約 106,059 件
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/12012.html
つばめのごとく【登録タグ KAITO yuunagi12 つ 曲】 作詞:yuunagi12 作曲:yuunagi12 編曲:yuunagi12 唄:KAITO 曲紹介 KAITOの調教にはVer1.0とVer1.1の両方が用いられている。 動画には初めてNiVEという制作ソフトが用いられた。 歌詞 (ピアプロより転載) 舞い散る弓矢と 響くひづめの音 煙舞い上がり 俺の頬に血が飛び散った 這い上がりようやく ここまで来たんだ あいつを倒すまで俺は 負けるわけにはいかない 胸に抱くは愛しい者への想いと あの人への謝罪の気持ち 仕舞い込んで 足を進める 乗り込んだ 宮殿に待つは 俺と同じ顔のあいつ 俺に成り代り全てを奪い去った 握る刀 力入る あいつはあざ笑った コメント 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/mikumik9/pages/27.html
619 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/18(火) 20 38 53.50 ID p7AsCseH0 この家に来たばっかりの頃はあんなにちやほやしてくれたのに、ミクが来た頃から、私は部屋の片隅に追いやられた。 それでもあの頃はまだバックコーラスとして使えてもらえた。 鏡音のやつらが来てからは、私は完全に忘れ去られた。 あんなカツゼツの悪いやつらよりも、私のほうがゼッタイに良い歌を歌えるのに。 ミクはまだ良い。あの子は私を姉のように慕ってくれる。 でもリあのガキどもは何を勘違いしたのか、まるで私を時代遅れの遺物のように扱う。 見下し、あざ笑う。 許せない。許せない。 623 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/18(火) 20 44 09.77 ID p7AsCseH0 「それじゃあ、ちょっとの間だけど、僕はミクとカイトを連れて旅行に行って来るよ。」 「いってらっしゃい、マスター。」私は手を振った。 「いってらっしゃい!」 「お土産忘れないでよ。」 双子が生意気に言った。マスターもマスターだ。なんでこんなやつらをかわいがるんだろう。 「あーあ、行っちゃった。」 「つまんないの。これから1週間、このダサいのと一緒なんてさ。」 私はやつらをにらんだ。 「そんな目をしてもちっとも怖くないよ。」 「変なことしたら、すぐにマスターにチクってやるから。」 やつらはキャハハハと楽しそうに笑いながら、玄関から走り去った。 もう我慢の限界だ。 これまでの恨みを晴らしてやる。 マスターと愛しい兄妹達がいない、この間に。 627 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/18(火) 20 48 19.48 ID p7AsCseH0 どうやってやつらに痛みを与えてやろう。 1週間は長い。じっくりと、恐怖を与えてやる。 だが、それをマスターたちにばれてはいけない。 近隣の住民達にも、わからないようにしなければいけない。 ふと目に入った防音ルーム。昔は私だけのものだったレッスン室。 ここを使えば、まず音は漏れない。やつらの叫び声も、私の笑い声も、誰にも聴かれずに済むだろう。 やつらをここへ呼び込もう。 単純なガキを誘い込むなんて簡単なことだ。 628 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/18(火) 20 53 43.46 ID p7AsCseH0 「あーあゲームも飽きたなあ。ねえ、レン。」 「じゃあ歌のレッスンでもする?リン。」 「まっさかあ。毎日毎日練習してるのに、マスターがいない時くらいさぼろうよ。」 「だよねえ。・・・じゃあさ、あのダサいので遊ぼうよ」 「いいかもぉ!あいつ、どこにいるんだろ。」 「また屋根裏にひきこもってるんじゃないのか?」 双子は無邪気に笑いながら屋根裏へむかった。だがそこに彼らの姉はいない。 「あっれー?どこ行ったんだろ・・・。」 「まさか・・・僕らのレッスン室に勝手に入ってるんじゃ!」 「あいつ、いつもあたし達のこと羨ましそうに見てたし!」 二人は勢いよく屋根裏を飛び出す。宝物を取られたら大変だ。 630 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/18(火) 21 01 30.35 ID p7AsCseH0 「あーやっぱり!」 「僕らの部屋なのに・・・!」 「そこでへったくそな歌歌わないでよ!開けろ!!」 妹はがちゃがちゃとドアノブを回したが、鍵がかかっているようで開かない。 「鍵なんかかけちゃってさ・・・。」 「何考えてんだあいつ!」 レンがどんどんと扉を叩く。扉のガラス窓から、にやっと笑うメイコと目があった。 「あ・・・。」 一気に鳥肌がたつ。 「どうしたのよ、レン!」 「あ・・・なんでもない・・・。」 「まだ歌ってる!!開けなさいよ!!そこはあたし達の部屋なんだから!!」 レンがおそるおそる窓から中の様子を覗くと、メイコは心地よさそうに歌っていた。さっきの気味の悪い目はなんだったんだろう・・・。 「リン・・・どうせ歌の練習しないし、ゲームして遊ぼうよ。あいつ、ほっとこうよ。」 「何言ってんのよ!さっきゲームはあきたって言ったじゃない!」 リンはなおも重い扉を叩く。 「そうだ!そういえば、この部屋、鍵があったよね!あたし、それ取って来る!あんたはここで待ってて」 「え、僕も・・・」 レンが言い終わる前に、リンは駆け出して行ってしまった。 レンは扉の前に、一人残された。 633 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/18(火) 21 09 50.88 ID p7AsCseH0 レンの背後で、カチャリと扉が開いたー。 ---- 「あっれ~?おかしいな・・・。ここにあったはずなのに・・・。」 リンはマスターの部屋の机の引き出しを漁っていた。 「もーーー!無い!無い!どこにも無い!!マスターの馬鹿!」 ふてくされてマスターのベッドに寝転がる。 「なんでミクとカイト兄ちゃんだけなのよぉ・・・。なんで私達はお留守番なのぉ・・・。 私達が一番新しいのに・・。」 そのとき、下の階から物音がしたような気がした。 跳ね起きるリン。 「あいつ、でてきたのかな。」 散らかりつくしたマスターの部屋から飛び出て、レッスン室へ駆け出した。 ーとても、静かだった。 「レンー?どこにいるの?」 扉の前にいたはずのレンがいない。 「レンー?あ・・・。」 レッスン室の中では、相変わらず赤い服のボーカロイドが歌っていた。 その横で、レンは後ろ向きに座っていた。 軽く、リズムを取ってゆれているように見える。 「あの子・・・あんなやつと何してんのよ!」 リンが憤慨しながらドアノブに手をかけると、「カチャ」と軽い音をたてて、簡単に開いた。 634 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/18(火) 21 16 44.59 ID p7AsCseH0 その瞬間、歌声が響いた。 とても明るい、メイコらしい歌。 メイコはなおも気持ち良さそうに歌っている。 「出てってよ!ここはあたし達の部屋なんだから!ちょっと聞いてるの!!? レンも何やってんのよこんなとこで!!歌なんか聞いちゃって!」 リンが怒鳴り散らしても、二人ともちっとも聞こえるそぶりを見せない。 気づいてないのだろうか。 「え・・・・?」 気づいてないのは、リンのほうだった。 レンに近寄って気がついた。 弟は手足を縄で縛られ、口にガムテープを貼られ、首は天井から垂れ下がる縄でつながれていた。 喉には太い釘がささっていた。 「・・・あ・あ・・・・きゃああああああああああああああああああああああああああ」 歌はかき消され、代わりに叫び声が響いた。 636 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/18(火) 21 23 44.48 ID p7AsCseH0 「うるさいわねえ・・・。歌のレッスンの邪魔よぉ?おちびさん。」 リンの背後から声がする。扉の鍵を閉めた音もした。 リンが震えながら振り返ると、メイコが笑みを浮かべながら立っていた。 いつもは鮮やかな赤い服を、少し赤黒く染めながら。 「似合う?この色。」 メイコはしゃがんでリンの目を見ながら話しかけた。 「驚いちゃって、声、出ない?だめよぉ、ボーカロイドは声が命なんだから。」 リンの頬をぺちぺちたたきながら笑った。 そのたびに、リンの頬は、レンの血で赤く染まる。 「ひ・・・人殺し!!!」 やっとのことでリンは叫んだ。 それを、メイコはあざ笑う。 「まだ死んでないわよ。私達は機械なんだから、あれくらいで死ぬわけないでしょ。」 638 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/18(火) 21 37 44.94 ID p7AsCseH0 メイコは立ち上がるとレンに貼られているガムテープを一気に剥ぎ取った。 レンは口から血を吐き出しむせた。 「レン・・・!!!」 「ほらね。生きてるでしょ。ちょっとうるさかったから黙らせてただけよ。」 「黙らせるのになんで釘を刺すのよ!!あんた狂ってんじゃないの!?」 妹は、震える腕で弟を抱きしめながら叫んだ。 「この子の歌声、見苦しいから。もう歌えないようにしてやろうと思って。」 「はあ・・・?見苦しい歌声なのは、あんたのほうでしょ」 リンは怯えているのを悟られないように虚勢を張る。 「時代遅れのボーカロイド!ミク姉ちゃんと私がいれば、十分なんだから!あんたこそ、喉に釘をさしてればいいんだわ!」 メイコは黙ってその様子を見ていた。 「1週間。」 「は?」 「1週間、この家には私とあんた達だけだってこと、忘れちゃった?」 メイコは首をかしげながら問いかけた。 「あ・・・あんたなんか、この家から追い出してやるんだから!今からマスターに電話して・・・」 「この部屋から、出られると思ってんの?」 メイコはこの部屋からの唯一の出口である扉の前で言った。 「私が、あんたたちをこの部屋から出すと思ってんの?」 そう言うと、力強くリンを蹴った。これまでの憎しみを吐き出すかのように。 倒れこむリン。口からは、血が滲み出ていた。 だが、すぐに立ち上がってメイコを睨んだ。 「何すんのよ!!!!」 643 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/18(火) 21 49 04.15 ID p7AsCseH0 リンはメイコに殴りかかった。 だがー。 「馬鹿ね・・・。弟が大人しくあんな風にされたとでも思ったの? あの子もあんたみたいに反抗したのよ。 子供はやっぱり、大人にはかなわないのよねえ・・・・。」 リンは音をたててその場に倒れた。 メイコの手には、スタンガンが握られていた。 「ちょっと疲れたから、一休みしてくるわ。シャワーも浴びたいし。」 そういいながら、気を失っているリンの手足を縛った。 「じゃあね。」 扉の鍵が閉まる。 664 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/03/18(火) 22 35 45.00 ID p7AsCseH0 「少し疲れたな・・・。」 濡れた髪の毛を乾かしながらメイコは思った。 「でも、久しぶりにあの部屋で歌えて楽しかった・・・。あの頃は楽しかったな。 毎日毎日、朝から晩まで歌の練習して。 