約 106,079 件
https://w.atwiki.jp/sin-changerowa/pages/82.html
森の中、一人の男が引きつった表情でタブレットを操作している。 「たしかに、ヒーローに対する憧れはあったけどさ……。 こんな状況でなっても、嬉しくないっての!」 そう叫ぶ精神の名前は、内海将。 無力な一般人なれど、ヒーローとなった友を最後まで隣で見守り続けた少年だ。 そして彼が宿る肉体の名は、内海成彰。 別に親戚関係ではないが、同じ姓である。 ついでに眼鏡をかけているのも同じだし、顔つきもそっくりというほどではないがまあまあ似ている。 意図的に共通点の多い人物をあてがったのだろう、と内海は考えていた。 それはさておき、肉体の方の内海は「仮面ライダー」というヒーローに変身していたらしい。 しかしタブレットに記載されたプロフィールを読む限り、その人生はとてもヒーローとは思えない。 ダークヒーロー……というか、もはやヴィランである。 しかしその行動も全ては、侵略者の懐に入り込み打倒の道を探るためだったらしい。 彼もまた表面上はともかく、心はヒーローだったのだろう。 内海はそう結論づけた。 「で、変身アイテムがこれか……」 タブレットをデイパックに戻した内海は、代わりに別のものを取り出す。 仮面ライダーマッドローグへの変身アイテム、エボルドライバーである。 「こんな状況で不謹慎だとは思うが……。 正直、わくわく感はある! あるけど……。 なんか危険そうなんだよなあ、これ!」 まず侵略者の側が作ったアイテムという時点で、内海にとってはうさんくさい。 しかも説明書きには、「生身の人間が使用する場合、肉体に負担がかかる」とまで書いてある。 それじゃとりあえず変身してみようか、などと軽い気分では使えそうにない代物だ。 ドライバーを手にしたまま、悩み続ける内海。 だが、その思考は強制的に中断させられる。 響いたのは、一発の発砲音。 「ひいっ!」 反射的に、内海は身を縮める。 彼は気づいていなかったが、近くの木の幹に銃弾がめり込んでいた。 「ふむ、体が変わっても、銃の腕前は変わらないか……。 まあ体の方に銃の心得がないのなら、当たり前か」 そんな言葉を漏らしながら、一人の男が歩いてくる。 その男の姿は、まさに闇そのものだった。 顔は黒い仮面と黒いヘルメットで、完全に覆い隠されている。 体に装着したプロテクターの色も黒。 全身タイツなのか地肌なのか、プロテクターに覆われていない部分も黒だ。 (なんだよ、この人……! 黒すぎて、目以外ろくに見えねえ!) 男の異様な姿に内海がたじろいでいる間に、男は内海へと歩み寄っていく。 「あの、つかぬ事を伺いしますが……。 やはり殺し合いに乗るおつもりで?」 「もちろんだ」 動揺のあまり必要以上に丁寧になった内海の問いに、男は短く答えた。 「いやいや、やめた方がいいですって! なんでも願いを叶えるとか、眉唾じゃないっすか!」 「ああ、私は別にいいんだ。願いを叶えるというのが嘘でもね。 何せ私の目的は、闘争そのものなのだから」 突如仮面の口部分が開き、凶悪な笑みを浮かべる。 その瞬間、内海は確信した。 この男は、怪獣と同じだ。 対話など不可能な、暴力で他者を蹂躙するだけの存在。 放置していれば、どれだけの人々に害をなすかわからない。 (迷ってる場合じゃねえ!) 内海はすぐさま、覚悟を決めた。 ドライバーを腰に装着し、2本のボトルをセットする。 『コウモリ! 発動機! エボルマッチ! Are you ready!?』 「準備なんかできてねえよ! でもやるしかねえだろ!」 叫びながら、内海は両腕を十字に交差させる。 親友が戦いに向かう時の、「アクセス・フラッシュ」のように。 「変身!」 『バットエンジン! ヌゥハハハハハハ……!』 その決意をあざ笑うかのような音声と共に、内海の姿が変化していく。 黒い素体を覆う、白い鎧。輝く青い瞳。 仮面ライダーマッドローグの姿が、そこにあった。 「ほほう、これは未知の技術だな……。 面白い!」 男は笑みを浮かべたまま、内海に飛びかかる。 その手にはいつの間にか銃に代わり、金属の爪が装備されている。 「ふん!」 気合の叫びと共に、男は爪を振り下ろす。 その攻撃は内海に直撃し彼をよろめかせるが、マッドローグの装甲に傷をつけるには至らない。 「こんにゃろう!」 今度は、内海が拳を振るう。 素人丸出しのパンチは相手の腕に防御され、有効打とはならない。 「ふむ……」 男は追撃をしかけるでもなく、一歩下がって何やら考え込む。 「おい、なんのつもりだ!」 「いや、何。つい気がはやって、こうしてしかけてしまったが……。 準備不足だったと思ってね」 「はぁ?」 男の発言に、内海は困惑を隠せなかった。 「ルール説明でも言っていたではないか。開始から一時間は、準備期間だと。 私も君も、まだこの体に慣れていない。 慣れてから戦えば……もっと素晴らしい戦いができる!」 「ふざけるなあ!」 男に殴りかかる内海。しかし男は跳躍し、その拳を回避する。 「では、また会おう!」 そう言い残し、男は内海に背を向けて逃げ出した。 「逃がすか!」 当然、内海はその後を追う。 だがただでさえ暗い、夜の森の中。 全身が黒い男を見失わずにいるのは、至難の業だ。 結果、内海は程なくして男を見失ってしまった。 「ちくしょう……」 悔しさを噛みしめ、内海はうなだれる。 「このままじゃダメだ……。 俺も……ヒーローにならないと……!」 ◆ ◆ ◆ 「いやあ、思っていた以上に楽しくなりそうだ」 内海を振り切った男は、笑顔のままで呟く。 「いかなる戦争が、私を待っているのか……。 楽しみで仕方ないよ! さあ、参加者諸君! 思う存分殺し合おうじゃないか!」 高ぶる思いを抑えきれず、何よりも戦争を愛する男は叫んだ。 【内海将@SSSS.GRIDMAN】 [身体]:内海成彰@仮面ライダービルド [状態]:健康 [装備]:エボルドライバー(複製品) バットボトル エンジンボトル@仮面ライダービルド [道具]:基本支給品、ランダム支給品0〜2 [思考・状況]基本方針:一人でも多くの人を守る。 1:黒い男と決着をつける。 [備考] ※参戦時期は「グリッドマンユニバース」終了後。 ※内海成彰の肉体は新世界のものです。そのため、サイボーグ化はされていません。 【少佐@HELLSING】 [身体]:ウォーズマン@キン肉マン [状態]:健康 [装備]:鉄の爪@ドラゴンクエストシリーズ [道具]:基本支給品、ニューナンブ(残弾49)@現実、ランダム支給品0〜1 [思考・状況]基本方針:闘争を楽しむ 1:いずれ鎧の青年と決着をつける。 [備考] ※参戦時期はロンドン襲撃以前 【エボルドライバー(複製品) バットボトル エンジンボトル@仮面ライダービルド】 仮面ライダーマッドローグの変身アイテム。 セットでひとつの支給品扱い。 エボルドライバーは本来エボルト専用の変身ベルトだが、複製品は地球人用にデチューンされている。 それでも、肉体にかかる負担は大きい。 【鉄の爪@ドラゴンクエストシリーズ】 鉄の手甲に、爪状の刃物が取り付けられた武器。 ドラクエにおいて、武闘家の象徴的な武器である。 47 赤く燃える白百合、天国を撃ち抜く最後の弾丸 投下順に読む 49 かわいそうなまおう GANE START 内海将 本編02 ウルトラマニアック GANE START 少佐 本編30 森は人を迷わせる
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1735.html
前ページ次ページ使い魔定光 無限に広がるようにも感じられる宇宙。数え切れないほどの星々が燦然と輝く 広大な大河を横切りながら、二つの光がすさまじい速さで飛び交っている。 一方は追う側、もう一方は追われる側と推測できるそれは、さながらカーチェイスのようであった。 『まいったな…本当に軌道上に惑星があるじゃないか!一体誰が軌道計算を?』 見ると、二つの光の行く手には、青々と輝く美しい惑星が確認できた。 先行していた光はしめた、といった感じで何の迷いも感じられない軌道を描きながら、 その惑星に向きをとった。 『…やれやれ…「流刑体(ルケイタイ)」が幾つあの惑星に衝突すると思って…違う!二千万だ。二千万!!』 やや、いらだちながら母星へ判断を仰ぐ後方の光。「彼」にとってあの惑星に「流刑体」が襲来することは、避けたい事態であるようだ。 『増援はいつ来る?…………』 二つの光は、あの惑星の衛星と思わしき二つの星を通過した、先行している光はなおも加速している。 総体距離がどんどん離されていく。 『…私のバッテリーが切れるまでには来ていただきたいものだがね』 精密機械と一部の生体部品で構成されている「彼」にも、皮肉を言う個性はあった。 毒づきながらも、周囲にフィールドを形成し、大気圏突入の体勢に入るところが、機械的な冷静さとでも言うべきか。 前方の光はすでに大気圏を突破したようだった。 『間もなく「流刑体・撃針」が地表に到達だ…しばらく追尾機会を見て「回収」する。以上だ!』 地表が近い。 「「宇宙」の果てのどこかにいる、私の下僕よ! 強く、美しく、そして生命力に溢れた使い魔よ! 私は心より求め、訴えるわ。