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たかみなのいつもの甘え方@スマスマ1206gif 画像はサムネイルです。 ○○.gifがファイルへのリンクです。 01.gif 02.gif 03.gif 04.gif 05.gif 06.gif 07.gif 08.gif 09.gif 10.gif 11.gif 12.gif 13.gif 14.gif
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SS50 いつか 戦ばかりが続いていた時代のこと。 男は戦にかり出され、女が家事や国事を行うことが当たり前になっていたのだが… そんな時代に三味線片手に旅をする少女が居た。 「ひ~ふ~み~よ~ご~は~ん♪」 少女は名前を唯といって、故郷に妹を残して出稼ぎ中の身である。 「次、そなたと我!」 唯の歌と三味線は“天下一品”というものでは無かったが、なんとなく人を集める不思議なものだった。 「おおっ。今日は良い出来だよ。これなら憂にお金を送ってもらわなくても生きていける」 演奏を終えて集まったお金を数えると、普段より多めだったようだ。 「「あっちで可愛い子が芸やってるって!」」 唯がお金を懐におさめ終えると辺りの人が大移動をしていた。 「今日は贅沢しちゃおうかな?久しぶりに鰻とか食べようか…」 「それじゃあ行くぞ!」 周りの人々の様子などさておいて唯が食べ物の事を考えていると、威勢の良いかけ声と共に鼓の音が鳴りはじめた。 「「わぁ!」」 さっきまで唯の演奏を聴いていた人が歓声をあげる。 唯が歓声を気にすると、鼓を叩いている女の子が空中回転をしていた。 少女の息をつかせない空中での連続技、時折見せるコマや傘を使った芸に人々は酔いしれた。 「凄い!あの子怖くないのかな?あ、今度は逆立ちした!」 気が付くと、同業者である唯自身も手に汗握って少女の芸を眺めていた。 「ありがとう~。ほんの気持ちで結構ですので、よろしければこちらに…」 結局、唯は芸が終わって少女がお金を集めだすまでその場を動かなかった。 少女は自分を中心にできた人の円をかごを片手にまわっていく。 「お、こんなに良いの?ここのお客さんは太っ腹だな。はい、そこのお嬢さんもどうだった?」 かごの中が溢れそうになってきて、遂に唯の立っている所まで少女が来た。 「…」 「あの…つまんなかったかな?」 唯は少女の笑顔に見惚れてしまっていた。 少女は無反応な唯に問いかける。 「え…凄く良かったよ!!」 「こんなに!?お嬢さん気前良いね。でも、これは貰いすぎだから…こんくらいでいいや」 少女が不安そうな顔をしたので、唯は後先を考えずに稼いだ銭を袋ごとかごに入れてしまった。 だが、少女はその袋から小銭を数枚とっただけであとは唯に返して次の客へと流れて行った。 「あは~っ。本当にここのお客さんは気前がいいな。これだけあれば随分旅が楽になるぜ」 「あの~…」 「ん?あ、さっきの気前がいいお嬢さん。どうかしたの?」 「いや、その…さっきの曲芸が凄く良くて、それで…私も旅芸人で…だから…その」 唯は帰り支度をしている少女に話しかけたが、緊張しているのか言いたい事をうまく伝えられなかった。 「ああ、同業者さんか。ここのお客さんは銭を惜しまないからお嬢さんも儲かったかい?」 「うん。普段の十倍くらい貰ったよ。これから何か美味しい物でも食べに行こうかと思って…」 「そりゃいいや。ちょうど良い時間だし…良かったら私も一緒に行って良いかな?あ、私は“律”って言うんだけど、お嬢さんの名前は?」 唯は神様に感謝した。今日は稼ぎも良かったし、なんて幸せなんだろうと。 「いや~、鰻なんて久しぶりだぜ」 「おいしいね。りっちゃん」 二人は鰻屋にて昼食をとることになり、同い年で同じ旅芸人ということもあって話のタネは尽きなかった。 「しかし、唯も苦労してるよな。私は天涯孤独みたいなもんだから良いけど。その歳で親が家を捨てちまって、妹さんを故郷に残して三味線一つで出稼ぎだもんな」 「何か…あらぬ尾ひれが…」 しかし、どこで間違えてしまったのか、律は唯が“頑張るお姉ちゃん“だと思ったようだ。 「…実は憂の送ってくれるお金で生活できてるなんて言えない…」 「ん?どうかしたのか?」 「何でも無いよ!」 結局、なかなか食べられない高価な食事だったが唯の頭の中は味よりも別の事で一杯になってしまった。 「ねえねえ、しばらくこの町で居るんでしょ?明日は一緒にやってみない?」 食事が終わって、別れ際に唯が律に提案した。 このままお別れは嫌だと思ったら…自然と言葉が出てきた。 だが、唯の誘いに律は困ったような顔をした。 「悪い。明日の朝にはここを発って次の町に行こうと思ってるんだ」 「そうなの?次の町って…私も一緒に行ったらダメかな?」 「…朝になったらすぐ発つけど、大丈夫か?」 律は少し考えた後、申し訳なさそうにもじもじしている唯に笑顔を向けた。 「大丈夫だよ!朝早いなら私寝ない方が良いかな」 「いや、旅するんだからちゃんと寝とけよ。そうだな、明日の日の出の時刻に街の西側の船着き場で会おうぜ。じゃあな!」 「え、りっちゃん!」 それだけ告げると、律は唯の静止を振り切って人ごみの中に消えていった。 唯も慌てて後を追ったが、律の方が圧倒的に足が速かったので追いつけなかった。 「はぁはぁ……りっちゃんて旅芸人になる前は飛脚だったのかな…」 走りつかれた唯は約束の明日に備えて早めに宿で休むことにした。 「楽しみすぎて眠れないよ。夜だから三味太も弾けないし…」 明日の支度を済ませて早目に床に就いたはいいが眠れない。 寝ないと明日辛くなると思えば思うほど悪循環で余計に眠れなくなっていく。 「水でも飲もうかな」 唯が水を飲もうと台所へ行くと、夜中のはずなのに人が大勢いた。 「宿泊者を全員起こせ!かまわぬ。抵抗する者が居れば斬れ」 何事かと思えば、武装した女達が宿の主人と揉めていた。 「何あの人たち…盗賊かな…!?」 危険を感じて唯は自室に戻ろうとしたが、その時に物音を立ててしまった。 「「貴様…よく似てるな。手配書にそっくりだ」」 物音を聞きつけた女達が唯を取り囲んで刃を向ける。 「貴様が”律”だな!よし、連れて行け」 「…え?ここ何処…」 殺されると思って放心状態になっていた唯が我に返ると、それまで居たはずの庶民的宿屋ではなく、立派なお屋敷のような宿屋が目に入ってきた。 「あの~此処は何処なんでしょうか?私はいったいどうなるんでしょうか?」 「さてな。我々の知ったことではないが、命まではとられないのではないか?」 「……」 身に覚えのない事で連れ去られて上に、殺されはしないまでも何かされる事は確定だと告げられて、唯は言葉を失った。 「ここで待て!しばらくすれば当主様がおみえになる」 宿屋の部屋で待たされる事半刻、階段を駆け上がってくる音がした。 「探したぞ律!」 その言葉が聞こえた時には、唯は知らない人に抱きしめられていた。 「あ~りつぅ~。会いたかったぞ。まったくお前は私をどれだけ心配させれば…って…あれ?律…じゃない?…うわぁぁぁぁぁ!!」 「何!?何なのこの人!?」 突然抱きしめられたと思ったら奇声を発して騒ぎ出したので、さすがの唯も気が動転して混乱してしまった。 「失礼、我が家の者がとんだ無礼を…旅の者と申されたな。よろしければお詫びもかねて今宵はごゆるりと」 あれからいろいろと揉めたりしたが、どうやら唯が無関係であることが解ってもらえたようだ。 唯をさらっていった者の主は秋山澪といい、東国の大名の跡取り姫君ということらしい。 「律さんて私に似てるんですか?」 この時点で澪が探しているのが昼間に出会った”律”であると、なんとなく唯は気が付いていたのであえて律と出会ったことは口にしなかった。 澪は律と聞いたとたんに顔をほころばせて流れるように語り始めた。 「似てるよ。寝る前の律は前髪を下してるからそっくりだ。あぁ、律…どうして居なくなってしまったんだ」 「大切な人なんですね」 自分の世界に入り込んでいる澪に当たり障りのないことを返す唯。 