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ダブルクロス The 3rd Edithion PL名: 「決め台詞」 簡易な設定 【基本情報】 名前:凍てつく閃光 コードネーム: 年齢: 歳 性別: 星座: 身長: 体重: 血液型: ワークス:UGNエージェントB カヴァー: ブリード:クロスブリード シンドローム:エンジェルハイロゥ/サラマンダー 【能力値】 肉体:2 Lv 感覚:4 射撃 1Lv 知覚 1Lv 精神:2 RC 3Lv 社会:1 調達 1Lv 情報:UGN 2Lv 【ライフパス】 出自: 経験: 邂逅: 覚醒:(侵蝕値:) 衝動:(侵蝕値:) 基本侵蝕値: HP:26 行動値:10 戦闘移動:15m 全力移動:30m 常備化ポイント:4 財産ポイント:3 【ロイス】 Dロイス 究極のゼロ 《コンセントレイト サラマンダー》に修正 判定ダイス+3 侵蝕率を3へ変更 P: N: P: N: 【エフェクト】 No : 名称 : Lv : タイミング : 技能 : 難易度 : 対象 : 射程 : 侵蝕 : 制限 : 効果 — : リザレクト : 1 : オート : - : - : 自身 : 至近 : 効果 : - : (LV)D点HP回復、侵蝕値上昇 — : ワーディング : 1 : オート : - : 自動 : シーン : 視界 : なし : - : 非オーヴァードをエキストラ化 01 : コンセントレイト サラマンダー : 2 : メジャー : シンドローム : - : - : - : 2(+1) : - : C値-Lv(下限値7) (判定ダイス+3) 02 : 光の手 : 1 : メジャー/リア : RC : - : - : 視界 : 2 : - : 【感覚】で判定 03 : 氷神の悲しみ : 3 : メジャー/リア : 【感覚】 : - : - : - : 3 : - : 判定ダイス+[Lv+1] HP3点消費 04 : 氷の塔 : 3 : メジャー : RC : 対決 : 範囲(選択) : 視界 : 4 : - : 攻撃力+[Lv×3]の射撃攻撃 同エンゲージ不可 05 : 氷の回廊 : 1 : マイナー : - : 自動 : 自身 : 至近 : 1 : - : 飛行状態で戦闘移動 移動距離+[Lv×2]m 06 : マスヴィジョン : 3 : メジャー : シンドローム : 対決 : - : - : 4 : 100% : 攻撃力+[Lv×5] シナリオ3回 【武器】 名称 : 種別 : 技能 : 命中 : 攻撃力 : ガード値 : 射程 : 常備化 : 解説 : : : : : : : : : : : : : : : : 【防具】 名称 : 種別 : ドッジ : 行動 : 装甲値 : 常備化 : 解説 : : : : : : : : : : : : 【一般アイテム】 名称 : 種別 : 技能 : 常備化 : 解説 UGN幹部 : コネ : 情報 UGN : 1 : 判定ダイス+2 : : : : : : : : : : : : 【コンボ】 【設定等】 K式クイックスタート第四弾は、エンジェルハイロゥ/サラマンダーのRC攻撃キャラ。 運用方法は特になし。敵にエンゲージされている時に《氷の回廊》で距離を取るくらい。 【感覚】型RCキャラの最大のメリットである高行動値を生かし、雑魚共に範囲攻撃を見舞ってやろう。 RCキャラは判定ダイス数を確保しにくいという弱点があるのだが、《氷神の悲しみ》によってそれを克服している。 構成するエフェクト名も氷系統で固められている為、非常に美しい(自画自賛)。 Dロイスルール採用時は「究極のゼロ」(上級P58)を取得。ダイス数が更に安定し、氷使い度も上がって一石二鳥。 「実験体」(上級P36)の完全下位互換とか言ってはならない事を言った奴はアリサたんに始末されてしまえ! その他の候補としては火力向上の為の「対抗種」(上級P35)や、扱いやすい「超侵蝕」(上級P46)などがオススメ。 ただし、前者はバックファイアが《氷神の悲しみ》と合わせて6点にもなってしまうので注意。 成長は、取得済みエフェクトのLvUP、 RC 技能や【感覚】の上昇などを優先するといい。 特に《氷の塔》はリミットエフェクト《氷炎の乱舞》の前提条件にもなっているため、迷ったらこれを上げるといいだろう。 また、《ミスディレクション》や《鏡の盾》といったエフェクトは問答無用で強力である為、それらもオススメである(面白みは無いが)。
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「ゆっゆっゆ~♪ ゆゆゆっゆ~♪ ゆっくりしていってね~♪」 博麗神社の台所にて、生首饅頭がうどん生地の上で楽しそうにぽむぽむ跳ねていた。 生首がうどんを捏ねるという世にも珍しい光景が生じた発端について語るには、少し時を遡る。 ◆ 「うぅ……だるい…………」 梅雨も終わりを迎え、夏へと向かって太陽がより一層強く輝く時期。 その朝の澄んだ空気が段々と暖まる頃、 博麗神社の一室にてその所有者である博麗霊夢が掠れた声で呟いた。 普段はお茶を飲んだり境内の掃除をしたりして日中をのんびりと過ごす彼女だが、 今日に限ってはそのようなことはない。 神社の一室で布団に身をくるめて寝込んでいる姿にはいつものような暢気さは見られなかった。 季節外れの風邪。それが彼女の身に生じている現象である。 「ただいまー!」 そこへ空気を読まずに大きく響く声。当然霊夢のものではない。 「れいむー! ごはん~!」 一頭身のシルエットを持つ何者かがゴムマリのようにぽいんぽいんと跳ねてきて、 霊夢の枕元で止まった。 その一頭身は霊夢に朝の挨拶をしようと声をかける。ただしその挨拶は「おはよう」ではなかった。 「ゆっくりしていってね!」 「言われなくてもしてるわよ……動こうとしても動けないっての……」 霊夢に似た髪型をして、霊夢に似たリボンをつけ、霊夢とは似ても似つかない顔つき。 愛嬌ある憎たらしさの中にどこかユーモラスさを感じさせる表情をした潰れた饅頭顔をした生首が、眉尻を下げて心配そうに霊夢の事を見つめていた。 その存在の名は『ゆっくり』。 幻想郷の少女達の頭部を中途半端に模した動く一頭身共だ。 このゆっくりは霊夢のゆっくりことゆっくりれいむ。 博麗神社で居候として共に暮らしている。 