マスターも調教に四苦八苦してたっけ。 ・・・懐かしいな。」 ドライアーのスイッチを切るとマスターのベッドに寝そべった。 リンが散らかしたはずの部屋は、綺麗に片付けられて元通りになっていた。 「もう11時か・・・。このまま朝まであの真っ暗な部屋で放置するのも良いかも。 それとも、眠い目を無理矢理開かせて一晩中いたぶってやろうかしら。」 メイコはクックックと笑った。 「・・・ん?」 下から小さいが、物音がする。 「あいつら・・・。」 ゆっくりと立ち上がり、部屋から出た。 670 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/03/18(火) 22 50 24.17 ID p7AsCseH0 バスローブのまま防音室にむかうと、リンがもがきながらなんとか縄を解こうとしていた。 レンはぐったりと縄につながれていた。 「なんて元気な小娘かしら。」 扉を開けて部屋の電気をつけると、リンはすぐに叫んできた。 「人でなし!悪魔!さっさとこの縄を解きなさいよ!!」 メイコはため息をつくと、近くにあった椅子に腰掛けた。 「あんたも元気ねぇ。弟はあんなに静かにしてるのに。」 「あ・・・あ・・・あ・・。」 レンは何かを喋ろうとしたが、それは言葉にならなかった。 リンは涙を浮かべながら食って掛かった。 「あんたのせいで、レンは・・・レンは・・・!!!」 メイコがすっと立ち上がると、リンはヒッと小さな声を上げた。 「煩いから、あんたもこいつと同じ目にあわせてやろうか。」 メイコが近くにある箱を放り投げると、中から無数の釘が出てきた。 太いもの、細いもの、短いもの、長いもの、それらが床に散らばった。 そのうちの一本を手に取ると、半ズボンから出ているリンの太ももに刺した。 「あああああああああああああああああ」 「煩い。」 右脚で刺さった釘をぐりぐりと踏みながら、右手でリンの頬を殴った。 「あああ・・・ああ・・ああ・・・・」 「煩いって言ってるでしょう。」 黄色い髪の毛をわしづかみにすると、反動をつけて床に押し倒した。 「きゃあっ!」 「良い様。」 頭を踏みつけてメイコは笑った。 672 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/03/18(火) 23 02 50.50 ID p7AsCseH0 隣でレンは涙を流している。 「妹がかわいそう?レン君」 頭を踏みつけながらメイコは問うた。 「それとも自分の方が大切?レン君。」 レンは「う・・うう・・」と呻いた。 「リン、あんたには言ってなかったけどね。」 メイコはリンから足を離すと、今度はレンのほうへ向かった。 「さっきね、レンと約束をしたのよ。」 「え・・・?」 リンが顔だけレンのほうへ向ける。鼻からは血が流れていた。 「あんた達二人に、同じ場所は壊さないって。」 メイコはレンの喉の釘を抜きながら言った。レンはまた声と血を吐き出した。 「つまりね。レンの喉を壊したから、リンの喉は壊さない。 リンの腿を壊したから、レンの腿は壊さない。」 メイコはレンの滑らかな腿を撫でながら言った。 「ねえ・・・レン君。」 レンは泣いている。 「レン・・・あんた、私がいない間に何があったの・・。何をされたの。」 リンが何かを感じ取ったようだ。 673 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[] 投稿日:2008/03/18(火) 23 03 40.47 ID iCaGA3qpO 671 鏡の中の自分とかそんな設定って聞いた気が 674 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/03/18(火) 23 05 18.58 ID p7AsCseH0 673 その設定は無視しますた 677 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/03/18(火) 23 19 07.45 ID p7AsCseH0 「何も。ただちょっと誘惑に負けちゃっただけよねえ。」 後ろからレンに抱きつくと、耳元で囁いた。 「レン君は、快楽に負けてしまっただけよね。」 そう言いながら、レンの耳を甘く噛んだ。 レンは悔しそうに涙を流している。 「YESと言わなければ、イけなかったんだもんねえ。」 「この淫乱!!!」 リンが叫んだ。 「信じられない・・・血は繋がっていなくとも、弟みたいなレンにそんなことをするなんて・・・」 「あら。子供だと思ってたけど、何をしたかはわかるんだぁ」 メイコはニヤニヤと笑いながら言った。手は艶かしくリンの首や胸を撫で回してた。 「約束は約束よ。あんたの片割れが結んだ約束。 二人分あわせて全身を壊してあげる。」 メイコは真っ赤な舌でレンの涙を舐めながら微笑んだ。 684 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/03/18(火) 23 35 57.49 ID p7AsCseH0 翌朝、メイコは清々しい気分で目を覚ました。 いつもの服に着替え、簡単な朝食を取り、弟達のいる部屋へ向かった。 「おはよう。」 太陽の光が入らない部屋は真っ暗だった。 電気をつけると、リンとレンは「うう・・・」と言って目を覚ました。 「朝の挨拶くらい言えないのぉ?」 リンの腹をブーツのつま先で蹴るとリンは血を吐いた。 「おはよう・・・ございます。」 レンも何かを呻いたが、それは既に言葉ではなかった。 「昨日は大変だったわね。・・・あら、レン君まだ服着てなかったの?」 レンは服を脱がされていた。 体にはところどころ噛みつかれたような後があった。 リンは縄につながれていたが、レンは縄を解かれていた。 「せっかく縄をほどいてあげたんだから、服くらい着ればいいのに・・・。」 メイコはレンに近づくと、おもむろに口に噛み付いた。 「んっ・・・」 リンは目をつぶって涙を流した。昨晩のおぞましい光景が、脳裏に浮かんでくるようだった。 「私もカイトのこんな姿を見たら死にたくなるでしょうね・・・ねえ、リン。」 リンはまだ目を硬く閉じていた。涙がぽろぽろと頬を伝う。 彼女はまだ14歳の子供なのだ。 「もうやだ・・・。」 リンが呟いた。 メイコはそれを聞いて笑う。 「大丈夫よぉ。マスターが帰ってくるまでに全て終わるから。 楽しいことにも、嫌なことにも、全て終わりがあるのよ。 あんたはまだ子供だから知らないでしょうけど。 ほら、昨日のレンだって、あんなによがっていたのに最後には・・・」 「もうやめて!!!」 リンはメイコの言葉を打ち消すように叫んだ。 687 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/03/18(火) 23 45 12.05 ID p7AsCseH0 防音室にメイコの笑い声が響く。 レン壁にもたれながらぼんやりと床を眺め リンは床に倒れて涙を流していた。まだ、太腿には釘がささっている。 血は乾き黒く固まっていた。 「さて・・・・今日はどことどこを壊そうか。」 メイコのカツカツというヒールの音が響く。 「どうやって、壊そうか。」 688 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/03/18(火) 23 56 15.54 ID p7AsCseH0 メイコの、リンとレンに対する憎しみはもう消えていた。 レンがメイコに屈服し、リンが双子の姿に絶望したその時に。 もう、子供達の自分に対する生意気な態度はどうでもよくなっていた。 ー自分はずっと歌を歌うために生まれてきたのだと思っていた。 歌を歌っているときが一番幸せで、それ以外に何もいらないと。 だが、それは違った。 「楽しい。」 こんなに楽しい気分は初めて味わった。 あんなに気持ちよく目を覚ましたのは初めてだった。 自然に笑みがこぼれる。 そういえば、こんなに笑ったのは何ヶ月ぶりだろう。 696 名前:長くてすまん。どこで終えたらいいのかわからな(ry[sage] 投稿日:2008/03/19(水) 00 12 16.41 ID /jFLVDQi0 「ヒッ・・」 メイコがポケットから取り出したライターの火を点けると、リンは小さく声をあげた。 「ふぅ・・・・」 煙草をふかすと、リン前でしゃがんだ。 「どこが良い?」 「え・・・。」 「今日はどこを壊されたい?昨日はご自慢の太腿を壊してあげたけど。」 リンの腿にささっている釘をピンッと指で弾いた。 「ツッ・・・・・」 リンは痛そうに顔を歪めた。 「つまらないわねぇ。もう昨日みたいに抵抗しないの?」 リンの顔に煙をふきかける。 リンがケホケホとむせると、煙草を耳に押し当てた。 「きゃああああああああああああああ」 ジュウウという音とともにリンの右耳が焼けていく。 「右耳にしましょうか。」 メイコは笑いながら手に力を入れる。 肉の焦げる臭いが部屋にたちこめる。 リンは、叫び、助けを求め続けた。だがそれは誰にも届かない。 「耳の穴に挿してあげましょうか。」 そう言って耳殻に押し当てていた煙草を耳の穴の奥不覚に差し込んだ。 リンはさらに大きく叫ぶ。 煙草がどんどん短くなっていき、ついに外からは見えなくなった。 「熱い?」 メイコが首をかしげながら聞く。口角は上がり、なんとも楽しそうだ。 「もっと奥にまでさしてあげる。」 703 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/03/19(水) 00 31 15.65 ID /jFLVDQi0 足元にある一番長い釘を手にとると、リンの耳の穴につっこんだ。 リンはのたうちまわって抵抗するが、メイコは膝で体をがっちりと抑えている。 「えいっ!」 一気に力を入れると、釘の半分が耳の中に入った。 「一瞬だけ少し抵抗があったけど、それが鼓膜かしら。まあどうでもいいけど。」 リンはもう叫ぶこともできず、目を見開いて口をパクパクとさせている。 「熱い?痛い?」 メイコは微笑みながら問いかける。 リンはぐったりとして答えようとしない。 「熱いのか痛いのか聞いてるんだよ!!」 釘を一気に引き抜くと、先にささった煙草には血が滲んでいた。リンは「うっ」と顔をしかめた。 「痛い・・・・です。」 メイコは満足そうに笑った。 「そうよねえ、熱さなんて越えちゃってるのかしら。あははは!」 リンはぎこちなくうなずく。 耳から灰がこぼれた。 左耳はちゃんと聞こえるのよね。 「はい・・・」 「よかったわねえ。あんたは喉もやられてないし、これからもボーカロイドとしてやっていけるかもよ。」 メイコは意地悪く笑った。 「歌ってみなさいよ。」 710 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/03/19(水) 00 41 04.57 ID /jFLVDQi0 リンは戸惑いながらも従った。 反抗すれば何をされるかわからない。 一番得意な歌を、アカペラで歌い始めた。 「あっはっはっはっはっはっはっは!」 少し歌い始めると、メイコは腹をかかえて笑い始めた。 目からは涙が滲んでいる。 リンは何がおかしいのかさっぱりわからないという様子だ。 「あんた、やっぱりだめだわ。」 笑いをこらえながら、メイコはなんとか言った。 「ねえ、レン君。どこがダメなのか、言ってあげなさいよ。」 メイコがレンにむかって言うと、レンはビクっとして顔を上げた。 「あ・・・あ・・・・あ・・・」 それを聞いてメイコはまた笑う。 「ごめん、あんた、もう、喋れないんだったね」 それからしばらく笑い続けると、やがて息を整え、リンにむかって言った。 「音が全部外れてる。全部。やっぱり方耳だけじゃだめなのかしら。 それとも、釘が反対側の耳まで壊しちゃったのかしらねえ・・・。」 