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虐待いじめ成分なし 明日は年に一度の博麗神社例大祭。 博霊神社の前には多くの出店が並び、人々が明日の祭りに向けて精力的に動き回っている。 この博霊神社例大祭、来る者は人間だけではない。 人間に混ざって妖精、妖怪、果てには神までもが参加する、幻想郷最大のイベントだ。 妖精や妖怪が来るのに人間が集まるのかと思う人もいるだろう。 確かに、軽いけが人は毎年出ているが、死人が出たことは、長い例大祭の歴史を振り返っても、一度としてなかった。 博霊の巫女が(人間から賽銭欲しさに)妖精や妖怪に睨みを利かせているのもあるが、基本的に幻想郷の連中は種族問わず、皆祭りが好きなのだ。 こんな日まで、血生臭い話題で祭りを汚したくないのだろう。 そのため、妖精や妖怪の妨害などもなく、準備は滞りなく進んでいった。 男は出店の前で煙草を吸っていた。自分の出店の準備が終わり、一息付いていたところだった。 男は祭りの定番である、風船屋の出店を出している。 店を出し、カラフルな風船を準備しガスを用意すれば、それで準備は終わりだ。 といっても、自分のところが終わったからさあ帰ろう!! とは、そうは問屋がおろさない。 人々が助け合い協力して生活している幻想郷では、一人は皆のために、皆は一人のためにが当たり前。 これから他の出店の準備の手伝いもしなければならないから、今夜は徹夜になるだろう。 これは忙しくなる前の最後の一服だ。 男は時計を見て、もう少し時間は大丈夫だろうと、もう一本煙草を取り出そうとした時、店の後ろに茂みで、ゴソゴソと何かが動いていた。 どうせ祭の定番動物、猫か狸だろうと考えながらも、商品が駄目にされることもあるので、さっさと追い出そうと店の裏に回った。 しかし、そこにいたのは猫でも犬でも狸でも狐でもなかった。 「ゆ!? やっとついたよ!!」 茂みから出てきたのはゆっくりだった。 初めはれいむ種一匹だけかと思ったが、その後ろには、子れいむや子まりさが数匹親の後について出てきた。 子まりさがいるということは、れいむとまりさの番なのだろう。 しかし、親まりさが居ないというのは、何かしらゆっくり出来ない事態に巻き込まれたということか。 ゆっくりの世界では、特別珍しいことではない。 農家の連中からは、害獣の一種と思われ駆除の対象となっているが、男は里で小さな個人店を営んでいるので、あまりそういった酷いゆっくりは見たことがなかった。 そのため、ゆっくりに対し嫌悪感は持っていない。 大方、人間たちが忙しく何をしているのか気になって見物に来たのだろう。 男は暇つぶしにちょうどいいと、ゆっくりの一家に声をかけた。 「おい、お前ら。ここに何しに来たんだ?」 「ゆゆっ!! おじさん、ゆっくりしていってね!!」 「今はゆっくりしてるが、もうすぐそれも終わりだな。後少ししたら、また仕事をしなくちゃならん」 「おじさんたちはなにをやってるの? ゆっくりれいむたちにおしえてね!!」 「祭りの準備をしてるのさ」 「まつり? まつりってなあに?」 「祭りってのは、みんなで集まってうまいものを食べたり遊んだり歌ったり踊ったりすることだ。まあ、お前らふうにいえば、いっぱいゆっくり出来る行事ってところか」 「ゆゆっ!! いっぱいゆっくりできるの? れいむたちも、まつりをやりたいよ!!」 「そうはいってもなあ……」 男は口を濁すが、れいむたち一家は男の態度に気付かず、もう自分たちも参加する気でいた。 「まりしゃもおいちいものたべりゅよ!!」とか「りぇいむたちもおうたをうたおうね!!」とか、大いにはしゃいでいる。 そんなゆっくり一家を見て、男は少し憐れそうな顔をしていた。 どこぞの飼いゆっくりならともかく、金も持ってない野良ゆっくりなどが祭りに参加できるはずもない。よくて追い返され、悪ければ屋台を狙う害獣として殺されるか、出店の商品にされるだろう。 今回の例大祭は、仮に名前を付けるなら、ゆっくり例大祭といっても過言ではない。 ゆっくりの丸焼き、ゆっくり飴、ゆっくり釣り、ゆっくりクジ、カラーゆっくりなど、ゆっくりを商品として並べる店が勢ぞろいしている。 例え無事祭に参加できても、そんな大量のゆっくりの死体に囲まれては、こいつらもゆっくり出来ないだろう。 そんなところに何の悪さもしていないこいつらを行かせるのも気が引ける。 そこで、男はこのゆっくり連中を少し遊ばせて、森に帰らせることにした。 「残念だがお前らは祭りには参加出来ないんだ」 「ゆゆっ!? どうして? ゆっくりせつめいしてね!!」 「実はな、この祭りにはゆっくりれみりゃがやってくるんだ。お前たちがいたら、れみりゃに食べられるぞ」 「ゆ――――!!! れみりゃ!! ゆっくりにげるよ!!!」 一家はれみりゃの単語を聞いたとたん、男に背を向けて、逃げようとした。 しかし、男はそんな一家に、「まあ待て!!」と、この場に留まらせる。 「おじさん、ゆっくりてをはなしてね!!」 「待てって言ってるだろ。話は最後まで聞け。確かにれみりゃが来るとは言ったが、来るのは明日だ。今日はいないよ」 「ゆっ? ほんとうに?」 「本当だ!! そんなわけだから、明日の祭りにはお前たちは参加出来んが、それもかわいそうだからな。特別に今おじさんが面白いことをしてやろう」 「おもしろいこと? ゆっくりやってみせてね!!」 男は出店から一個の風船と、足もとに置いてあるガスボンベのホースを掴むと、風船に空気を入れた。 「ゆゆ―――――!!!!」 子ゆっくりより小さな風船が、いきなり親より大きくなって驚く一家。 男は器用に風船の口を縛り、紐で結ぶと、手近の重い石に結び重しにした。 それを一家の前に置いてやる。 「お、おじさん!! いきなりおおきくなったよ!! ゆっくりせつめいしてね?」 「これは風船というものだ。空気を入れると膨らむんだ。触ってみな」 触ってと言われるも、一家は今まで見たことのない怪しげな物体に尻込みしている。 仕方がないなと、男はその風船を軽く叩き、左右に揺らしてみた。 ボクシングのサンドバッグのように、左右にゆっくり揺れてはゆっくり戻る風船が気になったのか、親れいむが恐る恐る風船に触ってみた。 するとどうだろう。れいむの力で風船が簡単に動くではないか!! これにはれいむもビックリした。 自分より大きくて動かせるような物体は自然界にはそうそう存在しない。 岩にしても、石にしても、木にしても、自分と同等かそれ以上の物体は、どんなに力を入れても動かせないものばかりだった。 しかし、目の前の風船は、自分よりはるかに大きいにも関わらず、れいむが軽く触っただけで動かせるような物体なのだ。 これなら力の弱い子供たちでも簡単に動かすことが出来るに違いない。 れいむは興奮を抑えることができず、子供達も触ってみなと場所を譲る。 最愛の親が言うならと、まず一匹の子まりさが風船に触ってみた。 すると、れいむ同様軽く触っただけで動かせる風船に驚き、何度も風船に触っては、風船の面白さの虜になっていった。 そんな子まりさの姿を見て、自分たちもと他の子ゆっくりたちが一斉に風船に群がっていく。 自分の体の何十倍も大きい風船が、自分一匹の力で動かせる興奮は親以上で、子ゆっくりたちはそんな風船に体当たりをしたり、舐めたりして、風船の魅力にどっぷりハマっていた。 一家はしばらく風船で遊んでいたのだが、一匹の子ゆっくりが風船に体当たりをすると、勢いが良すぎたのか、風船が近くの鋭い石にぶつかり、「パーン!!」と乾いた音をたてて破裂した。 「ゆぎゃっ!!!!」 いきなりの破裂音に驚き、腰を抜かす一家。 体当たりした子ゆっくりなど、衝撃で泡を吹いて倒れている。 「お、おじさんっ!! ふうせんがなくなったよ!!」 しばらく風船の破裂に驚いていた一家も、ようやく立ち直ったのか、親れいむが男に尋ねる。 「割れて無くなったのさ。風船はな、こういうトゲトゲしたものに当たると、簡単に割れて無くなってしまうんだよ」 風船を割った石を持って、一家に説明する。 しかし、一家は案の定というか、意味が分かっていないようだ。自然界にない風船に、どうしても理解が及ばないのだろう。 男は仕方がないなと、二度三度かけてゆっくり説明してやった。 ビニール袋を息で膨らまし、それを実際に割ってみせることで、原理はともかく、尖った物を当てれば割れるということはなんとか理解できたようだ。 「おじさん!! もっとふうせんをつくってね!!」 親れいむは男にお願いをする。 別に風船の値段などたかが知れてるので、もう一つ膨らましてやっても構わないのだが、同じことを繰り返してもつまらない。 そこで男は面白いことを思いついた。 「もう一個風船を作るより、もっと面白いことをしてやるよ」 「もっとおもしろいこと? ゆっくりやってみせてね!!」 そういうと、男は適当な子ゆっくりを掴みあげる。 大切な子供をいきなり取られ、親れいむは「なにするの!?」と男に詰め寄るが、男は「大丈夫だよ」と、ゆっくりれいむを制した。 そういわれてもれいむは不安顔を崩さないが、風船を見せてくれた男を多少信用しているのか、口を出さなくなった。 おそらく今まで森から出たことがなく、人間の恐怖を味わったことが無いのだろう。 何にも悪いことをしていない自分たちに、酷いことをするはずがないと、認識しているに違いない。 まあ、男もいじめや虐待をするつもりはさらさらないので、れいむの心配は杞憂に終わるのだが。 男は、子ゆっくりを大きめの透明なビニール風船に入れると、その中にボンベのホースを差し込み、空気を入れた。 「ゆっ!? かじぇがはいってくりゅよ!!」 袋に入れられた子ゆっくりが、ヘリウムガスの風に驚き、袋の中で逃げまどう。 男は少し風船に余裕を持たせガスを注入すると、さっきと同じように、口を長めの紐で縛って、飛ばないよう重い石に括り付けた。 「ゆゆっ!!!」 子れいむが、ビニール風船の中で、アヒル声で驚きの声を上げる。 ヘリウムで声が変わったせいだ。 ミニトマトより少し大きいくらいの子れいむなら、風船一個でも余裕で浮かぶことが出来るだろうとの考えだったが、案の定、浮くことが出来たようだ。 子れいむは、初めこそ自分がどういう状況に置かれているのか理解できていなかったが、次第に自分が親や姉妹、男より高い位置にいると分かると、楽しさが込み上げてきたようだ。 男は紐を伸ばして、凧上げのように、子ゆっくりの風船を高く舞い上げる。 木よりも高い場所で止まると、出店ばかりか、自分の巣のある森まで丸見えだ。 「ゆゆ――――!! りぇいむ、ほんちょうにおしょりゃをとんでりゅよ―――!!!」 子れいむは、ビニール風船の中で、飛ぶ興奮を抑えきれず飛び跳ねている。 それに合わせてビニール風船も軽く上下しているが、少なめにガスを入れているし、子ゆっくり程度の重さなら、まず割れることがないだろう。 それを見て羨ましくなったのか、他の子ゆっくりたちも男の前に来ては、「おじしゃん!! りぇいむ(まりしゃ)もおしょらをとびたいよ!!」と、おねだりをしている。 果てには、親れいむまでもが羨ましそうに、「れいむも、あかちゃんたちのあとにゆっくりふうせんのなかにいれてね!!」と言ってくる始末。 これには男も困った。 風船はともかく、ガスはそう安くない。たくさんガスを使えば、明日風船をたくさん売っても、採算割れする可能性がある。 しかし、この男は子供や動物に弱い。それはゆっくりも同じで、元々自分から進んで始めたことだ。 1匹にやれば全員にというのは容易に予測できたし、苦笑いしながら採算度外視覚悟で他の家族もやってやることにした。 まず子ゆっくりから、透明なビニールに入れて浮かせてやった。 数は全部で8匹。 子ゆっくりたちの無邪気で嬉しそうなアヒル声が、風船の中から響いてくる。 ここまで喜ばれれば、冥利に尽きるというものだ。 「おじさん!! れいむもゆっくりはやく、おそらをとびたいよ!!」 すべての子ゆっくりが浮かぶのを待って、親れいむが次は自分たちの番だと、男にせっついてくる。 自分がゆっくりすることが一番と考えるゆっくりだが、ちゃんと子供に先を譲るあたり、野生のゆっくりにしては、中々出来た親のようだ。 しかし、ここで問題なのは、親れいむをどうやって飛ばすかだ。 このれいむは、成体ゆっくりと比べ、少し小さく小ぢんまりとしている。おそらく、成体になるかならないかというところで、子供を作ったのだろう。 もしかしたら、親まりさが居ないのはそのせいかもしれない。母体が若すぎると、子供に栄養を取られ死んでしまうからだ。 それにしても、この若さで子を作り、よく未熟児や奇形児が出来なかったものだ。運が良かったとしか言えない。 まあそれはともかく、完全には成体になっていなくても、親れいむはバレーボール大の大きさがあるので、さすがに風船の中に入れることは出来ない。 祭りのゴミを入れる大きなビニール袋もあるが、透明なものがなく、中に入れても外が見れなくなってしまう。 自分が本当に浮いているのか分からなければ、楽しさも半減だろう。 そこで、男はれいむを風船の中に入れるのではなく、外から風船で釣り上げることにした。 これならばれいむも外が見れるし、れいむを浮かせるのに子ゆっくりたちの入った風船を使えば、ガスも多少温存できる。 男は、他の出店を出している仲間から小さな網を貰ってきた。 網といっても、漁で使うような細い糸ではなく、糸が5mm程度の太さのあるものだ。 この小さなハンモックにれいむを乗せて、浮かせるのだ。釣り糸のような細い網でやると、れいむの体重で、ところてんのように体が切れてしまうだろう。 まずハンモックにれいむを乗せて、ハンモックの四つ角に2匹ずづ、子ゆっくりたちの風船を縛りつけた。 しかし、これだけでは親れいむを浮かせるには不十分だったようで、男は大きな風船を計16個膨らませると、それを四つ角に四つずつ結び付けていった。 「ゆゆっ!! れいむもおそらをとんだよ!!!」 子ゆっくりの風船も合わせて、合計24個の風船で、親れいむの体が空に舞いだした。 というか、少々風船の量が多かったようだ。おそらく16~18個でも、十分に飛べただろう。 ガスを無駄にしてしまったことを、男は悔いた。 ハンモックから延びた紐を、出店の柱に括りつける。 さすがに、そこらの石では重石にもならないだろう。石といっしょに一家が飛んでいくのが目に浮かぶ。 「おじさん!! れいむたちをゆっくりたかくあげていってね!!」 親れいむが、ハンモックの中から男に頼み込む。 男はそんなれいむの言葉に応えるべく、紐を手に持った。 しかし、一家を高く上げようとした時、遠くから男を呼ぶ声が聞こえてきた。 「おおい!! 休憩中すまないが、手を貸してくれ!! 屋台を運びこむから、たくさん男手がいるんだ!!」 出店仲間が男に応援要請をしてきた。 間が悪いなあと愚痴るも、さすがに手伝いに行かないわけにはいくまい。 どうせ屋台の運び込みなんて、大の大人が集まれば、数分とかからず終わるのだ。 その後、存分に一家を凧揚げしてあげたらいい。 れいむに向き直り、ゆっくりわけを説明した。 「悪いんだが、俺は今から仲間を助けに行かなきゃならん。少しの間、そのまま待ててくれ。帰ってきたら、高く上げてやるからな」 「ゆー……わかったよ。れいむたち、ゆっくりまってるよ!! おしごとがんばってね!! ゆっくりはやくかえってきてね!!」 「分かった分かった!!」 れいむは、残念そうな顔をするも、しっかりと男の言い分を聞いてくれた。 野生のゆっくりにしては、本当に出来たゆっくりだ。以前、どこかで人間に飼われていたのだろうか? 男はそんなことを考えながらも、仲間の元へ駆け足で向かった。 「ゆー。おじさん、いっちゃったね。でも、ゆっくりおじさんをまってようね!!」 親れいむが上を向き、風船の中の子ゆっくり達に声を掛ける。 子ゆっくりはそろってアヒル声で「ゆっくりまってようね!!」とハモる。 れいむは男が帰ってくるのを、地上1mほどの高さでゆっくり待っていた。 初めは子ゆっくり達も親れいむの言葉に従って、ゆっくり男を待っていた。 しかし、子供ゆえの忍耐力の無さがしだいに現れ、初めこそ風船の中でトランポリンのように飛び跳ねたり、隣の風船の子ゆっくりと体当たりごっこをしたりして遊んでいたが、それもすぐに飽きてしまった。 それでも何とか男が帰ってくるのを我慢して待ってたが、いくら待っても帰ってこない男に、ついに忍耐の緒が切れ、我がままを言い始めた。 「おかあしゃん!! ゆっきゅりはやきゅ、おしょらをとびたいよ!!」 「しょうだよ!! おじしゃんがじぇんじぇんもどってきてくりぇないから、ちゅまらないよ!!」 子供の我儘に、親れいむが渋い顔をする。 「もうすこし、おじさんがかえってくるのを、ゆっくりまってようね!!」 親れいむも子ゆっくり同様、この状況に飽き始めているが、男との約束を破るわけにはいかないと、じっと我慢していた。 野生のゆっくりとしては、破格の賢さといっても過言ではない。 実はこの親れいむ、野生には違いないのだが、相方で母体となった親まりさが、以前人間に飼われていたことがあったのだ。 一人暮らしの老人に厳しくも愛情持って育てられた親まりさは、老人が老衰で亡くなると、離れて暮らしていた息子夫婦がその家に住むといって、家を追い出された。 人間に飼われていたため、狩りの仕方や巣の作り方を知らず、途方に暮れていたところを、このれいむと知り合ったのである。 その頃のれいむはまだ幼く、それこそ野生の傲慢なゆっくりそのもので、まりさを助けたのは、人間に飼われていたとても美しいまりさに一目ぼれしたからという打算があったからだ。 最初は一緒に暮らし、人間に迷惑を掛けちゃいけないと、常日頃言うまりさを鬱陶しいと思っていた。 まりさが美しくなければ、すぐに自分の巣から追い出していただろう。 しかし、長く一緒に生活していれば相手を理解できるようになるのは人間もゆっくりも同じことで、れいむも次第にまりさに感化され、何時しかまだ見ぬ人間を信頼するようになっていた。 粗暴で野生的な物の考えも少しずつ鳴りを潜め、自分のことだけでなく、他人も気遣わなくてはならないと考えるようになっていった。 まりさも、次第にそんなれいむに心惹かれるようになり、何時しか夫婦のような関係になっていった2匹は、どちらからともなく互いを求めた。 しかし、ここで不運だったのは、成体でないゆっくりが交尾をすると、朽ちてしまうということを、どちらも知らなかったことだ。 母体となったまりさは、頭に蔓を付けると、その日からどんどん栄養を子供たちに吸収されていった。 れいむはなんとかまりさを助けようと、精一杯食べ物を集めてきたが、まりさの衰弱は目に見えて速くなり、れいむの苦労も空しく、8匹の子供を残し、まりさは朽ちていった。 未熟児や奇形児を一匹も生まなかったのは、まりさの最後の置き土産といったところだろう。 まりさの遺志を継いで、この子供たちを、ゆっくりと賢い子に育てよう。れいむはがんばって子育てに励んでいた。 数日後、子供たちも少し大きくなり、初めて巣の外に出してやると、何やらうるさい音が聞こえてきだした。 遠目から様子を見ていると、人間が忙しそうに動きまわっている。 「おかあしゃん!! あのひとたち、ゆっきゅりちてないね!!」 「なにをやっちぇるにょ?」 れいむも子供たちの疑問に答えられず、自身も何をしているのかが気になり、一度人間に会ってみるのもいいだろうと、家族全員で祭りの準備場所に行ってみることにした。 歩きの遅い子供たちをゆっくり引き連れ、ようやく昼ごろに祭り会場に着く一家。 そこで初めて会った男は、今は亡きまりさが常々言っていた通り、ゆっくりさには少々欠けるが、やさしく穏やかな人間だった。 そんないい人間の期待を裏切るわけにはいかない。れいむは、そう自分に言い聞かせる。 しかし、れいむと違い、生まれてまだ数日しかたっていない子ゆっくりたちに、れいむと同じ考えを持てと言われても、無理があるだろう。 子ゆっくりが飽きてわがままを言うのも、ある意味仕方がない。 れいむは退屈で死んじゃうといった子ゆっくりたちを、何とか宥め、落ち着かせようとしていたが、子供というものは親が言ってどうなるものではない。 むしろ、れいむの言葉に逆らうように、風船の中でぎゃあぎゃあ喚いている。 一体どうすれば子供たちが落ち着いてくれるだろう? れいむが餡子を捻り考えていると、何を思いついたのか、一匹の子まりさが、「いいことおもいちゅいた!!」と、れいむに提案してきた。 「おかあしゃんが、まりしゃたちをおしょらにあげちぇくりぇりぇばいいんだよ!!」 子まりさは名案を言ったとばかりに、目を輝かせている。 おじさんが空に上げてくれないなら、代わりにお母さんが上げてくれればいい。 他の子ゆっくりたちもそれがいいと、れいむに「おかあしゃん、がばっちぇね!!」と、エールを送っている。 もはや、れいむが空に上げてやるのは、子ゆっくりの中で規定事項になっているらしい。 れいむは考えた。 ここで自分が空に上げてしまっては、おじさんとの約束を違えることになる。 しかし、子供たちを宥めるにはそれしかないのも事実だ。 れいむの餡子脳は、どちらの方法がいいのか、こっちに来たりあっちに来たりと忙しなく揺れているが、れいむは少し考えた後、おもむろに決心した。 子供たちの言い分を聞くことにしたのである。 例え甘やかすことになろうと、親としては子供たちの笑顔を見たいものだし、あのおじさんはやさしい人間だから、後で謝れば、きっと許してくれるだろう。 そう決めると、れいむはハンモックから垂れた紐を口に咥えた。そして、その紐を辿り、少しずつ出店の柱に近づいていく。 今、れいむたちが飛べないのは、この紐が出店の柱にくっ付いているからだ。 これを外せば、自分たちは、あの大空へと舞い上がることが出来るだろう。 れいむは、なんとか柱に辿り着くと、結び目を口に咥え、力いっぱい紐を引いた。 ゆっくりであるれいむは分からないが、男は固結びではなく、すぐに外せるように縛っていたので、力を入れなくても簡単に外れるようになっていた。 柱から外れた長い紐が、スルスルと地面を擦っていく。れいむは紐を離すまいと、今だ硬く紐を噛んでいた。 先ほど子れいむを凧揚げするとき、男はこの紐で上手に操縦していた。 だから、この紐さえしっかり持っていれば自分たちはいつでも帰れる。れいむはそう考えていた。 片や紐の端はハンモックに、片や逆の端はれいむの口に咥えられた30mも有ろうかという長い紐。それは大空で、ハイジのブランコのように、風船から垂れ下がっていた。 「ゆゆー!! おしょらをとんでりゅよー!!」 子ゆっくりたちの嬉しそうな声を聞いて、また自身も憧れた大空を飛び、れいむも大満足だった。 約束を破ってしまったおじさんには、帰ったらいっぱい謝ろう。 れいむは心の中で男に謝罪しつつ、子ゆっくりたちと、二度と戻らぬ死出の旅路へと、大空を飛び立っていった。 「まったく、ずいぶん掛っちまったな。あいつら、待ってるだろうな……」 男は一仕事を終えて、自分の出店へと走っていた。 本来なら簡単に終わる仕事だった。 しかし、一人の男性がバランスを崩し、屋台が転倒して半壊してしまったのだ。 さすがに祭りを明日に控え、ゆっくり直している時間はない。 ちょうどたくさんの男手もあるしと、その場で急いで屋台を直すことになってしまった。 好都合にも、屋台骨は無事だったので、必要最低限の修理で終わらせることが出来た。 しかし、おかげでずいぶんと時間を取られてしまった。 男は、一家はさぞお冠だろうなと苦笑いしながら、先を急いだ。 「いやあ、悪かったな。ちょっと仕事が長引いてなって……あれ? どこ行ったんだ?」 男は自分の出店に着くや、一家の乗った風船が無いことに気がついた。 一体どうしたのだろう? もしかしたら、ゆっくりで商売をしようと考えてる連中に連れて行かれたのだろうか? いや、まさかな。他人の店に繋がってる物を、取っていきはしないだろう。 それじゃあ、犬や猫にでも襲われたか? しかし、それにしては暴れたり荒らされたりした形跡がないな。 これもたぶん違うな。 まさか、自分たちで勝手に飛んでいったのか? いや、それこそあり得ないだろう。 紐で縛っていなければ、どこまでも飛んで行くなんて、猫の赤ちゃんですら分かることだ。 結構賢そうな親だったし、そんな馬鹿なことをするはずがないだろう。 となると、待ち切れずに帰ったのか。 これが一番有り得るな。大方、近くを通り過ぎた人間に風船から下ろしてもらい、そのまま森に帰ってしまったのだろう。 男は悪いことをしたなと同時に、ガスがもったいなかったなと、苦笑いしながら、懐から煙草を取り出し、火をつけた。 煙草を吹かしながら、ふと大空を眺める。 奇しくも、その方向は一家が旅立った方向と同じだった。 ~つづく~? 今まで書いたもの ゆっくりいじめ系435 とかいは(笑)ありす ゆっくりいじめ系452 表札 ゆっくりいじめ系478 ゆっくりいじり(視姦) ゆっくりいじめ系551 チェンジリング前 ゆっくりいじめ系552 チェンジリング中 ゆっくりいじめ系614 チェンジリング後① ゆっくりいじめ系615 チェンジリング後② いい夢みれただろ?前編 いい夢みれただろ?後編 ゆっくりですれ違った男女の悲しい愛の物語 このSSに感想を付ける