「なんてったって律は私の妻になるんだからな!律…私は律が忍びの鍛錬をさせられている時から10年以上律を手に入れる日を待っていたのに…」 ―――絶対この人勘違いしてるよ――― ”律”と言う度に澪がきつく抱きしめてくるのが鬱陶しかったが、何か粗相をして因縁をつけられても困るので、唯は大人しくしてやり過ごした。 「急がなきゃ…もうとっくにお日様出ちゃってるよ!」 散々澪の律話しを聞かされたらお日様が昇っていた。 唯は慌てて元居た宿屋に三味線を取りに帰り、西の船着き場までの路を走る。 唯が船着き場に着いた時、そこに律の姿は無かった。 「りっちゃん…まさか!あの人達に…」 唯の脳裏に昨夜の迷惑な姫様達の顔が浮かぶ。 「あのお姫様に捕まって東国に連れて行かれちゃったのかな…」 もしかして律が来ないかなと辺りを見回しても、やっぱり律は居ない。 「その三味線…あんたが唯って娘かい?」 「はい?」 船着き場周辺を歩いていると年配の女性に声をかけられた。 「これ、名も告げないから何処の誰かわかんないけど、あんたにって預かったんだよ。確かに渡したからね」 年配の女性は唯に手紙を渡して去って行った。 「もしかして…また難儀な事に巻き込まれたり…」 怪しい手紙を恐る恐る読んでみる。 唯へ 昨日は姫様が迷惑かけて申し訳ない。 唯を傷つけるような事をしたら助けようと思ってたけど、無事で良かったよ。 さて、本題なんだが 約束破って悪いな。 唯と一緒には行けない。 知ってると思うけど…私はまだしばらく姫様から逃げないといけない。 今はまだ楽に逃げられてるけど、この先手荒な事をしてくるかもしれないから一人が良いんだ。 勘違いしないでくれよ? 唯に一緒にって誘ってもらった時、私は凄く嬉しかったんだぞ。 たった数刻だったけど、初めて友達ができたみたいで…嬉しかった。 私はもうしばらく西の方を流れてみようと思う。 そうすれば、いい加減姫様も諦めてくれるだろ。 だからさ、私のごたごたが片付いたら…唯の隣りで鼓叩かせてくれないか? なんてな… 元気でな唯。 またいつか会える日を楽しみにしてる。 律 「りっちゃん…無事だったんだね。ちょっと遠いけど、私も西の果てまで旅してみようかな」 唯は三味線を片手に旅を再開した。 唯と律の二人がこの後どうなったのか? 数百年後の未来には何の記録も残されていないので定かではない。 ただ、たとえ再び相見えることが無くとも、繰り返す四季にただ一度きりの思い出を重ねて強く生き抜いたことだけは間違いないだろう。 「りっちゃんおぃ~っす」 「待ってたぞ唯。今日のおやつはシュークリームだってよ!」 end
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いつかきっと No.367 種別 トリック 聖霊力 Lv5 HAND 赤1金1 Power 0 PowerBonus 300+友情75% レアリティ レア 勢力 聖霊界 効果 相手に500ダメージを与える 戻る
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150 名無しさん@ピンキー sage 2009/06/30(火) 00 35 01 ID pVHuVLv8 〈1〉 今朝の朝食もいつもどおりだった。 3つのお皿に目玉焼きが3つとベーコンがそれぞれ2枚づつ、 付け合せのキャベツとトマト、薄っぺらな食パン3枚。 コーヒーと牛乳とオレンジジュース。 向かいの席の姉がトマトを皿の端へ除けていて、隣で妹がグチャグチャ目玉焼きの黄身をかき混ぜる。 繰り返す朝。 変わらない日常。 「もぅトモ、またネクタイが曲がってる」 不意にテーブルを飛び越えてくる手を咄嗟に払う。 「別にいいって言ってるだろ」 あからさまな失意の瞳。媚びる様な仕草。 見ていられなくて目を逸らす。 「ねぇ、きょうも『あされん』はないの?」 目玉焼きをやっつけた妹が袖を引っ張る。 先週末に大会が終わったばかりで、今週末まで朝練は無い。 「ないよ」 「じゃあ、きょうはいっしょにいく!!」 まだ箸を上手く使えない妹がフォークを天に突き上げる。 要するに幼稚園まで連れて行け、という事なのだろう。 「そっか、今日は紗耶を送ってくかな」 「じゃあ、私も……」 「姉さんは先に行っててよ」 付いて来ようとする姉を制すると、 「紗耶、あんまり遅いとお兄ちゃん先に出ちゃうぞ!!」 「まってぇ~」 急いで席を立ち、妹を急かして家を出る。 名残惜しそうな視線は……玄関で遮られた。 151 名無しさん@ピンキー sage 2009/06/30(火) 00 35 39 ID pVHuVLv8 〈2〉 別に、嫌いなわけじゃない。 ただ、知ってしまっただけだ。 姉が自分をどういう目で見ているか。 何気ない仕草に時折見え隠れする 粘りつくような、纏わり付くような、絡みつくような、熱い視線。 一度意識してしまうと途端にそれが息苦しくなった。 そして、何より恐ろしかった。 姉弟で好き合う事など考えられないし、それが何を意味しているかわからない年齢でもない。 諦めさせる。 そう決心してからはなるべく姉とは距離を置くようにしている。 多少冷たく接してでも距離を取って、風化するのを待つ。 それが姉に対して取っている唯一の対策。俺が姉に対してできる精一杯の努力。 「ぎゅう」 口で擬音を発しながら紗耶が手を握る。 「へへぇ……」 天真爛漫な笑顔。俺はこの笑顔に弱い。 妹の紗耶にはついつい甘くなってしまう。 歳の離れた妹なので、兄妹というよりも娘のような感覚で接している。 「ふん、ふふ~ん。ふん、ふふ~ん」 ご機嫌なのか、鼻歌を歌っている。 足元のおぼつかない、まだまだ発展途上の歩幅。 急ぎ過ぎないように、手を引いて歩いてゆく。 「紗耶ちゃん、今日はお兄ちゃんと一緒なんだ」 校門の前で園児達に挨拶をしていた先生が、こちらに声をかけてくる。 「うん」 「いいね。優しいお兄ちゃんで」 「うん」 妹の満面の笑顔。 透き通る様な無垢な返事がなんだか照れくさい。 「そういえば、聞きましたよこの前の大会!! 大活躍だったんですってね」 「ええ、まぁ……」 「目指せ、日本代表ですね!!」 息が詰まる。 どうしてそんなことを知っているのだろう。 「うふふ、紗耶ちゃんがいつも言ってますよ。『おにいちゃんは、だいひょーせんしゅになるんだ』って」 表情を読み取った紗耶の先生が笑う。 随分と間抜けな顔をしていたのだろう。褒められるのはどうにも苦手だ。 「それでは、紗耶をお願いします」 照れ隠しではないけれど、挨拶をしてこの場を離れる。 「ええ、いってらっしゃい」 「いってらっしゃ~~~い」 紗耶はこちらが見えなくなるまでずっと手を振り続けていた。 152 名無しさん@ピンキー sage 2009/06/30(火) 00 37 36 ID pVHuVLv8 〈3〉 「ハァ~イ、トモちゃん」 放課後。 教室でぼんやりとしていると、耳元で囁かれた。 「誰が『トモちゃん』だよ? 気持ち悪いからやり直せ」 「おっす、幼稚園児の妹の世話を焼くように見せかけて実は三度の飯よりロリ好きの上級変質者」 「喧嘩売ってんのか?」 「にゃはは、今なら安くしとくよ」 彼女は宙(そら)。 一ヶ月前くらいに転校してきたばかりで、ちょっとした事件をきっかけに知り合った。 まだ日は浅いはずなのだが、妙に気が合う事もあってよくこうやって馬鹿をやっている。 性格とセンスは別として、容姿は悪くないと思う。 ダサイ丸メガネに三つ編みという、一昔前の『いいんちょ』スタイル。 それでも、整った顔立ちではあるので目を引く存在ではある。 ここ一ヶ月の間だけでも多少目端の利く複数の男子からお付き合いの申し込みをされているらしい。 本人曰く、『男もオシャレもめんどくさい』とのこと。 個人的には不思議と異性を感じさせない事もあって友人をさせてもらっている。 それに、なんとなく……いや、まぁ気のせいだろう…… 「ところで……ようじょのおにゃのこに欲情するって人としてどうなのよ? ペド野郎」 ベシッ!! 