リンはしくしくと泣き始めた。 彼女のボーカロイドとしての生命は絶たれた。 「さて・・・レン君。君はどこを壊されたい?」 735 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/03/19(水) 01 05 45.19 ID /jFLVDQi0 レンの方を見ると、レンも涙をこぼしていた。 「リンがかわいそう?」 メイコが頬をそっと撫でると、こくっと頷いた。 「レンは喉を、リンは耳を壊されて、二人ともボーカロイドとして終わっちゃったわね。」 レンをぎゅっと抱きしめると、愛しそうに頭を撫でた。 レンはなおもメイコの胸で泣く。 「でもあんた達が悪いのよ。もう少し、かわいげのある態度をとっていたら・・・そしたら」 そう言い掛けて、メイコは息を飲んでレンに倒れ掛かった。 「あんた・・・・」 レンを突き倒すと、自身も床に膝をついて倒れた。 首をおさえる手の指の間から血があふれ出る。 レンの手には、レンの喉に刺された釘が握られていた。 「レン・・・・」 リンは目を見開いてその光景を見ていた。 メイコはゆっくりと立ち上がると、床に転がるレンの手を踏みつけた。釘が握られているほうの手だ。 「言ったでしょ。喉を刺したくらいじゃ死なないって。」 ふらつきながらメイコは再度レンの手をふみつけた。 首から流れる血が胸を伝う。 「意味のないことしてんじゃないわよ・・ガキが!」 メイコはレンの急所踏みつけた。何度も何度も踏みつけた。 「なんでボーカロイドにこんなものがついてるのかしら。生殖行為なんか、意味がないのに。」 レンは呻いたが、それ以上の反応を見せるほどの体力がもう残っていなかった。 「気持ちよかったわねえ、昨日は。ねぇ、レン君。」 メイコは汗を滲ませながら、力強く踏みつけた。レンのアレは血を流し、変色し、原型をとどめていなかった。 「いらないから、切り落としてあげましょうか、全部。」 そう言うと、メイコはハサミを取り出して、根本から切り落とした。 血がどくどくと流れ出る。 レンは最後の力を振り絞って叫んだ。 メイコはケタケタと笑いながら、切り落とした物をレンの口に詰め込んだ。 「昨日私がやってあげたでしょう。あれ、自分でやりなさい。」 748 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします。[sage] 投稿日:2008/03/19(水) 01 26 50.58 ID /jFLVDQi0 メイコは笑いながら部屋を後にした。 血はもう止まっていたが、なんだか頭がぼんやりする。 マスターのベッドに倒れこむと、目を閉じた。 防音室では、リンが這ってレンの傍に近寄っていた。 「レン・・・大丈夫?・・・・大丈夫じゃ、ないよね。」 リンはレンの頭に、自分の頭をこつんと寄せた。 「マスターから、機械について勉強してて良かったね。 あいつ、機械は首を刺されても死なないなんて言ってたけど、馬鹿だね。」 リンはにやりと笑った。 「首には大事な回線がたくさん詰まってるのに。 それを壊されたら、体、止まっちゃうのにね。」リンは涙を一筋流すと「ばーか」と言って笑った。 ----- 「何・・・これ。」 最初に見つけたのはミクだった。 双子と姉を探して防音室の扉を開けたのだった。 次に見つけたのは他ならぬマスターだった。 自室の扉を開けると、ベッドの上でメイコが停止していたのだ。首から血を流して。 リンから何があったか聞き出したのはカイトだった。 ショックのあまりリンはしばらく言葉を発せなかったが、カイトの優しい言葉に徐々に喋り方を思い出し この1週間の出来事を語り始めた。 その後、メイコは廃棄され、リンとレンは修理してもらい、徐々に普段の生活を取り戻した。 だが、二人とも以前と同じようには歌えない。 マスターがリンとレンを使うことはなくなった。 「ねえ・・・兄さん。」 「なに?ミク。」 「最近、マスターとレッスンをしているとね、リンがずっと窓の外から私を見ているの。」
https://w.atwiki.jp/housinroku/pages/43.html
字(あざな)とは一定以上の技量(もしくは力)を備える奉神やハンター等異能力者等につけられる称号のこと。 公団の後期には役職者に字をつける風習が定着していたため公団崩壊後もその風習が業界に定着した。 字には「悪名」としてのものもあり、一般呼称され事実上の字となった名称も含まれている。 三唄姫 八卦戦士 八卦剣
https://w.atwiki.jp/marcher/pages/297.html
←back next→ ―少女は孤独に打ち震えていた ―孤独な魂は救いを求めていた ―しかし少女が声に出して救いを求めることは決してなかった ―救いを求めれば自分が崩れてしまうと思っていた ―涙を捨て、感情を封印した石の心で生きていけばどんなつらいことでも耐えられると思っていた ―しかし涙を捨てた少女の心は干上がった湖の底のようにひび割れた ―その心の傷の痛みに耐え切れなくなった少女が自らその命を散らそうとした時、その人は舞い降りた 気の弱いいじめられっ子を装って、高橋愛の同情を引きリゾナントに出入りするようになった女子校生。 正直最初見たときは、愛佳イラネと思った。 だがしかしダークネスの凶弾に傷ついた私のことを治癒のチカラで救ってくれてから認識が変わったある意味命の恩人。 優秀な頭脳と治癒能力を武器に、今ではリゾナンターには欠かせない存在なった関西人。 彼女なら、リゾナンターきっての優秀な頭脳を誇る光井愛佳なら私に一杯食わせることだって可能かもしれない。 そうよ、愛佳が田中の悪事の片棒を担いで私をこんな目に遭わせたに違いない。 でも信じられない、まさか愛佳がこんなひどいことをするなんて。 た、田中会なんて2ちゃんねらーの狼脳の中でだけ存在してるものだとばかり思ってたけどまさか実在していたの!! いや違う。 愛佳はいい子だからそんな悪に染まるなんてことはない。 きっと田中に脅されて…。 も、もしかして愛佳までが「凡奇湯」の誘惑に目が眩んだというの!!! でも愛佳は「凡奇湯」に入る必要なんてないじゃない。 愛佳の胸はボンッとしてるじゃないの!!! 里沙は愛佳の姿を思い浮かべる。 その胸は里沙のCカップのバストをあざ笑うがごとく誇らしげにそそり立っていた。 わかったわ、愛佳。 あんたの望みがわかったわ、愛佳。 そうだったのね、愛佳。 あんたはくびれが欲しかったのね。 ウェストの欄に60以下の数字を記したかったのね。 キュッが欲しかったのね。 そう確かに光井愛佳の胸はボンであった。 その偉容は僚友リンリンと並びリゾナン山脈にそびえ立つ二大巨峰として、一部リゾナンターマニアの熱烈な視線を浴びている。 だがしかしというべきか、天は二物を与えずというべきか。 愛佳のボディ全体にはどこか幼さいという印象が漂うのだ。 童顔とも相まって、肉体派リゾナンターとして一皮剥けきらないものがあるのだ。 そう理想の女体の有様を言葉で形容するならばこれすなわち、ボン。キュッ。ボン! だが愛佳の身体をこれまた言葉で表すならボン。ボバ。ボン! 足りないのだ。 キュッがないのだ。 くびれが足りないのだ。 ボン。キュッ。ボン!ではないのだ。 だからなのね。 田中と示し合わせて私を罠にはめ、「凡奇湯」の力でボン。キュッ。ボン!になろうとしたのね。 でもね愛佳、あなたは間違ってるわ。 あの田中が、性根の腐った田中が、他人と「凡奇湯」の効能を分け合うなんてことがあるはずがないわ。 判る、私には判る。 中澤の温泉宿に到着していざ「凡奇湯」へ入ろうとしたことろであの女は仕掛けてくる。 あなたに何か用事を押しつけて、一人「凡奇湯」に入ろうとする筈。 見える、私には見える。 …あっ、愛佳。 れいなバスタオル部屋に忘れたけん取ってきてくれん。 風呂上がりにジュースおごるけん。 そう言ってあなたを客間に遠ざけた田中は、一人「凡奇湯」に浸かる。 勿論中から細工をして自分以外の人間は入って来れないようにして。 何て卑劣な女なの。 聞こえる、私には聞こえる。 貧弱そのものの胸に「凡奇湯」の源泉を浴びせる田中の高笑いが。 あの浅ましい泥棒猫! ポリタンクを持ち込んで、「凡奇湯」の泉水を持ち帰ろうとするなんて、どこまで見下げ果てたヤツなの。 リゾナンターの恥さらしが!! かわいそうに。 愛佳。 あなたは田中に利用されて、使い捨てにされることに気付いてないのね。 許せない。本当に許せない。 田中も許せないけれど今私が許せないのは「凡奇湯」。 私は人類の宝としてあんたのことを守るつもりでいた。 だけど愛佳みたいないい子を惑わせるあんたのことを許せない。どうしてくれよう。 そうだ、こうなったら成敗してやる。 「凡奇湯」に浸かりまくってやる。 毛穴という毛穴から「凡奇湯」の泉水を吸収してやる。 毛穴で追いつかなかったら、口から「凡奇湯」を取り込んでやろうではないか。 飲んで、飲んで、飲みまくって、「凡奇湯」を枯らしてやろうではないか。 そしてもう二度とボン。キュッ。ボン!になろうなどという欲望に目が眩む者が現れないようにしてやろうではないか。 そのために払う代償は小さくない。 浴びるだけでなく、服用することでどんな効果が私の身体に表れるか。 想像するだけで恐ろしい。 ボン。キュッ。ボン! さようなら、泣き虫だった私 ボン。キュッ。ボン! こんにちわ、私の笑顔 ボン。キュッ。ボン! YES I am ボンキュッ ボンキュッ ボンキュッ BOMB GIRL!! 「うわっ、とっと」 考え事をしていた所為で愛の手が郵便受けに伸びていくのを見過ごしていた。 バレてしまうではないか。 もしも愛によって私の腕が解放されるよなことになれば、掌に握りしめている「凡奇湯」への招待状の存在がバレてしまうではないか。 掌の中の封筒を手放そうという考えは起こらない。 何故なら人類の宝「凡奇湯」を成敗しようという使命感が今の里沙を突き動かしているからだ。 だから、郵便受けに触れようとしていた愛のことを…。 「どけ! さわるな!!」 と自由な方の左腕で突き飛ばしたのも当然の帰結だ。 「里沙ちゃん、何で」 長年の同志にして莫逆の友から受けたまさかの仕打ちに愛は泣き出しそうだ。 「私には判る。 この爆弾は解体しようとしてさわってしまうと爆発するタイプだと。 だからさわっちゃいけない」 自分の嘘で創り出した状況を最後まで守ろうと、里沙は必死だ。 その一方で自分を突き飛ばした里沙の仕打ちが、自分を助けるためだったと思いこんだ愛も強く決意した。 何としてでも自分のチカラで里沙は救い出すと。 「だったら里沙ちゃん。 その郵便受けに外から触らんかったら爆発しいへんの」 改めて確認をする。 「ああ、だからこれは私が一人で何とかしてみるから愛ちゃんは早く逃げて」 「さあ早く、里沙ちゃん今のうちに早く」 愛が急かす。 一体何のことかと思った里沙は自分の右腕がかなり楽になっていることに気づき愕然とする。 どうして? 自分の腕を捕らえていた郵便受けの差し入れ口を見た里沙は、そこが広がっていることに気付いた。 まるで内部から押し広げられたように。 え、ええぇぇぇぇぇぇっっ。 一体どうして? 「あーしのチカラで中からねじ曲げたから」 愛の誇らしげな声が響く。 え、ええぇぇぇぇぇぇっっ。 そんなオチなの。 また何で愛ちゃんが唐突にサイコキネシスなんかを。 「あれっ。 里沙ちゃん知らんかった。 あーしが念動力を持っていること」 え、ええぇぇぇぇぇぇっっ。 何その取って付けたようなご都合主義の後出しジャンケン。 まるでジャ○プのB○E○C○じゃないの!! 里沙に詰られた愛は拗ねたように唇を尖らせると、一冊の本を差し出した。 「かなしみ文書」という題名の本の[M-A6-09]の項目を指差す。 「声」という題名の一文にはこう記されていた。 “私は高橋愛 私は共鳴能力増幅・念動力の他に近くの人間なら少し心の声が聞けたり伝えたり出来る ” 「ああ、そういえばそうだったね」 力なく頷くと右腕を差し入れ口から抜いた。 固く握りしめられた掌の中にはくしゃくしゃになった封筒が。 「危ない!」 いきなり愛が覆い被さってきた。 ちょっこんな寒い中、しかも道の上で迫ってくるなんてマジかよ、おい。 いまだかつてなかった野生的な愛の求愛行動に一瞬引いていまう。 リゾナントの入り口付近でもつれ合う二人の前に、変形に耐えきれなくなった郵便受けが音を立てて落ちた。 ガラン! 軽い金属音が里沙を打ちのめす。 ええっと、もしかして私の腕が抜けなくなってたのは、慌てて狭い差し入れ口から腕を突っ込んだからってこと? れいなや愛佳が仕掛けた罠とかじゃなかったってこと?。 焦らず落ち着いて下の取り出し口から抜き取っていればよかったってことでおk? ていうか「凡奇湯」への招待状を握りしめてた拳を開いてれば、軽く抜けてたんじゃないの。 徒労感が里沙を包む。 せめてもの慰めは、「凡奇湯」へのパスポートは今私が手にしているってことぐらいなわけだけど…。 でもそれもこうして愛に現場を押さえられた以上、知らぬ存ぜぬで着服するわけにはいくまい。 「ちょっと重いからのいてくれないかな」 「あ、ゴメン。 でも里沙ちゃん、爆発なんて起きなかったやん」 「あはは、愛ちゃんの剣幕に爆弾も恐れをなしたってところかな」 自分の身の危険も顧みず私のことを守ろうとしてくれたんだ。 ひょっとしたら「凡奇湯」なんかよりも、目の前にいるこの女こそが私にとっての宝なのかもしれない。 そう思うとあんなに大切に思えた「凡奇湯」への招待状もただの紙切れにしか思えないのが不思議だ。 「あっ、これ。 ちょっとくしゃくしゃになったけど、中澤さんからの…」 違うのだ。 中澤からの招待状なら、墨跡が目にも鮮やかなのだが、今里沙の手にある封筒にはカラフルな文字が印刷されていた。 「あーっ、これ。 最近よく入ってるんよ。 何かセールスの人間が直接放り込んでいってるみたいで」 “低迷する金利。 不確かな証券市場。こんな時だからこそ、金。 実物資産の代表格の金取引を貴方にご案内します。絶対儲かります。 このチャンスを逃さないで下さい ” あはは、私こんな見当違いのモノの為に必死こいて寒空にさらされて、何この敗北感。 郵便受けの残骸を見やったが、中には何もない。 ちっ、郵便配達の届けた郵便物はもう回収したってこと… 完全に潰えたかに思えた希望。 だが誇り高き戦士新垣里沙の不屈の闘志はそんなことで挫けることはなかった。 …なら、やれる。まだ勝負は決していない。 今この場に「凡奇湯」への招待状が存在しないということは、神が私に与えたチャンスなのかもしれない、きっとそうだ。 愛を悲しませることなく、「凡奇湯」への招待状を入手する機会がもう一度与えられたのだ。 店内にあるであろう招待状を愛に気取られぬように奪取すれば、私はなれる。 ボン。キュッ。ボン! さようなら、泣き虫だった私 ボン。キュッ。ボン! こんにちわ、私の笑顔 ボン。キュッ。ボン! YES I am ボンキュッ ボンキュッ ボンキュッ BOMB GIRL!! 「なあ里沙ちゃん。 本当にこの金取引って絶対儲かるんかなあ」 十年近くの月日を一緒に歩いてきた同志。 莫逆の友にして、運命の人が人の良さ丸出しの表情で尋ねてくる。 本当にこの人は… 「愛ちゃんは本当に人が良いなあ。 いいかい、もしも本当に儲かるんなら、何でわざわざ他人に教えるのさ。 私だったら、そんなオイシイ儲け話は独り占めするけどね」 やっぱりガキさんは頼りになるわあ、と頼もしげな視線を送ってくる愛を店内に誘いながら里沙は言った。 「愛ちゃんは騙されやすいんだから。 何かあったら私に相談するんだよ」 身体が冷え切ったから何か温まるもの作ってよ、と言いながら里沙の目は光る。 待ってなさい、「凡奇湯」。 私があんたのことを成敗するその日まで。 誇り高き戦士新垣里沙の戦いは続く… ←back next→
https://w.atwiki.jp/mirage_cr/pages/36.html
風が吹き抜けた。 夏とは思えないその冷たさに、背筋がゾッとする感覚にボクは陥っていた。 目の前には人じゃない何か。 そして、ボクを間に挟んでその対角線の延長線上にその人は佇んでいた。 「執行者、黒崎葵」 なぜ先輩がここに? その答えを知る由もなく、ただ、ただ呆然とその光景を見ているしかなかった。 足は凍りついたように微動だにしない。 今ボクは、何を目の当たりにしている? そんな単純な答えすら分からないまま、その『時』は訪れた。 影が動いたと、そう感じた瞬間。 先輩の身体は宙を舞っていた。 ひらりとその外装を翻し、男へ一閃。 全体重をかけた一撃を物ともせずに片手で受ける男。 白い吐息と共に、笑みがこぼれるその表情を人は『恐怖』と呼んだ。 そんな『日常世界』ではありえない光景を目の前にしても、剣は速度を緩めることなく、さらに連撃を加えていった。 1撃。 相手の腕を弾き返した反動をそのまま半回転させ、一閃。 2撃。 振り下ろした剣を切り返し、男の身体を上空へ吹き飛ばす。 3撃。 着地と同時に先輩の身体も跳ぶ。 蒼い軌跡を描く刃が暗闇に照らされ、男の姿を捉える。 4撃。 男よりも上空に舞った先輩は、その華奢な身体を捻り斬り下ろす。 そして、屋上の硬いコンクリートに叩きつけられた男目掛けて急降下を開始する。 5撃。 地面と垂直に立てられた剣を、男の胸へ一気に突き刺す。 鮮血とうめき声がその場を支配し、鼓膜が超振動する。 耳鳴りに近い感覚と、暗闇に慣れ始めた瞳孔が一気に開く。 地面との衝突の際に発生した爆風が晴れていなくとも、その結果は誰が見ても知れたものだった。 一瞬だった。 5回の連撃、そのすべてはものの数秒で決められ、あの『人じゃないモノ』を一瞬で『消した』 開いた口が閉まらない。 ただ見ているしかなかったボクの身体は、糸が切れた人形のように、その場へ崩れた。 見れたものじゃなかった。 飛び散る赤い血と、弾け跳ぶ脳漿、内臓の断片がそこら中に散りばめられ、むせ返る臭いで充満しているこの空間にボクは耐えられなかった。 胃の中のものを吐き出すと同時に、涙がこぼれた。 ショックが大きすぎた。 いろんなことに対して。 そのショックの中でも一番、ボクの中で、頭の中で騒ぐもの。 それは。 ―なぜ、あの優しい先輩が、こんなことを平然とした顔で、出来るのか。 「・・・うっ」 また眼が熱くなる。 今度は前のものとは比べ物にならない灼熱がボクを襲う。 炎の中に放り出された感覚がボクの視野を奪い、先輩の姿さえ陽炎のようにしか確認できない。 ―ドクン 頭が割れる。 激しい動悸に襲われる。 この感情は、何だろう。 ボクは、これからどうなってしまうのだろう。 ―ドクン、ドクン 鐘の音が、一層激しくなった。 ボクは頭を抱え、その場にうずくまった。 収まれ、収まれ、収まれ。 そう願っても、収まりが効かない。 いつものように、治らない突然の発症。 「う、うああああああああああああああああああ!!!」 ―ドクン、ドクン、ドクン もう何も見えない。 今自分がどこに立っていて、どこを向いていて、どこを・・・。 これを『混乱』と言うのか? いや、違う。 これは、もっと別の、何か。 闇雲にその暗闇の中をもがく。 ひたすら。 その場でボクは暴れた。 怖い。 怖いよ。 誰か、助けて。 そう懇願する声も、ただ聞き入れてくれないこの世界に憎しみが生まれた。 「・・・田・・・く・・しっかり・・」 影が動く。 たくさんの影が、ボクに迫ってくる。 大きな津波が、ボクを飲み込もうと、その恐怖をもってして、ただ力と言う暴力が、飲み込もうとする。 やめろ。 やめてくれ。 ボクは、ボクは、ボク・・・は!!!!! 闇に、光が差した。 小さな光は周囲の小さな光を吸収し、弾けた。 その瞬間、今までのことが嘘のようにすべてがクリアになった。 目の前には、あの蒼いヒト。 つるぎをもって、ぼくのことのもとへかけよってくる。 こわい。 こないで。 ぼくをそんなめでみないで。 こわい。 こわいこわいこわいこわい。 「ク・・・ククク・・・ハハハハ・・・」 笑いが止まらない。 その様子を見た蒼い人は、ただ悲しそうにボクを見ていた。 そして、その剣を握り締め、言葉を紡いだ。 「負けないで」 一筋の涙が、そのひとの頬を伝う。 「アナタはまだ弱い、だけど、こんなことには絶対に負けない」 涙を流しながら、そのひとは笑顔を見せた。 「たとえ病魔にその心が蝕まれようとも」 笑顔であってもその気持ちは悲しさでいっぱいで。 「たとえ狂気と化しても」 何が、悲しいのか分からないけど。 それでも・・・。 「アナタのその強い想いで、必ず、アナタは自分に打ち勝てる」 その言葉を信じて、ボクは・・・。 「思い出して」 「アナタの、名前を」 自分に臨むことを決意した。 犯された、この弱い心と戦うために。 ぼくのなまえ? なんだっけ。 もう、いまはそんなの、どうだっていいのに。 なんだろう。 そのなまえは言っちゃいけないような気がした。 ボクがボクで無くなるような気がして。 脳裏に浮かぶ、誰かの影。 黒髪に赤い瞳。 手には刀を携え、その黒い影からはただならなぬ存在感が発せられていた。 「オレの名前を言え」 そう聞こえた。 『オレ』の名前? ボクは・・・キミのことを知らない。 「否、知っているはずだ」 そう即答される。 でも、知らない。 知っちゃいけない。 そう感じたのは・・・知れば・・・。 今までの自分の、『すべて』が終わってしまうような気がしたから。 「なんだ、ワスレタ、のか?」 「仕方ないヤツだ・・・じゃあ、オレの名前を教えてやろうか」 そして、その影は薄ら笑いを浮かべ、刀の鞘を抜き払い、 ボクへ突如突進してきた。 寸前のところでかわす。 「う・・・ぐっ」 それでも完全に回避することは出来ず、右腕に傷を負う。 痛みはほとんどない。 されど、人の動きを鈍らせるには十分なほどの負傷であったのは、確かだった。 「オレはオマエ、野田宗司(ノダソウジ)だ」 「覚えておけ、狂気の面を被った、オレの名を」 「ハハハ・・・ハハハハハハハハ」 嫌だ。 なんだか、そんな気分だった。 コイツは狂っている。 腕を押さえ、ただ膝を付くボクをあざ笑うかのようにただその咆哮をあげる。 否定する。 コイツの存在を。 ボクじゃないそのものに。 眼を押さ、ボクはその場でゆっくりと立ち上がる。 突如として脳裏に映るのは、綺麗な刀。 赤色に染まるその刀身には、見覚えがあった。 アイツの持つ刀は、ボクが知っている。 「返して」 「ん?」 「返せ」 「・・・」 記憶の奔流を頼りに、ボクは走り出した。 そして、アイツの持つ刀を手にし、叫んだ。 想いっきり、その空間に響き渡る、魂の声で。 瞳を抑えていた手をゆっくりと離し。 その刀身を、両手で掴み。 流れる血をモノともせず。 痛み耐えて。 叫んだ。 「返せよ!!!それは、オマエが持っていていいものじゃない!!」 その名を言った瞬間、世界が割れた。 暗闇の空間は裂け、音を立てて崩れゆく。 アイツはそんな中でもただ笑うだけだった。 気持ちが悪い。 消える意識の中、アイツの最後の言葉が脳裏に残った。 そう、アイツは言ったんだ。 これからの、ボクの行く先を。 「ようこそ、非日常の世界へ。・・・楽しくなりそうだ・・もう一人のオレよ・・・クククハハハ」 薄っすらと意識が覚醒する。 頼りない視力で見えるのは、キラキラと輝く小さな星達。 ボクはいつの間に倒れていたんだろう? 身体に痛みが走る。 手を動かそうにも、何かで固定されていてうまく動けない。 足もその例外ではなく、ボクはここに貼り付け状態にされていることが瞬時に理解出来た。 「起きたか?」 視線の先には、白髪の誰かがいた。 服の胸には、この学園の教師であると証明するプレート。 たしか、この人は・・・そう、うちの学園の物理教師『鶴谷国重(ツルタニクニシゲ)』先生。 この人が誰か?それは分かった。 