約 639,574 件
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/1941.html
16 :New ◆QTlJyklQpI:2013/10/14(月) 19 59 32 ※ゲート 自衛隊とのクロスです。 ネタSS ~大日本帝国は特地に転移しました 原作開始~ 20XX年、東京銀座に出現した巨大な門(ゲート)。そこから現れた中世風の装いをした軍勢により民間人が殺傷される ”銀座事件”が発生。激戦の末に謎の軍勢を撃退し門を確保した日本政府は門の向こうの特別地域、通称”特地”に 自衛隊を派遣することを決定。各国の様々な思惑が交錯する中、日本国は未知の世界へ歩を進めることになった。 「ん?」 「どうかしたんスか二尉?」 二重橋攻防戦で大活躍した自他ともに認めるオタク自衛官、伊丹耀司は異変に気付いた。 「なんかあのワイバーン、人乗っけてないか?」 「あ、ホントだ。斥候っスかね?」 アルヌスの丘に築いた陣地の上空を遠巻きに旋回するワイバーン。 その背には小さくが確かに人影があった。 「ん~、でもあの恰好どっかで見た気が・・・・」 今まで戦った竜騎士は恐ろしく長いロングランスを装備し派手な装飾を施した鎧に身を固めていたが 双眼鏡で見る限り乗っている人はワイバーンに溶け込むような地味な服装をしていて見えづらい。 結局記憶を探っても答えが見つからず”武装勢力の斥候”ということで思考は完結した。 だが伊丹がヲタクはヲタクでも軍ヲタであればその恰好が嘗ての大日本帝国航空隊の飛行服に酷似しているの を見て驚いたことだろう。 「いよいよ来たか・・・・」 特設した飛竜による偵察部隊と電波傍受や数年がかりで構築した帝国内の諜報網からアルヌスの丘に出現した門 と異世界の軍隊の出現の報はすぐさまファルマート大陸東部に浮かぶ日本列島に届いていた。 「原作通り門を中心に六芒星状の防衛陣地を形成してるみたいです」 「帝国の方はどうなっている?」 「見事に議会は紛糾してますね。元々戦力がようやく再編した直後での出兵ですので反対も多く、しかも 捕虜が日本語を話していることから我々の国を間違って攻撃してしまったのではと パニックになっている方も多いようです」 「原作では偵察員が望月紀子らを拉致していたのでは?」 「拉致はしていたようですが、どうやら日本語を話すなどの情報は握り潰されていたようで」 「日本語を話す人間を捕えていたのに征服を?」 「同じ世界の別の国と思ったか、あるいは危険を承知でやったのか・・・」 「それほど内政で行き詰っているのでしょう。最近はこちらの勢力圏にヒトや金が流出してますし」 その言葉を聞いてメンバー全員が苦笑を浮かべる。 17 :New ◆QTlJyklQpI:2013/10/14(月) 20 00 28 帝国と講和して数年、日本帝国を中心とするファルマート大陸東部は凄まじい勢いで発展しつつあった。 資源地帯を中心に開拓され、道路などインフラが整備され始めると噂を聞きつけた帝国の 商人や傭兵が集まり始め、ヒト・亜人問わない雇用があると知られると軍の再編・拡大のため重税を課し始めた 帝国から下級階層や迫害されフォルマル伯爵家では抱えきれない亜人を中心に東方へ流れていき、 わずかの間に帝国から人材・資本・物資が日本の勢力圏に大量に流出、近代文明の強大な経済に帝国は圧倒されつつあった。 加えて帝都では今回の日本との衝突の原因とされたゾルザル派の権威は衰退、これを見て次期皇帝としてディアボを 擁立する派閥が台頭し後継者争いに発展、ガタガタの内政が更に滞り、益々国力衰退に拍車が掛かった。 この内憂外患な状況を打破するため、現皇帝であるモルトは再び外征を行うことを決意。 長期的には日本帝国との再戦も視野に入れつつ、手始めに異世界へ再編した軍の経験稼ぎと収奪による膨大な 軍事費の補填を狙っての侵攻を行った。誤算があったとすれば拉致した人が日本語を話しているのを隠した( というより拉致を担当した人員に日本語がわかる者がいなかった)事、相手が日本帝国よりずっと上の軍事力を 持つ国であった事だろう。 「しかし原作より門の奪還に時間が掛かってる気がするんだが」 「どうやら帝国軍は侵攻時に重装甲化したジャイアントオーガを投入したようです」 「あの”眼鏡犬”か。明らかに我々に備えていたものを使用したな」 原作でも登場した小銃弾程度では貫通できない重厚な鎧を着せたジャイアントオーガやオークは”怪異使い” の統制の下に猛威を振るい、何とか戦闘ヘリによる航空支援で撃破できたものの、警察・自衛隊を相当に手古摺らせていた。 「連合諸王国軍も我々が潰してしまったし原作との乖離は避けられそうにないな」 「こちらにピニャ殿下がいる時点で既に乖離は確定してますがね」 ああ、と顔を引き攣らせる嶋田。講和締結後、人質の意味も込めて日本に留学に来たピニャ・コ・ラーダと 騎士団メンバーたち。初期にこそ日本の国情を探ろうとあちこち駆けずり回った面々であったが 801な人々の布教?により現在ではすっかり腐れ神の信仰者となっていた。 「誰ですか彼女らにその手のヒトを接触させたのは?」 「それは私にもさっぱり・・・とはいえ(文字通り)腐っても彼女は皇位継承権持ちです。 あまりにも帝国が混乱するようなら・・・」 「最悪の場合、彼女を前面に押し立ててに我々が介入か・・・・」 帝国の情勢不安定や自衛隊の苦戦により原作の流れから乖離したである以上 一定の軍事介入は覚悟していた。 「このまま帝国が崩壊して難民や武装勢力が押し寄せてきたら堪りませんしね。 中国やらアメリカの軍がやってくる可能性もありますし」 「こっちにはロシア帝国の血族もいる。向こうのロシアの介入も考慮しないと」 「自衛隊はともかく日本国政府は全く信用できないからな」 ”帝国主義いいいイイeeeeee!!”と金切り声を上げて騒ぐ左翼とマスゴミ連中とそれに押されてしまう政府関係者 (何故か某宇宙人)を幻視し溜息を吐くメンバーたち。 「こっちは大陸の東の果て、できれば自衛隊の行動範囲外であることを利用して接触したくないんだが・・・」 「既にフォルマル伯爵領を通じてこちらの物品は出回ってますし、向こうから来ますよ」 果たして、その言葉は現実のものとなる。 炎龍の出現により原作に沿ってコダ村の避難民を護衛していた伊丹率いる第3偵察隊は 炎龍と遭遇、亜神ロゥリィの助けもあって撃退し、孤児や怪我人などは(伊丹の独断で)自衛隊が 預かりコダ村の避難民らと別れる際にせめてもの礼にと村長から渡された品物に驚愕していた。 「こ、これは!」 「ジエイタイの人は知らんのだな。これは”ソクセキメン”と言う東の国から・・・」 日本語でしっかりと表記された包装紙、そして某ヒヨコのインスタントラーメンに似た中身を見て 呆気にとられる伊丹。アルヌスに帰還した伊丹らの報告が日本国政府や各国政府を震撼させるのに そう時間はかからなかった。 18 :New ◆QTlJyklQpI:2013/10/14(月) 20 01 11 余談 その頃、ピニャ殿下らは嶋田への誕生日祝いのプレゼントとして芸術の品定めをしていた。 「むむむ、やはり嶋田×辻もいいが意外に嶋田×山本も中々・・・・」 「殿下、これなんか宜しいのでは?」 「おお、嶋田×富永か。よしこれにしよう!」 「「(腐ってやがる・・・・早すぎたんだ(年齢的に))」」 殿下の護衛兼監視を任された面々は静かに誕生日祝いに卒倒するだろう嶋田首相への冥福を祈った。 更に余談 その頃アルヌスの丘に到着したレレイ&カトー 「お師匠、大丈夫?」 「うむ!肌身離さず持っていたからの!(薄い本をかざして)」 レレイは空気を固めて投げつけた。
https://w.atwiki.jp/bodav/pages/16.html
▽タグ一覧 AAA到達者 APEX LEGENDS DAEMON X MACHINA Ghost of Tsushima SEKIRO ウマ娘プリティーダービー 機動戦士ガンダムEXVSMBON キャラクター設定 名前(読み方) アルカトラス(あるかとらす) 種別 人間 年齢 成人済み 性別 男 Youtubeチャンネル名 アルカトラス twitterアカウント arukatorasu_bb ボーダーブレイクプレイヤー情報 プレイヤー名 アルカトラス 使用ボーダー 特になし メイン兵装 重火力 AC版プレイ経験(最高到達クラス) SS1 PS4版最高到達ランク AAA3
https://w.atwiki.jp/ciel_npc/pages/79.html
カトリーナへのコメント 舞hime -- 2010-08-19 16 38 27
https://w.atwiki.jp/gods/pages/60962.html
カトリーナ ルーマニアの伝承に登場する妖精。 天空を支配する3人の女妖精イェル(2)の一。
https://w.atwiki.jp/gods/pages/7074.html
カトリーヌ カタリナの別名。
https://w.atwiki.jp/oreqsw/pages/1062.html
前へ 早朝 上空2000m付近 飛行杯がふよふよとマルセイユの周りを飛ぶ。 中心にいるマルセイユは静止したまま動かず、銃口を向けたまま固まっている。 マルセイユ「…………」 たらりと汗が顎に伝う。そのまま拭いもせずにインカムに吼えた。 マルセイユ「……まだか!」 ≪中尉!掴まれ!≫ 朝の空気を引き裂いて一機の戦闘機が駆けてくる。 そのまま飛行杯の纏まりに突っ込む。慌ててマルセイユが右翼を掴むとさらに速度を増し、上空へと抜けた。 ≪遅いぞ、馬鹿!何してたんだ!?≫ ≪すまん!哨戒先で手こずった!≫ そのまま上空へエネルギー保持の為に上昇。飛行杯が追撃してくるのを横目で見ながら体勢を整える。 風防を開け、操縦席の後ろからマガジンを探り出してマルセイユに放った。 ≪ふいー……大丈夫だったか?≫ ≪問題ない…まったく、すぐ行くとか言って待たせるとはな…≫ ≪ハハーン、中尉なら平気だろ!?≫ ≪ふふん、否定はしないっ!≫ タイガーバウムが下に潜り、ロールからの迎撃に入る。上方の目標を失い、そのまま突っ込んで来た飛行杯をマルセイユが撃ち抜く。 そのまま飛行杯を引き付け、横に辷りながら降下。その真横を下から交差するようにタイガーバウムが突き抜け、後方の飛行杯の2機を数発で撃ち落とす。 ≪やっぱりその魔法便利だな≫ ≪こっちは底抜けのバケツで滝を受け止めてるようなモンだ!っふ、と、そっちだ!≫ ≪知ってる≫ ≪ハッハ、痺れるねぇ!≫ ≪そっちこそ……3機目!≫ ≪これで最後かァ?中尉!≫ ≪来い!!≫ 側面から迫りくるタイガーバウムとその後ろの飛行杯に狙いを定め、そのまま静止する。 にやりと俺が笑い、ほんの少し機体を傾けそのままマルセイユの真横を突き抜ける。 そのすれ違いざま、丁度傾いた分だけのスキマに銃弾を叩き込む。 銃弾は寸分の狂いもなく、吸い込まれるように飛行杯へと突き刺さった。 ≪まったく、なんてものくっ付けて来るんだ≫ 昇る朝日に砕けたネウロイの欠片がてらてらと輝く。 風圧で凪いだ髪を片手で押えながら、マルセイユはこちらに振り返った。 ≪ハッハ、背中は中尉に任せてるからな≫ 俺がからからと笑いながらマルセイユの隣にタイガーバウムを寄せる。 ≪ほら開けろ。指令部と繋ぐから≫ ≪へいへい、女神さまの仰る通りに…っと≫ ゴンゴンと少しばかり乱暴なノックに答え、風防を開けてやる。 熱気の籠った操縦席に、上空の冷えた空気が心地好い。 