頭の方は優秀ではなさそうなので一発チョップをかましておく。 「いつつ……ところでさぁ、今日暇?」 「いや、部活あるの知ってるだろ?」 「部活なんてバーゲンの前では何の意味も無いわ」 「は? バーゲン?」 「なに? バーゲンを知らないの?」 そこで心底不思議そうな顔をされても困る。 むしろ、困っているのは俺の方だ。 「いや、知ってるけど俺に何の関係が?」 「荷物持ちに決まってるじゃない」 決まってる? 決まってるってなんだ? 「日頃鍛えた筋肉はこういうときに使わないでいつ使うのよ。 アンタの筋肉が私にこき使われる喜びに打ち震え涙するのが私には見えるわ!!」 「変なもん幻視すんな。どんだけ変態なんだよ俺の筋肉は」 そもそも筋肉の涙ってなんだ? 汗の事か? 「つーわけだから、アンタ今日は部活を休みなさい」 「いや、意味わかんないし」 ってゆうか、話の展開について行けてない。 153 名無しさん@ピンキー sage 2009/06/30(火) 00 38 20 ID pVHuVLv8 「お前が誘えば筋肉要員ぐらいすぐに集められるんじゃないの?」 こちらが乗り気にならない所為か宙は口を尖らせる。 「嫌よ。他の男なんて……めんどくさい」 まぁ、言い寄られたり、勘違いされたりするのは確かにめんどくさいのだろう。 その点で言えば俺は適任だと言える。 「同級生の女の子とデパートで買い物なんて、部活に明け暮れてるよりもよっぽど青春!! って感じじゃない」 「そりゃ、まぁ、確かに……一理ある」 一理はあるが……相手がねぇ……。 それに、なんだか奢らされそうな気もする。 「よし! 決まりね!!」 こちらがひるんだ隙に、首根っこを掴まれて強引に立ち上がらせられる。 「こらっ! ちょっと待て、まだ行くとは一言も……」 「まぁまぁ、まぁまぁ」 こちらの抗議など聞く耳持たず、背中を押されて教室の外まで押し出される。 「いや、だから……」 「良いではないか、良いではないか」 ずっとこんな調子で、そのまま玄関まで押し切られてしまう。 「待てって……」 「気にしない、気にしない」 そのまま、校門をすり抜けて…… 「だぁ~~~!! 少しは話を聞けよ!!」 「大丈夫、大丈夫!! オマエは虎になるのだぁ~!!」 気が付くと、そこはもう商店街だった。 154 名無しさん@ピンキー sage 2009/06/30(火) 00 38 47 ID pVHuVLv8 〈4〉 「よくこれだけ買えるもんだな」 両手には10袋分の大量の衣類と食料品。 中には男物の下着や洋服まで入っている。 宙曰く、兄弟の背格好が俺とほぼ同じということらしい。 そういう理由があるのなら先に言ってほしいものだ。 「お前って結構お嬢様だったりする?」 「わっかる~? 隠しても隠し切れない、この滲み出てしまうセレブオーラが」 お嬢様風に髪を掻き揚げる仕草が笑えるくらい様になっていない。 頭にくっついたエビがぴょこっと跳ねただけ。 これではせいぜい近所のお転婆娘といったところか。 「なに? 文句があるなら聞くけど」 「本当のお嬢様だったらバーゲンなんて行かな……」 「ごめん。よく聞こえない」 宙の笑顔。 けれどそれは、可愛いとかいう類のものではない。 「……いえ、何でもありません」 目で威圧して同意を求めるなよ。 「ま、今回は特別に種明かしをしてあげる」 エセお嬢様は庶民的財布をごそごそとあさる。 「これ」 そう言って宙が取り出したのは一枚の宝くじ。 好きな数字を選ぶタイプのものだ。 「まさか……当たってた?」 「ううん、まだ」 まだ。 その言葉を理解するまでに、深イイ話一回分の時間を要した。 「そっか……当たるといいな」 あまりに不憫で、それしか口にできなかった。 「何、その人を哀れむような視線は……」 「いや、強く生きろよ」 「何それ、わけわかんない」 他に声をかけることも出来ずに歩き出すと、自然と宙は隣について歩いてきた。 「ふん、ふふ~ん。ふん、ふふ~ん」 最近どこかで聞いた旋律、流行っている歌なのだろう。 「……っ!!」 不意にメロディが途切れた。 隣では宙が立ち止まっている。 ここ一ヶ月の間に一度も見せた事の無い厳しい表情で睨め付けている。 その視線の先、 「姉さん」 宙とは接点の無いはずの人物が佇んでいた。 155 名無しさん@ピンキー sage 2009/06/30(火) 00 39 19 ID pVHuVLv8 「トモ……部活はどうしたの?」 底冷えするような深い声。 何処か虚ろな瞳。 ありきたりな言葉の裏に在る、あからさまな敵意。 「駄目じゃない、こんなところでサボってたりしたら……」 姉さんがこちらに向かって歩みを進める。 ギクシャクした機械のような動き。 まるで姉さん自身が追い詰められているように、その風貌からは余裕が感じられない。 「いっしょに……帰ろ」 凍てついた空気を孕んだ真っ白な指先が迫ってくる。 下手に扱えば壊れてしまいそうな、危さを秘め隠した表情。 伸ばされた手を―――強く払った。 「俺が何処で、誰と、何をしていようと関係ないだろ!!」 「ひぅっ!」 妙なうめき声をあげて指を引っ込めると、姉さんはズルズルと後退る。 「なんで……なんで……なんで……なんで、なんで、なんでなんでなんでなんでなんでなんで……!!」 絞りだすような声。 悲鳴のような反響がこの場を埋め尽くしている。 「その女の所為だ」 冷たい殺気。 たった一言から生まれたそれが、足場を凍らせる。 「―――その子はトモの何?」 友達だと言って通じるだろうか? 否。 一瞬、宙の表情を窺う。 刹那のやり取り、宙は力強く頷いていた。 「俺の……彼女だよ……」 その一言で、姉さんの表情が剥がれ落ちた。 「いやぁぁぁああああああああああああああああああああああああああ!!」 鼓膜を引き裂くような悲鳴。 まるで鎖の軋む様な慟哭。 絶望の咆哮。 「今日はデートだったんだ」 「いやいやいやいやいやぁあああ!! いやだぁぁぁああああああああああああああああ!!」 金切り声を撒き散らし髪をガリガリと掻き毟りながら、膝を付く。 「二人でショッピングして……」 「ヤメテぇぇぇ!!、きぎぃたぐなぃぃぃい!!」 噴出す涙や涎、鼻水を拭いもせずに耳を塞いだまま髪を振り乱す。 「これから―――彼女の家に行くんだ」 ブツリ。 と、糸が切れたように姉さんは崩れ落ちる。 力なく佇む姿。 まるで憑き物でも落ちたかのようだ。 156 名無しさん@ピンキー sage 2009/06/30(火) 00 39 51 ID pVHuVLv8 なんだ、これ。 野次馬達が騒がしい。 冷やかし、影口、噂。 俺たちはその輪の中心に居る。 ここまでなるとは思ってなかった。 いい機会だと思って、弟に彼女ができたって嘘を伝えただけだ。 冷たく接して、引き離して、それにも少し疲れて。 だからさっさと決着をつけて、楽になりたかった。 それで―――こんな姉の姿を見る事になるなんて想像できなかった。 「キモチワルイ……」 どこかから声がした。 辺りを取り囲む大多数の意見、これが普通の反応だろう。 姉さんの反応は異常だ。 「狂ってる」 宙は蔑むように姉さんを見下ろしている。 どこか宙が姉さんに向ける感情は周りのそれとは異質なものに感じる。 憎悪。 そう表現するに値する瞳の奥に宿る、緋色の篝火。 「……トモ」 呻き声が聞こえる。 それは注意して聞かなければ、周囲の雑音に掻き消されてしまいそうなほどの小さな音。 「タスケテよぉ……トモぉ……」 相変らずの頼りない声。 それなのにこの耳には届く、哀れな嗚咽。 一瞬だけ、幼い頃の姉さんの姿が重なる。 泣き虫だけどいつも優しくて、何処か頼りない、姉の姿。 誘われるように一歩踏み出し…… ここで手を差し出してどうするつもりだ。 生まれた亀裂を塞ごうとでも思っているのだろうか? わからない。 わかっているのは自分の手では姉を幸せにする事ができないという事。 それなのに俺は手を伸ばそうとした。 押さえられそうに無い衝動に突き動かされて……。 愚かな行為だとわかっていても、救いたいと願ってしまう。 救えないのに、救いたい。