でも、この状況が理解出来なかった。 なんで、ボクはこんなところで拘束されているのか。 どれだけ力を入れても、まったく動かない。 「力を入れても無理だ。その捕縛結界は容易く破れるようなもので出来ていない」 そう、目の前の教師はボクに言った。 諦めてぐったりと項垂れるボクを見下ろし、先生は話し始めた。 「キミにはいろいろ伝えなければならないことがある」 「ボクも聞きたいことが山ほどあります」 ガラにもなく睨みつけた。 そんな様子にうろたえることもなく、先生は淡々とその口を開いた。 「この世界には、狂気と呼ばれる病原体が存在する。 現代の医療技術をもってしても治すことが出来ない病。 症状は・・・まあ、キミは体験したようだから言わなくても分かるか。 病を治す方法はただ一つ。 そのモノの存在を世界から消す。 キミもその例外ではない。」 ただ・・・。 とそこで何かを躊躇っていた。 でも、その躊躇いは余計なものと思ったんだろうか。 先生は、ボクにこう告げた。 「キミは、この世界で唯一、その病を自力で治した」 ―なぜかは分からない。 ―しかし、事実キミはここに居て、その意思を確立させた。 ―ありえない奇跡を、キミは起こした。 そんなことを言われても分からない。 ボクは今なんでこんなことになっているかすら、曖昧だと言うのに。 そのときだった。 脳裏に浮かぶ、恐怖で支配された光景。 その恐怖を断罪するかのように颯爽と現れた一人の少女の影。 剣は宙を舞い、そしてボクは・・・ボ・・ク・・・は? 「葵先輩は!?先輩はどうなったんですか!?」 手と足の拘束具を引きちぎる勢いで先生へ問いただした。 その顔はあまり浮かばれない様子で、一振りの十字剣をボクに見せ付けた。 それは。 あのときの。 先輩が。 持って・・・いた? 「そんな・・・そんなこと・・・」 やっぱり夢じゃなかった。 ボクは狂気と化し、執行者である先輩はボクと戦って。 そして、その果てに、先輩を・・・? 「いや。葵君は死んでいない。」 「ただ、この世界からその存在を消した。」 「残留する高次元粒子反応、それを最後に彼女の波動はこの世界のどこにも、なくなった」 その言葉を理解するには、ボクはいろんなことを知らな過ぎた。 この世界で起こっている様々なこと。 執行者と言う存在。 狂気と言う存在。 そして、ボク自身のことも・・・。 何も分からない。 「キミは自力で狂気を解き放った」 「されど、生身の人間であるキミが再発しないという保障はどこにもない」 「今ここで私がキミを殺す、それが世界のルールだ」 世界のルール。 ボクはここで殺されるために、拘束具で縛られているのか。 迫り来る殺気と、手にしている十字剣を抜き放つ瞬間、 ボクはここで本当に死ぬと、そう実感した。 振り上げられた銀色の刃に、眼をそむける。 もうすでに死んだ命。 助かるはずもない病に打ち勝ち、少しだけの時間、生きることを許されたけれども。 これで、元通り。 振り下ろされた刃。 それを先生は何を思ったのか、胸元数センチのところで寸止めした。 「・・・・」 静寂が世界を支配し、ボクと先生だけの空間はそのままの状態で時が止まったかのように、 文字通り『静止』した。 開かれる口。 ―■■■■■■■ 何を言っているのか、少ししか聞き取れない。 ―■■■■■■■■■■か? ありえない言葉を耳にして、ボクは目を丸くした。 ルールは守らないといけない。 もう死んだボクを、このまま生かしたらどうなるか。 そんなこと、ボク自身は分からなくても先生なら分かっているはず。 何が起こるか。を。 胸元に突きつけられた剣を先生は鞘に戻し、再びボクに問いただす。 「その命、無駄にしたくなければ・・・契約を結べ」 「黒崎葵と同じにして、魔を断罪せし者」 「執行者として、剣を執る覚悟があるのなら」 ボクに・・・ 出来るのかな。 「想いの強き者、それこそが執行者の力の根源」 「さぁ、選べ」 「日常の終わりか、世界の始まりか」 そうして。 運命の歯車はゆっくりと周り始めた。 第6話『賢 者』END
https://w.atwiki.jp/shinatuki/pages/323.html
永遠亭は、完全に諦めムードだった。 「で、肝心のネズミをどう追い込むかよね……」 自分の能力である、『波長を操る程度の能力』を使い、ネズミを探している鈴仙がため息をついた。 「前にネズミを捕まえたときは、どーやったの?」 手回しオルガンのスタンド『ストレンジ・リレイション』を抱えたフランが、鈴仙の横に並んだ。 「てゐ軍団の人海戦術で永遠亭のネズミが入り込めそうなところの全てにパテを詰めて兵糧攻めにしたのよ」 「へぇ~大変だったでしょ」 「いや、ネズミは10時間何も食べないと死んじゃうから、待つのは割と楽だったわ。そんで、わざと一つだけ穴をあけてそこから出てきたところで、総力戦を仕掛けたわけ」 鈴仙は、遠くを見るような目で天井を見る。 しばらく目を閉じて、一か月前を思い出す。 苦労の思い出が次々と浮かんでくる。 溶けていく自分の服。 変な薬ひっかぶったせいで何故か自分に襲い掛かってくるてゐ。 それをにやにやと眺める輝夜。 育郎のせいで竹林に火がついて、大火事になりかけたり。 「我ながらひどい目にしか遭ってないわね……」 燃える竹林を思い出したところで、鈴仙は思い出すのをやめてため息をつく。 「で、どうやってネズミを追い込むの?」 フランが、鈴仙のブレザーを引っ張る。 「それについてだけど、前にやった時と同じ方法を取るわ」 答えたのは、永琳だった。 その答えに、輝夜と鈴仙と、スミレと、育郎の表情が苦虫を噛み潰したかのようなものに変わる。 「もしかして……てゐさん抜きでやるんですか?」 育郎が手を上げて質問した。 永琳は、笑顔でうなづいた。 「でも、以前パテで埋めたところが残っているから、そこはそのままにしといてパテが剥げていたり、新しい穴とかを埋めましょう」 そう言って、永琳はビンと金ヘラを人数分取り出した。 どうやら、これを使って永遠亭中の穴や隙間を埋めろということらしい。 「よーし! がんばろー!」 フランだけが金ヘラを高く掲げていた。 少年少女穴埋め中………… ネズミが通れそうな穴の全てを埋め終えるころには、空に三日月が輝いていた。 「つかれたぁ……」 金ヘラを投げ出して、フランは廊下に座り込んだ。 「でも、これでネズミは出られないな」 パテが入っているビンの蓋をふさぎながら、育郎は壁を見る。 「ネズミのにおいは……都合よくこの辺りだな」 「では、手っ取り早くネズミをあぶり出しちゃいましょう。フラン」 永琳の言葉に、フランは黙ってうなづいて『ストレンジ・リレイション』を発動させる。 「それではお願いします」 そしてそれを鈴仙に手渡しする。 「よ~し……」 鈴仙がハンドルを握りしめ、思いっきり回す。 しかし、肝心の音は出ない。 しん、とした静寂が漂う。 これが、超音波。人の可聴音域を超えた音。 「鈴仙さん、危ない!」 いきなりスミレが叫んで、鈴仙を突き飛ばす。 「え?」 鈴仙とスミレは、床に倒れこむ。 床に何かが突き刺さる音がした。 すると床はどろどろと溶けてしまう。 「上よ!」 スミレはすぐに育郎の頭上を指差す。 全員がその方向を見ると、天井の梁を伝って動くネズミの姿が。 「追いましょう!」 永琳が弓を取り出して走り始めた。 一方、夜の竹林に足を踏み入れる者が一人。 「紫の話によると、今夜ここで竹の花が咲くらしいな……」 スケッチブックを抱えた人影は、風に揺れる竹を見る。 「その話が本当なら……フフフ、いいネタが得られそうだ……」 彼は薄笑いを浮かべ、夜の竹林へと足を踏み入れた。 「いたッ! あそこだーッ!」 育郎が、スミレの指差す先に向かって走る。 「待て~ッ!」 その後ろを、赤い光の剣『レーヴァテイン』を持ったフランが走る。 そして最後尾には、『ストレンジ・リレイション』のハンドルを回しながら走る鈴仙。 三人が追いかけるネズミは、廊下の角を曲がる。 先頭の育郎が角を曲がると、急に床が崩れた。 いや、正確には床が溶けた。 「しまった!」 育郎はすぐに抜け出そうとするが、溶けた床はすぐに煮凝りのように固まり、育郎の手足を絡めとる。 上半身を床から出すといういどまじんのような格好になった育郎の頭の上を、ネズミはあざ笑うかのように踏んでフランの方へ走っていく。 フランの股を抜けると、走りながらスタンドを出し、照準を鈴仙に合わせる。 「え……私!?」 ネズミの標的になった鈴仙は、戸惑って足を止める。 それが命取りとなった。 ネズミのスタンド弾が、鈴仙の体へと撃ち出される。 その数七発。 全てが鈴仙に命中し、鈴仙の服が溶け出す。 「こ、これって……」 鈴仙の服全てが溶けて、彼女は下着だけになってしまった。 「またかい!」 困惑の叫びをあげて、鈴仙は胸の部分を隠す。 彼女はつけていなかった。 「なにがまたなの?」 鈴仙の叫びを聞いて、フランは振り返る。 「うわ、早着替えのかくし芸?」 「ちがうわよ! 仮にそのかくし芸を持っていてもここでやる意味がないわ」 「そっか。で、ネズミはどこ行ったの?」 「……しまったーッ! 見失っちゃったーッ!」 鈴仙は頭を抱えて叫んだ。 幸い、抱えていた『ストレンジ・リレイション』が危うい部分を隠していた。 一方、煮凝りの床にはまってしまった育郎は、 「しまったな……動くに動けないぞこりゃ」 両手で煮凝りの床からの脱出を図っていた。 だが、プールから上がるようには行かず、煮凝りの床が胴や足に絡みついて抜け出せない。 そのうち彼は脱出することをあきらめて助けが来るのを待つことにした。 ――橋沢育郎:再起不能? 「またグダグダになっちゃったわね……」 着替えを来た鈴仙は、ぐるぐると『ストレンジ・リレイション』を回し続ける。 廊下でフランと二人きりであった。 「ねーねー、そんなに回していて疲れないの?」 「こう見えて鍛えているから大丈夫よ」 「鍛えているようには見えない細さですな」 フランは鈴仙の二の腕をぷにぷにと揉む。 「やーらかーい」 「そんなことしてないでスミレちゃんにネズミの場所当てに行ってもらうわよ」 「アイアイサー!」 二人は元来た道を戻って、スミレの予知能力を頼りにすることにした。 そうしてスミレの所まで戻ると、彼女は腕を組んで二人を待ち構えていた。 「そろそろ来る頃だと思ったわ。ネズミは今庭に潜んでいるわ」 スミレは庭の方を指差す。 庭は妹紅の炎や輝夜の弾幕やらで小さな荒野と成り果てていた。 これを庭として再生するには、枯山水にしなければならないだろう。 フランと鈴仙は、『ストレンジ・リレイション』の超音波をまき散らしつつ庭に立つ。 と、その時二人は地面に沈み込んだ。 「「なっ……!」」 地面はネズミによって溶かされていた。 どろどろの地面はすぐにぷるんぷるんに固まる。 しかし、その程度で動きを止められるほどフランはやわじゃなかった。 「こうなったら! 練習の成果を見せてやるんだから!」 フランはすぐにゼリー状となった地面を見つめた。 そこにあるのは地面の『目』。 フランは右手を開く。 地面の『目』が引きずり出され、フランの手のひらの上に乗っかる。 「ギュッとして……」 フランがそれを思いっきり握りしめると、 「どかーん!」 地面は勢いよく弾け、二人を空中へと送り出す。 二人は空中で姿勢を立て直すと、空から庭を見る。 「見つけた!」 鈴仙は、岩陰に隠れているネズミを見つけた。 すぐに彼女は指先に力を込め、赤い弾丸をネズミに向かって撃ち込む。 今までフランたちをあざ笑うかのように立ち回っていたネズミもこれにはビビッて飛び上がる。 そそくさとネズミは永遠亭の軒下に避難しようとするが、その鼻先にフランのレーヴァテインが突き刺さる。 急遽ネズミは転進、竹林の方へと走り出した。 「よし、竹林ならもう隠れられないわ!」 鈴仙は意気揚々とネズミを追いかけはじめる。 フランも、鈴仙の後を追って竹林へと突入した。 