ケロンちゃんのお友達が増えればいいなって…わたしの友達を紹介したいって思って何がダメなの!?」 (はぁ…これ以上うるさい奴が増えたら困るわい。お前さんだけでもこんなに疲れるというのに…) 「もう!!ケロンちゃん!お前さんじゃなくて、ルルーテだって何度言ったら分かるの!!!」 また「うるさい」と怒鳴られるかと思い、とっさに口を抑えたルルーテだったが、頭の中に響く声はボソボソと小さいものだった。 (…今の見習い巫女…何を……隠して……) ルルーテは突然の話に驚く。 「ん?なーに?今なんて言ったの??」 (いや……なんでもないわい。日が落ちてしもうたぞ?明日も早いのだろう、さっさと家に帰るのじゃ) ルルーテは薄く月の出た空を見る。 「あれ…ホントだ。明日ちゃんと教えてね!」 ――翌日 いつものように巫女の神殿に向かうルルーテ。 リナにしっかり説明すれば、次こそは3人で話せるのではないかと期待に胸を踊らせていた。 神殿の近くまで辿り着くと、人だかりが出来ている。 何か……胸騒ぎがした。 人をかき分けて、その中心に辿り着くと…… 血溜まりの中にリナがいた。 腹部から大量の血が出ていいて、遠目からでも分かるくらい青白い顔は、とても生きているようには見えない。 横にはリナの母親が涙を流している。 「リナ……どうしたの……?」 ピクリとも動かないリナに近づこうとした時、母親が鬼の形相でこちらを見る。 「お前が……お前がやったのか!!!!?」 あまりの剣幕に、身体が凍りつく。 後ずさりしたルルーテは首を横に振りながら必死に訴えた。 「わたしじゃない……わたしじゃない!!!」 母親は身体を起こして、ルルーテに向かってくる。 「じゃあ誰が…リナをこんな目に合わせたの…?誰が!!」 ルルーテは恐怖で足がうまく動かせずに、尻もちをつく。 それでも向かってくる母親を、近くにいた神官が止める。 「落ち着いて下さい…。この様子では、この子は何も知らないでしょう。今はリナちゃんの側にいてあげてください」 見習い巫女を束ねている神官は、ルルーテから見ると厳しく恐ろしい存在だったが、この時ばかりはとても優しい人間に見えた。 母親は神官にもたれ掛かり、泣き崩れてその場に座り込む。 神官は母親の肩を抑えながらルルーテの方を向く。 「今日の修行は中止にします。家に帰りなさい」 ルルーテはその場に座りこみ、動かないリナを見ていた。 神官は更に続ける。 「聞こえないのですか!?早く帰りなさい!」 ビクっとしたルルーテは、なんとか立ち上がってその場を後にする。 「リナが……リナが……」 気がつくと祭壇で泣いていた。 どれだけ流しても、大粒の涙は止まらない。 昨日、ここで笑顔を見せたリナと、もう話す事もできない。 リナが巫女になる事もない。 「リナァああああああ…リナァああああああ…」 頭の中に、声が響く。 (なんじゃ…今日は一段と騒がしいのぉ…) 「ケロンちゃん…だって…だって…リナがぁあああ…」 地面に膝を付き、祭壇の柵にもたれ掛かったまま、泣き続けるルルーテ。 止まる事のない涙を止めたのは、アスピドケロンの言葉だった。 (人間はいつか死ぬ……遅かれ早かれな。お前さんの友達はそれが少し早かっただけじゃ。…確かにひどい最後となってしまったかもしれぬが、きっと天からお前さんを見ているじゃろう) ルルーテはその言葉に違和感を覚える。 「ケロンちゃん……なんでリナが死んじゃったって知ってるの?」 (っ……!?) 「ケロンちゃん……なんでひどい最後だったって知ってるの?」 (ワシは何も……) 「ケロンちゃん!知ってるなら教えて!リナに何があったの!?」 アスピドケロンは、歯切れ悪く応える。 (お前さんの…様子を見れば…なんじゃ…想像もつくじゃろう……) ルルーテは立ち上がる。 「嘘!!昨日だってなんか変な事言ってた!!知ってること全部教えてよ!お願いだから!!」 沈黙が流れ、やがてアスピドケロンの声が響く。 いつもと比べて、とても重たい声。 (お前さんの友達は、見習い巫女狩りにあったのじゃ…) 「っ……!?」 “見習い巫女狩り” あの噂が現実で起こった事に、ルルーテは動揺を隠せない。 (これが初めてではない。お前さんに助けを求めなかったのは、お前さんを巻き込みたくなかったのであろうな) ルルーテの心臓がドクンと音を立てる。 (あの子は怪我をしていたじゃろう。転んだと言っておったが…以前にも襲われていたようじゃ) 「誰……?誰がそんな事したの!?」 (犯人……。それを知ってどうするのじゃ?) 「わからない!わからないけど、このままにしておけないよ!!」 (………。) アスピドケロンは少し間を置いてから、真実を口にした。 ――翌日 ルルーテはいつもより早く巫女の神殿へと向かう。 リナの事を殺した人間を待ち伏せする為に。 神殿の門を潜り、その人物が現れるのを待った。 その時が訪れる。 「ちょっと話があるんだけど、いいかな?」 ルルーテは震える手を握りしめる。 「ルルーテ……。こんな朝からなんの用?」 序列1位の少女は、ルルーテの顔を見て不機嫌そうな顔をする。 「リナの事だけど…」 ルルーテが口ずさむと、少女は、口元に笑みをこぼす。 「あぁ、あの子…。良かったわね。ライバルが減って…。あんたも7位から6位に昇格したのよ?もっと喜んだら?まぁ、それでも最下位には変わらないのだけど……」 ルルーテは奥歯を噛みしめる。 こんなに大きな怒りを感じたのは生まれて初めてだった。 「リナを殺しといて…何を言っているの!!?」 彼女はフッと笑って言葉を返す。 「あら?どこにそんな証拠があるの?私が1位なのがそんなに妬ましいの?濡れ衣を着せるにも程があるわね」 ルルーテの目に涙が浮かぶが、溢れるのを必死で我慢する。 「あなたが……リナを階段から突き落としたのも…リナを刺したのも…わたしが知っていても、同じ事が言えるの!?」 「っ――!?」 彼女は明らかに動揺していた。 ルルーテは泣きながらも彼女を睨みつける。 しかし、彼女は笑顔に戻る。 「そう……。見てたの…。それならリナが死ぬ前に私を売っておくべきだったわね」 「何言ってるの!?なんでリナを殺したの!?」 「あの子なんか急に成長してきて…邪魔だったのよね。あの子が1位になる前に殺しちゃえば、1位の私には疑いがかかりにくいでしょ?」 「なにそれ……。抜かれないように頑張ればいいだけじゃん!なんでリナが殺されなきゃいけないの!?」 「はぁ……。まぁ、いいわ。」 そう言うと、鞄から血がついたナイフを取り出した。 少女は厳しい表情になり、ルルーテに向かってくる。 「随分仲も良さそうだったし……同じ場所に連れていってあげるわ!!」 ルルーテは構えるが、自分に向かってくる鋭利なナイフが目の前にきても、自分にこの状況をどうにかできるとは思えなかった。 とっさにギュっと目を閉じ、想像すら出来ないこれから起きる何かに備えると、瞳に溜まっていた涙が零れた。 身体にドンッという衝撃が走る。 足がグラつき、立っている事さえ出来ない。 尻もちをつくと、物凄い音が聞こえる。 何か変だと気が付くまでに時間がかかった。 どこにも痛みは感じず、地面は微かに揺れている。 恐る恐る目を開けると、目の前は石の壁で覆われていた。 少女がいた場所に、身体の何倍もある石の柱が倒れたようだ。 「なにこれ……??」 目の前の光景を理解する事も出来ずに、その場で気を失った。 ルルーテ……ルルーテ―― 目を開けると、どこか寝かされているようだった。 見慣れた天井は、巫女の神殿。 (全部夢だったの?) 周りを見渡すと、神官がルルーテを心配そうに見つめていた。 「神官様……」 ルルーテは起き上がり、頭に手を当てる。 神官は静かに言葉を吐く。 「ルルーテ。平気なようですね。よかった。立て続けに見習い巫女が死ぬと、私も困るのですよ。さぁ、修行の準備をしなさい」 ルルーテには何が起こっているのかわからなかった。 「神官様…えっと…さっき…」 「聞こえなかったのですか?さっさと修行の準備をしなさい!」 怒っているようにも見える神官に、それ以上話を続けるのは難しいと察し、言われた通り準備をして修行場へと向かった。 修行の間には少女がルルーテを含めて5人。 その中に序列1位の少女はいない。 「ねぇ、リナちゃんと、あの1位の子は……」 ルルーテは不安を抱え、他の少女に話しかけるが誰も返事をせずに無視されてしまう。 夢であって欲しいと願い続けた。 その日の修行が終わり、祭壇へ行こうとすると神官に呼び止められる。 横には鎧を着た男が5人並んでいる。 「今日から、お前たち見習い巫女に、私の従者をつける事にしました。この者達と家と神殿の往復をするように」 ルルーテは従者に連れられて神殿を出た。 ふと目に入ったのは、門の横の壊れた柱だった。 夢じゃなかった……。 リナも序列1位だった少女も、もうこの世にはいない。 見習い巫女にこれ以上危険が及ばないように、見習い巫女全員に従者がつけられた事をルルーテは理解する。 アスピドケロンと話がしたかった。 従者に思い切って切り出してみたが、寄り道は許されないと、真っ直ぐに家に帰る事を余儀なくされた。 それからは、退屈な日々が始まった。 あの日から、アスピドケロンと話ができていない。 従者は毎日送り迎えし、ルルーテに自由はなかった。 両親もルルーテには神殿に行く以外の外出を禁止され、毎日ただ修行を続ける日々が続く。 仕方がない事だと自分に言い聞かせたが、頭の片隅ではアスピドケロンの事を考えていた。 ――数日後 見習い巫女が一人いなくなった。 従者と共に神殿から帰っていた見習い巫女が、街の古い桟橋を歩いていたら桟橋が倒壊したらしい。 見習い巫女狩りなのか、それともただの事故なのか確かめる術はなかった。 ――更に数日後 見習い巫女がまた一人いなくなった。 今度は街の中に流れる川が大雨で増水して、流されてしまったと聞いた。 街の中に見習い巫女狩りの噂が立つ。 ルルーテを含む残り3人の見習い巫女が疑われたが、人間に出来る殺し方ではなかった。 街の人達は事故が重なっただけだと判断している中、ルルーテは何か引っかかる。 (人間にできない殺し方……ケロンちゃんなら……それができるの?) しかし、本人に確かめる事も出来なければ、アスピドケロンがそんな事をする動機も思い浮かばず、ルルーテはモヤモヤとした状態で過ごしていた。 ――更に数日後 ルルーテは真面目に修行を行っていたが、相変わらず序列は最下位だった。 ある日、巫女の神殿に向かっていると、神殿の方から大きな音が聞こえた。 神官の従者は警戒し、慎重に神殿へと歩を進める。 神殿に着くと、神殿の門が倒れており、下には人が見えた。 急いで助けようと、回復魔法をかけに行こうとするが、従者に止められる。 見習い巫女はルルーテ一人となった。 門の下敷きになった序列1位と2位の見習い巫女は、助からずに死亡した。 ルルーテは神官から尋問を受けるが、どうやってもルルーテが見習い巫女狩りの犯人だとは思える状況ではなかった。 従者からルルーテは問題を起こしていないと報告もあり、神官は不満そうな顔をしていたが不問とされた。 ただ一人の見習い巫女となったルルーテは、当代の巫女がいなくなった時、巫女となる事が決定した。 ルルーテの心境は複雑だった。 万年最下位だった自分が、何故巫女になるのか。 今までに起こった見習い巫女狩りは、リナの事件以外は犯人も捕まっていない。 それどころか、人が起こす事が不可能。 そんな事が出来るのは、アスピドケロン以外考えられなかった。 ルルーテは意を決する。 両親が寝静まった後、窓から家を抜け出し、祭壇へ向かった。 「ケロンちゃん…久し振り…。お話があるの」 月明かりの下、漆黒の海が広がる。 (こんな時間になんの用じゃ?) ルルーテは真っ直ぐと、海を見つめながら話す。 「リナちゃん以外の見習い巫女狩りをしたのは…あなたなんでしょう?ケロンちゃん」 (……だとしたら、どうするのじゃ?) 「なんでそんな事をしたのか聞きたいの。ケロンちゃんはそんな事をする子じゃないもん!」 頭の中に響いてくる声に彼女は緊張する。 (ルルーテを…守る為だ…) 「どういう事!?」 (最初は、お前さんの友達を殺した見習い巫女。お前さんはもう少しで殺されていた) 「それは…そうかもしれないけど!なにも殺す事はないでしょ!」 感情的にならないようにしようと決めていたルルーテだったが、抑えきる事はできなかった。 (お前さんの友達は一度助かったが、次の日に殺された。お前さんを一度助けた所で、何度でも殺そうとしてきただろう) 「っ……!それは……」 反論できずに言葉を詰まらす。 (その後は連鎖じゃな…。他の見習い巫女は皆、お前さんの事を怖がった。お前さんに殺されるのではないかと、ビクビクしていた。だから、お前さんを殺そうと企んでいたのじゃ…) 「そんな……!嘘だよね!?」 (残念ながら本当の事じゃ) ルルーテの目に涙が浮かぶ。 「もしそうでも、わたしが死ねば良かったじゃん!みんなが死ぬ事なんてなかったでしょ!?」 (………すまない) 沈黙が続いた。 波の音だけが聞こえる。 ルルーテは大粒の涙を流し続ける。 今までに見習い巫女に起こっていた事は、アスピドケロンがルルーテを想うが故の犯行だった。 その事実を受け止めたルルーテは、それ以上アスピドケロンを責める事ができない。 (いつかワシに聞いたな。見習い巫女の中で、誰に巫女になって欲しいかと) 色んな事がありすぎて、随分前の話の気がした。 「言ったかもしれない…」 (ワシは、ルルーテ。お前さんは、先代の巫女の誰よりも巫女に相応しいと思うのだ) 「なんで!?わたしはずっと最下位で…わたしよりも、ずっとずっと巫女に相応しい人が…」 (ワシと意志疎通が出来る人間など、長い歴史の中で、お前さん以外おらんのじゃよ) 空が明るくなりかけ、朝日が登ろうとしていた。 (すまないルルーテ。お前さんを悲しませるつもりはなかったんじゃが) ルルーテは首を横に振る。 「もういいの。わたしみんなの分も巫女頑張るから…」 顔を上げたルルーテは笑顔に戻っていた。 「リナにいつも言われてたの。ルルーテにはそのまま明るく生きて欲しいって!」 涙を拭って、ルルーテは伸びをする。 「まだまだ、見習い巫女だけど、素敵な巫女になれるように修行頑張るから!ケロンちゃんも応援してね!」 (………。) 「ケロンちゃん?」 アスピドケロンの様子がおかしい事に気がつくルルーテ。 何か、不穏な空気を感じる。 直後、地面が揺れ、海が荒れる。 「どうしたのケロンちゃん!!?」 返事は返ってこない。 立っている事も出来ずに、その場で頭を抑える。 『グォオオオオオオオオオ』 耳を裂くような轟音。 「……ケロンちゃんの声なの?どうしたの!?ケロンちゃん!!」 街は巨大な地震が続く。 一部の建物は崩れ、道が割れ、川からは水が溢れだした。 一向に収まる事のない天災の中、一番近くの頑丈な建物である巫女の神殿へと向かった。 神殿に入り、揺れが収まるのをジッと待つ。 数時間後、段々と揺れが小さくなり、やがて収まった。 耳が痛くなる程の静けさの中、外に出ようとすると、いつもルルーテを迎えにきていた従者が声をかけた。 「無事だったか。神官様からお前を連れて来いと命があった」 神官の元まで連れていかれ、話をされる。 「ルルーテ。早かったな。当代の巫女がアスピドケロンの暴走によりいなくなった。今日から、お前が巫女となる。早速だが、巫女の任命式を執り行う。すぐに準備なさい」 ルルーテは神官に詰め寄った。 「神官様!アスピドケロンの暴走ってなに!?」 「それは後に教示する。今は早く準備をしなさい」 神官は冷たく言うと、その場を立ち去った。 ――では今日より、ルルーテをアスピドケロンの巫女とする。 巫女の就任式が終わり、巫女の衣装を身にまとったルルーテは、神殿の最上部にある“巫女の間”に連れてこられた。 巫女の間は外から鍵が掛けられ、勝手に出る事は許されない。 これからの事を考えて深呼吸をする。 巫女の間の中心にある羅針盤に、水の魔素を流し込むとアスピドケロンを自由に動かす事が出来る。 進路は、巫女に仕える神官から指示があり、方向の調整をする事が巫女の勤め。 ふと目に入ったのは、眼下にある祭壇。 アスピドケロンの頭も少しだけ見える。 もしかしたら、ここなら声が届くのではないかと考え、ルルーテは声を出す。 「ケロンちゃん…聞こえるかな?」 祭壇で聞くよりも小さかったが、確かに頭の中にアスピドケロンの声が響く。 (ルルーテ……ワシはどうしたのだ?) 「え?」 あの後の事を話すが、アスピドケロンは暴走の事を何も覚えていなかった。 本当に暴走していたアスピドケロンをルルーテは心配する。 「身体は大丈夫なの?どこかおかしくない?」 (あちこち痛くて、食欲もないが…慣れたもんじゃの!) 「慣れた?前にも同じような事があったの?」 (そうじゃな…数年から数十年に一度、こんな事があるのじゃ) アスピドケロンは今までに何度も暴走している。 ルルーテは暴走の原因を考えるが、想像も出来なかった。 それからルルーテは巫女として、10年間アスピドケロンを操舵し続けた。 巫女の間での生活は、神官以外の人間との接触は出来ずに、今までの巫女はきっと孤独であっただろう。 しかし、ルルーテにはアスピドケロンがいた。 一日中アスピドケロンと会話する生活は、見習い巫女の時よりもずっと楽しい。 両親に会えない事には胸が傷んだが、それでもルルーテは明るく過ごしていた。 ――その日は唐突にやってきた 普段と同じように目覚め、その日の航海予定を神官から聞き終わったルルーテは、朝食を取っていた。 あの日と同じ、何か、不穏な空気を感じ取る。 カタカタと食器がぶつかる音がしたかと思うと、部屋全体が大きく揺れた。 外を見ると海が荒れ、白く濁った波が渦を巻いているように見える。 「ケロンちゃん!!ダメ!!意識をしっかり持って!!」 その祈りも虚しく、あの日が繰り返される。 『グォオオオオオオオオオ』 ルルーテは羅針盤に水の魔素を送り込むが、まったく効果が得られずに、ただ見ている事しかできない。 「あの時は…どうやってこの暴走を止めたの?巫女は確か…いなくなったって言ってた…」 突然、戸の鍵が開けられ、神官が入ってきた。 「巫女!アスピドケロンが暴走している!こちらに来なさい!」 神官に連れられて地面が揺れる中、外へと出た。 幼い頃、アスピドケロンと話をしていた、あの祭壇まで来ると神官が魔法を詠唱する。 祭壇が光り、突如海に向かって光の道が伸びた。 神官と共に、その道を歩いていく。 海に迫り出した光の道の終点は円形になっており、周囲には荒れた海が広がる。 光の円の中心に辿り着くと、神官が声を出す。 「アスピドケロンよ!只今より巫女喰み(みこはみ)の儀を行う!どうか鎮まりたまえ!」 “巫女喰みの儀” 聞いたことのない単語だった。 「神官様…わたしは何をすれば良いの?」 「アスピドケロンが暴走した時、その身を生け贄として捧げるのが、代々巫女の勤めなのだ」 神官はニヤリと笑い、続けた。 「お前達巫女の最後の役目だ。アスピドケロンにその身体を捧げよ!」 神官は魔法を詠唱すると、ルルーテが水の球体に包まれる。 「なにこれ!?出して!出してよ!」 ルルーテの声は神官に届かずに、水の球体は浮き上がる。 「アスピドケロンよ!鎮まりたまえ!」 水の球体は叩いてもビクともせずに、ルルーテを包んだまま荒れる海面に落とされる。 ルルーテは海中で初めてアスピドケロンの巨大な顔を見る。 しかし、ルルーテは不思議と怖いとは思わなかった。 (ケロンちゃん…巫女ってこんな最後なの?今までの巫女達は、みんなケロンちゃんの暴走を止める為に死んでいったの?) ルルーテはこれまでの事を思い返す。 (確かケロンちゃんが前に暴走した直後に、食欲がないって言ってた…。ケロンちゃんは巫女を食べて生きてるの?なんで巫女じゃないとだめなんだろう…。もしかしてケロンちゃんが食べてるのは、人間じゃなくて…水の魔素?) そうだとしたら…。 (ケロンちゃんは、ただお腹が空いてるだけなんだよね?ずっとわたし達巫女に操舵されてるから、お腹が空いても食べ物を探す事も許されなかったのに……そんなの、ひどすぎるよ…) アスピドケロンが口を開けたのを見て、瞳を閉じるルルーテ。 (でも、ケロンちゃんに食べられるなら、わたし、それでも良いのかな…。それでお父さんやお母さん…街の人達が救われるなら…それでも…) 水の球体が消え、自由に動けるようになったルルーテだったが、すぐ目の前までアスピドケロンの口が迫っていた。 (お父さん…お母さん…リナちゃん…ケロンちゃん…ごめんね…) ルルーテがすべてを諦めかけたその時―― 大きな錨が目の前に現れる。 (船の…錨…?) 遠くから声が聞こえた気がした。 「早く掴まってぇええ!」 言われた通り無我夢中で錨を掴むと、すごい速さで引っ張られる。 離してしまいそうになるが、必死でしがみついた。 船の底が見えると、網ですくわれて船の上に放り出される。 「ぷはぁっ…ハァ…ハァ…」 グラグラと揺れる甲板にルルーテは横たわる。 「生きてるー!?生きてたら寝てないで手伝ってー!せっかく助けたんだから!」 船の持ち主である少女は、その大きな狼の耳をピョコピョコさせながら、ルルーテに帆を閉じるのを手伝わせようとしている。 「なんで私の船が横を通ったタイミングでアスピドケロンに暴れられなきゃならないのぉおお!!」 不満そうに文句を言っている狼耳の少女は、太い縄で帆を縛る。 ルルーテはその少女に向かい叫んだ。 「あの!ごめんなさい!助けてくれたんだろうけど…わたしが食べられなきゃ暴走は止まらないの!」 狼耳の少女は、ルルーテを見下ろすと、嫌そうな顔をする。 