約 519,740 件
https://w.atwiki.jp/bsr_e/pages/1829.html
西の空に茜色の雲がたなびき、 釣瓶落としの秋の陽が山の端に触れようとしていた。 政宗は池の縁から腰を上げると、軽く伸びをする。 「さーてと。…叱られに帰るか。」 そう長い時間をぼんやりとしていた訳ではないが、 城を出た時刻が遅かったのだろう。 薄暗闇が少しずつその色を濃くしている。「帰りが遅い」と 小十郎に叱られる内容をもうひとつ増やす事も無いだろうと、 政宗は兜の緒を締め、馬に跨がった。 馬を速歩で歩ませながら来た道を引き返していると、 軽快な蹄の音に聞き慣れない音が混ざっている事に気付く。 手綱を引いて馬の脚を止めると。僅かながら、その音が鮮明になった。 獣の鳴き声に似ているが、どうも人間の… それも男女の諍う声のようだ。 ふと、いつかの朝議で従兄弟の成実から聞いた話を思い出す。 成実の言っていた、流れ者の野盗共が住み着いている森というのは 確かこの辺りの事ではなかったか。 例えそうでも、そうでなかったとしても、 この場をそのまま通り過ぎるという選択肢を政宗は持たない。 馬から降りると、そのまま声のする方向に歩み寄った。 おなごBASARA 続②2
https://w.atwiki.jp/yurainn/pages/51.html
まあ、何事もそんなにサクサクは進まないですからね。 とくに人は一番難しいですし。 というわけで、しばらく準備期間としておくのは極めて妥当かと。 あと、人入れて何か困ったことや悩むことがあればまたお知らせください。 施術とかメニューとか、場合によってはヘルプに行くのもOKですので。 ところで、スタッフの追加募集とかしてますか? とりあえず今の人を2〜3日見てからでもいいですが、 ランチ〜カフェの営業できるようになるとかなり楽になると思われなので もしまだなら早めに次の募集かけてみてくださいまし。 あと、役所の件はどうなりましたか? 前も書いた気がしますが、役所は放っておくと後回しにしやがりますんで、 もしまだ何の進展もないなら適当にケツをたたいてやってくださいまし。 とりあえず 他人様を雇い入れましたので、今日から新メニューっていうぶっつけ本番な。。。とも思ったのですが。 まあぼちぼちゆっくり始めて行こうかと。 今週いっぱい準備期間にしてみようかと思っております。 試作とかもしなくてはならんので。 朝のお母さんやってきましたが、まあ ぼんやりとした感じの方で。。。と思ったのですが 最初のスーパー主婦の印象もそんなんなのでとりあえず 我慢する1っ週間。 新メニュー用のマニュアルもできてないので。まあしょうがないかなーっと。
https://w.atwiki.jp/dqff1st/pages/170.html
ゼルとアリーナ、そしてサラマンダーの死闘の後、 アリアハン城南の森は閑散としていた。 そこでぼさぼさ頭の1人の青年、バッツはぼんやりと空を見上げていた。 木々が光りを遮っており、空など見えなかったが、ただ、ぼんやりと。 近くの戦闘の痕跡は、このゲームが始まっているのだということを彼にひしひしと伝えていた。 「誰だかわかんないけど・・・少なくとももう二人が死んだわけか・・・。 まさか二人で心中したわけじゃあるまいし、こいつらを殺した奴がどっかにいるんだな・・・。」 しかし、中央にあるショートソードを見るに、殺した者がそれほど冷酷な奴とも思えない。 となると、自衛の末にこうなったのだろうか? なんにせよ、もはやみんなで仲良く、というわけにはいかないということの証であることは確かだ。 (いや・・・そんなことはどうでもいい・・・) バッツには二人、生存を気にかけている人がいた。 