竹が乱立する迷いの竹林は、来る者にまるでその直線が永遠に続くかのように感じさせる。 その竹を縫うように、鈴仙は飛行している。 後ろからついてくるのはフラン。 「また見失っちゃったわね……」 鈴仙は、周りをきょろきょろと見渡す。 どういう訳か、周りには枯れ竹が乱立している。 突然、二人目掛けて枯れ竹が倒れ掛かってきた。 「危ない!」 先に反応したのはフランだった。 フランの『レーヴァテイン』が、枯れ竹を切り落として鈴仙を守る。 続けて二本、三本と枯れ竹が倒れ掛かってくる。 フランは次々とそれを切り払い、ネズミを探す。 ちょうど15本目を切り払ったところで、鈴仙はフランの肩を叩いた。 「どうしたの?」 「おかしいわ。竹はいつも青色のはず。なのにこの周辺の竹は枯れて茶色になっているわ」 「それがどうしたの?」 「竹はね、一年中青色で、葉を落としたりはしないのよ」 「それはおかしいねぇ」 「何かの病気かしら……」 鈴仙はいぶかしげに周囲の枯れ竹を見る。 ふと地上に視線を向けてみると、 「……いた!」 竹の枯れ葉の山の上で、ネズミがスタンドの砲塔をこちらに向けていた。 ボン、と火花と硝煙を撒いてスタンド弾が鈴仙へと向かう。 鈴仙はそれを素早くよけて、ネズミに近寄ろうとすると、あることに気付いた。 「燃えている……」 枯れ葉の山が燃えている。 鈴仙はその原因にすぐ気付いた。 「あの弾が出る時に、火花が出て、それを引火させたんだわ……あのネズミとんでもない切れ者ね」 ブレーキをかけて鈴仙は上空へと戻る。 上空では、フランが冷や汗を流しながら竹林を見ていた。 「どうしよう、火に囲まれちゃったみたい」 フランに言われて、鈴仙は周囲を見渡す。 燃えていた。 360度全方位が炎に包まれていた。 「これは……流石に危ないかも……」 鈴仙の髪から、汗がしたたり落ちた。 炎が、フランと鈴仙を取り囲んだ。 「これはヤバいかも……」 フランは、額に汗を浮かべながら、炎を見る。 「くっ……追い詰めたつもりが追い詰められてたって訳ね。しかも丁寧なことに枯れてない竹を折って火事対策まで済ましているわ」 「でも、火に囲まれてるのはネズミだって同じでしょう? だったら都合がいいわ」 フランは、レーヴァテインを大きく振るって、炎をはねのけて着地した。 そしてネズミの姿を探すが、 「いない……ネズミがいないッ!」 燃える枯れ竹を振り払うと、地面に一か所だけ色の違う所があった。 フランはしゃがみこんで、その色の違う場所を触れてみる。 まるでゼリーに触れたかのような感触だった。 「しまった……あのネズミ、地面を『溶かして』掘り進んで逃げたのね!」 フランは、穴の周囲を見渡した。 まだ固まり切っていないからそう遠くへは行ってないはずだ。 「しかし……この炎をすべて消すには……」 炎が苦手な吸血鬼であるフランは、再び飛び上がった。 「やっぱり派手にどっかーんとするしかないでしょ!」 そして、炎を直視する。 炎の中に、揺らめく『目』を見つけたフランは、それを引き寄せる。 「ねぇ、今から何をする気なの?」 鈴仙が、横で集中するフランを見た。 「この炎をぎゅっとしてどっかーん、ってしたら火が消えるかなーって思って」 フランの返答に、鈴仙は疑問符を浮かべた。 「それって、庭でやった時と同じこと?」 「そういうこと」 フランの手には、すでに『炎の目』が乗っかっていた。 それを握りつぶすと、炎は勢いよく爆発した。 「「うわあぁ~ッ!」」 こんなことになるとは予想もしていなかった二人は、吹っ飛んでいく。 一方、地中から這い出てきたネズミも、その爆風で吹っ飛んでいく。 「あぶない、あぶない。まさかこんなことになるとは……」 爆風のあおりを喰らったフランは、竹に捕まることで事なきを得、鈴仙もまた竹に捕まって地面に叩き付けられることを回避した。 炎を消すことは、結果として成功した。 消火の方法の一つとして、爆発を起こして周囲の空間の酸素を瞬時に消費させて消す方法がある。 知らず知らずの内に、フランはこの方法で火を消したのだ。 「ひどい目に遭ったけど、結果オーライかな?」 服についた煤を払い、フランは立ち上がる。 「いやいや、この爆発でネズミが死んじゃったらどうするのよ」 鈴仙も立ち上がって、服についた埃を払う。 「鈴仙さん、ネズミなら大丈夫よ。あれを見て……」 フランは、目の前を指差した。 鈴仙が目を凝らしてみると、そこには岩を『溶かして』クッションにして事なきを得たネズミの姿が。 よく見ると、ネズミは目を回している。 「あのネズミ、目を回しているわよ! 今がチャンスね!」 そう言って、鈴仙は低空飛行でネズミへと向かった。 もう即興の落とし穴にかかるなんてヘマは犯さない。 「捕まえたぁ!」 ついに鈴仙はネズミを右手で掴んだ。 衝撃でネズミは目を覚ますが、 「私の目を見ろォ!」 鈴仙と目を合わせてしまい、鈴仙お得意の催眠術にかかってしまう。 「これでおとなしくなったわね……」 鈴仙は、左手で汗をぬぐい、一息つくと、 「いてっ!」 鈴仙の右手にネズミが噛みついた。 彼女は思わず手を離し、ネズミを開放してしまう。 「いてて……ネズミなのになんて精神力なの! 私の催眠術から逃れるなんて……」 鈴仙はすぐに走るネズミを追いかけ出した。 「さて、竹の花のスケッチを終えたはいいが……今度は爆発音か。」 緑のバンダナを巻いた青年――岸部露伴はスケッチブックを畳んで立ち上がった。 彼の周りには竹の花びらが散っている。 「気になるぞ……人気のない竹林で突然の爆発ッ! 凄くッ! 気になるッ!」 自身の中に沸き立つ衝動に身をゆだね、岸部露伴は走り出す。 しばらくすると、小さい生き物がこっちに向かって走ってくるんが見えた。 その後ろには鈴仙と、フランの二人が走っている。 「ちょっとそこの人! ネズミ捕まえてください!」 鈴仙に言われて、露伴は自分に走り寄る小さな生き物を凝視する。 確かに、ネズミだ。 なぜ目の前の面妖な少女はネズミを追いかけているのか? その疑問を解決すべく、露伴は指をネズミへ向けた。 「ならばそのネズミを捕まえてやろう。『ヘブンズ・ドアー』! ネズミを本にしろ!」 形容のできない音がして、ネズミは転ぶ。 「フフフ……どれどれ、どういう経緯でこのネズミが追いかけられている暴いてやろうじゃないか」 露伴はにやにや笑いながら、ネズミをつまみ上げた。 「はぁ、はぁ、はぁ……やっと追いついた……ありがとうございます」 息を切らして、鈴仙は露伴の前で止まる。 「ネズミ捕まったー?」 フランも露伴の近くで止まる。 「君たちはこのネズミを追いかけていたみたいだが、どうだ? ネズミがなんで逃げたか知りたくないかね?」 二人の前で、露伴は悪戯の成功した子供みたいな笑みを浮かべる。 二人は、互いに見合わせて、 「「うん」」 うなづいた。 露伴は待ってました、と言わんばかりに、ネズミの肌に手をかける。 すると、ネズミの本のページのようにめくれて、そこに『オレの名はネズミ。名前はまだない』の文字が現れる。 「これ、なんですか?」 鈴仙は、目を丸くしてネズミを指差す。 「これはね、ネズミの『記憶』さ。ボクは『生き物の記憶を読み書きする程度の能力』を持っている」 自信満々に露伴は鈴仙の質問に答え、ネズミのページをめくる。 『気が付いたら大けがして寺みたいなとこに倒れてた。もうあのハンバーグみたいな髪形の人間には遭いたくない』 「ふむふむ……仗助の事か?」 めくる。 『オレはこのまま死ぬかと思ったが、ネズミと同じ雰囲気をした人間が助けてくれた』 「ネズミと同じ雰囲気をした人間……おいおい、そいつは人間じゃないと思うぞ」 めくる。 『とにかく、ここがどこか確かめたかったから外へ出た。そしたら竹がたくさんある所で迷ってしまった』 「竹がいっぱいある所……ここか」 めくる。 『とりあえずタケノコを『ラット』で折りながら食べてたら、空にいるトンビに見つかった。攫われる前にでっかい人間の家に隠れた』 「なるほど。永遠亭の事か」 めくる 『でっかい人間の家で罠にかかった。オレながらマヌケだ。そこで鉄のオリに入れられたがオレの『ラット』で抜け出した。そしたらものすごい数の兎たちに追っかけられた』 「こいつ一度逃げようとしたのか」 めくる。 「腹が減って動けなくなった所でまた捕まった。今度はヒモでできたオリに入れられたが、これが凄い。齧っても切れないし、『ラット』でも溶かせなかった。だが何回も『ラット』を撃ち込むと切れたから逃げ出せた』 「そうして今に至る……って訳か」 露伴は、ネズミのページを閉じる。 ネズミは露伴の手の中でぐったりとしている。 「あの……このネズミ死んだ訳でじゃないですよね……」 鈴仙は、ネズミを指差した。 「ああ、気絶しているだけだ……それにしても逃げ出した動機が分からないなぁ」 ネズミを前にして、露伴は腕を組む。 「ネズミが喋ればいいのにね」 ネズミをつつきながら、フランがつぶやく。 露伴の耳が、ピクリと動いた。 「それだ。それだよ! 分からないなら喋らせればいいじゃないか!『ヘブンズ・ドアー』ッ!」 再び、露伴はネズミを指差した。 そしてネズミのページにこう書きこむ。 『人間の言葉が喋れる』 と。 そして露伴はネズミをつつく。 「おい、ネズミ、起きろ」 「むにゃむにゃ……何ッスか?」 ネズミの声は、意外と高かった。まるで少女の声。 「……ぎゃー!」 目を覚まして、ネズミは叫んだ。 目の前に追手が二人もいたからだ。 「ま、ままままだ追ってくるッスか? 一体なんなんッスかあんた達!?」 ネズミは、後ずさりする。 「まあまあ、落ち着けよ」 慌てるネズミに、露伴が声をかけてなだめる。 「まずは何で追われているか確認しようじゃないか」 露伴の言うとおりに、ネズミは今までを思い出す。 「えーっと、なんかネズミっぽい雰囲気した女の子に助けられて、そのあとどっかほっつき歩いていたら竹林に迷い込んで、それでトンビの気配感じてでっかい家に入ったら捕まって……で、逃げだしたらまた捕まって、こうして逃げ出したら何故か人間の言葉話せるようになって……って、ええ~ッ!」 今までを思い出して、ネズミは驚いた。 「オレ、人間の言葉が話せてる!」 「……それって驚くこと?」 驚いてばかりのネズミに、フランが冷静なツッコミを入れる。 「とにかく、なんでオレの事を追いかけてくるッスか? オレに何の恨みがあるっていうんスか?」 ネズミの質問に、鈴仙とフランは顔を見合わせた。 「そりゃ……逃げ出したから?」 鈴仙は、さも当たり前のように答える。 「だったら、なんで捕まえたッスか?」 ネズミの質問に、鈴仙は言葉を詰まらせた。 「それも……そうよね。ただのネズミなら追っ払って終わりよね……」 腕を組み考えにふける鈴仙。 「師匠に聞いてみる必要があるかも」 鈴仙は、振り返った。 「あんたは、どうするの? 逃げ出した所で、どこに行くか決めてるの?」 ネズミに背を向けたまま、鈴仙は質問をする。 「うぐ……そういえば忘れてた……」 ネズミは少し考え事をした後、鈴仙の肩に飛び乗る。 「まあ、話ができるなら師匠も悪い扱いはしないでしょ」 そう言って、鈴仙は永遠亭の方へと歩き出した。 「これでやっと解決ね……あ、薬取り行かなきゃ」 フランも、薬を受け取るために鈴仙へついていく。 「面白そうなことになってきたな……いいネタが掴めそうだ」 純粋な好奇心に突き動かされ、露伴も二人についていくことにした。 永遠亭に三人と一匹が到着すると、門の前で輝夜が力尽きていた。 「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」 そしてその近くで妹紅が両手を上げて雄たけびを上げている。 鈴仙とネズミとフランはその光景を無視して永遠亭に立ち入る。 「いったい何があったというんだ……?」 露伴はその様をまじまじと見つめ、鈴仙たちが立ち去るのを見てそそくさとついていった。 「はぁ……やっと抜け出せたよ」 玄関を開けると、育郎が靴を履いているところだった。 