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そんなの、聞いてないぞ ◆.pKwLKR4oQ この殺し合いが始まるに際して参加者一同に等しく与えられたデイパック。 その外見は何の変哲もない肩から提げる形のオーソドックスで小さめのリュックサック型。 だが外見が等しいからと言って中身まで等しいわけではない。 参加者に等しく与えられたのは、参加者名簿、地図、コンパス、水と食料、筆記用具、照明器具(ランタン)の6点。 これに加えて1~3個のアイテムが支給されている。 その内訳はまさに千差万別。 殺し合いを有利に進められる兵器から何の役に立たないハズレまで様々な種類のアイテムが参加者を一喜一憂させてきた。 ただ参加者の中には中身を確認する間もなく命を失う者もいたので、そうやって中身を確認するまで生き延びていた者達は運が良いのかもしれない。 まあ中身を確認しても死ぬ時はあっさり死ぬのがこの殺し合い。 「はぁ、ロリっ娘ではないのか」 一般的な作業服の上に赤マントを羽織ったジェレミアの目の前にもその一例が転がっている。 傘のような髪型が特徴的な男の亡骸の生前の名は金蔵銭太郎。 地虫十兵衛と阿魔野邪鬼の話を盗み聞きしていたところを勘付かれて、脇差で胸を一突きされて死亡したのだ。 金蔵なりに十分注意していたとはいえ、甲賀忍者の中でもかなりの手練である二人の話を盗み聞きしたのが運の尽きと言えよう。 余談だが、この時金蔵と同行していた一人の参加者がいた。 その名はハイジ。 だがハイジは金蔵の死を目の当たりにした恐怖ですぐさまその場から逃げ去った。 そしてその先で親友のクララの無残な死に様を目撃して吸血鬼化してしまう。 この時クララが直前に乗っていた機体がランスロット、後にハイジを自爆に巻き込んで死なせた機体がガウェイン。 どちらもジェレミアのよく知るナイトメアという機体であったのは奇妙な縁である。 閑話休題。 「ほう、案外使えそうだな」 ジェレミアにとって幸いだったのは忍者二人が金蔵のデイパックに見向きもせずに立ち去った事だ。 元より十兵衛はデイパックを必要としていなかった事に加えて、その分のデイパックを譲り受けていた邪鬼はこれ以上デイパックが嵩張る事を避けたゆえのものだった。 だがジェレミアは気付いていた。 このデイパックが外見に反して中身が底無しだという事に。 だからどれだけデイパックを回収しようと一つにまとめてさえしまえば、大荷物になる事はない。 ただその場合一つのデイパックがごちゃごちゃになる可能性があるが、そこはきちんと整理しておけば問題ない。 こうしてジェレミアが回収した金蔵のデイパックには3つのアイテムが入っていた。 まず一つ目は黄金のインゴット。 右代宮家に伝わるベアトリーチェの黄金伝説で謳われる10トンの金塊。 その伝説の証明とも言うべき重さ10kgにもなる純度フォーナインの黄金のインゴットである。 だがそのような事情を知らないジェレミアにしてみればただの鈍器でしかない。 さすがにこの命懸けの状況では黄金であろうと札束であろうと金銭的なものは役には立たない。 シングルマザーでもブランケットに包んで振り回せば山羊頭に痛恨の一撃を与えるほどだから、成人男性が振るえば十分凶器になるだろう。 次に二つ目はスーパースター。 黄色の星型に可愛らしいクリっとした黒眼が付いたものだが、その愛らしい外見とは裏腹に効力は凄まじい。 一緒に付いていた説明書きによると、その効力は一定時間無敵となる上に加速力・最高速度が上昇するというもの。 さらに相手に接触するとクラッシュorスピンさせたり、一部の障害物を破壊or弾き飛せるという能力も付与される。 ただしこれはあくまで乗り物に使った場合であって、自分自身が使っても同じ効力が得られるかは不明だ。 だが乗り物さえ手に入れば十分強力な強化アイテムである事は間違いない。 そして幸か不幸かジェレミアはその乗り物を手に入れていた。 それが最後三つ目の支給品、モーターボート。 運良く乗り物が手に入ったが、不幸にも最大の問題は陸上では何の役にも立たない点。 一応地図を見る限り川や湖や海など水辺には事欠かない立地だが、さすがに水上戦が起こるかと言えば疑問視せざるを得ない。 「確か少し南に行けば川があったはず……よし、この機会に一度使ってみるか」 元々ジェレミアがF-7から北上してきたのは人が集まると予想される怪しい洞窟を目指すためだった。 その途上のE-7で金蔵銭太郎の死体を発見して、首尾よく手付かずのデイパックを回収できたのだ。 このまま洞窟を目指すのも良いが、確実に人が集まっているという保証もない。 その一方で新しい物を手に入れたら一度使ってみたくなるのは人の性。 だからここはボートを手に入れた機会を生かして、川を伝って湖まで下り、見晴らしの良い湖上で人探しをする事にした。 そこには幼きロリは怪しい洞窟には怖がって近寄らずに湖の岸辺で一人寂しく佇んでいるのではないか、というロリコンならではの理解しがたい思考が入っていた。 「おお、我が愛しき幼き娘達よ! 今すぐ向かいに行くぞ!」 そうと決まれば善は急げ。 コンパス頼りとはいえロリが関わった時のジェレミアの力は通常の比ではない。 鬱蒼と立ち並ぶ木々の間を軽やかなフットワークで駆け抜ける姿はまさにオレンジもとい赤き閃光。 ――とまではいかないが、かなりの身のこなしだ。 この調子でいけば川まで後少しだろうか。 「ッ!?」 そこでいきなりジェレミアは横に大きく跳んだ。 一見するとロリコンが極まった末に奇行に見えるかもしれないが、それは間違いだ。 横に跳んだ勢いのまま地面を転がるジェレミア/その直後森の中に響く爆発音/数本の木々を薙ぎ倒して巻き上がる土埃。 すぐさま体勢を立て直して木の背後に身を隠したジェレミアが顔を覗かせると、木が数本倒れて地面が抉り取られた空間が目に入った。 おそらくあのまま進んでいたら直撃を受けていた事は想像に難くない。 こうして無事に回避できたのは日々ルルーシュやロリっ娘のために鍛錬を積んできたおかげだろう。 だがまだ危機が去ったわけではない。 未だに姿の見えない襲撃者はこの周囲に潜んでいるからだ。 「そこの赤マント、一つ聞きたい事がある」 「…………」 「無視か。ちっ、ゼロと云う奴に会ったら『MAXが探していた』と伝えておけ」 (な、ゼロだと!? いったいどういう――) 最初無言でいたのは返答の声で自分の居場所が判明するのを避けたためだった。 だが続いて出された言葉にジェレミアは驚愕の色を隠せなかった。 いきなり襲撃者から『ゼロ』というよく知っている名前を聞かされたのだ。 おもわず木の背後から身を出して声のする方を見ると、さらなる驚きがジェレミアを襲った。 それは真っ黒い金属製のボディーをした謎の人物が足早に立ち去っていく光景だった。 (な、なんだいったいあいつは……? それにしてもどういうことだ? 今のゼロは枢木スザクだが、ここでもゼロの姿でいるのか? それとも秘密裏に開発された私の後継機という可能性も……そんなの、聞いてないぞ……) 日中でも若干薄暗い森の中でジェレミアの思考は闇の中でしばらく彷徨わずにはいられなかった。 【1日目 午前/F-7 森の中】 【ジェレミア・ゴットバルト@コードギアス】 【服装】小此木造園の作業着@ひぐらしのなく頃に、アーチャーの聖骸布@Fate/stay night 【状態】健康、強い決意、隠れ真性ロリコン、若干の戸惑い 【装備】対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカル(4/6)@HELLSING 【道具】支給品一式×4、スクール水着、手榴弾5個@現実、オレンジ49個@コードギアス、黄金のインゴット@カオスロワ、スーパースター@マリオカート、モーターボート@名探偵コナン 【思考】 基本:主催者から死者蘇生の力を手に入れて、ルルーシュ達を生き返らせる。 1 再び主催者に会うために参加者を皆殺しにする(苦しまないように一撃で殺す。特にロリっ娘は確実に全力で一撃で!)。 2 ボートで川を下って湖に出て、岸辺で一人寂しく泣いているロリっ娘を探す。 3 なぜMAXはゼロを探していたんだ? 【備考】 ※金蔵銭太郎のデイパック(支給品一式、黄金のインゴット@カオスロワ、スーパースター@マリオカート、モーターボート@名探偵コナン)を回収しました。 【MAX@ボンバーマンジェッターズ】 【服装】なし 【状態】右肩に刀傷(軽傷)、攻撃速度上昇 【装備】三属の剣(流星虫規制)@バロック、M134機関銃@シャーマンキング、クナイ×10@伊賀の影丸 【持ち物】基本支給品一式×2、不明支給品0~2 【思考】 基本:優勝して帰還する。 1 ゼロを破壊して己の優越性を証明する。 2 参加者の何人かをゼロに関するメッセンジャーとして利用する。 【備考】 ※参戦時期は後の書き手にお任せします。 ※設定上、マイティが利用可能なボムはほとんど全て使えるはずです。 【モーターボート@名探偵コナン】 劇場版「名探偵コナン」シリーズ第9作目である『名探偵コナン 水平線上の陰謀』に出てくる豪華客船アフロディーテ号に常備されていたモーターボート。 終盤に犯人がこれに乗って船を脱出して、コナンたち少年探偵団が別のボートに乗って追いかけるシーンがある。 時系列順で読む Back 大日毎日 Next 錬金したらやばいのができた 投下順で読む Back 儂なんかで、良かったら Next 私が真実を明らかにしようと心を決めた時 散りゆく者への鎮魂果 ジェレミア・ゴットバルト 私って、ほんとバカ 颯爽登場! 日の出美少年ズ MAX そのような事、俺が許さない!!!