と、 157 名無しさん@ピンキー sage 2009/06/30(火) 00 40 40 ID pVHuVLv8 でも、それは俺の役目ではないはずなんだ。 矛盾する心。 助けを求めるように、宙を窺う。 その瞳は―――俺を見ていた。 感情を映さない瞳。 怒りも軽蔑も落胆もなく。 ただ、現実として俺の答えを見守っている。 「ごめん」 そしてこれが、俺の答え。 俺には姉弟を捨てる覚悟はない。世間を敵に回す勇気も無い。 なにより、愛情のカタチが違う。 故に―――どんな道筋を通っても、結局ここが終着点になる。 だから、今ケリをつけた。 中途半端な慰めも残さないように、姉さんの恋心を殺した。 罪悪感は多少ある。 けれど、心に刺さっていた棘が抜けたような安堵を覚えている自分がいる。 「そっか……そうだよね……いつから……」 何処に向かっているかさえわからないぶつ切れの言葉。 伏せたままの横顔からは表情は読み取れない。 「うん……そうだね……そうすれば…………よかったんだね……わたし……」 泣き腫らした様なか細い声なのに、どこか微笑んでいるようにも聞こえる。 俺は声をかけられない。 瞳に灯る冷たい凶気、言葉に宿る仄暗い情念。 初めて、人間を恐いと感じた。 「待っててね……トモ」 そう残すとおぼつかない足取りで、そのままフラフラと立ち去ってゆく。 その後ろ姿からは足音すら聞こえない。 まるで影のように街並みに溶けていった。 「家まで送ってくれるんでしょ?」 「は?」 立ち竦んだままの動けない俺の横腹に宙が肘を入れる。 「さっき、言ってたじゃない」 さっき…… ああ、確かに言った。 「早く行こ、あんまり長居したくない」 苦虫を噛み潰したような顔で、歩き始める宙。 固まりつつあった膝を無理やり動かして追いかける。 「これが、始まりね」 追いつく寸前に耳を掠めた言葉。 その意味を俺は少しも理解できなかった。 158 名無しさん@ピンキー sage 2009/06/30(火) 00 41 09 ID pVHuVLv8 〈5〉 商店街からは少々離れた小高い丘の上。 宙の家は四階建てのマンションだった。 白を基調としたオシャレな外装、来客用のテラスには手の入った植物達、 駐車場に並ぶ高級外車、ロビーにはオートロックと正装した管理人。 ベランダの広さから一世帯当たりの部屋の作りが広く取られている事がわかる。 要するに高級マンション。 考えを改めなければならない。 宙さんはやっぱりお嬢様だ。 「ここでいいのか?」 「オッケー。良い筋トレになったでしょ?」 最上階の角部屋。 玄関で荷物を降ろすと踵を返す。 「それじゃあ、俺は帰るわ」 「ちょっと待った」 後ろからシャツの襟首を引っ張られて首が絞まる。 「お茶くらい出すから上がっていって」 返事も聞かずに……いや、正確には返事ができない状態のまま部屋に引っ張りこまれた。 無意識の内に靴を脱いでいた自分にはあっぱれをあげておこう。 「……何?」 圧迫から逃れた後、宙を睨んでやる。 「お前さぁ、ほんっっっとに人の話聞かないよな」 「うん、よく言われる」 皮肉を笑顔で返すと、宙はリビングへと俺を通す。 予想通りの広いリビングには必要最低限の家具。 宙に促されてソファに腰をかけると、具合の良い反発が返ってくる。 「くつろいでていいよ。こっちはお茶用意するから」 静かな家の様子からするとまだご両親や兄弟は帰ってきていないみたいだ。 同級生の女子の家。 しかも二人きり。 普段あらば多少の動悸の激しくなるような状況も、まだ先程の件の切り替えができていないのか実感が湧かない。 飾り気の無い部屋の様子も影響しているのだろう。 部屋に住み着く独特の空気、生活感の希薄さ。 そこで―――ふと、目に飛び込んできた違和感。 棚の上にポツンとたたずむ四角いガラスの板。 蛍光灯で白く反射するそれが妙に気になって席を立つ。 近付こうと歩を進めようとすると、慌てて戻ってきた宙に追い越されて道を阻まれる。 「これはダメ」 宙の後ろ手からパタンと音がする。 四角い板はどうやら写真立てだったらしく、宙はそれを見られないように伏せたらしい。 159 名無しさん@ピンキー sage 2009/06/30(火) 00 41 45 ID pVHuVLv8 「いいから座って」 宙は急須と湯飲みを机に並べる。 茶請けは商店街のお店で売っている蒸し饅頭。 こういうところの趣味は合う。 お互いに黙って、お茶を啜ると似たようなタイミングで一息つく。 「何も聞かないんだな、姉貴のこと」 茶請けに手を伸ばしながら、本題に切り込んだ。 「聞かなくたってわかるわよ」 あまり話題にも出したくないのか、そっぽを向いたまま宙も饅頭にかぶりついた。 「悪いな、なんか巻き込んじまったみたいで。そっちに被害が行かないようにこっちで手を打っておくから」 「別にいいわよ。貸しにしとくから」 二ヒヒ、と小悪魔みたいな笑顔。 「お手柔らかに頼むな」 手元にあった饅頭を一つ献上すると、宙は満足気な笑みを受かべる。 この笑顔には勝てないな、となんとなく思ってしまう。 「じゃあ、貸しついでにあともう一つ頼みたい事があるんだけど……」 「了解。でかい貸しだからコツコツ返すことにしましょう」 お互いに空になった湯飲みに茶を継ぎ足す。 お湯の量が足りなかったのか、湯飲みは半分程度しか満たされなかった。 「男手があるうちに『荷物』を運び込んでおきたいの」 「何処にあるんだ? その荷物って」 ずずっとお茶を飲み干して、宙は一言、 「実家」 『そんなに遠くないから』とだけ告げると簡単に片付けをして宙はマンションを出る。 追いかけるように扉を抜けて、先を歩く宙に並んだ。 160 名無しさん@ピンキー sage 2009/06/30(火) 00 42 14 ID pVHuVLv8 「そんなに遠くないのなら、実家から学校に通えばよかったんじゃねーの?」 「いろいろと事情があるの」 そう答える宙の表情は硬い。 他人のことを言えた状態でも無いが、宙の家にだって事情があるのだろう。 あまり深く詮索するのは躊躇われた。 影のある表情で『何も聞いてくれるな』と、宙の横顔が語っていたから。 「別に、勘違いとかしてないから」 沈黙の中、突然そんな言葉が宙の口から飛び出す。 主語が無いうえに話の脈絡が繋がっていない。 「何が?」 「は!? いや……そのぅ……」 なんとなく言いにくそうな顔をしているが、言ってもらわないことには始まらない。 「え~と……アレよ!! アレ!!」 恥ずかしいんだか怒ってるんだかよくわからない妙な視線を投げかけてくる。 「いや、わかんねぇし」 先に焦れたのは宙だった。 「あぁ~もう!! 彼女のくだりよ!! 彼女の!!」 逆ギレですか? というか、 「今更、話し合うほどの事でもないだろうに」 「え?」 「俺だってちゃんと心得てる」 「ちょ、ちょっと…待ってよ」 「そっちだって、同じこと考えてるんだろ」 「そんな……いきなり……」 「しばらく付き合ってるフリはしてもらう事になるかもしれないけど、あまり迷惑のかからないようにする」 「………………当たり前でしょ」 宙は口を尖らせ、歩みのペースを上げる。 追いつこうとこちらもペースを上げると宙もギアを一段上げて引き離しにかかる。 なんで不機嫌になってるんだ? 理由はわからないが、姫は御立腹らしい。 近くもなく、かといって遠いわけでもない微妙な距離感。 お互いに手探りのような緊張感。 近頃、急に長くなった陽が二人の距離を影で表していた。 「あ、そうそう……」 少し前を歩いていた宙が引き返してきて、背後に回る。 ゲシッ!! 無防備な尻にムエタイキックが突き刺さった。 「なんでケツを蹴るんだよ」 「自業自得」 「意味わかんねぇよ」 161 名無しさん@ピンキー sage 2009/06/30(火) 00 42 48 ID pVHuVLv8 〈6〉 角を数回曲がると見知った道に出る。 それもそのはず、ここは俺が学校に通う時の通学路そのものだ。 それを俺たちは逆行している。 見慣れた景色、見慣れた町並み。 昔、このあたりに居たのなら何処かで会っていたのかもしれない。 