約 1,317,276 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2402.html
気だるい感覚に包まれながら目蓋を開く。 見上げた先には木目が数えられそうなぐらい低い天井。 寝返りを打って横に向けた視線を白いカーテンが遮る。 身を起こそうとした瞬間、腹部に鈍痛が走る。 電流が流れたかのような痛みに思わず蹲る。 その痛みに胡乱だった意識が明確になっていく。 服を捲れば、その下には青く染まった痣。 ようやく何が起きたのかを思い出し、 ジョンストン総司令は立てかけてあった杖を手に慌てて医務室を飛び出した。 痛みを忘れるほどの憤怒が彼の内で渦巻く。 早足で艦内を駆け抜けて艦橋へと足を踏み入れる。 直後、艦橋に差し込む陽の光にジョンストンは視界を奪われた。 眩しそうに手で影を作る彼にボーウッドは平然と挨拶した。 「ああ、お目覚めになられたのですね」 「貴様! よくも抜け抜けと……! いや、それよりも戦況はどうなっている!?」 「戦闘は終わりました」 「……そうか」 簡潔なボーウッドの回答。それにジョンストンは笑みを洩らした。 どれほど気絶していたのかは判らないが一昼夜という事はないだろう。 短時間の間にトリステイン軍を打ち破って勝利を得たのならば大快挙だ。 しかし、その栄誉に与るのはコイツではない!この私だ! 上官に手を上げ、アルビオン艦隊に混乱を招いた罪で奴を処分する。 私は負傷しながらも指揮を執り続けたと言えばいい。 船員達の証言などいくらでも捏造できる。 戦闘が終われば私より優秀な部下など必要ないのだ。 「では貴殿の務めもここで終わりだボーウッド!」 ジョンストンが宣言と共に杖を振り上げる。 しかし、その杖が振り下ろされることはなかった。 杖を構えた直後、彼の首元へと複数の杖が突きつけられた。 ようやく明るさに慣れた眼が彼の周りに立つ人間の姿を映す。 船員かと思われたそれは敵意に満ちた目で彼を見やる。 その身を包む軍服はアルビオン軍ではなくトリステイン軍のもの。 アルビオン軍旗艦『レキシントン』の艦橋に敵がいる、 その事実が意味する所を理解できず、彼はボーウッドに尋ねた。 「こ……これはどういう事だ!?」 「言ったでしょう? 戦いは終わりました、我々の負けです」 両手を上げながらボーウッドは彼に事実を告げた。 ふらりとジョンストンの体がよろめいて船壁に当たる。 信じられないと言わんばかりに蒼白にした顔で、窓の外へと視線を向ける。 そこに広がるのは大地を埋め尽くさんばかりの軍艦の残骸。 どれもが見覚えのある、アルビオン軍の艦艇だった。 「……悪夢だ」 こんな事が起きるはずがない。 軍艦もないトリステイン軍に艦隊が全滅させられるなど有り得ない。 きっと、これは医務室で寝ている自分が見ている夢なのだ。 無敵のアルビオン艦隊が敗れるなどあってはならない。 彼の知る常識と願望が入り混じり、その結論を口にさせた。 「戦いに絶対はありませんよ。勝敗など時の運です」 現実を認めまいと必死になる総司令の姿にボーウッドは溜息を洩らす。 冷酷に、そして淡々と彼の前にもう一度事実を突きつける。 ぺたりとその場に座り込んで呆然とするジョンストンの姿が哀れに映る。 彼にとってはアルビオン艦隊総司令官の地位こそが全てだった。 権威も自信も誇りも力も全てがそこにあった。 いや、取り憑かれていたと言い換えてもいいだろう。 それを失った今、彼には何も残されていない。 正気を失いかけている彼に、もはや誰の言葉も耳には届かないだろう。 それを分かっていながらジョンストンは続ける。 「もう悪夢は終わりです。我々も目を覚まして生きる道を探しましょう」 もし夢だというのなら、これはきっとその終焉。 聖地奪還という名の幻想に縛られた悪夢の終わり。 これからどのような処罰が下されるのかは判らない。 だが少なくとも前よりはマシになるだろう。 もう二度と、罪無き人々に銃を向けなくて済むのだから。 墜落し、猛り炎上する軍艦。 それを前に勝鬨を上げるトリステイン兵士たち。 その喧騒を横にコルベールは傷だらけの体を引きずって歩いた。 偏在とはいえ十分に精神力を残したワルドを相手にしたのだ。 かろうじて勝利したとはいえ、その精神も肉体も限界を迎えている。 杖を地面に突き刺して崩れ落ちそうな自身を支える。 苦しげに落とした視線の先には無用となった槍や銃が転がっていた。 ―――そして、名も知らぬ兵士の屍も。 踏まぬように気を付けながらコルベールは尚も歩く。 ヒビの入った眼鏡の位置を直しながら足を動かす。 彼の眼には通り過ぎる兵士たちとは違う光景が映っていた。 決して取り返しの付かぬ過ちを起こした地。 燃え盛る軍艦は民家に、倒れた兵士は武器も持たぬ村人に。 彼の人生を変えた“あの日”が目の前に蘇る。 その時をなぞるかのように、響き渡る叫びを頼りにコルベールは歩む。 ただ一つ違うのはその声の主は見知らぬ少女のものではなく、 新たな人生で出会った掛け替えのない教え子だった。 桃色の髪を振り乱して彼女は泣いていた。 その腕に抱きかかえられているのは一匹の犬。 流れ落ちた血が乾き、その毛並みを黒く染め上げる。 呼吸や心肺運動もなく、そこに生命の脈動が感じられなかった。 ルイズの慟哭を耳にし、不意にコルベールの足が止まった。 しかし、俯きかけた視線を起こし真っ直ぐに前だけを見据える。 杖を地面から離し、力強い足取りで彼はルイズの元へと向かった。 近付いてくる人の気配に涙を湛えながらルイズは顔を起こした。 見上げた先にいたのは、学院にいるはずのコルベール先生だった。 何故彼がここにいるのかなど今の彼女に考えられる余裕など無かった。 ただ、自分の使い魔を大事に想ってくれた彼に泣きつくように声を洩らした。 「……コルベール先生。アイツは」 「知っています。だから……もう何も言わなくていい」 そっとルイズの両肩に手を置いてコルベールは応えた。 大粒の涙を零し続ける彼女の瞳と真っ向から向かい合う。 互いに見つめ合ったまま両者の間に沈黙が流れる。 その静寂は実際には数秒の事だろうか。 なのに、とても長く感じられるような穏やかな時間だった。 壊れたエンジンにも似たルイズの呼吸がリズムを取り戻す。 激しく上下に揺さぶられていた肩が静かに落ちていく。 彼女が落ち着きを取り戻したのを見計らい、 コルベールは彼女の手から遺体を優しく受け取った。 片足は切り落とされ、その額には深い孔が抉られている。 痛ましいほどに凄惨な最期だというのに、 彼の顔は眠っているかのように穏やかだった。 自分の最期を最愛の主人に看取ってもらえたのが嬉しかったのか、 それとも彼女に心配をかけまいと最後の力を振り絞ったのか、 どちらにしても彼は納得して自分の生を終えたのだろう。 そこに僅かでも救いがあったと信じて、コルベールは彼の冥福を祈った。 「これは貴方が持っていてください」 「…え?」 ボロボロになった首輪を外してルイズに差し出す。 困惑した表情で、彼女はおずおずと伸ばした両手でそれを受け取る。 なんで彼の首輪を外したのか、その意図を理解できずに。 「そして……忘れないでいてください、彼がいたという事を。 貴方の事を大切に想い、命を懸けて守ろうとした彼の事を」 不意にコルベールは立ち上がった。 呆然と見上げるルイズの前で彼は背を向けて歩き始めた。 ―――その腕に彼を抱きかかえたまま。 「ま……待って!」 立とうとしたルイズの足が縺れる。 虚無の魔法で精神力を使い果たし、 さらに泣き続けた彼女にはそんな簡単な事さえできない。 それでも地面を這ってでも彼女はコルベールに追い縋ろうとした。 しかし、その姿はどんどん遠くなっていく。 見る間に小さくなっていく背中にルイズは問う。 「どうしてなのコルベール先生! 何でアイツを連れて行くの!」 「彼を……誰の手も届かないようにします」 何の感情も込めずコルベールは答えた。 明言はしなかったがルイズにはその一言で十分だった。 これだけの力を持った彼の存在をアカデミーが見逃すはずがない。 きっと回収された彼の死体は様々な実験を施され、最後には解剖されるだろう。 そんなの耐えられるわけがない。死んでからも弄ばれるなんて冗談じゃない。 だけど、彼の遺体さえも残らないという事実にルイズの心は揺れ動いた。 「わたしが! わたしが守るわ! もう誰にも傷付けさせない! エレオノールお姉さまにもお願いするわ! 今度こそ守ってみせるから!」 胸に手を当てながら彼女は喉が裂けんばかりに叫んだ。 それでもコルベールは振り返りさえしなかった。 彼女の嘆きを背に受けながら奥歯が砕けんばかりに噛み締める。 出来る事ならばコルベールとて彼の遺体を処分などしたくはない。 たとえ、それが短い間の事だったとしても、 この異世界からの来訪者は確かに自分の友人だったのだから。 「わたしから、あいつを奪わないで!」 その言葉にコルベールは立ち止まった。 どれほど彼女が泣き喚こうとも動き続けた足が止まっていた。 僅かな沈黙の後、コルベールは彼女へと振り返る。 向き直った彼の表情にルイズは思わず呑まれた。 とても静かなのに、その迫力に完全に気圧されていた。 「誰も貴方から彼を奪うことはできません」 コルベールの呟いた声が戦場に流れる。 未だに雄叫びや悲鳴が響いている中、それはルイズの耳に鮮明に届いた。 「貴方と彼との間にある絆は永遠に変わらない。 それは使い魔の契約が意味を失っても同じ事です。 貴方達を分かつ事は誰にもできない。たとえ、それが死であろうとも」 「だから貴方は迷わずに前へと進んでください、彼の想いと共に」 それだけ告げるとコルベールは再び歩み始めた。 だけどルイズにはもう呼び止める事も追いかける事もできなかった。 彼女に出来るのは遠ざかっていく背中を見つめることだけ。 そうして姿が見えなくなってルイズは悟った。 ―――もう二度と彼に会う事はないのだと。 それから一週間後、ハルケギニア全土を衝撃的なニュースが飛び交った。 神聖アルビオン共和国より齎されたという“バオー”の生態に関する情報。 一歩間違えれば世界が破滅していたかもしれないという事実に各国はトリステインを糾弾した。 それに対するトリステイン王国の正式な回答は以下のようなものだった。 “我がトリステイン王国にそのような生物がいた事実はなく、 また当事者とされているヴァリエール家の三女は使い魔を未だ召喚していない” それに前後して“彼”がいたという事実は証拠と共に抹消された。 公的文書は勿論の事、手紙から日記に至るまで彼について書かれた物は全て燃やされた。 いつも牽いていたソリも食堂まで咥えてきた皿も訓練に使った棒もみんな灰になった。 そして学院には緘口令が布かれ、ルイズの使い魔について語ることは禁じられた。 トリステイン王国は総力を挙げて彼を“居なかった”事にしたのだ。 こうして“虚無の使い魔”はその存在さえも“虚無”となり表舞台から姿を消した。 ―――唯一、才人が手にした首輪と人々の記憶を除いて。 戻る 目次 進む
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2290.html
刃と杖。衝突する凶器の間に激しく飛び散る火花。 絶える事無き剣戟の音が戦場の空に木霊する。 喰らいつかれた前脚から止め処なく血が溢れ出る。 刃を振る度に牙は深く食い込み、肉を切り裂いていく。 しかし体内を巡る分泌液は半ばまで千切れかけた脚を修復していく。 直す度に傷付き、傷付く度に直る。永劫ともいえる苦痛の連鎖。 常人ならば耐え切れずに精神を崩壊させるだろう。 だが、それにも関わらずバオーはワルドと拮抗していた。 ワルドが苛立たしげに顔を歪ませる。 苦痛を感じない訳ではないだろう。 そこまでして何故ルイズの為に戦うのか、それがガンダールヴのルーンの力なのか、 あるいは苦痛を物ともしない化け物じみた精神を有しているのか? どちらにせよワルドには焦りだけが募っていた。 相手は片腕、それも刻一刻と血液を失い死に逝く身。 なのに自身の猛攻を凌ぎ、さらには反撃すらも試みる。 本当にこの怪物にも“死”は訪れるのかと疑惑が浮かぶ。 だが怪物とはいえ奴は生物だ。 この世の理を無視して活動しているのではない。 現に“光の杖”の乱発で体力を消耗し、本来の実力を発揮できていない。 生きている以上、どんな生物でも必ず殺せる。それは必定だ。 あと一手、それさえあればこの怪物を討ち取れる。 羽帽子の合間から見下ろす殺意に満ちた眼光。 それに正対しながら杖を切り払う。 刹那。激痛が針のように前脚を貫く。 竜の牙は感覚神経にまで達していた。 バオーの麻酔効果もそこまでは及ばない。 痛覚を無くすだけならばバオーには容易い。 だが、感覚が少しでも鈍ればワルドの杖は容赦なく頭蓋を打ち抜くだろう。 発狂しそうな激痛の中、それでもバオーは刃を振るい続ける。 頭の中を火花が駆け巡り、何もかもが真っ白になりそうな世界で、 彼はひたすらに少女の笑顔だけを思い浮かべ続ける。 戦う理由、守るべき者、それだけを心に刻む。 「僕はルイズを…虚無の力を手に入れる!」 ワルドの宣言と共に突き出された杖の一撃。 それを弾き返しながら彼は声ではなく心で叫んだ。 “ルイズは物じゃない!誰の物でもない!” 残された力を振り絞って力強く誰にも届かない言葉で叫んだ。 彼女は自由だ。自分で何でも決められる。 今は無理でも望んだ未来へと自分の足で歩んでいける。 傍にいて欲しいと思う。だけど決めるのは彼女だ。 彼女を繋ぎ止めたいとは思わない。 だって好きになったのはそんな彼女だったから。 戦う理由はいつからか“恩返し”じゃなくなっていた。 “彼女が好きだから”それだけで十分な理由になっていた。 いつの日か、彼女が今日までの事を笑って振り返れるように。 「その為にも貴様は邪魔なのだ!」 ああ、同感だ。おまえは邪魔だ。 おまえがいたら、いつまで経ってもルイズは笑えない。 大好きな彼女の笑顔が見られないのだから―――! 高高度での死闘が続く中、満身創痍の一団が上空を目指す。 風竜を中心にした竜騎士の小隊。 否。その風竜を駆るのは騎士ではなく一人の少女。 その背には同様に年若い少女。 彼女等を護衛するように傷だらけの竜騎士が左右に付く。 アルビオンの竜騎士隊は即座に迎撃へと移った。 進路から狙いはワルド子爵の風竜だと容易に知れた。 攻城戦では並居る兵士達を虐殺し、艦隊に大損害を与えた怪物が倒されようとしている。 その千載一遇の好機をこのような連中に邪魔されてなるものか。 彼等の意思が言葉ではなく気迫を通じて伝わってくる。 火竜の息吹が一団へと吐きかけられる。 シルフィードの眼前まで迫る炎の壁。 それを直属竜騎士隊は自らの騎竜を盾にして防ぐ。 灼熱を物ともしない火竜の鱗とはいえ限界はある。 肉が焦げる嫌な臭いと共に剥げ落ちる鱗と黒ずんだ皮膚。 だが、それでも火竜の勢いは衰えなかった。 速度をそのままに再び火を吐こうとした同類の喉笛に喰らいつく。 直属竜騎士隊が一騎当千の戦士ならば共に駆け抜けた彼等がそうでないはずはない。 悲鳴をあげる火竜の翼に爪を叩きつけて引き裂く。 とても誇り高き竜騎士同士の戦いではない。 しかし炎も精神力も尽きた彼等に残された戦い方はそれだけだった。 気が付けば他の竜も同様に爪と牙を武器に攻勢を仕掛けていた。 ここまで近付かれては味方を巻き込んでしまう炎を吐く事は出来ない。 彼等が防衛線に開けた穴を青い風竜が突き抜ける。 その後を火竜が追うが速度で勝るシルフィードには届かない。 飛び去っていくその背を見上げてアルビオン王国の騎士達は笑った。 己を十倍する敵に四方を囲まれ、逃げ場を失ってなお笑った。 自分達は勝ったのだと胸を張って誇るように。 きっと彼女等なら何かをしてくれる。 奇跡無くしてはトリステインに辿り着けなかった避難船を、彼女達は導いてくれた。 だから今度も奇跡が起きるのだろう。 ならば命など惜しくはない。勝利の為なら甘んじて捧げよう。 だがタダでは死なん。連中にも相応の代償を支払わせてやろう。 「王国の騎士達よ!最期まで杖を取れ! 亡き王、隊長、戦友に恥じぬ戦い振りを見せるのだ!」 すでに用を成さなくなった杖を胸元でかざす。 それに応じて他の騎士たちも続く。 死を覚悟して突撃する彼等へと一騎の竜騎士が迫る。 彼等がそちらに眼を向けた瞬間、竜はその大きな顎を開いた。 その瞬間、喉の奥底で燻る赤い炎が彼等の瞳に映った。 「………!?」 