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鈴木あきよし 監督 白浜さち「ぼくの彼女は同級生」 出演者 白浜さち メーカー スパイスビジュアル 発売日 2020/6/26 通販 Amazon.co.jp DMM 備考 監督は撮影名義
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綾瀬あきなをお気に入りに追加 綾瀬あきなとは 綾瀬あきなの66%はやらしさで出来ています。綾瀬あきなの18%は見栄で出来ています。綾瀬あきなの8%は波動で出来ています。綾瀬あきなの5%は汗と涙(化合物)で出来ています。綾瀬あきなの2%はマイナスイオンで出来ています。綾瀬あきなの1%は赤い何かで出来ています。 綾瀬あきなの報道 gnewプラグインエラー「綾瀬あきな」は見つからないか、接続エラーです。 綾瀬あきなのウィキペディア 綾瀬あきな 綾瀬あきなの掲示板 名前(HN) カキコミ すべてのコメントを見る 綾瀬あきなのリンク #blogsearch2 ページ先頭へ 綾瀬あきな 宝塚歌劇団 このページについて このページは綾瀬あきなのインターネット上の情報を時系列に網羅したリンク集のようなものです。ブックマークしておけば、日々更新される綾瀬あきなに関連する最新情報にアクセスすることができます。 情報収集はプログラムで行っているため、名前が同じであるが異なるカテゴリーの情報が掲載される場合があります。ご了承ください。 リンク先の内容を保証するものではありません。ご自身の責任でクリックしてください。
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よゐこの○○で○○生活 とは、You Tubeで公開された動画。 プロフィール キャラクター 動画リスト リンク コメント プロフィール よゐこの○○で○○生活 ジャンル ゲーム実況 制作 任天堂 時間 約30分 公開場所 You Tube 配信期間 『よゐこのマイクラでサバイバル生活』 2017/06/08~改題後 2018/04/13~ 話数 シーズン 31 最新話 よゐこのペーパーマリオでペラペラ生活 YouTubeのNintendo公式チャンネルで不定期に配信されている動画。 お笑い芸人「よゐこ」の2人が様々なゲームの実況プレイを行う。 配信当初は『Minecraft』の実況を行う「よゐこのマイクラでサバイバル生活」として公開されていたが、【ドンキーコング トロピカルフリーズ】?を題材とした「よゐこのドンキーコングでバナナ生活」以降は現在のタイトルへと変更された。 基本的に『ゲームセンターCX』と【ゲームセンターDX】?の2作品を統合したような内容だが、最新作品を取り扱っているためゲームクリアまでは遊ばない。 タイトルの由来は『いきなり!黄金伝説。』の番組内コーナーから派生した『よゐこの無人島0円生活』と思われる。 番組内ではそちらを由来とするネタもたまに使用されることがある。 キャラクター 濱口優よゐこのツッコミ担当。ゲームを遊ぶ際もツッコミを入れる事が多い。彼が最初にある程度遊んでから有野にバトンタッチするのが番組構成のお約束。「とったどー!」を始めとする『よゐこの無人島0円生活』を由来とするネタを使うことが多い。 有野晋哉よゐこのボケ担当。元々ゲーム好きであるのと『ゲームセンターCX』の経験上からか、濱口より後に遊ぶパターンが多く見られる。『ゲームセンターCX』からのネタとして【有野課長】?に扮するネタがたまに使用される。 管理人よゐこに指示を送るスタッフ。『Minecraft』風の濱口と有野が描かれたブロックがアイコンとして使用されている。 動画リスト 回 タイトル 題材 初回動画 最終回 備考 01 よゐこのマイクラでサバイバル生活 Minecraft 2017/06/08 2017/08/31 02 よゐこのマイクラでサバイバル生活 シーズン2 Minecraft 2017/10/12 2017/12/28 03 よゐこのドンキーコングでバナナ生活 【ドンキーコング トロピカルフリーズ】? 2018/04/13 2018/04/18 04 よゐこのインディーでお宝探し生活 ヒューマン フォール フラットCelesteOvercooked - オーバークック スペシャルエディションアンエピック『ゴロゴア』(Gorogoa)INVERSUS DeluxeMr.Shiftyロロロロ 2018/05/24 2018/06/14 05 よゐこのキノピオでぐるぐる生活 【進め!キノピオ隊長】? 2018/06/20 2018/07/04 06 よゐこのマリパで共同生活 【スーパー マリオパーティ】 2018/09/03 2018/09/28 07 よゐこのスマブラで大乱闘生活 【大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL】 2018/12/04 2018/12/20 08 よゐこのマリオでピーチ救出生活 【New スーパーマリオブラザーズ U デラックス】? 2019/01/10 2019/01/24 09 よゐこのインディーでお宝探し生活2 Ultimate Chicken HorseStikbold! ドッジボールアドベンチャー!DELUXEドーナツ カウンティ『Donut County』Minitニーズヘッグ2Yoku s Island ExpressPikuniku(ピクニック)完全爆弾解除マニュアル Keep Talking and Nobody ExplodesUNDERTALE 2019/04/11 2019/04/26 10 よゐこのマリオメーカーで職人生活 【スーパーマリオメーカー 2】? 2019/05/16 2019/08/01 11 よゐこのルイージでマンション生活 【ルイージマンション3】? 2019/10/24 2019/10/31 12 よゐこのリングとペンでトレーニング生活 【リングフィット アドベンチャー】?【東北大学加齢医学研究所 川島隆太教授監修 脳を鍛える大人のNintendo Switchトレーニング】? 2019/12/26 2020/03/27 13 よゐこのペーパーマリオでオリガミ生活 【ペーパーマリオ オリガミキング】 2020/07/14 2020/07/15 14 よゐこのピクミンでひっこぬき生活 【ピクミン3 デラックス】 2020/10/08 2020/10/09 15 よゐこのスーパーマリオで35周年生活 【スーパーマリオ 3Dコレクション】 2020/10/15 2020/12/10 16 よゐこのおうちでマリオカートライブ生活 【マリオカート ライブ ホームサーキット】 2020/01/28 (1本のみ) 17 よゐこのスーパーマリオで3Dワールド+フューリーワールド生活 【スーパーマリオ 3Dワールド + フューリーワールド】 2021/02/05 2021/02/12 18 よゐこの○○とミートピア生活 ミートピア 2021/05/18 2021/05/19 19 よゐこのはじめてのプログラミング生活 【ナビつき! つくってわかる はじめてゲームプログラミング】 2021/06/21 2021/09/29 20 よゐこのゼルダでふりふり生活 【ゼルダの伝説 スカイウォードソード HD】 2021/07/15 2021/07/16 21 よゐこのワリオでおすそわけ生活 【おすそわける メイド イン ワリオ】 2021/09/01 2021/09/08 22 よゐこのやわらかアソビでパーティ生活 【マリオパーティ スーパースターズ】【やわらかあたま塾 いっしょにあたまのストレッチ】【世界のアソビ大全51】? 2021/12/08 (1本のみ) 23 よゐこのカービィで自由研究生活 【星のカービィ ディスカバリー】 2022/03/18 2022/03/23 24 よゐこのスポーツで挑戦者求む生活 【Nintendo Switch Sports】 2022/07/15 2022/07/16 25 よゐこのインディーでお宝探し生活3 Untitled Goose Game ~いたずらガチョウがやって来た!~シューフォーズDorfromantikGang BeastsトゥーディーとトップディーUnpacking アンパッキングごく普通の鹿のゲーム DEEEER Simulator絶叫!スーパーマーケット 2022/12/13 2022/12/22 26 よゐこのカービィで能力全開生活 【星のカービィ Wii デラックス】 2023/02/21 2023/02/22 27 よゐこのマリオでワンダー生活 【スーパーマリオブラザーズ ワンダー】 2023/10/28 2023/10/19 28 よゐこのインディーでお宝探し生活4 Vampire Survivorsちっぴーとのっぽー なかよしコンビのわくわく工場駐められるもんなら駐めてみなスイカゲームTrombone ChampQ REMASTERED 2023/12/15 2023/12/22 29 よゐこのマリドンでひらめき生活 【マリオvs.ドンキーコング(Switch)】 2024/02/08 2024/02/13 30 よゐこのピーチでヒラメキ生活 【プリンセスピーチ Showtime!】 2024/03/18 2024/03/19 31 よゐこのペーパーマリオでペラペラ生活 【ペーパーマリオRPG(Switch)】 2024/05/17 2024/05/20 32 よゐこのルイージでマンション探訪生活 【ルイージマンション2 HD】 2024/06/21 2024/06/24
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※初めての方、および「もう忘れちまったよ!」という方のためのおさらい※ (面倒な方は飛ばしちゃってください) ○○……幻想郷で小説家業を営んでいる。3人の女性に想いを寄せられているも、察しが悪く気付いていない。竹林傍で1人暮らししているが、誰かしら家を訪ねてくるので1人でいることが逆に少ない。 慧音……人里の守護者で、寺子屋の先生。○○の出版業のサポートをしている。無茶しがちな友人たちのお目付け役。 妹紅……竹林に住む少女。○○と○○の小説が好き。食糧のおすそわけやら料理をしてもらうやら、色々と理由をつけて○○の家を訪問する。 魔理沙……勝手気ままな幻想郷の魔法少女。楽しいこと、面白いことにはすぐに首を突っ込む。理由もなく○○の家に突撃訪問しては、色々とかき回していく。 レミリア……紅魔館当主。小説家としての○○を気に入っているが、吸血鬼としてのプライドが先行して素直にそれを表に出せない。○○たちのラブコメ劇を一番楽しんでいる人。 咲夜……レミリアのメイドさん。主人に対して間違った敬愛の念を抱いている。 パチュリー……紅魔館大図書館の主。○○とは図書館の利用を通じて知り合っており、書物を通じての交流が続いている。 美鈴……紅魔館のお昼寝門番。妹紅の花嫁修業における師匠で、妹紅の恋を応援している。 阿求……幻想郷縁起の作者。○○とは同じ文筆家として協力したり、競い合ったり。慧音の恋を応援している。 アリス……魔法の森に住む人形遣い。魔理沙の親友を自負している。変人である○○に警戒しつつも、魔理沙の恋を応援している。 霊夢……本編主人公もここでは脇役。今回は出番なし。 文……文々。新聞の製作者。鴉天狗。○○の連載小説を自分の新聞に載せるなど、○○とは仕事上の深い付き合いがある。すさまじいデバガメ根性の持ち主で、裏☆文々。新聞という、○○たちのラブコメ劇を面白おかしく報ずる艶聞新聞を作っている。 ○○の家……かつて家が燃えてしまって建て直した際、魔理沙・妹紅・慧音たちによって対妖怪の防御要塞と化している。○○自身はそのことを知らない。 では、4コマ漫画感覚で気軽にお読みくださいー ※ ―ある日の夜― 竹林の傍に建つ木造一軒家。 大きくも小さくもなく、特に目立った作りも見当たらない平凡な家。 それを遠くから眺める、2人の妖精がいた。 ―あたい!― コソコソ コソコソ ???「ふふふ……やっと見つけた。あの家ね」コソコソ ???「ね、ねえ、チルノちゃん。本当にやめておこうよ」コソコソ チルノ「しっー! 大ちゃん、静かにして! ここまできたら引き返せないよ!」 大妖精「けど……」 チルノ「あたいはやるよ! やってやるよ!」 大妖精「あの家ってすごく危ないって話だよ? ルーミアちゃんも前にひどい目にあったって」 チルノ「あたいをあんなちっこい妖怪と一緒にしちゃあダメだね! あたいはもっとでっかいよ!」 大妖精「そんなに大きさは変わらないと思うけど」 チルノ「あたいの方が胸がでっかい!」 大妖精「そ、そうかなあ。正直そんなに変わらないような……」 ―ピンポンダッシュ的な― 大妖精「ルーミアちゃんだけじゃないよ? 他にも、サニーちゃんたちがあの家に忍び込んだら、白い髪の女の人にひどい目にあわされたって」 チルノ「ふーん」 大妖精「他にもたくさん……普通の家に見えるけど、妖怪とか妖精には危ないって噂が一杯」 チルノ「みたいだね」 大妖精「だ、だからやっぱり忍び込むなんてやめようよ」 チルノ「ふふふふ」 バッ! チルノ「危険上等! そういうところにもぐりこんで何か取ってきたら、あたいが最強だって示せるじゃない!」 大妖精「チルノちゃ~ん」アセアセ チルノ「あの3妖精でも忍び込めたんでしょ? あたいなら、あの家からモノを持ち出してくるなんて軽い軽い!」 大妖精「サニーちゃんたちは、白い髪の人に危うく燃やされそうになったらしいよ? チルノちゃん、火は苦手でしょ?」 チルノ「今年の夏もちゃんと乗り切ったあたいが、ただの火に負けてなるものかー!」 大妖精「その自信はいったいどこから出てくるの~!」あたふた ―いざ!― チルノ「よっし! いくよ!」 大妖精「ほ、本当にやめた方が……」 チルノ「大ちゃん! ほらっ!」 大妖精「え、え? 何?」 チルノ「合図! この神聖なる競技にふさわしい、もんのっすごいスタートを頼んだよ!」 大妖精「え、えーと、その」 チルノ「チルノ選手、位置につきました! 目標! 竹林の傍に建ってる人間の家! そこから果たして何か盗んでくることができるのでしょうかチルノ選手!」 大妖精「ど、どうして自分で実況してるの?」 チルノ「いいから! 早く!」 大妖精「もう! 知らないからね! ええと……よ、よーい」 チルノ「……!」スチャ 大妖精「……」←ためてる チルノ「……」うずうず 大妖精「……」←ためてる チルノ「……」うずうず チルノ「むむむっ!」 チルノ「ゴー!」ダダダッ! 大妖精「どんっ!って、え!? 私の合図関係ないじゃん!」 ―防衛装置作動開始― ダダダダ! チルノ「チルノ選手! これは良いスタートだ! このままゴールか? そうゴールだ!」ダダダダ! チルノ「とりゃー!」 ピッ ピピッ ピピピピッ 大妖精「な、何か鳴ってるような」 ピピピピ! ピーっ! カシャッ チルノ「うん?」 大妖精「地面から何か出てきた?」 大妖精(あれって黒白魔女さんが持ってる道具……だよね?) きゅいんきゅいん チルノ「へ?」 ぶぉーん! チルノ「うわっまぶし」 ぴちゅーん 大妖精「ああっ! チルノちゃんが! 極太レーザーで跡形も残らず!」 ―排除するまで止まりません― ピピピピ! 大妖精「え、え? まさか、まだ」 ピーっ! カシャ 大妖精「……お札?」 ごぉぉぉぉ! 大妖精「ほ、炎!? きゃあああ! 熱い熱い!」 ごぉぉぉ! 大妖精「やああ! 服が燃えちゃうよぉ!」 しゅるるる←消し飛んだ氷が再び集まる音 ポンッ! チルノ「あたい復活! ふふふ、あの程度のレーザーで」 ごぉぉぉ! チルノ「うわ、あつっ」 ぴちゅーん 大妖精「ああ! チルノちゃんが火炎放射で蒸発しちゃった!」 ピピピピ! 大妖精「あわわわ! まだ終わらないの!? こ、ここは水蒸気になったチルノちゃんをこの袋に入れて」 ピーっ! 大妖精「退却ー!」ぴゅーっ ピピピ…… ピピ…… …… シーン ―翌朝― ちゅんちゅん ガラっ(扉が開く音) ○○「……あ゛ー」 ゴシゴシ ○○「ふわあ」 ○○「ねむっ」 ○○「朝日が目に痛い。けっこう寝たはずなのになあ」 ○○「歳だなあ、俺も。って、まだ20代前半だっつーの」 ○○「……むなしく1人突っ込みしてないで、とりあえず深呼吸……スーハー」 ○○「さて、顔でも洗いますか」 スタスタ ○○「ん?」 ○○「んー? また地面に穴が空いてるな」 ○○「最近頻繁にあるよなあ。なんだろ、これ」 ○○「ちっさい穴が、家の周りに点々と……気味が悪いな」 ○○「……隕石でも降ってきたのか?」きょろきょろ ○○「って、こんな近くに落ちたら俺の家なんて吹っ飛ぶか、はははは」 ○○「はははは……はあ」 ○○「頭が働かない。とりあえず顔を洗おう」 ―常連さん― ○○「さてと、朝ご飯は何にするかな」 コンコン ○○「はいー?」 妹紅「おはよー。って、珍しい。○○が早起きしてるよ」 ○○「おはよ、妹紅。朝からどうした?」 妹紅「○○のだらしない寝顔でも眺めながらお茶漬けでも食べようかと」 ○○「おいおい」 妹紅「ま、それは冗談で。最近○○の顔見てないなーって思ったから、生存確認も兼ねて遊びに来ただけだよ」 ○○「こんな朝早くから?」 妹紅「寝顔が見られたら、それはそれで」 ○○「はい?」 妹紅「ん、なんでもない。とにかく、気が向いたから遊びに来ただけ」 ○○「ふーん。とりあえずどうぞ。朝ご飯でもごちそうするよ」 妹紅「囲炉裏の火は私が点けとくぞー」 ○○「おう、さんきゅ」 ―朝食の肴― 妹紅「へー、穴がねえ」モグモグ ○○「そうなんだ。なんか不思議でな。あっ、漬物あるぞ」モグモグ 妹紅「おっ、かぶら漬け。ありがと。まあ、もぐらでも出たんじゃない?」 ○○「そうなのかなあ」 妹紅「気にしない気にしない。○○に危ないことなんてないって」 ○○「うーん」 ―常連さん その2― ガラっ 魔理沙「○○、起きてるかー。って、おお?」 ○○「魔理沙、どうしたんだ、こんな朝早くから」 魔理沙「ちょいっと近くを通ったから寄ってみたんだが……ほぉー、妹紅もいるとはねえ」 妹紅「……何か?」モグモグ 魔理沙「別にぃ。んじゃま、私もお相伴に預かりますか。○○ー、なんか食べさせてくれー」 ○○「いきなり訪ねてきて飯の催促って」ハァ 魔理沙「妹紅だって食べてるし、いいだろ?」ニカッ ○○「仕方ないな。ちょっと座って待ってろ。今用意してやるから」 魔理沙「おー、頼んだぞー」 ○○「まったく」スタスタ ―厳重注意― 妹紅「……」モグモグ 魔理沙「んー」ジーっ 妹紅「……」モグモグ 魔理沙「なー、妹紅」 妹紅「……?」 魔理沙「朝駆けは成功したのか?」ニヤニヤ 妹紅「あさがけ……?」 魔理沙「どうせお前のことだから、寝てる○○の布団に潜りこんで色々するつもりだったんだろ? うわー、やらしい」 妹紅「なっ」カァ 魔理沙「おっ、図星か?」 妹紅「ち、違う! 私は別に……!」 魔理沙「だけどなあ、そういうのはルール違反だぜ?」チッチッ 妹紅「だから! 私はただ、ちょっと様子を見に来ただけだっ」プイッ 魔理沙「ふーん、それならいいけどな」 魔理沙「けど、ちょっとやってみたいとか思ったんじゃないか?」ニヤニヤ 妹紅「……」 妹紅「……」 妹紅「……」カァ 魔理沙「おいおい、冗談を真に受けるなって」 ―人間栄養剤― 魔理沙「しかしまあ、お前もよくここに通うよな。私たちの中じゃ、お前が一番この家に居座ってるんじゃないか?」 妹紅「まあ、近いし」 魔理沙「○○に会いたいし?」 妹紅「……ふん」 魔理沙「お前がうらやましいぜ。私はちょっと遠いからなー。暇な時ぐらいしか来れない」 妹紅「毎日暇なくせに」 魔理沙「でもないぜ? 最近は魔法の研究で手が離せないからな。アリスとパチュリーとで共同研究してるんだ」 妹紅「ふーん。けど、○○の家には寄るんだ」 魔理沙「あのちょっと間の抜けた顔を見てると、しんどいのが吹き飛ぶ感じがするからな」 妹紅「……分かるかも」コクコク 魔理沙「だろ?」 ○○「よいしょ、お待たせっと」カタカタ ○○「ほら、魔理沙。机をあけてくれよ……ん? なんだ? なんで2人とも俺の顔をそんなにじろじろ見てるんだ?」 妹紅「別に」 魔理沙「まあ、気にすんなって」 ○○「?」 ―知らないフリ― 魔理沙「ふーん、穴か」モグモグ ○○「ああ。魔理沙は何だと思う?」 魔理沙「さあな。誰かが表で弾幕ごっこでもしてたんじゃないか?」 ○○「さすがに弾幕ごっこがあったら、夜中でも起きると思うぞ」 魔理沙「だったら私にも分からないな。まあ、別に危害はないんだし、気にしなくていいだろ」 ○○「そうかねえ」 ○○「あっ、食器洗ってくる。妹紅、お茶は?」 妹紅「いいよ。飲む時は自分で淹れるから」 ○○「そうか。じゃあ、失礼してっと」スタスタ ―秘密の防衛隊― ジャー ガチャガチャ 妹紅「……」 魔理沙「……聞こえてないよな?」 妹紅「食器洗ってる時は聞こえない、はず」 魔理沙「そうか。で、穴が空いてたってことは、昨日もまた、なんか引っかかったってことだな?」 妹紅「みたいだね。けど、そんな大きい妖怪がきたってわけじゃないと思う。せいぜい妖精ぐらいか」 魔理沙「そうか。ま、防衛装置がきちんと動いててよかったってところか」 妹紅「穴が空くのはどうしようもない?」 魔理沙「地面に魔法道具埋めてる以上なー」 妹紅「しょうがない、か」 ―鈍さ全開― 妹紅「……けど、この家になってから半年以上経つのに、まだ○○にばれてないって結構すごいね」 魔理沙「防音魔法も完璧だからなー。この家の中にいたら、装置が動いてもわかんないだろ」 妹紅「○○は家にこもってることの方が多いし……なんだかんだ言って、この防衛装置を入れてよかった、か」 魔理沙「そりゃあ、人里から離れたこんな場所に住んでるんだから、これぐらいはしとくべきだぜ」 妹紅「○○に内緒のままで、いいのかっていう問題もあるけど」 魔理沙「けっこう気にしてたみたいだな。まあ、自分の家の前に穴が空いて気にしない奴はいないか」 妹紅「話した方がいいんじゃない?」 魔理沙「今更だろ。それに、○○なら絶対『そんな物騒なものを置かないでくれ』って言いそうだしな」 妹紅「……確かに」 魔理沙「こんなところで1人暮らしする方が物騒だってのに。竹林は永遠亭のおかげで比較的安全だっつっても、人里よりは危険があるわけだし?」 妹紅「うーん、○○にはそういうことを気にせず、のびのび育ってもらいたいな」 魔理沙「お前、それって小さい子供育ててる母親の台詞だぞ」 ―昔話― 妹紅「はい、お茶」 魔理沙「お、さんきゅ。妹紅がお茶を入れるとはなあ。前はお茶っ葉をそのまま湯呑みに突っ込んでたってのに」 妹紅「そんな昔の話、今更言わないでほしいね」 魔理沙「他の家事もちょこちょこやってるんだってな。特訓でもしてるのか?」 妹紅「特訓というか、修行?」ズズッ 魔理沙「修行ねえ」ズズッ 魔理沙「そうそう、話は戻るんだけどな。私は前から不思議だったんだが、あいつはなんでこんなところに住んでるんだ? 人里に住めばいいってのに」 妹紅「……さあ、なんでだったかな。確か、ここに越してきたのは、慧音のところで居候するのをやめた後だから、2年ぐらい前だったはずだけど」 魔理沙「だったら、私はまだ知り合ってすぐの頃だな。気がついたらあいつはここに住んでたぜ?」 妹紅「私もよく事情は知らないけど……慧音がすごく反対しても、○○は絶対にここに住むって決めてたみたいで、よく2人が話し合ってるのを聞いてたよ」 魔理沙「ふーん……何か思い入れでもあるのかね」 妹紅「さあ」 ―本音― 魔理沙「何にしろ、私としては人里に住んでもらいたいもんだ」 妹紅「心配だから?」 魔理沙「今より私の家に近くなる」 妹紅「……」ふぅ 魔理沙「つーか、私の家に住んでもらうってのもありか?」 妹紅「魔法の森に○○が住めるはずないでしょ」 魔理沙「だよなあ」 妹紅「ここで十分だと思うよ。強い妖怪が来ても大丈夫なように作ってるし、当分は危険もないはず」 魔理沙「何より自分の家から近いし、ってか?」 妹紅「……」 魔理沙「あ、お前目を逸らしたな? 図星なんだろ」 妹紅「さあね」 魔理沙「なんっか、ずりいよなあ」 スタスタ ○○「ふぅ、やっと終わった。おーい、2人とも、ちょっと散歩に出ないか? 食後の運動で」 妹紅「ん」 魔理沙「おー」 ―再び夜になり― ……ワオーン ……シーン バサッ バサッバサッ 「……あれがあの男の家で間違いないのね」 「はい」 「ふむ……」 「どうかいたしましたか?」 「貧相ね。小さいし、ボロいわ」 「お嬢様、私どもの屋敷と比べてはお可哀そうですわ」 レミリア「ふ、そうね。ただの人間がこの幻想郷で、村の助けも借りずに家を持つ。なかなかできることではないわ。そこは賞賛しましょう」 咲夜「さすがはお嬢様。器が大きくていらっしゃいますわ」 レミリア「当然のことよ。むしろこの程度で主をおだてるものではないわ、咲夜」 咲夜「失礼いたしました」 レミリア「さて、さっさと用事を済ませていくわよ。ここに来たのはただの観光ではないのだから」 咲夜「はい、かしこまりました」 ―ナイフ(魔力込み)― レミリア「それにしても辺ぴなところね。周りには何もないじゃない。何を好き好んでこんな場所に」トコトコ 咲夜「お待ちくださいお嬢様」 レミリア「なに?」 咲夜「妙な感覚が……おそらくこれは」ごそり シャッ!(ナイフを投げる音) ピピピ! ボンッ!(ナイフが多数の弾幕に撃ち落とされる音) レミリア「……地面から弾幕が?」 咲夜「トラップ……いえ、あの家を守る防衛装置ですね。家の周り一帯に仕掛けられているようです」 レミリア「なるほど。あの娘たちの仕業ね。なんとも過保護だこと」 咲夜「解除できるかお調べしますので、少々お待ちを」 ―潜入開始― 咲夜「お嬢様、申し訳ございません。かなり厳重な作りになっていて、私では少々手に余るようです」 レミリア「いいわ。あの程度の弾幕なら、私に傷もつけられない」 咲夜「いえ、トラップにはスペルカードレベルの魔力が込められているものもありますので、油断はできないかと。加えて、御髪や衣装が乱れるのは確実。そんなお姿での会合など、お嬢様はよしとしないのでは?」 レミリア「それはそうだけど、かと言ってあきらめろと?」 咲夜「幸い、トラップには抜け道があるようです。かなり狭い道ですが、そのルートを通れば家に入ることはできます」 レミリア「ふむ」 咲夜「恐れながら、お嬢様には私の指示通りに動いていただければと」 レミリア「分かったわ。指示なさい」 咲夜「かしこまりました」 ―指示に合わせて動け!― 咲夜「では始めます」 レミリア「ええ」 咲夜「まず……家に向かってまっすぐ3歩」 レミリア「ん」トコトコトコ 咲夜「次に、右に2歩」 レミリア「はい」トコトコ 咲夜「後ろに5歩」 レミリア「下がるの? 面倒ね」トコトコ 咲夜「軽くジャンプ」 レミリア「よっと」ぴょん 咲夜「すぐにしゃがんで頭を抱えてガード」 レミリア「ガード? はいはい」ぐっ 咲夜「1秒以内に前へ1歩」 レミリア「こまかいわね」 咲夜「3秒直立姿勢を維持し」 レミリア「ん」じっ 咲夜「くるりと回って」 レミリア「回って」 咲夜「うー☆」 レミリア「うー☆ って何やらせるの!」ピピッ 咲夜「あ」 レミリア「え?」 どごーん レミリア「……」プスプス 咲夜「お嬢様……」 レミリア「あれは必要なのね?」 咲夜「恐れながら」 レミリア「……仕方ないわね。もう1度よ」 ―道は長い― それからレミリアは 「うー☆」を8回、 「がおー、食べちゃうぞー」を3回、 「かわいいポーズ(ポロリもあるよ)」を1回行い、 プライドが十分傷つけられたところで、ようやく○○の家の前にたどり着くのだった。 ―初体験― レミリア「はあはあ、辛く長い道のりだったわ」グデーッ レミリア(い、いったい何をやっているのかしら、私は。あの男に会いに来ただけだというのに) レミリア(ん? そう言えば、ここに来るには咲夜も同じことをしなくてはいけないのでは?)バッ! レミリア(……ふふふ! ここはニヤニヤ笑いながら咲夜の恥ずかしい姿を見物すれば、私のプライドも少しは回復する!) レミリア「咲夜!」くるり 咲夜「はい、お嬢様」 レミリア「え? ええ? 咲夜? どうしてあなたがここに」 咲夜「はあ、私はお嬢様の従者ですので」 レミリア「そうじゃなくてトラップは? 理不尽な指示は? 咲夜のかわいいポーズ(ポロリもあるよ)は?」 咲夜「ああ、そのことですか」 咲夜「最初に申し上げましたが、あのトラップは魔力や妖力に反応するものです。つまり、妖怪対策ということですね」 レミリア「じゃ、じゃあ」 咲夜「はい、人間にはほとんど反応しません。私は数少ない汎用トラップを避けつつ、一直線にスタスタと」 レミリア「……」 咲夜「……」 レミリア「咲夜」 咲夜「はい」 レミリア「私、今生まれて初めて人間がうらやましいと思ったわ」 咲夜「貴重な経験をされましたね」 レミリア「ええ、本当に。さあ行くわよ」 ―ご対面― コンコン 「はいはーい」 ガラっ ○○「どちら様ですか、っと……あれ? レミリアさん? こんばんは」 レミリア「久しいわね、小説家」 咲夜「夜分にお邪魔いたします」 ○○「珍しいですね、お2人がこちらにやってくるなんて」 レミリア「むしろ妖怪がこの家にやってくること自体が珍しいのではなくて?」 ○○「はあ、そんなことはないと思いますが」 レミリア(……こいつ、トラップのことは知らないのね) 咲夜(彼女たちは過保護すぎますね、本当に) ―憂さ晴らし― レミリア「とりあえず、家に入れてもらってもいいかしら?」 ○○「あ、はい。どうぞ。今座布団を用意しますので」 レミリア「あら? この私に座布団に座れと。せめてロッキングチェアぐらいは用意なさい」 ○○「え、それは……」 咲夜「お嬢様、さすがにこの家にそのような椅子は」 レミリア「黙りなさい咲夜。ふふふ、そうね……」ニヤリ レミリア「では○○、あなたが椅子になりなさい。そこに四つん這いになるのよ」 ○○「え、えええ!」 咲夜(お嬢様、あんなことをする羽目になったのを根に持っているのですね) レミリア「言うことを聞かないというなら……どうしてくれようかしら」 ぞわぞわ(レミリアの身体から妖気が出る感じの擬音語) ぴこーん 咲夜(あら? 壁に貼られたお札が光ってる) ―出撃!― 同時刻、竹林に佇むある一軒家にて。 台所に立ち一心不乱に包丁を繰っている1人の少女がいた。 おぼつかない手つきながら、果物を食べられる大きさに切っていく少女。 以前は丸かじりという豪快な調理法ばかりを使っていた彼女にとって、こんな簡単な作業も真剣勝負だ。 「ん、んんっ!」 唸りながら包丁を操る少女。だんだんと果物が食べられる形に整っていき…… ぴこーん ぴこーん 「……はっ!」 と、そんな時、壁に貼られた1枚の御札から光が放たれた。 それに気付いた少女は、即座に包丁を壁に突き刺し、猛烈な勢いで家から飛び出した。 白い髪を翻し、迷いの竹林を迷うことなく駆けていく。 妹紅「○○……!」 1人の男の名を口にしながら。 ―鳥蝙相搏つ― ○○「えーと……」 レミリア「さあ、さっさと跪いて」 ……ダダダダ! バタン! 妹紅「燃す!」 レミリア「なにっ!?」 ガキン!←突き立てられた拳をガードする音 妹紅「○○の家に侵入した不届き者め! 私が消し炭すら残らないよう丹念に燃やして――って、お前は!」 レミリア「藤原妹紅……! どうしてここに!」 ○○「妹紅!」 妹紅「……」きょろきょろ←○○が無事であることと、咲夜がいることも確認 妹紅「……」じーっ←拳を受け止めているレミリアを凝視 妹紅「……っ!」←レミリアが○○を襲っていると判断 妹紅「なにやってるんだお子様吸血鬼ー!!」 レミリア「あんたには関係ないでしょうが焼き鳥娘ー!!」 ドーン!! 咲夜「あらあら、炎と妖力のぶつかり合いですわね」 ○○「あ、あぁ! 家が! 原稿が燃える!」 咲夜「いえいえ、○○さん。家の方はかなり頑丈にできていますので、この程度ではびくともしないかと」 ○○「つまり原稿は燃えるってことじゃないですか! 2人ともやめて!」 ―騒がしい客人― レミリア「……」ムスッ 妹紅「……」ムスッ 咲夜「片づけはこの程度でよろしいですか?」 ○○「ありがとうございます。助かりました」 咲夜「いえいえ。主の不始末は従者が引き受けるものですので」 レミリア「何よ。私が悪いというの」 妹紅「当たり前だろ。あんたが家に侵入するから」 レミリア「私はただこの男に用事があって来ただけよ」 妹紅「だったら家に入った時に感じた妖力はなんだっていうんだ」 レミリア「さあね。勘違いじゃないの」 妹紅「お前は……!」 ○○「どうどう。妹紅、とりあえず落ち着いてくれ」 妹紅「けど!」 ○○「そもそも、妹紅もなんでここに来たんだ? いきなりレミリアさんに突っかかったりなんかして」 妹紅「それは……」ギクリ ○○「うん?」 妹紅「……○○が危ないかもっていう勘が働いたっていうか」 ○○「勘ねえ」 咲夜(妖力探知の御札が貼ってるなんて、言えないんでしょうね。監視してるようなものだし) ―敬うことは距離を取ること― ○○「ともかく2人とも、家の中で弾幕ごっこは勘弁してください」 レミリア「分かってるわよ」 妹紅「……分かった」 ○○「頼むよ。それで、レミリアさんはどのようなご用事でこちらに?」 レミリア「あなたに仕事の依頼をしにきたのよ」 ○○「仕事ですか? しかし私ができるような仕事など」 レミリア「その話し方、やめなさい。別にもう初対面だというわけでもないんだから、過剰なまでに口調を丁寧にされるのも虫酸が走る」 ○○「しかし仕事なのでしたら」 レミリア「それでもよ」 ○○「……分かりました。では最低限にしておきます」 レミリア「ええ」 ―ご依頼なあに― ○○「で、レミリアさん、俺に依頼とは?」 レミリア「あなたに本を書いてほしいのよ」 ○○「本、ですか」 レミリア「私には妹がいるんだけど、その妹というのが部屋に閉じこもりがちな子でね。いつも部屋で絵本を読んだり、おもちゃで遊んだりばかり」 ○○「妹さんはまだ子供さんなんですね」 レミリア「そうね、500歳ぐらいの子供よ」 ○○「……さすが吸血鬼さん」 レミリア「で、その妹が最近『もっと色々な本が読みたい!』って駄々をこね始めたのよ。よほど暇なんでしょうね」 レミリア「けれど、幻想郷で売っているような本はほとんど買ってしまっている。そこで、あなたよ」 ○○「なるほど。児童書の執筆依頼ということですか」 ―さりげなく勧誘― レミリア「どうかしら。原稿料はもちろん払うけれど、その本を出版するなら援助してもいいわ」 ○○「……むぅ」 レミリア「あら、不満? 援助、と言わずに全部の経費を持ってもいいわよ」 ○○「……〆切はありますか?」 レミリア「1ヶ月。それ以上待っていると、あの子がかんしゃくを起こしそうだわ」 ○○「……」 レミリア「内容の条件はただひとつ。これ以上ない面白い話を書きなさい。吸血鬼を虜にするような、ね」 ○○「……むぅ」 レミリア「黙ってないで何かいいなさい」 ○○「……」 レミリア「ちょっと!」 ○○「……」 レミリア「まさか、報酬に不満でもあるの? だったら私の屋敷に住むっていう報酬はどうかしら。こんな何もないところにいるよりよっぽどマシだろうし」チラリ 妹紅「……」ギロリ レミリア「うふふ。どう? って、あなた、いい加減何か答えなさい」 ○○「え? ああ、すみません。報酬なら最初に言った通りでかまいませんよ」 妹紅「……」ほっ レミリア「ちっ。じゃあ、何を考えてるのよ」 ○○「書くのは難しいかなと」 レミリア「難しい? どうして?」 ―お仕事なら真剣に― ○○「正直、児童書を書いた経験が全くないんです。普通の小説と児童小説だと、書き方も内容も全然違うので」 レミリア「あら、自信がないと?」 ○○「自信を持って小説を書いたことなんて滅多にないですよ」 レミリア「幻想郷でもっとも売れてる小説家が、何を言ってるの。そんなことではあなたの読者が困るでしょうに」 ○○「色々あるんですよ。とにかく、受けるかどうかは少し考えさせてもらっても?」 レミリア「受けなさい。この私がわざわざこんなところまで来たのだから。無駄足を踏ませるなんて許さない」 ○○「厳しいですね……」 レミリア「私は期待している者にしか厳しくしないわ。ねえ、咲夜」 咲夜「はい。美鈴が昼寝をしたら容赦なくご飯を抜くのも、期待しているが故、ですわ」 レミリア「ええ」 妹紅「……みりんも苦労してるんだね」 ―結局受けさせられました― レミリア「じゃあ、頼んだわよ」 咲夜「お邪魔いたしました」 バタン 妹紅「さてと、あいつらも帰ったし、私もそろそろ……○○?」 ○○「……ん?」 妹紅「なんか元気ないけど、どうかした?」 ○○「いや、な。児童書とはまた難しい仕事を受けちゃったな、と」 妹紅「そんなに難しいもの?」 ○○「まあね。とにかく明日からは忙しくなる」 妹紅「そっか」 妹紅(……何か手伝えないかな) ―翌朝、○○の家― コンコン 妹紅「○○ー。起きてるー?」 コンコン 妹紅「おーい」 コンコン 妹紅「反応がない……まあ、とにかく入ってみるか」 ガラッ 妹紅「○○ー。って、うわ。すごい散らかりよう」 ○○「……おー、もこーかー」 妹紅「ま、○○? なんか目の下の隈がすごいぞ」 ○○「あはははは。あれから一晩中アイディアが浮かばないか考えてみたんだけどなー」 妹紅「いいのが思い浮かばなかったってことか」 ○○「まーねー」フラフラ ガラリ 「おーす。邪魔するぜって、なんだこりゃ!」 妹紅「あれ、魔理沙」 魔理沙「お、おう、妹紅。お前また来てたのか。で、こりゃなんだ?」 ―キョンシーの顔は青いのか?― 魔理沙「はー、なるほどなー。それで○○は今にも死にそうな顔をしてるっと」 ○○「そんなに俺、しんどそうか?」フラフラ 魔理沙「キョンシー以上に青い顔してるぜ」 妹紅「○○は一度寝たら?」 ○○「そうする……2人は適当にお茶でも飲んどいてくれ。昼ごろ起きるから」ふぁー ○○「では、おやすみ」バタン 妹紅「あ、布団敷く……って、もう寝てる」 魔理沙「よほど疲れてたのかねえ」 ―1000を過ぎても……― 魔理沙「ほお、レミリアがそんな仕事をなあ」 妹紅「昨日はちょっと焦ったよ」 魔理沙「ふーん……子供の本ね。○○の書くものはだいたい大人向けだったな」 妹紅「だから難しいって昨日言ってたね。どう難しいのかはよく分からないけど」 魔理沙「『子供の気持ちが分からない』とか、そういうことじゃないか? ○○って、書こうとするものについては、めちゃくちゃ詳しく調べるだろ?」 妹紅「ああ、だね」 魔理沙「○○も、もういい年したおっさんだからなあ。子供心って奴を忘れてるのかもな」 妹紅「おっさんって……○○はまだ20過ぎだろ」 魔理沙「ハタチ過ぎればなんとやら」 妹紅「それ諺か何か? けど私からしてみれば、10も20も変わらないっていうか……」むぅ 魔理沙「うん?」 妹紅「年は取ってもガキっぽいのがここにはうようよいるし……『アイツ』を見てると、人間はいつまでも子供なんだなと」 魔理沙「あー、あの姫さんなー」 ―彼女の思いつきはトラブルの始まり― 魔理沙「とにかく、あれだ。○○には子供心を取り戻すことが必要ってわけだな」 妹紅「かもね」 魔理沙「んー……おっ、いいこと思いついた」ピコーン 魔理沙「なあ、こんなのはどうだ?」 妹紅「……さてと、○○に朝食でも作ってあげようか」スタスタ 魔理沙「おいおい! 少しぐらい聞いてくれてもいいだろ」 妹紅「魔理沙の思いつきにろくなものはない」キッパリ 魔理沙「むっ。言ったな? だったら目にもの見せてやるよ! ここで待っとけよ!」 ビュン! ゴーッ!←魔理沙が箒で飛んでいく音 妹紅「やれやれ……変なことにならなきゃいいけど」 ―3人組襲来― グツグツ 妹紅「よし、味噌汁はこんなものかな。みりんに教えられた通りに作ってみたけど……ん、味は悪くない」 妹紅「余ってた餅も入れてみたけど、どうだろうか」 妹紅「って、もうお昼か。○○を起こさないと」 ガヤガヤ チョット ヒッパラナイデッテバ ・・・ドウシテ コンナトコロニ 妹紅「ん? 外が騒がしい……」 ガラっ! 魔理沙「少し手伝ってもらうだけなんだから、ケチくさいこと言うなって!」 アリス「あなたの『ちょっと』はちょっとじゃないの! 私だって研究で忙しいんだから!」 パチュリー「コホコホッ。この家、少し埃っぽいわ。掃除はしているのかしら」 妹紅「……」 妹紅(魔法娘3人組って……嫌な予感しかしない)ハァ ―客観的に見れば変です― アリス「まったく、いきなり家に来たと思ったら、こんなところに連れてきて……ここって○○さんの家でしょ?」 魔理沙「ああ、そうだぜ? アリスは来るの初めてだったか?」 アリス「当たり前でしょ。男の家に入るなんて、破廉恥な真似……って、あなたまさか」 魔理沙「うん?」 アリス「まさかとは思うけど、○○さんの家に毎日通ってるなんてことは」 魔理沙「毎日ってわけじゃないが、週4ぐらいは来てるぜ?」 