約 3,917,720 件
https://w.atwiki.jp/shinmanga/pages/269.html
罪の最後は涙じゃないよ ◆lDtTkFh3nc 「……なぜだ?なぜ俺をここへ?」 「僕としては反乱の意思表示のつもりだが…これもレシピ通りなのかもしれないね」 「……娘二人はどうなった?」 「一人は死んだ。もう一人は知らない。残念ながら僕の管轄外だ」 「……貴様らは何を考えている。貴様らの言う神とは誰の事だ」 「言っても理解できないだろう。ただ一つ言えるのは、『未来は神様のレシピで決まる』。 僕の役割が何かじっくりと考えて、行動したに過ぎない。 まぁ君の命だ。良く考えて好きにすればいい」 「……いいだろう。それが『何か』の掌の上だとしても…… 俺は強者との戦いを望むだけだ」 「……度し難いね。いや、だからこそ僕は君を選んだ…つもりだよ」 「言葉は無粋……行かせてもらおう」 ★ ★ ★ ★ ★ ついてねぇ… 思わずそう呟きたくなるような状況に、一匹の獣がため息をつく。 思えば彼が目覚めてから今まで、出会った人間はロクなのがいなかった。 状況も理解できない酔っぱらいに変態仮面。 大嫌いな白面の匂いの女に、極めつけがこの勘違い女。 自分をこともあろうに「かわいい」などと表現した上、変化を見せたらそちらを正体と思い込む始末。 決めた。今後人間相手に自分が化物であることを示すときは変化以外の手段にしよう。 そんなミョーな決意を胸に、普通の高校生の格好をしたとらはため息をもう一つ。 「『自分』を『獣』に変える力…?とにかくその能力…貴方、もしや参加者ですの?」 勝手に盛り上がり質問をしてくる相手に、心から面倒くさそうな顔で一応答える。 「あぁ…?サンカシャ?わしゃそんな名前じゃないぞ。大体、仮の姿はこっちだ、こっち」 そう言ってなんとかわからせようとするものの、勝手に興奮している相手には通じない。 そういえばさっきからなにやら憎たらしい声もどこかでペラペラ喋っている。 一応内容は耳に入れるが、大したことでもなさそうだ。 「…もういいですわ。貴方がなんであれ、この場にいる以上私の敵であることは明白! 私はロベルトの為にも…勝たねばならないのです!覚悟!!」 そう叫ぶと、少女は何も持たずに突進してくる。 それをひらりと飛び上がりかわす…ハズが、おかしなことに。 姿を人間にしていたのにそのまま飛び上がろうとしたものだから、とらはバランスを崩し、 おっとっと、と人間のような言葉をはきつつ横に転がるように突進をかわした。 ズシャ、と不思議な音が響く。見るととらが立っていた背後の壁に刀傷のような後がついていた。 「くっ!」 「なんだぁ?お前、ただの人間じゃないな?」 改めて身構える相手にひとまず距離をとると、とらは変化を解除する。 「!!」 「あー、もう人間に変化するのやめようかね、まったく」 「か、かぁいいですわ…ハッ!そ、そんな姿で私をごまかせるとでも…!」 まーたおかしなこと言ってやがる、と呆れつつ、とらは相手の処遇に考えを巡らせる。 とりあえず今自分は腹が減っている。そして目の前には人間の、それも女。これを喰わない手はない。 問題は女が身につけている臭っせぇ着物だが、あんなもん食うときにひっぺがしゃいいだろう。 最悪我慢できる程度だ。「おーでころん」とかに比べりゃちょっとはマシなものである。 しかし、ととらは歯噛みする。 この女からはそれ以上に嫌な臭がする。 さっきの奇妙な力といい、どうみても人間であるはずのこの女にはおかしな所がある。 具体的に言えば、食ってもうまくなさそうな気がするのである。 とらは知る由もないが、鈴子は「悪魔の実」を食した事でただの人間ではなくなっており、 それがとらの「食物」を見る目に不審にうつったのであろう。 思案の末、とらはひとつの決断をくだす。 「やーめた」 そう言って身を翻すと、高々と空へと飛びたってしまった。 驚いたのは鈴子である。戦闘態勢に入っていたのに放置され、呆気にとられて立ち尽くす。 「な、なにを…え?あ、ま、待ちなさい!!」 叫んだもののどこ吹く風、獣は気持ちよさそうに飛んでいく。 追いかけようと足を刃に変え、先程の要領で移動を開始した時だった。 彼女はこの移動方法で、先程思い出したくもない事故を起こしている。 それが心にあったからか、動き出してすぐ集中力が乱れた。 だから路上の段差に気がつかず、躓いて今日何度目かのズッコケをやって… 結果的に巨大な剣の一撃をかわしていた。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ から回る少女を残して獣は悠々と空中散歩中。 あの女を殺して食っても構わなかったのだが… やはりあまりウマそうでなかったのと、実はもう一つ。 近くに非常に忌々しい気配を感じたことも原因だった。 まだある程度距離はあるようだが…長い永い付き合いだ。 これくらい近づけばわかる。「獣の槍」が、そこにいると。 ということはあのクソ忌々しいちび人間も近くにいる可能性があって… そんなセットの近くで人間を食おうものなら、どうなるかわかったもんじゃない。 そこでふと、ならば攫ってどこかで食っちまえばよかったのだと気づく。 きゅ、と急ブレーキで止まり腕を組むと、ぽんと手を叩く。 (そうだよ、攫ってどっか遠くでゆっくり食えばいい。簡単な話じゃねーか。 どうせ殺し合いとかいうのをやってるんだし、一人くらいわかるめぇ。 よし、そうと決まればこの辺でいいから適当な食いもんをさがすとするか) 舌なめずりをして嬉しそうに飛んでいくその様は、バイキングを前にした少年のようだった。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 頭上を通り抜けた鉄塊に冷や汗が吹き出る。 四つん這いでシャカシャカと距離をとった鈴子が振り返ると、そこには一人の男が立っていた。 その男の姿はぼろぼろであったが、射ぬくような視線が鈴子に軽い恐怖を与えた。 先程振り抜かれたと思しき剣…?を支えにやっと立っている姿は弱々しいものの、 明らかに危険な雰囲気が漂っている。 「な、な、だ、誰ですっ!あなたは!」 「てめぇこそ、その力…化物か?ならば…」 その力、とは先程見せた「スパスパの実」の力の事だろうか? 化物か、とは失礼な話である。確かに奇妙な力は幾つかもっているが… 彼女はれっきとした人間だった。 「化物だなんて…失礼な!それを言うならそんな物を振り回す貴方の方がよほど…」 豪ッ!!! 言い切る前に風切り音がなり、またしても鉄塊が振り回される。 今度は正確に狙い澄まされ、彼女の眼前に突き立てられた。 「ヒィっ!」 「なら答えな。その力…どうやって身につけた。まさかてめぇ…『捧げた』のか? それとも『もどき』のほうか?」 意味がわからなかったが、相手はどうやらこの力の出所を教えろと言っているらしい。 驚きのあまり話してしまいそうになるが…思いとどまる。 なぜ自分がこんな男にそんな重大な情報を話さねばならないのか。 よく見れば相手は傷だらけで見るからに疲れきっている。 巨大な武器のプレッシャーについ飲み込まれていたが、屈する必要はないのだ。 「…貴方に話す義理はありませんわ」 「そうかい」 そう呟くと、男は剣を抜き去り鈴子に向けて突きを繰り出した。 すかさず両手を交差し、ガードする。 本来ならこんな防御は愚の骨頂である。しかし今の鈴子には効果的だった。 なぜなら彼女の体は「全身刃物」。それはすなわち「全身鉄の硬度」を意味する。 鉄を切れる人間でない限り、決して剣ではダメージを負わせられないのだ。 事実相手の突きは鈴子の腕を切断することはなく、少し後ろに吹き飛ばされただけで済む。 「チッ…やはりただの人間じゃねーな」 「問答無用で攻撃とは…貴方は危険ですね。申し訳ありませんけど…排除します!」 立ち上がった鈴子は両腕を刃物に変え、男に切りかかる。 攻撃を「かわす」必要がない以上、こちらの有利は絶対。そう確信しての攻撃だった。 それ故に、男の対処は想定内。剣を構えなおし、横薙ぎでの攻撃。 腕以外の全ても刃物に変え、攻撃に備える。「斬撃」は自分に通じないと思い知ればいい。 本日始めて物事が上手く進んでいる実感をもった鈴子。 そういう時こそ危ないものである。 結論から言えば、鈴子は敗北した。これでもかという程に。 襲撃者…ガッツのドラゴンころしによる一撃は「斬撃」ではなく「打撃」だったのだ。 もともと切れ味で勝負するわけではない剣である。その重量とそれを操るガッツの腕力。 それがそろえば鉄を切れぬとしても、ヘタをすれば砕ける位の威力は生まれる。 弱りきった今の彼でも、鈴子を吹き飛ばすくらいの一撃は放つことが出来た。 内臓を思い切り揺さぶられ、吐くに吐けない最悪の嘔吐感を与えられて鈴子は踞る。 「う、ケハッ」 そんなまともに動けない彼女の後ろ手を相手が掴み、何かで縛った。 拘束し、情報を奪うつもりだろうか。これはツイている。 神はまだ自分を見放していないと、鈴子は内心でほくそ笑んだ。 体が回復したら縛ったものを刃物に変えたこの身で切り、奇襲をかければいい。 あるいは相手が尋問の為に自分に触れてきたらそれを切り裂いてやる。 対抗手段はまだいくらでもある。希望は捨てませんわ、と力強く誓った。 結論から言えば、これも失敗。 ガッツが彼女を拘束したのはどこから調達したのか「鉄線」であった。 こんなもの切るにはニッパのようにテコの原理や勢いが必要だ。 こんな状態ではそのどちらも難しい。 鉄に「斬撃」が効かないことに苦しめられるのは自分だった。 ならば、相手が接触してきた時に反撃を…と身構える。 予想外にガッツがつかんできたのは頭だった。 真上から抑えるように腕を後頭部に突きつけてくる。 「(今ですわ)喰らいなさい!!」 叫びと同時に後頭部周辺を一気に刃物へ。そして背筋を全開にして頭を持ち上げる。 これで指くらいは切り飛ばせるはず…しかし、というか。 やはり、というか。これもまた、失敗だった。 「…金属音…それに先刻の動き…どういう理屈かしらねぇが…体を刃物にできる、ってとこか?」 「え、えーーーー!どうして!?」 「生憎、こっちは義手でな」 ご、と力強く地面に押し付けられ、鈴子は短く悲鳴をあげる。 ツイてない、とことんツイてなかった。 これで万策尽きた。もはや座して死を待つのみである。 「さて…その力について詳しく教えてもらう。ついでに知ってることは全部言え」 一段低くなった男の声。それが再び彼女に恐怖をもたらす。 「利用価値がねぇなら…」 そこでさらに込められる力。 抵抗むなしく、鈴子の情報は漏れていく。 「悪魔の実」について、それを食べた経緯…さらに、神を決める戦いについて。 あるいは先程の変身能力者のこと。診療所で入手した首輪のこと。 鈴子は正直に話す。実はある程度ごまかそうとしてはいたのだが…ガッツがそれを許さない。 少しでも胡散臭いと感じれば容赦なくその顔面を固い地面に叩きつけた。 御丁寧にメガネを外してくれていたとはいえ、その痛みは凄まじい。 なにより、顔は女の命である。それを傷つけられるのは…辛かった。 しかし、彼女は危険を承知でロベルトに関する情報だけは一切漏らさなかった。 それで殺されても本望。そのくらいの覚悟で臨んでいた。 結局ロベルトに関する事以外のほとんどの情報を奪われ、尋問は終わる。 「…もう十分だな」 その言葉に、鈴子は寒気を覚える。それが意味することは単純明快。 用済みとなった情報源の始末、これにほかならないだろう。 死ぬ。自分は死ぬのだ。 そう思うと恐怖と悲しみとがないまぜとなった涙が溢れ出す。 どうしてこんなことに…あぁ、助けてロベルト!と嘆くばかり。 ただ彼の力になりたかったのに…何も、何も出来ない。 結局一人で出来ることなんて限りがあった。 かといって、誰かを、ロベルト以外の誰かを頼る気にもなれなかった。 だってそうでしょう?死んだ仲間の首をはねたり、裏切ったり、裏切られたり… そんな関係に神経をすり減らすなんて御免ですもの。 そう鈴子は考えていた。本当は、『友達』が欲しい。 だがこの時点の彼女が知る『仲間』はとても『友達』とは呼べない者達ばかりだったが故に… 彼女の歪んだ人間観は孤独を選んでしまった。 それでも最期に思い出されるのは…ロベルトの顔。 最後に彼に会いたかった…そうつぶやこうとした時だった。 グルリ、と仰向けに向き直されると、顔に何かをかけられる。 「けほけほ…な、なんですの?」 「妖精の燐粉だ…持ち主は生意気な奴だが…効果は本物だからな」 答えたのはガッツだった。 本人も体の至る所に粉を塗っている。 「こ、これは確か私の支給品のハズ…」 「だからお前にも使ってやっただろうが。命と引き換えだと思えば安いもんだろ」 その言葉を理解するのに少し時間がかかった。 「こ、殺さないんですの?」 「ふん…さぁな。後で殺すかもしれないぜ。妙な事をしたらな」 言いながら乱暴に鈴子の身を起こすガッツ。 顔面の傷は随分と回復していた。 「例えばこういう時に余計な真似をするとかな。どの道逃げられねぇんだから、変な気は起こすなよ」 確かに両手を縛られた状態では逃げるにも満足に出来ない。 今半端な反撃をしても無駄ではある。しかし… 「で、でもそんな事をして、貴方になんの利があると言うのです?」 「…俺が聞きたいくらいだな。ほらよ」 鈴子を壁に寄りかからせ、何かを探し出すガッツ。 彼がこんな行動をとったのは、決して気まぐれではない。 気まぐれでこんな行動をとる男ではない。ではなぜか? 生真面目な態度のくせに、どこか抜けたところのある少女。 それがどこかの誰かさんを思い起こさせたのである。 聞けばまだ誰も殺していないという少女。決して化物ではなく、奇妙な力を持っただけの人間。 信じがたい話も混じってはいたが、あの状況で「嘘」はつくまい。 「隠し事」はあるかもしれないが… とにかく、なにも殺すことはない。そんな風に思えてしまったのである。 それは、直前に仮初とはいえ『仲間』との共闘をしていたのも大きいのだろう。 ガッツは見つけたそれを、元の場所へ戻す。 「あ…」 「なきゃ見えねぇんだろ」 メガネをかけて貰い視界に映った男の姿は、信じられないくらいに優しげに見えた。 ドカッ! ザクッ! ほぼ同時に発生した二つの音。 鈴子の体当たりによって突き飛ばされたガッツが尻餅をつきかけて踏みとどまる。 ふと手を見れば、血がついていた。 「な…」 「…バカ、ですわ」 ズルリ、と音を立てて、倒れる。 まるでスローモーションのビデオのようにゆっくりと。 ガッツは何が起こったのか必死で考える。なぜ、こうなった? 全身刃物のハズの少女の脇腹に、深々とナイフが突き刺さっていた。 「う、うぉおおおおおお!!!」 背後に走り、立てかけておいた得物を手にとると闇雲に振り回すガッツ。 今近くには誰もいなかった。しかし、目の前で少女は刺された。 そこから導き出される答えは、姿の見えない襲撃者。 その可能性に対処するための行動である。これは正解だった。 姿を消していた襲撃者はその攻撃に驚き、ナイフを鈴子の脇腹に残したまま離れてしまう。 ガッツは剣を振り回し続け、相手の接近を拒んだ。 まさしく虫の息の鈴子は思う。 なぜこんな馬鹿な事をしたのだろう、と。 メガネをかけられて、相手と目があって…なぜか照れくさくて目をそらした。 そこで偶然視界に入ったのは、転がる石ころ。それはあまりに不自然で… 直感的に、そこに誰か『居る』と思った。そしてその誰かが男に接近してると気づいた時には… もう動いていた。 もう、今度こそ本当に死ぬだろう。 結局自分は何も出来なかった。ロベルトの為に何一つ出来なかった… これは、報いなのだろうか。 自分が腕を切断した少女…首輪を奪った死体… それらが目の前で渦を巻いているような気がした。 その渦の向こうで、男は剣を振り回している。 上半身裸で包帯だけ巻いて…なんとも男っぽい姿だった。 そういえば、なぜ彼は逃げないのだろう。 そこで気がつく、男が少しずつ自分に近づいていることに。 あの人は、まさか自分を助けようとしてくれているのだろうか。 いいえ、それは少し夢を見すぎですわね…けれど… 今際の際くらい…夢をみさせてください。 自嘲気味な笑顔を浮かべて、鈴子はもう少し近くを見渡す。 (ありました、わ) そこには先程ばらまかれた変態写真の一部が落ちていた。 と同時に飛び出した大量の「あるもの」も。 先程の変身能力者に支給されたのだろうか。なんとも奇妙な偶然だ。 鈴子は最後の力でズルズルと動き、ありったけの「それら」に手で触れる。 そしてその上にゴロンと仰向けになおると、少し清々し気な顔をして叫んだ。 「ケホッ!あ、あの…貴方のお名前を…教えて…ゴホッ!」 血でむせてしまい上手く言えない。伝わっただろうか。 「何言ってやがる!今はそれどころじゃ…」 「お、お願い…です!!」 鬼気迫る声に圧倒されたか、ガッツは剣を振るう手は止めずに応える。 彼自身も疲労が蓄積し、足元が覚束ない状況だった。 「…ガッツだ」 「ガッツ、さん、です…か、ゴホッ!わ、私は…鈴子…鈴子・ジェラード、です…」 そこまで言い切ると、目を閉じる。 あの人が、助かるように。ここから逃げ出せるように。 自分は行動するんだ。そう決めた。今ここにいないロベルトにするように… ここにきて初めてまともに会話をすることが出来た、この男性の為に。 鈴子はうっすら、笑みを浮かべる。 「ごめんなさい…ロベルト」 その言葉が終わるか終わらないかのうちに、彼女の体の下から光が爆ぜる。 爆風とそれに煽られた砂煙が周囲を飲み込んだ。 煙が晴れると、そこには誰もいなかった。 少女の死体も、剣士の姿も、文字通り見えない襲撃者の姿も。 やがてガラッと音をたて瓦礫の下からガッツが姿を表した。 先程までの襲撃者の気配はない。爆発に飲まれて死んだか…恐れをなして逃げたか。 どの道、姿が見えないだけで戦闘力は高く無さそうだな、と感じた。 要警戒であることに変わりはなかったが。 なぜあの少女がこんな真似をしたのかわからなかった。 自分を突き飛ばしたのはあの攻撃から守るためだったのか。 最後に自爆したのはジリ貧となりつつあった状況を打破する為だったのか。 もはや誰にも聞くことは出来ない。 しかし、一つの事実として少女が死んだ。それだけが残った。 彼女に接近したのは情報収集の為。 