その行動に彼等は動揺を隠せなかった。 アルビオンの竜騎士隊を避けて彼等を攻撃する事は出来ない。 炎の吐息は彼等諸共、竜騎士隊も焼き尽くすだろう。 そして彼等はその竜騎士の意図を察した。 仲間を捨て駒にして自分達を倒そうとしているのだと。 口惜しさに噛み締められた奥歯が悲鳴を上げる。 戦いの果てに敗れるのは戦士の運命だ。 だが自分達を倒すのが誇り高き戦士ではなく、 戦友さえも手にかける卑怯者だという事実が許せなかった。 その彼等を意にも介さず火竜は息吹を吐きかけた。 炎の奔流が竜騎士たちを飲み込んでいく。 直撃を受けた騎士が瞬く間に炭と化し、 辛うじて避けた者も炎に巻かれて竜の操作を失う。 瞬時に地獄絵図に変わった戦況を王国の騎士たちは唖然と見つめる。 放たれた炎は彼等ではなく神聖アルビオン帝国の竜騎士たちへ向けられた。 突然の奇襲に困惑する帝国の竜騎士を再び炎が襲う。 「何をしている!?敵は総崩れだ、この機に一掃するぞ!」 呆然とする彼等に、その竜騎士は叱り飛ばすように叫んだ。 聞き覚えのある怒声に彼等は互いの顔を見合わせる。 そこに浮かぶ表情は皆一様に同じだった。 竜騎士が兜を脱ぎ捨てて、その素顔を晒す。 そこにあったのは見紛うことなく彼等の隊長その人だった。 「どうした?指示なくして動けぬ貴公等ではあるまい」 歓喜と興奮から彼等は杖を天高く掲げて雄叫びを上げた。 ある者は始祖の奇跡だと叫び、ある者は当然だと口にした。 別れた時に誓った再会は遠くトリステインの地で果たされた。 誰もが死んだものと思っただろう。 だがそれも仕方ない事だ。 彼自身もそう思っていたのだから。 自身の終焉を確信して閉じた瞳は再び見開いた。 そこにいたのは妖精のような美しい少女だった。 見ればその周りには何人もの子供達がいた。 使い魔に問えば子供達がその少女を連れてきたという。 死の淵に瀕している者がいると聞いて彼女は駆けつけてきたのだ。 礼を述べる隊長に彼女は謙遜するばかり。 いずれこの礼はするとだけ告げて彼はその場を去ろうとした。 竜に跨る騎士を羨望と尊敬の眼で見上げる少年達。 そこに、かつての自分の姿を重ねて男は笑った。 随分と子沢山な妖精さんだと冗談めかして言う彼に、 少女は必死に手と首を振るいながら否定し、 この子達は孤児院で預かっている戦災孤児だと答えた。 その返事に僅かに顔を曇らせながら騎士は言った。 なら、すぐにでも御礼が出来るかもしれないと。 “ちょっと戦争を終わらせに行ってくる” そんな言葉を残して一人の英雄がトリステインへと飛び立った。 「……貴様等は悔しくないのか?」 意気の上がる竜騎士隊を見上げグリフォン隊の副長は手綱を握り締めた。 問いかけの意味が分からず戸惑う彼等へと副長は振り返る。 そして杖を上空の竜騎士隊へと向けて叫んだ。 「トリステインの空で!アルビオンの竜騎士が争う! それを指を咥えて眺めているだけなど貴様等の誇りは許すのか!」 副長の檄が雷のように隊員達の間を駆け巡る。 心の中で勝てないと悟って膝を屈していたのかもしれない。 戦わずに敗れる事は恥だと知っていたのに、それでも彼等は臆した。 だが、その彼等をアルビオン王国の騎士たちが動かした。 戦う力を失ってもなお戦い続ける彼等の姿が眼に焼きついている。 力の問題ではない、これは意志の問題なのだ。 「我等の汚名は我等で雪ぐ!逆賊ワルドを討つは我等が使命!」 「応!」 副長の言葉にグリフォン隊全員が揃って応じる。 そこにいたのは竜騎士隊に敗れた敗残兵などではない。 トリステイン王国が誇る魔法衛士隊、その一翼を担う精鋭達。 「グリフォン隊突撃!この空が誰のものか連中に教えてやれ!」 戻る 目次 進む
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1220.html
前ページ次ページゼロの使い魔・ブルー編 「もう半日以上経っているぞ?魔法衛士隊の連中は化け物か」 「グリフォンと馬では勝手が違うのかも知れませんね……」 「そういうものかね」 「知りませんよ……」 「……大丈夫かね?」 ギーシュが言ったとおり、半日ほど馬に乗りっぱなしである二人であった。 元々乗馬の経験があるギーシュはまだ何とか体勢を保っていたが、 ルージュはと言うと、完全に馬の上でぐったりしている。 ギーシュはそんな様子を見て、不思議そうに言った。 「君はもっと体力がある方だと思ったがね」 「……何でです?」 「ちょっと剣を振ってみたんだがね、あれは結構疲れた」 「……そうですか」 「……本気で疲れてるようだね……」 そこに、ワルドの怒鳴り声が聞こえた。 「早くしないと、置いていくぞ!」 ……彼にしては珍しく、少し苛ついた。 「……『デュレイオーダー』」 グリフォンの速度を、少しずつ下げていった。 そのうち、ろくに操れていない馬の方が早くなる。 ルージュは追い越して、距離がある程度経つと息切れしながら、 何とか出せる限りの大きな声を出した。 「早くしないと……置いてきますよ……」 そのまま走り去る。 まぁ、『デュレイオーダー』は時間が経てば解けるし、 グリフォンの元の速度が馬より速いから、さして問題ではないのだが。 事実、その後ルージュの馬はワルドのグリフォンにあっさり抜き返された。 まぁ、そんな事をしていたので、馬を乗り換えながらも、 夜深くにようやくアルビオンの玄関口たるラ・ロシェールについたのだが。 「ゼェ……ハァ……」 「本気で辛そうだね……君は……」 「まだですか……」 「それはもうかれこれ12回聞いた気がするんだが…… だけど、もうすぐ着くよ」 その言葉にルージュは顔を上げて周りを見回した。 港町と聞いていたが、山だらけである。 「……シップがないのに、高地に港町があるんですか?」 「シップ?なんだねそれは」 「……船です」 「別におかしく無いじゃないか」 「……?」 その時、彼らめがけて崖上から火のついたたいまつが投げ込まれる。 馬がそれに驚き、暴れ出した馬にギーシュとルージュは捕まっていられなかった。 その後数本の矢が飛んでくると、ギーシュが叫ぶ。 「奇襲だ!」 「……」 「ブルー!寝てないで応戦したまえ」 「もう止めてくださいギーシュ……僕のLPはもうゼロです」 「ゼロになったら死ぬんじゃないのかね」 「宿屋に行けば大丈夫です……というわけで後は任せました……」 「いや、そういうわけに――」 矢が横をかすめて飛んできたので、ギーシュは黙り込む。 「むう、どうも一人でなんとかしなきゃならないみたいだね……」 ギーシュはそう言って矢の飛んでくる方向に大体の当たりを付け、 錬金で壁を作り出し、そこに隠れた。 「さて、近づいてきてくれれば僕でもどうにか出来るかも知れんが、 このままもう一回たいまつを投げ込まれたらどうしようか」 と、そこにワルドが戻ってくる。 飛んできた矢を、竜巻を作り出してはじき返した。 「子爵!」 「野党か山賊の類か?」 横で呆然としていたルイズが、続く。 「アルビオンの貴族派ってことは……」 「貴族ならあんな手は使わん」 その言葉に、寝ていたルージュは少しの違和感を感じた。 (そう言えば、今朝方も変だったな。 なんであの紹介でルイズの使い魔だと解ったんだ?) あの説明ならば、ギーシュと『その』使い魔のブルー、と捉えてもおかしくはない。 だが、それは個人の捉え方。どう解釈してもおかしくはない。 しかし。 (貴族派、と言ってもまさか全員が貴族というわけじゃないだろうし) そして思考をより深くしようとして、 どこからか聞こえてきた翼の音に、思考を中断させる。 崖の上から悲鳴が聞こえてくる。恐らく、たいまつや矢を飛ばしてきた者達だろう。 暗くて遠くなので良く見えないが、数回雷光が閃くと、その男達の姿が見えた。 「『風』の呪文……にしては妙だな」 雷撃に撃たれた男達ががけの上から転がってくる。 崖の上に何かが降り立つと、月からの逆光でシルエットが浮かび上がる。 「あれって……」 それは再び飛び上がると、此方に向かって飛翔してきた。 近づいてくると、その姿と、上に乗った二人組が見える。 「タバサ!クーン!後キュルケ」 「なんであたしはついでなのかしら?」 「何しに来たのよ!?」 「追ってきたのよ。思ったより時間がかかったけどね」 キュルケは雷竜の背中から飛び降りると、 転げ落ちていた男達を足で軽くこづく。 「で、こいつらどうするのよ?」 「僕に任せてくれたまえ」 と、ギーシュが一歩前に進み出る。 「君たちは何だね」 「ただの盗賊だよ」 ギーシュが振り返る。 「だそうだ」 「……いや、色々と突っ込むところが多すぎて逆に……」 「やるなら徹底的に」 といい、今度はタバサが前に進み出る。 「なんだ、今度は嬢ちゃんか、俺達はただの盗賊だって――」 返事はせず、タバサは小さく呟き、杖を振る。 幾つかの氷の矢が、自称盗賊達をかすめて地面に突き刺さる。 「……わ、解った。酒場で酒を飲んでたら、男と女の二人組に雇われたんだ」 「詳しく」 「女の方はフードを被ってたからよく解らねえ。 男の方は仮面を被っててよくわからなかったが、そうだな……身長はそこの兄ちゃんぐらいだな」 と、ワルドの方を見やって言う。 「それと、二人ともメイジだったな」 「それだけ解ればいい」 タバサが振り返る。 それに対し、ワルドが言う。 「……ふむ。捕縛したい所だが、時間がない。 ここは放置して先を急ぐとしよう」 と、ルイズを連れてグリフォンにまたがる。 ギーシュとルージュも馬に乗った。 彼らが進むその先に、ラ・ロシェールの灯が煌めいていた。 彼らが去った後。 「畜生、割の良い仕事だと思ったら、相手がメイジなんて聞いてねえぞ!」 「あんな人数のメイジを相手なんて、金貨200でも足りねえよ……」 と、そこに白い仮面を付けた男が現れる。 男達のうち一人はそれに気付くと、ぶっきらぼうな口調で言う。 「おい、いくら何でもメイジ相手は無茶ってもんだろう、旦那よ」 「そうか、だがまだ働いて貰うぞ」 「あぁ?俺達は今さっきガキのメイジ一人にあしらわれたんだぞ? こんな仕事やってられるか!降りるぞ!」 「そうか」 冷たく言うと、男は腰に下げた紅い剣を抜きはなった。 「な、何だ、やろうってのか?」 「逃げれば殺すと言っただろう」 「へ、へへ。剣を使うって事はてめぇメイジじゃねぇな。 この人数相手に勝てると思うのか!?」 と、周囲に寝転がっていた男達が立ち上がり、各々の獲物を手に取る。 「そうだ、てめえから金を奪えば良いじゃねえか。 まさかあれだけって筈もないだろ……やっちまえ!」 男達が、仮面の男に武器を構えて駆ける。 仮面の男はそれを平然と眺めて、手にある剣を一閃した。 剣がふくれあがった。そう表現するのが一番正しい。 紅く透き通った巨大な刀身が仮面の男を中心に振り回されると、 男達が身体を真横に両断される。 「……な、なにが…………は」 胸の辺りを切断された男は、最後の吐息を漏らすと、 それ以上話す事は出来なかった。 仮面の男が、その場を立ち去る。 後には、骸だけが残った。 『女神の杵』亭という、結構豪華な宿に泊まる事になった一行は、ぐったりしていた。 いや、どちらかというとルージュのみがぐったりとしていた。 ギーシュは、ワインを飲んでくつろいでいる。 キュルケはタバサに話しかけている。タバサは本を読んでいる。 つまり会話が成り立っていない形になる。 ルイズはと言うと、ワルドと共に『桟橋』に乗船の交渉に行っている。 ルージュが机に寝そべったまま、ギーシュの方を向き、聞いた。 「ギーシュ、さっき船がどうとか言ってたよね?」 ギーシュは、口に含んでいたワインを飲み込む。 「確かに言ったね」 「高地にあるって事は……まさか飛んだりはしない?」 「飛ぶに決まってるじゃないか。アルビオンに行くのだから」 と、そこでルイズとワルドが帰って来た。 一同が集まっていた卓の空いている席に座る。 「アルビオンへの船は明後日にならないと出せないそうだよ」 「一刻を争うのに……」 「良いじゃないですか、無理に急いだって良いことはありませんよ」 ルージュが言うが、その様子を見てると誰もが同じ感想を抱く。 休みたいだけじゃないのか?そんな視線に晒されても彼は動じない。 キュルケがそこで話題を変える。 「アルビオンに行ったことはないからわかんないけど、 明日は船が出せないの?」 「明日は月が重なるだろう?その翌日に、アルビオンが最もラ・ロシェールに近づくのだ」 そして、三つの鍵を机の上に置いた。 「今日はもう休もう、部屋をとっ……ってあれ?」 鍵がいつの間にか二つになっている。 見ると、ルージュが既に部屋のある上への階段を上っていた。 ワルドはそちらを見てから、もう一度卓についている者の方を向く。 「……キュルケとタバサ、彼とギーシュ、僕とルイズが相部屋だ」 前ページ次ページゼロの使い魔・ブルー編
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2944.html
その戴冠式は前代未聞と噂され、ハルケギニアの歴史にも長く残る事となった。 始祖より伝わる3つの玉座の一つ、アルビオン王家の冠を戴くのは少女ティファニア。 尖ったエルフの耳をもつ、異相の王女である。 電光石火の勢いでハヴィランド宮殿を陥落させ、主立ったレコン・キスタ上層部を捕縛した王党派が、王権の復活を宣言してから一週間。 わずかな期間の間に、レコン・キスタはほぼその軍門に下っていた。 5万の兵士を擁した艦隊を全滅させ、8万を超える兵士を中央突破で破った武勇。 ありえない速度での司令部撃破によって、反乱軍上層部の殆どが一網打尽で縄についた。 レコン・キスタ内部を飛び交うの噂には、それを成した伝説の存在が常に付いて回っている。 伝説の虚無を操る始祖の継承者と、それを守る最強の『神の盾』。 転移魔法による進軍をしていたため、本拠地から遠く離れた土地で日干しになっていた主力部隊は元より、アルビオン各地に散らばっていた部隊は恐れをなして次々に投降する。 特にガンダールヴの鬼神の如き戦いぶりを、戦艦を撃ち落す虚無の魔法を見た主力軍の兵士が抱かされた恐怖は深く強い。 実際の被害は全軍の十分の一にも満たなかったが、王軍の生み出した戦果と勇名、特にその先陣であるサイトへの畏怖を刻まれたレコン・キスタに、組織的な反撃をする余力は無かったのである。 既に主だった指揮官は捕縛され、賞罰の徹底と国軍の再編成が急ピッチで進められていた。 反乱軍という位置付けで敗戦を迎えたレコン・キスタ将兵の不安は、当然ながら大きかった。 王軍によって意図的に流された風説には、全員が斬首、あるいは家族にすら累が及ぶとするものも有ったのだから。 だが、不安が最高潮に高まった彼等へと発表された処分は、常識を疑うほどの温情的な処置だった。 反乱軍貴族のうち、指導者格は領地財産没収の上でアルビオン追放。 無領の下級貴族は免職の上で再度の仕官を望む者は平等にとりたてる。 平民は特に積極的に反乱に加担、先導をした者を除いて、全員を無罪放免。 希望者は降格の後、引き続き国軍兵士として仕える事を許すという破格のものだ。 それはティファニアが温情処置を望んだ事と、あまりにも反乱軍の数が多く国軍の数が少なかった事から採られた異例の措置だったが、結果として復活した王家は将兵達から歓呼を持って迎えられる事となった。 その中で発表された新国王の即位は、すべての国民から驚きをもって迎えられる事となる。 王家の血とエルフの血を、二つながらに持つ少女。 しかもその少女こそが、始祖ブリミルに連なる系譜の正当な証たる『虚無』を操ると言うのだ。 圧政者たるレコン・キスタからの解放。 正当なる血脈。 少数で多勢を打ち破った、伝説級の実績。 それらをもってしても、万民を納得させる戴冠とはなるまい。 そう予想しながらもティファニアを擁立した貴族達の予想は、驚きをもって覆される。 それはロマリア教皇、聖エイジス32世の戴冠式出席の報によってであった。 そも王権とは始祖ブリミルの名によって神から与えられるものである。 ために、時に成り上がりの蛮族と誹られるゲルマニアにおいてさえ、皇帝の戴冠を行うのは聖職者の役割であった。 その点は、始祖を始まりとするアルビオン王家ならばなおの事。 敬虔なとは言えないものの、祭壇に祈りを捧げる事も知っているティファニアは、逃亡時代に世話になった修道院の院長に話を通して、その伝手で戴冠式をおこなってくれる司祭を見つけるつもりだった。 