レナ、ファリスの姉妹である。 そして目の前にある二つの山・・・まさかとは思うが、最悪の事態が彼の脳裏をよぎっていた。 確認するには躊躇われたが、しかしずっとここにいるわけにもいかない。 バッツは意を決し、それが死者への冒涜的な行為であると自覚しながら、山を掘り返した。 ―――よかった・・・ 些か不謹慎なことではあったが、彼は安堵した。 暫く黙祷をしたあと、二つの亡骸をもとに戻すと、 バッツは出発のために持ち物を改めて確認した。 支給された武器である長身の剣は、まったくといっていいほど光沢を失ったおり、 一見とてもではないが使えそうには見えなかった。 しかし、バッツはこの剣がなんなのか知っていた。 ブレイブブレイド――持ち主の勇気に呼応して強くなる剣だ。 「はは・・・そうだな。俺は今、無茶苦茶怖いよ。 あいつらが生きているかわからないし、俺だっていつ死ぬかもわからない。 俺が死んだら―――」 ふとそこで言葉が詰まった。 自分が死んで悲しむのは誰だろう。 レナもファリスも、このゲームに参加している限り、生き残る可能性は限りなく少ない。 両親は既に他界している。 かつての仲間であるクルルもまだ14歳だし、日常の多忙からいずれ忘れていくに違いない。 故郷の人たちも、バッツがいなくなってときどき思い出す者があっても、 それは昔の思い出としてそれ以上になることはないだろう。 ボコは―――おいおい、チョコボだ・・・それにあいつには奥さんがいる・・・。 (なんだ・・・結局、俺が死んで困る奴は、誰もいないんじゃないか・・・) 溜息をついたが、その瞳に悲しみの表情は無かった。 もともと彼は天涯孤独の身であったのだから、今さら悲しむ必要などなかったかもしれない。 しかし、できるだけのことはしたい。 自分は助からなくても、王族でこれからの世界を担っていくレナやファリスは助かるべきだ―― そう考え、彼は二人の捜索を再開する。 ナマクラ刀も、魔法剣にすればちょっとはマシになるだろうと、 バッツは魔法剣士にジョブチェンジし、念のためアビリティに白魔法をつけた。 「さあて・・・いくか」 その場をあとにするバッツの持つ剣は、相変わらず光を失っていた。 【バッツ@魔法剣士(アビリティ:白魔法) 所持品:ブレイブブレイド 第一行動方針:レナとファリスを探す 基本行動方針:非好戦的だが、自衛はする】 【現在位置:アリアハン城南の森から北東】 ←PREV INDEX NEXT→ バッツ NEXT→
https://w.atwiki.jp/910moe/pages/711.html
中ボス 腹に熱の塊が食い込んで、俺の身体を容赦なく吹き飛ばした。柔らかい葉を焦がし、華奢な木々をへし折って熱風が後を追ってくる。瞬間目の前が暗転し、気がついたときには濡れた地面の上で、木々の間の狭い空を見上げていた。体中が痺れて感覚が無い。声も出ない。 積もった葉を踏み潰して、人影がこちらに近づいてくる。目がかすんで顔は見えないが、今しがた俺を吹き飛ばした魔術師か、勇者としてその名を轟かせている青年のどちらかだろう。他の者は皆彼等に殺されてしまったのだから。 彼等が何の為にこんな森まで来たのか、予想はつく。恐らく、あちらこちらで暴虐の限りを尽くしている俺の主を殺しに来たのだろう。 胸倉を掴んで引き起こされた。鎧の固い感触。唇が何事か動いているが、言葉が聴こえない。何事か俺に尋ねているようだったが、視界が水の中のようにぼやけていて、何も判らなかった。 殺すか。 きっと大声で魔術師に言ったのだろう、その言葉だけがぼんやりと聴こえた。 身体がすっと冷たくなる。 ついにこの時がきたか。戦いに負けて殺される時が。 眼前に迫る金属の輝きから逃れるように、俺は目を固く閉じた。 