放送を聞きつつ様子を確認し、人外である可能性を感じて襲撃、情報を奪おうとした。 特にグリフィスに関する情報はしっかりと吟味したが、大した物は得られなかった。 結果として奇妙な関係となってしまったが… ガッツは思う。 あの焔の男も、放送によればブラックジャックはじめあの病院にいた連中もほとんど死んだらしい。 先程共に戦った者達も、敗れたのか相討ちかはわからないが倒れたという。 ……事実、あの減らず口野郎の死体は自分の近くで見つけた。 そして今の少女も。 自分に関わった人間は皆死ぬ。 『あの連中』に言わせればこれも因果律という奴だろうか。 「……クソッ喰らえだ」 それは、ガッツが最も憎むもの。 定められた運命……そんな物に従って、アイツらは死んだっていうのか? もともと死ぬ定めだったというのか……捧げられた、『鷹の団』のように。 そんなことを認めてたまるものか。 改めて湧き上がる怒りを静かに胸に秘め、ガッツは立ち上がる。 「何度だって言うぜ。そのしたり顔で御託を並べるのは、オレが取り殺されてからにしな」 いつの間にかそこには馬に跨った一人の騎士がいる。 一瞥すらすることなく、ガッツは騎士に言い放っていた。 「……ならば命燃え尽きるまで戦うがいい。それこそが唯一の望みなり」 そう言い残し、髑髏の騎士は消える。 先程まで彼がいたその場所に鉄塊を叩き込むと、ガッツは吠えた。 【鈴子・ジェラード@うえきの法則 死亡】 【I-8/路上/1日目/日中】 【ガッツ@ベルセルク】 [状態]:疲労(特大) [服装]:上半身裸 [装備]:衝撃貝(インパクトダイアル)@ONE PIECE ドラゴンころし@ベルセルク [道具]:支給品一式、炸裂弾×2@ベルセルク、折れたキリバチ@ONE PIECE、青雲剣@封神演義、妖精の燐粉(残り50%)@ベルセルク [思考] 基本:グリフィスと、“神”に鉄塊をぶち込む。 1:運命に反逆する。 2:グリフィスを殺す。 3:グリフィスの部下の使徒どもも殺す。 4:なんか、夢に見たか? 5:なぜヤツが関わっている? [備考] ※原作32巻、ゾッドと共にガニシュカを撃退した後からの参戦です。 ※左手の義手に仕込まれた火砲と矢、身に着けていた狂戦士の甲冑は没収されています。 ※紅煉を使徒ではないかと思っています。 ※妙と、簡単な情報交換をしました。 ※左手の義手に衝撃貝が仕込まれています。 ※鈴子からロベルト関係以外の様々な情報を得ました。 ※鈴子の死体と荷物、ビーズ、蝉のナイフは近くに転がっています。損傷の可能性アリ。 ※ビーズ@うえきの法則はとらの不明支給品の一つです。 【ビーズ@うえきの法則】 普通のビーズ。洋服の装飾などに用いることも当然可能。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ハァハァと息を切らし、三千院ナギは透明化を解除。 民家のソファにへたりこんだ。 失敗だった。 戦っている者同士のスキを突き、まず強そうな方から倒す。 作戦自体は悪くなかった。問題は、なぜか敗者が勝者を庇ったこと。 それで随分と予定が狂ってしまった。しかし…… (あの強そうな大男だって、結局私に攻撃をすることは出来なかったじゃないか) 見るからに普段の自分では倒せそうにない男だった。 それを追い込み、翻弄したのだ。これは自信につながることだった。 次はしっかりと強者から倒していこう、と決意も新たに、ひとまず武器を探す。 台所で数本の包丁を入手し、カバンに収めた。 落ち着こう落ち着こうと思ってはいるものの、やはり気が焦る。 休憩もそこそこに家を出ると、ナギは市街地を慎重に探索しはじめた。 姿は消していない。 常に姿を消しているとなぜかやたらと疲れる気がしたからだ。 本人としては全力で警戒しながらの行動だったが、常に命のやりとりをしてきた 猛者から見れば格好の獲物になっただろう。 運良く今の所遭遇してはいないが… 大きな通りには人が見受けられず、焦りを覚えたナギは路地裏に入った。 そこで奇妙な光景を目にする。金網の前に突然男が現れたのだ。 その男は全裸で片膝をついた状態で姿を現すと、一切を隠すことなく周囲を見渡す。 物陰からその様子を見ていたナギは赤面しつつも、すぐにブンブンと頭を振って観察を始めた。 相手は先程の男にも勝る大男だった。しかし化物という訳ではない。 武器などを所持している様子はなく、その格好から何かを隠し持っている可能性が 限りなくゼロに近いことは容易にわかる。 ナギは姿を消し、包丁を二本構えてゆっくりと男に近づく。 (慌てるな…三千院ナギ…大丈夫、うまくやれる) 男はまるでロボットが動作確認でもするみたいに手や足を動かしている。 チャンスは今だ。これを逃す手はない。 先程のように発見されるようなマヌケをしないよう慎重に歩を進め、遂に手が届く所まできた。 嫌な感じが全身を覆う。人を刺す。そんな行為を少女の体が拒否している。 それでも、たどり着きたい場所があるから… 息を浅く一吸い。そして、刃を男の脇腹に突き立てる! 見事、刃は男に刺さった。 手応えを感じナギはやや高い位置、心臓付近に第二撃の狙いを定める。 だが… ゾワッ!!!!!! 見上げた獲物と目が合った瞬間、覚えのある寒気が彼女を襲う。 とっさに包丁を手放し全力で相手から離れたが、少し遅かった。 男は腕をふるい、その指先がわずかにナギに触れる。 それだけで命を持っていかれたかと勘違いする所だった。 驚きと恐怖に思わず尻餅をつく。 息が荒い。このままでは気づかれてしまう。 ナギは深呼吸を繰り返す。 (お、落ち着け…相手はこっちの位置がわからないんだ。ここは一旦逃げれば…) 冷静に、努めて冷静に対処しようとするナギ。 その彼女の目の前で男の姿に異変が起こる。 最初は何が起こったのかわからなかった。しかしすぐに化物が擬態していたと気づく。 腕が、足が、胴体が…全身が何回りも大きく膨れ、 男の姿は人間でない『何か』へと変貌していく。 その様を見て彼女の中の憎悪もまた…同様に膨れていった。 三千院ナギの戦いは終わらない。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 寒い。 カタカタと体を震わせながら西沢歩は歩いていた。 ほぼ裸同然だった状態から、ナイブズにマントを貰ったおかげで恥ずかしさは随分減った。 しかし寒さはどうしようもない。薄いマント一枚ではとても防寒着とは言えなかった。 それはナイブズにも言えることのハズだが、彼は顔色ひとつ変えていない。 (やっぱり、人間じゃない…のかな) 先程の襲撃者が楽しげにペラペラと語った内容によれば、ナイブズは人間ではないらしい。 それならばあの強さ、威圧感、そして自分を助けてくれた謎の力と、あらゆることに納得がいく。 少しは恐怖もあった。自分が今人外の何かと行動している。それは怖い。 しかし、それはもともとだ。彼に感じる恐怖はある程度わかっていたこと。 それでも、彼女はついてきたのだ。 打算や自暴自棄、あるいは恩返し。様々な感情をないまぜにして。 だから今更その事実がハッキリしたところで接し方は変わらなかった。 なにより彼女自身が、そんなことに気を配っていられる状態ではない。 三千院ナギを守る。 考えてはみたものの、それが自分に出来るだろうか。 ハヤテ君の代わりに、と軽々しく思いはしたものの、それがどれだけ大変なことかはよく知っている。 それでも、今の彼女にはそれくらいしかすがるところがなくて。 なにより、理解し合えた友人を失いたくはなくて。 (う~、もうやめよう。これ以上考えてたら耐えられないよ。 今は目の前の、あの人たちに何ができるかの方が大事じゃないかな) 結局考えはまとまらず、とりあえず保留しておく。 先程の放送で、とりあえずナギの名は呼ばれなかった。 しかし、一つ知った名前が呼ばれてしまう。 Mr.2ボン・クレー。ボンさんの名だ。 何があったかは分からない。ただ、悪い人ではなかった。 もう絶対会えないと思うと、自分でもびっくりするほど悲しくて… 自然と涙がこみ上げてきた。 しかし立ち止まり泣いている暇はない。 ゴシゴシと目にたまった涙を拭うと、ナイブズの背を追い歩き続ける。 その時だった。 凄まじい雷鳴が天空で鳴り響く。 「きゃあああ!!ま、また!?一体な、なんなのかな!?」 思わず上を見上げると、そこを駆け抜ける二つの影。 ひとつは漆黒の、巨大な影。もうひとつは金色の、美しい風。 その二つが踊るように絡み合いながら、どこかへと飛んでいく。 「ナ、ナイブズさん…」 「……人間ではあるまい。だが同胞でもない…」 それだけ呟き、影がみえなくなると興味がないと行った感じでナイブズは再び歩き出した。 あわてて彼女も追いかける。気にはなったがもう見えなくなっていたし、なにより怖い。 影が、というよりも、一人になるのが。だからついていった。 それが普通だろう。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 崩壊したデパートを眺めて、趙公明は嬉しそうに呟く。 「さぞ、楽しかっただろうね。僕も動かずここにいればよかったかな」 そこに見受けられる様々な戦闘の痕跡に胸踊らせる。 これは多対多、しかも実にバラエティに富んだ兵装のぶつかり合いだったようだ。 先程のナイブズとの戦いといい、まったく退屈しない。 「しかしここにあったワープポイントは使えない。競技場に行くにも歩くしかないね」 彼がデパートを目指したのはそのワープポイントを利用して移動することが目的。 禁止エリアに囲まれ動きづらくなる前にさっさと抜け出そうと思ったのである。 別に競技場に向かう必要はない。 しかしナイブズという非常に興味深い存在にその情報を与えた以上、多少の価値はある。 そこにトレビアンな細工を施して、強者達を迎える舞台とするのも悪くないだろう。 映像宝貝は気になるが、獲得の目が薄いことはキンブリーに知らされている。 何者かがあの場へ襲撃を仕掛けたようだがその後はいたって静かだ。 あまり盛り上がってはいないのかもしれない。 だったら禁止エリアが進入禁止になる前にさっさと北上したほうがいいかもしれない。 その為の移動に、神の陣営からある程度知らされていたワープを有効活用しようとした訳だ。 しかしデパートは完全に崩壊し、ワープポイントの形跡などほとんど無い。 と、そこで足元に何かの気配を感じ、趙公明はしゃがみ込む。 そしてしばらく瓦礫の山を触った後、鞄から盤古幡を取り出した。 あまり力を無駄遣いしない程度に重力を操り、重い瓦礫をどかしていく。 中から出てきたのは一人の男の死体と、鎧だった。 「ふむ、中々面白そうな道具じゃないか。確か…狂戦士の甲冑! 僕が着るには少々華やかさが足りないが…誰かに貸して上げるのも悪くない」 そう言って鎧を拾い上げ鞄に収める。 その時、彼の携帯電話から着信音がなる。 「もしもし、やぁ君か。なんの用だい?え? 僕と似た立場の参加者を用意した?どういう事だい?」 不審な内容にも関わらず、趙公明の顔は明るい。 「なるほど…参加者を利用してね。それで、僕に何を求めてるのかな? …その彼と無駄な戦いはしないで欲しいと。ハハハハ!!それは無理だよ」 何かが空中を通り抜ける気配を感じ、空を見上げる。 その目にもまた、二つの影が通り過ぎるのが映った。 「強いんだろう?だから選んだのだろう?なら、戦いたいじゃないか! 君や『彼』が何を考えていようとも、僕は強者との華麗な闘いを望む!それだけさ! それが掌の上というのなら…大歓迎だよ! なんだい、嬉しそうだね。いや、僕も嬉しい。君ともいずれ闘いたいものだ。 何がしたいのか知らないけれど、頑張ってくれたまえ」 本当に嬉しそうに笑いながら会話を終え、電話をきる。 しばらく携帯を手の中で弄んだ後、瓦礫の山からヒラリと飛び降りた。 「二枚目のジョーカーという訳か。ますます楽しくなってきたね」 【I-7/デパート跡地/1日目/日中】 【趙公明@封神演義】 [状態]:薬指と小指喪失、脇腹に裂傷 [服装]:貴族風の服 [装備]:オームの剣@ONE PIECE、交換日記“マルコ”(現所有者名:趙公明)@未来日記 [道具]:支給品一式、ティーセット、盤古幡@封神演義、狂戦士の甲冑@ベルセルク、橘文の単行本、小説と漫画多数 [思考] 基本:闘いを楽しむ、ジョーカーとしての役割を果たす。 1:闘う相手を捜す。 2:競技場に向かう? 3:カノンと再戦する。 4:ヴァッシュ、ナイブズに非常に強い興味。 5:特殊な力のない人間には宝貝を使わない。 6:宝貝持ちの仙人や、特殊な能力を持った存在には全力で相手をする。 7:キンブリーが決闘を申し込んできたら、喜んで応じる。 8:ネットを通じて遊べないか考える。 9:狂戦士の甲冑で遊ぶ。 10:二人目のジョーカーに興味。 [備考] ※今ロワにはジョーカーとして参戦しています。主催について口を開くつもりはしばらくはありません。 ※参加者の戦闘に関わらないプロフィールを知っているようです。 ※会場の隠し施設や支給品についても「ある程度」知識があるようです。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ 真っ暗闇で、遠くに人影が見える。 あれは…とても見覚えのある影だ。とても大切な影だ。 そう、あれは……ハヤテだ。 ハヤテ!!そう、ハヤテだ!!! やっぱり生きてた!やっと会えた! まったくあいつは、まったく!! ハヤテだけじゃない。伊澄もサクも、マリアもヒナギクも皆いる。 やっぱり私の仮説は合ってたんだ。別の世界ではみんな生きてる。 あの中心に私も……ん? 誰だ、あそこにいるのは。そこは私の場所だぞ!勝手に居座るな!! 誰だ、誰だ、誰だ!! あれは…あれは、 あれは、私だ。 私がいる。 そりゃそうか。他のハヤテ達がいるなら、他の私がいても何もおかしくない。 でも慌てることもない。『神』とやらに頼んで、アイツと私の立場を入れ替えればいいんだ。 冴えてるな、今の私。だからとりあえず、一度近づかなくっちゃな。 あ、あれ?なんだこれは? 壁…か?見えない壁みたいなのが…A○フィールド? 邪魔だなぁ…なんでこんな物があるんだ。 消えてくれ!私はハヤテ達に会いたいんだ!!! 消えろ、消えろ、消えろ!!! あっちであんなに楽しそうに話をしてるのに… 近づけないなんて非道い話があるか。誰か、誰か!おーい!! 私はここにいるぞ!ハヤテ!マリア!サク!伊澄!みんな!!! どうして…どうして近づけない……なんで…… あ!ハヤテが!ハヤテが近づいてきてくれる! やっぱり、やっぱりアイツは、最高の執事だ!!! ハヤテ、ハヤテ、ハヤテーーーーーー!!! こんな壁、壊してくれ!! みんなに会いたい、皆に触れたいんだ。 ハヤテ、お前と……手を、繋ぎたいんだ。 ハハ…なんだか今日の私、いやに素直だな。 なに、少し嫌な目にあってな…みんながいることの有り難さがよくわかったよ。 だから、な?この壁を壊してくれよ。 ……え?なんで?なんで壊せないんだ!!! ハヤテ、お前はハヤテだろう?私の最高の執事じゃないか! どうして…… この壁は、私が作った物?バカな、そんな訳あるか。 私が何を、何をしたって言うんだ。冗談はよせ。 ……なぁ、冗談だろう?そんなの聞いてなかったぞ。 私はただみんなに会いたくて…必死で…自分に出来ることをしようと思って… それが一番だって!一番あるべき姿だって思って!!だから!!! だから人まで殺したのに それがこの壁を作ったっていうのか もうみんなに触れられないのか。 楽しく喋れないのか。自慢話も、漫画の話も…何も話せないのか。 ハヤテ、お前にも……もう、なにも出来ないのか? 手が、手が繋ぎたかったのに…私の手…握って欲しかったのに… そうか、ホントだ。 よく見たら、私の手、真っ赤じゃないか。 こんな手じゃ、ハヤテも嫌だよな。 ハハ、当たり前の事なのに、どうして気がつかなかったんだろう。 こんなことして…なにも変わらない世界に戻れる訳なんてないのに。 だって、私自身が一番変わってしまったんだからな。 ハハハハ、可笑しいな。ハヤテも笑え。面白いだろう? ハハハハ……ハ、ハハハッ…… ……グスッ、う、うわぁ……うわぁああああん!!! どうして優しく微笑んでくれるんだ! 触れることも出来ないのに!もう二度と近づけないのに!! どうしてそう優しいんだ、お前は!! ……壁越しでもいい。ハヤテ。 その手を、触らせてくれ。 ゆっくりとその手を伸ばし、手と手が触れ合う。 その手をぎゅっと握り、閉じていた瞼を静かに開く。 そこにはよくある顔が見えた。でも、知っている顔だった。 自分の手を握ってくれていたのがその顔だとわかって、思わず苦笑しながらナギは呟く。 「……なんだ、お前か」 【三千院ナギ@ハヤテのごとく! 死亡】 時系列順で読む Back 135 To be, or not to be that is the question Next 136 味わうのは勝利の美酒か それとも敗北の苦汁か 投下順で読む Back 135 To be, or not to be that is the question Next 136 味わうのは勝利の美酒か それとも敗北の苦汁か 123 花の命は結構長い。女ですもの! 鈴子・ジェラード GAME OVER 131 番長たちの挽歌(下) ガッツ 138 素晴らしき日々~不連続存在~ 131 番長たちの挽歌(下) 三千院ナギ GAME OVER 130 運命よそこを退け、俺が通る 趙公明 140 『戦おうじゃないかっ、趙公明1番!!』作詞 C.公明 / 作曲 魔礼海 123 花の命は結構長い。女ですもの! とら 136 味わうのは勝利の美酒か それとも敗北の苦汁か 130 運命よそこを退け、俺が通る 西沢歩 136 味わうのは勝利の美酒か それとも敗北の苦汁か 130 運命よそこを退け、俺が通る ミリオンズ・ナイブズ 136 味わうのは勝利の美酒か それとも敗北の苦汁か
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/56982.html
