約 1,352,092 件
https://w.atwiki.jp/bakiss/pages/194.html
控えめな速度でドアが開けられ、セピアが肩から上だけを部屋に差し入れる。 「お話、終わった?」 「ああ、終わったとも。これで失礼するよ。セピア、与えられた薬は毎日飲むんじゃぞ」 「な、なんのことでしょう、ドクター」 冷や汗垂らしながらとぼけるセピアを見て、レッドにもなんとなく事情が推察できた。 「副作用が辛いのは分かるが、飲んだ振りをしてトイレに流すのは感心できないと言っておる」 「……ごめんなさい」 素直に頭を下げたセピアだったが、まもなくがばっと顔を上げた。 その目の色は無闇にきらきらしていて、反省の色がまったくない。 「でもでも、ドクターはなんでもお見通しなんですね。すごいです」 「ワシは医学的にお前と接してるからの。血液成分を分析すればその程度は造作もないわい」 そう言っておいて、レッドに意味ありげな視線を送る。 いい加減でうんざりしたレッドは手首を振ってドクターを部屋から追い立てようとした。 ドクターはそれを特に気にすることもなく、ではな、手を軽く挙げて去っていった。 急に病室が静まり返ったような気がした。空調設備の軽い駆動音が、ひときわその沈黙を引き立てる。 セピアが軽く咳払いをし、ベッドの横にパイプ椅子を引きずり寄せて座る。椅子の足が床をこするのが、いやに響いた。 「ユーゴーはどうした?」 「え? あ、疲れて眠っちゃった。別にお部屋を用意してもらって、そこで寝てるわ。 ……ずっと眠ってられたらいいのにね。目が覚めても、きっと辛いことしかないから」 しみじみと言ってから、慌てて口元を押さえる。心に隠していた本音をうっかり聞かれたときのように。 「あ、いや、そうじゃなくて、きっとお姉さまやグリーン兄さまがなんとかしてくれるわ。 ──ああ、これも違う、これはその、レッドが頼りないとかそういうことを言いたいんじゃないの。本当よ」 本当だから、とセピアは何度も連呼した。見てるこっちがいたたまれなくなるくらいの必死さであった。 「気にしてねーよ」とでも言うべきなのだろうか。なにかが違う気がした。 ふと、試してみる気になる。 「セピア」 「え?」 「手を出せ」 言われたとおり、セピアは手を出した。ハロウィンにお菓子をねだる子供のように。 「そうじゃない」 その一言で即座に理解したのか、セピアは「あ」と短くつぶやいて握手の形に向きを直した。 自分とはえらい違いだな、とレッドはなんとなく思う。ドクターの言うとおり馬鹿なのかもしれない、と。 「あ──」 セピアの手を握るのはこれで二度目だった。 最初のときは、冷たく、すべすべしていて、陶器にでも触っている心持ちになったのを覚えている。 では今は? ──よく分からない。 ただ、あの時はまるで感じなかった肌の温かみを確かに感じ取った。 セピアは今初めてレッドに会ったかのように、不思議なものを見るような目で、レッドの瞳をまじまじと覗き込んでいる。 ややあって、そっと、レッドの手に触れるセピアの指に力が込められた。 無言の時間が流れた。廊下では誰かが早足で歩いていた。 「How are you?(どうしてる?)」 「Fine,Thank you(上々よ、ありがとう)」 それきり、さらに沈黙。 その永遠とも思える時間感覚のなかで、レッドは手を離したくて離したくてしょうがなかったのだが、手は繋がれたままだった。 セピアが万力のごとき握力でがっちりレッドの手を握り締めていたから──という訳では、もちろん全然ない。 不本意と言えば不本意な展開だったが、不本意ついでにさらなる光景がレッドの目の前で起こる。 セピアがもう片方の手でレッドの手首をつかみ、そのままゆっくりと持ち上げた。 それは非常に緩慢な動作で、羽毛でも持つような、なんの抵抗もないであろう軽やかな手つきだった。 そして、レッドの手の甲を自分の頬に押し当てる。 静かに瞳を閉じて、全身の感覚をその一点に集中させているように。 セピアの頬は、少し熱かった。 ──三十分後、レッドはカリヨンタワーの最上階にいた。 相変わらず照明の足りない、この部屋の主の陰気さをうかがわせる明度だった。 傍らにはセピアがいて、少し離れた所にバイオレットとグリーンが鏡合わせのような位置関係で立っている。 そして、その奥には──。 「無事でなによりだ、レッド」 「ありがとよ、ブラック兄さん」 その言い草にグリーンがちょっと嫌な顔をするが、なにも言わなかった。 「シルバーにも手を焼かされる……困った弟だ。クリフ・ギルバートはエグリゴリにとって優秀な、 このまま殺すには忍びない逸材だというのに。しかし、あの負けん気の強さがあいつの良いところでもあるのだがな」 キース・ブラックの口調はどこまでも穏やかで、まるで本当に家庭内の問題を論じいるように聞こえる。 「僕はそう思わないな。旧人類の変異種ごときにここまで大それた真似をされて、黙って見過ごせと言うのかい? そりゃ、シルバー兄さんの行動は少し度を越しているかもしれないけれど、それだって仕方ないよ。 僕等キースシリーズに逆らうほうが悪いんだ」 そのあまりにも屈託のない発言に、今度はバイオレットが眉をしかめる。 お坊ちゃん育ちが滲み出ているようなグリーンにふさわしい、どこまでも無邪気な言い分だった。 「グリーン。あなた、ブラック兄さんの決定に逆らうつもりなの?」 グリーンは心外そうに、大仰な身振りで肩をすくめた。 「そんなんじゃないさ。任務は任務、僕だってその辺はしっかりしてるつもりだよ。 ただ個人的な見解からシルバー兄さんを弁護しただけさ。なんならクリフ・ギルバートくんに同情してやってもいい」 頭越しに飛び交わされる会話に痺れを切らし、レッドが割り込む。 「ブラック、結局のところ、あんた、いったいどうやって片をつける気なんだよ」 それが話の本題だと言いたげに、ブラックが深く首を振る。 「そうだ、レッド。お前がその身をもって実証したように、クリフ・ギルバートは非常に危険な存在だ。 だがその一方で、私は彼という稀有な能力者を失うことを恐れている。だから、彼には特別な処置を講ずることにしたのだ」 特別な、という部分にアクセントをつけて、ブラックが言った。 「これよりグリーンとバイオレットには、『シルバーの無力化』と『クリフ・ギルバートの拿捕』という任務に就いてもらう。 シルバーは勿論のこと、クリフ・ギルバートを殺すことも許さない。 どちらも危険で困難な任務だが、お前たちなら私の期待に応えてくれると信じている」 その言葉に、グリーンが芝居掛かった仕草で重々しく頷いてみせる。 バイオレットは目を伏せており、その場の誰とも目を合わせないようにしていた。 「レッド、そしてセピア。お前たちはゆっくり休め。二人とも、不測の事態によく対処してくれた。 お前たちの働きで、被害を最小限に抑えることができたのだからな」 レッドの後ろで、セピアが安堵の溜息をつくのが聞こえる。だが、 「ちょっと待てよ、ブラック」 レッドはキース・ブラックという男を知っている。こいつがそんな生温い解決を望むような男ではないということを。 「話はよーく分かった。……それで? クリフをとっ捕まえた後はいったいどうするつもりなんだ?」 バイオレットが控えめに、いや、控えめという前提でなら露骨に身体を強張らせる。 ブラックは沈黙を守っていた。 レッドの質問に答えたのは、やはりそうした空気の読めないグリーンだった。 「『アサイラム』」 ほとんど無造作に放り投げられた単語に、レッドはその意味を受け取り損ねる。 「ああ?」 「エグリゴリが世界中から集めた特殊能力者を収容する監獄だよ。 本来ならプレーンな実験体しか収容しないんだけどね。彼には気の毒だけどそこで一生を送ってもらうのさ」 「あ、あの」 おずおずと、だが決然とした面持ちで、セピアがグリーンに問う。 「ユーゴーは……どうなるんですか?」 なんでそんな無関係なことを、と首を捻りながら、それでも懇切丁寧を顕わに答える。 「彼女は『危険な実験体』ではないだろう? そんな心配しなくても、これまで通りの天使の扱いさ」 レッドは背後に振り返る。能天気なグリーンの声に反して、セピアの顔面は蒼白だった。 わななく唇が、目じりに溜まった水滴が、今にも泣き出しそうになるのを必死で堪えていることを表していた。 「なにも問題ないよ、セピア。今回の件でユーゴー・ギルバートにとって不利に働くようなことは何一つないからね」 レッドの心の奥に、ある名状しがたい感情が沸き起こる。 それはいつも感じている、キースシリーズや敵に対して抱く憎悪に似ていたが、それとはまた少し違っていた。 例えるなら、それはルビーの──その最上の発色を示す──鳩の血(ピジョン・ブラッド)に似て澄み切った、純粋な怒りだった。 「人の心が分からない、か──は、はは」 知らず、レッドの口の隙間から細い笑いが漏れる。 「なんだよ。なにがおかしいんだ?」 「てめえの頭の中身がだよ」 「なんだと……」 身を乗り出しかけたグリーンによく見えるように、レッドは両腕を開いてみせた。 「──いや、お前の言う通りだぜ、グリーン」 話の文脈を見失ったグリーンが、虚を突かれて押し黙る。 「なにも問題ない、問題ないんだ」 努めて軽い口調で。慣れない笑顔も作ってみせた。 「レッド……?」 訝しげに、セピアが呼ぶ。バイオレットもまた、レッドの意図を掴みかねているようだった。 「そう、これは大した問題じゃない。問題ですらない。 あんたら『マッド・ティー・パーティー』が雁首揃えて思い悩むようなことじゃないんだ。……そうだろう、ブラック」 問いかける言葉の先には、ブラックがいた。両手の下から覗く口元は、微かに歪んでいるように見えた。 「あんたさっきこう言ったよな──『お前がその身をもって実証したように、クリフ・ギルバートは非常に危険な存在だ』、ってな。 合ってるよな?」 「間違いない。私は確かにそう言った」 ブラックの肯定に、レッドは意を得たとばかりに続ける。 「実は、よ──オレはあの時、油断してたんだ。あんなガキがサイコキノだなんて思ってもみなかった。 アラート42を聞いても、目の前のそいつが『そう』だなんて、どうしても信じられなかった。 そのせいで先手を取られて、一方的にノされちまったのさ」 丸っきりの嘘だった。レッドにとって、嘘をつくなどという行為はかなり新鮮な体験だった。 だからといってそれが面白いかと聞かれれば、まったく面白くなかった。 「……事実だとしたら、私は救いがたい話だと思うがな、レッド。 お前の危機管理能力はその程度だったのか、と、お前への評価を改めざるを得ないだろう」 グリーンが呆気に取られたようにレッドを見ていた。 こともあろうにキース・レッドが自分の非を認めるとは──そういう驚愕がありありと顔に浮かんでいた。 ドス黒い感情でレッドの目の前が真っ赤に染まり、だがそれも、なぜかすぐに霧散する。 「いや、悪かったと思ってるさ、ブラック。 オレが、その──不甲斐ないばっかりに、シルバーに圧倒的な悪条件下での戦闘を強いちまった。 これが屋外だったら、いや、もうちょっと広いスペースの施設だったら、一瞬で勝負はついてたろうさ」 言いながら、ここだけは多分嘘ではないとレッドも認めるしかなく、それがわずかに腹立たしかった。 