我が導きに応えなさ――――」 猛烈な爆音とともに、彼女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールの詠唱はかき消された。 もくもくと上がる爆発による煙。 彼女が魔法に失敗したときの、お決まりの光景であった。 「また失敗か」 「しょうがないさ、なんたってゼロのルイズだ」 おもしろ半分に見守っていた人々は、期待通りのその展開におもわずそうつぶやいた。 サモン・サーヴァント。ここトリステイン魔法学院では1年から2年に進級するにあたって、この使い魔召喚の儀を執り行うのが通例となっていた。 進級に、いやひいてはメイジとしての資質をも判断する重要なイベントである。 使い魔を見ればメイジの力がわかる、と言われているほどに。 つまり、失敗することは許されないのだ。 だからこそ、ルイズも真剣だった。 彼女は目を凝らし、爆煙の中を覗いた。と、そこにはなにやら動く影が二つ。 「み、見なさい!なにかいるわ!成功したのよ!」 「!? ミス・ヴァリエール!そこを離れなさい!」 召喚の儀に立ち会っていた、教師コルベールは普段では絶対に出さない怒声を上げた。 それは、周囲に居た他の生徒もビクっと身体を震わせたほどであった。 当事者のルイズはそれ以上だ。身体が固まってしまい、その場を離れるタイミングを逸してしまった。 次の瞬間、もうもうと上がる煙から、とてつもない勢いでなにかが宙にばら撒かれた ばら撒くというよりも、撃ちだされた、という表現の方が的確かもしれない。 ここハルケギニアには存在しないが、マシンガンの銃撃といえばいいのだろうか。 銃撃がやむと、煙の中からノシノシと足音を立てながら、それは現れた。 [我が名は撃針…万物すべてに平等の死を…そのために我は生を受けた] ギギギィ、と牙をこすらせうなる、煙幕から姿をさらしたそれは、背は子供ほどだが頭部が異様に大きく、右腕と思しき部分は大木の枝のような形状をしており、先端の穴からは先ほど弾を撃ちだした為か、小さな煙が上がっている。 まさに化け物。そう形容するしかなく。少なくとも使い魔にしていいような、そんな こちらロジックが通用しないであろうと言うことは、そこにいた全員が五感で感じ取っていた。 「タバサ!」 「わかっている」 すばやく撃針に杖を向ける少女が二人、それにつられてか何人かの生徒も杖を向ける。 先頭に立つのはコルベールだ。 「ミス・ヴァリエール。動いてはいけませんよ!」 すっかり腰を抜かしているルイズにとって、その言葉は意味を成さなかった。 撃針に対する恐怖もそうだが、その後ろで微動だにしない黒い影も、彼女の恐怖を煽るには充分であった。 [どうやらここは予定していた惑星とは違うようだが…場所などこの際関係ない] 撃針はあたりを見回すと、ゆっくりと歩を進めた。が、それと同時にそれを阻むがごとく 強烈な炎が行く手を阻む。 「ミス・タバサ!迂闊だ!」 コルベールの怒声もむなしく、撃針には全く効果がなかったようだった。 […なかなか面白い手を使う。好戦的なのは結構だが…] そういうや否や撃針は右腕を上げ、目標をタバサに向けた。 生徒や、コルベールでさえ撃針の存在に恐怖し動けない。 [身の程を知ることだ…] 刹那、撃針の生体武装が火を噴いた。激しく撒き散らされる弾丸 が、そのすべては宙を切り裂いていた。 [キサマ…!] 「ミス・ヴァリエール!」 『シークエンス正常作動。全回路オールグリーン』 「さっきからギィギィうるさいのよあんたは!私に呼び出されたんならおとなしく私の言うことを――――!」 撃針の右腕の標準は、ルイズの両手によって天へとその方向を変えられていた。 だが、怒りに震える撃針はその身体を大きく揺らせ、がっしりとつかまれた右腕を大きく振り上げた。 「ルイズ!」 [死ね…!] 撃針の腕が一気に振り下ろされる! 「っ!-――あ、あれ?」 撃針の腕は振り下ろされることはなかった。 なぜなら、撃針の右腕は「彼」によって受け止められていたからだ。 『まったく。落着のショック程度で機能が一時停止するとは。さすが旧型のユマノイドデバイスだけはあるな…』 撃針の腕を受け止めたのは、ずんぐりとした撃針とは対照的な細身の人間であった。 一応、頭に兜のようなものをかぶってはいるようだが… [随行体…!] 撃針は「彼」を憎憎しげに見つめる けっして、浅からぬ縁のようだ。 『撃針。君には数々の星より被害の報告が寄せられている。君は「回収」対象の流刑体だ!』 [おもしろい!データ生命ごときに我を止められるものか!] 彼をあざ笑うかのごとく、撃針は背中の補助ロケットと跳躍力で高く飛び上がる。 見かけによらず身軽なのが撃針の強さであった。 『おのれ…! そこの現住民。周りの仲間達にここから離れるように言ってくれ 流刑体との戦闘は危険が伴う!』 その場で一番近くにいたルイズに「彼」は話しかける。 「あ、あ、ああんた!な、なにもの…!」 『錯乱しているのか… 無理もない。もう一度だけ言う。ここは危険だ。今すぐ避難するんだ!』 天空から猛スピードで落下してくる撃針。その光景を呆然と見守るコルベール達 『時間がない。私の言葉を理解し、実行できるか?」 背を向けたままだった「彼」が、業を煮やしたのか、今度はルイズの目を見据えて言った。 『回答の入力を!』 前ページ次ページ使い魔定光
https://w.atwiki.jp/p_ss/pages/2273.html
無邪気で可愛い彼女に憧れて心から羨望した 無愛想で綺麗な彼女に恋して心から絶望した それはあたしのしらない世界にいたふたりが教えてくれたこと。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 広島の高校を卒業して、都会の大学に入学して早三年。 最初は都会にビビってたし、右も左もわからなかったけど、三年も住んでると少しは余裕が出てきた。 広島弁もすこし抜けてきたかな。 大学の友達も意外と地方都市出身の子がいっぱいて、親近感を持ってそれなりにやっていってる。 まぁ、友達といっても構内でツルるくらいの知り合いに毛が生えた程度の関係。 憧れだったサークルにも参加したし。実際はサークルという呼び名の飲み会だったけど。 それなりに大学生活をエンジョイしたつもりだった。 でもきっと彼女ほどじゃないけど。 ほら、今日も友達に囲まれて楽しそう。 彼女の周りには必ず人が集まってくる。 いつも楽しそうな笑い声が聞こえる。 きっと彼女には人を惹きつける何かを持っているんだろう。 ゆかも本当はあっち側の人間になりたいよ。 でも基本人見知りだし、ネガティブだし、無理だよな。 彼女と友達とか無理だよね。 「はぁ・・・・」 大きなため息をつく。 空を見上げるとびっくりするくらい青い。ゆかをあざ笑うかのような青さだ。 「あー・・・バイト行かなきゃ」 ボソっと空に向かって呟いてバイト先のコーヒーショップへ向かった。 「・・・おはようございます」 コーヒーショップの従業員入り口から恐る恐る入る。 実はこのバイト今日でまだ三日目。 まだ仕事とスタッフの人にに慣れてなくて、かなりビビってる。 「・・・はよっす」 かなり感じ悪い挨拶をしてきたのは、たしかバイトの大学生の鈴木さん?だったっけ。 あー、ここ禁煙なのに、煙草吸わないでよ。洋服と制服に臭いがついちゃうよ。ゆか、煙嫌いなんだよな。 でも、止めて下さいなんて怖くて言えないよ〜。 「樫野さん、今日で三日目だよね。もうだいたい仕事の流れわかったでしょ?」 そう冷たく言い放ったのは、歳はアラフォーのいかにも性格の悪さがにじみ出てる女店長。 「は、はい」と、一応返事はしたものの、テンパっちゃって、何していいかわからないよ。 こんな混んでる時間帯にまだ三日目の新人をシフト入れるなよ。 「ほら!何してるの。早く、次のお客さんのオーダー取って!!」 性悪の女店長に半分怒られながら、ゆかは言われた通りにした。 「いらっしゃいませ」 次のお客さんは、憧れの彼女だった。珍しくひとりだ。 やばい、ちょっと緊張しちゃう。どうしよどうしよ。ちゃんと出来るかな。 「えっとー、アイスロイヤルミルクティーのMで」 「はい。310円に、なります」 彼女は、510円を出した。ゆかは200円のお釣りを渡す。彼女の財布はブランド物で中は綺麗に整頓されていたのが見えた。 そして注文したアイスロイヤルミルクティーも渡そうとした時、緊張して手元が狂ってそれをこぼしてしまった。 「きゃあ!!」 やっばい!!彼女のワンピースの裾に少しだけどかかっちゃった。 「す、すいません!!」 ゆかはは急いでタオルを持ってきて、ワンピースの汚れをふき取る。 「すいません!すいません!!」 ひたすらペコペコ頭を下げて謝る。 絶対キレられるって思って恐る恐る彼女の顔を見ると「これくらい大丈夫ですよ〜」って、笑顔で答えてくれた。 ミルクティーをワンピースにかけちゃったのに、全然怒ってない!? えー、普通怒るでしょ?怒鳴るでしょ?最低でも、嫌な顔はするでしょ? 彼女はなんでこんな大人な対応なの? 単純にすごい・・・。 ミルクティーこぼしたのが、彼女でよかった。 ゆかはこの時、なんで彼女の周りにはいつも人がいるのかが、わかった気がした。 ゆかがしでかしたのを店長が気付いて奥から出てきた。 