俺「っぷはぁ!やっぱ風を感じてえな!」 マルセイユ「ふふん、お前もストライク―を履けばいいんだ」 俺「なーに、コイツで充分さ」 マルセイユがさっと操縦席の左縁に腰かけ、計器盤に手を突っ込み通信スイッチをONにする。 そんな彼女を横目に、俺はゴーグルを上げて後部の酒瓶達を漁りだす。 マルセイユ「指令部?…ああ、うん。全部落とした…うん、分かった。了解」 がちゃがちゃと酒瓶を避ける音に混じって通信兵の安心したような溜息が聞こえる。 その応答にマルセイユは大げさだ、と少し照れながら笑って通信を切る。 俺「お!あったあった!見ろ、中尉!」 マルセイユがスイッチを切ると、タイミング良く横から俺がちょうど(俺の)掌サイズの籠を見せてきた。 茶色の綺麗に編まれた籠。使い込まれた感じのくすんだ金具。どう見てもバスケットだが、こんなに自信満々に見せられても困る。 間違えるはずはないけれど、マルセイユは少しだけ戸惑いがちに答えた。 マルセイユ「…バスケット?」 俺「半分正解だな。ほれ」 マルセイユ「サンドウィッチ……!」 眼を輝かせる彼女のお腹が小さく鳴いた。 しまったと、慌ててお腹を押さえるが頬の朱を隠し忘れている辺り年相応だなあと俺は思う。 俺「ハハ、そうだと思ったぜ。朝飯食ってなかったろ?つなぎだ」 マルセイユ「あ、ずるいぞ俺…うまいな」 俺「ブリタニアはローストビーフだけはうまいからなァ」 すでに食べていた俺にならって一つ掴んで食べる。 少しだけ焼いたパンにバター、ローストビーフ、チーズに戻し野菜。 パンにはローストビーフの焼き汁と戻し野菜の汁が染み、厚切り具合がちょうどいいし、 肉と野菜の間にかりかりとした砕けた胡椒の香ばしさが混ざっておいしかった。 マルセイユ「本当に料理出来たんだな」 俺「ハッハ、ガキのころから厨房にいたからな!ほら、もっと食え」 そう言って一緒に取りだした酒を飲む。雲も無く、風も明朗。世界の彼方まで見える位、大気は緩やかに巡っていた。 きょとんとマルセイユがチーズを伸ばしたまま固まったのでその食べかけを一口で食べ、また酒瓶を傾ける。 俺「さすが俺だな、今日もうまい」 マルセイユ「良いのか?」 俺「成長期はしっかり食わねえとな。俺は作ってる時に味見したからいいんだ」 マルセイユ「ふーん、食べちゃうからな」 俺「おうおう、食っちまいな。ふぁーー…ここは気持ちいいなァ」 くああと、もふもふと虎の毛が生えた姿であくびをする。 そう言えばこいつはいつ寝ているんだろうか。寝ている姿なんてほとんどみた事がない。 それに寝ていてもほとんど体が上下しないのも驚いた。 眠たげな俺を背にサンドウィッチを食べていると、空の向こうに綺麗な三角形が現れた。 マルセイユ「空は何もないからな……ほら、見えるか?あれがピラミッドだ」 俺「あんなにでかいのか…」 マルセイユ「ああ、王が無事天まで昇れるように…と造ったらしい」 俺「へぇ…そこまで願われて、慕われる奴はやっぱ凄かったんだろうなァ」 マルセイユ「古代エジプトでは王は絶対的な存在だったからな…当然だろ」 しばらく黙って見ていた俺が唐突に目を輝かせた。にっと口元に笑みを浮かべ、 俺「だが、空ではそれすら見下ろせる」 何とも図々しいと思う。 だが少しも敬意を払わないばかりか見下す俺は、なんだか型にはまっていた。 高く、遠い。そう思って、マルセイユは小さく笑った。 マルセイユ「…ここは、王ですら行きつけなかった最上の地」 遠く彼方のピラミッドを、その先を見ながら、俺がマルセイユの方を見る。 目が合うとにっと笑い返された。その顔を見て笑い、操縦席の縁に肘をかけた。 マルセイユ「やっぱり、私はここが好きだ」 俺「…ああ、俺もだ」 改めて景色に目を移す。縁に腰かけた彼女も顔をあげ、朝日に揺れる彼方を眺める。 上空5,000m。まるで頂点に立った様な錯覚を覚える高度。 インカム越しに聞かれぬ様に溜息を吐き、微かに震える彼女の手をそっと握った。 基地 俺「超・完・成!!俺特製パスタァァアアアア!!!」 稲垣「ミートボールスパゲッティですね!」 ペットゲン「え、ミートボール入れるの?」 俺「ミートボール大好きだからな!昔、軍のコックが作ってくれたのがうまくてなー」 パットン「うむ、また腕を上げたんじゃないか?俺」 朝食はミートボールスパゲッティだった。 散々作ると言っておいて、ようやく作った将軍達との約束の品。 加東「あら、将軍は召しあがった事が?」 パットン「コイツを基地に呼んだ時に作らせたのさ。有名だったからな…虎のパスタ」 モンティ「不味い飯じゃ士気も下がる。さすがロマーニャだな」 ロンメル「ブリタニア人が何を言っているか」 俺「やっぱりうまい飯が食いたいからな。さすが俺、今日もうまい!」 俺が豪気に笑って器用にフォークを操る。 本当に幸せそうに食べる。将軍たちもちくちく悪口を言い合いながらも食べていた。 パットン「実はこれが不味かったら軍法会議だったんだがな」 稲垣(食べ物に運命を左右されるって……) 口元のミートソースをぬぐい、パットンがぼそりと呟く。 なんだかその先まで見通せたようで、稲垣は小さく震えた。 マルセイユ「俺、おかわりだ」 俺「あいよ!…お、ソース付いてるぞ」 マルセイユ「どこだ?」 俺「あー!それ洗うの俺なんだから!ほら、口の端っこ!」 そう言うと俺がマルセイユの口元をぬぐい、そのまま指を口に運ぶ。 その様がどうにも自然で将兵達は反応に遅れ、怨恨の視線を俺へと送る。 マルセイユ「ん……ん?お前が洗ってるのか?」 俺「あん?当然だろ、雑用だからな。それよりも今日のソースうまいな!」 マルセイユ「ん?ああ、そうだな」 俺「おう。今度はたくさんあるからがっつり食えよ!」 ペットゲン(何だろう…何かを見過ごした気がする) じっと見ていたロンメルが不意に口を開いた。 ロンメル「さすがあの少将の子飼いだな。馬鹿さ加減がそっくりだ」 そう言って溜息を吐く。 少将と重ねているのか、その目はどこか遠くを見ているが。 俺「大胆と言ってくれ!」 加東「無茶と無謀とバカは大胆とは言わないの」 胸を張った俺に拳が飛ぶ。 加東の淡々とした物言いに、俺が良い事を思いついたとばかりに口元を歪める。 俺「アウチ…ったく、こんなだから貰い手が……おっと滑走路に行かなきゃなー!!」 加東「っの、俺ぇ!逃げるな!!」 稲垣「ケイさん!それしまって下さい!」ヤメテェ! マルセイユ「ケイ、もうちょっと左だ…そこ!」 タァン! <うおおおおっ!?ちゅ、中尉!カトー!やめ…ふおおおおおお!!? ゴロゴロ ペットゲン「後2分…あ、本日261人目」 <ちょっとこれ貸せ!な? <てめぇ虎野郎、貸せとか言って取るんじゃねええ!! バキィッ! はうっ その辺にいた兵を殴り倒し、ケッテンクラートを奪って滑走路へと走って行く。 苛立たしげにそれを見送った加東は、雑嚢に銃をしまった。 加東「…ネウロイはまだ観測されてないから、少しゆっくりしてていいからね」 マルセイユ「哨戒の連絡待ちか?」 加東「マルセイユはこの後哨戒ね。他のみんなも、いつでも出撃出来るようにはしておいて頂戴?」 マルセイユ「うえー…また私一人か?」 加東「あなたが一番目いいんだから我慢なさい。俺も付けるわよ?」 マルセイユ「午前は機体の点検だ」ムス 稲垣「あの、射場は空いてますか?」 加東「空いてるわ。手は…出されないか。無理しないようにね」 ペットゲン「マーミ!一緒にやろう?」 稲垣「いいのライーサ!?」パア ライーサ「もちろん!」 二人が食器を片付け、ぱたぱたと兵士達の間を抜けながら射場に向かう。 その様子を見る兵士達も、ほわほわと笑みをこぼしながら、さりげなく道を開けたり、おやつをあげたりしているのが見える。 こうして見てみると随分ここも変わった様な気がする。 俺が来てからと言うもの毎日鍛錬と喧嘩。慕うべき目標と言うか、マルセイユだけでは補い切れなかった部分まで、奴は一瞬で塗り替えてしまった。 戦う毎に先陣を切り、無茶を通して行く。ふざけて兵たちと遊び、アフリカを見渡していた虎を思い出しながら、長机に腰掛けた。 加東「……新型、どうするの?」 隣でスパゲッティを食べている少女に問いかける。 ふっと瞳が揺れ、溜息を吐きながら少女はフォークを置いた。 マルセイユ「この前将軍達に謝られたよ。サインもしたし…それに、もうケッセルリンクが黙ってない」 加東「F型、壊さないようにね。さ、ちゃっちゃと済ませて水浴びでもどうかしら?」 マルセイユ「…そうだな、マティルダに頼んでおいてくれよ」タタッ 手を振ってマルセイユを見送り、溜息をつく。 加東「2,3回履いて故障させる…か。やっぱり履かなきゃダメよね」ハァ 猛烈に胃薬と頭痛薬が欲しい。報告書だの始末書だの、俺のおかげで将軍達が多めに見てくれるからと言って、上に提出する書類をまとめるのは自分なのだ。 受諾したばかりの新型を2,3回で壊して「いい機体でした」なんて言ったらまた新しい奴が配備されるに違いない。 ああ、また研究員の言葉が頭をよぎる。忌々しい、何が『絶対大丈夫』だ。 加東「……絶対なんて言葉を使うのは、自信の無い臆病者か、よっぽどの馬鹿だけよ…!」 ――――――――――――――― 滑走路 俺「これもかー?」ゴロン 清掃班1「全部拾って下さいよー…あづぅ」コロン 清掃班2「いやーさすがに兄貴は早いですね。さすがパイロットだ」コツン 太陽が砂を焼く熱の中、マントを直しながら滑走路に落ちている石を、手に持ったバケツに放る。 毎日毎日乾いた風や、砂嵐が持って来る大量の砂と石を丁寧に掃除していく。 滑走路掃除は大変なのだ。それこそ、猫の手も借りたい位に。 俺「ハッハー、もっと褒めてもいいんだぜ?」ドヤ 清掃班3「はいはい、それも拾えよ」ゴロン 俺「わーってるよ…あちち」 清掃班1「手袋してくださいよ?」ミズー 俺「してるぜ?ほら」パッ 清掃班3「…これは、ドライビンググローブ!せめてパイロットグローブにしろ!」 俺「あー…よくある―――」 清掃班「「「無い!!」」」 <こんな細かい事気にすんなって! <兄貴は気にしなさ過ぎなの!だからバカなんだよ! <仕方ねえだろ!気になんねぇんだからよォ! ギリギリ <ギブギブ!ってあ゙ーーーー!! ガラガラ ―――――――――――――――― 整備班2「全部こぼしやがった…班長ー、滑走路掃除長引きまーす」 整備班長「報告御苦労!ったくまたあのバーカがなんかやったのか?」ガチャガチャ 砂を焼く日差しを避けた格納庫から整備兵が滑走路の様子を報告する。 傍らには数名の同期に双眼鏡。煙草が少々、酒瓶が5つ。 整備班4「清掃2にヘッドロックかけてますよ……おおっ清掃4の背後からの飛び蹴…あー顔面ストレート食った…いてて」 整備班1「鼻折れてねえか?全方向奇襲も通用しねえしよ…はーどうすりゃ勝てんのかねえ」ガチャン 整備班長「野郎共双眼鏡なんて覗いてないで整備しろ!…まあ、スパナ食らいたいなら話は別だがな」スラッ 整備班「「「「ラジャッ!!」」」」ビシッ イソガシーゼ! ソケットクレー! ネジアマッタゾー! ワイワイ 班長が自慢のスパナをポーチから抜けば、さっと持ち場に戻り整備を再開する。 サボってもいいが仕事はしろ、が最近の合言葉。 熱気が立ち込めるハンガー内を移動し、いつぞやのキューベルワーゲンの所へ向かう。 最近やっと俺の魔導エンジンの補給が届いたので、ついでに直しておいたのだ。今は調整中だが。 整備班長「ふぅーー…おい、キューベルの調子はどうだ?」 