アリス「……」アゼン 魔理沙「っていうか妹紅なんか週6だし。慧音も結構くるぞ。なあ?」 妹紅「まあね」 アリス「お、男の家に3人の女性が通い詰めるって……」 魔理沙「なんか変か?」 アリス「……あなた達に『恥じらい』というものを教えてあげたいわね、ほんと」ハァ ―多少の人望あり― パチュリー「こほこほ。藤原妹紅、少し窓を開けてもらってもいい?」 妹紅「はいはい」 ガラっ パチュリー「ふぅ……久しぶりに図書館の外に出た先が、こんなボロッちぃ家だなんて」 魔理沙「今日は○○がなあ。いつもはもう少し綺麗だぜ?」 パチュリー「そう……で、当の家主はどこにいるのかしら」 妹紅「あそこで寝てる」 ○○「zzzz」 パチュリー「……ねえ、魔理沙。○○さんのために来てくれって言ってたけど、本人は気持ちよさそうに寝てるじゃない。てっきり私は○○さんの体調が悪くなったのかと」 魔理沙「ある意味緊急事態だからこそ、お前たちを呼んだんじゃないか」 パチュリー「緊急事態ねえ」 アリス「そうは見えないけど」 魔理沙「とりあえず話を聞いてくれ。私たちの仲だろ?」 パチュリー「……分かったわ。○○さんは私にとっても読書仲間だし、話だけは聞いてあげる」 アリス「ふぅ、仕方ないわね」 魔理沙「よし、じゃあ耳を寄せろ。やらなきゃいけないのはな」ゴニョゴニョ」 妹紅「……お茶でも入れるか」 ―成長しています― 魔理沙「とまあ、こんな感じだ!」 アリス「……それってやる意味あるの?」 パチュリー「ないでしょうね。面白そうではあるけど」 魔理沙「意味はある! この私が言ってるんだから間違いない!」 妹紅「話は終わった? はい、2人とも。お茶」 アリス「あら、どうも」 パチュリー「あなたがお茶を淹れるだなんて……」へぇ 妹紅「似合わないとでも言いたい?」 パチュリー「いえ。ウチの門番から色々と教わってると聞いているわ。その成果なのだなとね」 妹紅「……みりんめ。誰にも言うなって言ったのに」 魔理沙「ほれほれ! お茶は後だぜ! さっそく魔法陣とか書いていかないと!」 アリス「ふぅ……じゃあ、始めましょうか」 パチュリー「ここまで来て何もせずに帰るのも、味気ないでしょうしね」 ―作業中― ガヤガヤ アリス「ああ、パチュリー。そこは文字を変えないと」 パチュリー「あら、そうかしら。あまり負荷をかけすぎると安定しないわ」 魔理沙「ふんふーん♪」カキカキ アリス「魔理沙! 適当に書かないの!」 魔理沙「んー? 私はいたって真面目だぜー」 パチュリー「それだと均一に魔力が通らないわよ。ほら、貸しなさい」 ガヤガヤ 妹紅(いきなり表に出たと思ったら、地面に落書き、もとい魔法陣を書き始めて……) 妹紅(いったい何をするつもりなんだか) ○○「zzzz」 妹紅(○○はまだ起きない……もうお昼過ぎてるのに) 妹紅(……お味噌汁が冷めた) ―作業時間30分― 魔理沙「よし、できたぞ!」 アリス「案外楽なものね」 パチュリー「3人も揃うとさすがにね」 妹紅「で、それはいったい何?」 魔理沙「ふっふっふっ、聞いて驚くなよ」 魔理沙「これは私たち魔法使い組が総力を結集して作り上げた!」 魔理沙「『若返り』の魔法陣だ!」ドンっ ―やっぱりただの思いつきでした― 妹紅「……はあ?」 アリス「要するに、この魔法陣の中に入った人間を子供に戻せるわけよ」 パチュリー「ただし身体だけね。精神は大人のまま。効果は1日程度よ」 妹紅「それにいったいどんな意味が……」 魔理沙「これで○○が子供に戻れば、『子供心』って奴を思い出せるだろ?」 妹紅「……そんな単純な」 魔理沙「何をー!」 妹紅「身体だけ子供になったって、心が大人のままじゃ意味ないだろ」 アリス「やっぱりそうよねえ」 パチュリー「そうかしら。無理やり笑顔を作れば心も楽しくなるように、子供の姿になれば、童心にかえることもできるかもしれないわよ」 魔理沙「だろ、だろ! パチュリーの言う通りだぜ!」 妹紅(魔理沙は絶対そこまで深く考えてない) ―実は初めて作った3人― 魔理沙「とにかく○○だ! ○○を魔法陣の中心に運べい!」 アリス「はいはい」シュ←人形を家の中に向かわせた音 妹紅「ちょっ、○○に変なことするなって!」 魔理沙「魔女2人と魔法使いが作った魔法陣なんだし、大丈夫だって」 パチュリー「作った以上、使わないともったいないのよね」 妹紅「だったらまずは魔理沙が試せばいい」 魔理沙「はっはっはっ」 妹紅「笑って誤魔化してるだろ」 ―実践― アリス「はい、上海、蓬莱、お疲れ様」 シャンハーイ ホラーイ ドサリ ○○「zzzz」 妹紅(……やっぱり止めよう。まずは○○を魔法陣の外に) ガシッ 妹紅「……! 魔理沙!」 魔理沙「止めようとしてももう遅いぜ」 妹紅「は、離せ!」 魔理沙「さあ、魔力を魔法陣に注ぐぞ!」キュイーン アリス「さて、成功するかしら」キュイーン パチュリー「悪いことにはならないから、安心しなさい。藤原妹紅」キュイーン キュインキュイン 妹紅「○○っ!」 ピカーン! ―結果は……― ピカーン! ○○「んん……」 ○○「な、なんなの?」パチクリ ○○(ん? なんか喉が変だ) ○○(風邪でもひいたか? とにかく起きよう) ムクリ スタッ ○○(……立ち上がった時の感覚が変だ) キョロキョロ ○○(……なんだ?) ○○(なんか、世界が大きくなった感じがする) ○○(っていうか煙が……何も見えない) ○○(ん? 煙の向こうから誰かが来る) 妹紅「○○!」 ○○「あっ」 ○○(妹紅? この煙はいったい) ○○「妹紅お姉ちゃん」 妹紅「!?」 ○○(!?) ―身体は子供、口調も子供― ○○(も、『妹紅お姉ちゃん』!? 何言ってるんだ俺は!) 妹紅「ま、○○……その姿……それに今、なんて」 アリス「あら、成功したわね」ひょっこり パチュリー「あらほんと」ひょっこり 魔理沙「ほらな。私の考えた魔法陣は完璧だったってわけだ」ひょっこり ○○「ふ、ふえ」 ○○(な、なんだ? アリスさんとパチュリーさんがなんでここに? それになんか大きくないか?) ○○(はっ、ま、まさか……)じーっ ○○(……お、俺の身体が) ○○「ぼ、僕の身体が小さくなってるー!?」 ―背が低いと反撃できません― ○○(どうやら俺は、魔理沙たちに魔法をかけられて、こんな姿になってしまったらしい) ○○(俺が子供向けの小説が書けないと悩んでいるのを、魔理沙が聞き、思いついたのだとか) ○○(アリスさんたちまで巻き込んで、何をやってるんだか)ハァ ○○(俺は今、8歳ぐらいの体になっている) ○○(……いや、この体はもちろん問題だが、それ以上に) ○○「ボクのこの喋り方はなんなのー!?」 魔理沙「おー、子供っぽいぞ○○。よかったな」 ○○「よくないよ!(よくない! 頭で考えた言葉が勝手に子供っぽくなるんだぞ!)」 魔理沙「まあそう怒るなよ、うりうり」グリグリ ○○「や! 頭ぐりぐりしないで!」 魔理沙「一度はお前の頭を撫でてみたかったんだよなあ」グリグリ ○○「うー! うー!」 魔理沙「……」グリグリ ○○「うぅ……やめてよぉ」 魔理沙(か、かわいい)キュン ―多分すごく難しい魔法― パチュリー「言語変換もうまくいってるみたいだし、大成功ね」 妹紅「えーと、つまり?」 パチュリー「思考は元のまま。ただし口から出てくる言葉は子供っぽくなるのよ。これで正真正銘、外見は子供でしょう?」 妹紅「……はぁ。なんて細かい魔法を」 アリス「ここまで完璧にできるとはね。魔理沙の思いつきもあなどれないものだわ。すごいわね、まり……さ……?」ぎょっ 魔理沙「……ふふ、ふふふふ」グリグリ ○○「魔理沙お姉ちゃん、いい加減にやめてよぉ!」 ○○(マジでやめて! 恥ずかしすぎる!) アリス(魔理沙が一心不乱に○○さんの頭を撫でてる) パチュリー(……なんだか顔が怖いわ) ―陥落寸前― 妹紅「魔理沙、○○をからかうなって」グイッ ○○「わわっ」 魔理沙「あ、妹紅、○○をとるなよ!」 妹紅「とる? 何かおかしくなってない?」ギュッ ○○「ふわ……」 ○○(うわ、なんだこれ。妹紅に後ろから抱きかかえられるとなんか、すごい優しい匂いが……) 妹紅「○○、大丈夫か? すぐに戻してやるから」 ○○「……うん、ありがと、妹紅お姉ちゃん(ありがとな、妹紅)」ギュッ 妹紅「!?」 魔理沙「うおっ」 アリス「へえ」 パチュリー「なるほど」 ○○「……?」 妹紅「……」ポーッ ○○「妹紅お姉ちゃん、どうかした?(妹紅、どうかしたか?)」クイクイ 妹紅「はっ! あ、ああ、なんでもない」 妹紅(い、意識が飛びかけてた!) 魔理沙(気持ちは分かるぞ、妹紅) ―そこに頭があるから― ○○(あ、そうだ)ピョン 妹紅「あ……」 妹紅(もう少し抱きしめてたかったのに) ○○「アリスお姉ちゃん、パチュリーお姉ちゃん、久しぶりだね!(お久しぶりです、お元気でしたか?)」ペコリ アリス「ええ、お久しぶり」 パチュリー「私はよく手紙のやりとりをしていたから、久方ぶりというわけでもないけど」 ○○「今日はごめんなさい。魔理沙お姉ちゃんが(ご迷惑かけて申し訳ない)」 アリス「いいのよ。面白い魔法陣が書けたし」ナデナデ パチュリー「あなたのためでもあるしね」ナデナデ ○○「う、うん(な、なんでみんな頭を撫でてくるんだ)」 妹紅(……なんであの○○を見て平静でいられるんだろ) 魔理沙(惚れた弱みかね、私たちは) ―子供の目は宝石― ○○「それで、魔理沙お姉ちゃん。やっぱり戻してくれないの?(戻してほしいんだが)」 魔理沙「子供心を掴んでないだろ?」 ○○「それも大事だけど、他にも大事なのがあるの!(レミリアさんのやつ以外にも仕事はあるんだ)」 魔理沙「そ、そうか」オロッ ○○「だいたいね、アリスお姉ちゃんやパチュリーお姉ちゃんも連れてきて、こんな悪戯ばっかりして……(2人に迷惑だろうに)」ハァ ○○「おいたしちゃダメだよ(せめてこっちに相談してからやれっての)」 魔理沙「ぐぐっ」キュン 魔理沙(や、やばいぜ。普段とのギャップが……) アリス(……惚れた相手の子供姿か) パチュリー(まあ、かわいいと思って当然でしょうね。魔理沙、身悶えてる) ―心を射止めました― 妹紅「ほら、魔理沙。ちゃっちゃっと元通りにする魔法陣を書く!」 魔理沙「だ、だけどだな」 ○○「魔理沙お姉ちゃん……ダメ?(頼むよ魔理沙)」キラキラ 魔理沙「くぅ!」ズキュン 魔理沙「わ、分かったんだぜ。ちょっと待ってろ」 アリス(あらら、魔理沙ったら顔が真っ赤) パチュリー(あれは落とされたわね) ―ちょっとハマってきました― 妹紅「○○、喉乾いてない?」 ○○「ううん、大丈夫だよ妹紅お姉ちゃん(それよりもなんで俺は妹紅の膝に乗せられてるんだ)」 妹紅「……」ナデナデ ○○「んん」 妹紅「……」ナデナデ ○○「ふわあ(ぐ、頭を撫でられると変な声が出る)」 魔理沙「おい妹紅! お前1人だけで楽しんでるだろ! ずるいぞ!」カキカキ アリス「えーと、ここがこうなって」カキカキ パチュリー「あ、そこは反転させないと」カキカキ 妹紅「……」ナデナデ ○○(妹紅? なんか手が熱いぞ? 妖術でも使おうとしてるのか?) ―作業時間15分― 魔理沙「よ、よしできたぞ!」 妹紅「今度はえらく早いね。大丈夫なのか?」 アリス「多分」 パチュリー「だいたいは」 妹紅「だいたいって」タラリ ○○「な、なんだか不安だよう(時間がかかってもいいからちゃんと戻してくれた方が)」 魔理沙「まあ、○○にはさっそく中央に立ってもらおう」グイグイ ○○「ま、魔理沙お姉ちゃん! 押さないで!(だ、大丈夫なのかこれ!)」 妹紅「……もう少し撫でたかった」 アリス「声に出てるわよ、藤原妹紅」 パチュリー(私も撫でてみたい、なんてね) ―急ごしらえなので― 魔理沙「よ、よし、いくぜアリス、パチュリー」 アリス「はいはい」 パチュリー「分かったわ」 魔理沙「魔力注入!」ぶぅん ○○(だ、大丈夫なんだろうか)ドキドキ 妹紅「……」 ブゥン 魔理沙「うん? なんか魔力の流れがおかしくないか?」 アリス「あらほんと」 パチュリー「……あそこ、魔理沙が書いた字が間違ってるわよ」 魔理沙「なにぃ!?」 妹紅「え?」 ○○(はい?) ―瞬く間に― 魔理沙「ま、魔力ストップだ!」 アリス「あー、もうダメね。注入しちゃったわ」 ゴゴゴゴゴ ○○(な、なんだなんだ!?) 妹紅「○○!」 ピカッ! ひゅっ 魔理沙「……」 アリス「……」 パチュリー「……」 妹紅「……消えた?」 ―○○消失に関連した魔女たちの分析― アリス「消えた、わね」 パチュリー「ほんと」 魔理沙「……」ぽかん 妹紅「……」ぽかん パチュリー「今回の魔法が時間操作を主としたからかしら」 アリス「時間と空間は密接に関係しているものね」 パチュリー「今回の事象は空間転移と推測できるわ。さすがに時間跳躍まで行う魔力はないはずだし」 魔理沙「え、えーと。待ってくれ。つまりは、なんだ。○○はどっかに飛ばされたってわけか?」 アリス「そういうことよ」 パチュリー「魔理沙が魔法陣を書き間違えるからよ、まったく」 魔理沙「うっ、それは急いでたからでだな」 アリス「仮にも魔法使いでしょうに」ハァ パチュリー「それにしてもあの文字で空間転移が発動するのね。なかなか興味深いわ」 アリス「そうね。書き留めてもいいかも」 ―彼女の怒りがヴォルケイノ― ゴゴゴゴゴ 魔理沙「うっ」 アリス「こ、この妖気は」 パチュリー「……」 バッ←3人が一声に振り返る ゴゴゴゴゴ! 妹紅「……冷静に分析してないで」 妹紅「○○を探すのが先、だろ」ギロリ 魔理沙「そ、そうだな! 頑張って探すぞー。あははは」 アリス「そ、そうね。急ぎましょう」 パチュリー「分かったから、私たちを燃やそうとしないでちょうだい」ハァ ―その頃、○○は― ○○「……ううん」ぱちくり ○○(こ、ここはどこだ?) ちゅんちゅん さぁー ○○(だだっ広い原っぱだけど) ○○(周りには何もない) ○○(どこだここ。目印になりそうなものもないし……) ○○(……) ○○「もしかしてボク、迷った?」 ○○(うわぁ、たぶん魔法が失敗して飛ばされたんだろうな) ○○(まずいぞこれは。子供の体だってのに、幻想郷に1人で放り出されたら) ○○(1人……俺、今1人なのか) ぶるり ○○「……ふ、ふえ」 ○○(うっ、ちょっと恐ろしいと思っただけで泣きそうになってる) ○○(これも子供化の影響か? 感情の振れ幅が大きすぎる。とにかく落ち着け) ○○(何か戻る方法を……うん? 空を何かが飛んでる?) ―空を飛ぶ人を呼びとめる方法― ??「ふんふーんふーん♪ ご飯っ、ご飯っ」 ??「幽々子様、外食はいいんですが、なるべく量を控えてくださいね」 幽々子「我慢するのは体に毒なのよ」 妖夢「我慢しないことも体に毒ですってば」 ○○(あ、あれはどこかで見たことあるような? とにかくこっちに気づいてもらわないと!) ○○(どうする? 狼煙とか上げたいところだけど、燃やせそうなものはないし) ○○(ええい、声をかけるしかない!) ○○「うわーん! うわーん!」 ○○(いやいや、なんで泣くんだ俺!) ―その頬は紅色まんじゅう― うわーん、うわーん 妖夢「あれ? 幽々子様、何か聞こえませんか……って、いない!?」 きょろきょろ 妖夢「いた! いつのまに地上に!?」 幽々子「……」じーっ ○○「うわーん!(な、なんかピンクの髪の人に見られてる)」 幽々子「……じゅるり」 ○○「うわーん!(なんで涎垂らしてるんだこの人!?)」 スタッ 妖夢「幽々子様! 何して……あれ? 子供?」 幽々子「ねえ妖夢。子供のほっぺたっておまんじゅうみたいでおいしそうじゃない?」 ○○「!?」 妖夢「だ、だめですよ! 子供は食べものじゃありません!」 ○○(お、思い出したぞ。この人は、節分の時に会った人で) 幽々子「じゅるり」 ○○(く、食いしん坊な人だ!) 幽々子「……ちょっとだけ舐めてみようかしら」 ガシッ ○○「え、え?(か、肩を捕まれた!?)」 妖夢「幽々子様!? だ、だめです! 舐めちゃだめ……ああっ!」 ○○「にゃーっ!」 ―子供に説明は難しい― ○○「ぐすっ、ぐすっ」 妖夢「もう大丈夫だよ。怖いお化けは離れたからね」ナデナデ 幽々子「失礼ね。こんな美女を捕まえて、何が怖いお化けなのかしら」 妖夢「少なくとも子供を食べようとするお化けであるのは間違いないでしょう」ハァ ○○(ほ、本当に食べられるかと思った) 妖夢「で、ボク、どうしてこんなところにいるの?」 ○○「ぐすっ、ぐすっ、あのね……(よし、ここは事情を話して助けてもらおう)」 妖夢「うん?」 ○○「気が付いたらここにいて……よく分からないんだけどね(よく分からない内に魔法で飛ばされて)」 ○○「それでね、ボクがいたところに、びゅってして (道も分からないし、妖怪に襲われる可能性もあるから……あれ?)」 ○○「だから、連れて行ってほしいの(知っている場所まで連れて行ってほしいです)」 妖夢「……幽々子様、分かりました?」 幽々子「全然」 ○○(おかしい。言いたいことがちゃんとした言葉にならない) ○○(子供の言葉じゃ詳しく説明できないのか?) ―母はいなくとも先生がいる― 妖夢「そうだ。お母さんはどこにいるの?」 ○○「……いないよ(幻想郷には)」 妖夢「そ、そうなんだ。ごめんね」 ○○「ううん」 ○○(詳しく説明したいところだけど、この身体のままじゃ難しそうだ) 幽々子「どうするの? 私はもうお腹がぺこぺこだわ」 妖夢「もう少し我慢してください。人間の子供のようですし、人里に連れて行きましょう。ちょうど私たちも向かうところでしたし」 ○○(!) ○○「……慧音先生(人里なら慧音さんがいる!)」 妖夢「うん?」 ○○「慧音先生が、いい(お願いですから、慧音さんのところに連れて行ってください)」 ―子供心に拒否反応が― 妖夢「慧音先生……あ、寺子屋の」 幽々子「そこの生徒かしらねえ」 妖夢「そうかもしれませんね。そうじゃなくても、慧音さんなら人里の子供を全員知っているでしょうし」 幽々子「なら、連れて行きなさい。妖夢が」 妖夢「分かってますよ。幽々子様じゃ、抱えながら食べてしまいそうですし」 ○○「……うっ、この人はやだ(食べられたくないです)」ウルウル 妖夢「あ、大丈夫だよ。ちゃんと私が連れて行ってあげるからね」 幽々子「……そこまで拒絶されるのも、なんだか嫌なものね」 妖夢「自業自得です」 ―妖夢お姉ちゃんに抱えられて空を飛んでます― ビューっ ○○(……子供の身体だからか、女の人に抱えられても変な気持ちにならないのが助かる) 妖夢「ボク、お名前は?」 ○○「……○○」 妖夢「○○? あれ、その名前って……」 幽々子「妖夢お気に入りの小説家と同じ名前じゃない」 妖夢「そ、そうですね。すごい偶然」 幽々子「案外、その人の子供だったりして」 ○○(それはない) ○○(にしても、妖夢さんは俺の小説を読んでくれてるらしい。ありがたや) ―裏新聞― 妖夢「子供に自分と同じ名前はつけないでしょう」 幽々子「そう? ○○2世、とかかもしれないじゃない」 ○○(日本人に2世と付けるのは合わないかと) 妖夢「うーん……けどあの小説家さん、特定の恋人がいるとか聞いたことないですし」 幽々子「そうねえ。そんなのがいたら、裏新聞に一発で載るでしょうし」 ○○(裏新聞?) ―こっぱずかしい― 幽々子「そうそう。あの小説家さん、妖夢的にはどうなの?」 妖夢「え、ええ!?」ぐらぐら ○○「わわっ!(落ちる!)」 幽々子「あら、危ないわよ」 妖夢「い、いきなり何を……」 幽々子「どうなの? かっこいいとか思うのかしら」 妖夢「そんな、会ったことなんて1度しかないのに、分かりませんよ」 幽々子「小説を読んでるのだったら、その人の内面も分かるってものじゃない」 妖夢「そういうものなんですか? う、うーん。やっぱり分かりませんよ。小説は好きですけどね」 幽々子「外見は?」 妖夢「外見は別に良くも悪くもなく……あの、幽々子様? なんでそんなことを気にするんですか?」 幽々子「だってあなたが、特定の誰かを気に入るなんてなかなかないことじゃない。しかも男よ男。祖父以外じゃ初めてでしょうに」 妖夢「そ、そんなことありませんって。私にだって男友達ぐらい……いますし」 幽々子「ほんと~に~?」ジロジロ 妖夢「う……あ、あまりいないかも」 幽々子「あまりぃ~?」ニヤニヤ 妖夢「……うぅ。勘弁してください」ガクリ ○○(……女性同士のこういう会話を聞くのは、どうにも落ち着かない) ―散々とからかわれた末に― ヒュー スタッ 妖夢「や、やっと着いた」 幽々子「あら残念。