約 1,164,441 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/316.html
ルイズは学院長室を出て、廊下を渡りながらどんどん気分が沈んでいくのが わかった。理由は明白、彼女が頼まれた、というよりも命じられたのがンドゥール の調査であるからだ。 それすなわち彼にはなにがしかの価値があるという証明、『ゼロ』のルイズ にはないものだ。 現時点で、ルイズはたくさんの視線を浴びている。それは以前までの嘲笑で はなかったが、決して気分のいいものではなかった。なにせその元凶は使い 魔のンドゥール、呪文も唱えずに魔法を使うメイジかもしれないと思われて いる男だ。自分はおまけ。 このままいけば近い将来、立場が逆転する可能性だってあるのではないか。 使い魔のルーンは刻んだとはいえなんの束縛力もないのだ。 ルイズはため息をつきながら自室の近くまで来る。すると、彼女の目に奇妙 なことをしている二人が映った。一人は使い魔であるンドゥール、もう一人 は憎きツェルプストー家の女、キュルケだった。 「ちょっと! 人の使い魔になにしてるのよ!」 ルイズは怒りを露にして詰め寄った。 「まだなんにもしてないわよ。これからするの。ね、ンドゥール」 腕を絡ませ豊かな胸を押し付ける。その上ルイズを見やり、わざとらしく鼻 で笑った。もちろんされたほうはたまらない。 「あんた、いい加減にしなさいよこの色情狂! ツェルプストー家って年中 発情期なの!?」 「何を言ってるの。私は単に彼に恋をしただけよ。平民でありながらあっさり 『青銅』のギーシュを倒した男。心に火が燈ったわ」 「うるさいわよ! 大体そいつはあたしの使い魔、許可なく口説いてんじゃないわ!」 「あら、彼だって一人の人間よ。使い魔だって言っても意思があるわ。ねえ ンドゥール、こんなのほっといて私の部屋に行きましょう?」 「ふざけないで!」 二人の視線が交差、中心では火花が起こっていそうだった。まさに犬猿の仲 である。巻き込まれたンドゥールはうんざりしていた。 「面倒だ。帰ってくれ」 「あん、つれないわ。でも私はいつでも待ってるわよ」 「二度とくるな!」 キュルケは笑いながら去っていった。 残ったルイズは湧き上がった怒りをンドゥールに向けようとするが、それは 急速にしぼんでいってしまう。一時的な感情では自身の劣等感を吹き消すこと ができないのだ。 ルイズは無言でンドゥールの脇を通り抜け、自室に入ってベッドに倒れこんだ。 今日のところはもう授業はないためのんびりと体を休ませるつもりだ。 ンドゥールも入り、定位置となっている藁を積み重ねただけの寝床の上に座り 込んだ。 それからはまるで彫像のようにびくともしない。 (こいつ、いったいどう思ってるのかしら) 遠い故郷、エジプトとやらのことでも思い出しているのかもしれない。 もしくは『あの方』という人のことを考えているのかもしれない。 自分が見知らぬ土地へとやってきた場合、まずなによりも帰りたいと願う。 ルイズはそう思った。 翌日、虚無の曜日だったため授業はなかった。ルイズはゆっくりと休日を過ご そうかとも考えたが、オスマンからンドゥールの調査を頼まれているため何が しか探りを入れる必要があった。で、思いついたのが、街へ出ることだった。 「ずっと学院に閉じこもってるわけじゃないし、人ごみとかにも慣れていかな くちゃいけないものね」 「地元は人の往来が激しかったが、俺もどんな街があるか気になる。だがルイズよ。 そこまでどうやっていくのだ?」 「馬よ」 ルイズは朝食を摂ったあと、厩舎で馬を一頭借りた。ンドゥールと二人で乗り 手綱を引く。 「落ちないようにしっかりつかまってなさい。飛ばすわ」 ブヒヒンと馬はいななき、草原を走り出した。その逞しい肉体にたがわず、風 のように駆けていく。ルイズはぐんぐんと過ぎていく景色を眺めながらわずか に上機嫌だった。なにせようやく優位な点を見つけたからだ。 ンドゥールは、らくだという馬に似たものに乗った経験はあるようだったが、 自分で手綱は引けないといったのだ。自分は魔法を使えない『ゼロ』で、 ンドゥールはドットを軽くいなすメイジかもしれない。しかし今だけは自分が 勝っている。がっしりと太い腕でつかまれていることは嬉しかった。頼りに されているという事実は彼女の劣等感を和らげた。 数時間後、街に到着したルイズたちは馬を預けて中へ入っていった。確かに 学院とは比較にならぬほど人がいるというの道幅も広くない。慣れているはず のルイズでさえ嫌な顔をしている。 「離れないでよね、ンドゥール」 「ああ」 仮にはぐれたところでルイズが声を出せばその位置をンドゥールが探り当てる ことができるのだが。二人はたいした目的もなかったので適当な店で果物を買い、 ベンチでそれを食すことにした。 一口かじると爽やかな甘みが広がる。そのおかげで疲労も軽減された。ルイズ はンドゥールに尋ねた。 「あんた、これを食べたことあるの?」 「ある。そんな滅多にではないが」 二人が食べたものは真っ赤に熟したりんごだ。 「最近は厨房の人間に分けてもらったことがある」 「は? なによそれ」 「シエスタを庇ったお礼だそうだ。あれから何度か賄いをわけてもらっている」 「ちょ、聞いてないわよそんなの! まるっきり餌付けじゃないの!」 「お前がまともな食事を与えんからだ。さすがに飢えは凌げるが、あれでは 栄養失調になってしまう」 「なによそれ。あたしが悪いの?」 「そうだ」 ルイズの心に亀裂が走った。 ああ、そのとおりだ。確かにまともな食事を与えようとしなかった自分が悪い。 でも、それなら一言ぐらいあってもいいじゃないのよ。 沸々と、静かにだが言いようのないものがこみ上げてきていた。怒りではない。 ルイズは立ち上がり、すっすと人ごみの中へ入っていった。 「どこへ行くのだ?」 「帰るのよ。一人で」 「なに?」 「だから帰るの。あんたは適当な人に頼んで送ってもらいなさい。どうせ一人 で馬にも乗れないんだから」 そういって彼女は走った。街の中央から入り口へと全力疾走した。が、体力は あまりなく人ごみを掻き分ける必要があるのですぐにばててしまった。 ルイズは店の壁に寄りかかり、深く息をついた。 別に本気で帰ってしまおうと思ってはいない。それでも、きっと一気に馬の ところにいけていたらさっさと街を出ていた。それぐらいの感情だった。 がやがやとした街の喧騒もどこか遠いもののように感じながら、彼女は空を 見上げた。白い雲と青い空の対照美が美しくあった。ふと、太陽が視界に入った ので眩しく感じ、目を閉じた。 色が消えた。 ざあと血の気が引く音をルイズは聞いた。 胸焼けが起こり、おもわず地にうずくまってしまった。彼女はようやくンドゥール が馬に一人で乗れない理由がわかった。既知の事実、目が見えないからだ。 聴覚がいくら常人離れをしていたところで、どうして暗闇を突き進むことが できるか。それも自分のものではなく獣の足で、すさまじい速度で。 無理だ。絶対に無理だ。 朝方に和らいだ劣等感は内側から破裂した。ルイズは己の小心さに恥と恨み に似た感情を抱いた。 生まれが特別だから貴族なのではない。貴族たる矜持と誇りをもつものこそが 貴族なのだ。 そんなこと耳が腐るほど母から言い聞かされていた。それなのに、自分は頼ら れるということに愉悦を感じていた。彼を人間的に『下に見てい』た。卑しい 喜びに震えていた。 いっそこの眼を潰してしまいたいとさえ思った。そうすれば四六時中暗闇に 居続けられる。しかし、それでもンドゥールが感じているものの十分の一に も届かないだろう。景色がすぐに思い描けるからだ。この記憶がある限り、 決してンドゥールの心の奥はわからない。 自己嫌悪で死にたくなった。 (なんであたしこうなのよ……) ルイズは街の中央に向かって歩き出した。進みは遅いが、着実にンドゥール と別れたベンチに近づいていった。が、人ごみが消えたとき、ルイズの頭の中 には困惑が広がった。 そこにはバンダナを巻き、コートを着て杖を持った巨漢はいなかった。 ンドゥールはいなかった。 周りを見ても群を抜いて背が大きいはずの姿が見えなかった。 冷や汗で背中がびっしょりとなった。本当に一人で帰ってしまったのかもしれ ない。けどそうじゃないかもしれない。 ルイズは深呼吸をし、恥を堪えて叫んだ。 そうすれば、気づいてくれる。 「ンドゥール! ここに来なさい!」 「なんだ?」 「んきゃあ!」 驚きのあまりルイズは地面に突っ伏した。それをンドゥールが見えない瞳で 見下ろしている。 「あ、あああ、あんた、いいいつからそこにいたのよ!」 「ついさっきだ。お前の様子がおかしかったのでな。後をつけた」 さっきと違い、ルイズは自分の顔が赤くなる音を聞いた。気恥ずかしいという 思いがあったが彼女はしゃんと立ち上がり、ンドゥールに向かい合った。 「なんだ?」 「………かったわよ。あんなこといって」 「なに? よく聞こえん」 「うそ言わないでよ! あんたの耳なら聞こえてるでしょ!」 「いや、発音が悪く――」 「うるさい! ほら行くわよ! どうせだからなんか買ってあげるわ!」 ルイズはゆっくりと歩きだす。 今度はンドゥールの前ではなく横だった。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1846.html
使い魔は引き籠り-1 使い魔は引き籠り-2 使い魔は引き籠り-3 使い魔は引き籠り-4 使い魔は引き籠り-5 使い魔は引き籠り-6 使い魔は引き籠り-7 使い魔は引き籠り-8 使い魔は引き籠り-9 使い魔は引き籠り-10 使い魔は引き籠り-11 使い魔は引き籠り-12 使い魔は引き籠り-13 使い魔は引き籠り-14 使い魔は引き籠り-15
https://w.atwiki.jp/saimoe09/pages/135.html
1位 158票 嵐山小夜子@夏のあらし! 2位 157票 神楽@銀魂 3位 155票 月島きらり@きらりん☆レボリューション 4位 146票 椎名観月@あかね色に染まる坂 5位 144票 寮長先生@まりあ†ほりっく 6位 134票 乱崎優歌@狂乱家族日記 6位 134票 スゥ@しゅごキャラ! シリーズ 8位 132票 島津由乃@マリア様がみてる 4thシーズン 9位 128票 パトリシア=マーティン(パティ)@らき☆すたOVA 9位 128票 杉乃歩@咲 -Saki- 11位 127票 宮永照@咲 -Saki- 11位 127票 九重りん@こどものじかん 2学期 13位 126票 カヤ@夏のあらし! 14位 123票 加賀愛@【獄・】さよなら絶望先生 15位 122票 春風千桜@ハヤテのごとく!! アツがナツいぜ 水着編! 16位 120票 北条國子@シャングリ・ラ 17位 117票 オクタヴィア@ティアーズ・トゥ・ティアラ 18位 116票 ケイコ@みなみけ おかえり 18位 116票 木原麻耶@とらドラ! 20位 115票 ユギリ・ペルセルテ@神曲奏界ポリフォニカ クリムゾンS 21位 113票 関内・マリア・太郎@【獄・】さよなら絶望先生 21位 113票 仙童紫@ロザリオとバンパイア CAPU2 23位 109票 黒崎朱浬@アスラクライン 24位 106票 獅子堂高嶺@宇宙をかける少女 〓〓〓〓〓ここまで本戦進出〓〓〓〓〓 25位 100票 リザ・ホークアイ@鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST 26位 96票 中務椿@ソウルイーター 26位 96票 長谷川千雨@魔法先生ネギま! ~白き翼 ALA ALBA~ 28位 94票 牧原イズミ@ケメコデラックス! 29位 92票 相坂さよ@魔法先生ネギま! ~白き翼 ALA ALBA~ 30位 89票 毛利蘭@名探偵コナン 31位 83票 ユズハ@OVA うたわれるもの 32位 80票 6号さん(鈴木さやか)@ぱにぽにだっしゅ! 特別話 33位 79票 ベホイミ@ぱにぽにだっしゅ! 