「ダメダメ!きみは私が助けたんだから、勝手に死んじゃダメ~~!!」 「でも、そうしないとアスピドケロンの暴走を止められないの!」 必死に言うルルーテの元に飛び降りてきた狼耳の少女は、ルルーテの目の前に顔を近付ける。 「お腹空いてるなら他のものあげればいいでしょ!?何食べるのあいつ!?」 荒れる海のグラグラと揺れる船の上で、必死に立ちながらルルーテは答える。 「多分…水の魔素を含んだモノなんだけど…」 狼耳の少女はニタっと笑う。 「じゃあアレでどう!?さっき引き上げたお宝!!水の魔素の塊みたいなものでしょ!?これを、アスピドケロンに食べさせれば、暴れるのやめるんだよね!?」 狼耳の少女が人差し指で指す方向に目をやると、巨大な真珠が船にある生け簀のような場所からはみ出していた。 ルルーテはキョトンとしながら答える。 「多分…それが本当なら大丈夫だと思うけど…」 「わかった!!た・だ・し!!これは、すごーーくレアなお宝なの!だから、きみが今日から私の下で働く事が条件だよ!」 そう言うと狼耳の少女は、木の板を巨大な真珠の下に設置した。 真珠に挟まった木の板は、生簀の淵を支点にして、斜め上に伸びる。 そして、狼耳の少女は巨大な斧で木の板の先端を思いっきり叩いた。 「いっけぇえええええ!!」 真珠はテコの原理で生簀から飛び出し、アスピドケロンに向かって飛んでいく。 アスピドケロンの頭に当たるか当たらないかのギリギリで、アスピドケロンが口を開ける。 瞬間、大波が船を襲い、船は波に飲み込まれた。 ……… …… … バシャっと顔にバケツの水を掛けられてルルーテは目を覚ます。 青い空とドクロマークのついた船の帆、狼耳が映り込んだ。 「おっ!生きてるね!怪我はない?」 ルルーテは身体を起こし辺りを見渡す。 海は穏やかになっており、少し離れた場所にアスピドケロンが見えた。 「ここは……?」 狼耳の少女は元気に答える。 「ここは私の船の上だよ。私は船長レイナだよ!お姉ちゃんと呼びなさい!」 「レイナ…お姉ちゃん……?」 目をパチクリさせながら、ルルーテは何をしていたのか思い出す。 「……そうだ……!!アスピドケロンは!?どうなったの!?」 レイナは頭の上にクエスチョンマークを出しながら首を傾ける。 「ん?あぁ、きみが言った通り、お宝を食べたら大人しくなったよ!作戦大成功だね!」 ルルーテは起き上がり、レイナに近付く。 「街を、アスピドケロンを助けてくれたのね!ありがとう!!」 「変な玉に入っていきなり上から海に落ちてくるんだもん。びっくりしたよ!私が助けなかったら、きみは今頃あの亀のお腹の中だったね!セーフセーフ!」 両手を横に広げて笑うレイナ。 ルルーテはアスピドケロンの事を考える。 「そうだ…ケロンちゃんとお話を…。あの、一つお願いがあるんだけど…」 「ん~?お願い?聞くだけ聞いてもいいよ!聞くだけね!」 「ケロンちゃんの…アスピドケロンの頭の近くに船を近づけて欲しいの!お願い!」 「えぇー大丈夫!?もうあいつ暴れたりしないの!?」 ルルーテはアスピドケロンを眺める。 「大丈夫だと思う。もう暴走は止まってるみたいだし」 「じゃあ条件!まず名前を教える事。それと、私の海賊船で働くこと!きみのせいで大事なお宝がなくなっちゃったんだ。少なくともその分はしっかり働いて貰うよ!」 ルルーテは満面の笑みを浮かべる。 「わたし、ルルーテ!海賊でもなんでもするから、あなたの言う通りにするから、お願い!」 「“あなた”じゃなくて、レイナお姉ちゃん!」 頬を膨らますレイナに、ルルーテは再度笑ってみせる。 「わかった!おねぇちゃんね!」 レイナは満足気な表情をしてから、ルルーテに手を差し伸べる。 「よし!今日からルルーテは、私の海賊団の一員として、しっかり働いて貰うからね!初仕事は、アスピドケロンに向けて船を動かす事!」 「りょうかい!おねぇちゃん!!」 アスピドケロンの頭の前に海賊船が停泊する。 ルルーテはアスピドケロンに、暴走の原因や、自分がどのようにして今の状況になっているか説明した。 「ごめんねアスピドケロン。わたし、新しいお友達のレイナちゃんと約束して、海賊になることにしたの!だから巫女にはもうなれないし、街にもなかなか戻ってこれないと思う。でも、水の魔素を手に入れたら時々持ってくるよ!ケロンちゃん食べたいでしょ?あんまり会えなくなるけど、寂しがっちゃだめだからね!」 ルルーテは巫女喰みの儀の事はアスピドケロンに言わなかった。 きっと今まで巫女を食べていた事を知ったら、アスピドケロンは悲しむだろう。 アスピドケロンは涙を流しているように見えた。 (ルルーテ……すまない。随分と迷惑をかけたようじゃ…) 「気にしないで!わたし生きてるし!たまには会いに来るから!街の人達をよろしくね!」 船は出港し、アスピドケロンの声は聞こえなくなった。 それでもルルーテは笑顔のまま、明るく生きていく事を心に誓った。 +流転の語り部ギルバート 楽都アルモニア― 音楽の都と呼ばれる美しい街。 アルモニアでは様々な楽器から音楽が絶えず鳴り響き、人々は歌をこよなく愛する。 アルモニアの市街地から郊外へ足を伸ばすと、大きな森へとたどり着く。 そこには小鳥のさえずりがオーケストラの如く響き渡る大自然があった。 森はおよそ人の手が入っておらず幻想的な世界を醸し出す。 木々をかき分け、リュートを片手に鼻歌交じりの軽快なリズムで歩む男。 その男の後ろでは、少し荒い息遣いをしながらも、遅れまいと後をついて行く美しい女性の姿があった。 「あなた…本当によかったの?」 「ん?なんでだい?ここは空気も綺麗だし、水も美味しい。何よりも詩を歌い、曲を奏でるには最高の環境だよ。あっ!あれかい?力仕事かい?自信はないけど…キミとボクとの新しい生活の為さ!頑張るよっ!」 男はリュートを片手で携えながらも、ドンっ!と胸を叩き、にっこりと笑顔を見せる。 「ん、んもうっ!照れるじゃない…バカ。私が言いたいのは、ここにはあなたの好きな街娘もいないし、どんなにいい歌でも、聞いてくれる人はいないのよ?それでもいいの?って事!」 少し顔を赤らめながらも、女は決心したかのように言葉を放つ。 男は吟遊詩人であった。 街から街へと渡り歩き、各地を放浪して詩を歌う。 その中でも吟遊詩人の歌う愛の歌は、行く先々で女性達を魅了していた。 軟派師…ナンパリスト…世で見られている吟遊詩人のイメージである。 女の言葉は、そんな吟遊詩人たる男へ覚悟はあるのか?と問い確かめているようであった。 男は怪訝そうに、一拍おいて少し考えながら言った。 「キミが…キミがいるじゃないか?ボクの曲も歌もキミが全部聞いてくれる!」 「あなた…」 そこで二人の会話は終わった。 寄り添いながらも、二人は足早に森へと入って行き、森では小鳥達のさえずりが二人を祝福するかのように鳴り響いていた。 そして数年後―― 森に新たな命が生まれた。 「ほんぎゃぁっ!ふぇええーんっ!!」 静かな森の中では力強く、激しい泣き声が小屋から森中に響き渡る。 あの時の仲睦まじい二人は子供を授かり、小屋の中では赤ん坊の名前を名付ける親の姿があった。 「あなた、この子の名前を…」 「ああ!もう考えてあるさっ!アレク…アレクサンダーなんてどうだい!?ボクの故郷に伝わる英雄の名前をこの子につけようと思うんだ!」 「アレクサンダー…力強くていい名前ね。でも、この子は優しい子に育って欲しいの。わたしも考えたんだけど、ねぇ…ギルバートはどうかしら?」 「ギルバート…かぁ。うん!いいね!キミが考えたのなら最高の名前だよ!よーし、この子は今日からギルバートだ!」 「ふんむぅ……きゃっ!きゃっ!」 森では小鳥達のさえずりが新たな命を祝福するかのように鳴り響いていた。 更に数年後―― 時は経ち、ギルバートは優しい両親の元でのびのびと育つ。 母親譲りの端麗な顔立ち、父親譲りの美しい歌声、吟遊詩人に必要な資質をギルバートは兼ね備えていた。 今日、ギルバートは父と共に森の中へ来ている。 まだ幼いながらも、吟遊詩人としての類まれなる資質を我が子から感じとった父は、リュートの修行をつけようとやってきていた。 「ほら、このリュートはこうやって音をだすんだよ。面白いだろ?今から父さんが曲を奏でながら歌うから、ギルバートも後に続いて歌ってみるんだよ」 「うん!わかった!」 森中に響く音楽と歌声は、心地よくも素敵な空間を生み出す。 父の後に続いて歌っているギルバートは、何のために曲を奏で歌うのか分からなかったが、一度聞いた父親の詩が頭から離れなかった。 ギルバートは父親の美しい演奏、そして詩に憧れ、いつからか父親に追いつくことが目標となり必死に練習をした。 そんなある日、森でリュートの練習をしていたギルバートの元に父がやってきた。 「ギルバート、頑張っているようだね」 「とうさん!うん!ぼくねぇ…このきょくもひけるようになったんだよ!」 「おお!すごいじゃないか!ギルバートはやっぱり才能があるな。そうだ、今日は吟遊詩人の話をしようじゃないか。お前も父さんも吟遊詩人の一族だから、吟遊詩人とはどういうものなのかを知っておかないとね」 それからギルバートの父は懇々と、まだ幼いギルバートが理解しやすいように言葉を選びながら吟遊詩人の一族について語っていった。 吟遊詩人とは何なのか?何のために歌うのか? 父も、そのまた父親からこの詩を受け継いだ事、吟遊詩人の技術が一子相伝で他人には教えてはならない事、継承者の親の死から5年以内に次の継承者を作らねば、共鳴の力が失われ、詩に魔力が宿らなくなることをギルバートに教えていく。 だが、父の話は難しくて、幼いギルバートにはまだ理解ができなかった。 時折、あくびを噛みころしながらそわそわしだす我が子を見て、父は困ったように笑いながら、いつか母さんのようにしっかりしていて、綺麗な“運命の人”を見つけなさいと言う。 「ギルバート。お母さんはな、お父さんの運命の人だったんだよ」 父はそう話すと、思い返しながら自分の昔のことをギルバートに語った。 吟遊詩人として旅をしながら各地をまわっていた頃のこと。 お父さんはとっても人気があって、女の子からモテモテだったこと。 だけど、お母さんを初めて見て、全身にビビッと衝撃が走り、この人だ!って思ったこと。 それ以来、お母さんがお父さんにとって一番の特別であること。 半分は父の自慢話で、もう半分はお母さんの事を大好きな父の話であった。 父は再度、ギルバートもそんな“運命の人”を見つけなさいと言う。 とある日のこと― ギルバートは家族でアルモニアに来ていた。 普段住んでいる静かな森とは違い、音楽と沢山の人に溢れている街にギルバートは感動してきょろきょろと周りを見回したり、ちょこまかと動き回る。 その時、1人の男が慌てて駆け寄ってきた。 男は息を整える時間すら惜しいといった様相で、興奮交じりに話し始める。 「ハァ…ハァ…。なあ、あんたあの有名な吟遊詩人じゃないか!いつアルモニアに来たんだ?なあ、いつまでこの街にいるんだよ?そうだ!一曲弾いてくれよ!俺はあんたの歌が忘れられなくてよう…な!頼むッ!」 まくしたてるようにその男は大声で喋る。 男は息を切らしながらも、一心に自分の伝えたいことを言い放った。 どうやら男の目当ては父だったようだ。 アルモニアでは有名な吟遊詩人の一族である父に男は演奏を懇願する。 その声を聞きつけた周りの人々が集まっていき、なんだなんだとギルバート達を囲むように人だかりが出来ていった。 父は少し困った顔をして男に話す。 「悪いけど、今日はオフ!…吟遊詩人としてアルモニアに来たわけではないんだよ」 「な、なんでだようッ!頼むよ!一曲弾いてくれよ!歌を聞かせてくれよ!次はどこであんたに出会えるかもわからねぇんだ。俺はあんたが歌ってくれるまでここを動かないからな!」 男は腕を組み、口をへの字に曲げながらその場にドカっと座る。 父を見つめる視線は男の固い決意を表すかの如く絶対にあきらめないぞ!と言っているようであった。 父は更に困った表情を見せ、男をどうやって説得しようかと思案している様子だった。 「ねえ、おとうさん。このひとかわいそうだよ。ぼくも、おとうさんのうたがききたいよ。いいでしょ?うたってあげてよ。」 ギルバートは父の袖を引っ張る。 父は、まいったなあ…という顔をしながらチラッと母の顔を覗き込む。 母は苦笑していたがニッコリと片目で父にウィンクを返す。 「息子にまでこうやって頼まれたらしょうがない。今日は家族で来ているんだ。一曲だけだからね?」 「おお!ありがてえ!こっちはあんたの息子か!こりゃお利口そうだ!おじさんの目に狂いはねえっ。坊主!お前は将来、絶対に大物になるぜ!」 人だかりは更に増えていた。 どうなることかと見守っていた人々と、新たに集まってきた野次馬たち。 父が歌うことに決まると一帯はお祭りの様な状況となっていた。 父はリュートに手をかける。 やさしい音色が鳴りはじめ澄み渡る声がアルモニアの街に響く。 ギルバートにとっては聞きなれた父の歌であったが、その歌に聞き入る人々はとても幸せそうな表情をしていた。 曲が終わると、あたりは一瞬の静寂に包まれた。 だれかが手を叩くと同時に巻き起こる拍手と喝采と賞賛の嵐が父に降り注ぐ。 その光景を目にしたギルバートは胸の奥から湧き上がる高揚感を覚え、幼いながらも吟遊詩人が歌う意味を知ったような気がした。 幸せそうな人々の顔をギルバートが見渡していると、1人の少女がその視線に気づく。 少女はギルバートと目が合うとにっこりと微笑みかけるが、ギルバートは慌てて父の後ろへと隠れてしまう。 森で育った為なのか、女の子の前だと恥ずかしがって隠れてしまう我が子を見て父は少し不安を感じていた。 ――それから10年 ギルバートは成長し、父から受け継いだリュートを持ってはアルモニアへ出かけて歌を歌っていた。 「今日こそは…」 あの日見た父の姿…父の弾くリュートはみんなを幸せにしていたんだ。 ボクも吟遊詩人なんだ…やればきっとできるはずだ! 自分に言い聞かせるように心の中でギルバートは繰り返した。 ギルバートがいつもの場所で演奏をはじめると、ぽつりぽつりとどこからか観衆が集まってくる。 しかし、いつも観衆の中に女の子の姿を見かけると演奏を止め、その場を足早に去っていく。 幼い頃、ボクに微笑みかけてくれた女の子…。 ボクが吟遊詩人になってから、アルモニアで演奏を始めた頃にボクのファンだと言ってくれた女の子…。 なぜかは分からないけれど、女の子と話すのはすごく苦手で、恥ずかしくて…うまく話せなくていつも逃げてしまう。 「今日も、ダメだったなあ…父さんになんて言おうか…」 落ち込みながらトボトボと家に帰ると、出迎えてくれた父はギルバートを慰めるように言った。 「誰にだって失敗はある。そして、その失敗から学んでいくんだ。女の子と話すことが恥ずかしいことなんてこれっぽっちもない!父さんなんて…母さんに何度もフラれたんだぞ?いつかきっと、ギルバートにも“運命の人”が現れる。今はその予行練習みたいなものさ」 と父はギルバートを勇気付けてくれる。 優しい父さんは…いつもボクを応援してくれている。 だけど、父さんは昔から“運命の人”がって言うんだ。 ボクは女の子が苦手だし、“運命の人”って何だろう?母さんみたいな人なのかな? ギルバートは頭の中で、父の言葉を自分に問いかけてみる。 翌日もギルバートはアルモニアの街へ出かけ、いつもの場所で演奏をする。 今日こそは…と心に誓うが、女の子の姿を見つけるといつものように逃げ出してしまう。 ギルバートは落ち込みながらトボトボと帰路に着く。 いつもの光景のはずだったが…今日は違った。 突然の強風から木々がざわめき、砂塵が舞う。 まだ日没には早い時間なのに、蝙蝠の大群がギルバートの家の方角へ飛んでいく。 一抹の不安を感じたギルバートは足早に家へと向かった。 そして、家までたどり着いたギルバートは緊張しながらドアノブに手をかける。 いつもはギルバートの帰りを今か今かと待ってくれている父の姿がない。 不安は半ば確信へと変わっていた…。 ―父が倒れた…! ギルバートは持っていたリュートをズルリと床に落とす。 焦燥の色を見せる母は、ギルバートの姿を見つけるやいなや医者を呼びに行くと告げて街へと急ぐ。 父さん…? 父さん…やだよ…。 ベッドに静かに横たわる父は痛々しい姿をしていた。 苦しそうな呼吸と時折激しく咳き込む声は、これが簡単な病ではないことを知らせる。 「ギルバート…ギルバートはいるか?」 「父さん!目が覚めたんだね!良かった……。何か飲む?母さんがスープを作っておいてくれたんだよ。」 「ありがとう…ギルバート。お前は本当に優しい子に育ってくれたね…。父さんは…もうあんまり…長くないのかもしれない…」 「ッ!やめてよ!何言ってるの、父さん!あ、母さんはね、父さんの為に街へお医者さんを呼びに行っているよ。ほら、すぐ良くなるよ!」 今度はボクが父さんを勇気付ける番だ。 あんなに明るくて優しい父さんが、病なんかに負けるわけがないじゃないか! 「聞いておくれ…ギルバート。今からお前に大事な話をする。よく覚えておくんだよ…」 「う、うん…」 今まで見たこともない父の真面目な顔にギルバートは圧倒されていた。 最後の力を振り絞るかのように、苦痛の表情を浮かべて父は話をする……。 ――後日 父さんは闘病生活を続けていたが、母さんの献身も空しく、程なくして亡くなった。 ボクも母さんも…涙が枯れ尽くすまで泣いた。 ――父の言葉 あの日、父さんがボクにしてくれた話が今のボクを動かす。 吟遊詩人の一族のルールの事。 一子相伝の詩の事、吟遊詩人の詩や音色には共鳴の力があり魔力が宿る事。 しかし、継承者の親の死から5年以内に次の継承者を作らねば、共鳴の力が失われ詩に魔力が宿らなくなる事。 父さんは自分の死期を悟って、吟遊詩人の一族の未来をボクに託したんだ。 「ギルバート…運命の人を必ず見つけるんだ…」 うん…わかっているよ。 きっと母さんみたいな人をみつけるからね。 幼い頃から聞かされていた話が、やっと、やっと…理解できた。 ――母との別れ 母さんに旅に出ることを話した。 「そう…決めたのね」 母さんは一言そういうと話をし始めた。 「ギルバート…お母さんはね、お父さんと一緒になってからずっと本当に幸せだったわ。あなたが生まれて…すぐにいつかこの日がくると思っていたの。だって…吟遊詩人だもんね」 母さんはそのまま続けてボクが生まれる前の話をしてくれた。 「吟遊詩人は各地を旅しているでしょう?父さんが私を好きだって言ってくれても、一緒になるなんて考えられなかったわ。でも、父さんはずっとそばに居てくれた。それに、運命の人なんて言われたけど、誰にでも言っているんじゃないの?って思ったりもしていたしね…」 父さんにとっての運命の人は母さん… その後は聞いているこっちのほうが照れるような話を母さんは続けた。 「行っておいで…あなたにはきっといい人がみつかるわ」 ――そして旅立ち タイムリミットは5年!アルモニアの街で父さんが曲を披露した時の皆の幸せそうな顔。 あの光景を守るためには、ボクの運命の人を見つけなければならない。 ギルバートは沢山の人がいる場所を目指してアルモニアからイエルへと足を運ぶ。 初めて見るアルモニア以外の街。 楽器や音楽の音ではなく、商業都市ならではの喧騒にギルバートは驚きを隠せなかった。 しかし、アルモニアとは違う賑わいをみせるイエルのそんな音を心地よく感じていた。 いま見ている風景が詩となり、頭に流れるメロディを思い描きながら街を歩いていると、ギルバートは美しい街娘を見つける。 足を止めて凝視していると、街娘はギルバートに気づいて微笑みかける。 ――緊張で口の中が乾いて行くのを感じる。 それでもギルバートは自分に微笑みかける街娘へと歩んでゆく。 ――今すぐ逃げ出したい気持ちに駆られる。 それでもギルバートは父の事や吟遊詩人の歌を聞いて幸せそうにする街の人々の顔を思い出しその場に踏みとどまる。 街娘の前までつくと乾いた口を開いて話しかける。 「ボクと一緒に来てほしい!」 突然のことに驚いた彼女は困ったような笑顔に変わり、ギルバートはフラれてしまう。 「ダメ、なのか……でも、初めて女の子と会話できた!」 ギルバートは内心で一人喜ぶ。 次に目に入った露店の看板娘にも声をかけるが、店主に睨まれてしまう。 数々の失敗を乗り越えながら徐々にうまく会話のコツを掴んでいく。 「ボクはやればできるじゃないか!今まで何を恐れていたんだろうか。もう、話しかけるのは怖くなくなってきたかな。ボクには時間がないんだ、急がなきゃ」 次に話しかけた女の子からは好感触を得ることができたが、お茶に誘ったところを断られてしまった。 しかし、ギルバートは落ち込む事もめげる事もなかった。 「中々かな?彼女の反応は今までになかったものだね……これは、父さんに少し近づけてきたのかもしれないな」 また、目に留まった女の子をナンパし始める。 今度は名前を聞き出すところまで成功する。 ギルバートは思い切って告白してみるが、いきなりはちょっとゴメンなさいとフラれてしまう。 しかし、ギルバートは自分に確かな手応えを感じていた。 「今回はもっといい感じだったね。そうか、もっと自然に行けばいいんだ!」 グッと拳を握り、小さくガッツポーズをして街で次々にナンパしていく。 ギルバートはイエルの街で着実にナンパの技術を磨き上げていった。 しかし、運命の人は見つからない。 ギルバートはイエルを後にし、獣境の村ヴィレスへと向かう。 獣人であるガルム族のみが住むその村を見たギルバートは感嘆する。 イエルの街にも少なからずいたガルム族が沢山いることに驚いていた。 