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※おぜうさまの か り す ま☆せっていがあるかもだどぉ~☆ ※虐待がすぐなめかもしれないんだどぉ~☆ 小ネタ ☆爆裂資産☆ 「こんの野郎!さっぱり売れねえじゃねーか!」 ボカン!とれみりゃの肉まんヘッドに俺の怒りの鉄拳がめり込んだ。 「ゔぁ゙ぁ~!ごべんなざいぃー!れみりゃのあがぢゃんがまずいがらでずぅ~!」 地面に転がったれみりゃはまるで土下座をするような体勢でひたすら謝っていた。 「反省するだけならゆっくりでもできるってんだよ!あ、そっかお前もゆっくりだったな」 はぁ、とひとつため息を付くとやり場のない怒りに俺は頭を抱えてその場に座り込んだ。 それというのも泣け無しの財産を叩いて始めた商売が初っ端から大コケにコケたからである。 里の近くで開かれる市では様々な出店が並び、毎日のように賑わいを見せる。 客層は広く、人間だけに限らず紅白貧乏巫女さんから年齢不詳の宇宙人まで何でもありだ。 そしてその広い客層すべてを相手にできる商売、それは「食い物屋」である。 俺はもともと加工所で働いていたものの、毎日同じような処理しかできず、 一向に虐待Styleのレパートリーが増えない職場に愛想を尽かせてしまったのだ。 週5日の勤務体制では正直外に出て虐待無双乱舞する時間も物足りない。 そこで俺が考えたのが自分で好きに加工でき、さらにそれを直接利益につなげることのできる「ゆっくり食品」の販売だ。 最初のうちは屋台でマグロの解体ショーならぬゆっくりの解体ショーでもやりながらゆっくり焼きでも作ろうと思っていたのだが、 すでにそのようなパフォ-マンスは加工所が手を出していてらしい。 いろいろとアイディアは尽きなかったが、どれもこれも先駆者がいるものが多かった。 2番手が1番手に勝負で勝つにはよほどの戦略がない限りは難しい。 新しい実演販売を捜し求め続け、最終的にたどり着いたのが「れみりゃの産地直送☆にくまん屋」であった。 れみりゃにその場で赤れみりゃを作らせて、それをその場で解体しつつ小さ目の肉まんに加工しふかし直して販売するのだ。 実はこの商売も先駆者がいた。だがなぜか途中で挫折するものが後を絶たず、現在市に同じ店を開いている者はいない。 なぜ成功しないのかはやってみてからのお楽しみだ。俺には失敗しない自信がある。 出だしは好調だった。外をほっつきまわっていたれみりゃをぷっでぃーん(プリンではないらしい)でおびき出して捕獲する。 その後1週間程かけて調教した後に市場へ連れて行きその場で自分の赤ぢゃんを加工させるのである。 さぼるれみりゃは容赦なく羽を毟り取り屋根からつるし、逃げ出すれみりゃは他のれみりゃに命じて赤れみりゃと一緒ににくまんになってもらった。 初日はその過激さのおかげで珍しいもの見たさで集まる連中が後を絶たず、屋台の周りには人だかりができた。 おぉ、れみりゃをよくぞここまで調教したもんだ。ゆっくりさせない為にならなんでもやるんだな。 どこからこんなアイディアが沸いてくるんだ。あらいい香りね少女臭には適わないけど。 各々が思い思いの感想を口に出しながら屋台の中を覗き込む。 人の壁で少し暗くなった屋台で俺はせっせと火を起こし肉まんを蒸かしてゆく。 開店から1時間、にくまんは20個程度売れ、このペースでいけば一日150個はくだらない。 ひゃぁ!我慢できねぇ!増産だ! と、調子に乗ってつくりまくったところ、あまりのバイオレンスっぷりに引け目を感じてか、その後客足は妙に少ない。 1ヶ月が経過したがその後売上額は低空飛行、むしろ墜落寸前の域をたどり続けた。 結局毎日多めに作ったにくまん50~70個程が破棄処分となってしまい相当な赤字になってしまった。まさに火の車である。 いや、寧ろ実際にこの屋台が燃えてくれたらどんなにいい事か。燃料代が少しは浮くだろう。 餌代はそのへんのゆっくりで賄える分ほぼタダであり、れみりゃにも現金の投資はない。 だが屋台の設置費や借地代がバカにならない。食費を差し引くとこのままでは月々の文々。新聞代すら危い。 やはり見世物小屋と食い物処は一緒にするべきものではなかった。 流石にその場でくたばったゆっくりを加工して出されるのは気分も良くないのだろう。 一部の鬼意山には人気を博したが、正直ほんの一握りといっていい。 またゆっくりに加工させているのもまずいらしく、清潔さを気にかける女性にはまったくといっていいほど売れなかった。 まさに爆裂資産。俺もこのまま四散してしまいたい。 「かぁ~……どうすっかなぁこれ……」 とりあえず絶望に打ち拉がれてこのいろんな意味で何もない屋台に永遠と突っ立っているわけにもいかない。 俺は惨めな気持ちで屋台に布をかけるとれみりゃたちを引きずりながら帰路に着いた。 家に帰ると俺は囲炉裏の小さな赤くなった炭を眺めながら打開策を練るべく脳内俺会議を開いていた。。 過激すぎるのもいけないが、家でれみりゃを加工して屋台でただ肉まんに整形して出すだけでも全く面白みがない。 ちょうどいい中間を捜せ、という結論に至る。 俺はまたため息を付くと近くにあった餅を網に載せると囲炉裏にかざした。 パチパチというなんとも風流な音が少しずつ餅を膨らませていく。 いい音だ。こういう音が食べ物のの味を何倍にも引き立てることは良くある事だ…… と、ここで脳内会議場の中心から一つのひらめきの花がぱっと開花した。 なるほど。音か。叫び声の中で作られたものや、更にそれをその叫び声の中で食べるなんて相当に気味の悪いことだろう。 一応俺のような特殊な人間を除いて、だが。 俺は適当な手ぬぐいを2枚手に取ると、土間のかごの中で喚き散らしているれみりゃの中から一匹えらんで部屋の中に放つ。 「うっう~、やっとれみりゃのかりすま☆かげんに気づいてくれたんだどぉ~♪」 勝手なことを抜かしているれみりゃを背伸びして捕まえると口の中に丸めた手ぬぐいを押し込んだ。 そして蓋をするように口の上から手ぬぐいを巻いた。 「*****!*******~!」 何を言っているのかは聞き取れないほど小さい音が漏れてくるのみである。 また、へんな帽子とあわせて丁度加工所の食堂のおばちゃんみたいな格好に見えた。 一つのアイディアで問題点を二つも解決してしまうとは。流石は俺。カリスマ度が違うぜ! だがまてよ、と俺の表情は再び険しいものとなった。 確かに親れみりゃの叫び声は抑えられる。だがしかし肝心な加工される側の赤れみりゃの口をふさぐことができない。 うちの屋台にこだまする叫び声の8割は赤れみりゃから発せられる断末魔である。 それにこれでは家の看板娘……ではなく看板畜生れみりゃの売り込みVoiceも流せない。 「れみりゃのあがぢゃんがらづぐっだにぐまんでずぅー!おいじいでずぅー!がっでぐだざいぃー!」 この声があってこそのれみりゃの肉まん屋である。 おそらくれみりゃ達に赤れみりゃの声を出させずに殺せと指示しても無駄だろう。 再び萎んでしまった頭の中の花に水をやる。 するとどこからとも無く赤れいむがやってきて俺の萎みかけのアイディアの花に向かってしーしーを始めた。 うおおおぉぉぉぉ!やめろおおぉ!俺のアイディアの花を病気にする気かおんどりゃぁ! 脳内会議は中断されて脳内鬼意山達がいっせいに赤れいむをフルボッコしにかかる。 まさに頭の中は戦場と化していた。もう何がなんだかわからなくなってきたぞ。 だが、砂糖水の雨を物ともせずに再び俺のアイディアの花はぱっと開いた! あぁそっか。れみりゃがダメなられみりゃいじめ百戦錬磨の俺が加工すればいい。 とりあえず赤れみりゃの声が出ないように息の根を止め、それをれみりゃたちに加工させればよいのだ。 そして1匹呼び込みようのれみりゃを用意すれば……おぉ!完璧だ! あまり過激でなく、清潔感があり、尚且つれみりゃの肉まん屋の醍醐味を味わってもらうことができる! これだ!これぞ究極の肉まん販売スタイルである! すぐさま脳内議会に解散を命令すると近くにあった台帳にメモを取った。 明日からこのスタイルで売ってみる。これでもダメであった場合は……不本意ではあるが、この道はあきらめよう。 俺は一世一代の大仕事にかかるべく、その日は夜遅くまでれみりゃの特訓に励んだ。 結論から言うと、この方法は大成功だった。 お昼ごろまではいつもと変わらぬうだつの上がらない状況が続いたが、昼飯時から一気に客足が増えた。 小奇麗になったしちょっと食べてみようか、というお客さんがかなり多かった。 またれみりゃ一人を完全に売り子として独立させたおかげで遠くまで客を呼び込むことができたのだ。 おかげでこの日は今までがうそだったかのように売上高が鰻上りに上昇し、十分な利益を得ることができた。 この調子があと1週間も続けば土地代も屋台代も支払うことができるだろう。 「いやっほぉぉぉぉぉ!大成功だぜぇ!」 俺は柄にも合わずれみりゃを抱きしめてそこらじゅうを飛び跳ね回った。 このままいけば俺は将来支店を出す事だってできるかもしれない。 俺の可能性はグングン広がってゆく。 「あのー、ちょっとよろしいかしら」 不意に声がかかり後ろを振り向くと、カウンターに女性が一人立っていた。顔が暗くてよく見えない。 ニヤニヤがとまらないままカウンターに歩み寄りながら答えを返す。 「あぁすみません。れみりゃまん随分と人気がでましてね、今日はもう売り切れちゃったんで店じまいなん――」 不意に俺の顔からニヤニヤがなくなり、逆にツツーと血の気が引いていった。 そこにはかの有名なれみりゃ愛好家として知られる洋館のメイド長が、輝きの無い目で俺を見ながら立っていた。 俺はその瞬間、この商売が成り立たない本当の理由を心のそこから理解したのである。 あとがき うぁー!ほんどうはごんなえずえずがぎだぐないどぉー!もっとさぐやとあまあまーなえずえずがぎだいんだどぉー! (途中から眠くなってやっつけになってしまってますがご勘弁ください) いままでかいたもの ゆっくりいじめ系1989 ゆっくりいじめ系2006 ぱちゅりーと鉄塔 ゆっくりいじめ系2011 満月の夜とひとりぼっち Enjoy! By かりすま☆れみりゃ
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ゆっくりの躾け方・上巻 はじめに ゆっくりを躾けるのは非常に難しい。 何故なら異常なまでに知能が低く、教えた事を三分で忘れるからだ。 比較的簡単なのはれいむ種だろうか。 知能レベルは最低に近いが、それでも根が素直なところがある。 生まれた時から愛情を注ぎ込むか、恐怖と暴力を与えればそれで済む事が多い。 逆にまりさ種は非常に難しい。 愛情を与えても、飼い主は自分を保護するためのものとしか見ず、横暴な態度は何時までも残る。 暴力で従わせようとしても、従った振りをして虎視眈々と脱走や報復の機会を窺う様になる。 また、その強い好奇心とリーダー気質から周囲の飼いゆっくりを巻き込んで悪さをする事も報告されているので手に負えない。 ブリーダーの間ではまりさを調教できたら一人前と言われているほどだ。 では、ゆっくりれみりあはどうなのだろうか。 難易度は中といったところ。頭は悪いが、他の種と違って悪知恵が働かないのはプラス要因。 毎日躾を欠かさなければ、それなりのレベルにまでは簡単に持っていける。 もっとも躾を怠れば他のゆっくり以上の早さで増長し、知能の劣化もそれに比例する。 そしてそれ以上に、ある一定以上の能力を求めるのには難しい。 何故なら持ち前の知能の低さが邪魔をし、高度な事を教え込めないからだ。 れみりあ種に高度な事を覚えこませるには、それこそ達人と呼ばれるほどの腕前を必要とする。 さて、前書きはこのくらいにしておいて、早速行動に移ってみよう。 前述の通り、初心者にはれいむ種から手を付ける事をおすすめする。 まずは固体の選別。 初心者は知能強化を施された赤ん坊を買うのをおすすめするが、野生の個体を選ぶとなるとそれなりのコツがいる。 「ゆっくりしていってね!」 初対面で上記の様な事を言ってくる固体は間違いなく知能が低い。 人間の恐怖を知らない野生の個体は、学習能力が著しく低い事を示す。 少しでも知能があれば、自分より大きい生物に対して警戒するのが当然だろう。 ついでに言えば他のゆっくりと情報交換ができていない証拠でもある。 なので上記の様なゆっくりを見つけたら優しくハンマーで潰してあげよう。 知能の低い野良ゆっくりを残しておくと、後々誰かが被害にあうかもしれない。 外出時には専用のゆっくり潰しハンマー(税込:535円)を持ち歩くのがエチケットだ。 次に選別の合格基準だが、これは方針によって異なる。 愛を与えるのなら家族がいる固体は止めた方がいい。人間よりも同族に対しての感情が強いからだ。 群れからはぐれた固体や、家族から追い出された固体なのが御し易いだろう。 そしてできれば赤ん坊がいい。成長後にその性格を矯正し、知識を与える事は難しい。 恐怖を与えて従わせるのならその逆。 家族はいい脅迫の材料になるし、見せしめにも使える。 これもやはり赤ん坊が良いし、何より長い間楽しめる。 と、言っても変異種でもない限り個体差はそこまで大きくない。 面倒だと思ったり、自分の腕に自信があったりするのならどんな固体でもいいだろう。 「……なるほどな」 お兄さんは読んでいた本を脇へと置き、透明な箱に入ったゆっくりれいむを眺める。 家の前で倒れていたのを保護し、飼ってもいいかなと考えていたところだ。 「こいつ飼えるのか? 本見た限りでは結構難しそうなんだが」 箱の中のれいむはお兄さんの考えも知らず、暢気に眠っている。 散々お兄さんに餌を要求し、満腹になったら直ぐに眠ってしまったのだ。 まあ、非常にゆっくりらしい性格をした固体だと言えるだろう。 と、その時れいむが目を覚ました。 しばらく辺りをキョロキョロとしていたが、やがて自分が知らない場所で透明の箱に入れられている事に気付く。 「おにいさん、れいむへんなはこのなかにはいってるよ! ゆっくりだしてね!」 お兄さんが声を掛ける前に、れいむは箱から出せと要求してくる。 が、そうはいかない。ゆっくりを部屋の中で放し飼いする気はお兄さんにはない。 あくまで観察したり、偶に遊んでやる程度の存在でいいのだ。 「おにいさんれいむのこえがきこえてないの? それともばかなの? れいむのいうことがりかいできないの?」 その声にお兄さんの眉が傾く。 助けてやった上に餌もやったのだが、それを忘れていきなりこれか。 お兄さんは騒ぐれいむを無視し、先ほどの本の続きに目を通す。 では実際に躾を行っていこう。 まず全体を通して注意すべき事は、ゆっくりより自分の方が上だと理解させる事だ。 これは愛情を与える場合にも必須だ。これがないと、ゆっくりは飼い主の事を便利な道具程度にしか思わない。 大事なのは懐いてないうちはゆっくりの要求を絶対に聞き入れない事。 餌が欲しい、遊んで欲しい、外に出して欲しい、などと言った要求は全て却下。 何故なら簡単に要求を呑むと、ゆっくりは飼い主を自分より下だと思い込む。 それに、飼い始めたばっかりのゆっくりを箱の外に出すのは危険だ。 何故なら十中八九部屋の中を荒らしまわるか、自分の家宣言をし始めるからだ。 調子に乗ったゆっくりを一気にどん底まで叩き落し、短期間で服従する方法もあるが初心者にはおすすめできない。 上記の様に書いたが、餌はやらないと流石に不味い。 ゆっくりは多少の絶食では死にはしないが、固体によっては絶望や思い込みで死に至るので長期間の絶食はおすすめはできない。 さて、餌のやり方だが、まずは自分の食事をゆっくりに見せながら食べる。 そして自分の食事が終わった後、食べかすや野菜クズをゆっくりに与えよう。 その際、いただきますとキチンと言わせよう。言わない様なら軽めの罰を与えていい。 そうする事によって、飼い主の方が上であるとゆっくりに教えるのだ。 間違ってもゆっくりの食事を優先したり、ゆっくりに手作りで餌を作ったりするのはしてはいけない。 そうする事によってゆっくりは増長するうえに、ゆっくりは自分に都合の良い事は中々忘れない。 少しでも餌のランクを落せば癇癪を起こし、飼い主の食事まで要求してくる事も多々ある。 大事なこの作業を根気良く続け、ゆっくりに自分の立場を理解させる事が…… 「……いかん、めんどくさそうだな」 お兄さんは本に栞を挟んで閉じ、溜息を吐いた。れいむは読書中も煩く喚きたてていたが、当然無視。 お兄さんの認識よりも遥かに、ゆっくりを飼うのは面倒そうなのだ。 もっとも生き物を飼うのは大抵面倒なのだが、生き物を飼った事のないお兄さんには分からない。 「む゙じぢない゙でえ゙ぇぇぇ」 「……まあ、やるだけやってみるか。懐けば可愛いだろうし」 それに犬や猫よりかは手間も掛からないだろうし、話し相手にもなるだろう。 そうお兄さんが考えていると、ふと周囲が暗くなっている事に気付く。 そろそろ夕食の時間か。そう思ったら腹が減ってきたので、お兄さんはれいむを無視して台所へと移動する。 「ほーら、メシだぞお」 「ゆゆっ! おにいさんれいむのためにありがとう! ゆっくりれいむにちょうだいね!」 お兄さんは焼き魚と味噌汁、そして白米をれいむの前に置いて見せ付ける。 そして透明な箱と取り去り、れいむを解放してやった。 そうすると当然れいむは飯へと急ぐが、たどりつく寸前にお兄さんの手が伸びる。 軽いデコピンによってれいむは弾き飛ばされ、勢い良くタンスにぶつかった。 そして素早く透明な箱を被せ、お兄さんは箸に手を伸ばす。 「どうじでごんなごとずるのおぉぉぉ」 「誰がお前の飯だっと言った。これは俺の飯だ」 「ゆ? おにいさんなにいってるの? それはれいむのごはんだよ?」 泣きながら喚くれいむを他所に、お兄さんは白米を掻きみ、酒で咽を潤す。やはり労働の後の一杯は美味い。 頭に疑問符を浮かべているれいむの戯言など、耳に入らぬほどだ。 「ゆゆっ! おにいさんれいむのごはんかってにたべないで! れいむはどろぼうきらいだよ!」 「だから何時お前の飯になったんだ。これは俺が用意したんだぞ」 「そんなのかんけいないよ! れいむがみつけたんだかられいむのごはんだよ!」 いかん、埒があかない。 お兄さんはそう舌打ちし、食事を中断して本を手に取る。 そもそもお兄さんが持ってきたのに、どうしてれいむが見つけた事になっているのか。 ゆっくりへの対処法 食事編……58P それでもゆっくりが食事の際に我侭を言う事は多々あります。 曰くその食事は自分のものだ、餌の量が少ない、餌の味が悪い、などと要求は多種多様です。 そういった事を言い出した場合、罰として餌を取り上げたり、次の餌を極端に少なくしたりすると効果的でしょう。 ゆっくりの知能は非常に低いですが、餌についての事は案外素早く覚えます。 不満を言ったりすれば自分の餌がどんどん少なくなり、味が落ちていく、貰えなくなると理解させるのは難しくはないです。 しかし、まりさ種の場合は飼い主の食事を横取りしようとする事も多いので、反省したから箱から出して、などと言っても無視しましょう。 また、どうしても聞き分けないのなら絶食や体罰も手です。 絶食の目安は丸一日です。一食抜いた程度では、ようやく自分の命令を聞いて持ってきたと錯覚される事も多々あります。 半端にやると逆効果になるので気を付けましょう。 体罰は頬をちぎる、もしくは針で刺す程度でいいでしょう。 それによって力の差を覚えさえ、徐々に飼いならして行くのが最善です。 あまり初期から激しい体罰を加えると、まりさ種でなくとも恨みを抱く可能性があるので注意が必要です。 「おにいさんはやくれいむのところにはこんでね! あとここからだしてね!」 「……ゆっくり、一つ聞こう。これは誰の飯だ?」 「おにいさんばかなの、なんかいいえばわかるの? そのごはんはれいむのだよ、ゆっくりりかいしてね!」 「あっ、そう。馬鹿には今日の餌はなしだ」 そう言うとお兄さんはれいむの見ている前で黙々と食事を続ける。 どおじてだべじゃうのおぉぉ、などと色々聞こえて来るが、お兄さんにはただの雑音に過ぎない。 そして全て食べ終え、ごちそうさまと手を合わせた。 「明日お前に餌をやるかどうかはお前の態度次第だ」 「れ゙い゙む゙のごはんがあぁぁぁ」 「……ほんとに飼えるのか、こいつ?」 不安を覚えながらも、れいむを入れた箱に布を被せ、押入れにしまいこむとゆっくりは寝室へと向かう。 あの調子で騒がれた煩くて寝れやしない。 明日からの躾をどうするか考えながら、お兄さんはゆっくりと眠りに付いた。 本格的な虐待……ではなく調教は次回くらいで 躾マニュアルみたいな感じ書こうとしたけど上手く書けないな…… このSSに感想を付ける
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「ゆ? ゆっくりうごいてるよ! もうすぐうまれるね!」 「ゆゆ! ほんとだわ! いまやわらかいばしょをよういするわ!」 ありすは急いで脇の方に置いてあった枯草を、れいむの前に敷き詰める。 ちょうどそこは、れいむの頭から生えている赤ちゃんたちの落ちる場所である。 「ゆっくりうまれてね!」 「「「ゆっゆ!」」」 産まれる直前ともなると、親の言葉に反応してプルプルと震える事ができる。 れいむはその振動を感じ取って幸せに包まれた。 もうすぐ愛する我が子と会える事に。 「ゆゆ! うまれるわ! ゆっくりがんばってね!」 ありすが掛け声をかける。れいむは子供たちが無事に生まれる事を願っていた。 ポロリと。頭の茎から一匹のありすが落ちた。そしてそれを皮きりに残り七匹も枯草の上に落ちてくる。 たっぷりと敷き詰めた枯草の上は柔らかいのだろう。落ちた後も枯草の上でモゾモゾとしていた。 親である二匹は心配そうに見つめていた。 やがて、三匹が目を開けた。そして二匹の方を向いて、生まれたてとは思えないほど大きな声で 「「「「ゆっきゅりちていっちぇね!!!」」」 そう言った。れいむはその光景を見て思わず涙ぐむ。 「ゆぐ、ゆぐっ!・・・ゆっくりしていってね!!!」 ありすもとても幸せそうな顔で挨拶を交わす。 「ゆーゆ♪」 「ゆっきゅりごひゃんたべちゃわ!」 「ゆっくりー!」 ありすが三匹とれいむが五匹。植物型でも少々多い。 が、両親は特に気にしなかった。今の季節は春である。食料も出産前から十分に溜めている おうちの方も、ゆっくりにしてはかなり広い方なので、狭いという事もない。 「おちびちゃんたち! ゆっくりごはんをたべてね!」 れいむがそう言うのと同時に、頭の上から茎が落ちてきた。 子供に送られていた栄養がたっぷりと詰まっていて、味もほどほどに抑えられている茎は 最初に子供が食べるものとしては最高の餌だ。 ありすとれいむはそれらを口の中に入れて、むーしゃむーしゃと噛み砕いた。 「ゆゆ! ゆっきゅちごひゃんをとらないでね!」 一匹の赤れいむが怒り出す。れいむは謝りながら 「ごめんねあかちゃん! でもこれでやわらかくなったからゆっくりたべれるよ。」 「ゆっくりたべてね!」 生まれたての赤ちゃん達はむしゃむしゃと柔らかくなった茎に被りつく。 そして生まれて初めての食事を楽しむ。 「「「「「「「むーちゃ!むーちゃ! ちあわちぇー!」」」」」」」 「ゆっきゅちちちぇいってね!!!」 「ゆ?」 両親は何か違和感を感じた。が、この時はそれは何なのかはわからなかった。 食事を終えた赤ちゃんたちは、さっそく家の中で遊んでいた。 「ゆっっきゅちおうたをききちゃいよ!」 「ありちゅはとかいちぇきなおうちゃをききちゃい!」 「れーみゅはすりすりしちゃいよ!」 無邪気に親に甘える赤ちゃん達。その中で変な言葉が聞こえてきた。 「ゆっゆっー! ゆっきゅりちちぇいっちぇね!」 一番小さい赤れいむである。 「ゆゆ? れーみゅたちはゆっきゅちちちぇるよ?」 「どうしたのあかちゃん? ゆっくりしてるわよみんな?」 赤れいむに話しかける家族。しかし帰ってくる答えは 「ゆっゆっゆー!」や 「ゆっくりー♪」 「ゆ?」 といった言葉しか返さない。というか基本的に「ゆっくりしていってね!!!(発音修正済み)」 か、「ゆー」とかしか言わないのだ。 「ゆ? どうちちゃったのれーみゅ?」 心配そうに見つめる兄弟 「ゆゆ! どうなってるの? まさかびょうきなの!」 れいむはソワソワと落ち着きなくおうちの中をうろついている。 ありすは家族を落ち着かせようとした。 「おちついてねみんな! いまぱちゅりーをよんでくるわ!」 そういって大急ぎで近くのぱちゅりーを呼びに行った。 「むきゅん! これはせんぞがえりね!!!」 「ゆー? なにそれぱちゅりー?」 ぱちゅりーの言った言葉の意味がわからないれいむ達。ぱちゅりーは話を続けた。 「むかしむかし、ゆっくりがだれにもじゃまされずにゆっくりしていたじだいとがあったのよ! むかしはみんな『ゆっくりしていってね!!!』しかいわなかったそうだわ!」 「それで! だいじょうぶなのあかちゃんは!」 ぱちゅりーはあくまで冷静にみんなに話す。 「おちついてねありす。これはとてもうんのいいことなのよ! むかしのゆっくりはぜったいにゆっくりできるっていいつたえがあるの! このこもとてもゆっくりできるはずよ!」 「ゆゆーん! さすがれいむたちのこだね! とってもゆっくりできるなんてすごいね!」 「とってもとかいはなこね! ありすはうれしいわ!」 「れーみゅはとちぇもゆっきゅりできるんだね!」 家族はとてもゆっくりできるという事を大いに喜んだ。 そして家族の生活は始まった。 最初の頃は、言葉が伝わらずに大変苦労したが、それでも長い間暮していると、言葉が伝わるようになっていった。 元々、ゆっくり達の話す『ゆっくり』にはかなり広い範囲の意味が込められている。 それこそ『おいしい』という意味から敵がいるかいないかまで、状況に応じて意味が違ってくる。 太古のゆっくりはその微妙なニュアンスの違いを感じ取っていたのかもしれない。あるいは意志の疎通など必要なかったのか。 とにかく、進化したとはいえ現在のゆっくり達の遺伝子にもそれは受け継がれている。 要は馴れれば分かるようになってくるのだ。 「ゆっくりしていってね!」 「そうねれいむ! きょうはおそとでとかいてきなひなたぼっこをするわ!」 「ゆっくりおひさまにあたろうね!」 「おかーさんもゆっくりいくよ!」 「ゆっくりしていってね!!!」 「ゆー!」 この一月の間に完璧なコミュニケーションが取れるようになった。 家族は近くの野原で思い思いに遊んだ。 「ゆっくりころがるよー!」 「ゆゆー! まってねばったさん!」 「ゆゆーん! とかいはのたんぽぽよ! れいむにあげるわ!」 「ゆっくりー! ゆっくりしていってね!!!」 「おねーちゃん! れいむもほしいよ!」 両親はその光景を眺めていた。 「みんなとってもゆっくりできてるね!」 「そうよね。ありすたちはとってもしあわせものね。」 互いに頬を寄せ合う二匹。それは親愛の証でもあった。 その時だった。二匹の後頭部ががっちりと何かに掴まれたのは。 「ゆゆ! だれなの! ゆっくりはなしてね!」 「そうよ! ありすたちはとってもよっくりしてるのよ!」 「ぷくううううううううう」と膨らんで怒り出す二匹。しかし掴んだ相手はそんな事はまるで気にしなかった。 「う~♪ あっまあまだっどぉー♪」 間抜けな声が聞こえた。そしてそれは近くで聞いてはいけない声だった。 「「でびりゃだあああああああああ!!!!!」」 「やめてね! おかーさんたちをはなしてね!!!」 子供たちは両親を掴んだ敵に対して体当たりを繰り出す。しかしそんなものは効果がない。 「うー? じゃまなんだどぉー! ちっちゃいあまあまはおちびちゃんたちのぶんなんだからー! だまってるんだどぉ♪」 そういって足でガッ!っと踏みつける。 「やべちぇえええええええええ!!!!」 「いたいですうううううううう!!!! 「ありすもういやああああああ!!! だれかたすけてえええええええええ!!!!」 次々に踏みつぶされる兄弟。あのれいむも家族を助けようとするが、 「まってねれいむ!」 長女のありすに止められた。 「ゆ! ゆっくりしていってね!」 「わたしたちじゃかてないわ! どすをよんできて!」 れいむ達の家の近くにはドスまりさが住んでいる。群れは持っていないが、ドスの周りには大勢のゆっくりが住んでおり れいむ達もその一つだ。 ドスならばみんなを助けられるとありすは考えた。 