俺は死ぬのが怖かった。情けないことに、主の配下でそんなことを考えて居る者は俺だけのようだったから、誰にも打ち明けたことなど無かった。 親しかった部下が殺されたと聞く度に、悲しみ、次は我が身かと怯えもした。次は俺が行って奴等を殺すのだと、息巻く同輩の気が知れなかった。 冷たい感触が喉にあたり、どうしようもなく手足に震えが来た。灰になって散って行ったかつての同輩達は、この醜態を見て嗤うだろうか。 長い時が過ぎたように思えたが、刃が俺の頸に食い込むことは無かった。酷い恐怖と、何故か湧き上がってくる焦燥感に耐えかねて目を開くと、やけに綺麗な色の瞳が、こちらをじっと覗きこんでいた。 「お前……」 死ぬのが、怖いのか。 半ば嘲るような調子で吐き出された言葉に、俺は頷いた。 青年は紋章が入った鎧を震わせて笑った。殺した魔物の中に死を怖がった者などは居なかった、お前は変わっていると。はっきりと蔑まれているのは判ったが、俺は何も言わなかった。負けた者が蔑まれ甚振られ殺されるのは当然のことだ。 胸倉を掴んでいた手を離され、俺はまた濡れた地面に倒れこんだ。未だに手足は動かなかった。とどめをさされずとも、放っておかれればこのまま死ぬのだろう。 ぼんやりと主の顔を思い出していると、不意に、防具をつけた腕が俺のことを抱え上げた。俺の鎧も残骸だけとはいえ未だ残っているから相当な重さであろうに、事も無げに肩の上に担ぎ上げられる。 傷に身体の重さがもろにかかり、酷い悪寒が来た。背筋が冷え、嫌な汗が頬を伝う。青年が一歩踏み出すごとに肩が揺れて酷い痛みが走った。最早もがく気力も無くなった俺の耳に、青年が楽しげに笑う声が届く。 「……なあ、こいつ連れて行こうぜ」 「連れて行くも何も、じきに死ぬだろ」 呆れたような声は魔術師だろうか。 「お前なら治してやれるだろ?」 「何で俺が手前でつけた傷を治さなきゃならんのだ」 乱暴に地面に放り出され、俺は蹲った。視界がぐらぐらと揺れて、急激に薄暗くなっていく。 「いやなに、魔物の癖に死ぬのが怖いなんてほざくもんだからさ。なら殺さずに飼ってやろうかと思って。躾ければ番犬ぐらいの役にはたつだろ――――」 薄れていく意識の中で最後に聞いたのは、勇者と呼ばれる青年の笑い声だった。 中ボス
https://w.atwiki.jp/dq_dictionary_2han/pages/2280.html
トルネコ3 【レミーラの石像】とは逆に黒い玉のようなものが乗っている石像。どう見ても石像に見えないとは言ってはいけない。 通路並みに見通しが悪くなり、プレイヤーも敵も周囲の様子が分からなくなる。 異世界の迷宮の【浮遊ゾーン】でも効果は発揮し、そこではぼんやりと白い霧に包まれたような珍しい光景が見られる。 レミーラの石像や【レミーラの杖】の効果があればそちらが優先的に発揮されるが、 【レミーラの巻物】のような永続的なレミーラ状態は打ち消す。 様々な地形、石像と組み合わさって強烈な効果を発揮する。下記のような被害を起こしやすいので注意。 +【マホトーンの石像】 レミーラの杖を使えない。他の石像が合わさると非常に恐ろしい事態に発展しやすい。 +【すいとりの石像】 吸い取られた装備品が何処にあるか分からず、しかも探している間にぞろぞろ敵が登場。 装備品が吸い込まれていった方向で凡その位置を割り出しておこう。 +【転びの石像】 石像見つけるか部屋に出ないと手持ちアイテムいっぺんにぶちまけられる。 【水路】や【モンスター化のワナ】などがあるとさらに悲惨。
https://w.atwiki.jp/misp/pages/20.html
