約 2,172 件
https://w.atwiki.jp/silly05/pages/28.html
~主役は霧島!ダメ・・・ストーカーちゃんが見てる・・・・ッ~ 霧島って顔がいいのに性格がアレじゃないですか。 いや性癖か。 だから結構泣いてた女の子も多いと言うか。 束縛しようとして失敗してフラれて逆恨み、とかザラにあったんですよ昔。 俺にしてみれば考えられない高校生でしたよ。 大半の女の子が泣いてた理由は 「こんなんだと思わなかった!」 「ついていけない!」 とか自分勝手なのが多くてですね。 霧島見てて可哀そうかな、とも思ったんですが アイツ来る者拒まず去る者追わずですから。 それに自分でうまく処理してましたからね。 んでアイツ頭いいんですよ、マジで。 生きていく上での頭の回転も、勉強面での回転もすごくてですね。 なぜオタクなのか、なぜ俺と友達なのか、って思いましたね。 バカ高選んだのも「近いから、面白そうなヤツ居そうだったから」ですよ。 頭のいい奴の考える事は解らない。 んで高校二年の夏休みですよ。 地元にもね、小規模ながらオタクイベントが巡業してきまして。 霧島がそれに一般参加で行ったら変わった子に目を付けられてね。 所謂合宿スレみたいなね、危ない子なんですけど。 その子バカ高1年で、イベントで霧島見かけて 「あの先輩がオタクだったなんて!お近づきになりたい!」って思い、 夏休み半分使って家凸電凸とアクティブに行動なさってて。 さすがの霧島もお手上げ状態だったんですよね。 普段のアイツは愚痴は零せど助けを求めるような奴じゃないんですよ。 それが例え女関係でも。 でもこの時ばかりは違ったなあ。 夏休みで嬉々として引きこもってる俺んとこまで来て 霧島「ヤバイのに目付けられた、ちょっとかくまって」 これですよ。 さすがに俺もやばいと思いましてね。 何日間か匿おうと。 でも俺んちには核爆弾が居たんでそう長くは置いておけない。 (むしろ家庭事情を友人に知られたくない、ってのもあった) だからこの何日かで撃退法を考えなければと。 合宿スレ見てる人ならわかると思うけど、こう言う人たちって何を言ってもダメじゃないですか。 思い込みが激しくてこっちの話なんて一つも聞いてない。 自分の思い通りに事が進まないと暴れ出す。 相手が女の子で例え過激なアクション起こされてたにしても、 こっちは男二人で、正当防衛も適応されるかどうかって話になるんだよな。 理不尽だけどさ。 お手付きもしてない女の子だし、思い込みで凸の嵐されてるんで 霧島は何も悪くないんだけど、こう言う場合K絡めるのもガキなんで抵抗ありました。 霧島「風呂上がったぞー」 もうね、全然お気楽なんだよ霧島。 なに?幾つもの死線を潜り抜けてきた兵士の余裕? ふざけんなよお前! おれ「お前家留守にしてて、家の人に危害行ってんじゃねえのか」 霧島「俺を置いてみんな旅行だ」 エロゲもビックリな都合の良さだな。 おれ「杏原さんとかには知らせないのか?」 霧島「んなもんこりゃオタク方面の話だ」 おれ「だな、一般人を巻き込むわけには行かない」 霧島「ジークジオン!ジークジオン!」 おれ「通常の三倍!通常の三倍!」 霧島「酒会に行こうぜ」 おれ「バッカス!こうこうせいがおさけのんじゃいけないんだぞ!」 霧島「じゃあその手に持ってる財布誰の?」 おれ「フヒヒwwwwwwwwwwww」 近くの酒屋で買い物を終えて(もちろんジュース類だ、もちろん) コンビニに寄り生活用品やらイケナイ物を買い一旦家へ戻る。 さて・・・ショータイムだ!(秦野風に) おれ「二次元にカンパーイ!」 霧島「ドーナツ島にカンパーイ!」 おれ「ミド・ファド、あとソラオと・・・・誰だっけ」 霧島「誰だっけ、あのラムリンみたいな位置付けのだよな」 おれ「いまいち影の薄い、な」 霧島「何だっけなー・・・じゃじゃ丸・ピッコロ」 おれ「ポーロリー」 今じゃ俺も霧島もザルなんですが、この頃は若かったので弱かったな。 主に霧島が弱かったなあ。 霧島「ねーえー、たっちゃん俺のためにアメイジンググレイス歌って」 選曲にびっくりだ。 これは後世にまで広く伝えられる霧島限界宣言の一つである。 おれ「歌詞知らんもん」 霧島「歌ってえー」 ん?この状況どっかで・・・・アアアアアア!修羅場の霧島がこれじゃねえか!! この頃から既にこうだったのか・・・ おれ「アァーメーイ ジーングレー」 霧島「よし俺んち行こうぜ」 おれ「バカかお前、何のためにかくまう決意したと思ってんだ」 霧島「いいじゃん、あ、それより重大ニュース」 おれ「なんだなんだ」 霧島「俺最近気付いたんだよ」 おれ「うん」 霧島「女の子がみんな泣いて別れるっていうじゃん?」 おれ「うん」 霧島「その理由が“セックスについていけない”だってさ!ギャハハハハ!」 おれ(ええー何その羨ましい理由・・・('A`)) 地元の小規模イベントへ参加した高校生霧島(♂) しかしその会場でストーカー気質の困ったチャン(♀)に目を付けられてしまった! どこで知ったか家凸電凸の嵐! 「俺はもうダメだ・・・せめて死ぬなら、お前の腕の中で・・・・」 そう呟く弱った霧島を我が家と言う救護テントへ運び込み、今、小さな宴が始まる・・・ 霧島「そう・・・そのまま飲み込んで。僕のアサヒスーパードライ・・・」 おれ「ぷはー うめえ」 霧島「ギャハハハハハハ!!セックスについていけないとか!エロ漫画の読み過ぎ!」 おれ「お前がな」 泥酔ですね、わかってます。 霧島「俺もビックリしたよ?ねちっこいかな?って思う程度だったよ?」 おれ「どんな思考回路だ」 霧島「だって僕まだ高二じゃん?初歩じゃん?ありえないってありえないって」 おれ「うん」 霧島「あ、試してみる?味見してみる?」 おれ「いやだよ」 霧島「絶対?」 おれ「絶対」 こんなに悪酔いする奴だったっけか 霧島「今まで五人にそれ言われたんだけども」 おれ(すでに五人は確実に食べた、そういうことですね) 霧島「んで考えたんだけども、俺の尋常じゃない性欲について来れるのって男だけじゃね?」 おれ「・・・・・・・・・・ん?」 どうした霧島! ストーカーちゃんのお陰で脳味噌がいつも以上にパーになってんじゃねえのか!?? おれ「その発想はおかしい」 霧島「いやおかしくなくね?」 おれ「おかしいだろ」 霧島「いやおかしくねえって。マゾが高じてホモになるってよく言うだろ」 言わねえよ! 霧島「そんなもんだよ」 おれ「わっかんねえなあ・・・・」 霧島「んで俺考えた、誰とだったら致せるか考えてみた」 おれ(また凄い所に行きついたもんだ) 霧島「まず杏ね」 おれ「・・・・・・・ヒッ」 霧島「まず掘られるよね、体格差から言ってダメ、俺そっちは使いたくない」 おれ(何だこの恐ろしい思考回路) 霧島「次りょうた、バカ、だめ、たぶんダメ」 おれ(たぶんじゃダメだろ) 霧島「次町田、Mはいいね、でも何かイラッとすると思うからダメ」 おれ(ああー!町田は本人の預かり知らぬところでもSに蔑まれているよー!) 霧島「他も考えてみたけどさー、ピンと来ないよな」 おれ「ピンと来てもヤだよ」 霧島「とんでもない美少年とかかな、やっぱ」 おれ「んなもん海外行ってこい、日本にも西日本の隅っこにもおらんわ」 霧島「や~ん」 や~んだかにゃ~んだか言ってゴロゴロする霧島。 霧島「俺がホモになっても辰彦は友達でいてくれるの?」 おれ「度合いによるな」 霧島「あー冷たい、ビックリしました、泣きそうです」 おれ「こんな告白された俺の方がビックリだ」 未来的には俺がホモですけどね!! 霧島「女とスルのと変わらんのかな?」 おれ「女とシタことないからわからん」 霧島「そうなの?」 おれ「うん、紙面で見るばっか」 霧島「バレー部入ってたのに?」 おれ「スポ根嫌いだったからなあ・・・スポ根バッチコイだったら今頃きっと・・・・」 霧島「・・・・・・・フフ」 笑われました、ああ笑われましたとも。 霧島「告られたことないの」 おれ「ないない、ビックリするほどない」 霧島「告ったことは」 おれ「ないない、そもそも人を好きにならない」 霧島「ありえない」 おれ「自分でもそう思う」 霧島「二次が俺の恋人、とか言うタイプか」 おれ「それも違うんだよな、それはそれって話なんだよな」 霧島「中途半端だなお前ー」 おれ「な」 一種のトランス状態から脱した霧島と、ジャージで寝転がりながら酒を飲む。 これも青春なのかも知れない。 霧島「パワフルミラクル今くるッ」 おれ「弾けるマジカルわんだふるッ」 二人「「リイカルコミカル恋するとろけるみっらっくるっみ!」」 おれ「キスから始まるミラクルだって あるよねぇ~」(あるよねぇ~) 霧島「雨でも晴れでも貴方が居るから、いつもズンズン行けるよ~」 おれ「翼の生えてる天使になって 飛んだら~」(飛んだら~) 霧島「銀河の彼方の煌めくチャペルで!ウェディンベルなら~すの~」 唐突に始まる鋼鉄天使くるみのOPにだって驚かない俺。 成長しました。 コーラス部分は霧島くんが担当しました。 霧島「お前くるみの中で誰好き」 おれ「サキがいいかな」 霧島「俺仲人がいいかな」 おれ「レズキャラとショタキャラって、俺らももうダメだな」 霧島「高二にしてお先真っ暗だ」 おれ「心配し~ないッ 気~にしないッ 泣くのは嬉しい時だよ~」 霧島「守ってあげるッ 私の胸でッ キュインて抱きしめてあげる~」 おれ「オウフッ!!!」 鋼鉄でも天使でもない男に抱きしめられたところで、物語は終わり。 終わりと言うかこのあとも引き続きOPを歌いながら、意識を遠のかせ気付いたら朝だったんですよ。 いけませんね、こんな酒の飲み方は。 次の日の昼ごろ、様子を伺いに霧島亭へと足を運んでみてビックリ。 警察の事件現場とかでよく見かける、あの黄色のテープが門の部分に張られていた。 霧島「ええー」 おれ「急展開すぎるだろー」 霧島「主人公不在の内に魔王死滅ー?」 おれ「RPGやる意味ねえー」 隣人「ちょっと!霧島さんとこの息子さん!!」 隣に住む中年のおじさんとおばさんが凄い勢いで飛び出してきた。 隣人「君のとこに昨日の晩泥棒入ったよ」 霧島「え!?」 隣人「どこ行ってたんだい、お家の方も居られなかったみたいだし」 霧島「家族は今旅行に行ってて、僕は友人宅に泊まってて・・・・」 俺達が案ずる暇もなく国家権力が介入してくれました! しかも俺たちの手を汚すことなく第三者からの通報によって。 何だよ思ったよりあっけないな。 詳細はこうです。 昨夜またストーカーちゃんが霧島の家に突撃したらしく、 反応の帰ってこない状況に業を煮やしドアの前で叫んで居たとか。 30分はそうやって口汚く罵ったりしていたそうで、流石の隣人さんも国家権力へ通報。 Kが霧島邸へ向かってる間に、怒りがピークに達したのかストーカーちゃんが実力行使に。 リビングの大きな窓を庭にあった大きめの石でバリーンと割りまして。 もうこの時点で器物破損ですよ、しょっ引かれるのも無理ありません。 ストーカーちゃんは霧島との痴情のもつれ路線で訴えていたらしいですが、 警察に赴いた霧島自身と、隣人さんの擁護によりストーカーちゃんの妄想だと解ってもらえました。 (身内以外にはいい顔しいの霧島くん、こう言う時の為のいい顔だったんですね!) 旅行先から緊急帰宅した霧島のご両親と、ストーカーちゃんのご両親とで話し合いをし 割られたガラス代を弁償してもらう方向で話はまとまりました。 ストーカーちゃんのご両親がとても理解のある方でよかtt・・・・ ストーカーちゃん「許さないんだから!!!」 ヒュー・・・危ない女も居たもんだ 霧島「今回の件で余計に男に傾きそうな俺が居る」 こっちはもっと危なかった!! ~Fin(笑)~
https://w.atwiki.jp/jojoaa/pages/1355.html
第五部キャラクター一覧へ , ---------- 、 / ̄⌒\____ \ / 二ミ ー─ミヽ \ \ {二二ミヽ `¨¨__ ∨ ヽ / <fろ)ノ _\\ } ‘, / ー三r /_ \モョヽノ ) } . /{ __ノ{ l__r___) } } /l/ // (__, --ミ \\ ' ノ ∨{ { '⌒ヽ \ノ ` _ノ / '⌒! . { { }---、__ } / _rf7 } . ∧\_ノ { _ノ / / }リ{/ ∧ \ / / ( /⌒\ /\ `¨¨¨¨¨´ イ{___ノ} /{ニニ> _____ イ> / / { {ニニニ/ . <´ . イ \ 二二二二二´ -<´ //------ / ̄ ̄ ̄ ̄\ /〕 みんな……… / /⌒\___/⌒\ /./フ__ 頭をあげてくれ…… / { {_/´ f三} {/ 〔_}_}〕 { ∧ {_∠f} }__{ ̄\ _{ _ノ } 君すまなかった… { ∧ 、___ノx─xー} く \___ノ /\ /∧ \ 〈_/二 } }/\__/ \/ こいつは自分の体に r‐x_ 人/∧ \____厂{_ノ} / / / 触られるのがにがてでな . /\{ { } ̄\__ ∧ {___/ / {\\ノ 〉 / ̄ ̄ ̄ ̄⌒>─‐く/∧ \_/ しかも……ブチャラティ 人ー‐{__{_/ ̄ ̄\───── ∧___ノ おまえから電話で連絡があった時は \_/ }\___. \ ∧ おまえひとりかと思っとった {__/ \\ } / ̄ ̄ ̄∧ { } }__ノ\___,/ /∧ おまえのチームが全員 人 /⌒\ \\ ∧ このカプリ島にそろっておるとはな…… \____/\ \ ∧ 知らなかった… { \ } ∧ {\ ( /} . ,x<´ ̄ ̄ ̄ `\ / /{∧ / ____/ {/∧ . / { _____/  ̄∧ { 〕 _ ____/∠二}∧ {___ }// / { 芯ラ ∧ 〈⌒V 〈{__/fあ)} 〕└┬ } } { r‐V∧  ̄/ └/⌒> } } 人_ {V∧、 {/__ノ // 厂 ̄\V∧}_________} ∨/ / / \\_____________/ //. \\___ __/ /⌒ ⌒\ / \/ \--- \ /⌒ -\----}\___// _________}___ / ⌒\⌒\/ \ \ _____ /⌒ ⌒\ 訳があってな あとで話す…… / _ \ /, {⌒\____ } それより本当にあるんじゃろうな…… . //{_ { {\∧⌒\___厂\__ 組織に納める金 {// ⌒\ \}_}_∧ / ノ 「6億」は? {∠二コ- \ \__ノ / ̄ ̄  ̄\ 人Ltiク ⌒ \ \/ / ̄ ̄ ̄ ̄\ ー} 人_ノ\ } }// }__x─┐ }} }/ / ̄ ̄ ̄ ̄\ └=⊃ }_,ノ } └rく ノ} || `¨¨¨¨⌒\ \ || | ,x<´ ̄ ̄ `>x, / / ̄ ̄ ̄\ \ / { t====ミ \__∧ この「金」が示す事実はッ!!……… ⌒} -厂ニ rモぅx ⌒∧ h }. / `¨¨´___} / く\} そのものにしかるべき『頭脳』と『信頼』が ) } / \______,ノr┘ /ftx. ∨ あったという証! _ノ { / / ___]____} ̄-/ . \ { {===ミ|__,ノ┐ \ \ ´ ̄\}┘//// \\ \__ノ ̄[___/// \}__/^) ___// _/⌒/____/厂 ̄ /´__,/⌒}-=ニニ}{___  ̄ ̄ ̄) ̄ '⌒\  ̄ ̄} \ ‘,  ̄ ̄} } } r=、───‐‐ 、 / / \ //^ `ヽ -、 } ところで……じゃ……… _} マフ ミ l /,、 } { (__\{ , | | {lノ /-、ノ く、).