「だからよ、オレにやらせてくれ。クリフはオレが捕まえる」 「……ん? おい、なにを勝手なことを言ってるんだよ。ブラック兄さんは僕にだね」 話の筋は見えていなかっただろうに、その言葉だけを聞き咎めたグリーンが異を唱えるが、 「黙りなさい、グリーン」 「え、でもバイオレット姉さんはさっき──」 「黙れと言っているのよ、坊や」 当事者の片割れであるバイオレットに制止されるとは思ってもみなかったらしく、目を白黒させながらも口を閉じる。 「……レッドよ。つまりお前はこう言いたいのか? 『クリフ・ギルバートはなんら危険視に値する存在ではなく、アサイラム送りは無用である』」 ブラックの発言を俯いて聞いていたセピアの首が、徐々に上を向く。 その表情は少しだけ明るくなっていた。今ここでなにが起きようとしているのか、その事態の変化をやっと察したようだった。 「『そして被害をいたずらに拡大させた責任を取るべく、単身で任務に赴き、情況を制圧する』──」 「──少し、違うな」 さすがにブラックがキナ臭い顔をするのへ、 「責任を取るのは二人だ。こいつもその場にいた。そのくせ、なにもしなかった」 レッドはセピアを一瞬だけ顧み、 「なにより、オレたちはツーマンセルのユニットだ。そうだろう? あんたが最初にそう命令したんだよな?」 「レッド……!」 セピアは小さく叫び、レッドの背に頭を押し付ける。レッドの陰になっているため、それはブラックには見えていないだろう。 「──なるほど。一応の筋は通っているな」 含むように、ブラックが笑う。 それはすべてを見透かしているような、癇に障る笑みだった。 「いいだろう。レッド、セピア。お前たちに任務を与える」 カリヨンタワーの下層では、今も獣と機械が死闘を演じている。 自分はいったいどっちなのか。 獣か、機械か。 その答えを見つけるために、キース・レッドは再び地獄の底へ降りようとしていた。 第九話 『心』 了
https://w.atwiki.jp/vip-wlo/pages/94.html
リン 土属性単体魔法・補助NPC。 初期ステは弱いがスキルが非常に強い。友情バッジとの相性が良いうえ、大地の鏡で終盤のマゾ狩場に耐えられる。 CONに再振りしてバッジを装備させ火力として使う場合と、AGI成長のまま鏡張り要員にする場合がある。魔法を使ってくるボスが多くなってくると後者は微妙。 加奈子 水属性物理・回復NPC。 チート性能の弓を装備している事と回復魔法が使える事から、狩りではトップクラスの安定度。ただし、LV50台中盤からLV90まで長期間通う南極の土属性白クマに弱く、PCが低火力だと1KILLできないのが欠点。 スキルが弓専用なためにボス戦ではほとんど使い物にならない。 弓耐性持ちのボス相手にはmiss連発。課金弓+4を装備させれば一応当たる事は当たる。 火女神が乗らないので他のNPCに比べてスキル使用時の火力が劣る。 クエストではバッジを付けて延々回復魔法を掛けているのが無難。 サシャ 水属性物理・補助NPC。 攻撃スキルが物理だが、INT成長。INTのおかげでフリーズの命中率が上がっているらしい。 フリーズが中盤までのボス戦で役に立つが、高LVボス相手では先制が取れず涙目。 マゼラン 土属性物理NPC。 取得クエストにクリフが必要なので、「強敵フリード!」でクリフが死亡する前に加入させておきたい。 スキルが微妙なこと、外見が微妙なこと、ボイス等未実装部分があるので育成しているプレイヤーはほとんどいない。 二章以降派生クエストが実装される予定らしい。 小火竜アレス 火属性動物型NPC 単体物理攻撃と横2体の魔法が使えるが、STR CON成長なので魔法はネタ。 未実装のATK鞍用に便利かもしれない。 動物型NPCとしてはステータスが低い方だが、専用バングルでHPが増えるので育てやすい。専用バングルは神官に話しかければ何度でも貰える。 クエスト加入NPCなので離別・逃亡しても消滅せず、オーストラリアの博士のところで再加入できる。
https://w.atwiki.jp/kyougenshi/pages/292.html
冥管「ゴーストクリフォード」 冥管「ゴーストクリフォード」 黒 妖霊玉 (5) スペルカード:メルラン・プリズムリバー 幽霊 3000 ■自分のバトルゾーンにメルラン・プリズムリバー以外の、プリズムリバーとつくスペルカードがあれば、自分のプリズムリバーのスペルカードすべてはブロッカーを得る。 □重奏-管(このスペルカードがバトルゾーンにあるとき、符名に管を持つスペルカードを召還するコストを1下げる。ただし、コストは1より少なくてはならない) フレーバーテキスト 凍える必要はない。その死神の旋律は心を解き放つ。 収録セット 第三篇 冬幻鏡 24/60 参考 メルラン・プリズムリバー
https://w.atwiki.jp/lactres-d/pages/16.html
ゲーム人生日記「混沌創世記」動画編xxxx 知っていてやる密サク 密サクxxx x/x 録画日 20xx/xx/xx 内容・詳細・解説 対応ブログ記事(今回の詳細・感想) xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx 動画まとめウィキ(企画のルール・他の動画など) xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx 密室のサクリファイス D3P D3パブリッシャー
https://w.atwiki.jp/nameless_city/pages/187.html
クリフォード・オデッツ(Clifford Odets)(1906年~1963年) 略歴 フィラデルフィア出身ニューヨーク育ちのユダヤ系劇作家。父はロシア系ユダヤ人実業家だった。高校中退後俳優となるが芽が出ず、劇作家に転向した。1931年に進歩的演劇集団「グループ・シアター」に参加し、劇作家として名声を得、1930年代を代表する社会派作家となった。その後、映画界から招かれて脚本家としても活躍した。しかし、穏健化するに従い輝きを失っていった。、 作品 『レフティーを待ちつつ』(Waiting for Lefty,1935)は一躍オデッツの名を高めた代表作。タクシー労働者のストライキをもとに、社会の不公正と不正義を糾弾した。 『醒めて唄え!』(Awake and Sing!,1935)はユダヤ人の労働者階級の家庭を舞台に、挫折や希望が入り混じる人間模様を描いた。 『ゴールデン・ボーイ』(Golden Boy,1937)は生活の安定のためにバイオリニストになる夢を捨て、ボクサーとなる青年の悲劇を描いた。 『カントリー・ガール』(The Country Girl,1950)は事故をきっかけとしてアル中となった元俳優の夫を、なんとか立ち直らせようと奮闘する妻を描いた。
https://w.atwiki.jp/gcmatome/pages/4635.html
本稿では本編(オリジナルのPSP版(不安定/スルメ)及びSwitch/Steam版(良作))を中心に、スピンオフ2本も概要レベルで解説しています。 密室のサクリファイス 概要 ストーリー 特徴 システム 探索パート キャラクター 評価点 探索パートの評価点 シナリオ 賛否両論点 問題点 総評 密室のサクリファイス/ABYSS OF THE SACRIFICE 概要(リマスター版) 変更点・評価点(リマスター版) 賛否両論点(リマスター版) 問題点(リマスター版) 総評(リマスター版) 余談 体験版・関連作など その他 密室のサクリファイス 【みっしつのさくりふぁいす】 ジャンル トラップアドベンチャー 対応機種 プレイステーション・ポータブル 発売元 D3パブリッシャー 開発元 インテンス 発売日 UMD版 2010年2月4日DL版 2010年3月4日 定価 UMD版 5,040円(税込)DL版 3,990円 レーティング CERO C(15歳以上対象) 判定 ゲームバランスが不安定 スルメゲー ポイント 可愛らしい絵とシビアなシナリオの両立バラエティ豊でボリューム満点の脱出パートただし、難易度は非常に高い その先にあるのは希望か? 絶望か? 概要 SIMPLEシリーズの『THE 密室からの脱出』シリーズなどを中心に、多くの脱出ゲームを製作しているインテンスが製作した脱出ADV。 同シリーズで得た脱出ゲームのノウハウをベースに、脱出ゲームにおいて希薄であることが多いキャラクターやストーリーといった面も深く作りこんだ作品。 公式では「脱出ゲームとサスペンスが融合したトラップアドベンチャー」とされている。 ストーリー 地底奥深くに建造された巨大な生活施設「ファウンデーション」いつ、何の目的で作られたのか——誰が、そこへ人々を導いたのか——真実は、長い年月の中に風化し、その歴史ははるか昔に消え去ってしまった。ここには、もう地上の世界を知る者はいない。今や、地中に存在するこのファウンデーションだけが人々にとっての「世界」となっていた。 そこを突如襲った「異変」が5人の少女の運命を変えた。無人となった「世界」。時折襲い来る、大振動。崩落する壁や天井。費えていく、水や食糧——取り残された5人の少女たちはその過酷な状況で生き残らねばならなかった。 今、ファウンデーションは崩壊の危機に立たされている。そして、少女たちにも最後の、長い試練の時が、今、訪れる—— 特徴 システム ゲームは全36のシナリオに分かれている。 + ネタバレ うち1つは条件を満たさないで入った場合バッドエンド直行(この時は謎解き要素がない)となる。 各ステージは、テキストを読み進めていくADVパートと、アイテムを見つけ使用したり暗号を解くなどして、その際陥っている状況を乗り越える探索パートに分かれている。 ADVパート内で起きた危機や困難を乗り越える際に、探索パートが挟まれる形で各シナリオが構成されている。 開始後しばらくはシナリオの順番は固定だが、メインキャラが揃った辺りで次に読むシナリオが選択できるようになる。一度シナリオを選択すると他のシナリオが選べなくなることもあるため、事実上の分岐要素となっている。 シナリオには「入るために生存している必要があるキャラ」が設定されており、ある時期以降のものには「そのシナリオで死ぬキャラ」も設定されている。ただし、その前に通過したシナリオによってそれらの設定が変化するケースもある。 メインキャラクターである5人の少女は全員が主人公であり、各シナリオはそれぞれのキャラクターをメインに設定されたシナリオがほぼ均等の数に割り振られている。 エンディングも各キャラクターに用意されており、ステージを選ぶ順番によりルートが変わるマルチエンディングとなっている。 一度クリアした後は「やりなおしプレイ」としてそれまで辿ってきたルートの途中に戻ることで、クリアしたステージをやり直したり、別のステージに行くことで別ルートを模索したりできる。 探索パート 全36ステージ中探索パートが2~3回あるステージもあり、かなり簡単なものからとても難しいものまで総数はおよそ4~50にのぼる。 