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前 種付けゆっくり・後編 ここは山の中腹にある草原。ここは山のゆっくり達が集い、思い思いにゆっくりと過す、いわゆる「ゆっくりプレイス」である。 ゆっくりは仲間達と追いかけっこをしていたり、歌ったり、草原の草花に舌鼓をうったりと楽しく過している。 「ゆっくりしていってね!!」 「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」 ゆっくり達はお決まりの挨拶の後、親愛の証として頬擦りをする。 その中の1匹がまりさであった。 「きょうもなかよくゆっくりしようね!!」 「「「「そうだね!ゆっくりしようね!!」」」」 まりさは幸せであった。最高のゆっくりプレイスで、大好きな仲間達と思う存分ゆっくりする。 まさにゆっくりらしい生活である。まりさは死ぬまで存分にゆっくりできると思っていた。 それは他のゆっくり達も同じである。 今日も夕方まで思う存分ゆっくりとし、夜になったらぐっすり寝る。そしてまた次の日にゆっくりする。 それだけで幸せだった。しかしそう上手くいかないのがゆっくりであった。 朝、いつもの様に目が覚める。いつもの様な心地よい朝だ。しかしその日は少し違った。 「ゆぅぅ・・・きょうはいつもよりねむいよ・・・!」 しっかり寝たはずなのに寝不足である。それもそのはず、このまりさは昨晩虐殺お兄さんに連れ去られ 改造されたまりさなのである。 まりさは寝たりなかったが、いつも通りにゆっくりプレイスでゆっくりと過す事にした。 「きょうもいちにちゆっくりしていってね!」 「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」 いつもの通り仲間達とゆっくり過すまりさ。しかし眠気のせいかいつもよりは元気が無い。 「むきゅん・・・どうしたの?まりさ。どこかいたいの?」 「だいじょうぶだよぱちゅりー!ちょっとねむいだけだよ!」 「まりさのげんきがなかったからしんぱいしたじゃない!・・・か、かんちがいしないでよ! ありすとかいはだからともだちのしんぱいをするのはとうぜんでしょ!!」 「なにもないならあんしんしたよ!ひきつづきゆっくりしていってね!」 「「「「ゆっくりしていってね!!」」」」 まりさは引き続きゆっくりした。しかしどうしても疲れが取れない為、夕方前に帰ることにした。 「ゆゆ~・・・きょうはどうしてもねむいからいえにかえってゆっくりねることにするよ!」 仲間のゆっくり達は残念そうだが、無理やり引き止めるのも悪いのでまりさを見送った。 「きょうははやくかえるけど!あしたはもっとゆっくりしようね!!またね!!」 「「「「またゆっくりしようね!!」」」」 挨拶を済ませるとまりさは巣に戻った。 少しゆっくりしようとも思ったが、眠くてしょうがない為餌を軽く食べてすぐに眠った。 朝 「ゆっくりよくねたよ!!」 昨日の疲れが嘘の様に取れていた。その為まりさはまたいつも通りにゆっくりプレイスでゆっくりと過した。 「きょうもなかよくゆっくりしようね!!」 「「「「そうだね!ゆっくりしようね!!」」」」 普段通りのまりさの様子を見て、皆安心して挨拶を返す。 その後はまたいつもの様に夕方までゆっくりと過す。 そしてまたいつもの様に 「またあしたもゆっくりしようね!!」 「「「「またゆっくりしようね!!」」」」 そしていつも通り夜になると眠った。 夜空が白みがかってきた頃、まりさは寝苦しさを覚え目が覚めた。 「う~ん・・・ちょっとあたまがいたいよ!」 といいつつまた寝ようとした時、異変は起こった。 頭に突然激痛が走り、直後めりめりと妙な音が巣に響いた。 「ゆげぇええ!!」 その後体内の餡子が頭の上に吸い上げられる感覚がした。 「あがががが!うげぇえぇぇぇ!!」 まりさは視線を上に向けた。するとそこには大量の蔦が見えた。 数秒程混乱したが、蔦に餡子が吸われているのが分かるとすぐに気付いた。 「な、なんでまりさがにんっしんしてるのぉぉぉおおぉぉ!?!?!?!?!?!?」 まりさは理解できなかった。何故なら今までにすっきりの経験が無かったからである。 夜の内に他のゆっくりにレイプされた形跡もなく、巣の中は寝る前となんら変わり無い。 混乱している最中にも、次々と餡子が蔦に吸われてゆく。 「ぐげげげげ!!!おごごごご!!!・・・」 まりさは白目をむいた。 「ゅっ・・・ゅ゛・・・」 そしてそのまま真っ黒になり朽ち果てた。 20匹分の赤ゆっくりの芽があるだけでもゆっくりにとって危険な上、 通常の3倍程の成長速度のある特製ゆっくりが一気に餡子を吸い上げる。 並のゆっくりでは餡子があっというまに足りなくなり、そのまま死ぬ。 まりさ以外の改造されたゆっくりも、同じ頃に同じ様に朽ち果てた。 そして夜が明けた。 改造された成体ゆっくりは皆つがいが居なかった為、誰の目にも触れずに巣の中で死んでいたが、 改造された子ゆっくりはそうではない。朝起きた時点で家族が見付け、騒ぎ立てた。 「うわぁあああああ!!れ゛い゛ぶのこどもがあああああぁぁぁあ!!」 「おねえぢゃあぁぁあああん!!!!」 などと泣き叫んでいたが、10分もすると 「しんだこどものぶんまでゆっくりするよ!!」 などと言ってゆっくりプレイスでゆっくりしだした。ゆっくりらしく切り替えが非常に早かった。 他のゆっくり達もいつも通りにゆっくししていた。しかし異変は起こった。 昼を過ぎたあたり、まりさの仲間のゆっくり達は妙な倦怠感を覚えた。その直後に体に激痛が走った。 「「「「ゆぎえぇえええっぇぇぇ!!!!」」」」 近くに居たゆっくりが驚き振り返ると、妙な光景が広がった。 そこには頭から大量の蔦を生やしたぱちゅりーとありす、急激に体の膨れ上がったれいむの姿があった。 「「「「ぐえぇぇえええ!うがぁぁああぁぁぁぁあ!!!」」」」 それぞれがゆっくりのものと思えない様な奇声をあげた。 蔦を生やした方のゆっくりは見る見るやせ細っていき、そのまま黒ずんで朽ち果てた。 膨れ上がった方のゆっくりは目玉が飛び出し、口から餡子を撒き散らして朽ち果てた。 3匹のゆっくりが怪死を遂げた為にゆっくり達は大騒ぎしたが、 それでも30分もするとゆっくり達はゆっくりを再開しだした。が、その矢先 「ゆゲぇええエええェェえぇぇッ!!」 ゆっくりプレイスにまた奇声が響いた。 子ゆっくりが子供とは思えない様な奇声を上げたかと思うと、突然膨れ上がり、破裂した。 それを皮切りに他のゆっくり達も奇声を上げ、形を変えた。 先のゆっくり同様にあるものは蔦を大量に生やし、またあるものは急激に膨れ上がり、それぞれ朽ち果てた。 素晴らしいゆっくりプレイスは今や地獄と化した。 ゆっくり達は巣に逃げた。そうしている間もゆっくり達が次々と怪死してゆく。 「ごわ゛ぃよおおおおおお!!・・・おごごごあががが!!」 メキメキベリベリベリ・・・ 「おぎゃあザあアぁぁっぁあぁっあっ!ごがぁぁ!!」 パーン・・・ 「もうやだああああ!おうぢがえぇエぇぇエレエレエレおごォぁ!!」 グチャ・・・ 快音が響き渡る。しばらくするとゆっくりプレイスからゆっくりが居なくなり、辺りは風の音だけが響いた。 巣に戻ったゆっくり達は安心していた。ゆっくりプレイスにいなければ死ぬ事は無いと考えたからである。 しかしそれはただの思い込みである。 ゆっくり達の巣からは相変わらず快音が響いている。それは昼夜問わず鳴り響いた。 そして数日が過ぎた。 「こ、これは凄い・・・」 村の人々はゆっくりプレイスを見て思わず息を飲んだ。 そこには散乱した餡子やゆっくりの体の一部、真っ黒に朽ち果てたゆっくりの死骸、そしてそれに群がる蟲達。 ここまでうまく行くとは村の人々は思っていなかった。 「どうです?凄いでしょう♪」 満面の笑みを浮かべ、ゆっくりプレイスを進んでゆくお兄さん。 「この近くにドスまりさの巣があります。そこも行って見ましょう♪」 そう言ってお兄さんはっくりプレイス近くの大きな洞窟まで来た。 奥から何やら呻き声が聞こえる。お兄さんは洞窟を進んだ。 「うぅぅ・・・どうしてこんな事に・・・うぐぐぐ・・・」 そこには異様な姿のドスまりさがいた。 頭からは大量の蔦を生やし、胴体は不自然に膨れ上がっている。 なんと植物型と動物型両方のにんっしんをしているのであった。 蔦には推定100匹分以上の芽があり、胎内には推定30匹以上の赤ゆっくりがいる様だ。 お兄さんは 「おい!ドスまりさ!ここで何があったんだ!?」 と心配したフリをしてドスまりさに尋ねた。 「分からないよ・・・みんな急ににんっしんしてそのまま死んじゃったんだ・・・ お兄さん・・・まりさをたすけて・・・」 そう言うやいなやドスまりさは白目を向いて気絶した。 「おい!大丈夫か?起きろ!!」 声を掛けても起きる様子は無い。 そこでお兄さんは洞窟の外に居る村の人々に呼びかけた。 「このドスまりさを運び出します。手伝ってください。」 そういってこのドスまりさを助け出した。 数ヵ月後 「ここはまりさたちがみつけたゆっくりぷれいすだよ!ばかなにんげんはでていってね!」 「うげぇぇええ!!ぎゃあああああ・・・・・・」 「こんなところにいたんじゃゆっくりできないぃぃぃ!!おうちがえるうぅぅぅ!!」 「2度と来るんじゃないぞ!」 「うるさいばか!ゆっくりできないじじいはしね!!」 「ふう、まぁ2度と来れないんだけどな♪」 村のゆっくりの被害は激減したが、それでも別の山のゆっくりは来る。 その為村に侵入したゆっくりには改造手術を施し、野に返している。 「あのくそじじいもどすにかかればいちころだよ!みんなでむらをしゅうげきしようね!」 「「「「おーーーー!!!・・・・・オごご・・・うぐぇぇぇえええ!!!」」」」 ぐちゃり 今日も村は平和である。 ちなみにお兄さんに助け出されたドスまりさは、加工所でゆっくり養殖用として第2の人生を送っている。 「ゆっくりした結果がこれだよぉぉぉおぉぉおお!!!」 めでたしめでたし 「めでたくないぃぃっぃぃいいいい!!!」」 終 読んでくれてありがとうございました。 まだ慣れていない為、見苦しい点もあるかと思いますが、生暖かい目で見てやってください。 このSSに感想を付ける
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以下、注意書き。よく読んでおいてください。 ※ハーフ、厨、死なないゆっくりがでます。俺設定、他人様の設定を含みます。とんでもなく読みづらいです。 ※実在の人物、団体、地名とは全く関係ありません。無いったら無いです。不幸になる人間が出ます。 ※まだはじめなので直接的な虐待はありません。むしろ虐待から趣旨がずれています。 ※読んでて気分が悪くなったら読むのを中止してください。 以上です。どう見ても核地雷です。本当にありがとうございました。 読まないことお勧め、これ最強。 投棄場に保管していただければ幸いです。 魔法が廃れ、剣と科学がこの世界を支配していた。 この地には人と幾ばくの野生生物とゆっくりが密接に存在していた。人の祖はあるとき地上に降臨したと言われるが定かではない。 動物も同じだった。だがゆっくりだけは違った。 世界にまだ魔法が存在していた頃、一人の狂える魔法使いが『始まりのゆっくり』と呼ばれるものを生み出したのだという。 その魔法使いが何故生み出したのか、何を為そうとしたのかはわかっていないが、伝え聞くことが真実ならばゆっくりは生物ではないということになる。 誰にもそれが真実であるということを証明できないが、虚実であることもまた証明できない、よってゆっくりは魔法物体、略して魔物と呼ばれている。 ゆっくりは言語を用いて人と多く関わってきた。文化を持たないがそこそこ賢く、貧弱でありながら生きて来た実績がある。だが所詮は人とは違うもの、 価値観の違いからの衝突、食料を巡っての争い、その大半は人の勝利で終わるが人間にも多少の被害は出ている。人とゆっくりの溝は 決して浅くはない。ゆっくりは旧き友であり、仇敵でもあった。 だがそれは人同士でも同じこと。集落から始まり、国を興し、隣国と戦争が起きるのは必然であった。人の歴史は戦とゆっくりとの争いに 彩られていた。 その世界に存在する王国『ユートルダム』は土地は肥え、海にも大きく開けており、とても豊かな国であった。 だがそのせいで隣国からは格好の標的にされた。代表的なのは、雪と氷が国土を占める北の共和国『キューズ』、 かつて世界全土を征服していた旧魔法時代の王の末裔を名乗る帝王の支配する技術先進国でもある西の帝国『テンペスト』の二国である。 幸いなことに二国は犬猿の仲であり、同盟を組むことも共同戦線を張ることもなかった。そして王国にはその豊かな国土に支えられた 屈強な兵団を抱えていることから侵略国を悉く退けてきた。その度に多くの英雄の武勇譚が詩人に謳われ、国民に勇気を与えた。 国はいつまでも安泰であり、人々は心ゆくまで平和を謳歌し、それは永遠であると信じていた。 だが人々が信じたものは陶器が地面が落ちるように、粉々にそして簡単に砕け散った。 キューズとテンペストがありえないことに同盟を組んだのだ。こうして攻めている間に国を攻め取られるという後顧の憂いがなくなり、 ユートルダム侵攻に多くの戦力をつぎ込むことができた。こうして歴史に類を見ない、大地を血に染めた戦争が始まった。 結果を言えば王国は勝利した。だがそれに喜ぶものは誰もいなかった。敵の二国の足並みがそろわず、この調子で行けば王国が勝てるはずだった。 だが二国は負傷兵も駆り出し、文字通り総力戦を行った。双国ともに相手よりも劣ることを嫌い、意地で戦争をしていたと思われる。 王国は防衛線であったことも手伝って、これを退けた。辛勝とも言えぬ勝利だった。勝ち得たものは少なく、二国との講和を条件に 支払われた賠償金、わずかな物資、技術。残ったものは荒れ果てた領地と疲れきった国民、そして兵力を大幅に減らした見るも無残な兵団だけだった。 そこで持ち上がった問題が早急な復興が必要であることだった。二国よりも早くに国を立て直さなければ、また戦争が起きたら負けは確実、 なのだが防衛線で失った国民が多すぎて立て直すには長い時間が必要であった。 当時の国王は頭を抱えていた。国を立て直すには時間が要るがそれでは王国の滅亡は時間の問題、それを打開する策を求めて 毎日、臣下と会議を行っていたのだが芳しくなかった。 二国と親交を深め、戦争を起こさせないというものは当然却下された。贈り物をしてそれを戦争の道具にされれば滅亡を早めるだけであり、 そもそも二国は信用ならざる相手であったからだ。 二国の仲を瓦解させ、争わせるという「二虎共食の計」を用いるというもの。だがこれも却下された。材料がないことも挙げられるが、 失敗すればこちらに攻め入る絶好の口実を与えることになってしまう。 かくなる上はこちらから攻め、相手に決定的な被害を与えるものもでたが、これはもう策などではない。王国には遠征を行える余裕はない。 もう打つ手はないと諦めの雰囲気が会議室内を支配していた。 その時、歴史は動いた。 この窮地を救った救世主として構成にまで語り継がれ、今でも王国の者ならば誰もが知っている人もゆっくりも関係無くだ。 それは一匹のゆっくり、「ぱちゅりぃ」であった。 その日、王は夢を見た。真っ暗な世界に一筋の光がさし、光はどこまでも明るく世界を照らす夢。天啓であろうか、王はなんとなく 馬で遠乗りに出かけることにした。護衛を二人だけつけて、活気の無い城下町を抜け、地平線まで見える平原で馬を休めた。 そして小高い丘の上でぱちゅりぃと出会った。王はただのゆっくりに声をかける王に驚いている護衛を無視し、ぱちゅりぃと話をはじめた。 『ぱちゅりぃに一つ提案があるわ』 ぱちゅりぃは挨拶もそこそこに王にある提案をした。それはゆっくりが敵国同士の同盟を解消させてこの国の窮地を救う。そのかわり、ゆっくりを国に 迎え、安全を保障してもらいたい、といったものだった。普通だったら笑い飛ばして話はそこで終わりだろう。だが王は笑わず、黙って話を聞いていた。 話が終わり、そこではじめて王は口を開いた。 「国に入ってなんとする?貴様らはどうやって生活するつもりだ」と。 ぱちゅりぃは答えた。土を耕し、作物を作る人の手伝いをしていくつもりだ、と。確かに今は猫の手も借りたい状況にある。ゆっくりは非力であるが、 力を合わせればそれなりのことはできるのだという。 その後のことは事を成してから話し合おうと、一ヵ月後またここで会う約束をしてぱちゅりぃは去っていった。 王はそれほど期待はしていなかった。だがこれは負けても何も失わない賭けとも呼べない、あるべき状況に戻るだけの単純なもの。それにこの状況を 打開できる策もないのだ。藁に縋る思いで王は待つことにした。 それから一ヵ月後、王は何もしなかったわけではないが、何かができたわけでもなかった。国の危機は現実味を増し、ますます王城には諦めの空気が 漂っていた。だが先日、キューズ、テンペストに送り込んでいた密偵から報告があった。二国ともにゆっくりによって食料を荒らされ、軍備もままならぬ とのこと。捕らえられたゆっくりはそれぞれキューズに、テンペストに命令されてやったと言っていた。疑うのが当たり前なのだろうが二国の仲は 薄氷の上に成り立つ同盟で繋がっていたに過ぎず、それはいとも簡単に崩れ去った。二国は国の安定に力を注ぐことに集中せざるをえなかった。 約束通り、王は小高い丘に現れた。百騎の騎士を従えて。ぱちゅりぃは既にそこにいた。こちらも数え切れない数の仲間を連れていた。ぱちゅりぃは 前に進み出て王に約束を果たすことを要求した。王は要求を呑むほかなかった。騎士に命じればこの程度のゆっくりなど造作もなく蹴散らすことができるだろう。 だが約束を違えることに意味があるのだ。この世界に神というものは存在しない。王こそが神であり、父であり、絶対なのだ。その王が虚言を用いることが 民に知られれば信頼を失い、国は傾き弱体化する。相手がゆっくりといえど約束を反故にはできなかった。王は開き直ることにして、こうなれば徹底的に やってしまおうと考えた。 その日のうちに王は演説を行い、ゆっくりを国民として迎えることを国中に伝えた。これには重鎮を含む、多くの国民が反対した。だが王はこれを聞き入れず、 勅命であると従わせた。国を見限り、他国に渡る民もいたが王はこれを咎めなかった。人々は王は狂われたのだと囁いた。 やがてゆっくりの農耕が始まったが問題が多発した。労働が過酷だと不満を垂れるゆっくり、収穫しても税として徴収されることに憤るゆっくり、 だがそれらは全て、他の農民と同じ条件であり、従わぬのならどこへなりとも行けと追い出した。それでも大半のゆっくりはここに残ることを選択した。 自然で生きていた頃よりも死亡率が下がったことも事実なのだ。 ゆっくりを迎えたことにより、キューズ、テンペストからは憎い敵として認識されていた。かつての国力を上回る力を取り戻したユートルダムは二国に これまでの礼も込めて戦争を仕掛けた。これらを難なく落とし、属国化させた王国はこの大陸一の強国になった。 このときにはゆっくりに対する人々の意識は変わっていた。やつらは便利な道具だ。うまく使えば生活が楽になる、と。 ゆっくりの数は国民の数と大差なかったがその大部分が奴隷以下の待遇を受けていた。そんな中で国を揺るがすほどの事件が起こった。 とある領主の息子が一匹のゆっくりと恋に落ちたのだ。しかもそのゆっくりはあのぱちゅりぃの子であった。 その出会いは偶然、あるいは必然であったのか。 領主の息子はその日、鹿狩りに出ていた。彼は馬の扱いに長けていたため、供の者たちを置き去りに一人はぐれてしまった。さらに運悪く雨が降ってきた。 どこか雨宿りできるところはないかと行き着いたのが洞窟であった。その洞窟は生来から体が弱かったため、働くことのできない子のためにあのぱちゅりぃが 用意したものであった。もちろん、中には子ぱちゅりぃが既にいた。それが出会いであった。 はじめは貴族の方と一緒の場所にいるのは恐れ多いからとぱちゅりぃは出て行くつもりだった。だが領主の息子はゆっくりが水にぬれると行動不能になり、 命に関わることを知っていたのでそれには及ばないと断った。 洞窟の入り口付近で外を眺めることで時間を潰していたがそれに飽いた彼は中に目を向けてぱちゅりぃが震えていることに気づいた。 ぱちゅりぃは寒くて震えているわけでも体調が悪いわけでもなかった。ただただ怖かったのだ。母から何度も言われたことが頭の中で何度も響いていた。 『人間は恐ろしく強い。その中でも貴族と呼ばれるものの怒りを買えばゆっくりなど簡単に殺されてしまう。だから近づくな』 逃げることを封じられ、広くもない洞窟で隠れることもできないぱちゅりぃは自分をどうにでもできる者の視線に怯えていた。 それを彼は雨のせいで下がった気温で寒くなり震えているのだと勘違いをした。ならば暖めてやろうと彼はぱちゅりぃを抱え込んで羽織っていたマントで 包み込んだ。いきなり掴みあげられたぱちゅりぃは恐怖で声も出せずにされるがままになっていた。誰だって死にたくはない。自分はここで死ぬんだと 信じたくはなかったぱちゅりぃはしばらく固まり、目を閉じていたが次の行動がいつまでたっても訪れないぱちゅりぃは恐る恐る目を開けると 顔を覗き込んでいる彼と目があった。 ゆっくりに興味があった彼はぱちゅりぃと会話をしてみた。親からゆくゆくは跡を継ぐのだと勤勉に励まされ、対等に話をできるものがいなかった彼にとって 興味の対象であった。最初こそ、恐怖を抱いていたぱちゅりぃであったがぱちゅりぃもまた孤独に苦しんでいた。こうして彼らは飽きることなく雨がやむまで 会話を楽しんだ。その後も彼は屋敷から抜け出してはぱちゅりぃに会いに行き、屋敷の中にいるだけでは知ることのできなかったことをぱちゅりぃから 教わったり、お礼に彼の馬に相乗りさせたりした。ぱちゅりぃもたびたび自分に会いにきて真剣に話を聞いてくれ、褒めてくれる。そして世界の広さを 教えてくれる彼に感謝していた。こうして彼らの中は急速に発展していった。 だがある日彼らのことは領主である父にばれてしまい、それは国王の耳にも届いた。王は彼らを王城に招き、その恋を諦めるように説得するつもりだった。 だが逆に彼らの強い愛情に心打たれ、婚姻を認めた。領主は王に考え直すように提言したが王はあの夫婦に子は望めぬのだからそこで途絶える。 そうしたら貴公のもう一人の子息に家を継がせれば良いではないかと言った。領主は王への忠誠に厚い人物だったので渋々ながら受け入れた。 そうなればぱちゅりぃは貴族の家に入ることになり、その母であるあのぱちゅりぃも貴族と同等の権利を持つことになった。今まではゆっくりのことに ついてはぱちゅりぃに一任されていたがその権利はその家に帰属することになった。 改めて国に仕えることになったぱちゅりぃはゆっくりであることを理由に今まで何の褒賞も受けられなかったが国に救った実績を考えれば 英雄と讃えられてもおかしくはないのだ。こうしてぱちゅりぃは王の「ゆっくりといえどその忠誠は誠天晴れ」といくつかの褒美とともに “偉大なるゆっくり”の称号を賜った。 その後平和な日々は続き、ゆっくりを国に迎え入れてから三十余年。ぱちゅりぃはこの世を去った。ゆっくりの寿命を考えれば長生きというには 長すぎる生涯であった。 領主も次の年に亡くなり、ぱちゅりぃと夫婦になった嫡男が跡を継いだ。 歳に加え、病を患った王は自分の死期が近いことを悟っていた。床に次代の王となる王子を呼び、ゆっくりと協力して国を栄えさせよ。ゆっくりは 人を新しい道へと導いてくれるだろう。と遺言を残して崩御された。ゆっくりを国に迎えた「狂王」、国を一つにまとめた「英雄王」、 さまざまなあだ名をつけられた王は齢八十にしてその生を終えた。 王が変わっても民の暮らしに変化はなかった。だが重大な、そしてあってはならないことが起こった。 あの領主の夫婦の間に産まれるはずのない、産まれてはならない男児が産まれたのだ。そして領主の弟が兄である領主一家を捕らえ、屋敷の塔に 幽閉したとの知らせが王に届いた。王はすぐに書状を記し、それを届けさせた。 届け先は領主の弟であった。彼は王からの書状が届いたことを不審に思った。てっきり、肉親、仕えるべき家へ背いた罰として騎士が派遣され、 自分を討ちに来ると思っていたし、その覚悟もあったからだ。彼はその書状に目を通した。内容は以下の通りだった。 “その方の所業は上の者へ背く行為であり、ひいては余へ刃を向けたことであると言える。だが人とゆっくりとの間に生まれた怪物が貴族として 家を継ぐことを防ぎ、そのような者がいることが民に知れ渡り、混乱に至る前に阻止した行為は余への忠誠として受け止めた。そのすばやい英断を 讃え、その見返りとしてその方をその地の領主を任ずる。” そのうち自分が新しい領主になるだろうと考えていたが子が産まれたことでそれが無くなると怒りの感情を抱いただけで深くは考えてはいなかった男は 軽率なことをしたと後悔していたのだ。 反逆の徒から一転して領主へと変わった男はその内容を理解したとき、安心して力が抜けた。 領主へと任じられた新領主はまずはじめに治めている土地の民に自分が新しい領主であることを告知。次に“偉大なるゆっくり”の権力である、 国内の全てのゆっくりを農耕へと使用する権利を各地の農民に売り払った。この権利はゆっくりの国民として正当に扱われることを保障するものであったのだが 辛いだけで実入りの少ない仕事であった。このようなものは売ってしまおうと考えていた男はまたも深く考えてはいなかった。 それはすぐに王の耳へと届き、王はまた書状をしたためた。 “貴公のしたことは民の暮らしをより良くするための第一歩となるだろう。その功績を讃え、勲章を授与する。” その書状をすぐに使いの者に届けさせた後、王は玉座の間に座り、笑った。 王はゆっくりが嫌いだった。理由は特になかったがあえて言うのならば総てであった。そのゆっくりを父王が国に迎え入れたときは 父は本当に狂っていると思った。だが先代の王の政策を取り消すこともできずに頭を悩ませていた。だがあの男のおかげで万事解決である。 ゆっくりを農耕の道具とすれば、さらに国は栄え、父の遺言にも従うことにもなる。 王は生きてきた中で最も大きな声で笑っていた。 人は豊かにゆっくりは苦しむ。 その政策は王が代わっても変わることなく続き、百年続いた。 そんな世界の中、長く伸ばした赤い髪を後ろでまとめ、農作業に精を出している青年がいた。 この青年を中心にこの物語は始まる。 ~あとがき~ 色々あってぶっ壊れました『オマケ』です。 ご覧の有様だよ!