`i´ l し' / }人 (__, } / {一' / ⌒\ 〈 ー一' / / ___ \ ー─一f_..イ /´ `ヽ ∧ ∠. / ∨ ∧ }ノ / ∨ ∧ | ,i ∨ ∧ | /{ __}// .} fニニ,==- ., /ィニニ 〉 >x ポルポの仕事の権利を受け継いだ君に __{ アラ 〉 /⌒} ‘, さっそくじゃが………… (__人 { { f} } } ・ ・ ・ └x〉 `T } }〈ノ /} } ポルポのやつは生前ひとつだけ 〈ヘ (⌒ ノノ / }=イ∧ / ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ,ィVヘ__ (⌒¨¨¨¨´ ノ } ∨ 『仕事』をやり残していたままでのう…… /{く___ } \._____,,. イ __/⌒} {ニニ(_ノ ∨__x<´__,.イ⌒ヽ `V/´__) /r===イ´ ∧ 人/ \ // ̄ ̄`\ ∧ ∨ ∧// ∨. } ∨ / { ∨ } \ /{ } イ `¨¨¨{⌒ ⌒\ ノ } 〈 ∨ ノ _____ /⌒ ⌒\ 『ポルポ』がやり残した仕事は . / ∧_ 当然 ブチャラティ……… / /⌒{ } { ________//⌒ \}\ 君が受け継ぐというわけだ 〈 { __/ t─‐ュ∨ } ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 〈 \ /} rtッフ ∨ ここのところはいいかね? 人__ -〉(_/__  ̄ } { ̄\{ /ソノノ 〉 ト、_ノ} } /{ {_} ト、 ___ノ┬‐_>__ノ } {. \___} \--、 |/´/ ./} 人 { ̄ ̄}─┬──┘ //} /- _/ ー‐く (___| ̄ ̄} ̄ ̄ ∧ /⌒ /// __,}__厂 ̄ ̄ // } . { / /{ ____)ノ} / / , ------- , /、 /r─┐ミヽ ノ/ilノ / tゥュ ´ ヽ}lハ ・ ・ ・ ・ , ──‐f´{ ∨ / 、__,、ノ __-リ 「ボス」じきじきの『命令』なんじゃよ / ̄`ヽ ∧ `{´ { / r‐\_jfヌ}_} / ∧ \} \ ≦ミiリヽノ 『命令』がポルポのやつに行く直前に . /__ } \ ー'⌒i___/ やつは自殺してしまいおった . / \ ノ \___ イ / \ } {⌒\ ./⌒ヽ r /ノ----- ミ _}ト、 |イ \ r‐/ .ノ \┐ _.ノ ヽ}人_ノ }lト、 / __//⌒亡...ノノ } . / []]--/_/-------\\ノ[] / []| | (王) (王)| | |.|| |─|:|───── |:|| | __x───x_ _厂} 〔 そう…… (_/) \ ボスの命令じゃ! ________//〈___ / ここで君に伝えるぞ! __/ ̄ ̄ ̄ ̄\\\ / _ ブチャラティ… _// / ⌒\\/ _/ }__ { -{__/ ̄ ̄\ ⌒\ 〔___ } {__/ ̄ ̄) / ∧ }/⌒\ノ {/⌒\ \/ /∧ }\ / . / \{____∧___ -/ //-/ { -/ / ̄ ̄\___,/ /// 人_// / }___/ { ̄/ /}\ 〉 /\ \ . -=ニ二二ニニ=- . / \ 彼女の名はトリッシュ・ウナ / \ 15歳 / __ (⌒∨ / /____ }_/∧ ∨_____ 当然断っておくがボスの名ではない… {/_____,〉 ∨∧} ∨⌒{ 母親の姓じゃ… {{ニニ=┐ ∨∧ } \_____ { -=フ_,ノ -∨ } } ̄\ トリッシュは自分が狙われてる事は 人 {____,ノ ∧(__,∧ / 知ってるが… _} \ .〈 ∧ /∧ ) // 父親…つまり…──「ボス」には {___r─x ∧ / ∧ {// 生まれてから会った事はない…… . └‐tュ‐ } /}// 人__ノ ノ / (__/ { \__/-// \_____// }-=ニ二二二二二 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\ / (__________ -\ . / / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄}\ {/ ̄) -ノ - \ , --───- 、 / _______ \ ,∠. __ r──ァ\\ ∧ だが当然 / /ハ〉 / rtッ┐ \} 人 ∧ 「ボス」にも「過去」はある __{ V/ / `二´ \ニ\} \/ } } r \-、ノ とくに若い頃の過去はな…… { { {/ ∠⌒\イ(fiハ_) {∧ 人 └ミメ、ノ イ ∧ \___フト、_ __/ \ {__./ {\ _,. イ \`¨¨´ノ〉 `¨¨´イ ̄{ \ , <´ ̄ ̄`> 、 /⌒ニニ r<_⌒ヽ \ く二ヽ \__} く ハ それもそのはずじゃ _/ィュ } マ甘フ l| /ヽ ナーゾなんて名の男は {⌒´/、_フヽ⌒ | ./ } 存在しないのじゃからな…… } イ____\ , }| ll|(リl / | )二ハ´ } / l l||ノ / ボスが使った事のある偽名だったんじゃ ___r‐ト、 ヽニニ´ // |し'_ _h_ /}\\八.__> 'nx<´ } ボスは若い頃から偽名を使っていて __{ |_j_∨ \{\__, <n| ln__/ ∠.....__ 正体を決して明かさない男だった… /| |-}_|_ レ7 r‐、ノ_l-}_|_| / / `ヽ まさか昔短い間付き合った男が / /| |-| | _} }------ 、 ∧ { ⌒ヽl |_{/ } 今…ギャングのボスをやってるなんて { {/| _/ / \ } }\ | }---- ノ 女は夢にも思わないで人生を送って来たろう… . }\人 / \弋ノ__ノ/ } / `¨¨´ ̄ \弋三/ ' / \ \ / / ∨ ` ̄} ̄ . -====‐- . 一部の者がささやき始めた… /_/x=={__∧ ひょっとしてこのドナテラって女は /ニ=〈 モサ }-} ボスの事を何か知ってたんじゃあないかってな… _}{tサラ}_ _{ ー一ノ}-{ ̄} }l}{ _ノ/__〉 }-{)_ノ 「娘」がいるだって? 誰の子だ? ___(_}\ }三) } ノ }∧ その娘は? . _{⌒ ∨/\\t┬_/ /ニ∧____ ___ ひょっとして } } ̄\___∨//\___,/ //\/∧ __r─ァ/〉/7 「ボスの子供」か?  ̄厂}___} ̄ ∨\ }\ ∨ } /\( ̄ }/ ………ってな . └‐{___厂}_ノ}\//}____/ ̄ ̄ ̄ ̄\V \_/ \/´ ̄ {二二ノ ∨ / \ { / \_,/ ノ/ ∧__/.\ {\___/{{ /∧⌒\∧ く\ { }__}_}ニ}_____ /\ {  ̄ ̄}--(こ)二二} / \ { / /  ̄} }o}___} } . \ \ \_________/ // ̄ ̄\ノ[_] - / } \__________/ /} -/ ∧ \ ∧__ -} / //∧ \__/ -/ ∨__ /\_{__{ニ二} 人_ /{ \_____/-=ニ{___}__/ }___,ノ {二二ニ=┐ く____/  ̄ ̄ ̄ ̄ / ̄ ̄ ̄\_ /-、.}(\ / ̄}\ ボスの命令が30分遅かったなら ノ7⌒} }_ノ)/⌒\}_ノ \ 『トリッシュ』はそいつらに Z(_ ノ} {-///⌒\ \- \ ら致されていたろう _(\__ 戸_ノ {/{__{ }/\ /∧__ {二(二\ ー─‐{ {/⌒' } \  ̄} そして…殺されていたろう └─x/ \_厂{ -/ _ノ}__) ⌒\ \___{_{__/ / /∧ 『何でもいい!何かボスの秘密を _/{ / ∧ 知ってるはずだ…』 / (__/ } …それを聞き出されてからな……… (_xく___,/ } { / ̄ ̄ \_} 人// / ̄ ̄ ̄ ̄} ̄}\_) {/.∨ } // ̄\ {___∨ ____}/./ ̄\\___ ∨ { ̄ ̄{リ ̄ ̄ ̄{リ} ̄} ∨ { ̄ ̄{[]} ̄ ̄ ̄{[]} ̄} \ { { {_______} } } . -=ニニニ=- . とにかく / -} わしには「スタンド」能力はない…… _{______/} 役に立てるのはここまでじゃ… (_____,/ }\__ ⊂ニx }L ̄ } }人_/ /⌒\ {と^\__/{\__ノノ_/ / /⌒∧ {_{(__ノ\{ { {-/ //∧  ̄\\ \八_/ '⌒\_人{_/\/∧ \___{ { ̄ ̄{\_/ ∧___ { \ \ \,/\} }___ { -} ∧____ノ\.-=ニ∧ { -ノ { -{-=ニ\\=ニ∧ 人 / r‐=ニV∧ニニニV∧ニ∧ {\___{_____{=ニ二V∧ニニニV∧ニ∧ \_______{ニニニV∧ニニニV/=ニ∧ / ____,/{∨ニニV/ニニニニ二二〉 〈_ _/ {-∨二二二二二ニ=-‐ {___/. {ニ∨二二ニ=-‐ _/ ---|  ̄^∨=-‐ └──‐┘ ↑一番上に戻る
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8107.html
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが、ル・ブランの西のはずれにある持ち主のいない地所を召し上げて住むことにしたのは、もう自分の将来に見切りをつけたためである。 かつてヴァリエール領の死刑執行人の一族が住んでいた屋敷は、陸の孤島と言っていいほど近隣の地所から離れており、しかも近くの湖から風が吹いているせいか、領内では珍しく湿気の多い土地柄ゆえに生い茂った森に四方を囲まれ、一本の道だけで森の外とつながっている。生い茂った森と言っても木々がみっちり立て込んでいるわけでないので、その間を十分散策できるというのも気に入って、トリステイン学院を去った後、家族のお荷物にならずにあと三、四十年、せいぜい五十年の楽隠居の生活を送るため、早めの終の棲家として移り住むことにした。 森の裏手は、公爵家の初代がラ・ヴァリエールの地を拝領する以前から石柱が並んでいる広場があり、ちょっとした観光名所になっている。そこを訪れる観光客のざわめきが森を通り抜けてくるのを聞きながら、それに背を向けて庭で読書をするなり、お茶を飲むなりして日々を無為に過ごすことに、世俗を無視する世捨て人の倒錯した優越感を感じるのが、今のルイズの生き方である。時々、かつて同じ教室に机を並べていた友人のキュルケ・フレデリカ・アウグスタ・フォン・ツェルプストーが訪ねてきては、なんとか引っ張り出そうと、最初の二年ほどはしていたが、これがルイズの決めたヴァリエールの一員としての生き方だということを納得してからは、ゲルマニアで世俗の栄達に邁進する貴族として、世捨て人を訪問してからかいつつも、隠者の助言を求めるという関係に変わっている。 森を越えてくるのは声だけではなく、ついでに森を散歩したくなった旅行者が、うっかり地所の中に入ってくることがままあり、そのような旅行者と言葉を交わしたり、場合によってはお茶に誘ったりするのも楽しみの一つである。そのようなことはルイズにとって、学院にいた時には考えられなかったことだが、今となっては、なぜあんなにピリピリしていたのか、そちらの方がむしろ理解できない。タバサが森を抜けて庭に迷い込んできた時も、ルイズはつくづくそう思ったものだ。いつも本ばかり読んでいて何を考えているか分からないのにキュルケとだけは仲が良かったタバサは、座学は完璧にしようと思って必死の努力を重ねていたルイズにとって、年下であるにもかかわらずトライアングルクラスの実技の実力を持ち合わせながら、知識でも追い立ててくる目の上のたんこぶだったが、今にして思えば一緒に勉強すればさらにお互いの力を伸ばすことができたはず。そう考えると以前の自分はつくづく損をしていたとルイズは思う。 「えっと、あまり話したことなかったけど、わたしのこと覚えてる?」 「ええ。久しぶりね、ルイズ」 「その・・・タバサ、って呼んでいい?」 学院を去った後、ガリアで起きた政変で、彼女の立場が激変したことは、隠遁しているルイズの耳にも入ってきていた。 「ええ。学院で知り合った人たちにとっては私はタバサだから。キュルケもいまだにそう呼んでいるもの。気にしなくていいわ」 「ありがとう。時間があったら、お茶、飲んでかない?」 「お言葉に甘えさせてもらうわ」 そう答えるとタバサは、連れてきていたメイドと衛士に声を掛ける。メイドは「はい、陛下」と言い、椅子を引いてタバサに掛けさせ、ルイズとタバサ二人の給仕をする。衛士は、タバサのそばに控えながら談笑する主人と主人の友人を見守った。 「キュルケから聞いていたけど、本当に召使も置いてないのね」 「そうよ。だからできることは自分でしているの。使い魔も一緒だけど、召使と言うよりは一種の変わった間借り人よね」 噂をすれば影が差す。その使い魔がタバサと同じく森を抜けて帰ってきた。 ルイズが引き籠もることを決意したのは、サモン・サーヴァントで平民を呼び出してしまったことが直接のきっかけである。メイジの実力を見るには使い魔を見ろと言われているこのメイジ社会のハルケギニアで、魔法を使えない、魔法の系統を象徴するとも考えられない人間の平民を召喚したということが他の貴族にどう映るか、どんな反応が返ってくるか、そして自分が、言わばサモン・サーヴァントでハルケギニアに強制連行あるいはら致したに等しい彼らを、人生の障害として憎むようになるのではないか、それらの考えから、ルイズは貴族社会を離れる決心をした。 「リさん、おかえり」 「ただいま帰ったのです」 使い魔は名前を尋ねた時、リと名乗った。その時は呼び捨てにしていたが、学院を辞め、貴族を捨てたつもりで若隠居するとなると関係も変わってくる。もうメイジとして生きるのはあきらめたのだから、使い魔ではない。使用人を置くつもりもなかった。だから、ルイズは彼を友人として遇し、自身よりだいぶ年上なのでリさんと呼んでいる。 リさんは、本人言うところの「ギャング時代のカポネのようなスーツ」という服を着ている。上はズボンのポケットに丸めて突っ込んであるものだから、そこがひどく膨らんでいる。そんな姿で森の中を散策するのがこの使い魔の日課である。 「お客さまだったのですか」 リさんは、タバサに気づき少しかしこまったポーズをとる。 「そうよ。紹介するわ。学院で同窓だったタバサ。本名はシャルロット・エレーヌ・オルレアン、ガリア女王陛下よ。でも学院ではタバサと名乗っていたから、今でもタバサと呼んでいるの」 「ええ。初めまして、リさん。お噂は伺っています。私のことはタバサと呼んでくださって結構ですよ」 「初めまして、女王陛下。リと申します。ルイズ様の使い魔であるのです」 「森の中で何をなさっておいででしたの?」 そこまではタバサはルイズから聞いたことがなかった。それゆえの質問である。 「鳥と話していたのです」 なぜ鳥と話ができるようになったのかということは、リさんにも分からないとルイズは聞いている。鳥の話を聞いているうちに、なんとなく話が通じそうな気になって、話しかけたところ通じたのだと言う。