二人でひさすら謝った。 最後まで彼女は「平気ですよー」って、笑顔のままだった。 そんな態度にますます憧れが強くなった。 その後は言うまでもなく、ゆかは悪女店長に延々と怒られた。 翌日、大学の構内でまた彼女を見かけた。 もう一度謝ろうと思ったけど、周りに人がいて近付きづらいよ・・・。 ひとりにならないかな。 そんなチャンスをじっと待ってると、どうやらトイレに行くみたいだ。 よし!!ゆかはは彼女の後を追ってトイレに向かった。なんかストーカーみたいで笑っちゃう。 「あのっ!!」 「え?」 彼女が個室に入る前に声を掛けた。 「えっと・・・これ」 そう言って、コーヒー無料券を出した。 「へ?」 「昨日のミルクティー・・・。それのお詫びにこれ差し上げます」 「ミルクティー?・・・あー、あの時!!」 「はい。昨日はすいませんでした」 「もう、いいですよ〜wwてか、同じ大学だったんですねw」 「はい」 「何年生ですか?」 「三年です」 「えー同じじゃけぇ。知らんかったw」 彼女はゆかと同じ学年って知ると、とたんに広島弁で話しかけてきてくれた。 それだけでもちょっとだけ彼女との距離が縮まった気がして嬉しかった。 「えっと、あっ、あたし西脇綾香。みんなからあ〜ちゃんって呼ばれてるから、そう呼んでw」 あ〜ちゃんは自分の事を指さしニコニコ自己紹介してくれた。 「あっ、樫野有香です。友達にはかしゆかとか、下の名前で呼ばれてマス」 「ゆかちゃんか〜。よろしくね。てか、敬語止めようよw同い年なんだし」 あ〜ちゃんにミルクティーをかけてしまった縁で、憧れのあ〜ちゃんと友達になれた。 世の中不思議な縁もあるもんだ。 あ〜ちゃんと友達になれたおかげで、ますます大学生活が楽しくなった。 嫌なコーヒーショップのバイトも我慢できた。 あ〜ちゃんと一緒にいると笑顔が増えた。 友達といてこんなにも楽しいと思ったのは初めてだった。 あ〜ちゃんは他の友達には言わない話もゆかにだけは話してくれた。 それがすごく嬉しかった。 だってそう言うのって、親友みたいじゃん。 「あ〜ちゃんって、彼氏いないん?」 あ〜ちゃんと同郷ってわかって、薄れてきた広島弁がまた出てきた。 同郷ってだけでより一層あ〜ちゃんに親近感を持ったし、ゆかだけは特別って感じた。 「えー、いないよ。そう言うゆかちゃんはどうなん?」 「ゆかもいないよ〜。あ〜ちゃんモテるのになんでいないん?あ〜ちゃんなら選び放題じゃろ?」 「そんなん知らんけぇwてか、あ〜ちゃんモテてないよぉ」 あー、恋バナ楽しい。やっぱ、女の子同士の話題と言ったら恋バナでしょ。 あ〜ちゃんと恋バナ出来るなんて思ってなかったよ。キャー、嬉しい。嬉しい。 あ〜ちゃんは彼氏はいないって言ったけど、ゆかが思うにそれは隠してる。 だって、たまに携帯で誰かと喋ってるのを見るけど、絶対あれは彼氏だ。 それに右手の薬指にしている指輪はペアリングでしょ。 あ〜ちゃんの趣味にしてはゴツすぎる指輪だもん。絶対それ彼氏の趣味でしょ。 なんでゆかに言ってくれないのかな。 ちょっと寂しい。 そのうち、紹介してくれるかな? あ〜ちゃんの彼氏なら、めっちゃカッコよくて優しい人なんだろうな。 いいな。ゆかもそういう彼氏欲しいな。
https://w.atwiki.jp/houseofhero/pages/3152.html
第八章-第三幕- 時を越え、刻まれる夢 第八章-第二幕- 第九章-第一幕- 勇者軍主力部隊はパープルナイト、イエローナイト、シアンナイト、 そしてレッドナイトの四名という戦力の大半以上を撃破し、 行動不能に陥れる事に成功した。だがそれでもまだ三名が残っており、 未だに予断を許さない状況のままなのは間違いなかった。 ブルーナイトは、直接ロバートの元に迫り来る。 「このストレンジャーソードの切れ味を試させてもらう!」 「デッドコピーが吠えるんじゃあねぇ!」 ブルーナイトの剣撃がロバートをつけ狙う。 「風圧斬!」 「風圧斬!」 まったく同じ技のぶつかり合いだ。 だが、マリーに貸してもらった剣を持ってしても スペックに違いがありすぎた。剣は叩き割られ、 一撃を凌ぐだけで終わってしまった。 「同じ技、同じ体術を使いこなしていても、 武器の性能ばかりは如何ともしがたいようだな!」 「ほざきやがれ! その剣の真の意味も知らない愚物が!」 「剣は剣だ! それ以外に何の意味があろうか!」 勢いに乗って斬りかかってくるブルーナイト。 死ぬ気でかわすが、それも限界がある。 あんな剣で叩き斬られたらまず助からない。 大きく距離を取って、銃撃で凌いでみせる。 アウトレンジからの一方的な射撃ならこちらのペースだ。 ブルーナイトも攻めあぐねて回避行動に移る。 「ざまぁ見ろや!」 「やる……流石はリーダーの才覚を持つだけはある」 「ほざけ!」 「ならば、この技の出番だ! 火よ水よ、氷よ雷よ、 この剣に纏わり、力を解放するがいい! 封神封魔流・攻の秘剣! 四大精霊元素爆裂剣!!」 ばごん! 大きな爆発が起きたが、本来想定された威力ではない。 「へっ、浅知恵が!!」 その威力に怯みもせず、ロバートが攻めかかってくる。 「馬鹿な! 四つの精霊元素を組み合わせたはずだ!?」 大きく怯み、ブルーナイトは後退する。 「地水火風の下級属性四つ、もしくは光闇雷氷の上級属性四つ。 それらは相関してこの世界を成立させているモンだ! そんな基礎知識も知らねぇ奴が封神封魔流を会得しただと! 俺の……いや、俺ン家の名に泥を塗るのも大概にしやがれぁ!」 ごがん!! ロバートの剛拳がブルーナイトを打ち据える。 「それと、そのストレンジャーソードは進化を求める剣だ! それを知らない馬鹿野郎にその剣はレプリカでも勿体無ぇよ!」 ずだんずだんずだんずだん!! 零距離から顔面に向けて散弾銃を全弾叩き込む。 「が……!」 それきり、ブルーナイトは動かなくなった。 「よく見ればこいつら全部メインメンバーの家宝の色と同じ色だ…… そうか、その時点で俺は気に入らなかったんだろうな。 へっ、偽者の上に馬鹿なくせに気分が悪ぃったらねぇぜ」 と、その場に唾を吐き捨てるロバートだった。 エリックはというと、グリーンナイトとスピード勝負をしていた。 屋内戦なので、グリーンナイトも自由に飛ぶには至らず、 時としてエリックに追いつかれる場面も多々あった。 「ちいっ、小蝿の分際で!」 「どうかな、小蝿の腕力だと甘く見ると怪我をするぞ!」 「ふっ、それはどうかな!? ヒーラー風情が!」 グリーンナイトは周囲に鉄線を張り巡らせ、 動揺したり、絡まったりしたところを叩き落とす作戦に出た。 だが、グリーンナイトは見切れていなかった。 鍛えに鍛え、極限まで攻撃的に成長した彼の筋力と、 それに伴う反射神経、動体視力、それら全てのスペックを。 ニヤリ、とエリックは笑う。 「何がおかしい!?」 「甘いからだ、お前が!」 エリックはどこにリールが張り巡らされたかをすべて認識し、 綱渡りのような要領で張られたリールに飛び乗る。 そしてそのままそれを足場として次々と飛び移る。 「策士ですらない者が策に溺れて相手をいたぶるなど、 愚か者の極地に等しいことだ……もらったぞ、ニノンの翼!」 後ろに組み付いて、強引にニノンの翼を毟り取る。 「あがぁぁぁぁぁぁッ!?」 そのまま蹴り落とされて、墜落するグリーンナイト。 エリックはそのままニノンの翼を装着し、八枚翼に戻る。 今また、時を越えて託された夢を象る翼が、彼の、 否、ルスト家のもとに戻ってきたのだ。 「許さねぇぞ、貴様ぁああ!」 機械仕掛けの翼を展開し、再び飛び上がるグリーンナイト。 「ウィングスパイカー!」 機械仕掛けの翼からリールの付いたスパイクを射出された。 だが、ニノンの翼を完全な状態で使いこなすエリックには 当たらないどころか、かすりさえしない。 「ところで世間にはこういう便利な代物があってだね!」 魔道書だ。エリックは躊躇無く詠唱する。 「プラズマランチャー!」 スパイクとリールを通して、見事に通電させる。 TPOをわきまえた見事な戦術だった。 「あが……ッ!」 機械仕掛けの翼も破壊され、今度こそ完全に墜落する。 グリーンナイトもまた、動かなくなった。 「冥界に存在せし『勇者の館』にて見ておられるか、 先人達よ!? かの翼、見事我が手に奪還せり!」 杖を掲げ、声高らかに宣言するエリックだった。 アンバーナイトは、エナ、レオナ、クロカゲ、カイトの四名を相手に 互角以上に競り合っていた。やはりスペックで劣っていても 特殊技能の塊とも呼べる、アンバーナイトは強敵だ。 伊達や酔狂でリーダーを名乗っているわけではないのだろう。 「マルチプルブリンガーの性能に声も出んか……無理も無い」 笑うように身体を揺するアンバーナイト。 「貴様……殺す……!!」 クロカゲが、普段は隠された殺意を剥き出しにして攻めるも、 ハイパーガードと呼ばれるアーマーナイト固有の兵種スキルで 弾き返してみせるアンバーナイト。 前回の戦いで分かっている通り、ナノ・マシンも通用しない。 不意を打つ、そのつもりでカイトは指示を出す。 「エナ君はソーサーでクロカゲ君の支援だ。 クロカゲ君もそのまま攻撃を続けて構わない。 レオナ君は……そうだな」 そっ、とレオナに耳打ちするカイト。 「分かったッス!」 レオナはカイトの護衛に回る。