約 1,622,215 件
https://w.atwiki.jp/apgirlsss/pages/302.html
翼をもがれた鳥 第14話――重なり合う心―― 空の様子の移り変わり。それは、人の心に例えられるもの。人の心に影響を与えるもの。 早朝と呼ぶにもまだ早すぎる時間。せつなは窓から覗く景色をぼんやりと眺めた。 漆黒の闇が徐々に薄れ、緋色の陽光が夜空を切り裂いてゆく。 光は雲を照らし、陽が昇るまでのわずかな一瞬、辺りを金色に染め上げる。 やがて光は闇を払い、澄み切った清浄なる輝きを取り戻す。 青い空は迷いを断ち、白い雲は心を洗い、明るい陽射しは、人々に希望を与えてくれる。 朝の訪れと共に、せつなもまた、暗い気持ちが薄れていくのを感じていた。 せつなは、傍らに眠るもう一つの太陽に視線を移した。 ただ、在るだけで人の心を明るく照らす少女。 振りまく笑顔だけで、皆を幸せにする子。 あれほどの、苦悩の後だというのに。 昨夜だって、いつの間にか眠ってしまった。 ただの一度も――悪夢にうなされることもなく。 (おはよう、ラブ。ありがとう) せつなは心の中で囁いて、そっと布団を直した。 滑るようにベッドから抜け出して、なるべく音を立てないように身支度をする。 姿見に映る自分の姿。可愛らしい、新品の下着に気恥ずかしさを覚える。 ラブから借りたピンク色のジャージ、ピッタリとサイズも合う。当たり前のように袖を通す自分が不思議だった。 静かに部屋を出て階段を降り、家の外に出た。 戦士が一般人と同じ生活だけしているわけにはいかない。 ここ数日のコンディションと過ごし方はメチャクチャだった。鍛え直す必要を感じていた。 距離と起伏、人通りの有無。頭に叩き込んだ地形から適切なコースを選択する。 家の前で、軽く準備運動をしてから駆け出した。 始めはゆっくりと、徐々にはやく。身体の回復具合、体力の衰え具合を測るようにしながら速度を上げていく。 商店街の大通りに入ったところで、同じように走っている少女の姿が目に入る。 ジョギングと呼ぶにはやや速すぎるペース、跳ぶように軽やかな足取り。風も無いのに、長い髪が美しくなびく。 「せつな!? おはよう」 「おはよう」 美希だった。振り返り、一瞬驚いた顔をする。そして笑顔を作って挨拶してきた。 せつなの表情にわずかに緊張が走る。一言だけ挨拶を返して、速度を上げて抜き去った。 自分が行っているのは戦闘訓練の一環だ、健康運動に付き合う余裕は無い。 一気に抜いたはずが、気配は離れようとしなかった。 「ちょっと! それだけ?」 「トレーニングの邪魔をするつもりはないわ」 既に身体も十分に温まった。コンディションの回復も申し分ない。せつなは全力で走り出した。 しかし、美希は離れようとせず、懸命に追いかけてくる。一瞬速度を緩めようかとも思ったが、やめた。 加減も失礼な気がしたからだ。 それから三十分の間、そのままのペースで走り続けた。やがて公園の噴水の前に出る。そこで休憩することにした。 後から付いてくる美希の、体力の限界が近いと感じたからだ。 美希は苦しげな表情で懸命に呼吸を整える。座り込んでしまわないのが、せめてもの矜持なのだろう。 話せるようになるまで数分の時間を必要とした。 「はあ、はあ、はあ、一体……、はあ、はあ、どんな体力してるのよ」 「何か用なの?」 「用ってほど急がないけど……。少しお話したいなと思ってたのよ」 「――いいわ」 「美希ちゃん! それに……せつなさん」 同じくジャージ姿の祈里が、二人を見つけて駆け寄ってくる。 せつなは強い眼光で祈里と視線を合わす。しかし、すぐに警戒を解く。 祈里の様子にも驚きが感じられたからだ。それに、ここを目指したのは自分の意思。待ち伏せされたわけでもなさそうだった。 ここ数日忙しくてさぼっていたが、ダンス練習を兼ねて毎朝一緒に体操する約束だったと説明してくれた。 「美希ちゃん、お疲れ様。スポーツドリンクよ、せつなさんもどうぞ」 「ありがとう、ブッキー」 「ありがとう。でも、いらないわ」 せつなが警戒して断る。とても良好とは言えない関係だった。まして美希とは、ついこの前に命のやりとりをしたばかり。 今さら争いになることはないにしても、どんな話になるかわからないうちから施しは受けたくなかった。 「じゃあ本題に入るわね。アタシ、せつなに言いたいことがあったの」 「そうね、私もよ。先に聞くわ」 両者と、祈里の表情に緊張が走る。 そして、美希の長身が大きく沈み込んだ! 『翼をもがれた鳥――重なり合う心――』 「戻れ! ソレワターセ!」 ウエスターの命令で、大樹のような魔物は苗へと姿を戻す。 それを手に収めると同時に、苦しげな息を吐く。苗を握る手は震え、額には脂汗が滲む。 ここ数日、彼はソレワターセのコントロール訓練にかかりきりになっていた。 「精が出ることだね。まだモノにしていないのかい?」 「ただ暴れさせるだけなら、こんな訓練は必要ない」 「出撃してから行き先を決めるような君にしては、ずいぶんと慎重なことだね」 「お前こそ、何を企んでいる?」 ウエスターを差し置いて、慎重なサウラーが真っ先に街に繰り出す。それだけでも怪しかった。 サウラーは情報の収集を優先し、漁夫の利を狙うような作戦行動を信条とする。 ましてや、直接肉弾戦を繰り広げるなど考えられない。行動も、そして手段も、全く彼らしくなかった。 「イースの消去か奪回。不幸のエネルギーの収集にも勝る最優先任務だが」 「消去にしては回りくどいし、奪回目的にしては手ぬるいがな。それに、消去などさせん!」 「なるほど、加減のための完全なるコントロールかい? 優しいことだね」 「勘違いするな! イースの確実な奪回のためだ」 「まあ、急ぐことだね。こうしている間にも、彼女は居場所を固めて手ごわくなっているよ」 「誰のせいだと思っている!」 「おお、恐いことだ。では失点を取り戻してくるとしよう」 ウエスターは、去っていくサウラーを訝しげに見つめる。 余裕のある言動とは裏腹に、行動に焦りを感じる。いや、動揺と言ったほうがいいのかもしれない。 イースの離反以後、彼の心にも何か変化が起こったのは間違い無かった。 「頭のいい奴の考えることはわからん。仲間を取り戻し、奪った奴に制裁を加える。他に何がある!」 ウエスターは苗を床に置き、再びソレワターセを召還した。 せつなの前で、美希が深々と頭を下げる。 付き合いが浅いとは言え、おおよその性格はつかんでいるつもりだ。 他人に、まして同年代の子に屈辱的な姿を晒すのは、彼女の人生にとって異例中の異例に違いあるまい。 「ごめんなさい、せつな。アタシは、あなたを見捨てて命を奪おうとした」 「何を……言ってるの? 意味がわからないわ」 「わっ、わたしも同じ。美希ちゃんにそう持ちかけたのはわたしなの。ごめんなさい」 突然の美希の謝罪に、せつなは驚き、困惑する。責められるとばかり思っていたのに。 その混乱に追い討ちをかけるかのように、祈里も深々と頭を下げる。 「あなたたちは何も間違ったことをしていないわ。私は、敵だったのよ!」 「それでも、苦しんでいたことも知っていたわ」 「じゃあ、美希は間違ったことをしたと思っているの? あなたの判断こそ正しいわ」 「ううん、間違っていたわ。