学院の教師の一人、コルベール先生は彼の右手に現れたルーンの意味を教えてくれなかったが、感覚の共有も、秘薬の材料の採集もできないこの使い魔に可能な唯一の特殊技能と関係あるのかもしれない。 「あら、鳥とどんなことを話してらっしゃるの?」 学院にいたころと大いに変わったのはルイズだけではない。タバサも、女王としての決して平坦ではない、女王になるまでとは種類の違う苦労の多い道のりを経て、見違えるほど社交性を身に着けていた。 「鳥というものは頭がよくないので、天気と食べ物の話しかしないのです」 ちょうど庭に下りて来た雀たちがいたので、リさんはチチチチチチチと声をかけた。すると雀たちもチュンチュンチュンチュンチュンチュンと応じる。 「今日は晴れているから羽が濡れなくて済むと言っているのです」 「じゃ、よかったわね、とお伝えくださる?」 タバサは、リさんを通訳として鳥と話してみるつもりになっていた。リさんはチチチチチと雀に声をかけ、雀はチュンチュンチュンチュンチュンチュンと返す。 「明日も晴れるとエサが取りやすいと言っているのです」 「かみ合ってないわね」 とルイズが突っ込んだ。その間タバサははるか上空を旋回している、地上の人間の目では点にしか見えない自分の使い魔に心で呼び掛けた。 (シルフィード、今の聞こえてた?) (きゅい。聞こえてたのね。「大いなる意志」が作り上げた自然の生きものの言語で話していたのね。そのおじさん、嘘ついてないのね) (そう) (ただ鳥は頭がよくないと言っているけど、それは間違いなのね。鳥にとって必要で重大なことを話しているだけなのね。人間が色々考え過ぎるのね) その日、タバサとルイズは、庭に訪れる鳥の話と、かみ合わない会話を楽しみながら旧交を温めた。 召喚したのはリさん当人だけではなく、運よくと言うか折悪しくと言うか、一緒にいた家族も全員こちらに引き込んでしまっていた。リさんの妻と子ども二人である。 リさんの奥さんは目鼻立ちのはっきりとしたショートカットの美人で、スタイルもなかなか肉づきのよい女性である。コントラクト・サーヴァントを直接交わしていないにもかかわらず、彼女の右手にもリさんのと同じルーンがなぜか存在している。リさんによると故郷では海女をしていたとのことで、実際地所の近くの湖で、素潜りをして魚をとってきている。淡水と海水の浮力の違いに最初は苦労したが、魚が目が合うと寄ってきて、そのまま大人しく捕まってくれるのが不思議だと、ルイズはリさんから聞いている。 リさん一家とルイズは食卓を共にしており、リさんの奥さんが獲ってきた魚もそこに並ぶ。リさんと奥さんの子どもたちは、最初ほとんど口を聞かず、笑ったり怒ったりと言った感情も見せず、子どもらしい遊びも何一つするではなかったが、ルイズがいろいろとかまっているうちに少しずつ反応が返ってくるようになった。当初は発育不良に見えたが、隠棲先を見つける前にいったんド・ラ・ヴァリエールの本邸に戻ったルイズに当然ついてきている二人を見たルイズの母も姉たちも一様に心配し、あれを食べろこれを食べろと世話を焼き、ル・ブランのはずれに隠居所を見出した時には、ヴァリエール家の厨房から食材をまわそうか、料理人も派遣しようかと言ってきた。ルイズも、思うように育たない体にいらだちを覚えた経験があるので、あまり意地を張らず、焼いてくれる世話は素直に受け入れた。学院を辞めたばかりのルイズは、自分の意志で退学してきたと言え、傷ついたプライドも抱えていたので、自分が無力な分野の存在を指摘するような発言には強く反発しても不思議はなかったが、自分の体のことじゃないからと素直になる努力をできたことが、思えばルイズが大人になる上で大きな一歩だったのかもしれない。 母親によく似た上の女の子も、姉のお下がりを着ているので最初のうちはこれも女の子かと思っていた下の男の子も、年相応に健康な成長を見せてくれている。この二人はなぜかギーシュとマリコルヌがお気に入りで、二人が来ると大喜びで寄っていく。ギーシュは相変わらずドットクラスで青銅のワルキューレを作っているが、ただその数が今では二十体を越え、しかも動きが人間並みに精密になってきている。一芸に秀でることの恐ろしさを思い知らされるが、子どもたちにはもっとかわいらしいものを錬金で見せてあげている。最近ではギーシュとモンモランシーの間に生まれた赤ちゃんが来るのが一番の娯楽らしい。 マリコルヌもよく遊びに来る。純粋に自分に走り寄り、お気に入りの自分より大きなぬいぐるみに対するように跳び付かれ、お気に入りの丸々した着ぐるみを愛でるような眼差しで見られるのがたまらないらしい。 「大きくなったらマルちゃんのお嫁さんになる!」と上の女の子に言われた時には、嫌にさわやかな笑みを浮かべて「大きくなる前でもオッケーさ」と言い放ったものだ。ルイズは子ども二人とマリコルヌだけにならないよう、常に警戒している。ともあれ、彼らはルイズの侘び住まい(と言っても屋敷ではあるが)の二階に一家で暮らしている。ルイズはそろそろ二人を学校に通わせようかとすら考えている。 ルイズがアンリエッタ女王の使者として内々のうちにロマリアに派遣され、珍しく屋敷を離れている間のこと、ある日、リさんは、厚さが一様でないので料理を作ると焼きムラが出てしまう不良品の大鍋が捨てられそうになったのを貰ってきた。それに水を張り、下から火を焚くと五右衛門風呂だ。帰って来たルイズが辻馬車から駆け降りて森の中の一本道を走り抜け、庭に駆け込み屋敷に上がり、二階に駆け上がり二階から駆け下り、屋敷から裏庭に駆け出てそれを見つけた時には、 奥さんが鍋に入り、リさんが下から火を焚いていた。 「ここにいたの!・・・・・・何してるの?」 うちわを持ったままリさんが答える。 「故郷の風呂なのです」 ルイズは足を火傷しないのかと心配になったが、 「底に板を渡してあります」 とのことだった。 「女房は故郷では海女をしていたのです」 そして、リさんは奥さんの素潜りの腕前を見せてやろうと言い、奥さんをお湯の中に潜らせた。 「五分くらいは平気で潜っているのです」 「ふ~ん・・・・・・それどころじゃなかった! リさん! あんたたち、帰れるわよ!」 「帰れるとはなんのことですか?」 「ロマリアで教皇聖下にお会いしたのよ! そうしたら教皇聖下は失われた系統である虚無の使い手で、世界扉(ワールドドア)っていう魔法が使えるのよ。見せてもらってけど今まで見たことのない街が扉の向こうにあったわ。精神力を蓄える必要があるけど、リさんたち、そこを通って元いたところに帰れるのよ!」 「ルイズ様は私たちを帰したいのですか?」 「えっ?」 「私たちが邪魔なのですか?」 「そういうわけじゃないけど・・・・・いや、あなたたちは私がサモン・サーヴァントで無理やりこっちに呼び寄せたんだから、人として元の世界に帰してあげないといけないんじゃないかと・・・・・・リさん、こっちで幸せ?」 「子どもたちはずいぶん明るく、健康になったのです」 「・・・・・・じゃ、元いたところじゃ?」 その時、奥さんがお湯の上に顔を出すなり、グンニャリと伸びてしまった。 「大変、大変、おぼれてしまったのです」 リさんとルイズは、あわてて奥さんを鍋から引き上げようとするが、奥さんは前に記したように肉づきのいい体格なものだからなかなか引っ張り出せない。 「何をぼやぼやしているのです」 とリさんはルイズを叱咤する。やっとこさ引っ張り出して屋敷に運んだが、ルイズは途中で躓いてしまい、奥さんの裸の両太ももにぼてっと挟まれたりした。 ルイズの人生に入り込んで来たこの一家がその後どうしたかと言うと 実はまだ二階にいるのです。
https://w.atwiki.jp/konashin/pages/402.html
シン・アスカは不幸だった。 アカデミーを優秀な成績で卒業、成績優秀者十数名にのみ送られるザフト・レッドの地 位を手に入れた。しかも卒業僅か2ヶ月で、ギルバート・デュランダル最高評議会議長直 々に、国防委員会直属特務隊FAITHに任命された、ZAFT創始期を除けば史上最短でのFAITH 就任という栄誉を授かった。 そう、他の奴らが見たら羨ましいだろうよ、シンは自棄気味にそう思っていた。 ────それが、こんな奴等のお守りじゃなけりゃな! Oct・2・C.E.73 ZAFT大型戦闘艦『ガブリエル』は、L4宙域の警戒任務に、単独で就いていた。 「ねーねー、シン、暇だよぉ~。なんか暇つぶしないのぉ~。マンガでもエロゲでもいい からさぁ」 ブリッジ後方から入ってきた、ザフト・レッドの制服を着る、どう見てもローティーン の少女──実際にはシンより年上だという、シンにはまったく信じられない──が、そん なことをのたまいながら、指揮官席のシンに、文字通り絡んでくる。 「エロゲってお前、まだ未成年だし!」 「あれ? プラントじゃ16で成人じゃん?」 シンのツッコミに、少女は即座に言い返し、特徴的なネコ口でニヤニヤ笑う。 シンは生粋のプラント人ではなく、本来はオーブ出身だから、そのあたりの感覚が、特 に未成年お断り関係になると混乱しやすい。まして、目の前にいる少女がナチュラルだと 知っていれば、尚更である。 ────C.E.70の戦役により、地上圏からプラントに流失した人口は、全てがコーディ ネィターというわけではなかった。 クライン派、すなわち対ナチュラル穏健派がプラントの実権を握った事により、“エイ プリル・フール・クライシス”で居住地を失ったナチュラルの一部も、プラントへ難民と なって流入した。 そうしたナチュラルの多くはしかし、プラントの市民1人1人にまで受け入れられたわ けではない。プラントにはいまだ、コーディネィター絶対優越論を信じている者が大多数 であった。 その為、プラントへのナチュラル難民は、その多くが、新設されたアーモリー・シティ の軍事工廠の一般作業員、単純作業の肉体労働者になった。しかし一部は、ZAFTの志願兵 になった。 デュランダル議長は彼らをZAFTに招き入れた。そして、“特殊遊撃任務部隊”という、 専門の部隊をいくつか、作ったのである。 デュランダル自身は「コーディネィターにはできない、ナチュラルならではの戦法に期 待する」と言っていたが、ZAFT軍組織の上層部は「隔離部隊」と認識していた。 もっとも、シン自身はデュランダルの言葉をまるっきり疑っているわけではない。元々 オーブ出身だけに、ナチュラルに対しアレルギーじみた反発感があるわけでもない。 しかし世の中、十人十色ピンからキリまで、ナチュラルとかコーディネィターとかそう いうことに関係なく、人間やその集団というものには、性格というものがあるのである。 シンが、FAITHオブザーバーとして回されたのは、特殊遊撃任務部隊『ラッキースター3』。 この部隊、どういうわけか、ほとんどが特定の地域出身の、少女で構成されていた。い や、それだけならまだ良い。その少女達は、やたらとアクが強い、つまり軍人としては著 しく問題がある連中ばかりだった。シンに言わせれば“適性がない”、そう断言して構わ なかった。 しかもシンは、本来なら、間もなく就役する最新MS『セカンドステージシリーズ』のパ イロットとして、同様に完成間近の最新の戦闘艦『ミネルバ』に乗り込むはずだった。そ れがどういうわけか、突然、ラッキースター3のオブザーバー役、シン曰く“お守り役” にされてしまったのである。もちろん、MSも最新型から一転、『ニューミレニアムシリー ズ』の量産開始で余剰になったセコハンMSである。 「アンタさ、それで潰しているヒマがあるんだったらシミュレーションでもやってたらど うだ」 助け舟を出すかのように、メインオペレーター用のコンソールに向かっていた、同様に 赤服姿の少女が、呆れたような表情で振り返りながら、言う。 名前は柊かがみ。長い髪をツインテールにしている。このラッキースター3の中では良 識派に数えていい1人で、少し激情型の性格を除けば、頼れる方だった。 「別にあたしはMSに乗るわけじゃないからね~」 シンに絡み付いていた、小柄な少女が、かがみに向かって言う。 「だったら艦の操作方法覚えろ」 「別にオペレーターや操舵手やるわけじゃないからね~」 「おい待てこら」 かがみとその少女とのやりとりに、シンは頭を抱えた。 この少女、泉こなたこそ、シンの一番の頭痛のタネだった。能力検査では知性、運動能 力共に、平凡なコーディネィターを凌ぐほどの能力を持ちながら、適性検査になると、MS パイロット、オペレーター、操艦、砲撃、整備、果ては事務処理に至るまで、何かしら致 命的な欠陥が見つかるのである。 しかし、彼女をここに回した国防委員会も、デュランダル議長も、彼女の首切りには肯 定せず、ラッキースター3の一員として加えさせておくように、としか回答してこない。 ────税金の無駄遣いだよな、まったく。 シンははぁ、と深くため息をついた。 「おやおやシン君、いけないね、そんな深刻な顔をしてため息をつくなんて、若さがたり ないよ若さが」 「アンタのせいだっつー事を認識しろ」 シンが腹の中に収めようとした言葉を、かがみがまるで代弁するように言った。 「おおかがみん、今日は何気に好戦的だね」 「おまえな」 かがみの言葉では効いた様子のないこなたに、シンはため息をつきつつ、指揮官席から 腰を上げる。 「良いから出てってくれ。何して遊んでても良いから、あー、危険な事以外は」 何しても、と言ってから、うかつなひと言だったと思いなおし、慌てて付け加えた。 「ここには俺かゆかりさんが呼んだとき以外来ないでくれ。他の人間の仕事のジャマだ」 そう言って、背後から肩を押しながら、ブリッジを追い出す。 「う~ん、シンのいけずぅ~」 こなたはしなを作るように身体をくねらせ、シンを上目遣いで見る。しかし、あからさ まに人をおちょくっているその行為に、シンは黙ってブリッジの扉を閉めた。 そのまま指揮官席に座りなおし、僅かにリクライニングの効くその椅子にもたれかかっ た。 「まったく、ただでさえ明日は忙しくなるかも知れないってのに」 ラッキースター3の母艦である『ガブリエル』は、押しも押されもせぬMS搭載の大型 戦闘艦であり、明日竣工式を迎える『ミネルバ』ともそう変わらない規模のフネである。 その外観は、かつて地球連合軍が建造した『アークエンジェル』に酷似している。 というか、『ガブリエル』は、まんまアークエンジェル型だった。 C.E.71のヘリオポリス襲撃の際、4機のGATの実機と共に、アークエンジェル型の設計 資料を入手していた。その後、ZAFTにおいてもMS搭載大型強襲戦闘艦(後のミネルバ型) を建造する事になり、その前段階として、試験・検証用に、アークエンジェル型のコピー 艦を建造したのである。 こうして建造された『ガブリエル』は、ミネルバ型の起工と共に当初の役割を終え、実 戦部隊にまわされることになった。その際、元々ナチュラルの設計によるものだから、と いう事で、特殊遊撃任務部隊にまわされたのである。 そして現在、ラッキースター3の母艦となって、L4宙域のパトロール任務に就いてい る。 「まぁ、アーモリー・シティにも警備艦隊がいるんだし、わざわざ私達を呼び寄せるよう な事にはならないでしょ」 オペレーター席でのびをしながら、かがみは苦笑混じりに、笑顔でシンに言った。 「あ、あぁ……」 かがみの歳相応な態度を見て、シンはふぅと息をつき、ようやく落ち着いたように微笑 を浮かべる。 「おおー、かがみん、シンちゃんフラグ立ててるねー」 指揮官席の反対側にうずくまり、コンソールから頭を覗かせながら、こなたがニヤニヤ してシンを見る。 「って、どっから湧いた、お前はっ!!」 