特別話 34位 76票 ティア・グランツ@テイルズ オブ ジ アビス 34位 76票 コーネリア・リ・ブリタニア@コードギアス 反逆のルルーシュR2 34位 76票 絡繰茶々丸@魔法先生ネギま! ~白き翼 ALA ALBA~ 37位 74票 早乙女雀@ヒャッコ 38位 71票 赤木リツコ@ヱヴァンゲリヲン新劇場版 破 39位 70票 アネモネ@交響詩篇エウレカセブン ポケットが虹でいっぱい 39位 70票 アニア・フォルチュナ・ソメシェル・ミク・クラウゼンブルヒ(ニア)@アスラクライン 41位 69票 ミミ@Mnemosyne -ムネモシュネの娘たち- 41位 69票 月島若葉@クロスゲーム 41位 69票 弥海砂@DEATH NOTE ディレクターズカット完全決着版 リライト2 Lを継ぐ者 44位 68票 野田恵@のだめカンタービレ 巴里編 45位 67票 楠優愛@カオス;ヘッド -CHAOS;HEAD- 46位 66票 深堀純代@咲 -Saki- 47位 65票 尾形琳@RIDEBACK -ライドバック- 48位 63票 プチネウス@まかでみWAっしょい! 49位 62票 ナタリア・L・K・ランバルディア@テイルズ オブ ジ アビス 50位 60票 柴崎麻子@図書館戦争 50位 60票 メディア@ぱにぽにだっしゅ! 特別話 52位 59票 董卓(月)@恋姫†無双 53位 58票 山本芽@S・A ~スペシャル・エー~ 54位 57票 源しずか@ドラえもん 55位 54票 日奈森あみ(あむの妹)@しゅごキャラ! シリーズ 56位 53票 橘玲@ぱにぽにだっしゅ! 特別話 56位 53票 山神異月@屍姫 シリーズ 58位 51票 橘ミコト@あかね色に染まる坂 59位 47票 リムリス@ティアーズ・トゥ・ティアラ 60位 46票 朝比奈あかね@かのこん 61位 45票 ブレア@ソウルイーター 62位 43票 ヘナロ@ドルアーガの塔 ~the Sword of URUK~ 63位 41票 ツゲ・ユフィンリー@神曲奏界ポリフォニカ クリムゾンS 63位 41票 ホタル@夏目友人帳 63位 41票 柿崎美砂@魔法先生ネギま! ~白き翼 ALA ALBA~ 63位 41票 ミユキ・アユカワ@バスカッシュ! 67位 40票 柏木優奈@ぱにぽにだっしゅ! 特別話 68位 38票 ルリィ@ドラえもん 69位 31票 倉澤六夏@アスラクライン 70位 30票 瑠翁水薙生@屍姫 赫 71位 29票 エレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエール@ゼロの使い魔 ~三美姫の輪舞~ 72位 19票 木村@CLANNAD ~AFTER STORY~
https://w.atwiki.jp/saimoe09/pages/127.html
1組井上純@咲 -Saki- 1組野上葵@絶対可憐チルドレン 1組那波千鶴@魔法先生ネギま! ~白き翼 ALA ALBA~ 1組アリエッタ@テイルズ オブ ジ アビス 1組タナロット@まかでみWAっしょい! 1組佐野茜@黒神 The Animation 1組ムジャッキー=サーペント@狂乱家族日記 1組獅子堂桜@宇宙をかける少女 1組山吹祈里(キュアパイン)@フレッシュプリキュア! 1組周防美琴@スクールランブル 三学期 1組エリザベス@黒執事 1組財布を落とした少女@ハヤテのごとく!! 1組佐々木まき絵@魔法先生ネギま! ~白き翼 ALA ALBA~ 1組塚本八雲@スクールランブル 三学期 1組孫尚香(小蓮)@恋姫†無双 1組平川ナツミ@今日の5の2 1組祇堂静珠@まりあ†ほりっく 1組モルガン@ティアーズ・トゥ・ティアラ 1組佐藤聖@マリア様がみてる 4thシーズン 1組ニア・テッペリン@劇場版 天元突破グレンラガン 紅蓮篇/螺巌篇 1組ラスティ@ティアーズ・トゥ・ティアラ 1組ポニョ@崖の上のポニョ 1組長瀬楓@魔法先生ネギま! ~白き翼 ALA ALBA~ 1組霞愛歌@ハヤテのごとく!! アツがナツいぜ 水着編! 1組柏木優麻@ぱにぽにだっしゅ! 特別話 1組Juiz(ジュイス)@東のエデン 1組武嶋蔦子@マリア様がみてる 4thシーズン 1組美墨なぎさ(キュアブラック)@映画プリキュアオールスターズDX みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合! 1組みさと先輩@ひだまりスケッチ×365 1組カーヤ@ドルアーガの塔 ~the Sword of URUK~ 1組スージー・エヴァンス@戦場のヴァルキュリア 1組恋ヶ窪ゆり@とらドラ! 1組藤吉晴美@【獄・】さよなら絶望先生 1組星乃結美@キミキス pure rouge 1組リディア@伯爵と妖精 1組夏目@ひだまりスケッチ×365 1組久保貴子@咲 -Saki- 1組柊@夏目友人帳 シリーズ 1組ミレイ・アッシュフォード@コードギアス 反逆のルルーシュR2 1組澤倉美咲@WHITE ALBUM 1組藤田靖子@咲 -Saki- 1組乱崎凶華@狂乱家族日記 1組住之江りこ@Kiss×sis 1組パティ・トンプソン@ソウルイーター 1組糸色倫@【獄・】さよなら絶望先生 1組仁科りえ@CLANNAD ~AFTER STORY~ 1組クロ@黒神 The Animation 1組伊藤伸恵@苺ましまろ encore 1組咲畑梨深@カオス;ヘッド -CHAOS;HEAD- 1組スメラギ・李・ノリエガ@機動戦士ガンダム00 1組津山睦月@咲 -Saki- 1組華園光@S・A ~スペシャル・エー~ 1組中杉小夜香@鉄腕バーディー DECODE シリーズ 1組夏目レイコ@夏目友人帳 シリーズ 1組ユギリ・プリネシカ@神曲奏界ポリフォニカ クリムゾンS 1組南極さくら@ペンギン娘はぁと 1組風花@セキレイ 1組夏木りん(キュアルージュ)@Yes! プリキュア5GoGo! 1組リーリン・マーフェス@鋼殻のレギオス 1組真城りま@しゅごキャラ! シリーズ 1組蒼井ミナモ@RD 潜脳調査室 1組吉田歩美@名探偵コナン 1組荀彧(桂花)@恋姫†無双 1組日向ヒナタ@NARUTO -ナルト- 疾風伝 1組五月七日小羽@xxxHOLiC 春夢記 1組篠崎咲世子@コードギアス 反逆のルルーシュR2 1組エーネウス@まかでみWAっしょい! 1組日高メグミ@今日の5の2 1組速瀬水月@君が望む永遠 ~Next Season~ 1組セシル・クルーミー@コードギアス 反逆のルルーシュR2 1組アニエス・シュヴァリエ・ド・ミラン@ゼロの使い魔 ~三美姫の輪舞~ 1組リリア(リリアーヌ・アイカシア・コラソン・ウィッティングトン・シュルツ)@アリソンとリリア 1組両儀式@劇場版 空の境界 the Garden of sinners
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9123.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第三十八話「狙われない少女」 電脳魔人デスフェイサー 四次元ロボ獣メカギラス ロボ怪獣メガザウラ 侵略変形メカ ヘルズキング カプセル怪獣ウインダム カプセル怪獣ミクラス 反重力宇宙人ゴドラ星人 サーベル暴君マグマ星人 異次元宇宙人イカルス星人 憑依宇宙人サーペント星人 登場 ある日突然現れた、マグマ星人ら宇宙人連合に狙われる地球人の少女、春奈を保護した才人とルイズ。 それから連合の刺客を撃退する日々を過ごしている中で、二人はアンリエッタにトリスタニアへと招集される。 実はトリスタニアの街の修理工に宇宙人連合の工作員が混じっていることが発覚したのだが、時既に遅し。 侵略者の作戦は発動し、トリスタニアが強力なロボット怪獣軍団の襲撃を受ける事態になってしまった。 すぐにウルティメイトフォースゼロが出動したが、そこに出現したのが、ネオフロンティアスペースで造られた 最強ロボットのデスフェイサー。デスフェイサーの圧倒的な力の前にゼロは惜敗。更に別働隊の宇宙人たちに 魔法学院が制圧されてしまった! トリステインそのものにもレコン・キスタの魔の手が迫る中、才人とルイズは 学院の仲間たちを救うために、一路魔法学院を目指すこととなった……。 「くッ……!」 ロボット怪獣のトリスタニア攻撃の翌朝。学院へと続く森の中の一本道を走る馬の上で、 才人が苦しそうに脇腹を抑えた。昨日はゼロに変身している時に、デスフェイサーに叩きのめされた。 そのダメージが才人の身体にも影響しているのだ。ウルトラ族の超回復能力で、ひと晩でかなり 回復したが、それでもまだダメージが残っている。 「サイト、大丈夫!?」 脂汗を浮かべる才人に、並走しているルイズが案じて呼びかけた。 「あ、あぁ……。このくらい、平気さ」 才人は努めて明るい声を出すが、顔を見れば、無理をしているのが明らかだった。それで ルイズはますます心配する。 「やっぱり、傷が治り切ってないんじゃない。こんなに飛ばしてたら響くでしょう。急がなきゃいけないのは 分かるけど、せめて、もう少しスピードを落としたら……」 と気遣うが、才人は頑なに断った。 「駄目だ。今こうしてる間にも、学院のみんなが危ないかもしれないんだ。何より……学院には 春奈を残してる!」 春奈の名前が才人の口から出ると、ルイズは密かに眉をひそめた。 「宇宙人たちはどういう訳か、ずっと春奈を狙ってた。春奈が一番危ないんだ。あいつが 何かされる前に、何とか助けないと……!」 「……そうね……」 口では同意するものの、ルイズは才人に心配され続ける春奈に、こんな時でも嫉妬した。 (サイトの馬鹿……。気持ちは分かるけど、今隣にいる、あんたのご主人様のことを少しは考えなさいよ……) 「どの道、宇宙人たちを追い払わなきゃ、トリステインは救われないんだ。モタモタしてる暇はない」 才人はルイズの気持ちを少しも察せず、彼女の嵌めている『水のルビー』の指輪を通して ミラーナイトに尋ねかけた。 「ミラーナイト、本当に侵略者たちは学院を制圧したんだな?」 『ええ。鏡越しに偵察して確かめました』 ルビーからミラーナイトが肯定した。 『リーダーはマグマ星人。トリスタニアに出現したイカルス星人の姿もありました。学院の各地には、 エビ型の宇宙人が多数配置されています』 『ゴドラ星人だな……親父から聞いてるぜ』 ゼロがエビ型という特徴から言い当てた。 「みんなはどうなってる? 春奈は? シエスタとか、キュルケたちは?」 『ほとんどは食堂に集められて見張られています。シエスタはジャンボットが誘導して逃がしたようですが、 ハルナは……すみませんが、確認できませんでした。あまり踏み込めば、鏡越しでも敵に気取られる危険が ありますので。申し訳ございません』 肝心の春奈の安否を突き止められずに謝罪するミラーナイト。 「いいんだ。それより、もうすぐ学院だ。どこか、敵に気づかれずに入り込めそうな場所を教えてくれ」 森を抜けて、いよいよ学院が見えた。これから乗り込もうとする才人とルイズなのだが、 その時に突然二人を地揺れが襲う。 「きゃッ! な、何!? 敵!?」 地揺れに驚いて、馬が足を止めてしまう。そしてルイズたちの正面の大地が突然裂け、 下から目下の最強の敵、デスフェイサーがせり上がってきた! 「し、しまった! 俺たちを待ち伏せしてたのか!」 進行方向をデスフェイサーに遮られた才人とルイズは横にそれようとしたが、左右と背後も、 はるか上空や異次元から出現したメカギラス、メガザウラ、ヘルズキングに塞がれてしまった。 「キィ――――――!」 「ギャアアァアアアアァ!」 「ゴオオオオオオオオ!」 「ま、まずいわ! 逃げ場がない!」 四方をロボット怪獣たちに囲まれて、ルイズらは立ち往生する。しかし、すぐに二人の仲間が 助太刀に駆けつけてくれた。 『はぁぁぁッ!』 『ジャンファイト!』 『テメェらー! リターンマッチさせてもらうぜ!』 ルビーの輝きからミラーナイト、空の彼方からはジャンボットとグレンファイヤーがやってきて、 メカギラス、メガザウラ、ヘルズキングにぶつかって食い止めた。だがまだデスフェイサーが残っている。 才人は学院を乗っ取った宇宙人と戦わなくてはいけないので、ゼロに変身することは出来ない。 「こんな時は……行けウインダム! ミクラス!」 そのため才人はデスフェイサーの前にカプセル怪獣を召喚した。それも今回は二体だ。 「グワアアアアアアア!」 「グアアアアアアアア!」 カプセルから解き放たれ、大地に立ったウインダムとミクラスは、即座にデスフェイサーに 向かっていってその両腕にしがみつき、進行を抑え込む。 「頼んだぞ、ウインダム、ミクラス!」 「早く行きましょう! みんなの頑張りを無駄には出来ないわ!」 仲間たちが足止めをしてくれている間に、才人とルイズは戦場をすり抜け、学院へと急いだ。 