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虐待分と言えるようなものはないかもしれません 虐待お兄さんと愛でお兄さんが出ますが虐待したり愛でたりすることはありません というかそもそも、どんなジャンルに分類されるかもわかりません ↓では、ドウゾ 「「「「ゆっくりしていってね!!!」」」」 畑仕事を終えた帰り道、聞きなれた声が森に唱和する。 ふと目を向ければ、そこにいるのは当然、ゆっくりだ。 れいむとまりさのつがいが二組、道行く途中で出会って挨拶を交わしたようである。 なんでもない日常的な風景だ。俺は無視して歩き出した。 ここで近所の虐待お兄さんなら「ヒャッハー!」と有無を言わさず捕獲にかかるのだろうが、俺はそんなことしない。 あんな饅頭虐めて何が楽しいんだろうかと思う。うるさいだけじゃないか。 かといって、俺はゆっくりを愛でる趣味もない。ゆっくりに関わるといえば、畑を荒らしたやつを駆除するときくらいなものだ。 なのだが、ちょっと今回は事情が違った。 「「ゆっくりしていってね!!」」 「ゆっくりしてるよ! れいむとまりさはどこからきたゆっくりなの?」 「このへんじゃみなおかおだね!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「ゆゆっ! ゆっくりしてるよ! だからどこからきたのかおしえてね!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「ゆぅ~! だからゆっくりしてるってば!」 「いいかげんにしてね! おはなしきいてね!」 何やら言い争いになっている。 どうも、新参のゆっくりに前からいた古参のゆっくりが怒っているようだが、どうしたんだ? ゆっくりにとって、「ゆっくりしていってね!」という言葉は挨拶以上のものを持つものだと聞いている。 人間風に言えば、スローガンというかポリシーというか信念というか。 ゆっくりは、ゆっくりできないこと、を何よりも嫌う。その顕れである言葉ではないのか? それを繰り返されるのがそんなに嫌なのだろうか。 とうとう、古参まりさは顔を真っ赤にして飛び跳ね始めた。 「ゆぅぅぅぅ!! れいむたちとはゆっくりできないよ!!」 「「ゆ?」」 そこで初めて、新参ゆっくり達は首、もとい頭を傾げた。 「「ゆっくりできないの?」」 「ゆっ……!! ゆっくりできないわけないよ!! まりさはゆっくりしてるよ!!」 「れいむもゆっくりしてるよ!!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「「ゆゆぅぅぅぅぅ~!!!!」」 何故か悔しげに地団太(?)を踏む古参ゆっくり達。 ……ワケが分からん。 あの二匹はただ「ゆっくりしていってね!!」と言っているだけなのに、何をそんなに怒っているのか。 「「ゆっくりしていってね!!」」 「うるざいよぉぉぉぉ!! れいむたちはもうどっかいってね!!」 「「ゆゆーっ!!」」 とうとう古参達が体当たりをし始めた。新参達は反撃するでもなくされるがままだ。 「「ゆっくりしていってよー!! ゆっくりー!!」」 「うるさいよ!! ゆっくりしてるよ!!」 「ゆっくりできないのはれいむたちのほうだよ!!」 攻撃が段々苛烈になっていく。 ……うーむ。 ゆっくり同士の喧嘩など、普段は珍しくもないのだが、なんだか今回は事情が違う気がする。 ちょっと興味が湧いてきたのだ。俺は事情を聞いてみることにした。 とりあえず声をかけてみよう。 「まぁちょっと待てお前ら」 「「「「ゆゆゆゆっ!!!!」」」」 びっくりした反応は全部一緒だった。 だがその後が違う。 「ゆゆっ! にんげんだよっ! にげるよれいむ!」 「ゆっくりできないよー!」 これは古参ゆっくり。 「ゆっ! おにいさんはゆっくりできるひと?」 「ゆっくりしていってね!」 これは新参ゆっくりだ。 古参は人間である俺を恐れているが、新参はそんな様子は微塵もない。よほど人里離れた場所からやってきたのだろうか。 「いや別に取って食いやしねーよ。お前達が喧嘩してたみたいだから、気になったんだ。一体全体、どうしたって言うんだい」 身を屈めて視線を低くしてやりながら、俺は訊いた。 口を開いたのは古参ゆっくりだった。 「ゆゆっ! あのこたちうるさいんだよ! ゆっくりしていってねってなんどもいうの!」 「れいむたちはゆっくりしてるのに!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 ゆっくり、という言葉に反応したのか、新参達が声を上げる。 「「だからうるさいよぉぉぉ!!」」 もう我慢できないのか激昂する古参達だが、その姿はどう見てもゆっくりしていない。 「お前ら、ゆっくりできてないじゃないか」 「ゆゆっ!? そんなことないよ」 「なんでそんなこというのぉぉぉ!?」 「だって、ほれ」 すぐさま突っかかってきた二匹を、新参ゆっくりのほうに見せてやる。 「「ゆ??」」 いきなり注目を浴びた二匹は、可愛らしく首をかしげるばかりで、どうして自分が見られているのか全然分かっていない様子だ。 知恵のついてない子供みたいな反応だが、それだけにむしろ泰然としたものまで感じさせる。 「ほら、あんなにゆっくりしてるだろ」 「「ゆううううううう……!?」」 反論が出ないあたり、この二匹も新参ゆっくりのゆっくりっぷりを感じ取ったのだろう。 「な? だからゆっくりできないのはお前らなんだって」 「ゆぅっ! ちがうよ! まりさはゆっくりできるゆっくりだよ!」 「そうだよ! あれはどんかんっていうんだよ! あんなにゆっくりしてちゃれみりゃにたべられちゃうよ!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 「「だからうるざいよぉぉぉぉぉ!!」」 できてねーよ。ゆっくりできてねーよ。 どうも、古参達は自分達こそがゆっくりできるゆっくりだと思っているのだが、しかしあの新参ゆっくりの真のゆっくりの前に、自信喪失寸前のようだ。 余裕のない態度がその表れであろう。 「まぁ、大体事情は分かった」 とりあえず俺の手に負えないってことは。 「とりあえず、俺の家にでも来るか。飯くらいは食わせてやる」 このまま放置しても良かったが、そうすると新参二匹がまた襲われてしまいそうだ。 ゆっくりなどどうでもいいことに変わりはないのだが、この二匹のことをもうちょっと知りたくなった。 あまりのゆっくりっぷりに癒されつつあったことも、まぁ認めよう。 「ゆ! ごはん! おにーさんのいえにつれてってね!」 「ゆっくりはやくね! ごはんー!」 「「ゆっくりしていってね!!」」 古参二匹のふてぶてしさは正にゆっくりらしい。新参二匹も、どことなく声のトーンが上がっている。 俺は四匹を腕に抱きかかえると、家路についた。 その途中、談笑している虐待お兄さんと愛でお兄さんに遭遇する。 ……趣味が相反していそうな二人が、やたら仲が良さそうなのに驚く人もいるだろうが、別におかしなことではない。 他はどうだか知らないが、この愛でお兄さんは自分の飼っているゆっくりだけに愛情を注いでいるのだ。 それを偏愛だの差別だのという奴はまさかいないだろう。人間とて、飼い犬と野犬に注ぐ愛情には天と地ほどの差があろう。 犬とゆっくりの立場が置き換わっただけだ。だから愛でお兄さんも、実際はただのゆっくりを飼っているだけの人と言えよう。 もっとも、十数匹も飼って育てている時点で、既に普通ではないが。 「やぁ、どうも」 「これはこれは、とうとうあなたもこの道に……」 「違いますやりませんあんたと一緒にしないでください」 きめぇ丸もかくやという顔で擦り寄ってきた虐待お兄さんを遠ざける。 ちなみにこの虐待お兄さんは、何の変哲もない普通の虐待お兄さんである。 「そうですか。残念です。しかしそれならば何故ゆっくりを?」 「ええ、実はかくかくしかじか」 「まるまるうしうしということですね。なるほど」 日本語って便利だ。 「というわけで思わずこうして連れてきてしまったんですが、どうしたもんでしょうか。 このまま離してもこっちがこっちを虐めちゃいそうで、なんか後味悪いんですよね」 ふむふむとお兄さんズは頷きあったあと、「ならばこうしてみると良いでしょう」と提案してきた。 俺は二人に礼を述べると、再び家路についた。 十分も歩けば我が家だ。 「ただいまー!」 一人暮らしなので迎えてくれる人は誰もいないが、一応言う。 「「ゆっくりしていってね!!」」 今度先に反応したのは新参ゆっくりのほうだ。『おかえり』のニュアンスでも含んでいるのだろうか。 「ゆゆ! とってもきれいなおうちだよ!」 「ここをまりさたちのゆっくりぷれいすにしようね!」 当然、こちらは古参ゆっくりである。別に気にすることはない。これがゆっくりという生き物だ。 俺は足の泥を払って、四匹を空き部屋に放り込んだ。壊されるようなものも特にない。 「それじゃあゆっくり待ってろよ。今メシ作ってきてやるからな」 「ゆっくりはやくね! まりさはおなかがすいたよ!」 「おいしいものたべさせてね!」 「「ゆっくりつくっていってね!!」」 最早どちらがどちらだとわざわざ説明する必要もあるまい。 俺は台所で余り物の野菜と冷えたご飯を適当に炒めてやった。まあ、野生のゆっくりにはそこそこ美味い飯になるだろう。 大皿二つに分けて持っていってやると、そこでは案の定の光景が繰り広げられていた。 古参二匹は、そこら中を跳ね廻っている。キャッキャと実に楽しそうだ。 新参二匹はというと、縁側のほうで寄り添いあって日向ぼっこをしている。猫か老人を思い浮かべる。 「ほら、飯だぞ」 部屋の真ん中に皿を置いてやると、古参ゆっくり達は早速飛びついてきた。 「ガツガツガツガツッ!!」 「うめっ! めっちゃうっめ!」 よほど飢えているのか、凄まじい食いっぷりだ。 ものの数分ですっかり皿は空になってしまった。 「ゆぅ~ん、おなかいっぱいだよー!」 「おしかったよ! ありがとうおにいさん!」 そう感謝されては、こちらも少しは嬉しい気分になる。 「はいはい、おそまつさま。それにしてももうちょっとゆっくり味わって食えよ」 「ゆっ! だっておいしかったんだもん!」 「まぁそれならいいが……」 言いながら、もう一つの皿のほうに目を向ける。 「むーしゃ♪ むーしゃ♪ しあわせ~」 「むーしゃ♪ むーしゃ♪ しあわせ~」 新参二匹は、実にゆっくりと食事を楽しんでいる。 「どうだ。美味いか」 「ゆっくりおいしいよ! ゆっくりたべるよ!」 「そうか、まぁゆっくり味わってくれ」 「ゆっくりあじわうよ! むーしゃ♪ むーしゃ♪」 見るものが幸せになってくるような、和やかな食事風景である。 ふと見れば今食事を終えたはずの二匹まで、また涎を垂らしているではないか。 「もっとゆっくり食えば良かったのにな」 「「ゆぅぅぅぅぅ~~~~~~~……!!」」 二匹は心底悔しそうであった。 食後も、二組の違いは明確に分かれていた。 古参は、食べてすぐだというのにまた遊び始めている。元気なことだ。まぁそのくらいじゃないと野生では生きていけんのかもしれん。 新参のほうは、部屋の隅のほうで寄り添いあって眠っている。牛になるぞ。 「ほら、次は水浴びさせてやる。こっち来い」 俺は古参を呼び寄せ、新参を起こしてやると、裏の水場に連れていった。 二つの大きめな桶に水を張り、それぞれの組を入れてやる。 「ゆっゆー! ぷしゅー♪ ぷしゅー♪」 「ゆーん! つべたいよれいむー! おかえしー♪」 古参は実に楽しそうに遊んでいる。 「ゆ~……ごくらく~」 「ゆっくりできるよー」 対してこちらは、まるで湯治場のジジイである。お前らほんとにゆっくりか……いやゆっくりだな。ゆっくりしてるし。 まるで子供と老人を見ているかのようである。 水遊びのあと、俺は元の部屋に戻り、四匹を前にして座った。 「どうだ。折角だし、今日は泊まっていくか」 四匹はいっせいに色めきたった。宿の心配はやはりあったのだろう。 「ゆっくりとまっていくよ!」 「ゆっくりしていくね! おにいさんもいっしょにゆっくりしてね!」 新参達は素直に喜びを表現している。 対して古参達は、 「とまっていくよ! でもそのこたちとはへやをべつにしてね!」 「そのこたちとはゆっくりできないよ! ゆっくりおねがいだよ!」 と言った。 「「ゆゆぅ!」」 新参達は傷ついたような顔をする。それはそうだろう。こいつらはただ一緒にゆっくりしたいだけなのだ。 「おいおい、酷いこと言うなよ。同じゆっくりだろ」 「ゆ! だってゆっくりゆっくりうるさいんだもん! そんなんじゃゆっくりできないよ!」 「ゆっくりすることが、お前達ゆっくりにとって一番大事なことだろ?」 「そうだけど……でもずっとゆっくりしてても、ごはんはとれないし、れみりゃからもにげられないよ!」 「ゆっくりするにも限度があるってことか?」 「ゆ! そのとおりだよ! ゆっくりしてばかりじゃゆっくりできないんだよ!」 日本語として何かおかしい気もするが、なるほど、実にもっともだ。 明日のゆっくりのために、今日のゆっくりを敢えて捨てる。捨てなければならない。悲しいけど、これ、現実なのよね。 ゆっくりだけでなく、人間にも通じる考え方であろう。 だが。 だがしかし、だ。 「それで、お前達は本当にゆっくりしていると言えるのか?」 「「ゆっ!?」」 俺は言った。目の前の二匹が、あまりにも哀れに思えたからだ。そしてそれが、自分や他の人間と重なったからかもしれない。 「ご飯を食べられればしあわせー♪だろうし、寝床にありつけばゆっくりできるだろう。 でもそれだけで、本当にゆっくりしているって言えるのか?」 「「どういうことぉぉぉぉ!?」」 「例えばの話、もしお前達が人間に捕まって、たくさんご飯をもらえたとするだろう。ゆっくりできるか!」 「ゆ! それはうれしいことだよ! ゆっくりできるよ!」 「目の前でたくさんの仲間達が、ご飯をもらえずにゆっくりしていても?」 「「ゆぅっ!?」」 その光景を想像したのだろう、二匹の顔が蒼白に染まった。 野生というだけあって、飢えの苦しみも知っているだろうから、まざまざと想像できたに違いない。 「掴まって狭い檻に入れられて、ゆっくりできるか? 確かにれみりゃからは襲われないし、安全だろうけど」 「ゆ、ゆぅ……」 「逆に、だ」 一拍置く。 「もし食べ物が足りなくても、もし安全な寝床がなくて……となりに大切な友達がいれば、ゆっくりできるんじゃないか?」 「「ゆゆっ……!!」」 二匹はお互いの顔を見合わせた。やはり、そんな経験があるのだろう。 苦しいときも支えあい、生き延びてきた、そんな経験が。 「そう、ゆっくりできるかどうかは、食べ物や寝床のあるなしじゃない。安全かどうかでもない。 一緒にゆっくりしたい誰かがいるか、そして何より『ゆっくりできている』と心から思えているか……そうなんじゃないか!?」 「「ゆ゛ーーーーーーーーー!!!!!!」」 ガァ────z______ン!!!という書き文字を頭から浮かべて、二匹は硬直した。 「お前達の今日の姿を見ていて、俺は思ったよ。 お前達はゆっくりできていなかった。それは、自然で生き抜くために、必要な在り方だっ。だから仕方ないとは思う。 だがな、見ろ」 俺は二匹を、新参ゆっくりのほうに向けてやる。 二匹はまたも注目を浴びて戸惑っていたが、やがて言った。 「「ゆっくりしていってね!!」」 まるで太陽のような明るい笑顔で。 「心にゆとりのある生き物……なんと素晴らしいことか! いつもどんなときも、自分がゆっくりできているからこそ、あの二匹はあんなことが言えるんだ。 自分がゆっくりするだけでなく、他の人もゆっくりさせてあげたいがためにな」 「ゆ、ゆ、ゆ、ゆ、ゆぅぅぅぅぅう!!!」 「ゆっぐりじだいよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 とうとう、二匹は泣き出してしまった。 新参達を見て、在りし日の姿を思い浮かべてしまったのだろう。 無邪気に遊べていた子供時代、何も心配することも恐れることもなかったあの懐かしき日々。 ああ、それを一体どこに置いてきてしまったのか……とか、そういうことを。 「ゆっ、ゆっくりしていってね!」 「なかないでね! いっしょにゆっくりしていってね!」 慌てたのは新参二匹だ。まるで自分が泣かせてしまったかのように思っているのだろう。 「ゆっぐりじだいよぉぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆっぐりざぜでえええええええ!!!」 しかし古参二匹はさらに泣き叫ぶばかりだ。ああ、そろそろうるさくなってきたぞ。 「いや、やってますな」 「やぁ、こんばんわ」 そんな折、虐待お兄さんと愛でお兄さんがやってきた。 「どうなりましたか? まぁ、これを見れば大体分かりますが」 「ええ、言ったとおりでしたよ」 愛でお兄さんと言葉を交わす。 お兄さんズは俺にこう言ったのだ。『どちらがゆっくりできているか観察し、そしてそのことをちゃんと言ってやればいい』。 その結果、古参は自分達がゆっくりできていなかったことを悟り、こうして泣き叫んでいる。 こうしてやれば、もはや古参達は新参達を虐めることはできまい。自ら敗北を認めてしまったのだから。 だがよく考えてみれば、根本的解決にはなっていない気がする。 新参ゆっくり達を野に放てば、どうせ他のゆっくりに虐められるに違いないからだ。 などと考えていると、虐待お兄さんが泣き叫んでいる二匹に近づいていった。ああ、また始まった。 「やぁ君達! ゆっくりしたいのかい?」 「ゆっぐりじだいでずぅぅぅぅぅぅ!!」 「ゆっくりさせてあげようか?」 「ゆっぐりざぜでぐだざいぃぃぃぃ!!」 虐待お兄さんはにんまりと笑う。 「そうかそうか! ではお兄さんの家でゆっくりさせてあげよう! まずはこの中に入りなさい」 と、二匹を麻袋の中に招き入れた。既に中で何かが蠢いていることについては突っ込むまい。 「ちょろいもんだぜ」 と唇の端をゆがめるお兄さんはどう見ても悪人である。 「ヒャア! 我慢できねぇ! 虐待だ!」 そしてそう言って、挨拶もなしに俺の家を飛び出していった。 「あーあ」 「行ってしまいましたね」 やれやれ、と愛でお兄さんと苦笑する。あの二匹は、もう永遠にゆっくりできないことであろう。死ぬまで。 「あれ? こっちは残していったんですね」 新参ゆっくりは、まるで旋風のように去っていった虐待お兄さんに目を丸くしている。 「ああ、彼はそのゆっくりには興味ないんですよ」 「というと?」 「真にゆっくりできているゆっくりは、虐めても良い反応を返しませんからね。レスポンスがないとつまらないと、そういうことでしょう」 「ふぅむ」 虐待お兄さんにも虐待できないものがあったとは。いや、というか、単にサドいだけか。 「「ゆゆっ!! ゆっくりしていってね!!」」 こちらの視線に気づいて、二匹がいつもの声を上げた。すると愛でお兄さんが近づき、二匹を抱き上げる。 「うん、ゆっくりしていくよ」 「「ゆっくりしていってね!!」」 優しく抱かれて、二匹とも嬉しそうである。 「飼うんですか?」 「ええ。このゆっくりは珍しいですからね。うちのゆっくりの、遊び相手にさせたいと思います」 珍しいねぇ。そんなに特殊なゆっくりなんだろうか。 「そんなに珍しいものなんですか? これ。見た目は普通のゆっくりと変わらないように見えますが」 「まぁ、ゆっくりであることに変わりはないんですが、ここまでゆっくりできているゆっくりとなると、中々いませんね。 今のゆっくりは、人や動物に襲われ続けて、警戒心が強くなってますから」 「つまり、昔はこのようなゆっくりが主流だったわけですか」 「ええ。ゆっくりたちは、生き残るために、ゆっくりすることを敢えて捨てて、今のようになったのです。世知辛い話ですね」 生き残るために、ゆっくりはゆっくりすることをやめた。 それでも『ゆっくりしていってね!』と言われて思わず立ち止まってしまうのは、種として誕生したときからの本能なのだろう。 そう考えると、ゆっくり達が少しだけかわいそうに思えてきた。 ゆっくりも、人間達と同じなのだ。生きるために働き、心のゆとりを喪っていく。 俺は目の前の二匹に、何か大切なことを教えられた気がした。 次の日から、俺はゆっくりに少しだけ優しくなった。 道端で声をかけられたら、ちゃんと『ゆっくりしていってね!』と返すようにしている。 ゆっくり達もまた、現代社会の犠牲者なのだ。それを無闇に蹴り飛ばすこともないだろう。そう思った。 ゆっくりにも、できるだけゆっくりしてもらいたいと、俺はほんの少し思うのだ。 ──ま。 だからって悪事を働いていい理由にはならないので、俺の畑を荒らしたやつは例外なくブチ殺すようにしているがね。 あとがき 虐待スレも、思えば遠くへ来たもんだ。 初期作品を読んでいたら、こんな話が出来上がっていました。 純粋なのも、ふてぶてしいのも、憎たらしいのもいいじゃない。ゆっくりだもの。 あと、いい加減自分に名前をつけることにしました。 好評を博して頂いている『焼き土下座』から名前を取り、これからは土下座衛門と名乗らせていただきます。 今後ともよろしくお願いいたします。 今までに書いたもの ゆっくり実験室 ゆっくり実験室・十面鬼編 ゆっくり焼き土下座(前) ゆっくり焼き土下座(中) ゆっくり焼き土下座(後) シムゆっくりちゅーとりある シムゆっくり仕様書 このSSに感想を付ける