村に漂うワイルドな雰囲気にギルバートはイエルとは違う感動を覚える。 何より、ワイルドでたくましく美しいガルムの女性達がいた。 ギルバートはイエルで学んだコツを使ってナンパを始めるが、全く相手にされない。 「なるほど…ここではもっと野性的になるのが重要なのかもしれないね」 ギルバートはその村その街に合ったナンパのスタイルがあることを覚える。 いつの間にか沢山の女性ガルムに囲まれるくらい打ち解けることができるようになった。 だが、ここでも運命の人は見つからない。 ギルバートはヴィレスを後にし、花園の街ラキラへと向かった。 大陸に住む女性の憧れとも聞く街ラキラ。 ギルバートは女性に声をかけ名前を聞こうとするが、成人していない女性には名前がないために結局うまくいかなかった。 それでも諦めずに、声をかけてはフラれることを繰り返す。 結局、運命の人は見つからなかった。 仕方がなく、ギルバートが次に向かった街は極寒都市コルキドであった。 年中氷点下の極寒の街コルキド… この街の住人はみな防寒コートを全身に着ており、外見からは性別すら判断がつきにくいが、ギルバートはこれを克服していく。 同性に声をかけて勘違いされることもあった…しかし、諦めずに声をかけ続けることで男性と女性の見分け方、更には相手の反応速度から年齢をも見抜くことが出来るようになり、ギルバートはコルキドでのナンパ術を構築していった。 だがしかし、ここでも運命の人は見つからなかった。 その後、色々な街を旅したギルバートはイエルへと戻ってくる。 そして、偶然最初に声をかけた街娘と再会する。 街娘は、ギルバートの事を覚えており、声をかけるやいなや逃げようとするが、リュートをつま弾いて引き留める。 「お嬢さん……あの時は突然すまなかった、君の可憐さについつい焦ってしまってね…どうかな?あの時のお詫びがしたいのだけど」 最初の頃とはうって変わって紳士的な態度で接する。 数々のナンパ技術を会得したギルバートはデートに誘う事に成功する。 ボクが探しているのは運命の人。 デートの終わり、別れる間際にギルバートは意を決して彼女に言葉をかける。 「君さえ良ければ、ボクの旅についてこないか?君ほど打ち解けた人は初めてさ。君こそがボクの運命の人だ!」 しかし、彼女は悲しそうな表情で言葉を返す。 「ごめんなさい。私には心に決めた人がいるの。あなたにはついて行けないわ……また、どこかで会いましょう」 彼女はそのまま走り去って行ってしまった。 一つの恋は終わり、一人その場に残されたギルバートは彼女が“運命の人”ではなかったのだと気が付いた。 「あぁ一体どこにいるのだろうか!まだ見ぬボクの“運命の人”!君に会うのが待ち遠しい…待っていてくれ!ボクは必ずキミの元にたどり着くからね!」 そう言いながらギルバートはイエルの街を後にし、気の向くまま足の向くまま渓谷を目指す。 遥か彼方に見える黒雲からは、龍の咆哮の様な雷鳴が鳴り響き、青白い光からは幾条にもなる閃光が放たれていた。 いつか…きっと出会うであろう。 しっかりしていて美しい女性…“運命の人”と必ず巡り会うことを胸に誓い、ギルバートは歩き出す。 だが、ギルバートはまだ知らない。 この旅のずっと先に…その“運命の人”が待っていることを… +高潔なる慈愛の光レティシア 商業都市イエル。 今日も旅人や商人が行き交っては物流の拠点としての賑わいを見せている。 商人は道行く人に声をかけては商売に精を出し、その声は街の至る所から聞くことができた。 日が落ち、日没を迎えるとイエルの街は別の雰囲気を醸し出す。 酒場の営業が始まる頃を見計らって、ぽつりぽつりと旅人や傭兵、冒険者などが酒を求めては酒場に集い始める。 旅人は旅の疲れを酒で癒し、ひと仕事を終えた傭兵は酒で喉を潤す。 酒場の奥では冒険者達が卓を囲みカードゲームに興じている。 イエルの街は夜になると、昼間とは違った賑わいを見せていた。 イエル中心から離れた閑静な貴族街。 ここは貴族や豪商などの特権階級や富豪が住居を構えていた。 「そーっと…気づかれないように…」 とある屋敷から闇にまぎれて動く人影があった。 2階のベランダから庭にむけて投げられたロープをつたって、その影は降りていく。 「…よいしょっと」 音をたてないように細心の注意を払いながら庭に降り立ち、きょろきょろとあたりを見渡して人の気配を確認しながら慎重に屋敷の正門を目指して忍び足で歩く。 そして、屋敷に配置されている街灯がほのかにその影を照らし出すと、そこには見事なブロンドの髪の女性の姿があった。 手には羽飾りのついた杖と大きな書物をもち、羽を意匠したきらびやかな服は、紛れもなく貴族の衣装であり、この場には似つかわしくない雰囲気を持つ。 「ふう、もう少しで…」 屋敷の庭はとても広い。 数分をかけて歩き、正門にさしかかったことで安心感ゆえになのか、ほっと小さなため息を吐いた。 音を立てないように門の鍵を開けて扉を開いていく… 「レティシア…こんな時間にどこへ行く?」 「ひゃっ!」 レティシアと呼ばれた女性は、突然自分に向けられた声に驚いては素っ頓狂な声をあげる。 この声は、まさか…いやな予感を感じながらも、レティシアが恐る恐る振り返ると案の定だった。 「お、お父様…」 今日、レティシアは屋敷を抜け出して街を出る手筈だった。 自分と同じ貴族の人間が、街の住民に悪逆非道をしているのを何とかして変えたい…その思いを胸に、レティシアは月の出ない今晩に行動を起こしていた。 「屋敷に…部屋に戻りなさい」 レティシアの父は威厳を込め、有無を言わさずにレティシアを連れ戻そうとする。 「…嫌ですっ!」 レティシアはその言葉に反抗した。 強い決心で、自分で自分の背中を押す。 そして、父に返事を返すと同時にスカートを捲り上げて正門の扉から一気に外へと駆け出した。 「レ、レティシアっ!くっ…追えっ!追うんだ!必ず連れ戻せ!」 傍らにいた数人の兵士が、下された命令を受けてレティシアの後を追う。 「…はぁっ、はぁっ」 レティシアは額に汗を滲ませながら、追っ手をまくためにイエルの街を走り回る。 「…はぁっ、はぁっ、ダメ…もっと急がないと」 タッタッタッタ……レティシアはスラムを目指していた。 スラムは迷路のような細道や雑多な建物が立ち並んでおり、身を隠すには最適な為だ。 わいわいと賑わう街の中心街からは遠く、灯りもまばらで人気のない裏通りを走り抜ける。 「おい!レティシア様の姿が見えたぞ!こっちから回り込め!」 手に剣を持った兵士の一隊がレティシアを追いかける。 「…あっ!」 裏通りを駆け抜け、スラムへたどり着く…だが、兵士の一隊がすでにスラムへの入り口を固めており、レティシアは踵(きびす)を返して元来た道へ引き返そうとする。 「…はぁっ、はぁっ、やっと追いつきましたよ!レティシア様!さぁお屋敷に戻りましょう!」 兵士の1人が息を切らしながら追いつきレティシアに観念を促す。 そして、その兵士の後ろからも兵士が現れてはジリジリと逃げ道を塞ぐようにレティシアの周囲を囲む。 「レティシア様…いい加減に聞き分けてください!さぁお屋敷に」 「嫌です!絶対に戻りません!この街のためなのです!ここは見逃してください!」 レティシアと兵士の間で押し問答がはじまる。 「お父様にはすぐに連れ戻すように命令を受けています…さぁ行きましょう」 1人の兵士がレティシアに声をかけて近寄ろうとした瞬間だった。 レティシアは素早く杖を取り出して兵士の足元へと魔法を放つ。 ボオォンッ!と音を立てて小さな爆発が起こる。 一瞬、兵士達は驚き足を止めるが、剣を抜いてレティシアに少しずつ近寄り始めた。 「レティシア様…あまり手荒な事はしたくありません。先ほどの事は無かったことにしましょう。さぁ早く」 「道を開けて下さいっ!どれだけ貴方達が止めても私はこの街を出ます!!」 「レティシア様!これ以上は!…お父様も心配されてます!どうしてもというなら力ずくでも…」 剣を構える兵士達に臆さず、レティシアは杖を強く握り兵士達へと一歩踏み出す。 「止めると言うなら覚悟してください!貴方達でも容赦しません!私達貴族が街の住民をおとしめるようなこの街を私は変えなきゃいけないんです!」 兵士であるあなた達に罪はないのは分かっているけど、ごめんなさい…私はやらなければ。 レティシアは少しためらいながら、その場で魔法の詠唱を始め、場には緊迫した空気が流れた。 だが突如として現れた1人の男がその空気を破る。 「おいおい。お前ら、エスコートの仕方も知らないのか?」 兵士の背後から男は笑みを浮かべ兵士達に声をかける。 「誰だっ!?」 振り返った兵士達は、男を見るなり驚いた表情で剣を構えた。 「き、貴様!ロイエル!なぜここに!?お前は投獄されたはずじゃ……」 ロイエル?もしかして…レティシアはロイエルという名前を知っている。 レティシアの家と並ぶ3大貴族の一角であるシュレイドにより逆賊として捕まった男の名前だ。 レティシアは兵士達がロイエルに気を取られているのを見て魔法の詠唱を解除し、隙をうかがいながら逃げ出す算段をする。 「悪いがじっとしてられる性分じゃねぇんだ。それじゃ、そのお嬢さんを放してもらうぜ?」 一瞬だった…目にも留まらぬ速さでロイエルの剣は正確に兵士達を捉えていく。 バタリと最後の兵士が倒れ、ロイエルと呼ばれた男はレティシアへ目を向ける。 レティシアは倒れた兵士達を心配そうに見つめていた。 「安心しろ、眠ってるだけだ、そのうち起きるだろ」 気絶させただけだと教えられ、助けてくれたロイエルにレティシアがお礼を言おうと口を開くが、剣を突き付けられてその言葉を遮られてしまう。 「お前、さっき街を変えたいとか言ってたな?貴族様ってのは、自分さえ良ければそれでいいんじゃねぇのか?俺のオヤジは街を変えようと、少しでも良くするために戦ってた。だから、消された。例えお前がどんだけ偉い貴族様の御令嬢でもそんなことしたらただじゃ済まねぇだろ。なぜ変えようと思う。利益のためか?」 利益?違う…私は、私はイエルの…この街の住人が大好きなのです。 ロイエルの問いにレティシアは思考を巡らすが、答えはすでに出ていた。 「貴方が私達貴族にどの様なことをされてきたか想像もつきませんが、それを知らないまま生きていくのは嫌です!知っているのに何もできないのはもっと嫌!私は、私の大好きなこの街の住民を護りたい!それ以外に理由なんていりません!たとえ私の家が地位を失うことになっても……。大好きな人達を護るためなら喜んで私は捨てましょう!」 剣を向けられていることを忘れてしまうくらい興奮している自分に少し恥ずかしさを覚えると同時に、言いたい事を正直にはっきりと言えた事に少しスッキリしていた。 そして、レティシアの言葉を聞いたロイエルは突然笑い出すと剣を降ろした。 「はははははっ!面白れぇ!でも、さっきみたいに囲まれて逃げ出せねぇようじゃ、用心棒が必要なんじゃねぇか?」 レティシアはその言葉を聞いて真剣に悩む。 確かに、まだ街を出ることすらできないのに…ロイエルが助けてくれなかったら私の旅は始まることもままならなかった。 この人にならそのあてがあるのだろうか?と考える。 「あの、ロイエルさんですよね。貴方にはその用心棒のあてがあるんですか?」 素直に尋ねたレティシアに対して胸を張って答えるロイエル。 「おいおい、目の前にいるだろう?お前は今、俺の剣の腕を見たんじゃないのか?」 ロイエルはレティシアに手を差し伸べる。 そして、レティシアは笑顔でその手をとりながら答えた。 「ぜひ!お願いします!ロイエルさん!私はレティシアと呼んでください!」 こうしてレティシアはイエルを変えるためにロイエルと共に行動することとなる。 ―― レティシア達はイエル近郊にある街へと来ていた。 今のイエルを変える足掛かりになる情報を二人で手分けして集める為に。 レティシアは情報収集を終えて酒場へ向かう。 ロイエルとは酒場で落ち合う約束をしており、約束の時間に遅れまいと急いでいた。 路地を進み、酒場までの通りに出たところで1人の傭兵がレティシアに気づき近づいてくる。 何か探している様子の傭兵に、警戒感からレティシアは身を隠す為のローブを深く被った。 「そこのお前!ロイエルという男をこの辺りで見なかったか?黒髪で妙な剣技を使う男だ」 傭兵はレティシアの前に立ちはだかると手配書をみせて尋ねる。 傭兵の言葉にレティシアは息をのみこんだ。 レティシアは深く被ったローブの中で深呼吸をして焦りを抑えてから答える。 「いえ、見たことありませんね」 そっけない返事から顔を見せないレティシアを不審に思った傭兵はフードを深く覗き込んでくる。 まずい、ばれてしまうのではないかと背筋に緊張が走る。 「あの…私急いでいるので」 その場を足早に立ち去ろうとする。 「待て」 傭兵はレティシアの進路を塞ぎ、もう一枚の手配書をみせる。 「最後にこの金髪の御令嬢を見なかったか?先ほどの男が連れ去ったのだ。コイツの身柄も同時に渡せば報酬が2倍になる」 傭兵は勘繰るような表情でレティシアを見つめる。 「見たことはありませんね……お力になれずにすみません」 レティシアはそっけない返事を繰り返し、傭兵の脇から潜りこむようにして前へ進む。 その瞬間だった…傭兵は去ろうとするレティシアのローブを掴んで強引に引っ張る。 「お前、何か隠してやがるだろう!そのフードを外して顔をよくみせてみろ!」 バッ!とフードが剥がされ、鮮やかな金髪の髪がなびく。 急いでフードを被りなおすが、男は手配書とレティシアを見比べわなわなと震えた。 「き、貴様!レティシアだな!やはり、ロイエルもこの近くにいるのか!?おい!あの男はどこにいる!」 掴みかかろうとする傭兵をかわし、レティシアは着ていたローブを投げつける。 傭兵がわずかにひるんだ瞬間を見逃さなかった。 レティシアはその場から駆け出して一目散に酒場を目指す。 「おい!見つけたぞ!こっちだ!逃がすなぁっ!」 傭兵は大声で仲間に向かって叫び、あたりは一気に喧騒に包まれた。 レティシアは町中に自分達を探す傭兵達であふれていた事に気がつく。 傭兵は走る自分の姿を見つけては、その数を増やしながら追いかけてくる。 バァンッ!酒場の扉が勢いよく開かれ、全力で走ったレティシアは肩で息を切らしながら叫んだ。 「ロイエルさん!大変です!すぐにここを出ましょう!!外に傭兵の皆さんが……あっ……えーと……」 言葉の途中で酒場中の人間の注目を自分が集めている事に気がづく。 愛想わらいでごまかそうとしているレティシアに向かってロイエルが声をかける。 「いつまで、そこに突っ立てるんだ?逃げるんだろ?というかローブはどうしたんだ?お前、目立つから着てろって言ったじゃねぇか?」 「動きづらかったので、捨てて来ました!急いで教えたかったので仕方がありません!」 ロイエルに必死に言い訳をするレティシア。 酒場を出た二人の目の前に、沢山の傭兵達が集まっていた。 「ロイエルさん!私も加勢します!」 杖を構えるレティシアの前に出るように剣を構えるロイエル。 「ったく!少しは反省しろよ!……しゃーねぇ!行くぞ!レティシア!」 ロイエルは傭兵達に向かって剣を向ける。 「テメェら!こいつは妙な剣技を使うから気をつけろよ!いいか!一人ずつじゃねぇぞ?束でかかれよっ!」 言うやロイエルを中心に周りを傭兵達が囲む…そして、一気に襲い掛かった。 傭兵達の判断は確かに間違ってはいなかった。 腕の差を冷静に判断して集団戦に持ち込む。 だが誤算は、ロイエルの剣技が傭兵達の予想をはるかに超えていたことだった。 多人数を相手に一歩も引かずに剣を振るうロイエルによって、傭兵達の旗色はどんどん悪くなっていく。 戦いは乱戦になっていき、ロイエルを護る為にレティシアが魔法の詠唱を始めた時だった。 背後からレティシアにとりつき羽交い絞めにする傭兵。 「あっ!レティシア!?」 一瞬、ロイエルはレティシアに気をとられた。 「隙ありだぁっつ!オラァッ!」 ロイエルの側面から剣が振り下ろされる。 ダアァァンッ!間一髪で剣を避け、反動から飛び蹴りを相手に放つ。 「レティシアを放しやがれっ!」 ロイエルの剣閃はレティシアを羽交い絞めにしていた傭兵だけを吹き飛ばす。 「レティシア!大丈夫か?」 「は、はい…それよりもロイエルさん…お怪我を…」 ロイエルの肩からは血が滴っていた。 「ちぃ…避けそこなったか」 「私の不注意で…すみません」 「今にはじまったことじゃねぇだろ?気にすんな。お前が無事ならそれでいい」 レティシア達はその場にいた傭兵達を一掃し、酒場の外へ出る。 応援を呼びに外へ向かった傭兵もおり、このままでは危険だと判断したためだ。 傭兵達があたりを探す中、レティシア達は荷馬車の中に身を隠し息を潜める。 やがて荷馬車が動き出し、傭兵達の声が徐々に遠ざかるのを感じて二人はホッとした。 怪我を治療するレティシアにロイエルは気になっていたことを質問する。 「そういや今更なんだが、なんでわざわざお屋敷を飛び出そうなんて思ったんだ?イエルじゃシュレイドと同じくらいデカい貴族なんだろ?お前のオヤジならどうにかなったんじゃねぇのか?」 レティシアは頭を振って答える。 「残念ですが、それはないです。父は根っからの貴族です。庶民に対して何か酷いことをするわけではないですが、庶民の身に起きていることに興味があるわけでもありません。私が、こうして何かしなきゃ…って思ったのはホントに些細なことからです」 レティシアはロイエルに語り始める。 「私は小さい頃から、ずっと本を読んでいたんです。本に出てくる冒険の話や平和な世界に憧れていました。それで、いつか外の世界を見たいと思うようになっていたんです」 自分の住むお屋敷と貴族街だけしか見たことのないレティシアにとって、外の世界への思いは募っていくばかりだった。 「一度だけ、ほんの出来心だったんですけど…どうしても外の世界が見たくなっちゃって父の目を盗んでお屋敷を抜け出したんです」 衝動を抑えられなかった。 どうしても外の世界を見たい!その気持ちはレティシアに行動を起こさせる。 お屋敷を抜け出し貴族街を駆け抜けてイエルの中心街へ向かう。 閑静な貴族街から中心街に近づくにつれて周りの騒がしさが増してくる。 はぁ…はぁ…と息を切らしながらたどり着くと中心街には市がたっていた。 見たこともないような珍しいものが所狭しと並び、興味をさらっていく。 そこでは貴族の社交界のような固い空気はなく、沢山の人が行き交い笑顔に満ちた世界が広がっていた。 「興奮しました。こんなにも素晴らしい世界があるんだなって思っちゃいました」 その日、レティシアは街中を探検していた。 だが、レティシアにとってはあまりに新鮮で刺激的であった為、夢中になりすぎて気づけば人気のない貧民街にまで来てしまっていた。 「ちょっと怖くなってきたので引き返そうとしたんです。そうしたら、貴族の兵士達がいるのを見つけて…見つからないように咄嗟に隠れました」 物陰に隠れてそっと様子を伺っていると、兵士達は乱暴に民家の扉を叩き始めた。 「住民の方が外に出てくると、兵士達はいきなり乱暴を始めたんです…」 突然の出来事に怖くて何もできなかった。 そして、貴族の兵士は住民の懐から財布を取りだすとそのままどこかに去っていった。 「住民の方は怪我をしていました。それで、私が魔法で治療したんです。ありがとうってお礼を言われて…なんでこんなひどい事をされたのか聞いてみました」 民家の住民は少し考えてから重い口を開き始める…。 「貴族の兵士は…ああやって身に覚えのない税金を取り立てに来るんだ…」 他にも店を荒らしに来る時もあれば、ただただ乱暴しにくるだけの時もある。 貴族に逆らうとどんなひどい目に合うかわからないからじっと堪えているという話を聞く。 「私、我慢できませんでした。自分と同じ貴族がこんなことをして人を苦しめているって初めて知って。急いでお屋敷に戻って、見たこと聞いたことを父に話したんです。そうしたら、庶民のことなんて貴族が気にする必要はないって言われたんです…」 あの日、お屋敷を抜け出したことを怒られた。 あの後も、父に疑問や質問を投げては庶民だからとどうしても取り合ってもらえなかった。 庶民と貴族はそんなに違うの…?それはしょうがない事なの?あの人達を見捨てて自分だけ幸せに暮らすなんて考えられない。 狭いお屋敷の中じゃ何もできない…そう考えてレティシアはお屋敷を飛び出そうとしたと語った。 揺られる馬車の中でロイエルはレティシアの話を聞き、そして口を開いた。 「そっか、今のスラムじゃぁ…レティシアの見た貴族兵の行いなんて日常茶飯事で起きてるしな。正直、俺は貴族なんてそんな奴らばっかだと思ってるぜ?けど、もしレティシアみたいな貴族が実権を握るならイエルも少しはマシになるかもな」 ロイエルは自分にも言い聞かせるように話をした。 二人は揺られる馬車の荷物の影に隠れながら、夜通しで互いの考え、互いの理想の話をする。 ――翌日 日が高く昇る頃、荷馬車はアルモニアの街に着いていた。 荷馬車の主が荷物を降ろそうと幌(ホロ)をはがすと、寝入っているレティシア達を見つける。 「お、おい!あんたら誰だ!?なんでウチの馬車に勝手に乗っているんだ!」 荷馬車の主が驚き大声を上げたことでレティシア達は目が覚める。 「ちぃっ…途中で降りるつもりだったが、俺としたことが…」 バッ!と起き、ロイエルは舌打ちをしてから何とか出し抜いて逃げようと画策する。 「レティシア!俺がひきつけるから…一気に走れ!」 ロイエルはレティシアに向かって指示を出す。 「ダメですっ!」 えっ?とロイエルはレティシアに振り向く。 レティシアは荷馬車の主に向かい申し訳なさそうに話しかける。 「すみません、ご迷惑をおかけしました。