「ゆっくりしててね!!!」 れいむはそれを理解して急いでドスの家へ向かっていった。 れみりゃは家族を踏むのに夢中で気づかなかった。 「う~? ぷにぷにしておもしろいどぉ~♪」 「いじゃいよ! やめてよ! ゆっくりできないよ!」 れいむは走った。途中で何度も転びそうになりながらも必死で走った。家族の為に。 その思いが通じたのか、何の障害もなくドスの家の前についた。 「ゆっくりしていってね!!!」 そういってドスの家へ飛び込むれいむ。 「ゆゆ? ゆっくりしていってね!!!」 中にはドスと何匹かのゆっくりがいた。その中にはぱちゅりーのつがいのまりさもいた。 「どうしたの? ゆっくりはなしてね!」 ドスの声に反応して、さっそく助けを求めようとするれいむ。 しかし 「ゆゆ? ちゃんとはなしてくれないとわからないよ! ドスだっておこるよ!」 「ゆ・・・ゆっくりしていってね!!!」 「さっきからなにいってるかわからいよ! れいむはちゃんとしゃべってね!!!」 「ばかなの? しぬの?」 かれこれ10分はこんな調子である。 れいむの言葉は馴れた家族には伝わったが、初めて会話する他のゆっくりには通じなかったのだ。 「ゆ・・・ゆっゆっくりしていってね!!!」 ついには泣きだしながら喋るれいむ。 「だからわからないっていってるでしょ? ばかなの?」 だんだんとドスは苛立ってきた。そしてもう家から追い出そうかと考えたちょうどその時 「どすー!たいへんなんだよー!れいむとありすたちがれみりゃにおそわれてるんだよー!」 「れみりゃのこどもたちもいっぱいきてるみょん!」 運よくれみりゃ達を目撃したちぇんとようむがドスに伝えに来たのだ。 「ゆ! わかったよ! すぐいくね!」 「ゆっ!ゆっくりしていってね!!!」 ドスがやっと動き出した事に喜ぶれいむ。 そして一目散に家族の元へ向かった。 助けを連れて戻ってきたれいむ。しかしそこに居たのはれみりゃ達とただの皮だった。 「うー! おいしかったどぉー! れみ☆りあ☆うー☆」 「とってもえれがんとだどぉ~♪ れみりゃのおちびちゃんはとってもかりしゅまなんだどぉー!」 「さくやー! のどがかわいた~♪ れみりゃはおれんじじゅーすがのみたいどぉー!」 「うっうー! のう☆さつだんすでふみふみだどぉ~♪」 そこには餡子を失って皮だけになった家族で弄ぶれみりゃ達がいた。 既に光のない眼で空を見ている両親と兄弟。先ほどまで元気に動いていた家族。 それが今ではただの動かない皮。 「ゆ・・・・ゆっくりじでいっでねぇえええええええええ!!!!!!!」 れいむは半ば半狂乱になりながらゴロゴロと転がりまわった。 それを周りのゆっくりが止めてるうちに、ドスはれみりゃ達に近づいた。 「ゆっくりできないれみりゃはゆっくりしんでね!!!」 それだけ言い放つと、口からドススパークを放ち、れみりゃ達をあっという間にやっつけた。 このれみりゃ達はみんなのごはんとして分けることになった。 ドスの家の前。近くのゆっくりが全員集まり、れいむとありす達を土の中に埋葬していた。 そこには当然れいむが居るはずである。しかしれいむはそこから少し離れた場所にいた。 近づけて貰えないのだ。 ゆっくり達は最後の別れを済ませた後に、口ぐちにれいむを責め立てた。 「れいむがちゃんといわないからありすたちはしんだんだみょん!」 「こどもなんだからしゃべれるでしょ! ほんとにできそこないのゆっくりだね!」 「ありすたちがしんだのはれいむのせいだね! はんせいしなくていいからゆっくりしんでね!!!」 「ことびゃもまちょもねはなちぇないなんて、ゆっきゅちできにゃいね!!!」 「ほんとはきょうだいをゆっくりさせたくなかったんでしょ!」 遂にはドスまでも 「れいむのせいだからね! ドスがもっとはやくついたらみんなぶじだったんだよ! わかってるの? ばかなの? しぬの? ゆっくりしないでどっかいってね!!!」 「ゆゆ・・・ゆっくりしていってね!!! ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくじでぎるわげないでしょおおおおおおおおおおおお!!!! どっどどでていってねえええええええ!!!!!」 こうしてれいむはこの付近から立ち退くことになった。れいむにとって嬉しかったことは ぱちゅりーだけは最後まで味方でいてくれた事だ。 「れいむ、たべられるものやかりのしかたはおぼえてるわね?」 出発当日、ぱちゅりーは朝早くからやってきて真剣な目で問いかけてきた。 「ゆっくりしていってね!!!」 ぱちゅりーには言葉の意味がわからなかったが、おそらく肯定したのだと思って話を続けた。 「そう、おうちのつくりかたもだいじょうぶね? これはあさごはんよ!」 そういって口から差し出したのは、はちみつだった。 野生のゆっくりにとっては滅多に食べれない貴重なものである。 「ゆっくりしていってね!!!」 「れいむもゆっくりしてね!!! がんばってねれいむ!!!」 帰って行ったぱちゅりーの後ろ姿を寂しげに見つめながら、れいむは新たな家を求めて旅立った。 【あとがき】 昔書いて途中でほったらかしたヤツ うん。何に影響を受けてたかよくわかるな俺 あと、久々に発掘した時に書かれてたメモが 【メモ】 ジャギ様登場 どういうことなの…… byバスケの人 このSSに感想をつける
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秋の恵み 17KB 秋 の恵み 初投稿です 生暖かい目でみてください。 ゆっくりの設定は俺設定です。 ゆっくりいじめwikiのほうから出張してきました。わかる人には僕がだれかわかるかもしれません。 もう何番煎じかなんて見当もつきません それでよければどうぞ 秋といえば紅葉だけでなく森の恵みもひとつの楽しみだろう。 キノコや栗などなど山で取れるめぐみはたくさんある。そのなかでもこいつだけは採らなければという一押しの恵みがある。 そう、みんなご存知のゆっくりである。 野生のゆっくりは主に春に生まれおちると言われているが、それ以外の季節にも生まれるのだ。 栄養状態の良く、狩上手な(つまり食べ物をたくさん貯めている)夫婦は季節を選ばずいつでもすっきりし、子を作る。 ゆっくりは体が脆く、すぐに死んでしまう。故に種の個体数を確保すべく万年発情可能なのである。 そしてそれによりゆっくりの数は減らぬどころか増える一途をたどっている。 話を戻すが、秋の恵みの中でも秋に生れ落ちた赤ゆっくりの味は料亭御用達になるほど美味であり、その取引価格は国産マツタケに劣らない。 つまりは超高級品食材だ。 その味たるや、美食倶○部の海原○山先生も絶賛するほどであり、ほかの季節に取れる赤ゆっくりとは風味も味も一線を画す。 そして自己紹介。僕は虐待おにいさんだ。でも虐待だけじゃ食べていけないので、虐待もできて、かつ実益になる仕事をしている。 僕は紅葉にみちた山の中を飼い主の命令を従順に聞く胴なしりれみりゃと共に歩いてゆく。 もちろんその目的は前述の秋の赤ゆっくりだ。でも自分ひとりの力ではそう簡単には見つからない。 そこでこの捕食種であるれみりゃの力が役に立つ。 ふと、視界の先に一組の成ゆっくりの番らしきものを見つけた。 多分あれはれいむとまりさだろう。ありふれた番だ。 近頃のこの付近にいる野生のゆっくりは人間の姿を見たとたん逃げるようになってきた。 いちいち逃げられるのも面倒なので僕は全速力でそいつらに近づき、未だ僕のことに気がつかないれいむの後頭部と 僕の存在に気づき、まるで熊とでも鉢合わせしてしまったような顔をしているまりさの側頭部を加減なしで蹴る。 「ユゲハァ!!!」 「ブジュワ!!!」 れいむの口とまりさの帽子から集めていた餌が盛大に撒き散らされる。ついでにゆっくりの餡子と歯も。 「はぁ・・はぁ・・・・ゆっくりしていってね・・・」 さすがに色々荷物を持ったまま、足場の悪い地面を100メートル以上全力疾走したのでこちらの息は少し上がる。 全力で蹴られたれいむとまりさは未だその痛みで動けないのかビクビクと体を震わせ地べたに這いつくばる。 しかしこんな程度ではゆっくりは死なない。あいつらの生命力はゴキブリに匹敵するほど・・いやそれ以上かもしれない。 そこへれみりゃが倒れているまりさの底部に食いつき、それを食いちぎる。 「ゆぎゃああああああああああ!!!?」 森の中にまりさの悲鳴がこだまする。 食いちぎられた断面からは餡子がこぼれ出る。これでこのまりさは誰かに救助でもされないかぎり出餡多量か何かで命を失うだろう。 れみりゃには食いちぎってもそれを食べるなと命令してあるので底部を食いちぎったらそれ以上は手を出さない。 れみりゃを満腹にさせると赤ゆっくりを探す能力が落ちてしまうのが一番の理由だ。 空腹状態のこのれみりゃのゆっくりに対する臭覚は犬よりも鋭いのだ。 「まりざあああああああ!!!?ゆっぐりじでええええええええ!!!?どぼじでごんなひどいごどずるのおおおお!!!?」 これを聞かれるのは何回目だろうか。僕はやれやれといった感じでそれに答える。 「ん・・お前ら生かしておくと森の食べ物が馬鹿みたいに減るだろ。栗とかキノコとか諸々さ、みんな迷惑してるんだよ」 「森の食べ物さんはみんなのものでしょおおおお!!!?」 「うん、そうだねれいむ。森の恵みはみんなのものだよ。でもその「みんな」には君たちゆっくりは含まれていないんだ。残念だったね?」 ちらりと見たれいむの顔はどうみても納得しているというものではない。 「れいむたちだって生きてるんだよ・・・ゆっくりした「黙れ害頭(がいじゅう)」ゆぶぅぅぅ!!!?」 れいむの腹に渾身の蹴りを食らわす。れいむは口から空中に大量の餡子の飛沫を散らせ、ピクリともしなくなった。 目でれみりゃに合図し、れいむの底部もまりさ同様に引きちぎらせる。 その際「ゆ゛っ・・・ゆ゛っ・・・」と声を漏らすれいむ。 やっぱり生きてやがったなこのゴキブリ饅頭が。 彼らの生命力はゴキブリ並みかそれ以上。ピクリともしなくとも死んだとは限らない。念を入れて底部をちぎらせた。 底部さえ深々と切り取ってしまえばそのゆっくりの生存率は極端に下がりほぼ0になる。 こんなゴミ饅頭如きに三分近くも時間を食ってしまったのをもったいなく思った。早く赤ゆ探しに戻らなければならない。時間は有限なのだ。 別にこんなことをせずにさっさと目的の赤ゆっくりのみを探せとみなは思うだろう。 しかし、事はそう単純ではない。ゆっくりれいむとゆっくりまりさ、そしてアリス種は季節を問わず食欲が旺盛で それを放置し続ければ鼠算式にその個体数を増やし、あっという間に森の貴重な食材(栗やマツタケなど高値で取引されるもの)を優先的に食いつくす。 そのことにより猪などの野生生物は食糧不足に喘ぎ、餓死したり、人里まで降りてきたりする。 またゆっくりも同じで森の食べ物を食い尽くすとドスを引き連れて人里まで降りてゆ害をもたらす。 故に森や山でれいむ、まりさ、アリス種のゆっくりを見つけたら即殺す。そのことは山や森に入る者にとって共通のルールとなっている。 僕はこれを善行を積むつもりで饅頭共を見つけるたびに毎回行っている。 森に入って二時間が経つころ、れみりゃがうーうーとわめき出す。おそらく赤ゆっくりのにおいを嗅ぎつけたのだろう。 いそいでれみりゃに案内させる。れみりゃはある程度すすむと木の前に止まりそこでくるくると回っている。 よく見るとその木には洞があり、そこに不自然とも思える枝や葉がバリゲードのように立てられていた。 僕はやつらの巣だ、と確信する。 音を立てずにそこから内部の覗き見てみると、そこには成れいむと成まりさ、夏みかんほどの子れいむ三匹と子まりさ二匹がいた。 そして注目すべきはその奥にいるプチトマトサイズの存在だ。1−2−3・・・・9つか。大量だ。ごっつぁんです。 なぜ子ゆっくり5匹に対し、赤ゆっくりは9匹もいるのか。 その理由は簡単だ。赤ゆっくりは兎に角死にやすい。子ゆっくりになる前に(ゆっくりには)原因不明の病気にかかったり 親が暢気に昼寝している間にこっそりと忍び寄ってきた蛇に丸呑みにされたりなど様々な死因があるのだ。 子ゆっくりになる間に赤ゆっくりは様々な障害を乗り越えなければならないのだ。 話を戻すがそいつらは食事を終えた後のようなのか、のんびり昼寝をしたりするものや、ピョンピョンと飛び回っている(遊びのつもりだろうか) もの、「ゆ~ゆ~ゆっくり~していって~」と不快な雑音のような歌を歌うようにしているものもいた。 その光景をみて・・・ちょっと・・・・・勃ってきた・・・・ 僕は対ゆっくり用につくった深い返しの付いた銛(もり)を右手に持ち、左手でバリゲードを盛大になぎ払った。 急に差し込んできた光に驚くゆっくり一家。親たちは僕(人間)の姿を見て一瞬思考が止まる。 僕はその隙を突いて、親まりさの腹(顎?)にめがけて銛の狙いを定め、 「ゆ?」 ズブシュ!!! 僕の手から放たれた銛はまりさの腹(下あごとも言うかもしれない)に深々と突き刺さった。 刺されたまりさは何が起こったのかわからない表情で、「ゆ?」と言いながらゆっくりと僕の顔を見る。 何秒か僕とまりさはお互いの視線があう。 そしてまりさの視線は僕の顔から僕の手へ、そして銛の刺さった傷口に移る。 まりさは自分の腹に銛が深く突き刺さった部分を黙ってみた後、ようやく自分に対してどんなことがされたのかを理解したのか大きな悲鳴を上げる。 「ゆぎいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!いだいいいいいいいいいいい!!!ばりざのおなががああああああああああ!!!?」 「まりざあああああああああ!!!!?どぼじだのおおおおおおおおおおお!!!?」 「「「おちょーしゃんゆっくちーー!!」」」 まりさの体表から痛みによる汗が大量に分泌されている。 いい悲鳴でないてくれた。そんなまりさ、君にお礼をしなければ。 「まりさ!今から君の家族を皆殺しにしてあげるね。ゆっくり抵抗してもいいんだよ?」 突き刺さった銛をゆっくりと、ゆっくりと、自分の下へ引っ張る。 「ゆぎいいいいいいいいい!!!いやだ!!!ひっばらないでええええ!!!!」 「まあ照れるなって」 まりさもその体をグリングリンと回して抵抗しているようだが、深々と刺さった銛はそう簡単に外れない。 「さあ気味の大好きなれみりゃちゃんもまってるぞ?この人気者め!」 「いやだああああああああああああああ!!!!そっぢいぎだぐな゛いいいいいい!!!?」 ズルズルズル・・・・ 抵抗もむなしくまりさは銛が刺さったまま外へと放り出され、そこへ近寄ってきたれみりゃに底部を食いちぎられる。 「ゆぎいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!いだいいいいいいいいいい!!!!」 食いちぎられたときのいたみでうんうんを盛大に撒き散らすまりさ。 「まりざああああああああああああ!!!!?じっがりじでええええええええええ!!!?」 れいむも自分の大切な夫が心配で声を上げる。しかし巣の外にはでてこない。賢明だな。無駄だけど。 まりさに突き刺した銛を強引に抉るように引き抜き、そのまりさの体を適当な方向へ投げ捨てる。 そして次は銛の照準をれいむに定める。 「ゆぎゃあああああああああああああああああ!!!」 銛を強引に引き抜かれ、放り投げられた時の衝撃で、まりさの深々と抉られた傷口から大量の液状餡子飛び散らす。 この傷はゆっくりにとっても深手ではあるが、しかしゆっくりはこんなものではまだまだ死なない。 そして僕は巣の最奥のあたりまで逃げ、子供達と共に震えながら怯え泣いているれいむに銛を放つ。 放たれた銛はれいむの右目を含めた頭部に深々と突き刺さる。 「ゆぎゃああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」 「「おきゃーしゃーん!!ゆっくちー!!」」 れいむは刺されたことに対する痛みでもみ上げをぶんぶんと振り、底部のグリングリンと回している。 「それじゃーこっちこようねーれいむちゃーん」 銛をこちら側に引っ張る。まりさ同様に抵抗するがその抵抗もむなしく巣の外へ放り出される。 そしてまたまりさ同様に近寄ってきたれみりゃに底部を食いちぎられた。 「ゆっぐううううう!!!!!!」 「ゆぐっ・・・ゆぐっ・・・・どぼじで・・・ごんな゛・・・」 「でいぶだちなにも・・・なにもわるいことしてないのに・・・・」 「生きてるだけでも悪いんだよこの強欲糞饅頭。今から君たちの子供を捕まえるからその様子でもゆっくりみててね」 れみりゃにれいむとまりさの巣へ入って子供たちをつれて来るよう命令する。 命令を受けたれみりゃはうーうーと言いながら巣の中へ入っていく。 親のいない巣の中で自分達の天敵であるれみりゃを目の前で見た赤ゆっくりと子ゆっくり達は親に助けを求める声をあげた。 「ゆきゃあああああああああああああ!!!!きょわいよおおおおおおおおおおおお!!!!」 「まりしゃちにちゃくにゃよおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 「やべろおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」 底部を食い千切られ、腹に銛が刺さった大きな痕があるにもかかわらず、まりさは立ち上がり、ズリズリと、もはや無い底部を 使って怒鳴りながらこちらへ向かってくる。 「ばりざぁ・・・・・・」 その様子を見ながら心配するれいむ。しかし自分は怖いのか、まりさの様に食いちぎられた足を使ってこちらに来ようとはいない。 ただまりさの様子を震えながら見ているだけだ。 しかしその移動速度は実に遅く、まりさが僕の足元に来るまでにはれみりゃは巣の中から子ゆっくりと赤ゆっくりをすべて持ってきていた。 僕は足元に置かれた赤ゆっくりの一匹である赤れいむの商品としての質を確かめるため摘み上げる。 肌はもちもちとして、艶もいい・・・匂いは・・・・・うん・・・秋ゆっくり独特の甘栗のような、それでいて焼き芋の ニュアンスもある甘いにおいがする。 「やべ・・でね!!まりさのおちびちゃんを今すぐ離してね!!」 足元で少しうるさいな・・・自分の立場ってのをわからせてあげよう。 僕はれみりゃに子ゆっくりと赤ゆっくりが逃げないよう指示し、まりさと向き合う。 「ねえまりさ。君・・今の自分の置かれてる立場わかってないだろ?」 「ゆ?」 「僕はこれから君たちの子供全員を・・・そうだな・・殺すつもりだ。」 「ゆっ!!そんなことは絶対にさせないよ・・・・そんなひどいことをするにんげんさんはゆっくりしね!!!」 「どうやって君はそれを阻止するんだい?現に君たち親は満身創痍で、今から起こる悲劇をただ見るだけしかできないただの饅頭なのにさ」 そういって僕は手に持った赤れいむに対しデコピンをする。 ベチン!「ゆぴぃ!!」 「「おちびちゃあああん!!!?」」 デコピンを食らったれいむはその痛さに3秒ほど悶絶したあとしーしーとうんうんを盛大に漏らしながら大きな声を上げて泣き叫んだ。 「ゆびいいいいいいいいいいいいいいい!!!!おきゃーしゃああああああああああああん!!!おきゃーーじゃーーーーん!!!」 さらにデコピンする。 ベチン!「ぴぎぃ!!!!」 「もうゆるさいよ!!!ゆっぐりじねええ!!!」 まりさが僕の足に噛みこうとしたその瞬間、僕の放った蹴りがまりさの下あごに炸裂する。 「ゆげえええ!!!」 まりさはそこから二メートルほど蹴り飛ばされ、餡子と歯を盛大に吐き出しながら転がり、仰向けに倒れた。 口からはカヒューカヒューと荒い呼吸音が聞こえ、餡子を吐き出すまりさ。 「ほらまりさ、君は僕よりも遥かに弱い。不意打ちしたとしても絶対に勝てないよ。そして今君の大切な子供達は僕の手にある。」 仰向けになっているまりさの腹に死なない程度に力を込め足を乗せる。 「ゆぎゅは!!!!・・・・おちびちゃんだちをはなぜえええ!!!!」 「君に出来ることは命令じゃない。お願いしかできないんだよ。その愚鈍な餡子脳でゆっくりりかいしてね?」 そう言ってから僕は仰向けでこちらを睨んでいるまりさに見せ付けるように赤れいむにデコピンを加える。 ベチン!「ゆびいい!!!」バチン!!「いちゃいいいい!!!」バチン!!「もうやじゃああああ!!!」 「ああ!!おちびちゃあああん!!!」 ベチン!「ぴぎいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」 狙ったわけではないが、僕の放ったデコピンは赤れいむの左目に当り、そこから透明なゼラチン状のものが噴出させた。 「あ・・・目が潰れたみたいだね。ついでにもう片方もつぶしちゃおっかあ」 その声を聞いたれいむとまりさは泣き叫ぶ。 「カヒュー・・や゛へでえええええええええええええ!!!」 「れいむのおちびちゃんをそれ以上いじめないでええええええええええ!!!!!」 「れいみゅのきゃわいいいもうちょがああああ!!」 まりさは、仰向けだった体をうつ伏せにし、まるで人間の土下座のようなポーズをとる。 「おねがいじばず人間ざん!!ぞのおじびじゃんをみのがじでぐだざい!!まりざだぢをみのがじでください!!」 まりさは自分の頭を地面にぐりぐりと擦り付けながらさらに言葉をつむぐ。 「ばりざはばりざだぢのごどもだちがゆっぐりでぎなぐざれるのがいちばんづらいんです!!ばりざがいままでためた たべものどがはずべで人間ざんにさじあげばず!!だがら・・・だがらもうこれ以上ばりざだちにゆっぐりでぎないごどをじないでぐだざい!!」 「え?無理」 即答でまりさのお願いを却下する。 ベチン!「ゆ゛ゆ゛・・・・・・・・ゆ゛」 どうやら赤れいむは片目をつぶした時点で気絶したようで悲鳴は上げなかった。 そろそろ頃合だろう。 僕はその赤れいむを後頭部のあたりから体の半分近く齧り取った。 「ゆ゛・・・・!!!・・!!」 その瞬間ほかのゆっくり達は言葉を失ったように静まった。 そしてその赤れいむの体を咀嚼する。 ・・・・・・・・・・・ ・・・・・・ 秋の森の静寂のなか僕の咀嚼音だけが響く。 う・・・・うまい・・・・・まるで秋の恵みそのものを凝縮したような濃厚でいて・・・くどくない甘みが口中を支配する。 秋の赤ゆっくりがなぜ高級食材に指定されるのかわかる気がする。この秋の恵みを最初に食べることが出来るのは狩をする者の特権だ。 「うっめええええええええええええええええええ!!!!?」 「ゆぎゃあああああああああああああ!!!!でいぶのあがちゃんがああああああああ!!!」 「まりしゃのいみょうちょがあああああああああああああ」 「カヒュー・・カヒュー・・・・まり゛ざの・・・あがじゃん・・」 未だピクピク震えている赤れいむの残った半身を飲み込み味わった後、木製の箱の中に赤ゆっくりたちを丁寧に詰めていく。 「たしゅけちぇええおきゃーしゃーん!!」 「おちびちゃんだちいいいいいいいいいいいい!!!」 「いみょーちょたちをどーしゅるにゃのおおお!?」 聞いてきたので答えてあげた。 「どうするって・・・料亭に売るんだよ。結構な高値で売れるんだ。そこでこの赤ちゃん達は一匹の例外もなく たっぷりたっぷりたっ~ぷ~~り痛めつけられた後にみんな食べられちゃうんだ。ゆっくりりかいしてね? ちなみに赤ちゃんじゃないほうはちぎってバラバラにした後この子たちの餌にしちゃうから。 君達だって狩の獲物が命乞いしたとしても耳を貸さないだろ?僕にとってこの赤ゆっくりは狩の獲物なんだよ」 親達は言葉を失った。なぜこの人間はこんな酷い事を平然と出来るのだろう、口にするんだろう・・と。 その間に僕は子ゆっくり達を麻袋に乱暴に投げ入れる。 「「おきゃーしゃーんたしゅけちぇー!!」」 「お・・おちびちゃんだぢ・・・」 子達は親に助けを求めるが、親はそんなことが出来る状態ではない。 「じゃ、そうゆうことで。子供達は千切って赤ゆっくり餌にすっから。そこでゆっくり野たれ死んで逝ってね!」 体に穴を空けられ、底部を破られ、子供達をすべて奪われ、一家のもっているすべてのしあわせ~を奪われ、 心も体も死に掛けになっている二匹に別れの挨拶をし、僕はそこから立ち去った。 「ゆっぐ・・・・ゆわああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」 「おちびちゃんだぢを・・おちびちゃんだちをかえじでええええええええええええええええええええ!!!」 親達の怨嗟の声が後ろから聞こえるが、あんな害頭(がいじゅう)のことなど気にしない。 そもそもあいつらゆっくりの馬鹿みたいな食欲のせいで一体何匹の野生動物が餓死したと思ってるんだ。 他の生物はゆっくりさせないで自分達だけはゆっくりしようとする害頭には情けなんてものは必要ない。 帰り道で、僕はよく働いてくれたれみりゃにねぎらう為、子れいむと子まりさを袋から取り出す。 「ゆびいいいいいいいいいいいいいい!!!はなしちぇええええええええ!!!こわいよおおおおきゃーしゃーん!!」 「おきゃーしゃんとおちょーしゃんにひどいこちょをするにんげんはゆっくちしにぇ!!」 そんな子ゆっくりを僕は空中で涎をたらしながらこちらをみているれみりゃに食べていいよと伝えた。 れみりゃは僕の手に乗った後、とってもうれしそうな顔をして、頭から子れいむに齧りついた。 「ゆぴいいいいいいいいいい!!!おきゃーしゃあああああああああああん!!」 「れみりゃこわいよおおおおお!!!たしゅけちぇええええええええ!!!」 ・・・・・・・ ・・・・ ・・ 「「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛っゆ゛・・・・・・」」 餡子を致死量すれすれまで吸われた子ゆっくりたちは痙攣している。 僕はそんな子ゆっくりたちを飾りや帽子を取り除いた後、手でバラバラに千切り、赤ゆっくりたちの入っている箱に入れてあげた。 「ほーら、おいしいあまあまだよ~~ゆっくちできるよ?」 「「「ゆゆ!!?あみゃあみゃしゃん?ゆっくち~~!!」」」 箱の中の子ゆっくりたちは一斉に自分達の姉だったモノにむしゃぶりつく。 そしてあっという間に平らげてしまった。まあ赤ゆっくりは8匹いるしな。 「これじゃたりないよー!!もっとちょうだいね!!もっとちょうだいね!!」 無視して箱のふたを閉じる。あまり食べ物を与えると成長してしまい味が落ちる。うまいのは赤ゆっくりのうちだけなのだ。 この赤ゆっくりに上げる量は現状維持程度でいい。 8匹もあればかなりの収入になるので思わず顔がほころぶ。 「ゆ~~ゆっくりしていってね~~♪」 気分がいいので、そんな歌を歌いながら僕はれみりゃと一緒に紅葉が覆う秋を満喫しつつ、目的の料亭に向かった。 おしまい。 トップページに戻る このSSへの感想 ※他人が不快になる発言はゆっくりできないよ!よく考えて投稿してね! 感想 すべてのコメントを見る 野良と野生は駆逐し尽くせ!!(善良以外) -- 2018-02-01 21 25 45 ゆっくりは現実世界にいたらいいと思う え、?何に使うのって? もちろん虐待 -- 2016-02-06 16 20 43 食べ物とかは全て人間さんに差し上げる?ゆっくりの食べ物は人間が食えないものばっかだからいいです -- 2012-10-08 10 39 27 もし現実にゆっくりがいたら? ↓ ごく僅かな優秀なもの・希少種以外は殲滅に限るね! ゆっくりだって生きてるんだよ!っていう倫理観を喚くことができるんなら、他の生き物や人間との付き合い方を考えられるはずなんだが、…所詮、唯我独尊主義、自分さえよけりゃそれでいいあんこ脳なんだね。 ゆっくりが生きてるだけで悪いってのには、賛成。こういう考え方は原罪って言うんだよね。 -- 2012-09-12 06 11 23 まったくもってゆっくりは不快な存在だな 共存関係でもありがたいと思わないのか? 街でゴミ漁り、お家宣言、食物や虫の乱獲、ゲス行為、同属喰い、自己優遇・・ 罪深すぎるな、確かに人間の悪い部分もあるかもだが、ここまではない 「ゆっくりだっていきてるんだよ!」に対し「死ね!」としか言いたくない -- 2011-11-02 23 48 56 野生ゆっくりを食べる時はせめて洗いましょう -- 2011-03-22 11 42 53 ゆっくりがいる山に山菜とかきのことかを望むのがそもそもの間違いだと思う。 そういうのを求めるならゆっくりは全部駆除しないと。 -- 2011-01-17 07 50 22 増えるだけ増えて貴重な山菜から優先的に食い荒らすとか ほんと性質悪い害獣だな -- 2010-10-14 13 50 18 君達だって狩の獲物が命乞いしたとしても耳を貸さないだろ?僕にとってこの赤ゆっくりは狩の獲物なんだよ 真理だなぁと、思わず感心した。 このお兄さんわかっていらっしゃるな。見ていてすっきりー! -- 2010-10-07 18 06 13 山の持ち主からすれば山菜やマツタケを食い荒らすゆっくりは 凶悪な害獣なんだろうな -- 2010-09-29 23 00 23 人間は絶滅すべき -- 2010-08-26 14 51 18 赤ゆの泣き声は最高!! -- 2010-08-05 10 03 10 狩り鬼意山の、 「え?無理」 の台詞に吹いたw -- 2010-06-29 09 21 29 命乞いするヤツを踏みにじるのは…最高にゆっくりできるね!! -- 2010-06-28 00 33 01