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前 (@BGM 『熱情の律動』) 『盛り上がってまいりました! 開始早々決勝進出に王手をかけたF大付属。丁寧な仕事で反抗の意志を奪い、 一網打尽かと思われましたが、時間をかけた仕上げがアダとなり西日暮里高校の介入を許しました!』 『西日暮里高校の機体、テイクイットEZ8。無骨な鉄の塊を思わせるデザイン、低重心で肩幅広く、 鉄機やマトリックスのザイオン防衛メカを連想させます。 西日暮里が準決勝のメインアームに選んだのはサブマシンガン。命中率よりも戦場により多くのBB弾をばらまく ことに重点を置いたチョイス。左手にはもうおなじみとなったドリル。鈍色の塗装がストイックな外観と相まって、 森とゆっくりのメルヘンチックなフィールドで一際異彩を放っております!』 『そしてなによりもおどろきなのは、西日暮里、機体にゆっくりれいむを搭乗させております』 『ただいま入りました情報によりますと、この子ゆっくりれいむ、西日暮里高校の操縦担当・大沢君が 個人的に飼育している飼いゆっくりのようです!!』 『なんということでしょう・・・・・・。戦場にもちこんでしまったゆっくりはたとえ滅失しても文句は言えません。 不退転の決意のあらわれか西日暮里高校・大沢!!』 『れいむの、まりさのあかじゃんをだすげでねええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇ!!!』 『おねがいねえええええええええええええええええええええええええええええええ!!!』 子ゆっくり達を背に、メカゆゆこと対峙するEZ8。その操縦席で不敵な微笑みを浮かべるれいむ。 逆さま状態から復帰したメカゆゆこは、半開きの口から触手をチラつかせて威嚇する。警告音。サイドワインダー。 その音響にゆっくりたちは震え上がる。だがEZ8に搭乗するれいむは違った。不敵な微笑はそのままに、勇ましい目つきを崩さない。 『にらみ合いが続いております』 『両者の体格差は一目瞭然ですね。メカゆゆこがバランスボールだとすると、EZ8はせいぜいXBOX360程度。 力比べでは太刀打ちのしようがありません。ここはローラーダッシュでかく乱しつつ刻んでいきたいところ』 『しかしサブマシンガンではメカゆゆこの外皮を貫くことは困難でしょうし、押し付けなくては効果が発揮されない ドリルは球体のメカゆゆこを相手取るには不適格と思われます』 『準々決勝で見せた狙撃銃や、切り札と公言していたパイルバンカーであれば対抗できたかも知れませんが……。 天秤はいまだF大付属に傾いている!』 そのとき、両者が動いた。 EZ8は後背に位置するゆっくり達をかばう様、直進しつつサブマシンガンを連射。 メカゆゆこは触手を勢いよく地面に突き立てると、 その反動を利用して大きく後ろに跳び、茂みの中へと消えた。 EZ8が急停止する。 茂みの向こう、メカゆゆこが立てる物音が急速に遠ざかっていく……。 (@BGM 停止) 『おっと……? これは意外な展開です。メカゆゆこが撤退しました。有利とおもわれていたF大付属、 ゆっくりの群れを前にして逃げてしまいました……?』 『向かう先に他の群れがいるようです。相手ロボとの戦闘よりも、ゆっくり回収力で勝負しようという作戦ですね』 『なるほど! メカゆゆこはゆっくりを体内に溜め込むことができますが、EZ8はそうはいきません。 自軍拠点にゆっくりたちを連れて行き、回収口まで誘導する必要があるのです』 脅威が去った。テイクイットEZ8はゆっくり達に向き直り、しゃがみこんだ。 「ゆ! だいじょうぶだったかい!?」 その言葉に、ゆっくり達の目に涙が溢れた。 「「「ありがどうううぅぅぅぅ」」」 「「「ゆっくりしていってね!」」」 「「「おやさいあげるね!」」」 「ざんねんだけどまだゆっくりはできないね! やつはまだゆっくりをねらっているよ! れいむはほかのゆっくりもたすけなくちゃいけないんだよ!!」 「「「おいでがないでええええぇぇ!!」」」 「だいじょうぶだよ! れいむがあんぜんなところまでつれていくよ! みんなはそこから だっしゅつしてね! そとはもうゆっくりプレイスだよ! だからゆっくりしないでついてきて!!」 EZ8が立ち上がる。ゆっくりの一団はそれぞれやさいのかけらをくわえ、EZ8の先導に従って森に入っていく。 『ご覧ください! 感動的な光景です。救世主ゆっくりに導かれ、ゆっくりの生き残り達が救助されようとしています』 『ゆっくりいそいでかえってきてね!』 『どこのれいむかしらないけどありがとうね!』 ほろほろと感謝の涙を流す親ゆっくり。すでにケースの下には涙がたまって水位を上げつつある。 また、酷くいらだたしい微笑みを浮かべて解説者二人をちらちらと横目でみやる。まるで勝ち誇っているかのようだ。 解説者は笑っていた。 『さあ、ベースに戻ってまいりました西日暮里高校。助けられたゆっくりたちが列を成して回収口に 入っていきます。おお? お礼の野菜をEZ8に差し出しました。しゃがみこんでドリルで受け取るEZ8。紳士です』 『ここで避難口の様子を見てみましょう』 暗く狭い通路。ベルトコンベアになっているそこを、助けられたゆっくり達が流れていく。 救出の喜びを分かち合い、助けられなかった同胞を嘆き、憎いメカゆゆこに復讐を誓う。 悲喜こもごもを乗せて、ベルトコンベアは進み、暗幕の向こうへ。 そこには水平にすえられた刃があった。 流れていくゆっくり達は、暗幕を潜って直ぐのところにある刃で滑らかに、何も知らないうちに分割された。 顔のある方は刃の上のコンベアに、餡子の過半数を有する下膨れ部分は下の廃棄溝に。 餡子のほとんどと切り離されたゆっくりは偽りの救出に顔をほころばせたまま、動かなくなった。 頭部だけを乗せてベルトは流れてゆく。 『・・・・・・・・・・・・』 『・・・・・・・・・?』 解説席の親ゆっくりは急激な状況の変化についていけなかった。 感激の涙を流しながら、ベルトコンベアで運ばれてゆくもの言わぬ顔だけになった子供達を目で追っていた。 さっきまで動いていた子供達。助けてくれたロボに感謝していた子供達。 いまは一様に、中空を見据えたまま動かない。 その様子に疑問を抱いたのか、少しずつ表情が曇っていく。 『はい。動かないように処理したゆっくりは、手作業で飾りを回収します』 『12個? 12個ですね。西日暮里高校、一挙12得点です! 決勝進出確定にはあと4個の飾りを回収する 必要があるため油断は出来ませんが、F大付属に大きく水をあけたと言っていいでしょう』 画面下にテロップが表示される。"ゆっくりの死骸はこの後ミキサーにかけ、肥料にいたします" 『しかし西日暮里高校・大沢。無垢な飼いゆっくりれいむを餌にしてゆっくりたちを騙し切りました。 友釣りの要領です。これまで手練手管を使い、人型ロボの汎用性・応用性を最大限に生かして、性能的 に上位の相手をことごとく下してきました。』 『そら恐ろしくさえありますね。大会的にはロボットの製作技術で白黒つけてもらいたいところではあるのですが』 『奇しくもゆっくり型対人型の対決となりました。知恵を使って自分達より強い獣を倒して繁栄してきた のがわれわれ人間ですから、どうも西日暮里のEZ8を応援したくなりますね。 ゲストの親ゆっくりさんはどうでしょう。どちらが勝つと思われますか?』 両サイドからマイクを向けられ、うろたえる親ゆっくり。 うつろに、取り繕うように微笑みながら、解説者達の顔を見回し、助かったはずの子供達の様子がおかしいことについて尋ねた。 『ゆっくりのこどもたちは……?』 解説者がマイクを自分に向ける。 『それは上半分ですか? 下半分ですか?』 『じねえええええええええええええええぇぇぇっぇぇぇぇっぇ!!!』 箱の中で親まりさが咆えた。親れいむは微笑みのまま白く燃え尽きていた。 『ごろじでやる! おばえらなんかゆっぐりじゃない!! にどどゆっぐりでぎないようにぢでや』 両サイドの解説者が同時にボタンをおした。箱の中の親ゆっくりは同時に机の中へと落ちていき、空の透明箱が残された。 『ここでお邪魔ゆっくりを2体投入します。親ゆっくりの飾りは得点になりませんので注意してください』 場面変わって森の中、球体が茂みを縫って移動している。 『F大付属、新たな群れを発見したようですね。おっとしかし……?』 メカゆゆこの進行方向に、6匹ほどの子ゆっくりがいた。 ゆっくりたちはすでにメカゆゆこの迫る方向に視線を向けていて、慌てた様子で四方に跳ねていく。 『先んじて逃げられました。これはどういうことでしょう。物音に警戒したというのでしょうか』 『これは死臭でしょう。むせかえるような餡子と黒蜜の匂いが危険を知らせてしまった……。 雲行きがあやしくなったF大付属。そつなく2匹を平らげたものの、ようやく6点。西日暮里の半分です』 『対する西日暮里は……。すでに次の群れに取り入っている! その数2体、いや、3体です!』 膝を付いたロボから話しかける飼いれいむに、3体の子ゆっくりれいむはめろめろになっている。 やがてうごきだしたEZ8に導かれて避難口へと向かう。 『勝利確定には届きませんが、限りなく勝利に近づくことのできる点数です』 『ご覧ください。自分達を処刑台に連れて行く執行者に、嬉々としてついていくゆっくりたち。その晴れやかな表情……』 『TVをご覧のお子さんにとって、極めて優秀な反面教師になると思います。知らないおじさんについていっては、だめですよー』 『では遠足気分のかわいいゆっくりたちをしばしご覧ください』 ロボットとゆっくりの一団は森を抜け、見晴らしのいい草原へ。西日暮里側の拠点、死境内へのエスカレーターが見えてきた。 「みんな、もうすぐそこだよ! ほかのゆっくりたちもまってるからね!」 「ゆ! おねえちゃんたちにあいたいよ!」 「ゆ! もうすぐゆっくりできるね!」 導かれる子ゆっくりたちは荒い息を押してゴールへと跳ねていく。 「そこまでだぜ!!」 勇ましい声と共にEZ8の上に影が落ちた。 操縦席のれいむが頭上に視線をやると同時、激しい衝撃が機体を襲った。 「ゆ"う"ううううううううううううううう!?!」 EZ8が吹き飛び、転倒する。 驚愕する子ゆっくりたちの前にぼってりと着地したのは、親ゆっくりまりさだった。 「りょうてのぶきをあたまのうえにあげるんだぜ! ゆっくりとね!!」 「おとーさん!?」 「どうしていぢわるするの!? あのれいむはみかただよ!!」 「ちがうの! あいつはにんげんのなかまだよ! いまおかあさんもくるからうごいちゃだめだよ! おまえたちのことはおとうさんがまもりぬくからね!! いまはただしんじてね!!」 親まりさの剣幕に子ゆっくり達は言葉を失う。ただ不安そうな顔で身を寄せ合った。 起き上がるEZ8。その動きに反応した親まりさが、子供達を背に隠す。 パイロットの飼いれいむは泣きながら地団太を踏む。 「どうじでじゃまするの! れいむはただ、みんなをたすけようとしただけだよ! あやまってね!」 「ふざけないでね! やくたたずのうらぎりものはまりさがたおすよ! ゆっくりじぶんのしたことをこうかいしてしんでね!」 EZれいむと親まりさの間で、敵愾心が膨れ上がっていく。 雷ばしるような緊張感のなか、先に動いた親まりさが、背後の子供達に告げた。 「・・・おとうさんのせなかを、よくおぼえておいてね……!!」 「ゆっ……」 「おとさん……」 か細い呼びかけを振り切るように親まりさは飛び出した。 視線の先には鉄の四肢をもつ裏切りれいむ。 敵うはずもない強大な敵に敢然と立ち向かう。 後ろに残した子供達、今なおどこかで逃げながらえている子供達、そして無残に殺されていった子供達のために――。 「ゆうううううううううううううううぅぅぅぅぅぅ!!!」 気合の叫びと共に突貫をかける親まりさ。ひらひらと舞い降りる赤い蝶。頬をかすめた蝶には目もくれず、一直線に相手の下へ――。 「ゆうううううううう……う……?」 その突進が、ゆっくりと減速して、止まった。 「…………」 親まりさは、振り返った。 子供達が心配そうに見ている。それはいい。親まりさの歩みを止めたのはそれではない。 すれ違った赤い蝶。その違和感だった。 蝶は草の上に落ちていた。 紅白の蝶。 ゆっくりれいむのリボン。 それも子どもサイズではない、親ゆっくりのサイズ。 親ゆっくりれいむのリボン。 それは、いつのまにか姿を現していた。 子ゆっくりたちの背後、死刑台に続くエスカレーターの入り口、その上に。 満月のように、メカゆゆこが鎮座していた。 『なんたることでしょう!! 西日暮里のゆっくり投入口の上にメカゆゆこが陣取っています!!』 『ゆっくりたちが脅えています。これではポイント還元が出来ません。 EZ8には格納機能がありませんから、ポイントを得るには投入口に入れないと……』 『こ、これはーーーーーー!!!?』 投入口前のメカゆゆこが、若干空を仰ぐように視線を上に。 するといままで隠れていた部位があらわになった。 メカゆゆこの口の真下にある小さなすぼまり。 地獄の門のようにゆっくりと開いた。 『これは! 間違いない!! 間違いないです!!』 『これは間違いないですねー! とんでもない隠し玉を持ってきましたF大付属!』 『解説も憚られるような光景が繰り広げられています! 悪趣味ここに極まった! いま西日暮里高校の投入口、唯一のポイント源であるゆっくり投入口が、あんこのトグロで埋め立てられてゆくーーー!!』 『も、最悪でしょう・・・…』 『実際のゆっくりにこのような生理現象はありませんのでご注意ください。 ともあれ、もうこの投入口をゆっくりがくぐることはないでしょう。西日暮里は追加点のチャンスを永遠に失ったことになります。』 親まりさは、ひりだされる餡子と黒蜜の混合物を見ていた。 明らかに餡子の量が多かった。子ゆっくり10匹でも足りないほどに。 そしてごみのように捨て置かれたれいむのリボン。 ゆっくり袋の緒が切れた。 「よぐもれいむおおおおおおおああああああああああああああああああああ!!!」 中身を吐く様な叫びと共に親まりさが飛び出した。 その動きを受けてEZ8、ローラーダッシュを用いて親まりさに追従する。 『西日暮里高校、先行した親ゆっくりを盾に、近づこうとしています』 1匹と1機の接近に際し、メカゆゆこは動かない。まったく余裕の笑みを浮かべたまま迎え撃つ構えだ。 「ぢね! おまえがいるがらゆっぐりでぎないんだああぁぁぁぁ!!」 親まりさの渾身の体当たり。そしてその影から飛び出したEZ8が銃口をメカゆゆこに向けた。 だが電光石火の触手舌が親まりさの体を下から上へ容赦なく貫く。 「ゆべぇ!?」 その隙を狙って放たれたEZ8の射撃だが、メカゆゆこはゆっくりを盾にし全てのBB弾を受け止める。 「いべべべべべいだいやめでいだいぃぃぃぃぃぃ!!!」 『おーっと、後頭部にBB弾の雨あられ。生地にめり込んでいます!』 『蓮コラみたいできもいですね。それか転んだあとの膝小僧に砂が食い込んでる感じ』 『あぁ~、あれキモイよねー。子供の頃ショックだったわ~』 EZ8は旋回し、盾の向こうの標的を狙う。 メカゆゆこもまた回り込むように移動、盾を十二分に生かし一向に被弾しない。 ぐるぐると旋回する2機。その中央にいる親まりさは広がる傷口から黒蜜を迸らせて号泣している。 「おろじでえええぇぇぇ! もうおうちかえるうううううううう!!」 『でましたゆっくりのおうち帰るコール。さっそく限界のようです! 饅頭は骨がない!』 『それにひきかえ骨太の攻防を繰り広げる両者。予断を許しません!』 こう着状態に陥ったかと思われた矢先、EZ8の銃が玉切れを起こした。 距離をとるためのバックダッシュを行いつつ手動でのマガジン交換を敢行する。 その隙をメカゆゆこは見逃さない。 大きな体を波打たせ、次の瞬間はるか上空へと跳躍した。 『これは高い! ゆゆこの跳躍、ボディプレスかーーー!!』 「ごわいおろじでえええええええええ」 メカゆゆこの影が、地表のEZ8を覆う。 装填を終え、空を仰いだEZ8の飼いれいむめがけ、ハンマーの如く振り下ろされる親まりさ。 間一髪、EZ8は回避に成功し、親まりさは地面に叩きつけられた。 「おとーさ」 「ゆ!?」 ぷち。 ぷち。 ぷち。 ZUNという衝撃音と共に固い土に叩きつけられた親まりさ。 砂塵が巻き上がり、そしてゆっくりと散ってゆく。 重体だった。 後頭部が破裂して中身の黒蜜が放射状に飛び散っていた。その飛び散り半径の広さを見れば、いかに強く叩きつけられたのかが解るだろう。 だが親まりさは悲鳴をあげなかった。 あげられなかったわけではない。 小さな音が悲鳴を飲み込んでしまっただけだ。 小さな感触が全身打撲の痛みを超えただけだ。 ぱぱー。 ぱぱー。 きょうもゆっくりしようねー。 晴れ渡った草原、記憶の中の風景。 元気に飛び跳ねるわが子ゆっくりの姿。 瑞々しい蛇苺を、口づけるようにくわえた横顔。 雨宿りの木の虚で、小さな体を摺り寄せてきた、そのぬくもり。 その感触が、たった今、自分の下で弾けた。 ・・・ オ ト ウ サ ン ノ セ ナ カ ヲ 、ヨ ク オ ボ エ テ オ イ テ ネ ――――――。 「い゛や゛ぁべでぇええええぇぇぇぇえええええええええぇぇぇ!!!!!」 瀕死の体で親まりさは絶叫した。声も涙も黒蜜も、出せるものは全て出しつくしての咆哮。 あらん限りの力で暴れ狂う。それでも、乗り上げた体勢のメカゆゆこをどかす事はできない。 それどころか、メカゆゆこは全ての体重をかけてのしかかった。 ぷち。ぷしゃ。 「どいでねえええ!!! ゆっぐりじないでおりでねええぇぇぇぇ!!」 あまつさえ、独楽のように回転をし始める。地面におしつけられた親まりさも一緒に回転することになる。 べろ。べろべろ。 「ぃいやあああああああああああああめでねぇえええええええええええええええええ!!!!!!!」 黒蜜の泡を飛ばしながら親まりさは絶叫した。 『おっとぉ? どうしたことでしょう』 『親まりさが自分の子供を潰してしまったようですね。これは不幸。人間社会にこのような不幸が訪れないことを祈るばかりです』 親まりさはかろうじて生きていた。 般若の形相で硬直しながら涙を流して痙攣している。 自らの流した黒蜜に塗れ、今なお口から吐血のように流れ出す命の源。 落下の怪我による中身の流出が酷いが、晴天のゆっくり治癒力ならばあるいは、という瀬戸際の怪我だった。 メカゆゆこはまりさから降り、触手に絡みつくつぶれ饅頭を放り捨てた。 その下から出てきた子ゆっくりの圧殺死体から帽子をふんだくり口の中に放りこむ。 『3点獲得で9点でしょうか? 我々はF大付属が親ゆっくりれいむを捕食した瞬間を確認していません。 もしそのときまでに3匹以上の子ゆっくりを獲得していれば、この時点で同点・逆転ということになります』 『時間的にも残りの子ゆっくりを探す余裕はありませんし、唯一の得点方法を失った西日暮里高校は、 敵ロボットの撃破を狙っていくしかないでしょう』 振り返るメカゆゆこ。 ゆっくりと歩行して近づくEZ8。 EZ8のむき出しの操縦席でれいむが頬を膨らませている。 「とってもわるいやつだね! いぢわるなおばさんまりさはともかく、こどもゆっくりにまでてをだすなんて!」 のしのしと接近しつつそんな悠長な台詞を言い放つ。 メカゆゆこは応じず、横方向に回転移動し始める。EZ8を中心にした円の軌道だ。 『始まりました。ロボ同士の肉弾戦です。単純な性能ではメカゆゆこが有利。試合序盤にも見せた旋回移動で相手を牽制します』 『EZ8は持ち前の機動力と自由度を武器に立ち向かわなければなりません。 もし此処で逃げられて回収力勝負になるともう勝ち目はありません。 その点、F大付属が真っ向勝負を選んでくれた事はチャンスでもあります』 『残り時間は3分を切りました! どちらが先に仕掛けるのか!』 回転半径を狭めつつ速度を上げるメカゆゆこ。EZ8は背後をとられることを警戒している。 「ゆ! ゆっくりいきのねをとめるね!」 EZ8は前方へと走行、左手のドリルを回転させつつ振りかぶる。 旋回のメカゆゆこが迫るタイミングを見切り、高速ドリルを突きこんだ。 しかし表皮をわずかに削りはしたが、衝撃によってメカゆゆこは弾かれ、距離が開いてしまう。 すかさずサブマシンガンのめくら撃ちを放り込む。吸い込まれるように全弾命中するも、メカゆゆこの動きはいささかも衰えない。 『懸念された通り、EZ8の攻撃がメカゆゆこに届きません!』 