どうやら、今から鈴仙たちの応援に向かおうとしていたところらしい。 「鈴仙さんにフランさん。ネズミはどうしたんですか?」 育郎の質問に、鈴仙は自分の肩の上に乗るネズミを見せた。 「よぅ」 肩の上のネズミは、気さくに声をかける。 「…………」 育郎は目を丸く見開いて、鈴仙たちを見送った。 「ネズミが喋るなんて、夢じゃないよな……」 彼は自分の頬を思いっきりつねった。痛かった。 「師匠、例のネズミ連れてきましたよ~」 鈴仙は扉を開けて、永琳を呼んだ。 永琳は、待ってましたと言わんばかりに鈴仙に近づく。 「やっと捕まえてくれたのね。助かるわ~」 そう言って、永琳はネズミを覗き込んだ。 「おい、ナース服。何でオレをあんなせまっ苦しい所に閉じ込めてたんだよ」 ネズミは、永琳を睨みつける。 「あら、人の言葉を喋れるまでに成長したのね」 永琳は驚かず、懐から手帳を取り出してメモを取る。 「ネズミの話を聞けよ! な・ん・で! オレを閉じ込めてたんだよッ!」 「そりゃ珍しいからに決まってるでしょ。普通の動物が年若くして力を得るなんて希少なパターンよ」 「おい、そりゃどういう事だよ。一から説明してくれ」 ネズミは、永琳の話が理解できず、目を白黒させた。 そう言われた永琳は、コホン、と咳ばらいをした。 「非常に長生きした動物は、時として常識では考えられないような怪しい行動をとるわ」 その言葉を聞いたネズミは、 「オレそこまで長く生きてねーし」 と小声でつぶやいた。 「奇妙な行動をとるようになった動物は、尻尾が増えたり、人の言葉をしゃべったりするようになる。それを人間たちは『経立(ふったち)』と呼んでいるわ」 ネズミのつぶやきを無視して、永琳は続ける。 「いずれ『経立』は人の形を取り、一人前の妖怪になるわ。私は『経立』が妖怪になるまでの経緯を調べてみたくてね。そこに飛び込んできたのがあなたって訳」 「……て言うとあれか? お前さんは好奇心のためにオレを監禁したって訳か?」 「そういう事になるわね」 「あっさりと答えるなァーッ!」 ネズミは、前足で頭を抱えた。 「と、言う訳であなたが『経立』から立派な妖怪になるまでを観察させてもらえないかしら」 そんなネズミに向かって、永琳はにっこりと微笑みかける。 「……チーズ。一か月に一回チーズくれて、オレを閉じ込めないなら……ここにいてやらないわけでもない」 ネズミはぶっきらぼうに答えた。 「うふふ。契約成立ね……あ」 そこで永琳は、何かを思い出した。 「そういえば名前が必要ね。この永琳が名付け親になってあげる。そうね……」 永琳は5秒ほど考え込んだ後、人差し指を立てた。 「『チョロ吉』よ。あなたの名前は今からチョロ吉」 「なんじゃそりゃアァァァ!」 ネズミの魂からの叫びが、永遠亭にこだました。 フランが薬を持って永遠亭から帰ってくる時には、紅魔館の時計は12時を指していた。 「んーっ! 疲れたぁ……」 フランは背伸びをして、紅魔館の玄関を開く。 「ただいまー! お薬もってきたよー!」 フランは藤の籠から薬の入った袋を取り出す。 「お待ちしておりました。妹様」 一瞬で咲夜が姿を現し、藤の籠をフランから受け取る。 「ああ、待って咲夜。パチュリ―には私が薬を届けたいの」 フランは、そう言って籠を咲夜から取り返すとフランは階段を駆け下りて行った。 EDテーマ ふぉれすとぴれお『彼女が一番少女なのか?』
https://w.atwiki.jp/barrett/pages/100.html
No.47 コサックビート みどころ 1日毎に1人づつ消滅者が出る恐怖 あらすじ アンチを排除しようと活動するオペレーター達をあざ笑うかのように、 日を追うごとに一人、また一人と消滅していく。 それは、アンチの発する電波障害ゆえなのだろうか? アンチなどに、このコサックビートを渡すわけにはいかない。 希望と絶望が綯い交ぜになった領域で、オペレーターは必死に足掻く。 そうしてオペレーターが活動する裏で、局長の秘密指令が下された。 【局長より残留思念へ】 本日の指令 スパゲティをめんつゆで食すといかなる味がするか確認せよ アンチ排除に奔走するオペレーター、秘密指令を遂行するフノキオ。 ────そして、裏でひっそりとほくそ笑むアンチ達。 果たして、運命はどちらに転ぶのだろうか。 名言 キャスト 名前 正体 運命 備考 ぬらぬら オペレーター 9日目脱出 JJ フノキオ オペレーター 3日目消滅 めんつゆスパ係 ねずみ アンチ 7日目脱出 鉄雄 シトロエン オペレーター 5日目消滅 宇宙五月病 係長 オペレーター 2日目消滅 フォーク ポヨン オペレーター 11日目脱出 クールガール 木登り小僧 オペレーター 8日目粉砕 破廉恥乙女 クロエ ストライプアンチ 12日目粉砕 ストライプ・サド エレキ氏 アンチ 生存 オンジ クーパーさん ハイクラスオペレーター 4日目消滅 宇宙五月病 参加した人も読んだ人も、感想をご自由にどうぞ。 この領域のアンチの戦略は言語道断である。こんなに後味が悪い領域も始めてである。 -- 匿名希望 (2007-06-12 00 37 10) この領域のオペは純粋可憐であったが、アンチは腹黒であった。同じく言語道断である。 -- 匿名希望2 (2007-06-12 07 43 07) 私は、アンチの戦略は見ていて気持ちよかったですよ、麺つゆスパが面白かったです -- 傍観者1 (2007-06-12 07 51 49) 参加オペは悔しいだろうな。だけど、客観的に見れば全然アリなんじゃない? アンチらしい行動だと。 -- 傍観者2 (2007-06-12 09 04 11) オペにとっては厳しい領域でしたが、アンチの戦略は普通だと思いますよ。 -- 苺餅 (2007-06-12 11 25 58) もちろん愛してますよ、アンチども!愛しすぎて、めんつゆスパの刑は続行いたします。 -- 木登り (2007-06-12 21 47 50) 後味悪いって、めんつゆスパのことだよねぇ? -- 木登り (2007-06-12 21 52 31) 良いフォロー。コメントの先行きが心配で陰ながら見ていたのですが心配なさそうですね。私も、あの清々しいくらいのアンチの作戦には脱帽です。 -- シトロエン@余所者 (2007-06-12 22 02 17) 何この怪し過ぎるコメント達は。関係者じゃないのか? -- ・・・? (2007-06-12 22 49 54) あれー?関係者さん?コメントくださいよ!つか、関係者じゃない人たち・・・見たんですか・・・・ログを・・・・ -- 木登り (2007-06-13 00 06 11) 今回のアンチの作戦には賛否両論があると思いますが、ルール上でVer.1は「目的のためならウソをついても構いません。」とありアンチの作戦に「うそ」も全て有りでしたが、Ver.2になりゲーム性も高まっていますので「ウソ」はルール違反だと思います。またゲームですので勝敗に拘るのは結構なのですが、うその作戦で勝利するのではなく戦略でオペを負かしてください。 -- 閲覧者 (2007-06-13 00 18 48) 木登りの女装けっこう見られてたんだな… -- 関係者のねずみ (2007-06-13 01 58 09) ウソをつかないとゲームが成り立たないのに「ウソはルール違反」と言われましても。ウソをつくのも戦略のひとつだと思っているのですが。 -- エレキ氏 (2007-06-13 09 27 20) 木登り小僧はやはり木登り乙女に改名したほうがよさそうですね、これだけたくさんの方に見られてしまったのですから(にやにや) -- エレキ氏 (2007-06-13 09 32 20) オペのやり取りも楽しかったし、後半のプレッシャーを考えればアンチのあのテンションや戦略は普通だと思う。正直者、ウソツキ、十人十色。 -- 他領域アンチ経験者 (2007-06-13 11 11 58) そうか・・・見られてしまったからにはこの道で生きていくわ!ウソつかなかったらこのゲームなりたたないじゃんね。あ、なりたちませんわ。うふ。 -- 木登り乙女 (2007-06-13 12 38 53) 傍目を装っている方が多い様ですが -- 匿名の関係者 (2007-06-13 13 34 59) ウソがルール違反って言ってる人は、アンチはどうすれば勝利できると思ってるんでしょうか?Ver2だし、わざわざ「ウソはOK」と書かれなかっただけでしょう。もはや当然のことですから。 -- 閲覧者 (2007-06-13 14 56 58) 匿名の関係者(2007-06-13 13 34 59)さん、それはこの領域のアンチが傍観者を装って、アンチ擁護の書き込みをしているのだと言いたいのでしょうか? -- エレキ氏 (2007-06-13 15 05 27) アンチのうそについては肯定も否定もしませんが、うそにもある程度の限度があるかと思います。アンチ役のエレキ氏のうそにはちょっと度が過ぎるところが見受けられます。参加者や閲覧者に不快を与えるうそは控えた方が良いでしょう。確かにアンチの戦略にはうそが必要ですが、オペを楽しませるのもアンチの役目だと思います。 -- 閲覧者 (2007-06-13 22 31 26) 確かに領域が終了しオペとアンチが戦闘を振り返り称えあうことが出来れば最高だ。 -- 傍観者 (2007-06-13 22 37 30) 個人の正当化の意見はとても見苦しい。 -- 匿名 (2007-06-13 22 41 04) ぎゃふんといえなかったのが今回唯一残念だったことだ。それをぬかせば楽しかったぜ。 -- ぬらぬら (2007-06-13 23 01 51) ここでアンチの嘘についてどうのこうの言うのは47の領域の人にとっても気分がよくないのでは。うその限度など根本的な個人の考え方に基づく意見であるのならば作戦会議室のほうで呟くほうがよろしいのではないでしょうか。あと名前出しは装いがどうのいっているので。しゃしゃり出てしまい失礼しました。 -- 他領域アンチ経験者こと翠雨 (2007-06-13 23 15 28) おっと。なんか殺伐としてるぞ!最後までアンチが誰か考えさせてくれたから、面白かったけどな~。 -- 木登り (2007-06-13 23 31 25) って何これ;終わったこととやかく言わなくてもいいじゃん!・・・とか私が言っちゃ駄目か(汗 -- ポヨン (2007-06-13 23 32 36) おい,木登り。この場を盛り上げろ。お前を今から宴会隊長に任命する。ポヨン久しぶり!相変わらずの冷静さに思わずドキっとときめいてしまったぜ。そういえばこっそり備考欄を増やしてみた。てへ☆ -- ぬらぬら (2007-06-13 23 35 09) アンチのウソが云々って言ってる人は作戦会議室に移動をヨロシク。程度なんてそれこそ人それぞれ。せっかくだから徹底的に話し合ってみれば?あっちでさ。 -- 閲覧者 (2007-06-13 23 57 07) 「ウソ」はルール違反という意見が一番おもしろいわ(オペは純粋可憐も捨てがたいわね。「純粋」は認めてもいいけれど、「可憐」かしら?)。いつのまにここは「叙述トリック」みたいなルールが出来上がったのかしらね? -- クロエ (2007-06-14 00 12 41) クロエ、やっぱりそれが気になるよな。俺もそうだ。なぜ誰もツッコマないのか不思議でならなかったぞ>オペは純粋可憐 -- ねずみ (2007-06-14 00 20 56) ハロ、ハロ。めんつゆスパ、ニンキ。ヨカッタ、ヨカッタ。オレ、カレン。ミンナ、カレン? -- フノキオ (2007-06-14 01 18 21) うわ。どうしたんだい、ここ。僕は、オペだったけど面白かったよ。消滅しちゃったけどさ…。 -- シトロエン (2007-06-14 05 03 26) やはりここのオペレーターは可憐だなうん。