戦う前から、それはわかっていたの」 「それでも、わたしたちはラブちゃんを守ることを優先させてしまったの」 美希と祈里が必死で訴えかける。本気なのはわかる。でも、意味も目的も理解できなかった。 逆の立場なら、当然、自分もラブのためにこの二人を始末しようとするだろう。 ラブと違って、この二人と直接交流があったわけでもない。 そもそも自分が助かるなんて思ってもいなかった。その奇跡がなければ、ラブだってどうなっていたかわからない。 二人の決断と行動こそ正義であるはずだった。プリキュアの使命であるはずだった。 「あれは仕方なかった。私は死ぬしかなかったのよ」 「聞いて、せつな。アタシは結局、せつなは敵という考えを捨てられなかった」 「わたしも……。でも、ラブちゃんは違った……」 「結果が良かっただけで、間違っていたのはラブの方よ!」 「それでも、アタシはもう、二度とせつなを見捨てたりはしない!」 「わたしも!」 「もう、やめて! あなたたちは――私には眩しすぎる」 せつなは耳を塞ぐようにして叫ぶ。そして、首を振って後ずさり、背を向けて走り去った。 追いかけようとする、美希と祈里を拒んで―― (ごめんなさいですって? 何を許せばいいと言うの……) せつなは、広い公園の中を目的も無くとぼとぼと歩く。 美希の行動は何も間違っていない。非は、全て自分にあるのだから。 それなのに謝ろうとする。どこまでも、美しく生きようとする。 それが、眩しいと思った。 本当は――自分も謝りたかった。 例え許してもらえないとしても、それでも謝りたかった。 それすら、できなくなってしまった……。 あんなことに頭を下げる美希に、自分が同じ言葉を使うなんて許されないと思った。 (私も、ごめんなさい。――なんて、言えるわけないわ!) せつなは考え事に意識を取られ、注意力が散漫になっていた。 背後からよく知った声が投げかけられる。 「迷い、後悔、苦悩。今の君は、イースが忌み嫌っていた愚かな人間そのものだ。そうは思わないかい?」 「サウラー!」 「これだけ接近しても気が付かない。心が生み出す強さとやらも、今は期待できないね」 「ちょうどむしゃくしゃしていたの。相手をしてあげるわっ! スイッチ・オー」 「そうはさせないよ!」 “ナケワメーケ! 我に仕えよ!!” 緑色のダイヤが、飛び道具と化してせつなを襲う。 せつなは変身を中断して横に飛ぶ。間一髪で避けたように思えた。 しかし、それはせつなの影に突き刺さり、染みが広がるようにその姿を拡大していく。 「馬鹿なっ! 物質を持たない影に干渉するなんて!」 「ただの影ではない、君の心の闇だよ。自分が何者か思い出すといい」 ワガナハ……イース! 影は、イースのシルエットを完全に再現しつつ実体を形成する。 違うのは声。くぐもった、怒りと憎しみを秘めた声。幸せを妬み、呪う声。 光と対になる存在。幸せに影を落とす者。常に満たされぬ想いを抱えて、破壊の限りを尽くす怪物。 それは紛れも無く、イースだった。 「いくらもがき、あがいても、影に陽が射すことはない。君はイースだ」 「だとしても、光に寄り添うことはできるわ。それが影よ!」 数メートルの体躯から繰り出される攻撃がせつなを襲った。 大きい分だけ、イース本来の俊敏さは失われていた。それに、動きやすいジャージとランニングシューズが幸いした。 せつなはなんとかその攻撃をかいくぐり、両手を胸の中央に合わせた。 その手を開きかけて――止まった。 「クッ、ここじゃ……」 「変身できないのかい? まあ、その方が君のためだ」 視界の端に、数人の人影を捉える。 ナケワメーケの咆哮と地面を抉る炸裂音が、周囲に居た市民を呼び寄せたのだ。 なまじかラビリンスの襲撃に慣れてきているのが災いした。中には、せつなを助けようと機会をうかがう勇敢な者もいた。 (私が変身するところを見られたら、ラブやおじさま、おばさまに迷惑がかかるかもしれない) 影というだけあって、その動きはイースそのものだった。それに、感じるのだ。ナケワメーケの怒りと攻撃の意思を。 せつなは、ナケワメーケの動きを予測して回避していく。 単に読みやすいだけではない。なぜか、攻撃が甘い気がした。モーションの直前に躊躇いを感じる。 (私を傷付けずに捕えるため? それとも、他に何か――) その疑問はすぐに解決される。騒ぎを聞きつけてやってきたのは市民ばかりではなかった。 様子を見守っていた人々の間から歓声が上がる。 “ダブル・プリキュア・キック!!” キュアベリーとキュアパインの飛び蹴りが、ナケワメーケの胸に突き刺さる。巨体が宙に舞い、ベンチや木々をなぎ倒しながら転倒する。 プリキュアが来たことで安心したのか、戦いが激しくなることを予想したのか、取り巻いていた人々も避難しはじめた。 そして――せつなが苦悶の声を上げてうずくまった。 プリキュアの攻撃と同時に、胸を撃たれたような痛みが走る。 「せつなっ! 無事?」 「せつなさん、早く逃げて!」 「っ――」 「せつな、どうしたの? まさか怪我を?」 「君たちがやったんだよ」 「どういうこと?」 力で押すタイプのウエスターと違い、サウラーは特殊能力を持ったナケワメーケの召還を得意とする。 プリキュアがここに居ることも、その参戦も承知の上で仕掛けてきたのだ。 「このナケワメーケは、イースの生体情報を組み込んである特別製だ。彼女の精神や感覚器官の一部とリンクしているのさ」 「そして、互いの苦痛をそのまま相手に伝えるってことね。ベリー! パイン! 伝わるのは痛みだけよ。気にせずに倒して!」 「そんなことっ!」 「できるわけないでしょ!」 ベリーとパインは攻撃が繰り出せず、防戦一方に追い込まれる。 敵の攻撃手段は物理的な打撃だけのようだった。動きもイースの劣化版で、パワーもウエスターの呼び出すものほど強くない。 しかし、もう一つの特殊能力がやっかいだった。大小を問わず影の中に入り込み、影から影に移動する。 そして、不意打ちの形で攻撃を仕掛けてくるのだ。 「パイン、こうなったら!」 「うん。わたしの技なら、傷付けずに浄化できるかも」 「かもしれないね、一か八か試してみたらどうだい?」 「想定の範囲内ってわけね……」 ワガナハ……イース! 浄化に苦痛を感じるとしたら、その痛みはせつなも共有するかもしれない。確信が持てない以上は、使うわけにはいかない。 しかし、他に手段が無かった。回避に専念しているとはいえ、徐々に疲れが目立ち攻撃が二人の体をかすめる。 「何をしているの! ベリー! パイン! 他に手段が無いのなら、迷う必要なんてないわ!」 「そうね、迷わないわ。お断りよ!」 「せつなさんはお友達よ。傷付けるためには戦わない!」 「っぅ――」 「きゃあぁぁ!」 せつなは、成す術もなく翻弄される二人を呆然と見つめた。 この二人は――何を守ろうとしているの? 自分のため? 心を通わせたことなどなかったはず。 正義感? 使命? ならば、なおさら戦うべきだと思えた。 攻撃は痛みとして自分に跳ね返ってくる。だから、自分は戦力にならない。 悔しさに歯噛みする。 全力で戦うようにとの、再三の忠告も聞き入れてもらえなかった。 これ以上――イースのために傷付く人たちを見るのはまっぴらだった。 