各探索パートは、脱出ゲーム要素としてはそれぞれ完全に独立している。たとえ同じステージであっても、前の探索パートで持っていたアイテムや行動内容などは引き継がれない。 謎解き要素の無い探索パートもある。探し物をするシーンなど、プレイヤーに操作をさせることで感情移入に役立てている。 本作を象徴するのがこの探索パートである。難易度は高めで、全体的に脱出ゲームに慣れた人向けの難易度となっている。 基本的にノーヒントで進む。キャラクターが明確なヒントを言わないため、ほぼ全てを手探りで進めていかなくてはならない。 手がかりが必要な謎解きにはもちろん手がかりはあるが、それ自体がものによってはかなり複雑な暗号になっている。 キャラクター 「まはん。」氏によるキャラクターは間違いなく萌え絵の範疇に入るデザインであり、メインキャラが全員学生年齢の女の子であることもあって一見ギャルゲー的。 若干ながらサービスシーンもあるなどそういった面が全くないことはないのだが、シナリオ自体は基本的にシリアスかつシビアである。 主人公である5人の少女は皆大なり小なり過去に闇を負っており、またそのために各々が独自の信念や目的の元に動いている。 冷淡なミキ、我儘なアスナ、他の4人を利用しようとしているクロエと、友好的とは言いがたい人物も多い。共に行動してはいるが、想いは人それぞれである。 そのため、協力したり仲良くしたりといったシーンもあるが、ギスギスした険悪なシーンも少なからず描かれている。 これと危機的な世界背景も相まって、緊迫したこのゲームの独特の空気を作り上げている。 登場はほぼ回想の中だが、主人公たち以外にも話に深く関わる登場人物が3人いる。 表立った登場人物は主人公を含めたこの8人のみで、そのうち7人が女性であり、男性は1人のみである。 評価点 探索パートの評価点 脱出ゲームの基礎部分は良好 探索パートがいわゆる脱出ゲームのパートとなるが、単に脱出するだけでなく、「何かを探す」「目的地への扉を開ける」など目的は様々。 持っているアイテムを調べる、アイテム同士を組み合わせて別のアイテムに変化させるといった、脱出ゲーム定番の要素もある。 クリア済みのステージはADVパートも探索パートもスキップすることが可能となり、他のルートのためのやり直しがあまり苦にならなくなっている。 探索の舞台となる場所も、近未来的な現実空間の他に、ストーリー設定を活かして夢の中やサイバー空間で謎を解くステージもある。 それらの一部ステージではギミックにある程度現実性を持たせるという「縛り」に囚われない構成がなされていて、脱出ゲームというジャンルと世界設定がうまくマッチしている。 美味しい紅茶を作るだけのほんわかした探索パートがあったり、一種のパズルを解くステージや、カードゲームの詰めゲームのようなことをやる探索パートなど、バラエティ豊か。 一般的に脱出ゲームは「身の回りのものに脱出ゲームとしてのギミックを持たせる」ために日常を切り取ったような舞台になるか、もしくは牢獄や個室といった「閉じ込められた」感の強い舞台になるかのいずれかになることが多い。しかし本作はそのいずれでもなく、近未来的な地下施設を中心にした世界観で違和感なく脱出ゲームの舞台を作り上げている。 多くのステージがあるが探索パートにおける描画の使い回しはほとんどなく、ゲーム全体では相当数のグラフィックが使われている。 探索パートのギミック自体もバリエーション豊かで、50近くという量の探索パートを持ちながら、「似たようなの前にやったなあ」という既視感に囚われるようなことは少ない。 それでいてネジ回しや鍵の付いた扉など、一般的な「脱出ゲーム」でイメージしがちなありきたりなギミックにはあまり頼っておらず、非常に発想力豊かである。 脱出ゲームに求められる発想力や多彩なシチュエーションを十全に満たしており、多くの脱出ゲームファンが満足できる出来と言っていいだろう。 ストーリーからそのままの画面で脱出パートに入るため、切り替わりが自然でプレイヤーの没入感を損なわない。 操作に関しては、カーソルを動かし対象に合わせて調べる方法。対象が調べられる場合、分かりやすいようにカーソルにサークルが出るようになっている。 アイテムをはじめ調査可能なものが、良くも悪くも違和感なく背景に溶け込むように置かれているため非常に役に立つ。 シナリオ ストーリーはよく作り込まれており、ADVパートのみでもかなりのボリュームがある。 SF要素の強い、近未来的な世界観も本作の特徴のひとつであり、雰囲気作りを助けている。 探索パートの評価とも被るが、ほぼ自然にシナリオと探索パートが融合しており、探索パートを入れたお陰でストーリーに無理が生じている、ということは全く無い。 作中にはロシア語(キリル文字)が多く使われており、雰囲気作りに役立っている。勿論、ロシア語がわからないと探索パートができないということは全くないので心配無用。 雰囲気はかなりシリアスで、上記の通りそのキャラクター造形とのギャップが魅力となっている。 ゲームは主人公の1人であるミキの視点で開始し、他の女の子達と出会っていく形になるが、 血塗れの姿で現れた上に放射線被曝している アスナ、箱に入れられた状態で登場するイトカはその出会いの時点で目を引く。 序盤はキャラクター同士が出会ったばかりということもあり、描写も比較的和やかで落ち着いているが、それでも各々のキャラが内面的に抱えている闇が感じ取れ、波乱を予感させる。 後半になると、キャラクター同士の軋轢が表面化し、ルートによっては事故や殺人すら発生する。もっともその中で確実に仲間としての絆も育まれており、それが真エンディングへと繋がっていく。 小出しに少しずつ明かされていく各キャラが抱える重い過去やキャラ同士の繋がり、現在襲い来る異変に関する謎、そして衝撃的な展開など、早く続きを読みたいと思わせる内容・構成になっている。 他人同士であるはずのメインヒロイン5人だが、断片的に描写される過去には妙な繋がりがある。その詳細が徐々に明かされていく様は伏線も張られており、評価は高い。 1ステージにつきシナリオ部分はボイスを含めても10~20分程度であるため、読みやすく中断もしやすい。ラストに衝撃や謎を残して終わるステージも多く、コメディ要素は少ないが読ませる力は低くない。 世界設定やキャラの背景はルートにより判明する内容が違うため(キャラが違うので当たり前だが)、全てのシナリオをプレイしてようやく完全に把握できるようになっている。 + エンディングについて ※ネタバレ注意 上記の通り、各キャラクターにそれぞれエンディングが用意されているが、イトカルートのエンディングは作品そのものの真のエンディングという位置づけになっており、他の4人のエンディングを見た後でないと正しいルートで進んでも見ることはできない。 ちなみに、イトカ以外の4人のエンディングは、マルチバッドエンドのごとく救われない展開ばかりであり、元々暗い世界観と相まって今作を鬱ゲーと言って差し支えないものにしている。 しかし、最後の最後に見られる真エンディングでは、全てが繋がり全員のトラウマが解消された上で生還する、文字通りのハッピーエンドを迎える。 それまでがひどい鬱展開である反動も相まって、その感動は一際際立ったものになっている。 ラストステージは、それまでにあった各ヒロインの回想を扱ったステージを繋ぎ合わせた構成になっており、非常に感慨深い。 スタッフがインタビューにて、「脱出ゲームに必要なのは"折れない心"」と言っていたが、ストーリー的にも最後まで折れてはいけない。 フルボイスが演出を盛り上げる。 声優陣の演技は、緊迫した状況や和やかな状況など、シーンにより違うキャラクターや雰囲気をより引き立てるのに貢献している。 脱出ゲームなので、ギミックを調べた際にキャラクターが感想を述べたりリアクションを取ることもあるが、ストーリーだけでなくそれらも全てフルボイスとなっている。 BGMも緊迫感の強いストーリーに合った張り詰めた音楽揃いであり、質は高い。 緊迫感を保ちつつ、探索パートでプレイヤーが考える妨げにならない程度にうまく調整されている。 賛否両論点 探索パートの難易度 全体的にヒントが少なく、プレイヤーが自分で考えなければならない事が非常に多い。特に後半は謎解きの難易度も上がり、規模も大きくなっていく。 序盤~中盤でも、暗号はシンプルで分かったらなーんだという話なのだが、ヒントが少ないため脱出ゲーム慣れしていても詰まりかねない場所がある。わずか3ステージ目の「父親」が代表的で、少なからぬプレイヤーが苦汁を舐めた。 使用の方法や用途が全く不明な機械やギミックが置いてあり、自分で使ってみて、その結果から法則や正解を導き出さなければならないというパターンも比較的多い。 何も分からない状態から、「必要なモノを自分で集めて仮説を立て、それを試し、ダメならもう一度」という幾度もの試行錯誤することが醍醐味であり、そのやりごたえは十分すぎるほど。自力で解決させたときの達成感と爽快感には凄まじいものがある。 反面、ヒントの少なさは詰まってしまう要因にもなっている。 ただ、意図的なものかどうかは不明だが、代わりにこの手の作品にありがちな「作品の雰囲気を削ぐ、妙に説明的な台詞」というものがあまりないため、脱出ゲーム部分になってもシリアスさを損なわずに進められているという部分があることは付記しておく。 ギャルゲーライクな絵柄 パッケージだけ見てギャルゲーだと思って買うと、ガチサスペンスなシナリオや超難度の探索パートなど色々と痛い目にあうことになる。 一方でそのギャップに魅きつけられたプレイヤーも多く、よりストーリーに引き込まれる要因にもなっている。 問題点 探索パートの判定が非常にシビア アイテムが小さく紛れるように置いてある例が若干あり、見落としやすい。 特に、「大きなドアのそばに小さな鍵が落ちている」のような、小さなアイテムが大きな「調べられるもの」に重なっている(連なっている)場合、視認のしにくさに加えて「調べられるものはアイコンがサークル状に変わる」ことによる判別ができないため、かなり見落としやすい。 恐らくは画面の総当たりによるクリアを防ぐ為だと思われるが、何かを見つけても反応せず、拾えるアイテムでないと誤認も起きやすい。 同じハードのADV『ダンガンロンパ』で例えると捜査パートの証拠品探しに苦労するようなものである。 謎解きの難易度は賛否両論点だが、謎解きに必須のアイテムや情報を見つけにくいのは問題点だと言える。 詰まってしまうとどうしようもない どれだけ失敗してもヒントが増えたりといった事がない為、クリアできないとゲームが止まってしまう。ゲームの難易度が非常に高いため、フォローがないのが非常につらい。 ストーリーの先が気になるのに進めなくなってしまうことも多く、批判点として挙げられることも多い。 幸い、詳細な手順まで記されている非公式の攻略Wikiはあるため、そちらを頼ればクリアは可能ではある。 上記のシビアな判定もあり、「探索が足りていない」のか、「探索は足りているが、アイテムの使い方や暗号解読が間違っている」のかも判断しづらく、余計迷うことになりやすい。脱出ゲームでは、本作に限らずままあることではあるが。 