「れいむってばどうかしたの? ゆっくりしてる?」 「してないわよ。風邪なの……アンタにはわからないでしょうけど、人間はたまに風邪っていう病気になるの。病気ってのは体が動かせなくて大変になるのよ……」 「そんなんググッたからしってるよ! お饅頭だからってバカにしないでね!」 「いきなりギリギリな発言するんじゃないわよ」 博麗神社にパソコンがあったっていいじゃないのとゆっくりれいむは思う。 電力? 回線? なにそれ強いの? ①河童が作った②スキマパワー③ここは幻想「卿」。 どうしても理由が欲しいのならこの中から適当に選べばいいしとゆっくりれいむは語る。 「頭痛い…………何よりお腹空いた……ひもじぃよぉ…………」 「れいむってやつ元気ないね」 ゆっくりれいむは霊夢の弱弱しい姿を見ていて心が痛んだ。 これはいけない。霊夢にはゆっくりが不足している。 ゆっくり。それはゆとりと余裕を意味する言葉であり、そして何よりも優雅を表す。 日本舞踊の能に代表されるように、優雅なものはゆっくりしていて、ゆっくりしたものは優雅だ。 昼下がりにお茶を啜りながらのんびりゆっくりとする霊夢がゆっくりれいむは大好きだった。 日常でのゆっくりとしたリラックスと脱力こそが、弾幕ごっこの最中の精密移動を生じさせるのだ。 ゆっくり移動こそ弾幕ごっこにおいて最強なのだ。 大体弾幕ごっこで移動速度が速くていいことなんて殆ど無いよね。事故るし。 魔理沙とか趣味以外じゃ使えない性能だよ。マスパだって威力落ちてるじゃん。 可愛いから使ってるけどさ。とはゆっくりれいむの弁である。 そして弾幕ごっこ云々よりもゆっくりの持つ意味として重要なことがある。 ゆっくりしたものは可愛いのだ。 例えば同じ虫でも、のそのそとゆっくり動くカタツムリには愛嬌を感じるが、 高速で飛び回るゴキブリはどうだろうか。速度こそが絶対的な違いなのだ。 そう、ゆっくりしたものは可愛いのだ。 移動速度が遅く幻想郷一の精密移動特化型にして、 U・S・C(アルティメット・スピード遅い・クリーチャー)とも呼ばれ、 かけっこビリケツ常連で鈍足女王の名を欲しいままにするゆうかりん。 彼女が幻想郷大運動会での体操服にブルマという扇情的な衣装で、 その豊満な乳を揺らして白く滑らかな太ももを晒しだしながら 圧倒的な遅さでゴールテープを横切ったとき、 涙目で強がっている幽香を見てその場にいた者全てが悶えた。 つまり、ゆっくりしたものは可愛いのだ。 それに対して超高速で空を飛びまわる、 幻想郷最速の射命丸の全速力で飛び回っているときの顔を見たことがあるか? 無いのならそれがいい。 風圧とGでびろんびろんな物凄い顔になった彼女の顔面は想像を絶する。 彼女の同僚の天狗が写真に収めたものを元にした画像が一時期ブラクラとして出回り、 うっかり踏んでしまったグロ耐性の無い哀れな少女たちを恐怖の渦に陥れた。 結論、ゆっくりしたものは可愛いのだ。 ゆっくりれいむはゆっくりの重要さを改めて頭の中に駆け巡らせたあと、 霊夢をゆっくりさせるために呼吸を整え、大きく息を吸い込み、ばっと吐き出すように大声を張り上げた。 「ゆっくりしていってね!!!」 ゆっくりれいむの全身全霊にして渾身のゆっくりしていってね!!! ゆっくりれいむは「ゆっくりしていってね!!!」と霊夢にゆっくりを促すのが仕事の一つだ。 風邪に対しては絶対安静が一番の治療法。それすなわちゆっくり。 その一番の治療を促しているが故に、 自分が一番霊夢の役に立っているとゆっくりれいむは自負している。 「ゆっくりしていってね! ゆっくりゆったりのんびりしていってね!」 霊夢、動けないときこそゆっくりさ。 体が動けないってことは休息を必要としているということだよ。 だったらひたすら回復に努めてね。 そうしてゆっくりれいむは霊夢のためにひたすらゆっくりを促す。 それこそがゆっくりの使命であると疑わない。 「ゆっくりしていってねっ! ゆっくりしていってねっ! ゆっくりしろやグルァ!」 ゆっくりだ、ゆっくりするのだ。 ゆっくりしてゆっくりしてゆっくりして、ひたすらゆっくりすることだ。 「ん~……」 霊夢は首を回してそんなゆっくりと視線を合わせる。 「ゆっ!」 ゆっくりれいむは自信ありげに眉を吊り上げ、どや顔で霊夢の言葉を待つ。 「ゆっくり、何やってんの?」 「ゆっくりのサービスさ! 思う存分ゆっくりしていってね!」 「へぇ、そうなんだ……」 どうかしたの霊夢。ゆっくりの礼をいうにはまだ早いよ。 「ほめてもいいのよ!」 けれどどうしてもというのならば聞かないことも無い。 さぁ私を膝の上に乗せてナデナデする許可をやろう。 そのスベスベとした手で私の頭に触れるがいい。 柔らかく滑らかな太ももに乗せてもらえばいうことなしさ。 「れいむ~♪」 ゆっくりれいむは我慢できなくなり、霊夢に向かって頭を傾けて上目遣いで眼を輝かせる。 「かわいくってごめんねっ!」 「あのねぇ、ゆっくり……」 「ゆ~♪」 そわそわ、わくわく。 そんなゆっくりれいむの頭の上に霊夢は手のひらを当てて―― 【博麗式岩山両斬波!】 「うるせー!」 「ゆべしっ!」 ◆ 「ゆ~……」 凹の字にその頭をへこませたゆっくりれいむは落ち込んでいた。 霊夢があのような痛々しい姿を見せていたことで悲しい気持ちで一杯になる。 つまり霊夢はお腹をすかせていて、だからゆっくりする暇が無いんだね、 なるほど、空腹は生物にとって原初の本能に刷り込まれた危機だからねと ゆっくりれいむは納得する。 そもそも生物は皆空腹の状態では心にゆとりや余裕を持つことができない。 脳に行渡る糖質が不足することにより、脳細胞が働かず更にイライラする。 人間で言うところの脳の部分が餡子という破格の糖エネルギーを持った ゆっくりれいむからすれば、それは無縁の悩みである。 あぁ、人間はどうしてこんなに不便な生き物なんだろ。あれもこれも全て脳味噌のせいだ。 味噌なんて塩っ辛いものを頭に入れているからいけないんだ、 この世の生き物全ての頭の中身が甘味だったら戦争もなくなるのに。 もしもドラ○ンボールがあったら、世界中の生きとし生けるもの全ての頭蓋骨をくりぬいて 脳味噌の代わりに餡子でも詰めることを願おうとゆっくりれいむは思っていた。 霊夢の食事を作らなければならない。 だがしかしゆっくりれいむの体(頭)は丸っこい饅頭状をとっている。 この体(頭)は考えることには最も適しているが、肉体行動には不向きだ。 