整備班3「班長殿、コイツは『バウムクーヘン』ですよ」ガチギリリ 整備班長「あいつのネーミングセンスはどうかしてるな…」 整備班1「酔った勢いで魔導エンジンをブチこんだ班長もどうかして――冗談です。いい意味で、です班長殿」ダラダラ 俺「おいおい班長、朝っぱらからスプラッタとかやめてくれよ」ヨッコイセ 整備班長「よう俺、いつ名前なんて付けてくれたんだ?」 俺「ぶっ壊した日だから……3週間とちょっとか?カッコいいだろ?バウムクーヘン」ドヤッ 整備班長「…タイガーバウムからおかしいと思っていたんだ、そのネーミングセンス……!」 俺「はっはっは!一つ前に乗ってた奴がグロールタイガーだったからな!タイガーを取った!」 整備班4「いや、グロールタイガーは普通だ」シンケン 整備班長「…うん、もういい」 俺「そういやクーヘンは直ったのか?派手に壊れたと思ったんだが」 整備班2「兄貴の機体のエンジン部品が届きましたからね。そいつで班長が直しましたよ」 整備班長「そう言う事だ、大事に使ってくれよ。俺の傑作なんだからな」フンス 俺「またかっ飛ばさせてもらうぜ!」フンス 整備班長「…ふは、はッスパナは、まだまだある…!!」ブンッ 整備班3「班長殿ぉ!お前ら取り押えろ!班長殿がご乱心だー!!」 ハンチョー トマッテ! コワレマスヨー!! ヤメロォオオ!! ガンッ!! ガホォォオ!? アニキーー!!? ――――――――――― 格納庫の隅 俺「野郎に治療してもらってもなぁ…」ハア 整備班2「俺だってやりたかねえよ!タイガーちゃんをいじってたほうが楽しいつうの!」ギュッ 俺「へいへい、そういやアレなんだ?見た事ねえけど」 頭に包帯を巻かれながら、一昨日は無かったカーキ色の幌をかぶった物体を指差す。 背の高い俺に苦戦しながらも包帯を巻き終えた整備兵が振り返れば、現在最高の不安材料が見え、思わず返答に詰まる。 整備班2「…マルセイユ中尉のユニットだよ。新型のBf109/G-2…エンジンに欠陥があるって評判の問題機さ」 整備兵1「昨日届いたんだが、中尉はコイツが大っ嫌いでね…今は調整と言う名の放置だ。まあ、お偉いさんの命令には逆らえんしな…」 格納庫に鎮座する最新のストライカーを見て、二人が重い溜息を吐き出す。 カーキの幌に包まれたそれは、マルセイユがどれ程嫌っているか分かる位に、一切の手も付けられていなかった。 俺「…なるほどな」 整備班長「何がなるほどなんだ?」 整備班達が作ったであろうリラックスチェアに横になりながら、俺はポケットから葉巻を取りだして咥えた。 その横にあった空き箱に班長が腰かけ、煙草を吸い吸い、無言でマッチを俺に投げて寄こす。 俺「中尉が悩んでるというかな…なんとなくだよ」シュッ 整備班長「さすが百戦錬磨の虎ってとこか?」フー 俺「女の子ってのは繊細なんだよ。特に16まではな」 整備班長「かっはっは、よく見てるよ、ホントに」 俺「かわいいもんだぜ?16の誕生日にわざわざ来りなあ」ハッハ 整備班長「いいねえ…久しぶりに夜の街にでも繰り出してぇなあ。どうだ?俺も」 ちらりと横目で俺を見遣る。夜に抜け出すのは、警備の兵も目を瞑ってくれる。 しかし、目一杯遊んで帰るには、早い足が必要だった。おそらくクーヘンの魔導エンジンならば、最速記録を簡単に破れるであろう。 そして何より、夜の撃墜王が喰いつかない訳がない。 俺「…ハッ、熱いセックスさえあれば、愛なんていらねえよ」 俺が楽しそうに喉をぐるぐる鳴らす。ニッと笑った俺を見て、 整備班長が立ち上がる。今日はいい酒を警備の奴等にやらないと駄目だと、思いを巡らせる。 整備班長「ヤッハ、決まりっ!野郎共に知らせなくっちゃな!!」 俺「おいおい、酒だけで終わっちまうぞ?」 整備班長「いいんだよ。夜を教えてやるだけさ」 俺「…だったらとびっきりを用意しなくちゃなァ」ニヤ 整備班長「金はお前持ちだぜ?少尉殿」 俺「おういいぜ!存分に楽しもうじゃねえか、兄弟!」 整備班長「はっはっは!そうこなくっちゃな!」 吸っていた葉巻を酒瓶に放り込み、俺が整備班長へと拳を突き出す。 その動作を見た班長も煙草を踏み消し、俺の拳に自身の拳をぶつかり合わせた。 ――――――――――――――――――――― ――――――― エンジンの轟音が辺りに響く。 音に遮られないように自然と声が大きくなるのはいつもの事。 エンジンの振動を聴き、異音が無いか、共鳴音はおかしくないかを全て聴き分ける。 オーバーホールはすでに4回目。必要な部品はすでに底を尽き、補給を今か今かと待ちわびる状況だ。 整備1「飛行時間を大幅に超えてるが…どうする?」 俺「…お前等の腕でどうにかしてくれ」 整備1「……了解」 俺「やっぱ特別製はキツイな…改造で補うしかねえか」 会話を交わしながらエンジンを切り、飛び降りる。 じわじわと奪われる水分を酒で補給しながら工具箱を手に取り、機首部分へと向かう。 整備班長「どの辺をやるよ」 俺「エンジンだ。また音が飛んでやがる」ガチャコガチャ 整備班長「俺達でも気付けねえよ…本当に繊細だな」テツダウゼー 俺のやっている場所とは違う個所を微調整しながら、問題個所を見る。 来た部品とは違う場所の魔法力伝道経路が焼き切れ、分散シャフトが残り数本しか残っていなかった。 俺「ありがとよ。回転供給経路を捻じ曲げれば…」ギリッガギギ 整備班長「……ッ!?これじゃ伝導率が高過ぎだろうが!」 俺「これでダイレクトに魔法力が供給される」 整備班長「確かに飛べるがなぁ、お前の負担が…!」 俺「俺を信じろ。それに、こっちの方が高く飛べる」ニシシ 耐えられるはずがないのに、この男は何故笑う。 ここまでの状態に陥ったものを飛ばそうなんて普通の神経をしていたら考えない。思考をよぎる事すらない。 どうして飛ぶんだ、約束がそこまで大事か?叩きつけたい言葉はコイツが来た時から溢れるほどにある。 全てを一つに、朗らかに笑う正面の男の眼を見据え、唸るように呟いた。 整備班長「…これは無謀だ」 整備の雑音が響く。タイガーバウムへの細かな整備をしている連中も息を潜めて次の言葉を待つ。 待っている時間すらも水分を奪う熱の中で、奴の眼をぐっと睨みつける。 整備兵達の生唾を飲む音が聞こえる。次第に猛烈な暑さの中に怖気が混ざりだすのを肌で感じた。 それすらも心地よいとでも言う様に、奴は笑みを深めた。 俺「俺を誰だと思ってやがる」 さあ、女神のお帰りだ。奴は言い、軍靴を鳴らしながらハンガーの外へと歩き出した。 エンジン音でも聞こえたのだろうか、なにせ奴はウィッチ達全てのエンジン音の聴き分けすら出来るのだから。きっと中尉が帰って来たのだろう。 整備班長「………大馬鹿野郎が」 遠くなった背中に向かって吐き捨てるように声を掛けるのが精一杯だった。どうしてこうも馬鹿になれるのか。 だが、その背中に憧憬を抱くのは何故なんだ… どうやら予想は当たった様で、降りて来た中尉を奴が抱きとめ、一言二言言葉を交えていた。 考え過ぎてぼんやりとしてきた脳髄に遠くの俺の声が染み入る。 俺「班長、今日はちょっくら忙しいぜ!タイガーバウム発進準備だ!」 覚醒は、一瞬だった。 整備班長「了解!!」 タイガーバウムに駆け寄り、整備兵達への指揮を飛ばすがもう半分以上は出来ていた。 さすが精鋭。急いでエンジンに手を掛け、配線、回路、オイルを手早く調整し、魔法力伝道経路にスパナを入れる。 整備兵3「ッ!?班長、そこは!!」ガシッ 整備班長「…最後の足掻きだ…やらせてくれ」グッ 整備兵3「…っく、おい!モーターカノンの給弾!早くしろ!!」 整備兵5「少尉!準備完了まで後2分です!」 怒号の様な掛け声が響く中、俺が中尉を姫抱きにして発進ユニットの方へ向かっていた。 スパナでも投げてやろうかと身構えるとけたたましく警報が鳴り響き、思わず遅いと唸る。 しかし、観測班の名誉の為に言わせてもらえば警報はいつも通りなのだ。 こういう事も多々あるが、俺が来てからはその力の方が役に立つとの少佐のお言葉で俺が基準になっていたのだ。 俺「行けるか!?」 整備班長「おう!状況は!?」 俺「地上部隊が奇襲を食らった!ついでにくっ付いてきた飛行杯で中尉のストライカーが破損!」ガッガ、ガロロロロロ なるほど、中尉が姫抱きにされてたのは状況報告とストライカーへの被弾で姿勢制御が難しかったからか… 無線を付けながら俺が計器盤を操作する。それを横目で確認しながら安全な場所へ移動。無線での会話に切り替える。 エンジンの轟音がハンガーを支配する。回転数は急ぎの為、極微量の魔法力で上昇させるている。これは結構魔法力を食うらしい。 整備班長「…分かった。で、お前はどうする?」 俺「決まってんだろ?…カトー達を待っている時間はねえ、だが数からして無理はない」ニイッ 整備班長「そう言うと思ったぜ!っし、チョーク外せーい!!」 俺「カトー達にはゆっくりでいいと伝えてくれ!」 整備班長「了解!ウィッチ達を頼んだぞ!」 俺「おうよ!ティグレ、出るぞ!!」ブロロロロロ 整備班長「おい、ストライカーは!?」 俺を見送り、破損したユニットに集まる整備兵達に声を飛ばす。 ずんずんと近寄ると状況がだんだんと見えてくる…ああ、誰も返事を返さない訳だ… マルセイユ「そうか…代えのフリッツも」 整備兵6「申し訳ありません…現在2機とも整備中です…」 担当整備兵が俯きながら謝罪する。 油断していた。丁度2機とも整備の時期に当たったし、最近襲撃も安定しているから忙しくなる前に…なんて甘い事を考えていた自分が憎い。 ここはアフリカ。甘い水なぞ湧きはせぬ。 整備兵5「しかし増援は要らないと―――」 マルセイユ「そんなもの、強がりに決まってるだろ!」 加東「その通り!!」 整備班長「わっ少佐!?」 加東「びびるな!それよりも全機発進準備急げ!」ピョコン 整備班「「「「「「了解!!」」」」」」 ペットゲン「遅くなりました!!」ダダッ 稲垣「ケイさん!状況は!?」キキィ! 加東「地上部隊が奇襲を食らったわ!…先行した俺に追いつくわよ!」ブロロロロロ 稲垣・ペット「「了解!」」タタッ 二人がさっとストライカーを履き、エンジンを吹かす。 その横では、マルセイユが今だホロを被った新型―Bf109/G-2―を見詰め、押し黙っていた。 加東「マルセイユ、あなたは平気よ。その辺で―――――」 ガツリと軍靴が鳴り響き、マルセイユがストライカーへと向かう。 前に立っていた整備兵は半分転びながら慌てて道を開ける。怪訝そうに加東がマルセイユを見遣った。 足音は止まらない ペットゲン「…ティ、ナ?」 新型との距離を詰め、その正面に立って震える手を伸ばす。 エンジン音は彼方に消え、辺りは水を打ったように静かであった。 幌の表面に手を置き、そのまま手を止める。 一度だけ深呼吸をした後に、震える手で幌を握り締め、そのまま一気に剥ぎ取った。 浅く積もった塵が太陽を受けて輝き、カーキの幌から磨き抜かれたストライカーが現れる。 取った幌を投げ捨て、マルセイユが発進ユニットへと上がっていく。 加東「マルセイユ…あなた……」 悲痛な面持ちでこちらを見る加東に、靴下を脱ぎながら答える。 マルセイユ「勘違いするなよ、ケイ」 マルセイユ「確かに嫌だよ。エンジンは危ないし、嫌な奴からの命令だしな」 ひたりと足音がやむ。ここを超えれば後戻りは出来ない。何が起きてもあのサインがある限り、これを壊れるまで使わなければならない。 加東「…私達だけで何とかするわ!これは――――――!」 マルセイユ「私は私の意思でこれを履く」 ぴしゃりと加東の言葉を遮る。言わんとしている事は百も承知。 まだ何か言いたげな加東を見据え、マルセイユ大胆不敵に笑ってみせた。 マルセイユ「それに、好敵手の危機の一つや二つ…救ってやれずにどうする」 全てを振り切る様に、マルセイユは足場から飛躍した。 前へ ページ先頭へ