4桁の数字を解くギミックでは、総当り(10,000パターン)で無理押しするプレイヤーもいた。 + ただ、終盤には4桁数字などかわいいものがあるわけで……(ネタバレ) トゥルーエンドルートの終盤では27文字中5文字(文字の重複使用不可)のパスワード……968万以上の組み合わせの中に1つだけある正解を当てなければならないという、4桁数字よりも桁違いに難易度が高いものがある。 もはや総当たりも不可能レベルで、入力に対する応答の意味を理解する必要がある。 しかも組み合わせの中にはダミーも仕込まれている(しかもダミーの方は並び順不問のため1個ではなく120個)。 なおダミーを構成する文字が正解には一切絡まないことに気づくと、課題は22文字中5文字となり、候補が316万強まで減る。さらに、ダミーが何かはわかる人には案外察しやすかったりも……? + ネタバレ ダミー(のうち意味のある並び方をしているもの)はある重要キャラの名前だったりする。 一部の謎解き 数字を逆さに読むなどのギミックを複数絡めたものがあり、さすがに理不尽とも言われる。 総当たりで謎を解き、答えからヒントの意味を考察するという逆転現象も見られた。 「マインスイーパー」「エイト・クイーン」「マスターマインド(ヒット・アンド・ブロー)」「数独(ナンバープレイス)」などをベースにしたパズルもある。ルールを知らなくてもギミックの結果から法則を推測できなくはないが、知らないとハンディキャップは大きい。 不便なスキップ機能 既読テキストや解決済みの探索パートのスキップ機能だが、そこに至るまでのルートが変わってストーリー内容に差が生じた場合、探索パートは全く同じでもスキップ不可能となる。 変更点が現れるのはもっぱらADVパートなのに、ただでさえ高難易度で面倒な探索パートを何度も解かされるのは非常に面倒。 特に本作は解決方法が分かっていても判定が小さくてクリックに手間取ったり、きちんとメモを残しておかないと解くのが大変な暗号なども多い為、一度解決した探索パートのスキップ機能自体は非常にありがたい。だからこそ、飛ばせないのが非常に不便である。 また、最終ステージはクリア後そのままタイトルに戻るため、クリアデータのセーブができない。 そのため、最終ステージはスキップできない。 一部のシナリオの問題 よく練られ綺麗にまとまっているシナリオではあるが、一部若干無理やりっぽいところや放置されたままになる謎などもあり、全体的に良いだけに多少気になる。 + 一例(ネタバレ) よりによってトゥルーエンドとなるルート内に「あるキャラの存在を抹消してしまっているのに、その先の展開では(存在形態はともかく)普通に出てくる」というものがあったりする。 その他UIの不満点 バックログの文章量が少ない。 読み返せる量が文字送り20~25回分程度と少なめ。 シナリオ重視のADVとしてはやはり短く感じる事もあるし、脱出ゲームの情報を読み返すという意味でもっと保存してほしいというケースがしばしば出てくる。 PSP版にはイラストやBGMの鑑賞モードがない。曲数は多くないが、どれも質の良いものなので残念。 テキストの細かい誤字脱字が目立つ。 文字では「やっちゃった」なのにボイスでは「やっちゃってた」というような、微妙な文字とボイスのズレも散見される。 特定の場所でセーブするとPSPの電源が落ちるなどのバグが存在する。 ゲーム中盤に本作の数少ないセクシーシーンであるイトカのシャワーシーンのCGがあるのだが、ボディラインの関係で「おっぱいが3つある(ように見える)」とネタにされた。 問題点に置いたのはボディラインがおかしいという意味であり、このシーン自体はネタの方で広まっている。 総評 昔の脱出ゲームを彷彿とさせる高難易度により、大きなやりごたえを得られる一作。 ただし難易度の高さにより、シナリオの先が読みたいのに脱出パートがクリアできないプレイヤーも多く見られる。 露骨な誘導やヒントの少ない硬派な作りを受け入れられれば、高難易度とシビアなシナリオを堪能できるだろう。 魅力あるキャラクターや重苦しいながらも壮大でよく作り込まれたシナリオはプレイヤーを世界観に引き込み、メインであろう脱出ゲーム部分を食ってしまうほどの出来である。 脱出ゲーム要素を本格的なストーリーの中にうまく取り入れている点は、ブラウザゲームなどで遊ぶ脱出ゲームではまず真似できない部分だろう。 密室のサクリファイス/ABYSS OF THE SACRIFICE 【みっしつのさくりふぁいす あびす おぶ ざ さくりふぁいす】 ジャンル トラップアドベンチャー 対応機種 Nintendo SwitchWindows(Steam) 発売元 D3パブリッシャー 開発元 インテンス 発売日 2020年12月17日 定価 Switch パッケージ版 4,800円(税抜)Switch DL版/Steam版 3,990円(税込) プレイ人数 1人 レーティング CERO C(15才以上対象) 判定 良作 ポイント 随所に手直しの入ったリマスター版ヒント機能追加で万人向けに 概要(リマスター版) オリジナルから約11年の時を経て、SwitchとPCに移植されたリマスター版。 公式は「移植」という表現も見られるが、全体に渡ってグラフィックのリファインが入っている上、ゲーム部分への細かい手直しも多数見られるため、リマスター版と表現するのが実態に近い。 メインとなる変更はグラフィックの全面的なリファインと、難解な謎解きの多かった探索パートにヒント機能が追加されたことである。 変更点・評価点(リマスター版) 難易度の緩和 難易度が高かった探索パートにヒント機能が追加されたことで、オリジナルの問題点だった「手詰まり感」が解消された。 ヒントは探索パート中いつでも見られる。必要なものには画像による説明も用意されている。 進んでいる部分以上のヒントは表示されないため、先のネタバレになってしまうということはない。 特に難易度の高いものには、回答そのものを表示する項目も用意されている。1ページ目は注意喚起のみで、実際の答えは2ページ目以降での掲載なので間違って選んでも安心。 小さなアイテムは数秒ごとに光るようになり、必要なアイテムが見つけ辛いという問題点も改善された。 また、「宿主」「覚醒」の2シナリオで謎解きの内容が変更されている。 いずれもヒントが少なすぎたことによる対応で、「宿主」は紙切れに書かれたヒントの内容が分かりやすいものに変更されており、「覚醒」は浮かび上がった文字列からノーヒントでワードを作る最後の部分が丸々カットされている。 グラフィックのリファイン 携帯機であるPSPからSwitchに移植されるに際して、画面サイズの変更に合わせイラストの解像度が上げられた。 キャラクターの塗りはアニメ調のものから、柔らかい雰囲気に塗りなおされている。 背景も水の流れなど、原作で一枚絵で動きの無かった部分にアニメーションが追加され、演出力がアップしている。 シナリオ選択画面や、謎解きパートのアイテム選択などのレイアウトも一新。 特に原作で殺風景だったシナリオ選択画面は、イラストや奥行き感が追加されよりスタイリッシュになった。 エンディングのイラストは若干構図が変わり、新規に描き直されている。 ギャラリーの追加 作中のイラスト、BGMの入ったギャラリーモードが追加された。 BGMは元々曲名が付いていなかったため、ギャラリーモードの追加に際して命名されている。 アルバムには作中に使われているものの他、販促イラストがおまけCGとして4枚用意されている。 販促イラストのため、水着や胸元の空いたカフェ制服などのあざといものが揃っており、本編のイラストとの温度差が中々のものである。 タッチ、マウス操作への対応 Switch版ではタッチパネル、Steam版ではマウスにより直感的な操作が可能となった。 スキップ関連の改善 オリジナルにはシナリオ名が同じでも内容が異なるとスキップできない現象があったが、同様の部分だけはスキップできるよう改善された。 クリア後にもセーブが可能になったことで、最終ステージでもスキップが可能になり、トゥルーエンドを読み返す際の手間が軽減された。 多言語対応 ボイスは日本語のみだが、字幕やUIは英語および中国語にも対応するようになった。 賛否両論点(リマスター版) 「おっぱいが3つある」とネタにされたイトカのシャワーシーンCGも描き直されているのだが、タオルを巻いたものに変更されてしまった。顔と手首以外湯煙で見えなくなるよりはマシか。 ネタとして広まった原因であるボディラインも修正されている(タオルの皺からの推測もあるが)。 問題点(リマスター版) 収録されているのは本編のみであり、スピンオフ2本(後述)は未収録。 当初収録する話も出たが、PC版をSteamで配信するにあたり、セクシャルな要素が多い都合上海外のレーティング的に断念したとのこと。 スキップ関連は改善されたが、スタッフロールを飛ばすことはできない。 ギャラリーのBGM鑑賞において、選曲後実際にその曲が流れるまでに時間差がある。表示はすぐに選んだ曲にマークが移動するので不自然。 総評(リマスター版) ヒント機能の追加で難易度が大きく緩和されたリマスター版。 あくまでも本編のみのリマスターでありスピンオフは未収録なものの、歯ごたえのある脱出アドベンチャーを最後まで楽しむ分には十分である。 余談 体験版・関連作など WEB限定の体験版が、本編の公式サイトで2つ、下記のイトカDLCの公式サイトで1つ公開されていた。 体験版は、画像こそ製品版の流用が大半となっているものの、謎解きは完全にオリジナルで、製品には存在しない構成の脱出ゲームをプレイ出来た。 Flashを使用していたため、2020年に起こったインターネットブラウザのFlash廃止対応に際して現在はプレイできなくなっている。上記リマスター版の発売に際して、公式ページもリマスター版のものに統合された。 PSNでは、ヒロイン単体をフィーチャーしたスピンオフ作品が配信されている。 現在発売されているのは下記の2本。 タイトル 発売日 密室のサクリファイス~イトカ ある閉鎖施設からの脱出~ 2010年10月21日 密室のサクリファイス~ミキ ハイテンションナイト~ 2011年4月21日 共にジャンルは脱出ゲームで、定価は600円。レーティングも本編同様CERO C(15歳以上対象)となっている。 「イトカ」は元は携帯アプリであり、PSP版はその移植となる。「ミキ」は最初からPSP用ソフトとして発売。 ストーリーは本編の前日談であり、ガチガチな本編と比べてコスチュームチェンジや乳揺れなど、ギャルゲー色を多く盛り込み前面に押し出した内容になっている。ストーリーもシリアス要素は無くはないが全体的にゆるいコミカル調で本編とのギャップが激しい。実質的な次回作『女の子と密室にいたら○○しちゃうかもしれない。』に近い雰囲気である。 そのため露骨なエロ要素が多く、本編とはまた違う方向で人を選ぶ事は否定できない。 しかし重苦しい本編では見られないキャラの一面が描かれているという魅力もあり、特にミキは鬱屈していた本編での姿とは打って変わって快活な本来の性格を存分に見る事が出来る(*1)。 