『万事休すか西日暮里高校大沢!』 攻撃方法を失ったEZ8にメカゆゆこの巨体が容赦なく襲い掛かる。 高速で突き出される触手が右肩の付け根をえぐり、右腕が吹き飛んだ。 「ゆっ!? まずいよ! おにいさんしっかりよけてね!」 パイロットれいむが悲鳴をあげる。当然のことながら、ロボットの操縦は人間が遠隔操作で行っている。 バランスを崩して尻餅をついたEZ8。その脚を潰すようにメカゆゆこがのしかかる。 『あー! マウントをとりました』 メカゆゆこはにんまりと笑うと、触手による乱れ突きを繰り出した。 それはコクピット付近の装甲をえぐり、金属片を撒き散らした。 しきりに身をよじりEZ8はコクピットへの直撃を避けようともがく。 「いやあああああああ! やべでぇ! あぶないがらあああああああ!!」 『大沢君の飼いれいむが鳴いております! いやいやをするように顔を振っています! 泣き叫びながら飼い主に助けを求めております! なんとか助けることが出来るのか大沢!?』 『これはむごい展開もあるかもしれませんよ!』 触手の狙いは正確ではなかったし、EZ8も最大限回避に努めた。 だがそれでも、延々と繰り返される攻撃を最後まで避け続けることはできなかった。 そのうちの一撃が、むき出しのコクピットを襲った。 「やべでええええ――ぐぃげぇえええええええええええええ!」 飼いれいむの顔面を貫く銀の舌。 狭い棺おけの中、れいむは激痛に打ち震え、けいれんを繰り返した。 『決まったーーーーーーーーー!! 残酷なディープキス! 深く深く差し込まれた楔が飼い主との絆を断ち切ったーーーーーーーーーーー!!』 『ズキュウウンですね! わかります!』 「おっ、おべっ、おべ……」 だんだんと白目をむきだす飼いれいむ。勝ち誇ったように笑うメカゆゆこ。 しかし、勝負はまだ決してはいない。 EZ8のコクピットが閉じた。 上下から現れた鋼鉄の歯が、一瞬のうちに噛み合わされたのだ。 それは死に始めの飼いれいむと共に、メカゆゆこの触手を万力のように締め付けた。 『おおおおおおおおおおっ!これはああああ!?』 『トラップです! これ見よがしの飼いれいむは、ゆっくり誘導のためばかりでなく、 メカゆゆこに対するブービートラップだったのか!? コクピットの圧殺機能がメカ ゆゆこの触手を封じました! 懸命にさがろうとするメカゆゆこ、動けません! 逆にその動きがEZ8を助け起こしてしまったーーーー!!』 立ち上がったEZ8。 左手のドリルを振りかぶり、再びメカゆゆこへと繰り出した。 激しい金属音と共に装甲がえぐれ、メカゆゆこが吹き飛ぶ。 ――だが捉えられた触手が伸びきり、それ以上の後退を許さない。 『EZ8、逃がしません! 触手を捉えたまま旋回し、メカゆゆこを振り回します! そのまま樹にぶつけてきた!』 『さらに天高く放り上げました! 時間後僅か逆転なるか!』 高々と飛ばされたメカゆゆこが重力によって地面に叩きつけられ、運悪く下敷きになった親まりさは物も言わずに死んだ。 仰向けに地面にめり込み、動けないでいるメカゆゆこ。 その上に、逆襲とばかりに踊りかかったEZ8がドリルを突き立てた。 固定された相手に対し、ドリルは最大の効果を発揮する。 激しい火花が2機を覆い尽くした。 『ドリル決まったああああああああああ!! これは逃げられない! 削りきるのか西日暮里! 逃げ切るかF大付属!』 『もう時間がありません! 5・4・3・2・1……タイムアッーーーーープ!』 ブザーが鳴り響いた。 メカゆゆこの損傷は、大破には至らないと判断された。 2機はそれぞれ、互いの本拠地へと戻り、回収された。 『現在、獲得アクセサリー数を計算しております。得点計算には少々お時間がかかりますので、その間、フィールドのクリアリングを行います』 『クリアリングを行いますのは、品種改良された対ゆっくり用ゆっくり・きめありすです。芸術とも言われるその妙技をご覧ください』 アナウンスと共に会場に優雅なクラシック音楽が流れ出した。 フィールドの地面の数箇所がせりあがり、そこから成体ありすの群れが飛び出す。 あきらかに発情中と解る移動速度。しかし、一切の声を発さない。 つりあがった目をギラギラと輝かせ、獲物を探して視線を縦横に走らせる。 湧き上がり続ける涎を溢すまいと唇を引き結びながらも、まだ見ぬ生贄を思うがあまり口の端はつり上がり笑みを形作る。 口の中いっぱいに蓄えられた唾液は跳ねるたびに勢いよくこぼれだしている。 フィールドをくまなく走査するきめありすは、ついに逃げ延びていた子ゆっくりを発見する。 それは地面に叩きつけられたようにつぶれている親まりさにすがりつく子まりさだった。 泣き喚き、あたりに何が起きたのかも解らぬまま肉親の死に打ちのめされている。 その子まりさの背後からすべるように近づいたきめありすは電光石火の早業で子まりさをひっくり返し、 そのつるりとした下面に覆いかぶさるように乗り上げるやいなやもはや肉眼では捉えられない速度で 滑らかに円運動、自身の底部をこすり付けだした。いわずと知れたゆっくりの性交渉である。 下敷きにされた子まりさはまず状況の変化に戸惑い、次いで自らの感覚を犯すなにかに怖気をふるい、あまりにも強引なやり方に泣き叫んだ。 きめありすは一方的に達すると、潰れかかっている子まりさを捕食した。 うっとりとした表情で口腔の子まりさを舐め転がし、口蓋に押し付けて潰した。 捕食による一体化を究極の愛と定義するのがきめありすの特徴だった。 きめありすは地面で広がっている親まりさの死骸に対してもゆっくり性交渉を行い、たいらげた。 一時も休むことなく次の獲物を探し始める。 それがフィールド全体で繰り広げられ、逃げ延びていた子ゆっくり達は処理された。 BGMのクラシックが終わると、きめありすはありすらしい優雅さを取り戻し、そそとした所作で退場していった。この間、約5分。 『はい、掃除が完了いたしました。集計もおわりましたので見てみましょう』 『得点は……西日暮里高校! 12点! 対するF大付属……12点!! 同点です!』 『これは珍しい……。引き分け再試合、サドンデスということになるのでしょうか?』 『え? ……ちょっとまってください。はい、はい……』 『えー、ただいまの試合、12対12の引き分けと発表されましたが』 『F大付属の獲得アクセサリの中に、大会側の用意したものではないれいむのリボンが含まれておりましたため、』 『11点と訂正させていただきます』 『12対11! 買ったのは西日暮里高校です! 凶獣メカゆゆこを下し、テイクイットEZ8決勝進出ーーーー!!』 『代表者の大沢君に話を窺いましょう。今のお気持ちはどうですか!?』 『はい! とても、厳しい、その、戦いでした勝ててよかったです。』 『飼いゆっくりが潰されてしまいましたが?』 『優勝したとき、皆さんの前で潰してやる予定でしたでもこの準決勝でだめになってそれがあんな形で 役に立つとは思わなかったです役に立ってよかったです』 『ハイ! ありがとうございました!』 『古豪、西日暮里高校が決勝に駒を進めました。CMの後は準決勝第二試合です――――』 ゆっくりロボコン 終 このSSに感想を付ける
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冬眠ゆっくりの子守唄 「ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくりしていってね!!!」 そのゆっくりれいむが通ると、誰もがあたたかな声をかける。 「ゆっくり、していってね」 答えるれいむは上品だった。物腰たおやかで、そして美しかった。 魔法の森の誰もがうらやむ、最上のゆっくり、それが彼女だった。 「ゆっくりー……」 柔らかな草の上に座り、ただゆっくりと日を浴びる、それだけでも花のように絵にな るゆっくりだった。 「ゆっくりちちぇっちぇね!」 「ゆっくりちちぇっちぇね!」 小石ほどのちっちゃな赤ちゃんまりさや赤ちゃんれいむたちが、蝶を追ってぴょんぴょ んと飛んでいく。それを見ると、ぴょんと横から蝶を捕まえ、赤ちゃんたちにやった。 「はい、ちょうちょさんよ」 「ありがちょ、おねーたん!」 「やさしいね、おねーたん!」 感謝するちびたちに、無言でにっこりと笑いかける。 ゆっくり特有の騒々しさもなく、控えめで、優しい。本当によく出来たゆっくりだっ た。 そのれいむは、一年を母親の下で過ごし、そろそろ一人立ちを迎えようとするころだっ た。こんなにも器量よしで気立てのよいゆっくりなので、もちろん大勢のゆっくりたち が彼女を慕っていた。 「れいむとゆっくりつきあってね!」 「まりさとゆっくりつきあってほしいんだぜ!」 「あっあっあアリスと赤ちゃんをつくりましょぉ~~~~~!」 そんな誘いにも、れいむは頬を赤らめて、つつましく辞退していた。 「もうちょっと、ゆっくりかんがえさせてね」 彼女が一体誰と付き合うのか、森のゆっくりたちはやきもきしていた。 れいむの母親は、保守的な考えの持ち主だった。 「れいむはまだまだこどもだよ! 次の春までゆっくりと成長して、それからすてきな 人を見つけるといいよ!」 れいむ本人も、漠然とそんなふうに考えていた。 まだまだ、恋というものを遠くの虹のように考えていたのだ。 だが、恋のほうではれいむを待ってくれなかった。 ある日のこと、草むらをゆくゆくとしとやかに歩いていたれいむは、隠れていた蛇に 襲われた。悲鳴を上げて逃げようとした時、石をくわえて蛇を叩きのめしてくれたゆっ くりがいた。 「このあたりは危ないんだぜ。ゆっくりしないで通り抜けてね!」 そのまりさは、れいむにしばらく目を留めていたが、他のゆっくりのようにれいむの 美貌に惑わされて口説き始めたりはせず、黒い帽子を翻してそっけなく去っていった。 「すてきなひと……!」 ゆっくりれいむの餡子ハートが、きゅんきゅん鳴り始めた瞬間だった。 ほどなくそのまりさの素性がわかった。魔法の森のはずれの石地に暮らす、一人身の ゆっくりだった。 数日後、れいむはとびきり色艶のいいアマガエルをくわえて彼女に近づき、震えるハ ートに勇気を奮い起こして話しかけた。 「あの、せんじつはありがとう……いっしょにゆっくりしてね?」 「ゆっ?」 振り向いたまりさは、しばらくれいむを見つめてから、やがてにっこりとほほえんで くれた。 「ああ、あのときの……」 覚えていてくれた。それだけのことで、れいむは天にも昇る心地になった。 「これ、おれいなの。ゆっくりたべてね……?」 まりさはカエルを見て、べろんと舌を伸ばして食べてくれたが、ふいと向こうをむい てしまった。 「ありがとう。でも、ゆっくり帰ってね」 「どうして? れいむ、もっと……まりさといたいよ」 「ゆぅぅ、それはだめだよ」 「どうして?」 「だってまりさは……ばつをうけている身だからね」 まりさの告白は、衝撃的なものだった。 彼女はむかし、母親や姉妹たちと大きな家族で暮らしていた。ある日のこと、その家 族がゆっくりれみりゃに襲われた。母まりさが立ち向かい、子供たちも必死に手助けし たが、空を飛ぶゆっくりには勝てなかった。母も姉妹も体のあちこちをつまみぐいされ、 身動き取れなくなった。 そのとき、一人だけ無傷だったこのまりさは、家族を捨てて逃げたのだった。 「おかあさんがさけんでいたよ。『まりさだけでも、逃げてゆっくりしてね……!』っ て」 だが森のゆっくりたちは、このまりさに冷たい目を注いだ。家族を見捨てたゆっくり としてつまはじきにし、森のはずれのこんな寒々しい土地に追い出したのだ。 そこまで聞いた時、やさしいゆっくりれいむの目から、熱いものがあふれ出した。 「どお゛じでぞんな゛目゛にあっでるのぉぉ……!」 同情が胸を締め付ける。その痛みはすぐに、甘い共感に変わった。 我知らずれいむは、まりさに頬をすりつけていた。 強く強く、いっぱいの気持ちを込めて、すりすりと……。 「れ、れいむ……」 「つらかったよね、さびしかったよね……!」 すり寄るれいむに対して、まりさはとうとう何も言わなかった。 だが、別れ際に一度だけ、自分からそっと頬を当ててくれた。 れいむには、それだけで十分だった。 その日から、二人のひそかな逢瀬が始まった。 森のゆっくりたちの目をかすめて、石の荒地で、木陰のうろで、滝つぼの陰で、ふた りは密会を重ねるようになった。 密会といっても、二人とも前の冬に生まれたばかりで、まだ若い。子作りを求める、 燃え立つような情欲とは縁遠い。れいむが浮き立った調子で日常のことをしゃべり、そ れにまりさが時折あいづちを打つというような、他愛のない時を過ごしただけだった。 孤独なまりさはれいむの話を聞くと、ほかのゆっくりが気づかなかったようなれいむ の苦労を汲んで、ぽつりと同情してくれた。 「ゆっくりは、顔じゃないんだぜ」 「れいむは顔よりも、心がすてきだと思うんだぜ」 またそんなまりさも、おのれの美貌におごらない、謙虚で正直なれいむに惹かれていっ た。 「おかあさんや妹たちに、いつまでもゆっくりしてほしいよ」 「まりさのことも、きっとみんなはわかってくれるよ!」 夏の間、ふたりはそうやって、穏やかに愛をはぐくんでいった。 秋に入ると、ゆっくりれいむは冬支度を始めた。 優しいながら芯のしっかりしたこのれいむは、生まれて一年もたたないうちから、一 人で越冬をすると決めていたのだ。 外敵の近づきにくいイバラのしげみの奥に穴を掘り、着々と食料を貯めて行くゆっく りれいむの姿に、最初は心配していた母れいむも、許可を出してくれた。 「しんぱいだけど、だいじょうぶそうだね! がんばってゆっくりしてね!」 「うん、れいむがんばるね!」 幼女期を過ぎて少女期に入ったばかりのれいむではあったが、必要な餌の量や穴の広 さを本能が教えてくれた。れいむは着々と準備を進めていった。 ひとつ、気がかりなのは、あの仲良くなったゆっくりまりさのことだった。れいむは まりさと一緒にいたかった。 だが、結婚の誘いを口にするには、れいむはまだまだ幼かった。 もしそんな誘いをしたならば、一冬をずっと同じ穴の中で過ごすことになる。まりさ と夜を過ごしたことは、いまだに一度もなかった。そこで何が起こるのか、少女の活発 な妄想力をもってしてもさすがに考えが及ばず、れいむは一人、顔を赤くして首を振る のだった。 ――まだはやい、まだはやいよ! もっとゆっくりなかよくなってから……! 冬ごもりの食料は莫大だから、簡単には移せない。つまり、思いつきで移住すること は出来ない。どちらにしろ、今年は一人で過ごすことが決定していた。 森の木が色づきだしてからというもの、まりさのほうも冬支度を始めているようだっ た。ときおり遊びにいったれいむは、石穴での彼女の冬支度が、それなりに順調に進ん でいるようだったので、ほっとした。 そのころのれいむは、まりさの視線を感じて小麦粉の頬を熱くすることが増えていた。 まりさも同じように考えてくれている――そんな確信があった。 季節が移りゆき、とうとう幻想郷に初雪が降ったある日。 いよいよ冬篭りの支度をすっかり整えたれいむは、銀世界に顔跡をつけていっさんに 走っていた。 「ゆっ、ゆゆっ、ゆっ、ゆゆっ!」 今日は三ヵ月を越える冬ごもりを始める日。巣穴の入り口を閉じる前の、最後の逢瀬 だ。 石地の巣穴にたどり着くと、期待したとおり、その入り口はまだ開いていた。 「まりさ、いる?」 「れいむ? ゆっくりしていってね!」 聞き慣れた誘いの声。れいむはこの上ない喜びを覚えて、巣穴に入っていった。 「いよいよだね……!」 「ゆっくりと生き延びようね……!」 感無量で見つめあう顔と顔。自然の厳しさはお互いに知っている。うまくゆっくりで きなければ、再び会うことは出来ないかもしれない。 そんな切羽詰まった思いが、若いれいむに思い切ったことを口走らせた。 「あの……あのね、まりさ!」 「ゆっ?」 「もしこの冬篭りに成功したら……わたしとけっこんしてね!!」 白玉楼から飛び降りる思いでの大胆な告白。もちもちした頬を真っ赤に染めて、れい むはぎゅっとうつむく。 期待と不安に餡子が高鳴る。まりさはなんて答えるだろう。孤独なひとだから、断ら れるかもしれない。実は他に好きな人がいるかもしれない。乙女ゆっくりの想像力が暴 走しかけていく。 「ゆ……ゆぐ……」 のどに詰まったような不思議な声。おそるおそる声を上げると、まりさは顔を背けて むこうを向いている。 まりさを困らせてしまった――その思いに、れいむは足場が消えてなくなったような 絶望を覚える。やっぱり、自分の思い込みだったんだ。まりさは、ただの友達としか思っ てくれていなかったんだ……! 「ご、ごめんね、まりさ! 変なこと言っちゃった。……ゆっくりしていってね!」 最後の挨拶を残し、出て行こうとするれいむ。 涙を見られる前に。 ところがその後ろ髪が引っ張られる。ころんと転がって振り向いたれいむが見たのは、 真っ赤に染まって、怒っているようなまりさの顔。 「わ……わるかったよ、れいむ!」 「ゆっ?」 「な、なんて言っていいか、わからなかったんだぜ! うれしすぎて!」 言うが早いか、まりさは寄ってきた。柔らかな肌とふさふさの金髪がれいむの頬に押 し付けられる。 「まりさもだいすきだぜ! きっと、きっとけっこんしようね!」 「ゆ……ゆぅぅぅぅ!!」 歓喜の声がのどから漏れる。餡子脳をまたたく間に餡内麻薬が満たしていく。押し寄 せる幸福感、高まるヘヴン状態。 「ま、まりさ、うれしいよ……!」 「れいむ、ほんとにだいすきだぜ……!」 むにむにと頬をこすりつけ、何度も言葉を掛け合う。 こんなに幸せな思い出があれば、長い冬ごもりもぜんぜん苦しくない。少しの後悔も なくここを離れて、巣穴に戻ることが出来る。れいむはそう思った。 が――。 「ゆ、ゆく……ゆふ……」 「ゆぅ……ゆむぅ……」 押し付けた肌のぬくもりが、あまりに心地よすぎた。 愛しい人との距離が、あまりに近すぎた。 いつの間にか二人は言葉を忘れ、短い声だけを漏らして、体をゆすりあっていた。 そう、それは……二人がまだまだ早いと考えていた、愛の営みのきざし。 実際、二人はそんなことをするつもりは毛頭なかった。 ただただ、その心地よく温かい行為を止めたくなくて、じわじわと続けていただけな のだ。 しかし、いくら自覚がなくても、幼い餡子体に目覚めつつある官能は、そのまま消え てくれはしなかった。むしろ二人が押し合うのに合わせて、急速に高まりつつあった。 「ゆっゆっ……ゆっゆっゆぐっゆぐっ」 「ゆは、ゆは、ゆふ、ゆふ、ゆふぅぅ……ま、まりさぁ……へんだよぉ……」 頬を染め、とろんと溶けた目でつぶやくれいむ。 ふと相手を見れば、同じように快感に目を細め、唇をゆがめている。 そのまりさが、はっとれいむの視線に気づき、何か言おうとした。 「れ、れいむ……ゆっくりとやめようね……?」 彼女はまだ理性を残していた。今このタイミングで営みを始めたら、どんな悲劇的な 結末が待っているか、きちんと想像が出来た。 結末――それは恐ろしい光景だ。一人で巣穴に帰ったれいむが、腹の痛みを感じる。 そして何日かのあとに子供を産み落としてしまう。 一人用として準備された、巣穴の中で。 見詰め合ったまま、二人はわずかに逡巡した。 だがれいむは、しとやかで相手の望みを慮る性格のために、感じてしまった。 まりさがこらえている飢えを。芽吹きはじめた欲情を。 ――まりさがれいむをほしがってる……すっきりしたがってる……! それゆえに、れいむは揺すり続けた。 美しい頬をすりよせ、唇の端をまりさの唇に沿わせ……。 「まりさ、いいよ、まりさ……」 「ゆっ、れいむ、れいむ?」 「れいむはいいの。してほしいの。ねえ、すっきりしていってね……?」 魔法の森で一番とたたえられた、青いほど若く美しいゆくっりれいむの、健気な誘惑 ……。 それに、長い間孤独にさいなまれ、れいむを慕い続けていたまりさが、抗えるわけが なかった。 「れっ、れいむ、いいの、ほんとにいいの?」 「いいの、いいのぉ、まりさなら、ゆぅん、いいのぉっ……!」 まだ幼い、餡子皮もろくに厚くなっていない、青い果実のようなれいむがあえぐ。 「れいむっ、すきだよっ、れいむ、ほんとぉぉぉ!」 人の情けを知らずにたった一人で生き抜いてきた、飢えたまりさがむさぼる。 舌を伸ばしてべろべろと舐めあい、湿った頬をぐにぐにとすりつけ、野獣のように汁 まみれで愛し合う。若く未熟だといっても、いや、若く未熟だからこそ、二人の愛はと どまるところを知らなかった。 「ゆっ、ゆおっ、ゆふっ、ゆむぅっ♪ まりさっ、きもぢいい、ぎもぢいいよぉぉ!」 「れ゛いむ゛ッ、れい゛む゛っ、れ゛いむ゛ぅぅ、だいすきだよぉぉぉほぉぉ!」 「もっどっ、もっどじでっ、ぐるっ、ぐるっ、なにがぎぢゃぅぅぅぅ!!」 「まりざも、まりざもっ、れるっ、れるっ、なにかがれる゛ぅぅぅ!!」 ずくんずくんと押しつけるまりさの動きが最高に高まった瞬間、れいむは感じた。 じわじわぁぁっ……! と自分の中に染みとおってくる、まりさの愛のこもった熱い 波を……。 