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てつどうの歌 ~鉄道唱歌/銀河鉄道999~ 発売日:2013年9月25日(水) 発売元:日本コロムビア 規格商品番号:COCP-38200 全20曲収録/65分06秒 収録楽曲 1.鉄道唱歌[東海道篇]新橋~浜松 2.汽車ぽっぽ 3.汽車 4.汽車ポッポ 5.新鉄道唱歌(伊勢路) 6.僕は特急の機関士で(東海道の巻) 7.僕は特急の機関士で(九州巡りの巻) 8.僕は特急の機関士で(東北巡りの巻) 9.僕は特急の機関士で(北海道巡りの巻) 10.ボクはお猿の機関士で(冗談鉄道唱歌・子供版) 11.修学旅行 12.鈍行夢列車 13.急行青森行き 14.夜行列車 15.寝台列車 16.特急列車通過 電気機関車けん引(寝台特急富士) 17.特急いっぱい! 18.かもつれっしゃのうた 19.新幹線でゴー!ゴ・ゴー! 20.銀河鉄道999(GALAXY EXPRESS 999)
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それは、小さな少女と、大きな青年の、ちょっとした話。 偶然と運命と、そして―――ちょっとだけ、楽しい話 この予告はあくまでも予告であり本編と違う可能性がありますことをお許しください。 目を開く、状況を確認、蛍光灯の光、テレビから流れるニュース、ちょっとだけコーヒーの匂い。 頭に響くノイズが喧しく耳を打つ、少し耳を押さえて、音を聞こえないようにする。 頭を起こす、周囲の状況、パソコンのディスプレイのそばにいて、自己認識……うん、私は私。 自己を自分として認識、「わたしは、わたし」それが、AIとして、神姫に刻まれた「こころ」 「起きた?」 上から心配そうな声、若干小さめなのが私には、有難い……耳の良すぎるこの身には。 見上げる、短髪黒毛で銀縁の眼鏡を掛けた……そこそこの年齢の男性の顔……心配そうな顔が、覗いている。 「……問題ないです」 自己診断プログラムは正常、その結果を伝え、そして、疑問を口にする。 「……始めまして、私は犬型MMS、タイプハウリンです……ここは、どこですか?」 ……怜悧な声で告げる、実際私に名は無い、与えられる前に捨てられた。 「あー、えっと、大丈夫か?」 事情を知っているらしい、その男性は温和な笑みを浮かべて答える、どこか間の抜けた、情け無い顔だが、声を絞ってくれている。 「……」 有難いとは思うのだが、それでも、耳に響いて、痛むが……悪くは無い……優しい声だ、私にはそれが、分かる。 分かる……そう分かるのだ……音の流れ、空気の響き、声質……そう、分かってしまう。 そのせいで、私は、中古ショップとやらに持ち込まれ、スリープ状態で放置された…… 「緊張してる?」 勤めてか細い声で、気を使っている声だ……《彼》は私を買ったのだろうか……? 「ああ、えと、一応、僕がオーナー、かな、君の」 私の疑問に答えるように、その《彼》は答えをくれた。 「なんで、私みたいな……?」 ふと沸いた疑問を、口にする、だって私は。 後天性オーバーロード、症状、聴覚センサーの異常発達、代償としてその制御が出来ず。 初期起動時に、オーナー、いや、元オーナーの声に驚き、その上、停止した。 ……その後の事は分からない、というか記憶していない、神姫センターは特に異常は見られないと言った。 ショップやメーカー持込みでも特に異常は見られず、めったに見られないケースなため、ありえないこと、にされた。 保障も交換も聞かないので、中古品ショップに私を、売ったらしい。 「そりゃ、寂しいからだな」 その《彼》は微笑む……寂しい、私が、何故? 「……寂しいやつってのは寂しい連中が分かるもんだ……違う?」 ちょっと、はにかんだように微笑む、今のオーナーである《彼》 「私は、不良品ですよ、それでも、ですか?」 念押し、分かっている、自分がそうだってこと。 「……知らん、俺がお前を欲しいと思った、そしてお前が寂しそうにしていたからな、一致だ、俺らの利害の……」 「もの、扱いですか、結局?」 寂しく思った、結局一緒か、と。 「違うっ!……ん、むう、なんつーか、あれだ」 最初、大きな声で、びっくりしたが、へたり込んだ私のその耳、きっちり聞こえていた言葉。 「一目惚れ」みたいなもんだ、って…… 私、私に、私が、私を……聞き違い?それこそありえない。 …………え、え、絵、ええええ、ひと、ひとひとひとめぼっ、れっ!? 私が、必要とされてる……私に? 「……私が……私に……私は……」 メモリーが一杯になりそうな情報量が溢れていく。 何故?/私が?/嬉しい/不良品なのに?/ええっと、恋人?/あと三分でデータ保存のため強制停止します。/一目惚れってことはそーよね?/でもえとわたし神姫ですしっ!/ありえないありえない/充電が切れそうです、あと二分三十秒。/ええとでも嬉しいしでも/人間と神姫は…? 「……あ、うを、あ、う、ええと、と」 うろたえている《彼》……私を見て?……何故? 《彼》の触れた指が、顔をなぞっていく……《私》に触れたのは、初めて。 ああ、私、泣いていたん、だな……と分かったのは《彼》の指が頬に触れて、濡れた感触がしたから。 「う、えっぐ、う」 ぼろぼろ泣いた、それから、ずっと、ずっと、泣いた。 「……」 《彼》の指は、ずっと顔をふいてくれて、触れた指の体温が、温かくて。 黙って、私が泣きやむまで、そうしてくれていて。 ややあって、落ち着き、そして彼が、出来るだけ小さな声で 「ん、まあ、ようこそ、とはじめまして」 「……あ」 ふ、っと電力が切れ……その場に座り込んだ、そういえば充電してもらっていないのと警告メッセージが出てたのを言うのを、忘れてた。 「……おい、おーい、起きろ、起きろっ、起きろっ、碧鈴!」 がくがくゆさぶる彼。 大丈夫ですよ、充電が切れただけ、ですから、そんな顔、しないで。 ――――碧鈴(へきすず)……固有名称登……録……完了。 いいたかったなあ、わたしも、はじめましてって――――。 徒然続く、そんな話。 第一節 《君》と《僕》と小さな告白、節終。 続く 戻る
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暗い、エルゴの店内、そして、そこに薄ぼんやりとした、光。 「来たかえ、ようやく」 笑うのは、純白の悪魔。 「ええ、来ました」 答えるのは、碧の犬。 間違いなく、そこにあるのは敵意、である。 「マイロードになんのつもりですか!?」 睨む眼光は烈火 「ふん、ちょっとした、『遊び』じゃよ」 笑い、エントリーポットの中に沈む、ディス 「待ちなさいっ!」 追うように飛び込む。 仮想の風、吹き荒ぶは、砦。 そして、映るは一人の映像。 そして複数の影。 「マイロードっ!!」 縛られて、拘束されている影ひとつ。 駆け寄ろうとして。 ――――銃声一発。 「……狙撃!?」 聞き取り、寸前に回避。 映るのは月下に赤い眼。 《紅き目の狙撃手》 「悪いけど、仕事なのよ」 悠然と微笑む、柱に構える影、見えないが、声は響く。 そして、足音、多数、近接、重圧。 「どういう、つもりですかっ!!」 咆哮。 「ふん、遊びだと言ったろう?」 「ルールはシンプル、ここにある、鍵」 砦の入り口に置かれ。 「これを取ったら、お前の勝ちじゃ」 「取ったら、で良いんですね?」 「無論じゃよ……嘘は言わん」 不適に微笑む白影。 「では、スタート、じゃ」 「……っ!!」 猛ダッシュ、向こうには狙撃手、止まっていたら確実にアウト。 「悪いけど、そーはいかないんだよねっ!!」 鞘走り、銀の一閃。 