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ゆっくりありすが散々な目にあいます まぎらわしいので書いておきます 「」が会話文 『』が心の声です 作者のストレスがありすでマッハです カオスでカスです。 それでよければどうぞ。 昼~ 某所 人里近くの森 家 ゆっくりが沢山棲む、割と人里近くにある森に、鬼井山は居を構えている。 昼飯を済ませた鬼井山は、腹ごなしに散歩でもすっか。ついでにゆっくり捕獲すっか。という思いで家を出た。 其の鬼井山が扉を開けて見た映像とは・・・・・ 「んほぉおおおおおおお!!!ぎぼぢいいばぁぁあああああ!!!」 「ゔ-!!!ゔ~~~~~!!!」 地獄絵図だった。 夜行性であるはずの体なしゆっくりれみりゃ(以下ゆっくりゃ)とレイパーありすが玄関前で交尾してた 「ん、ぼぉおおおおおお!!でびりゃの、まむまむ、どがいばよぉおおおお!!」 「ゔゔぶぶぶ、ゔ~~~~~!!!」 鬼井山は一瞬で判断した 『体なしゆっくりゃいじめづらいんだよなぁ。 でもこのままほっとくとレイパーが増えるからなぁ。 とりあえずゆっくりゃを捕獲して隔離しとくか。』 懐から折りたたみ透明な箱をとりだしゆっくりゃをもちあげて中にほおりこむ 「んぼ・・・・ゆっ?」 「ゔ~!ゔ~~~~~~~~!!」 『あ、爪きっとくの忘れた・・・・。まぁ、いいか。』 「NiceDay.きもくてサンドバックなゆっくり共!!」 『とりあえずゆっくりゃ隔離成功。 このレイパーをどうs』 「ゆっ!このいなかもの!ありすのおよめさんこうほかえしなさい!」 『オーケー。虐待決定。こいつは俺の獲物決定。』 「おいありす、このゆっくりゃ返してほしいか?」 『とりあえず聞いてみっか。』 「さっさとかえしなさい! それぐらいもわかんないの?ばかなの?」 やっぱゆっくりきめぇ。 「やだね。あげる理由が無い。というかお前のモノじゃない。」 「どうでもいいからかえせぇえええええ!!!」 おお。きもいきもい。 さてどういじめよう。 「このやくにたたないじじいはさっさとれみりゃをかえせぇえええええ!!」 「黙れこの糞畜生が!」 「ゆっ・・・・」 (・・・・サンドバックでいいか。) そう決定した鬼井山は手っ取り早く懐から取り出した透明のビニールにありすをいれた。 家の中に入って扉をしっかり閉めて施錠して・・とゆっくり対策をした後虐待部屋へと移動した。 昼~ 鬼井山の家、虐待部屋 とりあえずいままで透明な箱にいれていたゆっくりゃを開放する 「う~!う~!」 「おい肉まん、幾つか言っておく。 邪魔するな、騒ぐな、此処から出るな、意思疎通を取るならすばやく。以上。」 「ゔっ・・・・」 『とりあえず・・・これでゆっくりゃのほうはOKかな? 問題はこの袋の中でもごもごいってるレイパーだ。』 鬼井山は近くにあるタンクから伸びているゆっくりの口にフィットする形のホースを持った。 袋の中に居るゆっくりの口にホースを銜えさせ。ガムテープで固定した。 もごもごいってるけど鬼井山は無視して作業を続ける。 袋の中の空気をぬいてゆっくりにぴったりにさせる ゆっくりやめてね!とかとかいはじゃないぃいい!とかきこえてくるけど気にしてはいけない。 それから数分後、サンドバックは完成した 頭の部分にはありすが。胴の部分はひろったありすが積めてあるもの。 ゆっくりゃがうずうずしてたけど気にしない 『とりあえず準備完了。虐待に入ろうか!!!』 鬼井山は大きく息を吸い込んで 「ヒャアアアアアア!!!虐・待!だッッッッッッ!!!」 と声高々に宣言した後サンドバックになぐりかかった。 「ゆべぇっ!」 ありすが悲鳴を上げた。 フック・フック・ジャブ・ジャブ・ストレート・ストレート・アッパー・キック・ストレート と華麗にサンドバックに攻撃を叩きこんだ。 「ゆべっ!べべっ!ゆぎっ!やべdゆぎぃっ!」 がありす。 「「「「「やめてあげてね!いたがってるでゆぎゃぁああっ!ゆっぐじでぎだぃいいいいい!!」」」」」 がありすズ 「ヒャァーッハァ!オラオラオラオラ無駄無駄オラオラ無駄無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄オラ無駄ァッ!!!」 一瞬でゲシュタルト崩壊したけれど気にしないで攻撃を叩きこんでいく 胴部分から悲鳴が聞こえなくなった頃ありすも限界が来たようだ。 「ぼっど、ゆっぐじ、じたが・・・?」 ここで鬼井山がタンクを操作してホースに オレンジジュース(果汁1%、糖度99%、自家製)を流し込んだ。 「ゆゆー!(ガボガボ)とかいはなあまさねー!(ガボガボ)しあわせー!(ガボガボ)」 少したってから操作してオレンジジュースを止める。 「ゆゆっ!もっとながしなさいよ!つかえないわね!」 とか暴言を吐き出したら合図。 「・・・いくぜオラオラァ!」 ジャブ・ジャブ・ジャブ・ジャブ・ジャブ・ジャブ・ジャブ・ジャブ・ジャブ・・・・ 「ゆべっ!べっ!べっ!べっべっべっ・・・」 ジャブ・ジャブ・ジャブ・ジャブ・ジャブ・ジャブ・ジャブ・・・ 「やべっ!ぼうっ!やべっ!でぇっ!ゆぎゃっ!・・・」 ジャブ・ジャブ・渾身の右ストレートォッ! 「ゆべっ!やべっ!ゆげぇえええええええええっ!!!」 カン、カン、カーンというK.O.の音が何処かで聞こえるのは気の所為です。 「ぃょっしゃぁあああああ!!!あー、だりぃ・・・・」 流石に鬼井山も疲れた様子を見せる。 「うー!うー!」 とゆっくりゃがタオルをもってきた、すっかりマネージャーである。 「ん・・・・まぁいいや。ありがとう。だがプリンはないぞ。」 「うー、うー♪」と撫でられていたがプリンは無いぞで少し落ち込んだようだ。 「ゆ゙・・・・びゃっど。ぼばり・・・?」 とかありすがほざいてるがむししてゆっくりゃを強めにわしわしとする。 「うー!うー!」 少し涙目になっていた。 鬼井山は可愛いゆっくり、頭のいいゆっくりは好きである。 とすこしわしゃわしゃしたあと思い出したようにタンクを操作してオレンジジュースを流した 「ごっく、(ガボガボ)ごっく。(ガボガボ)とかいはー・・・・」 『少しやりすぎたか、図に乗らない程度に希望をあたえてやんなきゃ其のうち反応なくなっちまう。』 さてどうしたものか、とおもってたらいきなり鬼井山脳に昼の景色がフラッシュバックする。 「これだ・・・・・」 「う~?」 こうしちゃおれん、と行動を開始する鬼井山 ありすを睡眠薬で眠らせて箱に閉じ込めて・・といいつつ行動する鬼井山であった。 夕方~ 虐待部屋の一角。 透明な箱いれられたありす(睡眠薬投与済み、そろそろおきる) とゆっくりまりさ(加工所産、様子がおかしい) 「・・・そろそろおきるかなぁー・・・?」 「うー?」 と、鬼井山が言った後すこししてゆっくり二匹が起きた。 「ゆ・・・ゆゆっ!?まりさっ!?」 「ゆゆっ!ありすがおきたよ!ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね! まりさ!とかいはなありすをたすけにきてくれたのね!?うれしいわぁ!」 「そうだよ!たすけにきたよ!・・・だけどね、なんかまりさ、からだがおかしいよぉ・・・ ありす、すっきりさせてぇー?」 『・・・・・うぁ、これは、引く・・・・・』 と鬼井山が真っ青になってる前でありすは 「ゆふぅううううん!ばでぃざぁあああ!!どがいばのでぐにっぐみぜであげるわぁああああ!!」 と簡単に誘い受けに乗っていた 馬鹿である。 ~~~ここからさきは作者が描写を嫌がるので会話文のみで御進みください~~~ 「ばでぃざぁああああ!!ぼっべだ、ぼっぢぼぢでぇええええ!!」 「ありすぅうう!!ありすのほっぺたももちもちだよぉおおお!!」 「ばでぃざああああああ!!ばでぃざのまむまむに、あでぃずのべにべにいでぇるでぇえええ!!!」 「ありすぅううう!!!まりさのばぁじんもらってぇええええ!!」 「んほぉおおおおおおお!!」 「ゆぅうううううううう!!」 「んほっ!んほっ!んほぉおっ!」 「ゆぅっ!ゆぅゅ!ゆぅううっ!」 「すっ」 「すっ」 ~~~戻します~~~~ 「其処までだ饅頭二匹」 「ゆべぇえええええ!!たべないでぇええええ!!」 「ばでぃざあああああああああ!!!」 「うー♪」 すっきりーしそうなありすを袋に入れてすっきりーしそうなまりさをゆっくりゃがぱっくんして。 というのを数秒のうちにやってのけた。 いつのまにかゆっくりゃと仲のいい鬼井山であった。 「さて準備準備」 ありすをちゃっちゃとサンドバックに戻していく 胴部分のモノは全く変えないである。死臭で脅すためだ、ゆっくりゃも引く臭さになっている。 やべでー!とかごろじでやるぅうー!とか聞こえるけど空耳だ。絶対。 というのを後2回ぐらい繰り返した。 そのころには気力が薄く、助かる見込みがないと思いつつある。 ここで鬼井山は殴るのをやめておいしく食べるために「加工」の工程に移る。 気持ち悪いとはいえ饅頭だ。何であれおいしく食べるのが鬼井山の心情である。 サンドバックのなかの袋(清潔)に入ってる饅頭 (変形しているが、ぎゅうぎゅうずめな為漏れてはいない) を取り出し、潰し、混ぜて半分はゆっくりゃにあげる。 「うー!うー!!あまあま♪」 おいしそうに食べている。そのあと半分はお裾分けしてくれた。ぶっちゃけ使わないけど食べる事にした。 欲張りでは無いゆっくりは好きな鬼井山であった。 大量の死んだありすの半分は湯煎で解かしてパイに積める。 シュークリームが沢山できた。 あとで里の寺子屋にもってこうかなぁ?と鬼井山は思考していた 「・・で、おい饅頭」 「なぁに・・・?ありすに、なにか、よう?」 「やっと死ねるぞ。喜べ。」 「・・・そう。やっとおわるのね・・・。」 「そうだ。うれしいか?もう殴られないぞ?」 「・・・・・もっととかいはにゆっくりしたかったわ・・・。」 「そうかい。じゃぁな。」 といって、鬼井山はありすを眠らせた そのありすの半分をつかってエクレアを作った そのありすの半分を使って 「・・・ゆ?しんでない・・?」 「よーう、饅頭」 「おにいさん!?なに!?」 「うっうー♪」 「体がちっちゃくなった感想はどうだぁー?あと、皮をパイ生地にしてやったぞー♪喜べー♪」 ゆっくりありすを改造していた。 鬼井山はお菓子職人でもあった。 「・・・え?」 「実験のつもりで皮変えたら動けるようになるとは・・・マジゆっくりって不思議・・・」 「だぁでぃごでぇえええええええ!!!」 「あ、目と口は元の奴と一緒だからよろしく。作るのだるいんで簡便な♪」 「もどじでぇえええええええええ!!」 「だが断る。 あ、お前もうゆっくりじゃなくて、ゆっくりっぽい何かだから。」 「あでぃずはゆっぐでぃだよぉおおおお!?」 「・・・まぁいいや。飾りも髪も元の奴だから。群れに帰れ。んじゃぁな♪」 「やべでぇえええええええ!!ぼどにぼどじd・・・?!」 こうして。ありすは群れへと返された。 「あー、すっきりした。 ゆっくりゃー。お前さんも群れに帰るかー?」 「うー・・・?うー・・・・」 「まだ居たいのね、はいはい。いいよ。」 「うー♪」 「寺子屋にこれ届けるから手伝えー?」 「うー!」 ありすは。幸せな未来を暮らしたか。不幸な今で死んだか。それは皆さんのご想像にお任せします。 ~~~~~~あとがき~~~~~~ どうも、半年ROMです。 ほぼ初めまして。ですね。 今後も頑張ります!よろしければよろしくおねがいします。 批評はスレでおねがいします。 レスはできませんがしっかりと聞きます。 ご参考にさせていただきます。 このSSに感想を付ける
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※俺設定注意 ドスまりさの目の前でゆっくり達は全滅した。 泣き喚くもの、状況を理解せずに脅しつけるもの、命乞いをするもの。 人間はそんなゆっくり達を差別しない。 全て平等に、踏み潰し、切り裂き、引き千切り、殺す。 親ゆっくりも子ゆっくりも赤ゆっくりも老ゆっくりもすべてみんな殺されてゆく。 もちろん、ドスまりさもその殺戮の範疇にいた。 体は切り裂かれ、脳天に杭を打ち込まれているドスまりさの意識はない。 やがて処刑は終わる。 里の広場という処刑場にあるのは餡子。餡子。餡子の海。 気付けば日も暮れ始め、人間達はそれぞれの家に帰る。満身創痍のドスまりさを置いて。 だが、ここで奇跡が起こる。 ドスまりさの意識が目覚める。 本来ならば有り得えない。いくらドスとて、これほどの傷を負えばそのまま死ぬはずだった。 やがてドスまりさは地面にうち捨てられた帽子を拾い、ゆっくりと這い出す。 まただ。また、やってしまった。 ドスまりさはゆっくりと這う。おうちへと帰るのだ。 今回で何度目だ?一体、いくら死なせれば気が済むのだ? ドスまりさの胸中に浮かぶものは後悔。 ドスまりさは今まで何度も群れの全滅を見てきた。 ある時は突然の大雨。ある時はれみりゃの大群。そして、今回は人間の里に手を出してしまった。 他にも例をあげればきりが無い。 それほどまでにゆっくりは死にやすい。 今度こそ。今度こそこの群れは、立派にゆっくりさせてみせる。 そんな想いを何度も抱き、何度も打ち砕かれた。 この世はゆっくりできないものが多すぎる。そうだ。そうなのだ。 人間もれみりゃもふらんも山犬も雨も風も自然も何もかも、すべてがゆっくりできない。 もう解った。ゆっくりできないものには近づかない。近づきたくない。 だから次の群れは。次の群れこそはゆっくりさせてみせる。 ドスまりさは傷を庇うようにゆっくり這っていく。 その脳天には、いまだに杭が打ち込まれたままになっていた。 人間が立ち入ろうともしないような森の奥。 ここはゆっくりの理想郷。 ここのゆっくりは皆ゆっくりと、しあわせに暮らしている。 ゆっくりできないものなど無い。すべてがゆっくりしている。 ドスまりさは全てのゆっくりがしあわせー!になれるように、この理想郷を「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」と名づけた。 ゆっくりぱらのいあ 日の光が射しこむ朝。木の下に掘ったおうちの中で、まりさはゆっくり目覚める。 遂にこの日がやってきてしまった。 朝日の下、憂鬱な気分を紛らわすように溜息を吐く。 まりさの属する群れには、あるひとつの掟があった。 成人を迎えたゆっくりは、定期的に”お仕事”に就かねばならない。 まりさはこの春大人の仲間入りをした。今日初めて”お仕事”に就く。 これが普通の狩りや家事ならば、喜んでやろう。 まりさは本来そういう仕事に憧れていたし、その能力もあった。 だが違う。これからやる”お仕事”はどう考えても喜べるものではない。 ”お仕事”を放棄することは出来ない。 そんなことをすれば群れの長が黙っては居ない。 良くて追放、悪ければ・・・・・・まりさは考えるのを止める。 こんなことを考えても仕方が無い。 今日”お仕事”を済ませれば、当分の間は大丈夫。この群れに大人のゆっくりは数多くいる。 ゆっくり特有の前向き思考で、まりさは現状の問題を棚上げする。 こんな時はお兄さんと遊んだときのことを思い出そう。 まりさの話を聞いてくれて、まりさにいろんなことを教えてくれたとってもいい人。 今度はいつ会えるのだろう?また会って遊んでほしい。 楽しいことを思い浮かべるけれどもやっぱり憂鬱。 まりさはそんな気分で、森の広場へと向かっていった。 森の広場。 そこだけ木が切り取られたような広い空間に、巨大な饅頭が鎮座している。 この群れの長、ドスまりさだ。 「まりさ。まりさはゆっくりしてる?」 「もちろんだよドス。ゆっくりしてるのはゆっくりの『ぎむ』だよ」 嘘だ。本当はゆっくりなどしていない。 だが嘘をつく。そうでなければ殺されてしまうから。 このドスまりさは狂っていた。 ドスまりさはこの群れ、「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」をゆっくりにとっての理想郷だと信じ込んでいる。 ドスまりさは森の外は、ゆっくりできないものがうようよしていると信じている。 彼らは「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」の破壊を目的にしているのだ。 そのためドスまりさは、こんな森の奥に引っ込み、手出しができないようにした。 さらにドスまりさは、群れのゆっくりの中にも反逆者が混じっている、と信じている。 彼らはゆっくりできないもの、例えば人間と通じており、「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」の破壊を目論んでいる。 彼らは忠実な群れのゆっくりに化けている。探し出し、処刑しなくてはならない。 ここのゆっくりは、皆ゆっくりしている。何故ならば、ドスが皆にゆっくりを提供しているから。 ドスはみんなの友達であり、ドスはみんなのことを常に考えている、ドスまりさは自分でそう信じている。 従って、群れのゆっくりは皆ゆっくりとしていなければならない。 もしゆっくりとしていないならば、それこそ反逆者である証拠だ。 「れいむ。れいむはゆっくりしてる?」 「もちろんだよドス。ゆっくりしてるのはゆっくりの『ぎむ』だよ」 「ありす。ありすはゆっくりしてる?」 「もちろんよドス。ゆっくりしてるのはとかいはの『ぎむ』だわ」 「ぱちゅりー。ぱちゅりーはゆっくりしてる?」 「むきゅ、もちろんよドス。ゆっくりしてるのはゆっくりの『ぎむ』よ」 「ちぇん。ちぇんはゆっくりしてる?」 「もちろんだよー。ゆっくりしてるのはゆっくりの『ぎむ』なんだねー」 今日集められたゆっくりは5匹。 れいむ、ありす、ぱちゅりー、ちぇん、そしてまりさ。 この中で”お仕事”が初めてなのはまりさとぱちゅりー。 2匹は幼馴染みだった。 「今日はあつまってくれてありがとう。さっそく”お仕事”の説明をするよ」 一通り挨拶し終えたドスは話を切り出す。 「この前、ゆっくりできないれみりゃを見かけたという報告があったよ」 「れみりゃはゆっくりできない。ゆっくりできないものはこの森にいてはいけない」 「ドスはそう考えたよ。だからみんなに集まってもらった」 「みんなの”お仕事”は、そのれみりゃを永遠にゆっくりさせること」 「もちろん、反逆者がいたら報告してね。場合によってはその場で処刑してもいいよ」 きた。これだ。まったくゆっくりできない。 両親から聞いた話の通り過ぎて、まりさはさらに憂鬱になる。 「全てのれみりゃ・ふらん・その他捕食種はゆっくりできないよ」 「この森に住むゆっくりたちは全てゆっくりしており、この「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」は そうした完璧なゆっくりのみに許されたゆーとぴあだよ」 「ゆっくりしていない外見、中身、その他もろもろを持ったゆっくりは見つけ出され、根絶しなければならないよ」 知っている。 この森には飾りを無くしたゆっくりなんて者は居ない。 この森にはドスに逆らうゆっくりなんて居ない。 なぜなら飾りを無くせばドスに殺されるから。ドスに歯向かえば殺されるから。 最低のディストピアだ。 「ドスに内緒のお話・行動をしているゆっくりは反逆者だよ」 「ドスが知らない、認めていない組織に参加しているゆっくり。ドスが知らないということはその組織は秘密組織であり、 それに参加する者はドスや、「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」に危害を加えようとしているものと判断するよ」 「そんな反逆者は、狩りだして処刑されねばならないよ」 それも知っている。 秘密の狩りに出かけたもの。隠れてすっきりをしたもの。 彼らは全てドスに殺された。 この群れには密告というルールがある。 不穏な行動を取るゆっくりをドスに密告し、その報酬として安全を約束される。 自分の保身のために他のゆっくりを売る。 お陰でこの森から逃げる算段をつけることすらも難しい。 「ドスは君達の力量を考え、十分な装備を提供し、適切な任務を与えるよ」 「つまり、君達の任務成功率は100%だとドスは確信しているよ」 嘘だ。 ただのゆっくりがたった五人で、れみりゃに敵うと思っているのか。 それにこの森にれみりゃなんて居ない。 とっくの昔にドスまりさが狩りつくしてしまった。 報告というのもどうせ誰かの口から出任せ。 居ないものをどうやって捜せというのか。 つまり、まりさ達の任務成功率は0%だ。 ドスまりさの傍からゆっくりにとりが顔を出す。 このにとりも狂っていた。 まりさ達に手渡されるのは複雑に変形した棒のような何か。 おそらくはドスまりさの話を聞いて作った何かの模造品。これが「十分な装備」とは、恐れ入る。 「もし任務が失敗してしまうようならば、ドスはそれを反逆者の陰謀だと判断するよ」 まりさ達は任務の失敗を言い繕うために、反逆者を捜し出す。 別に反逆者である必要はない。誰かをそう仕立て上げれば良いだけのこと。 これからまりさたちが行うのは、自分達の命をかけた騙し合いだった。 「それからもう一つ!もし人間さんを見つけたら、必ず報告してね!」 「人間さんはゆっくりできないよ!人間さんはゆっくりできないよ!人間さんはゆっくりできないよ!」 壊れたようにドスまりさは繰り返す。 過去に何かあっただろう。それほどまでにドスまりさは人間を恐れている。 だがまりさは報告しない。 そんなことをすれば殺されてしまう。 ドスからすれば人間と会っているゆっくり=反逆者だからだ。 馬鹿正直に話をして、ドスまりさに反逆者と思われたら元も子もない。 「それじゃあみんな、頑張ってきてね!ドスはここで皆のことを応援してるよ!」 まりさ達5匹は、れみりゃが居たと報告された場所へ向かって歩き出す。 これから居もしないれみりゃを捜し出して、5匹の中の誰かを反逆者にするのだ。 まったくもって非生産的な”お仕事”。 楽しすぎて涙が出る。 そういえば、まりさは本当に反逆者なんだっけ。 ドスに内緒で人間さんと出会い、遊んだ。殺されるには十分な理由。 それだけのことで死んでたまるか。誰を犠牲にしてでも、絶対に生き延びてやる。 まりさはそう決意し、森の中を跳ねていった。 広場から遠く離れた森の何処か。 今まりさはひとり、森の中をぶらついていた。 当然のように、れみりゃはいなかった。 報告があったという洞穴。どこを探そうとれみりゃの影も形も見当たらない。 それでも一応、どこかに居るかもしれないという理由でまりさ達は分散して捜索を続けることにした。 死体は自分の無実を証明できない。 だから、まず先に殺してから相手に罪を被せることのほうが楽だ。 五人全員一緒に居ていつ誰から襲われるともわからない状況より、ひとりの方が気が楽だった。 このままでは任務は失敗に終わる。 その前に誰かに反逆者になってもらわねば。誰がいいだろうか?れいむあたりがいいかもしれない。 当然、相手も同じ事を考えている。殺るか殺られるか。 そう考えながら、まりさは周囲を捜索する振りを続ける。 突如。 目の前の茂みから、がさがさと音が鳴る。 まりさは驚愕する。 誰だ。れいむかありすかちぇんか。誰がまりさを殺しに来た。 いや、まさか。もしかしたられみりゃかもしれない。 もし本当にれみりゃが居たとしたら、今まりさはひとり。殺される。 あらゆる可能性が頭の中を駆け抜け、まりさを青褪めさせる。 しまった。いくら危険でも、全員で固まっていた方が良かったのかもしれない。 ここでまりさは殺され、後の4匹はまりさを反逆者ということにして生き延びる。 嫌だ。絶対に嫌だ。死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない…… もうまりさが何を後悔しても遅い。茂みをかき分け、出てきたのは――― 「お、いたいた。まりさ、ゆっくりしていってね」 まりさの不安は外れた。茂みから出てきたのは、人間さん。 