謎解きの難易度も本編譲りであり、やり応えも詰まり具合も同様である。「本編と違うゆるい雰囲気だから難易度もゆるい」と嘗めて掛かると痛い目に遭う。 ちなみに、本編ではなかったイラストギャラリーだが、スピンオフでは搭載されている。 なお、先に「ミキ」を遊んでしまうと「イトカ」の展開のネタバレ(と言うよりオチの大ヒント)を喰らうため、発売順である 「イトカ」→「ミキ」の順でプレイすることを強く推奨 する。 他3人のスピンオフは存在しないので、そちらのファンにとっては残念な所。 『女の子と密室にいたら○○しちゃうかもしれない。』もヒロインのスピンオフは出たがやはり全員ではなかった。 リマスター版発売の際、ディレクターの福田尚己氏は続編と共に他3人のスピンオフの製作にも意欲を見せているため、今後出る可能性は無い訳ではない。 本作のヒロインの1人であるイトカは、PS3の『SIMPLE500シリーズ Vol.1 THE 麻雀』のDLCとして客演している。 同スタッフが製作した『女の子と密室にいたら○○しちゃうかもしれない。』には「伊都香・リザヴェータ・イヴァーノ」というキャラクターが登場しており、声優も同じである。しかし外見こそ似ているがキャラ的には全くの別物となっており、本作のイメージを持ってプレイすると驚くことだろう。 本作発売前の2009年12月にスパイクから「脱出ゲーム×サスペンス」という同様のコンセプトのニンテンドーDS用ソフト『極限脱出 9時間9人9の扉』が発売されている。 こちらもインテンスが脱出ゲームパートを製作しているのだが、脱出ゲーム向きのDS用ソフトであることや、『infinity』シリーズの打越鋼太郎氏がシナリオを担当し、サウンドノベルで有名なチュンソフトがストーリー部分を製作していることなどから、本作はその影に隠れてしまったところもある。 その他 ヒロインの1人であるミキの本編CGにスカートの下の大腿が大きく見えているものがあり、「はいてない」のではという疑惑がファンからネタにされた。 公式も認知していたらしく、スピンオフ作品『密室のサクリファイス~ミキ ハイテンションナイト~』は略称が「ハイテナイ (履いてない)」になっている。 移植版発表の際、PSP版は時間ギリギリで調整しきれなかった部分もあったと福田氏が公式Twitterで述べている。
https://w.atwiki.jp/tetimemo/pages/12.html
てちさんの覚書メモ。 MR(マジックリフォーム)メモ 昔はマジックルーレットだったらしい。 一度目のMRは現金だけ減って補正が変わらないバグ(?)があるらしい。 回避方法として、先に†幸せクローバーをMRしてから、MRしたいアイテムをMRするといいMR. アビで増えた値はMRしても増えたまま(補正幅+アビ値) 強化材で増えた値はMRすると消える(補正幅に収まる)(合成回数は変わらず) MRできない装備も多々ある。(tales wiki にMR不可と書かれてるので参照すること) ナルビクの子がいい子。 †幸せクローバーを装備したり、†調理帽子をかぶったり、座ったりするジンクスがあるっぽい。
https://w.atwiki.jp/5010/pages/277.html
BACK ギルティギア イグゼクス アクセントコア プラスR 第一回ロケテ報告 【ロケテはじまり】 筆者は1日目も2日目も行きました。 1日目は開店と同時に行きました!開店15分前にして30人近い人が。 私が1回だけ戦って、帰るときには……2階~4階(4階がロケ筺体のフロア)まで長蛇の列! 1プレイ3時間待ちくらいでは?(どのプレイヤーも技の調査をしているため一試合が長い) 建物外まで列が続いていた、前作アクセントコアのロケテほどの人は居ませんでした。 とはいえ、さすがの人入り。2×2台にこんなにもファンが群がるなんて、凄い光景であります。 http //www.famitsu.com/news/201206/03015662.html (ファミ通.comのレポートも混雑の様子を伝えています。) 2日目は、1日目の情報が出たせいか、残念ながら1日目の半分くらいの人数に減少。 3階踊り場~4階まで。それでも約30分待ち。 2日目はアンケート用紙が無かった… AC+Rの石渡絵ポスター(というか立看板)中に、 QRコードでアンケートサイトのURLを告知し、 WEBでの投票のみ受け付ける、という方式でした。 時代は変わったの。そのほうが管理も楽なんでしょうけど。 でもそのポスターの脇に「撮影禁止!」という張り紙もあるので、携帯を向け辛いですよ…… 2本先取に設定されているロケテといえばこの光景。 1戦目と2戦目、ひたすら研究に費やし、1Pと2Pがそれぞれ1ラウンド取る。 3戦目は普通に勝負。 今回も暗黙の了解というやつで、プレイヤーはほぼ上記の流れに従っていた。 ロケテは筺体のほうで5連勝するとゲームが強制終了するように設定されているため、 上級プレイヤーが勝ち続けようと5勝止まり。 なお強制終了時には、coming soonと書かれたメインイラストが表示されていた。 【概要】 ファーストロケテです。 基本的に画面構成は、前作であるアクセントコアから何も変わっていませんでした。 各種ゲージのデザイン一緒。 ステージ(背景)一緒。 公式サイトに載っている旧作ステージは選べず。 勝利画面一緒。 勝利メッセージ一緒。 キャラのカラーも一緒(EXカラーはまだ選べず)。 キャラセレクトの立絵も一緒。 ボイスも一緒。 開幕演出も一緒。 BGMも一緒。 通常技のグラフィックも変更報告がない。新規絵、皆無では……? これから変わっていく部分もあるでしょうが、 パッと見だけで「変わった!」と思わせる要素は…残念ながら特に無し。 強いて挙げればタイトル画面のロゴが変わった。 …そらそうよ。 体力ゲージ、MAXのときは緑色になりました。 1ダメージでも受けると前作と同じ黄色に。 これによりパーフェクト勝利だったときは、緑色かどうかで手軽に判断できますね。 むしろ、今までそうでは無かったことに驚かされたり。 確か、ゼクスの頃はMAXのとき色違ってませんでしたか?あとで確認しよ。 自キャラの気絶(ピヨり)が近づくと、顔アイコンが赤く点滅してそれを教えてくれるように。 とはいえ、やられ側としては既にどうしようもない状況である可能性もあり、 ぶっちゃけこれは攻めてる側が有効に使えそうな変更点ですね。 特に、聖ソルやポチョムキンの6HS当てているとき把握に便利そう。 【新システムは?】 筺体にシステムの紹介がびっしりありました! フォルトレスディフェンス 投げ&投げ抜け ロマンキャンセル ダストアタック デッドアングルアタック サイクバースト スラッシュバック ああ、あぁ、一緒だな…… スラッシュ→アクセントコアのときは、 フォースブレイクにスラッシュバックに投げ抜けと、 色々入ったものだったのですが。 ちなみにガードレベルゲージの説明まであって、これがかつてない詳しさで 徹底解説されていて、新規さんを意識している気迫は伝わりましたよ。 とはいえ中級者以上対象、ってとこでしょうね。一般の方には暗号レベルの説明の数々です。 大改変の【スラッシュバック】 上記おなじみのシステムの中で、驚きの性能変化を遂げたのがこれ。 消費量アップ(1回使用につき、テンションゲージ4%消費) 有効時間アップ(恐らく3F) 失敗時でもガード不能にならない 1回使う毎にガードレベルゲージ上昇(6回連続で使うと早速ガードレベルゲージが点滅) 成功時、スラッシュバックしたプレイヤーに若干のヒットストップあり 起き上がり直後に出せない点は前作同様。 Sボタンを押しながらHSボタンを押すだけで出せる点も同じ。 失敗時でもガード不能にならない点が非常に大きく、 相手のガトリング中であろうと遠慮なく狙っていけるのが利点。 なお筺体の説明文にも、「使用するとガードレベルゲージが上昇します」との記述が。 スラッシュバックの仕様については、本稼働時に上記すべてが採用になるかは わかりませんけど、いずれにせよかなりの変更が入ると思っていて良さそうですね。 成功時の効果は前作よりやや抑えられていますが… 良くも悪くもゲームバランスをひっくり返す、重大な変更要素でしょう。 【キャラ変化はどうだったのか】 新規絵が無いせいで、どうにも変わり映えが地味。 ヒット効果が変わった技がぽつぽつと。 新技扱いのものも、既存技のフォースブレイク版(ゲージ25%消費)が多数。 もちろん、これまでのコンボができなかったり新コンボが作れたりと、 実際プレイする分には、色々と変化に気を配る必要があるわけですが…… 「全技の性能が激変!」なんてことはなく、 むしろ変わっていない部分のほうが多い印象です。 急きょ調整が入ることになってスタッフもてんやわんや、というのは邪推でしょうか。 本作の初報PVなんて、タイトルも仮で、内容が家庭用AC+のままでしたしね… とはいえまだ1回目のロケテなので、更に変更点が増えていくことに期待したいです。 【新キャラ(という名のお馴染みキャラ)はどうだったのか】 家庭用の常連隠しキャラ2名がとうとう参戦。 …石渡ポスター絵にはこの2名を描くべきだろ常考。 ジャスティス まさかの、地上ダッシュと空中ダッシュの削除!!! 通常技は総じて強いままなので、何だか飛び道具主体のポチョムキンのようなキャラに。 全キャラ中、ベースキャラから一番変わっているのは間違いありません。 何だかジャスティスを否定しているようなキャラですが、これはこれで面白そうです。 クリフ 1日目と2日目で、クリフを計3回遊んできました。 (聖ソルは…遊んでないんだ……) 地上ダッシュが、一定距離を鈍足で、ちょっと進むだけのステップ方式に。 空中をホバーで移動する。見た目だけならゼクスプラスのダッシュですね。 距離が中途半端な上に、遅いのがネック。使い所が難しそう・・・ 挑発のバカモン!は健在。しっかり攻撃判定もあり。ロケテ時、開幕の挑発連打で テンションを上げる際の迷惑になる。何かごめんなさい。 地上技は、家庭版とほぼ同じ印象。とはいえ6Pなどは弱くなってるっぽい。 6HSは出すとやっぱりクリフが疲れる。 JP 聖ソルばりに猛連打可能。はやいはやい! JK JPほどではないが、こちらも連打可能。 JS ハイジャンプからだと、着地するまで2回出せる。 JHS ハイジャンプからだと、着地するまで2回出せる。 JD 急降下攻撃。着地時の隙がやや気になる。 空中頭蓋砕 出すと着地まで何も技が出せない! 低空出し推奨。発生は地上版よりずっと早い。 四肢落とし ポチョのJDの強化版のような技。着地時の衝撃波にも攻撃判定あり。 空中咆哮返し アクセントコアプラスから登場のフォースブレイク技。空中で後方ジャンプしつつファイア。 家庭版と性能は同じ印象。ヒット時は吹き飛び&壁張り付き効果だけど追撃できるケースは限られる。 地上戦が弱いキャラなので空中戦を・・・と思いたいけど バカでかい攻撃判定をもつJSとJHSはさほど回転率が高くないので 空中にばかりは居られない。 