身を屈め、前を見る 赤い着物を纏った、ツガルタイプ。 「……傭兵、ですか」 「そーいうことっ、なんせボクは無敵だからねっ!」 何度も振るわれる刃。 「悪いけど、付き合ってはられないんですよっ!」 見聞り、中空へ。 ――――”SWORD VENT” 浮かんだ、瞬間、叩き落される。 「迂闊に飛ぶものではありませんね」 不適に笑う、黒い悪魔、腕には黒き刃。 「さて、エレガントとは言いかねますが―――悪らしくいきましょう」 飛び掛ってくる影を寸前回避。 慌てて、体制を建て直し、後退しようとした一瞬。 体が、浮いた。 「ライジング・ぺネトレーションっ!!ってなーっ!」 続いてくるのは、螺旋の衝撃。 鋼の悪魔が放つ、怒号の一撃。 「っっ!!」 砲莱を盾に、そのまま吹き飛ばされる。 その刹那、銃声。 「―――忠実なる守り手っ!!」 スキルを起動、そのままレーザーを受け止める。 それだけ、そのまま狙い撃たれる。 銃、剣、刀、穿 スキルにより、ダメージは無いが、動けない。 「……っ、く」 このままじっとして、様子を見ようとした、その瞬間。 「――――ふん」 白い悪魔が、龍ノ刃を、振り、そのまま、吹き飛ばす。 「貴様―――まだ、そんなぬるい考えか」 「何が、ですか」 呼吸も荒く、立ち上がって 「どうせじっとしてそのまま耐えようと思っていたのだろう?」 「な……」 図星を突かれ 「ふん、詰まらん、ライバルとも呼べぬわ、主は儂が貰う」 「!?」 蹴り足、そのままサバーカの一撃で蹴倒され 「痴れ者め、そこでじっと這い蹲れ」 振り向いて、そのまま、興味すら失った顔で そして、周囲からの攻撃も再開される。 「ねーー、なんか弱いもの苛めみたいでやだよ、ボクこれ」 「―――悪のためですから、悪には悪の流儀があります」 「ち、胸糞悪い、とっとと終わらせてしっぽりしてーぜ」 一閃、二斬、三打。 構えて、腕装甲を使って防御、防御、防御 ――――私は、これでいいの? スキル「忠実なる守り手」の使用を推奨。 システムメッセージが響く……だけど私は 否定(ネガティヴ) 素体蓄積ダメージが一定量経過、スキル「忠実なる守り手」の使用を。 ――――否定(ネガティヴ) 私が望むものは。 地面にじっと立って待つことではなく! 前へ進み、大切な人の下へっ。 映るのは、草原、穏やかな大きな樹の下で、彼女は笑う。 「ん、貴方がそれを望むなら、蒼にして緑は力を貸すわ、ようこそ」 優しい、暖かい声が、聞こえた。 スキル「忠実なる守り手」を破棄、スキル構築……完了。 スキル「疾風なる走り手」の使用を推奨。 ……っ!! 翔ける、浮遊、前進、速度、一瞬。 そして鍵の前。 「―――ぁぁぁぁっ!!!」 「ふん、まともな顔になったな」 最後には白い悪魔 轟刀一閃 「感謝します―――」 跳躍。 「ふん、良いのじゃよ、儂は負けるのも好きだからな」 その刹那、鍵を掴んだ 「……私の、勝ちですね」 笑い、幻想が解ける。 戻ってきたのは現実、そして、あの人の顔。 「碧鈴ー、大丈夫かー?」 頭を撫でる、彼女の主。 「うわぁぁぁん、まいろぉぉどぉぉぉ」 抱きついて、顔にすりすり、と。 そして気づく、周囲から視線が。 「こほん」 視線の先にはエルゴの店長。 「あー、先輩、すんません、うちのディスが」 「んや、おれは早人に金さえ払って貰えれば、電気代かかるし、バーチャルだと」 「へ?」 「……ああ、ついでに助っ人の皆に、お礼も払って置くのじゃぞ?」 「え?、ちょ、俺金ないのに!?」 「……自業自得です、馬鹿マイロード」 「うわぁぁあん!?」 「えと、ディス、その、えーっと」 「ん、なんじゃ碧鈴、儂と一夜でも過ごすか?」 「茶化さないでくださいっ、えーと、その……宣戦、布告、です」 「良かろう、儂は両方とくっついて一挙両得じゃ」 「なー!?」 なお、しばらくエルゴのただ働きで色々決着がつきましたとさ。 どっとはらい 「払えてねえから、絶対払えてないから……」 orz 徒然続く、そんな話。 第九節 思いは風になりて。 節終 続く 戻る
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雪の降り積もる迷いの竹林。その中で風景に溶け込みそうな白銀の髪の少女が無言で佇む。藤原妹紅だ。 「…………」 妹紅は黙ったまま足元を見下ろしている。そこだけは周りの地面と違い少しだけ雪が盛り上がっていた。 「…………」 彼女はその下になにがあるかを知っていた。知っているからこそ、それを掘り起こそうとはしなかった。そして、それをもう見たいとも思わなかった。 「これで三人目か……」 妹紅はそれをあえて人として数えたが、それは正確ではない。 なぜなら、その下にあるものは既に生きてはいないのだから。 「くそっ、一体どうなってやがるんだ!」 現在の幻想郷は、少なくともこのような寒さの訪れるべき季節ではない。にも関わらずここ数日は異例の大寒波がこの地を襲っていた。 幻想郷に永く住む妹紅にはわかる。これは異変だ。それもかなり大規模なものである。 たしかに以前にも春が訪れず冬が終わらない異変はあった。しかしあれはあくまで冬が続いていたものであり、人々の寒さへの対策に問題はなかった。 けれども今回は違う。なんの前触れもなく、急に異様な寒さが幻想郷を包んだのだ。それは当然のごとく人々の体調を崩させ、体調を崩した者達は自然と医者の助けを求めて永遠亭へと足を運ぶ。 だが、ただでさえ迷いやすいこの竹林を、この銀世界の中歩けばどうなるか。 その結末は、妹紅の足元に転がっていた。 「私がもっとしっかりしていれば……」 もちろん妹紅の責任ではない。しかし、それでも自警団の旗を掲げる彼女は自分を責めずにはいられなかった。敵が寒さだというのならば、まさに自分が助けになれたであろう、と。 そうは言っても、妹紅とて体はひとつしかない。誰かを警護している間に別の誰かが来れば、片方は諦めざるを得ない。それは彼女一人の力ではどうしようもないことだ。 それでも妹紅は助けたかった。ひとつでも多くの命を、この手で救いたいと願った。 「じゃなきゃ、なんのための自警団かわからないじゃないか……!」 終わらない命を持つ少女は、ただただ己の無力を嘆き歯を食いしばるのだった。 続く
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7032F 7000系7032F。2連で、宝塚線での運用。4050系とも仲がよい。実は甘いもの好き。初登場は8200救助編。 4053 車歴抹消済ではあるが、4050系4053F。事業用車が故に力持ち。10両は余裕で運べる。初登場は8200救助編。 8200くん 阪急8200系8200F。平日朝以外はニートな子。ただ競技には興味を持っており、3000km/hまでは出せる。また激突停止を行った時に傷をおい倒れた。初登場は暴走車両激突停止編。 ジェットカー君 阪神5001形。初代ジェットカーで、引退後は後輩に指導をしている。しかし5331形 5131形の引退によって指導の幅も狭くなり、今は年金生活。モブキャラ扱いではあるものの、日私連副会長を勤めている大御所。ちなみに初登場は起動加速度22km/h/sを出した車両を見たとき。 お魚図鑑くん モ2423「伊勢志摩お魚図鑑」。伊勢志摩でとれた魚を輸送している。それ故お魚が大好き。でも牛肉も好きだな(松阪牛)。初登場は大阪遠足。 しらゆきくん JR653系1000番台「特急しらゆき」。米どころ新潟に住んでいるため、米が大好き。ただ枝豆も好き。酒豪。もち食べたい。初登場は旅先で枝豆を買うとき。 05ハロゲンくん 営団05系スカート無車。前照灯がハロゲンのはず。