だが、その儀式を教皇直々に執り行ってくれるという。 それはもちろん、純粋な信仰の発露やアルビオン王家への好意というワケではなく、始祖の正統の証『虚無』の使い手である新女王をとりまく様々な政治的判断と妥協、そして思惑ゆえの事なのだろうが…… ともかく、その事実はティファニアの正統性を主張する錦の御旗となる。 各国の王もその意向を無視するわけにはいかず、ゲルマニアやトリステインからはその代表が、ガリアからも大使が到着した。 いずれ玉座に座り女王となるのでは無いかと噂される王女アンリエッタ。 ゲルマニアの至尊の王冠を戴く皇帝、アルブレヒト三世。 唯一国王が欠席となったガリアからは王ジョゼフの一子、王女イザベラが。 それぞれの国が誇る最新の戦列艦とその護衛を引き連れて、ハルケギニア王権の担い手達が王都ロンディニウムに集う。 錚々たる列席者に、歓迎は内戦で疲弊したアルビオンにかなう最上級の用意がなされ、王都はお祭騒ぎに包まれた。 街には時ならぬ市場が建ち、内戦に疲弊していた住民達の顔にも笑顔が戻った。 商魂たくましい商人達が浮遊大陸の方々から集まって、珍しい商品を露店に幾つも広げて見せる。 物々しく兵士が巡回する街角を子供達や着飾った女達がさざめきながら行き交う。 街角で旅芸人が歌を披露すれば、道化が踊り、街娘が男達の手をとって踊り出す。 ロンディニウムのそこかしこで「女王陛下万歳!」の叫びが上った。 それは本当に女王の即位を祝う声ではなく、戦争という抑圧から開放された衆愚の無責任な叫びだが、それでもエルフの血を引くティファニアの即位を心底嫌悪してはいないという、その現われではあった。 そんな大騒ぎの中の戴冠式3日前。 国賓として宮殿へと訪れたアンリエッタに、ルイズは再会したのであった。 「お久しゅうございます、姫様」 毛足の長い赤絨毯に膝をつき、ルイズは深々と頭を下げる。 驚くほど広く天井の高い部屋を、魔法の明りとクリスタルを組み合わせたシャンデリアが照らしている。 その輝きにも負けない気品を持った生まれながらの王族の少女は、水晶のついた王家の杖を手に堂々と立っていた。 アンリエッタの隣に控えるのは宰相マザリーニ卿。 背後をルイズは名前も知らないヒポグリフ隊の隊長と近衛騎士達が直立不動で固めている。 「姫様におかれましては御身おかわり無く、まことにお喜び申し上げます」 平静な声が口から滑り落ちる。 ルイズの声の調子に単なる貴族の子女以上の何かを感じたのか、マザリーニ卿のみがわずかに眉を動かした。 ルイズはアルビオン王政府から借りた、ごく薄い桃色の礼服を身につけてアンリエッタを迎えている。 桃色の髪が映える衣装によって、ルイズの生まれ持った気品が普段以上に強調されて、一種の風格にまで高まっている程だ。 その指に光るのは水のルビー。 不思議な感覚だった。 幼い頃共に遊んだとは言え、自分にとって最も敬愛する王女アンリエッタを前にして、ルイズは平静な気持ちを維持している。 しかも辣腕で知られる枢機卿や屈強な魔法衛視隊の歴々までもが控えるその正面で、堂々としていられるのだから。 そう。ルイズは今から戦うつもりだった。 それは槍の替わりに意思を、魔法の替わりに言葉を交わす、けれど命を賭けた戦いである。 自分と、そして己が使い魔の命を賭けた戦い。 なぜかマントをつけていないルイズの姿を見て不思議そうにしながら、アンリエッタは親友の手をとって立ち上がらせる。 「まぁルイズったら……まだあれから10日しか経っていないわ。 けれどあまりにも色々な事があったから、つい長い時間が過ぎたと勘違いしてしまうのね。 お願いよ、私の大切なおともだち。 どうかこの10日間になにがおこったのか、私に話して聞かせてちょうだいな?」 顔をあげたルイズの瞳を正面から見つめて、アンリエッタはそう言った。 その潤んだ瞳には、ウェールズ皇太子がどうなったのかを聞きたいという感情が浮かんでいる。 親愛なる王女の望みを汲み取ったルイズは、王宮の一室に与えられた自分の部屋へとアンリエッタを案内する。 「では姫様、こちらへ。わたくしが見聞きした全てを、お話させていただきます」 それは部外者には聞かれたくないという意思表示。 王女の目配せを受け取って、マザリーニ枢機卿を含めた全員が部屋で待つ。 どうせ魔法なりの手段で盗み聞きはされるのだろうが、それはアンリエッタの立場上言っても仕方の無い事だろう。 慣れた様子で宮殿付きのメイドにお茶を淹れさせたルイズは、アンリエッタと向かい合って椅子に座る。 用事を済ませば静々と退出する、教育の行き届いたメイドが樫材の扉の向こうへと姿を消した。 それからルイズは、アンリエッタに向かって日が沈むまで語った。 伝説と伝説と伝説に彩られ、異世界の魔法が乱舞する10日間の記憶の全てを。 【虚無の使い魔と煉獄の虚神】 虚無の使い手とは、歴史上・信仰上の問題として決して無視できない重みを持っている。 古い時代と比べれば始祖への尊敬など薄れてしまった、聖職者すら信仰を見失いがちな現代においても、決して軽視は出来ない伝説だ。 それが表ざたにされずに隠されているのならともかく、新女王がその担い手であると発表されればなおの事。 まして、伝説の虚無が一軍を破るほどの実質的な「戦力」であるとなれば、各国の王とて無視はできまい。 事実、それによってアルビオン王家は起死回生を果たし、ロマリア教皇すらも動いたのだから。 だからこそ、ルイズとサイトの立場は微妙だった。 その存在と力は既に風説となってアルビオンは元より他国にまで流布している。 それどころか、5万の空軍を壊滅させたのも、虚無とその使い魔の仕業だと噂されているのだ。 無かった事には出来ないだろう。 一国の軍隊に比肩しうる伝説の存在が三人。 1人はアルビオンの女王であり、2人はトリステインの貴族とその使い魔。 異邦の魔法を操る錬金大系の魔導師がアルビオンに居て、神の如き力を振るう相似の魔導師はガリアのメイジの使い魔だ。 更に、死者たる大系魔導師達を操る謎の第三勢力。 戦いをひっくり返す事も出来る未知の戦力の分散と集中は、為政者にとって決して見過ごせるものではあるまい。 既にアルビオン王政府はヒラガ・サイトとグレン・アザレイに爵位と領地の授与を打診している。 王党復活に特に尽力の有った二人を、自国の貴族として迎え入れると言うのだ。 それどころか、ルイズとタバサ、それにギーシュやキュルケに対しても同様の叙勲を申し出ている。 ただし、各国の貴族としての立場を鑑みて、それぞれの実家や国家に了解を得てから、という話にはなっているのだが。 他の三人がどうするのか、ルイズには分からない。 領地継承の目が無い三男であるギーシュにとっては渡りに船だろうし、断る事はあまり考えにくい。 キュルケは確か一人娘だったとは思うが、ゲルマニア貴族が勢力拡大のチャンスを棒に振るかどうかは五分だろう。 タバサの立場は更に微妙だ。 彼女の実家がどのような家系かは知らないが、あからさまな偽名を名乗って留学してきたガリア貴族で、しかもトライアングルクラスの実力者となれば只者ではあるまい。 その上、あのグレン・アザレイの主人となれば、無能で知られるガリア王とて放任すると云う事は考えられなかった。 そしてルイズとサイト。 二人を系譜の面から考えれば、その戦力はトリステインが保有するのが筋となる。 しかしサイトはあくまでルイズと個人の契約によって結び付けられているワケだし、ルイズの実家ヴァリエール家とて、一つ事あれば反旗を翻して王軍と伍す気概と実力は持っている大貴族。 国際的な視点、そして国内の火種として考えても、ルイズの存在は微妙に過ぎる。 だからと言ってアルビオンに二人の下駄を預けて済ませるには、あまりにも危険で魅力的過ぎる武器なのだった。 つまるところ、ルイズ達はうっかり救国の英雄となってしまったため、軍事バランスのコントロールという国際間ゲームのカードに否応無くされてしまっているのが現状なのだ。 アルビオン首脳部はあくまで貴族としての信義から恩賞を与えたいと言っているが、それもテファとモードと言う強力なカードを二枚、既に手中にしている安心感からの発言であることは否めまい。 また、彼等は自分達が与える爵位等を各国が拒否した場合、それと同等の栄誉を与えるべしとの圧力もかけていた。 つまり、グレンやサイト、そしてルイズを我が物としようと言うのなら、それ相応の格を与えて遇せよと言うのだ。 かくして、戴冠式を控えた3日間の宮廷は、きらびやかな見た目とは裏腹に、多大な緊張感を孕んだ外交戦の舞台となっているのだった。 笑顔でもって各国の客人をもてなしながら、様々なカードを切る事に余念が無いアルビオン。 新女王ティファニアが座る玉座の隣で指揮を執るのは、宰相に抜擢されたマチルタ・オブ・サウスゴータその人である。 世事と交渉に長けて世慣れた彼女は、盗賊時代に集めた貴族の醜聞すら利用して、既に頭角を現し始めていた。 反乱貴族から巻き上げた潤沢な資金と、美貌の辣腕宰相の姿に、新生アルビオンは一筋縄では行かぬと政治屋達は噂しあう。 一方、タバサとグレンを当然のように侍らせるのはガリア王女イザベラ。 王宮の一角にて国許から連れて来た使用人達を使って豪華の極みのような生活をしているものの、あまり派手に姿を現すことも無く、傍観者ぶった態度で静観を決め込んでいる。 その沈黙から他国に侮られる面もあったが、グレンという最強の鬼札を手にしている状況にアルビオンの警戒は深まっていた。 法王本人までもが出張ってきたロマリアは、しかしガリア同様の沈黙を守っている。 美貌の青年、聖エイジス32世は不思議な微笑みの下に本意を隠したまま、ただ水面下で「始祖の恵児たる虚無の担い手に、相応の敬意を払うべし」との意思を伝えるのみ。 ただ、その忠実な配下である各国の司祭達を通して、秘密裏に働きかけがあったとも無かったとも噂されていた。 ある意味で最も蚊帳の外に居るのがゲルマニア皇帝であろう。 大貴族であるツェルプストーの判断には、皇帝であっても横槍の口出しはできにくい。 実の娘の参加した騒ぎに、一大事と駆けつけたツェルプストー当主が居る現状では尚更だろう。 それに、英雄の1人とは言えキュルケは端役に過ぎないのだから旨味は少ない。 その上、レコン・キスタの脅威が去ったため、手の平を返したトリステインによってアンリエッタとの婚約は立ち消えになった。 結局、国政から開放されたのを幸いと食べて呑んで狩りや遠乗りの話しに花を咲かせる、ただのヨッパライ貴族のオヤジと化した皇帝陛下であったという。 そして最後の一国トリステインは、決断を迫られていた。 最大の焦点はサラガ・サイトの処遇。 平民だが、伝説の存在であるガンダールヴの彼を貴族として叙するべきか否か。 その決断しだいでは、アルビオンが彼を自国の貴族として迎えるだろう。 虚無の担い手とその使い魔は一組だとも考えられるが、それならばアルビオン女王ティファニアがガンダールヴを従えてもかまわないのだから。 いや、ヒラガ・サイトの処遇に注目しているのはトリステイン一国では無い。 アルビオンは元より、ロマリア法王もガリア国王も、息を潜めて事態の推移を注視している。 8万の大群を先陣にて貫き穿つ『神の盾』にして『アルビオンの槍』。 4大国の要人達から注目される少年はけれど―――暗い部屋の中で独り沈み込んでいた。 赤と青の月明かりが、分厚いカーテンの隙間から差し込む。 この広い部屋にある明かりはそれだけだ。 サイトが一声かければ、隣室に控えたメイドが蜜蝋のロウソクに火を灯して現われるはずだった。 蜀台やランプを用意し、豪勢な食事を持ち込み、浴びるほどの酒や招かれている芸人や楽士を呼んでくる事も出来るだろう。 けれど、サイトは暗い部屋の隅で床に座り込んで、ただ膝を抱えるのみである。 暗闇の中で、サイトはじっと手を見る。 その手の中に残るのは、巨大な鎚と槍を投げた感触。 高揚しきっていたあの戦いの最中では気がつかなかったが、今は小刻みにその手が震えている。 自分は人を殺したのだ。 自分の手で、自分の意思で、自分と同じ人間を殺したのだ。 ギーシュのゴーレムやワルドの遍在を切り捨てるのとは意味が違う。 水の秘術で動かされていた死者を斬ったのとも意味が違う。 裏切り者のワルドの腕を落とした時でさえ……もしも殺していたら、平静で居られた自信は無い。 それは、人殺しを罪悪とする平和な日本で育った少年には重過ぎる事実だった。 回転する巨大な鉄槌に飲み込まれて挽肉になった兵士と軍馬。 電柱よりも巨大な槍に貫かれて串刺しになったメイジ。 その命を奪った感触は手の中に残っていなくても、込み上げてくる嫌悪感は止める事ができなかった。 「母ちゃん……父ちゃん……」 アンタ達の息子は人殺しになっちまったよと、サイトは小さく呟いた。 それは少年の知る社会の常識において、許されないような怪物になったという意味なのだ。 どうでもいいような学校での毎日だとか。 どうでもいいような日曜日の過ごし方だとか。 母親の味噌汁の味だとか、新聞を読みながら屁をこくような父親との団欒だとか。 そんなどうでもいい、けれど掛け替えのない日々に、殺人者になったサイトはもうきっと戻れない。 俯いたまま、下唇をきゅっと噛む。 そうやって我慢しようとしたのに、せつなくて涙が溢れるのを止められなかった。 「…………サイト」 ほんの半月で聞き慣れた優しい声に、真っ暗な部屋へと目を上げれば、そこに桃色の髪の少女が立っていた。 ルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエール。 サイトのご主人様の姿は、闇の中にあってなお輝くように美しかった。 「ルイズ?」 「ごめんねサイト……私のせいで……私のために、そんな風に傷付いて……」 泣き出しそうな潤んだ瞳。 細く頼り無い体を罪悪感に絡み獲られられながら、けれどルイズの頬はどこか上気したように朱に染まっている。 膝をつき、サイトを抱きしめたルイズの身体からは、甘い少女の香りと女の鼓動が伝わってきた。 「大丈夫だから。アンタは私の使い魔だもの。だから、サイトの罪は私のものよ。 死んでまで操られていたかわいそうな魔導師を斬ったのも私が命令したから。 たくさんの兵隊に向かっていったのも私がそう望んだから。 魔法で増えたワルドに向かっていってくれたのも私のためだもの。 サイトは悪い事なんてなにもしていないわ。 貴方の罪は私から生まれたものだから、全部私が引き受ける。 貴方の痛みは私の責任で生まれるものだから、全部私が引き受ける。 だからサイト。貴方を罪深くして、貴方を痛くするのは私だけよ?」 少女の瞳が熱くゆらめく。 愛でもって全ての罪を浄化する慈母のように。愛でもって全てを奪いつくす娼婦のように。 ガンダールヴ・サイトという存在が各国の要人達から注視されている現在に在って、ルイズはサイトに自分だけのナイトで居て欲しいと望んでいた。 誰かに、例えばティファニアに奪われたくない。 離れ離れになるのも絶対に嫌だ。 それはある意味で、ボタンの掛け違いのような偶然によって生まれた感情だったかもしれない。 サイトが本来の、もっとお調子者で年相応にスケベな一面を見せていたら、今ほど抵抗無く惚れ込む事は無かっただろう。 けれど幸か不幸か、グレン・アザレイの存在がサイトから余裕を無くさせ、結果として本来よりも幾分か慎重で苦悩する少年へとサイトを成長させていた。 ワルドの裏切りからもう少し時間を置く事が出来れば、ルイズももう少し冷静になれただろう。 けれど嵐のような事態の推移が、そのための時間を少女から奪い取った。 間髪入れずに目の前に晒された『虚無の担い手』という自身の価値が、少女により強く負担を与えた事も影響しているだろう。 だから不安定な少女は求めた。 強く、優しく、自分のためだけに戦ってくれるナイトを。 「ねえサイト。私は貴方と一緒に居るわ。 そのためにトリステインを、ヴァリエールを捨ててもかまわない。 誓って。貴方だけが私を捕まえて、貴方だけが私を痛くするんだって。 そうしたら貴方の罪も罰も痛みもすべて、私だけが引き受けてあげるから」 少女は告げる。少年がどの陣営に連れて行かれる事になろうと、自分はそれに同行するのだと。 それは甘やかな堕落の蜜。 そこに縋ればあらゆる罪から逃れる事ができるだろう。 サイトの手がルイズの抱擁に答えようと持ち上がり……そして力無く落ちた。 それは、それだけは出来ない事だった。 自分の罪を使い魔と主人という関係性に縋ってルイズに押し付けるなど、男として出来る事では無い。 