ここまで運んでいただいたのですから、少ないですが、こちらを受け取ってください」 レティシアが手渡した袋には金がぎっしりと詰まっていた。 「お、お…本当にいいのか?嬢ちゃん!?」 袋を受け取って中身を覗いた荷馬車の主は、その量に驚いては大はしゃぎで快くレティシア達を許す。 「ほー、あんなに渡して…太っ腹だなぁレティシア」 「はい!全部差し上げました!」 「え…マジかよ」 大はしゃぎをしている荷馬車の主を前にして、返せとも言えずにロイエルは1人頭をうなだれた。 アルモニアはいたって平穏であり、まだこの街では二人の顔は割れていないらしく、顔を出しても充分外を出歩ける様子だった。 イエルの現状を変えたいと飛び出したものの、具体的な行動を何も決めていない二人。 まずは情報を集めて目的を決めようとロイエルが促す。 スラムのボスが顔を利かせていた頃のイエルは平和だったんだ…それが、徐々に変わり始めたのには何か理由があるはずだ。 レティシアは頷いて、ロイエルの案に乗る。 「ロイエルさん、アルモニアは帝国に占領されているんですよね?街のあちこちに怪我をしている人がいたので…あの、私、目の前の傷ついた人たちも放って置けないです!」 アルモニアが帝国に占領されているからか、この街も相当疲弊している様子だった。 「そうだな…それなら情報収集する時間を決めるか。レティシア1人だと不安だしな、昼はレティシアに俺が用心棒として付き添うぜ」 「ロイエルさん…ありがとうございます!」 「夜になったら俺は酒場で情報集めをするか」 「はい!」 二人は相談して案を決め、昼は用心棒も兼ねてレティシアの人助けを手伝い、夜はロイエルが酒場で情報収集をすることになった。 また、路銀が尽きたこともあり、レティシアは治癒魔法で医療院の手伝いをする。 そんな形でしばらくの間、二人のアルモニア生活が始まった。 ――そして月日は経ち 拠点としている宿で今日も二人は集めた情報を報告しあう。 「どうだ?何かめぼしい情報は手に入ったか?」 「えぇと…私が治癒魔法を使って回復させた人なんですけど、今は亡き奴隷商に仕えていた元奴隷の方で…火には気をつけろ!特に赤い竜の炎には気をつけろッ!と言っていました」 「はぁ?なんだ?そのたわ言みたいな情報は…」 「え、えぇと…あ、そういえば、かつてアルモニアが誇っていた音楽隊の隊長なんですけど…その男の人、口紅はピンク色を使っているそうです。なんか男運があがるからとか…」 「おいおい…そんな情報がなんの役にたつんだ?」 「えぇと、すみません……これで全部です」 アルモニアに来てから結構な月日が経つが、イエルの現状を打破するような情報はまったく集まっていなかった。 「くっそ…こんなんじゃ、全然前に進めねぇじゃねえか!」 次第にロイエルは焦りからかイラ立ちが募り始めていく。 「レティシア、いつまでもアルモニアの人に構ってばかりいちゃ、イエルも世界も変えられねぇ。少しは集中して今後の事を考えようぜ?」 ロイエルの話は、人助けをやめて情報収集に専念しようという内容だった。 「そうですか…分かりました。あ、でも、あの…重病だったおじいさんの所には、少しだけでも様子を見に行ってもいいですか…?」 ロイエルの案に了承しつつもレティシアは重病の老人の様子だけは見に行きたいと言う。 レティシアは街で病気や怪我で床に伏せている人を見つけては、治癒魔法で癒してあげている。 癒したあとも数日に一度は様子を伺いに行くようにしていた。 だが、その重病の老人には治癒魔法が効かず、せめて会話だけでもと毎日のように老人の家に通っていたのだった。 「レティシア…」 ロイエルはハッと何かを思い出したかのように、レティシアに向かい申し訳なさそうにする。 「え?どうしたんですか?」 レティシアは驚きながらもロイエルに問い返していた。 別に情報収集をサボっているとかそういう事じゃない。 情報の集まりが悪くてイライラしていただけだ。 イエルを良くしたくて…変えたくて……このアルモニアまで来たのに、目の前の人も助けないで何がイエルも世界も変えられねえ!…だ。 「どうやら頭に血が昇っていたみたいだ。お前のいいところはそういう優しさだったな…情報が集まらないからって、八つ当たりしてすまねぇ。」 「そんな!謝らないでください。私はそんな事気にしていませんから」 「ああ、ありがとな。なんか大事な気持ちを忘れるとこだったぜ。そうだな、まだ当たってないところもあるし…もうちょっと気合入れて情報収集するか!」 「はい!頑張りましょう」 ―― 二人はせっせと情報収集を再開していた。 レティシアだけはあの老人の為に毎日少しの時間を割いては話し相手になっていた。 助けられなくても、せめて力になれることをしたかったのだ。 そんな中、ロイエルは酒場で仕入れた情報から、時勢に詳しい情報屋がアルモニアに帰ってきている事を知る。 「ロイエルさん、やりましたね!」 「ああ、少しは前進できたな。情報屋はここからそんなに遠くないところに宿をとっているらしい。早速でかけるか!」 「はい!いきましょう」 二人の毎日の情報集めが功を奏し、アルトゥーロという情報屋までたどり着くことができた。 そして、二人はひとしきり喜びを分かち合った後に情報屋がいるという宿へ向かう。 ロイエルは宿の店主にアルトゥーロという男が泊まっていないか尋ねてみる。 だが、店主には答えられないと断られてしまう。 「どうすっかな…アルトゥーロが出てくるまで待つか?」 「はい。そうしましょうか」 二人が相談をしていると、パイプを口にした男がロイエルへ近づいていく。 「おい…お前らか?俺の事を探し回っているって奴らは」 「お前、アルトゥーロか?はは、こんなすぐ会えるとはな!俺はロイエルってんだ。早速で悪いんだが情報が欲しくてな…」 ロイエルがみなまで言うより先にアルトゥーロが口を開いた。 「帰れ…」 情報屋のアルトゥーロは、ロイエルを一瞥するなり冷たく言い放つ。 「おい!何でなんだよ!」 「よく俺を見つけたなと褒めてやりたいが…俺は情報屋だぞ?情報を売って金にしているんだ。あんたらは見た感じ、金…持ってないんだろう?」 情報屋は確かにイエルの情報を持っているが、どれだけ二人が食い下がっても金が払えないなら教えられる情報はないと突っぱねられる。 「くっそ、あの野郎…足元見やがって!」 「すみません…私が荷馬車の方に路銀を全て渡してしまったばかりに」 「おいおい、過ぎたことでくよくよしてもしょうがないだろ?」 「ですが…」 「せっかく、ちょっとは前進できたんだ。あんな大金を払うのは癪だが…なんとか金を作ることを考えようぜ?」 「ロイエルさん…はい!わかりました!」 二人は大金を稼ぐ方法を相談するが、なかなかいい案が思い浮かばずにいた。 ―― 次の日、お金を稼ぐ方法を話し合いながら、レティシアは日課のお見舞いにロイエルと二人で重病の老人の家へと来ていた。 「おじいさん、こんにちは!調子はどうですか?今日は桃を持ってきましたよ」 「おお、レティシアちゃん…いつもすまないねえ」 「気にしないでください。こんなことしか力になれないので。」 レティシアは馴れた手つきで皮をむき、桃をきれいに切り分けては小皿に盛り付けていく。 「できましたよ。はい、どうぞ」 レティシアは老人に桃の盛り付けられた小皿を渡す。 「ありがとう。こんな老いぼれに優しくしてくれるなんて、ほんとうにレティシアちゃんは優しい子だよ…」 「そんな…あ、食べたらお薬の時間ですよね?お湯を沸かすので少し待っててください」 パタパタと動き回るレティシア。 ロイエルもレティシアの手伝いの為に、台所へと水差しを取りにいく。 「爺さん、帰ったぞ。…おい!なんだてめえら?」 ガチャっと開かれた扉から姿を現れたのはアルトゥーロだった。 「てめえら、あんときの…!」 アルトゥーロには二人が金策に行き詰った故の行動に見えたのだろう。 老人に薬を飲ませていたレティシアにナイフで襲い掛かる。 「レティシア!あぶねぇッ!」 だが、間一髪ロイエルの剣が間に入りナイフを受けた。 「ちっ…お前ら、ここで何をしている?返答次第じゃ生かして返さねぇぞ」 アルトゥーロが凄みをきかせて二人を睨みつける。 「アル!やめろ!この二人は客人だぞ!物騒なものをしまえ!」 重病人であるはずの老人の怒号が響き渡る。 アルトゥーロは驚いたが、素直に老人のその言葉に従った。 老人はレティシアに命を助けられた事を話し、今も毎日のように話し相手になってくれているとアルトゥーロに説明をした。 「そうか…すまなかった。まさか、お前らが爺さんの恩人だったとはな。ああ、俺は爺さんの孫さ。こうやって情報屋をしながら爺さんの病気のために金を稼いでいるんだ」 レティシア達は老人と情報屋アルトゥーロが祖父と孫の関係であることを知る。 「恩には恩で返す。爺さんの命の恩人なら情報を渡さないわけにはいかないな。よし、なんでも聞いてくれ」 「アルトゥーロさん…ありがとうございます!」 「よかったな。ワシもちょっとはレティシアちゃんに恩が返せたようだよ」 老人は微笑みながらうれしそうに話す。 「おじいさんも…ほんとにありがとう」 レティシアとロイエルは老人とアルトゥーロに感謝し、イエルの情報を求めた。 「イエルの近況について聞きたいんだ、どんなことでもいい。教えてくれ」 「ふむ、イエルか…そうだな。帝国が王都を陥落させたことは知っているよな?そのせいでイエルにも変化が起きている。なんでも…イエルの三大貴族の一つであるシュレイド家が帝国に取り入る為に賄賂を渡しているって話だ。それも莫大な金額を…その金を作るのに結構あくどいことをしているみたいだぞ?シュレイドを筆頭にその一味が勝手に税を取り立てたり、イエルの住民に暴行を働いては財産を奪ったりしているらしい」 シュレイドの名前が出た瞬間、ロイエルの顔が一瞬険しくなる。 その話の内容もスラムでは日常茶飯事に行われている事だった。 レティシアは黙ってアルトゥーロの話を聞いていた。 シュレイドの名前が出てからのロイエルはずっと難しい表情をしている。 レティシアには、その心情を推し量る事しかできなかった。 ―― 二人は老人の家を後にし、自分達の宿へと向かって歩く。 「帝国だったんですね…」 色々と情報を得たことで諸悪の根源は帝国であることを知る。 「ああ、そうだな。スラムがおかしくなったのも…スラムのボスがシュレイドに殺されたのも同じ時期だったな。」 「ロイエルさん、これからどうしましょうか?」 レティシアはロイエルに今後の事を聞いてみる。 アルトゥーロの話でシュレイドという名前が出たときに、ロイエルが見せた険しい表情をレティシアは見逃さなかった。 何か因縁があったのだろうか?レティシアは心境を見せないでいるロイエルを気にしていた。 「レティシア、帝国が全部の悪だってことはわかった。けど、俺はその片棒を担ぐようなことをしているシュレイドも許せねぇんだ…あいつの悪事は帝国に比べたら小さいかもしれねぇけど…」 シュレイドに対する己の心情をロイエルはレティシアに話す。 帝国は許せないが、シュレイドも許しがたい…ロイエルは葛藤をしていた。 「復讐しても仕方ないのは分かっているが、それでもシュレイドは許せねぇんだ!けど、あいつを打ち倒しても、傘下の貴族家が同じ事をするだけで…何も変わらないかもしれねぇけどな」 「ロイエルさん。これまで通り…まずは帝国やシュレイド家の情報を集めませんか?今悩まずに、色々分かってから決めればいいじゃないですか」 「ああ、そうだな…そうするか」 ―― 帝国やシュレイド家の情報を集めはじめて数日が経った頃、遅い晩御飯をとるために二人は酒場に来ていた。 この酒場はロイエルがよく情報収集につかっており、常連客とはすでに顔なじみであった。 酒をなみなみ注いだジョッキを片手にした常連客の男は、ロイエルの姿を見つけては話し相手がいたとばかりにロイエル達のテーブルに寄ってくる。 「よぉ…そういや聞いたかおめぇ?イエルでとんでもねぇ事件があったらしいぞ。なんだか貴族のでかい家に居た全員が、惨殺死体で発見されたと。貴族の名前は、シュ…シュレなんだっけか?」 「シュレイドか!」 ロイエルは声を上げた。 「それだ!そんな名前だったぞ!」 想像以上に食いついてくるロイエルに、おっさんはちょっと待っていろと言い残して酒場のゴミ箱からぐしゃぐしゃになった号外紙を持ってくる。 号外紙にはシュレイド家の中にいた全員が、短刀のようなもので切り刻まれた惨殺死体で発見されたとあり、さらに当主のシュレイドは自室で誰よりもひどい状態で発見されたとのことだった。 「はは…あの野郎…くたばりやがったか…」 ロイエルは少し泣きそうな顔をしながら笑い出す。 「レティシア、すまねぇが…先に宿に戻ってる。悪りぃが少し一人にしておいてくれ」 レティシアが声をかけることを戸惑っているとロイエルは足早に宿へと戻っていく。 背中姿は悲しそうな、そして何かやるせない思いをしているのだとレティシアは感じていた。 ―― 翌日の朝、レティシアはロイエルの部屋の前に来ていた。 昨夜からずっと部屋を締め切りにしているロイエルを心配してのことだった。 「あの…ロイエルさん。朝食をいただきに行きませんか?」 レティシアはコンコンとノックをしてドア越しに声をかける。 「決めたっ!レティシア!」 バンッ!とドアが開かれ、大声をあげながらロイエルが部屋から出てくる。 「きゃっ!ロ、ロイエルさん…?何を決めたんですか?」 「ああ、レティシア。的は一つだ!シュレイドはもういねえし…帝国を討てば全てが終わるはずだ!もう吹っ切れたぜ!相手はシュレイドの比じゃねえが…やってやろうぜ!」 昨日とは打って変わって元気な姿を見せるロイエルにレティシアは驚く。 シュレイドの事は吹っ切れたのだろうか?だが、“こちらのロイエルさん”のほうがいい。 そう思ったレティシアは何も聞かずにロイエルの言葉に全力で同意した。 「はい!そうしましょう!」 しかしここ最近調べた情報では、帝国の勢力はあまりに強く二人で何とかできるような状況ではない。 「帝国は強大だ…俺たちだけだと敵わないからな。まずは、帝国と戦っているっていう反帝国組織にあたってみるか?」 「そうですね。それに、イエルもアルモニアも…私は帝国の支配に苦しむ人たちをみんな解放していきたいです」 「はは、そいつは困難な道のりになりそうだな」 「はい!ずっと何とかしなきゃって思ったことが出来そうです!」 そして、まだ見ぬ帝国の支配に苦しむ人たちを開放すべく二人は反帝国組織に入団する決心を固める。 生まれも境遇も違う二人が…それぞれ思い描き、夢見た平和な世界。 形は違えども、その平和への望みは一緒だった。 帝国は巨大な存在で二人の前に立ちはだかっている。 それでも希望を胸に二人は戦い続けることを選んだ。 そして、夢見た平和な世界の実現へ向けて二人の戦いは新たな幕を開ける。
https://w.atwiki.jp/etazo/pages/9.html
キャラスペック:クレリックレベル20 斧:バトルアクス 槌:ウォーハンマー (両スキル共にレベル20MAX) 対象:ジュラゴブスカ 検証方法:1回の戦闘にて斧・槌、初回攻撃より20秒の命中率及びダメージ 検証回数:100匹 ■斧 攻撃命中:519回 攻撃ミス:264回 命中率:65,4% 合計ダメージ:8424 ■槌 攻撃命中:474回 攻撃ミス:124回 命中率:79,6% 合計ダメージ:8756 総括:散々言われてたクレリックの武器についてだが、 数値化してみるとあきらかな差がでた。 (2ちゃんねるエタゾスレ28より) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/sokulibe/pages/511.html
+黒き禁忌に触れし者ハシュテッド 「ハッピーバースデー!ハシュテッド!!」 仕事明けの自室。 扉を開けた途端に耳に飛び込んできた大声に驚く。 「シャロン……?どうしたの?」 「どうした……って、今日は貴方の誕生日でしょう?」 「あぁ!そうだった……ハハ。忘れていたよ」 激務に追われる日々のせいでついつい忘れていた。 同僚である彼女もまた同じ環境にいるはずなのに、わざわざ覚えてくれていたのか。 思えば自分も彼女の誕生日のことだけは忘れたことはない。 そういうことなのだろう。 「ところで、留守の間にどうやって部屋に入ったんだい?」 「やっとこの合鍵ちゃんにも出番が回ってきただけよ!」 「あー……ずっと前に渡したっきりだったね」 「そんなことよりも、早く!ご馳走も沢山用意してあるの!」 自信あり気な面持ちのまま、テーブルまで自分の腕を引っ張っていくシャロン。 そこには、その表情を裏打ちするには十分すぎる料理の数々が並んでいた。 「凄いな……全部一人で?」 「当然!例え一流シェフであっても、今夜は私以外の人間の作ったものは口に入れさせないから」 「部隊のみんなは、いつも戦場で果敢に戦う君にもこんな一面があるってことを知らないんだね。本当に光栄なことだ」 「いい加減見え透いたお世辞はやめにしないかしら?こういう事が似合わないのはわかってるわよ……」 「アハハ!嬉しくって、ついね……」 食卓に並べられたご馳走に舌鼓を打ちながら、静かに夜は過ぎていく。 「本当に美味しかったよ。今日はありがとう。シャロン」 「デザートもあるわよ?」 再び例の微笑ましい表情を浮かべ、食器棚の影からケーキを運んできたシャロン。 そして彼女は、おもむろにロウソクをテーブルの上に並べた。 「……二十三本。ちゃんと歳の数だけ用意してくれたんだ」 「それを一本ずつケーキに刺しながら、貴方のその歳の想い出を聞かせて欲しいな」 「だから机に並べたのか……なんだか急に罰ゲームみたいになってきてないかい?」 「じゃあ、まずは生まれたばかりのハシュテッドから!」 「問答無用なんだね……」 真新しいケーキを見つめ、自分の生まれを思い返す。 「二十三年前の今日。アスピドケロンの街で、僕は司書の両親の間に生まれた」 ………… …… 「五歳。騎士団の養成学校に入った。父の勧めだったけど、運動の苦手な僕は正直気乗りしなかったな……」 ………… …… 「十三歳。団長が認めてくれて、術士隊の副隊長になった年だ。突然のことで驚いたよ」 ………… …… 「十六歳。君を初めて見た。両親の勤める図書館だった。そこに顔を出した君をずっと眺めていたのを覚えているよ。装甲士隊の隊長だった君に近づくため、それからはがむしゃらだったな……」 「初めて聞いた……私は全然気づかなかったわ……」 「それもそうだろうね。後衛の術士隊が最前線の装甲士隊の人と関わる機会なんてほとんどないし、僕も隊の人に聞いてやっと君の事を知ったんだから」 ………… …… 「十八歳。この年は――」 「私と一緒ね」 「……あぁ。そうだね。ここからは君と歩んだ人生だ。僕の人生で一番大きな転機になった年。憧れだった君の隣に立てることが、とにかく嬉しかったよ」 「私はいつも無茶する貴方が心配で仕事中も落ち着かなかったわ……」 「それはお互い様さ。この年はいろいろな事があったね。泊り掛けの遠征じゃ、二人きりでもないのにやたらとドキドキした。両親に君を紹介した時は、身構えていた僕達を心から祝福してくれたのは本当に嬉しかった」 ………… …… 「二十一歳。騎士団長に就任した君。そして、僕も併せて副団長に昇格した。倍に増えた仕事を二人でなんとか処理し続けたね……」 「えぇ……地獄だったわ……きっと貴方とじゃなければ気が滅入ってた……」 ………… …… 「二十三歳。今日。一番大切な人に誕生日を祝ってもらった。そして……僕はそのお返しに、結婚を申し込むんだ」 「…………え?」 最後の一本をケーキに差し、二十三本のロウソクの灯が部屋を包み込む。 そして、彼女の手を優しく取り、真剣な眼差しで言葉を紡ぐ。 「シャロン。これからもずっと傍にいて欲しい。僕と結婚してくれるかい……?」 「…………」 「……あれ?」 絶対の自信があったわけではない。 少なくとも許否のどちらかの返事はもらえそうなものだが、予想外の沈黙。 彼女は目を見開き、驚いた表情のまま固まってしまっている。 「……勢いに任せて言ってるんじゃないでしょうね?」 「え!?そ、それは勿論!」 唐突に口を開いたシャロン。 実のところ、前々から機会は伺っていた。 タイミング的に言いやすいと思ったのは間違いないが、ただ勢いに任せてというわけではない。 だから嘘は言っていない。 「……喜んで」 口に出した途端、見る見るうちに彼女の目から涙が溢れ出る。 それは彼女が真意を述べている何よりの証拠だった。 「ほ……本当に!?」 「ここで嘘を付くほど無神経な女だと思っているの?」 「い、いや、そういうわけじゃ!ただ……その……受けてもらえた後の言葉を考えていなかったというか……いや!適当な気持ちで言ったってわけじゃなくて!あぁ、そうだった!!指輪を!!」 「ふふ……貴方らしい」 プロポーズを快く承諾してくれたシャロン。 慌てて差し出された指輪に薬指が通ると、涙を流したまま、満面の笑顔を見せてくれた。 本当に幸せな夜だった。 明日、騎士団の団長として、王都からの招集を受けていた彼女。 任務から戻ったら式を挙げようと約束した。 ――コンコンッ 「シャロン?準備はできたかい?」 翌朝、隊舎の団長室の扉をノックして中へと入る。 出発の控えるシャロンに、見送りの言葉をと思ったのだが…… 「何をしてるんだい?」 「ハシュテッド!?い、いつの間に!?!?」 シャロンが愛用の盾の裏に、熱心にナイフで何かを刻んでいるのが見えた。 声を掛けられたことでやっとこちらの存在に気付いた彼女は、慌てて盾を背中へ隠す。 