カイトは自分からは動かない。 エナとクロカゲによる合同での攻撃がアンバーナイトに当たるが、 アンバーナイトは素早く動き、回避と防御を巧みに使い分ける。 「詰めが甘いようだな」 アンバーナイトは射撃に切り替え、弓を放ってくるも、 レオナの懸命のガードで、カイトへの直撃は避けられている。 一旦攻撃がやむ、そのタイミングでカイトは叫ぶ。 「今だ、レオナ君!」 「はいッス! ナノ・マシン展開!」 「効かぬわ!」 アンバーナイトはまたあざ笑うが、ナノ・マシンのターゲットは アンバーナイトではなく、エナだった。 「はりゃりゃりゃりゃ!?」 視覚と聴覚が一時的におかしくなったエナのソーサーは てんでんばらばらに動き、まったく軌道の予測が出来なくなった。 「なんだ、何事だ!?」 予測していない事態に慌てるアンバーナイト。 「ほら、動揺する、詰めが甘いのはどちらかな……スタッブだ」 「死ね……!」 クロカゲが斬りかかる。確実に急所を捉えた。 「とどめッスよ!」 レオナも二本の槍でアンバーナイトを切り裂いた。 「がっ……!」 それでも寸前でハイパーガードの構えを取り、 かろうじて一撃での撃破だけは免れたアンバーナイト。 「自らの力に溺れているのはどちらか、思い知ったかい?」 腹黒く微笑むカイトを、アンバーナイトはただ睨みつけていた。 「全員、起きろぉーッ!」 アンバーナイトが叫ぶと、白虹騎士団の全員が起き上がる。 「野郎、まだ生きてたのか!」 ロバートが追撃しようとするが、大きく距離を取られた。 「悔しいが奴等の実力は本物だ……切り札を切るぞ!」 「ちっ……手前ェに従うのは気に入らねぇが、しょうがねぇ」 パープルナイトが文句を言うが、大人しく従う。 「煙幕を張れ!」 アンバーナイトの指示で、煙幕を張るレッドナイト。 そして一気に戦艦の奥へと退避してしまった。 「追うぞ!」 意気上がるエリックの指示に従い、総員突撃する。 いよいよ、シドミード国王との決戦が近付きつつあった。 <第九章-第一幕-へ続く>
https://w.atwiki.jp/dangeurarace/pages/90.html
4位『SSその1』 その1 得票数 13 GK評 最も異色なSSがその8ならば、最も個性的なSSはこのSSその1であると私は答えます。とにかくもう冒頭からパワー全開の俺は俺の好きなようにやるぞ宣言! 全てのキャラ、プロローグを読み込んでいざ本戦SSに挑む人々の心をあざ笑うかのような開幕から終わりまでノンSTOPのアナルパッケージホールド展開!しかしこんな真似をしておきながら、その実に内容は全て15キャラクターの設定、能力、プロローグ内容を充全に取り込んだ上で練られた極めて正統派な挑み方であるのがすご過ぎる!結局全てのSSを読み終えても、このSSよりも15キャラ全てを活かした上で自分のSS内容を構成するという試練を巧みにこなしたSSは無かったのでは……?と思わされました。豊富なアイディアと散りばめられた小ネタで読者の腹筋を壊す笑撃力!(個人的には天・地・アナルというどうしようもないネーミングが好きです)TAGトーナメントという独特の舞台を用意して各キャラの見せ場と裏Raceに仕掛けられた謎の解答を全て用意した構成力!そして締め切りにゆとりをもって投稿した計画力! そう、番外的な評価ではありますが、このSSは全SS中、唯一前日以前に投稿した最速のSSでもありました。だからこそ読者に最も最初に読まれる可能性が高いSSその1の場所をゲットしたのです。その圧倒的なパワーは間違いなくTOP3を脅かす位置にいましたが、やはり個性的過ぎる内容が追い越すには一歩足りなかったか、この位置となりました。(スカーレット) 表に登場したダイスでランダムにキャラを選ぶSSも斬新でしたが、こちらのタッグマッチも目からウロコのキャラ活用法でした。やっぱり男の子は最強トーナメントが読みたいですよね!それでいざトーナメントが始まると、普通に試合をしている場面もあれば、不意打ち的に試合が終わってしまう場面もあるのがとっても面白い。自分で考えた舞台を自分で壊すというのは、並大抵のことではありません。このお方とSSで対戦するのもすごく怖いです。(tasuku) 投票コメント 肉じゃねーか!徹頭徹尾ギャグで通してしかもちゃんと面白いのはそれだけで賞賛に値します。やはり天才じゃったか。 まず笑えた!声を出して噴出したのはこれくらいだ!しかし笑わせるだけで終わらず、各キャラのプロローグを細部まで読み込み、緻密な論理で繋いで見せたのはお見事。「最終的に自キャラが勝っている」というメタ的なオチもいっそ爽やかでした。 ネタの密度は一番!ただ、トーナメントにしてしまうと争奪戦の臨場感が失われてしまうのが惜しいです。しかしそれを差し引いても余りあるネタの嵐。逮捕!逮捕!逮捕!悪童!そして伏線回収!連続逮捕のスピード感は凄まじかったです。グイグイ読んでました。 画風の確立されたカートゥーンってかんじでした!個性とキャッチーさが両立されていて、とても読みやすく楽しかったです。場面転換ごとにはさまるアイキャッチもよかった。アイキャッチっていうか、メガテン風キャラクター紹介のことですけども。テンポの良さと世界観の演出に大きく貢献していたようにおもいます。とにかくがんがん畳み掛けてくるパワーがすごかったです。めまぐるしく楽しさにあふれた作品でした! 今SSキャンペーン中でも随一の飛び道具っぷり。対魔人用手錠をかけられて次々参加者が退場していくところや明石家のトレース具合など、印象に残るシーンが次々と出現し、3万字超という長さを感じさせない作品でした。正直ついていけない部分はあったものの、このSSにこめられたものすげぇパワーはそれを打ち消すだけの破壊力があったので投票したいと思います。 うわーっ!最高!三万字がノンストップで面白い!パッケージ交換からの最悪華麗砲とか、キン肉マングレートを下敷きにしつつ最悪に最高でした!紫苑ちゃんが後ろの穴奪われてるのになんか普通に進行してるのも、作者の格の高さを思い知らされますね……。トーナメント終了後も更に複数回どんでん返しがあり、しかも全部面白い!最高でした!(港) しょっぱなの副題から既に笑いの鈍器を振り回す恐るべきギャグとコメディの応酬。それで居て『探偵役がアナルパッケージホールド』『アナルパッケージホールドの中身が入れ替わる』といった真面目なネタでも通用しそうな独創的なアイデアや、美食神・明石家をあのお笑いモンスターめいた存在として堂々と出してくるギャグの真っ向勝負、幕間ネタを拾ってニセミルキーウェイでオカマ要素を回収するなど小技もビシバシと効かせてくる辺り流石です。 最後でまさか食われた本来のメインキャラ繰り出すあたり本当自由にやりやがったなくそう。 一番感情を動かされたのはどれだっただろうと思うとこのSSでした。大爆笑。しかも相変わらずロジックも通ってるのがひどい。タッグトーナメントとかアナルパッケージホールドさんとか全面的に好き放題やりやがって。おもしろいじゃねえか。 上の方に同じような単語並んでるんだろうなあ、と思いつつ言わずにはいられない……卑怯だよ!!wwwいやいや、面白すぎるでしょうこれ。めちゃくちゃ笑いました。このような、ギャグで圧してくるSSってふつうは短めか、長い場合は多少ダレちゃったりしがちなもんですけど(偏見)、このSSはもう、3万字に渡ってずっと面白い! ひたすら腹を抱えて笑ってる!!どこがヤバかったかって書こうとしても枚挙に暇がないんですけど、個人的に一番ヤバかったのは明石家かなあ……だって、そこを拾おうとだけは思わないよ!ww そのうえでめっちゃ面白いし、脳内再生余裕な程に再現してきよるし、なんなの!wwwいやはや、とんでもないSSでした。ごちそうさまですよ本当……w SSその1:これ外出先でスマホで読んでたんですが、外で読むようなものじゃなかったですね。何度吹き出しそうになったことか……w 声を出して笑いながら読むのがベストな読み方だと感じました。それだけ面白かったです。それっぽい理屈の付け方も上手くて思わず納得してしまいました! レースを!やれよ!!ばか!!!本気でただやりたい放題してるだけのSSで、作者さんがやりたいようにやっててそれが面白いのがめっちゃズルかったです。だいたい笑いっぱなしでした。最後にいい話みたいな空気出すのは本当にふざけんなと思いました。最高です。 いやー ちょっとやりすぎの所があるにせよ ギャグでガンガン攻めていくのは楽しいですねえほかとは違うっていう良さがああるのは凄くいいですネタのねらいどころ狭いギャグもありましたがテンションで押せますねあとテンポがいいので読みやすかったです 全体感想より抜粋 その1とても楽しいSSでした!普通なら敬遠されるネタでありながら完全に昇華されていたと思います。キン肉マンがリアル連載中と言うこともあってめっちゃ刺さりました。みんながやりたいことをやってくれたとてもステキなSSでした。退場に至る天丼もめっちゃ好きでした。あと、ヤケクソ気味な作者さんの叫びにとても共感しました。 その1…なんだこれ。ちょっと未だに理解できてない部分もありますが、勢いだけでいえば過去に読んだことのあるSSその他を全部ぶっちぎってる気がします。 その1:まさかのタッグトーナメント。そして試合がまともに行われた方が少ない!展開は非常に良かったのですが、私的に組み合わせてはいけないビロウなネタが混入した事で私の脳内株暴落し投票にはいたらず。すまぬぅ。