それ以上に、サイトには目標があったのだ。 倒すべき、いつか戦うべき目標。 5万の人間を一瞬で滅ぼし、その虐殺を虐殺であると受け入れた神に似た男。 自分自身の罪をルイズに押し付けるような男が、その前に立つことなど出来ないだろう。 だからサイトは泣いた。ただどうにもならない事に泣いた。 その涙を、愛しそうにキスで拭うルイズ。 誰よりも近くに居ながら、二人の心は誰よりもすれ違っている。 けれどその日。 二人の身体だけはベッドの中で重なるのだった。 雲が高い。 ここはハルケギニアから遠く離れたコンクリートとアスファルトで固められた世界。 排気ガスの充満する空を割いて、ギラギラと輝く真夏の太陽が地上を照らす。 反射熱で大気は炙られ、陽炎のように視界を歪めていた。 そんな灼熱の東京で、ほんのわずかに見える小さな緑地の中に、その施設は建っている。 神社でありながら、いかなる宗教でも無いとされるその施設の名は靖国神社。 戦争によって没した死者を英霊として祭る、巨大な慰霊碑。 その境内に、1人の男が立っていた。 一見して西洋人とわかる男の姿は、この場所では奇異かと言えばそうでも無い。 あまり知られていないが、靖国神社には戦没した西洋人の御魂も祭られているため、ここを訪れる外国人も皆無では無い。 だが、その男のいでたちは、やはり奇異だと言わねばならないだろう。 突き刺すような日差しを無視した、まるで男自身が逃げ水であるかのような印象を与える白いスーツ。 白い帽子の下には、道化を連想させるうさんくさい笑顔。 なにより奇異を感じさせるのは、右目を覆う銀の眼帯の存在だ。 彼を不思議そうに見る、境内を掃除した帰りの老人は知るまい。 この男が、東京を核爆弾で滅ぼそうとしているテロリストの協力者だなどとは。 大きな黒い目を不思議そうに眇める、老人の孫らしい少年も知るまい。 この男が、百年以上の時を日本の歴史と共に過ごした『悪い魔法使い』である事など。 男の名は王子護ハウゼン。 自身の感覚を起点に世界を認識した形に変える完全大系の魔導師にして『マジシャン』の異名を持つ魔人である。 だが王子護はその時、ただ静かに眠る魂に哀悼の意を捧げていた。 彼が日本という国に現われて百年。 政府の裏の顔に携わる時間も長かった男は、軍人の指導教官という立場だった時代もある。 もっとも生徒は異世界から追放された犯罪者達であり、彼等の乗る飛行機には片道分だけの燃料しか積まれていなかったが。 つまるところ、特攻隊のパイロットの養成が王子護ハウゼンの仕事だったのだ。 だから此処には彼の教え子も奉られている。 他の多くの刻印魔導師には別の、専任係官や犯罪魔導師も共に埋葬されている寺があるのだが、日本という国家を守るために南海で散った彼等の御霊だけはこの靖国に眠るとされたのだ。 本当にこの地が核によって更地になるかもしれないからと一度だけ手を合わせに来たのは、長すぎる時間を生きる怪物の中に残った、わずかばかりの人間性の表れだろうか。 炎天下の境内に立ち尽くすハウゼンは、じっと靖国本殿へ視線を向けたままでいる。 その中に有るのは整然と並べられた無数の木札。 そこには一枚一枚に1人ずつ、戦没者の名前が余さず記されている。 ここにあるのはこの札と魂、それにわずかな遺品のみで、遺体や骨は一切無い。 そもそも死体が残るような死に方をした者など、あの悲惨な戦争に駆り出された魔導師の中には1人も居なかったのだから。 だが、だからこそこの靖国という形こそが、魔法世界の中で唯一神無き地、奇跡に見放された世界と言われる地球で、罪人として命を落とした魔法使い達の死を弔うのに、あるいは相応しいのかもしれないと王子護は皮肉気に思う。 その皮肉な笑顔を崩さぬまま、無数の札の中から一つ一つ教え子の名を読み取っていく王子護。 高位魔導師である彼にとって、悪鬼による魔法消去さえ受けなければ境内からでもその全てを読む事に支障は無いのだ。 その中の一つを目にした時、ふと魔法使いの視線が止まった。 書かれているのは教え子の名では無い。 「シラヌイ……キミは本当に死んだんデスかね?」 『不知火』と呼ばれたその男は、公館において刻印魔導師を統率する専任係官の1人だった。 スローターデーモンと恐れられ、魔導師を死地に追いやる悪鬼の中の悪鬼。 魔法も使えず特殊な能力も無く、しかし極まった剣の技で不知火の如く眼前から消え失せ、相手がそうと気づかぬ内に殺害したという。 その技の冴えは、当代で最強と噂される『鬼火』のそれにも匹敵するか。 魔法を使えず、感知も出来ず、治療魔術の恩恵も受けられないがゆえに、この世界の戦闘技術は奇形的な鬼子となった。 その限界を極めた、一匹の剣鬼。 で、ありながら、不知火は刻印魔導師だけを特攻機に乗せて戦場へ送る事に反対した。 そして専任係官は刻印魔導師を管理監督する者だと言って、自らもゼロ戦に乗り込み―――当然の如く帰還しなかったのだ。 だが、王子護は不知火が死んだとは感じていない。 自身も選任係官として公館の歴史と共に歩んできたその中で、最も死ぬ姿が想像出来なかった男が彼だ。 認識によって世界を書き換える魔法使いにすら、死を空想できない戦鬼。 太平洋で戦死したとして木札一枚奉られているのが彼の知る不知火だとは、王子護には思えなかった。 「ササキ・タケオ……そう言えばキミはそんな名前でしたっけネ、シラヌイ」 数十年ぶりに同僚の本名を確認するように呟いて、王子護はきびすを返した。 感傷はここまで。 この先は『仕事』を十全に片付けねばならない。 周囲の視線が途切れる瞬間、王子護は転移魔法を発動させた。 目の前の空気の揺らぎを空間の歪みと認識して、そこに無理矢理転移の扉を作り出したのだ。 不知火のように消え失せる白スーツの魔法使い。 後にはただ、セミの鳴き声と真夏の日差しだけが降り注いでいた。 そんな、真昼の東京から遥か次元を隔てて離れたハルケギニアの夜。 二つの月が照らす水面は、美しい赤と青の月光に染まる。 地球の月よりも位置が近いのか、あるいは惑星そのものが大きいのか。 この世界で満月の夜は、夜半を過ぎて街の明かりが消えた時間でも十分に明るい。 フラフラと水面の月を覗く少女の顔もはっきりと見えるぐらいに。 まだ若い、綺麗な顔立ちをした娘だった。 笑顔を見せれば誰もが好感を抱くだろうその顔は、しかし今は絶望の色に染められている。 大切な何かを失った表情だった。 失いすぎて、なにもかもを見失った表情だった。 悲しみが、苦しみが深すぎて、自分自身のありかさえ見失い―――彼女は目の前の河に身を投げた。 大きな水音が夜陰を裂く。 水を吸った衣服は瞬時に重苦しい拘束具になり、このまま沈めばわずかな時間で少女の命は失われるだろう。 だが、冷たい水に身体を絡めとられ、意思が決した自分の死に肉体が従おうとしたその時、強烈な恐怖が生存本能を呼び起こした。 死にたくない。生きたい。 自殺のために飛び込んでいながら、少女は死を恐れてもがく。 喉に流れ込む川水を吐き出し、酸素を求めて浮上すべく手足をめっくらぽうに振り回した。 死ぬのは嫌だ。そう、本当は死にたくなんて無かった。 辛い思いもした。大切なたった一人の父親を亡くした。だけど死にたくない。死ねない。 父を自殺においやった、あの憎い貴族がのうのうと生きているのに、死ねるものか。 狂おしく生を望む必死の形相に、怒りと憎しみの色が加わる。 と、その身体がフワリと浮力を得た。 誰かが河に飛び込み、溺れている自分を抱きかかえてくれたのだと少女が気付いた時には、その逞しい腕で河原に引き上げられていた。 強く咳き込んで肺に侵入しかかっていた水を吐き出す少女。 その咳は、いつのまにか嗚咽へと代わっていく。 ずぶ濡れになった頬を涙がこぼれ落ちる。 悔しかった。悲しかった。 なによりも大切な人を亡くして絶望しながら、それでも生を望む浅ましさが。 だれよりも大事な人を死に追いやられながら、復讐も出来ない無力さが。 幸せだったのに。母親を早くに亡くして、父親と二人だけで暮らしてきたけれど、自分達は幸せだったのに。 誰に迷惑をかけるわけでもなく、ただ平穏に暮らしていた。 街の片隅でごく普通の居酒屋を営んでいた父と、ちょっと引っ込み思案なウエイトレスだった自分。 父が腕を振るった料理が評判で、近所の家族連れなども多く訪れたこじんまりとした店。 酔っ払うといつも歌声を披露する昔楽団員だったというオジサンや、会うたびに飴玉をくれたお爺さんが常連だった。 親子の小さな生活は、たった1人の貴族の、ほんの気まぐれで壊される。 半年前、たまたま徴税官のチュレンヌという貴族の不興を買った父の店は、ありえない額の税金を掛けられて潰されたのだ。 役人によって差し押さえられた店の前で親子は途方にくれた。 正当な手続きなど行われていない。 文句を言っても聞いてもらえない。 それどころか、店の前を通りかかったチュレンヌに縋りついて直訴した親子の目の前で、徴税官はとりまきに命じて無数の攻撃魔法を店へと放たせたのである。 それは圧倒的な、平民などにはどうしようもないメイジの力。 何もかもを奪われ、恐ろしい力を見せ付けられ、父は心身を病んだ。 病に倒れ、日がな一日床についたまま呆けたように壁を見つめるだけの父。 変わり果ててしまった、料理が上手くて、働き者で、いつも笑顔だった大好きな父親。 その父が、昨日首を吊って死んだ。 賃仕事から夕方遅くに帰宅した娘の目の前で、バラック小屋の柱からぶら下がった父親の足が揺れる。 カーテンも無い窓から差し込む夕日で真っ赤に染まったその光景を見て、少女は全てが終わったのだと知ったのだ。 嗚咽が慟哭に変わり、少女は喉も千切れよとばかりに泣きじゃくった。 彼女を水中から引き上げた太く逞しい腕は、ただ静かに肩を抱いてくれている。 分厚い胸板。温かい体温。それと、河に跳び込んだせいで流れてしまった微かな香水の残り香。 散々泣いて泣き疲れて、見上げた顔には見覚えがあった。 撫で付けた黒髪と割れた顎。 いまはベットリと顔に張り付いてしまっている、瀟洒な口髭と顎髭。 「どうやら落ち着いたみたいね、ジャンヌちゃん?」 体格に似合わないオカマ言葉の優しい声。 穏やかそうなつぶらな瞳の中年男性は、少女の小さな幸せだった店と同じ通りで酒場を営んでいる人物だった。 「スカロンさん……」 「もうっ、びっくりしたわよ。貴女を探してたら、こんな所で溺れてるんだもの!」 なぜ探していたのかは言われなくても知れた。 父の死体が見つかって、その場に居なかった自分を心配した知り合いの大人達が探して回ってくれたのだろう。 そう思ってみれば、何処かからおーいだとか、見つかったかーだとか言う声が聞こえる。 スカロンは「見つけたわよー」と大きな声で叫んでから少女、ジャンヌを抱き上げた。 「大丈夫だから。苦しい日も悲しい日もあるけれど、生きていればきっと良い日は来るから。 諦めちゃダメよ。絶望しちゃダメよ。なにより、貴族の横暴なんかに負けちゃダメ。 神様は見ていらっしゃるもの。悪い人にはきっと天罰が下るわよ」 優しい声が耳元に響く。 ポンポンと背中を叩く大きな手に、ジャンヌは元気だった頃の父親を思い出してまた泣き出してしまった。 泣いたままの少女を『魅惑の妖精亭』へと連れて帰るスカロン。 それからジェシカに付き添われて身体を拭いてもらい、桶に張った温かな湯で身体を洗ってもらった。 優しさが疲れ切った心と身体に染みこんでくる。 「ウチに来ると良いよ。私達と家族になろう?」と言われながら、ジェシカのベッドで並んで眠るジャンヌ。 その一瞬前、大きなコウモリかカラスが飛び立ったような変な幻を見て、少女は重いまぶたを閉じるのだった。 大きなコウモリかカラスが舞い降りた。 徴税官チュレンヌは二つの月の光の下で、目の前に影が降り立った時にそう感じた。 いや、違う。 魔獣幻獣が跋扈するハルケギニアにとて、人ほども大きなカラスやコウモリなどそうは居ない。 ましてやトリステインの首都トリスタニアという大都会に、そんな未開の怪物など現われるはずが無いのだ。 「人間!?」 誰何の声をあげれば、思った通りにソレは人間であった。 ただ黒いマントを身に付けているために、カラスやコウモリの類に見えたのだ。 「何者だ貴様!?」 「このお方を徴税官チュレンヌ様と知って行く手を阻むか?」 周囲のとりまきが詰問口調の声をあげる。 今の今まで街の酒場でタダ酒を飲んでいた男達は、気が大きくなっていた。 だから逆に、注意力や判断力は最低中の最低にまで低下している。 男はマントこそ付けていたが杖は持っていなかったので侮ったのだ。 その腰に一振りの曲った大剣を提げている事も気が付かずに。 目深に被った奇妙な形の帽子のツバの下の眼光が、尋常な物では無い事も気付かずに。 「もちろんチュレンヌ様と知っててトオセンボしてるわよん。 アンタが悪徳徴税官で、どうしようも無い下衆って事もね。 でもタダ酒たかる程度ならまぁ見逃すかと思ってたのよ? その程度の小悪党、貴族に限らず何処にでも居るもの。 だけど―――アンタのせいで人死にが出たとあっちゃあ捨ててはおけないわ。 たとえ王女殿下と始祖ブリミルが見逃しても、アタシのご先祖様が許さないのよ!!」 男の……それとも女なのか、やたら野太い声だが女言葉の口上に、チュレンヌのとりまきは嘲笑と共に杖を構えようとして――― 首が落ちた。 一瞬で5人のメイジが、抵抗も出来ずに真紅の飛沫を上げる噴水と化す。 呆然とする仲間達。 目の前のマントの男が不知火のように消え失せたかと思った次の瞬間、抜く手も見せずに振るわれた異国調の剣で切り殺されたのだと理解出来ただろうか。 限界まで研ぎ上げられた技量はまさに魔法の領域。 おそらく痛みも感じる隙無く死んだ5人がぐらりと揺れて倒れるよりも前に、更に3人が斬殺される。 ここに至ってようやく漆で朱に塗られた鞘をカラリと石畳の上に投げ捨てて、八艘の形に剣……否、カタナを構える男。 長さは子供の身の丈ほどもある刀は、俗に胴田貫と呼ばれる大物。 特に朱鞘のソレは鎧すら断ち切ると言われ、カブトワリの異名をもって知られる大太刀である。 豪腕でもってその刀を軽々と振り回す怪人は、低い声でたった一人生き残ったチュレンヌに向かって滔々と宣告する。 「護国の戦鬼ササキタケオの遺志によりて、無辜の人々を脅かす犯罪魔導師を狩らん。 ―――アンタはやりすぎたのよ、死んであの娘の父親に謝りなさい」 「ヒッ!?」 慌てた徴税官チュレンヌの舌が回転する。 だが、男の動きはメイジが呪文をつむぐよりもなお高速だった。 魔法を持たず、治癒魔法の恩恵も受けられぬ平民だからこその鍛え上げられた四肢。 そこから生み出される決死の意を伴った剣の業は、奇形的とも言えるだろう。 人が言葉を発するよりもなお速いという、まさに迅雷の剣閃。 ある種の論理体系にて編まれた足の運び、腰の捻り、一刀を振り抜く腕の動き。 その全てが一体となった刀は、白光となってチュレンヌを袈裟に切り裂いた。 呪文を唱えるための肺と、生きるための心臓、そして杖を握った腕を一瞬で切断されて、徴税官は単なる肉の塊と化す。 8人分の血溜まりの上にビシャリと音をたてて転がる男の上半身。 見開いた目が、自分を殺した剣鬼の姿をうつろに写す。 死の間際に気がついただろうか。自分を殺した男が、何度もタダ酒を飲んだ酒場のオカマ店主だという事に。 そしてもう一つ。 黒に見えたマントは年代を経て返り血を浴びたため黒ずんでいるだけで、元々はカーキ色だった事に。 剣鬼が身に纏うのは、襟に少尉の階級章が縫い付けられた大日本帝国海軍の外套。 第二次大戦中の南海にて消えた公館の専任係官、スローターデーモン佐々木武雄の遺品であった。 次へ 前に戻る 目次に戻る
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/2382.html