https://w.atwiki.jp/vip_witches/pages/758.html
次へ ハルファヤ峠 兵士A「っぐ、増援は!?ウィッチ隊はまだか!?」ガガガガッ!! 兵士B「指令達に任せとけ!―――来るぞ!発射用意!!照準合わせ!!」 兵士C「アハトアハトを守れ!飛行杯共をこっちに―――っがぁ!?」ドサッ 兵士A「Cィーー!衛生兵!っくしょお!数が…まだ彼女もいねぇのにこりゃねぇよ!!」ガガガガガガガガ ッドグシャァアアアアアアアア!!! 兵士E「くそがぁあああ!!防衛線突破!っはは、死んだな…せめて――――」 兵士D「バカヤロォ!んなこと言ってる暇あったら撃てェ!!」 通信室 着弾の激震に穴倉の様な通信室の天井の木板からパラパラと砂が零れる。 次第に近くなる音、兵士たちの悲鳴と怒号。 司令は噛み付く様に無線機に吼えたてた。 ≪ウィッチ隊、聞こえるか!?ウィッチ隊!!≫ ≪っくぅ、後20分!!こちらも…必ず行きます!持たせて下さい!!≫ 兵士A「指令!防衛線突破されました!…もう、撤退しか……!!」 応答が来た通信からは、向こうの戦況の激化を伝えるには充分の、切迫した声が返ってきた。 幾多の要請が来る中で、決して希望を失わずに戦う少女たちに、指令は胸が熱くなるのを感じた。 …もう己の戦線の維持は不可能。ならば、やるべき事は唯一つ。 ≪………ウィッチ隊、援護は不要だ。そちらの戦闘に専念してくれたまえ……そうだろう?A≫ 指令がにやりと兵士を見る―――――全てを悟ったように、Aは唇を噛みながら敬礼で返た。そして、再び戦場へと飛び出し、大声で告げた。 兵士A「伝令!……我々は撤退を良しとしない!!死ぬのならば―――――!!」 ≪徹底抗戦だ。化けて出てでもネウロイ共…貴様らに――――――≫ 兵士A「この北アフリカを、渡しはしない!!!」 兵士「「「「「「うぉぉおおおおおおおおお!!!!!」」」」」」 無線越しから聞える男達の咆哮に、たらりと嫌な汗が頬を伝う。 させるものかと、マイルズは必死に呼びかけた。 ≪ッ!?何を考えているんですか?…あきらめちゃ駄目です!!≫ ≪…君達とこのハルファヤ峠を防衛出来た事、誇りに思う。男79人、ここで――――!!≫ ≪やめてください!……お願いですから、すぐに、後10分だけ……必ず行きますから…!≫ 死刑宣告様なその言葉に、次第に涙声になって行く彼女にありったけの感謝を伝えた。 あの花咲くような笑みを、決意を秘めた真っ直ぐな瞳を、もう自分が見る事は叶わないのだから… ≪…ウィッチ諸君、感謝する。君達に、神の加護が有らん事を……≫ ≪待って――――!≫ブチッ 縋る様な声を一方的に切る。がちりと叩きつけられた受話器を見詰めながら、 背後で司令部に報告を行っていた通信兵が、そっと全ての無線機のスイッチを切った。 通信兵「指令……ここまでですか………」 指令「…ここが、引き際だということだ。行くぞ」ザッ 通信兵「………ハイッ!!」ザッ 指令「男に生まれ、男に生き、男として死ぬのなら…派手に散って、この命、乙女らに捧げよう!!!皆に告ぐ!!一匹たりともこの防衛線の外に出すな!! たとえ命散らせてでも…一匹でも多くを道連れにしろォ!!!!」 兵士「「「「「「おおぉぉおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」」 ≪ザザッ、ハッ…ザー…ガガ…でこそ、男って…ンだ!≫ 誰もいない通信室に声が響く。からからと向こう側からは場にそぐわない陽気な笑い声が流れる。 ≪ザザーッ…れもいねぇのか?ガピーザッ…から突貫すガガッ…伏せろ≫ …応答なし。――おそらく全員外に出たのだろう……己の命を掛けて―― 男は自分の声すら聞こえない轟音の中で深く息を吸い、インカムに叫んだ。 ≪てめぇら全員、頭下げろォオオオオオオオ!!!!!≫ 雷鳴の様な咆哮が穴倉から襲い来る。 天井からは、一握の砂が零れ落ちた。 兵士B「うわっ!?……兄貴…なのか?」 兵士D「~~~ッ痛ってぇ!…今の通信は!?頭下げるってなんで?」ホワイ!? 兵士E「あ゙がぁ、鼓膜がァ!?…ッバカヤロウ!止まるな!死ぬぞ!!」 指令「っくぅ~~~!」(頭を下げろ?奴は何を言っている!?…調子に乗るなよ、野良猫が!たった一人で…何が――――!?) 突然起こった大音量に頭を抱える。怒りのままに天を見上げ、いきなり現れた星に指令はうっと目を細めた。 ――――星か?……いや、今は昼間…まさかッ!?―――― 倒れた体を無理矢理起こし、双眼鏡でもう一度真昼の星を見る。 指令「……ははっ、地獄に連れてく奴が増えやがった…!!」 その機体、色は黄にして、時に黒。敵を食らうその様たるや、まさに虎…!! 兵士C「お、おい!アレ!!」 兵士A「ッカヤロ!敵は陸戦が6と大型が1だぞ!?飛行杯だっている!…なんでわざわざ、死にに来た!!」 奴はぐんぐんと高度を下げ、こちらに向かって来ている。速度から見るに墜落か?操縦不能?…どうでもいい、すでに捧げた命だ。好きに使うがよろしい。 墜死でも爆死でも何でも付き合ってやる!!貴様の最後の希望に、しがみ付かせてもらおう!! 指令「総員、直ちに地球にキィイイッスゥ!!」ガバッ 兵士「「「「「「「イエッサァアアアアア!!!!」」」」」」」 多くの兵が砂に身を投げる。轟音が迫る戦否、落ちてくる。垂直落下の形だ。このままくれば奴は墜死、こちらの数名は味方機の墜落に巻き込まれた、と不名誉な死を迎えるだろう。 追突まで数秒の所で奴の機首が軽く持ち上がるのが見えた。 まだ立っている者がいる。あいつは正常な精神を持っているのだろう。こんな賭け、誰がするか。 しかし今、俺達が持っている切符はたったの2枚…ネウロイ共と共に地獄に落ちるか、 虎を信じて基地に帰るか……奴は俺達を信じてここに来たのだろう。だったら、選ぶ切符は、選べる切符はたったの一枚―――!!! 兵士B「俺はあんたに賭けるぞ!虎ぁ!」 飛行杯を撃つ友人をタックルで倒す。ぎゃあぎゃあと喚かれるが次々と倒す。 良いんだ。たとえ死んだとしても、俺は、自分で決めた!! 機首はまだ上がっていない 指令「上がれ……あがれぇええぇぇえええええええええ!!!!!!」 ゴオォオオオオオオオオオオオ!!!! 接触の寸前、黄金の風が彼等を撫ぜた。荒々しく熱砂を巻き上げながら。 弾丸が辺りに降り注ぐ。誰一人として動けない。あっという間に飛行杯共は薙ぎ払われた。 そのまま奴は砲台に登った陸戦を2機程撃ち抜き、大型への針路を取る。 兵士A「うえっぺっぺッ!ごほ……生きてる?」 兵士F「何暢気なこと言ってやがる!見ろ!」 ラダー操作と言うのだろうか。奴は辷る様に大型へと向かっていく。 下では目標を奴一点に定めた陸戦、大型が光線やら弾を乱れ撃つがかすりもしない。奴にも、そしてこちらにも。 兵士C「お、おい、なんでこっちに一発も来ないんだ?」 兵士B「…来ないんじゃない!派手に出てきて敵の注意を全部引き付けたんだ!だから流れ弾の一つも飛んで来ない!」 兵士D「なあ、それってすごいんだよな…?」 少年の様な眼で彼等は奴―タイガーバウム―を見詰める。その間にも陸戦が火花を散らし、その数を減らしてゆく。 大型まで後数秒。急速に敵の固定砲座に赤い光が集まるのが指令の双眼鏡に映った。 指令「奴め!ぶっとい奴をブチ込む気だ!!」 隣で口角泡を飛ばしながら指令が叫ぶ。それでも奴はスピードを緩めない。針路も変えず、まっすぐに敵の懐へ飛び込んでゆく。 瞬間、機体が傾く。機銃を放ちながら大型ネウロイの懐、脚と地面のスキマにその身をねじ込んで――― ―――――――――――――――――――――――――――――――――― ――――――――――――――――――――― 班長「こ、の、馬鹿虎!」ゴィン 俺「あでっ!……スパナは整備士の魂じゃねぇのかよ」サスサス 班長「あのなぁ、飛行杯は分かる!…戦闘機で陸戦4と大型1って何やってんだ!?」 俺「あん?共同撃破だからそんなに落としてねえぞ?」 整備1「また数えてなかったんですか?共同を引いてこれですよ。今の所週間トップですね」ガチャガチャ 俺「仕方ねぇだろ。常に全開じゃなきゃ治まらんからな!」フンス 整備2「まあ、そのお陰で整備のやり甲斐があるってもんだ。増えた分尾翼に描き加えとくからな~」 ワイワイ サッサト カエチマウゾー! オー! ナア、オーバーホールスルカ? ンー チョットシタラヤルカ リョーカイ ガチャガチャ 班長「…ったくよォ、お前は無茶したって構わねえよ。だがな、コイツがぼろっちょになるのは我慢ならん!」ズビシッ 所は格納庫。先程の戦闘は終了。現在は再出撃の為の調整中の様だ。 そして整備班長の指差す先には、脚のもげたBf 109もといタイガーバウム。ついでに両翼にも弾を受けている。 そんな愛機を見て満足げに頷くと、俺は操縦席の後ろに積んであった酒瓶を傾ける。 俺「ハァッハー!良くあるこった、気にすんな!」ガブガブ 班長「フゥーー……状況を整理しようか、少尉。大型は確かにデカイがその股をくぐるなんて戦闘機でやるもんじゃないぞ? しかも超低空飛行でエンジンに砂が入るわ、もうちょっと労わってやってくれ」 俺「すまんすまん。ここに来てからあんまりにも調子がいいから、もっと飛ばしたくてな。やっぱお前らの腕は最高だな。 動きが全然違う、まさに人機一体って感じだぜ。ありがとな」ニシシ 班長「…礼を言うならこのトンデモエンジンの開発者と機体の制作元に言うんだな。 一度魔法力を流せば、長距離航行可能。運動性の上昇…機体の方もそれに付いてこれる安定性に格闘性能。それに戦闘機型のBf 109なんざ聞いた事もないしよ」 俺「エンジンの設計は扶桑だ。機体はメッサーシャルフで…あーエンジンは調整し直しだったな。コイツは俺の給料30ヶ月分で作ってもらったのさ」 班長「おおう…ストライカーも大分高いが、コイツはすげえな…オーダーメイドか」 俺「そんなモンだな。まぁ、12ヵ月分にまけてもらったけどな」 班長「どうやって!?」 俺「全員に女紹介してやった」ドヤ 班長「……まあ、そうだよな…うん」 俺「ハッハッハ!そいつも本当だが、大方の理由は設計図さ!扶桑でもらったな!」 班長「設計図だァ?」 俺「そ。最初に乗ってた九六式が限界に近かったんでダイナモ作戦の後に変えたんだ。 そんでメッサーシャルフに、今出てる最高のストライカーと同性能の戦闘機を作ってくれって頼んだら、エンジンの設計図を見せろって言われてな」 班長「分かるなぁ…その気持ち。で、企画、設計は誰なんだ?これは実験機だったんだろ?」 俺「イチローだよ。実験内容は男でもウィッチと同等に飛べるか。だけど適合者がいないから駄目になったんだと。で、そいつを俺が拝借。」 班長「運がいいというか何というか……」(イチロー…はて、どっかで聞いたような…?) 俺「ハッハー、運も実力の内ってな!」 「ふふん、相変わらず良く回る口だな」 突然後ろから羽交い絞めにされ、持ち上げられる。ストライカーの音からして彼女だろう。まあ、持ち上げると言っても数センチ浮いた位だが。 俺「おう、中尉。上がりか?」 マルセイユ「とりあえず午前は終わりだな……おも…」 そう言いながらそのままよろよろと飛び、発進ユニットの方へと進む。 道中、重そうに持ち上げた俺にマルセイユが楽しそうな声色で話しかけた。 マルセイユ「さーて、今日は何機落とした?」 俺「ハッハー、聞いて驚け!飛行杯5に陸戦4、大型1だ!」 