ゆっくりとは本来デスクワーク型の生き物なのである。 そう、ゆっくりにも仕事があるのだ。勤労を伴わないゆっくりとはただの怠惰である。 スロゥスである。 そんなものはゆっくりではないとゆっくりれいむは断言できる。 ゆっくりすることが至高という考え方をしてはいるものの、 最上のゆっくりとは労働の汗を流した後の休息にあると考えているゆっくりれいむ。 日中はパソコンに向かいpix○vやオギ○ッシュのグロ画像収集を行なう趣味と実益を兼ねた仕事をしている。 むしろ最近では霊夢にゆっくりを促す仕事よりもそちらの方が本業に近い。 近頃の一日の流れはこうだ。 朝起きたら神社の庭をぴょこぴょこ跳ね回って適度な運動をして、 霊夢の作った美味しい朝食を食べた後にグロ画像を収集。 昼食を食べたらすやすやとおひるねという名の仮眠を行い、 おやつというエネルギー補給の後グロ画像を収集。 夕食を食べて霊夢と一緒にお風呂に入った後は寝るまでグロ画像収集。 ゆっくりれいむはそのように毎日忙しくも充実した生活を送っている。 グロ画像はいいねぇ、リリンが生み出した文化の極みだよゆへへへへ。 そして昨日も寝る間を惜しんでグロ画像収集に明け暮れて体力的に厳しいが、 それでも愛する霊夢のためには慣れないガテン形の仕事でもやらなくてはならない。 全てを終えた後の霊夢とのゆっくりした時間を得るために。 「なにつくろっかな!」 ゆっくりれいむはぽんぽんぽんと台所中を跳ねまわり食材探しを行なう。 風邪をひいたときといえばお粥と相場が決まってるよね。 消化がよくて胃にもたれないし、梅干しがあれば言うことなしさ。 そんなことを考えながらもそもそと台所を漁るゆっくりれいむであった。 「うわ、なんもねー!」 何てこった、お米がないよ。お米だけじゃなくて、おかずすら全く無い。 残ってるのは調味料だけじゃん。 霊夢、あれほど食料の備蓄には注意するようにと言っていたのに。 これではあるもので何とかするしかないじゃないか。 「ゆ゛~……ゆ゛ぅ~……ゆゆゆ~……――」 ゆっくりれいむはその頭部に含まれる糖分をフルに使い、 現状を打破する方法を捻り出さんと唸り続ける。 こうなったら自分に何か調味料を加えて霊夢に差し出すべきか。思いつめるゆっくりれいむ。 ドレッシング饅頭にするべきか、マヨネーズ饅頭にするべきか、 それともタバスコ饅頭にするべきか。 意外とマッチするかもしれない。おいしかったら今度お店でもだそうかな? 「ゆ゛? なにさこれ?」 悩み転がるゆっくりれいむは戸棚の奥にぽつんと置かれている、白い粉が入った袋を見つけた。 これはなんだろうと思って袋をよじよじと口で開け、一舐めする ペロッ。 「これは――青酸カリ!」 あなた~、今日の料理は味噌汁かけご飯の青酸カリ和えよ。 わ~いパパの大好物だよグハァ! と、ミステリー作品で大人気の調味料である。 「――なわけないよね! 小麦粉だよ!」 小麦粉。穀物の一種であり、パンや麺類に調理して主食とすることが出来る食材だ。 これを見てゆっくりれいむはピンと閃いた。 「そだ、うどんならどっかな?」 風邪に効果ありとされるうどん。 昔から風邪気味の人にはうどんを食べさせるとよいといわれていたが、 実際うどんは食後の体温が高く保たれるという調査結果が出ている。 これはうどんの消化速度が極めて速いことによる。 その速さの秘密はうどんのコシの正体「グルテン」にある。 この「グルテン」、小麦粉を捏ねる事によりタンパク質が網目状の組織を形成して、 でんぷん質を包み込むように守っているので体内に入ると消化酵素が入り込みやすくなり 消化が早く進むのだ。 ググッたらそう書いてあった。 「そんなことよりおうどんたべたい!」 決まりだね。霊夢にはうどんをご馳走してあげよっと。 ゆっくりれいむは早速作業に取り掛かった。 ◆ ゆっくりれいむはうどん作りを開始する。 まずは器の中に入れた小麦粉に対して塩水をかけ、 その後口に咥えた棒を使ってゆっくりと器の中をかき混ぜるように小麦粉を練る。 練って練って練り続ける。 するとどうだろうか、うどん粉が生地状になってきたではないか。 これよりまな板の上にうどん生地を移して捏ね繰り回す段階に入る。 「ゆっ♪ ゆっ♪ ゆ~♪」 さぁここからはストレス解消タイムの始まりさ。 うどん生地という手も足も出ないサンドバックを一方的に痛める蹂躙劇に ゆっくりれいむはわくわくしてくる。 「ゆっくりのひ~♪ すっきりのひ~♪ まったりのひ~♪」 ぽむぽむぽむ。 ゆっくりの体は柔らかいものの、質量が球体状に集中しているためか、 中々うどんを踏む力は強いようだ。 「ゆっゆっゆ~♪ ゆゆゆっゆ~♪ ゆっくりしていってね~♪ ストレス解消楽しい♪」 ぽこぽこぽこ。 跳ねて踏んでうどんをこねているゆっくり。 殴るのって楽しい♪ 踏んづけるのって最高♪ 暴力っていいね♪ その快感に酔いしれたその顔はもうヘブン状態。 だがしかし、突如その身に起こった異変に気付く。 「……………………ゆ゛っ!?」 小麦粉がベトベトするではないか。 「ゆ゛ゆ゛っ!!?」 引っ付いて取れないではないか。 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛っ!!!?」 粉っぽいではないか。 そう、これは命が掛かった状況に追い込まれたうどん生地の最後の抵抗である。 手も足も出ないサンドバックなどという比喩は間違いであった。 奴は油断しきった愚か者を両断する爪を隠し持っていたのだ。 うどん生地。 その計り知れない底力をゆっくりは目の当たりにすることになる。 我も黙って食われる程その命安くは無い。食いたくば我を屈服させろと、 眼前のうどん生地は不敵な笑みで微笑んだ(ように見えた)。 ゆっくりれいむも対抗してニヤリと笑う。 自慢のグロ画像フォルダに新しい一枚が加わるのだから。 「敵・即・殺」と平和の使者ガンジーも言いました。偉人の言うことに間違いはない。 さぁ蹂躙タイムの始まりだ。ゾクゾクムラムラしてくるぜぇ。 「ゆっくり死んでいってね!」 うどん生地の撲殺画像ゲットだぜ! 「もうやだおうちかえるぅっ! れ゛い゛む゛~~!!」 うどん生地は超強かった。 そのベトベトネトネトは、ゆっくりれいむの心に一生物のトラウマを植えつけんとする。 ゆっくりれいむは戦略的撤退だよと、たまらず霊夢のところに一目散に帰っていく。 「れ゛い゛む゛っ! れ゛い゛む゛ぅぅ~~!!」 