「どうして――私なんかをかばうの? 私が何をしてきたか知っているでしょ!」 ジュースの水流で、美希を弟と一緒に溺れさせようとした。 祈里の知り合いの子の飼い犬を使って、街を破壊しようとした。 練習のしすぎで、倒れるほど打ち込んできたダンス大会をメチャクチャにした。 憎まれて――当然のはずだ。 「仕方なかったと言ったわね。せつなだって、一緒じゃない! 従うより他に、希望が見えなかったんでしょ」 「せつなさんの可能性を信じてあげられなかった。だから、わたしもせつなさんと同じよ!」 「あなたたちの夢を――ダンス大会を壊したのは、私の意志よ」 「だったら、今度は一緒にやろう!」 「壊れてないわよ。より完璧な優勝のために、先延ばしにしただけなんだから」 いつの間にか、せつなの両目から涙がハラハラと流れていた。 ほんとうに、何を言ってるのかわからない……。 ほんとうに、あなたたちは、私には眩しすぎる……。 でも、だからこそ! もう、二度とあなたたちの邪魔はさせない! 絶対に!! せつなの両手が胸の中央で合わせられる。クローバーの幸せを祈るように。 せつなの両目が希望で輝く。そして、腕を大きく開く! 罪は呪おう。でも、償う力を、命を、チャンスを得られたことは喜ぼう。 そして――戦おう! この身体が――砕け散るまで! ラビリンスの野望を――砕ききるまで! “スイッチ・オーバー” 高らかな叫びと共に、全身に電流が駆け巡る。体内の細胞が、戦うための配列に切り替わる。 白銀の髪は朝日を浴びて輝き、全身が淡き光をまとう純白の衣に覆われる。 これが、本当の自分を生きるための力。大空を翔ける自由なる翼。 「あなたが私の闇だと言うなら、真っ先にこの手で倒すべき敵よ!」 「ダメッ! せつなっ!」 「せつなさん!」 イースの体が、飛翔の如く高く跳躍する。膝を丸め、高速で回転しつつカカト落しを叩きつける。 地面にめり込んで動きを止めたナケワメーケに、イースの連続攻撃が炸裂する。 歯を食いしばったイースの口から、苦しげな声が零れる。全身から嫌な汗が噴き出す。 だけど――こんなもの、あの時の苦痛に比べたら! ワガナハ…… 「そう、イースよ! そして、あなたは私には絶対に敵わない!」 イースは、ナケワメーケの攻撃に対して一切の防御をしない。 狙うはカウンター! 当たったって構わない、それも相手のダメージになるのだから。 「刺し違えたって構わない。これが――止めよ!」 イースの拳がナケワメーケのクリスタルに伸びる! ナケワメーケの渾身の一撃がイースの身体に届く! 「ダメッ――!!」 太陽の光を背負って、その化身のような眩き戦士が舞い降りる。 キュアピーチだった。両者の間に割って入り、イースの攻撃を止めるように背中で拳の進路を塞ぐ。 そして、ナケワメーケの攻撃を両手で受け止めた。 ワガナハ…… 「イースだよね。あたしの親友で、あたしたちの仲間だよ!」 「ピーチ……」 ォォォオオオオ!! 苦しみとも、悲しみともとれるような咆哮をあげて、ナケワメーケは小さくなっていく。 ピーチに倒れこむように。彼女の腕の中に飛び込むように。 そして、元の影となってイースの体に戻った。 クリスタルだけを――ピーチの掌の上に残して。 安心したような、けれど、少し寂しそうな表情でピーチはそれを見つめる。 イース、ベリー、パインが彼女の元に駆け寄った。 「ピーチ……どうして?」 「なんとなく、ナケワメーケが泣いてるみたいに感じたの」 「敵わないわね、ピーチには」 「うん。でも、きっと来てくれるって、わたし、信じてた」 サウラーが怒りの表情を浮かべて歩み寄る。 ピーチ、ベリー、パインの三人は、イースを庇うようにサウラーに立ちはだかった。 「これは、どういうことだ? ナケワメーケが自滅するなど」 「イースには闇なんてないよ! あるのは悲しみだけ。一緒に乗り越えるって決めたから!」 「「「だから、あなたたちにイースは渡さない!」」」 声を揃えて宣言するプリキュアたちには答えず、サウラーは背を向けて立ち去った。 次こそは、必ず闇を思い知らせてやる。そう、イースに言い残して。 ピーチは、イースにクリスタルを手渡す。 それは、イースの手の上で弾けるように砕け散った。 「一人で抱えちゃダメだよ、せつな。あたしたちは仲間なんだから」 「仲間? でも、私は美希と祈里に――」 「まだ、せつなの返事を聞いてないわ。アタシたちのこと、許してくれる?」 「せつなさんのお話も、まだ聞いてなかったね」 「許すことなんて――始めからないわ。私こそ――ごめんなさい」 深く頭を下げるイースの肩に、ベリーとパインが手を添える。 嬉しそうに微笑んで、ピーチが三人に向かって手を伸ばした。 ベリーが、パインが、そして、おそるおそるイースがその上に手を重ねた。 「あたしたちは仲間だよ。みんなで幸せゲットしようね!」 翌朝から、せつなのジョギングにラブが並んで走るようになった。 美希と祈里の待つ――公園を目指して。 第15話 翼をもがれた鳥――三位一体――へ続く
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/8080.html
【登録タグ S minamiP 巡音ルカ 曲】 作詞:minamiP 作曲:minamiP 編曲:minamiP 唄:巡音ルカ 曲紹介 クリスマスに遅刻しないように作りました。やった!間に合った!(作者コメ転載) 歌詞 街の明かりがキラリ輝き始める そんな季節、あなたに出会えたんだ ふたり寄り添う交差点であなたから 伝わる体温、ハートを溶かすの このままあなたとふたりの 時間が続いて欲しい… いいよね?今夜は特別な あなたにだけ、プレゼントあげるよ! ふわり舞い落ちる 白い雪がきらめいたら あなたとふたりきり すべてを見せて! 抱き合うふたりの 瞳合わせ口づけたら 言葉は要らないの! ただ愛してる… テールライトが、まるで流れ星みたい 星空の街並みを駆け抜けてく 窓の外には、いつもと同じ景色が なんだか今日は違うように見える おおきなケーキは無いけど ひとくちサイズの気持ち 心をこめて伝えるから 残さず全部受け止めてほしい! ろうそく消えたら ふたりだけのエピソードを 心に刻み込む 消えないように… 甘くてせつない 恋を強く抱きしめたら 暖かい気持ちで 優しくなれる 手と手を絡ませ ふたり、ココロ、ひとつになる あなたが居るコトを 感じていたい…。 どうしてこんなに あなたのコト好きなのかな? 動き出す愛しさ 止められないの! ふわり舞い落ちる 白い雪がきらめいたら あなたとふたりきり すべてを見せて! 抱き合うふたりの 瞳合わせ、口づけたら 言葉は要らないの! ただ愛してる… コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/ova-v/pages/265.html