首跨ぎの攻撃判定が減った代わりに、移動距離もスピードもアップしてるので、 首跨ぎで逃げつつ、たまに振りのでかい技を出してけん制、当たったら攻めに転じる。 攻撃力自体は鬼強!防御力はチップ並! あと、その場で身をそらせて無敵になる「先の先」は、 8回連続で出してもぎっくりが発生しないこともあって、わりと強気で使えます。 ファウスト先生のハンマーを引きつければ完全に避けられたので全身無敵でしょう。強いね。 まあ敵が目の前に居る時にぎっくり出たら死ねますが……。 ちなみに「先の先」からは、Pで地獄突っ込み、DでFB地獄突っ込みが出せます。 ■頭蓋砕 ぐるぐる回転しながら突っ込んでいく多段ヒットの突進技。 発生が12Fくらいで出が少々遅くなった印象。 ガードされると相手にめり込むため、距離次第で反撃を受ける。 …というか、スラッシュバックのせいで離れてても反撃を受けかねない。 空中版といい、連続技専用にしたほうがいいかも。 ■FB地獄突っ込み 当たると即ピヨり!! 対戦相手のジャムに決めたところ、素の状態から通常のヒットでピヨりでした。 ピヨり後、もう一度決めたらまたピヨり! (ロケテってことでわざと当たって頂きました。多謝) 3回目決めたら、あれ…ピヨり直前止まり。 非常に気絶値が高い技っぽいけど、ランダム性が多少あるのか。 それとも気絶に何か補正ありますの? ちなみに、外したときに限り、クリフのほうに6HSの疲れモーションが出て死ねる!! という、絶対に外せない技でもあります。 リーチは通常の地獄突っ込みと変わりません。 ■ソウルサヴァイヴァー 溜められるんだけど、溜め中に潰されたので詳細わからず。 素出しの性能はこれまで通りな印象。そもそも当たらなかったけど! <総評> 家庭版のときより、首跨ぎでの「逃げ」と先の先からの「カウンター」に 主眼がおかれ、スラッシュバックの変更も手伝いガン攻めできる印象はありません。 さらにヒット時に相手を吹き飛ばす技が増えているのですが、 ダッシュでそれを追うのは困難なため、コンボは色々と工夫の必要がありそう。 以上のことから、トリッキーなキャラを好むプレイヤーにおすすめできそうです。 一番の問題点は、「全キャラ一小柄なおじいちゃん」という見た目かもしれません… その昔、GGX公式サイトのキャラ人気投票で、毎月(一か月ごとリセットされる)最下位争いをしていた 御仁なので、人気はあまり……若クリフのほうは超かっこいいのにねえ。 いや、老いと若きが同居しているのが個性ですから。俺は好きですよクリフ! 稼働後には新たな持ちキャラにしてみせるよ。 ジャスティスはさておき、 クリフのほうは、家庭版アクセントコア+でそれなりに練習しておけそうですよ。 BACK
https://w.atwiki.jp/wiki7_vipac/pages/314.html
右赤腕URUGUと左青腕CHAOS これは通称であり、畏怖と共に名付けられたものである。 機体の一部の特殊なカラーリングを元に名付けられたこの二機のAC。 一時期巷を賑わしていた二人組のレイヴン。 にもかかわらず、この二機を操るレイヴンについて知られている事はあまりに少ない。 通称と機体名だけが有名になり、レイヴン名は知れ渡っていないのだ。 神出鬼没のこの二機は目的も不明。ただただ圧倒的な力を示す。 ある時はレイヴンの手助けをし、またある時はレイヴンをその手にかける。 行動理念がまったくもって理解出来ない。目的など解りうるはずもない。 それが民衆の、レイヴンの目に映った彼らの姿である。 そしてその二人こそ、他でもないクレリス・ワス・カリムとルークだった。 目的はただ一つだった。レイヴンでありながら、平和を望んでいた。 しかし、自惚れであったのかもしれない。 世界に害為す危険な意思を持つレイヴンを排除し、自分達と少なからず同じ意思を持つレイヴンを助ける。 より良いレイヴンのみ選定し、世界を善き方向へと導いて行く。 それだけの力を、二人は持っていた。それが出来ると、信じていた。 でもやはり、自惚れであったのかもしれない。 天罰を下す神が如きその高慢な意思で、他者を善悪二つに大別する。 或いはそれこそが二人に降りた、天罰だったのかもしれない。 クレリスは敗れた。一人のレイヴンに。実力からすれば決して負ける筈のない相手に。 彼女は自分の奢りを少なからず感じていた。その所為かもしれない。 自分達が善い、と判断したレイヴンを助けた。協力をした、勝手にその意思も伝えずに。 その助けられたレイヴンがとった行動は、助けた彼女を襲うというもの。 既に二人に助けられたレイヴン、そしてやられたレイヴンは多い。 助けたと思わせておいて自分を殺すつもりではないのか、レイヴンはそう考えたのだ。 彼らは自分達の意志を明かしていなかった。疑われるのも仕方が無い。 なにより、こんな意思をあかせようものだろうか。 それこそ狂っている。といわれても可笑しくない。そんな気持ちが二人にはあったからだ。 かくして彼女は重傷を負い、それでも逃げた。しかし傷は、深かった。 ルークは負傷した彼女を、特殊な装置に隠しその回復を待った。 その期間、約一年。その一年の間に、彼女の知らない間に、何があったのか。 ルークとクレリスは普通のレイヴンだった。 そう、表面上はレイヴン・ルークとレイヴン・カリムという普通のレイヴンなのだ。 なんてことない普通の機体を操り、普通の依頼をこなす本当に、平凡な、ただのレイヴン。 要は、普通のレイヴンを偽装していた。彼らは裏でその意思の元それぞれの本当の愛機を駆っていた。 目的は遂行されずに、クレリスの負傷という事態によって断念される。 この時を境に、右赤腕URUGUと左青腕CHAOSは活動を停止した。 だが、この二人に疑いがかけられる事は無かった。彼らの偽装は完璧そのものだった。その現れである。 レイヴン・カリムは任務中に死亡という形で処理し、レイヴン・ルークは何喰わぬ顔で活動を続けた。 ルークは彼女を…本来なら死んでいてもおかしくないその身体を回復させる為、装置へ預けた。 それから一年の月日が経った。 回復したクレリスはアリアという女性に身を預ける事になった。本来ならルークの役目である。 そしてそのルークが、変わり果てていた。一年の間に、まったくもって変わり果てていた。 レイヴン・ルークが存在していなかったのである。今や彼は、レイヴンとして活動していない。 何があったのか、それはレイヴンとしての地位が邪魔であり。必要なくなったと言う事。 彼が行っているのは、やはり平和を望む為のもの。 以前の彼らとはまったく違う方法で、彼はクレリスにその方法を提示した。 クレリスは、それを拒否した。彼女の望む、平和とはほど遠い行為であった。認める事は、出来なかった。 その彼女の、クレリスの愛機・右赤腕URUGUは静かに主人の帰りを待っている。 平和の意思を、決して最善とは言えない、それでも一途なその意思を込められた『兵器』 一人の男が、かかさず整備を一年間続けて来た。いつでもクレリスの意思、その想いのままに、動ける。 朝目覚めると、すぐ側で寝息をたてていた筈の少女が居ない。 部屋を探しても、居ない。ホテルのロビーへ、売店へ、何処へ行っても少女は居ない。 プリマは泣きそうな顔を更に憂いと悲しみに満たせ、それでも泣かなかった。 「…馬鹿な子じゃないし、その内戻ってくる筈…うん、そう…大丈夫。貴方の所為なんかじゃないわ」 携帯電話片手に、椅子に腰掛けるアリア。 出社して直ぐ、こんな連絡をプリマから受け取った。クレリスの姿が無い。 「ほらほら、貴方にも立派な仕事があるんだから。シャキッとしなさい!」 或いは彼女よりも、自分の方が落ち込んでいるのかもしれない。 自分と彼女、両方に向けて厳しく言い放ったアリア。 「それと、また変な仕事しないでよね。私貴方を捕まえるのは嫌よ?」 プリマが電話の向こう側で、小さく唸った。 「はいはい、解った解った。そう、心配しないで。…ああ、もう…切るよ!」 乱暴に携帯を閉じ、そしてしまう。 その一連のやりとりを目の前でみていたレイヴン・ローレンは苦笑した。 「厄介ごとを抱えてるみたいだな、相談になら乗るよ。話を聞くのは得意なんでね」 相変わらず淡い光を点す緑色の目を、アリアは見据えて言った。 「お言葉に…甘えようかしら」 古く寂れた、形だけを残す大きな建物。 どこぞの誰かが戯れに作ったのか、以前はしっかり動いていたのか定かではない。 ただただ古く、ところどころ崩れ落ちてそれでも原型を保っているAC規格で作られた建物。 その高くそびえる壁を見上げて、クレリスは思わず苦笑した。 中に居る人物と、もう一つ、中にあるであろうものを胸中に抱いた。 これまた古く、錆びたドアゆっくりあける。不快な音を立てて、ゆっくりと。 開けた大きな空間。薄暗く、淡い小さな光でうすぼんやりと全景が見える。 外見からは想像もつかない、手入れの行き届いた真新しい…ガレージ。 その中心にそびえ立つ一機のAC。右腕の一部だけが、赤い。 「久しぶりでぇ、カリム…?」 どこからか、声がした。陽気なべらんめぇ口調の男のものだった。 しかし声は疑問のものである。クレリスは気にしない。声の方向から、1人の男が現れた。 久しい顔。無精髭を生やした、いかにもエンジニアな男。格好もエンジニアのそれである。 「これ…貴方一人で管理していたの?」 目の前に広がる立派なACガレージを見やり、クレリスは問う。 疑問を胸中に抱えながらも、男は答えた自信たっぷりに。胸を張って。 「おうよ、俺を誰だと思ってやがる。天才クリフ様だぞ!」 気が向いたら、クリフを訪ねろ。先日のルークの言葉だ。 クレリスは気が変わって等居ない。ただ決心を、硬い意思を定めただけだ。 ルークを、止める。 (自称)天才クリフは我が子のように目の前のACを嬉々として解説した。 「構成はかえちゃいねぇ、まんまだ。お前の愛機、右赤腕URUGUでぇ」 かつての愛機、本当の愛機を見上げその手入れの行き届き加減に満足げに笑みを浮かべるクレリス。 本当に…変わってないな、とクレリスは感動を覚えた。 「右手にバズーカ、左手にゃあカラサワ。詳しい説明は不要だな、まったく怖いくらい良い機体だ」 クリフに愛機を褒められた、がこれは彼女に笑みを運ばなかった。 正確に、56回目の彼の「良い機体」という感想だったからだ。 先端のとがったコアから伸びるいかつい両足。細腕に握られた高火力の武装。 全体的に黒いカラーリング、右腕の一部だけが僅かに赤い。右赤腕たる通称の証だ。 機械と、オイルの混じった風の匂いが懐かしく思えた。 「さて、とこれから俺は仕事があるんだぁな」 クリフが気楽に言い放った。 「仕事…?」 「おうよ、俺様の天才的技術力が欲しいっていう会社があるんだ…名前は忘れたが」 自分の興味の働かない部分を記憶しない、そんな性格に変わりはなかった。 「人工衛星って奴だ、それに俺様の技術を利用したい、って奴が居てな?」 そんなニュースをどこかで聞いたな、程度の感想しかクレリスには無い。 まさかそれに知人が関わっている等と予想はしていなかったが、それもまた、特に関係無い。 「それより、ルークから何か無い?」 彼女は彼の自慢話を遮る意味も込めて、核心を突いた。 機体を用意させていたのだ、ルークが何も用意していないはずはない。 