「ん~……どうしたのゆっくり!?」 寝ていたところを起こされて布団の中でもそもそ動いてゆっくりれいむの方に首を向ける霊夢。 「うどんつえぇ! うどんってやつハンパない!」 霊夢はゆっくりの言ってる事が通じないのはいつもの事だと思いつつも眉を顰める。 「うるさいわね~……頭痛いんだからもう少し小さな声で喋りなさいよ。――っていうか粉だらけじゃないの。アンタさっさと体洗って後で床に雑巾掛けなさいよね」 「う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん!!」 「いやだから黙りなさいって……あ~……だるくて引っぱたく気にもなれないわ…………」 先ほどの大技による消耗が体に響いている霊夢の前で大泣きするゆっくりれいむ。 チクショウあの白い悪魔めっ。あの色白野郎。ちょっと美白だからって調子こいてんじゃねぇぞ。 大体お前の肌すっげぇ粉っぽいんだよ。 「まったくもう――」 「ゆ゛っ!?」 そんなことを叫ぶゆっくりれいむの頭の上に霊夢の手のひらがぽんと置かれる。 途端、先ほどの必殺技の悪夢が蘇ったゆっくりれいむがビクッと反応する。 けれどもまるで攻撃の気配が無く、疑問に思うゆっくりれいむに霊夢がぼそりと呟いた。 「しょうがないわね……もうちょっと寝たらご飯作ってあげるから大人しく待ってなさいよ。それまで庭の草とか適当に毟って食べてていいから」 「ゆ? ゆ?」 「お腹すいてるんでしょ? 今日は私朝から寝込んでたから、アンタ何も食べてないじゃない。だから少しの間ゆっくり待ってなさい」 けほんけほんと、霊夢は咳をしつつ布団を被る。 「あ~……そういや米切らしてるんだっけ? 何作ろっかなぁ……タンポポのマヨネーズ和えとかかなぁ……胃にもたれそうだけど……」 そう言うと霊夢は再び寝込んでしまった。 後に残されたゆっくりれいむは、泣き叫んでいたのもすっかり忘れて黙っていた。 「………………」 ゆっくりれいむは後悔していた。弱っている霊夢を頼ろうとしていたことに後悔していた。 辛いことは全部霊夢任せにしようとした事に後悔していた。 元々自分が霊夢をゆっくりさせるために食べ物を作ろうとした。そのことを忘れていたのだ。 それが余りにも情けなかった。 このままではゆっくりの伝道師ことゆっくりしていってねの名が廃る。 霊夢にうどんを作ってあげたい。霊夢に楽をさせてあげたい。霊夢をゆっくりさせてあげたい。 だったらどうすればいいの? うどんに勝つことさ。 勝利。 ゆっくりれいむはそれのみを欲した。その体内に流れる餡子が熱く煮えたぎるのを感じる。 てめぇらの血は何味だ? 「おしるこさ!」 甘えを捨てろ。これから先は覚悟を決めるんだ。 「れいむ! ごはん作るからゆっくりまっててね!」 かくして饅頭とうどん生地の戦いは第2ラウンドの幕を開けた。 うどん生地との再戦は熾烈を極めた。 熱戦、苦戦、激闘、死闘。どれもその光景をあらわす言葉として生ぬるく、 何よりそんな綺麗なものではない。 四肢を捥いででも立ち向うゆっくりれいむ。四肢が弾け飛んででも迎え撃つうどん生地。 頭だけになっても向かっていくゆっくりれいむ。 原形を留めて無くても叩かれるたびに押し返すうどん生地。 凄惨極まりない光景ではあるが、けれども意味のある戦いというものはこういうものだ。 我こそ正義とお題目を掲げながら同属同士で無益な虐殺を繰り広げる戦争とは違い、 食うか食われるかの原始の戦いには綺麗ごとなんて挟む余地がないのである。 善も、悪も、主義も、差別も、信念も、憎悪も、 そんなとってつけたような意義を求める必要は無い。 食うから殺す。それで十分だ。 「ゆぅ……ゆぅ…………ゆぅぅぅぅ!」 ゆっくりれいむは吼えた。 心臓が悲鳴を上げ、全身の筋肉がピクリとも動かなくなるほど消耗し、 骨がミシミシと限界の音を聞かせ、 頭の中は酸欠で朦朧としている。 もう動けない。動きたくない。そんな心の声が聞こえてくる。 だがしかし、そんな心の弱音に負けたときこそがゆっくりれいむの最期だ。 生き物は痛みに屈して諦めるのではない。苦しさに屈して諦めるのだ。 サバンナで死闘を繰り広げるライオンとシマウマの命を賭けた競争。 捕まえねば餓えて死ぬライオン。捕まったら食べられて死ぬシマウマ。 苦しさに負けて足を止めた方が生存競争から脱落する。 「ゆゆゆゆゆ~!」 ドスッドスッドスッ。 もうやめたいよ。負けてもいいじゃん。楽になりたいよ。ゆっくりしたいよ。 ガスッガスッガスッ。 一言弱音が聞こえたら一撃をぶち込み、更に一言聞こえたら一撃、十聞こえたら十撃、百聞こえたら百撃。 敗北を肯定するような弱音を振り払うかのように、更に攻撃を重ねるゆっくりれいむ。 「ゆ、ゆっくりっ……ゆっ! ゆッ! ゆ~……ゆ~~~~!!」 ポスン、ポスン、ポスン。 いくら弱肉強食の世界には恨みっこなしとはいえ、それはあくまでも建前だ。 生きている以上生存競争に負けて食べられることに恐怖と無念を感じないものは殆どいない。 死ぬのは誰だって怖いのだ。痛いのは誰だって嫌なのだ。苦しい思いはしたくないのだ。 しかしそれでも、ゆっくりれいむは戦うことをやめなかった。 例えその身がゆっくりとスローモーションになっても、 吹けば倒れるほどフラフラの状態になっても、 戦うことをやめなかった。 「ゆっ……ゆ…………っ………………」 ペチ……ペチ……。 技術も戦闘力も、そんなものはこの泥沼の戦いでは無意味だった。 最期に勝者と敗者を分ける境界となるのはその意志の強さ、気持ちの強さである。 誰かのために戦う。それはとても素晴らしい考え方だ。 けれども何かを背負っている者が必ずしも勝てるわけではない。現実は非常なのだ。 だが、ゆっくりれいむは自分は絶対に勝てると思っていた。 そんな甘い考えをするのもしょうがない。ゆっくりれいむの頭の中は甘いもので一杯だ。 けれども、大切な思い出も一杯に詰まっている。だからこそ頑張れる。 限界を迎えつつあるゆっくりれいむの脳裏に浮かんできたのは霊夢の顔であった。 『変な妖怪がいるって聞いたから来てみれば……何が『わきをみせびらかしているみこはにせものだ!』よ、この饅頭顔!』 『何でついてくるのよ! 私はアンタの親でも何でもないんだからね!』 『…………他に行くとこないんでしょ? わかったわよ。別にいてもいいわよ。――ちょっ、こら泣くな! 引っ付くな!』 『よし、汚れがとれたわよ。アンタ顔はともかく髪の毛は綺麗ね。