そう、まりさと一緒に遊んでくれたお兄さんだ。 安心とともに地面にふにゃりとへたれ込むまりさ。 「ゆ、ゆぅぅ……。びっくりさせないでね、おにいさん」 「?」 お兄さんが首をかしげている。一体何のことかわからないのだろう。 お兄さんに説明してあげなきゃ。まりさはゆっくりと、今の状況を説明し始めた。 「ふーん……成る程ね。難儀だな、お前も」 「ゆぅ……ゆっくりりかいしてくれて、うれしいよ……」 大体の説明を終え、お兄さんはまりさを励ましている。 こんな異常な話に理解を示してくれたお兄さんに、まりさはさらに好感を持った。 「お前んとこの長が狂ってて、今お前は誰に殺されるかわからない状況だと……すごい話だな」 「ゆ……そうなんだよ」 普通ならばこんな話は信じられない。少なくとも、まりさは信じない。 でもお兄さんは信じてくれている。人間さんはとってもゆっくりできるとまりさは思った。 「俺にはどうすることも出来ないけど……とりあえずこれ、食べるか?」 「ゆゆっ?それ、なぁに?」 懐から真っ赤な丸いものを取り出すお兄さん。 初めて見るそれに、まりさは疑問を呈する。 「見たこと無いのか?トマトっていうんだ。美味しいぞ」 「ゆっ……?」 日の光を浴びて輝くトマト。言われてみればとても美味しそうに見える。 まりさはふらふらとお兄さんに近寄り、トマトを一口かじる。 「おっ……おいしぃ~!!しあわせぇ~!!!」 思わず涙が出てしまう。 それくらいに美味しい。ほんのりとした酸味と甘さのコラボレーション。まるで太陽の味。 まりさは脇目も振らず、トマトを平らげる。 「おにいさん!ありがとう!おいしかったよ!」 「どういたしまして。傷物でよかったらまだまだあるよ」 更に懐からトマトを取り出すお兄さん。まりさはトマトにかぶりつく。 ああ、こんなに美味しいものをくれるだなんて。やっぱりお兄さんは良い人だ。人間さんはゆっくりできる。 ドスは何であそこまで人間さんを恐れるのだろう?こんなに人間さんはゆっくりできるのに。 赤い果実を食みながら、まりさはそんなことを思った。 もう日が高く昇っている。 お兄さんと別れ、まりさは歩き出す。 トマトのお陰でおなかは満腹。気力も充実。 今ならば誰にも負ける気がしない。生き残るには最高のコンディションだ。 そろそろ洞穴の前に戻るべきか。 このまま一人で居続けたならば、いつの間にか反逆者に仕立て上げられ、逃亡したということになりかねない。 そうなればドスまりさの山狩りが始まる。逃げ切れるとは思えない。 まりさは急いで元来た道へと引き返す。 「ゆっくり!ゆっくりいそぐよ!……ゆっ!?」 何か声がする。 ゆっくりしていない罵声。何か争うような音。洞穴の前で誰かが戦っている。 まりさは木の陰に隠れ、様子を伺う。 「まっででねおぢびぢゃん!!今がらままがおぢびぢゃんのがだぎをうづがらね!!」 「ゆあ゛っ、ぐるな゛、ぐるな゛ああああああああぁぁぁぁぁ!!!!」 ゆっくりありすとゆっくりれいむ。 恐怖を顔に貼り付けながら逃げるれいむを、修羅もかくやという表情のありすが追っている。 「までっ、までえええええぇぇぇぁぁぁああああ!!!!おぢびぢゃんのがだぎいいいいいぃぃぃぃぃ!!!!」 「ゆひいいいぃぃぃぃ!!!!ごなっ、ごないでえええぇぇぇぇぇぇぁぁぁああ!!!!」 すでに両者はぼろぼろだ。まりさが到着する前からふたりは戦っていたのだろう。 「じねえええええええええええええぇぇぇぇえええ!!!!!」 「ゆびゅぇっ!!!」 ありすの体当たりが炸裂する。吹っ飛ぶれいむ。 「じねっ!じね、じねえええええぇぇぇ!!!」 「ゆびゅっ!!!ぶっ、ぼぉっ!!!」 すかさずれいむに圧し掛かるありす。 そのままれいむを踏みつけだした。 「おまえのっ、ぜいでっ!!まりざがっ、おぢびぢゃんがっ、じんだっ、んだっ!!」 「げびゅっ!!ぶびょっ!!びょぶっ!!ぼびっ!!ぶぽっ!!」 ありすの踏みつけは終わらない。 どんどん餡子を吐き出し小さくなっていくれいむ。 「おばえざえっ、おばえざえいながっだら、ありずはっ!!」 「びょっ!ぶっ!ぼぇっ!」 おそらく、ありすの家族はれいむの密告によって反逆者として処刑された。 偶然にもれいむと”お仕事”をすることになったありすは、仇を討とうとしたのだ。 こんな光景は珍しくない。密告によって家族を失うゆっくりは大勢いた。 「までぃざどっ!!!おぢびぢゃんどっ!!!いっじょにっ!!!」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ありすは止まらない。 れいむが皮だけになっても、まだ跳ね続けている。 「ありずは・・・・・・じあわぜに・・・・・・」 ようやくありすは止まる。 れいむだった饅頭皮に顔をうずめ、泣き始めた。 まりさは隠れるのをやめた。 そっとありすの傍に近寄る。 「ありす・・・・・・」 「ゆ・・・・・・?ま、まりさ・・・・・・?」 ありすは顔を上げる。涙と泥と餡子でぐちゃぐちゃの顔。 「まりさだ・・・・・・まりさ・・・・・・まりさ・・・・・・」 何度もまりさの名前を呼ぶありす。様子がおかしい。 「ゆふ、ゆふふ・・・・・・!あのれいむをやっつけたから、まりさがかえってきた!」 何を言ってる・・・・・・そう言おうとして、まりさはやめた。 このありすは狂った。長年の仇を討ち、復讐という精神の拠り所を失ったのだ。 「まりさが、まりさがかえってきた!」 れいむを殺しても、まりさとおちびちゃんは帰ってこない。 わかっていたはずの現実から逃避し、ありすは楽しい夢の世界へといった。 「あれ?まりさはかえってきたけど、おちびちゃんがいないわね?」 きょろきょろと周囲を振り返るありす。 その瞳に正気の色は無い。 「おちびちゃんったらいったいどこにいったのかしら・・・・・・まりさ、しってる?」 まりさに子供の居場所を尋ねるありす。 まりさは首を振り、わからないと言った。 まりさにあの世の場所などわかるはずも無い。 「もう、おちびちゃんったら!ままにこんなしんぱいさせて、いけないこね!」 言葉では怒りつつも、その顔は満面の笑顔で満たされている。 きっとおちびちゃんがいた頃のありすはこんな感じだったのだろう。 慈愛に満ちた、優しいママ。 「まりさはそこにいてね!ありすはおちびちゃんをさがしてくるわ!」 まりさを洞穴に残し、ふらふらとありすは歩いていく。 見つかるはずの無いおちびちゃんを捜しに行くのだ。 「おちびちゃん~♪かくれてないででておいで~♪」 少しずつありすの姿は遠く、小さくなっていく。 おちびちゃんを呼ぶ声は、本当に楽しそうだった。 やがて、ありすの姿は見えなくなった。 でも、あの声は。 楽しそうにおちびちゃんを呼ぶ声はいつまでも消えずに、まりさに届いていた。 それからすぐに、ちぇんとぱちゅりーは戻ってきた。 まりさはれいむが反逆者であったこと、自分がそれを倒したことを伝えた。 ありすはれいむに食われたことにした。 生きていると知られるよりも、死んでいると思われたほうがあのありすにとって幸せだと思えたのだ。 結局、任務は失敗に終わった。 邪悪なる反逆者・れいむがその命を以ってまりさたちを阻んだのだ、ということにした。 森の広場で、ドスまりさに報告を行う。 「―――というわけで、にんむはしっぱいしちゃったよ、ドス」 「ゆうう!!反逆者がいたなら、仕方ないね!!」 まりさの言い訳に納得するドス。 任務は失敗だが、反逆者を見つけたことで満足したようだ。 「それじゃあ皆、お疲れ様。今回の任務はおしまい―――」 任務の終了を言い渡そうとするドス。 れいむという犠牲を払って生き延びられたというまりさの安心を――― 「まってねドス!はんぎゃくしゃはまだこのなかにいるんだよ!わかってねー!」 ―――ちぇんの叫びが、阻んだ。 「ゆ?どういうこと、ちぇん?」 「わかるよー!まりさははんぎゃくしゃだったんだよー!」 まりさの息が詰まる。 一体どういうことだ。このまま行けば任務は完了するはずだったのに。 「ちぇんはみたんだよー!まりさがにんげんさんといっしょにいるところを! まりさはにんげんさんからなにかあかいたべものをもらっていたよー! たのしそうにおしゃべりしてたよー!きっとまえからにんげんさんをしっていたんだねー!」 ちぇんは見ていたのだ。まりさが人間さんと出会った一部始終を。 それだけならばまだ良かったかもしれない。その後ちぇんはまりさを見失った。 そして洞穴に戻ってみればまりさと、れいむの死体があった。 きっとまりさは人間さんの手下として、れいむを殺したに違いない。 ありすがれいむに喰われたというのも嘘だ。きっとまりさがありすを殺して、食ったんだ。 なにも知らぬちぇんが、そう思ったのも不思議ではない。 本当の反逆者を告発するのに一片の躊躇もない。 「まりさのいってたことはうそだよー!きっとれいむとありすはまりさにころされたんだよー!」 「・・・・・・本当なの?まりさ」 能面のような無表情でドスまりさが問う。 やばい。やばいやばいやばい。殺される。何とかしてこの場を切り抜けなければ―――! 「ちっ、ちがうよ!ドス!そのちぇんのいってることはうそだよ!」 咄嗟にそんな言葉が口から出る。 こうなったら、ちぇんを反逆者にしてしまおう。そうでなければ、自分がそうなる。 まりさは覚悟を決め、嘘を並べる。 「まりさはそんなことしらないよ!きっとちぇんがにんげんさんのてしたなんだよ! まりさをはんぎゃくしゃにして、ころそうとしているにちがないよ! どす!だまされちゃだめだよ!このちぇんのほうこそはんぎゃくしゃだよ!」 「ちがうよー!まりさがはんぎゃくしゃだよー!わかってねー!」 「・・・・・・ゆうううぅぅぅぅ・・・・・・」 ドスまりさは悩む。 両者の言っていることは正反対。どちらかが反逆者だという明らかな証拠が無い。 はたして本当のことを言っているのはちぇんか。まりさか。 「まりさはしょうにんがいるよ!まりさはぱちゅりーといっしょにいたよ!」 「むきゅっ!?」 突然話を振られ、うろたえるぱちゅりー。 ドスまりさがパチュリーの方を向き、訊ねる。 「本当なの、ぱちゅりー?」 「む、むきゅううううううう・・・・・・」 おろおろしているぱちゅりーを見ながら、ちぇんは哂う。 何を言っているんだ、あのまりさは。 あの時まりさはひとりで、ぱちゅりーなどいなかった。まりさは自分の首を絞めたようなものだ。 虚偽の告発は、それも反逆だ。あの反逆者まりさは、処刑されるのだ。 「・・・・・・ほ、ほんとうよ。ぱちゅはまりさとずっといっしょにいたわ!」 「にゃあ!?」 ぱちゅりーの言葉に驚くちぇん。 そんな。どうして。何故そんな嘘を。 ちぇんはぱちゅりーの言っていることがわからない。 「ぱちゅはまりさといっしょにいたけど、にんげんさんなんてみなかったわ!ちぇんのいってることはうそよ! きっとちぇんがにんげんさんにあって、まりさをはんぎゃくしゃにするよういわれたにちがいないわ!」 ちぇんは知らなかった。 このぱちゅりーはまりさの幼馴染みだということを。 日々互いが密告をする群れの中で、2匹は信頼しあっていたということを。 ぱちゅりーは何も知らない。 まりさが人間さんと出会っていたことなど知らない。 まりさの言っていたことは嘘だということも知らない。 ただ、まりさのため。そのためだけに今こうして口裏を合わせている。 「いだいなちせいをもったドスならわかるでしょう!ちぇんははんぎゃくしゃよ!」 「ちっちがうよおおおおおおおお!!!わがっでねえええぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 今度はちぇんがうろたえる番だった。 まりさは反逆者だったはずなのに、いつのまにか自分が反逆者ということになっている。 しかも相手には証人が居る。2対1。絶体絶命。 「・・・・・・ドスは判断したよ」 ゆっくりと口を開くドスまりさ。 「ドスはちぇんを反逆者だと判断し、これを処刑するよ!」 「に゛ゃあ゛あ゛あ゛あ゛あああ!!!ぢがうよおおおおお!!!ドズぅ、わがっでよおおおおおお!!!!」 泣きながら自身の潔白を訴えるちぇん。 だが無駄だ。もうドスまりさはちぇんを反逆者と決めている。反逆者の言うことなど聞かない。 ゆっくりと開かれる口。 そこにはちぇんを消し去るための光が満ちる。ドススパークだ。 「反逆者はゆっくりしないで死んでね!!」 閃光。 まりさは見た。ドスの口から放たれる、灼熱の焔を。 小さく引き絞られた口径により、威力を高められた光の槍がちぇんを穿つ。 スパークと言うよりはまるでレーザーのよう。 ドスまりさは少なくとも勤勉だった。 己の身を守るため、群れを人間やれみりゃから救うために研鑽し続けた。 その結果がこのレーザー。このドスまりさだけが編み出した、新たなる武器。 ちぇんの額に穴が開く。 びくびくと痙攣し、白目を剥くちぇん。穴は深く、ちぇんの後頭部まで貫通している。 だがドスまりさはまだ止めない。 二度三度、レーザーを撃つ。次々にちぇんの穴が増えていく。 発射時間を抑え、その代わりに連射を可能にしたこのレーザーに隙は無い。 危なかった。まりさはそう思う。 一歩間違えば、自分がこうなっていたのだ。ドスの恐ろしさを改めて再認識する。 ドスまりさは止まらない。 ドスまりさがレーザーを撃つたび、森にレーザーの発射音が木霊する。 最早ちぇんが蜂の巣と見分けが付かなくなった頃。 ようやくドスまりさはちぇんを撃つのをやめた。 「―――ふぅ。反逆者はゆっくり死んだよ!」 元ちぇんだった穴だらけの何かの前で、ドスまりさは笑顔でそう言った。 最初の一発で死んでいたのに、何故ここまでやる必要があるのか。 やはりドスまりさは狂っているのだ。どうしようもない偏執狂。 「ごめんね、まりさ。ドスはまりさのことを疑ってしまうところだったよ」 まりさに謝るドスまりさ。 疑ってしまうところだった?思い切り疑っていたではないか。今は謝罪より、さっさと開放してくれ。 まりさは心の中で毒突く。 「さぁ、まりさ、ぱちゅりー、ご苦労だったね!"お仕事"は終了だよ!」 今度こそ任務の完了を告げるドス。 ようやく終わった。まりさは安堵する。 このふざけた茶番も終わり。次の"お仕事"がいつかは解らないが、とりあえずそれまではゆっくりできる・・・・・・。 「まりさとぱちゅりーにはご褒美をあげなくっちゃね!」 突然、ドスまりさがそんなことを言い出した。 ご褒美?なんだそれは? 両親の話にも出てこなかったご褒美とやらに、まりさは興味を持つ。 もしかしてまりさ達が優秀だったからご褒美をくれるのかもしれない。 5人の内、2人も反逆者がいたのだ。普通だったら全滅していてもおかしくはない。 生き残った2人は、それだけ優秀だった。ならば一体どんなご褒美が出るのだろう。 もしかして綺麗なたからものかもしれない。 ドスまりさが持っていると言われていたキラキラと輝く石。 そんなものがあれば、まりさは一生他のゆっくりに自慢ができるだろう。 もしかして沢山の食べ物かもしれない。 ドスまりさは群れの食料を管理している。そこからご褒美としてまりさに融通してくれるのでは。 自分の身体が埋まるほどの量の食べ物。一体どれほど幸せだろう。 もしかして。もしかして。もしかして。 まりさの期待は際限なく高まる。 「まりさたちには・・・・・・あの・・・・・・えーと・・・・・・なんだっけ・・・・・・ あの赤くて丸い、とってもおいしいもの。あのほっぺが落ちそうになるあれの名前は・・・・・・」 ああ。それはトマトだ。赤くて丸くて美味しいもの。 あの太陽のような輝きを持った食べ物は、まりさの心の中に刻まれていた。 「ゆっ!ドス、それはとまとさんだよ!」 まりさは指摘する。ドスのご褒美はトマトだったのか。 トマトならばご褒美として申し分ない。さぁ。早くトマトを。トマトをくれ。 まりさがドスに向かってそう言おうとした時。 「・・・・・・まりさ、トマトさんって一体何?トマトさんは人間さんの食べ物だよ」 冷たく重い、ドスまりさの言葉が返ってきた。 「まりさ、まりさは人間さんのことをよく知らないはずなのに、なんでトマトさんのことを知っているの?」 まりさは凍りつく。 やばい。しまった。迂闊だった。何とかしなければ―――。 「まりさは人間さんと出会ったことがないんでしょ?それなのになんでトマトさんのことを知ってるの? 人間さんを知らないのに、トマトさんは知ってる。 もしかして、まりさは人間さんと出会ってるんじゃないの?」 ドスまりさはまりさを騙したのだ。 ちぇんを処刑したとき、ドスまりさはまりさのことも疑っていた。ちぇんの証言は具体的過ぎる。 赤い食べ物とは一体何か。恐らくだが、トマトのことか、苺のことだろう。 ドスまりさはまりさにカマをかけてみたのだ。知らないならば良し、もし知っているならば反逆者。 「まりさはドスに嘘をつき、人間さんと出会っていた。これは立派な反逆行為となるよ! よってドスはまりさを反逆者と見なし、これを処刑するよ!」 まりさの目の前が真っ暗になる。もう駄目だ。まりさは死ぬ。 絶望の涙を流すまりさ。 「それからぱちゅりー!ぱちゅりーはドスに嘘をついていたね! ぱちゅりーはまりさと一緒にいたと言ったけど、それなら人間さんと出会っていることになるよ!」 「む、むきゅ!ドス、じつは、ぱちゅりーは・・・・・・」 「もしぱちゅりーがまりさと一緒じゃなかったなら、それもドスに嘘をついたことになるよ! ぱちゅりーはドスに嘘をついた!これは立派な反逆行為であり、ドスはぱちゅりーを反逆者だと判断するよ!」 「む゛、む゛ぎゅううううううううううう!!!」 ぱちゅりーも反逆者となった。 もうまりさたちに逃げる手段はない。 「ドスはまりさ、ぱちゅりーの両名を反逆者として認め、刑の執行を開始するよ!」 またも口を開くドス。その中には滅びの光。 今度その照準が向けられるのはちぇんではない。狙うのは、まりさ達。 最早まりさたちに希望はない。絶望し、涙を流しながら寄り添う二匹。 一体何のために生まれてきたのか。 自分達はゆっくりするために生まれ、生きてきたはずだ。それが何故、こんなことに。何故こんなことで死ななければならない。 もっとゆっくりしたかった。まりさ達はそう叫ぼうとして。 その叫びは光の中に呑み込まれていった。 「・・・・・・ゆぅ。まさか全員死んでしまうとは思わなかったよ」 「でも次のまりさ達なら。今度のゆっくり達なら、もっとうまくやってくれるよね」 「―――もしもし、○○さんですか?ええ、はい。私です。いつもお世話になってます」 今俺は電話をかけていた。相手は少し離れた里の重役さん。 「はい。いました。きめえ丸が巡回中に見つけたんです。 ・・・・・・ええ、うちのゆっくり園の中に逃げ込んでました。もう群れを作っていますね」 少し前、とあるドスまりさが群れを率いて里にちょっかいを出したらしい。 勿論その群れは潰され、ドスも殺されたはず・・・・・・だった。 「ええ、いえ、いいんですよ。別にうちの商品の価値が下がるというわけでもないし。 こちらとしても貴重なドスがゆっくり園にいるというのは好ましいことですから」 ところがそのドスは満身創痍ながらも逃げ仰せ、今は俺が所有する食用ゆっくりの繁殖地―――「ゆっくり園」に逃げ込んだ。 ここと向こうの里ではかなりの距離があるというのに、大した奴だと思う。 「はい。それに、結構面白い個体ですよ、奴は。どうもそちらでお灸を据え過ぎたようでしてね。 どうやら人間を恐れているようなんです。それも異常なくらいに」 今のドスまりさはとても変わったルールというか、指導方法を群れに課している。 いや、指導方法とは言い方が悪かった。あれではまるで粛清と、独裁だ。本当に変わっている。 「それに他にも面白いところがありまして。"ドススパーク"ってご存知でしょう? あれが少し変わってましてね。まるでレーザーみたいに連射してるんですよ」 毎日毎日誰かを疑っては、殺す。その日々をドスまりさは送っている。 きっとあのレーザーはそんな中で生み出されたものかも。実に興味深い。 「ああ、大丈夫です。連射が効くといっても、相手は人間を恐れているし、危険はありませんよ。 それに、あのレーザー程度じゃ問題にはなりません。駆除しようと思えばいつでもできます」 それに何より面白いのは、ドスがそんな暴君だというのに意外と群れの安定は保たれているということだ。 心優しい名君より、狂った無慈悲な暴君。そっちの方がゆっくりには合っているのかもしれない。 「しばらくは様子を見ようと思っています。あのドスが一体どういう群れを作っていくのかが興味あるので。 ・・・・・・ええ、どうも。ありがとうございます。それでは、また」 受話器を置く。傍らにはゆうかと、きめえ丸が立っていた。 「よし、きめえ丸。お前はもう一度監視に言ってこい」 「おお、了解了解。まったくゆっくり使いの荒いことで」 「ゆうかは俺についてこい。ちょっとあの群れのゆっくりに接触するぞ」 「わかったわ、お兄さん」 はてさてドス。お前は一体、その狂った頭でどんな理想郷を作ろうとしているんだ。 人間が立ち入ろうともしないような森の奥。 いや、正確にはここは私有地。だから誰も立ち入ろうとしない。 ここはゆっくりの理想郷。 ここのゆっくりは皆ゆっくりと、しあわせに暮らしている。 ゆっくりできないものなど無い。すべてがゆっくりしている。 それは嘘だ。全てはドスの妄想。ただドスがそう思っているだけ。 ドスまりさの頭にはいまだ杭が刺さっている。その杭のせいか、はたまたこの世の現実か。そのどちらかが、ドスまりさの心を狂わせた。 ここには幸せなゆっくりなど一匹もいない。ドスまりさは繰り返し滑稽な茶番を行う。 ドスまりさは全てのゆっくりがしあわせー!になれるように、この地獄を「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」と名づけた。 ――――ゆっくり、あなたはゆっくりしてる? ――――ZAP! ――――ZAP! ――――ZAP! おわり ――――― 元ネタはボードゲームの「パラノイア」です。 閉ざされたディストピア。狂った管理者。敵はモンスターではなく、他のプレイヤー。 いかに生き延びるか、あるいは滑稽に死ぬか。 そんな設定に心惹かれました。 といっても元ネタの設定の良さの10分の1すら伝わってないとおもうんだねー、わかるよー! て言うかボードゲームやったことないくせにこんなSS書くなんて身の程知らずだったんだね、わかるよー!! このSSに感想をつける
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復讐のらん ――復讐のめーりん続編・ぱちゅあきりすぺくと―― 82KB ※容量オーバーの為、勝手に分割しました (ぶっちゃけ、主役たちの知能がゆっくり基準でチートレベルに高いけど、そうしないと話が進まないのでわかってね!) (『めーりんの復讐編』は、らんサイドから見たアナザーストーリー。 『復讐の復讐編』は、まあ後日談みたいなものだよ!) 『めーりんの復讐編』 「ちぇええええええん! どこだー!?」 日が傾き、薄暗くなった森で、ゆっくりらんがひたすらに伴侶のちぇんを探していた。 ちぇんが狩りに行くと言って大木の根元の巣穴を出てから、夕食前になっても帰ってこないので、心配して出てきたのだ。 そして森の中に響き渡った悲鳴を聞いた。 「らんじゃまあああああああっっっ!」 紛れもない、自分の伴侶のちぇんの声だと思い、その声のする方に駆けつけた。 そこにいたのは、耳も尻尾も千切れ、体のあちこちの傷からチョコクリームを垂れ流しているちぇんだった。 「ちぇ、ん……?」 変わり果てたちぇんの姿を見て、大丈夫かと一も二もなくすり寄ろうとした。 が、そんなちぇんの口から発せられた言葉を聞いて、らんは呆然とした。 「らんじゃば……おぞずぎだよ……なにやっでだの?……でも、ちぇんはやさしいからゆるじであげるね……」 「ぐずのめーりんのせいでぼろぼろにされちゃったよ……まだそのへんにいるはずだから……さっさとさがしだじでごろじてね……」 違う! こんな汚い言葉を吐く生意気な野良猫が、うちのちぇんのはずがない! そして、らんはそのボロボロのかたまりを無視して、ちぇんの捜索を再開した。 ちぇんとともに歩いた場所は、全て探し尽くした。が、その二叉の尻尾の影すら見あたらなかった。 空腹に苛まれ、既に長い時間歩き回って、足の方もぼろぼろだった。 それでも、その苦痛を我慢して、我慢して、歩き回り続けてきた。 いい加減限界が近いことをらん自身、分かっていたが諦めきれなかった。 そんならんを、ふと正気に戻させるものがあった。 「ちびちゃんたち、そろそろばんごはんのじかんだよ! ゆっくりおうちにかえろうね!」 「「はーい、おきゃあしゃん!」」 ゆっくりれいむの親子だった。 冷静になってみて、ふと自分の軽率さに、らんは体を震わせる。 子供達だけで、巣に留守番させっぱなしだった。 酷く嫌な予感がする。慌てて、らんは巣の方に跳ねていく。 先ほどの、どうしようもない暴言を吐いていたちぇんは、既に動かぬゆっくりになっていた。 哀れみなど覚えている暇もなく、らんはその横を通り過ぎる。 全く楽観が無かったわけではない。 ひょっとしたら、ご飯を採って帰ってきたちぇんと入れ違いになったのかもしれない。 ちぇんと子供達は、沢山の夕食を目の前にして、帰ってこないらんをゆっくり待ちぼうけしているのかもしれない。 そうであってほしい、と願った。 が、残念ながら、その願いはかなうことはなかった。 それどころか、そんな願いをあざ笑うような、想像を絶する地獄の光景がらんを待ち受けていたのだった。 らんは自分の巣に戻ってきた。 が、巣を目前にして、歩みを止めた。 ――うー、うー♪ れみりゃか、それともふらんか。楽しげな鳴き声が、聞こえた。 子供達のいる巣穴の中から。 「あ……あああ……」 どれだけらんの感情が拒絶したとしても、もはや悟らざるを得なかった。 自分の子供達が、捕食種によって皆殺しにされたことを。 「うー、まだちょこがのこってるー♪」 「ちぇんのあまあま、おいしいどー♪」 巣穴の奥に、二つのもぞもぞと動くものが見えた。 細く、にやりと見開かれた目が、小さな赤い光を保っていた。 敵は二匹。 殺してやる。絶対に殺す。 いかに大人のらんといえども、捕食種二匹相手では勝ち目はほとんど無い。 普段なら、そのくらいの冷静な判断は出来る。 だが、冷静さなど、今のらんには足止めの役にも立たない。 そして、らんは巣穴に向かって駆け出そうとした。 そのときだった。横から何かがぶつかってきて、らんは巣の横の茂みに突っ込んだ。 「!?」 「だめよ、らん!」 そうささやきかけてきたものの正体を見て、らんは目を見開く。 ゆっくりゆかりんだった。 このらんにとっては、ゆかりんに会うのは初めてのことだった。 