製造が近畿車両のため1年に1度は大阪へ帰省する。東京みやげを持って。屈指の大混雑路線の運用で、疲れはたまりやすい。好きなことは世間話。酒はあまり強くない。初登場は大阪帰省。 秋刀魚くん 東武30000系。別名「秋刀魚」。それ故(?)好きな食べ物はさんま。東上本線に行ったら必ず見る車両だが、インバータがいいのでヨシ!過労は溜まりやすいものの、発散しやすいタイプ。初登場はさんま定食を食べたとき。 11634 イイムサシくん。6連。現在ミクリ入場中。初登場は11455パンタ故障編。 9152F 東武9050系9152F。前まではメインキャラ。すきな食べ物はねぎ。狭山茶をこよなく愛している。初登場(モブとして)は11455パンタ故障編。 9107F 東武9000系9107F。9152Fの同僚。コルゲート愛が凄まじい。好きな食べ物はたこやきとお好み焼き。初登場は安泰(大嘘)編。 21444F 東武20400系21444F。20000型先頭車に20050系中間車という迷連結をした車両ではあるがそんなの関係ない。好きな食べ物は温泉まんじゅう。初登場は安泰(大嘘)編。 C11 325 東武のC11系統の2代目。蒸気機関を使って走る。でも好きな食べ物はしゃぶしゃぶ。よく打ち上げに行く。初登場は安泰(大嘘)編。 スハフ14 5 スハフ14系4兄弟の1人。四国でも活躍していたためか四国に帰省したり。好きな食べ物はみかんとすだち。初登場は安泰(大嘘)編。 DE10 1099 東武のDE10の中では最初に譲受した車両。ブラックだったJR東日本からの転属。好きな食べ物はすき焼きとしゃぶしゃぶ。初登場は安泰(大嘘)編。 101F 東武の「スペーシア」100系のトプナン。新宿まで顔を出すのはいいのだが、ブラック。好きな食べ物はピザ。初登場は安泰(大嘘)編。 7101F 17000のせいで消えた7000系...と思われたがまだ1編成いた!それが7101F。今は運輸担当。リハビリを行ってまた営業運転に復帰したい。また 9107に9101用半導体を届けた。初登場は安泰(大嘘)編。 9101F 東武9000系のトプナン。今は半導体が無く営業運転に復帰できていない。メカニックの手によって直された後に営業運転に入れそうだ。ただ今は半導体が無く話すこともできない。初登場は安泰(大嘘)編。 113 向日町車両区所属の113系。抹茶色ではある。最近はおつまみにハマり始めた。USJへ行く予定をたてている。遠足におつまみを持って行くところにハマり具合が現れているだろう。(主も修学旅行におつまみを持って行ったことがある)初登場はUSJ遠足計画をたてているとき。 11202F 東武10000系11202F。普段は小泉線などを走っている。東武一の腕前をもつメカニックで、弟子もいる。初登場は9101修復編。 901 901系。ケト線で運用後引退した───が、総合車両センターに今いる。いつかケト線に入れることを夢見て、今は世間話をみんなと。初登場は総合車両センター編。 209-0 209系0番台。ケト線で運用後は房総半島へ仲間を根こそぎ持って行かれた後運用離脱。901系とともに、世間話や思い出話を。初登場は総合車両センター編。 209-2200 209系2200番台。ケト線で0番台と共に運用していたのだが、南武線に持って行かれた。運用離脱後は合流を果たし、思い出話とかをしている。初登場は総合車両センター編。 B•B•BASE 南武線の運用離脱後サイクルトレインに改造された車両。房総半島を爆走することから暴走族と呼ばれるが、ボロたちと一緒にしないでほしい(2000 2100のこと)。初登場は総合車両センター編。 (ここから表記変更) 123U-15 形式 クモハ123 編成 U-15 走行路線 宇部線・小野田線 制御装置 抵抗制御 改造年 1987年 製造 近畿車輛 備考(My設定) 寿司屋でバイトをしている。昔荷物車時代に修行を積んでおり寿司を握る技術はとても高い。それ故なのか、刺身と寿司が大好き。 1702F 形式 名鉄1700系 編成 第2編成 走行路線 名鉄名古屋本線・犬山線・津島線・豊川線・尾西線・河和線・知多新線・常滑線・空港線など 制御装置 東芝IGBT-VVVF 改造年 2008年 製造 日本車輌 備考 2021年引退 (ここからMy設定)東名古屋港で廃車を待っていた2022年5月、再就職表が来た。現在は2年のリハビリ期間。好きな食べ物は手羽先ときしめん。
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「ゆっゆっゆ~♪ ゆゆゆっゆ~♪ ゆっくりしていってね~♪」 博麗神社の台所にて、生首饅頭がうどん生地の上で楽しそうにぽむぽむ跳ねていた。 生首がうどんを捏ねるという世にも珍しい光景が生じた発端について語るには、少し時を遡る。 ◆ 「うぅ……だるい…………」 梅雨も終わりを迎え、夏へと向かって太陽がより一層強く輝く時期。 その朝の澄んだ空気が段々と暖まる頃、 博麗神社の一室にてその所有者である博麗霊夢が掠れた声で呟いた。 普段はお茶を飲んだり境内の掃除をしたりして日中をのんびりと過ごす彼女だが、 今日に限ってはそのようなことはない。 神社の一室で布団に身をくるめて寝込んでいる姿にはいつものような暢気さは見られなかった。 季節外れの風邪。それが彼女の身に生じている現象である。 「ただいまー!」 そこへ空気を読まずに大きく響く声。当然霊夢のものではない。 「れいむー! ごはん~!」 一頭身のシルエットを持つ何者かがゴムマリのようにぽいんぽいんと跳ねてきて、 霊夢の枕元で止まった。 その一頭身は霊夢に朝の挨拶をしようと声をかける。ただしその挨拶は「おはよう」ではなかった。 「ゆっくりしていってね!」 「言われなくてもしてるわよ……動こうとしても動けないっての……」 霊夢に似た髪型をして、霊夢に似たリボンをつけ、霊夢とは似ても似つかない顔つき。 愛嬌ある憎たらしさの中にどこかユーモラスさを感じさせる表情をした潰れた饅頭顔をした生首が、眉尻を下げて心配そうに霊夢の事を見つめていた。 その存在の名は『ゆっくり』。 幻想郷の少女達の頭部を中途半端に模した動く一頭身共だ。 このゆっくりは霊夢のゆっくりことゆっくりれいむ。 博麗神社で居候として共に暮らしている。 「れいむってばどうかしたの? ゆっくりしてる?」 「してないわよ。風邪なの……アンタにはわからないでしょうけど、人間はたまに風邪っていう病気になるの。病気ってのは体が動かせなくて大変になるのよ……」 「そんなんググッたからしってるよ! お饅頭だからってバカにしないでね!」 「いきなりギリギリな発言するんじゃないわよ」 博麗神社にパソコンがあったっていいじゃないのとゆっくりれいむは思う。 電力? 回線? なにそれ強いの? ①河童が作った②スキマパワー③ここは幻想「卿」。 どうしても理由が欲しいのならこの中から適当に選べばいいしとゆっくりれいむは語る。 「頭痛い…………何よりお腹空いた……ひもじぃよぉ…………」 「れいむってやつ元気ないね」 ゆっくりれいむは霊夢の弱弱しい姿を見ていて心が痛んだ。 これはいけない。霊夢にはゆっくりが不足している。 ゆっくり。それはゆとりと余裕を意味する言葉であり、そして何よりも優雅を表す。 日本舞踊の能に代表されるように、優雅なものはゆっくりしていて、ゆっくりしたものは優雅だ。 昼下がりにお茶を啜りながらのんびりゆっくりとする霊夢がゆっくりれいむは大好きだった。 日常でのゆっくりとしたリラックスと脱力こそが、弾幕ごっこの最中の精密移動を生じさせるのだ。 