【検索用 きれいしゃない 登録タグ Peg Synthesizer V き さぶろう 井上カワズ 曲 曲か 花隈千冬】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:ヤマモトガク 作曲:ヤマモトガク 編曲:ヤマモトガク 映像:井上カワズ (X) マスタリング:さぶろう 唄:花隈千冬 曲紹介 口では何とでも言えるし 曲名:『綺麗じゃない』(きれいじゃない) 「放蕩レコーズ」によるコンピアルバム『完全変態』収録の書き下ろし楽曲。 歌詞 (動画より書き起こし) もう誰のことも 信じれないよ 「劣等感なんかは誰でもそう 一番良いのはありのまま」 ダウト、ダウト、ダウト 「言っちゃいけない事言うけれど お前はただのよくいるかまちょ 病んでる自分が好きなだけ」 ダウト、ダウト、ダウト? 鏡よ鏡。この世で私以外 口が裂けてしまったら、いとをかし 愛しいくらい私も人並み そしたら私、綺麗? 嘘つくな 正論なんか聞きたかないけど ねえ私、綺麗? 嘘つくな 分かるから。目を見て言ってよ ねえ私、綺麗? 綺麗? 可愛くなくてごめん 生まれてきてごめん 『狂気』な私の月は綺麗? 仰る通りこの世の私以外 好きじゃないし どうなろうが構わない 「せめて心だけは綺麗でいなさい」 こんな心は綺麗? 嘘つくな 正論なんか聞きたかないけど ねえ私、綺麗? 嘘つくな 分かるから。目を見て言ってよ ねえ私だけ? 不織布の下を世に晒す時は 私はひとりの修羅なのだ 不織布の下を晒して問うから 変わらずずっと綺麗と言え 縞麗? 嘘つくな 正論なんか聞きたかないけど ねえ私、結麗? 嘘つくな 分かるから。目を見て言ってよ ねえ私、綺麗? 「綺麗」 コメント 名前 コメント コメントを書き込む際の注意 コメント欄は匿名で使用できる性質上、荒れやすいので、 以下の条件に該当するようなコメントは削除されることがあります。 コメントする際は、絶対に目を通してください。 暴力的、または卑猥な表現・差別用語(Wiki利用者に著しく不快感を与えるような表現) 特定の個人・団体の宣伝または批判 (曲紹介ページにおいて)歌詞の独自解釈を展開するコメント、いわゆる“解釈コメ” 長すぎるコメント 『歌ってみた』系動画や、歌い手に関する話題 「カラオケで歌えた」「学校で流れた」などの曲に直接関係しない、本来日記に書くようなコメント カラオケ化、カラオケ配信等の話題 同一人物によると判断される連続・大量コメント Wikiの保守管理は有志によって行われています。 Wikiを気持ちよく利用するためにも、上記の注意事項は守って頂くようにお願いします。
https://w.atwiki.jp/kt108stars/pages/9565.html
103 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/07/30(水) 10 18 17.93 ID v98saSqu0 愚痴スレ向きかもしれないが ウチのPLの一人にいい加減キレそうだ 善人プレイ推奨システムで下衆な行動するとか相当好き勝手やるくせに 自業自得であろうと不利な状況になったらPLフレンドリーじゃないて文句言う ご都合主義をやったらやったでGMのあからさまな三味線が透けて見えて萎えると文句言う PLが心地よいと思えるように、かつそれを気付かせないようにさりげなく接待し続けろってことかよ 他のPLも、止めさせるほどじゃないけど好きになれない態度だなぁくらいしか言ってくれない日和見ばっかだし 最近GMをやるモチベーションがゴリゴリ削れていってる 104 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/07/30(水) 10 28 38.26 ID jKxzv1u90 悪いことは言わん 追い詰められすぎる前に周囲にぶっちゃけて少し休め 107 名前:ゲーム好き名無しさん[sage] 投稿日:2014/07/30(水) 11 21 29.16 ID z1ZpJWZH0 終了後に感情的に成らずに話し合ってみて、それでも妥協点が見いだせないなのなら、一緒に遊ぶ必要はありません。 ガイギャックス先生の有り難いお言葉です。 スレ391
https://w.atwiki.jp/doloris/pages/15.html
おいしいものが食べたくなって、食べちゃいました。 お取り寄せしたカニです。 最近の流行りというかちょっと前まではなかったと思うんですが、カニ脚ポーションを注文して食べました(=^・^=) こんな食べやすいものがあったんですね。いっつもカニの殻むきに苦戦していたのが馬鹿らしく思えます。 殻がむいてあるので、身の部分にかぶりつくだけでいいんですし、おいしい身がいっぱい食べれたんでかなりの満足度ですね^m^ これなら味噌汁とか鍋に入れても食べやすいんで良さそうですよね。子供とかでも食べやすくて良さそうです。 今までは、まるまる買っても、カニの甲羅部分はほとんど捨ててしまうので、なんかもったいない気がしてたんでポーション最高だと思いますよ(^^♪ なんかしゃぶしゃぶ用のむき身とかもあったんで、こんどはそっちにしてみよーかな。。。
https://w.atwiki.jp/tesu002/pages/1474.html
梓と純ちゃんが『喜多上中学校』の卒業生に当たり、むぎの頼んだ組織が唯を探している間、残る私たちは パソコンで今までどおりに作業をするということに決めた 例の容疑者3人がまったくの無関係だったときのことを考えて、ほかの犯人の目星をつけておく必要もあるかもしれない。ゆっくりしてはいられないのだ ところが むぎに調査を頼んだ次の日の夕方、むぎから電話があった 「唯ちゃんを見つけたって!例の歓楽街のあたりよ!」 私はこのとき、むぎの力にもっと早くから頼るべきだったかもしれない、と思った それからすぐ、私たち3人は私の部屋に集まった 唯に会いにいく。今夜だ。むぎの頼んだ組織は唯をぴったりマークしているから、見失うことはないだろう あくまで偶然を装って。唯のことが心配だからとりあえず会いに来たら、本当に会えた、ということにして… 私たちは夜8時ごろ、家を出た 8時半、私たちは例の繁華街に立っていた。むぎの携帯電話が鳴り、今、唯がどの辺りにいるかの情報が入った 「『xyz』っていうバーの辺りにいるらしいわ」 そこならば、以前唯を探していた頃に何度か前を通っているからよくわかった 律が深呼吸をして 「準備はいいか?」 と確認した。私とむぎがうなずく 唯に会える…期待と不安で心臓が張り裂けそうだ 10分ほど歩き、そろそろ『xyz』が見えてくる頃… 「え~?い~じゃん遊んでよ~!サービスするよ~?ケチー!」 唯が、いた 「唯!」「唯ちゃん!」「唯ぃ!」 3人とも全力で駆け出していた 「!?みんな!?…うえあぁっ!?」 私たちは唯に抱きついた。3人ともわんわん泣いた。涙の理由はわからなかった 「みんなぁ~、重い、重いよぉ~」 唯は困ったような笑顔を浮かべていた それから私たちは、以前入った喫茶店に行った 席に着き、律が頭をかきながら話す 「いや、な。3人でちょっと出掛けたんだけど…唯は大丈夫かな、って急に心配になってな ダメもとで来てみたんだけど…ダメじゃなかった」 唯が笑って答える。この間とはまた別の制服だ。衣装として何着も持っているのだろうか 「そっか~私すごくびっくりしたよ~だってみんなが泣きながら突っ込んで来るんだもん」 それからしばらく話をした 唯はまだ援助交際を続けているらしく、 「もうすっかり慣れちゃったよ。この仕事、私に向いてるのかもしれないよ~」 と悲しいことをあっけらかんと言い放った。こんなの仕事じゃないだろうに… また、探偵事務所は新しくしたが、やはり進展はないようだ 「『虎田探偵所』っていうんだよ。おもしろい名前でしょ。ネットカフェで探して見つけたんだ」 あっさり探偵事務所の名前がわかってしまった。これで情報を流すことができる とりあえずの目的は達した。でもそんなことは、正直どうでもよかった 今は、とにかく唯といっしょにいたい。話していたい。笑いあっていたい… でも、そうもいかなかった。9時半を回った頃、唯が言った 「ごめんね、今日はちょっとお得意さんと約束があるから…もう行かないと」 お得意さんまでいるのか…やっぱりショックだ 私は立ち上がった唯に、こう聞いた 「なあ…まだ、あの時と気持ちは変わらないのか?」 私の問い掛けに、唯は表情を曇らせて、 「うん…ごめんね。私はやっぱり、あいつらを許せないし、自分の力だけで仇をうちたいと思ってるよ これは…こればっかりは、ずっと変わらない気持ちだと思う」 …そうか。やっぱりな… 私たちは唯と一緒に店を出た 唯はやつれた笑顔で 「じゃーね!また会おうねー!」 と手を大きく振り、駆けていった 唯の背中が見えなくなった頃、私は、私たちがまた泣いていることに気付いた その後私たちはネットで探偵事務所の名前を調べ、電話番号を控えておいた ただし、そこへの連絡はもう少し先にするべきだ、ということになった 情報に不確定の部分が多すぎる。もう少し煮詰める必要がある そのためには、2年生コンビの頑張りを期待しないと… 3日後の夕方。梓から連絡が入った 「色々わかったことがあるんです。すぐにみなさんを集めてください!」 どこか自信の溢れる声だった 数時間後の私の部屋。純ちゃんが口火を切った 「ジャズ研の同級生が『喜多上中』の出身だったんで…ほら、これ」 純ちゃんがカバンから出したのは卒業アルバムだった 「おおー!!」 3年生チームがどよめく むぎが両手をあわせて笑う 「すごい!お手柄よ、純ちゃん!」 「お褒めいただくのはまだ早いですよ」 純ちゃんは不敵に笑った 「その子の家に梓と遊びに行って、いろいろ聞いたんです。というか、まあその子がおしゃべりで…ね?」 純ちゃんが梓に笑いかける。あずさは苦笑して 「聞いてもないことぺらぺらしゃべるんだよね…」 「まったくね…まあ、それはいいか。で、その子に聞いた話で、この間の3人はほぼ特定できました」 純ちゃんは卒業アルバムを開くと、クラスの集合写真のページを開いた 「『岡本和也』…これがおそらく『かず』です。で、その隣の『川口純平』が『ぐっさん』 それからこっちのクラスの…これ、『杉田恭平』が『タキ』です。『すぎ たき ょうへい』で、『タキ』なんでしょうね」 私は尋ねた 「確かに名前とニックネームの関係は自然だな。でもそれだけじゃ材料として弱い」 純ちゃんが語る 「もちろん、そこも聞いてます。この3人はとても仲がよくて、いつもつるんで遊んでいたそうです しかも一緒の高校…そう、『梅ヶ峰』を受験しています。そして何より…この『杉田恭平』…」 純ちゃんは一呼吸置いて 「夏でも長袖しか着ていなかったそうです」 と言った 「この『杉田』、聞いた話では子供の頃に、腕に大やけどを負ってるらしいんです。それを人に見られるのが嫌で いつも長袖を着ていたようですよ」 律はかなり興奮している 「うっしゃあー!!間違いない、こいつらがそいつらだ!!」 しかし、それを制するようにむぎが言う 「でも、犯人は4人組でしょう?残る一人は…?」 「…あー……」 むぎの言葉を聞いて、律は急に萎えたようだ。しかし 純ちゃんはまだ語るべきことがあるようだ 「その子に聞いたんです。この3人と特に仲のよかった人はいないのか、って。そしたら ええと…こいつです、『三谷晃治』。あの3人とこの『三谷』の4人はすごく仲がよかったそうです 一部女子の間ではホモなんじゃないかって噂されるくらい…あぁ、失礼しました」 「この『三谷』って人は『梅ヶ峰高校』の人ではないの?」 むぎの問に純ちゃんが答える 「はい、この三谷は進学せずに就職したそうです。どこに就職したかまではわからないけど…」 「ニクシィには加入してないのかな?」 「『タキ』たちが友達登録している人を全員調べてみたけど、この三谷に該当するような人はいませんでした もしニクシィに加入していれば、絶対に『三谷』も友達登録されてるはずですから。多分『三谷』はニクシィに加入していません」 私はそれを聞いて少なからず落胆した 「そうか…容疑者の中学時代の親友ってだけじゃあ証拠として弱すぎるな…今も交流があるかすらわからないし…」 と、そこで梓が口を開いた 「まだ話は終わっていないですよ、澪先輩! 私、見つけたんです、この『三谷』のブログ!」 「ほ、本当か、梓!?」 「はい!昨日、手当たり次第に検索ワード入れて検索しまくってたんです。そしたら見つかりました パソコン、お借りしますね」 梓は点けっ放しにしてあったパソコンの前に座り、あるページを開いた 『コウちゃんの、こうすればいいんだ日記!!』 というホームページだった。力が抜ける… 梓が画面をスクロールさせる 「ほら、見てください。この画像。そこのアルバムの『三谷』と同じ顔です」 そこには、タンクトップを着てジーパンをはき、ネックレスをした茶髪のやさ男が木刀を構えている写真があった。間違いない、『三谷』だ 梓がマウスをクリックしページを開いていく 「それにここ、この写真…先週アップされたものです。『三谷』は海に行ってるんですけど… この、『三谷』と一緒に写ってる男、『岡本』と『川口』です。こっちの写真には…ほら、『杉田』ですよ、これ」 卒業アルバムのページと見比べる。髪は茶髪になっているし、多少雰囲気も変わっているが、間違いない 『三谷』は今も『岡本』『川口』『杉田』と仲が良いのだ 梓はさらにページを開く 「それからもう一つ。…事件があった日の日記です。短いんですけど、こう書いてあります 『MTCの新エキスパンション「シャドウの夜明け」を大量ゲット。発売日に買えると気分イーぜ!』 」 律が尋ねる 「えむてぃーしー?えきすぱんしょん?何だそりゃ」 「MTCって言うのは『三谷』がハマってるカードゲームで、新エキスパンションというのは新しいシリーズのことです ほかの日記でも、『三谷』はこのカードゲームについて色々書いてますね」 私には梓の真意がまだ読めないでいる 「それが…どう繋がるんだ?」 「このブログで『三谷』はこう不満を漏らしています 『何でこれだけメジャーかつエクセレントかつエンジョイなものがここにしかないかねー もっとコンビニとかにも置け!本屋とかにも置け!置け!オーケー!』 ……正直ムカつきますねこいつ。まあいいや、どうやらこのMTCってカードは、この辺にはあんまり置いてる店がないみたいです で、『三谷』がMTCを買える唯一のお店がここ…『ゲームショップ ペルセウス』」 「『ペルセウス』!?あの商店街にあるゲームショップじゃん!!」 「はい。つまり『三谷』はあの日、あの商店街にいた可能性が極めて高いんです…!」 繋がった。確かに繋がった…! 『かず』『ぐっさん』『タキ』『三谷』は事件当日にあの商店街に、一緒に行っている可能性が高い 憂ちゃんを襲ったのは『梅ヶ峰高校』の生徒で『かず』『ぐっさん』『タキ』は『梅ヶ峰高校』の生徒 憂ちゃんを襲ったうちの一人は7月なのに長袖のシャッを着ていて、『タキ』は一年中長袖を着ている 『ぐっさん』は商店街で『良いこと』があったらしいが、その『良いこと』が何かを、その日の日記にもその後 の日記でもまったく明かしていない 私は叫んだ 「お手柄だ、純ちゃん!梓!もしかすると、もしかするぞこれは!」 律も再び興奮して言う 「とうとう犯人が見つかった!!やったぞ!!」 梓がそれを抑える 「待ってください律先輩。そう考えるのは早計過ぎますよ」 「そうですよ、特に、『三谷』に関しては情報がまだ少ないです。犯人と決め付けるのはまだ…」 律はぺたんと座り込んだ 「まあ…それは、そう…か。…そうだな。あー!でもさー、喜びたいじゃんよー!!」 「そうだな、少しぐらいは喜んでもいいよな」 むぎがニコニコしながら言った 「そうだわ!唯ちゃんが頼んでる探偵さんにこのことを伝えたほうがいいんじゃないかしら?」 そうだ、これだけの情報があれば、その『虎田探偵所』も動いてくれるかもしれない。善は急げだ ああ。でも… 「な、なあ、何て言って電話すればいいと思う?女子高生の人探しに匿名で情報提供者が現れるなんて変じゃないか?」 「確かにそうですね…」 「しかも、絶対に私たちが情報を提供したって唯にばれちゃダメなんだ。その辺の事情をどう説明したらいいかなあ!?」 律が苦笑いして言った 「会議はもう少し長引きそうですかな~?」 その時 律の携帯電話が鳴った 「ん~?ありゃ、さわちゃんだ。心配して電話でもしてきたかな?」 律が通話ボタンを押して携帯電話を耳に当てる 「はい、もしもし……先生?………!!」 律…?…顔色が…… 「……唯が、トラックにはねられたって」 律の携帯電話がぼとりと落ちた 「さわ子先生!!」 病院の廊下。両脇にソファが置いてあり、唯のご両親、とさわ子先生が座っていた 私たちの声に、ハンカチを握り締めたさわ子先生が立ち上がる。目が真っ赤だ 「みんな…!唯ちゃん、唯ちゃんが…!ああっ!!」 さわ子先生はその場に泣き崩れてしまった 律が先生の肩を揺さぶって問い掛ける 「さわちゃん!唯の、唯の容態は!?助かるよな!?大丈夫だよな!?さわちゃん!答えろよぉ!」 駄目だ、さわ子先生はただ泣きじゃくっている……唯のご両親!! 私は唯の両親のところへ駆け寄り問い掛けた 「あの!唯のお父さん!唯は、あの、唯さんは大丈夫なんですか!?大丈夫ですよね!?」 「これはねぇ…天罰なんだ…」 何を…言っている?…天罰? 梓が駆け寄り、私と同じように尋ねた 「唯先輩のことを教えてください!怪我の具合はどうなんですか!?重いんですか軽いんですか!?教えてください!!」 「これはねぇ、私たちへの罰なんだよ。子供をないがしろにした罰なんだよ。神様が、お前たちは子供なんかいらないんだろう、って唯も憂も連れて行ってしまったんだ。もう無理だ。もう無理だ。もう無理だ…」 唯のお父さんはうつむいてブツブツ呟くだけだ。唯のお母さんは…ソファに腰掛けたままぴくりとも動かない 事態がうまく掴めない。心臓が痛いほどに脈を打つ。汗が全身から吹き出す。めまいを感じて私はソファに倒れこむように腰をかけた 梓は泣きながらおろおろしている。純ちゃんは落着きなくあたりをキョロキョロ見回している むぎはさわ子先生の傍に寄り添って介抱している。律は… 「澪…」 律が私の横にどさりと座った 「大丈夫だよな…だって、約束したもんな…約束したよ…」 そうだ。約束したんだ。絶対に軽音部に戻ってくると、約束したんだよ、唯… 「ああ。唯は甘えん坊でいい加減なところも多いけど…約束を破ったことは一度だってない…!きっと、大丈夫だ…!だから律、泣くな」 私はハンカチで、律の顔をそっと拭った それからしばらくの間、私たちは手術が終わるのを待ち続けた 途中、何とか落ち着きを取り戻したさわ子先生に、ここまでの経緯を話してもらった 今日の夜9時過ぎ、例の歓楽街の交差点で、唯が道路に飛び出し、直進してきたトラックにはね飛ばされた 数分後、救急車が到着し、この病院に搬送された。唯は全身を強く打っており意識不明の重体 身分や住所の証明となるものがなかったため、病院側は携帯電話の電話帳から自宅及びさわ子先生の電話番号を調べ、連絡した、ということらしかった 道路に飛び出した…?一体なぜ…? 私は『手術中』のランプをぼんやりと見つめていた 唯…私たち、すごい手がかりを掴んだんだぞ…。だから、ちゃんと戻って来いよ… どれほどの時間、そうしていただろうか 不意に手術室のランプが消えた 唯のご両親以外の全員が立ち上がる 手術室の扉が開き、お医者さんと思しき人と、看護士さんがあらわれた 私たちは一斉に駆け寄り、尋ねた 「唯は、唯は助かりましたか!?」 お医者さんはこう言った 「出来る限りの手は尽くしましたが…残念です。申し訳ありません」 私はその夜、親友を失った 8