マルセイユ「……飛行杯なら私の勝ちだな、7機だ」 俺「…午後から巻き返してやるよ」 ペットゲン「その前に服を着なさい」ゴンッ ライーサがMG34で俺を殴る。 難なくゴーグルで受け止めながら、甘いなと、笑った。 俺「下来てるから良いじゃねえか!」ブーブー マルセイユ「まあ、暑いのは分かるがなぁ…たかがタンクトップ一枚だぞ?」 俺「キャビンの中は蒸し風呂みてぇなもんだ。少しでも涼が欲しいの!―――ぐぅぅ―――オゥ…」 マルセイユ達は長袖にも関わらず汗は少しかいているだけ。対する俺は上半身裸にも関わらずだらだらと汗をかいていた。 ウィッチとしてのシールド、彼女らは障壁を張って暑さを凌いでいるのだが、俺にはその機能は備わっていない。 それに操縦席は窓が無いのだ。直接風を受けられる彼女たちは何と羨ましいことか… ペットゲン「っぷぷ、体は正直ね」クスクス マルセイユ「よし、さっさと食べに行こう。ライーサ、早く脱ぐぞ」ブロロロ ペットゲン「はい、ティナ。俺は先に行ってていいよ?」 俺「ハハーン、レディを置いて先に頂戴しようなんて事考えると思うか?…って聞いてねえし…班長ー先に飯貰うぜー」 班長「おーおー両手に花たぁこの事だな。次までには仕上げとくから早く行け」シッシッ 俺「ハッハッハ、さーて今日は何かなーっと……」 呟きながらハンガーを出る。今日も太陽さんは絶好調だ。ぎらぎらと辺り一面を焼いている。 半裸でも関係なく汗がどっと出てくる。じりじりと皮膚が焼かれる感覚にはもう慣れたが、これ以上日焼けしたら立派なアフリカ人になりそうだ。 暑さに思わず呻き声を漏らすと後ろから二人分の駆け足の音が聞こえてくる。 ――何も走らなくてもいいのに―― 振り返ろうとすると、背中に衝撃と幸せの感触、そしてライーサのため息が聞こえた。 マルセイユ「そんなに肌出してると火傷するぞ?」 俺「ハッハー、俺は火傷しない体質なんだ!…うん、マントがあった方がいいなァ」 ペットゲン「ティナ!飛び付かなくてもマントは渡せるよ?」 マルセイユ「お、ライーサもやるか?」 ペットゲン「やりません……俺、変な事考えて無いでしょうね?」 俺「あ?美女に抱きつかれて考えない方が失れゔ!?」ゴシャア 蹴りが飛んだ瞬間、マルセイユがその素晴らしい視力を使って俺から離脱。 首に巻き付いた手が離れた瞬間、左手を前にその足を顔面ギリギリで受け止める。 マルセイユ「ナイスキック、マティルダ!」グゥレイト! 俺「ハッハ、今日もばっちりだな!」 マティルダ「ふん、今日はマミが当番だ。早くしろ」 俺「扶桑料理か!……マミはまだ訓練期間か?」 ペットゲン「…俺、ちょっと……」 振り向きざまに見たライーサの顔は、…なるほど。 俺「ご相談なら何なりと…お嬢さん」 紳士とは、女の子達の願いを叶えてこそ輝くものだ。 ―――――――――――――――――――――――― ――――――お昼休憩 帰ってきた俺達の話す今日の戦闘を聞きながら、加東は漬物をかじる。 稲垣と氷野兵曹ら扶桑の整備兵達が漬けた物で誠に美味。扶桑最高。 両隣では俺とマルセイユがまた戦果を競いながら、もっさもっさとご飯をかきこんでいる。 加東「今日もハイスコアね…よろしい」モクモク 俺「今の所俺が一歩リードだ。今度こそ引き分けかァ?」モギュモギュ マルセイユ「ふふん、私は午後だって出撃だぞ?まだ勝ちは譲らないさ」モグモグ 稲垣「あ、おかわり要りますか?」 俺・マルセ「「頼む!」」 競争競争競争。俺が来て早3週間。二人が勝負と言わない日は無かった様に思う。 どっらがご飯を早く食べ終えるか、どっちが多く腹筋出来るか、シャワー終わりの牛乳をどっちが早く飲み干すか… ちなみに戦闘に置いてはマルセイユがリードしている。まあ、俺もしっかりと報告すれば同じ位だと思うのだが。 味噌汁を飲みながら、またご飯をかきこむ二人に注意を施す。 加東「腹八分にしときなさいよ?まったく食べれば良いってもんじゃないの!」 俺「腹が減っては戦は出来ぬってな!それにうまいから仕方ない!」モッシャモッシャ ペットゲン「ティナもだよ?この前みたいに食べ過ぎで戦闘不能なんてやめてね」 マルセイユ「…分かってるよ。もう一杯」 ―――――――――――――――――― ―――――――――――――――― お昼寝ほど心地の良いものはなかなか無いと思う。たくさん食べて、その後少しのお休みを使って椰子の木の陰に寝転ぶ。 カトーが『食べた後すぐに寝ると牛になる』と言っていたが、虎だし心配ないだろう。 寝転べば、すっと眠りの泥に沈んでいく。少し暑いが風で汗が冷やされて気持ちがいい。そのまま意識はぬるい底なしの泥に沈んで落ちていった。 マルセイユ「えいっ」ピト 俺「……んお?」パチッ 椰子の木陰に寝転んでいた俺の頬に瓶を当てる。泥みたいに動かなかったから少し心配したが杞憂に終わったようだ。 もそもそと起き上がると大口を開けて伸びながらあくびをした。猫かコイツは…ああ、虎か。 俺「ふぁ~~…ゔぅー……中尉?どうした?」ゴキゴキ マルセイユ「牛乳。マティルダから貰った」ポイ 二つ持っていた内の一つを投げ渡し、隣に腰掛ける。 ちょっと冷えた蓋付きの牛乳瓶。嬉しそうに俺が瓶を眺める。 俺「おーあんがとよ。………なあ、アレある?千枚通し」 マルセイユ「そんなものない」 俺「……あれなきゃ開けらんねぇんだよ」 マルセイユ「…女のはいじり慣れてる癖にか?」 俺「お前の口からその言葉が出るとは思わなんだ……あっ」どぶっ 俺「オゥ…指入んねぇ…蓋取ってくれ中尉」 マルセイユ「本当に駄目なんだな…ほら」 俺「ありがとよ。あ、指濡れちまったな」ハシ ベロン マルセイユ「~~~~ッ!?」 俺「うん、うまい」 マルセイユ「………馬鹿か」 赤くなったマルセイユの反応を楽しみながら、ぐいっと牛乳を飲む。 ここに来てからほぼ毎日飲んでいるが、飽きないおいしさは素晴らしい。 俺「ハッハ、猫舌はこういう時便利なのさ。欠点はアイスキャンディーがすぐ無くなっちまうトコぐれぇだな」ニシシ マルセイユ「…今度目の前でゆっくり食べてやる」チビチビ 俺「半分ぐらいもらうからな」グビグビ マルセイユ「ハン、ジェラートでも食ってろ」 俺「お、じゃあ休暇が被ったらロマーニャ行くか?俺の庭だぜ?」 マルセイユ「時間があったらな」 俺「決まりだな…………さて、行くか」ザッ 牛乳を一気に飲み干し立ち上がる。この行動が示す事は唯一つ マルセイユ「来たか…便利な耳だな。瓶はちゃんと木箱に入れろよ!」タタッ 俺「あ!待てコラ!今日は俺が勝たせてもらうからな!!」ダダッ 木陰からマルセイユが飛び去る。一歩遅れて俺も駆け出した。 テーブルを横切ると書類を書きながらサンドウィッチを食べるカトーから今日の予定が飛ばされる。 加東「俺!2時頃にコンテナ届くからよろしく!!」 俺「あいよ!!」 雑用は大変だ。素早く敬礼し、俺はハンガーへ駆けだした。 ―――――――――――――――――――――――――――――――― 俺「月の~沙漠を~はぁーるーばるとォー」フンフン 稲垣「旅のーラクダがー行きーましたー……お上手ですね」 俺「マミの方が上手さ。やっぱかわいい子が歌った方がいいなァ」 二人でコンテナを運びながら歩く。稲垣が一つ、俺も一つ。ちなみに俺は二つ持って行こうとしていたので稲垣が渾身の力で止めた。 稲垣「俺さんはこの後水浴びですか?」 俺「ハッハ、水浴びは最後だ。この後はマミと洗濯だぜ?」ニシシ 稲垣「忘れてなかったみたいですね」ニパ 俺「ハハー、当然だろ?さ、早く運ぼうぜ!」 稲垣「はい!」タタッ ―――――――――――――――――――――――― ―――――3時近く 洗濯 ざぶざぶ 俺「あ、これボタン取れそうだな…ゆっくり着ろっての、まったく」ジャブジャブ 稲垣「…なんでこんな普通に洗ってるんですか……」ザブザブ 俺「いやだって…見慣れてるし? あ、カトーの奴コーヒーこぼしやがった」シミヌキット 稲垣「ヒモ?ってすごいんですね」 俺「まあなー養ってもらって女の子と遊べて、最高だ! その代わりに掃除洗濯家事のあらゆる全てをこなし、なおかつ相手が好きな俺を保たなくちゃあならないけどな。まっ楽勝だけど」フンス 稲垣「わぁ…すごいんですね……!」キラキラ 俺「ハッハ、マミは正直だな!中尉に『ヒモのなり方』を教えてやった時には怒られたもんだぜ!」 稲垣「え?…そう言えば最初からマルセイユ中尉と知り合いだったみたいですけど、いつ会ったんですか?」 俺「ダイナモ作戦の時さ。あいつの部隊の支援に行った時に少し話したんだよ」 稲垣「それだけですか?」 俺「おう。いつか隣を飛べるようになるといいな、って言って別れたんだ。少しだったが、面白い奴だってのは分かったなァ」 稲垣「やっぱりマルセイユさんはすごいんですね…」 俺「ハッハ、信念を持った奴は面白いんだよ……マミ、訓練は辛いか」 稲垣「―――ッ!?い、いえ!全然平気です!むしろもっと頑張らないと、皆さんに……その、ご迷惑を…」 次第に声が小さくなる。無理もないだろう。たった14歳で戦場に来たのだ。 それも周りはみんな実力者。親しくなった者もいつ死んでしまうか分からない… きっとここで話を終わらせてしまえばそこまで。だが、それはこの子の意思ではないだろう。一声、それだけでいいんだ。 俺「マミ」 洗っていた手を止めて、彼女の潤んだ瞳を見詰めた。 稲垣「…………私は、皆さんより弱いんです」 ぽつりと心の内がこぼれ出す。 俺「ああ、そうだな」 稲垣「…私も、出撃した事はあります。でも、いつも迷惑をかけてしまって」 稲垣「情けないんです。力があるのに、訓練してるのに、全然追いつかなくて……」 稲垣「…分かってはいるんです。ケイさんにも言われたし、まだ、追いつけないって」 稲垣「才能があるって言われても、なんだか……不安で…もしかしたら騙されてるんじゃないかって」 稲垣「……あの、俺さんは、どうして戦うんですか?別の道だってたくさんあったのに…」 俺「やりたかったからだ」 稲垣「………え?」 俺「俺は、俺の進みたい道を選んできた。それだけだ」 稲垣「え、その…その力が、ウィッチの力があるからじゃないんですか?」 俺「守りたいものがあったから、力を手に入れたんだ。仕方なくやってるんじゃねえよ」 俺「…誰に言われたか知らねえけどよ、まあ確かにヒモやってた方が楽だし、レーサーやってた方が女も金も手に入るぜ? でもよ、それじゃ女の子を守れねえんだ」 稲垣「でも!…自分が死ぬかも知れないんですよ!?誰かを…失うかも知れないんですよ?それなのに、どうして―――」 俺「まったくもってその通り!…だがな、俺は手前の魂に嘘を吐きたくねえ!」 稲垣「―――――ッ」 俺「…それに、この力が無くたって俺は戦いに飛び込んだぜ?マミ、お前は違うのか?」 稲垣「なんで、そんなに…」 俺「後悔なんざしたかねぇんだよ、俺はな」 稲垣「……俺さんは、まっすぐでかっこいいです…」ポロポロ 俺「…」ポムポム 稲垣「いつも、考えてたんです…この力が無ければ、幸せだったんじゃないかって」グスグス 俺「…俺はな、いつも幸せだよ」ポムポム 俺「俺は全力全開で生きて来た。今もそうだ。その生き方しか知らねえしな」 俺「一つの場所に留まるのが嫌だった。だから走って来たんだ」 俺「…確かにその力はお前の意思じゃなかったかもしれない。でもよ、ここに来たのはお前の意思じゃねえのか?」 稲垣「…私は…まだまだですね」 俺「お前は俺達アフリカの仲間なんだぜ?だから、転んだっていいんだ。焦らなくてもお前は、お前の強さに向かって進んでる」 稲垣「はいッ…」 俺「ハッハ、それでいい。