何しろ、ゆっくりゆかりんという種族は、どこにいるのかも皆目検討がつかないのだ。 その見つけづらさは、人間にも捕獲成功例はおろか、目撃例すらほとんど無いほどだ。 ただ、ごく稀にゆっくりらんと共にいる光景が見られる程度の存在。 そのときは、らんがゆかりんの言うことを何でも聞く主従関係が確認されている。 「うー、ごちそうさまー♪」 「ちょこのなくなったごみは、おそとにぽい♪するどー」 「らん! かくれるのよ! なにしてるの、はやく!」 そう言って、ゆかりんはらんの体を茂みの奥に自分の体もろとも押し込んだ。 茂みの中から、ゆかりんは巣穴の方を見る。 そして、れみりゃが外に出てきた。 なにやらだらりとした皮状のものを、口にくわえてぶらさげていた。 れみりゃは、その口にくわえているものを巣の横に放った。 狙ったわけではあるまいが、それはらんとゆかりんが隠れている茂みの前に落ちた。 「うー、くらくなってきたんだどー、しょくごのでざーとをたべたいどー」 「うー、ふらんすっきりしすぎてつかれたー」 「あまあまさがしにいってくるどー、ふらんはすのなかでまっているんだどー」 巣穴からちょっと姿を見せたふらんにそう告げて、れみりゃは夜の森へと飛び出した。 「しんじられないわ。れみりゃとふらんが、あんなになかよしにしているなんて……らん?」 ゆかりんは、らんの方を向いた。 らんは、茂みの前にうち捨てられた、子ちぇんだったものの残骸をぼんやりと見ていた。 潰され、中身の完全に吸い取られた死骸の顔は、醜くゆがんでいた。 二叉の尻尾がなければ、何の死骸かは分からなかっただろう。 「あんなにゆっくりした、かわいいちぇんのこどもだったのに……」 と、独りごちるらん。 「……らん」 「こどものらんもちぇんも、みんな……」 「きもちはわかるけど、らん、おちつかなきゃだめよ」 「ゆかりさまは、たいせつなかぞくをころされて、おちついてられるんですか」 らんの言葉に、ゆかりんは何も言えなかった。 「「おがあぢゃああああん! だれがああああっ! だずげでよおおおおおおおおっ!」」 意外と早く、れみりゃが帰ってきた。その口に、二匹の子れいむのもみあげをくわえている。 先ほど、らんが見たれいむの子供だった。 らんは知るよしもないが、既に親れいむはれみりゃにつまみ食いされて皮だけになって いる。 そしてれみりゃが、巣穴の中に入っていった。 「「いやだあああああああっ! じにだぐないよおおおおおおおおっ!」」 ゆっくりれいむはゆっくりれみりゃやふらんに食べられるものとはいえ可哀想に。残酷な話ね。 無力に泣きじゃくる子れいむを見届けて、ゆかりんはそう思った。 「うー、おねえさま、はやーい♪」 「それじゃ、いただきますなんだどー」 「ちょっとまってね、れみりゃ、ふらん」 巣穴から、別の声が聞こえた。 「せっかくだから、れみりゃとふらんがどれくらいかいふくしたのかみたいよ」 「うー、わかったどー。ここはせまいから、おそとにでるんだどー」 「?」 穴から出てきたゆっくりの姿を見て、ゆかりんは目を疑った。 口に子れいむをぶら下げたれみりゃと、ふらんはいい。 だが、その後に出てきたのは……小振りな体のゆっくりめーりんだ。 「それじゃ、れいむをそこにはなしてね」 めーりんがそう言うと、れみりゃは素直に従う。 「じゅうかぞえるあいだに、にげきれたら、たすけてあげるよ」 そう子れいむに言って、めーりんはにやりと笑った。 「いーち、にーい、さーん……」 めーりんが、ゆっくりとカウントを始める。 「「ゆっ、ゆっくりしないでにげるよ!」」 子れいむが慌てて巣穴から離れていく。 残酷な希望を与えるものね。とゆかりんは思った。 そして、子れいむたちがこっちに逃げてこなくて良かった、と思った。 当然ながら、いくら死にものぐるいとはいえ、ゆっくりの子供の逃げ足などたかが知れている。 十数える間に、れみりゃたちの視界から消えることなど、不可能な話だ。 「……はーち、きゅーう……じゅう」 「「うー♪」」 「たいむおーばーだよ」 同時に、れみりゃとふらんが空中を駆けた。 先に飛び出したのはれみりゃだった。ややフライング気味だったが、そうでなくとも結果に大差はない。 勢いよく、片方の子れいむに後ろから噛みついて、ちぎり取る。 「ゆぎっ!」 その一撃で、子れいむは後頭部の大半を持って行かれた。 れみりゃが、動けなくなった子れいむの前に降り立つ。子れいむは既に瀕死だった。 「うー、あまあまー♪」 そう言ってれみりゃは、口内の子れいむの一部をもてあそび、堪能する。 徹底的な恐怖と絶望に苛まれた子れいむは、さぞかしれみりゃにとって美味だろう。 「も、っと……ゆっくり……したかっ」 最期の言葉を言い切る直前に、れみりゃが大きく口を開け、子れいむにかぶりついた。 出遅れたふらんだったが、もう一方の子れいむに追いついたのはれみりゃとほぼ同時だった。 ふらんは、れみりゃとはまた違ったやり方で、自分の体が完全であることを示した。 まず、子れいむの前に回り込んで、体当たりで子れいむの体を撥ね飛ばした。 そして、近くに落ちていた木の枝を口にくわえる。 それで何度も何度も子れいむの体を、叩いて、突き刺した。 「ゆべっ、ぐべっ、いじゃいよおおっ! だれがだずげでよおおっ! ぎゃあああああっ! れいむのおめめがあああああっっ!!」 子れいむは両目を潰され、もはや闇雲に逃げまどうしかない。 そうこうしているうちに、子れいむはいつしか、めーりんの目の前まで戻ってきていた。 もう少し、あの子れいむは長生きするだろう。ふらんの気が済むか、何もかも諦めるまで。 ゆかりんはそれよりも、子れいむを見るめーりんの様子に目を見張っていた。 ――あんな、底意地の悪い笑顔を、これまでゆかりんは見たことがなかった。 れいむを、完全に見下している。その笑みには、憎しみすら浮かんで見える。 「ふらんのやりかたは、のろくてこうりつがわるいんだどー」 とっくの昔に子れいむを食い終わったれみりゃが、物言いを付けた。 「うー。おねえさまのほうが、あまあまのこと、わかってないー」 ボロボロになって痙攣するだけになった子れいむの横で、ふらんが言い返した。 「う? ふらんはれみりゃにくちごたえするなんて、ごひゃくねんはやいんだど?」 だんだん、れみりゃとふらんの口調が剣呑になってきた。 これはひょっとして、仲間割れでもしてくれるのかしら? とゆかりんは少し期待した。 だが、ゆかりんのそんな淡い期待を打ち砕くように、めーりんが横から口を出した。 「ふたりとも、やめるんだよ! なかよくしようねっていったでしょ!」 「うー? そうだったどー」 「ふたりとも、げんきになれたのはだれのおかげだとおもってるの?」 「うー……めーりんだよ」 「ふたりとも、すごくかりがうまかったよ! いっきにころすのも、じっくりいたぶるのも、どちらもせいかいなんだよ!」 「うー、わるかったどー」 「あやまるのはこっちじゃないよ!」 「うー、わるかったど、ふらん」 「ふらんもおねえさまにくちごたえして、ごめんなさいー」 信じられない光景を、一日の内に次々と見せられて、ゆっくりの中でも知能が高いとされているゆかりんでも、頭が混乱するのを抑えられなかった。 どうしてめーりんがあんなに流暢に喋っているのか。 どうしてめーりんの言うことを、れみりゃとふらんがあんなに素直に聞くのか。 「うー、はんぶんおねえさまにあげるー♪」 「うー、ふらんのあまあまは、れみりゃのより、ちょっとあまいんだどー♪」 れみりゃとふらんが仲良くしていることなど、めーりんに関する疑問に比べれば、些細なものだ。 「ちょっとこれは、やっかいそうね……いったん、ひきあげましょう、らん」 らんは、答えない。 らんはずっと、あのボロボロになって死んだちぇんの事を思い出していたのだった。 ――ぐずのめーりんにやられた。 それが本当だとすれば…… 「らん、らん! ここはきけんよ。ものおもいにふけるのは、あんぜんなところにいってからでもおそくないわ」 体を揺すられて、ようやくらんはゆかりんの言葉に従った。 ゆかりんの巣は、石の目立つ所にあった。 「ここが、わたしのいまのかりずまいよ」 ゆかりんは、坂にある大きめの石の前で言った。 「ちょっとまっててね」 ゆかりんが、石の隙間に体を押しつけて、他のゆっくりではとうてい入らないであろう隙間の中に入っていった。 そして、内側から石をどけると、ぽっかりと穴が空いていた。 らんがその中にはいると、ゆかりんは外から石を元に戻し、また隙間から入ってきた。 中は、仮住まいという割には、意外と広かった。ゆっくりの二、三匹は優に入る。 それでも、らんとちぇんの一家が棲んでいた大木の根元の巣穴よりは狭かったが。 「せまいところだけど……ゆっくりしていってね」 そう言って、ゆかりんは蓄えていた食料を、らんの前に出した。 だが、らんはそれに口を付けなかった。 「わがままね……おなかすいてるでしょう? たべなさい、らん」 ゆかりんがそう命令してようやく、らんがぼそぼそと食事を口に運んだ。 ゆかりんは嘆息する。 「とてもゆっくりしているらんとちぇんがいるときいて、やってきたんだけど、こんなことになっているとはおもわなかったわ」 「ゆかりさま。ちぇんは……うちのちぇんは……ぐずだったかもしれないんです」 「どういうことかしら?」 らんはうつむいて、自分の考えていることを語りだした。 らんにしては酷く支離滅裂な説明だったが、ゆかりんに言いたいことは伝わった。 自分の伴侶のちぇんが、いなくなるまでの経緯。 子供達だけで留守番を任せて長い時間遠出していた短慮。 道ばたで見つけた、死にかけのちぇんが吐いた暴言。 そしてあの、巣を襲ったれみりゃとふらんとめーりんの三匹。 あのめーりんが、ちぇんの言っていたぐずのめーりんなのだと思う。 他のめーりんがちぇんに自ら襲いかかるとも考えられない。 だが、れみりゃとふらんを手なずける胆力のあるあのめーりんなら可能だろう。 それでも、感情がなかなか推測を認めたがらない。 それを認めれば、あの汚い言葉遣いのちぇんこそが、自分の伴侶だったと認めることにつながる。 あの日、ご飯を採りに行くと言って帰ってこなかったのは、家族をほったらかして逃げ出すつもりだったのかもしれない。 半年もの時間をかけて築き上げてきたあの金色の幸せが、メッキをはがせば汚泥まみれだったなどと考えたくもない。 「みんな……みんなゆっくりしたいいこだったのに……」 「らん、わたしにはあなたが、なにをなやんでいるかわからないわ。いいえ、わかるけど、それがぴんとこないの」 らんは、ゆかりんの顔を見る。 「どんなゆっくりのこころのなかにも、げすになるかのうせいがあるわ。もちろんわたしにも、あなたにも」 ゆかりんは、毅然とした口調で告げる。 「ドスまりさだって、げすになるものがいたわ。ましてや、あのめーりんや、あなたのちぇんがれいがいになるはずがないわ」 らんは何も言えずにいる。 それでも、とゆかりんは続ける。 「――それでも、あなたのまえでは、ちぇんはいいおやちぇんだったんでしょ?」 はい、とらんは涙ぐんでうなずいた。 「それなら、それをしんじなさい。さいごにあったのは、べつものだとおもいなさい。それでいいのよ」 「……むずかしいです」 わたしだって、そうかんたんにできるわけじゃないわよ。とゆかりんは微笑した。 そして、らんが眠りにつく前に、ゆかりんは優しく言った。 「はがれたきんめっきだって、かきあつめればほんもののきんよ」 石の隙間から、こぼれ入る朝の光に照らされて、らんは目覚めた。 「ぐう……ぐう……」 ゆかりんは深い眠りについている。おそらく、このまま昼まで眠っているだろう。 起こすわけにはいかない。このまま心地よい眠りを楽しんでいてほしい。 らんは石を押しのけて外に出て、石を元の穴に戻した。 そして、かつての住処に向かって跳ねていった。 さすがにれみりゃもふらんも、日の昇っている間は巣の中で大人しくしているのだろう。 らんが、茂みの中から様子を探ると、めーりんが穴の前でじっとしていた。 めーりんはぼんやりと中空を見ていた。魂が抜けたような姿だ。 昨日見た、邪悪な笑みからは想像も付かないもので、らんは場所を間違えたかとすら思った。 そのまま、動く気配はない。 出来たら、巣穴の中の様子を知りたかったのだが、これではまともに近づけない。 これは持久戦になりそうだ。そう判断したらんは、腹ごしらえをしようと決めて、その場から離れた。 一人で食べる分を集めればいいのに、つい、家族の分もと無意識のうちに思っていたのだろう。 山盛りの食料を前に、らんは苦笑する。 まあ、余った分はゆかりんの住処に運ぼう。 「むーしゃ、むーしゃ……」 普通のゆっくりなら、食事中に出てくるはずの、次のフレーズが出てこない。 味気ないその食事を、腹一杯に詰め込む。 それでも、食料は一人では運びきれないほど残っている。 さてどうしようかと、悩んでいたときだった。 「ゆっ! たくさんたべものがあるちーんぽ!」 そう言って近寄ってきたのは、ゆっくりようむだった。 歯には武器となる二叉に分かれた枝をくわえている。 「そんなにたくさんとっても、はこびきれないちーんぽ! ようむにわけてほしいんだちーんぽ!」 「……じぶんのたべものは、じぶんでとってくるものだぞ」 無駄だと思いつつも、らんはそう言った。 「ゆうっ! だから、ここにあるものをじぶんでとるちーんぽ! さからうならじつりょくこうしだちーんぽ!」 予想通りの返答だった。らんは呆れる気にもならなかった。 「いいよ。わかったよ。おおこわいこわい。らんがもってかえるぶんいがいは、ぜんぶもっていっていいぞ」 「ちんぽっ! はなしのわかるゆっくりでよかったちんぽっ!」 らんが自分の帽子の中に食料を入れている最中、ようむは気を許したのか身の上話を始めた。 「まったく、うちのれいむとまりさとぱちゅりーは、なまけすぎなんだちんぽっ!」 らんが聞き流していたようむの話の内容は、大まかにこういう事だった。 ――ずっと昔のこと、初めて狩りをした。れいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりー、ちぇんがいっしょだった。 ありすはその狩りの時に死んでしまったが、初めての狩りは成功して、残る者達は食料のたっぷりある巣を手に入れた。 何を狩ったかはよく覚えていないが、確かぐずのゆっくりだった。とてもうれしかった。 ようむはれいむと、まりさはぱちゅりーとつがいになった。 ちぇんは外に出て、らんとつがいになった。 それからは、それぞれ子供を作って気楽にやっていたのだが、どうも最近他の連中が怠けだしてきている。 れいむは妊娠をネタに。まりさはようむの強さをネタに、ぱちゅりーは自分の脆弱さをネタにして、ようむに食料探しを押しつけるようになった。 二つの家族みんなの分を集めさせるなど、無茶もいいところだ。 ようむとれいむのつがいは、割と珍しいかな、とらんは思った。 食料を詰め込んでぱんぱんにふくらんだ帽子をかぶる。 「それじゃ、のこりはいただくちーんぽ!」 帽子も持っていないのに、どうやって運ぶんだろうとらんは思った。 が、これ以上深入りする気はなかった。手伝いなんてごめんだ。 「あーあ、うんざりするちーんぽ。いっそ、ちぇんみたいにつがいをとっかえひっかえしてみたいちーんぽ」 聞きたくもない事を聞いてしまった。らんはいそいそとその場から立ち去る。 「ちぇん、おまえじゃ……ないよな」 一旦、巣に戻った。 さすがに昼過ぎになって、ゆかりんも起きていた。 「ゆかりさま、しょくりょうをとってきました」 「ああ、ごくろうさま、そこにおいて」 例のごとく外から穴を塞いで、ゆかりんが隙間から巣の中に戻る。 「さて、めーりんたちのようすを、ほうこくしてもらおうかしら」 だが、報告できることなど特に無かった ずっとめーりんが巣穴の入り口にいて、中の様子を探ることは出来なかった。 「――わかったわ、それじゃ、ゆうがたごろに、もういちどいきましょう」 らんは承知した。 「さすがに、にじゅうよじかん、おきていられるわけでもないでしょう。すいみんじかんがながくて、かぶるということもありえるわ」 いやそれはゆかりさまだけでしょ、と言いたくなるのをらんはこらえた。 「なあに? なにかいいたそうなかおしているけど」 ゆかりんが笑みを浮かべてらんの顔をのぞき込む。 「いや、なんでも……ないです。ほんとです、ほんとですってば!」 「ほんとうに?」 「あ、いえ、じつはあるんです」 と言って、らんは思っていたことと別の話題を出した。食料集めの時に出会ったようむの話を。 「ようむとれいむのつがい……なるほど、たしかにちょっとめずらしいわね」 「ゆかりさまでも、めずらしいものがありますか」 「あのめーりんも、そのひとりね」 「はい、れみりゃとふらんをしたがわせるめーりんなんて、はじめてです」 ん? とそのとき、ゆかりんは首を傾げるように、体を傾げた。 「どうかなさいましたか?」 「へんね……たしか、そのしんだちぇんは、ぐずのめーりんにやられた、といったのでしょう?」 「……はい」 「もし、あのめーりんがちぇんをころしたんだとしたら、おかしいとはおもわない?」 「どういうことですか?」 「わからない? ……いいわ。ふつうにかんがえれば、わざわざめーりんがてをくだすひつようはないじゃない?」 らんは、合点がいったように、表情を変える。 「あ……そうか、れみりゃやふらんにやらせればいい。というより、そっちのほうがかくじつですよね」 「かいふくがどうとかいっていたから、けがをしていた、とかんがえてもいいけど、それでもちぇんひとりでは、おやのれみりゃとふらんのあいてにはならないわ」 返り討ちに遭う危険を冒してでも、めーりんひとりでちぇんを襲った。 その理由として考えられることは……選択肢はわずかだった。 「ちぇんをぼろぼろのしにかけでのこしたやりかたをみても、つよいにくしみがあったとしか、かんがえられないわ」 「……すをおそったのと、べつのめーりんのかのうせいは、ないですか?」 愚か者と罵られることを覚悟で、らんは尋ねる。 「ないわ」 ゆかりんは即答する。 「べつべつのめーりんが、おなじひに、たまたまあなたのすみかのちかくにいたというの?」 らんは、答えられなかった。 それでも、らんは言葉を絞り出す。 「でも、それじゃどうして、なんのつみもないこどもたちまで……」 「ふたつかんがえられるわ。ひとつは、ちぇんをころすだけじゃまんぞくできなかった」 「そ、そんな……」 「そして、もうひとつは、れみりゃとふらんのこどもをつくるためよ」 ゆかりんは、極めて冷静に語った。らんは対照的に、取り乱していく。 「でも! どうして、それがうちのこなんですか!?」 「たまたまちかくに、べんりなすみかが、あったからよ。めぼしをつけていたのでしょうね、きっと」 どこまでも、どこまでも合理的に、方程式を解くように、ゆかりんは答えを出した。 「うっ……ううっ……」 ぼろぼろと涙を流し始めるらん。ゆかりんはそれに寄り添う。 らんが泣き止んだ頃、ちょうど夕暮れ時になっていた。 ゆかりんとらんが、例の茂みに身を潜めた。 めーりんは未だに、門番を続けていた。 「ひょっとして、あさからずっとこうなの? きんべんなものね」 さすがに、夕方になって、れみりゃとふらんが活動し始める時間帯に、巣穴を確かめに行く勇気はなかった。 「あら?」 ゆかりんが、別の方角に目を向けた。 そこにいたのは、まりさとれいむの、別に珍しくも何ともないつがいだった。 「ゆ? あそこにあなさんがあるよ?」 「ほんとだ! ちょうどいいね! まりさとれいむの、しんこんまいほーむにしようね!」 まさか、門番をしているめーりんの姿が見えないわけでもあるまいに。 れいむとまりさは、巣穴に近づく。と、すっとめーりんが二匹の行く手を塞いだ。 「ゆううっ? まりさ。なんでこのぐず、じゃましてるの?」 「おいおい、ぐずはぐずらしく、いねむりでもしてるんだぜ!」 「このすあなは、ゆっくりできないところだよ。ゆっくりひきかえしてね」 そうめーりんが言うと、まりさとれいむは、怪訝そうな表情を浮かべる。 「ゆ? どうしてこのめーりん、しゃべれるの? じゃおおおんじゃないの?」 「しょうじきどうでもいいんだぜ。いまからここを、まりさとれいむのゆっくりプレイスにしてやるんだぜ!」 「……けいこくは、したよ」 めーりんは脇に退いた。まりさとれいむは疑いもせず、巣穴の中に入っていく。 二匹分の悲鳴が巣穴から聞こえる。めーりんは笑みすら浮かべない。 「ほんと、どうしてああもおろかなのかしらね……だからいとしくもあるのだけれど」 と、ゆかりんが言った。 巣穴から飛び出そうとしたまりさを、めーりんが体当たりで巣穴の中に弾いた。 「あら、さっきのまりさをみた? あたまにいっぱい、れみりゃやふらんのあかちゃんをくっつけてたわ」 と、ゆかりんはらんに言った。 らんは、ぎりぎりと自分の尻尾の端を噛みしめていた。 「うー、めーりーん!」 「どうしたの、れみりゃ」 めーりんが、呼ばれて巣穴に入る。 「ちょっと、きけんをおかしてみましょう。ちかづくわよ、らん」 ゆかりんとらんは、茂みから出て巣穴の近くまで忍び寄った。 中まではのぞけないが、それでも喋っている言葉は聞こえる。 「れみりゃのあかちゃんが、うまれてこないんだどー。こっちはうまれたのにいい」 「れみりゃ、これはもう、しんじゃってるんだよ」 「やだやだやだ! れみりゃのあかじゃああああん!! じんじゃやだあああ」 「げんいんはこのあかちゃんのらんだよ。こいつが、れみりゃのあかちゃんのえいようをとったから、あかちゃんはしんじゃったんだよ」 「ぐううううっ! ごろじでやるううううっ! ごのあがぢゃんごろじいい!」 「だめだよ! れみりゃ、おあずけ! こいつは、ほかのれみりゃのあかちゃんのためにのこすんだよ!」 「ふらんのは、ぜんぶちゃんとうまれたー。かわいいちびちゃんー」 「ぐうううううううううううううっっっ!!!」 「もう、このしたいにはようはないから、すててきてね。たべてもいいけど」 「うううううっっっ! こんなのたべたくもないんだどー!」 巣穴から出てくる気配を感じて、慌ててらんとゆかりんは大木の裏に身を潜めた。 れみりゃとふらんは、口に子ちぇんや子らんの変わり果てた死骸をくわえていた。 それは、れいぱーありすにれいぷされた子ゆっくりと、ほぼ同じ姿だった。 黒ずんで縮んだ体。植物型妊娠の茎。 そして、絶望と虚無をたたえた顔に残る涙の跡。 れみりゃとふらんは、森の奥に姿を消したかと思うと、すぐに手ぶらで帰ってきた。 「あかちゃんもまともにつくれないぐずは、ぽーい♪ なんだどー。れみ☆りゃ☆うー♪」 と、楽しげに言いながら、巣に戻る。そして数回、死体遺棄を繰り返した。 ゆかりんとらんは、れみりゃが向かった方に走る。 そして、地面に落ちてひしゃげていた、子供達の死骸を見つけた。 「うああああああああああっ!」 その死骸にすがりついたらん。それきり微動だにしない。 ゆかりんは、その親子を残して、巣穴の見える茂みに戻った。 ゆかりんは、らんをあの場所に残した自分の選択が正しかったと知る。 巣穴の前で繰り広げられていた光景。 「ほらほら、ゆっくりしないでね。すのなかでくわれたいんならいいけど」 と、めーりんに巣穴の外に追い立てられる、ちぇんとらんの赤ちゃん達。 「おやのれみりゃとふらんは、こいつらをいっぴきもにがしちゃだめだよ。でも、ころしちゃだめ」 「「うー、わかったー」」 「それじゃ、れみりゃとふらんのあかちゃんたちも、ゆっくりでてきてね」 これから何が起こるかなど、言葉にするまでもなかった。 古今東西、様々なゆっくりの生き様と死に様を見てきたゆかりんも、今度ばかりは体を震わせずにいられなかった。 ちぇんとらんの赤ちゃん達の断末魔が、脳裏にこびりついて離れない。 ――どうしておとうしゃんもおかあしゃんもいないの 厳密に言えば、父親はれみりゃとふらんで、母親は母体となって死んだ子ちぇんと子らんなのだが。 「うー、まんまー、れみりゃ、にひきつかまえたー」 「さすがはれみりゃのゆうしゅうなこどもなんだどー! えらいえらいなんだどー」 無論、赤ちぇんや赤らんに、れみりゃとふらんが親の情を示すことなど無い。 初めての狩りの成果を自慢する子供達を見て、れみりゃもふらんも有頂天だった。 その様子を見て、計算通り、とばかりに笑みを見せるめーりん。 先ほど、ゆかりんは自滅していったまりさとれいむを見て、その愚かさに愛しささえ感じていた。 では、あいつらはどうだ? 百歩譲って、れみりゃとふらんはゆっくりの摂理でなすべき事をなしているのだ、と納得しよう。 だが、あのめーりんは? あの悪魔のような笑みを浮かべるゆっくりに、愛しさなど感じられるだろうか? ゆかりんは、もう見るべきものはここにはないと判断して、茂みを離れた。 らんの様子は、全く変わっていなかった。 物言わぬ残骸に寄り添ってじっとしている。 実はもう死んでいるんじゃないか、とさえ思えた。 「らん。きもちはわかるけど、いつまでもここにはいられないわ」 「……かわいいかわいいちびちゃん、ずっとゆっくりしてね」 らんが、死骸に話しかけていた。 この子も頭が可哀想なゆっくりになってしまったのか。とゆかりんは思ったがそうではなかった。 「いきましょう、ゆかりさま」 その穏やかな笑顔には、どこか諦念にも似た狂気が漂っていた。 「……ええ」 今さっき見た、めーりんと同じ笑みだった。 それから、数日が過ぎた。 いまや、らんの頭の中には、一つの情念が渦巻いていた。 それは、すっきりで殺された子供の死骸のように、どす黒い情念だった。 「めざめるたびに、あなたのかおがかわっていくのがわかるわ」 と、ゆかりんは言った。 夕方、捕食種達がうめき声を上げて、活動を始める。 それまでは、親のれみりゃか、ふらんが外に食事を探しに出かけていた。 だが、今日は様子が違った。 ぞろぞろと、家族総出で巣穴から湧き出てくる。 「うー♪」「うー♪」「うー♪」「うー♪」 親を含めると、総勢で六匹。れみりゃとふらんが三匹づつ。 そして、めーりんがゆっくりと歩き出す。 まるで、遠足の補導をする先生のように。 親たちがそれに従い、子供達は親に従う。 らんは気付かれないように距離を取って、めーりんと同じ歩調で後を追う。 幸い、捕食者達が浮かれて騒いでいるので、尾行は気付かれなかった。 めーりんが立ち止まるのを見て、らんは近くの木の陰に身を隠した。 おそらく、めーりんたちは何かを見つけたのだろうが、ここからでは見にくかった。 らんは、横手に回り込む。そして、めーりんたちの視線の先にあるものを見た。 「まったくみんなしごとをみょんにおしつけすぎだちーんぽ!!!」 みょんがぶらついていた。先日、らんが集めた食料を持って行ったみょんだった。 おそらく、今日も他のゆっくりに食料探しを押しつけられたのだろう。 口を開けば、不満が次々とあふれ出していた。 しかし、ふと立ち止まり「まらまらまら……」と忍び笑いを始めた。 何かエッチなことでも思いついたのだろうか。 その隙を、子れみりゃと、子ふらんは見逃さなかった。 みょんは、初めのうちは敵が子供二匹だとみて、口の枝を振り回して応戦していた。 だが、次々と新手が襲いかかってくる。 一分持たずに、その体はあちこちを食いちぎられ、動きはみるみる鈍くなっていった。 そして、真打ちが現れる。 めーりんは、みょんが落とした枝を、ぺにぺにの辺りに突き刺してとどめを刺した。 「ぢぃいんぼおぉぉぉぉっ!」 そして、何度も中身をかき回す。ずいぶんと、念の入ったとどめだった。 「「「うー! うー♪」」」 ゆっくりの中でも、強い部類に入るみょんを倒したことで、捕食種たちの士気も上がっていた。 「このまま、やつらのところにいくよ。れみりゃ、ふらん、こいつをはこんでね」 「うー、あまあまいっぱーい♪ はやくいきたいー」 「きょうは、たべちゃうぞー。はらいっぱいたーべちゃうぞー♪」 「「「うーっ!」」」 めーりんの足取りには迷いはない。この辺りの地理を知っているのだ。 その場所の近く、森の外れの肥沃な場所に、れいむ中心の大家族が最近住み着いたことを、らんは知っていた。 だが、めーりんはそんなことは素知らぬふりで、別の方へ足を向ける。 そして、めーりんたちがたどり着いた場所を見て、らんは全て合点がいった。 それは、一つの大きな巣穴だった。 以前、みょんと出くわしたときは思い出せなかったが、今やっと、らんは思い出した。 実は、らんは出会ったばかりのちぇんに連れられて、ここにいた家族に会ったことがあったのだ。 れいむ、まりさ、ぱちゅりー、そしてみょん。 昔の仲間だという。既に、そこには大勢の子供がいた。 その家族のかしましい様子を見て、らんもちぇんとの子供を作りたいと思ったのだった。 ただ、親のガラはあまり良いとは言えなかった。 言葉遣いの端々に、子供のいないちぇんとらんを馬鹿にする響きがあった。 巣穴の奥にうんざりするほどの食料をため込んでいるくせに、らんたちに食べさせるのをケチった。 「そんなおおくのたべものを、どうやったらとれるのかおしえてくれないか」 と尋ねると、誰も彼もが言葉を濁した。 「せいいっぱい、がんばる。これがひけつなんだぜ!」 と、答えになっていない答えを返してもらうのがせいぜいだった。 「しょうじき、あまりいいれんちゅうじゃなかったな……」 とこぼすと、ちぇんは意外にもこう言った。 「わからないよー、らんしゃまはちょっと、おかたいんだねー」 ちぇんが口答えめいたことを言うのは、初めてだった。もっとも、そのときはさほど気にすることもなかったのだが……。 「らんしゃまー、ちぇんたちもはやく、こどもをつくろうね!」 そんな言葉と笑顔で、ごまかされたのだった。 めーりんが他の群れではなく、わざわざここを目的地にしたその理由を、らんは悟った。 れいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりー、みょん、そしてちぇん。 何もかも、偶然ではなかったのだ。 かつて、この巣穴には、別のゆっくりが住み着いていた。それはおそらく…… いや、もう断定しても良いだろう。 ここには、他のゆっくりにくずだぐずだと蔑まれているめーりんの家族が住んでいた。 それを、あのれいむたちは殺し、奪ったのだ。 そして、他のゆっくりから奪うことの快感と旨味を、れいむたちは知った。 その復讐を、今、受けようとしていた。 めーりんが、巣穴の入り口で叫ぶ。 「ゆっくりしんでいってね!!!」 元ネタ作品『ぐずめーりん』byぱちゅあき 02『復讐への復讐編』へ