「ノックはしたんだけど……?」 「そ、そうだったかしら!?」 ノックにすら気付かない程に集中していた彼女。 それだけの想いを込めて彫られたものとなると、その正体が気になるのも当然だ。 「何だい?気になるな」 「何でもないの!そ、そろそろ出発しないと!」 「あ、うん。点呼は済ませておいたよ。皆すでに待機してる」 「じゃあ、私も行くわ。任務を終えて必ず帰る……ニ、三日間だけの辛抱ね」 「待ち遠しいよ。たった数日なのに何年にも思えそうだ」 結局、何を彫っていたのかは教えてくれなかった。 彼女が帰ったら改めて聞いてみよう。 部隊の無事を祈りながら、次第に小さくなっていく彼女の背中が見えなくなるまでずっと見送り続けた。 そして、彼女は部隊共々、二度と帰ってはこなかった…… 帝国が王都を襲撃したとの知らせを受けたのは、シャロンと近衛隊が王都に向かってからすぐのことだ。 当然、団長と団員の安否を確認するため、団内でも会議の場が設けられ、上層部に王都への出兵を打診した。 しかし、状況が詳細につかめていない中、軽々に行動するのは危険だという判断により申請は棄却。 隊舎に残った騎士団員達は皆、苦虫を噛んだような顔で、ただ事態が変わることを待つほかなかった。 「離せ!頼む!行かせてくれ!!」 「副長!どうか……どうかご辛抱を!!」 「我々も想いは同じです……ですが、今は!」 「落ち着きたまえ、ハシュテッド君。君まで行方知れずなんてことになれば、騎士団の基盤そのものが揺るぎかねないんだぞ!?せめて王都からの救援要請が来るのを待つんだ!!」 「要請が無ければ誰も助けないのがこの騎士団の在り方ですか!?そんな組織ならば私はこの場で退団させていただく!」 「落ち着けと言っているだろぅ!おい!この者をしばらく牢にぶち込んでおけ!!」 上層部の面々が並ぶ席で、決定をどうしても受け入れることができなかったハシュテッドは、単身王都へと向かうことを宣言。 しかしこれを上層部が許すはずも無く、団員達の手によりその場で抑え込まれる。 命令通り、牢へと連れていかれたハシュテッドだったが、この時に牢へと彼を連れて行った団員達は、口々に言葉を残した。 申し訳ありません。 頼みます。 去り際にそう述べた彼らは、哀しさとも、悔しさとも取れない苦悩の表情で顔を歪ませていた。 腰に手をやると、いつも通り刺されたままになっている杖。 「そういうことか……」 あの場で彼らが命令に背けば、自分だけでなく騎士団そのものが処罰対象になりかねない。 申し訳ありませんとは、自分一人に全て託すことになり申し訳ないとの意。 頼みますとは、シャロンと、共に王都に出向いた団員達のことを頼むとの意。 「……ありがとう!任せてくれ!!」 街が寝静まるのを待ち、行動を起こしたハシュテッド。 治癒魔術を得意にしているとはいえ、彼ほどの術士ともなれば、ある程度の攻撃魔術を操ることも容易い。 牢を破壊し、隊舎を抜け出した彼は、一人王都へと船を向かわせたのだった。 ――翌日 単身アスピドケロンを飛び出したハシュテッド。 彼の姿は、陽の落ちた王都の中心街。 その路地裏にあった。 念のために行商人の運ぶ荷台に隠れて王都入りしたのは正解だった。 街の外からはわからなかったが、都内にかつての英華は見る影も無く、行き交う民の表情も暗い。 あちこちに戦闘の傷跡と思われる損傷。 通りのいたるところに帝国兵の監視の目。 王都は敗北したのだ。 アスピドケロンを発つ前に確認したシャロンの辞令。 彼女達が王都へ赴いたのは、要人の護衛のためだ。 護衛対象は、王都の元老院に所属する議員の一人。 彼に話を聞けば、シャロン達の行方を掴める可能性もあるが、王都が帝国に支配されてしまっては、議員が処刑されてしまっている可能性も否めない。 そうでなくても、どこかに監禁されていると考えるのが妥当か。 だが所在がわからぬ以上、まずは当人の屋敷を当たってみるしかないか。 あらかじめ調べを付けておいた屋敷を路地伝いに一周。 表の門と、裏に二名ずつ帝国兵が立っている。 幸運だ。 議員はまだ生きて、しかもここにいるようだ。 見張りの存在がそれを裏付けている。 「しかし妙だな……ん?」 屋敷の側面。 敷地を囲むようにして植えられた街路樹。 その内の一際高い一本は、屋敷を囲う柵を易々と超える高さ。 丁度いい。 既に陽の落ちた今なら目撃される心配も少ないまま、密かに中に侵入できる。 「起きてください……議員」 「……ん……んん?な!?だ、誰だきさ――」 「失礼。大声を出すのは遠慮して頂きます」 静まり返った屋敷の中。 議員の寝室へと忍び込んだハシュテッドが議員に接触する。 寝ていた自分の傍に現れた見知らぬ男を見て、声を上げようとした議員だったが、その口を塞いだハシュテッドの目を見て、抵抗の余地のない事を悟ってくれたようだ。 「こんな真似をして……何用だ?お前は誰だ?」 「お答えできません。ただ、こちらの質問に答えて頂ければ、議員の身に害が及ぶこともありません」 「……何が聞きたい?」 「先日の戦にて、議員を護衛していた者達の事です。行方をご存じなのでは?」 「彼女達の身内の者か!?彼女達には……本当に申し訳ない事をしたと思っている!」 「待ってください!どういうことです?」 「……私がしたことを知ってここへ来たのではないのか?」 「……?」 「そ、そうか……いや、全て話そう。君には知る権利がある」 議員は語る。 先の戦乱時、議員は帝国に脅され、彼らを王都へ招き入れるよう手引きをしたこと。 シャロン達はそんなこととは知らず、議員を護るべく帝国兵の群れの中へと斬り込んでいったこと。 そしてその時、黒い霧が戦場を包み込み、帝国兵ごと彼女達の姿が消えたということ。 「その後の行方は知らぬ……強要されたこととはいえ、今回の結果を招いた張本人は私だ。そんな私を護るために彼女達は……」 「黒い霧……魔術の一種か?」 「すまない……本当にすまない……!」 「やめろ!まだ彼女達が死んだとは限らない!勝手なことを言うな!!」 「あ……あぁ!その通りだ!彼女達ならきっと、きっと生き延びているだろう!!」 「……」 だが違和感を覚える。 この男の言動。 恐らく嘘は口にしていないが、何かひっかかる…… 「……貴方は帝国に監禁されているのですか?」 「その通りだ」 「では、僕がお救いしましょう。屋敷を抜け出すのです」 「な、何を!?」 「帝国がこの地を治めた今、貴方はもはや用済みだ。いつ処刑されてもおかしくない」 「し、しかし……逃げたことが知られれば即処刑だ!このまま屋敷にいれば、命だけは助かるかもしれない!」 「……確かに。ですが、やはり貴方がここにいるのはおかしい」 「何故だ?」 「言いましたよね?いくら王都の元老院議員で、協力者だったとはいえ、貴方にはもう何の力も無い。帝国にとっては無価値。なのに軟禁なんて面倒なことをする理由がない」 「それは……まだこの地における帝国の支配も完全とは言えない。反乱分子が領内に潜伏している可能性も示唆し、いざという時に人質にできると思っているのではないか?」 「……その可能性も無くはないですね。でも、僕はこう考えます。貴方は帝国と取引をし、何らかの条件を呑ませた上で彼らを手引きした。例えば……身柄の安全と帝国での地位」 「な!?とんでもない!!私は――」 「外の様子も見ましたが、屋敷内を含めてもせいぜい十人足らずの兵士しかいない。人質にするつもりなら牢に入れた方が自然だし、監視も楽だ。これではまるで……通常業務としての警備。まさにそんな感じです」 「程度の差だろう!?帝国はこれで十分だと考えているだけかもしれない!」 「ここに来た時、僕はすぐに違和感を覚えました。議員の行方を探す手がかりがあればと思って来てみれば、まさかの本人がそこにいた。しかも、お世辞にも万全とは言い難い監視体制。これで監禁されているなんて言わせませんよ?」 「だから――」 「声が大きいですよ。何故、そこまで熱くなるのですか?」 「ぐ……」 「貴方は僕が護衛について尋ねた瞬間、聞かれてもいないことまで饒舌に語りだした。懺悔と言えば聞こえはいいが、貴方はただ自分の罪が露呈することを恐れただけですよね?後でボロが出るくらいなら、いっそ帝国を手引きした事実を強要させられたことにしてしまえば追及もされない」 「……」 「僕が情を誘える人間に見えましたか?そうして信用させておき、機会を伺い帝国兵に始末させれば貴方の罪を知る者はいなくなる」 「私は……ただ……」 「本当に強要させられたのであれば同情します。誰しも命は惜しいものです。だが……お前は違う!自分だけが大切で!自分だけが全てで!自分さえ良ければそれでいい!!そんなお前は――」 「ま、待ってくれ!命だけは助けてくれ!!」 「……それは僕の仮説が正しいと認めるということでしょうか?」 「認める!だから命だけは……!そ、そうだ!私の護衛に付かないか!?」 「何のつもりです?」 「仲間を探すにも動きやすいし、情報も手に入りやすいだろう!」 「王都を裏切り、帝国に尻尾を振った人間を信用しろと?」 「な、ならば金はどうだ!?これに勝る信用もない!!」 「……貴方には感謝しなくてはならない」 「おぉ!そうだろうとも!!」 「元々、僕はお前を殺すなんて考えてはいなかった。だが、話を聞いて如何にお前が救えない人間かよくわかったよ……」 「……は?え!?」 「お前のような人間を護るために……皆が……彼女が身を危険にさらしたかと思うとどうにかなりそうだ……僕は、危うく間違いを犯すところだったよ。それを気付かせてくれてありがとう……」 具体的な情報は得られなかったが、彼女達が生きている可能性があるとわかっただけでも良しとするべきなのかもしれない。 話によれば、帝国軍もまた黒い霧の被害に巻き込まれたとの事。 となると、帝国に手を出しそうな連中が絡んでいる? 真っ先に思いつくのは今回の戦の敗残兵。 中にはどこかで再集結し、帝国に反撃する機会を伺っている者もいるはずだ。 何にせよ、帝国の傘下の者を殺めてしまった以上、このまま王都に留まり続けるのは危険。 目標を革命軍に移し、その晩の内に王都を出ることを決めた。 ―― 一年後 シャロンの行方はいくら探してもその手掛かりさえ掴むことはできなかった。 かつて、王都の敗残兵に希望を求めたものだが、所詮噂は噂。 それを頼りに夜蛍の都『ミール』までやってきたが、本当に一年もの間身を潜め、力を蓄えることなどできているのだろうか。 実際は拠点どころか、その真偽すらも確かめようがない。 それでも諦めず、まずは情報が行き交う酒場に足を運んでみている。 「うぉい!酒が足りてねぇぞ!」 「そこの嬢ちゃん!ちょっと酌してけよ!」 比較的穏やかな治安情勢にある街と記憶していたが、どんなところにもこういう連中はいるものなのか。 カウンターに腰かけ、騒いでる連中に視線を向けてみると、その制服から彼らが帝国軍所属の兵士であることが分かる。 帝都での一件で、自分はお尋ね者となっているかもしれない。 少々目障りだが、触らぬ神に祟りなしだ。 いつもならそう考えるはずだった…… 「君達。他の客に迷惑だ。少し静かにしてもらえないだろうか?」 気が付けば席を立ちあがり、男達を窘めようと声をかけていた。 「はぁああああ!?俺達に言ってんのかよ!?」 「余所者か?ここでは俺達がルールだ。わかったら店の隅でミルクでも飲んでろ」 「ははははは!そりゃいい!!」 下品な笑い。 威圧的な言葉。 何もかもが無性に癇に障る。 あの夜以来、自分の心の奥底に何かドス黒い感情が芽生え始めているような気がしてならない。 「君達が勝手に掲げた規則など子供の落書きにも劣る。僕はこの場に集まる大多数の意見を代弁しているつもりだ」 「たった一人で威勢がいいじゃねえか小僧!」 「俺たちが誰だかわかってんだろうな!」 なんと気が楽なのだろうか。 湧き上がる衝動に身を任せるだけでこんなにも心地が良い。 「……ん?」 ふと感じた鋭い視線。 関わらまいと顔を伏せている街の人間のものではない。 視線の気配を辿ると、壁際の物陰に隠れた人物に辿り着く。 「はっ!?君は!」 「あぁん?お仲間かぁ!?」 何故ここにいる。 心から探し求めた最愛の人。 「ちっ……余計なことを……!」 自分の声に反応した兵士からも注目され、やれやれといって表情を浮かべる彼女。 見間違えるはずも無い。 王都で行方をくらましたはずのシャロンがどうしてここにいる。 「そこの女!おまえもこっちに……え!?」 「はぁっ!!」 思考が定まらない自分を余所に、躊躇なく兵士へと飛びかかったシャロン。 呆気に取られた兵士の一人が吹き飛ばされる。 「自分が何してんのかわかってんのか、てめぇ!?」 残された三人の兵士が、仲間がやられたことで標的を自分から彼女へ切り替えた。 「実戦も知らない雑魚共がっ!」 瞬く間に四人の兵士を倒してのけたシャロン。 動きも間違いなく彼女のものだ。 「すげぇ!かっこいいぜ姉ちゃんっ!!」 「酒持ってこぉおおおおおおおい!」 歓声に沸くその場で自分と彼女だけが静かに互いを見つめる。 「ふん……調子の良い連中だ。おい、大丈夫か?」 「あ……え?」 (何だこの違和感は?いや、それよりも彼女が……!) 「おまえ、革命軍の関係者か?」 「え?か、革命軍……?」 (わからない……一体何が起こっている?) 「無駄骨を折ったか……」 そのまま踵を返した彼女は早々に酒場を後にしようとする。 「待ってくれ!君なんだろ!?シャロン!」 「え?なに!?」 この反応の仕方。 名前にも反応したように思える。 口調や服装は違うが、やはりシャロンであることは間違いない。 「……やっぱり君なんだね?」 また彼女の優しい笑顔を見ることができる。 そんな儚い想いは、次に返ってきた答えによりあっさりと打ち砕かれた。 「人違いだ……私はシャロンなどという名ではない」 何だこれは…… 結婚の約束までした恋人の事を忘れている? それだけではない。 自分自身のことさえも。 確かめなくては。 このまま行かせてはならない。 「いいや……間違いない……!シャロン……ずっと探していた!」 「ぐうっ……!またか……!」 一瞬、懐かしむような表情を浮かべたかのように見えたが、その途端、頭を抱えて苦しみだしたシャロン。 「シャロン!?どこか痛むのか!?今すぐ傷を……」 「近づくな!私に触れるな!!」 伸ばした手は払いのけられ、彼女は逃げるように走り出した。 「私はダリアだ!シャロンなどという女ではない!これ以上関わるな!!」 「待ってくれ!!」 ダリアとは誰の名だ? 彼女を追わなくては。 それはわかっているのに、自分が忘れられたという事実を受け入れる恐怖と不安から足が思うように動かない。 その時の自分には、遠く霞んでいく彼女の背中をただ見つめることしかできなかった。 どれ程の時間その場にへたり込んでいたのか。 彼女が生きていることは素直に嬉しい。 しかし、その希望こそが彼女の異常がもたらす絶望をより濃いものにする。 ショックによる記憶喪失? これも何かしらの魔術による影響? 他人の記憶に干渉する魔術なんて聞いたことも―― いや、ある。 あらゆる分野の本を読み漁り、知識を積み重ね続けた二十余年。 ある医療関係の文献で、治癒魔術の弊害で記憶が変異する事例があったはず。 例えば、王都から姿を消した彼女は何らかの治療を受け、結果あのような症状をきたしてしまったとすればどうだろう。 専門の研究機関でなら詳しく調査がなされたこともあるかもしれない。 「待っていてくれ、シャロン。必ず君を……」 文字通り、魔術の粋が集合体となった都、魔導都市『マーニル』 魔術を専門的に研究する機関は世界各地に数あれど、この街が揺るぎない権威を持ち続ける所以はいくつかある。 その一つが、領地の三割を占める程の敷地面接を誇るマーニル魔法学校の存在だ。 『知識』という形で考えるなら、間違いなく世界一の機関と言えるだろう。 マーニル魔法学校図書室には、五千万冊にも上る蔵書が収められており、その半数が魔術関連の書籍や文献となっている。 「ゴメンよ……」 気を失い、目の前で床に倒れている一人の女性。 この学校の教師の一人だ。 知識の宝庫とはいえ、その実態は一般人が出入りする学校。 人の記憶を変異させるような人権を無視した情報が一般公開されているはずも無い。 閲覧制限、封印指定などがなされた類のもののみを収める隔離書庫は必ず存在する。 そして読み通り、目の前にその書庫が広がっている。 この書庫を見つけるため、彼女には協力してもらった。 脅しを利かせはしたが、すんなり頼みを聞いてくれたことは有難い限りだ。 拒絶でもされていれば、口封じも考えねばならぬところ。 それにしても、ひどく怯えた様子に見えた。 そこまで怖がらせたつもりはなかったのだが。 「……すごい数だな」 図書室の最奥部。 本棚をどかすと現れた床に擬態した扉。 扉の下に続く階段を下り、三つの魔術結界を解除。 そこまでしてようやくたどり着いたこの場所は『隠された』なんて言葉が不似合いな程の広さ。 まさか閲覧禁止カテゴリに該当するものだけでもこの数とは。 恐るべしマーニル魔法学校。 端の棚からタイトルをなぞっていくと、不老不死、人体複製、死者蘇生などといった身の毛もよだつ文字が並んでいる。 暫らく進むと、治癒魔術関連のものがまとめられている棚に突き当たった。 その中に目を惹くタイトルが一つ。 「治癒魔術を応用した疑似記憶の移植実験」 ―――――――――――――――――――――――――――――― ~治癒魔術が及ぼす人体への影響~ 今日、治癒魔術は世界中の魔術師の手により日々開拓され、その真価を高めている。 その多様性は多岐に渡り、今なお各地で独自の進化を………… ………… …… ~脳への干渉による治癒~ およそ三百年前、大陸北西の孤島に居住していたとみられるグティプタラ民族が用いた呪術を元に発展した治癒魔術。 概要としては、魔力によって被術者の脳内部、記憶を司るとされる海馬に刺激を与え、良好な健康状態時の記憶を引き出し、その姿へ被術者を導くことで自己治癒能力を最大まで高めるもの。 本魔術の特筆すべき点は、被術者の内的要素によって効果を促すことにあり、治癒の他、人体破壊や記憶操作、細胞回復による若返りにも同様のメカニズムを転用できる可能性があると考察………… ………… …… ~第一期記憶操作実験記録~ 本魔術を応用し、人体の記憶操作を試みる実験を開始。 魔素により形成した疑似記憶を被験者の海馬へと流し込み、定着させる。 第一次実験 被験者ティム=ディゴリー 男性 二十七歳 ………… 第一次実験失敗 ………… 第二次実験失敗 ………… …… ~失敗要因の考察~ 全実験結果において、微かに記憶の混濁症状は見られるものの成功には至らず。 以下のいずれかの要因が考え得る。 一、形成した疑似記憶の不完全性 二、記憶を定着させる際の魔力による疑似記憶の変異又は損傷 上記要因解消のため、宝具『イマジン・カンヴァス』の使用許可を申請。 ………… …… ~第二期記憶操作実験記録~ 宝具『イマジン・カンヴァス』の具現化能力により、強い魔力耐性を持つ、完全疑似記憶を形成。 これを被験者の海馬へと流し込み、定着させる。 第一期実験の課題であった、疑似記憶の不完全性と対魔力耐性の解消を目的とするものである。 第一次実験。 被験者アンジェロ=バートン 男性 二十九歳 拒絶反応無し。 幼少期の記憶に疑似記憶と見られる痕跡を確認。 だが、その後の経過により記憶の欠落が発生。 実用には至らず。 第一次実験失敗。 ………… 第二次実験失敗。 ………… …… ~失敗要因の考察~ 疑似記憶の定着に成功。 ただし、全被験者に時間経過と共に記憶が欠落していく症状が確認された。 個体差はあるも、現時点では数年分の記憶量が限界との検証結果。 以下のいずれかの要因が考え得る。 一、脳が疑似記憶を異物と感知し、自壊作用を及ぼした 二、術式の負荷に脳が耐えられず、記憶障害を引き起こした 三、疑似記憶の容量が脳の記憶容量を超えているため、定着しきれなかった疑似記憶が自壊 上記要因解消については、術式の圧縮、効率化により一定の解消が見込まれる。 ………… …… 現段階の技術では、高精度術式の開発は不可能と断定。 協議の結果、本実験は中止。 以降、新たな術式の開発、または宝具『ソリス・メモリア』の発見まで本実験を凍結するものとする。 マーニル魔法学校所属 第十三魔術研究室 ○○○○年 前期レポート ―――――――――――――――――――――――――――――― 「…………」 暫らく呆然と立ち尽くすしかなかったハシュテッド。 シャロンは記憶喪失などではない。 操作され、改竄されたのだ。 それは事故ではなく、故意に引き起こされた。 レポートを読んだ限り、それ以外の結論が見つけられない。 だが、この実験は結局失敗し、凍結されたものとある。 他の誰かがこの実験を完成させ、シャロンの記憶を操作したか、もしくは全く別の魔術によるものということか。 念のため、他の書物も漁ってみたが、他に記憶操作に関する術の情報は得られなかった。 勿論、ここにある文献が魔術の全てではないが、アテも無く存在するかわからない魔術を探すより、ひとまずはこのレポートの可能性を検証する方を優先すべきか。 シャロンの記憶を操った何者かがこの研究を応用したと仮定すると、実験失敗の原因を突き止め、解決したことになる。 レポートの最後の考察では三つの可能性が原因の可能性として挙げられていた。 「被験者の脳が疑似記憶を異物と感知し、自壊作用を及ぼす」 これは疑似記憶が破壊されるという可能性なので否定される。 シャロンは自らをダリアと名乗っていた。 このことから疑似記憶は消滅していないことはわかる。 