『さっきミラーナイトから侵入口を聞いた! 俺が誘導するぜ!』 そしてゼロの導きにより、二人は学院の内部への侵入を決行した。 トリステイン魔法学院は、多くのメイジ、つまり貴族の子息が集まる教育機関。そのため、 彼らを狙うテロリストへの対策がいくつも用意されている。その一つが、噂ではコルベールが 密かに利用しているという地下の隠し通路。そこはマグマ星人たちの目を逃れていた。 そして才人たちはそこを通り、無事に学院内への侵入に成功した。 『……よし、敵はまだ俺たちの侵入には気づいてないみたいだ』 校舎内の廊下に忍び込むと、ゼロが超感覚を働かせて近くの敵の有無を調べた。それから 才人とルイズに告げる。 『その辺にいる奴らをいちいち相手してたら、人質に危険が及びかねない。ここは一気に 首謀者のマグマ星人のところまで行くぞ。ミラーナイトの話じゃ、学院長室を占拠してるみたいだ。 まずはそこまで……』 話の途中で、廊下の先から、二人分の足音がコツコツと響いてきた。 「誰か来るわよ! 敵じゃない!?」 『いや、これはゴドラ星人の足音じゃない……。こいつは……』 ルイズたちの元に歩いてきたのは、キュルケとタバサの二人組だ。すぐに才人が呼びかける。 「キュルケ、タバサ! お前たち、無事だったんだな!」 二人に近寄ろうとするが、それをデルフリンガーに制止された。 「近づくな相棒! 何だか様子が変だぞ。……妙な魔法の気配がしやがる」 「魔法ですって!?」 驚くルイズと才人に向けて、キュルケとタバサは杖を向け、炎と氷の魔法で攻撃してきた! 「うわぁッ!?」 才人は咄嗟にデルフリンガーを盾にして、魔法を吸収した。だがキュルケたちは前に乗り出し、 更に激しく魔法を飛ばしてくる。才人はルイズをかばいつつ、どうにか攻撃をしのぐ。 「くッ、どういうことだ!? どうして二人が俺たちを攻撃するんだ!」 「きっとウェールズ殿下みたいに、魔法で操られてるのよ! 敵にメイジが混じってるんだわ!」 「二人に反撃する訳にはいかないし……ルイズ、『ディスペル』を頼む!」 魔法を解く『ディスペル』を詠唱し出すルイズだが、その途端にキュルケとタバサは攻め手を より強めて、爆発の衝撃で詠唱を妨害した。 「きゃッ! これじゃ『虚無』が使えないわ!」 狭い廊下では、ルイズを二人の攻撃の届かないところまで逃がすのは無理がある。どうしたものか、 と才人が下唇を噛み締めていると、ゼロが申し出た。 『才人、一瞬だけ俺に代わってくれ。ウルトラ念力で二人を止める!』 「え? でも、一瞬だけ止めても意味ないんじゃ……」 『説明してる暇はない! とにかく、俺に任せてくれ!』 ゼロがそう頼むので、才人はその通りに従った。意識が表面に出たゼロは、即座に精神を 集中させてウルトラ戦士共通の超能力、ウルトラ念力を発動する。 「むんッ!」 目に見えない力がキュルケとタバサの身体を縛り、一瞬だけ完全に動きを停止させた。その瞬間、 「今だシエスタ君! 行くぞッ!」 「えーいッ!」 曲がり角の陰からコルベールとタバサが飛び出し、キュルケとタバサの耳に耳栓を嵌め込んだ。 すると二人がガクリと崩れかけ、すぐに目に光を宿して起き上がる。 「あ、あら? どうしてルイズがいるの? アタシたち、どうしてたのかしら……?」 「確か……敵と戦ってて……そこから、記憶がない……」 「ミスタ・コルベール!? シエスタまで! これってどういうこと?」 突然現れたコルベールたちの姿に、ルイズと才人は驚愕する。いささか混乱する二人に、 シエスタらが状況の説明をする。 「順を追って説明しますね。お二人が王宮に向かった昨日、学院をウチュウ人たちが占領しました。 わたしはジャ……いえ、運良く魔の手から逃れて、コルベール先生に助けてもらいました」 「わたしは今、侵略者から学院を取り返そうと動いてるところだ。その途中で騒ぎを聞きつけ、 この場に出くわしたという訳だ」 続いて、キュルケの説明。 「アタシも同じよ。タバサと一緒にウチュウ人たちと戦ってたんだけど、そこに誰が現れたと思う? ウェザリーよ! ウェザリーは侵略者の、レコン・キスタの仲間だったの!」 「ウェザリーが!?」 意外な名前を耳にして、仰天するルイズと才人。 「まぁアタシは演劇してた時から、彼女が怪しいと思ってたけど。劇団ということを差し引いても、 ウェザリーの周りには怪しい奴らの影が見え隠れしてたから。結局、後手に回っちゃった訳だけど……」 「ウェザリーが現れてから……記憶が一切ない。きっと、彼女の催眠魔法。それも、一般の 社会に伝わってない、独特なもの。わたしたちは、それにやられてしまった……」 「で、ミスタ・コルベールたちが耳栓をしたら、元に戻ったのね」 タバサの説明で、ここまでの状況を納得するルイズ。 「でもミスタ、よく敵の魔法の正体が分かりましたね。それも、耳栓で解けるなんて」 「いや、わたしが暴いたんじゃないよ。先に敵がオールド・オスマンを操ろうとして失敗したことで、 学院長が突き止めたんだ。それを学院長の使い魔のモートソグニル越しに、対抗策も含めてわたしに 教えてくれたんだ。耳栓には特殊な風の魔法を掛けてるから、一時的に催眠魔法を無効化する。 君たちもつけていきなさい」 ルイズと才人はコルベールから耳栓を受け取り、耳に嵌めた。その直後に、廊下の奥から ゴドラ星人の集団がこちらに向かってきた。 「いかん、今の騒ぎで敵に気づかれてしまった! 戦いは嫌いだが……やむをえん、ここは わたしが食い止める。ミス・ヴァリエールとサイト君は、学院を解放しに来たんだろう? 敵のリーダーがいる、学院長室に急いでくれたまえ!」 「不死身のダーリンなら、ウチュウ人たちをやっつけてくれるわよね。学院をお願いするわね!」 「わたしたちは、ミスタ・コルベールと時間稼ぎをする」 「分かった! ありがとう!」 シエスタは戦う力がないので避難しようとするが、その前に一つだけ、才人たちに伝えた。 「ハルナさんのことですが、わたし、ハルナさんが学院長室に連れてかれるのを見ました! 早く行ってあげて下さい!」 「本当か!? あぁ分かった、春奈は絶対救い出す! シエスタも気をつけてな!」 コルベールらがゴドラ星人の足を止めている内に、才人とルイズは学院長室への階段を 急いで駆け上がっていった。 「グワアアアアアアア!」 「グアアアアアアアア!」 学院の外では、カプセル怪獣にウルティメイトフォースゼロが、ロボット怪獣軍団に苦戦していた。 ウインダムはデスフェイサーのシザーアームに首を締め上げられ、ミクラスはガトリングガンの連射を 食らって横転した。 「キィ――――――!」 『ぐぅッ!』 ミラーナイトは次元移動で背後に回ったメカギラスに側頭部を強かに殴りつけられる。 「ギャアアァアアアアァ!」 『ぬおおおおッ!』 ジャンボットはメガザウラの大火力に拘束される。 「ゴオオオオオオオオ!」 『ぐはぁッ!』 グレンファイヤーはヘルズキングのパンチに見せかけたビーム砲の近接射撃を食らい、 吹っ飛ばされた。 『くぅッ……ゼロ、急いで下さい……!』 敵に翻弄される中で、ミラーナイトがゼロたちに向けてつぶやいた。 「うりゃあーッ! だりゃあッ!」 才人は移動の途中、あちこちから飛び出てくるゴドラ星人を斬り捨て、またはゼロアイのビームで 撃って返り討ちにしながら、道を突き進んでいった。ルイズはその後に続く。 「サイト、すごい……」 破竹の勢いで敵を蹴散らす才人に驚嘆するルイズだが、彼が頑張る理由が春奈にあると 意識すると気分が沈む。それを慌てて払いながら、才人についていった。 そしてほどなくして二人は、学院長室にたどり着いた。才人はすぐに扉を蹴破り、中に踏み込む。 『おいおいおいおいッ! 地球じゃノックは足でするもんなのかぁ!?』 『イカカカカカ! デスフェイサーを相手にしてひと晩で、ここまで来られたのは褒めてやろうじゃなイカ! イカカカカカカ!』 中で二人を待っていたのは、マグマ星人とイカルス星人に、ゴドラ星人が一人。そして、壁際にウェザリー。 「ウェザリー! 本当に、宇宙人たちの味方に……!」 「ウェザリー! どうしてそいつらに肩入れしてるの! そいつらがどういう連中か分かってる訳!? わたしたち人間の敵なのよ!」 ルイズが詰問したが、ウェザリーは何も答えず、黙ったままたたずんでいた。 そして学院長室の床には、気絶した春奈が倒れていた。 「春奈! お前ら、春奈に何かしたんじゃないだろうな!?」 才人が怒りを露わに、宇宙人たちを問い詰めると、ゴドラ星人が肩を上下に揺らしながら答えた。 『クックックッ……どうだろうなぁ『イカカカカカ!』? 自分の目で、その娘が『イカカカカカカカ!』 どんな状態か、確かめてみたらどうだ『イーカカカカカカカカカ!』うるさいぞイカルスッ!』 しつこく笑い続けて台詞を妨害するイカルス星人に憤怒するゴドラ星人。そんなものは放置して、 才人は宇宙人たちを警戒しながら春奈を抱き寄せる。 「春奈! 春奈! 大丈夫か!?」 『完全に気絶してるな……だが、命に別状はないみたいだ』 ゼロが春奈の容態を診察した。ウェールズなどの前例があるので、敵の変身や懐に怪獣を 潜ませているかも調べたが、そんな様子はなかった。 しかしだとすると、分からないのが、何故敵があれだけ執着した春奈をこうもあっさり返したかだ。 才人が春奈を背後に寝かせると、ゼロはマグマ星人らに問う。 『そろそろ教えてもらうぜ。お前ら、どうして春奈をこの世界にさらってきた。そして今は、 何をしようっていうつもりだ?』 『クックックッ……』 『イカカカカカカカ!』 するとマグマ星人たちは意味ありげにこちらを嘲笑する。ゼロたちが怪訝に思っていると、 マグマ星人が言いつけた。 『そいつは、後ろのそいつに直接聞いてみることだなぁ!』 『何だと……!?』 背後から突如殺気を感じて、才人は慌てて振り返った。だが、その時にはもう遅かった。 「がはぁッ!?」 「サイトぉッ!?」 才人は振り向いた瞬間に、胸に青白い怪光線を食らい、床に大の字に倒れ込んだ。 「ふふふふふ……」 才人に怪光線を撃ち込んだのは、春奈だ。ルイズは絶句した。 「は、ハルナ! 一体どうしちゃったの!?」 「私は、高凪春奈ではない。M9球状星雲からやってきた、サーペント星人だ」 春奈がポケットから取り出した銀色のカプセルが、手の平の上で溶ける。その溶液が春奈の 全身を包み込んで、銀色の甲冑を身に纏ったような宇宙人の姿に変貌させた。 『ただし、身体は高凪春奈のものだがね。私は憑依能力を持つ種族なのだよ』 「ひ、憑依!?」 『そういうことだったのか……!』 ルイズが愕然とし、ゼロは宇宙人連合の作戦をようやく理解した。 マグマ星人たちは、春奈を狙っていたのではない。その振りをして、サーペント星人を 取り憑かせた彼女を、この瞬間のために才人に近づけるのが目的だったのだ。肉体は間違いなく 地球人のものなので、ゼロの目を以てしても正体を見抜くことは出来なかった。しかしゼロは悔やむ。 『くっそ、どうして気づかなかったんだ……! ヒントはあったじゃねぇか……! ウルトラマンゼロ、 一生の不覚だぜ……!』 サーペント星人は肉体の90%以上が水分で出来た生命体。そのため乾燥に非常に弱く、 憑依された者は頻繁に水を飲むようになる。思い返せば、春奈は病から回復してからも、 事ある毎に水分を補給していた。それが、サーペント星人が身体の内に潜んでいる証だったのに……。 『ヒャーハッハッハッハッ! 気づくのが遅すぎるぜぇウルトラマンゼロッ!』 不意打ちを食らって立ち上がれなくなった才人とゼロの姿に、マグマ星人たちは堰を切ったように 馬鹿笑いを上げた。マグマ星人は計画の全容を暴露する。 『その娘は、ウルトラマンゼロ、テメェを確実に抹殺するための駒だったのさ。知らない世界に 放り出された、悪い侵略者につけ狙われる哀れな少女を、お人好しのウルトラマン様は放っとかないだろう? より同情を誘うために、わざわざその身体の知り合いを選んだんだぜ。そして油断し切ったところを、 後ろからバッサリ! 全て上手く行った! 連戦の上に深刻なダメージを受けて、もうまともに動くことも 出来ねぇだろう! いいザマだぜぇ!』 「そ、それなら、ハルナへの刺客は何だったの!?」 ルイズが疑問を口に出すと、マグマ星人はヘラヘラ笑いながら答えた。 『追っ手がなけりゃ怪しまれるだろうからなぁ。それも演技の内だったんだよ。もっとも、 追っ手自体にゃこのことを教えてなかったがね。