その途端、真っ白な閃光が丸い餡子体のすみずみまでも走りぬけ、れいむは我知らず に絶叫していた。 「すっきりーーー!」 「すっきりーーー!」 同時にまりさも叫び、柔らかい体をべったりとれいむに密着させたまま、ふるふると 硬直した。 白一色の野原の中、小さな穴倉で人知れず重なり合った二人の上に、新たな冬の使者 が音もなくはらはらと降り積もり始めた……。 ゆっくりれいむは枯れ草を敷き詰めた穴倉に、じっと座り込んでいた。 冬篭りを始めて一週間。――食料の消費は予想通りで、念入りにふさいだ入り口から は雪の一片も漏れてこず、冬篭りはすべて問題なく進んでいるようだった。 しかしれいむの顔は、心なしか青かった。 ――だいじょうぶ、だいじょうぶ! ゆっくりしてればいいの! 自分に言い聞かせつつも、思い返してしまうのは、あの日のことだ。 生まれて初めての衝動に押し流されるまま、自分の体のすべてを与え、恥ずかしい痴 態をさらしてまりさとひとつに溶け合った。それ自体は例えようもなくすばらしい愛の 出来事だった。 だが、終わったあとに残ったのは、取り返しのつかない愚行をしてしまったのではな いかという、巨大な不安――。 「れ、れいむ……」 おろおろとうろたえながら、まりさが何かを言おうとした。 「……こっちでゆっくりしていく? まりさはかまわないよ」 だが、出てきたのはこんな益体もない台詞だけ。もとよりまりさの巣穴にはまりさの 分の食料しかない。たとえまりさが身を投げ打ってくれたところで、来るべき事態の解 決にはならない。 れいむにまりさを責める気はなかった。あの流れの中で、自分は確かに、人生の分岐 点をこちらへと渡ったのだ。 一時の快楽に押し流されて……。 「ありがとう、まりさ。れいむはおうちにかえるね」 にっこりと笑って、れいむはそう言った。 まりさが好きだった。だから心配をかけたくなかった。 ただ、どうしたわけか、涙だけは目じりからぽろぽろとこぼれた。 「ゆっくりしていってね、まりさ。れいむはだいすきだったよ!」 「れ、れいむぅぅぅ……」 同じように涙を流し、何度も抱擁して、まりさは送り出してくれたのだった。 「春になったらむかえにいくからね! ぜったいいくからね!」 ……そんな声を背に、れいむは巣穴に帰ってきたのだ。 「ゆっ、ゆゆっ、ゆんっ!」 ふるふると頭を振って、自分に活を入れる。 「ゆっくりできるよ、ゆっくりしてるよ!」 すべては杞憂なのだ。こうして座って、辛抱強く食料を食いつないでいけば、やがて は春が来るのだ。 そうして、ある暖かな一日に薄暗い穴の中で目を覚ますと、入り口を掘りあけてまり さが来てくれるはずなのだ。 「ゆっくりしすぎたぜ、れいむ!」 そうやって、微笑んで……。 ぐりゅ、と頭皮の上で何かが動いた。 「……!」 れいむは頭をふる。何度も何度も振る。 「ゆっくり、ゆっくりしていくよ……!」 聞くものとてない冬山のイバラの茂みの奥に、そんな小さな叫びが響く。 だが――。 運命の神は――。 二人の愛の結晶を、無慈悲にも――。 「ゆぐっ、ゆぐっ、ゆゆぎぃぃぃ……!」 吹雪の吹きすさぶ厳冬の一月。 分厚い雪に振り込められた巣穴の奥に、異様な光景があった。 それは膨れ上がったゆっくりれいむ。――ただ縦方向に伸びているだけでないのは、 その口の下にみちみちと開きつつある穴から、明白だ。 産道が穿たれつつある。 一歳に達しないゆっくりれいむが、枝をつけずに胎児を孕むのは、きわめて異例なこ とだ。だがこれは、彼女自身が引き起こしたことだった。 その原因は、れいむが己の妊娠を徹底的に否定し続けてきたことにあった。 まりさとのあの日から一週間を過ぎたあたりから、れいむの体調は確実に変化してい た。食欲が異様に増え、食べても食べても物足りない。頭がうずき、何かが生えつつあ るような感覚が湧いた。 頭から枝が生えたら、子供が実る。――その程度のことは、うぶなれいむでも知って いた。 「は、はえないでね! ゆっくりはえないでね!」 頭の上に少しでも何かが突き出そうになると、壁にこすり付けて削り落とした。 だがゆっくりの体の作りは、ゆっくりであるれいむ本人にも想像もつかない神秘を秘 めていた。 枝が生えなくなってほっとしていると、今度は十日過ぎから、腹の中に違和感を感じ るようになった。 みちみちみち……。 みちみちみち……。 腹が圧迫されていく。 内側から。 まるで新しい何かが形成されているかのように。 「ゆ、冬太りになってきちゃったよ!」 「ゆっくりしてるの、ゆっくり一人ですごすのぉぉ!!」 食料の食べすぎだ、運動不足だと自らをあざむいても、詮無いことだった。 茎を作って生まれ出ることのできなかった生命が、行き場をなくして腹の中に宿って しまったのだ。 以来、それは育ちに育ち、一ヵ月半が過ぎた今では、かつてのれいむ自身に匹敵する ような何者かが腹の中にいることは、明白になってしまった。 それが今――。 いよいよ胎児としての成熟を迎え、外の世界に生れ落ちようとしている。 ふくれあがり、中からミチミチと押し開かれる産道に、れいむは懸命に力を込める。 「だめっ、だめぇぇぇ……生まれちゃ、生ま゛れ゛ぢゃだめぇぇぇ……! 出だら゛死ん゛じゃう゛の゛お゛ぉぉぉぉ!!!」 かつて誰よりも美しかったまぁるいあごの線は、無様にふくれ、見る者見る者に舐め てみたいと思わせた滑らかな餅肌には、脂汗が玉のようにびっしり浮いている。 若く美しいゆっくりだったれいむが、今は腹の膨れた妊婦となって、おのれの恥ずか しい穴を必死に引き締めているのだから、グロテスクを通り越して滑稽ですらあった。 「ゆぎい゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!」 顔の下部に熱した金属棒を突っ込まれ、グリグリとこじ開けられるような壮絶な痛み が、れいむを苛む。れいむは歯を食いしばってそれに耐える。 最初のうちは外に出すまい、奥に戻してやろうという力みだったが、自然の巨大な力 の前に、そんな愚かな努力はたやすく圧潰した。今ではもう、腹の出口に宿る凶悪な痛 みの塊を、ただなんとか処理したいということしか、考えられない。 「ぎぎぎっぎゅぃいいぃいい! いだっいだっだっ、いだいよぉぉぉぉ!」 体内の餡子という餡子がマントルのように煮え返り、循環するような猛烈な苦痛が襲っ ている。その最悪の瞬間、れいむは痛みから逃れることしか考えていなかった。この痛 みをもたらしたすべての者を憎悪した。生まれつつある胎児自身、それを種つけたゆっ くりまりさ、種を受け入れた昔の自分、そしてそんな自分を世に送り出した母親までも を憎みぬいた。 「ゆっぐりじだいぃぃぃ! みんなみんなゆっくりじねぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!!」 誰一人助けてくれるものもない、孤独な苦痛が最高に高まった瞬間―― きゅぅぅぅ……ぽんっ! 軽快な音とともに、一瞬で腹が軽くなった。たちまち、どっと音を立てそうな勢いで 安堵があふれ出し、れいむは至高の快楽に浸る。 「ゆっくりー!」 「ゅっ」 だが、彼女の安堵は、小さな小さなうめきを聞いた瞬間、絶望に転じた。 目を開ければ、薄暗い巣穴の床に、小さな丸いものが落ちている。 黒い帽子、濡れて波打つ金髪、ちょっぴり世をすねたような唇、まだ開いていないま ぶた……。 それは、愛したゆっくりまりさに生き写しの、自分の子供だった。 ――生まれてしまった……! ひたひたと押し寄せるその事実に、れいむは押しつぶされる。聡明な彼女には、この ことの帰結がはっきりと理解できた。 巣穴には一人分の食料しかない。 子供と二人では、間違いなく足りなくなる。 だから当然、今しなければいけないのは――間引き。 「……ゆ、ぐ、ぅ……」 それは子供を自らの手で殺すこと。大丈夫、生まれて間もない赤子はまだ世界のもの ではない。あちら側、死者の側の住人なのだ。殺すといっても、そちらへ送り返すだけ。 そう、これは「お帰し」なのだ――。 ゆっちゅりーだったか、あるいは他の誰かだったか。昔聞いたそんな理屈が、頭の中 でぐるぐると回った。 れいむはぶるぶるとおこりにかかったように震えながら、前へ進む。あれほどわが身 を痛めつけてくれたのに、子供の大きさは桃の実ほどもない。スイカ並みの大きさがあ る今の自分なら、のしかかるだけで片をつけることが出来る。 やるのだ。 やらねば。 やらなければ! ――と、そのとき目を開いた小さな子供が、きょろきょろと辺りを見回したかと思う と、輝く瞳にいっぱいの希望を浮かべて言った。 「ゆっくちちぇっちぇね!!!」 一撃だった。 それはれいむの脆い殺意を突き崩し、深い深い愛を呼び覚ますに十分な一撃だった。 幼い母親であるれいむの心に――幼いからこそ、純粋な愛がこんこんと湧き出した。 愛したまりさとの子供、自分の腹を痛めた子供だという思いが、あっという間に心を満 たした。 「ゆ゛っ……」 れいむは、その言葉を口にした。 「ゆっぐり、ぢでいっで、ねぇ……!!!」 そして滝のように涙を流し、わんわんと声を上げながら、赤ちゃんまりさに頬ずりし た。 「ゆっ? おかあたん、どうちたの? まりさがちゅいてるよ! 何もわからない幼いまりさが、早くもそんなことを言って、母に頬を擦り付けた。 母子はずっと一緒にゆっくり暮らした。 狭く暗い穴倉の中で、せいいっぱいゆっくりと……。 出産が済んだれいむは、いくらもたたないうちに、元のように丸く美しい体形を取り 戻した。子供と二人、彼女は毎日を楽しく暮らした。 子まりさも、満足しきっているようだった。 「おかーたん、ゆっくちおととにでたいよ!」 「おそとは寒いのよ。暖かくなったらね」 「おととにはどんなものがあるの?」 「きれいなお花や、可愛いちょうちょや、すてきなまりさかあさんがいるのよ」 「ゆっ、おかーたんがもうひとりいるの? まりさ、たのしみだよ!」 子まりさの幼すぎる餡子脳は、結末をまったく想像できなかった。 彼女はただ、外敵のいない快適な穴倉で、寝てもさめてもそばにいてくれる、若く美 しい母親と、壁一杯に積まれたたっぷりのごちそうに囲まれ、明るく広い未来を想像し て、至福のときを過ごしていた。 「ゆぅ・ゆ・ゆー ゆぅ・ゆ・ゆー ゆーゆゆぅゆ ゆーゆぅ……」 柔らかなアルトの子守唄を聴きながら寝かしつけられると、子まりさはついついこん なことを言ってしまうのだった。 「おかーたん」 「なぁに? まりさ」 「まりさ、とってもちあわちぇ!」 ちゅっ、と頬にキスして目を閉じる娘を、れいむはこの上なく幸せな顔で、だが滂沱 の涙を流しつつ、見守るのだった。 時が流れ、日々が過ぎていった。吹雪の音は収まることがなかったが、壁に積まれた 食料は少しずつ減っていった。 れいむにはひとつだけ迷いがあった。それは自分を犠牲にしてこの子を助けようかど うかということ。自ら招いた過ちである以上、そうすることもれいむは真剣に考えた。 だが、出た結論は、そうしたくないし、そうするべきではないと言うものだった。 母の肉体を食い荒らして育った娘が、幸せになれるだろうか……。 恋人の肉体を食い荒らして巣穴から出てきた娘を、母まりさが許してくれるだろうか ……。 そう考えれば、答えはとても簡単であるような気がした。 三月、冬の終わりを告げる最後の地吹雪が巣穴をとどろかしているころ。 食べるものが何一つなくなった、空虚な巣穴の中で、頬がこけ、げっそりと衰弱した れいむ親子が、夢うつつの境をさまよっていた。 「ゆぅ……ゆぅ……」 「ゅぅ……ゅぅ……」 寄り添った二人は、もはや苦鳴すら漏らしていなかった。おなかがちゅいた、と子ま りさが文句を言っていたのも、すでに一週間も前のことだった。 今では細い息を漏らしながら、迫り来る死を待っているだけだった。 「ゆぅ……ゆぅ……ゆっ・ぐ」 薄れる意識を漠然とたもっていたれいむは、ある一瞬、確かに自分の生が途切れたの を感じた。人間にたとえれば、弱りきった心臓が短い間、停止したというところだろう か。ともかく、死はすぐそこまで迫っているとわかった。 ――れいむ、しぬんだ……。 ――がんばったけど、ここで死んじゃうんだ……。 ――おかあさん、ごめん。まりさ、ごめん。子まりさ、ほんとにごめん……。 いつ死んでもおかしくない、と思った瞬間、れいむは細い決意を抱いた。あれほど考 え抜いて決めたことなのに、土壇場で再び母性本能がうずきだしていた。 「まりさ……まりさ」 「ゅぅ……ゅ?」 「今から、ごはんをあげるからね……いっぱいたべて、ゆっくりしてね……」 そう言って、子まりさから離れ、壁際の石へよろよろと這いずっていった。石の角で 自らを切り裂き、餡子を与えるつもりだった。 だが、その作業を始めて痛みに顔をしかめていると、ちっちゃな子まりさがゆむゆむ と必死にはいずってきて、細い声で取りすがった。 「おかーた、おかーたん、いたいいたいしちゃ、だめ!」 「いいのよ、まりさ……」 「だめなの、まりさはおかーたんがちゅきなの! おかーたんいっしょにいて!」 餡子の味を知らないから、そんなことを言うのだろう。いったん餡子を食わせてやれ ば、我を忘れてむさぼるだろう。 そうとわかってはいても、れいむは愛しいわが子を、泣かせたくなかった。 れいむは石から離れた。そしてまりさにゆっくりと寄り添って、歌い始めた。 「ゆぅ・ゆ・ゆー ゆぅ・ゆ・ゆー ゆーゆゆぅゆ ゆーゆぅ……」 眠れ眠れ母の胸に。 歌の歌詞そのまま、眠るように子まりさは静かになった。 ほどなくその静かな歌も途切れ、あとには吹雪のとどろきが残った。 汗ばむほどの陽気に包まれ、根雪が盛大に溶け流れている。 四月。魔法の森には急激な春が訪れ、すべての生き物たちがいっせいに目覚めていた。 「ゆっ、ゆゆっ、ゆっくゆっく!」 雪解けの地面を、全身泥まみれになりながら駆けていくゆっくりがいる。 黒い帽子のゆっくりまりさだ。もう五日も前から巣穴を防ぐ石版をぐいぐいと押し続 け、今日やっと、上に乗っている雪が溶けたために出てこられたのだった。 「ゆっくり、ゆっくりーっ!」 それは訪れた春を歌い上げる歓喜の声であるとともに、愛する人に聞かせる呼びかけ の声だ。皮よ破れよ帽子よ落ちよとばかりに、出せる限りの速度でまりさは跳ね飛んで いく。 イバラの茂みは、秋に記憶したとおりの場所にあった。そこは雪がまだ溶けていなかっ たが、そんなことは問題ではなかった。まりさの頭の中は、四ヶ月前に激しく愛し合っ た、美しく愛らしいゆっくりれいむのことだけが占めていた。 ――れいむ、れいむ! いま掘り出してあげるぜ! 冷たい雪を口にくわえて横手へ吐き出しながら、まりさは冬ごもりの間に数え切れな いほど繰り返した至福の想像を、再び頭の中で組み立てる。 雪をどけて扉を崩せば、待っていたれいむが涙ながらに飛び出してくるはずだ。 いや、慎み深いれいむのことだから、久しぶりの出会いにためらって、もじもじして いるかもしれない。 まさか眠っているってことはないはずだ! どれにしろ、まりさの言うべきことはひとつだけのはずだった。 ゆっくりしていってね! これからずぅっとずうっと、死ぬまで一緒にゆっくりしようね……! ゴソッ、と雪が抜けた。巣穴を閉ざす石と枝が現れた。 「れいむ! まりさだよ、ゆっくりしないで来てあげたよ!」 石と枝をくわえることすらもどかしく、もぞもぞと顔を突っ込んでまりさは入り口を 掘り抜いた。ずぼっと穴が貫通し、湿った巣穴の匂い、懐かしいれいむの甘い香りが、 ふわりと漂いだしてきた。 「れいむ!」 まりさは三日、遅かった。 ========================================================================= YT このSSに感想を付ける
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家に帰ったらゆっくりれみりゃがいた。 笑顔で「うー!うー!」と言いながらよってくる。 うるさいので蹴飛ばしたらみぞおちにヒットした。 吹っ飛ばされて部屋の壁に当たる。 こいつは笑顔を崩して「う”-!!う”-!!」と泣き喚く。 赤い目から涙が流れ出て鼻水らしき液体も駄々漏れ。 所々で「ふごっ」と鼻をすする。汚い豚だ。 せっかくのお洋服がぐしょぐしょになってしまった。 ?ぐしょぐしょ?そうか。 俺はいい事を思いついた。次の作業に移るためにれみりゃにやさしく声をかける。 「う”ぁー、うぁぅ・・・」 「よしよしごめんよれみりゃ、痛くなかったかい」 「がぉー!い~たかぁ~ったぞぉ~!」 れみりゃは蛸のようなぐねぐねした腕を精一杯伸ばしてずれた帽子を直す。 上目遣いのれみりゃは顔をぐずつかせてご機嫌斜めのようだ。 「ほんと~に勘違いしてたよ、ごめんな」 そう言ってよしよししてやる。 れみりゃは暫くふてぶてしい表情をしていたが、 やがて俺がもう危害を加え無いと判断したのかご機嫌を取り戻していく。 「うっう~うぁうぁ♪」 不可解な音頭を取り笑顔になるれみりゃを連れて浴室へ。 俺はれみりゃを脱がして服を洗濯機に入れる。 「うぁ~、えっち☆」とぶりっ子のポーズを取るれみりゃ。 殴り殺したくなる所を抑えて風呂でシャワーを浴びさせる。 そこで俺は観察した。 このゆっくりは一体何だろう。 肉まんと呼ぶには人間に限りなく近い。 3頭身程度だが体温も髪質も人並み。 人の言葉を解して拙くとも喋る。 手足は五本指で爪もある。人の犬歯よりやや長い牙を持つ。 何より帽子や服は本当の布でできていた。 誰の差し金で俺の所に来た? そもそもこいつは生物なのか? ゆっくりゃの目は赤く、頭は不自然に大きい。 顔のパーツは上よりになっていて、髪を引っ張ると痛がる。 「ぃたぃ、ぃたぃ、ぅー・・・がぉ!」 牙を向いて腕に噛み付くが全く痛くない。 俺はゆっくりの顎を無理やり残る手で開かせてゆっくりゃの体を洗う。 裸のゆっくりゃは肌色で人間の幼女と変わりない。 生殖器もついでに開いて見ると人間のそれと似ている。 「ゃぁ~だぁ。だめだぉぅ。がお~ぅ・・・」 ゆっくりゃは顔を赤くしてうつむく。 この不相応な大きさの頭を除けばこれは人間の幼女と同じだ。それなら・・・ 仮説『適当なプロセスを選べばいくらでも人間の形に近づけることができるだろう』 俺はこいつのシャワーを終えると一人で良いアイデアがないか考えることにした。 ゆっくりゃは大きな頭をぶるんぶるん振って髪の水気を取ろうとしている。 「がぉー、水きらい!ざぐやぁ!ふげふけ!」 うるさいよこの豚。 俺は睨みを利かせて黙らせた。 リビングで乾いたゆっくりゃに服を着せずに放置しておく。 裸でも良いらしく相変わらずうぁうぁ踊っている。 俺は500ml紙カップ入りのコーヒー牛乳を飲みながら考えた。 あの顔には肉まんの中身が詰まっているのだろう。 噂ではゆっくり種は30%程度の中身を失うと死ぬらしい。 そして中身を他の部位に移し変えれば生きているそうだ。 だとすれば・・・・。 やるべきことが決まってきたので早速準備に取り掛かる。 肉まんを幼女に転生させるのだ。 しかし幼女にすることが目標ではない。 肉まんを審美眼に堪え得る存在に昇華させる事が目的なのだ。 準備品はは家にあるものだけで十分だった。 包丁、おたま、肌色の縫い糸と縫い針、接着剤、新聞紙、プリン、やさい、これが全てだ。 早速実行に移す。ゆっくりゃは退屈してきたのかテディベアのような姿勢で座り込んでいる。 顔からはよだれと涙が垂れており、食欲が湧いている。 「うぅ~、は~らぺ~こだぞぉ!」 俺の視線に気づくと床を叩いて 「さぐや!おやづ!」 とねだる。赤い眼は薄く濁り、ふてぶてしい表情を浮かべている。 俺は用意したプリンを見せる。 「よし、こっちおいで!プリンがあるよ!」 「ぷりん?ぷでぃんがあるの?う~!だべどぅ♪」 笑顔で転がりながらやって来る。 ごろごろしたゆっくりゃを片手で止める。 俺はプリンをすくってこいつの目の前までもっていく。 もう片手にはやさい(キャベツ)を隠しておく。 「あ~ん♪」 「これあげるっ」 隠しておいたキャベツを思いっきりゆっくりゃの口の中に押しこむ。 一瞬「ごぼっ」と音が聞こえ、ゆっくりゃはもがく。 「ん”-------!!!!!!!ん”ん”--------!!!!!」 手足をジタバタさせるゆっくりゃ。 俺は翼を手でもぎ取り、余った顎を包丁で開き、中の肉をお玉で一気にこそぎとる。 キャベツが芯になってやりやすい。 まるでケバブを調理する感覚だ。 キャベツを含んだ口の袋を残して肉といくつか皮を新聞紙の上に取り出す。 頭だけでこいつは40%の肉をもっているだろうから注意する。 「ぐっ!!!ん”ん”ん”!!!!ぶぅー!!!」 今度は胸を切開する。暴れるれみりゃ。 「暴れると余計痛いぞ」 そう言うと鼻息荒くもれみりゃはじっとしようと耐え始めた。 何もない胸にまず切り取った顎の皮を縫い付ける。 皮にゆとりができたのでさっきの肉を接着剤と混ぜて詰め込む。 この作業を二回繰り返して胸を作った。 そこそこ上手くできたのでさらに接着剤で胸のの手術跡を塞ぐ。 次は空きっぱなしだった顎を整形させる。 ゆっくりゃの頭の大きさを直すために頭を思いっきり押さえつける。 切り開かれた顎の下から肉がめきめき出てくる。 ゆっくりゃは前にも増してじたばたする。 「☆★♪!!!!!!!??!?!#$#”$%」 キャベツをそろそろ取り外してやる。 「ぎゃぁ”””””””!!!!ぶでぃんだべずるっふーげふ」 顎が塞がれていないので上手く喋ることができない。 大きな顎と頭のラインを整えるために出てきた肉と余った皮を切り取る。 喉を押さえつけて皮を思いっきり引っ張る。 頭が普通の人間位の大きさになってきたのでまとめて包丁で切除、縫合、接着。 「い”だぁあああああああああああああい”よぉおおおおおおおお!!!!!」 出来上がったゆっくりゃの顔は引っ張って作ったせいか垂れ目で口は鯉のようだ。 全体のシルエットは胸のある幼女といった所。 「ぷでぃんたべる!!!!!!」 幸い言語はちゃんと喋れるようだ。 しかし細かい所まで処置できなかったので所々おかしな箇所があるがそれはどうでもいい。 こうしてゆっくりゃの人間化は一つの節目を迎えた。 残った肉と皮は全体の15%程度で、どうするべきか悩んだが捨てることにした。 「すでないでぇええええええええええ」 ゆっくりゃが泣き付いてきたが食べさせるとまた元通りになりそうだったので無視した。 足元に抱きつきながらずるずる引っ張られるゆっくりゃ。 ああ、かわいい、かわいいよ。 数日後。 ゆっくりゃはそのまま変わった所も無くいつものようにうーうー踊っている。 たとえ形が変わっても精神が変わるには困難を要する。 あれからやさいしか与えていない。もしゆっくりを与えるとすぐに元に戻ってしまうだろう。 仮に与えても口が小さくなったから丸かじりできない。 野生に放すともう捕食すらできないだろう。 「ぶでぃんだべどぅ!やざいいだだい!ざぐや”!!!!う”----------!!!!!」 じたばたするゆっくりゃも毎度の事となった。 俺がこの存在を育てていくのだ。