ゆっくり移動こそ弾幕ごっこにおいて最強なのだ。 大体弾幕ごっこで移動速度が速くていいことなんて殆ど無いよね。事故るし。 魔理沙とか趣味以外じゃ使えない性能だよ。マスパだって威力落ちてるじゃん。 可愛いから使ってるけどさ。とはゆっくりれいむの弁である。 そして弾幕ごっこ云々よりもゆっくりの持つ意味として重要なことがある。 ゆっくりしたものは可愛いのだ。 例えば同じ虫でも、のそのそとゆっくり動くカタツムリには愛嬌を感じるが、 高速で飛び回るゴキブリはどうだろうか。速度こそが絶対的な違いなのだ。 そう、ゆっくりしたものは可愛いのだ。 移動速度が遅く幻想郷一の精密移動特化型にして、 U・S・C(アルティメット・スピード遅い・クリーチャー)とも呼ばれ、 かけっこビリケツ常連で鈍足女王の名を欲しいままにするゆうかりん。 彼女が幻想郷大運動会での体操服にブルマという扇情的な衣装で、 その豊満な乳を揺らして白く滑らかな太ももを晒しだしながら 圧倒的な遅さでゴールテープを横切ったとき、 涙目で強がっている幽香を見てその場にいた者全てが悶えた。 つまり、ゆっくりしたものは可愛いのだ。 それに対して超高速で空を飛びまわる、 幻想郷最速の射命丸の全速力で飛び回っているときの顔を見たことがあるか? 無いのならそれがいい。 風圧とGでびろんびろんな物凄い顔になった彼女の顔面は想像を絶する。 彼女の同僚の天狗が写真に収めたものを元にした画像が一時期ブラクラとして出回り、 うっかり踏んでしまったグロ耐性の無い哀れな少女たちを恐怖の渦に陥れた。 結論、ゆっくりしたものは可愛いのだ。 ゆっくりれいむはゆっくりの重要さを改めて頭の中に駆け巡らせたあと、 霊夢をゆっくりさせるために呼吸を整え、大きく息を吸い込み、ばっと吐き出すように大声を張り上げた。 「ゆっくりしていってね!!!」 ゆっくりれいむの全身全霊にして渾身のゆっくりしていってね!!! ゆっくりれいむは「ゆっくりしていってね!!!」と霊夢にゆっくりを促すのが仕事の一つだ。 風邪に対しては絶対安静が一番の治療法。それすなわちゆっくり。 その一番の治療を促しているが故に、 自分が一番霊夢の役に立っているとゆっくりれいむは自負している。 「ゆっくりしていってね! ゆっくりゆったりのんびりしていってね!」 霊夢、動けないときこそゆっくりさ。 体が動けないってことは休息を必要としているということだよ。 だったらひたすら回復に努めてね。 そうしてゆっくりれいむは霊夢のためにひたすらゆっくりを促す。 それこそがゆっくりの使命であると疑わない。 「ゆっくりしていってねっ! ゆっくりしていってねっ! ゆっくりしろやグルァ!」 ゆっくりだ、ゆっくりするのだ。 ゆっくりしてゆっくりしてゆっくりして、ひたすらゆっくりすることだ。 「ん~……」 霊夢は首を回してそんなゆっくりと視線を合わせる。 「ゆっ!」 ゆっくりれいむは自信ありげに眉を吊り上げ、どや顔で霊夢の言葉を待つ。 「ゆっくり、何やってんの?」 「ゆっくりのサービスさ! 思う存分ゆっくりしていってね!」 「へぇ、そうなんだ……」 どうかしたの霊夢。ゆっくりの礼をいうにはまだ早いよ。 「ほめてもいいのよ!」 けれどどうしてもというのならば聞かないことも無い。 さぁ私を膝の上に乗せてナデナデする許可をやろう。 そのスベスベとした手で私の頭に触れるがいい。 柔らかく滑らかな太ももに乗せてもらえばいうことなしさ。 「れいむ~♪」 ゆっくりれいむは我慢できなくなり、霊夢に向かって頭を傾けて上目遣いで眼を輝かせる。 「かわいくってごめんねっ!」 「あのねぇ、ゆっくり……」 「ゆ~♪」 そわそわ、わくわく。 そんなゆっくりれいむの頭の上に霊夢は手のひらを当てて―― 【博麗式岩山両斬波!】 「うるせー!」 「ゆべしっ!」 ◆ 「ゆ~……」 凹の字にその頭をへこませたゆっくりれいむは落ち込んでいた。 霊夢があのような痛々しい姿を見せていたことで悲しい気持ちで一杯になる。 つまり霊夢はお腹をすかせていて、だからゆっくりする暇が無いんだね、 なるほど、空腹は生物にとって原初の本能に刷り込まれた危機だからねと ゆっくりれいむは納得する。 そもそも生物は皆空腹の状態では心にゆとりや余裕を持つことができない。 脳に行渡る糖質が不足することにより、脳細胞が働かず更にイライラする。 人間で言うところの脳の部分が餡子という破格の糖エネルギーを持った ゆっくりれいむからすれば、それは無縁の悩みである。 あぁ、人間はどうしてこんなに不便な生き物なんだろ。あれもこれも全て脳味噌のせいだ。 味噌なんて塩っ辛いものを頭に入れているからいけないんだ、 この世の生き物全ての頭の中身が甘味だったら戦争もなくなるのに。 もしもドラ○ンボールがあったら、世界中の生きとし生けるもの全ての頭蓋骨をくりぬいて 脳味噌の代わりに餡子でも詰めることを願おうとゆっくりれいむは思っていた。 霊夢の食事を作らなければならない。 だがしかしゆっくりれいむの体(頭)は丸っこい饅頭状をとっている。 この体(頭)は考えることには最も適しているが、肉体行動には不向きだ。 ゆっくりとは本来デスクワーク型の生き物なのである。 そう、ゆっくりにも仕事があるのだ。勤労を伴わないゆっくりとはただの怠惰である。 スロゥスである。 そんなものはゆっくりではないとゆっくりれいむは断言できる。 ゆっくりすることが至高という考え方をしてはいるものの、 最上のゆっくりとは労働の汗を流した後の休息にあると考えているゆっくりれいむ。 日中はパソコンに向かいpix○vやオギ○ッシュのグロ画像収集を行なう趣味と実益を兼ねた仕事をしている。 むしろ最近では霊夢にゆっくりを促す仕事よりもそちらの方が本業に近い。 近頃の一日の流れはこうだ。 朝起きたら神社の庭をぴょこぴょこ跳ね回って適度な運動をして、 霊夢の作った美味しい朝食を食べた後にグロ画像を収集。 昼食を食べたらすやすやとおひるねという名の仮眠を行い、 おやつというエネルギー補給の後グロ画像を収集。 夕食を食べて霊夢と一緒にお風呂に入った後は寝るまでグロ画像収集。 ゆっくりれいむはそのように毎日忙しくも充実した生活を送っている。 グロ画像はいいねぇ、リリンが生み出した文化の極みだよゆへへへへ。 そして昨日も寝る間を惜しんでグロ画像収集に明け暮れて体力的に厳しいが、 それでも愛する霊夢のためには慣れないガテン形の仕事でもやらなくてはならない。 全てを終えた後の霊夢とのゆっくりした時間を得るために。 「なにつくろっかな!」 ゆっくりれいむはぽんぽんぽんと台所中を跳ねまわり食材探しを行なう。 風邪をひいたときといえばお粥と相場が決まってるよね。 消化がよくて胃にもたれないし、梅干しがあれば言うことなしさ。 そんなことを考えながらもそもそと台所を漁るゆっくりれいむであった。 「うわ、なんもねー!」 何てこった、お米がないよ。お米だけじゃなくて、おかずすら全く無い。 残ってるのは調味料だけじゃん。 霊夢、あれほど食料の備蓄には注意するようにと言っていたのに。 これではあるもので何とかするしかないじゃないか。 「ゆ゛~……ゆ゛ぅ~……ゆゆゆ~……――」 ゆっくりれいむはその頭部に含まれる糖分をフルに使い、 現状を打破する方法を捻り出さんと唸り続ける。 こうなったら自分に何か調味料を加えて霊夢に差し出すべきか。思いつめるゆっくりれいむ。 ドレッシング饅頭にするべきか、マヨネーズ饅頭にするべきか、 それともタバスコ饅頭にするべきか。 意外とマッチするかもしれない。おいしかったら今度お店でもだそうかな? 「ゆ゛? なにさこれ?」 悩み転がるゆっくりれいむは戸棚の奥にぽつんと置かれている、白い粉が入った袋を見つけた。 