真剣に娘を狙ってもらわなきゃ、偽装が バレかねないからな』 「た、たったそれだけのために、仲間を平気で犠牲にしたってことか……! ゆ、許せねぇ……!」 あまりの卑劣振りに怒りに燃える才人だが、ダメージが大き過ぎて、立ち上がることすら出来なかった。 そしてその腕を、サーペント星人が踏みつける。 「ぐぁッ!」 『無駄なあがきはよせ。貴様はもう完全に終わりだ。助かる可能性は全て潰した』 ルイズは才人を踏みにじるサーペント星人に杖を向ける。 「卑怯者! サイトから離れなさいッ!」 だが杖先が震える。サーペント星人の肉体は春奈のものなのだ。傷つけることなど出来ない。 そして躊躇っている内に、サーペント星人に殴られて倒れ込んだ。 「きゃああッ!」 「ルイズッ!」 『サーペント星人! 物のついでだ、そのガキもあの世に送ってやりな!』 と命令するマグマ星人に、ウェザリーが初めて口を開いた。 「待って。あなたたちの目的は、サイトを仕留めることまででしょう? 何も彼女を道連れに する必要はないじゃない」 そう言って、マグマ星人たちを止めようとする。 「それより、私との約束を果たしてちょうだい。私と私の家を迫害した、トリステインへの復讐を……」 『うるさいじゃなイカ! 女ぁッ!』 だがその瞬間に、イカルス星人が手の平から放ったアロー光線によって壁に叩きつけられた。 「あぁぁッ!?」 「なッ!? 何を……!」 宇宙人たちの暴挙に目を剥く才人とルイズ。マグマ星人は倒れたウェザリーに、冷酷に告げる。 『ウェザリー、お前はスパイとしてなかなか役に立った。だが下等種族の出番はもう終わりだ。 なぁに、心配するなよ。復讐の代行はちゃんと果たすぜ。元より、この星の原住民は皆殺しに するつもりなんだからな! お前も含めてッ!』 「ぐッ……それが本性だったのね……!」 歯ぎしりするウェザリー。しかし彼女ももう立ち上がれなくなってしまった。 「グワアアアアアアア!」 「グアアアアアアアア!」 更に外からは、ウインダムとミクラスの悲鳴が上がった。デスフェイサーを抑えていた二体だが、 とうとう敗れてしまった。二体が仰向けに倒れ、障害のなくなったデスフェイサーは学院の校舎に接近する。 「くっそぉ……! もう、本当にここまでなのか……!?」 自分もルイズも倒れ、春奈の身体は人質にされ、外も中も敵しかいない。一切の希望が見えない 最悪の状況に、才人は悔しがって大きな歯ぎしりを立てた。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9352.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第百十一話「永遠(とわ)なるイーヴァルディ」 邪悪生命体ゴーデス 迷子珍獣ハネジロー 登場 ルイズの“虚無”の魔法の力を目の当たりにして、一旦は飛んで去ろうとしたビダーシャル。 しかし眼下のアーハンブラ城が突然崩壊し、巨大生物が出現したことには、普段は冷徹なほど 落ち着いている彼も唖然とさせられた。 「な、何だあれは……」 風石の力で高度を保ったまま、巨大生物――ゴーデスを観察する。城を下から破壊して 出てきたということは、城の地下に潜伏していたということだろう。あんな巨大なものが。 「全く気がつかなかった……一体いつから……」 思案するビダーシャル。エルフである自分は、自然そのものといえる精霊の力と契約して、 その「声」を聞くことが出来るが、真下にあんなものが隠れていたということは、精霊は教えて くれなかった。いや、精霊もあの存在を感じ取れなかったのか。 大地の精霊に問えば、近くに怪獣が潜っていればすぐに分かる。その精霊でも感知できなかった ような異常な怪物が、自分の戦いのすぐ後に出現した。これは偶然だろうか? ふとビダーシャルの脳裏に、才人が叫んだ「ガリアは怪獣を操っている」という言葉がよみがえった。 「……」 冷や汗を流しながら、ビダーシャルはゴーデスの触手が届かないくらいの距離の地点に降下していった。 「ひいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃッ!!」 ギーシュ、マリコルヌ、モンモランシーの三人が自分たちの面前にそそり立つ巨大な怪物、 ゴーデスを見上げて悲鳴の合唱を上げた。これまで幾度も怪獣を見てきた彼らであるが、 この距離はものすごく危険だ。ゴーデスが少し触手を伸ばせば、彼らなど簡単にペシャンコに 出来るだろう。 「タバサ! タバサはどうなったの!?」 一方でキュルケは、あくまで友のことを案じ、狂ったように叫んでいる。それにウェザリーが、 ゴーデスにおののきながら答えた。 「さっきの兵士たちは、あの怪物の肉の中に呑み込まれていったわ。ということはタバサと 彼女の母親も同じように……」 「そんなッ! タバサたちは無事なの!?」 「そこまでは分からないわ!」 ゴーデスは触手の一本を振り上げ、キュルケたちに叩きつけようとする! 「ゴオオオオオオ……!」 「この怪物ッ! タバサを返しなさい!」 ゴーデスに杖を向けるキュルケだが、ウェザリーがそれを慌てて抑えた。 「落ち着きなさい! 敵うはずがないわ!」 「逃げろぉぉッ!」 才人の絶叫を合図に、一同はクルリと反転して全速力で逃走し始めた。直後に、彼らのいた 場所に触手が叩きつけられる。 しかしゴーデスのサイズに対して、才人たちはあまりに小さい。どんなに走ったところで、 すぐに追いつかれてしまう。そこで才人はルイズをギーシュとマリコルヌに押しつけた。 「ルイズを頼む!」 「頼むって、きみは!?」 「俺は奴の気を引きつける! その間に逃げてくれ!」 言うが早いや、才人は再び反転して、デルフリンガーを握り締めてゴーデスに突っ込んでいく! 「うおおおおおおッ!」 「ああッ!? な、何て無茶をッ!」 ギーシュたちが止める間もなく、才人はゴーデスの左側へ回り込むように駆けていく。 ゴーデスはそちらに顔を向けて、ギーシュたちから目を離した。 「くッ、彼の献身を無駄にしてはいけない! みんな、全力で逃げるんだぁ!」 才人が気を引きつけている間に、出来るだけ遠くへ逃げようと必死に足を動かすギーシュたち。 だが、囮となった才人に触手が無慈悲に振り下ろされた! 「あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!! さ、サイトぉぉぉぉぉぉぉッ!!」 絶叫する仲間たち。ゴーデスは再び目を彼らに向け、触手を伸ばしてきた。まだその間合いから 逃れられてはいない。 「も、もう駄目だぁぁぁぁぁッ!」 どう考えても逃げるのは間に合わない。絶望するマリコルヌだが、その時に空の彼方から 猛スピードで飛んでくる一つの影が。 「きゅいーッ!」 「あれは! シルフィードぉ!」 シルフィードであった。宿で待機していたのだが、異常を察知したことで怪我を押して 助けに来てくれたのだ。 ギーシュたちは全員シルフィードの背に乗り、シルフィードは飛翔。間一髪のところで ゴーデスの触手から逃れられることが出来た。 「あ、危なかった……」 「でも、サイトがッ!」 モンモランシーが叫んだその時、ゴーデスの正面に人型の何かがぐんぐんと巨大化して立ちはだかった。 「セェアッ!」 「あぁッ! ウルトラマンゼロだぁッ!」 それはウルトラマンゼロ! 才人はすんでのところで変身を行い、難を逃れていたのだ。 「デヤッ!」 「グギャアアアアアアアッ!」 これ以上の狼藉は許さないと、戦いの構えを取るゼロ。対するゴーデスも全部の触手を振り上げ、 ゼロを迎え撃つ姿勢を見せた。 『くッ、まさかとは思ったが、ホントに出てきやがるとはな……ゴーデスッ!』 ゼロはゴーデスの出現に内心おののいていた。彼はかつてゴーデスと、宇宙の命運を懸けて 戦い合ったウルトラマングレートからどういう生物なのかを聞いていた。 あらゆるエネルギーを食らい、細胞は別の物質や生命体に憑依、融合することが出来る。 ゴーデスはその能力で次々に怪獣を生み出し、最終的には宇宙の全てをその身に取り込んで しまおうとしたという。そこらの怪獣、宇宙人とは格が違う強大な相手だ。 『だがどうも様子が妙だな……生気を感じねぇぜ』 ゼロには一つ、疑問があった。ゴーデスは知能レベルも高く、グレートと対等に対話をしたと 聞いている。だが今目の前にいるのは、ひと言も言葉を発しないどころか身体に活力が今一つ 感じられない。まるで誰かに動かされているよう……ゾンビか何かのようであった。 「グギャアアァァァッ!」 ゴーデスは両眼から赤いレーザーを発して、様子を窺っているゼロに攻撃を仕掛けてきた! 『ちッ、気にしてる暇はねぇか!』 咄嗟にレーザーをかわしたゼロは、拳を握り直してゴーデスを迎え撃つ姿勢を取り直した。 そこに才人が問いかける。 『ゼロ、タバサたちがどうなったか分からないか!?』 『ちょっと待ちな……!』 ゼロが透視を使った結果、ゴーデスの体内にたくさんの人の影があるのを確認した。その内の一つが、 体格からしてタバサだとゼロは判断した。 『やっぱり、ゴーデスの中に呑み込まれちまってるぜ! まだ生きてはいるみたいだが、 早くどうにかしねぇとどうなっちまうか分かったもんじゃねぇ……!』 「ゴオオオオオオオオオ……!」 ゴーデスが振り回してくる触手を打ち払うゼロ。 「シェアァッ!」 反撃にエメリウムスラッシュを発射。ゴーデスの胴体の中心に命中するが、ゴーデスに 効いた様子は全くない。……いや、そのエネルギーが吸収されてしまったようだった! 「グギャアアアアアアアアアッ!」 「ゼアッ!」 ゴーデスのレーザーを拳で弾きながら懐に飛び込み、拳打を繰り出す。しかしいくら打ち込んでも、 これもまるで手応えがなかった。 ゴーデスは衝撃まで吸収できるようであった。 「テェェェェヤッ!」 一足飛びで下がったゼロはワイドゼロショットを撃ち込んだ。だがこれも効果が見られなかった。 『何て奴だ……攻撃のエネルギーを全て吸収しちまってる! 攻撃が効かねぇんじゃ倒しようがねぇぜ!』 驚愕するゼロ。あらゆるエネルギーを食らう、というのが伊達ではないことを見せつけられた。 このままでは、時間が経つほどに追いつめられるだけだ。 『それにただ倒すだけじゃなく、タバサたちを奴の内部から救い出さねぇと……』 『大丈夫なのか、ゼロ!』 『ああ、こういう時に有効な手が一つあるぜ』 そう言ったゼロは、才人に尋ねかけた。 『だがかなりの危険がある。才人、お前にもつき合わせることになるが、覚悟はいいか?』 それに才人は即答した。 『タバサが助けられるのなら、何だって怖くないぜ!』 『へッ、今更だったな。よぉしッ!』 ゼロはウルティメイトブレスレットから青い光を発し、ルナミラクルゼロに変身した。 『才人たちが命を懸けて戦ったんだ! 俺も命懸けるぜッ!』 そしてゼロは地を蹴って宙に浮き上がり、ゴーデスめがけまっすぐ飛んでいった! 「ゴオオオオオオオ……!」 ゴーデスは青い怪光を放ち、ゼロを球形のバリアの中に閉じ込める。しかしゼロはそのまま 飛んでいき、ゴーデスに突っ込んだ! その結果、ゼロがゴーデスの体内に消えていった。 「うわあああああ―――――――! ゼロまでが奴に呑み込まれてしまったぁぁぁぁッ!」 ギーシュたちは絶望の悲鳴を発す。が、キュルケとウェザリーはゼロの行動をしっかりと観察していた。 「いえ、むしろ自分からあれの体内に入っていったようだったわ……」 ゼロがゴーデスの体内に消えると、ゴーデスの動きがピタリと止まった。 キュルケの言った通り、ゼロはルナミラクルの超能力で自分からゴーデスの内部に入り込んだのだった。 外からではどうしても倒せないゴーデスを内部から突破し、同時にタバサたちを救出する。奥の手の パーティクルナミラクル作戦だ。 『ぐぅッ! 何て圧力だ……!』 だがゴーデスは内側もそう簡単にはいかなかった。内部にはゴーデスの吸収したエネルギーが 充満しており、それがすさまじい圧力を生じている。ウルトラ戦士の強靭な肉体でも苦しいほどであった。 更には、怪獣の幻影がゼロに襲いかかる。 『キイイィ! キイイィ!』 『グギュウウウウウウウウ!』 『なッ!? こいつらは……うおぉッ!』 キングザウルス三世とシルバゴンの幻影がゼロに食らいついてきて、彼の精神力にダメージを与える。 『ギャアアァァァ――――!』 『パア――――――オ!』 更にアイロス星人、トドラ、ベル星人、ヴァリエル星人の幻影が押し寄せてきて、ゼロに激突した。 