何で出来てるのよ』 『ゆっくりれいむ~……長いしゆっくりでいいや』 『ご飯粒付いてるじゃないの。とってあげるからこっちに来なさい』 『このおバカ! 今日はごはん抜きだからね! 文句があるならかかってきなさ――うわ、思ったより速い!』 『全く、心配させるんじゃないわよ。心配してないけどさ。――ほら、うちに帰るからついてきなさい』 「ゆ~!!!!」 ドスン。 「すりすりってきもちいいね~……」 戦いを終えたゆっくりれいむとうどん生地。今はまな板の上でその身を擦り寄せあっている。 ゆっくりれいむの気持ちも不思議なもので、 つい先ほどまではうどん生地を叩き潰すことのみを考えていたのに、今はそのようなことはない。 先ほどまでの殺伐とした空気はどこかへ飛んでゆき、穏やかな時間がゆっくりと過ぎている。 「ゆっくりしてるね~……」 勝負はもう決した。うどん生地はこの上ないほど捏ねられたのだ。 あとはうどん生地を寝かせて、麺状に切った後に器に盛るだけである。 うどん生地はもはや小麦粉には戻れない。 パンになることも、揚げ物になることも、饅頭になることも出来ない。 その未来はすでに決した。ゆっくりれいむはうどん生地の先を奪ったのだ。 だがしかし、うどん生地には何も不満は無い。 不意打ちでまだ余力がある状態で死ぬときに残るのは後悔。 けれど真正面から撃ち抜かれ、残った力がまるで無い状態で残るのは賞賛。 覚悟を決めた者同士が互いに全力を尽くした末の、 これまでの生涯全てをぶつけ合った先に得る境地は一種の充実と安堵である。 「もっとゆっくりしていってほしいね…………」 このままずっと時がゆっくり流れていけばいいのに。 形が違えば友達としてもっとゆっくり出来たかもしれないのに。 ゆっくりれいむはうどん生地にほっぺたを当てたままそう思った。 饅頭とうどん生地、同じ小麦粉で作られた者同士、きっといい友達になれたであろう。 しかし全ての力を使い果たした者に対しては本来回復する間も無く止めを刺すのが礼儀であり、 下手に生き残る希望を与えてしまうことは敗者への侮辱に他ならない。 故にその者が最も精神的に充実した時に、死への恐怖が薄れている時に仕留める必要がある。 よってうどん生地が寝かされて十分に熟成されたら、それが別れのときである。 割り切れないゆっくりれいむを諭すかのように、うどん生地の優しい声が聞こえたような気がした。 (ありがとう、とても愉しい殺し合いだった……) (うどん生地として悔いの残らない生涯だったよ……) (さらばだ、我が友よ) (お前の友人共々、残さず食べてくれよ) 「………………………ゆっ」 ゆっくりのほっぺたを何かが伝った。 けれども自分達は生きなければならない。笑って生きていかなければ倒した相手に申し訳ないのだから。 捕食とは対象を血肉にする行為。相手を取り込むことで共に生きてゆくことが出来る。 とはいえ、うどん生地との思い出を残せるものは他に何もない。 だからこそ、一つぐらいは形として残るものが欲しい。 よってゆっくりれいむは写真を一枚、一生の思い出として撮ることにした。 パシャッ。 【うどん生地撲殺記念】 この一枚は【ナメクジが塩で溶ける動画】と並びゆっくりれいむのグロ画像フォルダに大事に保管されることとなったという。 ◆ 「さぁ、おたべなさい!」 霊夢がもうそろそろ何か食事を取ろうと思い、 そのだるい体を布団の中からもそりと起き上がらせた瞬間、 頭の上にうどんを乗せた器を持ってきたゆっくりれいむがどや顔で部屋に入ってきた。 その言葉の意味がわからず一瞬固まった霊夢であったが、 すぐさまゆっくりれいむが自分に食事を持ってきたのだと理解した。 となると次に誰が作ったかという疑問が沸くが、 生憎博麗神社には霊夢とゆっくりれいむしかいない。 すると導き出される答えはひとつだった。 「アンタが作ったの!? このうどんを!?」 「いぇす、アイマム!」 「あぁ、さっきから何かしてると思ったらそういうことだったの。アンタ中々器用ね」 ゆっくりれいむは自らの霊夢である霊夢の胸にぴょーんと飛び掛かりたい欲求を抑えて、 うどんを乗せたお盆を頭の上に乗せてそろり、そろりと霊夢の目の前に持ってくる。 「さぁ、おたべなさい!!」 大事なことなので二回言ったようだ。ゆっくりれいむは自信満々にうどんを差し出す。 ゆっくりれいむの顔をよく見れば、小麦粉がこびり付いている。 水で洗ったのだろうが、しっかりと取れていなかったようだ。 霊夢はそれを見てうどんがどのような過程で作られたか何となくだが理解できた。 全く、慣れないことしてるんじゃないわよと軽く悪態を付くが、 何はともあれ空腹でフラフラの霊夢には目の前のうどんがとても魅力的に思えた。 だったらすることは一つである。霊夢は箸を持って両手を合わせる。 「じゃあ、その、いただきます」 「ゆっくりたべていってね!」 「麺がのびちゃうじゃないの」 そんなやりとりを踏まえつつも霊夢は箸を持ち、その麺をじっと見る。面の太さにばらつきがある。 だがしかし大事なのは見た目よりも味だ。 味はどうだろうと、若干の不安を覚えながらも麺にふぅふぅと息を吹きつけ、 ちゅるんとすする。 もぐもぐ、むにむに、こくん。 「あ……意外にも……」 美味しい。素直にそう思った。 ちょっとツユの味が濃く量が少ないが、麺がかなりの絶品だった。 生地がよく捏ねられているらしく、 噛むと口内で麺が踊るほどの弾力とシコシコとした舌触りが食欲をそそる。 霊夢は思わず次も一口うどんを啜る。 「ほめてもいいのよ!」 「調子に乗るな」 とはいうものの、その箸と口の動きは止まらない。 ちゅるん、もぐもぐ、むにむに、ごくん。ちゅるん、もぐもぐ、むにむに、ごくん。 まさかこれほどまでとは思わなかった。 風邪でだるい体でも無理なく食べることが出来て、優しく胃を満たすその味。 普段風邪をひいたときは誰かが見舞いに来てくれるまで神社の中で一人寂しく待っているか、 待ちきれないときは熱っぽい体を引きずって無理矢理粥を作る霊夢。 家の中の誰かが作ってくれた料理を食べることなんて、久しく経験していない。 強大な力を持つとはいえ、まだあどけなさを残した少女であるにも関わらず、だ。 「………………」 「れいむどしたの?」 「なっ、何でもないわよ」 場に流れた妙な空気を振り払うかのように更に一口うどんをすする。 そんな折、一言ぐらいはゆっくりれいむに礼を言っておくべきかなと思った霊夢。 