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「ゆぅぅぅぅぅ! どうじでぞういうごというのおおお!」 れみりゃへの怒りで一つになって一致団結……かに見えたゆっくりの群れだったが、早速分裂しそうになっていた。 お決まりの強硬派vs慎重派である。慎重派筆頭はもうこれはそういう星の下に生まれたのであろう長女まりさ。強硬派の方は長である母まりさと他の姉妹。ちなみに十七匹もいた姉妹たちも、軍隊長まりさをはじめとしてれみりゃに殺され、十匹にまで減っている。 「ゆぅ、これからどんどん暗くなっていくよ。れみりゃはまりさたちよりも夜目が利くから、こっちが不利だよ。とりあえず、長のおうちなら生き残ったみんなが入れるからそこに立て篭もって夜明けを待つべきだよ」 しっかりと戸締りをすれば、れみりゃでもそう簡単に開けることはできない。無理に入って来たら、そこをみんなで攻撃すればいい。 これは、妙案と言えた。ゆっくりたちはいまいち理解しておらず、長女まりさといえどもそうはっきりと認識していたわけではないが、これまでゆっくりたちはれみりゃの機動力によっていいように蹂躙されてきたのである。力の差ももちろんあるが、まずなによりも機動力だ。家に立て篭もることによって、れみりゃの機動力の有効性を減退させることができる。入り口で待ち伏せればいいのだ。どこに来るのかがわかっていれば、そこに全戦力を集中することもできる。 「ゆぅぅぅ! すぐにれみりゃをとーばつしに行くべきだよ! だいたい、そうやってみんながかたまってたられみりゃは怖がって出てこないよ!」 ここでも、ゆっくりたちの判断力を鈍らせているのは、自分たちは強い、という認識であった。れみりゃはコソコソと少数で行動しているものや、子供などの弱いものを狙ってきている。それは、れみりゃも兵隊ゆっくりたちが三十匹もいてはかなわないとわかっているからだ。だから逆に、そうやって数が揃っている以上、れみりゃは姿を現さないだろう、というのが強硬派の言い分である。 「でも、みんなで探しに行ったら、また子供たちが襲われるかもしれないよ」 「ゆゆぅ……」 「それはだめだよ、もう子供たちを殺させるわけにはいかないよ……」 先ほどの惨劇が脳裏に蘇ると、さすがに強硬派も少し腰が砕けてくる。先ほどの襲撃で殺された子ゆっくりは五匹程度だったが、逃げることもできずにいた赤ゆっくりの被害が大きく、三十匹は殺されていた。 咲夜はこの群れの数を二百匹程度と見積もっていたが、それは大体当たっていた。 長まりさの一家が約二十匹。彼女らを含めぬ兵隊ゆっくりが四十匹程度。兵隊ゆっくりではない大人のゆっくりがやはり四十匹程度。後は、子ゆっくりと赤ゆっくりが百匹程度。群れの総数二百匹と言っても、基本的に子沢山なゆっくりであるから、子供の割合がかなり大きくなる。 一連のれみりゃの襲撃により、兵隊ゆっくりは三十匹は殺されている。兵隊ゆっくりではない大人ゆっくりは殺されたのは十匹程度で三十匹残っている。子ゆっくりと赤ゆっくりは合わせて、約六十匹しか残っていない。ゆっくりは大きな数は認識できないものの、こうまで殺されると「とにかくすごくゆっくりできない数が減った」ということはわかる。 「ゆゆ、そこでまりさは考えたんだけど」 と、長女まりさが切り出した。 「ゆゆっ、ゆっくり聞かせてね!」 長をはじめ、ゆっくりたちは熱心にその話に聞き入った。 作戦は、いわばおうちにいる子供たちを囮にするものだった。子供を囮、というだけで露骨に嫌がるものもいたが、結局これしかないと長女まりさと、逸早く同意したゆっくりたちに説得されて、長まりさが断を下したことにより、作戦は実行に移された。 「うー、おめめぱっちりだどぉー」 数時間眠って、目を覚ましたれみりゃは周囲の漆黒の闇を見て嬉しそうにダンスを踊る。 「うー、あー、れみりゃのじかん、だどぉー」 と、踊りつつ、なんだかとてもいい感じだとれみりゃは思った。 「これがゆっくり……ちがうどぉ、ゆっくりはもっとゆっくりしてるんだどぉ」 その正体はわからぬが、とにかく今、楽しいのは確かだった。嬉しくなってさらに尻の振りを大きくして踊る。 「さぁて、今度はどうやって攻めてやろうかな、だどぉ」 楽しい。 「とりあえず、あいつらのおうちの様子を見に行くどぉ」 とにかく、今、楽しいのだから、楽しまねば損だ。なにしろ週に一度のぷでぃーん以外になんの楽しみもないゆっくり生だったのだから。 「うー、誰もいないどぉ、みんなおうちでおねむーかな、だどぉ」 集会場にはゆっくり一匹おらず、さっきの襲撃で潰されたゆっくりたちの死骸の一部が草や地面にこびりついているばかりだった。一応、片付けられる限りに片付けたようだ。 「うー、あれ?」 れみりゃは夜行性なのでけっこう夜目が利く。 「あそこは、さっきは穴が開いてたはずだどぉー」 そう、そこは洞窟で、そこにゆっくりたちが逃げ込んでいたのを確かに覚えている。あの時は兵隊ゆっくりや、逃げられずにいる赤ゆっくりを潰すのに専念していたので洞窟に逃げ込むゆっくりは放置していたが、確かにあそこには穴があったはずだ。それが完全に塞がれている。 「うー、あそこに隠れているに違いないどぉー」 れみりゃは、そろーりそろーりと抜き足差し足で、その塞がれた穴に行ってみた。 「うー」 壁の向こうから微かにゆっくりの声が聞こえてくる。 「ゆゆっ、みんなれみりゃを探しに行って、ここにいるのは戦いは下手なゆっくりと、子供と赤ちゃんだけだよ」 「ゆうぅ、やっぱり怖いよ、不安だよ」 「ゆっゆっ、この扉はれみりゃにも壊せないから大丈夫だよ!」 「ゆっ、そうだね!」 「がんじょうに作ってあるもんね!」 そんな会話を聞いて、れみりゃはにやりと笑う。 「うー!」 少し扉から離れて助走をつけて思い切り木剣を突き込むと、扉にはあっさりと穴が開いた。中から「ゆゆーっ!」という悲鳴が聞こえてくる。 「うーっ、こんなうっすいドアはれみりゃのこんばくりゅうでイチコロなんだどぉ」 ばきばきと穴を広げていく。 「やめてね! やめてね!」 「この中には、戦えないゆっくりとおちびちゃんたちしかいないんだよ!」 「やめちぇ! れみりゃはあっちいけー!」 「うー、うー」 中からの悲鳴懇願は当然これまで通り無視である。 「う?」 だが、成体サイズのゆっくりが通れるぐらいの穴が開いたところで、木剣が欠けてしまった。扉を作るのに使った材料の中に鉄板があり、その鉄は、硬度は先ほどのみょんの剣とそう変わらなかったが、軽量のゆっくりがくわえているのではなく、扉の材料として固定されていたために、さしもの咲夜お手製の木剣も負けてしまったのだ。 それでも折れることはないだろうが、れみりゃは咲夜にこれを「プレゼント」として貰っているので、これ以上傷つけたくなかった。 「うー」 現時点で開いている穴では、胴つきであるれみりゃは通ることができない。 「うー」 何か他に武器は無いか、と見回すがあいにくそういうものは無いし、それにれみりゃの中ではこの扉は、咲夜がくれた木剣よりも強い、という認識ができあがっており、生半可なものでは逆に壊れてしまう、と思った。 腰に下げてあるナイフを思い出したのはその時だ。これは咲夜が愛用しているのと同じものである。当然切れるし丈夫である。 「うー、さぐやのぷれぜんとを折るわけにはいがないどぉ」 しかし、れみりゃはそのナイフを「短かくて弱そうだから」という理由だけで耐久性は低いと思い込んでいた。ゆっくりを斬り付けるならともかく、この扉をこじ開けることができないだろう、と。もちろん、そんなことは無いのだが、とにかくれみりゃはそう思い込んでいた。薄れている記憶を掘り起こす。咲夜にはもう一つ、なにかを貰ったはず。 「うー……うっ!」 ようやく思い出したようだ。れみりゃは尻振りダンスをかました。 それから座り込み、帽子の中から何かを取り出した。それは円形の筒でれみりゃの片手におさまる程度の大きさで、それに紙が巻き付けてある。 その紙を広げて、れみりゃは、うー、うー、とそこに描いてある絵をじーっと見ていた。 「ゆゆっ! もう行こうよ!」 にっくきれみりゃがもたもたしているのに耐えかねて、れいむが隣にいる長女まりさへ言った。 「ゆっ、だめだよ。今行ったら、れみりゃは飛んで逃げちゃうよ」 「ゆゆぅ……」 れいむは、力なく下を向いた。長女まりさの言うことが正しいということはわかっていた。しかし、このれいむは、先の襲撃で三日前に生まれたばかりの赤ちゃんを三匹とも潰された上に、護衛に残っていた部隊に伴侶のまりさがいて、これも殺されたために、れみりゃのせいで今日一日で家族を全員失うという憂き目に遭っていた。 「もう少し待つんだよ。もう少し、もう少しだけゆっくりと待つんだよ」 妹を七匹殺された長女まりさには、れいむの気持ちが痛いほどにわかる。だが、その恨みを晴らすためにも、今は待つ、ゆっくりと。 長女まりさは、ゆぅゆぅ唸って考えて、れみりゃを仕留めるにはまず飛べなくすることだ、という結論に達した。どんなに追い詰めても、れみりゃが飛べて自分たちが飛べない以上、逃げられる可能性が高い。 そこで、長女まりさが考え付いたのが今回の作戦である。 まず、長のおうちである洞窟に、兵隊ゆっくり以外の全てのゆっくりが入り、そして兵隊ゆっくりも十匹ほど入る。先ほど、戦えるものが全て出払っていると言ったのは、れみりゃにわざと聞かせるための嘘であった。 扉をこじ開けてれみりゃが洞窟の中に入る。その時、中にいるものたちは悲鳴を上げて逃げる。……これは演技をせずとも、れみりゃに対する本能的な恐怖から自然とそうなってしまうであろう。 非戦闘ゆっくりばかりと油断してれみりゃが洞窟の奥まで入ったら、奥に隠れていた兵隊ゆっくりたちが全力で打ちかかる。それを率いているのは長まりさであり、そう簡単にパニックを起こすことはないだろう。あの洞窟はいざという時に群れのゆっくりが避難する場所にもなっているので、かなり広い。奥の奥まで誘い込めば出ようと思ってもそうすぐには出られない。そこで、表に隠れていた長女まりさの率いる別働隊二十匹が入り口を塞いでしまう。洞窟の中に閉じ込めて飛んで逃げれなくなればこっちのものだ。三十匹の兵隊ゆっくりによる攻撃にれみりゃは耐えられないだろう。 れみりゃに飛行しての逃亡を許さない、という観点から見ればよい作戦である。しかし、果たして戦闘訓練を積んでいるとはいえ、三十匹のゆっくりでれみりゃを倒せるのか? ――倒せる。 と、そこは長女まりさも他のみんなも確信している。 どんなに知恵があり賢くても、物事の判断材料となるものは多くは自らの経験だ。その経験を正しく積んでいないと、どんなに賢くてもそもそもの前提が違っているために思う通りの結果が出ない。 この長女まりさがまさしくそうであった。まず最初に、おそらく世界一弱いれみりゃに勝ってしまった。その時のれみりゃの弱さこそが勝因なのだが、そうは思えない。なにしろれみりゃと初めて戦ったのだから、比較する経験が無いのだ。 それから後は、れみりゃやふらん、その他の外敵とまともに戦う機会を与えられなかった。紅魔館の妖精メイドたちが、うちのれみりゃが鍛え終わるまであいつらを殺させるなとのメイド長の指令によってあの手この手で群れを守り、しかもそれを自分たちの実力であると思わせた。特例中の特例の経験を修正する機会を全て奪われて、長女まりさほど賢いゆっくりが、とにかくれみりゃを空へ逃がしさえしなければ確実に勝てる、と確信してしまっている。 そして、誤算はもう一つあった。 このれみりゃのバックには十六夜咲夜という下手な妖怪なんぞ裸足で逃げる恐ろしい人間さんが着いており、彼女がれみりゃに円形の筒状をした道具を渡していたこと。 「うー、ひもをひっぱって抜く、おうちに投げる。……かんたんなんだどぉー」 紙に描いてあった絵は、筒の使い方を字だとわかりっこねえので絵にして示した、いわば取扱説明書であった。咲夜が無駄に力を入れた写実的なれみりゃが筒から出たひもを引っ張って、それをゆっくりがいる穴の中に投げ込んで、うーうーと尻を振って踊っている絵である。 「うー、さぐやのくれたこの丸いのを喰らうがいいどぉ」 れみりゃはひもをぐっと引っ張った。何かに引っかかって取れないように、少し堅いが、れみりゃが全力を出せば抜けるようにしてある。 「うぅぅぅぅっ、うーっ!」 すぽんと紐が抜けた。するとその穴から煙が噴出し始めた。 「うー、もくもくだどぉ、えい、だどぉ」 扉の穴に、それを投げ込んだ。あの筒は、ゆっくりをいぶり出すための発煙筒だったのだ。 「ゆゆぅ、れみりゃ来ないねえ」 「なにをゆっくりしてるんだろうね、ゆっくりしてないではやくしてね!」 「ゆっ? 何か入ってきたよ。ゆゆっ!? もくもくがもくもく出てるよ」 「なんなのこれ、ゆっくりできないよ!」 中から途端に悲鳴が上がる。咲夜が持たせただけに、ただの発煙筒ではない。その筒に「八意」という、ゆっくりにとってはそれだけで禍々しくゆっくりできない文字が書かれているそれは、ゆっくりにとっては極めて高い毒性を持った煙を噴出する。 「ゆ゛、ゆ゛っぐりでぎない……」 「おぐ、おぐ、おぐへ逃げでええええ!」 「びんなあ、おぐだよもっどおぐへぇぇぇ!」 「ゆっぐりでぎなぐなるよぉ、あのもくもくは、ゆっぐりでぎないよぉ……ゆぐぅ!」 扉のすぐ向こうにいたゆっくりたちは最初に無警戒に煙を吸い込んでしまったために、奥へ行く途中に倒れて死んで行った。 「ゆゆっ?」 表で待機していた別働隊は、一体何が起こっているのかわからず、かといってれみりゃが洞窟の外にいるので出ていくわけにもいかず。 「れみりゃ、扉を開けるのを諦めたのかな?」 「ゆぅ、でもゆっくりできない踊りをしているよ……」 「MPが吸い取られそうなのぜ」 皆は、長女まりさの指示を待っている。 「ゆぅ……」 しかし、長女まりさとて何が起こっているのかわからなければ判断の下しようが無い。賢いだけに、判断材料が揃わないと決断できない、というところが彼女にはあった。 「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!」 やがて、洞窟の中から物凄い苦しそうな、ゆっくりできない声が聞こえてきた。そして、内側から扉が壊されているではないか。 この扉は、内側からは簡単に壊せるようにしてある。巣作りをするゆっくりならば出来て当たり前の技術である。 そのため、いざ内側から開けようとすれば、それは簡単だった。扉が壊れると、つん、と嫌な臭いが漂ってきたので、それを嫌ってれみりゃは後ろに下がった。 「ゆ゛げっ、ゆ゛げえっ」 「ごほっ、ごほっ、ごほごほ」 「ゆぅ、ゆぅ、ゆぅ」 吐くもの、咳き込むもの、へたり込むもの。とにかく、洞窟の中にいたみんなが弱っているのだけはよくわかった。 それでも、最初に思い切り吸い込んでしまったゆっくり以外は死に至らなかった。洞窟が広く、煙の毒性がそれほどでもなくなる程度に拡散したからだ。 「うー、嫌な臭いが消えてきたどぉ」 扉が開いたことにより、煙の残滓も外に逃げて行った。れみりゃは木剣を頭上に掲げつつ、扉を壊して表へ転がり出してきた長まりさたちへと近付いていく。 「……ゆゆゆーーーっ! 突撃ぃ!」 長女まりさは、作戦が失敗したことを悟り、別働隊に突撃を命じた。しかし、まだれみりゃは洞窟の入り口近くにいる。 「みんなで一斉に体当たりしてれみりゃを洞窟へ入れるんだよ!」 「ゆぅぅぅぅぅ!」 みんなで一斉に、とは言っても二十匹全てが一辺に当たれるわけではない。それに、あくまでも油断しないれみりゃは、後背からゆっくりたちが現れた時点でとにかく飛び上がり、距離をとって様子を見ることにした。 「ゆ、ゆゆぅ……」 もはや、完全に洞窟の中にれみりゃを入れて飛んで逃げれなくなるという作戦が破綻して、長女まりさが悔しそうに呻く。 「れみりゃああああ!」 長女まりさが叫んだ。 「いつまで逃げ回っているの? 弱いの? ヘタレなの?」 「うーっ?」 「まりさたちは、れみりゃなんか怖くないんだよ! ただ、そうやって飛べるから、逃げられてるだけなんだよ!」 長女まりさは、もういちかばちか、他に手が無くなったので挑発するしかなくなったのだ。れみりゃ種にしては慎重な相手である。そんなところは自分に似ている。この程度の挑発には乗らないかもしれないが、それでもとにかく、もうそれ以外に手が無かった。 「そうだよ! まりさたちはね! 前にれみりゃをやっつけたことがあるんだよ!」 毒煙のダメージから回復した長まりさも、上空に向かって叫ぶ。 「その時は、まりさとそこのまりさと、まだ子供だったまりさとれいむたちだけで勝ったんだよ! まりさたちはその時よりも強くなっているし。仲間も増えてるんだよ! 絶対にれみりゃなんか、まともに戦ったら負けるわけがないんだよ!」 「そうだよ、おかーさんは、長はちゃんぴおんのれみりゃをやっつけたんだよ! お帽子についてる赤いのがそのしょーこだよ! 怖いからコソコソ逃げ回る気持ちはわかるけど、そろそろちゃんと勝負してね! おくびょうもののれみりゃちゃん!」 長女まりさの作戦を察してそれに乗ったもの、或いはもう家族を仲間を失った怒りを嘲りにしてれみりゃにぶつけるもの。少数の前者と多数の後者であったが、とにかくやっていることは同じであった。みんな、れみりゃの臆病さと卑怯さとゆっくりしてなさを罵倒して、度胸が少しでもあるなら、正々堂々勝負しろ、と挑発した。 「うー」 今まで、れみりゃはなんとなくこの群れを漠然と母の仇だと思っていた。しかし、今ここに、はっきりと自分がやった、と言うゆっくりを見た。 ――こいつが仇。 れみりゃの中に、はっきりとした輪郭を持った「母の仇」が生まれていた。 「うーっ!」 急降下。木剣を振る。狙いは、母から奪い取ったというちゃんぴおんの証。 「ゆぐぅっ!」 見事に命中。赤バッチのついた帽子が宙に舞う。ついでに長まりさの頭皮にも傷をつけていた。 「ゆぅ、まりさの、お帽子!」 慌てて帽子を拾いに行く長まりさ、帽子をくわえた瞬間、再び急降下してきたれみりゃが、木剣を突き刺した。 「ゆ゛ぐあ゛あ゛あ゛あ゛!」 後頭部を貫いて口から切っ先が姿を見せている。 「うー!」 足で長まりさを踏みつけて木剣を抜き取る。別に長まりさを狙ったつもりはなく、あくまで帽子についた赤バッチを狙ったのだが、長まりさが帽子をくわえたために、そうなってしまったのだ。 「うー」 今の一撃で、れみりゃは冷静になった。クールに瀟洒、私のように。咲夜の教えはれみりゃの脳髄にまでこびり付いている。 「ゆっ、逃がしちゃだめだよ!」 宙に浮いたれみりゃを見て、長女まりさが慌ててみなに命じる。しかし、れみりゃは逃げるつもりなどなかった。 「うーっ!」 三度の急降下。狙いは……またもや長まりさ。徹底的に長を最初に叩いておこうというのか。長女まりさの指令というよりお願いが飛ぶ。 「ゆゆっ、おかあさんを守って上げて!」 長まりさを心配して傍らに駆けつけていたれいむが、木剣に薙がれてふっ飛んだ。餡子を点々と地面に落としながら。 クールで瀟洒なれみりゃの狙いは最初から長まりさではなかった。怪我をした長を心配して寄って来て、傷口をぺーろぺーろしている奴を狙ったのだ。なぜか、隙があるからだ。それ以外に理由は無い。隙のより大きいものから攻撃する。クールに、瀟洒に。 クールはともかく、瀟洒はちと違うのでは、と言いたいとこではあるが、れみりゃにとってはクールも瀟洒もあまり変わりなく、怖い時の十六夜咲夜のようであればそれであるという認識なのだ。 上空からの急降下しての一撃離脱に、ゆっくりたちはなす術が無かった。 はじめは、あのれみりゃは逃げる気が無いようだ、と安堵した長女まりさであるが、手の届かない天空から一方的に攻撃を仕掛けられるとなると、安堵は恐怖に変わった。 「ゆぅ、はやくしないと、ゆっくりしてられないよ」 ちら、ちら、と視線は長――母まりさへと注がれる。今すぐに手当てすれば、間に合うかもしれない。すぐにぺーろぺーろして、パチュリーのお墨付きの薬草の葉っぱで傷口を塞げば助かるかもしれない。 しかし、それはできない。長の危機に駆け寄ってぺーろぺーろするゆっくりは先ほどのれいむのように何匹かいたが、全てがれいむと同じ運命を辿った。れみりゃは明らかに、そうやって無防備になっているゆっくりを優先して狙ってきていた。 れいむの次にまりさ、みょん、れいむ、の計四匹が長の傷の手当て中に急降下攻撃を喰らって死ぬと、もう長へ駆け寄るものはいなくなった。 長女まりさだって、すぐにでも行きたい。ぺーろぺーろしたい。大丈夫だとおかあさんを励ましたい。でも、それをすれば自分がやられる。おそらく、長に続いて自分がやられれば、まがりなりにもなんとか成立しているこの戦闘集団は瓦解する。 「ゆゆぅ、ゆっくりでぎない゛よぉ、もうやぢゃああああ!」 遙か高みから恐ろしい敵に見下ろされる緊張感に耐え切れずに、どうやら理性が壊れてしまったらしいまりさが何もかも、敵にも味方にもおうちにも背を向けて走り出した。 「ゆっ、だめだよ!」 それは、長女まりさの妹のもはや数少ない生き残りであった。姉妹の中では一番戦いに向いていないと思った。種でいえば、まりさ種はれいむ種よりも戦いや狩り向きだが、姉妹のれいむたちよりも、あのまりさは向いていなかった。何度も、兵隊ゆっくりから他の仕事に変わるように言った。でも、あの子は聞かなかった。 「まりさは、えらいえらーいちゃんぴおんの子供なのぜ。戦ってみんなを、群れを守るのぜ!」 そう言われては、それ以上何も言えなかった。おとなしい気性のくせに、荒っぽい軍隊長まりさの真似をして「なのぜ」などと言っているのが、明らかに無理をしていて心配だった。 今度の戦い、妹は生き延びてきた。正直、真っ先に死ぬと思っていた。しかし、生き延びた。まともな戦いはせずに、他のみんなの後ろに着いていただけだ。生き延びられたのは、運の要素が強い。たまたま、れみりゃの視界の中にいなかった。いても、たまたま、あの子よりももっと隙だらけのゆっくりがそばにいた。 それでも、よくぞここまで生き延びた。と長女まりさは思う。だから、今この緊張感に精神が焼き切れてしまうのを責めようとは思わない。よくやった。無理して自分に合わないことをしていたけど、ゆっくりしていた。……実はあんまりゆっくりとはしていなかったが、それでも、言って上げたい。とってもゆっくりしているね! と。 責める気など毛頭無い。 「だめだよ、背中を見せちゃーーー!」 だから、咎めたのはそのことではない。敵に背中を見せることを咎めた。だからといって、逃げたことを咎めたのではない。同じことなのかもしれないが、長女まりさの中では違う。奴は、隙を見せたものを最優先にする。だから、背中を見せちゃいけない。逃げてもいい、あの子には生き延びて欲しい。だから、背中を見せちゃ駄目! 「うぅぅぅーっ!」 れみりゃが見逃すはずもなかった。もう、あの子が背中を向けた瞬間にわかっていた光景。逃げる背中を追いかけて、その勢いをそのまま木剣に乗せる。幾度となく見たあいつのやり方、一見、ただ触れただけのように見えるが、とつてもない威力を帯びたその攻撃。 