妖夢との恋バナはまたの機会にしましょうか」 妖夢「だから、別に恋とかじゃなくて、ただ小説が好きなだけですってば」 幽々子「ふふっ、どうかしら」 妖夢「もう……あそこが上白沢慧音さんの家ですね」 幽々子「なら、さっさとこの子を引き渡して、料理屋に行きましょう」 ○○(慧音さん……家にいるといいんだけど) コンコン 「はい」 ガラリ 慧音「お待たせした。どちら様で……幽々子殿?」 幽々子「はぁい」 妖夢「どうも、こんにちは。御無沙汰しています」 慧音「妖夢殿もか。こんにちは。お2人が私の家に来るとは珍しいですね」 ―先生!― 幽々子「私たちじゃなくて、この子があなたに用事があるのよ」 慧音「この子?」 ○○「あ、あの、先生!(慧音さん!)」 慧音「……この子は?」 妖夢「ここから少し離れた原っぱで泣いていたのを見つけまして。迷子だったようなので、ここまで連れてきたんです。慧音さんはご存じではないですか?」 ○○「……(さすがにこの姿だと気付かないだろうか)」 慧音「……」じーっ 妖夢「あの、慧音さん?」 慧音「あ、いや。知らない子供なんだが……なんだろうか。どこかで見たことがある気がしないでも」 幽々子「人里に住む人間の子供じゃないのかしら」 ○○「……」ドキドキ 慧音「ここにいる子供の顔ならだいたい把握しているが、この子は……」じーっ ―さすがは慧音先生― 慧音「……」 慧音「……」じーっ 慧音「……むぅ」 ○○「……あ、あの」 慧音「……」 慧音「……○○?」 ○○「!」ドキリ 妖夢「あ、知っているんですか? この子の名前は確かに○○君って言うんですよ」 慧音「そうなのか? しかしそれなら彼と同じ名前……よく見れば、どこか彼の面影があるような。いや、まさか」 妖夢「小説家さんの親戚か何かでしょうか」 慧音「彼は外来人なのだから、幻想郷に親類縁者がいるとは思えないが……ともかく、分かりました。この子はこちらで預かりましょう」 妖夢「お願いします」 ―お別れ― 幽々子「さあ、用も済んだし、料理屋に行くわよ~!」 妖夢「あ、待ってください! じゃあ、○○君! またね!」 ○○「ばいばい、妖夢お姉ちゃん……怖い幽霊さん(お世話になりました。このお礼は必ず)」 幽々子「むむ、あの子、ついに私にはなつかなかったわね」 妖夢「仕方ないですって。いきなり食べようとしたんですから……あ、料理屋はこちらですよ」 幽々子「お腹いっぱい食べるぞ~」 妖夢「ほ、ほどほどにしてくださいね」 スタスタスタ…… ○○(……ありがとうございました、本当に) ―疑惑― 慧音「さて、○○君――と呼ぶのはどうにも違和感があるな。○○と呼ばせてもらおう。○○、こちらに座りなさい」 ○○「ひゃ、ひゃい!」 慧音「まずは君の話を聞かせてくれ。その後、保護者を探してみよう。ほら、お茶を飲みなさい」スッ ○○「あ、ありがとう」 慧音「お礼をちゃんと言えるのか。偉いぞ」ニコリ ○○(……慧音さん、子供にもやっぱり優しいんだな) 慧音「それにしても、同じ名前とは……」むぅ ○○(ん? 慧音さんがいきなり真面目な顔に) 慧音「まさかとは思うが、○○の子供の可能性も……いやいや、それはさすがに……しかし、この子の顔はやはり彼に似ているし」ブツブツ ○○(どうしたんだろうか。慧音さんが怖い) ―失敗の効果― ○○「慧音せんせ、うぐっ!」ギュッ 慧音「! どうした!」 ○○「む、胸が……(胸がめちゃくちゃ熱い!?)」グゥ 慧音「どこか怪我でもしているのか! 見せてみろ!」 ○○「ううぅ!」 慧音「服の上からでは分からないな。脱がせるぞ」グっ ○○「あ、ま、待って」 慧音「ほら、腕を上げて!」スッ ○○「ああ!」 ピカーッ! ―とんでもない状況― ○○「……」 慧音「……」 ○○「あ、あの、慧音さん」 慧音「○○……?」 ○○「はい俺です。あ、口調が戻ってる。身体も」 慧音「……」ぽかーん ○○「あの」 慧音「あ、ああ。○○、だな。しかしあの子供は? ど、どういうことだ」 ○○「慧音さん、説明はしますから、まず、その」 ○○「ふ、服を……」カァ 慧音「……」チラリ←自分が○○の上半身の服をほぼ脱がしかけている状況を確認 慧音「なーっ!!」カァアアア! ―運動はしていないが、そもそも余分な栄養も取っていない― ○○「ごめんなさい、すみません、本当に申し訳ありません」ペコペコ 慧音「い、いや。いいんだ。だいたいの事情は分かったから」 ○○「あんな失礼なものを見せてしまって、本当に申し訳ない」 慧音「いや、家に引きこもりがちにしては、たるんではいないし、悪くは」カァ ○○「え?」 慧音「なんでもない。それよりもだ」 ―頼れる人、慧音先生― 慧音「魔理沙たちには後でじっくりお説教するとして」 ○○(魔理沙、ご愁傷様) 慧音「児童小説を書く、か」 ○○「あ、はい」 慧音「そういうことなら、何故私に相談しない。私はこれでも寺子屋の教師、子供のことなら人一倍理解しているつもりだ」 ○○「あ……そうでした。1人で悩んでいてばかりで、全然そこに考えが及ばなかったです」 慧音「それは寂しいな。これでも君の友人のつもりだったんだが……君はそう思っていなかったということか」シュン ○○「そんなことありません! 魔理沙の思いつきでドタバタしていたのもあって……すみません」 慧音「ふふ、冗談だ。子供の君が、私を頼ってきてくれた。それだけでも十分だから」ニコリ ―子供の専門家― 慧音「子供に何か話をする時に心がけておくべきなのは、『子供だましは通用しない』ということだ」 ○○「子供だまし、ですか」 慧音「ああ。相手が子供だからといって、下手に物事を簡略化したり、伝えるべきことを伝えないままにしてはいけない」 慧音「綺麗事や誤魔化しなど、たとえ表向きには通用したように見えても、実は看破されていると思っていい。子供は『未完成な大人』などではなく、れっきとした人間であり、確固とした意志を持っているからな」 慧音「理解力は、むしろ子供の方が優れているだろう。余計な先入観を持っていない分、物事の核心に迫りやすい」 ○○「なるほど」 慧音「かと言って、君が普段の小説で使っているような、複雑な物の言い方をするのもダメだ。彼らには私たちに比べて人生の経験が少ないのだからな」 慧音「つまり、複雑な物事を分かりやすく、それでいて過不足なく伝えなくてはいけない」 ○○「それはまた難しいですね」むぅ 慧音「いや」フリフリ 慧音「君ならできるよ。私などよりずっと上手く」 慧音「君はまぎれもない、『言葉と物語の専門家』なのだから」ニコリ ○○「買いかぶりすぎですよ……けど、ありがとうございます」 ―恥ずかしい過去― 慧音「君が幻想郷に来たばかりの頃は、寺子屋の子供とよく話をしていただろう? その頃のことを思い出してみればいい」 ○○「慧音さんの寺子屋かあ」 慧音「あの頃は、よく手伝ってくれていたな」 ○○「他にできることがなかったですからね」 慧音「大工仕事、か?」 ○○「いやもう、その話はお恥ずかしい」 慧音「ははは」 ―それは愛の力などではなく― ガヤガヤ 慧音「ん? 外に誰かいるのか?」 「ここって、慧音の家じゃないか。本当にここに?」 「私の○○センサーがここにいるって言ってるんだぜ!」 「そうじゃなくて、私とパチュリーの追跡魔法でしょ」 「まさか久しぶりの外出でこんなに運動するなんて、思いもしなかったわ」 ○○「この声は」 ガラリ! 妹紅「慧音ー、ちょいっと邪魔するよ――って、○○!」 魔理沙「いた! やっぱりいたぞ!」 アリス「そりゃいるわよ。私たちがちゃんと追跡したんだから」 パチュリー「○○さん、無事で何よりだわ」 ○○「みんな……探してくれてたのか。ありがとう」 妹紅「よかった……身体も戻ってるみたいだし」 魔理沙「なんだ、もう少し子供の○○が見たかったのに」 アリス「一件落着ね」 パチュリー「じゃあ私はそろそろ紅魔館に帰ろうかしら」 ―お説教タイム― トントン 慧音「魔法使い3人組よ」 魔理沙「へ?」 アリス「はい?」 パチュリー「むきゅ?」 慧音「そこに座れ。正座だ」 魔理沙「け、慧音? 何怒ってるんだ?」 慧音「ただの人間である○○に思いつきの魔法をかけ、あまつさえ魔法の失敗で危険な目にあわせた」 慧音「叱られるのに十分な理由だと思うが?」ジロリ 魔理沙「うっ」 慧音「それに、お前たちのせいで私がどれだけ恥ずかしい思いをしたことか」 アリス「えーと、私とパチュリーは、厳密に言えば魔理沙に巻き込まれただけなんだけれど」 パチュリー「え、ええ、そうね」 慧音「ノリノリで魔法陣を書いていたと聞いているが?」 アリス・パチュリー「……」 慧音「まあ、とにかく」 慧音「座りなさい」ニコリ 魔理沙「うぅ……」 アリス「り、理不尽だわ」 パチュリー「むきゅー」 ―くどくどくどくど― 慧音「そもそも魔法というのは自然の理を捻じ曲げるものだということを十分に自覚してだな――」 魔理沙「ひー」 くどくどくどくどくど 妹紅「……○○、帰る?」 ○○「……だな」 妹紅「小説は書けそう?」 ○○「ああ。慧音さんに助言を貰ったし、今日から構成を作ってみる」 妹紅「それはよかった」 くどくどくどくど アリス「ど、どうして私がこんな目に……」 パチュリー「むきゅぅ」 ―それから!― ○○(で、家に戻ってきたわけだけど) ○○(……机に向かっても全然筆が進まない) ○○(慧音さんに書き方のヒントはもらえたけど、肝心の内容を思いついてないんだよなあ) ○○(んー) ○○(あ)ピコン ○○(そうか。そうしてみるか) ○○(よし、今日はとりあえず休んで、明日から書いてみよう) ○○(で、ご飯ご飯……あれ?) ○○「味噌汁がある……俺、作ったか?」 ○○「まあいいや。いただくとしよう」 ○○「……ん?」 ○○「味噌汁に餅、か」 ○○「珍しいな」 ―執筆1日目― ちゅんちゅん ○○(さあ、1日が始まるぞ!) ○○(昨日はあの騒ぎで全然書けなかったけど) ○○(今日は書く!) ○○「おーし!」 ―執筆中― カリカリカリ ○○「……」 カリカリカリ ○○「……」 カリカリカリ コンコン ○○「……」 カリカリカリ コンコン ―その頃、○○の家の前― コンコン 妹紅「○○ー?」 シーン 妹紅「……出てこない」 カリカリ 妹紅「物音はするから家にはいるんだろうけど」 カリカリ 妹紅「あー……缶詰してるんだろうなあ、これ」 妹紅「さすがに昨日の今日で邪魔するのはあれだし」 妹紅「……しょうがない。今日は帰るか」 妹紅(どうせ1週間後には餓死寸前になってるんだろうし、また食料を持ってくるかな) 妹紅(いや、ここは料理という手も) 妹紅(……) 妹紅(みりんに修業つけてもらおう) ―執筆2日目― カリカリカリ ○○「……」 カリカリカリ ○○「……」 カリカリカリ ○○(……よし、プロットはこんなものかな) ○○(あとは書きながら修正しよう) カリカリカリ ―その頃の紅魔館― 美鈴「ふんふふーん♪」←花畑の水やり中 レミリア「……ふぅ」カチャリ←庭で紅茶を嗜み中 レミリア「最近、美鈴がやけに元気ね。気持ち悪いぐらいに」 咲夜「なんでも、弟子を持てるようになって嬉しいとのことで」 レミリア「弟子? 美鈴の弟子って……武術かしら」 咲夜「さあ、存じ上げません」 レミリア「気になるわね」 咲夜「あ、そう言えば、先日美鈴が出かける時に抱えていた荷物なのですが」 レミリア「弟子と何か関係が?」 咲夜「妖精メイドの着古したメイド服を持っていましたわ。修業のために必要だと言って」 レミリア「メイド服」 咲夜「はい」 レミリア「……美鈴がメイドの修業をつけているのかしら、その弟子とやらに」 咲夜「さあ」 レミリア「美鈴がメイド、ね」ちらり 咲夜「美鈴がメイド、ですか」ちらり 美鈴「ふんふーん♪」ジャー ぽわわーん←想像力がかきたてられた音 美鈴『お嬢様! 紅茶をどうぞ!』ニパー ぽわわーん 咲夜「ないですね」 レミリア「ありね」 咲夜「え?」 レミリア「え?」 ―執筆3日目― カリカリカリ ○○「……」 カリカリカリ ○○「……」 カリカリカリ ―その頃の人里― トコトコトコ 阿求「あ、慧音先生、こんにちは」 慧音「やあ阿求。こんにちは」 阿求「お出かけですか? すごくおめかしをしていますけれど」 慧音「これは出かけてきた後でな。まあ、会えず仕舞いだったが」 阿求「ああ、つまり彼ですね? 不在だったんですか?」 慧音「いや、いたことはいたんだが……ちょっと立て込んでいるようだったので、帰ってきた」 阿求「誰かと一緒だったとか?」 慧音「1人だったよ。しかし、これ以上ないほど立て込んでいたな」 阿求「はあ」 慧音「会うのはまたの機会でいい。今の私にできることは、ただ見守るのみだ」 阿求「よく分かりませんが、慧音先生が良妻賢母であることだけは分かります」 慧音「りょ、良妻……い、いきなりからかってくれるな」 阿求「ふふふ、その顔を彼に見せれば、イチコロですよ」ニコリ ―執筆4日目― カリカリカリ ○○「……」 カリカリカリ ○○「……」 カリカリカリ ○○「……むぅ」 カリ……カリ…… ○○「ああ、もう!」 バタン! ○○「……」 ○○「……ふぅ」 ムクッ ……カリカリカリ ―その頃の大図書館― アリス「この前はひどい目にあったわ」 魔理沙「まったくだぜ」 アリス「魔理沙のせいでしょ! 見なさい! パチュリーなんか、あの日の後遺症で!」 パチュリー「むきゅー」ばたんきゅー アリス「まともに言葉も喋ることもできず……ああ、かわいそうに」 魔理沙「いや、ただ単に疲労でダウンしてるだけだろ。つーか、あの日から5日も経ってるのにまだ回復してないのか」 パチュリー「むきゅう……あのハクタクの説教の長さは、拷問ね」 魔理沙「私は月1ぐらいで受けてるけどなー」 アリス「あなたの底知れない元気っぷりがうらやましいわ……で、あれだけのことをして、○○さんはどうなってるの?」 魔理沙「分からん」 パチュリー「……どういうこと?」 魔理沙「○○が家から出てこない。多分、小説書くためにこもってるな、ありゃ」 アリス「こもってるって」 魔理沙「よくあることだぜ」 アリス「別に立てこもってるわけじゃないんだし、会うことぐらいはできないの? 失礼かもしれないけど、家に勝手に入るとか」 魔理沙「ダメだ」 アリス「え」 パチュリー「むきゅ?」 魔理沙「ああいう時の○○だけは、邪魔しちゃダメなんだ。もしアリスやパチュリーがそうするって言うんなら……ちょいっと、弾幕ごっこでもしてもらうぜ?」 アリス「……あなたにはしては、やけに殊勝な言葉ね」 パチュリー「大事にしているのね、○○さんを」 魔理沙「ま、日が空いたらまた遊びに行くさ」 ―執筆5日目― カリカリカリ ○○「……」 カリカリカリ ピタリ ○○「……いや、ここはもっとふさわしい言葉が」 ○○「……」 ○○「大事なのは『省かず、わかりやすく』だな、うん」 ○○「よし」 カリカリカリ ―その頃の紅魔館 2― 美鈴「ちゃらららーん、ちゃらん♪」ジャー レミリア「最近、美鈴がさらにご機嫌になってるわね。踊りながら花壇に水やりなんて、見ていてむかついてくるわ」 咲夜「なんでも、お弟子さんの修業が上手くいっていて、先日ついに『カツドン』を完成させたとのことで」 レミリア「『カツドン』? 『カツドン』って何かしら。何か新しい技みたいなもの?」 咲夜「さあ、私にも分かりかねますが」 レミリア「カツドン、カツドン……」むぅ レミリア「こんな感じの技かしら。カツ、ど~ん、みたいな」 咲夜「おおおおお嬢様!」バッ! レミリア「な、何よ」 咲夜「今のポーズ、もう一度見せていただきませんか? 『カツドン』のポーズを!」 レミリア「何をそんなに興奮して……別にいいけれど。えーと、こう」 レミリア「カツ」←両手を胸の前で小さくクロス レミリア「ど~ん」←腕を大きく上に広げて万歳ポーズ 咲夜「!」ズギャーン! レミリア「咲夜? どうしたの?」 咲夜「……」←あまりの衝撃に白目を剥いて気絶している レミリア「……はぁ」 レミリア「本当に美鈴をメイドにしちゃおうかしらー」←棒読み 咲夜「それはご勘弁を!」バッ! レミリア「そ、そこまで大仰に反応されるとびっくりするわ」 ―執筆10日目― カリ……カリ…… ○○「……」 カリ…… ○○「……」 バタン! ○○「……お、お腹すいた」 ○○(さすがに1日1食が3日続くときつい) ○○(かと言って保存してる食糧はもうないし) ○○(買いに行くしかないんだろうけど、その体力ももう) コンコン ○○「は~い……勝手にお入りください」 ガラリ ―救出隊― 妹紅「ああ、やっぱり倒れてる」 魔理沙「ほらな。だから10日ぐらいだって言っただろ?」 慧音「いや、この顔は3日前からろくに休んでいないと見える。つまり、私の予想の7日が当たっていたというわけだ」 ○○「みんな、どうして……」 妹紅「○○に食べてもらいたいものがあってね」 魔理沙「私はアリスとパチュリーを代表して、この前の詫びにきたんだぜ」 慧音「助言が役に立っているのか、少し様子見をな」 ○○「……」ポカン 妹紅「ほら、起きなよ。今から私がとっておきの『カツ丼』を作ってやるからさ」 魔理沙「アリスたちと一緒に作った、魔女特製のハイパー元気溌剌ドリンクってのを持ってきたぜ? 見た目は悪いが、飲めば元気百倍だ」 慧音「心配するな。一緒に食事をしたらすぐに退散する。仕事の邪魔はしないから」 ガヤガヤ ○○「……ははっ」 ○○(ありがたくって涙が出そうだ) ―あたい!― チルノ「リベンジ!」 大妖精「チルノちゃーん、いい加減にやめようよ~」 チルノ「あの程度で諦める私じゃないのよ! さあ、例の家が見えた!」 コソコソ チルノ「ここはゆっくり近づいて……」 チルノ「ま、まずはトラップの確認からだね」 大妖精(チルノちゃんが珍しく学習してる……よほど前のが怖かったのかな) チルノ「弾幕を撃って確認……とりゃ!」 バシュンッ! ヒューっ チルノ「……何も出てこない」 大妖精「だね。弾がそのまま飛んでちゃった」 チルノ「つまりこれはトラップが作動してないということ……チャンス!」 大妖精(今回は大丈夫かな?) スタッ ゾワッ! ―混沌― チルノ「!」 大妖精「!」 ゾワワワ チルノ「う、動けない!」 大妖精(な、何これ……魔力と妖力と霊力がごちゃまぜになって、ぐだんぐだんの、ばっちばちになってる!?)ガクガク チルノ「ぐぐぐ!」 大妖精(あの家から……? あの家に、すごい妖怪とか魔法使いがいるの?) ―その頃の○○の家― 妹紅「魔理沙! 私が先にカツ丼を作るんだから、火元を取るな!」 魔理沙「食べ物より飲み物の方が先だぜ? 元気もりもりジュースは温めた方が上手いんだから、私に使わせろっての」 ぎゃあぎゃあ 慧音「2人とも……台所で喧嘩をするな、妖力と魔力を出すな」 妹紅「私が先だ!」 魔理沙「こっちだっての!」 慧音「ふぅ」 慧音「……これ以上○○の家で騒ぐようなら」 慧音「お説教、だぞ?」ニコリ 妹紅「静かにします」しゅぱ 魔理沙「八卦炉で温めます」しゅぱ 慧音「それでよし」 ○○(……台所から不穏な空気が)タラリ ―勇気と無謀の違い― チルノ「うぐぐ……」 大妖精(やっぱりやめた方がいいよ……もう無理だよ) チルノ「こなくそー! 私は行くのだー!」 大妖精(だ、ダメだよチルノちゃん! こんな不安定な場所に私たち妖精が入ったりしたら!) チルノ「どりゃー!」 ゾワワ チルノ「あひゅん!」バシュ 大妖精(ああ……チルノちゃんが形を保てずに水蒸気になっちゃった!) 大妖精(仕方ない。今回も水蒸気を集めてっと)ガサゴソ 大妖精(てったいだー!) ピュー …… …… カツドン デキタゾー ジュース ガ サキダゼ! ダカラ サワグナ トイウニ ガヤガヤ ―騒がしくも― この日、○○の家の灯りはとても温かな色をしていた。 ―あらすじ― ここは魔法と自然にあふれた、どこか彼方の世界。 世界の片隅にある1つの村に、1人の少女がいました。 人間である彼女は今年で10歳。お父さんお母さんと一緒に住む、ごく普通の少女。 魔法使いになるのが夢で、3人の魔女の弟子として毎日毎日魔法のお勉強をしています。 今日も魔女の館で魔法の練習をしていると、魔女の1人が言いました。 「かわいい私のお弟子さん。特製ジュースを作るから、七色の果物を取ってきてもらえるかしら」 頼まれた少女は喜びました。この病弱な魔女さんは、いつもとてもおいしいジュースをごちそうしてくれるからです。 果物をとってくれば、またジュースが飲める。そう思った少女は「よし」と果物をとりにいくことに決めました 意気込んでお出かけの準備をしていた時、もう1人の魔女が現れました。 人形を肩に乗せたその魔女は、こう言いました。 「かわいい私のお弟子さん。お人形の服を作りたいから、虹色の布をとってきてちょうだいな」 頼まれた少女は喜びました。この魔女さんは、人形の服を作って余った布で、少女の服も作ってくれるからです。 