息を切らせながら、僕らは坂道を上っていた。 急勾配の小径はどこまでも続く。両側は壁面で挟まれて、間隔はまちまちに玄関扉が並んでいる。取り囲むものは全てが白く、照り返しは目も眩むほど強烈だ。 立ち上る熱気の中に少し牧草の匂いが混ざっているのは、毎日ここを通るロバのタクシーのせいだろう。 青く澄んだ空のところどころには細く長い雲が波打っている。太陽は僕らの真上にあって、ぎらぎらと燃え盛っていた。 「見て」 リベカの汗ばんだ小さな手に引かれ、僕は振り返った。 そこからは僕らの街が一望できた。 複雑に積み重なった白い家々が傾斜に沿って広がっていく。煉瓦の屋根は優しい茶色。細々とした路地は迷路のように入り組んで、途切れるところは一つもない。そうした塊が山腹の所々にあって、海をぐるりと囲んでいる。 視線を更に下す。 空白が家々に迫りつつあった。 そこでは建設用、或いは撤去用のMTが群れをなして蠢いている。膨大な量の家屋の白骨がトラックで運ばれていった。大地の衣は剥ぎ取られ、黒々とした杭が次々に挿し込まれていく。間に金属管が通されては、濁った灰色のゲルが吐き出された。 こうしてできた土壌から未熟な建築物たちが産まれていた。 建材を貪り喰らう度に不快な金切り声をあげ、臍の緒のような舗装が足下に根を張っている。ぎらついた光沢が海岸線にまで迫る様子は、ただただ醜悪だった。 「たかいたてもの、きらい」 リベカが呟く。「海がみえないから」 彼女はこの街で生まれた。幼いときから海と触れ合いながら育ってきたのだ。自分の成長よりも早く変わっていく都市を見て、何を思ったのだろうか。 ぎゅっと握り締めてくる小さな手から、僕には何となく解る気がした。 「さぁ、行こう」 僕はリベカの手を引いた。「もうすぐだ」 それから程なくして、鐘が鳴る音が、次いで鐘楼の先端が斜面の向こうから現れた。数段の階段を上がって、教会の扉を開けると、ひんやりとした冷気が心地よかった。中には誰もいなかったが、告解室の扉は閉まっていた。 僕らは個室の脇の席に座った。 女性のくぐもった囁き声が聞こえる。節々に嗚咽のようなものが混ざり、その度にリベカが不安げな視線を僕に向けた。もじもじとワンピースの裾をいじくり、落ち着かない。床から浮いた足がふらふらと揺れる。僕は何度かたしなめたが、あまり意味はなかった。 そして、扉が開いた。 黒いヴェールに身を包んだ女性が手で口を押さえながら足早に出て行った。泣いていたのだと思う。 隣に座るリベカは唇をきつく噛み締めてつま先を見つめていた。彼女の番だった。さぁ、と僕は膝に置かれた小さな手を握る。リベカはごくりと固唾を下すと、俯いたままサっと立ち上がり、駆けるように告解室の前に進んだ。そして扉の取っ手に手をかけた。 長い沈黙。固まった妹。肩が震えている。 どうしたんだ。 僕が近づくと、その場で金の長髪を翻し、突進してきた。僕の腹に顔をぐりぐりと押し付けて泣き出した。驚くほど力強かった。 困惑した。どうしたらいいか解らなかった。 神父が個室から飛び出てきた。顔には業火がうねり狂っていた。 耳を真っ赤にして泣く少女を一瞥。次に戸惑う僕に視線を上げる。すぐに合点がいったようだ。不届き者に対する厳しい表情が、蜃気楼が掻き消えるように、柔和な微笑みに変わっていった。 僕が口を開くと、彼は片手を挙げて制した。しばらく、少女の感情の赴くままに任せる。 「告解は初めてかね?」 神父がまだ赤みがかったリベカの顔を覗き込んだ。彼女は、人の存在を意識できるところまで自分を取り戻しつつあった。僕の腹に頬を押し付けたまま大きく頷いた。 「そうか、そうか」 そう微笑む神父の顔は若くも見えたし、年老いても見えた。大きな手でリベカの頭を撫でる。 「私も初めての告解は、そりゃあ恐ろしいものだったよ。余りに恐ろしくてシーツにコブラを召喚してしまう程だったな」 「え、はい?」 僕にはさっぱり解らなかった。リベカもそうだった。そんな僕らの様子に満足したのか、彼は何度も頷いて、さらに続ける。 「自分の新陳代謝に畏敬を覚えるくらい大きかったよ。坊やくらいはあったなぁ、多分。いや、そんなにはなかったかな? まぁ、それで無性に取って置きたくなってね。ベッドの下に押し込んだんだ」 リベカが僕を見上げる。潤んだ瞳には疑問がいっぱい詰まっている。 そこからは一息だった。 「私は何食わぬ顔でキッチンに降りていった。さながら、往年のアラン・ドロンの如し。 で、母と一言二言会話をしながらシリアルを頬張っていると、ランドルマン・ガルメニア・ウィンターズ・スピアーズ・アバム・ライアン・ジュニアが――っと、こいつはとんでもない馬鹿犬でね。 私が付けた名前がよほど気に食わなかったのか、証言台で不利になるような悪戯ばかりをする馬鹿犬だったんだよ。あれ、いま、馬鹿って二回言ったな……。まぁ、いいや。 で、なんとそいつは、ベッドの下からシーツを引っ張り出して、キッチンと居間の間に広げやがったんだ。あの時の小憎たらしい顔といったら……。 私はもう盛大に憤慨した。噴火した両耳が天井に引っ付くくらい。 で、ボウルの枠を掴んでフリスビーの如く弾き飛ばした。倍超豪速球、飛び散るミルク。 阿呆犬は尻から火を吹いて回避し、床が水浸しになって、新聞を小脇に抱えてやってきた父が滑って転んだ。私は思わず吹き出したが、笑っていたのは私だけだった。 二人はサタンの手下のように憤慨した。噴火した毛髪が天井に突き刺さるくらい。 で、結果として、私は祈りの言葉を二つ多く唱えなければならなかったし、当分の間、深夜の復刻ホラー映画が禁止になった」 彼はそう言って、真顔になって、次の瞬間には声を出して笑いだした。大きく背中を反って天を仰ぐ。 僕らは呆気にとられた。喉の奥が見えてしまうほどに口を開けて笑う大人に会ったことはなかった。 彼はやがて、浅く長い軽やかな一息をつくと、さて、と言って跪いた。リベカと視線の高さを合わせる。 「手をお出し、お嬢さん」 妹が恐る恐る手のひらを差し出すと、彼はドロップ缶をどこからか取り出して、白い飴をそこに落とした。ハッカの匂いがすっと鼻を突く。 「ほら、当たりだ」 「あたり?」リベカが首を傾げる。 涙は当の昔に押し戻されていた。 「白はいい色だ。太陽の色、神様の色、百合の花の色、君の肌の色と一緒」 頷く神父は太い親指で妹の頬に残った涙の跡を撫でる。僕らは彼を親戚の叔父さんかなにかだと錯覚しはじめていた。 「でも、しんぷさまは?」 リベカがそう尋ねると神父はさも痛そうに脇腹を押さえた。 「肝臓が悪いんだ」 「なにそれ」 「私の肝臓はギチギチのフォアグラなんだ!」 おどけた渋面に、妹の口元が綻びる。このときばかりは僕も笑った。誰もいない教会に三人の笑い声が転がって、返ってくる。ジョークの意味は全く解らなかったけど。 「いい子だ」 神父はゆっくり立ち上がった。 はにかむリベカを愛おしげな視線で見つめ、それから僕の方に向き直る。微笑みに静かなウィンク。 「さぁ、兄としての威厳を見せるときだ」 前/家/次
https://w.atwiki.jp/wiki2_me/pages/4.html
みんなで脚本をかんがえよう 早朝の街角 角を曲がる主人公 黒い壁(男の学生服の胸辺り)にぶつかる くわえていたトーストを落とす女生徒「あ~;;」 残念な顔をしてぶつかった男に視線を移す 男性のかばん(紙袋風?)からフランスパンがでているのに気付く 「それ頂戴!」と言って袋から勝手に抜き取り 半分にちぎって返し、残りをくわえて走り去る このシナリオは未完成です。加筆して下さる方を求めています。