https://w.atwiki.jp/vipthmj/pages/305.html
花が咲き鈴の心が鳴る。 私はいつものようにこの門の前にいる。 そしていつものように職を果たすだけ。 「恋符『マスタースパーク』!!」 ピチューン 果たせたためしが無いとか言ってはいけない。 いきなりスペカぶっぱしてくるような相手にまともに防衛できるはずはないだろう。 私の本職は近接戦闘なのだから遠距離攻撃はずるいと思う。 うん、ずるい。 こんなんじゃまともに職を果たせるはずがない。 守りたくて守れないじゃない。……守って見せれるよう全力は尽くすけど。 ◆◆◆ 眠い。眠い。寝たい。 こんな時は太極拳だ。ゆるい踊りとか言わないで、お願い。 ……。…………。zzzz……。 っ!!寝てないよ!私は寝てないよ! 「なにをそんなに慌ててるのかしら?中国?」 「中国ってゆーな!!あ……」 咲夜さんがクスクスと笑っている。 やめて、怖い。怖い。そのなんか片手にナイフ持ってその立ち方やめて。 「また昼寝ですか?昼寝がすきなら永久に寝てみますか? またパチュリー様の本がまた盗まれたのですが今度はどう責任を取りますか?」 「あ……あうあう……」 ピチューン こんな平和(?)も日常的になってていいのかなぁとか思える私が少し悔しい Mじゃないぞ……私はMじゃないぞ! でも本当にこんな今は本当にいいのかもしれない。 この今と言うのはとても大事で抱きしめ続けるべきものなのだろうか? 正義の味方っていうのはこの抱きしめ続けるべきものを守るためにいるんだっけ? 私は妖怪だし人を襲うことが存在意義のようなものだけれどこの今は譲れない。 この門番という居場所を守るのは正義の味方であるということかな? ◆◆◆ 「氷符『アイシクルフォール-easy-』」 ピチュ……ンはしないよ、流石の私でも 遠距離攻撃が苦手と言ってもチルノに負けるほど私は駄目な子じゃないよ! まぁ……まぁチルノとかルーミアぐらいの危険だったら私でも十分に守ることはできる。 黒白とか紅白は卑怯。うん、私が弱いわけじゃない。あいつらが卑怯なだけなんだ。うん。 でもあの私を問答無用で吹っ飛ばして門を越えていくあいつらがいる今も平和なのだろう。大事にすべき今なんだろう。 あいつらは人間で私のような妖怪じゃないのだからいつ病気で死んでもおかしくはない。 だから明日見えない今に彩られた時なのだからこそ今を重ねていくべき、そう考えると楽になれるし今を生きることが大事なのがまた分かる。 長く生きてもこのことは気が付けないし永遠に理解できそうにない。 というか理解することそのものが不可能なのだろう。 「氷符『アイシクルフォール-runa-』」 ルナは駄目!無理むピチュ-ン 私ってこんなに駄目なこだっけ……? 庭でお茶を飲んでるお嬢様の視線が痛い。 というかお茶会にチルノを呼ぶなんて……私より待遇良くない? っていうかあれ?アイシクルフォールにルナなんてあったっけ? ◆◆◆ 花壇の周りをくるくると。 パチュリー様が”みすてりーさーくる”なるものを作って天狗が来たのが少し懐かしい。 3度右に曲がって元の場所。そんなことをしてもみすてりーさーくるがまた現れるわけはないがそんなことをしたくなった。ただそれだけ。 この前黒白に何十回目かの門突破をされてから感傷的になりすぎかな? 自分でこの門番の職をやってるのになんの理由があるんだっけ?なんで私はこんな職をやってるんだっけ? 「あらあら、今日は花壇のお世話ですか。優しいですね」 「あ、風見さんこんにちわ……ってどこから入ったんですか!」 「誰も門番をしてなかったから勝手に入らせてもらったわ、普通の魔法使いも私の後からはいってわよ、クスクス」 しまった……感傷的になりすぎたか…… しかし風見さん……私の立場を理解してるくせに黒白を止めなかったな!鬼! 「でもあなたなにか迷ってるみたいね。なにかあったの」 「ええと実はですね……」 「長い話は嫌いなの、ごめんね」 えぇと、自分から聞いて置いてそれは無いんじゃないですか? そしてその手に貯めてる力は何ですか?すんごい怖いんですけど。 本家マスパは駄目ですからね?やめてくださいよ? だからや……ピチューン 「ボロボロね、うふふ」 「風見さんがやったんでしょうが……」 水面に映る私は本当にぼろぼろでびしょびしょだ。 マスパで気絶させて湖に放り投げるってどんな鬼?悪魔? そんなことで不満げな目を風見さんに向けていたのに気が付いたのか風見さんが微笑を浮かべながら語りかけてくる。 「迷いなんて吹き飛ばしてしまえばいいのよ あなたがここにいる限りこれからもずっとあなたの日常は変わらないわ 今の日常が壊れてもあなたが自分を守ろうとする限り新しい日常が生まれてくるわ この花壇も一つの花が枯れてもまた新しい花が咲くでしょう?それが日常よ」 これは風見さんなりの励まし方と思っていいんだよね……? そういわれると迷いが結構吹きとぶ。 でも私の迷いを吹き飛ばすために私を吹き飛ばして湖に放り投げる必要なんてあったのかな……? いや、あったんだ。ないと悲しすぎる。 「ええと……私は必要なんですかね?お嬢様や咲夜さん、その他色々な人にとって?」 「そんなの知るはずないじゃない」 ですよねー。 さっきの答えを聞く限り答えてくれそうだったとはいえこういうのは答えてくれませんよねー 「でもね、一応私にとってあなた必要よ」 もう一度。今なんて言ったのかもう一度。 私が風見さんにとって必要? 「私の愚痴の相手に時々なってもらえるしなにより天子やリグルがいない時のストレス解消の相手になってくれるしね」 なによりの後は聞こえなかったことに。 でも前半分は嬉しいな。愚痴の相手になるだけで必要だと思ってもらえる。 これだけでも十分救われる。 「多分どうしようもないことでもレミリアとかは必要だと思ってるんじゃないかしら? 貴方が気が付かないようなことでもね。 さて、私はそろそろ用事を済ませないとね。今日は図書館にひきこもってる子に用があってきたの」 それだけ告げると風見さんは私を湖に残したまま門をくぐっていった。 うーん?答えは出してもらえたしアドバイスもしてもらえた。 これは感謝すべきだよね。ありがとう風見さん。 「恋符『マスタースパーク』」 あ。壁が吹きとんだ。 あれの修理するの私なのに……黒白め……風見さんのおかげですっきりしたところで面倒事をまた作りやがって…… 出る時はちゃんと扉から出て行け! こんど来たら今度こそとっちめてやる! たぶん今の私、相当笑顔なんだろうなぁ…… ◆◆◆ 今私はここにいる。両足で立って。 これからもずっと。私という存在が消滅するまでここにいる。 意味がないと思う人もいるかもしれない。でも私がここにいることには意味がある。 永遠をめぐる螺旋階段には多くの道と出会いがある。 それを一歩一歩上って行くということが生きること、存在することの意味。 一度の今を、出会いを大切に。 それが存在することの意味。 私はこの意味を守ってみせる。 完結。 これは酷いw 書いてみたとかあるけど昔のフォルダから見つけたの引っ張り出しただけw なんか誤字脱字の報告があればどうぞ 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/meteor089/pages/123.html
佐天「あの人、かっこよかったなぁ……」 ① ② 前へ 戻る 499 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 10 40 05.29 ID swAtw4xO0 午前8時 駅前 佐天(結局、早く来ちゃったな……) 佐天(お弁当も作ってきたし……待ってよ) 一方通行「よォ、早ェなァ」 佐天「は、はいっ! お、おはようございます!?」 一方通行「何だ、その慌て様はァ? 俺がそンな不振人物かァ?」 佐天「いや、ちょっと来るのが早いな~って」 一方通行「あァ。家にいてもロクな事がねェからなァ……」 佐天「そうなんですか? じゃあ、早く行きましょう!」 501 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 10 50 40.81 ID swAtw4xO0 一方通行「行くぞ」 佐天「はい!」 佐天「遊園地って、久しぶりですよ私」 一方通行「俺は初めてだけどなァ」 佐天「えぇ!? 遊園地、行ったこと無いんですか?」 一方通行「ガキの頃から実験漬けだったからなァ。遊園地どころか遊ぶ暇すら無かったンだ」 505 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 11 02 52.07 ID swAtw4xO0 佐天「それじゃあ、私が始めてですね」 一方通行「……あァ。そうだなァ」 佐天「ふふ。なんだか嬉しいです」 一方通行「何がだァ?」 佐天「いいえ。何でも」 514 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 11 12 54.20 ID swAtw4xO0 佐天「着きましたよ!」 一方通行「あァ。行くか」 佐天「楽しみですね」 ダッ 一方通行「ちょ、待て、手ェ握るなァ!」 佐天「さ、さ。行きましょ!」 517 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 11 20 43.03 ID swAtw4xO0 佐天「うわぁ! やっぱり学園都市の遊園地は色々あるなぁ!」 一方通行「どれ行くンだァ?」 佐天「えーっと、最初は……アレとかどうでしょう?」 一方通行「……お化け屋敷ィ? 科学の時代にオカルト物かァ……」 佐天「気にしない。気にしない」 520 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 11 27 27.25 ID swAtw4xO0 佐天「な、なかなかリアル……ですね……」 一方通行「あ、あァ……(侮っていたぜェ……これがお化け屋敷)」 佐天「アレなんか本物みたいで……」 一方通行「な、何言ってんだァ……ほ、本物のゾンビなんていてたまるかァ……!」 ゾンビ「あ゛あ゛い゛えうあ゛たぁ!」 佐天「ひぃっ!?」 522 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 11 35 05.44 ID swAtw4xO0 佐天「いやぁっ!」 ガバッ 一方通行「……ッ!?」 佐天「……い、行きましたか?」 一方通行「あァ……(び、ビビッたぜェ……)」 一方通行「そろそろ、離れてもいいんじゃねェのかァ?」 佐天「あ、す、すいません!」 バッ 537 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 12 41 16.93 ID swAtw4xO0 一方通行「……な、なかなかだったなァ」 佐天「で、ですね! 流石、学園都市、と言ったところでしょうか!」 一方通行「科学の力ってのは凄ェもンだなァ……」 佐天「気を取り直して! 次は何処行きましょうか?」 一方通行「アレなんかどうだ? 面白そうだぜェ?」 542 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 13 02 29.64 ID swAtw4xO0 佐天「ジェットコースターですか? いいですね、行きましょう」 一方通行「ジェットコースターってンのか……」 佐天「い、行きますよぉ……!」 一方通行「あ、あァ……(設計上、大丈夫なのかァ!?)」 544 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 13 14 31.91 ID swAtw4xO0 ゴォー。ガー。ズォン。ガゴー。 佐天「きゃぁぁぁ!!」 一方通行「……ッ!?(な、何だコリャァ!?)」 一方通行「……ふゥ」 佐天「凄かったですね……はぁ、はぁ……」 一方通行「休むかァ? そろそろ12時だろォ?」 549 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/05(火) 13 30 02.81 ID pIeC1gl+0 一方さんwwwwwww抜いてるwwww 550 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/05(火) 13 34 05.08 ID HEoY/6z20 一方通行「……ふゥ」 548 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 13 29 39.88 ID swAtw4xO0 佐天「そうですね。お昼にしましょうか」 一方通行「そしたら何処かのレストランにでも……」 佐天「あ、あの、私、実はお弁当とか作ってきちゃったんですけど……」 一方通行「弁当ゥ?」 佐天「はい。もしよかったらなぁ、なんて。い、いりませんか?」 一方通行「ンな訳ねェだろ。ありがとなァ……」 佐天「ありがとうございます!」 551 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 13 35 55.34 ID swAtw4xO0 佐天「さぁ、どうぞ!」 一方通行「頂くぜェ……」 佐天「ど、どうですか!?」 一方通行「……めェよ」 佐天「え?」 一方通行「美味ェよ。こンなの美味ェの食った事ねェなァ」 556 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 13 42 59.19 ID swAtw4xO0 佐天「朝早く起きた甲斐がありましたよ」 一方通行「……ご苦労なこった、ありがとなァ……」 佐天「あなたって、意外と優しいんですね」 一方通行「はァ? 何言ってやがンだァ?」 佐天「ふふふ。照れないで。あ、そうだ! あーん、してあげましょうか?」 一方通行「い、いらねェよォ!」 559 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 13 53 56.97 ID swAtw4xO0 佐天「そうですか……残念だなぁ」 一方通行「て、テメェがどうしてもっていうんなら……」 佐天「え?」 一方通行「や、やってやっても構わねェけどなァ……」 佐天「え!? やってやるって……何をですかねぇ?」 一方通行「あ、あーんだよォ!」 562 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 14 01 38.33 ID swAtw4xO0 佐天「……いいですよ。それじゃ、はい、あーん」 一方通行「あ、あーん……」 佐天「えいっ!」 一方通行「……ンァ……」 佐天「どうですかぁ?」 一方通行「……悪くはねェなァ」 565 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 14 06 44.91 ID swAtw4xO0 佐天「顔紅いですよ?」 一方通行「あ、暑ィからなァ!」 佐天「今、気温8℃ですよ。冬ですので、寒いです」 一方通行「……ッ」 佐天「さ、お昼も食べたし、また遊びましょうか!」 一方通行「あ、あァ……」 569 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 14 22 26.95 ID swAtw4xO0 佐天「ふぅ……これで大方のアトラクションは回りましたかね」 一方通行「あと残ってンのはァ……パレードかァ」 佐天「どうせだからパレードも見て帰りましょうよ」 一方通行「そうだなァ……」 571 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 14 29 58.27 ID swAtw4xO0 佐天「ほら! 始まりましたよ!」 一方通行「おォ……(まんざらでもねェなァ……)」 佐天「綺麗ですねぇ……」 一方通行「あァ、そうだなァ」 佐天「こういう時は「お前の方が綺麗だよ」とか言ってくださいよ」 一方通行「はァ!? ……し、仕方ねェなァ!」 一方通行「お、オメェのほうが綺麗だよ……!」 577 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 14 38 45.11 ID swAtw4xO0 佐天「ふふっ。ありがとうございますね」 一方通行「ふざけんのも大概にしろよォ……」 佐天「あなたもカッコイイですよ」 一方通行「なッ!?」 佐天「また照れてる。緊張でもしちゃってますか?」 579 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 14 42 45.19 ID swAtw4xO0 一方通行「し、してねェよォ!」 