「…エリア48に向かえ。そこで話を聞くらしい」 クリフがなんとも気の抜けた声を出した、しかし何処か真剣味がある。 それと、とクリフは続ける。 「悪いが、俺にはもう立派な仕事がある。それだけ俺は認められた。お前達が居なくても…もう困らない」 彼は全てを知っている。クレリスは言葉からそれを感じ取った。 ルークの事も、自分の事も知っているのだろう。だが、聞いた所で答えはしないだろう。 今の言葉は、そういう意味も込められている。 お互いが潰し合う事になっても、もうクリフは困らない。流れに身を任せようというのだ。 「そう、ありがとう。あとは…何か無い?」 顎に手をやって、暫く思案するクリフ。そしてすぐにおっ、と声を出す。何かを思い出したらしい。 「オペレーターを雇った。大丈夫だ、なんか変な姉ちゃんだったから情報が漏れる心配はねぇ」 「変な人にオペレーターを頼んだの…?」 「仕方がねぇだろ?普通の奴なんて雇えねぇじゃねぇか。だってお前、今レイヴンじゃないだろ?」 「確かに、そうだけど…で、どんな人なの?」 「とにかく…まぁ色々と凄い姉ちゃんだったぜ。なんせ格好がすげぇ!」 クリフの最後の言葉に嫌なものを感じ、それでもAC輸送機へと足を運ぶ。 彼女の愛機URUGUは既に輸送機の中。そして一緒にオペレーターと、操縦士。 輸送機の中へ入るのを暫く躊躇い、しかし拉致が空かないので、やはり入った。 嫌な予感はバッチリ当たった。嬉しさなんて微塵も無い。思わず崩れ落ちそうになった。 「…クレリスちゃん!?」 変な姉ちゃん、格好のすげぇ姉ちゃん、部屋にレイヴン関連の情報が入った端末を持つ姉ちゃん。 (だから…レイヴン関連の…オペレーター…確かに…あの格好は…声には関係無い…か) 一般のオペレーターの服装に身を包み、やはり泣きそうな顔のプリマが、そこに居た。 「どうして突然出て行ったりしたの?」 少々的外れな事を聞くプリマ。まずは彼女がここにいる事を問うべきだろう。 「見ての通り、私はレイヴンだから」 開き直ったクレリスは、最早動じない。 プリマの方が、彼女の開き直りっぷりに動じていた。 「…そう…それで、貴方は何をしようと…」 「私の名前はクレリス・ワス・カリム。機体は…見てないみたいだから言うけど、名前はURUGU」 プリマは驚いた。オペレーターであるからレイヴンに詳しいのは当然。 レイヴン・カリムの事は知らずとも、右赤腕URUGUの事は良く知っている。 「クレリスちゃんが…?そんな…嘘—」 「—そんな冗談言うわけないでしょ。」 プリマの言葉を、クレリスは同じ言葉で遮った。 プリマは全てを諦め、それでも一つ彼女が断れないように最大の気力を持って提案した。 「知ってる事を話して。私は貴方のオペレーターです」 泣きそうな顔はどこへやら、意思の強さを表した少し怖い顔だった。 クレリスは事のいきさつを話した。 自分がレイヴンとして活動していた事、もう一つ右赤腕としての活動もしていた事。 そして一連の事件の犯人であるルークを、自ら追う決心をしたこと。 今から向かうのはその彼が指定した場所であるということも、全部。 プリマはレイヴン・カリムについて詳しく知らなかった。姿も声も、知らない。 だが、こんな少女が、あの伝説のACを駆るレイヴンだったとは驚きも一層である。 「なんで1人で追うなんて事…」 「説得で済めばそれにこした事は無いし、それに、今みたいな説明を延々してる時間がまず惜しい」 民間のそれに協力した所で、ルークを簡単に捕まえられる保証は無い。 事実彼らは犯人であるルークの事をまったくもって知らない。 それを教えた所で、結局の所名前くらいしか解らないのもまた事実。 「とりあえずは指定された場所に行くだけ。オペレート、お願いね」 それだけ言うと、彼女は席を立ち愛機の元へと進んで行った。 「…」 プリマは無言のまま彼女を見送った。 「到着、ACを投下する。一定距離を保ち、そこからオペレートを開始します」 プリマの声が、通信機から聞こえて来た。短く、了解とだけ返す。 右赤腕URUGUはけたたましい音と砂塵を巻き上げ、着地した。 「早速だけど、熱源反応あり。近づいてきます…ACでしょう」 プリマが切り替えの早い人で良かった、と安心するクレリス。しかしすぐに、迫るACに集中する。 レーダーを確認、しかしすぐにそれは肉眼で確認出来た。 どうやらオーバードブースト(OB)でこちらへやってくるらしい。 もの凄い速度で迫るAC、左青腕CHAOS…ではない。ルークでは、ない。 「あ…!あの機体は…狩人の…」 クレリスには見覚えが無いが、プリマには解ったようだ。 彼女の回復中、その一年間で現れたか、名を上げたレイヴンなのだろう。 (狩人…か、成る程。そういう名前があれば、レイヴン殺しも納得) それはレイヴンがレイヴンを殺すと言う稀に起こる状態、それを行うレイヴンに付けられた名だろう。 それを偽装してルークはこの狩人を仲間に引き入れ、レイヴン殺しを遂行していた。 「あんたが、右赤腕URUGU…というか、ルークの言う、カリムね?」 狩人と呼ばれたレイヴンは、意外にも女性だった。 「そう、でも私は貴方を知らないんだけど」 挑発的な口調で狩人に言葉を告げるクレリス。狩人は動じない。 「狩人フェイ。この子はアンフェスバエナ」 なんとも律儀に自己紹介までしてみせ、機体名までも教えてくれた狩人と呼ばれる女性。 (まずは脚…COUGAR2に…両手NIXか、肩に…強化人間か、リニアガンとは厄介な…) 目の前にそびえ立つ紫色の二脚ACの武装を分析するクレリス。交戦した場合の準備だ。 しかし、またも律儀に狩人フェイは説明を開始した。 「私はあんたの意思を聞くように言われただけ…勿論答えによっては…」 あんたを殺す。という言葉を言わないだけで、クレリスにもプリマにも理解できた。 「彼女は、すんごく強いらしいです。武装は見てわかるよね、戦闘じゃ私は何も出来ないから」 プリマがしおらしくクレリスに伝えた。 苦笑して、彼女は答える。 「大丈夫、そこまで望んでない」 「さて、と。伝言をそのまま伝えるとしますか。ルークからの言葉は一言だけ」 ルークというその言葉を聞くだけで、クレリスは静かな怒りが込み上がるのを感じた。 彼女に対する嫉妬だろうか、彼に対する純粋な怒りなのだろうか。 そんなクレリスを置いて、フェイはゆっくりと確かに聞く。 「答えは?」 短い、それだけだった。ルークらしい、ともクレリスは感じ取った。 でも、もう答えは決まってる。わざわざ指し示すのさえ面倒だ。 だから彼女は、ゆっくりと右手のバズーカの銃口を、フェイに向けた。 「…嬉しいね、実はあんたとは戦ってみたかったんだよ!」 両手のマシンガンを構え、ブースターが点火する。 狩人フェイのアンフェスバエナと右赤腕URUGUのレイヴン・カリムの開戦の合図だった。 クレリスは勿論、フェイもまた負ける気はなかった。 そして彼女は、また遠く離れた場所で一つの戦いが同時に始まった事も、当然知らない。
https://w.atwiki.jp/wiki9_vipac/pages/311.html
右赤腕URUGUと左青腕CHAOS これは通称であり、畏怖と共に名付けられたものである。 機体の一部の特殊なカラーリングを元に名付けられたこの二機のAC。 一時期巷を賑わしていた二人組のレイヴン。 にもかかわらず、この二機を操るレイヴンについて知られている事はあまりに少ない。 通称と機体名だけが有名になり、レイヴン名は知れ渡っていないのだ。 神出鬼没のこの二機は目的も不明。ただただ圧倒的な力を示す。 ある時はレイヴンの手助けをし、またある時はレイヴンをその手にかける。 行動理念がまったくもって理解出来ない。目的など解りうるはずもない。 それが民衆の、レイヴンの目に映った彼らの姿である。 そしてその二人こそ、他でもないクレリス・ワス・カリムとルークだった。 目的はただ一つだった。レイヴンでありながら、平和を望んでいた。 しかし、自惚れであったのかもしれない。 世界に害為す危険な意思を持つレイヴンを排除し、自分達と少なからず同じ意思を持つレイヴンを助ける。 より良いレイヴンのみ選定し、世界を善き方向へと導いて行く。 それだけの力を、二人は持っていた。それが出来ると、信じていた。 でもやはり、自惚れであったのかもしれない。 天罰を下す神が如きその高慢な意思で、他者を善悪二つに大別する。 或いはそれこそが二人に降りた、天罰だったのかもしれない。 クレリスは敗れた。一人のレイヴンに。実力からすれば決して負ける筈のない相手に。 彼女は自分の奢りを少なからず感じていた。その所為かもしれない。 自分達が善い、と判断したレイヴンを助けた。協力をした、勝手にその意思も伝えずに。 その助けられたレイヴンがとった行動は、助けた彼女を襲うというもの。 既に二人に助けられたレイヴン、そしてやられたレイヴンは多い。 助けたと思わせておいて自分を殺すつもりではないのか、レイヴンはそう考えたのだ。 彼らは自分達の意志を明かしていなかった。疑われるのも仕方が無い。 なにより、こんな意思をあかせようものだろうか。 それこそ狂っている。といわれても可笑しくない。そんな気持ちが二人にはあったからだ。 かくして彼女は重傷を負い、それでも逃げた。しかし傷は、深かった。 ルークは負傷した彼女を、特殊な装置に隠しその回復を待った。 その期間、約一年。その一年の間に、彼女の知らない間に、何があったのか。 ルークとクレリスは普通のレイヴンだった。 そう、表面上はレイヴン・ルークとレイヴン・カリムという普通のレイヴンなのだ。 なんてことない普通の機体を操り、普通の依頼をこなす本当に、平凡な、ただのレイヴン。 要は、普通のレイヴンを偽装していた。彼らは裏でその意思の元それぞれの本当の愛機を駆っていた。 目的は遂行されずに、クレリスの負傷という事態によって断念される。 この時を境に、右赤腕URUGUと左青腕CHAOSは活動を停止した。 だが、この二人に疑いがかけられる事は無かった。彼らの偽装は完璧そのものだった。その現れである。 レイヴン・カリムは任務中に死亡という形で処理し、レイヴン・ルークは何喰わぬ顔で活動を続けた。 ルークは彼女を…本来なら死んでいてもおかしくないその身体を回復させる為、装置へ預けた。 それから一年の月日が経った。 回復したクレリスはアリアという女性に身を預ける事になった。本来ならルークの役目である。 そしてそのルークが、変わり果てていた。一年の間に、まったくもって変わり果てていた。 レイヴン・ルークが存在していなかったのである。今や彼は、レイヴンとして活動していない。 何があったのか、それはレイヴンとしての地位が邪魔であり。必要なくなったと言う事。 彼が行っているのは、やはり平和を望む為のもの。 以前の彼らとはまったく違う方法で、彼はクレリスにその方法を提示した。 クレリスは、それを拒否した。彼女の望む、平和とはほど遠い行為であった。認める事は、出来なかった。 その彼女の、クレリスの愛機・右赤腕URUGUは静かに主人の帰りを待っている。 平和の意思を、決して最善とは言えない、それでも一途なその意思を込められた『兵器』 一人の男が、かかさず整備を一年間続けて来た。