これはなんだろうと思って袋をよじよじと口で開け、一舐めする ペロッ。 「これは――青酸カリ!」 あなた~、今日の料理は味噌汁かけご飯の青酸カリ和えよ。 わ~いパパの大好物だよグハァ! と、ミステリー作品で大人気の調味料である。 「――なわけないよね! 小麦粉だよ!」 小麦粉。穀物の一種であり、パンや麺類に調理して主食とすることが出来る食材だ。 これを見てゆっくりれいむはピンと閃いた。 「そだ、うどんならどっかな?」 風邪に効果ありとされるうどん。 昔から風邪気味の人にはうどんを食べさせるとよいといわれていたが、 実際うどんは食後の体温が高く保たれるという調査結果が出ている。 これはうどんの消化速度が極めて速いことによる。 その速さの秘密はうどんのコシの正体「グルテン」にある。 この「グルテン」、小麦粉を捏ねる事によりタンパク質が網目状の組織を形成して、 でんぷん質を包み込むように守っているので体内に入ると消化酵素が入り込みやすくなり 消化が早く進むのだ。 ググッたらそう書いてあった。 「そんなことよりおうどんたべたい!」 決まりだね。霊夢にはうどんをご馳走してあげよっと。 ゆっくりれいむは早速作業に取り掛かった。 ◆ ゆっくりれいむはうどん作りを開始する。 まずは器の中に入れた小麦粉に対して塩水をかけ、 その後口に咥えた棒を使ってゆっくりと器の中をかき混ぜるように小麦粉を練る。 練って練って練り続ける。 するとどうだろうか、うどん粉が生地状になってきたではないか。 これよりまな板の上にうどん生地を移して捏ね繰り回す段階に入る。 「ゆっ♪ ゆっ♪ ゆ~♪」 さぁここからはストレス解消タイムの始まりさ。 うどん生地という手も足も出ないサンドバックを一方的に痛める蹂躙劇に ゆっくりれいむはわくわくしてくる。 「ゆっくりのひ~♪ すっきりのひ~♪ まったりのひ~♪」 ぽむぽむぽむ。 ゆっくりの体は柔らかいものの、質量が球体状に集中しているためか、 中々うどんを踏む力は強いようだ。 「ゆっゆっゆ~♪ ゆゆゆっゆ~♪ ゆっくりしていってね~♪ ストレス解消楽しい♪」 ぽこぽこぽこ。 跳ねて踏んでうどんをこねているゆっくり。 殴るのって楽しい♪ 踏んづけるのって最高♪ 暴力っていいね♪ その快感に酔いしれたその顔はもうヘブン状態。 だがしかし、突如その身に起こった異変に気付く。 「……………………ゆ゛っ!?」 小麦粉がベトベトするではないか。 「ゆ゛ゆ゛っ!!?」 引っ付いて取れないではないか。 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛っ!!!?」 粉っぽいではないか。 そう、これは命が掛かった状況に追い込まれたうどん生地の最後の抵抗である。 手も足も出ないサンドバックなどという比喩は間違いであった。 奴は油断しきった愚か者を両断する爪を隠し持っていたのだ。 うどん生地。 その計り知れない底力をゆっくりは目の当たりにすることになる。 我も黙って食われる程その命安くは無い。食いたくば我を屈服させろと、 眼前のうどん生地は不敵な笑みで微笑んだ(ように見えた)。 ゆっくりれいむも対抗してニヤリと笑う。 自慢のグロ画像フォルダに新しい一枚が加わるのだから。 「敵・即・殺」と平和の使者ガンジーも言いました。偉人の言うことに間違いはない。 さぁ蹂躙タイムの始まりだ。ゾクゾクムラムラしてくるぜぇ。 「ゆっくり死んでいってね!」 うどん生地の撲殺画像ゲットだぜ! 「もうやだおうちかえるぅっ! れ゛い゛む゛~~!!」 うどん生地は超強かった。 そのベトベトネトネトは、ゆっくりれいむの心に一生物のトラウマを植えつけんとする。 ゆっくりれいむは戦略的撤退だよと、たまらず霊夢のところに一目散に帰っていく。 「れ゛い゛む゛っ! れ゛い゛む゛ぅぅ~~!!」 「ん~……どうしたのゆっくり!?」 寝ていたところを起こされて布団の中でもそもそ動いてゆっくりれいむの方に首を向ける霊夢。 「うどんつえぇ! うどんってやつハンパない!」 霊夢はゆっくりの言ってる事が通じないのはいつもの事だと思いつつも眉を顰める。 「うるさいわね~……頭痛いんだからもう少し小さな声で喋りなさいよ。――っていうか粉だらけじゃないの。アンタさっさと体洗って後で床に雑巾掛けなさいよね」 「う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん!!」 「いやだから黙りなさいって……あ~……だるくて引っぱたく気にもなれないわ…………」 先ほどの大技による消耗が体に響いている霊夢の前で大泣きするゆっくりれいむ。 チクショウあの白い悪魔めっ。あの色白野郎。ちょっと美白だからって調子こいてんじゃねぇぞ。 大体お前の肌すっげぇ粉っぽいんだよ。 「まったくもう――」 「ゆ゛っ!?」 そんなことを叫ぶゆっくりれいむの頭の上に霊夢の手のひらがぽんと置かれる。 途端、先ほどの必殺技の悪夢が蘇ったゆっくりれいむがビクッと反応する。 けれどもまるで攻撃の気配が無く、疑問に思うゆっくりれいむに霊夢がぼそりと呟いた。 「しょうがないわね……もうちょっと寝たらご飯作ってあげるから大人しく待ってなさいよ。それまで庭の草とか適当に毟って食べてていいから」 「ゆ? ゆ?」 「お腹すいてるんでしょ? 今日は私朝から寝込んでたから、アンタ何も食べてないじゃない。だから少しの間ゆっくり待ってなさい」 けほんけほんと、霊夢は咳をしつつ布団を被る。 「あ~……そういや米切らしてるんだっけ? 何作ろっかなぁ……タンポポのマヨネーズ和えとかかなぁ……胃にもたれそうだけど……」 そう言うと霊夢は再び寝込んでしまった。 後に残されたゆっくりれいむは、泣き叫んでいたのもすっかり忘れて黙っていた。 「………………」 ゆっくりれいむは後悔していた。弱っている霊夢を頼ろうとしていたことに後悔していた。 辛いことは全部霊夢任せにしようとした事に後悔していた。 元々自分が霊夢をゆっくりさせるために食べ物を作ろうとした。そのことを忘れていたのだ。 それが余りにも情けなかった。 このままではゆっくりの伝道師ことゆっくりしていってねの名が廃る。 霊夢にうどんを作ってあげたい。霊夢に楽をさせてあげたい。霊夢をゆっくりさせてあげたい。 だったらどうすればいいの? うどんに勝つことさ。 勝利。 ゆっくりれいむはそれのみを欲した。その体内に流れる餡子が熱く煮えたぎるのを感じる。 てめぇらの血は何味だ? 「おしるこさ!」 甘えを捨てろ。これから先は覚悟を決めるんだ。 「れいむ! ごはん作るからゆっくりまっててね!」 かくして饅頭とうどん生地の戦いは第2ラウンドの幕を開けた。 うどん生地との再戦は熾烈を極めた。 熱戦、苦戦、激闘、死闘。どれもその光景をあらわす言葉として生ぬるく、 何よりそんな綺麗なものではない。 四肢を捥いででも立ち向うゆっくりれいむ。四肢が弾け飛んででも迎え撃つうどん生地。 頭だけになっても向かっていくゆっくりれいむ。 原形を留めて無くても叩かれるたびに押し返すうどん生地。 凄惨極まりない光景ではあるが、けれども意味のある戦いというものはこういうものだ。 我こそ正義とお題目を掲げながら同属同士で無益な虐殺を繰り広げる戦争とは違い、 食うか食われるかの原始の戦いには綺麗ごとなんて挟む余地がないのである。 善も、悪も、主義も、差別も、信念も、憎悪も、 そんなとってつけたような意義を求める必要は無い。 食うから殺す。それで十分だ。 「ゆぅ……ゆぅ…………ゆぅぅぅぅ!」 ゆっくりれいむは吼えた。 