佐天「そうですか? ふふっ……」 一方通行「パレードも終わったし、帰るかァ?」 佐天「はい。家まで送って下さいね」 一方通行「言われなくてもわかってらァ!」 584 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 14 48 53.75 ID swAtw4xO0 佐天「今日はありがとうございました!」 一方通行「……あァ」 佐天「それじゃ、おやすみなさい!」 一方通行「じゃァな。風邪とか引くなよ」 佐天「心配してくれてるんですか? ありがとうございますね!」 590 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 15 03 18.54 ID swAtw4xO0 芳川「あら、おかえり」 黄泉川「今日は朝から……例の彼女とデートじゃんか?」 一方通行「違ェっつってンだろォ!」 黄泉川「今の若い子は積極的じゃんよ。「パレードよりお前の方が綺麗だよ」とか言っちゃいそうじゃん」 一方通行「な、ンでテメェがそれを!? ……着いてきやがったのかァ!?」 黄泉川「本当に言ったじゃんか……あんたも意外と積極的じゃん」 593 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 15 16 07.66 ID swAtw4xO0 打ち止め「そ、そんな事まで……ってミサカはミサカは絶望したり……」 一方通行「ち、違ェよォ! 誤解だっつてンだろォ!」 芳川「あらあら。全く、あなたは何をやってるの」 一方通行「何もしてねェよォ!」 黄泉川「慰めてくるじゃんよ」 598 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 15 25 20.87 ID swAtw4xO0 初春「あれ? 佐天さん、来てませんねー」 初春「メールだ……」 FROM 佐天涙子 SUB ごめん 風邪引いたっぽい 今日は学校休むね -END- 初春「佐天さん休みですかー。つまらないですね」 601 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 15 34 13.90 ID swAtw4xO0 一方通行「遅ェな……何やってンだ」 一方通行「仕方ねェ……電話してみるかァ……」 プルルルルルルル♪ 佐天「電話……初春かな?」 佐天「あ……あの人からだ……」 605 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 15 41 43.84 ID swAtw4xO0 佐天「も、もしもし……」 一方通行『何やってンだァ? 今、何時だかわかってンのかァ?』 佐天「す、すいません。連絡するの忘れちゃって……」 一方通行『はァ? 何かあったのかァ?』 佐天「実は風邪引いちゃって……すいません」 一方通行『風邪だァ? で、テメェは大丈夫なのかァ?』 佐天「いや、全然大丈夫じゃなくて……」 一方通行『今から行ってやるから待ってろ』 佐天「え、ちょ、待って―――がちゃ 609 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 15 50 14.55 ID swAtw4xO0 一方通行「おィ、来てやったぞォ!」 佐天「い、今開けます!」 ガチャ 一方通行「ったく。昨日風邪に気ィ付けろって言ったばっかりじゃねェか」 佐天「すいません……」 一方通行「病人は寝てろ。俺がやってやるから」 611 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 16 00 10.08 ID swAtw4xO0 一方通行「ンじゃあ、薬とか買ってくるが、必要な物はあるかァ?」 佐天「えーっと……アイス、とか食べたいなぁって……」 一方通行「アイスゥ? 仕方ねェなァ……」 一方通行「それじゃァ、行って来ンぞォ……」 佐天「いってらっしゃい」 613 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 16 07 56.88 ID swAtw4xO0 「とーま! アイス食べたいんだよ!」 「何言ってるんだ! この前、お菓子たくさんもらったろ!」 「あんなぐらいじゃ私のお腹はいっぱいになんないんだよ!」 「お前の胃袋はブラックホールにでもなってんのか!?」 一方通行「風邪薬と……ポカリも買っておいたほうがいいなァ……」 一方通行「あとは……ウィダーインゼリーも必要かァ……? あとは……あァ、これもかァ」 622 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 16 17 19.29 ID swAtw4xO0 「ありがとうございましたー」 一方通行「……思ったより買っちまったなァ……」 一方通行「まァ、いいかァ。帰るか」 「とうまー! アイスは我慢するからジュースがいいんだよ!」 「変わらないじゃないか!」 「違うもん。個体と液体は違うんだよ!」 「そういう意味じゃない!」 625 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 16 26 41.27 ID swAtw4xO0 佐天「……今の内に体拭いとこうかな」 するする。しゅ。ぱさ 佐天「……んっ。あっ……」 一方通行「戻ったぞォ……」 佐天「あ」 一方通行「い」 636 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 16 35 24.48 ID swAtw4xO0 佐天「い、あ……」 一方通行「お、あ……」 佐天「きゃ、きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 一方通行「悪ィ!」 バタン 一方通行「な、なンだってンだァ?」 639 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 16 43 53.12 ID swAtw4xO0 佐天「み、見られちゃったよね……ど、どうしよう」 一方通行「……アレは……だよな……」 一方通行「何つー物を見ちまったンだ……」 佐天「あ、あの! もう入ってもいいですよ……!」 一方通行「あ、あァ! アイスが溶けちまうしなァ!」 642 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 16 48 57.18 ID swAtw4xO0 一方通行「あ、アイスは今食うかァ?」 佐天「は、はい。ありがとうございます……」 一方通行「それじゃァ、他の物は冷蔵庫に入れとくぞ」 一方通行「これが風邪薬だからさっさと飲ンじまいなァ」 佐天「あ、あの……見ましたよね?」 一方通行「見たって……何を……」 佐天「私の……ハダカ」 一方通行「そ、そりゃァ……」 646 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 16 53 12.74 ID swAtw4xO0 佐天「み、見たんですね……」 一方通行「不可抗力だろォがァ……!」 佐天「な、なら、とってくださいよ……」 一方通行「はァ?」 佐天「ちゃんと責任、とってくださいよ……!」 654 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 16 59 27.36 ID swAtw4xO0 一方通行「せ、責任って……ンな事言われても……」 佐天「……ぷっ」 一方通行「あァ?」 佐天「はっはっはははっは!」 佐天「もう、照れちゃってー! 私、中学生だよ? そんなことするわけ無いじゃないですか」 一方通行「……ッ! あ、あァ! 冗談に決まってるよなァ!」 658 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 17 11 37.48 ID swAtw4xO0 佐天「何か変な事でも考えてたんですか?」 一方通行「か、考えてねェよォ! さっさと風邪薬飲みやがれェ!」 佐天「はいはい。それじゃ、いただきますね」 ごくっ 佐天「んっ……んくっ……」 一方通行「飲み終わったら、さっさと寝やがれェ」 661 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/05(火) 17 13 15.93 ID mfHTqTDn0 なんか佐天とられたら初春がかわいそうだな 665 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 17 16 50.19 ID swAtw4xO0 佐天「すー……zzz」 一方通行「寝たかァ……ったく。迷惑かけやがって」 一方通行「……飯でも作ってやるかァ」 ぐつぐつ 一方通行「熱ッ!? クソ……上手くいかねェなァ……!」 666 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/05(火) 17 18 04.49 ID 11CIK4Eq0 熱のベクトルは操作できないの? 667 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 17 18 36.07 ID swAtw4xO0 打ち止めが一方さんの能力制限してんですよ 672 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 17 23 03.75 ID swAtw4xO0 一方通行「クソッ……あのガキ、能力制限させてンじゃねェぞ……!」 一方通行「っと……こうかァ? 普段、料理なんてしねェからなァ」 一方通行「これじゃあ、まだダメかァ……?」 一方通行「能力さえ使えればなァ……何してやんがあのガキ……!」 679 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 17 29 53.78 ID swAtw4xO0 佐天「あ……もう夜か」 一方通行「起きたかァ?」 佐天「あ、おはようございます」 一方通行「調子はどうだァ? 飯は食えそうかァ?」 佐天「はい……でもご飯の用意してないし……」 一方通行「粥でよけりゃァ、あるぜ。食うか?」 佐天「是非、いただきます!」 685 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 17 38 20.09 ID swAtw4xO0 一方通行「ほらよォ」 佐天「ありがとうございますっ!」 佐天「んぐ……あちっ……」 一方通行「大丈夫かァ?」 佐天「はい。これ、あなたが作ったんですか?」 一方通行「ち、違ェよ! 買って来たのを温めただけに決まってンだろォ!」 佐天「ふふふ。そうですか。美味しいですよ」 一方通行「よかったなァ!」 696 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 17 46 17.93 ID swAtw4xO0 佐天(何言ってんだか……ちゃんと見てたよ) 佐天(あなたが料理してるところ) 佐天「やっぱり、優しいんですね」 一方通行「はァ? ふざけた事言ってねェでさっさと食え」 佐天「はいっ!」 708 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 17 54 28.47 ID swAtw4xO0 一方通行「俺はもう帰るからなァ……」 佐天「はい、なんかとっても元気になりました!」 一方通行「良かったじゃねェか。明日はちゃんと来いよ」 佐天「わかってますって。それじゃあ、あなたも風邪に気をつけて」 一方通行「俺は風邪なンざ引かねェよ。じゃァなァ」 710 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 18 04 51.38 ID swAtw4xO0 打ち止め「またあの女の所に行ってたの?」 一方通行「俺が何しようと勝手だろォがァ?」 打ち止め「勝手じゃないよ……」 一方通行「はァ? 第一、テメェ、能力勝手に制限してんじゃねェよ」 打ち止め「だ、だって……あなたが悪いんだもん」 一方通行「訳わかンねェ事言ってンじゃねェぞォ?」 714 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/05(火) 18 11 54.18 ID wKCk+nZG0 打ち止めの嫉妬か・・・ 729 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 18 31 08.60 ID swAtw4xO0 黄泉川「最近、打ち止めが不機嫌じゃんよ」 芳川「仕方ないわね。彼が彼女とあんな毎日会ってれば。ああなるわよ」 黄泉川「ちょっと可愛そうじゃんよ」 芳川「でもね、私達に出来る事はないわよね。放っておくしかないわね」 737 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 18 41 52.73 ID swAtw4xO0 佐天「こんにちはー!」 一方通行「治ったみてェだなァ……よかったじゃねェか」 佐天「はい! すっかり元気ですよ! これもあなたのお陰ですね」 一方通行「俺は買い物に行っただけだけどなァ」 佐天「ふふ、そうですか。それじゃ、今日もお願いしますね」 一方通行「あァ。次のシステムスキャンに間に合わせるぞォ」 742 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 18 53 29.00 ID swAtw4xO0 佐天「ん~……こんな感じですかね」 一方通行「悪かねェなァ……。おし、上等だァ」 佐天「そうですか!?」 一方通行「あァ。これならシステムスキャンには間に合いそうだな」 佐天「やった……! 私、ついに能力者に……!」 一方通行「何言ってンだァ? テメェの最終目標は御坂美琴を越えるレベル5だろォ?」 佐天「……そうですね」 743 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 19 06 17.83 ID swAtw4xO0 佐天「また明日」 佐天「……今日も楽しかったなぁ」 佐天(最近、能力とかじゃなくて、あの人に会うのが楽しみになってるよね……) 佐天(やっぱり私……あの人の事が好きなの、かな?) 佐天(べ、別に恥ずかしい事じゃないよね……! そ、そうだよ!) 752 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 19 12 13.71 ID swAtw4xO0 佐天「う~い~は~る~!」 ひゅぅぅぅ ばさっ 初春「ひゃぁっ!? さ、佐天さん!? って……あんな離れたところに?」 佐天「おやおや。今日は青白縞パンですか。可愛らしいね~!」 初春「や、やめてくださいよ! っていうかさっきのどうやったんですか!?」 753 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 19 17 58.48 ID swAtw4xO0 佐天「何って……周囲の温度差による対流?だっけ、だよ?」 初春「で、でも、何でそれを佐天さんが?」 佐天「能力でしょ。私の温度操作だよ?」 初春「佐天さん、そんな凄い事が出来る様になったんですか?」 佐天「まあね。とある人に教えてもらってから急に上達したんだよー」 756 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 19 22 37.86 ID swAtw4xO0 初春「本当ですか~?」 佐天「あ、バカにしたねぇ……とりゃぁぁ!」 ひゅぅぅぅぅぅ。ばさり 初春「さ、佐天さぁぁん!?」 佐天「ブラはパンツと同じ青白縞と。オシャレだねぇ~!」 初春「凄いのはわかりましたから! やめてください!」 佐天「仕方ないなー、オシャレな初春に免じて許してあげよう」 初春「もぅ。佐天さんったら……」 759 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 19 27 02.01 ID swAtw4xO0 初春「その教わった人って誰なんですか?」 佐天「聞いちゃいますか?」 初春「やっぱり、佐天さんの彼氏なんですよね!」 佐天「彼氏じゃないよー。……私が好きなだけだって」 初春「え!? そうなんですか!?」 佐天「うん。そうだよ」 765 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 19 39 11.56 ID swAtw4xO0 初春「告白はもうしたんですか!?」 佐天「何言ってるの。まだに決まってるじゃない」 初春「まだしてないんですか?」 佐天「ん。なんと言うか気持ちが固まらないっていうか……怖いのかな」 初春「怖い?」 佐天「そう。向こうが私の事を好きだと思ってなかったら……って考えると何か怖くて」 779 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 19 56 06.82 ID swAtw4xO0 芳川「好きなの? あの子のこと」 一方通行「ぶっ……」 芳川「あら。素直な反応ね……」 一方通行「ふざけンなよ!」 芳川「じゃあ、好きじゃないのかしら?」 一方通行「そ、そりゃァ……」 芳川「ふふふ。なら好きなのね」 芳川「ならこのままでいいのかしら。放っておくと誰かに盗られちゃうわよ」 785 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 20 01 58.31 ID swAtw4xO0 黄泉川「このままでいいじゃんか?」 打ち止め「仕方ないよ。