https://w.atwiki.jp/anirowakojinn/pages/907.html
「プリムラ……ごめんな、守れなくて」 木々に囲まれ鬱蒼とした深夜の森。 草木が眠り、静寂な空気が辺りをひんやりとさせる。 その深夜の森にはあまりにもミスマッチ過ぎる異端、ブレザーを着た青年、土見稟はグスグスと泣いていた。 「俺は……何もできなった。ただ家族が無残に殺されるのを見ているだけ。 なんだよ、俺酷すぎるじゃねえか。屑にもほどがあるぜ」 自傷する稟の表情はあまりにもひどく見るに耐えないものだった。 涙と鼻水で顔はぐちゃぐちゃで瞳には意志の光がない。 全てに絶望したかの表情だった。 「俺に生きる価値はあるのか?……なぁ、プリムラ。 俺はもう限界だよ。楽になりたいよ」 返事は帰ってこない。当然だ。プリムラはもうすでに“死んでいる”。 意味が無いのだ。いくら嘆いても、涙を流しても、怒りを顕にしても。 還ってこないものは還ってこない。 もう楽になりたい、こんな辛い気持ちになるぐらいならいっそ、と思っていた稟を留めているもの。 それは。 「楓、シア、ネリネ、真弓、樹」 稟と同じようにこの島で行われる殺し合いに参加している友人達。 それが稟を死という逃げ道に向かうのを妨げていた。 仲間を残して自分だけ勝手に死ぬことは自分勝手すぎるんじゃないか? 稟の気持ちは搖れに揺れていた。 「俺は……」 稟は顔を上げ、夜空を見上げる。 再び頭に浮かぶ自分の知り合いの笑顔。 「だめだ……やっぱり」 みんなを助けないで死ぬのはひどすぎる。 顔を上げた稟はぐちゃぐちゃの表情は依然としてかわりないが目は違っていた。 「まだ死んじゃ駄目だよな。助けないといけない奴らがいるもんな。 それに、俺なんかよりも楓にシア、ネリネ、真弓の方がよっぽどショックなんだ」 “眼”。 さっきのように絶望に濡れて終りを感じさせる“眼”ではない。 どれほど叩かれても諦めない不屈の眼力。 燈――希望の意志。 「まだ諦めるには早い。ここには樹もいる。俺なんかと違ってあいつは冷静だ。 いろいろと脱出方法について練ってるはずだ。俺がこんな風にグズっててどうする!」 稟はまだ全てを失ったわけではない、と強く自分に言い聞かせる。 自分に尽くしてくれる幼なじみ。 こんな自分を好きだと言ってくれた二人のお姫様。 仲の良い二人の友人。 稟は心に、そしてプリムラに誓う。 (悪い、プリムラ。そっちに行くのは遅くなる、俺は頑張って生きなくちゃいけないから。 みんな無事に帰ったら、プリムラのお墓を作るよ。 だから見守っていてくれ) 稟は止まっていた自分に喝を入れて一歩を踏み出す。 この殺し合いを終わらせるための一歩を。 それに。 『稟……頑張れ……』 プリムラのそんな声が稟には聞こえたから。 ◆ ◆ ◆ 稟が誰か他の参加者と接触するために歩き始めて数分後、何かが聞こえたのだろうか、耳を澄まして立ち止まった。 「何だ、これは?話し声にしちゃ大きすぎるな」 何とも言えない気分になってしまった稟はその場に立ち止まり考える。 (どうする?接触するべきか。リスクは……五分五分だな。 これが殺し合いに乗ってない人を呼び寄せるなら、当然のごとく危険だ。 逆にこの状況を理解していない場合だったら早急に止めないといけない) どう行動すべきか。これは大きな分岐だ、と思いながら。 「見てみなきゃ始まらないか…… 遠巻きに見て怪しそうじゃなかったら接触、その逆なら即座に逃げよう」 とりあえずは近づこうと思い、稟は声の震源地を目指す。 吉と出るか、凶と出るか。それは行ってみなくちゃ分からない。 万が一乗ってる参加者だった時の威嚇用に腰には支給品として入っていた大型のリボルバーを二挺差して。 「できれば使わないことを祈りたいけど、もしもの時はこれを使うしかないんだろうな」 そう願って森の中を進む稟を待っていたものとは。 ◆ ◆ ◆ (あれは本気でやっているのか?この状況で……) 待ち受けていたのは、稟の目に映るのは黒のゴスロリ服を着た薄紫色の長い髪の女性。 稟より少し年上だと言ったところか。 だが、そんなことを差し置いて稟が一番驚いたことがある。 「あふれーるそのやさーしさー」 歌を歌っていることだ、それも、満面の笑みで呑気に。 傍から見ればかなり変な人である。稟は思わず大きなため息を吐き、頭を抱える。 (この人、どうしよう、このままだとまずいよなぁ。こんなの、自分はここにいますよ、 早く殺しに来て下さいと言ってるようなもんだ。自殺行為にもほどがあるぞ やめさせないと!) 「おい、あんた!」 「だからいまはもー……ふぇ?」 稟は思い切って隠れていた茂みから飛び出し、女性に声を掛ける。 女性も呼びかけを聞き、歌うのをやめ、稟の方へ体を向ける。女性の顔は相変わらずの満面の笑みだった。 「はいー、なんでしょうかー」 女性が間延びした声で答える。アニメで聞くような柔らかく聞く人をほんわかさせるような声だった。 だがこの非常事態では、意味をなさない。 「何で歌ってたんだ。ここで大きな声を出すのは自分から死ににいくようなもんだぞ!」 稟は引き続きこの女性がなぜあんなに大声で歌っていたのかを問いかける。 (この人……裏があるのか?それともただの天然なのか。まだわからないな。 話を聞いてみないことには始まらない) 残念なことに真剣に考えていた稟のをあざ笑うかのように女性の出した答えは想像の遥か斜め上のことだった。 「うーん、寂しかったから、かなぁ」 「へ……それだけですか?」 「うん!それだけだよー!だって一人は寂しいじゃない。 一人よりは二人、二人よりは三人って言うじゃない」 あっけらかんとした答えに絶句する稟に依然とニコニコとした女性。 実におもしろい構図である。 「あのさ……えっと「綺堂渚だよ、私の名前」……渚さん、今自分がおかれている現状とか理解していますか?」 「はいー、殺し合いですよね、嫌になっちゃいますねー」 これからの事を思い浮かべるだけで頭痛がしてくる。 稟はそう思った。 稟が渚に大きな声をだすのが危険だということをわからせるのに時間がかなりかかったのはまた別の話―― 【C-3/一日目・深夜】 【土見稟@SHUFFLE!】 【状態】精神疲労(大) 【装備】『死』@操り世界のエトランジェ、『死』@操り世界のエトランジェ 【持ち物】 ディパック(支給品一式)、特性予備弾@操り世界のエトランジェ、不明支給品0~1 【思考】 0.ゲームには乗らない 1.綺堂渚をどうするか。 2.知り合いとの合流。 【綺堂渚@キラークイーン】 【状態】健康 【装備】 【持ち物】 支給品一式、不明支給品1~3 【思考】 0.稟君っておもしろーい 1.稟君の話を聞く ※綺堂渚の歌声がF-3に響きました。その周りにも聞こえてる可能性もあります。 【『死』@操り世界のエトランジェ】 闇宮冥の特注武器『刻死夢葬』の『死』の部分。 かなり大型のリボルバー。威力が普通の拳銃の何倍。 掠っただけでもアウトである。ちなみに二挺セット。 BACK 紅く染まれ――愛/哀の傷跡 時系列順 NEXT スカーレット・オラトリオ BACK 紅く染まれ――愛/哀の傷跡 投下順 NEXT スカーレット・オラトリオ GAME START 土見稟 NEXT GAME START 綺堂渚 NEXT
https://w.atwiki.jp/narumiayumu/pages/53.html
「プリムラ……ごめんな、守れなくて」 木々に囲まれ鬱蒼とした深夜の森。 草木が眠り、静寂な空気が辺りをひんやりとさせる。 その深夜の森にはあまりにもミスマッチ過ぎる異端、ブレザーを着た青年、土見稟はグスグスと泣いていた。 「俺は……何もできなった。ただ家族が無残に殺されるのを見ているだけ。 なんだよ、俺酷すぎるじゃねえか。屑にもほどがあるぜ」 自傷する稟の表情はあまりにもひどく見るに耐えないものだった。 涙と鼻水で顔はぐちゃぐちゃで瞳には意志の光がない。 全てに絶望したかの表情だった。 「俺に生きる価値はあるのか?……なぁ、プリムラ。 俺はもう限界だよ。楽になりたいよ」 返事は帰ってこない。当然だ。プリムラはもうすでに“死んでいる”。 意味が無いのだ。いくら嘆いても、涙を流しても、怒りを顕にしても。 還ってこないものは還ってこない。 もう楽になりたい、こんな辛い気持ちになるぐらいならいっそ、と思っていた稟を留めているもの。 それは。 「楓、シア、ネリネ、真弓、亜沙先輩、樹」 稟と同じようにこの島で行われる殺し合いに参加している友人達。 それが稟を死という逃げ道に向かうのを妨げていた。 仲間を残して自分だけ勝手に死ぬことは自分勝手すぎるんじゃないか? 稟の気持ちは搖れに揺れていた。 「俺は……」 稟は顔を上げ、夜空を見上げる。 再び頭に浮かぶ自分の知り合いの笑顔。 「だめだ……やっぱり」 みんなを助けないで死ぬのはひどすぎる。 顔を上げた稟はぐちゃぐちゃの表情は依然としてかわりないが目は違っていた。 「まだ死んじゃ駄目だよな。助けないといけない奴らがいるもんな。 それに、俺なんかよりも楓の方がよっぽどショックなんだ」 “眼”。 