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ゆっくりのフォアグラ フォアグラ用ゆっくりの一生は繁殖工場から始まる。 まだ満足に「ゆっくりしていってね!!!」とも言えない時期に親から引き離され、野外に放牧される。 数週間かけて成熟し、健康な体(生首)となったゆっくり達は工場へと送られる。 工場に送られてからはずっと、無機質に区切られた鉄製ケージの中で過ごすことになる。 睡眠時間を除き、3時間おきにやってくるのは巨大なタンクへと繋がるホース。 そのホースの先端を、ゆっくりの口内へと無理矢理押し込む。これでセット完了。 タンクの中に入っているのは蒸かした小豆。 スイッチを押すとタンク内の小豆が凄まじい勢いでゆっくりの胃へと送り込まれる。 最初の一回は、好物の小豆を食べられることで喜ぶゆっくりだが、3回目あたりになると大抵のゆっくりは激しく抵抗する。 「ゆっくり食べさせてね!!!」 工場のあちこちで聞こえるゆっくりの叫び声は工場の外からでも聞こえるという。 たまらず、小豆を吐き出そうとするゆっくりもいるが、ゆっくりの体(生首)の構造上、嘔吐することは難しい。 仮に嘔吐できたとしても、次の給餌では吐き出した分を加算して与えられるので苦しくなるだけである。 ゆっくりの性格はさまざまで、作業員の姿を見てビクビク震えるものもいれば、懲りることなく「ゆっくり食べさせて!」と懇願するものもいる。 狭いケージでは満足に動くこともできず、小豆を消化することもままならない。 常に満腹感に満たされながら、ゆっくり達は死ぬこともできずにただひたすらに小豆を流し込まれる。 「ゆっくり食べさせてね!」「ゆっくり順番になってね!」「次はもっとゆっくり来てね!」 しかし、このような声は給餌開始から2週間ほどで聞こえなくなる。 2週間も経つと、ゆっくり達はたまった餡子のせいでパンパンに膨れ上がり、もはや満足に言葉を発することもできなくなるのだ。 元から狭かったケージに密着するようになり、本格的に動くことができなくなる。 そして、生成が終わる3週間目ともなると、ゆっくり達はケージからハミでるほど膨張している。 小豆は、ゆっくり特有の消化器官を経て餡子に変わることで知られているが、大量に送り込むことで小豆のうまみを凝縮した最高級餡子を 作ることができると分かったのはごく最近のことである。 しかし、このままでは水分が多すぎて出荷することはできない。 最後の工程では、ベルトコンベアーを利用しケージごとサウナへと送られる。 もはや植物状態であったゆっくりも、このときばかりは叫び声をあげはじめる。 「ゆっくり冷まして!」「ゆっくり戻して!」「ゆっくりさせて!!!」 窓からは断末魔が聞こえ、排水溝からは洪水のようにゆっくり達の汗が流れてくる。 24時間の脱水工程を終えると、ゆっくり達は3週間前の体(生首)くらいに小さくなっている。 このとき、より小さくなったゆっくりなほど餡子のうまみを凝縮しており、高級とされる。 そのまま作業場へと流されたゆっくり達は大きさによってランク分けして箱詰めされる。 こうして全工程を約1ヶ月かけ、めでたく店頭に並ぶのである。 幻想郷にお越しの際はひとつ、ゆっくりのフォアグラをご賞味あれ。
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―――ここは幻想郷にある人里 この人里で、俺は便利屋として生計を立てていた。 趣味と実益を兼ねたゆっくりの駆除を行い、甘党な俺は仕事が終わったあとで頑張った自分へのご褒美(笑)に狩ったゆっくり達の餡子でスイーツパーティー(笑)を行うのが恒例行事であった。 しかし・・・最近人里で、とある噂が囁かれている。 「ゆっくり達が消えるのではないか」という噂だ。 幻想郷にある日突然現れた生物(?)であるゆっくり達は「ゆっくりしていってね!!!」という独特の鳴き声をしており、 人語も多少は解するが中身は餡子やらクリームやらであることから人里では甘味の材料として重宝されていた。 実際、以前は人里を少し離れれば頻繁に見かけられたゆっくり達がここ数週間殆ど見当たらないのだ。 本当に居なくなってしまうのだろうか・・・ まぁそれならそれで構わないし、ゆっくりが幻想郷に突如出現するまでは普通に農作業を手伝ったり、獰猛な野犬の駆除などをして生活していたのだ。 その生活に戻ったところで大して困ることも無いさ。 そんな事を考えながら過ごしていたある日、里の少しはずれの畑で農夫の手伝いをしていると森の方から大きな物音が聞こえてきた。 音のする方へ急ぐと、森の入り口に異様に大きなゆっくりまりさがどっしりと構えていた。 巨大ゆっくりまりさの近くにある若木から察するに、身の丈は六~七尺程であろうか・・・ゆっくりとしてはとんでもない巨体である。 俺と農夫が近づくと巨大ゆっくりまりさは声を張り上げて叫んだ。 「よくもまりさたちのおともだちをたくさんころしたね!!!まりさたちをゆっくりさせないにんげんたちはゆっくりしね!!!」 その言葉を発した直後、どこに隠れていたのか大量のゆっくりが「「「「ゆっくりしね!!!」」」」の掛け声と共に巨大ゆっくりまりさの元に現れた。 近頃ゆっくり達を見かけなくなっていたのは、この蜂起の準備をしていたせいなのだろう。 「・・・早く!あなたは里に戻って自警団に報告してください!」 俺はひとまず農夫をこの場から逃がし、ゆっくりの大群と相対した。 ボスまりさの後ろには様々な種類のゆっくりが群れを成している。その総数は二千は下るまい。 「「「ゆっくりしね!!!」」」 近くにいる十数匹のゆっくりが俺にいっせいに飛びかかってくる。 人間を滅ぼそうというゆっくり、それがこの数で飛びかかってきた。 「う・・・うぉわあぁぁぁああぁあああぁぁ!!!」 死ぬ、そう思った。 ボムッ、ボヨォン、ブニッ。「……あれ?」 と思いきや無傷、まったくの無傷であった。 数の多さと勢いで圧倒されるかと思ったが・・・よく考えれば所詮はただの饅頭である。殺傷能力などあろうはずもない。突進の速さも種族の名に違わずスロウリィ。 「・・・ふ、ふふふ、うふ、ふふふふふふ」 と、在りし日の魔法の森の白黒のような笑いがこみ上げてくる。 「ゆ?きもちわるいわらいかたするにんげんはゆっくりしんでね!」「ゆっくりじゃまするにんげんはゆっくりはやくしんでね!!!」 「がぁおー♪たーべちゃーうぞー♪」「ちーんぽ!!!」「わたしたちのあっとうてきせんりょくにぜつぼうしちゃったんだね!!!わかる、わかるよー!!!」 俺の様子を見たゆっくり達が騒ぎ立てるが、ゆっくり達が集まったところで全くの無力。 それを悟った俺には、もうこの状況が――― 「すいいいぃぃぃぃいいぃぃつ祭りィ・・・、開催じゃあああぁぁぁああぁぁああぁッ!!!!!みんなァッ!!!ゆっくりしていってねえぇっ!!!」 ―――もはや、大地一杯に広がる甘味畑にしか見えなくなっていた。 大声で「ゆっくりしていってね!!!」という言葉を聞いた途端に動きが止まるゆっくり達、これも種族の性か。 大地を蹴りゆっくり達の群れの中心に飛び込む。手当たり次第にゆっくりをつかみ上げて噛みちぎり、啜り尽くし、薙ぎ払い、踏み潰し、蹂躙する。 「おいちいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!最高でえええぇぇぇぇぇッス!!!」 気分がノってきて、すごく楽しくなってきた。やっぱりゆっくり狩りは最高だね!こんな楽しい事が無くなっても構わないなんて、 最近の俺はどうかしてたね!!!スイーツ(笑)最高おおおおおおおおおおおおお!!!」 「おじさんはゆっくりできてないよ!!!ゆっくりやめてね、こっちこないdぎゅbりゅぎッ!!!」 「ゆっぐりじだげっががごれだよ゙おおぉぉおおぉぉっ!!!」「もっど、ゆっぐり、ぢだがっだよおおおぉぉおおぉぉっ!!!」 「ぢぼっ、ぢんっ、ぢんぼおおおぉぉおおぉぉぉっっ!!!」「わがら゙な゙い、わがら゙な゙いよ゙おおおおぉぉおおおぉぉぉ!!!」 辺りに鳴り響く大量の断末魔、阿鼻叫喚とはこの事を言うのだろう。 「あ、肉まんはいいや、ポイだポイ。」言うと俺はゆっくりれみりゃの両腕を千切り取り、遠くへ投げ捨てた。 「あ゙あ゙あ゙があ゙あぁぁ゙!!い゙だい゙、いだいぃぃぃ!!!でみでゃのぷりぢーなおででがあ゙あ゙ぁぁあ゙ぁぁっ!!! ざぐやにいいづげでやどぅううぅぅ!!ざぐや!!ざぐやあ゙あ゙あ゙あ゙ぁぁぁ!!!」 投げ捨てた両腕に向かって飛んで行こうとするゆっくりれみりゃの両足を捕らえて地面に叩きつける。支える腕の無いゆっくりれみりゃは顔面から勢いよく地面に激突した。 「ぶぎゅる!!がぁおー!!!だべぢゃうぞおおおおおぉぉぉ!!!」 それでも闘志を失っていないのか、それともただやけっぱちになっているだけなのか、恐らくは後者であろう。この期に及んでまだ威嚇などしている。 これ以上時間をかけても面倒なので、手早く頭を踏み潰すと俺は再び他の甘味ゆっくりの蹂躙を始めた。 ひとしきりスイーツ(笑)を堪能し終えた頃、自警団や里の男達が鎌や鍬を携えてやってきた。 俺は里の者達と合流して残党ゆっくりの掃討を始めた。逃げ遅れたゆっくり達が残っている、こいつらも処分しなければ。 「どおぢでええええええええぇぇ…。」 「ゆぎぐがあああああああああああああああああ!!!!!」 残党をあらかた処分し終えた頃、ある事に気付いた。群れを統率していた巨大ゆっくりまりさの姿が見当たらないのだ。 「逃げたか・・・」 ゆっくりまりさ種は自分の身に危険が迫ると群れを犠牲にしてでも逃げる狡猾さで有名だ。 しかし所詮はゆっくり、まだそんなに遠くには逃げていない筈だ。幸いなことに、その巨体の重さ故に巨大ゆっくりまりさの移動跡は大きく荒々しい。 程なくして巨大まりさは自警団に発見・捕縛された。辺りを必死に逃げ回ったのだろう、所々皮が破れて中身が見えている。 「まりざはなにもわるいごどじでないよおおおおおおお!!!ごろずならほがのゆっぐりにじでねえええぇぇぇええぇぇっ!!!」 巨体から発せられる大声を間近で受けて、耳にキーンときた。 なにはともあれ、ここまで人間を恐れるようになってしまえば、もう駆除までの手間は普通のゆっくりまりさと大して変わらない。さっさとバラしてしまおう。 と、ここで巨大まりさの餡が露出した部分から濃く甘い匂いが漂ってきた。なぜだろう、さっきまでゆっくり達を喰い散らかしていたというのに唾液が止まらない。 中身の露出した部分へ腕を突っ込み、手で掬って口へ運んでみる。 「ゆ゙ぎぎぐうぅぅぅっっ!!?」 巨大まりさが耳障りな悲鳴を上げたが、俺はそんなものは意識に入っていなかった。 「これは・・・美味い!凄く甘くて美味い!!」 強烈な甘さ、それに特有の舌触り。この味は――― 「栗だ、こいつの餡は栗の味がするぞ」と、農夫が言う。 そう、栗の味がする。この巨大ゆっくりまりさの中身は通常のゆっくりと違って栗餡なのだ。 おせち料理の栗金団に入っているアレである。 「よし、こいつは持ち帰ってみんなで食べよう。今晩は宴会だァ!!!」 「「「「うおおォーーーッ!!!」」」」 ・・・でもまずは、この残骸を片付けないとな・・・。思い切って残業(笑) その後、生きたまま里へと持ち帰られた巨大ゆっくりまりさの中身の栗餡は里を挙げて行われた夜の宴会にて振舞われた。 ―――厨房にて 「もう・・・やべでええええええぇぇぇぇぇ・・・・・・」 特別に用意された十尺四方の檻の中で力なく抵抗する巨大ゆっくりまりさ、もはや暴れる気力も体力も無いようだ。 食べる時は栗餡の鮮度を保つため、食べる分だけを巨大ゆっくりまりさの背中に空けた穴の中からへらを使ってこそぎ取る。 「ゆぎゃが゙あ゙ぁぁぁあ゙ぁ!!!や゙め゙っ、ゆ゙るじでぇぇぇぇぇ…ま゙りざのながみ…なぐなっぢゃうのほお゙お゙お゙ぉぉお゙お゙ぉ…!!」 「こいつは・・・すごいな」ゆっくり加工所勤務の友人が言う。 「そんなにすごいのか?」 「ああ、このゆっくり、エサを口に入れたそばからどんどん消化して栗餡にしてるよ。この特異体質のせいで今まで野性で生き続けられたんだなぁ。これなら死なない程度に餡を取って、エサを与え続ければかなり長い間餡が採れそうだ。子を産ませるのも良いかもな。」 ふたりの会話を聞いた巨大ゆっくりまりさは悟った。「もう自分は二度とゆっくりできない」と。 (ゆっくりしたけっかが・・・・・・これだよ・・・・・・) きっとこれからも、ゆっくりは人間達に搾取され続けるのだろう。スイーツ(笑) このSSに感想を付ける
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がさ。 がさがさがさ。 「ん……?」 何やら耳元で音がする。 不快感を呼び起こす騒音に、眠気が少しずつ引いていく感覚。 瞼越しに伝わる光量からすると、時刻は丁度目覚めるのにいい時間帯だろうか。 がさがさがさがさがさがさがさ。 しかしなんだこの音は。 まるで何かが這いずり回っているような…… 「…………うぉっ!?」 目を開けた瞬間映った光景に、俺は驚いて跳ね起きた。 俺の周囲、円状に集まっている、虫の大群。 カブトムシやらコオロギやらゴキブリやら、その種類は半端なく多い。 生理的嫌悪を催す光景に、鳥肌がぷつぷつ浮かび上がる。 こんなことを仕出かす犯人を、俺は一人しか知らない。 「リ、リグルちゃんか……!」 朝の目覚ましモーニングサービスだかなんだかで、こういう事業を始めたことは知っていたが。 ちゃんと丁重にお断りしておいたのになぁ。 後で文句言わないと…… 「こ、こっちに来ないでね! ゆっくり離れてね!」 「……ん?」 何やら慌てた声が聞こえ、俺は声がするほうを向いた。 「ま、まりさは美味しくないよ! ゆっくりしないでどっか行ってね!!」 昨日、透明の箱に閉じ込めたゆっくり魔理沙。 その周囲に、虫たちが群がっていた。 「ゆ、ゆーっ!!?」 「れいむたちはごはんじゃないよぉー!!?」 「ゆっくりできないよぉぉぉ!!!」 赤ちゃんゆっくり霊夢の周囲にも、虫たちが興味津々といった様子で集まっている。 赤ちゃんゆっくりたちは可哀相にすっかり怯えてしまい、中央に固まってゆーゆー泣いていた。 ちょっと萌える。 「お、お兄さん、ゆっくり助けてね!」 そして我が愛しのマイペット、ゆっくり霊夢は眠りから眠りから覚醒した俺に気付き、必死に助けを求めていた。 むっ、これはいかん。 俺は虫を踏まないよう慎重に足元を確認しながら、ゆっくり霊夢を閉じ込めた透明箱を抱え上げ、テーブルの上に避難させた。 「お、お兄さん、魔理沙たちも助けてね!!!」 「おに゛いざん、ゆ゛っぐり゛ざぜでぇ゛ぇ゛ぇ゛!!!」 他のゆっくりたちからも救助の声が上がるが無視。 だってこいつらの泣き顔見るのが超快感なんだもん。 涙を流しながら必死な表情で右往左往しているゆっくりは、鼻血が出そうなほど可愛いと思う。 こんな光景が見られたのなら、虫たちに少し感謝してもいいくらいだ。 俺は赤ちゃんゆっくり霊夢の箱を開けると、一匹だけ取り出した。 「ゆっ、たかいたかーい♪」 「あ、いいな!」 「れいむたちもたすけてね!」 虫たちの包囲網から救出してもらえたと思ったのだろう、俺に掴まれた赤ちゃんゆっくり霊夢が歓声を上げ、他のゆっくりたちが文句を言う。 俺はにこりと微笑むと、足元でうぞうぞしている虫たちに優しい声で言った。 「お前たち、餌をやるぞ」 「……ゆっ?」 何を言ってるのか分からない、といった感じの赤ちゃんゆっくり霊夢。 俺はそいつが理解するよりも早く、手の中のゆっくりを床にぽとりと落とした。 「ゆっ、ゆ゛ーーーっ!!?」 途端、涙声で逃げ出そうとする赤ちゃんゆっくり霊夢。 虫たちはそれなりに頭が良いのか、いきなり襲い掛かろうとはせずに、逃げ場を少しずつ埋めるように移動していく。 「や、やめてね! 赤ちゃんを助けてね!!!」 ゆっくり魔理沙の慌てた声。 俺はそんなゆっくり魔理沙に指をびしりと突きつけた。 「問題!」 「ゆっ!?」 「ゆっくりアリスは一度の交尾で、ゆっくり魔理沙との子供を六匹作ることが出来ます。七度ゆっくり魔理沙に襲い掛かったら、何匹子供が生まれるでしょうか?」 「ゆゆっ!? まりさは七回もこども生めないよ!?」 「はい、スタート。答えられたら子供は助けてやる」 有無を言わさず開始宣言。 ゆっくり魔理沙は悩みだすが、ゆっくりアリスに襲われる自分を想像してしまうのだろう、時々小刻みにぶるぶる震えていた。 俺は残り五匹となった赤ちゃんゆっくり霊夢たちに近付き、力付けるように言う。 「お前たちのお母さんがあのゆっくり霊夢を助けてくれるみたいだぞ!」 「ゆっ、本当!?」 「で、でも……」 一瞬明るい表情を見せる赤ちゃんゆっくりたちだが、すぐに暗い顔で俯いてしまう。 昨日、妹の一人が見捨てられた(実際は無理難題だったわけだが)ことを思い出したのだろう。 「まぁ、信じてな」 俺はそう言って、虫たちの群れに放り込んだ赤ちゃんゆっくり霊夢を観察し始めた。 涙目でぴょんぴょん飛び跳ねながら、全力で逃げようとしているその姿は果てしなく愛らしい。 しかし逃げようとした矢先に虫たちに回り込まれ、別の方向に逃げようとして、やはり回り込まれる。 ……む、面白い趣向を思いついた。 俺は机の引き出しから下敷きを取り出すと、姉妹である赤ちゃんゆっくり霊夢たちの閉じ込められている箱まで下敷きを使って虫を払い除け、道を作ってあげた。 「れいむ、こっちだよ!」 「ゆっくりしないでこっちにきてね!」 「ゆっ、れいむがんばるね!」 姉妹たちの声に勇気付けられ、赤ちゃんゆっくり霊夢は必死の力で床を飛びはね、箱に近付いていく。 しかし後ろから、どんどんと迫る虫たち。 まだ外の世界にいたころ、金曜ロードショーで見たアニメに出てくる王蟲の大群を思い出す光景だ。 やがて赤ちゃんゆっくり霊夢は見事に箱の前に辿り着いた。 が、しかしそこはやはりゆっくりブレインだった。 「ゆっ!? 中に入れないよ!!?」 そう、それが箱である以上、壁の内側に入れないのは当然なわけで。 ようやく姉妹の所に戻れてほっとしたのも束の間、赤ちゃんゆっくり霊夢は涙目で壁に体当たりを始める。 「いれて! そのなかにいれてよ!」 「ゆゆっ、はいれないの!?」 「どうすればいいの!!?」 身体に似合わない滂沱の涙を流しながら、身体を寄せ合うゆっくりの姉妹。 だけどその間は境界を分かつ絶対的な壁が存在し、まるで天国と地獄の様相だ。 そうこうしているうちに、とうとう痺れを切らした一匹の虫が、赤ちゃんゆっくり霊夢にかぶりついた。 「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅぅっ!!?」 悲鳴。 齧られたのは表面を少しだけ。だが黒い餡子がちょっとだけ漏れ出る。 それまで外の姉妹を何とかしようと壁に張り付いていた赤ちゃんゆっくりたちは、その光景にドン引きしたかのようにゆっくりらしくない素早さで後退した。 