前のページを読み直す / 表紙へ戻る / さらにページをめくる 《『王宮日誌 シャルロット秘書録』より》 私たちが『人質』という事になって、幾日も経った。 しかし、トリステインからの救い手は一向に現れず、こちらとしては感覚共有できる『シルフィード』を介しての定期連絡 ―――彼女が喋れることは隠しているので、質疑へのイエス・ノーや無事の確認程度だが――― 以外は何をするでもない、暇な時間を過ごしていた。 出歩く自由がない以外は、衣食住の心配も、身の危険を案ずる心配もない。 アルビオン国王ジェームズ1世は、トラクスの手にかかり討ち死に。 ウェールズ皇太子は、私のシルフィードに乗ってトリステインへ亡命。 主なきニューカッスル城の将兵はよく総攻撃に耐え、奮戦したが、ついに落城した。 非戦闘員は脱出できたが、それ以外は運命に委ねられた。 彼らの絶望的な戦いも話題となったが、やはり将兵たちの間に上る名は『蛮人トラクス』。 素性も知れぬ流れ者の、剣の達人。 勇猛で誇り高く、残酷なるスキタイ人。 国王殺し。 美しい女メイジと共に戦う、無敵の戦士。 魔法を喰らい、五月蝿く喋る魔剣を振るう兇漢。 投石器で人を砕き、鉄の弓を引く超人。 そして、伝説の使い魔『ガンダールヴ』。 デルフリンガーやフーケ、将兵や捕虜から流れる話は尾鰭がつき、拡大する。 人の血肉を喰らい、腕が四本ある。 牙の並ぶ口が耳まで裂け、額に二本の角がある。 恐るべきエルフだ。 背中に皮翼があり、空を飛ぶ。 炎と黒煙を吐く巨漢で、トロール鬼を従えている。 身長が30メイルもある。 女メイジが口だけで笑いながら走っているのを見た。 ……意味のわからない噂もあるが、畏怖と憧れが二人には付きまとうようになった。 無論、蛮人如きと見下し、戦いを挑む命知らずな輩もいるらしいが……。 トラクスとフーケは、ひとまず『ナイト(騎士)』に叙勲された。ガリアやトリステインの『シュヴァリエ』に当たる。 彼らを連れて来たユリシーズも、褒賞にあずかったらしい。 近々、クロムウェルたちはトリステインへ侵攻する予定だとも、伝え聞いた。 アルビオンの首都、ロンディニウムにあるハヴィランド宮殿の一室にて。二人と一本に来客があった。 「やあサー・トラクス、デイム・マチルダ。傷はもうよろしいのかな?」 クロムウェルだ。先頃国名を『神聖アルビオン共和国』に変え、自ら『神聖皇帝』と名乗った。 始祖ブリミルの降臨した、東の『聖地』をエルフから奪還し、ハルケギニアを統一すると宣言してだ。 フーケは胡散臭そうな顔をするが、すぐ笑顔で返答する。 「ええ、陛下。トラクスは瞼と白目が切れただけで、水の秘薬を使ったらすぐ治りましたよ。 疲労が激しかったようですが、魔剣を持たせておくと回復も早くて」 「それは重畳。なにしろ我々『レコン・キスタ』の英雄だ、続く戦いでも活躍して頂かねば。 ウェールズ皇太子の首は獲れなかったが、トリステイン如きに頼っても後はない。 ガリアもゲルマニアも、我らの理想に賛同してくれたよ。きっとロマリアもそうだろう。 戦後処理と戦争の準備もあり、一ヶ月ほど休暇を与えよう。ま、ゆっくり英気を養ってくれたまえ」 上機嫌に話すクロムウェル。マチルダの旧領サウスゴータは、トリステインを降してから安堵するという。 貴族様に戻る気は薄いが、テファや餓鬼どもの世話もある。くれる物は貰っておこう。 トラクスは包帯を頭に巻いたまま、ベッドに座って黙り込んでいる。やがてデルフが喋りだした。 「なあア、ロングビル、いやフーケ、マチルダ。お前は沢山名前があるんだなあ。 相棒なんか家名もない、ただの『トラクス』だぜ。強いて言えばトラクス・オブ・スキタイアンか? いや、騎士になったからサー・トラクス・オブ・スキタイアンか。デイムってのは女騎士の敬称だったかな」 「職業柄、偽名を使うことが多くてね。一応本名は『マチルダ・オブ・サウスゴータ』さ。 アルビオンじゃあ結構名の知れた家だったんだがね、こないだも言ったがお取り潰しにあっちまって。 理由? さあ、あたしが小娘の頃のことさ、たいして調べる気もないね」 彼女の父親は王弟の大公家に仕えていた、サウスゴータの太守だった。 ところが、大公は密かにエルフを妾としており、娘まで産ませた。 エルフは東の恐るべき、忌まわしき種族。人間を超越した先住魔法の使い手。 マチルダの父親は大公家への忠誠心からエルフ母子を匿い、それを知った王家により家名を取り潰されたのだ。 そして、マチルダとそのエルフの娘『ティファニア(テファ)』は姉妹のように仲が良く、 実家が没落した後もマチルダは彼女に仕送りを続けていた。 最初は普通の商売だったが、メイジの力を振るって盗賊を働き出してからは止まらない。 たちまち彼女は『土くれのフーケ』として悪名を流し、裏世界に染まっていった。 おかげで仕送りは相当の額になり、テファの隠れ住むウェストウッド村も潤う程になったが、 妹分を心配させないため、盗賊稼業のことは内緒にしている。 サウスゴータ家の復興。まさか、こんな形で転がり込んでくるとは。 クロムウェルは怪しい男で、エルフと戦うとか言っているから、テファがすぐ世間に出られるわけじゃない。 半分人間の血が入ったエルフなど、あちらのエルフ社会でも爪弾きだろう。 それでも、サウスゴータ領内にあるウェストウッド村なら、匿っておける。蛮人だって、半エルフだって。 殺戮大好きなデルフと蛮人トラクスを、世間知らずなあの娘に会わせるのは、御免こうむるけれど。 (戦争が終わったら、トラクスとデルフにはスキタイなりゲルマニアなりへ去ってもらうとして、 あたしたちは穏やかに暮らしたいもんだね。随分カネも貯まったし) 「ねえ、ミスタ・ユリシーズ。私、脱走したくてたまらないんだけど」 桃色の髪が、風に揺れる。鳶色の瞳が青空を写す。 ルイズ・フランソワーズは、ロンディニウムの宮殿で、お付きの女官やメイドたちに傅かれていた。 「ご退屈でしょうが、もうしばらくご滞在を、ミス・ヴァリエール。 ご家族はじめ、魔法学院のご歴々やアンリエッタ王女ほか、トリステイン王国には大きな危害は加えませんから。 貴女の存在は、無用な戦火を未然に防ぎ、我々人類の理想を実現する一歩を平和裏に……」 ユリシーズの諂いに、ルイズはびしりと反論する。 「ウェールズ皇太子はトリステインに亡命されたそうね。ワルド子爵様とキュルケが手引きして。 あの方が父王陛下のご遺志を継がれ、貴方たち『レコン・キスタ』に挑むというのが自然でしょう? どっち道、戦争は避けられないわ。姫様もヴァリエール公爵家も、きっと参戦するわよ」 そうなのだ。ウェールズ皇太子という御神輿がおられる限り、ハルケギニア各地のアルビオン王党派は団結する。 手柄と褒賞を求めて、或は戦争の危険を求めて、傭兵や商人連中だって集まる。 トリステイン一国では、アルビオンの空中艦隊には勝てない。でも、ゲリラ戦なら? ゲルマニアと同盟すれば? トラクスがいくら強くても、何万という軍隊に勝てる道理がない。ワルド様などの強力なメイジだっている。 だから、この私を殺す理由も、クロムウェルには無いはずなのだ。交渉の『切り札』として。 「私の存在価値は、『ゼロ』じゃない……」 ゼロ。魔法の才能がなく、胸もゼロ。友達も恋愛経験も、ほとんどゼロ。 自嘲気味に、ルイズはその禁句を呟く。 「ミス・ヴァリエール。まあ、そう御自分を卑下なさらずに。 私だって、子供の頃は失敗続きのいじめられっ子で、よく『ダメッピくん』なんて呼ばれたもんです。 体だって小さかったし、下級貴族なんて平民とそう変わりゃあしませんよ。 家も平民の金持ちから借金してましてね、苦労したものです」 ユリシーズが砕けた口調になる。 「そこへこの革命騒ぎですよ。テューダー王家に恨みはないが、そうたいした義理もあるわけじゃない。 うまく立ち回れば、それなりの地位には成り上がれるかもしれない。 そう考えて、貴族派についたんです。ヴァリエール公爵家のご令嬢には、ご理解し難いかも知れませんが。 たいていの貴族なんて、そんなもんですよ。クロムウェル様だって……おっと」 おどけて口をふさぐユリシーズ。その仕草に、ルイズも女官たちも微笑む。 「ようやく本音で接してくれたわね。貴方の才能なら、結構な地位につけるかも。 ちょっと軽いところはあるけどね。あ~あ、貴方が『使い魔』ならよかったのに」 「いくらなんでも、そりゃないですよ。あははははははは」 皆はつられて、明るく笑い出した。 「で、相棒よお。これからどうする?」 「また戦が始まるんだろう。ワルドやウェールズ、キュルケとまた戦う。 だが、一人二人じゃあ勝てない。向こうも復讐と雪辱に燃え、準備を整えて待ち構えているんだ。 強力な仲間が必要だろうな。フーケに並ぶぐらいのマジナイ師(メイジ)が」 トラクスとデルフは、スキタイ語で会話する。なぜデルフが話せるかは分からない。 一応トラクスも、トリステイン語やアルビオン語を少しは片言で話せるが、やはり使い慣れた言葉がいい。 この世界でも異邦人、『蛮人(バルバロイ)』であり続けるために。 「仲間ねえ。王様の首をちょーん、と刎ねられる仲間かよ。 そういう奴らは、もうクロムウェルの旦那に従って、いい地位についてんじゃあねえか? 街中か王宮へ行って、仲間になるか聞いてきてもらうかよ」 「馬鹿言うな。俺が何と呼ばれている? 悪魔か鬼神扱いだ。 臆病な奴らに怖がられすぎている。この傷痕も、顔つきを一層悪くしやがった」 トラクスが、左の頬からこめかみを撫でる。ワルドとウェールズの『風の鎌』がつけた傷だ。 左眼はどうにか治ったが、三白眼と相まって迫力満点だ。これがなければ、ひょろっとした男なのだが。 「男前があがって、いいじゃあねえか。似合うぜ、サー・トラクス・オブ・スキタイアン。 まったく、長ったらしい名前になりやがって。ナイトだかシュヴァリエだかキャバレーだか知らねえが」 「そう呼んでいるのは、デルフだけだろう。無駄口はいい、思い当たる奴はいないか」 「相棒と一心同体の俺様に、心当たりがあるかよ。フーケの奴に聞けばいいだろ。 もしくは、時々襲ってくる命知らずの馬鹿野郎にさ」 トラクスを狙ってくるゴロツキどもは、命を取られはしないものの、片輪にされて帰される。 伝説の蛮人の恐ろしさを知らしめる方便だが、何日かに一度はしつこくやって来るのだ。 「そうだな、似たもの同士でいいかもしれん。それに雑魚でも数があれば、盾にはなる。 賞金も貰ったし、有意義に使うか」 「有意義ってえんなら、酒場か娼館でも行きゃあいいじゃねえか。ゴロツキだらけだろ」 「俺は、その手の女に近づけないんだ。この『烙印』が疼きやがる」 「伝説の『ガンダールヴ』の証に、そんな効果があるなんて知らねえぞ。 おおかた例の『ご主人様』が嫉妬深くて、馬鹿馬鹿しい効果をつけやがったに相違ねえ。 蛮人丸出しのままじゃあ、碌な事がねえもんな。ひっひひひ」 と、ドアがノックされる。大きな音で、位置も高い。大男の気配だ。 「おいトラクス、噂をすればまたお客だ。今度はどこにする? 耳か? 鼻か? 目ん玉か?」 「黙っていろ。そうとは限らん」 返事をしないでいると、野太い男の声がした。 『おおい、蛮人騎士のトラクスさん。いるんだろ? 返事ぐらいしてくれよ。 あんたの肉は、いい匂いで焼けそうなんだがなあ』 (続く) 前のページを読み直す / 表紙へ戻る / さらにページをめくる
https://w.atwiki.jp/quizmagicianblackcat/pages/2912.html
遅延 火→ジェニファー、(シャナ)、(ニーナ)、(キリヒメ) 水→チヒロ、フレイ、(イレーナ)、(フウカ) 雷→(ニコラ)、(ミライ) 軽減 火→(キャナル)、(メグリ) 水→デューク、(パール)、(エイダ)、(マナト) 雷→アルビオン、ジン、(エミー)、(カエデ) 属性特攻 火→アルル、ユアン、シド、(スモモ) 水→リィル、ローレン、ステファーヌ、フレイ 雷→サイラス、(みうみう)、(サキュナ) AS回復 火→カスミ、ユニコ、フェイ、パイドラ、イーシェン、(キャナル)、(ミミララ)、 (シャクティ)、(赤アンジェリカ)、(エミリア)、(シャナ)、(ポポル) 水→イヴ、ルリ、フィリー、ペガサス、ルシェ、チヒロ、(メイラン)、(サーヤ)、(ヤヨイ) (イレーナ)、(アーシア)、(ジル)、(パール) 雷→アルテミス、イリジン、シンシア、レラ、ニーニャ、ポロン、アルビオン、フェルチ、アーサー (黄アンジェリカ)、(クラリス)、(アリス)、 単色パネル変換 火→ヒサギ、カスミ、フーシャオ、アルル(6ターン)、ユウギリ、 水→シリウス、シズカグ、ルリ、(イツキ)、 雷→ガイアス、イリジン、シンシア、ルーファス、サイラス(6ターン)、(セリーヌ、6ターン)、(パトラ) 2色以上パネル変換 火→ユニコ(火雷)、(アキラ火雷7ターン)、(ミミララ3色9ターン) 水→ペガサス(水雷)、サギリ(水火)、ルーシュ(水火6ターン)、メリエル(3色10ターン)、(ルドルフ水雷7ターン)、(ラピスラ火雷) 雷→エトワール(火雷)、アルテミズ(火雷)、(プフ火雷7ターン)、(黄アンジェリカ3色11ターン) 連撃(数字は攻撃回数) 火→(ステイシー4)、(ジョージ4)、(ニーナ4)、(キリヒメ5)、(ゴウキ4) 水→サクヤ3、ニル2、(イツキ3) 雷→リンリン3、(シャーリー5)、(カエデ4)、(アイ5)、(タバサ3) %削り系 火→ユーム、(ミシェル)、(アルティーナ)、(エミリア)、(スモモ)、(ポポル、全体) 水→ローレン、(シャドウ、15%全体) 雷→(ヴァイオレッタ) シャッフル 火→(ステイシー)、アレク(A止まり) 水→ソフィ、(アーシア) 雷→ヴァレンティナ、(アン)、(ボブ)、イーライ(A止まり) コンボ数ダメージアップ系 火→(アリューゼ) 水→ソフィ 雷→ヴァレンティナ、(ミライ3ターン)、(ムドー10ターン)
https://w.atwiki.jp/teitoku_bbs/pages/8215.html
870:635:2022/09/08(木) 07 17 20 HOST 119-171-248-234.rev.home.ne.jp 銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようです欧州大戦その十二 SUMOU海峡場所開幕 ロシアという国の日本人の想像するロシア(サンクトペテルブルク・モスクワ)以外の人間が日本、そしてティ連という国を真に認識したのは結局の所この戦争からであろう。 「ビルが立ったよ…。」 「昨日まで原野だったのに…。」 「道路も全部舗装されてるぞ…。」 シベリアの地方都市、黄色に緑で安全第一の十字マークのヘルメット被ったロシア人たちは眼前の光景に呆然とする。 目の前では六角形の柱が光線放つ度にニョキニョキと建物が生え、大量の重機が瞬く間に昨日まで泥だらけで泥濘んでいた道路を舗装していく。 こういった光景はロシア各地方都市で最近よく見られる光景だった。 東欧よりの避難民達を収容するため、またロシア後方の国土を強靭化させる為に工場やら建物やら各種ライフラインがティ連工作艦隊と日本の土建屋、神崎島工兵により次々に作られていく。 またモノはどうにかなるが中身は猫の手も借りたい程であるので日本円での給料や各種福利厚生で顔を引っ叩き未だに続く不況に苦しみ喘いでいた地方の失業者を労働者として尽く飲み干していく。 そして余裕が出て日本円を得て懐の温かい労働者はその財布の中身を日本製品や地元での食事その他に消費していく。 お陰で戦中ということもあり日本からの輸送では足りずに現地で工場作って地元民雇って現地生産するという有様であった。 故に戦地となっているロシア東部に比べ他の地域は未曾有の好景気に湧いていた。 ロシアどこでも平等な生活を享受出来るようになったのだ。ここからであろう漸くロシアがロシアとして纏まったのは そして衣食住足りて、という言葉があるがその通りに衣食住足りたロシア人達は漸く認識したのだ。 これを成したのが敗戦国であるとロシアより格下とソ連時代より教えられてきた日本であり、今の日本はロシアより各上にあると。 ロシアは日本の下っ端になったのだ。 「まあ、だからといって俺らの生活変わる訳でもないし?」 「とにかく俺らの生活が良くなればヨシ!(現場猫並感)」 「この状況齎したドイツ万歳!ヤポンスキーの皇帝陛下万歳!ロマノフ皇女殿下万歳!ってか?」 「ドイツはヤバイ…秘密警察に目付けられっぞ?」 「取り敢えず仕事終われば飲めるから仕事終わらそうぜ?」 「仕事中飲めなくなったのだけは納得出来ねえ…。」 それでもロシア人(呑兵衛)はやはりロシア人(呑兵衛)だった。 毒竜が動けばアルビオンがその身を消し飛ばす。 毒を吐こうとすれば人型機動艦艇と化した軍神アレスでもあるローマが顎を切り落とし、蛭子命が神風を吹かせ穢を押し流す。 ただその繰り返し、千日手なのではなくリアッサの乗る旭龍が安全な所へ退避するまでの時間稼ぎだ。 