シンは声を上げながら、反射的に飛び退いていた。 …………結局、こなたはシンにネコづかみされ、ブリッジをつまみ出された。 「ったく、もう……」 「って、えぇ!?」 シンが気を取り直して指揮官席に座りなおすと、その直後、かがみが驚いたような声を 上げた。 「どうした!?」 シンが聞き返すと、振り返ったかがみは、気まずそうな表情をしている。 「マジで異常事態発生! 警備艦隊とUNKOWNがアーモリー・ワン外周で戦闘中!?」 「なんだって!?」 シンはかがみから、正面下方、操舵席の方に向かって声を出す。 「全速で急行!」 「了解シマシタ」 妙な抑揚で答える、緑服の操舵手。やはり少女で、癖のあるブロンドを持っている。彼 女はこのフネの中では数少ない例外の1人で、完全なナチュラルではない。所謂ハーフコ ーディネィターだった。 メインスラスターのスロットルを全開にし、操縦艦を両手で握る。 増速するガブリエル。 ゴンッ! ブリッジの緊張感を破るように、後部の扉のところで派手な打撃音がした。 シンが思わず振り返ると、扉が開き、癖毛をショートカットにした女性がふらふら~と 現れた。おでこに赤い、打撲の痕がある。 「はぅ~ またやっちゃったぁ」 高良ゆかり、“一応”このガブリエルの艦長である。軍艦の中でも就寝時間帯にはフリ フリのネグリジェで寝る女性である。別名、シンの頭痛のタネ第2号。 「それで~、今どうなってるの?」 艦長席に腰を下ろしながら、涙目で訊ねてくる。 「そうだ、続報は何かないのか?」 本音では自分が把握するつもりで、シンはかがみに問いかける。 「アーモリー・シティーの軍司令部が応答しません」 かがみ自身も、その事に不愉快そうに答える。 「よほどの事態ってことか……艦長?」 シンは呟くように言いつつ、一応ゆかりに伺いを立てる。 「あー、そのあたりの細かい事はシンちゃんに任せる~」 手をパタパタ振りながら、ゆかりは言う。 「MS隊発艦準備」 「格納庫、MS隊発艦準備願います」 かがみはコンソール越しに格納庫にそう伝えてから、シンを振り返る。 「シンはどうする?」 「俺はもう少し状況を見たい」 そう言って、目の前の艦長席を見る。コンソールを手悪戯しているゆかりの後姿を見て、 ため息をついた。 「一番後から出られるように、すぐに起動はできるように頼む」 「了解」 かがみも呆れたように苦笑しながら、コンソールに向き直った。 「レーザーサイトに反応、不明のMSが宇宙港のゲートに侵入してマス」 操舵手として前方に注意を払う彼女、パトリシア・マーティンが報告してくる。 「UNKOWNは複数のMS、とりあえずゲートに取り付いている奴を何とかしてやってくれ」 シンは直接、艦内通信用のインカムに向かって言う。 「頼んだぞ、みなみ」 「了解」 静かに聞こえるが、はっきりとした言葉が返ってきた。 「あやのもな」 「はい、任されました」 丁寧だが、どこか緊張感に欠ける声が返ってくる。 「よし、MS隊発進開始」 「ちょっと待て、あたしには何にもなしってか~!?」 甲高い、怒気を孕んだ声が聞こえてきた。 「ったく、本来の隊長はあたしだっつぅのぉ。まぁそりゃ確かに、みなみんみたく特別な 機体乗ってるわけじゃないけど」 ブツクサ言いつつ、起動したMSのコンディションチェックをかける。 「ま、いっか」 ケロッと忘れたかのように、発進待機位置に進めつつ、前を見る。 「日下部みさお、ジン・ウィザード、出るよーん」 ZGMF-1017M3R-W2。元々は、旧型のジンに、新鋭機のザクシリーズと互換のウィザード システムを搭載可能にして、延命しようとした機体。ザクの生産数が確保できる見通しが たった為、本格的な改造計画は放棄された。少数が改造されてナチュラル用に調整したOS を載せたもので、特殊遊撃特務隊では主力機だった。 カタパルトのガイドLEDが、艦の方向に対して後方から前方に順次点灯していく。そし て、リニアカタパルトが、スラッシュウィザードを背負うみさお機を射出した。 その後ろに、もう1機、同型が続く。 「峰岸あやの、ジン・ウィザード、行きます!」 スラッシュ・ジン・ウィザードが、やはり同じように宇宙空間に射出される。 そして、それにつづく3機目のMSは、ZAFTのMSにしてはがらりとイメージが変わ った。 それもそのはず、そもそもは母艦であるガブリエル同様、連合のMSの設計を奪取し、 その性能評価、技術検証の為に製造された機体なのだから。 フリーダム、ジャスティス、そしてZGMF-X12A……これら初期のZAFT・GUNDAM の完成により、一度は用途廃止品扱いとなった。しかし、ユニウス条約の締結により、核 動力MSが事実上不可能になった為、解体を免れる。 その後、プラントの技術を用いてズープ・アップと最適化が行われ、その後のニューミ レニアムシリーズと同等の性能を確保した上で運用されていたが、セカンドステージシリ ーズ開発にあたり、その新機軸である「シルエットシステム」の開発・試験用のテストベ ッド機として提供されることになった。 シルエットシステムの開発は終了し、採用するMS「インパルス」も落成したが、こちら も能力は非常に高い物を維持できている為、解体せず、『ラッキースター3』に転用され たのである。 ZGAT-X105として生み出されたその機体。今はZGAT-X105Gと形式号を変えていた。 リニアカタパルトの発振待機位置に進むそれは、胴の一部に朱色の帯が入っている以外 は、かのスーパーコーディネィター、キラ・ヤマトの伝説の発端となった、あのMSとほぼ 同じ姿をしていた。 「岩崎みなみ。シャドゥストライク、行きます」 スターカットの入った、静かだがはっきりとした声で、告げる。 リニアカタパルトが作動し、シャドゥストライクは、同じく色と所属の違う母艦から射 出される。 『みなみちゃん、フォースシルエット、行くよ』 「了解です」 3機のMSが射出されたそれとは、反対側の発艦デッキのハッチが開き、大気圏内用の 翼を持った無人機、シルエットフライヤーが、フォースシルエットを連結した状態で、リ ニアカタパルトで射出されていく。 速度を緩めていたシャドゥストライクに追いつくと、背後でシルエットとフライヤーが 分離し、フォースシルエットはシャドゥストライクとドッキングする。 みなみはビームサーベルを抜くと、先行している2機を追う。 宇宙港のゲートのひとつで、みさお達ジン・ウィザードと、“敵”のMSがやり合って いた。 “敵”は、みなみの乗るシャドゥストライクと良く似た機体。ダガーシリーズ。肩口に 大口径の砲を搭載している。本来は対艦・火力支援型なのだろう。 みなみは、ノーマークだった1機に目をつけると、真正面から切りかかる。背負った大 口径砲が重いのか、その敵MSはろくに回避行動もできず、袈裟斬りにされ、スクラップに 変わる。 『敵はダガー系統の機体、連合です!』 「なんだって!?」 あやのから入った報告を、スピーカー越しに聞き、シンは思わず、指揮官席から立ち上 がっていた。 「どうして…………」 「シンちゃん!?」 はっ、と気付いたように、ゆかりが振り返る。 その次の瞬間、シンは、視界の先の相手に、伝わるはずもないのに、叫んでいた。 「そんなに、また戦争がしたいのか、アンタ達はぁぁっ!!!!」 前 戻る 次
https://w.atwiki.jp/kusanonemaze/pages/125.html
西村修平・街宣名誉毀損裁判:東京高裁判決(平成22年10月28日判決言渡)前編 平成22年10月28日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官 平成22年(ネ)第3403号 損害賠償請求控訴事件 (原審・東京地方裁判所立川支部平成20年(ワ)第2379号) 口頭弁論終結日 平成22年8月5日 判決 (住所) 控訴人 西村修平 同訴訟代理人弁護士 田中平八 (住所) 被控訴人 千葉英司 主文 1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は、控訴人の負担とする。 第1 控訴の趣旨 1 原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 2 上記取消部分に係る被控訴人の請求を棄却する。 第2 事案の概要 1 本件は、東京都東村山市議会議員であった亡朝木明代の転落死事件をめぐり、控訴人が、東村山駅前で開催された「朝木明代さん殺害事件を13年目の命日に市民に訴える!」と題する集会において、亡朝木明代は計画的に殺害されたものであるのに、東村山警察署副署長であった被控訴人は、謀殺事件を自殺事件に仕立て挙げて隠ぺいしたとの内容の演説を行ったほか、控訴人が管理するウェブサイトの同趣旨の記事等を掲載したことにより、被控訴人の名誉が毀損されたとして、被控訴人が控訴人に対し、不法行為に基づき、慰謝料100万円の支払を求めたところ、控訴人は、上記演説及び記事の内容は真実であり、仮に真実でなかったとしても、真実であると信じるに足る相当な理由があったなどと主張した事案である。 原判決は、被控訴人の本件請求は、控訴人に対して10万円の支払を求める限度で理由があるとしてその限度でこれを容認し、その余は理由がないとしてこれを棄却した。控訴人は、原判決中控訴人敗訴部分を不服として控訴した。被控訴人は控訴も附帯控訴もしない。 2 前提事実、争点及び争点に関する当事者の主張の要旨は、3のとおり当審における控訴人の主張の要旨を加えるほかは、原判決「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の2から4まで(原判決2頁4行目から19頁22行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する(ただし、原判決3頁22行目の「非常階段」を「外階段」に、6頁16行目及び19頁5行目の各「故意又は過失」をいずれも「責任」に改める。)。 3 当審における控訴人の主張の要旨 (1) 控訴人が、本件窃盗被疑事件は冤罪であり、本件転落死事件は殺人罪であったと信ずる相当な理由があったことは、以下に述べる事実から明らかである。 ア 直子が、本件転落死事件当日の平成7年9月1日午後10時過ぎに自宅へ着いたときには施錠されていたが、午後10時半ころ、本件マンションから落下していた亡明代は、靴を履いておらず、自宅と事務所の鍵が付いた本件鍵束も所持していなかったから、当夜、亡明代の自宅に施錠した者は亡明代以外の者、つまり、亡明代を自宅で拉致換金し、本件マンションの何階かは不明だが階段の踊り場まで運び、そこから突き落とした犯人グループであることは経験則に照らして間違いない。 イ 本件鍵束については、平成7年9月11日、東村山署遺失物係から亡明代の遺族に対して、「鍵束が見つかった。」との連絡があったところ、本件鍵束には亡明代の鍵束であることを示す標識は何もなかったから、東村山署があらかじめ本件鍵束が亡明代の鍵束であることを知っていたことと意味し、これは、本件転落死事件が殺人事件であることを知っていたことを示すものである。 ウ 本件転落死事件が殺人事件であったことを証明する証拠として、以下の証拠がある。 (ア) 本件マンションの下で倒れていた亡明代を見つけたモスバーガーの店主が「飛び降りたのですか。」と聞いたら、亡明代は「飛び降りてはいない。」と明確に否定した。 (イ) 亡明代が本件マンションの踊り場から落下したころに、「ギャー」という女の悲鳴とその直後にドスーンという音がしたことを本件マンションの住民が聞いているが、亡明代が自殺したものならば、「ギャー」という悲鳴は発しないはずである。 (ウ) 亡明代が、本件転落死事件の当日午後9時19分に自宅から矢野に電話した「ちょっと気分が悪いので、休んでいきます。」との「ファイナルメッセージ」の音声は、極度の精神的緊張の状態で架電していたことが鑑定の結果明らかになった。 (エ) 本件解剖鑑定書の創傷の部位程度の頃の「上肢の損傷」欄に記載されている上腕内側の皮下出血による皮膚変色は、被害者が犯人と揉み合ったときに生ずるものと考えるのが法医学の常識であり、これは、亡明代が当夜自宅で犯人グループにら致された際、犯人に左右上腕を強く掴まれて行動の自由を奪われていた際に犯人の指先に強く圧迫されて発生した皮下出血であり、本件転落死事件が殺人事件であったことを証明する決定的な証拠である。 (オ) 被控訴人の主張によれば「亡明代は、事件当夜、本件マンションの外階段の5階から6階の手すりによじ登り、体の向きを180度変え、手すりの外側に腹部を向けて手すりに掴まって落下した。」というが、もし亡明代が、高さ109cmから151cmの手すりによじ登り、体の向きを180度変えて手すりにぶら下がったものならば、亡明代の遺体の掌や指に顕著な擦過傷や強い圧迫による皮下出血による皮膚変色が必ずあったはずであるが、本件司法解剖にはそのような記載は一切ない。 エ 亡明代が落下した状態は、殺人犯人グループにより、本件マンションの階段踊り場からうつむけに水平の状態で突き落とされたものとしか考えられない。 オ 原告直子外、被告株式会社潮出版外の東京地方裁判所平成9年(ワ)第18260号損害賠償等請求事件の判決は、亡明代が万引きをした犯人と断定することはできないし、亡明代が自殺したとの事実が真実であるとは認められないと認定している。被控訴人直子外、被控訴人本件被控訴人の東京高等裁判所平成20年(ネ)第2748号損害賠償請求事件の判決は、直子及び矢野が、本件窃盗被疑事件は冤罪であり、本件転落死事件は他殺であったと信ずべき正当な理由があったことを肯定している。 (2) 本件演説部分及び本件記事部分は真実であり、仮に真実でなかったとしても控訴人が真実であると信じるにつき相当の理由があったことは、以下の事実から明らかである。 ア 被控訴人は、控訴人が指揮をとった亡明代に関する本件窃盗被疑事件及び本件転落死事件についての捜査記録に基づき、本件転落死事件は亡明代が本件窃盗被疑事件で地検八王子支部の検察官から呼び出しを受けていたことを苦にした自殺の可能性が高く、事件性は低いと主張するが、被控訴人の主張を裏付ける捜査記録は、本件司法外貌鑑定書以外は一切提出されていない。しかるに、原判決は、控訴人の上記主張を容認し、原審において開示されていない上記刑事事件の証拠の標目を判決に引用している。これは証拠によらずして裁判したものであり、民事訴訟法219条の解釈を誤った違法がある。 イ 本件窃盗被疑事件の被害者である(店主)は、万引き犯人が着ていたスーツと当日亡明代が着ていたスーツとは、色も違うし、ブラウスの襟もマオカラーと違うし、犯人が着ていたスーツには亡明代が当日着ていたスーツのような縦縞模様はなかったと別件法廷で証言しており、本件窃盗被疑事件は冤罪であることは既に証明十分である。本件窃盗被疑事件はあらかじめ計画されていた可能性が極めて高いものであり、本件窃盗被疑事件がねつ造された理由は、引き続き発生する本件転落死事件に際して、自殺事件として闇に葬り去るため、亡明代が本件窃盗被疑事件で検察官から呼び出しを受けていたことを苦にした自殺事件であると広報するための計画的謀略であった可能性が極めて高く、それ以外の理由は考えられない。 ウ 東村山署須田豊美係長は、平成7年9月2日、亡明代が防衛医科大学校病院で死亡したとき、この事実を亡明代の遺族に知らせることなく、担当医に対し、「マスコミ関係者には死亡した女性が朝木明代であることを知らせないでほしい。」