https://w.atwiki.jp/zeromoon/pages/76.html
前ページ次ページマガツカオルタナティブ 使い魔召喚の儀式のはずがいつのまにやら百合の花園 「ムグッ!?ゥン…ンムムゥン!」 予想もしていなかったルイズの接吻攻撃に面白いくらいに動転するライダー パニックに陥った思考は豪快に空回り金鳥印の殺虫剤を喰らってひっくり返ったGの様に 手足をばたつかせるばかり 一方ルイズは遂に掴んだ成功の証し サモン・サーバントによって召喚した強く美しい使い魔を決して手放すまいと自らの唇を ライダーのそれに一層力を込めて押し付け一心にコントラクト・サーバントの呪文を唱え 続ける 勢い余って舌まで入れていたりするのは若さ故か ついでにルイズの両手がライダーの豊満な乳房を鷲掴みにして仰向けになっても美しい紡 錘形を保つみっちりと中身の詰まった肉球をムニュンモニュンと揉みしだいているのはも のの弾みというやつだろう 流石は“エロ”のルイズ 冗談はさておき ライダーの口腔内でジュルジュルと濡れた音を響かせあたかも蛇の交尾のごとく絡み合う ルイズの舌とライダーの舌 粘膜の接触を通してパスが繋がると同時に“ブリミルの呪い”と“サーヴァントシステム” が真っ向からぶつかり合う 互いに主導権を握ろうと荒れ狂う魔力の奔流はルイズとライダーの肉体を大陸横断特急の ピストンに放り込んだように翻弄する 「あがっ!ひがぁあッ!!」 「くッ!うふぅう……」 固く抱き合ったままどこか艶っぽい苦悶の声を漏らしのたうちまわる美女と美少女 脚を絡ませ腰を揺する度にスカートの奥のシークレットゾーンが白日の下に晒される 見物する男子生徒はもはや全員前屈みである やがて互いの実力を認め合った異なる世界の術式は双方の影響力を等分に行使することで 手打ちとした 即ち ライダーの右腕に騎兵に相応しくヴィンダールブのルーンが刻まれる ルイズの左腕に三つの令呪が浮かび上がる まだ火照りの残る身体にどうにか言うことを聞かせようやっと抱擁を解いたルイズは未だ 余韻の醒めぬ様子で荒い息を吐くライダーを潤んだ瞳で見つめそっと呟いた 「ごきげんよう」 前ページ次ページマガツカオルタナティブ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/626.html
♪rururururu~ 朝、ベットの中・・・ 遥か彼方から聴こえる電子音・・・ それは、間違いなく「嫌いな音」であり「好きな音」ではない。いや、好きな音であってはいけない。 仮に「好きな音」であった場合、安らぎや心地良さを感じ、この音が本来持つ役割を果たせなくなるからだ。 そして、この音は俺に軽い頭痛と薄明るくも眩しい光を提供してくれる。 今、何時だ・・・っ?!? 本日の起床予定は六時!今は六時十分! どうやら先程の「嫌いな音」はスヌーズ機能の恩恵によるものだったらしい。 まったく、何やってるの俺! 大急ぎで髪型を整え、制服を着る。 (遅れたら死刑だからねっ!) いつものハルヒの口癖が、脳裏をかすめ俺の行動が加速する。 飛び起きて僅か十数分、俺は自転車に飛び乗るところまで目標を達成していた。 そう、今朝は昨日の約束通りハルヒを迎えに行くのだ。 昨日の「一見平坦に見える心臓破りの坂」は、一人で駆け上がるには何の問題も無かった。加速して一気に登って行く。 ただ、若干の登りが連続するという事実は受けとめなければならない訳で、昨日「オアシス」と思わず呼んでしまった頂上の販売機にさしかかる頃には、少し息がアガッてしまった。 (団長として・・) っ・・・! 不意に昨日の此所での事を思い出した。 ハルヒが見せたあの今まで見たこともない表情。 不意打ちの様なキス。そして・・・何故か俺と同じモノ・・・つまり缶コーヒーを選んだハルヒ。 いや、実を言うとコイツが一番厄介だ。 他人と似通う事を一番嫌うハルヒが何故だ・・・。 表情は光の加減・・・キスは・・・雰囲気か? まあ、あの夕日の美しさは異常だったしな・・。 コーヒーは・・・たまたま飲みたかった? いや、違うな。俺がコーヒーと言う前から「同じモノを」と言って・・・いたと思う。 さて、ここまで考えが進むと、俺の中に今すぐ解決すべき最大の問題が浮上した。 『どの面さげて、ハルヒに会えばいいんだ』 とりあえず自転車を飛ばしながら祈る。 昨日の全ての出来事が、ハルヒの気まぐれのみに因るモノでありりますように。 やがて、俺はハルヒとの待ち合わせ場所に到着した。 「おっはよう!七時ジャストね。まあ、キョンにしては上出来だわ!」 そいつはどうも。 で、足は大丈夫か? 「まあ、昨日程ではないわね。さっ、行きましょう!」 右膝から太股にかけて包帯を巻いているものの、ハルヒの身のこなしは至って軽い。 『平気なら明日から電車で行けよ』と突っ込みを入れる間も無く、俺の自転車の荷台に腰を降ろした。 ただ・・・微かに湿布の香りがして、俺は少し心配になった。 「さあ、出して」 おいおい、人の心配をよそに『出して』とは? まるで、御屋敷住まいのお嬢様が執事かなんかに車を運転させるアレのつもりか? 昔のアメリカ映画で見たことあるぞ? 「早く出しなさい?」 へいへい。 結局、ここに着くまでの最大の問題なんてハルヒのペースに乗せられて何処かに消えてしまった。 そうだ、これでいい。 おそらく俺は、ハルヒといるこの感じが好きなんだと思う。 人は他人と関係する時に、必ず自分に無い要素を持つ人間を心の底で求めるという。 かといって、俺がハルヒを求めているとは言いがたいが、この心地よさの理由にするには十分だと思う。 俺達は、走りだした。 「キョン!なあキョンよ!何故に俺に話してくれなかった?そういう事なら正直に言ってくれよぉ!」 いつになく谷口が、暑苦しく迫って来る。 しかも、ここは始業直前の男子トイレときたもんだ。 なんだよ、朝から。 それに熱く語りたいなら、要点を明確にしてかにしろよな。 「涼宮と付き合ってたんだよな?あのな、キョン!いくら相手があの涼宮ハルヒでも、お前が選んだ道だ!俺は親友として限りなく祝福・・・」 ちょっと待て! さっぱり解らん。どうしてそうなった?俺が理解出来る様にまとめて説明しろ!始業のチャイムが鳴る一分前までにだ! 「???だって、お前・・・全校内で噂だぞ!?今朝も自転車で二人・・・」 それか。 しかし、自転車で男子が女子を後ろに乗せて走るなんて事は、別に「付き合う」って事と関係無いと思うのだが。 じゃあ、あれか? 仮に、朝比奈みくるさんを自転車の後ろに乗せて走ったとしたら、俺と朝比奈さんは「付き合っている」という事になるのか? まあ、それはそれで何か良い・・・いや、そうじゃない!そうじゃなくて! 谷口よ。誤解だ。 だから、お前の灼熱の祝福はいらん。 やがて、始業のベルが鳴った。 谷口に言わせれば、俺は今「噂の男」なんだろうが、生憎俺は周囲の自分に対する視線や空気感に妙に鈍感な時があるんだな。 だからこそ、今まで散々SOS団絡みの事で周囲から興味を持たれても、それほど気にもとめなかった訳だ。 そしてそんな感じで、「噂の男」になってしまった今も、普段と変わらず過ごしている。 