「分かりました」と返事をした少女は、さっそく魔女の館を出るのでした。 そうして森の中を歩いていると、今度は箒を持った魔女に声をかけられました。 「よお、お弟子さん。どうかしたか?」 箒の魔女はその箒で空をお掃除するのが大好きなので、森の上の空にはいつも雲がありません。気分が落ち込んでいる時でも、その青い空を見たらすぐに元気になれるので、少女はこの魔女のことが大好きでした。 少女は他の魔女たちに頼まれごとをされたと説明します。 「ほお、2人に頼まれごとをされたのか。だったら私の頼みも聞いてくれるかな、お弟子さん」 なんと箒の魔女は、たまには雨を降らせたいからと、少女に『雲のもと』をとってきてほしいと頼んだのです。 さあ、少女は困ってしまいました。『雲のもと』なんてどこにあるのでしょう。それによく考えてみると、七色の果物や虹色の布も、どこにあるのか分かりません。 困った少女は、同じ森に住む紅い鳥に相談しました。 紅い鳥は大切なお友達。ちょっとぶっきらぼうだけど、魔法の練習に付き合ってくれたり、一緒に冒険してくれたりする優しい鳥さんです。 紅い鳥は言いました。 「なるほどね。だったら先生に聞いてみたらいい。あいつはすごく物知りだから」 先生とは近くの村に住む1人の女性のこと。なんでも知っている人で、少女に初めて魔法のことを教えてくれたのも彼女でした。 先生ならきっと知ってる。そう思った少女と紅い鳥は、一緒に先生のもとへ向かうことにしました。 さあ、少女はちゃんと魔女たちの頼みごとをやりとげることができるのでしょうか? ―約1ヶ月後― レミリア「で、これが完成した小説というわけね」 ○○「はい」 レミリア「ふむ……まあまあの長さね。これを1ヶ月で書き上げるとは、なかなかに仕事が早いじゃない」 ○○「色々と手助けしてもらいましたし、書いてみると児童小説も楽しいなと」 レミリア「そう。ところで」チラリ 妹紅「いつもより文体が幼い感じなんだ」 魔理沙「そりゃあ、子供向けだからだろ」 慧音「3人の魔女……ふむ」 アリス「この魔女の1人って、パチュリーっぽいわね」 パチュリー「それを言うなら、この人形好きの魔女はあなたみたいよ」 レミリア「……あなたの後ろのギャラリーはいったい何なのかしら」ハァ ○○「小説が完成したって報告したら、みんな集まってきてしまいまして……ははは」 レミリア「パチェまで、いったい何をしているの」 パチュリー「自分が関わったものが完成したとなれば、気になるものなのよ、ねえ、○○さん」 ○○「あー……はい。子供になった経験も結構役に立ちましたよ。子供の目線とか分かりましたし」 レミリア「子供になった?」 アリス「他にも役に立ったでしょう? 口調とか」クスクス 魔理沙「そうそう、頭撫でられて気持ちよさそうにしてたのも、だな」ニヤニヤ ○○「あれはもう恥ずかしすぎ。勘弁してください」 アハハハ レミリア「……むぅ」 咲夜(何の話か分からず、仲間外れにされてむくれているお嬢様……素晴らしい) ―かなり楽しみにしてました― レミリア「こほん。妹に見せていいものかどうか、まず私が読ませてもらいましょう。良いと判断すれば、約束通り原稿料を支払うわ」 ○○「分かりました」 レミリア「ではそろそろ帰るわ」ソワソワ 魔理沙「……なあレミリア」 レミリア「なにか?」 魔理沙「お前、背中の翼がピクピク動いてるぞ」 レミリア「なっ」ピクピク アリス「あらほんと」 慧音「まるで犬の尻尾……いや、失礼」 パチュリー「レミィの翼がピクピク動くのは、嬉しかったり楽しみだったりする時、よね?」 妹紅「……○○の小説を一番に読むなんて、お子様吸血鬼にはもったいないねえ」ハッ レミリア「ぐ、ぐぬぬ」 咲夜(否定しない辺り、図星なのですね、お嬢様) ―終わり― 魔理沙「なあ、○○。この箒の魔女ってのは私のことか?」 慧音「先生とは私か」 妹紅「で、紅い鳥が私と。明らかにモデルがいるって分かる登場人物を出すなんて、珍しいね?」 ○○「まあ、今回は初めてづくしだったからな。基本に戻って書いてみたんだ」 妹紅「基本?」 ○○「自分の経験から小説を書くってこと。思いついた時はこれでいいのか迷ったけど、案外いけるもんだ」 慧音「そうか。だとすれば……この小説に出てくる私たちは、○○が抱いている私たちへのイメージと見ていいわけだな?」 ○○「え?」 魔理沙(箒で空を掃除ねえ。良いのか悪いのか) 慧音(私は物知りに思われているのか) 妹紅(……友達、友達か) むぅ←3人の悩ましい声 ○○「3人ともどうした? なんかすごい顔してるぞ」 アリス(どうして○○さんは彼女たちの好意に気付かないのかしら。不思議だわ) パチュリー(今日も今日とて、彼らの関係はあまり変わらず、か) レミリア(早く帰りたい)うずうず 咲夜(ああ、うずうずしているお嬢様も素晴らしい) おしまい Megalith 2012/02/27 ─────────────────────────────────────────────────────────── 『写真』 ―皐月の20― 迷いの竹林の傍に建つ小さな平屋。そこに1人の男が住んでいた。 名前は○○と言う。若い人間の男であり、外来人であり、そして己の頭と万年筆をもって生計を立てている、要するに小説家だった。 彼は今、畳の上であぐらをかき、考え込んでいた。首を限界まで傾げ、さらには身体まで傾けている。 常日頃、彼は「ネタはないか、いいものは書けないか」と思い悩んでいるので、眉間にしわを寄せているのも珍しいことではない。しかし、いつもと違い、彼は万年筆を持っていなかった。机も紙もなかった。目の前にあるのは黒光りした四角い物体。両手で持たなくてはいけないぐらいの大きさで、中央部から円柱が突き出て、円柱の天井に透明な板がとりつけられている。 ○○は頭を反対方向に傾けた。ない頭から何かがこぼれ落ちないか試していたのだ。 しかし、振れども振れども出てこない。 代わりに「うーん」という声が出てくる。 「いったい何を撮ればいいやら……」 ○○はひとりごち、おもむろに目の前に置かれたものを持ち上げた。顔の前に持っていき、上部につき出た突起物をのぞき込む。すると視界がせばまり、白い十字マークが浮かび上がった。 そのまま、白い十字を四方八方へと漂わせた。壁、机、台所と、部屋の中の様々なものに焦点を合わせていく。だが、やはり良いアイデアは出てこない。○○は再び「うーん」とうなった。 「○○ー! お茶くれー!」 突然、玄関の扉がものすごい勢いで開いた。驚いた○○は思わずボタンをぽちっと押してしまう。 白い十字はちょうど闖入者に向けられていた。 パシャリ。 「あっ」 「おっ?」 黒い物体からジィーという機械音が鳴り始める。止める術はなく、前方に開いた平べったい口から1枚の紙が出てきた。 「ん? どした?」 闖入者は遠慮なく上り込んできた。○○の前に立ち、不思議そうにしている。しかし○○は何も答えず、呆然と出てきた紙を見つめていた。 真っ黒な紙でしかなかったそれは、時間が経つにつれて徐々に色を帯びてきた。紙の底から浮かび上がってくるかのように、1人の人間の形が現れる。 金髪のウェーブがかった髪、黄色味の帯びた瞳。頭には三角の形をした黒い帽子を被り、特徴的な白黒魔女衣装をまとった少女の姿。 ○○の友人である霧雨魔理沙の、大口を開けている顔が、紙の上に写し出されていた。 いわゆる、インスタントカメラである。 ※ 「へー、文が持ってるカメラとはまた違うんだな」 まるで自分の家のようにあぐらをかきくつろぐ魔理沙が、テーブルの上に置かれたインスタントカメラを物珍しそうに見つめている。今にも触り出しそうで、○○はひやひやしていた。 「これは写してすぐに写真が出てくるんだ。借り物だから勝手に触るなよ」 「ん? なんか仕事関係か?」 「まあ、一応な」 悪戯されないためにも、○○は魔理沙に事情を説明してやることにした。 ○○は今、新刊本の執筆を手がけていた。文章自体は8割方できあがっており、ほとんど仕上げの段階に入っている。順調に行けば来月の下旬には発売できるだろう。 そんな中、先日出版元かつ編集者である烏天狗の射命丸文から連絡が入った。 『新しい本の表紙は、○○さんが取った写真にしませんか?』 本の内容的に、その方がぴったりになるはずだからとのこと。 そうして彼女が持っているインスタントカメラ――かなり古めかしくて、おそらく外の世界から幻想入りしてしまったものだろう――を貸してもらったというわけだ。 しかし、本の表紙になるような写真なんて、何を撮ればいいやらさっぱり分からない。そのために○○は一日中うなりっぱなしなのだった。 「ふーん、大変なんだな。文章だけじゃないわけか」 「まあな。で、借り物だから、あんまりフィルムを無駄遣いしちゃダメなんだ」 ○○は先ほど撮ってしまった写真を見つめて、ため息をついた。完全に色のついた写真は元に戻すことはできない。まさか魔理沙の写真を本の表紙に使うわけにもいかず、これをどうしたものかと首をひねる。 この○○の態度に、魔理沙が不満げな顔をした。 「おいおい、無駄じゃないだろ。私の写真なんだから、色々使い道があるんじゃないか?」 「使い道って、何に使えと」 「そりゃあ、○○は男なんだし、一人暮らしだし、色々と……な」 「色々?」 「私の口から言わせる気か?」 頬を赤らめて目を逸らす魔理沙。 彼女と友人になってから、けっこうな月日が経っている。その小さな口が言わんとすることなんて、○○はすぐに理解できた。 「魔理沙」 「うん?」 「からかってるだろ」 「分かるか?」 にひひ、と魔理沙が笑った。やっぱりそうだった。彼女はこういう、男女のぎりぎりラインを攻めてくるような冗談をよく飛ばしてくる。 「独り身の○○に潤いを、ってな。で、私の喉を潤すためのお茶は出てこないのかなーっと」 「はいはい、今入れるよ」 ○○は立ち上がり、台所へと向かった。 勝手に上り込み、ずうずうしくもお茶を催促する友人なんて、そうそういないだろう。だが、悪い気はしていないし、もう慣れた。なんだかんだと数年友人をやっているのだ。彼女の底抜けの明るさに触れることは、むしろ色々悩んでいた頭のリフレッシュにもなっている。お茶をご馳走するぐらいなんてことなかった。 台所にはお茶の作り置きがあった。春の終わりに近いこの季節、熱いお茶より冷たいお茶の方が飲んで気持ち良い。氷を利用した簡易冷蔵庫を開けて、竹筒で作った水筒を取り出す。 中身を湯呑みに入れようとした時、カシャ、という音が居間から聞こえた。 まさか、と○○は慌てて居間に戻る。 「魔理沙!」 「おー、すごいな。時限装置もあるんだな。ほら、見てみろよ」 机の上に置かれたカメラと、そのレンズの先に座っている魔理沙。 彼女の手には1枚の写真があり、それをこれみよがしに見せてきた。 浮かび上がってきたのは、畳の上で女の子座りして、しっかりとカメラ目線で笑っている少女の姿。 どうやら自画撮りをしたらしい。 ○○はがくりと肩を落とす。 「今無駄遣いするなって言ったばかり……」 「天狗の持ち物に遠慮はいらないと思うぜ? それに○○が使うならこういう写真の方がいいだろ」 「その冗談はもういいって」 「んー、冗談っていうか、○○には私の写真の1枚でも持ってもらったら嬉しいっていうか。ほれほれ」 ドヤ顔の魔理沙が、写真を胸元に押し付けてくる。受け取り、改めて写真を眺めてみた。 枠いっぱいに魔理沙が写っている。魔理沙しか見えない。これ以上ないほどの満面の笑み、しかもダブルピースまでしている。 元々目鼻立ちの整った魔理沙がこんなポーズをしていると、ただのインスタントカメラの写真でも、まるでキラキラと光っているように見えてしまう。 不意に、喉から言葉がこみ上げてきた。 「……かわいい」 「え」 ○○がぽつりと言うと、魔理沙が固まった。 「い、今かわいいって?」 「ああ、そうだな。魔理沙は悪戯なんてせず、こんな風に笑ってたらかわいいのに」 「え、あ……う」 赤い顔で俯く魔理沙。 ○○は黙って彼女の前に立ち、「かわいいなあ」と追撃をかけた。 もじもじとしている魔理沙。だが、すぐにはっとした様子で顔を上げた。 「あっ、からかってるんだな! さっきの仕返しか!?」 「ばれたか」 意地悪気味に舌を出した○○に対し、魔理沙がぷくりと頬を膨らませた。これで仕返しができたと満足した○○。「本気でうれしくなった自分が馬鹿みたいだぜ」というつぶやきは、○○には聞こえていないようだった。 ここでコンコン、とノックの音が響いた。また誰かがやってきたらしい。 ○○が返事をするより先に、「○○いるー?」という若い女性の声が響いた。知った声だった。 「おっ、チャンス!」 なぜか、魔理沙が真っ先に動いた。机の上に置いていたカメラをぶんどり、すばやくレンズを玄関に向ける。 ほどなく扉が開く。 「なんだ○○、いるならいるって」 「こっちこっち!」 「え」 声をかけられた訪問者が突然のことに驚いているところを、 パシャリ。 「おーし、完璧」 魔理沙が楽しそうに親指を立てた。 ジィーという音と共にまた1枚、写真が吐き出された。 今度の写真は白がメイン色だった。白い髪、白い肌、白い服。陶磁器のようになめらかな白さの中に、アクセントとして紅い瞳と紅いもんぺが現れる。そのコントラストは、その人物が持つ激情さと無垢さを表しているかのようだった。 表情はとても怪訝な様子で、眉をひそめてジト目になっていた。しかしそれで魅力が減じられているわけでもなく、何か背筋をゾクリとさせるような美しさがフレームに収まっていた。 藤原妹紅。○○のもう1人の友人の写真が出来上がった。 魔理沙は写真を見て、「んー」とうなった。 「もっと笑えよー、妹紅」 「いきなり撮ってきて何を……何なのそれ」 妹紅もまた勝手知ったる様子で居間に上がり、○○の横に座った。そこが自分の指定席のような、自然な所作だった。 ○○は妹紅にも事情を説明し、魔理沙からはカメラを没収した。これ以上フィルムを使われてはたまらない。 妹紅が興味深そうに○○の手の中のカメラを眺めている。 「本の表紙の写真、か。じゃあ中の文章自体はもう?」 「だいたいは完成してるかな。あとは校正をするだけだけど……ああ」 表情が変わりにくい妹紅だが、彼女の目は時に口より思いを伝えてくれる。今も真顔ではあるが、じーっと見つめてくる目がウキウキランランと輝いていた。言わんとすることもすぐに分かった。 「ん、分かってるよ。校正が終わったら見せるから」 「うん」 頬をかすかにほころばせた妹紅。いつもの凛とした感じとは違い、子供のように嬉しがっているのが見て取れた。 「相変わらず物好きだねえ、妹紅は。あんなくそ長い文章をよく読めるもんだ。私なら読んでて『ガーッ!』っていう感じになって、いきなり燃やしちまいそうだぜ」 魔理沙が肩をすくませた。 妹紅は○○の書いた小説をよく読んでくれていた。○○が幻想郷にきてからずっと、全ての文章を欠かすことなくだ。その上で色々と感想を言う。あれがいい、これが面白くないと。贔屓目なしの率直な意見を聞かせててくれるので、○○としてもありがたかった。 「○○の書いたもの以外は、私も読もうとしないけど」 「それって、小説が好きっていうより、○○の方がっていうことか?」 「違う違う。んー、説明するのが難しいんだよね。なんというか、○○の書いたものしか心の琴線に触れないというか、その文章の底にあるものが読みたいっていうか」 「……よーわからん」 魔理沙は首を横に振り、「要するに好きってことでいいだろ」と無理矢理まとめてしまった。妹紅もそれ以上説明する術を持たないようで「それでいいよ」と首肯する。自分の好きなものを好きである理由を、他人に説明するのは難しいものだ。 続けて魔理沙は、そっちの方に興味がある、という顔を○○に向けた。 「で、○○、写真はどうすんだ?」 「うん、それなんだよな」 妹紅と魔理沙が話している間も、○○はカメラを片手にして考え込んでいた。 文章を書く以外のことはからきしの自分が、売り物を飾る写真なんて撮れるとは思えない。かと言って、今更射命丸文にカメラを返すわけにもいかないだろう。 困り顔の○○に対し、妹紅が机に肘をつきながら言った。 「とりあえず、景色とかにしたら?」 「それがいいんだろうけど、外来人の俺が『綺麗だ』と思っても、幻想郷の人たちにとっては当然なものだったりするだろ? だから難しくって」 綺麗とか美しいとか、そういう感情はとても主観的だ。 わかりやすい例として『綺麗な自然』が挙げられる。都会暮らしの人間にはものすごく綺麗でも、そこに住んでいる人にとっては生活の一部だったり、驚異だったりする。生活の一部を綺麗だと言われたら、不思議に思うだろう。 場所が違えば価値観も違う。下手な写真を撮って、『なんでこんな風景を?』と敬遠されるような本にしたくはない。 「幻想郷の人たちにとっての良い景色っていうのが大事なわけなんだけど」 「あー……うん。私もそういう感覚が薄いからなあ」 こめかみ辺りに中指を押し当てる妹紅。どうやら一緒になって考えてくれているようだ。 だが、こんなことで悩ませるのも心苦しい。これは自分の仕事なので、そこまで気にしなくていいと言おうとすると、 「だったら、ちょうどいい奴がいるだろ」 目の前でお茶をイッキ飲みしていた魔理沙が言った。 「ちょうどいい奴?」 「幻想郷のこととか、歴史とか地理とかに詳しい、堅物様」 言われて、1人の女性のことがすぐに思い浮かんだ。ここにはいない、自分たちにとっての共通の友人。 なるほど、と○○は頷いた。妹紅も「魔理沙にしてはいい意見を出すんだね」と感心している。「『しては』が余計だぜ」と誇らしげに言う魔理沙。 ○○は立ち上がり、出かける支度をすることにした。 もう1人の友人は、人里にいる。 ※ カシャ。 シャッターの切れる音がして、○○は横に立つ魔理沙を「こら」と叱った。またフィルムを使われてしまった。 しかし魔理沙は「気にするなって」と自身が全く気にすることなく、カメラの口から写真を引き抜いた。 今度の写真は明るい外で撮られたので、全体が若干白っぽくなった。焦点の合わせ方も甘かったようで、軽くピンボケしている。 だが、寺子屋をバックにして写っている人物の、均整の取れた顔にはそれでも目を引かれた。若干青みがかった銀髪。六面体と三角錐が合わさったような形の帽子。顔は細面で、ひとつひとつのパーツがきりりとしている。魔理沙と比較するとよく分かるが、明らかに大人の女性の顔である。 そして何より、写真の下部に収められたふくよかな身体。服から突き出しそうな、形のいいアレ。男性なら誰でも目のやり場に困るだろう。 しかし、幻想郷でお世話になりっぱなしの恩人を、そんな目で見るのは忍びない。 ○○は写真から目を離し、目の前に立つ実物の女性に会釈した。彼女、上白沢慧音は小さく頷いた後、写真とまったく同じ憮然とした表情を自分たちに向けた。 「突然やってきたと思ったら、何のつもりだ?」 「○○が『使う』ために撮ってるんだぜ」 「使う?……ふむ、なるほど」 「いやいや、納得しないでください。魔理沙もいつまでそのネタを引っ張るんだ」 ○○は魔理沙の頭を軽くはたいた。「あいた」と魔理沙は痛くなさそうな声をあげる。 「魔理沙の妄言は忘れてください」 「それはかまわないが……」 慧音は紐とじした書類を肩に当て、軽く息を吐いた。疲労の色がそこに見えた。寺子屋の授業が終わったばかりのところを訪れたのは間が悪かったかもしれない。 ○○は「お疲れのところすみません」と一言クッションを入れた。すると慧音は「いや」と落ち着いた笑みを浮かべる。 「君の顔を見れば、多少疲れも取れたよ」 「え」 「そうだ、勝手に写真を撮られたわびとして、私も君の写真が欲しいんだが、どうだろう?」 「あ、それいいね。私もほしい」と妹紅が後ろでつぶやくのが聞こえた。魔理沙もカメラをかまえている。 しかし冗談だろうと思った○○は、魔理沙からカメラを取り上げつつ、「いえいえ、今日はそういうことじゃなくて」と軽く流して本題に入ることにした。(女性3人がちょっと残念そうな顔をしていることに、○○は気付いていない) 「実はですね」 事情を説明すると、慧音は口元に人差し指を当てて、考え込み始めた。誰かから相談を持ちかけられた時に見せる、知識人としての表情だった。 「幻想郷の風景の写真か……まあ、よい場所を知らないわけではないが」 「よかった。いくつか教えていただけないですか?」 「……まず聞いておきたいんだが、本の表紙というのは、本の内容とつながりがあるものじゃないか?」 ○○は首肯した。読者は時に、表紙をきっかけにして本を読み始めることがある。表紙から内容を推測することもあれば、内容を読んだあとに「こういうことだったのか」と表紙の真意に気付くこともある。