・MiSP-[UW] "あやめ" (Undefined, Who are you?/未定義,不明) ※現時点では外見以外の詳細不明の謎多き輩であるため便宜上[UW]を付与。 黒髪ポニテにワイシャツで、上着を羽織って紺色の袴をはいた、謎多き機体。 全体的に出るとこは出てる体型であり、身長自体も思いの外でかい。 現在はばぐとら研に突然現れ、家事全般系の押しかけ女房をしている。 ものすごく長い距離を、全行程徒歩でやってきたらしい。 性格は冷静とぼんやりの間で、口数はそれほど多くないが、これは無口じゃなくて口べた。 "MARI"とのトークは、おおむねかみ合っていないようだが意思の疎通はできているようだ。 側頭部に実装の航空型アンテナユニットが旧仕様のものであることから、 かなりのご長寿だとか、別時系列の住人だとかいう説もあるが本人もよくわかっていないようだ。 メモ:おそらく同型機と思われる、配色以外大変よく似た"iRIS"(アイリス)と呼ばれる、 妹にあたる姉妹機もまた別のどこかで押しかけ女房をしているらしい。
https://w.atwiki.jp/nrks/pages/464.html
あんの狐……! 名前 ゼリシュ・フェーブス 性別 女 年齢 17 身長 168cm 体重 不明 瞳色 蒼 好き 紅茶 所属 無所属 【人物】 ポニーテールにした長い銀髪に鋭い蒼の瞳、赤系の鎧ドレスを着た少女。 背中には長短一振ずつの双剣を背負っている。 最近は中身の気紛れで私服モードもあり。但し気紛れなのでどんな感じかは定まっていない。 お嬢様育ちで目付きの鋭さに見合ったキツめの性格だが、少女らしい面もあるとかないとか。 現在は世界各地を気ままな一人旅。 大の紅茶好きで、ミルクティーが大好き。 【装備】 〝十字双剣〟 光輝鉄鉱という特殊な金属に魔術的な加工を施した双剣。 自然に光の魔力を生成・蓄積する性質を持ち、ぼんやり光っている。 長剣の方は宝玉やマギタイトの様な、魔力を宿した物質を取り込み、その魔力を刃に乗せる事が出来る。 短剣の方は身体強化の加護が加えられており、あまり強い力がないながらも双剣を自在に扱う事を可能としている。 〝創炎の宝玉の欠片(1/9)〟 エルモ永久凍土で獲得した、宝玉の欠片。 基本的に長剣内部に取り込まれている。 【備考】 最近は狐の女と一緒にいるか使いっぱしられている事が多い。
https://w.atwiki.jp/magichappy/pages/1870.html
▼ Evade and Escape 作戦指令: 参謀本部は、我が軍本隊がレベロス風穴に侵 入後、地の利を得ている敵軍によって袋の鼠 にされる危険性を指摘。別口の撤退ルートの 準備を要求している。アサルト要員は先行し て風穴を調査。本隊の脱出口を確保せよ。 作戦領域:レベロス風穴 作戦目標:脱出口の確保 募集要員:レベル70 3~6人 ※受付~突入、帰還の幻灯解放後は土竜作戦と同様。 レベロス風穴 土筆作戦を開始! 作戦目標:脱出口の確保 制限時間は30分(地球時間)です。 (Switchを調べる) 装置に灯が点った。 しかし、灯はぼんやりとして力ない……。 (Switchを調べる) 装置の灯は、今にも消えてしまいそうだ……。 (Switchを調べる) 反応がない……。 先ほどまで点灯していた灯も 消えてしまったようだ……。 (Switchを調べる) 装置の灯が、煌々と点っている。 これなら消える心配もないだろう。 作戦目標を達成しました。 (H-8)地点に帰還の幻灯(Rune of Release)を 開放します。 ▲ ■関連項目 アサルト Copyright (C) 2002-2012 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.