さっきのように絶望に濡れて終りを感じさせる“眼”ではない。 どれほど叩かれても諦めない不屈の眼力。 燈――希望の意志。 「まだ諦めるには早い。ここには樹もいる。俺なんかと違ってあいつは冷静だ。 いろいろと脱出方法について練ってるはずだ。俺がこんな風にグズっててどうする!」 稟はまだ全てを失ったわけではない、と強く自分に言い聞かせる。 自分に尽くしてくれる幼なじみ。 こんな自分を好きだと言ってくれた二人のお姫様。 仲の良い二人の友人に先輩。 稟は心に、そしてプリムラに誓う。 (悪い、プリムラ。そっちに行くのは遅くなる、俺は頑張って生きなくちゃいけないから。 みんな無事に帰ったら、プリムラのお墓を作るよ。 だから見守っていてくれ) 稟は止まっていた自分に喝を入れて一歩を踏み出す。 この殺し合いを終わらせるための一歩を。 それに。 『稟……頑張れ……』 プリムラのそんな声が稟には聞こえたから。 ◆ ◆ ◆ 稟が誰か他の参加者と接触するために歩き始めて数分後、何かが聞こえたのだろうか、耳を澄まして立ち止まった。 「何だ、これは?話し声にしちゃ大きすぎるな」 何とも言えない気分になってしまった稟はその場に立ち止まり考える。 (どうする?接触するべきか。リスクは……五分五分だな。 これが殺し合いに乗ってない人を呼び寄せるなら、当然のごとく危険だ。 逆にこの状況を理解していない場合だったら早急に止めないといけない) どう行動すべきか。これは大きな分岐だ、と思いながら。 「見てみなきゃ始まらないか…… 遠巻きに見て怪しそうじゃなかったら接触、その逆なら即座に逃げよう」 とりあえずは近づこうと思い、稟は声の震源地を目指す。 吉と出るか、凶と出るか。それは行ってみなくちゃ分からない。 万が一乗ってる参加者だった時の威嚇用に腰には支給品として入っていた大型のリボルバーを二挺差して。 「できれば使わないことを祈りたいけど、もしもの時はこれを使うしかないんだろうな」 そう願って森の中を進む稟を待っていたものとは。 ◆ ◆ ◆ (あれは本気でやっているのか?この状況で……) 待ち受けていたのは、稟の目に映るのは黒のゴスロリ服を着た薄紫色の長い髪の女性。 稟より少し年上だと言ったところか。 だが、そんなことを差し置いて稟が一番驚いたことがある。 「あふれーるそのやさーしさー」 歌を歌っていることだ、それも、満面の笑みで呑気に。 傍から見ればかなり変な人である。稟は思わず大きなため息を吐き、頭を抱える。 (この人、どうしよう、このままだとまずいよなぁ。こんなの、自分はここにいますよ、 早く殺しに来て下さいと言ってるようなもんだ。自殺行為にもほどがあるぞ やめさせないと!) 「おい、あんた!」 「だからいまはもー……ふぇ?」 稟は思い切って隠れていた茂みから飛び出し、女性に声を掛ける。 女性も呼びかけを聞き、歌うのをやめ、稟の方へ体を向ける。女性の顔は相変わらずの満面の笑みだった。 「はいー、なんでしょうかー」 女性が間延びした声で答える。アニメで聞くような柔らかく聞く人をほんわかさせるような声だった。 だがこの非常事態では、意味をなさない。 「何で歌ってたんだ。ここで大きな声を出すのは自分から死ににいくようなもんだぞ!」 稟は引き続きこの女性がなぜあんなに大声で歌っていたのかを問いかける。 (この人……裏があるのか?それともただの天然なのか。まだわからないな。 話を聞いてみないことには始まらない) 残念なことに真剣に考えていた稟のをあざ笑うかのように女性の出した答えは想像の遥か斜め上のことだった。 「うーん、寂しかったから、かなぁ」 「へ……それだけですか?」 「うん!それだけだよー!だって一人は寂しいじゃない。 一人よりは二人、二人よりは三人って言うじゃない」 あっけらかんとした答えに絶句する稟に依然とニコニコとした女性。 実におもしろい構図である。 「あのさ……えっと「綺堂渚だよ、私の名前」……渚さん、今自分がおかれている現状とか理解していますか?」 「はいー、殺し合いですよね、嫌になっちゃいますねー」 これからの事を思い浮かべるだけで頭痛がしてくる。 稟はそう思った。 稟が渚に大きな声をだすのが危険だということをわからせるのに時間がかなりかかったのはまた別の話―― 【C-3/一日目・深夜】 【土見稟@SHUFFLE!】 【状態】精神疲労(大) 【装備】『死』@操り世界のエトランジェ、『死』@操り世界のエトランジェ 【持ち物】 ディパック(支給品一式)、特性予備弾@操り世界のエトランジェ、不明支給品0~1 【思考】 0.ゲームには乗らない 1.綺堂渚をどうするか。 2.知り合いとの合流。 【綺堂渚@キラークイーン】 【状態】健康 【装備】 【持ち物】 支給品一式、不明支給品1~3 【思考】 0.稟君っておもしろーい 1.稟君の話を聞く ※綺堂渚の歌声がF-3に響きました。その周りにも聞こえてる可能性もあります。 【『死』@操り世界のエトランジェ】 闇宮冥の特注武器『刻死夢葬』の『死』の部分。 かなり大型のリボルバー。威力が普通の拳銃の何倍。 掠っただけでもアウトである。ちなみに二挺セット。 BACK 紅く染まれ――愛/哀の傷跡 時系列順 NEXT スカーレット・オラトリオ BACK 紅く染まれ――愛/哀の傷跡 投下順 NEXT スカーレット・オラトリオ GAME START 土見稟 NEXT 平穏崩壊 GAME START 綺堂渚 NEXT 平穏崩壊
https://w.atwiki.jp/ls2014/pages/106.html
月明かりの道しるべ◆zrcvXqFgZw (……夢?) それが殺し合いの舞台に強制参加させられた電が最初に思い浮かんだ言葉である。 鎮守府に配属され、他の駆逐艦と共に訓練に励んでいた筈の電が突如として見知らぬ空間にいた。 そんな状況になれば、そう考えるのも何ら不思議ではない。 だがそれは間違いであるとすぐに思い知らされる。 「……ッ!!?」 上から降りてきた老人が放ったミサイルによって、一人の人間が肉片を撒き散らしながら命を落とした。 (ひ……酷すぎるのです……) 惨状を目の当たりにした電は両手で口元を押させながらペタリと地面に座り込んだ。 兵器でありながらも敵の命も救いたいと願うほどの優しさを持つ電にとっては、あまりにもショックは大きい。 悲しみで涙が溢れてくる、そんな電の心情をあざ笑うかのように一人、また一人と命が奪われていく。 (…や、め………やめて……ください……) 老人の行為を止めるべく言葉に発しようとした電だったが心の中で懇願するだけで言えなかった。 老人に目を付けられれば殺されてしまうかもしれない。 そう考えた時の恐怖が電の体を縛りつけて何も行動させずにいた。 この場所から別の場所へとテレポートさせられるまで 電は最後まで反抗の意志を見せる事無く、小動物のように震える事しかできなかった。 深海凄艦を倒す為の兵器であり、経験を積めば提督とケッコンカッコカリも可能と言えでも 艦娘の中では幼い方に入る少女である電には恐怖を振り払い、行動するだけの勇気が持てずにいた。 電がテレポートされた先は暗闇に包まれた街の中だった。 近代的な造りの夜の街とは思えないほど静まり返っており、人の気配が全くない。 目の前にあるゴーストタウンは電の不安を掻き立てるには十分だった。 スマートフォンを手に取り、参加者や現在位置等の情報を収集した電は行動を開始した。 鎮守府へ行けば、雷や響もいるかもしれない。 そんな微かな希望にすがって歩いた。 じわじわと心身へ浸食する恐怖から必死に逃れるように。 一刻も早く鎮守府に行きたかった電は、早歩きで進んでおり前方にいた少年に気付くことなく電はまた衝突事故を起こした。 「きゃっ!?」 それが彼との最初の出会いであった。 少年にぶつかった事に気付いた電は慌てて謝罪をしながら少年を見ると うずくまってガタガタ震えながら命乞いをしていた。 少年は電を殺し合いに乗った人物だと思い込んで恐れていたのだ。 電は少年に優しく話しかけて、自分の誤解を説いた。 幸いにして、少年を落ち着かせる為の対応が結果として、自分自身をも冷静にさせて恐怖心を和らげる事になった。 ◆ ◆ ◆ 「つまり電さんは、ここから北にある鎮守府という場所へ向かっている途中だったんですね!」 「はい、なのです」 現在は、そのぶつかった少年である真月零と行動を共にする事になった。 「それにしてもポーキーという人は許せませんね! 人の命をまるで玩具のように弄ぶなんてゲスの極みですよ! こんな……こんな残酷な事は絶対に止めないと……」 ポーキーの残忍な行為に真月は怒りを露わにしていた。 それだけじゃなく殺された人達に対して悲しみの表情も浮かべている。 「真月さん……」 「電さん、一刻も早く鎮守府に行って他の人達を探しましょう! 仲間を集めて皆で力を合わせれば、どんな困難だって乗り越えられるはずです!」 (真月さんの言う通りなのです。いつまでも怯えていては駄目なのです) 熱意の籠った真月の言葉は、電の心の奥底へと響き渡る。 電は脳裏で過去に行われたキス島撤退作戦を思い出す。 駆逐艦だけで編成された艦隊での出撃は熾烈で過酷を極めた。 それでも諦める事無く戦続けた電達は、負傷しながらも勝利をつかみ取る事に成功したのだ。 