「術式の負荷に被験者の脳が耐えられず、障害を引き起こす」 これも同じく、正誤問わずシャロンの記憶全てに影響がおよび破壊されるというもの。 彼女は両の記憶を元に、自分の立場や考えをしっかりと形成していた。 よって否定される。 「疑似記憶の容量が脳の記憶容量を超えているため、定着しきれなかった疑似記憶が自壊」 残された可能性。 これは今のところ否定できない。 もしも疑似記憶の圧縮に成功し、脳の記憶容量の問題をクリアできたなら、記憶操作も可能か? いや、待て…… 仮に疑似記憶を植え付けられたとして、それでは正誤の記憶が同時に存在することになる。 シャロンの人格は偽の記憶で形成されていた。 では正しい記憶はどこへいった? 「まさか……消した…………違う!!」 元の記憶を全て消したりなんてしたら人は人でさえなくなる。 全ての記憶を疑似記憶で担うなんて不可能だ。 万が一、作る手段があったとして、そんな完全な設計が誰にできる? そもそもこの問題を研究者達は認識していたはず―― 「そうか……宝具『ソリス・メモリア』とは、記憶を封印することのできる宝具……!」 元の記憶の一部を封印して記憶容量を確保。 都合のいいタイミングから疑似記憶で人格を形成すれば、思い通りの人間が出来上がる。 そんな宝具があるのなら、疑似記憶の容量さえ解決できれば実験は成功する。 そして帝国よりも先にこれを手に入れ、シャロンにこの実験を施した何者かがいるんだ。 既に誰かの手にそれが渡っているとすれば、所在を突き止めて奪い取ることは難しい。 「ならば……僕がこの手で……!」 マーニルを後にし、ミールへと戻ったハシュテッド。 早速、自らの術で記憶を封印する実験を開始する。 植え付ける疑似記憶を作る必要はない。 記憶が封印できる事実さえ掴めれば、それを逆用して解放してやるだけでいい。 そうすれば元の記憶で記憶容量は圧迫され、溢れ出た疑似記憶は自壊する。 脳の構造が根本的に違う動物を使っても無意味に命を粗末にするだけだ。 やるなら人間だ。 この街に戻ったのは、消えても問題のない人間にアテがあったから。 「さぁ……僕のために、いや、シャロンのためにその命を使わせてもらうよ。無価値な君達にとってはこれ以上ない貢献と言えるだろう……」 「ちくしょう!てめぇ!!ぶっ殺してやる!!!!」 いつぞやの酒場で出会った四人の帝国兵。 「あの時、意味も無く関わってしまったのかとも思ったが、彼らはこういう形で役割を持つことになるのか……フフ……人生とはよくできたものだ……」 「なにブツブツ言ってやがる!!さっさと縄を解きやがれ!!」 「安心していい。命を取ろうというわけじゃないんだ。少しだけ協力して欲しい。ただ、それだけだ……」 「コイツ……狂ってやがる!!」 「失礼なことを言うなぁ……ほら、動かないで。手元が狂ったら大変だ」 「ひぃいいいい!」 できる。 レポートを読んで、海馬にアクセスするイメージは掴めている。 治癒魔術の応用で可能なはずだ。 「あ……あぁ…………あぁあああああああ!!」 「ん?加減が甘かったか?負荷に耐えられなかったようだ……」 「……こ……殺したのか!?」 「すまない。そんなつもりはなかったんだけど、やはり初回で成功とはいかなかった。大丈夫。昔の人は良い言葉を残してくれているだろう?失敗は成功の元さ……次は術式を変えてみよう」 「ちょ、待て!あぁ!!あ……あぁ……あぁあああああああ―― ―――― ―― 「やぁ、お腹が空いているだろう。ご飯にしよう」 四人の被検体を用い、数度の実験を重ねた。 やはり難しい試みだったが、シャロンに捧げるこの想いを誰かが汲んでくれたのかもしれない。 最後の一人。 その記憶の封印に成功した。 「ごあん?」 「そう、ご飯だよ」 彼にはおおよそ三十年分の記憶を封印する術を施した。 見た目から察するに、今の彼は二、三歳程度の年齢までの記憶しかない。 「おいしいかい?」 「ん!うまぁい!!」 闇に光明が差し込んだ。 シャロンの中には元の記憶が残っている。 彼女に会った時、僕の言葉に反応したように見えた。 あとはこの術を反転しシャロンの脳に働きかければ、記憶の封印を解くことができる。 一応翌朝まで被検体の様子を観察してから封印を解いてみよう。 そういえばこんなにも落ち着いた気持ちで眠りにつくのは何日ぶりだろうか。 「ふふ……やったぞ……僕の想いと術は宝具を超えたんだ……ふふふ……ふふふふふ……」 肉体的にも精神的にも疲れ果てていたハシュテッド。 目を閉じて数秒の内にそれらは押し寄せ、彼を眠りの奥に引きずり込んでいった。 ――翌朝 「おはよう。調子はどうだい?」 「…………」 「おや。まだ寝ているのかい?かわいそうだが、実験の続きがあるんだ」 「…………」 被検体の様子がおかしい。 生きてはいる。 起きてもいる。 しかし、自分の声に反応するどころか、虚ろな表情を浮かべたまま微動だにしない。 「まさか……!?」 慎重に彼の脳に施した魔力の痕跡を辿る。 無い。 痕跡が一切感じられない。 封印した一部の記憶ごと、全ての記憶と術が消滅している。 この結果は、記憶を封印したなら、それを維持し続けるための別の術式が必要との事実を示していた。 事象の固定や時間軸の停滞といった術式でも存在すれば可能かもしれないが、そんな人の領域を遥かに超えたものは存在しない。 だいたいそれ程の高度な魔術の負荷に、繊細な脳細胞がその負荷に耐えられるわけがない。 「あ……あぁ……そんな……!」 脳裏をよぎったシャロンの顔。 自分は失敗した。 宝具を用いれば成功していたのだろうか。 もしも自分と同じ方法でシャロンの記憶が封印されたのだとしたら、目の前で起きたことは彼女の身にも起きることになる。 ミールで別れた後、そうなっていたら…… 「シャロン!!」 アテも無く走りだした。 彼女の中に、元の記憶が生きていることを確かめなければ。 あの笑顔を取り戻せることを確かめなければ。 もう一度、君に会わなければ…… 悲痛の叫びが谷を越え、山を越え、朝焼けの街『トレイユ』を通りがかろうとした時だった。 ハシュテッドの行く手に、チカチカと瞬く光。 何かが沈んでいく夕日の光を反射しているようだ。 吸い寄せられるように光の元へ歩いていくハシュテッド。 近づくにつれ徐々にその正体が視認できるようになっていき、また、それに合わせて確かめるように早足になっていく。 「やっと見つけた……シャロン!」 光を反射していたものは大きな盾。 人違いの可能性もあったはずなのだが、それが盾だとわかった時点で何故か彼女のものだと確信していた。 「またおまえか……丁度いい。もう関わるな。おまえの探す女と私は無関係だ。それから、あのような馬鹿な真似はもうするな……それだけ忠告しておきたかった……」 「……シャロン……良かった……まだ記憶は消えていない……そうだ……確かめないと……あの日々を……あの笑顔を……僕は……」 「さらばだ……二度と会うことはないだろう……」 別れの挨拶を吐き捨て、足早に去ろうとする彼女。 だが、ハシュテッドはその手を掴んで離さなかった。 「僕だ!ハシュテッドだ!わからないのか!?」 真実を知る恐怖で心が挫けそうになる。 既に彼女の中にあったはずの元の記憶が完全に失われていたとすると、もうあの日々は二度と戻らない。 人の心に巣食う闇の深淵に触れてなお揺るがなかった想い。 それが今、生きるか死ぬかの天秤にかけられる。 「しつこい奴だ……!ここで果てたいのか!?」 「シャロン……帰って来てくれ……任務を終えて必ず帰ると約束してくれたじゃないか!」 「な……なぜ、おまえがその言葉を知っている!?」 「シャロン……本当に忘れてしまったのか……君はやはり……」 共に駆けた戦場も、手をつないで歩いた並木道も、朝まで騒ぎ明かしたハロウィンも、将来を約束したあの夜も…… 「ぐぅっ……ああっ……!!」 唯一無二の希望を賭けた訴え。 自分の言葉に、確実に彼女は反応を示している 「あぁあああああああああ!!」 「シャロン!大丈夫か!?シャロン!!」 頭を抱えて苦しむシャロン。 彼女の本来の記憶が封印に抗っている。 そう思えた。 「あぁああああああああああああ!!!!」 「うっ!?」 痛みに耐えかね暴れる彼女を抱きしめようと近づくも、いきなり顔面を殴りつけられる。 「シャ……シャロン!君は……」 「だまれぁえええええ!!もう私を乱すな!関わるなぁああ!!」 「そんな……」 「私はダリア!!貴様など知らない!!!!」 再度この場から去ろうとするシャロン。 今度こそ行かせてはならない。 「ま、待つんだ……待ってくれ……!」 伸ばした手で彼女の脚を掴み、なんとか引き留めようと足?く。 「う……うわぁあああああああ!!」 ――ガンッ 目を覚ました時、辺りには誰もおらず、夜虫の鳴き声だけが響き渡っていた。 起き上がろうと体に力を入れると、頭に鈍い痛みが走る。 どうやらシャロンに盾で殴られ気絶したらしい。 「…………」 どうにか半身だけを起こし空を見上げる。 額から血が滴ってくるのがわかるが、そんなことはもうどうでもいい。 間違いない。 やはり彼女の中には、元の記憶が生き続けている。 封印された記憶を破壊せずに解き放つためにはどうすれば…… 簡単なことだ。 宝具『ソリス・メモリア』を手に入れる。 帝国軍は、確実に記憶を封印できる宝具の情報を持っている。 「待っていてくれ、シャロン……もうすぐ救ってあげるから……」" +聖夜に咲く祝福の花アマナ 流水の都ラグーエルの詰所は、慌ただしい空気に包まれていた。 帝国軍の支配下にある街としては珍しい光景である。 こうした件は大抵、余所者か異常者が原因となり引き起こされるもので、今回の件も漏れなくその前者にあたる余所者による騒ぎのようだ。 否。 見るものによってはその両方と取れるのかもしれない。 調書を取るラグーエル兵士の前で、土下座するガルムの男。 そして、その隣で顔を引きつらせながらも頭を下げ続けるエルフの女性。 二人の言い分はチグハグとしていて、結局何が本当なのか分らない。 この手の尋問では良くある事なのだが、話を聞いていくと事件性と言うには乏しく、更には帝国に喧嘩を売ってきた模様。 今のラグーエルは帝国の介入は出来るだけ避けたい。 この二人を匿っているとでも思われたら面倒な事この上ない事案になる。 「もう!なんで付いてくるんですか!?カイザーさん!」 解放された二人は、見慣れない街を歩いていた。 行く当てと言えば、実家のあるラキラの街以外にはないのだが、帝国が進軍した今は危ないと詰所で言われてきたばかり。 途方にくれながらも今日の宿を探していると、横にあの男が並んで歩いていた。 「何を言う?我輩とアマナちゃんはすでに婚礼の約束を交わした仲ではないか?いや、今はもう夫婦であったか?」 「ふざけないでください!!いきなり変なこと言い出して!!」 事の発端は、花の都ラキラが帝国軍に襲われたことに始まる。 店だけは守ろうと、外に出している鉢などを片づけていると、帝国兵の小隊がやってきた。 その中の一人がカイザーだった。 万事休すと思われたが、あろうことかアマナに一目ぼれしたカイザーはその場でアマナに求婚。 対するアマナは、敵でもある帝国軍兵士と結婚したいはずも無くこれを拒否。 するとカイザーは周りにいた兵士達を薙ぎ倒し、アマナを抱えて逃亡したのだった。 道中、目についたラグーエルへと入ったカイザーだったが、嫌がっている様子のアマナを抱きかかえたガルムの男は当然目を引くもので、すぐさま街の兵士に不審人物として連行された。 「吾輩の気持ちに嘘偽りはないのだ!大きな船に乗ったつもりで我輩に付いてくるといい!!」 「イヤです!何を勝手な事ばかり言っているのですか!」 「ナハハハ!そう照れなくても良いのだぞ!」 「照れてなんていません!!」 出会った当初から勝手な暴走を続けるカイザー。 彼から離れたいのはやまやまだが、走ったところで彼の脚から逃げられるはずもない。 「どうしよう……ラキラのことも気になるし……」 「そうなのか?だが、先程の兵士は今のラキラは危険だと申しておったぞ?」 「それはそうですけど……う~ん……」 突然、どこからか小さな声が聞こえる。 「うぇ~ん!」 「え?今の声?」 「どうやら子供が泣いておるようだ。あちらの公園からだな」 踵を返して真っ直ぐに視線を向けるカイザー。 「よくそこまで分かりましたね……」 「我輩だからな!」 声の元へと駆けだしたアマナは、通りの傍にあった公園のベンチに座り、一人泣きじゃくる子供の姿を見つけた。 「どうしたの?大丈夫……?」 「サンタさんが!サンタさんがぁ~!!びぇえええええええ!!」 泣き喚きながらも、ポツリポツリと単語を発する子供。 それらを拾い集めて解読してみると、どうやらクリスマスなのに自分の家にはサンタが来ないことを悲しんでいるようだった。 粗方の事情を察したアマナ。 この街に限らず、帝国軍の影響で不安定な情勢にある街の多くでは貧富の差が一つの大きな問題となっており、こうした現場を目にすることも決して初めてのことではなかった。 だが、小さな子供の悲愴な表情と溢れる涙は、アマナの心を痛く絞め付ける。 「今のわたしにできることなんて……」 つい自身も目から涙が溢れそうになったところを踏み堪えるアマナ。 その様子をカイザーは見逃さなかった。 「我輩に任せるのだ!!」 「え!?ちょっと!カイザーさん!?」 それだけを口にして、アマナと子供を公園に残したまま、何処へともなく走り去っていったカイザー。 しばらくその場で待ち続けたが、終ぞ彼が戻ってくることはなかった。 陽も落ちてきた頃に子供を家へと送り届け、そのままその日の宿をラグーエルで取ったアマナ。 疲れ果てた彼女の身体には安宿のベッドさえも雲のように感じられ、横になってすぐに眠りへと誘われていった。 「アマナちゃ~~~~んは、ここかぁ!!!!」 けたたましい轟音と共に部屋の扉がけ破られ、思わず飛び起きるアマナ。 何事かと驚くアマナの前に顔を突き出したのはカイザーだった。 「カイザーさん!?一体今までどこで……じゃなくて、何やってるんですか!!」 「アマナちゃん……良い香りがするな。やはりこの香りを追ってきて正解であった!」 「な!?やめてください!よくわかりませんが恥ずかしいです!」 「そうだアマナちゃん!話を聞いてくれ!!我輩は…………くんくん……」 「匂いを嗅がないでください!!さっきお風呂に入っただけですから!!それより顔が近い!近いです!!」 「風呂か!良いな!我輩も頂くと……ではない!話を聞いてくれアマナちゃん!」 「だから近い!近い!近い!いい加減にしないと怒りますよ!!」 突然の事で話など聞ける状態ではなかったアマナだが、部屋の隅でカイザーがしょぼくれている隙に、なんとか平静を取り戻す。 「それで、お話とは?」 「そうであった!我輩とサタンをしよう!!」 「……もう一度お願いします」 「む……?我輩と一緒にサタンをしよう!アマナちゃん!」 「サンタ……ですか?」 つまりは、自分達がサンタ役となり、街中の恵まれない子ども達にプレゼントを配ろうということだった。 彼は彼で昼間に出会った子どもを見て、思うところがあったのだろう。 「それは良い考えかもしれませんが……」 「どうしたのだ!?我輩はまたアマナちゃんを困らせてしまうようなことを言ったのか!?」 「いえ。そうではありません。本当に良い考えだと思います」 「そうであろう!?」 「ですが……わたし達にはそんなお金……」 プレゼントを用意するにはどうしたって金が必要になる。 一人、二人ならばなんとかなるかもしれないが、今回の思い付きを実行するとなると、どれだけのプレゼントを用意すればよいかもわからない。 「なんだ。そんなことであるか!それなら心配は無用であるぞ?」 いぶかしむアマナを宿の外へとおもむろに連れ出すカイザー。 そこには、壊れたり古くなったために捨てられたと思われる大量のおもちゃ。 他にも布切れや木材、鉄材などが山のように積まれていた。 「どうしたんですか!?これ……」 「うむ!とりあえず使えそうな物を拾えるだけ拾ってきた!」 公園を飛び出してから今の今まで、ずっと街を駆け回っていたようだ。 ざっと目を通しただけだが、簡単な修繕を施せば立派なプレゼントになりそうなものも多い。 「これなら……できるかもしれません」 行き当たりばったりで突拍子もない行動ばかりのカイザーだが、がむしゃらに何かのために頑張る様は、確かにアマナの心を打つものがあった。 「やれるだけやってみましょう!」 「うむ!クリスマスまであと…………すぐだ!!」 「三日です。しっかりしてください!」 ――クリスマス当日。 この日のために三日間ほぼ徹夜で用意した大量のクリスマスプレゼント。 並べられた自分達の努力の結晶を目の前にし、得も言えぬ喜びが込み上げる。 「やりましたね!カイザーさん!」 「うん?あぁ、そうであるな!!」 「どうかしましたか?」 何やら落ち着きのないカイザー。 普段の彼の素行を考えれば、小躍りの一つでも披露してくれそうなものだが。 「ア、アマナちゃん……これを受け取って欲しいのだ!」 「……婚約指輪なら受け取りませんよ?」 「しまったぁああああ!!その手があった!!!!それも後で用意しよう!だが、今日の所はひとまずはこれを!」 「何ですか?」 綺麗に包装された小包を手渡されるアマナ。 少し警戒しつつ、ゆっくりとその封を開けてみる。 「……何ですか?これ」 「無論!サタンクロースの衣装だ!」 違う。 それっぽくは仕上げられているが、フリフリのミニスカートが可愛らしいぴちぴちコスチューム。 こんな破廉恥なサンタクロースを子供達の目に触れさせるわけにはいかない。 「着ませんよ!?絶対に着ませんから!!」 「何故だ!?サタンになるのであろう!!」 「だったらちゃんとしたサンタさんの服を用意してくださいよ!というか、こんなものいつの間に用意したんですか!?」 「安心して良いぞ!絶対に似合う!我輩が保証する!!」 「嫌ですってば!!!!」 その後、諦めずに食い下がるカイザーにとうとう押し切られ、嫌々ながらもそのコスチュームを着せられてしまったアマナ。 プレゼントの入った袋を抱え、いざ出発せんという今になっても彼女の表情は雪の舞う曇天と同じ色をしていた。 「これを機に、そろそろ我輩も計画的に生きようと思うのだがどうだろうか?」 「そうですね……それは良い事ですね……」 「であるな!では式はいつにする?」 「そんな予定はありません!!」 こうして、プレゼントを配る本物の可愛いサンタが現れたと、ラグーエルの街に暖かい話題が飛び込むこととなった。 コスチュームの件では頬を膨らますアマナだったが、結果的には子ども達の明るい笑顔を見られた事に満足していた。 ――そしてまた、クリスマスがやってくる 「さぁ、アマナちゃん!今年はこのイエルの街に素晴らしいサタンを呼び寄せようではないか!!」 「そんな悪魔召喚みたいなイベントではありません!サンタです!いい加減覚えてください!って……またやるんですか!?」 「当たり前であろう!我輩は思ったのだ……夫婦として協力するクリスマスは素晴らしいものだと!!」 「夫婦なんかじゃありません!!」 「またまた……そんなに照れなくても良いではないか!」 「そういう事じゃありません!!」 +蒼き浄化の紡ぎ手ミリア 「あっれ~?どこ行っちゃったんだろう、あの人……」 頭をキョロキョロと左右に振りながら、狭く、薄暗く、複雑な道を右往左往。 何故こんな薄汚い路地裏を徘徊しているかと聞かれれば、私はある人物を探していると答える。 ここは商業都市『イエル』 それが物であれ情報であれ、量と質を求めれば大陸きっての大都市だ。 帝国軍の影響もあってか、最近それも少し影が落ち始めてはいるが、それでも商いを生業とする者達にとって、この街の存在はとてつもなく大きい。 かく言う私も仕事のためにここを訪れたわけなのだが、到着した直後、裏路地に入っていったある一人の男に視線を奪われたのである。 「おや?人影発見!」 こんな場所でもやはり人はいるものだ。 何だか久々に人に会えた気がすると、どこかホッとしながら声をかけてみることにした。 「あの~、すみません。人を探しているんですけど~?」 「あん?人探し?」 「えっと、こ~~~んな大きな盾を背負ってて、銀髪で二十台半ばくらいかな?って感じの男の人なんですけど、見ませんでした?」 「…………あぁ!見た、見た!アイツか!!」 「ホントですか!?どっちの方に行ったのかわかりませんか!?」 なにやらジロジロと観察されたような気がして身構えそうになったが、せっかくの手がかりだ。 失礼な態度は慎むべきなのであろう。 「任せな。案内してやるよ。こっちだ」 「え?あ、いえ!方向を教えてくれるだけで十分ですよ!?」 前言撤回。 この先の展開が容易に想像できてしまう。 間違って付いて行きでもすれば、何をされるかわかったものではない。 向かった先に仲間の男たちが大勢いて……みたいな。 人として、女子としてもそこまで警戒心は失っていない。 「せっかく人が進んで案内してやるって言ってんだから、こういう時は素直に世話になっておくべきだと思うぜ?」 「いえいえ、そこまでしてもらうのはさすがに悪いので!あ!!あんなところに探してた人が!!ありがとうございました!おかげ様であの人を見つけることが出来ました!それでは、これで失礼します!!」 思いついた嘘を早口でそう述べた後にくるりと方向転換。 男に引き留める隙を与えないままその場を離脱しよう。 ――ドンッ! 「――わっ!?」 足早に去ろうとした私の顔面があるはずのない壁にぶつかった。 「おかしいな?