一人前になるまでは俺達が守ってやる。 …力があるから戦うんじゃない、信念を、何かをもって、何かの為に戦ってんだ。マミだってもってんだろ?」ナデナデ 稲垣「…はいっ」(大きい手…何だろう、お父さん?ううん、私の知らない……) 稲垣「俺さんの手は大きいですね」 俺「おう。なんでも掴めるぞ?」ワシャワシャ 稲垣「いなかったから分からなかったんですけど……」 俺「おう?」 稲垣「俺さんって、お兄ちゃんみたいです」ニコ 俺「は……ハッハ、そうだなァ」ワシャワシャ 稲垣「うー…そんなにやらなくても良いじゃないですか」ブー 俺「ハハ、これだけ言えれば元気だな。みんな心配してたんだぜ?特にライーサがな」 稲垣「あははやっぱり…ごめんねライーサ…」 俺「ハッハッハ、大丈夫だ!うまい飯食って寝れば明日になる。だろ?」 稲垣「ふふっ、俺さんはやっぱりカッコいいです」 俺「かわい子ちゃんの悩みを聞いて、解決して差し上げるのも紳士のたしなみだぜ? それにごちゃごちゃ考えるのが嫌なだけだ。さ、みんな待ってるぜ」 洗濯終了!と言うと俺が桶を抱えて立ちあがる。洗濯のものは全て綺麗に洗ってあった。 稲垣「俺さん、私が持ちます!」 俺「おう、頼んだぜマミ」ヒョイ 稲垣「っとと、…えへへ、今日のご飯は何でしょうね?」 俺「俺は肉がいいな~たまにはがっつり行きたいもんだ」 稲垣「じゃあ、お肉が届いたらみんなで食べましょう。炊事班の皆さんと頑張りますからね!」 俺「ハッハ、楽しみにしてるぜ」ナデナデ 稲垣「おいしいご飯は任せてください」ニコ 俺「任せた。さ、早く戻らないと炊事班の奴等にどやされちまう」ザッザ 稲垣「あ……はい!」タタッ 先行く大きな背中を追いかけるように、稲垣は走る。手に抱えた桶の重さを感じながら、俺の隣に並んだ。 その日見た景色は、どことなく故郷、扶桑の梅雨明けにも似た爽やかさを孕んでいるように感じ、 稲垣はふっと笑った。 ―――――――――――――――――――――――――――――― ――――――――――― 「新型ストライカーねぇ……」 「今度こそ駄目か?」 「そこまで言うなら使って安全を確かめてみろ、だそうだ。実験はそっちでやれば良いだろうに」ギリ 「事故が多いと聞くからな…それにあの子の意見も尊重したかったがなぁ……」 「祈るしか無かろう。何もない事、何も失わない事…」 「壊したらどやされるかね?」ハッハッハ 「報告書も提出だ。馬鹿馬鹿しい…契約書まであるんだぞ?」 「死ねと言ってる様な物だな。確かにエースが履いて、成果を出せば評価は良くなるだろうが…」 「今まで散々突っぱねて来たお釣りが来たんだろ。諦めなかった執念だけは認めてやる」バサッ 「だからと言ってどう説明すればいいのだ!?」バンッ 「もう逃げられん。それに今から呼んで説明しなければ間に合わない」 「そうだな。おい!彼女を、マルセイユ中尉をここに。話があると」 「はっ」ザッザッ 「あとおやつもあるって!頼むぞ!」 右に座す男が拳を握りしめ、怒りに震える手を落ち着ける。 ぎりりと歯を合わせる音が天幕に響いた。 「我が輩の、失態だ」 「お前の所為じゃないさ…ここにいる全員が共犯者だ」 次へ ページ先頭へ
https://w.atwiki.jp/vip_witches/pages/760.html
前へ 早朝 上空2000m付近 飛行杯がふよふよとマルセイユの周りを飛ぶ。 中心にいるマルセイユは静止したまま動かず、銃口を向けたまま固まっている。 マルセイユ「…………」 たらりと汗が顎に伝う。そのまま拭いもせずにインカムに吼えた。 マルセイユ「……まだか!」 ≪中尉!掴まれ!≫ 朝の空気を引き裂いて一機の戦闘機が駆けてくる。 そのまま飛行杯の纏まりに突っ込む。慌ててマルセイユが右翼を掴むとさらに速度を増し、上空へと抜けた。 ≪遅いぞ、馬鹿!何してたんだ!?≫ ≪すまん!哨戒先で手こずった!≫ そのまま上空へエネルギー保持の為に上昇。飛行杯が追撃してくるのを横目で見ながら体勢を整える。 風防を開け、操縦席の後ろからマガジンを探り出してマルセイユに放った。 ≪ふいー……大丈夫だったか?≫ ≪問題ない…まったく、すぐ行くとか言って待たせるとはな…≫ ≪ハハーン、中尉なら平気だろ!?≫ ≪ふふん、否定はしないっ!≫ タイガーバウムが下に潜り、ロールからの迎撃に入る。上方の目標を失い、そのまま突っ込んで来た飛行杯をマルセイユが撃ち抜く。 そのまま飛行杯を引き付け、横に辷りながら降下。その真横を下から交差するようにタイガーバウムが突き抜け、後方の飛行杯の2機を数発で撃ち落とす。 ≪やっぱりその魔法便利だな≫ ≪こっちは底抜けのバケツで滝を受け止めてるようなモンだ!っふ、と、そっちだ!≫ ≪知ってる≫ ≪ハッハ、痺れるねぇ!≫ ≪そっちこそ……3機目!≫ ≪これで最後かァ?中尉!≫ ≪来い!!≫ 側面から迫りくるタイガーバウムとその後ろの飛行杯に狙いを定め、そのまま静止する。 にやりと俺が笑い、ほんの少し機体を傾けそのままマルセイユの真横を突き抜ける。 そのすれ違いざま、丁度傾いた分だけのスキマに銃弾を叩き込む。 銃弾は寸分の狂いもなく、吸い込まれるように飛行杯へと突き刺さった。 ≪まったく、なんてものくっ付けて来るんだ≫ 昇る朝日に砕けたネウロイの欠片がてらてらと輝く。 風圧で凪いだ髪を片手で押えながら、マルセイユはこちらに振り返った。 ≪ハッハ、背中は中尉に任せてるからな≫ 俺がからからと笑いながらマルセイユの隣にタイガーバウムを寄せる。 ≪ほら開けろ。指令部と繋ぐから≫ ≪へいへい、女神さまの仰る通りに…っと≫ ゴンゴンと少しばかり乱暴なノックに答え、風防を開けてやる。 熱気の籠った操縦席に、上空の冷えた空気が心地好い。 俺「っぷはぁ!やっぱ風を感じてえな!」 マルセイユ「ふふん、お前もストライク―を履けばいいんだ」 俺「なーに、コイツで充分さ」 マルセイユがさっと操縦席の左縁に腰かけ、計器盤に手を突っ込み通信スイッチをONにする。 そんな彼女を横目に、俺はゴーグルを上げて後部の酒瓶達を漁りだす。 マルセイユ「指令部?…ああ、うん。全部落とした…うん、分かった。了解」 がちゃがちゃと酒瓶を避ける音に混じって通信兵の安心したような溜息が聞こえる。 その応答にマルセイユは大げさだ、と少し照れながら笑って通信を切る。 俺「お!あったあった!見ろ、中尉!」 マルセイユがスイッチを切ると、タイミング良く横から俺がちょうど(俺の)掌サイズの籠を見せてきた。 茶色の綺麗に編まれた籠。使い込まれた感じのくすんだ金具。どう見てもバスケットだが、こんなに自信満々に見せられても困る。 間違えるはずはないけれど、マルセイユは少しだけ戸惑いがちに答えた。 マルセイユ「…バスケット?」 俺「半分正解だな。ほれ」 マルセイユ「サンドウィッチ……!」 眼を輝かせる彼女のお腹が小さく鳴いた。 しまったと、慌ててお腹を押さえるが頬の朱を隠し忘れている辺り年相応だなあと俺は思う。 俺「ハハ、そうだと思ったぜ。朝飯食ってなかったろ?つなぎだ」 マルセイユ「あ、ずるいぞ俺…うまいな」 俺「ブリタニアはローストビーフだけはうまいからなァ」 すでに食べていた俺にならって一つ掴んで食べる。 少しだけ焼いたパンにバター、ローストビーフ、チーズに戻し野菜。 パンにはローストビーフの焼き汁と戻し野菜の汁が染み、厚切り具合がちょうどいいし、 肉と野菜の間にかりかりとした砕けた胡椒の香ばしさが混ざっておいしかった。 マルセイユ「本当に料理出来たんだな」 俺「ハッハ、ガキのころから厨房にいたからな!ほら、もっと食え」 そう言って一緒に取りだした酒を飲む。雲も無く、風も明朗。世界の彼方まで見える位、大気は緩やかに巡っていた。 きょとんとマルセイユがチーズを伸ばしたまま固まったのでその食べかけを一口で食べ、また酒瓶を傾ける。 俺「さすが俺だな、今日もうまい」 マルセイユ「良いのか?」 俺「成長期はしっかり食わねえとな。俺は作ってる時に味見したからいいんだ」 マルセイユ「ふーん、食べちゃうからな」 俺「おうおう、食っちまいな。ふぁーー…ここは気持ちいいなァ」 くああと、もふもふと虎の毛が生えた姿であくびをする。 そう言えばこいつはいつ寝ているんだろうか。寝ている姿なんてほとんどみた事がない。 それに寝ていてもほとんど体が上下しないのも驚いた。 眠たげな俺を背にサンドウィッチを食べていると、空の向こうに綺麗な三角形が現れた。 マルセイユ「空は何もないからな……ほら、見えるか?あれがピラミッドだ」 俺「あんなにでかいのか…」 マルセイユ「ああ、王が無事天まで昇れるように…と造ったらしい」 俺「へぇ…そこまで願われて、慕われる奴はやっぱ凄かったんだろうなァ」 マルセイユ「古代エジプトでは王は絶対的な存在だったからな…当然だろ」 しばらく黙って見ていた俺が唐突に目を輝かせた。にっと口元に笑みを浮かべ、 俺「だが、空ではそれすら見下ろせる」 何とも図々しいと思う。 だが少しも敬意を払わないばかりか見下す俺は、なんだか型にはまっていた。 高く、遠い。そう思って、マルセイユは小さく笑った。 マルセイユ「…ここは、王ですら行きつけなかった最上の地」 遠く彼方のピラミッドを、その先を見ながら、俺がマルセイユの方を見る。 目が合うとにっと笑い返された。その顔を見て笑い、操縦席の縁に肘をかけた。 マルセイユ「やっぱり、私はここが好きだ」 俺「…ああ、俺もだ」 改めて景色に目を移す。縁に腰かけた彼女も顔をあげ、朝日に揺れる彼方を眺める。 上空5,000m。まるで頂点に立った様な錯覚を覚える高度。 インカム越しに聞かれぬ様に溜息を吐き、微かに震える彼女の手をそっと握った。 基地 俺「超・完・成!!俺特製パスタァァアアアア!!!」 稲垣「ミートボールスパゲッティですね!」 ペットゲン「え、ミートボール入れるの?」 俺「ミートボール大好きだからな!昔、軍のコックが作ってくれたのがうまくてなー」 パットン「うむ、また腕を上げたんじゃないか?俺」 朝食はミートボールスパゲッティだった。 散々作ると言っておいて、ようやく作った将軍達との約束の品。 加東「あら、将軍は召しあがった事が?」 パットン「コイツを基地に呼んだ時に作らせたのさ。有名だったからな…虎のパスタ」 モンティ「不味い飯じゃ士気も下がる。さすがロマーニャだな」 ロンメル「ブリタニア人が何を言っているか」 俺「やっぱりうまい飯が食いたいからな。さすが俺、今日もうまい!」 俺が豪気に笑って器用にフォークを操る。 本当に幸せそうに食べる。将軍たちもちくちく悪口を言い合いながらも食べていた。 パットン「実はこれが不味かったら軍法会議だったんだがな」 稲垣(食べ物に運命を左右されるって……) 口元のミートソースをぬぐい、パットンがぼそりと呟く。 なんだかその先まで見通せたようで、稲垣は小さく震えた。 マルセイユ「俺、おかわりだ」 俺「あいよ!…お、ソース付いてるぞ」 マルセイユ「どこだ?」 俺「あー!それ洗うの俺なんだから!ほら、口の端っこ!」 そう言うと俺がマルセイユの口元をぬぐい、そのまま指を口に運ぶ。 その様がどうにも自然で将兵達は反応に遅れ、怨恨の視線を俺へと送る。 マルセイユ「ん……ん?お前が洗ってるのか?」 俺「あん?当然だろ、雑用だからな。それよりも今日のソースうまいな!」 マルセイユ「ん?ああ、そうだな」 俺「おう。今度はたくさんあるからがっつり食えよ!」 ペットゲン(何だろう…何かを見過ごした気がする) じっと見ていたロンメルが不意に口を開いた。 