ぱん、と、妹の体は弾け飛んだ。背中にえぐられたような傷が出来ている。ごろごろと前に転がって、その回転が止まった後は、もう二度と動かない……かと思ったが、なんと妹はぴくりぴくりと動いているではないか。 「うーっ、ちょっと外したんだどぉ、トドメだどぉ、こんばくりゅうのこけんに関わるんだどぉ」 いや、関わんないから、と妖夢がこの場にいたら言ったであろうが、もちろんいないので、れみりゃはこんばくりゅうのこけんとかいしんとか、なんか大層なもんを背負いつつ、妹まりさにトドメを刺すべく急降下した。 「まりざのいぼうどぉ! やべでえええええ!」 それまで群れのゆっくりの中ではただ一匹、冷静を保っていた長女まりさの精神もそろそろ限界であった。ゆひゅぅ、ゆひゅぅ、とか細い呼吸をしながら辛うじて生きている妹にあの悪魔が突き進む光景。見たくないのに、目を閉じられない。 「ゆ゛!」 断末魔は短いが、よく通る声だった。 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」 長女まりさは、叫んだ。それに呼応して他の生き残りたちも叫び始める。しかし、あくまでもれみりゃはクールで瀟洒。無我夢中で叫んで隙が出来たゆっくりれいむを血祭りならぬ餡祭りに上げる。 残る兵隊ゆっくりは、十八匹。うち三匹は、急降下攻撃の直撃を辛うじてかわしたが、相当な痛手を負っているものだ。 「ゆ゛う゛う゛う゛っ゛ ひぎょうだよ!」 しばらく意味をなさぬ叫び声を上げていた長女まりさが、言った。卑怯だ、と。 「空を飛ぶなんて、ひぎょうだよ! ずるいよ!」 そう、ゆっくりの一つ覚えと言われてもしょうがない。 挑発、である。 「そうだよ! ひぎょうものぉ!」 「れいぶたちは飛べないんだがら、飛ばれだら勝てないよ!」 「ふこーへーなのぜ! ちゃんとびょうどーに戦うのぜ!」 「う゛んう゛んだよ、おばえみだいなきたない奴は、う゛んう゛んだよ!」 もう、進退窮し切ったとでも言うべきか、それでもまだ少しは計算していて、他にもう何も手がないから仕方なく挑発という方法をとっている長女まりさはともかくとして、他のゆっくりたちは、もう現実逃避のために大声でとにかくれみりゃを罵るだけだ。 「うー」 長女まりさも、他のゆっくりも信じられなかった。自分たちの末路はこのままれみりゃによる一方的な急降下を受けての全滅だと、みんな、心のどこかで覚悟していた。 しかし、れみりゃは静かに地上に降り立った。木剣を構えて、言った。 「うー、かかってくるんだどぉ」 何か罠があるのではないかと警戒した長女まりさは、すぐにも飛び掛ろうとする仲間を制した。 「ぴんぴんなのが十と少し、けがでいだいいだいなのが三」 れみりゃは構えながら、正確に、ゆっくりたちの状況を把握していることを示した。 「この程度なら、飛ばなくても勝てるんだどぉ、もっとたくさんいた時も、やれば勝ててたんだどぉ、でもくーるでしょーしゃなれみりゃは、しんちょーにやったんだどぉ」 「ゆゆっ!!!」 「ゆっ、だ」 め、と長女まりさが言う前に、れみりゃの背後に位置していたれいむが口にくわえた棒をれみりゃの背中に向けて突っ込んだ。 ゆっくりれいむとしては生涯最速の走りのつもりだったのだろうが、近付く前に、跳ねる音で察知されてしまい、後ろを向いたれみりゃに真正面から相対する格好となり、難なく真っ二つに割られた。 「こんばくりゅう、うしろぎりだどぉ」 これぞ、魂魄流後ろ斬り、そのまんまな名前であるが、魂魄家に伝わる剣術の名誉のために言えば、そんな技存在しない。そもそも後ろを向いて普通に前から斬ってるんだから後ろ斬りじゃないじゃん、とかそらもう突っ込みは無数にできるのだが、この場にいるのはゆっくりだけなので、そういう野暮な突っ込みは無いのである。ゆっ。 「そこで死にがけでる奴の赤バッチは、元々れみりゃのまぁまのものだったんだどぉ」 長女まりさがハッとする。なぜこのれみりゃは自分たちの群れを皆殺しにするような勢いで襲撃してきたのか。攻撃に対応するのに忙しくて、真剣にゆっくりと落ち着いて考えることはなかったが、頭の片隅にはその疑問はあった。捕食種というのは恐ろしい存在だが、れみりゃはそれでもまだ捕食種の中ではマシな方だ。れみりゃのゆっくりへの攻撃はあくまで捕食であり、腹が一杯になるだけのゆっくりプラス両手に持てるだけのゆっくり、それ以上は殺さない。ゆっくりをいたぶって殺すこと自体が目的のふらんに比べれば、群れを壊滅させるような恐ろしい存在ではないはずなのだ。特に一匹だけとあっては。 「……まりさたちは、あなたのおかあさんのかたきなんだね」 「そうだどぉ、生まれたばかりのわだじは、その仇討ちのために育てられたんだどぉ、ゆっくりすることなんて無かったどぉ、週に一度のぷっでぃーんだけが楽しみだったどぉ」 「ゆゆぅ、それでも……」 それならば、自分たち一家だけ殺せばいいではないか。群れごと皆殺しにかかることはないではないか、長女まりさは、憎い敵ではあるものの、死んだ母親の仇討ちという理由を知って、僅かにだが、れみりゃに対しての敵意が薄らいでいた。 「うー! れみりゃは、さぐやに作られた戦闘マッスィーンなんだど! ゆっくりを殺すのが楽しいど。ぷっでぃーん以外に、初めて見つけた楽しみだど!」 だがその言葉を聞いてそんな気持ちは霧散する。こいつは、駄目だ。もう、こいつは仇討ちとかはどうでもよくて、ただ快楽のためにゆっくりを殺したいだけ。姿形はれみりゃでも、もはやふらん種に近い。ふらんでもこれほどの戦闘能力を持った個体はそうはいないだろうから、ふらんよりも遙かにゆっくりにとってタチの悪い存在だ。 「上からずばーんてやれば絶対に勝てるど、でも、それもたいくつになってきたんだど、少しは反撃されてみたいどぉ」 すすっ、とれみりゃが流れるようなすり足で前に出た。紅美鈴が見れば「よし、ちゃんとできてる」と合格点を出したであろう。 「ゆ゛びぃぃぃぃぃ」 目の前にれみりゃが来たれいむは、くわえていた武器を取り落とした。もう、口を閉じていられないのだ。あわあわと、口が小刻みに震えている。 「うー、その構えはあし」 なんだか意味はよくわからないが、魂魄妖夢との特訓中、そう言った直後に妖夢は強烈な斬撃をれみりゃの隙があったところへ打ち込んできたので、なんとなく真似したのである。 ぶおん、と木剣が唸り、突いて後、跳ね上げる。 しかし、相手がゆっくりである。剣に刺さったまま、持ち上がってしまった。 「い゛だい゛ぃぃぃぃぃぃ!」 「うー、ぽい!」 れみりゃは剣を振った。すぽん、とれいむが剣から抜けて、そのままその先にいたまりさにぶち当たった。不運なことに、そのまりさは木の棒を前に突き出して構えており、れいむに衝突されて、その木の棒が喉の奥に突き刺さってしまった。 「ゆ゛ぎあ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ!」 「いぢゃいぃぃぃぃぃ!」 「うー、なんか新おうぎあみだしたかもしれないどぉ、れみりゃ、凄いどぉ、こんばくりゅうのほまれだどぉ」 れみりゃは嬉しくなって、うーうー、と例の尻ダンスをする。 「ゆ゛ぅっ!」 長女まりさが自らを鼓舞するように叫んだ。 「みんな、もうまりざだちの残りは、十五人だけ、まりざだちがやられたら、もう子供たちを守るものはいないよ!」 自分たちの敗北イコール、子供たちの死、という現実を改めて突き付けられて、他のゆっくりたちの顔が引き締まる。 「もうこうなったら小細工はむよーだよ! みんなでいっせいに死に物狂いでかかるんだよっ!」 正確に言うと、もう小細工すら考えつかない。もう、命を捨てて行くしかない。 「ゆっくりしねえええええ!」 これが、攻撃開始の合図になった。 ぽよんぽよんと、四方からゆっくりたちが跳ねてくる。飛べば、難なくその包囲を脱して後ろに回り込めたが、れみりゃは翼を羽ばたかせることは無かった。 「うー! うー! うー!」 縦横に木剣を振るう。当たれば一撃でゆっくりは戦闘不能に陥る。しかし、その(あくまでゆっくり的には)凄まじい斬撃は、防御を捨ててこその攻撃力。死角から突っ込んできたゆっくりたちの武器に、れみりゃの体もまた痛めつけられる。 しかし、泣かない。 運よく直撃せずに、木剣がかすってちょっと傷付いただけでも、兵隊ゆっくりなどと言っていた連中はゆぎゃん、ゆびぃ、と泣く。 でも、れみりゃは泣かない。泣いたら咲夜に怒られるから。泣いたらくーるでしょーしゃでないから。 「ゆ、ゆぅぅぅ」 長女まりさは、隙あらば全体重を乗せた突きをお見舞いしようと伺っているのだが、これという隙が無い。隙は無いことは無い。でも、そこでは大したダメージにならない、という箇所ばかり。 「ゆぅ、にゃんで、にゃんで……」 恐怖に涙を流しながら、長女まりさは呟く。 なんで、このれみりゃは泣かない。れみりゃは、痛みを与えたらすぐに泣くものだ。 「にゃんで泣かないにょぉぉぉぉぉぉぉ!」 隙――無我夢中で突いた。隙、らしきもの。それがれみりゃの誘いだということに、普段の長女まりさならば気付いただろうが――。 「それはれみりゃが戦闘マッスィーンだからだどぉ、これ言うの二回目だど」 すぱーんと音高く、木剣が長女まりさの右頬をこそぎ落とすように切った。 「ゆぎゃああああ!」 痛みにのた打ち回りながら、長女まりさはすぐに周囲を見回す。仲間たちはどうなった。それを思えば、頬の痛みを一瞬忘れることができた。本当に、ごく普通に育っていれば、さぞかし立派なまりさとなって、長生きできたらドスまりさにもなれたかもしれない。 「ゆ゛ぐっ゛」 既に満足に立っている仲間はいなかった。ほとんどが事切れていて、生きているものも寝転がって辛うじて生きているだけ。長女まりさ以外で最もマシなのは寝転がってれみりゃに向かって命乞いをしているまりさだった。まだ声を出す余力がある分だけ、彼女はマシだった。 しかし、一番最初に死んだのはそのまりさだった。うるさいので、真っ先にトドメを刺されたのだ。 他に生きているゆっくりも、れみりゃは無慈悲に潰していく。 そして、とうとう、長女まりさだけが残った。洞窟に避難している非戦闘ゆっくり以外は全滅。もうこの群れにはこのれみりゃを止められるような戦闘力は残っていない。いや、もしかしたら、最初からそんなものは存在しなかったのかもしれないが。 「うー、まぁまのかたき、かくご、だどぉ」 振り上げられた木剣を見ながら、長女まりさは死を覚悟した。もう、それを覚悟する以外に無いではないか。 「ゆ゛ぅ、ごべんべえええええ」 長女まりさは洞窟の方へと目をやって声を限りに謝る。あの中では、今も群れの仲間たちが、自分たちの勝利を信じて待っているだろう。 「やべてね!」 その声に、れみりゃは振り向く。 「うー、しぶとい奴なんだどぉ、さすがにれみりゃのまぁまを倒した奴なんだどぉ」 声は、既に死んだと思われていた長まりさのものだった。 「ゆひー、ゆひー、やべてね、ばりさのぶすめに手を出じだら、ばりさおごるよっ」 息も切れ切れに、長まりさは、いや母まりさは声を絞り出した。 「うー、たいした奴なんだどぉ、けーいをひょーじて、特に変わったことはじないで殺すけど、とにかくけーいはひょーするどぉ」 軽く叩いただけで、もう母まりさは絶命するだろう。れみりゃは、けっこう本気でこの母まりさに感心していたので、後ろでずーりずーりという音がしているのに気付かなかった。 「ゆぅぅぅぅ!」 長女まりさは、渾身の力で飛んだ。 捨て身の体当たり、それで自分の体がぺしゃりと潰れてもいい全力の一撃。 それで、そいつを倒せるなんて思っていなかった。できれば逃げてしまいたかった。 でも、おかーさんを助けるために、まりさは飛んだ。 れみりゃ――。 かつて家族みんなでやっつけたれみりゃの子供らしい。 おかあさんれみりゃよりもずっと強いれみりゃ。 倒せるわけはないけれど、あの時も、おかーさんを助けるために自分は飛んだのだから、今度も行ける。あの時、一度まりさは死んだのだ。もう死んでいるのだから、恐怖も何も無い、あのれみりゃを倒してから、その子供のれみりゃが現れる今日まで、本当にしあわせだった。ゆっくりした。ゆっくりしまくった日々だった。むーしゃむーしゃ、しあわせー、と群れのみんなで声を合わせて言ったあの瞬間のしあわせ感は忘れることができない。 「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!」 「う? う゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」 自分へ返って来る衝撃とかそんなことも度外視したその一撃は、完全に後ろからの不意打ちだったこともあって、さすがのれみりゃも転倒させられてしまった。 「うー、油断したど、くーるでしょーしゃじゃないどぉ」 「ゆぎぃぃぃぃぃぃぃっ、い゛い゛っ゛、ゆ゛ぎぃ゛」 明らかにダメージが大きいのは仕掛けた長女まりさの方であった。衝撃で、右頬の傷口から餡子の塊がぼとりと落ちてしまった。 「うー、おやこそろってたいしたもんだどぉ、おまえにもけーいをひょーじてやるどぉ」 木剣を振り下ろす。かつん、と地面に落ちていた石を叩いた手応えに、思わず木剣を取り落としてしまう。 長女まりさが剣が当たる寸前に転がってかわしたのだ。 「ゆ゛がががが!」 恐ろしい形相でれみりゃの右手に噛み付いてくる。 「う゛ぁ゛っ、い゛だいどぉ、はなずんだどぉ!」 空いている左手で叩くが、噛み付きの力が緩まない。 「ぎぃぃぃぃっ、ぎぎぃっ!」 長女まりさは、ゆっくりとはかけ離れた必死さで噛み付いて離さない。もう意識もまともには残っていなかった。とにかく、れみりゃの右手を使えなくしてやろうと思った。れみりゃは右手で木剣を振っていた。あれが利き腕なんだ。だから、それを使えなくしてやれば、少しでも、おかあさんや他のみんなが生き延びる可能性が高くなる。 「う゛ぁ゛っ!!」 その長女まりさの顔を見て、れみりゃは怯んだ。そして悟った。 「おばえ、死ゆっくりだどぉ!」 このまりさは、既に死んでいる。生きながら死ゆっくりになっている。ならば、すっかり勝ったと油断して生者になっていたれみりゃが遅れをとるのも当然。 「う゛ぅぅぅっ!」 (5)へ
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このごろ世間では、ゆっくりとかいう奇妙な生き物が跋扈しているらしい。 私のように、親の遺産で隠遁生活を送る者のところへはやってこないのか、今まで見たことはないが。 そんなある日、久しぶりに私を訪ねてくる人があった。古い友人だった。 何かがいる 「久しぶりだな。上がってもいいかい?」 彼は十年前から変わらないような服を着、見たことのない透明な空箱を提げていた。 「もちろんさ、ゆっくりしていってくれよ君」 「ところでお前――結構ゆっくり好きだったりするのか?」 友人は怪訝そうな顔で、なぜかそんなことをいきなり聞いてきた。 「いや、好きも嫌いも……このあたりで見かけたことは一度もないなあ」 それを聞くと、友人は 「あっはははははは!!!いや、まいったっ……っふっははははは!!!」 ただひたすら笑い転げた。私は何だか面白くない。 「すまないが、あまり人前に出ないものでね、最近の世情には疎いんだ。 そうだ、いい機会だからそのゆっくりとかいう生き物について教えてくれないか? 君の方はなかなか詳しそうじゃないか」 友人はなおも大爆笑。 「おい?」 「いや、お前、こんな仕込みをしてくれるなんて……性格変わったか?」 私はさすがに異常を感じる。 「君……一体何の話をしてるんだ……?」 友人は笑い転げるのをやめて、こちらに向き直った。まだ顔は引きつっていたが。 「いや……俺を面白がらせるためだけに、部屋にこんなにゆっくりを放つなんて思っても見なかったからさ…… まるでゆっくりが一匹もいないみたいに振舞う演技もすごく上手かったしな、面白かったよ」 「?」 彼も、私との間の異常を感じ取ったようだ。 「お前……まさか本当に……」 彼の視線がまっすぐに私を射る。 「本当に、この、部屋中のゆっくりが見えないのか」 「何のことだ?」 私は部屋を振り返った。いつもの私の部屋。 そこには、なにも存在していなかった。 * * * * ゆっくりとは、人面を持つ饅頭で、人語を喋る。その性質は傲慢極まりないが、知能はそれほど高くない。 食料を取るために人の畑を荒らすので、害獣のような扱いを受けることが多い。 それが友人から聞いたゆっくりだった。 「お前は昔から、まるで幻想郷に生きていないような浮世離れしたところがあったからな」 友人は言った。 「確かに。 聞いていれば、そのゆっくりとかいう生き物、この幻想郷そのもののようだ」 「どういうことだ」 「曖昧で、いかようにも変幻し、実存がその拠って立つ物理法則よりも優先される」 「すまんが、もうすこし易しく」 「いいかげんな生き物だってことさ。私が、年を経ていまだ馴染むことのできないこの世界と同じくね。 彼らは”存在するから認識される”のではなく、”認識から生まれ存在する”かのようだ。 だからきっと、偏屈な私には理解することも認識することもできないんだろう」 友人はため息をついた。辺りを見回す。 「それにしてもひどいありさまだ。二十匹近くいるんじゃないのか」 私はなんとなく笑った。 「そんなにか」 「お前は物に執着しない性質だったからな。今も、ほとんど物を持たない生活をしているんだろう?」 「なんでもお見通しだな」 友人が言うには、ゆっくりは人間の物を荒らしたり人間の家を自分の住処として好き放題に踏み荒らすらしい。 物を持たない自分だからこそ、今までゆっくりの存在に気づくこともなかったのだろう。 「言われてみれば、食べ物がすぐになくなるような気がすることは多々あったが…」 「お前は健啖家だからな、たくさんある食べ物が少しぐらいなくなっても気づかないのかもしれないが… それにしても、信じられないな」 そこらじゅうをぴょんぴょんと飛び跳ねているらしいゆっくりを見ようと目を細めてみたが、やはりなにも見えなかった。 友人は、ゆっくりの”虐待”を生業にしているといった。眉をひそめる私に友人は言う。 「犬や猫をいじめるのとは違うさ。こいつらは知能を持ち、我欲でもって人間に悪事を働くことも多い。 畑を荒らすなんて日常茶飯事だ。……もっともそれは生活のためなんだが、言うに事欠いてあいつらは ”ここはれいむのおうちだよ!ゆっくりできないにんげんはでていってね!”とか言うんだぜ」 「なるほど、それはよろしくないな」 「お前にも見えればな、すぐに理解できるんだが。どうしてこいつらがこんな扱いを受けるのかが」 友人は床の上をまさぐり、何かを掴むような仕草をした。 それがゆっくりを掴んだのだとすぐに気がついた。 「お、おい……」 友人はそれを、こちらへ放り投げる。もちろん私には何も見えない。 何かがぶつかったような感じもしなかった。 「おい、どうなったんだ」 友人は釈然としない表情で言う。 「……よくわからんが……すり抜けた……ように見えた」 * * * * 「ゆぴいぃぃぃ!!!ゆっぐりざぜてええええ!!!」 れいむとまりさを親とする、一般的な家族形態のゆっくり家族。 男の家に住まうその家族は今まで幸せだった。 時には、 「おにいさん!はやくたべもののいれものをあけてね!!」 「……」 「おにいさんはぐずなの?しぬの?」 「……」 「ばやくしてってばあああああ!!!!」 「……」 またある時には。 「おにいさん!さむいからはやくとをしめてね!!こどもたちがさむがってるよ!!」 「おお、雪が降ってきたか……風流、風流」 「ゆゆゆゆゆゆ……」 「おにいさんばっかりあったかいふくでずるいよ!れいむたちのことももっとかんがえてね!」 「吹雪いてきたな……すこし冷えるが、良い眺めだ」 「さむいぃぃぃぃ!!!ゆっぐりできないぃぃぃぃぃ!!!」 以上のように、ゆっくりを完全に無視する男の態度が不都合だったりはするものの、男が悪意を持ちえない以上 それが命に関わるようなことはなかったからだ。 基本的には広くて立派なゆっくりぷれいすとして、ゆっくりたちは男の家に安住していたのだ。 そこに天敵はいなかった。 しかし、それは今までの話だ。 透明な箱に入った二匹のれみりゃと、それを連れてやってきた男は違った。 「なるほど、私の認識を覆すことがないようにでもなっているのか……」 「おそらくはな」 客である男は、今もまったく何気ない顔で子供のゆっくりを捕まえ、死なない程度に圧を加えている。 「ぢゅぶれりゃう!!!!おかあちゃんちゃちゅけてええええ!!!!」 「あたらしいおにいさん!ゆっくりあかちゃんをはなしてね!!」 「ゆっくりできないおにいさんはでていってね!!」 れいむとまりさの抗議など何処吹く風と聞き流し、家人である男との会話に興じている。 ぐっぐっぐっと、だんだん子ゆっくりが膨らんでいくのがわかる。 「おかあ……じゃびゅうう!!!!」 とうとう限界を超え、はじけて中身を飛び散らかすゆっくり。 「れいむのあがちゃんがあああああ!!!!」 それを見て箱の中のれみりゃは大喜びだ。 「あうー☆いっぱいゆっくりがいるどぅ~♪はやくたべたいっどぅ~~♪」 「まぁまぁ~♪れみぃもたべたぁいどぅ~!うあ☆うあ☆」 ちなみにれみりゃは親子で、親ゆっくりは胴付きだが子のほうはまだそこまで成長してはいない。 「よぐもあかちゃんつぶしたね!ゆっくりあやまってね!!」 嘆き悲しみ、文句をまくしたてるれいむをちらりと見ると、男はれみりゃの入った箱に手をかける。 その動作でゆっくりはびくっと身をすくませる。 「はやくおそとにでるどぅ~!!」 と、れみりゃも箱をばんばんと叩きゆっくり家族を脅かす。 「れみりゃはゆっくりできないよ!ゆっくりやめてね!」 「「れみりゃはゆっくちかえってね!!!」」 そのさまを男はなんでもないように見守る。 それはゆっくりを認識しない家人の男のものとは似ているが違う。 ゆっくりの虐待が日常と化している男の目だった。 * * * * 「おお、すっかり長居してしまった。そろそろ帰るわ」 だいぶ話し込んだ後で、友人が言った。 「そうか。辺鄙なところだが、また寄ってくれよ」 「もちろんだ。……ところで、頼みがあるんだが」 「何だ?どうせ、かのゆっくり絡みだろうが」 「その通り」 私は友人の要請を聞き入れた。 天井の梁に金網を渡し、天井に近い部分の空間を区切る。友人はそこへ、持ってきた箱の中身を開けた。 「本当はこれを見せに来たんだ。俺の自慢の、ゆっくりをゆっくりさせないゆっくりだ」 「悪いが何を言ってるのかさっぱりだ……」 相変わらずゆっくりの見えない私には、空箱を持って演劇の練習でもしているようにしか見えない。 「あとは、家の外にこいつを置かせてくれ」 「空の箱?」 「そうか、見えないんだったな……俺が連れてきたゆっくりは二匹いて、ここにはまだ一匹入っているんだ。 特に何もしなくていい。後で俺が様子を見に来るよ」 「そうか、分かった」 * * * * 天井から声がする。金網張りの上かられみりゃがこっちを見ているのだ。 「たべちゃうどぅ~♪ぎゃお~☆」 「やめてええええ!!!!」 「ゆっくちできないぃぃぃ!!!ゆっくりにげりゅよ!!」 ゆっくり達はゆっくりと移動する。 「にがさないどぅ~!うっう~☆」 れみりゃはそれよりも素早く飛んで、ゆっくり達の上に居続ける。 「れみりゃこわいぃぃぃぃぃ!!!!!」 「ゆっ!あかちゃんたち!おそとににげるよ!」 「おきゃあさんあたまいい!ゆっきゅりおそといくよ!!」 「ううーーー!!!まつんだどぅぅぅぅーーーー!!!!」 扉にぽむぽむと体当たりして押し開け、外へと飛び出すゆっくり達。 れみりゃが追ってこないと知るや、はやくもゆっくりしだす。 「おうちのなかはゆっくりできないから、ここでゆっくりするよ!」 「ゆっきゅりぃぃぃ!」 だが。 「ぎゃお~!ゆっくりたべちゃうどぅ~♪」 「ゆっぐりできないよぉぉぉぉ!!!!」 外にも虐待お兄さんが置いていった子れみりゃがいる。箱に入ったままで外には出られないが、 得意満面でゆっくり達を威嚇する。胴体もなく翼も未熟だが、そんな子れみりゃでも通常種よりは遙かに強いのだ。 「ゆぶぶぶぶ!!!!」 「まりざのあがちゃんがああああ!!!!」 子の一匹がショックで死んでしまったほどだ。 「ゆっくりにげるよ!!」 「うわああああんんんんん!!!!」 再び慌てて逃げ出すゆっくり達。家と庭を往復し、延々と泣き叫び続けるのだった。 一方、れみりゃ達も――。 「う?またゆっくりはいってきたどぅ♪まつんだどぅぅぅぅぅ!!!」 金網を手で掴んでもがくが、金網はびくともしない。 「ゆゆっ!!またれみりゃだよ!ゆっくりにげるよ!!」 「まつんだどぅぅぅぅ!!なんでだべられないどぅぅぅ!!?? おながずいたどぅぅぅぅぅぅ!!!!!ざくや、ざぐやああああ!!!!!」 「まぁまぁ~!!れみぃおなかすいたどぅぅ!!あう♪ゆっくりきたどぅ~♪たべちゃうどぅ~☆」 もちろん逃げるゆっくり。 「はこからでるぅぅぅーーー!!!はこからでるどぅぅぅ!!!ゆっきゅりたべたいどぅぅぅぅーーー!!!!」 家主の男は書き物の仕事をしている。 「ゆっ……ゆっ……!おにいさん、かわいいれいむたちをたすけてね!」 「れいむにげまわってちゅかれた!ゆっくりしたいよおおお!!!」 ゆっくり達の発言も、もちろん男には聞こえていない。 「なるほどね。随分扉のたてつけが悪くなったものだと思っていたが、ゆっくりが使っているということかな?」 などと、思索にふけったりしている。 「なにのんぎなごといっでるのおおおおおお!!!???はやくなんとかしてよおおおお!!!!!」 「どこにいるのかはわからないが……どこにでもいるんだろうな。 なんにしても、私の家を勝手に使われているのは面白くない」 「なにいってるの!ここはれいむのおうちだよ!!おにいさんはぐずぐずしないでれいむのいうこときいてね!!!」 「れみりゃ……とか言ったか? 家を荒らすような生き物は、彼が連れて聞いたそれにさっさと食べられてしまうがいいさ」 「どぼぢでそんなごというのおおおおお!!!!!!」 「今日も静かな夜だ……この部屋に何かがいるなんてとても信じられないな。 さて、そろそろ仕事を切り上げて寝るとしようかね」 「れみりゃごわいいいいい!!!!」 「ゆっぐりでぎないいいいいい!!!!!!!」 おしまい。 □ ■ □ ■ あとがき ”ゆっくりが見えないお兄さん”のお話でした。 見えないお兄さんと虐待お兄さんがコンビを組んだらいろんなことができそうな予感。 読了ありがとうございました。 過去に書いたSS 豚小屋とぷっでぃーん 豚小屋とぷっでぃーん2 エターナル冷やし饅頭 れみりゃ拘束虐待 無尽庭園 ゆっくりできない夜 ゆっくりぴこぴこ このSSに感想を付ける