https://w.atwiki.jp/fateonsen/pages/244.html
キャラシート【としあきの聖杯戦争TRPG】 【名前】ジュリエット 【容姿】金髪にドレス姿の少女 【願い事】外を見ること、そうして貴方の為に歌えるならばきっと幸せ。 【バッドエンド】省略 【グッドエンド】省略 【その他】混沌・中庸、女性、人間 【令呪】 1 / 3 【HP】 5 / 5 【筋力】E:1 【耐久】E:1 【敏捷】E:1 【魔力】A+:6(7) 【幸運】A:5 【スキル1】理想の■■:英雄点5を得る。エクストラクラスの召喚が可能となる。 【スキル2】泡沫の明滅:自分のサーヴァントの物理攻撃時、補正値3を与える。 【スキル3】夢幻の明日:自分のサーヴァントの魔術防御時、補正値3を与える。 【設定】 名前は、貴方のお好きなように。 外を知らない、閉ざされた世界しかしらない、知らなかった少女。どこかぼんやりとしているが声は綺麗とても。 外は知らずとも読書は好き、映画鑑賞もちょっぴり好き。 ついにどうにか外へ出て、夏の暑さと日差しの厳しさを体験した。アヴェンジャーと一緒だったのでちょっぴり楽しかった、とは本人の弁。 どうか明日も、良き日であることを祈っている、永遠に。
https://w.atwiki.jp/oyatu1/pages/611.html
『私を守る人 貴方を守る人』 私は今、家路を急いでいる。 別に特別なことがあるわけではない。この現実をはやく忘れてしまいたい。 「ただいま!」 「お帰り~」 のんびりした声で、同居人のこなたが言う。 「ふぅ…外で軽く食べてきたから、ご飯は少しでいいわ」 「ほ~い」 私は今、とある法律事務所で弁護士として働いている。 法律が改正され、法科大学院が多くの大学に新設された。私の母校の場合、もともと司法試験の合格者を輩出することに力を入れていたせいか、 かなり合格率が高い大学院として有名だった。 もっとも、授業はとても厳しく、挫折しそうになったことは一度や二度ではない。 だがそんな時、励ましてくれた人がいた。 「かがみが弁護士になって活躍するの、楽しみにしてるよ~」 「あれだけ私にイジられてキレなかったんだから、メンタル面は強い方だと思うよ」 「もしダメだったとしても命まで取られるわけじゃないし、何とかなるよ」 その人は、こなただった。 こなたの励ましが無かったら、私は実家に逃げ帰っていたかもしれない。こなたがいてくれたから合格できたと今でも思っている。 本人に言うと調子に乗りそうなので、黙っているのだが。 今、こなたは私と同居している。 こなたの勤務先と私の事務所が近いので、一緒に暮らそうということになった。 最初は家事の分担や、生活習慣の違いなどでケンカになったこともあったが、今はお互いに妥協点を見つけ、仲良くやっている。 「ごはんと、煮物と…あとはビールでいいかな」 「あぁ…ありがと…」 こなたの手作りの食事に箸をつける。 「…おいしい」 「ねぇねぇ、ちょっとダシ替えてみたんだけどさ、口に合うかな?」 「うん…すごく、いい…」 黙々と箸を動かす私。 やはり、こなたの作る食事が一番美味しい。 実家の食事も大好きだが、今はこなたが作ってくれた料理のほうが気に入っている。 単純に料理の腕がいいだけでなく、気持ちがこもっている。これは食べた人間にしか分からないだろう。 キンキンに冷えたビールを喉の奥に流し込んだ。 「…ふぅ」 「かがみ~ん、どうしたの、今日はなんか元気ないよ~」 「…ねぇ、こなた、この世に正義って本当にあるのかな?」 「え?」 個人情報の保護など、頭には全くなかった。 私は今日起きたことを、こなたに打ち明けた。 結論を言うと、本来は救われるべき人がさらに傷ついて、裁かれるべき人間が、堂々と表を歩いて、 遊んでいられる身分のまま放置される、ということになってしまった。 正直、若手の私に、こんなきつい案件が来るとは思っていなかった。