ただ・・・ ハルヒはどうなんだろう。 俺達をとりまくこの妙な噂を、どのように受けとめているんだろうか。 まあ、ハルヒが細かい事や人の噂をいちいち気にする性格なら、今のこの生活は有り得ないわけだし、ましてやSOS団も存在しないだろう。 それに・・・ 「恋愛感情なんてのは精神病の一種」なんて事を前に言ってた気がする。 だから、そんな噂が耳に入ったところで、「なにそれ、くだらないわね」なんて一言で簡単に片付くんだろうな。 そんな事を、ぼんやりと考えながら俺は午前中の退屈な授業をやりすごした。 昼休み。 ハルヒに足の具合を聞こうと思ったのだが、終業のベルが鳴るや否や、教室から出ていってしまった。 大方、保険室か部室でコッソリ湿布を取り替えるんだろう。 (隙を見せるのはポリシーに反する・・・) 昨日の放課後にハルヒが言ってた言葉を思い出した。 。 なにも、そこまでしなくてもいいのに・・・ 早々に昼飯を済ませた俺は、少しばかり昼寝をしようと考え教室を出た。 朝六時(正確には少々寝坊したが)に起きて、隣町までのハイペースなサイクリング・・・ 腹を満たした俺の中に睡魔を降臨させるには十分過ぎる条件だな。 さて、何処で寝ようか。 窓の外は十月半にしては、暖かい陽差しだ。 やっぱり、あの木の下・・・だな。 俺は玄関に向かった。 木の下には先客が居た。 女子二名が木洩陽の下でランチの真っ最中らしい。 間違いなく俺は招かれざるアレだな。部室にでも行くか・・・ 俺は再び校舎に向かい歩きだした。 「ねえ!」 ? 「おーい!」 ! 後ろから・・・木のある方から呼ぶ声に振り返ると、先程のランチ中の女子が手を振っていた。 呼ばれるままに近寄って行くと、その女子二人が見覚えのある顔である事に気が付く。 ああ・・・確か軽音部の・・・ 「久しぶりね、あの時はどうも。涼宮さんは元気?」 思い出した、榎本さんだな。 「噂になってるね?色男?」 こっちは財前さん・・・て、おい! 色男とは一体!? 「私達さ?文化祭の後に涼宮さんの教室に行った時から、なんとなく気付いてたんだよ。ね?」 「ね!」 一体何の話です? 「ん?アナタと涼宮さんの話よ。ね?」 「ね!」 ! 今朝、谷口が騒いでいたアレか・・・ 俺は、ハルヒの怪我の事。団長命令で泣く泣く御抱運転手の真似事を毎朝する羽目になった事を簡潔にまとめて説明した。 まあ、販売機での事や、その前の「おひめさまだっこ」の事は禁則事項だから言わないが。 「なんだぁ、残念!」「でもさ、今朝の二人乗りだけが噂の原因じゃ無いと思うよ。」 「うんうん。」 「だって、元々付き合ってたんじゃないの?って言ってる子も居たし。」 マジかよ! 「それにね、これは私達も自分達の目で見た事だから言える事なんだけど・・・」 「ああ、今朝の!」 「涼宮さんね、アナタの背中に寄り添って、物凄く幸せそうに微笑んでたのよ。」 結局、昼寝は出来なかった。 (涼宮さんね、アナタの背中に寄り添って、物凄く幸せそうに微笑んでたのよ) 俺は先程の榎本さんの言葉を思い出しながら、ボンヤリと授業を聞いていた。 そういえば今日は、一日中ボンヤリしていた気がする。 馴れない早起きのせいだろうか。 幸せそうな微笑・・・って、ハルヒが「いいこと思いついた!」の時に見せるアレか? まあ、女子が男子の自転車の後ろに乗ってニコニコしていれば幸せそうにも見えるだろうし。 ただハルヒの場合、もっと笑顔の要素が違うところにある気がするんだが。 俺は、ふと思い付いて後ろを振り返った。 なんとなく、後ろの席に座っているであろうハルヒの顔を少しだけ見たくなったのだ。 あれ? 居ない・・・ どうしたんだろう・・・。さすがに大事をとって早退して地元の医者にでも行ったか? 俺の心配をよそにハルヒは、その後の授業も欠席した。 放課後。 なんとなく部室にハルヒが居る気がして、俺は早足で部室棟へと向かった。 心配だから?いやいや、ちがうな。たぶんそんなんじゃない。 そんなんじゃないけど・・・なんとなく。 例によって朝比奈さんの着替えを警戒しつつドアをノックする。 「おや、お客さんの様ですよ?」 中から、古泉の声がする。 と、言うことは長門も朝比奈さんも居るな。 根拠は無いが、そんな気がする。 ハルヒは・・・どうだ? 俺はドアをあけて、予想通り居た三人に軽く挨拶した。 そして、ハルヒの机がある方に目を向ける。 居た! てゆうか、ずっとココに居たのか? 「煩いわね。今大事なトコなの!後にして!」 ハルヒは、いつになく真剣にパソコンに向かっている。 俺は、(今度は一体何をしようとしてるんだ?)という意を込めて古泉に視線を送った。 「さあ、なんでしょうね」と言わんばかりにニヤける古泉。 長門は相変わらず読書中か。 しばらくすると朝比奈さんがお茶を持ってきた。 「今日は試しに鉄観音茶にしてみました。」 いや、ありがとうございます! そう言えば昨日は部活が無かったから飲めなかったんだよな、朝比奈さんのお茶・・・ 何かの本に「会えない時間が愛を育てる」という件が書いてあった気がしたが、正に現在の朝比奈さんの癒しの笑顔と、お茶に捧げるべき言葉だろう。 ああ、一日ぶりのお茶・・・美味し・・ 「みんな!重大発表よっ!よおーく聞きなさいっ?」 それまで、黙々とパソコンをいじっていたハルヒが、突然叫んだ。 ああ、俺の癒しの一時が・・・ ハルヒは続ける。 「我がSOS団はこの度、日本最大級のインターネット掲示板に殴りこみをかけて、その存在を知らしめる事が決定されたわ!」 おい。それって2・・・ 「まずは、『スレ立て』ね!キョン?あんたやんなさい!」 一体何処の板に! 「あー、楽しみね!こういうのをwtkkするって言うのかしら!」 「それは何です?」と小泉がニヤニヤしながら聞く。 「『ワクワクテカテカする』って意味よ!この掲示板には他にも特殊な用語が盛りだくさんよ!あんたたちも勉強しなさい!」 おい・・・それを言うならwktkだろ。 そんなこんなで、一日振りの活動は訳が解らないまま終了した。 ハルヒ、帰るか? 「いい。駅まで歩いて、電車で帰るわ。」 そうか・・・って、おい!それ、机の上にあるの薬か? 「そうよ、痛み止。仕方がないから昼に学校抜け出して変態田代のトコに行ってきたわよ。今飲めば、家に帰るくらいまでは何とかなるから。」 無理すんなって! 送ってやる。約束したろ? 「いい。」 いい・・・って、おい! 「迷惑よ。」 ? 送ってもらって、迷惑って何さ? 「違う!キョンが・・・。」 俺? 「噂に・・・なってるじゃない。」 ! 俺は今、予想だにしていなかった事態にとまどっている。 ていうより、正直に言ってしまえばどうしたら良いか解らない。 ただ言えるのは、ハルヒが自分を学校まで乗せた事で、俺との間に妙(?)な噂がたってしまったのを気にしているという事。 そして、それを回避すべく嫌悪感をこらえつつ変態田代の診察を受け痛み止を貰い、帰りは何とか一人で帰ろうとしているという事。 ああ、こんな時・・・気の効いた言葉の一つも言えない俺って! 「じゃアタシ帰るから。」 ・・・。 「?」 待てよ! 「なによ・・・。」 俺は噂なんか全然気にしていないし、むしろ・・・ 「?」 別にそれならそれで良いって思ったくらいだから気にするな! 「なによ・・・わかんない・・・そんな答え・・・想像すらしてなかったわよ・・・バカ・・・」 ハルヒが泣いている でも・・・微笑んでいて・・ あ! 俺は、昼休みに聞いたあの言葉を思い出した。 (涼宮さんね、アナタの背中に寄り添って、物凄く幸せそうに微笑んでたのよ。) とりあえず一緒に帰ろう 駐輪場までは「昨日のヤツ」で行ってやるから。