『ぐぅあああッ!』 これらの幻影は、ゴーデスが怪獣たちに最も接してきたタバサの記憶を読み、再現したものであった。 タバサが苦しんできた記憶が今、ゼロにも牙を剥いて彼を苛んでいるのだった。 『キュオォ――――――――!』 『キュウッ! アァオ――――――――ッ!』 『ブモォ――――――――!』 『くっそ! このぉッ!』 キュラノス、ガーゴルゴン、カウラの幻影にゼロは拳を突き出して反撃する。だがこの怪獣たちは あくまで幻影。そんなことをしても君が傷ついていくだけだ! 『ギャアオオオオオオウ! オオオオウ!』 『キャア――――!』 『ぐぅッ……! こんなことしてる場合じゃねぇってのに……!』 テレスドンと再生ドラコの幻影に押し込まれ、うめくゼロ。この空間のどこかにタバサたちが いるはずだが、絶え間なく襲い来る怪獣たちの幻影に阻まれ、見つけ出すことが出来ないでいた。 そうしている間にも、ゼロのエネルギーはどんどんと消耗していく……! ゼロと一体化している才人も、自分のあらん限りの力を振り絞り、ゼロを助けようとしていた。 『頑張れ、ゼロ……! ここまで来たんだ……! 絶対タバサを助けるんだ!』 才人の心にあきらめはなく、どれだけ怪獣の幻影に苦しめられても立ち上がって力を出し続けた。 外では、動きを止めたゴーデスをシルフィードに乗ったギーシュたちが固唾を呑んで見下ろしている。 「一体どうなってしまったんだ……。ゼロは無事なのか?」 「うぅん……」 その時、体内でのゼロの戦いの気が精神を通じて影響を与えたのか、ルイズが目を覚まして 身体を起こした。 「あッ、ルイズ! 気がついたか!」 「い、一体どうなったの……? タバサは助けられたの……?」 起き抜けに首を振って問いかけたルイズに、モンモランシーが手短に答えた。 「それが怪獣が現れて、城の人たちを呑み込んじゃって……ウルトラマンゼロが出てきたんだけど、 彼も呑み込まれちゃったの!」 「ええ!?」 急激に目が冴えて、ゴーデスを見下ろすルイズ。彼女は、あの中でゼロが戦っているのだと いうことを直感で理解した。 (サイト……) 自分の魔法はもう打ち止めだ。ルイズは才人とゼロの無事と勝利を祈り、ぎゅっと両手を 握り締めた。 その頃、タバサはゴーデスの体内に力なく漂っていた。自分の記憶がゼロへの攻撃に利用 されていることも知らず、光を失った瞳で呆然と宙を見つめる。 (ああ……わたしは、ここで終わりなんだ……) タバサの心を支配しているのは、絶望と諦観だった。こんな状況に陥ってしまったら、 助かる手段なんてあるはずがない。タバサは最早抗うこともせず、ただ流されるままにいた。 同時にこれまでの自分の足取りを振り返る。 今の自分の始まりは、ファンガスの森から。ファルマガンを失い、二度と何かを失わないことを 心に誓って「シャルロット」の名を捨てた。そしてひたすらに戦い抜いた。それもこれも、自分の 身代わりとなって心を壊された母を救うため。自分は先ほど読んだ『イーヴァルディ』のような 勇者になろうとした。 でも出来なかった。所詮、自分はその程度の人間だったのだ。ほどなくして、母も消えて しまうのだろう。彼女の献身も、自分の努力も、全ては無駄だったのだ……。 もうこんな無力な自分が生きていても、仕方ない。タバサはこれ以上何もせず、自分が 消え去る時をただ待っていた……。 シオメントは、イーヴァルディに尋ねました。 『おお、イーヴァルディよ。そなたはなぜ、竜の住処へ赴くのだ? あの娘は、お前をあんなにも 苦しめたのだぞ』 不意に、タバサの耳にそんな文句が聞こえてきた。 「……え?」 暗闇に閉ざされていたタバサの瞳に、光が戻る。今のはどこから聞こえてきたのか。今のは…… 自分が朗読していた『イーヴァルディの勇者』の一節ではないか。 幻聴だろうか? イーヴァルディは答えました。 『わからない。なぜなのか、ぼくにもわからない。ただ、ぼくの中にいる何かが、ぐんぐんぼくを 引っ張っていくんだ』 もう一度、はっきりと聞こえた。 同時に、宙の彼方の一点に、温かい光が瞬いたかのように見えた。 あの光は何だ。ともに聞こえた『イーヴァルディの勇者』の内容はどういうことなのか。 『ルーを返せ』 『あの娘はお前の妻なのか?』 『違う』 『お前とどのような関係があるのだ?』 『なんの関係もない。ただ、立ち寄った村で、パンを食べさせてくれただけだ』 『それでお前は命を捨てるのか』 イーヴァルディは、ぶるぶると震えながら、言いました。 『それでぼくは命を賭けるんだ』 まさか……あの光は、『勇者』なのだろうか? イーヴァルディのように、自分を助けに来てくれた? ……そんなはずはない。必死に頑張っても母を助けられなかった無力で無価値な自分のために、 誰が命を賭けてくれるというのか。 ファンガスの森に現れた銀色の巨人――ウルトラマンのように、自分を助けてくれる『勇者』。 心のどこかでいつも待ち焦がれていた。しかし、それが今になってやってきて、自分を救い出して くれるなんて都合の良いこと、あるはずが……。 イーヴァルディは竜に向けて剣をふるいましたが、硬い鱗に阻まれ、弾かれました。竜は爪や、 大きな顎や、噴き出す炎で何度もイーヴァルディを苦しめました。 イーヴァルディは何度も倒れましたが、そのたびに立ち上がりました。 光が、どんどんと大きくなっていく。 タバサは思わず、そちらに向けて手を伸ばしていた。 いつの間にか心から絶望が消え、希望が溢れていた――。 「パムー」 『ん!?』 ゼロは突然あらぬ方向に首を向けた。そちらから、タバサの声――タバサの朗読の声が聞こえたのだ。 『才人……!』 『ああ、俺にも聞こえた!』 二人は内容を知らないのだが、『イーヴァルディの勇者』の文章が延々と聞こえてきていた。 タバサが朗読した際のものの再生であった。 それとともに、宙の彼方に光の輝きが見えた。 『――うおおおおおおおおおッ!!』 ゼロは反射的に、幻影を振り切ってそちらへ向けて飛び出した。小さな光へ向けて手を 伸ばしながら突き進んでいくと、光が大きくなっていく。近づいていく。 『才人、手を伸ばせッ!』 ゼロに言われたように、才人も光に向けて精一杯腕を伸ばした――。 タバサの視界に、こちらへ向けて飛んでくるゼロの姿が映った。 その姿には、才人が重なっていた。 「――タバサぁぁぁぁぁッ!!」 勇者――。タバサは心で感じた。 タバサの腕を、ゼロの手――才人の手の平が掴み取った! 『もう大丈夫だよ』 イーヴァルディはルーに手を差し伸べました。 『竜はやっつけた。きみは自由だ』 「セェェェェェェェェアァッ!!」 ゴーデスの頭頂部が噴火したかのように炸裂! 遅れてゴーデスの首、胴体も粉砕された! それとともに飛び出してきたのは、ウルトラマンゼロだった! 「……やったぁぁぁぁぁぁああああああああああああッ!!」 一拍遅れて、事態を把握したルイズたちは大歓声を発した。 ゴーデスが消滅し、シルフィードは地上へ降り立つ。周囲には、ゴーデスの内部から解放された 兵士たちが転がっていた。結局眠ったままの彼らは、自分たちの身に何が起きていたのかも知らないのだろう。 「タバサは! タバサはどこ? サイトも無事かしら……」 キュルケを始めとして、タバサたちの姿を捜して辺りを見回していると……彼女たちの 望んでいない者が近寄ってきた。 「……よもや、このような事態になるとはな」 ビダーシャルであった。ルイズたちは仰天し、咄嗟に身構える。 「何よ! まだやろうっていうの!?」 杖を構えるルイズだが、ビダーシャルにその意志はなかった。 「勘違いするな。我は真実を確かめに来ただけだ。……お前たちは言ったな、蛮人の国が 怪獣を操っていると。それは真だと、お前たちの崇拝するものに誓って言えるか?」 ルイズは胸を張ってその問いかけに答えた。 「もちろんよ! 今の見たでしょ? 偶然出てきたなんて都合のいいこと、あるはずないわ。 あんただって、さっきサイトに言われたことが気にかかったからこうして戻ってきたんでしょ」 「……」 「悪いことは言わないわ。ガリアとは手を切りなさい。後悔してからじゃ遅いわよ」 ルイズの忠告に、ビダーシャルは淡々と返答する。 「……我の目的は、シャイターンの復活を阻止すること。それだけは、何としても譲りはしない」 「あんたねぇ……!」 「しかし」 と、ビダーシャルは言葉を区切る。 「……あの蛮人の王は、更に別の災厄を呼び込もうとしているのかもしれぬ。シャイターンの末裔よ、 我はお前たちには何があろうと味方はせんが……彼との協定には、慎重にならねばならぬようだな」 それだけ言い残すと、ビダーシャルはローブの裾を翻して、ルイズたちの前から立ち去っていった。 「……えーと、要するにどういうことだね?」 「ガリアとは場合によっては手を切る、ってことでしょ」 「回りくどい言い方するなぁ」 キュルケに尋ねたギーシュがぼやいた。 「そんなことより、今はサイトとタバサよ。一体どこに……」 ルイズがそう言った時、城の瓦礫を踏み越えて、才人が彼らの元に舞い戻ってきた。 「おおサイト! 生きてたか!」 「このヤロー心配させやがって全く!」 ギーシュとマリコルヌと同様にルイズも一瞬顔を輝かせたが、すぐに眉間に皺を寄せた。 才人は、その両腕の中にタバサを抱え上げていたからだ。 「あっちにタバサの母親らしい人もいる。運んできてくれ」 ギーシュたちに頼む才人の姿を見つめ、ルイズはムッと顔をしかめた。 タバサを抱きかかえる才人……その構図が、お姫さまを助け出した勇者のように見えたからであった。 こんな時にまで嫉妬を覚える、仕方のないルイズであった。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/900.html
トリステイン魔法学院。その頂点に立つ老人、オールド・オスマンは地図を見ながら悩んでいた。 「ここが良いかの?それともここか?」 何枚もの地図を机の上に広げ、オールド・オスマンは難しそうに頭を悩ましていた。 地図を見る表情は真剣そのもので、彼を知る者たちが見ればド肝を抜かすであろう光景である。 オスマンが悩んでいると学院長室の扉がノックされた。 「誰かの?」 「私です。オールド・オスマン」 扉の向こうから聞こえてくるのは、彼の秘書であるミス・ロングビルの声。 オスマンは入室を促し、一礼してミス・ロングビルは学院長室に入るとオスマンの元へ歩み寄る。 「心は決まったかの?」 オスマンが語りかけ、ミス・ロングビルは頬を朱に染め恥ずかしそうに頷く。 「大切に……して下さい」 「おお、おお、勿論じゃとも」 オスマンはミス・ロングビルに近づきその身体を抱き寄せる。ミス・ロングビルはオスマンに任せるままに 身体を預け、二人は愛しそうに抱き合う。 「おお、ミス・ロングビル。ハネムーンはどこがいいかの?」 ミス・ロングビルは潤んだ瞳でオスマンを見つめる。 「あなたと一緒ならどこでも構いませんわ。」 ミス・ロングビルはそう言って、オスマンの首に手を回し、顔を引き寄せる。 「それから……もう、ミス・ロングビルではありませんわ」 二人の唇が触れ合い――― オスマンは眼を覚ました。いつもと変わらぬ室内。使い魔のネズミと自分以外には誰も居ない。 「え~夢じゃった。正夢にならんかの~」 オスマンは欠伸をして一人呟く。その時、学院長室の扉がノックされた。 「誰じゃ?」 「私です。オールド・オスマン」 扉の向こうから聞こえてくるのは、彼の秘書であるミス・ロングビルの声。 夢で見たものと同じことが起きてオスマンは心を振るわせた。 「失礼します」 ミス・ロングビルが学院長室に入り会釈し、オスマンの元へ歩み寄る。 「とうとう結婚してくれる気になったか?!」 オスマンが机から身を乗り出し、ミス・ロングビルに期待を込めて問いかける。 ミス・ロングビルは太陽のように微笑み頷く。 「オールド・オスマン。寝言は寝てから言ってください。それともまだ寝てらっしゃるなら 起こして差し上げましょうか?二度と眼が覚めないかも知れませんが」 現実は非情だった。 「バッチリ目覚めておる!それでどうしたんじゃ?」 ミス・ロングビルは頷くと、少し焦りながら報告を始めた。 「中庭で、昨日二年生が召喚したばかりの使い魔が暴走して学園に被害を与えています。 現在、ミスタ・コルベール、ミスタ・ギトーにさっき戻ってきましたミセス・シュヴルーズが 対処しておりますが戦況芳しくなく、他の教師たちが『眠りの鐘』の使用許可を求めています」 「アホか。