「ここ」 「ここ、って……これは……」 ありえない。 なんたってここは…… 「たしかこれだったかな?」 宙は幾つかの鍵が連なったキーホルダーから一つの鍵を選ぶと、鍵穴に差込む。 ガチャリ。 やや重いシリンダーの噛み合う音がして、開くはずの無い扉が開く。 「おい、ちょっと待てって!!」 静止を無視して宙は玄関へと足を踏み入れる。 それとほぼ同時にトテトテと軽い足音がこちらへと向かってきた。 「おかえりぃー……っておねえちゃん、だれ?」 迎えに来た少女と鉢合わせると宙は息を呑む。 紗耶と宙。 見詰め合う二人、やがて宙はそっと紗耶を抱きしめ母親のように優しく両腕で包む。 眼を丸くして驚く紗耶、その耳元で宙はそっと呟く。 「おねえちゃんは……あなたの味方だよ」 その一言で、くたりと力の抜けてしまった紗耶を宙は受け止める。 「お前、紗耶に何を……!!」 「大丈夫、眠ってるだけだから」 宙は紗耶を抱え上げると、俺の両腕に紗耶を返す。 紗耶は腕の中で穏やかな寝息を立てていた。 「説明しろよ」 「何を?」 「何で俺の家の鍵を持ってるのか? 紗那にいったい何をしたのか? ここにある荷物って何なのか? 全部説明しろ」 場合によってはただじゃおかない。 そういう威嚇を込めた言葉をぶつける。 宙は一瞬だけ物憂げな表情を浮かべると、すぐに元の表情を取り繕う。 「そういえば、私あんまり自分の事を話したこと無かったね」 そう語り始めると、宙は勝手に俺の『実家』に上がりこむ。 162 名無しさん@ピンキー sage 2009/06/30(火) 00 43 28 ID pVHuVLv8 ―――何かが腑に落ちない。 宙がこの家に足を踏み入れてから付きまとう、喉の奥につかえる違和感。 その手がかりさえ掴めない焦燥感。 そのくせ、致命的な何かを見落としていると胸の奥が騒ぎ立てている。 「私は三人兄弟の末っ子で、上の姉弟とは結構年が離れてたの。 私ってば小さい頃は人懐っこかったみたいで、兄からは結構可愛がってもらってたんだ。 姉には……あまり好かれてなかったみたいだけど」 宙は振り返らずに廊下を進み始める。 自然な足取り。 時折見せる仕草。 宙の明かした情報の断片がおぼろげだった違和感の正体を手繰り寄せ始める。 「私の両親は仕事が忙しい人でね、面倒は兄がよく見てくれてたの。 その所為かな、私は結構ブラコンに育っちゃって色々とお兄ちゃんに迷惑かけてたみたい。 赤ちゃんの頃なんかはお母さんのおっぱいと間違えてお兄ちゃんのおっぱいに噛み付いた事もあるんだって」 くすくすと笑いながらリビングに足を踏み入れた宙は、 壁紙にうっすらと残った落書きに指を滑らせて柔らかな表情を浮かべる。 「お兄ちゃんの背中をずっと追いかけてたなぁ。 年が離れてる所為もあって、私は追いかけるので精一杯だったけど―――お兄ちゃんは必ず待ってくれていた。 見守ってくれて、時には手を引いてくれた。本当に私を大事にしてくれた、優しい兄だった」 昔を懐かしむ声。 けれどそれは、もういない人を懐かしむかのような哀しい響き。 「そんな私の自慢のお兄ちゃんはね高校時代はサッカー部のエースで、トロフィーや賞状をいくつも持ってたの。 この地区では有名な選手だったらしいよ。そして……将来の夢は……」 「日本代表」 自然と言葉が漏れた。 知る人の少ない俺の夢。 誰もが持っているはずなのに、口にしてしまえば笑われてしまうような夢。 宙の知らないはずの夢。 そして、止まない胸騒ぎの正体。 宙は一瞬だけ驚いた表情の後、優しく微笑んだ。 「紗那は逆さにするとNASA。NASAといえば宇宙……だからソラ。安直でしょ?」 深い憂いを秘め隠した微笑み。 その瞳にはうっすらと涙が滲んでいる。 夕日の差し込む窓際。 柔らかなオレンジ色の中で宙はメガネを外し、髪を束ねていた輪ゴムを解く。 「やっと、気付いてくれたね……お兄ちゃん」 そうやって宙は説明の半分を終わらせた。
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いつきたかし 本名 生年月日 血液型 出身地 デビュー年 デビュー作 HP 単行本 タイトル タイトル(カナ) タイトル(副題) 出版社 発売日 発行日 サイズ 巻数 備考 ※発売日・発行日は第1巻のもの 連載 タイトル タイトル(カナ) タイトル(副題) 連載雑誌 出版社 連載開始 連載終了 備考 ガングリオン コミックヨシモト ヨシモトブックス 20070703(1) 作:白岩久弥 読切 タイトル タイトル(カナ) タイトル(副題) 連載雑誌 出版社 開始 終了 備考 ※開始・終了は複数回の場合
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こちらのページではFIFA16のCPU相手、対人戦において勝つために必要なテクニックや戦術について書いていきます。 ◆対CPU ◆対人
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ぼくらいつまでもきみと【登録タグ VOCALOID ほ ネクストP 曲 鏡音リン 鏡音レン】 作詞:ネクストP 作曲:ネクストP 編曲:ネクストP 唄:鏡音レン・鏡音リン 歌詞 (PIAPROより転載) 今夜も君に会えるかな(会いたいな) 深い夢の底でいつも待ってる からだが軽くなってくの感じたら そっと目を開いて僕らがいるよ どこまでも高い空つつまれる白い雲 楽しい気持ちだけで自由に飛べるよ 君が笑い出せば僕たちも嬉しくて 一緒にいるだけで笑顔になれるよ 夜が明ければ心のかけらがしずかに きらきら ひらひら 降り続くいつまでも 君が笑えば夢の中も光溢れるから いつでも笑って笑ってほしいな きれいなかけら集めてる 探してる 君に見せてあげる新しい夢を いまから少し目を閉じてまっててね 緑の草原を花でうめるよ しっかりと手をつなぎ花の中たおれたら 優しい気持ちで満たされてゆく 君が歌口ずさみ僕たちも声合わす 楽しい気持ちで一つになれるね 眠くなったら今日の夢もおわるけど 僕らはいつでも感じてる君のこと いつまでもずっと一緒にいられるこの世界で また夢の続き作って待ってる ラララララ・・・ ずっと ぼくら 一緒さ コメント 名前 コメント
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どうやら自分はクビではない、という事が解ったのは、翌週火曜日の事だった。 そして、エレベーターが動き始めたのが翌日の夕方ごろだった。 腕力・妖力が全てであろうが、弱肉強食であろうが、社会ならば暦はつきまとう。 その年の5月は、水橋も忙しかった。 橋の改修自体は2か月も前に予定されていたが、肝心の土蜘蛛一派への連絡が全く 成されていなかった様で、スケジュールの大幅な変更と調整・見積もりの打ち合わせ で不眠不休の日が続いた。果ては貴重品棚の解体と移動から、各帳簿の名札の変更 と新規での作成まで全てを一人で背負わされた。 2日ほど休日(その週のシフトは木曜と月曜午前)を返上して何とか終わらせ、水橋 は床に突っ伏した。 無償で手伝ってくれたのは勇儀とお燐だけだった。ヤマメは立場上動いてくれたが、 報酬を支払っている分、慌てている水橋を見てニマニマ笑い続けているのが彼女の 神経を逆なでし続けた。 「おのれおのれおのれおのれおのれ」 労働は労働。 職があるのかどうかさえ怪しい地底の連中の中にあって、明確な役職に就いている 水橋は、それだけで周囲を嫉み続ける事ができた。 現場で力仕事をしている鬼や土蜘蛛には、「頭脳労働のこちらと違って、単純作業 で気楽なものね」と嫉み、連中が休憩している隙を狙って棚を直したり小物を運んだり して、「そもそも力仕事に向いていないから、休憩時間を割いて苦手な作業を続けな ければならない」 と嫉む。 そうした自家発電によって力を蓄えようとしたが、3日程で限界が来た。 周りはそんな彼女を別段蔑みも嫉妬もしなくなっていた。 「あぁ。