心臓が悲鳴を上げ、全身の筋肉がピクリとも動かなくなるほど消耗し、 骨がミシミシと限界の音を聞かせ、 頭の中は酸欠で朦朧としている。 もう動けない。動きたくない。そんな心の声が聞こえてくる。 だがしかし、そんな心の弱音に負けたときこそがゆっくりれいむの最期だ。 生き物は痛みに屈して諦めるのではない。苦しさに屈して諦めるのだ。 サバンナで死闘を繰り広げるライオンとシマウマの命を賭けた競争。 捕まえねば餓えて死ぬライオン。捕まったら食べられて死ぬシマウマ。 苦しさに負けて足を止めた方が生存競争から脱落する。 「ゆゆゆゆゆ~!」 ドスッドスッドスッ。 もうやめたいよ。負けてもいいじゃん。楽になりたいよ。ゆっくりしたいよ。 ガスッガスッガスッ。 一言弱音が聞こえたら一撃をぶち込み、更に一言聞こえたら一撃、十聞こえたら十撃、百聞こえたら百撃。 敗北を肯定するような弱音を振り払うかのように、更に攻撃を重ねるゆっくりれいむ。 「ゆ、ゆっくりっ……ゆっ! ゆッ! ゆ~……ゆ~~~~!!」 ポスン、ポスン、ポスン。 いくら弱肉強食の世界には恨みっこなしとはいえ、それはあくまでも建前だ。 生きている以上生存競争に負けて食べられることに恐怖と無念を感じないものは殆どいない。 死ぬのは誰だって怖いのだ。痛いのは誰だって嫌なのだ。苦しい思いはしたくないのだ。 しかしそれでも、ゆっくりれいむは戦うことをやめなかった。 例えその身がゆっくりとスローモーションになっても、 吹けば倒れるほどフラフラの状態になっても、 戦うことをやめなかった。 「ゆっ……ゆ…………っ………………」 ペチ……ペチ……。 技術も戦闘力も、そんなものはこの泥沼の戦いでは無意味だった。 最期に勝者と敗者を分ける境界となるのはその意志の強さ、気持ちの強さである。 誰かのために戦う。それはとても素晴らしい考え方だ。 けれども何かを背負っている者が必ずしも勝てるわけではない。現実は非常なのだ。 だが、ゆっくりれいむは自分は絶対に勝てると思っていた。 そんな甘い考えをするのもしょうがない。ゆっくりれいむの頭の中は甘いもので一杯だ。 けれども、大切な思い出も一杯に詰まっている。だからこそ頑張れる。 限界を迎えつつあるゆっくりれいむの脳裏に浮かんできたのは霊夢の顔であった。 『変な妖怪がいるって聞いたから来てみれば……何が『わきをみせびらかしているみこはにせものだ!』よ、この饅頭顔!』 『何でついてくるのよ! 私はアンタの親でも何でもないんだからね!』 『…………他に行くとこないんでしょ? わかったわよ。別にいてもいいわよ。――ちょっ、こら泣くな! 引っ付くな!』 『よし、汚れがとれたわよ。アンタ顔はともかく髪の毛は綺麗ね。何で出来てるのよ』 『ゆっくりれいむ~……長いしゆっくりでいいや』 『ご飯粒付いてるじゃないの。とってあげるからこっちに来なさい』 『このおバカ! 今日はごはん抜きだからね! 文句があるならかかってきなさ――うわ、思ったより速い!』 『全く、心配させるんじゃないわよ。心配してないけどさ。――ほら、うちに帰るからついてきなさい』 「ゆ~!!!!」 ドスン。 「すりすりってきもちいいね~……」 戦いを終えたゆっくりれいむとうどん生地。今はまな板の上でその身を擦り寄せあっている。 ゆっくりれいむの気持ちも不思議なもので、 つい先ほどまではうどん生地を叩き潰すことのみを考えていたのに、今はそのようなことはない。 先ほどまでの殺伐とした空気はどこかへ飛んでゆき、穏やかな時間がゆっくりと過ぎている。 「ゆっくりしてるね~……」 勝負はもう決した。うどん生地はこの上ないほど捏ねられたのだ。 あとはうどん生地を寝かせて、麺状に切った後に器に盛るだけである。 うどん生地はもはや小麦粉には戻れない。 パンになることも、揚げ物になることも、饅頭になることも出来ない。 その未来はすでに決した。ゆっくりれいむはうどん生地の先を奪ったのだ。 だがしかし、うどん生地には何も不満は無い。 不意打ちでまだ余力がある状態で死ぬときに残るのは後悔。 けれど真正面から撃ち抜かれ、残った力がまるで無い状態で残るのは賞賛。 覚悟を決めた者同士が互いに全力を尽くした末の、 これまでの生涯全てをぶつけ合った先に得る境地は一種の充実と安堵である。 「もっとゆっくりしていってほしいね…………」 このままずっと時がゆっくり流れていけばいいのに。 形が違えば友達としてもっとゆっくり出来たかもしれないのに。 ゆっくりれいむはうどん生地にほっぺたを当てたままそう思った。 饅頭とうどん生地、同じ小麦粉で作られた者同士、きっといい友達になれたであろう。 しかし全ての力を使い果たした者に対しては本来回復する間も無く止めを刺すのが礼儀であり、 下手に生き残る希望を与えてしまうことは敗者への侮辱に他ならない。 故にその者が最も精神的に充実した時に、死への恐怖が薄れている時に仕留める必要がある。 よってうどん生地が寝かされて十分に熟成されたら、それが別れのときである。 割り切れないゆっくりれいむを諭すかのように、うどん生地の優しい声が聞こえたような気がした。 (ありがとう、とても愉しい殺し合いだった……) (うどん生地として悔いの残らない生涯だったよ……) (さらばだ、我が友よ) (お前の友人共々、残さず食べてくれよ) 「………………………ゆっ」 ゆっくりのほっぺたを何かが伝った。 けれども自分達は生きなければならない。笑って生きていかなければ倒した相手に申し訳ないのだから。 捕食とは対象を血肉にする行為。相手を取り込むことで共に生きてゆくことが出来る。 とはいえ、うどん生地との思い出を残せるものは他に何もない。 だからこそ、一つぐらいは形として残るものが欲しい。 よってゆっくりれいむは写真を一枚、一生の思い出として撮ることにした。 パシャッ。 【うどん生地撲殺記念】 この一枚は【ナメクジが塩で溶ける動画】と並びゆっくりれいむのグロ画像フォルダに大事に保管されることとなったという。 ◆ 「さぁ、おたべなさい!」 霊夢がもうそろそろ何か食事を取ろうと思い、 そのだるい体を布団の中からもそりと起き上がらせた瞬間、 頭の上にうどんを乗せた器を持ってきたゆっくりれいむがどや顔で部屋に入ってきた。 その言葉の意味がわからず一瞬固まった霊夢であったが、 すぐさまゆっくりれいむが自分に食事を持ってきたのだと理解した。 となると次に誰が作ったかという疑問が沸くが、 生憎博麗神社には霊夢とゆっくりれいむしかいない。 すると導き出される答えはひとつだった。 「アンタが作ったの!? このうどんを!?」 「いぇす、アイマム!」 「あぁ、さっきから何かしてると思ったらそういうことだったの。アンタ中々器用ね」 ゆっくりれいむは自らの霊夢である霊夢の胸にぴょーんと飛び掛かりたい欲求を抑えて、 うどんを乗せたお盆を頭の上に乗せてそろり、そろりと霊夢の目の前に持ってくる。 「さぁ、おたべなさい!!」 大事なことなので二回言ったようだ。ゆっくりれいむは自信満々にうどんを差し出す。 ゆっくりれいむの顔をよく見れば、小麦粉がこびり付いている。 水で洗ったのだろうが、しっかりと取れていなかったようだ。 霊夢はそれを見てうどんがどのような過程で作られたか何となくだが理解できた。 全く、慣れないことしてるんじゃないわよと軽く悪態を付くが、 何はともあれ空腹でフラフラの霊夢には目の前のうどんがとても魅力的に思えた。 だったらすることは一つである。霊夢は箸を持って両手を合わせる。 「じゃあ、その、いただきます」 「ゆっくりたべていってね!」 「麺がのびちゃうじゃないの」 そんなやりとりを踏まえつつも霊夢は箸を持ち、その麺をじっと見る。面の太さにばらつきがある。 