たかが暴走した使い魔を止めるのに秘宝なんぞ使えるか。それに戦況とは大げさな…… 教師たちに自分たちで何とかするよう伝えなさい」 オスマンがウンザリしたように答える。しかし、ミス・ロングビルは動かない。 「学院長。まず、ご自分の眼でご覧になって下さい」 ミス・ロングビルは毒舌だが、学院長である自分の命には逆らわない。一部の例外を除いてだが。 その彼女が真面目な顔で答えるのを見て、オスマンは杖を振るう。すると、学院長室の壁にかかった 大きな鏡に事件が起こっている中庭が映し出された。 「コッチヲ見ロォ~!」 キャタピラを唸らせ突進してくる使い魔にコルベールは炎を浴びせかける。 しかし使い魔が爆発し炎が吹き散らされ、その爆風でコルベールも吹き飛ばされた。 無傷のまま、その使い魔は倒れたコルベールに向かって尚も突進する。 「フギャーッ!!」 ミセス・シュヴルーズが作り出した赤土のゴーレムが、猫のような植物に近づく前に打ち砕かれ、 なんとか近づいたゴーレムも猫のような植物に触れられずに砕け散っていく。 そして、猫のような植物はミセス・シュヴルーズに狙いをつけた。 「おんぶして。ねっ!おんぶして」 ギトーの背中に取り付いた使い魔が囁きかける。ギトーはなんとか引き剥がそうとするも 無理に剥がそうとすると背中も剥がれた。使い魔は彼の耳元で囁きかける。 「人に『背中』見せれば……ねっ。ぼく離れてそっち行く!見せるだけ!」 「こりゃ凄いの」 中庭で起きている惨劇にも動じずにオスマンはのん気に顎鬚を摩る。 「早く『眠りの鐘』の使用許可を!」 ミス・ロングビルは苛立ち声を荒げる。しかし、オスマンは椅子に腰掛けミス・ロングビルに向き直り、 のんびりとした口調で言い聞かせるように語りかけた。 「まあの、これ位なら何とかするじゃろ。彼らに任せときなさい」 「……ですが!」 尚も食い下がるミス・ロングビルに鷹のように鋭い視線を浴びせ、それだけで黙らせる。 ミス・ロングビルは観念し、一礼して学院長室を後にした。 中庭で惨劇が繰り広げられる中、ルイズは自分の魔法を浴びて倒れたトリッシュを見下ろしていた。 左足が爆発に巻き込まれ苦痛の表情を浮かべて蹲るトリッシュに近づき、楽しげな顔で見下ろしながら 杖の先端をトリッシュに向けて突き出す。 「貴族が上で平民は下。これが正しいあり方なの」 トリッシュはルイズの言葉に反応せずに蹲ったまま震えている。ルイズは蹲り震えるトリッシュの頭を 足で踏む。勝ち誇った表情を隠そうともせず勝利者の愉悦に浸る。 「普通の決闘だと相手を殺さずに杖を折ったら勝ちなんだけど、アンタは平民だしね」 震えてなにも答えないトリッシュを見て、怯えていると感じたルイズは更に調子に乗る。 「そうね。アンタが『お許し下さいルイズ様。二度と逆らうようなことは致しません。どうかご慈悲を』って 言うなら命はとらないであげるわ。どう?私って優しいでしょ」 しかし、トリッシュは尚も震えて動かない。ルイズが答えないトリッシュに苛立ち顔を覗き込もうとする。 「ちょっとルイズ!やり過ぎなんじゃない?その子平民なんでしょ」 キュルケが見かねてルイズに声を掛けるが、ルイズはキュルケを睨む。邪魔するなと言うことだ。 両手を挙げて恭順の意を示すキュルケ。呆れて物も言えないようだ。 「アンタ!なんとか言ったらどうなの!!」 我慢できなくなったルイズが蹲るトリッシュの顔を見てやろうと、踏み付けていた足を上げる 足が離れた瞬間、トリッシュは顔を上げる。怯えていると思っていたトリッシュの顔が笑っていた。 「アンタなら絶対にやると思ったわ。近づく手間が省けたわね」 ルイズが驚き呪文を唱え杖を振る。だが、それよりも早く――― 「スパイス・ガール!」 杖を持つ手が弾かれ、その勢いでルイズは転倒する。怒りのままに杖を振ろうとして、弾かれた手に 眼が留まった。白魚のような細い指が五本とも歪に曲がり皮膚を破って白いものが飛び出している。 「なに…これ……?」 呆然とするルイズに脚を引きずりながら近づき、その顔にトリッシュは蹴りを叩き込む。 仰向けになって倒れたルイズの胸に踵を打ち込み、地面に釘付けにする。 まだ呆然としているルイズを見下ろすトリッシュ。一瞬にして立場が逆転していた。
https://w.atwiki.jp/zerolibrary/pages/16.html
サイト サウスゴータ 始祖の使い魔 始祖の秘宝 始祖のルビー シェフィールド シルフィード
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9425.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第百四十三話「六冊目『大決戦!超ウルトラ8兄弟』(その1)」 海獣キングゲスラ 邪心王黒い影法師 登場 『古き本』に奪い取られたルイズの記憶を取り戻すために、本の世界を旅している才人とゼロ。 五冊目の世界はウルトラマンマックスが守った地球を舞台とした本であり、地上人と地底人の 存亡という地球の運命を懸けた戦いに二人は身を投じた。同じ惑星の文明同士という、本来は ウルトラ戦士が立ち入ることの出来ない非常に困難な問題であったが、最後まで未来をあきらめない 人間の行動が地底人デロスの心を動かし、二種族の対立は解決された。そして最後の障害たる バーサークシステムも停止させることに成功し、地球は未来を掴み取ることが出来たのだった。 そして遂に残された本は一冊のみとなった。リーヴルの話が真実であるならば、これを 完結させればルイズは元に戻るはずだ。……しかし、最後の本の旅が始まる前に、才人たちは 密かに集まって相談を行っていた……。 「『古き本』もいよいよ後一冊で最後だ。その攻略を始める前に……ガラQ、リーヴルについて 何か分かったことはないか?」 才人、タバサ、シルフィード、シエスタはリーヴルに内緒で連れてきたガラQから話を 聞いているところだった。三冊目の攻略を始める前に、ガラQにリーヴルの内偵を頼んで いたが、その結果を尋ねているのだ。 ガラQは才人たちに、次のように報告した。 「リーヴル、夜中に誰かと会ってるみたい」 「誰か……?」 才人たちは互いに目を合わせた。彼らは、一連の事件がリーヴル単独で起こされたものでは ないと推理していたが、やはりリーヴルの背後には才人たちの知らない何者かがいるのか。 「そいつの正体は分からないか? どんな姿をしてるかってだけでもいいんだ」 質問する才人だが、ガラQは残念そうに首(はないので身体ごと)を振った。 「分かんない。姿も、ぼんやりした靄みたいでよく分かんなかった」 「靄みたい……そもそもの始まりの話にあった、幽霊みたいですね」 つぶやくシエスタ。図書館の幽霊の話は、あながち間違いではなかったのだ。 『俺はそんな奴の気配は感じなかった。やっぱり、一筋縄じゃいかねぇような奴みたいだな……』 ガラQからの情報にそう判断するゼロだが、同時に難しい声を出す。 『しかもそんだけじゃあ、正体を特定するのはまず無理だな。それにここまで来てそれくらいしか 尻尾を掴ませないからには、相当用心深い奴みたいだ。今の段階で、正体を探り当てるってのは 不可能か……』 「むー……リーヴルに直接聞いてみたらいいんじゃないのね?」 眉間に皺を寄せたシルフィードが提案したが、タバサに却下される。 「下手な手を打ったら、ルイズがどうなるか分かったものじゃない。ルイズは人質のような ものだから」 「そっか……難しいのね……」 お手上げとばかりにシルフィードは肩をすくめた。ここでシエスタが疑問を呈する。 「わたしたち、いえサイトさんはこれまでミス・リーヴルの言う通りに『古き本』の完結を 進めてきましたが……このまま最後の本も完結させていいんでしょうか?」 「それってどういうことだ?」 聞き返す才人。 「ミス・リーヴルと、その正体の知れない誰かの目的は全く分かりませんけど、それに必要な 過程が『古き本』の完結だというのは間違いないことだと思います」 もっともな話だ。ルイズの記憶喪失が人為的なものであるならば、こんな回りくどいことを 何の意味もなくさせるはずがない。 「だったら、全ての『古き本』を完結させたら、ミス・ヴァリエールの記憶が戻る以外の何かが 起こってしまうんじゃないでしょうか。それが何かというのは、見当がつきませんが……」 「洞窟を照らしてトロールを出す……」 ハルケギニアの格言を口にするタバサ。「藪をつついて蛇を出す」と同等の意味だ。 「全ての本を完結させたら、悪いことが起きるかもしれない。そもそも、ルイズが本当に 治るという保証もない。相手の思惑に乗るのは、危険かも……」 「パムー……」 ハネジローが困惑したように目を伏せた。 警戒をするタバサだが、才人はこのように言い返す。 「けど、それ以外に方法が見当たらない。動かないことには、ルイズはいつまで経っても 元に戻らないんだ。だったら危険でも、やる他はないさ……!」 『それからどうするかは、本の完結が済んでからだな。ホントにルイズの記憶が戻るんなら それでよし、もし戻らないようだったら……ブラックホールに飛び込むつもりでリーヴルに アタックしてみようぜ』 ウルトラの星の格言を口にするゼロ。「虎穴に入らずんば虎児を得ず」と同等の意味だ。 そうして最後の『古き本』への旅が始まる時刻となった。 「今日で本への旅も最後となりましたね、サイトさん。最後の本も、無事に完結してくれる ことを祈ってます」 才人らが自分を疑っていることを知ってか知らずか、リーヴルは相変わらず淡々とした 調子で語った。 「それではサイトさん、本の前に立って下さい」 「ああ……」 もう慣れたもので、才人が最後に残された『古き本』の前に立つと、リーヴルが魔法を掛ける。 「それでは最後の旅も、どうか良きものになりますよう……」 リーヴルがはなむけの言葉を寄せ、才人は本の世界へと入っていく……。 ‐大決戦!超ウルトラ8兄弟‐ 昭和四十一年七月十七日、夕陽が町をオレンジ色に染める中、虫取り網と虫かごを持った 三人の子供たちが駄菓子屋に駆け込んできた。 「くーださーいなー!」 「はははは! 何にするかな?」 「ラムネ!」 「僕も!」 「俺もー!」 「よーしよしよし!」 駄菓子屋の店主は快活に笑いながら少年たちにラムネを渡す。ラムネに舌鼓を打つ少年たちだが、 ふと一人があることに気がついた。 「あッ! おじさん、今何時?」 「んー……六時、ちょい過ぎ」 「大変だー!!」 時刻を知った三人は声をそろえて、慌てて帰路につき始めた。それに面食らう駄菓子屋の店主。 「どうした? そんなに急いで」 振り返った子供たちは、次の通り答えた。 「今日から、『ウルトラマン』が始まるんだ」 「早くはやく!」 何とか七時前に少年の一人の家に帰ってきた三人は、カレーの食卓の席で始まるテレビ番組に 目を奪われる。 『武田武田武田~♪ 武田武田武田~♪ 武田た~け~だ~♪』 提供の紹介後――特撮番組『ウルトラマン』が始まり、少年たちは歓声を上げた。 「始まったー!!」 三人は巨大ヒーロー「ウルトラマン」と怪獣「ベムラー」の対決に夢中となる。 『M78星雲の宇宙人からその命を託されたハヤタ隊員は、ベーターカプセルで宇宙人に変身した! マッハ5のスピードで空を飛び、強力なエネルギーであらゆる敵を粉砕する不死身の男となった。 それゆけ、我らのヒーロー!』 「すっげー……!」 「かっこいー!」 ――特撮番組に夢中になる小さな少年も、月日の流れとともに大人になる。そして、そんな 日々の中で、『それ』は起こったのである……。 ……才人は気がつくと、見知らぬ建物の中にいた。 「あれ……? 本の世界の中に入ったのか?」 キョロキョロと周りを見回す才人。しかし周囲には誰の姿もない。 「随分静かな始まり方だな……。今までは、ウルトラ戦士が怪獣と戦ってるところから入ってたのに」 とりあえず、初めに何をすればいいのかと考えていると……正面の階段の中ほどに、白い洋服の 小さな少女が背を向いて立っている姿が目に飛び込んできた。 「……赤い靴の女の子?」 その少女は、履いている赤い靴が妙に印象的であった。 赤い靴の少女は、背を向けたまま才人に呼びかける。 「ある世界が、侵略者に狙われている」 「え?」 「急いで。その世界には、ウルトラマンはいない。七人の勇者を目覚めさせ、ともに、 侵略者を倒して……!」 少女は才人に頼みながら、階段を上がって去っていく。 「あッ、ちょっと待って! 詳しい話を……!」 