あんまり褒めると調子に乗るけど、 今日くらいはいいかなと思いゆっくりれいむの方を横目でチラリと見ると、 涎を滝のようにたらしながら霊夢の方をじっと見つめていた。 霊夢は「そりゃそうよね。自分が一生懸命作ったうどんは普通食べたくなるわよね」と思わず苦笑する。 「食べる?」 「たべるっ♪」 即答かよと思いつつも麺を箸で一掴みして、ゆっくりの上に垂らす。 大口を開けて待っているゆっくりのところに、麺を放り込む。 「あち! あっち!」 「あ、ごめん。冷ますの忘れてた」 「人でなしっ!」 ゆっくりれいむがごろごろと転がりながら悶えていた。 霊夢がその光景を見てごめんごめんと謝る。 「ゆ~……」 口をすぼめて拗ねるゆっくりに対し、霊夢が手で招く動作をする。 「ゆっくり、ちょっとこっち来なさい」 「ゆゆ?」 霊夢がきょとんとした顔をしながら近づいてきたゆっくりをひょいと持ち上げ、 そのまま膝の上に乗せる。 続けてゆっくりの分のうどんに箸をつけ、うどんを持ち上げる。 霊夢は淡々とした様子でふぅふぅとうどんを冷ます。 「こうすればいいでしょ。ほらゆっくり、口を開けなさい」 「今日のれいむはやさしいね!」 「今日だけよ」 あ~んと、霊夢が口を開けてゆっくりに動作を真似させる。 ゆっくりは人間の幼児が母親の真似をするかのように口を開け、 そこ目掛けて霊夢が冷ましたうどんをするりと放り込む。 「ぱねぇ! めっちゃぱねぇ!」 「うるさい。黙って食べなさい」 涙目になりながらほんのりと至福の表情を浮かべるゆっくり。 霊夢はいいからさっさと食べろと、次の一口の分のうどんを取り出す。 「む~しゃ、む~しゃ、しあわせ~♪ すっげぇしあわせ~♪」 「うるさいっての」 ぱちんと霊夢がゆっくりの額を叩くが、そこに厳しさは見られない。 霊夢は自らうどんを啜り、次いでゆっくりれいむにうどんを啜らせ、それを交互に繰り返す。 はぐはぐと嬉しそうに食べるゆっくりれいむと、時折感嘆のため息を漏らす霊夢。 お椀の中のうどんはあっという間に減っていった。 「それにしてもアンタもやるわね。こんないいうどんを作れるなんて。ねぇ、どうやって作ったの? ――って何泣いてんのよ!? 私何か変なこと言った!?」 そんなやりとりからしばらく後、霊夢もゆっくりも食べ終えた。 胃が満たされることによる幸福感が彼女達にやってきた。 「ありがたう!」 「はいはい、お粗末さまでした」 何故か涙目になったゆっくりと、その頭にぽんと手を置く霊夢。 霊夢はゆっくりの口元を布巾で拭き取った。 「それとゆっくり、ご馳走様」 「ゆっ♪」 喜んでもらえて何よりだった。この笑顔が見れてよかったとゆっくりれいむは思う。 今だったらゆっくりしてもらえるんだろうな。ちょっとぐらい甘えてもいいよね。 ゆっくりれいむは霊夢に更に擦り寄った。 「ゆっくりしていってね♪」 「こらっ、離れなさいよ暑苦しい」 「ゆっ♪ ゆっ♪」とじゃれるゆっくりれいむ。 口を尖らせながら不満そうな顔をしているのに、されるがままにじゃれられている霊夢。 近頃の博麗神社で極たまに見られる光景であった。 「お邪魔するぜ霊夢~――ってあれ? 霊夢風邪引いたの?」 「やっほ~霊夢遊びに来たわ~」 そんな折、外から来訪者が次々とやってくる。霊夢の友人達である。 遅い朝飯とも早い昼食とも言える食事を終えた時間帯だ。誰かが来ても不思議ではない。 友人達は布団の中にいる霊夢を見て一瞬心配そうな顔をするが、 ゆっくりれいむを膝の上に乗せている霊夢の姿を見て指を刺して笑う。 「うっわ~霊夢ってそういうことするのホント似合わないな」 「今日だけよ! たまたまよ!」 「いくら餓えてるからってゆっくりを食べちゃ駄目よ~。共食いは体に悪いのよ~」 「誰が食べるか! お腹壊すっての!」 「はいはい。ふふふ」 「笑うなぁ~」 大声を出してけほけほと咽る霊夢と、からかった際の反応が楽しくて笑う友人達。 病人の傍で賑やかなものであった。 霊夢の周りには色々な者が集まる。 皆でワイワイと宴会をするのは楽しい。彼女達がたまに連れてくるゆっくり達と遊ぶのは楽しい。 大好きな霊夢とその仲間達と一緒に過ごせて、ゆっくりれいむは幸せだった。 ずっとこうしていたいと思う。だけどそれは適わない。 いつか自分にも寿命が来るだろう。饅頭だから賞味期限もあるだろうし。 仮に自分がこのまま妖怪として寿命を迎えずに生き続けても、 いつかは霊夢の方が死ぬ。人間にも賞味期限があるし。 だったら時が過ぎ去るのもゆっくりしていって欲しい。そうゆっくりれいむは考える。 来るものは拒まず去るものは追わず。だったら一緒にいる間ぐらい皆ゆっくりしていってね。 「ゆっくりしていってね!!!」 なんだかんだいって最後いい話で終わったな このれいむは可愛すぎるし健気でいい子だ 霊夢もいいなぁ、姉妹みたい -- 名無しさん (2011-02-20 16 52 09) れいむのうどんこねの様子可愛いなあ -- 名無しさん (2012-02-25 17 16 55) 名前 コメント
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「儂を呼んだか、主?」 「呼んだ呼んだ―――手、貸してくれるか?」 「マ、マイロード、その、私は?」 尻尾をたれ下げて、上目遣い。 「……碧鈴に、まだ戦闘はさせられん」 自制し、なんとか言い返す。 「なら、儂ならよいのか?」 からかうように、ディスが呟く。 「そ、そーいうわけじゃないじゃないが、うん」 大事に思ってる、だから…… 「そう、ですか」 尻尾が下がったままで、下の階へ。 「ごめんな、碧鈴」 ぽつ、と呟いた……こんな言葉じゃ届かない、って分かってるけど――――今は分かってる、気分を切り替え。 「―――ディス、いけるか?」 「儂は、常在戦場、じゃぞ?」 「いい返事だ、乱入すんぞ」 「―――うむ」 飛び込むは、電子の戦場。 0と1で構成される、荒野、戦場。 「へっへっへ、片付いちまったなあ、雑魚の相手もここまでかぁ!?」 癇に障るリアルサイドの声。 「当然でゴザルよ、そろそろ終りにするでござる」 相手の、小さな子供が操るマオチャオは返事も出来ずに呻いている。 ログアウト敗北の無い程度に、痛めつけている、何せ子供で初心者だ、ギブアップすら威圧されて出来ない。 「―――止めといこうぜぇ!?」 ストラーフが、その大きな異形の腕を振り下ろす刹那に。 ――――斬。 その場に居た誰もが言葉を失った。 