表紙と内容、そこには強いつながりがあり、両者が合わさって1冊の本になるのだ。 「なら、まずは君がもうすぐ出すという本の内容について聞こうか。その後、ふさわしい景色を考えてみよう」 ニコリと笑った慧音は頼もしくも優しかった。 ○○はもう拝みたくすらあった。幻想郷にやってきてから今まで、彼女の世話にならなかった日はない。迷惑だからいけないと思いつつも、彼女によりかかると途端にホッとしてしまう。 「今度はどういう物語なんだ? また恋物語か?」 「いえ、今回は小説じゃないんです」 「え、そうなんだ」 驚いた声を出したのは妹紅だった。慧音も「ほお」と興味深そうにしている。小説以外の本を出版するのは初めてなので、確かに驚かれるかもしれない。 次に出す本は、日々の日常について書きつづったり、自分の考えをちょっと文字にしてみたりした、いわゆるエッセイ本だった。日記本と言ってもいいかもしれない。 「○○さん自身のことを知りたい、という読者がけっこういまして」と編集者に提案されたのをきっかけに、執筆してみたのだ。書き慣れないジャンルだったので非常に苦労した。その分、よい経験になったけれど。 「日記本か……」 慧音は再び人差し指を口元にやった。細い指が艶やかな唇を撫でている。 「○○、ここは私の意見を聞かない方がいい」 「え?」 「君が良いと思う写真にするべきだ」 それはふりだしに戻るのではないか。 困惑気味の○○に対し、慧音は微笑みかけた。 「君のことが書かれているのなら、君を『表す』写真にした方がいい。自分自身と結びつくようなもの。君の原点、基礎、考えの元になっているようなものを表す風景ならば、ふさわしいと思う」 それらの説明を受けると、あるひとつの言葉が○○の口からこぼれでた。 「……『原風景』?」 「ああ、それだ。さすが小説家。すぐにふさわしい言葉が思いつくんだな」 「いやいや、おだてても何も出ませんよ。けど、なるほど、原風景か」 ○○は小気味よく膝を打った。的確な助言、さすがは慧音先生だ。 しかし、会話の内容を理解しているのは○○と慧音だけだった。後ろにいた妹紅と魔理沙は何が何やらという顔をしている。妹紅が「げんふうけい? なにそれ」と尋ねてきた。 ○○は振り返り、説明した。 「原因の『原』に風景とつけて、原風景。心象風景なんて言ったりもするけど……んー、簡単に言うと『自分の心に焼き付いている光景』かな」 さらに慧音が引き継ぐ。 「美術の世界ではよく使われているな。原風景はその人の思考の核となり、創作活動の元になることが多い。例えば、子供の頃に見た夕焼けの景色が心に焼き付いていると、その人物は夕焼けの絵ばかりを書いたりする」 妹紅は「んー」と目をつむる。意味を咀嚼しているのだろう。目を開くと、分かったという表情に変わっていた。 「日記は○○の心が反映されてるから、表紙の写真も○○の心に焼き付いた風景にすればいいってことか」 「そういうこと。よくできました」 よく理解してくれたのが嬉しくて、○○は思わず妹紅の頭を撫でてしまった。女性の頭を気安く撫でるという愚行にすぐ気づき、謝罪して手を引こうとしたものの、妹紅は存外抵抗しなかった。 妹紅は「あう」という小さなつぶやきを発した後は、ぽーっとした顔で撫でられるに任せている。人形のように固まっていた。 ちょっと楽しくなってきて、さらに撫でる。白い髪の感触が心地いい。というより、撫でられっぱなしの妹紅がどうもかわいく思えてきて―― 「あ、ついに写真じゃ我慢できず実物に手を出したか?」 瞬間的に手を離した。いつの間にやら、○○の懐に魔理沙がいて、意地悪そうに見上げていた。 そしてなぜか団子を頬張っている。 「私なら、もぐもぐ、いくらでも撫でていいぞー。ただし一撫でごとに団子1本な」 「有料かい」 「タダだと怖いことになると思うぜ」 魔理沙は3本の白い団子を、小鳥のようについばんでいた。話に飽きてどこかで買ってきたのだろう。 「……なでなで」 ちなみに妹紅はまだぽーっとしている。突然撫でられて驚いてしまったのだろうか。 「それで、どうするんだ○○」 呆れ顔の慧音に言われ、○○は慌てて話を本筋に戻した。慧音の提案はとても参考になったものの、懸案事項があった。 「原風景はすごくいい案なんですが、あいにく、俺は外の世界出身ですからね。『懐かしい』とか『これが自分の心に焼き付いている』風景となると」 「外の世界のものになる、というわけか。しかし、幻想郷にきてもう数年経つ。それだけ過ごせば、何か心に残るものはあるだろう?」 ○○は自分の胸に聞いてみるものの、そう簡単に思い浮かばなかった。外の世界のものなら、いくらか……良い原風景も、悪い原風景も思い浮かぶ。 どうだ? と慧音に重ねて尋ねられたものの、○○は首を横に振った。せっかくの案なのに申し訳なかった。 だが、慧音は気にすることなく、さらに提案してくれた。 「なら、私たちを参考にするか?」 「参考?」 「幻想郷にきた○○と、一番長く一緒にいたのは私たちだと思うんだが……違うか?」 ○○は「もちろんです」と即答した。否定するどころか、全力で肯定してよかった。彼女たち3人と過ごした時間は、他の誰よりも長い。 「だったら、私たちにとって大事な風景が、○○にとってもそうかもしれない。4人に共通する大事な記憶や思い出をきっかけにして、原風景を思いつくかもしれない。当てもなく探すよりは、その方がいいだろう」 とても建設的な案だった。 しかし、それは彼女たちにさらなる迷惑をかけることでもある。○○はいいんですか? と申し訳なさそうに3人に尋ねると、 「私ならかまわない。相談を受けた身だ。答えが出ないと私も気になる」 慧音は笑顔で答え、 「ん? べつにいいけど」 団子片手の魔理沙は気楽そうに答え、 「……」 「妹紅?」 「え? あ、うん。別に時間あるし」 呆けたままだった妹紅は、声をかけられ我に返ると、そっぽを向いて、しかしきちんと了承してくれた。 ○○は心の中に暖かい空気が流れ込んでくるのを感じていた。 本当に……世話になりっぱなしだ。彼女たちには。 ※ まずは私からだな、と慧音が先陣を切って歩き始めたので、○○たちはその後ろをついていった。 彼女は空を飛ぼうとせず、人里の中を大股で歩いていった。寺子屋から離れ、大通りに出る。 大通りには数多くの商店が軒を連ねている。そして人もたくさんいた。野菜を詰め込んだ袋を抱えている人、お喋りに興じている主婦たち、仕事がひと段落して腰を下ろしている行商人、駄菓子屋へ急ぐ子供。そして、そんな彼らの頭上を飛び交う、威勢のいい呼び込みの声。 昔ながらの商店街といった風景だろうか。シャッター商店街ばかり見てきた○○には少々遠い時代のもの。しかしどこか懐かしく感じるところもあった。 その中に溶け込んでいった慧音は、一直線に人の波を掻き分けていく。 「あ、慧音先生だ」 「こんにちはー」 さすがに顔が広い慧音は、1歩進むごとに声をかけられていた。慧音は律儀に挨拶を返し、頭を下げている。 「いつもの4人組かね。今日は何も起こさないでおくれよー」 店先のオバサンが発したこれには、慧音も苦笑いを浮かべていた。このメンバーで出歩くと何かがある、と思われているらしい。何も起こすつもりはありませんよ、と慧音は答えていた。 大通りの中間地点に到着すると、慧音は突然立ち止まり、振り向いた。 「ここだ」 彼女は短く言い、○○に手のひらを差し出した。カメラを貸してほしい、ということらしかった。 渡すと、慧音は迷うことなくシャッターを切った。 写真が出てくる。 それはまっすぐと伸びる大通りを撮ったもの。両側には商店が並び、間を行き交う人々の数は数え切れない。 ○○は得心がいった。とても慧音らしいと思った。 「人里の風景、ですね」 「ああ。私にとって一番大事な場所というと、ここだ」 慧音は写真を眺めながら、優しい笑顔を浮かべていた。 「ここは寺子屋の授業が終わって、自分の家に帰る時に通る。私はいつも、里の皆が平和に過ごしている光景を見て、息をつく」 自分たちの傍を、がやがやと通行人が横切っていく。笑っている人ばかりではない。仕事に疲れて気だるげな人もいるし、忙しそうに早歩きしている人もいる。けれど、彼ら全員、決して不幸には見えなかった。 「人が、その日その日を懸命に生き、他人と交わり、明日につなぐ様を見ているだけで、私は何か救われた気分に浸れる」 慧音は写真から顔をあげ、○○に笑みを向けた。 「そういう意味では、○○、君を見ていることも同じかもしれないな。君は前に進む人間の代表といったところだ」 「そんな、買いかぶりすぎですよ」 「そうかな?」 含み笑いを浮かべながら、慧音は写真とカメラを○○に返した。 ○○は写真をふところに収めた。紙1枚でしかないのに、とても重いものをもらったような気がした。「もしそうだとしても」と自然と言葉が出てきた。 「前に進めるのは、慧音さんのような人が後ろにいてくれているからですよ」 「それは……ありがたい言葉だ」 慧音はそれからしばらく大通りを眺めていた。 ○○は彼女の後ろ姿に見惚れた。女性らしく細い身体ながら、彼女の背中はぴんと伸びていて、とても広く大きく見える。見えているもの全てを受け止めてしまえそうな、そんな頼もしさがあった。 ※ 次は私の番だぜ、と宣言した魔理沙が出したのは、魔法使いの必需品『箒』だった。 すばやくまたがり、「○○、後ろ」と親指で後ろを指す。 「ん? 後ろ?」 「私の後ろ。ほれ、さっさと乗れって」 そこには、人1人分ほどのスペース――果たして箒の柄の部分を腰かける場所と考えていいとしたら、だが――が空いている。 ちょっとだけ、冷や汗が出てきた。 数十分後、○○は空の上にいた。 「た、高くないか?」 「そうかー? こんなもんだろー」 魔理沙がニヒヒと笑い、おちょくるかのように箒を左右に揺らした。突然のことに動揺した○○は、藁をも掴む気持ちで、目の前の身体に回している腕の力を強めた。 人間は空を飛べるようにできていないとつくづく思う。地面に足がつかない浮遊感は、根源的な恐怖を培養する。「私の好きな風景を撮るなら、飛ばなきゃな」と言われたのでついてきたものの、下を向けば人が豆粒に見えるようなところは、人間がいるべき場所ではない。 「○○ー、大丈夫?」 「落ちても私たちが受け止めるから大丈夫だ。まったく、以前のように籠を使えばいいだろうに、どうして2人乗りなんだ……」 真横を飛んでいるのは妹紅と慧音だ。彼女たちは飛行機が編隊飛行するかのように、魔理沙の斜め後ろにぴったりとくっついている。妹紅は心配そうに、慧音は少し不満そうにしていて、普段と変わりない彼女たちの様子を見ると、○○はちょっと恐怖が和らいだ気がした。 魔理沙が顔をちょいっと後ろに向けて、話しかけてきた。 「何度かこうやって飛んだことあるのに、何怖がってんだよ」 「いや、空を飛ぶのも久しぶりだし、何よりこの高さは初めてで……」 今飛んでいるのは、何度か相乗りさせてもらったときよりも数倍高いところだった。普段がマンションの10階ぐらいの高さだとしたら、今は小さな山なら越えられるぐらいの高さだろうか。空が近く、地上が遠い。若干肌寒いし、何より下を向いたときの恐怖感がすさまじい。人も建物も地上の緑色に埋もれてしまっている。 「私たちもそうそうこんな高さは飛ばない」と慧音は言っていたが、その割にみんな平気な顔をしている。恐怖なんてみじんも感じていないらしい。日常的に顔を合わせているので忘れがちだが、こういうところで彼女たちが特殊な人間、幻想郷の少女なのだなと納得させられる。 「公然と美少女に抱きつける機会だぜ? もっと喜んでもいいと思うけどなー」 笑いながら、魔理沙は後ろに体重をかけてきた。必然的に身体の接し具合が増して、服ごしの感触に気付かざるをえなくなった。 魔理沙は、どこもかしこもぷにぷにしている。腕を回しているお腹周りは、余計な肉はついていないのに柔らかく腕を押し返してくる。広く接している背中は温かさがじんわりと感じられ、ウェーブがかった金髪からも女の子っぽい匂いがした。 ○○はなんだか悪い気がして、少し身体を離そうとした。だがそれに気が付いた魔理沙に「ちゃんと引っ付いてないと落ちるぞー」と言われては、そうそう離れることもできない。かといって、少女の柔肌に精神を削られてしまいそうで。 困った。これは……困った。 「○○……ちょっと嬉しくなってない?」 すぐそばを飛んでいた妹紅が、ジトリした目を向けてきた。葛藤を見破られたらしい。○○は「い、いや?」と力なく否定するも、妹紅は「ふーん」と納得のいかない顔をしている。「これ、仕事だよね」と刺々しく言われてしまった。 その通りだと○○は自戒した。彼女たちは自分の仕事のために協力してくれている。下心など持っては、彼女たちに失礼だ。 無心、無心だ、と○○は気を引き締め、飛行の邪魔にならないぐらいの力で、目の前の身体に抱きついた。「やば……」と魔理沙が軽く身じろぎし箒が揺れた。何かまずいことをしたのだろうか。 「魔理沙、顔が赤い。へらへらしすぎ」 妹紅が不機嫌そうに言うと、魔理沙は「へへへ」と笑った。 しばらくして魔理沙が「この辺りにするか」と呟き、カメラを準備するように言った。 「気を抜くなよ。シャッターチャンスは一瞬だぜ」 「あ、ああ」 「そら! とんぼ返りだ!」 急激に機首が上がり、風が耳のそばをゴォと通り過ぎた。身体の中身が重力と加速度に引っ張られて落ちてしまいそうだった。魔理沙の背中の温かみが綱になっていなければ、意識が飛んでいただろう。 視界はめまぐるしく変わる。雲と太陽が足下にすべりこんでくる。 そこで訪れる、天地が逆転する瞬間。 「撮れ!」 魔理沙の大声に、○○の指は反射的に動いた。前に構えていたカメラのシャッターが切られたかどうかは、風の音に遮られ分からなかった。 引っ張られる感覚がなくなっていき、再び安定飛行に戻る。空が上にあり、地面が下にあるのを確認して、ようやく息をつくことができた。 何が何やら分からなかったが、魔理沙の「とんぼ返り」という言葉が正しければ、大きく1回転したのだろう。 「っしょっと。おーし、○○、大丈夫か?」 「頭がクラクラする……」 「まあ、最初はそうなるわな。けど、いい写真撮れたんじゃないか?」 カメラから出てきた写真には、あの怒濤とした瞬間に見えた、一瞬の風景が写されていた 上には地上が、下には空が。青と緑を地平線がまっぷたつに断ずる。全てが上下逆転している世界。この写真をじっと見ていると、空の上を歩いていると錯覚してしまいそうだ。 普通に空を飛んでいる間に写真を撮って、逆さにすればいいと思うかもしれない。しかし、それは違う。あの宙返りをした時の経験があるからこそ分かる。重力や常識から解き放たれたこの写真は、やっぱりあの一瞬じゃないと撮れない。 「へー」 「なるほど、なかなか綺麗なものだ」 いつの間にか自分たちの斜め上を飛んでいた妹紅と慧音も、感心深そうに写真を眺めていた。 ○○は魔理沙に「すごいな」と率直な感想を伝えた。魔理沙はとても嬉しそうに笑った。 「だろ? 原風景とかはよく分かんないけど、そういう風景は好きだぜ」 「なんだか、魔理沙っぽい写真だと思うよ」 豪快で鮮やか。上下の枠にも縛られず、自由気ままに空を横切っている魔法少女が常に見ている風景。 魔理沙をそのまま表したような写真だ。 ※ 「本当にここでいいのか?」 ○○が尋ねると、妹紅は「うん」と頷いた。彼女はカメラを構え、部屋の中を四方八方眺めている。ついさっき、自分がやっていたのと全く同じ行動をしていて、ちょっと可笑しくなった。 最後の番である妹紅が指定した場所は、どういうわけか竹林傍の木造一階建て、人1人が住めればいいぐらいの広さしか持たないぼろ家――要するに○○の家の中だった。 ○○はもちろん不思議に思った。幻想郷にはもっと綺麗な場所があるというのに、わざわざあばら屋に戻ってくるなんて、と。 理由を尋ねると、妹紅はこう答えた。 「私も○○みたいに外から幻想郷にやってきた口だし、そもそも、子供の頃に見た風景なんてもう覚えてないんだよね」 「だから、今好きな風景を撮る」と彼女は笑って言った。「覚えてない」と言い切ったあたり、何か複雑な過去があるのかとも思ったが、彼女からは暗い雰囲気など感じず、むしろ写真を撮ることを楽しみにしているように見えた。 妹紅はこういうところがミステリアスだと思う。そっけなくて、けど素直で、どこか底知れない雰囲気を持っている。 「よし、決めた。○○はここに座って」 「ん、ここ?」 書き物机の前に座るよう言われたので、その通りにする。しかし、すぐに妹紅が「違う違う。向こう」と指をくるりと回した。妹紅たちに背中を向けろと言っているようだった。 いったい何の写真を撮るのか見当もつかない。とりあえず指示された通りにした。 「おーい、妹紅、私たちはどうすんだ?」 魔理沙に言われ、妹紅は答える。 「カメラの後ろにいてくれたらいいよ。写真に入らないように」 魔理沙と慧音は妹紅の後ろに立っている。これでは写真の被写体が自分だけになる。○○は再度どんな写真にするのか尋ねようとしたが、妹紅はすでにカメラを構えていた。 「○○、万年筆を持って、なんでもいいから原稿用紙に書いててよ」 「え? なんでもいいと言われても……」 「書いてるフリでもいいから」 小首を傾げつつ、○○は万年筆を撮り、原稿用紙に適当な文字を書いていった。 カリカリカリ。 習慣は精神を引きずる。万年筆の感触に手が慣れていき、頭が文字と概念でいっぱいになる。自分が被写体になっていることも忘れたところで、パシャリという音が背中から聞こえた。 振り返ると、妹紅がカメラのレンズをこちらに向けていた。 出てきた写真は、自分にとっては何の変哲もないものだった。1人の男が万年筆を持って机に向かっている。あぐらをかき、背中を軽く曲げ、軽く首を傾けている。ただそれだけ。綺麗なものなんてどこにもない。 しかし妹紅は言った。これが私の特別だと。 「私、○○が小説を書いているのをよく後ろから眺めてるんだよね」 妹紅は写真を感慨深いそうに見つめている。 「○○が手を動かすたびに、1文字1文字何かができあがっていく。その何かは例えば物語だったり、人の言葉だったり、風景の描写だったり。もちろん文字で表しただけの虚構のものだけど、その机の上でもうひとつの世界ができあがってる。で、私はそれを後ろから眺めてて、新しい世界ができあがるのを待ってる。新しい世界を見るたびに、私の中の世界も広がっていくような気がして……だから○○が振り返って『読む?』と言ってくれる瞬間が待ち遠しくて」 一瞬遠い目をする妹紅。 「まさか私が、先の時間を待ち遠しくなれるなんてって、驚きもして」 そして自信に満ちた目を○○に向けた。 「そういうわけで、この光景ほど、私の心に刻まれたものはないと思う」 部屋の中がしんと静まりかえった。妹紅の独白に対し、皆が圧倒されているようだった。 「……なんとも」 慧音は苦笑いを浮かべ、 「お前、筋金入りだな」 魔理沙は呆れ気味に妹紅の肩を叩いた。対して妹紅は、もはや開き直っているかのように誇らしげに笑っていた。 「筋金入り」というのは、小説好きとして筋金入りという意味だろうか。確かに、ここまで1人の作家のファンになるなんていうのは、なかなかないことに違いない。 ○○にとってそれは、 「いや……小説家冥利に尽きるよ、ほんと」 ものすごく嬉しいことで、顔が赤くなるのを抑えきれなかった。 「ありがとう、妹紅」 「……どういたしまして、って言っておこうかな」 妹紅は半分嬉しげに、半分呆れた顔で応じた。何に呆れられたのかは、○○には分からなかった。 ※ 「で、そろそろ決まったか?」 魔理沙の問いかけに対し、○○はうーんと唸っることしかできなかった。お茶の入った湯飲みを持った友人たち3人は、こちらが答えを出すのを待っている。しかし、どうにも決めることができなかった。 改めて3枚の写真を見比べてみる。人里の風景、天地逆さまの空、小説家の後ろ姿。それぞれがそれぞれの思いを十分に込めた、すばらしい写真だ。 果たして自分にここまで確固とした思い入れのある風景があるのか。自信がなくなってきて、いくつか候補を思い浮かべても決断できないでいた。 すると慧音がアドバイスをくれた。 「難しく考えるとまとまるものもまとまらない。何か思いついたものがあったら、とりあえず写真にしてみたらどうだ?」 「……そうですね、だったら」 ○○はカメラを取り出し、机の上に置いた。ボタンを押し、時限装置(セルフタイマー)をオンにする。 レンズの先には友人たち。 ○○は急いで彼女たちの間に入った 「なんだなんだ?」 右隣に座り、何が起こるのかと楽しそうな魔理沙。 「え? もっと寄らないと入らない? 別にいいけど……」 左隣には妹紅。