追いかけようと階段に足を掛けた才人だったが、すぐに視界がグルグル回転し、止まったかと 思った時には外にいることに気がついた。 「ここは……?」 目の前に見える光景には、赤いレンガの建物がある。才人はそれが何かに気がつく。 「赤レンガ倉庫……。ってことは、ここは横浜か……? でも相変わらず人の姿がないな……」 横浜ほどの都市なら、どこにいようとも人の姿くらいはあるだろうに、と思っていたところに、 倉庫の向こう側から怒濤の水しぶきが起こり、巨大怪獣がのっそりと姿を現した! 「ウアァァァッ!」 「わぁッ! あいつは……!」 即座に端末から情報を引き出す才人。 「ゲスラ……いや、強化版のキングゲスラだッ!」 怪獣キングゲスラは猛然と暴れて赤レンガ倉庫を破壊し出す。それを見てゼロが才人に告げた。 『才人、ここはメビウスが迷い込んだっていうレベル3バースの地球だ!』 「メビウスが迷い込んだって!?」 『メビウスに聞いたことがある。あいつがまだ地球で戦ってた時に、ウルトラ戦士のいない 平行世界に入ってそこを狙う宇宙人どもと戦ったってことをな。この本の世界は、それを 綴った物語だったか……!』 飛んでくる瓦礫から逃れた才人は、キングゲスラの近くに一人だけスーツ姿の青年がいる ことに目を留めた。 「あんなところに人が!」 『確か、メビウスはここで平行世界で最初に変身したそうだ。ってことはもうじきメビウスが 出てくるはずだ……』 と言うゼロだが、待てど暮らせどウルトラマンメビウスが出てくるような気配は微塵もなかった。 そうこうしている内に、キングゲスラが腰を抜かしている青年に接近していく。 「ゼロ! 話が違うぞ! あの人が危ないじゃんか!」 『おかしいな……。メビウス、何をぐずぐずしてんだ……?』 戸惑うゼロだったが、先ほどの赤い靴の少女のことを思い返し、ハッと気がついた。 『違うッ! あの人を助けるのは、才人、俺たちだッ!』 「えッ!?」 『早く変身だッ!』 ゼロに促されて、才人は慌ててウルトラゼロアイを装着! 「デュワッ!」 才人の肉体が光とともにぐんぐん巨大化し、たちまちウルトラマンゼロとなってキングゲスラの 前に立った! 『よぉし、行くぜッ!』 ゼロは早速ゲスラに飛び掛かり、脳天に鋭いチョップをお見舞いした。 「ウアァァァッ!」 「デヤッ!」 ゲスラが衝撃でその場に伏せると、首を掴んでひねり投げる。才人は困惑しながら戦う ゼロに問いかけた。 『ゼロ、どういうことだ? メビウスが出てくるんじゃ……』 『詳しい話は後だ! 先にこいつをやっつけるぜ!』 才人に答えたゼロは起き上がったゲスラの突進をかわし、回し蹴りで迎撃する。 「ハァァッ!」 俊敏な宇宙空手の技でゲスラを追い込んでいくゼロ。しかしゲスラの首筋に手を掛けたところで、 ゲスラに生えている細かいトゲが皮膚を突き破った。 『うわッ! しまった、毒針か……!』 ゲスラには毒針があることを失念していた。しかもキングゲスラの毒は通常のゲスラの ものよりも強力だ。ゼロはたちまち腕が痺れて思うように動けなくなる。 「ウアァァァッ!」 その隙を突いて反撃してきたゲスラにゼロは突き飛ばされて、倒れたところをゲスラが 覆い被さってきた。 「ウアァァァッ!」 『ぐッ……!』 ゼロを押さえつけながら張り手を何度も振り下ろしてくるゲスラ。ゼロはじわりじわりと 苦しめられる。この状態ではストロングコロナへの変身も出来ない。 『何か奴の弱点はねぇか……!?』 『えぇっと、ゲスラの弱点は……!』 才人がそれを告げるより早く、地上から声が聞こえた。 「その怪獣の弱点は、背びれだッ!」 『あの人は……!』 先ほどキングゲスラに襲われていた青年だ。ゼロは彼にうなずいて、弱点を教えてくれた ことへの反応を表す。 「デェアッ!」 力と精神を集中し、ゲスラの腹に足を当てて思い切り蹴り飛ばす。 「ウアァァァッ!」 「セイヤァッ!」 立ち上がると素早く相手の背後に回り込んで、生えている背びれを力の限り引っこ抜いた! 「キャアア――――――!!」 たちまちゲスラは悲鳴を上げて、見るからに動きが鈍った。青年の教えてくれた情報が 正しかったのだ。 『よし、今だッ!』 ゼロはゲスラをむんずと掴んでウルトラ投げを決めると、額からエメリウムスラッシュを発射。 「シェアッ!」 「ウアァァァッ!!」 緑色のレーザーがキングゲスラを貫き、瞬時に爆発させた。ゼロの勝利だ! キングゲスラを倒して変身を解くと、才人は改めてゼロに尋ねかけた。 「ゼロ、つまり俺たちがウルトラマンメビウスの代わりをした……いや、するってこと?」 『そのようだな。この本は、書き進められてた部分が一番少なかった。だから、本来の異邦人たる メビウスの役割に俺たちがすっぽり収まったのかもしれねぇ』 「なるほど……さっきの人は?」 才人が青年の元へ向かうと、彼は傷一つないままでその場にたたずんでいた。青年の無事を 知って才人は安堵し、彼に呼びかけた。 「さっきはありがとうございます。お陰で助かりました」 「君は……?」 不思議そうに見つめてくる青年に、才人は自己紹介する。 「平賀才人……ウルトラマンゼロです!」 と言ったところで風景が揺らぎ、彼らの周囲に大勢の人間が現れた。同時に、壊されたはずの 赤レンガ倉庫も元の状態に変化する。 「これは……?」 『今までは、一時的に違う世界にいたみたいだな。位相のズレた世界とでも言うべきか……』 突っ立っている才人に、近くの子供たちがわらわらと集まってくる。 「ねぇお兄さん、今どっから出てきたの?」 「どっからともなくいきなり出てこなかった!? すげー!」 「手品師か何か!?」 どうやら、周りから見たら自分が唐突に出現したように見えるらしい。子供に囲まれ、 才人はどうしたらいいか困る。 「あッ、いや、それはね……!」 そこに先ほどの青年が、連れている外国人たちを置いて才人の元に駆け寄ってきた。 「ごめんね! ちょっとごめんね!」 そうして半ば強引に才人を、人のいないところまで連れていった。 落ち着いた場所で、ベンチに腰掛けた二人は話を始める。 「何だかすいません。仕事中みたいだったのに……」 青年はツアーのガイドのようであった。その仕事を邪魔する形になったと才人は申し訳なく 思うが、青年は首を振った。 「いいんだ。それよりさっきのことを詳しく聞きたい。……とても不思議な出来事だった。 実際に怪獣がいて、ウルトラマンがいて……」 「ウルトラマンがいて?」 青年の言葉に違和感を持った才人に、ゼロがひそひそと教える。 『この世界にウルトラ戦士はいねぇが、ウルトラマンが架空の存在としては存在してるんだ。 テレビのヒーローって形でな』 『テレビのヒーロー! そういう世界もあるのか!』 驚いた才人は、ここでふと青年に問いかける。 「そういえば、まだ名前を伺ってなかったですね」 「ああごめん。申し遅れたね」 青年は才人に向かって、自分の名前を教えた。 「僕はマドカ・ダイゴと言うんだ。よろしく」 マドカ・ダイゴ……。かつて『ウルトラマン』に夢中になっていた三人の少年の一人であり、 彼こそがこの物語の世界の主人公なのであった。 『……』 そしてダイゴと会話する才人の様子を、はるか遠くから、真っ黒いローブで姿を隠したような 怪しい存在……この物語の悪役たる「黒い影法師」が観察していた……。 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/9332.html
前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔 ウルトラマンゼロの使い魔 第百三話「ゼロ最大のピンチ!変身!ウルトラマン80」 暗殺宇宙人ナックル星人グレイ 夢幻魔獣インキュラス 夢幻神獣魔デウス 超怪獣スーパーグランドキング 登場 さらわれた才人を救い出すため、リシュの支配する夢の世界への侵入を行ったルイズ。 リシュの力は想像以上に強大であったが、デルフリンガーや夢のクラスメイトたちの激励により 奮起したルイズは、遂にリシュの力を覆して才人の心を取り戻すことに成功した。しかしそこで 知ったのは、リシュの悲しい身の上だった。このままリシュを封印して終わりでいいのか……。 悩むルイズたちであったが、事態は風雲急を告げる。リシュに協力していたナックル星人が 本性を現し、インキュラスを使ってリシュを捕らえたのだ。ナックル星人の目的とは、彼女の力を 利用して最強最悪の怪獣軍団を作り出すことだった! 現れた魔デウスの能力により、その時は 刻一刻と迫る。だがリシュを人質に取られた才人は変身することが出来ない。ゼロ最大のピンチ! その時に立ち上がったのは、夢の世界での彼らの担任、『矢的猛』。しかしてその正体は、 才人の願望をリシュが知らず知らずの内に叶えたことで、宇宙を越えて夢の世界に巻き込まれた 矢的猛=ウルトラマン80本人であった! 80はリシュを救うために立ち上がる! 「シュワッ!」 ナックル星人の不意を突いて変身を遂げたウルトラマン80は、唖然として立ち尽くしている インキュラスに素早く接近。リシュを掴む腕の手首に鋭いチョップを振り下ろした。 「グウウウウ……!」 突然の攻撃にインキュラスは耐えられず悶絶。その隙を突いて、80はリシュを奪い返して 飛びすさり、才人たちの元へリシュを下ろした。 「あッ……」 「リシュ!」 才人らはすぐさまリシュの周りを取り囲んで、彼女を保護。危ないところを救い出された リシュは呆然と80の顔を見上げる。80は優しい雰囲気で彼女にうなずき返した。 「グウウウウ……!」 その時、インキュラスが背後から80に襲いかかる! 「ヤマト先生、危ない!」 思わず叫ぶリシュだが、そうするまでもなく80はインキュラスの攻撃を察していた。 相手が間合いに入ってきた瞬間に後ろ蹴りを浴びせ、返り討ちにする。 それから80は校舎から離れ、リシュたちが戦いに巻き込まれない距離を取った。 『な、何てことなのぉ~! まさかこの夢の世界に、他のウルトラマンがいただなんてぇ~!』 ナックル星人は80という全くのイレギュラーによって己の計算が丸々打ち崩されたことに 頭を抱える。そこに才人はゼロアイ・ガンモードを突きつけた。 「降参して怪獣を退かせろ! もうお前の陰謀は終わりだッ!」 投降を命ずるが、ナックル星人は往生際が悪かった。 『なめるんじゃないわよ、小僧! 戦わずして諦めたら、ナックル星人の名が廃るわ!』 「ああそうかい! じゃ、覚悟はいいんだな!?」 才人はナックル星人の足元に光弾を撃ち込んで牽制。 『キャアァッ! あ、危ないッ! あッ、いやぁぁんッ!』 気色悪い悲鳴を上げて逃げ回るナックル星人だが、背後のフェンスに気づかずに後ずさろうとして、 勢いのままフェンスを乗り越えてしまった。 『あぁッ!? あぁぁぁぁ~れぇぇぇぇぇぇぇぇ~!!』 ナックル星人はそのまま屋上から真っ逆さまに転落していった。才人は銃撃の手を止める。 主人のナックル星人の姿が消えても、インキュラスは戦いの手を止めない。鈍器のように 太い腕を振り上げ、80に格闘戦を挑む。インキュラスは人型に近い体型もあって、格闘戦を 得意とする強力な怪獣だ。 だが、80はバッバッと風を切る音が発せられるほどの速い身のこなしにより、インキュラスの反撃を 許さずに叩きのめしていく。水平チョップが相手の側頭を打ち、すくい投げで百八十度ひっくり返して 地面に叩きつけ、おまけに後ろ回し蹴りがインキュラスを大きく吹っ飛ばした。 「グウウウウ……!」 インキュラスはきりもみ回転しながら激しく転倒。80のあまりの攻撃スピードに、まるで ついていくことが出来なかった。 普段は柔和な物腰の80だが、その胸の内には熱く燃える闘志と勇気がたぎっている。いざ戦いに なると、彼は背にしているものを守り抜く凄腕の戦士となるのだ! 「す、すごい実力……!」 「いいぞー! 先せーい!!」 ルイズとリシュは80の強さに目を見張って驚き、80の教え子たちは口をそろえて歓声を上げた。 このままインキュラスを完封するものかと思われたが、しかし、そう上手くは戦いは運ばなかった。 それまで沈黙を守っていた魔デウスだが、80を外敵と見なしたのか、卵型の姿からブーメラン状の 形態に変身し、ぐるぐる回転しながら80へ体当たりをしていく。 その飛行速度は、80のスピードにも迫るほどであった! 「ウッ!」 強烈な体当たりを真正面から食らい、さしもの80も弾き飛ばされる。 「あぁッ! 矢的先生!」 色めく教え子たち。