いつでもクレリスの意思、その想いのままに、動ける。 朝目覚めると、すぐ側で寝息をたてていた筈の少女が居ない。 部屋を探しても、居ない。ホテルのロビーへ、売店へ、何処へ行っても少女は居ない。 プリマは泣きそうな顔を更に憂いと悲しみに満たせ、それでも泣かなかった。 「…馬鹿な子じゃないし、その内戻ってくる筈…うん、そう…大丈夫。貴方の所為なんかじゃないわ」 携帯電話片手に、椅子に腰掛けるアリア。 出社して直ぐ、こんな連絡をプリマから受け取った。クレリスの姿が無い。 「ほらほら、貴方にも立派な仕事があるんだから。シャキッとしなさい!」 或いは彼女よりも、自分の方が落ち込んでいるのかもしれない。 自分と彼女、両方に向けて厳しく言い放ったアリア。 「それと、また変な仕事しないでよね。私貴方を捕まえるのは嫌よ?」 プリマが電話の向こう側で、小さく唸った。 「はいはい、解った解った。そう、心配しないで。…ああ、もう…切るよ!」 乱暴に携帯を閉じ、そしてしまう。 その一連のやりとりを目の前でみていたレイヴン・ローレンは苦笑した。 「厄介ごとを抱えてるみたいだな、相談になら乗るよ。話を聞くのは得意なんでね」 相変わらず淡い光を点す緑色の目を、アリアは見据えて言った。 「お言葉に…甘えようかしら」 古く寂れた、形だけを残す大きな建物。 どこぞの誰かが戯れに作ったのか、以前はしっかり動いていたのか定かではない。 ただただ古く、ところどころ崩れ落ちてそれでも原型を保っているAC規格で作られた建物。 その高くそびえる壁を見上げて、クレリスは思わず苦笑した。 中に居る人物と、もう一つ、中にあるであろうものを胸中に抱いた。 これまた古く、錆びたドアゆっくりあける。不快な音を立てて、ゆっくりと。 開けた大きな空間。薄暗く、淡い小さな光でうすぼんやりと全景が見える。 外見からは想像もつかない、手入れの行き届いた真新しい…ガレージ。 その中心にそびえ立つ一機のAC。右腕の一部だけが、赤い。 「久しぶりでぇ、カリム…?」 どこからか、声がした。陽気なべらんめぇ口調の男のものだった。 しかし声は疑問のものである。クレリスは気にしない。声の方向から、1人の男が現れた。 久しい顔。無精髭を生やした、いかにもエンジニアな男。格好もエンジニアのそれである。 「これ…貴方一人で管理していたの?」 目の前に広がる立派なACガレージを見やり、クレリスは問う。 疑問を胸中に抱えながらも、男は答えた自信たっぷりに。胸を張って。 「おうよ、俺を誰だと思ってやがる。天才クリフ様だぞ!」 気が向いたら、クリフを訪ねろ。先日のルークの言葉だ。 クレリスは気が変わって等居ない。ただ決心を、硬い意思を定めただけだ。 ルークを、止める。 (自称)天才クリフは我が子のように目の前のACを嬉々として解説した。 「構成はかえちゃいねぇ、まんまだ。お前の愛機、右赤腕URUGUでぇ」 かつての愛機、本当の愛機を見上げその手入れの行き届き加減に満足げに笑みを浮かべるクレリス。 本当に…変わってないな、とクレリスは感動を覚えた。 「右手にバズーカ、左手にゃあカラサワ。詳しい説明は不要だな、まったく怖いくらい良い機体だ」 クリフに愛機を褒められた、がこれは彼女に笑みを運ばなかった。 正確に、56回目の彼の「良い機体」という感想だったからだ。 先端のとがったコアから伸びるいかつい両足。細腕に握られた高火力の武装。 全体的に黒いカラーリング、右腕の一部だけが僅かに赤い。右赤腕たる通称の証だ。 機械と、オイルの混じった風の匂いが懐かしく思えた。 「さて、とこれから俺は仕事があるんだぁな」 クリフが気楽に言い放った。 「仕事…?」 「おうよ、俺様の天才的技術力が欲しいっていう会社があるんだ…名前は忘れたが」 自分の興味の働かない部分を記憶しない、そんな性格に変わりはなかった。 「人工衛星って奴だ、それに俺様の技術を利用したい、って奴が居てな?」 そんなニュースをどこかで聞いたな、程度の感想しかクレリスには無い。 まさかそれに知人が関わっている等と予想はしていなかったが、それもまた、特に関係無い。 「それより、ルークから何か無い?」 彼女は彼の自慢話を遮る意味も込めて、核心を突いた。 機体を用意させていたのだ、ルークが何も用意していないはずはない。 「…エリア48に向かえ。そこで話を聞くらしい」 クリフがなんとも気の抜けた声を出した、しかし何処か真剣味がある。 それと、とクリフは続ける。 「悪いが、俺にはもう立派な仕事がある。それだけ俺は認められた。お前達が居なくても…もう困らない」 彼は全てを知っている。クレリスは言葉からそれを感じ取った。 ルークの事も、自分の事も知っているのだろう。だが、聞いた所で答えはしないだろう。 今の言葉は、そういう意味も込められている。 お互いが潰し合う事になっても、もうクリフは困らない。流れに身を任せようというのだ。 「そう、ありがとう。あとは…何か無い?」 顎に手をやって、暫く思案するクリフ。そしてすぐにおっ、と声を出す。何かを思い出したらしい。 「オペレーターを雇った。大丈夫だ、なんか変な姉ちゃんだったから情報が漏れる心配はねぇ」 「変な人にオペレーターを頼んだの…?」 「仕方がねぇだろ?普通の奴なんて雇えねぇじゃねぇか。だってお前、今レイヴンじゃないだろ?」 「確かに、そうだけど…で、どんな人なの?」 「とにかく…まぁ色々と凄い姉ちゃんだったぜ。なんせ格好がすげぇ!」 クリフの最後の言葉に嫌なものを感じ、それでもAC輸送機へと足を運ぶ。 彼女の愛機URUGUは既に輸送機の中。そして一緒にオペレーターと、操縦士。 輸送機の中へ入るのを暫く躊躇い、しかし拉致が空かないので、やはり入った。 嫌な予感はバッチリ当たった。嬉しさなんて微塵も無い。思わず崩れ落ちそうになった。 「…クレリスちゃん!?」 変な姉ちゃん、格好のすげぇ姉ちゃん、部屋にレイヴン関連の情報が入った端末を持つ姉ちゃん。 (だから…レイヴン関連の…オペレーター…確かに…あの格好は…声には関係無い…か) 一般のオペレーターの服装に身を包み、やはり泣きそうな顔のプリマが、そこに居た。 「どうして突然出て行ったりしたの?」 少々的外れな事を聞くプリマ。まずは彼女がここにいる事を問うべきだろう。 「見ての通り、私はレイヴンだから」 開き直ったクレリスは、最早動じない。 プリマの方が、彼女の開き直りっぷりに動じていた。 「…そう…それで、貴方は何をしようと…」 「私の名前はクレリス・ワス・カリム。機体は…見てないみたいだから言うけど、名前はURUGU」 プリマは驚いた。オペレーターであるからレイヴンに詳しいのは当然。 レイヴン・カリムの事は知らずとも、右赤腕URUGUの事は良く知っている。 「クレリスちゃんが…?そんな…嘘—」 「—そんな冗談言うわけないでしょ。」 プリマの言葉を、クレリスは同じ言葉で遮った。 プリマは全てを諦め、それでも一つ彼女が断れないように最大の気力を持って提案した。 「知ってる事を話して。私は貴方のオペレーターです」 泣きそうな顔はどこへやら、意思の強さを表した少し怖い顔だった。 クレリスは事のいきさつを話した。 自分がレイヴンとして活動していた事、もう一つ右赤腕としての活動もしていた事。 そして一連の事件の犯人であるルークを、自ら追う決心をしたこと。 今から向かうのはその彼が指定した場所であるということも、全部。 プリマはレイヴン・カリムについて詳しく知らなかった。姿も声も、知らない。 だが、こんな少女が、あの伝説のACを駆るレイヴンだったとは驚きも一層である。 「なんで1人で追うなんて事…」 「説得で済めばそれにこした事は無いし、それに、今みたいな説明を延々してる時間がまず惜しい」 民間のそれに協力した所で、ルークを簡単に捕まえられる保証は無い。 事実彼らは犯人であるルークの事をまったくもって知らない。 それを教えた所で、結局の所名前くらいしか解らないのもまた事実。 「とりあえずは指定された場所に行くだけ。オペレート、お願いね」 それだけ言うと、彼女は席を立ち愛機の元へと進んで行った。 「…」 プリマは無言のまま彼女を見送った。 「到着、ACを投下する。一定距離を保ち、そこからオペレートを開始します」 プリマの声が、通信機から聞こえて来た。短く、了解とだけ返す。 右赤腕URUGUはけたたましい音と砂塵を巻き上げ、着地した。 「早速だけど、熱源反応あり。近づいてきます…ACでしょう」 プリマが切り替えの早い人で良かった、と安心するクレリス。しかしすぐに、迫るACに集中する。 レーダーを確認、しかしすぐにそれは肉眼で確認出来た。 どうやらオーバードブースト(OB)でこちらへやってくるらしい。 もの凄い速度で迫るAC、左青腕CHAOS…ではない。ルークでは、ない。 「あ…!あの機体は…狩人の…」 クレリスには見覚えが無いが、プリマには解ったようだ。 彼女の回復中、その一年間で現れたか、名を上げたレイヴンなのだろう。 (狩人…か、成る程。そういう名前があれば、レイヴン殺しも納得) それはレイヴンがレイヴンを殺すと言う稀に起こる状態、それを行うレイヴンに付けられた名だろう。 それを偽装してルークはこの狩人を仲間に引き入れ、レイヴン殺しを遂行していた。 「あんたが、右赤腕URUGU…というか、ルークの言う、カリムね?」 狩人と呼ばれたレイヴンは、意外にも女性だった。 「そう、でも私は貴方を知らないんだけど」 挑発的な口調で狩人に言葉を告げるクレリス。狩人は動じない。 「狩人フェイ。この子はアンフェスバエナ」 なんとも律儀に自己紹介までしてみせ、機体名までも教えてくれた狩人と呼ばれる女性。 (まずは脚…COUGAR2に…両手NIXか、肩に…強化人間か、リニアガンとは厄介な…) 目の前にそびえ立つ紫色の二脚ACの武装を分析するクレリス。交戦した場合の準備だ。 しかし、またも律儀に狩人フェイは説明を開始した。 「私はあんたの意思を聞くように言われただけ…勿論答えによっては…」 あんたを殺す。という言葉を言わないだけで、クレリスにもプリマにも理解できた。 「彼女は、すんごく強いらしいです。武装は見てわかるよね、戦闘じゃ私は何も出来ないから」 プリマがしおらしくクレリスに伝えた。 苦笑して、彼女は答える。 「大丈夫、そこまで望んでない」 「さて、と。伝言をそのまま伝えるとしますか。ルークからの言葉は一言だけ」 ルークというその言葉を聞くだけで、クレリスは静かな怒りが込み上がるのを感じた。 彼女に対する嫉妬だろうか、彼に対する純粋な怒りなのだろうか。 そんなクレリスを置いて、フェイはゆっくりと確かに聞く。 「答えは?」 短い、それだけだった。ルークらしい、ともクレリスは感じ取った。 でも、もう答えは決まってる。わざわざ指し示すのさえ面倒だ。 だから彼女は、ゆっくりと右手のバズーカの銃口を、フェイに向けた。 「…嬉しいね、実はあんたとは戦ってみたかったんだよ!」 両手のマシンガンを構え、ブースターが点火する。 狩人フェイのアンフェスバエナと右赤腕URUGUのレイヴン・カリムの開戦の合図だった。 クレリスは勿論、フェイもまた負ける気はなかった。 そして彼女は、また遠く離れた場所で一つの戦いが同時に始まった事も、当然知らない。