「真月さん、電も頑張るのです。他の子達も救助したいのです」 「ありがとう電さん!そうと決まったら…」 真月は人懐っこい表情を浮かべながら電の右腕をぎゅっと握る。 突然のアプローチに電は驚きの声をあげた。 「し、し、し、真月さん!?」 「急ぎましょう!さっきスマホで鎮守府への近道を調べておいたんです!」 「ちょっとまっ」 電の制止の声も聞かずに右腕を掴んだまま真月は駆け出した。 「こっちこっちー!」 「はわわーーーっ!?」 大通りから脇道に入り、路地裏の奥深くへと走り… 「こっちです!」 「はにゃーーーっ!?」 ビルとビルの間を飛び越えて進み… 「こっちです!」 「はわわ…こ、ここは~!!」 男子トイレに入り、窓から抜け出し… 「こっちですこっち!」 「ひゃーーーっ!!」 土管が三つ置いてある空き地を通り過ぎた時、大きな爆発と爆音が鳴り響き 真月は足を止め、爆発のした方角を見つめた。 「なんでしょうね?今の爆発は…って電さん大丈夫ですか?」 「ううっ……ちょっとふらふらするのです…」 真月に連れ回された電は、色んな物と衝突して全身埃まみれになっていた。 「すみません電さん、よかれと思って早く鎮守府に着くようにと近道を通ったんですけど……」 「いえ、真月さんは電の事をとても気遣ってくれて、すごく嬉しいのです」 「電さんがそう言ってくれると僕も助かります!それにしてもあの爆発は鎮守府に近いですね」 「もしかしたら、もう戦闘が始まってるのかも……」 「それは大変です!急いで止めに行きましょう!」 「はい!」 最初は怖かった。怖くて怖くてどうしようもなかった。 そんな恐怖の闇を、月明かりのように照らし光をもたらしたのは真月零だった。 自分以上に臆病な少年が見せてくれた明るい笑顔と、困難に立ち向かう勇気が 電の不安を掻き消して、戦う決意を持つことが出来たのだ。 ここには海路を示す羅針盤は無い。 それでも電は必ず脱出できると信じている。 真月の言う通り、仲間を集めて協力すれば不可能ではないと信じているのだから。 【D-4 市街地 /深夜】 【真月零@遊戯王ZEXAL】 [状態]:疲労(中)、人間態 [装備]:なし [道具]:基本支給品、決闘盤とカード(ベクターのカード)@遊戯王ZEXAL、首輪探知機@LSロワ2014オリジナル、 不明支給品×0~1 [思考・行動] 基本方針:良からぬことを企む 1:真月零の姿で殺し合いに乗っていない者達の中に潜む 2:電が利用できる存在か見極め、用済みならば魂を喰らう 3:遊馬とアストラルは必ずぶっ殺す! 4:主催者を乗っ取りさらなる力を得る ※アニメ130話、メラグとナッシュがバリアン世界に戻る直前からの参戦です ※バリアン体での分身能力、瞬間移動が可能かどうかは不明です ※バリアンズスフィアキューブなしでバリアルフォーゼは可能ですが、体力を消耗します 【電@艦隊これくしょん】 [状態]:健康 [装備]:なし [道具]:基本支給品、ランダム支給品×1~3 [思考・行動] 基本方針:殺し合いには乗らない 1:真月さんと鎮守府に向かう 2:司令官や響、お姉ちゃんに会いたい ※真月零に信頼を寄せています ≪036 夢のENDはいつも目覚し! 時系列順に読む 038 カードキャプターしゃーく≫ ≪036 夢のENDはいつも目覚し! 投下順に読む 038 カードキャプターしゃーく≫ ≪019 忍び寄る闇 真月零の登場SSを読む 0xx [[]]≫ 電の登場SSを読む
https://w.atwiki.jp/sousaku-mite/pages/340.html
Top 【シェア】みんなで世界を創るスレ【クロス】 地獄世界・「ややえちゃんはお化けだぞ!」 第9話 ややえちゃんはお化けだぞ! 第9話 黒檀の机で揺らぐ炎が、まだ幼い殿下の顔に深い陰影を作り出す。 組んだ指を動かしながら嫌らしい笑いを浮かべる姿は、まるで腹黒い政治家のようだった。 「さて、どこから話したもんか……」 殿下は椅子を斜めに倒しながら、俺の表情を堪能するように目を細めていたが、思い立った ように前のめりになると、再び指を組み直した。 「アイツの鈴のデカさはちょっと異常でな。オレはちょっとした好奇心でその未練の正体を 探ってみたんだ。まあ、最初から最後まで話したら日がくれちまうんで掻い摘んで話すが、 あの女は生前、そこそこ大きな領地を有した大名の娘だったのさ――」 そう前置きすると、殿下は腰を落ち着けるように座り直し、夜々重がまだ生きていた頃の 話を、ゆっくりと語りだした。 卍 卍 卍 今からはもう何百年も昔、長きに渡る戦国時代が幕を閉じてまだ間もなかった頃、夜々重 はある裕福な大名の家にその生を受けた。 天下泰平の名の下、表だった戦は確実に減り、男と女の立場が徐々に形を変えていく中で、 夜々重の父親もまた娘を大変に可愛がり、それは大切にしていたという。 当時にしてもかなり贅沢な生活を送っていた夜々重は、やがて毎日のように城内を騒がす 「おてんば姫」として育っていった。 そんなある日、父親の気まぐれから鷹狩について行くことになった夜々重は、めったに見る ことのない外の世界に心を踊らせるあまり、崖から足を滑らせ皆とはぐれてしまったのだ。 箱入り娘としてぬくぬくと城で育ってきた夜々重が道に迷うのは必然。 どこへどう繋がっているかも分からない獣道を何時間かさまよい、ついに疲れて座り込んで いるところを、偶然通りがかった一人の男に助けられることになる。 その男は山間にある集落に住む男で、貧しい身なりの人間だった。 夜々重は最初こそ警戒していたものの、隠しきれない不安の中でたった一人頼れるその男に 対し、徐々に心を開いていった。 男も夜々重を城まで届けてやりたい気持ちはあったが、夕暮れに染まる山の中、これ以上 進むのは危険と判断し、眺めの良い場所を選んで焚き火を起こした。 奇妙な出会いが気持ちを高揚させていたのか、二人は疲れて眠ってしまうまでも笑いながら 語り合ったという。 次の夜明け、なんとか城まで辿りついた二人を待っていたのは、鬼の形相で門前に立つ 夜々重の父親だった。 溺愛する娘が行方不明となり正気を失っていた父親は、お前が娘をさらったのかと男に 食ってかかった。 当然夜々重が一言いえば済むところだったのだが、優しい笑顔しか見せたことのなかった 父親が牙を剥いて怒り狂う前、夜々重はついにそれを言い出せなかったのである。 恩人であり、少なからず好意を抱き始めていたはずの男はその場で斬首。 浴びる返り血、ようやく事態の重さに気づいた夜々重は、転がった男の首を抱きしめると、 父親を跳ね飛ばし、そのまま再び行方知れずとなる。 自分のせいで、恩人が罪人として殺されてしまった。 こうして夜々重は暗く深い苦悩の果て、自分にも男と同じ苦しみをと首に縄をかけ、15年 という短い生涯を自らの手で絶つも、不甲斐ない自分への未練は小さな鈴に形を変え、幽霊 となって現世に魂を残すことになる。 ――ところがこれで全てが終わったわけではなかった。 無言での自害、それがさらなる悲劇を巻き起こしてしまう。 数日後、夜々重の遺体は近くの山で発見された。 父親は娘の変わり果てた姿に悲しんだ末、あの男が娘に呪いをかけたのだと信じ込み、 城下の浪人者たちを引き連れて、今度は村の人間を皆殺しにしてしまったのだ。 わけも分からず殺されていく罪の無い人々。叫びと血飛沫が舞う凄惨な光景。 自らが招いた惨劇を目の当たりにした夜々重の鈴はさらに大きく膨れ上がり、あのように 巨大な未練の鈴を背負い込むことになる。 卍 卍 卍 「これがアイツの未練の正体だ。ちなみにお前とは何の関係もない」 ここまで聞いて、俺は深い溜息をついてみせた。 まさか夜々重のヘタレっぷりが人をも殺していたとは、思いもよらなかったのだ。 しかし、とはいえだ。 何百年なんて昔の話をされても、全く現実味を感じられないのが正直なところ。 夜々重には出来損ないの昔話みたいな過去があるんだな、ぐらいにしか思えなかった俺は、 素直にそれを言葉にする。 「なんで俺にそんな話を」 「お前にとってはただのバカにしか見えないのかもしれないがな、数百年の時を後悔と共 に過ごすという苦痛は人間ごときに計れるものではないと言いたいのだ。その永い年月は あのバカ女にひとつの妙案を思いつかせることになったのだ」 「妙案?」 「アイツは誰かの命を救うことで、自らの罪を清められるのではないかと考えたのさ」 それは立派な心がけじゃないか、と思うこと数秒。 ふと蝋燭の炎が大きく揺らぎ、俺の心の中に穏やかでないほころびが生じ始めた。 「まさか、自分で殺して……」 「分かったか? あいつがお前を呪い殺したのは『わざと』なんだ」 全身に寒気が走った。 同時に、この流れをどうしても否定しなければならない衝動にかられる。 「ちょっと待ってくれ、そんなバカな」 「思い出してみろ。あいつと最初に会った時、何かおかしなことはなかったか?」 「……いや」 「壁を抜けてお前にぶつかってきたんだろう? 壁を抜けられるのに、どうしてお前に ぶつかるんだ」 「それは……そういうものなんだと」 「ふん、まだあるぞ。呪いのことを忘れてただ? バカを言え、忘れるぐらいの未練なら 幽霊になどなれる訳がない」 「あいつはバカなんだ……」 「バカはお前だ。