探してた人なんてどこにもいねぇぞ?」 「ケケケ……甘いぜお嬢ちゃん」 ぶつかったのは壁ではなく、別の男の分厚い胸板。 得物を逃がさないように、予め仲間を背後に忍ばせておいたようである。 どうやら都会のスラム街を逞しく生き抜くならず者たちは、田舎者の私よりもよほど賢かったようだ。 「あ~……すみませんけど、私、用事があるのでこれで失礼しようかと…………」 「用事なら俺たちが聞いてやるよ。とりあえず相談料として有り金と持ち物全部出しな?」 「ケケ……隠すと身のためにならないぜ?」 この場を切り抜けるための策を必死に巡らせるが、三人の男たちに囲まれたこの状況を自分一人で打破する術などあるだろうか。 「少女一人に大の男が寄ってたかる……感心しないな」 「あぁ!?誰だ!?」 不意の言葉に、私を含めた全員が虚を突かれた瞬間だった。 「――ふげっ!?」 男の一人が遥か先の壁まで突き飛ばされる。 「抵抗せず少女を開放しろ。手加減は得意じゃないもんでな」 「な、何なんだよお前は!?」 仲間の一人を突如失い、うろたえる男たち。 その向かいで仁王立ちする別の男。 手に大きな盾を携えた銀髪の男は、先程まで私が探していた人物その人だった。 「助けてくれるの?」 「困っていたように見えたのだが、余計な世話だったか?」 「そんなことはないけど――って、それ!やっぱりそうだ!!あなた、その盾をどこで手に入れて――」 「おいっ!!いきなり手ぇ出してきといて、無視決め込んでんじゃねぇ!!」 「タダで帰れると思うなよ、この野郎!!」 ならず者二人の怒声で言葉が遮られ、彼らは胸元からナイフを取り出すと、それを銀髪の男へ向ける。 「諦めてはくれないか。仕方ないな」 「舐めんじゃねぇぞ!!」 勢い良く飛びかかるならず者。 相対する銀髪の男は、たじろぐどころか、向かってくる男たちよりも早く前へと踏み込むと、体の前に盾を構えて突進。 ナイフもろとも吹き飛ばされるならず者の片割れ。 残された一人が怯んだ隙に、間髪入れずに攻撃した銀髪の男。 こうして最後の一人も気絶させられ、銀髪の男はものの数秒で場を制して見せた。 「やれやれ……結局、荒事になってしまった」 真っ先に手を出した人間が言えた台詞か。 そう喉まで出かかったのを飲み込み、私は改めて本題へと移る。 「その盾、どうしたの?何処で手に入れたの?」 「……ただでかいだけの盾だが?」 「隠しても無駄よ。私にはわかるわ」 「……助ける相手を間違えたか」 私の言葉を受け、男の纏う雰囲気が変わる。 明らかな敵意。 そして、強まるもう一つの存在感。 男が手にする盾からは、間違いなく『呪術』の気配を感じる。 やはり勘違いではなかった。 路地裏にこの男が入るのを見た瞬間に感じた予感。 この男の盾には強力な術がかけられている。 「そこで何をしている!!」 緊迫した空気を切り裂く怒声。 路地裏に駆けこんでくる自警団らしき男たちが見えた。 巡回中に騒ぎを聞きつけたのだろう。 「っち……君にも来てもらうぞ!」 「はい?え!?わわっ!?」 私を脇に抱え上げたと思えば、凄まじい速さで駆けだす男。 男の背中越しには必死の形相で追いかけてくる自警団たちの姿。 急変した事態についていくのがやっとな状況ではあったが、私としてもあまり自警団のような組織の厄介にはなりたくなかったこともあり、自分を抱えて走り続ける男に一つの提案をしてみることにした。 「荷馬車があるの!そこに隠れればアイツらを撒けるでしょ!?」 「君は俺に協力しようと言うのか……?」 「私のためよ!まぁ、その盾にも用事はあるんだけど、お互い面倒事はゴメンでしょ!?」 「……いいだろう!」 「じゃあ、とりあえず路地裏から出て!それから中央広場へ!」 こうして私の案内の元、身を隠すための荷馬車へと向かう。 数分の間ではあったが、女とはいえ人一人と大きな盾を背負ったまま全力疾走を続ける銀髪の男。 それも、日々鍛錬しているであろう自警団の者たちに追いつかれることなくである。 彼もまた相当な鍛錬を積んでいるということなのだろう。 路地裏の一件からもそれが伺える。 「あった!あの荷馬車の荷台に!!」 「了解した!」 男は更に速度を上げ、人混みの中へ。 そうして自警団の視界を遮った後、速やかに荷台へ身を潜めた。 「くそっ!どこへ行った!?」 「散開して捜索するぞ!!」 どうやら上手く撒くことが出来たようだ。 「ふぅ……なんとか大丈夫みた――ちょっ!?」 薄布を被せた荷台の中、暗闇にも目が慣れ始めたところで隣の男に声をかけるが、私は彼の表情に戦慄を覚えた。 闇に浮かぶ鋭い眼光。 身を屈めながらも、咄嗟に動けるように構えた体勢。 盾を握る拳にも十分な力が込められているのがわかる。 思えば、彼からすれば私はただ助けただけの娘。 それが何故か自分の秘密を知っているように訴えてきたのだ。 敵か味方かはともかくとして、警戒するのは当然だろう。 「違う!違うってば!私は貴方をどうこうしたりするつもりはないの!ただ、貴方を見かけた時に、その盾が気になって……それでいてもたってもいられなくて!」 嘘偽りない言葉ではあるが、それでもやはり彼にとっては十分に警戒に値する発言だ。 彼自身がそれだけ触れられたくない事。 ひた隠しにしてきた事なのだろう。 「お願いだから警戒しないでよ!私は貴方を助けてあげたいの!その盾にかけられてる『呪術』を私は解いてあげることが出来るわ。信じて!」 変な嘘は逆効果。 そう思った私は、真の想いだけを語り続ける。 「……わかったよ。警戒は解こう」 「あ……ありがとう!」 重苦しい空気から解放され、やっと落ち着いて一息つくことが出来た。 「だが、この盾の事は放っておいてくれ。君には関係のない話だ」 「何で!?その術は貴方に悪い影響を与えるものよ!?あなた自身も分かっているはずでしょ!?」 「そこまでわかるのか……だが構わないでくれと言っている。今なら自警団の連中の目も散っているはずだ。他に用が無いなら俺はこれで失礼するよ」 取り付く島も無く立ち去ろうとする男。 それはダメだ。 私には彼と、彼の持つ盾を放っておけない理由がある。 「待って……てばぁ!!」 「な、何をする!?離すんだ!」 荷台から降りようとした男に対し、私は必死にしがみついた。 「何故そんなにも俺に関わろうとする!?俺がどうなろうと、君には何の不利益もないだろう!?」 「そういう問題じゃない!そうやって近づく人みんな拒絶、拒絶し続けてきたんでしょ!?まだ話も何も終わってないのに!!」 「くそ……いい加減に――」 ――パリン。 狭い荷台で暴れる二人。 力いっぱい自分を振りほどこうとした男が何かを踏みつけ、割ったようだ。 「え?今の音……もしかして……」 私には壊れた何かの正体の見当がすぐについた。 「ちょ、ちょっと!降りて!!早く!!!!」 「今度は何なん――おわっ!?」 私は男を引っ張っていた以上の力で今度は押した。 荷台から降りようとしていたところに、急に力が加えられ、勢い余って荷台の外へと転がり落ちる男。 「う……むぅ……こ、今度は一体何だ!?」 「あぁああああああああああああ!!」 私たちが身を潜めていたのは、行商のために私自身が店から連れてきた荷馬車。 当然、荷台なのだから、そこには荷が積まれている。 今回の仕事に必要な道具や商品たち。 そして、荷台の中で聞いた何かが割れたような軽い音。 消去法でその音の正体を探っていくと、自ずと一つの答えに辿り着く。 「あぁ……あぁ…………!」 小さな木箱の中に収められていたはずの耳飾り。 あれだけ荷台の上で暴れたのだから、その拍子で箱から零れ出たのだろう。 あしらわれていた石が粉々に砕けていた。 「それは……耳飾りか?」 ワナワナと震える私の手の上で、細かくなった石の破片がキラキラと輝いている。 それをひょっこりと上から覗き込んだ男が、まるで他人事の様な口調で呟いた。 「どうしてくれるのっ!?お得意先からの預かり物なのに!!」 「俺のせいか!?確かに踏んだのは俺かもしれないが、それも元はと言えば――」 「信じらんないっ!他人のもの壊しておいて、何よそれっ!?」 「だ、だから君が離さないから――」 「謝って!!」 「…………す、すまん。しかしだな、君も――」 「弁償して!!」 「そ……そんな高価そうな物を弁償できるだけの金は……持ち合わせていない。だが――」 「どうしてくれんのよ、これ!?」 「…………っ!!」 しかし、その時の私の声と表情には、彼を黙らせるだけの何かがあったのだろう。 そして、頭を悩ませていた私はあることを思いつき、こう口にしたのだ。 「仕方ないわ。罰として、今日一日、雑用として私の仕事を手伝いなさい!」 言われなくてもわかっている。 これはもう交渉でもなければお願いでもない。 ただの脅迫だ。 「ぐ……ぬぬ…………わかった。償いはさせてもらう」 年若い少女を想っての優しさか。 それとも勝手に背負い込んでくれた責任感か。 何にせよ、こうして行動を共にし、じっくりと男の素性と、盾の事を聞き出す機会をまんまとせしめたのである。 「私はミリア。改めてよろしくね!」 「ハウザーだ。短い付き合いになるとは思うが、少なくとも今日一日は君の手足となって職務に励もう」 「堅っ苦しいなぁ……まぁ、いいけどね!」 程無くして、イエルの商業地帯を歩く二つの人影があった。 フードですっぽりと身を隠したまま一頭の荷馬車を引き連れるその姿は何とも怪しげである。 というか私とハウザーだった。 騒ぎは収まったとはいえ、まだ辺りを自警団がうろついている可能性もあったので、素性を隠すために二人してフードで身を包むことにしたのだ。 「ここが今日のお客さんの店」 「……なんというか……怪しげな店だな」 周囲の店と比べても明らかに古く、こじんまりとしたレンガ造りの店。 看板の文字は年月と共に劣化し、原型を留めておらず、窓のカーテンは閉まったまま。 彼の感想は至極ごもっともではある。 「こらこら。気持ちはわかるけど、今の私は商人としてここを訪ねてるんだから、取引相手に失礼な事言わないの!」 「そうであったな。以後、気を付けよう。思えば我々の恰好もひどく怪しいものだしな」 「そこは気にしない!ほら、早く入るわよ!」 ――カランッ 入り口の戸を開くと、客の来訪を告げる小さな鐘が鳴る。 店内は至って普通の雑貨屋といったところ。 少なくともハウザーの眼にはそう映っていることだろう。 物珍しそうに店内を見回す彼は置いておき、早速店主と商談だ。 フードを脱ぎ、脇に抱えると、身なりを軽く整えてからレジの呼び鈴を鳴らす。 ――チリンチリンッ 「ん?いらっしゃい。何をお求めでしょう?」 「私です。いつもお世話になってます!」 「おぉ、ミリアちゃんか。例のモノを取りに来たんだね。けっこう集まったよ」 「わぁ!ありがとうございます!!」 店の奥から姿を現した初老の男性。 店主である彼と私の会話の内容が察せずにいるハウザー。 自分の背後で浮かべられている彼のポカンとした顔が容易に想像できる。 そして、その顔がすぐに曇るであろうことも。 「ところで……先月、預かった耳飾りの件なんですけど……」 「あぁ!そういえばそうだった!どうだったね?」 「実は……『解呪』には成功したんですけど……この有様で……」 私はポケットから小さな木箱を取り出した。 ハウザーに踏み砕かれ、見事に石が粉々になったあの耳飾りである。 「おぉ……これはまた見事に粉々に…………」 「本当にごめんなさい。私の不注意でこんな――」 「すまん、店主殿!ミリアは悪くない!それを壊してしまったのは俺だ!だから責任を取れと言うのなら俺がなんとかしよう!」 店主と頭を下げる私の間に割り込んできたハウザー。 確かに預かり物を壊した直接的な犯人は誰かと聞けば彼ということになるのだろうが、そもそもこんなことになった原因は私にもある。 それを承知の上で、私は彼に責任を押し付け、今日一日同伴することを要求したのだ。 彼の盾のことを何とかしたいという思惑があったとはいえ、彼の純粋さというか、責任感の強さというか、そんな彼の性分に付け込んだようで、今さらながら罪悪感に苛まれる。 「いいの、ハウザー。これは私の仕事だから、私が解決しないといけないことなの」 「しかしだな……」 「貴方はもう私に代償を支払ってるんだから、気にしなくていいって言ってるの!ちょっと外に出てて!!」 「……あぁ。わかったよ」 諭された彼は渋々と店を出て行く。 その迷いある足取りは、最後までこちらを気にする彼の心情を表しているようだった。 「ミリアちゃんのとこの従業員かい?良かったのかね?」 「彼は……そうですねぇ……私の趣味の方のお客さんってところでしょうか」 「ほほぅ……なるほどね」 タイミングを見計らっていたように口を開いた店主。 さて、ひとまず場が落ち着いたところで閑話休題。 ここからは私の本当の仕事の時間だ。 「ところで、おじさん。この耳飾りの件なのですが」 「うむ。詳しく聞かせてもらおうかな」 「はい。ここにこれをお持ちしたのにはある理由があるんです。実はこの耳飾りには――」 ――数分後。 店主と話を終えた私が店を出ると、待ってましたと言わんばかりにハウザーが駆け寄ってきた。 「ミリア!話は付いたのか!?大丈夫だったのか!?」 まるで忠犬のようだ。 そう思うと少し可愛くも見えてくる。 「もぅ……気にしなくていいって言ってるのに。大丈夫よ。何も問題なかったわ」 「しかし、あれは店主殿から何かしら頼まれていた品ではなかったのか?」 「その話も後で聞かせてあげるから、とりあえず付いてきて」 「ん?あぁ、わかった」 そうして私はハウザーを店の裏まで連れて行く。 そこにあったモノを見て、彼を連れていて本当に良かったとしみじみ思ったものだ。 「これはなんだ?」 「もちろん商品よ。これを全て表の荷馬車の荷台に積むのが貴方の仕事」 積み重なった木箱の山。 他にも、箱に詰められないような大きさの何かが布で包まれたままゴロゴロと転がっている。 全て合わせると、荷台に積み切れるか心配になる程の量だ。 「私は品のチェックをしていくから、済んだものからどんどん運んでね!よろしく!」 「よくわらんが力仕事か。それなら任せてくれ」 作業の確認が取れたところで、早速一品目。 一番手前にあった木箱の封を解くと、中には大きな壺が一つ入っていた。 私はそれに手を触れ、静かに目を閉じる。 「うん。じゃあ、これ運んでおいて」 「あぁ。わかった」 次なる一品。 丁寧に布で包装された筒状の物。 同じく封を解くと、年代物の釣り竿のようだった。 またも私はそれに手を触れ、目を閉じる。 「うん。これもよろしく」 「わかった。こんなものまで扱うのだな……」 次々と露わになっていく荷の姿を興味津々と言った様子で観察するハウザー。 何やらぶつぶつと言ってるようだが、とりあえず放置して手早くチェックを済ませよう。 こうして私たちは数時間をかけて、全ての荷の確認と積み込みを終えた。 「ふぅ……やっと終わった。ハウザーもお疲れ様!」 「この程度なら問題ないさ。ところで、いい加減聞きたいことが山積みなのだが……?」 「でしょうね。作業中も気になりますって感じがビンビン伝わってきてたわ」 「では、質問だ。店主殿から預かっていたという俺が壊してしまった耳飾りについてだ。君は店主から何か代償といったものを要求されたりしなかったのか?」 「他にも聞きたいことが沢山ありそうなもんだけど、まずそこを聞いてくる辺りが本当に真面目よね」 「やはり何かあったのか!?」 「ないわよ。あれは元々、返す必要のないものだったの」 「……ますますわからんな」 「あの耳飾りには、ある『呪術』がかけられていたの」 『呪術』 その単語を出した途端、ハウザーの表情が強張った。 彼を見かけた時から感じている盾からの気配。 やはり、盾には呪術の力が加えられていると彼が認識しているのは間違いない。 が、まだそれについて問いただすのは時期尚早のようだ。 ひとまずは周りのピースから埋めていこう。 「私はこの店の主人にその術を解くこと、つまりは『解呪』を依頼されてたってわけ。難しいようなら、破壊してくれても構わないし、返す必要もないと言われてたわ」 「その『解呪』とやらが君の仕事という訳か?」 「そっちは仕事というより趣味……というか、夢……というか……まぁ、そんなもの。私の仕事は呪術のかけられたアイテムの鑑定と販売、あとはアドバイスみたいなものかな」 「ということは、まさか……今荷台に積んだモノは全て……」 「そ。貴方が言うところの呪われたアイテムたち。この店は普通の骨董屋さんだけど、時々そういうモノを持ち込んでくるお客さんがいるから、その場合は商品を引き取ってもらっておいて、こうして時々私がまとめて買い取ってるの」 「危険ではなかったのか?」 「直接触らないように注意したから店の裏に放っておいてみたいだし、そんなに強力な術の気配は感じなかったから大丈夫なはずよ」 「君はいわゆる呪術の専門家というわけか。魔術師に会ったことは数あれど、呪術師となると君が初めてだよ」 「魔術師よりもずっと数は少ないしね。それに、世間的にはあまり受けは良くないからって隠してる人もいるみたい」 「呪術師と魔術師か……何が違うんだ?俺にはよくわからん」 「でも、呪いって聞くと良いイメージは沸かないでしょう?」 「それは……そう……だな」 複雑な表情を浮かべるハウザー。 その表情は、私たち家族を村から追い出した彼らと同じものだった。 十年以上も昔の、あの日の記憶―――――― ―――― ―― ――私がまだ幼かった頃の話。 名も無いような小さな村。 代々、呪術師の名家としてこの地に繁栄を築いていた家に私は生まれた。 両親は名の通った世界でも数少ない凄腕の呪術師。 「ミリア!?どうしたの!?また、そんなに泥だらけになって!」 「……みんなに意地悪された」 呪術について一定の知識や理解を持つ者にとって、一流の呪術師の肩書はそれだけで権威あるものとされる。 当時より、さらに少し前まで遡れば、それは一般的な認識で間違いはなかった。 しかし、年々その考え方は変わってきていた。 呪術を悪意的に用いたケースの蔓延。 すなわち、世に溢れる呪いの存在の影響だ。 情報の行き来が少ない田舎ともなれば、反応はより顕著だった。 魔術は正義。 呪術は悪。 この村では、そんな考え方こそが当たりで、正義だった。 「ごめんね、ミリア。ママとパパのお仕事のせいで辛い想いをさせてしまって……」 「大丈夫だもん。ママたちがお仕事頑張ってるの知ってるもん。わたしも頑張る……」 既に廃れかけていた過去の権威ではあったが、今も少なからず大国の大臣や貴族との取引を続けていた両親には直接手が出せない村人たち。 どうにか私たちに村から出ていってほしかった彼らは、家の壁に落書きをしたり、ごみを玄関前に捨てたりといった嫌がらせを日常的に行っており、幼く、呪術の行使がまだおぼつかない私も標的にされることが多かった。 「ミリア……我が愛娘に幸運があらんことを……」 「ママ、あったかいね……」 辛く、悲しいことがある度、母は『おまじない』だと言い、自分をぎゅっと抱きしめ、額に優しくキスをしてくれた。 母の愛と温もりが傷ついた心身に染み渡るそれは、私にとって何よりの心の支えだった。 「この村を出る。新しい土地で、家族みんな笑顔で暮らすんだ!」 屈辱的な生活に家族全員が限界を感じ始めていた頃、父が下した一つの決断だった。 今受けている仕事が片付き次第、新しい土地へと移る。 「あなた……本当にいいの?」 「私が決断することを恐れ続けている限り、ミリアはずっと苦しむことになる。これ以上、愛する娘に涙は流させないさ!」 「ママ、パパ。わたしたちお引越しするの?」 「あぁ!ミリアはどんな所がいい?海の近くが良いかな?それとも大きな街が良いかな?」 「えっとね、えっとね――」 その決断は時代と共に歴代の祖先たちがこの地に築いてきた軌跡を捨て去ることと等しいものだったが、娘の幸せを想う父の顔に後悔の念は無かったと思う。 「ミリア。少しだけ待っててね。ママたち、お仕事頑張るから!」 「一人で寂しくても泣くんじゃないぞ?おまえは強い子だからな」 「うん!!」 父が引き受けた村での最後の仕事。 それは、王都の貴族から預かったある呪いのアイテムの解呪を行うものだった。 指にはめた者に安らかなる永遠の眠りをもたらす。 そんな凄まじく強い呪術をかけられた指輪。 両親は協力してこの術式の解体に挑んだのである。 無理に術に手を加えようとすれば呪術の反動が二人に襲いかかるため、作業は慎重に進められた。 三日三晩かけて術式の解析を終え、いよいよ解呪に移ろうとした時だった。 それまで完璧な仕事をこなしていた二人だったが、疲労が溜まりきっていた二人に生まれた毛ほどの油断が取り返しのつかない悲劇を招く。 指輪の石にかけられた術とは別に、台座の指輪そのものにもう一つ術が仕込まれていた。 石の強力な術の気配に隠れた、ほんの小さな気配に気付くことができなかった二人。 不用意に術に干渉したことで発動したもう一つの呪術。 結果として、その反動は魔力の波となって家を跡形も無く吹き飛ばした。 「う……うぅ……痛いよぉ……マ……マ……パパ……?」 瓦礫の中から必死に這い出た私。 工房があった場所を探し、少しずつ家の残骸をどかしていくと、そこに両親の遺体が転がっていた。 「いやぁああああああああああああ!!」 自分を愛し、大切に育て、護ってくれていた両親を失い、共に笑い、支え合い、それまでの生涯を過ごした思い出の家を失った。 そんな私に対し、村人たちはさらに過酷な現実を突き付ける。 彼らは、一人では何もできない私をその土地から追い出し、忌み嫌う呪術師の血を村から根絶することに成功したのだ。 