こうしている間にも、地上の連中は……何かしら……を謳歌しているに違いない」 「まあ何かしらはしてるだろうね」 「長い長い休みが欲しいわ」 最後に行ったのはいつだっただろうか。白黒の魔法使いが先日事もあろうに勇儀に 誘われて飲みにやってきた他、頻繁に訪れるのは山の神様とたまにどこぞの住職くらい のもの。 水橋自身、地上自体にはさして興味は無かったが、隣接して実際に見聞きしていない 他者の生活空間を、嫉まない訳にはいかないので、定期的にこうした呪詛を口に出して いたが、職場の中で何日も寝泊りが続くと本心で他人の庭が青く見える。 「もう、旧都へ飲みに行こう」 「またあの白黒と勇儀が一緒に飲んでる所を見そうだから 嫌だわ」 「あの人間はきっともう来ないよ」 最後の総点検を終え、大の字に寝そべるなどという事はせず、欄干の隅でお燐と膝を 抱えてぼそぼそと話した。 「色々やったんだ。さとり様には話してみるよ。少し長めに休みでもとらせてもらったら?」 その日の内に、水橋は休日届を提出し――――思い切って外出許可証も貰ってきた。 色々手続きを済ませ、詰所に戻ると不自然に蜘蛛の糸が絡まった人里観光案内の本と、 古びた人骨が卓上に置かれていた。 「あいつら…………」 糸は読みにくくされただけだし、人骨は普通に意味が解らない。また神経は逆なでされるの だった。 そうした訳で地上に出てから真っ先に向かったのが、人里。 「素晴らしい店があるものね」 二日程滞在する予定だったが、もうこのまま帰ってもよいほどの感動を、その夜水橋は早くも 味わった。 「地上も捨てたもんじゃないわ」 注目の店として付箋がつけられていたのは蕎麦屋だったが、その向かいの団子屋に、躊躇なく 水橋は入った。 古くとも清潔で内装も悪くは無い良店。 だが、それを補って有り余る程の陰気さ 経営している老夫婦の愛想の悪さ。 向かいの店の繁盛の眩い輝きを一身に遮蔽して生まれた、深い闇の様な延々と続く二人の愚痴。 光ある所に影あり。 こうも純度の高い嫉妬が生まれるとは、人間も変わってはいない。 (あああ、唾液が、唾液が止まらない…………) 気前よく団子を追加注文し、「頑張っていたのが馬鹿みたいだ」「もっと楽になりたい」と、 能力を使うまでも無く生活が崩れていく様子に、食欲は促進され、体は産声をあげるようだった。 支払い時、思わず笑顔を振りまくのを必死にこらえたほどだ。 うきうきしながら、水橋は人里を巡り始めた。 そうして繁盛している店の近くにいけば、簡単に渦巻く嫉妬を目の当たりにできるだろう。 勿論、低レベルで能力は発動させたままである。 まき散らした、小さな嫉妬の種はどんな花を咲かせるか…………? 想像すると口の端が吊り上る。 民宿の一間を借りて荷物を下ろした後、寝る前に一杯と、深夜に水橋は宿を出た。 妖怪向けに、こうした時間も営業している店があるとは、これは嫌味や皮肉では無しに素晴らしい。 「こうまで来ると、この気遣いが嫉ましいほどだわ」 店内には、嬉しい事に人間客も多くいた。 妖怪連中と楽しげに飲んでいる。 酒は確かに万人をこうして幸せにするかもしれないが、ここまでの有様では、なるほど確かに 人間よりも妖怪が平和ボケしていると苦言があがるのもうなづける。 「やりがいがあるなあ」 種類に限らず、とにかく異質な要素のある者同士が集うだけで嫉妬はすくすくと育つのだ。 楽しげな地上の妖怪も人間も、嫉妬心が煽り続けられれば会話もおかしくなり、いがみあい そして生活も破綻をきたすだろう。 そこまで付き合わなくても、その予兆を感じさせる事前の雰囲気に浸りながら飲む酒は、さぞや 美味しいに違いない。 不自然にも、開いているのに隣のテーブルに腰を下ろすと、一同会話が一瞬止まった。 (しめしめ) 「あ、こんばんはー」 「こんばんはあ」 丁寧に、人間達は頭を下げる。 「………誰?」 「橋姫」 「おお、噂の」 知られているのか。小声で訪ねる妖怪達が知らなかったという事は、人間の間で何かしらの 資料が流れているのか。 だとするとやりづらい。 客達は、何か空気が変わるのを微妙に感じ取った様だったが、特に動じる事も無く話を続けて いる。わきまえて、能力が使われていない――――という態度で来たわけだ。 「―――ふん」 内心は皆穏やかではないのかもしれないが、表情に出さない客達に、水橋は愛想を尽かした。 鬼達もこうした対策が気に食わなくて地上を去ったのだ。 一杯飲んだだけで水橋は店を後にし―――その後も何軒か梯子をした。 行く先々で、客達は挨拶はするし、こちらが話しかけても返事は二言三言するも、それ以上は 向こうが続けてくれない 「おのれおのれおのれおのれおのれ」 どこのどいつが自分の悪評(事実だが)を流したのか。 少なくとも地底に来てしまったような相手には優しく接していたはずだ。 情報を流したと言えば、丑の刻参りも伝わっているはずだった。 しかし「人に見られてはいけない」などと言うルールを設定してしまったから、そこら辺で 行われているはずはないし、どこか目立たない場所でやっているかもしれないが、それを探す 手間を考えると面倒くささで悶絶しそうになる。 やはり地上は地上。 人里は人里で、妖怪は妖怪で、嫌われ者は嫌われ者という訳だ。 素直にもう宿で眠り、適当に玄武の沢でも見てから帰ろうと考えて会計を済ませた時―――― 店主が、初めて話しかけてきた。 「折角外に出たんでしたら、お寺にでも行かれてはどうですかね」 「寺?」 「『怪談大会』が妖怪の衆に絶賛されてまさあ」 元より、人間の恐怖を煽るために編まれた話の事 妖怪が何故それを楽しむというのか。 しかも、悪名高き地底の妖怪が 「まあ、土産話に」 「馬鹿にしなさんな。こう見えて、何年地獄の橋渡しやってると思ってるんだい」 妖怪が、今更怖がる怪談話なんてあるか 「死ぬかと思った」 比喩と事実を含め、2度ほど死んだようなものなのだけど。 あれを楽しめるというのは、平和ボケの反動か、元より肝の据わった連中が多いのか……・・ 「何が色即是空よ」 あの住職、紅白巫女よりも凶悪ではないか? 生死のかかった(程度に見せかけた)適度なスリリングさを楽しむ趣向だという事は解る。 人間が怪談を楽しむのはそういう事。 妖怪も、身の危険に晒される様な話を安全な場所で聞くのも一興という事も解る。 だが――――自己の否定から始まる解脱とか目的の一つだそうだが、あれはそんな生易しいもの ではなかった。 僧侶だって、性欲や食欲を削ろうとはしても、突然それを奪われる訳では無かろう。 最終的に両方を捨てる事はできても(それも人生の終末に臨み)、睡眠欲まで捨てられる奴はいまい。 橋姫から、嫉妬を捨てろとは、そういう事。 スリルとかそういう問題では無い。 兎に角、つまらない事この上ないはずの仏法会は、水橋にトラウマも残しかねないものとなった。 初日にして、楽園と地獄を味わった。 いや、上げて、落とされた気分だった。 最初に入ったのが良い店過ぎた。いや今となっては後のこの嫌がらせのための布石だとすら思えて きた。大体、人里の連中は行儀が良すぎる。町中で妖怪が殺戮に走るとは思っていない安心感と、 怒らせまいとする謙虚さが入り混じっているのかもしれないが、どいつもこいつも自らきちんと挨拶 をしてくるのだ。 殺伐とした地底とは真逆である。 付け入る隙があまりない。 この空気は少し受け入れがたい。 だが人里全体を観光した訳ではないし、湖の方や竹林、妖怪の山付近など、行ってみるべしと言わ れた名所はまだまだある。せっかく数日間の休みももらったし、実に久方ぶりの地上である。 帰ってしまえばそれはそれで後悔が残るだろう。 それに、元々地底への穴もそこそこ遠いのだ。 宿で風呂に入って眠り、朝食を近くで済ませ、二泊と言った所を一泊に変える手続きをして身支度を し、キスメ・黒谷・勇儀・お燐・お空・さとり、あとチビゆっくりとこいし用とその他補佐の橋守役に にお土産を吟味して帰り、それを抱えてちょっと先の穴まで帰り、帳簿もつけねばなるまい そこまで想像して、あまりの面倒くささに水橋は膝をつきそうになった。 というか、無人の人里内の街道の隅で、一度腰を下ろした。 