https://w.atwiki.jp/twin_world/pages/41.html
秋も深まり、新しい学校になじみ始めた陸は家に帰ってきても学校の友達と遊びに行くことが多くなった。 明もミクの本体の調整にかかりきりで、カイトは家事をこなしつつも歌の自主練習ばかりしていた。 そんなある日、ついに来るべきときが来た。 「お留守番???」 カイトはきょとんとして明と陸を交互に見つめる。 「明日からの3連休、ボク友達んちに泊まりに行くんだ」 「わしは学会の準備。手伝うだけだからすぐに戻ってこれると思うが…」 そういうわけだから、留守をよろしく。と、あっさりカイトは広い家に取り残されてしまった。 二人がいない家をいつもどおり家事をしてみても、食事は必要ないし、洗濯もない。 自主練のさびしさがどうしようもなくたまりかねなくなっていく。 「どーしよう…さびしいって、僕子供じゃないか…」 歌を歌ってもさびしいなんて、カイトにとっては初めてだった。 そんなとき。 「そう…、だ。ミク、ミクに会いに行こう!」 カイトはこの家にもう一人いたのを思い出した。 もちろん相手は寝ているので数には入らないのかもしれないが、今のカイトにとっては唯一の存在だった。 「えーと、ケーブルケーブル…」 自分で手探りで首の後ろへケーブルを差し込むと、目を閉じて意識を集中させる。 そして一瞬息を止めて――。 何かを通り抜ける感覚。 そして気づけば電脳空間に降り立っていた。 始めて降り立った場所ではなく、いっぺんにミクのいる建物の前まで着いていた。 「よし、じゃあ行くかな」 あまりのさびしさに独り言が増えるが、久しぶりに妹の顔が見れると浮き足だっていた。 「ミクー?」 起きない相手に声をかけても仕方がないのだが、『上』での生活はすでに習慣になっていた。 「いい夢見てるかな…?」 そっと天蓋つきのベットをのぞきこむ。 が。 ベットの上はシーツだけ。 ――あの子がいない。 そんなばかな。 カイトはメイコの言葉を思い出す。 起きないわよ、そうメイコは言っていた。だけど、その前にこうも言っていなかったか? この子は完成していて、本体の調整のためにここにいると…。 目を覚まさないこともない、とも。 それらの言葉から分かることは、ミクがなんらかの理由で目が覚めてここから移動しているということだ。 再びメイコの言葉がよぎる。 『人と会話して傷ついたら人に会うだけで機能停止とか、部屋の外へ出て怖い思いをしたら本当の外へ出られなくなるかもしれない。』 「ミクを見つけてここに戻さなきゃ!!」 カイトにとってほとんど未知である電脳空間の中で、ミク大捜索が始まった。 建物の中はほとんどカイトが入れない場所ばかりだった。 ということはミクも入れない可能性が高い。 入れない場所には行かないが、出られる場所になら出てしまうかもしれない。 カイトは建物の中をとにかく走り回った。 そして一つ、扉が開いている場所へたどり着く。 セキュリティのかかっていない部屋のようだ。 外には出ていない、きっとここにいる。 ほっと胸をなでおろし、部屋の中へ一歩足を踏み入れた。 目の前の世界に、カイトは息をのんだ。 ここは電脳空間。 現実空間とは常識が違っているのも、『自分がここで生まれた』から知っている。 覚えていないが、感覚として残っている部分があった。 だけど、カイトは衝撃を抑えることができなかった。 円状の部屋に天井がはるか遠くに伸び、床があるべき場所が奈落の底のように地下へ続き、目の前の一本の通路だけが在った。 そして壁一面にデータ。 データなのだ。 アプリケーションでも、プログラムデータでもない。 ここにある全てが音楽データだったのだ。 楽譜、音のサンプリングデータ、音源という音源。 それは音楽の巨大な図書館のようなものだった。 「すごい、こんな場所が…!」 『音楽』に囲まれてカイトは体が高ぶるのを感じるが、目の前の小さな動く塊にはたと気づく。 「ミク!」 通路の奥、うずくまってデータをあさっている少女がいた。 たしかにあの子だ。 そう思ってカイトは走り寄った。 「あなた、だぁれ?」 目がかち合って、カイトは体を硬直させた。 しまった。 これでミクを怯えさせてしまったら、自分がトラウマ第一号となってしまう。 「えっと、あ、んーと・・・」 しどろもどろになりながらも、なんとかひねりだす。 「き、君を守るお兄ちゃんだよ!」 守る、という言葉で『敵性』ではないことを理解してくれるといいんだけど。 そう思いながらハラハラしていると、ミクは持っていた楽譜データで顔を隠す。 「それ、怖い…?」 「怖くない! 怖くないよ! だって僕はミクを守るんだから」 「まも、る…」 ダメ押しでもう一度言ってみるが、いまいち理解していない。 やはりミクはまだ現実空間へ生まれる前のプログラム…本当は未完成なのだ。 なんとか優しく声をかけて、そっと手を差し伸べる。 「君はまだ未完成なんだ。外へ出てしまっては危ないんだよ。僕が部屋まで送ってあげるから、一緒に行こう?」 怖くないよー、よしよし、など猫を呼ぶように辛抱強く待つ。 すると、おず、という感じでミクは手を取った。 「おにい、ちゃん」 そう答えたミクの顔は無表情だが、自分を認めてもらえた喜びでカイトはうっすら涙さえ浮かべた。 もちろん心の中ではガッツポーズをとっている。 だけどそれをおくびにも出さず、慎重に、出来る限りの優しい声でミクを促す。 「さ、行こう。自分の部屋から出たら危ない」 結局この後、帰ってきた明によってミクは再び眠りについた。 カイトはそれを残念に思いながらも、ある日、家事の合間をぬって『図書館』へ足を運んだ。 ミクとの思い出の場所でもあるし、何より楽譜と音源を探すのは楽しい。 今度、現実空間でミクと会ったときに『図書館』でのことを教えられたらいいな、なんて考えていた。 「ミクはどんな音楽が好きかな、意外とクラシックとかいけるんじゃ……」 「ポルカ、とか?」 「いや、それクラシックじゃ、な、い、し……!?」 誰もいないはずの背後から声がして振り向けば――、 アクアブルーのロングヘア、白くて細い手足、黒いアンダーにスカート、ニーソックスの女の子がそこにいた。 「ミ、ミクーーーーー!!!???」 プロフェッサーによると。 ミクは時々、こうやってスリープから抜け出すことがあるらしい。 理由はよくわからないが、特に本体との調整を中断したときにスリープへ移行できないことがあるようなのだ。 「じゃ、カイト。ミクのお守りを頼む」 手間を増やして申し訳ないと謝る明だったが、カイトには嬉しいかぎりであった。 それからというものミクの調整が進むにつれて、カイトはひっきりなしに電脳空間へ呼び出されることとなる。 しかし、あのときのカイトにはミクがものすごく手のかかる妹だとは知る由もなく、近くの本屋で育児書を手に悩むカイトの目撃情報が陸の耳に入るのも時間の問題であった。 前へ 目次 次へ この話には短編で後日談?があります。 むしろそれがメイン(ぉぃ 短編に載せる予定です。 育児書って兄さん、隠し子!?(マテ とか、明が帰ってくるまでミクと二人っきり!?とか、ハラハラしてもらえたらいいなと思います。 それでは、読んでいただいてありがとうございました。 感謝、感謝です! ※アップ後に少し修正しました。 ミクは存在は完成しているけど、起動前だからという意味で未完成という…。 ややこしくてごめんなさい…! かるな