「ゆ゛っ!? い゛がな゛い゛でぇぇぇ!!!」 心の支えであっただろう姉妹の身体が遠く離れてしまったことに、赤ちゃんゆっくり霊夢は絶叫する。 そんなゆっくりに追い討ちをかけるように、他の虫たちも赤ちゃんゆっくり霊夢に群がり、ほんの少しずつ咀嚼する。 仲間意識があるのだろう、統率された虫たちの行動は訓練された兵隊のように澱みなく、抜け駆けして丸呑みしようとする虫一匹現れない。 仲間たちにきちんと行き渡るよう、一度噛み付いたらすぐに離れ、別の虫に場所を譲る。 だが赤ちゃんゆっくり霊夢からしてみれば、これ以上ないくらいの嬲り殺し、永遠に続くかのような拷問だった。 「れ゛いむ゛のあ゛んこだべな゛い゛でぇ゛ぇぇ!!! ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉっ!!!」 聞いてるこっちまで痛みが伝わるような慟哭。 箱の中で震える赤ちゃんゆっくりたちは、涙に塗れた瞳を母親へと向ける。 「おかあさん、はやくしてね!」 「いもうとをたすけてね!!!」 だがゆっくり魔理沙は、青ざめた顔で動かない身体の代わりに眼を忙しなく震わせるだけだった。 「さ、さんかいめでじゅうはちひき、よんかいめで……ゆーっ!! よんかいもできないよぉぉぉ!!!」 発情したゆっくりアリスの幻影でも浮かんでいるのか、イヤイヤするようにその身体を揺り動かす。 虫たちの餌になっている赤ちゃんゆっくり霊夢は、既に身体が半分になっていた。 「ゆっくりしたけっかがこれだよ……」 そして、トドメなのだろう。 壁際から虫たちの中心に運ばれた赤ちゃんゆっくり霊夢は、虫たちに一斉に飛び掛られ、その短い生涯を終えた。 「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっっ!!!!!」 今際の際の悲鳴。 どれだけ苦しかっただろうか。 まだ生きたかっただろうに。 またも姉妹を失った悲しみに、赤ちゃんゆっくり霊夢たちは声を上げて泣いた。 そこに間髪入れず、俺が囁く。 「あーあ、またお前たちのお母さんは答えられなかったな」 びくり、と赤ちゃんゆっくりたちの身体が震える。 「答えられたら、あのゆっくりもお前たちと再会出来てたのになぁ。虫に食べられることなく、お前たちとゆっくり出来たのになぁ。お母さんが問題に答えさえしてればなぁ……」 成人したゆっくりだったら、そもそも先程の赤ちゃんゆっくり霊夢を虫たちの中に放り込んだ俺を糾弾していたかもしれない。 だが未だ幼稚な頭脳しか持たないゆっくりたちは、俺の言葉に見事なまでに惑わされ、ふつふつと母親への怒りを充填させていく。 「ひどいよおかあさん!」 「おかあさんがれいむのかわりにしねばよかったのに!!」 「おかあさんはゆっくりしないでしんでね!!!」 昨夜よりも激しい母への憎悪の発露。 あまりに理不尽すぎる状況と、それでも回答出来ていたら子供は助かっていたはずという罪悪感で、ゆっくり魔理沙は狂ったように泣き叫ぶ。 「や゛め゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇっ、お゛があ゛ざん゛にぞんな゛ごどい゛わ゛な゛い゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ!!!」 ゾクゾクゾクゾク!!! 背筋に走る衝撃。全身を包み込む恍惚感。 ゆっくりが泣く姿は、どうしてこう、俺に充足感を与えてくれるかなぁ!? 心の内より溢れて垂れ流さんばかりのこの感情を何と呼べばいいのだろう。やはり萌えだろうか。 俺は笑いを抑えることが出来なかった。 一息つき、虫たちが帰ったところで朝食の準備に取り掛かる。 台所から立ち上る香ばしい匂いを呼吸用の穴から嗅ぎ取ったゆっくりたちは、涎を垂らして俺に催促し始めた。 「ゆっくりたべさせてね!」 「おなかすいたよ!」 「たくさんちょうだいね!」 やれやれ、さっき家族が死んだばかりだというのに切り替えの早い奴らだ。 俺は人間二人分の料理を完成させると、一つはテーブルの上に乗せ、もう一つを半分にしてゆっくり霊夢の箱の中に入れた。 ゆっくり霊夢の箱は大きいので、箱の中でそのまま食事をすることが可能なのだ。 ゆっくり霊夢は何か言いたげに俺を上目遣いに見つめていたが、結局無言のまま料理に口をつけ始めた。 頭のいい奴。だから大好きなんだ。 そしてもう半分を床に置き、米粒を五粒だけ掴むと、赤ちゃんゆっくりの箱の中に投げ入れた。 「ほら、朝食だぞ」 「ゆっ、すくないよ!?」 「もっとたくさんちょうだいね!」 目の前にお腹いっぱいになれるだけの料理があるのに、何故これっぽっちしか貰えないのか。 空腹を抱えた赤ちゃんゆっくり霊夢たちはゆーゆー文句を言って飛び跳ねる。 俺はその声を無視して、ゆっくり魔理沙の箱に近付いた。 相変わらず大きさが不釣合いの箱の中に押し込められたゆっくり魔理沙は、息苦しそうに呻いている。 顔面を変形させ、いつもの小生意気な顔から今にも屋上から飛び降りて自殺するいじめられっ子のような弱々しい顔をしたゆっくり魔理沙は、相変わらず俺の心を掴んで放さない。 しばらく眺めていたい衝動に駆られるが、そこはぐっと我慢。 箱に顔を近づけ、赤ちゃんゆっくりたちに聞こえない程度の声量で、そっと耳打ちする。 「今からお前を箱から出してやるが、もし妙な真似をしたり何かおかしなことをしゃべったりしたら、お前ら全員加工所送りにしてやる」 「ゆっ……」 「妙なことさえしなければ、ちゃんと朝食を食べさせてやる。分かったなら二秒間だけ目を閉じろ」 ゆっくり魔理沙は数瞬視線を彷徨わせた後、言われた通り目を閉じた。 よしよし、計画通り。 俺はゆっくり魔理沙を箱から出してやった。 窮屈な箱から解放され、ゆっくり魔理沙はしばらく床を跳ね回る。 「すっきりー!」 だが、すぐにハッとした様子で、慌てて赤ちゃんゆっくりたちの元へ向かおうとする。 「おっと」 だが俺はゆっくり魔理沙の頭を掴み、それを阻止する。 「ゆ、ゆーっ!!?」 何をするんだ、と言わんばかりに俺に講義の視線を向けるゆっくり魔理沙。 しかし俺が加工所、と小声で囁くと、すぐに大人しくなった。 「さぁ、朝食の時間だ。たんとお食べ」 俺はわざわざ赤ちゃんゆっくりたちの前に置きなおした朝食の前に、ゆっくり魔理沙を持ってくる。 野菜炒めや焼き魚など至って普通のメニューではあるが、ゆっくりにとって野生にいたころからは考えられないご馳走だろう。 ゆっくり魔理沙にとって――勿論、赤ちゃんゆっくり霊夢にとっても。 「おかあさんだけそんなにいっぱい、ずるいよ!」 「れいむたちにもわけてね!」 予想通り、何も貰っていないも同然の赤ちゃんゆっくりたちが俄かに騒ぎ出す。 ゆっくり魔理沙はおろおろした様子で、俺を見上げた。 「ま、まりさはいいから、このごはんは赤ちゃんにあげてね!」 「駄目だ」 しかし、俺はぴしゃりと遮る。 「お前が全部食うんだ」 「で、でも」 「さもないと……」 ゆっくり魔理沙は慌てて食べ始めた。 最初は遠慮がちだったが、やがてゆっくりとしての本能が現れ始めたのか、 「うっめ!!! メッチャうっめこれ!!!」 と下品にがっつき始める。 それを見て不満が出てくるのが、無論赤ちゃんゆっくりたちである。 自分たちはこれだけしか食べてないのに、何故お母さんはあんなに食べられるのか? 自分たちの姉妹を見殺しにした母だけが、何故!? 憎悪と殺意が満ち満ちた視線で、己の母親を睨みつける。 「なんでれいむたちにごはんくれないの!!?」 「ゆっくりできないよ!!!」 「ゆっくりできないおかあさんはしねっ!!!」 「「「ゆっくりしねっ!!! ゆっくりしねっ!!!」」」 「ぞん゛な゛ごどい゛わ゛な゛い゛でぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇっ!!!」 謂れの無い中傷を浴びて、ゆっくり魔理沙は大泣きしながら子供たちの下に駆け寄ろうとする。 だけど俺がきっちりガード。言うこと聞かなかったお仕置きとして、赤ちゃんゆっくりたちから見えない角度でゆっくり魔理沙の背の皮を抓り上げた。 「ゆ゛ぐぅぅぅっ!!?」 「そのまま食事を続けろ。それと、食べ終わったら子供たちに向かって今から俺が言う台詞を言うんだ。いいか――」 「――ゆっ!? そんなこと言えないよ!!!」 「じゃあ、全員加工所送りだな」 「……」 ゆっくり魔理沙は気落ちした様子で、食事を再開した。 止まらない、子供たちからのブーイング。誤解を解くことの出来ないこの状況、親としてどんな気持ちで受け止めているのだろうか。 昨日まで、この家族は幸せの中にいたのだろう。 家族全員でゆっくり出来る、素晴らしい毎日を過ごしていたに違いない。 それが、今ではどうだ。 子供七匹のうち二匹が死に、しかもその責任を負わされ、弁解するチャンスもない。 ゆっくりが、ゆっくりすることが不可能なこの状況。 最高だ。 ゆっくり魔理沙は朝食を食べ終わると、赤ちゃんゆっくりたちのほうを振り向いた。 数秒、躊躇する。 だが俺が少し手を動かすそぶりを見せると、諦めたのか、早口に捲し立てた。 「美味しかったよ! れいむたちはそこでゆっくり餓死していってね!」 「――っ!!!」 怒りを覚えながらも、それでも心の片隅で、信じ続けていたお母さん。 赤ちゃんゆっくり霊夢たちの中で、その信頼という形が、ガラガラと音を立てて崩れ去るのが、俺にもハッキリ伝わった。 「ゆっ……ゆ゛っ……!!!」 「ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉっ!!!」 「な゛ん゛でぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛ぉ゛ぉぉぉっ!!?」 「お゛があ゛ざんな゛んでも゛う゛おがあ゛ざん゛じゃな゛い゛よぉぉぉ!!!」 「ゆ゛っぐり゛じな゛い゛でじん゛でね゛っ!!!」 「も゛う゛がお゛も゛み゛だぐな゛い゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉぉっ!!!」 怒号。悲鳴。絶叫。 ありとあらゆる不の感情の放出。 そしてそれに晒される、ゆっくり魔理沙。 「あ゛っあ゛あ゛ああああ゛あ゛あああ゛あ゛あ゛ああああ゛あ゛ああ゛あ゛あああ゛あ゛あぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁ゛ぁ゛ぁぁぁ゛ぁぁぁ゛ぁ゛ぁぁっっっ!!! 一生分とも呼べそうな涙を流し、身を引き裂かれるような心の苦痛でじたばた暴れまわる。 きっと、伝えたいのだろう。 自分が親として、どれほど子供を愛しているのか。 子供が死んでしまったとき、どれだけ哀しみを共有したかったのか。 だけど、言えない。 言ったら、それこそ全てが潰える。 伝えたい、だけど伝えられない、極限のもどかしさ。 「――!!!」 これだ。 俺が求めていたものは。 俺が見たいのは『必死』なゆっくり。 そしてこのゆっくり魔理沙は、他のどのゆっくりも、究極的に『必死』だった。 その後、俺は加工所に赴き、『あるもの』を入手してきた。 その正体は後ほど披露するとして、その前に仕込みをしておかなければならない。 俺はお菓子を与えることを条件に、赤ちゃんゆっくり霊夢たちの生まれた順番を教えてもらうことにした。 そしてその順番通り、赤ちゃんゆっくり霊夢のリボンにマジックで番号を振る。 「ゆゆっ!? れいむのりぼんにいたずらしないでね!」 とか言われたけど無視。 ちなみに最初に死んだのは六女、先程虫に貪られたのは四女らしかった。 現在、箱の中には赤ちゃんゆっくり霊夢1、2、3、5、7の五匹が身を寄せ合って「ゆっくりできないよ!」と騒いでいる。 ゆっくり魔理沙はまた狭い箱の中に閉じ込めた。ご飯をたらふく食べた分体積が増えたので、苦しさが増したようだった。 ゆっくり霊夢は他のゆっくりたちを助けるよう呼びかける声が五月蝿くなってきたので、申し訳ないと思いつつも猿轡を噛まさせてもらった。 後で好物のハンバーグを食べさせてあげるから許して欲しいところである。 「さて、と」 どうせなら、全部奇数にしてみるか。 俺は2の番号が書かれた赤ちゃんゆっくり霊夢を摘み上げた。 「ゆーっ!?」 「おねえちゃーん!」 「お、おにいさん、おねえちゃんをゆっくりはなしてね!」 姉妹たちがぴょんぴょん飛び跳ねて阻止しようとするが、赤ちゃんゆっくり霊夢2は既に俺の手の中だ。 いや、しかし冷静に見てみるとやっぱり可愛いよなこいつら。家を荒らさなければ思いっきり愛でてやったのに。 俺は赤ちゃんゆっくり霊夢2を床に降ろすと、加工所からの帰り道で拾った木の枝に糸と爪楊枝を結びつけただけの即席釣竿を構える。 そして赤ちゃんゆっくり霊夢2のリボンを解くと、素早く爪楊枝に結びつけた。 「ゆっ!? れいむのりぼんかえしてね!」 ゆっくりにとって、付けている装飾品を奪われることは死活問題に繋がる。 人間にとってゆっくりたちが身に付けている装飾品はただ食べられる素材で出来た食品に過ぎないが、ゆっくりたちにとって装飾品は固体を区別するための重要な機能らしい。 装飾品を奪われたゆっくりは目の前で奪われたのを目撃された場合のみを例外として、大抵ゆっくりたちから『ゆっくり出来ない存在』として忌み嫌われることになる。 理由はよく分からないが、そういうものらしい。 たとえ親兄弟だろうと、装飾品を奪われたゆっくりはその時点で『他人』となり、場合によっては暴力を振るわれることすらある。 だからゆっくりたちは装飾品に触れられることを嫌がり、取られた場合は取り返すために躍起になり、酷い時は他のゆっくりの装飾品を奪うこともあるという。 ちなみに死んだゆっくりの装飾品はその時点で死臭のようなものが漂い、身に着けてもすぐにバレるらしかった。 まったく、ゆっくりの生態はワケが分からなくて興味深い。 「かえしてね! ゆっくりかえしてね!!」 赤ちゃんゆっくり霊夢2はジャンプして爪楊枝に結びつけたリボンに食いつこうとするが、俺はギリギリのところで枝を固定しているため、届かずに落下してしまう。 「ゆ、ゆーっ! とどかないよ、どうしてー!?」 無駄な努力だと気付かず、半泣きでリボンに飛び掛る赤ちゃんゆっくり霊夢2。 うはー、かーわえー。 今俺の中では今すぐリボンを返して慰めたい気持ちとこのまま必死なゆっくりを観察したい気持ちが大体4 6くらい。 別にゆっくりが憎くてこんなことしてるわけじゃないしな。 ゆっくりは普通に可愛いと思う。 そして可愛いからこそ、こうして悪戯をしたいと思うのだ。 「ほらほら、どうしたー? もう少しで届くぞー」 「いじわるしないでかえしてね!」 息を切らしながらも、それでも死活問題なので意味の無い苦労を重ねる赤ちゃんゆっくり霊夢2。 姉妹ゆっくりたちも、その光景を固唾を呑んで見守っている。 目の前でリボンを取ったから一応姉妹だということを認識しているらしい。このままリボンを取り返せなかったら姉妹扱い出来なくなるから頑張って欲しい、といったところか。 ゆっくり魔理沙は体積が大きくなった分、箱の中の酸素が薄くなってしまったからか、とても息苦しそうだった。 おっと、これはいかん。 俺はゆっくり魔理沙の箱の蓋を開き、ゆっくり魔理沙の口が蓋側になるよう調節してやった。 「ゆ?」 困惑した様子で俺を見つめるゆっくり魔理沙。助けてもらえたのは嬉しいが、何故お兄さんがそんなことを、といった表情だ。 俺はにこりと微笑むと、爪楊枝からリボンを引き抜き、呼吸のために大きく口を開けていたゆっくり魔理沙の口内に放り込んだ。 「ゆっくり!?」 慌てて吐き出そうとするゆっくり魔理沙を押さえつけ、口が箱に押し付けられるような位置に調整し直す。箱内部はキツく狭いので、これで口を開くことは出来まい。 そして俺は一連の光景を呆然とした様子で眺めていた赤ちゃんゆっくり霊夢に、わざとらしいくらい大袈裟に言った。 「わー、お前のお母さん、お前のリボン飲み込んじゃったぞ!」 「ゆっ!? ……ゆっ……」 「リボンを失ったゆっくりがどうなるか、勿論お前のお母さんが知らないわけないよなぁ? つまり、お前のお母さんは、知っててわざと飲み込んだんだな!」 「んーっ、んんーっ!!?」 違うよ、間違いだよ、といった風に身体を小刻みに揺らすゆっくり魔理沙。己の口で俺の言い分を否定したいに違いない。 リボンを外して口に入れたところをちゃんと目撃したよね、と言いたいのだろう。 だが、赤ちゃんゆっくり脳の単純さを侮ってはいけない。既に母への信頼が0になっていたところに、俺の言葉が乾いた大地に落とした水のように染み渡ったのだ。 赤ちゃんゆっくり霊夢2にとって、俺はもう眼中に入っていない。こいつにあるのは『母が自分のリボンを食べた』その一点だけだ。 「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅう゛う゛うう゛ううう゛うぅぅ゛ぅ゛う゛ぅ゛ぅ゛ぅう゛うぅ゛ぅ゛ぅぅぅ!!!」 赤ちゃんゆっくり霊夢2は涙と共に絶叫を上げ、ゆっくりにあるまじき凄まじい怒りの表情で母の入った箱に体当たりを仕掛けた。 「ひどい゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉ!!! ゆ゛っぐり゛じね゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇ!!!」 壁に当たって跳ね返っても、また果敢に体当たり。 ゆっくりとしてのアンデンティティを奪った相手を完全に抹殺しようとする、野生の生物としての本能。 憤怒。憎悪。殺意。 そしてそれらの悪感情を一心に浴びせられるのは、 「ん゛んっん゛ん゛ん゛ん゛んんんっー!!!」 今までこの赤ちゃんゆっくりを愛情込めて育て上げた母、ゆっくり魔理沙だ。 これまでの遠くから罵声を浴びせられる、ある意味まだ余裕があった間接的攻撃と比較して、これは直接自分を害しようとする行為を見せ付けられる最上級の拷問だ。 嗚呼、このゆっくり魔理沙の絶望と傷心と阻喪の入り混じったこの表情をカメラに保存して一生残しておきたいっ! 人はこのゆっくり魔理沙を哀れに思うだろうか。 でもしょうがないよね。 悪いことしたのはあっちだし。 この状態で赤ちゃんゆっくり霊夢2が家から逃げ出そうとすることはないだろう。 そう考えた俺は、一旦家の外に出ることにした。 扉の横には、加工所で購入した大小二つの箱が置いてある。 俺はそのうち、小さな箱を手に抱えた。 大きさは掌に収まるサイズ。 遠目から見れば結婚指輪を収納するアレに似ているかもしれない。 もっとも、中に入っているものはそんな幸せアイテムとは似ても似つかないものなのだが…… 「ゆ゛っぐり゛じな゛い゛でじね゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇ!!!」 扉を開けて家に戻ると、まだやっていた。 昨夜から今に至るまでで、ゆっくり魔理沙の精神はどれだけ磨耗しただろうか。 虚ろな眼でただ虚空を眺めているだけの生物になりかけている。 これ以上は危険だな。 破壊してしまっては面白さが半減どころの騒ぎではない。 まだ赤ちゃんゆっくりはたくさんいるのだ、これが終わったら少し休憩にしよう。 俺は体当たりを続けている赤ちゃんゆっくりを摘み上げ、その身体に糸を巻きつけ始めた。 身体を縛るロープ代わりである。 「ゆっ!? はなしてね!」 赤ちゃんゆっくり霊夢2は俺の手からぴょんと逃れて離れようとするが、糸の長さまでしか遠くに行くことが出来ない。 糸がぴんと張ったところで無様にぶしゃっと床に潰れ、ゆーゆー泣き始めた。 「それじゃ、ご開帳っと」 糸の先を左手の小指に巻きつけ、俺は外から持ってきた箱を開けた。 中に入っているのは、 「ちょっと、とかいはのありすをはやくだしなさいよね!」 生後まだ二週間にも満たない、赤ちゃんゆっくりアリスである。 大きさは赤ちゃんゆっくり霊夢2よりほんの少し大きな程度。 俺はその赤ちゃんゆっくりアリスの身体に、赤ちゃんゆっくり霊夢2と同じように糸を巻きつける。 「な、なにするのよ、ゆっくりできないじゃない!」 ぶーぶー文句を垂れる赤ちゃんゆっくりアリス。 だけど俺が用があるのはプライドの高い普通のゆっくりアリスではなく、他のゆっくりから恐れられている性欲魔人としてのゆっくりアリスである。 俺は糸の先を今度は右手の小指に巻きつけると、赤ちゃんゆっくりアリスの身体を人差し指で揺すり始めた。 「ちょ、ちょっと」 最初は嫌がって離れようとする赤ちゃんゆっくりアリス、だが次第に熱を帯び始め、呼吸が荒くなっていく。 ゆっくりを発情させることはゆっくり霊夢にやってあげているので日常茶飯事だが、発情しがゆっくりアリスの様子はゆっくり霊夢のそれとは大分違っていた。 口元のゆるみっぷりは半端無く、熱も溶けるんじゃないかってくらい上昇している。息も荒く、重い病気にかかった人間のようだ。 そして何よりも、目がヤバい。