月も出ていない。 きっと、幻想郷内で一番カッコ悪い妖怪は自分であろうと思うと、またぞろ暫く会っていない人妖や 地底の連中の顔を思い出して、嫉ましさがこみ上げるのだった。そうすると気分は悪いままだが、 体力面では多少元気になる。 とりあえず宿で寝てから考えようと立ち上がると、無人だと街道に、影が二つあった。 生首だった。 薄暗いので、色まではよく解らない。 さて物騒なものだと―――――転がる生首以上に、ここが人里だという事と、気が付かなかったことが ショックだったが―――よく見ると、見知った顔かもしれなかった。 長い髪を左右にまとめているので、一瞬キスメかと思ったが、何となく首をちぎる事はやってもキスメ がちぎられることは無いはずだと頭からそれを否定した。一度呼ばれた宴会で、天狗の中に似たような奴 がいた覚えがある。あいつか?もう一人似たような髪型の大柄な奴も見た気がするが、思い出せなかった。 もう一人は、色素の非常に薄い髪型なので暗がりでも何となく解った。 十六夜咲夜さんである。 あの吸血鬼の事を連想して、この場に立ち会ってる事の面倒くささに卒倒しそうになった時、生首1頭が、 喋った。 「ゆっくりしていってね!!!」 なんだ。ゆっくりか。 しかし、喋ったのはキスメか知らない天狗っぽい奴の方だった。顔も声も、ゆっくりは大体が同じだから 区別はつかなかった。対して、十六夜咲夜さんの方は押しだったままで――――顔も、普通のゆっくりとは 違っていた。 何と言うか、酷く不気味なコケにしたような笑顔だった。口元も目の下もそれだけなら気持ちよく大いに 笑っている部分だが、どうにも不自然で、斜め上から見ている様だった。 「………何だい……?」 「パルさん、お帰りかえ?」 まあ、色々な意味で帰りたくはある。 「見た所良い休日は過ごせていない様だねえ」 「うるさいな、生首が何よ」 「こっちは今から休みだよ! ゆっくりすごそうよ!」 ゆっくり――――確かに、時間だけはまだ余裕があるのだから、先程考えた手続きだって、ゆっくりと 行えば問題はないのかもしれない。 ただ、地底でもそうした過ごし方をしたことはあった。それで、結局時間を無駄にした気がしたものだ。 有意義な休みの過ごし方とはやはり難しい。 どんなに休みがあっても、終りは必ず来る。 必ず働かなくてはならない日がやって来る。 短い休みを満喫するために働いてるのか、働くために短い休みを満喫しようとしているのか? やはり、前者が望ましい。 どちらにせよ、満喫などは難しいが。 どうあっても休みの方が短いのだし。 「実は旅行で地霊殿に行こうと思ってるんだけど、帰るんなら一緒に行かない?」 「地霊殿に?」 鼻が鳴ってしまう 「あそこは、あんたらみたいなお饅頭の行く所じゃないよ」 「大丈夫だよ。怖くない所まで行くから!」 「最初にヤマメの奴にいじめられちまうよ?」 「パルさんは通してくれないの?」 「仕事ならそのまま帰ってもらうところだけどねえ」 まあ、殺しても死ぬような連中でも無し。今更身を心配するほどでも無いか? 加えて、地底においては害も無かろう。 事実上は今は休日中。 行きたいと言うのなら行かせてやろう。 「でも少し遠いよ?」 「近道を知ってるんだよ!」 知らないと言うだけで、どこかに入口があるのだろうか? だとすれば仕事が増えそうな話だ。 「詳しく聞かせてもらおうかい」 「じゃあ、ゆっくり仕度してね!!!」 ゆっくり達は水橋についてきた。 連中は宿には入らず、宿の先で待っていた。結局戻って風呂だけ浴びてひと眠りした 水橋は、明け方も二人の姿の詳細を見る事は出来なかった。 手続きを済ませると、早朝水橋は宿を後にした。 「で、近道って?」 「ゆっくりついてきてね」 「あー……お土産どうしようか」 今はどこの店も開いていない。 「お土産なら、腐るほど買えるところがあるよ!」 「どこよ」 「ほら、そこに」 宿の向かい側に、掘立小屋が立っていた。 木造の、不気味な程正確な立法体だった。 昨日までは無かったのに。 それも、かなり大きい。 往来に迷惑にも程があると思ったし、早く断ち除かねばという義務感さえ芽生えかけ たが、良く見ると植物の様に根深く地面から生える様に立っている。 全体的に土を被っていて―――まるで、地中から登って来たかのよう。 ガラリ、と障子が空いた。 洋間だった。 これは地霊殿の内装に近い。 白黒の清潔なタイルに、角には観葉植物、天井からは高そうなシャンデリア。 くつろげそうな大きな椅子が3脚。 可愛いテーブルが一つ。 あと棚。 窓は無い。 「何これ」 「地底まで直通のエレベーターだよ!」 「えれ………?」 「釣瓶みたいなもんだと思ってね!!!」 動力は解らないが、地底と地上の間を行き来する桶に当たるのがこの部屋か。 それで本当に地霊殿に行けるかどうかは別として、入って調べてみる必要はあると思った。 足を踏み入れると、空調は非常に良かった。 柑橘系の良い匂いまでした。 もう一歩踏み込んで、棚を見ると酒が少し。 あと花札やトランプなどのカード類の玩具が軒並みと、ルールは解らないが中々面白そうな 玩具が数種。 その時、障子がしまった。 重たげな音を立てて、部屋ごと、すでに地球の中心へ向かって進んで言っている事が解った。 障子の外が見る間に暗くなり、地上が遠ざかるのが解る。 焦って声を上げそうになりながら振り向いた。 何だか変な笑顔のゆっくり咲夜さんと並んで、うやうやしく、キスメか知らない天狗っぽい ゆっくりは、うやうやしく頭(全身)を下げた。 真っ赤な髪が翻る。 よく見ると、部屋の隅には大きな鎌が置かれていた。物騒な。 「ゆっくりゴールデン………■■…………を楽しんで言ってね!!!」 「ゴールデン、何だって?」 「次は地下2階、果物売り場でございますー」 鐘の様な音が聞こえ、部屋は動きが止まった。 そして、ひとりでに障子が開く。 「は?」 そこには、見渡す限りの果物市が広がっていた。 『――――で、今どこにいるのさ?』 「”ぷらもでる屋”って所」 あれから、4ヶ月が経った。 一日一階か、下手をすれば一週間のペースで、「エレベーター」は地底に潜っていく。 地上からどの程度の深さになったのかは想像がつかない。 そもそも、既に何階分降りたのかが解らない。 「エレベーター」が停止すると障子が開き、その先にはいつも広い市場が広がっていた。 果物市 お菓子市 肉市 魚市 弁当市 本屋 家具屋 着物屋 たまに、同じ様な市がまたあったりして混乱する。 全部を見渡すのに最低2時間はかかった。エレベーターの内装同様、非常に清潔な場所で、 従業員は全員人間。 客はちらほら妖怪らしきものも見受けられたが、ただ暇そうにうろついていたり、隅の休憩 場所の長椅子に寝そべっていたりした。それ以外は人間だった。 ところどころに、ゆっくりもいたが、大抵はなぜか胴体が生えていて、安らかな顔で 眠りについて動こうとしなかった。 客も従業員も、それを器用に避けて通る。 出口は、どこにも無かった。 窓も無い。 休憩所とトイレだけは隅にあった。 業務員用の扉は、各階にあったが、水橋は、その中に入るのが、とんでもない恐怖に思えた。 そういう訳で、一日一回か、下手をすると3日に一度動くエレベーターに乗って、下を目指す しかないのだった。 ゆっくり達や従業員の人間達に質問すると、確かにいつかは必ず地霊殿に到着すると言うので、 それを信じるしかない。 お酒を初めとして、市場でお土産は十分買った。 どれも外の世界のもので、購買欲・探究欲は大いに促進された。 正直、楽しい。 2時間かけていた物色も、今は一日ゆっくりと、あの奇妙なゆっくり咲夜さんと見て回っている。 更に、4日目に、途中で「電話」という真っ黒な機械を紹介された。 僅かな小銭を払うと、その機械の先から、まずヤマメの声がした 「―――という訳で、休み明けまでに帰れそうにない」 『―――じゃ、さとり様には伝えとくよ』 小銭を払って、指定のボタンを押すと、その度に、地霊殿の連中と会話ができた。 仕組みは全く持って解らなかったが、単純に話せることだけでこんなに自分が喜べるとは 思わなかった。 