と述べ、東村山署は、矢野から亡明代の捜索願の申出を受けているのに、亡明代の遺族や矢野に知らせることなく遺族の承諾のないまま亡明代を納棺し、遺族の抗議に対しても遺体の引渡しをせず、行政解剖を主張し、遺族が同意しなかったため司法解剖をすることとなった経緯があり、このように東村山署が亡明代の家族や矢野に連絡をしなかった理由は、「亡明代の本件転落死事件を自殺事件として闇に葬るために、亡明代が本件マンションから落下して瀕死の重傷を負っている事実、防衛医科大学校病院に搬送した事実、防衛医科大学校病院救命救急治療室で治療したが死亡した事実を亡明代の家族や矢野にできるだけ知らせない間に、遺体を荼毘に付して殺害証拠をなくすこと。」以外には考えられないものである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所の判断の要旨は、次のとおりである。 (マル1)本件各表現は、被控訴人の人格的価値について社会から受ける客観的評価を低下させ、その名誉を毀損するものであると認められ、(マル2)本件各表現は、東村山署副署長としての本件転落死事件に関する捜査指揮等に関連するものという事柄の性質上、公共の利害に関する事実に係るものであるといえ、また、その目的が専ら公益を図ることにあったと認められ、(マル3)本件各表現で摘示又は前提とされた事実の重要な部分である、「亡明代は、計画的に殺害されたものであること」、「被控訴人が、上記事実を知りながら、これを自殺事件に仕立て上げて隠ぺいしようとしたこと」、「創価学会が亡明代の謀殺事件にかかわっており、被控訴人は、創価学会の学会員である検察官2名と結託して上記隠ぺいに加担する不正を行ったものであり、学会員である検察官と同類のものであること」、「被控訴人がその隠ぺい工作として亡明代が万引きをしたという虚偽の事実をねつ造したこと」の各事実の真実性の証明を検討すべきであり、(マル4)「亡明代は、計画的に殺害されたものであること」の事実は、(あ)亡明代が自宅を出てまもなく帰宅した直子が自宅で認識した状況、(い)異常な行為が行われれば比較的容易に認知できる状況にあるのに、本件転落死事件に第三者が関与していたことを示す事実の目撃者等が現れていないこと、(う)倒れているところを発見された際の亡明代の行為は、計画的な殺害の被害にあった者が被害直後に第三者に発見されたときの行為として理解することは困難なものであること、(え)認定される客観的事実と整合性のある転落状況を想定すると、その転落状況が計画的な殺害によって生じたというのは困難であることなどを考慮すると、真実性の証明はないと言うべきであり、(マル5)「亡明代は、計画的に殺害されたものであること」の事実を前提とする「被控訴人が、上記事実を知りながら、これを自殺事件に仕立て上げて隠ぺいしようとしたこと」、「創価学会が亡明代の謀殺事件にかかわっており、被控訴人は、創価学会の学会員である検察官2名と結託して上記隠ぺいに加担する不正を行ったものであり、学会員である検察官と同類のものであること」の各事実の真実性の証明はないというべきであり、(マル6)本件窃盗被疑事件の捜査敬意によれば、「被控訴人が、亡明代が万引きをしたという虚偽の事実をねつ造した」という余地はなく、同事実の真実性の証明はないというべきであり、したがって、本件各表現の違法性は阻却されず、(マル7)控訴任が参考にした資料によって、「亡明代は、計画的に殺害されたものであること」を控訴人が信じるについて相当の理由があったと認めることはできず、「被控訴人が、上記事実を知りながら、これを自殺事件に仕立て上げて隠ぺいしようとしたこと」、「創価学会が亡明代の謀殺事件に関わっており、被控訴人は創価学会の学会員である検察官2名と結託して上記隠ぺいに加担する不正を行ったものであり、学会員である検察官と同類のものであること」、「被控訴人が、亡明代が万引きをしたという虚偽の事実をねつ造したこと」の各事実は控訴人の推測にすぎず、信じるについて相当の理由があったと認めることができず、意見又は論評として許容される範囲内であるともいえないから、責任は阻却されず、(マル8)被控訴人の被った精神的苦痛を慰謝するには10万円が相当である。 以下、詳論する。 2 争点(1)(名誉毀損性)について (1) 本件演説部分について 本件演説部分は、これと一体をなすその余の部分、とりわけ創価学会がオウム真理教に比類する巨大なカルト集団であり、亡明代の謀殺事件にかかわっていると断定的に主張する部分および前後の文脈等の事情を総合的に考慮し、一般の徴収の普通の注意と受け取り方を基準として判断すると、亡明代は計画的に殺害されたと断定的に主張した上、東村山署副署長であった被控訴人が捜査に当たり、亡明代が自殺したものとして処理したことについて、被控訴人が、同署刑事係長及び地検八王子支部の検察官2人と共に、亡明代が計画的に殺害されたことを知りながら、謀殺事件を自殺事件に仕立て上げて隠ぺいしようとしたと主張し、さらに、被控訴人及び上記刑事係長もこれと結託して上記隠ぺいに加担する不正を行ったものであり、学会員である検察官と同類のものであると主張し、上記各事実を摘示するとともに、同事実を前提に被控訴人の行為及び人格の悪性を強調する意見又は論評を公表したものと解することができる。 したがって、本件演説部分は、被控訴人の人格的価値について社会から受ける客観的評価を低下させるものというべきである。 (2) 本件記事部分について 本件記事部分は、これと一体をなす本件記事の表題及びその余の部分、とりわけ本件窃盗被疑事件の被害店舗の経営者を「創価学会信者」と記載し、被控訴人を同店舗の「ガードマン(?)として登場する創価学会の怪!」と記載している部分及び文脈を総合的に考慮し、一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断すると、亡明代は計画的に殺害されたと主張するとともに、東村山署副署長である被控訴人は、創価学会の関係者であって、捜査に当たり、亡明代が計画的に殺害されたことを知りながら、自殺と断定してこれを隠ぺいしようとしたもので、その隠ぺい工作として亡明代が万引きをしたという虚偽の事実をねつ造したと主張し、上記各事実を摘示するとともに、同事実を前提にその行為の悪性を強調する意見又は論評を公表したものと解するのが相当である。 したがって、本件記事部分は、被控訴人の人格的価値について社会から受ける客観的評価を低下させるものというべきである。 (3) 控訴人は、本件各表現は、東村山署の機関である副署長としての被控訴人の捜査指揮を批判したもので、被控訴人個人を対象としていないと主張する。 しかしながら、本件各表現は、被控訴人の人格的価値について社会から受ける客観的評価を低下させ、その名誉を毀損するものであると認められる。 (4) よって、本件各表現は、被控訴人の人格的価値について社会から受ける客観的評価を低下させ、その名誉を毀損するものであると認められる。 (西村修平・街宣名誉毀損裁判:東京高裁判決(後)へ) ソース(凪論):その1・その2・その3・その4 2011年1月20日:ページ作成。
https://w.atwiki.jp/wiki11_hibiki/pages/145.html
国語国字問題 出典 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 国語国字問題(こくごこくじもんだい)は、国語としての日本語(標準語)の漢字を廃止または改変しようという明治以来の言語政策問題のこと。 この項目では、近現代の日本語において、限られた用途しか持たず使用頻度の少ない漢字の習得・使用の是非をめぐり、あるいは時には漢字一般の使用の是非をめぐり、形成される政策(公的決定)について解説する。 目次 1 日本における主な政策の歴史1.1 国語改革1.1.1 当用漢字表 1.1.2 当用漢字別表と人名用漢字別表 1.1.3 当用漢字に対する批判 1.1.4 現代かなづかい 1.2 常用漢字とJIS 1.3 表外漢字字体表 2 主な政策論議の歴史 3 関連団体とその活動 4 関連項目 5 外部リンク 6 関連書 1.日本における主な政策の歴史 1.1国語改革 戦後に行われた国語改革は、漢字をめぐる政策の内、今日の日本語に対する影響が最も大きいもののひとつであるとされる。 1946年4月、志賀直哉は雑誌『改造』に「国語問題」を発表し、日本語を廃止して、世界中で一番美しい言語であるフランス語を採用することにしたらどうか、という提案を行った。また11月12日、読売報知(今の読売新聞)は「漢字を廃止せよ」と題された社説を掲載した。 また、同じ年の3月、連合国軍最高司令官総司令部によって招かれた第一次アメリカ教育使節団が3月31日に第一次アメリカ教育使節団報告書を提出、学校教育における漢字の弊害とローマ字の便を指摘しており、連合国軍の占領政策となったため、漢字全廃の決定とそれまでの使用漢字当用漢字と現代かなづかいが制定された。 1.1.1当用漢字表 当用漢字とは、1946年(昭和21年)に内閣から告示された漢字の全廃を目的に全廃まで当面使用できる漢字表に掲載された1850字の漢字を、狭義には指す。広義には、関連するいくつかの告示を総称する。同表では、使用頻度の低いとされた漢字が排除され、公式文書やメディアなどで用いるべき漢字の範囲が示された。 従来、複雑であったり多様であったりした字体を簡素化する試みも、一部の文字で行われた。ただ、中国の簡体字のように漢字の構成要素ごとに体系的に変更を行なうのではなく、慣例を参考に個別の文字を部分的に略字化しただけであった。 漢字の読みを制限する試みも行われたが、当初の制限は「魚」の読みを「うお」に制限し「さかな」の読みができなくなるなどの不合理が散見され、一度改訂されている。 今日見られる「まぜ書き」の問題も、同表に端を発する問題である。同表によれば、当用漢字で書けない言葉は言い換えを行なう事になっていたが、現実には漢字をかなで書いただけで元の言葉が引き続き使われる事がかなり多くあり、「まぜ書き」が多数生ずる事となった。顕著な例としては「改ざん」「破たん」「隠ぺい」「漏えい」「覚せい剤」などがあり、これらは正しく表記すると「改竄」「破綻」「隠蔽」「漏洩」「覚醒剤」である。別にこれらは法律で「まぜ書き」を使うように指導されているわけではないし、随筆や小説などの文学ではほとんど用いられない。だが、一部の大手新聞社やテレビ放送局などのマスコミはそれぞれの業界団体を経由で政府の指導に従い、特に「まぜ書き」表現を多用している。表向きでは大衆に文面を読みやすくする配慮であるが、それは同時に購読者や視聴者を獲得するための戦略でもある。極端な例としては一部テレビ番組で、低学年にも分かりやすく説明できるよう、常用漢字さえも「まぜ書き」の対象としている番組があるのも事実である。他にも、戦前においては、新聞等において難読字にはルビを振ることが一般的に行われていたが、これが当時の活版印刷においては組版作業のコスト増大を招いており、漢字制限・漢字撤廃がこれらのコストを低減させる、という経済的理由も当時は存在した。事実、新聞各社は当用漢字の導入と同時にルビを廃止している。漢字の字数も読みも制限されていれば、振り仮名は不要である、という理屈である。 国語審議会は1956年(昭和31年)7月5日、当用漢字の適用を円滑にするためとして、当用漢字表にない漢字を含む漢語を同音の別字に書きかえてもよいことを決定し、「同音の漢字による書きかえ」として発表した。以下のようなものが有名。(括弧内が本来の書き方。) 注文(註文) 遺跡(遺蹟) 防御(防禦) 扇動(煽動) 英知(叡智) 混交(混淆) 更生(甦生 本来の読みは「そせい」→蘇生) 激高(激昂) 知恵(智慧) 略奪(掠奪) この方針は中国の簡体字の原理と少し似ているように思われる。今日では異なる文字に書き換えられたことがあまり意識されなくなった例として、 妨害(妨碍、妨礙) 意向(意嚮) 講和(媾和) 硬骨(鯁骨) 格闘(挌鬪) 骨格(骨骼) 書簡(書翰) 奇形(畸形) 破棄(破毀) のようなものがある。 これらの「まぜ書き」「書き換え」には共通の問題点が孕まれている。それは、熟語本来の意味が不明瞭になってしまうことである。漢字は「音」と「意」で成り立っており、熟語はそれを組み合わせ、意味を表したものである。たとえば「破たん」という熟語で、「破」は”やぶれる”という意味であるが、「たん」の意味を問われたとして、平仮名の「たん」だと何も意味を成せない。また、「沈澱」の書き換えである「沈殿」だと、「殿」の意味を問われたとしても、「殿が沈む」など全く意味をはき違えてしまうのである。これは自ら日本語文化、熟語の成り立ちを破棄していることに等しい行為である。書き換えの中には支障の少ないものもあるが(「掩護」→「援護」など)、大抵は音を仮借しただけに過ぎず、乱れた日本語表現を合理化主義の中で合法化してしまったといえる。実際、国語審議会の動きには新聞社など大手マスコミが大きく関わっていたといわれている。 しかし、今日漢字表記の在り方が見直されつつあり、「まぜ書き」を用いず、表外の漢字を多用したり、またその漢字にはルビを表記するメディアが増加してきた。これは近年浸透してきたネット社会の中に於いて、ワープロの変換文字など表外字に触れあう機会が増大したことで、改めて表外字の存在が見直されてきた証拠である。そしてその表外字の存在が、日本固有の言語、漢字を見直す格好の機会となっていることが背景にある。(表外漢字字体表の項で詳述) 1.1.2当用漢字別表と人名用漢字別表 当用漢字のうち881字は、小学校教育期間中に習得されるべき漢字として当用漢字別表という形でまとめられた。いわゆる「教育漢字」である。 人名については、当初は当用漢字にないものは、新生児の戸籍の届出の際に使用すべきでないとしていたものの、1951年には人名用漢字別表として92字が内閣から告示され、当用漢字外の漢字も一部認められることになった。この人名用漢字別表は数度の改訂を経て1997年の改訂後、285字を含むものとなった。(但し、必ずしも追加だけが行われたわけではなく、一部の漢字は表から外された。) また、札幌高等裁判所で、簡単な字であるのに人名用漢字別表に含まれないために子供の名として使用できなかったことを不服とした裁判で訴えが認められたことから、2004年8月13日に488文字が追加された。当初は580文字の追加が見込まれていたが、パブリックコメントの結果、人名にふさわしくない漢字(怨・痔・屍など)が削除された。 1.1.3当用漢字に対する批判 漢字全廃を目的とした当用漢字はしばしば批判されている。1958年から雑誌「聲」に連載された『私の國語教室』で福田恆存は、既に漢字制限は不可能である事が明らかになっている、と指摘した。1961年には表音主義者が多数を占め、毎回同じ委員が選出される構造となっていた国語審議会の総会から、舟橋聖一、塩田良平、宇野精一、山岸徳平等、改革反対派の委員が退場する事件となった。 1962年、国語審議会の委員に選出された吉田富三は、「国語は、漢字仮名交りを以て、その表記の正則とする。国語審議会は、この前提の下に、国語の改善を審議するものである。」を審議の前提とするよう提案した。 1965年、森戸辰男・国語審議会会長は記者会見で、「漢字かなまじり文が審議の前提。漢字全廃は考えられない」と述べた。 