白目の部分を血走らせ、獲物を探して右往左往している瞳の動きは、はっきり言って気持ち悪いを通り越して、怖い。 「ゆっ、ゆっ、ゆっ、ゆっ!!!」 指を離そうとしたら、物凄い勢いで擦り寄ってきた。俺の指を孕まそうとしてるんだろうか。 俺は若干の恐怖を感じながら、赤ちゃんゆっくりアリスを箱から出して床に降ろしてやった。 すっかり発情した赤ちゃんゆっくりアリスの視線の先には、先刻から繋がれた糸をどうにかしようとぴょんぴょん飛び跳ねていた、赤ちゃんゆっくり霊夢2の姿。 「れ、れれれ、れ゛い゛む゛ぅ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅ!!!」 「ゆ、ゆゆっ!!?」 とても成熟していない赤ん坊とは思えぬ素早さで赤ちゃんゆっくり霊夢2に襲いかかろうとする赤ちゃんゆっくりアリス、赤ちゃんゆっくり霊夢2はその剣幕にビビって逃げ出そうとする。 ピン。 「ゆべっ!?」 糸が最大限まで張り詰められ、赤ちゃんゆっくり霊夢2は勢いよく転倒する。 その間に距離を詰める赤ちゃんゆっくりアリス、その口からはご馳走を前にした獣のように涎が溢れまくっている。 「が、がわ゛い゛ぃい゛い゛いよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉ゛ぉぉれ゛い゛む゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅぅ!!!」 「ゆーっ!?」 まさに絶体絶命、赤ちゃんゆっくり霊夢2が慄いて悲鳴を上げる。 赤ちゃんゆっくりアリスは狂気の目で、赤ちゃんゆっくり霊夢2に飛び掛った。 「り゛ぼん゛の゛な゛いれ゛い゛む゛もぞう゛じゃな゛いれ゛い゛む゛もあ゛り゛ずの゛ごども゛をう゛ん゛でぇぇぇぇぇぇ!!!」 ピン。 「れ゛い゛っむ゛ぐぅ゛!?」 しかし、ギリギリの位置で糸が届かず、赤ちゃんゆっくりアリスも転倒してしまった。 「ど、どう゛じでぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇ!!? ごう゛びざぜでよ゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉ!!?」 涙を溢れさせながら、それでも相手を孕ませるために前に出ようとする赤ちゃんゆっくりアリス。赤ちゃんゆっくり霊夢2からすれば、恐怖以外の何者でもない。 「さて、今こうして俺が糸を持っているから、均衡が保てているわけですが」 俺は奇妙な静止状態に陥った空間に、静かに言い聞かせるように告げる。 「俺がこうして少しでも糸を緩めると」 言いながら、赤ちゃんゆっくり霊夢2の糸を結びつけた小指を少しだけ前に出してやる。 「ゆっ、はなれたよ!?」 その分糸にゆとりが出来、赤ちゃんゆっくり霊夢2は危機からほんの少しだけ遠ざかることになった。 ゆっくりアリスは歯をギリギリ食いしばって悔しがっている。怖っ! 「逆にこっち側の糸をゆるめると」 今度は右手を前に。 すると赤ちゃんゆっくりアリスを押さえつけていた糸が緩み、ゆっくりアリスは猛牛のような勢いで赤ちゃんゆっくり霊夢2に接近する。 最初の時に比べてかなり近付いており、吐く息がお互いに届くくらいだ。 だけどくっつくことはかなわない。流石俺、ナイス調節。 「こうなるわけだ」 「や、やめてね! ありすのいとをゆるめないでね!」 赤ちゃんゆっくり霊夢2が涙声で俺に訴えかける。 当の赤ちゃんゆっくりアリスは既に相手を妊娠させること以外頭にないのか、俺の言葉が耳に届いていないようでハァハァ言いながらじっと赤ちゃんゆっくり霊夢2だけを見つめていた。 こいつ本当に赤ちゃんなのか? まったく、ゆっくりアリスという種族は末恐ろしい。 「では、ここで問題です」 俺は膠着状態に陥った二匹をしばらく観察した後、足で器用にゆっくり魔理沙の入った蓋を開けた。 そのまま足先でゆっくり魔理沙の身体を回転させ、口をしゃべれる位置にまで持ってきてやる。 勿論、ジャンプして逃げられないように押さえつけるもの忘れていない。 「ゆっくり魔理沙が答えられたら赤ちゃんゆっくり霊夢の糸をゆるめてあげます。間違えたなら赤ちゃんゆっくりアリスの糸をゆるめてあげます」 「ゆ……」 ゆっくり魔理沙はまたか、とでも言うように眉を顰めた。 だけど娘の命がかかっている。どうせ選択権もないし、やらざるを得ない状況だ。 ゆっくり魔理沙は何か言おうと口を開きかけ、 「やめてよね!」 と、怒りの篭った声が割り込み、口を噤んだ。 驚いてそちらを見ると、そこには赤ちゃんゆっくりアリスから少しでも離れようと身体をひしゃげながら、母に敵意を向ける赤ちゃんゆっくり霊夢2の姿があった。 「おかあさんがこたえたられいむしんじゃうもん! ゆっくりできなくなっちゃうよ!」 「そ、そんなことないよ! おかあさんはれいむのために」 「だまっててね!」 キッ、とキツい視線を浴びせられて言葉を詰まらせるゆっくり魔理沙。 やがて、じわじわとまた涙が溢れ出してくる。 「ど、どう゛じでぞん゛な゛ごどい゛う゛の゛ぉ゛ぉ゛ぉぉぉ!!?」 「おかあさんがいるとゆっくりできないからだよ! おかあさんはゆっくりしね!」 吐き捨てるような口調。 今まで黙ってことの成り行きをハラハラと見守っていた他の赤ちゃんゆっくり霊夢たちも、賛同したように口を揃えて非難の声を上げた。 「そうだよ、おかあさんはゆっくりしね!」 「いもうとをかえしてね!」 「おかあさんのせいでぜんぶこうなったんだ!」 「おかあさんはもうゆっくりしなくていいよ、ゆっくりしないでとっととしんでね!」 リボンを失って少し時間が経過したゆっくりより、子供を裏切った母への怒りのほうが大きいようだった。 ここに、ゆっくり魔理沙の味方は一人もいない。 そろそろ『そんなれいむたちはまりさのこどもじゃないよぉぉぉ!』とキレるかと思いきや、俺が思ってた以上にゆっくり魔理沙はあくまでも母親だった。 「はやくもんだいだしてね!」 罵声の雨の中、それでも我が子を守ろうとするゆっくり魔理沙の姿に、俺はちょびっとだけ感動してしまった。 まぁ、全員助かった後で説明したらきっと分かってもらえるだろうという、ご都合脳なだけなのかもしれないが。 でも心を動かされたのは事実なので、問題は簡単なやつにしてやろう。 「では問題。答えは簡単、身体が弱くて喘息気味のゆっくり種といえば何でしょう?」 「ゆっ! 答えはぱちゅりーだよ!」 自信満々の回答。余程答えに間違いがないと確信しているのだろう。 ゆっくり魔理沙は今までの陰鬱な雰囲気はどこへやら、明るい表情で「さあ、赤ちゃんをたすけてね!」とのたまっている。 赤ちゃんゆっくり姉妹も、そんな母親を驚いた、だけど少し誇らしげに見つめていた。 やはり、母は母だったのだ、と。 俺はふっと笑い、 「ぶー、残念外れです」 僅かに見えた希望という光を問答無用で叩き潰した。 「な、なんで!? からだが弱いゆっくりはぱちゅりーしかいないよ!?」 納得出来ない様子のゆっくり魔理沙が俺に抗議の目を向ける。 俺はこの場にいる全ゆっくりに聞こえる大きさで、正しい解答を発表する。 「問題はちゃんと聞こうな。最初に言ったじゃないか。『答えは簡単』って。だから答えは『簡単』だよ」 「……ゆっ!?」 そんな馬鹿な話があるか、といったゆっくり魔理沙の表情。 何か変なことを言う前に、俺はまた芝居がかった声を出した。 「本当に赤ちゃんを助けるつもりがあったのなら、ちゃんと答えられたはずなんだけどなぁ。やっぱり赤ちゃんなんてどうでもいいから、助ける気なんてさらさらないんだね!」 「ち、ちがうよ! まりさは」 「はい、罰ゲーム!」 俺はゆっくり魔理沙が言い切る前に、右手の糸を緩めた。 今までお預け状態で気が狂いそうなほど我慢を強いられていたゆっくりアリスの枷が外れ、嬉々とした様子で赤ちゃんゆっくり霊夢2に飛びつく。 「ゆ゛ーっ!!!」 赤ちゃんゆっくり霊夢2は逃れようとするが、そちらの糸は緩めていないので、逃げ場はない。 「はぁはぁはぁ、れ゛い゛む゛ぅぅぅ、がわ゛い゛い゛ごをだぐざんづぐろ゛う゛ね゛ぇ゛ぇ゛ぇぇぇぇぇぇ!!!」 「や、やだよ! れいむはまだあかちゃんなんてつくれないよぉぉぉぉぉ!!!」 「あ゛あ゛っあ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁっい゛い゛よ゛おおぉぉぉぉぉぉれ゛い゛む゛うううぅぅぅぅぅぅぅんほぉぉぉぉぉぉぉ!!!」 「ゆ゛ーっ! ゆ゛っぐりや゛め゛でぇぇぇぇ!!! ゆ゛っぐり゛でぎな゛い゛よ゛ぉぉぉぉぉぉ!!!」 激しい律動。 赤ちゃんゆっくりアリスは摩擦で燃え上がるんじゃないかと心配になるくらい自分の身体を赤ちゃんゆっくり霊夢2に擦りつけ、赤ちゃんゆっくり霊夢2は涙をぼろぼろ流して逃れようとしている。 押し潰して殺してしまわないよう、成長したゆっくりアリスではなくその子供を連れてきたわけだが、そのゆっくりを押さえつける力は親にも引けをとらない 自分が気持ちよくなれば相手はどうなってもいいという身勝手な性行為。 元となったアリスさんとまったく似ても似つかぬ(まぁ、ゆっくりの大半は元の人物と似てないんだが)横暴さに、少し気分が悪くなってきた。 涙目で必死に逃げようとする赤ちゃんゆっくり霊夢2は可愛いんだけどね。 他の姉妹たちはその光景を見て、「はやくにげてね!」「おねえちゃんにへんなことしないでね!」と騒いでいる。 ゆっくり魔理沙は子供を助けようと、俺の足の下でもがいていた。 そうこうしてるうちにやがて快楽の頂点に達したのか、赤ちゃんゆっくりアリスは感極まった声を上げた。 「イグッイグよ゛おおぉぉぉぉれ゛い゛む゛うううぅぅぅぅぅぅぅ!!!」 「や゛だぁぁぁぁイギだぐな゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃぃぃぃぃぃぃ!!!」 「んほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ、……すっきりー!」 「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅぅぅぅぅぅぅぅっ!!!」 一際大きな声を上げたと思ったら、ゆっくりアリスはぶるっと一瞬震え、そして満ち足りた表情で身体を離した。 赤ちゃんゆっくり霊夢2は壮絶な表情で固まっている。 やがて、にょき、と赤ちゃんゆっくり霊夢2の頭から蔦が伸び始め、植物界の常識を覆す速度で実を生らせた。 しかし、本来は子供が生るべきその場所は、泥団子しか存在しない。 当然だ。成熟していないどころか、この世に誕生してまだ一週間以上経過していないゆっくりが、子孫を残すことなんて出来るはずもない。 赤ちゃんゆっくり霊夢2は苦痛としか形容出来ない表情のまま黒く朽ち果て、その短い命を終えた。 「ま゛りざのあ゛がぢゃんがあ゛あ゛あぁ゛ぁ゛ぁぁぁ!!!!!!」 ゆっくり魔理沙はまたもや子供を救うことが出来なかった悲しみで、何度目になるのか分からない涙を流す。 しかしそこに浴びせられるのは当然、 「なにうそのなみだをながしてるの!?」 「おねえちゃんをころしたのはおかあさんだよ!」 「かえして! おねえちゃんをゆっくりかえしてねっ!!!」 更に憎悪を増した子供たちからの罵倒の言葉だ。 先程、俺が言った言葉をまた思惑通りに受け止めてくれたらしい。 ゆっくり魔理沙はその言葉を聞いて、また悲しみに打ち震えて暴れだす。 俺はそんな光景に満足しながら、すっきりして落ち着いた様子の赤ちゃんゆっくりアリスを持ち上げ、残り四匹となった赤ちゃんゆっくりたちの箱の中に落とした。 「ゆっ!?」 予期せぬ闖入者、しかも相手は先程自分たちの姉妹を殺したばかりのゆっくり。 姉妹は警戒して距離を開くが、赤ちゃんゆっくりアリスがその辺を事情を知っているわけがなく。 「しょうがないから、あんたたちいなかもののゆっくりををとかいはのありすのおともだちにしてあげてもいいよ!」 とゆっくりアリス特有の上から目線で話しかける。 しかし、その言葉は姉妹の神経を逆撫でする結果にしたかならなかった。 ゆっくりアリスの丁度後ろに陣取っていた一番の長女、赤ちゃんゆっくり霊夢1が、まったくの無警戒の赤ちゃんゆっくりアリスのお尻に噛み付いた。 「ゆ゛ーっ!?」 突然の痛みに吃驚して悲鳴を上げる赤ちゃんゆっくりアリス、それが皮切りだったように、他の姉妹たちもゆっくりアリスに突撃した。 「ゆっくりしねっ!」 「や、やめなさいよ、やめでぇぇぇぇ!!!」 「ゆっくりしねっ、ゆっくりしねっ!!!」 「あ、あ゛り゛ずいな゛がも゛の゛でい゛い゛がら゛ぁぁぁぁぁ!!! だずげでえええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 四方からのリンチにたまらず赤ちゃんゆっくりアリスが泣き叫ぶが、姉妹たちは聞く耳持たずに行動を続ける。 その様子を眺めながら、俺はゆっくり魔理沙の耳元にそっと囁きかけた。 「おやぁ、子供たちは赤ちゃんゆっくりアリスを殺すつもりだぞ? 止めなくていいのか?」 「ゆっ、ゆーっ!!!」 ゆっくり魔理沙はじたばた暴れるが、閉め直した箱が開くはずもなく、徒労に終わる。 ゆっくりがゆっくりを殺害することは禁忌だ。 例えどのような理由があろうと、ゆっくりがゆっくりを殺害すると他のゆっくりたちから何されようと仕方の無い状態になってしまうらしい。 だからもし他のゆっくりを殺さなければならない状況の場合、親が相手のゆっくりを殺害し、子供たちに非難が及ばないようにする。 それがゆっくりたちの流儀……らしい。 ちなみに性行為は殺害の範疇に当たらない。 「み、みんな、やめてね!」 ゆっくり魔理沙は子供たちを止めようとするが、興奮した子供たちにその声は届かない。 やがて赤ちゃんゆっくりアリスの皮が裂け、中のカスタードが漏れ始めた。 「……ゆっ!?」 漂い始めたいい匂いに、たまらず姉妹たちはごくりと唾を飲み込んだ。 朝は何も食べていないに等しく、一粒の米と少量のお菓子しか食していない空腹のゆっくりにとって、その香りはあまりに魅力的すぎた。 「お、おいしいよ、これ!」 「ひぎぃ!? ありすのかすたーどすわないでぇぇ!!!」 「ゆっくりたべるね!」 「あまくておいしいね!」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー♪」 「い゛や゛ぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」 空いた穴という穴からカスタードを吸われ、赤ちゃんゆっくりアリスが悲鳴を上げる。 だが段々力を失って悲鳴が小さくなっていき、そして脱力し、その場に崩れ落ちた。 絶命。 子供たちがゆっくりを殺してしまった光景に、ゆっくり魔理沙はただただ泣き叫ぶしかなかった。 そしてその表情を見て、俺はまだまだ満足するのだった。 残り四匹。 まだまだ快感を味わえる。 続く このSSに感想を付ける
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『ゆっくリズム』 「ゆっくりしていってね!」 ゆっくりと呼ばれる饅頭みたいな生き物が人間の男に近づき、にこにこ笑いながらゆっくりしていくことを強要してきた。 この人間にもゆっくりしてほしい、そんな気持ちから笑顔で今日もゆっくり流のあいさつを人間にする。 ちなみにこのゆっくりは、まりさ種と呼ばれるもので、黒い薄気味悪い帽子を被っていて、金色の長くて綺麗な髪をもつゆっくりである。 これまでに挨拶した人間はみんな「ゆっくりしていってね」と笑顔で挨拶を返してくれた。 だから、この人間も笑顔で挨拶を返してくれる。まりさはそんな人間達が大好きなのだ。 だけど今回の人間はゆっくりまりさの期待している行動とは全く別の行動をとったのだ。 男は、ひょいっとゆっくりまりさのサッカーボールくらいの大きさの顔を、頬のあたりを掴んで片手で持ち上がる 「ゆっ! ゆっくりやめてね」 驚いているゆっくりまりさを男は無視する。 持ち上げたゆっくりまりさを片方の腕で「ぽすっ」と口と顎の中間辺りを叩く。 人間でいえばこの辺がお腹になるのだろうか? 顔しかない生き物だからよくわからない… が、ここをお腹と仮定する。 出産する時のゆっくりは口と顎の中間辺りから子供を産むと聞くから、ここがお腹だとは思われる。 「ゆっくりやめてね」 少しぷくっと膨れた顔で怒るゆっくりまりさ。 力を全く入れずに叩いただけなのて平気らしい。しかし男は何回もゆっくりのお腹を叩いていく。 「たたくのはゆっくりやめてね!」 「ほんとにまりさおこるよ!」 「ゆっ! ゆぶっ… ゆぶっ!」」 いくら力を入れないパンチといってもそれを何回も入れられるとゆっくりにとっては効いてきたらしい。 「おぅおぅ、言うね言うねぇいっちょまえに! こぉのゆっくりが!」 どんどん殴る速度を速め力も入れていく。 「ゆぶぅ゛!! ゆぶぅ゛!!」 今度は地面に仰向けの状態でゆっくりまりさを下ろし、マウントポジションを取ると、両手で殴る。 小刻みにリズムを取りながら、さらに速く速く殴っていく。 「悪いのは、この口か? この口か?」 タタタン♪ タタタン♪ タタタン♪ 規則正しいリズムの音がゆっくりを殴りながら聞こえてくる。 「も゛う゛… や゛べでぐだざい… ぐぶょ!!」 タタタン♪ タタタン♪ タタタン♪ まりさの言葉などには耳を貸さずに殴り続ける男。 そして仕上げに、思い切り強く平手を喰らわせる。 バシィィー!! 「ぶべあ゛ぁぁぁ゛!!」 いい音と声がした。そのまま5mくらい地面をぼよんぼよんとバウンドしながら飛んでいくゆっくりまりさ。 俯けで倒れたまま動かない。 男は倒れているゆっくりまりさに近づくと、ゆっくりまりさの帽子を取ってみる。 すると帽子を取られた事にはすぐに反応し、ずるずると起き上がった。 「や゛… やめてね… まりざのぼうじをかえしてね…」 ぼろぼろの顔で帽子を返せと言ってくる。 そんな言葉には耳をかさず、男は帽子を両手で持ち、力を入れてばりばりと真っ二つに破り捨てた。 これにはゆっくりまりさも大ショック! 大粒の涙を流し泣き始めた。 「ま゛ま゛りざのぼう゛じが゙あ゙あああああ!!!」 今度は帽子を失ったゆっくりまりさの長い髪をつかみ持ち上げる。 「ひ゛どい゛よ゛おじざん!! ぼうじを゛ぼうじ゛を゛がえ゛じで ごびゅ!!!」 ゆっくりまりさを地面にびたんと叩きつけ、再び両手でお腹を殴り始める。 「おぅおぅ言うね言うねぇ! こぉのゆっくりが!」 タタタン♪ タタタン♪ タタタン♪ 「お゛おじざん… やべでぇ!」 再びゆっくりを殴るリズムが始まった。 タタタン♪ タタタン♪ タタタン♪ 「ゆっくりの癖に調子くれて帽子なんか被りやがって…」 タタタン♪ タタタン♪ タタタン♪ 「おまけに、ゆっくりの癖に綺麗な髪しちゃって」 タタタン♪ タタタン♪ タタタン♪ 「しかも髪の色は金髪… おしゃれさんだねぇ」 タタタン♪ タタタン♪ タタタン♪ 「ぼ… ぼぅ… ゅるじでぐだ… ざぃ」 か細い声でそう訴えかけるゆっくりまりさ。 男が我に返ると目や口から餡子が漏れ出し、潰れた饅頭に変形していた。いくら軽く殴っていたとはいえ殴りすぎたようだ。 だからといってやめる気配は一向になかったが。 バシィィー!! もう一度、仕上げに本気の平手をお見舞いする。 「ゆびゅ゛う゛お゛え゛え゛え゛ぇぇぇ」 ものすごい奇声を上げ、ごろごろと転がっていくゆっくりまりさ。 そして、ピクピクと痙攣したまま動かない。 そんな事はお構いなしに再びゆっくりまりさの長い髪をぐいっと引っぱり持ち上がる。 「ゆ゛…」 殴られすぎてもはや何かを喋る気力さえないゆっくりまりさ。 ゆっくりまりさは思う。これだけ殴られた自分にまだ何をするのだろう? でももうこれ以上は殴らないだろう、だからこのまま目をつぶってやりすごそう。 無抵抗の自分を殴るほどこの人間も酷くはないだろう。 そう思いながら目を閉じてやりすごそうとする。 「おぅおぅ言うね言うね! こぉのゆっくりが!」 その言葉で閉じようとしていた眼がぐわっと開く。 「ま゛! ま゛り゛ざなにもい゛っでな゛ぐべぁ!!」 タタタン♪ タタタン♪ タタタン♪ もちろんゆっくりまりさは何も言っていない。男に対して最初から「ゆっくりしていってね!」しか言っていない だけどその「ゆっくりしていってね!」が男の怒りにスイッチを入れてしまったのだ。 そして、このゆっくりまりさは日が暮れるまでリズム良く殴られ続け、フィニッシュには平手をお見舞いされるを繰り返された。 ギリギリで生きてはいるが元の形に戻るには時間がかかることだろう。 おわり ゆっくりまりさは、ゆっくりの中でもいぢめたいNo1です。 人を見下したような表情、卑怯な性格、黒い帽子、長い金髪。 これだけ揃えばいじめたくなります。 でも、このお話に出てくるゆっくりまりさは良いゆっくりまりさです。 何もしてないのに可哀想ですね。 このSSに感想を付ける