あの人が選んだ道だもん、ってミサカはミサカは個人の意思を尊重してみる」 黄泉川「そうじゃんか」 打ち止め「それに私だって諦めた訳じゃないんだよ!ってミサカはミサカは決意表明してみる!」 黄泉川「頑張るじゃんね。応援してるじゃん」 787 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 20 04 39.43 ID swAtw4xO0 芳川「さ、早く行きなさい。彼女が待っているわよ」 一方通行「あ、あァ……!」 初春「佐天さん。頑張ってくださいね! 応援してますよ!」 佐天「うん! ありがとね、初春!」 792 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 20 09 26.11 ID swAtw4xO0 一方通行「よ、よォ……」 佐天「こ、こんにちは……」 一方通行「あ、あのよォ……」 佐天「あ、あの……!」 一方通行・佐天「あ」 佐天「ど、どうぞ!」 一方通行「そ、そっちから言えよ……!」 799 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 20 12 40.00 ID swAtw4xO0 佐天「そ、それじゃあ……私から……!」 一方通行「お、おゥ……」 佐天「あ、あの……!」 佐天「わ、私……その……えっと……」 佐天「あ、あ、あなたのことが――― 803 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 20 16 26.01 ID swAtw4xO0 佐天「好――― 禁書「あー! お菓子くれた人だ!」 上条「インデックス、公園で大きな声をあげ……!」 佐天「……え?」 一方通行「て、テメェは……!」 上条「あ、一方通行に、佐天さん……!?」 一方通行「……テメェはよっぽど俺の邪魔をするのが好きみてェだなァ……!」 811 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 20 20 04.92 ID swAtw4xO0 禁書「あなたは……お花の人と一緒にいた人だよね!」 佐天「初春のこと、かな?」 禁書「ういはる?っていうの? 花瓶を頭に乗っけてる人!」 佐天「う、うん。私は佐天涙子っていうの」 禁書「るいこ? ふーん。私はインデックスっていうんだよ!」 一方通行「滅びろやァ!」 上条「ふ、不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁ!」 832 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 21 10 56.88 ID swAtw4xO0 上条「ふ、不幸だぁ……」 一方通行「ハッ! どっちが不幸だか、わからねェなァ……!」 禁書「あ、もうこんな時間なんだよ。今日はこもえの家で焼肉パーティーがあるから、この辺で失礼するんだよ! じゃーね! るいこ!」 佐天「じゃ、じゃあね。インデックスちゃん」 佐天「……はぁ。何か気分じゃなくなっちゃったな……」 834 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 21 15 41.47 ID swAtw4xO0 一方通行「……ったく。ふざけてンじゃねェぞ」 一方通行「テメェのせいで気分がぶち壊れたじゃねェか……」 一方通行「戻るかァ……」 佐天「あ、戻ってきましたか」 一方通行「あァ。で、話ってなンだ?」 838 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 21 18 31.07 ID swAtw4xO0 佐天「そ、その……」 佐天「な、何でもありません……! あなたは……」 一方通行「お、俺も何でもねェよ。……それじゃあ、始めンぞ」 佐天「はい!お願いします!」 846 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 21 25 15.07 ID swAtw4xO0 身体検査当日... 佐天「やりましたよ!」 一方通行「……あァ?」 佐天「私、ついに……温度操作レベル2になりました!」 一方通行「そうかァ……よかったなァ……」 佐天「本当にあなたのお陰です! ありがとうございました!」 一方通行「努力したのはテメェだろォが。俺はほンの少し、後押ししただけだ」 佐天「それでもあなたのお陰には変わりありませんよ」 一方通行「そうかィ。よかったなァ」 849 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 21 29 51.89 ID swAtw4xO0 佐天「あれぇ? 誰に言ってるんですか?」 一方通行「誰って……テメェ以外に誰がいンだよ?」 佐天「私にはテメェじゃなくて、佐天涙子っていう名前があるんですよ?」 佐天「そろそろ、名前で呼んでくれてもいいかなあ、って」 一方通行「おめでとなァ!……涙子ォ!」 佐天「ふふっ。ありがとうございます!」 858 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 21 36 44.16 ID swAtw4xO0 二年後... 「なぁ、聞いたか?」 「ああ。新しいレベル5だろ?」 「今回の身体検査でなったらしいぜ。何でも二年前までレベル0だったとか……」 「マジかよ!? それじゃあ、あの超電磁砲よりも凄いじゃねーか!」 「だよなー。……もしかしたら、俺達にもチャンスあるかもな」 「……かもしれねーな。少し、頑張ってみるか」 861 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/05(火) 21 37 59.72 ID +A0upmDG0 なんだと・・・ 862 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/05(火) 21 39 27.89 ID JEqWjrOEO ついに第四波動か 865 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/01/05(火) 21 40 39.91 ID EzFHuACy0 いきなりすぎてワロタwwww 870 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 21 43 05.69 ID swAtw4xO0 「こんにちはー!」 「よォ、レベル5"完全現象"」 「ふふ。本当にあなたのお陰ですよ……今回は御坂さんを越せなかったけど、次こそは……!」 「いい心意気だなァ……! そこまで俺が手伝ってやるとするかァ……!」 「お願いしますね。……そうそう。私、あなたの事がずっと前から好きだったんですよ」 「……。奇遇だなァ……俺もテメェが好きだったンだよ」 「これからもずっと一緒にいましょうね」 「あァ……そうだな」 883 : ◆OxJHzKNBv2 :2010/01/05(火) 21 51 23.05 ID swAtw4xO0 あまり難しい要望はやめてくれ…… はい。限界です。これ以上どうやって話膨らませろと 少なくとも自分には不可能でした。という訳でこれでおしまいです。 ちなみに"完全現象"というのは 温度の変化により様々な現象を起こせる、とかいう感じです。 前へ 戻る
https://w.atwiki.jp/jewelry_maiden/pages/917.html
化「ほほー」 黒「な、なんでしょうか」 化「けしからんのう、けしからんやねん」 黒「は、はあ」 化「黒やんってけっこうおっぱい大きいやんな?」 黒「はうっ!?」 化「うちもこんくらいは欲しいやねん。お父やん、なしておっぱい大きく作ってくれんかったんやろ」 黒「え、あ、あうー……」 化「黒やん? 黒やーん? 寝てもうたやねん?」
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/2527.html
809 :私は人がわからない:2012/08/22(水) 10 54 16 ID /4kh.2c. [1/12] 遂に、ぽつぽつと雨が降ってきた。 徐々に雨量を増していく雨は、雨脚こそはまだ弱いが、これから激しくなっていくだろう予感を感じさせる、たしかな力強さを持っていた。降りしきる雨粒は遊歩道に黒い染みをつくり、通行人たちは慌てて傘を広げている。 私はコーヒーカップをソーサーに戻すと、ぼんやりと雨に見入った。 「何を見ているんだ?」 前田かん子が、角砂糖をコーヒーに入れながら問うた。 「いや、雨、降っちゃったなって」 「雨?」 怪訝そうに目を細めてから、彼女も外を見やった。雨粒は窓を軽くノックし、水滴を張り付かせては落ちていく。 「雨が降ると、なにか不都合なのか」 「不都合。そうですね、不都合といえば不都合です。実は今日、傘を持ってくるのを忘れちゃいまして。このままじゃ濡れて帰ることになるなと危惧していたわけです」 「嘘だな」 即座に否定されて、びっくりして対面を見返す。前田かん子はじっと私を睨みつけていた。嘘吐きを見る目だった。 「今のお前の返答は、通常よりも幾らか早かった。あらかじめ私がこの質問をするのに備えていたんだ。本当はもっと別の理由があるんじゃないか。雨が降るとマズくなる、別の理由が」 「……さすがに穿ちすぎですよ。別の理由なんてあるはずないじゃないですか」 ゆるゆると首を振る。 「前田さんが私のことを嫌っているのはわかっています。ですが、そう何度も突っかかられるのは困りますよ。とても疲れてしまいます。お願いですから、多少の不快には目を瞑ってもらえませんか」 「嫌っているのはわかっている、ねえ……」 角砂糖をコーヒーに入れながら、前田かん子は面白そうに笑う。 「ああ。たしかに私はお前を嫌っているさ。それもかなり。私はお前が嫌いで嫌いで仕方がない。鳥島タロウの全てが気に喰わない。特に、その喋り方。そのとってつけたような丁寧語は気に入らん。一人称が私の男子高校生だなんて、今まで見たことがないぞ」 まさか口調を指摘されると思っていなかったので、少々面をくらう。しかしまあ、言われてみると確かに珍しいかもしれない。妙齢の男性でもないくせに一人称が私だというのは。だが、これはもう癖みたいなもので、すっかり馴染んでしまって今更どうこう出来る物ではなかった。 「すいません。言葉遣いに関しては、我慢してもらうしかありません。長年染み付いてしまったものなので、矯正は難しいかと」 私がそう言うと、前田かん子は、チッと舌を鳴らして視線を外した。耳についているシルバーピアスが、オレンジ色の照明に照らされて鈍い光を放つ。 810 :私は人がわからない:2012/08/22(水) 10 56 18 ID /4kh.2c.[2/12] 「なら、さっさと本題に入れ。キリエについて訊きたいことがあるのだろう?」 すわ本題か。私は居住まいをなおし、腕を組んでしばし考え込むと、やおら口を開く。 「そうですね……じゃあ、まずは田中さんの簡単な個人情報、プロフィールを教えてもらえますか?」 「プロフィール……内容云々は、私の自己判断で構わないのか?」 「構いません」 「そうか。了解した」 前田かん子は角砂糖をコーヒーに入れると、瞑想する時のように瞼を下ろした。どのようなことから話すべきかを考えているみたいだ。 五分程度経つと、彼女はフゥと息を吐き、目を閉じたままの状態で滔々と話を始めた。 「氏名、田中キリエ。現在は父親と継母の三人暮らしで、兄弟はいない。ペットなども飼ってないが、唯一自室でサボテンを育てている。現在三年目。継母からの贈り物と聞いている。 身長は百四十二・三センチで、体重は三十六・二キログラム・・いや、訂正だ。体重は三日前に二百グラム増えたから、正確には三十六・四キログラムだ。それと足のサイズは二十一・五センチ。 性格は引っ込み思案かつ人見知り。けど、細かいところに目が届き気配りは上手。だから、キリエのことを悪く思うやつは一人だっていないはずだ。キリエは優しくて可愛いからな。アイツの陰口を叩いてる人間なんかいたら、殺してやるさ。 利き手は左だが、書き物をするときや食事などでは右手を使う。まあ、スポーツ等以外では左手を使わないから、実質右利きと言ってもいいのかもしれない。 好きな食べ物は宇治金時で、嫌いな食べ物はトマト。趣味は料理に手芸。料理のほうは言うまでもなく絶品。小さい頃かずっと包丁を握っていたからな。経験だって豊富だ。休日にはお菓子なんかもつくったりする。 手芸のほうは、大体冬が近づくととマフラーや手袋なんかを編み始める。キリエが今年つけているピンク色のマフラーも、自分で編んだものだ。キリエはピンクが好きだから、毛糸も必ずピンク色のものを使用する。ふふっ、ほんとうに愛らしい。 それと、風呂に入ったときに最初に洗う箇所は左足の甲で次は・・」 「ちょ、ちょっと待ってくださいっ」 堪らず声を上げてしまった。身を乗り出すようにして話を遮る。前田かん子は急に話の腰を折られたためか、不機嫌そうに此方を睨みつけていた。 「なんだよ、急に」 「あ、いえ、いきなり話を中断させて申し訳ないとは思うのですか……あの、いくらなんでも詳しすぎやしませんか?」 「はあ?」 何を言っているのかわからない、といった風で首を傾げる。その態度があまりにも自然なものだったので、一瞬、間違っているのはこちらなのではと考えてしまう。けど、まさかそんなはずはないだろう。 811 :私は人がわからない:2012/08/22(水) 10 58 16 ID /4kh.2c.[3/12] 「ですから、ちょっと田中さんについて仔細に知りすぎていますよ。身長や体重を小数点以下まで把握しているなんて、忌憚なく言わせてもらうとかなり異常です。ましてや、入浴時云々なんて言うまでもないかと……」 そう指摘すると、前田かん子は呆れ顔になって、 「なあ、鳥島タロウ。お前には、親友と呼べる人間はいるか?」 「親友、ですか? いえ、お恥ずかしながら……」 前田かん子は、やはりそうか、とでも言いたげにやれやれと首を振った。 「なら、理解できなくても仕方がないか。無知蒙昧なお前に教えてやろう。普通、親友ってのは相手のことをとてもよく理解しているものなんだ。とてもよく、だ。 親友のいないお前にはイマイチ理解出来ないのかもしれんが、これしきの基礎知識、親友なら知ってて当然なんだよ」 「そ、そうなんですか」 衝撃の事実だった。これまで私の考えていた親友像と、前田かん子の説明する親友像には、大きな隔たりがあった。まさか、親友なるものの心の距離感がここまで近いとは……。もはや密着と言っても差し障りがないではないか。 ぶっちゃけ、今言った親友の定義は違っているのではと疑ったりもした。が、実際に親友を持つ者の言葉にはやはり重みがあった。白黒つけるまでもない。恐るべし親友。自分にもいつか、そんな存在が出来たらなと願う。 ふむふむ、と感慨深く頷く。これでまた私はひとつ賢くなった。 「それで、次に訊きたいことはなんだ」 「次、ですか……次はですね、えと」 「どうした? 随分と考えあぐねているじゃないか」 返答に窮していると、ここぞとばかりに攻撃してくる。意地悪な小姑のように、ネチネチと陰湿に。 「今日は訊きたい事が山ほどあったから私を呼び出したんだろう? なのに、質問内容をぽんぽんと繰り出せない今の状況はおかしいな。私にはとても奇異に見える」 「ですから」 難癖をつけるのも大概にしてほしい。私は多少声を荒げて啖呵を切る。 「前田さんは疑りすぎなんですよ。ちょっとの間、言葉に詰まっていただけでしょう。それをなんですか。まるで私に腹蔵があるみたいに言うのは。そう気を揉まなくても、なんの裏もありゃしませんよ。 今はただ、ほら、バイキング料理と一緒です。目の前にずらりと料理が並べられていると、どれから手に取ろうか悩んでしまうでしょう? そんな感じで、質問を決められずにいたのです」 「本当にそうかな」 それでも揶揄する前田かん子に、身体の温度が上昇しかけるが、ハッと気付く。身に覚えがあった。こうやって、わざと私を苛立たせ、本性を暴こうとする手口には。 812 :私は人がわからない:2012/08/22(水) 11 00 14 ID /4kh.2c.[4/12] なるほど。冷静に観察してみれば、彼女からは明らかに作為的な雰囲気を感じる。私の本音を白日の下に曝すために、意図的に因縁をつけているのだ。つまるところ、彼女と同じことをしている。茶道室に居座る、あの魔女と同じことを。 そうとわかれば話は早い。 「さあ、どうですかね」 一息入れ、道化のように肩をすくめてみせる。こういう相手に真面目に取り掛かってしまうのは逆効果でしかないのを知っていた。 こちとら長いあいだ斎藤ヨシヱに煮え湯を飲まされ続けているのだ。この手の対応には、抜かりがない。 前田かん子もこれ以上の揺さぶりは詮無しと悟ったのだろう。そうかい、と呟いたきりあっさりと身を退いて、変に突っかかるのをやめた。黙って角砂糖をコーヒーに入れ、訊きたいことは決まったかと再度訊ねる。 「それでは、田中さんの男性遍歴について訊かせてもらえますかね」 私と付き合う以前、田中キリエがどんな恋愛をしてどんな別れ方をしていったかが気になっていた。 「ないよ」 「えっ?」 「キリエが男と付き合ったことは、今まで一度だってない。曲解されぬ内に言っておくが、女ともだぞ」 「へぇ、意外ですね。彼女って、中々モテるんじゃないですか? 容姿については問題ないですし、性格だっていいでしょう」 「ああ、モテたさ。キリエはクラスでもあまり目立つほうではないが、そのぶん密かなファンは多い。中学時代は言わずもがな、高校でだって何度か告白されている」 「なのに、どうして誰ともお付き合いを?」 「さあね。どっかの誰かさんを長年想い慕っていたからじゃないのか」 挑戦的な瞳で私を見る。こういう言われ方をされてしまっては、何も言い返すことが出来ない。愚者を気取ってわからないフリをし、遠くを眺める。 「どうして、なんだろうな」 急に、前田かん子が独白する。