その間に旭龍はイオージマへ着艦、鳳翔達が保護した桜花に乗せられていた幼子らは待ち構えていた海兵隊員が用意したタオルや毛布に包まれ抱きかかえられる。 そして鳳翔や藤原秀郷…俵藤太らは竜へと身体を向ける。 暴れる毒竜を見て憐れみ秀郷は呟きその弓に矢を番える。 「大百足にして毒の竜たる者よ。お主は愛する者を護る為に化生にされ、それ故に愛する者を護れず苦しめた…苦しかろう、辛かろう…。」 憐れみながらもその弓はしっかりと毒竜に矢先を合わせ隣でオリオンもそれに同調する。 俵藤太、藤原秀郷は伝説に謳われる彼の神田の公を殺した日ノ本随一の怪異殺しにして龍神すら喰らう大百足を退治した逸話の持ち主。 彼とありとあらゆる獣、キリスト教言う悪を狩るオリオンも合わせれば人の成った大百足の竜など瞬く間に屠ることが出来るだろう。 痛みも感じさせず殺すのがせめてもの慈悲と自慢の弓に力を込める。しかしその矢が放たれることはなかった。 秀郷は困った顔で己の足元を見る。隣のオリオンも同様の表情。 二人の視線の先には足に群がり涙を浮かべた瞳で二人を見上げる幼子達、皆桜花に乗せられていた子らだ。 皆が訴える。竜を殺さないで皆を助けて、と。 「すまんが俺は殺す以外にあいつらを解放する方法を知らん。」 オリオンは申し訳なさそうに子らに言い幼子の涙が増える。 幼子達も分かっている、それが一番の救いになると。 特攻機で繋がっていた故に幼子らには死して呪詛の竜となった母や父、大勢の人々の悲鳴が聞こえる。 (殺してくれ!生き残った我が子を、幼子らを殺してしまう前に解き放ってくれ!) しかし理解と感情は別物、眼の前で両親であったモノが殺されるなど容認出来るものではない。 戦い続けるアルビオンも嘆願する。 『私からもお願いする。』 「アルビオン…。」 『救う方法など私には分からない。だけど同じ竜種としたあれの存在は余りにも悲し過ぎる…。』 しかしと秀郷は首を振る 871:635:2022/09/08(木) 07 17 51 HOST 119-171-248-234.rev.home.ne.jp 「あの竜となった者達を救うな「出来るぞ。」…対州姫。」 秀郷の言葉を遮ったのは対州要塞姫、対馬の嘆きの姫にして死者に報いるモノ(神)。 「ここには日ノ本の者と海兵隊がいるイオージマがある。 相手は毒竜、そして八百万の神々がおる。徳高き聖女がおる。俵藤太、いや藤原秀衡竜に請われ大百足でを鎮めたお主がおる。」 対州要塞姫が歩み出る。その言葉に何か合点が行くような顔をする秀郷。 オリオンは訳が分からないという顔をする。 「一体どういうことだ…?」 「ここは貴き方が鎮まぬ者を鎮めた地ということだ…【仇討たで野邊に朽ちじ吾は又、七たび生まれて矛を報らむぞ】。」 秀郷は呟く。 「【慰霊地は今安らかに水をたたふ如何ばかり君ら水を欲りけむ】…。」 それに応える涼やかな声が響く、その言葉に込められた力を聞いた途端に毒の竜はその動きを止める。 聖女ジャンヌ・ダルクとアインビルを伴った王妃マリー・アントワネットの声。 「その歌に応えるのは私でも大丈夫かしら?」 「私も少しばかり救いの一助となるのならば…。」 「無論、王配そして聖女の助力あれば心強し。」 マリー・アントワネットとジャンヌ・ダルクの問に応える秀郷。 「しかし、時間を稼ぐ必要がある。軍神アレスや蛭子様はこれより執り行うこと故に戦えぬ。」 「それは妾に任せよ!」 『私も努力しよう!』 対州要塞姫とアルビオンが言う。 その瞬間、言霊の力が切れ毒竜が再び動き出す。 「だけど対州要塞姫やアルビオンの攻撃では強すぎれば消滅させてしまう恐れがあるんじゃ?」 葛城のその言葉にアルビオンはその身をヒト、妖精騎士の似姿へと転じさせる。 「この姿ならば大丈夫でしょう?」 アルビオンはにこりと笑いながら手甲より爪を伸ばし毒竜を切り裂く。 対し対州要塞姫はイオージマより水面に降りると大声で喚ぶ。 彼らは国を愛する者を護る為に散った。ならば国を、愛する者を護る戦いならば彼らもまた応えるだろう。 「靖国そしてアーリントンに眠るもののふ(兵)らよ!妾の声を聞け! 悪意により化生となり子を殺めんと苦しむ死者がおる!呪いにより親を失い涙する幼子がおる! もののふ(武士)ならば戈を止める為に来たれ!!」 ここは硫黄島(イオージマ)、日ノ本の大地。ならば死者に応える日ノ本の姫が彼らを喚べぬ筈がない。 その声に応え姫の背後に幾つもの、いや数万人規模の人影が顕れる。 手に三八式歩兵銃やM1ガーランドを手に持ち或いは九七式中戦車やM4シャーマンに乗り、 旧大日本帝国陸軍或いは第二次世界大戦時のアメリカ合衆国の野戦服を纏う軍人達。 硫黄島で戦い死んだ。或いは戦い抜いた英霊達。 ザッ、数万のそんな音が聞こえそうな程に一糸乱れぬ整列をする。 その整列の最前列に共に翻るは旭日旗と星条旗、先の大戦で相搏った者達の御旗。 「総員!掛かれ!!」 対州要塞姫の号令と共にラッパが鳴り響き雄叫びと共に日米の軍人達は竜に向かい進撃を開始する。 海の上であるのに陸を行くが如く。 姫に呼ばれた者達には加護がある。彼らならば嵐の海すらも山を超える様に踏破出来るだろう。 突撃する彼らの銃弾が竜の鱗を穿ち、砲弾が竜の殻を粉砕する。 だが英霊であるが竜に比べれば余りに矮小な人の身、その身の身動ぎで或いは毒気で忽ち倒れ伏す。 だが倒れても倒れても何度でも起き上がり、毒竜に暇を作らせない。 その身が罪なき者の、同胞を救う最後の盾であることを分かっているからだ。 872:635:2022/09/08(木) 07 18 57 HOST 119-171-248-234.rev.home.ne.jp それらの光景を見て秀郷は時間が稼げると頷くと近くの海兵隊員に話しかける。 「そこな海兵隊員殿、この船にお主らの長の将軍閣下がいるだろう。連れてきてはくれまいか? それから布を、シーツでも何でも良い。腰に巻けるほどの大きさのものを頼む。」 困惑する海兵隊員にその上官はさっさと行くように言う。 部下の何故との問に上官は答える。 「まあ多分また儀式するんだろう。」 「ほう!察しがいいな!」 面白げに笑う秀郷に上官は対馬の時の日本をテレビで見ていて日本での勤務経験もあるという。 そしてどうやって竜に囚われた者達を救うのかと問う。 「ここはやんごとなき方が荒ぶる者達を鎮めた救い給もうた島の名を持つ!貴き血の王配がここで言の葉を紡いだ! 十字の僧であり聖女である娘がおる!西洋の破邪の剣がある!そして我らもののふ(武士)がいる!出来ぬ筈がない! ああ、アインビルにオリオンこちらへ来い!アインビルは上半身を脱げ!」 秀郷はアインビルとオリオンを呼ぶ。 その間いつの間にか集まった龍驤、雲龍、天城は不思議な歩法をし、鳳翔と葛城は何も番えぬ弓をかき鳴らす。 そして戦乙女たるジャービス達は一列に並び舞いながら円を作るとその中央向け柏手を打つ。 「あれは…。」 「龍驤らは反閇で鳳翔と葛城は鳴弦でこの場を清め、ジャービス達は外界と内を区切っている、ということよ…。」 「つまりはフェアリーサークル、結界の一種。つまりはあれは人方屋という訳ですかな?」 「御名答ですな。将軍閣下。」 声に振り向けばイオージマに乗っていた海兵隊の司令官の姿があった。 しかも何かワクワクしてる。 海兵隊員達はそれを見てヒソヒソと話し合う。 「(なあ司令官って…。)」 「(ああ大の…。)」 「(つまりはこれからあるのは…。)」 藤原秀衡、いや日本最高峰の武士俵藤太は笑いジェーナスの方を向く。 見ると私!?という顔をしていつの間にかイオージマの近くまで来た蛭子命を見上げるジェーナス。 その手には蛭子命から貰ったであろう扇、否軍配が握られていた。 「ははは!では魅せようか藤原…いや、俵藤太土俵入り、天覧・上覧相撲英仏海峡場所を!!」 874:635:2022/09/08(木) 07 21 41 HOST 119-171-248-234.rev.home.ne.jp 以上になりま。転載はご自由にどうぞ。
https://w.atwiki.jp/k2727324602/pages/257.html
コウ モーラ サエグサ キース カミーユ ヤザン バニング ファ ダンケル ベイト エマ ラムサス モンシア カツ クワトロ アデル フォウ ジュドー シナプス ヘンケン ルー パサロフ ハヤト ビーチャ シモン ベルトーチカ エル ニナ トーレス モンド コウ・ウラキ 愛称:コウ 機動戦士ガンダム0083 ~スターダストメモリー 声優:堀川りょう オーストラリアの連邦基地トリントンにて訓練を受けていたテストパイロット。階級は少尉。 目の前でガトーにガンダム試作2号機を奪われ、その奪回任務に志願する。モビルスーツに関する造詣に深く、ガンダム試作2号機が核を装備しているのを一目で看破し、ニナを驚かせる。 初陣では実戦に慣れていないことをガトーに見抜かれ、苦汁をなめさせられるが、徐々にその能力を開花させ、ガトーと対等に戦える程の戦士へと成長する。お坊ちゃんが多いということで有名なナイメーヘン士官学校でも奥手な方だったようで、ニナとの付き合いも彼女に始終リードされていた。ニンジンが苦手。 一言モード1:この海は…地獄だ…! 一言モード2:何を言うんだ? 連邦の仕官に対して、お姉さんぶらないでほしいな。 一言モード3:ぶつけるしかない、でやぁぁーーーーっ!! 一言モード4:ニンジン、いらないよ。 チャック・キース 愛称:キース 機動戦士ガンダム0083 ~スターダストメモリー 声優:山田善晴 コウと共にナイメーヘン士官学校を卒業後、オーストラリアのトリントン基地で訓練を受けていたテストパイロット。階級は少尉。 親友コウと共にガトーがガンダム試作2号機を奪う場面に遭遇する。容器で多少気が弱いが、持ち前のバイタリティでデラーズ・フリートとの戦いを生き抜いた。最初は美人のニナにアタックをかけていたが、メカニックのモーラと意気投合、いい仲になる。 一言モード1:コウ、戦況は絶えず変化するんだ。まごまごしてると、孤立しちまうぞ~。 一言モード2:へ~、効いてないみたい。 一言モード3:見てたのじゃないよ、全く。ハイスクールのガキだってもうちっとマシだぜ? 一言モード4:--- サウス・バニング 愛称:バニング 機動戦士ガンダム0083 ~スターダストメモリー 声優:菅原正志 一年戦争当時からモンシア達を率いて活躍した地球連邦軍のベテランパイロット。階級は大尉。 ガンダム試作2号機強奪事件に遭遇し、以後追撃部隊アルビオンでモビルスーツ隊の指揮官を務めることになる。しかし、宇宙空間での訓練中にシーマの部隊と遭遇、これを退けるも、この際に被弾した機体胴体部が帰還中に爆発して帰らぬ人となる。厳しくも情に厚い人物であり、アルビオン所属のパイロット全員に慕われていた。なお、地球に別居中の妻がいる。 一言モード1:戦いは、お前達がいつまでもピーピー喧しいヒヨッコかどうかで決まる! 一言モード2:お前達はもう1人前なんだ。後はそれが実感できるかだが、そこまでは教えられん。 …こんな話を前にもしたな。夜のオーストラリアで…。 一言モード3:いや、俺も不器用でな…。ま、お前ほどではないが。 一言モード4:実は、妻とは以前から別居中の状態でして…。 アルファ・A・ベイト 愛称:ベイト 機動戦士ガンダム0083 ~スターダストメモリー 声優:戸谷公次 アルビオンに補充されたパイロット。階級は中尉、乗機はジム・カスタム。 一年戦争当時はモンシア、アデルと同じくバニング率いる第4小隊に所属していた。 腕は確かであるが、それゆえか傲慢な部分がありモーラとつかみ合いのケンカをしたこともある。 バニングの死後は戦時昇進で大尉に昇格し、部隊の指揮官を務めた。 一言モード1:残り物には福がある、ってか? 一言モード2:まったく、メシ食うヒマもないのかい! 一言モード3:鴨料理でも自分で作るかい? 一言モード4:やるじぇねえか、でっかい姉ちゃん…! ベルナルド・モンシア 愛称:モンシア 機動戦士ガンダム0083 ~スターダストメモリー 声優:茶風林 一年戦争時からの歴戦の地球連邦軍モビルスーツパイロット。階級は中尉。 ガトーが強奪したガンダム試作2号機追撃任務を受けたアルビオンに補充パイロットとして、配属される。だが、腕の立つパイロットにありがちな傲慢さによって、アルビオンクルーとトラブルを多発する。しかし、上官であるバニング大尉を尊敬し、当初はシロウト扱いしていたコウに対しても最後は仲間意識を持つ。 一言モード1:ちぃっ、誰も小便小僧はいらねぇよ! 一言モード2:へっ、案外やるじぇねえか。青臭い新米少尉にしちゃあよ。 一言モード3:そこのお嬢さんたちぃっ!!どうだい、今夜、付き合わねえか? 一言モード4:ウゥラキィッ!! チャップ・アデル 愛称:アデル 機動戦士ガンダム0083 ~スターダストメモリー 声優:幹本雅之 アルビオンに補充されたパイロット。階級は少尉、乗機はジム・キャノンⅡ。 ベイト、モンシアと共に第4小隊の出身であり、一年戦争当時はバニングの部下であった。 実直な性格で、素行の悪いベイトやモンシアの押さえ役に回ることが多い。 なお、既婚である。 一言モード1:まさか、こんな事件に関わるとはな。 一言モード2:行け、ウラキ!フルバーニアンだ! 一言モード3:あの人に、学習機能はないんでしょうか? 一言モード4:--- エイバー・シナプス 愛称:シナプス 機動戦士ガンダム0083 ~スターダストメモリー 声優:大塚周夫 アルビオンの艦長。階級は大佐。 核弾頭受領のために立ち寄ったトリントン基地で輸送中のガンダム2号機を強奪され、以降はデラーズ・フリートの追撃任務に就く。 良識ある紳士であると同時に、軍人としても高い能力を持つ。最前線に立つゆえに現状に対する危機意識も高く、コロニー落下を阻止するために軍に背き、試作3号機を持ち出す。 デラーズ・フリートとの紛争終結後、後ろ盾であったコーウェン中将がジャミトフによって失脚し、シナプスも作戦中の命令違反の罪を問われ、極刑が下された。 一言モード1:いや、若者はいい。ひたすら勝利を目指している…。 一言モード2:メガ粒子砲、撃てぃ!! 一言モード3:ツケは高くついたな…!。 一言モード4:回避運動を取りつつ、レーザー砲で敵機を迎撃せよ! イワン・パサロフ 愛称:パサロフ 機動戦士ガンダム0083 ~スターダストメモリー 声優:岸野一彦 アルビオンの操舵手。階級は大尉。 寡黙な人物であり、余計なことはしゃべらない。 趣味は読書。なお、アルコールに強い。 デラーズ・フリートとの紛争終結後はティターンズに配属された。 一言モード1:総員、発進準備! 一言モード2:許可します…アルビオンへ、ようこそ。 一言モード3:--- 一言モード4:--- ジャクリーヌ・シモン 愛称:シモン 機動戦士ガンダム0083 ~スターダストメモリー 声優:荒木香恵 アルビオンのブリッジオペレーター。階級は軍曹。アルコールが入ると底抜けに陽気になり、同僚のピーター・スコットをからかったりする。 デラーズ・フリートとの紛争終結後は、他のアルビオンのクルーと同じくティターンズに配属になった。 一言モード1:艦長、味方機を呼び戻しますか!? 一言モード2:そのまさかです、大尉! 一言モード3:--- 一言モード4:--- ニナ・パープルトン 愛称:ニナ 機動戦士ガンダム0083 ~スターダストメモリー 声優:--- アナハイム・エレクトロニクス社に勤めるシステムエンジニアでルナリアン(月面生活者)。 ガンダム開発計画に携わり、連邦軍に出向する。オーストラリアのトリントン基地でガンダム試作2号機強奪の場面に遭遇し、以降この紛争が終わるまでアルビオンと行動を共にする。コウの才能に着目し、心惹かれるようになるが、彼の戦いの相手がかつての恋人ガトーと知り、苦悩する。 一言モード1:--- 一言モード2:--- 一言モード3:--- 一言モード4:--- モーラ・バシット 愛称:モーラ 機動戦士ガンダム0083 ~スターダストメモリー 声優:--- 地球連邦軍所属のメカニックで階級は中尉。 ガンダム試作機全てのチーフメカニックとしてアルビオンに赴任。男性より大柄な体格と豪胆な性格で、クルー全員の姉御といった存在だった。コウとの関係に悩むニナの良き相談相手となり、自身はキースといい仲になる。 一言モード1:--- 一言モード2:--- 一言モード3:--- 一言モード4:--- カミーユ・ビダン 愛称:カミーユ 機動戦士Zガンダム 声優:飛田展男 サイド7のコロニー、グリーンノア1に住んでいた民間人の少年。 