その時の彼らの顔は忘れたくても忘れられない。 痛々しいものを見る様なあの目。 申し訳なさそうにしつつも、どうしても嫌悪してしまうような。 まさにそんな表情だった―――――― ―――― ―― 「ミリア!」 「え!?」 「大丈夫か?顔色が悪いぞ?」 嫌なことを思い出してしまった。 そう長い時間考え込んではいないはずだが、少なくとも彼に異常を察知される程に私は酷い顔をしていたのだろう。 「あ~……うん、平気。ちょっと疲れてボーッとしちゃって!」 「どこかで少し休むか?」 「そうだね。お昼時も過ぎちゃったし、お腹ぺこぺこだよ。何か食べに行こっか」 少し気まずい雰囲気なってしまったこともあり、空気を一転させることも兼ねて、昼食にハウザーを誘った。 彼はこれを快く承諾した。 そもそも彼を助けるために行動を共にしているはずなのに、こうも気を遣わせてしまっては本末転倒である。 「ここでいいよね?」 「いや、まずいだろ」 入ろうとしたのは一般的な大衆食堂。 大きな店構えで、昼飯にはもう遅い時間帯にも関わらず、まだまだ客は大入り状態。 「ここでは人目がありすぎる。忘れていないか?俺たちは一応追われている身なんだぞ?」 「忘れてないわよ?そのためにフードを被ってるんだし」 「こんな場所でフードを被っていればむしろ目立つだろう!どちらにせよ、ここではダメだ!」 「だから大丈夫なんだって。このフードには被った人間の存在を薄くする呪術がかけられてるから平気なの。直接話かけでもしない限り、向こうに勘付かれることは……まぁ滅多にないから」 「なんだと!?」 呪術のかけられたアイテムだと聞き、慌ててフードを脱ぎ捨てようとするハウザー。 「心配しないの!別に何か起こったりはしないから!さぁ、何食べよっか!?」 「本当だな!?ちゃんと説明してもらうぞ!?」 「わかった、わかった。ご飯食べながらゆっくりとね」 強引に店内へ引っ張り込もうとする私に抵抗を続けていたハウザーだが、最終的には納得してくれた様で何よりだ。 「いっただっきまーす!」 「で、本当にこのフードの呪いは大丈夫なんだろうな?」 「いきなりね……まだ一口も食べてないんだけど……」 「気になって食事など喉も通らんのだ!さっきの話も途中で流れてしまったままだぞ!?」 「はぁ……わかったわよ」 どうにも我慢ならないらしい彼をさすがに可哀そうに思い、私は順を追って説明する。 「貴方は今このフードの『呪い』って口にしたけど、私は『呪術』がかけられてるって言ったのは覚えてる?」 「……そう……だったか?だが『呪い』と『呪術』に何の違いがある?」 「それが一般的な考えよね。最初に一つ訂正しておくけど『呪い』は『呪術』の一種であって、それ自体は比べるものではないわ」 「呪術には……『呪い』以外の術があるということか?」 「正確にはそれも違うわ。そもそも呪術師の言うところの『呪い』と、貴方たち一般人が口にする『呪い』は同じ言葉ではあるけど、その意味は似て非なるものなの」 「……う……む?」 「じゃあ、まずは魔術と呪術の違いからお勉強しましょ!」 『魔術』と『呪術』 ロジックや理に多少の違いはあれど、どちらも同じく魔法のカテゴリに含まれるものである。 『魔術』とは主に体内、外の魔素を媒介として力を行使する術のことで、攻撃、防御、治癒など、複雑な術式よりも単一効果をもたらす術構成を得意としている。 『呪術』とは意志、恨み、愛といった強烈な思念が、体内魔素と特殊反応を起こすことで異能を発現させる業のことを指し、条件指定や付与効果が複雑な術式を得意とする反面、それだけ被術者に狙いを定めるのが難しくなりがちである。 魔術を行使する者に比べ、呪術を行使することのできる者は数少ない。 その理由はいくつかあるが、最も大きな理由を二つ挙げるとするならば以下の二つの理由が挙げられるだろう。 一つ、行使難易度の高さ。 複雑な計算式を解くことを魔術と例えるなら、それに対し呪術は膨大な桁数の数字をひたすら読み上げていく行為に等しい。 学力や才能で理解するものではなく、ただひたすらに集中し、執念のような思いで念じ続けることで呪術を行使することが出来るようになる。 二つ、大きなリスク。 複雑な術式を得意とする呪術だが、素早くそれらの術を発動させることは難しく、動くモノを標的とした場合における命中率は著しる低下する。 そこで、命中率と確実性の向上を図るために多く用いられた方法が、自身と標的の間に新たに受け皿を設ける手法である。 具体的には、術士が何かしらの物体に呪術をかけ、それを触れたり干渉したりした者に影響を及ぼすといったものだ。 しかし、当然これには大きな弊害も存在した。 呪術がかけられたアイテムに、標的以外の者が干渉してしまった場合だ。 発動条件を絞ることで、ある程度の回避はできるものの、不慮の事故で無関係の者や味方が呪いの効果に巻き込まれるケースが相次ぎ、確実性の向上を図ったはずの思惑は、よりランダム性を強めた爆弾を生み出すきっかけとなってしまった。 これが大きく影響し、呪術の扱いが難しく危険な技術とされ、結果として世間から不吉なものとして忌み嫌われるようになる。 「――――と、ここまでは良いかな?」 「……あぁ。問題ない」 「絶対嘘でしょ!?つ・ま・り、難しい術をアイテムにかけて、手にした人に効果を与えるのが得意なのが呪術なんだけど、事故とかが頻発しちゃって、世間から危ないものだって思われることになっちゃったってこと!」 「最初からそのように言えば良かったではないか。わかりやすかったぞ?」 「やっぱりわかってなかった……術師以外の人に分かり易く説明するのは難しいなぁ……」 「で、さっきの『呪い』の話に繋がるわけか?」 「まぁ、そゆこと。そういった事故のせいもあって、呪術に悪いイメージがついちゃってね。いつの間にか、そうしたもの全部が『呪い』なんて呼ばれるようになったの。呪術、すなわち悪いものって捉え方がされるようになっちゃったわけ」 「しかし、呪いが悪いものであることは否定できないのではないのか?」 「残念だけど、それは間違ってないわ。ハウザーは呪いってどういう意味で考えてる?」 「そうだな……さっきの君の口ぶりを察するに、人や世界に悪影響だけを与えるものが呪いということになるか?」 「惜しい。正解は、悪意だけをもって不幸と厄災をもたらせしめようとする目的で行使される呪術。それが呪術師にとっての『呪い』よ」 ハウザーは考える。 呪術師とそうでない者における呪いの意味の相違点について。 「…………何か違うのか?」 「惜しいって言ったでしょ。争点になるのは術者が悪意をもって行使した術か否かね。悪意による術を『呪い』って呼ぶのに対して、そうでない術のことを私たちは『呪言(まじない)』って呼ぶの」 「……つまり……呪術は大きく分けて『呪い』『呪言』に分けられる?」 「正解!」 「では、例えばこのフードにかけられた術は呪術ではあるが、それは呪いではなく呪言だと?」 「そう。でも忘れないで。これは呪術師から見た場合の話。例えそれが呪いではなく、呪言であっても、呪術を知らない人間からすればそれが呪いと見えることも多いの」 「またわからなくなってきたのだが……」 「視点の違いよ。昼間に尋ねたお店のこと覚えてるでしょ?」 「その話が途中だったな。例の呪いの耳飾りの件だろう?店主殿から預かっていたという」 「おじさんの話では、あの耳飾りは亡くなった奥さんに贈ったものだったらしいんだけど、奥さんのお墓に一緒に埋めたはずなのに、いつの間にかおじさんの手元に戻ってきてたんだって」 「捨てても、捨てても戻ってくるというヤツか。作り話にもよくあるな」 「あれね……呪いなんてかかってなかったの」 「店主殿の勘違いだったということか?」 「ううん。私はおじさんから耳飾りを預かって直接鑑定したから断言できる。あれには呪術がかけられていた」 「ということは……」 「うん。耳飾りにかけられてたのは呪いじゃなくて呪言。かけたのはたぶん亡くなった奥さん」 「待ってくれ!それが呪言だったというのはまだ理解できるが、それを彼の奥方がやったのか?呪術というのは誰にでもできるものなのか?」 「具体的にどういった効果を持たせるかは専門的な知識がないと難しいわね。でも、呪術には時々こういうケースがあるの。今回の件も意図的なものじゃなかったんだと思う」 「先程、呪術は強い思念によって発現すると言っていたな?奥方が生前、何かを強く想ったことで呪術が発現したというのだな?」 魔術の素養や素質無き者達が、それでも力を得たいと心から願った結果、生み出された業こそが『呪術』の本質。 知りたい、触れたい、見たい、聞きたい、伝えたい、行きたい、護りたい、勝ちたいといった、数多の渇望の想い全ての結晶。 死に別れた夫に対し、彼女が何を願い、望んだか…… 「きっと、ずっと一緒にいたかったんだよ」 「……そんな気持ちが耳飾りに宿り、どこへいっても店主殿の元へ帰るようになった……と?」 「おじさんは気味悪がって、捨ててくれてもいいって言ってたけどね。仕方のないことかもしれないけど、悲しいことだよ」 「だから君は耳飾りの術を解いた後、店主殿の所へ再びそれを届け返したわけか」 「そこまではしない。私が知ったことをおじさんに伝えて、それをどうするかはおじさんに決めてもらったよ。おじさん、泣きながら握り締めてくれたけどね!」 「視点により呪言は呪いへと変わる、か……哀しくも人とは善としての面よりも、悪としての面に敏感で、過剰な生き物だ。見る者には悪に見えても、何かを救い、護っている。それを理解できぬことを仕方ないと割り切ることは簡単だが、それではあまりに哀れだ」 「そう思うでしょ!?だから夢なの!私の夢!!凄い呪術師だったママとパパみたいに、立派な呪術師になって、世界中のみんなに本当の呪術がどんなものかを知ってもらいたいの!!」 「良き夢だ。心からそう思う」 「うん!」 「だが、しかし……」 「ん?」 「その話を聞いてしまうと、あの耳飾りを壊してしまったことへの罪悪感が一段と重く圧し掛かってくるな……!」 「だ、大丈夫!おじさんも喜んでたし、許してくれてるよ!ほら?お肉食べよ?ね!?話のせいで冷めちゃってるけど……ま、まぁ、おいしいよ!!」 店で過ごした時間の大半が長話で消費されたものだったが、何はともあれ腹ごしらえを済ませた私たち。 こうして呪術についてある程度理解を得られたところで、そろそろ私が最も気になっていることに踏み込んでいこう。 思えばいろいろあったが、ハウザーとはそれなりに良い関係を築けているはずだ。 「……ねぇ?ハウザー」 「ん?どうした?まだ食べたりないのか?」 「違う!ちょっと真剣な空気作ろうとしてんだから察してよ!!」 「そ、そうか!すまん!で、何だ?」 「その盾のこと!貴方は嫌がるだろうけど、やっぱりどうしても気になるの……」 「この『呪い』のことか……おっと『呪言』かもしれないのだったな。すまない」 「ううん。それは呪言じゃない。近くで見ればよくわかる。呪いで間違いないよ。大きな力を得る代わりに、精神と魂を蝕む性質のものだね」 急に口が重くなるハウザー。 勢いに任せて聞いてはみたものの、やはり断られてしまうか。 「……そうだな。君だけにあれだけ語らせておいて、俺が何も教えないというのもやや不公平というか、無礼なのだろうな」 「……あれ?いいの?」 「出会った時点では得体の知れない娘だと思ったものだが、今は君を一人の人間として信用している。この場から逃げたところで、君はまた追いかけてきそうでもあるしな」 言葉の端々に問い正したい点があることは我慢しよう。 あれほどまでに拒絶一辺倒だった彼に、やっと自分の真剣さと想いが伝わったのだから。 「それでも全てを語ることはできないことは許して欲しい。君が深入りしすぎて、巻き込んでしまうことになるのは避けたいのだ」 「うん。わかった」 「…………私はある土地で隠れ里を築いていた戦闘部族の出身だ。一族は皆、戦士として生き、そして死ぬことを誇りとしていた」 ハウザーは語りだす。 自身の経歴と、盾を手にするに至った経緯について。 「ある日、俺たちの里が帝国軍に襲撃された。傭兵として戦地に赴くことも多かった俺たちは、ヤツらからすれば大陸侵略の障害になり得たのだろう。当然、皆で抵抗したが、圧倒的な戦力差の前に仲間たちは次々と倒れていった……」 帝国軍については勿論知っていた。 王都陥落の以後、もはやその存在を知らぬ者は大陸にはいない。 しかし、大規模な侵略の陰で、里を丸ごと滅ぼすような所業にまで及んでいるとは初耳だった。 恐らくはハウザーの里以外にも、こうして人知れず命を奪われている者達が数多くいるのだろう。 「俺を含む生き残りは、里にある宝物殿に籠城した。その奥には一族が代々封印し、不可侵の誇りとして護ってきた秘宝が存在していたからだ。それがこの盾だ」 「……その秘宝に呪いが?」 ――違和感というか、腑に落ちない感じだった。 「宝物殿に押し寄せた帝国軍により、俺たちは重傷を負った。これまでかと思ったよ。霞む視界に、宝物殿の祠の奥へと踏み入っていく帝国兵が見えた時だった……俺たちは最後の力を振り絞り、帝国兵達に抵抗したんだ……」 ――ハウザーの一族は、呪いのアイテムを秘宝として護っていた? 「帝国兵を突き飛ばした俺は、目の前にあった秘宝。つまりはこの盾を掴んだ。奪われまいと。必死の想いでな」 ――封印されていた理由は、それが呪われたアイテムだったから?でも…… 「その瞬間、おぞましい瘴気に呑み込まれた。いつの間にか俺だけが立っていた。一族の皆と、帝国兵の死体だけが点々と転がる、荒れ果てた里の真ん中に。ふと気が付くと、俺の手にはコイツが握られていたんだ」 ――私だから気付くことのできた疑問。 「その時だよ。これが呪われた秘宝であることを知ったのはな」 ――私だから辿り着けた真実。 「だが、気にしないでくれ。この力のおかげで俺は生き延び、一族の誇りと取り戻すために戦うことが出来るんだ。皆の復讐の念を果たすことが出来るんだ」 「……だから『解呪』は必要ない?」 「あぁ。少なくとも、誓いを果たすまではな。それを果たせずままこの身が滅ぶことがあったなら、俺もそこまでの人間だったということなのだろう……」 「そう……」 私は何も言えない。 言ってはいけない。 私だけが知り得た真実を、彼に伝えることは許さない。 「こんなところだが、十分だろうか?」 「………………」 私は口を閉ざし、堪えることしかできなかった。 「ミリア……?」 「……ごめん。私、ハウザーに出会ってすぐに呪いを解いてあげるみたいなこと言ったでしょ?あれ、すごく無神経だった。だからゴメン」 「あの時の君は何も知らなかったのだから当然だ。むしろ、人を助けようとする行動は間違ったものではないと思うぞ?」 彼は自身の心を蝕む狂気の誘いを、弱者だった己が生を掴むために、身の丈以上の力に手を伸ばした対価であるとして受け入れた。 一族の誇りを取り戻さんとする誓いの象徴として、呪いを背負うことを決めたのだ。 そんな男の信念に、昔の記憶が再び蘇る―――――― ―――― ―― ――大切なものを全て失い、村を追われた私は、生死の縁をさまよいながら海に辿り着いた。 海岸線から見渡す海の美しさは、一瞬とはいえ私に全てを忘れさせてくれた。 「おぅ!嬢ちゃん。目が覚めたか?」 「あれ……?わたし……」 「覚えてないか?あんた砂浜で倒れてたんだぜ?」 そうか。 呆然とした思考の中で、いつの間にか気を失ってしまっていたようだ。 「ここは……どこ……ですか?」 「はは!そんなに怯えなくて大丈夫だよ。ここはバルバームって村だ。しばらくゆっくりと休むといいさ」 見ず知らずの大人の男。 幼い私にとっては十二分に警戒してしまう相手ともいえるが、それでもあの村の大人たちとは違い、嫌な感じはしなかった。 その後、私は村を案内された。 海賊の村『バルバーム』 元は犯罪者やならず者が集まって作ったとの話だが、今は文字通り海賊達の根城ともなっている。 ここで勘違いして欲しくないのが、彼らは決してただの悪人というわけではないという点だ。 彼らはいわゆる義賊的な活動を続ける組織であり、多少、法に触れることもすることはあれど、それもこれも村の存在と、村人たちの生活を護るための行為だった。 近年では著しい発展を遂げ、人口も文化レベルも大陸の立派な街と肩を並べる程にまで成長していたこの村で暮らす人間の多くは、居場所を失ったり、希望を求めここへやってきた人たちだという。 そこは私にとってもまた、世間のしがらみから隔離された住み心地の良い場所だったのかもしれない。 しかし、そんなことはどうでも良かったのだ。 もはや私には生きる意味を見出すことが出来なかったから。 かといって、死ぬ勇気があるわけでもない。 私はただただ茫然と日々を過ごすだけだった。 そんな生活の中でも腹は減る。 優しい村人たちが私を気遣い、毎日食事を持ってきてくれるものだから餓死することも無かった。 起きて、食べて、ぼーっとして、食べて、寝る。 本当に何もしなかった。 「おぅ。昼飯ここに置いとくぜ?」 「…………ありがとう……ございます」 「ミリア……ちゃん……だったか?おめぇさんにどんな過去があるのかは知らねぇし、聞こうとも思わねぇけどよぉ。今こうして生きていられてんのは、たぶん誰かがおめぇさんを守ろうとした結果なんだと思うぜ?この村の連中のおかげで飯が食えているようにな」 「…………」 「俺なんかが指図する権利はねぇんだろうけどよ、そんな連中に対して、おめぇさんは何も返さなくてもいいのか?何かをしようとは思わねぇのか?それじゃ報われねぇよ……それじゃ本当に可愛そうなのは、おめぇさんじゃなくて守ろうとした連中の方さ。本当にそれでいいのか?」 「…………」 「……また明日来る。少しは考えてみてくれや」 村にいた海賊の船員が口にしたそんな言葉。 それがきっかけだった。 自分を何時も護ってくれていた両親を失ったあの日、あの時、何故自分だけが生き残ったのか。 その理由がわからなかった。 思えばあの時、崩れた家の瓦礫の下敷きになったことで、少なからずケガを負うことにはなったが、それ以上のことが無かったのは何故なのか。 両親が解呪に失敗したことで暴走した呪術の反動は、家を丸ごと吹き飛ばすほどの衝撃だったはず。 それが原因で両親は命を落とした。 では、その衝撃から自分を護ったものとは何だったのか。 幸運という言葉だけでは片付けられない疑問。 幸運……? ――我が愛娘に幸運があらんことを 母の言葉を思い出した時、私の思考は巡りだした。 両親の唯一の形見ともいえるノート。 瓦礫の中から見つけることのできた唯一の繋がり。 それを一心不乱に捲り、読み漁った。 何の事はない。 私は最後の最後まで二人に護ってもらっていたのだ。 母は『おまじない』だと言って、よく自分を抱きしめ、額に優しくキスをしてくれた。 これは父の編み出した術式で、秘術ともいえるものだった。 強力な加護を付与するもの。 邪悪な念を祓い除け、いつまでも健やかに生きて欲しいとの切なる願い。 それは『呪言』として彼女に植え付けられ『呪い』に抗う彼女の力、体質となっていた。 「…………ママ……パパ……ごめんなさい……!」 私は何をしていたのだろう。 後悔と謝罪の念。 せっかく救ってもらった命をただ浪費するだけの日々。 両親はこんな自分を護ろうとしたわけではないはずだ。 それから間も無く、私は呪術師としてバルバームで店を開いた。 そして名乗るようになる。 呪いを祓う『解呪師』の名を―――――― ―――― ―― 彼の傍で、その行く末を見届けよう。 私にはその誓いが果たされるまで、彼を支えることが出来る。 誓いが果たされ、盾の呪いが役目を終えた時、彼が肩に背負ったものを下ろしてあげることができる。 「ハウザー。私、決めた。貴方の旅の終着点で、その呪いを解くために私も貴方と一緒に行く」 「何故いきなりそうなった!?」 私の身に宿る、母の呪言。 ハウザーの身に宿る、盾の呪い。 私を護ろうとした両親と、誇りを護ろうとしたハウザー。 「私がそう決めたの!さ、そろそろ行こうか。まずはこの荷を船に乗せないといけないから、とりあえず海に向かうわよ?」 「待て!誰が同行を許した!?」 「少なくとも今日一日、貴方は私の手足でしょ?主人の言う事に逆らったりしないの!」 「それは今日一日限りの話だ!それを終えたら俺は一人で行くぞ!いいな!?」 『呪言』と『呪い』 形は違えど、どちらも護りたいとの願いの結果。 幸福と絶望の礎。 私が絶望の淵から立ち上がり、今という小さな幸せを掴んだように、彼の行きつく果てにも幸せがないと不公平だ。 呪術師でありながら、呪いが呪術の悪しき一面だと断じて諦めてしまっていた己を恥じなければいけない。 「さてさて……レイナ達が迎えに来てくれるのは何時だったかな」 「話を聞け!」 勘違いしてはいけない。 これは彼を想っての選択かと思いきや、実は私のためなのだ。 もしも彼がこの先、帝国との戦いに勝利したとしても、結局このままでは彼の死の運命は変わらない。 生ある限り呪いに蝕まれ、苦しみ続ける。 彼はそれでも良いと言うかもしれない。 目的が果たせたのなら構わないと諦めるかもしれない。 そんなのは私が許してやるもんか。 呪術はそんな悲しいものなんかじゃない。 その時こそ、私が彼に幸せを見せて、呪いを呪言に変えてやる。 彼一人が例外じゃない。 きっと似たようなことがあれば、私は同じ選択をすると思う。 それが呪言であれ、呪いであれ、大好きだった両親がそうであったように、私は呪術がもたらす幸せや喜びを世界中の人々に伝えたいのだ。 そんな呪術師であってこそ、両親に胸を張ってありがとうと言えると思うから。