それでも80はすぐに立ち上がり、まっすぐ伸ばした両腕を飛行する 魔デウスに向け、螺旋状のレーザーを発射した。ウルトラスパイラルビーム! しかし魔デウスはスパイラルビームを身体全体で吸収し、ダメージを受けない。それどころか エネルギー光線として80に撃ち返した! 「ウワァッ!」 自身の攻撃の威力をそのまま反射され、80もたまらず地面に投げ出された。伝説の怪獣とまで 呼ばれるほどはあり、魔デウスの能力は恐ろしいものであった。 「グウウウウ……!」 更に80にボコボコにされていたインキュラスが戦闘に復帰。怪しいオーロラのカーテンを放つと、 起き上がった80をその中に閉じ込めてしまう。 脱出を図る80だが、オーロラの檻は触れるだけで80にダメージを与え、破ることが出来ない! 「ウゥッ!」 「80が危ないわ! サイト!」 「おっしゃ!」 二大怪獣によって窮地に陥る80の加勢に入ろうと、才人は勇んでゼロアイを装着しようとする。 しかし、それを80の教え子たちに止められた。 「いや、先生はまだ大丈夫さ。俺たちの先生は、あれしきのことでへこたれたりはしないんだ!」 「えッ?」 才人らが目を丸くして振り返ると、教え子たちは80を見上げる瞳を輝かせながら口々に言う。 「先生はとても強かった! その戦う背中はいつだって、僕たちに愛と勇気を教えてくれた!」 「誰かを守るために戦う先生は、負けたことなんか一度もなかった!」 「勇敢に戦う姿で、不登校児だった僕の心を開いた!」 「俺の失恋の悲しみの塊を晴らしてくれた!」 「ある時は親子怪獣のために、自ら悪役を買って出る優しさも見せた!」 「自分が宇宙人だと現実逃避してた僕の弱さを正してくれた!」 「悪気のない騒音怪獣を倒さずに宇宙に帰してあげたりな!」 「あたしたちみんな、先生から大事なものをいっぱい学んだのよ!」 博士、落語、塚本、中野、スーパー、大島、岡島、ファッションが語り、集った教え子全員で 80を応援する。 「先せーい! がんばれー!!」 果たして80の愛した彼らの声は、80自身の何にも代えがたい力となったのだ! 80は背筋を伸ばして持ち直し、左腕を天高く、右腕を真横に伸ばしたL字のポーズを取る。 これは80が彼の超能力を発揮する際に取る体勢であり、逆転のポーズなのだ。 80はそのまま一回転すると同時に、腕から次元エネルギーを照射。それがインキュラスの 放ったオーロラの檻を消滅させる! 「グウウウウ……!?」 自身の力が破られたことに動揺するインキュラス。80はそこに伸ばした手先からの光線、 ウルトラショットを撃ち込む。 「グウウウウ……!」 ウルトラショットが頭頂部に命中し、インキュラスはたまらずに倒れ込み、昏倒。その間に80は 魔デウスの方を相手取る。しかし魔デウスには光線技が全く通用しない。ウルトラ戦士の大きな長所を 丸々一つ潰す脅威の能力を持つ敵に、80はどう戦うつもりなのか。 すると80はその場でバク転したかと思うと、空中で膝を抱えて丸まった体勢で高速回転。 そしてボールのようになった状態で飛び回り、魔デウスに肉薄していった! これぞ秘技、ダイナマイトボール作戦! 「うわぁッ!」 まさかそうするとは思わなかったルイズたちは、驚嘆の声を発した。 回転しながら空中を縦横無尽に飛び回る80と、魔デウスが何度も衝突。その結果は、魔デウスが ぐらついてスピードを落とす形となった。 「タァーッ!」 この絶好のチャンスを逃す80ではない。ダイナマイトボールを解くと更に一回転して、 片足の先にエネルギーを集中した飛び蹴りを仕掛ける! 必殺、ムーンサルトキック! 80の一撃をもらった魔デウスは、卵型の状態に戻って林の真ん中に墜落したのであった。 「やったぁーッ!」 80の教え子たちが沸き立つ。着地した80は、ちょうど起き上がったインキュラスの方へと振り返る。 「グウウウウ……!」 インキュラスは最早自棄になって80へ遮二無二突撃していくが、80は再びL字のポーズを取ると、 ワイドゼロショットのように腕を組み直して必殺光線を放った! 80の十八番、サクシウム光線だ! 「グウウウウ……!!」 サクシウム光線の直撃を受けてもがき苦しむインキュラスの全身から、フラッシュが焚かれる。 その直後に跡形もなく爆散! 「勝った! 80の勝利だわ!」 「わぁぁぁぁぁ―――――――――! 先せぇぇいッ!!」 見事な80の大勝利。はしゃぐルイズに安堵する才人。教え子たちは、今は大人の姿になっているが、 この瞬間はありし日の……80の地球滞在時の活躍を見守り、応援していた子供時代のように喝采を 上げたのだった。 「ヤマト先生……!」 リシュもまた、80の勝利に映える立ち姿をほれぼれと見上げた。 ――しかし、勝利の喜びに水を差す笑い声がどこからか発せられる。 『オ―――――ホッホッホッホッホッ!』 「! この声、ナックル星人! どこだッ!」 ナックル星人の笑い声だと気づいた才人が周囲を見回した。 「あッ! あそこ! あの卵怪獣のところよ!」 ルイズが指し示した先、墜落した魔デウスの上に、ナックル星人は浮遊していた。ジュリ扇を はためかせて、才人たちや80に言い放つ。 『ものの見事にやってくれたわねぇ、あんたたち。お陰で大分作戦が狂ったわ。けど残念! この魔デウスを呼び出した時点で、最低限の部分はクリアしたのよ!』 「何だって!?」 驚きの声を上げ、身体を強張らせる才人たち、そして80。 『サキュバスの小娘の能力がないからには、魔デウスの力の全ては制御し切れなくなったけれど…… こうすることで、アタシは最強の力を手に入れるわぁッ!』 ナックル星人の全身が不気味なオーラに包まれたかと思うと……一直線に魔デウスへと飛び込んだ! 『はぁぁぁぁぁぁ――――――――――ッ!』 「な、何を!?」 ナックル星人が魔デウスの表面に吸い込まれていった。そして……魔デウスが突然、本物の 卵よろしくバックリと二つに割れた! その中から、巨人のウルトラマン80をも超越する大型怪獣が地響きを立てて出現する! 「グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」 鋭く凶悪な目つきと面構え。両手は巨大なクローとなっていて、シャベルのようにも見える。 背には内に反った突起がいくつも並ぶ。生物ではあるが同時に機械のようにも見える巨躯。 それから発せられる咆哮は大気を揺るがし、才人たちの肌をビリビリと震わせた。 「あ、あいつは……!」 「すさまじいプレッシャー……!」 ルイズは怪獣の全身から放たれる威圧感だけで、新たな怪獣が普通のとはひと味もふた味も 異なる恐ろしいものだと感じ取った。 怪獣の内部に満ちた闇の空間に、精神体と化したナックル星人が宿り、高笑いを上げた。 『オホホホホホホホ! これぞかつて闇の宇宙の帝王が生み出し、ウルトラ兄弟を追いつめるほどの 力を見せつけた超怪獣グランドキング! それを更にパワーアップさせたものよぉ! このグランドキングと アタシは一体となった! 怪獣軍団がなくとも、この超パワーがあれば世界を滅ぼすには十分! そして 現実世界へと繰り出し、世界を征服してやるわぁーッ!!』 ナックル星人の恐ろしい野望。スーパーグランドキングとでも呼ぶべき怪獣の姿となり、 ハルケギニアを滅ぼそうというのだ! あんな大怪獣が現実世界に出てしまえば、未曽有の 大被害は免れないだろう。 「そんなことさせるもんか!」 『才人、いよいよ俺たちも行くぜッ!』 あれほどの敵を、80一人には任せていられない。才人は変身の姿勢を見せるが、その前に ルイズに呼びかけた。 「ルイズ、デルフを俺に!」 「ええ!」 携帯端末の姿を才人へ渡すルイズ。今はこんなナリでも、ともにあれば変わることがきっとある。 「よし、行くぞ! デュワッ!」 そして才人はゼロアイを装着し、ウルトラマンゼロへと変身を遂げた! 80の隣、グランドキングの 正面に降り立つゼロ! 『待たせたな。テメェの野望はこのウルトラマンゼロが許さねぇぜ、ナックル星人!』 『誰も待ってなんかないわよッ! お邪魔虫め!』 ナックル星人が文句を放ったが、ゼロはお構いなしだ。 『よろしく頼むぜ、80先輩! 一緒にハルケギニアと、俺たちの後ろにいるみんなを守ろうぜ!』 『ああ! ともに戦おう、ゼロ!』 並び立ったゼロと80、二人の勇者。彼らは呼吸を合わせ、強大な悪へ敢然と立ち向かっていく! 『でぇりゃあああぁぁぁぁぁぁぁッ!』 二人のウルトラマンがグランドキングに肉薄し、ウルトラパンチを浴びせる! 『やったわねぇ、ちょこざいな! けど、グランドキングにちょっとやそっとの攻撃は通用しないわよぉッ!』 「グワアアアァァァァァァァァ!!」 だがゼロと80の、二人の一流戦士の攻撃を受けて、グランドキングにさしたるダメージはなかった。 そのあまりもの巨体は、防御力も相応するものなのだ! グランドキングは逆にクローでゼロたちを殴り飛ばした。 「ウッ!」 『うおぉぉッ!』 どうにか踏みとどまったゼロと80は、打撃は効果が薄いと見て、相手の両腕に飛びつき 抑え込もうとする。 『おおおおおおおおおッ!』 ゼロたちは超怪力を振るってグランドキングを押していき、校舎から引き離していく。が、 『ええいッ! 鬱陶しい!』 グランドキングが腕を振り回すと、二人とも軽々と弾き飛ばされた。 「グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」 「ウワァッ!」 『ぐぅッ!』 人間をはるかに超越した力を持っているはずのウルトラマンを、まるで子供扱いだ! ルイズたちはグランドキングの恐るべき戦闘力を実感した。 『何の、まだまだ! こいつでどうだぁぁぁッ!』 ゼロのワイドゼロショット、80のサクシウム光線が同時に発射され、グランドキングに クリーンヒット! 激しい爆発が起こる! 「グルウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」 ……しかし、必殺光線同時撃ちでも、グランドキングに効いている様子はなかった! 『何だと!?』 目を見張るゼロ。大怪獣であることは分かっていたが、まさか合体光線が全然通用しないとは。 かつてグランドキングと交戦したゾフィーからタロウまでのウルトラ六兄弟が大苦戦を強いられたと いう話もうなずけるというものだ。 『オーホホホホホホホホッ! 無駄よ、無駄ぁッ! 最早アタシの力はあんたたちウルトラ戦士も 凌駕したわ! あんたたちはもう、グランドキングに叩き潰されるだけの存在と化したのよッ!』 圧倒的な武力を背景に、いい気になって勝ち誇るナックル星人。追いつめられるゼロたちの様子に、 ルイズもリシュも、80の教え子たちでさえ不安の表情となる。 だが、こんな脅しには、今のゼロは屈したりなどしなかった。 『そいつはどうかな!』 『何ですってぇ!?』 『確かにそいつは強えぇぜ。とんでもねぇ闇のパワーだ。けどな……俺たちにはもっと素晴らしい 光のパワーがある! それはお前の一人きりの孤独な力とは違う……心と心の絆の力だ!!』 そう言って、ゼロは己の内の才人に呼びかけた。 『そうだろう、才人!』 『ああ! 数え切れない苦難を乗り越えてつないだ俺たちの絆の光、見せてやろうぜ!』 『相棒たち、俺もいるぜ! 俺はお前たちの剣! 力になるなら俺の他にいるもんかい!』 ゼロと才人とデルフリンガー、三人の心が一体となって、闇を打ち払う光となる! 『よぉし! 見せてやるぜ、ナックル星人! 俺たちの光を! たくさんの人の希望が形となった…… この奇跡の鎧をッ!』 ゼロが左腕を掲げると、ウルティメイトブレスレットが激しく発光! そして拡大していき、 鎧となってゼロの身体を包んだ! ウルティメイトイージスの完成! しかも今回は、それだけに留まらない! 『おッ、今度は剣だけじゃなく鎧にまで俺は宿ってんのかい。へへッ、それも悪かねえな!』 イージスからデルフリンガーの声が発せられた。そう、ゼロツインソードの時のように、 デルフリンガーの意識をイージスに宿らせてより力を上げた、ウルティメイトイージスDSと したのであった! 才人が大きな試練を乗り越え、心の光が以前よりも一層強まったことで、 この新たなるステージへと到達したのである。 『ナックル星人! テメェの悪事なんざ、二万年早いってことを俺たちが教えてやるぜぇッ!』 三人の心を一つにしたウルティメイトゼロが、巨大な闇の力を迎え撃つ! 前ページ次ページウルトラマンゼロの使い魔