1.1.4現代かなづかい 現代かなづかいでは、歴史的仮名遣と字音仮名遣いとの区別を行なっていない。 助詞の「は」「へ」「を」において歴史的仮名遣いの原則が維持されている事はよく知られているが、漢字の読み方でも、字音仮名遣いに基いた規則を採用している場合がある。 和語においては、「鼻血」は「はな」と「ち」の合成語であるので形態素を意識した「はなぢ」と表記する。 しかし、音読みの場合は、「地面」のように発音通りの「じめん」が正則とされ、「ぢ」とたびたび書かれる「痔」も、現代かなづかいでは「じ」が正しい。 1.2常用漢字とJIS 常用漢字は、1981年に内閣から告示された漢字表に掲載された漢字1945字(常用漢字一覧参照)を指す。同表は当用漢字表を基に改定されたものである。常用漢字は、漢字全廃を目的とした当用漢字と比べて制限の緩い「目安」という位置付けになっている。 漢字をめぐるこうした政府の動きと前後して、日本規格協会(JIS)も、コンピュータやワープロなどで用いる漢字について、その漢字の種類(文字集合)と、各漢字をデータとして処理する際の数値表現(文字コード)の規格を独自に定める試みを続けてきた。 この内、前者「文字集合」は、常用漢字などと同じく、夥しい数の漢字の中から一定数の漢字をとりだしたもので、俗にJIS漢字と呼ばれる。現在までに数度の改訂が行なわれている。 最初のものは1978年に指定された6802字の漢字(JIS C 6226)である。俗に「旧JIS漢字」とも呼ばれる。 1983年には6877字の文字(漢字以外を含む)が指定された。(JIS C 6226)これは「新JIS漢字」と呼ばれるもので、後に1987年JIS X 0208という呼称に変更になった。 「旧JIS漢字」と「新JIS漢字」との間で、示された字体が入れ換えになっているものがある。「旧JIS漢字」で作成された文書が「新JIS漢字」を採用しているワープロ等で字体が変ってしまう、といった問題がある。 また、JISの文字集合では、「包摂」の考え方によって新旧の字体を区別せず、一つの文字として扱っているものがあり、両者を区別したい場合にも区別できないという問題がある。その一方、「剣」「劒」「劍」のように、複数の例示字体が存在する文字もある。 1.3表外漢字字体表 1980年代半ば以降、ワードプロセッサやパソコンにおけるかな漢字変換の普及により、それまで専ら手書きに頼っていた日本語の記述に大きな変化がもたらされた。それにより、常用漢字外の漢字の使用環境が改善され、それまで減少の一途を辿っていた漢字の使用率が、平衡、あるいは増加に転じるようになった。 常用漢字表に示される省略字体は、常用漢字表外の漢字には適用されないというのが原則ではあったが、前述の「新JIS漢字」は漢字の省略を常用漢字表外の漢字へと拡大しており、一般の書籍における漢字字体とワープロ/パソコン環境での出力字体との間で乖離を生んでいた。また、一部には「新JIS漢字」の省略を積極的に採用する動きも出版界にあり、常用漢字表外の漢字字体に混乱が生じているとして、国語審議会が「字体選択のよりどころ」として一定の方針を示すことになったのが、「表外漢字字体表」である。 表外漢字字体表では実際の印刷物に使われている表外漢字を調査し、その結果、表外漢字の代表的なものとして1,022字を挙げ、それらについてほぼ康熙字典掲載字体となる「印刷標準字体」を掲示した。うち、38字については略字体を「簡易慣用字体」としたが、全体方針としては常用漢字表外の漢字については、伝統的な字体を用いる方針が示された。 かつては漢字制限に積極的であった新聞各社であるが、表外漢字字体表の発表を受けて新聞用語懇談会においてまぜ書きの減少が検討された。その後刊行された『記者ハンドブック新聞用字用語集』では使用する漢字が増やされる傾向にあり、それまでまぜ書きにされていた「拉致」(「ら致」)や「危惧」(「危ぐ」)などが漢字書きされるようになっている。また、一部の新聞では組版作業の電算化に伴いルビを復活させた新聞もあり、足並みこそ揃ってはいないが、漢字の使用が増える傾向が全体的に見られる。この傾向は新聞以外のマスメディアでも同様であり、NHKでも『NHK 新用字用語辞典』において、まぜ書きを減らしている。 2000年に答申された表外漢字字体表は一部においてJIS漢字との不整合を持っていたが、2004年にJIS X 0213が改正され、例示字形を表外漢字字体表に整合させた。しかし現状でこの規格を採り入れたOSはなく、オプショナルな手段を用いずに印刷標準字体を過不足なく出力できるPC環境は存在しない。また法務省が2004年に行った人名用漢字の追加も印刷標準字体によって行われており、PC環境との乖離が進行している。 2005年、Microsoft社は次期OS・Windows Vistaにおいて標準日本語フォントをJIS X 0213 2004準拠とすることを発表した。これにより、表外漢字字体表とWindows環境上の漢字環境の不整合は解消されるが、同一の文字コードの表示字形が環境によって変化するという「旧JIS/新JIS」の混乱が再び招来されるのではないかといわれている。 2.主な政策論議の歴史 日本語の表記法として漢字を用いることの是非は、少なくとも幕末以来度々議論の対象となってきたとされる。従来は、以下のような根拠によって、漢字の使用が批判されてきた。(漢字廃止論も参照されよ) 漢字は数が多く、読み方、書き方共に覚えることが容易ではない。 国際的に良くつかわれる文字はローマ字であり、漢字を使用すれば世界から取り残される事になる。 タイプライタ、コンピュータの出現によって、機械化の観点からも批判が行なわれるようになった。 ワープロ、コンピュータでは、数が多い漢字の処理に時間がかかる。 仮名のみ、ローマ字のみによる文書作成に比べて、漢字仮名交じり文による文書作成は、いわゆる「かな漢字変換」作業を必要とするため、非効率である。 そして、政策によって、使用する漢字を削減したり、あるいは漢字を全廃することは、国益にかなう事である、という主張が生じた。 漢字廃止論の先駆けとしてしばしば言及されるのが、1866年(慶応2年)、前島来輔(密)が、時の将軍徳川慶喜に提出した「漢字御廃止之議」と呼ばれる報告、提言(建白書)である(近年、この建白書の存在をめぐっては、否定的にみる見解や指摘が示され、その再検討を試みたものに、阿久澤佳之『前島来輔『漢字御廃止之議』の成立問題』立正大学文学部史学科卒業論文、1999年がある)。漢字の習得は非効率であるため漢字を廃止すべき、との議論であった。他に、次のような論者が知られている。 賀茂真淵『国意考』 漢字の数の多さを批判し、仮名はアルファベットと似て表音文字であるため便利だと論じた。仏典が50文字からなる語で書かれていること、オランダ語は25文字しか用いないこと、などを引き合いに出した。 本居宣長『玉勝間』 福澤諭吉『文字之教』1873年(明治6年) 前島来輔(密)『漢字御廃止之議』1866年(慶応2年) 西周『洋字ヲ以テ国語ヲ書スルノ論』(ローマ字推進) 末松謙澄『日本文章論』(明治19年) 上田万年 森有礼『日本の教育』(英語推進) 南部義籌(ローマ字推進) 馬場辰猪『日本語文典』 志賀直哉「国語問題」(『改造』1946年4月) 3.関連団体とその活動 新聞用語懇談会 日本新聞協会の加盟社からなる集まりで、新聞紙上における漢字の使用について話し合うもの。 4.関連項目 文部科学省 文字コード ローマ字論 日本における漢字 漢字廃止論 5.外部リンク 國語問題協議會 国語審議会報告「同音の漢字による書きかえ」 - 個人サイト 「同音の漢字による書きかえ」逆変換 - 個人サイト 日本の「漢字表」 - 京都大学人文科学研究所附属漢字情報研究センター 常用漢字表と83改正に関する文化庁の見解 - 文芸批評家、加藤弘一による カナモジカイ 6.関連書 高島俊男 『漢字と日本人』 文春新書 文藝春秋 ISBN 4166601989 田部井文雄 『「完璧」はなぜ「完ぺき」と書くのか』これでいいのか?交ぜ書き語 大修館書店 ISBN 4-469-22179-1 コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/kusanonemaze/pages/124.html
西村修平・街宣名誉毀損裁判:東京高裁判決(平成22年10月28日判決言渡)後編 (西村修平・街宣名誉毀損裁判:東京高裁判決(前)より続く) 3 争点(2)(違法性阻却事由)について (1) 事実を摘示しての名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明があったときには、上記行為には違法性がなく(最高裁昭和37年(オ)第815号同41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号1118号、最高裁昭和56年(オ)第25号同58年10月20日第一小法廷判決・裁判集民事140号177頁参照)、また、ある事実を基礎としての意見又は論評の表明による名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、上記意見又は論評の前提としている事実が重要な部分について真実であることの証明があったときには、人身攻撃に及ぶなど意見又は論評としての域を逸脱したものでない限り、上記事実は違法性を欠くというべきである(最高裁昭和60年(オ)第1274号平成元年12月21日第一小法廷判決・民集43巻12号2252ページ、最高裁平成15年(受)第1793号外同平成16年7月15日第一小法廷判決・民集58巻5号1615号参照)ので、以下これらの点について検討する。 (2) 公共性及び公益性について 本件演説部分は、東村山署副署長として被控訴人が行った本件転落死事件に関する捜査指揮等に関連するものであり、本件記事部分も、被控訴人が行った本件転落死事件等に関する捜査指揮等に関連するものであるから、本件各表現は、事柄の性質上、公共の利益に関する事実に係るものといえ、また、その目的が専ら公益を図ることにあったと認められる。 (3) 真実性について ア 本件各表現で摘示又は前提とされた事実の重要な部分について (ア) 上記によれば、本件演説部分において摘示された事実、あるいは意見又は論評の前提としている事実のうち、重要な部分は、(マル1)亡明代は、計画的に殺害されたものであること、(マル2)被控訴人が、(マル1)の事実を知りながら、これを自殺事件に仕立て上げて隠ぺいしようとしたこと、(マル3)創価学会が亡明代の謀殺事件にかかわっており、被控訴人は、創価学会の学会員である検察官2人と結託して上記隠ぺいに加担する不正を行ったものであり、学会員である検察官と同類のものであると認められる。 (イ) 上記によれば、本件記事部分において摘示された事実、あるいは意見又は論評の前提としている事実のうち、重要な部分は、亡明代は、計画的に殺害されたものであること(上記(ア)(マル1)の事実)、被控訴人が亡明代が計画的に殺害されたことを知りながら、自殺と断定して、これを隠ぺいしようとしたこと(上記(ア)(マル2)の事実と同趣旨である)、(マル4)被控訴人がその隠ぺい工作として亡明代が万引きをしたという虚偽の事実をねつ造したことである。 (ウ) そして、上記の本件各表現の事実の重要な部分のうち、上記(ア)(マル2)及び(マル3)の事実は、基本的に上記(ア)(マル1)の亡明代は計画的に殺害されたものであるという客観的な事実の存在を前提として、その客観的事実を隠ぺいして自殺事件に仕立て上げたという被控訴人のかかわりと創価学会が謀殺事件にかかわり、被控訴人は創価学会の学会員である検察官と同類のものであるということを指摘する事実であるから、上記(ア)(マル2)及び(マル3)の事実は上記(ア)(マル1)の事実が存在することを前提とするものであり、真実性の証明については、初めに上記(ア)(マル1)の事実について検討することとする。これに対し、上記(イ)(マル4)の事実のうち、被控訴人が、亡明代が万引きをしたという虚偽の事実をねつ造したとの事実は、上記(ア)(マル1)から(マル3)までの事実とは独立した事実であるから、別に真実性の証明を検討すべきこととなる。 イ 上記ア(ア)(マル1)の亡明代は計画的に殺害されたものであるとの事実の真実性について (ア) 亡明代が計画的に殺害されたものであるとの事実の立証の用に供し得る証拠として、一応次の証拠が指摘できる。 a 上記引用に係る原判決事実摘示のとおり、本件司法解剖鑑定書には、上記の損傷につき、「左上腕部後面、肘頭部の上左方4cmの部を中心に、2×2.2cmの紫青色皮膚変色部。左上腕内側下1/3の部に、上下に7cm、幅3cmの淡赤紫色及び淡赤褐色皮膚変色部、加割すると皮下出血を認める。」。「右上腕部内側、脇鵜窩の高さの下方11cmの部を中心に、上下に5cm、幅9.5cmの皮膚変色部を認める。加割すると皮下出血を認める。」、「右前腕部内側、肘頭部の高さの下方9cmの部を中心に、上下に5.5cm、幅6.5cmの範囲に粟粒大以下の紫赤色皮膚変色部及び1×1.6cm以下の紫青色皮膚変色部多数を認める。加割すると皮下出血を認める。」と記載されているところ、法医学を専門とする鈴木教授は、本件鑑定補充書(乙34)において、上記上腕の損傷について、「上腕内部に皮下出血がある場合は、まず第一に他人との揉み合いなど、争った跡を推定するのが「法医学の常識」である。個々の例では、他人と争った原因以外の原因で、上腕内側の皮下出血が生じ得る可能性を検討し、それらのすべてが否定されれば、この例の上腕内側の皮下出血は他人と争った際に生じたと言えるのである。ところで、亡朝木明代殿の左右上腕内側の皮下出血の成因として「他人と争った」以外の成因はすべて否定されるのであって、従って、亡朝木明代殿の左右上腕内側の皮下出血は、他人と揉み合った際に生じたこと以外は考えられず、他人と争った際に生じたと考えるのが妥当と認められる。」との意見を述べている。 b 日本音響研究所所長鈴木松美は、本件音声鑑定書(乙10)において、本件転落死事件発生の直前である平成7年9月1日午後9時19分に亡明代が矢野に架電した音声を録音した資料について、「資料中の朝木明代の音声の基本周波数の変化は、最低値がおよそ250Hz、最高値がおよそ415Hzの周波数で推移している。及び音声の状況より相当なる精神的緊張状態にあったことが推せられる。」との意見を述べている。 c 本件鍵束(乙35)については、本件転落死事件後に行われた東村山署による現場付近の捜索によって発見されることはなかったが、同捜索後に本件マンション2階の焼肉店店員が同階階段において発見し、拾得物として東村山署に届けられている(甲5)。 (イ) 一方、甲5、9、10、甲31の1、2、甲35、36、38、乙4の2、乙7の6頁から9頁まで、12頁、14頁、15頁の各写真部分、乙8の2、乙9の1,2、乙11、乙22の左上角の写真部分、乙25、乙32の20頁の「一九九五年当時の事件現場と事務所と自宅付近の見取り図」と題する図面及び21頁8行目から31頁17行目までの記載部分、乙41の2、乙42の1、2及び弁論の全趣旨によれば、本件転落死事件に関する事実として次の事実を認めることができ、同認定事実を左右するに足りる証拠はなく、同認定事実に反する控訴人の主張(当審における主張を含む。)