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/665.html
━━━━普段、「自習」となれば騒がしくなるこのクラスも、「試験の二日前の自習」ともなると流石に静かだ。 あの谷口ですら、神妙な面持ちで机に向かっている。 まあ、谷口の場合は中間試験が散々な結果だったから、今回で何とかしないと非常にマズい…あ、それは俺も同じか。 と、とにかく教室の中は試験前の張りつめた空気で満たされていたっ! …俺の後ろの席の約1名、ハルヒを除いて。━━━━━━ 【凉宮ハルヒの暇潰@コーヒーふたつ】 自習となった今の時間…四時間目が始まってから10分余りが過ぎた頃、俺の背中に予想通りの攻撃が開始された。 初めは間欠的に「チクッ、チクッ」、そして気付かない振りを続けていると「チクッ」は「ブスッ」に変わってくる。 まったく、ある偉人が「ペンは剣より強し」という言葉を残したが、ハルヒの場合は違う意味でそれを実証しかねない。 「ブスッ」とやられた時の痛みは、本気で殺意を覚える程だ。 ただ、今日の俺はいつもの俺とは少し違う。 いつもなら、背中への猛攻に屈して振り返るところだが、今日はこうなる事を予測して四時間目が始まる直前に段ボールを背中に仕込んでおいたのだ。 なので、ハルヒの「ペン撃」などは蚊に刺された程度にしか感じない。 (ふふ…まあ、精々頑張ってチクチクやっててくれ。) 俺は、ハルヒの妨害から自らのテスト勉強の為の時間を守りきった事に充足感を覚えながら、テキストを鞄から取り出した。 そしてそれを開こうとした瞬間… 机の上にマナーモードにして置いておいた筈の俺の携帯が、大音量で鳴りだした! 一斉にクラス全員が、俺に軽蔑の視線を投げかける。 (な、何でだっ?まさか…っ) 思わず後ろを振り返ると、ハルヒがニヤニヤ笑っている。 そして、携帯のディスプレイには「受信メールあり」と表示されていた。 (くっ!さっきのはハルヒの仕業かっ!) 慌てて携帯のメールフォルダを開いてみると、案の定ハルヒからだった。 『バーカ、無視した罰よっ!』とか書いてやがるっ! 俺は直ぐにマナーモードを設定しなおすと『いつのまに解除したんだ?まったく、人の携帯を勝手にいじるな!』と打ち返した。 すると、驚くべき事にものの2秒程で返事が返って来た!。 一般的に女子の方が男子よりメールを打つ速度が早い事はもはや定説だが、ハルヒのメールを打つ速度は異常だ。 とりあえず驚きつつも、俺は再びメールフォルダを開いてみる。 『休み時間に机の上に置いたままにするアンタが悪い!』 なるほどね…そういう事かよ。 まあ、いいや。 これ以上のヤリトリはは時間の無駄だ。 俺は『とにかく、もうやめろよ?また、後でな!』と打ち返した。すると、再び物凄い速度で返信が来る。 ハルヒは自分に都合の悪い話は耳に入らないという迷惑な特性の持ち主だが、どうやら都合の悪いメールも目に入らないらしい。 『そうだ!ねぇ、キョン!メールでしりとりするわよ!』 『しない!』 『じゃあ、アタシからね!焼きそば!』 『しないって言ってるのに… バイリンガル』 『る?…ルックチョコレート!』 『おい!商品名出すのはフェアじゃないだろ! とりあえず「ト」か?時計!』 「い?イカフライ!」 『石頭!』 『巻き寿司!』 『…お前、腹減ってるだろ』 『う…うるさいわねっ!次行くわよ!』 『「し 」か?獅子笛!』 『海老ドリア!』 まったく、キリがない。 俺は、しりとりの答えを考える振りをしながら、ハルヒを黙らせる効果的な方法を模索してみる。 そして…ひとつだけ思いついた。 『「ア」だよな? 愛してる!』 俺は送信ボタンを押してから、そーっと振り返ってハルヒの様子を伺った。 すると、耳まで真っ赤になったハルヒが、携帯を持ったまま固まってるのが見える。 ふふ…こちらも相当恥ずかしいが作戦成功だ! さて、勉強勉強… 「キーンコーンカーンコーン…」 テキスト開いた瞬間に鳴ったのは、ハルヒからのメール着信ではなく、終業のベルだった。 お…しまい。
https://w.atwiki.jp/sinsetsuz/pages/13.html
シン敵対ルートを描いた切ないストーリーに定評あり。 繊細なMS描写、熱いバトル有り。不器用なシンと不器用なセツコの互いを思い合う姿。 まさにこのスレの住人達が悶える為のストーリーに胸をキュンキュンさせるといいさ!! シン敵対ルートから始まる切ないラブストーリー ■ ぶつかり合う運命 ├ 第一話 ├ 第二話 ├ 第三話 └ 第四話 作者別インデックスへ
https://w.atwiki.jp/parutena2/pages/6.html
パルティオン王国 パルティオン王国とは名のとおり、王政の国家である。 王印と呼ばれる特殊な徴をもつ者を国王として戴いている(※後述)。 国王は絶対の専制君主。政治的法的軍事的権限の頂点にある。 神殿による無償教育(初等教育的なもののみ)が全国的に行われているため、国民の識字率は100%に近い。 王印について 王印の所持者は必ず同時代に最大で3名まで存在する。 すなわち現国王と、2人の継承者である。 王印は誕生と同時に手の甲に刻まれる。 左右で鏡合わせの形状になっており、左右どちらかの手に刻まれる。 そのため、それぞれを右手の継承者。左手の継承者と呼ぶ風習がある。 王印をもつ継承者2名から選ばれたものが次期国王となる。 東方にあるノールの塔にて「星読み」の神官達により 継承者誕生の予言がもたらされると、1年以内に王印をもつ子供が2人生まれる。 それから継承者が15歳になる年に「継承の儀」と呼ばれる 王位継承者を選定するための儀式が執り行われ、 双方どちらがより王にふさわしい人物であるかを競わせる。 「継承の儀」を経た後、王の指名により次期国王が選定され 通称「鏡合わせの儀」により継承者の印は、次期国王の元にひとつになり、王とならなかった継承者から印がなくなる。 また、その時より先代の王は隠棲する決まりとなっている。 なお王印を継ぐ赤子がどこで生まれるかは不明であるためその年より赤子に王印があるかを検査する国家事業が行われるが、必ずしも2人揃って見出されるとは限らない。 その場合、略式での継承の儀が執り行われ、見出された継承者を王につける慣例となっている。 歴代で継承者が一人も見いだされなかった事例は存在していない。 パルティオンでは、国王になる資格は血縁ではなく、王印の継承によるため 国王とは現人神であるという認識が浸透しており、故に国民からは絶大な支持・信仰を受けている。