ロンメル「さすがあの少将の子飼いだな。馬鹿さ加減がそっくりだ」 そう言って溜息を吐く。 少将と重ねているのか、その目はどこか遠くを見ているが。 俺「大胆と言ってくれ!」 加東「無茶と無謀とバカは大胆とは言わないの」 胸を張った俺に拳が飛ぶ。 加東の淡々とした物言いに、俺が良い事を思いついたとばかりに口元を歪める。 俺「アウチ…ったく、こんなだから貰い手が……おっと滑走路に行かなきゃなー!!」 加東「っの、俺ぇ!逃げるな!!」 稲垣「ケイさん!それしまって下さい!」ヤメテェ! マルセイユ「ケイ、もうちょっと左だ…そこ!」 タァン! <うおおおおっ!?ちゅ、中尉!カトー!やめ…ふおおおおおお!!? ゴロゴロ ペットゲン「後2分…あ、本日261人目」 <ちょっとこれ貸せ!な? <てめぇ虎野郎、貸せとか言って取るんじゃねええ!! バキィッ! はうっ その辺にいた兵を殴り倒し、ケッテンクラートを奪って滑走路へと走って行く。 苛立たしげにそれを見送った加東は、雑嚢に銃をしまった。 加東「…ネウロイはまだ観測されてないから、少しゆっくりしてていいからね」 マルセイユ「哨戒の連絡待ちか?」 加東「マルセイユはこの後哨戒ね。他のみんなも、いつでも出撃出来るようにはしておいて頂戴?」 マルセイユ「うえー…また私一人か?」 加東「あなたが一番目いいんだから我慢なさい。俺も付けるわよ?」 マルセイユ「午前は機体の点検だ」ムス 稲垣「あの、射場は空いてますか?」 加東「空いてるわ。手は…出されないか。無理しないようにね」 ペットゲン「マーミ!一緒にやろう?」 稲垣「いいのライーサ!?」パア ライーサ「もちろん!」 二人が食器を片付け、ぱたぱたと兵士達の間を抜けながら射場に向かう。 その様子を見る兵士達も、ほわほわと笑みをこぼしながら、さりげなく道を開けたり、おやつをあげたりしているのが見える。 こうして見てみると随分ここも変わった様な気がする。 俺が来てからと言うもの毎日鍛錬と喧嘩。慕うべき目標と言うか、マルセイユだけでは補い切れなかった部分まで、奴は一瞬で塗り替えてしまった。 戦う毎に先陣を切り、無茶を通して行く。ふざけて兵たちと遊び、アフリカを見渡していた虎を思い出しながら、長机に腰掛けた。 加東「……新型、どうするの?」 隣でスパゲッティを食べている少女に問いかける。 ふっと瞳が揺れ、溜息を吐きながら少女はフォークを置いた。 マルセイユ「この前将軍達に謝られたよ。サインもしたし…それに、もうケッセルリンクが黙ってない」 加東「F型、壊さないようにね。さ、ちゃっちゃと済ませて水浴びでもどうかしら?」 マルセイユ「…そうだな、マティルダに頼んでおいてくれよ」タタッ 手を振ってマルセイユを見送り、溜息をつく。 加東「2,3回履いて故障させる…か。やっぱり履かなきゃダメよね」ハァ 猛烈に胃薬と頭痛薬が欲しい。報告書だの始末書だの、俺のおかげで将軍達が多めに見てくれるからと言って、上に提出する書類をまとめるのは自分なのだ。 受諾したばかりの新型を2,3回で壊して「いい機体でした」なんて言ったらまた新しい奴が配備されるに違いない。 ああ、また研究員の言葉が頭をよぎる。忌々しい、何が『絶対大丈夫』だ。 加東「……絶対なんて言葉を使うのは、自信の無い臆病者か、よっぽどの馬鹿だけよ…!」 ――――――――――――――― 滑走路 俺「これもかー?」ゴロン 清掃班1「全部拾って下さいよー…あづぅ」コロン 清掃班2「いやーさすがに兄貴は早いですね。さすがパイロットだ」コツン 太陽が砂を焼く熱の中、マントを直しながら滑走路に落ちている石を、手に持ったバケツに放る。 毎日毎日乾いた風や、砂嵐が持って来る大量の砂と石を丁寧に掃除していく。 滑走路掃除は大変なのだ。それこそ、猫の手も借りたい位に。 俺「ハッハー、もっと褒めてもいいんだぜ?」ドヤ 清掃班3「はいはい、それも拾えよ」ゴロン 俺「わーってるよ…あちち」 清掃班1「手袋してくださいよ?」ミズー 俺「してるぜ?ほら」パッ 清掃班3「…これは、ドライビンググローブ!せめてパイロットグローブにしろ!」 俺「あー…よくある―――」 清掃班「「「無い!!」」」 <こんな細かい事気にすんなって! <兄貴は気にしなさ過ぎなの!だからバカなんだよ! <仕方ねえだろ!気になんねぇんだからよォ! ギリギリ <ギブギブ!ってあ゙ーーーー!! ガラガラ ―――――――――――――――― 整備班2「全部こぼしやがった…班長ー、滑走路掃除長引きまーす」 整備班長「報告御苦労!ったくまたあのバーカがなんかやったのか?」ガチャガチャ 砂を焼く日差しを避けた格納庫から整備兵が滑走路の様子を報告する。 傍らには数名の同期に双眼鏡。煙草が少々、酒瓶が5つ。 整備班4「清掃2にヘッドロックかけてますよ……おおっ清掃4の背後からの飛び蹴…あー顔面ストレート食った…いてて」 整備班1「鼻折れてねえか?全方向奇襲も通用しねえしよ…はーどうすりゃ勝てんのかねえ」ガチャン 整備班長「野郎共双眼鏡なんて覗いてないで整備しろ!…まあ、スパナ食らいたいなら話は別だがな」スラッ 整備班「「「「ラジャッ!!」」」」ビシッ イソガシーゼ! ソケットクレー! ネジアマッタゾー! ワイワイ 班長が自慢のスパナをポーチから抜けば、さっと持ち場に戻り整備を再開する。 サボってもいいが仕事はしろ、が最近の合言葉。 熱気が立ち込めるハンガー内を移動し、いつぞやのキューベルワーゲンの所へ向かう。 最近やっと俺の魔導エンジンの補給が届いたので、ついでに直しておいたのだ。今は調整中だが。 整備班長「ふぅーー…おい、キューベルの調子はどうだ?」 整備班3「班長殿、コイツは『バウムクーヘン』ですよ」ガチギリリ 整備班長「あいつのネーミングセンスはどうかしてるな…」 整備班1「酔った勢いで魔導エンジンをブチこんだ班長もどうかして――冗談です。いい意味で、です班長殿」ダラダラ 俺「おいおい班長、朝っぱらからスプラッタとかやめてくれよ」ヨッコイセ 整備班長「よう俺、いつ名前なんて付けてくれたんだ?」 俺「ぶっ壊した日だから……3週間とちょっとか?カッコいいだろ?バウムクーヘン」ドヤッ 整備班長「…タイガーバウムからおかしいと思っていたんだ、そのネーミングセンス……!」 俺「はっはっは!一つ前に乗ってた奴がグロールタイガーだったからな!タイガーを取った!」 整備班4「いや、グロールタイガーは普通だ」シンケン 整備班長「…うん、もういい」 俺「そういやクーヘンは直ったのか?派手に壊れたと思ったんだが」 整備班2「兄貴の機体のエンジン部品が届きましたからね。そいつで班長が直しましたよ」 整備班長「そう言う事だ、大事に使ってくれよ。俺の傑作なんだからな」フンス 俺「またかっ飛ばさせてもらうぜ!」フンス 整備班長「…ふは、はッスパナは、まだまだある…!!」ブンッ 整備班3「班長殿ぉ!お前ら取り押えろ!班長殿がご乱心だー!!」 ハンチョー トマッテ! コワレマスヨー!! ヤメロォオオ!! ガンッ!! ガホォォオ!? アニキーー!!? ――――――――――― 格納庫の隅 俺「野郎に治療してもらってもなぁ…」ハア 整備班2「俺だってやりたかねえよ!タイガーちゃんをいじってたほうが楽しいつうの!」ギュッ 俺「へいへい、そういやアレなんだ?見た事ねえけど」 頭に包帯を巻かれながら、一昨日は無かったカーキ色の幌をかぶった物体を指差す。 背の高い俺に苦戦しながらも包帯を巻き終えた整備兵が振り返れば、現在最高の不安材料が見え、思わず返答に詰まる。 整備班2「…マルセイユ中尉のユニットだよ。新型のBf109/G-2…エンジンに欠陥があるって評判の問題機さ」 整備兵1「昨日届いたんだが、中尉はコイツが大っ嫌いでね…今は調整と言う名の放置だ。まあ、お偉いさんの命令には逆らえんしな…」 格納庫に鎮座する最新のストライカーを見て、二人が重い溜息を吐き出す。 カーキの幌に包まれたそれは、マルセイユがどれ程嫌っているか分かる位に、一切の手も付けられていなかった。 俺「…なるほどな」 整備班長「何がなるほどなんだ?」 整備班達が作ったであろうリラックスチェアに横になりながら、俺はポケットから葉巻を取りだして咥えた。 その横にあった空き箱に班長が腰かけ、煙草を吸い吸い、無言でマッチを俺に投げて寄こす。 俺「中尉が悩んでるというかな…なんとなくだよ」シュッ 整備班長「さすが百戦錬磨の虎ってとこか?」フー 俺「女の子ってのは繊細なんだよ。特に16まではな」 整備班長「かっはっは、よく見てるよ、ホントに」 俺「かわいいもんだぜ?16の誕生日にわざわざ来りなあ」ハッハ 整備班長「いいねえ…久しぶりに夜の街にでも繰り出してぇなあ。どうだ?俺も」 ちらりと横目で俺を見遣る。夜に抜け出すのは、警備の兵も目を瞑ってくれる。 しかし、目一杯遊んで帰るには、早い足が必要だった。おそらくクーヘンの魔導エンジンならば、最速記録を簡単に破れるであろう。 そして何より、夜の撃墜王が喰いつかない訳がない。 俺「…ハッ、熱いセックスさえあれば、愛なんていらねえよ」 俺が楽しそうに喉をぐるぐる鳴らす。ニッと笑った俺を見て、 整備班長が立ち上がる。今日はいい酒を警備の奴等にやらないと駄目だと、思いを巡らせる。 整備班長「ヤッハ、決まりっ!野郎共に知らせなくっちゃな!!」 俺「おいおい、酒だけで終わっちまうぞ?」 整備班長「いいんだよ。夜を教えてやるだけさ」 俺「…だったらとびっきりを用意しなくちゃなァ」ニヤ 整備班長「金はお前持ちだぜ?少尉殿」 俺「おういいぜ!存分に楽しもうじゃねえか、兄弟!」 整備班長「はっはっは!そうこなくっちゃな!」 吸っていた葉巻を酒瓶に放り込み、俺が整備班長へと拳を突き出す。 その動作を見た班長も煙草を踏み消し、俺の拳に自身の拳をぶつかり合わせた。 ――――――――――――――――――――― ――――――― エンジンの轟音が辺りに響く。 音に遮られないように自然と声が大きくなるのはいつもの事。 エンジンの振動を聴き、異音が無いか、共鳴音はおかしくないかを全て聴き分ける。 オーバーホールはすでに4回目。必要な部品はすでに底を尽き、補給を今か今かと待ちわびる状況だ。 整備1「飛行時間を大幅に超えてるが…どうする?」 俺「…お前等の腕でどうにかしてくれ」 整備1「……了解」 俺「やっぱ特別製はキツイな…改造で補うしかねえか」 会話を交わしながらエンジンを切り、飛び降りる。 じわじわと奪われる水分を酒で補給しながら工具箱を手に取り、機首部分へと向かう。 整備班長「どの辺をやるよ」 俺「エンジンだ。また音が飛んでやがる」ガチャコガチャ 整備班長「俺達でも気付けねえよ…本当に繊細だな」テツダウゼー 俺のやっている場所とは違う個所を微調整しながら、問題個所を見る。 来た部品とは違う場所の魔法力伝道経路が焼き切れ、分散シャフトが残り数本しか残っていなかった。 俺「ありがとよ。回転供給経路を捻じ曲げれば…」ギリッガギギ 整備班長「……ッ!?これじゃ伝導率が高過ぎだろうが!」 俺「これでダイレクトに魔法力が供給される」 整備班長「確かに飛べるがなぁ、お前の負担が…!」 俺「俺を信じろ。それに、こっちの方が高く飛べる」ニシシ 耐えられるはずがないのに、この男は何故笑う。 ここまでの状態に陥ったものを飛ばそうなんて普通の神経をしていたら考えない。思考をよぎる事すらない。 どうして飛ぶんだ、約束がそこまで大事か?叩きつけたい言葉はコイツが来た時から溢れるほどにある。 全てを一つに、朗らかに笑う正面の男の眼を見据え、唸るように呟いた。 