いきなり、ストラーフの腕が、斬り飛ばされた。 相手は見えず……気づけばマオチャオの姿も無い。 「ど、どこにいったでゴザル?」 「てめえ、俺の神姫にっ!」 想定外の事態で慌てる2体の神姫、どーやら、感情を消されてる、というか……考えなくさせられている。 「ふん、この程度の雑魚とはな」 不敵に、砂塵舞う荒野に―――白い悪魔と白い刃。 ずいぶんと、遠くから攻撃したらしいが、相手のストラーフに出来ているのは切断面、巨大なブレードで切り刻んだような 綺麗な切断、おそらく高速で接近し切り刻んで離れたのだろう。 「なんだと、やっちまえっ!」 「やるでゴザルよっ!」 ストラーフが大地を蹴り、アーンヴァルが空中から狙い撃ち、上等パターンだ、勝てる、そう思い込んだ。 「ふん」 巨大な刀を、投擲。 「使うまでも無いわ、来るがよい」 大地を蹴る―――最初からフルスピード。 ゼロから無限へ、一瞬だ。 その一瞬で空中へ跳躍。 空を舞うアーンヴァルを、蹴り飛ばす。 落下地点にストラーフ。 狙い定めて叩き落した。 「ふん、他愛も無い」 「……ん、だとぉぉぉ!?」 いらついたように、敵のストラーフが、短剣を投擲。 「死ぬでゴザル、逝って良しでゴザルっ!!」 アーンヴァルもウィングを捨て、拳銃を乱射してくる。 白いストラーフが落ちる地点を狙って撃った、当たる、必中の一撃。 そのはずだった、勝った、いつものように、あざ笑ってやろうと思った。 ――――にやり。 「―――きめちまえ、ディス」 「了解、主」 笑ったと思うと、落ちる、と思った寸前に、何かが、滑り込む。 それは、投げたはずの刀。 「ようやく温まったか、烈龍刀よ」 白い刃には、しっかりとした、龍の紋。 その上に、足を乗せ。 「では―――逝くが良い」 超高速 そして 空中へ舞い上がって 「巨刃大津波(ビッグブレードウェーブ)」 すがすがしい宣言と共に、2体まとめて貫き、電子のグリットに返す。 「……わあ」 今まで見ていた。 あの白い悪魔の戦いを、一階のモニターから 白い刃を持った同類の少女。 彼女は2体一でも楽勝に勝利し。 羨ましい、強いわけでも、ましてや、積極的にもなれない あの人のそばに、私はいて良いのだろうか。 「なんや、置いてけぼりか?」 「あ、えと、凛奈、さん?」 「冷たいねな、はーちゃん、おいてけぼりにして」 「……えと、私が逃げたんです、その」 「嫉妬か、かーいいなあ、碧鈴ちゃん」 「……」 そう、この感情は嫉妬。 強く、しなやかで不敵で、きっと彼女ならマイロードを満足させてあげられる。 でも、私は、何も……出来ていないのだ。 「アレや、積極的にいかんと、思いはかなわんでー」 「あう、でもその私は、何にも……」 「そーいうの見る子じゃないやろ、はーちゃんは」 知っている、分かっている。 自分の身を案じてくれた事は。 絶対に勝たなきゃいけない状況な事も。 「知ってますよそんなの……」 ひざを抱えて、私は思考の渦に沈む事しか、出来なかった。 徒然続く、そんな話。 第七節 彼女の陰鬱。 節終 続く 戻る
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自分は何のためにここにいるのだろう。 自分は誰かの役にたてるのだろうか? 自分は居なくてもいいのではないか? それが、私、碧鈴の、現在の迷いである。 低音、高音。 聞こえる音は、全て雑音。 絶叫じみた音楽からはなれ。 たんすの上で、そらを見上げる。 「はぁ……」 出るのは何度目かしらないため息。 考えるのは、自己の存在。 思うのは、大切な「あの人」 後天性オーバーロード。 耳の聴覚センサーの異常発達。 制御不能の雑音拾い。 それが、私。 「どーして、こんな私を……」 尻尾を垂れて、ぶんぶんと振っている。 「……参ったなあ」 頭を掻く俺。 「どーした、金欠かえ?」 見つめるは白い悪魔、ディス。 「あーそーですよ、誰かさんが《魔剣》なんて買うから あのときのバイト代と俺の貯金の大半を吹っ飛ばしてくれましたよね貴女っ!!」 ちょっと苛立って、鳳凰杯のことを回想。 このディスは、いつの間にか俺の財布からカード抜き取って買い物してくれました、自分の欲しいものをっ!! まあ、碧鈴に《ALChemist》の、フィオラを買ってやれたので良かったのだが。 「天剣絶刀の事は、儂が体で払ってやろうと言っ「良いから黙れ色欲神姫っ!!」 挑発するような上目遣い、で妖艶な動きをするディスに、取りあえず突っ込みを入れておく、言って置かないと、本気でやりかねん。 「……まあ、言わずとも判るが」 なら、最初からネタを混ぜないで頂きたい。 「キャラ付けの問題じゃからな、しかたない」 「メタねたは嫌われるからやめなさい」 「それはそれとして」 「スルーか貴様」 一連のボケ突込みを終え。 「碧鈴の事であろ?」 「まーな、言わなくても判るとは思うが」 と言うかアレで判らないのは本当に馬鹿かアレな人だと思う。 「儂にいい考えがある」 どこぞの司令官風味に告げるディス。 「……大丈夫か?」 「なあに、任せるが良い」 にやり、と笑う、ディス……いや、本当に大丈夫か? 「……あれ?」 ふと気づく、周囲の生活している《音》が聞こえない。 テレビの音も、PCのファンの音も、人の歩く足音も……足音も? 「……!?」タンスから降りる、周囲を確認する。 テレビも消えている、出て行った形跡があるなら、わかる筈…… 《耳》を澄ます、聞こえない……ここには居ない。 置いて行かれた?……まさか捨てられる? 嫌 嫌嫌 嫌嫌嫌 嫌嫌嫌嫌 嫌嫌嫌嫌嫌 嫌嫌嫌嫌嫌嫌ぁぁっ!? やっと大切に思える誰かが居て、それを、離したくないっ!! 慌てた状態で、ふと視線を机に向ける。 一枚の紙がひらり、と眼前に。 『チチキトク スグカエレ』 「……」 無言で破く、とその中に丸めた手紙が入っている。 えーとなになに 『お前のオーナーは預かった』 『助けて欲しければ、21時にエルゴまで来るが良い』 『なお、こなかった場合、マグロ漁船に載せるのであしからず』 『D・S』 「21時……」現在の時計確認、19時半、飛行ユニットを用いて移動するのに20分程度。 「……よし」現在のバッテリー……そんなに動いてないので一メモリ半程度の減り……ならば ぎりぎりの時間に設定して充電しなおす、何があるか判らない。 暗い店内、一人の大きな影。 そしていくつかの小さな影。 「なぁ、これで成功すんのか?」 大柄な背部ユニットを背負った影。 「へっへー、僕らに任せておけば、一件落着全部解決間違いなし、だねっ」 髪を二つに分けた、着物を着た影。 「……呼ばれてみれば悪役、ねえ?」 気だるげな、それで居て余裕が感じられる、片目に赤い眼が光る影。 「エレガントとは言いかねますが……悪らしい仕事ではあります」 手には槍を、背中にはマントを揺らす、いや揺らしてるのはぷちだけど。 「あー、何かすんません……大事に」 「どーんと構えておれ、荒療治だが……これなら確実じゃよ」 不敵に、しろいあくまが微笑んだ。 徒然続く、そんな話。 第八節 彼女が隣で歩くとき 節終 続く 戻る