○○がカメラの方を指さすと、仕方ないという表情で肩をくっつけた。 「ふむ」 そして意図を把握したらしい慧音が後ろで膝立ちになる。 頃合いをはかり、○○は掛け声をあげた。 「1たす1は!」 だが定番の合図も、幻想郷では通じないらしく。 「なんだそりゃ」と魔理沙。 「いきなり算数の授業でも始めたのか?」と慧音。 「……○○、近い」と妹紅。 「いやただの合図で、あ!」 カシャ 出てきた写真はお粗末なものだった。 ○○はかけ声の説明をしようと後ろを向き、魔理沙は○○の腕にひっつきつつ不思議そうな顔をし、妹紅は恥ずかしそうに目を背け、慧音は○○の肩に手を置き話を聞く態勢に入っている。誰もカメラの方を見ていない。 しかし、わざとらしい笑顔なんかよりも、よほど4人の仲のよさが分かる写真だった。 「結局、幻想郷に来てから一番印象に残ってるのは、この4人でいる時間かなと」 「しかし、これを本の表紙にはできないんじゃないか?」 慧音の冷静な指摘に、○○は「それもそうですね」と苦笑した。 ※ この後、魔理沙と妹紅が「自分もその写真が欲しい」と言い出したので、人数分の集合写真を撮ることになった。 それらは1枚1枚、表情が違っていた。 2枚目は、魔理沙が○○の首筋にいきなり抱きついたので、○○がうろたえ、妹紅と慧音が不機嫌そうに引きはがす、そんな光景が撮れた。 3枚目。「表情が硬い」と魔理沙が慧音の頬をつねろうとし、慧音は相手を押しとどめ、同じく硬くなっていた妹紅は、○○に「そう緊張しなくてもいいから」と頭を撫でられたせいで、白い頬を真っ赤にしてうつむいているーーそんな写真が撮れた。 4枚目ぐらいは真面目に撮ろうということになり、左から妹紅、魔理沙、慧音、○○という順番で横並びになって、全員が大人しくレンズを見つめていた。だが、大人しくならない少女が約1名。さりげなく○○のわき腹に手をのばそうとしたのを慧音に見咎められ、逆に脇をくすぐられてしまい「ひゃう!」と悲鳴をあげたところで、シャッターが切られた。結果、慧音と○○だけがにこやかに笑い、魔理沙が脇をおさえ、その隣の妹紅が怪訝そうにしている写真が撮れた。 それらの写真を、各々が1枚ずつ持つことになった。 ○○は1枚目の写真だった。 今、彼はそれを眺めながら、自宅の書き物机の前に座っていた。すでに友人たちは帰宅していて、部屋の中はしんとしている。ついさっきまでの喧噪は消え失せていた。 しかし、写真を見ればすぐに思い出せる。彼女たちとの時間を。 魔理沙。 妹紅。 慧音。 奇妙な世界で出会った個性的な3人の友人。彼らと過ごした時間は何ものにも代えがたい、宝物のようなものだ。 「にしては下手だよなあ……」 集合写真を眺めながら、○○は苦笑いを浮かべた。構図も光の反射具合も考慮していない、焦点すら微妙に狂っている写真。あまりにもつたなく、自分がこの宝物をどれだけ大事にしているか、10分の1も表現できていない。 やはり、写真よりも文字がいい。1枚の写真では表現しきれない万感の思いを、そこに込めることができる。 もし書くとしたら。そう考えたところで、○○はぶるりと身体を震わせた。 身体の底の底から、何かがせり上がってくる感覚。柔らかくも温かい塊がどこからともなく現れ、胸の辺りにずずっとはまりこみ、溶けだして四肢に流れ込む。 すると手も足も頭も、ひとつの行動をどうしようもなく希求する。逆らおうとしても逆らえない、衝動に近いもの。 すなわち「書きたい」という欲求。 ○○はひとつ、大きく息を吐いた。 頭の中でわき上がってくるのは、小説や日記のような、売り物のフィクションではなかった。きわめて個人的な文章だ。他人には見せられない。お蔵入りは決定だろう。 それでも……と自分の頑固さに○○は笑った。それでも、書きたいのだから仕方ない。 万年筆を持ち、原稿用紙の1マス目に先端を当てる。あとは全身全霊を書き込んでいくだけだった。 ※ 『間話』 ―皐月の22― 「それで、本の表紙はどうなったんですか?」 焼魚の煙がもくもくとあがっている。焼き具合を確かめるために魚を裏返そうとすると、煙の合間から美鈴の質問が飛んできた。先ほどから続けている世間話は、よほど彼女の興味を引いているようだ。 妹紅は煙を手で払いのけ、箸を操りつつ答えた。 「○○の家の写真になった。一番長くいる場所だからってことで……ん、焼けたかな」 「なるほど。○○さんは在宅仕事ですしね。あ、いい感じに美味しそうですよ」 こんがりと焼き目のついた川魚を、慎重に網の上から皿へと移す。塩がまぶされた魚の身はてかてかと光っていた。 自分でも納得のいくものができ、妹紅は自信ありげに美鈴へと視線をやった。すると相手も大きく頷き、親指を立てた。完璧、とその顔が語っていた。 「お料理、上手になりましたねえ。お米を石鹸で洗っていた頃と比べれば、もう本当に成長して……うぅ、感動ものです」 「そんな昔のことを……そりゃ、自分でもあれはひどかったと思うけど」 「これだけの上達具合、師匠としても誇らしいですよ。ふふふ、これも愛の力というやつですかね!」 「……」 「愛の!」 「繰り返さなくても聞こえてる」 妹紅はぶすっとした表情で、しかし耳まで赤くしながら、焦げのついた網の後片づけを始めた。からかわれていると分かってはいたが、そう簡単に『愛』の否定もできず、かと言って素直に認めることもできない。結果ふてくされることしかできなかった。 慧音たち相手なら臆面もなく語れる『愛』も、恋友以外に出すのはまだ恥ずかしかった。 もちろん、美鈴もそんな弟子の純情さを分かっているからこそ、ニヤニヤとしている。 「それにしても、この写真いいですね」 美鈴が壁に貼られた写真を指さした。そこには○○、妹紅、慧音、魔理沙の4人が写っている。中でも妹紅は○○に頭を撫でられて顔を赤らめていた。 料理中に「これはどこで撮ったんですか?」と美鈴が質問してきたことから、あの日についての世間話が始まったのだ。あまりにも聞きたそうにしていたので、妹紅は渋々と幻想郷の写真を撮って回ったことを話した。そして4人で集まった写真を全員が持つことになった、と言うと、美鈴はしきりにうらやましがった。 『きちんと思い出を残している感じがするじゃないですか。しかもそれを4人ともが持っているなんて、すごく情緒溢れると思いますよ』 妹紅はそれを否定しなかった。こういう写真を持つのも悪くない。○○や友人の顔をいつも見ることができるのは、幸福だ。1人でいる時も、これからの長い人生の中でも。 「妹紅さんって、こういう顔もできるんですね」 美鈴が写真の中の妹紅に指を添えて言った。 「いや、○○さん相手だからこその顔なのかな? ○○さんって、あんまり女の人の身体に触ったりしないように見えるのに、妹紅さんにはよく頭を撫でたりしてますよね?」 「撫でやすい位置にあるからとか、言ってるけど」 だからと言ってそう気安く撫でられると、こちらがもたないと妹紅は常々思っている。この写真を撮る時もかなり恥ずかしかった。 できれば撫でる前に一言言ってくれれば……と考え、妹紅は首を横に振った。それはそれで心臓に悪い。 「撫でやすい。なるほど」 美鈴がうんうんと頷いた。 「きっと距離感が近いんですね。これは○○さんのお嫁さんに一番近いのは妹紅さんかな?」 「……」 「○○さんのお嫁さん」 「……う」 「どう思います? 一日中○○さんと一緒ですよー」 からかわれている。絶対に。 けれど、感情はどうやっても反応するし、頭は勝手にお嫁さんとなった自分を想像してしまう。新婚生活、2人だけ、寝る時も一緒などと、想像するだけで顔がニヤける。 笑うまいと我慢。拳を握りしめ、別のことを考えようと努力する。 そこに美鈴からのとどめの一言。 「撫でられるのは頭だけじゃく、色々と恥ずかしいところも……なんちゃって、うぐっ!」 ほとんど条件反射だった。淫靡な妄想を振り払おうと腕を振るうと、ちょうどそこに相手の身体があったのだ。 握りしめた拳が、若干の炎をまとい美鈴の鳩尾に突き刺さっている。 さすがの武道の達人である美鈴も、この不意打ちには「ごふっ」と膝を曲げていた。 「ぼ、炎のボディブローは、効く……!」 「あ、ご、ごめん、みりん」 「い、いえ、こちらこそからかいすぎました……ぐぐっ、それと私の名前はみりんじゃなくて美鈴です」 「今、何か冷やすものを」 「ふふふ、心配しなくても大丈夫。妖怪がこの程度で倒れては」 「今日はまだ甘味の作り方教えてもらってないし、倒れられると困る」 「そっちの心配!?」 がーん、という顔で美鈴はその場に崩れ落ちた。 これで少し気が晴れた妹紅は、こんな風にじゃれ合える師匠兼友人ができたことに、小さく笑うのだった。 Megalith 2013/10/28 ───────────────────────────────────────────────────────────
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『復讐が生むモノ』 23KB 制裁 変態 野良ゆ 姉妹 子ゆ ゲス 現代 虐待人間 独自設定 気がついたら前から作ってた作品より長くなってました 独自設定有り。 ネタが被っていたら申し訳ありません。 豹変注意。 HENTAI注意。 復讐が生むモノ 「母さんが死んだ」 現在としあきのいる双葉寺では、彼の母親の葬儀の準備が進んでいた。死因は骨折によ る内臓損傷。路上に呑気に飛び出してきたゆっくり親子を身を呈して庇った結果だ。良く いえば世話好き、悪くいえばお節介な母親らしいという人もいた。 「鬼意さん。この度は本当に申し訳ありませんでした」 一人の男がとしあきの前で土下座をする。彼はとしあきの母親を轢いた車を運転してい た男だ。彼が悪いわけではない。としあきにはわかっている。 「顔を上げてください。あれは事故です。仕方がなかったことです。そんなに自分を責め ないでください」 立ち上がった男に、としあきは頭を下げる。彼もまた被害者なのだ。そう、すべての元 凶は、この世のすべての悪ともいえる、ゆっくりという存在だ。 としあきはどうしても納得することができなかった。何故母親が庇ったのがゆっくりだ ったのか。何故ゆっくりごときのために母が死ななければならなかったのか。 としあきが小学生の頃に父親と離婚し、それから女手ひとつでとしあきを育ててくれた 母。一家に金銭的に余裕は無く、生活は貧しかった。塩味をつけただけのパスタで、一週 間凌いだこともあった。しかし、としあきへの愛情だけは欠かさずに注いでいてくれた。 そんな母がゆっくりごときのために死んだ。としあきには納得できるはずがなかった。 「鬼意としあき様、いらっしゃいますか?」 本堂の入り口に立っている男がとしあきを呼んでいる。その手には、四角い透明の箱が 抱えられていた。としあきが男の元へ向かい自分のことを伝えると、男は口早に語りだし た。 「自己紹介が遅れました。私は保健所で職員をやらせてもらっている、西浦と申します。 この度はご愁傷さまでございます。今回お邪魔させてもらったのは、お母様がお庇いにな ったゆっくりたちの件でお話があったからでして……」 としあきは西浦の抱えている、透明な箱の中を覗き込んだ。箱の中には汚らわしい親れ いむ、子れいむ、子まりさという見ただけで野良とわかる一家が入れられていた。こいつ らが母親の命を奪った元凶か。今すぐにでもこいつらを潰したい、という衝動がとしあき を襲った。彼はこの件の元凶となった野良ゆっくりなど、とっくに処分されたものだと思 っていた。西浦から聞いた話によると、普通はすぐに処分されるのだが、今回は状況が状 況だったので、処分を保留してとしあきの判断を仰ぐことにしたとのことだった。 「お母様が命を懸けて守ったゆっくり一家です。どうか穏便にすませてあげてはいかがで しょうか」 西浦がいった。 ゆっくり一家は保健所で保管されている間、本当におとなしくしていたらしかった。西 浦の話によると、ここまで従順な例は珍しいということだ。たが、としあきはその話に何 か違和感を感じていた。 としあきにはゆっくりに対する知識が豊富にあった。大学を卒業するまでは、ゆっくり を虐待することを趣味としていたからだ。仕事漬けで家を空けることが多かった母。とし あきの家にはテレビゲームやおもちゃを買う金銭的余裕は無かった。そうなると、としあ きがお金のかからないゆっくり虐待にのめり込んでいくのは当然だったといえる。社会人 になってからは多忙な日々のため、虐待から遠ざかっていたとしあきだったが、一時は生 活の一部だったともいえたゆっくりに対する知識は、記憶から消えることは無かった。 「わかりました。ちょっと、そのゆっくり一家を見せてくれませんか?」 「はい。こちらになります。今、箱を開けますね」 西浦の手で、防音の透明な箱の蓋がゆっくりと開けられる。それと同時に今まで聞こえ ていなかったゆっくりたちの声が、としあきと西浦の耳に流れこんできた。 「ゆゆっ! ふたさんがあいたよ! ばかなにんげんたちは、やっとれいむたちをかいっ ほうするきになったみたいだね! かわいいってつみだねっ!」 「おかーさん! あそこにあまあまさんがあるんだじぇ! あまあま! あまあま!」 「あまあまよこしぇー! じじぃ! ぷきゅー!」 蓋を開けた途端に本堂中に響き渡るゆっくりたちの叫び声。親れいむは外へ出せと、子 まりさと子れいむはお供え物の果物をよこせと、思い思いに邪な欲望を吐き出した。 西浦の顔がみるみる青冷めていくのがわかる。としあきはわかっていたのだ。彼のいう ような善良な個体なんて、野良には絶対にいないことが。ゆっくりの餡子の中には加工所 や保健所を恐れる本能が刻み込まれている故に、保健所では善良のように振舞っていただ けということが。外に戻れたことによって、その醜悪な本性を曝け出すに違いないという ことが。 としあきの心の中には、数時間前とは比べものにならないほどの強烈な怒りの気持ちが 渦巻いていた。しかし数分前のように、今すぐ潰してやりたいという気持ちは無かった。 こいつらはもっと絶望を味わってから、母親がどんなに苦しんだか、それを理解しながら 死んでいかなければならない、そう思っていた。としあきはこの一家を一瞬で痛みも感じ ることもなく潰してやるなどという、仏のような優しさなんて持ちあわせていなかった。 「まったく! つかえないどれいだね! れいむのかわりにすぃーにひかれてえいえんに ゆっくりしたどれいとは、おおちがいだよ! どれいはどれいなりにやくだってくれなき ゃ、いみないでしょおおおおお!?」 その言葉を聞いた瞬間、慌てて西浦が透明な箱の蓋を閉めた。彼は顔面蒼白な上、ダラ ダラと冷や汗を流し、口元をブルブルと震わせていた。自分の軽率な判断で遺族の気持ち を踏みにじってしまったとでも思ったのだろうか。 「いいですよ。そのゆっくりたちは、私が責任を持って飼いましょう。しかし、葬儀中に は面倒を見ていられないので、そこに置いておいていただけないでしょうか?」 としあきが満遍の作り笑いを浮かべながら彼にいった。彼の笑顔が作り笑いだというこ とは、西浦にも伝わっただろう。 「わ、わかりました。ありがとうございます――」 西浦の表情は一瞬驚いたようになり、直後に何かを悟ったような表情へと変わった。そ そくさと透明な箱を邪魔にならない離れの部屋の一角に置くと、一礼して寺の外に止めて ある車へと戻っていく。としあきは彼の動作の一つ一つから、焦りのようなものを感じる ことができた。 葬儀は数時間後におわった。としあきは火葬を行うために、車で火葬場へと移動する。 ゆっくり一家の入った透明な箱は葬儀屋に頼んで一緒に運んでもらうことになった。 火葬が執り行なわれ、としあきは最愛の母親の遺骨と対面した。彼は大粒の涙を流しな がら母の骨を拾った。その時彼が流した涙は、母を失った悲しみの涙なのだろうか。それ とも、母の仇をこの手で取れるという嬉し涙なのだろうか。それは彼自身にもわからなか った。 太陽が西へ沈み、空が青紫色に染まり始めた頃、としあきは誰もいない実家へと帰って きた。右手には母親の遺骨の入った骨箱、左手にはゆっくり一家が入った透明な箱を持っ ている。親戚の何人かが、「俺も泊まっていこうか?」と声をかけてくれたが、謹んで遠 慮した。空にはいくつかの星がきらきらと輝き始めていた。 としあきが玄関の戸を開け、玄関に入った。 「ただいま」 家の中から返事は帰ってこなかった。家の中はしーんと静まり返り、一定の間隔で蛇口 から水滴が落ちる音だけが響き渡っている。 「本当に、一人になっちゃったんだな」 としあきは震える声で呟いた。 部屋の灯りをつける。紐を引っ張ると少量の埃がとしあきの頭に降ってきた。ここはと しあきが高校生になるまで生活していた部屋だ。としあきはこの部屋の中心にゆっくり一 家が入っている透明な箱を放るようにして置くと、母の骨箱を抱えて仏間へと向かった。 骨箱を仏壇に置いた後、母、祖父、祖母が眠る仏壇に、そっと手を合わせる。祖父と祖 母はとしあきが幼稚園の頃に病気で他界している。わずかにだが、とても優しくしてもら ったことを覚えている。としあきは淋しげな表情で三人の遺影を眺めた。その後、 「じゃあ持っていくよ、母さん。一緒に、母さんの命を奪ったあいつらに、復讐しよう」 と呟くと、としあきは母の遺影と、遺骨の入った骨箱に手を伸ばした――。 としあきは辺りが寝静まった頃、実家へと帰ってきた。手にはコンビニのビニール袋。 袋の中には電池が数本、何か工具セットのようなもの、菓子類などが入っていた。田舎の コンビニならではの品揃えだ。彼は”ある作業”を済ませると、これから必要なものをコ ンビニへと買いにいっていたのだ。 としあきは自分の部屋に戻った。手にはビニール袋と何かの包み、そして母親の遺影を 持っている。すると、透明な箱の中の一家が、透明の壁に体当たりを繰り返し始めた。何 やら喚いているようだが、防音のため聞き取ることは出来ない。しかし、一家が何をいい たいのか、としあきは手に取るようにわかっていた。 としあきは遺影を少し離れた場所に飾ると、透明な箱の蓋を開けた。 「ゆうううっ! くそどれい! やっとでいぶたちをじゆうにさせるきになったんだね! はやくここからだしてね! それからあまあまもちょうだいね! たくさんでいいよ!」 「おにゃかすいたよー! はこのなかはゆっくちできないいいい!」 「このはこのなかはとってもゆっくちできないのじぇ! はやくまりちゃをおそとにだす んだじぇ!」 としあきは透明な箱を持ち上げ、そのままひっくり返した。「ゆべっ!」という鳴き声 とともに、一家が畳の上へと落下する。 「ゆわあああああああん! いちゃいのじぇえええ!」 「おちびちゃんだいじょうぶ!? おかあさんがぺーろぺーろしてあげるからね。ぺーろ ぺーろ……」 「ゆわあああああん! れいみゅにもぺーろぺーろしちぇねええええええ!」 としあきはビニール袋から先ほど買ってきた菓子を取り出た。パッケージを破ると、丸 まって互いを舐め合う一家の中心へ落とした。すると、数秒前まで激しく痛みをアピール していた子まりさと子れいむが、それを忘れたかのように菓子に飛びついた。親れいむも 二匹へのぺーろぺーろのことなどすっかり忘れ、菓子の虜になっている。としあきは、ゆ っくりの”痛み”なんてこんなもんだ、と心の中で思った。 母さんの痛みはこんなもんじゃなかったんだよ――。 「「「むーしゃむーしゃ、しあわせえええええ!」」」 としあきはぐちゃぐちゃと醜い音を立てながら菓子を頬張る一家を尻目に、部屋の片隅 へと向かった。そこには埃を被ったとても大きなケースが置かれていた。元々は衣装箱だ ったそのケースの大きさは、ゆうに一メートルを越えている。埃を手で軽く払ってから中 を開けると、何かの器具からおもちゃまで様々なものが入っていた。このケースは、とし あきが高校生の頃まで使っていた、ゆっくりを虐待するための道具入れであった。 としあきはその中から一際大きなものを取り出した。それはダンプカーを模した大きな ラジコンカーだった。全長はゆうに五十センチを超えるだろうか、一般的なラジコンカー と比べたら、その規格外の大きさに圧倒される。それもそのはず、このラジコンカーはと しあきがゆっくりを虐待するために改造した、特別なものなのだ。 としあきはラジコンカーの底部にある蓋を開け、その中に先ほど買ってきた電池をはめ 込んでいく。「はふっ、これめっちゃうめ!」というゆっくり一家の声と、としあきが電 池をはめ込む音だけが、静かな部屋に響いていた。 それから数分が経過した。菓子を食べ終わったゆっくり一家がゲップを吐いている。そ して、間髪いれずにとしあきにいった。 