趣味は空手、ホモ・アビス(1人用小型飛行機)操縦、ジュニアモビルスーツ操縦等。自分の女性的な名前に強いコンプレックスを持っており、それを笑ったジェリドを殴ったことでティターンズに連行される。そして、グリーンノアに侵入したクワトロと接触したことをきっかけにエゥーゴへ参加する。その際、初めて乗ったガンダムMk-Ⅱで戦闘をやって見せ、ブライトらに「アムロ・レイの再来」と言わしめる。エゥーゴに加わってからも多大な戦果を挙げ、ニュータイプ能力の開花を伴ってエースパイロット級の活躍を見せる。また、モビルスーツの開発面でも優れた才能を見せ、Mk-ⅡのフライングアーマーやZガンダムは彼のアイデアが盛り込まれたものである。その性格はナイーブさと狂暴さ、少年らしい素直さと計算高い部分が同居した複雑なもの。当初はティターンズへの漠然とした怒りから戦闘に参加していたが、クワトロやアムロ、フォウとの出会いを経て、戦争を終結に導くために自らの意志を持って戦うようになり、人間的にも大きく成長していく。 コロニーレーザーを舞台にしたシロッコとの決戦において勝利するものの、精神崩壊に追い込まれる。その後、ファと共に療養生活を送るが、「機動戦士ガンダムZZ」で幾度かジュドーやプルを導いたことがある。なお、同作品の最終回で復活を遂げる。 一言モード1:カミーユが男の名前で何が悪いんだ!俺は男だよ! 一言モード2:フォウ、僕だ!カミーユ・ビダンだ! 一言モード3:歯ぁ食いしばれっ!!そんな大人、修正してやるっ!! 一言モード4:自分だけが特別だと思うな!あの人が喜ぶのかよ、生き還るのかよ!! ファ・ユイリィ 愛称:ファ 機動戦士Zガンダム 声優:松岡ミユキ グリーンノア1でカミーユの家の隣に住んでいた少女。両親がティターンズに捕らえられた後、エゥーゴに参加してパイロットとなる。グリーンノア1にいた頃は、好意から何かとカミーユの世話を焼きたがっていたが、エゥーゴに参加してからは不安と恐怖からカミーユに頼るようになる。そして、カミーユに自分を認められたいために、パイロットとして何度も無理をしたこともあった。シロッコとの最終決戦で精神が崩壊したカミーユを看病するため、「機動戦士ガンダムZZ」序盤でアーガマを降りる。 一言モード1:あ…あ、足手まといにはならない! 一言モード2:カミーユ、生きてるんでしょ点?カミーユ、返事をして…カミーユ! 一言モード3:カミーユ。 一言モード4:私だって、パイロットなんだから! エマ・シーン 愛称:エマ 機動戦士Zガンダム 声優:--- ティターンズの一員であったが、己の信念でエゥーゴに参加する。階級は中尉。 理知的な性格であると同時に、負けず嫌いで気が強く、年下のカミーユやカツ、ファに対して常に姉のように振る舞おうとする。また、ヘンケンに想いを寄せられていたが、内心で悪い気はしていなかったようである。シロッコの下へ去ったレコアとの戦いで重傷を負い、カミーユに見守られて息を引き取る。 一言モード1:あらやだ…近々縁談ありだなんて… 一言モード2:うかつなっ! 一言モード3:地球で恋をしてきたんでしょう? 一言モード4:--- カツ・コバヤシ 愛称:カツ 機動戦士Zガンダム 声優:難波圭一 一年戦争時、ホワイトベースに乗っていた子供達の1人で、戦後にはハヤトとフラウの養子となった。軟禁状態にあったアムロを説得し、彼と共にエゥーゴに参加する。アムロの活躍に憧れ、同年代のカミーユをライバル視して無茶な行動を繰り返し、その度に周囲から修正を受ける。戦いの中で出会ったサラに心惹かれ、何とかシロッコの下から救い出そうとするが、シロッコをかばった彼女を誤って撃墜してしまう。ティターンズとの最終決戦直前に、岩石に激突して機体が損傷したところをヤザンに狙われ、死亡する。 一言モード1:僕だって…戦えるんだ! 一言モード2:ぼ、僕じゃ…こいつを扱いきれないのか? 一言モード3:--- 一言モード4:--- フォウ・ムラサメ 愛称:フォウ 機動戦士Zガンダム 声優:島津冴子 ムラサメ研究所4番目の強化人間。 サイコガンダムと共にアウドムラ追撃隊に合流し、ホンコンでカミーユに接触する。その出会いの中、2人は心を通わせるが、エゥーゴを倒せば失われた記憶を研究所が取り戻してくれるという言葉を信じ、サイコガンダムでカミーユと戦う。しかし、一度はサイコガンダムの呪縛から逃れ、自分の身を犠牲にカミーユを宇宙へと上がらせる。その後、キリマンジャロ基地攻防戦の中でカミーユと再会するが、再強化を受けており、再び敵として対峙してしまう。戦いの中で正気に戻るものの、ジェリドの攻撃からカミーユのZガンダムを守るため命を落とす。その出会いと死はカミーユを人間的に大きく成長させる契機となった。 一言モード1:カミーユ、宇宙へ…さよなら…。 一言モード2:カミーユは、その力を表現してくれるマシンに乗っている…! 一言モード3:みんな…嫌いだっ!! 一言モード4:ウフフフフフッ。自分の名前、嫌いなのね? ヘンケン・ベッケナー 愛称:ヘンケン 機動戦士Zガンダム 声優:--- エゥーゴの一員でアーガマの初代艦長。 ブライトの艦長就任後は戦艦・ラーディッシュの艦長としてエゥーゴの旗艦であるアーガマのフォローに徹する。一年戦争時は連邦軍のサラミス級艦の艦長を務め、ア・バオア・クーではジオングに接触こそしなかったものの赤い彗星のプレッシャーを感じていた。 ざっくばらんとした性格で人当たりがよい。エマに心惹かれて、何度か不器用なアプローチを繰り返し、最期は敵の攻撃にさらされたエマを守るために艦を盾にし、無事を確認した後に爆死する。 一言モード1:--- 一言モード2:--- 一言モード3:--- 一言モード4:--- ハヤト・コバヤシ 愛称:ハヤト 機動戦士Zガンダム 声優:--- 元ホワイトベースの一員で、カラバではアウドムラの機長として前線指揮を担当する。一年戦争ではガンダンク及びガンキャノンのパイロットとして戦い、戦後はフラウ・ボゥと結婚し、カツ、レツ、キッカを養子に迎え、さらに戦争博物館の館長を務めていた。しかし、自らの意志でカラバに参加し、その中心的人物となった。 「機動戦士ZZガンダム」ではジュドーをかばって命を落とす。 一言モード1:--- 一言モード2:--- 一言モード3:--- 一言モード4:--- ベルトーチカ・イルマ 愛称:ベルトーチカ 機動戦士Zガンダム 声優:--- エゥーゴの地上支援組織であるカラバの一員。 連絡や陽動を主な任務とするが前線に立つ事も辞さない強気な性格であり、その言動はデリカシーがないととられる場合もあった。エゥーゴに参加を決めながらも戦う決心がつかないアムロを奮い立たせ、その再起に大きな役割を果たす。また、ダカールでの議会占拠作戦では前線に立ち、クワトロの演説を中継する。その頃には性格も多少丸くなったようでカミーユと談笑する場面も見られた。レシプロの複葉機ピーチクラフト17が愛機で、初登場時はそれに乗っていた。 一言モード1:--- 一言モード2:--- 一言モード3:--- 一言モード4:--- トーレス 愛称:トーレス 機動戦士Zガンダム 声優:柴本浩行 アーガマのブリッジ担当要員。甲板指揮・通信・探索を担当する。年齢が近いせいもあり、カミーユとは親しい間柄であった。 「機動戦士ガンダムZZ」では人手不足からパイロットを務めた場面もあり、ジュドー達がネェル・アーガマに乗り換えた後も引き続き乗艦し、艦長代理となったビーチャの補佐を務めた。 一言モード1:ホンコン土産。 一言モード2:進路、クリア! 一言モード3:--- 一言モード4:--- サエグサ 愛称:サエグサ 機動戦士Zガンダム 声優:塩谷浩三 アーガマのブリッジ要員。 ナビゲーションと操舵を担当する。無口で目立たないタイプ。 「機動戦士ガンダムZZ」冒頭において、ヤザンに殺されてしまう。 一言モード1:香港なんかのホロテープのいいやつが… 一言モード2:待ってください、ミノフスキー粒子が濃くて! 一言モード3:--- 一言モード4:--- ヤザン・ゲーブル 愛称:ヤザン 機動戦士Zガンダム 声優:大塚芳忠 ティターンズの一員。 パイロットとしての腕前は一流であり、ギャプランやハンブラビといった高機動の機体を自由自在に操る。また、策略にも長け、アレキサンドリアに乗っていたジャマイカンを謀殺する。後にシロッコのスケールの大きさに興味を持ち、その野望に協力することになる。部下のラムサス、ダンゲルとチームを組み、クワトロやカミーユを苦しめるが、その非道への怒りでZガンダムのバイオセンサーを発動させたカミーユによって撃墜される。しかし、「機動戦士ガンダムZZ」第1話でサイド1のシャングリラにたどり着き、入港したアーガマのモビルスーツを奪おうとするが、ここでもその非道ぶりがジュドーの怒りを買う。その後、ジャンク屋のゲモン・バジャックと協力して、モビルスーツ・ゲゼでアーガマを襲うが最後はジュドーのZガンダムに撃墜される。 一言モード1:ラムサス、ダンケル!奴にクモの巣を仕掛ける! 一言モード2:縮んどるぞ、まだ出撃前だ。しっかりせい! 一言モード3:女が戦場にいるなんてなぁ気に入らないんだよ!消えな!! 一言モード4:--- ダンケル・クーパー 愛称:ダンケル 機動戦士Zガンダム 声優:菊池正美 ティターンズの一員で、ヤザンの部下。 ラムサスと共にハンブラビを駆り、3機の息の合ったコンビネーション攻撃でクワトロやカミーユを苦しめた。最後はカミーユのZガンダムに撃墜される。 一言モード1:了解しました、ヤザン大尉。 一言モード2:うぁっ!ヤ、ヤザン隊長…これ以上は! 一言モード3:--- 一言モード4:--- ラムサス・ハサ 愛称:ラムサス 機動戦士Zガンダム 声優:拡森信吾 ティターンズの一員で、ヤザン直属のパイロット。 ヤザン、ダンゲルと共にハンブラビを駆り、3機の息の合ったコンビネーション攻撃でクワトロやカミーユを苦しめた。最後はエマのスーパーガンダムに撃墜される。 一言モード1:フ、噂ほどではないな。 一言モード2:ヤ、ヤザン大尉!だぁぁぁぁっ!! 一言モード3:--- 一言モード4:--- クワトロ・バジーナ 愛称:クワトロ 機動戦士Zガンダム 声優:--- アーガマのモビルスーツ隊の隊長。 階級上は大尉であるが、リック・ディアスや百式でパイロットとして戦うだけでなく、戦略においても意見するエゥーゴの重要人物。 サングラスを常用し、その言動、過去の経歴等も謎が多い。 その正体はアクシズから地球圏の様子を探るために派遣されたジオンの赤い彗星シャア=アズナブルである。 カミーユのニュータイプの素養に早くから注目し様々な面で面倒を見る。 当初はスペースノイドの立場を脅かすティターンズと戦うため、パイロットに徹していたが、かつてのライバル・アムロと再会、シロッコの出現、ブレックスの死、ダカールでの演説を経てエゥーゴの中心人物となっていく。だが、コロニーレーザーを舞台にしたハマーンのキュベレイとの戦いの後、消息不明となる。以後、シャアがクワトロの名を使うことはなかった。 なお、クワトロとはイタリア語で数字の「4」のことであり、キャスバル、エドワウ、シャアに続く4番目の名前を意味している。 一言モード1:--- 一言モード2:--- 一言モード3:--- 一言モード4:--- ジュドー・アーシタ 愛称:ジュドー 機動戦士ガンダムZZ 声優:矢尾一樹 サイド1のコロニー・シャングリラに住んでいた民間人の少年。 自らと妹リィナの生活をジャンク屋稼業で支えていた。入港したアーガマからモビルスーツを盗もうとするが、成り行きと持ち前の正義感からヤザンやネオ・ジオンをZガンダムで退けたことをきっかけに、アーガマ所属のパイロットとなる。行動力とバイタリティにあふれ、常に明るく前向きな性格。当初はリィナとの暮らしのために戦っていたが、仲間やリィナが戦いに巻き込まれていく中で、戦争を終わらせるために戦う明確な意志を持つに至る。ニュータイプとしても高い資質を持ち、ハマーンやプル達と心を通わせた。 ハマーンとの決戦に勝利した後、さらなる成長のためにルーと共に木星船団に参加する。 一言モード1:大儲けしたら、お前も山の手の学校にいかしてやるから! 一言モード2:ジュドー、ダブルゼータ、行くぜっ! 一言モード3:あ、あら?調子に乗りすぎちまったか? 一言モード4:一気にいくぜ、ハイメガ・キャノン! ルー・ルカ 愛称:ルー 機動戦士ガンダムZZ 声優:松井菜桜子 エゥーゴの志願兵で、ZZガンダムのコアファイターをアーガマへ移送してきた。トレードマークは流星のマーキング入りパイロットスーツ。ジュドーがZZガンダムに乗った後はZガンダムのパイロットを務める。自分の意志を明確にもった気丈な性格であり、成り行きで戦うジュドー達とは反発しあう事もあったが、徐々に仲間として打ち解けていった。また、グレミー・トトに一方的に言い寄られ困惑していたが、アクシズでの決戦で彼を撃った際には一人、涙を流す。 全ての戦いが終わった後、ジュドーと共に木星船団に参加する。 一言モード1:このぉっ! 一言モード2:あいたぁ~…やってくれたわね! 一言モード3:あぁっ!ウソでしょ!?マジでやばいじゃないの! 一言モード4:--- ビーチャ・オレーグ 愛称:ビーチャ 機動戦士ガンダムZZ 声優:拡森信吾 シャングリラのジャンク屋仲間の1人でジュドー達のリーダー格。 しかし、その日和見でわがままな性格から仲間からの信頼はあまり高くはなく、ジュドーとは何かと対立していた。一時は状況を見て、モンドと共にネオ・ジオンに付く事も考えるが、最終的にはアーガマに戻り、主に百式のパイロットとして戦う。また、ブライトが前線から退いた後には、ネェル・アーガマの艦長として仲間をまとめあげた。 一言モード1:大人達が勝手に始めた戦争に、なんで子供の俺達が戦って、尻拭いしなきゃなんないんだよ! 一言モード2:ジュドーばかりに、いいかっこさせるかよ! 一言モード3:--- 一言モード4:--- エル・ビアンノ 愛称:エル 機動戦士ガンダムZZ 声優:原えりこ シャングリラのジャンク屋仲間の1人。 仲間内では主に情報収集を担当する。性格は活発で勝ち気であり、ジュドーとはケンカ友達であったが、内心では彼に好意を寄せていた。アーガマに乗り込んだ後は、ルーにライバル意識を燃やして、主にガンダムMk-Ⅱで戦った。戦いの中、ジュドーの前で何度か少女らしい面を見せるが、最後はビーチャの気持ちに応えることになる。 一言モード1:ほらほら、こっちこっち! 一言モード2:ルーには負けるもんかっ! 一言モード3:--- 一言モード4:--- モンド・アガケ 愛称:モンド 機動戦士ガンダムZZ 声優:塩谷浩三 シャングリラのジャンク屋仲間の1人。 特にビーチャと仲が良く、一時は一緒にアーガマを降りようとした。抜群のメカニックへのセンスを誇り、コロニー・ムーンムーンでは放置されていた作業用モビルスーツ・キャトルを修理する等の活躍を見せた。当初は日和見な性格であったが、ムーンムーンの指導者のラサラと出会ったことで、人間的にも成長する。 一言モード1:このっ、このっ、このっ! 一言モード2:俺だって、ジュドーくらいには! 一言モード3:--- 一言モード4:--- オプション情報大事典に戻る
https://w.atwiki.jp/fable3/pages/47.html
シルバーキー(1) 奥の門の中。ストーリー進めると入れるようになる ノーム(1) 北東の泣き虫の小屋へ行く途中の道の柵 本(1) 歴史に名高き王たち:セドリック王 北東の泣き虫の小屋内 宝箱 シルバーキー5 古き良き小屋と、愛の小屋の中間(サビーンが騙る山の民の歴史が置いてある場所)の奥 店舗 カズアル ウェア(コスチューム) 山の民のスーツ(男性用) 山の民のスーツ(女性用) アルビオン インク(タトゥー) 山の民のタトゥー サミット商会(雑貨) 花 山の民のメイク
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/387.html