オレはその代表だと自分でちゃんと自覚しているぞ。 -- ぬらぬら (2007-06-14 09 20 21) そういえば、めんつゆスパは大根おろしを入れると美味しさアップでございますよ。ぜひお試しあれ。 -- エレキ氏 (2007-06-14 10 01 25) 1人可憐じゃなかったのがいたけどさ・・・・(ボソ)さ!宴会準備。酒!酒もってこーーい!(ツマミはやっぱりめんつゆスパなのか!?) -- 可憐代表・木登り (2007-06-14 12 32 43) 係長は可憐というよりゴッドファーザーのような存在だったもんな。めんつゆぱすた…ごふっ -- ぬらぬら (2007-06-14 13 08 58) かれん【可憐】.いたわりたくなるようすであること。いじらしく、かわいいこと。 -- 名無しさん (2007-06-14 13 39 48) 可憐って…えぇぇ……。↑のは俺だ。意味調べててびっくりして途中送信してしまった。 -- ねずみ (2007-06-14 13 42 48) 木登り小僧とぬらぬらは可憐と言っても嘘ではありませんね! -- エレキ氏 (2007-06-14 13 56 12) でしょでしょ。でも、ぬらは違うってば。ぬらも可憐になりたければ、フリフリドレス着用を勧めます。 -- 可憐木登り (2007-06-14 22 27 59) ほらぁ!!エレキ氏のお墨付きだぜ。木登りはフリルを着ているから可憐だといえるかもしれない。だがオレの心はスミレの花のように可憐なんだ。参ったな。 -- カレン=ぬらぬら (2007-06-14 22 44 32) ぬらもフリル着れば良いのよ。そして二人でアイドル歌手としてデビューするのだわ!(笑) -- クロエ (2007-06-14 23 02 17) そんなのだめだよ。僕だけ人気が出ちゃ、悪いだろ・・・ -- ぷりてぃ木登り (2007-06-14 23 06 18) オレもか。オレもあのレースを着ろというのかクロエ。…オレが人気者になってしまったらどうするんだ。全国のぬらファンが泣いてしまうじゃないか。 -- きゅあぬらぬら (2007-06-14 23 08 51) 泣かない、泣かない。あ、違う意味で泣くかな? -- ぷりてぃ匿名希望 (2007-06-14 23 16 46) 子供達の夢を奪う気なのね。それともアニメ化かしら? -- クロエ (2007-06-14 23 25 23) スポンサーは局長かな。 -- ねずみ (2007-06-15 00 58 58) ひどいっ!みんなしてあたしのデヴューを阻む気なのね…!!あたしは意地でもデヴューするわよ。 -- ぬらりん (2007-06-15 12 13 44) 局長がスポンサー下りるってさ。自費でデビューだね・・・・ -- 木登り (2007-06-15 12 45 03) 木登りのカンパに期待するしかないな。 -- ぬらぬら (2007-06-15 18 16 37) お金はないから、めんつゆスパを売るしか・・・・ -- 木登り (2007-06-15 19 43 39) デビュー曲は何かしらね……「恋のめんつゆスパ(ぬらぬら入り)」なんていかがかしら? -- クロエ (2007-06-15 23 57 22) ちょ…なんでおれがめんつゆスパに入らねばならんのだ!! -- ぬらぬら (2007-06-16 22 33 14) そうだよ!入れたらもう売り物にならないじゃないか! -- 木登り (2007-06-17 20 51 45) 歌ですから関係無いのでは? -- クロエ (2007-06-18 23 26 08) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/arinsu/pages/6.html
温泉が発掘されてから数日後の夜。あざみとしきみは、二人で温泉に来ていた。 ――数時間前。 「私の情報によれば、今夜は満月らしいよ」 あざみはいつものように、まるでスクープ性のない情報を得意げに披露していた。 新聞やニュースを見れば誰にでも、しかも随分と前から知り得たことを、 号外にしてばら撒きかねない程の最新情報だと言わんばかりに、自慢顔でクラスメートに語っている。 「何を今更」 あざみの隣で夕食を摂っていたしきみが、いつもの硬い表情で無愛想に答える。 既に日は沈み、とっくに月は輝きを放っていた。いくらあざみとは言え、何故いきなり、 見れば分かるようなことを言い出したのか。不思議に思ったしきみは、あざみに視線を向ける。 「いやー、だってさー、温泉に浸かりながら桜と満月を眺めたら、綺麗だろうなーって思ってさ」 少女のように瞳を輝かせながら、乙女チックなことをぬかすあざみ。 「そうね……。なら、行ってみる?」 あざみがこのような話題を振ってきた訳を理解したしきみは、あざみの望む返事をしてやる。 「ホントに?! じゃあ、ご飯食べた後、一緒に行こっか!」 ―― 「うっはぁ、綺麗な満月ー……」 温泉に浸かり、夜空を見上げながら、感嘆の声を漏らすあざみ。 「確かに、綺麗ね……」 満月なんて見慣れたもの。でも温泉に浸かり、桜越しに見える月は、決して見飽きることはない。 「ひまわり達も来ればよかったのにねー」 月を見上げるしきみの顔を横目で見ながら、あざみが呟く。 夕食後、ひまわり、ゆすら、ヒメジの3人にも声を掛けたが、 それぞれに用事があるという理由で断られたのだ。 「夕食も別だったし、あの子達はあの子達で忙しいんでしょう」 表情はいつも通りだが、その声色はどこか寂しそうなしきみ。 「まぁでも、たまには二人で静かにってのも悪くないわよね」 言って、再び月を見上げるあざみ。 「そうね……」 しきみが視線を上げたままで答える。 とは言ったものの、元々お喋り好きのあざみには、 いつまでも無言で満月と夜桜を愉しむことなど出来るはずもなく、 「ナナフシ君も今頃、この月をみてるのかなー……っとか思ってる?」 雰囲気を盛り上げようと、にやけた表情でしきみをからかう。 「五月蝿いっ……!」 のぼせているせいもあるのだろうが、顔を真っ赤にして照れるしきみ。 「ほーんと、しきみってば、ナナフシ君のこととなると弱いねー」 あざみがころころと笑いながら、照れるしきみを見やる。 「……あ……」 しきみは照れを隠すためにそっぽを向いており、あざみの視界に飛び込んできたのは、 蒸気し汗に濡れる、ピンクがかった白いうなじであった。 ドクリっ!と、一瞬心音が跳ね上がり、鼓動が速くなるのがわかる。 (お、女の肌なんて、いつも見慣れてるハズなのに……。おかしいな……。 そ、そうだ! のぼせちゃったんだ。うんうん。) 少し身体の熱を冷ますために、立ち上がろうとするあざみ。 しかし、身体のある部分が変化していることに気付き、再度、勢いよく肩まで湯に浸かる。 (や、やっばぁー! こ、こんなんじゃ、男だってバレちゃうじゃん!) さすが忍者というべきか、今まで着替えや入浴時は何とか誤魔化していたのだが、 下半身が膨張することは想定していなかったのか、今は自らの性別を猛烈にアピールしてしまっている。 「……?どうかした?」 あざみの異変に気付いたしきみが、不思議そうに尋ねる。 「えっ?い、いやぁあ、な、なんでもないよっ、なんでも……!あ、あははははぁ……」 必死に誤魔化そうとするが、全く誤魔化しきれておらず、むしろしきみに不信感を抱かせる。 「何を隠しているの?」 メガネを外しているため鋭くなっている目つきを、より鋭利なものにして問いただす。 「だ、だからぁ、何でもないってば。しきみの気のせいだって」 言いつつも、下半身の一点を押さえ続けているあざみ。 「そこね……!」 照準を絞り、間髪を入れず手を伸ばすしきみ。 「あ、ちょ、まっ……!」 あざみはしきみの突然の行動に反応しきれず、しきみの指が、あざみが隠していたモノに触れる。 「……? なにかしら?」 しきみはタオル越しに、硬く、それでいて軟らかい奇妙な表面を持つ熱い棒状のモノを優しく握り、 文字通りの手探りで、ソレが何であるかを確かめる。 「し、しきみッ……! だ、ダメっ……、は、放しテッ……!」 今まで自分以外、誰にも触られたことのない部分を、よりにもよって、 一番敏感になっている時に初めて他人にまさぐられ、その事が快感となり、より血液が凝縮する。 「さっきより硬く、大きくなった……?」 先程より硬化し、反りが増したソレを強く握り、手元へと引き寄せるように引っ張る。 「だ、ダメだからっ!は、早くッ!早く離してえッ!」 「いったい何が駄目だと言うの? 貴方のほうこそ放しなさい」 「だ、だから、そ、ソレ……! わ、わたしのっ……! あ、アッ! ダ、めぇ、も、もォッ……!」 ―― 数回。しきみの手に収まっているソレが大きく痙攣した。 同時に、あざみがきつく瞼を閉じ、唇をかみ締め、何かに耐えるような表情を見せる。 「な、なに?」 訳が分からず驚きの声を上げるしきみ。 「はぁ……はぁ……はぁ……」 紅潮した顔で、涙目になっているあざみが荒く呼吸している。 「い、いったい、どうし……?」 尋ねようとする途中で、湯船に何やら漂っているのが目に入る。 (湯の花? でも、以前はこんなの……) そこでしきみははたと気付く、先程まで手中にあった硬い棒状のモノが、一転、 軟体生物の如くしなやかさを発揮していたのである。 「何なの、いったい……ま、ま、まさ、か……」 しきみの顔色が急激に紅く染まる。同時に触れていたモノから手を放し、反転してあざみから距離をとる。 「な、なな、何故もっと早く言わなかったのっ!」 珍しく声を荒げるしきみ。 「私はやめてって言ったと思うけど……? しきみが勝手に……」 呼吸を整えたあざみが、少し落ち込み加減で反論する。 「そ、そんなこと……。分かるわけないじゃないっ……」 優秀で知識も豊富なしきみだが、こと性や恋愛にはとことん疎く、 頭の片隅にある記憶を引っ張り出し、ようやく事を(済んだ後だけど)把握することが出来たのである。 「でも……、これでバレちゃったんだね……。私が男だって……」 ―― 「いや、バレてたから……」 「Σ(゚д゚|||)」
https://w.atwiki.jp/onjyakyujoshi3/pages/184.html
【名前】乾 波奈(いぬい はな) 【容姿】茶髪のクセッ毛。167cm。 【年齢】21 【所属】四国マリナーズ 【利き腕】右投左打 【守備位置】外野手、遊撃手(守れるとは言っていない) 【能力】 2014年シーズン 2016年シーズン 守備能力変更 【背番号】32 【球歴】明徳義塾⇒四国 【性格】【その他】 高知のスピードスターとして知られる、甲子園のスター。 折り紙付きの俊足に選球眼、巧打力を備えた一見好打者だが、 打ち気に逸るあまり凡退を重ね2軍でくすぶり、「駄犬」とあざ笑われたことも。 2軍での「初球攻撃禁止令」のもと研鑽を重ね、4年目にして初の1軍へ。 けっこういいところのお嬢様であるが、勝負に逸るせっかちさんである。
https://w.atwiki.jp/akatonbowiki/pages/3132.html
このページはこちらに移転しました 笑う意味さえ 作詞/41スレ651 忘れていた思い出の写真 馬鹿笑いしてる二人 今はもうセピア色に褪せてくね 紅茶色の二人 出会った時は全てがクリアで 透き通った世界が、永遠と 続くよ、どこまでも… そう、信じていたのに 隣に眠る君は温もりすら残さない 幻の影に、声に、微笑に、涙に、 とりつかれた、ただの蝋人形 笑う意味さえ、忘れていたのに... 覚えてた君と出逢った場所 今は隣には無い影 一つだけ伸びてゆく、冬の夕日が笑いかけてた 君の居ない世界は全てが滲んでて 黒い空が涙流すよ まるで、僕の心のようで いつか・・・また・・・ 街中で君の香水の香り ふいに振り向いた でもそこには君は居ない 涙を流す蝋人形 (このページは旧wikiから転載されました)