だがしかし大事なのは見た目よりも味だ。 味はどうだろうと、若干の不安を覚えながらも麺にふぅふぅと息を吹きつけ、 ちゅるんとすする。 もぐもぐ、むにむに、こくん。 「あ……意外にも……」 美味しい。素直にそう思った。 ちょっとツユの味が濃く量が少ないが、麺がかなりの絶品だった。 生地がよく捏ねられているらしく、 噛むと口内で麺が踊るほどの弾力とシコシコとした舌触りが食欲をそそる。 霊夢は思わず次も一口うどんを啜る。 「ほめてもいいのよ!」 「調子に乗るな」 とはいうものの、その箸と口の動きは止まらない。 ちゅるん、もぐもぐ、むにむに、ごくん。ちゅるん、もぐもぐ、むにむに、ごくん。 まさかこれほどまでとは思わなかった。 風邪でだるい体でも無理なく食べることが出来て、優しく胃を満たすその味。 普段風邪をひいたときは誰かが見舞いに来てくれるまで神社の中で一人寂しく待っているか、 待ちきれないときは熱っぽい体を引きずって無理矢理粥を作る霊夢。 家の中の誰かが作ってくれた料理を食べることなんて、久しく経験していない。 強大な力を持つとはいえ、まだあどけなさを残した少女であるにも関わらず、だ。 「………………」 「れいむどしたの?」 「なっ、何でもないわよ」 場に流れた妙な空気を振り払うかのように更に一口うどんをすする。 そんな折、一言ぐらいはゆっくりれいむに礼を言っておくべきかなと思った霊夢。 あんまり褒めると調子に乗るけど、 今日くらいはいいかなと思いゆっくりれいむの方を横目でチラリと見ると、 涎を滝のようにたらしながら霊夢の方をじっと見つめていた。 霊夢は「そりゃそうよね。自分が一生懸命作ったうどんは普通食べたくなるわよね」と思わず苦笑する。 「食べる?」 「たべるっ♪」 即答かよと思いつつも麺を箸で一掴みして、ゆっくりの上に垂らす。 大口を開けて待っているゆっくりのところに、麺を放り込む。 「あち! あっち!」 「あ、ごめん。冷ますの忘れてた」 「人でなしっ!」 ゆっくりれいむがごろごろと転がりながら悶えていた。 霊夢がその光景を見てごめんごめんと謝る。 「ゆ~……」 口をすぼめて拗ねるゆっくりに対し、霊夢が手で招く動作をする。 「ゆっくり、ちょっとこっち来なさい」 「ゆゆ?」 霊夢がきょとんとした顔をしながら近づいてきたゆっくりをひょいと持ち上げ、 そのまま膝の上に乗せる。 続けてゆっくりの分のうどんに箸をつけ、うどんを持ち上げる。 霊夢は淡々とした様子でふぅふぅとうどんを冷ます。 「こうすればいいでしょ。ほらゆっくり、口を開けなさい」 「今日のれいむはやさしいね!」 「今日だけよ」 あ~んと、霊夢が口を開けてゆっくりに動作を真似させる。 ゆっくりは人間の幼児が母親の真似をするかのように口を開け、 そこ目掛けて霊夢が冷ましたうどんをするりと放り込む。 「ぱねぇ! めっちゃぱねぇ!」 「うるさい。黙って食べなさい」 涙目になりながらほんのりと至福の表情を浮かべるゆっくり。 霊夢はいいからさっさと食べろと、次の一口の分のうどんを取り出す。 「む~しゃ、む~しゃ、しあわせ~♪ すっげぇしあわせ~♪」 「うるさいっての」 ぱちんと霊夢がゆっくりの額を叩くが、そこに厳しさは見られない。 霊夢は自らうどんを啜り、次いでゆっくりれいむにうどんを啜らせ、それを交互に繰り返す。 はぐはぐと嬉しそうに食べるゆっくりれいむと、時折感嘆のため息を漏らす霊夢。 お椀の中のうどんはあっという間に減っていった。 「それにしてもアンタもやるわね。こんないいうどんを作れるなんて。ねぇ、どうやって作ったの? ――って何泣いてんのよ!? 私何か変なこと言った!?」 そんなやりとりからしばらく後、霊夢もゆっくりも食べ終えた。 胃が満たされることによる幸福感が彼女達にやってきた。 「ありがたう!」 「はいはい、お粗末さまでした」 何故か涙目になったゆっくりと、その頭にぽんと手を置く霊夢。 霊夢はゆっくりの口元を布巾で拭き取った。 「それとゆっくり、ご馳走様」 「ゆっ♪」 喜んでもらえて何よりだった。この笑顔が見れてよかったとゆっくりれいむは思う。 今だったらゆっくりしてもらえるんだろうな。ちょっとぐらい甘えてもいいよね。 ゆっくりれいむは霊夢に更に擦り寄った。 「ゆっくりしていってね♪」 「こらっ、離れなさいよ暑苦しい」 「ゆっ♪ ゆっ♪」とじゃれるゆっくりれいむ。 口を尖らせながら不満そうな顔をしているのに、されるがままにじゃれられている霊夢。 近頃の博麗神社で極たまに見られる光景であった。 「お邪魔するぜ霊夢~――ってあれ? 霊夢風邪引いたの?」 「やっほ~霊夢遊びに来たわ~」 そんな折、外から来訪者が次々とやってくる。霊夢の友人達である。 遅い朝飯とも早い昼食とも言える食事を終えた時間帯だ。誰かが来ても不思議ではない。 友人達は布団の中にいる霊夢を見て一瞬心配そうな顔をするが、 ゆっくりれいむを膝の上に乗せている霊夢の姿を見て指を刺して笑う。 「うっわ~霊夢ってそういうことするのホント似合わないな」 「今日だけよ! たまたまよ!」 「いくら餓えてるからってゆっくりを食べちゃ駄目よ~。共食いは体に悪いのよ~」 「誰が食べるか! お腹壊すっての!」 「はいはい。ふふふ」 「笑うなぁ~」 大声を出してけほけほと咽る霊夢と、からかった際の反応が楽しくて笑う友人達。 病人の傍で賑やかなものであった。 霊夢の周りには色々な者が集まる。 皆でワイワイと宴会をするのは楽しい。彼女達がたまに連れてくるゆっくり達と遊ぶのは楽しい。 大好きな霊夢とその仲間達と一緒に過ごせて、ゆっくりれいむは幸せだった。 ずっとこうしていたいと思う。だけどそれは適わない。 いつか自分にも寿命が来るだろう。饅頭だから賞味期限もあるだろうし。 仮に自分がこのまま妖怪として寿命を迎えずに生き続けても、 いつかは霊夢の方が死ぬ。人間にも賞味期限があるし。 だったら時が過ぎ去るのもゆっくりしていって欲しい。そうゆっくりれいむは考える。 来るものは拒まず去るものは追わず。だったら一緒にいる間ぐらい皆ゆっくりしていってね。 「ゆっくりしていってね!!!」 なんだかんだいって最後いい話で終わったな このれいむは可愛すぎるし健気でいい子だ 霊夢もいいなぁ、姉妹みたい -- 名無しさん (2011-02-20 16 52 09) れいむのうどんこねの様子可愛いなあ -- 名無しさん (2012-02-25 17 16 55) 名前 コメント
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尊王攘夷(そんのうじょうい http //ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8A%E7%9A%87%E6%94%98%E5%A4%B7? 尊王攘夷(そんのうじょうい、尊攘)とは、天皇を尊び外圧・外敵・外国を撃退しなければ日本の未来はあり得ないという表現で、江戸幕末に革命の旗印になり、各藩や公家または幕府内の過激派の間で熱く論じられた思想である。国の存在の根拠としての尊皇(尊王)と、侵略・侵入してくる外国に対抗する攘夷が結びついたもの。「王(きみ=天子)を尊び、夷(い=外国人)を攘(はら)う」の意。古代中国において、周王朝の天子(王)を尊び、王朝を守るため侵入する夷狄(いてき=周辺諸民族)を打ち払う、という意味で使われた言葉を、国学者が輸入して流用したものである。春秋時代がおこりとされる中国の尊王攘夷と峻別する際には「尊皇攘夷」と記されることもある。
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