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天気。快晴。 気温。平年並み。 予定。休日。 コレで出かけない道理はない!……いや、ないよ? ……休日はだらだらしたいんだけどそこはまー、ほら、碧鈴のため? 「……マイロード、独り言は寂しいですよ?」 哀れんだ眼で心配そうな碧鈴。 「あ、声に出てた?」 苦笑、俺ってやつは。 「……私がいるのに独り言なんて」 ぽそぽそ、と呟く碧鈴 「悪い、碧鈴」 苦笑しながら頭をなでる。 「……ポテチ買ってくれたら許します」 小さな声で、そう呟く……尻尾は横に豪快に振られ。 「はいはい、りょーかい」 碧鈴を頭に載せ、近所を散歩する。 町はバレンタインだかヴァレンティヌスだかの浮かれモード。 すっかり縁などございません、大体チョコ会社の陰謀だっつーの くそ、笑うな、そこのカップル、今俺を笑ったなぁぁぁー と、やさぐれも止めておこう、空しい…… 現状確認。 日差しは暖かく、風は冷たい、まあ、気合で何とか。 「んなわけねえ、寒い」 ぶるぶると体を震わせて、苦笑。 「……マイロード、どこかで、その、お茶、でも?」 おずおず、と気を使うように碧鈴が呟く。 「ナンパかい、付き合いましょうお嬢様」 小さな手を取って、キス。 「……」 沈黙、風の音、車のエンジン音、周囲の雑踏の声。 「ば、ばっかばっか馬鹿マイロードっ!」 大声、怒号。 「っていきなり、うを、頭叩くな!?」 ぺちぺちと頭を殴打する碧鈴。 「うっさいです馬鹿マイロードっ、唐突に何してるんですかっ!?」 ぺちぺちぺちぺちぺちぺち、と頭を叩く。 「いだ、いだだだだだだ!?」 「いっつも宣言なしでどきどきさせてっ!?」 「この、このボケナスかいしょなし変態っ、知ってるんですからねっ、マイロードが神姫のえっちな本読んではぁはぁしてたのっ!?」 「だーっ、公衆の面前で碧鈴ちょっと待てっ!?」 泡を食って口をふさごうとするが頭の上にいる碧鈴は巧みに回避し。 そんなこと近所でばらすなー、と慌てて弁解しようとするものの。 「……知りませんよ、マイロードが悪いんです」 ぷい、っと拗ねた様にして 「あーえーと、碧鈴、悪かった、頼むから、機嫌直せって」 苦笑して、碧鈴を連れ……エルゴへ。 「あー、ここもなのな」 いちゃつく、多数の神姫とオーナー達。 「……(じー」 羨ましそうに見る碧鈴。 「碧鈴は、あーいうこと、したい?」 からかう様に、軽く問う 「……はい」 いや、そこで堂々と答えるなそこっ! 「大変だな早人~」 にやにやとする《先輩》 「大変ですねぇ」 にやにやと見るジェニーさん。 「えーっと、神姫用チョコ一つと、自分用の一つ」 「はい毎度あり~」 ハメられた気がしながら、代金を払い。 椅子に腰掛け、二人でチョコを食べながら……碧鈴が呟く 「……私は、マイロードに何も、して上げられません」 「何を唐突に言うか」 「……耳のせいで、バトルや、その、日常生活でもお世話になってばっかりで」 「気にするなって言ったろ?」 「……役に立たなきゃ……私に意義なんてないのに……神姫は、役に立つ道具なのに、私が」 血を吐く叫び、碧鈴、気にしてたんだな、いろいろと……でもだけど、言ってやらなきゃいけない言葉がある。 道具として、自分が役に立たない、オーバーロードであった、自分を恨む声を碧鈴はいつも感じて……神姫として役に立たないと思っている彼女に、伝えることがある。 「でも、いつも、迷惑、かけてっ、マイロードはどう思ってるんだろうとか迷惑かけてないかなあとか言ってくれないから私は」 「こんな耳、があっても心の声までは聞こえないんですよ、マイロードっ!?」 「阿呆」 デコピン、一撃。 「阿呆とはなんですかっ!?」 「んなこと気にしてたのかよ、お前は」 「んなことって私はっ?!」 「……ずっと、悩んで、きたんですから」 はぁ、とため息。 「なあ碧鈴、お前は、あれだ、神姫は道具と思ってるのか?」 「……人のために生まれたモノ、なんですから、そーだと思ってます」 「碧鈴、神姫つーのは意志あるものだろ?」 「……はい、えと、でもそれも」 「十分にそれだけで役に立ってるよ」 「……え?」 「夜、寂しく家に帰らなくてすむし」 切なる思いを 「話し相手がいるってだけで、十分だし」 大事なことを 「傍に誰かが居てくれる、それだけで、俺は十分」 大切な、貴女に、伝えよう。 「だから、居なくなったりしないでくれれば、俺は上等」 今日はきっと、それも許される日なのだから。 「……あう……はい、わかりました」 そこで照れると俺も照れるんだが、まあいい 「で、どーしてあんなこと言い出したん、何か気になることでもあったん?」 「……違いますっ、その、えと……バレンタインにチョコ一つ上げられない、のは、その」 もじもじ、と呟く碧鈴――――いや、可愛いんだけどな。 「ま、あれだ……チョコを上げるのは、女の子だけじゃないってことさね」 「……ありがとうございます、マイロード」 徒然続く、そんな話。 第四節 甘いチョコレートと思い。 節終 その日、家に帰ると、小さな小包が届いた。 それが、小さな波乱の幕開けとなるのも知らずに。 続く 戻る
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立夫「俺、明日用事が・・・」 ウィルソン「そんな見え透いた嘘つくなよ」 どんなに明白な事実を並べ立ててもこの一言ですべてが嘘にされてしまうという、恐ろしい名言。 基本的に回避手段は無く、また人数が増えれば増えるほどその勢いは度を増す。ただし従う必要はない。
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皆さんそんなに興奮しないでくださいwww 名前 コメント