整備班長「…これは無謀だ」 整備の雑音が響く。タイガーバウムへの細かな整備をしている連中も息を潜めて次の言葉を待つ。 待っている時間すらも水分を奪う熱の中で、奴の眼をぐっと睨みつける。 整備兵達の生唾を飲む音が聞こえる。次第に猛烈な暑さの中に怖気が混ざりだすのを肌で感じた。 それすらも心地よいとでも言う様に、奴は笑みを深めた。 俺「俺を誰だと思ってやがる」 さあ、女神のお帰りだ。奴は言い、軍靴を鳴らしながらハンガーの外へと歩き出した。 エンジン音でも聞こえたのだろうか、なにせ奴はウィッチ達全てのエンジン音の聴き分けすら出来るのだから。きっと中尉が帰って来たのだろう。 整備班長「………大馬鹿野郎が」 遠くなった背中に向かって吐き捨てるように声を掛けるのが精一杯だった。どうしてこうも馬鹿になれるのか。 だが、その背中に憧憬を抱くのは何故なんだ… どうやら予想は当たった様で、降りて来た中尉を奴が抱きとめ、一言二言言葉を交えていた。 考え過ぎてぼんやりとしてきた脳髄に遠くの俺の声が染み入る。 俺「班長、今日はちょっくら忙しいぜ!タイガーバウム発進準備だ!」 覚醒は、一瞬だった。 整備班長「了解!!」 タイガーバウムに駆け寄り、整備兵達への指揮を飛ばすがもう半分以上は出来ていた。 さすが精鋭。急いでエンジンに手を掛け、配線、回路、オイルを手早く調整し、魔法力伝道経路にスパナを入れる。 整備兵3「ッ!?班長、そこは!!」ガシッ 整備班長「…最後の足掻きだ…やらせてくれ」グッ 整備兵3「…っく、おい!モーターカノンの給弾!早くしろ!!」 整備兵5「少尉!準備完了まで後2分です!」 怒号の様な掛け声が響く中、俺が中尉を姫抱きにして発進ユニットの方へ向かっていた。 スパナでも投げてやろうかと身構えるとけたたましく警報が鳴り響き、思わず遅いと唸る。 しかし、観測班の名誉の為に言わせてもらえば警報はいつも通りなのだ。 こういう事も多々あるが、俺が来てからはその力の方が役に立つとの少佐のお言葉で俺が基準になっていたのだ。 俺「行けるか!?」 整備班長「おう!状況は!?」 俺「地上部隊が奇襲を食らった!ついでにくっ付いてきた飛行杯で中尉のストライカーが破損!」ガッガ、ガロロロロロ なるほど、中尉が姫抱きにされてたのは状況報告とストライカーへの被弾で姿勢制御が難しかったからか… 無線を付けながら俺が計器盤を操作する。それを横目で確認しながら安全な場所へ移動。無線での会話に切り替える。 エンジンの轟音がハンガーを支配する。回転数は急ぎの為、極微量の魔法力で上昇させるている。これは結構魔法力を食うらしい。 整備班長「…分かった。で、お前はどうする?」 俺「決まってんだろ?…カトー達を待っている時間はねえ、だが数からして無理はない」ニイッ 整備班長「そう言うと思ったぜ!っし、チョーク外せーい!!」 俺「カトー達にはゆっくりでいいと伝えてくれ!」 整備班長「了解!ウィッチ達を頼んだぞ!」 俺「おうよ!ティグレ、出るぞ!!」ブロロロロロ 整備班長「おい、ストライカーは!?」 俺を見送り、破損したユニットに集まる整備兵達に声を飛ばす。 ずんずんと近寄ると状況がだんだんと見えてくる…ああ、誰も返事を返さない訳だ… マルセイユ「そうか…代えのフリッツも」 整備兵6「申し訳ありません…現在2機とも整備中です…」 担当整備兵が俯きながら謝罪する。 油断していた。丁度2機とも整備の時期に当たったし、最近襲撃も安定しているから忙しくなる前に…なんて甘い事を考えていた自分が憎い。 ここはアフリカ。甘い水なぞ湧きはせぬ。 整備兵5「しかし増援は要らないと―――」 マルセイユ「そんなもの、強がりに決まってるだろ!」 加東「その通り!!」 整備班長「わっ少佐!?」 加東「びびるな!それよりも全機発進準備急げ!」ピョコン 整備班「「「「「「了解!!」」」」」」 ペットゲン「遅くなりました!!」ダダッ 稲垣「ケイさん!状況は!?」キキィ! 加東「地上部隊が奇襲を食らったわ!…先行した俺に追いつくわよ!」ブロロロロロ 稲垣・ペット「「了解!」」タタッ 二人がさっとストライカーを履き、エンジンを吹かす。 その横では、マルセイユが今だホロを被った新型―Bf109/G-2―を見詰め、押し黙っていた。 加東「マルセイユ、あなたは平気よ。その辺で―――――」 ガツリと軍靴が鳴り響き、マルセイユがストライカーへと向かう。 前に立っていた整備兵は半分転びながら慌てて道を開ける。怪訝そうに加東がマルセイユを見遣った。 足音は止まらない ペットゲン「…ティ、ナ?」 新型との距離を詰め、その正面に立って震える手を伸ばす。 エンジン音は彼方に消え、辺りは水を打ったように静かであった。 幌の表面に手を置き、そのまま手を止める。 一度だけ深呼吸をした後に、震える手で幌を握り締め、そのまま一気に剥ぎ取った。 浅く積もった塵が太陽を受けて輝き、カーキの幌から磨き抜かれたストライカーが現れる。 取った幌を投げ捨て、マルセイユが発進ユニットへと上がっていく。 加東「マルセイユ…あなた……」 悲痛な面持ちでこちらを見る加東に、靴下を脱ぎながら答える。 マルセイユ「勘違いするなよ、ケイ」 マルセイユ「確かに嫌だよ。エンジンは危ないし、嫌な奴からの命令だしな」 ひたりと足音がやむ。ここを超えれば後戻りは出来ない。何が起きてもあのサインがある限り、これを壊れるまで使わなければならない。 加東「…私達だけで何とかするわ!これは――――――!」 マルセイユ「私は私の意思でこれを履く」 ぴしゃりと加東の言葉を遮る。言わんとしている事は百も承知。 まだ何か言いたげな加東を見据え、マルセイユ大胆不敵に笑ってみせた。 マルセイユ「それに、好敵手の危機の一つや二つ…救ってやれずにどうする」 全てを振り切る様に、マルセイユは足場から飛躍した。 前へ ページ先頭へ
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/37073.html
【検索用 かとらりー 登録タグ 2017年 BiliBiliミリオン達成曲 VOCALOID YouTubeミリオン達成曲 か プロジェクトセカイ カラフルステージ! ミリオン達成曲 初音ミク 曲 曲か 有機酸 東洋医学 殿堂入り】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 関連動画 コメント 作詞:有機酸 作曲:有機酸 編曲:有機酸 イラスト・動画:東洋医学 唄:初音ミク 曲紹介 曲名:『カトラリー』 有機酸氏の14作目。 歌詞 (動画より書き起こし) 何でもないのに涙が こぼれ落ちたらいいから笑って 一滴も残さずに救ったら 戸棚の隅のほうへ隠すから 誰かの言葉の分だけ また少しだけ夜が長くなる 目を閉じたらどう? もう見たくもない なんて 言えるわけもないし 不機嫌な声は霞んだ 浅い指輪の味を頂戴な またいつもの作り話 灼けたライトで映す夢を見ていた 藍色になるこの身 委ね なすがままに 故に 忘れてしまっても 愛用であるように 錆びたカトラリー 君が終わらせてよ 最悪の場合は 何でもないのに涙が 溢れ出したら今日だけ笑って 一切の感情を殺したら 扉の前でちゃんと話すから 誰かの暮らしの分だけ また少しずつ街が沈んでる 目を開けたらもう 誰もいないなんて 洒落にもならないし 愛想がつく前に 気兼ねなく我儘に やがて無くしてしまっても 後悔しないように 織りなすメロディ 君と踊らせてよ 最善の用意は 不機嫌な声は霞んだ 苦い指輪納めて頂戴な またいつもの作り話 馬鹿みたいな悪い夢を 藍色になるこの身 委ね なすがままに 故に 忘れてしまっても 愛用であるように 錆びたカトラリー 君が終わらせてよ 最悪の場合は 何でもないこの涙が 要らなくなったならもう忘れて 溜まった食器洗ったら 記憶の奥のほうへ隠すから 誰かの言葉の分だけ また少しだけ君がいなくなる 目を閉じたらどう? もう見たくもない なんて 言えるわけもないし 関連動画 プロセカver. コメント 今作も良かったです -- 名無しさん (2017-12-27 09 42 35) 有機酸様は神曲ばかりですね〜^ -- 名無しの大罪 (2017-12-28 16 23 31) サビとかやばい好きってなるし最後のカーテン閉める所とか好きだし有機酸さんは神(語彙力) -- わらびもちもち (2017-12-29 10 37 47) たくさんすきです -- め (2017-12-31 14 10 55) 食器の音とか水の音とか曲に入れるところ好きです...もう全部好きです...! -- 名無しさん (2018-01-07 19 44 26) すき -- 名無しさん (2018-01-21 22 30 17) ヤベ・・好き・・・ -- mk2 (2018-01-25 10 12 03) うわっめっちゃ好み -- 名無しさん (2018-03-17 17 20 41) 死ぬほど好み -- レオン (2018-04-20 20 52 44) 有機酸さんの曲は胸がキュッとなる…息がしづらい(いい意味で) -- 鎖彩綾 (2019-12-30 15 34 32) うわ…好き(語彙力) -- 名無しさん (2020-05-26 19 00 19) 自分半年くらいたってもこの曲好きだからこの曲は神曲ということでよろしいでしょうか? -- めだま (2020-11-09 21 19 56) 食器を洗う音ってこんなに綺麗だったとは…感動。 -- 名無しぃ (2021-01-17 08 47 01) 最高すぎる泣けてきた -- 名無しさん (2021-08-06 15 51 48) この曲のためなら死ねるわ、好き -- 夏草 (2021-08-25 21 01 35) ピッと鳴るところとか食器の音とか普通の生活を表しているのに人生の中で重要な部分が曲なのがほんとすっごい(語彙) -- 名無しさん (2021-09-15 13 07 54) 有機酸はマジで神曲多いよね😂ハートが動く -- クリエイターspg918 (2022-02-28 14 57 34) いつ聴いても素敵な歌 -- 名無しさん (2023-11-19 15 49 25) カトラリーが錆びるなんて経験無いし考えられなかったけど 手入れしないと直ぐに錆びる銀製の品だったら考えられるんだな -- 名無しさん (2024-07-06 19 14 28) 名前 コメント コメントを書き込む際の注意 コメント欄は匿名で使用できる性質上、荒れやすいので、 以下の条件に該当するようなコメントは削除されることがあります。 コメントする際は、絶対に目を通してください。 暴力的、または卑猥な表現・差別用語(Wiki利用者に著しく不快感を与えるような表現) 特定の個人・団体の宣伝または批判 (曲紹介ページにおいて)歌詞の独自解釈を展開するコメント、いわゆる“解釈コメ” 長すぎるコメント 『歌ってみた』系動画や、歌い手に関する話題 「カラオケで歌えた」「学校で流れた」などの曲に直接関係しない、本来日記に書くようなコメント カラオケ化、カラオケ配信等の話題 同一人物によると判断される連続・大量コメント Wikiの保守管理は有志によって行われています。 Wikiを気持ちよく利用するためにも、上記の注意事項は守って頂くようにお願いします。
https://w.atwiki.jp/gods/pages/19679.html
カトヴァド カスヴァズの別名。