田中キリエの趣向は理解し難いとでも言いたげに、眉根を寄せていた。 「容姿はよくない。体格も華奢で頼りない。いつもへらへら笑ってて何を考えているかわからない。見てて不愉快だし、男性らしい魅力も皆無。少なくとも私には、ただの下賎な男にしか感じられない。なのに、なぜ、キリエはコイツに失望しなかった……」 角砂糖をコーヒーに入れながら、何か考え込んでいる御様子。私を貶める発言が鼻につくが、それは寛容な心をもって流しといてやろう。 813 :私は人がわからない:2012/08/22(水) 11 02 34 ID Lfmv7T16[5/12] それよりも、 「前田さん。いい加減、口を挟んでもいいですかね」 彼女は私にちらりと目をやって、訊ね返した。 「口を挟むって、なににだよ」 「コーヒーです」 私は、およそ液体らしい動きを獲得していないコーヒーを指差した。 「いくらなんでも砂糖を入れすぎでしょう。あまりにも量が多いもんだから、溶解しきってないじゃないですか。ものすごくじゃりじゃりしてそうです。というか、こんなの飲んだら血糖値がとんでもないことになりますよ」 「うん? 普通、砂糖はこれくらい入れるもんだろう。じゃないと苦いじゃないか」 「……いや、まあ、苦いかもしれませんけど」 コーヒーとはその苦味を味わうものではないのか、と心中で突っ込む。 前田かん子は小首を傾げながらも更に角砂糖を追加していたが、シュガーポットが空になったところで漸く手を止めた。そしてコーヒー(?)を口に含むが、どこか不満気な顔をしている。 まさか、まだ砂糖を入れ足りないのだろうか。勘弁して欲しい。こちとら見ているだけで胸焼けを起こしそうだというのに。 私は目の前の光景から目を逸らし、己のブラックコーヒーを口に含んだ。ねちゃねちゃとした甘ったるさを感じるのは、間違いなく錯覚だろう。 私は豆の苦味を十全に味わう為に、咥内の液体をぐるりと掻き回したのだった。 それから、私達はぽつぽつと言葉を交わした。 会話の主な内容は、もちろん田中キリエについて。彼女の情報を取り入れる度、重要な情報、不要な情報を取捨選択し、頭の中のメモ帳に書き連ねていく。そうすることで、あやふやだった田中キリエ像に肉付けがされ、実体を伴っていく。 前田かん子は面倒臭そうながらも、割りと誠実に質問に答えてくれた。やはり根は義理堅いのだろう。質問と返答の応酬は、滞りなく進んでいく。 話の途中、彼女はライダースーツのポケットから煙草を取り出した。 「ここ、全席禁煙ですよ」 無理だろうなと確信しつつも、控えめに諫言する。 うるせーちくしょーそんなルール私にゃ関係ねーんだよバーカ、ってな感じで素っ気なく跳ね除けられると大方予測していたのだが、存外、彼女は普通に従った。手中の煙草を、再びポケットに戻す。 意外と規則は守る人なのかしら、と危うくギャップ萌えで好感度が急上昇しそうになるが、軒下に違法駐車されている無骨なバイクを見て正気に戻る。 814 :私は人がわからない:2012/08/22(水) 11 04 10 ID Lfmv7T16[6/12] 結局のところ、どこにでもあるただのダブルスタンダードだった。あれはいいけど、これはだめ。前田かん子の中にも、独自の線引きがあるのだろう。あぶないあぶない。危うく好きになってしまうところだった。 そんなやりとりがあり、また質問を数個加えたところで、話が潰えた。 ざあざあ、と力強さを露にした雨音を聞きながら、私達は同じ沈黙を共有する。彼女のコーヒーカップは既に空になっていた。私も残り少ないコーヒーを一気に煽って、同じく空にする。 スッキリしないな、とカップの底をじいと見つめながら思った。 違和感。そう、言うならば私は前田かん子に対し違和感を感じていた。田中キリエについて話す時の彼女は、その、何かが違うのだ。具体的にどう違うのかと訊かれたら困るのだが、とにかく、前田かん子は田中キリエ対し、特殊な感情を抱いているように見える。 だから、私は訊ねていた。 「前田さんは、どうしてそんなに田中さんに傾倒しているのですか?」 正直、返答は期待していなかった。私達は依然敵対関係を継続させているし、なにより前田かん子はプライベートな質問には答えないだろう。彼女が果たすべき義務は、あくまで田中キリエ関連の事のみなのだから。 だから前田かん子が、わかったと言って小さく頷いた時には、私は心底驚いていたのであった。新種の生物でも発見したときのような、物珍しい感動を覚えていた。 「私とキリエが初めて会ったのは、中学校からだ」 腕を組みじっと椅子にもたれたまま、彼女は小さいけれど、しかしはっきりとした声で己について語り始める。 この時、言ってしまえば私は心構えが出来ていなかったのである。どこか異国にでも観光に来たような、いわばお客様のような気楽さで話に耳を傾けていた。だから、次に発せられた発言には、掛け値なしに仰天することになる。 「当時、私はイジメられていた」 「はっ?」 横っ面を引っ叩かれたような衝撃。手にしていたコーヒーカップを落としそうになり、テーブルが硬質な音を立てる。 待て。待ってくれ。彼女は今、前田かん子は今、なんと言ったのだ? イジメられていた? バカな、そんな、まさか。 「冗談でしょう?」 今の発言が信じられなくて、若干、茶化すような口調で問いなおした。が、寄越された鋭利な視線で今のが嘘でないと確信する。 ほとほと信じられない話ではあるが、彼女は過去、本当にイジメられていたらしい。現在の恐ろしい風体からでは、到底考え付かないことである。 「私は昔から、孤独を恐れていた」 前田かん子は、静かに回顧を始める。 815 :私は人がわからない:2012/08/22(水) 11 05 46 ID Lfmv7T16[7/12] 「とにかく独りになるのが怖かったんだ。周りに誰もいないという環境を異常なまでに厭い、沈黙ではなく喧騒を愛した。私はそんな人間だった。だから、学校ではいつも寄生虫のように特定のグループにくっつき、下手な相槌と愛想笑いを振りまいてコミュニティに媚を売っていた。 今となっては反吐が出そうな毎日だったが、当時の私はそれなりに幸せだった。私にとって一番マズイ事態というのが孤独。極端な話、孤独さえ遠ざかっていれば全部満足だったんだよ。 けど、まあ。そんな日常が続くはずもなかった。私はとてもつまらない人間だった。付和雷同をよしとし、常にイエスしか言わない人間。主体性も個性も欠陥した、大量消費品みたいな人間。そんな人間が、まず面白いはずがない。私は次第に疎まれ、イジメられていった。 イジメが始まったときは、文字通り地獄だったよ。今まで散々イジメられないように生きてきたんだ。それが突然、独りぼっちに。嗚呼、まさに発狂もんだったね。最悪ってのは、ああいうのを言うんだろうな。 そして、次第に私は自殺を考えるようになった。辛い日常に疲れていたんだ。目の前でちらつく死が、とても甘美な麻薬のように思えた。だから、死ぬことにしたんだ。 死に場所は学校の屋上を選んだ。学校の屋上飛び降り自殺。そっちのほうが、自宅で首を吊ってるよりもセンセーショナルな事件になると思ったからだ。 自分の死によって、アイツらに少しでも罪悪感を感じさせれれば、そんな復讐も兼ねていたのかもしれない。笑っちまうよな。加害者が被害者に対して申し訳なかったと思うことなんて、ありえないのに。 そして、私は恨み辛みを書いた遺書を持って、屋上に行ったんだ。ちょうど、今ぐらいの季節だった。寒い寒い冬の日。そこで、出会ったんだ。キリエに。田中キリエに。 夕日をバックにして立っていたキリエは、なんというか、ひどく非現実的な人物に見えた。まるで異世界に足を踏み入れてしまったような錯覚に陥った。我ながら陳腐な表現ではあるが、そのときは本当にそんな気がしたんだ。 私は驚いてしまって、何も口にすることが出来なかった。キリエも同じで、突然の来訪者に驚いているみたいだった。互いに顔を見合って、妙な牽制をしあっていた。 こんにちは、と機先を制したのはキリエだった。アイツは柔らかい笑みを浮かべて、こう訊ねてきたんだ。どうして屋上に来たのって。 悲劇のヒロインに酔っていた私は、無粋な部外者に水を差された気がして、とても気分が悪かった。別に貴女には関係がないでしょ、とか、つっけんどんなことを言った気がする。 けど、キリエはあくまで柔和に、優しくのんびりと接してくれた。久しぶりの温かい気遣いに、じんわりと胸に心地よいものが広がるのがわかった。私達は初対面だったが、自然とキリエに愁眉を開いていった。 816 :私は人がわからない:2012/08/22(水) 11 08 53 ID gEXkxocY[8/12] キリエは、夕日を見に来たのだと言った。学校の屋上から見る夕焼けはとても綺麗で、だからたまに此処へやってくるのだと。そして、よければ貴女も一緒に見ないかと誘われた。断るはずがなかった。私は黙ってキリエの横に並んで、夕日を見た。 綺麗だった。赤い夕日、紫色の千切れ雲、微かに光る星屑。空なんて今までに飽きるほど見てきたけど、私はあんなに美しい夕日を見たことがなかった。感動で胸中がぐちゃぐちゃになって、気付けば泣き出していた。 そして、全てを吐き出していた。孤独が怖いこと、イジメられて悲しいこと、屋上には自殺しに来たこと。私が吐露したモノを、キリエはそっくりそのまま受け入れてくれた。私の全部を受け入れてくれた。話を終えた後、アイツは私にそっと言ってくれたんだ。 なら、私と友達になりましょうって。それなら前田さんは独りじゃないでしょうって。 世界が変わった気がしたよ。喩えるなら、灰色だった世界に色がついたんだ。息苦しかった空気が爽やかなものになって、身体がとても軽くなっていた。生きているっていう実感が、初めて沸いたんだ。 でさ、触れたんだよ私は。私は真理に触れたんだ。キリエさえ居れば、他のことなんてどうでもいいんだっていう、至極簡単な真理に触れたんだよ。私にとっての世界は、キリエと、その他の有象無象なんだってことがわかったんだ。 大衆など必要ない。賑やかのなんていらない。私にはキリエ。ただ隣りにキリエさえいればいい。それなら孤独だって怖くないって。キリエさえいれば、世界なんて滅んだっていいんだって」 前田かん子は、私がいることなど忘れてしまったかのように、機械的に話しを続ける。口元は歪に曲がり、時折哄笑を漏らす。瞳は暗く濁り、此処ではない遠い世界を見据えている。 話はまだ終わっていないようだったが、もう十分だった。私はトリップしてしまった彼女を、冷ややかな視点で見ている。 違和感の正体にやっと気付いた。というか、気付くのが遅すぎたくらいだ。やはり自分は感情の推し量りが不得手なのだなと、つくづく実感する。 私はずっと、前田かん子が田中キリエに対して抱いているのは友情だと思っていた。けど、違うのだ。それは友情とは程遠いものだった。 彼女が抱いていたのは、ただただ歪曲し、狂気すら宿した、愚にもつかない愛情。おぞましさすら感じてしまう、井戸の底のように暗い感情だった。 気持ち悪い。私は対面に座る前田かん子を見て、そう思った。気持ち悪い、と。 「以上で、私とキリエの話は終わりだ」 話が終わると、彼女の瞳にも漸く光が戻ってきた。放棄していた正気を手繰り寄せつつあるのだろう。怖気立つような不快な感じが、徐々にではあるが消えていく。 ホッと胸を撫で下ろした。あの気持ち悪い前田かん子には、二度と会いたくないと思った。 817 :私は人がわからない:2012/08/22(水) 11 10 36 ID gEXkxocY[9/12] 「いやぁ、そんな過去があったのですね。色々と意外な事実も露呈して、とても興味深く話が聞けました」 話をしてもらった礼儀として、質問をひとつする。 「ところで、結局イジメはどうなったのでしょうか?」 「ああ、あれからイジメていた奴等全員、学校に来れなくした」 「へぇ……」 具体的なことは訊かずにおこう。 と、不意に、フラッシュを焚いた時のように窓の外がピカリと光った。数秒して、ゴロゴロと天が唸り声を上げる。 私と前田かん子は、ほぼ同時に通りに目をやった。いつの間にか、外はとても暗くなっていて、通行人はものの見事に一人もいない。店内の客も全て消えていて、カウンターの店員さんだけが、ちらちらとこちらを盗み見ていた。 「…………」 もう頃合いだなと、これより先のことは断念する。内心、満足していない部分もかなりあったが、人事は全うしたのだ。後は、天啓を待つのみなのだろう。 「最後の質問です」 前田かん子を見据えて、言葉を続ける。 「どうして、田中さんは私のことが好きなのですか?」 これだ。何があろうと、最後にこれだけは訊いておこうと決めていた。長年の疑問。田中キリエが、なぜ鳥島タロウを好いているのか。 「あなたの口ぶりだと、田中さんが私を好きになったのは、どうやらもっと昔のことのようです。しかし、私と田中さんが初めて出会ったのは、高校からのはずだ。少なくとも私はそう認識しています。 なのに何故、田中さんは私に恋心を抱いていたのか。ずっと疑問だったんです。前田さん、教えてもらえますか?」 また雷が落ちた。前田かん子の顔が、青白い光に照らされる。轟音で窓が震え、キシキシと嫌な音を立てる。彼女はコツコツ、と人差し指でテーブルを叩いている。 「私も詳しく聞いたわけじゃない」 と、前田かん子はあらかじめ前置きをした。私は首肯して、先を促す。今から事の真相が、暴かれる。 「キリエは昔、市立N小学校に通っていた」 市立N小学校という単語を聞き、心臓がどきりと跳ね上がる。 「市立N小学校って……」 「そうだ。キリエはお前と同じ小学校に通っていたんだ」 818 :私は人がわからない:2012/08/22(水) 11 12 15 ID gEXkxocY [9/12] 要は私と同じだよ、と自嘲的な響きを含めて、彼女は説明する。 「当時、たしか小学五年生だったか。キリエはイジメに会っていた。原因はわからない。アイツは優しい人間だから、自分からは絶対にイジメの原因を作り出していないはずだ。ほぼ一方的に危害を加えられたに違いない。 それだけでなく、家でもかなりの不和を抱えていたと聞く。さっき家族構成を説明した時、私は母親でなく継母だと言ったよな。アイツの実の母親は、もう既に亡くなっているんだ。自殺だったらしい。 キリエ自身が、特に母親のことは話したがらないから、これはあくまで憶測なんだが、おそらくキリエは実母から虐待を受けていたように思う。言葉の端々から、なんとなくそんな匂いがした。少なくとも、母親とは決して良好な関係ではなかったはずだ。 つまり、内でも外でも、キリエの世界はボロボロだったんだよ。嗚呼、可哀想に。キリエは、あの時が人生で一番辛かった時期だと言っていた。とても、ひとりで耐えられるものではなかったと」 ふっと、彼女の顔から憐憫の念が消え、憤怒に取って代わった。 「だけど、だ。憎たらしいことに、私にとって、最も不快な事実があったんだ」 激情をおさえきれなかったのだろう。彼女は唐突に握りこぶしでテーブルを叩いた。身体はやるせなさで震え、歯をぎりぎりと噛み締めている。羨望と憎悪が混ざり合った瞳の先には、当然のように私がいた。 「そんな絶望のさなかにいたキリエを救ったのが、鳥島タロウだという事実だ」 今にも噛み付かんばかりの表情で、最後を締めくくった。 かちり、と頭の中で歯車が動き出した。私は剣呑な様子の前田かん子には意にも介さずに、じっと考え込む。 そうだ。私は知っていた。小学五年生の時に、そのような少女がいたのを知っていた。かちかちと、歯車が噛み合わさっていくのを感じる。だが、何かが足りない。ジグソーパズルのワンピース。後一つ、最後にそれが埋まりさえすれば全て思い出せるのに。 「前田さん」 私は目を閉じて、眉間の辺りを強く揉んだ。かちかちかちかち。歯車が回る。 「当時、田中さんは苗字が違ったんじゃないですか? 田中キリエでない、もっと難しい名前だったはずだ。そうだ。私はその少女を知っている。けど、田中キリエではなかった。もっと違う。違う名前」 おぼろげながらも、少女の姿が浮かんでくる。しっかりと意識を向けなければ消えてしまうほどの儚い幻想だったけれど、確かに私の中に少女はいた。 そうだよ、と未だ興奮の抜けぬ声色で前田かん子は言う。 「アイツの親父は婿入りだったから、離婚時に苗字が変わっている。小学生の時、キリエは田中キリエでなかった。当時のアイツの苗字は・・」 819 :私は人がわからない:2012/08/22(水) 11 13 47 ID gEXkxocY [10/12] 最後のピースを手渡してくれた。 「葛篭木だ。小学生の時のアイツの名前は、葛篭木キリエだ」 「ツヅラギ、キリエ・・」 かちり。全ての歯車が噛み合わさり、からくりは動き出す。フラッシュバックする情景。ストロボをたいた時のように、眩い閃光と共に記憶が浮かび上がっていく。 雨。校舎。昇降口。たたずむ少女。弱い。死んでしまいそうな。傘。失くした物。探索。結果。帰り道。水溜り。虹。そして、少女の瞳に宿る……。 靄が晴れていくように、さっと疑念がきえていくのがわかった。心に一陣の風が吹き、清涼剤の如き爽やかな気分が胸中を占める。やっとだ。わからないという気持ちの悪い状態から、やっと解放されたのだ。 葛篭木キリエ、いや、田中キリエはあの時の少女だったのだ。 「ありがとうございます」 テーブルに手をついて、深々と頭を下げた。自分にしては珍しく、それは正真正銘の心からの感謝だった。 「質問はこれで全て終わりました。前田さんのおかげで、これからうまくやれそうです。本日は御協力、誠に感謝いたします」 「ふん」 前田かん子はつまらなそうに鼻を鳴らしてから、すっと腰を上げた。自分の責務は果たした言わんばかりに、きっかりと私への関心を無くす。そして、ポケットの中から小銭入れを取り出した。 「支払いは結構です。今日は私が払いますよ。そもそも呼び出したのは此方ですし、そこまでしてもらうわけにはいきません」 「断る。お前に妙な借りはつくっておきたくない」 そうして乱暴に硬貨を投げる。三百十五円。ブレンドコーヒーちょうどの値段だった。 「それと鳥島タロウ。携帯電話を貸せ」 「携帯電話?」 誰かに連絡をとるつもりなのかしら、と疑問に思いつつも、私は古びた携帯電話を彼女に差し出した。すると、パキン。携帯電話が真っ二つに折られた。そしてそのままテーブルの上に放り投げられる。 