前ページ次ページとある魔術の使い魔と主 ワルド達は、再び走り出す。 ルイズは腕の事を心配したが、しきりに大丈夫です~、と若干冗談を交えて当麻は安心させようとした。 剥き出しというのもどうかと、傷を布で覆い隠す。少しでもルイズを不安がらせないようにする当麻なりの配慮である。 (それにしても……) 走りながら、当麻は先程の戦いを思い出す。 あれは完全に当麻が油断してしまった結果である。近接戦闘を行いがら呪文を紡ぎ、魔法を放つ。おそらく天草式の人達と同じタイプなのであろう。 (やっぱりこっちでも魔術に関してはあまり変わらないんだな) 元の世界で幾多の魔術師と戦って来た経験が、役に立つ。根本的な部分はそこまで変わらない。 次は先程のようにはいかない。向こうの誤算はここで当麻を仕留めそこなった事。そういう事にしてやる、と当麻は心に決めた。 階段を上った先には一艘の船が停泊していた。帆船のように当麻は見えた。唯一違う点を挙げるとしたら、羽が突き出ている点だろうか? 枝に何本ものロープが絡まっていて、船は枝に吊るさられていた。 そして、当麻達が乗っている枝が迎えるように甲板へと伸びていた。 彼等が船上に現れると、甲板で寝込んでいた船員がこちらに気付き、起き上がった。 「なんでぇいおめぇら!」 かなり酔っている。普通の吐く息でさえもかなり臭い。 「船長はいるか?」 「もうお休みさ、用があるなら、明日の朝、改めてくらーことだな!」 男は景気よく、手に持っていたラム酒をラッパ飲みしながら、答えた。いやもう、一発ぶん殴ろうか? と当麻は思った。 ワルドは黙ったまま、杖を引き抜いて男の方へと向ける。すると、男の目が見開いた。 「貴族に二度同じことを言わせるとはな。船長を呼んでくれないか?」 「き、き貴族!」 男はがばっ、と立ち上がると、船長室へと走り去っていった。 当麻はその様子を見て、思わずルイズに話し掛ける。 「貴族って何でもオーケーなんだな」 「当たり前じゃない。貴族と平民は雲泥の差よ」 そうは言ってもな……と当麻は髪をかく。 確かに上の立場、下の立場はあるしそれは認める。 しかし、それを当然だと思うのはどうかと思う。生まれた時からその人生が決まるというが、これはさらに制限されている。 (だから革命が起きたんだろうな) 名前は覚えてないが確かあった……というかなかったら困る。 当麻の世界では貴族はほとんどいない。いたとしてもこのような人格はしていない。 いつかこの世界にも革命が起きるんだろうな、と言葉に出来ない事を思っていると、船長が現れた。 やや寝ぼけており、髪はぼさぼさになりながらもこちらに向かってくる。 少し歳をとって、帽子を被っている。船長のイメージにはピッタシだ。 「何か御用ですかな?」 船長は早く話を終わらしたいように思えた。 「女王陛下の魔法衛士隊隊長のワルド子爵だ」 今度は船長の目が見開かれる。今ので目が覚めたのだろう。こちらの身分が相当高い事がわかった為、言葉遣いがさらに丁寧になる。 「これはこれは……。して、なぜこのような当船に赴いたのでしょうか?」 「アルビオンへと今すぐ出港して欲しい」 「それは無茶です!」 船長の声が途端に大きくなる。本来の予定ならば明日に向かうのだ。だけどなぜ無茶なのだろうか? 予定をちょっと早くなるだけではないか。 「勅命だ。まさか王室に逆らうつもりか?」 「いえ! そのような事は断じてございませんが、朝にならないと出港が出来ないのです!」 「なぜだ?」 「アルビオンが最もここ、ラ・ロシェールに近づくのは朝であります! その前に出発したんでは風石が足りませんや!」 「……風石って何?」 当麻が耳打ちでルイズに聞く。 そんな事も教えなきゃいけないの? といっためんどくさげな目を見られて、当麻はハハハ、と苦笑いを取るしかなかった。 「『風』の魔法力を蓄えた石。それがあるから船は宙に浮かぶの」 ふむ、と当麻は頷く。ならばそれさえ触れなければ沈没、という事はなさそうだ。 「子爵様、当船が積んだ『風石』はアルビオンへの最短距離分しかありません。それ以上積んだら足が出ちまいます。よって今は出港できません。途中で地面に落っこちてしまいまさあ」「なら大丈夫、『風石』が足りない分は、僕が補う。僕は『風』のスクウェアだ」 船長と船員は、顔を見合わせた。おそらく初めての出来事で戸惑っているようだ。少しだんまりした後、再びワルドの方へ向く。 「ならば問題ないかと。料金ははずましてもらいますよ」 「積荷はなんだ?」 「硫黄で。アルビオンでは今や黄金並の値段がつきますんで。新しい秩序を建設ならっている貴族のかたがたは高値をつけてくださいます。秩序の建設には火薬と火の秘薬は必須ですからね」 「その運賃と同額を出そう」 船長は笑みを浮かべた。なんともまぁいやらしい笑みではあったが、こちらの条件に対して頷いた。 無事商談は成立、船長は船にいる船員に命令を与えた。 「出発だ! もやいを放て! 帆を打て!」 こんな夜中にかよ……とぶつぶつ文句を言っているが、船員達は淡々と船長の命令に従い、出発の準備をし始める。 帆を張り、枝に吊した綱を解き放つ。ガクッ、と重力に従って沈んだが、直ぐさま発動した『風石』の力で宙に浮かぶ。 帆と羽が風を受け、ゆっくりと動き出す。 ここまで時間にて僅か数分、ヒュウと思わず口笛を吹いてしまう。 「アルビオンにはいつ頃着く?」 「明日の昼過ぎには、スカボローの港に到着しまさあ」 ワルドが尋ね、船長が答える。 まだまだ時間がかかるんだな、と当麻は舷側に乗り出して、景色を見る。 下の方で、ラ・ヴァリエールの明かりが離れていく。かなりのスピードが出ているようだ。 と、誰かに手を置かれた。見るとそれはルイズであった。 「傷は大丈夫?」 心配そうにルイズは左腕を見る。 「あぁ、こんなもん上条当麻さんにはへのへのへ~ですったい。それともあれですか? もしかして心配しちゃってるんですか?」 当麻の冗談を含めた言い方に、ルイズはキッ、と睨んだ。 「当たり前でしょ! 使い魔を心配するのは当然よ!」 ちょっと涙を浮かべながら怒鳴るルイズに、当麻は手を左右に振りながらも慌てた。 「いや、大丈夫だってホント。マジ俺の復活速度は半端ないし。つーか右手でほとんど打ち消したし問題ないって」 ほらほら、と作り笑いをしながら右手を見せびらかす。 ルイズにも当麻の右手、幻想殺しの効果がどれだけ凄いか知っている。 「なら……いいけど」 まだ何か言いたげな様子であったが、とりあえずルイズは納得した様子。 そんな二人の元に、ワルドが寄って来た。 「船長の話では、ニューカッスル付近に陣を配置した王軍は、包囲されて苦戦中のようだ」 その時、ルイズはある事に気付きワルドへと詰め寄る。 「ウェールズ皇太子は?」 返事の代わりに首を横に振った。 「生死もわからない、か。とりあえずこれからどうするんだ?」 「王党派と連絡を取りたい所ね」 「陣中突破しかあるまいな。スカボローからニューカッスルまでは馬で一日だ」 ゲ……と当麻は口から漏らす。彼にとって馬は、もう半ばトラウマとなっている。 「反乱軍の間を擦り抜けて?」 「そうだ。それしか方法はないだろう。まぁ向こうもこちらに公然と手出しは出来んだろう。暗闇に気をつけながらも隙を見て、ニューカッスルの陣へと向かう」 「んじゃあさ」 ワルドとルイズは当麻に目をやる。 「とりあえず決まった事だし、休まない?」 どれくらい寝ただろうか? 当麻は眩しい陽の光と話し声で、意識を取り戻した。 ゆっくりと目を開けると、一面青空が広がっている。再び舷側から身を乗り出すと、白い雲が広がっている。どうやら船は雲の上を進んでいるようだ。 あれ? でも息苦しくないよな、と早速この世界の常識に不思議がっていると、鐘楼の上に立っている船員が大声で叫ぶ。 「アルビオンが見えたぞ!」 という事は今は昼過ぎか、随分寝たなー、と閉じそうな瞼をごしごしとこする。 立ち上がり、気付く。隣で小さな寝息を立ててルイズが寝ていた。 どうやらここでも使い魔の仕事をしなければならないようだ。当麻は優しくルイズの肩を揺らす。 「ふぇ……」 「着いたらしいぜ」 一声かけて、体を大きく逸らす。当麻にとって目を覚ますのにはこれが一番だ。 するとルイズが起き上がり、ある方向を向いたまま目線を変えなかった。なんかあるのか? と思い、そちらへと視線を向け…… 当麻は息を飲んだ。 「おいおい、この世界はホントなんでもありだな」 「驚いた?」 そこには、巨大な大陸が文字通り浮いていた。地表には山がそびえ、川も流れている。 当麻の許す視界には収まりきれない程の大きさだ。 「浮遊大陸アルビオン。ああやって空中に浮遊して、主に大洋の上をさ迷っているわ。でも、月に何度か、ハルケギニアの上にやってくる。大きさはトリステインの国土ほどもあるわ。通称『白の国』」 「白の国?」 当麻の質問を待っていたのか、ルイズは大陸の方を指差した。 大河から溢れた水が空に落ち込んでいる。その際、白い霧へと変わり、大陸の下半分を包んでいた。 百聞は一見にしかず、なるほど、と当麻は納得した。 あの霧が雲となって大雨を降らしているのだと、ルイズは補足してくれた。 その時、再び鐘楼の上に立っている船員が、大声で叫ぶ。 「右舷上方の雲中より、船が接近しています!」 当麻は視線を大陸からずらす。そこには肉眼でもはっきしと船が近づいて来ているのがわかる。自分らの船より一回り大きく、舷側に開いた穴からは大砲が突き出ている。 「……いや、そんな事はないですよね? あったら困るよな?」 当麻は最悪の展開を頭に浮かべる。こういった時、よくある事といえば―― 「いやだわ。反乱勢……、貴族派の軍艦かしら」 当麻の代わりにルイズが答えた。 「何ですか一体、どうしてこうも困難フラグが立つんですか!?」 「知らないわよそんなの!」 うがー、と当麻は両手で頭を抱えて悩む。 簡潔に言うと、空賊に船を乗っとられてしまったのだ。 当麻やルイズの予想通りだったのかはわからないが、それは一番質の悪い空賊であった。 あちらは無数の大砲にメイジもいる。こちらは三つだけの大砲に、魔力がないメイジと魔法が放てないメイジ。 戦力の差は決定的、ここは素直に捕まるのを選んだ。 三人は船倉に閉じ込められた。一緒に航空した船員達は、自分達のものだった船の曳航を手伝わされているらしい。 周りには、酒樽やら穀物のつまった袋やら、しまいには火薬樽までもが散らばっている。 ワルドはやることがないのか、興味深そうに見て回っている。 一瞬、当麻の顔が苦痛の表情へと変わる。ズキッと左腕が再び痛みだしたらしい。その一瞬を、ルイズは見逃さない。 「トウマ、怪我痛むの?」 「あー大丈夫だって。いやちょっとは痛むけど」 「痛むならちょっと見せてよ。ほら」 ルイズは当麻の答えを聞く前に腕を掴むと、布を取り払った。 「きゃ!」 ルイズは思わず尻餅をついた。それぐらい当麻の腕は酷かった。 左腕の手首ちょい手前から肩までひどい水ぶくれとなって、見られたせいなのか痙攣も起こし始めた。 「ひどい火傷じゃないの! どうしてほっとくのよ!」 ルイズは立ち上がると、扉を叩いた。 「誰か! そこにいるでしょっ!」 当麻は再び布で左腕を覆い被せる。その間にも看守の男がこちらの様子に気付いた。 「なんだ?」 「怪我人がいるの! 水と……後『水』系統のメイジはいないの!? 治してほしいの!」 「いねぇよ」 「嘘! いるんでしょう!」 「あーもう落ち着けって」 取り乱しているルイズに思わず当麻は手をかける。ルイズはそんな当麻をキッと睨む。 「なんでよ! あんた怪我してるじゃないの!」 「あーすみませんこの子ちょっとオーバーリアクションで……な、ちょっと向こうへいこうか?」 「あ、ちょっと! 何してんのよ!」 ルイズの手を引っ張り扉から離れる。看守の男は首を傾げながらも再び座り込んだ。 「とりあえず落ち着いてくれ。向こうをあまり刺激しちゃマズイ」 「なにムゴゴ」 よ、と言い切る前に当麻が口を塞いだ。しばらくして放すと、ルイズは顔を伏せ、黙った。 「確かに何も言わなかった俺が悪い。けど俺達は姫様から授かった重要な任務のまっさだなかだ。あそこで俺の治療の為に時間を使うわけにはいかなかったんだ」 そう、ラ・ロシェールでもそうだったが、『目的地に辿り着くのが任務』なのだ。だからタバサ達を犠牲にしてここまできた。 その事実があったからこそ、当麻は弱音を吐かなかった。しかし、ルイズにとってそんなのはどうでもよかった。 「あんたはわたしの使い魔なんだから……心配かけさせないでよ」 肩が震えている。顔を隠しているがヒック、と言葉を吐き出す。 「えとー……ルイズさん。もしかして泣いていらっしゃるのでしょうか?」 「泣いてないもん……、絶対に泣かないもん……」 当麻は困った。正直自分が悪い。全責任が当麻にある。慰めようにも多分言う事を聞いてくれないだろう。 仕方なく当麻はワルドの元へ向かう。 「慰めてやってください」 状況を理解していたワルドは黙って頷くと、当麻の代わりにルイズの元へと向かった。見たら殺されそうな気がしたので、視線を違う方へと逸らした。 と、扉ががたんと開いた。空賊の一人が入って来ると、三人に話しかけた。 「頭がお呼びだ」 当麻達三人が連れていかれた部屋はかなり立派であった。豪華なデイナーテーブルが中央に置かれている。その一番上座に腰掛けているのが、この空賊船の船長であった。 大きな水晶のついた杖をいじっているのに夢中で、その周りの部下達がルイズ達をニヤニヤと笑いながら見つめている。 ここまでルイズを連れて来た男が、後ろからルイズをつついた。 「おい、頭の前だ。挨拶しろ」しかし、このルイズははいそうですかと頷かない。挨拶の代わりに頭をただ睨み続けた。 すると、頭はこちらを見てニヤリと笑う。 「気の強い女は好きだぜ。さて、名乗りな」 「大使としての扱いを要求するわ」 頭の体がピクッと動いた。 「どうしてだ?」 「わたしは王党派への使いよ。まだ貴族が勝ったわけじゃないから、アルビオンは王国だし、正統なる政府は王室ね。 わたしはトリステインを代表してそこに向かう貴族だから大使ね。だから、大使としての扱いを要求してるの」 「王党派と言ったな」 「えぇ、言ったわ」 「今ここで言うが、俺達は好き放題暴れる代わりに、王党派に味方するような連中を捕まえるという条件があってな――」 「だから何よ?」 頭の会話に乱入する。が、気にせず話を続けた。 「貴族派につく気はないかね? それなら港まで無料で運ぶし、向こうも礼金をたんまりくれるだろう」 「それだったら死んだ方がマシね」 ルイズははっきしと言った。当麻は頭を抱えたくなった。なんというか、貴族というのはきっと交渉が下手なんだなと思った。 (でもまぁ、その姿勢は誇れるぜ) ルイズの体は僅かながらも震えていた。好きで言っているわけではない。怖いのだ。しかし、たとえ怖くても、真っ直ぐルイズは男を見つめている。 そんなルイズに、当麻は彼女の『力』を感じた。 「もう一度言う。貴族派につく気はないかね?」 頭の口調が重くなった。ぴりぴりと緊張が走る。 それでも、ルイズは負けない。負けないつもりだったが当麻が先に口を開いた。 「無理だ。無理です。無理無理無理無理無理無理無理無理ー!」 だー、と両手を大の字に広げる。全員が当麻に視線を向けた。 「あーもう、何度も繰り返すとかどこのアナウンスさんですか。俺達は王党派なんだ。その事実は何があっても覆んねえよ」 「貴様はなんだ?」 今度は当麻を睨み付ける。しかし、当麻にとってこんなのは怖くもなんともない。 「ただの使い魔」 「使い魔?」 「ただのを入れ忘れてるぜ?」 途端頭は笑った。部屋中を支配するぐらい大声で笑った。 「トリステインの貴族は、気ばかり強くてどうしようもないな。まぁ、どこぞの国の恥知らずどもより何百倍もマシだがね」 頭はそう言うと、再び笑い出して立ち上がる。当麻達はあまりの豹変ぶりに戸惑い、顔を見合わせた。 「失礼した。貴族に名乗らせるなら、まずはこちらからだな」 周りに控えた空賊達が、一斉に直立した。なんだなんだ!? と当麻は身構えた。 すると頭は髪の毛をびりっとはがした。それはカツラであった。眼帯を取り外し、つけひげもびりっとはがす。 現れたのは、凛々しい金髪の若者であった。 「私はアルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官……いやこの肩書きよりこちらの方が通りがいいだろう」 若者は再び威風堂々、名乗った。 「アルビオン王国皇太子、ウェールズ・テューダーだ」 ルイズと当麻、二人が口を大きく開けた。 前ページ次ページとある魔術の使い魔と主