「「「あまあまがたりないよ! もっとたくさんもってきてね!」」」 としあきは溜息を吐くと、右足を振り上げ、一家が傷つかない程度に加減をして蹴り飛 ばした。 「「「ゆべっ!!!」」」 としあきは畳を転がっていく一家の前に座り直し、自分のこと、そして母親のことを語 り始めた。ゆっくり一家に理解してもらおうなどと、としあきは思っていない。一種の自 己満足だ。 「なにするんだくそにんげんん! でいぶたちはおなかがすいてるだけなんだよ! とっ ととあまあまをもってごいいいいいい!」 「あんなすこしじゃたりないんだじぇ! もっともっちぇこい!」 「れいみゅたちはずっととじこめられちぇ、おなかぺーこぺーこなんだよ! ばかなの? しぬの?」 ゆっくり一家はとしあきの話など聞いてはいないようだ。だが、としあきは続ける。 としあきは淡々と話した。幼い頃に父親が離婚し、母親に育てられてきたということ。 母親は懸命に働いてくれたが、それでも生活は貧しかったということ。そんな貧しい生活 の中でも、母親の愛情を感じてこれたからこそここまで来れたということ。その母親が、 ゆっくり一家の代わりに車に轢かれて死んだということ。 としあきの予想とは裏腹に、ゆっくり一家は途中からとしあきの話をしっかりと聞いて いた。 「つかえないははおやだね! れいむならおちびちゃんたちにもっとしあわせー! なせ いかつをさせてあげられるよ! ゆうしゅうでごめんねっ! だからどれいはあまあまを もっとちょうだいね! たくさんでいいよっ! れいむもしんぐるまざーなんだよ! か わいそうなんだよ!」 しかし、それに対する親れいむの反応はとしあきの考えの範疇を超えたものだった。 としあきの中で、何かが切れた。 「――だと?」 「ゆっ……?」 「母さんがゴミ饅頭以下だと? 冗談も大概にしろっていってるんだよ――」 親れいむの言葉を契機に、場の空気が一瞬にして変わる。としあきから親れいむに向け られる視線は鋭く、冷たい。としあきの心は沸騰しそうなほど熱くなっていた。最愛の、 最高の母親がゴミ饅頭以下といわれたのだ。としあきは自分が馬鹿にされる何十倍もの、 形容しがたい怒りを感じていた。 もういい。復讐を始めよう。俺と、母さんの――。 としあきがラジコンのコントローラーを操作すると、ラジコンカー独特のモーター音が 鳴り響く。軽く動かして不具合が無いかを確認すると、ラジコンカーをゆっくり一家に向 けて突進させた。 「「「ゆひぃ!」」」 ラジコンカーはゆっくり一家に激突する寸前で止まった。一家までの距離は十センチと いったところだろうか。としあきは一家の悲鳴がとても気に入った。口元に笑みを浮かべ ると、ラジコンカーを後退させ、再び一家に向かって突進させた。そのたびに一家の、 「「「ゆひぃ!」」」 という悲鳴が部屋中に反響した。としあきは何度も何度も繰り返した。ゆっくり一家は あんよが竦んでしまったようで、その場を動こうとしなかった。その恐怖におそろしーし ーを漏らしてしまっているのが確認できる。それを見てとしあきは心臓を鷲掴みにされた ような、そんな恍惚感を感じていた。 「――して」 「ああ?」 「どぼぢでこんなことするのおおお!? でいぶたちなにもわるいことしてないでしょお おお!?」 「本当に餡子脳って奴はおめでたいな。お前らが母さんを殺したこと、忘れたのか?」 「それはくそどれいがかってにしんだんでしょおおおお!? すぃーかられいむたちをま もることなんて、かんたんなことでしょおおお? えいえんにゆっくりするほうがわるい んだよおおお!?」 「簡単? はは、そうか。簡単っていうか。じゃあ証明してもらおうじゃないか。その行 動がどれだけ簡単なのか、さ!」 としあきは体から溢れ出そうになるほどの激情を、寸前のところで押しとどめた。時間 を、時間をかけなくてはいけない。一時の激情に流されてはいけない。奴らは、奴らは時 間をかけて己等の愚かさを理解しないといけない。我慢だ、我慢をしなくてはならない。 としあきは心の中で何度も繰り返し、その激情を鎮めた。 「これからお前の子供たちをラジコンカーで轢き殺す。このラジコンカーに轢かれたら、 お前の子供たちは二匹とも、間違いなくあの世行きだ。だが、お前が体を張って止めるな ら、犠牲になるのはお前一匹で済むだろう。そうなったら、俺は子供たちを殺すのはやめ てやる。さぁ、選べ。自分の命を犠牲にするか、それとも子供たちを見捨てるか」 としあきはラジコンカーの操作を再開した。ラジコンカーはゆっくり一家の周りを、獲 物を狙う獣のように旋回する。しばらくは震えているだけしか出来なかったゆっくり一家 だったが、数分後に変化がおきた。 「いもーちょ! ゆっくちにげるのじぇ!」 「ゆううっ……おねーちゃ!」 最初に動いたのは子まりさだった。子まりさはおさげで子れいむを引っ張ると、ラジコ ンカーの進行方向の逆側へと跳ねだした。亀の歩みの如く、必死に逃げていく二匹。その 餡子脳故か、二匹は工夫もせず真っ直ぐに逃げていく。もっと工夫をしなければ、逃げて いる意味など無い。としあきは笑いを堪えることができなかった。彼は口から異様な笑い 声を漏らしつつ、ラジコンカーを二匹の後方から突っ込ませた。 「おちびちゃん! にげてえええ!」 親れいむが子まりさと子れいむに向かって叫ぶ。親れいむのあんよは若干何かをする気 配を見せたが、実際に動くことはなかった。先ほど簡単なことと馬鹿にしていたのにこの 様かよ、ととしあきは思った。 ラジコンカーはあっという間に子まりさと子れいむに追いついた。そのままの勢いで二 匹を潰そうかといった瞬間、ラジコンカーは急に方向を変え、二匹の真横を通過していっ た。 「はい、これで一回死んだね。れいむちゃんが二匹を助けられるのは、何回おちびちゃん たちが死んだ時かな?」 としあきは意図的にラジコンの進行方向を変えていた。子まりさと子れいむを助けられ なかったという絶望を、何度も何度も親れいむに味合わせてやるためだ。ラジコンカーは 再び進行方向を変えると、子まりさと子れいむに迫っていく。その様相はまさに死神だ。 子まりさと子れいむはもう動くことができなかった。 「二回」 「「ゆびぃっ!」」 「三回」 「「ゆぎゃああっ!?」」 「四回」 「「もういやじゃああああ!」」 「五回」 「「ゆっぐ……ゆっぐ……」」 「ぼうやべであげてぐだざいいいいいいい!」 としあきのカウント、子まりさと子れいむの悲鳴、親れいむの嘆願だけが、ラジコンカ ーのモーター音のビージーエムとともに響いている。 としあきがラジコンカーを動かし、六回目の突進を行った。しかし彼はラジコンカーの 操作を若干誤った。正面から子れいむのギリギリ真左を通り過ぎたラジコンカーは、子れ いむの右の揉みあげを引きちぎった。 「ゆぎゃああああああ!? れいみゅのぴこぴこさんがあああああああ!?」 「れいみゅうううう!? ゆっくち!? ゆっくちいいいいいいいいい!?」 「おちびちゃんのごーじゃすでえれがんとなもみあげさんがあああああ!?」 ゆっくり一家の悲痛な叫び声に、としあきの、「六回」というあくまでも冷静な声が重 なる。 としあきは全く気にしていなかった。彼の中では、とっくにこの後のゆっくり一家の死 が決定していたからだ。揉みあげの一本や二本無くなろうが、彼にとっては知ったこっち ゃないのだ。 「お、おちびちゃんはでいぶがまもるんだああああっ!」 その時、意を決した親れいむが重い腰を上げ、子まりさと子れいむを守るために動き出 した。全速力で跳ねるれいむの速さは、人間がゆっくり歩くのと同じ程度はあった。 「待ってたんだよ、それをさぁ!」 としあきは満遍の、歪んだ笑みを浮かべた。待っていたとばかりにラジコンカーの速度 が何倍にも跳ね上がる。としあきは最初からラジコンカーをフルスピードで走らせてはい なかったのだ。 「おちびちゃ……」 親れいむがいいおわる前に、ラジコンカーが子まりさと子れいむの上を激しい音を立て ながら通り抜ける。次の瞬間、二匹の姿は忽然と消えていた。畳の上に残る黒い染みと甘 ったるい匂いだけが、そこに”何か”が存在していたことを示していた。 「おちび……れいむの……おちびちゃ……まりちゃ……れいみゅ……」 親れいむは魂の抜けたような表情を浮かべながら、自身の子の名前をブツブツと呟いて いる。 それを見たとしあきは、”我慢”をするのを止めた。 「ヒャハハハハハハハ! れいむちゃん、残念でしたああああっ! お前はおちびちゃん すら助けられないような最低、最悪の親だったんだね! 役立たずでごめんねっ! なー にが簡単だ、ああ? コラ?」 としあきの口調は先ほどの冷静なものとは打って変わって、ドス黒い感情を発散させて いるかのようなものへと変わった。そう、まるでずっと我慢していたものを、勢い良く解 放させるかのように。 としあきは思っていた。そう、これだ。やっと自分をさらけ出すことができたんだと。 この気持ちこそが、自分が求めていたものなんだと。今、自分は最高に幸せなんだと。 としあきの狂ったような声を聞いて、親れいむが我に返ったようだ。その顔は青ざめ、 あんよを小さくぐねぐねと動かして、少しずつとしあきから逃げようとしている。それに 気づいたとしあきは、笑顔で親れいむにいった。 「そんなに怖がらなくてもいいんだぞぉ? れいむちゃんよ。”俺は”もうお前に何もし ないんだからさぁ。”俺に”怯える必要なんてねぇんだ。お前への制裁は”母さん”にや ってもらうことにするからな。 なぁ、”母さん”――」 としあきは畳の上にあった包みを手に取ると、それに向かって喋りかけた。この行動を 親れいむは理解することができないようだ。何やら怪訝そうな表情を浮かべている。 としあきは持っていた包みを開ける。そこから出てきたのは、数本の”白いモノ”。 「れいむちゃん、これがなんだかわかりまちゅか?」 れいむが顔を横に振る。 「これはなぁ、お前に殺された”母さん”だよ。あぁ、可哀想な”母さん”自分が守ろう とした糞饅頭に忘れられちゃうなんて……フザケるんじゃねえぞこらああああああ!」 としあきが取り出したのは、紛れもない人骨だった。先端は彼によって鋭く加工されて いる。彼は仏壇の骨箱から母親の遺骨を持ち出していた。 「母さんはな、お前を庇って車に轢かれた時、体中の骨が折れたんだよ。その骨の何本か が、内蔵を傷つけたせいで死んだんだ。お前にもその苦しみを味わってもらおうと思って ねぇ。あ、糞饅頭に内蔵なんて立派なもんはねぇか! ハハハハハハハハ! そうだよな ぁ、お前らは単なる動く饅頭だもんなあああ!」 としあきは遺骨の一本を持ち、れいむの目元にチラつかせながら、訊いた。 「これからお前が死ぬまで、母さんの傷ついた内蔵と同じ場所に、一本ずつ”母さん”を 刺していってやる。死ぬ前に何かいいたいことはあるかぁ?」 れいむは口を真一文字にしたまま、答えない。 「そうか、何もいうことは無い……か。つまらねぇなぁ糞饅頭はよぉ!? それじゃあ、 まずは”胃”だ」 としあきは親れいむの口の左側に”母さん”を刺しこんでいった。人体でいえば、胃の ある位置だ。 「ゆぎゃあああ!」 親れいむの悲痛な叫びが響いた。それを聞いたとしあきは、過度の興奮によって、絶頂 に達した。 「あぁ……たまんねぇなあ、おい。たまんねぇよ……!」 としあきは”母さん”が親れいむから抜けないように気をつけながら、ゆっくりと前後 させる。餡子の流出によって親れいむが死んでしまうのを防ぐためだ。”母さん”は親れ いむの内部の餡子を何度も擦り、その度に親れいむに苦痛を与える。 「いだいいいいい! いだいいい! たずけで! だれかでいぶをたずけて!」 親れいむが”誰か”に助けを懇願する。シングルマザーの親れいむは、子供たちを失っ たことによって、天涯孤独の身となった。助けに来るものなど、存在するはずがない。と しあきはそんなことを想像すると、自分のものが再び熱くなっていくのを感じた。 「こんなもんで済むと思うなよ、クズがぁ! 次は”肺”だ!」 としあきは親れいむの側面から、中心部のやや下に”母さん”を二本、左右対称にゆっ くり、ゆっくりと刺していった。中枢餡を傷つけることだけは避けなければならなかった からだ。”母さん”が運良く親れいむの呼吸をつかさどる餡子を傷つけたのだろうか、親 れいむは呼吸が荒くなり、声が上手く出せなくなった。 「かひゅ……ひゅ……ごべ……かひゅ……れい……かったです……かんた……じゃ……あ ……ません……」 「何いってるか全然わかんねーよ、ゴミクズが。もっと良い声で泣けよ! 叫べよ! 喚 けよ! もっと俺と”母さん”を楽しませてみせろよ! 次は”肝臓”だ!」 今度は口の左側、”胃”に刺した方向とは反対側に”母さん”が刺さる。前後左右に刺 された”母さん”は、上からみたら漢字の”井”の字を形成しているようだ。 「ごべん……な……ざい……あ……やまり……ます……ら……ゆる……して」 親れいむが懸命に声を振り絞る。今度はとしあきもしっかりと聞き取ることができた。 「あ? 何言ってるのか全然わかんねーよ」 が、としあきは聞き取れなかったことにした。理由は簡単。そのほうが面白いからだ。 「どぼ……ち……っくち!」 としあきは親れいむの様子が変化したことに気付いた。言葉の最後に”っくち”がつい ていた。これは非ゆっくち症を発症しかけている証だということを、としあきは知ってい た。 「ハハハハハハッ! 非ゆっくち症だと!? ゆっくりにとって最も辛い死に方といわれ ているあれか!? ほんっと、お前最高だなあ!? ヒャーハハハハハ!」 としあきは満足していた。虐待の世界でもゆっくりが最も苦痛を感じる死に方の一つと して認知されている、非ゆっくち症を発症させたのだ。復讐としては、これ以上の形は無 いといえた。 しかし、としあきはチラッと母親の遺影を目にすると、何か思い出したかのように俯い た。 「いや……駄目だ。馬鹿か俺は? 馬鹿なのか!? 意味が無いじゃないか! 母さんが あの糞饅頭の肌を切り裂き! 中身をグチャグチャに蹂躙し! これ以上無いほどの苦し みを与えなければ意味が無い! 意味が無いじゃないか! ああ、なんて俺は馬鹿だった んだ! ごめんよ、母さん! ごめんよおおおお!」 としあきは畳に寝転がると、頭を両手で抱え、白目を剥きながら畳の上で悶え始めた。 それを見ていた親れいむの顔から生気が失われていく。ゆっくりである親れいむでも気付 いていたのだろうか。としあきは人として、既に狂ってしまっていたということに。この 人間にどのように嘆願しても、自分が助かることは無いということに。 親れいむが最後に見たのは、両手で”母さん”を振りかざす、としあきの狂気に満ちた 笑顔だった。 朝になった。 としあきは虚ろな表情を浮かべていた。あれだけ高ぶっていた感情が、時間が経過する につれて急激に冷めていった。 残らなかった。 そう、としあきには、本当に何一つ残るものはなかったのだ。 母の遺影から、流れるはずの無い涙が、ポロリと流れた気がした。 過去の作品 anko2817 十字傷みょんの出逢い anko2813 ちぇんが敬遠される三つの理由 anko2795 ゆっくり◯◯の一日 anko2788 畑荒らしの正体 anko2785 ゆっくりとお正月を満喫しよう! anko2758 作ろう!ドスまりさ! anko2753 共生 anko2751 ゆっくり餅 anko2737 イヴの夜に anko2561 すぃーはゆっくりできない anko2516 読書の秋 anko2514 新発見、ゆっくりの新しい移動法 anko2504 冷凍ゆっくり anko2503 新たなエネルギー源 anko2501 胴付きになりたかったまりさ anko2498 日本を支える一大産業(本編) anko2495 一番多いゆっくりは コンバートあき 挿絵:○○あき 挿絵:車田あき 挿絵:車田あき
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あきらめるP【登録タグ 作あ 作あか 作り手】 【ニコニコ動画】 特徴 「すこてぃっしゅアストる」がオリジナル曲初投稿作。 リンク SoundCloud Twitter 曲 Pastel ┌(┌^o^)┐ホモォ… すこてぃっしゅアストる CD FRONTIER -Into Eternal Space- Weeek!! ぽぷりぽっと3/ぽぷりぽ! 動画 コメント 名前 コメント
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声優-か行検索 名前:くるまど あきこ よみ:くるまど あきこ 性別:女性 誕生日:1977年10月18日 出身地:東京都 血液型:- 所属:フリー 出演作品 関連商品 声優-か行検索
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ゆけっ! ○○! (ポケットモンスター ソード/シールド) 使用条件 ピカチュウ以外のCランク以下 効果 [戦闘前] 2D6を振り、その戦闘中以下の効果を1回だけ使用できる。 ポケモントレーナーは出目を±2まで操れる。 目 効果 1 バリコオル:ミラーコート[主要][攻撃][E]そのラウンド中に自分に[E]の攻撃を行ってきたキャラクターに主要行動でその攻撃と同LV 火力:2倍で攻撃を行う。 2 ミミッキュ:ばけのかわ[対抗(損害判定)]自身が受けた損害判定によるダメージ、エリミネイトを無効化する。 3 ジュラルドン:てっていこうせん[主要][攻撃][E]自身の耐久力を最大耐久力の半分(切り捨て)だけ減らし、対象1体にてっていこうせん[LV:5 火力 40]で攻撃する。 4 ワンパチ:たまひろい[特殊] イヌヌワン手札補充の前に捨て札になっている「~弾」と名の付くCカードを1枚自分の手札に加える。 5 タチフサグマ:ブロッキング[対抗(攻撃)][防御]]LV:4の防御を行う(継続効果なし)。相手の攻撃が格闘攻撃だった場合、そのラウンド中相手が受ける損害判定の出目を-2する。 6 セキタンザン:タールショット[主要][E]対象はその戦闘中、火や炎に関する名前の攻撃を受ける時、火力を2倍にする。 7 イエッサン:ゆびをふる[主要][攻撃]Cカードの山札からランダムに1枚めくり、それが攻撃CカードならそのCカードで攻撃を行う。 8 ネギガナイト:インファイト[主要][攻撃][格闘]LV:1D6 コラム:1D3+1で格闘攻撃を行う。その戦闘中、自分の受ける損害判定の出目が-1される。 9 ヨクバリス:どろぼう[支援]対象1体の手札のCカードをランダムに1枚奪う。そのCカードが気にいらないなら捨ててよい。 10 タイレーツ:はいすいのじん[支援]]「予測」を得るかわりに逃避Cカードの逃避効果を受けることができなくなる。 11 ドラパルト:ゴーストダイブ[主要] [E]次のラウンドの自身の手番まで自分は攻撃の対象にならず、次のラウンドの主要行動でのCカードの攻撃に防御不可を付与する。 12 イシヘンジン:じばく[主要][攻撃]]自分以外の全員に10:1の損害判定を与え、自身に50:1の損害判定を行う。自分の下にマスがあるなら、そのマスを破壊する。 13 ムゲンダイナ:ムゲンダイビーム[主要][攻撃][E]対象1体にムゲンダイビーム[LV:4 火力:160]で攻撃する。この能力を使用すると、次の自分の手番は行動できない。 備考 2019年に発売したソード/シールドのポケモンと技を(できるだけ)詰め込んだ。 いけ!、○○!と違い1戦闘に1回しか能力が使えないが、条件がCランク以下と緩くなっている。 便利さと出目のあれが適当なんでこれ入れ替えたほうがいいとかあったらオナシャス イシヘンジン、バリコオル、ムゲンダイナもちょっと適当感あふれるので この子入れたいとかあったら一考します。 2020/1/8 順番入れ替え,ブロッキングのLVを3から4に 2020/1/8 バリコオルの効果を変更 この能力カードへの意見 真ん中あたりの方が便利で端の方があんま使い所先輩なさそうで草な -- 名無しさん (2020-01-08 01 06 50) 出目4の効果が微妙なので4と6入れ替えた方が面白そうじゃないですか? -- waka (2020-01-08 05 14 41) 名前 コメント
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所属しているサブ:なし 通称:あきたぬさん 現在体験入部中。 わたるんのお友達さんで、同じくTWは初心者さんのお方。 我がクラブ初のクロエ様です。 皆様優しくしてあげてくださいね!