とは言え、仕事を選べる身分でもないので、やれるだけのことはやった。 決して仕事に間違いがあったわけではない。こうするしか選択肢はなかったのだ。 「そんな事が…」 「これ、全部実話なのよ。信じられる?この日本で実際に起こってる事なのよ」 こなたは呆然とした表情で、私の説明を聞いた。 「依頼人からの仕事をきっちりやるのがプロなんだけど…でも、今日ほど世の中間違ってるって思ったことは無いわ…」 「…」 「…ふぅ」 しばらく沈黙が続く。こなたは私の話がショックだったのか、空になったグラスをぼんやりと見つめている。 「…本当に、これで良かったのかな?」 「ん?」 こなたが顔を上げた。 「私はね、弱い人を守る立場になりたいって思って、司法試験を受けたんだ。お金儲けとか、社会的地位とか、どうでも良かったの。 ドラマみたいな理由だけど、あの頃は本気でそう思ってたわ」 「毎日かなーり勉強してたんだよね」 「うん…恋愛とか遊びとか、かなりのものを犠牲にしたわ。絶対に合格するんだって心に決めて、勉強漬けの生活だった。朝も夜も関係なくね」 「で、一発で通っちゃったんだからさ、素晴らしいじゃなーい」 「…嬉しいわ。そう言ってくれて」 私は瓶に残ったビールをグラスに注ぎ込むと、一気に飲み干した。 「ぷはー!!」 「かがみぃ、それじゃおじさんだよ…」 「ん、あぁ、気にしない気にしない」 そう言って、ぼんやり天井を眺めた。 「ねぇ、こなた?」 「ん?」 「私さ、本当にこういう生き方でよかったのかな?」 何となく聞いてみた。 「ん…、私はね…かがみには今の仕事続けて欲しいって思ってるんだ。きれいごとばかりの世界じゃないんだろうけど…」 「…」 「かがみが合格したときさ、真っ先に私に教えてくれたじゃん。あれ、結構嬉しかったんだよ」 「あぁ…そう言えば」 「最近のかがみを見てるとすごく生き生きしてるから、私も元気になってくるんだよ。週末仕事がある日でも、 かがみも頑張ってるんだからって思って会社に行ってるんだ」 「そうなの…」 「かがみは優しすぎるんだよ。そこがいいところでもあるんだけどさ、今の世の中、モラルも人情も無いろくでなしが 権力やお金持ってたりするから、そういう連中からいいように扱われないためにも、いい意味での無神経さも必要だと思うんだよね~」 「…あんたって、アニメやゲームしか興味ないと思ったら、結構色々考えてるのね」 「む、失礼だな。私だっていつまでも子供じゃないよ」 そう言って頬を膨らませる。こういうところは子供のままだ。 「…まぁ、今日は遅いからもう寝ようか。明日も早いんでしょ?」 「え、あ、うん…そうね」 「じゃあお風呂沸いてるから入ってきなよ。私は先に寝てるから」 「うん…わかった。おやすみ…」 「おやすみ~」 こなたはそう言うと、目をこすりながら寝室へ入っていった。 (優しすぎる、か…) こなたが言った事を思い出しながら、私は机の上にある食器をぼんやり眺めていた。 (あいつ、どんどん人間として成長しているな…私の方が子供なのかな…) 次の日も、その次の日も、仕事はどんどん舞い込んできた。 ひとつの問題が片付くと、また別の問題がやってくる。そんな事の繰り返しだ。 (こうやって年を重ねていくのかな) ふとそんなことを思った。仕事一筋で生きている人間もいるが、私はそういう生き方は望んでいない。 自分を支えてくれる、必要としてくれる、そんな人の為に生きたい…。 だが、人は簡単には変われない。朝から夜まで仕事に追われる毎日が続いた。 こなたとも必要最低限の会話しかなく、互いに仕事のことで精一杯だった。 家に帰っても、こなたは先に寝ていたり、残業で遅くなったり、二人で食事する時間もほとんど取れなかった。 休日は二人とも寝ていることが多く、時々近所の本屋へ行く程度だった。 そして、数ヶ月の月日が流れた。 「ただいま~」 「おかえりぃーーー!かがみ様ーーーー!!!」 こなたの大声と同時に、クラッカーの爆発音が鳴った。 「うわっ!何よいきなり!!」 