2回目は勇儀。キスメ・お空と出て、翌週火曜日に、さとりが出た。 『長旅になってしまいましたねえ』 「すみません」 『反省しているのは伝わってきますがね。―――帰ったら頼みたいこともあるんですから』 「はあ」 『見本棚の組立とか』 「………また壊れたんですかあ!?」 各階で、思わず買ってしまうお土産 通話代 そして、長旅における食費。 定期的に、浴場がしつらえられた階もあるので、そこで体を洗うが勿論有料だ(しかも高い) 見る間に所持金は底を突き始めた。 財布を見て焦る水橋に、ゆっくり達はしごく真っ当な意見を忠告をする。 「稼ぐが勝ち だよ!!!」 そういう訳で、着いた階の従業員と話したところ、買い物籠の整理を手伝わせてくれた。 あまり興味の無い市場に着いた時を狙って、水橋は大いに働いた。 買い物もそこそこに、水橋は籠を片付けていった。 階によっては、迷子をあやしたり、車椅子の客の介助や、ゆっくり達を籠の横に積み上げる という謎の仕事も、地味に地味に続けた。 たまに、ゆっくり達をまとめて段ボールに収納する仕事があったり、逆に様々な位置に「風水」 だとか言って配置する謎の作業も多くあった。 その度に小銭をもらったが、一日働くとかなりの額になった。 5.6日は飲み食いして買い物もできるほどに。 そうして、「よせばいいのに」と自分でもうんざりしながら、土産物を買い、市場をくまなく 足を棒にして見て回り、そして何か変わった部分はないかとその階を探検して、「ここでしか 食べられない」と半ば義務感に駆られて、その階の飲食店で食事をとり、徒労感とともに エレベーターに戻る。 そして買ってきてそろそろ古くなりそうなものをおやつ代わりにして、ゆっくりゆっくりと 下降するエレベーターの中、真っ赤な髪のゆっくりと花札をしたり、たまに賭け事をして遊ぶが 大抵は負けた。 電話をかけて、地霊殿とも連絡をとった。これも生甲斐の一つになっていた。 そんな生活が、かれこれ5年程続いた。 電話先では、色々な話を見な聞かせてくれた。キスメが新聞の記事として載っている本が発見 されたとか、ヤマメとお燐がかの地上のお寺へ入門しようとして断られたとか(幸いな事である)、 こいしが本当に在家だが入門してしまったとか、話題には事欠かない。 近頃では、水橋は頑張って貯金をしている。 来る日も来る日も、ゆっくりを片付けたり、積んだり、まとめたり。 「この階しか食えない」とは言っても、似たような店があるはずだと、なるべく抑え、お土産 の吟味や計算にも時間をかけている。 そして、何か豪華な物でも見つけたら買おうとしているが――――まあ、地霊殿に到着する前 に傷んで、自分で食べる事になるだろうか。 『ああ、そうそう。貴重品棚も壊れてしまいましたから、帰ったら直して置いて下さいね』 「またですか…………」 5年間も職場に顔を出せていない訳だが、とりあえず解雇はされていないことを、さとりとの 会話で確認している。 6年目にして、ようやくエレベーターの止まる階や速度にもある程度のリズムがある事に気が ついた。 正月の飾りつけを、エレベーターの中で片付けている時だった。この発見に思わず手を打った。 5.6日に二度の割合で、今いち水橋の購買欲にひっかからない階に止まるのだ。この時、水橋は 一気に働く。 それはもう、今までのダラダラ具合を取り返すように。 非常に充実した2日間だ。 そして、十分な賃金を得る。 翌日からは、また自分にうんざりしながら購買欲と知識欲と好奇心を満たすための行軍が始まる のだが、これはもうどうしても止められない。 本当に止められない。 「ゆっくりしなよー」 「そうもいかないの」 「休日と、ゆっくりと、どっちが大切なの!!?」 「ばっか、おめえら、休日とゆっくりを比べられる訳がないじゃない!」 エレベーターの中で、一緒にくつろごうというゆっくり達をふりきって、毎日水橋はその階を 物色してしまう。仕方ないのだ。帰りばかりが最近めっきり遅くなる。 そして、待ちに待った稼ぐ日がやってくる。 「こんな時だけうきうきしちゃってー」 「うるさいね。ゆっくりに、稼ぐ良さが解るもんかい!」 8年目には、大体この「エレベーター」に乗った時期にあたる時期に、長期にわたって稼げる週が ある事を把握していた。 今では、もうその一週間から二週ほど前から水橋はそわそわしている。 毎日、うんざりしながら市場を満喫してはその週を待ち、そしてその週に突入すると、顔を輝かせ ながら作業にあたるのだった。 あと、年末年始と秋と、お盆の頃にもそれはあった。 地霊殿に帰れば、さとりに頼まれた直さなければいけない棚の数や橋の修繕箇所・付けなければ いけない帳簿などが膨大な量で詰まれているはずだが、もう、気にならなくなっていた。 了 遭難先で生きるために工夫をしていたら意外と住み心地が良くなったので そのまま生活をしていた的な感じかしら パルスィはこれから先どうなるのだろうか? きっと氏の別の作品で明かされるに違いない にしても、何年も顔を出していないのにクビにされないなんていろんな意味で凄い職場だことw -- 名無しさん (2012-06-01 23 44 04) ところどころ笑える箇所もありますが、 いつ着くのかわからないエレベーター。 何も解決しないままの幕引き。 延々と続く、一見したら普通だけどよく考えたら不気味な地下市。 そして、それをさしたる疑問もなく受け入れているパルスィ。 静かで隠れてはいるけど、確実にそこにあるホラーの存在を感じました -- 名無しさん (2012-06-02 23 06 22) 途中で一頭身の饅頭が現れるまで、これがゆっくりSSということを忘れてましたw ところどころに求聞口授ネタが使われててお見事。何か不気味な雰囲気ですが、パルパルが幸せそうで何よりです -- 名無しさん (2012-06-03 00 06 02) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/okako-science-club/pages/35.html
ここではいつもの風景というわけで ほぼ毎日更新します! 部活が無い日はどうなるかわかりません!! #weblog ブログ形式で書けば良いのに。『#weblog()』と記述。 -- Intron (2006-07-21 17 42 12) そんな技術が! -- N君 (2006-07-21 20 14 00) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/kbsxfxq9/pages/23.html
615 名前:既にその名前は使われています[sage] 投稿日:2007/12/18(火) 14 59 24.57 ID V+uBFXXf 裏方やってる人間も完全なボランティアじゃねーんだよ 戦争に勝つためにやってるんだ 戦争に勝てば報酬が増える、目標戦だとオフィシャル開店に一歩近づく 自分に見返りあるからやってるんだよ もちろん裏方自体が楽しいっていう理由も有るが 裏方なんて一切せずにフルエンチャでスコア厨ひゃっほいしてる奴らも 戦争に勝つために役に立ってる あたりまえだ全員が全員裏方やったら勝てるわけも無いからな 課金なんてしねーよwwwでも前線行きたいから氷皿やります って奴らも戦争に勝つために役に立ってる 課金なんてしねーよwwwでも前線で遊びたい 氷皿?つまんないからやらなーいwスイーツ(笑) こんな奴は要らない 国のためにとかじゃなくて俺が損するから要らない消えて欲しい でも他人の遊び方を決める権利は無い だから文句を言う 「お前がいると俺が損するから消えてくれませんか」 628 名前:既にその名前は使われています[sage] 投稿日:2007/12/18(火) 15 01 32.84 ID kbsxfxQ9 " "615 あんた馬鹿でしょ? 論理破綻してるし 要は金使ってない奴は役に立たないから消えろって事ね ゲームオタの気持ち悪い戯言。リアルで言ってみ?誰も寄り付かない