「これからは二度と私に連絡をとろうとするな。わかったな」 「……はい」 意気消沈の返事をしながら、二つに分離した携帯電話を左右それぞれの手で拾い上げる。断面から赤いコードが、内臓のようにだらしなくはみ出していてグロテスクだった。 まあ、前々から機種変更をしようと思ってたし、別にいいんだけどさ。けどさ、そんなの口で言えば済むことじゃない。なにも物理的破壊に躍り出なくたって……まあ、いいんだけどさ。本当に気にしてないんだけどさ。別に、携帯電話くらい、いいんだけどさ。 はあ、と溜め息を一つ。携帯電話をテーブルに置き、つんつんと指でいじる。 820 :私は人がわからない:2012/08/22(水) 11 15 04 ID gEXkxocY [11/12] と、それで立ち去るだろうと思っていた前田かん子が、なぜかまだ前方に立っていた。 「まだ何か?」 点燈することのない液晶画面を覗き込みながら、いじけた口調で訊ねる。が、返事は返ってこない。 これは本格的におかしいぞ、と不安を感じながら顔を上げると、彼女は今まで見たことのない、なにやら難しい顔をして私を見下ろしていた。 「まだ、言わないつもりなのか」 低い、しわがれたハスキーボイスでそう言った。 はてなにやら。こちらとしては首を傾げるしかない。 「言わないもなにも、今日は訊きたいこと全て訊けましたし、私にはもう言うことはありませんけど」 「違うっ」 即座に言い返される。まだ惚ける気なのか、と前田かん子は詰問調で口火を切った。 「あまり私を舐めるなよ。気付いていないとでも思っていたのか。今日、お前は私と会ってからずっとそうだ。何を言うにも、薄皮一枚挟んだような嘘くさい物言いばっかしやがって。 違うんだろう、鳥島タロウ。お前の本当の目的は、キリエの情報を訊くことではない。そうなんだろう」 「…………」 「言えよ。なにが狙いだ。電話でなく、わざわざこんなショッピングモールの喫茶店にまで呼び出して、私とくだらない会話を交わした理由はなんだ。なにを企んでいるんだ。吐けよ、洗いざらい吐けよ。気味が悪いんだよ、お前」 「……くくく」 自然と、笑い声が漏れ出ていた。いやいや驚いた。前田かん子、コイツは私が思っているよりも、よっぽど鋭かった。野生の勘などではなく、冷静に私を観察しての結論なのだろう。彼女に対する評価を、改めなくてはならない。 「ええ、その通りです」 私はお手上げだとばかりに万歳して、降参の意を表した。 「たしかに、私が前田さんを呼び出したのは、田中さんのことを訊くだけではありません。それはあくまで名目上の理由です。隠された、真実の目的があります」 一呼吸置いて、十分な間をつくって空気を張り詰めた。そして、あくまで慇懃な口調で、ゆっくりと真意を告げた。 821 :私は人がわからない:2012/08/22(水) 11 16 25 ID gEXkxocY [12/12] 「私が前田さんを呼び出したのは、ひとえに言って好感度を上げるためです。田中さんとの個別ルートを進めつつ、前田さんとも親密になり、そしてゆくゆくは両手に華エンドという壮大な目的が・・」 雨音に負けないほどの乱暴な騒音。いつの間にか目の前から前田かん子は消えていて、出入り口のドアに付随していたベルが床に落ちた。店員さんは仰け反るようにして、恐怖でブルブルと震えている。 エンジン音がして、外に目を移すと、彼女はちょうどフルフェイスヘルメットを被っているところであった。そして前田かん子は私を一度も見ることなく、大雨の中をバイクで駆け抜けて行った。目を見張るほどの猛スピード。事故らなきゃいいけど、と不必要な心配をする。 猛獣の唸り声が遠ざかっていき、完全に消滅したところで、私は漸く身体の緊張を解いた。 「……怖かったなあ」 呟く。正直、かなり怖かった。身体中が間断なく震えている。終始わざと余裕な態度をつくっていただけに反動が凄い。深い呼吸を何度か繰り返し、私はなんとか平常心を取り戻した。 さて、今日の計画はうまくいったのだろうか。残念ながら、それはわからない。百点満点とは云えないだろうが、それでも及第点ぐらいは取れたはず。少なくとも赤点は免れた。 まあ、詳しいことは何も判明していないけど、今はそれでよしとしよう。 それよりも、 「まさか、田中キリエが葛篭木キリエだったとはねぇ……」 合縁奇縁。人の繋がりとは妙なものであると、殊更に実感する。いや、中々どうして。忘れていたフラグを今になって回収するとは、自分も結構主人公やってるじゃないか。笑ってしまう。 「…………」 これから、どうしよう。私はぽつねんと残された店内で一人、呆けたように座っている。 店の外では、相変わらず強い雨が地面を跳ねていた。冬本番のこの季節。この雨の中に出て行ったら、間違いなく風邪をひいてしまうだろう。明日からまた学校だし、体調を崩してしまうのは得でない。 「ふむ」 少し悩んだ末、私はまだカウンターで怯えている店員さんを呼んで、コーヒーのおかわりを注文した。雨脚が弱まるまで、もうちょっと店内で粘ろうと思ったからだ。 その時だった。 ・・君さ、傘持ってる? 不意に、まだ幼い頃の己の声が再生されて、私は思わず苦笑したのだった。 そうだ。葛篭木キリエと初めて話したあの日。あの日も私はこうして傘を忘れて、雨が止むのを待っていた。
https://w.atwiki.jp/ressenrowa/pages/39.html
茶色の毛並みに猿そのものな面構え、 一見そいつは手足が長いだけで妙なステップを繰り返す猿にしか見えない しかし実際は悪の軍団を率いて世界支配をもくろむ Dr.モービスという邪悪な科学者が チーターマン兄弟を滅ぼすべく作り出した恐ろしい生物兵器。 それがサル型戦士エイプマンなのである。 バトルロワイヤルに召喚されたエイプマンは説明書を読みながら ポケナビで参加者名簿を閲覧して にっくきチーターマン3兄弟どもがいるか確認したが なんと一人もいなかった。 このことにエイプマンは憤りを見せ怒りのあまりに般若のごとく顔を歪ませ 地団駄を踏んで怒りの叫びを上げた。 だがこのまま怒っていても何も進展はないと 直ぐに我に返って冷静になり このバトルロワイヤルの世界で何をすべきかの判断を下した。 その判断とは優勝し、新幹部とやらに就任し記念の願いで チーターマン兄弟をやっつけてもらうことである。 そうと決まれば話は早い。 邪悪な笑みを浮かべ、自分が優勝する場面を思い浮かべながら エイプマンは見る者を高確率で困惑させる トリッキーかつ珍妙なステップを刻みながら 悪しき願いのために出発をした。 出発し、自分が優勝してチーターマン兄弟が全滅するビジョンを明確に イメージしながら悪意にみちた笑い声を上げるエイプマン。 少し移動すると学ランを着た大男の背中がエイプマンの凶悪な瞳に映った。 ちょうど良い、背中からだけでも伝わる強者としての気迫と威厳。 実に狩りがいにあふれた犠牲者第1号ではないか。 我が体当たりの餌食にして苦痛と恐怖に溺れた最期を与えてやろうじゃないか。 このバトルロワイヤルの世界に呼ばれた不幸を、 足の裏から頭のてっぺんの毛穴までとことん呪い尽くすが良い。 ◆ ◆ ◆ 「俺の名は空条承太郎、バトルロワイヤルに召喚されちまったぜ、やれやれだぜ。」 現在一人であるにも関わらず、誰に向けたのかわからない自己紹介を行った スタンド使いの名は空条承太郎。 現在高校生であり、やばくなった母の空条ホリィを救うため 邪悪の化身(仮)DIOを討伐するべく 仲間とともにエジプト出発した少年だ。 しかしこの空条承太郎は本来の承太郎とはいろんな意味で違う。 「こんなやばいイベントに巻き困られちまったら、 生き残って、とにかくとりあえずサカキとか言う あのおっさんをぶちのめしたいぜ。」 主催者のサカキへの敵意が燃えゆく たしかに彼は真の承太郎ではない。 自分もよく噛むくせに敵が台詞をかんだらここぞとばかりにつっこむし、 怪しい奴は問答無用でスタンドのラッシュを直ぐにかますような 無慈悲すぎてそれでも主人公なのかといいたいが 内に秘めた正義感と理不尽と暴虐をぶちまけ続ける 吐き気を催す悪への怒りは確かに渦巻いているのかもしれない。 「それにしてもあの大量のナイフ… すげぇちくちくしていて痛すぎたぜ、 直前で止まる原理なんて気にしている場合じゃなかったな」 承太郎の最後の記憶はDIOのスタンド、ザワールドに時間を止められ、動けぬ隙にとてつもない量のナイフを投げられ、スタープラチナの超速ラッシュを持ってしても捌ききることはできず、全身グサグサのブサブサ先生にされた状況であった。 しかしどういうわけか今はナイフの刺し傷がすべて回復している。 「じゃあまずは名簿を見てみるぜ、じじいやみんなが巻き込まれているのは…嫌。」 名簿を閲覧しようとした承太郎、 仲間の名前が記されていないことを祈りつつ、 DIOがもしもいたらぶちのせるチャンス到来だから良いなと考えていた。 名簿確認の直前に、暴虐をまき散らす宣言のような雄叫びをあげながら 猿のような怪物が背後から襲いかかってきた。 「うおっ!!やべっ!!とりあえずスタープラチナ!!」 びっくりして冷や汗をかいたがとっさに振り向き 古代ローマの強靱な剣闘士を思わせる外見のスタンド スタープラチナを繰り出し、両腕を縦に構え怪物の体当たりを防ぐ。 こいつは単なる猿にしか見えないが 百獣の王ライオンのような闘志に 獲物を必ず仕留めんとする毒蛇のような殺意を持つ 本物の怪物であることだけは確かだ。 この怪物を仕留めなければ犠牲者は増える一方となるだろう。 「オォラア!!」 次の動作へ無駄なく移ったスタープラチナは素早く上半身をひねり右の拳を引っ込め バズーカ如くの勢いでエイプマンをぶん殴り、 あまりにも強烈な威力で吹っ飛んでいく前に、左手で猿の右足を迅速につかんだ。 「!?」 エイプマンは何が起きたのかわからず 口をあんぐりと開けながら深く動揺している。 強いてわかったことは目の前の男はただの高身長の学生ではない、 背後霊のような存在を操り、その背後霊は想像を絶する膂力を持っている。 戦場に足をつけんとする怪物として本能が 次の内容をエイプマンは理解する、 それはあの恐ろしいパンチでも明らかに手加減をしていることだ。 手加減したのはおそらく自分から何らかの情報を吐かせたり 全く知らないがあの主催の男についてなにか聞き出したいのだろう。 それらの用がもしも済めば自分はどうなるか? 死あるのみの可能性が非常に高い。なにせ襲いかかってきたのはこちらからであり 正当防衛などの目的や、生かしたら被害が広がると考えられてそうなる前に 殺される可能性があるからだ。 こんな屈強すぎる背後霊が本気で殴れば 自分は間違いなく死に絶えるだろう。 「おい。」 「……」 主催の黒服野郎のことも知らないし、 Dr.モービス軍団のことを 仮に教えたとしても、死を免れる状況になるのか ほぼ確定でそれはない。 「おめー本体はどこだ?」 「…?」 本体?なんのことだ? 「なんとか言え!!俺はモンキーが黙るとむかつくんだ!!」 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオオラオラオラオラオラァ!」 左手でつかんでいるため右手だけなのと手加減を恐らくしているため 本気の威力ではないがスタープラチナの脅威のラッシュが ガトリング銃じみた速度でエイプマンを襲う。 痛い、痛すぎるまたこんなラッシュをたたき込まれたら死ぬ。 この威力で本気ではないようだからマジで恐ろしい。 猿が嫌いだからって、いっきに怒鳴りキレて ぼこぼこにしてくるのもいろんな意味で恐ろしい。 「とぼけんじゃねーぜ、てめーの本体はどこにいるんだぜ。」 いや、わからないけど… 「まさかてめーがスタンドの本体でスタンドそのものはどっかに隠しているってことか?」 だからわかんねーよ。 空条承太郎は以前に海上にて オランウータンのスタンドを操る貨物船を たたきのめしたことがある。 そのときと同じようにこの猿もスタンドの一種ではないかと考えたのだ。 もしこの場にいたのが真の空条承太郎であれば この猿を本体と解釈して、スタンドを見せない理由を問い詰めていた可能性が高い。 「!!!」 激しい身振り手振りや首を全力で横に振ることで スタンドなんざ知らないことを 必死に伝えようとする哀れでずたぼろのエイプマン。 「嘘だったまたオラを打ち込むが… まさかそもそもスタンドを知らないのか? そうだとしたらちょっと殴りすぎたごめん。」 その言葉を聞いて 首を縦に故障した人形のように振りまくる。 激しく振りすぎて少しの風圧すら発生している 「知らない振りしてんじゃー無いだろうな?」 さらに首を早く振る、こんな速度で首を振れば 一般人であれば間違いなく折れるだろうが 仮にも侵攻を目的とする生物兵器なので折れることはまず無い。 みっともなくおびえようとも彼もまた屈強であり スタープラチナに比べればさすがに劣るが 強靱なる戦士であることには変わらない。 「まじかどうか怪しいが知らないで御座いますか…、 でもさっき襲いかかったと言うことは バトルロワイヤルに乗ったと言うことで良いんだな。」 あ、やべ、スタンドとやらを知らないことをわかって もらえたのは良いが、俺がゲームに乗ったのは事実 こんな強いのがいるなら願いのことなんざ考えるのは間違いだった。 「…本当はお前のような奴はやっつけたいんだが… 恐怖で錯乱して生き残りたいために死にたんん、噛んだぜ。 死にたくない死にたくないと殺し合いに乗った みたいな理由ならさすがにかわいそうだから 俺の監視付きでなら生きていても良いぜ」 一回噛んだがやたら具体的な解説を付けてエイプマンに一種の情けを掛ける。 それを聞いたエイプマンはにっこり笑いながら 敬礼のポーズをとり了承したようだ。 「よしよし、それが正しいんだ、いくら追い詰められて やべーことになってもそんなことをしちゃうと 殺人事件に発展するからな」 そう言うとスタープラチナが足を離した瞬間に エイプマンは超高速で奇妙かつ謎なステップを刻みながら全速力で逃げ出した。 「あ、おいこら逃げんじゃねーぜ!!」 冗談じゃないお前みてーな意味不明で台詞も噛むし、 連続のパンチはすげー痛いし よくよく見たら髪と帽子が一体化しているようにも見えるし 誰がお前のような意味不明の塊見てーな奴と同行するか 「待つんだぜ!!待たないと…えっとその…ひどいぜ!!」 いきなり逃げられた動揺で言葉が上手く出ずたどたどしくなってしまう。 とりあえず追いかけるために全力で走る。一応ゲームに乗っているから 放置すると犠牲者が発生しても不思議ではない。 「おい待っ…!!!けむり!!!」 以外、それは煙。どこにも火や煙出すような 器具などもないのにも関わらずいきなり煙が発生した。 煙の原因はエイプマンの支給品である煙玉にある。 逃走の際に深い煙を巻き起こしてとても逃げやすくなる効果がある。 「…ちょおいおいお、げほぐぇっごほほええぼ!!」 あまりにも多くて深い煙に 承太郎はむせてしまいひるんでしまった。 「スタープラチナ!!!よしプラチ菜も…あれでないぜ」 煙を手早く払うべく、スタープラチナとそのスタンドをそのまま女性にしたような外見の プラチ菜を使おうとするがなぜか出ないし使えない いつもならスタープラチナ一人では難しい問題を速解決するために活用したり 観察や偵察に使えるプラチ菜がなぜか使用できない。 「明らかにおかしいぜ!!どういうわけだこれ!?」 早い内に制限に気づけたのは間違いなく幸運ではあるが 殺し合いに乗ったサル型戦士エイプマンの逃走を許してしまった。 「しょうがねぇ!!とにかく今は煙を払うぜ!!」 手のひらを広げ豪快に煙を仰ぎスタープラチナは煙を払った。 「この煙…深いっ!!」 スタープラチナの強大なパワーを持ってしても逃走を 100%許してしまうほどの煙を 払い尽くすのにはあと少し時間がかかりそうだった。 【K-2/未明/一日目】 【空条承太郎@うろ覚えで振り返る 承太郎の奇妙な冒険】 [状態]:あのサルむかつくんだ! [装備]:なし [道具]:基本支給品、1~3、 [思考・状況]基本行動方針:殺し合いには乗らない、サカキをぶちのめす。 1: 煙を払うぜ 2: あのサルは放っておけないぜ 3:プラチ菜が使えないぜ… 4: まだ名簿を見てないぜ!見たいぜ! [備考] プラチ菜(スタープラチナの女性版)は制限で使えません。 参戦時期はパート59の終了直後です。 ◆ ◆ ◆ 逃走に成功したエイプマンは現在K-3の南あたりにいた。 うかつだったまさかあんなに強くてよくわからなすぎる実力者がいるとは あんな強すぎるやつがいたら、モービスの動物戦士軍団がいても 世界征服なんぞほぼ無理ではないか、 方針を変えようどんな異常な強者がいるのかわかったもんじゃない 少しでも怪しかったり、変だったりする奴からはとにかく逃げよう。 世界を支配する悪の軍団としての誇りや意地だとか そんな綺麗事をほざいている場合ではない なんとしてでも生き延びて願いを叶えなくては とにかく逃走に徹していれば その内参加者たちが徐々に死んでいって 漁夫の利を狙う作戦もありだ。 優勝してチーターマン兄弟打倒の願いだけはなんとしてでも叶えたい その一点だけはぶれないぼろぼろなエイプマンであった。 【K-3(南あたり)/未明/一日目】 【エイプマン@チーターマンII】 [状態]:重傷、全身に打撲痕、疲労(大) [装備]:なし [道具]:基本支給品、2~3、煙玉@ポケットモンスターオメガルビー [思考・状況]基本行動方針:優勝を目指す 1: 今は少しでも怪しい奴からは逃げる。 2:あの学ラン男はいろんな意味でやばい。 3:そういえば煙がなんか出たな… 4:スタンドとはなんなんだ? 5:あの背後霊がスタンドというのか…? [備考] 煙玉に制限があり、煙玉を持った状態で5回逃走すると玉が壊れます。 あと4回で壊れます。 【煙玉@ポケットモンスターオメガルビー】 持たせると野生のポケモンから必ず逃走できる便利な道具。 今回のロワでは制限が掛けられており、5回使用すると 壊れて使用不可になる。 PREV 008 NEXT ひとりよがりの逃避行 投下順 今はわからないことばかりだけど 時系列順 それ飛べ!空条承太郎 GAME START 空条承太郎 それ飛べ!空条承太郎 GAME START エイプマン