「ふふ~ん、今日は何の日か覚えてないのー?」 「え?あ…」 今日は、私の誕生日。 昔は家族がプレゼントをくれて、ケーキを食べたりしてお祝いしてもらった。 それがごく普通のことだったのに、大学へ行ってからは、ほとんど一人で誕生日を迎えていた。 お祝いのメッセージや、プレゼントをくれた友人もいたが、彼女たちとは卒業後、一度も顔を合わせていない。 今考えると、それほど深い付き合いではなかったと思う。 社会人になってからは、誕生日があったことすら忘れていた。 「こなた…覚えていてくれたの?」 「当然じゃん。かがみが私の誕生日を覚えてくれていたんだから、このくらいしなきゃ罰が当たるよ」 「あぁ…そう言えば。でも、私はハンカチ一枚あげただけだし、ここまでは…」 「かがみん…あのハンカチ、どれだけ嬉しかったと思う?辛い仕事漬けの生活の中、ふっと優しくしてくれるかがみん… これで落ちない奴ぁ人間じゃなあぁい!!」 「そ、そうなんだ……買ってきた甲斐があったわ」 「普段はデキる女、ときどきツンツン、ときどきデレる。そんなかがみん激萌え~~」 「何度言われても慣れないわ、それ…」 こなたらしい言い回しに、口では不満を言いながらも、内心ちょっとカワイイと思った。 テーブルの上には、豪華な料理が並べられ、いい匂いが漂っている。 「本当に、嬉しいな…」 「ささ、冷めちゃう前に早く食べましょー」 その日の夜は、お互いに色々話して盛り上がった。 仕事の愚痴、会社の悪口、アニメやラノベの話題、ゲームの話…。 気がつけば、あっという間に寝る時間になってしまった。 「あ…もうこんな時間…」 「そろそろ寝ましょうか…」 そう言ってお皿を持って立ち上がった。 「ストーップ!!片付けは私がやっておくよ!お風呂入ってきなよ」 「え…いいの?」 「当然、今日の主役を働かせちゃ悪いよ…」 かがみがシャワーを浴びる音が聞こえてくる。 私は流しで食器を洗いながら、ぼんやりと考え事をしていた。 (私って、かがみからどう思われているのかな) 私よりいい大学を出て、私より高収入で、おそらく職場でも頼られているだろう。 美人で頭が良くて、性格もいい。 でも完璧じゃない。どこか抜けている。しかもツンデレ。 (男だったら、惚れてただろうな…なんで女に生まれてきたんだろう) どうしようもないことを考えてしまった。今の自分を否定したところで、何も解決しないのに。 劣等感を感じやすい性分なのだろうか。 かがみは立派だと思うし、尊敬している。でも心のどこかで嫉妬しているのかもしれない。 私と一緒にいてくれる、友達として接してくれる、優しいかがみ…。 何だろう、この気持ち…。 「ふぅ…さっぱりした!」 かがみがお風呂から上がってきた。 頭と体にタオルを巻いて、細くて長い足がヒザの上まで見えている。 「湯上りのかがみん…1000ポイント!」 「あ~…おもしろいおもしろい」 「あぁん、もっとツンデレなリアクションしてくれなきゃ!かがみの商品価値が下がっちゃうよ~」 「はいはい、ご期待に沿えず申し訳ございませんでした。ツッコむ気力もございませ~ん」 「そうですか…ま、倒れないようにね。私も時々仕事抜けたりしてるし」 「相変わらず要領いいな…怒られても知らないわよ」 「大丈夫だよ~」 「ま、いいけど。とりあえず今日は寝るわ。おやすみ」 「おやすみ~」 かがみと一緒に過ごしているときが、一番楽しい。 片づけを終えた私は、キッチンでぼんやりしていた。 もう少しゆっくり出来る時間が欲しい。二人っきりで色々としたいのに…。 部屋の隅に、最近買った漫画が置いてある。二人の女の子が互いを守り、助け合いながら世知辛い世の中を生きていくという話だ。 パラパラめくっていくと、夫婦にしか見えない女の子達の世界が描かれている。 (私、何かあったら、かがみを守れるのかな…) 夜は更けていく。 (続く) コメントフォーム 名前 コメント (≧∀≦)b -- 名無しさん (2023-03-06 23 00 24)