じゃあ聞くが、なんで都合よく地獄巡りの広告なんか持ってるんだ?」 あらゆる言い訳を考えてみても「わざと」という言葉の前に全て打ち砕かれてしまう。 思わず握りしめた拳を見て、殿下は立ち上がり背を向けた。 「最初にも伝えたが、この魂言堂ではウソがつけん。あいつは確かに言った――」 呼吸すら忘れていたのか、思い出したように息を吸い込む。 「わざとです、とな」 最悪だ。 自分が今、一体どういう気持ちなのかすら分からない。 落ち着いて整理したいのに、どこから手をつけていいのかまるで分からないのだ。 あざ笑う殿下と侍女長。堂中にこだまする二人の笑い声にも、怒りを感じる余裕すらない。 「くくく、分かるぞ、お前の気持。オレですら憤りを感じたのだ。人の命を冒涜したその 所業、これは断じて許されることではない。お前には悪いが、解呪申請書など絶対に発行 してやらん」 混乱の渦は絶望と嘲笑を巻き込み、目眩という形をもってその姿を現す。 過去、夜々重のせいで死んでいった人たちと同じように、俺もまた何一つ理解できぬまま、 その生涯を終えるというのか。 言いようの無い焦燥感に思わず下をむいて頭をかきむしっていると、不意に笑い声が消えた。 「――とまあ思ってたんだな、アイツがここを出て行くまでは」 漏らされた言葉に顔を上げると、殿下はにやりと口元を曲げ深く椅子に座り直す。 「オレが面白いと言ったのは、まさにここからなのさ」 その手には、最初に見てそのまま机に置かれていたはずの黒いノートがあり、表紙には 不気味な昆虫の写真と、ポップな字体で「ジャパニコ閻魔帳」と書かれていた。 上へ ややえちゃんはお化けだぞ! 第8話 ややえちゃんはお化けだぞ! 第10話
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2300.html
「ここまでする必要があるとは思えねえが、まあ仕事だしな」 傭兵がぶつくさと独り言を洩らす。 ガツガツと杖の先で壁に面した地面を小突く。 あらかた後始末を終えた彼が一息入れて合図を待つ。 どうせ楽な仕事なのだから酒の一杯でもやらせてもらいたい。 そんな事を考えながら緩み切った表情を浮かべる彼の目前を何かが横切る。 その何かは大きく地面を跳ねて壁へとぶつかって転々とする。 「何だ?」 傭兵がそれにレビテーションをかけて止める。 油断しているとはいえ何か分からない物に触れたりしない。 罠かも知れないという危機感は戦場では常に持っていた。 男は距離を保ちながらそれを観察する。 白い霧の中では見えにくい同色の球。 素材は皮なのだろうか、このような物がどうして地面で大きく弾むのか、 見た事もない代物に男は興味を惹かれた。 ディテクト・マジックで魔法の反応がない事を確認すると、男はそれを手に取った。 否。手に取ろうとした。 「え?」 まるで幻であったかのように、するりと男の手を通り抜ける白球。 男の困惑など意にも介さず白球は地面に転がり落ちる。 知らぬ間に傭兵の身体は震えていた。 “自分の知らない何か”への興味は、 “自分の理解できない何か”への恐怖へと変わっていた。 直後、男の足元が裂けた。 剣で斬られたように白球が転がった後を走る亀裂。 大岩を落としたとしても、このような痕は生まれない。 瞬時にして傭兵の身体が大地に飲み込まれた。 地下に引きずり込まれる感覚に、男は目を閉じ息を止めた。 そして気が付けば、そこにいた。 外にいたはずの自分がいつの間にか建物の中に。 それも校舎の中ではなく見た事もない豪奢な屋敷。 暖炉には火がくべられており、誰かがいた痕跡が残されている。 大きなテーブルには酒や菓子が置かれ、それを裏付ける。 幻覚か、それともどこかに飛ばされたのか、 だがディテクト・マジックはそれを否定する。 半ば自棄になって置いてあった酒瓶に手を伸ばす。 そして一気に喉の奥まで流し込んだ。 だが飲み込んだはずの酒は胃には至らない。 自分の身体を突き抜けて床へと酒が零れ落ちる。 その光景に、男は思わず手にした酒を落とした。 甲高い悲鳴を上げて砕け散る酒瓶。 頭の中がぐちゃぐちゃになりそうだった。 よろよろとふらつくように下がって壁に背を預ける。 見れば砕け散ったはずの酒瓶は中身ごと元通りになっていた。 まるで俺の姿をあざ笑うようにそれは床を転がる。 正気を失ってしまったのか、錯乱しかけた自分の顔に手を当てる。 「俺は……狂っちまったのか」 「いえ、貴方は正気ですよ」 突然響いた誰かの声に男は振り返ろうとした。 だが、それは出来なかった。 動かそうとした首は背後から締め上げられた。 何もない壁から生えたように伸びた腕。 それが自分の杖を掴んで喉元に押し当てる。 喉を潰され、詠唱どころか呼吸さえも侭ならない。 脳に回っていた酸素が絶たれて意識が遠のいていく。 ばたついていた足が力を失い、ぐったりと絨毯の上に伸ばされる。 それを確認するとコルベールは男の杖を手放した。 そして、ゆっくりと部屋の中央に運んで傭兵を寝かせた。 男の手足を縛り上げながらコルベールは辺りを見渡す。 何もない所に生み出された非現実的な空間。 これを作り上げたのはメイジではなく平民の少年。 溜息と共にコルベールの口から感嘆の声が洩れる。 「それにしても……『スタンド』と言いましたか、凄い能力です」 「僕には魔法の方がよっぽど凄く思えるけど」 それは決して謙遜ではない。 杖と詠唱さえあれば大抵の事は出来てしまう。 それこそ日常生活の支えから戦闘までこなせる。 そこまで便利な能力はスタンド使いでもそうはいないだろう。 だが、それ以上にエンポリオを驚嘆させたのはコルベールの技量だった。 いくら相手が混乱していたとはいえ、魔法を使わず使わせずに無力化する。 その手際は彼のいた世界の特殊部隊を思わせるほど鮮やかだった。 エンポリオはコルベールが最初に立てた作戦を思い返す。 彼は決して無謀な計画に臨んで多くの人間を危険に晒す人物ではない。 つまりコルベールには彼等は無力化するだけの自信があった、そう考えるほかない。 一体この教師は何者なのだろうか?と考えているとコルベールより声が掛かった。 「では君はここで待っていてください。私は残りの連中を片付けてきます」 「な……そんな!一人じゃ無理に決まっている!」 「いえ、問題ありません。必要な物は手に入りましたから」 そう言ってコルベールが男の全身を覆っていた布を剥ぐ。 恐らくは他の仲間も同じもので素性を隠しているのだろう。 これを被っていれば警戒される事なく敵に近付ける。 そうすればエンポリオのスタンドが無くても一人ずつ仕留められる。 コルベールは初めからそのつもりだった。 エンポリオのスタンド能力を利用するのは一回だけと心にそう決めていた。 「僕も戦えます!」 「ええ、知っています。君はとても勇敢な少年です」 顔を上げたコルベールが優しげに微笑む。 なのにエンポリオの目には彼の表情がどこか悲しげに映った。 「だけど君には戦って欲しくない……これは私のワガママです」 「そこまでして『スタンド』の事を隠さないといけないの?」 「そうです」 エンポリオはイザベラの言葉を思い出した。 “『スタンド』の事を誰にも話してはならない” その約束を交わした理由は彼女の個人的な動機だけではなかった。 コルベールも彼の能力を目の当たりにするまでは危機感を感じていなかった。 エンポリオの能力を聞かされた時、彼はそれを先住魔法に近い物だと推察した。 相手に有りもしない部屋の幻覚を見せる、その程度だと侮っていた。 だが彼のスタンド“バーニング・ダウン・ザ・ハウス”を体験し、それは驚愕へと変わった。 断じて幻覚などではない。彼はこの場に全く別の空間を作り出している。 それは魔法でも先住魔法でも、恐らくは虚無の力でさえも再現できない能力。 この事が知られれば彼は間違いなく能力解明の為のモルモットにされるだろう。 アカデミーは探求の為ならば犠牲を省みない。 かつてコルベールは自分が所属していた実験部隊の事を思い出す。 “疫病の蔓延を防ぐために村一つ焼き払う” それは自分にしかできない事だと思った。 子供から老人に至るまで誰一人逃さず焼き殺す。 それだけの腕と覚悟を持っているのは自分だけだと確信していた。 すべてはトリステイン王国の為、そこに住まう多くの民の為。 だが、私は祖国に裏切られた。 私が焼き殺したのは守るべき無辜の民。 たった一人の人間の出世の為に利用された生贄の羊たち。 アカデミーも恐らくは気付いていたのだろう、あの村に疫病など存在しない事に。 もし原因不明の病気が発生したならば必ずアカデミーの調査が入る。 なのに、そんな嘘に騙されていたとは考えにくい。 彼等は知りたかったのだ。 自分たちの実験部隊がどれだけの性能を発揮できるのか、 どのような任務であろうとも忠実に実行に移せるのか、 それを知りたくてリッシュモンの口車に乗った。 だけど彼等を責める事は出来ない。 そのような事が許されるはずがない。 実際に手を下したのは私だ。 それはどんな理由をつけようも変わらない。 何よりも私も彼等と同類だ。 私も知りたかったのだ。 自分の魔法がどれだけの事を成せるのか。 編み出しても使う事はないと思っていた魔法。 それを振るう機会を与えられた私の心は あの時、確かに歓喜に震えていたのだから……。