は採用できない。 a 本件転落死事件の現場である本件マンションは、建物の名称を「ロックケープハイム」といい、本件マンションの南側で西武線東村山駅東口から東に延びる大通りに接面する。本件マンションから東村山署東村山駅前交番までの距離は約50mである。本件マンションは6階建てで、1階、2階は店舗部分、3階以上は住居部分であり、本件転落死事件当時、1階にはモスバーガー東村山店(以下「モスバーガー」という。)が、2階には焼肉店が営業していた。本件マンションの北側と西側には、隣地を一体として利用した駐車場(以下「隣地駐車場」という。)が存し、本件マンション敷地と隣地駐車場の協会に沿って、金属製フェンスが設けられている。隣地駐車場には管理人が常駐する管理人小屋が存する。 本件マンションの北西側に、1階から屋上階に至るコンクリート製外階段(以下「本件外階段」という。)が設けられている。本件外階段には、コンクリート製手すりが設けられ、手すりと天井の間は開口部となっている。階段床面から手すり最上端までの高さは、階段の段差と手すりの段差に応じ、90cmから151cmまでとなっている。隣地駐車場から、本件外階段の2階以上の全景を見渡すことができる。本件外階段の真下の本件マンションの敷地部分はコンクリート舗装され、同敷地部分の本件マンションと金属製フェンスの間の空間にゴミ置き場が、ゴミ置き場に近接した地上に排気口が設置されている。 b 本件転落死事件の当日である平成7年9月1日、矢野は、亡明代と共同で使用する事務所(以下「事務所」という。)において、市議会の準備作業に従事していた。午後9時13分、事務所に電話が架かったが、矢野が出る前に留守番電話の案内に切り替わり、電話は切れた。その後、矢野が市議会職員と電話で会話をしていたところ、午後9時19分にキャッチホンを受けた。電話を切り替えると、亡明代であり、「ちょっと、気分が悪いので、休んで行きます。」と告げられた。後日、NTTの記録により、午後9時13分の電話及び9時19分の亡明代の電話は、いずれも亡明代自宅の電話から架けられたものであることが判明している。上記平成7年9月1日、直子は、夕食を取るため、父及び弟と共に所沢市内のファミリーレストランに入店したが、亡明代が気になり、午後10時ころ、事務所に電話した。矢野から、亡明代は自宅にいると思うと告げられ、自宅に電話をしたが、誰も出なかった。直子は、父及び弟をファミリーレストランに残し、一人で自動車を運転して東村山市内の自宅に向かった。亡明代らの自宅は庭付き木造2階建てであり、門には伸縮式門扉が設けられている。直子は、午後10時25分ころ自宅に到着し、亡明代を探したが、建物内に亡明代の姿はなく、また、自宅に第三者が侵入した痕跡も見当たらなかった。直子は、亡明代が外で事故にあったのではないかと心配になり、午後10時30分、事務所に電話をして、矢野に、亡明代の捜索願申出を依頼した。矢野は、午後10時33分、東村山署に電話をして、亡明代の捜索願を申し出た。 c 亡明代は、平成7年9月1日午後10時ころ、本件外階段の開口部から本件外階段の直下にあるゴミ置き場に転落した。同時刻、本件マンションの住民は、ギャッという悲鳴の直後にズドーンと物が落下する音を聞いた。午後10時5分ころ、ゴミ置き場にゴミを置きに来たモスバーガーの店員は、横に寝た状態の人物がゴミ置き場で動いているのを認め、酔っぱらいが寝ているものと受け止め、ゴミを放り捨ててそこを離れた。午後10時30分ころ、モスバーガーの店長と店員がゴミ置き場に赴き、女性(亡明代。亡明代の氏名が判明するのは死亡後であるが、便宜、亡明代と表記する。)がゴミ置き場に倒れているのを認めた。店長が、亡明代に対し、「大丈夫ですか。」と声をかけると、亡明代は、はっきりとした口調で。「大丈夫です。」と答えた。店長は、かがんだ姿勢で亡明代に立ち上がるように促したが、亡明代が立ち上がらないため、自分の身を起こしたところ、ゴミ置き場に近接した金属製フェンスが折れ曲がっているのに気付いた。店長が「落ちたのですか。」と尋ねると、亡明代は、それを否定した。店員が、「救急車を呼びましょうか。」と尋ねると、亡明代は、これを拒否した。店長らは、隣地駐車場の管理人に、隣地駐車場の照明を点灯するよう依頼した。点灯された照明により、店長らは、亡明代の足下付近のダンボール上に血液が貯留しているのを認めた。店長は、午後10時42分、電話で東村山駅前交番勤務の小松俊寛巡査長(以下「小松巡査長」という。)に対し、「店の裏にあるゴミ置き場に女性が倒れている。」旨通報した。小松巡査長は、直ちに無線で東村山署に概要を報告し、救急車の派遣を要請し、午後10時45分、現場である本件マンション北側置き場に到着した。小松巡査長は、うつぶせに倒れ、うめき声をあげている亡明代に対し、「大丈夫ですか。」などと声をかけたが、応答はなかった。小松巡査長も、亡明代の足下付近に多量の出血があることを認めた。 d 東京消防庁東村山消防署は、同日午後10時45分、同庁警防本部(以下「警察本部」という。)から出場要請を受け、同署東村山2部救急隊(以下「救急隊」という。)が午後10時52分ころに現場に到着した。救急隊が亡明代の容態を観察したところ、亡明代は、JCSレベル30の意識障害(痛み刺激を加えつつ呼びかけを繰り返すと、かろうじて開眼するもの。)を示し、呼吸は浅く、苦もんの顔貌であり、両下腿部に出血を伴う骨折を認めた。亡明代のズボンを両下腿部の膝まで切断すると、右下腿の中央ふくらはぎ部分に約30cmの挫創があり、左下腿足関節部からふくらはぎにかけて約10cmの挫創があること、いずれも折れた骨が外部に露出する開放骨折であること、創傷部から1000ccの出血があることを確認した。救急隊は、両下肢の止血処理及び固定処理を行い、午後11時10分、亡明代を救急車内に収容した。収容後に亡明代の容態が悪化したため、救急隊は救命措置を講じた。警防本部から、亡明代を防衛医科大学校病院救命救急センター(以下「救命救急センター」という。)に搬送するよう指示があり、救急隊は、午後11時16分ころ、現場を出発した。 e 亡明代は、同日午後11時25分に救命救急センターに搬入された。搬入時亡明代は、意識がなく、呼吸は停止し、心臓もほぼ停止状態であった。救命救急センターの瀧野昌也医師(以下「瀧野医師」という。)は、緊張性気胸を発症しているものと診断し、開胸術を施行し、右側に緊張性気胸を出血を認めた。開胸術下の心臓マッサージ等により、亡明代は、いったん心拍が再開した。肋骨骨折によってできたと思われる右肺下葉の2、3条の肺裂傷が後面にあり、ここからの出血があったため、瀧野医師は、右肺下葉を切除する処置に着手したが、手術途中の9月2日午前0時34分に再度心停止し、午前1時に亡明代は死亡した。 f 本件転落死事件に関して、被疑者負傷の殺人被疑事件として、刑事訴訟法225条1項所定の鑑定処分許可条に基づき、亡明代の解剖が行われ、本件司法解剖鑑定書が作成された。本件司法解剖鑑定書の「第三章 説明 二、凶器の種類、その方法」には、「本屍の左右下腿部に認められる縫合創は、その性状及び直下に左脛骨骨折、右腓骨骨折を認めることから、前記骨折により損傷されたものと思われる。その他に本屍の外表に認められる前記創傷は表皮剥脱、皮下及び筋肉内出血と思われ、何れも鈍体による打撲、圧迫、擦過等により形成されたと思われる。内部において、胸腔内出血、多発性肋骨骨折、肺損傷を認めることから、胸部及び左右下肢には外力が強力に左右したものと思われる。これら部に作用した当該凶器の性状を詳らかにするのは困難である。本屍に認められる前記左脛骨及び腓骨骨折、右腓骨骨折に相当する外表には外力による明らかな創傷を認めないことから、これらの骨折は左右足部への強力な鈍体の作用による介達的な外力により発生した可能性が考えられる。本屍には外傷性クモ膜下出血、頚椎損傷を認めるが、これらの部に相当する外表に外力によると思われる明らかな創傷を認めないことから、前記損傷は胸部への強力な鈍体の作用による介達的な外力により形成されたと思われる。」とあり、(マル1)左右足部への強力な鈍体の作用と、(マル2)胸部への強力な鈍体の作用を指摘する判断が示されている。 g 本件転落死事件に関する捜査において、本件外階段の直下の金属製フェンスが折れ曲がり、本件マンションと金属製フェンスの間の地上に設置されていた排気口が折損していたこと、亡明代が倒れていたゴミ置き場の直上に位置する本件外階段の5階と6階の間の踊り場に設置されたコンクリート製手すり上面の外壁側に両手すりも手をかけた形の手の痕跡が残されていることが確認された。 h 東村山署は本件転落死事件に関する捜査を行い、直子及び矢野は更に独自の調査を行ったが、本件転落死事件に第三者が関与していたことを示す事実を目撃した旨の人物又はそのような物音を聞いた旨の人物が現れることはなく、上記(ア)に摘示した証拠のほかは、本件転落死事件に第三者が関与していたことを示す証拠と理解することのできる客観的証拠が発見されることはなかった。 (ウ)(イ)で認定した事実を整理して検討すると、次のとおり考えられる。 (マル1)本件転落死事件当日の午後9時19分時点では、亡明代は自宅におり、そこから事務所の矢野と電話で話しており、その後自宅から出ているというべきところ、午後10時25分ころに自宅に帰宅した直子は、自宅に第三者が侵入した痕跡を認めていない、(マル2)本件マンションは、東村山駅東口に近く大通りに面し、しかも、東村山署東村山駅前交番までは約50mの距離に位置し、1階、2階では店舗が営業し、3階以上は住居部分であり、隣地駐車場から本件外階段の2階以上の全景を見渡すことができ、亡明代がその意思に反して本件マンションに運び込まれ、外階段の開口部から投げ出されるという異常な行為が行われれば比較的容易に認知できる状況にあるといえるのに、本件転落死事件に第三者が関与していたことを示す事実を目撃した旨の人物又はそのような物音を聞いた旨の人物が現れることはなかったし、本件マンションは、第三者が亡明代らをら致し外階段から投げ出して殺害する場所としてはふさわしくない立地条件にある、(マル3)亡明代は、本件外階段から転落したことにより両下肢の開放骨折及び右肺下葉の肺損傷の傷害を負い、開放骨折部位からの外部出血及び肺損傷部位からの内部出血を起こしていたのであり、小松巡査長が現場に到着した時点以降の容態の急激な悪化をみれば、モスバーガーの店長らに発見した時点で既に重篤な状態にあり、亡明代も自分自身の身体のこととしてそれを認識できたはずであるのに、亡明代は、明瞭な意識がありながら、モスバーガーの店長らに被害事実を訴え、救護を求めることはなく、氏名を明らかにして家族に対する連絡を依頼することもなく、逆に、「大丈夫です。」と答え、救急車を呼ぶことすら拒否しているのであり、この亡明代の行為は、計画的な殺害の被害にあった者が被害直後に第三者に発見されたときの行為として理解することは困難なものである、(マル4)転落時、ギャッとの悲鳴の直後にズドーンとの転落音が聴取されていること、倒れている亡明代の足下に多量の出血が認められていること、近接する金属製フェンスが折れ曲がっていたこと、本件マンションと金属製フェンスの間の地上に設置されていた排気口が折損していたこと、亡明代に認められた両下肢及び右胸部の重篤な傷害の状況、本件司法解剖鑑定書は、左右足部へ強力な鈍体の作用及び胸部への強力な鈍体の作用を指摘する判断を示していること、本件外階段の5階と6階の間の踊り場に設置されたコンクリート製手すり上面の外壁側に、同手すりに手をかけた形の手の痕跡が残されていることという客観的事実によれば、亡明代は、本件外階段の5階と6階の間の踊り場に外側から手をかける形でぶら下がり、その状態から手を離して落下し、地面に衝突する直前で右胸部が金属製フェンスに衝突し、その直後に左右足部が排気口、そして、地面に衝突し、ゴミ置き場に転倒したとの転落状況を想定するのが最も整合性があると考えられるところ、この転落状況が計画的な殺害によって生じたというのは困難である、といわなければならない。 そして、上記(ア)に摘示した、(マル1)亡明代の上腕内側の皮下出血に関する鈴木教授の意見については、亡明代の転落状況について上記の程度には想定できるものの、本件外階段の5階と6階の間の踊り場に設置されたコンクリート製手すりに外側から手をかける形でぶら下がり、その状態から手を離して落下し、地面に衝突する直前で右胸部が金属製フェンスに衝突し、その直後に左右足部が排気口、そして、地面に衝突し、ゴミ置き場に転倒したとの経過の中で、亡明代の両上肢がどのような態様で何に接触し、又は衝突したかを確定する証拠は一切ないのであるから、このような証拠関係において、鈴木教授の意見をそのまま採用するのは困難といわざるを得ず、(マル2)本件転落死事件発生の直前に亡明代が矢野に架電した音声を録音した資料に関する日本音響研究所所長鈴木松美の意見については、亡明代をら致した第三者が、亡明代の自宅から、亡明代をして矢野に電話を架けさせることは想定し難いし、これに、上記音声が録音された午後9時19分の6分前である午後9時13分にも亡明代の自宅から事務所に電話が架けられていること、午後10時25分ころに自宅に帰宅した直子は、自宅に第三者が侵入した痕跡を認めていないこと等の上記認定事実を考え合わせると、録音された亡明代の音声に相当なる精神的緊張状態にあったことを推定し得る特徴が認められるとしても、これをもって計画的な殺人を裏付ける証拠とすることはできず、(マル3)本件鍵束の発見状況についてもそれ以外の状況が全く明らかではない下では、上記と同様、計画的な殺人を裏付ける証拠とすることはできないのであり、その他に本件転落死事件に第三者が関与していたことを示す証拠と理解することのできる客観的証拠が発見されることはなかったとの事実と、上記に説示したとおり、本件転落死事件が計画的な殺害によって生じたとするには困難である多くの事情が存することを併せ考慮すると、上記(ア)に摘示した証拠をもって、亡明代は計画的に殺害されたものであるとの事実を認めることはできず、結局、本件において、亡明代は計画的に殺害されたものであるとの事実の真実性の証明はないというべきである。上記判断に反する控訴人の主張(当審における主張を含む。)は、証拠に基づかない主張か、証拠に反する主張であって、採用することはできない。 ウ したがって、上記説示のとおり、本件各表現で摘示又は前提とされた事実の重要な部分のうち、被控訴人が、亡明代は計画的に殺害されたものである事実を知りながら、これを自殺事件に仕立て上げて隠ぺいしようとしたこと(上記ア(ア)(マル2)の事実)、創価学会が亡明代の謀殺事件にかかわっており、被控訴人は創価学会の学会員である検察官2人と結託して上記隠ぺいに加担する不正を行ったものであり、学会員である検察官と同類のものであること(上記ア(ア)(マル3)の事実)の各事実についても、真実性の証明はないという結論になる(なお、付言するに、本件全証拠によるも、創価学会が本件転落死事件にかかわっている事実及び被控訴人が創価学会の学会員である検察官2人と同類のものであることも認められず、真実性の証明はない。)。 エ 上記ア(イ)(マル4)の事実のうち、被控訴人が、亡明代が万引きをしたという虚偽の事実をねつ造したとの事実の真実性について (ア) 前掲各証拠によれば、次の事実を認めることができる。 (店主)は、平成7年6月19日、東村山警察官に対し、以前から面識があり、万引きをしたと疑っていた亡明代が本件洋品店に来たことから、防犯ミラーを通して注視していたところ、Tシャツを万引きしたのを目撃したので、立ち去る亡明代を約20m追跡して追い付きとがめたところ、亡明代がTシャツを落としたのでこれを取り返したが、亡明代には逃げられたことなどを被害申告した。東村山署刑事課所属の捜査官(以下「捜査官」という。)は、同被害申告を受けて、当日客として同店に居合わせ、(店主)が犯人から上記Tシャツを取り返す状況等を目撃したという者や、同人らが犯人は亡明代だと述べていたのを現場で目撃したという者らの事情聴取をするなどの捜査をした。捜査官は、亡明代を被疑者として任意で3回取り調べを行ったが、亡明代は万引き事件は政敵によるでっち上げであるとして犯行を否認し、万引き事件当日午後3時過ぎころ、レストラン「びっくりドンキー」において矢野と一緒に食事をしていた旨のアリバイを申し立て、アリバイの裏付け資料として同レストランが発行した「レギュラーランチ」を食べたとするレジジャーナルの写しを提出した。捜査官は、同レジジャーナルの写しについて裏付け捜査を行い、その結果等を踏まえ、東村山署署長は、同年7月12日、亡明代を被疑者とする本件窃盗被疑事件を地検八王子支部検察官に書類送致した。被控訴人は、副署長の職務として東村山署の広報を担当していたことから、報道機関に対し、広報案文に基づき、「捜査の結果、アリバイは信用できないことや目撃者が複数いることなどから、警察は朝木市議による犯行と認め、本日、被疑者を窃盗罪で地検に書類送致した。」などと、本件窃盗被疑事件の広報を行った。 (イ) (ア)で認定した事実によれば、(店主)は、東村山署警察官に対し、亡明代を被疑者とする万引き被害の被害申告をしたのであるから、東村山署においては、亡明代を被疑者とする窃盗被疑事件を立件して捜査をし、速やかに書類及び証拠物とともに事件を地検八王子支部検察官に送致することが刑事訴訟法に定められた任務であり(同法246条)、また、被控訴人がした本件窃盗被疑事件の広報については、東村山署の広報担当として職務上行ったものであるから、被控訴人が、亡明代が万引きをしたという虚偽の事実をねつ造したという余地はなく、本件において、同事実の真実性の証明はないというべきである。上記判断に反する控訴人の主張(当審における主張を含む。)は、証拠に基づかない主張か、証拠に反する主張であって、採用することはできない。 (ウ) 控訴人は、亡明代が本件窃盗被疑事件の犯人であることを否定するための証拠を種々指摘するが、上記のとおり、被控訴人が、亡明代が万引きをしたという虚偽の事実をねつ造したとの事実の真実性の証明はないと判断される以上、亡明代が本件窃盗被疑事件の犯人であるか否かを判断する必要はないし、亡明代は検察官取り調べを受けることなく死亡したのであって、そのような刑事事件の嫌疑の当否を当裁判所が判断することが相当であると解されないから、上記証拠に対する判断はしない。 オ 結論 よって、本件各表現について、摘示又は前提とされた事実の重要な部分が真実であることが証明されたとはいえず、違法性は阻却されない。 4 争点(3)(責任の阻却事由)について (1) 事実を摘示しての名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、摘示された事実がその重要な部分について真実であることの証明がないときにも、行為者において上記事実の重要な部分を真実と信ずるについて相当の理由があれば、その故意又は過失は否定され(前掲最高裁昭和41年6月23日第一小法廷判決・民集20巻5号1118頁、前掲最高裁昭和58年10月20日第一小法廷判決・裁判集民事140号177頁参照)、また、ある事実を基礎としての意見又は論評の表明による名誉毀損にあっては、その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあった場合に、意見又は論評の前提としている事実がその重要な部分について真実であることの証明がないときにも、行為者において上記事実の重要な部分を真実と信じるについて相当の理由があれば、その故意又は過失は否定されると解するのが相当である(最高裁平成6年(オ)第978号同9年9月9日第三小法廷判決・民集51巻8号3804頁参照)。そして、故意又は過失を否定する者が、上記事実を真実と信じるについて相当の理由があったことの証明責任を負うものと解される。本件各表現は、公共の利害に関する事実に係るものと認められ、かつ、その目的が専ら公益を図ることにあったことは前記3(2)のとおりであるから、以下、相当の理由があったと認められるか否かについて検討する。 (2) 被控訴人は、本件官邸補充書は、本件演説及び本件記事の後に作成提出されたものであるから、相当性の根拠とすることは許されないと主張する。確かに、行為者において真実と信ずるにつき相当の理由があるかどうかは、故意、過失の問題であるから、当該名誉毀損行為時を基準として判断すべきであるので、行為後の事情そのものは基本的に考慮すべきではないが、行為後に作成された資料を、行為時の相当性の判断の一資料とすることは許されるというべきである。そこで、本件官邸補充書も、控訴人の本件各表現の相当性の判断の一資料として考慮するに、本件官邸補充書の記載内容は、上記摘示のとおりである。 (3)ア 証拠(乙、控訴人本人)によれば、本件演説及び本件記事発表当時、控訴人が主としてその前提事実の重要な部分の根拠として直接把握していたものは、本件司法解剖鑑定書(ただし、添付写真を除く。)、本件音声鑑定書、参議院特別委員会会議録(乙30)等のほかは、主として、乙骨正生著に係る「怪死」と題する書籍(乙28)、本件書籍(乙32)、週刊文春(乙21)等の週刊誌等の記事であったことが認められる。 なお、控訴人は、控訴人本人尋問において、鈴木教授の意見を確認した旨供述するが、控訴人が本件各表現をした後に本件鑑定補充書を確認したことは認められるものの、平成18年8月20日付け意見書及び平成20年5月26日付け鑑定書については、本件において証拠として提出されておらず、控訴人がこれらの意見書等を本件各表現以前に確認していたとの上記供述はにわかに採用できない。 イ そして、上記各資料のうち、既にその内容を認定した本件司法解剖鑑定書、本件音声鑑定書及び本件鑑定補充書を除くものについて、証拠(甲27、37、39、乙6、21、22、28、30、32、33)によれば、要旨、以下の内容が記載されていることが認められる。 (ア) 平成7年11月30日に開催された第134回国会参議院宗教法人等に関する特別委員会の会議録には、出席した委員保坂三蔵が「本件転落死事件が単純な偶発的な事件ではなく、計画された事件であったら大変なことである。本件転落死事件を創価学会が起こしたとは言わないが、疑われている。」などと発言したこと、その際、政府委員として出席した警察庁刑事局長野田健が「本件転落死事件につき、現在、警視庁において、所要の捜査体制の下であらゆる可能性を視野に入れ、自殺、他殺両面からの捜査を進めており、早期に捜査を遂げて総合的な判断をしたい。」などと発言したことが記載されている(乙30)。 (イ) 乙骨正生著による「怪死」と題する書籍は、平成8年5月20日、第1版が発行されたもので、その内容は多岐にわたっているものの、本件転落死事件に関しては、「手すりについた指の跡から指紋が採取されていないこと、亡明代の靴が発見されず、警察犬が臭跡を発見できなかったこと、警察犬が発見できなかった事務所の鍵が平成7年9月2日に本件マンション2階の飲食店店員によって発見されたこと、東村山署が本件転落死直後の現場検証後、現場保存をしないなどその捜査が不自然であることなどから、被控訴人が本件転落死につき事件性がない旨判断したことには疑問があること」などが記載されている(乙28)。 (ウ) 矢野及び直子が著した本件書籍は、平成15年11月10日、初版が発行されたものであるが、「東村山署の捜査及び広報の責任者である被控訴人が、他の捜査担当者とともに、本件窃盗被疑事件について亡明代を犯人であると速断して捜査を尽くさないまま書類送検し、本件転落死事件についても早々に『万引きを苦にした自殺』説を打ち出して、外部に広報し、他殺の証拠を無視し、捜査をねじ曲げたもので、その職務は適正さないし公正さを欠くものであった」などと記載されている(乙32、33)。 (エ) 週刊文春(乙21)等の週刊誌等の記事の要旨は、原判決別表記載のとおりである(甲27、37、39、乙6、21、22)。 ウ 上記認定によれば、控訴人が参考にした上記資料及び本件鑑定補充書には、(マル1)左右上腕内側の皮下出血は、他人と揉み合った際に生じたこと以外には考えられないこと、(マル2)本件転落死事件直前の亡明代の声からは亡明代が相当な精神的緊張にあったと推測されること及び(マル3)亡明代が自殺したとするには不自然な点があることなどが記載されているにすぎず、そして、上記3(3)イ(ウ)に判示したとおり、上記(マル1)及び(マル2)については本件転落死事件が計画的な殺害によって生じたと断定することは困難であるのに、控訴人は、被控訴人が本件転落死事件につき早々に本件窃盗被疑事件を苦にした自殺説を打ち出して他殺の証拠を無視したなどと記載されている本件書籍等を前提とし、これに沿うように上記資料を解釈して、本件各表現を行ったものと認められ、これらに、本件転落死事件が計画的な殺害によって生じたと認定するには妨げとなる、上記3(3)イ(イ)aからhまでの事実及び同エ(ア)の事実については、控訴人が参考にした上記資料や直子及び矢野が当事者となっている訴訟の判決書(控訴人は、これを直子から入手することができるものと考えられる。)によって容易に把握することができたことに照らすと、控訴人が報道等に携わる者ではないことを考慮しても、裏付け調査を十分にしたとは到底いえず、本件各表現当時、亡明代が計画的に殺害されたものであること(前記3(3)ア(ア)(マル1))を控訴人が真実であると信じるについて相当の理由があったと認めることはできない。ましてや、本件において、被控訴人が、同(マル1)の事実を知りながら、これを自殺事件に仕立て上げて隠蔽しようとしたこと(前記3(3)ア(ア)(マル2))、創価学会が亡明代の謀殺事件にかかわっており、被控訴人は、創価学会の学会員である検察官2人と結託して上記隠ぺいに加担する不正を行ったものであり、学会員である検察官と同類のものであること(前記3(3)ア(ア)(マル3))、被控訴人がその隠ぺい工作として亡明代が万引きをしたという虚偽の事実をねつ造したこと(前記3(3)ア(イ)(マル4))は、控訴人の推測にすぎず、本件各表現当時、これらの事実を控訴人が真実であると信じるについて相当の理由があったと認めることはできず、本件各表現の意見又は論評が公正な論評として許容される範囲内であるともいえない。上記判断に反する控訴人の主張(当審における主張を含む。)は、証拠に基づかない主張であるか、証拠に反する主張であって、採用することはできない。 (4) したがって、控訴人が、本件各表現について、摘示又は前提とされた事実の重要な部分を真実と信じるについて相当の理由があったとは認められず、責任は阻却されない。原告直子外、株式会社潮出版社外の東京地方裁判所平成9年(ワ)第12860号損害賠償請求事件の判決(乙31)及び控訴人直子外、本件被控訴人の東京高等裁判所平成20年(ネ)第2748号損害賠償請求控訴事件の判決(乙33)は、本件訴訟の当事者と異なる当事者による本件表現と異なる表現行為について判断を示したものであり、本件と事案を異にするから、上記各判決を引用してする控訴人の主張は採用できない。 5 争点(4)について 以上のとおり、本件各表現は、被控訴人の行為や人格の悪性を強調し、その名誉を毀損するもので違法かつ有責であるが、本件転落死事件は、現職の東村山市議会議員が、同市内で発生した本件窃盗被疑事件の被疑者として書類送検される中、同市内において本件マンションから転落死したという事案であり、本件各表現は、当時捜査の指揮に当たっていた責任者に対して、本件転落死事件の事件性を問題とし、本件窃盗被疑事件に当たっていた責任者に対して、本件転落死事件の事件性を問題として、本件窃盗被疑事件に関する捜査の在り方を批判して、公正な捜査と事件の真相の解明を求める側面及び東村山署という組織の活動に対する批評としての側面もあること、その他、本件に現れた諸般の事情を総合考慮すると、被控訴人のこうむった精神的苦痛を慰謝するには10万円が相当であると思科する。 第4 結論 以上により、被控訴人の請求は、控訴人に対して10万円の支払を請求する限度で理由があるからその限度でこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却すべきものである。当裁判所の上記判断と同旨の原判決は相当であって、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第21民事部 裁判長裁判官 前田順司 裁判官 橋本昌純 裁判官 山口信恭 ソース(凪論):その1・その2・その3・その4 2011年1月20日:ページ作成。
https://w.atwiki.jp/kattenisrc/pages/2008.html
102: 名無しさん(ザコ) :2020/02/20(木) 16 15 35 ID Sg7R/UBc0 実年齢が・・・いえなんでもないです。 まだ野望に満ちていた、若い時のギルモア博士により、 改造されたサイボーグ戦士。 とりあえず、ギルモア博士はフランソワーズに土下座しろ。 パイロット ステータス的には、回避値がやや高目位で、そこまで見るモノは無い。 まあ、透視とか強化聴力等で周囲を探査する、スカウト的な能力だから致し方ないか。 反面、SPは支援SPが一通り揃っており、育てた分の見返りは大きい。 特に激励がLv15、再動がLv37と修得が早いのもGOOD。 しいて言うなら、SP愛が重い位か。 ユニット 攻撃力1500で射程1-4のB属性スーパーガンが優秀だが、 パイロットステータスと合せて見たら、正直な所弱い。 パイロットでSPが優秀だから、育てた見返りが大きいとは書いたが、 他作品で、このSPタイプの大半が、ユニットデータでヒーラーを兼ねてる事が多く、 そう言った意味で003は売りが弱い。 まあ、作品内での能力がSRC的には再現しづらいから致し方無いが。 総評 009フォルダのみなら兎も角、他作品と共闘しだすと、 同系統のヒロインに押されて、ベンチ入りも厳しい性能。 キャラ的には色々と美味しいので、シナリオでの使い勝手は良いが。
https://w.atwiki.jp/fittinoukikaisekkei/pages/13.html
基本的に製図と設計の教科書が必要。 無くしたら致命的。 α棟の自習室で戦友と進めるべきである。 先達の図面があると理想的。
https://w.atwiki.jp/bazanoheya/pages/25.html
イーオス 主に火山や沼地に住む禍々しい真紅の鱗を持つランポス種のモンスター 劣悪な環境で弱った獲物を執拗に付け狙う狡猾さを持っている。 口から致死性の毒を吐き出し、死にかけた獲物を集団で捕食する